妖狐「わしは聞いてないぞ?」男「言ってなかったな。旅に出ます」(967)

トアール国

��街の掲示版前��

町人1「はぁ…また吸われたらしいね…」

町人2「はぁ!?今回で何度目だよ………で、またやるのか?」

町人1「どうもそうらしいね…なんでも、被害が後を絶たないそうだ」

町人2「しかしあの洞窟からは出てこれないんだろう?だったら下手に突っつかない方が良いんじゃないか?」

町人1「それがそうもいかないらしいんだ…。どうやらその洞窟にいるマモノは男性を操る事ができるらしい」

町人2「嘘だろ…怪しい術とか使うのか…?」

町人1「いやーどうだろうね。しかし確かめようが無いんだよ…何せ討伐に向かった連中は全員消息不明だ」

町人2「なっ…!全員!?今までもそこそこ名の知れた腕利きが向かったはずだが…それに男性が操られるなら女性を向かわせるのはダメなのか?」

町人1「全員、だよ。消息不明だ。そして女を向かわせても男が勝てないマモノに勝てるかわからないし、男性が操られて女性が返り討ちに合う危険性もある」

町人2「くそぉ…打つ手無し、か…」

町人1「王はまた討伐隊に入る者を募っているらしいよ、討伐した者には多額の報酬が支払われるが果たして…」

町人2「こんなもんに参加するやつは物好きだよなー」

町人1「そう、だな」

町人2「しっかしマモノはどんな姿なんだろうなー」

町人1「さぁ?想像もつかないなー」


     ‘‘妖狐’’って…。


……
………
…………

…………
………
……

町人1「はー…物好き、かー」

町人1「(確かに物好きかもしれんなぁ、国兵は参加するだろうがそれ以外からわざわざ参加するやつの気が知れんのは確かだ)」

町人1「(まぁ…参加するんですけど。実際どんな姿か見てみたいし退屈してた所だ。どうせ一度きりの人生だしマモノぐらい拝んで死んでも良いだろう)」



……
………

………
……


��家��

町人1「さて、と…。剣は持った、装備は…まぁ金無いしいつも通りだな。…おっとと、護身用のペンダント忘れてた」

町人1「(………)」カタ…

町人1「色々あったが何かしなきゃ何も始まらないよな…」

町人1(男)「よし!父さん、男…行ってきます!」タッタッタッタッ

………
……


王城前広場

ガヤガヤガヤ

男「んー、やっぱりあんまり以前より多くないな」

男「(ここに、居ればいいのか…?)」

兵士「なぁ…お前、彼女いるんだろ?いいのか?」

兵士2「いいわけ無いだろ!できるならすぐに帰ってベッドインしたいっつーの!」

兵士2「でもそうもいかないところが、辛い」

兵士「そうさなぁ、俺達の給料は確かに良いが、こういう事には体が故障してない限り参加しなきゃならんからなー…」

兵士2「まぁ仕方ないさ、俺が頑張ればそれで可愛い彼女が食っていけるんだ。だったらいくらでも働いてやるよ」

兵士2「あぁ…お前も俺の彼女に会えばこの可愛いさが伝わるはずだ…俺、この討伐遠征が終わったらプロポーズするんだ…」

兵士「おぉすげぇな、応援してるぜ。とっとともげろ」

ガヤガヤガヤ … ガヤガヤガヤ…

男「(なんかまずい会話聞いた気がするんだが聞かなかったことにしておこう…)」

男「ん?あれは、国王か…」

大臣「皆の者、静まれ!」

王「集まって頂いたのは他でもない、此度こそ、妖狐を討伐してもらいたい」

王「何をしても構わん、妖狐を捕らえるか打ち首を持ってきてもらいたい。そしてやつは怪しげな術を使うとの報告がある。十分注意するように…!」

大臣「兵士達は隊列を組め!一般から参加するものは兵士達の後ろについて行くのだ!」

兵士達「はっ!!」ザッザッ

男「ようやくか、待ちくたびれたぞ…」フッ…

男「ていうか一般からの参加者は俺一人かよ!!恥ずかしい!」


……
………

………
……


山道

男「長えええぇぇ…長いよ長い過ぎるよどんだけ続くんだよこの坂道は!」

兵士「ほぅ…一般からの参加者はお前一人か。なかなか度胸があるやつだな。それにしても一人とはまったくたるんでおるな!」

男「あはは…そっすね…(あんたの腹もたるんでるけどな」

兵士「ん?なにか言ったか?」

男「いえいえ何も…」

男「そういえば例の洞窟、どこにあるんですか?」

兵士「この山の頂上から下に降りれるようになってるらしいぞ、もうすぐだ」

男「はへー、話変わりますけど、疲れたんでおんぶしてもらっていいっすか?」

兵士「っ…!まったくたるんでおるな!乗れ!」

男「優しいっすね!あざっす!」ヤッホーイッ


……
………

………
……


洞窟内

男「おっ…広い所に出たぞ」

男「んー?何も無いな…(何も無い…?)」

グラグラ…
男「うわ、ここの壁ゆるいなー、少しの衝撃で崩れるぞこれ」

男「それにしても暗いな…ん?なんだあれ……」

男「お、おおおぉぉおおわわわわわ!!!なんだよこれ!なんで、こんな、数」

兵士「これはっ!男性の死体…!それもこんなに!」ヨッコイショ

男「あ、兵士さんおぶってもらってありがとうございました」

兵士「構わん気にするな、その代わり少しは戦闘で役に立ってくれよ?…って聞けよ!」

男「うーむ…男性の死体ばかりだな…ん?山になってるな…それに上に穴が空いてる…」

男「ここは…まて、死体が山積み?死体の留置所…?まずい!みんなここから逃げ…!!」

ゴゴゴゴゴゴ!!!!
兵士「なんだ!?何が起こってるんだ!?」

兵士2「この地響きは…?!」

???「ほっ!」

ガラガラガラドドーン…!!

男「くそ…!出口が塞がれた!!罠だ!!」

???「そう、罠じゃよ」

男「っ!誰だ!!」

???「よっこいせっと…。いやー良い頃合いじゃった!そろそろ補給をせねばならぬ頃じゃったからの」

男「(補給?頃合い?)」

???「おっとっと、自己紹介がまだじゃったのぉ…我は妖狐じゃ!」デーンッ

男「お前が妖狐か…!こんなふざけた罠を仕掛けやがって!これで閉じ込めたつもりか?!」

妖狐「ふ、ふざけたとは何じゃ!三日かかったんじゃぞ!わしの苦労も知らんで…」

兵士「貴様が同胞達を…!!」

兵士長「皆退くな!ここで妖狐を討ち取り帰るぞ!!かかれ!!」

兵士「おぉおおおぉ!!!せやっ!」ブンッ

妖狐「おいおいせっかちな奴らじゃの………《魅了》!」

兵士「!!?」

兵士2「なんだ…?これ、は…!?」

兵士長「体がうご、かん…!!ぐぐぐぐ…!!」

兵士3「くっそおおおおぉ!!」

妖狐「《ひれ伏せ》」

兵士「うぐぐぐ…!」ザザッ

兵士2「体が勝手に…!」ザッ

妖狐「ほっほっほ、まぁ無理じゃろうな。今まで抵抗できたやつは会ったこと無いのぉ」







男「そうなのか?」

妖狐「そうじゃ!」

男「…」

妖狐「…」


男「………」


妖狐「………」


妖狐「何で平然と立っておる!?」ガビーン

男「いや、えーっと、何かしたの?」

妖狐「したわ!さっきしたわ!ならばもう一度……《魅了》!!!!」

男「…?大丈夫か?」

妖狐「う、うるさい!なんでじゃ!?なんで効かないんじゃ!?」

男「効かないから効かないんじゃないか?」

妖狐「うるっさいわ!そんなこと言われなくてもわかっとるわ!!」

妖狐「(なんでじゃ!?なぜ効かん!?ありえん!こんな人間は初めてじゃ…)」

妖狐「え、ええぃ!こうなったら妖術で焼き払ってくれるわ!《火炎》!」ボォ!!

男「あちっ!あちあちち!うぉ…丸焦げになるところだった」

妖狐「ぐぬぬ…(魔力が足りん…!ハッ!そうか…足りなければ補給すれば良いのだ!」

男「心の声漏れてるけど補給って何だ?」

妖狐「ふん!今からするから見ておれ」

妖狐「ふー…そいっ!」バッ

兵士「なんだ?なんだ!?」グニャァ

兵士長「からだ…が…ちじ…みゅ…」グニャァ

男「お、おい!待て!」

妖狐「待てと言われて待つ阿呆などおらんわ!」ポンッ

男「兵士達が、珠になった…」

妖狐「ははははは!これを取り込め…ば!」ングング…  シュウウゥゥ

男「おいおいこれはやべーな…」

妖狐「ふぅ…全快はしないものの魔力は半分以上は回復した…のぉ!《火炎》!!」ボォォォォォ!!

男「っ!!あぶねぇ!」ヒュンッ

ザザッ!  ガッ

男「(しまっ…!地面に足を取られ…!)」

妖狐「がら空きじゃなぁ!《火炎》」バシュウッ!!

男「ごふっ……ケホッケホッあつっあつっ!!」

妖狐「ほぅ…あれを食らって生きながらえてるとはやりおるの」

男「そりゃどーも…よっ!」ヒュンッ

妖狐「ぬっ!?小賢しい真似を…!」キンッ

妖狐「しかしこれで貴様の武器である剣は使えな…っ」

ザッ!ビュオッッ!!ガッ!

