京太郎「高遠原の学園祭?」 (48)



咲-saki-のssです


京ムロです

ムロたんイェイ~♪


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希「おうよ!」

和「もしよかったら、咲さんと須賀君も行きませんか?」

京太郎「今週の土曜か……いいぜ、特に予定もないしな」

咲「和ちゃん達の中学校か、どんなとこなんだろ」

和「別段、変わったところはありませんよ。いたって普通の中学校です」


優希「それじゃ、二人に渡しておくものがあるじぇ」

咲「これは、パンフレット?」

優希「うん。学園祭のプログラムとか、各クラスの催し物が書かれてるやつ」

優希「あと模擬店で使えるチケットも付いてるから、切り取って使うといいじぇ」

咲「わぁ、いろいろあるんだね」

京太郎「へえ、お好み焼き、たこ焼き、ワッフル、ねぎ焼き、モダン焼き」

京太郎「クレープ、焼きそば、ホットケーキ……」


京太郎「粉もん多くね?」

咲「全体で話し合いとかしなかったのかな……」

和「バリエーションが多いようで狭いですね」

優希「まったくだじぇ!」


優希「これだけあってタコスが無いなんて、けしからん!」

京太郎「さらに粉もん増やす気かよ」


和「ま、まあ、模擬店だけが学園祭ではありませんし」

咲「そうだよね」

優希「だいたい部活ごとに催し物があったりな」


咲「ロビーには美術部や書道部の作品が展示されたり、とかさ」

和「体育館では合唱部や吹奏楽部の演奏が行われたり、ですね」

優希「我が古巣の高遠原麻雀部も催し物やるんだじぇ!」

京太郎「麻雀部なにやるんだ?」


優希「占い」

京太郎「は?」

優希「麻雀部では占いやってます」

京太郎「なんでだよ」

咲「ホントだ。麻雀部のとこ『占い喫茶』って書いてある」

京太郎「麻雀全然関係ねーし! つーか占いで喫茶ってなんなんだよ!?」

優希「高遠原麻雀部では代々、学園祭では占いをやるという伝統があるんだじぇ」

和「ええ、去年もやりました」

咲「伝統なんだ……」


京太郎「でも、占いって言っても色んなのあるしなぁ」

咲「なんだろ? 手相とかかな」

優希「実は、麻雀部のオリジナル占いがあるんだじぇ! その名もすば……」


優希「おっと、コレは当日のお楽しみ」

咲「すば?」


和「それでは土曜日、駅前に集合でいいですか?」

咲「うん」

京太郎「オッケー」

学園祭当日 高遠原中学校


京太郎「なんか、よその学校って緊張するな」

咲「うん。普通だったらまず入れない施設だもんね」

ガヤガヤ

京太郎「おー、けっこう人来てる」

咲「OBかな? 保護者っぽくない、一般の人もたくさん居るね」

優希「よし、さっそく麻雀部に行くじぇ!」


和「この昇降口、この廊下……まだ1年も経ってないのに懐かしいです」

優希「時の流れって早いじぇ」

マホ「あ、優希先輩! 和先輩!」

優希「おうマホ、来たじぇ!」

マホ「わぁ、嬉しいです! 宮永先輩も来てくれたんですね!」

咲「こんにちわ、マホちゃん」


ミカ「いらっしゃいませ、和先輩。お久しぶりです」

和「はい、お久しぶりです」

優希「京太郎は会うの初めてだったな」

京太郎「ああ」

優希「紹介するじぇ。後輩のマホと、こっちがミカ」

和「こちらは私達と同じく、1年生で麻雀部の須賀京太郎君です」

京太郎「須賀京太郎です。よろしく」

マホ「はじめまして、夢乃マホです!」

ミカ「3年の加藤ミカです」


和「そういえばムロは?」

ミカ「今ちょっと買い出し行ってるんです。もうすぐ帰ってくると思うんですけど……」

ザワザワ

マホ「とりあえず座ってください。お飲み物お持ちします!」

優希「今年は占いと喫茶店だったな」

ザワザワ

咲「……ねぇ京ちゃん、なんか」

京太郎「妙にざわついてるけど、一体……」


  「あれってもしかして……」

  「え、マジで? まさか」

教師「あら? アナタ達、久しぶりね!」

和「先生、お久しぶりです」

優希「お久です!」

教師「相変わらず元気いっぱいね、優希ちゃん。和ちゃんも変わりない?」

和「はい。先生もお元気そうでなによりです」

  「や、やっぱり!」

京太郎「お?」

ガヤガヤ

  「清澄高校の麻雀部の人達だ!」

  「ほ、本物の原村和!」

  「じゃあ、横に居るのって宮永咲!?」

  「原村和と片岡優希ってここの卒業生だなんだっけ」

ガヤガヤ

優希「ふっ……どうやらバレてしまったか」

和「なにキメ顔してるんですか」

京太郎「すげぇ人気だな、お前ら」

咲「え、ええ!?」

教師「そうそう、見てたわよ全国大会! 優勝おめでとう!」

和「ありがとうございます」

教師「もう中学校だけじゃなくて地元の英雄よ!」

優希「はっはっは! そんなことあるじぇ!」

京太郎「臆面もなく」

ガヤガヤ

  「すげぇ、オレ有名人ナマで見るの初めてだよ!」

  「のどっちって、シャンプーなに使ってるのかしら」

