【艦これ】提督「長閑ですねぇ」 (71)

艦これのSSです。
書簡体、対話体、それぞれの形式で書く事があります。
いくつかオリジナル要素が登場します。
何番煎じか解らない設定も多くあると思いますがそこは生暖かい目でお見守り下さい。
一部、過剰な表現が登場したりする場合もあるかもしれません。
各艦娘の相関図や性格等、若干変わってくる部分もあると思いますが二次創作観点からご了承下さい。
更新は不定期になりますのでその点も長い目で見て頂けると助かります。
上記、改めて予めご了承の程宜しくお願いします。



【艦これ】提督「暇っすね」
【艦これ】提督「暇っすね」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1404/14040/1404046254.html)

【艦これ】提督「暇っすね」Part2
【艦これ】提督「暇っすね」part2 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1404/14042/1404294340.html)

【艦これ】提督「暇っすね」part3
【艦これ】提督「暇っすね」part3 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1404646553/)

【艦これ】提督「暇じゃなくなった」
【艦これ】提督「暇じゃなくなった」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1411557252/)

【艦これ】提督「バリバリ最強No.2」
【艦これ】提督「バリバリ最強No.2」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1422113973/)


上記五作品は過去作品になります。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1448801258

~ダメ提督~



-窓際提督-

武蔵「それ自体に異論は唱えんさ」

提督「いやぁ~、今日も快晴、海は穏やか、こう清々しい天気だと、散歩でもしたくなりますね。ねぇ、武蔵さん?」

武蔵「はぁ…提督よ、少しは真面目に執務をこなそうという気概はないのか?鎮守府のトップである提督が聞いて呆れるぞ」

提督「そうは言ってもねぇ、こう澄んだ空気と空を見たら、そうも言ってられないじゃない」

武蔵「全く、そういってこの間も長門から説教を食らっていただろう。秘書艦として嘆かわしいぞ」

提督「ふふふふっ、見られてましたか。う~ん、悲しいですねぇ…僕としては一生懸命やってるつもりなんですけどねぇ」

武蔵「必死さは全く伝わってこないがな」

提督「おっと、そうこうしている内に三時のおやつですよ。ヒトゴーマルマル、当鎮守府では一時間の休憩時間開始です。
さてさて、今日の間宮さんのデザートはなんでしょうかね。今から楽しみです」スタスタ…

武蔵「はぁ…」


その鎮守府は任務こそ艦娘が行う為にある程度まともではあるが、それを指揮する提督のダメっぷりが災いしている。

身内からも『ダメ』の二文字の烙印を捺されている生粋のダメ人間、もといダメ提督として認識されていた。

無論それは鎮守府内でも変わらず、艦娘からの信頼もベニヤ板のように薄い。

唯一まともに相手をしようとするのは秘書艦の武蔵くらいのものだった。

しかしそれでいて彼の階級は上から数えて三番目、つまり中将。

艦娘としてもそれが納得いかない様子で、度々首を傾げている。

周りの将校達もあれだけのダメっぷりを発揮していながら何故中将の位に座していられるのか、甚だ皆目見当もつかない様子だった。



提督「まーみーやさんっ!っといーらこっちゃん!」

間宮「あら、いらっしゃい、提督さん。今日もメガネが素敵ですね」

伊良湖「いらっしゃいませ、提督さんっ!」

提督「いやぁははは…しかし美人さんお二人がこうして出迎えてくれると、今日のデザートもまた一段と甘みが増しそうですねぇ」

伊良湖「美人さんだなんてそんなぁ///」テレテレ

間宮「うふふ、褒めてもサービスはしませんよ?」

提督「あははは、伊良湖ちゃんは照れても可愛いですねぇ」

間宮「それよりも提督さん、こんな所で油売ってて宜しいんですか?」

提督「はい?」

間宮「先ほど、長門さんが近海に深海棲艦を確認したって、赤城さんや加賀さん等を引き連れてドタバタしてらっしゃいましたよ」

伊良湖「えっと、えっと、作戦指揮とか、でしょうか?そういうの、されなくていいんですか?」

提督「あ~…うん、まぁ…長門さんが行ったのなら大丈夫じゃないでしょうか。それに赤城さんと加賀さんも一緒ならね。
尚の事、心配するだけ逆に失礼かなって、僕は思いますよ」

伊良湖「はぁ、そうですか。あっ…」

長門「提督っ!」ガシッ

提督「おわっ」グイッ

長門「こんな場所で何をしている!近海の哨戒をしていた千歳と隼鷹からの報告を受けていただろう!?」

提督「ちょっと、苦しっ……」

長門「はぁ…」パッ

提督「けほっ、けほっ」

長門「報告を受けてから時間がどれだけあった?何故、任務に当たっていた他の艦娘への報告が滞っているんだ!
下手をすればここが襲撃されていたかもしれないんだぞ!危機感はないのか、提督には!!」テーブル バンッ

提督「お、落ち着いて、ね?落ち着きましょう、長門さん」

間宮「そうですよ、長門さん。それに上司に対してその態度はいけません」

長門「くっ…」


提督「確かに連絡は貰いましたよ。ただですね、問題ないと、僕なりに判断したんです。
その時点で、ここには武蔵さんをはじめ、貴女達主力部隊の面々が待機していた。いざとなれば、即時出撃も可能。
そう僕は判断して、緊急通達はしなかったんですよ」

長門「だからと言って、全くの注意喚起もしないのはどういう事だ!?」

伊良湖「お、落ち着いてください、長門さん」オロオロ…

提督「確かに、注意喚起しなかったのは私の落ち度ですね。その点については謝罪します。
ですが、皆さんを信じていたからこそ、というのも事実ですよ?長門さん達が居るから大丈夫と…
まぁ、それに胡坐をかくと言うのは確かに良くない事ですから、僕も今後は細部に渡って注意をしていきます。
それで構いませんか?」

