バムとケロのじゅけんせんそう (14)

土曜日の朝。

隣の部屋からの大きな物音で目が覚めた。


バム「……。今何時……?」

寝ぼけ眼を擦りながら置時計を見やる。

まだ朝の4:30だ。

ケロちゃんがベッドから落っこちたのかな?

心配だから様子を見に行ってみよう……。

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バム「ケロちゃん!!」

ケロ「あ、バムさん……。おはようございます……」


扉を開けてびっくり仰天。

ケロちゃんが参考書の山に埋もれてひっくり返っていた。


バム「もう起きて勉強してたの?」


ケロちゃんの短い手を引っ張って助け起こす。

目の下には物凄い隈ができている。


ケロ「もう起きてたっていうか、まだ寝てないんですけどね……」


ケロちゃんは力なく答えた。

バム「まだ寝てないって……。今4:30だよ!? ちゃんと睡眠は取らないとダメでしょうがッ! ほらッ! ベッドに入るッ!」

ケロ「いや、あの……英語の過去問がまだ途中で……」

バム「ダメったらダメ! 鉛筆を離しなさいッ!」


ぷるぷると震える手から強引に奪い取り、ケロちゃんがベッドに潜るのを見届ける。


バム「まったく……」


いくら今日が休日とはいえ、生活のリズムを壊すのだけは絶対に良くない。


***

正午すぎ。

お昼ご飯の炒飯が出来上がった。

上手い具合にパラパラになっている。


バム「ケロちゃん、ぐっすり眠れたかな?」


そろそろ起こさないと、今度は夜に眠れなくなってしまう。

お腹も空いたし、一緒にお昼ご飯を食べよう!



部屋の戸を開けて中の様子を覗うと、布団がこんもりと盛り上がっていた。






……なんだか不自然なくらい盛り上がっている。






バム「……。まさか……」


バッ! と布団をめくる。

ケロちゃんはびっくりして懐中電灯と暗記カードを落っことした。




バム「……。ケロちゃん……?」




ケロ「お、おはようございます……」

バム「おはようじゃないよね?」


ケロちゃんの目の隈はさらに深みを増していた!


バム「何でいうこと聞かないの! 体壊したら受験も何もあったもんじゃないでしょうに!」

ケロ「ごめんなさい……」

バム「謝んなくていいからさっさと寝るッ!」


ケロちゃんに無理矢理アイマスクを被せて寝かせる。

5分も断たないうちにケロちゃんはグーグーと寝息を立てた。

よっぽど疲れていたみたいだ。


バム「受験勉強って応援する方も大変……」


すやすやと眠るケロちゃんを見ながら頬杖をつく。

いつの間にかこの子も受験生だもんなぁ……。

昔はあんなに無邪気にはしゃぎ回っていたのに、今では僕に対してさん付けになってしまった。

実を言うともっと甘えて欲しいところだが、本当の親子関係でないことが大きな壁になっているのかもしれない。


***


ケロ「フロッグ大を受けてみようと思うんです……」

バム「ふぁ!?」


今からちょうど半年前、ケロちゃんが夕食の席でそう切り出した。

あの時の様子はよく覚えている。

恥ずかしそうに俯きながらそう言ったのだ。


バム「受けてみるって言ったって……」

ケロ「も、勿論無理だってのは分かってます……。僕は馬鹿ですし……」

バム「……」


因みにケロちゃんは馬鹿ではない。

部活でクタクタになって帰ってきても毎日3時間は勉強しているし、その成果は成績の伸びを見れば明らかだ。

しかし国立フロッグ大と言えば我が国で知らない人はいないほどの名門中の名門大学。

ウン十年前に私立負け犬大学を温情で卒業させていただいた身からすれば、まさに雲の上のような存在なのである。

バム「な、なんでそんな難関大を……。っていうか、フロッグ大って遠いよ? ここから通えないよ?」

ケロ「分かってます……」

バム「負け犬大じゃダメなの? どんな点数でもお金さえ積めば入らせてくれるし、土下座さえすれば卒業させてくれるのに……」

ケロ「あ、負け犬大だけは行くつもりないです」

バム「そんな……」


自分の母校にケロちゃんが入学する様子を夢見ていた僕にとって、このケロちゃんの告白はショッキングだった。

ケロちゃんが僕の手元から離れて遠くに行ってしまうことが考えられなかったのだ。

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