提督「あけぼのちゃんはツンドラ」 (710)


一応他作
蒼龍「私だ」
蒼龍「私だ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1446487829/)

提督「誰が誰だか分からねえ!」
提督「誰が誰だか分からねえ!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1446723751/)


今回は違う世界観。あんまり関係ないけど
投下ペースはスローペース


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1446847278


執務室


曙「突然呼び出して何の用よクソ提督」

提督「…………」

曙「…………」

提督「…………」ジィー

曙「……何の用もないなら戻るけど」

提督「冷たい!!!」

曙「は?」


提督「反応や言葉遣いや目線やなにやらに至るまで諸々が冷たい! 冷たいぞあけぼのちゃんよ!」

曙「そこまで冷たく感じるのならいっそ凍死してしまえば苦しまずに済むんじゃない?」

提督「一理ある」

曙「なら有言実行、Let's凍死」

提督「冷たい!!!」


提督「俺ね、こないだ用事でよその司令部に行ったんだけどさ、そこにも曙がいたんですよ」

曙「"曙"を司令部に置いとく物好きが他にもいるなんてね」

提督「でもそこの曙はウチのあけぼのちゃんと違ってたんですよ……!」

曙「どの辺が? まつげ? 目付きならどの曙よりも悪い自信があるわよ」

提督「そこの曙と提督の間ではハートフルウォーミングなやり取りが交わされていたんですよ!!」

曙「ハートフルウォーミング」

提督「そこの提督がそこの曙の頭を撫でてたら顔真っ赤にして人前で何やってんのよクソ提督! って言ってた」

曙「それをハートフルウォーミングというアンタの感性を疑う」

提督「あけぼのちゃんだったら、俺が頭撫でたらどうする?」

曙「撫でられる前に鳩尾に一撃」

提督「知ってる、これまで十回くらいやられてるし」

曙「訊く意味とは」


曙「至極真っ当な反応だと思うけど? 親しくもない男に頭なんて触らせないでしょう、普通」

提督「百理あるけど過剰防衛だと思うんだ?」

曙「仕方ない、これからはビンタで妥協してやるわ」

提督「精神へのダメージが強くなりそう」

曙「ビンタされた時にありがとうございますって言えば良いんじゃない? そういう業界もあるって漣から聞いたわ」

提督「天才かよ」

提督「でもあけぼのちゃんに変なこと吹き込んだ漣には今度お仕置きしよう」


提督「というか本題はそこじゃないんだよワトソン君」

曙「アンタがホームズとか笑わせるわ」

提督「心を抉るツッコミはやめて」

提督「じゃなくてさ、あけぼのちゃんは他の曙と比べて明らかに人への接し方やツッコミ、言動が冷たいって言いたいんですよ!」

曙「風当たり強くしてるのはアンタに対してだけなんだけど。 他の子達にまでそう強く当たるわけないじゃない」

提督「衝撃の事実」


提督「衝撃の事実はいいとして……せめて他の曙みたく柔らかくなったりしないのかなあと……いや、この冷凍庫に入れっぱなしの剣山みたいなあけぼのちゃんもいいんですけど」

曙「身体は柔らかい方よ」

提督「じゃなくて」

曙「分かってる分かってる。 でも性格なんて変えようがないじゃない?」

提督「その通りではあるんだけどもなあ」

曙「他の曙みたいに、ねえ。 他の曙のことでよく耳にする言葉があるんだけど……なんだっけ、一昔前に流行ったとかいう」

提督「ツンデr」

曙「ツンドラ?」

提督「ツンドラ」


提督「ツンドラなのはあけぼのちゃんだけだと思います」

曙「そうかしら」

提督「でもノリはいいよね」

曙「まあね、でないとアンタの話なんか聞かず一発鳩尾にぶち込んで帰ってるかも」

提督「ノリ良くて本当良かった」

曙「でもベタベタ引っ付かれるのは嫌いだから」

提督「ノリだけに?」

曙「物理的なツッコミを入れるターンかしら」

提督「余計なこと言ってごめんなさい」


提督「しかしあけぼのちゃんがツンドラであることが発覚した以上打開策を練らねばならない」

曙「別に何もしなくていいと思うけど。 というか何かされるのは面倒」

提督「だって折角だし仲良くしたいじゃん? 同じ釜の飯を食う上官と部下の関係じゃん?」

曙「なんだかんだで突き放してたのにへこたれないことだけは素直に凄いわ」

提督「なのであけぼのちゃん氷解大作戦を今後実施していきます」

曙「意味がわからないんだけど」

提督「あけぼのちゃんに対して様々なアプローチをかけることでツンドラぼのやんを別の属性に書き換えようという魂胆よ!」

曙「それ本人に言ったら駄目な奴じゃないの?」

提督「とりあえず今日は何にも考えてないから安心していいよ、明日から覚悟しな!」

曙「明日には忘れといたげるから普通に仕事しろ」


第七駆逐隊の部屋


漣「お、ぼのちゃんお帰りウィッシュ! ご主人様の呼び出しって何だったの?」

曙「身にも為にもならない話だったわ」

漣「ふーん……その割にはなんかさ」

曙「何?」

漣「前途多難マジヤベって顔してる」

曙「……明日からが思いやられる」

漣「マジでなんの話しとったん……?」



曙「そうだ、アンタその内お仕置きされるかもよ」

漣「なんでや!漣ちゃんなんもしとらんやろ!」


今はここまで
現実の時間とは特にリンクはしません
ていうかツンドラってどんなだっけとか漣のキャラが超絶ブレそうとか不安要素祭り
生きろ


初日特有のハイペース
だらだら書く


翌日——


曙「すう……」

漣「インド人を右に……ムニャ……」

潮「すー……」

目覚まし時計『ピッ、ピッ、ピッ、』5:59

目覚まし時計『ピッ』6:00

目覚まし時計『ナカチャンダヨー!! ナカチャンダヨー!! ナカチャンダヨー!! ナカチャンダヨー!!』

朧「えいっ」ポチー

目覚まし時計『ナカチャ』

曙「んん……」

潮「ふわあ……」

漣「うう……今日もまた那珂ちゃんに起こされてしまった」

朧「あ、みんなおはよう」

潮「おはよう、ございます……」

漣「おあよ、那珂ちゃん時計もおあよー」

曙「目覚ましにコレ使うのどうにかなんないの?」

朧「一応貰ったものだし……それに、なんだかんだでコレが一番効果あるから」

漣「那珂ちゃんの音声内臓目覚まし時計……使ってるの朧ちんくらいだよね」

曙「目覚ましよか早く起きてちゃ世話ないけどね」


潮「朧ちゃんもう着替えてる、ランニング?」

朧「日課だからね、朝食までには戻るから」

潮「うん、いってらっしゃい」

漣「ほほほ、若い子は元気ですのう」

曙「アンタも一緒に走ればボケ防止になるんじゃない?」

漣「HEY!まだまだ漣はピチピチだぜ!」

朧「それじゃいってきま」ドアガチャ

朧「ひぃいいいいい!?」

潮「ええっ!?」

漣「ちょ、何ご」

提督「」ピ~ヒャラ~

漣「と……!?」

漣(キ、キタキタ……提督……)


曙「フッ」

漣(朧ちんが腰を抜かし、潮ちゃんが訳が分からずあわあわしている中、ぼのやんはご主人の懐に潜り込み、その行動の早さは正に電光石火)

提督「!? 早——」

曙「破ァ!」テツザンコー

提督「どゅふん!」ドガァァ

曙「フン」

朧「あれ、よく見たら提督……あれ? いいのコレ?」

曙「あー、私が始末つけとくからアンタはランニングでもなんでも行きな、ホラ」

朧「え? うん……」

<ナンノサワギー?
<タオレテンノダレ?

提督「あいだだだ……」

曙「お仕置き」

提督「えっ」

曙「昨日言った業界の話、なんだったっけ? ごちそうさまでした? とりあえず今言えてなかったし一発」

提督「ちょ、ちょっと待って色々状況が違」

曙「Let's try!!」ビターン

提督「ごちそうさまでしたァ!!」


潮「ええと、ええと」

漣「なんだこれ」


食堂


提督「全身のあちこちが痛い」

曙「自業自得を体現してるわよね」

提督「くそう、元凶に言われても言い返せねえ!」

曙「この場合の元凶はアンタじゃないの?」

漣「ていうか朝っぱから何してんですかご主人様、鎮守府外だったら事案通り越して音速で通報から猥褻物陳列罪で現行犯逮捕の黄金コンボですよ」

提督「腰ミノの下に海パンはいてたからセーフ」

漣「アウトなんだよなあ」

提督「ちなみにブーメランパンツ」

漣「聞いてねえし」

提督「それはそれとして、アレはあけぼのちゃん氷解大作戦の一環なんだよ」

漣「なんぞそれ」

曙「なんか私がツンドラ?だからって違う何かに変えていくつもりみたいよ」

漣「ああ、なるへそ。 ぼのやん完全に氷属性だもんね」

潮「あの、ツンドラって気候ですよね……?」

漣「潮ちゃんは分からなくていいよ、純粋なままの君でいて」

朧「言わんとするところは分かりますけど……それがどうしてアレに繋がるんですか」

提督「朧はどうして遠巻きなのかな」

朧「暗がりの中、真顔であんな格好して気持ち悪くくねらせた蛇のようなポーズをしていた人に対していつも通り接しろと言う方が無理だから」

漣「無理もない」


提督「まあ、氷解と言っても具体的にどうしたもんかってわけで」

提督「そこでシンプルに笑わせる方向性で行ってみようかと」

漣「アレじゃ恐怖体験だっつーに」

曙「方向性はともかく行動が正気じゃない」

朧「正直提督のこと人間として軽蔑しそうにはなりました、というかしてます」

提督「Oh、ツンドラが感染していく」

曙「でも私、元々そんなに笑わない方なのよね、そのやり方は無理があると思うけど」

漣「そうかな?」

曙「えっ」

漣「まあぼのやんが言うなら、ぼのやんの中ではそうなんだろうね」

曙「ちょっと待って、私そう言われるほど笑ってる?」

漣「さあにー」

提督「なるほど、方向性は間違っていないみたいだな。 別のアプローチも考えつつ攻め込んでみるか」

朧「あの格好はなしでお願いします」

潮「みんな食べないんですか? 冷めちゃいますよ?」


曙「そう言えばクソ提督、気になってたんだけど」

提督「なんじゃらほい」

曙「今朝はどうして食堂で食べてるの? 普段は毎週ごとに変わる秘書艦がアンタの食事用意するんでしょ?」

漣「えっ」

潮「えっ」

朧(たくあん美味しい)

提督「おう、そうなんだけどな。 どうやらその秘書艦がそのことを忘れてるみたいで」

曙「愛想尽かされたんじゃない? 今朝の不審者めいた姿見られてさ」

提督「いや、単に忘れてるだけらしい」

曙「? どうしてそんなことが……」

潮「えっと、曙ちゃん」

漣「今週の秘書艦はぼのやんだぜ……?」

曙「…………」

曙「マジで?」

漣「マジでジマ」

潮「昨日、提督がダーツで決めてたよね?」

曙「う、そう言えば」


曙「その、言い訳するのも悪いけど今朝の衝撃が大き過ぎて完全に忘れてた。 ゴメン」

提督「あんま気にしてないよ、こっちでも時々食べるし、大勢の方が楽しいからな」

曙「ならいいや」

提督「貴重なしおらしさが!!」

漣「何激レアシーン逃してんですかご主人様ァ!! もうちょい鬼になって引っ張りゃええものをなー!!」

曙「やかましい」

提督「はい」
漣「はい」

潮「曙ちゃん、お母さんみたい」

曙「手のかかる子供の面倒見るのも大変よ」

提督「ママー! おやつ買ってー!」

漣「お母さーん! 漣にはモバコインカード買ってー!」

曙「調子に乗るな」

提督「育児放棄だ」

漣「ネグレクトやで」

曙「あ……? ちょっと待って」

漣「何? 買ってくれちゃうの?」

曙「違うから」


曙「私さ、今週秘書艦当番なのよね」

漣「せやで」

潮「大変だと思うけど、頑張って!」

曙「今週ってことは今週中よね」

潮「……? うん」

曙「秘書艦ってさ、常にってわけではないにせよ長い時間はクソ提督と共に過ごす訳よね」

提督「まあ、そうなるな」

曙「…………」

曙「今週ずっとこのテンションに付き合わされるの……!?」ゾッ

潮「が、頑張って……」

漣「強く生きてください」

提督「かくしてあけぼのちゃん氷解大作戦の舵が切られたのであった!」

曙「氷解し過ぎて悪辣なまでに辛辣になっても知らないから」

提督「サバンナぼのやんか」

漣「お前それサバンナでも同じこと言えんの?」

曙「今すぐサバンナに送りつけてやろうかなコイツ」

漣「視線がめっちゃツンドラだわ」


朧「ごちそうさまでした」パチンッ


今日はここまで
潮ちゃんは地理がちょっと苦手、そういうことにしておけば全て解決するのだ
明日は多分更新出来ないです、許してくレイトン


更新は出来ないと言ったな、あれは嘘だ
予定が狂っただけである。だらだら始める


執務室


提督「さて仕事をしてもらうわけなんだけど」

曙「なんだけど」

提督「あけぼのちゃんは今日何か他に予定は?」

曙「午前中いっぱいは講義があるわね、悪いけどそっち優先させてもらうから」

提督「そうか、元々そっち優先させるつもりだったけどな」

曙「ところで秘書艦って具体的に何すればいいのよ? アンタの普段の仕事自体よく知らないのよね」

提督「ん? そうだな、片時も俺のそばから離れることなく寄り添い尽くし、そして人目のつかないところでムフフな」

曙「マジメにやれ」

提督「はい」

提督「でも俺に着いてきてもらうことは変わらないかな。 普段の業務の補佐なんかをしてもらうくらいだ」

曙「その普段の業務が訊きたいんだけど」

提督「日によるからな……大淀さんの眼鏡拭いたりお偉いさんの靴舐めたり」

曙「アンタの舌に靴磨きを塗り込めばいいのね」

提督「比喩! 比喩だから! 流石にこんな露骨なことしちゃいないけど!」

提督「あ、あとご飯楽しみにしてます。 あけぼのちゃんの手料理!」

曙「めんどくさいからなんか買って食べといて」

提督「そんな倦怠期の妻みたいな冷たさまで見せなくても」


曙「茶番はここまでにして、私は行ってくるから」

提督「はい、いってらっしゃい。 なんか歳の離れた妹が学校に行くのを見送る気分だなあ」

曙「アンタが血縁者なんて御免こうむる」ドアガチャ

提督「反抗期っぽい」

提督「…………」

提督「さて……今曙が出て行ったドアの裏。 いるんだろう、漣?」

漣「気付かれてましたか」カサカサ

提督「いると思ってなかったってかなんちゅう現れ方してんだお前」

漣「比叡さんリスペクト」

提督「どういうことなの……」


漣「それはそれとして、わざわざ呼んだってことは何か用ですかご主人様?」

提督「皆まで言わずとも分かるだろう?」

漣「このやり取りも含めて様式美という奴ですよ」

提督「なんか違う気がする」

提督「まあいいや、呼んだのは他でもない、あけぼのちゃん氷解大作戦についてのことだ」

漣「知ってた」

提督「自ら様式美を台無しにしていくスタイル」

漣「常識に囚われちゃあいけませんぜ」

漣「もち、大作戦には協力させてもらいますよ」

提督「乗り気だな。 激レアとかどうとか言ってたから乗ってくるかなと思っていたが」

漣「そりゃあね? 初めて会った頃と比べたら随分マシになったけど、あの氷結鉄仮面を剥いでみたいよね?」

提督「当初はツンドラどころか絶対零度だったよな」

漣「うっぜーな近寄んじゃねーよって感じのバリア張ってたし」

漣「でも性根はいい子だったんだろね」

提督「駆逐艦"曙"あるあるだな」


漣「でも昔のことなんざどーでもいーんですよ!」

漣「あの抜けてるところもあるけど基本冷静で感情の振り幅が小さい彼奴の腹筋か涙腺か表情筋をブレイクしてやりたいっつーだけやねん!!」

提督「お、おう、落ち着け」

漣「なんやねんあの鉄仮面!! 鉄面皮!!」

提督「落ち着けっちゅうねん」デコピーン

漣「いでっ、ハァ……こないだね、漣らの部屋に黒きGが出たんですよ」

提督「G? ああ」

漣「潮ちゃんは全身鳥肌立てて朧ちんの後ろに隠れて、朧ちんはハエ叩き持ってぼのやんの裏に隠れまして。 ちなみに漣はベッドの上で威嚇してました」

漣「で、案の定あの鉄仮面ぼのやんは全く動じずに『こんなんたかが虫一匹じゃない、普段から化け物相手にしてんのに何ビビってんのよ』、なんて余裕かましてたんですよ」

漣「そして殺虫剤を持ってGに吹きかけた瞬間ね、Gが急にぼのやんの顔面目掛けて飛んだんですよ。 ていうか顔面着地してた」

提督「うわぁおっかねえ。 それで、あけぼのちゃんはどうなったんだよ」

漣「流石に取り乱すかと思ったんだけど……全く動きやしなかったのよ」

提督「なんだと」

漣「Gはそのまま逃げてっちゃったけどさ、それでも動かないからあれー? と思って呼び掛けたりしたのよ」

漣「そんで気付いたんだけど、フリーズしてたのよあの子」

提督「声をあげるでもなく慌てふためくでもなく思考停止及び遮断とは……Gですら敵わないのか」

漣「引き分けみたいなもんだけどね」


漣「で、要はぼのやんが笑い転げたり慌てふためいたり感動の渦に包まれるためなら漣はなんでも考えますよということなのです! 実行犯はご主人様!」

提督「俺のと趣旨が微妙に違ってかお前は何もしないのかよ!」

漣「ブレーンは必要でしょ?」

提督「策を練るのも仕事な俺に対する挑発か何か?」

漣「まあまあそう言わずに旦那様」

提督「時代劇か」

漣「あーれーってする? したいならいいですよこのケダモノ」

提督「上げたいのか落としたいのかどっちなんだよ」

漣「まあそんなわけでシクヨロ! なんかあったら呼んでクレメンス!」

提督「呼んどいてなんだけど呼ばなくてもよかったかもしれない」


提督「ところで漣、お前講義受けないの?」

漣「……漣は将来プロゲーマーで食っていきますし」

提督「やめとけ」


眠いのでここまで
ナチュラルに講義だとかて独自設定ぶち込んでます、許して
艦娘退役した後就職も進学も出来ないと路頭に迷う羽目になるから、そうならないように鎮守府では希望者にある程度勉強も教えてるよって話です
ついでに作中の第七駆逐隊は15歳くらいでイメージしてます。 無論それより上か下かで想像してもらっても

この設定が活かされることは多分ない


飛龍牧場ってする意味あんのかな、してるけど
ぐだぐだ始める


正午過ぎ


曙「戻ったわよ」ドアガチャ

ラジカセ『恋ーは、スリル、ショック、サースペンス』

提督「」パラッ パラッ

ラジカセ『見えーない力たよーりに』

提督「」パラッ パラッ

ラジカセ『ここーろの扉閉ざさーずに、強くー強くー』

提督「」パラッ パラッ

曙「昼食、買ってきたのここに置いとくから」

提督「ゴミを見るような目すらせずにスルーしないで」


提督「定番ネタすら通用しないとはやはりぼのやん城の牙城を崩すのは容易ではないな」

曙「アレのどこがどう定番なのか」

提督「漣なら速攻吹き出すか一緒に踊りだすかしてくれるもんかと」

曙「同じ綾波型だからっても、ツボは違うし知識も同じなわけないでしょ」

提督「一理ある」

曙「分かったらとっとと食べて仕事しなさいな」

提督「そしてやっぱり買い弁なんですね」

曙「有言実行よ」

提督「まあ先週よりは遥かにマシなんだけど。 ところで何買ってきたの?」

曙「パスタ。 私のはカルボナーラでクソ提督のは明太子」

提督「パスタ! なんか女子っぽい!」

曙「サラダもあるわよ」

提督「女子だー!!」

曙「アンタの中の女子って何?」


曙「ん? 先週よりは、って言った?」

提督「おう、言ったな」

曙「先週の秘書艦の手料理か買ってきたのがよっぽど酷かったってこと? 誰だったっけ」

提督「ながもん」

曙「ながもん」

曙「ながもん……じゃない、長門が料理してる姿はちょっとイメージ出来ないわね」

提督「本人はやる気だったんだよ、やる気勢だった。 自信満々だった」

提督「料理とか苦手そうなイメージがあったからな、意外に思いつつも期待してたんだよ。 初日の朝の前の晩までは」

曙「当日ですらない」

提督「料理は生まれてこの方したことがないが、このビッグセブンに不可能はないさ、なんて言われたらそりゃあね?」

曙「ここまで包丁を任せられないビッグセブンもそうはいないわ」


提督「ながもんの意のままに任せたら俺の胃袋が大惨事大戦の危機を迎えると思った俺は、ながもんにリクエストを出したんだ」

提督「そうしておけば人参丸々一本のサラダとか、鱗も取らない三枚下ろしにもなってないアジフライとかみたいのは出ないだろう、とな」

曙「防衛線が分厚過ぎない? まあ賢明な判断だろうけど」

曙「ところで何をリクエストしたのかしら」

提督「豆腐とワカメの味噌汁、白米、納豆とシンプルに収めた」

曙「具材まで指定したのね、どこまで警戒していたのやら」

提督「正直やり過ぎだとは思ったさ、料理したことがないからって壊滅的なことになるのはマンガやアニメくらいなもんなハズだしな」

曙「ハズだしな、ということは」

提督「見事に期待通りだったよ」

提督「何故か甘い味噌汁の中には半分乾燥したままのワカメ、豆腐は原型をとどめていなかった」

提督「白米はやる気、もとい力を入れ過ぎて研ぎ過ぎたのかなんかもう凄い粒」

提督「納豆もさ……いや、納豆は失敗しようがないけど、失敗じゃないんだけど……出てきた時は市販のパックの納豆だったんだけど……」

提督「私が混ぜてやろう! とながもんが意気揚々とやる気勢らしく混ぜ始め、パックがすっぽ抜けて納豆の半分くらいが床に落ちた」

曙「なんというか、うん」

曙「ドンマイ」


提督「ながもんも納豆を含め、想像以上の出来に気を落としていたよ」

提督「予防線のためとはいえ、リクエストをした手前俺も責めることは出来なかったしな」

曙「流石に味音痴ではないのね……いや、甘い味噌汁ってなんなの、白味噌?」

提督「味噌辛かったから、砂糖と蜂蜜を入れたんだと」

曙「味見しろと」

提督「で、朝食ですらコレだから以降が思いやられてな。 流石に昼は外食にしたよ」

提督「でも夜は逃げ切れませんでした、朝の雪辱を晴らさせてくれとか言って来られちゃって」

曙「女としての矜持……いや、ビッグセブン的な矜持なのかしらね」

提督「朝食とは逆に、何が食べたいかって訊かれたからここもシンプルにカレーを作ってもらうように頼んだんだ」

曙「アンタ毎週カレー食べてるって聞いたけど」

提督「作る人によって味が違うのが楽しいからな、加賀じゃないけどここは譲れない」

提督「でも正直このチョイスは失敗した。 余程じゃなければ融通無碍なカレーだけど、だからこそダメだった」

曙「なんとなく察しはつくわね」


提督「ながもん曰くの試製ビッグセブンカレーは俺の中にあったカレーという概念を大らかにしてくれたよ」

提督「人がカレーだと思ったもの、それがカレーなんだって」

曙「あ、話さなくてもいいわよ。 パスタが不味くなるかもしれないし」

提督「安心せい、こんなことこそ言ったがちゃんと食えたものだったよ」

提督「しかしな……」

曙「わざわざ溜めることなの?」

提督「どちゃくそ甘かった」

曙「どちゃくそ」

提督「どちゃくそ」


提督「朝のこともあって無知は無恥ではなく恥である、とかなんとかということで料理、というかカレーについては調べたらしくてな」

提督「それでまあ出てきたのがどちゃくそ甘口なビッグセブンカレーでした」

曙「暁なら喜んで食べそうよね」

提督「俺は辛口派だったから違和感もビッグセブン級だったよ」

提督「具材も違和感が壮絶だったよ、なんせフツーのカレーだったら入ってそうなタマネギ、人参、じゃがいもが入ってねえの」

曙「なんか嫌な予感が」

提督「カボチャ、リンゴ、パイナップル、マンゴーが主な具材でした」

曙「甘っ」

提督「更にここでも蜂蜜先輩が登場」

曙「100エーカーの森のクマさんもビックリ」

提督「そして何故か入っているトンカツ」

曙「なんでそこで足柄成分が入るのよ」

提督「カレーと言えば足柄だろうと言うことで話を訊いたんだってさ……」

提督「いやまあ甘いカレーも別にいいか、フルーツカレーとかあるかもしれんしね、と表面に見えた具材だけで判断したんだけどさ」

提督「イチゴジャムとか練乳とかまで入れてくれてたらしいのよね」

曙「正直料理に関しては長門のこと馬鹿にしそうだわ」


曙「というか明らかに食べれたもんじゃないわよねそれ、アンタ食べれたものだったって言ったじゃない」

提督「胃に収まれば全て同じなのです……」

曙「ダメだコイツ、甘味で脳と胃袋がやられてしまったのね」

提督「いやもうさ、食べれることに感謝しちゃうよね」

曙「ところでその馬鹿甘カレーを作った張本人はどうだったのよ」

提督「改良の余地があるな、って言ってた」

曙「改善でしょうが」

提督「で、ここで思い出して欲しいのがこの時の夕食はまだながもんの秘書当番初日の出来事ってこと」

曙「一寸先が混沌」

提督「正直胃が持たないと思った、だから明日以降は俺が作るって言おうと思ったよ」

曙「アンタなんかが料理出来るの?」

提督「料理ってのは時間とレシピさえあれば誰にだって作れるのさ」

提督「でもさあ……面と向かってお前料理の腕壊滅的だから作るのやめてとか言えないだろ?」

曙「多少はオブラートに包めばいいのに」

提督「お前が言うか」

提督「それにな……ながもんてば楽しそうに調理してるんだよ……」

提督「初めてって言ってたしな……それもあってか失敗も含めていい顔してたよ」

提督「俺には……あの顔を曇らせることが出来なかった」

曙「……つまり」

提督「俺は胃袋にこう言ってやったよ」

提督「共に逝こうぜ……業火が渦巻く地獄の果てまでよ……! ってな」

曙「道理で先週ずっと顔色が悪かったわけね」

提督「気付いてたのなら胃薬くらいくれ」

曙「なんでアンタの心配しなきゃいけないわけ?」

提督「そういうことアッサリ言えちゃうぼのやん凄え」


提督「というわけで今の俺提督にとってはこの愛情の欠片もない明太パスタでもお茶漬けのようにホッとする食べ物なのです」

曙「アンタにくれてやる愛情もないからね、募金した方がマシよ」

提督「俺に愛情募金してくれてもいいんだよ?」

曙「カルボナーラに入ってたベーコン一欠片あげる」

提督「わーいぼくベーコンだいすきー」

曙「ところで、長門の料理の腕が馬鹿なんだったら陸奥が黙ってなかったんじゃないの?」

提督「ああうん、初日以降はむっちゃんが手伝うからーってキッチンに入ろうとしたんだけどさ」

提督「ここは私に任された戦場だ! ってながもんが譲らなくてむっちゃん追い出されてた」

曙「矜持って面倒ね」

提督「むっちゃんさえいれば煮込みハンバーグ(しかし半生)ラーメンなんて食べなくて済んだのに」

曙「素人の創作料理の危険度を身を以て知れて良かったわね」

提督「いくない」


提督「まあそんなわけでごちそうさまでした」

曙「お粗末様」

提督「ところでお母さん、晩御飯は決めてるの?」

曙「その辺で弁当でも買ってこようかしら」

提督「作れよ……」

曙「だって面倒くさいじゃない」

提督「流石に今まで俺の食事を全部店で買ったもので済ませた奴なんて……あ、いたわ」

曙「いるんだ? 誰?」

提督「漣」

曙「よりにもよってアンタか、漣」

提督「経費で落とすからって出前ばっか取ってた」

曙「人の財布に対して遠慮なさ過ぎでしょ」

提督「もちろん通らなかったから俺の財布が薄くなったよ」

曙「ドンマイ」


提督「でもなんであけぼのちゃん料理作ってくれないんですか? お高いの?」

曙「旧帝国海軍の酸素魚雷3本分くらいの値段があるわ」

提督「バリ高え」

曙「手作り料理なんて愛情表現の定番もいいところじゃない、私の愛情はアンタの安月給で買えるほどお安くないのよ」

提督「とかなんとか言っちゃってさー、実は料理出来ないからって逃げてるだけなんじゃないの?」

曙「バレたか」

提督「チョロいぜ」

提督「って思わず台詞間違えたじゃんよ!? マジで!?」

曙「そこまで言うのならやってやろうじゃないのよ、なんてこともなく私も料理はしたことがないの。 だからしない、それだけよ」

提督「うっそだろお前……ぼのやん料理が出来て当たり前みたいなキャラクターしてるのに出来ないのか……」

曙「鮮血にまみれたカレーが食べたいならそうするけど」

提督「こえーよ、スプラッタだよ」


提督「ってーかそれ単にぶきっちょってんだよ、さっき言ったけどレシピさえありゃあな」

曙「チッ、適当に嘘をついても諦めないか、しつこいなあ」

提督「嘘なのかよ」

曙「面倒なのは本当だけど。 そもそも秘書艦てだけでどうしてアンタの食事の面倒まで看なきゃいけないのよ」

提督「これまで誰1人として疑問に思っていなかったというのに!」

曙「というかアンタ料理出来るんでしょ? だったら自分で作ればいいじゃない」

提督「ぐっ、言い返せねえ!」

曙「いっそのこと私の分も作れば完璧でしょ」

提督「天才かよ」

提督「だが断らせてもらおう! こーなったら意地でもぼのやんの手料理食べてやるからな!」

曙「作らないって言ってんでしょうに」


今日はここまで
っぽい

片手間に始める
キラ付けめんどい


提督「片付けも済んだところで」

曙「そうね」

提督「昼寝しよう」

曙「仕事しろ」

提督「あけぼのちゃんが代わりに仕事しといて」

曙「逆、私が昼寝するからアンタが仕事するの」

提督「秘書艦の言うことじゃないよソレ」

曙「そういう常識に囚われている限りアンタは万年少尉よ」

提督「一応もっと上なんだけどな? これでもまあまあ偉いんですよ?」

曙「所詮、佐世鎮支部の中のクソ提督よ」

提督「否定は出来ない」


曙「茶番は程々にして、と」

提督「茶番で既に傷付いてる俺の心はスルーなのね」

曙「結局私は何をしたらいいのかしらね。 アンタのしてることがよく分からないから補佐のしようもない」

提督「仕事がないわけじゃないんだけど、出撃任務が立て込んでいない限りは結構暇なんだよね、暇ってことは平和ってことだからいいんだけどさー」

曙「本営からは任務の連絡来てるみたいだけど? 補給線の破壊とか潜水艦の殲滅とか」

提督「だりい」

曙「おい」

提督「冗談、後で適当に見繕って南西方面にでも出てもらうよ。 あの辺は深海棲艦の補給艦の目撃情報が多いからな」

曙「大規模ってわけでもないのね。 OK、見繕うのは私がやっとくわ」

提督「そう? なら任せちゃおうか」

曙「任された」


曙「ん……何これ、漁船の護衛依頼? 本営からじゃなくて民間からの依頼?」

提督「ああ、良くあるんだよそういうの」

提督「俺の管轄の部隊はさ、ここの近海警備ばっかやってるからかな、市民の皆様的には割と身近な存在らしいんだよね」

提督「海でグラビアの撮影するから警備お願いしますとか、海水浴のシーズンだからーとか、ね」

曙「へーえ。 意外とマメなことしてんのね」

提督「まあお陰で遠方の海域に艦隊を繰り出せる権限こそあれども持ち腐れ状態だよ。 平和っていいね」

曙「気が緩んでるところを敵機動部隊に爆撃とかされなきゃいいわね」

提督「怖いこと言うなよ……夜トイレ行けなくなっちゃうだろ」

曙「怪談じゃないっての」


提督「ま、近所付き合いは良くしといて悪いことはない。 年端も行かぬ女の子達を戦わせるなんてどういう了見だ! みたいな団体も存在してるくらいだからなあ。 少しでも世間様の目を良くしとかないと」

曙「フン、アンタらに心配してもらう程私らはヤワじゃないってんのよ、そんな綺麗事を言うだけで世界が救われるわけないでしょうが、馬鹿な話よねえ?」

提督「お、おう」

曙「大体私達が戦う事を無理強いされてると思ったら大間違いよ、徴兵制だなんて時代錯誤なこともないしこっちゃなろうと思って艦娘になってんのよ、自分らの勝手な正義に酔って出てきたような言葉に貸す耳も道理も義務もありゃしないっての! これだから自分で相手の事を考えて作り出した像だけで決め付けて話を進める有象無象の馬鹿は嫌いなのよ!! なぁにが艦娘人権保護団体よ! 初めっから人権持ってるつーのバーカ!!」

提督「あ、あの、曙さん落ち着いて」

曙「なんでもかんでも私のせいにしやがったクソ共全員ドラム缶に詰め込んで東京湾に沈めてやるう!!」

提督「もう死んでる! もう大体死んでるから!」

曙「ゼェ、ゼェ、ハー……」

曙「…………」

提督「落ち着いた……?」

曙「ごめん、なんか変なスイッチ入った」

提督「そんなこともあるさ。 しかしぼのやんでも声を荒げることあるのね……」

曙「理不尽なのは、嫌いだからね。 前世のせいかもだけど……」

提督「正しく感情の振れ幅が氷解した瞬間でもあったけどな……俺が望むのとは違うから、ノーカンかな」

曙「そう」

曙「でもカウントしといた方がいいんじゃない? 私がアンタに対してラブラブハートキャッチウォーミングなんてことは望めないわよ?」

提督「ぼのちゃんがデレるかデレないかなんだ、やってみる価値はありますぜ」

提督「ていうかよくそんなこっぱずかしいこと言えるな、聞いてる方が恥ずかしいぜそれ」

曙「ラブラブハートキャッチウォーミング特盛り、今ならなんと定価の4割増しで10兆円」

提督「愛が金額的に重い」


提督「ていうか仕事しよう」

曙「まったく、誰かのせいで仕事が進まないんだから」

提督「鏡ならそこに置いてあるよ」

曙「やだどうしよう、鏡の向こうに性犯罪者が泣いて土下座するレベルの男がいる」

提督「美少女がいる、とかじゃなくてそっちかよ、俺が泣くよ?」

曙「まあ仕事上の理由で女子に囲まれる男なんて見たら、普通の性犯罪者だったら羨ましくて更生しそうよね」

提督「性犯罪者じゃなくっても羨ましいと感じると思うけどなあ」

曙「アンタはどうなの? 毎日毎日女子に囲まれて戯れて」

提督「ん? 毎日が楽しくはあるよ」

曙「楽しい、だけ? 女子と戯れたいが為に提督になろうと猛勉強する人もいなくはないって話だけど」

提督「うーん、そういう気持ちがなかったわけでもないが、別に結婚相手とかを探しに来たわけでもないしなー」

曙「結婚て」

提督「それに、いざ提督やってみるとそんな目で艦娘をあんまり見ないんだよね、友達のような同僚のような、妹のような娘のような」

曙「なるほど、同性愛者だったと」

提督「今証明してやろうかぼのやんよ」

曙「きゃーたすけてーおかされるー」


提督「ていうか仕事しよう?」

曙「アンタが話を逸らさなければいいのよ」

提督「ぼのやんも悪乗りしてるじゃねーか」

曙「出来ない上官を持つとダメになるわね」

提督「はい! もういいから! とりあえず南西方面の補給線破壊する艦隊組むから適当に召集して! そこにマイクあるから!」

曙「はいはい」

曙『えー、マイクチェック、1、2。 よし、こんにちは、私霧島です。 なんて言われなくたって声聞いたら分かるわよってツッコミたい曙よ』

提督「ぼのやん霧島になんか恨みでもあるの? 可哀想だからやめたげてよ」

曙『クソ提督がやかましいので手短かに。 でっちー、イムヤ、ろーちゃんの3名は急速に執務室まで出頭されたし。 以上』ブツッ

提督「誰1人として正式名で呼んでねえ!」

曙「分かればいいのよ、分かれば」

提督「ところでなんであの3人なん?」

曙「なんか最近暇そうだったし。 それに補給艦をちょっと叩くくらいならそんな大艦隊にしなくてもいいでしょ? 何か文句でも?」

提督「いや……なんか、よく分からないんだけどとてつもなく罪悪感のようなものを感じる編成だな、と……」


曙「で、この後は?」

提督「とりあえず3人が来てから任務の説明と作戦会議、資料は……必要あるかなあ、うーん」

曙「呼ぶ前に作るべきだったわね、とりあえずちゃっちゃとそれなりのを作ればいいんでしょ? パソコン借りるわよ」

提督「なんだこのぼのやん有能だぞ」

曙「他司令部の偵察機の情報によると南西方面は特に目立った異変は見られないとの事だし、特筆事項はないが緊張を持って臨めってくらいかな」

曙「まあ行かせるならオリョールの方でしょ、資源の入手も望めて一石二鳥ね」

提督「ねえなんでこの子有能なの? 秘書艦やるの初めてなんだよね?」

曙「はい印刷完了、簡素だけどこんなもんでいいでしょ?」

提督「もうずっと秘書艦やってくれよ……」

曙「やなこった」

<ゴーヤハデッチージャナイデチー!!

曙「あ、来たわね」

提督「みたいだな、不満は垂れてるが」

提督「それじゃ作戦会議でもしますかね」


今はここまで
チキン南蛮食べたい

スローペースの定義が崩れる
のろのろ始める


夕暮れ————


曙「…………」モクモク

扉<コンコン

曙「ん、どーぞ」

漣「ちょりーす」ドアガチャ

曙「妖怪遠慮知らず、と潮か。 なんか用? クソ提督ならいないわよ」

潮「曙ちゃん、お疲れ様」

漣「なんやねんその呼び方……」

曙「聞いたわよ、アンタ秘書艦やった時料理作らずに出前ばっか取ったんだって?」

漣「経費で落ちるんだしいいじゃん? じゃんじゃん?」

曙「落ちたのはアイツの財布の中身だったそうよ」

漣「マジで」

曙「大マジ」

漣「ご主人様からはなーんも言われなかったんだけど……」

潮「さ、漣ちゃんそれはちょっと……」

曙「半端に優しくするとつけあがるからザックリ切り捨てちゃって」

漣「潮ちゃんに言わせるんかい、ぼのやんはなんも言わんの?」

曙「見限った」

漣「つらい」

潮「ご飯はちゃんと、自分で作らないとダメだと思う……ます!」

漣「そっちかい!」

曙(あ、これ自分の首絞めたかも)


漣「そーだ、ぼのやんはお昼何食べたん? ってーか何作ったん?」

曙「」

潮「あ、私も少し気になるかな」

曙「ところでアンタらは何しに来たの? 冷やかしならお断りよ」

漣「へーいご名答、クリスタル漣ちゃんあげちゃう」

潮「訓練も済んだし、近海の定期哨戒も終わって、時間が空いたから曙ちゃん頑張ってるかな、って様子見に来たんだけど……邪魔しちゃったかな」

曙「あーいや、資料に目を通してただけだから、うん」

漣「なんじゃこら、目を通してただけって量じゃないでしょ」

曙「まあね、先週の秘書艦……長門が先週末まで手を付けていた仕事の引き継ぎ?をしてるだけよ」

潮「こんなにたくさん……長門さんって秘書艦としても凄いんだ……」

曙(料理の方はからきしだけど)

漣「アイドルによる艦娘のイメージアップ政策……訓練の効率化……限界突破改装の促進……」

漣「なんか思ってたのと違うような仕事が多いんだねえ……」

曙「資料の大半はクソ提督が会議に出た時に配布されたものだって聞いてるけどね。 長門がしてるのって空いた箇所に走り書きしてるくらいじゃない?」

潮「あ、ケッコンカッコカリという名称は如何なものかって書いてある」

漣「長門さんや、アイドルはアイドルでも那珂ちゃんのことじゃないでよ……」

曙「ポンコツなとこばかり引き抜かないでやんなさいよ」


漣「ところでぼのやん、めっちゃフツーに話逸らしたね」

曙「は? なんのこと?」

漣「ここまで白々しいと逆に潔いね」

潮「? 曙ちゃんが何を?」

漣「チッチッ、誤魔化されちゃあいかんぜ潮ちゃんや」

漣「ぼのやんがご主人様に何を振る舞ったかをまだ聞いてないではあぁりませんか!」

曙「チッ」

漣「うっわ凄え嫌そうな顔」

潮「ああ、そういえば。 曙ちゃん、何作ったの?」

曙「………………パスタ」

漣「スゥパゲットウィ!! オサレ!! 勿論歯応えはアルデンテ!! でもアルデンテって何?」

潮「へえ、パスタかあ。 いいなあ」

曙「…………違う」

潮「え」

漣「おん?」

曙「作っては、ない、買ってきたやつ」

潮「」

漣「」

曙「……サラダも買った」

潮「」

漣「」


漣「ぼのやんよ」

曙「何か?」

漣「いや何かじゃないっしょあーた、漣にゃ遠慮知らずの汚名着せといて自分はそれかい」

曙「ハッ、妖怪料理無精でもなんでも呼ぶがいいわ」

漣「開き直るこっちゃねーぜ戦国武将さんや」

潮「ほ、ほら、曙ちゃんは講義があったから……時間がなかったんだよね? うん」

曙「良いわよ、自分に言い聞かせなくても」

潮「この後のお夕食はちゃんと作るんだよね?」

曙「いや、作らないけど……」

潮「」

漣「マジかよ」


潮「曙ちゃん」

曙「な、何?」

潮「提督のこと……嫌いなの?」

漣「突然ぶっこんできたね!?」

曙「前提が破綻し過ぎでしょ……」

潮「だって……頑なに作らないって言うんだったらそれしか思い付かなくて」

曙「好き嫌いの話ではないでしょ……アレのことはそんな風に考えたこともないわよ」

漣「おや? つまり考えるまでもなくいて当然的な?」

曙「装備ひん剥いてサーモン沖に放り出してやろうか」

漣「焦ってるところが尚更怪しいのう、フヘヘ」

曙「決め付けないでよ……別に、好きなんかじゃない。 寧ろちょっと嫌いな方だし。 漣並にウザいし」

潮「そ、そうなんだ……」

漣「ねえそれって間接的に漣のことも嫌いって言ってません? ねえ?」


曙「……だけど」

漣「お?」

潮「だけど……?」

曙「…………」

曙「……借りを作りたくない」

漣「……借り?」

潮「借り……ですか?」

曙「そーよ、だってアイツ料理作れるらしいのよ? だったら自分で作りなさいよってなるじゃない?」

漣「え、おっおう」

潮「確かにそれはそうかも……」

曙「でしょう? 自分で作れるというのに作らないなんて甘えもいいところだわ、だから戒めも込めて最大限に手ぇ抜いてやってんのよ」

漣「う、うーん?」

曙「私は今週のアイツの食事当番みたいなもんだからね、1週間テキトーなもんばかり食べさせられて誰かに作ってもらえる幸せと喜びを感じいるがいいわ」

潮「曙ちゃんはそれでいいの……?」

曙「勿論よ、私が腕を奮ってやる義理もないし? 普段ふざけてばかりだからやり返す良い機会よ」

漣「いや、ぼのやん結構激しいツッコミとかいれてるじゃん? 今朝とか今朝とか」

曙「アレは正当防衛だから」


潮「でも……後悔、しない?」

曙「後悔? するわけないでしょそんなもん」

潮「分からないよ、今は平和でも明日はそうじゃないかもしれないんだから」

漣「潮ちゃん、話が重いぞい」

潮「あまり言いたくないけど、私達の、艦娘の命は他の人達よりもずっと脆いものだよ、明日は来ないかもしれない程に」

曙「こら潮、どこまで沈む気よアンタ」

潮「提督だってそう、例え無事過ごせたとしても私達が退役したらもう赤の他人。 特に私達、駆逐艦娘は一緒に過ごせる時間がそう長くはないんだから」

曙「どうしよう、引っ込みつかなくなってるんだけど」

漣「落ち着けぼのやん、こうなったら漣達で軌道修正を」

潮「真面目に聞いてっ!!」

曙「ハイッ!?」

漣「ひゃいっ!?」

漣(心底ビビった)

曙(制御効かなくなってるわね、コレ)


潮「心の中で思ってるだけじゃ何も伝わらない、想うだけじゃ自己満足で終わっちゃう」

潮「そして、それを伝えられないまま終わったらきっと後悔する。 私は大好きな友達にそんな風に感じて欲しくない」

漣(潮ちゃん、過去に何があったんじゃよ……めっちゃ重いよ……)

潮「ねえ曙ちゃん、よく考えてみて。 提督に対して何か……大切な想いはないの?」

曙「…………いやあのさ、私が料理を作るか否かって話がなんでここまで」

潮「話を逸らさないで」

漣(逸らしてんのは潮ちゃんやで……って言っても聞く耳持たなさそうだよねえ)

漣(ぼのやん、なんとかしてクレメンス……重い空気で真空パックにされそう)

曙「はあ……潮の言い分も分かるけど、悪いとも思うけどやっぱり後悔とかはないかな」

潮「…………」

漣(あ、プリン食べたくなってきた)