男「俺は元々剣の腕はあまり無いもんでな」ギチチチ…

妖狐「(早っ…!)ぐっ…」

男「さて…お前の首を絞めて殺すのも良いが最後に何か言いたい事はあるか?」

妖狐「ふん!そんなもの無い!殺すならとっとと殺せ…!どうせ生きててもつまらん。ここから出られないんじゃしな…」

男「出られない?そういや気になってたんだがなんでお前はここから出れないの?」

妖狐「封印じゃよ、わしはここに封印されてるんじゃ。だから洞窟からは出られん。」

男「封印?なんだそれ?ちょっと見せてくれよ」スッ…

妖狐「げほっげほ…んん…外して良かったのか…?」

男「まぁ、いいよ。それより封印とやらを見たい」

妖狐「ふん、物好きじゃの。ついて来い」

男「あぁ。俺は物好きだからな」

……
………

………
……


ー封印の間ー

男「ここか…って真上じゃねぇか!」

妖狐「そうじゃが?」キョトン

男「なんかいかにもな剣が地面にぶっ刺さってるな」

妖狐「まぁの。こいつのせいでわしは洞窟から出られん。まったく」

男「触っても?」

妖狐「あんまりおすすめはせんがまぁ良い、勝手にせい」

男「ほー…ふーん…触った感じどうってこと無いな」

妖狐「なっ…!(嘘じゃろ!?人間が触れれば3日はうなされ寝込むほど強烈な邪気を放っておるというのに…)」

男「おーい妖狐ー」

妖狐「(ふーむ…こいつは一体何者なんじゃ?人間にしてはなかなか強い。それにわしの全快の炎では無いにせよかすり傷程度で済んでおるし…)」

男「おーいってばー…あっ」スポッ

妖狐「(こいつ、もしや…封印を解くのに利用できるかもしれんな)」ニヤリ

男「ごめん、抜けちゃった…えへへ」

妖狐「………へ?」ポカーン

男「あ、やっぱまずいですよねすみません、戻しておきますね」ザクッ

妖狐「まっ待て待て待て!!抜いて良い!抜いて良いから!はやくぬいてぇ!!」

男「そうなの?じゃあ…」スポッ

妖狐「おぉ…ということは、これで…ようやく…自由の身じゃっ!!!」ピョンッピョンッ

男「………待て」ザクッ

妖狐「ぬぉおおお!!なぜ戻す!?」

男「この封印の剣、抜いてやらん事も無いが一つだけ条件がある」

妖狐「条件じゃと…?このわしにか?はっはっはっ!調子に乗るのもいい加減にしておけよ小童が!」

男「じゃあ俺、帰るぞ」

妖狐「待て待て待て待ってください!まだ何も断るって言ったわけじゃなかろう…?じょ、条件とやらを言うてみい」

男「俺と契約を交せ」

妖狐「契約ぅ?なんじゃそれは。取引か?」

男「いや、家にあった古い本にな、マモノと契約を交せば使い魔にできると書いてたんでな。試したい」

妖狐「試したい!?事もあろうにわしで試すのか!?」

男「うん、試す」

妖狐「なんか腑に落ちんが…その契約とやらをすれば封印を解いてくれるんじゃな?」

男「あぁ。約束は必ず守る」

妖狐「はぁ…マモノが人間を信用するなど阿呆な話じゃが仕方ないか…」

妖狐「で?その契約とやらは何をするんじゃ?」

男「口づけ」

妖狐「ぶっっ!!ごほっごほっ…何をいきなり言うとるんじゃ!貴様と口づけ?阿呆か!」

男「接吻とも言う」

妖狐「言い直さんでいいわ!ていうかするわけなかろうっ!!」

男「そっかーじゃあ仕方ない。ここでお別れだ」

妖狐「えっ…」

男「もちろん封印は解かないがな」

妖狐「くぅぅ…卑怯者め…」

男「お前にだけは言われたくないなー、それに他の封印が解けるやつを待つんでも良いんだぞ?俺よりもっと心優しい人間が来るかどうかはわからんがな」ニヤッ

妖狐「くそぉ…くそぉ…!」エグエグッ…

男「お、おいおい泣くなよ…そんなに俺不細工か?泣くぞ…」グスン…

妖狐「えぇい!もうこうなってはやけくそじゃ!早くせい!」

男「本当に良いのか?」

妖狐「構わん!ここから出れないよりはマシじゃ!」

男「わかった…じゃあ、するぞ?」

妖狐「ちょっちょっとまて!あの…心の準備が…」

妖狐「その、初めてじゃから…優しく、頼む…」スッ…

男「…?お、おう」スッ…



チュッ…


……
………

一応酉付けときます。今日はここで終わります
お付き合いありがとうございました

………
……


妖狐「はー!外の空気はうまいのぉ!久方ぶりじゃ!」

男「そんなに久しぶりなのか?」

妖狐「うーむ、150年ぶりかの?」

男「うっわそれババ…」

妖狐「何 か 言 っ た か の ?」

男「それババアじゃんと言いかけました」

妖狐「聞こえなかったわけなかろうが!わざわざ言うな!!」ポカッ

男「いてて…。それはそうと、お前これからどうするんだ?」

妖狐「どうするも何もお主と契約とやらを結んだんじゃろ?勝手に何処かに行けるものなのか?」

男「お主ってなんだよ…んー、確かに、契約者からは離れられないかもなぁ」

妖狐「成り行きとはいえ、契りを交わしたんじゃ。お主でよかろう」

男「まぁ、貴様よりはマシだな」

男「さてと、これから俺が居た国に帰るが…どうしたものやら…」

妖狐「わしはついて行っても大丈夫なのか?」

男「うーん…尻尾と耳は隠せるか?」

妖狐「無理じゃな」

男「だよなぁ…うーん…ま、歩きながら考えるか」

妖狐「なーんかお主は適当じゃのう…」

………
……


男「そろそろ暗くなってきたな、今日はここら辺で野宿だ」

男「よっ…枝木を集めてっと…妖狐、頼む」

妖狐「ふあ?何をじゃ?」

男「アレだよアレ。ボッと火をだしてくれ」

妖狐「お主の丸焼きが今日の夕飯かの?」

男「ちげーよ!ここに火をつけるんだよ!」

妖狐「まったく仕方ないのぉ」ボッ

パチパチ… パチ…パキキ…

男「おっ、ついたついた…あったけー」

妖狐「(……なんか便利屋みたく扱われてるのは気のせいか…?」

男「木の実とかしか持ってないんだ、今日はこれで我慢してくれ」

妖狐「うぬ。…なかなか旨いな」ハムハム

男「この木の実もなかなか甘くて旨いよな」ハム

男「ごちそうさん」パンッ

妖狐「うむ!美味じゃった!」ゲフ

男「妖狐、ごちそうさまはちゃんと言え」ギラッ

妖狐「す、すまぬ…わかったからそう睨むでない…ごちそうさまじゃ」

男「さ、とっとと寝るぞー」

妖狐「うむぅ…」


……
………

………
……


男「さて、そろそろ街に着くんだが」

妖狐「うむ」

男「うむ、じゃねーよ!礼くらい言え!」ヨッコイセ

妖狐「すまんの、世話になった」スタ

男「ったく…足が痛いとか言い出したからおぶってやったってのに…」

妖狐「こんなに歩いたのは久しぶりなんじゃよ、許せ」

男「はいはい…っと、外見隠す為のローブ買ってくるからここで隠れて待っててくれ」

妖狐「承知した」

タッタッタッタッ
男「買ってきたぞー」

妖狐「遅いわ!いったい何をしておったんじゃまった…くっっ」ムグッ

男「甘菓子買ってたんだ、旨いだろ?」グイ

妖狐「ま、まぁの…それなりに美味じゃ」モグ…





男「…………しっかし、ローブはダボダボだな…大きさ見誤ったかな…こう、胸の辺りが…」

妖狐「……なんじゃ?胸が小さいと言いたいのかの?」

男「そうだな、もう少しあると思ってたんだけど想像以上に無かった」

妖狐「ぐぬぬ…はっきりと言おってからに…屈辱じゃ…!」

男「そ、それより、俺これ好きなんだよなー」モグモグ

妖狐「甘菓子か。その美味さは認めよう」モグモグ





妖狐「………お主よ、その…もう少し…甘菓子とやらを、そ…その…」

男「ん?あぁ、はい。好きなだけ食っていいぞ」

妖狐「お、おぉぉ!んぐんぐ…美味じゃのぉ…美味すぎるのぉ…」モグモグ

男「リスかよ」


……
………

………
……


男「で、話してたら王城前に着いたわけだが」

妖狐「ほーこれが城か」モグモグ

男「まだバレないようにしておけよ。あとこれからは常に殺気を放っておけ」

妖狐「?良いのか?殺気なんぞ放って」

男「あぁ。ガンガン放ってろその方がマモノっぽく見える」

男「よし、行くぞ!」

妖狐「うむ!」


……

……


男「すみません、王様に御用があり参りました。」

門番「用件を話せ」

男「妖狐討伐の件です」

門番「何!?討伐した、のか?」

男「?え、えぇ。しましたよ、なので王様にご報告したいのですが…」

門番「少し待っていろ」タッタッタッタッ

妖狐「………」モグモグ…

タッタッタッタッ…

門番「入れ。中央の階段を登りそこから左手に進めば謁見の間に着く」

男「ありがとうございます」

門番「待て!その者はなんだ?ローブの中身を見せろ」

男「すみません、この娘は酷い虐待を受け心が病んでしまい、人前でローブを脱げないのです。どうか許してやってくれませんか」

妖狐「………」ゴオオオオオ!!

門番「う、うむ…ならば、仕方ない、な…通れ(凄い殺気を感じるのは気のせいか…?)」

男「ありがとうございます」テクテク

妖狐「………。」テクテク





男「ばかっ…門番にまで殺気全開にしてどうするんだ!」ヒソヒソ

妖狐「お主がしろというたんじゃろうが!」ヒソヒソ

男「時と場合によるだろ!まぁその、今回はすまん」ヒソヒソ

妖狐「わかればよい」ヒソヒソ

男「なんか腑に落ちねー…」ヒソヒソ

ー謁見の間ー

大臣「面を上げい」

男「はっ」スッ
妖狐「……」スッ

王「ふむ、先程妖狐を討伐したとの知らせを聞いたが本当か?」

男「はい。ですが正確には討伐はしておりません」

王「それはどういうことじゃ?」

男「私は討伐したのではなく、従えました」

大臣「なんだと!?して、そいつは!?」

王「なんと!そんなことが…」

男「皆さんもお気づきでしょう、私の横にいる者…。この者はなんだと思います?」

王「なんだ、とは…?」

男「討伐したといっても私しかあの場には居ません。なので証明しようがありません。ですので連れてまいりました」

大臣「なっ…ま、まさか」

男「はい。この者が皆の手を煩わせてきた妖狐です」バサッ

妖狐「………」ゴオオオオオオオオオオオ!!!!!

男「(殺気出しすぎ!)」

大臣「っっ!!何たる殺気!と、捕らえよ!即刻捕らえよ!!」

男「待ってください!!」

男「先程も言いましたけど、この耳、尻尾、どれを見てもこの者は紛れも無く妖狐。しかし幾度となく討伐に失敗してきたここの兵士達で果たして捕らえることができるでしょうか?」

大臣「うぐっ…」

男「ここに果物があります。これを…。妖狐(ボソッ」ポイッ

妖狐「……(コクリ」スッ…ボォォッ!

