周子「暇」 (33)

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周子「暇」

ありす「……」カキカキ

周子「ひま」

ありす「……」ケシケシ

周子「……ひ~~ま~~~」ゴロゴロ

ありす「大丈夫ですよ、周子さん。聞こえてますから」カキカキ

周子「わかってて無視してたのね。悲しい」

ありす「今の私の状況を考慮してください」カキカキ

ありす「学校の宿題をやっているんです。こういったすきま時間を有効利用するのが賢い生き方なんですよ」カキカキ

周子「ありすちゃんはそれ以上賢くならなくていいよー」グデーン

ありす「周子さんはもっと賢くなるべきですけどね」カキカキ

周子「今日のありすちゃんは毒が強いね。あたしは毒無効だからいいけどさ」

ありす「何言ってるんですか…」

ありす「今日はもう終わりなんですか?」カキカキ

周子「そだよー。午前も午後もレッスンでもうクタクタ。もうソファーから動けへんよ」ダラーン

ありす「そうですか。お疲れ様です」ケシケシ

周子「ありすちゃんは?」

ありす「このあとレッスンです。文香さんと一緒なので、おそらくユニットとしての練習になると思います」カキカキ

周子「ふ~ん、そっか~……」

周子「あたしも午後の方はユニットのやつだったよ。フレちゃんと一緒だったし」

周子「だから余計疲れた」

ありす「その言い方だとフレデリカさんが嫌な人みたいに聞こえますね」カキカキ

周子「もちろんそんなことあらへんよ。ボケにボケを重ねていくみたいな感じで進むから」

周子「途中からテンションが変に上がるんだよね。終わりに反動が来るけど」

ありす「そうなんですか。容易に想像できますけど…」カキカキ

周子「ん~~…コーヒー淹れよう。ありすちゃんも飲む?」

ありす「あ、じゃあお願いします」

周子「アリアリでいい?」

ありす「…?なんです、それは」

周子「まあアリアリだろうね。アリアリでいっか」

ありす「だからアリアリってなんですか」

周子「大人ならみんな知ってるよ?」

ありす「…いいですよ。私にはこのタブレットがありますからね」スチャ スッスッ

周子「さすがのタブレット力(ぢから)だね、隙がない」

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―――――



周子「できたよー。はい、コーヒー」コト

ありす「ありがとうございます」

周子「意味わかった?」

ありす「はい。牛乳と砂糖が入ってるっていう意味ですよね」

周子「さすが」

ありす「私にかかればこんなこと造作もありません」ドヤァ

周子「さすが」

ありす「む…何か馬鹿にしてませんか?」

周子「気のせい気のせい。ただちょっと、らしいなって思っただけ」

ありす「…そうですか、まあいいです。では、いただきます」ズズ…

周子「どうぞどうぞ」

ありす「……」ズズ…

周子「量とか大丈夫だった?苦かったら言ってね?」

ありす「大丈夫です、ちょうどいいです」

周子「ならよかった」

ありす「はい」

周子「……」ズズ…

ありす「……」ズズ…

周子「…また暇になった……」

ありす「もう帰ったらいいんじゃないですか?」

周子「……しおみしゅうこー」

ありす「…はい?」

周子「塩見周子……並び替えたら、『しゅしおうみこ』」

周子「…うん、意味通じるね。はい。じゃ、次ありすちゃんね」

ありす「えっ意味が分からないんですけど」

周子「名前の並び替え、ね?ほら、ありすちゃんもちょうど手が空いてることだしさ、やろ?」

ありす「今はコーヒーブレイクをしてただけですが…」

周子「そんなこと言わずにさーお願いーあたしを助けてー」ゴロゴロ

ありす「そんなに暇なんですか?」

ありす「…まあ、いいですよ。ちょっとした息抜きになら…」

周子「やったーありがとー」

ありす「ええと……周子さんはなんて言いましたっけ?」

周子「塩見周子、並び替えると『しゅしおうみこ』」

ありす「しゅしおう…?」

周子「『種子を追う巫女』だよ。ほら、歌鈴ちゃんがたんぽぽ持ってるの想像して?はい!風が吹きました!」

ありす「ああ…なるほど…」

周子「想像して想像して」

ありす「……」

周子「……想像できてる?」

ありす「…はい」

周子「……転んだ?」

ありす「……はい」

周子「やっぱそうかー」

ありす「…歌鈴さんごめんなさい」

周子「じゃあ次ありすちゃん」

ありす「ちょっと待ってください…ええっと、『たちばなありす』……うーん…」

周子「早く早く!」

ありす「せ、急かさないでくださいっ……すな……ばりあ……」