曙「アンタの思う程、私は情に厚くないし、クソ提督に思い入れもないから」

潮「……本当に?」

曙「本当」

潮「……そう、分かった……お仕事頑張ってね」ガチャッ


漣「……おおう」

曙「なんか、気まずい終わり方よね……」

漣「ぼのやん、嘘でもなんでも潮ちゃん喜ばせといた方が良かったんじゃ……」

曙「それは悪手でしょ、とりあえず漣は潮のとこ行ってあげて」

漣「うぃっす……大丈夫、だよね? 朧ちんは自主トレしてるけど、部屋戻ったら気まずい空気でどうしたのコレとか勘弁だよ」

曙「単なる喧嘩なら良かったんだけどね……思想の違い、小さな宗教戦争みたいなものだから、いや本当どうしよう?」

漣「知らんよ……そんじゃま、行ってくる」ガチャッ


曙「…………」

曙「……思ってるだけじゃ何も伝わらない」

曙「百も承知よ」

曙「いやでも何も思うことがない相手に何を伝えろってのよ……無理難題でしょ……」

提督「何をブツクサ言ってんだ?」ドアガチャ

曙「うわわ、いきなり入ってくんじゃないわよ」

提督「俺の部屋だし……ところで、潮が今にも崩壊しそうな顔してたんだが、何かあったか?」

曙「えー、あー、いやその」

曙「……カップ麺作ってくる」

提督「まだちょっと早くないか?」

曙「私のやけ食い、悪いけど付き合え」

提督「顔むくむよ……?」

今日はここまで
潮と焼き芋食べたい

めっちゃ腹が減る
近所で何か買ってきてから始める


夜・第七駆逐隊の部屋——


曙「…………」

漣「…………」

朧「…………」

潮『…………』

曙「あの、潮のベッドの上の布団の塊は何」

潮『布団です』

曙「布団が喋った」

潮『私のことはいないと思って気にしないでください』

朧「私が戻った時には既にこうなってたんだけど」

漣「右に同じだったりする、あの後すぐコレやねん」

潮『私はただの布団です』

漣「ところでほのやん、仕事は?」

曙「クソ提督によく分からないけど潮がキレた話をしたら、よく分からんけど話し合ったら?って早上がりさせられた」

漣「よく分からん会話しとんね」


朧「漣から大体話は聞いたけど……曙も大概頑固だよね、料理くらい作ってあげたらいいじゃん」

曙「えええ」

朧「そんな露骨に嫌な顔する程嫌なの?」

曙「嫌って言うか、理由がないじゃないのよ、アイツにわざわざ作ってやる理由が」

漣「料理当番だからってだけでいいじゃんね」

曙「出前オンリーで済ませたアンタが言うか」

漣「それは言うでない」

朧「そこまで意固地になって反抗してると逆に何かありそうって周りに勘繰られるんじゃ」

曙「う、それはそれで嫌ね」

朧「特別な感情が無いなら無いで、料理当番になったから作った、くらいドライな方が私らの知る曙らしいよ」

曙「それは、そうなんだけど」

曙(愛情だのどうのだのとかクソ提督が言うからそういう意識を拭い切れない、それに)


潮『心がこもってない料理なんてダメです』

朧「わっ」

漣「布団が喋った」

曙「……コレがいるのよねえ」

漣「いないものとして扱えって言ったやん……」

潮『私は布団です』

曙「…………」

漣「ぼのやん今めんどくせえって思ったっしょ」

曙「え、まあ流石に少しは」

曙「ところでさ、私としては潮がここまで拗れた理由が分からないんだけど」

潮『私は布団です』

漣「割と唐突だったしねえ、漣もそー思ってこの妖怪フートンに訊いてみたんだよ。 もしかして昔に何かあったりした?って」

曙「それで、何かあったの?」

漣「いやなーんも。 別にそんな感じのトラウマはないし家庭環境も特に問題ナッスィングだって」

曙「えっ」

漣「それ以上は口割ってくれなかったけど、推察はしてみた」

漣「ウチら艦娘って一応はいつ死ぬとも知れぬ身の上じゃん? 他の鎮守府での訃報を聞かない月はないしねー」

漣「まあこんな危うい日常を過ごして行く内に潮ちゃんの中でそういう考えが芽生えたのかなーって。 アレだよ、御涙頂戴なドキュメンタリー見て影響を受けるよーな感じ?」

曙「なんか、余計めんどくさくなったわね」

漣「言っちゃえばただの自論だもんね。 もっとザックリ言うと同意してもらえなくて駄々こねてるだけ。 こんな子供っぽいところあったんだねえ」

曙「私以上にどストレートなアンタに少し恐怖を覚える」


漣「でも漣的に言わせてもらえば、今回はぼのやんサイドにも問題がある」

曙「うぐ、私のだってワガママではあるしね」

漣「ちっ、がぁう!!」

曙「おおう!?」

漣「いや違わねーけど!? つべこべ言ってねーで作れよぼのやんってのも確かにありますけど!? そうじゃねんですよボノエッティ!」

曙「もはや誰それ」

漣「あーたね! 潮ちゃんにあんだけどうこう言われて押し付けられてどー思ったよ!」

曙「え? 潮の言うこともまあ分からなくもないけど、って」

漣「それやねん!!」

曙「えー」

漣「何理解示しちゃっとんねん!! 『は? 何自分の考え押し付けてくれてんのよ、誰もがアンタと同じ思考回路なわけないでしょ常識考えなさいよ』くらい言ってしまえばええねん!!」

朧「今の凄い曙っぽかった」

曙「自分が喋ってるのかと錯覚したわ」

潮『布団もそう思います』

漣「モノマネ大会しとんのとちゃうわ!!」


曙「いやでもさ、流石にそんな辛辣にはなれないでしょ……友達なんだし」

漣「なんでそんな思いやりがあるねん! だからファッションツンドラなんよ!!」

曙「ファッションツンドラて」

漣「ぼのやんは口悪いけどさー! 気遣い利くしホントに人が傷付くようなことまではしないしなんかもう色々!なんなの! すっごく良い子か! こんなんデースデース言ってばっかの金剛さんなんかかないっこねーよ!!」

朧「おーい、夜なんだしもう少し声量落として」

漣「どーせ夜戦大好き馬鹿さんが騒いでるでしょ!! ぼのやんがいっそ絶対零度時代のように近付いただけで凍傷になりそうだったらさー! 潮ちゃんもそこまで押し付けがましくはなかったと思うんすよ!! こえーし!」

曙「私そんなにだったっけ……」

朧「私は知らないんだよね」

漣「でーもさー! 今は優しいやん! ええ子やん! 理解示してくれるやん! 全然怒らねーじゃん! 甘えちゃうよね!? なんか大体暴走とかしても許してくれそうじゃん!? なんでやねん! 同年代やろが!」

曙「これ貶されてんの? 褒められてんの?」

潮『布団には分かりません』

漣「なんかもー半端に大人やねん! もっと自分を出してけよ!! そんなぼのやんが大好き漣15歳でーーーーす!!!」

ドアガチャ

叢雲「…………」

漣「」

曙(マジでキレる5秒前の顔)

朧(ああ、吹雪型の部屋近いから……)

潮『…………?』

潮「どうしたの漣……あ、叢雲ちゃん」カオダシ

叢雲「……これ以上騒いだら沈めるわよ」

漣「ウィッス」

バタン

漣「イキテルッテスバラシイ」


曙「一度感情が振り切れると暴走するのは綾波型、というか私らの特徴か何か?」

朧「さあ……個人個人の問題だと思うけど」

漣「うん、流石に騒ぎ過ぎた。 許してヒヤシンス」

曙「球根を装填して主砲で撃ってやろうか」

漣「そんな……求婚を装填するだなんて……」

曙「テンション落ち着いた途端うざったくなったわね、こっち来んな」

漣「にゃはは、これくらいがちょーどいいってことで」

漣「でもさ、ぼのやんももうちょい素を
出して……本心を見せてってよ」

曙「は? これ以上ないくらい素を曝け出してると思うんだけど」

漣「いやまあそうだと思うけど、そうなんだけど何かまだ隠してるというか……遠慮してるというか?」

曙「何よそれ」

漣「よく分かんないけどそう感じるんだよねー、漣ちゃんの第六感でも目覚めちゃったのかな?」

曙「手を使わずにスプーン曲げるくらいしてから言いなさいよ」

漣「主砲ぶっぱすれば確1」

曙「それは違う」


漣「まあ未来の超能力者様なんかよりもさ、先にそっちの生首女と話したげなよ」

曙「ん」

潮「あっ」

曙「……えーと」

潮「…………」スゴスゴ

潮『私は布団です』

漣「オイコラ」

朧「かたつむりみたい」

曙「……私はさ、怒ってるとか許さないとかじゃないからどうしようもないんだけど……顔出してよ潮」

潮『私は怒ってます、ぷんすか』

曙「うー…」

漣「頑固さだったらぼのやんとタメ張れるなあ……いや、これまで漣が騒いでただけで実は何も解決してないんだけどね」

朧「本当だよね、何がしたかったの?」

漣「やめて、朧ちんのナチュラルトーンは一番心に刺さるからホンマやめて」


曙「流石にこのままじゃ平行線なんだけど……ねえ潮」

潮『話をしたって平行線じゃないですか』

曙「そんな子供みたいな理屈こねてないでさあ」

潮『どうせ私は子供です、曙ちゃんみたいにはなれません』

曙「本格的にめんどくさいな……」

漣「ぼのやんが匙を投げたらダメやで……」

潮『……だけどこのままじゃダメなのは分かってる、だから私許します』

曙「……潮」

漣「おお!? なんか大逆転ktkr!?」

潮『だけど、条件として曙ちゃんは提督にちゃんと料理を作ってあげてください』

曙「え、それはやだ」

潮『』

漣「」

朧「」

曙「……あれ」

漣「台無しだぜボーニィッ……!」


潮『……分かりました』

曙「あれ」

漣「あれ、じゃねーじゃろがこのっ……なんや! 天然か! 天然ツンドラか何かか! おばかー!」

朧「また叢雲が来るよ」

漣「コワイ」

曙「そう言われたって……」

潮『曙ちゃんが愛を知らぬと言うのなら』

曙「あ?」

漣「おん?

朧「何か始まった」

潮『私が!』バサー

潮「愛を教える伝道師となりましょう!!」

漣「どうしてそうなった!?」

曙「開いた口が塞がらないってのはこの事よね」

潮「考えを押し付けるのではなく、教え説くことが必要なのだと私は気付かされました」

潮「だけど私はまだ未熟者、だから金剛さんや浦風ちゃん、雷ちゃん達に話を訊きそこから学んだことを曙ちゃんに伝えます!」

潮「ゆくゆくは曙ちゃんが彼女達のように愛の化身のごとく……!」

曙「やめてそれだけはやめてマジで」

潮「そういうわけで曙ちゃんは第一歩として提督にちゃんと料理を作りましょう!!」

曙「だからそれは」

潮「返事はハイしか聞きませんっ!!」

曙「えええええ」

潮「そうやって逃げているからダメなんだよ曙ちゃん! ただ考えて、思って理解するだけじゃなくて、実際に行動して理解することが必要なんだから!!」

曙「そうかもしれないけどってかまた押し付けてるわよアンタ」

漣「あの、そこで叢雲様がスタンばってるから、あの潮ちゃん、ああもうダメだこれ漣は知らないもう寝る」

朧「潮、曙、おやすみ」

今はここまで
フィーリングだけで話進めるとどう転ぶか分からない
まあ起伏がないと面白くないから多少はね?

お腹出してる艦娘って意外と多い
始める


翌朝・執務室——


曙「そんなわけで今朝は愛の欠片も無いトーストを焼いてやったわ」

提督「愛以外の話が重い」

曙「バターでもこんもり塗りたくろうか?」

提督「胃まで重くしにかかるのはやめて」

曙「しかし潮には驚いたわ、ああまで我が強いとこっちが妥協するしかないじゃない」

提督「あけぼのちゃんも充分我が強いと思いますけどねえ……」

曙「そうかしら」

提督「それにしても、流石にトーストだけじゃ腹減らない?」

曙「減るわね、しかしこれ以上譲歩するわけには……」

提督「何がぼのやんをそこまで意固地にさせるのか」

提督「まあいいや、ちょいと待ってな」


提督「ヘイお待ち、ベーコンエッグだ」

曙「2品揃うだけで朝食っぽくなったわね」

提督「牛乳もあるでよ」

曙「……コーヒーじゃないの? そっちの方がなんか、らしいと思うけど」

提督「馬鹿野郎! 朝は牛乳でしょうがぼのやん! 身長伸びませんよ!」

曙「別に身長伸ばしたいわけじゃないし」

提督「それに俺、カフェオレは飲むけどコーヒーはあんま飲まないんだよ」

曙「子供舌」

提督「お黙りっ」

提督「まあいい、冷めない内に食べよう」

曙「そうね、いただき……て、アンタ何してんの? トーストにベーコンエッグ乗せて」

提督「こーして折り畳んで食うのが美味いの」

曙「食べ方までなんか子供っぽい」

提督「子供っぽいことを平気でするのが大人の特権なんですぅー!」


曙「ご馳走様」

提督「お粗末さん。 しかし俺に作るのは嫌でも、俺が作ったものを食べるのはいいんだな」

曙「食べ物に罪はないし。 粗末にだってしたくないしね」

提督「その言い方だと俺がギルティに聞こえるんだけどな?」

曙「数十人もの女子を侍らせてることはギルティじゃなくて?」

提督「言い方に悪意しかない」

提督「しかし逆に考えよう、俺の手料理を食べるのは別にいいと言うのはこれはあけぼのちゃんの胃袋をキャッチ出来るということなのでは?」

曙「よし、吐き戻してくる」

提督「冗談! 冗談だから!」

曙「アンタ私を氷解させたいのか氷河期にさせたいのかどっちなのよ」

提督「そんな恥ずかしいこと……言えないよっ」

曙「全力で気持ち悪い」

提督「流石に今のはご先祖様にも申し訳が立たないと自分でも思った」

曙「未来永劫同じことをしないと誓って」


曙「で、今日の仕事は? 今日は講義も休みだし一応フルタイムで働けるけど」

提督「ない」

曙「ない」

提督「ない」

曙「……ない?」

提督「ないの」

曙「あんだけ書類あるのに?」

提督「上のクソジzお偉方が話を進めてくれないとこっちも進められないような案件が多いからな」

曙「アンタそこそこ偉いんじゃなかったっけ」

提督「発言力はないよ、なんか困ったらコイツんとこにやらせときゃーいーだろ的な便利役にしか思われちゃねーだろーし」

曙「出世欲とかないのね」

提督「今ぐらいが一番楽。 昔は所詮昔だ」

曙「それには同意する」


提督「……いや待った。 やっぱしよう、仕事」

曙「なんで? 無いんでしょ? 存分に生まれた空き時間を使って映画でも見させなさいよ」

提督「いいのかぼのやん、暇が出来ていいのか?」

曙「何、その思わせ振りな。 何があるっての?」

提督「さっき聞いたぼのやんの話からすると、何故か愛の伝道師に目覚めた潮が暇してるぼのやんに愛を布教しに来ると思うけど」

曙「さ、流石に潮でも時間とかはわきまえるでしょ……訓練とかだってあるんだし」

提督「いやあどうだろう、突拍子もないことを始めた奴は突拍子もなく行動するぞ……」

曙「うげえ、何かないの? 仕事」

提督「今考えてるから」

曙「……ん? でもアンタ的には私が潮の餌食になって洗脳された方がいいんじゃないの?」

提督「洗脳て……別に、俺はあけぼのちゃんの味方ってだけだぜ」

曙「はあ」

提督「でも困ってるのを見るのも楽しそう」

曙「アンタって一言多いわよね」


提督「……アレもダメ、コレもダメ」

曙「そんなに仕事思い付かないもんなの? というかどんだけ仕事ないのよ普段」

提督「ないっていうか、ぼのやんやってくれなさそうなのばかりだもん」

曙「言う前から諦めてんじゃないわよ」

提督「再来月発売する雑誌のグラビア撮影の企画、誰に出てもらうか決めてないんだけど出てくれんの?」

曙「出るわけないでしょ、ってかそんな仕事まであんの? あ、そういやあったな」

提督「便利屋呼ばわりは伊達じゃないぜ」

曙「私達ってなんなのかしらね」

提督「よろず屋ぼのちゃんでも始める?」

曙「即日廃業してやるわ」


提督「……うん、コレにしよう、俺が仕事と言えば仕事なんだ」

曙「やっと決まった? 数十分も部屋の中歩き回られててこっちは気が落ち着かなかったんだけど」

提督「というかよく潮来なかったな?」

曙「あんまり考えたくないけど話を訊いて回ってるのかも。 今日1日潮と遭遇しなかったとしても、部屋は同じだし……あー、頭が痛い」

提督「うん? そうなると別に仕事しなくてもいい?」

曙「いや、私が暇を持て余してるとなると1日中アンタの食事の時以外は潮に振り回されるのが目に見えてる」

提督「そこまでかよ……半分冗談で言ったのに」

曙「我の強い潮は知らないからどうなるか私にも分からないわ、それはいいからとにかく仕事、なんなの?」

提督「ん、ああ、食材の買い出し」

曙「買い出し」

提督「買い出し」


曙「それ仕事? 仕事じゃなくて雑用じゃないの?」

提督「俺が仕事って言い張れば仕事」

曙「でも食材って毎日届いてるでしょ? トラックか何かで」

提督「うん、だから買うのは俺のやつ。私用の食材」

曙「……アンタの」

提督「冷蔵庫の中身はもう卵と牛乳くらいしか残ってねーしな、先週ながもんにアレもコレもと使われちゃったから」

曙「ええと、つまり」

提督「言い換えればあけぼのちゃんに作ってもらう料理の材料を買いに行こうってお話でーす!」

曙「職権濫用じゃない」

提督「まあまあ、お固いことを言うでないよ」

提督「それに外出許可、は取るとしても休日以外で鎮守府外に出る機会ってあんましないだろ? 役得って言っときな」

曙「アンタと2人じゃあねえ。 行かないって選択肢も考えようかしら」

提督「HAHAHA、言ってくれるわ」


曙「……そういえばさ」

提督「ん?」

曙「艦娘に志願してここに来てから私、鎮守府の外に出たことなかったわ」

提督「マジで」

曙「うん」

曙「それどころか、鎮守府の外の街のこともよく知らなくて」

提督「Oh……」

曙「……なるほど、良い機会じゃない。 いいわ、行ったげる。 鎮守府外の空気を味わい尽くしてやるわ」

提督「あんま美味くないと思うよ、ってかメインは買い出しだからね? ね?」

曙「んなもんついでよ」

提督「ついで」

曙「さあ、さっさと準備しなさいよクソ提督。 私の前を阻む者は全て蹴散らしてやるわ!」

提督「キラキラしだしちゃってまあ……ま、目的は果たせそうだし良しとしようか」ボソリ


提督「あ、そうだ。 俺免許持ってないから歩きだよ」

曙「それじゃ帰りはタクシーね」

提督「容赦ねえな?」

今日はここまで
燃料が16万もあるのにボーキが半分以下しかなくてつらい


これから投下する分のぼのやんの服装を拙い画力で描いたけど必要がなければ貼らない
貼り方もわからないけど
始める


鎮守府正門前——


提督「…………」

提督「ぼのやん遅え」

提督「女の準備は1時間とは言ったものだな」

曙「待たせたわね」テクテク

提督「悪びれもせずやってき」

曙「はいはい悪かった悪かった」

提督「」

曙「……何? 人のことジロジロ見ちゃって。 通報する?」

提督「いやその、買い出しに行くだけなのにめかし込んできたなと」

提督(ベージュのダッフルコートの下に白地のセーター、暗いベージュのスカートに黒タイツと来て茶色っぽいキャスケット。 全体的にセピアっぽい)

曙「あー? めかし込んだ、ってこんなん全然そんな内に入らないわよ、さっさと出なきゃいけないからパッと見て速攻で合わせただけ、即席麺より即席よ」

提督「はあ……にしたって気合い入ってるな」

曙「初めて街に繰り出すのよ、ならそれなりの見た目にはしないといけないに決まってんでしょうがこのトーヘンボク」

提督「トーヘンボクて」

曙「アンタこそ何よそれ、黒いコートに黒いスーツて」

提督「……私服置いてないの忘れてたの」


曙「あ、そういえば執務室空けてて大丈夫かしら」

提督「俺がいない間の業務はむっちゃんに一任するって普段から言ってあるしな。 ついでに執務室の扉にそう張り紙しといた」

曙「なんで陸奥?」

提督「ながもんよりはなんか安心して託せる。 面倒見もいいしなー」

曙「ふーん、信頼してんのね」

提督「ウチで信頼してない艦娘なんていないからな。 ながもんの料理の腕以外は」

曙「そうねー、私も実力はありますから」

提督「ちっ、揺るがねえな」

曙「そうアンタの思い通りになってやるもんですか」

提督「まあいつまでも立ち話するのもなんだ、行くとしよう」

曙「そうだ、街まで歩いてどのくらいなの?」

提督「大体30分くらい」

曙「うへえ」

提督「なので近くにタクシー呼んだから、来たらそれでひとっ飛びよ」

曙「あれ、帰りじゃなくて行きの時点でタクシー使うわけ?」

提督「時間も惜しいしな」

曙「はあ、せっかちなのね」


都会——


バタン ブロォォン…

提督「やー、文明の機器って素晴らしいもんだよなあ」

曙「」ボーゼン

提督「しかし、便利を知ってしまうとダメだな……免許取ろうかなあ、俺」

曙「」ボーゼン

提督「ところであけぼのちゃんはどうしたんですかね、ボケっとして」

曙「どこここ」

提督「街」

曙「高い建物がいっぱい」キョロキョロ

提督「都会だし」

曙「なんなのここー!?」

提督「だから都会やっちゅうねん、あんまり騒ぐと周りに注目されるぞ」


曙「ま、街ってこう、商店街みたいなの想像してたんだけど」

提督「いつもここまで買い出しに来てるからなあ俺」

提督「てかさ、ぼのやんはホントに都会とか来たことも見たこともないの?」

曙「うん」

提督「アメイジング……!」

曙「あっ! なんか建物にでっかいテレビがついてる!」

提督「電光掲示板だな」

曙「あっちにはよくわからない何かが!」

提督「よくわからないモニュメントだな」

曙「というか人がめっちゃ多い!!」

提督「都会だからな」

曙「変なカッコしてんのがいるー!」

提督「いやアレは都会特有のじゃないから無視していい」

曙「さっきのテレビで映画始まったー!?」

提督「CMだな……しかしここまでとはな」

提督「……あけぼのちゃんや、どうせならあちこち適当に歩き回ってみるか?」

曙「いいの!? そのつもりだったけど! よっしゃー! 行くわよー!」

提督「1人で突っ走ると迷子になるっちゅう……聞いちゃいねえ! 落ち着けぼのやん!」


曙「何あれ?」

提督「コンビニ。 いや、コンビニは知ってるだろ」

曙「見たことないとこだったから」


曙「ここは?」

提督「芸能プロダクション。 ウチの艦娘もたまーにグラビアの撮影でここ使ってる」

曙「へー」


曙「何あの車?」

提督「移動販売車……いや、販売移動車だっけ? まあそんなもん。 クレープねえ」

曙「チラッ」

提督「金持ってるだろ……?」


曙「何あの変わった船?」

提督「屋形船だな、あの中で宴会したりするらしいぜ」

曙「屋形船の艦娘……船娘とかいたりしないのかしらね」

提督「飛鷹型が大体そんなもんじゃないか?」

曙「あ、なんか塔が見える」

提督「なんたらツリーだな、行ったことないけど」


曙「おお、これは絶景ね。 なんたらツリーすごい」

提督「思い立ったらすぐ行動するんだもんな」


曙「なんか神殿みたいね、国会議事堂だっけ?」

提督「緊急時には変形して戦う国会議事堂ロボになるんだぜ」

曙「いや、流石にそれは」

提督「ふふふ、この世には知らなくてもいいことがいくつもあるんだぜ」


曙「さっきから同じコンビニばかり見る」

提督「都会あるある」


曙「何あのでっかいボウリングのピン」

提督「ゲームセンターだけど、いざとなったらアレ対空迎撃砲になるんだぜ」


曙「お腹すいた」

提督「もう昼過ぎだしな、どっか適当にファミレスでも行くか」

曙「高級フレンチ的なのがいい!!」

提督「真昼間からんなもん食べる馬鹿がいますか!!」

曙「いいじゃない! 都会の人間は毎日そうなんでしょ!!」

提督「日本人はみんな毎日寿司食ってる並の理論を展開するでない!!」


曙「結局ファミレス」

提督「文句言うんじゃない」

曙「財布の紐が硬い男は頭まで硬いのよ」

提督「いやだから君お金持っとるでしょうが」

曙「お財布にあんまり入ってなかったからさっきのクレープで限界よ」

提督「マジかよ……じゃあここ俺の奢りやん……」

提督「それはともかく、ぼのやんくらいの歳の子はハンバーガーとかホットドッグとかみたいなジャンクフードでも歩き食いしてる方が似合ってんの」

曙「偏見だー、差別だー、男尊女卑だー」

提督「何とでも言ってろい、ほらさっさと決めな」

曙「……何このボタン?」

提督「あー、それ押すと店員が来る」

曙「何? 電波でも出るの? 店員はロボットなの?」

提督「なわけないでしょ……俺は決めたけど、ぼのやんは?」

曙「ああ待って。 私が押す」ベー

店員「お待たせしました、ご注文をどうぞ」

曙「スペシャルハンバーググリルとフライドポテトとオニオンスープに日替わりサラダ、ドリンクバーと食後に特盛りスイーツパフェをお願いしまーす」

提督「少しでも遠慮したらどうかねぼのやん!! 君らホント他人の財布に容赦ねーな!?」


曙「むふぅ、満足満足」

提督「わーいさいふがかるくなったー」

曙「で、この後は? まだどっかあるの? 何かあるの?」

提督「何……あんだけ食べておいてまだどこかで買い食いでもするんですか……ていうか入るのかよ……」

曙「にひひ、買い食いが似合うって言ったのはアンタでしょ」

提督「チクショウ! 丸々と肥え太ってしまえ!」

曙「ちゃんと運動してますから大丈夫ですぅー」

提督「くそう……でもただ街を散策するのもな……あ、ここからなら動物園が近」

曙「動物園!!」

提督「いぃ!?」

曙「決まり! 動物園! さあ行くわよ!」

提督「即決かよ……そんなに動物園好きなの?」

曙「小学生の頃1度行ったきりなのよねー、ほらボサッとしてないでキビキビ歩く! というか走れ!」

提督「食後に激しい運動させるのは控えてください……」

小休止。また後ほど

小休止と言いつつ危うく寝るところだった
再開


動物園——


曙「意外と来客は多くないのね?」

提督「平日で昼間だからな。 連休や休日には家族連れがわんさか……というほどでもないか」

提督「遊園地だとか水族館だとか、行こうと思えば他にもあるからな」

曙「なんにせよ人数が少なければストレスフリーで臨めるわ、出撃よ!」

提督「君今んとこどこでも誰がいてもフリーダムですやん」


曙「キリン! きりん!」

提督「でけえもんだよなあ……ってのわー! ツバ吐いたー!?」


曙「ゾウよ! 鳴かないの!? 鳴かないの!? ねえ鳴かないの鳴かないの!?」

提督「ゾウに訊いてくれ」

曙「あっ鳴いた!」


提督「ゴリラだ」

曙「意外と短足」

提督「お前それジャングルでも同じこと言えんの?」

曙「でも結構可愛い顔してるわよね」

提督「マジで言ってる?」


曙「ハシビロコウ」

提督「目付きの悪さはぼのやんと引けを取らないよな」

曙「ハシビロコウの場合は顔の造形でそう見えてるだけなのよね、角度を変えて見てみると」

提督「こっちに角度合わせてきやがった」

曙「うわ、白目剥いて口開けた、こわっ」


曙「ニホンザルだ」

提督「個体差ありすぎて見るのも一苦労だよなあ」

曙「あ、あのサル休みの時の漣みたい」

提督「そんなのいるわけ、うーわマジだやる気ゼロのツラして死んだように倒れてんのは漣だ」

提督「お、アレなんかリンゴ丸かじりしてる雪風みたいじゃないか?」

曙「そんな限定的な雪風を見たことないんだけど何故かその情景が目に浮かぶ」

提督「で、あそこに風格漂わせて座ってるのは……」

曙「…………」

提督「…………」

曙「該当者がいないわ」

提督「うん」


提督「カバですよぼのやん」

曙「可愛いなー、でもキレたらライオンをも葬るって話はあまりにも有名よね」

提督「そこまで壮絶な話でしたっけ」

曙「あと汗がピンクなんだっけ」

提督「可愛いって言うならもう少し可愛い話題にしなよ……」

曙「えーと、カバの牙には小鳥が止まる?」

提督「俺の持ってる漫画を読んだな?」


曙「ついにきたわ、パンダよパンダ」

提督「意外と落ち着いてる」

曙「初めこそ荒ぶったけど、テンション配分は考えてあるのよ。 本命はまだ残っているの」

提督「へー? まあいいや、今はパンダですよ」

曙「パンダって笹を殆ど消化出来ないのよね? その話知ってからパンダって進化を怠けた馬鹿なんじゃないの? って思うようになったわ」

提督「動物園のパンダが何食ってるかは分からんけど、そんなパンダ全体を貶すようなこと言わんでも」

曙「あそこのパンダ、笹食べてる」

提督「動物園サイドにも問題があるのかもしれない」

曙「あ、転がった。 可愛い」


曙「ペンギン! ペンギンよペンギン! こーてーぺんぎん!」

提督「ここが勝負どころ?」

曙「違うわよ、まだ準決勝。 でもコウテイペンギンの何考えてるか分からない顔超好き」

提督「それはなんか分かるな」

曙「見た目もTHE・ペンギンって感じだし!」

提督「雛も大人とのギャップがあるのが面白いところだよなあ」

曙「抱きしめたいなあ」

提督「あーなんかわかる、羽毛なのか表面ザラザラなのか知りたい」

曙「経費で買おうよ、コウテイペンギン」

提督「買えるか! 突然冷蔵庫にコウテイペンギンが入ってることでもお祈りしてなさい!」


提督「大体見終わったかな」

曙「まだよ、メインステージはこれからなんだから」

提督「おいおい、そんな1人で行くと迷子に、ん? ふれあい広場?」


提督「うさぎだ」

曙「〜〜〜〜ッ!」

曙「ふぅ……」ガクッ

提督「おおうぼのやんどうした!?」

曙「ふ、ふふ」

提督「あの? 曙さん?」

曙「うさぎ」

提督「は?」

曙「うさぎうさぎうさぎうさぎうさぎ&うさぎぃ! うさぎよ! うさぎ超いっぱい! こんないっぱいいると思わなかった! きゃー!」

提督「あ、うん、そうだね」

曙「こっちおいでー! きゃーホントに来たー! かわいい! 悶え死にそう!」

提督「すげえ変わり様……あっこら裾を噛むな!」

曙「そーだ! 写メ撮って私に送ってよクソ提督!」

提督「ちょっ」

周りの客(クソ提督)

周りの客(クソ提督って言った)

周りの客(どういうプレイだよ)

提督(ああ! なんて痛い奴だって目線が痛い!)

曙「ほーら! 早く早くー!」

提督「……まあいいか!」ティロリーン


曙「えっとーこれも買ってー」

提督「あ、あの、あけぼのちゃん」

曙「潮達にはそうね……あ、丁度良くアイツらの色っぽいうさぎぐるみがある! 値段はまあ……大丈夫ね」

提督「良くないよ! 良くないよね!? お土産買ってもいいとは言ったけど俺にも限度がありますよ!?」

曙「そーだ、昨日騒がせちゃったし叢雲にもなんか見繕ってあーげよ」

提督(オギャアアアアア!!)


店員「合計22,080円頂戴します」

提督「……オギャア」

提督(カードさん使うか……)

曙「んーと、ちょっと待って……」ゴソゴソ

曙「はい、3万で」

提督(諭吉が出てきただとぉ!?)

店員「7,920円お返ししますー、ありがとうございましたー」

曙「はー買った買った」

提督「ちょっと待ったあ!? 財布空っぽなんじゃなかったんかい!!」

曙「ん? 財布は見せた通り空っぽよ? でもポケットに手持ちのお金突っ込んでたの」

提督「」

曙「ふふん、残念でした。 こんな子供騙しに引っかかっちゃ世話ないわね」

提督「この小娘め……いいだろう、覚悟するがいい! ギャフンて言わせてやる!」

曙「今時そんなん言う奴いないって」


高級レストラン——


曙「ぎゃふん」

提督「即堕ち漫画か何か?」

曙「無理もないでしょ……なんか、凄い、場違い感が」

提督「堂々としてれば様になるって」

曙「け、料理の値段の桁が、ひとつ多い気がするんだけど」

提督「ファミレス行った後だと無理もないな」

曙「アンタお金大丈夫なの……?」

提督「心配無用。 遠慮せず好きな物を頼むといい。 でも食べ過ぎははしたないぞ?」

提督(ぶっちゃけ見栄張ってるけどな)

曙「流石にそんなことしないわよ……」

曙「でも……うう、ここにいるだけで緊張してきた、緊張で味が分からなくなりそう……」

提督「肩の力抜きなって」

曙「ううう」


曙「美味っしい! あはっ、同じハンバーグでも昼に食べたのと全然違う!」

提督「はは、また即堕ちしてら」

曙「はぁ……ほっぺたが落ちるって正にこの事よね……」ウットリ

提督「まあ安くてもそれなりの物は食えるけどさ、高いけど美味い物を食うのもいいだろう?」

曙「そうよねー、毎日は無理でも月に1度……半月に1度でもいいから食べたいくらいね」

提督「流石にそれは多過ぎだっての」

曙「いいじゃない、それくらい」

提督「よくないっちゅうに」

曙「……くふ、あははははは!」

提督「はは……やれやれだ」


曙「……すっかり、夜ね」

提督「ああ、10時近いな」

曙「だけど街はこんなに明るい」

提督「そうだな、街が眠りを迎えるのはまだまだ先だ」

曙「眠らない街か……不思議な感じ」

提督「そうだな……なんだか異世界にいる気分だ」

曙「異世界?」

提督「俺達は普段、こうして鎮守府の外には出ないだろう? まあ休みの日には出てる奴もいるけどさ、鈴谷とか」

提督「だからこうして鎮守府って世界から抜け出して、ここにいることを不思議に思う。 ……けどいつか、いることを当たり前にしないとな」

曙「…………」

提督「ふ、柄にもないことを言ったな。 タクシーも来たし帰るとしようか。 あ、佐世保鎮守府関東第2支部までで」

曙「……そうね」


ブロロォン…オォン…


提督「かぁーっ! 鎮守府見るとなんか安心するなあ」

曙「あー、すっごいよく分かる。 こっちから鎮守府見たことってなかったけど凄い安心感ね」

提督「でも明日からまた仕事ですよー、気を緩めた分しっかり引き締めねえとな」

曙「言われるまでもないわ、私はオンオフちゃんと出来るからね」

提督「頼もしい秘書艦様よ」

曙「でも雷みたく頼らせはしないわよ?」

提督「はっは、尚更頼もしいってもんだ」

提督「それじゃ今日はここまでだ。 荷物多いけど転ぶなよ?」

曙「大丈夫よ、艦娘の平衡感覚舐めないでよね」

提督「それもそうだな、それじゃおやすみあけぼのちゃん」

曙「おやすみ、クソ提督」


曙「——と言ったものの、流石に重いわね、ぬいぐるみ5つは買い過ぎだったかな……」

叢雲「あれ? アンタ曙? 1日中どこに、ってかその格好、いやそれよりも」

曙「あ、叢雲! 丁度良かったわ、ハイこれ!」

叢雲「どわっ、何よコレ……うさぎ? ぬいぐるみ?」

曙「昨日騒がせたお詫び! それじゃーねー、ほっつき歩いてないで寝なさいよー!」

叢雲「……何あれ、曙?」


第七駆逐隊の部屋——


曙「たっだいまー!」ドアガチャ

朧「曙!?」

潮「曙ちゃん!」

漣「ぼのやん! 今日1日どこに、って何その荷物、ってかカッコってか、ぼのやん……?」

曙「ゴメンごめん、とりあえずこれお土産! アンタらの!」

潮「お土産……? わ、うさぎのぬいぐるみだ」

朧「カニじゃないんだ……」

漣「うさぎだのカニだのはおいといてさ……ぼのやんどこ行ってたんよ? ぼのやんどころかご主人様もいないしさ、プチパニックだったんだよ? ぼのやんは無事っぽいけどさ」

朧「出掛けるから陸奥よろしくって置き手紙があるだけだったしね……というか提督は? 一緒じゃないの?」

曙「そんなことなってたの? ゴメンゴメン、クソ提督に付き合わされて街まで行ってたのよ、あー疲れたー!」

漣「ぼのやんが」

朧「提督と」

潮「街に……?」


曙「そーそー、街中をぶらぶら歩いたりー、なんたらツリーに登ったりー、動物園行ったりー、レストランとかも、ふふ、色々付き合わされたなあ」

朧「」

潮「ええと」

曙「ん? ああ!?」

漣「な、なんじゃらほい」

曙「買い出しするの忘れてた……」

漣「買い出し……て」

曙「アイツのご飯用の食材……アイツも忘れてんじゃないわよ! もー!」

朧「」

潮「ええと、ええと、ええと」

漣「あー、あのさ、ぼのやん? 一言、いい?」

曙「? 何?」

漣「それ完全にデートじゃね?」

曙「え?」

曙「あ」

曙「」




曙「あ゛あ゛!?!!?」ドギャーン


曙「あ、あ、あ、え」

漣「すげー、顔が赤くなるどころか青ざめていってる、ってか指摘されるまで気付かなかったのかよ」

潮「私が訊き集めた愛の秘伝書第1章は必要なさそうかな……」

朧「本当にやってたんだ、それ」

漣「にしても凄いなご主人様、ぼのやんめっちゃ嬉しそうな笑顔して帰ってきたし。 初めて見たよぼのやんの満面の笑み」

曙「え、嘘」

朧「本当。 微笑とか含み笑いくらいなら見たことあるけど、ああまで満たされたかのようなのは初めて見たかな」

潮「凄く自然だったし、曙ちゃんがこんな風に笑えるなんて思わなかったなあ……素敵だったよ」

曙「そんな、私いつから、アイツ黙ってたの……!?」

漣「言ったら意識しそーだしね……もしかしたら買い出しってのも嘘か、ぼのやんを連れ出す口実だったりして」

曙「なっ」

潮「策士……だね」

漣「ん、噂をしたらご主人様からメールが」

曙「何!?」

漣「件名、ぼのやん。 わ、超いい笑顔だぼのやん。 何ここ? うさぎカフェ?」

曙「わああああああ!? あの馬鹿何をうわあああああ!!」ドアガチャ-

叢雲「うわ、ビックリした……行っちゃったし」

漣「あや、叢雲様。 騒ぎの元凶は今行っちゃったぜよ」

叢雲「知ってるわよ……どうしたのアイツ? さっき会ったけど、あんな嬉しそうな曙は初めて見たわ」

潮「それは……」

朧「経緯は分からないけど、あの反応を見る限りミイラ取りがミイラになった、ってところかな」


曙「あの馬鹿あの馬鹿あの馬鹿あの馬鹿あの馬鹿あの馬鹿!!!」ダダダダダ

曙「絶対殺す百回殺す千回殺す万回殺す億回殺す!!!」ダダダダダ

曙「クソ提督ーッ!!!」ドアガチャァァァ


提督「」

陸奥「言い訳は以上かしら」ゴゴゴゴゴ

曙「」

陸奥「あら曙ちゃん。 ここは私に任せて今日はもう寝なさい」

曙「えっいや、私もそこの馬鹿に用が」

陸奥「また明日ね、今は私のターンだから」

提督「お、俺のターンは……」

陸奥「来るわけないでしょ?」


陸奥「業務を放り投げて曙ちゃんと外に遊びに行くだなんて、まあ貴方はそういう奔放なところもあるし一応皆も理解してる」

陸奥「けど、この紙は何」

提督「で、出掛けるから後のことはむっちゃんよろしくっていう……」

陸奥「そうよね、そういう意味よね。 私も普段から貴方がいない時の指示は聞いてたから、この紙を初めに見つけた雷ちゃん達に連れて来られて見た時は別に驚きもしなかった」

陸奥「でもそこからよ」ゴゴゴゴゴ

提督「な、何か……」

陸奥「雷ちゃんが私の世話をすると言い出したわ」

曙「」ブフッ

提督「なんでやねん……」

陸奥「出掛けるから陸奥、の・こ・と・をよろしくって受け取ったみたいでね」

陸奥「そうじゃないって言っても聞かないし、私の世話をしようという波は更に広がって行ったわ」

陸奥「挙げ句の果てには長門まで名乗りを上げてくる始末」

陸奥「今日1日、至れり尽くせりされてどれだけ居心地が悪かったか分かるかしら?」

提督「……俺あんまり悪くないような気」

陸奥「貴方がテキトーな文章にしなければこうはならなかったのよ」

陸奥「そもそも業務をサボってると言うのに反省の色も見えないし、今夜は私も徹夜覚悟でみっちり絞ってやるわ」

提督「し、絞るって何をデスカ……」

陸奥「貴方の性根をよ」

提督「ええ……何されるの俺……ぼのやん助けて……」

曙「……明日は私のターンだから」プイッ

提督「俺のターンはぁ!?」

曙 「ない!!!」
陸奥「ない!!!」


めっちょ長なった。今日はここまで
そいや来週から艦これイベントですね。更新どうなるかなあ
あ、拙いお出掛けぼのやんの服装upはやめました。 各々方の脳内の方が鮮明にイメージ出来るはずなので
余計なことはしない方がいいはず


今日の更新はありません、土日にがんばる
コレとは違う話が脳内で展開され始めて困る

浦風のヒモになりたい
朝っぱらから始める


翌朝・執務室前——


曙「……昨日の今日で律儀に秘書艦業しに来る私ってクソ真面目ね」

曙「……とりあえず入ろう」ドアガチャ

 躊躇いがちに執務室の扉を開けた私を迎えたのは朝日を後光にし、十字架に磔にされているクソ提督——しかもスーツ姿のまま——だった。
 予想だになかったそれは、私の視線と思考を奪うには充分過ぎるほど気味が悪く、腹が立つ程神々しく朝日を浴びている。
 刹那とも永遠ともとれる間から意識を戻した私は何故このような——

曙「——って、何詩的になってんだ私。 こんなんに構ってる時間が無駄よ、無駄」

提督「」

曙「……生きてるのかしらこれ」

提督「ぐう」

曙「磔にされてるのに寝てるし。 肝据わり過ぎじゃないのコイツ」



提督「う……あ、ぼのやんだ……おはよう……」

曙「そのまま朝日浴びて浄化されろ」

提督「朝から辛辣さがキレッキレやで……とりあえずここから下ろして……」

曙「自ら望んで磔にされてるのかと思った、寝てるくらいだし」

提督「どんな体勢でも眠気には抗えなかったってだけよ……とにかく下ろしてくださいあけぼのさま……」

曙「普段調子乗り過ぎだし丁度いいんじゃないの、しばらくそうしてりゃいいのよ」

提督「仕事出来ないんですけど……」

曙「アンタの手なんか必要ないわよ無能」

提督「すごい、何もしてないのにあけぼのちゃんの中の俺の存在価値が磨耗していってる」


曙「フン、手間のかかる」

提督「ぼのやんが絶対零度期に戻りそうで怖い」

曙「何があったかはどうでもいいわ、大体察しはつく」

提督「訊かないでね、思い返したくないから」

曙「何があったわけ?」

提督「傷口にアイスピックを打ち込んでいくスタイル」

曙「ちなみに言わないと私の好感度が下がる」

提督「言ったら?」

曙「内容次第で下がる、どのみち下がる」

提督「デメリットしかないクソイベントじゃねーかコレ」


提督「すげー端的に言うと、むっちゃんに愚痴られ文句言われ愚痴られ文句言われ、最終的にストレス発散だとか言って俺を十字架に磔にしてそのまま帰って行きました」

曙「最後だけが本当に謎でしかない」

提督「誰もがきっとわけわからんことをしたい欲求があるんだと思う、むっちゃんは磔にした後なんか違うなコレって顔してから帰ってったけど」

曙「アンタが夜道を歩いてたらこのドロボウ猫ーって陸奥に刺されるかもね」

提督「俺がドロボウ猫かよ」

曙「ドロボウ猫かよりもアンタが刺されることのが重要」

提督「ぼのやんは俺になんか恨みでもあるのかな?」

曙「けっ」

提督「こわい」

曙「とりあえず朝食、今日も愛の欠片も無いシリーズ」

提督「なんだろなー? 予想つくけど」

曙「卵かけ御飯」

提督「TKG」


提督「TKGは別にいいんだけどぼのやんが俺からめっちゃ遠くね?」

曙「私遠視だからこれくらいが丁度いいのよ」

提督「初耳なんですけど」

曙「嘘だし」

提督「騙す気があるのかないのか」

曙「物理的に距離置きたいだけ」

提督「なんかべたべたし過ぎてて距離感が分からなくなったカップルみたいだな」

曙「それ以上ふざけたこと言ったらアンタの目玉を私の箸が貫くから」

提督「ツンドラ絶好調過ぎる、本日は絶賛猛吹雪」

眠気に負ける前に小休止
負けそう

余裕のD敗北、おふとんはフラレよりつよい
再開


提督「それで、本題は?」

曙「は? いきなり何のことよ」

提督「なんか牽制するだけして踏み込んでこないように感じるからな」

曙「アンタに私の考えてることが分かるっての?」

提督「そう感じたって話をしただけだ、気に障ったのなら謝るさ。 別に言いたくなければ言わなくてもいい」

曙「チッ……」

提督「ああそうだ、普段買い出しに行ってるスーパーは歩いて20分くらいのとこにあるんだ、後で行ってくれる?」

曙「……アンタも人のこと言えないわね」

提督「なんのことやら」

曙「とぼけんな、アンタこそ言いたいことがあるなら言えばいいじゃない」

提督「昼ご飯はチャーハン食べたい」

曙「このクソ提督」


曙「……昨日、嘘をついてまで私を連れ出したのはどういう魂胆よ」

提督「嘘をつきたかった訳ではないが、嘘になっちまったな。 買い物に行くのをすっかり忘れてたんだ」

提督「どういう魂胆かってーと、魂胆って言うほど大したものではないな、ぼのやん氷解大作戦の一環として君に楽しんでもらいたかっただけ」

曙「は? 私に?」

提督「おう、それ以上でもそれ以下でもない」

曙「ふざけてんの?」

提督「これでも大真面目。 実際どうだった? あれだけはしゃいでいて楽しくなかったとは言わせんよ」

曙「……否定はしないけど」

提督「ならば良し。 だけど2度と通用しない不意打ちみたいなもんだからな、普段の中でも昨日のような笑顔を拝むにはまだ遠いな」

曙「馬鹿なんじゃないの」

提督「大真面目と言った」


曙「なんとかかんとか言って、結局私に何か求めてんじゃないの?」

提督「別に、そんな意地の悪いこと考えちゃないって」

曙「嘘、何かをして見返りを求めない奴なんていやしない、無為の善意を他人に施せる人なんているわけないでしょ」

提督「拗れてんなあ……あーやって連れ出したことそのものが俺のエゴだよ。 で、連れ出した先で君は我を忘れてはしゃいだし俺も楽しかった。 それでいいだろ?」

曙「……納得いかないんだけど」

提督「普段も昨日みたいにもうちょっと素直になりなって。 周りにも、自分にまでも遠慮することないだろ」

曙「別に私は」

提督「と、ゆっくりし過ぎたな、さっさと食い終わろう。 後で金渡すから買い出し行ってきて」

曙「……昨日あれだけ使わせといてなんだけどアンタ金持ってるの?」

提督「……カード渡すから」

一旦ここまで
ふとんはダイソンよりつよい


歩いて30分が街で歩いて20分でスーパーって地理関係ガバガバじゃねーかと思ったけど、タクシーで行った先が歩いて30分の街だとは限らないしそもそも30分の距離に街があるのがホントか定かではないのでそういうことにしよう
ゆーちゃんをオリョールに行かせつつ始める


