緒方智絵里「働きたくない」 双葉杏「ど、どうしよう……」 (29)

智絵里「いつになったら週休8日になるんだー」

杏「そ、それは物理的に無理じゃないかな……」


P「なんだこの違和感半端ない状況は」

P「まるで2人の中身が入れ替わったような……まさか!」

志希「あたしだ」

P「お前だったのか」

志希「暇を持て余した」

P「神々の……って、こんなことしてる場合じゃないだろう」

志希「もう、つれないなあ~」


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志希「――というわけですヨ」

P「なるほど。つまり、志希が気まぐれで作った入れ替わり薬の入った飴を、たまたま智絵里と杏が食べてしまったと」

志希「イチゴ味の飴とリンゴ味の飴を食べた人間の中身がチェーンジ♪ どーよ、すごいでしょ!」

P「君と晶葉の発明にはいつも驚かされてばかりだよ」

P「で、この二人をどうするかだが」

P「杏の中にいるのが智絵里」

杏「はい。困りました……今日もお仕事あるのに」

P「智絵里の中にいるのが杏」

智絵里「他の人にばれるとまずいから今日は自宅待機ということに」

P「ならん」

智絵里「えー、なんでさ」

P「安易な仕事のドタキャンは信用を落とすからな。二人とも仕事がだんだん増えてきたこの時期にそれは避けたい」

智絵里「ちぇー。うまい感じにサボる口実ができたと思ったのに」

杏「あ、あの……皆さんに事情を説明するというのは」

志希「あー、それはできるだけやめといてほしーな」

志希「身体を入れ替える薬なんて、存在がばれるといろいろメンドーなことになりそうだし」

P「まあ、こっちから言わなきゃ、二人の中身が入れ替わってるなんて疑う人はいないだろう」

志希「そそ♪というわけで、事務所のみんなにも秘密の方向でひとつよろしく♪」

P「だ、そうだ。二人とも、それで大丈夫か」

杏「な、なんとかやってみます……杏ちゃんの真似、できるかな」

P「困ったら寝てればそれらしくなるぞ」

智絵里「ちょっと、なんなのその言い方。まあ違わないけど」

P「杏もいけそうか?」

智絵里「ま、やれるだけはやってみるよ。勝手に飴食べたこっちにも責任はあるし」

智絵里「プロデューサーも、ちゃんと呼び方気をつけないと」

P「ん? あ、そうだな……わかったよ、智絵里」

智絵里「はーい」

志希「にゃふふー、なんか面白いことになる予感♪」

P「楽しむな。君の薬のせいでこんなことになったんだぞ」チョップ

志希「ごめんごめーん」

卯月「杏ちゃん、今日はなんだか元気ですね!」

杏「え、そ、そうかな……」

卯月「いつもなら、この時間はお昼寝しているので」

杏「きょ、今日はちょっとやる気モード、みたいな?」




幸子「逆に智絵里さんはいつもよりぐでーっとしてますね」

智絵里「今日は省エネモードなんだ」

幸子「はあ……でも、省エネもほどほどに、ですよ」

幸子「だらだらしていると、カワイイボクが置いていっちゃいますからね!」フフーン

智絵里「あーうん、どぞどぞ」

幸子「……なんだか、本当にいつもと違いますね」

幸子「体調が悪いなら、早めにプロデューサーさんに言った方がいいですよ?」

智絵里「わかったー……はー、だるい」




P「………」

P「よし、大丈夫そうだな!」

志希「いやいや、今の見てそう言えるの? 本気で?」

P「そう思わないとやってられないからな」

P「仕事中にボロ出しそうになったら俺や君がなんとかする。それでなんとかなる」

志希「キミのそーいうひた向きでギャンブル精神旺盛なところは、あたし好きだったりしてー」

P「どういたしまして」

P「というわけで、中身が智絵里の杏のフォローは任せたぞ」

志希「これから一緒に仕事だからってことだね。オッケー、まかされよ♪」


志希「とゆーわけで杏ちゃん。あたしとともに希望の未来へレッツゴー!」

杏「ひゃっ! い、いきなり手をつかまないでくだ――」

志希「びゅーん♪」

杏「あ、あ~れ~~~」


卯月「あはは……志希ちゃんはエネルギッシュですね」

幸子「相変わらずスイッチの切り替えが激しいというか」

P「……志希が目立つぶん、一緒にいれば杏の違和感は薄れるだろう」

P「あっちは任せて大丈夫……だよな?」

幸子「それじゃ、ボク達も行ってきますね」

卯月「頑張ります!」

P「ああ、しっかり頼む」


ガチャ、バタン


P「卯月と幸子も現場に向かった、と……残るは」

智絵里「ぐで~~」

P「あそこで干物になってる杏か……見た目が智絵里なせいで違和感がすさまじい」

智絵里「プロデューサー、やっぱ今日は休みにしようよ。きっとよくないことが起こるよ」

P「大丈夫だ心配するな」

智絵里「根拠は?」

P「大丈夫だ心配するな」

智絵里「いやそんなこと言ってもさ」

