妹「雑談しよ、お兄ちゃん」(113)


兄「雑談つったって、話すことなんて無いぞ?」

妹「気にしないで。ただの暇つぶしだから」

兄「ん、なら良いが」


妹「お兄ちゃん、暇?」

兄「俺は大体いつも暇だと思っていいぞ。いや、別にニートって訳じゃないが」

妹「春休みなんだよね」

兄「まぁな。妹は、いつから春休みだっけ?」

妹「23日ぐらい?」

兄「なんで覚えてないんだよ、自己管理しっかりしろな」

妹「いいんだよ、細かいことは」

兄「そりゃそうだけどな」


妹「ついったぁ~、お兄ちゃんはやってるんだっけ?」

兄「いや、やってないけど」

妹「なんで?」

兄「なんでって言われてもなぁ、理由って言える理由もない」

妹「あれ?私、お兄ちゃんについったぁ~勧められた記憶があるんだけど」

兄「アカウントは持ってるよ。でも、飽きたからやってない」

妹「ふぅん」

兄「っつーと、お前はツイッターやってんのか?」

妹「うぅん、飽きてやめた」

兄「兄妹だな」

妹「そうだね」


妹「パックのコーヒー安かったから買ってきた」

兄「ん、1?の奴か」

妹「無糖だって。お兄ちゃんも、確か砂糖入れないよね」

兄「まぁそうだが。確かそれ、すっごく濃くて苦いんじゃなかったっけ?」

妹「え、嘘?」

兄「嘘じゃなかよ。ま、酸っぱくないから俺は好きだが」

妹「むー」

兄「いいじゃねぇか。薄めて飲めよ」

妹「あ、そうだね。問題解決!」

兄「お湯で薄めろよ?まだ寒いし、体冷やすと風邪引くから」

妹「そうだね。ありがとうお兄ちゃん」

兄「ん」


兄「暇つぶしの筈なのに、結局その気になって書いてるのな」

妹「いつもの事だよ」

兄「確かに」

妹「その逆も多いけどね」

兄「た、確かに」

妹「困ったお兄ちゃんですねぇ」

妹「って、私もか」

兄「偶に思うんだが、こういうのはノリツッコミに入るんだろうか」

妹「私としては、入ると思うんだけど。どっちでもいいよね」

兄「確かに」


兄「ふぁぁ……んっ……」

妹「なんでお兄ちゃんって私より女の子っぽい仕草が多いの」

兄「ん、欠伸は誰だってこうだろ」

妹「いや、そうじゃなくてね。……いや、なんでもない。気にしないで」

兄「そこは最後まで言えって」

妹「ごめんごめん」

兄「怒ってるんじゃないけどさ」

妹「女の子っぽいって言われるの、そんなに嫌だったの?」

兄「………」

妹「そこは否定して欲しかったよお兄ちゃん……」

妹「それは良いとして、いや、良くないけどさ」

妹「私ね、これでもけっこう自信あったんだよ」

兄「ツッコミに?」

妹「違う」


妹「美貌に……って言ったら、パリコレの人に怒られそうだけど」

妹「可愛いって、ちょっとは思ってたんだけどね」

兄「誰が?」

妹「反応はしないよ」

妹「鏡見て、ね……ちょっとだけだからね?」

兄「へぇ、意外な事実」

妹「でもね、お兄ちゃんは知ってると思うけど、私いままで一回も告白されたこと無いんだよ」

妹「なんでだと思う?」

妹「お兄ちゃんが可愛いからだよ」

兄「うん、知ってた」

妹「え……」

兄「この話、二回目だから」

妹「めっさ恥ずかしいんですけど」

兄「どんまい」


妹「もう、歳かな」

兄「そうだな」

妹「否定しようね」

兄「嫌」

妹「そこは否定しないでいいから」


兄「あー、眠い」

妹「さっき欠伸してたもんね」

妹「でも、いつも何時間寝てるの?」

兄「ん、10時間ぐらい」

妹「十分だと思うけどなぁ……」

兄「俺には足りないの」

兄「妹はどうなんだ?」

妹「うーん、大体5時間くらいかな?」

兄「妹お前すげーな」

妹「いや、凄いって話でもないと思うけどね」

妹「それよりお兄ちゃんは私の二倍寝てもまだ足りないんだね。育ち盛り?」

兄「それはない……と思う」

妹「でも、背は同じだよね。伸びてる訳でもないし」

兄「言うな」


妹「お兄ちゃんは、何か趣味ってあったっけ?」

兄「無い」

妹「じゃあ、マイブーム」

兄「ん、寝ることだな」

妹「えー」

兄「嘘じゃねぇよ」

妹「確かに嘘じゃないけどさ」

妹「いや、ずっと前からお兄ちゃん寝るの好きだったし、ブームじゃないのかな」

兄「どっちでも良いよ」

妹「むー」

兄「ふくれるな」

妹「ふん、どうせお兄ちゃんは羽毛布団が恋人だよ!」バタバタバタ

兄「また訳の分からん事を……って、廊下を走るな。学校じゃないけど」

兄「すでにいないから言っても仕方ないんだけどさ」


妹「ダイエットしたい」

兄「腹の肉が気になったのか。こんなんでも一応は女なんだな」

妹「そこうるさい」

兄「てか、今までダイエットした事なかったよな?割と意外だけど」

妹「まぁね。『食楽』と『体重』を天秤に架けて、『食楽』が勝ったからダイエットはしてなかったんだよ」

兄「でも、いい加減に気になってきたと」

妹「うん」

兄「見た感じ、全然分からんけど。むしろ、痩せすぎじゃないのか?」

妹「それは違うよ!おなか周りとか!ほら!」グイッ

兄「んー?あぁ確かに」ムニュ

妹「ひあぁんっ!?」

兄「面白い反応だな。めざせ芸人」

妹「ばっ、馬鹿兄ぃ!」バキ

兄「ぎゃふっ」

妹「……はぁ」


妹「pcってさ、ホント便利だよね」

兄「今更何を」

妹「だってさ、ホラ!こんなに文字が打ち易い!変換だって一瞬だよ!」カタカタ

兄「辞書登録とかもあるもんな」

妹「そうだよ!これこそ文明の利器だよ!」

妹「ケータイなんか目じゃないよね。すごいよね。両手で打てるもんね」

妹「どや!」

兄「何故お前がどや!ってするんだよ……」

兄「てか」

兄「お前さっきからキーボードしか褒めてないからな」

兄「それpc凄いとはちょっと違うからな」

妹「き、きにしなーい」

兄「うん、お前は気にしなくていいよ」

兄「そういう奴だって分かってるから」

妹「ぐっ……」


兄「正直さ……」

妹「うん?」

兄「時間の無駄だと思わない?」

妹「今更何を」


妹「お年玉、pc買うのに全部使った」

兄「馬鹿なのか賢いのか」

兄「買ったのって、一昨日だろ?」

妹「うん、もう日を跨いだから一昨日」

兄「んで、用件は?」

