エイラ「サーニャと、雨上がりの草原で」 (18)




今までのシリーズと関係あるかは尻ません。
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【R-18】ペリーヌ「アメリーのアヘ顔ダブルピースが見たい?」 - SSまとめ速報
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簡単な話だ。
要するに、『柄じゃない!』だとか『おっ、ヘタレてない!』だとか言われても。
それは皮肉だとは思うけど、それでも褒めているに違いない。
たぶん、そうじゃないかな。
だって昨日のワタシはすごかったんだぞ? ワタシもワタシを褒めてやりたいんだ。

町に買い物へ行く四人が選ばれたのにもかかわらず。
サーニャに二人きりで買い物をしようと言ったんだから。

飛んでいた野次は今でも思い出すと耳まで真っ赤になるからあまり思い出したくない。

あの時サーニャがどんな顔をして肯定したかは聞こえなかった。
ワタシは周りのシャーリーやハルトマンに言い返していたんだから。
柄じゃないこともたまにはいーだろー! とかな。

……ウソ。

照れ隠しでサーニャの顔を全く見れなかったから見なかった、の間違いだ。





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「サーニャ。決まったか?」

「ううん、ちょっと待って……どれにしようか、まだ決まらないの」

そう言って再度ショーウインドウの前で屈んだ彼女は、ただの普通な女の子だ。



こういう時に、女の子ってメンドクサイんだろなって、思う。
だってそうだろ? 早く席にも着きたいし、腹は減ってる。
なんでもいーじゃん。甘いお菓子なんて、普通に甘いか、少し甘いか、とびきり甘いか。
ただそれだけ。ビターチョコレートもクッキーもキャンディーも。そんなに悩むことはない。

時間は限られていて、決して無限ではなく、どの瞬間も一度きりの有限だ。
せっかく用意したデートプランもうまく進まない、むしろイレギュラーで手一杯。

あぁ、早くしてくれねーかな。

なんてそう思うのは、それは興味が無い女の子に対してだろう。






サーニャがショーウインドウの中、5段に分けられたケーキを選ぶ姿も。
今サーニャがどれを食べたらこんな顔をするのかなと、彼女の横顔を見て考えるのも。
席に着いたらどんなことを話して食べようか、とか。
むしろデートプランにイレギュラーなんてかかってこい、吹き飛ばしてやる、とか。
あとはまぁ、サーニャといれば無駄な時間なんて無いってくらいには、溺愛していたり。

もう末期だな、なんて思いながら。
それでも惚れた弱みを握ってる風でもない彼女に、少しもやもやする。
ずるい、ずるい、ずるい。
自覚がないんだろうな、でもそうだとしたらこれは私一人が勝手に舞い上がってるようで……。

それってかなりヒドイことだよな。
うん、そうに違いない。





そうやって彼女に、気づいてよ、なんてオーラを発信していると、注文が決まったらしい彼女は口を開いた。

「このハロウィンパンプキンパイをください」

「こっちにもおいしそうなチョコレートケーキがあるけど……」

「エイラはフォンダン・ショコラでしょう? 同じだと飽きない?」

あぁ、そういうことか。ワケっこね
ぜんっぜん考えも及ばなかったヨ。だってさ、これはきっと私が言う役目だったと思うんだ。

『サーニャ、迷ってるなら半分こにしよう。どっちも食べれるぞ?』
『そんな……エイラったら……半分こだなんて、恋人みたい……////』

『ほら、口をあけて。あーんって』
『あ、あーん……/////』
なんてサ。

まったく……。
サーニャはいつも知らないフリをしているようで、その実肝心なところで分かってるよ、と言う。
歯がゆいキモチになってしまうのも、もう慣れっこだ。
そこが可愛いと思う。いいや、そこも。





席でしばらく待つと、美味しそうな匂いと共にケーキと紅茶が運ばれた。
ワタシはダージリンのストレート、サーニャはオレンジ・ペコにレモン。
そのどれもが鼻腔をくすぐって、気分も華やぐ、そんなゆっくりとした時間。

