男(陰陽師)「式神やら妖怪たちと過ごす日常」 (5)

名も無き山の中
登山道どころか獣道すら続いていない隔絶された小さな空間

木々に囲まれた場所のまんなかにひっそりと祠が建っていた

小さい石造りの祠はしばらく手入れされた様子が無く、向こう何十年も放っておかれたいたかのようだ
ただ一つ、石に彫られただけの観音開きの戸に新品に見える札が張ってある


「これか」

祠に近づいてみる
ザァアと風が足の合間を駆け抜けていった

木々がざわめく

風が止んで尚


木の葉がさざめき、枝が揺れ動く

風も無いのに意思を持っているかのように枝が、幹が、木が

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その異様な景色が全体に広がっている。天をも伸びた枝が覆い、太陽光を遮りだした

「さっきは、もう少し、明るかっただろ…」

自分の意識を強く保つために出した言葉は震えており、むしろ自身を不安に落とし込んだ
それがトリガーだったか、せきどめられていた恐怖があふれ出し本能が悲鳴を上げた


「助けてくれぇ!」

祠に背を向けて走り出した。この広場から、この山から、離れるんだ


ガタガタガタガタ

バン!


扉が開いた音がした
あの祠に開く戸など無かったのに


ハラリ、とお札が剥がれ落ちた

男「休日ってのはどうしてこんなに暇かねえ」

布団に潜って天井を見つめる


猫又「主よ、暇ならあそんでくりゃれ」

そんな優雅な寝たまま日和に邪魔者一匹


男「顔にケツ乗っけんな」

猫又「にひひ、これが人の女子だと妄想しておれば良い」

男「他の奴と遊んでいろよー」


二股に分かれた尻尾が叩いてくる

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