長門「言う事は毎回呈を成しているが、貴方はいつもそこ止まりだ。何故、もっと提督らしい態度を取らない」

提督「提督らしい、ですか」

長門「そうだ。然として凛とする。提督が威風堂々と構えていれば、自ずと私達艦娘だって身が引き締まる。
その姿勢が貴方には欠けていると、私は言っているのだ」

武蔵「その位にしておけ、長門」

長門「武蔵…」

武蔵「一報を出せなかった責任は私にもある。確かに近海にまで深海棲艦が迫っていながら、任務に当たる艦娘への通達を怠るのは良くない事だ」

長門「当然だ!」

武蔵「だが、お前達が揃って居るなら少し安寧と構えたくなるのも分からん話でもないぜ」

長門「なっ…武蔵、お前まで何を…!」

武蔵「ふふっ、冗談だ。提督には私から後で言い含めておく。一航戦の二人にも私に免じて許して欲しいと伝えておけ」

長門「はぁ…赤城はまだしも、加賀は一筋縄ではいかないぞ」

提督「加賀さんは怒ると怖いですからねぇ…」

長門「提督…!」

武蔵「はぁ、口を慎め、提督。お前の所為だと自覚しろ」

提督「おっと、これは失礼しました」



通称はダメ人間、もしくはダメガネ。

そこはそんな揶揄をされる中将提督が治める鎮守府。

近隣鎮守府の提督からも駄目出しをされるほどに人間としてのダメッぷりを発揮している。

大将連中からも煙たがられ、同じ中将同士でも格下に見られ、己よりも下の階位にある将校連中にすら馬鹿にされる。

そんな男が治めるこの鎮守府には、数多くの艦娘達が日々を過ごしている。

どれも一線で活躍できる実力を持っている実力者達だ。


ザアァァァァ……


矢矧「はぁ…やっぱり塩水被るのは慣れたくないわね。肌が荒れちゃうわ」

古鷹「でもでも、こうしてシャワー浴びるとなんだかシャキッとしますよね」

赤城「皆さん、湯冷めはしないようにしてくださいね」

加賀「湯船に浸かって行っても良いけれど、余り時間をかけないようにお願いします」

矢矧「古鷹さんはどうしますか?」

古鷹「やっぱり浸かっていきたいよねぇ」ニコー

矢矧「ふふっ、それじゃお供しましょうか」

加賀「私は先に出ます。赤城さん、30分後に弓道場で」

赤城「ええ、解りました」


ガララ……


矢矧「はぁ…峠は越えたみたいだけど、また加賀さんの逆鱗に提督は触れたようね」

古鷹「あははは……ど、どうなんでしょうね。私はその、余り気にしないと言うか、なんというか…」

矢矧「でも、急遽の出撃…それも赤城さんと加賀さんが気付いて、命令を下したのは長門さんだもの」

古鷹「そう言えば、長門さんの怒号が響いてたねぇ…」

矢矧「あのダメガネさんは、ホントのんびりしすぎなのよ」

古鷹「ダ、ダメガネって…」ニガワライ

矢矧「さて、と…そろそろ上がりましょう」ザバァ

古鷹「あっ、うん、そうだね」ザバァ

本日はここまで

新章です。
これから宜しくお願いします。

またトリップ付け忘れてた・・・
皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします

提督「はぁぁ…加賀さん怖かったなぁ…」

武蔵「自業自得と知れ。お陰で私まで一緒に説教を受ける羽目になった。この埋め合わせはでかいぜ、提督」

提督「えぇ、えぇ…解っていますとも。武蔵さんはカステラで許してくれる節が見受けられますが、そこは今回は?」

武蔵「そうだな。一週間、間宮の特製カステラ一本で手を打とうか」

提督「ぐっ……中々に足許を見てきますね」

武蔵「小言がそれで減ると思えば提督としては満更でもなかろう。最も、それ以降の対処は自身次第だろうがな」ニヤッ

提督「ははは、仰るとおりですよ。さて、と…夕食までの鎮守府内の巡察にでも行きましょうか」

武蔵「うむ、ではいこうか」


カツ カツ カツ……


古鷹「あっ」

矢矧「あら」

提督「おや、良い香りですね。ラベンダーでしょうか」

矢矧「」(変態か!)ピクッ

古鷹「あああ、えっと、はい!お風呂頂いてましたから!」

矢矧「地獄鼻……」ボソッ

古鷹「や、矢矧さぁん……」ボソッ クイクイ…

提督「…僕の不手際でご迷惑を掛けてしまいましたね。無事で何よりです。十分に残りの時間、休養を取って下さい」

矢矧「ええ、そうさせて頂きます。では、これで」ペコッ

古鷹「提督もお疲れ様です!それじゃ、失礼しますね」ペコッ


タッタッタ……


武蔵「はぁ、早速棘が刺さったな」

提督「慣れっ子ですから」ニコッ

武蔵「慣れっ子の使い方を間違えているな」

隼鷹「おっ、提督じゃーん、サボってんのぉ?」ヒック

提督「ははは、サボってないですよ?鎮守府内の巡察です」

武蔵「隼鷹、鎮守府内に酒を持ち込むなとあれほど言っただろう!?」

隼鷹「あぁ~、はいはい。武蔵はお堅いねぇ…千歳は気持ち良く乗ってくれたってぇのにさぁ♪」

武蔵「共犯者は千歳か…」

隼鷹「共犯って…物騒な物言いすんない。かぁ~、ちっちゃいねぇ!」

提督「隼鷹さん、鎮守府内は公共の場です。憩いの場も勿論ありますが、出来る限り公私に渡る区切りは明確にお願いします」

隼鷹「へいへ~い、提督は相変わらず緩いねぇ」ニコニコ

提督「おや、僕だって怒る時は怒りますよ?」

隼鷹「へぇ、そりゃあ天変地異が起きそうだねぇ♪アッハッハ!そんじゃ、武蔵が睨んでて怖いから艦娘寮にいくよ~」ヒラヒラ スタスタ…

武蔵「全く…おい、提督。ああいうのは風紀に関わる事だ。ビシッとそこは言ってくれないと困るぜ」

提督「縛り付けるのは良くありませんよ、武蔵さん。さっ、次へ行きましょう」

武蔵「やれやれ…」


カツ カツ カツ……


青葉「おやっ、そこを行くのは窓際司令官と武蔵さんではありませんか!青葉、見ちゃいました!」

提督「はっはっは、いやぁ見られてしまいましたね」

青葉「司令官、ノリが良いのか悪いのか、判断に苦しみます」

提督「おや、そうですか?」

青葉「っていうか、何してるんです?何かスクープとかですか!?」

武蔵「ただの巡察だ。いい加減にしろ」

青葉「…ですよね。そうですよね。だって武蔵さんが一緒の時点でサボってる訳ないですしね」

提督「そうですよ。僕も武蔵さんに監視されてますからねぇ。サボろうにもサボれません」

武蔵「……提督」ピキッ

提督「おや、失言だったようです。さて、それじゃ青葉さんも余り油を売らずに、明日の準備でもしてコンディションを整えて下さいね」

青葉「青葉、了解です!では~!」


カツ カツ カツ……


秋月「あっ」

浜風「あら」

潮「あっ…」

島風「オゥッ!?」

曙「うわっ、最悪…クソ提督じゃん」

提督「曙さん、そのクソ提督っていうの、どうにかなりませんかねぇ」

曙「う、うっさいなぁ!クソ提督だからクソ提督って言って何が悪いわけ!?ばっかじゃないの!ふんっ!」タッタッタ…

潮「あ、曙ちゃん…!あぁ、行っちゃった…あ、あの、提督ごめんなさい。曙ちゃんにはあとで私から…」

提督「いいえ、大丈夫ですよ。潮さんは優しいですね。曙さんは、結構無鉄砲な所も多いですから、支えて上げて下さい」ニコッ

潮「は、はい///」

秋月「司令、お疲れ様です」

浜風「お疲れ様です、提督」

島風「てーとく、お疲れ様ー!」

提督「はい、皆さんお疲れ様です。今日の任務は大変ではありませんでしたか?」

浜風「外海での実戦訓練と近海の哨戒任務ですから、さして難しいとは感じませんでした」

秋月「途中、長門さんからの通信でドキッとしましたけど、それも何とかなりましたし」

島風「問題なーし!」

提督「そうですか。それは何より、無事が一番ですからね」

武蔵「直に夕飯だ。支度を整えておけよ」

潮「あ、はい。これから向かおうと思ってましたから大丈夫です」

武蔵「そうか。薮蛇だったな。私達はまだ少し巡察が残っているから、先に食に付いてもらって構わん」

秋月「解りました。長門さんにもその旨伝えておきますね」

武蔵「ああ、頼んだ。では提督、次だ」

提督「ええ、そうですね。では、失礼しますね」


カツ カツ カツ……


??「オラッ、待てゴーヤ!まだ頭拭いてねぇだろ!」

ゴーヤ「あ、あとは自分で出来るでち~!」タッタッタ…

提督「おっと」

ゴーヤ「はわっ」

武蔵「こら、緊急時以外で鎮守府内で走り回るな」

ゴーヤ「はわわ、ごめんでち」

??「どこ行きやがった、ゴーヤ!」

提督「おやおや」

武蔵「木曾…」

木曾「おっ、なんだ提督と武蔵か……って居やがったな、ゴーヤ!」

武蔵「なんて格好だ、木曾」

木曾「あぁ?んだよ、短パンとタンクトップだよ。別に素っ裸じゃねぇんだからいいだろ」

武蔵「全く…ゴーヤもゴーヤだ。辺り一帯水浸しじゃないか。ちゃんと拭いておくんだぞ」

木曾「ったく、風呂上がってそのまま出てこうとしてんじゃねぇよ!」

ゴーヤ「つ、つい海から上がった時の癖でち…」

提督「はっはっは、元気があっていいですねぇ。ですが、風邪には気を付けて下さいね。最近流行ってるみたいですから。
あぁ、あと木曾さん?」

木曾「あぁん?なんだよ、提督」

提督「君も北風小僧じゃないんですから、少しは気を付けて下さいよ」

木曾「ははっ、北風小僧か。そいつはいいや。くくっ、はいはい解ってるよ。悪かったな、五月蝿くってよ」

ゴーヤ「ごめんでち」ペコリ

木曾「うっし、ゴーヤ、体ちゃんと拭いて着替えて飯だ!今日は確かデザートにお前の好きな間宮アイスがあったはずだ!」

ゴーヤ「ホ、ホントでちか!?こうしちゃいられないー!」ドタドタドタ…

武蔵「くくっ、煽てるのが上手いな、木曽は」

木曾「んな事ねーよ。んじゃ、また後でな!」タッタッタ…

提督「さて、と…以上ですかね?」

武蔵「あとは艦娘寮のほうを確認して終わりだ」

提督「あぁ、そうでしたね。僕とした事が、うっかりしていました。では参りましょうか」


カツ カツ カツ……


瑞鶴「あ、提督さんじゃん」

翔鶴「お疲れ様です、提督」

千歳「あっ、お疲れ様、提督!」

提督「おや、まだ夕食の席には着いていないのですか」

瑞鶴「うん、ちょっとねー」

翔鶴「これから向かう所だったんですよ」

千歳「提督と武蔵さんは?」

武蔵「鎮守府の巡察だ。あと千歳、隼鷹にも言ったが鎮守府内に酒を持ち込むのは金輪際止めてもらおう」

千歳「あっ……あぁ~、あはは、いやぁ~、ごめんね。ついつい…」

武蔵「そういう姿勢が隼鷹を調子付かせるんだ。特にあいつは酒癖が悪い。駆逐艦の者達に悪影響を及ぼす」

千歳「うぅ…了解、気をつけるよ」

提督「まぁまぁ、武蔵さん、それくらいにしておきましょう。千歳さんだって悪気があってやった訳ではないんですから。
ただし、何かが起こってからでは遅いですからね、その部分は留意して下さい」

千歳「うん、そうだね。改めて肝に銘じておきます」

提督「ええ、是非そうして頂けると助かりますね。では、僕達はもう少し巡察してから戻りますので」

翔鶴「はい、それでは失礼しますね、提督」ペコリ


カツ カツ カツ……


瑞鶴「……こういっちゃアレだけど、あれじゃ武蔵さんが提督さんで、提督さんが武蔵さんのお付してるようにしか見えないね。」

翔鶴「こら、瑞鶴」

瑞鶴「え~、だって本当の事じゃん」

千歳「私も提督が怒ったところって見た事ないんですよねぇ。いつもニコニコ朗らかで、笑ってるイメージしかない」

瑞鶴「翔鶴姉ぇは提督の経歴とかそういうの知ってるの?」

翔鶴「さぁ…どうだったかしら。上司の悪口はあまり言いたくはありませんけど、提督間ではあまり良いお噂は聞いてはいません」

瑞鶴「あっ、それ私も知ってる。ダメ提督とかダメガネって言われてんでしょ。はぁ、なんかその鎮守府の艦娘ってだけでもなんかなぁって思う」

千歳「作戦立案、戦術指南、運営形態、その殆どが武蔵さんの考案内容って言われてるからねぇ」

瑞鶴「あぁ~あ、どうしてこんな鎮守府に来ちゃったんだろ。第一部隊は赤城さんと加賀が幅利かせてるから入り込む余地ないし」

翔鶴「瑞鶴、余り先輩方を悪く言ってはダメよ。それに、一航戦のお二人は実力があるんだもの、当然のポジションでしょう?」

瑞鶴「私だってあれくらいやれるわよ!」

千歳「ふふっ、瑞鶴気合入ってるねぇ。私も頑張らないとかな」

瑞鶴「トーゼン!いずれ一航戦だって抜きさってNo.1空母の座を手に入れてみせるんだから!」

本日はここまで

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします

-提督の秘密-

武蔵「提督、今日のスケジュール一覧だ」ピラッ

提督「ええ、どうもありがとう。おや…今日は、出撃任務が二つですか」

武蔵「あぁ、南の提督の領海だが、そちらでは対応しきれないという事で私達の艦隊にお声が掛かったと言うわけだ。
随分と上からな物言いで、流石に不快を露に仕掛けたがな…」

