魔王「ぬはは!魔王だぞぉ!」男「変なおっさんがなんか言ってる」(89)

魔王「魔王だ…ぞ……」

男「息絶えてるし……っておい大丈夫か!」

男宅

魔王「スマンな少年よ、わざわざこんなにごちそうになってしまって」

男「声かけたら家に押し入られた上に冷蔵庫荒らされた」

魔王「ぬはは!そういうな、褒美に何でも好きなものを取らせよう」

男「褒美って、あんたあんた腹減って行き倒れになってた奴に何ができるんだよ」

魔王「ん?ワシは魔王だぞ!何でも言ってみよ!」

男「今時魔王って……あんたいつの時代を生きてるんだよ」

魔王「ふむ、今年で1022歳になるな。なんなら証拠見せてやろうか?」

男「証拠も褒美もいらないから早く出てけ」

魔王「そういうな少年。ワシもこのままでは気が済まんのだ」

男「押し入られたこっちの身にもなってみろよ……」

魔王「いや、本当にスマンな。では証拠と褒美ついでにこの王家の紋章バッヂをやろう!」

男「自分の家の紋章を容易く人に渡すなよって汚っ!」

魔王「ふむ、200年間まともに手入れしてなかったからな」

男「んなもん渡すな!」

男「えぇと、この紋章は……見たこと無いな。あんた本当に魔王か?」

魔王「無論だ少年よ!ワシこそが泣く子も更に泣き出すと言われた魔王!本名は言えん!」

男「更に無くのな。しかし1000年くらいの年となると相当長い間魔王やってたんだろ?文献か何かに残ってるはずだが」

魔王「建国した3日後に国の財政が傾いた」

男「」

魔王「傾いた理由は、建国初日に城で保管していた予算のほとんどを信じていた友人数人に持ち逃げした」

魔王「それこそ小さい国だったから資金も小規模だったがほとんどはワシが用意した金だった」

男「お、おう」

魔王「魔王であるワシから金が出せず、市場はガタガタ。そしてさらに3日後に残りの財産と土地をすべて没収された」

魔王「国から追い出され、一人途方に暮れていた矢先、他国の大戦争に巻き込まれた」

魔王「残っていた荷は押され潰され取られ、そして」



魔王「今に至る」

男「それはおかしくね?」

魔王「何がおかしい!ワシの転落人生のほぼすべてを語ったんだぞ!」

男「大きい戦争も何も起きてないこのご時世に何で100年だか1000年だか知らない昔の出来事でいきなり今に至るんだよ」

魔王「数百年間血反吐吐きながら野草とか木の実とかで食いつないでたんだよ言わせんな恥ずかしい!」

男「逆ギレ!?」

男「事情は分かったが結局褒美も何もあったもんじゃないな」

魔王「だからこの紋章バッヂをだな」

男「いらん、そして話して気が済んだだろう。去れ」

魔王「そう堅い事を言うな。コレやるから今晩泊めてくれよ、な?」

男「な?っじゃねーよ!何図々しいこと言ってんだよおっさん!褒美じゃなかったの!?遠慮とか無いの?!?」

魔王「びばのんのー」

男「結局押し切られた、ってか既に風呂入ってるし」

男「まったく何だよあいつ。魔王って言ったってただの残念なおっさんじゃないか」

男「でもまぁ、苦労はしてるみたいだな。人間の俺よりも長い人生歩んできてるんだし」

男「豪傑なタイプに見えるけど、それでも友人に裏切られてあのザマだ。昔話してる時の表情は見てられなかったな」