妹「ps vita欲しい」

兄「ダメ、無理」

妹「ケチー」

兄「どっちがだ」

妹「私」

兄「逆d……じゃなかった。紛らわしいやめろ」

兄「てかpcで満足しろよ」

妹「じゃあ、お兄ちゃんで満足させてよ!」

兄「断固拒否する」

妹「そこまで否定されると傷つくんですけど」


妹「コーヒーをさ、寝る前に飲むじゃん?」

兄「ん、まぁ偶に飲むな」

妹「でも、それで眠れなくなるって無いよね」

兄「確かに」

妹「何でなんだろうね」

兄「知らん」

妹「実はね、コーヒーの成分のカフェインってね、二週間しか効き目が出ないんだってさ」

兄「知ってんのかよ」

妹「つまり、毎日コーヒーを飲んでると、二週間ぐらいで効果がでなくなるって」

兄「へぇ~」

兄「この前テレビでやってたな」

妹「お兄ちゃんも知ってるんかい!」

兄「ん」

妹「だから、夜寝る前に飲んでも、私とかお兄ちゃんみたいな毎日何杯も飲んでるような人は、目が覚めるわけじゃないの」

兄「へぇ~」


兄「ん、おはよう」

妹「おはよー」

兄「相変わらず起きるの早いな」

妹「寝るのが遅いわけじゃないからね」

兄「昨日は何時に寝たん?」

妹「えー、一時くらい?」

兄「起きたのは?」

妹「六時」

兄「単に夜更かししてるからって、睡眠時間が短いわけじゃないんだな」

妹「早起きは三文の徳だよ」

兄「別に何かするわけじゃないのにな」

妹「大した理由なんてないよ。五時間以上は寝られないだけ。目が覚めちゃうの」

兄「なんで兄妹なのにこんな差があるんだか」

兄「それに、なんかオッサンみたいだな。決まった時間に起きちゃうのとか」

妹「さり気に酷い事言わないでよ」


兄「調査書、イッコ余った」

妹「受験の奴?」

兄「うん。余ったら返せって先生に言われてたけど、返すの忘れたまま卒業しちゃった」

妹「開けちゃえ開けちゃえ」

兄「えー、自分の評価とか見たくない」

妹「大丈夫だって。お兄ちゃんの事だから」

兄「その理由なんか怖いんだが」

妹「隙あり!」バッ

兄「あっ、おい!」

妹「へっへーん、何が書いてあるかなー」ガザゴソ

兄「駄目だっての」ゴン

妹「いったぁーい!」

兄「ホラ、返せ。燃やして捨てる」

妹「うぅ……ケチ……」

兄「言ってろ」


兄「最近、胃の調子が悪くって」

妹「食べすぎでしょ?」

兄「身も蓋も無い事いうなよ」

妹「事実でしょ。それに、太るよ?」

兄「それは妹であって俺じゃない」

妹「な、なんじゃとぉう!?」

兄「太りにくい体質なの。んで、量は食う方なの」

妹「ぐぬぬ……ずるい……」

兄「お前だって、痩せてr……そういえば、腹周り気になってたんだっけか」

妹「ぬがーっ!」

兄「あっははは、すまんすまん」

妹「くそぅ!お腹の肉!移れ!お兄ちゃんのお腹に飛んで行け!」

妹「ふんぬっふんぬっ」

兄「あっはっはっは」

妹「笑うなぁ!」


妹「ねぇ、お兄ちゃん」

兄「なんだ?妹もついに好きな男でも出来たのか?」

妹「ち、違うよ!なんでそうなるの!」

兄「あ、動揺したー」

妹「………」ゴン

兄「すいませんでした」

妹「……でさ」

兄「はい」

妹「私の、『孫の手』知らない?」

兄「……なんだって?」

妹「私の……『孫の手』、知らない……?」

兄「孫の……手……だと!?」

デデーン

<失踪した、妹の孫の手。そして迫り来る数多の刺客達>

<次週、『消えた孫の手と妹のぬくもり』。こう、ご期待>


妹「いや、意味わかんないから」

兄「ですよねー」

妹「で、知らないの?」

兄「知ってる」

妹「吐け」

兄「トイレに落ちてたよ」

妹「あー、あの時か」

兄「どの時?」

妹「トイレなんだからトイレ以外にあると思う?」

兄「否定はしない」

妹「しなさい」

兄「ん、断る」

妹「……もういいや。とりあえず、ありがとう」

兄「かまわん」

兄「そして、こっそりとトイレに忍び込む妹。そしてその手を<ゴツン>いたーい」


妹「じゃんけん」

兄「ぽん」

妹「勝ったー」

兄「負けたー」

妹「ラストプリンいただき」

兄「くそぅ」

妹「もぐもぐ」

兄「だったらお前を食ってやる」ガバ

妹「ひゃぁ!」

プリンベチャ

兄「あ」

妹「……お兄ちゃん?」

兄「すいませんでした」

妹「明日、買ってきてね」

兄「はい」


妹「英単語帳」

兄「なにそのボロいの」

妹「たった今、英単語帳と言ったのですが」

兄「ふぅん。で、何したらそんなボロくなったんだよ」

妹「雨で濡れた」

兄「ん、よくあるな」

妹「濡れてたからバックから出して、乾かした」

兄「にしちゃあ、ボロすぎないか?」

妹「乾かして、ちょっと目を離したら犬に玩具にされた」

兄「犬ってなんだよ犬って」

妹「近所のクレオパトラちゃん」

兄「あー……外で乾かしてたのか。犬のネーミングセンスについては触れないぞ」

妹「濡れ縁で乾かしてた」

兄「まぁ、しゃーないな。……ホラ、俺のやる。もう使わないし」

妹「その言葉を待ってた」


妹「………」

兄「枕元に立つな。気味悪い」

妹「起きてたの」

兄「今起きたの」

妹「……あのさ」

兄「いいよ、来い」

妹「うん……」

妹「……怖い夢、見たの」

兄「そっか」

妹「お兄ちゃんがいなくって」

兄「大丈夫だ。俺はいるから」

妹「うん……」ギュッ

妹「お兄ちゃんの背中……おっきい」

兄「そっか」

妹「うん……」


妹「zzz……」

兄「んー」

兄「やっぱ、気になりますよね」

兄「寝られませんよね」

兄「睡眠不足確定」

兄「……はぁ」


妹「……起きたらお兄ちゃんのお腹が目の前にあった」

妹「どうしよう」

妹「今起きだしたらお兄ちゃんも起きちゃうよね」

妹「どうしよう」

妹「……もっかい寝よう」

妹「お兄ちゃんあったかい」

妹「……ぐぅ」

兄「zzz……」


兄(起きたら妹と目が合った)

妹(起きたらお兄ちゃんと目が合った)

………

兄・妹(寝顔……見られてたのかな……)


兄(俺、涎とか垂れてたり寝言言ったりしてないよな……)

妹(お兄ちゃんが私の寝てる顔を……)

………

兄・妹(は、恥ずかしい………)