提督「そうでしたか。あぁ、それで今朝は武蔵さん、少し機嫌が悪かったんですね。合点がいきました。
しかし困りましたねぇ…今日は第一部隊は別件でこれからもう抜錨します。となると、おのずとそちらへ派兵させるのは
第二部隊という事になりますが、今日の編成はどうなっていましたかねぇ」

武蔵「変わらずだ。私を旗艦とし、随艦には五航戦の翔鶴と瑞鶴、青葉に浜風と島風の六人だ」

提督「では、急遽第三部隊の遠征任務は取り止め、近海の警戒任務に切り替えましょう」

武蔵「そこまで警戒するほどのものか?それに鎮守府の方はどうする。蛻の殻じゃないか」

提督「そこはまぁ、なんとかなるでしょう。心配なら南の任務を早急に片付けて舞い戻って来て下さい」ニコッ

武蔵「全く、たまに意見したかと思えば無茶難題を吹っかけてくるな」


コンコン…


提督「はい、どなたでしょう」


ナガトダ


提督「開いてます。どうぞ」


ガチャ…


長門「失礼する。おはよう、提督」

提督「ええ、おはようございます、長門さん」

長門「昨日は済まなかった。頭に血が上っていたとは言え、提督に対する態度ではなかった」

提督「いいえ、長門さんの言い分は最もですから、そこを咎める気は毛頭ありません。
何より、長門さんのような姿勢の人が居るという事が重要なんですよ。いざという時の道標になります」

武蔵「お前が居れば、私や提督がいない場合でも指針がぶれる事はそうあるまい。私亡き後は長門に任せるのが吉だな」

長門「武蔵、そういう縁起でもない事は口にするな。厄を呼び寄せるだけだ」

提督「そうですよ、武蔵さん。口は禍の角…何気ない言葉でも、それが元で災難を招き身を滅ぼすという事もあります。
言葉とは難しいですねぇ…ものをいう時には慎重になるべきという戒めでしょうか」

長門「ふっ、提督にしてはいい事を言う」

提督「お褒めに預かり恐縮です。それはそうと、謝罪だけの為にここまできたのですか?」

長門「ああ、それなんだが…昨日の深海棲艦の件だ」


武蔵「何かあったか?」

長門「動きが不自然だった」

提督「動きが?」

武蔵「不自然とはどういう事だ?」

長門「これまでの深海棲艦には考察という概念そのものがなかった。
それは言い換えれば、こちらの戦術を理解もしなければ作戦の行使も容易だったといえる。
だが、近頃の深海棲艦にはこちらの戦術を理解・把握し、それに対応しようとする動きが見て取れる」

武蔵「馬鹿な。深海棲艦に知恵でも付いたというのか?」

長門「だが事実、昨日近海に出現した深海棲艦は明らかにこの鎮守府を目指して進軍していた」

武蔵「何…?」

提督「………」

長門「何かが起こる前兆とこれは捉えるべきではないか」

武蔵「提督…」

提督「…解りました。その件については僕の方から大本営に話を通しておきましょう」

武蔵「直接赴くか?」

提督「そうですねぇ…第二の旗艦を翔鶴さんに、武蔵さんは第三の旗艦として鎮守府で部隊待機。
木曾さんに第二へ一時的に移って頂き、任務の従事に当たって頂きましょう」

武蔵「了解した」

長門「では、私達もこれより抜錨する」

提督「ええ、宜しくお願いします。くれぐれも無理はしないようにお願いしますね」

長門「心得ている」


提督「さて、それじゃ武蔵さん、あとは頼みましたよ」

武蔵「ああ、そっちもサボるんじゃないぞ」

提督「はっはっは、手厳しいですねぇ。これでも僕、結構しっかり働いているんですよ?」

武蔵「ふんっ、どうだかな。まぁ期待はしないよ。精々ちゃんとやってくれ。頼んだぜ」


ガチャ……パタン……


提督「……ふぅ」カチャ…

提督「…ふふ、眼鏡…別に目が悪い訳ではないんですけどねぇ。どういう訳か、これを掛けるとしっくりくる」

提督「……願掛け、と言うには少し特殊ですかねぇ」カチャ…スッ…

提督「さて、それでは大本営に赴くとしましょうか」



ザワザワ……


本部員1「おい、あれって…」

本部員2「あぁ、窓際提督だろ。不祥事こそないらしいが、別に目立った功績がある訳でもないのに中将の位に居るって噂の…」

本部員3「眼鏡だけはインテリなんだけどな。ダメガネなんて呼ばれてるらしいぜ」

本部員1「ヒドイあだ名だな、それ…」クスクス…

本部員2「おっと…」

提督「どうも」ペコリ

本部員123「「ど、どーも…」」


ツカ ツカ ツカ……


提督「どうも、元帥はいらっしゃいますか?」

大淀「これは提督、お疲れ様です」

提督「ええ、お疲れ様です。大淀さんもお変わりないようで」

大淀「はい、滞りなく。それで、本日は元帥にどのような件で?」

提督「そうですねぇ。どう説明すれば良いでしょうか。ここ最近の深海棲艦の動きについて、少し気になる事がありましてね?」

大淀「深海棲艦の動き、ですか」

提督「ええ、先日の事です。僕の鎮守府近海で少し変わった行動を取る深海棲艦群が居ましてねぇ…
任務に従事する艦娘からも、挙動が変だったと指摘を貰ったものですから、ご報告をと思ったまでです」

大淀「大変申し訳ありませんが、元帥は非常にお忙しい身です。用件のほどはこの私、大淀が確かに承りました。
追って電文にてお返事のご報告をさせて頂きますので、今日はお引取り頂いて構いませんか?」

提督「困りましたねぇ…出来れば直接、お話がしたかったんですが」

大淀「困るほどの内容でしょうか?深海棲艦の動きに不審な点がある。それ自体には確かに留意の点はありますが、
現時点で元帥に一提督が直接内容をお伝えするほどの事とは到底思いません」

提督「なるほど、一理ありますね」

大淀「それと、余りこういう事は言いたくはありませんが…」

提督「はい?何でしょうか」

大淀「提督、貴方と言う人物の信頼性には些か欠ける部分が多過ぎるという事です」

提督「ふふっ、これは…手厳しいですねぇ。解りました…では今日は大人しく引き下がる事にします。では」ペコリ

大淀「申し訳ありません」ペコリ



提督「…………」


コトッ…


店員「ご注文のホットコーヒーになります。ご注文は以上で宜しいでしょうか?」

提督「ええ、ありがとう」ゴクッ…


カチャ…


提督「…………」

??「ここの席、一緒していいかな?」

提督「…………」チラッ…

提督「…ええ、構いませんよ。むしろ、お待ちしておりました」

??「相も変わらず、と言った趣きだな、君は」ガタ…

提督「お伺いしたんですが、ふふっ…大淀さんにピシャリと言い包められてしまいまして。よい秘書艦を携えてますね、元帥」

元帥「彼女は優秀すぎるほどに優秀だよ。第二秘書艦として十二分な働きをしてくれている」

提督「ええ、そうでしょうね」

元帥「で、私に話があるんだろう?」

提督「大淀さんがどう伝えてくれたのかは知りませんが、概ねの内容は伝わっていると思うんですが…」

元帥「聞いたよ。深海棲艦の動きが変だという話だろう?」

提督「ええ、そうです」

元帥「君はいつまでそうしているつもりだ?」

提督「…そうしている、とはどうしている事でしょう?」

元帥「確信に迫ろうとすると直にそうやって茶を濁す。君の悪い癖だぞ」

提督「僕は別に濁しているつもりはないんですがねぇ…人間誰しも答えたくない内容の一つや二つは心に秘めているものでしょう」

元帥「君の場合は心の奥底に後生大事に隠し持っているようにしか見えんがね。その若さで達観するというのは如何なものかと思うぞ」

提督「そうでしょうか。だとするのなら、今もこうして貴方と向かい合ってティータイムになど興じていませんよ。
少なくとも、僕はこの階位に満足していません。何より、この海軍と言う組織に良い印象を抱いていない。
言葉を返すようですが、貴方はいつまで僕をこの組織に縛り付けておく気なのでしょうか?」

元帥「私が君を海軍に留め続けていると、そういうのか?」

提督「少なくとも、僕はそう感じて止みませんね」

元帥「ふっ、ならばそうなのだろう」

提督「はい?」

元帥「君がそう感じるのならそうなんだろうと、そう答えたまでだ」

提督「歯に衣着せぬ、と言った所でしょうか。遠慮と言うものを相変わらず知らない方だ」

元帥「君がそれを言うのか。ならばお相子と言った所かな。さて、話が脱線しているようだが?」

提督「はぁ…これはあくまで、僕が独自に集めたデータによる憶測に過ぎません。それを念頭に置いて聞いて下さい────」



深海棲艦の動きはここ数週間で劇的に変化をしています。

具体的に申し上げると、一部の海域において深海棲艦の出現地点が徐々にこちらの各鎮守府に近付いているという点です。

そして近付くに連れて、出現の頻度は増している。

僕が知る限りで初めてこの変化に気付いてから数えて十日。

それが次に確認が取れた時点では八日。

そこから二日おきに出現するかと目測を立てていた所、次に現れたのは五日。

そして、今回ので二日。

恐らく今度は明日。

それも奇襲と言う形でどこかの鎮守府が襲撃される恐れは大いにあります。

考えられるものとして、深海棲艦の泊地が何らかの理由により移動している。

もしくは移動した先で前線基地を構えている。

故に短いスパンで態勢を整えた断続的な攻撃に転じられるというのが僕の考えた内容です。


元帥「その内容が真実だったと仮定しよう。だが疑問は残る。深海棲艦の泊地はこれまで何かしらの島を利用していただろう。
そういった島々の沖合いを深海棲艦が制圧し、そこに泊地を築き上げる。これらの泊地はこれまでにも確認は取れている。
だが、君の言う理論で言うと、今回の深海棲艦の泊地は海底移動をしているという事になる。これは流石に受け入れ難いものがある」