男「とまぁこの様に怪しげな術も使ったりもできるみたいですね、ですが」

男「妖狐、止まれ」ナデナデ

妖狐「………」

男「この様に私は妖狐を従わす事ができます」

王「ふむ…妖狐のそなたへの忠誠心はわかった。して、何が望みなのだ?何かあるのだろう?」

男「流石王様、察しが良くて助かります。いくら従えど、この国で妖狐と生活するのは難しいかと思います。なので私はこの妖狐と旅に出ようかと思っております」

王「旅、か…。しかし、私が民に言ってやることも可能だが…どうする?」

男「民に強要するのはあまり良い案ではありません。ですので少しばかり旅に役立つ物が欲しいのですがどうでしょうか?」

王「ふむ…わかった。大臣よ、この者に旅に困らん程度の金貨と…それと、地図は……持っておるか?」

男「いえ、持っていません。頂けるのならばありがたく…」

大臣「これを持ってゆけ」ジャラ…パサッ…

男「ありがとうございます」スッ…

男「それでは、失礼します」スタスタ

妖狐「…………」スタスタ


……
………








………
……


王「さっきの者に渡した地図はちゃんと………を消してあるな?」

大臣「もちろんです、抜かりはありません」

王「そうか…。」


……
………

………
……


ー広場ー

男「はー、かったるかったーなかなかの演技だったな、妖狐」

妖狐「ふん、当たり前じゃ」






妖狐「で?旅に出るとか抜かしおったがわしは聞いてないぞ?」

男「あー、言ってなかったな。うん、そうなのです旅に出ます」

妖狐「そうか。ではお別れじゃの。わしはこの近くの森で暮らすゆえ、たまには顔見せるんじゃぞ」

男「なーに言ってんだこの狐は。お前も来るんだよ」

妖狐「はぁ!?聞いておらんぞ!」 

男「聞いてないも何も、俺ら契約結んだんじゃないのか?」

妖狐「しまった…!忘れておった…」

男「ということで改めてよろしくな、妖狐」

妖狐「ふん、まぁお主と居ると退屈しなさそうじゃしよいか…」





妖狐「(頃合いを見計らって殺せばよかろう…それでおさらばじゃ!)」

男「………。頃合いを見計らって殺そうとか思ってるな」

妖狐「!?なぜわかった!?」

男「やっぱり思ってたのかよ、そんな悪い子には甘菓子はあげません」

妖狐「なんじゃと!?すまぬ…それだけは…」ウゥ…

男「涙目になるなよ!反応に困るだろうが…」

妖狐「しっかしお主もわしなんかと旅とは、やっぱり物好きじゃの」ニシシッ

男「そうだなー、俺は物好きだからな」


……
………

………
……


妖狐「あぁー足が痛いーなんとかならんのかこの痛みは」

男「俺に言うなよ…ていうかさっきまでおぶってやってただろ!」

妖狐「わしはか弱き乙女なのじゃよー…そんな乙女にこんな長旅を強いるとはお主は人で無しじゃのぉ…」

男「マモノのお前に言われたくねーよ!それに街から出発してまだ半日も経ってないだろ!!とっとと歩かないと森で野宿する事になるぞ?」

妖狐「うぅ…それは嫌じゃぁ…」

男「ほらほら、だったらとっとと歩け歩け」


カァーカァー

妖狐「あぁーもうカラスンが泣いておる…わしも足の痛みで泣いておる…」

男「えーと…もうすぐ小さな村に着くな…今日はそこに泊めてもらえるよう掛け合ってみるか」ペラッ

妖狐「その村は大丈夫なのかの?」

男「んえ?何が?」

妖狐「わしはマモノじゃぞ?まずいんじゃなかろうか」

男「まぁ…大丈夫だろ?耳と尻尾さえ隠しておけばお前は普通の村娘とそう変わらんよ」

妖狐「それならいいんじゃが…」


……
………

………
……


ーシュウヘン村ー

男「んー、酒場は…あったあった。まずは酒場で情報でも集めるか」

妖狐「情報?そういえばお主の旅の目的を聞いておらんかったの。なんなんじゃ?」

男「うん?あー…まぁ、時間ができた時に話すよ」

妖狐「わかった」

カランコロン

ー酒場ー

男「こんにちっ…は…」

男「(なんだ…?異様に空気が重いな…)」

妖狐「………」

店主「よぅ、旅人さんかい?すまんねぇ、重くて」

男「いえ、静かな方が好きなので大丈夫ですよ」

男「何か、あったんですか?」

店主「……、何か飲まねぇか?ミルク、酒、果物水、何でもあるぜ」

男「では、この店自慢の酒をぜひ」

店主「了解だ、そっちのお嬢さんは?」

妖狐「果物水を…」

店主「わかった。奥に座って待っててくんな」

男「(ふーむ、酒類や果物が出せる辺りその辺は困ってなさそうだな…)」

男「(となると食料か…?見たところ狩りをした後の者はいなさそうだしな…)」

店主「待たせたな、ウチの店自慢の特性蒸留酒だ。お嬢さんには特性果物水だ。」

男「ありがとう。んぐんぐ…ぷはっ!とても美味しいですね」ゲフ

妖狐「美味しい…」

店主「ありがとよ!……で、だ。なんでこんな空気が重いのかやっぱ気になるよな」

男「ですね。私達にできることがあればお手伝いさせて頂きたいのですが…」

店主「手伝い、か…。この村から少し離れた所に森があるのは知ってるか?」

男「ここに来る前に少しだけ拝見しました」

店主「そうか…。俺達ここの村人は昔からその森で狩りをしたり山菜を取ったりして生活してんのよ」

店主「しかし3年前ぐれぇ、かな。この森にやべぇ怪物が住み着いちまったんだ」

男「やべぇ怪物?」

店主「あぁ、そうとしか言えねぇ。もちろん俺達も何とか倒すまで行かなくとも追い払おうとしたさ。しかしソイツがまたえれぇ凶暴でな」

店主「しかも手当たり次第襲うんだ。何が目的かはわからんが、おかげで俺達は食料難になりかけだ。今はまだ備蓄があるがそれもいつ切れるかわからんほどだ」

店主「くそ!ソイツのせいで村に来る人は減るわ村全体の空気もこの有様よ」

男「なる、ほど…」

店主「おっと、旅人に愚痴っても仕方ねぇな悪い。ところで宿はもう決めたか?」

男「いえ、まだです。もしよろしければ良い宿をご紹介いただけませんか?」

店主「だったらウチに止まるか?丁度2階は泊まれるようにしてあるんでな!」

男「よろしいのですか?ぜひお願いします。お代はおいくらでしょうか?」

店主「お代はいらねぇよ!久々に村人以外と話せたし愚痴を聞いてもらったお礼だ!」

男「ありがとうございます」
妖狐「……ありがとう」ペコ

店主「おうよ!何か飲み物や食いもんが欲しけりゃそっちは有料で持って行ってやるぜ!」ガハハハハ!

男「はは、その時はよろしくお願いします」


……
………

………
……


ー部屋ー

男「ふー…大収穫だったな」

妖狐「そうなのか?」

男「あぁ。明日は森に行くぞ」

妖狐「そうか…。ん!?ちょっとまて!お主は店主の話を聞いておったのか!?」

男「聞いてたけど?」

妖狐「聞いておいてなんでこの流れになるんじゃ!」ダンッダンッ

男「まぁまぁ落ち着けよ」

妖狐「落ち着いて欲しければ甘菓子をよこすことじゃな」

男「ほらよ。森に行く理由なんだが」

妖狐「ふぅむ、ふぁふぁせ」モグモグ

男「店主が言ってたソイツっての、マモノっぽくないか?」

妖狐「まぁ、そうじゃろうな」モグモグ

男「うん、だから行く」

妖狐「答えになっておらんの…」

妖狐「のぉ…わしらは契りを交わしたんじゃろう?」

男「そうだな、交わしたな」

妖狐「じゃったら理由くらい教えてくれても…わしは何も知らぬままは嫌じゃ」

男「……ま、お前をもっと信用できるようになってからな」

妖狐「はぁ…まったく用心深い奴め、それはいつになるんじゃろうなー?」

男「さぁな。さっ、明日は森に行くんだ、ぐっすり寝て体力を回復しておけよ?」

妖狐「わかっておるわ。おやすみ」

男「あぁ、おやすみ」

今日はここで終わります
ありがとうございました

食糧の備蓄が少なくなってきてるのに気前よく食わせたりとか細かいところが気にかかる

>>56
久しぶりに旅人が来たのもあり村の酒場として見栄を張りたかったから、みたいな感じです

皆さんレスありがとうございます
拙い文章なので他にも読みにくい点、気になる点があれば言ってくださると助かります


……
………

ー瘴気の杜ー

男「さてと、森に来たわけだが」

妖狐「うむ」

男「見た感じ何も無いな」

妖狐「うむ」

男「しっかしなんか臭いな…」

妖狐「うむ」

男「一体どんなマモノなんだろうな?いや、マモノと決まったわけじゃないけど…」

妖狐「うむ」

男「なぁ、なんでさっきから、‘‘うむ’’しか言わないんだ?」

妖狐「お主が昨日の理由を言わんからだ」

男「えぇ…めんどくさいな…一先ず帰ってからにしてくれないか?」

妖狐「またそうやってはぐらかすのかの?」

男「わかったわかった、今度はちゃんと言うからさ…」

妖狐「はぁ…わかった。じゃ進もうぞ」

男「おう!」

………
……


ザクッザクッザクッ…

男「うーん、変わった所は特に無いな。魔物はチラホラ居るがマモノが居そうな雰囲気は無いな」

妖狐「なんじゃ?その魔物やらマモノやら…何か違うのか?」

男「あぁ、これか?俺達人間は…そうだな、妖狐みたいに宿している魔力が大きい物の人外をマモノ、それよりも比較的小さな魔力を宿している人外を魔物と呼んでいるんだ」

妖狐「ほほぉ、つまりわしは偉いと?」

男「んー?うん、まぁ、そんな感じだな」

妖狐「ふふん、まっ当然じゃな!」

男「はいはい、偉い子には甘菓子を上げまーす」

妖狐「やった!甘菓子じゃ!」

妖狐「ほーうまいうまい、これはいくらでも食べられるのぉー」モグモグ

男「ははは、お前はほんと甘菓子好きだ…な」

妖狐「うむ!しかしこんなに食べていてはすぐに底をつくんじゃないかの?」

男「大丈夫、だいじょうぶ…まだまだあるからあんしんして、たべ、…ろ…よ」ヨロッ…バタ

妖狐「ん?どうした…?」

妖狐「おいお主!どうしたんじゃ!!」



男「う、ん…なんか、からだうまくうごかないんだ」

妖狐「体が動かない…?っ!そうか瘴気のせいじゃな…」

男「しょう、き…?」

妖狐「うむ、よく見てみてみぃ、この森は奥に行くにつれて瘴気が濃くなってきておる。わしは耐性があるから気にしておらんかったがお主にとっては辛いかもしれん」

男「そ、れ…もうすこしはやくいってほし、かったな…」

妖狐「すまん!まったく盲点じゃった…ここに居ては瘴気はますます濃くなるばかりじゃ、場所を移すぞ!」ヨッコラショ

男「すま、ない…」

妖狐「瘴気を吸い込むから喋るな!なるべく口を閉じておれ!」

男「………」コクリ

………
……


ー気の幹ー

妖狐「ふむ…ここら辺でよいか…」ドサッ

男「う、んん…」

妖狐「ちょっと待っておれ…《浄化》!」シュウウゥゥ…

妖狐「周りの瘴気とお主の中に入り込んだ瘴気を取り除いた。少し休めば回復するじゃろう」

男「あり、がとう…。めいわくかけてすまん」

妖狐「構わん。わしらは契りを結んだ仲じゃろう?」

男「そうだったな、ははは…」

妖狐「うむ。持ちつ持たれつじゃ!気にするな」




男「ふぅ…だんだん落ち着いてきたな」

男「そういや、さっき、俺が倒れた場所覚えてるか?」

妖狐「ん?あ、あぁ。覚えておるが…それがどうかしたか?」

男「あそこの奥から少し殺気のようなものを感じた」

妖狐「お主は殺気が感じ取れるのか?」

男「まぁ、多少はね…お前だってできるだろ?」

妖狐「わしは疲れるから常にはしておらん。特にお主と居るときはな」

男「んえ?なんで俺といる時は《警戒》しないんだ?」

妖狐「さっきも言ったように疲れるのと、あとはお主が勝手に感じ取ってくれるじゃろうからな」

男「なるほどな、ははは…」

妖狐「で、奥に行くのかの?」

男「もちろん、行く」

妖狐「止めても無駄じゃろうし仕方がないの。せめてもう少し体力が回復してから行こう」




男「わかった。……で、だな」

妖狐「なんじゃ?」



男「いや、その…もう膝枕はいいぞ…?」

妖狐「なっ、なっ…!要らぬのなら早う言わんかっ!」バッ

男「あだっ!急に立ち上がるなよ…でもまぁ、悪くなかったよ」

妖狐「お主がそう言うのなら…まぁ…よい」




妖狐「(まったく…!恥ずかしい思いをしてしまったではないか!くそぅ…人生初の膝枕をこんなやつに捧げるとは…!)」

男「おーい、そろそろ出発するぞー」

妖狐「ちょっと待て男よ。これを飲んでゆけ」スッ

男「ん?なんだこれは…薬?」

妖狐「うむ。さっき作った。これで瘴気を吸っても少しは耐えれるはずじゃ」

男「どうやって…?」

妖狐「探索してる時に葉を取っておいたのじゃ。幸い、この森には薬になる色々な葉が生えておる」

男「そっか、ありがとな」ゴク

妖狐「お、お主に死なれては困るだけじゃからな!それだけじゃからな!」

………
……


ー瘴気の杜 奥地ー

ザクッ ザクッ  ザクッ…

男「なかなか草木が茂ってるな」

妖狐「足を取られぬよう気をつけい」

男「だなー」

男「しっかし、妖狐がくれた薬のお陰で体は何ともないな」

妖狐「当たり前じゃ!わし特性の薬なのじゃからな!しかし効力はそう長くは持たんぞ」

男「了解。とっととケリつけて帰るか」

妖狐「そうじゃの。早く帰って甘菓子を食べたいわい」

男「俺も食べたい…帰ったら腹一杯食おう…!」

妖狐「うむ!」

男「………っと、そろそろだな」

男「この辺りか…」







ヒュオオオオオオオ………

男「っ…!!妖狐!」バッ

妖狐「うむっ!」バッ

ズドドッ!!

マモノ「……!……」

男「この木の枝…鋭いな」

妖狐「男!上じゃ!」

男「なっ…!あれは!!」

妖狐「あれは…なんじゃ!?」

男「……………知らん、ていうか見えん」

妖狐「知らんのか!なんで知ってる風だったんじゃ!」

男「なんとなくだ」

妖狐「くぅ…当てにならん奴じゃ!」

男「そういうお前こそ長年生きてきたんだ、何か知らないのか?」

妖狐「似たようなものは見たことあるが…こやつは知らんのぉ」

男「じゃあとりあえずマモノってことで!」

男「よ…っと」ススッ ドドドッ!!

