【らっきょ福音】両儀夫妻の日常会話 (83)

とりあえず、猫を舐めるのはやめておこう。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1446699466

猫にはボルヴィックを。
秋の夜長には作文を。

また夜に来ます。

wktk
普段会話は受け身の式が自分から話しかけるのか気になる

涼やかな秋風が、竹林の間隙を縫って頬を撫でる。

靴底に伝わる石畳の冷たさと、左手にまだ残る愛娘の小さな手の温もり。そのコントラストの贅沢を何と呼べば良いのか。

ぼんやり言葉を探しながら、石畳を進む。緩やかに身をくねらせる蛇の様に、緩慢に弧を描きながら続く道。それをたどる僕の左脚は、右脚より少し不器用だ。

風に揺れる竹林のさざめきに耳を浴し、終わりの見えない道程をぼんやりと視界に捉える。懐かしい旋律が唇から漏れた。

「Long and winding road...」

その旋律は、僕の不規則な歩調にアクセントを与える。やがて、石畳の路の先に、古風な武家屋敷が見えてきた。幾夜過ごそうと、一般家庭で育った僕が「我が家」と気軽に呼ぶには余りに規格外な、妻の実家。

着物姿の細身の女性が、門柱に身を預けている。燻んだ緋色と橙色で染め上げられた反物に、朝日を受けて鈍く輝く白銀の帯。
いつもより気怠げな佇まい。その眼差しは天高く、秋空へ。鳥のシルエットでも追っているのだろうか。


「ただいま」
「あぁ、どんな様子だった、アイツ?」

>>3
初めての書き込みだ。有り難う。
また来てくれると嬉しい。

ぶっきら棒に言葉を吐き出す口調。いまは母親モードではないらしい。

「んー それがさ…」
「どうした? まさか行きたくないって、泣かれたのか?」
「いや、その逆だよ。あっさりとバイバイして、友達のところへ走って行った。家族以外の人間とどこかに泊まるなんて、初めてなのにね」

秋空から僕の顔にゆるりと降りてくる、彼女の眼差し。目を逸らさずにそれを受け止めると、彼女の端正な顔立ちに、幼い娘のそれがオーバーラップして見えた。

身に余る大きさのリュックを背負って、保育園の門をくぐって行った、今朝の愛娘の後姿。自然と口元がほころぶ。

「そっか。アイツ、保育園のお泊まり遠足、楽しみにしてたもんな」
「友達、沢山いるからね」
「ママ友一人もいなくて悪かったな」

小動物みたいに、拗ねてみせる横顔。久し振りに目にする、素の彼女。やっぱり、ウサギだ。

「そういう意味じゃないよ。娘の成長を感じるよね。嬉しいような、寂しいような…」
「フン。感傷的だな、お前は」
「あれ、君は違うの?」
「んー まぁ、そういう感情もあるけど、いまは別の気持ちの方が大きいな。圧倒的に」
「えっと、それってどんな?」

今夜はここまでです。
また明晩来ます。

乙です
待ってるぜ

会話期待して開いてみたら小説じゃねーか。しかも書き溜めてねーとか。


続きはよ

あくしろ

>>8>>9
有り難う。

>>10>>11
遅筆でスマン。こういう文章、久し振りに書くんだ。

一応、このエピソード終わりまでは一気に書いたんだけど、読み返してたら細かいとこ納得いかなくって。
手直しでき次第、順次書き込みしていくから、気長に付き合って。


じゃ、昨夜の続き。

刹那、彼女の澄んだ瞳に、艶めいた光が宿る。それは、悪戯を思い付いた猫。いや、獲物を見つけた捕食獣のそれか。
しかし、僕がその正体を探るのを拒むかの様に、閉じられる目蓋。そのまま、彼女は続ける。

「…なぁ、二人だけでこんな風に話するのって、いつぶりだろうな」
「それは… あれ? えっと、わかんないや」
「フフッ。そうだよな。実を言うと、オレにもよくわからない」