  「宮永咲はテレビで見るのと印象違うなぁ」


咲「ふえぇぇ」

ミカ「だ、だいぶ混んできたね……」

マホ「人多すぎですー!?」

教師「それにしても、この状況はマズイわ……」

和「す、すみません。こんな事なら事前に連絡しておけばよかったですね」

優希「あーあ、有名人はツライじぇー」

教師「アナタ達が気にする事じゃないわよ……あ、そうだ!」

教師「今日ね、吹奏楽部の演奏があるんだけど、それまですこし時間あるのよ」

教師「だからその間、この人達を集めてトークショーってできないかしら?」

和「ええ!?」

優希「ほほう」


教師「お願い! もうコレしか解決方法は無さげなの!」

和「えーと……じゃあ、しかたありませんね」

教師「ありがとう! じゃあ急いで行きましょ!」

優希「レッツゴー!」

咲「あ、いってらっしゃ……」

教師「さぁ、宮永さんも! こっちこっち!」ガシッ

咲「え? え? ええええ!?」


教師「あなた達も手伝って!」

マホ「は、はい!」

  「おい、体育館でなんかやるらしいぞ」

  「行こう行こう! で、体育館ってどこ?」

  「もしもし? 今ね、原村和がいたの! それでね……」

ミカ「はーい、押さないでくださーい!」


京太郎「いってらしゃーい」

京太郎「…………」

シーン

京太郎「台風一過、か」


 「ただいまーって、あれ?」


京太郎「ん?」

ムロ「……誰もいない」

京太郎「あー」

ムロ「なんなの……みんな神隠されたの?」


京太郎「えーとキミ、麻雀部の子だよね」

ムロ「あ、はい。そうですけど」

京太郎「だよね。なんか見たことある」

ムロ「え?」

京太郎「たしか応援ビデオで見切れてた……」


ムロ「はい?」

京太郎「いや、なんでもない」

ムロ「あ! もしかして清澄の麻雀部の」

京太郎「オレのこと知ってるの?」

ムロ「はい。たしかテレビ中継で見切れてた……」


京太郎「なんて?」

ムロ「いえ、なんでもありません」


ムロ「改めまして、高遠原中学3年の室橋裕子です。みんなからはムロって呼ばれてます」

京太郎「清澄高校1年の須賀京太郎です。ヨロシク、ムロ」

ムロ「それで、須賀先輩にお聞きしたいんですけど」

京太郎「なになに?」

ムロ「私の他にも麻雀部の部員って居たはずなんですけど、どこ行ったか知りません?」

京太郎「話せば長くなるんだが……」


京太郎「咲と和と優希目当ての人が増えてきたから体育館に移動したんだ」

ムロ「ああ、そうだったんですか」


京太郎「あんまし長くならなかった……」

ムロ「いいと思います。簡潔で」

誕生日おめでとうでした

ムロ「まあ、どうぞどうぞ。お座りください」

京太郎「サンキュー。これがメニューね」


京太郎「ドリンクのみか」

ムロ「はい。メインは占いですから」

京太郎「そういえばそうだったな。じゃ、コーヒーナシナシで」

ムロ「おお、通ですね。かしこまりました、しばらくお待ちください」


ムロ「って、コーヒー切れてるし……しょうがないなぁ」

京太郎「べつに急いで作らなくてもいいぞ。他に誰も居ないし」

ムロ「すみません。えっと、コーヒー粉はっと……」

京太郎「インスタントじゃなくて、コーヒーメーカーなんだ」

ムロ「そうなんですよ」

京太郎「どうりで教室なのに職員室みたいな匂いがすると思った」

ムロ「ああ、アレ独特ですよねぇ」


ムロ「さてと」ガサガサ

京太郎「それ、何買ってきたんだ?」

ムロ「コレです。紙コップのフタ」

グゴゴゴゴ

ムロ「ここで飲み切らずに持っていくお客さんもいたので、あったら便利かなって」

京太郎「気が効いてる」

ボシュウゥゥゥゥ

ムロ「出来ましたね。はい、淹れたてですよー」コポコポ

京太郎「おお、待ってました」

ムロ「付けます? フタ」

京太郎「せっかくだし」


ムロ「では、このボウルから1つ取ってください。チョコでもクッキーでも」

京太郎「お茶請け? じゃあコレで」

ムロ「なにか気付きませんか?」

京太郎「え……」

ムロ「裏」

京太郎「…………」

クルッ


京太郎「ああ!? シールが貼ってある!」


ムロ「そして?」

京太郎「番号が書いてある!」

京太郎「これは一体?」

ムロ「このシートに書いてある番号のコメントを読んでみてください」スッ

京太郎「なるほど、そんな仕掛けが……ええと、28番は……あった!」


  『ややすばら』


京太郎「なに、この……」


京太郎「これが占い喫茶……」

ムロ「でもこれは占いっていうより、おみくじ的な扱いですけどね」

京太郎「違うのかよ! なんか区別する基準でもあるの?」

ムロ「まぁ、おみくじも占いの一種なんですけど。結果を書いた紙がありますよね」

京太郎「うん」

ムロ「それを持ち帰っちゃうと、占いじゃなくておみくじになるんですよ」

ムロ(って、花田先輩が言ってたけど、たぶんテキトーだろうな)


京太郎「確かに。タロットとかの場合は持ち帰ったりしないしなぁ」

ムロ(めっちゃ納得してる……)


