魔王「ボクと世界を手にしない?」村人「手に入れちゃおっかな」(461)

ー魔王城,外壁ー

  ヒュオオオォォォ……

村人「はえー…高いぃぃぃ!」

村人「王様直々に呼び出されたと思ったら…」

村人「偵察しに行けって無茶すぎるでしょ!」

村人「というか特に何も無い平民で平和に暮らしてたのに…」

村人「呼ばれた理由だってわけがわからないよ」

村人「『お主、騎士団の入団試験に一度来た事があるな?その腕を見込んで頼みがある』」

村人「とかなんとか言っちゃってさぁ!試験受けたのもただ稼ぎが良さそうでなんとなくって理由だったのに!」

村人「絶対捨て駒だよこれぇ…」

村人「しかし、敵も外壁から侵入するなんて流石に思わないよね…」

村人「正面から入らなきゃ行けないなんて決まりは無いしね!」チラッ

村人「………」

村人「…落ちたら即死だなぁ…」

村人「よいしょっよいっしょ…」ヨジヨジ

村人「ん…?あの窓から中に入れそう」

村人「んっ!おぉ…なかなか、硬い…んしょっ!」ドンッドンッ

  ガチャッ!


村人「うわっ」ドサッ

村人「(やばいやばいやばい気づかれてない…よね…?)」


   シーン…

村人「(ほっ…あくまで偵察、ちらっと見たら帰ればいい!よし!)」コソコソ

村人「(ここ、天井裏?かな…)」

ボソボソ…ボソ…

村人「ん?何か話し声が聞こえる…」



魔王「ねぇ側近ー、何か暇つぶしできること無い?」

側近「ありません、殺しますよ」

魔王「ちぇっー、怖いからやめて」

魔王「そういえば、また魔族が人間に殺られたんだって?」

側近「はい。偵察部隊から連絡がありました。なんでも、人間の国に侵入したので始末されたそうです」

魔王「えぇ!?それ酷くない?ちょっと間違えて入っちゃっただけかもしれないじゃーん」

側近「侵入した魔族の者たちは人間を襲ったと情報が入っています」

魔王「ありゃりゃ…それは仕方ないね」

魔王「もーまったく!ボクは人間が居る土地には入るなって言ったのにぃ!」

魔王「ますます印象悪くなるじゃないか…」

側近「この服を着てこの装着具をつければ良い印象が上がること間違い無しと言っているじゃありませんか!」ハァハァ

魔王「着ないから!なんでそんな露出度の高いヒラッヒラした服を着なきゃならないの!?」

魔王「ていうかその装着具はなに!?猫耳をつける意味がわからないんだけど!」

側近「まったく強情ですね、前に一度着た時は仲間たちにも好評だったでしょう?」

側近「ふひひ…私を信じてください魔王様!」

魔王「どこを信じたらいいのか全然わからないんだけど!?」








村人「何なのこの会話…」

メキメキ…

村人「はぁ…魔王様とか言われてたけどまさかあれが魔王なの?」

村人「極悪非道とか聞いたけどどこがやら…」

村人「なんか腑に落ちないけど、とりあえずもう帰るか…」

パキキ…

村人「ん!?ちょっ、やば!うわっ」



バキッ!
   ズガシャーン!



魔王「ふぎゃっ!」ゴツンッ!!

村人「いてて…」

側近「ま、魔王様!?大丈夫ですか!?」

魔王「な、なになに!?なんなのぉ!?」ヒリヒリ

村人「(あっこれ死んだな)」

側近「そこの者!動くな!!」

村人「はひぃぃ!」バッ

側近「動くなと言ってるだろう!」

魔王「一体何なのぉ!?」

側近「魔王様!侵入者です!」

魔王「どこどこ!?」キョロキョロ

側近「後ろにいますよ!後ろ後ろ!」

魔王「後ろぉ?」

村人「こ、こんにちはー」

魔王「あ、こんにちはです」

村人「どうもお邪魔してます…」

魔王「お邪魔されてまーす」
 
側近「なにボケてるんですか」ゴンッ

魔王「痛っ!グーは痛い!」

側近「そんなことはどうでもいいです。それより…」

側近「ここへ何をしに来たのですか?人間。」

村人「え、えっと…魔王様の顔をご拝見したいなぁーと思いここに参った次第です…」ダラダラ

魔王「そかそかっ!じゃあお客さんだねー!」

側近「なわけないでしょ」ゴンッ!

魔王「いだっ!だからグーはやめて!」

側近「魔王様、偵察ですよ偵察。この人間は私達の情報を集めに来たのです」

魔王「えぇ!?そうなの!?」

村人「いえ、違います」

魔王「側近ー、この人間は違うって言ってるじゃん!」

側近「何故私の方を信じてくれないのですか…」

魔王「側近は一杯嘘つくから…」

側近「ゴホン、まっまぁ私なりの冗談ですよ冗談」

魔王「冗談でいつも変な服着せられるボクの身にもなってよ…」

側近「魔王様が可愛いからいけないのです」

魔王「ボクのせいなの!?」

側近「そうです、魔王様のせいです」

魔王「そっかー、それなら仕方ないね………とはならないからね!」

側近「ちっ」

魔王「はいはい舌打ちしない!」

村人「あのぉ…そろそろ私は帰らせて頂きますね」コソッ

魔王「あ、はーいっまたねー」フリフリ

側近「待て人間」

側近「こちらの情報を持っている以上、帰すわけにはいかない」

村人「え!ここに住んでいいんですか!?」

側近「誰がそんな事を言った!」

村人「だって帰してくれないって………はっ!」

村人「ま、まさかこの私に惚れました?」

村人「いやー、いくら格好いい私でも初対面でしかも魔族相手は少し考えさせてほしいですね」

  ドゴォ!

村人「ほげっ!?」

側近「次、口を開けた時貴様の命は無いと思え」

魔王「ちょっちょちょ!あんまり壊さないでよー?」

側近「ご安心ください魔王様、次は消し飛ばしますので」

魔王「どこが安心なの!?まぁいいや」

魔王「ねぇねぇ、それより!」

魔王「キミ凄いね!ボクに一撃を与えるとは!仲間たちでもほとんど入れられるやつはいないんだよ?」

村人「は、はぁ…(落ちただけだけど)」

魔王「気に入った!キミ面白いし」





魔王「ボクと世界を手に入れてみない?」

村人「…へ?世界…?」

魔王「そう!世界!一緒に侵略してみようよー」

側近「ま、魔王様!?」

村人「えっと、じゃあ…」

魔王「うんうん」ニコニコ

村人「…手に入れちゃおっかな!」

魔王「やった!決まり!」

側近「えぇ…」
………
……

ー魔王城ー

村人「あのぉ…それで、どうやって手に入れるんですか?」

魔王「わかんない!」

村人「あはは、わからないですか…それは仕方無いですね」

魔王「うん!仕方無いね」

側近「なにふざけてるんですか人間、殺しますよ?」

村人「ちょっと!ふざけ始めたのは魔王様の方じゃん!」

側近「魔王様は可愛いので良いのです」

村人「そんな酷い…」

魔王「ねぇねぇ…キミ、名前は何て言うの?」

村人「あ、私ですか?私は村人です」

村人「あ、私ですか?私は村人です」

魔王「村人…ね、覚えた!」

村人「あの…魔王様の事、まおちゃんって呼んでも良いですか?」

魔王「良いよー!じゃあボクはキミの事むーくんって呼ぼうかなー」

側近「良いわけないでしょう…がっ!!」ゴンゴンッ!!

村人「いだっっ!!何で二度も!?」

側近「魔王様に無礼が過ぎるますよ、むーくん」

村人「なに自然に呼んでるんですか!?」

村人「そんな態度だとあなたの事そっちゃんって呼びますよ?」

側近「この人間、図太すぎるでしょ…」

魔王「まぁまぁ…落ち着いて、そっちゃん」

側近「くはぁ!可愛い…そっちゃんもなかなか良いかもしれませんね」

村人「でしょう?これからよろしくね、そっちゃん」

側近「貴様は呼ぶな、殺しますよ」

村人「そんなっ…」

魔王「もーそっちゃん!むーくんを殺しちゃダメだよ?せめて半殺しにしてね」

側近「わかっております!魔王様の命令は絶対ですので!」

村人「ひぃー助かった…のかわからないけどまおちゃんのおかげだ、ありがとう」

魔王「どういたしましてっ」ニコッ

側近「魔王様可愛すぎ!後で甘菓子持ってきますね!」

村人「あ、私にもください」

側近「むーくんは黙れ」

村人「ハイ…」




側近「魔王様!甘菓子持ってきましたよー!」トタタタ

魔王「きたー!甘菓子!これ美味しんだよねぇ!」

側近「紅茶も入れますね」トポポ…

魔王「甘菓子に紅茶!最高の組み合わせだよ!」モグモグ

村人「確かに…甘菓子って美味しいですね」モグモグ

側近「貴様は食うな」ドスッ

村人「ごほっ!食べてる最中はやめて…」

魔王「もう!そっちゃんももう少し優しくしてあげなよー」

魔王「はい、むーくんっ!あーんっ」

村人「あーん」

  ヒュンッ 
  ドゴォ!

側近「あーんっ!」パクッ

村人「」ズザザザザ!!

側近「ひゃー!魔王様にあーんしてもらっちゃったっ」

魔王「むーくん大丈夫!?死んでない!?」

村人「な、なんとか…」

側近「(ちっ…死んでなかったか」

村人「側近さん心の声漏れてるよ!」

魔王「そんなことより、そろそろ会議始まるよね?」

村人「そんなことで済まさないで!死にかけたんだから!」

側近「そうですね、そろそろ会議室に移動しますか」

村人「ちょっと!聞いてる!?」

………
……

とりあえず今日はここで終わりますありがとうございましたっ

ー会議室ー

キィー
 バタン

オーク「………」

スケルトン隊長「………」

猫又「………」

吸血鬼「………」

ラミア「………」

ドラゴン「………」

  ゴゴゴゴゴゴゴゴ…


村人「(す、すごい迫力だ…これから一体どんな会議が行われるんだ!?)」


魔王「よしよし、みんな集まってるねー!」

魔王「それでは今週の会議始めるよー」パンッパンッ

     ハーイ

魔王「ではまず、オークから…どうぞ!」

オーク「クククッ…先週は非道の限りを尽くしたぜ!」

猫又「またかにゃ…」

ラミア「へー、今回はどんな事やったの?」





オーク「まず村を襲っていた盗賊共を皆殺しにしてやったぜぇ!」フヘヘ

オーク「もちろん金品はその村に住んでいたやつらに投げつけてやったぜ」

オーク「俺様たちにこんなちっぽけな金は必要ねぇ!」

吸血鬼「ほぅ…なかなかやるじゃありませんか」

ラミア「えーもったいないなー」

オーク「ふんっまだまだこんなもんで驚いて貰っちゃあ困るなぁ?」

隊長「まだあるんですか!?」

オーク「更に俺様たちは生き残りの村人を連行し近辺の村に押し込んでやったぜ!」

オーク「女と子供は特に丁重に扱ったが、後から利用できるかもしれねぇからな!」

オーク「周辺も見回りを配置しているしこれでしばらく盗賊共がやり返して来ることはないだろうなぁ…クククッ」

猫又「このデブ…色んな意味でなかなかやるにゃあ」

オーク「何ぃ!?俺様がイケメンだとぉ?」

猫又「どこをどう聞けばそうなるにゃ!」

オーク「ククク…あまりのカッコよさに言葉がつい漏れてしまうのも無理は無い…このカッコいい俺様が特別に許してやろう」

猫又「このデブ頭おかしいにゃ」

魔王「はいはい喧嘩しない!次は…」

スケルトン隊長「はい、私が!」ビッ

魔王「おっ!じゃあ隊長おねがいっ」

隊長「ではご報告させていただきますね!」

隊長「まず私達の隊は魔王城周辺の荒くれた魔族達を一掃しました!」

オーク「ほー、すげぇじゃねぇか」

隊長「魔王様が、『ちょっと最近、城周辺がうるさくない?ポポーンと消してきてよ』と命令されたので…」

魔王「そういやそうだった、忘れてたよ」テヘ

側近「魔王様可愛い!」

隊長「あと、部下の訓練も兼ねて掃除をしてきましたよ………国をね」ニヤ

猫又「国をかにゃ!?」

オーク「流石隊長だ!」

吸血鬼「これはこれは…」

ラミア「ほほー…で、どのくらいの量を掃除したの?」

隊長「…驚かないでくださいよー?」

猫又「勿体ぶらずに早く言うにゃ!」







隊長「ふふふ…なんと!このゴミ袋一杯にです!」ドサッ

猫又「…にゃ?」

隊長「いやー、見てくださいよこれ!こんなにも落ち葉が溜まっていたんですよ!これは掃除するしかありませんよね!?」

隊長「ついでに民家の汚れも掃除しておきましたよ!あんな汚れ、見過ごせませんからね!」

隊長「しかしこれはほんの一部でしてね!残りの落ち葉は処分の最中なんですよ!」

猫又「そっちの掃除かにゃ!期待した私が馬鹿だったにゃあ…」

ラミア「あっ!その落ち葉で焼き芋でもしようよー」

魔王「イイねイイね!焼き芋!」

ドラゴン「隊長よ…後で案内しろ、わしが燃やしてやろう」

隊長「ドラ爺殿!ありがとうございます!」

猫又「ドラ爺が焼くと芋が消し飛ぶにゃ!!」

オーク「すげぇぜ…こんな量、流石の俺様も到底かなわないぜ」

猫又「このデブは馬鹿通り越してアホにゃ」

オーク「何ぃ?俺様がイケメンで最高にカッコイイだとぉ!?」

オーク「クククッ…イケメンとカッコイイを重ねてくるなんて、やるな猫又…」

猫又「もうこのアホデブは放っておくにゃ…」

魔王「はーいはい、喧嘩しないのー」

魔王「次はー?」

吸血鬼「私が行こう」ス…

オーク「おぉ、ついに来たぜ…今回はどんな悪行をやったんだろうな…」ゴクリ

猫又「吸血鬼には毎度驚かされるからにゃぁ…」

隊長「期待ですね」

吸血鬼「ふふ、私は北の国に赴き、中に住んでいる商人達の商品を根こそぎ奪ってきましたよ」

猫又「にゃにゃ!?それは凄いにゃ!」

吸血鬼「私の隊は夜襲が得意でしてね、奪うのは容易でしたよ」

ラミア「それでー?奪った商品とやらはどこにあるの?」

吸血鬼「まぁそう焦らずに…例の物をここに」パチン

部下「はっ!」

猫又「一体何かにゃあ…美味しい物だといいにゃあ」

オーク「にく!俺様は肉がいいぜ!」

隊長「私は武器類なら嬉しいです!」

ドラゴン「わしも強いて言うなら肉かのぉ」

ラミア「私は武器と肉どっちも欲しー」

部下「ささっ!こちらへ…」

奴隷「………」テクテクテク

猫又「…これは何にゃ…?」

吸血鬼「フフ…聞いて腰を抜かさないでくださいよ?」




吸血鬼「私は奴隷商の商品を全て奪ってやりましたよ!!フハハッ!」

吸血鬼「今頃商人たちは口を開けて呆けてるだろうなぁ!笑いが止まらないよ!」ハハハッ

猫又「口を開けて呆けてるのはこっちにゃ!」バンッ

猫又「奴隷なんか奪ってきてどうするにゃ!?」

吸血鬼「ふぅんっ、人間が人間を奴隷にするなど腹立たしいからな!」

猫又「そんなわけわからない理由で奪って来られても困るにゃ!」

猫又「魔王様も困りますよね!?」

魔王「んー?空いてる部屋一杯あるし何人来ようとよゆーよゆー」

猫又「そういう問題じゃないにゃあ…!」ウガー

側近「おい猫又、なに魔王様に口答えしてるんですか?」ギロッ

猫又「ひょえぇ…怖いにゃあ…」グス…

隊長「それで、どうするんです?あの奴隷たちは」

吸血鬼「まぁまぁ…私も何も考えていないわけではないんですよ?」

ドラゴン「ほぉほぉ、どうするんじゃ?」

吸血鬼「まずあの奴隷たちには徹底的に水攻めをします、汚いですからね」

オーク「おほー!流石やることが違うぜ!」

吸血鬼「次は…やはり調教ですかねぇ」ニヤ

ラミア「けげー、アンタの調教はえげつないからねー…」

猫又「徹夜で書物を覚えさせられた時は思わず噛みちぎりそうになったにゃ…」

吸血鬼「ふふ…十分に調教し終わった後は治安が良い適当な国にでも捨ててやりますよ」フフフ

ドラゴン「国に捨て行く時はわしも手伝ってやろう」

吸血鬼「おやおや、これはありがとうございます」

魔王「えー、捨てちゃうの?何人かうちで雇えない?」

吸血鬼「フッ…魔王様、私にお任せを。魔王様がきっと気に入る奴隷を調教し終えた後、お連れしましょう」

魔王「やった!よろしくね!」

魔王「じゃあ次は…」 

ドラゴン「わし、かのぉ」

魔王「おぉ、ドラ爺!今回は何したのー?」

ドラゴン「ほほ…あまり大きなことではないのじゃが…」

魔王「うんうんっ」










ドラゴン「わしは南東の国を消してきましたぞい………地図から」

猫又「(にゃにゃぁ…)」

オーク「(おっふぅ…)」

ラミア「(いやいや…)」

吸血鬼「(なんと…)」

隊長「(す、凄い…)」


「「「「「スケールが違う!!」」」」」


猫又「地図から消すってどういうことにゃあ!?」

オーク「ドラ爺…やっぱりアンタはすげぇぜ!」

吸血鬼「やはり貴方には敵いませんね…」

隊長「今度稽古つけてください!」

ラミア「敵には回したくないもんだわー」

ドラゴン「ふぉっふぉっふぉ…皆、わしを過大評価しすぎじゃ。今回はたまたまわしだけでも楽な方じゃっただけじゃよ」

猫又「(地図から消してるのに楽な方って違う意味で頭おかしいにゃ…)」

魔王「あー、あの国か…最近度々攻撃してくるしこっちの仲間たちも被害に合ってたから助かったよー」

ドラゴン「ほほ…お役に立ててなによりじゃ」

猫又「あっあの…魔王様!」

魔王「おっ、今度は猫又?」

猫又「い、いえ…そのぉ…」

オーク「どうした猫又、俺様がカッコ良すぎて思わず声が出ないのか?」

猫又「デブは黙ってろにゃ」

オーク「何ぃ?俺様が超絶イケメンで思わず惚れてしまっただとぉ!?」

オーク「ククッ…まぁこのイケメンな俺様に惚れてしまうのも無理は無い…まったく俺様ってやつは罪なオスよ…」

猫又「あーもうっ!うるさいにゃ!」ガタッ

隊長「まぁまぁ猫又殿、落ち着いて…」

猫又「はぁ…私が言いたいのは、そこにシレッといる人間についてにゃ!」

魔王「人間じゃないよ、むーくんだよー」

猫又「名前とかどうっっでもいいにゃ!!」

側近「猫又、魔王様のお言葉がどうでもいいとは…後で覚えておくように」ギロッ

猫又「だから怖いにゃあ…」グス…

村人「こほん、みなさん初めまして…むーくんです」

隊長「ご丁寧にありがとうございます!私はスケルトン隊長と言います!」

吸血鬼「私は吸血鬼と申します、どうぞお見知りおきを…」

ラミア「私はラミアよー、よろしくねー」

ドラゴン「ふぉっふぉっ…わしはドラゴン、皆からはドラ爺なんて呼ばれておる」

オーク「俺様は魔族の中でも特にイケメンでカッコイイ、オークって言うぜ!覚えときな」

猫又「私は猫又にゃ、どーぞよろしくにゃ」

村人「あ、自己紹介ありがとうございます。よろしくお願いしますね」

オーク「(…お?)」チラッ

村人「(ん…?)」チラッ

オーク「(この人間…)」

村人「(このオーク…)」







オーク「(クソッ…なかなかカッコイイじゃねぇか…)」タラリ…

村人「(くっ…結構カッコイイですね…)」タラリ…


猫又「ってなに自然に自己紹介なんてしてるにゃ!!」

猫又「問題なのはなんで人間がここにいるのかってことにゃ!!」

魔王「えーっと…むーくんと私達で共に世界を手に入れようかなって」

猫又「全然話が見えないにゃ…」

オーク「ほぉ…これは大きくでたじゃねぇか!」

吸血鬼「世界…ですか」

魔王「うん!そろそろ世界を征服しておいた方が良いかなって!」

猫又「そんな、そろそろ実家帰った方が良いかな…みたいに言われても困るにゃ!」

ドラゴン「そもそも…そちらのむーくんとやらは強いのかのぉ?」

村人「いえ、相当弱いです」

猫又「ダメじゃにゃいか!足手まといすぎるにゃ!!」

魔王「でもでも、ボクの頭に一撃を入れたんだよー?」

オーク「なっ、魔王様に一撃を…それも頭にか!?」

隊長「只者じゃありませんね!」

吸血鬼「これで弱いとは…人間は末恐ろしいね…」

ラミア「へー、むーくんなかなかやるじゃーん」

村人「た、たまたま(落ちただけ)ですよー」アハハ…

猫又「むぅ…なんか納得いかにゃいにゃ…」

魔王「さてと、話が逸れちゃったねー」

魔王「他は…残ってるのはラミアと猫又かー」

魔王「二人共、何かやった?」

ラミア「私は何も」

猫又「私も同じくにゃ」

オーク「何もやってねぇのかよ!」

吸血鬼「少しは働いて欲しいですねぇ」

ドラゴン「ふぉっふぉ…働き口でも探してやろうかのぉ…」

隊長「二人共、今度掃除でも一緒にしましょう!」

ラミア「えぇ…隊長のは遠慮しとくよ…」

猫又「働くのは嫌にゃあ…」

側近「はぁ…このお二人方は何故働いてくれないのでしょう…」

魔王「まっ、働きたくないなら仕方ない!」アハハッ

側近「働いていないのになぜこの地位にいるのか疑問でなりません」

魔王「まぁまぁ…」

魔王「ふー…これで一応全員、報告は終わったかなー?」

魔王「じゃあ明日から本格的に行動を始めるよ!今日はみんなゆっくり休んでねー」

魔王「それじゃあ…解散っっ」


………
……

今日はここで終わります

ー魔王城ー

村人「はぁ…あんなアホな会議は初めて見たな…」テクテク

側近「あれでも各隊の長を務める者たちなんですけどね…」テクテク

魔王「そう?今週も面白かったなー!来週も楽しみ!」テクテク

魔王「あっそうだ!むーくんはここに住むんだよね?」

村人「そう、ですね…今更帰るわけにもいけませんし」

魔王「ふふっじゃあボクの部屋で一緒に寝る?」

側近「なんですと!?」ギラッ

村人「え、えーと…他の部屋は無いんですかね?」

魔王「他の部屋ー?ボクの部屋でも良いんだよー?」

側近「………」ジー

村人「う、うーん…(側近さんの目が怖い…)」

村人「じゃあ、とりあえず魔王様の部屋に行ってみたいです」

側近「ぐぬぬ…私は一緒に寝たことが無いというのに!!!」ダンダンッ!