魔王「上がったぞ少年!牛乳をいっぱい貰えるか?」

男「一杯じゃなくていっぱい!?」

魔王「ぬはは!ジョークジョークジョークアベニー!」

男「いい加減追い出すぞ糞野郎」

魔王「ぬはは!こうしてベッドで寝るのは久しぶりだ!」

男「ベッド勝手に使ってんじゃねぇよ」

魔王「若いうちから否定的だと後々いい友人が出来なくなるぞ少年!」

男「金持ち逃げされたあんたにだけは言われたくないよ」

魔王「さてもう寝るとしよう。明日は早くなるからな!」

男「あぁ、もう朝には出てってくれよ」

魔王「いつまでも無職のままではいられんからな!さっそくアルバイトを探してくることにしよう!」

男「はは、そうしてくれ」

魔王「おう!明日からも頼むぞ!少年!」





男「は?」

男「……何言っても聞きそうにないな」

男「うちに居座ってもらっても困るし明日隣の都市の方で住み込みのバイト探しに行くぞ?」

魔王「……」

男「こんなド田舎よりはマシだろう。あそこはできたばかりの都市だから人手も足りないみたいだし」

男「俺も明日は用事であっちに行くからついでに探してやるよ」

魔王「……」

男「なんだよ不服か?そうまでしてうちに居座りたいのか?」

魔王「ウゴゴゴ……」

男「寝てるし」

魔王「朝だぁーー!!」

魔王「おほほぉ!いやぁ生きているって素晴らしい!」

魔王「飯食ってクソ垂れて寝る!そんな当たり前のことができるなんてどれだけ幸せなことか!」



魔王「昼まで寝るか」

男「起きろ糞野郎」

魔王「で、どんなアルバイトがあるんだ?」

男「昨日自分で探すとか言ってたじゃねーか」

魔王「"自分で"とは言っておらん。お前と一緒にだ」

男「ふざけんなよ……」

男「朝飯できてるから早く居間に来い」

魔王「おお、スマンな。やはり持つべきものは友人か」

男「勝手に友人になるな、そして笑顔で近寄るな、手を握るな気持ち悪い」

魔王「感謝の意を込めての握手だ。普通の王はこんなことはせんぞ!」

男「普通じゃないもんな。ホントに王かどうか知らんし」

魔王「ふむ、美味であったぞ」

男「そいつはどうも。昨日冷蔵庫の中身食い尽くされたからただのインスタント食品だけどな」

魔王「ん?泥棒にでも入られたのか?しっかり戸締りはしておかねばいかんぞ」

男「内部犯ということは確定なんだがお前は心当たりが全くないのか?」

男「一応都市の方に行く前に聞いておくが、アンタ何ができる?」

魔王「何とは?抽象的すぎて質問の意味が理解できんぞ」

男「いちいち癇に障るな」

男「まぁバイト探すにあたって資格とか手に職持ってるとかそんな感じだよ」

魔王「ワシに死角は無い」

男「テンプレだがホントにふざけんなよテメェ」

魔王「まぁ、魔法が少々使えるな」

男「筋骨隆々な見た目なのに魔法か。種類にもよるが使えるなら結構簡単に雇ってくれるところもあるだろうな」

魔王「ん?魔法が使える程度で働ける場所があるのか?」

男「そりゃまぁ使える人材は少ないんだしあった方がいいに決まってるだろう」

魔王「少ない……?お前さんは使えないのか?」

男「馬鹿言え、俺は由緒正しき平民の家系だぞ。使えるわけないだろ」

魔王「え、なに?今は家系とかで決まっちゃうの?」

男「今も昔もそうだろ」