口の中は甘いショコラの風味でいっぱい。
目の前には……サーニャがいて、同じように楽しんでいる、といいな。
こうしていれば、日々あんなことをしている風には見えないよな。
それはお互いに、さ。

そんなことを考えていたら、今が絶好のチャンスなんじゃないかと気づいた。
ワタシは先ほどサーニャに隠れて買っていたモノを取り出すと、
それを見てフォークとナイフを置いたサーニャに、ケーキの上を通らないように渡した。

「そうだ、これ。……はい、プレゼント」

「……どうして? この間私の誕生日に貰ったじゃない」

「そういうんじゃなくて……ほら、あげたい時に私はあげるんだ」

「ふぅん? そうなの? でも私、何も用意してない……」

「そうじゃなくて、ワタシが思い立っただけなんだ。プレゼントしたいって」






サーニャは首を傾げながら、頭に?をあげながらワタシを見る。
イマイチ伝わらないようで、ワタシはミヤフジが言っていた言葉を思い出す。

誕生日プレゼントなんか義務的にあげるものじゃなくて……
こう、あげたい人にあげたい時にあげる。
喜ぶ姿が見たいから。確かそうだよな、よし、それを上手く説明して……。

「ありがとう、嬉しいわ」

「え、あ、お……おう、私も嬉しいぞ、サーニャ」

微笑む彼女の姿を見て呆気にとられてしまった。
やっぱり。可愛いな、サーニャって。

そんな顔を見てしまえばどうってことのない解説だ。
うーん。ま、そんな厚かましい言葉なんて聞かせたくないし。
そうやって心の中で仕舞うしかないかな……アハハ。
気づいてくれてもいいんだよ?と視線を投げかけたが、
彼女はワタシのあげたプレゼントに夢中になっていた。





「開けてもいい?」

ショコラを頬張りながら頷くのを見て、彼女は紅茶を一口飲んでからラッピングを解き始めた。
ゆっくり丁寧に、包装紙を広げる姿は、ワタシとは正反対。
ワタシなんて、ビリビリに破いちゃうもんなー。

包装紙をたたみ、箱を開けて出てきたモノを広げると、大事そうに両腕で体に抱く。
あのさぁ、サーニャ。
ワタシもそうやって抱きしめてくれ、なんてことは言わないけど。
それは可愛すぎる仕草だから今は止めてくれ、なんてもっと言わないけど。
でも、それを見せられると……

「エイラ? どうしたの? 顔が真っ赤よ?」

なんてことになるので、非常に恥ずかしいのである。

可愛すぎだろ!! もー! ズルイ! まったくもうだぞ、まったくもう!





「サーニャに、似合うと思ってさ」

「うん、ありがとう。そろそろ寒くなってきたもの、嬉しいわ」

「今日なんか一段と寒いしな」

「うん。……今日から使わせてもらうね、ありがとう、エイラ」

「あぁ、ワタシも嬉しいよ」

「……でもどうして赤なの?」

その質問をした彼女の姿は小悪魔か無邪気か。
いつも黒だったり白だったり。あとはそう、緑色。
可愛らしい色も似合うよ、とは言えないもので。
ワタシの口から出てきた言葉は何でもない、ただのありきたりな言葉だった。

「えーっと、たまには別の色もいいかなーって……あはは」

情けない、とか思ってないかな。
もっとあるじゃん、サーニャのためにすごく悩んだんだ、とか。
でもな? 本当に似合うと思ったんだよ、サーニャに。その赤いマフラー。






その後はほとんど501の話。誰がこうしてどうなったとか、他愛ない話。
代わり映えしないといえば身も蓋もないけどな……。
そんなことを考えながら壁掛け時計に目をやった。

「んー、そろそろ行くかー。もう18時だ。帰らなきゃな」

「うん、そうね……」

そう言って席を立ち、会計を済ませると、彼女はもう一度店内を振り向いた。
忘れ物かと聞くと、なんでもないと答える。
もしかしたら、と考えたが口に出すのは野暮な気がした。