魔王「だってそっちゃん、ずっと抱きついてくるじゃん…」

側近「可愛いものに抱きついて何が悪いんですか!」

魔王「えぇ…」

村人「まぁ確かに、可愛いし仕方が無いかもしれませんね」

側近「ほぉ…初めてわかりあえましたね、私達」

魔王「む、むーくん何言ってるのぉっ」カァァ

側近「ぐはぁ!照れてる魔王様可愛すぎ!死ぬ!!」ゴフッ

側近「はぁ…はぁ…しかしむーくんの言葉で照れるとは、悔しいですね…!」

魔王「わわっ…そっちゃん大丈夫…?」ナデナデ

側近「あわわわわわ…魔王様に頭撫でてもらってりゅ…」

村人「早く部屋に行きましょうよ」

側近「至福の一時の邪魔をするな、黙れ」

村人「怖いぃぃ…」

魔王「もー…そっちゃん、そんなこと言っちゃ、めっ!だよ?」

側近「私を悶え殺す気ですかぁぁ!?」ガクガク

側近「今日の魔王様はいつにも増して可愛さ25倍くらいありますね!」

村人「25倍っていまいちよくわからん…」

側近「むーくんは黙っていてください、消し飛ばしますよ?」

村人「理不尽すぎる!」

魔王「はいはい、それじゃあ部屋に行くよー」

側近「はーいっ」トテテテテ

村人「くっ…私にもっと力があれば…」
………
……

ー魔王の部屋ー

魔王「さー、ここがボクの部屋だよー!入って入って!」

村人「(広っ!凄く大きなベッドに鏡台、ソファーに円形の机、その他諸々…)」

側近「すうううぅぅぅぅーーー!!!はぁあああぁぁぁーーー!!!」

側近「ああぁぁ!!最高っっ!!魔王様の匂い最高です!!」クンカクンカ

村人「すんすんっ…おぉ、確かになんか…甘くて良い匂い」

側近「ほぉ、またわかりあえましたね…私達」

魔王「ぁぅ…だからやめてよぉっ」

側近「はぁっ!もう可愛い!」ギュッ

村人「あの、ベッドはどこですか?」

魔王「こっちだよー!」サッ

側近「あっ…」

側近「………やっぱり、むーくんは邪魔ね…」ボソ

村人「(…聞かなかったことにしておこう)」





村人「うわー、すごいふわっふわだ」

魔王「でしょー?ここで寝るの凄く気持ち良いのっ!」

側近「凄く…気持ちいい!?」

側近「まさか魔王様…ベッドであんなことやこんな事を…!」

村人「触っても良いですか?」

魔王「良いよー!ほらっここにおいでっ」ポフポフ

側近「のわぁーー!!私ですらベッドに誘って貰った事無いのにぃぃ!!」

村人「じゃあ、失礼して…」

 ヒュッ
   ドゴォ

側近「失礼なのでいけません」

村人「」

魔王「ちょっ、ちょっとぉ!死んじゃうよ!」

側近「代わりに私が入りますねっ」サッ

魔王「だ、ダメだよぉ!」

側近「何故ですか!?」

魔王「そっちゃん、一度くっつくと離れてくれないじゃん…」

側近「良いじゃないですか!」

魔王「良くないから言ってるの!」

村人「いてて…まおちゃん、私と今日からここで一緒に寝ましょう」

側近「なっ!?」

魔王「ほんとに!?やったぁー!」

村人「えぇ、楽しい夜を過ごしましょうね」ニヤ

側近「(くっ、むーくん…なかなかやりますね、私への当てつけですか)」

魔王「さて、部屋も決まったことだし…次は何しようか?」

村人「そうですね…では、先程集まっていた皆さんが何をやっているのか見て回りたいです」

魔王「よし!じゃあ今から見に…」

側近「魔王様、お待ちください」

魔王「な、なに…?」

側近「魔王様は昨日から残っている書類の方を処理していただかないといけません」

魔王「へ、へー?そんなのあったんだぁ…」

側近「逃げなければ済んでいたものを…今日はちゃんとやってもらいますからね!」

魔王「い、嫌だよぉ!むーくんと一緒に回るのぉ!」

側近「むーくんは私がご案内しますのでご心配無く」ガシッ

側近「ちゃんとしていなかったら…またあの服着せますからね、ふひひ…」

魔王「あの服は嫌ぁ…」

側近「じゃあとっとと行きましょうねー」ズルズル

魔王「うわーん…」

側近「むーくんはそこでお待ちください、動いていた場合は殺しますので」

村人「いちいち物騒なこと言わないで!」

………
……

側近「あら、ちゃんと動かないで居たんですね、殺さなくて済みました」

村人「死ぬのは嫌だからね…」

側近「さて、魔王様は監禁してきましたので、参りましょうか」

村人「さらっと監禁とか出てくる辺り怖い」

側近「まずは…隊長の所にでも行きましょうか」

村人「わかりましたん」

側近「何ですかその語尾」

村人「かわいいでしょ?そっちゃんともっと打ち解けたいなーって」

側近「殺していいですか殺して欲しいんですよね殺しますね、殺意がわいてきます」

村人「そんなに!?」

側近「次使った時、むーくんの命はありませんので」

村人「すみませんでしたん」

側近「むーくんはそんなに命が惜しくないんですね」ドスッ

村人「ぐほっ!さっきから拳の軌道が早すぎて見えないんだけど」

側近「当たり前じゃないですか、むーくんなんかに避けられたく無いですし」

村人「本気で死ぬからやめて!」

側近「私に殴らせなければいいだけですよ」

村人「それが無理だから言ってんの!」

側近「おっと、話してるうちに中庭に着きましたよ」

村人「ちゃんと聞いて!」

ー中庭ー

  コツコツコツ…

隊長「毎回ここに集まってるんですけど…あ、いたいた」

村人「(石畳を敷いてるんだな…)」

村人「どれどれ…」








隊長「皆さん!今日は魔王様からお休みを頂きました!」

隊長「なので今日一日は魔王城を徹底的に綺麗にしましょう!」

部下「えぇー!?せっかくの休みなのに勘弁してくださいよ!」

隊長「まぁまぁそう言わずに!魔王様への感謝の気持ちを込めて掃除しましょう!」

隊長「しないものは切り捨てますので!」

部下「そんな爽やかに切り捨てとか言わないでくださいよ!」

部下2「まぁ、魔王様には恩があるのでしますけども…」

部下3「そうだなぁ、あの人がいなければ俺達今頃、おっ死んで地獄に行ってたかもしれないしなぁ…」

部下「よぉし!気合入れてやるかぁ!」

部下2「だな!やるならとことんやってやるぜ!」

部下3「っしゃあ!みんな 掃除道具は持ったな!!行くぞォ!!」








村人「平和ですね…」

側近「隊長は掃除好きですからね…」

村人「いや、なんというか…果たしてこれでいいんでしょうか…」

側近「むーくんの言わんとしてる事はわかります。しかしこんな序盤でこれだとついていけませんよ」

村人「この後はこれより酷いのか…」

隊長「おや?側近殿にむーくん殿じゃありませんか!」

側近「こんにちは、隊長さん」

村人「こんにちは」

隊長「…ふむ、お二人はデートですかな?」

村人「そうなんですよー、そっちゃんがどうしてもって聞かなぐっっ…!!」ドスッ

側近「隊長さん違います、むーくんが皆が何をしているのか見たいと仰ったので案内をしているんです」

隊長「おぉ!そうだったのですね!これは早とちり失礼しました!」

隊長「それで……お二人もご一緒に掃除しますか!?」

村人「い、いや…これからまだ回らなくちゃいけないからまた今度にしておきますね」

隊長「そうですか…残念です」シュン

村人「お誘いありがとう、また今度誘ってよ、その時は一緒に掃除しましょう」

隊長「ありがとうございます!その時はよろしくお願いしますね!」パァァ

村人「う、うん…」

側近「それじゃ、次行きましょうか」

……

ー食堂ー

側近「今の時間だと、ここにいるはずですが…」キョロキョロ

側近「あっいましたよ」

村人「(ここもまた広いなー…一体何人入れるかわからないくらいだ…)」

村人「どれどれ…」







オーク「おめぇら!今日は魔王様から休みを頂いた!」

オーク「このイケメンでカッコイイ俺様のおかげでな!」クククッ

部下「また言ってるぜ…」

部下2「いい加減現実見てほしいよな…」

部下3「オークさんカッコイィィ!」

オーク「そういうわけだ、今日は飲んで食って騒ごうぜぇ!!全部イケメンな俺様の奢りだぁ!」

部下「うおぉぉぉぉ!!カッコイイ!!イケメンすぎるぜ!!」

部下2「やっぱり俺たちと格が違うな!流石イケメンだ!」

部下3「ウヒョォオオォォ!!」

ワーワー  
 ガヤガャ  イケメン!  ステキ!




村人「見事な手のひら返しだ…」

側近「毎度の事ながら笑えますよ、部下たちもわざとやっているんだと思いますけど」

オーク「ん?おぉ、おめぇらどうした?」

側近「オークさんこんにちは」

村人「こんにちは」

村人「オークさんたちが何をしてるのかなって気になって見学に来ました」

オーク「ほぉ!精が出るじゃねぇか!」

オーク「このイケメンな俺様を存分に見ると良い!ただし…惚れても責任は取らないぜ?」

村人「へぇ、それはどうかな?」

オーク「なんだと…?」

オーク「(一体何をする気だ…!?)」

村人「ふぅ……はっ!」

ババババッ ヒュンッヒュンッ
       クルッ


       スタッ

オーク「(なっ!こいつ突然踊りだしてバク転まで決めやがった!?)」

村人「(決まった…)」キリッ

オーク「(俺様は力はあるがこいつみてぇに素早い動きはできねぇ…やるな…!)」

オーク「(…クソ!悔しいがカッコ良すぎる決め顔だぜ…)」

村人「ふっ」ニヤ

オーク「なかなかやるじゃねぇか…」

オーク「なら…俺様はぁぁ!!こうだぁぁー!!」ムキムキッ  キリッ

村人「(なっ!?たくましい筋肉を見せつけつつ私に負けず劣らずな決め顔を…!!)」

村人「(私は筋肉では太刀打ちはできない…そこをついてきたな…!)」

村人「(こいつ……!できる!!)」

側近「何やってるんですか…」


村人「どっちがカッコイイかの対決です」
オーク「どっちがカッコイイかの対決だ!」


側近「どっちもブサイクでこちらの目が汚れるのでやめてください」

村人「」

オーク「」

側近「さっ、そろそろ次に行きますよ」

……

ードラ爺の部屋ー

側近「ここはドラ爺さん専用の部屋なんですよ」

側近「ちなみに…ほら、あそこの壁を見てください」

村人「あれは…穴?」

側近「実はあの穴は会議室と繋がってましてね、あの穴から頭を突っ込めば会議室に顔を出せるんですよ」

村人「な、なるほど…」

側近「ドラ爺さんは巨体ですからね」

村人「(…にしても広すぎだろ…一体オーク何体詰め込めるんだろう…)」

ドラゴン「おや…側近さんとむーくんかのぉ?」

側近「ドラ爺さん、こんにちは」

村人「こんにちはー」

ドラゴン「こんにちは。何か御用ですかな?」

村人「背中に乗せてください!」

側近「ちょっ、こら!」

ドラゴン「ふぉっふぉっ…元気があるのぉ、しかし今は乗せる事はできないのじゃ…すまんの…」

村人「がーん!何でですか!?」

ドラゴン「先週に背中と羽を痛めてのぉ…飛ぶのが辛いんじゃよ」

村人「そうだったんですね、すみません」

村人「じゃあ治ったら乗せてください!」

側近「こ、こら!無理を言ってはいけませんよむーくん!」

ドラゴン「なに、気にするでない。治った時は存分に乗せてやるぞ」

村人「やった!ありがとうございます!楽しみにしてますね!」

側近「はぁ…まったく…」

村人「長居しちゃ迷惑ですし、そろそろ行きましょうか」

側近「それむーくんが言うんですか…」

ドラゴン「ふぉっふぉっふぉ…またいつでもおいで」

村人「うん!またね!」

側近「はぁ…ドラ爺さん、それでは失礼します」
………
……

今日はここで終わりますん

ー調教部屋ー

キィー
 パタン

側近「多分吸血鬼さんはここにいると思うんですけど…」

村人「あぁ、奴隷を調教するとか言ってましたね」

側近「あっ、いましたよ」

村人「どれどれ…」チラッ





吸血鬼「さて、君たちには私から直々の調教を受けてもらうわけだが…」

吸血鬼「2つだけ先に言っておかなければいけないことがある」

奴隷達「………」

吸血鬼「まず1つ、わからない所や気になる所は私にすぐに聞け、放っておくと後で後悔するぞ?」ニヤ

吸血鬼「2つめは、苦しくなったり疲れたら隠さずに言え。それだけだ」

吸血鬼「言わなかった場合、首を跳ねて殺すからね」

吸血鬼「さて、始めようか」

奴隷「あ、あのぉ…」ス…

吸血鬼「なんだね?」

奴隷「ここの文字はどう読むんですか…?」

吸血鬼「ふむ、これは『ま』と『お』と『う』だな」

奴隷「で、では…これの後のこれは何と読むのでしょう…?」

吸血鬼「ふふっ、これは少し難しかったかな?『ば』と『ん』と『ざ』…そして最後は『い』だよ」

奴隷「………」コクコク

吸血鬼「さぁ、さっきの文字を順番に読んでごらん?」

奴隷「まおう…さま…ば…ん…ざ…い…?」

吸血鬼「はははっ良く出来たね、ご褒美の甘菓子だ」ナデナデ スッ

奴隷「わーいっ」






村人「微笑ましいですね…」

側近「教師とか向いてますよね」

吸血鬼「おやおや、これは側近さんにむーくんではありませんか」

側近「吸血鬼さん、こんにちは」

村人「こんにちは」

吸血鬼「どうだね、私の調教は?」

村人「えぇ、とっても…凄いですね…」

吸血鬼「ふふふ…だろう?」

村人「調教し終えた後は捨てるんですよね?」

吸血鬼「勿論だとも!使い捨てに用は無いからね」

側近「そういえば、ここで雇う奴隷はどうするんです?」

吸血鬼「ふふっ…よくぞ聞いてくれましたね、通常の調教を終えた後特別に更に調教を施すのですよ」

吸血鬼「炊事洗濯掃除に作法…どんな事でも言う事を聞く立派な奴隷にしてみせますよ!」

村人「調教、頑張ってください…」

吸血鬼「うむ!」

側近「そ、そろそろ次に行きましょうか…」






村人「吸血鬼さん、いつもあんな感じなの?」

側近「いつもあんな感じですね…」

村人「なんか、面白い魔族だね…」

……

ー西の部屋ー

村人「ここは…宿泊施設ですかね?」

側近「ですね、主にメスの上位魔族たちが使っているところです」

村人「上位…?」

側近「そうですね、階級といいますか」

村人「それって誰でもなれるの?」

側近「なれますよ、実力があれば」

村人「なるほど…それでここには誰がいるんですか?」

側近「猫又さんとラミアさんが居ますよ、ちなみにあの二人は相部屋です」

村人「あぁ…あの働いてない…」

側近「そうです…」

猫又「ねーねー、何か楽しいこと無いかにゃ?」

ラミア「猫じゃらしでも取ってこようか?」

猫又「そんな低俗な遊びするわけ無いにゃ!」

ラミア「でもこの前、自分の尻尾を追ってくるくる回ってたじゃん」

猫又「う、うるさいにゃっ!」

猫又「それより、ラミアはまた武器の手入れかにゃ?」

ラミア「んー?そんな感じねー」

猫又「ほんと、武器好きにゃ…」

ラミア「まぁねー、いつどんな敵が襲ってくるかわからないし自分の身は自分で守れなきゃだしねー」

ラミア「アンタもその小太刀、毎日大切に手入れしてるでしょ?それと同じよ」

猫又「これは魔王様からの頂き物だからだにゃ」

ラミア「良いなぁ…私も欲しいー」

猫又「………」

猫又「今度一緒に頼みに行ってみるかにゃ?」

ラミア「でも…良いの?」

猫又「お安い御用にゃ!」

ラミア「ふふ、ありがとう」ギュッ

猫又「にゃふぅ…」



ラミア「おろろ?」

ラミア「あれぇ、猫又…少し胸大きくなった?」ムニュ

猫又「んっ…にゃぁ…ほんとかにゃ?小さいからそうだと嬉しいんだけどにゃあ」

猫又「ラミアだってまた大きくなったんじゃないかにゃ?」モニュモニュ

ラミア「やんっ…んあ…最近服がキツくなってきたんだけどそうなのかな…」

猫又「絶対そうにゃ!羨ましいにゃぁ…」

ラミア「猫又だってこれからもっと大きくなるってっ」






村人「あぁ、眼福眼福…」コソッ

側近「ふひひ…魔王様とはまた違う可愛さがありますね」コソッ

村人「いやー、たまりませんね」

側近「ですねぇ…ぐふふっ」ジュル

村人「またまたわかりあえましたね」

側近「こちらの趣味はお互い合いそうですね」

村人「こんな近くにお仲間が居たとは思いませんでしたよ」

側近「まったくです」




ラミア「うん…?あれ、側近さんとむーくんじゃーん」

猫又「うにゃ?」

側近「こんにちは、ラミアさん、猫又さん」

村人「こんにちは」

猫又「こんにちはですにゃー」

ラミア「こんにちはー」

猫又「それで…何か用かにゃ?」

側近「用というわけではないんですよ」

村人「皆さんが何をしているのかなと気になりまして…」

ラミア「なるほどねー、でも私達を見てもつまんないよ?」

猫又「だにゃあ…いつもゴロゴロしてるか外で遊んでるかだしにゃ」

村人「お二人は働かないんですか?」

ラミア「んー?そうねぇ、面倒くさいからね」

猫又「同じく。だから働かないにゃ」

村人「そのまんまですね…」

ラミア「あ、でもでも、たまに作戦に参加したりはするのよー?」

猫又「私達の隊は数が少ないし何よりラミアと二人で遊撃する事が多いにゃ」

村人「二人だけで…?」

ラミア「そそー、二人だけだと楽なのよねー」

猫又「そうにゃ。ごちゃごちゃ居ると戦いづらいしにゃ…」

村人「なる、ほど…」

ラミア「それより、私はむーくんの実力が知りたいなぁ?」

猫又「私も気になるにゃ!」

村人「えっと…(やばい弱い事が本当にバレるのはまずい…)」

側近「武器なら使えますよ、ちょうど今日は中庭使えますし」

村人「(余計な事いわないで…!)」

猫又「今からお手合わせ願いたいにゃぁ」

ラミア「いいねー、私も私も!」

側近「では、中庭に行きましょうか」ニヤ

村人「ちょっとまだ返事してないんだけど!」

ー中庭ー

側近「むーくん、武器は何使います?」

村人「えーと…何があるんですかね?」

側近「剣に刀、弓に小太刀、槍に鈍器、その他諸々まで何でも揃ってますよ」

村人「すごいでしゅね…」

村人「じゃあ…無難に剣をお願いします」

側近「どうぞ。訓練用の物なんで怪我とかはしませんのでご安心を」

村人「そ、そうですか」ホッ…

村人「あの、本当にするんですか…?」

猫又「あったりまえにゃー!」

ラミア「もちろん!」

村人「本当に本当に良いんですか?どうなっても知りませんよ!?(主に私が)」

猫又「ばっちこいにゃ!」

ラミア「よーし、それじゃあ…」チャキ

村人「ま、待って待って!」

猫又「どうしたにゃ?」

村人「ふ、二人で来るの?」

ラミア「?そうだけど?」

村人「何言ってるの?みたいな顔しないで!二人は無理だから!」

ラミア「何言ってるの?」

村人「ほんとに言わなくてもいいから!」

猫又「だって魔王様に一撃を与えたんだにゃ。手加減したらこちらがやられるにゃ!」

村人「せめて1対1にして!」

猫又「しょうがないにゃあ…」

ラミア「じゃあ猫又、ジャンケンしよっか」

 じゃーんけーんっ  

   ぽん!

猫又「やったにゃ!」チョキ

ラミア「ありゃりゃ…負けちゃった」パー

猫又「というわけで私が相手になるにゃ!」

村人「あ、あぁ…そうなんですか…」

村人「あれ?猫又さんの武器は?」

猫又「ぬっふっふっ…武器は秘密にゃ!」

村人「(いや明らかにその腰に下げてる小太刀でしょ…)」

猫又「側近さん、合図をお願いしますにゃ」

村人「(ん…?下げてる小太刀…)」

村人「(あっ…)」

側近「わかりました。それでは…」

村人「(まずいまずいまずい!あの小太刀…真剣じゃん!!)」

猫又「………」ジリ…

村人「まっ、ちょっ!」ジリ…

側近「よーい…はじめ!」


猫又「にゃっ!!」ダッ!!

村人「…っ!わわっ」

 ヒュンッ  
    キィンッッ!!


ラミア「おぉー、猫又の初撃を弾くなんてむーくんやるじゃん」

側近「ふむ…」


猫又「にゃっ!にゃ!にゃにゃっ!!」

ヒュンッ
  ヒュンッ
    ビュンッ!!

村人「(くそっ最初のはまぐれだな…速すぎて避けるのがやっとだ)」

村人「(しかし相手の武器は小太刀、攻撃範囲は狭く体に当たってもそうそう一刀両断はされない、はず…)」


猫又「防戦一方かにゃっ!」ブンブンッ

村人「くっ…!」

村人「(確かに速さはある、しかし斬撃自体の威力はそこまで重くない…と思う)」

村人「(私は一撃食らえば瀕死になりそうだけど!)」

村人「(このまま距離を取り避け続けるか…?いや駄目だ、とにかく反撃しないと…)」


猫又「にゅふふっ…」ニヤ

猫又「後ろががら空きにゃあ!!」ザッッ

村人「(後ろ!?)うおっっ!」

 
  ガキィンッッ!

猫又「にゃっ!?」




ラミア「おー、凄いね…あれを防ぐかー」

側近「むーくんは本当に村人なんでしょうか…」

ラミア「気になるよねー、実は人間の国の方では凄く強い騎士とかだったりして」ニシシ

側近「そんな、まさか…」

ラミア「いやいやー、魔王様に一撃与えたんだよ?ありえなくはないよー」




村人「(危なかった!!とっさに背中に剣を回したけど横薙ぎの攻撃じゃなければ即死だった)」

村人「(相手は動揺してる…今しかないない!!)」クルッ


村人「っっふんっ!!」ブンッ

猫又「うっ…にゃあっ!!」バッ

  
  キィンッッ!!

村人「なっ!?しまっ…!」


村人「(防がれた!しかも振り抜いたから体勢がっ…!)」


猫又「ぬふふ!これで私の勝ちにゃあ!!」ヒュンッ


村人「まずっ…うおっ!」ズルッ


    スカッッ! 

  ゲシッ



猫又「ぎゅにゃ!?」ヨロ…

  

  ドシャアッ!



猫又「ふにゅぅ…」

村人「いってて」

村人「一体何が…」



側近「大丈夫ですか!?」タッタッタッ

ラミア「むーくんすごいねー、強いじゃん!」シュルルル

村人「え、えっと…」

ラミア「まさかあの体勢から猫又の顎に左足で蹴りを入れるなんてねー」

側近「ですね…絶対猫又さんが勝ったと思っていました」

村人「え、えぇ…まぁ…」



村人「(ん…?この石畳…)」ツルツル

村人「(そうか…隊長さん達が磨いたりして掃除したからよく滑るようになってたのか…)」

ラミア「しっかし猫又がこんなに簡単にやられちゃうとはねー」

側近「猫又さんはあの集まりの中でも結構強い方なのですよ?」

村人「へ、へー…そうだったんですかぁ…」

村人「(本当に運が良かったなこれ…)」

ラミア「私がやっててもやられちゃってたかもなぁ」

村人「…そ、そうですね!ラミアさんでも猫又さんと同じ結果だったと思いますよ!」

ラミア「おぉ!言ってくれるじゃないのー、2戦目いっとく?」

村人「い、いえ…今日は疲れたのでまた今度で!」

ラミア「そう?お手合わせはいつでも受けるから遠慮なく言ってねー」

村人「あ、ありがとうございます…」

側近「日が暮れてきましたし、そろそろ魔王様の様子を見に行きましょうか」

村人「そうしますか…」

………
……

     ―会議日誌―

――むーくんが加わった事だし、日誌作ってみたよ!何でも好きな事書いてね!             魔王
――これは良いですね、些細な事はここで教えて頂くと助かります。  側近
――よろしくお願いしますん。  村人
――イイねぇ、カッコイイ俺様に相応しい日誌じゃねぇか!     オーク
――デブはおとなしく黙ってろにゃ
            追記,猫又
――何ぃ!?俺様の文字が凄まじくカッコイイだとぉ!?   追記,オーク
――ここでそのやり取りやめてくれないかなー…。          ラミア
――まぁまぁ、1ページ目くらい許してさしあげましょう。     吸血鬼
――皆さんよろしくお願いします!隊長
――よろしくじゃ。     ドラゴン
――ドラ爺はどうやって書いてるにゃ!?           猫又
――日誌の前で念を込めれば勝手に書き込まれるぞい。 追記,ドラゴン
――うおぉぉぉ!!すげぇぜ!!まじだ!!流石俺様だぜ! 追記,オーク
――デブは日誌まで枠取りすぎにゃ! 
            追記,猫又
――はーいはい!喧嘩は終わりっ
            追記,魔王

今日はここで終わりますん

ー執務室ー

 コンコンッ
  ガチャ

側近「魔王様、失礼します」

村人「失礼しまうま」

側近「ちゃんと言い直してください」ドスッ

村人「失礼しましゅ…」

魔王「はーい、失礼されまーす!」

側近「調子はどうですか?」

魔王「すごーく悪いでーす」ムスッ

側近「むすっとした顔も可愛いですね」ヒソッ

村人「ですね、これもなかなか」ヒソッ

魔王「もー!なに二人でコソコソ話してるのっボクも混ぜてよー!」

側近「魔王様は混ざる側ではなく混ぜられる側ですのでダメです」

魔王「最近そっちゃんが言ってる事、ますますわけがわからないよ…」

村人「永遠にわからなくても良いと思いますよ」

魔王「そうなの…?それならいっかぁ」

村人「あ、そうだ…まおちゃん、ちょっとそこに立ってくれますか?」

魔王「うん?ここでいいの?」

村人「はい、大丈夫です」

側近「(一体何を…?)」チラッ

村人「………」

村人「魔王様、握手しまっ…」ダッ

村人「おっとぉ!!足が滑ったぁぁ!!」ズルリンッ

側近「(なっ!?まさか定位置に魔王様を配置することによって事故を事後にする気ですか!?)」

魔王「ふえぇ!?わっ…ちょちょっ!」


   ドサッ…

村人「………」ムニュムニュ

魔王「ふあ…んっ…」

村人「………」モミモミ

魔王「なっななななな!!何してるのぉ!!!」ピカッ

 

  ドゴォォォ!!!


村人「」ズザザザザザドカッ!

側近「あぁ…」




村人「(執務室の天井が吹っ飛んだ…!!)」
側近「(また執務室の天井が吹っ飛びました…)」



魔王「もー!いきなり何なのぉ!?」グス…

村人「す、すみませ…ん…握手したかったんですけど足が滑りました」ゴホッゴホッ

魔王「なんであんな距離空いてるのに握手を求めたの!?」

村人「魔王様が柔らかそうだったので」

魔王「意味がわからないよ!」

側近「はぁ…また執務室の天井が無くなりましたね…」

村人「また…?」

側近「えぇ、今回で3度目ですよ」

側近「1度目は書類処理の為に一週間監禁した時に不満が爆発」

側近「2度目は甘菓子が3日間食べれなかった時に爆発しました」

村人「なんて怖い時限爆弾なの…」

側近「幸い、上方向に爆発するので私達は無事なんですけどね…」

村人「確かにこれ、直撃してたら間違いなく即死だった」

側近「流石の私もどうなってるかわかりませんよ…」

村人「木っ端微塵ってこの事を言うんだね…」

側近「それより…」

側近「どうだったんですか!?もみ心地は!!」

村人「最高でしたよっ!えぇ!」

側近「私でさえまだもんだことないと言うのに!!」

村人「硬すぎず柔らかすぎず絶妙な触り心地と大きさでしたよ!」

側近「くうぅぅぅぅ!!羨ましい!!!」

村人「やっぱり魔王様は最高ですね!!」

側近「まったくですね!!」フンス

魔王「ちょっとぉ!胸触っといて盛り上がらないでよ!」

側近「これが盛り上がらずにいられるかってんですよ!」

村人「そっちゃん、次は私がもめるように協力しますよ!」

側近「なっ…!良いのですか!?」

村人「何言ってるんだい、仲間だろ?」b グッ

側近「ありがとうございます!」ドスッ

村人「おふっ…なんで殴るの…」

側近「そっちゃんと呼ばないでください」

村人「気分が台無しだよ!」

魔王「もうっ!だからボクも混ぜてよ!」

側近「魔王様、そろそろ夕食を取りに行きましょうか」

村人「お腹空きましたねー」

魔王「ちょっと聞いてる!?」


……

ー会食室ー

村人「えっと…なぜ皆さんが集まって…?」

側近「週に一度、会議の日は夕食も同じく集まって食べるんですよ」

村人「へー…私も居て良いんですかね?」

魔王「全然良いよ!だってむーくんだもん!」

村人「ちょっと何言ってるかわからない…」

猫又「むーくんはこっちにくるにゃ!」グイッ

村人「わわっ…」

魔王「あっ!私もむーくんの横に座るぅ!」

側近「私は魔王様の横に座りますっ」

オーク「クククッ…イケメンな俺様の横はいつでも空いてるぜ?」

猫又「デブの横なんて一生空いてろにゃ」

オーク「何ぃ?俺様がカッコ良すぎて畏れ多く近づけないだとぉ!?」

猫又「このデブ、鋼の精神すぎるにゃぁ…」

吸血鬼「では私が横に座らせていただこうかな」

隊長「私も座ります!」

オーク「クククッ…俺様はオスだろうとメスだろうと平等に愛してやるぜ!」

吸血鬼「ははは、私は気持ちだけいただくよ」

隊長「今度掃除でもしましょうね!オーク殿!」

ドラゴン「ふぉっふぉっふぉ…賑やかで楽しいわい」

ラミア「私は猫又の横でいいや…」

側近「そろそろ料理が来る頃ですかね…?」

料理長「皆様お待たせしました、今料理をお運びしますね」

オーク「来たぜ!!早く早くぅ!」ダンダン

猫又「少し落ち着けにゃ」

料理長「あはは…少々お待ちくださいねー」コト…コト…

吸血鬼「おぉ…今日の夕食も美味しそうですね」

隊長「いい匂いです!」

側近「ほんと、(魔王様は)いい匂いですね!」スゥゥゥゥ!!