妖狐「ふむ…しかしさっきからお主ばかり狙われておるの」

男「なんでだろうな、よくわからん」

妖狐「うーむ…そういえば近年に住み着いたと言っておったな」

妖狐「この者もまた前のわしと同じく補給してるのかもしれん」

男「となると、俺が男性だからか?」

妖狐「いや、わしの場合は単に男性だと操れるから狙っておっただけじゃ。今回は関係なかろう」

男「じゃあ…人間だからか」

妖狐「多分そうじゃろな。補給するには人間を取り込むのが一番手っ取り早い」

男「まぁそれはいいんだが、あいつ隠れてばっかでわかんねぇな」

妖狐「うーむ…」

男「……そうだなぁ…」

男「妖狐、一旦退くぞ」

妖狐「な、なんじゃ?敵は目の前におるというのに」

男「いいからいいから」

妖狐「……わかった」

タッタッタッタッ…



マモノ「……ギギギ…」

………
……


妖狐「で?なんかお主には策があるんじゃろう?」

男「策という策では無いんだが…お前、確か周りの瘴気を払えたよな?」

妖狐「まぁの。あまり広範囲は払えんし払ったとしても時間が経てばここの瘴気は戻るぞ」

男「いや、問題無い。一定時間払えるなら大丈夫だ。あとは…」

妖狐「ま、待て男よ。そのぉ…ひじょーに言いにくいことなのじゃが…」

男「なんだ?時間が無いとっとと言ってくれ」

妖狐「うぅむ…その、わしはもう《浄化》は使えん」

男「はぁ!?ちょっ…おいまじかよ!!」

妖狐「まじじゃ。魔力がもう底を尽きかけての…先程お主を運ぶ為に体に《筋力増強》を使い、それに周りの瘴気とお主の中の瘴気を払うために《浄化》を使った、だから今のわしの魔力はぎりぎりじゃ」

男「うーん、どうにかならないか?」

妖狐「魔力さえ補給できればどうにでもなるんじゃが、近くに人間なんておらんかろ?」

男「居ないな…ていうか居たとしてもダメだ」

妖狐「じゃから無理じゃ」

男「くそ…!どうすれば…」

妖狐「…………」




妖狐「ひとつだけ。ひとつだけ案が無いことも、無い」

男「なんだ!?何でも言ってくれ!俺にできることならなんでもする!」

妖狐「お主の中の魔力をわしに分け与える事、かの」

男「俺を…食うのか…?」

妖狐「いや、お主自身を食いはせん。中の魔力を半分貰うだけじゃ」

妖狐「元々人間を食うのは中から取るのが面倒で食った方が早いからじゃ」

男「じゃあ、俺はどうなるんだ?」

妖狐「わからん。わしは相手の魔力を吸う時、全てを吸い切る。それはすなわち死じゃ」

妖狐「しかし半分など吸うたことがないからの…お主もどうなるかわからん」

男「しかし、方法はそれしか無いんだろ?」

妖狐「まぁ、の…」

男「だったらやってくれ。どのみちここも、もうすぐバレて殺られるだけだ」

妖狐「ううむ…わかった」

妖狐「そこに立て。少し気が飛ぶかもしれんぞ?」

男「…わかった」スクッ

妖狐「今から手に集中する。話しかけるでないぞ?」

妖狐「それと……」










妖狐「わしを信じろ!!!」

妖狐「ふうぅ…!!では、ゆくぞ!」ドンッ

男「ごふっ…!!ん…あ…がっっ!」

妖狐「んっ…!もう少し…!」

男「ま…だ、か…!?」ハァハァ

妖狐「だまっておれ!もうすぐじゃ!」シュウウゥゥ…





妖狐「ふぅ…うむ、お主の魔力を半分いただいた、が…」

妖狐「お主、なかなか持っておるの。鍛え方次第ではお主自身の魔力はもっと増えるかもしれん」

男「そ、そう…か?はぁ…はぁ…すごい、つかれるな…」

妖狐「そりゃの…少し休むか」

男「ふぅ…ふぅ…ふうぅーー………」

男「よし!落ち着いてきた」

妖狐「で、策の話がまだ終わってなかったの」

男「あぁ、続きを話そう。えぇっと…そうだ、瘴気を払う所まで話したな」

妖狐「うむ、そこからどうするんじゃ?」

男「ヤツはこの視界の悪い瘴気を利用し俺達に攻撃を仕掛けてくる、だからまずはこの鬱陶しい瘴気を払う」

男「次に、できるならでいいんだが…周りの木を焼き払う…のは無理だよな?」

妖狐「焼くこと自体は用意じゃが…炎が木々へと燃え移りこの森一体が焼けるぞ」

男「だよなぁ…なら仕方ない、焼くのはやめよう」




バキバキバキ…

男「俺が相手の注意を引きつける。お前は隠れて後方から隙をみて《火炎》をヤツにぶち当ててくれないか?」

妖狐「………命中力に自信は無いぞ?」

男「だったら当たるまでやるだけだ」

妖狐「うぅむ…それでいいのか…」

男「木か木へと飛び移りながら攻撃されたんじゃこちらの攻撃が届かない、だからヤツをどうにかして地面に落としたいんだ」

妖狐「そうじゃのぉ…まずはそれから、じゃの」

男「おっと…そろそろここもバレそうだな」

男「妖狐は先に行け、頼んだぞ」

妖狐「うむ、任せておけ!」サッ






バキバキバキバキバキバキ!!!

マモノ「ミ ツ ケ タ」

今日はここで終わります
ありがとうございました

男「さっそくお出ましか!」

男「おっと、お前の相手は俺だぜ!」ザッ

男「ほらほらどうした?お前の攻撃はそんなものか?」ザザッッ!!

ズドドッ!  
       ドスッッズドドドド!!

男「おっとと…くそっ!調子に乗りやがって!」

男「(妖狐はまだか…!?)」



妖狐「ふー…範囲が広いからの…気合を入れて…!《浄化》!!」シュゥゥゥ…!!

シュワァァァァァァ……!!!

マモノ「…!…?」

男「ん?おっ…モヤが晴れてきた!」

男「おぉ…あれが、マモノの正体か」

男「植物系のマモノだな、しかしやっぱり見えても何なのかはわからん」

男「っと、呆けてる場合じゃないな」ササッ

男「おーいっどうした?へいへいっそんなもんかー!?」

マモノ「……ッ!ウルッサイ!!」

シュバッ!     バシュッ!
   シュバッ!
       ヒュンヒュンッ

男「おっとと、あぶねー」キンッ




妖狐「うぅむ…すばしっこいやつじゃの…」

妖狐「ゆくぞ…《火炎》!」ボシュッ!!


ヒュンッ

 ドゴォ!


マモノ「!?ガハッ…!」ズルッ

ヒューー…    



.
.
.

…ドサッ!


妖狐「おぉっ命中じゃ!」


マモノ「グググ…ジャマヲ…スルナァ!!」シュルルルッ!!

男「なっ!触手か!!」

妖狐「っ!!まずっ」

男「っ!!妖狐!!」ダッ!




男「(くそっ…!)」バッ



男「(あと少し…!!だめだ間に合わないっ…!)」




男「(くっそぉ!こんな大事な所でも腕が短いせいで…!)」







男「(届け…!頼む…届いてくれ…!!)」







男「とどけええええぇえええぇぇぇーーー!!!!」ボォフッ!



男「……へ?」

マモノ「!!?グギャアアアァ!!ググ………!」シュル…

妖狐「なっっ!?」

妖狐「お、おおお主…それは…!」





妖狐「それはわしの《火炎》ではないか!!」

妖狐「な、なに真似ておるんじゃ!この!!」ダンッダンッ!

男「いやそこかよ」

妖狐「くぅ…わしの術を…!」

男「そんなことはいいからとっととこっちにこい!」

妖狐「う、うむ…」ダッ

妖狐「ま、まぁでもわしの威力にはとうに及ばんしな。そしてわしの本気はこんなもんじゃないぞ!」

男「はいはいわかったわかった。それより、あのマモノの中心部に何か光る珠みたいなものがあった」

妖狐「ふむ…じゃとしたらそれがヤツの核じゃの」

男「そいつをぶっ壊せば倒せるんだな?」

妖狐「あぁ…しかしやはり核は蔦で強固に覆われておるぞ?」

男「あの周りの触手、焼き払えないか?」

妖狐「できる…が、お主も巻き込むかもしれん」

男「心配すんな、そんなので死ぬほどヤワじゃない」

妖狐「わしの術をそんなのとはなんじゃ!そんなのとは!」

男「わ、悪い悪い…よし…」ジリ…



男「行くぞっ!!」ダッ!

ダッダッダッダッ!!

マモノ「グギギギギ…!ガァ!!」シュパッシュパッ!!!

男「おっと、そんな木の枝っもう当たんねぇよ!」ササッ!

妖狐「むぅ…!男が邪魔じゃ!ちょこまかと動きおって…!《火炎》!」ボシュゥッ!!


ドゴォ!

マモノ「ガ…ア!!アアアァ!!」バフッ!!

妖狐「よし!またもや命中じゃ!流石わし!」

男「見えた…!うおおおおおおおぉ!!!!」ダンッッッ!!!

マモノ「グギギ…!!イヤダ…!マダ…!」ヨロヨロ…

男「おらぁぁっっ!!」ブンッッ








ザシュゥッッッ!!!!








パキンッ…

………
……


マモノ「…」

男「ふー、疲れた」ドサッ

妖狐「じゃのぉ…」ドサッ

男「しかしヤツはどうやって補給とやらをしてたんだ?」

妖狐「瘴気で獲物の自由を奪いその後魔力を摂取しておったんじゃろう」

妖狐「倒されたことによって瘴気もじきに収まるであろうな」

男「そっか…でもなんでここなんだろうな」

マモノ「…」ピクッ

妖狐「わから、ぬ…ん?」

妖狐「男!そのマモノから離れろ!!」

マモノ「っ!!」シュバッ

男「ん?おおっ!ぬあっ」バチィッ

男「ん!がっ…!ひだり、うでに!何か入った…!!」

妖狐「油断しておった!まさかまだ動けるとは!」

妖狐「男!そのまま腕を締めておれ!」

男「んぐ…ぁ…!……あ、あれ?収まった」

妖狐「なんじゃと!?よく見せるんじゃ」

妖狐「ううむ…これは…」

男「どうだ?」

妖狐「これは、寄生しておる」

男「き、寄生…?」

妖狐「先程のマモノの種じゃろう。このマモノは死に際に周りにおる生物に寄生し生き延びてきたんじゃろうな」

妖狐「そして、じきにお主の魔力を吸い尽くすだろうの」

男「そうか……」

妖狐「うむ」





男「って!やばいじゃん!俺死ぬのか!?」

妖狐「そうじゃの、全て魔力を吸われると死ぬ」

男「まじ、かよ…どうすれば…」

妖狐「どうすることもできん、吸われ尽くすまでの命じゃな」

男「そっか…まぁ仕方ないか」

妖狐「仕方ないのか!?もっと慌てるぐらいせい!」

男「いやー、仕方ないだろ。お前ですらどうにもできないだろ?」

妖狐「そ、そうじゃが…妙に落ち着いておるの」

男「まぁな。一応、どうやって死ぬか死因はわかったし…おっ」

妖狐「どうしたんじゃ?」

男「なんか、左腕が動いた気が」

妖狐「あぁ…お主の魔力を吸っておるんじゃろう」

男「なぁ、あとどれくらい持つんだ?」

妖狐「そうじゃの…お主の症状を見るに、長くもって3日かの」

男「そうかー、3日かー…とりあえず村に戻るか」

妖狐「う、うむ…そうじゃの…」

………
……


ーシュウヘン村ー

男「ふー、戻ってきたな」

妖狐「あぁー…疲れた、足が痛い…」

男「俺は体がダルい…」

男「とりあえず酒場に行くか…」

妖狐「りょーかいじゃー…」

ー酒場ー

店主「よぉ、いらっしゃい!…って兄ちゃんたちか!」

男「こんにちはー」

妖狐「ちはー」

店主「おう!…そういや兄ちゃん達が森に入っていく所を見かけたと村人から聞いたんだが大丈夫だったか!?」

男「あー、はい。もう森は大丈夫だと思いますよ」

店主「それはどういうこった?」

男「皆さんを苦しめていた元凶、退治してきましたよ」

店主「なっ!嘘だろ!?それは本当か!?」

店主「昨日会ったばかりの兄ちゃん達が、ねぇ…」

男「森に入ればすぐわかりますよ、空気が変わってるので」

バンッ!