男「少なくとも俺は魔法が使えるような素質は無い」

魔王「ふむ、それは不便だな」

男「まぁ使えるあんたからしてみれば不便だろうな」

魔王「そうだな……。では少年、ちょっとこっち来い!」

男「嫌だ、お前が来い」

魔王「……お前さんもずいぶんアレな性格だな」

男「んで?何する気だ?」

魔王「ちょっと待っておれ。お前さんにワシの魔力を注ぎ込む」

男「強化魔法でもかけるのか?ってかあんたの魔法の内容も把握しないとな」

魔王「違う、強化魔法ではなくお前さんにも魔法を使えるようにしてやろうと思ってだな」

男「はい!?」

男「体動かね……お、おいちょっと待て。何か危ない魔法だったり危ない薬使ったりはしないだろうな!?」

魔王「そんなもん使わないし魔法でも無いわ!」

男「突然爆発とか切断とかにならないだろうな!」

魔王「失敗しない限りは」

男「」

魔王「ホレ終わりだ。何とも無いだろう」

男「生きた心地がしねーよ。ってか本当に何ともないな」

魔王「昔はこれでよっぽど素養が無い限りは誰でも魔法が使えるようになったんだがなぁ……これが時代か」

男「ってことはこれで俺も魔法が使えるようになったってこと?」

魔王「そういうことだ。まあ試しに手に魔力を集中させてみろ」

男「魔力ったってどうやって……お、こうか?」

魔王「おお、呑み込みが早いな少年!そうだ、そうやって流れるような感覚で魔力を操るんだ!」

男「すごい……体の中で津波が押し寄せるみたいだ!」

魔王「そう!そのまま手のひらで溜める!」

男「こうか!」

魔王「もっと!!」

男「うおぉぉぉぉぉ!!」

魔王「もっと!もっとだぁ!!」

男「おおおおおおおおおおおお!」

魔王「今だ放て!!」

男「そりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」

魔王「え、ワシにmぐっはあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

男「おっさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」

魔王「ナイスだ……もう、教える事は…無……」

男「いや、ホント ゴメン」

魔王「都市に繰り出したぞ!」

男「復活早いなおっさん」

魔王「なんだか建設中の建物がおおいな」

男「昨日も言ったがまだ出来たばっかりだからな、どこもこんなもんだ」

男「さて、それじゃあ派遣所でまず仕事を探すか。ちゃんと説明させすればあっちが仕事探してくれ……おっさん?」

男「おいどこ行ったおっさん!」

魔王「お前さん」

犬「きゃうん……」

魔王「迷子の子犬さんというやつか、どれこっちにこい」

犬「きゃわん!」

魔王「おお、人懐こいなぁ。こうもすぐに胸に飛び込んでくるとは」

魔王「首輪もついているし飼い犬か?それにしても汚いな」

男「居たよ……おっさん勝手にどこか行かないでくれ」

魔王「ああ、スマンな。こいつが気になってな」

男「なにそれ、犬?」

魔王「おう、迷子のようだな」

魔王「1日2日でこんなに汚れたりはしないだろうな」

魔王「ずいぶん衰弱しているようだ。ロクに食べ物も食べてないだろう」

男「みたいだな……で?どうするんだソレ?」