兄「あ、あのさ……」

妹「な、なに……?」

兄「朝飯、作るから……」

妹「あ、私が作るから……」

兄「……一緒に作るか」

妹「あ……うん」


兄「さて、休日だ。何しよう」

妹「お兄ちゃんチェスやろうよ」

兄「だそうだ。チェスやるか」

妹「ハンデちょうだい!」

兄「逆な。えーっと、ナイトとルーク外すよ」

妹「やった!これで……!」

………

妹「参りました」

兄「ちょいちょい、チェックメイトって言わせてくれよ」

妹「だって、メイトする前に負けが分かってるんだもん」

兄「まったく、再戦は?」

妹「ハンデマシマシで」

兄「某ラーメン屋っぽく言わないでよろしい」

妹「イエス、サー」

兄「日本語でよろしい」


妹「きゅりきゅりきゅりきゅり キャビア じゃなくて キャタピラ そんなムード」

兄「いきなり何を。てか、どんなムードか全然分からないんだが」

妹「考えるな。感じるんだ」

兄「人の限界って結構あっさりと到達するものだって知った。十五の夜だった」

妹「お兄ちゃんもう18だけどね」

兄「永遠の15歳」

妹「ボケとツッコミが入れ替わってるよ、お兄ちゃん」

兄「気にするな。誤差の範囲だ」

妹「そっか。それは僥倖だよ」

兄「だから日本語で喋れと」

妹「日本語だよ、お兄ちゃん」


妹「uma」

兄「馬?」

妹「何で私は「ゆーま」って発音したのに、その返しになるのかな」

兄「確かにそうだな」

妹「umaを捕まえてみたい」

兄「牧場行け」

妹「馬ネタはもう十分だからね。それに、牧場でいきなり馬捕まえたりしたら、一発でお縄だよ」

兄「確かに」

兄「じゃあ、裏山にでも行くか?ツチノコぐらいは、いるだろ」

妹「裏山って言うとド○えもんみたいだね。世代の問題かな」

妹「それでさ、ツチノコをシマヘビと同等に扱うのはどうかと思う」

兄「え?この前、ちっこい奴見たぞ。誰かがグレイなんちゃらって言ってたな」

妹「いつのまに我が市の裏山はそんな不思議ポイントになってたの」

兄「前からだろ?てか、何で今更」

妹「………」


兄「……と、いう訳で早速 裏山に来てみた」

妹「でてこーいでてこーい」

兄「何で俺まで」

妹「お兄ちゃんがいれば、いざって時に取り押さえられるから!」

兄「俺はいつの間にかumaハンターになっていたのか」

妹「『umaハンター兄』だね!」

兄「プロゴルファー猿を思い出したのは、やっぱり世代の問題なんだろうな」


<30分後>

ガサガサ!

妹「あ!何か動いた!」

兄「お、ついに来たか?」

妹「そこか!くらえuma!」バシィ

??「きゃぁぁぁっ!!」

妹「……あれ?」

兄「人間だ」

??「な、何!?一体全体なにが起きているんですか!?敵襲!?」

妹「チッ、umaじゃないのか」

兄「もっとリアクションすべき点があると思う」

妹「おー、すごいコレ。フリフリドレスだよ、お姫様かな」

姫様「あ、貴方達は誰ですか!?そしてここはどこ!?」

妹「すごいテンパり方だね」

兄「……この子、日本人じゃないよね」


こんなノリで第二章に突入

雑談はどこ行った


兄「さて、三分間放置したお姫様がこちらです」

姫様「あ、あの……え、何を仰って……?」

妹「まだ落ち着いてないんですが」

兄「ま、そろそろ大丈夫だろうよ」

兄「んで、アンタは誰なんだ?」

妹「ちょっとお兄ちゃん、その聞き方は怖がらせるだけだって」

兄「うっせ」

姫様「あ、あのぅ……お兄ちゃん様?」

兄「!!!!!」

兄の全身に電撃が走った!