京太郎「あれ? でも、おみくじって木に結んだりしないか?」

ムロ「言われてみれば」

京太郎「あれはどうなの?」

ムロ「どうなんでしょう。神社によってもルール違いますし、私もそこまで詳しくは……」

京太郎「そっか。じゃあ占いの方、お願いしてもいいかな」

ムロ「かしこまりました!」


ムロ「では、何占いを希望します?」

京太郎「なにがあるんだ?」

ムロ「色々ありますよー」


京太郎「アレは? 甲羅を焼いて、入ったヒビで占うやつ」

ムロ「あー、すみません。いまちょっと亀が品切れ中でして」


京太郎「しょうがないなぁ」

ムロ「ってか、思いつくのがまずソレですか」

京太郎「あんまり最近流行ってるのとか知らなくてさ」

ムロ「流行り以前に、古めかしいにもほどがありますよ」


ムロ「手元にタロットがあるんで、コレにしません?」

京太郎「お願いします」

ムロ「タロットの占い方にも様々な方法があるんですよ」

京太郎「ほうほう」

ムロ「今回は、最もベーシックな、スリー・カード・スプレッドという方法です」

京太郎「つまり3枚のカードを使うのか」

ムロ「そうです。これは過去・現在・未来を示しています」

ムロ「さて、須賀先輩はなにを占ってほしいんです?」

京太郎「そうだなぁ……やっぱ部活の事かな」

ムロ「具体的には?」


京太郎「オレ、このまま麻雀部に居てもいいのかな?」


ムロ「……急にシリアスになりましたね」

京太郎「高校生って大変なんだよ」

ムロ「もっと詳しく聞かせてもらっていいですか?」


京太郎「知っての通り、清澄高校麻雀部は今年のインターハイで優勝した」

ムロ「はい」

京太郎「そしたらもうすごい人気。今なんかトークショーとかお願いされたりしてんだから」

ムロ「へぇ、先輩達そんな事してるんですか」


京太郎「うん。体育館で」

ムロ「あっ、今ってホントに今の事!? リアルタイムで!?」

京太郎「そういうの見てるとさ、こいつらホントスゲーなって思うわけよ」

ムロ「すごいですよね」

京太郎「しかも1年生でだぜ? それと比べると、どうしても自分が小さく思えちゃってさ」

ムロ「比べちゃいますか」

京太郎「先輩だったら素直に祝えるんだけど、同学年だとちょっとな……」

ムロ「それはあるかもしれませんね」


ムロ「和先輩が全中王者になった時とか、私もいっぱい祝福しましたけど」

ムロ「もしもミカ、いやマホがチャンピオンになったらって考えると……」

ムロ「…………」

京太郎「どう?」


ムロ「……あ、チョンボした」

京太郎「想像の中でも?」


ムロ「無理無理。マホには無理です」

京太郎「そんなに難しいの」

ムロ「でも、気持ちはわかる気がします。試験の学年順位とか、友達に負けたら悔しいですもん」

ムロ「この教科では勝てると思ってたのにーって」

京太郎「うーん、そういうのとはちょっと違うんだよなぁ」

ムロ「違うかー」

京太郎「他人が活躍してるのを見て、悔しい羨ましいって感じるんじゃなくて」

京太郎「そのスゲーやつらの、その場に自分の居てもいいのかと」

京太郎「輪の中に入ることに後ろめたさを感じるというか」

ムロ「ふむ……わかりました」


ムロ「とにもかくにも、占ってみましょう。それで何か答えを得るかもしれませんし」

京太郎「そうだな。頼む」


ムロ「今回は大アルカナのみで行います」

京太郎「魔術師とか戦車とかの?」

ムロ「そうです。タロットといえばこれですよね」


ムロ「まずはシャッフル。マットの上でかき混ぜます」

シャカシャカ

京太郎「けっこう滑りが良い」

ムロ「良すぎてたまに飛んでっちゃうんですよ」

シャッシャッ

ムロ「混ぜ終わりました」