提督「ですから、憶測に基くと始めに言ったではありませんか。僕だってこれが真実ならば、大いに恐れ戦きますよ。
海底への進軍となれば、向かえる艦娘にも制限が付きますからねぇ…現時点で名を列挙するならば、
イムヤさん、ハチさん、イクさん、ゴーヤさん、シオイさん、大鯨さん、まるゆさん、ローさんの八名でしょうか」

元帥「……艦娘全員の名前、まさか覚えてるのか?」

提督「まさか…僭越ながら、名の知れている子達を列挙したまでです。流石に深海に泊地を形成する、と言うのは無理がある。
とするならば、小隊を編成して断続的な遠征攻撃を敢行している、というのが僕が一番可能性として考えている案です」

元帥「深海棲艦が遠征だと…?」

提督「事実だとするなら、恐ろしい事です。深海棲艦にも知能が備わっている、という事ですからね」

元帥「…解った。早急に調査を開始する」

提督「お願いします」

元帥「君は、動かんのか」

提督「ふふふ、窓際に何を期待しているんですかね?それに僕の鎮守府は僕が優秀なのではなく、
そこに存在している艦娘の皆さんが優秀なだけです。勘違いしないで下さい。では、失礼します」ペコリ

元帥「……昼行灯、と言うわけか」


過去を一切語らない、窓際提督、ダメ提督、ダメガネと言われたい放題の提督。

そんな提督が治めているとある鎮守府。

艦娘からの信頼は殆どないに等しいが、日々を滞りなく過ごしている。

それも秘書艦の武蔵や第一部隊を牽引している長門の努力の賜物でもあろう。

これは、そんな艦娘からの評判が悪いダメ提督と呼ばれている彼を中心とした物語。

本日はここまで

皆様こんばんは
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~意に背く男~



-役立たず-

今、その鎮守府では緊急の作戦会議が行われている。

敵対する深海棲艦の動向に関して、不審と思われる点が幾つか上がっていた為、独自に対策を練ろうという方針だった。


武蔵「よし、全員揃ったな。点呼、第一艦隊!」

長門「戦艦長門を旗艦とし、以下随艦五名、赤城、加賀、古鷹、矢矧、秋月、計六名!」

武蔵「第二艦隊!戦艦武蔵を旗艦とし、以下随艦五名、翔鶴、瑞鶴、青葉、浜風、島風、計六名!次、第三艦隊!」

木曾「雷巡木曾を旗艦とし、以下随艦五名、千歳、隼鷹、曙、潮、ゴーヤ、計六名だ」

武蔵「全十八名鎮守府着任を確認。ではこれより作戦会議に移行する」

提督「皆さんご苦労様です。今回集まって頂いたのは先にも説明した通り、深海棲艦の動きに不審な点が幾つか見受けられた為です」

加賀「前回の鎮守府襲撃未遂の件と関連性は?」

提督「それも含めて、とご理解下さい。順を追って説明を先ずはしましょう」


今までの深海棲艦の襲撃周期は散漫なものであり、大体はこちらからの攻撃に対して防衛行動を取るのが主としていました。

これに関しては皆さんもご存知の通りです。

こちらから追撃を仕掛ける事はあっても、相手から追撃を仕掛けてくる等作戦染みた動きは皆無だったといえます。

しかし、ここ最近での深海棲艦の動きは襲撃の頻度と回数、その周期から照らし合わせると非常に奇妙といえます。

最初の襲撃から数えて今回の一件に至るまでに僅か一月、この一月の間に深海棲艦は過剰とも言える襲撃を繰り返しています。

先行打撃部隊をはじめ、偵察部隊、陽動部隊、輸送部隊、哨戒線警戒部隊、こちらの動きを把握し、待ち伏せているケースもありました。

これは異例とも言うべき事態と皆さんには認識して頂きたいと思っています。



提督「赤城さん、これまでの深海棲艦の形態を簡潔に述べるとどうなりますか?」

赤城「烏合の衆、でしょうか。群れは成していますが統率は取れていない」

提督「的確ですね。まさにその通りです。ですが、今は小隊を組み、陣形を成し、明確な意思を持って攻めてきています」

木曾「マジかよ…」

提督「ええ、マジですよ、木曾さん」

武蔵「以前に長門達が殲滅した深海棲艦群もこちらの海域を偵察するために編成されたらしい水雷戦隊と予想される。
速力のある軽巡型を基準に雷巡型が二匹、駆逐型が三匹、計六匹による高速偵察部隊だ」

長門「相手の挙動は初回から不自然なものだった。まず、私達と遭遇した事自体が、相手にとっては不慮の事故であったと思う節がある」

翔鶴「……相手、つまり私達の方で哨戒に当たっている面子に空母部隊が存在しないと思っていた、と言う事でしょうか?」

長門「その通りだ。本来、近海哨戒の担当は木曾達の第三部隊だ」

木曾「おい、それって…」

瑞鶴「私達の艦隊編成や担当海域を把握してたっての!?」

加賀「解せないわね。深海棲艦に作戦立案をするだけの知性と行動力が備わっているという事かしら?」

武蔵「認めたくはないが、そうとしか言いようがない」

提督「そこでですね。次回、またいつ何時こうした事態が起こるかも解りませんので、皆さんで事前の打ち合わせをして頂きたいのです」

古鷹「えっと、その…提督は、話し合いには参加されないんですか?」

提督「僕が参加しても皆さんを困惑させてしまうだけでしょう」

矢矧「参加しても意味ないでしょうしね」

古鷹「あぁん、矢矧さぁん…!」ボソッ グイグイ…

隼鷹「にしても気に入らないねぇ。あたしと千歳が近海哨戒する際に、初回しか空の偵察出さないってのも知ってたワケだ」

千歳「こっちの情報筒抜け、だね」

提督「この鎮守府に深海棲艦と内通するような人が居ないのは僕が良く解っています。
とするならば、やはり深海棲艦に知性と行動力が備わっているだろうというのが見解ですね。
出来うる限り、計画を密に行い、実行に移して頂ければと思います」

武蔵「よし、これより作戦の立案と行使に関しての意見交換をする」


スタ スタ……


秋月「本当に提督、出て行ってしまいましたね」

浜風「まぁ、今に始まった事ではないと思いますが…」

曙「ふんっ、別にあんなクソ提督、居ても居なくても同じじゃない。居れば居たで役立たずなんだし、居ない方がマシよ」

島風「にししっ、ぼのちゃん、しんらつぅ~♪」

曙「うっさいわね」



スタ スタ……

チャッ……


提督「…やっぱり、似合わないと思うんですがねぇ…君は、どう思いますか?ふふっ、答えれる訳もありませんか」

提督「この眼鏡も、もう随分と経ちますねぇ。僕には、過ぎた物なのかもしれません。ですが、手放す事が出来ない」

提督「呪縛……というには些か大袈裟でしょうか。君がこうして見ていてくれるから、僕は誤らずに進めるのかもしれない」

提督「……そう、僕が関われば関わった人は────」


チャッ……


提督「ふふっ、ここまで自虐的じゃなかったはずなんですけど、人間変わるもんですね…」


ツカ ツカ ツカ……


武蔵「…………」



長門「ではこれより先の作戦概要に沿って、今後の哨戒任務は遂行する。それで構わないな、武蔵」

武蔵「ああ、問題ない。ただ、深海棲艦の動向が不明慮なままだ。十分に注意して任務には当たってくれ」

長門「解っている。そっちも提督のお守で大変だろうがよろしく頼む」

武蔵「……」

長門「なんだ、どうした?」

武蔵「いや、何でもない。精々足許を掬われんように気をつけるさ」

長門「…?ああ、気をつけるに越した事はない。では、行って来る」

武蔵「あぁ…」

長門「なんだ?」

武蔵「いや、少し赤城を貸してくれ」

長門「赤城を?」

武蔵「出来れば、だが」

長門「空の目ならば加賀で事は足りるだろうが…少しルートを浅めにして警戒を密にすれば問題はないだろう。
埋め合わせはしてもらうぞ、武蔵」

武蔵「やれやれ、早速足許を掬われる羽目になるとは…それも身内にな」

長門「ふっ、ではな」



赤城「武蔵さん、お待たせしました」

武蔵「急で済まない」

赤城「いいえ、武蔵さんからのお誘いは多くありませんから、少し嬉しいですよ?」ニコッ

武蔵「拙いとは思うが、それは詫びだ」

赤城「間宮さんお手製のカステラですね。これ、大好きです。それで、お話がある素振りですが…」

武蔵「赤城はこの鎮守府に着任してどれくらいになる?」

赤城「今の提督が即位されてから間も無くですね。古参と言う表現をするのなら、武蔵さん、私、加賀さん、長門さん」

武蔵「あぁ、そうだな。今の第一部隊はその半分が古参と言えるかもしれない」

赤城「それがどうかされましたか?」

武蔵「赤城は、提督についてどれくらい知っている?」

赤城「…は?」

武蔵「提督についてだ」

赤城「あ、えっと…う~ん、ごめんなさい。確かにそう改めて聞かれると…何も知りませんね」

武蔵「…ああ、そうだ。私も知らない。提督が着任して、もう彼此一年と半年は経っている。なのに、私は知らない。
提督について知っている事と言えば、性格は大らかで珈琲が好きで、誰に対しても敬語を使う。それだけだ」

