不良娘「おやすみ、良い夢を」(44)

――屋上

カツンカツン

ガチャ

少女「……あ、居た」

不良娘「お、ここにくるなんて珍しいな」スパー

少女「うん。隣、いい?」

不良娘「おいで」

少女「さっきの放送、聞いてなかったの?」

不良娘「聞いてた」スパー

少女「ならいいんだけど」

不良娘「間引き政策なんてな。馬鹿馬鹿しい」

少女「あれ、知ってたんだ」

不良娘「…あんた、あたしを舐めんなよ?」

少女「あはは」

不良娘「増えすぎた子供を減らしますーっなんてな」

少女「昔は少子化で大変だったみたいだけどね」

不良娘「…だからって、殺しあいはないよな」

少女「今から君たちに殺しあって貰いますなんて、まさか言われるとは思わなかったよ」

不良娘「半分に減らすんだっけ」

少女「うん」

不良娘「どうだったんだ、あんたのクラスは」

少女「山田くんと鈴木くんが無双してたよ」

不良娘「野球部はバッドあるからな。ズリー」スパー

少女「いじめられっ子がここぞとばかりに暴れてたし」

不良娘「人間って恐ろしいな」フー

少女「あなたは?」

不良娘「あ?」

少女「いずれここにも誰か来るよ」

不良娘「だろーなぁ」

少女「得物、ないじゃん。どう戦うの?」

不良娘「あー、なんか、疲れちゃったからさー」

不良娘「もういいかなって」

少女「……そっか」

不良娘「だから今必死にタバコ消費してんの」

少女「身体に悪いよ」

不良娘「少なくとも夕方には死ぬだろうから問題ない」

少女「抵抗とかする予定は?」

不良娘「どうしよ。嫌いなやつだったらするかも」

少女「ふぅん」

不良娘「」スパー

不良娘「吸ってみるか?最期に」

少女「やだよ。臭いし」

不良娘「おまっ、ひでぇな」

少女「タバコ吸うと息苦しくなるじゃん?だから水泳部の敵なの」

不良娘「そういや水泳部だったか」

少女「でもまた廃部かな」

不良娘「なんで」

少女「部長と後輩が死んでたから」

不良娘「それは…ご愁傷様」フー

少女「今年の大会が最後だったなんて、なぁ」

不良娘「どうだったんだ、成績は」

少女「平泳ぎ六位」

不良娘「ビミョーだな」

少女「むっ。頑張って泳いだんだから」

不良娘「はいはい偉い偉い」ナデナデ

少女「えへへ」

不良娘「昨年あんなに廃部から復活させようとしてたのにな」

少女「まさに水の泡だよ」

不良娘「」スパー

少女「……暖かいね、ここは」

不良娘「だな」

少女「床は汚いけど」

不良娘「雨ざらしだからな」

少女「覚えてる?」

不良娘「なにを」

少女「わたしたち、ここで初めてあったんだよね」

不良娘「あー。あたしはタバコ吸いに、あんたは景色を見にな」

少女「すごいびっくりしてたねぇ」クスクス

不良娘「だって自殺かと思うだろあれ。フツーに」

少女「なんで知り合いになったんだろうね」

不良娘「なんで知り合いになったんだろうな」

少女「不思議だね」

不良娘「全くだ」スパー

少女「あのさ」

不良娘「あん?」

少女「わたしのいじめ、止めてくれたのあなただよね」

不良娘「なに言ってやがんだてめー」

少女「だって、わたしあなた以外に相談しなかったし」

少女「いじめてた子、あなた見てすごいびびってたし」

不良娘「……はっ」スパー

不良娘「そんな善人みたいなこと、あたしはやんねーよ」

少女「嘘だー」

不良娘「嘘じゃないですー」

少女「じゃあ誰がわたしを救ってくれたのよー」

不良娘「通りすがりの仮面ライダーじゃね?」

少女「えー」

少女「じゃあいいや、通りすがりの仮面ライダーさんありがとう」

不良娘「……」スパー

少女「空、あおーい」

不良娘「むかつくなるほど青いな」

少女「吸い込まれそう」

不良娘「ロマンチストだな」

少女「女の子はシュガーとスパイスと素敵な何かで出来てるからね」

不良娘「ああそうかい」

不良娘「……なんで生まれてきちまったんだろうな」

少女「……」

不良娘「間引きされるぐらいなら、生まれなければ良かった」

少女「…うん」

不良娘「大人達の無責任な行動であたしたちは殺されなきゃならないなんて」

少女「辛い?」

不良娘「別に」

少女「強がっちゃって」

少女「でも」

少女「わたしは、生まれてこれて良かったと思うよ」

不良娘「なんで?」

少女「あなたと会えたから」

不良娘「ごほっ、がはっ」

少女「むせた!?」

不良娘「おまっ、あの、ちょっと、なにいってんだ!」

少女「本心だけど」

不良娘「ああそうかい」スパスパ

少女「あれあれー、まさか照れてる?」

不良娘「ん、んなわけねーよ」

少女「顔真っ赤だよ?」