魔王「一度関わってしまったんだ、見捨てるわけにもいかんだろう」

魔王「それともお前さん、捨ててこいなどと無慈悲なことを言うわけないよな?」

男「俺もそんなことはしないぞ、関わらないようにはしたいけど」

魔王「ま、普通はそうだな。だがワシは仮にも王、弱き者の救える命は全力で救いたい!」

男「ふーん。王としてかは知らないがヒトとしてはいいんじゃないか?そういうの好きだよ」

魔王「それなら話は早い!ホレ!」

男「何?突然手を出して」

魔王「ドッグフード買うから金くれ」

男「あんたのことちょっと見直した自分が恥ずかしいよ」

魔王「おおぅ、いい喰いっぷりだなメヌエット!」

犬「きゃんきゃん!」

男「さっそく名前つけちゃったよ」

男「でもどうすんだ?ウチでは犬飼う気無いぞ」

魔王「そこまで甘えるわけにもいかん。ここまで面倒見てくれれば十分!」

魔王「ワシが責任を持って引き取ろう」




魔王「ま、イコールお前さんの家に連れて帰るということだがな」

男「お前ホント何様だよ」

魔王「だってしかたなかろう!この子はつらい目にあってきたんだ!きっとそうだ!」

魔王「それなのに今だけ食事を与えてはいさようなら、なんてそれは偽善だ!」

魔王「関わった以上責任は取る!このまま野宿を続けさせるなぞもってのほか!」

魔王「ゆえに、後にワシが帰るお前さんの家に連れて行くのは当然だろう!」

男「もうあんたが今日もウチに泊まるのは決定事項なのか?」

魔王「あと何様と聞かれてもワシは魔王様としか答えれんぞ」

男「しらねぇよ」

魔王「おおメヌエット!よかったなぁ、しばらくあの少年が住まわせてくれるようだぞ!」

犬「きゃんきゃん」

男「もういいよそれで」

男「ところで、何でメヌエットなんだ?」

魔王「何故って、そこの張り紙に書いてあるだろう?」

男「張り紙?」

迷子の子犬を探しています
名前はメヌエットです
見かけたらご連絡ください

男「写真付きだな。あ、ホントそっくりだな。こっちのは汚ねーけど」

魔王「だろう?」

男「だろう?じゃねーよ返してこい」

魔王「えー!」

男「えーじゃねえよ!返せよ!」

飼い主「本当にありがとうザマス!メヌエットちゃんがこうして無事に帰ってきたのもあなたたちのおかげザマス!救世主ザマス!」

魔王「ぬはは!奥さんそう本当のことを言われてはワシも照れてしまうぞ!」

男「あんたさっきまで返したくないって泣きわめいてただろ……」

飼い主「あ、そうだ。お礼金を渡さなきゃいけないザマスね!これくらいでどうザマス?」

男「え?いいですよ、そんな……いちじゅうひゃくせんまんじゅうまん……」

魔王「ぬはは!大量だな少年!」

男「」

男「いちじゅうひゃくせんまんじゅうまん……」

魔王「お前さんさっきからそればっかりだな」

男「あ、やちんとからくしょうだな。しょくひもしばらくは」

男「うへへ、かねがあればなんでもできる」

魔王「おい、大丈夫か……?」

男「あ、じゅうまんとまんじゅうってにてるな」

魔王「ダメだコイツ、早くな(ry」

今になって思ったんだが何が楽しくて俺はこんな男とおっさんが絡み合う謎の文章を書いてるんだ

見てた人がいたからおっさん元気でた
寝たら書く(`・ω・´)