第七駆逐隊の部屋——


漣「ありー、ぼのやん今日も出掛けんの? でも昨日程オサレしとらんね」

曙「買い出しに行くだけ、着飾る必要もない。 コートだけで充分」

漣「買い出し? あー、言ってたねえ、ふーん? じゃ漣もご一緒しちゃおうかなあ」

曙「アンタ訓練とか色々あるでしょうが、それに外出許可証だってそんないきなり」

漣「固いこと言わんの言わんの、ご主人様にぼのやんと一緒に行っていーか訊いてみるねー」

曙「メールて……許可だって降りるわけが」

漣「オッケーだってさ」

曙「おいクソ提督」

漣「そんじゃま行きまっしょい! 闇鍋しよーぜ闇鍋!」

曙「なんで買い出しだけでそんなテンション高いのアンタ」


漣「ククク、無事脱獄成功よ」

曙「まだ鎮守府の目の前なんだけど」

漣「さあ行くぞぼのやん! 我々の目的地、スーパーは紅く燃えている!」

曙「火事じゃん、それ」

漣「あ、見てあの雲、うさぎみたい」

曙「アンタ何なの? 散歩に出てテンション狂ってる犬か何かなの? 付き合い切れないってーかウザいから帰れ」

漣「自覚はあるZE」

曙「タチ悪っ」

漣「まーまー、鎮守府にいたんじゃおとなしく話も出来ないからねえ」

曙「どういうつもりよ」

漣「いや、鎮守府にいたら伝道師モードになってる潮ちゃんが絶対突っ込んで来るじゃん? そーなると話にならなさそうだから」

漣「朝食ん時にぼのやんにはぼのやんのやり方があるんだから外野があんまし口挟んでやりなさんなって言っといたけどねー」

曙「ねえ、その言い方だとまるで私が」

漣「わーってるわってる、とりあえずでも潮ちゃんに釘刺しといただけだから」

曙「……というか、話をするっていうのにどういうつもりだって」

漣「あーそっち? 話ってのはまー、色々?」

曙「何それ」

漣「へへ、とりまスーパー行きましょうや。 歩きながらでも話は出来るからにー」


漣「さて、しりとりでもしましょうか」

曙「会話の始まり方が既におかしい」

漣「いいじゃんそんなこと」

曙「とっとと本題に入りなさいよ、遠回りから攻めようとして回りくどい」

漣「いー、だ。 漣より回りくどいというかめんどっちいぼのやんには言われたくないですー」

曙「すいませんね、面倒臭くて。 でも今更それを知らないとは言わせないわ」

漣「分かってますよっと、何年一緒だと思ってんのさ」

曙「さあ、3年くらいじゃない?」

漣「いー、いー……」

曙「…………」

漣「駄目だ、出てこね。 負けたぜ」

曙「自分からしりとり始めといて」

漣「こんな風に乗ってくるとは思わんでしょうが」


漣「しりとりにも負けたことだし率直に訊こうか、ぼのやんてご主人様のことどー思ってんの?」

曙「率直どころか飛躍してる気がするんだけど、って一昨日くらいに言った気がする」

漣「改めて、というかよう分からんなったから訊いてるわけですよ? ほれ、見んさいコレを」

曙「ケータイ? ……昨日の私ね」

漣「普段笑わない子のこんないい笑顔見れたらなんもかんも吹っ飛ぶってもんよ」

漣「でもさー、ぼのやんはご主人様のことはどっちかってーと嫌いだと来た。 嫌いな人に向かってこんな風に笑えるもん?」

曙「……頼んだのよ、これは、私が撮ってくれ、って」

漣「あ、そう。 ああそうだ、別に何か責めてるわけじゃないから、あんま気にせんでね」

漣「そんなに嫌いでもないけど嫌いだってのは多分嘘じゃない。 昨日のぷんすこ具合を見たらまあ、分かる」

漣「だけど、ああまでなって怒るような事でもないと思うんだけど。 ご主人様とのデートになってたってのがそんなに嫌なん?」

曙「……そうじゃなくて」

漣「じゃなくて?」

曙「……あんな写真、見せびらかされたら、恥ずかしいでしょうが」

漣「……は?」

曙「こっちの身にもなりなさいよ、あの馬鹿……私からしたら変顔撮られたようなもんよ」

漣「え? 待って、昨日部屋飛び出してったのって、それ? ご主人様とのデートがじゃなくて?」

曙「そうよ、それによくよく考えたらデートなんてもんじゃないわよ、私が一方的にどこ行きたいそこ行きたいって好き勝手してただけなんだから」

漣「好きとか嫌いとかそーいう感情は」

曙「皆無」

漣「……あれ? うーん、なんか腑に落ちるようなないような……?」

漣「でもまあいいや、変なこと訊いてゴメンねぼのやん」

曙「責めてないとか言ったけど、凄んどいていう言葉じゃないわよホント」

漣「ナハハ、おっしゃる通りで……」


漣「そんなわけでスーパーだぜぼのやん! なんか滅多に来ないスーパーってwktkしない?」

曙「テンションの上下激しいわよねアンタ」

漣「オンオフ機能のついたデキる女ですもんで、にょほほ」

曙「デキる女がそんな笑い方するかしらね」

漣「漣はコレでいいんですぅー、とりまテキトーにカゴに突っ込んでくんねー! 闇鍋しよーぜ闇鍋!」

曙「まだいってんのそれ、ってか待ちなさいよ!」

漣「あーばよー、とっつぁーん!」ダバダバ

曙「ったく……あんなんついていけないわ」

曙「まあ、一世一代の名演技してやったんだ、あれくらい大目に見てやろうかな……」

曙(漣、アンタに言ったことは殆どが嘘なんだ)

曙(だけど分からないこともある)

曙(私が何に対して怒っているのか、それが分からない)


 そもそも、怒っているのかどうかも分からないのだけど。 怒りで結論付けるのは少し暴力的な気がする。
 楽しかったから怒る? 訳が分からない。
 嘘をつかれたから怒る? もっともらしいけど違うと思う。
 一緒に過ごしたのがアイツなのが気にくわない? そんな理不尽な怒りをぶつける程嫌いじゃない。
 嫌いじゃないなら、好きなの? それが一番ない。 そういう対象として見てないし、見られてもない、と思う。 アイツ自身、私達のことをそういう風に考えていないっぽいし。 あれが本心なのかは分からないけれど。
 それは私達だってそうだけど。 いや、金剛はどうなんだろう。 アプローチは凄い熱烈なんだけど、所謂キャラ付けとしての行動じゃないかとたまに思う。 艦娘の金剛を10人並べたら10人共同じようにアプローチするのだろうか。 十人一色。

 ——思考が逸れた。 何だったろうか、私がアイツをどう思っているか?
 これは漣との問答で半分は既に決している。 嫌いだけど好きじゃない、けどちょっと嫌い。 少し前に流行った調味料の名前みたい。
 だけど、嫌いだ嫌いだと言うほど嫌いではなかったりする。 そういう事にしておけばアイツをクソ提督と呼んでもあまり誰にも咎められない。 実際、クソだと思ってこう呼んでいるわけでもないし。 クソ提督呼びで浦風と悶着を起こしたこともあるけど、それは今は関係ない。


 嫌いでも好きでもなくクソでもなければその先にある感情は無関心だろうか。

 それも違う。 本当に無関心なら、こうして悩むこともないはずだ。

 なんだか自分のこと自体、分からなくなってきた。 胸の扉を開けて心に直接問い掛けてみたい。 開けてもそこにあるのは心臓だけど。 扉だってないし。

 それともなんだろう、昨日は感情が昂ぶったままだったから脳の感情を司る機能が上手く機能しなくて暴走したのかな。 そういうことにしとけばこれ以上、不毛な思考を巡らせることもないし。

 それでもまだ少しだけスッキリしない。 何で怒ってんの? とかはこの際どうでもいい。 いや、怒ってたのは何かしらの感情が制御し切れなくてそれが怒りとして出ただけ。 もうそれでいい。

 私はアイツのこと、どう思っているんだろう。 なんだかそればっかりだ。

 嫌いでもない、好きでもない、無関心でもないけど、クソ野郎ってわけでもない、たまにウザいところもあるけど。

 これらの先に何かある、気がする。 それが何かは分からない、もしくは気付かないフリをしているのだと思うけど、それを見つけるにはどうしたら——。


漣「買い物カゴジーーーッと見つめて何してんだべぼのやん」

曙「うぃええ!?」

漣「うぃええじゃねーべさあーた、奇声挙げたいのこっちですがな。 カゴを見つめても商品はそこにゃ入らねーですよオクサマ」

曙「あっ、え、私何してたの?」

漣「知らんがな、ずっと立ちぼうけてただけでしょ。 それとも何? 精神だけ異世界にでも行って大冒険してた?」

曙「そんなんじゃないけど……ってアンタ、何そのカゴの中身? ってか、量」

漣「あー、闇鍋の材料」

曙「キムチ、豚肉、白菜、人参、ソーセージ、カレールー、うどんその他etc……無難なのばっかじゃない」

漣「食べ物で冒険する勇気、漣にはなかったぜ……!」

曙「ていうか、作るの私なんだけど」

漣「闇鍋しよーぜ闇鍋」

曙「アンタの持ってきたのだとただの鍋からキムチ鍋とか普通なのになりそう、何が闇鍋やら」

漣「うるへー!」


執務室・昼——


提督「わー、なにこの量」

曙「文句はこっちに言ってよね」

漣「ええやろ! 色んな材料があったほーがぼのやんも作り甲斐があるってもんじゃろ!」

提督「一理ある」

曙「面倒だしそんな手の凝ったもん作るわけないでしょ」

漣「愛を込めないと妖怪ラブ宣教師がやってくるでよ!」

曙「…………」

提督「……ん?」

漣「……え? 何?」

曙「あるわけないでしょ、そんなもん」

漣「え、何今の間」

提督「昨日の一件でまさかぼのやんのハートが一気に氷解したとでも言うのかーっ!?」

曙「馬鹿じゃないの」

漣「あ、そーだご主人様、昨日のデートどーだったの? ぼのやんに感想聞きそびれたし」

提督「昨日のデートぉ? あれデートって言うのかなあ?」

漣「男女が外出して遊んでりゃーそれをデートと呼ばずして何と言うか! 傍目から見てもデートでしょーが! おらー答えろー!」

提督「そんなこと言われてもなー、昨日の主役はあけぼのちゃんだったわけだし、どうだったよぼのやん?」

曙「ばーか」

提督「ぼのやんが馬鹿としか言ってくれねえ!」

漣「クソッ、こうなったらぼのやんの口を割るのは容易じゃない! ご主人様とっとと答えなんし!!」

提督「そう言われてもー! 俺は楽しかったけどー!」


曙「……昼ご飯何作ろう」


今日はここまで
唐突に現れる地の文ニキ。地の文ってか地の文なのかコレ
ともかく、迷走しそうなので早いとこ畳まなくちゃ……

ツンドラがドンツラに見えてくる今日この頃
はじめる


執務室・夕方——


潮「曙ちゃん! 今暇ですか!」ドアガチャ-

曙「暇じゃない」

潮「…………」

朧「こら潮、ノックくらい……」

曙「そいっ」

潮「…………」

朧「……何この紙飛行機の大量撃墜現場」

曙「見ての通り私は紙飛行機作りとその後始末で忙しいから」

潮「暇なんだ」

曙「暇じゃない」

朧「暇なんじゃん」

曙「暇じゃない」


朧「ん、この紙飛行機って資料の紙なんじゃないの?」

潮「あ、ホントだ。 いいの曙ちゃん? こんなことして、というか良くないよね?」

曙「いーのよ、開いて日付見てみなさいよ」

潮「日付? ……半年前のだね、コレ」

朧「こっちは去年のだ……っていやいや。 だからってこんな雑にしたらダメでしょ」

曙「いーでしょ別に。 資料っても、もう解決したり済んだ話なんだからどうだっていいでしょ。 机の上に山積みにしといて大半がこれじゃあね、提督ってのはどーいう仕事してんだか」

朧「でも後になって過去の資料が必要になることだって……たぶん」

曙「パソコンの中にも大体同じのがまとめられてたわよ、あーあークソ提督も外出してるし、秘書艦ってのは案外暇を持て余すもんなのねー」

潮「やっぱり暇なんだ」

曙「暇じゃない」


朧「提督、いないと思ったら出掛けてるんだ。 何処に行くって?」

曙「ウチの那珂のライブステージを見に行くんだってさ。 まあなんか、いわゆる地下アイドルらしいけど」

朧「那珂ちゃんの……頑張ってるからね、那珂ちゃん」

潮「曙ちゃんは一緒に行かないの?」

曙「なんで私が……」

潮「だって昨日は提督と一緒に出掛けてたでしょう? でもどうして今日は、って」

曙「昨日と今日とでは事情が違うのよ、今はあまり私に考え事をさせないで」

潮「? それってどういう……」

曙「う、それはその」

金剛「ボノエッティー! テートクとデートしたっていうのはどういうことネー!?」ドアガチャァアア

曙「朧、閉めて」

朧「え、うん」ドアシメ

金剛「あっちょっ」バタン

金剛「これでfinishにはさせませんヨー!」ドアガチャ-

曙「ホント、特にウザいのが来たわね」

金剛「ボノエッティはモー少し歳上を敬うべきではないでスカ……?」

曙「ネタキャラを敬えって言われてもねえ?」

金剛「ワタシはそんなcharacterじゃないデース!」


朧「金剛さん、どうどう」

金剛「アポロン! ワタシは馬でもないネ!」

朧「朧です」

潮「人参、ありますよ?」

金剛「ウッシーまで! というかどーして2人して馬路線で攻めてくるんでスカ!?」

曙「金剛、お手」

金剛「ン? ハイ」ポム

金剛「って唐突にナニやらせるネー!?」

曙「これだけ良いように弄ばれるようじゃ敬うも何もありゃしない」

金剛「ウグッ」

曙「やっぱり、戦艦足るもの威厳がないとねえ?」

金剛「sit……今のワタシではpower不足ということデスカ……」

朧「親しみ易いとは思いますけどね」

金剛「慰めはノーセンキューネ、アポロン……」

朧「朧です」

潮「わ、私は金剛さんは素敵だと思いますよ」

金剛「フ、フフ、ありがとうネ、ウッシー」

金剛「でもワタシはまだまだnoviceのようデース……but、いつの日かボノエッティをギャフンと言わせてあげますヨ」

曙「はいはい精々期待せずに待ってる」

金剛「ではまた……good bye」ドアガチャ


潮「…………」

朧「…………」

曙「…………」カギガチャ

曙「さ、掃除でもしようか」

朧「そうだね」

潮「えっ? あの、金剛さんはいいの?」

曙「別にいーわよ、あんなの」

潮「そんなぞんざいに……グッバイなんて言ってたし、もしかして辞めちゃうんじゃ」

曙「どっちかって言うと、ワタシこれからブシシュギョーの旅に行こうと思いマース、とかじゃないの?」

朧「ウチの金剛さんって何人なんだろう」

潮「……? 武士修行って、武者修行じゃないの?」

曙「そこは気にしなくてもいいの」

金剛『——、何当たり前のよーに話終わらせっ、アレッ、開かな、あっ鍵ッ、ボノエッティィイー!! 開けるデース!! Open the door!!』ガチャバタドタガチャ

朧「……日本人?」

曙「チッ、流石にそこまでネタキャラじゃなかったか」

潮「せめて話だけでも聞いてあげよう……?」

金剛『Open bean!!!』

曙(豆かよ)


金剛「ぐすん……まさか開けゴマが言えるまで開けてくれないとは思いもしなかったデース」

曙「それで話って何、私とクソ提督がなんだって?」

金剛「ハッ、そうデス、仕事をsabotageしてテートクとデートしたってどーいうコトヨ!」

曙「デートなんかしてないけど」

金剛「えっ」

潮「えっ」

曙「私を連れ出したのはクソ提督だけど、その後は私が好きなようにあちこち回って、アイツを引きずり回したよーなもんよ。 それでもデートって言えるのかしら」

潮「でも漣ちゃんが」

曙「アレの言うことを真に受けちゃいけないから」

金剛「NO!断じてNO! 男女が一緒に出掛けていればそれは既にデートネー!」

曙「アンタまで漣理論展開するんかい」

金剛「ワタシはテートクにapproach、many、manyしているというのに! 一度も! 誘われたコトないデース!」

曙「ドンマイ」

金剛「ヌァアアアア!! What!? それは正妻! ワイフのヨユーとでもー!?」

曙「何素っ頓狂なこと言ってんのよアンタは」

朧「これは確かに威厳ないね」


金剛「大体何ナンデスカテートクは! approachしてるワタシはthroughで何もしてないボノエッティとはデートしてー!」

曙「だからデートじゃないっつう」

金剛「ちょっとはコッチになびいてくれたっていいデショー! ンモー!」

曙「一理ある」

金剛「ハ、ひょっとしてテートクはボノエッティにゾッコンだとかそーゆー……」

曙「それはないと思う……ないわよね?」

朧「さあ?」

潮「そんな風には見えないけど、見ようと思えば見えなくもない……よね?」

曙「いや見えないでしょ」

金剛「ン?」

曙「とりあえずアンタに話すことはもうないから、行った行った」

金剛「NO! 話はまだまだ続きが!」

曙「アンタ相手にしてると本当キリがないから。 やって、朧」

朧「はいはい、金剛さんボッシュートでーす」グイグイ

金剛「ちょっとー!? やめるネアポローン!」

朧「朧です」ドアガチャ


潮「結局、金剛さんは殆ど話させて貰えてなかったね……」

曙「どうせ同じようなことしか言わないだろうし、不毛よ。 文句があるなら私じゃなくてクソ提督の方行けっつうの」

潮「提督にも物を言うつもりで執務室に来たんじゃないかな?」

曙「それもそっか」

潮「……どうなんだろうね、提督は」

曙「あん?」

潮「昨日、曙ちゃんは提督に連れ出されたけどその後は曙ちゃんの自由だったって言ってたよね?」

潮「それって提督がどうこうしたいとかじゃなくて、曙ちゃんに自由を与えたんじゃないかなって思うけど」

曙「……アイツは私に楽しんでもらいたかったって言ってたけど」

潮「脈アリ、なのかな」

曙「私側の脈がないんだけど」

曙「というか、アイツが私達にそういう考えを持つとは思えない、そういう距離感でもないし……」

潮「それは確かにそうかも……」

潮「……愛の伝道マニュアル第1章、読む? どうせなら曙ちゃんから攻めに行くとか」

曙「遠慮しとく」

今日はここまで
秋津洲の腋に指を突っ込みたいかも

ねむい
ゆっくり適当に始める


ライブハウス・夜——


<ミンナアリガトー!

<ワーナカチャーン!!

提督「……頑張ってんなあ」

漣「ホントにねー。 しかもそこそこ人気あるっぽいし」

提督「結構長いことやってるらしいからな、固定客もボチボチいるんじゃないか?」

漣「へー? そーいや艦娘アイドルなんたらかんたらって資料あったけど、アレって那珂ちゃんのこと?」

提督「ああ、それと那珂ちゃんは全く関係ないぞ。 アイドル業は那珂ちゃんのプライベートというか、本人がどっちも頑張るからって言うからやらせてる」

漣「どっちも、って艦娘業と? 出来んのそれ?」

提督「一応今までは。 だけど出撃して毎回無傷ともいかないから、怪我とかしてよくこっちの方に支障が出てるらしいけどな」

漣「ですよねー、単純な骨折くらいなら3日もあれば治せてしまうっても、やっぱし」

提督「アイツは気を遣わなくていいって言ってるが……大丈夫って言っても大丈夫じゃないことも多いし、どうしたもんだか」

漣「艦娘辞めさせちゃうとか?」

提督「ダメだろそれは……ところでさ、話は変わるけど」

漣「なんでしょ」

提督「なんでここにいるの君、独り言だったのに自然と会話始まって驚く暇もなかったんだけど」

漣「なんか面白そうかなーって思ってコッソリついてきました、2度とトランクになんか入りたくない」

提督「忍者か何かか」


提督「で、本音は」

漣「ぼのやんだけ楽しんでズルいと思ったので漣ちゃんにも同じ待遇を所望する!」

提督「300円やるから安いハンバーガー屋でも行っといで」

漣「やだ! 高い方がいい! ってーか対応が雑過ぎじゃありませんかねご主人様」

周りの客(ご主人様)

周りの客(ご主人様って言った)

周りの客(主従プレイかな)

提督「鎮守府の外でご主人様って呼ぶのはやめて」

漣「んじゃダーリン」

提督「なんで」

漣「お兄ちゃんが良かった?」

提督「そういう問題じゃないよ?」

漣「口答えすんな愚弟」

提督「オラこんな姉さ嫌だ」

漣「分かりましたよ、その辺の高級フレンチで妥協しますよ師匠」

提督「お前らの要求レベル大差ねーな」

漣「ところでフレンチってなーに」

提督「知らねえのかよ!」

漣「叫んだら周りの人の迷惑になるでしょ! ママとのお約束でしょ!」

提督「最初に叫んだの君でしょうが……とりあえず外行こう外」

漣「高級フレンチゲットだぜ」

提督「なわけねーだろ」


漣「結局ファミレス」

提督「凄い既視感」

漣「ご主人様の財布の紐硬いんですね、財布が硬い人は頭も硬いって偉い人も言ってますよ」

提督「やかましいわ、頼んでいいのは2品までだからな」

漣「マジで硬くて笑う」

提督「前科と前例があるからな」

漣「うぐ、過去なんか水に流しちゃいましょーぜご主人様、ザバーって」

提督「しでかした本人が言うことじゃないんだよなあ」

漣「けちんぼ!」

提督「厚かましいわ!」

一時中断
私事で気が乗らなくなってしまった。気が滅入る

寝れば大体忘れるのデス、睡眠は偉大
E-4やりながら再開


漣「ハンバーグウマー!」

提督「美味そうに食べるなあ、見てるこっちも腹が埋まりそうになる」

漣「何いきなり口説いてんですかねこん人は」

提督「率直な感想を言っただけだって」

漣「ところでそういうご主人様は何も食べないの? 漣をおかずにしてなら水だけでもご馳走だぜ! とか言っちゃうの? そういうのやめてくだし」

提督「何言ってくれてんだお前、俺には鎮守府で待つ晩御飯がちゃんとあるんですぅー」

漣「愛の欠片も感じさせないぼのやんシェフの手抜き晩御飯かな? 昼はお茶漬けオンリーだったし晩はもやし炒めだけかもねー」

提督「ヘルシーじゃないか」

漣「そんなん続くと腹減るやろjk……」

提督「そこは気合で」

漣「やっぱり足りてないんじゃねーか」


漣「でまあ、散々ふざけといてだけど漣の目的は別にあるのね」

提督「帰りに何かスイーツ買ってーとかなら聞き入れませんよ」

漣「ちゃいますよん。 まあ少し下世話ではあるんだけどー、皆がいない方がご主人様も話し易いだろうしーってことでついてきたわけ」

提督「下世話って……ってか呼び方」ミズノミ

漣「ぶっちゃけご主人様てぼのやんのことどう思ってんの? 女として」

提督「ゴボッフゥ」

漣「きちゃない! えんがちょ! ポマード!」

店員「どうかされましたかお客様!?」

提督「う、あいや平気す、大丈夫です、むせただけなんで」

漣「ンモー、人様に迷惑かけちゃあダメでしょご主人様」

提督「誰のせいだと……」

店員(ご主人様て)


提督「いきなり何を言い出すんですかね、こやつは……」

漣「で、どーなん?」

提督「どうもこうもないだろ……そんな風に見ることなんて出来ないって」

漣「何ー? 数年共に過ごしたら家族みたいに感じて恋愛対象じゃなくなったみたいなー?」

提督「それで言うと俺めっちゃ家族多くなるな?」

漣「でもさー、だったらどーしてぼのやんのデートとかしたのん? ねえ?」

提督「まーたその話か、デートじゃないったろうが、謎理論も聞かないぞ」

漣「でもさでもさ、漣達とご主人様って言っちゃえば所詮、部下と上司みたいなものじゃん? そういう関係で済ますには説得力がない感じなんだけどどうなのかにゃーって。 そこまでしなくね? って」

提督「それもそうだけど……そうじゃないんだよ、俺が多分、世話焼きだからじゃないかな」

漣「世話焼き? それっぽい覚えはあんましないけど」

提督「俺もないよ、もしかしたらそうなんじゃねーのかなっていうifの話」


提督「……曙さ、今では着任当初からは想像もつかないくらい打ち解けてるだろ? それでもまだ微妙に距離があるというか、容赦はないけど遠慮はあるみたいな。 それをもう少し解消したくての氷解大作戦なんだけど」

漣「別にいいんでないの? そのくらいの距離感でも。 それ以上は過干渉になるかもしんないじゃん?」

提督「まあな。 俺だって深入りはされたくないから分かる。 距離を縮めようとしてる奴の言うことじゃないがな」

漣「そーなの? ちょっと意外」

提督「まあそれはおいといて、お前の言うデートをしたのだって遠慮をなくさせるため、曙に楽しんでもらうためなわけだ」

漣「結果的にはなんか、より凍り付いたっぽい感じだけどね、も少し程々にしといた方がいいんじゃないです?

提督「それもそういかないんだな、これが」

漣「ってーと?」

提督「曙の写メ、送っただろ?」

漣「ん? ああ、あの笑顔ぼのやん」

提督「あれをさ、もう一度見たいって思ってしまってるんだ」

漣(……んん?)

提督「こうなると単なる俺のエゴだな、というか大作戦含めて俺のエゴなんだけど」

漣(ん? うん?)

提督「せっかくいい笑顔が出来るんだからさ、もっと笑って欲しいわけですよ。 不意を突かれて笑うんじやなくて、自然に。 どうしたらいいかなーってわけでもあるけど」

漣()

提督「まあ過干渉になることもあるだろうけど、色々と模索してくつもりだよ、ツンドラが相手だから簡単じゃないだろうけど」

漣「……振り出しに戻っていい? ぼのやんのことどう思ってる?」

提督「あー? そういう風には見てないって言っただろ?」

漣「本気で? マジで?」

提督「マジだけど……何をそんなに噛み付くことがあるんだよ」

漣「先が思いやられる、マジヤベって顔していい?」

提督「よく分からんが、どうぞ? まあ実際思いやられる感じはあるよなあ、どうやって氷解させたもんか」

漣(そっちじゃないんだよなあ)


提督「っと、そろそろ帰ろうか。 そこまでじゃないがあんまり遅くなってもな」

漣「ソーデスネ、はよ帰って冷えた愛妻夕食でも食べてやるがいいのです」

提督「なんか投げやりになってないか?」

漣「そうさせた張本人に言われたかーない」

提督「はあ? 話を振り始めたのはそっちだろうに」

漣「うるせーです、天然物のニブチン天然水なご主人様はアルプス山脈にでも行けばいいんです」

提督「また訳の分からんことを……」

那珂「やっほー! 二人ともお待たせー!」パタパタ

漣「へっ、え? なんで那珂ちゃんがここに」

提督「ああ、どうせなら一緒に帰ろうかと思ってな、ライブが終わった後に予定がなければこっち来るようにメールしといたんだ」

那珂「ところでさ、二人とも来てたよね? ステージから見えたもん、どうだった? 那珂ちゃんライブどうだった?」

提督「あーいうのには疎いんだが、身内贔屓するわけでもなく良かったと思うぞ? 楽しそうだったし」

那珂「やったあ! 漣ちゃん、は、てどうしたの? 凄い顔してるけど」

漣「え? あー、はは、この先どーなるんだろうなって」

那珂「う、確かに険しい道のりだけど! 艦娘アイドル那珂ちゃん! 二足のわらじで頑張ります!」

漣「あ、ごめん、そっちじゃない」


鎮守府・執務室——


提督「いやあアイドルってのは凄いもんだよな」

曙「戻ってくるなり開口一番がそれ?」

提督「いや本当凄いと思ったもんよ。 規模こそ大きくはないけどさ、何人もの観客を沸かせて笑顔にさせるってのは、俺には凄いとしか言い様がない」

曙「ボキャ貧は辛いのね」

提督「論点そこじゃないよ! ぼのやんならどう言うってのさ!」

曙「私には到底出来やしないわ、それだけ那珂が魅力的に映るんでしょ」

提督「俺のよりも強そう」

曙「はい、アンタのターン」

提督「えっ」

曙「添削するから」

提督「ええと、えー」

提督「ぼくにはとてもできない」

曙「添削するまでもないわ、不合格」


提督「まあそれはおいといてさ、晩御飯ある? ってか作ってある?」

曙「一応、あるにはあるけど」

提督「やったぜ、もやし炒めかな!」

曙「……ちょっと待ってて、持ってくる」

提督「ん? おう」


提督「ば……馬鹿な……」

曙「……呆然としてないで食べたらどうよ」

提督「豚の生姜焼きにキャベツの千切り、ポテトサラダに味噌汁と白米だと……!? これはまさしく晩御飯という奴なのでは……!?」

曙「誤解されないように言っておく、コレなんだと思う?」ピラッ

提督「ん? レシピか……印刷した奴?」

曙「潮がコレ持ってきたの」

提督「ああなるほど、納得」


曙「まったく、アンタがいなかったから好き勝手されたわよ。 いい迷惑」

提督「ははは、でもよく出来てるじゃん、美味いぜぼのやん」

曙「そりゃそーよ、レシピ通りに作ったらそうなるわ」

提督「ま、どうせなら一緒に食べたかったけどな」

曙「何言ってんの、人と一緒に食べて味が変わるわけないでしょ」

提督「気分の問題さ、誰かと同じ時間を共有することが楽しいんじゃないか」

曙「……!」

提督「まあ流石に全く知らない他人とかでもいいってわけじゃないけどな! 俺もそこまでは強くないし」

曙「アンタは……」

提督「ん?」

曙「……いや、いい、なんでもない」

提督「なんだ? なんでもないなら、ないでいいけど……」


提督「ああそうだ、明日は俺夜遅くまでいないから」

曙「え、そうなの」

提督「ツキイチの戦果報告会とかあるんだよ、それで本営まで向かわなきゃだしそこでどーせ会議に巻き込まれるし、鎮守府に戻っても上のクソジzお偉方らが反省会議みたいなん開くだろーしで面倒尽くしだ」

曙「……私は、というか秘書艦はついてかなくていいの? それ」

提督「秘書と来てる人もいるが、眠くなるような話しかしとらんよ、だから俺は誰も連れてったことないし連れてく気もないな。 不毛な会議なんて面倒だろ?」

曙「それはそうだけど……そういう面倒な仕事をするのが、負担を軽くするのが秘書艦じゃないの?」

提督「いーのいーの、どうせ適当に流しときゃすぐだすぐ」

提督「ってなわけで明日は1日よろしくな。 また陸奥にも頼んどくし余程のことがなければ大丈夫だろ」

曙「だと思うけど、って大丈夫なの? 昨日の今日で」

提督「……だいじょばないかもだから必死で頼む」

曙「陸奥が呆れるのが目に見えるわ」


今日はここまで
ツ級しね(半泣)


今日の更新はなし。おそらく明日も
あまり話が頭でまとまっていないのもある


更新はないと言ったな以下略
始める


第七駆逐隊の部屋・深夜——


漣「スヤァ……」

曙「…………」

潮「んー……」

朧「すー……」

曙「…………」

曙「…………」ゴロン

曙「…………」ゴロン

曙(思考が目まぐるしく回って全く寝付けない)

漣「馬鹿め……そっちはメロンパンだ……スヤァ」

曙(大体コイツと金剛や潮、あとアイツのせいか)

漣「身体が動かねえぜ……むにゃ」

曙「いつも思うけどアンタどんな夢見てんの?」

漣「ちくわ音頭」

曙「……起きてる?」

漣「スヤァ……」

曙「寝言だったんだ、それ……」


 頭の中を巡り回ってる議題の内容は今日の出来事の蒸し返し。 私がクソ提督をどう思っていて、クソ提督が私をどう思っているのか。 それが飽きる事なく無限に走り続けてる。

 クソ提督が私をどう思っているかなんて、他人が考えている事なんて知りようがないから自分の中で結論付けても、それは憶測の域を出ない以上するだけ無意味だと思ってる。 思っているけど止められない。 制御不能になった暴走機関車のよう。

 反対に、「私がクソ提督をどう思っているのか」の列車はというと「分からない」の一点張り。 マトモに進みすらしない。

 あの道はどうだ、この道はどうだと道を示してもそっちじゃない、それでもないの繰り返し。 じゃあどこに行きたいんだと言うと「分からない」に戻るのだからどうしようもない。

 自分の事が分からないんじゃあ、相手の事も知りようがないよね! という解が出たのは数え始めて4回目。 無論、ただの逃避には不正解のバツ印をくれてやる。そうじゃない道がある気がするから、その道が分かるまで進もうとしていないんだ、多分。

 その道が分かって、行先が開けたらもう1つの暴走機関車もあるべきレールに乗って本来の速度で進み始める、気がする。

 もっとも、その道の見つけ方から分からないのだけど。 そういえばなんで怒ってたんだっけ? あ、また「分からない」だ。 もう、これについて問うのは止めようかな。

 ——こうやって客観的に考えるのも何度目だろう。 暗闇は目が効かないから思考が働いて仕方がない。

 あ、また機関車が走り始めた。


<ナカチャンダヨー! ナカチャンダヨー! ナカチャンダヨー! ナカチャンダヨー! ナカチャンダヨー! ナカチャッ

朧「ふ、わああ……今日は熟睡しちゃったなぁ」

潮「んん……おはようみんな……」

漣「おはウィッシュ……那珂ちゃんがまだ頭の那珂ちゃんでこだましてるぜ……なんだ頭の那珂ちゃんて」

朧「……あれ、あけぼ」

曙『…………』

朧「のは……?」

潮「ど、どうしたの曙ちゃん……曙ちゃんだよね?』

漣「凄い見た事のある布団の塊があるんだけど」

曙『私は布団よ』

漣「いやいやいやいや、朝っぱらからボケの切れ味鋭過ぎでしょぼのやん」メクリーノ

曙「…………」

漣「おぎゃーお……すげー顔してるぜぼのやん、乙女のしていい顔じゃあない」

潮「ど、どうしたの曙ちゃん……」

朧「クマが凄い……もしかして寝てないの?」

曙「……寝付けなくて」

朧「それはまた……どうして?」

曙「色々と、ね……ははは」

漣「虚ろな目で笑わんでよぼのやん、軽くホラーだよ」


執務室・朝——


提督「…………」

曙「…………」

提督「……普段の3倍くらいは目付き悪いな」

曙「いいじゃん、見たら泣く子もギャン泣きよ」

提督「ダメじゃないのかなそれ」

曙「ていうか朝御飯、作るの私じゃなくて良かったわけ? アンタに追い出されちゃったけど」

提督「目線がまな板の上じゃなくてナイジェリアの方向いてそうな奴に包丁握らせらんねえよ……」

曙「別になんとかなるでしょ、多分」

提督「ならないよ? 朝から流血スプラッタとか勘弁して欲しいな?」

提督「ていうかそんなんで今日1日大丈夫かよぼのやん……」

曙「陸奥がなんとかするでしょ」

提督「THE・人任せ」

曙「ところで、陸奥に頼むっていう話はついてんの?」

提督「これからするの、上手くいくよう祈っといて」

曙「アンタも大抵見切り発車よね」


眠いので一旦ここまで
スヤァ


————
——


提督「——かくかくしかじかという訳でよろしくお願いします」

陸奥「……肝が据わっているというか、厚顔無恥というか、貴方も大概よねぇ」

提督「こうでもなきゃこんな仕事やってられんからな」

陸奥「誰彼構わず絡んだりからかったり一緒にふざけたり、果てには連れ出してデートするような仕事がそんなにハード?」

提督「むっちゃんまでデートって言うー」

曙「弁解するのもそろそろ面倒になってくる頃合ね」

陸奥「まあいいわ、引き受けてあげる」

提督「やったー! むっちゃんは懐の広さまでビッグセブンだぜ!」

陸奥「そ・の・か・わ・り」

提督「うん?」

陸奥「私ともデートしてもらおうかな?」

曙「うえっ」

提督「なんですと」

陸奥「だって曙だけ羽を伸ばしただなんてズルいじゃない? そうしてくれたら諸々のこともチャラにしてあげるっ」

曙「その条件ってどうかと思うんだけど……」

提督「そんなんでいいのなら別にいいけどさ……?」

曙「…………」

提督「む、なんだぼのやん?」

曙「あ、いや、いいんだ、って。 それだけ」

陸奥「ふふ、やった。 何買ってもらおうかなーっと」

提督「もしかして俺、体良くむっちゃんの財布にされただけなんじゃねえ?」

曙「陸奥のみぞ知る、ね」


提督「ってと、準備も済んだし行ってくる。 後は任せたぞ2人共」

陸奥「安心して行ってらっしゃい」

曙「お土産ショボかったらはっ倒すから」

提督「観光じゃないっちゅうねん! そんじゃ!」ドアガチャ

陸奥「……行ったわね、それじゃ何からしようか?」

曙「え、それを私に振るの?」

陸奥「言わば私は今日1日提督代理、そして曙は提督の秘書艦だから今は私の秘書艦でもある、そうでしょ?」

曙「いやまあそれはそうだけど……何って言われても」

陸奥「その反応を見る限り、急ぎの仕事や任務はないみたいね。 それじゃ少しサボっちゃおうか」

曙「サボる、ってアンタそれでもビッグセブンなの?」

陸奥「それは戦艦陸奥の話、私は私よ。 そういう訳で曙には提督とのデートについて洗いざらい喋ってもらうわ!」

曙「なんでどいつもこいつもその事についてばかり食ってかかってくるのよ……」

陸奥「人様の色恋沙汰に食い付かない女子がいる訳ないじゃない? それが身内ともなればより盛り上がりは増すのよ!」

曙「私がそんなのと縁あるわけないでしょうが、他当たれ他」

陸奥「だからこそじゃないの、そんな冷徹で恋の欠片もなさそうな曙が提督とデートしたって言うから皆驚いてるのよ?」

曙「……ねえ、すっごい今更なんだけどどうしてアンタ達がそのこと知ってるわけ? 金剛の時に気付くべきだったわ」

陸奥「え? ああ、私は漣ちゃんがそんな話をしていたのを聞いただけよ。 私は言いふらしてないけれど、他の誰かが聞いては言いふらしたりしたんじゃないかしら? 漣ちゃん自身も色んな子に話してたし」

曙「漣をシメなきゃ」


陸奥「さ、そういう訳で遠慮なくどうぞ! なんならボイスレコーダーも用意しちゃう!」

曙「私に恋の欠片もないって言うなら、そういう感情も特にないって分かるでしょうが……こんなん聞くだけ無駄よ」

陸奥「分からないわよ? 恋心は突然生まれるものだもの、昨日はなくても今日にはあっても不思議じゃないわ」

曙「……アンタは潮と話してる方が楽しいと思う」

陸奥「とにかくはぐらかしてないで! いいのよ!」

曙「……人に話させる前に自分が話したらどうなのよ」

陸奥「んー?」

曙「デートしろ、ってアイツに言ってたけどアンタはアイツのことどう思ってんのよ」

陸奥「あら、それ訊いちゃう? それに質問を質問で返すなんてズルいのねぇ」

曙「さっそくはぐらかしてくれちゃって。 そんなんじゃ私も答える理由がないわね」

陸奥「うーん、でもいいのかしら? つまり私が貴方の質問に答えたら、貴方も私の質問に答えてくれるって事よね?」

曙「えっ」

陸奥「どうしようかなぁ、あんまり話すような事でもないのだけどー」

曙「ちょ、今の無し! 無しだから!」

陸奥「せっかく大義名分を与えてくれたんだし、乗っからないと損よねぇ? それなら曙の質問に答えちゃおう!」

曙「無視すんな! それでもビッグセブンかってのー!」


陸奥「そうね、提督のことをどう思ってるかというとー、好きよ? うん」

曙「い、言い切ったわね」

陸奥「だけど曙の思うのとは多分違う。 あくまで人として、ね」

曙「どういうことよ?」

陸奥「男女の恋愛的な好きじゃなくて、彼を上官としては慕っているの。 それだけよ」

曙「いやでも、アンタデートって、それは」

陸奥「羽を伸ばしたいのは本当のこと、その口実に貴方を使わせてもらっただけよ。 使えるものは使わなきゃ、ね?」

曙「え、ええ……?」

陸奥「あら、何やら納得していないみたいね?」

曙「私でもよく分からないんだけど……好きでもないのにデートて」

陸奥「頭が硬いのね、それに貴方が言えたことかしら?」

曙「うぐ、それはその」

陸奥「デートだなんてのは言葉のあやくらいに考えておけばいいのよ、そんな深く考えるようなことじゃないわ。 そういう風に囃し立てられるのが嫌なら気にしなければいいじゃない」

曙「……大人の余裕があればこそなせる技ね」

陸奥「貴方もまだまだ子供ってことね」


曙「あ、慕ってるとか言ってたけど、アイツのどこに慕えるようなところがあるのさ」

陸奥「ん? そうねぇ、何をしても許してくれるところかしら?」

曙「」

曙「いやいやいや、どうなのよそれは」

陸奥「凄く大雑把に言ったら、ね。 そうでもないとあんなことしないわよ」

曙「あんなこと……? ああ……」

陸奥「さっきも言ったけど彼、普段から
おちゃらけていてばかりでしょう? 他の司令部、というか他所の司令官を見たことは何度もあるけれど、ウチほど空気は緩んでないし、彼ほどテキトーなちゃらんぽらんは見たことないわね」

曙「アンタ、怖いもの知らずね……」

陸奥「そっくり返したげる。 で、ふざけてばかりの彼だからとでも言うのかな、彼のふざけている範囲内でなら私達が何をしても許してくれるというかね」

曙「買い被り過ぎでしょ、あんなんその場その場で刹那的に生きているだけよ」

陸奥「手厳しいのね? だけど貴方も彼の寛容さの恩恵に預かっている。 身に覚えがないとは言わせないわよ?」

曙「それは、まあ……」

陸奥「私はこの司令部が好き。 長門や曙、他の皆のことも。好きな皆と笑い合えるこの場所が好き。 こんな場所を作り上げてくれた彼のことも。 今更他の司令部には行けないわね」

曙「よくもまあ好き好き言えるわね……聞いてるこっちが凄い恥ずかしいんだけど」

陸奥「だって本当のことだもの?」

曙「いやそれにしたってどうかと」


陸奥「さ、私は洗いざらい話したんだから今度は曙の番よ!」

曙「うげえ、話すことなんて何もないってえの」

陸奥「そんなこと言ったって逃がさないわよ? 貴方の口が割れないのなら望むところではないけれど、漣ちゃんに訊いたって良いわけだしー」

曙「うっわ、卑怯だこのびっくりビッグセブン」

陸奥「ホラ、大人しく口を割れば良いのよ! 単純に好きか嫌いかでもいいからー!」

曙「しつこいなあ! 私にとってアイツはそんなんじゃないのよ! なんかもうもっとめんどくさいの! フン!」

陸奥「あら、どこ行くのって、宿直室?」

曙「見て分かる通り寝不足、ってか寝てない、だから少し寝る、他に用が出来たら起こして、おやすみ!」ドアガチャ-

陸奥「おかんむりねぇ。 はねっかえりな妹がいたらこんな感じなのかしら」

陸奥(まあいいか、洗いざらいは話してないからこれ以上つっつくのは勘弁してあげる)

陸奥(私の立ち入る隙も無いからね、彼。 だからさっさと攻略しちゃいなさいな)


今日はここまで
グラーフ出ない つらい


今日の更新はないです
そろそろ畳むか少し引き延ばすか悩む


長さよりも締めを重視する方向に向かおうと思います。その過程で長くならないとは限らないけど長くはしない
蛇足にならないよう善処するのです
帰宅したら始める


 赤色は私を疎み、嫌い、攻撃する敵。

 灰色は私を歯牙にも掛けず、叩きも守りもしない、無関心な存在。

 青色は偽善者も含め、私の側に立とうとする奇特な奴。

 本当にそう見えていたわけではないけれど、少し前の私にとっての世界はその3色だけで構成されていた様に思う。


執務室付属宿直室・昼——


陸奥「あ・な・た、早く起きて? もう時間なんだから、遅刻しちゃうわよ?」

曙「…………」

陸奥「あ、起きた。 おはよう曙、目覚めはいかが?」

曙「すっごい妙な気分……ていうか何してんのアンタ」

陸奥「様々な世代の男性に訊いた、妻や彼女に求めるシチュエーション100選。 雑誌に載ってたの」

曙「どうしてそれを私にやるのよ……起こしたってことは何か用なの? 今何時よ」

陸奥「丁度お昼よ。 眠いにしても、お昼ご飯くらい食べたらどうかなって」

曙「……ん、それもそうね」

陸奥「それじゃ、曙の手料理を堪能させてもらおうかしら」

曙「何言ってんの、作るわけないでしょ? 食堂行くわよ食堂」

陸奥「えー? 今の私は提督代理よー?」

曙「いい大人が・膨らませてワガママ言うんじゃないの」

曙(そう言えば陸奥が何歳かは知らないな……)


執務室前——


曙「それにしても昔の夢を見て寝覚めが悪い」ドアガチャ

陸奥「昔の夢? 前世の方?」

曙「現世の方。 前世の方も見て気分のいいものじゃないけどね」

陸奥「へえ、昔の曙ねぇ。 でも貴方の歳で昔って言うと、小学校に通ってた頃くらいしかないんじゃない?」

曙「まさしくその頃よ。 ま、人に話す様なことでもないから話さないけれど」

陸奥「へーえ? どんな夢だったの?」

曙「話さないって今言ったわよね?」

陸奥「いいじゃない? 秘密にするから、ねっ」

曙「……赤か、灰色か、青か。 それだけの夢よ」

陸奥「……? それってどういう意味?」

曙「さあね。 で、アンタは多分青かな。 というか、この司令部だと殆どが青かもね……」

陸奥「ますます謎が深まるわね……」

曙「いいのよ、わけなんて分からなくて。 そんなに世界は単純でもないし」

曙「さ、突っ立ってないで行こう、食堂で食事したら昼の業務よー」

陸奥「ああもういけず。 教えてくれたっていいじゃない」


食堂——


<テートクトデートシタンダッケ

<アケボノチャンダ

<ボノエッティー! ツモルハナシハヤマノヨウニアルデース!