P「大丈夫だ心配するな」

智絵里「対応が雑!」

智絵里「抗議しまーす、プロデューサーが杏の意思をないがしろにしまーす」

P「はあ、まったく……というか、今日だけはもう少ししっかりしてくれ」

智絵里「えー? いーじゃん、今は杏とプロデューサーの二人だけなんだし」

P「そういうわけにもいかないんだよ」

P「ワンピース姿で地べたを這ってると……ズレて、下着が見える」

智絵里「………」

智絵里「!!?」シュババッ

P「ものすごい速度で姿勢を正したな……」

智絵里「い、いつもならともかく、これ智絵里ちゃんの身体だから。はしたない姿見せてたら、戻った後に怒られそうだし」

P「そうだぞ。だから今日はしっかり者でいこうな。仕事にも文句言わずに」

智絵里「それとこれとは別」

P「やっぱりか。手ごわい奴め」

智絵里「だがそれがわたしだ」ドヤ

P「………」

智絵里「……プロデューサー? どうかした?」

P「いや、なんでもない」

P「ほら、飴あげるから仕事頑張れ」

智絵里「いくつくれる?」

P「3つ。終わったらもう3つあげよう」

智絵里「むう……しょうがないなあ」

P「ようやくやる気になったか。偉いぞ」ナデナデ

智絵里「ひゃっ! ちょ、いきなり触られるとびっくりするって」

P「あ、ああ。ごめん」

P「(いつもは頭触ったくらいじゃ何も言わないのに……智絵里の身体は敏感なのか?)」

P「(あるいは、常時省エネの杏の身体が外部の刺激に鈍感なだけか)」

智絵里「それより、早く飴ちょーだい」

P「わかったわかった。ほら」

智絵里「ありがとー」

P「ほい、あーん」

智絵里「……あ、食べさせてくれるんだ」

P「いつもそうしてるだろ」

智絵里「そうなんだけどさ。今日は身体が違うから、ほら」

智絵里「あーん……」

P「………」

P「(智絵里の身体が口を開けて飴を待っている姿、妙にエロいぞ……)」

P「(い、いや! 落ち着け、俺はプロデューサーだ。アイドルに邪な感情を抱くわけにはいかん)」

P「あーん」

智絵里「はむっ」パク

P「おいしいか?」

智絵里「うん……おいしい」ニコ

P「そうか。なら仕事に行ってくれるな」

智絵里「しょうがないなー。でも杏歩きたくないから、プロデューサーが連れてってよ」

P「はいはい。わかったよ」

智絵里「で、おぶっていくんだ」

P「なんだ。お姫様だっこのほうがよかったか?」

智絵里「おひっ……さすがにそれは嫌かなー」

P「ははは」

P「(おんぶしている時の感触も、いつもと全然違うな)」

P「(杏はちんちくりんだからあまり意識しなかったが……智絵里の身体を背負うと、さすがに胸とかいろいろ気になってしまう)」

智絵里「………」

智絵里「プロデューサー、背中大きいね」

P「ん? どうした今さら」

智絵里「……ううん、なんでもない」

その後 仕事終わりの帰りの車の中


P「お仕事お疲れ様。見事に本物の智絵里らしかったぞ」

智絵里「はっはっは、これがわたしの本気だー……あー、疲れた」グッタリ

P「頑張ったな。ほら、約束の飴だ」

智絵里「あーん」

P「ほい」

智絵里「もぐもぐ……おいしい」

P「………」

P「杏。この後の食事だけど、このまま店に直行でいいか?」

智絵里「食事?」

P「この前約束しただろう。今日の仕事終わった後、おいしいものが食べられるところに連れて行ってやるって」

智絵里「あー、そういえばそんなこと言ってたっけ。うん、細かいことはプロデューサーに任せるよ」

P「わかった。じゃあ、食べに行こうか」

P「うまかったな」

智絵里「この辺にこんなラーメン屋さんがあったなんてねー。プロデューサー、実はこういう穴場見つけるの趣味だったりする?」

P「いや。この店は765プロのプロデューサーに教えてもらったんだ。あちらさんのアイドルと一緒に来たんだとさ」

智絵里「へー」

P「………」

智絵里「……どしたの? 車のエンジンかけないの」

P「家に送り届ける前に、聞いておきたいことがある」

智絵里「聞いておきたいこと? それ、別に運転しながらでも」



P「どうしてこんな面倒な嘘をついたんだ? 智絵里」

智絵里「……え? 嘘って、いったいなんの」

P「1日一緒にいれば、さすがに気づくぞ」

P「本当は、入れ替わってなんかないんだろ」

智絵里「!」

P「最初から、杏は杏だし、智絵里は智絵里だった。お互いがお互いのふりをしていただけ」

P「志希の薬はなんでもありだから、人の中身が入れ替わるのもあり得る……と思わせて、俺を騙す作戦だった。違うか?」

智絵里「………」

智絵里「いつから、気づいていたんですか?」

P「はじめは普通に騙されてたんだけど、智絵里と話しているうちにだんだん違和感が出てきてさ。いつも杏にしているはずのことをしたら、妙に恥ずかしがったり。反応がおかしかった」