しばし待たれよ

男「スマン、落ち着いた」

魔王「まさかワシを焦らせるとは思わなかったぞ」

男「こんな大金を一気に手にしたのは初めてだからな。あのオバはんなに考えてるんだ」

魔王「犬といえど家族なのだろう。あの子犬にはその大金か、あるいはそれ以上の価値が彼女にはあるんだろうな」

男「そういうもんなのか」

魔王「さて、金も手に入ったし!」

男「そうだな、もとはといえばあんたの功績だしこれでどこかホテルでも……」



魔王「帰るか」

男「マテや」

男「あんたここに何しに来たんだよ!?あんたに帰る場所無いから!」

魔王「そう言うな。仕事は明日探すから今日もまた……な?」

男「いやいやいや、探せよ!住むところも働くところも今すぐ!」

魔王「いいではないか。焦る必要はないだろう」

男「焦れよホームレス!」

魔王「ホレ、家賃だ。文句はなかろう!」

男「oh...」

魔王「ぬはは!さぁて、晩飯を買って帰るぞ少年!」

男「今手にした大金をあんなボロ屋の家賃替わりに簡単に投げ出すとは……」

魔王「なに、ワシがあそこを気に入っただけだ!それに、誰かといると寂しくないからな!」

男「寂しいって……ずいぶんとセンチメンタルなんだな」

魔王「ホテルで金使って泊まるよりお前さんと暮らした方が有意義な気がするからな!」

男「あぁもう暮らすこと前提なのな」

魔王「その通りよ!ま、これからも定期的に家賃くらいは払わせてもらうがな!」

男「もうそれでいいよ、前金でこんなに貰えたからな。金があるうちは置いておいてやる」

魔王「そうしてくれるとありがたい!……ん?」

男「どうした?」

魔王「なんだこの紙切れは?」

男「福引か。そういやあそこの店でやってたな」

魔王「ほほぅ、なんかいい予感がするぞ!」

男「まぁせっかくだしやってくか。気のせいか俺もいい予感がするし」

係員「おめでとうございます!3等のフルーツ盛り合わせです!」

男「ホントに当たったな。しょっぱいけど」

魔王「ぬはは!当たりは当たりだ!今日はいい日だなぁ!」

男(んー?なんか変な感じが)

幼女「うわーん!私のお人形がー!」

魔王「どれ、見せてみぃ!」

幼女「わぁ、おじさんありがとー!これあげるー!」

―――

おばあさん「あぁ、ひったくりじゃー!」

魔王「待たんかガキ共ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

おばあさん「おぉありがたやありがたや……お礼にこれを……」

―――
――

作業員「うあぁぁあ!鉄骨が落ちてきたあぁぁぁ!」

従業員「下に子供が!」

魔王「唸れよ魔剣!!」

母「ありがとうございます!なんとお礼を申し上げたらよいか……これをお受け取りください」

魔王「ぬはは!よいよい!」

―――
――


男「おっさん何者だよ……」

魔王「だから初めから魔王だと言っておるだろう?」

男「いや、それは分かったから……」

男(次々にトラブルを引き寄せて解決して)

男(ヒトに感謝されたと思ったらお礼を貰って)

男「まるで世界に愛されてるみたいだな」

魔王「ぬはは!同じようなことを昔よく言われたが、本当にそうなら友人に金を持ち逃げなんてされんだろうな!」

男「まぁ、そうだが……」

魔王「ところでお前さん、用事があったのだろう?」

男「あ、そうだ。忘れるところだった」

男「おっさん、ここでちょっと待っててくれるか?」

魔王「ん?まあいいだろう。無事に再会できる保証はないがな!」

男「自分で言うなよ……んじゃ待っててくれよ」

魔王「おう!いざとなったら自分で帰るわい!」

男「あのおっさん人の話も聞けんかまったく……」

男「さて、と。こんにちは」

神父「おや?こんにちは、今日は随分と遅かったですね」

男「いろいろありすぎてね。数年分の驚きを一瞬で味わった気分になってるよ」

神父「それはそれは。とりあえず上がってください、彼女もあなたを待っていますよ」

男「いつもそんな風には見えないけどな」

少女「……」

男「よう、また来たぞ」

少女「……何度来ても同じ。私は話すことはない」

男「そう言うな、俺は話したいことがあるからな」


男「そうだな、それじゃあ面白いもの見せてやるよ」

少女「?」

男「見てろよ?」

男「えぇと……手のひらで確かこうやって……」

少女「……!」

男「出た出た!ほら、俺魔法が使えるようになったんだ!」

少女「それをどこで……?」

男「ん、あぁ、まあ話しても伝えられないと思うから割愛しとく」

id変わってらぁ

男(おっさんの事なんて話しても信じてくれんわな)