魔王「髪が凄い吸引されてるぅ…」

村人「(まおちゃん可愛い)」

ラミア「おっと、料理が揃ったみたいだよ」

料理長「お待たせ致しました!それではお召し上がりください!」

魔王「じゃっ!みんな手を合わせてー!」


    いただきまーす!

オーク「おほー!うめぇ!うますぎるぜ!」バクバク

吸血鬼「今日の夕食もとても美味だ」

猫又「むーくんの料理は私が寄そってあげるにゃ!」

魔王「あぁ!ボクもしてあげる!」

側近「魔王様のは私が寄そって差し上げますねっ」

村人「おおっふ…見事に肉ばかり…」

猫又「私を倒した人にゃ、そんなヒョロヒョロした体だと見た目が悪いにゃ!」

魔王「えぇ!?むーくん、猫又倒したの!?すごーい」

猫又「そうにゃ!私自身も驚いたにゃあ」

吸血鬼「へぇ…むーくん、なかなかやりますね」

隊長「やはり只者じゃないですね!」

ドラゴン「すごいのぉ…」

村人「た、たまたまですよたまたま…」

側近「玉々!?ここで下ネタぶち込んで来る辺り流石ですね…」

オーク「ふんっ!俺様の筋肉には美しすぎて到底及ばないがな!」

猫又「そのブサイクな筋肉はとっとと削ぎ落としてこいにゃ」

オーク「何ぃ!?俺様の筋肉が逞しすぎて思わず抱きつきたいだとぉ!?」

オーク「クククッ…やはりいくら猫又でもこの俺様の筋肉の前では 無 力 !」

猫又「いい加減こいつをどうにかしてほしいにゃ…」

村人「まぁまぁ落ち着いて」ナデナデ

猫又「んん…にゃふぅ…」

ラミア「(すごい…猫又が懐いてる…)」

隊長「ドラ爺殿!何か寄そって欲しい料理はありますか!?」

ドラゴン「おぉ、ありがとう助かるわい…ではそこの果物を山盛り頼む」

隊長「了解です!」

吸血鬼「料理長、今日のトマトジュースはいつにも増して美味しいね、お代わりを頂きたい」

料理長「ありがとうございます!まだまだ冷やしていますのでどうぞ!」スッ

吸血鬼「ふぅ…よく冷えたジュースはたまらなく美味だ…」ゴクゴク…

側近「魔王様、お口が汚れてらっしゃいますよ、私が拭かせていただきますねっ」

魔王「んんっ、そっちゃんありがとうー」

村人「では私は魔王様の飲みかけのジュースを飲ませていただきますねっ」

側近「良いわけ無いでしょう」ドスッ

村人「うぐっ…中身が出るからやめて…」

猫又「むーくん、私のジュースで良ければあげるにゃ」

村人「ありがとう、猫又さん」ゴクゴク…

ラミア「(あんなデレてる猫又見るのは久しぶりね…)」

魔王「あっ!そうだそうだ忘れてた!」

魔王「みんなー!重大発表があるから日誌見といてねー!」

村人「ここで言うのはダメなんですか…?」

魔王「ふふふっ!ひ み つ !なのっ」ニコッ

側近「あぁ可愛い!この笑顔の前ではどんなものも霞みますね!」

ラミア「重大発表かー、なんだろうね」

猫又「嫌な予感しかしないにゃ」

オーク「何が来ようと俺様は大丈夫だぜ!」

隊長「楽しい事だと良いですね!」

吸血鬼「そうだねぇ…」

ドラゴン「あまり羽に響かん事を祈るわい」

村人「重大発表………」

側近「何するんでしょうね、何しても魔王様は最高に可愛いですけど」

村人「ほんとそっちゃんはブレませんよね」

側近「そっちゃんと呼ばないでください」ドスッ


………
……

     ―会議日誌―

――【重大発表】明日は焼き芋大会をします! 魔王
――ちょっ!明日からするって言ってた征服はどうなるにゃあ!? 追記,猫又
――面倒くさくなったから後回しにするよ! 追記,魔王
――まぁ、まだ作戦も何も立ててないですしね…。 村人
――だねー、とりあえず明日は焼き芋大会ってことでいいと思う。 ラミア
――魔王様の命は絶対です! 側近
――クククッ…焼き芋大会、俺様に相応しい行事だぜ!! オーク
――明日落ち葉集めておきますね!隊長
――火は任せい。 ドラゴン
――楽しみですねぇ、焼き芋…。 吸血鬼
――本当にこれで良いのかにゃ…。 猫又
――明日は楽しみましょうね、猫又さん。 村人
――しょ、しょうがないにゃあ…! 
              追記,猫又


……
………


――『偵察部隊より緊急通達!』


――『オーク様率いる部隊で村周辺の見回りの任についていた者達が全滅!』


――『外見は人間、しかし敵は我々と同じく治癒や攻撃等の特殊な術を使う者も確認!人数は4人と推定!』


――『予測進路はここ、‘‘魔王城’’!敵は更に周辺の魔族達を乱雑に標的にしている模様』


――『繰り返しご報告します!……』


………
……

今日はここで終わりますん

ー魔王の部屋ー

村人「んん…」

村人「ふあぁ…んあー…」ノビー

村人「もう朝か…ん?」

魔王「すぅ…すぅ…」

村人「!?」

村人「(こ、これは!?)」

村人「(まおちゃんがあられもない姿で寝息を立てて寝ておられる!)」

村人「(そういえば昨日、夕飯の後はそのまま爆睡したんだった…)」

村人「………」ゴクリ

村人「(いけるか…?下方向から胸をもめば仮に爆発しても即死は免れるはず…!!)」

村人「(ここでやらなきゃいつやるってんだ!)」

村人「行くよ!」ソー…

側近「何してるんですか」ドスンッ!!

村人「ごはっ…!!」

側近「いつまで経っても起きないので起こしにに来てみれば…まったく危ないところでした」

村人「お、音!殴った時の音が昨日より違うんだけど!骨大丈夫なのこれ!?」

側近「他ならぬ魔王様に手を出そうなど許せませんからね」

村人「うぐぅ…しかしいつから居たんですか…?」

側近「『こ、これは!?』の所からですかね」

村人「最初から居たのかよ!ていうか心の声読まないで!」

側近「静かにしてください!」

村人「な、なんでですか?」

側近「今ならまだ魔王様に手を出せますので…ふひひ」

村人「ちょ、私を殴っておいてそれは無いでしょ!」

側近「黙ってください、もう一度殴りましょうか?」

村人「………」コクコク

側近「ふふふ…それでは…」

魔王「う…ん…?むにゃ…」

魔王「あれぇ?むーくんにそっちゃん、おはよー」

側近「ちっ、惜しい(魔王様おはようございます)」

村人「心の声漏れてるよ…」

魔王「何が惜しいのぉ…?」

側近「何でもございませんよ、さっ…そろそろ起きてください」

魔王「ううん…うー、そっちゃん…眠いよぉ」ギュッ

側近「ほわあああぁぁ!!!」ガグガク

村人「…っ」ビクッ

側近「ま、魔王様から抱きついてくださるなんて…!!」

村人「………」




村人「………」ギュ

側近「…むーくんは何故私に抱きついてるんですか」

村人「そっちゃんもなかなか柔らかそうだったので」

側近「まぁ…今は魔王様に抱きつかれてるので許しますが。命拾いしましたね?」

村人「ですね、私もこの状況じゃなければやっていませんでしたよ」

側近「それにしても…魔王様は柔らかいですねぇ…」ハァハァ

村人「そっちゃんも柔らかいよ」

村人「この服は…メイド?だっけ」

側近「そうですね、主に使用人が着る服だそうです」

村人「だそうって…もしかして人間の店で買ったの?」

側近「?そうですが?」

村人「凄いね…一体どうやって?」

側近「私は元々、外見はほぼ人間に似てますし尾と頭の角、あとは羽さえ隠せばバレませんよ」

村人「なるほど……えいっ」ギュム






側近「ひゃんっ」

村人「…ひゃん?」

側近「尻尾を触るのはやめてください。殺しますよ?」



村人「………やだ」ニギニギ

側近「わわっ…んん…ひゃめてくらはい!」

村人「おぉ…意外とこれもなかなか…」

魔王「ふあぁ…んー…そろそろ起きるかぁ……よいしょっと」スタッ

村人「やばい死ぬ」

側近「…そうですね、起きましょうか」

側近「魔王様もお着替えください」

側近「これから会議室に行きますよ」

村人「(…あれ?殴ってこない…)」

側近「ほら、むーくんも行きましょう」

村人「何かあったんですか…?」

側近「………」





側近「行けば、わかります」

………
……

ー会議室ー

   シーン…


側近「皆さん、全員集まっていますね」

村人「なんか外がやけに騒がしかった気がするんだけど…」

魔王「みんなおはよー!って…どしたの?」

側近「魔王様、早朝に偵察部隊より緊急通達が入りました」

村人「緊急通達…?」


オーク「そうだ。俺様の部隊の見回りについてたやつらが何者かの一行に全滅させられたんだ」


魔王「………」

村人「ぜん、めつ…」

吸血鬼「幸い、と言っていいのかわかりませんが…全員急所は外されて攻撃されてましたので一命は取り留めていますよ」

隊長「私の部下達も被害にあったそうです」

オーク「クソッ!ぜってぇ許さねぇ!!」ダンッ!!

ラミア「その敵ってのはなんだったっけ?」


ドラゴン「人間…と聞いたのぉ」チラッ


猫又「人、間…」チラッ

吸血鬼「ふむ…」チラッ

隊長「人間、ですか…」チラッ

ラミア「人間、ねぇ…」チラッ

オーク「………」ジロッ








村人「ん…?」

村人「えぇ!?私じゃないですよ!?」

オーク「てめぇ…まさか俺様達の情報を流したんじゃねぇだろうな…?」

村人「流してませんよ!」

オーク「俺達オークの知性は他の魔族より低い者が多い、だが統率はしっかり取れるように訓練してるし配置だって完璧だ」


オーク「だが、それを知ってる人間はおめぇしか居ねぇよなぁ?」


村人「ちょ…」

オーク「どうなんだ!言ってみろ!!」

猫又「デブは少し落ち着けにゃ!」

オーク「うるせぇ!これが落ち着いていられるかッ!!猫野郎は黙ってろ!」

猫又「っ!」ビクッ

隊長「我々の情報に一番詳しい人間は、村人さんしかいませんね」

吸血鬼「確かに、ここに居る人間は村人しかいないね」

村人「ちょ、ちょっと待ってください!私は昨日、皆さんと一緒に居たじゃありませんか!」

ラミア「でも村人、猫又に模擬戦とは言え勝ったよね?」

村人「え、えぇ…」

ラミア「猫又ってさ、私が言うのも何だけど、結構強いのよ。それにキミは勝ったわけ」

ラミア「私はキミの事、普通の人間とは思えないんだよね。だからこの魔王城の近くにも仲間が居たとか…」

村人「…居ませんよ…」

オーク「村人ぉ!!嘘つくと許さねぇぞ…?」ギラッ


猫又「むーくん…どうなのにゃ…?」

猫又「私は…私はむーくんが裏切ったなんて思いたくないにゃ…」グス…

村人「裏切ってませんよ!!」

吸血鬼「では何故オークさんの部隊が半滅したんでしょうか?」

隊長「オーク殿の部隊は私の部下に負けず劣らず強いはずです」

隊長「それが、出向いてる者が全滅なんてにわかには信じられません」

ドラゴン「じゃとすると、こちらの弱点や部隊の配置を知っておった者が情報を流した可能性が高いかもしれん」

ラミア「そういや、相手はそんなに強かったの?」

猫又「聞いた話だと、あっちはほぼ無傷でこちらを斬り伏せたらしいにゃ…」

ラミア「無傷、ねー…」

ラミア「村人、キミ…本当は何者なの…?」

村人「私は、ただのしがない村人ですよ…」

側近「村人さん、正直にお答えください。今ならまだ拷問だけで済みますよ」

村人「側近さんまで…」

村人「私は本当に…」ギリ…

魔王「はいはい!そこまで!!」

魔王「まだむーくんが犯人って決まったわけじゃない!憶測だけで決めつけちゃいけないよ!」

魔王「それに昨日はむーくんが言う通りボクたちと一緒にいたじゃないか!」

魔王「だから…喧嘩はダメ!!」






オーク「…っ!チッ…」スタスタ

魔王「ちょっと!どこ行くの!」

オーク「少し、風に当たってくるだけだ!」


      キィー
        バタン!!


   …………………………………………



吸血鬼「私も、部屋に戻らせてもらおうかな」



隊長「…掃除、してきます…」




ラミア「…猫又、部屋に戻ろっか」

猫又「…にゃぁ…」




ドラゴン「わしも、戻らせてもらおうかのぉ…」



側近「私も、少し考えを整理してきます」

  
       キィー
         パタン…

村人「…」






村人「……」







村人「………」








村人「みんな、行っちゃったな…」

村人「はは…裏切り、か…」

村人「裏切るならとっくに裏切ってますよ…」

村人「私は、私はただ…みんなと楽しく過ごしたかっただけなのに…」

魔王「むーくん…」

村人「魔王様は…」

村人「魔王様は、出て行かないんですか…?」




魔王「行けるわけ、ないじゃん…」

魔王「むーくんの…そんな悲しい顔見て、出ていけるわけないよ…」ギュ

村人「………」

村人「私は…皆さんと出会い、魔族と人間はもしかしたら共存できるんじゃないかって…」グス…

村人「でも…やっぱり、無理なんですかね…?」

村人「私達は、相容れないんでしょうか…?」ポロポロ

魔王「そんなことない!!」

魔王「ボクは…ボクは……!」

魔王「人間の事…好きだよ…?」

魔王「むーくんの事だって大好きだよ…?」

魔王「むーくんは、何でボクがあの時、殺さずにこっちに誘ったと思う?」

村人「…わかりません」

魔王「あの時、ボクに対して、むーくんは何一つ態度を変えず接してくれたでしょ?」

魔王「ボクね、嬉しかったんだ。例え魔族相手だろうと自分を曲げず、素直な気持ちで対等に接してくれてる」

魔王「ボク達は、魔族ってだけで人間から攻撃されたりしてたんだ」

魔王「こちらからは人間を攻撃しないように、そして人間とわかり合えるように頑張ってきたんだけどね…」

魔王「やっぱり、無理なのかなって思ってた」

魔王「でもそんな時、むーくんと出会って…人間にもこんなにも優しい人が居るんだなって…」

魔王「だから…諦めずに、人間と共存出来るように頑張ろうって改めて思ったの」

魔王「ボクは、むーくんの事…信じてるから」

村人「魔王様…」

魔王「大丈夫、きっとみんなも心の何処かで信じてくれてる」

魔王「ただ、今は仲間がやられちゃって気が動転してるだけだよ」

魔王「だから…ね…?今をどうするか、一緒に考えよ?」

村人「…ありがとう、ございます…」グス…

魔王「うんうん、よしよし…」ナデナデ

魔王「むーくんには、ボクがついてるから。安心して…?」

村人「……はぃ………。」ギュ






     コンコンッ!



魔王「どうぞ」

部下「失礼します!偵察部隊より通達が入りました!ご報告よろしいでしょうか?」

魔王「良いよ。あの4人組の事?」

部下「それもあるのですが、事態は更に深刻になっていまして…」

魔王「言ってみて」

部下「はい!早朝に報告した4人組がこちらに向かっているのですが…」

部下「それと同じくして、南西の国、北西の国、そして西の国から大軍がこちらに向かっているとの知らせが入りました」

部下「4人組と戦闘した魔族達は急所を外され一命は取り留めているのですが…」

部下「国からの大軍と戦闘を行った魔族達は全て命を落としているそうです」

部下「こちらも対抗しなんとか保っているのですが…」

部下「早朝に知らせた4人組の件、そしてそこを大軍に突かれ指揮系統は混乱」

部下「このままでは突破され、3日後にはこの魔王城近くまで進軍されると予測しています!」

部下「我々はもはや魔王様の命に従うしかありません!いかが致しましょう!?」

魔王「……国の兵士と戦ってる魔族達には一旦退くように言って。それと例の4人組には極力近づかないようにも言っといて」

魔王「後は順に追って連絡する」

部下「はっ!畏まりました!それでは失礼します!」


    キィー
     バタン


魔王「……し…ょ…ぅ」

魔王「どう、しよう……!」

魔王「どうすれば、良いんだろう…?」

魔王「こんな、事に…なるなんて…」

村人「…4人組の一行が魔族を薙ぎ倒し、その混乱に乗じてこちらを攻め落とすつもりですよ」

魔王「仲間も、人間も、誰も傷ついて欲しくないのに…」

村人「………」

魔王「どうして人間はいつも血を流すような事するの…?」

魔王「このままだとまた戦が起こっちゃうよ…」グス…

村人「…もう、これから起こるのではなく既に起こってます」

魔王「嫌だよ…また人間を攻撃するなんて…ボクは嫌だよ!」

魔王「もう、このまま…」





村人「………」ギリッ

村人「…何甘ったれた事言ってるんだ!!」

魔王「…っ!」ビクッ

村人「人間にも優しい人は居る、それは間違ってない。だけど…」

村人「それと同じく悪い人だって居る。魔族にだって居るだろ?」

村人「こうしてる間にも各地で魔族達が少なからず殺られてる」

魔王「ぅん…」

村人「こうなってしまった以上、誰も傷つかないなんて選択肢は無い!」

村人「戦での小を切り捨て勝利と言う名の大を成す行為は嫌いだ。だけど魔王、アンタは魔族の長なんだろ?」

村人「アンタが狼狽えていてどうする!このままだと小どころか大すら失うぞ!!」


村人「敵…というより人間は魔族を全て悪だと思い込んでる」

魔王「そんなの、どうすればいいの…」

魔王「ボクにはわからないよ…」グス…

村人「なに、相手と全面的に殺し合いなんてしなくても良いんだ」

村人「要は相手国の王に、魔族全てが悪では無いと納得してもらえりゃいい」

魔王「でも…どうやって」

村人「…方法が無いことも無い」

魔王「ほんと…?」

村人「うん。例の強い4人組、あの一行に賭けるしかない」

魔王「あの4人組に一体何するの…?」

魔王「ボクは…何をすれば良い…?」

村人「ふぅ…。とりあえずどうにかしてここに来る前に接触を図ってみたいですね」

村人「魔族は全員急所を外して攻撃されてるって所も気になりますし」

村人「それには、魔王様と魔王様の軍が必要になります」

村人「ですので…私に力をお貸しくださいませんか?」

魔王「うん…ボクに出来ることなら何でもする。だから…」



魔王「むーくんもボクに力を貸して…?」ス…

村人「はい。もちろんです」ス…


    ギュッ


魔王「んっ…約束の握手!」

村人「はい、約束です」

魔王「えへへ…ごめんね、ボクがこんなんだとダメだね…しっかりしないと…!」

魔王「叱ってくれてありがとう、むーくん」

村人「…どういたしまして」

村人「それでは、これから作戦を立てましょうか」





村人「そして、パパっと終わらせて焼き芋大会でもしましょう」ニコッ

魔王「うん!」

………
……

    ―会議日誌―

――ボクはむーくんの事も、そしてみんなの事も信じてるから!
――力で従わす事はボクは絶対にしたくない
――だからお願い…
  みんな、力を貸して…? 魔王
――どうか、お願いします。 村人

今日はここで終わります

………
……

ー???ー

 ザシュッッ!!  
         ドスッ
    ドゴォ!       
   