赤城「あの、でもそれが一体…」

武蔵「私も…赤城、お前も加賀も、長門も…洞察力、観察力に関しては引けを取らないと思っている」

赤城「つまり?」

武蔵「今回の件だ────」


事の発端は今回、提督と私が事前通達を怠った深海棲艦の接近の一件。

今思い返すと不思議と思える点が幾つかある。

まず始めに、深海棲艦の襲撃の前兆を提督は既に察知していたと言える。

あの時、提督は『またですか』と呟いた。

また、と言う事は以前にも似たケースがあったという事だ。

私はそんな報告を受けてなどないし、提督も口にはしていない。

そして長門から危険示唆を受けて提督は一言『解った。あとはこちらで対処します』と、凡そそんな対応を取った。

それだけの情報で、今回の見解を導き出せるものかどうか、私には腑に落ちない部分が多くあった。

そもそも、提督はこの鎮守府で余り好感触は得ていない。

それは大本営においても同じだと聞いている。

いや、実際同行した際にも陰口の数は他と比べる非じゃなかったのを覚えている。

そんな人間が、大本営に赴いて易々と元帥に目通りなど叶うかどうかも怪しいものだ。

にも関わらず、戻ってきた提督の第一声は緊急の作戦会議の立案とそれに伴う戦術変更の指示。

しかも、そこまで指示を出しておいてそこから先は私達に丸投げだ。

まるでそれ以上は関わるのを避けるかのような態度にも見受けられる。



武蔵「────結論、提督は私達に何かを隠している」

赤城「そ、それは考えとしては飛躍しすぎているのではありませんか?確かにこれまでの提督は積極的ではありませんでした。
何かあっても咎めることもせず、僅かな注意と労いの言葉が殆どです。そういう性格なのだと、私達も納得済みです」

武蔵「性格はそうなのかもしれないが、考え方や行動ともなれば話は別だ」

赤城「武蔵さんは、それを追及してどうなさるんです?」

武蔵「赤城、お前はこれまでの歴代で名を残してきた提督を知っているか」

赤城「それは、無論です。私達艦娘を牽引し、その中枢を担う言わば頭脳です。多岐に渡る戦術用法を始め、戦略や陣の形成。
ありとあらゆる方面で智勇兼備の活躍を見せる提督は数多く存在します」

武蔵「では、幻とも呼ばれ、神の眼を持つ男と呼ばれた提督の事をお前は知っているか?」

赤城「神の眼…?」

武蔵「お前でも知らんか。私は一度だけ風の噂で聞いた事がある。先の先まで見通す千里眼の如きその眼はあらゆる障害を物ともしない。
戦術、戦略、謀略すらも看破し、時としてそれを利用さえして相手の上手を行く。まさに知略に置いて右に出れる者が居なかったと聞く」

赤城「そのような智将であれば知らないはずがありませんが…」

武蔵「ある日を境に、その智将は忽然と姿を消したらしいって話でな。姿を消した日から、完全に表舞台からは消失し、噂だけが流れてるって話だ」

赤城「まるで逸話、伝説のような方ですね」

武蔵「あぁ、実際そういう類に分類されて現実かどうかも定かじゃなくなってる」

赤城「その、神の眼を持つ男がどうされたんですか?」

武蔵「その男が消えてから間も無く、もう一つ噂が立った。大本営の面汚し、居ても居なくても一緒のお荷物提督。
役に立たないにも拘らず、その提督の階位は上位に位置し、皆が揃って首を傾げたという曰くの提督さ」

赤城「それって…」

提督「僕の事ですか」

赤城「あっ…」

武蔵「提督…!」

提督「別に噂には頓着しませんが、余り良い趣味とは言えませんね」

赤城「あの、これは、その…」

提督「別に咎めている訳ではありません。単に僕がこういう類に良い感情を抱いていないというだけですよ。
それで、武蔵さんなりに何か気付く事でもありましたか」

武蔵「ふっ、随分と今日は強気だな、提督」

提督「いえ、強気だなんてとんでもない。何か気付いている事でもあれば、それが改善の参考にでもなるかと、そう思ったまでです」

武蔵「ならば単刀直入に聞こう。お前は噂に流れていた神の眼を持つ男、その人だろう?」

提督「これはこれは…突拍子もありませんね。僕が神の眼を持つ男?」

赤城「…………」ハラハラ…

武蔵「ふっ、その飄々とした顔、返って怪しさ満点だぜ、提督?」

提督「はぁ、困りましたね」

武蔵「ああ、本当にな」

赤城「あ、あの、提督?」

提督「はい、何でしょうか、赤城さん」

赤城「…これは、加賀さんの言葉です。何故、提督は常に一歩引いた所でしか物事を見ないのか────」

本日はここまで
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皆様こんばんは
少しだけ更新



加賀「何故、提督は常に一歩引いた所でしか物事を見ないのか、その意味がよく解りません」

赤城「一歩引いたところ?」

加賀「戦術の立案、提案、用法、どれも武蔵さんの提唱という事ですが、本来それらは提督の仕事のはずです。
確かに戦術に長けた艦娘も居ることでしょう。しかし、提督のそれには遠く及ばないと、私は思っているわ。
簡単に言ってしまえば、身体を動かすのは私達艦娘であり、頭脳を動かすのは提督。そういう風に考えていたのだけれど」

赤城「提督は、それを放棄しているって事でしょうか?」

加賀「放棄は言い過ぎかもしれませんが、率先的ではない、と言う風に私は考えます」

赤城「でも、それは一体どういう事なのかしら?」

加賀「解りません。ただ、一歩引く意味が解らないという事です。有体に言えば、私達艦娘を避けている、と見て取れます」

赤城「艦娘を、避ける?」

加賀「提督にどういった過去があるのかは解らないけれど、彼は秘書艦である武蔵さんにさえ、壁を作っているように見えます」

赤城「そんな、まさか…」

加賀「巧みに隠しているようですが、永遠と言うものは存在しません。いずれ隠しているものはバレます。
隠し事や嘘は、どれだけ偽ろうと、どれだけ欺こうと、何れは白日の下に晒されるという事です」



赤城「────何れは白日の下に晒されるという事です。提督……提督は、そうなった時、ここから去るおつもりですか?」

提督「……はぁ、敵いませんねぇ。では一つだけ、教えましょう」

武蔵「……?」

提督「加賀さんが言われた通り、この世に永遠と言うものはありません。同じように普遍的なものも存在しないという事です。
時が流れれば人が代わり、世代が代われば在り方も変わる。僕が今もまだこの組織に居る事自体が、異常なんですよ。
過去の存在は、過去にのみ輝けば良い。今尚、輝く必要はないという事です。出すぎた杭は、打たれて然るべきです」

赤城「では、何故提督はまだここにいらっしゃるんですか」

武蔵「赤城…!」

赤城「何故ですか、提督!」

提督「さぁ、何故でしょうねぇ…それを、貴女に教える義理はありますか、赤城さん」ジロリ…

赤城「……ッ!」ビクッ

提督「僕の望みは、この海軍から去る事です」

武蔵「なんだと…?」

提督「ただ、現時点ではまだ僕は海軍を去る訳にはいかない状況にあり、その自由もないという事です。
いざ、去るとなった時に君達との絆が深まっていては決心が揺らぐだけでしょう。だからこそ、最小限の接触に留めている。
これで少しは納得して頂けましたか?」

赤城「……納得は、していません」

提督「何故でしょうか?」

赤城「提督は、本心を隠しているからです」

提督「」(真っ直ぐな目。微塵も僕を疑っていない目。だからこそ、僕がどれだけ巧みに誤魔化そうとしてもそれに惑わされない。
見事なまでの観察眼……この目があればこその、第一航空戦隊。彼女と加賀さん、二人が揃えばまさに敵無しでしょうね)クスッ…

武蔵「何を笑っている、提督!」

提督「……僕が、神の眼を持つ男、と呼ばれていた理由、解りますか」

武蔵「……!」

赤城「…表面的な部分でしか説明は無理です」

提督「それはまた何故でしょう?」

赤城「完璧な解がそこに存在していないからです」


提督「中々に明瞭な回答ですね。そう、答えと言うのは必ずしも一つとは限らない。僕はそれら解の中から最適解を導く事に長けていました」

武蔵「最適解…?」

提督「戦術や戦略と言った類の物も一緒ですよ。数多とある解の中から今の戦力が最大火力を発揮できる戦術。
今居る面子で行える戦略でどれが最も君たち艦娘に負担が無く、且つ最良なのかを見極める事。
僕はそういうのを考えるのが他人よりも若干早いというだけの事です」

赤城「それほどの眼を持っていながら、何故その力を振るわないのですか?」

提督「…お話はここまでですね」

赤城「提督…!」

武蔵「待て、赤城」

赤城「え?」

提督「今、鎮守府に残っている艦娘は?」

武蔵「…私と赤城、二人だけだ。先の作戦概要に沿って、残り十六名は全員出払っている」

提督「武蔵さん、聞こえましたね?」

武蔵「ああ、聞こえた」

赤城「一体…」

武蔵「敵襲だ」

赤城「…!」

提督「こちらの想定を、越えています…!」



-神の眼を持つ男-

武蔵「作戦を考えている暇は無い。クソッ!長門達の包囲網をどうやって突破した!?」

赤城「加賀さんや千歳さん、隼鷹さんの網を掻い潜れる深海棲艦が存在するなんて…」

提督「針のような小さな穴を通したんですよ」

武蔵「小さな穴、だと?」

提督「言った筈です。この世に永遠と言うものが存在しないように、完璧と言うものも存在はしません。
荒を探せば幾らでも見つけられるという事です。そして、この深海棲艦にはそれが出来たという事になります」