ムロ「それでは、この上から3枚カードをめくっていきます」

ムロ「まず1枚目。過去を示すカードは……」


 『愚者-The Fool-(正)』


京太郎「これは?」

ムロ「愚者です。愚か者、無知で無謀な男」

京太郎「そこまで言わなくても……」

ムロ「須賀先輩のことじゃないですよ。それに、悪い意味ばかりじゃありません」

京太郎「これが過去か」

ムロ「じゃあ2枚目いきましょう。現在はどうなってる?」


 『星-The Star-(逆)』


ムロ「星のカード、逆位置で出ました」

京太郎「逆だと意味が変わったりするのか?」

ムロ「そうですね。大抵は良くない方向に」

京太郎「うわぁ……マジか。でも、問題はこれからの未来だ!」

ムロ「では最後、未来を示す3枚目……」


 『死神-Death-(正)』


京太郎「うわぁ……」

ムロ「ふむ」

京太郎「なんかヤバイのきちゃったー!?」

ムロ「死神です」

京太郎「見ればわかります……」

ムロ「終わりを暗示するカードです」

京太郎「だろうね。終わっちゃうよね。そういう顔してるもん」

ムロ「顔っていうかガイコツですけどね」


ムロ「ではでは、3枚揃ったのでリーディングを始めます」

京太郎「バッチコーイ!」


ムロ「まずは、現在の状況ですけど」

京太郎「星。それも逆位置で」

ムロ「星のカードの意味は、希望、インスピレーション、平穏などです」

京太郎「それが逆位置で出てきたという事は……」

ムロ「今の状況に対して、明確な解決策が見つからない」


ムロ「麻雀部での立場やポジションに悩んでいるのを示してるんだと思います」

京太郎「なるほど」

ムロ「それじゃあ、過去についてですけど」

京太郎「愚者だ。これはどういう意味なんだっけ?」

ムロ「自由とか、何にも縛られていない、新しい事を始めようとしている状態」

京太郎「おお! オレ今年から麻雀始めたんだよ! あってるあってる」

ムロ「へえ、そうだったんですか。なら、これは入部したての頃を示してるんですね」


ムロ「現在の状況になる前、インハイより以前は須賀先輩も楽しく麻雀打ってたんじゃないですか?」

京太郎「そうだな。麻雀ってルールが複雑で、覚えるのが大変だったけど」

京太郎「うん……新しい知識を吸収していくのは、楽しかった」

ムロ「でも、愚者の自由さには危なっかしいところもあるんです」


ムロ「何も知らない状態。何も知らないって事は、何をしていいのかも分からない」

京太郎「咲達には絶対に負けられない理由があったけど、オレには無かった」

京太郎「あいつらと違って強くなりたい、勝ちたいって理由が漠然としてたのかも」

ムロ「目標が定まらないところに和先輩達が結果を出したから、それで迷っちゃったんですね」

京太郎「あまりにも差が広がりすぎて、追いつける気がしないんだ」


京太郎「同じ麻雀部員として、オレは不釣り合いなんだと思う」

ムロ「……星のカードには明るい未来の望みがあるんです」


京太郎「でも逆位置だから、反対の意味なんだからそれは無いってことだろう?」

ムロ「違います」

ムロ「望みが無い、悪い状況だったら、それこそ塔だったり隠者や悪魔が出ますよ」

ムロ「逆位置で出たのは、希望を見つけるには至らなかったというだけ」

ムロ「決してマイナスの状況ではないんです」

京太郎「そうなのか。でも3枚目」

京太郎「死神きちゃったら、さすがに明るい未来とは言えないんじゃ……」


ムロ「安心してください、正位置ですよ」ニヤリ

京太郎「マ、マジかよ……?」


ムロ「死神は終わりを暗示するカードです。終わりを迎えるのは、現在の状況」

ムロ「自分はこれからどうすればいいんだっていう、須賀先輩の悩みは長くは続かないでしょう」