<サワガナイデクダサイオネエサマ

<ヒトハミカケニヨラナイワヨネェ


曙「あっはっは、おとなしく食事作って執務室に引きこもってた方が良かったかしら」

陸奥「目が笑ってないわよ」

曙「……正直、好奇の視線が集中してるのは耐えられない」

陸奥「あらあら、汗が滝みたい」

漣「お、ぼのやんとむっちゃんさんじゃーん? ご一緒してもいいー? しちゃうよーしちゃいましたー」ガタン

陸奥「あら、七駆勢揃いで。 丁度お昼?」

潮「そうなんです、訓練も終わったので」

朧「それで昼ご飯を食べに来たら何かざわついてるなって……曙、クマもあいまって不審者の様相を成しているけど、大丈夫?」

曙「あー、うん、多分」

漣「呼んだクマ?」

曙「似てない」

漣「酷いクマ」

球磨「呼んだクマ?」

曙「呼んでない」

球磨「分かったクマ」


陸奥「うーん……まあ、皆の視線がこっちに集中してるのは流石に居心地が悪くないかしら? って、訊くまでもないと思うけど」

曙「でも、1度来てから逃げたらそれはそれで何か、負けな気がする」

朧「何と戦ってるんだか」

陸奥「でもいいの? 今朝も言ったけど、他者の色恋沙汰で盛り上がらない女子はいないし、ましてやここは女の園みたいな場所なんだから、質問やら何やらの集中爆撃を受けても知らないわよ?」

曙「全員が潮状態……!?」

潮「曙ちゃん、どういう意味かなそれ」

球磨「皆でこぞって曙に何を訊くつもりだクマ?」

漣「多分球磨型の皆さんにだけは無縁そーなこと、ってまだいたんだ」

球磨「無縁とは失礼クマね、わざわざ訊いてもしょうがないことを訊いてどうするつもりだってことクマ」

漣「お、おう? 意外と意外なところから意外な意見が」


球磨「大体、曙から話を聞いてどうするクマ、聞いても曙にはなれないし全く同じことは出来ないし、全く同じことが出来たとしたらそれはそいつじゃなくて曙クマ、まるで意味がないクマよ」

曙「あの、球磨……?」

潮「つ、続けてください」

球磨「勿論誰かの良いところを真似ることに意味がないとは言わないクマ、だけどそれよりも確実なのは自己を高めることに他ならないクマ!」

朧(何かズレてる気がする)

球磨「己が未熟なまま誰かを真似たところで猿真似にしかならないクマ! どうせ真似るのなら真似るのではなく吸収してしまえばいいクマ! 吸収することが出来るほどになるまでには自己鍛錬あるのみクマよ!」

<ナ、ナルホド

<ナンカソンナキガシテキタヨ

<ヘーイシスターズ! コレカラベリーベリートックンハジメルネー!

<ゴコーセンノコタチニハマケラレマセン

漣「な、なんかよく分かんないけど球磨さん凄い説得力というか迫力……!」

陸奥「……ねえ球磨ちゃん」

球磨「なんだクマ?」

陸奥「皆が曙に何を訊くつもりだったか、分かってる?」

漣「へ?」

球磨「む? 曙が提督に稽古をつけてもらったって話じゃないのかクマ?」

潮「えっ」

朧「そんなことだろうとは」

曙「……何それ。 誰から聞いたの?」

球磨「木曾が天龍から聞いたって言ってたクマ。 その天龍は長門から聞いて、長門は雷から聞いて、後は知らないクマ」

曙「……伝言ゲームみたいね、なんか」

漣「どこで捻じ曲がったのやら」


漣「球磨さんや、真相はかくかくしかじかで」

曙「それも語弊があるんだけど」

球磨「……マジクマ?」

漣「大マジッスよセンパイ」

球磨「確かに色恋沙汰は無縁、というか専門外クマ……ハッ! 適任がいるクマ!」

曙「却下で」

球磨「せめて話だけでもさせて欲しいクマ」

曙「聞くまでもない、そもそも周りが勝手に盛り上がってるだけで私とクソ提督には何にもないし」

球磨「何にもなかったらデートなんてしないはずだクマ」

曙「元々ただの買い出しのはずだったの。 それにアイツだってデートじゃないみたいなこと言ってたし」

球磨「当人らがどう思おうとも、男と女が2人連れ添って出歩いていればそれをデートと言わずに何と言うクマー!」

曙「ねえ、この鎮守府って漣理論流行ってんの?」

漣「理論ってーかね」

陸奥「割と一般的な認識だと思うわ」


曙「漣理論の蔓延はどうでもいいとしても、私の口からは何も話すことなんかないから。 I don't speak.OK?」

球磨「ふむ、無理に口を割ることもないクマね、分かったクマ」

曙「話の分かる子は好きよー」ナデナデ

球磨「えへへー、歳上は可愛がるんじゃなくて敬えクマ」

曙「説得力のない顔しといて何を言うか」

漣「球磨さんは皆のマスコットだよねー」ナデナデ

曙「……どうして私が撫でられてるわけ?」

漣「こーすればぼのやんもデレるかと思って」ナデナデ

陸奥「なるほど、そういう手もあるわね」ナデナデ

潮「あ、じゃあ私も」ナデナデ

朧「なら私も乗っかろうかな」ナデナデ

球磨「球磨も撫で返すクマー!」ワシャワシャ

曙「ちょ、アンタら」

漣「よいではないか、よいではないか」ナデナデ

潮「曙ちゃんが素直になりますように」ナデナデ

朧「撫でてれば物理的に柔らかくなるかもね」ナデナデ

球磨「曙の髪はなんかいいニオイがするクマねー、口は悪いけどやっぱり女の子クマ」ワシャワシャ

陸奥「ほーんと、ちょっと本気を出せばすぐなのにねぇ」ナデナデ

曙「」ナデワシャナデワシャサレーノ

曙「だーもう! いい加減鬱陶しいわアンタらー!」


漣「あんまりキレると小ジワが増えるぜ奥さん」

曙「誰が奥さんだ、アンタの顔面物理的にシワクチャにしてやるわよ!」

漣「家庭内暴力だー! 助けてママー!」

陸奥「ホラホラ、お姉ちゃんなんだからあんまりいじめちゃダメよ?」

曙「誰が姉だー! 陸奥も悪ノリしてんじゃない!」

球磨「フッフフ、それにしても曙は随分変わったクマ」

曙「は? 何よいきなり」

陸奥「あら、球磨ちゃんもそう思う?」

球磨「もちろん。 前と比べて表情がコロコロ変わるようになってるクマ。 それも感情の波が大きいのが分かるくらいに」

潮「そうですね、あんまり大声出したりはしなかったかも」

曙「そう……かな」

球磨「ま、司令部の皆がこーやって曙に構うからほぐれたのかもしれないクマねー」ホッペムニー

曙「やふぇんかい」

朧「私は皆の言う冷たい曙を知らないけどさ、こうして皆と一緒にいる曙は楽しそうにしてるよね、そう見えるよ」

漣「ビミョーに遠慮されてる感はあるかもだけどねー」

陸奥「そうなの? ママには遠慮なんてしなくてもいいのよー?」

球磨「陸奥がママなら球磨がお姉ちゃんになるクマ! 今更1人増えたところでどうとでもなるクマ!」

潮「え、じゃあ私はええと、何がいいかな曙ちゃん!」

曙「何がいいって……調子狂うな、もう」

漣「漣はちょっとよろしくない悪ダチポジションでシクヨロ!」

朧「その話はもういいから」


曙「……皆、味方だって気付けたから、かな」

球磨「クマ?」

潮「味方?」

陸奥「それって何が、どういう?」

曙「だからっ、私が、変わったってのは……」

曙「もう、やだ! 言えっこないよこんなこと!」バタバタ

球磨「あっ、逃げたクマ!」

漣「顔面真っ赤ぼのやんは無事漣の脳内フォルダに保存されました」

朧「何かそんな恥ずかしいことでもあったのかな、一昨日の夜と同じくらいだったし」

潮「今の話の流れでそういうこと思い出すかな……?」

陸奥「照れ臭くって本心を言えないパターンかしらね」

瑞鶴「ねえ、曙どうしたの? 顔真っ赤で走ってったけど……」

漣「おや、ずいずいに叢雲様。 どったの?」

瑞鶴「私のその変なあだ名はどうにかなんないのかな」

叢雲「様付けよりマシでしょ……曙に訊きたいことがあったんだけど、まあ、アンタでもいいか」

漣「おん? なんじゃらほい」

瑞鶴「……耳こっちに寄せて」キョロキョロ

漣「はいな」

陸奥「はーい」

潮「なんなんでしょうか……」

球磨「きっとよからぬ話クマ、漣で言うワカチコって奴クマ」

瑞鶴「いやアンタらはいいから」

叢雲「別に構わないわ、コイツらは話知ってそうだし」

漣「何なのさーもう、勿体ぶらずにはよ」

朧(数人が寄せ集まって、変な光景だなあ)

叢雲「……曙が提督と夜戦したって本当?」

漣「…………はあ?」


話の本筋はここまで
今日はおまけ話でも投下しようかな、と意に反して話が長引きそうな試み
それにしてもここのところ寝落ちが酷くて困ってしまう


おまけ話「斯くして噂は広まった」


——————
————
——

第七駆逐隊の部屋・早朝


<ナカチャンダヨー!ナカチャンダヨー!

朧「グッモーニン那珂ちゃん」チョップ

<ナカチャンダッ

漣「んんーっ、と。 今日も那珂ちゃんか……明日も明後日もずっと那珂ちゃんだろうけど」

潮「う……おはようございますー」ゴシゴシ

朧「おはよう、2人共」

漣「……あれ、ぼのやんは?」

朧「秘書艦の仕事だ、ってもうとっくに起きて行っちゃったよ」

漣「ち、昨日のことについて根掘り葉掘り訊こうと思ってたのに。 まーいいや、後でも訊けるもんねー」

潮「昨日の、って?」

漣「ぼのやんとご主人様がデートしたことに決まってるっしょ! こんなぼのやんはウルトラレアだよ!」

朧「ケータイの待ち受けにするってどうなのそれ」

潮「ああ……いい笑顔してるねえ、やっぱり」

漣「不肖漣、ぼのやんの口を割ることに身命を賭す覚悟よ!」

朧「なら同じくらい勉強も頑張ろうか」

漣「さーて着替えて朝御飯食べに行こーぜ皆の者ー」

朧「逃げた」

潮「逃げちゃダメだよ漣ちゃん」


食堂——


漣「それにしてもビックリだよねホント」

朧「何が? ああ、味噌汁に豆腐が入ってないってことかな」

漣「ちゃいますがな、ぼのやんだよぼのやん」

潮「え、でもお味噌汁にお豆腐は必要だよ?」

漣「話の肝そこじゃないから。 漣ちゃん的には豆腐の有無はどーでもいーし」

朧「どうでもよくはないよ、豆腐の良さを分からない人とは一緒にいられないかな」

漣「そーゆーどーでもいいじゃないよ! どーでもいーけど! 漣ちゃんをツッコミに回させんなし!」

朧「まあ冗談はそこそこにしておいて、曙のことでしょ? 別につつくようなこともないんじゃないかな」

漣「何言っとりますのん! あのぼのやんがだよ! あの子がデートだっちゅーてそのまま素直に従いますかいな!」

朧「だからだって。 素直に従うような性格じゃないから、提督もデートとは言わずに別の要件で呼び出して、って感じじゃないの? 昨日の様子からしてもこうだと思うけど」

漣「そんな気はするけどそれを気にしてちゃ始まんないぜ、それに双方に話を訊かにゃあとなー」

朧「はあ、野次馬根性も程々にしとかないと嫌われるよ」

漣「漣とぼのやんはズッ友だからだいじょぶ!」

朧「何それ」


潮「デート、デートって言ってるけど、提督の方はどうなんだろう?」

漣「んあ?ご主人?」

潮「曙ちゃんを連れ出したのは提督でしょう? その提督は曙ちゃんのことどう思ってるのかなって」

漣「そら氷解大作戦ーとか言ってるくらいだからそれなりの気はあると思うけど、どうなんだろね。 未だにイマイチ分かんねーぜあの人。 特定の誰かに色目向けてるような素振りがあるわけでもなしだし」

朧「まあ、この狭い閉鎖空間で何かしようものなら即行で知れ渡るし、内容によっては村八分待ったなしだよね。 女の敵は女とも言うし」

漣「n角関係で潰れた司令部もあるって噂もあるしねー。 まあ漣らのご主人様は誰でもバッチコイ絶倫大魔王とかじゃなくてよかったよかった」

潮「漣ちゃん、まだ朝だよ」

朧「夜なら言ってもいいってわけでもないからね?」


浦風「何やら賑わっとおね、お邪魔してもいい?」

朧「浦風、それと浜風。 珍しいね」

漣「浦風先生おはよーさーん。 かげやん達はどったの?」

浦風「なんや、課題がまだぎょうさんある言うて徹夜でやっとる最中なんよ。 日頃から口を酸っぱくして早よ終わらし、言うとるのにコレよ」

朧「漣も見習いなよ」

漣「それはまあ、またの機会に……」

潮「浜風さん、おはようございます」

浜風「おはようございます」

潮「…………」

浜風「…………」

浦風「…………」

朧「…………」

漣「駆逐艦娘の中でも屈指の胸部装甲を持つ3人が揃いおったわ……!」

朧「そこじゃないよね」


浜風「申し訳ありません、話を繋ぐというか、苦手でして」

朧「それはもう知ってるから平気だよ、悪気があるわけじゃないのも皆知ってるからね」

浦風「そうなんよねぇ、自分からグイグイ喋らんといけんって環境じゃないから浜風もずっとこの調子でのう」

浜風「面目ない、皆の好意というか優しさについ甘えてしまって……」

浦風「どうせなら漣ちゃんくらいに喋ってくれたら心配もいらんのじゃけど」

漣「おーう? 漣ちゃんのマシンガントークスキルは盛者必中、唯我点睛、焼肉定食の秘伝だぜ? それを学びたいってんならまず世界中に散らばる108人の煩悩の権化を揃えてからじゃにゃーと教えらんねえな?」

浦風「ほら、話を振っただけでこうよ?」

浜風「なるほど、焼肉定食……」

朧「コレを参考にするのは間違ってるってことは教えておく」

潮「四字熟語がめちゃくちゃだよ漣ちゃん」

漣「支離霧中ってね」


浜風「本当は、皆と会話が上手く交わせればと思うのですが、いざとなると話題も思い付きませんし、相手にとってつまらない話題かも、と思うと」

朧「うーん、眉間にシワ寄せて考えることでもないと思うんだけど」

浜風「う」

浦風「小難しく考えんでええよって言うてもこう、じゃからなぁ」

漣「漣も意識してるわけじゃないからにぃ、アドバイスはちっと難しいね」

浜風「そうですか……」

潮「うーん、話せる話題があればいいんですよね?」

浜風「え、まあ、端的に言えばそうなります」

潮「だったら、とっておきの話題がありますよ!」

漣「え、潮ちゃんにそんな十八番的な話題があったっけ? おっぱいでかい?」

潮「そんなのじゃないです! それに、今話していたことですよ!」

朧「今? それってまさか」

潮「曙ちゃんと提督がデートした話です!」


浦風「——あの曙ちゃんが、ねえ」

浜風「デート、ですか。 ですが、この話が一体私と何の関係が」

潮「話題ですよ」

浜風「話題?」

潮「つっけんどんで提督にすら一撃を入れるあの曙ちゃんが提督とデートしたという話に食い付かない人は、この司令部には多分いません。 言わばこの話題は会話を始めるためのスタートダッシュなんです」

潮「会話を始めてからは浜風さんの好きなように展開してもらっても構いません。 どう思ったとか、どう思うとか、これからどうなるんだろう、とか色々自由に引き出してください!」

浜風「どう思った、どう思う……なるほど! 素晴らしく参考になります!」

潮「もちろんこの話題以外にも、いつもと髪型が違うなあくらいでもいいんですよ? 会話のきっかけなんて人それぞれです」

浦風「へーえ、潮ちゃん詳しいんじゃねえ」

潮「えへへ、つい最近色んな人に訊いたことの総括の一部なんですけどね」

浜風「御教授ありがとうございます。 鬼に金棒とまでは行きませんが、釘バットくらいにはなれた、気がします!」

浦風「物騒な例えはやめとき、な?」

漣「ねー朧ちん、すっげーナチュラルに友達のあんまり言い触らされたくないであろう話を売られた光景を見てどう思う?」

朧「悪意のない善意が一番恐ろしいね」


陸奥「ふうん、デートねえ……」チラッ

長門「ん、なんだ?」

陸奥「別に? 貴方に女子力をお裾分けしてあげて欲しいなって思っただけ」

長門(女子力……?)


————
——


浦風「いやあ、それにしても驚きじゃねえ」

浜風「何度言えば気が済むのですか、それ」

浦風「そりゃあだって、あの曙ちゃんじゃけん、驚くのも無理はなかろ?」

浜風「まあ、クールな印象はあるけれど」

浜風「それよりも曙と言うと、浦風と決闘騒ぎまで起こしていたことの方がすぐに思い出せる」

浦風「ちょ、そげなこと思い出さんでいいやんね、いらんこと言わんの」

浜風「曙が提督のことをクソ提督と呼ぶのが気に食わないという口喧嘩からまさかあそこまで発展するとは思いも」

浦風「皆まで言わんでええわ! 早よ講義行きんさい!」

浜風「分かった、分かったから押さないの。 浦風もこの後の遠征、気を付けて」

浦風「まったくもう……そんにしてもデートかぁ。 隅に置けん奴じゃねぇ、ふふっ」


今日はここまで。今日でおまけ終わらすつもりだったのに遅筆が響く
明日も引き続き。 浜風sideからだけど浦風sideもあるんじゃよ
関係ないけど照月もでかいよね


グラーフはまだ出ないけど、E-5攻略中に嵐は出ましたから満足です、えへへ…
始める


浜風side・講義室——


<ワイワイガヤガヤ

浜風(潮から人と話すための話題を提供してもらえたのはいいけれど、話の切り出し方が分からない)

浜風(既に会話を始めている人達のところに行くのも、邪魔しては悪いし)

浜風(それに、講義は別の司令部と共同ですし見知った人でも別人という可能性も……まったく同じ顔でないにしても似た顔立ちをされると紛らわしいものです)

浜風(難しく考えることではないと言われたけれど、私にはハードルが——)

大井「ごめんなさい、隣、いいですか?」

浜風「わ」

大井「あら、驚かせてしまったかしら」

浜風「ああ、あの、いえ、どうぞ」

大井「ふふ、そんなにかしこまらなくていいですよ」


浜風「あの、何故私の隣に……」

大井「言うほどの理由なんてないですよ? 手頃な席がここだっただけですし」

浜風「そうですか」

浜風「…………」

大井「…………」

浜風(会話が途切れてしまった……)

浜風「…………」ジーーーッ

大井(なんかすっごい見られてる……)

浜風(この大井さんは私の知る大井さんだけども、何か普段と違うところは……)

浜風(いきなりあの話をするのは突拍子もないし、まずは何か牽制が出来れば)ジーーーッ

大井(言いたいことがあるならとっとと言ってくれた方が気が楽なんだけど……それとも隣に座られたのが気に食わなかったの?)

浜風「あ」

大井「え」

浜風「服、違いますね、その制服は改仕様の物では……」

大井「ああ、改二のだと寒いですから。 ほら、お腹出てるでしょ? それに今日は出撃任務もありませんからいいかなーって」

浜風「なるほど……」

浜風(我ながら上出来なのではないでしょうか、今のは。 この調子で畳み掛けよう)

大井(あれだけ凝視しといて言いたかったのはコレだけなのかしら)

浜風「時に、大井さん」

大井「はい? なんでしょう?」

浜風「デートをしたことはあるでしょうか?」

大井「……はい?」


大井「急に話が飛びましたね……」

浜風「いやその、そうではなくてその実は曙がかくかくしかじかということらしく」

大井「え、曙さんが? 嘘でしょ?」

浜風「信じ難いとは思いますが、友人である潮から聞いた話ですから信頼に足るかと」

大井「それでもちょっと……胡散臭いとまでは言わないけれど」

浜風「そこまでの話、ですか?」

大井「そりゃそうですよ、普段の彼女の提督への言動を見聞きしていればね」

大井「私の知る中では、『汚物にまみれて死ねヘドロゾウリムシ』と提督に言っていたのが堂々1位の悪態です」

浜風「むしろ提督が何をして曙にそれを言わせたのかが気にかかるところなんですが」

大井「まあ、最近はすっかり丸くなりましたけどね。 ドラム缶に詰め込んで沈めてやるって言ってたのが最新かしら?」

浜風「それもどうかと」


大井「そんなこんなで、彼女が提督とデートしたなんて到底想像も、信じることも、ね。 それくらいのレベルなんです」

浜風「本当の話だと思いますが……漣にそのデートの時であろう写真を見せてもらいましたし」

大井「彼女と提督の仲を考えると過程をいくつも飛び越えてますけどね。 一体何がどうしてそうなったのやら」

大井「と、そろそろ講義、始まりますよ。 お喋りはここまでにしときましょうか」

浜風「あ、はい。 そうですね」

浜風(浜風、やりました。 助言があったとはいえ独力で会話を繋ぐことに成功しました)

浜風(これも全て潮の、いえ、潮先生のお陰です。ありがとうございます)

大井(デート……デートかあ)


————
——


大井「チッ、今回もまた課題てんこ盛りにしてくれちゃって。 私達艦娘がそんな簡単に課題こなす時間作れるわけないってのに、どこの教師か教授か何か知らないけど少しは考えろっつーの」

浜風「大井さん、どうかしましたか?」

大井「はっ、いいえ! 別になんでもありませんよ! おほほ」

浜風「そうですか……? 私は他の講義がまだありますから、失礼します」

大井「ああ、はい! お疲れ様です」

浜風「ではまた」

浜風(この調子でどんどん行こう……!)

大井「ええ、また」

大井「……勉強熱心ねぇ。 にしてもあんな風に話をする人だったかな」

北上「よっほー大井っち、暇だから来たよー」

大井「北上さん! 迎えに来てくれたんですか?」

北上「いんや、訓練飽きたし暇潰しにブラついてただけ」

大井「ああんもう、北上さんったら♪」


大井「そうだ北上さん! 私達もデートしましょう!」

北上「おおう、えらく唐突だね? ってか、も、ってどゆこと?」

大井「何やら曙さんと提督がデートをするほどの仲になっているらしくて」

北上「うぇ、あの曙が? マジで?」

大井「大マジです、さあさ早くプランを建てに行きましょ」

北上「ついでに諸々の話を聞かせてもらおうかなー」

北上「でも私らの場合デートって言わなくない? 男女じゃないしこの近辺あんまり行くとこないしー」

大井「細かいことはいいんです! ほら善は急げです、2人には負けられませんよ!」

北上「どーゆー勝ち負けなんだかなあ」


足柄「」コソッ

足柄「提督と曙が? 本当に?」


甘味処「間宮」——


足柄「——とゆーわけよもー、先越されたぁー」グビー

那智「そう腐るな、あの2人はお似合いだと思うがな」

間宮「あのー」

足柄「似合う似合わないじゃないのぉー、私だっていちおー提督のこと狙ってたんだからー」

足柄「ビジュアルまあよし、職業安定、人柄も悪くはなしでぇ。 せっかく身近にいたそこそこ良条件の人だったのにー」グビー

那智「そうは言うがな足柄、貴様は提督に対してアプローチか何かはしたのか?」

足柄「してない……」

那智「だろう? そんな体たらくで愚痴を吐くのは2人に対して筋違いじゃないのか?」

足柄「わかってますぅー、わかってるんだけどー」グビー

間宮「あのー」

足柄「はぁ……逃した獲物は大きいにゃあ……」

那智「何、星の数だけ男はいるさ。 同じ星は無くとも次を探せばいいだけだ」

足柄「その次はいつ見つかるってえのよ」

那智「……いつか見つかるさ」

足柄「あーもう! ヤケ酒よヤケ酒ー! 飲まなきゃやってらんないわー!」グビー

間宮「あのー」

足柄「おかわり!!」

間宮「オレンジジュースをビールみたいに飲むの、やめてもらえません? ジョッキまで持ちこんで……」

那智「茶番の舞台にして申し訳ない」

足柄「おつまみー!」

那智「貴様もいい加減にしておけ」


那智「む、もう昼か。 どうせ食べるならまともな食事にしておけ」

足柄「どうせ行くなら鳳翔さんとこで朝までホンモノの酒浸りコースで……」

那智「寝言を言うな、これからまだ仕事もあるんだぞ」ズルズル

足柄「やーん、まだ飲み足りないのぉー!」

間宮「……酔っ払いの相手も大変そうね。 鳳翔さんは凄いわねぇ……」

電「あっ、間宮さんなのです」

間宮「あら、電ちゃん。 六駆の子達と阿武隈ちゃんに浦風ちゃんも。 遠征帰り?」

阿武隈「はい、南方海域の方に輸送任務で」

暁「まったく、しれーかんってばレディの扱いが雑なんだから! あんなにドラム缶持たせて……」

浦風「文句言わんの。 皆頑張ったけぇ、何か奢っちゃるき」

雷「ホント!? やったあ!」

響「Большое спасибо……じゃない、ありがとう」

暁「あ、暁はそんなんじゃなびかないけど、どうしてもと言うなら……」

電「浦風さん、ありがとうなのです!」

阿武隈「浦風ちゃんは相変わらず面倒見がいいよねぇ」

浦風「阿武隈さんがね」

阿武隈「え゛っ、アタシ!?」

暁「」チラッチラッ

響「」キラキラ

雷「」キラキラ

電「」キラキラ

阿武隈「……奢るケド」

浦風「もちろんウチにも、ね」

阿武隈「前言撤回しようかなぁ……」


今日はここまで。side分けた意味が絶無だけどまあいいか
土日の更新は期待しないでくだし。おそらく斧か大剣を振り回している可能性が高いので
嵐の台詞がカッコよくて濡れる 濡れた


猫が強い
始める


六駆「「「「いただきまーす!」」」」

阿武隈「あはは、嬉しそうで何より……」

浦風「阿武隈さんは食べんの?」

阿武隈「お昼ご飯まだだし、先に甘いもの食べるのもって感じで」

浦風「ふうん? 几帳面なんやねぇ」

阿武隈「浦風ちゃんは意外にルーズというか自由というかそんな感じだよね……バッチリ食べてるし」

浦風「んー、他者の厚意に甘えるべき時には甘えとかんとね」

阿武隈「甘え過ぎだと思う」

電「そういえばさっき、足柄さんが那智さんに引きずられていたのです」

暁「それ私も見たわ、何だったのかしらアレ」

響「ダメな大人の典型」

暁「そういうことじゃなくって」

雷「ねー間宮さん、何か知ってる?」

間宮「え? そうね、確か提督を取られたとかなんとかって」

雷「しれーかんを取られた? 誰に?」

響「そもそも司令官は誰のものとかではないけど」

電「しれーかんは皆のものなのです!」

響「まずものと言うのをやめよう」

間宮「確か……なんでも、曙ちゃんが提督とデートしただとかお似合いだとか、そんな話をしていたわね」

浦風「あらま、その話? ウチのおらん間に広まっとるんじゃねぇ」

浦風(漣ちゃんか、もしかしたら浜風かのう)


雷「浦風さん、何か知ってるの?」

浦風「知っとるっちゅうほどじゃないよ、ウチも漣ちゃんから同じ話聞いただけやけんね」

阿武隈「曙ちゃんがねぇ。 なんかちょっと意外かな、あの子はそういうの興味ないと思ってた」

浦風「大体皆同じ意見みたいやね、まあ普段の曙ちゃん見とうとそうなるわ」

阿武隈「口悪いもんねぇ、1日に何回悪態ついてるんだろ?」

電「えと、曙さんは優しい人、ですよ?」

阿武隈「ん?」

響「そうだね、この間図書室でたくさん本を借りて、部屋に持ち帰ろうとしたら代わりに持ってくれた」

雷「あ、私は宿題を教えてもらったことがあるわ!」

暁「……私はピーマンが食べれなくてどうしようってところに意地悪げに笑われて、ちゃんと食べろって言われた」

電「それはその、残すのは良くないのです」

暁「そのあとアイスくれたけど……」

阿武隈「へえ、また意外な一面が出て来たねー」

電「だから、曙さんがしれーかんとデートするのがおかしい、というのは……」

浦風「大丈夫よ電ちゃん、曙ちゃんが優しいのは皆知っとるけぇ」

電「本当ですか?」

浦風「けどなぁ、あくまで優しいのは皆には、なんよ。 提督に対しては……どう思う?」

電「しれーかんに」

響「対して……?」

暁「あ、そう言えばこの間……」

ホワンホワンホワーン

————————

曙「フンッ!」ドスッ

提督「おふっ!」

曙「ったく、十数回やられといてまだ懲りてないようだから教えといたげる」

曙「女ってのは気安く頭を触られたくないもんなのよ、知恵遅れで数少ない脳細胞にそこんとこ刻み込んどきなさい、このクソ提督」

提督「ぐ……いい、拳だった……ぜ、がくっ」

曙「馬鹿じゃないの」

暁(ば、ばいおれんすだわ……!)ノゾキミー

————————


暁「——なんてことがちょっと前に」

響「Это ...」

電「そ、それは……」

雷「あっ、それなら私もね——」

ホワンホワンホワーン

————————

曙「そこぉっ!」バシーン

提督「やったか!?」

曙「ちっ、逃げられたわ!」

提督「奴は絶対生きて帰すな、奴が存在している限り俺達に安息はない……!」

曙「まあ私は部屋に帰ればいいんだけどさ」

提督「そんな殺生な!」

曙「てゆーかなんで私が蚊退治に付き合わされてんのよ、秘書にやらせなさいよ秘書に」

提督「霧島は今近場のスーパーに蚊取り線香買いに行ってもらってるから……丁度来てくれて助かったぜあけぼのちゃんや」

曙「来なきゃ良かった……あ」

提督「ん?」

曙「……動かないでよ」ジリジリ

提督「え、何、何?」

曙「動かないで、動くな……ジッとしてろ……」ジリジリ

提督「あのっ、まだそんな俺気持ちの整理がまだっ」

曙「動くなぁっ!!」ビッターン

提督「ありがとうございますっ!?」バターン

曙「ふー、アンタの顔に止まってくれて助かったわ、蚊」

提督「」チーン

雷(かっ、家庭内暴力……!?)イカズチハミテイタ

————————


雷「——という、ソーゼツな現場に遭遇したわ……夏の頃の出来事よ」

響「それは微妙に違う気がするけれど」

雷「そお?」

阿武隈「提督に対してはとことん冷たいというか、優しさを見せてないよね……」

浦風「まあ、そんな感じじゃけぇ、曙ちゃんが提督とデートしたー言うんがね、皆びっくりしとるんよ」

電「そうですか……」

暁「デートするっていうのには憧れるけど、暴力はいただけないわね! レディらしくないわ!」

響「2人の挙げた例が悪かっただけな気もする」

電「でも、どうしてしれーかんにだけそんなに冷たいんでしょうか? 皆には優しいのに……」

浦風「うーん、ややこしゅうこと言うけど、かつての艦の曙の艦娘は多少違いはあっても皆おんなじように提督というか、指令を出すような人が気に食わんのじゃと。 それであげな風になるーて漣ちゃんが言うとったよ」

響「持って生まれた性質、か。 曙自身がそう思ってなくても曙としてそう思うようになっているのかな」

暁「……響の言っていることがよく分からないわ」


筆のノリが悪いので一旦ここまで
早ければまた夜に


今週の更新は絶望的という報告。狩人業は関係ないはずなのです
もし更新するなら金土に…まとまった時間が欲しい


雷「えーっと、曙ちゃんが曙ちゃんだから曙ちゃんは曙ちゃんなんだけど本当の曙ちゃんはそうじゃないってこと?」

暁「曙曙連呼されると訳分かんないわ!」

電「曙さんは曙さんですよ?」

雷「そうじゃなくってね?」

響「そう言えば曙と暁という単語は意味合いとしては大体同じだと辞書か何かで見たことがある」

暁「つまり曙は暁で暁は曙だったの……!?」

雷「自分から訳分かんなくしてどうするのよ」

電「曙さんは暁ちゃんだったんですか?」

響「если、暁はこれから司令官のことをクソ提督と呼ばなくては」

暁「突然そんなこと言ったら怒られちゃうじゃない!」

響「普段から曙によってカラテ殺法を受けてる司令官だからきっと許される、それに暁は曙だから」

暁「そうなのかな……暁が曙なら平気なの?」

阿武隈「暁ちゃん、目を覚まして」

浦風「見事に話が脱線したねぇ、キッカケ作ったんはウチやけど」

阿武隈「さ、皆早く食べないと食堂閉まっちゃうよ! 流石にお昼ご飯抜きは嫌でしょ?」

響「もう食べ終わっているから平気」

電「はわわ、すっかり忘れていたのです」

雷「急がなきゃ……って暁?」

暁「暁は曙で曙は暁で暁は曙で曙は暁で」ブツブツ

浦風「しゃんとしぃな」ワキバラツカミー

暁「うぃひぃい!?」ガタタッ


演習場・昼過ぎ——


暁「——どお!? これがレディの実力なんだから!」ドヤァ

電「えっと、主砲を20発撃って15発が仮装標的に命中だから、命中率70%を超えているのです! 凄いです!」

暁「へへーん、レディだから当然よ!」

響「相手は単騎でかつ動きもしない、反撃もない、暁自身も静止して安定した砲撃が可能、дальше、天候による影響も無しなのだから暁の練度も考えるとそれくらい出来ないと」

暁「い、いいでしょ別に! 練習で上手くいかないと実戦がダメになるんだから!」

響「それはそうだけど、上には上がいることを忘れてはいけないよ」

暁「うう……」

電「響ちゃんは暁ちゃんよりも凄い人を知っているのですか?」

響「話を聞いただけなのは浦風や叢雲、この目で見たのは曙と時雨かな」

電「浦風さんが凄いのは分かるのです、午前の遠征の時に見ましたから」

暁「1人でエリートクラスの駆逐艦を何匹も追っ払ってたわね……暁だってドラム缶ばかり持たされていなければ出来たのに」

響「叢雲なんだけど、少し前に彼女のいる艦隊が遠征帰りに敵艦隊に出くわしてしまったらしい。 しかもその中にはフラグシップクラスの戦艦ル級もいたとか」

暁「フラッ……!?」

響「正確な証言はないけど。 当時は悪天候で視界も悪く同じ場にいた睦月、如月、天龍は動揺していたらしいから」

響「全員で馬鹿正直に逃げたところで逃げ切れないと感じた叢雲は轟沈覚悟で囮になって3人を逃したそうだよ」

電「そんな……」

暁「あ、でも今普通に生きてるわよね」

響「まあその通りだけど。 天龍達が帰還して1時間ほどで中破しつつも帰ってきたらしい」

暁「……中破?」

響「中破」

暁「りーありー?」

響「действительно」

暁「……なんて?」

響「ホントだよ。 叢雲本人から聞いた訳ではないけども」


響「叢雲に関しては、当人がわざわざ語る程のことはないって言っていたから真偽も分からないけれど」

暁「でも、敵の1艦隊を相手にしてどうやって中破止まりで帰ってこれたんだろう……」

電「教えてくれないのなら知りようがないですね……」

響「残る曙と時雨だけど、先々週に丁度ここで私が1人で訓練の間の小休止をしていた時に2人が仮想標的を持ってやって来たんだ」

電「2人で一緒に訓練、だったのかな?」

響「いや、別の方向から来ていたから単にバッティングしただけだと思う」

響「と言っても、演習場は広いしただ訓練するだけなら何の問題もないはずなのだけど、2人とも見つめ合ったまま動かなくて。 その後どうなったと思う?」

暁「にらめっこでもしていたの?」

電「きっと無言で譲り合いをしていたんですよ」

響「2人とも仮想標的をその辺に投げ捨て、海上に出てそのまま模擬戦を始めたんだ」


暁「待って、2人とも偶然ここにやって来たんでしょ?」

響「そうだよ」

暁「で、ここに来てから一言も喋ってなかったんでしょ?」

響「顔を合わせて、『あ』くらいなら言っていたと思うけど」

電「姉妹艦でもないのに……以心伝心なのです」

響「2人の練度はこの司令部に所属する駆逐艦の中でもトップクラスだからね、トップ同士で何か通じ合ったのかもしれない。 仮想標的を相手にするよりよっぽどいいのが目の前にいる、と言った具合に」

暁「でも、2人で模擬戦したってだけでしょ? 別にそんな凄い話じゃ」

響「まだ話の途中だよ、暁。 ただの模擬戦なら私も気に留めなかったろう」

響「戦艦同士の砲撃戦のような派手さは無かったし、実際の戦闘に活かせるかは難色があったけれど凄いものだった」

響「近付けば取っ組み合いにも見紛うインファイト染みた射撃戦、離れれば相手の先の先まで読んだ偏差射撃の雨霰の応酬、それでも模擬弾で染色されることのない互いの衣服。 見ていた私の息が止まる程目まぐるしい戦いだった」

電「聞いているだけで凄そうなのです……」

暁「話だけじゃイマイチだけど……実際に見ていた響がちょっとだけ羨ましいわ」

響「ビデオカメラがあったら間違いなく録画していただろうね、勿体無いことをした」

響「で、あまりにも濃密だった僅か数分の戦闘は互いに主砲を突き付ける形で終了したよ。 それに、最後まで命中弾はなかったのだから驚きだ」

暁「え? 1発も当ててないの? 2人とも?」

響「当てていないと言うより、全て躱されたと言うのが正しいだろうね。こと戦闘に関して司令官は勝つよりも無事であるようにと言っているから、2人ともそれに則っていたのだと思う」

電「それでも、全弾回避なんて出来るんでしょうか……?」

響「確かにこの目で見たけれど、今でも夢だったんじゃないかと思うことはあるよ」


響「ま、そんな訳で上には上がいるという話。 暁には彼女達と並べるくらいには頑張ってもらおう」

暁「ちょ、そんなのハードルが高過ぎるわよ!」

響「諦めたらそこで試合終了だという偉人の名言があるよ、漣から聞いた」

暁「そんなこと言ったってえ! 大体響だって今は私達と同じ制服着てるけどホントは」

響「そう言えば雷は? 一緒に演習場に来ていたはずだけど」

暁「無視するなー!」

電「えと、雷ちゃんはあそこで座ったまま……」

雷「しれーかんが……うん、いやでも……」ブツブツ

電「ずっと、何かブツブツ言っているのです」

響「昼食の途中から何かに気付いたかのように物思いにふけっていたけれど、まだ続いていたんだ」

暁「流石にずっとあんなんだと怪しいわよね……と言うか来てから何もしてないし、ここはレディとしてバシッと言ってやるわ!」

電「暁ちゃんはこんな時だけは頼もしいのです!」

響「だけ、は余計だと思う」

暁「雷、さっきからどーしたのよ! ずっとブツブツブツブツ言っちゃって!」

雷「へ!? あ、あれ? ああ、ゴメンね、ちょっと考え事が弾んじゃって」

暁「ご飯の時からずっとよね、あの時も生返事しかしなかったし」

響「考え事? 何か悩んでいるなら相談に乗ろう」

電「4人寄れば六駆の知恵、なのです!」

雷「いや、そんな大したことじゃないのよ? ただ……」

響「ただ?」

雷「しれーかんと曙ちゃんが結婚したらしれーかんの世話を焼けなくなるから、どーしたらいいのかなーって」

響「」

暁「」

電「」

雷「……あれ? 変なこと言った?」


雷「だって曙ちゃんはしれーかんとデートしたんでしょ? そしたらいずれは結婚してもおかしくないし、だけどそーなったらしれーかんの世話を私が焼くと2人の間を邪魔することになっちゃうし、だけどしれーかんはほっとけないしで……何かいい方法ないかなあって」

暁「」

響「」

電「」

雷「ねー、みんなー、生きてるー?」

響「Я не знаю то, что Вы говорите」

電「雷ちゃんが何を言っているのか分からないのです……」

雷「響の言うことのが分からないけど!?」

響「大体同じことを言ったよ」

電「雷ちゃん、色々飛躍し過ぎじゃないですか……? デートしたからって結婚するとは……」

雷「何言ってんのよ! もはや時間の問題よ! 秒読みよ! その前に何か良い案が浮かべば良いんだけどー!」

響「仮に2人が結婚したとして、間に割って入るのは野暮だと思う」.

雷「分かってるわよー! そうならない方法がないか考えてるとこなの!」

響(ないと思う)

暁「」

電「暁ちゃん、目を覚ますのです」チョップ

暁「はっ!? 雷のあまりの意味不明さに圧縮された時間を過ごしていたわ……」

雷「意味不明って何よ!」

暁「だけどお陰で名案が浮かんだわ! 感謝しなさい雷!」

雷「えっ、ホント!?」

暁「2人の養子になればいいのよっ!!!」

雷「」

響「」

電「」


暁「夫婦となった2人の間に入ってもおかしくないポジションの存在、それは即ち子供よ! なら、2人の養子になれば極めて自然にこのポジションに収まることが出来るわ!」

響「……それはどうかと」

電「暁ちゃん、どこかに頭のネジ忘れてきちゃったんですか?」

暁「どーゆー意味よ! 失礼しちゃう!」

雷「つまり、しれーかんが私のお父さんになるってこと?」

響「雷、真面目に考えなくていい」

雷「うーん、でも私お父さんもお母さんもいるんだけど大丈夫なのかなあ」

響「考えなくていいから」

電「せめて他の案を考えよう……?」

暁「名案だと思ったのに」プンムクレ


長門「おや、賑やかだな。 訓練していた訳ではなさそうだが」

暁「あ、長門さんだ」

長門「む。 雷、どうかしたのか? 何やら浮かない顔をしているが」

雷「んー、ねえ長門さん、しれーかんが結婚したら私はどーやってしれーかんのお世話したらいいのかな」

長門「……どういう意味だ?」

響「曙が司令官とデートをしたらしい。 で、その話を聞いてから雷はこの調子で」

長門「ああ、その話か。 それを聞いて金剛が気を失ったとか言っていたな……夕方には目覚めるだろうが」

電「金剛さんは分かりやすいのです」

雷「ねえ長門さんは何かいい方法思いつかない?」

長門「そうは言われてもな……そういったことは不得手なものでな、申し訳ない」

雷「そっかあ……」

響「雷のこれは気の迷いみたいなものだから、あまり気にしなくて構わない」

長門「同じく悩みを持つ者同士として、何かしら解決の糸口を示せれば良かったのだがな」


電「長門さんにも悩み事があるのです?」

暁「意外ね、大きなことでしか悩まないと思ってた。 明日地球が爆発するとか」

長門「はは、私にだって些細な悩みはあるさ。 陸奥に女子力を磨いたらどうだと言われたはいいが、どうすればいいかまるで見当がつかなかったりな」

暁「女子力? なんで?」

長門「女らしさとも言うか、陸奥の言う限りでは私にはそれが欠けているようでな、曙にお裾分けして貰ったらどうだとまで言われたよ」

響「曙よりも、浦風や那珂とかの方が参考になると思うけども」

長門「それほどということなのだろうな、私は。 しかし幼い頃からそう言ったことは性分に合わなくてな……自分に見合わない範囲まで手を伸ばせば、女子力も磨きようがあるのだろうが、そうなっては私ではなくなるような気さえしてな」

電「ビッグセブンも大変なのですね」

暁「らしくないと言えば曙がデートしたって言うのもらしくないわよねー」

雷「それは皆の思うところよね、デートなんて最上位の女子力修行みたいなものだし」

長門「そういうものなのか? 男女で逢い引きする程度の事だと思っていたが、奥が深いのか……?」

暁「逢い引きて」


響「皆、そろそろ午後の遠征の時間だ。 小休止して訓練の疲れを抜いてから行こうと思っていたけど、お喋りが過ぎたね。 このまま向かって浦風と阿武隈を待とう」

暁「え、もうそんな時間?」

電「時間が経つのは早いのです、あわわ」

雷(そう言えば私何にもしてないわね、まあいいや)

響「雷は遠征から戻ったら私と一緒に訓練しよう、何もしていないのは良くないから」

雷「う、やっぱりそうなるのね」

長門「4人とも気を付けて行ってこい。 慢心はするんじゃないぞ?

雷「分かってまーす」

響「了解」

暁「レディの辞書に慢心なんて言葉はないわ!」

電「そう言えば長門さんはどうしてここに?」

長門「私か? 悩み事とかで頭の中が溢れた時はよく訓練して頭の中を空にするんだ。 そうして終わった後に空になった頭で整理しながら考えるという訳さ」

電「なるほど、そうなんですか」

<イナヅマー、オイテクワヨー

電「はわわ、それじゃ行ってきますです」ペコリ

長門「ああ、行っていきな」


一旦ここまで
グラーフなんていなかったんだ


スレ建てて1ヶ月経つことにびっくり
ステビア海見ながら始める


長門「……さて、始めるとするか。 持ってきたコイツの電源を入れて、距離は……100mくらいでいいか、行ってこい」

仮想標的「イッテキマース」ブロロロロ

長門「……女子力、修行、曙、デート、曙はともかく、耳に入り慣れていない単語に押し寄せて来られるのはどうにも参ってしまうな」

長門「ふ、そんな時こそ精密射撃で心を空に、静かにしようなどと言い聞かせてみようか」

天龍「へえ、天下のビッグセブン様も特訓とかするんだな」

長門「む、天龍……か?」

天龍「んだよ? そんなジロジロ見てよ。 あ、嫌味って訳じゃねえからな?」

長門「いや、いつも浮いているアレが無いと雰囲気が違うんだな、と」

天龍「あー、今日は休みだからな、俺」


天龍「それよりも何ブツブツ言ってたんだ?」

長門「ああ、大したことでは無い、曙が修行をしたと雷が」

天龍「は? 修行?」

長門「いや、それは別にいい。 悪いが天龍、少し付き合え」

天龍「いや付き合えって、俺今日休み……」

長門「どうせなら動く的の方がいいからな。 それに、休みだからと腑抜けているその根性を叩き直せて一石二鳥だ」

天龍「いいじゃねーか別に! 休みは休みだぞ! すごろくだって1回休みは1回休みじゃねーか!」

長門「有無は言わせんよ、さあ、艤装を装備してこい! 私の修行に一役買って貰おうか!」

天龍「チクショウ! 声なんてかけなきゃよかった!」


仮想標的<ホウチプレイッテヒドクネ


演習場・夕方——


長門「——む、日が暮れてきたな。 熱が入るとどうにも時間を忘れてしまう」

天龍「そ、そうだな……どうせならあと1時間は早く気付いてくれりゃあ良かったんだが」

長門「今日はこのくらいにしておくか。 天龍、礼を言おう。 休みを潰した詫びとして何か贈ろうか」

天龍「だったら規定日数とは別に自由に使える有給2日分くらいくれ。 そんくらいは撃たれた気がするぜ、俺」

長門「はは、確かに全身桃色にされた労力とは釣り合っているかもな。 今度提督に打診してみよう」

天龍「頼むぜマジで。 ペイント弾でも直撃すっと痛ぇんだからよ」

長門「善処するさ。 ではな」

長門(女子力の修行……修行したことで女子力とやらが身に着いたのだろうか?)