武蔵「馬鹿な…」

提督「お二人は即時抜錨。深海棲艦を鎮守府に近付けてはいけません」

武蔵「言われずとも解っている。だが…」

赤城「私達二人だけでは…!」

提督「……回線を開いて置いて下さい。追って指示を出します」

武蔵「どうする気だ、提督!」

提督「先にも述べたでしょう。ここまでは相手が上手だった…それだけの事です。海軍に未練が無いのは確かです。
ですが、僕が存在している以上、こうも易々と僕の預かる陣地を荒らされるのは、我慢なりませんね。
お見せしますよ、一石二鳥と言う奴を…相手を迎撃し、この鎮守府を守り抜きます。その為の力、お貸し願いますよ」

本日はここまで
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戦局は多勢に無勢、明らかに武蔵達が劣勢を極めていた。

鎮守府側の戦力は武蔵と赤城の二人のみ。

対する深海棲艦はその数、十二匹。

聨合艦隊ではないが、水上打撃部隊と水雷戦隊の複合部隊。

幸いと空を制圧できる分は、武蔵達に軍配が上がるが、普通に考えてこれを二名だけで迎撃するのは至難を極める。

提督は眼鏡中央のフレームを人差し指で押し上げ、静かに考えを巡らせる。

それが考えていたのか、初めから用意していた答えなのか、それが解らないほどの迅速な決断。


提督『赤城さん、敵水雷戦隊を集中的に艦攻艦爆を仕掛けて下さい。出来るなら三匹、せめて二匹は削りたい所ですね』

赤城「…解りました。一航戦赤城、出ます!」

提督『武蔵さんは幾分、肉を切らせて骨を絶つ事になるかもしれませんが…』

武蔵「御託は良い!お前に懸けたんだ!だったら私のする事は一つだけだ。戦艦武蔵、いざ…出撃するぞ!」

提督『赤城さん、貴女の総艦載数は確か82機でしたね』

赤城「えっ!?あ、はい!」(私の扱える艦載機の皆さんの最大数を正確に把握してるなんて…)

提督『制空権はこちらが頂いたも同然です。で、あれば…攻撃として放てる一度の絶対数は比較的稼げますね』

赤城「大丈夫です。いけます!私にお任せくださいませ」チャキッ

提督『敵水雷戦隊は赤城さんの初手で勢いを削ぎます』

赤城「いきます……第一次攻撃隊、発艦してください!」ビュッ


ブウウウゥゥゥゥゥゥン……


提督『艦攻隊を先行させ、正面からの攻撃を開始。そこから一拍置いて艦爆隊は上空より空爆を開始。
狙いを軽巡型に絞れば、自ずと随艦は勝手に沈みますよ。必ず、旗艦を庇いますからね』

赤城「……!」サッ

赤城「艦載機のみなさん、用意はいい?」スッ…

赤城「目標は敵機旗艦、軽巡型の深海棲艦です。艦攻隊、攻撃を始めてください!」バッ

提督『武蔵さんは初回、全砲門を解放し広範囲をカバーするように威嚇も込めて砲撃して下さい。
その際、敵水上打撃部隊の正面の視界を完全に奪う形で夾叉・直撃を狙い弾幕を展開するように』

武蔵「ちっ、無茶難題を吹っ掛けてくれるな。だがやってやるさ…全砲門、開けっ!」ジャキッ

武蔵「さぁ、行くぞ!撃ち方…始めっ!!」



ダダダダダダダダッ

ボゴオオオオォォォォォォォォン


ドォン ドォン

ボボボボボボボボンッ

ボゴオオオオォォォォォォォォン


武蔵「赤城、そっちの種別、正確な視認はできているか!?」

赤城「申し訳ありません、旗艦が軽巡型、駆逐型が数匹としか…」

提督『敵水雷戦隊の旗艦は軽巡へ級のエリート型、随艦は雷巡チ級のエリート型が一匹と駆逐ハ級のエリート型が一匹、
残り三匹は通常の駆逐ハ級です』

赤城「えぇ!?」

武蔵「あの、一瞬で種別を判断したのか…」

提督『敵水上打撃部隊は旗艦は戦艦ル級フラグシップ型、随艦に重巡リ級エリート二匹、残り三匹は通常の駆逐ニ級三匹です』

武蔵「……!」(私達ですら把握しきれていない中で、なんだこの男…これが、これこそが提督の実力なのか)

提督『先の艦爆艦攻、砲撃戦で水上打撃部隊の駆逐棲艦は撃滅を確認しました。水雷戦隊側は通常の駆逐棲艦の撃滅を確認。
雷巡棲艦は痛打を受けたようですね。合わせて五匹、上々ですねぇ。赤城さんはそのままの位置で追撃を、武蔵さんは距離を詰めて堅実にお願いします。
その際、武蔵さんには集中的に砲撃が飛来するでしょう。戦艦の力の見せ所ですね』


ヒュン ヒュン ヒュン ヒュンッ

ボボボボボボボボボンッ


武蔵「ちっ、上等だ。みせてやる…!」

赤城「武蔵さんっ!」

武蔵「そんな攻撃…っ!」ググッ


ボゴオオオォォォォォォォン


武蔵「……蚊に刺されたような物だ!」バッ 小破

ル級FS「シズメ…」ジャキッ

武蔵「…ふっ、痛快だな!いいぞ、当ててこい!私はここだ!」バッ



不敵に笑い、武蔵は両手を広げて相手を挑発する。

そして徐に周囲の景色をつぶさに見て改めて現状を認識しなおした。


武蔵「こいつは、赤城と私の攻撃で完全に足が止まっているのか…」

ル級FS「クラエ…ッ!」

武蔵「……!」


ドォン ドォン

ボボボボボボボボボボン


武蔵「何処を狙っている。私はここだぞ!」ジャキッ


両脇に鎮座するように備えている艤装の砲塔が静かに標的を見定め、ガコッと音を響かせて固定される。

真っ直ぐに武蔵は標的であるル級FSを見据えると、掛けている眼鏡のズレを人差し指、中指の二本で正して大きく息を吸い込む。


武蔵「…………!」チャッ…

ル級FS「……!?」

武蔵「深海棲艦、覚悟は出来てるんだろうな!この領海に侵入して、五体満足で帰れると思うなよ。一匹たりとも逃しはせんぞ!!」ジャキッ


ドォン ドォン


ル級FS「……ッ!」バッ


ボゴオオオォォォォォォォン


ル級FS「」 轟沈

提督『赤城さん』

赤城「あっ、はい!」

提督『恐らくその距離ならば相手の砲撃もまだ飛来はしないでしょう。アウトレンジから一方的に攻め立てられる筈です。
先のお二人の攻撃で相手は恐らく萎縮している事でしょう。暫くは混乱から立ち直れないかもしれませんねぇ』

赤城「……!」(これが、提督の狙い。だから開幕で火力を多めで攻撃をするよう指示を出した…
この好機を逃す手はありませんね)チャキッ


赤城「第二次攻撃隊、発艦してください!」ビュッ


ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン


赤城「引き続き目標は軽巡へ級EL!」

へ級EL「……!」ザザザッ

赤城「逃がしはしません!艦載機のみなさん、準備はいい?」サッ

赤城「艦攻隊は真っ直ぐに軽巡へ級ELへ!艦爆隊は絨毯爆撃を敢行!面で制圧します!」バッ

提督『…………』(空間把握能力、認識力、三次元の動きのバランスが取れた赤城さんと、
相手の行動パターンを瞬時に把握し最も有効な攻撃方法の選抜が得意な加賀さん。どちらも計りに掛けるには分量が大きすぎますね。
こちらの意図を一瞬で汲み取ってくれるとは、ありがたい限りです。一航戦の名は伊達ではないという事でしょうか。
このままの推移で事が運べば、恐らく相手は……)


ボゴオオォォォォォォン

ボゴオオォォォォォォン

ボゴオオォォォォォォン

ボゴオオォォォォォォン


赤城の放った艦載機による広範囲爆撃によって相手水雷戦隊の編隊が大きく乱れる。

赤城は次の矢を抜き放ち、武蔵も次発装填をして臨戦態勢に入る。

しかし、相手は向かって来ることはせずにそこで反転、去っていく。


武蔵「ちっ、このまま逃がすわけには…!」

提督『いえ、武蔵さん深追いは止めましょう。むしろ僥倖と言うべきです。加えて言えば、恐ろしくもありますが…』

武蔵「どういう事だ!?」

提督『こちらと相手の力量、それを測る物差しが相手にはあるという事です。この撤退で確信しました。
相手にも僕達と同じ、指揮する者が居る…そしてそれは恐らく深海棲艦ではなく人間でしょう』

赤城「えっ…!?」

武蔵「人間が、深海棲艦に肩入れしているというのか…」

提督『とにもかくにも、お二人ともお疲れ様です。各艦隊への通達は僕がしておきましょう。
通信回線はこれで切ります』

武蔵「ああ、頼んだ」



ブツン……


赤城「ふぅ」

武蔵「お疲れさんだな、赤城」

赤城「ふふ、武蔵さんこそ、腕の傷は大丈夫ですか?」

武蔵「なんのこれしき、ただのかすり傷だ。しかし、驚かされっぱなしだったな」

赤城「ええ、提督の冴え、極まっていました。僅かな隙も見落とさない。まさに神の眼と言うに相応しい千里眼のような方です」

武蔵「こうなる事を想定して先手を打つ。考えれないわけじゃないが、それを実行に移して成功させるんだからな。恐れ入る」

赤城「初手の広範囲に渡る攻撃、これが肝だったようですね」

武蔵「ああ、相手の足を止める事。最初の攻撃でこちらの攻撃を脅威に思わせ、足を竦ませる」

赤城「こちらは二人だけです。それが躊躇う事無く攻撃に転じ、更には一人で複数を一瞬で沈めてくる。
確かにこんな状況を目の当たりにすれば警戒態勢を密にしても不思議はありません」