妹「変態」

兄「……おっと、しまった」

兄「男はこうだから困る」

妹「お兄ちゃんだけでしょ」


姫様「え、え……?」

兄「あぁすまん。俺は『兄』っつぅんだ」

兄「んで、このちっこいのが『妹』」

姫様「あ、そうだったんですか。すいません兄さん」

兄「かまへんかまへん」

妹「貴女はなんてゆーの?」

兄「お前だって同じじゃねーか」

妹「うっさい」

姫様「ふふ、わたしは『姫様』です。よろしくお願いします」

兄「おう、よろしく」

妹「自分で様付け……」

兄「そこは触れるなバカ」

妹「バカって言った!」

兄「知るかバカ」

妹「あ、また言ったぁ!」


姫様「あ、あの……それで、こちらは何処なのでしょうか」

兄「ん、おっとすまん」

兄「で、どこって言われてもな」

兄「あ、ほら、ちょうどそこに看板あるから、見てくるといいよ」

姫様「看板ですか……」

妹「まさか日本語、読めないとか?」

兄「んなこたねーだろ。日本語喋ってるし」

姫様「そ、そのぉ……読めないん……です」

兄「………」

妹「……まさか、当たるとは思わなかった」

兄「まったくだ……」


兄「彼女はこう言った」

『たぶん、パラレルワールドかと思われます』

兄「まさか、そんな非現実的な話になるとは夢にも思わなかった」

妹「uma探しに来た人間の言うことじゃないよね」

兄「確かに」

………

姫様「どうしましょう……」

兄「字は読めない、でも言葉は通じる。で良いんだよな?」

姫様「あ、は、はい。そうです」

兄「もちろん、金なんて持ってない」

姫様「すいません。金銭は御付の者が管理しているので……」

兄「当たり前だが宿も無い」

姫様「どうしましょう………」

兄「……うっし、ウチに来い!」

姫様「……!」


………

姫様「ここが、兄さん達の家ですか……」

兄「おう。築30年超えで結構ボロいけど、気にしないでくれ」

姫様「は、はい。」

妹「姫様、緊張してるの?」

姫様「え、あの、それは……」

兄「たぶん、城と雰囲気が違いすぎたんだろ。大丈夫だ、お化けしか出ないから」

姫様「で、出るんですか!?」ビクッ

妹「お兄ちゃん、嘘を信じちゃう人に嘘を吐かないで」

兄「えー。だったらいつ嘘吐きゃいいんだよ」

妹「普通は、そもそも吐こうと思わないからね」

兄「確かに」

姫様「あの……お化けは、出るんですか?」

妹「出ないから安心していいよ」

姫様「そうですか……良かったぁ……」ホッ


姫様「し、失礼します……」

兄「なに畏まってんだか。もっとラクに行こうぜー」

妹「あのねぇ、女の子は繊細なの!」

兄「そうなのか?」

妹「姫様に聞いてみれば分かるんじゃないのー?」

兄「ん、姫様はどう思う?」ポン

姫様「はひゃいっ!な、なんでしょう!?」

兄「………」

兄「……俺、嫌われてたのか」

妹「んな訳ないでしょ」


妹「ねぇ、姫様」

姫様「はぃ……なんでしょうか……」

妹「……お兄ちゃん、パス」

兄「お、俺に振るなよ!」

兄「……あ、あのさ。大丈夫か?かなり緊張してるようだが」

姫様「はい、大丈夫です……」


姫様「覚悟は出来ていますから……」


兄「……は?」

妹「はぁ……やっぱりか……」

兄「???」

兄「妹、説明」

妹「あー、了解」


妹「姫様」

姫様「はい……」

妹「代償は要りません」

姫様「えっ……!?」

妹「私たちは、あなたに恩を売るつもりではありません」

妹「ですので、見返りも求めません」

妹「力を抜いてください」

姫様「いいの……ですか……」

妹「はい」


妹「どう?お兄ちゃん。これで分かったでしょ」

兄「……いや、全然。どういうことよ?」

妹「……ダメだこのお兄ちゃん」ハァ


妹「あのね」

妹「姫様は、他の世界から来た……らしい、んだよ」

妹「で、お金は持ってない」

妹「庶民の感覚も、恐らく持ち合わせてない」

兄「ん、ちょっと失礼な言い方だが、見逃そう。……それで?」

妹「それで、たぶん姫様は、私たちが宿を貸す代わりに、見返りを求めると思ったんだろうね」

妹「でしょ?姫様」

姫様「は、はい……」

兄「見返り?だって、金は持ってないんだぜ?働けって?」

妹「うーん、ちょっと違うよ」

姫様「あ、あの!」

姫様「私が、自分で言います……」

姫様「妹さんに頼むのは申し訳ないです……」

妹「そう、分かった」


姫様「私が、今、持っているものは」

姫様「この服だけです……」

兄「ん、まぁそうだな」

姫様「それと……」

兄「……?」

姫様「……身体」

兄「……あ」

妹「あ、じゃないよアホ兄」

兄「あー、そういうことか」

姫様「すいません……」

兄「あ、なんで姫様が謝るの!むしろごめん!」

兄「俺デリカシー無さ過ぎだろう……ぐあぁ」

姫様「あ、あの!」

兄「……ん?」

姫様「私は……私は、それでも構いませんから……」


姫様「お二人のご好意は、私には大きすぎます……ですから」

姫様「上手ではないかもしれません……でも、頑張りますので!」

兄「なーにを一人で盛り上がってんだ」ペシ

姫様「あぅっ」

妹「こらお兄ちゃん、女の子に手を挙げちゃダメでしょ!」

兄「おぉ、すまんすまん」

兄「でもな」

兄「そういうのは、俺はヤだな」

兄「女なんだからよ、自分の貞操だけは守り抜けよ」

兄「いつかさ、いつか、大切な人が出来たときに……その人に捧げてやれ」

姫様「兄……さん……」

姫様「……はいっ!」


妹「……ふぅーん」

兄「何か言ったら裸に剥いてやるからな」


兄「……さて、暗いのはやめだ!」

兄「明るく行こう!」

妹「誰のせいで暗くなったんだか」

兄「てめぇ、よほど襲われたいようだな」

妹「きゃーへんたいがいるー」

兄「変態ちゃうわっ!」

姫様「……ふふ」

兄「そこ、笑うな!」

妹「あっはっはっはっは」

兄「からてチョップ」ビシ

妹「うぎょーふっ」


兄「さて、夕食の時間もとっくに過ぎてる事だし」

兄「さっさと作って食うぞ」

妹「りょーかーい」

姫様「えっと……わたしは何をすれば?」

兄「ん、姫様は……」

兄「……別に手伝ってもらうような事は今んところ無いし、テレビでも見てて」

姫様「てれび……?」

兄「あー、説明めんどうなんだが」

妹「私が説明するよ。お兄ちゃんは夕ご飯作っておいて」

兄「おう、助かる。他の家電とかもよろしく」

妹「任された」

妹「じゃ、行きましょー姫様♪」

姫様「あ、はい」

パタパタ

兄「あー、なんか負けた気分。何故だ。……飯作るか」


………

兄「で、姫様の目が輝いてるんだが」

姫様「凄いです!便利です!」キラキラ

姫様「テレビ凄いです!レンジ便利です!」キラキラキラキラ

兄「……妹」

妹「あー、うん。ごめん。魅力的に語りすぎた」

兄「お前、セールスマンになれ。絶対世界一になれるから」

妹「それ割りとネタになってないから怖い」

兄「自覚あるんか」

妹「だってさ……」ユビサシ

姫様「はい、なんでしょうか?」キラキラキラキラキラキラ

妹「ここに被害者が」

兄「………」


妹「お風呂はいってくる」

姫様「えっと、行ってきます」

兄「はいよー、ごゆっくりー」


兄「……さて、姫様が帰る方法でも探すか」

兄「パラレルワールド……か」

兄「……諦めた」

<キャッキャ

兄「煩悩がやばい」

兄「……ゲームでもすっか」

<ヒメサマムネオッキィー

兄「む」

兄「……ヘッドホンしてゲームしよう」


妹「お風呂でたよー」

兄「……あぁ」

妹「やつれたねー。理由は分かってるから聞かないけど」

兄「……おぅ」

妹「んじゃ、もう寝よっかな」

兄「……そうか」

妹「おやすみ、お兄ちゃん」

兄「……おやすみ」

スタスタ

兄「……風呂、入るか」


カポーン

兄「ふぃー……」

兄「生き返るー」

兄「いやぁ、風呂最高」

兄「はあぁー」

兄「……どうしたもんかな」

兄「当たり前だけど、パラレルワールドって言われても、意思でどうこう出来る話じゃないからなぁ」

兄「でも、何とかして送り返してあげないとな」

兄「姫様……か」

姫様「はい、呼びましたか?」

兄「うわあぁっ!!」バシャーン

姫様「きゃっ」

姫様「だ、大丈夫ですか!?」

兄「大丈夫……ってか」

兄「姫様!なにを……ここ、風呂ですよ!?」


姫様「それは……もちろん分かってます」

姫様「……あの」

姫様「となり、いいですか?」

兄「あ、あぁ。いいけど……湯船、狭くないか?」

姫様「大丈夫ですから……」

兄「ん……そか。分かった」

姫様「……失礼します」チャポン

兄「………」

姫様「………」

姫様「……私、ホントは凄く怖かったんです」

姫様「知らない場所、知らない建物、知らない雰囲気」

姫様「そして」

姫様「知らない人達」

兄「姫様……」


姫様「怖くて、泣きそうになって……」

姫様「でも」

姫様「兄さん、あなた達が私を救ってくれました」

姫様「初めは、怖がってしまいました」

姫様「すいません」

兄「ん、いいって」

姫様「ありがとうございます」

姫様「………」

姫様「感謝しています」

姫様「心の底から」

姫様「……ありがとう」

姫様「兄……さん……」ピト

姫様「これは……私の意思です」

姫様「貰って下さい……私を」

兄「姫……様……」


兄「……駄目だ」グイ