集合場所の町の入り口に着くまで、彼女は巻いているマフラーをぎゅっと握っていた。
それでなんとなく、ワタシは彼女に提案していた。

「なぁ。まだ時間まで少しある。あそこで町でも眺めていかないか」





やってきたのは町からすぐの小高い山、というよりは丘だろう。
足首までしかない草原、寂しげな木と、それを囲むように大きな岩が少し。

「今日、楽しかったよ。ありがとな」

「ううん、私の方こそありがとう。プレゼントまで貰っちゃったし」

「似合うぞ、サーニャ」

夜目がきくのはサーニャの方だろうが、それでもワタシにはサーニャがはっきりと見えた。
赤いマフラーを何重にも巻いた彼女の姿は、やはり人形のよう。

「えーっと、その……星、キレイだな」

「えぇ、そうね……」

二人して夜空を見上げる。
星に詳しい彼女が口を開く。ワタシがそれを聞く。
夜間哨戒でよくある光景だ。





ワタシはその辺の大きな岩に腰を下ろすと、もう一度空を見上げた。
ん、お尻が冷たい……そういえばさっき店の外では小雨が降っていたような。
サーニャはというと、来た時と同じ姿勢でまだ星を見ていた。
寒くないか? と声をかけようとしたが、止めた。
今の彼女を邪魔することは出来ない。時が止まったような、静寂。

肌寒いけどココロはなぜか温かい。
こういうのを幸せっていうのかな。

なんてなー、はー……幸せ。

なぁ。サーニャは幸せだと思う時はどんな時?
ワタシという時? 皆でいる時? 空を飛んでいる時?

教えてくれよ。サーニャばっかりずるい。
ワタシのキモチを知ってるんだから。
少しは教えてくれよな、っていうのも、何度目のワガママかな。
はぁ、惚れた弱みって、まさにこういうことだよなぁ。






「そろそろ行くかー。ミヤフジとリーネも待ってるだろうし」

「そうね……うん、でもあと少しだけ」

「ん? あぁ、いいぞ……んむっ」

彼女は鼻歌まじりにワタシを見て、ゆっくりと座ったままのワタシの頭を胸で抱く。
そうしてプレゼントしたマフラーをワタシの首にも巻きつけるのであった。

「エイラ、つかまえた……」

柄じゃないと思った。

彼女はそれを察したのだろう。

「たまには柄じゃないことも、ね」

その胸からうずくまった頭をあげると、彼女はワタシをじっと見ていた。

ふふ、と声を漏らす小さな口は、口角をあげて満面の笑みを浮かべ、
そこにいたのはただ1人の普通の女の子だった。

ワタシの大好きな、女の子だった。





指先まで冷えたワタシのカラダは熱を帯び、彼女の腰に手を回すまできっかり3秒。

どんな言葉でサーニャを抱きしめようか。

「エイラ……」

甘える声で再度ワタシの頭を抱くサーニャに、ココロが溶けていく気がした。










テテテテンッ デデデンッ!           つづく








オワリナンダナ
読んでくれた方、ありがとうございました。

リハビリなので短編です、すみません……。

この半年ずっと聴きこんでいた曲を今回モチーフにさせていただきました。
聴きながら読むと……何かあるかもしれません。
https://www.youtube.com/watch?v=jeU1TSxlhVo

次回はエイリーヌかダブルピースか芳リーネです。
なるべく11月中にあげます。あげます、あげますってば!
(もしくはデレマスのあんきらかもしれません)

某まとめサイト様が復帰されるのを心待ちにしております。
某まとめサイト様、並びに各所でコメントくださる方、いつもありがとうございます。
それでは、また。

ストパンT.V.Aアルマデ戦線ヲ維持シツツ別命アルマデ書キ続ケルンダナ

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年11月06日 (金) 08:48:42   ID: GIjn1cCC

まじめ・・・だと!

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