村人「はぁ…はぁ…!」

店主「おいおい何事だぁ?」

村人「も、もりが!森が元に…以前の‘‘桜類の森’’に戻ってる!!」

店主「んなっ…!」

店主「兄ちゃん達が言ってることは嘘じゃねぇみたいだな…」

店主「すまねぇ!実は半信半疑だった…申し訳ねぇ!!」

男「いえいえ、信じて頂ければそれで。元に戻って良かったです、これで活気も戻りますね」

店主「あぁ…!ほんと、感謝しきれねぇ…!!おいみんな!今日は宴だ!!」

村人2「おぉ…ようやく狩りができるんだな…うぅ…」

村人3「いやっほぉぉぉおーーーうっっ!!!」

村人4「おおぉ!!今夜は食いまくるぞ!!酒を持ってきてくれぇ!!」

村人3「いぇいいぇいいぇい!!!!!うひょおおおおおおおぉぉー!!!!」

店主「兄ちゃん達ありがとな…よぉし!今日はタダだ!あんまり派手にはできねぇが一緒に飲んで騒ごうぜ!!」

男「はは、ありがとうございます、いただきます」ペコ

妖狐「…ます」ペコ

ワーワー    
    ガヤガヤ
  ウヒョー



……
………

………
……


ー部屋ー

男「……やばい…もう動け、ない」ドサ

妖狐「うぬ…わしも、じゃ」ドサ

男「村人にとって森が戻ったってのはやっぱり凄く嬉しいことだったんだな」

妖狐「そうじゃなぁ、しかしあれほどはめを外して大丈夫なのかの…」

男「まぁ…良いんじゃないか?あんだけ騒ぐのも多分3年ぶりくらいだろうしさ」

妖狐「うあー、そうじゃ!そういえばお主の腕はどうなっておる?見せい」グイッ

男「時折少し動くくらい、かな」スル…

妖狐「ふむ…早まっては無さそうじゃの…」ピタ

男「…なんかお前の手、冷たくね?」

妖狐「さ、寒いんじゃよ!というかお主の腕だって冷たいじゃろ!」

男「そうだな、寒い」

妖狐「ふぁああ…眠いの…もう寝てもよいか?」

男「ん…?あ、あぁ…俺も寝るか…」

妖狐「うぬ…」フワフワ

男「……………。」ジー…

妖狐「んあ?なんじゃ?こっちを見て…」

男「……尻尾…」ボソッ

妖狐「うん?わしの尾がどうかしたか?」

男「……えい」ギュム

妖狐「わひゃあっ…!」

妖狐「な、ななななっっなにをしておりゅ!!」

男「温かそうだなーと」

妖狐「さ、触るな!尻尾を触っていいのは…!その…」

男「?その、なんだよ?」

妖狐「その…は…ごにょごにょ…」

男「んえ?聞こえん、もう少し大きな声で頼む」

妖狐「は、伴侶だけじゃ!心に決めた伴侶だけしか触ってはならんのじゃっ…!」

男「えー…でも俺達主従関係なのにか?」

妖狐「うぐぅ…それを言われると痛いが…」

男「…ま、わかったよ。悪かった、お前にも譲れないものはあるもんな」

妖狐「う、うむ。」

男「ふぁあ…そろそろ寝るか」

妖狐「そ、そうじゃの…」

妖狐「おっおやすみ…!」

男「?あぁ、おやすみ」

………
……


男「おはようございます、店主さん」

店主「おう、二人共おはよう!ぐっすり眠れたか?」

男「はい、お陰様で快適でしたよ」

店主「そりゃ良かった!朝飯、食うか?」

男「お願いします。それと、旅の道中で食べれそうな料理や食材とかってありますかね?」

店主「おうあるぜ!もう、今日出るのか…?」

男「はい、朝食を頂いたら出ようかと思ってます」

店主「そうか、はぇな…もう少しゆっくりしていってもいいんだぜ?」

男「ここの暮らしは快適で楽しいですが、留まりすぎるとこいつがウルサイので…」ポムポム

妖狐「………」ペコ

店主「ははは!そりゃしかたねぇな!っと、飯作ってくるから少し待ってろ!」

ー朝食後ー

男「ごちそうさまでした、とても美味しかったです」

妖狐「ごちそうさまじゃ!」

店主「おう!それと、料理包んでおいたからこれは道中で食ってくれや!」

男「ありがとうございます、おいくらでしょうか?」

店主「金はいらねぇよ!なんたって俺達の村の問題を解決してくれた、いわば勇者様なんだしよ!これぐらいさせてくれや!」

男「勇者だなんてそんな大層なものではありませんよ…それに、勝手にお節介を焼いただけです」ハハハ

店主「それでも、だよ。ありがとな」

男「…はい。では、またどこかで…」ペコ

店主「おう!近く来たら必ず寄ってくれよな!またな!」

カランコロン

男「さてと、村を出るか」

男「忘れ物は無いなー?」

妖狐「大丈夫じゃ!」

男「んんー…それにしても、無事に帰ってこれて良かったなぁ」

妖狐「そうじゃな。しかしお主よ、危険をおかしてまで人助けとは…まったくもの好きなやつじゃな」

男「んー?そうだなぁ」







男「まっ、俺は物好きだからなー」

………
……

レスありがとうございます
今日はここで終わります
ありがとうございました!

��___________
|               |
|               |
|               |
|       キ街   森 |
|          シュ村   | 
|             ト国 |
|_4_______山_|
�� \/           ��   \/

ト=トアール国
シュ=シュウヘン村
キ=キンペン街
4=方位記号
森=森林
山=山岳地帯

………
……


ー道中ー

男「ふぅー、さてと…次はどこに行くかなー」ペラッ

男「うーん…地図見ても先がわからんな…」

男「一旦ここで新しい地図を入手するべき、か…?」

妖狐「なぁ男よぉ…そんなことよりアレは無いのかぁ…?」

男「アレ?あぁ、甘菓子の事か?」

妖狐「そうじゃ!甘菓子じゃ!」

男「悪いが、無い」

妖狐「なっ…!う、嘘じゃ!昨日はまだあんなにあったはずじゃ!」

男「そうだな、あったな」

妖狐「そ、それが一晩で無くなるわけなかろう!お主…隠しておるな!」

男「隠してねーよ!お前が全部食べたんだろうが…」

妖狐「わ、わしはそんなに食べておらん!」

男「美味じゃぁ!美味じゃぁ…!うまいのぉ…甘菓子はいくらでも食えるわい!ゲフッ……とか言ってあんなに食ってただろ!」

妖狐「ぐ、ぐぬぅ…!」

男「一応出発する前に店主には聞いてみたんだが、どうやらあの村は甘菓子というもの自体知らないらしい」

男「なので、もう無い」

妖狐「うぅ…甘菓子ぃ…」

男「後先考えずに食べるからだ…それに俺なんかほとんど食べてないんだぞ!」

妖狐「はぁ…次はあるといいのぉ…」

男「そうだな…(これからはこいつに与える量は考えないと全部食われるな…)」

妖狐「そしてお主よ、次はどこに行くのじゃ?」

男「ん?あぁ、そうだなー…ここより少し北西に行った所に‘‘キンペン街’’という街があるからそこに行ってみるか」

妖狐「キンペン街?そこには甘菓子はあるのかの?」

男「お前そればっかだな…‘‘街’’というからには商人も居るだろうし売ってるんじゃないか?」

妖狐「ほほぉ!早くゆこうすぐゆこう!今すぐゆこうぞ!」グイグイ

男「わっわっ、引っ張るなって」

………
……

ーキンペン街ー

ガヤガヤ…     オホー!
   イラッシャイヤセー 

男「おぉ…すげぇ!賑わってるなー」

妖狐「着いた!男よ!はやく!はやく甘菓子を買いにゆこうぞ!」

男「わかったから少し落ち着けよ…」ドンッ

男「わっとと…すみま…せん?」

少女「わわっ!ごめんなさい!」ペコ

男「いえいえこちらこそ。ごめんね?」ペコ

少女「ううん、いいよー!」

男「あ、そうだ。ねぇ君、ここら辺で甘菓子売ってる所知らないかな?」

少女「甘菓子…?あ!あれね!それなら…あそこの街広場から右に行ったら商店が並んでるからそこにあると思うよ!」

男「右、だな…なるほど。ありがとう、助かったよ」

少女「うん!じゃあ…行くね?バイバーイ!」フリフリ

男「バイバイ」フリフリ

妖狐「可愛かったの」

男「そうだな、お前とは大違いだ」

妖狐「うるさいわ!ほれ、とっととゆくぞ!」

男「はいはい」

………
……

ー商店列ー

妖狐「ほー、すごいの…ずるりと並んでおる」

男「ズラリ、な」

妖狐「して、甘菓子はどこじゃ!?」

男「んー…と、あっあったあった」キョロキョロ




商人「いらっしゃい、何をお求めで?」

妖狐「ほほぉ…甘菓子が沢山…まるで宝の山じゃ!」

男「そんな大層なもんでは無いけどな。ただ砂糖固めて蜜をかけただけだし」

妖狐「ふん!お主にはこれの素晴らしさがわからんのか!」

男「いやそもそもお前に食べさせたの俺だからな…」

男「あ、すみません、甘菓子を……そうですね、この袋一杯にください」

商人「ほぉ、ちょっと袋見せてもらえる?…ふむふむ…じゃあ金貨3枚でどうでしょう?」

男「そうですね…」チラッ

男「…ん?そういえば、そこに積まれてる果物は…?」

商人「!おおっ…お目が高い!これはある貴重なルートから仕入れた物でしてね…頬が落ちる程とても甘美な果物なのです。買われます?」

男「ちなみにおいくら?」

商人「これは滅多に手に入らない貴重な物ですからねぇ…1つ金貨1枚でどうでしょう?」

男「じゃあその果物2つと甘菓子をこの袋一杯に詰めて金貨3枚と銀貨4枚でどうかな?」

商人「はは…まったく、お客さんには敵いませんね…わかりました、ではそれで売りましょう」

男「ありがとう」チャリン

商人「どうもね」チャリン






妖狐「なぁ、お主よ…気になることがあるんじゃが…」テクテク

男「んー?なんだ?」テクテク

妖狐「いくら数えてもなぜ合わせて金貨5枚が渡す時には金貨3枚と銀貨4枚になったのかわからん」テク…

男「あー、あれね。まぁちょっとぼったくられそうだったんでこちらも少しまけさそうって感じだな」テク…

妖狐「あの値段はぼったくり、なのかの?」

男「あったりまえだろ!甘菓子はこの袋一杯で多くて金貨2枚が良いところだ」

妖狐「そうなのか…しかしなんで果物まで買ったんじゃ?」

男「この果物、確かに貴重な果物かもしれん。いや、逆に貴重だから、かな」

妖狐「貴重だから…?」

男「うん、結構積んであったろ?この果物。ようは売れてないんだよ、高いから。貴重だからどうしても元を取り更に儲けようと値段を高くしてしまう、だけど高すぎると逆に買い手が現れない」