僕も彼女も、周囲から「大人」と認識される年齢になった。少し風変わりではあるけれど、それぞれ仕事も持って、毎日それなりに忙しくしている。

そして。僕と彼女の間に、当たり前の様に存在する小さな生き物。いつもはしゃぎ回り、拗ねて、泣いて、喜んで、甘えてくる、第三の命。

娘が生まれてから、ずっと三人で過ごしてきた。父と母の愛情を当たり前の様に享受し、貪欲にむさぼる。その圧倒的な存在感。

だが、明日の夕方まで、娘は不在だ。空白がもたらすアンバランス。僕と妻、二人ぼっちだということに、いまさら気付いた。

その新鮮な欠落に少し動揺しながら、素直な言葉を彼女に投げてみる。こめた思いは、多くの称賛と感謝、そして、少なからぬ驚嘆。

「君が母親としてあんなに…献身的なタイプになるなんて、想像してなかったよ」

事実、彼女は優秀な母親だった。昼夜を問わず、娘の求めにいつでも応じる。
かと言って、いたずらに与えることはなく、ダメなことはピシリと言って聞かせる。
やはりなんだかんだ言っても、素性は良家のお嬢様なのだ。

一瞬、はにかんだ様に見えた彼女は、口元を歪めて、すぐに切り返す。

「お前こそ、その親馬鹿っぷり、予想通り過ぎて呆れるぞ。自分の娘に嫉妬するなんて、思ってもみなかった」

微かに染まった頰。わずかな抗議を含んだ視線が、僕のすぐ近くから見上げる。

「あぁ、目に入れても痛くない…って、このことかな」
「片方、ないくせに」
「あ、その言い方はないんじゃないかな」
「…ゴメン、悪かった」

二人の間を、朝の澄んだ風が吹き抜け、秋に染まった紅葉が揺れる。もはや恋人と呼ぶには面映い。
かと言って、ありふれた夫婦にしては近過ぎる精神的距離。双方向の憑代。

「…欲」
「ヨク? ヨクって、なに?」
「さっきのお前の質問への答えだよ。オレの… いまの気持ち。ってゆーか、三大欲求」
「えっと、食欲、睡眠欲… それから、何だっけ?」
「それ以上言ったら殴るぞ。出掛ける。泊まりの用意しろ」

背を向けて、屋敷へと歩き始める彼女。その横顔が、いまや紅葉色に染まっていたのは目の錯覚か。誘われる様に、その背中を追う。

あと一回の書き込みで、このエピソード終わるんだけど。
どうも納得いかない出来なので、また明日。

「随分と急な誘いだね。どこ行くの?」

「先代から使ってる鄙びた温泉宿があるんだ。車なら小一時間で着く」

「へー 近くにそんな場所があったんだ」

「あぁ、オレも久し振りだ」

「あ、それって、保育園から急な連絡あった場合に備えて、わざわざ近場に…?」

「まぁな。でも、今日だけは… 連絡がないことを祈る。だって、せっかく…」


速まる歩調。彼女の下駄が砂利を勢い良く蹴散らし、最後の言葉はよく聴き取れなかった。

殺人衝動を抱えながら、殺人を禁忌とした少女。やがて、その身に命を宿し、戸惑いながらも、不器用な愛情を注ぐ。殺人とは真逆の、もう一つの本能。

起源への裏切りを、彼女の人格はどう咀嚼したのか。彼ならば、いまの彼女をどう認識し得たのか。
そして、どちらでもない彼女は、いまでも変わらず、あの雪の夜に超然と佇んでいるのか。