長門(いや、私とて女だ、私が私らしくあるというだけで女子力の修行になるのではないだろうか?)

長門(……陸奥に相談してみるか、アイツの方がその方面は強いからな)スタスタ

天龍「……なんかエラく難しい顔して行ったな。 強え奴は何考えてんのかわっかんねえな」

木曾「それは、お前は強くないって言っているようなものだがいいのかい?」

天龍「うおお!? いきなり声かけんなよ!ってかいたのかよ! ってかいつからいた!?」

木曾「お前の元に来たのはたった今だが、長門仕込みの猛特訓は始めから見ていたぞ」

天龍「だったら止めろよ! 止めてくれよ! いっそお前も巻き込まれろよ!」

木曾「滅多にない機会だ、邪魔することはないだろうと思ってな」

天龍「お前、俺のこのナリを見ても言えんのかよ」

木曾「……ショッキングな感じでオシャレじゃないか、似合ってるぞ、ぷくふふっ」

天龍「笑ってんじゃねーか」


天龍「ったくよ、戦艦の相手が軽巡に務まるかっつーの、戦艦は戦艦と殴り合ってりゃいいってのに」

木曾「実戦だとそうもいかないだろう、落とせる敵から落とすべきだしな」

天龍「それは分かるけどよ……」

木曾「それはそれとして珍しいよな、長門が演習とか、そういうことをする姿は久し振りに見た気がする」

天龍「あー確かに、戦闘に関しちゃ鍛錬とかしなくてもいいレベルだと思ってたぜ。 長門は修行だとか言ってたけどな」

木曾「ご時世に似合わない妙な言い回しをするもんだな?」

天龍「いや、なんでも確か……曙が修行したとか雷がなんとか、とか言ってたな?」

木曾「それは……曙と雷が2人で修行をした、ということか? だが……」

天龍「ああ、雷にゃ悪いがちっと実力が釣り合ってねえな。 俺と長門もそうだけどよ……いや、軽巡と戦艦を比べんなっつー話だよ」

木曾「曙が修行したという話を雷から聞いた、ということかもな。 それなら合点が行く」

天龍「なるほどな、それなら納得だ」


天龍「んー、でもまだ足りねえな」

木曾「何がだ?」

天龍「いや、曙がそういうことをしてる姿を見たことがねえなって思ってよ? もし昨日今日の話だとしてもアイツは今週の秘書艦だろ? してる暇があるとも思えねえしなって」

木曾「ウチの司令部は随分ルーズな方だが、それもそうだな……あ」

天龍「お? 何かあるのか?」

木曾「そう言えば、昼飯を食ってる時に曙と提督がどうのとかいう話が流れていたな」

天龍「そうだったか? 飯ン時は食うことに集中してっからなあ」

木曾「足柄が何か喚いてたからな、嫌でも耳に……というか目に入ったよ」

木曾「で、だ。 もしこの2つが繋がっているとしたら曙は提督と修行をした、ということになる」

天龍「やー、それも苦しくないか? 艦娘とフツーの人間がする修行ってなんだよ? 武器を装備してなきゃ俺らもただの人間だけどよ」

木曾「天龍! まさしくそれだ!」

天龍「おおう、なんだ急に」

木曾「装備がなければ艦娘とてただの人、つまりか弱い女なんだ。 まあ、中には腕っ節に自信のある奴もいそうだが……」

天龍「長門とか腹筋凄えもんな……」

木曾「対して曙はどうだ、今は確か14か15歳とかだったな。 そんなのがもし装備もない時に暴漢にでも襲われたらどうなるか言うまでもないだろう?」

天龍「アイツなら容赦無く金的とかやりかねないけどな」

木曾「それは言うな。 でな、提督は曙のことを大層気に入っているだろう? 何かと構っているからな」

天龍「その都度痛い目見てるのもよく見るぜ」

木曾「それも言うな。まあ、それでも心配なんだろう。 アイツはクールで気丈で放っといても生きていけそう、そして提督に対して口が悪いと来ているがな」

木曾「それで多分……修行というか、稽古をつけてやってるんだろう。 おそらく対人格闘とかのをな」

天龍「お節介というか人がいいというか、なあ。 3年か4年かの付き合いらしいけどよく見限らねえよな。 ずっと一緒にいてあの態度とかさ、普通ならもう相手にされねえだろ」

木曾「提督が寛容だってことにしておこうか。 一旦話は置いておいて、お前のピンクいのをなんとかしようか。 そのままじゃ飯も食えねえだろ」

天龍「すっげえ普通に話してたから忘れてた。 風呂で流して、服は洗濯、艤装のは……明日の手入れン時に落とすか」

木曾「今日やっとけ。 飯の後でなら手伝ってやるからよ」

天龍「マジで? 恩にきるぜ」

木曾「長門の猛特訓に付き合わされたご褒美ってことでな」


時雨「……曙が稽古?」コソッ


食堂・夜——


時雨「——という話を聞いたんだけど、どうなんだろう」モグモグ

白露「信憑性は薄いと思うよ? どっちかと言うとデートしたって話の方が広まってるし」モグモグ

時雨「そうなんだけど、あの2人が嘘をつくとも嘘に騙されるとも思えないし」

白露「どっかでねじ曲がったりしてるのかもねー、所詮噂話だもん。 曙と提督が結婚したなんてのを聞いた時はサイダー吹き出しそうになったよ」

時雨「当人達がいれば直接訊けるんだけど……当然この場にはいないし、直接訊きに行くという切り込み隊長はいないみたいだね」

白露「曙の逆鱗にゃー触れたくないからねぇ。 それなのに話に尾ビレ背ビレに胸ビレがどんどんついてくという」

時雨「正直なところ、デートに行ったこと自体が間違いなんじゃないかと思うよ」

白露「曙だもんねぇ」


白露「けど、デートかぁ。 ちょっと憧れるなー」

時雨「え? もしかして提督のことが好きなの?」

白露「違う違う、デートしたっていうのがいいなぁってだけだよ。 ほらウチらってさ、年齢的には中学生とか高校生とかそんなもんでしょ? 戦艦や空母、重巡の人らはもっと上だろうけどさ」

時雨「まあ、そうだね」

白露「艦娘やってなかったら学生なんだよねー、そんでさぁ、隣のクラスの気になってたカレに告白とかされちゃってさぁ、放課後デートとか? 告白記念日とか? あわよくば初チッスとか? いやーいいよねぇ」

時雨「恋に恋する女の子って表現がピッタリだね」

白露「どーゆー意味よ」

時雨「他意は無いよ」

白露「むう。 でもさーあ? ウチらってそーゆー青春をぶん投げてるよね、軽く。 男っ気無いし、ここ。 そりゃあ艦娘なりたくてなったのはこっちだけど?」

時雨「提督を代表として、一般の事務員の人とか整備員の人くらいだよね、男の人。 その事務員や整備員も女の人が多いし、守衛さんも女性だし病棟の医師も看護師も皆女性だ」

白露「同年代の男の子いないんだもんなー! しかも数少ない男性陣の中で一番若いのが提督だよテ・イ・ト・ク!」

時雨「20代だったかな、確か。 詳しくは知らないけど、あの若さで階級も高かったはずだし結構凄いと思うけど」

白露「そーじゃないのだよ時雨くん、あの人は曙にベッタリだからノーチャンなんです」

時雨「え、そうかな。 曙に限らず皆のこと褒めちぎってるよ」

白露「そーじゃないんだよ時雨先生……! 事あるごとに雑用を曙に任せたり、何してんの?って訊いたらちょっと考え事してたってこれ大体曙のことだろうし、水雷戦隊では大体曙が旗艦任されてるしその他諸々、これでどうベッタリじゃないってのよー!」

時雨「落ち着いてよ白露、明らかに思い過ごしも混ざってるし」

白露「てゆーか褒めちぎってるってどゆこと?」

時雨「え? ああ、提督って唐突に目の前に誰がいようと誰かのこと褒めたりするから。 僕は直接僕に言われちゃったけど……髪が綺麗だって、へへ」

白露「え、何それ、私聞いたことない、私のは? 私のは誰が聞いたっての!?」

時雨「白露のも僕が聞いたよ、褒め言葉か分からないけれど」

白露「なんて!?」

時雨「がっつくね……確か、幼馴染だったら放っとかなかったかも、とか」

白露「だったら気合いか怪しい薬かで何か若返ろうよ……!」

時雨「……白露、好きなの?」

白露「だからノーチャンなんだって……!」


白露「……いいもん、明石さんにタイム風呂敷作ってもらうから」

時雨「流石に現代技術じゃ作れないから」

白露「じゃあアポトキシン」

時雨「あれ本当は毒薬だからね?」

白露「赤と青の年齢詐称薬とか……」

時雨「魔法がこの世にあるとでも?」

白露「八方塞がりか……」

時雨「どうして奇策だけで攻めようとするのかな」

白露「いいもん、将来なんかの社長にでもなってギャフンと言わせてやるんだから」

時雨「気が長いのにふんわりとした話だね」


江風「おいーっす姉貴達ー。 遅れ馳せながらおゆはんご一緒してもいいかい? ……って殆ど食べ終わってんね」

時雨「やあ江風。 それに川内さんも一緒なんだ」

川内「いやー、2人で夜戦の特訓してたら危うく晩御飯すっぽかすとこだったよ」

江風「で、白露の姉貴はどうして眉間にしわ子になってるんだい?」

白露「……ふ、いつか江風にも分かるよ、甘酸っぱい青春がね……」

江風「何訳わかんないこと言ってんだ?」

時雨「さっき自分で青春をぶん投げてるって言ってなかったっけ」

白露「一般的な青春はぶん投げてるけど、投げた後に残った数少ない青春は謳歌してもいいの!」

川内「青春かあ、若いねえ……」

時雨「川内さん、それは20歳超えてない人が言う台詞じゃないよ」

川内「いいのいいの、細かいことは気にしないのが若さの秘訣なんだから」

時雨「早寝早起きもね」

川内「うぐ」

江風「こりゃ時雨の姉貴の方が正しいかね」


江風「そう言えばさ、なんか騒がしくないかい? や、騒がしいのはいつものことだけどさ」

川内「あー、話をするにしてもなんか似たような単語ばかり聞こえてるような、ね」

白露「おや? 2人とも何も知らないの?」

川内「今日はずっとご飯食べたらすぐ特訓ーなんてしてたからね、江風以外と喋る機会が無くって」

江風「薄ら暗い部屋で神経衰弱やったりとかなー、これがまた判別し辛いんだよ」

白露「特訓になるのそれ? てか目ぇ悪くしそう……」

時雨「一応2人にも訊いておこうかな、曙が提督に何かしらの稽古をつけてもらったって話、どう思う?」

江風「なんだそりゃ。 曙ってあの取っつきにくそーな人だろ?」

川内「皆が皆、曙曙って言ってるような気がしてたけど、それと関係あるの? と言うかありそうだよね」

時雨「まあね。 でもこの意見は明らかに少数派みたいだから、単にどう思うかだけで答えてくれたらそれでいいよ」

江風「うぅん、何の稽古かってーのにもよると思うが、あり得ないんじゃないか? 公私混同するかは分からねぇけど、お前と個人稽古とかお断りだーとかってやりそうだし」

白露「でもデートしたって話なんだよねぇ」

江風「は?」

時雨「はいはい、こっちの話」


川内「いや、江風はあり得ないと言ったけど逆だね、あり得る話だよ」

白露「お?」

江風「そうかねぇ? なんかホラ、クソテートクとかあの人言ってるし、無いんじゃないの?」

川内「好き嫌いを超えたレベルの革新性を持った稽古なんだよ、きっと! 提督はただの人間だからさ、だからこそ私達とは違う目線で物事を見ることが出来てそこで何か気付いたに違いない!」

江風「な、なるほど、そういうのもあり得るか」

白露「なんか自分が納得するようにこじつけてない?」

時雨「こうして噂はねじ曲がって行くんだね」

川内「よぉし! こうしちゃいらんない、さっさと食べて特訓の続きするよ!」

江風「合点承知ィ!」

白露「直さなくていいの、これ?」

時雨「そこまで面倒を見なきゃいけないこともないし、いいんじゃないかな? どうせ明日には気付くだろうし」

白露「そだねー、それに回られて困る話でもないし。 別にいっか」


川内型の部屋(暗室)・夜中——


川内「…………」

江風「…………」スッ

川内「…………」

江風「…………」ポイッ

<チャリーン

川内「そこォ!」シュタッ

江風「流石の夜目だな姐さん、いや、夜耳か? 音だけで硬貨を見つけるたぁな。 これで何連続正解だ?」

川内「これで7回目、夜戦では目だけを頼りにしちゃダメだからね。 探照灯や照明弾はあるに越したことはないけど……最後に頼るのは自分自身だから」

江風「頼りになるねぇ、ところでそろそろ変わって欲しいんだけど」

川内「後もうちょっとだけ! まだ足りない気がするんだ、曙がしたっていう稽古やら特訓やらってのには」

江風「でもさ、何をしたのかってのは具体的に分からないんじゃないのかい? やっこさんが何をしたのか分からないってのに特訓しても見当違いな方向に向かってちゃあな」

川内「いや、大体見当は付いてるんだ、というかほぼ間違いない、夜戦の特訓だよ」

江風「ほお? そりゃまたどうしてさ?」

川内「提督が力添え出来ることなんて限られてるからね、輸送作戦や砲雷撃戦なんかは教えられることなんてないでしょ、多分」

川内「でも夜戦のことなら別だよ、今の私達みたいにこうして部屋を暗くしてさ、暗中から提督が襲いかかってくるんだ! 曙ならそれに対してどうすると思う?」

江風「え? えーと、反撃しそう、かなあ」

川内「だよね、提督はきっと身を張ってまで曙の特訓に付き合ってるんだよ。 もし江風に同じこと頼んだらどう? 嫌でしょ?」

江風「あー、殴られるのは勘弁さね」

川内「当然の意見よね。 まあこれは憶測でしかないんだけどさ、夜目と即座に反撃出来る反射神経を鍛えられるいい特訓だと思うんだ。 擬似的な夜戦みたいなものだし?」

江風「武器は己の拳か脚のみだけどな」

川内「……そう言えば最近夜戦してないなあ」

江風「あ、騒ぐのはやめてくれ。 もう散々騒いでるし、また叢雲の姐さんがやって来るぜ?」

川内「曙ばっかりずるいー! 私も提督の夜戦したーい!」

江風「ダメだこりゃ」


部屋の前——


<ヤーセーンー! テートクトヤーセーンー! アケボノダケズールーイー!

<アネサンシズカニシテクレッテホントニ! アネゴニドヤサレンノコワインダカラ!

<ワタシモマゼロー! ヤセンシタイー!

叢雲「…………」←夜川内好きバカうるさいって言いに来た

瑞鶴「…………」←かわうち静かにしろって言いに来た

叢雲「…………司令官と夜戦?」

瑞鶴「曙が? 夜戦?」

叢雲「……いやでも馬鹿の言うことだし」

瑞鶴「だよね? きっと額面通りの意味だよね?」

叢雲「……でもデートはしてるんでしょ」

瑞鶴「…………」

叢雲「…………」

那珂「みーんな、大好きーって、何してんの、叢雲ちゃんと瑞鶴さん? トマトみたいな顔色しちゃって」

瑞鶴「へぅっ!? いやいや違う違う違うんだから!」

叢雲「そそっそうめん! じゃない! 何もそうじゃないんだから!」

那珂「んー? あ、また川内ちゃん騒いでる。 いつもゴメンねー、ちょっと言ってくるから」ドアガチャ

<センダイチャンミンナニメーワクカケチャダメッテイッテルデショー!

<マサカノナカチャンアネサンガキタ

<ダッテー! ワタシモヤセンー!

<ダッテモヘチマモナイヨ! ジブンホンイダトファンナンテフエナインダカラ!

叢雲「……帰ろっか」

瑞鶴「そだね、明日にでも当人に訊けばいいし」

叢雲「訊くんだ……いや、気にならなくはないけど……」

瑞鶴「一応真相は最後まで、ね? それじゃおやすみ」

叢雲「……ええ、おやすみ。 また明日ね」

<ヤーセーンー! ヤーセーンー!

叢雲「…………」ドアガチャ

叢雲「黙らないと尻に酸素魚雷ぶちこむわよ!」


おまけのおわり


今日はここまで。 おまけのくせに生意気な長さ
次からやっとこ本筋に戻ります。 更新は遅い模様

グラーフも来た。ようやくイベント完遂


今日の更新はないです報告。と言うか次更新がいつになるのか分からなかったり
1から10の7から9だけが話として浮かんでいる状態
というわけで暫しお待ちいただければと思います


本筋の最後が>>315で、そこだけ見ると2週間以上空けてたことに…たまげたなあ
のろのろ始める


執務室・昼過ぎ——


曙「…………」ムスッ

漣「ねーぼのやーん機嫌直してよー」

陸奥「そーよ、せっかくのお顔がどんぐり詰め込み過ぎたリスみたい」

曙「…………」

漣「クソッ、真面目に仕事しやがって……」

陸奥「困ったわね……真面目に仕事されるとこっちも真面目にしないといけないじゃない」

漣「ご主人様は意外と真面目なぼのやんを前にしてよくもまあふざけてられるよね、ある意味才能だぜ」

曙「……アンタ達もやることは何かしらあるでしょうが。 特に陸奥、アンタは代行でしょ」

漣「お、口利いてくれた」

陸奥「そうは言うけれど、普段やってるようなことは午前中に済ませちゃったわよ? 貴方が寝てる間に」

曙「くっ、無駄に敏腕なんだから」

陸奥「事務時代も短くはなかったからね」


漣「さてぼのやんは機嫌直してくれましたかね」

曙「……別に機嫌が悪かったわけじゃ、ない」

漣「あ〜いいよその表情! 氷属性が付与されたレイピアで突き刺すようなその目付き! 今年度のアブソリュート・ゼロ・ガールグランプリもいただきですね!」

陸奥「そんなのあるの?」

漣「ねーです」

曙「寧ろたった今機嫌が悪くなったわ」

漣「コンソメパンチあげるから許して」

曙「……私のり塩派」

漣「OK、ピザポテトもつけよう」

曙「のり塩」

漣「じゃがりこもオマケしてやるよ……!」

曙「のり塩」

漣「今ならなんと! キャラメルコーンもオマケして」

曙「のり塩」

漣「何この頑なにのり塩ガール」

陸奥「のり塩ガールグランプリでも優勝しそうね」

漣「優勝しても嬉しくないタイトル」


漣「まあ怒ってないなら怒ってないでいいとして、どーかしたの? ぷんむくれガールさん」

曙「別に、さっきのが尾を引いてるだけよ」

漣「さっきの?」

陸奥「ああ、食堂では好奇の視線が降り注いでいたものね。 秘書艦になってると仕事じゃない限り意外に顔も見なくなるし、それも後押ししてたかもね」

曙「それもあるけど……まあいいや」

漣「いやはや、ここまで早く話が広まるとは思わなんだよ」

曙「アンタが原因って聞いたけど。 どう始末してくれようかしら」

漣「えっ、漣ちゃんなにもしてないデースよ……」

曙「どーせアンタがそこらへんで誰彼構わずぺちゃくちゃくっちゃべってたんでしょーよ」

漣「マジでなんもしてねんですけど! ぬれぎぬー! びしょ濡れ鬼怒ー!」

陸奥「まあ確かに、このままだと曙も居心地が悪いでしょうね」

曙「悪いなんてもんじゃなかったわよ、正直甘く見てた」

漣「ねえツッコミ待ちなんですけど。 ウチに鬼怒いねーよとか色々待ってるんですけど。 放置いくないよ? ボケ殺しだよ?」

陸奥「どうせなら本当に提督とデートしちゃったら?」

曙「アホか、事実無根なところに本当に根を植えてどうすんのよ」

陸奥「既に無根ではないと思うけど?」

曙「うぐ」

漣「漣ちゃんへの風当たりキツくないスかお二人様、ウサギは寂しくても死なないけど漣ちゃんは死ぬんだよ? 構えよ」


陸奥「いっそのこと、この機に乗じてくっついちゃえば?」

曙「寝言は寝て言いなさいよポンコツビッグセブン」

陸奥「そう? 結構お似合いだと思うけど。 しょっちゅう夫婦漫才してるじゃない」

曙「あのバカのノリに合わせといた方が疲れないのよ、そうじゃなかったらあんなん側溝にでも突き落としてるわ。 誰が夫婦漫才か」

陸奥「受け入れているようで受け入れていないようで。 難儀な子ねぇ」

漣「ぼのやんはそういう子ですので」

陸奥「曙さえ本気出せばイチコロでしょうに、提督も苦労するわけよ」

曙「そりゃ主砲で撃てばイチコロでしょ」

漣「あ、むっちゃんさんもそう思う?」

曙「あ?」

陸奥「私がいつから見てると思ってるの? あんなに分かりやすい人はいないわよ」

漣「でもねー、当人が自分のこと理解してないんスよこれが」

陸奥「え? どういうこと?」

漣「直接訊いたんだけどそんなんじゃないとか言ってた、自分自身の気持ちに気付いてないパッティーンすよアレ。 ハーレム漫画の主人公ばりの鈍感っぷり」

陸奥「うわあ、面倒ねそれ」

漣「でも、向こうからの攻略は期待できないけど、本心に気付かせるなりぼのやん自身に攻略させればチョロいと思う。 この頑固者からね」

陸奥「そうよねぇ、こっちも脈はあると思うんだけど」

曙「ちょっと、何アンタらだけで分かる話してんのよ? 私も関係あるんだったら私にも分かるように話しなさいよ」

陸奥「あら、分からない? 彼、提督が貴方に惚れてるって話よ」

曙「」

曙「はあ?」


漣「あや、言っちゃうのん?」

陸奥「ホントは見守っていても良かったんだけどね、放っといたらずっと進展がないと思うとまどろっこしくなっちゃって」

漣「あー確かに。 強引にでも進めないと絶対進まないよね、この2人」

曙「」ポカーン

曙「いやいやいやいや、ない、それはない絶対ない」

陸奥「ホラね?」

漣「ん、こりゃ武力介入しないとダメな奴だ」

曙「クソ提督が私に惚れてるって、どの次元の話をしてんのよアンタら」

漣「3次元」

曙「じゃなくて」

陸奥「よくもここまで気付かないものよね、貴方の鈍感具合も相当よ」

曙「そう言われたって、思い当たる節なんて……」

陸奥「貴方が着任してからずっと、ずっとずっと、彼は貴方のことを気にかけていたけれど、それも無いと?」

曙「いやそれは分かるけど……」

陸奥「率直に言うけど、当時の貴方は見放されてもおかしくはなかった。 即解体なんてことにならなかったのが不思議なくらいにね」

陸奥「そんなだった貴方を責めもせず受け入れるなんてこと、並大抵の思考で出来るとでも?」

漣「結構ぶっちゃけるね、むっちゃんさん……」

曙「…………」


曙「……そうは言うけどさ、クソ提督が私に惚れてるっていうのはやっぱり無いと思う」

陸奥「強情ね、はたから見れば気付いてしまうくらいなのに」

曙「じゃなくて、誰かに惚れてる男が半裸で腰ミノ巻いて眼前に現れたりする?」

陸奥「それは…………」

漣「Oh…………」

曙「アンタ達の言うように物事を考えるとアイツのしてることはズレ過ぎてるのよ」

曙「私はそんな風に見られちゃいないし、私も見るつもり無いから」

漣「まあ……ご主人様が時々変なのは今に始まったことじゃないけど」

曙「それに、惚れてるなら惚れてるで、なんかこう……ほら、あるんじゃないの? なんか優しくするとか、贈り物だとかなんかこう……」

漣「漫画か。 ってか意外に乙女か。 そしてボキャ貧」

陸奥「お手本のような恋愛初心者ね」


曙「……もうさ、放っといてよ。 私とアイツはそんなんありもしないって何度言ったか分からないくらいなんだけど。 外野が勝手に騒いで事を面倒にしないでくれない?」

陸奥「騒ぎが大きくなったのは私じゃないけどね」

漣「漣ちゃんでもないよ……ホンマやで……ああもうそんな氷属性たっぷりの目線で見ないでよう」

陸奥「でも本当にいいの? 漣ちゃんの話を聞く限り、このままだとずっと平行線なのは間違いないわよ?」

曙「しつこいわね本当、久々にアンタのこと嫌いになりそう」

陸奥「ドンと来いってね。 私も昔とは違うわよ」

漣「……ハイハイ! この話はもうやめ! ハイ! 結論を導くのも出すのも全部ぼのやんの仕事なんだから外野は噂話に翻弄されるだけにしとこ! ね!」

曙「広めた張本人が何を言うか」

漣「だから身に覚えが全くないとまでは言わないけど漣ちゃんはピーチクパーチク喋っちゃいねーぜお姉様……!」

曙「鳥肌立ったからやめて、その呼び方」

漣「ひどいや」


曙「元凶はもうどうでもいいわ、終わりなら終わりでとっとと散った散った」

陸奥「解散って言ったって、私が提督代行なんだけど」

曙「私が預かるわよ、今日はもう夕方や夜間の定期哨戒とか遠征任務云々くらいで充分でしょ。 明日のことは明日のクソ提督に押し付ければいい」

陸奥「いいのかしら、それ」

漣「ご主人様なら、あーはいはいわーったわーったそゆことねーで流しそう」

陸奥「うーん、でも貴方をここに縛り付けちゃうことになっちゃうけど」

曙「今この状況で出回る方が危険なのはさっき知ったから」

漣「危険ってーか、注目の的ってーか。 今ならよっぽどのヘマ踏んでも話題の強さ的に見逃されそうだよね」

曙「そういうことだから、今日1日残りは執務室に引きこもる。 何も問題ないわ」

陸奥「そういうことならまあ……でも、誰かしら押し掛けて来ると思うわよ?」

曙「そん時はそん時よ、大多数の面前に晒されるよりなんとかなる」

陸奥「大多数で押し掛けてきたら?」

曙「1人ずつ蹴倒す」

陸奥「粗暴ねぇ」

漣「1人ずつ並べてドミノにしようぜ!」


陸奥「じゃあ、私は上がるけど……少しは考えてあげたら? 彼のこと」

曙「しつこい」

陸奥「ふふ、お節介は今に始まったことじゃないのよ」ドアガチャ

曙「ったくもう……前提条件が噛み合ってないってのは本当面倒ね」

漣「当事者しか真意は知りようがねーけど、ぼのやんのが圧倒的マイノリティってことなんじゃん?」

曙「多数派こそが真だなんて、ふざけた風潮だわ」

漣「まあむっちゃんさんの場合、自分には手が届かないけどいつまでもぶら下がってる餌を放っとかれてる気分なんじゃないかね?」

曙「どういうことよ、それ」

漣「それでもどうするか決めるのはぼのやんってこと」

曙「アンタの言うことは難解だわ」

漣「分かって貰えなくてもOK、分かって貰えればなおOK! それが漣ちゃん流エンターテイナー道よ!」

曙「アンタのネタキャラ路線はどうでもいいとして、昼の近海定期哨戒はアンタが行ってきて。 アンタなら単騎でも平気でしょ」

漣「だから色々とスルーするーのはボケ殺しだってゆってるじゃないですかァーッ! てゆーかめんどっちいからヤダ!」

曙「帰ってきたら間宮奢ってあげるから」

漣「行って参りますわ、お姉様! 哨戒任務完徹の報を貴方の元に届けることをお約束しましょう!」

曙「ほんとやだその呼ばれ方、背筋が冷える」

漣「それでもなおツッコむのは呼び方だけなんじゃね……」


————
——


<コンコン

曙「勝手にどうぞー」

時雨「やっ」ドアガチャ

曙「アンタか。 何か?」

時雨「たいした用は無いさ、何をしてるのかな……って、随分くつろいでいるんだね、ソファに横になって何を見ているの?」

曙「良くある愛憎入り乱れる昼ドラ。 三角関係っておっかないわよねぇ」

時雨「へえ……僕も一緒してもいいかな?」

曙「どういう根性してんのよアンタ。 というか、もう終わるわよ」

時雨「別にいいさ、隣失礼するよ」

曙「まあいいけどさ、どうでも」


時雨「あ、死んだ」

曙「死んだわね」

時雨「そしてそのままエンドクレジットか……今の女性が主人公なんだよね?」

曙「そーよ、でも主人公のくせに男を寝取る側だし、この男の前にも1人寝取ってるのよね」

時雨「前の人はどうなったの?」

曙「事故に遭って死んでる。 主人公は表面上は悲しんでたけど実際のとこはそこまで愛していなかったから、保険金のおかげで棚から金塊が降ってきて超ラッキーって感じだったわね」

時雨「主人公が一番闇が深いってどうなのさそれ」

曙「自分が原因でカップルが台無しに見る様を見るのが1番の快楽だって言ってたでしょ? 正直殺されてもそりゃそうなるわって感じよね」

時雨「殺されて清々する主人公ってことなのかな、ここまで持っていくのを見るために何人が神経をすり減らすか、苛立ちを溜め込んでいたんだろう」

曙「前の男が死んだ時にも男の元サヤに1度殺されかけてたけどね。 その時に自分の命がかかるのも悪く無いとかって歪んでたし」

時雨「修羅場ジャンキーかな」

曙「ああ、なんか凄いしっくりくるそれ」


時雨「修羅場と言えば僕も修羅場を見たことあるよ。 ほら、あのイケメン大佐いたでしょ?」

曙「あーあのイケメンアイドルみたいな? アイツ絶対就く職業間違えてんでしょ」

時雨「先月なんだけど、彼の司令部にいる僕に用事があってね。 そこで見ちゃったんだ」

曙「自分に用があるって字面も普通じゃあり得ないわよね」

時雨「云十人もの艦娘がイケメン大佐を取り合って殴り合いをしているのを……」

曙「主砲でドッカンドッカンパラダイスとかではないのね、流石に。 昼ドラ見た後だと微笑ましいレベル」

時雨「でも壮絶だったよ、罵詈雑言のバーゲンセールも同時開催されていたし。 艦娘じゃない地が出てるんじゃないかってくらいのキャラ崩壊もしていたからね」

曙「キャラとか言わないの」

時雨「で、争いの原因となったイケメン大佐はその争いを前にしてオロオロしていたね。 その時偶然通りがかっていた僕にすがるような救いの目線を送ってきたけれど、自分のことなんだし自分でなんとかしなよってエールを返してあげたよ」

曙「わーひどーい……って、今月頭の鎮守府通信に載ってた乱闘騒ぎってもしかしてそれのことかしら」

時雨「もしかしなくても、そうだろうね」


曙「で? 雑談で様子見しながらアンタは何の用なわけ? 大方、今ウチで出回ってる噂話のことだろうけど」

時雨「察しが良くて助かるよ。 それなら初めからストレートに訊けばよかったかな」

曙「先に言っといてあげるけど、デートなんかじゃないから。 アイツが私を連れ出して逆に私が振り回しただけ。 そーいう意識も関係もありゃしないから」

時雨「当人がどう言い繕っても、デートはデートであることには変わりはないさ」

曙「当人の意見が聞き入れられないなんて、司法だったら腐り切ってるわよ」

時雨「僕個人は真偽を確かめたかっただけでね、事実に関しては然程思うことはないよ。 意外だなってくらいかな」

曙「皆アンタみたいだったら良かったのに」

時雨「皆一人称が僕になるのかな?」

曙「いっそ黒髪にして犬耳も生やす?」

時雨「耳じゃないよ、これ」


時雨「それじゃあ、訊こうと思っていたことは訊けたからここらでお暇しようかな」

曙「……ああそうだ、時雨。 ちょっとくだらないこと訊いてもいい?」

時雨「ん、何かな?」

曙「アンタはアイツのこと……クソ提督のことどう思ってる?」

時雨「くだらないというか、意外にも意外な質問だね。 案外噂は事実無根でもなかったりするのかな?」

曙「そうじゃない、好き嫌いとかじゃなくてさ」

時雨「聞かんとすることは分かるよ。 なんというか、身近だよね」

曙「身近?」

時雨「提督っていう立場の人はさ、上官だからと高圧的だったり、所詮職場での関係って感じだったり、何かしら艦娘と提督を二分する一線があるのが殆どだと思うんだ」

時雨「だけど僕達の提督にはその一線が無いように思える。 親戚のお兄さんみたいなものなのかな? 僕にはいないけどね」

時雨「ちょっと変わってるけど、いい人だと思うよ」

曙「ちょっとどころかしら」

時雨「はは、楽したいからって出世を蹴るのはちょっとではないかもね」

曙「そういう変じゃ……まあいいわ、変なこと訊いて悪かったわね」

時雨「構わないさ。 それじゃあね、また今度模擬戦をしよう」ドアガチャ

曙「うん、また今度」


————
——


<ダダダダダダダダ

金剛「ボノエッティィー! 午後3時! ティータイムのじかっ」ドアガチャァアア

曙「…………」

金剛「ヘッ、ヘッドホン……!」

金剛(テートクの椅子でリラックスし、目まで閉じて、これは完全にMy worldに没入してマスネ……)

金剛「……ボノエッティー?」フリフリ

曙「…………」

金剛(ダメデス、周囲を完全にshutoutしていマース……)

金剛(こーなったら根比べデス、負けないからネー!)


1時間後——


曙「……んぁ」カクッ

曙「ふあ……寝てたか……いつの間に寝てたんだろ、最初の曲は聴いた記憶あるけど……」ヘッドホンハズシーノ

金剛「あ、ヨーヤク起きました? good afternoon!」

曙「」

曙「」キョロキョロ

金剛「ンー? どーかしまシタ?」

曙「ここどこ」

金剛「執務室デスよ?」

曙「ティーパーティー仕様になってんだけど」

金剛「いやー、まさかMy worldではなくdream worldに旅立ってるとは思ってなかったネー、だのでその間に模様替えさせてもらいまシタ!」

霧島「この私の計算があれば人1人起こさずに模様替えをすることなんて造作も無いことよ」

曙「いたんだ眼鏡」

霧島「その呼び方は如何なものかと」


曙「にしてもアンタの侵入を許しちゃったか……鍵かけとけば良かった」

金剛「ワタシの扱いは深海棲艦かinvaderか何かデス?」

曙「だってウzうるさいし」

金剛「今何か言葉を飲み込んだよーな」

曙「気のせいよ」

霧島「まあまあ、話はお茶でも飲みながら。 丁度出来ましたから」

金剛「Oh! NICEね霧島! ボノエッティには積もる話が沢山アリマスからネ!

曙「……何か違和感あると思ったら比叡と榛名がいないんだ、2人はどうかしたの?」

霧島「ああ、2人共先程までいたのだけど、長門さんが来るなり修行を手伝ってくれ、なんて言って2人を連行していったわ」

曙「修行て……」

金剛「艤装はつけてませんでしたけどネー、ナガエモンは時々よく分からないデース……」

霧島「確か、自分磨きだとかなんだとかって言ってませんでした?」

曙「一体何をするつもりなのやら」


霧島「長門さんに攫われた2人のことはおいといて、冷めないうちに紅茶をお飲みになってくださいな」

金剛「そうしましょーカ、2人の犠牲は決して忘れないデース……」

曙「いや死んじゃいないでしょ、多分」

金剛「ホーラ、ボノエッティもcome here!」

曙「はあ、せっかくだしいただこうかな」

霧島「あ、ミルクティーにします? それともそのまま?」

曙「ミルクティーで」

霧島「了解。 お姉様はストレートですよね」

金剛「Yes、お願いするネ」

曙「そういや、淹れるの金剛じゃないんだ。 いつもティータイムティータイムうるさいのに」

霧島「私が目下勉強中でね。 だから味の批評については大目に見てもらえればと」

曙「私はそんなに美食舌じゃないけどね」


金剛「フッフフ、席に着きましたネボノエッティ……もう逃げ場はありませんヨー!」

曙「拘束されてないから逃げ放題なんだけど」

金剛「気分の問題ネ。 さあ! テートクとのデートについて有る事無い事洗いざらい喋って貰いマース!」

曙「話すようなことは特にない。 以上」

金剛「NO! 絶対にNO! 質問は特盛り山盛りてんこ盛りヨ!」

曙「私の口から言うことは何もない、以上」

霧島「これは思っていた以上に取り付く島がありませんね、お姉様」

金剛「ぬぬぬ、これではワタシの計画がtrash行き待ったなしデース」

曙「計画?」

金剛「エエ、テートクがいつになっても誘ってくれないのならワタシの方から誘おうと思ってネー。 で、Planを建てようにもワタシは誰かとデートなんてしたことありませんから……」

霧島「それで、誰か経験者に相談したらどうだろうということになりまして」

曙「それで私か。 じゃあこないだ来たのって」

金剛「あ、アレは突発的に動いてしまっただけで」

曙「僅かでも感心しなければよかった」


とりあえずここまで
近々世界観の独自設定のバーゲンセールになるかもデース。 でも本筋とはあまり関係ないのでそんなもんかくらいで流しても
だったら出さなくてもいいか?その時に考えます
ところでアケ版艦これのロケテではぼのやんの勇姿は見れるんですかね…


更新ない報告必要なのかなと思いつつも今日は更新ないです報告
ついでに土日も更新はない予定。1,2レス分の細かいのなら投下するかも


更新無し報告をするにしても3日に1回くらいにしましょうか。流石にスレが埋まるまで続くことはないはずですが念の為
そんなわけで夜までまばらに始める


曙「……アンタはさ、なんだってアイツにそんなご執心なワケ? 金剛ってのはどいつもこいつも惚れっぽいの?」

金剛「中々にシビアなことを言ってくれマスネ……他のワタシについてはnot understandデスが、ワタシだって何も無しというワケではありませんヨ? そう、それはワタシがこの司令部に着任して間も無い頃でシタ……」

霧島「ああ、始まっちゃいましたか」

曙「長くなるなら100文字以内でまとめてくれる?」

金剛「What's!? It's very shortネ!?」

曙「えーと、ホワッツで5、6文字でイッツベリーショートでえーと?」

金剛「ノーカン! 今のは絶対no countよ!」

曙「ああ大変、今のであと70文字切ったわよ」

金剛「オニー! アクマー! ボノエッティの血の色は何色デスかー!?」

曙「赤」

金剛「そりゃそうでしょーケド!」


金剛「着任した当時、ワタシは英国から戻ったバカリで親しい知人もなく右も左もサッパリで正直心細かったのデス……」

曙「ホントに帰国子女だったんだ」

霧島「話の腰を折るようなこと言わないの」

金剛「ま、憂う間も無く比叡達sistersも着任したんデスが。 その短い間にワタシは提督に心奪われたのヨ……」

曙「ああ、そう言えば芋づる式に着任して来たわよねアンタ達」

霧島「だから貴方ね」

曙「ハイハイわかったわかった」

金剛「ある日の海戦の時デス、丁度ワタシはドップリnegativeに満ちていマシタ」

金剛「敵はそれを知ってか知らずか集中砲火をワタシに浴びせ、ワタシは大破してしまい出撃して間も無いにもかかわらず艦隊の撤退を余儀なくされマシテ」

金剛「戦艦としての本懐も果たセズ、相談出来るほどのfriendsもいまセンで情けなくて寂しくて泣きそーになりマシタよ。 っていうか泣きました、布団にこもって」

曙「アンタも布団になったのね……」

金剛「What?」

曙「あ、気にしないで」


金剛「大破した艤装の修理中、丸1日部屋の布団にこもっていたワケデスが、心配したテートクが部屋を訪れたんデス」

曙「あ、思い出した。 アンタその日の翌日から別人て程でもないけど憑き物が落ちたかのように戦果を挙げ始めたのよね」

金剛「Yes、訪れたテートクに同じよーなコトを言ったんデスよ、戦艦として情け無くてしょーがない、friendもいない、ここでどう振る舞えばいいか分からないとかmany、沢山吐き出しちゃいマシタね」

金剛「テートクは呆れもセズ聞いていてくれマシタ。 で、ワタシが全部全部思いをburstし終えた後にこう言ったんデス」

金剛「それならオレが友達になろうか、って! キャー!」

曙(今のに赤面する要素ある?)

