真姫「満月の誘惑」【SS】 (49)

今宵は満月。闇夜にぱっと、明るく輝く満月の日

毎年この満月を見るとふと、あの日を思い出してしまう

あの日の私は……私たちはどうかしてたんだと思う

むしろどうかしていなかったら困る

そう、あれは十年前、今日みたいな満月が夜空に浮かんでいた………

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1447002259

μ'sのみんなが寝静まる中、私はベランダで一人月を眺めていた

「………はぁ」

ため息一つ。何に対して吐いたわけでもない、ただのため息

理由をあげるとするなら、そこで呑気に寝転がっている穂乃果みたいに寝られないことに……かな

でもそんなのはただの言い訳で、本当は…

「………?…真姫?」

寂しかったのかもしれない

中では珍しく寝言やいびきが聞こえず、外では五月蝿い虫達もなりを潜めている

そんな中一人、無音の暗闇の中でこの世の終わりとか自分の死とかを考えると眠れなくなっちゃうことってあるじゃない

私はμ'sの事。μ'sが終わったらどうなっちゃうんだろうって

いてもたってもいられず、こうしてベランダに逃げ込んだわけ

べ、別に泣いてなんかないけど!欠伸とかで目に涙が溜まっただけ!

「海未?」

そろそろ眠れるかなと思っていた矢先、海未が少しふらふらとした足取りで私の元に近づいてきた

あ、言い忘れたけど、今は海未の家でお泊り会の最中

穂乃果とことりに押し切られ、なんだかんだあって結局他のメンバーも泊まることに

加えて、人の家だと眠れなくなる事もよくあるわよね

閑話休題

「まだ起きていたのですか?」

「えぇ…ちょっと夜風に当たりたくて、ね」

もちろんこんな子供じみたこと、海未に言えるわけがない

他のみんなにはもっての外。馬鹿にされるのが目に見えるもの

「海未は?もしかして起こしちゃったかしら」

「……いえ、私も、そんな感じです」

海未にしては言い淀んだ言い方。多分眠気と相まって思考が回らなかったんだろう

「そう………じゃあ私もう寝るわ」

海未とほんの少しだけ話して安心した私はベッドに戻ろうとした

でも戻れなかった

「あっ真姫」

「ん?何よ」

「…もう少しお話しませんか」

月明かりに照らされ、にこりと微笑む海未に止められて

「その、嫌でなければ、ですが……」

「……別にいいわよ。なんだか目が覚めちゃったし」

「ふふっありがとうございます。私も目が覚めてしまいました」

この時不覚にも、増してくすくすと笑う海未にどきりとしてしまった

……恐らく雰囲気のせいだ

煌めく満月。ひっそりと沈んでいる夜。微笑む美少女と二人きり

男なら間違いなくイチコロね

だから私は悪くない。悪いのは海未と満月のせいだ

それからは他愛もない話が何事も無く行われていった

時々光る唇や微かに動く首筋に目がいってしまうが、それはただ海未が客観的に見て上位に位置する美しい女性なだけであって普通な事

……そう、思ってたのに

「月が、綺麗ですね」

「なっ…」

いきなり何を……

「あ、あぁすみません。今のはそう言う意味ではなくてですね」

海未が素早く否定する

「……何なのよもう。びっくりさせないでよ」

ちょっとどきっとしちゃったじゃない

「でも以外ね。海未もその言葉の意味を知ってたなんて」

「私からすれば真姫がそっちの意味で解釈してしまう事に驚きです」

ぐっ……言い返せない……

でも仕方ないじゃない。雰囲気のせいよ雰囲気のせい

でももう一つ驚いたのは………

「やけに冷静ね。いつもなら『破廉恥ですっ』って騒いでる癖に」

ちょっと反抗の意味を込めて言い返す

周りが寝ているから配慮した。なんて素っ気ない言葉が帰ってくると思いきや

「確かに。それは私も不思議です。どうしてこうも冷静でいられるのでしょうか」

逆に問いかけられてしまった

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