P「それで、カマをかけてみたんだ」

智絵里「カマ?」

P「今日の食事の約束だけど、あれはさっきでっちあげた嘘だ」

智絵里「え、ええっ!? そうだったんですか……」

P「なんにも疑わずに信じたから、『あ、やっぱこいつ杏じゃないな』って確信できたよ」ハハハ

智絵里「う、嘘つくなんてひどいです……」

P「先に嘘をついたのは君達だからな」

智絵里「あ……そうでした」

P「それで? どうしてこんなことを」

智絵里「……元をたどれば、わたしの子供っぽい気持ちから始まったんです」

智絵里「その。杏ちゃんが、羨ましかったんです」

P「杏が?」

智絵里「えっと……いつもPさんに飴をもらったり、背負ってもらったり……わたしも、一度でいいから、そういうことしてもらいたいなって」

智絵里「……Pさんに、甘えてみたくて」

智絵里「それを志希さんに話したら、この作戦を教えてもらって……面白そうだからやってみてよと言われて」

P「面白そう、ね。志希らしいな」

P「杏はどう説得したんだ?」

智絵里「飴をあげるからって言ったら、『しょうがないなあ』と」

P「俺はたまに杏がチョロいんじゃないかと錯覚することがある」

智絵里「あの、Pさん……ごめんなさいっ」

P「うお、いきなり大声出してどうした」

智絵里「だって、嘘をついてしまって……迷惑になることだって、わかっていたのに」

P「………」

P「(智絵里の家庭環境がよくないということは、本人の口から聞いている)」

P「(今回の一件は、そんな智絵里の……それこそ、何年か振りのわがままだったのかもしれないな)」

P「……参ったな。怒るに怒れない」

智絵里「え?」

P「わかった。じゃあ、俺からひとつだけ、罰として命令だ」

智絵里「命令……は、はいっ」カチコチ

P「よし、では智絵里に命令だ」

P「今後、甘えたい時はまどろっこしいことせずに素直に甘えること。以上!」

智絵里「……はい?」

P「返事はしっかり!」

智絵里「は、はい!」

P「よろしい。約束だぞ」

智絵里「……ありがとうございます、Pさん」

智絵里「早速ですみません。でも……頭を、撫でてくれませんか?」

P「いいぞ」ナデナデ

智絵里「ふふっ」

P「ちなみに、今日1日俺に甘えてみた感想は?」

智絵里「感想、ですか?」

智絵里「………」



智絵里「えへへ……」ニヘラ

P「(智絵里のこんなだらしない顔、初めて見たかもしれん)」

P「(考えてみれば、この子は今日1日頑張って杏の真似してたんだよな。俺にタメ口聞いたりして)」

P「(……思い返すと、かわいかったな)」

一方その頃


志希「智絵里ちゃん、うまくやってるかナー」

杏「どうだろうねえ。杏の予想だと、プロデューサーにはあっさりばれると思うけど」

志希「ま、そうなってもなんとかなるでしょ♪プロデューサーだし!」

杏「かねー」

志希「ところで杏ちゃん。今回あたし達はまさしく舞台装置だったわけだけども」

杏「ん? まあ、そうだね」

志希「あたしは思うわけ。このまま終わるのは少し癪だなーと」

杏「はあ」

志希「あとさー……杏ちゃんって、すっごいイイ匂いしそうだよね」

杏「………」

杏「さて、杏はそろそろ家に帰って」

志希「嗅がせろー! にゃっはー!」

杏「うわああああ」

翌日


幸子「……なんだか、距離近くないですか?」

P「ん? ああ、ちょっといろいろあってな」

智絵里「えへへ」ベッタリ



卯月「杏ちゃん……どうしたんですか?」

杏「アンズ、シキチャンノオモチャデハナイ」

杏「ノットオモチャ、アイアムフリー! アイハブフューチャー!」

卯月「は、はあ……」

志希「ちょっと興奮しすぎちゃった♪」テヘペロ



幸子「この事務所大丈夫なんですかね……」

智絵里「♪」


おしまい

終わりです。お付き合いいただきありがとうございました
モバマスってなんでもありの世界観なのでいろいろ話が構築しやすいと思います

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