霧島(お姉様は他者からの気持ちに対してノーガードだから)

金剛「イヤまあ最初は断りマシタよ? テートクはテートクですからーって? アンマリ艦娘と密接になるとテートクとしてのCharismaとかがbreakingしてしまうでしょーし」

金剛「だけどテートクは、ワタシには笑顔でいて欲しいから、って……ワー! いつ思い出してもフットーしそうデース!!」ドタバタ

曙「ん? うーん……その話はクソ提督から聞いたことあるの思い出したんだけど……なんか違うような」

霧島「お姉様の司令関連の話は大体勘違いで出来てるから」


曙「ふう……ご馳走様。 アンタがアイツのことどう思ってるのかは知ってたけど一応納得したってことにしておく」

金剛「ん? What do you mean?」

曙「こっちの話。 さてと用件も済んだしさっさと部屋を片付けて退散してもらおうかしら」

金剛「ちょっ、ワタシの用件は済んでないんだケド!?」

曙「やかましい、人が寝てる間に勝手に模様替えしといて。 片付けるのだって楽じゃないでしょうが、全部アンタ達がやってよね」

金剛「そんなー! 慈悲はないのデスか!?」

霧島「お姉様、自業自得かつ因果応報です」

曙「模様替えに乗っかったのはアンタもでしょうが眼鏡。 蚊帳の外に逃れようったってそうはいかないんだから」

霧島「ですよねぇ」

金剛「霧島、逃げるつもりだったの?」

霧島「この後装備のメンテナンスをしようかなぁと思ってましたので。 最近良く主砲の軌道が思ったより右寄りな気がしてて」

曙「あー、それは一大事ね。 じゃあ金剛だけで後片付け頑張って」

金剛「ちょっとー!? いくらなんでも1人で片付けするのは、ハッ! ボノエッティが代わりにhelpして」

曙「1人で頑張ってねー、私その間に間宮にでも行ってるから」

金剛「ノォォォォォォウ!!」


今日はここまで。また明日
艦これロケテは大井っちのパンツを見たのだけが収穫でした


更新予定のはずが狂ってしまったという言い訳。次更新はおそらく日曜日に
余力があれば水曜にでも


人様のSS読んでると自分の凡才さのあまりにウェーイwwwwってなる
ガス抜きに短いのでも投下しようかなあ、とか思いつつ始める


甘味処「間宮」——


漣「れ、ぼのやんだ」

曙「漣? アンタ帰ってたんだ、いつ?」

漣「4時前くらいかなー、ぼのやんは寝てるし金剛シスターズがごちゃがちゃなんかしてるし? だから報告書だけ置いてスタコラサッサと」

曙「なんかしてるってなら止めなさいよ」

漣「その方が面白そうだったからしゃーない」

間宮「あら、曙ちゃんいらっしゃい。 ご注文は?」

曙「間宮パフェ一航戦スペシャルで」

間宮「……聞き間違えたかしら、もう一度言ってもらえます?」

曙「間宮パフェ一航戦スペシャル」

漣「せ、攻めるねぼのやん……胃袋爆発するぜ……?」

曙「今執務室を金剛に元に戻させてるからね、それまでゆっくり食べるつもり」

漣「人使い荒いねえ」


漣「ところで金剛さん以外に誰か執務室にやってきた?」

曙「入ってきたのは時雨くらいね。 扉の外に気配を何度か感じたんだけど、入って来ずじまいよ」

漣「気配て」

曙「私が出歩いてると遠巻きに見るくせに、突撃してくる度胸はないんだなーって。 私は動物園の猛獣か何かかっつうの」

漣「下手すっと逆鱗に触れそうだからじゃね?」

曙「そうなんだろうけど。 でもこの距離感が1番イライラする」

漣「この曙大明神様がなんでも質問に答えてあげるわ! って言えば皆遠慮なしにがっつきにくるよ」

曙「気が狂ってもそんな愉快な真似はするわけないでしょ」

漣「とうとう頭のネジが吹き飛んだか、って同情されそう」

曙「自分で言っておいて」


間宮「えーと、お待たせしましたー、間宮パフェ一航戦スペシャルです」ズダンッ

漣「効果音がパフェじゃねーぜ」

曙「うわあ」

漣「いや自分で頼んどいてうわあってあーた」

曙「ところで間宮さん、一航戦スペシャルと一航戦盛りとミッドウェー越えってあるけど、この3つてどう違うの?」

間宮「量だけの話になるけど、1番多いのがミッドウェー越えで1番小さいのが一航戦盛りよ」

漣「なるほど、まるでわけがわからんぞ!」

間宮「加賀さん達がどうしてもって言うから……」

曙「コレでさえ人の頭一つ分はあるのに、どうなってんのよミッドウェー越え」

間宮「知りたい?」

曙「聞いただけで胃もたれしそうだからやめとく」

漣「スペシャルも充分胃もたれの素質あると思うの」

曙「食べ切れなかったら宿直室にある冷蔵庫にぶち込んどくから、まあ……なんならアンタにお裾分けしても」

漣「お断りします」


間宮「ところで曙ちゃん、貴方も大変ねぇ」

曙「ん? それはどういう」

間宮「色んな子が来るでしょう? ここ。 それでつい話が耳に入ってしまうんだけど、昨日からずっと殆どの子が貴方と提督がどうのって話ばかりしてて」

曙「マジで?」

漣「もう消しようがないね、この大騒ぎ、HAHAHA」

曙「黙れ元凶」

漣「ちゃうっちゅうねん」

間宮「でも、本当のところはどうなの? 貴方と提督がデートしたっていう話は」

曙「こんなところに伏兵が」

間宮「ああ違うの、曙ちゃんさえ良ければここに来た子達に本当はそうじゃないって風に流布して話題を沈静化させようかと思って」

間宮「あまり注目されてるとどこにも居づらいでしょう? それで、その……」

漣「女神か……」

間宮「へっ?」

曙「慈母よ……後光を携えた慈母……」

漣「メシアは身近なところにいるんだね……」

間宮「そんな、大袈裟ですって」


曙「そういうことなら話そうかな、だんまり決め込んでるから憶測で適当なこと語られるのよね」

漣「憶測ってーかまあ憶測なんだろうけど仕方ないってーか」

曙「まず始めにクソ提督が買い出しだとか言って私を連れ出した。 デートのデの字の欠片も無く」

曙「で、その時に気付いたんだけど、この鎮守府に来てから私は1度も鎮守府の外に出た覚えが無くって」

曙「財布もいるしどうせなら買い出しだけめ終わらせずに利用してやろうと思ったわけよ。 ここまではOK?」

間宮「え、ええ」

漣「最後のだけ聞くとぼのやんすっげぇクソ女だよね」

曙「あんな奴、ずさんに扱うくらいが丁度いいのよ」


曙「で、いざ連れ出されてみたら摩天楼に囲まれてた。 ビルすごい都会すごい人おおい変なオブジェもあるしでっかいテレビもあるし何あれ」

漣「おぼのりさん……いや、ってーか何なん、ぼのやん田舎暮らしガールだったの?」

曙「ん、違うけど。 艦娘になる以前からあんまり家から出歩いたこともなかったの。 だからあんなの初めてで」

漣「お、おう……? まあ今はおいておこうか、それで?」

曙「私の思うまま好きなように街を歩き回ってね。 城みたいのはあるしなんたらタワーには登ったしその辺でクレープ買い食いしたり、お昼はクソ提督の金でファミレスだったけど」

漣(あー、前例ってそーいうこと)

曙「昼ご飯食べ終わった後は動物園が近いって言うからそこに行くことになって」

間宮「……あら?」

漣「おう……?」


曙「色んな動物を見て回ったなあ。 お土産も買ったし大満足よ」

曙「で、最後にクソ提督が私にぎゃふんと言わせてやるとか言うから、どうするつもりかって思ってたらなんか縁が無いほど高そうなレストランに連行されたりね。 アレには勝てないわ」

漣「ぼのやんだけずっこい……というかというか」

間宮「ええと……」

曙「当初の目的の買い出しは忘れてたけど、まあそんな感じで好き勝手して堪能したけどさ、デートなんて言えるようなことは何もしてないのよ。 漣を筆頭にどいつもこいつも好き勝手言ってくれちゃって困ったもんよ」

漣「……ぼのやん、漣もさ話が広まったことに関してはまあ、責任の一端は感じていたんだけどさ、そんなん全部吹き飛んだ」

曙「へ?」

間宮「あの、ごめんなさい、それはどう言い繕っても……」

曙「え? 何?」

漣「ぼのやん、当人がどう言い足掻いてもやってることが150%デートやで、諦めんさい」

曙「……いやアレのどこが」

漣「ぼのやんがどう感じたのかまでは分からんけれど、もう言い訳しようがないくらいにデートです。 諦メロン」

間宮「ええ……話だけ聞くとこれは、ね」

漣「ついでに言うとご主人様からぼのやんに楽しんでもらうために連れ出したって言質も取ってるんだよね、もう逃げ場無くね?」

曙「ぐ、アイツめ、漣にまで言いふらして」


漣「はー、ニブチン山脈だわ片方はゆけゆけ頑固ちゃんだわでてめーらめん独裁政権でもやってんのかっつーの、漣ちゃんも呆れますよ」

曙「何言ってんのか訳分かんないけど、私らはそんなんじゃ」

漣「あんね、流石にもう無理でしょ。 シマウマを10人に見せて9人がシマウマって答えてぼのやんだけブラジルって答えてるようなもんだよ」

間宮「または杏仁豆腐を食べて、1人だけ葛餅だって言い張っているような」

曙「……そんなになの?」

漣「いや、ってーかそもそもハナっからぼのやんも認めてんじゃん。 こないだ帰ってきた時にそれデートじゃね?って言ったら顔面トランザムして部屋出てったじゃん」

曙「あっ……でもその、うぐぅ」

間宮「だ、大丈夫よ、デートしたからって今日明日に地球が爆発するわけでもないんだから、ね?」

曙「……でも認めたら認めたで余計に口うるさく突っ込んでくる連中が出て来る……たぶん」

漣「そんな時こそツンドラの本領発揮でしょうがおバカ! それ以上は特に何もないからピーチクパーチク突っ込んでくんじゃないわよ下世話なミーハー共めとかって冷たく突き放しゃーそれで良かろーね! っつーかホントにツンドラか! ぼのやんここ数日で氷解し過ぎやん! やん!」

曙「で、でもその」

漣「乙女か!! 奥手か!!いつもの威勢はどこ行ったん!! ブラジルか!!」

間宮「漣ちゃん落ち着いて?」

漣「漣ちゃんにツッコミやらせんなってそれ縄文時代から言われてるからぁー!!」


漣「もなかうめえ」モグモグ

間宮「落ち着いた?」

漣「スンマセン女神様」

曙「はー…………」ツクエニフセーノ

漣「ぼのやんはぼのやんでまた愉快なことに」

曙「どうしたらいいんだろう……」

漣「何がだよ……何もどうすることないじゃん……ご主人様だってそんな気にしてないっぽいんだからぼのやんも気にしなきゃいーじゃん」

曙「それが出来ないからこうなんだけど」

漣「なんでやねん……この話題で真剣になってんのぼのやんくらいなもんよ? でもまあ丁度いいかもね」

曙「……何が?」

漣「ウチらってこの司令部ではむっちゃんと並んで最古参でしょ? 数年だけども世話になってるわけだから流石にご主人様に何かしら思うことあるかもだし、ご主人様についてなんか考えてみたらーって」

曙「……ちょっと違うけど考えてんのよ、ずっと」

漣「およ?」

曙「アイツがどう思ってるのか、私はどう感じているのか、とか寝る前から」

漣「おおう……今朝の妖怪フートンとその目のクマはそーいうことかいね……」


曙「まあ、今の今まで忘れていたんだけど、忘れたままでいたかったわ」

漣「ドンマイ」

間宮「最古参って言ってたけど、一応私もいるのよ?」

漣「あ、そいやそだった。 許してヒヤシンス」

漣「で、考えてるってなら漣ちゃんはそれに関してどうこう言わないよ。 どんなでも答えを出すのはぼのやんだし」

漣「だけど考えに詰まったりなんかしたりしたら相談に乗るよ? 友達だかんな! ズッ友やかんな!」

曙「しないと思うけど……ありがと」

金剛「う〜……ボノエッティ、模様替え終わったデース……」

曙「あ、ご苦労さん。 思ったより早かったわね、これあげる」

金剛「What……一航戦Special……鬼デスか貴方は」

曙「頼んだけど、結局殆ど入らなかったから。 肉体労働の後だし丁度いいんじゃない?」

金剛「一航戦Specialはそういう問題じゃないscaleなんデスけど……」

漣「ドンマイ」


一旦ここまで。午後更新するかは気分次第
寝落ちするとは予想外


別スレ建ててたから生存報告サボってましたがわたしはげんきです
一日中だらだらスタンスで始める


執務室・夕方——


曙「紅茶セット出しっぱなしじゃない」

曙「まあ紅茶セットもそうだけど、執務室を何だと思ってるのかって家具多いわよね……大体倉庫の肥やしになってるけど」

曙「……テレビとソファは来客対応に必要だし出しててもいいよね」

<コンコン

曙「言ったそばから。 宗教勧誘以外だったらどーぞ」

浦風「や。 調子はどう?」

浜風「どうも」

曙「…………」ムググ

浜風「苦虫を噛み潰したような顔を……」

浦風「よりにもよって、って感じやねぇ」

曙「別にいいんだけどさ……何か用?」

浦風「たいした用じゃないんよ、ただ皆あちこちで騒いどるから当の本人はどうしとうかなって、たまたま通りがかったからね」

曙「別にどうも。 こうして引きこもってれば誰も来ないわよ、アンタ達みたいな物好き以外はね」

浦風「へえ、意外と平気そうにしとるんね?」

曙「平気だったら引きこもったりしないでしょうが」

浜風「……私のせいですね、ごめんなさい」

曙「はあ? どうしてアンタが謝るのよ」

浜風「こうなったのはおそらく、私が色々な人に話をしたから……その、貴方と提督の話を」

曙「思ってもない奴が伏兵だった」


浜風「人と話すのが上手くいかない、という話をしたら潮から何か話題があればいい、とその話を教えてもらって……それで」

浦風「そしたらビックリするくらい広まっとったもんねぇ。 頑張りすぎとも言えるくらいじゃ」

曙「怒っていいものなのやらどうなのやら」

浜風「すいません……ここまで大事になるとは」

曙「悪意がないだけに責めたら私が悪者みたいね……別にいいわよ、そんなに気にしなくていいから」

浜風「でも……」

曙「言い訳しない。 私がいいって言ってるんだからそれで終わり。 目には目をってつもりもないから」

浜風「……そう、言うのでしたら」

曙「あ、コイツ絶対納得してないわね」

浦風「頭でっかち気味やけんねぇ」


曙「それだったら罪滅ぼしとして、アンタはクソ提督のことどう思ってるのかでも訊こうかな」

浦風「こぉら曙、まだそんな呼び方して」

曙「はいはい蒸し返さない蒸し返さない」

浜風「……? そんなことで罪滅ぼしになるのでしょうか」

曙「どいつもこいつもが私にどう思ってる?どう思ってる? って空気出してるからね、趣向返しみたいなもんよ」

浜風「そうですか……でしたら、ふむ……」

浜風「…………」

曙「時間かかりそうね、アンタでもいいわよ浦風」

浦風「ウチ? そうじゃのう、やる時はやれるんやから、もう少しシャキッとして欲しいかのう」

曙「ふーん? アイツがシャキッとしてた試しなんてないけどね」

浦風「何言いよるん、幾つも大きな作戦に参加して戦果を挙げとうのを間近で見とるくせに」

曙「それを差し引いてでもってことよ、基本アンポンタンなんだから」

浦風「もう、だからシャキッとしぃって思うんよ。 そうしたら曙も提督を見直して呼び方や態度も改めるやろうに」

曙「どう足掻いたってクソ提督はクソ提督だけどねー」

浦風「はー……筋金入りじゃねぇ」


浜風「……むう」

曙「まだ悩んでたんだ」

浜風「いえ、その、誰にでも分け隔てなく接する方だと思うのですが、人生の伴侶として連れ添う方と考えるともう少し熟慮が必要で」

曙「何言ってんのアンタ? 伴侶?」

浦風「あのね浜風、そこまで深く考えなくてええんよ? 曙もそういうつもりやなかろうし」

浜風「そうですか? しかし、どう思うのかと……」

曙「別に男女仲とかそういう意味で訊いてないわよ、単に印象くらいでいいの。 まあ、印象は聞けたけどさ」

浜風「……もう少し修行が必要ですね」

曙「今日は修行だとか稽古だとかってよく聞く気がするなあ」


————
——


曙「…………」ジー

那珂「…………」ジー

曙「……最近アイドルをテレビでよく見るようになったわよね」

那珂「そうだねー」

曙「今みたいに番組のお天気コーナーとかにまで出てるし」

那珂「この子友達なんだ……」

曙「そうなんだ……」

那珂「うん……」

曙「……アンタもそのうち同じ場所に立てるんじゃないの」

那珂「もちろん、狙うはトップアイドルだもん」

曙「うん、知ってる」

那珂「そっか……」


曙「……てかなんでアンタ来たんだっけ」

那珂「んー、シフトの確認」

曙「シフト? 遠征とか哨戒とかって、アイツ大体その日その場で決めてるでしょ」

那珂「うん、だからアイドルの方のシフトと照らし合わせて今週この日のこの時間は出られないよーっていう報告をね」

曙「あー、なるほど……教えてくれれば伝えておくわ」

那珂「ありがとー」

曙「ん」

那珂「……明日は1日中お天気だって」

曙「みたいね」


曙「…………」

那珂「…………」

曙「ところでさ」

那珂「何?」

曙「何この空気、というかなんで静かなのアンタ」

那珂「いや……元気良く入ったのに曙ちゃん生返事だったから静かにした方がいいのかなあって」

曙「アンタでも空気読むんだ……ただテレビ見てただけだから気にしなくてもよかったのに」

那珂「曙ちゃん、怒ると怖いから……」

曙「そうかな……」

那珂「そうだよ……最近はそんなドカーンって感じじゃないけど」

曙「ドカーンて」


曙「……ねえ、アンタはクソ提督のことどう思ってる?」

那珂「何? 恋バナ?」

曙「違うわよ……単に何か思うことはあるか、ってだけ」

那珂「なぁんだ、そうだねー……たくさんあるなあ」

曙「そんなに?」

那珂「……那珂ちゃんはさ、艦娘とアイドルどっちもやってるでしょ? だからって甘えるつもりはないし、どっちも頑張らなきゃいけないけれど、それでも迷惑かけちゃうこともあって」

那珂「それなのにそのことで責めることはなくって、時々ライブにも来てくれて……たぶん、他の人のところにいたら今こんなに楽しくないと思うんだ」

那珂「トップアイドルも目指したいし、艦娘としても頑張りたいのが、私の目標だから」

那珂「うん……いつかちゃんと、お礼したいな……」

曙「お礼、か……」

那珂「そういう曙ちゃんはどうなの?」

曙「うっ」

那珂「ほらぁデートしたんでしょ? 皆その話で持ちきりだし? どうなのどうなの? やっぱり好きなの?」

曙「はい! 無駄話は終わり! アンタも用があるんだったらさっさと済まして戻る!」

那珂「えー? 那珂ちゃんにだけ話させてそれはズルくなーい? テレビ見るくらい暇があるならいいじゃーん?」

曙「これから忙しくなるの! たぶん!」

那珂「曙ちゃんのけちんぼー!」

アイドルも頑張ってる那珂ちゃんはいいよね
こっちの曙たちは普通の駆逐艦娘サイズなんかいね


>>482
>>41にある通り、ここでの曙含めた七駆も15歳前後のつもりです
ついでに白露や時雨に浦風とかも同じくらい


宿直室・夜——


曙「…………」トン トン

<コンコン

曙「ん、誰?」

潮「こっちにいたんだ、曙ちゃん。 隣の部屋にいなかったから」ドアガチャ

朧「哨戒終わったから、その報告」

曙「ああ。 そう、分かったわ、後で見とく」

潮「……もしかしてお料理作ってるところ?」

曙「もしかしなくても見れば分かるでしょ」

潮「と、とうとう曙ちゃんが自主的に提督にお料理を……!」

朧「いや、提督は今日1日いないんじゃなかった? それに自分の分だけかもしれないし」

潮「何を作ってるのかな曙ちゃん!」

朧「聞いてないね?」

曙「カレー。 簡単だし」

潮「カレー! カレーだって! やっぱりそうなんだ!」ピョンピョン

朧「とりあえず潮は落ち着こうか」


潮「ああ、愛の伝道師になった甲斐があったなあ……」

朧「それは関係ないと思うけど。 というか、潮は曙に何か伝道した? してないよね?」

曙「……そう思うんなら別にそれでもいいけど」

朧「なんだかさっぱりしてるね」

曙「無駄に考える時間が多かったせいか周りが騒ごうがどうでも良くなっちゃってね、どれだけ騒がれても私は私だって」

朧「達観してるなあ、でもそれとカレーは繋がりがあるの?」

曙「どうだろう。 何か思うことはあると思うんだけど、それが分からなくて、何か思いついたことでもやってみようって、それで」

朧「ふうん……? よく分からないけど曙がそれでいいならいいんじゃない?」

曙「どうかしら、カレーで分かるほど甘くはなかったりね」

潮「作ってるカレー、甘口なの?」

曙「辛口」


執務室——


曙「カレーは出来たけど」

曙「……眠いなあ」

曙「…………」

曙(何人かに同じことを訊いて、そして帰ってきた答えもそれぞれで)

曙(皆、アイツに対して大小問わず何かしら思うことはあるみたい)

曙(そういう理屈で私も何か、って決めたい訳じゃないけれど)

曙(本当に何もないのは、少しだけ——)

<ガチャッ

提督「おう、1日お疲れさん」

曙「クソ提督……? アンタ、今日は1日中外にって、まだ8時前——」

提督「ちょっとだけ早く終わってな。 でもこれから本部の方で反省会みてーな会議するっぽいからこっちにゃちょっと寄っただけだよ」

曙「はあ、そうなの……」


曙「ていうか本部って?」

提督「今更かよぼのやん……鎮守府敷地内で1番でっかい建物がそれな、お偉方のクソジジイ共があそこでふんぞりがえってて、そこでまあ今日の報告とか色々する訳ですよ」

提督「まあ、艦娘からしたらあんまり立ち寄らない場所だしなー、学校で言う用務員室か校長室みたいなもん?」

曙「よく分からない例えね」

提督「あー、中学行ってねんだったな……ところで良い匂いするけど、カレーか? これ」

曙「……うん、一応」

提督「へえ、そっか。 ぼのやんはもう食べた?」

曙「食べたけど」

提督「そうか、じゃあ先にあがっといていいぜ、俺はまだ時間かかるしな。 お疲れさーん」ドアガチャ-

曙「……忙しい奴」

提督「ああそうだ、お土産のケーキ宿直室の冷蔵庫に入れとくから食べたければご自由にどうぞ」ャチガアド

曙「あ、うん」

<ッタク、ホーコクナンテテキトーデヨカローガジジードモメ

曙「……先に、ね。 でも」

曙「あんなこと言っていたから……待っといて……ふあ……」


今日はここまで
ようやく終わりに手がかかった。後は向かうのみ


3日に一回とか言いながら今日の更新はないです報告、というか年内はこちらの更新はないです。たぶん
年末年始頃にまーたスピンオフスレ建てる予定だからね。仕方ないね
クリスマスに続いて年明けというイベントがあるのが悪い

今更だけど、横須賀じゃなくて佐世保なんだね


安価スレの七転八倒感が楽しそう
とか思いながらだらだら始める

>>498
佐世保というか、作中に登場している鎮守府は 佐世保鎮守府第2関東支部 なので舞台は一応関東だったり
あまり深い意味はないのです


 誰も彼もが敵だった。

 生前の艦としての記憶があるというだけで否定されては拒絶され、髪色のせいで隠す事も出来ず、かつて味わった理不尽にも劣らない理不尽を子供ながらに感じていた。

 親の都合で転校を繰り返して、行く先々で同じ対応をされ続けて。 次はきっと、という期待などした事がない。

 それでも両親は励ましてくれたりしたが、自分達のせいで不憫な目にという思いを感じて心が痛んだ。

 学校にも味方がいない訳ではなかった。 でも、私を庇うせいでその子まで傷付けられる事の方が辛かったから、自分から拒絶した。 いっそのこと、全員敵の方が気が楽だった。

 生まれを呪った事はない。 どんな形であれ生まれていなければ私はいないのだからと。 諦めていただけかもしれないけど。

 髪を染めて隠す、学校に行かない、とか色々やりようはあったと思うけど、甘えたやり方を覚えたら駄目になってしまう気がして。 生前の記憶がそうさせたのかと思うけど、今では知りようがない。

 悲劇のヒロイン気取りではないけど茨の道を歩み、それでいて解決策は探さない。 なんて不器用な生き方をしていたのやら。

 でも、楽しかった時期はあった。 ほんの数ヶ月とまるで一瞬だったけどかけがえの無い時間。 だけど、それだけでは救われなかった。

 敵だらけの赤い世界を生きる中、限界を感じた私は1つの逃げ道に辿り着いた。


幾年前——


「——だから、艦娘になるって言ってるの」

「今なら近くに鎮守府っていう私みたいなのと同じのが集まるところがあるし、丁度いいでしょ?」

「……分かってるよ、艦娘になったら化け物と戦わなくちゃいけないって事くらい」

「国の為にとか、誰かの為にってつもりもないけど」

「だったら——って? また引越しするんでしょ、こないだ話してるの聞こえちゃって」

「そうして引越した先の学校でまた同じ事になって、また心配させて……そういうのはもう嫌」

「だからここで終わりにするの、お母さん達に心配ばかりさせる生活を」

「違う、お父さんのせいじゃない、学校で上手くやれない私のせい、不器用な私のせいだから気にしないで」

「でももう大丈夫だよ、艦娘なんて私みたいのばっかりだろうからイジめる様な奴なんていないよ、多分」

「前向きに考えようよ、鎮守府ってとこでも勉強は教えてくれるみたいだし、任期っていうのが終わる頃なら私が学校に行っても突っかかってくる奴なんていないと思う」

「それにまだ小学生なのにお小遣い——じゃない、お給料貰えるんだから! お父さんのよりおおいかもね、そうだったら焼肉屋さんとか回転寿司とかに私が連れて行っちゃうんだから!」

「……何年かの間だけだから、そうしたら、また一緒に……うん……ちゃんと帰ってくるから……」

「……その名前で呼ばれるのも後ちょっとだけか。 少し変わった名前ともお別れだなあ、こっちも変わってるけど」

「本当に平気かって……平気よ、何とかなるわよ」

「私は駆逐艦の艦娘、曙だから」


——————
————
——

執務室前——


曙(……あ、ここかな)

曙(しつ務室……ドアの上の札に読み仮名は書いてないけど多分合ってる、はず)

曙(テートクってのはどんな奴なんだろ……どんな奴でもいいや、私にはそんなの関係無いし)

曙(上から物を言うだけの奴はクソッタレな奴だって散々夢で見てるから)

「あっ、あああのっ」

曙「……?」ジロリ

「ひっ」

曙「……そっちから声かけといて、何」

「あああごこめんなさいそういうつもりじゃそうじゃなくて」アワアワワタタ

曙「うるさいうざいうっとーしい」

「あぐう……で、でも諦めないから……」

曙(ほっといて入ろ)ドアガチャ

「ああん! 無視しないでー!」


執務室——

「ははは、時間ピッタリに元気なのがやって来たな」

「本当ね、ウフフ、初々しいわね」

曙「……うるさいのはこっちのピンク」

「な、何その呼び方ー! ちゃんと名前あるのにー!」

曙「知らないし」

「はっ! そう言えばそうだったーって勢いで入っちゃったしあわわわ自己紹介自己紹介あれ? 自己紹介するの? するんだよね?」

「そうだな、それじゃあ先に自己紹介して貰えるかな」

「あハイ! えと、も——じゃない、私はー! えーと! 綾波型漣駆逐艦特型駆逐艦の7番艦です! はい! 噛まないで言えた!」

曙(どこが)

「えーと書類にはーっと、特Ⅱ型駆逐艦は綾波型駆逐艦9番艦の漣、と。 よろしくな、漣」

漣「……めっちゃ間違ってた!」ガ-ン

「次は藤色の髪の君だな」

曙「……その持ってる紙に私の事も書いてあるんでしょ、だったら私から言わなくても」

「それだと紙にある事しか分からないだろう? 俺達は紙にある情報の集合体じゃなくて、ちゃんと肉の身体と心と魂を持った人間だからな」

曙「……チッ」

(感じ悪いわねぇ)

曙「化け物の間違いだっつうの」ボソッ

曙「……特型駆逐艦、曙、以上」

「曙か、確か漣と同じ綾波型だったけな」

漣「ほんと!? お仲間!」パアッ

曙「馴れ馴れしくしないで」

漣「えっ、うん……」シュン

(無愛想で年甲斐もなく可愛げもなくて……)

曙「……何」ギロリ

「あら、何かしら」

曙「言いたい事があるなら言ったらどう」

「別に? アクの強い子達が来たなーってだけよ」

(この子と仲良くなる未来は到底見えないわね)


「今度はこっちの番だな、俺がこの司令部を預かる提督……? 司令官?」

「どっちでもいいんじゃない?」

提督「かな、まあそういう奴だよ。 名前はまあ……別にいいか」

漣「えー? 教えてくれないのー?」

提督「どーせ名前で呼ばれずに提督ーとかしれいかーんとかって呼ばれるだけだろうしな! 提督なんてのは記号みたいなもんだぜ」

「あまり卑下しないの」

漣「……ところでさっきから気になってたんですけど、そっちの人って」

「あら私? そうよね、キチンと説明してあげる」

「私は長門型戦艦の陸奥よ。 よろしくね」

漣「やっぱり勘違いじゃなかった! 陸奥さんだー! 噂のびっくりセブン! 数多くの艦娘の中でも大和や武蔵などについで数少ないとされる陸奥さんだー! どんな敵もイチコロー!」

陸奥「びっくりじゃなくてビッグよ……そうやって目を輝かせてくれているところ悪いけど、私はまだ期待には答えられないわ」

漣「え? それってどういう」

提督「あー、とだな、ウチの陸奥……さんは事務員兼受付兼秘書兼色々……みたいな感じで出撃はまだ、出来ないんだ……」

漣「えーなんでー? どーしてー?」

陸奥「それがね……私の艤装、まだ無いの」

漣「えっ」

提督「この部屋に来るまでにあちこち立ち入り禁止とか見ただろうけど、この建物はまだ未完成で、司令部自体も発足したばかりでな」

提督「で、本来は新設されたばかりの司令部については大淀って艦娘がついて当面の間は雑務とか色々やってくれるらしいんだけど……人手不足らしくて」

陸奥「そんな時にね、私はこの鎮守府に艦娘として志願を出していたのだけど、そういう訳だからなんて勝手に話を纏められちゃってね。 艤装はそっち持ちでその内開発してくれればいいだなんて、失礼にも程があるわ」

提督「出来立てホヤホヤ司令部にそんな資源の余裕も無い上、配給される資源の割り当てもさして多くもないってのにな……はーあ」

漣「なんか……どうなんですかソレ色々と」


提督「まあそんな訳で、君達は現状のウチの大事な戦力って状態だな。 これからよろしく頼むよ」

漣「おお……陸奥さんが残念なのは残念だけど、ツートップみたいな感じ! いい!」

陸奥「残念残念って言われるとお姉さん悲しくなっちゃうぞ?」

漣「わわ、ごめんなさい……えっとじゃあ、これから頑張ろうね! 曙ちゃん!」

曙「私の部屋はどこにあるの」ズイッ

漣「……あのう」

提督「……出て曲がって、いや、鍵渡すよ。 渡そうと思って置いといたんだけど、どこやったかな」ガサゴソ

陸奥「ねえ貴方、これから一緒に過ごす子に対してそれはないんじゃない?」

曙「くだらない話を聞かされた身にもなってよ、アンタ達の身の上話なんか私からすればどうでもいいんだから」

提督「ははは……ごもっともだ」

陸奥「ごもっとも、じゃないでしょ? 貴方もその態度、流石に目に余るわよ」

曙「余るなりなんなり勝手にして。 仕事はする、でも用が無い限り話しかけないで。 他人と馴れ合う気なんて無いから」

漣「…………」

陸奥「……貴方ねえ!」

提督「まあまあ、抑えてくれよ陸奥さん。 ほら、部屋の鍵だ」チャリッ

陸奥「抑えろって、貴方も人の上に立つ立場ならもう少しはらしくしてよ!」

提督「してるさ、俺なりにな」

曙「……ヘラヘラして貫禄の欠片も無い」パシッ

陸奥「次から次へと……!」

提督「貫禄が無いのは事実だ、なんせ辛うじて酒が飲めない年齢だからな」

漣「わっか!? 提督、ってそんな簡単になれるの……?」

提督「近年はハードルが下がってるらしいけどな、これでも昔は神童だのと持て囃されてまして」

曙「……くだんない」ドアガチャ

バタン


漣「…………行っちゃった」

陸奥「何よあの子! 曙の艦娘の特徴は聞いていたけど、漣ちゃんにまで辛辣に当たる必要ないでしょ!?」

漣「あ、えっと、漣は……そんなに気にしてませんから」

提督「いやあ、キレッキレだったな。 いっそ清々しいくらいだ」

陸奥「何をふざけた事を言ってるのよ、貴方提督でしょ!? ビシッと叱ってやってよ! それとも甘やかすつもり!?」

提督「甘やかすつもりなんてないよ。 何でああまで辛辣なのかは分からんが、まだ顔を合わせたばかりだ。 長い目で見てやってくれないかな」

陸奥「……よくあんな子供に生意気な口を利かれて平気でいられるのね、貴方の方が年上なんじゃ」

提督「平気だと思う?」

陸奥「え……」

提督「それよりもだ、悪いな漣。 曙はあんな調子だけど……仲良くしてやってくれるか?」カガミーノ

陸奥「提督……?」

漣「……同じ艦娘だったら仲良くなれるって、友達になれるかもってそう思ってたの……ん、です」

漣「だから、あんな風に言われても諦めない、ません! わた、漣はしつこいから!」ピシッ

提督「そっか……敬礼はこうだな」ビシッ

漣「あわわ」ビシ-

提督「漣にも部屋の鍵、渡しとくよ。 曙の事頼んだぜ」

漣「うん!」

提督「返事ははい、だな」

漣「はい!」


一旦中断すでのな

そんな訳で過去編入ってます。口調違い過ぎて別人だらけです。主に漣

それにしても作中で語り切れてない設定の多いこと。作中では鎮守府というのは複数の司令部の集まりの一単位だとか。本名についてだとか。

それとなくは言ってますが分かりにくかったら申し訳ないです。話に直ちに影響を及ぼすものではありませんけど


————


曙(……ここかな、鍵に付いてる棒の番号と同じ番号がドアに書いてあるし)ドアガチャ

曙(流石に出来立てなんて言うだけはある、壁はシミひとつ無いしフローリングも近付ければ顔が反射して映りそう)

曙(しばらく過ごすには充分かな……でも気になることがある)

曙(私の荷物が届いてるのはともかく、見慣れない荷物の山)

曙(それと2つある机と椅子のセットに2段ベッド、少し考えたら気付く1人用の部屋としては広い感じ)

曙(これって、もしかして)

ガチャッ

曙(鍵の閉まる音……)クルッ

漣「ふ、ふふ、ふふふふふ、つ、つーかまーえたー……なんて」

曙「…………」ジトリ

漣(ひいっ、やっぱり怖い目が怖いっ)


曙「……なんでアンタが」

漣「いやっそのなんでも何もその……この鍵の番号に従っただけとゆーか……その……」チャリッ

曙(同じ棒のついた鍵……)

漣「で、でもさっきは逃げられらけど! 今はこのわたー漣様がドアの守護神だから! 逃がさないから! うん! じゃないはい!」

曙「…………」

漣「とゆーわけで、諦めてー……漣とお友達に……」

曙「」ズイ

漣「ひうっ」ズサッ

曙「」ズイッ

漣「あ、あのう……話聞いてる……」ドアビターン

曙「」ズイッ

漣「あうう……」オメメグルグル

曙「のいて」

漣「ひゃい……」ペトン

曙「……あのクソテートク」ガチャッ

漣「ふええ……なんであんなにおっかないの……」

漣「——じゃなくて! 逃しちゃったし! 待ってよー!」


執務室——


ドアガチャ

提督「ん、用がなんたらと言う割にはお早い対面で」

陸奥「ノックぐらいしたらどうなの?」

曙「アイツと部屋が同じだなんて聞いてないんだけど」

提督「そりゃ言ってないし、訊かれなかったからな」

曙「チッ……大人が小学生みたいな屁理屈を」

陸奥「……態度もさることながら、その言い方。 思っていたのと違うから部屋を変えろと言っている風に聞こえるのだけど」

曙「言う手間が省けたわ」

陸奥「いい加減にしなさいよ!!」

漣「ひっ」ビクッ

提督「お、漣も来たか。 こっち来いこっち」テマネキシーノ

漣「な、な、なぬ、何が何……?」ビクビク

提督「聞いてりゃ分かるさ、にしても陸奥さんて沸点低いのかな」

漣(なんでこの人は全く平然としてるの……?)


中途半端だけど書いてて凄く胃が痛いのでここまでにさせてくだし…
没入するのも考えもの

作中の連中はきっと軍人意識が相当に希薄。


チーズケーキおいひい
書き溜め交えながら始める


陸奥「ワガママで横暴で冷徹で自分勝手で、10分もしないでよくもまあこれだけの悪印象を残せるわね、目に余るなんて言葉じゃ済まないわ!」

曙「余るなら勝手に余らせとけば」

陸奥「半人前の癖に悪態だけは一人前ね、ボイスレコーダーに録音してタコが出来るくらい聞かせてやりたいわ!」

曙「そんな長い時間黙って聞いてる訳ないでしょ、馬鹿じゃないの?」

陸奥「っ、次から次へと減らない口ね」

曙「余ってる分は減らさないと溢れるから仕方ないんじゃない」

陸奥「ホント、どんな育ち方したらこうも可愛げもなくのかしらね!」

曙「……アンタに何が分かんの」

陸奥「教えて貰わなくても分かるわよ、大層大事に甘やかされて育ったんでしょうよ! 何を言っても許される環境でワガママも言いたい放題、他人の迷惑をかけようが気にも留めないような!」

漣「て、提督さん……」

提督(流石に不味いかな)

曙「……黙んなさいよ、何も知らない癖に」

陸奥「知らなくたって分かるって言ったでしょ、昨日今日までそうだったとしてもいつまでも小学生気分でいられるとこっちが迷惑なのよ!」

曙「っとにうっざい、叫ぶしか出来ないならホントに黙って」

陸奥「チッ、良いわよ、よく分かった、曙ってのはやたらと手がかかる艦娘だって噂は聞いてたけど本当みたいね! アンタなんて何処行っても同じよ!!」

提督「おい陸奥……」

曙(何処に行っても——)ギリッ

曙「私の事何一つ知らない癖して勝手に決め付けて喋ってんじゃねーよ乳デカ露出女っ!!」

陸奥「なっ、が、誰が、こんな格好好きでする訳がっ!!」ブンッ

曙「!!」

バシンッ


曙「……っ」

曙(……痛くな——)チラッ

提督「ぐっふぅ!」ドタッ

曙「なっ」

陸奥「提督!?」

提督「おーいってえ……陸奥さんの全力ビンタ半端ねえな……こりゃしばらく痕が、いだだ」

陸奥「ちょっと、どうして……」

提督「……手を上げちまったらもう戻れない、そう思っただけ」

陸奥「っ、でも」

提督「でももだっても無し。 子供相手にマジギレすんなよ、その上買い言葉に売り言葉じゃあアンタも同罪だぜ?」

陸奥「…………」

曙「……何よ、庇って恩でも着せるつもり?」

陸奥「またそうやって……!」

提督「この程度で恩を感じてくれる様ならさっさと庇ってるに決まってるだろ?」

曙「それは……」

提督「でもまあ、見過ごせなかったのはこれだけじゃない、いつつ……流石に行き過ぎたワガママを看過出来る程俺も寛容ではないよ、曙」

曙「……でも、私は独りの方が」

陸奥「此の期に及んでまだ——」

提督「そこで妥協案だ」

曙「……妥協?」

提督「曙のワガママを通すのであれば、本来同室の漣のワガママも通るべきだと思うな、俺は」

漣「漣の……?」

曙「そんな理屈が……」

提督「道理の通らないワガママを通そうとしていたお前さんにゃ言われたくないな?」

曙「……チッ」


漣「えーと……?」

提督「さあ漣よ、何でもワガママ言ってみな。 この絶対零度ガールのワガママを成り立たせるには君にも何か好きにさせてやんないと釣り合いが取れないからな」

曙「何、その言い方」

漣「わた、漣は……、……何でもいいの?」

提督「俺の財布の許す限りで頼む、まだ給料貰ってないから……」

漣「……離れたくない」

漣「曙ちゃんは独りがいいって言うし、ちょっと怖いし、何考えてるのかよく分かんないけど……それなのに離れ離れになったらお話も出来なくて、友達にもなれないから……」

提督「ええ子や……」

陸奥「提督、余計な茶々入れないで」

提督「あ、はい」

曙「余計なお世話よ」

提督「」

漣「……曙ちゃん」

曙「馴れ合う気は無いって言ったでしょ、これだと1人部屋になってもコイツに付きまとわれるって事じゃない、私が一方的に不利な決め事じゃん」

陸奥「……アンタはどうしてそんなにも頑なに——」

提督「よーしわかった! じゃあ俺もこの件については話を一切受け付けん、強行採決な!」

陸奥「えっ」

漣「へ」

曙「は?」

提督「だってしょーがないだろ? 曙のワガママをただで通す訳にもいかないし、その曙は妥協案も受け入れる素振り無しと来たからもう俺が決める、異議申し立ては一切受け付けないからよろしく!」

曙「そんな勝手な——」

提督「勝手も横暴も百も承知ってな! なー陸奥さん、家具とかの倉庫って何処だっけ」

陸奥「え? 部屋を出て左……宿直室の隣だけど」

提督「おっけサンキューさん、さて目当ての物はあるかなっと」ドアガチャ

陸奥「…………」

曙「…………」

漣「……行っちゃった」


曙「…………」

陸奥「…………」

漣「……ど、どうしたら」

陸奥「どうしたらって……どうするの」

曙「え、何で私」

陸奥「アンタが原因みたいな、というか原因じゃない……」

曙「……知らないわよ、アイツが何をするつもりなのか分かんないのに」

漣「でも、目当ての物が何かって……目当ての物ってなんだろ」

曙「……さあ、首吊り用の縄とか」

陸奥「そんな縁起でもない事言うんじゃないわよ」

曙「……でもあれ、怒ってんの? 怒ってないの?」

漣「……分かんない」

曙「……アンタは何か」

陸奥「彼と顔を合わせたのは昨日が初めてなのよ、そんなんで人となりが分かる訳ないじゃない……」

<ゴトン

漣「ひっ」

陸奥「な、何?」

<アークッソオモテェナ、ミタメイジョウダナコリャ…

曙「……探し物は見つかったみたいね」

漣「部屋、通り過ぎてっちゃった……」

陸奥「そうね……」

曙「…………」

陸奥「…………」

漣「……追わなくても……?」

陸奥「良い予感はしないわね、行きましょう」タッ

曙「もう、何だってのよ、訳分かんない」タッ


廊下——


漣「ところで、提督さんはどっちに……」

陸奥「どっちも何も、さっきの音からして倉庫とは反対の方なのは確かでしょ、それにさっきまでの話の流れからすれば」

曙「……部屋か」

漣「部屋? あ、いた、見えた! けど、部屋に入って……あそこは私達の?」

陸奥「ここまでは予想通りだけど……何をするつもりなの?」

曙「まさか爆発でもするんじゃないでしょうね」


陸奥「提督!」ドアガチャ

曙「アンタ一体何を——」タタッ

提督「せ、えぇのっ!!」ブォンッ

ドバンッ!

陸奥「」

曙「」

漣「」

提督「ぬぉっとと、思いの外硬いというか力不足と言うか……」ヨロヨロッ

提督「……ん、どしたの皆? 危ないから離れてな」

漣「は、はんまー……?」

提督「お、いいだろコレ。 倉庫に壁壊すのに丁度いいのないかなーって駄目元で探してみたらあってさー。 でも流石に重いのなコレ」

曙「えっ」

陸奥「ちょっと待って、サラッと言ったけど今なんて?」

提督「だから壊すんだよ、壁」


陸奥「壊、って何を馬鹿な事言ってるの!?」

提督「確かに馬鹿げてるけど、俺はいたって大真面目だぞ? 壁壊して隣の部屋と繋げて、部屋が広くなれば曙も干渉されない程度のパーソナルスペースは確保出来るし、逆に漣も曙に必要な時に構う程度の事は出来るだろうし。 やー、我ながら見事な折衷案」

曙「だからって壊すなんて馬鹿よ! 馬鹿じゃないの! 大馬鹿よ! だったら私が隣の部屋に行けばいいだけじゃん!」

提督「他にもメリットはあるんだよなー、いずれ他の艦娘が着任するかもしれないし、そんな時に同じ綾波型の子が来たら広くなったこの部屋に入れてやれる。 同型の艦娘なら初対面でもそこまで緊張せずに済むんじゃないか?」

漣「……なるほど?」

陸奥「納得しちゃ駄目よ」

曙「だからって他にやりようが……こんな当てつけみたいなやり方やめてよ……」

提督「当てつけ? 何言ってんだ、俺がやってみたいからやってるだけだっての」

提督「障子を破いてみたり、高そーなツボを割ってみたりとか、やっちゃいけない事への忌避感を気にせずに何かを思っきしやってみたかったんだよなー」

陸奥「それにしたって飛躍し過ぎだから! 修繕費とか諸々どうするのよ!」

提督「色々テキトーに騙くらかしてぶん取る!」

陸奥「それだったら普通にリフォーム代請求すれば良いじゃない! と言うかこの建物一部が未完成って言うならそれに乗じて!」

提督「……なるほどな? でも壁壊したいなー」チラッ

陸奥「スイカでも叩いてて……」

提督「まだシーズンじゃないやん……」


提督「ま、しゃーなしって事で。 とりあえずその内業者呼ぶから、そういう事でいいかな、漣」

漣「えっ、うん……はい」

提督「曙も、それでいいか?」

曙「…………」コクン

提督「よしっ、とどうしようか? 訓練でもと思ってたが、来たばかりで気疲れしてるだろ? 司令部敷地内でも旅行するか? 旅行ってーか下見? 散歩?」

漣「あ……荷物の整理とかが……」

提督「ん、おおう、凄え量だな……ならまた後でだな、何かあったら部屋に来てくれなー……ハンマーを倉庫に戻さなきゃじゃん、あーだる」ドアガチャ

陸奥「…………」チラッ

曙「…………」

陸奥「……じゃあ、またね」ガチャ-

漣「はーい……」

曙「…………」

漣「……叩いた跡凄いね、へこんでる」

曙「…………」

漣「……ハンマーって思ってたより小さいんだね、初めて見たけど」

曙「…………」

漣「……曙ちゃん、大丈夫……?」

曙「……今はちょっとほっといて」スタスタ ゴロン

漣「……お昼からベッドに転がってると妖怪フートンがやって来るよ」

曙「何よそれ……」


とりあえずここまで。眠かったり眠くなかったりしてて不穏な気配
胃が痛いところは過ぎたので一安心。ぶっちゃけ今んとこの過去編で1番不憫なのは漣な気がする

ぶおおおおー
というわけでだらだら始める


執務室——


提督「あ゛ーあ助かったーあ……」ダラーン

陸奥「ど、どうしたの急に? と言うか、何が……」

提督「どーにかキレずに済んだって話……いやー危なかった危なかった」

陸奥「え」

提督「まあ陸奥さんのお陰だけどな? 目の前で感情爆発させてる人がいるとかえって冷静になるもんだな」

陸奥「ちょっと待って、貴方内心では怒ってたの? いや、壁をハンマーで壊そうなんて人が怒っていないはずないと思うけど……」

提督「そら小生意気なガキンチョ見てたら苛立ちくらい溜まりますよ、ぷんすこ! 俺は聖人君子じゃないんだゾ!」

陸奥「急に説得力が灰塵と化した気がするわ」

提督「ま、マジな話年上っつーか大人が子供を寄ってたかってガミガミ言うのはよろしくないと思ってるからな。 俺はまだガキみてーなもんだけどアイツらからしたら大人だし、一応さ」

陸奥「……考えてるんだ」

提督「人様の娘を預かる身分ですから。 でも陸奥さんはキレ過ぎだな」

陸奥「うっ」

提督「慣れない環境、予定外で想定外の事務役、小生意気な子供、その他諸々豪華絢爛ストレスのフルコースみたいなもんだけどさ。 もう少しテキトーでもバチは当たらないぜ?」

陸奥「……年下に人生観を説かれるのは何かシャクに触るわね」

提督「1つ違いなら誤差って事で。 アンタも俺も大人の余裕を持つのはこれからよ」

提督「それまでは精々見栄張ってそれっぽくしないとな。 あー、胃が痛くなりそう」


陸奥「こっちはこっちとしても、まだ問題はあるわよね」

提督「曙だろ? まあなんとか仲良くしてやってくれよ」

陸奥「…………」ガチャ

提督「ドア開けて何しとんの」

陸奥「いや、この手の話をしてたら実は外で聞いてました的な……あるじゃない?」

提督「聞いてました的な話をするつもりだったのか……」

陸奥「正直に言わせてもらうけど、ここに置いておかない方がいいわよ、あの子」

提督「ほう? そらまたなんで」

陸奥「これから先、貴方も言っていたようにここもいずれ人が、艦娘が増えていくでしょう」

陸奥「その度に誰彼構わず喧嘩を売って、場を乱しては空気も険悪にして、司令部の士気や風紀にも影響が出ないとは限らない」

陸奥「そうならなかったらならなかったで、あの子の居場所は無くなる。 そういう空気に飲まれなかった子達に疎まれ、排斥されて、何処にも居られなくなるわ」

陸奥「恩着せがましいけれど、ここにいない方があの子の為だと思うの。 集団生活には向いてなさすぎるし、曙の艦娘だからって理由を通すのも無理と限度が……」

提督「まるでアイツの全部を知ってるみたいな物言いだな?」

陸奥「知らないけれど……さっきまでのやり取りで概ね把握出来るでしょ?」

提督「時期尚早、決め付けるには早過ぎるな。 アイツにはまだまだ時間をかけてみるよ」


陸奥「……あ、そうだ湿布……」ガサゴソ

提督「湿布?」

陸奥「さっき叩いちゃったでしょ? 痛くないの?」

提督「……意識したら痛くなってきた」

陸奥「ごめんなさいね、今思い返すと凄くみっともない……はい、顔出して」ペター

提督「いつつ、まあそんな事もあるって」

陸奥「……でも、どうしてあんなにあの子のことを庇う、いや、庇えるの? 比べて大人だからってだけじゃ理由に欠けるんじゃない?」

提督「んー? んー……似てるから?」

陸奥「似てる? 誰に?」

提督「俺に」

陸奥「貴方に?」

提督「っても今より前の、だけどな」


提督「まあざっくり言うとな、ガキの頃周りより少し出来る子程度でチヤホヤされてた俺は他の連中を俺より出来ない雑魚みたいに思っててな、調子に乗ってたのよ。 雑魚が擦り寄って来んなってな」