    ドサッ…

??「んんー?なんか魔族とあんまり遭遇しなくなったね」

???「だな。なんか怪しい気がしなくもないが」

???「良いじゃないか、出会ったら面倒だ」

??「ですね、無駄な戦闘は避けたいです…」

??「えぇー暇じゃない?」

???「というかお前は血気盛ん過ぎるんだよ…」

??「そうかな?剣振るの楽しいじゃん」

???「振るのは良いが俺に当たらないようにしてくれよ!」

???「ったく、勇者様が聞いて呆れるな」

??「わ、私は勇者じゃないってば!ただの剣士だよ!」

剣士「…そう、私は剣士…西の国でとある人に拾われそのまま何やかんやあって今はそのとある人を探しながら魔王城を目指す旅をしている最中なのだ!」

???「なんか急に語りだした」

剣士「もう一つご紹介しなければいけないのが…そう!私の仲間たち!!」

???「お前は一体誰に話しているんだ」

剣士「さっきから私に会話のツッコミ、そして夜のツッコミをしているのが私の幼馴染、魔術使!」

魔術使「ちょ、おま!夜のってなんだよ!」

剣士「ご存知の通り、なかなかキレのあるツッコミをされるんですが、夜の方はあまりキレがありません…」

魔術使「だ、だから夜の方ってなんだよ!!」

???「お前、オレ達がいない所でそんな事を…」

魔術使「ち、違うってば!」

剣士「そんな…あれは遊びだったと言うの!?」

??「魔術使さん…見損ないましたぁ…」

魔術使「誤解だ!」

剣士「さぁ次々行きますよ!」

魔術使「お前はどこに向かってるんだ…」

剣士「ほえ?魔王城ですけど…」

魔術使「そういう意味で言ったんじゃないから!」

剣士「さてさて、二人目は闘術家さん!なんとこの人、術を使いつつ接近戦もお手の物!すごい!魔術使なんて役立たずでいらないですね!」

闘術家「流石に魔術使ほど術を使えたりはしないさ。オレができるのはせいぜい小さな術を飛ばすか拳に纏うぐらいだな」

魔術使「使われたら俺の立場が無いからな、つか役立たずって酷いな」

??「私の立場も無いですね…」

魔術使「お前はまだ治癒の術使えたりするんだから良いじゃん、羨ましい」

剣士「ちゅーの術!?ちゅーってあのちゅっちゅ唇をつける、あの!?」

魔術使「お前は黙れっとれ、俺がちゅーするぞ」

剣士「おぇ…」

魔術使「傷つくからその反応はやめてください」



剣士「最後の三人目いっときますか…そう!我らの天使、僧侶ちゅわんです!」

僧侶「え、えっと…よろしく…?」

魔術使「ほんと、僧侶はアホな剣士と違って天使だわ」

剣士「なっ…浮気!?浮気するのねアナタ!」

闘術家「おいおい…浮気する男は最低だぞ」

僧侶「同意です」

魔術使「そんな、俺何もしてないのに…」

剣士「話変わりますけど、魔王城って本当にこっちで合ってましたっけ?」

魔術使「唐突すぎるだろ!」

僧侶「えっとぉ…地図によればこのまま何も起こらなければ3日くらいで着きそうですね」

闘術家「3日か、まぁ気長に行こう」

魔術使「そろそろ野営の準備でもするか」

剣士「夜営………夜の営み……はっ!もしや私達の体を狙ってる!?」

剣士「僧侶ちゃん!襲われないように気をつけて!」

魔術使「襲わねーよ!ていうかどう解釈したらそうなる…」

剣士「もうっ…獣なんだからぁ」ツンツンッ

魔術使「お前の装備剥ぎ取って焼くぞこら」

剣士「闘術家さん、魔術使が『お前の装備剥ぎ取って焼くぞ』って言ってますよー」

闘術家「はは、その時は一瞬で息の根を止めるから大丈夫だ」

魔術使「アンタが言うと洒落にならないからやめてください…」



魔術使「てか、そういや剣士はとある人…じゃなかった、お兄さんの事まだ諦めてないのか?」

剣士「当たり前じゃん!諦めきれるかってんですよ!」

魔術使「確かにあの人は良い人だったが…」

僧侶「魔王城に向かったんでしたっけ…」

魔術使「魔王城に確か、偵察?とかで単身で乗りこんだんだよな」

闘術家「単身で、か…凄い勇気だ」

剣士「偵察という名の捨て駒ですよ、絶対。」

魔術使「お兄さんが帰ってこないんで、国中探してたんだけど」



魔術使「王城に乗りこんだ時、俺は死を覚悟したな」

僧侶「あぁ…あの時ですか…」

剣士「王様なら何か知ってるかなーって」

魔術使「にしても聞き方ってもんがあるだろ…」

僧侶「あの時の剣士さんは相当怒ってましたね…」

闘術家「騎士団長…とやらを倒したんだったか」

魔術使「そうそう。剣士のやつ、お兄さんが王の命令で魔王城に行かされたって聞いた時に…」

魔術使「すんごいブチギレて王に斬りかかったんだよな……それをその時、横に居た騎士団長が防いだんだけどさ」


魔術使「いやーもう、正直俺には何が起こってるのかわからなかったわ」


僧侶「お互いの剣が速すぎて音しか聞こえませんでしたね」


闘術家「オレから見ても凄まじかったぞ、その歳でその剣捌きは驚いた」


魔術使「でも謁見の間で斬り合いしてる姿はなんか面白かったけど」ハハハッ

剣士「そんなにですか…?」

魔術使「当たり前だろ、しかもあの時のお前の『オラアァァァァー!!!』って叫びながら騎士団長ぶっ飛ばしたのは今でも鮮明に思い出せるぞ」

僧侶「あれは衝撃的でしたね…」

剣士「そう言われると結構恥ずかしいね」

闘術家「そしてその後の、『ッッシャッッ!オラァァッッ!!倒したぞォ!!』という叫びもなかなか印象的だった」

剣士「うぅ…やめてくださいよぉ…」

剣士「だって王が『騎士団長を倒せるものなら倒してみぃ!』とか言うんだもん」

魔術使「しかしあの王も図々しかったなー」

僧侶「ですね、最低です」

魔術使「騎士団長倒したからって、『おぉ!そなたが誠の勇者か!?』とか言っちゃってさぁ」

闘術家「しかしその時の魔術使はちゃっかりしていたな。軍資金と称して金を王から巻き上げるなんて」ハハハッ

魔術使「俺も腹が立ったからなー」

僧侶「あんなゲスい魔術使さんは初めて見ましたね」

剣士「だよねー、ゲスすぎ」

闘術家「確かにあれは、その…王相手になかなかだったぞ…」

魔術使「そんなにか!?」

剣士「『俺、遠隔で国中の人に話せる術を持ってましてねぇ(ハッタリ)』」

剣士「『この事バラされたくなかったら…出すもんわかってるよなぁ?あん?』とか言ってたね」

僧侶「しかも最低な人とはいえ、一国の王相手にですからね…」

魔術使「あの時は…ほら…やけくそだったんだよ…」

魔術使「それに、どうせ剣士のやつは止めても国を出て探しに行くだろうし金が必要だったのは本当だ」

僧侶「でもまさか、こんな事になるとは思いもしませんでした」

闘術家「そうだな、魔物討伐の依頼で組んだが、まさか旅をするまでになるとはな」

剣士「その…なんか、ごめん…」

魔術使「お前が謝ることじゃないだろ、それに王が『軍資金上げたんじゃし魔王倒してくれぃ』とか言ってきたんだしな」

魔術使「気にすんな、意外と旅も結構楽しいしな」

僧侶「私もです!」

闘術家「だな、オレも色んなこと経験できて毎度新鮮な気持ちになれる」

剣士「みんな…ありがとう」

魔術使「お兄さん、無事だといいな」

魔術使「俺がこうして魔術使になってるのもお兄さんのおかげだし」

闘術家「そうなのか?」

魔術使「あぁ…昔な、近接で戦うのめんどくせーって相談したことあるんだよ。その時にお兄さんが…」

魔術使「『お前、術の才能ありそうだし勉強してみたら?遠くから攻撃できて楽だぞ』って言われて、あっその手があったか!って思ったよ」

僧侶「魔術使さんって意外とお馬鹿ですよね」

魔術使「うるせぇ!…剣士もお兄さんが助言して今があるしな」

剣士「だねー、私はお兄ちゃんが剣をひょろひょろ振ってるのを見て楽しそうだったから私も一緒に振っててさ…」

剣士「それで試しに模擬戦してみたら『ちょっおまっ!まってまって!死ぬから!』」

剣士「『いやーお前、俺より剣の才能あるんじゃね?年下に負けるとか泣きたいんだけど』って言われて」

剣士「もっとお兄ちゃん泣かしてやろうって思って頑張ってたのよねー」

魔術使「お前性格悪すぎだろ……お兄さん本気で泣いてたぞ」

魔術使「その後、剣士が騎士団にちょろっと入った時期あったんだけど」

剣士「あー、あの時か…」

魔術使「お兄さん、心配だからってコッソリ騎士団の試験受けて結局落ちてて笑ったぞ」ハハハッ

剣士「もぅ、貧弱なのに来るから」

僧侶「苦労してますね、お兄さん…」

魔術使「まーそれで、なんだ…魔王倒すのはついででいいんだよついでで」

僧侶「でも、魔王城に乗り込んで無事かどうか…」

闘術家「何と言ったって、魔族の本拠地だからな…」

魔術使「剣士のお兄さん、案外しぶといしきっと無事だよ」

剣士「だと良いんですけど…」

剣士「ぐぬぬ…魔王め…会った時は必ず斬り殺します!」

魔術使「んじゃ、そろそろ飯にするか」

………
……


……

魔王「それで…どうするの?」

村人「えーと…地図はありますかね?」

魔王「ちょっと待ってね、確かここに…」ゴソゴソ

魔王「あったあった!はいっ」

村人「ありがとうございます」

   パサッ…

村人「ふーむ…」

村人「この魔王城は北東に位置してる…」

魔王「うん、そうだよ」

村人「ここに攻めて来ているのは南西と北西、それに西の国か…」

村人「進軍速度がわからないけど、早朝には出発してて、報告で3日後にはここに来るくらいの速度か…」

村人「南東の国は…ドラ爺のおかげで地図から消し飛んでるけど、東の国からは何も音沙汰無し、か…」

村人「何も起こらないと良いけど…」

村人「敵の軍勢はどの程度かってのはわかります?」

魔王「ちょっと聞いてみるね」

村人「んえ?聞く?」

魔王「うん、偵察部隊の指揮官に」

村人「ちょ、ここから!?」

魔王「?そうだよ?言葉を直接相手の頭に送って意思疎通するの」

村人「さ、流石魔王様…」

魔王「んーと、なになに…敵の軍勢は約1400…だってさ」

村人「げっ…1400!?多すぎるでしょ…」

村人「南西、北西、西の国、それぞれどのくらいの兵士が出ているかわかりますかね?」

魔王「んーと、だいたい南西が450、北西が400、西が550くらい…だってさ」

村人「西の国からの兵士数が凄まじいな…」

村人「だとすると、あの4人組一行は西の国の者、なのか…?」

村人「数的に、西の国はこの戦に全兵力を注いでそうだ…」

村人「ちなみにこちらの勢力は…?」

魔王「んー…結構やられちゃったと思うけど、それでも200ちょっとくらいは居るんじゃない?」

村人「す、少ねぇ…」

村人「この数で対抗できるの、かな…」

魔王「まぁ、この200はあの6匹の直属の部下を外した数だけども…」

村人「えぇ!?」

村人「じゃ、じゃああの6匹の部下を全部合わせるとどのくらいに…?」

魔王「えっと…オークの所が120、隊長の所が180、吸血鬼の所が110、猫又とラミアの所は70、ドラ爺の所は20くらいだったかな…」

村人「よく覚えてますね…」

魔王「まぁねぇ、これでも魔王だし」

村人「ちょっと書き起こしてみますか」カキカキ


 西の国  550
 南西の国 450
 北西の国 400
 謎の一行 4
        』


 オーク部隊   120
 スケルトン部隊 180
 吸血鬼部隊   110
 猫又部隊    70
 ラミア部隊   70
 ドラゴン部隊  20
 他       200
           』

村人「あの…例えばオークさんの部隊に配属されてる方は全てオーク族なのでしょうか?」

魔王「ううん、全てってわけじゃないよー、中にはオーク族以外も混ざってたりするけど基本的に得意な事は同じって感じ」

村人「ではオークさんの部隊は力自慢の方達が集まってるって感じですか…」

魔王「そそー」

村人「…これなら、なんとかなる…かもしれませんね」

魔王「でも相手より数百も数が違うよ?」

村人「そこは何とか策を練るしかありません」

村人「あとは皆さんが来てくれる事を祈るしか…」

魔王「大丈夫!きっと来てくれるよ!」

村人「…ですね、私も信じてます」

村人「あっそうだ、この地形を利用すれば―――」
………
……

     ―会議日誌―

――所で、お腹空いたんだけど…。魔王
――実は私もです。
 朝食べてませんからね。追記,村人
――先に焼き芋食べちゃう?追記,魔王
――食べちゃいます…? 追記,村人
――
――
――
――
――ダメだもう食べよう! 魔王
――食べちゃおっかな! 追記,村人
――いやっほぅー! 追記,魔王

今日はここで終わりますっ

………
……


ー魔王城,屋上ー

オーク「はー…」


オーク「クソッ!わけがわからねぇよ…」


オーク「あいつは裏切ったのか…?でもあいつはそんな事する奴じゃねぇとは思うが…」


オーク「じゃあ一体俺様の部隊に何があったんだ!?」


オーク「あー、クソ…頭がごちゃごちゃだ」


オーク「だが、仮に裏切ってたとしても人間に軽くやられたんじゃあ俺様達の鍛え方が足りなかったってのもあるよな…」


オーク「………」

オーク「俺は一体何を信じれば…」

……



吸血鬼「………」

奴隷「考え事ですか…?」

吸血鬼「うん…?あ、あぁ…すまない」

奴隷「いえ…。難しい事ですか?」

吸血鬼「そう、だね…難しい事だ」





吸血鬼「………」

吸血鬼「なぁ、奴隷よ。君はもし信じていた人が裏切っているかもしれない場合、どうする?」

奴隷「裏切り、ですか…。」

吸血鬼「うむ…」

奴隷「その、信じていた人が裏切ったって証拠はあったりしますか…?」

吸血鬼「いや、無い…。状況で判断したまでだ」

奴隷「その人は、何と言ってましたか…?」

吸血鬼「『私は裏切っていない』と言っていたよ」

奴隷「でしたら…」







奴隷「私はその人を信じます」

吸血鬼「ほぅ…それは何故だね?」

奴隷「その人は吸血鬼様にとって大切な人なんですよね?だったら」

奴隷「信じないで後悔するより信じて後悔した方が良いと思うからです…」

吸血鬼「なる、ほど…」

吸血鬼「ふふふ…まさか君に教わるとはね…ありがとう」ナデナデ

……

ー中庭ー

隊長「はぁ…」

部下「隊長、元気が無いですね」

隊長「ははは…貴方達にもそう見えますか…?」

部下「はい。掃除も全然楽しそうじゃありません」

隊長「貴方達に言われるようでは、私もまだまだですね…」




部下「悩み事ですか…?」

隊長「…ですね。」

部下「隊長らしくありませんよ!いつもの隊長なら何も考えず突っ走っていくじゃありませんか!」

部下「あの人間の事ですか…?」

隊長「っ…!」

部下「…俺達は、隊長について行きますよ。それがどんな命令でも」

部下「だから、俺達のことは気にせず、隊長の思うままに行動してください!」

部下「その人間が裏切ったって所、見てないんでしょう?だったらまだ犯人だと決めつけるのは早いですよ!」

隊長「……そう、ですね…。」


隊長「………」






隊長「そうです!何を悩んでいたんでしょうか。私がこの目で見た物を信じればいい!」

部下「はははっ!その息です!」

隊長「ありがとう!私は少し用事があるので各自、いつでも出れるように準備をしていてください!」タッタッタッ

部下「わかりました!」

……



ー部屋ー

ラミア「ねー、猫又ー」

猫又「何にゃ?」

ラミア「むーくん、本当に裏切ったと思う?」

猫又「私は…やっぱり裏切りじゃないと思うにゃ」

猫又「それに、あのむーくんに裏切り行為ができるはずにゃいというか…」

ラミア「あー、それはある…かも」

ラミア「キツく言っちゃった事、謝りに行こうかな…」

猫又「一緒に、行くかにゃ?」

ラミア「うん…来てほしい…」

猫又「ふふっ、任せるにゃ!」

 


  ドタバタドタバタ…


ラミア「なんか、さっきから騒がしくない?」

猫又「だにゃあ」







ラミア「ねー、何かあったの?」シュルルル

猫又「どうしたにゃ?」スタスタ

部下「これはラミア様!それに猫又様も!」

部下「魔王様から魔王城とその周辺にいる魔族全員に招集をかけておられるのです!」

部下「なんでも、敵と対抗する為に人間と策を練っているとか…」

部下「っと…それでは私は失礼します!」タッタッタッ






ラミア「人間…」

猫又「きっとむーくんの事にゃ…」

ラミア「私達、あんな酷い事言ったのにそれでも魔族達に協力してくれるんだ…」

猫又「やっぱり、むーくんは良い人にゃ…裏切る人がこんな事するわけないにゃ!」

ラミア「…そうだね、私達も行こう!」シュルルル

猫又「りょーかいにゃっ!」タッタッタッ

……



ー魔王城,裏山ー


ドラゴン「ふむぁ…」

部下「おや…ドラ爺殿、いつにも増して真剣に悩んでおられますね」

ドラゴン「そうじゃの…ここ最近では一番の悩み事に入るくらいじゃ」

部下「…ドラ爺殿がよく話しておられた人間の事ですか…?」



ドラゴン「まぁ、そうじゃ…のぉ…」

部下「あの人間、私達の間でも話題になってたんですよ」

部下「あの魔王様直属の6匹様に平気でふざけた態度で接している人間が居るって」ハハハッ

部下「面白い人間ですよね。私はそんな図太い人間が裏切りなんてちっぽけな事、するとは思えないです」



ドラゴン「やはり、お主もそう思うか…?」

部下「はい。私は、実はあの人間は世界征服の為に魔王様を利用しに来た、と言ったとしても驚きませんね」ハハハッ

ドラゴン「お主もなかなかじゃな…」ククク

部下「おや?どこか行かれるんです?」

ドラゴン「ふぉっふぉっ…なぁに、ちと野暮用じゃよ」

部下「ははっ、必要な時はいつでも呼び出してください」

ドラゴン「うむ」

……


ー側近の部屋ー


側近「…むーくんは本当に裏切り行為をしたのでしょうか…?」


側近「…私は、何度考えても裏切ったと言う結果に辿り着けません…」


側近「あの方は自由に生きてました…自由すぎるほどに。」


側近「私達魔族を見てもものともせず、一緒に笑い、一緒にふざけ合い…」




側近「………」


側近「憶測だけで決めつけてはダメ、ですか…」

側近「魔王様の言う通りですね…。私は冷静に判断できていなかった…」

側近「過ちは、正さなければいけませんね」スタスタ

………
……



ー会議室,前ー

ゾロ ゾロ ゾロ


ラミア「あれ、みんな…」

吸血鬼「おやおやこれは皆さんお揃いで…」

猫又「やっぱりみんなも、かにゃ?」

隊長「ですね!」

オーク「お、俺様は別に魔王様が気になって来ただけだよっ!」

ドラゴン「ふぉっふぉっ…皆、考える事は同じじゃのぉ」ノソ…

側近「ふふっ、さっ参りましょうか」

ドラゴン「おっと、わしはあちらから…」


 カチャ…     チラッ
       
  キィー






村人「そうそう、それで妹が―――」モグモグ

魔王「えぇ!?そんな事まで―――」モグモグ

村人「はははっ、流石に―――」

魔王「もぅ!むーくんったらっ―――」


   アハハハハハッ


側近「(これは…)」

猫又「(にゃんというか…)」

ラミア「(すごーく…)」






「「「「「「「入りづらい!!」」」」」」」

猫又「ちょちょ!なんで二人は談笑なんかしてるにゃ!?」

オーク「クソッ!心配損かよ!」

村人「あれ、皆さんいつの間に」

魔王「みんなお帰りー」

隊長「ただいまです!」

吸血鬼「お二人共、楽しそうですねぇ」

ラミア「む、むーくん!」

村人「うん?なんでしょう?」

ラミア「そ、その…さっきは、酷い事言ってごめん…なさい…」

村人「………」



側近「私も…すみませんでした…」


吸血鬼「軽率な発言、すまなかった」


ドラゴン「本当にすまんのぉ…」


隊長「すみませんでした!!」ペコ


猫又「むーくんごめんにゃぁ…」


オーク「その、悪かったよ」ポリポリ


魔王「むーくん…」チラッ







村人「言葉ではどうとでも言えますよ」

猫又「にゃぁ…」

吸血鬼「………」

ラミア「ぅん……」

ドラゴン「うむぅ…」






村人「ですので、行動で誠意を示して欲しいですね」

村人「現在緊迫した戦況にあります」

猫又「緊迫してたのにあんな談笑してたのかにゃ!?」

村人「そりゃ、こちらの今の戦力では貴方方がいないとどうすることもできませんし…」

魔王「お手上げって感じだよねー」

隊長「魔王様軽いっ!」

吸血鬼「ははは…なるほど」

オーク「で?俺様たちは何をすりゃいい?」

猫又「何でも協力するにゃ!」

ラミア「うんうん!」

隊長「部隊も自由に動かせますので言ってください!」

吸血鬼「借りは返さなければならないからね」

ドラゴン「わしに出来る事があれば何でもするぞい」

側近「私も全力で助力させていただきます」



村人「皆さん、ありがとうございます」

村人「では、作戦…と言ってもただ簡単な事なんですが…」

村人「それをまずは話しましょうか」

魔王「だねー!」

………
……

     ―会議日誌―

――みんな来てくれてありがと! 魔王
――信じていました。 村人
――もちろんにゃ! 猫又
――イケメンな俺様がいねぇとどうしようもねぇだろうしな! オーク
――張り切って行きましょう! 隊長
――むーくんだけだと心配ですしね。側近
――しかし君達は先程から何を食べているのだね? 吸血鬼
――焼き芋だよー! 追記,魔王
――ちょっ2人共ズルいー!追記ラミア
――とっとと片付けて焼き芋でもするかのぉ… ドラゴン
――焼き芋ぉぉぉぉ!! オーク
――焼き芋にゃぁぁぁ!! 猫又 
――2人共落ち着いて… 追記,村人

今日はここで終わります!

ー会議室ー


村人「一応確認しておきますか」パサッ



 西の国  500
 南西の国 350
 北西の国 350
 謎の一行 4
        』



 オーク部隊   120
 スケルトン部隊 180
 吸血鬼部隊   110
 猫又部隊    70
 ラミア部隊   70
 ドラゴン部隊  20
 他       200
           』

村人「皆さん、地図を見ていただけますか」

村人「まず北西の国とこの魔王城の間には大きな山岳地帯があります」


村人「ここで先に隊長の部隊を当てます。その後頃合いを見計らって」


村人「後方からドラ爺の部隊が空から援護しつつ隊長の部隊を使って数で押します」


村人「あの場所で陸と空から攻められるとは思われない、はずです」


村人「というかわかっていても人間では空からの追撃にはせいぜい矢を放つくらいしか抵抗できないでしょう」


ドラゴン「ふむ、なるほどの…」

隊長「たしかに!」

村人「次に西の国についてですが、ここと魔王城の間には大きな森が多く広がっている場所があります」


村人「森の外から回り込んで他の魔族たちに攻めてもらって相手を森の中におびき寄せます」


村人「そこをオークさんと猫又さんの部隊で一気に仕留めましょう」

猫又「ラミアとは組まなくてもいいのかにゃ?」

村人「大丈夫です、オークさんの部隊は力が強いですが速さが足りない」

村人「ですので、猫又さんの部隊と組ませてそれを補います」

オーク「ほぉ…」

村人「西の国から来る兵士の数は他の国に比べて多いです。まともに正面から衝突してもこちらが押されます」

猫又「にゃるほど…森を使ってバラけさせるのかにゃ」

村人「その通りです。森は視界が悪く不意打ちにはもってこいですからね」


村人「ですが視界が悪いのはこちらも同じ事なので不意打ちに失敗した者は一旦退くように魔族の方々に言っておいてください」


村人「あくまで森では相手の数を減らすのが目的なのですので」

オーク「うし!任せとけ!」

村人「それと、西の国の兵士とは殺すつもりで戦闘してくださいね。慈悲なんていりませんから」

魔王「む、むーくん…大丈夫なの…?」

村人「大丈夫じゃないですね、確実に死ぬ者がお互い出ます」

魔王「じゃ、じゃぁっ…」

村人「甘い事なんて言いっこ無しですよ。こちらは数が少ないんです、手加減なんてしてられません」

猫又「うにゃぁ…」

ラミア「なんか、私達より…」

吸血鬼「魔族っぽいね…」

ドラゴン「じゃのぉ…」









村人「ったく、こちらは何もしていないのにあちらから仕掛けてくるなんて……。西の国、本当に虫唾が走るな…」ボソッ

魔王「んえ?何か言った?」

村人「いえいえ、何も…」

村人「そして、最後は南西の国なんですが…」

村人「魔王城との間に何かあったりしますかね?」

魔王「確か…洞窟があったよね?」

吸血鬼「えぇ。高い山を超えて来る事も可能ですがそれよりは洞窟を通った方が遥かに楽ですね」

村人「じゃ、その洞窟を利用しますか」

村人「洞窟の中がどういう構造なのかわかってたりします?」

吸血鬼「もちろんわかっているよ」

ラミア「あそこはよく利用するしねー」

村人「部隊が待ち伏せ出来るくらいの大きさってあります?」

ラミア「あるよー、元々あの洞窟は山の中を通ってるから思ったより大きいのよ」

村人「では吸血鬼さんの部隊を少し分けましょう」

吸血鬼「分ける、とは…?」

村人「そうですね…数を40と70に分けましょうか」

村人「その40の方を先に敵と遭遇させ少しずつ出口の方に後退しつつ戦闘させてください。この40は待ち伏せに勘付かれない為の囮みたいなものですね」

村人「ある程度戦った後はその40匹の方は退いて貰って構いません」

ラミア「私の部隊からは行かなくてもいいの?」

村人「はい。敢えてここは行かせません」

村人「吸血鬼さんの部隊だけ敵と戦わせる事でラミアさんの部隊の存在を気づかれないようにします」


村人「後は敵が出口近くまで進んだら、洞窟の中で待ち伏せをしている吸血鬼さんの部隊と出口付近で待ち伏せしているラミアさん部隊で挟み撃ちって感じです」


吸血鬼「挟み撃ちか…なかなかむーくんもやる事がえげつないね」ハハハッ

ラミア「私と吸血鬼は暗闇でも相手の位置が見えるから、か…」

村人「えぇ。そして吸血鬼さんの部隊は夜襲が得意と仰っていたので」

猫又「(むーくんは絶対敵に回したくないにゃ…)」

村人「あ、それと皆さん猫又さんみたいに何か特殊な武器とか持ってますよね?」

ドラゴン「わし以外は持っておるはずじゃ」

村人「そうですか。ではその武器の詳細をペラペラ敵に喋らないようにしてくださいね」


村人「オークさんとかが特にしそうなんですけど、対策されるのを少しでも遅くさせたいんで。」

オーク「うぐぅ…良くわかってるじゃねぇか…」

猫又「ぷくくっ…デブは毎度敵に自慢げに話してるにゃ」

村人「最後に…敵部隊の指揮官、長格の者を発見した場合、可能なら優先的に負傷または殺してください」

村人「多分、大幅に士気や隊列、連絡系統が乱れると思うので。」

魔王「やっぱり殺しちゃうの…?」

村人「ですね、あちらも殺すつもりで来ている以上、こちらもやらなければいけませんし」


村人「うまく行けばそのまま時間稼ぎができたり運が良ければ兵士達が退いてくれる可能性もあります」


村人「あ、もう1つ。ドラ爺の部隊の部下を1匹借りても良いですか?」

ドラゴン「ふむ…それは構わんがどうするんじゃ?」

村人「謎の一行が気になるので部下のドラゴンでひとっ飛び行ってこようかなと」

ドラゴン「ふぉっふぉっ…なるほどの…では一匹こちらに寄越しておく」

村人「ありがとうございます」

村人「私から話す事は以上です、何か質問とかありますか…?」

隊長「質問です!オークさんと猫又さんは手加減無しと言われていましたが私達はどうすれば…?」

村人「そうですね…やはり数で負けている以上、手加減などする暇無いんですが」

村人「敵の動けなくなった者は拘束なりして捕虜にでもしましょうか」

隊長「拘束ですね!わかりました!」

村人「他にはありますか?」

魔王「むーくん、ボクは何したらいいの?」

村人「まおちゃんは連絡係りですかねー」

魔王「それは、良いんだけど…むーくんとは話せないよ?」

村人「えぇ!?なんで!?」

魔王「ボクの念話は魔族相手にしか効かないから…」

村人「そ、そんな制限があったなんて…」

村人「では私の傍にずっと居てください」

魔王「え、えぇ!?ずっと傍にって…はわわわわ……」カァァァ

側近「ぐぬぬ…」

村人「他にはありますか?」

側近「はいっ!はいっ!」

村人「なんだか元気の良いそっちゃん、どうぞ…」

側近「私はまだ何も言われてませんが…何をすれば?」

村人「側近さんは魔王様と一緒に行動してください。万が一の為、魔王様の傍にはお強い方が居た方が良いです」

村人「それと、戦況をまとめて記録して欲しいです。側近さん上手そうですし」

側近「わかりました、お任せ下さい」

村人「後は、無いですか?」

 シーン…

村人「無さそうですね」

村人「私から言えることは全て言いました。また、随時戦況を報告します」

村人「それと、相手が降伏なりしてきた場合、攻撃の手を緩めずまず連絡をお願いします」

村人「では、各自お願いします!」


……

ー中庭ー

部下「魔王様と側近様こんちはっす!それとアンタがあの話題の人間っすね!」

魔王「こんにちはー!」

側近「こんにちは」

村人「え、えぇ…あなたはドラ爺の所の方ですか…?」

部下「そうっす!ドラ爺さんから言われてお迎えにあがりやした!」

村人「ありがとうございます。まおちゃん、偵察部隊に謎の一行がどこに居るか聞いてくれますか」

魔王「りょーかいー」

村人「部下さん、早速乗っても良いですかね?」

部下「どうぞっす!」ノソ…

村人「んっしょっ…んっしょっ…」ヨシヨジ

村人「………」プルプル…

側近「よっと…」スタッ

村人「えぇ!?何その跳躍力!」

側近「むーくん、ドラゴンにすら登れないってどういう事なんですか…」

村人「筋力が無いんですよ!助けて!」

側近「仕方無いですね、手をどうぞ」ス…

村人「あ、ありがとうございましゅ…」

魔王「ほりゃっ」スタッ

村人「ちょっとみんななんでそんなホイホイ飛び乗れるんですか…」

魔王「…?ボク魔王だし」

側近「そもそもむーくんは人間なので当たり前だと思いますよ」

村人「ぐぬぬ…あ、部下さん飛んで下さい」

部下「了解っす!」バサッ


   ブワッッ!!