「式」

「なんだ、幹也」

「呼んだだけ」

「なっ… 子供か、お前は」

「フフッ」

「…なんだよ」

「式」

「だから、なんだよ」

「君はいまでも僕を… 殺したいのかな?」


僕がこちら側に繋ぎ止めてしまった、その罪に。
あの頃よりも伸びた妻の髪に手を伸ばして、小さな頭蓋骨をそっと抱いた。

僕はまだ、彼女を許していない。




2005年10月

>>16
有り難う。


一つめ、終わり。暫時休憩。

このスレをたまたま開いて、読んでくれたわずか数名wの方へ


まず、読んでくれて有り難う。

当初はもっとコンパクトで、会話メインだったんだけど。地の文を書き足してたら、つい長くなってしまった。


こんなスレ立てておきながら、スマン、実を言うと私は、ほとんどアニメ見ません。普段は違う分野のオタクなので。

「空の境界」を知ったのは、アニオタの友人から、那須氏の作品を勧められたのがきっかけ。FateシリーズはZeroを含め、一応、目を通した。


過去、某所に駄文を載せてたんどけど、なぜか書けなくなって数年。何度も書こうとしたんだけど、書けなかった。

それがなぜか、いまになって、書けてしまった。秋の夜長にスマホで、気が付いたら書き上げてた。書いたら、どこかに載せたくなった。スレを立てたのは、そんな経緯。



さて、せっかくだから、空の境界に触れて、浮かんだ場面のいくつかを文章にしていきたいと思う。例えば、こんなの。


・猫「ボルビック以外、飲ませんな」

・式「ハーゲンダッツ… キャラメルトリュフだと?」

・幹也「メガネ男子、やめることにした」

・未那「秋隆、お母様の弱点を教えなさい」


良ければもう少し、私のリハビリに付き合ってください。

なんでまたこんなコピペになりそうなものを…

別にこの口調ならまだコピペにする程のものじゃないのでは。
文章が終わってるならまだしもこの内容ならなぁ

え、ここで終わり?
何か中途半端だな
あとこんなの書きたいですとかいいから、書くなら書けよ

乙です
次も待ってるぜ

>>22>>23
コピペ…? よくわからないな。

>>24
そうか。一つ書けたよ。スレタイ通り、今回は会話オンリー。

>>25
有り難う。

式「…」

幹也「えっと」

式「…おい」

幹也「ど、どうしたの?」

式「なんだ、コレは」

幹也「うん、近所のコンビニ全部ハシゴしたんだけど、ハーゲンダッツのストロベリーだけなぜか売り切れててさ」

式「それで」

幹也「仕方ないから、期間限定のキャラメ…」

式「いらない」

幹也「やっぱり?」

式「当たり前だ。こんな甘ったるそうな物、食べられるか」


未那「…お母様?」

式「未那? どうしたの?」

未那「食べてくれないの?」

式「え」

未那「私が選んだんだよ、期間限定のキャラメルトリュフ」

式「な、なな」

未那「お母様の為に… 選んだんだよ…」

式「幹也さん、スプーンを取ってください。はやく」




2007年8月

今でもfateよりらっきょ派

娘には勝てぬか・・・



>>1は野生のらっきょですか?

式の弱点は未那じゃないかなぁ

らっきよ
じゃねぇ、キノコだ

>>28
らっきょ派、ナカーマ。
しかし、別にFateが同じくらい好きでも構わんのだろう?

>>29>>30
有り難う。
楽しんでくれると嬉しい。


娘のお気に入りの絵本作家のとこへ同行して、債務免除(?)した上に仕事まで用意してやるとか、式もなんだかんだ言いながら、甘い母親だと想像。

「娘には勝てない」「式の弱点は未那」って前提で、もう一つ書いた。

幹也「未那、お風呂入ろうか」

未那「んー おかーさまとおふろ」

幹也「ん? 今日はそういう気分なの?」

式「わかりました。行きましょう」

未那「パパとおふろ」

式「…え?」

幹也「えっと」

未那「おかーさまとおふろ。パパとおふろ」

幹也「あぁ、ひょっとして三人で入りたいのかな?」

式「え」

幹也「わかった。じゃあ、今夜は三人でお風呂入ろうか」

未那「うん!」

式「…やだ」

幹也「え?」

式「いやだって言ったんだ。三人で入りたいなら、秋隆と入れ」

幹也「式? 未那はきっと、僕と君と三人で入りたいんだよ?」

未那「いんだよ?」

式「だって… は、はずかし…」

幹也「え?」

式「恥ずかしいだろ… 裸…」

幹也「えー いまさらそんな…」

未那「いまさらー!」

式「な、なにがいまさらだ! 幹也、お前はだいだい… やっぱり秋隆を呼ぶ!」

幹也「じゃ、今日はパパと未那で、お母さんを洗ってあげよう」

未那「あげよー!」

式「な、ななな! お前ら、人の話聞いてたのか? 勝手に決めるな!」

秋隆「…」




2003年7月

かわいい(かわいい)