提督「思うだけならまだしも、それが言動や態度にも表れてたからさあ大変。 周りは見事に敵だらけになりました」

提督「大人にだけ都合良くしとけばどうにでもなったのを理解してたし、それが余計にぼっちを加速してたなあ……これが小学生時代ね」

提督「中学に上がっても変わらねえな、人間関係もそのまま繰り上がるだけだしわざわざ寄って来る奴もいないわな」

提督「でもなー、所詮小学生レベルで多少頭抜けていたところで意味ない訳よ、馬脚を現すとでも言うのかな? 小学校では神童でも、中学校では上から数えた方が早いだけの性格悪いクソガキでしかなかった」

提督「いやー、流石に堪えたなあ……事の問題にはすぐ気付いたけど当時の俺ではどうしようもなかった」

提督「だから逃げる事にした、救いようのない人間関係から。 っても中学辞めた訳じゃなくて、卒業まで耐え抜いてその間勉強して逃げる為の選択肢を増やそうってな」

提督「そしたらまあ……この道を選んでたよ。 選んでたってーけどハードルも相応に高かったしギリッギリだったけどな?」

提督「けどまー、リセットされた人間関係は気楽だったなー。 人付き合いなんてまともにした事なかったけど貶さず驕らずありのままでいればそれでいいんだもんよ。 やーホント周りに恵まれたなあ」

提督「でまあ、その頃にようやく昔の俺は自分から敵を作ってたって気付いた。 おせーよっての」

提督「それで……あ、陸奥さん外確認してもらってもいい? いや、実は聞いてましたなんてされてたら恥ずかしゅーて敵わんわ、こんな話」


提督「——で、そんな経験をしたからか、曙がガキの頃の俺と被って見えたんだよな。 初対面なのに」

陸奥「それって、あの子も驕り高ぶってるってこと?」

提督「や、敵を作る目をしてた。 初対面なのに仇でも見るかのよーな視線だったし。 それも俺に限らず漣と陸奥に対してもだ」

陸奥「よく見てるのね……でもどうして」

提督「おかしいよな、こっちゃまだ何もしてないんだし。 いや、ガキの俺みたく周りは雑魚思想してるならまだしも別にそういう訳じゃなさそうだし」

提督「……馴れ合う気はないとか言ってたけどね? うん」

提督「曙の過去は知らん、理由も分からんが敵を作る生き方をしていたのは分かる。 それも多分俺以上に」

提督「だからかな、この子の敵にはなっちゃダメだ、って。 味方でなくとも、敵になったらガキの頃の俺と同じになっちまうんじゃないのかってな」

提督「艦娘だろうと何だろうと、子供がそんな荒れ果てた人生を少しの間だとしても過ごす必要はないだろ?」

陸奥「……凄いのね、会って間もないのにそんなに考えていただなんて」

提督「だってこれ今考えた後付けだし」

陸奥「えっ」

提督「俺のしてた行動に今理由を当てはめただけだよ、アニメや漫画じゃねんだからそんな一瞬で過去なんて振り返られないって」

陸奥「……なんか、台無しね」

提督「でも嘘ではないさ」


提督「ま、そんな訳だ。 仲良くしてやってくれよ」

陸奥「……私はもうあの子に敵認定されていてもおかしくないんだけど」

提督「昨日の敵は今日の憎たらしい隣人ってことで」

陸奥「それ、解決してないわよね?」

提督「まあまあ、多少は思いの丈ぶつけ合った方がいいんじゃん? 物理攻撃はNGだけどな」

提督「喧嘩はしても相手は貶さない。 これでいいんだよ」

陸奥「簡単に言ってくれるわね……そうだ、1つ訊きたいんだけど」

提督「なんじゃらほい」

陸奥「さっきのアレ、貴方、本気で壁壊すつもりだった?」

提督「まさか。 話が面倒臭くなりそうだったから暴走したフリしただけだよ。 陸奥さんが止めて有耶無耶にしてくれんだろって沸騰寸前の投げやりな思考だったけどな。 でも助かったよ」

陸奥「はあ……どういたしまして」


————
——

曙と漣の部屋・夕方——


曙「ん……」パチ

曙(どこ、ここ)ムクリ

漣「あ、起きた……? おはよう曙ちゃん……」

曙「……? あー、そっか、家じゃないんだ……」

曙「……て言うかアンタ、何その、数」

曙(漫画やらノートやら、絵本やらが床を埋め尽くしてる……その犯人はノートパソコンでなんかしてるし)

漣「え、あ、わわゴメン、整理しようと思ったらその……つい、へへ」

曙「…………」ジトー

漣「ひええ……で、でも本棚もないし机の上も限度があるしぃい……」

曙「……勝手にすれば、片付けるのはアンタだからどうでもいい」フイッ

漣「う、うん……」

曙(……漫画とかは分かるけど、なんで絵本……)

曙(いや、どうせいつか離れ離れになる奴の事なんか深く考えなくていい、よっぽどじゃなきゃ離れ離れになっても続きやしないんだから……)


<コンコン

曙「ん」

漣「はーいぃってよくないぃい!?」ドタバタバタン

提督「スマン、もう遅い」ドアガチャ

提督「って、あらまあ、凄い散らかりっぷりだな」

漣「ううう、これはそのぅ……」

提督「はーん、漫画や絵本ねえ……必要なら本棚買ってやろうか?」

漣「えっ」パアッ

曙「ふん、甘やかしちゃって」

提督「まあそう言うない。 ところでどうだ? ちょっと早いけど夕飯にでも」

曙「夕飯……?」

漣「そう言えば食堂があったような……」

提督「あー、食堂な、あるにはあるけど炊事係がいなくて……ってか君ら以外にいないからな、艦娘」

曙「何、じゃあ私達に作らせるわけ?」

提督「いずれはそういうこともあるかもな。 今日は、てかしばらくは君らが作ることはないさ」

提督「それに今は4人しかいないんだ、どうせなら執務室で一緒に食おう」


今日はここまで
2月上旬からイベントか…バケツ集めなきゃ…


話の筋道は浮かんでいるのにそれを書き出す手が動かないのが悪い癖
ぐだぐだ始める


執務室——


曙「…………」

提督「おう、どーしたそんな目をして。 親の仇でも見るように」

曙「……アンタ、常識って知ってる?」

提督「知ってるか? 常識というのはそいつがそれまでの人生経験によって培われた偏見であると昔の偉い人が——」

曙「そーゆー事が言いたいんじゃなくて」

漣「」

曙「コイツなんて気まずさで凍り付いてんじゃん」

提督「気まずさ、と言うなら原因は分かってる訳だろ? つまりはそういう事ですよ」

曙「……だからってさっきの今なんてのはないでしょ」

陸奥「私だって反対したわよ、いくらなんでもって。 ハイお待たせ」ゴトッ ゴトッ

提督「やったーカレーだー!」

曙「……子供か」

陸奥「残念ながら子供にはまだ早い辛口です」

曙「あっそ、お生憎だけど私は辛口でイケる口なの。 残念ね」

陸奥「当然の様に愛嬌ないのねー、子供じゃなかったらクソガキかしら?」

曙「そっちも反省してないんじゃん、乳でかヒステリーさん」

提督「ホントでかいよなあ」マジマジ

陸奥「…………」パシーン

提督「いったい! 何で俺!? ってかそのハリセン何処から出したの!?」

陸奥「ゴメン、今叩くなら貴方だと思って」

曙「ドスケベクソテートク」


提督「やーまあ、いつまでも喧嘩されてる方がうぜーからとっとと同じ釜の飯食って仲直りしたらどーよ? って魂胆でな」

曙「直る仲がないのに」

提督「ないなら作れば良いのです」

曙「馴れ合いはしないって言ったでしょ」

陸奥「ホンット可愛くないわねーこの子。 こっちは一応でも和解するつもりはあるって言うのに」

曙「愛嬌ないとか言っておいてどの口が」

提督「はっはっは、喧嘩するほど仲が良いってな!」

曙「アンタが1番ウッザイ」

提督「褒め言葉として受け取っておこう」

漣「」

陸奥「おーい漣ちゃーん、起きてー。 息してー。 この場何とかしてー」

曙「荷が重過ぎる」

漣「はっ、えーえんとうさぎの数を数えさせられる地獄に落ちる夢を……うさぎがいっぴきうさぎがにひき……」

提督「安心しろ、まだ地獄だから」

曙「分かってんならその地獄を作り出す真似してんじゃないわよ、馬鹿なの?」

陸奥「貴女、少しは提督に敬意を払ったらどうなの? 一応上官なのよ? 一応」

提督「ねーねー、陸奥さんからの評価下がったの俺? 一応連呼はやめようね?」

曙「こんな奴に敬意を払う前に誠意を見せてもらいたいもんだわ、敬意の前払いなんかまっぴらゴメンよ」

漣「」ギョルン

提督「まーた白目向いちゃってまあ」


提督「まあんなこったどーでもいーからカレー食べようぜ、カレーを熱い内に食べるって諺があるだろ」

曙「無いし」

陸奥「寧ろ貴方は多少冷えてもらった方が丁度いいと思うの」

提督「俺寒いの嫌いなんだけど」

陸奥「物理的にじゃなくて」

漣「」

曙「アンタはいつまで固まってんの」クチニツッコミーノ

漣「」パクッ

漣「」ダラダラ

提督「お、戻った」

陸奥「でもスゴイ顔してるんだけど……大丈夫?」

漣「からい……」ウルウル

陸奥「もしかして辛いのダメだった!? ゴメンね! えーと今から作り直すと時間かかるでもえーと」ガタドタバタアタフタ

漣「らいじょぶれふ……おとなのかいらんってやつ……」

提督「辛口カレーと作り方見ないで鶴を折るのは大人の階段の代表だよな……」

曙「低過ぎる大人の階段」


提督「漣には大人の階段を登ってもらうとして、いただきまーす」

陸奥「いただきます」

漣「さきにいたらいてまふ……」

曙「……いただきます」

陸奥「意外に素直に食べるのね、アンタの作ったのなんかいらないって言うのかと」

曙「余計なお世話よ……食べ物に罪は無いし」パクー

提督「おっ、いい言葉。 食事時にまで乱痴気騒ぎ起こされてたら流石の俺様も堪忍袋の緒がバーニングしてたぜ」パクー

曙「さっきも充分気が触れてた様に思えるけど……ッ!?」ゲホッエフッゲフン

提督「おおう、どーしたいきなり」

曙「の、喉が、焼け……げほっ」

陸奥「あーら? やっぱりお子様には早かったみたいね?」

曙「これ、そんなレベ、るじゃ……」

提督「どーやら曙はまだ大人の階段を登り切っゴッホォゥ!!?」

陸奥「えっ」ビクッ

提督「き、気管にダイレクトアタックはズルい……」

曙「こんな大人の階段なら登らなくていい……」

漣「」

提督「ああ! 漣があまりの辛さに階段の道中で気絶している!」

陸奥「ええ……? そんなに辛いかしら……」パクー

陸奥「…………」

提督「……無理すんな陸奥さん」

陸奥「…………大人の階段なんて無くなればいいのよ」

曙「こんな階段脇道に決まってる」

提督「よく見たら結構赤色してるな……」

陸奥「一味唐辛子振り入れてる時にクシャミしちゃったんだけど……もしかしてその拍子に」

提督「ドバッとしてゾバーって流れ出たか……」

陸奥「……あと8人前はあるから数日間頑張りましょう」

曙「1人で処理しなさいよ……」

漣「うさぎがにじゅうきゅうひきうさぎがさんじゅっぴき」

提督「またうさぎ地獄に堕ちてらあ……」


————


漣「うさぎがひゃくいっぴきわんちゃんうさぎがひゃくにひきうさぎが」

提督「おーい、蘇れー」ホッペブニー

漣「はっ、うさぎをえーえんと」

提督「それはもういいから」

曙「……カレー食べるたびに今夜の事思い出しそう、苦いどころか辛い思い出ってね」

陸奥「返す言葉も無いわ……」

提督「カレーだけに辛え思い出ってな!」

曙「…………」

陸奥「提督、今日だけでいいからもう喋らないで貰える?」

提督「辛辣ぅ……」

曙「……食べ終わったからもう用は無いわ」ガタ

提督「ん、そーだ。 風呂、ってか大浴場だけど沸いてるはずだからいつでも入っていいぞ」

漣「大浴場?」

提督「大浴場。 昼過ぎに掃除してたがでっかいぞー、東京ドームくらい」

漣「そんなに!? 見に行こ曙ちゃん!!」ガタッ

曙「いや私は……」

提督「ん、もう日も暮れる頃か。 君らは風呂入って少ししたら歯磨きして寝る時間だろうかね、ならばおやすみと言っておこうか」

陸奥「……おやすみ、また明日」

漣「おやすみなし!」ドアガチャ-

曙「…………ふん」ツイッ


長い睡眠時間だった(白目)
そして生存報告かつ言い訳の時間。考えれば考えるほど考えに詰まってくるという
何食わぬ顔であっさり再開するかもですが、しばし時間をくだし…


最近芋けんぴばっか食べてる
そんなわけでしれっと始める


提督「……さて、一緒に机を囲んで親睦を深めよう作戦の結果ですが」

陸奥「芳しいとは言えないわね、曙に話を振るたびに気まずいくらいだったし」

提督「いやあ、反抗期ってな怖いもんだなあ……」

陸奥「そういう問題かしら」

提督「だけどこの程度じゃへこたれんよ! 時間はたっぷりとっぷりあるんだからな、あのぶきっちょガールをどうにかしてでも攻略してやるぜ!」

陸奥「……アレを不器用って言うの?」

提督「敵を作る云々って言ったじゃん? ここに来る以前はそれでも良かったろうけど、ここに来てまで同じスタイルを通そうってのは他に人との接し方を知らないぶきっちょだとしか言いようがないだろ」

提督「人間関係がリセットされてるはずなのに、またそこで敵を作る必要なんてないにもかかわらず、だ」

陸奥「ふうん、そういう見方もあるのね」

提督「生意気なクソガキ、で思考を止めてたらそう考える事も出来んよ」

陸奥「あ、やっぱりそう思ってる部分もあるんだ?」

提督「まあ……俺も寛容さを鍛えないとな、うん」


提督「最悪、俺への態度はあのままでもいいとしてだ、漣とは仲良くやって欲しいよなあ……」

陸奥「そうよねぇ……漣ちゃん、あのままじゃ針のむしろも同然よね」

提督「何か都合のいい切っ掛けでもあれば進展するかね……あ、出撃させればいいんじゃん、艦娘なんだし」

陸奥「出撃? ……連携とか大丈夫なの? あのつっけんどんな曙とで」

提督「……そこまで子供じゃないことを願う……いや、あのくらいの歳だとそこまでの子供だろうしなあ……」

陸奥「……せめて演習にしといたらどう?」

提督「……鎮守府近海の哨戒くらいなら大丈夫だろ、うん。 比較的安全な海域だし、重巡クラス以上が顔を出す事のない程の近場であれば特に」

陸奥「想定外の事が起きないとは限らないわよ? 空母が鎮守府を急襲したりとか」

提督「不安を煽るなよう……とにかく、一緒に出撃させて親睦が深まったらいいなってか深めろ大作戦だ! 明日から数日間パパッと色々叩き込んで、華々しく大海デビューして貰おうか!」

陸奥「そう上手く行くといいわねー」

提督「凄い投げやり」


数日後・出撃ドック——


提督「うむ、壮観壮観」

曙「壮観って言葉の意味、広辞苑で調べたら? 駆逐艦の艤装なんかじゃちっぽけだってのに」

提督「こういうのは気分の問題ってな」

陸奥「……見てると私もムズムズして来たわ、私も早く艤装欲しいなぁ」ツンツン

提督「それはまたの機会にって事で……」

曙「……バカップル」

提督「ん゛っ、まあ出撃って言ってもここから1,2kmくらいのエリアを見回ってもらうだけでいいから、そんな大変じゃないよ」

曙「さっきも聞いたわよ……子供のお使いレベルじゃん、こんなの」

提督「海上初心者にはこれくらいが妥当って訳よ。 いくら生前の記憶があるからって練度が伴っていない以上不用意に危険なところに行かせられるかってんだ」

曙「……ま、仕事は仕事だしちゃんとやるけど、こいつはどうなの」チラ

漣「なまむぎなまごめなまたまごなまうになまにくなまなまこ」ガタガタガタガタ

提督「分かりやすく緊張してんなあ」

陸奥「大丈夫よ漣ちゃん、軽くだけど訓練もしたでしょう? おんなじようにやればいいの」

漣「あああ、頭では分かっていてももも」

曙「先が思いやられる……」

提督「万が一敵に出くわしてもまあ、大丈夫だろ。 余程テンパってない限り、艦娘には生前の艦としての戦闘勘が宿ってるって聞くし、戦えない事はないはずだ」

曙「…………」チラ

漣「となりのきゃたつはよくきゃききゅうきゃきゅきょ」ガタガタ

提督「……まあ、よろしく頼む」

曙「別にいいわ、1人でだって。 曙、出撃する」ドッ

漣「あかまんとあおまんとってあわわわ
曙ちゃん待ってぇ! 行ってきまー!」ドッ

提督「…………」

陸奥「…………」

陸奥「……本当に大丈夫なの?」

提督「……執務室に通信機器あったろ、一応そこで待機してようか」


鎮守府近海——


曙(……そろそろ1kmくらい、のはず)

曙(振り返れば陸がなんとか見えるような見えないような……この辺りから先を適当に見回ればいいのかな)

漣「ちょっと待ってよー……曙ちゃん、陣形ー!」

曙「あ? 陣形なんてあってないようなもんでしょ、2人だけなのに」

漣「それはそうだけど……せっかく習ったんだし……」

曙「……じゃあ単横陣」

漣「えっうん」スイーッ

曙「……単縦陣」

漣「はーい」スイーッ

曙「複縦陣」

漣「えーっと」スイーッ

曙「最後に輪形陣」

漣「輪……」グルーリ

曙「……私の周りを回ってどうすんの」

漣「だってえ……」

曙「他のも後ろか横に着いただけだし、だから2人じゃ陣形なんて意味がないってのよ」

漣「おっしゃるとおりです……」


曙「じゃあもう、陣形なんてどうでもいいから見回り始めるわよ。 見回りだし両舷原速で」

漣「うええそんな急に、えっと原速原速……」

ザァーッ…


漣「……何にもいないねー」

曙「どーせなら1匹や2匹くらい出てきて欲しいもんね、コレでもぶっ放したらストレス解消になりそうなのに」チャキッ

漣「主砲……? ストレス?」

曙「アンタ達しつっこいのよ、構うなってのに事あるごとに何あるごとに声掛けて話振って近寄ってきて。 この数日間ずっと。 学習能力ないワケ?」

漣「そ、そんなこと言われても漣は……」

曙「ハン、こんな奴を友達にしようだなんて見る目がないのね。 友達なんてたくさんよ、よっぽどでもないとその程度の繋がりなんて簡単にちぎれるってのに」

漣「そんなことないよー、たぶん……離れてても繋がってるのが友達だと思うし……」

曙「……チッ、知ったような事を」

漣「曙ちゃん……」

漣「……ん? あれ、曙ちゃん、あっち!」

曙「あ? どっちよ」

漣「あ、えーと2時?の方! なんかいる!」

曙「ん……確かに、双眼鏡っと……あれはー……駆逐イ級、だっけ。 1匹だけか」

漣「ど、どうしよう……どうすれば」

曙「どうもこうもないわ、気付かれてないみたいだし気付かれるまで接近して、先制攻撃して潰すわよ」

漣「ええ!? た、戦うの!? 戦い方なんてちょっとしか習って——」

曙「あのね、私達は艦娘でしょ。 戦わないでどーすんのよ」

曙「それに、戦い方は確かにロクに教えてもらってないけどなんとかなるってクソテートクが言ってたじゃん」

曙「悔しいけどその通りだと思う。 訓練の時に初めて水の上に立った時、動いた時もなんとなくで動けたし、バランスも取れたから」

曙「所詮、私達艦娘は戦うための化け物ってことよ。 化け物の相手をするのには化け物がうってつけってこと」

漣「曙ちゃん……?」

曙「気ぃ引き締めなさい! ストレスごとあの化け物をぶっ飛ばしてやるんだから!」


曙「第一戦速まで上げて、奴がこっち向いてないうちに近付くわよ!」ズアッ

漣「え、えーここから砲撃すると言うのはー」ズアッ

曙「バカね、有効射程外でしょーが! 第一そこまで狙える程上手くないし!」

漣「それはそうだけどー! 見れば見るほどおっかないー!」

曙「知るか! このままアイツの後ろを斜めに突っ切る軌道で! 気付かれ次第に左舷魚雷発射、主砲で追撃!」

漣「気付かれって、それ魚雷当たらないと思うんだけどー!」

曙「動きを封じる様に撃つの! メインは主砲!」

漣「それ威力的に駆逐艦のやり方じゃない気がするんだけどー!」

曙「知ったこっちゃないわ! 目標との距離50切った!」

漣「センチー!? メートルー!?」

曙「メートル!」

イ級「——!」

漣「あ、気付かれ——」

曙「魚雷発射!」ガシュッ

漣「ぎょは、発射!」バシュッ

曙(——狙い通り、魚雷を躱そうと魚雷の軌道に対してなるべく平行に動き始めた! 進行方向を制限した今が!)

漣(あ、この距離と、動く方向さえ分かっていれば漣でも!)

曙「——ってぇ!」ドンッ

漣「当たれぇ!」ドッドンッ


ザバッ ドパンッ ギャドンッ

イ級「オオオ……!」

曙「外した……! けど1発命中! やるじゃんアンタ!」

漣「イ級、た、大破炎上! でもまだ生きてる!」

曙「チ、取り舵一杯……もう!急速旋回とか出来ないのこれ!?」

漣「そんな無茶なことしたら主機とかが壊れちゃうよ!」

曙「——だったら! ん゛っ!」ピョンッ

漣「えっ」

漣(跳ねっ——)

曙「ぐうっ、これでどおよ!」ザッバシュッ

漣(跳ねてる間に身体ごと方向転換!? えっでも艤装重いよね!? え!?)

漣「……漣にも出来るかな」ピョンッ

漣「ぴゃー!?」スッテンコロリーン

漣「うう……慣性がー、反動がー……」ビショヌレーノ


曙「さて、と。 動きながらならともかく、こっちも足を止めていれば外す心配はないわね」

イ級「……!」

曙「……未練がましそうにしてんじゃないわよ、そんな思考があるか分からないけど、そんな姿で生まれたことを呪うのね」ドンッ


漣「あ、曙ちゃーん」ザバー

曙「ん……アンタなんでそんなびしょ濡れなの」

漣「盛大にコケて……ところであれ、倒したの?」

曙「多分死んでるんじゃない? さっきまでは目みたいなのが鈍く光ってたけど、今は消えてるし」

漣「……見れば見るほどなんというか、ちっさいクジラだよね」

曙「何言ってんだか……さて、どうする? まだ見回りをしたと言うには見回ってないけれど、1匹処理した訳だし」

漣「うーん……提督さんに倒したこと報告しない? で、どうするかも相談して」

曙「それもそーね、それなら充分だからもう帰って来てもいいって言いそうながするけど」

ゴボポボボ…

曙「……? 何の音——」

ザバァッ ギュドッ

曙「ごふっ——!?」ズシャァアアア

漣「曙ちゃん!?」

曙「うう……痛っ……」

曙(何、何を受けたの、攻撃? 砲撃じゃない、突撃……体当たり的な)

ゴドンッ

曙(あ、マズ——)

ドガァッ


ヤマザキ春の擬音祭りなところで今日はここまで
次の更新はいつになるやら。なるたけ早くしますけども、それでもいつになるやら


色々と見えた。目下以外
そんなわけで始めません、ただの投下予告です
早ければ今日、そうでなければ日曜、月曜にでも


漣「曙ちゃんっ!?」

イ級「オオオ——……」

漣「ひっ……! ま、さか、増援……」

漣(しかも、今倒したのとは違う、なんか赤いし、なんというか、なんというか……!)

イ級「——……」ジィ……

漣(さっきのより、絶対、強そう……!)

イ級「…………」スゥ……

漣「え、私、無視され……」

漣(って違う! 水煙で見えないけど、曙ちゃんの方に向かってる!)

漣「まさか、食べたり、とか、するの……?」ゾッ

漣「やだ、やだ、そんなのやだ! 絶対やだ!」ドッ


イ級「——……」ザァーッ

漣「それ以上先は、ダメっ!」ドッドンッ

イ級「オオ……」ザバッ ドギンッ

漣(当たったけど、あんまり効いてない! 主砲がダメなら、)

漣「魚雷一斉射、行けえっ!」ドシュッ ドドバシュッ

イ級「——……!」スッ

漣(やっぱり魚雷は避けられる、ってことは当たればあの赤いのでもタダじゃ済まないってこと! だったら——)

漣「直撃じゃなくても、誘爆させれば!」ドンッ

ドパァッ ザパァンッ

イ級「オオオ——!」

漣「や、やたっ上手くいった! って水飛沫すごっ」

イ級「オオオ……」グルリ

漣「ひっ、こっち向いた」

イ級「ゴアアアア——!!」グバァアアッ

漣「飛び掛かって——」

漣(——あ、口の中が見える。 そう言えば昨日、提督さんが——)


提督『敵駆逐艦の弱点? そうだな……口の中までは流石に装甲で固められてないんじゃないか?』

提督『それに、近海に現れるような奴らは脆弱だしな。 同じようにまだ脆弱な君らの装備で敵わないような奴なんて滅多に出やしないはずだ』

提督『所詮駆逐艦だ、適度な威力があれば砲撃でも雷撃でも装甲は貫けるし、口の中を狙える機会自体滅多にないだろうから忘れてもいいぞ?』


漣「——ッ!」チャキッ ドンッ

ドギャンッ

漣「危っ」サッ

イ級「ゴガアアア!!」ザッパァアアアン

漣「……ホントに、弱点っぽい……のかな? まだ生きてるみたいだけど……」

イ級「ウゴゴ……」ギシッ

漣「……そんなんじゃもう戦えないでしょ、さっさとどっか行って! じゃないともっかいおんなじことするよ!」

イ級「…………」ギギッ ザァーッ…

漣「……行っちゃった。 言葉通じるのかな……はっ」

漣「あ、あけ、曙ちゃん!大変、大変だった!きゅーきゅーしゃ、じゃなくて!どこ!?えっと、どっち!?赤いのに突き飛ばされてー、あっち!」アタフタ


曙「……ぐ、う……」

漣「曙ちゃん!大丈、うっ……!?」ザバザバ

漣(酷いヤケド……艤装も主に機関部がかなりひしゃげて壊れてるし、服もボロボロ……治せるの、これ……)

曙「はぁっ……敵、は……」

漣「あ、大丈夫! 追い払ったから! 全部追っ払ったから! だから、ええと休んで、休んでて! ね! うん!」

曙「…………ない……」

漣「え?」

曙「髪の……ヘアゴ、ぐう……!」

漣「曙ちゃん! えっと、ヘ、ヘアゴム? 吹き飛んじゃったんじゃ……」

漣「……あ、あった! ゴムはちぎれてるけど、一緒に付いてたアクセとか鈴とかは無事だよ!」

曙「……から貰った、大、事な……」ガクッ

漣「曙ちゃん? え、ちょっと、ねえ? ウソだよね?」


今日はここまで。でもってまた明日
ウルトラど遅筆。ギャグ回やりたい。でももうその予定がない。過去編済んだら終わるだけ。イェーイ!

まあ終わっても終わらないんですけどね


また明日などと言いながら今日は筆を走らせるまとまった時間がないことに気付く始末
ので、今日の更新はないのです。次更新は早ければ水木に…


基本的に身悶えしながら書いてるので遅筆だという言い訳
始める


執務室——


提督「…………」プルプル

陸奥「…………」

提督「…………」プルプル

トン

提督「はあ……」

陸奥「……さっきから何をしているの?」

提督「や、見りゃ分かるでしょうよ」

陸奥「分かるけれど、分かるからこそ聞いているんだけど」

提督「……トランプタワー作り以外の何があると?」

陸奥「2個も3個も、それも2段までのものばかり……」

提督「これで6つ目ですー、俺は2段までが精一杯なんですー」

陸奥「……心配して仕事どころじゃないのは分かるけれど、でもまだ2人が出発して30分も経ってないのよ?そんなんじゃこれから先、心臓がいくらあっても足りないわよ」

提督「な、なーに言ってんだい心配なんてしてませんともしてませんともええ」

陸奥「強がっちゃって……あら、そう言ってたら入電みたいよ」

提督「あー出ます出ます。 ところで見た目だけレトロな最新機器ってなんかグッと来ない?」

陸奥「はあ、ちょっと分からないわね」

提督「残念。 さてと、はーい提督さんでーす何のごよ」ガチャッ

漣『あげぼのぢゃんがじんじゃっだあああああ』

提督「」ガチャーン


陸奥「提督?」

提督「」スーハースーハー

提督「ふー……きっと明日も良い天気、私は元気です」

陸奥「どうかしたの? と言うか、どうかしちゃったの?」

提督「はい、こちらコールセンターでござい」ガチャ

漣『でーどぐざああああああん!!!』

提督「Oh……話にならねえ……」

陸奥「叫び声が……何かあったの?」

提督「や、気にしない気にしない、任せて。 とりあえず落ち着いてくれ漣」

漣『こんなのっであんまりだよおおお』

提督「落ち着けないかもしれないけど落ち着け漣」

漣『どーしでこんなごどに』

提督「さーざーなーみ」

漣『・う……ぐじゅ』

提督「落ち着いた? て言うか落ち着け。 曙なら大丈夫だから、多分」

漣『で、でも起きないし返事もないしそれに』

提督「物理的に沈んだ訳ではなく気絶しただけか……緊急の装置がちゃんと仕事したか」

漣『うぇ?』

提督「昨日説明したろ……まあ戻って来たらまた言ってやるけど。 曙はちゃんと息してるだろ?」

漣『いき……あ、してる……生きてるの……?」

提督「生きてる生きてる息してる。 さて、落ち着いたところで仕事してもらわんとな。 曳航のやり方も教えただろ? まずワイヤーを取り出してだな——」


病棟・曙の病室——


曙「…………」スー

漣「きんきゅーぼうぎょそーち?」

提督「なんかこう、艤装についてる電磁バリアみたいなん展開装置の緊急版みたいな奴よ、不意を突かれた時なんかに咄嗟にバリアを展開、反応させて爆発させて身体への直撃を防ぐとか……なんとか? で、合ってる?」

陸奥「……と思うけど、仕様書見ても変なカタカナばっかりね、読みにくいったらありゃしない」

提督「て言うかバリアとかガンダムかよSFかよってーの……艤装も見た目はかつての軍艦を模してるくせに最新技術を放り込んじゃって、流石にここまでくると情緒もへったくれもねーな」

陸奥「最後のはともかく、お陰でこの子も五体満足で戻れた訳だし良かったんじゃない?」

提督「……まあ、生身の身体に砲弾なんて直撃してちゃ普通に即死だもんな。 艦娘っても鋼で出来た肉体って訳じゃないし」

漣「だけどヤケドが……治っても痕が残っちゃうんじゃ……」

提督「ああ、それなら大丈夫、痕も残らないしキチンと治るってよ。 2、3日もしたら元通りだ、意識もそのうち戻るだろ」

漣「ホント?」

提督「ホントホント。 やー、一般には解放されてない医療技術ってのもロマン感じるよなあ」

陸奥「貴方の感性はよく分からないわね」

提督「まあそんな訳だ、戻ってきてからロクに休んでないだろ? 風呂で汗流すなりして休んできなよ」

漣「ん……だけど……」

陸奥「そう言えば私、小腹すいちゃったのよねぇ。 漣ちゃん、お昼頃だけど良かったら軽く何か食べない? 間宮、まだ行ってないでしょ」

漣「まみや?」

陸奥「いいわよね提督?」

提督「ん? ああ、いいけど」

陸奥「ふふ、それじゃ行きましょ」

漣「はーい」ガララ


提督「……なんちゅうか急だな? うーん」

提督「…………」チラ

曙「…………」ス-

提督「……ああ、独りにさせないようにか。 いい大人してんじゃん……こっちゃ見た目取り繕うのだけで精一杯よ」

曙「…………」ス-

提督「しかしまるでミイラだな……未出の医療技術、ねえ」

提督「体良く言っちゃいるが、要はモルモットじゃねーか。 恩恵を受けてはいるが、ふざけんなっての」

提督「……つーか連中との戦いもいつまで続けんだよってな。 日常になり過ぎて感覚が麻痺してんじゃねーのかこの国」

提督「お陰で戦闘関連の技術の進歩が著しいってな……人間がバリアて、笑えてくるわ」

曙「…………」ス-

提督「終わらせられねえこっちもクソ野郎って訳だけど……なーるほど、クソテートクって言われても反論しようがねえ」

提督「かと言って俺個人の力で終わらせられるとも思ってねえけど……そんな事しでかしたら人類史に残る英雄の爆誕よ」

提督「だったらせめて手に届く範囲での平穏のために、なんて」

曙「…………」ス-

提督「……敵を作り続けたってつまらない、敵が攻撃してきたら逃げることになる」

提督「逃げるために頑張らなくちゃいけなくなる。 逃げるために頑張ることに費やす時間は、不毛だ。 逃げて逃げてようやく辿り着くのがスタートラインだ」

提督「そんな凍り付いた時間、過ごさせたくないよなあ……」

曙「…………」ス-

提督「お前がどう思うか、どう思ってるかは知らんけど、俺はお前の敵になんかなってやるもんか」

提督「漣だってそうだろうな、陸奥さんはー……まあ、なんとかしようか、なんとかなるだろ」

提督「何日でも何ヶ月でもしつこく敵じゃねえってこと刷り込んでやる。 直接言うのは小っ恥ずかしいからナシな!」

提督「……どうせなら笑顔の一つでも拝んでみたいもんだな、女の子ってのは誰でも笑顔が一番よ」

曙「…………」ス-

提督「ったく、急に1人になると独り言が弾んでしょうがねえな」

提督「…………曙、起きてないよな? 実は聞いてましたってパターンはなしでお願いしますよ」


翌日——


曙「…………」パチッ

曙「…………?」

曙(ここどこ……?)ムクリ

曙「いっ、つつ……何か腕に刺さってる……病院のドラマとかで見た奴?」

曙「じゃあここは病院かどこか……て言うか生きてるんだ」

曙(……鏡ないから分かんないけど、腕や顔の肌の感触からして、包帯まみれな気がする)

曙(目も当てられないことになってたりしてね……)

<ガララッ

曙(うわ誰か来た)ボフン

漣「……まだ目、覚まさないんだ」テクテク

提督「遅くとも1週間以内には目ぇ覚ますって言ってたろ? あんまり急かしてやりなさんな」

曙(漣と、クソテートクかな……お見舞いのつもりか何かなの)


漣「そうだ、提督さん、手伝ってもらってありがとございます」

提督「いや、別にいいんだけどさ……いいんだけどさあ……」

曙(何よ)

提督「君ここに住む気かっちゅーねん、こんなに漫画持ち込んで」

曙(は?)

漣「曙ちゃんが入院してる間だけ……いや住まないですけど!」

漣「いっぱいあれば曙ちゃん目覚ましても退屈しないで済むかなーって、漣も空いた時間はここで」

曙(今すぐ持って帰りなさいよ……)

提督「……寝袋まで用意しなければいいか」

曙(良くないし)

提督「あ、ダメだ漣。 私物の多数持ち込み厳禁だってさ。 ほら張り紙」

漣「がーん……そしたら漣はどうしたら……」

提督「いやまあ1人が嫌なら執務室に来てもいいぞ……? 応接セットとかあるし、四六時中ではないけど俺か陸奥さんいるし」

曙(そうして)

漣「そしたら曙ちゃんがひとりぼっちで寂しくて死んじゃう……」

曙(うさぎ扱いか)

提督「野生のうさぎって案外1匹でいるもんらしいぞ? たぶん」

曙(うさぎから離れたらどうなの)


漣「ところで提督さんも曙ちゃんに用事があるって言ってたけど、どんな?」

曙(クソテートクが私に? 戦力外通告でも出しに来たの?)

提督「ああ、手紙だよ。 曙宛に2通来ててな」

漣「曙ちゃんに?」

曙(手紙)

提督「っても片方の手紙はもう片方のに添付されてきた物だけど。 今時手紙とはノスタルジックと言うか、いいもんじゃないか」

漣「誰から? 中身は? 手紙には何が書いて?」ワクワク

提督「読んでないし、差出人もちゃんと見ちゃないっての。 プライバシーは守るもんよ」

漣「曙ちゃんのこともっと知りたいし! お願いします! なんでも島風がしますから!」

提督「ウチに島風いねーし……そもそも島風の艦娘は数が少ないって噂だし……まあでも、俺も少しは気になっちゃうし?」

曙()

提督「添付されてきた方は筆跡的に同年代くらいかな……と言うか学校のクラスメイトとかか? 本名で来てるし」

漣「曙ちゃんの友達!? というか本名! 本名気になる!」

曙「」ガバッ

提督「食い付くのそっちかよ……あーなるほど、ウチ宛の住所になってないけど、そういうことか」

曙「」ヒュバッ

漣「? どういうこと?」

提督「添付元の手紙は曙の親なんだがそっち、つまり曙の実家の方にこの添付されたのが届いて実家越しにこっちにーって、あれ、手紙どこ行った」

漣「あっ」

曙「…………」ジトー

提督「おう、おはようさん、ってか寝起きなのに素早いのね……」

曙「人の手紙を勝手に見るとかいい度胸してんのね」


漣「曙ちゃん起きたあ! 良かったー!」ダキツキー

曙「いだだだだ! うざいうるさいうっとーしい抱きつくなバカ!」

漣「だってぇ……」グスン

曙「ったく……ケガ人に対して何してくれんのよホント」

漣「ところでお手紙は誰から来たの?」

曙(てんで堪えてないし)

曙「アンタには関係ない」

漣「か、関係あるもん! 友達のことを知るのは友達の義務だし! 責務だし!」

曙「いつ誰がアンタと友達になったって……アンタは何笑ってんのよ」

提督「んー? いやあ、友達なんてくだらねーぜみたいな事言ってたりそんな雰囲気出してたりするのに友達がちゃんといるんだなってな?」

曙「なっ」

提督「手紙まで出してくれるなんて甲斐甲斐しいじゃねーの?」

曙「ぐうう……あ、あんな奴のなんか!」バッ

漣「え、友達からの手紙破いちゃうの?」

曙「〜〜〜〜〜っ!」

曙「アンタらなんかとは違うのよ! とっとと出てけー!」

提督「へーへー、寝起きで気性も荒いみたいだし退散しましょうか。 また後で来ればいーしな」

漣「はーい、それじゃ曙ちゃんまた後でねー!」

曙「2度と来んな!!」


数時間後——


曙「…………」ムッスー

提督「いやー、昼飯をカップ麺とかで雑に済ますのもいいよなあ」コポポ

陸奥「良くはないでしょ、高血圧になっても知らないわよ?」

提督「1食や2食程度じゃイエローカードすら貰わんから平気だろ」

漣「あと何分? あと何分?」

提督「漣のはあと2分ちょいだな」

漣「むふー、カップ麺はこうして待ってる時間が1番楽しい……」

曙「……アンタら何やってんの、2度と来んなって言ったでしょ」

陸奥「私は聞いてないから問題ないわね」

曙「ぐ、大人のくせに小学生みたいな事を……」

提督「何ってそりゃお前、昼ご飯の準備だけど? 病室にこうしてテーブルと椅子が用意されてるんだから、有効活用しないとなあ?」

曙「自分らのところで食べればいいでしょうが……なんでわざわざこっち来んのよ、脳みそにボウフラでも湧いてんの?」

漣「だって曙ちゃんが寂しくて死んじゃうし……」

曙「うさぎじゃないしそもそも独りは慣れっこだってのにそれ以前に何度も私に構うなって言っふぇ」

陸奥「はいはい、病人は黙ってリンゴでも食べてなさい」グイー

曙「むぐ…………」シャクシャク

提督(食べるんだ)

漣(リスみたい)

曙「んぐ、いきなり何すんのよバカ乳女!」

陸奥「説得力がないわね」


提督「まあまあ、陸奥さんのおっぱいがビッグセブンだとか曙が小動物みたいだとかはおいといて飯にしよう飯。 そろそろ出来上がる頃合いだろ」

陸奥「ナチュラルにセクハラ発言していくのね」

曙「出てけってんのよ分からず屋共ー!」

提督「そっちも食事届いてるし丁度いいんじゃん? それにベッドの上からじゃ何も出来るまい! 悔しかったら早く身体を治すことだな、はっはっは!」

曙「言われずとも今すぐ息の根ごと止めてやう」

陸奥「はいはい、病人は黙って安静にしときなさいね」グイー

曙「ぐむ…………」シャクシャク

提督(やっぱ小動物だわ)

漣(かわいい)

曙「って、2度も同じことさせんなっつーの!」

陸奥「お約束って奴よ」

提督「2度あることはサンドイッチ……今思うと3度なのに1ってすげー名前だよな、サンドイッチ伯爵」

漣「そういう名前じゃないと思うのです」

提督「だろーな、まあいいや、食べよう食べよう。 いただきまーす」

漣「いただきまーす!」

陸奥「はーい、いただきます」

曙「何当たり前のように食べ始めてんのよ!! 帰れ!!」


提督「ところで皆ラーメンは何派? 俺は豚骨だけど」ズルズル

漣「醤油かなぁ」

陸奥「私も醤油ね、1番ラーメンって感じがするし」

提督「うーむ、マイノリティ。 曙は?」

曙「…………」モグモグ

提督「へーい曙さーん?」

曙「……………」モグモグ ゴクン

提督「何味がお好きー?」

曙「……ほんっとうっざい」ギロッ

提督「ほうとう派だってさ」

曙「」

漣「ほうとう?」

陸奥「確か、どこかの郷土料理だったかしら」

提督「給食で食ったことあるよーな気がするけどな……郷土料理だってんなら気のせいかね」

曙「……アンタ、わざとやってんの?」

提督「なんのことやら」

曙「どこまでも人をバカにして——」

提督「まあまあ、メンマどうぞ」ヒョイ

曙「…………」パク

陸奥(食べるんだ)

漣(食べるんだ)

提督(食べんのかよ)


————


提督「さて、腹も膨れたところで」

曙「とっとと出てって」

提督「じゃーん、ただのトランプー」

漣「ひみつ道具みたい」

陸奥「貴方、仕事しなくていいの?」

提督「明日の事は明日の俺に任せる、今日の事もきっと明日の俺がなんとかしてくれるでしょう」

陸奥「夏休みの宿題、期日までに終わらせたことないでしょ?」

提督「なんで分かるんだよ、エスパーかよ陸奥さん」バサー

曙「当たり前の様に広げてんじゃないわよ」

提督「4人だったら大富豪かねえ……いや、ローカルルールめんどくさいし神経衰弱にするか」ヒョイ ヒョイ

曙「私を頭数に入れないで」

提督「不戦敗かな? ちなみにビリには本人の覚えてる限りでの恥ずかしい記憶を吐露してもらうつもりだけど」

曙「……とろ、って何」

提督「簡単に言うと全部ぶっちゃけてもらうってこと」

曙「……さっさと並べなさいよ」

提督(チョロい)

陸奥(さりげなくこっちまで被害受けそうなんだけど)


漣「——あ、外れた。 次、陸奥さん」

提督「……どうでもいいんだけどさ」

陸奥「どうかしたの?」

提督「"陸奥さん"って、なんか呼びにくくない? いやよく分からんけど、なんか、なんかさ」

陸奥「うん、ホントによく分からないわね。 はい次」

曙「ホントにどうでもいい」

漣「ああでも、なんとなくだけど……ちょっとだけ分かる気が」

提督「だろー? でも陸奥ーって呼び捨てるのもなんか違う気がするんだよな……」

陸奥「そう言われてもねぇ……艦名を変える訳にはいかないし、本名で呼ぶのも先を考えると人が増えるたびに説明しなきゃだし?」

漣「……あだ名をつける、とかどうでしょ」

陸奥「あ、あだ名? 別に構わないけど……あんまり突飛なのは」

提督「じゃあ"むっちゃん"だな、シンプルイズベスト」

陸奥「……なんだか諸々削ぎ落とされた気がするわね、主に威厳とかそういうのが」

曙「あったっけそんなの」

提督「ところで俺の番が回ってこないんですけど曙さん、神経衰弱ガチになり過ぎじゃね」


漣「む、むっちゃん……さん!」

陸奥「いや、ちゃんの後にさんを付けるのってどうなの?」

提督「いやあ……むっさんよりはいいんじゃないのか?」

陸奥「えぇー……?」

漣「じゃ、じゃあ次は漣にあだ名をですね」wktk

提督「漣……うーん、ザナミン……ザナムィン……?」

陸奥「どうして私と違って変化球気味なのかしらね」

漣「なんか攻撃魔法みたい……」

提督「サザーリン……さっちゃん……サザンクロス……なんかどれもしっくり来ないな」

漣「最後だけ明らかにおかしいんですけど」

提督「インスピレーションが舞い降りて来ないな……これは漣は漣のままでっていう天啓かね……」

陸奥「私はむっちゃんなのにね」

漣「そんなー……むっちゃんさんも考えてくださいよう」

陸奥「その呼び方は変えないのね……提督の言うのがインパクト強いせいで私も何も思いつかないわ、ゴメンなさいね」

曙「ふん、あだ名の1つや2つ程度で一喜一憂しちゃって、バカみたい」


漣「うう、漣はまたの機会を待つとしますです、次は提督さんの番!」

提督「あー? 俺?」

曙「こんな奴クソテートクで充分よ、クソテートク」

提督「いやまあ、別にどうとでも呼べばいいと思うけどさ……俺にあだ名なんて付けようがないと思うんだけど」

陸奥「貴方も本名で呼ばれないものねぇ、何故かしら? 最近遅れて来た事務の方達からも一貫して提督で通ってるものね」

提督「司令部を一歩出ればそうでもないんだけどな……」

漣「……ご主人様?とか?」

提督「ぶふっ」

陸奥「くふっ」

曙「大真面目な顔して何言ってんのアンタ」

漣「おお……? なんだか想像以上にしっくり来ますよ! これがインスピレーションって奴ですねご主人様!」

提督「どうとでも呼べばいいったのは俺だけど! 俺なんだけど! ご主人様ってどうなのさ! あらぬ疑いかけられそうなんだけど!?」

陸奥「普通に考えたらそう呼ばせてる神経を疑われるわよね」

提督「て言うかそもそもどこで聞いたんだよそんな言葉って話な?」

漣「漫画とかで……なんなら旦那様にします?」

提督「天秤がどう揺れても大差なさそうだからもう勝手にしてけれ」


そんなわけで半端だけども今日はここまで
今月中には終わるはずなんだ…たぶん…


睡眠時間を生贄に捧げ、執筆時間を召喚するぜ!
とかやってももれなく執筆時間を生贄に睡眠時間を召喚することになりそう
そんなわけでだらだら始める


陸奥「それじゃあ、最後は曙かしら?」

曙「やめて、そういうのウザいだけだし」

提督「曙なあ……?」カオオサエ

漣「曙ちゃん……?」クビヒネリ

曙「やめろってんのに」

漣「ぼのりん……」

提督「ボノリンティウス……」

陸奥「身代わりにされそうね」

漣「ぼのえもん……」

曙「道具の代わりにドロップキックお見舞いしてやるわよ」

提督「あけみ……?」

曙「誰よそれ」

漣「あけみ……みっちゃん……」

曙「そっちから派生すんな」

提督「ボノワール……」

陸奥「貴方の変化球ってどうにも変化し過ぎてるわよね」

漣「ぼのたん……」

曙「1番やだそれ」

提督「ぼのえもんやボノリンティウスよりもかよ」

曙「首筋が凍りそうになったし」

提督「基準が分からねえな」

曙「アンタのは訳分かんないだけだし」

曙「突然呼び出して何の用よクソ提督」

提督「…………」

曙「…………」

提督「…………」ジィー

曙「……何の用もないなら戻るけど」

提督「冷たい!!!」

曙「は?」

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漣「うー、インスピレーションが閃かない……ご主人様はー?」