村人「お、おぉ…これは落ちたら即死だな…」チラッ

魔王「むーくん、謎の一行の件なんだけど…」

村人「あ、なんて言ってました?」

魔王「それが…見失った、らしい…」

村人「見失った…?」

魔王「うん…今至急、捜索してるんだけど…」

村人「最後に確認した場所はどこです?」

魔王「えっと…地図で言うとこの辺なんだけど…」









村人「ぇ…嘘…」

魔王「痕跡からして、西の森に入ったと思われる、って…。」

村人「まじですか…非常にまずいですね……」

側近「その森、確か作戦でオークさんと猫又さん達が待ち伏せをしている…」

村人「あの二人には手加減するなって言っちゃったし、出会うと交渉どころじゃなくなっちゃうぅぅ!!」

村人「部下さん!全速でお願いします!!」

部下「了解っす!!」ビュンッ!!


………
……

     ―会議日誌―

――そういえば、なんでむーくんはそん
なに戦について詳しいの? 魔王
――あー…昔、騎士団に入ろうとした事
がありまして。私は体力が無いので頭
を使おうと思い、本とか読んだんです
よ。結局落ちましたけどね! 村人
――おぉ、わりと予想が当たってた…
           追記,ラミア
――まじかにゃ…。 猫又
――どうりで詳しいわけだ 吸血鬼
――しかし落ちたのか…今度飯でも奢っ
てやるよ…。 オーク
――今度一緒に訓練しましょう! 隊長
――わしも手伝うぞい。 ドラゴン
――むーくん、魔王様の下着を差しあげ
るので元気出して下さい…。 側近
――そっちゃん何してるの!?追記,魔王

今日はここで終わりますん

ー北西,山岳地帯ー

部下「前方、敵を視認!」

隊長「いよいよですね…」

隊長「皆さん、先ほど言った通り!」

隊長「手加減無し、ただし抵抗できなくなった人間は拘束して捕虜にします!」

隊長「後は…死なない程度に頑張りますよ!!」

  オオオオォォォー!!!!!

…………………………

兵士「前方に魔族の大軍を確認!どうなされますか!?」

北兵士長「数はどれくらいだ?」

兵士「数は約200!こちらが上回っています!」

北「ふん!舐めてられた物だな…」

北「このまま正面から押し切るぞ!魔族は皆殺しだ!!」

兵士「はっ!」

   オオオォォー!!
…………………………


キンッキンッ   ザシュッ!!   ウオー!

  ザシュッ  ドサ…   ワーワー


ドラゴン「ふむ…どうやら始まったようじゃな」

部下「やはり少し数でこちらが押されてますね…」

ドラゴン「ふぉっふぉっ…まだまだこれからじゃわい」

ドラゴン「わしらは敵後方の空から攻撃じゃぞ」

ドラゴン「なるべく広範囲を攻撃せい」

部下「わかりました!」

ドラゴン「さて、そろそろ行くかのぉ」ノソ…

部下「了解です!」


  ブワッ  バサッバサッ
      
         バササササッッッ!!


ヒュンッ  ヒュンッ    
 ドゴォ!  ドゴォ!

   ボオオォォォ!!!


兵士「な、なんだ!?」

兵士「グワー!」

兵士「後方から敵を確認!あれは…ドラゴンです!!」

兵士「アイエエエ!!ドラゴン!?ドラゴンナンデ!?」

北兵士長「なんだと!?一体どこから…」

北「ぐっ…囲まれた!!」

兵士「くっそぉ!!」

北「待て!取り乱すな!」

兵士「やべぇよ、囲まれた…どうすりゃ…!」

兵士「ぐはっ…!」ゴフ

兵士「兵士長!ドラゴンの追撃によりこちらは防戦一方です!」

北「くそ!ドラゴンなんて報告には無かったぞ!!後衛は矢を放て!!」

兵士「うおおおおぉぉ!」ヒュンッヒュンッ

兵士「こちらも矢を放ちます!」ヒュンッ



兵士「ダメだ!早すぎて当たらねぇ!」

兵士「兵士長どうしますか!?」

北「な、何故だ…魔族は知性が低いはず…!!なのになぜ…!!」







北「何故こうも連携が取れているッッ!!」

………


ー南西道,洞窟(中)ー


吸血鬼「さて、先程伝えた通りに分かれてくれ」

部下「了解です!」

 ゾロゾロゾロ…


部下「吸血鬼様!まもなく人間が洞窟に侵入します!」

吸血鬼「ほう、思ったより早いじゃないか」

吸血鬼「皆、位置につけ」

吸血鬼「第1部隊はなるべく負傷しないように出口に向かいつつ敵を引きつけるのだ」

吸血鬼「第2部体は敵が出口付近まで進んだ後、不意打ちを仕掛けるよ」

部下「はっ!」

吸血鬼「さてさて、楽しませてくれよ…?」

…………………………

ー南西道,洞窟(入口付近)ー


南兵士長「ふむ…洞窟か…」

兵士「いかがいたしますか?」

南「山は超えれないか?」

兵士「とてもじゃないですが、超えるとなると時間がかかりますし何より、隊の疲労が大きくなります」

南「洞窟は危険が多く入りたくないのだが…。他の国に遅れを取るわけにはいかないし、仕方が無いか…」

南「それに、魔族が何か考えてるとも思えんしな」



南「総員、洞窟に前進だ!」

兵士「はっ!」

南「憎き魔族は見つけ次第始末しろ!!」

南「行くぞッ!!」

   ザッザッザッザッ…

…………………………

ー南西道,洞窟(出口付近)ー


ラミア「にししっ…みんな、気配を消しといてねー」

部下「ここで待ち伏せですか?」

ラミア「そそー。ちゃーんと吸血鬼がうまくやってれば良いんだけど…。」

ラミア「まっ、心配はいらないか」

部下「この作戦、あの人間が考えたんですよね?」

ラミア「そうだよー、不満?」

部下「いえ、逆です…。同族相手にここまでの行為を考えつく人間も居るんだなと…」

部下「普通、躊躇ったりすると思うのですが…」

部下「あの人間、本当に人間なんでしょうか…?」

ラミア「私達よりよっぽど魔族らしいよねー」

部下「是非ともうちの部隊に勧誘したいところです」

ラミア「あはは…私もそうしたいけど、むーくんは魔王様のお気に入りだしねー」

部下「魔王様も認める程の人間ですか、世の中何があるかわかりませんね…」

ラミア「そうねぇ…っと、そろそろ位置についてね」

部下「了解です」


  シュルルルル……

…………………………

ー南西道,洞窟(中)ー


南兵士長「列を崩すな、周囲を警戒せよ」

南「明かりは絶対に切らすなよ」

兵士「ん…?あれは…」

兵士「兵士長!前方に魔族発見!いかがいたしますか?」

南「焦るな。このまま進む。数はどのくらいだ?」

兵士「暗くて確定はできないのですが、約50かと…」

南「はっ、50か。この暗闇を利用して少人数でこちらを倒す気か?笑えるな」

南「ふん、あれで待ち伏せているつもりか…?」

南「皆、各隊の松明を持つものを一人増やせ!明かりで見える範囲を広くするぞ」

兵士「はっ!!」

   ザッザッザッザッ……


兵士「兵士長!まもなく魔族と衝突します!」

南「皆、武器を抜け!」

兵士「はっ!」スチャ

兵士「来たな…」カチャ

南「弓班、弓を射て!」

兵士「…はっ」ギチチ…ヒュンッ

  ヒュンッ ヒュンッ 
   ヒュンッ  ヒュンッ


南「ほぅ、避けるか」

南「前衛、突撃だ!」

兵士「うおおぉ!!」ブンブン

兵士「どうした!そんなものか!」キンッキンッ

兵士「家族の敵!」ダダダッ

南「このまま出口まで押し切るぞ!!」

  ザッザッザッザッ!





兵士「兵士長、魔族は後退する一方ですね」

南「この戦力の差だ、逃げるのも無理は無かろう」

兵士「兵士長!もうすぐ出口です!」

兵士「魔族共め…思い知ったか!」

兵士「まだまだ行くぞぉ!」


南「ふん、ようやく―――」






  ザシュッ!  ザシュッ
   ドスッ     ザンッッ



兵士「ぐはっ!」

兵士「どうした!?なにが―――」ドスッ
 
兵士「ごほっ…なん、だ…」ドサ…

兵士「何が起こってるんだ!?」

南「ん…?どうした!何があった、報告せよ!」

兵士「兵士長!後方から―――」ズシャッ

南「どうした!」

吸血鬼「遅いですね」ヒュンッ ザクッ

吸血鬼「皆、松明を狙うのだ」

部下「了解!」

吸血鬼「(こうして人を刺すのは久しぶりですね…)」ザクッ

兵士「な、なんだこいつら!」ゴフッ

兵士「くそっ!松明を持っている者が次々と!!」

兵士「これじゃあ暗くて見ぇねぇ!」

兵士「兵士長ぉぉ!!後方から、後方から魔族が!!」

南「なんだと!!!我々は敵がいない事を確認していたはず!」

南「ぐっ…一体どこから湧いてきた!?」

兵士「ぐぞ…なん、で…」ドサッ

兵士「くそ!出口だ!出口から出るぞ!!」

兵士「走れぇぇぇ!」ダダダッ


ザシュッ    ドシュッ!
  ザシュッッッ  ボゴォッ! 

   ゾロゾロゾロ…


兵士「で、出口が…!」

兵士「なんで…なんで出口にも魔族がいるんだよぉぉ!!」

兵士「ぐああぁぁ…焼ける!!焼けるぅッッッ!!」ボォォォ

兵士「くそッ!あいつら術も使えるのか!!」

兵士「兵士長!出口に多くの魔族が固まっていて道が塞がれています!」

南「くっ!なら後方の魔族を蹴散らし後退を…!!」

兵士「ダメです!!多すぎて突破できません!!」

兵士「兵士長!退路も魔族に塞がれています!!どうしますか!?」

南「なんだと!?何が起こっている!?」

兵士「ぐ…あっ…体が…!」

兵士「兵士長!出口方面より魔族を率いている長の様な者がこちらに向かってきます!」

南「ぐぬぬ…皆!何としても退路を確保するのだ!一旦退くぞ!!」


兵士「体が…うごか、ない…」ギチチ…

兵士「くそっ…なんで、だ…」ギチチ…

兵士「ぐうううぅぅ!!」ギチチ…


 






ラミア「はーいはい、どいてねー」ドスッ

ラミア「やっぱり《魅了》って普通に効くのねー。むーくん相手に効かなかったから自信なくしてたんだけど…」ザシュッ

ラミア「(もしかしてむーくんに私はメスとして見られてない…?)」

ラミア「むーくんが言ってた隊の長ってどこにいるのかなー」ザシュッ

ラミア「ねー吸血鬼、どいつだと思うー?」ドシュッ

吸血鬼「ふむ、先程から声を荒げ命令を出しているこの方ではないかな」ス…

兵士「なっ!?いつの間に…!!」

南「しまッッ…!!」

兵士「兵士長ぉぉ!!うぉぉぉ!!」チャキ

兵士「みんな兵士長をお守りするんだ!!」

ラミア「あー、もう邪魔だなぁ」



 ズバババババッッッ!!!


兵士「ぬあっ!!」

兵士「ごはっ…」ドサ

兵士「なん、だ…と…一瞬でこの数を…」ゴフッ

兵士「俺達は鎧も着てるって、のに…げぼっ…」ビチャ


 ドサドサ 
ドサ   ドサ…ドサ…

ラミア「さてっと…キミがこの隊の長なの?」

南「そ、そうだとしたらどうする…?」ジリ…

吸血鬼「良かった、合っていましたね」

南「………」ス…

ラミア「両手を上げて何してるの?」

南「…私達の負けだ」

ラミア「あれ、諦めちゃうんだ」

南「あ、あぁ…。」

南「だから死ぬ前にせめてその武器の詳細を最後に教えてくれないか」

南「なんなのだ、その奇っ怪な武器は…」

南「それに武器はその刀だけではないのか?他にもある気がするのだが…」

南「そして仲間はどれくらい居るんだ?まだ隠れていたりするのか?」

南「(あの刀と隠し持っている武器がなんなのかさえわかればこちらにも勝機はあるはずだ…!)」

南「(どれくらいの数が居るのかも判明すれば更に勝率が上がる…!)」

南「(そして……少しでも時間を稼ぐ…!!)」

ラミア「んー?あー…武器?」

ラミア「それと、仲間の数…」

ラミア「そうねぇ…」

南「……」ゴクリ










ラミア「ぬふふっ教えてあーげないっ!」ザシュッ!

南「っ!?ごはっ、げほっ…おえぇぇ…」ビチャ

吸血鬼「そもそも、武器がわかっていたとしても間違い無く貴方では勝てませんよ」

吸血鬼「何せ彼女は、どんな武器も軽く扱い使いこなしてしまうのですから」

ラミア「一応死なないように斬っといたから安心しなよ」

南「ぐ……きさま、らぁ………」カク

ラミア「あらら、気を失っちゃった」

ラミア「(まっ、私がよく使う曲刀【苗絡刀】は重さが殆ど無く切れ味は抜群。鎧だって巧く振れば斬れちゃうのよねー)」

ラミア「(むーくんに言うなって言われたから言わないけど)」

ラミア「(ていうか誰が仲間の情報を言うかっての)」

ラミア「私達は動けない人間を拘束するから残ってるのは任せたよー」

吸血鬼「えぇ、お任せください」ダッ



…………………………

ー西の森ー


オーク「おめぇら!敵相手に手加減なんてすんなよ!」

猫又「不意打ちが失敗した者はすぐに退くにゃ!」

部下「任せな!」

部下「了解です!」

オーク「うし!それじゃあ各自さっき言ったように隊を作れ!」


 ゾロゾロゾロ…


猫又「終わったようだにゃ…じゃあ森の外の魔族達に合図を出してくれにゃ!」

部下「はっ!」

オーク「クククッ…久々に腕がなるぜ!!」

猫又「にゃふふっ…早く戦いたいにゃ!」

…………………………


ー西之森,入口付近ー


西兵士長「皆、別件で騎士団長は不在だが手を抜くな!」

西「団長に頼らなくても勝てるように我々はならなければならない!」

西「もうすぐ森に入る、気を抜くなよ!」

兵士「はっっ!」

兵士「兵士長ー!左方向より魔族の群れを確認!まもなく交戦します!」

兵士長「ほぅ、さっそくお出ましか。迎え撃て!」




兵士「ふんっ!」ブン

兵士「おらぁ!」ドスッ

兵士「それほど強くないな…!」ズバッ

兵士「ははっ!なめやがって!」

兵士「兵士長!右方向より魔族の群れを確認!!」

西「なに!?このままだと挟まれるな…」

西「予定より早いが、急いで森に入る!」

西「魔族達を牽制しつつ進行だ!」

西「森に入れば奴らを撒ける!行くぞ!!」

兵士「はっ!」

 ザッザッザッザッザッザッ!!








魔族「はぁ…はぁ…」

魔族「なんとかうまく行ったか…?」

魔族「あぁ…。俺達は森に誘い入れるまでが仕事だからな…」

魔族「ふぅ…後は任せますぜ。オークの旦那」

魔族「だな…。すぐに負傷者を手当するぞ!」

魔族「おう!」

…………………………

ー上空ー


魔王「むーくん、みんな順調だってさ」

村人「そうですか、このままいけばいいんですけど…」

村人「敵は多分、こちらの魔族は殆ど知性が低い者ばかりと思っているはずです」

村人「ですので、こんな簡単な罠にも引っかかってくれるんだと思いますが…」

村人「うーん…」

魔王「どしたの?」


村人「西の国にはすんごい強い騎士団長という方が居ましてね…。その人の報告を聞かないのが気になってるんです」

魔王「騎士団長…?」

村人「はい。兵士長の更に上の人と言えばわかりますかね」

村人「西の国は兵士達をひっくるめて騎士団と呼んでるんですが、騎士団長はいつもは警護として王の側に常に居るんですよ」

村人「その間、兵士長が代わりに軍の指揮をするんですが…」

魔王「その、団長さんは強いの?」

村人「強いですよ、そこら辺の魔族ではまず勝ち目ありません」

村人「あの人だけは特別でしてね、魔族の群れから一人で国を守ったとかなんとか聞きましたし…」

村人「交戦すれば自ずと連絡が来るはずなんですが…」

魔王「ほ、ほえー…」

村人「あの6匹の方々なら、まだ何とかなる、かもしれませんが…」

村人「いずれにせよ、単独で挑んで欲しくない相手ですね」

魔王「とりあえずその事、みんなに伝えとくね」

村人「お願いします」

…………………………

ー西の森ー


剣士「ふぅー、結構歩いたけどまだ森抜けられないの?」

僧侶「抜けるにはもう少しかかりそうです」

魔術使「はぁ…しんどっ!長ぇよ!」

闘術家「まぁまぁ、敵には殆ど会っていないんだし良いじゃないか」

剣士「だねー………ん?」

魔術使「どうし―――」




剣士「しっ!静かにして」

僧侶「何か居ました…?」コソッ

剣士「あそこ見て」コソッ

魔術使「……んー?うおっ、結構近い所に居たな…」コソッ

闘術家「あれは…魔族だな…」コソッ

剣士「うん。でも他の魔族と違う雰囲気を感じる」

闘術家「一匹は…大きいな、あれはオーク族か…?」

剣士「かもね。もう一匹は獣の耳…。猫かな…?」

魔術使「にしても、あいつら…凄いデカイ声でボケとツッコミを繰り返してるな」ププッ

僧侶「ふふっ…面白いですね」

闘術家「魔族もオレ達みたいなもんなのかもな。ただ姿が違うってだけで…」

僧侶「そうかもしれませんね…」

魔術使「…で、どうする?」

剣士「決まってるでしょ、とりあえず倒す」

剣士「何か知ってそうならその後に聞こう」

魔術使「お前は穏便という言葉を知らないのか…」

剣士「魔族は絶対に許さないよ。あいつらのせいで私の村は壊滅したんだし」ギリッ

剣士「魔術使が急所外せって言ってなかったら魔族は一撃で仕留めてるよ」

魔術使「おっかねーなほんと…」

剣士「…でもあの2匹の魔族、相当強いと思うよ」

僧侶「えぇ!?」

闘術家「剣士がそこまで言うんだからそうなんだろうな…」

剣士「多分、手加減してたらこっちがやられちゃうかもね」

魔術使「マジかよ…」

剣士「相手はまだこちらに気づいてないから…魔術使、不意打ちして。」

剣士「それと同時に一斉に飛び出すよ!」

僧侶「わかりました」

闘術家「了解だ」

魔術使「よっし!任せろ!」ザッ

…………………………

ー南西道,洞窟(入口付近)ー


「王に命じられて来てみたが」

「確か南西の国からの通信兵が来ず、連絡が途絶えたと言っていたな」

「…魔の気配を感じる。これはやられたか」

「西の国の兵士達の事は、一応兵士長に任せてあるし大丈夫だろう」



「ふむ…洞窟か…」

「あの数をこの洞窟内で倒したのか…。相手がなかなかの手練かそれとも南西の国の兵士達が貧弱だっただけ、か…」

「そして何より、奴ら魔族側にはかなり知性が高い者がついているな」


「何にせよ、油断は禁物だな」

「まぁ、行けばわかるか」


  スタスタスタ…

…………
……

 ―どんな村人でもわかる戦術指南書―

1,まずは相手がどの程度の強さなのかサササーッと見極めよう!ついでにこちらの軍勢もシュワッと確認だ!

2,次に、戦となる地形を把握しよう!
こちらが有利になるようにズバンッと編成するのだ!

3,えっ?こちらの方が人数が少なくて負けるかもって?まぁまぁ慌てるな!
そう言う時はピコーンッ!と策を練ろう!

4,上記に加え、相手の軍勢、個々の武器、強さが判明し次第、相性が良くなるようにシュパパパッと更に人員を配置するのだ!

5,戦況は常にキラーン☆と把握すべし!

6,予期せぬ事態が起きたって?
はっはっはっ!その時はまず情報を少しでも多く集め、何が起きているのか冷静にグワワッと把握するのだ!

如何だろう!
これでキミも今日から戦マスターだッ!

次のページからは武器の扱い方についてダゾ☆



村人「…」ペラッ


村人「……」ペラッ…



村人「………」パタン



村人「ふぅー…」











村人「………全っっっ然っわからん!!!」スパーンッ

今日はここで終わります

ー北西,山岳地帯ー

キンキンッ ドゴォ! 
 ドゴォ!  ザシュッ ドガッ


兵士「ぐぁ……魔族、め…」ゴフッ

兵士「ちくしょぉ…」ドサッ

北兵士長「おかしい…魔族にこんなに知性があるなんて聞いた事ないぞ!!」

北「このままではこちらが敗けてしまう…」

北「何か…何か手は…!!」






隊長『すいませーん!』

北「な、なんだこの声は!?」

兵士「兵士長!あそこに大きな声を発している魔族がいます!」

北「あれは…あちらの指揮官か…?」

兵士「そのようですね…」

兵士「兵士長、魔族の動きが次々止まっていきます!」

兵士「今のうちに攻撃をいたしますか!?」

北「だ、だめだ!それこそ相手の逆鱗に触れるかもしれん…」

北「ひとまずこちらも止めるぞ!」

北『皆!攻撃をやめぃ!!!』

 ザワザワザワ…
 





隊長『あのぅ!降伏するなら今のうちですよー!』


隊長『こちらも無駄な死者は出したくないのでー!』


北「な、なんだとぉ!?」

北「(意味がわからん…!なんだ??こいつ、何が狙いだ!?)」

隊長『どうしますかー!?』

北「(しかし、今の戦況はまずい…ここは相手の提案に乗ってみるか…)」

北『そちらの指揮官殿!我々も無駄な死人は出したくない!退いて頂けるのならそちらの要求を受け入れよう!』

北「(とりあえず乗っておいて頃合いを見計らって不意打ちだ…!!)」

北「(魔族なんかに従ってたまるか!)」

部下「おぉ…人間が受け入れたぞ…」

隊長「あ!そういえば降伏した時はむーくんに知らせなくてはいけませんね!」

隊長「どなたか連絡をお願いします!」

部下「わかりました」


隊長『それでは、全員武器を捨て…』

北『その前に!まずは貴方と対面して直接話をしたい!可能ならばこちらに来ていただけないだろうか!』

隊長『そうですね…この状態で話すのは失礼ですよね。わかりました!今そちらに行きますね!!』

隊長「どなたか私と一緒に来ていただけますか?」

部下「私がついていきます!」

部下「俺も行きます!」

隊長「ありがとうございます、では行きましょう!」スタスタ


………………………………………

ー上空ー

ヒュゥゥゥゥゥ…

魔王「ん…?隊長の部隊から連絡が入ってきた…」

村人「おっと、来ましたね。内容は…?」

魔王「えっとぉ…敵の長が降伏したって…」

村人「ふむ…やはりですか」

魔王「あ、それと敵の長が話をしたいと持ちかけ、敵陣に隊長が向かったって…」

村人「げっ…まずいですね」

魔王「そうなの?でも敵は降伏してるんじゃ…」

村人「まおちゃん、人間を甘く見てはいけませんよ」

村人「人間はずる賢くそれでいて平気で裏切り、更に欲の為ならなんだってします」

魔王「それをむーくんが言っちゃうんだ…」

村人「そうです。同じ人間だからこそわかるんですよ」

村人「隊長には、その敵の長には注意してって言っておいてくれますか…?」

魔王「ん。わかった」

村人「もう、遅いかもしれませんが…」


……………………………


ー西の森ー

  ヒュンッッ


猫又「っ!!オークっ避けるにゃ!」

オーク「むっ!?うおッッ!」バッ

猫又「大丈夫かにゃ!?」

オーク「大丈夫だ…お前のおかげで、何とか当たらずに済んだ」

猫又「そこに居るのは誰にゃ!!」





魔術使「あちゃー、避けられちまったな」

剣士「とっとと行くよ!」

闘術家「おうっ」

僧侶「はいっ!」


ガサガサ
   ガサガサササッッ


剣士「闘術家さんはデカイのを!僧侶ちゃんは魔術使と援護をお願い!」タッタッタッ

闘術家「任せろ!」

魔術使「了解!」

僧侶「わかりました!」

猫又「オーク!動きを止めるから全体攻撃にゃ!」タッタッタッ

剣士「(動きを止める…?)」

オーク「うぉぉぉぉ!フンッッ!!」ブンッ

猫又「にゃふふっ」ピタッ


ドゴォッッ!!ズドドドドドドッッッ


剣士「ッ!?みんな横に飛んでっ!!」バッ

闘術家「ぬおっ」バッ

魔術使「おわわわっあぶねぇ!」バッ




僧侶「わわ…ぇ…!か、体が…!」グググ

剣士「僧侶ちゃん!!」

僧侶「っきゃぁっ…!」バチィッ!

闘術家「僧侶!」

剣士「な、なんで…!いつもの僧侶ちゃんなら避けれたはずなのに…!」

剣士「魔術使!僧侶ちゃんの手当をお願い!!」

魔術使「わかった!」

僧侶「す…すみ…ませ、ん…体が動かなくて…」ハァハァ

闘術家「何だあれは…?衝撃の様な物が飛んで来たな…」

剣士「地面に武器を叩きつけただけで出せるなんて厄介ね…」

猫又「オーク、もう一発行くにゃ!」

猫又「次はあの女にゃ!」タッタッタッ

剣士「くっ…!」

剣士「(振りかざした時に避けるしかない…!)」

オーク「うおぉぉ…」ググッ

剣士「来るなら来いっ!」チャキッ



オーク「フンッ!」ズダンッ!

剣士「(っ!?叩きつけの攻撃じゃないッッ踏み込んで来た!!)」

オーク「うぉぉぉぉッッオラァァァッッッ!!」ブンッ!

剣士「(ぐッッ!!まだ剣で防げば間に―――)」

猫又「にゃふふっ…」ピタッ


剣士「(また立ち止まった…!?)」

剣士「(ぐっ…体がッ…動か、ないッッ!!まずっ―――)」

闘術家「剣士ッッッ!!」

  
  ドゴォッッ!!