武蔵「それを見越した上で、距離を図り、相手の進んできた先で構え、先手を打てる間合いをキッチリと見極める…」

赤城「ここまで見越した戦術用法をあの一瞬で構築させるとは…」

武蔵「くくっ、昼行灯とはまさにこの事だな」

赤城「あの、この事は皆さんには…」

武蔵「私とお前が言えば皆は恐らく信じはするだろう。が、あの提督がそれで納得すると思うか?」

赤城「……しません、よね。理由はわかりませんが、ここまで欺き続けてきた事実です」

武蔵「そういう事だ。この事実は、提督自身が自ら告白する以外で認める事は出来ない」

本日はここまで
レスありがとうございます


今回の提督は確かに某細かい事が気になる、僕の悪い癖な人がモチーフです
ですが全てが同じと言うわけではないのでそこはご了承下さい

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします

-伏龍-

??「……そうか、鎮守府が蛻の殻になる瞬間を狙ったはずなんだが、不可思議な現象でも起こったのか」

??「……なるほど、そういう事か。ふっ、それはまた手酷いな。そして悲しくもある。
それではまるで、世の摂理からは逃れられないと、暗に示唆されているみたいではないか」

??「しかし、実験にと選んだ鎮守府によもやそれほどの智将が潜んでいるとは想定を越えたな。
だが、面白くもある。艦娘がどれほどのものか、見せて貰おうじゃないか…」


黒のキャップを目深に被り、男は椅子から立ち上がると通信を切る。

そしてゆっくりと振り返り、気配のする方へ身体を向けるとピタリと止まった。


??「あの程度の組織ならば気付かないと…そう高を括っていたんだが、存外馬鹿ばかりでもないらしい。
これなら君達も存分に暴れる事が出来るだろう?今やこの海の制海権は我々にある。人類は空に逃げ、陸に逃げた。
無様に抵抗する組織は海軍を中心に小細工を仕掛けている程度だ。この程度では、まだまだ我々を満足はさせれまい」

??「次ノ目的地ハ、どこなのカシラ?」

??「ここ数ヶ月、余り目立たないように動いてきたのが功を奏している。これを踏まえた上で、次の目標がはっきりとした。
まずは君達のレベリングだ。その次に連携、戦術用法の考案と行使。問題は山積みだが、これを一つずつ攻略していく」

??「つまり、再ビ演習ガ続くと、ソウいう事カシラ?」

??「今回の遠征はあくまでこれまで培ってきたものの動作確認に過ぎない。結果として鎮守府襲撃は失敗に終わり、
こちらの損害は軽微とは凡そ言えない大きさだった。どういう経緯でこうなったのか、また何があったのか。
それらをまずは知る必要がある。今回選抜したメンバーはこう易々と潰される連中ではないはずだ」

??「ドチラも旗艦は轟沈……フフッ、こう言ってハあれだケド、不甲斐無い結果ネ」

??「君達上位種と違って、彼女達には一から教え込まなければならない。それを不甲斐無いで片付けるのは流石に酷だ。
待機していた者からの報告だけでは事の顛末は窺い知れないよ」

??「そう……貴方ガそう言うのナラ、私達はソノ方針に従うダケ。期待シカしてないワ。次のステップへ移りまショウ、黒提督」

黒提督「いつの世も…与り知らず…霞みゆく…」

??「なぁに、ソレ」クスッ…

黒提督「短歌と言ってね。韻文である和歌の一形式で五・七・五・七・七の五句体の歌体の事だよ」

??「へぇ……アラ、でもそれならマダ途中じゃナイかしら?」

黒提督「呑み込みが早いじゃないか。けどいいんだよ…まだ、始まったばかりなんだからね」ニヤッ…




提督「まーみーやさんっ!と、いーらこっちゃん!」

間宮「ふふっ、今日も提督は元気ですね」

伊良湖「いらっしゃいませ、提督さん!」

提督「どうも僕は3時のおやつにはここにこないと、エネルギーチャージが出来ないようです。憩いの場とはこの事ですね」

伊良湖「今日は苺大福です!」

提督「おや、それでは珈琲ではなく、ほうじ茶辺りを頂きましょうか」

伊良湖「そう思うじゃないですか?思うじゃないですか?珈琲にもピッタリ合うんですよ~♪」ルンルンッ

提督「これはこれは…ははは、伊良湖ちゃん今日は随分と上機嫌ですねぇ」

間宮「他のお客様にその組み合わせで好評頂きまして、苺大福は伊良湖ちゃんが作ってるから、尚更かしら?」

提督「ふふっ、そうでしたか」

間宮「それよりも提督?」

提督「はい、なんでしょう?」

間宮「そろそろ、私や伊良湖ちゃんでも庇いきれないかもしれませんよ?」

提督「武蔵さんと赤城さんでしょうか」

間宮「もぅ、普段からそのままでいらっしゃればいいのに、どうして隠す必要があるんです?」

提督「困りましたねぇ…僕としては、ただ穏やかに過ごしたいだけなんですけどねぇ」

間宮「まだお若いのに、直にそうやって達観して、年長者の方々へ失礼ですよ、提督?」

提督「ふふふ、手厳しいですね。別に達観しているつもりはないんですが…本当ですよ?」

間宮「私に言われても知りません」

伊良湖「お待たせしましたぁ~、苺大福と、珈琲……えーっと、お砂糖一つまみ、ミルク少量、ですよね?」

提督「ええ、ありがとう」ニコッ

伊良湖「えへへ~、もう覚えましたよ!大丈夫です!」

間宮「伊良湖ちゃん、きっと少ししたら艦娘の子達も着だすでしょうから、それまでの間に一通りの準備お願いね」

伊良湖「はぁーい!今日も張り切って、ガンバります!」タッタッタ…

間宮「伊良湖ちゃんはあの通り純粋だから、提督の昔話とか興味ないんでしょうけど、そろそろ貯めていた期待値が崩壊するかもしれませんよ?」

提督「怖いですねぇ…ですが、間宮さんがここまで僕を庇ってくれる理由に見当がつかないのも事実なんですよ」

間宮「提督と似たようなものですよ、きっと」

提督「はい?」

間宮「その、眼鏡ですよ」

提督「……」

間宮「とても、お似合いですよ」クル……スタ スタ……

提督「…ぐうの音も出ないとは、まさにこの事ですね」チャッ…



提督は眼鏡を外し、その外観を改めて見る。

黒くて細いフレーム、サイド部分には銀のラインが入り、上部に小さく何かが彫り込まれている。

目を凝らしてみて見る。


──Cool heads but Warm hearts.──


冷静な頭脳を持って、温かい心を持とう。

いつでも冷静に、深慮深く、一手先二手先を見て物事を考えた。

心に、温もりが通わなくなったのはいつからだったか。

提督は静かに目を閉じて眼鏡を掛け直す。

ゆっくりと目を開けて小さく息を吐くと一口、二口で苺大福を平らげて珈琲を飲む。


コトッ……


提督「ふふっ、和洋折衷……見事なものです」ガタッ…


スタ スタ スタ……


間宮「……お帰りなさい、提督」

伊良湖「どうしたんですか、間宮さん……ってあれ、提督さん帰っちゃったんですか?感想聞きたかったのにぃ…」

間宮「ふふっ、どうせまた明日も来るわよ。さっ、それよりも準備、整えましょう。艦娘の子達、きちゃうわよ」

伊良湖「はい!一番乗りは昨日は島風ちゃんでしたね!オレンジジュース、用意しておきましょう♪」

短いですが本日はここまで

皆様こんばんは
本日も宜しくお願いします

レスありがとうございます
見れて嬉しいと言って頂けるだけでも重畳です




~緋色の記憶~



-夜明け-

??「提督、こういう場合はどう指示を出すべきなんでしょうか?」

提督「そうですねぇ…この艦隊がどういう経緯を持ってこのルートを選択したのか、それをまずは考えて見るべきです」

??「どうしてそのルートを選んだのか、ですか?」

提督「ええ、御覧なさい。目的地へ向かうにはこちらのルートを通るのが正攻法であり、距離としても最短です。
あえてそうはせずに、こちらを選んだ理由を考えて見るべきです。考えられる理由としては幾つかあると思いますよ」

??「えーっと…伏兵、とかでしょうか」

提督「ええ、それも考えられる一つの理由ですね。ですがそれは敵が潜んでいると解る状況でなければ体を成しませんね」

??「でも、伏兵と言うのは得てして解らない事が殆どじゃないですか?」

提督「見極める事は可能だと思いますよ」

??「えぇ!?」

提督「おや…解りませんか?この地図上で、何処に潜伏できる場所があるのか。そして艦隊が備えている装備が何なのか。
それらを照らし合わせてみれば、伏兵が居るのかどうかを見極めれるか否かは一目瞭然です」

??「あっ……そっか。あはは、うーん、難しい…」

提督「ふふ、慣れればどうって事ないものばかりですよ。ようはどこに目を付けるか、着眼点の問題です」

??「着眼点…?」

提督「そうです。全体に目を通して、そこからどうすればいいのかは考えないとなりませんけどね。基本は着眼点です」

??「ふむふむ…」カキカキ…

提督「ふふ、楽しいですか?」

??「あっ、はい!提督って何でも知ってるから、ホント為になります!」ニコッ

提督「それは何よりですね」

??「あ、でもでも、提督ってどうしてそんなに色々と知ってるんですか?」

提督「さぁ、何故でしょうねぇ…」

??「アーッ、また直にそうやってはぐらかす!提督って答えたくない質問来るといっつもそうなんだよね。
さぁ、何故でしょうねぇ……か、もしくは、おや、そうでしたか?って言ってはぐらかすの!提督の悪い癖!」