姫様「兄さん……」

兄「駄目だよ……そんな事言われたら……」

兄「抑えが……利かなくなるから」ギュ

姫様「あっ……」

兄「……ん」

兄「これで、満足だ」

姫様「え……兄さん……?」

兄「逆上せちゃったかな。先に失礼するよ」ガチャ

バタン

姫様「あ、兄さん……」

姫様「……兄さん」チャポン

………

兄「……ごめんな、意気地なしで」


居間

妹「お兄ちゃん」

兄「い、妹……」

兄「あ、あれはだな……その……」

妹「ありがと」

兄「俺が悪いn……え?」

妹「やっぱ、お兄ちゃんはお兄ちゃんだね」

姫様「ほら、言ったとおりでしょう?」

兄「え、え? 姫様……?」

兄「ご、ごめん。ちょっと状況が……」

姫様「兄さん!」

兄「は、はい!」

姫様「あなたの事は、『お兄様』と、呼ばせていただきます!」

兄「は、はい!」

兄「……は?」


兄「……え?」

兄「妹と姫様、結婚すんの?」

妹「んな訳ないでしょ!」バシ

兄「あいたっ」

姫様「……私も、お兄様の妹とさせて頂きます」

兄「えーと、えーと……?」

姫様「ですので、私のことも、姫、とお呼びください」

妹「じゃ、私は、姫ちゃん、って呼ぶね」

姫様「はい、よろしくね、妹ちゃん」

妹「うん!」

兄「姫様が姫で妹で……???」

妹「あー、お兄ちゃんの処理能力が足りてない……」


兄「ようするに、義妹ってことでfa?」

妹「……イラっとしたけど、合ってる」

兄「よっしゃ!妹が二人で二倍ウハウハだぜ!」

姫様「え……兄さん……」

妹「……キモ」

兄「う、嘘だって!冗談だって!」

兄「俺は変態じゃない!信じてくれよ!」

妹「……で、本当は?」

兄「ウハウハの変態ですいませんでした」

妹「よろし……くないけど、よろしい」

姫様「えーと……」

妹「あー、姫ちゃんは気にしないでいいからねー」

姫様「は、はい」


こっからまた、日常パート

詰まりすぎワロタ


兄「姫さ……じゃなくて、姫」

姫様「はい、なんでしょうかお兄様」

兄「学校……どうする?」

姫様「学校……?」

兄「あー、勉強するトコだ」

兄「昼間とか、暇だろ?」

姫様「あぁ、それなら問題ありませんよ」

姫様「不肖私、英才教育を受けておりましたので」

兄「さすが……まさに姫だな」

姫様「でも、お兄様達は、学校に行くのでしょう?」

兄「ん、まぁな」

姫様「でしたら、私も行かせてください。昼、一人で暇なのは少しだけ辛いですから」

兄「あいよ。了解」

姫様「ありがとうございます」

兄「いいって」


校長「で、私に編入させろと」

兄「うん」

校長「金はあるのか?」

兄「んー、あんま無いかな」

校長「はぁ、仕方あるまいか」

兄「ありがと」

校長「事情の説明は……」

兄「ごめん」

校長「……はぁ」

兄「溜め息ばっか吐いてると、皺ふえるよ」

校長「この歳で皺とか言うだけ無駄だからな」

兄「確かに」


校長「兄君の家が住所でいいのか?」

兄「うん」

校長「……久々だな」

校長「こうして、編入を迫られるのも」

兄「迫られるって、悪者みたいに言うなよ」

校長「これ位は言わせろ。わしの金がまた減るんだぞ」

兄「「私」じゃなかったのか。若作りもほどほどにな」

校長「じゃかぁしいわ」

兄「凄むな凄むな」

兄「……分かってるよ。埋め合わせはするさ」

校長「ったく、これだから最近の若いモンは」

兄「おいおい、俺だけだからな、こんなの」

校長「分かっとるわボケ」

兄「ボケ言うなジジイ」


兄「……と、言うわけで」

兄「姫も学校に通うことになりました」

妹「あー」

妹「また脅したの」

兄「脅したゆーな」

兄「れっきとした交渉だ」

妹「はいはい」


妹「姫ちゃん、おめでとう!」

姫様「うん、ありがとう」

兄「おー、仲睦まじいこった」

妹「あ、お兄ちゃん、嫉妬?」

兄「うっせ」


校長「……ふむ」

校長「編入も楽じゃないんだがなぁ」

校長「ふぅむ」

校長「………」ピポパ

プルルル

??『……なに?』

校長「兄君の件だが」

??『お!待ってました!』

校長「……状況を見て来てくれ」

??『また増えたのか!』

校長「あぁ。同年の女子だ」

??『おっし!行って来るぜ!』

校長「コンタクトは許すが、襲うなよ」

??『分かってるって!』ガチャッ ツーツー

校長「……はぁ」


兄「姫、ちょっといいかな」

姫「はい、なんでしょう?」

兄「学校の事なんだけどな、来月から行くことになった」

姫「ということは、まだ日はあるのですね」

兄「ん、まぁな。いろいろ準備も必要だし、丁度良いんじゃないか?」

姫「そうですね」

姫「……ところで、お兄様や妹ちゃんは既に学校に通っているのでしょう?」

兄「あぁ。それがどうかした?」

姫「妹ちゃんから、平日は学校があって、休日はその名のとおり休みだと伺ったのですが」

兄「……妹よ、曜日や休日の説明をして、長期休みの話をしていないとは、これ如何に」

姫「??」

兄「あ、いや、なんでもない。えーとな……かくかくしかじかで……」

兄「と、いう訳なんだ」

姫「そうでしたの。それでは、来月からというのは、新学期に合わせての配慮だったのですか」

兄「おう。理解が早くて助かる」


姫「新学期まで、あと10日です!」


兄「……お前、それ誰に向かって言ってるんだ」

姫「視聴者ですわよ」

兄「無理に口調をお姫様っぽくしないで良いから」

姫「はいですの」

兄「それも違う」

姫「はいな~」

兄「そのネタは誰にも通じないと思う。主にヒント不足的な意味で」

姫「ふむ、私もまだまだですね」

姫「修行が必要なようです」

兄「せんでいい」


姫「お兄様、これは何ですか?」

兄「いいえ、それはトムです」

姫「はい?」

兄「なんでもない」

兄「それはパソコンだ。この前、妹が買った奴だな」

姫「これがパソコンですか。なるほどハイテクですね」

兄「パソコンは分かんないのにハイテクって言葉は使いこなせてるのな」

姫「いえいえ、それほどでも」

兄「むしろ皮肉ってたつもりだったんだが」

姫「テレビとは違うのですか?なにやらボタンが沢山ありますが」

兄「テレビとは違うのだよ!テレビとは! ……じゃなくて」

兄「これ電源スイッチな」ポチ フィィーン

姫「おー」

姫「これはメモリは積んでないのですか?2gbでは足りないと思うのですが」

兄「キミ、絶対知ってて言ってるよね」


妹「お兄ちゃん、買い物付き合って欲しいんだけど」

兄「ん、何買うんだ?」

妹「お、お兄ちゃんに言わなきゃダメ?」

兄「あー、いや、付き合えって言ってる手前、別に隠すような事じゃないかと思ったんだが」

兄「すまんな、別に言わなくてもいいぞ」

妹「うん、ありがと」

兄「んで、今から行くのか?」

妹「うん」

兄「あいよ、財布とって来る」

妹「あ、あのさ……」

兄「ん?」

妹「姫ちゃんには、内緒にしたい……かな」

兄「了解。大体なんのことか分かったけどな」ヒヒヒ

妹「……サイテー」

兄「あぁぁぁ、すまんって!すまんって!」


兄「ふへー、帰宅」

妹「そんな息つくほどの遠出じゃないでしょ」

兄「年寄りは労わってくれよ」

妹「18が何をおっしゃる」

兄「き、貴様!何故それを……!」

妹「はいはい。着替えてくるよ」

兄「あいよ」

妹「……付き合ってくれて、ありがと」

兄「ん、いいよそんなの」

妹「うん……」

兄「ほら、とっとと行け。昼間っから兄相手に盛るな」

妹「……やっぱサイテー」

兄「あぁぁぁぁ、ごめんって!ごめんってぇ!」


姫「お兄様……」

姫「お兄様ぁっ……」

妹「……姫ちゃん?」

姫「ひゃあぁぁぁぁ!?」

姫「い、あ、か、帰ってきてたのですか……」

妹「そ、そうだけど……」

姫「その、あの、今のは……えぇと……」

妹「き、気にしなくていいから……」

姫「あぁぁぁ……」

妹「お兄ちゃんには……内緒にしておくよ……」

妹「そ……それに」

姫「……?」

妹「たぶん、それは普通だと思うから……ね」

姫「うぅ……ごめんなさい」

妹「ホントに、気にしないで、ね?」


………

妹「お兄ちゃん、やっぱり人気者だね」

妹「学校でも、家でも」

妹「………」

妹「あーぁ」

妹「これからはずっと私が独り占めできると思ってたんだけどなぁ」

妹「ま、仕方ないか。それでこそお兄ちゃんだし」

妹「………」

妹「ちょっと、寂しいかな」

妹「お兄ちゃん……」

妹「お兄ちゃん……私……」

妹「……お兄ちゃん」

妹「………」

妹「……そろそろだよね」

妹「姫ちゃんに何て言おう……」


姫「お兄様から聞きましたよ」

妹「な、なんだって……」ガビーン

姫「ふふ、仕方ない事ですからね」

妹「上から目線やめて!」

姫「っていうのは、冗談としまして」

妹「はい」

姫「その、私はどうすればいいの?」

妹「んー、前に他の人がいたときは、お兄ちゃんを外泊させたんだけど」

妹「どうする?」

姫「あの、私がいても、問題はないかな……?」

妹「え、えーと。それを聞かれると困るんだけど……」

妹「私は、大丈夫かな……たぶん」

妹「お兄ちゃんにも、聞いてみて」

姫「あ、うん、分かりまし……分かった」

姫「聞いてくるね」


書けば書くほど雑談から遠ざかる。

頭が勝手にストーリーを弄ってしまうんだぁ!