周子「砂バリア?」

ありす「うぅ~……あの、これ結構難しいですよね?」

周子「んふふ……あ、できた」

ありす「えっ」

周子「いや、でもまずはありすちゃんができるのを待つよ。最初くらいはね」

ありす「最初くらいって…このあとも続くんですか?」

周子「ん~とりあえずは時間の許す限り、ね?」

ありす「……はい!」

周子「お、できた?」

ありす「えー…橘ありす、並び替えたら『ちばあたりすな』!」

周子「…とりあえず説明を」

ありす「はい。天気予報を見ていました」

周子「はい」

ありす「千葉辺りは砂です」

周子「砂降るの?雨じゃなくて?」

ありす「…やっぱり、強引すぎましたか?」

周子「ちょっと……いや、火山灰は聞いたことあるけど」

周子「…うん、ダメだね」

ありす「そうですか…」

ありす「周子さんはどんなのを思いついたんですか?」

周子「あたしはー……『あなたすりばち』だね」

ありす「…それはどういう…」

周子「お父さんお母さんの会話で、お母さんが『あなたー、すり鉢どこー?』ってお父さんに聞いてるシーン」

ありす「それも強引じゃありません?」

周子「いやーこれはまだあり得る会話だよ?」

周子「さらに情報を足すならこのお母さんは昨日お父さんがすり鉢を使ってたのを知ってるの」

周子「だから『あなた、すり鉢』って言うだけでお父さんもすぐに『あぁ、あのすり鉢なら…』ってなるよ」

ありす「そこまで情報が必要だったんですね…」

周子「そうだよ。千葉辺り砂は惜しかったね。一応今度ナナさんに経験したことあるか聞いてみよっか?」

ありす「どうしてそこで菜々さんの名前が…?」

周子「おっと、関係なかったか」

周子「他の人の名前でもやってみよっか?まだ時間大丈夫?」

ありす「まだ余裕はあります。私もこのまま引き下がることはできませんし」

周子「その意気その意気」

ありす「…そうですね……」

周子「……五十嵐響子!…響子ちゃんね」

ありす「もうできたんですか?」

周子「『いがらしきょうこ』、並び替えたら『きょういこがらし』。脅威、木枯らしってね」

ありす「はぁー…よくそんなに思いつきますね…」

周子「別に紙とペン使ってもいいんだよ?その方が整理しやすいし」

ありす「じゃあ…私は使わせていただきます」

ありす「んー……」カキカキ

周子「……」

ありす「……あぁ…」ケシケシ

周子「………できた!」

ありす「えぇ…」

周子「森久保乃々、並び替えたら『ぼくのりもの』」

ありす「一体どんなシチュエーションなんですか?」

周子「5歳くらいの男の子が公園で友達と遊んでるときにこれを言うの」

ありす「『ボク乗り物!』って言うんですか?」

周子「多分そう。正直意味はわかんない」

ありす「でも小さい子ってこういうこと言いそうですよね」

周子「確かに」

ありす「それにしても私は未だにできません…」カキカキ

周子「なんだろー…得手不得手があるのかな?」

ありす「周子さんはすごいですね、紙もペンも使わないで…頭の中でそんなにできるものなんですか?」

周子「割とポーンとできるもんよ?」

ありす「むぅ…そこは少し大人っぽいですね…」

周子「ありすちゃんの大人の基準がわからない……あ、できた」

ありす「」

周子「堀裕子、並び替えると『ゆりほうこ』。ユリの宝庫だよ」

ありす「しっかり意味が通じますね…」

周子「うん。どこかは知らんけど」

ありす「ユリの宝庫ですか?調べましょうか?」スッ

周子「いや、別にいいよ」

ありす「そうですか………………」シュン

周子「調べたかったの?」

周子「短いのはパッと思いつくよ?中野有香で『ゆかのなか(床の中)』とか」

ありす「短いの…ですか…」カキカキ

周子「そうそう。そしたらすぐにできるもんよ?」

ありす「確かに…長い名前や小さい文字が入ってると難易度が跳ね上がりますね、これ」カキカキ

周子「そうだねー。あっ、じゃあこれなんてどうかな?」

ありす「なんです?」

周子「龍崎薫」

ありす「よくすぐに出ましたね、その名前」

周子「ムリかなー…?」

ありす「よりによって濁点の入った文字まで…いえ、別に薫さん本人に非があるわけではありませんが…」

周子「んー…………あ、これできそうじゃない?」

ありそ「嘘ですよね?」

周子「龍崎薫、並び替えたら「きゅうりをかざる」。キュウリを飾る、だよ。『お』は『を』にしてるけど」

ありす「今の私には周子さんは眩しすぎます…!」

周子「ありすちゃんはどうしちゃったの?」

ありす「時間が……そろそろ時間が迫ってきました…」カキカキ

周子「別にできなかったらできなかったでいいんだけどなー…」