提督「これはこれは、困りましたね…」ニガワライ

??「出た出た、二言目は困りましたねぇ!」

提督「か、敵いませんね────」



────思い出せない記憶。

思い出したくない記憶。

どっちなのか判断に迷う部分が大きい。

だから今も夢に見てしまうのかもしれない。

同じ夢、同じパターン、同じ所で夢は覚める。

淡い夢、儚い思い出、刹那の記憶。

そして意識は現実に引き戻される。


提督「…………」チャッ…

提督「…いきますか」


ガチャ……パタン……


加賀「…おはようございます」

提督「あぁ、おはようございます、加賀さん。日課の鍛錬ですか」

加賀「ええ、この時間に執務室から出てくるなんて、意外でした」

提督「昨日は少し柄にも無い事をしてまして」

加賀「そう、別に私は心配はしないけれど、余計な心配を武蔵さんに掛けない事ね」

提督「ふふ、肝に銘じておきます。それよりも、加賀さん?」

加賀「何かしら」

提督「技法としては申し分ありませんが、心法としては些か、腑に落ちませんね」

加賀「……!」

提督「ある流派の心構えに、我が身を大日如来と思え、大日の規矩(だいにちのかね)と呼ばれる表現があるそうです。
男は凛々しく、女は凜として行射する。心の乱れは残心を狂わせると聞きます。禅を組まれるのが良いかもしれませんねぇ。
では、僕は早朝の巡察に参りますのでこれで」ペコリ

加賀「…………」(私の課題でもある心法について明確に言い当てた…これは、一体…)



古鷹「う~ん……はぁ、今日も良い天気♪」ノビノビー

青葉「それー!」ワキバラ ツンッ

古鷹「ひゃわぁ!」ビクッ

青葉「青葉、聞いちゃいました!古鷹の可愛い悲鳴♪」パシャパシャ

古鷹「~~ッ!あ~お~ば~!あっ……」

提督「これはこれは、朝から元気ですね」

古鷹「て、提督、おはようございます!」

青葉「おや、司令官、聞いちゃいました?聞いちゃいました?古鷹の可愛い悲鳴!」

提督「朝から元気なのはいい事ですが、羽目を外し過ぎない程度にしてくださいよ、青葉さん?」

青葉「えーっ、青葉だけですか!?」

古鷹「青葉はいつも騒がしすぎるんだよ、全くもう!」

提督「元気な事自体は結構ですけどね。青葉さん、髪の毛があらぬ方向に飛び出てますよ。それじゃ示しが付きません」ニコッ

青葉「むむ、女子力の見せ所でしょうか。しかし司令官、なんだか、雰囲気変わりました?」

提督「はい?」

古鷹「え?いつもと一緒じゃないかな?」

提督「特に意識して変えてる訳じゃありませんが、どこか変でしょうか?」

青葉「うーん、青葉の勘違いですかね?」

提督「まぁそれはさておき、もう直朝のミーティングが始まりますから、各自準備を整えて作戦室に集合して下さい」

古鷹「はい、解りました!」

青葉「青葉、了解しましたぁ!」



潮「いち、にっ、さん、しっ!」

曙「ごー、ろく、しち、はち……ふあぁ……」

潮「あー、もう、曙ちゃん、朝なんだよ。シャキッとしようよ~」

曙「あんたののんびり声でシャキッとって言われてもしっくりこないってば」

潮「あーっ、ひどい~!」

島風「早朝ランニングしゅーりょー!」ザザザッ

浜風「はぁ、はぁ……は、速い…」

秋月「お、おかしく、ありませんか、島風ちゃん…はぁ、はぁ…」

島風「え、何が?」

潮「あ、三人ともお帰りなさい」

曙「おかー。島風に足で勝とうっても無理よ、無理。マジでその子速いんだもん」

島風「にししっ」

提督「おや、早朝トレーニングですか」

潮「あ、提督おはようございます」ペコリ

提督「ええ、おはようございます」

浜風「おはようございます。お見苦しいところを…」

秋月「おはようございます」

島風「てーとく、おはよーございまーす!」

曙「クソ提督、あんた朝っぱらから何してるわけ」

潮「あああ、曙ちゃんってば!」

提督「これはこれは、辛辣ですねぇ。朝の巡察ですよ?妖精の皆さんにばかりお任せする訳にはいきませんからね」

曙「フンッ、どうだか!おおかた、武蔵や長門の小言聞きたくなくて逃げてるだけなんじゃないの?」

島風「ぼのちゃん、ツンツンしすぎ~」

曙「うっさいわね!」

提督「それも、曙さんの持ち味ですよ」

曙「は、はぁ!?な、何言っちゃってんの!ばっかみたい!あ、あたしは先に行くからね!///」タッタッタ…

潮「も~、曙ちゃんも少しは素直になればいいのにぃ…」

島風「にっしし~、ぼのちゃんだも~ん、ムリムリ☆」

潮「そ、そんな爽やかな笑顔で言われても~…」ニガワライ

提督「あぁ、そうです。今日皆さんには座学を中心に一日を過ごしてもらいますので、そのつもりでお願いします」

島風「えぇっ」

浜風「座学、ですか?」

秋月「勉強は大事ですからね!」

浜風「秋月、なんだかちょっとやる気あり、な感じですか?」

秋月「勿論!講師はどなたが担当されるんでしょうか?」

提督「僕ですが、何か」

秋月「え゛……」

提督「はい?」

浜風「」(秋月、露骨過ぎます…)アセ

潮「」(あぁ、秋月ちゃん、顔に出てるよぉ…)アセ

島風「あははははっ」キャッキャ

提督「はっはっは、いやいや、素直なことはいい事だと思いますよ?」

秋月「あぁ、えっと、その、も、申し訳ありませんっ///」

提督「まぁ、為にはなると思いますよ?では、僕はまだ巡察がありますから、曙さんには後で伝えておいて下さい」



長門「手加減無用だ」スッ…

武蔵「当然だ。ビックセブン相手に何をどう手加減できる」スッ…

長門「言って、くれるな!」ビュッ


ガシッ


武蔵「朝方の鈍っている体を解すには、これが、一番だ!」ザッ ビュッ


パシッ


長門「精々、眼鏡が割れないように気をつけろっ!」バッ

武蔵「ふっ、心配無用だ!」バッ


ガシィッ


真っ白な道着に着替えている二人の艦娘、武蔵と長門。

二人の日課はこの組み手から始まる。

と言っても、ここ最近始めたばかりであり、戦績は現在の所十二戦三勝三敗六引分、非常に仲の良い二人だ。

今日で十三戦目、互いに気合は入っているが、負けた方は勝った方に昼飯を奢らなければならないという罰が控えている。

互いに戦艦同士、午後の任務に備えて蓄える分は非常に多い。

それに反比例して互いの財布事情は非常に枯渇している。

可愛らしい、負けられない闘いが此処にある。



武蔵「今日こそ、昼を支払わせてやる!」

長門「舐めるな、それはお前だ!」


バシィッ


幾度目かの打ち合い、互いの拳を受け止め合い、睨み合う形で力比べが始まる。

双方共に力は似通っている。

一方的に押し負けるという事がない反面、こう着状態も長く続く。


グググッ……


武蔵「力を、上げたな、長門…!」ググッ…

長門「ふっ、相変わらずの、馬鹿力め…!」ググッ…


バッ

ザッ


互いに一足飛びで後方へ一度退き、再度反動を付けて同時にぶつかり合う。

拳、蹴りを同時に放って弾け合い、相手の連撃を綺麗に捌いては反撃に転じる。

左右のワン・ツーから左のブロー、更に沈み込んで長門の左脇腹を抉ろうと右のブローを武蔵は繰り出す。

それを後方へステップで回避して長門は武蔵の足を狙いローの回し蹴りを放つがこれは空振りに終わる。

しかし振り抜いた足の勢いを殺さずに真上に振り翳し、そのまま踵落としへ繋げる。



ダンッ


武蔵「大振りめ!」ザッ

長門「お前が言うのか!?」ザッ


互いに踏み込み、引き絞った弓のように後方で溜め込んだ渾身の右ストレートを同時に放つ。


ドゴォッ


武蔵「ぐっ」

長門「くっ」


ザザザザッ……


共に胸部に強烈な一発を貰い後方へと押し戻されたところで合図のように声が掛かった。


提督「お見事です」

武蔵「はぁ、はぁ、提督か」

長門「はぁ、ふぅ…ま、まさかずっと見てたのか」

提督「真に迫る勢いだったもので、声を掛けるタイミングを逸していました」

長門「別に大したものでもないだろうに…」

提督「僕は体術には疎いですからねぇ…専ら動かすのは頭なものですから」クスッ

長門「……はぁ、まぁどっちだっていいさ。取り敢えず今回の勝負はお預けだな。十三戦目は引分だ」

武蔵「致し方あるまい。だが次は抜かるなよ、長門。確実に私が獲るぜ」

長門「ふっ、言っていろ。私だって燻ったままじゃない。ではまた後でな」スタ スタ…

武蔵「…で、今日は何をするんだ」

提督「取り敢えず、今日は近隣の哨戒のみに勤め、大部分は頭の体操をして頂きます」

武蔵「ふむ、となると…」

提督「空母部隊で哨戒任務には当たって貰う形になりますねぇ」

武蔵「まぁ、妥当か」

提督「ええ、空母機動部隊を編成し、哨戒には一航戦、五航戦の四名と千歳さん、隼鷹さんのお二人、計六名でお願いする予定です」

武蔵「しかし、頭の体操と言っても、一体何を…」

提督「簡単な謎解きゲームですよ」ニコッ

本日はここまで

皆様こんばんは

現在、PCが故障中につき続きが書けない状態です
復旧次第、状況を見て再開させたいと思います

ご挨拶大変遅れて申し訳ありません。
あけましておめでとうございます。

未だPCが直っておらず、執筆に取りかかれない状態です。
PC復旧し次第、できる限り早い更新ができればと思っております。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年12月23日 (水) 14:27:33   ID: YkfI0Ek5

こういうssを待っていた!

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