京太郎「おお、 解決しちゃうのか!」

ムロ「終わりがあれば始まりがあります。新しい環境でまたスタートするんです」

京太郎「新しい環境?」


京太郎「え……それって、麻雀部は辞めて別の部活に入るとか、そういう……?」

ムロ「いやいや」


ムロ「辞めたいんですか?」

京太郎「辞めたくはないです」

ムロ「先輩達が辞めろって言ってました?」

京太郎「言ってないです」

ムロ「自分が変わると、世界も変わって見えるっていうじゃないですか」

京太郎「ああ、そういうこと」

ムロ「あと、残念ながら死神の示す始まりは、星と違って必ずしも良い事とは限らないんです」


ムロ「だから、結局は須賀先輩次第ですよ」

京太郎「オレ次第、か」

ムロ「わかりました? じゃあ、結果をまとめますね」


ムロ「現在の状況は、過去に明確な目標を設定していなかったのが原因と思われます」

ムロ「なので、例えば地区大会でベスト8に入るなど、具体的な目標を立てて頑張りましょう」

ムロ「まずはそこからです。いきなり全国優勝なんて難しいですからね」

ムロ「すぐ大きな結果を求めないで、コツコツと。きっと先輩達も協力してくれますよ」


ムロ「と、こんな感じでいかがですか?」

京太郎「うん。参考になったよ」

ムロ「麻雀に関しては、須賀先輩は実績無いですから、それで自信が持てなかったんでしょう」

京太郎「ふむふむ……なるほど」

京太郎「いますぐに、みんなと対等の実力や実績が手に入るわけないってわかってた」

京太郎「焦ってたのかも。それで無い物ねだりして、空回ってこんがらがって」

京太郎「人から指摘されてようやく、自分がすべき事が見えた気がするよ」


京太郎「ありがとな、ムロ」

ムロ「お役に立てたのなら、なによりです」


ミカ「ただいまー」

マホ「戻りましたー」

京太郎「おかえりー」

マホ「マホ、とても疲れました……」

ムロ「おかえり。先輩達トークショーしてるとか、私さっき知ったんだけど」


ムロ「ミカ達はなにしてきたの?」

ミカ「体育館にイス並べたり、お客さん誘導したり。ホント、人多すぎ……」

ムロ「お疲れ様。飲み物持ってくるよ」

ミカ「つめたいお茶がいいな」

マホ「須賀先輩、タロットしてたんですか?」


京太郎「ああ、いま終わったとこ」

ムロ「マホは?」

マホ「オレンジジュースおねがいします!」

ムロ「はいよ」

ミカ「そうだ、須賀先輩にお願いしたいことが」

京太郎「なに?」

ミカ「実は……」



ムロ「お待たせー」

マホ「わぁ、ありがとうございます!」

ミカ「サンキュー」

京太郎「なぁムロ、学校を案内してくれないか?」

ムロ「え?」

ミカ「行ってきたら? ムロはずっと教室にいたんでしょ?」

ムロ「そうだけど」

マホ「ここはマホ達がお留守番してますから、大丈夫です!」


京太郎「オレ一人で回るのも、なんかさみしいしさ」

ムロ「そういうことでしたら」

京太郎「よし!」

ムロ「じゃあ、どこ行きましょうか」

京太郎「とりあえず近くの、目に入った店でも冷やかすか」


京太郎「さて……」


お好み焼き

ねぎ焼き

お好み焼き

お好み焼き

モダン焼き


京太郎「なにが好き?」

ムロ「どれも似た様なラインナップですけど……」


京太郎「どうやらオレ達は、高遠原粉もん通りに入ってしまったようだ」

ムロ「来年は学校単位で話し合うべきです」

京太郎「あそこなんか、お好み焼き屋の隣りがお好み焼き屋になってるし」

ムロ「コンビニかって話ですよね」

ムロ「どこに入ってもソース味」

京太郎「ソースも奥が深いんだぜ?」

京太郎「お好み焼きのソースだけで、何十種類も市販されてるんだ」

