夢の中のアリス (25)

他サイトにのせてた奴をちょっと文変えてこっちへのせてみました。
すぐ終わるので暇だったらお読みください。

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?「きゃっ!?」

ダイナ「痛っ!?」


 だが、森の角で誰かとぶつかり、彼は尻餅をつく。ダイナはぶつかった相手へと目を向けた。


?「ご、ごめんなさい、大丈夫かしら?」


 相手もそれで倒れたようで、立ち上がりながらダイナに謝罪をし、優しく声をかける。

 彼女は美しいブロンドの髪を持つ、ダイナより少し背の高い少女だった。どうやら、先程の声の持ち主は彼女のようだ。

すいません、間違えました、こっちが先です

?『助けて!』

少年「!?」

 突如、少女の叫び声が聞こえ、少年は目を覚ます。


少年「ここは……というか、今誰かの悲鳴が聞こえたような……」


 彼の名はダイナ、黒髪碧眼の小柄な少年。
 その突然の状況に彼は戸惑い、辺りを見回す。どうやら、どこかの森の中のようだ。


?『助けて!』


 するとまた、少女の声が彼の耳を駆け抜けていく。


ダイナ「!?やっぱり、あっちから聞こえる!」


 ダイナは急いで、声のした方へと向かった。

?「きゃっ!?」

ダイナ「痛っ!?」


 だが、森の角で誰かとぶつかり、彼は尻餅をつく。ダイナはぶつかった相手へと目を向けた。


?「ご、ごめんなさい、大丈夫かしら?」


 相手もそれで倒れたようで、立ち上がりながらダイナに謝罪をし、優しく声をかける。

 彼女は美しいブロンドの髪を持つ、ダイナより少し背の高い少女だった。どうやら、先程の声の持ち主は彼女のようだ。

 彼は少女のその言葉に返答するため声をかけようとするが、その間もなく。


?「見つけたぞ生意気な小娘め!!」


 今度はおそらく年のいった女性の声が森の中を反響する。
 その声の直後、一人の大柄な女と護衛のような男が三人、こちらへ駆け足で向かってきた。 

ダイナ「なんだあの人たち?」

少女「私の首をはねるために追ってきているのよ」

ダイナ「首をはねる!?」

 少女の言葉に耳を疑うが、状況を整理しようと思考するも束の間、謎の女たちの声で遮られる。


?「やっと見つけたぞ生意気なガキめ!」

「ハートの女王様?なぜ私の首をはねようとするの?私はなにもしていないわ」

ハートの女王「何もしてない?ブァッ!笑わせないでちょーだい!」

 「ハートの女王」と少女に呼ばれた、大柄な女の服や頭につけた冠には所々にハートのマークが見える。
 そんなものとは裏腹に、女の横暴さと迫力はその体格に見合うほど地を揺らす勢いだ。
 その姿になにかを感じた彼は、少女の前に立ち彼女を庇うように手をかざす。