不良娘「あがり症なんだよ!」

少女「どことなくフォローになってないような…」

不良娘「この話はもうやめ!」

少女「はいはい」クスクス

不良娘「」スパー

少女「……」ウト

不良娘「」フー

少女「……」カク

不良娘「眠くなってきたのか」

少女「ん……」

不良娘「その傷、いつ作った」

少女「ここにくる一時間前ぐらいかな」

不良娘「脇腹か」

少女「うん」

不良娘「だいぶ血を流したみたいだな。今まで辛くなかったのか」

少女「根性でしゃべってた」

不良娘「根性論かよ」

少女「もう最後だから。黙ってなんかいられないし」

不良娘「だな」

少女「寒い」

不良娘「もっと近くよれ」

少女「そこは寄ってよ」

不良娘「めんどくせーな」ススス

少女「手、あったかい…」

不良娘「心は冷たいけどな」

少女「そんなことはないよ。あったかいよ」

少女「寒い」

不良娘「もっと近くよれ」

少女「そこは寄ってよ」

不良娘「めんどくせーな」ススス

少女「手、あったかい…」

不良娘「心は冷たいけどな」

少女「そんなことはないよ。あったかいよ」

不良娘「……」

少女「どうしたの?」

不良娘「人が恥ずかしいと思うこと量産機め」

少女「すごい長いあだな」

不良娘「こんなあだなは嫌だ」

少女「言いにくすぎて誰も呼ばないあだな」

不良娘「あだなの意味」

少女「あー、そーだ」


不良娘「うん?」

少女「校長先生が銃乱発してた」

不良娘「教師乱入かよ。あの人確か趣味で猟してたんだっけ…」

少女「集会の度に言ってたね」

不良娘「とうとう人間まで狩り出したか」

少女「悲しいけどこれ、現実なのよね」

少女「ストレス溜まってんじゃないの?」

不良娘「だからハゲなのか」

少女「あはは」

不良娘「あはは」

少女「下らないことで命削った気がする…」

不良娘「ドンマイ」

少女「うーん…このまま眠るように死ねるなら、それはそれでいいかも」

不良娘「そうか」スパ-

不良娘「……なんか、最後にやりたかったかととかないのか?」

少女「あなたは?」

不良娘「回らない寿司食べたかった」

少女「わーお、可愛らしい」

不良娘「うっせ」

少女「わたしはね……」

少女「キスしたかった、な……」

不良娘「純粋だー」

少女「悪かったですねー」

不良娘「…してやろうか」

少女「え」

不良娘「あたしで良かったら」

少女「いいの?」

不良娘「減るもんじゃないし」

少女「安売りしすぎ」

不良娘「じゃあ止めるか」

少女「え、待って。する」

不良娘「ん」チュ

少女「……ん」

不良娘「ごちそうさま」

少女「心の準備というものをさせてよ」

不良娘「やるときにやるんだよ」

少女「ドヤ顔しないで」

不良娘「本当は好きな人とするべきなんだけどな」

少女「それなら心配ないよ」

不良娘「え?」

少女「え?」

不良娘「ちょっと、それどういう意味だ?」

少女「そーゆう意味ですよ」

不良娘「……受け取っておこう、その気持ち」スパー

少女「ありがと――」コテッ

少女「……えへへ、力入らなくなってきた」

不良娘「肩枕は高いぜ」タバコグリグリ

少女「お支払は命で」

不良娘「洒落にならん」

少女「……」

不良娘「……」

少女「悪くはなかったよ、この人生」

不良娘「……」

少女「辛いこともあったけと、あなたに会えたし」

不良娘「……」

少女「それに、こんな青空の下で死ぬのも案外いいかもしれない」

不良娘「……」

少女「先に、眠るね」

不良娘「ん」

少女「おやすみ」

不良娘「おやすみ、良い夢を」

不良娘「……」

不良娘「あ、もうタバコないのか」クシャッ

不良娘「……幸せそうな顔で死にやがって」

少女「」

不良娘「実はあたしもファーストキスでしたーなんて、な」

少女「」

不良娘「ほんっと、空は青いなぁー」

カツン

不良娘「……」

カツン

カツン

カツン

パァン

カツン

不良娘「こりゃ校長っぽいな。銃声もしたし」

不良娘「初、生銃声」

不良娘「嬉しくねーし」

カツン

不良娘「――なぁ」

少女「」

カツン

カツン

不良娘「あたしも」

カツン

不良娘「あんたに会えて、良かったよ」

カツン

不良娘「ありがとう」



ガチャ

パァン



……ドサッ




不良娘「おやすみ、良い夢を」 end

口の悪い子と普通の子のやりとりが書きたかったのです。

彼女たちがいなくなった以上、この物語は終わりです。
ありがとうございました。

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