提督「さっぱりだな、インスピレーションの神が舞い降りて来ない……ていうかホントにそれで行くんだな。 もうどうにでもなーれって気分になれそう」

陸奥「変化球をいくらでも投げれておいてインスピレーションがどうのって言うのも変な気がするわね」

提督「こういうのはフィット感が重要なんだよ……目玉焼きを卵焼きって呼ばない様なもんなんだよ……目玉焼きは目玉焼きなんだよ……」

陸奥「余計分からなくなったわ」

曙「目玉焼きとか卵焼きとかどうでもいいけど、やる事ないんならとっとと出てけば? 神経衰弱だってアンタで止まってるし」

提督「バカ野郎! 入院イベントとかいう親交を深めるチャンスを棒に振る奴がどこにいるってんだ!」

漣「曙ちゃんが逃げられないこの機にお友達ポイントを高める大作戦……!」

曙「全力でウザい……治るまでコレが続くの? もう辞めようかな……」

提督「まあ数日もしたら全快するって言ってたけどな」

曙「早っ、自分で言うのもなんだけどかなりの大怪我したと思うんだけど……ていうか火傷」

提督「ドラゴンボール使ったからなんとかなる」

曙「そんな冗談……あるの? ホントに?」

陸奥「そんな冗談を信じそうにならないの」


提督「まあ正直ぶっちゃけますと、ここ数日間程度の付き合いとは言え取りつく島がないどころか荒天なんて言葉が生ぬるいレベルの海域じゃねーかとすら思ってました。 天は裂け海は割れ、空からは雨ではなく雷が降り注いでんの」

曙「ここまで言われるのは初めてね」

提督「でも手紙を送ってくる様な友達がいるってゆーじゃん? 一筋の光明が確実に存在してる訳じゃん? こりゃ付け入るしかないよなあ!ってなる訳よ」

陸奥「どうにかならなかったのかしら、その言い方」

曙「……いるのは認めるけど、だからってアンタらなんかともヨロシクするつもりなんてないし」

提督「へっ! ウチの司令部が4,50人を超える大所帯になっても同じ事が言えるかな!」

陸奥「言っちゃうの、それ?」

曙「全員がかりで私になんかするってわけ? 随分と陰険で陰湿なのね、上等よ、たかが数が2倍ちょっとになったくらいで」

提督「全員がかりで曙に構わせます」

曙「思ってたのより酷かった」

提督「むしろ50対1の鬼ごっことかするよね?」

漣「49対2にして欲しいなあ」

曙「混ざってくんな」

提督「いっそ49対3にするか……」

曙「アンタも入って来るなっての」

陸奥「じゃあ48対3で私はレフェリーね」

曙「審判が必要な鬼ごっこって何よ」


曙「ていうかホントに、くだんない雑談しかしないんなら帰ってって何度も言ってんだけど」

提督「クックック……ここで俺が帰ったところで第2、第3の俺が貴様の元を訪れるだろう……」

曙「そういうアンタみたいのがついてけないのよ、面倒くさいったらありやしない」

漣「でも、まだあだ名決まってないし……」

曙「いらないし、ってかまだ考えてたの」

漣「……ぼのちゃん」

曙「省略しただけじゃん」

陸奥「それ私にも同じ事言える?」

提督「ぼのちゃん……ぼのやん?」

曙「は」

提督「あ、しっくり来た。 ぼのやんにしよう」

曙「アンタのしっくりの基準が分からないんだけど」

提督「そんなもん決まってる、完全無欠に純粋天然物100%フィーリングオンリーよ!」

陸奥「要はなんとなくでしょ?」

提督「そうとも言う」

漣「でもちょっとダサい感じがあだ名っぽくていいかも!」

提督「よっしゃ! ぼのやんで決定な!」

曙「なんで私に拒否権がないわけ?」

提督「俺にもないからおあいこよ」

曙「試合にすらなってないんだけど」


曙「つーかアンタらホント何なの? こんだけこっちが拒否ってんのにグイグイ構いに来てさ、何が目的?」

陸奥「主にこっちの2人が、だけどね。 私も1人でだったら貴女みたいな反抗期真っ盛りなガキンチョなんて相手してないわよ?」

曙「初日と違って平然と言ってくれるのね、清々しいくらい」

提督「何が目的ってもなー、ガキンチョ相手に求めるものがあると思ってるのが凄いぜぼのやん」

曙「こっちもこっちで」

提督「まああるんですけどね? 皆と仲良くしよーぜ?ってくらいのが」

曙「そんなこと……別に、誰と繋がらなくたって仕事は出来るし、それに、何年かしたら終わるような縁でしょうが。 切れることが分かってる縁なんか結ぶつもりなんてないわ」

漣「そんなー……」

提督「うーん、艦娘が合理的な判断だけで動くような機械、または兵器だって言うなら別にそれでもいいんだけどさ」

曙「何よ」

提督「不条理で不合理的なのが人間だろうよ? 理屈とか正しさなんてのを抑えるのが感情だしなあ」

曙「……知った様なことを、人生経験も薄そうな奴なんかに人間についてを説かれたくなんか」

提督「知らなきゃ言わねえっつうのこんな事。 俺のは自業自得だけど」

曙「えっ」

提督「ま、俺に出来るのは同じ轍を踏ませない様にしつこく食いさがるくらいのもんよ。 友達が無理でも知人くらいまでならいけるだろ?」

曙「……アンタがどうだったとか知ったこっちゃないんだけど、私には関係ないし」

提督「まーな、昔の事なんてこれから先の事には何も関係ないわな。 それは曙とっても同じ事だと思うがね」スッ

曙「……この手は何」

提督「んもー、説明なんて野暮な事させんなよー。 曙がつっけんどんで他者と交流する気がないとしてもだ、それでもこれからもよろしくってな」


曙「……卑怯者」

提督「卑怯? 何が?」

曙「ここでアンタの手を振り払ったら最低じゃない、私」

陸奥「この期に及んでまだ心象とか気にしてたの? 初めっから最低だったじゃないの貴女」

曙「うぐっ」

陸奥「それにね、1度や2度振り払ったところでこの人がすんなり諦めるとでも思っているの? 貴女の根が折れるまで3度も4度もやってくるわよ、なんなら試しに今回は振り払ってみたら?」

提督「陸奥さん、俺だってそんなにメンタル強くないんですけど」

陸奥「それに、振り払ったところで壊れるような信頼関係もまだ築いていないってのにね? そんなに自分をヒロイックにしてんじゃないわよガ・キ・ン・チョ」

曙「……少なくともアンタとは築ける気がしないわ」

提督「アレだな、喧嘩するほど仲が良いって奴」

陸奥「しかしてない、の間違いね」

漣「それじゃ、はい」ヒョイ

曙「あ? 何よ手をとって」

漣「お友達条約の完成ー」グイ-

曙「あっコラ! まだ考え中! ってか誰が友達よこんな奴と!」

陸奥「あらいいじゃない、私も混ぜてもらおうかな」

漣「もちろん漣も仲間入りしてるからね!」

曙「こら離せ! 絶交! 絶交してやる!」

提督「なー漣ー、これ新人が来るたびにやんのか?」

漣「楽しそうですねそれ、もちろんあけぼ、じゃないぼのやんも巻き込んで!」

曙「勝手に巻き込むな! こんな条約すぐに破棄してやるー!」


現代——

鎮守府本部・会議室・深夜——



提督「んがっ」ガタッ

提督「あー……? 夢……昔のことを夢で見るなんてことあるんだな……」

提督(てゆーか部屋暗っ。 あのクソジジイ共、年甲斐もなくガキみてーな嫌がらせしてきやがって)

提督(大体話が長えんだよ、校長の話かっつーの。 んなもん退屈過ぎて子守唄だっつーの馬鹿め)

提督(鍵も閉まってらーな。 生意気な若輩者はお嫌いですかそーですか)ガチャガチャ

提督(それじゃ生意気らしく窓から抜け出しましょうかね、開けっ放しになるけどこんな事も予測しなかったお硬い脳みそが悪いって事で。 鎮守府内に不審者が出る事もないだろうしいーだろ別に)ガチャ

提督(2階とか3階とかじゃなくて助かったぜ……っと)スタッ

提督(さーてと、確かぼのやんがカレー作ってたよな、あっためて食べてそのまま寝るとしよう。 待っててくれよマイカレー、なんて)


執務室——


提督(——で、廊下さみーなとか思いながら辿り着いたら扉の隙間から光が漏れてまして? ぼのやん電気消し忘れたのかなーって思ったら)

曙「すー……」

提督「寝てやんの。 無防備か」

提督「ぼのやんがカレーを食べた痕跡もなし……何でここで寝てんの? ってか何で残ってんの?」

提督「寝顔でも堪能してやろうか、滅多にない機会だぜ」

曙「ん……」

提督「……夢で見た後だと色っぽく、じゃなくて大人っぽくなっ、じゃなくてね?」

提督「へいぼのやん、こんな所で寝てないで起きようか?」ユサユサ

曙「んぅー……? あれ、クソ提督だ……むっちゃんとサザンクロスは……?」

提督「どっちもいないけどサザンクロスとはまた懐かしいものを」


曙「……夢かー、ここに来たばっかりの時の事、思い出してたつもりだったけど」

提督「なんだい2人揃って同じ夢見ちゃってさ。 僕らはいつも以心伝心とかって?」

曙「寝起き早々ウザいのブッ込んでくるわねー、あんまりウザくてどうでもよくなるわ」

提督「そこはテレパシーで会話しようぜ……じゃなくて、先に上がっといていいって言った気がするんだけど、何で残ってんだ? しかもグッスリ」

曙「なんでだっけ……夢が思い出せるくらい濃すぎて寝る前の記憶があやふやだわ」

曙「……ああ、思い出した。 アンタ言ってたでしょ、ご飯は誰かと食べた方が美味しいとかって。 だから」

提督「……え、それだけ? 何か一言物申すとか果たし状とかじゃなくて?」

曙「それだけ。 今更アンタに言うことなんか……うーん」

提督「何スかそのうーん、は」

曙「いや、何をいくら言っても物足りないんだけどね。 そうじゃなくて何か別のさ……アンタに私が感じていること、言いたいことがイマイチ形にならないから、それを考えてる状態」

曙「アンタと真っ向向き合ってみたら分かるかなーって思って待ってたけどさ……ふわ、今日は眠いし、明日にする」

提督「お、おう……それを今言われると明日まで俺は消化不良な気分を味あわされる訳だが……」

曙「別にいいでしょそれくらい。 それじゃあねクソ提督、また明日」ドアガチャ


提督「……また明日か。 あんな夢見た後だとまるっきり別人だよな」

提督「まるっきりでもないか……カレー、あっためよ」


提督(実際、あの日を境に関係が変わった訳じゃない。 態度も性格も、極端に変わったと感じたことなんて瞬間すらない)

提督(いつの間にかって表現が正しいんかな。 氷の溶け始めは気付かないけど、気付いたら溶けるのが進行している)

提督(そしていつかは溶け切って水になるっていうか、氷で覆われてたものが露わになるっていうか。 今の曙はどの段階なんだろうなあ)


提督(まあこれも大体、漣のおかげだろうかね……四六時中付きまとっては突き放され、それでもなお引っ付いて……ってまあ一歩間違えれば粘着質というかストーカーみたいなもんだったけど)

提督(諦めようともしない漣がいたから俺もしつこく行動を起こし続けていられた訳で……ヘドロゾウリムシなんて呼ばれたこともあったなー、あれは堪えた)

提督「……バカ野郎、これからカレーを食べるのにヘドロはないだろ。 でも食う、いただきます」パチン

提督「ん、美味い」

提督(……漣はいつから今みたいになったんだっけ……まあいいや、人は変わるってことで)モグモグ


今日はここまで。
たぶん、次の更新で終わり。


次更新はおそらく水曜か木曜に
今日更新したかったけど思考が詰まる詰まる


ついネタに熱が入ると終わる気がしなくなる。終わらせるけど
パパッと投下だけする


第七駆逐隊の部屋・朝——


<ナカチャンダヨーナカチ

朧「」バシッ

<ャンッ

曙「ぉぁょぅ……」ムクリ

朧「うわっ、いたんだ」

曙「のっけからご挨拶ね……そりゃあいるでしょうよ、自室なんだから」

朧「だって私達が寝る頃になっても帰ってこなかったし……昨日、いつ帰ってきたの?」

曙「さあ……ついさっきな気もするし、そうじゃない気もする。 私も執務室で居眠りして、クソ提督に起こされてそのまま帰ってきて寝たから、細かいことは分かんない」

漣「おはちょりーす……あ、ぼのやんがいる」

潮「ふああ……みんなおはよー」ネボケ

曙「んー、おはよー」

漣「ぼのやん、昨日はお楽しみでしたか」

曙「は?」

漣「……いや、だって帰ってこなかったし? ね? 訊くのはお約束だよね?」

曙「はあ……よく分かんないけど、あの頃のサザンクロスはどこに行ったのかしらね」

漣「お前はもう死んでいる……」

曙「それ北だしクロスじゃないし」

漣「ていうかサザンクロスとかいう謎の無茶振りに応えた漣ちゃんを褒めろよ」

潮「えらいえらい」ナデナデ

漣「わぁい」


漣「いや、てゆーかですね、漣ちゃん的に言わして貰えばなしてぼのやんは執務室でぐーすかぴーちゃんしとったん?って話なんですやん」

曙「ついうっかりね」

漣「ついうっかりかー、それなら仕方ないかー」

曙「分かればいいのよ」

漣「分かるかいこのスカポンタンぼのやんやん!」

朧「そんなことよりもさ、曙は仕事しに行かなくていいの?」

漣「そんなこっちゃねーぜ! 重要案件だぜ!」

曙「んー、アイツも帰ってきたのは遅かったろうし、別に急がなくてもいんじゃない? 律儀に早起きするような奴じゃないでしょ」

朧「昨日帰り遅かったから今日もその分始業遅くするかー、なんて確かに言いそうだね」

潮「曙ちゃん、こういう時こそ優しく起こしてあげれば新妻度がUPするよ」

曙「誰が新妻か」

潮「更に胃に優しいお料理も作っておけば効果倍増!」

曙「二日酔い相手じゃないの、それ」

漣「どーせなら裸エプロンでもしてやればいーんでないの?」

曙「クソ提督の裸エプロンなんか見たくないんだけど」

漣「なんでこの流れでそうなるねん!! 着してやれっちゅーわけちゃうっちゅーねん!!」

曙「だって私がそんな羞恥心を捨てた権化のような真似をする訳ないじゃない」

漣「いくらなんでもご主人様だってしねーと思うぜ……って言い切れないぜ……」

朧「腰ミノ姿なんか披露されちゃったらもう何も言えないよね」


潮「それじゃ、今日は曙ちゃんの朝ご飯どうするの? 食堂で一緒に食べる?」

曙「いや……昨日の昼みたいなことになるかもしんないし、執務室でひっそり食べる」

漣「秘書当番終わったら執務室に逃げるのも出来なくなるけどにー」

曙「げ、それもそうね」

朧「その頃にはほとぼりも冷めてると思うけどね。 噂なんて燃料がなければ続きやしないから」

漣「ぶっちゃけぼのやんそのものが燃料みたいなもんだけど」

潮「立てばガソリン、座ればハイオク、歩く姿は原子力……」

漣「その言い回しどこで覚えたんだぜ潮ちゃん……」

潮「え? ことわざを弄っただけだよ」

漣「mjd」

曙「そんなトリビアはともかく、人が形だけでもデートしたくらいでギャーギャー騒がないで欲しいもんよ」

朧「ギャーギャーじゃなくてキャーキャーな気もする」

漣「てーか認めたら負けみたいなことゆーときながらデート認めよったよこの頑固ちゃん」

曙「否定し続けるのを考えたら面倒になった」

漣「面倒がプライドを上回っちゃったかー」


漣「でも騒ぐなってもの無理くね? 新参が来て邂逅一番ケッ! て言い放ってたぼのやんがデートしたとかいう生えてた棘どこに忘れてきたんじゃワレ! ってレベルのお話やで?」

曙「私をそこまで鋭くしてんじゃないわよ」

漣「初日でむっちゃんさんと大喧嘩しといてよくもまあ」

朧「私が初見で抱いたイメージは少し冷たそうだな、くらいだったんだけど」

潮「私は、仲良くなれるか不安だったなあ……」

漣「漣ちゃん的にはコイツとは一生かけても終わらない戦いを続けることになりそうだ……! って思いましたね」

曙「今すぐ息の根を止めて戦いを終わらせてやろうかなー」

漣「怖いぞぼのやん、笑顔になれよ☆」

朧「冗談だろうのにあながち間違ってなさそうだよね」

曙「こんなんと一生付き合ってたらツッコミが追い付かないからどっかで縁切ってやるわ」

漣「マジで? ぼのやん円月斬り使えんの?」

曙「今練習中だから、アンタ試しに斬られてくれる?」

漣「マジで」

朧「なんだかんだで仲良いよね、2人共」

潮「うん、息ピッタリのコンビの芸人さんみたい」

漣「ズッ友ですから」

曙「それも今日で終わりよ」スチャッ

漣「ちょい待てぼのやん軍刀なんてどっから取り出した」

曙「クローゼットに入ってたわ」

漣「取り寄せクローゼットか何かなのかなー!」

曙「喰らえ! えーと先月殺法!」ブンッ

漣「グワーッ!」ベシッ

潮「痛そう」

朧「鞘から抜いてないにしても痛いだろうね」


執務室前——


曙(寝起きから疲れるやりとりをするとはね)

曙(飽きないと言えば飽きないんだけど、言うと絶対増長するからなあ、アイツ)

曙(ま、それはさておいて自分の分ついでに寝てるであろうクソ提督の朝食でも作ってやろうかしらね、甲斐甲斐しく)

曙「入るわよー、クソ提督ー寝てるー?」ドアガチャ

提督「起きてますよ、斬新な入り方だな」

曙「うわ、起きてる」

提督「そりゃ起きてますって」

曙「まだ寝てるかと思ったんだけど。 昨日遅かったし、まだ7時過ぎだし」

提督「早起きが習慣付いてるからな、3時間も寝れば充分よ」

曙「え、そんなに遅かったの」

提督「いや、昨日は1時くらいに帰ってきて2時前に寝た」

曙「なんだ、ビックリした……って、結局アンタはそんなに寝てないじゃん。 そんなで大丈夫なわけ?」

提督「眠くなったら昼寝すればいーの」

曙「職務中に堂々と寝る宣言とかしちゃうんだ」

提督「提督権限っていいよね」

曙「いつ寝てもいいみたいな都合のいい権限は無いでしょうが」


<ム゙-ッ ム゙-ッ

提督「ん」

曙「電話?」

提督「俺だな、朝からなんじゃらほい」ヒョイ

提督「Oh……」ム゙-ッ ム゙-ッ

曙「誰から?」

提督「ママンよママン、おっかさん。 いやマジで朝からなんだっつーの」ピッ

提督「はいもっしー? 朝から何用ですかねお母様……あー? はいはい久し振り久し振り久し振りでございますはい、で、何の用よお袋さん」

曙「呼び方統一しなさいよ……にしても、アンタにも母親っているのね」

提督「そりゃいるってえの、俺をなんだと……ああいやこっちの話。 いや話戻さなくていいって……そりゃ悪かったって。 でも俺の連絡無精は今に始まったこっちゃないでしょうに……うん……」

曙「……そういえば長いこと声すら聞いてないなあ。 手紙は来るけど……元気にしてるのかな」

<ム゙-ッ ム゙-ッ

曙「と、噂をしたらって奴かしら」ヒョイ

提督「業務中の私用電話は厳禁ですぅー」

曙「その言葉、そっくりそのまま打ち返してやるわ」

提督「こりゃ耳が痛え、あーこっちの話こっちの話。 いや急に電話かけてくる方が悪いだろが、そりゃ確かにまだ仕事始まっちゃないけどさー」

曙「じゃ、私は部屋の外で電話に出ようかしらね」ドアガチャ


バタン

曙「——さて。 何年ぶりだっけ……改まるとなんか緊張するわね」 ム゙-ッ ム゙-ッ

曙「ええい、どうにでもなれ、よ」ピッ

曙「……………………うわー、凄い久し振りに本名で呼ばれた」

曙「あ、ゴメン。 ちょっと謎の感動を味わってて。 うん、久し振り、お母さん」

曙「ああ、それなら大丈夫、まだ業務始まってないし、クソ提督も電話に出てる最中だし」

曙「え? あー、上官よ上官。 上司。 部長だか係長みたいな」

曙「いいのよ別に、当人にも別に何も言われてないし。 クソ提督ーなんてのはあだ名みたいなもんなの、嫌ってる訳でもないし、そう言うほど悪い奴って訳でもないの。 変な奴だけど」

曙「いや、あんなのを上司らしく扱えってのが無理な話なんだけど……アイツ自体そういう上司らしさ無いし? 確かに年上だけどさ……」

曙「えー。 やだよ今更接し方変えるなんて。 え? うん、ずっとこんな感じだけど」

曙「そりゃあまあ、クソ提督にじゃないけど、怒られたりもしたけど。 なんて言えばいんだろ、年上でも同僚って言うのかな……まあ、別の艦娘? 年上の同僚? にね?」

曙「あー、大丈夫大丈夫。 今は別にソイツと仲違いしてないし、他の奴らとも。 小学生の頃の二の舞みたいなことにはなってないよ、安心して」


曙「……アイツからの手紙? まだ来てるよ、つい先月来たし。 お母さん以上に顔を合わせてないのに律儀というかなんというか」

曙「そう言えばなんで電話かけてきたの? なんか良くないことでもあった?」

曙「……なんとなくて。 いやダメじゃないけどさ、数年間手紙のやり取りだけだったのに急に電話だから」

曙「まあ、自分でも思うけど先行き不安な離れ方したもんね。 さっきも言ったけど大丈夫よ、普通な奴か変な奴くらいしかいないもん」

曙「……この歳になって友達出来たの? なんて訊かれるのってどうなんだろうね。 小学生じゃあるまいし」

曙「いやまあいるよ、何人か。 嘘じゃないって、騙されてないし騙してないし誤魔化してないし気遣ってなんかないし」

曙「そりゃあ……いつまでも小学生の時と同じままって訳にはいかないしさ。 うん、自分でも変わったって思う」

曙「自分から変わったって言うか、変えられたって言うか……クソ提督とかその他がしつこかったせいかな」

漣「あっれー、ぼのやん何してんの?」

曙「げっ、漣」


曙「ア、アンタこそ何しに来たのよ」

漣「んー、ご飯さっさと食べ終わっちゃってさー、せっかくだしぼのやん冷やかしに行ってくんねーって来たわけですが、そしたら部屋の外にいるぼのやんを見つけた訳で」

曙「冷やかしなんてお断りだっつう……あ、ゴメン、ちょっとその、同僚が」

漣「電話……?」

曙「いや、別にただの冷やかしって言ってるし相手なんてしなくていいの、ホントだって」シッシッ

漣「…………」

曙「多少ぞんざいに扱ったって大丈夫な奴だし……アンタも、用がないならさっさとどっか行きなさいよ」

漣「」ニッコリ

曙「」ゾワッ

漣「トランザム!!」シュバッ

曙「わっ」バッ

漣「はーいお電話変わりましたーぞんざいに扱っても大丈夫な同僚でぼのやんのお友達の漣でございまーす」シュタッ

曙「……え? えっ、あっ、あー! こら何してんのバカ電話返せ!」


漣「えーえーはいそーです、お友達ですよ! やーこちらこそお世話になってますってかお世話してますよお義母さん」

曙「何をしれっと言ってんのよてゆーか返せ」

漣「ええ、ちゃんと仕事はしてますよー。 迷惑らしい迷惑なんて最近は滅多にかけてないですしどこに出しても恥ずかしくない娘ですぜ奥様」

曙「アンタも呼び方統一しない民族かい」

漣「……ほう、やーでも鎮守府に来たばっかの頃ならまだしも今のぼのやんならだいじょぶっすよ、ご主——提督さんとか、他の友達とか色んなのに囲まれてますからねー」

曙「ああもう、いい加減返せ!」バッ

漣「あー、けちんぼー」

曙「何がけちんぼよ勝手に奪っといて! お母さんも相手しなくていいし!」

漣「ふぇっふぇっふぇ、紫音ちゃんは可愛いのう」

曙「本名で呼ぶなバカ! 忘れろ! ……え? あー、楽しいって言うか迷惑よ迷惑。 年中年柄同じ日がないし四六時中何かしらあるしで気力が保たないわ」

漣「マグロみたいな生き方って最高だと思わんかね」

曙「だったら市場で転がってなさいよ……え、任期? まあ、最低限の任期はとっくに終わってるけれど……んー……」

曙「……まだもうちょっと、気が済むまでは。 うん……いやだから迷惑、あーもう、楽しいけどさ……」

漣「ぼのやんがデレた、ボイレコ持ってりゃよかったぜ」

曙「後でシメる」

漣「生きたままシメられるマグロの身にもなれよ!」

曙「……感謝? 誰に……あー……そうか、そうだよね、色々まとまった気がする」

漣「お?」

曙「ありがとう。 ん、じゃあまた」ピッ

漣「何々ー? 感謝とか聞こえましたけど漣ちゃんに日頃の恩を返しなさいよ的なー?」

曙「むしろアンタからは普段から迷惑かけられてる借りを返してもらいたいくらいなんだけど」

漣「やっべえ、高くつきそう」

曙「今はそれよりも」


曙「クソ提督ー、電話終わったー?」ドアガチャ

提督「終わってる終わってる。 しかしそっちは随分賑やかだったな」

漣「そりゃあ賑やかし担当がいましたから」ヒョコッ

提督「なるほど」

曙「アンタのとこのは何の用事だったの?」

提督「くだらない用事だよ、田舎からリンゴが届いたけど食べ切れないからそっちで食べてくれってさ」

漣「田舎から届くものと言ったらみかんかリンゴだよね」

提督「こっちに送られたら送られたらで、ウチの人数的にビミョーな数だろうけどなあ。 どーするかは届いてから考えますかね」

曙「そうね。 それで、アンタはいつまでいるわけ?」

漣「いやいつまでも何も執務室にゃ入ったばっかしだぜボーニィ」

曙「知ってるけど。 朝の哨戒行ってきなさいよ」

漣「いやいや今朝の当番はしらちゅんと小川じゃ」

曙「やかましい、アンタが行け」

漣「おーぼー! 職権濫用! ってーか昨日も昼にソロ哨戒したんですけど!」

曙「言い訳は後で聞き流してあげるから」ドアガチャ

漣「ぼのやんのファッションツンドラー!」バタン

提督「ところでしらちゅんと小川って誰だっけ」

曙「白露と江風でしょ」


提督「しかしなあ、難癖つけてまで追い出さなくても良かったんでないの?」

曙「漣がいると真面目な話なんかしようがないからね、形だけでもこの場からいなくなって欲しかったのよ」

提督「真面目な話?」

曙「まあね。 どうせ扉の外にいるんでしょうけど」

提督「案外素直に行ってたりするんじゃないか?」

曙「この場にいなければどっちだっていいわ」


提督「しかし真面目な話ってなんだい、愛の告白でもされちゃうの?」

曙「アンタも大概だったわね、この際どうでもいいんだけどさ」

曙「アンタさ、ここに来たばっかりの頃の私の事、どう思ってた? どんな風に見えてた?」

提督「思ってたより真面目な話っぽいな? でも、どうって言われてもなあ」

曙「別にどう言われたって思われたって怒ったり八つ当たりなんかしないわよ、昔の事だし」

提督「うーん? まあ、多少小生意気な感じの子だなあとは」

曙「小生意気どころじゃないでしょ?」

提督「はい」

曙「正直でよろしい」ボスボス

提督「腹パンはやめい」


曙「でもさ、自分で言うのはどうかと思うけど、大分変わったと思う」

提督「劇的ビフォーアフターぼのやん編」

曙「幾人もの匠の手によりあら不思議、剣山の様に刺々しかった女の子が刺したら痛いつまようじになりましたとさ」

提督「薔薇の方がオシャンティだぜ、棘もあるし」

曙「はいはい、これ以上脱線させないの。 そうやってふざけられるといつまで経っても話が進まないんだから」

提督「真面目な話って苦手なんだよ、自分からすることもあるけど」

曙「我慢して。 私はさ、変な言い方になるけど、こうまで変われたというか更生出来たのは漣やアンタのおかげだと思ってる」

提督「お、おう……むっちゃんは?」

曙「んー? んー……一応カウントしといてあげるか」

提督「一応扱い」

曙「まあ仲悪かったし」


曙「アンタ達はこっちがいくら無視しても突き放しても邪険に扱ってもどうしてもさ、懲りないし諦めないしへこたれないしでホンッッットしつこかったわ」

提督「良い褒め言葉だ、心が温まるぜ」

曙「私も意固地になって反抗し続けてたけどね。 それでも見捨てないで見放さないで見限らないで。 どっかネジ外れてるどころかぶっ壊れてんじゃないのってくらい、私に構い続けて」

曙「そうね……確か1度訊いたことがあったっけ、何が目的なんだって。 意味、無かったけどね。 普段から口にしてるのと同じこと言うんだから」

曙「アイツは友達だからとか、アンタは仲良くしたいだけ、とかそんな感じことだったかしら」

曙「私からしたら訳が分からなくてね。 あの頃は嫌われて上等って考えしてたからなあ。 むしろ全部全員に嫌われてる方が何も期待しないで済むから気が楽だった」

曙「一時期を除いてずっとそうだったから、ここに来ても同じ様に振る舞ったのにね。 アンタ達ときたら」

提督「提督たるもの、しつこさと根性がなければ務まらないってもんよ」

曙「どっちかと言うと忍耐力じゃない? 数多の美女美少女に囲まれてながら提督然として誰にもなびかずにいないといけないんだからさ」

提督「別に艦娘と付き合っちゃダメーみたいなのはないんだけどな」

曙「風紀よ風紀。 目の前で同僚が上官とイチャコラしてたら魚雷をぶん投げたくなるわ。 ウザいし」

曙「別に鎮守府外から誰か適当に引っ掛けてここに連れてくる分なら別にいいかもね」

提督「こんな仕事してると艦娘以外の出会いが滅多にないんですが? ていうか今度はぼのやんの方から話逸らしてるぞ」

曙「あら失礼」


曙「まあ、さ。 艦娘になってここに来て、出会ったのがアンタ達で良かった」

曙「そうじゃなかったら多分私は灰色な世界でずっと燻ったままでいて、無為に時間だけを浪費して、誰にも心を閉ざしたままで1人の人間としても未熟なままで」

曙「任期が終わったらそのまま逃げる様に艦娘辞めて、それでもどこに行っても何をやっても居場所なんかなくって——なんてのが容易に想像出来るわ」

提督「て事は俺らはぼのやんの恩人って訳だな」

曙「そうなるわね、胸を張ってもいいのよ?」

提督「どやっ☆」

曙「はいはいウザいウザい」

曙「……それで私がアンタ達と出会って、私の手を掴んでは引っ張ったり振り回したりしてさ。 そうされている内に私の目に映る世界も少しずつ色鮮やかになって、たんだと思う。 変化が急じゃないから過程についての実感はないけれど」

提督「水を差しちゃうけどぼのやんって結構ポエミーと言うか詩人めいてない?」

曙「そういうのは心の中だけにしといて、黙っといてよ」


曙「だからさ、今の生活は私なりに凄く楽しんでるよ。 アンタに騙し討ちで街に連行されたり、それについて他の連中にからかわれたりするような生活だけどね」

提督「騙し討ち……? ああ……何か不便をかけたようで」

曙「ちなみにまだ現在進行形」

提督「おおう……」

曙「私個人じゃどうにもならないから、ほとぼりが冷めるのを待つしかないわ」

曙「ま、こういうのも刺激をもたらすハプニングとでも思えばいいのかな。 でもこれで終わりじゃない、これから先もまだ楽しませてくれるんでしょ?」

提督「……無論、言われるまでもないな、どうせならいつか死ぬほど笑わせてやるよ」

曙「期待しとくわ、顎が外れなければいいけど。 その前に、お礼を言わないとね」

提督「お礼?」

曙「さっき電話でお母さんと話してる時にさ、声が明るくなったねって言われたのよ。 今の生活が余程楽しいんだろうって」

曙「私にそんな風に感じさせてくれた友達や提督って人に感謝しないとね、ってさ。 だから……その」

曙「……ありがとう」

曙「っ、わ私朝ご飯作ってくるから」タタッ


宿直室——


ガチャ バタン

曙「……はー」カベモタレ

曙(思いついたが、ってことで勢いに任せてしまったけど正直恥ずい)

曙(だけど、私がクソ提督に対して燻ってた感情は感謝ってことでいいのかな。 一応何か吐き出した感じはあるし)

曙(そういうことにしておこう。 嘘の気持ちって訳でもないし)

曙(……顔が熱い。 朝食作って平静を取り戻そう……)

曙「ん……」カガミチラー

曙(……なーに笑ってんのよ私は)


執務室——


提督「…………」

<ドアガチャ-

漣「ご主人様だけデレぼのやんいただくとかズルくねーです? ねー? ズルくねー?」

提督「…………」

漣「漣ちゃんも付き合い同程度なんにさー。 あんにゃろめ、マジで雑に扱ってくれちゃって、こりゃあオシオキが必要な奴だぜ!」

提督「…………」

漣「……おーいご主人様やーい、無反応はボケ殺しだってジュラ紀の頃から言い伝えられてるんだよ? ってか何ぼけーっとしてんのさ」

提督「……いい笑顔だった」

漣「は」

提督「決めた」クルッ ガサゴソ

漣「や、決めたって何を……」

提督「みっけ。 適当にしまい込んだ記憶しかなかったが、すぐ見つかってよかった」

漣「漣ちゃんガン無視かよオイ……て、なんそれ? 何かの用紙と小箱……?」


提督「ケッコンカッコカリ。 このふざけた名前を聞いたことくらいはあるだろう」

漣「え? あーアレでしょ、艤装の限界突破改装みたいな……なんでそんな名称やねん!って感じの」

漣「……ってこの流れでその話をするってこたご主人様あーた」

提督「ぼのやんは最大限の練度があると認められているしな、ああ、その通りだ、行ってくる」

漣「ちょい待ち、その書類一式さ、いつから持ってたの?」

提督「俺が着任して1年くらいの時にお試しセットとか言って大本営から届いたんだよ。 その時は誰も練度の条件を満たしていなかったし、名前が名前だから俺も抵抗があってな。 皆には黙って隠してた」

漣「名前が、って一応そういう風に感じたりはする人だったんすね……ちゅーことはちゅーことはもしかしてご主人様アンタ」

提督「ぶっちゃける、惚れた」

漣「」

提督「いやまずね、ありがとう、ですよ? あの絶対零度の頃から面倒見続けたってか構い続けてさ、そして今報われたというか感無量というかね? まあそんな親心みたいな感情も1%くらいはありましたよ」

漣「1%かよ」

提督「残りはね、笑顔です」

漣「笑顔」

提督「この時のとはまた違うんですよ、こんな顔を出来るようになったのかとかそういうのも3%くらいはあるんだけどさ」

漣(こないだの笑顔ぼのやん写真を待ち受けにしてやがる……!)

提督「後はもう理屈抜きにストレートに射抜かれ、俺は抵抗する術を持たなかった」

提督「ケッコンカッコカリ、正直この恥ずいふざけた名称の制度はこのいかにもな名称のせいでそういうことを意識する艦娘が多いと聞く」

提督「だが、このふざけた名称が今の俺には味方となる……!」

漣「……ご主人様」

提督「止めてくれるなよ漣、一世一代の大勝負なんだ」

漣「そうじゃない、止めやしないけど一言言ってもいいかな」

提督「……なんだ?」

漣「すぅーっ、」

漣「遅いよ!!!」


提督「えっ」

漣「おっせえよ!! 1万光年遅いよ!! 自分の気持ちに気付くのにどんだけ時間かけてんだこんにゃろーめ!! だからニブチン山脈ってんの!!」

提督「ニブチン……ってああ!? そういうことなの!? ニブチン山脈ってのがあるんじゃなくてそういうこと!? うっわマジか鈍いな俺!?」

漣「どっちを鈍いってんのか分かんねーよ!? いやってーかニブチン山脈なんて山脈どこにもある訳なかろーがおバカ! グーグル先生に訊けよ!!」

提督「いやでももしかしたらブラジルとかアルゼンチンとかに行ったらあるかも」

漣「ねーから! あったら全裸でブレイクダンスしながらヲ級沈めてやるわ!」

漣「いやっ、鈍いのはニブチンだけど! もひとつ! 行動が突飛すぎでしょ!! 諸々すっ飛ばして求婚かよ!!」

提督「それはアレ! 結婚を前提としてみたいな!」

漣「このロリコン!!!」

提督「ロリコンちゃうわ!!! 合法ですー!!!」

漣「マジかよぼのやん同い年だと思ってた!!! いやでもやっぱロリコン!!!」

提督「ちげーし!! ええい、鉄は熱いうちに打てってローマの誰かが言ってた! 俺はやるぞ!!」

漣「ああもうダメだこのクソ提督ってば人の話聞きゃしないよー!!」


曙「何騒いでんのよギャーギャーギャーギャーとやかましい、動物園か」ドアガチャ-

提督「あっ、丁度良い時に来たぼのやん!」

漣「タイミングダメな時に来たぼのやん! 逃げてー!」

曙「どっちなんだっての、どちらにしろこれ以上騒ぐようならこのフライパンのサビにしてやるわよ」

提督「それよりもだ! 黙ってコイツを受け取るがいい!」バッ

曙「あん? 何これ、何の紙? と、ちっさい箱」パシッ

提督「おう! ……まあ、そういうことです!」

漣「ここに来てメンタル軟弱もやしか!! さっきまでの勢いはどしたの!!男ならジャッキーンのガキーンでパキパキパッキーンとせんかい!!!」

提督「お前はどっちの味方なんだよ」

漣「面白そうな方に転びそうな方の味方!」

曙「んー……ああ、例の奴ね? 改装ひとつするのに署名が必要なんて面倒な話ね」

提督「む」

漣「ん?」

曙「ちょっと待ってて、すぐ書くから。 机借りるわよ」

漣「……なんか、淡白じゃね?」

提督「ま、まあ、ぼのやんだし……?」


曙「ほいほいっと。 で、こっちの小箱は何? 開けてもいいの?」

提督「お、おう、どうぞ」

曙「なら早速」パカッ

曙「……指輪ー、指輪? シンプルだけど綺麗ね。 人差し指にでもはめとこ」

提督(!?)

漣(!?)

曙「これってアレ? 更なる改装をした艦娘っていう証明みたいな、免許証みたいな奴?」

提督「ソウダヨ」

漣「」ドスッ

提督「ごふっ、俺の脇腹に何の恨みが」

漣「そうだよじゃねーだろべおまいさん、なーに淡白アトモスフィアに流されそになっとんのじゃ、攻めろよ」

提督「さ、漣さん……ハイライトどこに失くしてきたの……」

漣「ぼのやんもぼのやんだよ!!!」

曙「うわっ、訳わかんないけど飛び火した」

漣「なぁーーーに何の疑問も持たずに指輪はめとんねん!!!っつーか何で人差し指やねん!!!そこは薬指にはめるところちゃうんかい!!!」

曙「そんなアンタ、婚約指輪じゃあるまいし」

提督「」

漣「いやいやいやいやいやいやいやいや何を言っちょんのぼのやんあーたねあのさ例の奴ってーくらいだから分かってんでしょ知ってんでしょ?ケッコンカッコカリじゃよ?な?ね?」

曙「はあ……別にどこにつけてもいいと思うけど……様式に倣えって言うならそうするわよ、イマイチ納得出来ないけど」ツケカエ

漣「淡白ゥー!! めっちゃ淡白ゥー!!! ドライ過ぎんでしょ!! ぼのやんスローネドライだよ!!!」

曙「やっかましい」ベゴン

漣「うぎゃん!」


漣「いたあ……なんでんなにクールなんだよ……ケッコンカッコカリだよ……ケッコンだぞお前ぇ……」

曙「(仮)でしょうが、それに文句が言いたければ制度作った奴に言いなさいよ」

曙「ふざけた名前してるわよねー。 考えた奴ら、酒飲みながら会議してたんじゃないの?」

漣「いやでもさ……色々と連想せざるを得ないでしょ……だのになしてそんなさっぱりしすぎてんの……」

曙「連想? 連想って言ったってねえ」チラ

提督「」

曙「クソ提督が私にそういった感情を抱いてる訳ないでしょ」

漣「」

曙「あっても……そうね、精々世話焼きみたいなそんな感じの情くらいじゃないの?」

提督「」

漣「」

曙「で、話は終わり? なら私朝食作りの途中だから」スタスタ

漣「」

提督「」

漣「……いや放心してないで押しに行きなよ……ダイレクトに言わねーと通じねーよアレ……」

提督「……今はもう、そういう流れが消え去ってしまっている……」

漣「……敗因は思ったよりご主人様の押しが弱いってか肝心な場面で奥手かよってところだと思うけども」

提督「決めたって言っといて決まらねえよな……」


漣「……あのさーご主人様、ニブチン山脈登山部を設立しようと思うんだけど、どうよ」

提督「……部長は俺かな」

漣「むっちゃんさんを名誉顧問にしよう」

提督「……まさかニブチン山脈が他にもあるとはな」

漣「でもそこに山がある限り、挑戦するのが登山部の使命よ」

提督「完全踏破するには、ニブチン山脈はあまりにも険し過ぎるけどな」

漣「……とりあえず予行演習しません?」

提督「予行演習?」

漣「登山って言えば頂上でヤッホーでしょ、ほら窓開けて開けて」ガララ

提督「……風が寒いな」

漣「ここは山じゃないから……山に向かって言うつもりで」

提督「おう」

漣「せーのっ」

漣「ファッションツンドラのバカァーー!!!」

提督「こんっのニブチン山脈ゥーー!!!」


<ドアガチャッ

<ベゴンッ パゴンッ




おわり


くぅ疲。本当に疲れた
きっかり3ヶ月で終わりました。狙ってないけど区切りがいい
1,2ヶ月で終わるはずだったのに筆が変に乗ったり乗らなかったりで。話の大まかな流れ以外をフィーリング任せにした結果がコレだよ

年末年始スピンオフを読んだ方がいれば、読んだ方からしたら終わりはある程度察せるような終わり方
くっつかねえのかよ!感はある。でもいつか続き書くつもりやから…許してや…
続きって言っても他作品とのクロスオーバーをするつもりでもあるんですけど。というかする前提で書いてたりするのです
と言っても互いに密接に関わるというより同じ世界線にいるという程度の。クロスオーバーなんかするなって言われてもやりたいんだから仕方ない。 はい

コレ書き始めた理由は、色んなところで見る曙が大体テンプレツンデレで。でも自分としてはクールでドライでサバサバしててデレ?何それ美味しいの?みたいな曙が欲しかったから
ぶっちゃけ冷たくされたい。ずさんに扱われたい、そう思いませんかあなた


というくっさいくっさい後書きでした
長いことお付き合いいただきありがとうございました。返信こそしてませんが感想は励みになってました
それではまたお目にかかるその日まで


凄いどうでもいいけど、同一世界線を舞台にしてそこそこ書くつもりです
が、結果として今作の話の流れの直接的な続編は随分先になりそうというアレ
スピンオフの2作のように時系列無視してもいいんですけどね…

という言い訳


ひっそり報告。進捗ダメです(遠い目)
関連作投下はいつになるかな…


ひっそり報告。
次投稿予定のものが1%くらい進んでます。ぼのやんメインの話ではないですが一応同一世界線の話ということで

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年12月26日 (土) 21:41:31   ID: 1T0rlOkT

よい

2 :  SS好きの774さん   2016年01月05日 (火) 01:26:26   ID: pt4ud9_Z

続き楽しみじゃぁ…

3 :  SS好きの774さん   2016年01月24日 (日) 23:14:12   ID: yoRiUYQe

ボノやんかわいいんじゃぁ・・・

4 :  SS好きの774さん   2016年02月07日 (日) 22:04:36   ID: ivvsM6Ki

素晴らしい
デレるぼのやんには食傷気味だったんだ

5 :  SS好きの774さん   2016年02月08日 (月) 16:27:22   ID: WjBwY3XE

燃料が足りん
続きを希望します!

6 :  SS好きの774さん   2016年02月08日 (月) 19:30:58   ID: BicsyhRk

くっつかねえのかよ!
てか終わりなのかよ!
続きはねえのかよ!お願いしますなんでもしますからг〇゛

7 :  SS好きの774さん   2016年02月09日 (火) 23:24:03   ID: ZSxQ3MXi

ん?今(ry
最後のデレに感動した、そして変わらない曙(いや変わってるんだけど)にすごく共感というかこのSS良かったです(こなみ

8 :  SS好きの774さん   2016年02月25日 (木) 00:46:11   ID: 20xP8AP6

おう続き書くんだよあくしろよ(せっかち)

9 :  SS好きの774さん   2016年02月29日 (月) 20:57:08   ID: pTqcxpSP

1%だとぉ・・・

10 :  SS好きの774さん   2016年03月01日 (火) 19:19:13   ID: VPPThYSG

このスレ第7駆がおもしろすぎる

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