この言い方だと文才あるみたいだな

ないよ!読んでれば分かるけど!


兄「……妹は、いいって言ったのか?」

姫「はい。渋々、といった雰囲気でしたけど」

兄「そっか」

兄「じゃ、いいよ」

姫「ありがとうございます」

兄「……でもな」

姫「は、はい」

兄「キツいのは、アイツじゃなくてお前だぞ」

姫「………」

姫「……はい」

兄「……分かった」

姫「それでは、お休みなさい、お兄様」

兄「ん、おやすみ」

………

兄「……たぶん、『彼女』も来るだろうし。大丈夫かな……俺以外は」


??「……ほう、分かってんじゃねぇか」

??「大丈夫だ。アタシが助けてやるよ」

??「はっはっは、楽しいカーニバルになりそうだ!」

兄「止めてくださいね」

??「おぉう!?」

兄「絶対いると思ってましたよ」

??「はっはぁ、腕を上げたな!」

兄「はいはい、そうですか」

??「なんだ、釣れねぇなあ」

兄「ノリ悪くて悪かったですね」

兄「で、部屋は準備してありますが、どうします?」



兄「……姉さん」


妹「……やっぱりね」

姉「そういうなって!悲しいじゃねえか!」

妹「だったらもう少し悲しそうにしてよね……」

兄「でさ。姉さん」

姉「なんだい、弟よ」

兄「目的は?」

姉「ん、お前」

兄「………」

姉「冗談だって!」

姉「……そこのネェチャンだよ」

姫「わ、私ですか……」

姉「おうよ」

姉「理由は聞いてるのは知ってるけどさ」

姉「やっぱし、覚悟決めてるっつっても」

姉「困るんだよね。邪魔だ」


兄「姉さん!その言い方は!」

姉「いや、ね。数日間だけでいいからさ」

妹「お姉ちゃん!」

姉「あぁもう!二人して!はいはいアタシは悪者ですよ!」

姉「でもな」

姉「それで困るのは誰だ?ツライのはネェチャンかも知れないがな」

姉「もっと、もっと苦しく感じるのは何時だって『兄』じゃねぇか」

姉「……アタシは、様子見とちょっとした世話のために来たんだ」

姉「でも、こんな事になってるたぁ思わなかったわ」

兄「………」

妹「………」

姫「………」


姉「だからさ」

姉「アタシは言いたい訳よ」

姉「……おい、ネェチャン。ちょっとこっち来い」

姫「え……は、はい」

姉「アンタ、覚悟あるって言ったよな」

姫「………」

姉「ダンマリかい」

姫「ぁ……」

姉「あぁ?」

姫「あの……私は……」

姫「私は……お兄様につらい思いをさせるのなら……」

姉「………なら?」

姫「覚悟は……ただの独りよがり……です、から……」ポロポロ

姉「………」

姫「邪魔、ですし……出て行きます……」ポロポロ


姉「……ふぅん」

兄「……姉さん」

姉「あぁ、分かったよ」

姉「コイツは大丈夫だ」

姉「参加してよし!」

姫「ぐすっ……あ、ぁの……なにを……」

妹「……はぁ。毎回これやるの、精神的にしんどいんだけど」

兄「まったくだな」

姉「はっはぁ! いやぁー、まったく、アタシだってこんなんイヤなんだぞ?」

姫「お、お兄様……?妹ちゃん……?」


兄「あー、姫。ごめんな」

姫「は、はい……」

兄「姉さんは、こうやってウチに来る人を試すのが好きでな」

姉「好きちゃうわ!」

兄「それで、姫もその審査を受けたってワケ」

姫「そうなんですか……」

姉「って事だ。すまんね、姫ちゃん」

姫「……っ」ビク

兄「あーあ、怖がられてやんの」

姫「だ、大丈夫です……気にして、ません、から」

姉「おい、その言葉ほど信用できないって思ったことはないぞ……」

姉「じゃ、なくて。ホントにスマンな」

姉「そったら、兄!姫ちゃんのアフターケアよろしく!」

兄「え、ちょっと姉さん!自分でやっt……」

兄「……窓から出てったし。なんなんだあの人は」


姫「……っぁ」ペタン

兄「あ、大丈夫?」

姫「す、すいません。力が抜けて……」

兄「あー……」

妹「……姉さん、私のこと、まだ許してくれてないんだね」

兄「……しゃあないだろ」

兄「姫、立てるか?」

姫「す、すいません……まだ……」

兄「そっか」

兄「……ほらよ」

姫「……え?」

兄「背負ってやる」

姫「え……あ……はい」モゾモゾ

兄「どっこいしょ」スクッ

妹「………」


兄「部屋に運べばいいか?」

姫「はい、お願いします」

兄「あいよ」

スタスタ

妹「……お兄ちゃん」

妹「……胸が痛いよ」

妹「………」

妹「お兄ちゃん……」

姉「へぇ、やっぱこうなるんだ」

妹「ひぁぁぅっ」ビクゥッ

姉「妹、アンタの事は恨んでないよ」

妹「え……」

姉「でも、許してもない」

姉「だから、精一杯ぶつかっていけ!お前に分はある!行けぇい!」

妹「お姉ちゃん……」


妹「ありがと……」

妹「でも、それじゃやだよ」

姉「あ?なんでさ」

妹「お姉ちゃんも、ぶつからなくっちゃ」

姉「……!」

姉「お前……」

妹「お姉ちゃんも、姫ちゃんも、同じだよ」

妹「おんなじ、ライバル」

妹「だから、ライバルが諦めるなら、私も行かない」

姉「……アンタねぇ」

姉「だから甘いんだよ。何時まで経っても進展ないんだよ」

姉「はぁ」

姉「……今回だけだぞ。全力で行くからな」

妹「その意気だよお姉ちゃん」

姉「ったく、何時からそんな生意気な口聞くようになったんだかな」


<兄争奪戦:開幕>

雑談?