かわいいなーかわいいなー。

こう言う家族がほしい

>>33>>34
秋隆かわいいよ秋隆(違

しかし、未来福音設定だと、凛とした抜刀系ツンギレ式さんが思い浮かばないな。内面では夫と娘にデレデレだからか。

ってことで、未那にも弱いけど、相変わらず幹也にも弱い式を書いてみた。

式「おい」

幹也「ん、どうしたの?」

式「私の部屋に、見覚えのある…」

幹也「黒猫がいた? 大きくなったよね。すっかり大人に…」

式「そうじゃないだろ」

幹也「え、前に一週間同居したあのコだよ。忘れたの?」

式「同居したのはお前じゃなくて、オレだ。忘れるはずないだろ」

幹也「そう。良かった」

式「…」

幹也「…?」

式「だから。なぜ、私のベッドの上で、その猫と未那が気持ち良さそうに丸まってるんだ」

幹也「あぁ、鮮花が両親にね、旅行をプレゼントしたんだ。で、空っぽの実家に猫だけ残すのは可哀想でしょ」

式「それはそうだが… だからと言って、私のベッドを使わせる訳には」

幹也「式のベッドが気に入ったみたいだよ。あ、そうだ。一つだけ言っておくことが」

式「なんだ」

幹也「あのコ、ボルヴィック以外、飲まないから」

式「…はぁ?」

幹也「実家でもずっとボルヴィックあげてたって。なんでだろうね」

式「猫にミネラルウォーターばかり飲ませて大丈夫なのか?」

幹也「ん。その点は問題ないみたい。調べてみたんだ、少しだけ。猫っていうのは確かに尿路結石が出来やすい生き物みたいで、日々の食生活でも過度なカルシウムやマグネシウムの摂取には気を付けないといけないみたいだね。で、ミネラルウォーターっていうのは、その名の通り、様々なミネラル成分を含有する飲料水。でも、だからと言って、全てのミネラルウォーターが猫の尿路結石の原因になるかって言うと、そういう訳ではなくて。市販されてるミネラルウォーターは大きく硬水と軟水に分類されるんだけど、注意しなければならないのは硬度の高いミネラルウォーター。一説によると、硬度300以下のものならば、継続的に飲ませても問題ないんじゃないかと言われてるらしい。そこで、例えばコントレックスなんかは硬度が1,500超で要注意。一方、コンビニなんかで入手可能な日本産のミネラルウォーターの硬度は大体100以下みたいだね。そして、ボルヴィックの硬度は50以下の軟水なんだ。ってことで、実家で飼うことになった時に、僕は問題なしと判断した。ちなみに、ペットとして一般に飼われる生物の中で、他にも尿路結石に気を付けないといけないのはやっぱり犬で…」