ハートの女王「なんだ少年?私は気が立っているのだ」

ダイナ「首をはねるなんて正気の沙汰じゃない、とりあえず落ち着いてよ、おばさん」


 彼はハートの女王を説得し、落ち着かせようとする、が、その言葉が逆に着火点であったかのように女の顔は怒りでそのハートのマークのように真っ赤に染まる。

ハートの女王「おばさんだって――ッ!?貴様ら、そやつらの首をはねーい!」

護衛「「「合点承知!合点承知――ッ!!」」」

 護衛の男性たちは手に持っていた槍を二人へ向ける。このままでは危ないと思ったダイナは、少女の手を握る。

「逃げるぞ!!」

 そう少女に声をかけると、彼女の頷きを確認したと共にその場から全力で走った。

二人「「はぁ……はぁ……」」


 しばらく道なりを逃げ、どれぐらい走り続けたかも分からなくなるほど疲労した二人は、先程の女たちがいないのを確認し、近くの木の下に座り込んだ。


少女「あの、ありがとう、お名前は?私はアリスよ」

ダイナ「僕の名前はダイナさ」

少女「ダイナ?偶然!うちの猫もダイナって言うのよ?」

ダイナ「じゃあ僕たちは、なにかしら縁があるのかも」

アリス「うん、きっとそう!――でも、ダイナは死んでしまったの」

ダイナ「そうか、それは悲しい事だね」

アリス「うん」

 アリスは俯く。ダイナと過ごした日々を振り返っているのか、その顔はとても悲しみに満ちていた。
 その顔を見ていられなくなった彼は、自分の身の上を話した。

ダイナ「僕、実はここの住人じゃないんだ、いつの間にかここに迷いこんでさ」

アリス「そうなの!?」

ダイナ「どうかしたのかい?……まさか、アリスもここじゃないところから?」


 その問いに、また彼女は顔を俯かせる。


ダイナ「そうか……いつからここに?」

アリス「分からない、どれぐらいここにいたのかも忘れてしまったわ」


 アリスは唇を力いっぱい噛み締めると、我慢していた思いが溢れたのか、こう呟いた。

アリス「……こんな世界、もういや、眼が回ってしまいそう……ぐすっ」


 アリスはまるで締まりの悪い蛇口のようにポタポタと涙を流す。
 その様子を見て一つの決心をした彼は、アリスにこう言った。


ダイナ「きっと、二人で抜け出そう、この世界から」

アリス「……抜け出せるのかしら?」

ダイナ「あぁ、大丈夫さ、僕を信じてくれ」


 ダイナはアリスの頬を伝う涙を右手で優しく撫でて、拭き取る。


「ありがとう、ダイナ」


 彼女は彼の手を両手で包むように握ると、微笑んだ。

ダイナ「なんだいこの寸胴な猫は?」

アリス「意地悪が大好きなチシャ猫さんよ」

チシャ猫「意地悪だなんてひどいなぁ、私は君とお話したいだけさ」

アリス「その可愛らしい尻尾とお喋りしていればいいわ」


 アリスは皮肉をたっぷり込めた口調でチシャ猫へそう言うと、両腕を組みそっぽを向く。

チシャ猫「ククッ、すまないが、自分にまで尻尾を振る趣味はなくてね」


 チシャ猫はニヤニヤと笑いながらそう言い、尻尾を振った。
 そして彼は突然なにかをリズムを刻むように口ずさむ。

チシャ猫「ゆめゆめ交えぬ人と夢♪混じれば儚くゆめゆめしい♪」

ダイナ「それは?猫なのに詩かい?」


 ダイナはチシャ猫にそう質問する。彼は口ずさむのをやめ、それに返答した。


「いや、忠告さ。だが、忠告と取るのも詩と取るのも、君たち次第だがね」


 チシャ猫はそう言うと、また一段と大きくニヤリと笑った。

ダイナ「ニヤニヤニヤニヤ、猫らしくもないね」

チシャ猫「ククッ……ではまた会おう、お二人さん、そろそろ時間だからね」

 チシャ猫はそう彼に別れを告げると、最初に現れた時とは逆にだんだんと姿を消していく。最後には、不気味に笑う猫の表情だけが残り、やがて消えた。


ダイナ「なんだ、笑いだけ残して消えていった」

アリス「珍事でしょ、ああゆう猫なの」

ダイナ「愉快な猫だね」


 二人は猫のいなくなった森を再び歩き始める。

 しばらく歩いていると、遠くに数人で机の周りに座って、なにかパーティのようなことをしているのが彼には見えた。


ダイナ「なんだあれは?」

アリス「最悪だわ……」


 アリスはとても嫌そうに呟く。その彼女の様子を見てダイナは質問した。


ダイナ「あれがなにかを知ってるのかい?」

アリス「世界で一番馬鹿馬鹿しいパーティよ」

 どうやら、また彼女と関わりのある者のようだ。
 ダイナはそのアリスの言うパーティへと足を運びながらこう言った。


ダイナ「とりあえず、帰り道を聞いてみよう、なにか知っているかもしれない」

アリス「ロクな答えが返ってくるといいけど」


 そして、二人は机の目の前で足を止める。

ダイナ「あの、聞きたいことがあるんだけれど?」

 そして、ダイナがそこにいたウサギに尋ねる。
 だがその瞬間、帽子をかぶった男が顔を真っ赤にして

「満員!満員――!!」

と大声でダイナに向かって叫んだ。

「そんなこと言ったって、こんなに席が空いてるじゃないか」


 その態度に、ダイナは力強く反論した。すると、隣に座っていたウサギが優しく声をかけてきた。

ウサギ「ビールでも飲むかい?」

ダイナ「見たところお茶しか見当たらないけど?」

ウサギ「だってないもん」


 その態度とは裏腹に、それはとても支離滅裂な言動だった。


「ないものを薦めるってのも、どうかしていないか?」


 ダイナはウサギの彼にそう言う。アリスはその様子にダイナの耳へ手をかざし

(この人たちに何を言っても無駄よ)