知らん知らん


妹「新学期まで、あと10日です!」


兄「……今度はお前か」

妹「おー、いえーす」

兄「日本語英語の極みだな」

妹「oh……yes……yes……」

兄「また懐かしいcmを」

妹「艶かしいでしょ!」

兄「はいはい」

姫「妹ちゃん……ハァハァ」

兄「………」

兄「何時からいたんだ、そんな性癖あったのか」

兄「好きなほうを選べ」

妹「疑問を相手に選ばせるとは、斬新過ぎて周囲が困るね!」

兄「知るか。俺は今、軽くショックを受けているんだ」


妹「あと9日です!」

兄「コピペしたせいで日にちずらすの忘れたんだな」

妹「うるさい!」

姫「どうもすいませんでした」

姉「月に変わって謝罪します」

兄「姉さん、それ月の立場がひどく社長じみてるからやめてね」

姉「広報担当の悲劇」

兄「見たくない見たくない」


兄「コーヒー最高」

妹「うむ」

姫「コーヒー?」

兄「これですぞ。ささ、お姫様。どぞ」

姫「ど、どうも……」

姫「あ、芳ばしい香り」

姫「いただきます」ズズ…

姫「………」

兄「どう?」

姫「に、にがいでふ……」

兄「うん、そうだと思った」

姫「おにいひゃま!ひどいでひゅ!」

妹「か、可愛ええ……」

兄「確かに」

姫「苦ぃ……ふぇ……」


兄「恋のキューピッド」

妹「ごめん意味が分からない」

兄「キューピッドって、エロスの事なんだよ」

兄「恋のキューピッドってさ」

妹「ごめん意味が分かりたくない」

兄「文法おかしいよ」

妹「細かいことは気にしない。長生きのコツ」

兄「そーなのか」

妹「そーなのだ」


妹「姫ちゃん、フリスクあげる」

姫「ありがとう」

姫「タブレットという物ですね」

妹「はい、どうぞ」

姫「いただきます」パク

姫「………」

妹「どう?」

姫「……どうひてわたひはこんな立ち位置になってるんでふか」

妹「可愛いからだよ!」

姫「ひどいでふ。非人道的でふ」

妹「可愛いからいいの!」

妹「むぎゅーーー」

姫「ひゃゃぁぁぁ」


兄「……何やら騒がしいなぁ」


姫「あの、お兄様」

兄「ん?」

姫「『お兄様』って呼び方は、変えたほうが良いでしょうか」

兄「え、なんで?」

姫「り、理由は特にありませんけど……」

姫「例えば、『お兄ちゃん』とか……」

兄「妹と被ってるじゃん」

姫「では、『にぃに』」

兄「……何かが、最近アニメになってるらしい何かがフラッシュバックするからダメ」

姫「『兄やん』」

兄「上に同じく。アニメじゃなくてゲームだけど」

姫「『兄さん』」

兄「これ言っていいか分かんないけど、『にいさん』なのか『あにさん』なのかで意味が変わってくるから却下」

姫「……なんかもう、変えなくていいです」

兄「はい。またの受付お待ちしております」


姫「妹ちゃんは、化粧品を持っているのですか?」

兄「……何故俺に聞く」

姫「いえ、妹ちゃんが教えてくださらないので」

兄「策士め」

姫「褒めても何もでませんよ」

兄「褒めてねぇよ」

兄「んで、化粧か」

兄「リップぐらいじゃねーの?」

姫「そうですか」

姫「ありがとうございます」

姫「では」スタスタ

………

兄「ふぅん」

兄「乙女の戦いかな」

兄「……果たして乙女なのかどうかは別にして」


妹「お兄ちゃん!」

兄「やっぱ来たか」

妹「なんで適当なこと教えるの!」

兄「だって知らんし」

妹「普通、知らなかったら適当にでっちあげようとは思わないからね!」

兄「なに、そうなのか」

妹「……はぁ」

兄「で、何で教えたくないんだ?」

妹「やだ、言わない」

兄「はぁ?」

妹「この、バカお兄ちゃん!」バタバタ

兄「……い、意味分からん」

………

妹「ばか……」

妹「お兄ちゃんのための化粧だから、誰にも教えたくないの……って、絶対言っても理解してくれないもん……」


姉「どもー、姉でーす」

兄「ナチュラルに窓から入ってこないでください」

姉「無理」

兄「否定ではなく不可能ですか……」

姉「で、どう?美味くイってる?」

兄「その言い方は誤解を招きます。やめてください」

姉「却下」

兄「何やら姉さんの方が権力を持っているようですね」

姉「すいませんでした」

兄「さすが姉さんです。尊敬してしまいまいます」

姉「『いま』が多い」

兄「あら、ホント」

姉「最近さぁ、アタシのあしらい方酷くないですか?」

兄「気のせいだと思われます」

姉「だよねー」


校長「オチを付けないネタは世界で三番目に悪なのだぁぁぁ!!」


妹「……今なにか聞こえた気がする」

兄「疲れてるんだろ。そろそろ寝ろな」

妹「うん、おやすみ」

兄「おやすみ」


姉「しっかり兄貴やってんじゃん」

兄「見てたんですか」

兄「っていっても、前に姉さんが来たときと変わらないと思いますよ」

姉「あー、それもそうだね」

姉「そろそろアタシも帰るか」

兄「そういえば、姉さんはウチに泊まらないんですか?」

姉「え、それって襲っていいってこと?」

兄「玄関はあっちだから、お休みなさい、姉さん」

姉「ちょ、嘘だって!嘘だから……あぁぁぁーーーー」 バタン ガチャ


姉「……ったくよぉ、鍵閉めやがって」

姉「さて、帰るか」

兄「姉さん」

姉「ん、どした?」

兄「……冗談ですよ。泊まっていってください」

姉「へへ、やだね」

兄「どうしても、ですか?」

姉「あぁ。この家は嫌いだ」

兄「……分かりました」

姉「お前が気にすることじゃないよ」

姉「じゃな、おやすみ」

兄「おやすみなさい……」


妹「あと8日!」

兄「はいはい」

妹「私はあと2日!」

兄「言わんでよろしい」


姫「お兄様、バイト……という物がしたいです」

兄「バイトぉ?いや、する必要ないからいいって」

姫「それはそうかもしれませんが、私がこの家に厄介になる以上は、何か出来る事をしたいです」

兄「ん、それは良い心がけかもしれないがな。……でも、その上で、必要ない」

姫「そんな……」

兄「誰かの役に立ちたい、というのなら」

兄「この世界のことをいっぱい学んで、姫の世界に帰ってからそれを活かせ」

兄「それこそ、お前の世界での人助け……いや、文明の発展に貢献できるからな」

姫「で、ですが」

兄「姫」

兄「何をするにも、”こっち”に慣れてからだ。それに、夕食の支度とか手伝ってくれると、俺はすごく助かるよ」

兄「だから、俺の手伝いから始めよう。バイトも、人助けも、その後だ」

姫「……はい」

兄「そう気負うな。皺が増えるぞ」

姫「そ、それは怒ってると、です!」


兄「音楽プレイヤー壊れた」

妹「あっはっはっはっは」

兄「笑うな!」


姫「ゲームしましょう!」

兄「……は?いや、姫。お前ゲームなんてしたこと無いだろ」

姫「ところで、ゲームってなんですか?」

兄「……おい妹。姫を巧みに操ってゲームをしようと」

妹「あ、ばれた?」

兄「ばれるばれない以前の問題だろ……」

妹「でも一回やったら姫ちゃんも絶対やりたいって思うもんね!」

兄「はいはい」

兄「別に、お前が直接『ゲームやりたい』って言いに来てもダメとは言わんぞ」

妹「あー確かに」

兄「……じゃあ何故姫を使った」

姫「???」


妹「大乱闘スマッシュブラザーズ(64版)!」

兄「どうしてそう古いのをやりたがる」

姫「古いのですか?それにしては、綺麗ですね。塗装もはげてませんし」

妹「うん。この前お兄ちゃんに整備させた」

兄「させられた」

姫「そ、そうですか……」

兄「基盤まで掃除したのでまる一日かかりました」

姫「そ、そうですか………」

妹「塗装は私がやったけどね」

兄「お前はただペンキで遊びたかっただけだろ」

妹「まぁねー」

姫「え、ペンキなんですか、コレ」

兄「うん」

姫「そ、そうですか…………」