式「あー もういい。わかった」

幹也「今夜からは未那に加えて、猫も同じベッドだね」

式「なんで私のベッドにばかり集まってくるんだ」

幹也「どうしても狭かったら、夜中に僕のとこへ来たら」

式「お前… そういうことをよくサラッと言えるな」

幹也「? なんで?」

式「知らん!」





2007年2月



この2人は中の人のせいで幹也と式だけじゃ見られんくなったわ

>>37
あぁ、なんか声優さん同士で結婚したとか、どこかで読んだ気がする。そんなこともあるんだな。

幹也に弱い式、でもう一つ書けたので、載せます。
が、デレてばかりの式さんにも飽きてきたので、明日からは少し趣向変えます。

「もう意味ないよね、コレ」

「…え?」

「片方しか使わないのに、メガネのレンズは左右二つ。もったいないっていうか、資源の無駄遣いっていうか…」

「…」

「だから、これからはコンタクトにしようと思ってるんだ」

「そんな…」

「ほら、季節もちょうど春だし? 心機一転かなって」

「…ダメだ」

「うん?」

「そんなワガママは許さない。そのままでいろ」

「え、どうしてさ」

「どうしてもだ」

「よくわからないよ」

「…幹也、お前、寝る時以外はずっとメガネしてるだろ」

「ん。そーだね」

「つまり、お前のメガネしてない顔を見るのは、一緒に寝る相手だけだ」

「ふむふむ」

「…だから、そういうことだ」

「え、どういうことか、さっぱりわからないんだけど」

「わからなくていい、バカ」

「やっぱコンタクトにしよ」

「そんなことしたら、魔眼でコンタクト[ピーーー]」

「…これからもメガネにしときます」




1999年4月

地味に日付書いてるの良いな

このSS見かけて映画と原作見直してきた

おつおつ。会話主体のコミカルなのも悪くないが、最初の小説風のがやっぱいいな。その文章力で式のベッドシーンが読みたい...

日常会話なのかベッドシーンは…………

>>40
原作をわざわざ読み返してくれたのか。有り難う。原作と合わせて楽しんでくれると、私も嬉しい。

年月は、主に未那の年齢の指標として書いてます。
殺人考察(後)~未来福音(序)までの空白期間を勝手に妄想してるSSなので、いつの出来事なのか明記した方がイメージ湧きやすいかなと。


>>41
有り難う。ベッドシーンじゃないけど、次のはベッドシーン直後の式のモノローグ。
スレタイに合わないが、ふと情景が浮かんだので書いてしまった。大目に見て欲しい。

>>42
この二人の場合、ベッドではほぼ無言で、書くことなさそう。

窓越しの月明かりが彼の身体を琥珀色に縁取り、汗に濡れた皮膚を陶器の様に輝かせる。
それを最初に望んだのは、彼なのか、それとも私なのか。もうそんな昔のことは忘れた。不可逆の過去に未練はない。

余りにも拙い、当事者以外には滑稽としか映らない行為。その拙さゆえに、互いに満たされず、貪る。ただひたすら貪る。飽きる事を忘れたかの如く、貪り続ける。

「信じられない。一人だけ先に寝るとか」

彼が退院してからここ数日、私と彼の鼓動はずっと同調したままだった。基本動作の繰り返しが増幅する中毒性。単調故の非退屈。個対個が溶け合い、単一の肉塊へと融合する蜜月。

この滑稽な営みの行き着く先が、命の誕生だというならば。
人の生が喜劇たらんとするのも、また必然か。

「まったく、男は気楽で良いよな」

彼の不器用な動きを受け止め続けた関節が、僅かに軋む。黙殺。ベッドの上に、ゆっくりと上半身を起こす。
月明かりに左腕をかざすと、産毛が銀色に輝く。最高位の人形師は、小娘に与える義手一本の品質にも妥協しなかったらしい。
子供の頃に見た手品師の様に指を踊らせて、夜空の柔らかい光をしばらく弄ぶ。

彼は髪を乱したまま、私の膝の上で気持ち良さそうに眠っている。長い睫毛に縁取られた瞼がランダムに震え、私の下腹部を撫でる彼の寝息がくすぐったい。

「なんて無防備… うっかり殺してしまいそうだ」

耳朶に唇を近付けて、囁く。言葉にすることで私の殺意が励起して、魔眼が目覚める。彼の身体はどこもかしこも、死線だらけだ。一分の隙もなく脆弱。まばたきする間に五回は殺せる。

前半ここまで。やはり地の文書くと時間掛かる。後半は明日載せられるかと。

おつ
最高です楽しみに待ってます
地の文上手いな~

>>46
有り難う。励みになる。
じゃ、後半。

夜気で冷えきった床に、爪先から降りる。火照った足裏を伝って、フローリングの硬い感触が私の脊椎を犯す。じわりと疼く下腹部。

ずっと彼と接触していたせいか。いまの私の身体は、どんな感触でも快感と誤認する。
不意に襲ってきた羞恥をバネにして、一息に立ち上がる。フラつく視界。それもあえて補正せず、身体が踊るに任せて、冷蔵庫までたどり着く。
まるで飛び石を渡る道化。この身体は、いつになく機嫌が良いらしい。月明かりを照明に、久方振りに一曲舞ってみようか。