剣士「かはっっ…!」ドガガガッ…

魔術使「剣士!大丈夫かっ!?」

魔術使「くそッ!俺の治癒術じゃまだ僧侶の手当に時間がかかる…!!」

魔術使「後少し…闘術家っ!後少しだけ持ちこたえてくれ!!」

闘術家「わかった!魔術使はそちらを任せる!」ザッ

猫又「後戦えそうなのはアンタだけかにゃ?」

オーク「お前らか?俺の仲間を倒したってのは」

闘術家「何の事だ…?」

オーク「とぼけてんじゃねぇ!!」

猫又「村…丁度西の国近くの村周辺に居たオーク達の事にゃ」

闘術家「…さぁな」

オーク「ふん、あくまで知らないふりをするつもりか」

闘術家「もし、オレ達が倒したと言ったら…?」

猫又「仲間の敵は取らせてもらうにゃ…!」

オーク「…猫又、もういい。どうせ敵は倒さなきゃいけねぇんだ、それに…」

オーク「やってようがやってまいが」








オーク「てめぇらに選択肢なんかねぇんだよッッ!!」

オーク「猫又ァ!もう一発行くぞッ!」ググッ

猫又「任せろにゃ!」タッタッタッ

闘術家「(またさっきのか…!一体何故動けなくなるんだ!?)」

剣士「ぅ…ぐ…げほっ…げほっ…」モゾモゾ

魔術使「け、剣士…!無理すんなって!」

剣士「闘術家、さんっ…!」

闘術家「なんだっ!?」


剣士「影……影で…す!」

闘術家「影…?」

剣士「その小さい…やつに、影を踏まれないように…気を…つけてください…!!」

闘術家「(影…!!)」ダッ!

猫又「にゃにゃっ!?」スカッ


オーク「うおぉぉぉらぁぁぁッッッ!!!」ブンッ


ドゴォッッ!!ズドドドドドドッッッ


闘術家「っ!うご…ける!!動けるぞっ!」バッッ

オーク「何ぃッッ!?」

猫又「ちっ…」

猫又「(まさかこんにゃに早く《影踏み》に気づかれるとはにゃ…)」

闘術家「剣士、さっきは動けたが…一体アイツは影に何をしてるんだ…?」

剣士「ごほっ…ごほっ…、アイツ…は、私達の影を踏んで…動きを止めていたみたいです…」ハァハァ

魔術使「影を…?」

魔術使「そうか、だから攻撃前に立ち止まってたのか…」

闘術家「ははっ、理由がわかれば避けるのは簡単だな」

僧侶「んぐ…けほっ…」

魔術使「僧侶、大丈夫か?」

僧侶「はい…すみません、もう大丈夫です…!」

魔術使「よし、剣士の治療を任せていいか?」

僧侶「はい!すぐ取り掛かります!」タッタッタッ

闘術家「さて、と…魔術使、オレ達はコイツらを倒さなければな」

魔術使「あぁ…!《魔身増》!」シュゥゥゥ

魔術使「闘術家の身体能力を強化しておいた!後ろは任せろ!」

闘術家「助かる!」ビュンッッ



オーク「一度避けたからって調子に乗るなよッッ!!」ブンッ

猫又「オーク!待つにゃ!!」



ドゴォッッ!!ズドドドドドドッッッ



オーク「はぁ…はぁ…どうだッ!」

猫又「ど、どこにも居にゃい…!」キョロキョロ


  バチバチバチ…


猫又「な、何にゃ…?この弾ける音は…」ハッ






猫又「っっ!!オーク!上にゃっ!!」バッ

オーク「なん、だとぉぉぉ!?」


闘術家「何度も同じ攻撃を食らうほど…」バチバチ…


闘術家「オレ達は……甘くないぞッッ!!」


闘術家「《蕾稲拳》!!!」バチチチッッ



  ズドンッッッッ!!





…………………………………

ー上空ー

ヒュゥォォォォォ…





ズドンッッ………



魔王「わわっ…なになに?」

村人「結構大きな音でしたね…」

村人「もしかしたら…」

魔王「見に行ってみる?」

村人「はい、行ってみましょう」

村人「嫌な予感しかしませんが…」

……………………………



オーク「がっ……はっ……」ドサッ

猫又「オークっ!!しっかりするにゃぁっ!」タッタッ

オーク「俺の、事は…良い…!敵から目を離すな…!」ハァハァ

猫又「アイツらっ…!!」ギリッ

猫又「殺す…!絶対殺すにゃ…!!」

オーク「猫…又…!冷静さを、欠くな!」

オーク「ここは俺様たちしか居ねぇ…!やられるわけにはいかねぇんだ…」ゴホッゴホッ

猫又「わ、わかったにゃ…」

オーク「まだヤツらの一人は回復中だ…」

オーク「俺様をぶん殴った、アイツさえ倒せば…まだ勝機はある…!!」

猫又「任せとけ…にゃ…!」チャキ

闘術家「次はそちらのお嬢さんが相手かな?」

猫又「余裕ぶれるのも今のうちにゃ!」ダッ


猫又「《廻離》ッ!!」ビュンッッ

闘術家「むっ…?」

ヒュンッ   ヒュンッ  

  ヒュンッ   ヒュンッ
     ヒュンッ
 ヒュンッ

闘術家「(早いな…ついていくのがやっとだ…!)」

闘術家「(しかし、全て避けられない事は…無い…!)」バババッ

魔術使「お、おぉ…早すぎて術が当てれねぇ…」

僧侶「ど、どうしましょう…!」

魔術使「と、とりあえず隙が出来るのを待とう…」

ヒュンッ   ヒュンッ  

  ヒュンッ   ビュンッ
     ヒュンッ
 ビュンッ     ビュンッッッ


闘術家「(ぐっ…かろうじで避けれるが、やはり何発か食らってしまうッ!!)」スパッ

猫又「どうしたにゃっ!」

闘術家「(一瞬…!一瞬でも動きを止める事が出来たら…!!)」





闘術家「うぐっ…」ガクッ

猫又「にゃふっ…もう終わりかにゃ?」

闘術家「なん、だ…いつもより体力の消耗が激しく感じる…!」

僧侶「闘術家さん!今回復を…!」

魔術使「ま、待てっ!今近づくのはまずい!」 

僧侶「で、でもっ!」

猫又「(当たり前にゃ!私の武器【魔朽小太刀】は斬る度に相手の生命力を奪う刀…)」

猫又「(こんなに食らってまだ立ってるコイツがどこかのデブと同じくタフなんだけにゃ…!!)」

魔術使「くそ…あれじゃあ時間の問題だ…」

僧侶「…闘術家さん!壁を貼った時に合わせて攻撃してください!!」

闘術家「っ…わかった!!」

猫又「そんな隙は与えないにゃ!」バッ!



闘術家「(正面だと!?…これを狙うしかないッ!!)」バチチチッッ

闘術家「ふんッッッ!!」ブンッ


猫又「《残心》!!」

  スカッッ!!

闘術家「なっ!?これは…!!」

闘術家「(しまった…!残像を攻撃してしまった…!!)」

猫又「にゃふふ!これで終わりにゃあっ!!」ブンッ

闘術家「(ぐっ…)」





僧侶「《聖壁》!」

  ガキンッッ!

猫又「にゃっ!!?」

闘術家「しめた…!うおおぉぉぉ!!!」

闘術家「(チャンスは今しかない…!!)」バチチチッ

闘術家「これで…終わりだッ!!」ブンッ

猫又「ぅ…にゃっ!」







『ちょっと待ったあぁぁぁー!!!』


猫又「!?」

闘術家「ぬっ!?」ピタッ

魔術使「お、おいおい何だありゃ…」

僧侶「な、なんですかあれ…」

剣士「ドラ…ゴン…?」


バサッバサッバサッ


「いやー、危ない危ない…」

「間一髪だったねー」

「しかし、オークさんが倒されていますね…」

「二人共やられてないだけマシさ!」

「よっ」

「そりゃっ」

「とうっ!」

シュタッ   シュタッ   ズデンッ


側近「何やってるんですか…」

魔王「む、むーくん大丈夫!?」

村人「し、尻が痛い…」

側近「むーくんは本当に鈍くさいですね」

村人「しょうがないじゃん!貧弱なんだから!」

魔王「それ自分で言っちゃうの…」

村人「言っちゃいます!」



猫又「む、むーくん…?」

村人「おっ猫又さんお疲れ様です」

猫又「う、うん…お疲れ様、にゃ…?」

村人「あちゃー、オークさんは伸されてますね」

猫又「一応意識はあるにゃ…」

オーク「そう、だぜ…このカッコイイ俺様が意識を失うなんざ、あっちゃいけねぇ事よ…」

魔王「オークイケメン!」

側近「初めてカッコイイと思いました」

オーク「魔王様、ありがと、よ…」

オーク「側近は、何だとこの野郎…!後でぶっ飛ばす…」

側近「そんな事言って良いんですか?」ギロッ

オーク「…すいませんでした」




魔術使「ちょ!ちょっとちょっと!」

魔術使「和気あいあいしてるとこ悪いけど、敵!目の前に!居るからな!!」

僧侶「そ、そうですよ!」

闘術家「ん…?どうした、剣士…」

剣士「…ぉ…」

僧侶「お…?」







剣士「お兄ちゃん!!何してるのそこで!!!」

村人「ん…?うげっ!」

闘術家「剣士、お前が言ってたお兄さんってのが、あの人…なのか…?」

剣士「そうだよ!変な言葉遣いになってるけど!」

魔術使「うーむ…あんまり最近会わなかったが…そう言われると面影が…」ジー

村人「ひ、人違いですよ…」

魔王「むーくん、知り合い?」

村人「いえ、あの…」

村人「(ここでバレるとまた面倒くさいことになる…!!)」

剣士「お兄ちゃん!誰なの!その女の人っ!」

剣士「人っていうか魔族っぽいけど!!」

村人「わ、私はお兄ちゃんでは無いです…よ…?」

側近「そうなんですか?」

僧侶「剣士さん…あの人、違うって言ってますけど…」

剣士「ちょっとぉ!何で嘘つくの!?」

村人「いや…えっと…ここで知られるとまずいと言うか…」

側近「知られると、まずい…?」

村人「いえっ…そのぉ…」ダラダラ

剣士「そう…わかった」

村人「ん?あれ、わかってもらえましたか」

剣士「うん、わかったよ」

村人「ほっ…良かっ―――」










剣士「お兄ちゃん、操られてるんでしょ?」

村人「…へ?」

剣士「それとも、そこの魔族に脅されてるの?」

剣士「ごめんね、気づいてあげれなくて!」

村人「ち、ちがっ―――」

剣士「勝手に私のお兄ちゃんをたぶらかして…あまつさえ操るなんて…!!」

剣士「絶対に許さないッッ!!!」

剣士「大丈夫…私が助けてあげるからね…」チャキ

村人「剣を構えるのやめて!」

剣士「待っててね、お兄ちゃん」


魔術使「お、おいおいやべぇぞ!剣士を止めろ!」ガシッ

闘術家「あ、あぁ!わかった!」ガシッ

僧侶「剣士さん…!落ち着いてください!」ガシッ


剣士「は な し て !!」グググ…


魔術使「うおぉー!!三人がかりで止めてるのに引っ張られる!!」

闘術家「な、なんて強い力なんだ…」

僧侶「剣士さん止まってぇぇ」

村人「こ、こここ殺されるぅぅぅ!!」ガクガク

…………………………………

ー南西道,洞窟ー

ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…

吸血鬼「うん…?人間の生き残りか…?」

吸血鬼「そこで何を―――」

  ザシュッッッ!!

吸血鬼「なっ…ごほっ…」ガクッ

ラミア「っ!?吸血鬼…!」

「ふん、強い敵と戦えると思っていたんだがな」

「こんなにも呆気ないとは…」

ラミア「み、みんな…!吸血鬼の手当を…!急いで!!」




ラミア「キミ、誰…?」ギラッ

「魔族如きに名乗る程、私は暇ではないのでな」

ラミア「ふーん、そっか」

ラミア「まっ、アンタが誰だろうとどうでもいいや…」

「ほぅ…それはどうしてだ?」

ラミア「どうせ殺すから。」

「私を殺す、か。はははっ…」

ラミア「何がおかしいの?」

「出来るものならやってみてくれないか」

「果たして貴様ら魔族が私を殺せるか―――」

ラミア「うん、じゃあやってあげる」ブォンッ

  スパッッッ!

「ぬおっ…!」

ラミア「言っとくけど、次は手加減なんてしないから。」

「ははは…なるほど、な。やはりここにまで遠出して来たかいがあったな」

ラミア「私は優しいからね。もう一度だけ聞いてあげる」


ラミア「キミ、何者なの?」チャキッ

…………
……

     ―会議日誌―

――魔王様!私にも何か特殊な武器くださ
い! 村人
――良いけど…むーくん使えるの? 魔王
――竜にも乗れない筋力じゃ無理かと…
                側近
――武器が泣くぜ… オーク
――同感にゃぁ… 猫又
――ああいう武器はちゃんと使える人が
使ってこそだしねぇ… ラミア
――少し体を鍛えたらどうだろう 吸血鬼
――むーくんは貧弱すぎます! 隊長
――わしの背中に乗ってもよいぞ、元気だ
せい… ドラゴン
――うわあぁぁぁんドラ爺ぃぃぃ(泣)村人

今日はここで終わります


―――――

「…貴様はなかなか腕が立つようだな」

ラミア「当たり前じゃん。少なくとも、アンタよりは強いよ」

「ククッ…魔族も口が達者な奴は居るんだな」

「良いだろう、特別に名乗ってやる」






「私は‘‘騎士団長’’と言う者だ」


ラミア「へー、アンタも人間側の長なんだ」

団長「『も』、と言う事は貴様もか?」

ラミア「そうだね、これでも一部体の隊長を務めさせて貰ってるよ」

団長「なるほどな…」

ラミア「で?」

団長「…む?」





団長「人間の中で一番、とでも言っておこうかな」

団長「(少し前、若者にぶっ飛ばされたけどあれは本気出してなかっただけだ…!)」

団長「(流石に若き芽を摘むのは駄目だからな、うんうん)」

団長「(本気で相手をするなんて大人げないこともできないから、な…!)」

ラミア「ふーんふんふん」

団長「な、何かね?」

ラミア「アンタ、誰かに負けたでしょ?」

団長「…!?そ、その根拠はどこからだろうか?」

ラミア「そんな雰囲気を醸し出してる」

団長「雰囲気は関係無いだろうが!!」

ラミア「まぁ、負けたならアンタもその程度の腕って事っしょ?」ププッ

ラミア「アンタ、人間側で言うとどのくらい強いの?」

団長「ふむ…。強さか。そうだな…」



団長「人間の中で一番、と言っておこうかな」

団長「(少し前、若者にぶっ飛ばされたけどあれは本気出してなかっただけだ…!)」

団長「(流石に若き芽を摘むのは駄目だからな、うんうん)」

団長「(本気で相手をするなんて大人げないこともできないから、な…!)」

ラミア「ふーんふんふん」

団長「な、何かね?」

ラミア「アンタ、誰かに負けたでしょ?」

団長「…その根拠はどこからだろうか?」

ラミア「そんな雰囲気を醸し出してる」

団長「雰囲気は関係無いだろうが!!」

ラミア「まぁ、負けたならアンタもその程度の腕って事っしょ?」ププッ

団長「くっ…!この…」

団長「言わせておけばッッ」ダッ

ラミア「っ!」

団長「(遅い!!このまま横薙に叩き斬ってやる!!)」ビュンッッ



  ギャリリリンッッッ


団長「なっ!!」

団長「(こいつ…!剣で受け流しやがった!!)」

ラミア「アンタもまだまだ甘いね」

ラミア「あんな挑発に乗っちゃうなんて…さ!」


  ザンッッッ!!






  ドサッ…

ラミア「(ふー…面倒くさい相手だったしすぐに終わって良かった)」

ラミア「さて、と…吸血鬼の手当はどこまで―――」チラッ








「甘いのは果たしてどちらかな?」


ラミア「ッッ!!」ビクッ


 ドスッッ!!!


ラミア「かはっ…ぐ、ぅ…」ボタタ…

ラミア「(はぁ…はぁ…)」

ラミア「(ありゃりゃ…。腹を思いっきり刺されちゃったな…)」ゲホッ

ラミア「なん、で…動けるの…」

ラミア「確かに…斬ったはずなのに…」ヨロ…




団長「フハッ……急所は辛うじて外した…だけだ」

 ポタ
 :
 ポタ
 :



団長「ぐっ……」ガクッ


ラミア「っ!アンタ…」

団長「これでも人間一を名乗っているのでね…」

団長「不意打ちで殺られては格好がつかないだろう…?」ハァハァ


団長「私は…負ける訳にはいかないのだ…!」

ラミア「なるほど、ね…。アンタもそれなりの芯があるわけ、だ…」



ラミア「吸血鬼!!」

吸血鬼「…なん、だね?」

ラミア「アンタの小刀貸して!!」


吸血鬼「…仕方無いですね。私は今、持っていても戦えませんし、わかりました」ブンッ


===【小刀】パシッ


ラミア「それと吸血鬼、これはアンタが持ってて」ブン

吸血鬼「む…?これは…」パシッ

ラミア「私の隠し刀よ」


団長「ハッ!その刀が形見にならないと良いな?」

吸血鬼「わかりました。お預かりします」カサ…

団長「ふん。刀を2本持った所で変わらんよ」

団長「知っているか?2本同時に扱うのは1本を扱うのより遥かに難しい、とな」

ラミア「それはどうかなー?」

 ヒュンッ

団長「む!?」



団長「(何!?先程の小刀を投げてきやがった…!)」

団長「ぐおっ!」


 ガキンッ


団長「むっ?」

団長「(この小刀はもう片方の刀とは質が違うのか…?)」

団長「(あの刀のように鎧を通さなかったな…)」



  シュルルルッ…


団長「っ!しまっ…!」

団長「(まずい、さっきの攻撃で気を取られてしまった!)」

団長「(どこだ…?火は足元に立ててあるが視界が悪すぎる…)」


ブオンッ


団長「うおっ!!」

           ガシャンッガシャン…


団長「(何だ?何が飛んできた…?)」


 ブオンッ ガシャン…


  ズドドドッッ


団長「(おっふ!衝撃が痛ぇ!)」ドカッ

団長「(さっきから何なんだこれは…)」チラッ

団長「(これは…鎧か…?こっちは剣だな…)」

ドドドドッッッ


団長「(おっと!危ねぇ危ねぇ…)」ササッ

団長「(槍まで飛んできやがるな…)」

団長「おいおい何なんだぁ?この茶番は―――」

ラミア「後ろがお留守ですよーっと」


  ザンッッ


団長「ぐぁっ…!」ヨロ…

ラミア「同時に扱うのが難しい?そんなのこっちもわかってるつーの」






ラミア「誰が同時に使うって言ったのよ?」

団長「な、ナメやがって…」

ラミア「よっと」シュッ

 ヒュンッ



団長「ぐっ!?」

団長「(あの刀は鎧を通す刀…!)」

団長「くそっ!!」バッッ

団長「はぁ…はぁ…。」

団長「(何とか避けれたがまた見失ってしまった…)」

団長「ちょこまかと鬱陶し―――」

 


  ガキンッッッッ

団長「くっ…ははっ!」

団長「暗闇を利用して不意打ちを狙い続けてると思ってるかもしれんが」

団長「この鎧は特別製だ。そんじょそこらの剣程度で俺の体を斬ろうものなら、一体何年かかるんだろうなぁ?」

団長「もっとも、最初に持っていた刀なら斬れるが…さっき投げてしまったしな!ハハハッ」





ラミア「…その鎧、本当に斬り続けても壊れないのかなぁ?」

団長「何…?」

ヒュンッ

 ザシュッガギギギギギギンッッッ


  ヒュンッ ザシュッガギギンッ


団長「(こ、こいつ正気か?鎧の上から攻撃してきやがる…!)」

団長「(しかし剣捌きは俺より上かもしれんな…。早すぎて全てを弾ききれん)」



 ヒュンッ 
   ザシュッガギギギンッッ



 ガギギンッッ
    ヒュンッ


団長「(チッ!しかも合間合間に剣が頭に飛んでくるせいで鎧への攻撃が防げん…!!)」

シュルル…


団長「そこだッ!!!」ブンッッ



  ズオッッッ
    ガギィンッ



団長「何ぃ!?なんだ!!手応えが…!」

ラミア「ぬっふふー」シュルル

団長「(奴の装備の類は丸腰だったはず…!なのに何故斬った時に鎧の感触が…)」

団長「(それに何だ?奴は頭目がけて何本も武器を投げたはず…)」

ラミア「(ふふっ、実は鎧を持ってたりしてー)」

ラミア「(でも流石に手で持って防ぐだけじゃ弾かれちゃうね…)」

ヒュンッ 
 ヒュンッ ブシュッガギギギギンッッッ


団長「(しかし一行に止む気配が無い!)」


団長「(流石にこれだけの武器を全て持っていたならば外見でわかるはず…一体どこに隠し持っていたのだ…?)」


ヒュンッ
 キィンッ


団長「(チッ、埒が明かんな…)」



キィンッ ギギギィンッ 







ゴキンッッ!

団長「!?」

団長「(なんだ!?さっきの音は…まさか鎧が…?)」

団長「(斬り続けたら鎧が壊れる?そんなバカな話があってたまるか!)」


団長「貴様!!正々堂々戦わんか!!」

ラミア「嫌だねー。ていうかアンタも私に不意打ちしたじゃん」

団長「ぐ…それもそうだな…」

ラミア「(この人間はお馬鹿なのかしら…?)」

団長「(ごほっこぼっ…くそが…)」

団長「(しかもちょいちょい斬り後を斬りつけてきやがる)」ポタポタ

団長「(頭への攻撃の対処で傷への防御が遅くなってしまう…)」

団長「(まずいな、鎧が破壊されずとも体力の方が持たん…!)」

団長「(次の攻撃で決める…!!))

 ==スヒュンッッ



団長「(来た!この頭への攻撃を避ける!!)」ババッ


      ボシュゥ…


団長「(むっ!?火を消されたか…!しかしもう遅い!!)」


団長「(ここだ…!!)」



ガギギギンッッ―――――







団長「一閃!!前方横薙だッッ!!!」ブォッンッッ

 

  ガギャンッッ!!


ラミア「っとっと…!」

団長「ふん!ようやく捉えたぞ!」

ラミア「あらら…少し単調過ぎたかなー」

団長「フハハッ!貴様はどうやら力では私に劣るらしいな」

団長「所詮魔物。貴様一匹の力では私に勝てなかったと言うわけだ」ギギギギ













ラミア「だろうね。一匹だったらの話だけど」

団長「なっ―――」

 


  ドスッ…!




吸血鬼「ふぅ…ふぅ…。間に合って良かった」

ラミア「良いタイミングね…吸血鬼」

ラミア「こっちもそろそろ危なかったよ…」ヨロ

団長「くぁ…ごほっ……」フラッ






 ドシャァッ…


―――

ラミア「あー、疲れた…」ドサッ

部下「大丈夫ですか!?ラミア様!」

ラミア「あーうん、大丈夫…じゃないかも」

部下「すぐに手当をしますね!」





吸血鬼「全く、手負いの私に『合図と同時に隙をついて攻撃して』だなんて無茶を言ってくれるね…」

吸血鬼「一瞬、合図が何なのかわからず遅れてしまいましたけど…」

ラミア「あはは…でも出来たでしょ?」

吸血鬼「それは結果論じゃないですか…」

ラミア「まぁまぁ!」




団長「ぉえ……ぅ…」モゾ…

ラミア「おっとっとー?まだ息があったか」

団長「はぁ…はァ…なぜ…だ。いつ、作戦など…」

ラミア「作戦は隠し刀を吸血鬼に預けた時一緒にね」

吸血鬼「まさか魔紙が巻き付いてるとは思いませんでしたけどね」

ラミア「ふっふーん!流石ね!」

吸血鬼「自画自賛ですか…」

団長「なら…、あ…の…無数の武器は…」

ラミア「あれは周りに倒れてたアンタ達人間の物」

団長「だが…私達の武器は剣に槍、刀など多種に渡るはずだが…」

団長「それを歴戦の使い手の如く扱っていたのは何なのだ…?」

ラミア「私ね、大抵の武器は扱えちゃうのよね」

ラミア「だからああいう戦法も取れるのよ」



団長「…くはは…な、るほど…な…。」



団長「なぁ…。吸血鬼とやらは鎧を通す刀を持っているのか…?」

団長「確かにそこの蛇女は持っていたが…。」

ラミア「蛇女って酷い…ラミアちゃん傷ついちゃうよー」

吸血鬼「持っている、と言っていいのかわかりませんが…」

吸血鬼「私がラミアさんに渡した小刀は特別な物でしてね」

ラミア「そーそー。血が付着すればするほど切れ味と強度が増すんだよね」

団長「血が付着…。そうか。私の血か…」

ラミア「鎧を斬っていると思いきや本当は血を付着させてましたー」

ラミア「でも、今回は吸血鬼が居たのと洞窟内っていう私に都合の良い条件が揃ってたから勝てただけ」

ラミア「あと、流石にあの鎧を普通の剣で斬った時は‘‘ヤバイ’’って思ったねー…」

団長「そして合間に傷への攻撃を、か…」ゴホッ

ラミア「そ。で、最後、灯りが消える前に投げた武器あったでしょ?あれが例の武器ってわけ」

ラミア「まぁこういう武器使っちゃったりしてちょっとズルかったかなーって思っちゃったり…」

団長「…ふん…。」

最初に鎧や武器を私に向けて放ったのは攻撃の為では無い


私の周囲の壁や地に武器や防具を放ち自分の戦場と化させる為…

奴は攻撃後、武器を捨て移動しつつ再度近くにある武器を取り攻撃していたのか。
道理で無数に感じる訳だ


頭に向けて武器を放つ事で鎧への攻撃の妨害を防ぎこちらの体力を消耗させ
更に、常に防げない一撃目で鎧の間を斬り裂き血を付着させたのか…


多分、投げた時に周りの倒れている兵士達にも度々刺して付着させていたんだろう


鎧がおかしな音を立てたのはこの小刀の切れ味と強度が段々と増していて鎧が耐えられたなくなっていたからか…


そして尚且つ、注意を自分に向けるさせる事で吸血鬼とやらの回復の時間稼ぎ


合図は私の灯りを消した時、か…。

    








 
    見事ッッ…!!