少女「で、それで何ができるの?」

男「(お、興味示したか?)何って言われてもなぁ。こうやってかざして」

男「強く念じて……」

少女「あ、ダメ!」

男「え?あ!?」

神父「二人とも、お茶をmあがぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

男「」

少女「……今日は帰った方がいい」

男「そうだな、そうする」

少女「神父様は私が運んでおくから」

男「スマン、頼む」

―――
――


魔王「よう!待ちくたびれたぞ少年!」

男「探していないと思ってたら本当に先に家に帰ってたか……」

魔王「で、お前さんどこへ行ってたんだ?」

男「野暮用だよ。答える必要は無いな」

魔王「連れない奴だな……まぁいい、飯はどうする?」

男「結局一人で買い物済ませてきたよ、今作る。あとホラ、これ」

魔王「ん?これは今日のワシの稼ぎではないか。家賃として渡したが不服だったか?」

男「あれを稼ぎと言うな。全国の真面目に働いてるヒトに謝れ。こんなにいらんから、返す」

魔王「偏屈な奴だなお前さん。素直に貰っておけばいいものを」

男「こんなに持ってると気がおかしくなりそうだ」

魔王「まぁこれはいずれ払う"家賃"としてワシが管理しておこう」

男「そうしておいてくれ」

男「すぐに作るから待ってろ」

魔王「あ、ワシオムライスが食べたい」

男「買い物付き合ってさえいないのにどこまで図々しんいだあんた!?」

男「……なぁおっさん、いろいろと聞きたいことがあるんだけど」

魔王「ガツガツッん?うってみおそうねん!」

男「喰ってる最中に聞いた俺が悪かったから謝るがいい年こいたおっさんが物を口に含んだまましゃべんな」

魔王「んぐん!ぬはは!そう邪険にするな!おっさん落ち込んでしまうぞ!」

男「勝手に落ち込んでろ……でさ、結局おっさんが魔王ってのは本当の事なんだよな?」

魔王「あぁ!本当さ!」

魔王「魔王とはすなわち!魔を統べる王!」

魔王「かつてこの大陸を制した魔王は人と魔族、エルフ・ドワーフ・獣人・龍、その他数々の人種を一つにまとめ上げた!」

魔王「人と魔がともに生きることを表明し、そして……今この世界がある!」

魔王「姿勢に共感した者たちが、従来の魔王の"力による支配"ではなく、その魔王の行った"平和による理解"にあこがれた!」

魔王「約1000年前、そんな魔王を見たワシもまた……その姿に憧れ、目指し、そしてその努力は成就した……」

魔王「ま、結果は見ての通り。ワシはその魔王にはなれなかったがな」

男「無理してまでそんなすごい奴になる必要は無いだろ」

魔王「昔は各国どこでもそんな王の生き方を目指していたんだ。ワシは今でも目指すものは変わらんがな!」

男「何とまぁ一途なことで」

男「でも同じような話は絵本とかで見たことあるな」

男「確か"永遠の勇者"っていう昔話だな」

魔王「あー、あれはダメだ!元になった話……まぁ今話したことだが、それとかけ離れた内容になっとる」

男「へぇ、そういうのっておとぎ話とかじゃなかったんだ。って元ネタかよ!?」

魔王「おう、元ネタがある立派な童話だな」

魔王「しかし、隠ぺいされた事や非公開、美化も多かった為か時代とともに大きく改変していったな」

魔王「最終的に"魔王"は魔を統べる者ではなく王本人がそう名乗るようになれば魔王として扱われるようになったな」

男「あんたも数ある便乗者の中の一人でしかないってか」

魔王「その通り!王一人に国の生き方も一つ!それがいくつも存在した!」

魔王「周りがどのような信条を掲げようともワシの…いや、多くの者の目指すものは一つだったというわけだ」

男「建国初日に予算持ち逃げされておいてよく言うよ」

魔王「そこは他の王達にハンデをくれてやった程度にしか思っておらんわ」

魔王「そしてもう心は決まっておる!ワシはもう一度自分の国を持つ!」

魔王「こうしてお前さんに出会って生きながらえた命、その為にあると信じよう!いやきっとそうだ!」

男「せいぜい頑張ってくれ、俺は関わらないけどな」

魔王「期待せず待っておけよ少年!」



男「楽しいな、このおっさん」

なんかところどころ日本語おかしかったりするけどスルー

魔王「さて、腹ごなしに夜の散歩でも行ってくるとしよう!」

男「あ、待て。夜は危ないぞ」

魔王「ぬはは!ワシを誰だと思っておる?この魔王に敵など無いのだ!ぬははははは!」

男「外には魔獣の……」

魔王「魔獣程度に遅れは取らんわ!では行ってくる!」

男「いや、だから魔獣の……行っちゃったよ」

男「魔獣の糞尿が闇に紛れ込んでて危ないって言いたかったのに」


魔王「なんか踏んだ」

男「ほらな」

魔王(ふむ……)