冷蔵庫の中にポツンと残された、最後のボルヴィックのボトルに手を伸ばす。
彼が起きたら、一緒に買いに行こう。歩きながら腕を絡ませたら、きっと面白い顔が見られるだろうな。よし、決まり。

透明の液体が、口内に残る彼の液体と絡み合いながら、喉の奥へと流れ込んでいく。私の身体はもう、それを異物とは認識しない。
彼との営みは願った通りの結果を私にもたらして、理性は早々に思考放棄。本能だけが満場一致で是認。

「相性が良いのは、直感でわかってたけど。まさかこんなに早くとはね…」

全身の細胞が、静かな悦びにさざめく。体内にもう一つの人格が宿る。コレは、懐かしい感覚。いや、違うな。今回のは、宿った瞬間から別離が確定している。
そういう意味で、かつてのアイツとは似て非なるが… それでも否応なしに思い出さずにはいられない。

「なぁ、こんなものが、お前が見た夢なのか」

かつて、私の中にいた、もう一人の自分に問い掛けてみる。沈黙。

「こんなものの為に、お前は死んだのか」

私の半身を削ぎ切って、去って行ったもう一つの人格。私を黒い渦の上に、2年間も置き去りにして。
織といい、幹也といい、男ってなんて身勝手で、強引で、幸せな生き物なのだろう。

私だけが一方的に削られ、孕み、また削られる。なんて理不尽。なんて不公平な幸せ。
恨み言すらもう届かないなら、見守るしかないじゃないか。

「いいぜ。どうせもう手遅れなんだから。オレが見てやるよ、お前の夢の続き…」




1999年3月

以上、自分が妊娠したことに気付いた式のモノローグ。

未那の年齢から逆算すると、幹也が退院してすぐに妊娠しないと間に合わない。
片目片足が不自由で、しかも実家(特に妹)からの風当たりも強かったろうに。頑張ったな、幹也…

