猫「・・・・・・」 (22)

窓から差し込む陽だまりで、猫が一匹丸くなる

猫「……」

彼は人間の家に居候中

ご飯は家主が運んでくる

彼の方が偉いのかもしれない




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今日も今日とて家主は出かける、『仕事』というものに行くらしい

猫「……」

よくもまあ飽きないものだ

家主が慌てて戻ってくる

靴下の色を揃える重要性とは何なのか


今日は外に出て見回りへ、お気に入りの木陰で休憩する

猫「……」

風の音が少々うるさい

これでは気持ちよく寝られないじゃないか

安眠妨害は重罪だ


近所の境内で仲間と集まる、集会は猫ならば当然の義務である

猫たち「「「「……」」」」

今日の議題は『何故お日様は暖かいのか』

検討するためみんなで日向ぼっこ

なかなか有意義な時間だった


仲間と別れて一人で歩く、孤独も当然の義務である

猫「……」

どこからかピアノが聞こえる

この曲にはとても腹立たしい歌詞がついているそうだ

猫は踏むものではないと強く主張する


彼に突然試練が降り注ぐ、行く手を阻む水たまり

猫「……」

飛び越えるには大きすぎる

しょうがないから道を変えよう

これで通算4勝9敗


大きな木から何かが落ちた、これは恐らくマツボックリ

猫「……」

彼は重力を理解した

ニュートンでも気がつかなかった真理すらだ

しかしここに書くには余白が足りない


池のほとりで覗き込む、ご馳走がいないかと覗き込む

猫「……」

小さな魚はたくさんいる

しかし狙うは大物だ

この池にもマグロはいないみたい

急に大粒の雨が降る、どこかで雨宿りをしなければ

猫「……」

空を見上げて彼は考える

この水はどこからくるのだろう

次の集会の議題が決まった

しばらくすると雲間から、優しい光が降り注ぐ

猫「……」

土から立ち昇る雨が染みこんだ匂い

葉っぱは翠に濡れている

まるで知らないところに来たようだ


丘から街を見下ろしながら、彼は何を考えるのか

猫「……」

明日の天気か世界平和か

かすかな寝息が聞こえてくる

どうやらお昼寝してたみたい


お日様がゆっくりと沈んでいく、世界がオレンジに染まりだす

猫「……」

そろそろ家に帰ろうか

今日も一日いろいろあった

家主にたくさん教えてあげよう


今日は少し遅くなった、外はすっかり真っ暗である

猫「……」

まだ家主は帰っていない

どれだけ待たせれば気がすむのだろう

彼は小さくにゃあと鳴いた


窓から月を見上げていると、玄関がガチャッと音を立てる

猫「……」

扉の前へ急いで走る

お出迎えは居候の役目だ

家主は笑顔でただいまと言う


夕食を済ませた二人の時間、彼は今日の出来事をかたる

猫「にゃあ」

精一杯の意思表示

家主はそうなんだーと言いながら撫でてくる

なかなか物わかりの良い人間だ


夜も更け家主は寝るようだ、彼も布団に潜り込む

猫「……」

今日はたくさん歩いて少し疲れた

家主は優しくにゃあと言う

彼も眠たげににゃあと返す


空が薄く染まりだす、夜の闇が押し出されていく

猫「……」

また新しい一日が始まるようだ

今日はなにをしようかな

そう思いながら寝息をたてる




窓から差し込む陽だまりで、猫が一匹丸くなる

                     【おわり】

初投稿だったので不安でしたが、楽しんでくださった方がいたようでなによりです

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