妹「へっへっへー」


妹「くらえー」

兄「くらわんー」

妹「おりゃー」

兄「なにくそー」


姫「………」

姫「私とcpuの残機が無くなってから、もう30分経つのですが」


兄「そこだー」

妹「あまいわー」


あ、100行った

ってこれ、101じゃん

祝100じゃないじゃん


妹「みてみてーガチャピン」

兄「スーパーボールくっつけてガチャピンって発想は無かったわ」

妹「色は割愛」

兄「一番大事なトコを」

妹「ガチャピンミサイル!」ビシュ

兄「ちょ、危ないからやめぃ!」

妹「ふはははは!ガチャピンの恐ろしさに肝を冷やしたか!」

兄「いや、肝は冷やさないが……そもそもそのガチャピン玉の使い道違うからな」

妹「え、そうなの?」

兄「ん、使うってのとは違うけどな。ラクダのコブみたいに、中にエネルギーを溜めてるんだとさ」

妹「へぇー」

兄「つっても、例えに使ったが、ラクダのコブに溜まってるのはエネルギーじゃないがな」

妹「そうなの?」

兄「水だとよ」

妹「へぇー。……あれ?そもそも何の話だっけ?」


妹「夕ご飯なにー?」

兄「喜べ、肉鍋だ」

妹「に、肉鍋……お兄ちゃん……」

兄「おいこら、ドンブリと同じような発想するな」

妹「冗談に決まってんじゃん」

兄「殴っていいか?いいよな」

妹「秘技!姫ちゃんガード!」

姫「きゃ!?え、今、布団で本読んでたのに……あれ?」

妹「どうだ!殴れまい!」

兄「……」バキ

妹「あふん」

姫「お、お兄様!?妹ちゃん!?え、え??」

兄「あー、姫。部屋戻っていいぞ」

姫「あ、はい……と思いましたが、そちらは、何の準備をなさっているのですか?」

兄「あ、これ。鍋っていうんだけど……もうちょっとで準備終わるからちょっと待ってて」


兄「よし、完成!」

妹「んじゃ、運ぶよー」

兄「おう、頼む」

妹「ほいほーい」

兄「おーい、姫。夕食できたぞー」

姫「はーい。今行きますー」パタパタ

姫「わぁ、とっても美味しそうです!」

兄「お、そうか。今日のは特によく出来たから、期待していいぞ」

姫「分かりました、精一杯期待させていただきますね」

兄「はは、ちょっと緊張するなぁ」

妹「大丈夫だよ、美味しいもん」モグモグ

兄「おい、フライング」

妹「はっはっはー、早くしないとなくなっちゃうぞー」

姫「そ、それは大変です」

兄「マジで心配するなっての」


………

妹「ふぃー、お腹いっぱいだー」

兄「食いすぎっと太るぞー」

妹「こんだけ食べたんだから今更だーい」

姫「お兄様、とっても美味しかったです。これは『鍋』というのですね」

兄「ん、あぁ。そうだ。それよか姫、鍋、見たこと無いのか?」

姫「はい、初めて聞きました。……なぜ、そのような質問を?」

兄「あー、いや。お前とは全く関係ない話だが、以前にちょっとあってな。聞きたいか?」

姫「出来ることなら、お願いします」

兄「そうか。分かった」

兄「ちょっと長くなるかもな」

姫「はい、大丈夫です」

兄「ん、じゃあ話すか」

兄「だいぶ前のことなんだがな、つっても3年ぐらいか?」

兄「その頃に、この家に来てたんだよ。姫じゃない、『外の世界』の奴が」


兄「懐かしい話だな。もう3年位経つのか」

兄「姫と同じくらいの歳の奴でな」

兄「つっても、お姫様、ってワケじゃなかったが。まぁ、普通の階級だったんだろうよ」

兄「んで、そいつが住んでた世界ってのが、『ここ』と鏡写しだったんだ」

兄「いや、鏡写しっつっても、そのままの意味じゃないぞ?」

兄「『パラレルワールド』。そいつは、そう言ってた」

兄「どこかで時空が分岐したのか、或いは平行世界だったのか」

兄「そいつは『こっち』でずっとその事を追い求めてたんだよ」

兄「『向こう』では、最年少の科学者だとかなんとか……まぁ、スゴイ奴ではあったんだがな」


『パラレルワールド』

彼女にとって、理解できない、そして科学では証明できないことが悔しかったのだろう。

彼女が悩み、考え込む姿が思い出される。

今は、どうしているのだろうか……

少しだけ感傷的になってみる


………

姫「そうだったのですか……」

兄「ん、そんな暗くなるなっての」

兄「それよか、むしろ喜ぶべきだぜ?」

姫「……?なぜですか?」

兄「アイツの、その後を知りたいだろ?どうなったと思う?」

姫「え、それは、まさか」

兄「あぁ、「帰っていった」よ。アイツの世界に」

姫「………!」

兄「つまりは……頭良いお前なら分かるよな」

姫「私も……帰ることが出来る……ですか」

兄「そういうこったな」

姫「帰れる……元の世界に……」

兄「どうした?あまり嬉しくなさそうだが」

姫「あ、いえ。……すこし、考えさせてください」


深夜

姫「……私は」

姫「帰りたいのでしょうか……」

姫「私のいた世界に……帰りたいのでしょうか」

姫「………」

姫「必要とされていなかった……」

姫「どこにいても邪魔者で……」

姫「地位だけの存在で……」

姫「それでも……戻りたいのでしょうか……」

姫「……分かりません……私には分かりません」

姫「お兄様、私はどうすれば……」


兄「じっくり考えてから結論出せばいいんじゃねぇの?」


姫「お、お兄様!?」

兄「やぁやぁ姫、独り言は声に出さないほうが良いぞ」


姫「なぜ……」

兄「白馬に乗った王子様……っつーほどイカしてもないがな」

兄「困ってんのに、気づかないフリはできねぇよ」

兄「つっても、結論はもう出てるがな」

姫「………」

兄「めいっぱい、こっちで暮らしてみればいいんじゃねぇの?」

兄「そんで、それでも、姫の世界の方が良いって、そう思うなら」

兄「俺が背中を押してやる」

兄「元の世界への返し方なんて殆ど手探りになるけどな。そこは許してくれ」

姫「お兄様……」

兄「ちょっとしたラッキーだと思って、楽しんだほうがいいぞ」

姫「はい……」

姫「ありがとう……お兄様」

兄「気にすんな、みんなが楽しめた方が、俺も楽しいからな」


兄「……さて、そろそろ寝ろよ?もうこんな時間だしな」

姫「はい、お休みなさい」

兄「あぁ、おやすみ」

………

兄「さてと、ウチは夜更かしさんが多いから大変だな」

妹「……やっぱ、気づいてたの」

兄「そりゃ気づく。俺を舐めんなっての」

妹「舐めないよ、汚いもん」

兄「んな、てめぇ……」

妹「ふっふっふー」

兄「んで、用件はアレか?あと二日とか宣言してたけどよ」

妹「うん、そうだよ」

兄「相変わらず淡白だなぁ……結構大変なんだぞ?」

妹「でも、嫌ではない、と」

兄「うっせ」


妹「それで、さ」

兄「もう結構来てるんだろ?」

妹「……うん」

兄「どうしたい?」

妹「……私にそれを言わせるの?」

兄「俺じゃ分からん」

妹「まったく……お兄ちゃんらしいけどさ」

妹「……ちゅう、して」

兄「その歳で「ちゅう」とか」

妹「う、うるさい」

兄「ほら、もっと近く寄れ」

妹「あのさぁ、ムードとか無いの?」

兄「無い……ん」チュ

妹「んっ……、ぁ……はぁ……はぁ」

妹「あり、がと……」


妹「でも、もっと辛くなったかも……」

兄「だと思ったよ」

妹「お兄ちゃん……」

兄「しゃーねぇ妹だ……ったく」ギュ

妹「ふあぁ……」ゾクゾク

兄「……おい、今からマジになってどうする」

妹「そ……言っても……ムリ、ぃ……」

兄「……はぁ、また寝不足か」

妹「ごめん……」

兄「気にすんな……とは言いたくないがな」

妹「ふふっ……」

兄「………」チュッ

妹「んむっ……い、いきなりしないでよぉ」

兄「うっせ」

妹「ちょっと……ひぁ……おにぃちゃん……」

俺きめぇワロエナイ

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