しかし、コレは一般受けしない。
ただでさえ、一般受けする作品じゃないのに、空の境界。
まぁ、いいか。

ってことで、暫時休憩。

乙ー

織とは会えなくなっちゃったから真那には甘いのかな


>>50
有り難う。そういう面もあるかも。しかし、その未那は鮮花に似ているという皮肉…


ってか、このスレ、読書一人じゃないだろうかw

しかし、気にせず書いていく。たまには朝から更新。式が妊娠に気付いて、数週間後の会話。

「せっかくの休みだし、お昼は外で食べようか」

「…今日はいい」

「ん。そっか」

「…」

「…」

「なぁ」

「なに?」

「あのさ、その…」

「うん」

「…なんでもない」

「そう」

「いや、外で食べたいなら、幹也だけ行ってくればいい」

「ここにいるよ」

「…」

「僕は、君のそばにいるよ」

「…は、話が」

「うん」

「あるんだけど…」

「そうだね。これからたくさん、話して決めないといけないね」

「…気付いてたのか」

「それはそうでしょ。ずっと一緒にいるんだから」

「う…」

「いつも以上に気怠そうな君の様子。体調にも食欲にも波があって。それから、何よりもすねた猫みたいな、その機嫌の悪さ。典型的な初期症状だよ」

「…(グスッ)」

「あれ、泣くことじゃないだろ。喜ぼうよ」

「喜んで… くれるのか」

「? それ以外にどんな反応すればいいの?」

「うぅ… あんまり泣かせるな、バカ」

「えっと、ゴメン」

「気付いてたなら早く言え、バカ」

「それも、ゴメン」

「ずっと不安だったんだぞ、バカ」

「ゴメン…」

「それから、人を猫扱いするな、バカ」

「そんなにバカかな、僕?」

「うるさい! もっとそばに来い、バカ!」

「ん、わかった」

「…」

「…」

「また泣かされた」

「そうだね」

「泣いたら、腹減った」

「ええ?」

「やっぱり出掛ける。付き合え」

「はいはい。どこへでもご一緒しますよ」




1999年4月

すごくニヨニヨする。もっと書いて

ワイもいるでー(バリバリ

オレも見てる。小説っぽいのと会話とのギャップが良い。続き期待。

自分も見てる
wktk

>>54
朝早くから有り難う。

>>55
その煎餅、私にも一枚ください。

>>56
有り難う。小説っぽいのばかりだと疲れてくるから、会話文でバランス取ってる。

>>57
有り難う。テカテカしてくれ。



さて、少なくとも4人は見てくれてることがわかったw

これ以降、10年くらい式さんはデレっぱなしな訳ですが。デレ妊娠式へのマニアックな需要とかどれくらいあるのか不明だけど、一つ書けたので載せます。

式「(ごろごろ)」

幹也「えっと、式?」

式「(ごろごろごろ)」

幹也「…なにしてんの?」

式「見てわからないのか。退屈だからごろごろしてる」

幹也「仕方ないよ、妊婦さんなんだから」

式「ひーまーだー!」

幹也「そんなこと言っても」

式「なんとかしろ」

幹也「えぇ?」

式「オレがこうなったのは全部お前のせいだ。せっかくの休みでこんなに良い天気なのに、気持ち悪くて出掛けられないのもお前のせいだ。腹が少し出てきて、着物のシルエットがイマイチなのもお前のせい。だから、お前がなんとかしてオレを楽しませろ」

幹也「えー そんな無茶振りされても、宴会芸とか何もないしなぁ…」

式「なーんーとーかーしーろー!」

幹也「参ったな… じゃあ、少しだけ眼を閉じてて」

式「? こうか?」

幹也「そうそう… (ちゅ)」

式「!」

幹也「はい、おしまい」

式「…この能無し。5秒しか暇潰し出来てないだろ。役立たず!」

幹也「えー ヒドいな。僕なりに出来ることを考えて…」

式「…もうちょっと長く」

幹也「え? なに?」

式「わざとわからない振りしてるだろ、お前! もういい」

幹也「んー 冷蔵庫にハーゲンダッツが…」

式「やめろ。甘い物の話をするな。いまは無理だ。う、きもちわる…」

幹也「はいはい、お手洗いはこちらですよー」

式「ううう」




1999年5月

ハーゲンダッツよりこのやり取りのが断然あめぇよ…………

抜刀系ツンギレ式がねぇ。

すっげぇニヨニヨする。

乙ー

幹也の式たらしの凄さよ・・・

貴方が神か。一か月にエピソード一つでよいから、このまま未那が十歳になるまで書き続けてくれ。

>>60
私も書いてて、軽く気持ち悪くなった。ここまで甘いのは、あまり書いたことないので…

>>61
マタニティ式の需要ありましたか。良かったです。

>>62
式を始め、異能な女子高生を片っ端からデレさせるとか、もはや宝具クラス。

>>63
なにそのSSマラソン。単純計算、12回 × 10年分で120エピソードじゃないですか。流石に無理。

ってことで、半年ほど時間を進めてみた。

式「(ガサゴソ)」

幹也「スースー」

式「(ゴロゴロ)」

幹也「スースー」

式「(眠れない…)」

幹也「んー にゃむにゃむ」

式「(腹が大きくて横向き体勢しか取れないし)」

幹也「にゃむ… えへへ」

式「(ぐ、間抜けな顔しやがって。どんな夢見てるんだ、この能天気)」

式「(ダメだ。幹也は悪くない。いや、でも、ちょっとは悪いかも。とにかく、なんか腹が立つ)」

式「(よし、少しだけ八つ当たりしよう。妻の八つ当たりに応じるのも、夫の勤めだ)」

式「…ツンツン」

幹也「んん… にゃむにゃむ」

式「ぷぷっ。なんだコイツ。ツンツンツン」

幹也「んんん… にゃむっ」

式「ヤバい。楽しくなってきた」

式「ペシ。ペシペシペシ… カプッ」

幹也「んん! いたっ!」

式「あ」

幹也「んー… 式?」

式「…起たのか?」

幹也「噛み付かれたら起きるでしょ、フツー。猫じゃないんだから… いま何時?」

式「んー 4時くらい。たぶん」

幹也「えー 寝ようよ」

式「寝られないんだ」

幹也「仕方ないなぁ… なでなで」

式「ヘタくそ。もっと撫でろ」

幹也「なでなで… グゥ」

式「途中で寝るな! …って、おぉ!?」

幹也「どうしたの?」

式「どうやらコイツまで目を覚ましたぞ。腹蹴ってる」

幹也「ほんと? 見せて」

式「わ、ちょ、めくるな…」

幹也「おー! (ちゅ)」

式「やめ! くすぐったい!」

幹也「テンション上がって、僕まですっかり目が覚めたよ」

式「全員起きてどーするんだ」




1999/10

幹也は普通すぎるから、異能から好かれやすいんだとか

そんなの知ってるが何故急にそんなことを

何をどうめくって…ちゅ?