ありす「それは私自身が許せません。絶対に完成させて見せます」ケシケシ

周子「あ、うん」

ありす「……」

ありす「…………!!!」

ありす「周子さん、できました!」

周子「お、どれどれー?」

ありす「えー…コホン。福山舞!」

周子「福山舞!」

ありす「並び替えると…!」

周子「替えるとー…?」

ありす「『ままふくいや』です!」

周子「……ん?」

ありす「『ままふくいや』です!!」

周子「いや、聞こえてたよ?」

ありす「場面はデパートです。お母さんの手に取った服が気に入らない5歳くらいの男の子が言うセリフです」

周子「また出てきたね、5歳くらいの男の子」

ありす「『ママ、この服、イヤ!』ということです」

周子「う~ん…でも今付け足したこの服の『この』は、結構重要な意味を持つ気がするんだけど」

ありす「どういうことですか?」

周子「『ママ、服、イヤ』のままだと、あんまり意味が通らなくない?」

ありす「……いや、そんなことは…」

周子「ちょっと説得力持たせるためにありすちゃん、このセリフ言ってみて?」

ありす「えっ」

周子「5歳の男の子になったつもりで。実際に演ってみたら納得できるかも」

ありす「なるほど…では、やってみます」

周子「どうぞ」

ありす「ママ!服、イヤ!」

周子「もうちょっと駄々っ子みたいに」

ありす「ママぁ、服ぅ…ィヤ!」

周子「まだ6歳だね。もっと幼く」

ありす「マーマぁ…ふーくーぅー…やーあー!!」

周子「やりすぎた」

ありす「どうでした?納得できましたか?」

周子「演技は良かったけどやっぱり言葉の意味が伝わりにくいかなー、なんて」

ありす「そう…ですか……」

周子「いや、そんな落ち込まんでも」

ありす「あと…10分……」カキカキ

周子「頑張れっていうのも変だけど頑張れー」

ありす「はい……」カキカキ

周子「……」

ありす「……」ケシケシ

周子「……こんなことなら『千葉辺り砂』でOK出しとけば良かったね」

ありす「…あれは自分の中でも最初から駄目だと思っていたので……」カキカキ

周子「そう…」

ありす「……」カキカキ

周子「……」

ありす「……」カキカキ

周子「……結構いろんなの書いてるよね。ちょっと見せてね」

ありす「あ」

周子「………あの、この『ヘレン』っていうのは…」

ありす「……」

周子「字数減らしたねー」

ありす「しかも無理でした…」

周子「さすがにこの文字数は……ケイトで『時計』とか言われても達成感無いでしょ?」

ありす「!」

周子「いや、ダメだからね?」

ありす「すぎさかうみ……おおたゆう……」ブツブツ

周子「トランス状態に入っちゃった」

ありす「……」カキカキ

周子(ありすちゃんのことだからこのあとまで引きずりそう。なんとかならんかなー…)

ありす「……」カキカキ

周子「……」

ありす「……」カキカキ

周子「……」

ありす「…………や!」

周子「や?」

ありす「できました!」

周子「おぉーじゃあどうぞ」

ありす「神谷奈緒!」

周子「神谷奈緒!」

ありす「並び替えたら…」

周子「替えたらー…?」

ありす「『やなおかみ』!」

周子「……」

ありす「……」

周子「………できた…」

ありす「!」パァァ

周子「できたよ!ありすちゃん!」

ありす「はい!私もできました!」

周子「やなおかみ!嫌な女将だね!」

ありす「はい!嫌な女将です!」

周子「やなおかみ!」

ありす「やなおかみ!」


 ヤッナオッカミ♪ ヤッナオッカミ♪


ガチャ

みく「おっ疲れさまにゃあ~~…なんだコレ」

おまけ


みく「前川みく!」

周子「前川みく」

みく「並び替えたら!」

周子「替えたら?」

みく「……『わかくみまえ』…?」

周子「……見舞いに来るなら若々しくしろって意味?」

みく「……どういうことにゃあ…?」

周子「いや知らんよ」

おまけ2


ありす「―――ということがあってですね、要するに私が大人に近づいたという話でして」ペラペラ

文香「…………」フム…

文香「…では…私の場合は…」

文香「……『ぎふわささみか』…」

ありす「……岐阜は…ささみ、か…?」

文香「…………」

ありす「ええと、岐阜と言えば……ささみなんですか…?」

文香「……恐らく、違うと思います…」

文香「すみません…忘れてください…」カァ…

ありす(…大丈夫ですよ、文香さん。私も似たようなこと言いましたから…)

おわり

読んでいただきありがとうございました。

依頼出してきます。

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