完敗だ。清々しい程に、な


ハハハ…なかなか知恵の働く、そして強い魔物も居たものだ…


いや…。そんなのは連絡が途絶えた時からわかっていた事か。


見下していた魔物に負ける自分は何なんだろうな


情けない…。

ラミア「強いよ、貴方は。」

団長「………」

ラミア「ただ今回は運が悪かっただけね」ニヤ

団長「いや…私の負けだ。見抜けなかった私のな」

ラミア「潔いのね」

団長「そうだな。負けてしまったしな…。」

ラミア「…そ。」

団長「殺せ。情けはいらん」








ラミア「なんで?」

団長「はぁ!?敗者の命を取るのが普通だろうが…」

ラミア「そんな普通、私は知らないし」

ラミア「何より、私達は魔物だよ?人間側での常識なのかわからないけど、そんなのなんで聞かなきゃいけないの」

吸血鬼「はは…。ラミアさんらしいですね」

ラミア「それにもう勝負ついてるしね」

ラミア「誰かー、この人間の応急手当お願い」

吸血鬼「良いんですか?」

ラミア「うん。次も反抗してくるならその時は殺そうかな」

団長「ふん、変わった魔物だな」

ラミア「キミとはちゃんとした模擬戦してみたいからさー、今度うちに遊びにおいでよ」

団長「は…?家?それはまさか―――」






ラミア「魔王城」

団長「…貴様は何なのだ。敵の本拠地に招待されて、はいそうですかと行くと思っているのか?」

ラミア「あっ!何だったら竜でお出迎えしてあげるよ!」

団長「そういう問題ではない!」 

吸血鬼「ふふっ…。手が空いてる者、この人間に応急手当をしてやってくれ」

団長「くっ…!屈辱だ!」

ラミア「じゃあその屈辱を今度晴らしに来てよー」

団長「………。」



団長「…チッ。私もやられたままは嫌だからな」

ラミア「おっ!来てくれるの?」

団長「…行ったら魔王軍が戦闘態勢でお出迎えとかは無しだぞ?」

ラミア「それはやって欲しいっていうフリかな?」

団長「やめてくれ…」

ラミア「冗談だってばー」

―――

ラミア「そういえば、なんで魔物をそんなに憎んでるの?」

団長「………」


団長「…私が生まれた村が魔物の強襲にあってな…」

団長「両親は私を逃がす時間を稼ぐ為に…。」

団長「騒ぎが収まり戻った頃には村は無くなっていた」

団長「その後、国の騎士団に入ると宿や食事が出ると聞き、腕を上げ入団し今に至るってところだな」

団長「まぁ、よくある話だ」

ラミア「…ごめんね」

団長「何故貴様が謝る?」

ラミア「例え私がしていなくても、同族が取り返しのつかない事しちゃったから…」

団長「ふん、気にするな。貴様は関係の無い事だ」

ラミア「そ…。」

団長「まぁ、貴様の様なおかしな魔物も居るとわかっただけでも今回は収穫があったな」

ラミア「…ふふ。ありがとう」ニコ

団長「れ、礼などいらんっ!」

ラミア「もー!照れちゃって可愛い!」ギュッ

団長「抱きつくなっ!」


 ギャー
   ギャー






吸血鬼「ふぅ、一件落着ですね」

吸血鬼「(しかし、お互い凄い強そうな雰囲気で対峙してらしたのに…)」

吸血鬼「(お互い不意打ちで致命傷を与えられるとは何だかモヤモヤしますねぇ…)」

―――――
――

報告も無しに長々と空けてしまいすみませんでした!
保守してくださった方、感謝です!
今日はここで終わります!

――――


魔王「んあー…ふんふん、りょかい!」

魔王「じゃあ敵意がある無い関わらず、とりあえず全員捕まえといてー」

魔王「えっ!隊長がブチギレたの!?」

魔王「んもぉ…あの隊長を怒らせるって何したのさ」

魔王「あー、なるほど。騙し討かー」

魔王「隊長、そういうの嫌いだからなぁ」

魔王「その兵士長さんはどうしたの?」

魔王「あらら、ザックリと…か。まっ仕方ないよね」

魔王「一応その兵士長さん含めて、怪我してる人は死なない程度に手当してあげてね」

魔王「ほいほい、報告ありがとね!んじゃ切るねー」










魔王「隊長の方、無事終わったってさ!」

村人「無事じゃないような物騒な言葉がいくつか聞こえたんですけど!?」

側近「隊長さんがキレたとかなんとか…」

魔王「隊長が騙し討ちされて危なかったらしいよー」

村人「そんな軽くて良いんですか」

側近「騙し討ちですか…」

魔王「いやー、危ないのはどっちかって言うと人間さんの方なんだけどねぇ」

村人「…?というと?」

側近「ほら、皆さん特別な武器を持っていたでしょう?隊長さんも当然持っているわけでして」

側近「隊長さんの武器は、感情が昂ぶると強化される剣を持っているんですよ」

村人「か、感情が昂ぶると強くなる剣…」

魔王「ちょっ、そっちゃんボクの台詞取らないでよぉ!」

側近「すみません魔王様…。あとそんなしょげている魔王様も可愛いですね!」

魔王「その報告ボクにする意味は!?」

村人「隊長さん、温厚そうな方ですけど、武器が合ってないんじゃ…?」

側近「逆ですよ。あの剣は結構持ちの主の感情を取りやすく、普通の方が持てば暴走するか或いは上手く使いこなせないだけなんです」

村人「暴走するとどうなるんですか…?」

側近「簡潔に言うと、持ち主の体力が尽きるまでひたすら敵味方関係無く斬りかかり頭がおかしくなります」

村人「ひょえー…」

側近「むーくんなんて1秒であの世ですよ」

村人「そんな情報いらないから!」

魔王「大丈夫!むーくんはボクが守ってあげるから!」フフン

村人「まおちゃん頼もしい!」

側近「…羨ましい」







剣士「ちょっと!!何楽しそうに話してるの!!」

村人「おっとと、忘れてた…」

剣士「むぐぐ…!やっぱり操られてるのね!」

村人「ちょ、待ってください!」

村人「私は操られてたりしませんよ!」

剣士「嘘!!普段はそんな言葉遣いじゃないもん!!」

村人「ないもんって言われましても…」

魔術使「まぁ、確かにあんな言葉遣いでは無かったよな」

魔術使「どちらかと言うと、俺に似てるというか俺が似たというか…」

闘術家「そうなのか?」

魔術使「あぁ。昔から剣士のお兄さんと一緒に居る事が多かったから自然と、な」

村人「一応これには考えがあってですね…」

側近「ほー、むーくんには何か企みがある、と」

魔王「えぇ!?何か悪い事企んでるのー?」

村人「企んでるというか、こういう言葉遣いだと良い印象を与えるかなーと思いまして…」

村人「まぁ、それだけが理由では無いんですが…。」ボソッ


側近「うわー…」

魔王「えー、そんなのしなくても、むーくんはむーくんだよ?気にしなくていいのにぃ」

村人「まおちゃん…」キュンッ

側近「魔王様…」キュンッ

村人「なんでそっちゃんまでトキメイちゃってるんですか」

側近「逆になんでトキメイてはいけないんですか?」

剣士「もう!!だから何楽しそうに話してるのよ!!」






僧侶「ど、どうしましょうこれ…」

闘術家「…。とりあえずまだ様子見だな」

魔術使「あぁ。あそこの魔王とやらはどうやら本物みたいだしな」

僧侶「えぇぇ!?そうなんですか!?」

魔術使「ばっ!声がでけぇよ…!」シッ

闘術家「それで…、さっきのは本当なのか…?」

魔術使「あぁ、ここからでもわかる。正直みんなが居なかったら俺、気を失ってるかもな」

闘術家「そこまでか…」

魔術使「それと…、あの魔王とやらの側に居るヤツ」

魔術使「アレもまた凄いぞ…」

闘術家「…勝てるか…?」

魔術使「無理だ」

僧侶「即答ですか…」

魔術使「あぁ。絶対に無理だな。下手すると数秒で俺達はこの世には居ない」

闘術家「分どころか秒、か」

僧侶「ふえぇ…」

魔術使「見た感じ、剣士のお兄さんはあの魔王と側のもう1匹の魔族と仲が良さそうに見える」

魔術使「どうして仲が良いのかはわからんが…」

魔術使「お兄さんのお陰で俺達は生きていると言っても過言では無いぞ」

闘術家「ふーむ…。」

僧侶「剣士さん…どうしましょう…?」

魔術使「うーん…ここは見守っておくかなぁ」

闘術家「止めに行かないのか」

魔術使「嫌だよ、変にあっち刺激すると剣士諸共、殺られそうだし」

僧侶「男気無いですね…」

魔術使「うっせーな!今も結構足震えてんだぞ」プルプル

魔術使「逆に剣士はお兄さんの事しか見えなさ過ぎだ…」

僧侶「剣士さん、いつもお兄さんの事話してましたしね」

闘術家「そうだな…」

魔術使「はぁ…。よりにもよって魔王と一緒に居るとかぶっ飛びすぎだろ」

僧侶「剣士さんの言う通り、操られてるんですかね…?」

闘術家「うーむ。俺にはそうは見えないんだがな…」

魔術使「俺も同感だ。自然体すぎる」

魔術使「それに、あんなに似てる同一人物が居たらそれそれで怖い」

僧侶「では剣士さんの勘違い、と…?」

魔術使「だな。ったくアイツは昔からお兄さんの事となると後先考えず動くんだから…」

闘術家「嫁に苦労してるな」

魔術使「なっ…!嫁じゃねぇよっ!」

僧侶「ふふふっ、またまたー」

魔術使「そ、そんなんじゃねぇよっ」

闘術家「魔術使はわかりやすいな」

僧侶「ですねぇ」








剣士「こら!!そっちも何楽しそうに盛り上がってるの!!」

魔術使「わ、悪い悪い…」 

闘術家「すまん…」

僧侶「ごめんなさぁぃ…」

剣士「お兄ちゃん!いい加減目を覚ましてよ!」

村人「元から覚めてるんですけど…」








魔術使「……はぁ、しゃーねぇなぁ」スッ

闘術家「魔術使…?」


魔術使「おーい、お兄さーん!アンタは操られてるんじゃないんだよな?」

村人「操られてませんよ、あとお兄さんではないです」

魔術使「(いや‘‘お兄さん’’に反応したじゃん)」

魔術使「(うーむ、せめて前の言葉遣いで素が見れたらな…)」

村人「何か御用ですか?」

魔術使「んー、そうだなぁ」







魔術使「なぁ、お兄さんは今週の『週間・農業神』ってもう読んだ?」

村人「なッ!?」

剣士「(週間・農業神って、確かお兄ちゃんが毎週欠かさずに見てた雑誌…)」

魔術使「いやー凄かったぜ?まさかあんな土の耕し方があるとはなぁ」

魔術使「でも楽っちゃ楽だが、俺的にはアレはどうかと思うなー」

魔術使「それと、新種の野菜も―――」






村人「その耕し方はッ!!!」

魔王「!?」ビクッ

側近「!?」

魔術使「うん?」

村人「だから!!その耕し方はどんな方法なんだって聞いてんだよ!!」

闘術家「おぉ…」

僧侶「あわわ…」

魔術使「えっとなー…確か、土魔法で一度地面を抉るんだと」

魔術使「んで、その抉った土を風魔法で―――」

村人「そんなんじゃ駄目だッ!!作物には心が大事なんだよ!」

村人「それに魔法を使うと荒くなって土が痛むし可哀想だろ!クワを使えクワを!!」

村人「美味しい作物は手間がかかってこそなんだよ!魔法で楽したって美味くなんねぇんだよぉッ!!」

村人「それに―――ん?」











村人「あっやばい」

剣士「やっぱりお兄ちゃんじゃん!!」

魔術使「流石にチョロすぎるな…」

闘術家「あれが本性か」

僧侶「でも農業のことで熱くなるなんて、なんだか可愛いですねっ」

剣士「あったりまえじゃん!お兄ちゃんだもん!」

側近「むーくん…、城の空き地で作物でも育てますか…?」

村人「そっちゃんはそんな哀れな目でこちらを見ないでください…」

村人「くっそぉ…土を…土を触ってなかったからつい…」

魔王「うんうん…ストレスがたまってたんだね…」ウルウル

魔王「だいじょーぶっ…ボクが何とかしてあげるからね…!」ポンポン

村人「まおちゃんに背中ポンポンされると何だか悲しくなりますね…」








魔術使「まー、という訳で、あれが剣士のお兄さんと言う事が判明したわけだが」ニヤッ

村人「うーぐぐ…」

魔術使「そもそも、お兄さんは何でそこの魔族と一緒に?」

村人「えーと、これは成り行きと言いますか…」

闘術家「どんな成り行きか凄まじく気になるんだが」

剣士「お兄ちゃん!帰ろうよ!」

村人「え?」

剣士「私…お兄ちゃんが生きててくれて良かった…」グスッ

剣士「一緒に帰ってまたいつもと同じ様に暮らそうよ…」

魔術使「剣士…」







村人「駄目だ」

剣士「っ!なんで!!」

村人「今帰るわけにはいかない」

剣士「どうして!そんな魔族と一緒に居ることないじゃん!!」

剣士「なんでなの…お兄ちゃん…」

村人「そちらの皆さんは今、どんな状況か知っていますか?」

僧侶「(どんな状況、か…?)」

村人「今、他の場所で戦が起こってるのは知ってますか?」

魔術使「…俺達が旅をしてる途中、噂で軍が何やら大移動してるってのを聞いたが…」

闘術家「やっぱり、と言うべきか」

僧侶「この予想は当たって欲しくありませんでしたね…」

剣士「それがどうしたっていうの!お兄ちゃんには関係無いじゃない!」

村人「今こちらを離れると、もう人間と魔族はわかり合えないかもしれない」

村人「そうなると困るんです」

村人「それに関係あるんですよ、大アリなんです」

側近「まぁ…確かにありますね」

魔術使「それは一体どんな関係なんだ…?」


















村人「私が魔王軍の指揮をとってるからですよ」アハハ

魔王「ねーっ!」

魔術使「はァァァァー!!?ちょっ!嘘だろ!?」

魔術使「アハハじゃねぇよ!!」

闘術家「なるほど…それで魔王と一緒に居るのか」

僧侶「でもそれって…」



剣士「お兄ちゃん…、人間側を裏切ったの…?」

村人「裏切ったというわけでは…」

剣士「…答えて…。」ボソ

魔術使「け、剣士…?」






剣士「私が魔族に何されたか知ってるよね…。」

剣士「ちゃんと、理由を説明して。お兄ちゃん?」ギロッ

村人「ま、まおちゃん助けて」ガクブル

魔王「こ、コラコラ!喧嘩はダメだよっ!」

剣士「そこのチビは黙ってて!!」

魔王「うわーん…そっちゃん、チビって言われたぁ…」グスッ

側近「ちょっとそこのアナタ!魔王様を泣かせるなんて…ぬっころしますよ!」

魔術使「馬鹿!怒らせちゃやばいって!」

村人「あのー、決して人間側を滅ぼそうとかそういうのじゃありませんよ?」

側近「でもこの世界手に入れるとか言ってましたよね」

村人「そっちゃんは余計な事言わないで!」




闘術家「黙って聞いていたが、つまり…。」

闘術家「何かお兄さんなりの思惑があってそちらに居るってことで良いんだよな?」

村人「そうです」

闘術家「ふむ…。で、だ」

闘術家「その思惑とやらが終わったらちゃんと帰ってくるんだろ?」

村人「えーと…たぶん…」

魔王「えー…むーくん帰っちゃうの…?」

側近「どうぞお帰り下さって結構ですよ」

村人「正直、まだそこまでは考えてませんね…。あとそっちゃん酷い」

村人「今はそれどころではないと言うか」

闘術家「…でも、可能性はあるし、これからもまったく会えなくなるわけではないんだよな?」

村人「それは勿論ですよ、私が死んでいない場合…ですけど」

闘術家「…だ、そうだぞ。剣士」チラッ

剣士「…本当に帰ってきてくれるの…?」

闘術家「なぁ、剣士。もし帰ってこなかったら…いっその事、剣士がお兄さんの所へ行ったら良いんじゃないか?」

剣士「…っ!」ハッ

僧侶「(その手があったか!みたいな顔してますね…)」

闘術家「別に待つ必要なんて無いんだ。それに、剣士が来てくれるときっとお兄さんも喜ぶと思うぞ」

剣士「…闘術家さん…!」

村人「いや、喜びませんけど…」

闘術家「だから、とりあえずお兄さんの用事が終わるまで待とうじゃないか。な?」

僧侶「(まるで親子みたいですね)」

剣士「………わかりました。それに、自分の言動を見返すと流石に自分勝手過ぎました」

剣士「でも、魔族を認めたわけじゃないから。」

闘術家「それはまた、追々…な」

魔術使「(…すげェ!納得したぞ…!)」

魔術使「(闘術家…なんてカッコいいんだ。これが経験してる大人の余裕ってヤツか…)」

僧侶「流石闘術家さんです!どこかの幼馴染とはまるで違いますね!」

剣士「その代わり!ちゃんと終わったら連絡してよねお兄ちゃん!」

村人「わ、わかりましたよ…」







魔術使「よし!丸く収まった事だし、そのお兄さんの思惑とやらをちょっと聞かせてくれないか」

僧侶「何自分が上手く丸めた感を出してるんですか」

魔術使「僧侶ちゃんはちょいちょい毒舌だね!?」

村人「思惑というか、企みというか…さっきも言いましたけど―――」

――――

オーク「なぁ、俺達なんか置いてけぼりだな」

猫又「みんなからは居ない事にされてるにゃ…」

猫又「それよりオーク、傷はもう大丈夫かにゃ?」

オーク「あぁ…、だいぶ楽になってきたぜ。まぁ俺様のようなイケメンなら当然だがな」イテテ

猫又「はいはい。そんな無駄口叩けるくらい回復したなら安心だにゃ」

オーク「ふん。おらよ」ブン

猫又「にゃ…?」パサッ

オーク「オメーもそんな寒い格好してっと風邪引くぞ。この森は冷えるからな」

オーク「俺の上着だが羽織っておけ」

猫又「余計なお世話にゃ」

オーク「そうかよ。だったらそこら辺にでも捨てとけ」




猫又「……捨てるのは勿体無いから、仕方なーく着てやってもいいにゃっ」ファサッ

――――

今日はここで終わります!