イエナンデモゴザイマセン

週末、天気イマイチだったけどキャンプいてきた。そろそろ撤収…


>>66>>67
普通っぽく見せておいて実は…の士郎パターンかと思ったんだけど、本当に最後まで一般人だったな、幹也氏。

>>68
そこは夫婦のことなので、ご想像に任せます…


で、デレ妊婦式さんに飽きてきたので、ちょっとキリッとした式を書いてみた。

幹也「もうすぐ臨月なのに」

式「ん?」

幹也「赤ちゃんの名前がまだ決まらない…」

式「なんだ、そんなのまだ悩んでたのか」

幹也「当たり前だよ。そういう式はどうなの?」

式「オレは、顔を見てから決めることにしてる」

幹也「…え?」

式「だから。どんなヤツかもわからないのに、名前だけ先に決めようってのが、そもそも無理なんだ」

幹也「ふむふむ」

式「逆に、顔さえ見れば直感で何か浮かぶだろ」

幹也「…なるほど。妙な説得力があるね。でも、せめていくつか候補を決めておいても…」

式「いらん」

幹也「姓名判断とか」

式「いらん」

幹也「字画数で運勢占いとか」

式「あのなぁ」

幹也「はい」

式「親が子供の幸せを願って贈る名前だ。これ以上の加護がどこにあるって言うんだ、お前は」

幹也「うーん。確かに」

式「仮にその運勢とやらが多少悪かったとしても、そんなものオレが魔眼でブッた斬る」

幹也「わかりました。よろしくお願いします」




1999年11月

乙ー

無病息災(物理)

いやいいもんだ

地味だが良スレ。ベッドシーンがダメなら、その文章力で出産シーンを…

>>71
名前が四文字熟語とかアリなんだろうか…

>>72
有り難う。

>>73
なんですか、そのニッチな需要。血が苦手なので、出産シーンは想像しただけでちょっと…


ってことで、出産シーンはスキップして、出産後のシーンをいま書いてます。会話だけじゃないヤツ。これでいったん区切りにしたいと思う。

続き待ってる

>>75
遅くなってすまない。どうもイマイチなものしか書けなくて苦戦中。
代わりと言ってはなんだが、未那と三人のやり取りが一つ書けたので載せます。

幹也「ゴクリ… ふー」

式「またそんなの飲んでるのか」

幹也「寒い日は美味しいんだよ、缶コーヒー」

式「…私も少し飲む」

幹也「はい」

式「ありがと… コクリ」

未那「まなものむ」

幹也「ん? 未那も欲しいの?」

式「…子供にコーヒーなんてダメだ」

未那「まーなーもーのーむー!」

幹也「式、一口くらい良いじゃないかな。味見させてあげたら?」

式「ダメだ。カフェイン効果で眠れなくなる」

幹也「まだ朝だよ」

式「…唾液から虫歯が伝染する」

幹也「虫歯ないでしょ、僕ら」

式「か、風邪気味なんだ」

幹也「そうは見えないけど」

未那「みえないけどー!」

式「未那、もう一本買ってあげるから、それを飲みなさい」

未那「えー!」

幹也「じゃあ、式にだいぶ飲まれたし、未那の残りを僕が貰おうかな」

式「…それもダメだ」

幹也「式?」

未那「しーきー!!」

式「お母様と呼びない子にはコーヒーあげません」

幹也「しつけなのかな、それって…」




2004年2月

>式「お母様と呼びない子にはコーヒーあげません」

呼びない…orz

また書けなくなった…orz

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