ムロ「そんなに」


京太郎「有名なのはオタフクソースだな」

ムロ「あっ、あのお店使ってるみたいですよ。オタフクソース」

ムロ「あそこにします?」

京太郎「行こうか。悩むと時間かかりそうだし」


  「らっしゃっせー」

京太郎「お好み焼き、ひとつ」

ムロ「ひとつだけ?」

京太郎「ここでお腹ふくらましても、もったいないじゃん。半分こしようぜ」

ムロ「そうですね。他のお店も見たいですし」


ジュー ジュー

  「おまちどっす。ソースとマヨはセルフになってます」

京太郎「ありがとう」

ムロ「さっそくオタフクの出番ですね」

京太郎「ムロおねがいしていい?」

ムロ「おまかせください!」

ペタペタ

ムロ「このくらいでいいですか?」

京太郎「オッケー」

ムロ「あとはマヨ……」

京太郎「どうした?」


ムロ「せっかくですし、なんか文字とか書きます?」

京太郎「お、それは面白そう」

ムロ「リクエスト受付中です」

京太郎「んーと……」


京太郎「じゃあ、ハツ」

ムロ「ハツ?」


京太郎「そう、ハツ」

ムロ「それはアレですか? 麻雀でいう特急券でおなじみの」

京太郎「うん。役牌でおなじみの。書ける?」


ムロ「あー」

京太郎「書けるよなぁ? なんてったって麻雀部だもんなぁ?」ニヤニヤ

ムロ「うぅ……」

ムロ「よ、よーし! 書いてやろうじゃありませんか!」

京太郎「うむ。それでこそ雀士のあるべき姿だ!」


ムロ「ええと、ハツ……ハツ……部首は発の上のやつで合ってるよなぁ」

京太郎「そこからかよ」

ムロ「その下……あとなんか、左の方にてへんもあった気がするんだけど」

京太郎「てへん?」

ムロ「部首です。部首のてへん」

京太郎「それはわかるけど」


京太郎「ハツにてへんなんて……」

ムロ「……ありませんでしたっけ」


京太郎「ギブする?」

ムロ「いや……ヒント、ヒントください!」

京太郎「しかたない。ヒントあげるよ」

ムロ「ありがとうございます!」

京太郎「部首はムロが言ったので合ってるぞ」


ムロ「ど、どっちだ……?」

京太郎「だからそっちじゃねえって」

ムロ「えー、全然わっかんねー!」

京太郎「ギブ?」

ムロ「イヤです。それは麻雀部として負けた気がする……」


ムロ「ハツじゃなくて中に変更していいですか?」

京太郎「お前はそれで勝った気になれるのか?」


ムロ「うう……ギブアップです」

京太郎「残念だ。でもよく頑張ったよ」

ムロ「それで、正解は?」

京太郎「正解は……」


京太郎「ちょっと待ってな。今スマホで調べるから」

ムロ「自分も知らないんじゃないですか!?」


京太郎「發だってよ」

ムロ「てへんじゃなくて、ゆみへんだったかぁ」

京太郎「こだわるね。じゃあ疑問も解決したところで」

ムロ「いただきまーす」

ムロ「もぐもぐ……けっこう甘いですね」

京太郎「それに、ドロっとこってりしてる」

ムロ「初めての味ですけど美味しいです」

京太郎「だな。もぐもぐ」


咲「あ、なんか食べてる。いいなー」

優希「もしかして……!?」

京太郎「ういーっす。ちなみにタコスじゃないぞ」

和「ここに居たんですね」


ムロ「先輩達はトークショーでしたっけ。ずっとしゃべってたんですか?」

和「はい。急にお願いされたのでびっくりしちゃいましたけど」

優希「でも、のどちゃん慣れてた様子でさすがだったじぇ!」

咲「私なんてアガっちゃって、全然しゃべれなかったよ……」

和「それで、すこし学校を見て回ってたんです」


和「あと、ミカからムロを見つけたら連れて来るよう言われました」

ムロ「え?」

ムロ「なんだろう?」