と囁いた。

 すると帽子の男はダイナの方へ手に持ったコーヒーカップを向けてこう言った。

帽子の男「で、おめぇさんは何をしてるんだい?」

ダイナ「帰り道を探してるんだ」

帽子の男「帰り道ってどこだい」

ダイナ「だからそれを探してるんだよ」

 ダイナはその帽子の男の適当な態度に少し怒りを覚える。すると突然、ウサギが閃いたようにこう言った。

ウサギ「分かったぜ帽子屋、こいつ原点へ帰りたいのさ!」

帽子の男「原点ってどこだ?」

ウサギ「さぁ、それは知らんね」


 そのあまりにもマイペースな二人の会話に呆れたアリスとダイナは


「「だから帰り道を探してるんだ(の)!!」」


と同時にウサギと帽子屋へ向けて怒鳴った。

 そのあまりの大きな怒声に、眠っていた山ネズミが「ハッ!?」とびっくりして起き上がる。


山ネズミ「だいじょーぶ、おまえたちのかいわはぜんぶきいてたぜぇ……Zzz」


 そう言ってあくびをした山ネズミは、再び眠るのであった。

 彼はただ一言、こう思った。

――わけがわからない、と。

 そんな彼らの様子を見果て、ダイナはアリスの手を握ってこう言った。


ダイナ「もういい、先を急ごうアリス」

アリス「そうね、私もそれが正解だと思うわ」

 そして、ダイナたちがその場を去ろうとした時だった。


「見つけたぞ、生意気な小娘ども!!」


 聞き覚えのある、女の大きな声がした。そう、ダイナ達はまた見つかってしまったのだ、あの大柄な女王に。


ハートの女王「今すぐ引っ捕らえて、首をはねろ――ッ!!」

護衛「「合点承知!合点承知――ッ!」」


 ハートの女王たちはものすごい勢いでダイナたちへ向かってくる。


ダイナ「逃げようアリス!」


 ダイナはアリスの手を強く握りしめてこう言うと、全速力で走った。
 その大きな声や音に目を覚ました山ネズミは、「ハッ!?」とした後こう言った。


山ネズミ「だいじょーぶ、おまえたちのかいわはぜんぶきいてたぜぇ……Zzz」


 そしてあくびをした後、再び眠るのであった。

チシャ猫「お二人さんお二人さん、そんなに急いでどこへ行く?」

二人が女王から逃げていると、突然チシャ猫が宙に浮かんで現れた。


ダイナ「すまないけど、君に構ってる暇はないんだ!」

チシャ猫「そうかい、でも、君たちが探しているのは、ああいうものではないのかな?」

 チシャ猫はそう言うと、少し離れたところにある大きな木を指さす。その木の下には、扉が存在していた。


ダイナ「!?アリス、あそこへ逃げ込もう、チシャ猫、感謝するよ!」

チシャ猫「いやいや、とんでもないさ」

 ダイナはアリスを連れて急いでその扉の場所へ向かう。そして、ダイナがその扉のドアノブに手をかけ、開ける。


ダイナ「うわあああああああ!!」

アリス「きゃあああああああ!!」


 だがそこには部屋等ではなく、大きな穴が存在していた。二人は走る勢いで扉に飛び込んでいったので、まるで吸い込まれるように穴へ落ちていってしまった。


チシャ猫「ククッ、アリス、幸せにね」


 チシャ猫はその様子をニヤリと嘲ると、森の暗闇へ溶け込むように、消えていった。

ダイナ「う、うう、ここは……」


 ダイナは目を覚ます。辺りを見回すと、目の前には湖があった。草や木々が立ち並び、太陽の光がその間から綺麗に差し込む、非常に美しい風景だった。
 そこは、ダイナの好きな場所の一つだ。彼らは現実の世界へと抜け出したのだ。


ダイナ「アリス!」


 彼の隣には、アリスが倒れていた。ダイナは慌てて駆け寄り、起こそうと彼女の肩を揺する。


ダイナ「アリス、大丈夫かアリス!」

アリス「う、うぅ」


 アリスはゆっくりと瞼を開ける。そしてダイナの方へ顔を向けて、彼の名を呟く。


アリス「……ダイナ?」

ダイナ「あぁ、そうだ、僕たち、抜け出せたんだ!」

アリス「……本当に!?」

 アリスは急いで辺りを見回す。その光景を確認すると、ダイナへ飛び付き、彼を抱く。


ダイナ「ここは、僕の家の近くなんだ。なぜかアリスもここへ来てしまったようだ、だから君の家は……」

アリス「――そう。でも、とても、とても嬉しいわ。あなたとあの世界を抜け出せただけで私は幸せ、あなたも嬉しいでしょう、ダイナ?」

ダイナ「……あぁ、とても嬉しいよ」


 ダイナはそのままアリスを強く抱いた。そして彼女の頭を優しく撫でる。


ダイナ「とりあえず、あそこにある僕の家へ寄らないか?母さんと父さんが待ってる」


 ダイナはある場所を指さす。そこには大きな白い家があった。

アリス「私が行っても、大丈夫かしら?」

ダイナ「あぁ、両親は優しい、アリスの家が見つかるまでなら、きっと泊めてくれるさ」

アリス「そう……ありがとう、ダイナ」


 ダイナは彼女の微笑んだ顔を確認した後、「行こうか」と声をかける。彼はアリスの手を握り、そのまま自宅へと連れていく。

 彼女はそれに連れられて、その手が離れぬよう、しっかりと、だが曖昧に握りしめる。今の幸せな気持ちに夢中で、ダイナの背を見つめながら優しく微笑んだ。アリスはまるで、ゆめのようだった。


ダイナ「……?」


 突然なにか違和感を覚えたダイナは、自分の手を確認する。


アリス「どうしたの?ダイナ?」

ダイナ「……気のせい、か」


 そう呟くと、彼は再び家に向かって走り出した。

終わりです。
携帯の違うブラウザアプリを使ってるせいか毎回IDが変わってますが気にしないでください。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。

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