魔王(一人で夜風に当たるのは慣れているが)

魔王(久しぶりだな、こんな寂しいと思える感情を持つのは)

魔王(誰かと共に行動するなど何十年ぶりか)

魔王(奴に迷惑はかけるが、少しの間辛抱してもらおう)

魔王(もう一度国を建てる。あれは嘘ではない)

魔王(だが、本当にできるとも思ってはおらん)

魔王(これはワシが見る夢、ワシに与えられたチャンス)

魔王(一度死したワシに与えられた試練)

魔王(ワシの目指す理想の形、どこまで成し遂げられるだろうか)

魔王(奴に拾われたこの命……さて、いつまで持つか)



魔王「またなんか踏んだ」

男「おっさん結局足元アレまみれになって帰ってきたよ」

魔王「ぬはは!ちんけな獣の糞尿を踏んだところで気にせんわ!」

男「今あんたの靴洗ってるの俺だけどな!?少しは気にして!?」

魔王「では風呂に入って寝るとしよう!」

男「だから人の話聞けよ……ってもう行っちゃったよ」

男「こんな生活に慣れるしかないのか……」

男「で、おっさんまた明日もバイト探しに行くのか?」

魔王「金はあるにしろ、やはり働かなければいかんだろうな」

魔王「一度失った経験があるからこそ、そう思えれるのだがな!ぬはは!」

男「ま、いい心がけだと思うよ。探すくらいしか手伝ってやるつもりはないけど」

魔王「今はそれだけで十分だ!では寝るとしよう!」

男「今はって……」

魔王「む?一寝入りしたらもう日が出てるではないか!」

男「おっさん起きたか」

魔王「おお、お前さんは早いな。今日もまた用事でもあるのか?」

男「何言ってんの!?あんたのバイト探しのために起きてるんだよ!?」

魔王「ぬはは!ジョーダンだ!忘れてはおらんさ!」

魔王「では、朝も早くからアルバイトを探すとしよう!」




男「もう昼だよ」

魔王「」

魔王「ぬかった!何故起こしてくれなんだ!」

男「何度起こしたと思ってんだよ!!寝てる間にもう一回魔法ぶつけてやろうと思ったくらいだよ!!」

魔王「あれは痛いからやめて」

男「急にテンション下がったな」

男「一応バイトは見つけておいたぞ」

魔王「おおスマンな。しかし結局ワシが何ができるかは伝えてなかった気がするんだが」

男「昨日の行動見てて聞く必要が無くなったからな。日雇いの仕事ですぐに人手がほしいそうだ」

男「準備しろ、早くいくぞ」

魔王「え、朝ご飯とお昼ご飯は?」

男「起きなかったお前が悪い。昼飯も俺一人で済ませちまったからあきらめろ」

魔王「」

男「さて、都市行きの列車に乗ったが……」

魔王「」

男「無表情であらぬ方向を見つめるのやめてくれないか?」

魔王「おなかすいた」

魔王「はたらきたくない」

魔王「おうちかえりたい」

男「おっさん他の客いるから自重しような?」

お婆さん「あのぉ……」

男「あ、すみませんこのおっさん迷惑でしたよね?あと30分くらい我慢してくださいホントごめんなさい」

お婆さん「いえいえ、そこのお兄さん。よかったらこのおむすび食べるかい?」

魔王「おお、ご老人!感謝しますぞ!」

男「あぁ……忘れてた。おっさんの謎運……」

魔王「いやぁ、同居人が意地が悪くてな!」

お婆さん「おやおやまぁまぁ」

男「てめぇ何言ってんだ」

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