――――

村人「それで、少し質問良いですか?そこの頭良さそうな人」

剣士「ふふん!何でも聞いてよ、お兄ちゃん!」

村人「いや、アホな剣士の後ろの人ですよ…」

剣士「いつになく酷い!」

闘術家「む…?俺か?」

村人「はい」

闘術家「構わないぞ、頭の良さは人並だが答えれる範囲でなら。」

村人「では…。この戦争、何故このタイミングで起こったのか何か心辺りとかってあります?」

闘術家「ふむ…。」








闘術家「今回の戦争の引き金は、間違い無く俺達だろうな」

村人「それはどうして…?」

闘術家「魔術使とも話していたんだが、俺達がちょっくら国王に喧嘩ふっかけちまってな…」

魔術使「俺達…というより、ほぼ剣士のせいだけどな」

剣士「魔術使だってあんなゲスい事しておいてよく人の事言えるねぇ」

僧侶「ですね、魔術使さんのせいでもあるんですよ」

魔術使「おっとっとー?なんだか標的が俺に変わってるぞー」

闘術家「あの時、勢いで魔王城に行くだなんて言わなければな…」

村人「ふむ…」

魔術使「要は、善良…かどうかは個々の魔物にもよるが」

魔術使「魔族相手に戦争ふっかけて、勝てばそれで良し、負ければ俺達のせいにして逃れるつもりなんだろ」

魔術使「なんたって俺達は勇者御一行様らしいしな」

闘術家「多分、予め準備は進めていたんだろう」

村人「また面倒な事を…」

闘術家「俺達の目的は剣士のお兄さんを探す事だったし、その目的は達成されたんだが」

闘術家「戦争の方はどうにもならん…。申し訳ない」

魔王「んー、まぁ…起こっちゃったものは仕方無いしこれからどうするか考えよっか」

魔術使「おいおい、魔族の方がよっぽど人間より良いじゃねぇか」

剣士「魔術使っ!浮気なの!?浮気するのね!」

闘術家「浮気する男は最低だぞ、魔術使」

僧侶「そうです。最低のクソ野郎ですよ、魔術使さん」

魔術使「このやり取りデジャヴなんだが…」

魔術使「あと僧侶ちゃん、何気に罵倒が酷くなってる!そんな汚い言葉使っちゃダメよ!」

剣士「うっわ、魔術使きもちわるい…」

魔術使「うるせーよ!」

闘術家「それで…、魔王様とやらはこれからどうするつもりなんだ?」

魔王「まおちゃんで良いよー!」

魔術使「まおちゃん!?」

魔王「うん。ボク、本当は魔王って呼ばれるの好きじゃないんだよねぇ」

剣士「えぇ!?魔族の王なのに!?」

魔王「んー…。」





魔王「ボクね、本当は魔族の王じゃないの」

魔王「ただ生まれた時から魔力が他の魔族より高くて…」

魔王「誰かが『魔王様』って言い出してそれが広まり今はこんな事に…」

魔王「だからむーくんが『まおちゃん』って呼んでくれた時は凄く嬉しかったなぁ」

魔王「あの城だって、本当は城っていうか家っていうか…」

側近「魔王様の両親は親バカですからね」

村人「確かに、そう言われると魔王城って聞いたのに外見はあんまり禍々しくありませんでしたね…」

魔王「ママやパパにだってもう3年も会ってないんだー…」

側近「全く、あの夫婦はどこほっつき歩いているんだか…。」

村人「あれ、両親は居るんですか?」

側近「居ることには居ますけど、なかなか帰ってこないんですよ」

側近「よく用事で家を空けるんですけど、その間は竜爺ともう一匹の竜が魔王様の世話をしているんです」

村人「うん…?そっちゃんは?」

側近「私はまぁ、魔王様の夫婦に借りがあるので護衛みたいなものですかね」

魔王「一応手紙は来てるんだけど、やっぱり会いたいなぁ」

側近「魔族がこんなに人間に優しいのも魔王様とあの夫婦のおかけですよ」

魔術使「なぁ、さっきから『あの夫婦』ってのがよく出てくるが、どんな奴なんだ?」

剣士「やっぱり相当強い魔物だったりするのかなー」

側近「母は魔物、父は人間…というより、元人間ですかね」

魔術使「に、人間!?お父さんの方は人間なのか!?」

闘術家「という事は、魔物と人間の娘か…」

僧侶「き、禁断の愛…!」

村人「ちょ、ちょっと待ってください…」





村人「いや…そんな、でも…」

剣士「どうしたの?」





村人「も…もしかして、昔…魔物と人間が旅をしたって話を聞いた、もとより…本にもあるんですけど…」


村人「え、まさか…?」


側近「あー…そのまさか、ですね。多分合ってますよ」

村人「あれって70年も前の話じゃ…」

村人「母の方は可能性はありますけど、父の方は亡くなっているのでは…?」

側近「だから言ったじゃありませんか。魔物と元人間だって。」

側近「元、というより半分人間の方が正しいかもしれませんが」

村人「なる、ほど…」

村人「あれ?でも魔王城には大きな竜は竜爺しか居ませんでしたけど…」

魔王「くふふっ…、竜爺ってば喧嘩しちゃったんだよねー」

側近「竜爺は寒い所が苦手で、竜爺の奥さんは温かいところが苦手なんです」

側近「それで、どこに住むかって話になって揉めて…」

側近「結局今は別居中ですね、奥さんは氷山に居ます」

魔術使「ぶははっ!そりゃ爆笑もんだな…!」

魔術使「そもそも何で苦手なもの同士がくっつくんだよ」クククッ

側近「竜爺が一目惚れしたと聞きましたよ」

僧侶「ふふ…魔族でも恋はするんですね」

闘術家「やっぱり、魔族は俺達人間と外見が違うだけで根本的所は同じなんだな」



剣士「そうだお兄ちゃん、さっき言ってた本って何の事?」

村人「ん?あぁ、本っていうのは…」

村人「昔、各地を渡り歩いて厄介事を解決して行ったメスの魔物と男性の人間の話なんだけど」

村人「その魔物と人間が関わった人達が書き記した物を、とあるエルフがまとめ上げて冒険記として本にした物なんだ」

剣士「へー、家にもあるの?」

村人「もちろん大切に保管してるよ」

村人「ただ魔物と人間がどうのこうのって良く思わない人間も少なからず居てね」

村人「だんだんと消えていった本さ」

闘術家「ふむ…、興味が湧いてくるな」

僧侶「良いですねぇ、ロマンチックだなぁ」





村人「っと、話が脱線してしまいましたね」ハハハ

魔術使「そうだな…これからどうするか…」

村人「んー、そっちゃん、アレ出してくれる?」

側近「えっ!?そんな…!こんな公衆の面前で!?なかなか大胆で変態ですねっ」

村人「何を言ってるのか知りませんけど、敵の軍勢とか書き記したアレですよ」

側近「なんだ、あのゴミですか」

村人「ゴミとか言わないで!というか何だと思ってたんですか…」

側近「どうぞ」つ

村人「はいはい、無視ですか」スッ






村人「ってこれ!まおちゃんの下着じゃないですか!!」

側近「おっと、間違えました」つ

村人「全く…。後でちゃんとさっきの見せてくださいよ?」スッ

側近「むーくんは等価交換と言うものをご存知で?」

村人「くっ…!こちらの手持ちはあの下着に匹敵するほどの物が無いッ…!!」

側近「残念でしたね」ニヤニヤ









魔術使「剣士のお兄さんも色んな意味で大変だな…」

剣士「お兄ちゃん…」

魔王「もー、いつもボクも混ぜてって言ってるのにっ!」

闘術家「俺達の会話に自然と入ってくる魔王様もどうかと思うが…」

魔王「魔王様じゃなくてまおちゃん!」

闘術家「わ、悪い…まおちゃん…」

闘術家「(相当恥ずかしいなこれ)」

魔術使「(下着の件はスルーするのか…)」

僧侶「まおちゃん可愛いなぁ…。見た目も人間とほとんど変わらないですし」フフフ

魔王「今度みんなも城へおいでよ!歓迎するよー!」

魔術使「そんな簡単に人間を招いていいのか…?」

魔王「ぜーんぜんおっけー!人間なら既にむーくんが城で寝泊まりしたし!」

魔術使「む、むーくん…?」

魔王「うん!最初は村人って名乗ってたかな?」

剣士「ちょっとお兄ちゃん!何であだ名で呼び合うほど仲良くなってるの!!」

闘術家「剣士のお兄さんは相当図太いな」

僧侶「私はまおちゃんと一緒に寝たいですっ!ふふふ…」

剣士「(僧侶ちゃん顔…!)」ボソッ

僧侶「こ、コホン…。一応敵の本拠地ですからね!用心して行かないとですね!」

闘術家「全く説得力が無いな…」

剣士「僧侶ちゃんは可愛い物に目がないからねぇ」

側近「それで?これからどうするんですか、むーくん」

村人「えーと、剣士と魔術使以外のお二人も西の国から来たんですか?」

闘術家「そうだ」

僧侶「はい!」

村人「では、どうやら西の国が中心となってこの戦争を起こしてる可能性がありますね」

村人「兵の数を見ても西の国が他国より多いですし」ピラッ

村人「他の国はおこぼれを貰おうとそれに乗っかった形ですか…。」

剣士「どうするの…?お兄ちゃん」

村人「うーん…」







村人「もう面倒臭いので直接、西の国に行きましょうか」

側近「今までの慎重だったむーくんは何処に…」

村人「戦況は報告を聞く限りこちらが圧倒的に有利です」

村人「相手側がトンデモ行為とかしてくるならまた別なんですが」

魔王「トンデモ行為…?」

村人「はい。例えば、魔製爆弾を持って魔王城に自爆特攻してくるとか。」

村人「魔製の爆弾を所持しておけば仮に敵に殺られたとしても起爆すれば多大な被害を与えることが出来ます」

村人「まぁそれには敵陣に乗り込む必要があるので、‘‘特攻’’なんですが…。」

魔術使「しかし何でお兄さんはそんな事に詳しいんだ…」

魔術使「魔製爆弾なんてあまり広く知られてない物だぞ」

村人「えっと、魔王城に偵察に行けーって言われた時にどうせなら持ち込もうかなと…。」

村人「爆弾の事は知人に聞いただけなんですけど、自作できなかったので諦めましたよ」アハハ

側近「むーくん意外と恐ろしい事をさらりと言いますね」

剣士「魔製爆弾って確か、通常の爆弾の数十倍の威力があるんだっけ?」

魔術使「そうだ。作るにはそれ相応の技術が居るんだが、俺も小さいのなら一応作れるぞ」

魔術使「ただ自身の魔力を使うので、作った後はドッと疲れる」

村人「それなら複数作成するのは困難ですね」

魔術使「そうだな、作るヤツが1人なら、の話だが。」

村人「………。」

村人「まぁそれに…流石に兵士を特攻させる程、国王も冷酷では無いでしょう」

魔術使「………。」

剣士「………。」

闘術家「………。」

僧侶「………。」

村人「…え?やっちゃいそうなんです?」

魔術使「あの国王ならありえそうで怖いんだよなー」

剣士「ねー」

村人「………。」







村人「…とっとと西の国に行きましょう!」

魔王「ほいほいっ」

側近「はぁ…。部下さーん、こっちへ来てください」

部下「へいへい、話はまとまりましたかね?」ヌッ

魔術使「うぉ、竜か…?」

僧侶「こんなに間近で見たのは初めてです…!」

闘術家「(本当に剣士のお兄さんは何者なんだ…?)」

村人「では私達は最初に言った通り、これから西の国へ行って王をぶん殴って来ますが皆さんはどうされます?」

魔術使「ぶん殴るって…」

闘術家「流石剣士のお兄さんだな。剣士と全く同じ思考だ」

僧侶「私達はどうしましょう…?」

剣士「んー、ここからだと魔王城の方が近い…んだよね?」

村人「うん、西の国に帰るよりは近いよ」

剣士「じゃあ、私達は魔王城行こっか」

魔術使「行って何するんだよ」

剣士「もちろんお兄ちゃんの帰りを待つ!」

闘術家「剣士らしいな…」

剣士「まー…半分は、だけどねー」

魔術使「ほー。じゃあもう半分は?」

剣士「もし…。もしさっき言ってた特攻してくる兵士の人達が居たら説得して止める」

村人「剣士…。」

剣士「どんな命だって平等だよ。こんなくだらない戦争に使って良いものじゃない」

闘術家「もし説得できなかったら?」

剣士「力ずくでぶっ飛ばーすっ!」

僧侶「あはは…剣士さんらしいですね」

魔術使「結局実力行使かよ」

剣士「本当は来ない事が一番良いんだけどねぇ」

村人「…剣士」

剣士「うん?」




村人「気をつけて、ね…。」ナデナデ

剣士「えへへっ……うんっ!」





魔術使「やっぱお兄さんには敵わないなー」

闘術家「魔術使、ヤキモチか?」

僧侶「それとも嫉妬ですか?」

魔術使「っるせーよ、そうだよ!」

僧侶「わわっ、潔いですね」

側近「剣士さん、と言いましたか。これをどうぞ」

剣士「これは…?」

側近「魔王城まで道を記してある地図です。この通りに進んで行けば普通の道を通るより早く着きますよ」

剣士「ありがとう。信用していいんだよね?」

側近「それは、任せます」

剣士「うーん…」

村人「剣士、信じてください」

剣士「わかった!」

魔術使「(チョロすぎだろ)」

闘術家「(心配になってくるな)」

僧侶「(まおちゃん可愛い…)」ジー

魔王「(なんだかそっちゃんと似た様な視線を感じる…)」



村人「さて、と。じゃあ行きましょうか」

魔王「はーいっ」ヒョイッ

村人「…ぁの…」モジモジ

側近「むーくんは何しているんですか?」

村人「…そっちゃん、乗れないのでお願いします…」

側近「はぁ…仕方ないですね」ガシッ



側近「よっと…」ヒョイッ

部下「それじゃあ西の国で良いんすよね?」

村人「お願いします」

部下「了解っす!」バサッ



魔術使「俺達も行こうぜ」

闘術家「あぁ」

剣士「ごーごー!」

僧侶「はいっ」


――――














猫又「私達も帰るかにゃ…?」

オーク「そうだな、俺達もやる事やったし帰ってもいいだろう」

猫又「それじゃあ撤収するにゃ」ピーッ

オーク「アイツら最後まで俺様達の事をスルーしてたな」

猫又「まぁここは少し茂みで隠れてるし気づかないのも無理は無いにゃ」

オーク「つっても、人間共とはさっきまで戦ってたんだぜ?」

猫又「私達を忘れる程、大きな出来事があったんじゃにゃいかにゃぁ…?」

オーク「まっ、どうでもいいけどよ」



オーク「俺様は細けぇ事はわかんねぇ。だから魔王様と…」

猫又「むーくんに任せる、かにゃ?」

オーク「あぁ。アイツ、頭は少なくとも俺様よりは良さそうだし、な…。」

オーク「チッ、何もできなくてムカつくぜ」

猫又「んにゃぁ…。オークは力で勝ってるんだし、個々によって適材適所ってものがあるにゃ」

猫又「それに、私達はちゃんと出来る事をやったにゃ」

猫又「だからオークが気にすること無いにゃ」




オーク「…はーったく、オメーに慰められるとは俺様もまだまだだな…。」

猫又「にししっ」



――――
――

今日はここで終わります!

―――


ガサガサッ
  ザッザッザッ……




剣士「お?おぉー!?」

魔術使「でけぇ……」

闘術家「大きいな」

僧侶「ひょわー……」



魔術使「(‘‘魔王城’’、か……。外観は確かに想像と違うな)」

魔術使「(つーか、派手!!何だこの派手さは!)」

剣士「んー、まだ敵兵は見当たらないねぇ」

魔術使「おいおい、その言い方だとまるで俺達は魔王軍に加担してるみたいじゃん」

剣士「加担してるに決まってるじゃん!お兄ちゃん居るし!」

魔術使「うおい!何言ってんだよ国に帰れねぇぞ!?」

剣士「勝つから大丈夫大丈夫!」

魔術使「加担してる状況で勝っちゃダメだろ!」

魔術使「なぁ、闘術家達も何とか言ってやってくれないか」

闘術家「ふむ……。俺は剣士に着いて行くと決めた。だから剣士が魔王軍に加担するなら俺も付き合う」

剣士「ひゅぅー!かっくいーっ!」

僧侶「わ、私も魔術使さん以外には着いて行くと決めてるので同意見ですっ!」

魔術使「ちょっと待てそれどういうこと!?」

剣士「あー、まぁ魔術使はアリエナイよねー」

僧侶「ですよねぇ」

魔術使「ちっくしょぅ……」

闘術家「元気出せ、剣士と僧侶はオレに任せろ」ポンッ

魔術使「俺だけ一人ぼっちかよぉぉ!!」

闘術家「ハハハ、冗談だ。お前を見捨てる訳無いだろ?」

魔術使「と、闘術家ぁ……」ウワーン

剣士「魔術使の涙ほど気持ち悪いものは無いよねぇ」

僧侶「やっぱり剣士さんも思ってましたか!」

魔術使「お前ら酷いな」













剣士「で、魔術使を適当にからかったので本題に入ろう」

魔術使「お前ら本当に酷いな」

闘術家「確か、‘‘魔製爆弾’’とやらで特攻してくる可能性があるとかなんとか言ってたな」

僧侶「その爆弾でお城でも壊すんでしょうか?」

魔術使「そうかもな。実は70年前にも一度、東の方で大きな爆発があったんだが……」

魔術使「辺り一面、広範囲を巻き込んで爆発した記録があった。その巻き込まれた場所には何も残っていない」

魔術使「残るとしたら、抉られて枯れ果てた大地のみだ」

魔術使「まぁこの爆発の原因だった魔製爆弾は、現代である物より数十倍の威力があったらしいから、今回相手が担いでくる爆弾はまだ軽い方かもしれない」

魔術使「それでも危険な事に変わり無いから気をつけ―――」

僧侶「み、皆さん!あっあれ!!」

闘術家「ん?」

剣士「うっわ、やばいね」

魔術使「来ちゃったかぁ……」

剣士「とりあえず、身を潜めるよ!」ササッ


「「「了解!」」」

 

 ザッザッザッ


「なぁ……本当にやるのか……?」

「仕方、無いだろ……」

「嫌だ……死にたくない……」

「だがやらねぇと俺達の家族が……」

「クソ……特攻を仕掛けるって事は、もう手が無いって事だろ?」

「だろうな。戦況もこちらが着々と不利になってきていると聞いた」

「マジかよぉ……死にたくねぇ……」グスッ

「泣くなよ……皆だって泣きたいのを我慢してるんだぞ」

「すまねぇ……。そう、だよな。俺だけ泣いてちゃ覚悟決まらねぇよな……」

「……見えてきたな」










「アレか……。忌々しい魔王じょ―――え?アレ魔王城なの?」

「あんなのが?」

「俺達、道を間違ったか??」

「い、いや。地図を確認した所、間違い無くアレだと思うんだが……。」


 シーーーン









「ど、どうするよ?」

「俺に聞くぅ?間違ってアレを爆破させて、人違いならぬ城違いでしたーとかなったら俺嫌だぞ」

「でも他に大きな建物は見当たらないし……」

「確認しに行ってみる、とか?」

「お前は馬鹿か?もし魔王城だったらどうすんだよ!『すみませんここって魔王城ですかねぇ?』とか聞いた瞬間あの世だぞ!」

「こう、何というか……敵ももう少し我々の事を考えて欲しいというか……威厳が全く無いな」

「せめて俺達にもわかりやすいように、‘‘魔王城!!デデーン’’ 的な感じが欲しかったよなー」









「あークッソ、ちょっと面白くなってきたな」

「どうせ死にに行くんだし、あの城に入ってみねぇ?見張りは居なさそうだしさ」

「そうだな。俺、一度魔王城に入ってみたかったんだよなぁ!」

「俺も俺も!超ワクワクするよな!」

「じゃっじゃあ城の門超える時は、皆いっせーのーせっ!で行こうぜ!」

「良いね良いねぇ!抜け駆けは禁止だぞ?」

「お前こそな!」



 ワーワー

  ガヤガヤ













魔術使「すんごい盛り上がってるな」

闘術家「なんだか出ていくタイミングを失ったな……」

剣士「でも正直、魔王城の中、気になるよね」

僧侶「ちょっと興味は惹かれますよね」

剣士「よっし!皆ここで待ってて!」ダッ

魔術使「おっおい!……って行っちまった」

闘術家「ここは剣士に任せよう」

僧侶「ですね。信じましょう」





アノースミマセン!

ナンダァ?オマエハ

チョットマオウグンニカタンシテルモノデス!

テキジャン!

テキデス!マオウジョウニイッショニハイリマセンカ!

ハァ!?フザケンナヨ! ソウイッテユダンサセテウシロカラサスキダロ!

カモシレマセン!デスケドソチラハドウセシヌキデショ?

オ、オウ…マァナ…

ダッタラカンケイナイデスヨネ!

ウー、ウーン?マァ…ソウナル、ノ……カ……??

ジャ!キマリデスネ!!





剣士「兵士さん達と一緒に魔王城に入りましょう!」

魔術使「何でそうなる!?」

闘術家「何と話したんだ?」

剣士「魔王城に一緒に入りませんかーって……。」

僧侶「当初の主旨と全く違うじゃないですか……」

魔術使「で、でもまぁ、とりあえず特攻は防げたんだし良しと……して良いのかなぁ……」

闘術家「ま、行こうか」

僧侶「一体中はどうなってるんでしょうね!?」

魔術使「僧侶はノリノリだな」

―――

―上空【竜の背】―


村人「まだですかね?もう少しで着くかな?」ソワソワ

側近「もうすぐですので落ち着いてください。落ちますよ」

村人「そういえば、まおちゃんのご両親はどんな方なんです?」

魔王「んーと、パパはカッコいいよ!ママは小さくて綺麗!」

村人「へぇー、一度会ってみたいですね」

魔王「んふふーっ、パパの剣術は凄いんだよぉ?こう、ズバババー!っと相手を一瞬で倒しちゃうの!」

魔王「それとカッコいい技名も叫んでたよ!」

側近「あれはカッコいいのではなく、ダサいだけでは……」

村人「カッコいい技名?」

魔王「うん!えとねー……じょうか?とか言ってたよー、文字は難しくてわからなかった」エヘヘ

側近「《丈華》です。得意技らしいですよ」

側近「多分むーくん相手だと秒殺だと思いますよ。私でさえ斬られましたし……」

村人「ひ、ひえぇ……」

村人「……」

側近「むーくん、どうかしましたか?」

村人「いえ。その、こんな事言うのもアレですけど……」

村人「そんなにお強いなら、まおちゃんのご両親がこの戦、何とかできなかったんですかね?」

側近「……」

魔王「……」

村人「……」











側近「さ、着きましたよー」

村人「無視しないで!?」

魔王「多分、きっとどこかでパパとママも戦ってるはずだよ」

魔王「ボク、信じてるから。」

側近「そうですね。あの方達が何もしてないはずありません」

村人「私の用無し感!」

―――


―【???】―



「あーもうっ!まだ着かぬのか!」

「わしの足はもうヘトヘトじゃぞ」

「腹も減ったし……そうじゃ、少し前に買った焼き芋があったの!」

「その焼き芋、俺が食う前に『うまいのぉ……うまいのぉ!!これは止まらんわ!』って言って全部食っただろ」

「そんなのは知らん!やーきーいーも!焼き芋が食べたいんじゃあー!」

「おぶってやるから駄々こねるなって……」ヨット

「やる事やったら久しぶりに城に帰るんだし、そこで焼き芋作れるように帰りに芋を買って帰ろう」

「ふふん、お主にしてはなかなか殊勝な心がけじゃな?」

「そりゃどうも」

「それより地図はどこじゃ地図は」バシバシ

「地図は鞄の中だっつの。頭叩くな」

「うーん?おー?……あった!」ゴソゴソ

「西の国に行くんじゃったかのぉ」

「あぁ。何でもこの戦争、西の国が戦犯らしい」

「西の国ぃ?また何で急に動き出したんじゃ」

「わからん。ただ魔王を倒すとか何とか言ってたのを聞いたから、もしやとは思ったが」

「まさか予想が当たるとは思わなかったよ。東方面の国々に話をつけておいて良かった」

「じゃなぁ。まっ、わしらの努力の賜物じゃな!」

「そう、だな……。っと、そろそろ西の国に着くぞ」

「にししっ、甘菓子は売っておるじゃろうか?」

「お前なぁ、戦争の真っ只中なのによくもまぁ呑気な事が言えるもんだ」

「ふんっ、わしがそこら辺の雑魚共に負けるはずないからのっ!」

「……ま、それもそうだな」

















「さーてと。我が子の為に、パパ頑張っちゃうぞーっ!」

「いつにも増して気持ち悪いのぉ……」



――――
――

更新遅くなりすみませんでした
ちゃんと畳もうと思っているのでもう少しお付き合い頂けると嬉しいです

―――

―魔王城【門前】―



兵士「うおおぉっ!すっげ!これが魔王城ッッ!!」

兵士「だなぁ!間近で見たのは初めてだぜ!」

僧侶「凄いですねぇ!大きいです!」

魔術使「んー?でも門は開いてないな」

闘術家「どうする?剣士―――」

剣士「ドーーンッッ!!」


 ドゴォッッ

剣士「じゃ、入ろっか!」

兵士「私達、確実に死んだな」

兵士「あぁ……魔王城の門ぶっ壊してタダで済むわけないよな……」

兵士「ま、まぁ?最初から死ぬつもりだったし…全然俺は怖くないしぃ……」

魔術使「ったく、せめて壊す前に声くらいかけろよ」

剣士「なんかああいうキラキラしたの嫌いなんだよねー」

闘術家「金だったな、門が。」

僧侶「一体おいくらするんでしょうかね……」

剣士「…………」

魔術使「弁償しろよ、剣士」

剣士「ふぅー……さてと、入りますかぁ」スタスタ

魔術使「無かったことにするつもりかよ」

 
 ―魔王城【中庭】―


兵士「ひっろ!広すぎ!!何だよこれ俺の家の数倍あるんだけど!!!」

兵士「ちっくしょぅ……良い所に住んでやがるなぁ」

魔術使「確かにこりゃすげぇや」

剣士「んー!この広さなら思い切り稽古が出来そう!」

闘術家「そうだなぁ、周りも気にしなくて良いし良い場所だ」

僧侶「下もちゃんと手入れされてますね」コツッコツッ






魔物「ん?んんぉぉおおぉぉ!?!?」

魔物「お、お前ら……人間か!?」

剣士「こんにちは」

魔物「あ、どうもです。こんにちは」

兵士「やべぇ!やっぱ魔物居たよ!」

魔物「ノコノコと敵の本拠地にやってくるとは……」

魔術使「いやホント、全くその通りだよな」

魔物「まさか……」ギロッ

闘術家「…………」ジリ…

僧侶「…………」ゴクリ

魔術使「っ……」

兵士「あわわわわ……」ガクガク












魔物「魔王様に招待されたお客様?」

魔術使「ちげーよッ!!」ズコー

闘術家「一応招待された、のかもしれん」

僧侶「そうですねぇ、私達今は魔王軍に居ることになってますし」

魔物「え、アンタら俺らの仲間なんです?」

魔術使「多分、な」

剣士「あの、お兄ちゃん知ってます?」

魔物「お兄ちゃん??」

剣士「皆さんからは‘‘むーくん’’と呼ばれているみたいですが……」

魔物「あぁ!あの人間ですか!」

魔物「いやー、あの人の助言のお陰で農業が捗る捗るっ!」

魔物「俺ね、特に野菜を育てるのが好きなんですけど、なかなか良い土地が見つけれなくて困ってたんですよ」

魔物「そんなある日、むーくんが土地の耕し方を教えてくれて……もう本当に助かっちゃって」アハハ

魔物「まさか土地の方に手を加えるとは思いもしませんでしたよー」

魔術使「相当馴染んでるな……」

魔物「あ、良かったらこれから一緒に食事でもどうです?食堂で鍋パやろうって話になってるんですよ」

剣士「えっいいの?食べたい!」

僧侶「私も食べたい!です!」

闘術家「オレも腹が減ったな」

兵士「ちょっ、ちょっと待てぇぇぇ!!!」

魔物「な、なんですか!?大きな声は驚くのでやめてください……」ビクッ

兵士「そ、それはすまん……。じゃなくて!」

兵士「まぁ兵士、落ち着いて。私達は死にものぐるいでこの戦争を戦ってきた。そして先程まで死を覚悟し、この魔王城まで来た」 

兵士「それがなんだ。鍋パだと?クッソ楽しそうじゃないか!!!」

兵士「おまっ!そうじゃねぇだろ!重要なのはこの状況で鍋パとか魔王軍は呑気過ぎるだろって事だ!!」

魔物「うーん、でももう勝てますし?」

兵士「チッ、余裕なこったな?」

魔物「さっき連絡が入ったんですよ、とあるお二方が西ノ国に向かったと」

魔物「魔族の中でも最強と言われてるお二方達が西の国に向かったんですよ?」 

闘術家「それは……魔王の事か?」

魔物「いえいえ違いますよ、そりゃ魔王様も超お強いですし俺らでは手も足も出ませんが」

魔物「俺が言ってるのは、魔王様よりももっと強いお方ですよ」

僧侶「え、えぇぇ!?魔王様よりも強いのが居るんですか!?」

魔物「えっと、なんだったかな……。そのお二方は魔王様のご両親?と聞いたことがあります」

剣士「ご、ご両親!?」

魔術使「頭痛くなってきた……」

魔物「そのお二方によると、魔王様の力はまだまだ未熟らしいですよ。それでも俺らは勝てませんが」ハハハッ

魔物「でも俺ら魔族がこんなに呑気というか穏やかなのはあのお二方のお陰でもあるんですよ」

魔術使「その二人は何をしたんだ?」

魔物「何でも、今も魔物と人間の仲を取り持つ為に各地を周っているとか聞きました」

魔物「ここ数十年、魔物が人間の国や村へ攻めて行った事は殆ど無いと思いますよ」

魔物「ま、中には野蛮な者も居ますからソイツらは迷惑かけたかもしれませんが……」

剣士「…………」

闘術家「もしその二人が居なかったらどうなってたんだ?」

魔物「そりゃもう年中そこら辺、火の海でしょうね」

僧侶「それはまずいですね……」

魔物「ま、そんな訳で俺らの勝ちなんすよ」

剣士「らしいよ、勝てるって私達」

魔術使「勝てるっつってもなぁ……。凄く複雑な心境」

兵士「すんません、鍋パに入れてもらっても……?」

兵士「私もお願いしたい」

魔物「良いっすよ!食事は多い勢の方が美味いですしね!」

兵士「いやっほーい!」

兵士「ずっと気を張って緊張していたから腹が減った……」

僧侶「鍋!鍋っ!!」






魔術使「……なぁ」

闘術家「わかる。お前の言わんとしてる事は」

魔術使「うん……」

闘術家「でもとりあえず鍋パしてから考えよう」

魔術使「…………」










魔術使「本当にこれで良いのかなぁ……」ハァ…

―――

―西ノ国【城内】―


王「側近よ、戦局はどうだ?」

側近「非常に不利です。騎士団長とも連絡が取れず、我々側の部隊はほぼ壊滅しています」

王「使えない者共め…。側近、残っている兵士達に例の物を装備させておけ」

側近「っ!しかしアレはまだ未完成では…?」

王「構わん、どうせ奴らはここへ攻めてくるはずだ。この城は何としても死守せねばならん」

側近「で、ですが…!」

王「側近よ…、二度は言わん。わかっているな?」

側近「っ…。わかりました、直ぐに伝達しておきます」

王「ふむ。それでいい」

王「他国の残兵もそろそろ全てここへ集う筈だ……」





王「魔族共め、調子に乗るなよッ…!」

―――

―西ノ国 城前【上空】―


村人「部下さん、もっと高くまで上がれます?」

部下「お安い御用でっせ!」バサッ

側近「こんなに高くまで上昇して何をする気です?」

村人「出来れば人が私達を認識できない程距離を取りたいんですが……」

村人「余計な混乱を防ぐ為、国民には見つからないように城内に侵入しようかなと……」

側近「なるほど、部下さんに乗っていくと丸見えですからね……」

村人「はい。という事でそっちゃん、ここから私を担いで飛び降りられますかね?」

側近「それは可能ですが、着地時の衝撃にむーくんは耐えられますか?」

村人「絶っ対に無理ですね!」

魔王「そっちゃん、ほらアレ!ふわっとするやつ使えたじゃん!」

側近「むーくんに使いたくないんですよねぇ」

村人「酷い……というか、何ですそのふわっとするやつとは」

側近「私は触れた物を5秒間だけ宙に浮かす事が出来るんですよ」

村人「なにそれ凄い」

側近「でもこれ使うと疲れるんですよねぇ」

側近「むーくんは大人しく衝撃を耐えてくれませんか?」

村人「そんな面白特技あるのに何でですか!?」

側近「面白くないです、ここから叩き落としますよ」

魔王「そろそろ降りていい?」

村人「はぁ…はぁ…ちょ、っと待って……」

側近「上空に居ますし空気が薄くてむーくん大変そうですね」

村人「そんな、他人事みたいに言わない、でっ!」ハァハァ

魔王「むーくんの為にとっとと降りようっ」トンッ

側近「仕方無いですね……」ガシッ

部下「行ってらっしゃいませー」



ビュォ
  ォォォ
   ォッッッ
     ………




   ドゴオォォンッッッ!!


ナンダナンダ!? シロノホウカラキコエタゾ

   ザワザワザワ


魔王「…………」ズダンッ

側近「…………」ズダンッ

村人「…………」フワッ ズテ










村人「まおちゃん、そこの門壊して」

魔王「うん」ピカッ バチチチチッバコッ

モクモクモク…

 ナンダ!? モ、モンガ!
   シンニュウシャダー!!
  バタバタバタ



側近「…………」

魔王「…………」

村人「…………」








村人「気づかれちゃった☆」テヘペロ

側近「全く無意味だったじゃないですか」ドスッ

村人「ぐえっ……仕方ないじゃん!着地時の音があんなに大きいとは思わなかったんだもん!」

魔王「もう城ごと壊す?」

村人「それはマズイからダメ!」

今日はここで終わります

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年01月04日 (月) 20:55:50   ID: ehncNfKq

続き待ってます!

2 :  SS好きの774さん   2016年09月01日 (木) 22:59:38   ID: w8S41DGA

つ、続き… 続きを…!

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