男「だからその抱えてる在庫が腐って売れなくなる前に買ってやるからまけろよって感じだな」

男「もっと人が多い、それこそ国で売ってたなら買い手はいくらでも居たと思うが」

男「ここはそこまで人が多いってわけでもないし金を持ってる奴があんまり居なかったんだろうな」

男「この果物、少し鮮度が落ちかけてるように見える。多分少し日にちが経ってるんだろう。もっと前にくればもう少し値段も高かったかもな?」

妖狐「なるほどの…して、その果物は旨いのか?」

男「わからん。初めて俺も見た、だけど見た目は旨そうだよな」

妖狐「そうじゃの、まるで輝いておるみたいじゃ」

男「だな、どこかで調理してもらうか」

妖狐「甘菓子も買えたし、一先ず宿を探さんか?もう足がへとへとじゃ…」

男「そうだな、とりあえず広場に戻るか」

ー街広場ー


男「ふー、少し座るか」ヨイショ

妖狐「そうじゃのー…」ドサ


男「……」ポケー

妖狐「……」ポケー



男「…なんか、こうしてゆっくりするのも良いもんだな」

妖狐「そうじゃのぉ…わしは何年ぶりじゃろうか…」

妖狐「できることなら男よ、これからはあまり危険な事に首を突っ込んでほしくないものだがな?」

男「それは約束できないなー、でも俺だって危険なことはしたくないし」

妖狐「はぁ…まったく、お主は一度死なんとわからんようじゃの?」

男「えー、死にたくはないなぁ」

妖狐「巻き込まれるわしの身にもなってみぃ…疲労で体がばっきばきじゃわ!」

男「ただの運動不足じゃないか?あと甘菓子食べ過ぎて太ったとか」

妖狐「なっ…!乙女に対して太ったとはなんじゃ!太ったとは!というか太っておらんわっ」

男「そうかぁ?この腹の辺りとか…」プニプニ

妖狐「やっ、やめい!んん…触るなぁ…」

男「おいおい…これは本気でマズくないか…?」プニプニ

妖狐「う、うるさい!まだまだ大丈夫じゃ!これが普通なのだ!」

男「マモノの事はよくわからんがお前がそう言うならそうなのかもな…」

妖狐「そうじゃ!」フフン

男「さて、そろそろ行くか」スタスタ




妖狐「ちょっ…そこはツッコまんか!」

妖狐「………。」

妖狐「はぁ…そうじゃの、ゆくか…」

ー酒場前ー

男「で、また酒場に来てしまったんだけども」

妖狐「お主も酒場が好きじゃのぉ、酒が好きなのか?」

男「いや、酒はあんまりだな。それより酒場は人が多く集まり色んな情報が集まる、だからとりあえず何か情報が欲しい時は酒場に行く感じだ」

妖狐「なるほどの」


カランカラン

ー酒場ー

ワイワイ  ガヤガヤ

店主「あら、いらっしゃい」

男「こんにちは」
妖狐「ちはー」

店主「何か食べる?それとも…」

男「そうですね…ではここの美味しいミルクを二人分頂きたいですね」チラッ

店主「あら、ありがとう。うちの店はミルクが自慢でね?美味しさには自信あるわよっ」コト コト…

男「それは楽しみです。いただきます」スッ ゴク…

妖狐「いただきます…」ゴク…




妖狐「お、おおおぉ…うまい!なんて旨さじゃ!この喉に透き通る喉越し、そして後味がサッパリしてなんとも美味じゃぁ…」

男「お前よく喋るな…」

店主「ふふふ、ありがとう。嬉しいわ」

男「毎日こんなに賑わっているのですか?」

店主「そうねぇ、最近は特に、かしら?」

男「そうなんですか?見てるだけでこちらも楽しくなってきますね」

店主「ふふ、そうね。でも、最近物騒になってるから気を紛らわす為に余計に、かしらね…」

男「物騒に…?」

店主「えぇ、なんでも人が襲われる事件が相次いで起こってるの」

男「人が…襲われる?街でですか?」

店主「そうなの。なんでも、襲われた人の首には必ず2本の刺し傷があるらしいの」

男「2本の、刺し傷…」

妖狐「………」グイッ

妖狐「お主、また余計な事に首を突っ込むつもりかの?」ヒソッ

男「そうなんですか…戸締まりはしっかりして気をつけなければいけませんね」

店主「えぇ。あなたは旅をしてきたんでしょう?十分に気をつけてね」

妖狐「無視か!?」ヒソッ

男「はい。そういえば、戸締まりがしっかりしてる良い宿屋とかってありますかね?」

店主「ふふ、そうね…この店を出て少し右に進むと‘‘イイーン宿’’って所があるから、そこに行くと良いわ。知り合いの店だから紹介状書いといてあげる」カキカキ…スッ

男「すいません、お手数をおかけてして」

店主「良いのよ、気にしないで。それより、さっきも言ったけれどあなた達もちゃんと気をつけるのよ?」

男「わかりました、ありがとうございます。それと、ミルクごちそうさまでした」ペコ

妖狐「ごちそうさまじゃ!」ペコ

店主「またいつでもいらっしゃーい」

カランカラン

………
……


ーイイーン宿,前ー

男「えーっと、ここ…だよな?」

妖狐「ここしかないの」

男「た、確かに戸締まりがしっかりできる所とは言ったが、これはガッチリしすぎじゃないか…?」

男「というかそもそもあれは冗談のつもりで言ったんだが…」

妖狐「これは簡単には外から侵入できそうにはないの」

男「…だな」

男「さて、入るぞ」ギィィィ…



チリンチリン

ーイイーン宿ー

男「こんばんは」
妖狐「ばんはー」


宿主「……いらっしゃい」

男「すみません、ここに泊めてもらいに来たのですが…」スッ…

宿主「ほぉ…あの店主の紹介状か…」

宿主「飯は無し一晩、銅貨2枚だ。どうする?」

男「では、一先ず一晩お願いします」スッ…チャリン

宿主「わかった、これは部屋の鍵だ」スッ…

宿主「部屋は2階に上がって右手側の一番奥だ」

宿主「………それと、夜はあまり出歩くなよ」

男「?え、えぇ…わかりました」

ー部屋ー

男「出入り口の部屋にまで鍵をかけれるなんてな」

妖狐「普通じゃないのかの?」

男「…宿代が高いそれなりの宿へ行けば鍵付き部屋は当然あるだろう。しかしこの宿は宿代、外見、部屋の作りら見てもそこまで高いわけでも手が込んでいるわけでもない」

妖狐「う、うぬ…」

男「しかし、なんだろうな?窓が凄く頑丈に閉められてる」

妖狐「うあー…こうも閉め切っておると少し暑くなるのぉ」パタパタ…チラッ

男「夜中は冷えるし丁度いいだろ」

妖狐「お主は本当にオスなのか!?」

男「?そうだけど」

妖狐「うぅむ…まぁよい。あ、そうじゃ。飯はどうするのだ?」

男「日が暮れて来たな…早めに酒場にでも食べに行くか?」

妖狐「うむ!わしは腹が減った!ゆくぞ!」

男「ついでにさっき買った果物を料理してくれる所も探そう」

妖狐「おぉ…ついにアレを食べるのか!」

男「まぁな、せっかく買ったんだ、食べなきゃ損だ」

妖狐「どんな味がするんじゃろうか…」

男「想像もできんな…」

………
……

ー酒場ー

カランカラン

男「こんばんはー」
妖狐「ばんはー」

店主「あら、いっしゃいー」

男「さて、何食べる?」

妖狐「肉!肉が食いたいの!」

男「じゃあ…牛肉と野菜のスープなんてどうだ?」

妖狐「や、野菜は嫌じゃぁ…」

妖狐「この!鶏の丸焼き!!これが食いたいぞ!」バンッ

男「うぐ…高ぇ…」

妖狐「ダメかの…?」シュン…

男「ダメ」

妖狐「こんなにしおらしく頼んでおるのにか!?」

男「うん、ダメ」

妖狐「くぅぅ…薄情なやつめ」

男「あ、すみませーん注文いいですか?」

妖狐「お主よ!もう少し待ってくれても!」

店主「はーい、何かしら?」

男「えーと、牛肉と野菜のスープと鶏の丸焼き…それとミルクを二人分ください」

妖狐「!?」

店主「わかったわー、合わせて…銀貨2枚と銅貨6枚だけど大丈夫かしら?」

男「お願いします」チャリン

店主「ありがとうっ、少し待っててねー」

妖狐「よ、よいのか…?」

男「うん?あれは俺が食うんだけど」

妖狐「なっ…そんな、では…わしの飯は、ミルクだけか…?」ウルウル

男「……そうだな、ミルクだけだな。子供のお前には十分じゃないか?」

妖狐「誰が子供じゃ!うぅ…ひもじいのぉ…」グゥゥゥ…

男「………嘘だよ、鶏の丸焼きもやるって」

妖狐「!!も、もう!お主はわしを弄ぶでないっ」

男「ははは、悪い悪い…しかし中身はババア、外見は子供なんて面白いな」

妖狐「だから子供ではないと言うとろうがっ!ていうか誰がババアじゃ!!」

男「ババアじゃなけりゃなんなんだ?」

妖狐「ふん!すこーし歳を取っておる、お主のおねいさんというところかの?」

男「お前が俺の姉ぇ?ははっ狐も逆立ちして笑うような冗談だな」

妖狐「う、うるさいわっ」

店主「あらあら仲が良いのねぇ…はい、牛肉と野菜のスープと鶏の丸焼き、あとミルク。おまちどおさま」コトリ コトリ

男「ありがとうございます」

妖狐「おほーー!きた!丸焼きじゃ!」

妖狐「んが!んがっ…んぐんぐ…うぅん…!ふまいほぉ!!」ガツガツガツ

男「お前、もう少し落ち着いて食えよ…こっちが恥ずかしいわ」ズズズ…




男「!!?うまっ!なんだこのスープは…!?牛肉は柔らかく野菜も程よい歯ごたえ…しかもそれでいて腹が持たれず野菜と牛肉の旨味が出ているこの透き通るスープ…!!うまい!」ガツガツガツ!

妖狐「……お主も人の事言えんの」

男「う、うるさいっ…」

店主「ふふ…嬉しいわ、ありがとう」

男「いえいえ、ほんと美味しいです!」モグモグ

妖狐「さいほうひゃの!」モグモグ

男「あ、ところで…これを調理していただける店などは知りませんか?」ス…

店主「こ、これっ!どこで手に入れたの!?」

男「えっと…買いました、けど…」

店主「買ったの!?これを!?」

男「は、はい…そんなに珍しい物なんですか?」

店主「珍しいわよ!何せここいらじゃ一番甘美な果物と言われてるくらいよ!?」

男「お、おぉ…ちなみに相場はおいくら…?」

店主「そうねぇ…1つ金貨2枚くらいかしら?それぐらい高価なものよ」

男「金貨2枚!?」ギョッ

妖狐「お主は相当ぼったっ…」ムグッ

男「は、ははは…そうなんですかー、そんなに高価な物だったんですね驚きです!」

店主「そうよぉ?しかも市場にあまり出回らないんだから買えたのは運がいいわよー」

店主「まぁ出たとしても高すぎて買う人は滅多にいないんだけどねぇ」

男「へ、へぇー…これ、どうやって食べるんですかね?」

店主「食べたことは?」

男「一度も」

店主「うーん、調理してももちろん美味しいんだけど、食べたことないんだったらそのまま生で一度は食べてみることをオススメするわ」

男「そのまま、ですか?」

店主「えぇ。この果物自体の味を知ってほしいわね」

男「なるほど…わかりました」



男「っと、そろそろ帰ります、ごちそうさまでした」

妖狐「ごちそうさまじゃ!」

店主「はーい、またいつでもいらしてねー」



カランカラン

………
……


男「ふー、旨かったなー」

妖狐「じゃのぉ…はぁ…また食いたい」ゲフ

男「まさか全部食うとはな…少しくらいわけてくれよ…」

妖狐「ふん!わしで遊ぶからじゃ」

男「ちぇっ、まぁいいか」

男「しかしあの果物があんな高価なものだったとはな」

妖狐「お主の方がよっぽどぼったくりじゃの」ニシシ

男「じゃあ帰ってこの果物でも食べ…」




キャアアアァァァーー!!!

男「!?なんだ!?」

妖狐「わからん…が確かに悲鳴が聞こえた」

男「だよ、な?」

男「くそ…暗いから視界が…」

ズオォォォ!!  ヒュンッ

妖狐「っ!!男っ伏せろ!」

男「っっ!!」シュバッ

???「ッ……」ブォンッ!!

男「どうした!?」スクッ

妖狐「何者じゃ!!」

???「………、、……」

男「ヤツは、なんだ…?暗くてハッキリと見えない」

妖狐「見た目はお主と同じ人間のように見える…」

男「おま、見えるのか?」

妖狐「うむ、と言っても《暗視》を使っておるだけじゃが」

男「《暗視》?」

妖狐「そうじゃ。簡単に言うと暗闇でも物を見通せるんじゃ」

男「はえー、便利だな」

???「……チ、、………」

妖狐「まぁの…それより、あヤツ…何かを呟いておる」

男「聞き取れるか…?」

妖狐「う、ん…?……ち?」

???「………血、ヲ……」

妖狐「ちを?…なんじゃ、ちをって」

男「ちを?ちを…ち、を…」

男「………ちを…」




男「お、おい…まさか、血を…じゃない、よな…?」

妖狐「ま、まさかそんなはずなかろう!血を欲しがってどうするのじゃっ…」

???「……血ヲ……ヨコ、セッッ!」ダッ!!

妖狐「おいおいそのまさかじゃぞ!」

男「と、とりあえず…」ジリ…

妖狐「あ、あぁ…」ジリ…







男「逃げるぞ!!!!」ダッ!!

妖狐「うむ!!!!」ダッ!!



ズダダダダダダダ!!!!

男「お、おいおいおい!!しかも早い早い!!!なんだよあいつ!」

妖狐「わ、わからん!!じゃが今言えることはとにかくまずい状況じゃ!!」

???「血…!!血…!!!!」

男「はぁっ!はぁっ…!どうする!?このままじゃじきに追いつかれる!!」

妖狐「あ、あぁ…!そ、そうじゃ!宿!!宿に戻るぞ!!」

男「宿ってお前っ…!」



男「反対方向じゃねーか!!無理だって!」

妖狐「し、しかしあそこなら入ってこれないのではないか!?」

男「た、確かに戸締まりはギッチギチだったけども!」チラッ


???「チヲ…!血が…!ホシ、イ!!」ガオー




男「引き返すなんて無理だろ!!」

妖狐「じゃあどうするんじゃ!?」

男「くそっ…!どうすれば…!!」

男「せめて少しでもアイツの目を奪えたら…!」

男「っ!そうだ…!この果物…」

妖狐「なんじゃ?案を思いついたのか?」

男「うまく行くかはわからん、しかしもう考えてる暇がない!」

男「というかお前次第だ!」

妖狐「わかった!わしに任せろ!その案とやらをはよう言え!」

男「あぁ…!まぁ、簡単なんだがこの果物をアイツに向かって投げる、それをお前が《火炎》で弾け飛ばせ!」

妖狐「わしが《火炎》を果物に当てたらいいんじゃな!?」

男「あぁ!当たった瞬間、引き返してアイツの横を走り抜けるぞ!!」

妖狐「わかった!!」

男「いくぞ…!」ブンッ

???「っっ!!」

妖狐「ほっ《火炎》!!」ボォッ!