京太郎「ふぅ……ごちそうさま。それじゃあ戻ろうぜ」

ムロ「あ、はい」


ムロ「あんまりお店見れませんでしたね」

京太郎「ムロが發に時間とられちゃったから……」

ムロ「須賀先輩だって知らなかったでしょ!」

京太郎「ムロだったら書けるって、オレ信じてたのになぁ」

ムロ「ぐぬぬ……言いたい放題ですか」


和「さぁ、着きましたよ」

ムロ「あれ? なんで教室の扉が閉まって……」

優希「ムロ、扉の前に立って」

ムロ「は、はい」


コンコン

和「では、開けますよ」

優希「準備はいいか?」

ムロ「じゅ、準備って? え、なになに?」


ガラッ



  「「「ムロ、誕生日おめでとう!!」」」


パーンッ パーンッ


ムロ「わっ」


ミカ「おめでとう!」

マホ「おめでとうございます!」

和「おめでとう」

優希「おめでとうムロ!」


ムロ「うわわ、これって……」

京太郎「今日誕生日なんだってな。おめでとう」

咲「おめでとう」

ムロ「あ、ありがとうございます」


ムロ「正直、うれしいよりビックリの方が上回ってますけど」

優希「さらにビックリさせてやるじぇ!」

和「こちらへ来てください」

マホ「じゃーん! バースデーケーキです!」

ムロ「わざわざケーキまで! ありがとうございます、みなさん」


ムロ「しかもポッキーささってる。15本」

ミカ「ロウソクだとちょっと危ないし、処分が面倒だしね」

京太郎「そうか、今日で15歳なのか」

ムロ「はい。あまり実感は無いですけどね」


京太郎「実は、オレも15歳なんだよね」

ムロ「そうなんですか。早生まれ?」

京太郎「うん、2月生まれ」

優希「ムロ、これから京太郎にはタメ口でいいからな」

京太郎「いい理由にはなんねーだろ!」

ムロ「まあまあ京太郎、落ち着いて」

京太郎「ノリいいな!?」


京太郎「でも今日は無礼講だ。許してやろう」

ムロ「サンキュー」


優希「ムロが清澄に来てくれれば、ウチの部活もまた賑やかになるじぇ」

和「そうですね」

京太郎「ムロは清澄志望なんだ」

ムロ「はい」


ムロ「入学したら、よろしくお願いしますね。須賀先輩」

京太郎「できる事なら頼もしい先輩でいたいけど、また今日みたいに相談するかもしれない」

ムロ「かまいませんよ。遠慮しないでください」

京太郎「ありがとう。その時は、よろしくお願いします」

咲「な、なんか、いい雰囲気だね……?」

和「あらあら」

優希「おい、二人に何があったんだ?」

マホ「さ、さあ? マホ達も一緒じゃなかったので……」

咲「じゃ、じゃあ京ちゃんとムロちゃんずっと二人きりだったの?」

優希「あやしいじぇ。おい! きょうた……」


ミカ「ケーキ切り分けますよー」

咲「はーい!」

優希「待って待って! 私がやるじぇー!」

和「この切り替えの早さ」


京太郎「まだ腹にはいる?」

ムロ「もちろん。先輩が食べれないって言うなら、私が食べてあげますよ?」

京太郎「……そうだな」

ムロ「あれ、本当におなかいっぱい?」

京太郎「そのかわり、オレの誕生日には、オレがムロの分のケーキ食べちゃうからな?」

ムロ「……そんな約束しなくても、食べに行ってあげますよ」

京太郎「そっか。当日は大きめのケーキ用意しなくちゃ」


ムロ「とびっきり美味しいの、期待してますね!」






優希「はい、コレが京太郎の分とムロの分」

京太郎・ムロ「「ちっちゃ!?」

おしまい

>>12
ありがとうでした

誕生日ギリギリだったけど、スレ立てれてよかったです
依頼出してきます

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