   バチィッ!!  
     ビチャッ

???「グッ…!ギャア…!!」

妖狐「ほほぉ!もう百発百中じゃのっ!」

男「喜んでる場合か!抜けるぞ!」ダッッ!!

妖狐「うむ!」ダッッ!!



???「ググ……チ…」

ヒュンッ!!
   ヒュンッ!!

男「よしっ!抜けたっ!!」

妖狐「やったの!成功じゃ!」

男「このまま宿屋まで行くぞ!」

妖狐「うむ!」

ダダダダッ……
    ダダダダッ…

いつもレスありがとうございます
今日はここで終わります
ありがとうございましたっ

ー宿屋ー

バンッッ!! 

  チリンチリン

バタンッ!!

男「はぁっ…はぁっ……はぁっ……」ヨロッ…

妖狐「ぜぇ…ぜぇ…ぜぇ………」ヨロッ…


ドンッドンッ!……ドンドンドンッ!!

男「ひぃー、押さえろ押さえろ!」グイッ

妖狐「はぁ…はぁ…うむ…!」グイッ

宿主「……」スタスタ

カチャリッ…


宿主「やっぱり、出たか…」

男「あ…え…?鍵、かけれたのか…はぁぁぁ……」ドサッ

妖狐「ふぅぅぅ……疲れたわい…」ドサッ

ドンッドンッドン!!!

ドンッドンッ!!


ドンッ!


シーーーン………

男「おっ…?収まった、か?」

妖狐「みたい、じゃの…」

男「はぁ…はぁ…で、あんたは何か知ってるみたいだな?」

宿主「………。何も知らん」

男「それは、本当ですか?」

宿主「………。何も知らん、と言うのは間違いだな。私はアイツについては何も知らないだけだ」

男「……では、アイツ以外の事を教えてください」

宿主「ふむ…。他言無用と約束できるか?」

男「もちろんです」

宿主「わかった、では話そう」

宿主「……数日前、私の宿に泊まっている客が一人襲われた」ボソッ

宿主「私はたまたまだと思った。街では夜中に金目の物目的等で人が襲われるのはありえない事ではないからな」

宿主「しかしある時私は襲われてる現場を偶然見てしまった…というよりは居合わせたのだがどうやら化物には運良く気づかれなかっただけだろう」

宿主「しかしそこからだ。丁度3日おきに私の宿に泊まって居た客が襲われるようになったのは」

男「ふむ…」

宿主「被害にあった人は皆、金目の物が目的で襲われたような痕跡が無かった」

宿屋「そして不自然な事に、襲われた人は全員首に2本の刺し傷があるってことくらいだ」

宿主「はぁ…おかげで悪魔の宿屋なんて変な噂もたつし勘弁してほしいね」

宿主「もちろん私も対策はした。しかし君たちと同じくやはり外出時に狙われてしまうのでどうにもならなかった」

男「だから窓や扉が強固に閉まりきってるんですね…」

男「それで、その奇妙な化物はどこに行ったかわかりますか…?」 

宿主「…その化物は街外れの古い館に入っていっていたのを見たよ」

男「なんでわかるんですか?」

宿主「つけていったからな」

男「なるほど」

男「古い館…」

宿主「昔、とある富豪が建てた…としかわからない。謎多き館だ」

宿主「しかし突き止めたものの何があるかわからん…それに私は強いわけではないからな。だからこうして臆病に引きこもって毎日を過ごしている」

男「……では、俺達が行ってきますよ」

宿主「なんだと…?場所を話した私が言うのもなんだが、危険だと思うぞ?」

男「良いですよ、危険でも。これまでも危険な目にあってきたんで」ハハハ

妖狐「お、おい!お主…」

男「それに、何人も襲われているんでしょう?だったら早く解決した方がいい。それに、俺達だって襲われたんだこのまま引き下がれるかよ」ニヤ

妖狐「お、お主はまったく…またか…」

男「しかし何故俺達に話してくれたんですか?」

宿主「なんとなく、と言いたいところだが…酒場店主の紹介で来た人だからな」

宿主「信用するに値すると判断したからだ」

男「そうですか、ありがとうございます」

宿主「…もし、こんな事件を犯している犯人に会えたら、一発殴っておいてくれないか?こっちはこの事件のせいで商売上がったりなんでな」

男「……はは、任せてください」

妖狐「はぁ…」

宿主「ありがとう。それで、いつ行くんだ?」

男「明日の、昼頃…ですかね。夜行くのは危険ですし。今日は少し考えます」

宿主「そうか…この宿はいつでも空けておくからゆっくり休むと良い」

男「ありがとうございます。では、おやすみなさい」

宿主「あぁ、おやすみ」
…………
……

ー部屋ー

男「はー…さて、どうするかなぁ…」

妖狐「で…?今回はどうするんじゃ?」

男「うーん…」

妖狐「お主のことじゃ、また良い案があるんじゃろ?」

男「無い」

妖狐「…へ?」

妖狐「ま、またまたぁ…わしを笑わす為の冗談を言うでないっ、ちゃんとあるんじゃろう?」コノコノッ

男「もう一度言う、無い」

妖狐「無いのか!?あんな自信満々に…!」

妖狐「俺達だって襲われたんだ、このまま引き下がれるかよ」キリッ

妖狐「とか…」

妖狐「任せてください」キリッ

妖狐「とか言っておったろうが!!」

男「仕方ないじゃーん、無いもんは無い。というより、今回は相手の情報が少なすぎてわからん」

妖狐「またいきあたりばったりか…いつかわしら絶対に死ぬの…」

男「そりゃ生きてるんだからいつかは死ぬだろ」

妖狐「そういう意味では無いわ!まったく!」

男「まぁ、俺はお前となら死んでも良いしな。それに、ここまで引っ張ってきたのは俺なんだ」

男「いざとなったら命かけて守ってやるよ」

妖狐「ぬあっ…!か、かっこいい事言ってもわしは惚れんからなっっ」カァァ

妖狐「というかお主は自分が死なんようにわしを守らんか!」

男「…ていうかそもそも力で言うと俺よりお前の方が強くないか…?」

妖狐「当たり前じゃ!お主なんかに負けてたまるか!」

男「だったら逆に俺を守って欲しいんだがなぁ…」フサ…

妖狐「乙女を盾にするとは卑劣なやつじゃの!」

男「えぇ…」

妖狐「…ん?」

男「…?どうした?」

妖狐「なんか…お主の左腕、妙に緑ではないか…?」

男「そういえば、そうだな…なんだこれ?」パキキ…

妖狐「お、おいお主!葉が生えておるぞ!」

男「お、おおおぉ!なんでだ!?」

妖狐「わからんが…」

妖狐「とりあえず、燃やすか?」

男「燃やすわけねーだろ!!」

妖狐「なんじゃ、燃やさんのか」

男「当たり前だろ!俺を殺す気か!」

妖狐「流石にそんなことするわけなかろうが!」

妖狐「ただ燃えやすそうじゃったから燃やしたかっただけじゃよ」

男「なおさらダメだろうが!」

妖狐「お主はケチなやつじゃのぉ」

男「ケチもくそもあるかよ!」

妖狐「しかし、伸びてないか…?」

男「伸びてるな…」モサァ…

妖狐「これ、いつ頃なり始めたか正確に覚えては…」

男「無いな」

妖狐「じゃろうなぁ…」

男「昨日辺りまでは多分…何とも、無かったハズ」

妖狐「昨日辺りまで、か」

妖狐「昨日…」

男「昨日まで、だな」

妖狐「………」

男「………」



男「あっ」 
妖狐「あっ」




男「寄生されてるの忘れてた!」
妖狐「寄生されてるの忘れておった!」

男「そうか、そういえばかれこれあの日から3日は経つな…」

男「………」モサァ

妖狐「………」




妖狐「…燃やすか…?」

男「………」


男「…も、燃やしてみる、か…?あんまり強くするなよ?」

妖狐「………」スッ…

男「ま、まてまて…優しくな?よわーい火で頼むぞ?フリじゃないからな?絶対間違えんなよ!?」

妖狐「……」ニタァ

男「お、おい!やめっ死ぬ!」

妖狐「ぬわっはっはっはっ!《火炎》!!!」ボォォォッ!

男「あつっ!!あつい!!あついいぃぃぃ!!!」ジタバタッ

マモノ「…ッッアツッ!アツッ!」



男「焼けるぅぅぅぅ!!!死ぬぅぅぅ!!」ゴロゴロゴロ!

マモノ「ヤケルッッ!!シヌゥゥ!!」



妖狐「同じこと二度も言わずともわかっておるわ!」

妖狐「ほれ、水じゃっ」バシャッ

男「はぁ…はぁ…え?俺そんなに喋ってたか…?」シュゥァァ…

妖狐「喋っておったわ!なかなか面白かったぞ」

マモノ「ハァ…ハァ…」モゾモゾ

妖狐「?なんかお主の腕まだ動いておるな…」

妖狐「………」



妖狐「もう一発行っとくかの」スッ

男「ちょっま…!」

マモノ「ヤメテ!!」

男「!?」
妖狐「!?」

男「う、腕が…喋った!?」

妖狐「お、おぉ…凄いの、これは…」

男「な、なんだ…?」

妖狐「くくく………」

妖狐「はっはっはっっはっ!!!」ジタバタ

男「な、何笑ってんだよ!」

妖狐「いやー、すまんすまん、ついおかしくての…くく…」

男「一体どうしたんだ…?」

妖狐「お主、あの日以来体が少し怠くないか?」クク…

男「ん?あ、あぁ…まぁ快調ではないな。いつもは寝たら朝には回復してるはずなんだが」

妖狐「じゃろうな」

男「それと何か関係が…?」

妖狐「うむ…このツタを…よっと」ブチィ

男「いっっってええぇぇぇっっ!!!」

妖狐「おっとすまんすまん。これもお主の一部じゃったな」

男「もっと優しくしてくれよ…」

妖狐「まぁまぁ…ほーどれどれ…おっ、あったあった」

妖狐「ここを見てみぃ」ユビサシ

男「これは…珠?」

妖狐「うむ、これを破壊すると寄生してるマモノを殺せるぞ」

男「おおっまじか!」

妖狐「破壊すればお主の左腕も腐敗するがの」

男「ダメじゃん!!」

妖狐「しかしまぁ、もう放っておいても大丈夫じゃろ」

男「いや俺死ぬだろ!」

男「ん?死ぬ…?いや、待てよ…」



男「確か、お前長くても3日後に死ぬとか言ってなかったか?」

男「俺、その通りなら既に死んでるんじゃ…」

妖狐「うむ。全く持ってその通りじゃ」

男「…え、なに、これから俺はどこかで急にパッタリ死ぬとかじゃないよな…?」

妖狐「さっきも言ったが、お主は死ぬ事は無い。そいつは成長しきっておる」

男「成長しきる…?」

妖狐「そうじゃ。ソイツは成長するまで寄生主の魔力を吸い続ける。まぁ、殆どの場合成長しきるまでに寄生主は死ぬがの」

妖狐「言うなれば今お主に寄生しておるのは単に居心地が良いからじゃろうな」

男「えぇ…心臓に悪いから出てっくれよ…」

男「というか、なんで俺死んでないんだ?」

妖狐「多分お主の中の魔力が多いからじゃろうな」

妖狐「わしに分け与えた時もなかなか多かったしの」

妖狐「お主の自然回復力がソイツの吸う量を上回ったんじゃろう」

妖狐「…しっかし、面白いのぉ」

男「何がだ?」

妖狐「お主、もしかしたらわしと同じく魔力を使った術が使えるかもしれんの」

男「まじかよ!?でも俺人間だぞ…?」

妖狐「そもそも人間にも魔力は宿っておる。それにわし達マモノとは少し質が違って外に出しにくいってだけじゃしの」

男「なる、ほど…?」

妖狐「先日、お主はわしと同じ…とは言えんがわしと質が似ていた炎を出したじゃろ?」

男「あ、あぁ…あの時のか」

妖狐「その少し前にお主の魔力をわしは吸った、が…」

妖狐「その時に多分わしの魔力が少し逆流したみたいじゃの」

男「ぎゃ、逆流…?」

妖狐「うむ。つまりお主の中にある魔力にはわしのも混ざっておる」

妖狐「お主の体は面白いの。わしの魔力が混ざった魔力にどうも体は順応してしまったみたいじゃな」

男「順応したらどうなるんだよ」

妖狐「お主の魔力はもうその中にあるものと同じ質のものしか増えん。わしの魔力が消えることも無い」

妖狐「つまり、‘‘半人外’’と言ったところかの」ニッシッシッ

男「はぁ!?えっ俺人間じゃなくなったの!?」

妖狐「もう人間じゃないのぉ」ニヤ

男「……………」



妖狐「なんじゃ?やっぱり悲しいか?」

妖狐「まぁ急に受け入れよと言われても難しい話じゃしな…」

妖狐「なぁに、死にはせん。安心せ……ん?どうしたんじゃ?」

男「………すっ…」

妖狐「?す…?」







男「すっっっっげええぇぇぇぇ!!!!」

男「お前みたく術使えんの!?うひょーっ!これで俺もっと強くなれるじゃん!!」ピョンッピョンッ

男「おおおおぉ………興奮してきた…!」

男「妖狐!どうやるんだ!?どうやってお前みたいにボッと炎出せるんだ!?」

男「早く!早く教えてくれよ!!」ユサユサ

妖狐「お、おぬしよ…すこしおちつけぇぃ…」グラグラ…

男「いやー!これで戦略の幅が広がるな!」

男「《火炎》!なんちって!」ハハハ!

妖狐「はぁ…お主のことじゃ、泣くことは無いと思っておったがまさかこんなに喜ばれるとこっちも反応にこまるの…」

男「はやくぅ!はやくおしえて!」

妖狐「そ、そう焦るでない!そこに座れ!」

男「はい!」シュタッ

妖狐「うむ。では教えるぞ…といってもできるかはお主次第じゃ」

男「わかってる!はやく!」

妖狐「はぁ…そうじゃの、まず手を前に出せ」

男「こう、か…?」ス…

妖狐「うむ。呼吸を整えよ。深呼吸するのじゃ」

男「わかった」スゥゥ……ハァ……

妖狐「落ち着いてきたようじゃな。次は想像してみよ。今回は…わしと同じ炎で良いじゃろう」

妖狐「喋らなくてよい、頭の中で想像するのじゃ」

男「(炎…炎……)」

妖狐「次は掌に集中するのじゃ」

男「(掌…?手の平の事か。手の平…手の平…)」

妖狐「よし。そのまま掌から炎を放つ想像をし力を込めてみよ!」

男「ふぅぅ………ほりゃっ!」パフッ

男「あらら…やっぱり最初からはうまくいかないよなー」

妖狐「お、おぉ…ほんとに出るとは…」

男「え?これは良い方なのか?」

妖狐「そうじゃな、見込みは十分あるの」

妖狐「個々によって得意不得意があって出せるものも変わってくるがお主はわしの魔力が混ざっておる」

妖狐「もしかしたらわしと同じく‘‘火’’が向いてるのかもしれんのー」

妖狐「しかしさっきのものをわしと同じく《火炎》などとはくれぐれも言わないように!」

妖狐「被るのは嫌じゃからな!《火炎》はわしのものじゃ!」

男「なんてワガママな…」

男「んー、これって鍛錬すればもっと強くなる?」

妖狐「強くなると思うぞ。わしには及ばんだろうけどのっ!」ヌワッハッハッハッ!

男「はいはい…じゃあ、お前より小さな炎だし《炎粉》ってところか」

妖狐「ふふん!お主にピッタリじゃの!」ププッ

男「今に見てろよ…」

男「しかしなんで魔力が混ざったら出せるようになったんだ?」

妖狐「そうじゃのぉ…言うなれば、元のお主には魔力を出せる門に鍵がかかっておるとする」

妖狐「しかしわしのが混ざる事によって魔力が門を通過しやすくなったんじゃろうな」

妖狐「まぁわしの魔力は鍵みたいなもんじゃよ」

男「なるほど、な(よくわからん)」

男「なぁなぁ、それより他にも教えてくれよ」

男「もっと妖狐の術が知りたい」

妖狐「お主は図々しすぎじゃろ…」

妖狐「もう少し遠慮というものを知らんのか」

男「知らん」

妖狐「じゃろうな…はぁ、一度に教えると疲れるから今日はあともう2つ程度で我慢してくれぬか?」

男「わかった、頼む!」

妖狐「あぁ…わしの術が…」
………
……

男「ところで…」

妖狐「なんじゃ?」

男「放っておいてたけどこの左腕、どうしよう」

男「このツタまみれの腕のままじゃどうみても変人だ」

妖狐「そうじゃのぉ…燃やすか?」

男「お前考えが安直すぎるだろ!それしかないのか!」

妖狐「冗談もわからんのかお主は…」

男「はぁ…せめてツタだけでもどうにかならないかなぁ」

妖狐「わしも左腕がツタまみれの変人と一緒に歩くのは嫌じゃの」

男「おーい寄生してるマモノよー、聞いてるかー?このツタを外してくれると助かるんだけどー」




男「………」

妖狐「………」

マモノ「………」

ブチッブチブチブチッ
男「お、おおぉ…!ツタが切れて外れた…」

妖狐「意思疎通ができるのか!?」

妖狐「な、なんじゃこいつは…人に懐くマモノなんて見たことないぞ!?」

男「うーん、できれば顔を見せてくれると嬉しいんだけどねぇ」

妖狐「流石にそれは無いじゃろ…」

男「………」

妖狐「………」

マモノ「…………」ニョキッ

男「ん!?なんか芽が出てきたぞ」ジー

妖狐「お、おいおいまさか…」ジー

マモノ「アツクナイ?」

妖狐「何かしでかすなら即刻燃やす」ボソッ

マモノ「!!」シュッ

男「お、おいおい怖がらせてどうするんだよ、引っ込んじまったぞ」

妖狐「あのなぁお主よ。こヤツ、元は敵じゃぞ?ちっとは気を引き締めい」

男「今のところ害は無いんだし大丈夫だろ。それに、俺に何かするつもりなら既に何かしてるだろ」

妖狐「確かにそうじゃが…」

男「おーい、悪かったさっきのは嘘だ。熱くないから出てきてくれないかー?」

マモノ「ホント?」

男「ホントホント!」

マモノ「………」ニョキッ

妖狐「あ、出てきおった」

男「そのまま出てき……てか、こいつ姿とかあるのか?」

妖狐「この芽が本体なのかまだ姿を変えれるのかいまいちわからんの…」

マモノ「スガタ、カエレルヨ」

男「え、おっおぉ!じゃあ変えてみてくれ」

マモノ「……」ポンッ

妖狐「ひょえー…すごいの…」

男「わーすげぇ…」

妖狐「微妙に人の子に似てなくは無いの。頭に葉はあるけども」

男「なぁ、こいつに名前つけないか?」

妖狐「なんじゃ急に」

男「いやー、いつまでもマモノ呼ばわりだと紛らわしいしな?」

妖狐「そうじゃのぉ…名か…」

男「うーん…」

妖狐「!では‘‘シキ’’というのはどうじゃ?」

男「シキ?一応理由聞いてもいいか?」

妖狐「うむ。植物は四季折々で色んな姿あるものじゃろう?じゃからシキじゃ!」

男「また安直だな…ていうか関係なくないか?」

妖狐「ある!」

男「そ、そう…」 

男「でも、悪くないな。じゃ、シキにしよう」

妖狐「ふふん!じゃろう?」

男「今日からお前は…‘‘シキ’’だ!」

シキ「シキ…?シキッ!」ヒョコヒョコ

男「ふむ…それにしても」

妖狐「ん?」

男「可愛いな、うん可愛いわこれ」

妖狐「んなっ!?」

妖狐「お主にはそういう趣味が…わ、わしは構わんよ?全然だいじょーぶじゃぁ…」

男「ちげーよ!そういうことじゃない!」

妖狐「な、なら…」

妖狐「まっまさか…浮気か!?」

男「浮気ってなんだよ!ていうかお前と付き合ってるわけじゃないだろ!」

妖狐「そ、そんな…わしらは契を交わしたというのに…」

男「ただの契約じゃねぇか!」

妖狐「なっ!ただのじゃと!?わしの初めてを奪っておいて!」

男「その言い方は誤解が生まれるからやめろ!!」

シキ「アノ…」


男「少し黙ってて!」
妖狐「少し黙っておれ!」


シキ「ハイ…」


妖狐「だいたいいつもお主は適当すぎなんじゃ!巻き込まれるこっちの身にもなってみぃ!」

男「阿呆のくせによくそんな事が言えるな!肝心な時にいつも役に立たないくせに!」

男「出会った時に術が効かないくらいで、どうして効かないんじゃぁーとかすんごい動揺してたくせに!」

妖狐「そ、それは関係なかろうが!」

妖狐「それにわしだって‘‘瘴気の杜’’に行った時は倒れたお主をちゃんと助けたじゃろうが!」

男「あれはそもそもお前がとっとと瘴気について知らせてちゃんと対策してればあんな事にはならなかったっつーの!」

妖狐「なんじゃとぉ!!」
男「なにをぉ!!」




男「うぐぐぐぐ…!」
妖狐「ぐぬぬぬぬ…!」




妖狐「もうよい!!」

妖狐「わしは付き合いきれん!!ここで別れじゃな!」

男「あーあーぜんっぜん良いぜ?お前なんかいなくたって旅は続けれるんだしな!」

男「ふぅー!うるさいやつがいなくなってせいせいしたぜ!」

妖狐「ふん!わしだってこっちから願い下げじゃ!!」スクッ

妖狐「じゃあのっっ!!!」グスッ…


キィー 
  バタン!

男「…………」



男「ふん、ほんと…せいせいしたぜ…」




男「………」






男「静かだなぁ…」

シキ「………」


……
………

スタスタスタスタ…

妖狐「(なんじゃっなんじゃなんじゃっ!男のやつめっ)」グス…

妖狐「(わしの初めてを奪ったくせにっ!)」



妖狐「(わしは…わしはそんなに嫌われておったのかの…?)」


妖狐「(わしは、お主と旅をするのが楽しかったのにのぉ…)」


妖狐「(ふんっ喜んでおった自分が馬鹿みたいじゃ!)」グスグス…

妖狐「………」

妖狐「(独りは…独りは寂しいのぉ…)」

   ユラ…

妖狐「…?なんじゃ、こんな夜中に人かの…?」

???「……血……人…ジャ、ナイ…」

妖狐「こ、こヤツは…!」ジリ…

???「ジャマ…マモノ…」

???「イラ…ナイ…!!」ダッ!

  ヒュンッ
    スパッ

妖狐「くっ!」パサッ…

妖狐「(爪が鋭いの、まるで刃物みたいじゃ…)」

妖狐「(どうすれば…どうすれば切り抜けられる!?)」

???「グググ…」ジリ…

妖狐「(わしの《火炎》で焼き払うか…?百発百中なわしなら当てることも余裕じゃが一撃で倒せるとも限らんしのぉ…)」

妖狐「(やはりここは一旦逃げて男を呼びに…)」

妖狐「(………)」

妖狐「(いやダメじゃダメじゃ!それではまたわしは役立たずになってしまう!)」

妖狐「(わしだって役に立つんじゃ!)」ジリ…

???「ググ………ガアッ!!」ダダッ!!

妖狐「くっ!!《火炎》!」シュボォッ!!

 ==ヒュンッ 
    バチィッ!!

???「グギャアァ!!」プスプス…

妖狐「はっはっ!わしの腕を見たか!」

???「ウグ……ガアァアアアアッッ!!!」ダダダダッッ!!

妖狐「なっ!?(こヤツ《火炎》を受けながら突っ込んでっ!!)」





    ドスッッ!!

………
……

今日はここで終わります、ありがとうございました

ー道中ー 

テクテク  
 テクテク…


男「うぅ…寒い寒いぃぃ…」ガクブル

妖狐「寒いのぉ…」ガクブル


妖狐「いやーしっかし昨日は大変じゃったのぉ」

男「疲れたなんてもんじゃないな、今まで生きてきた中で1番の山場だった」

妖狐「まったく、一人で乗り込むなんぞ無謀すぎるぞ!」

妖狐「あんなずたずたになって虫の息だったお主は初めて見た」

男「あれは死ぬかと思ったなぁ」

男「ていうか二人がかりで俺を殺しに来るとか卑怯だろ…」

妖狐「まぁそれを言うならわしらも最後は二対一を仕掛けたんじゃしお互い様じゃがの」

男「確かにそうだな」ハハッ

妖狐「わしが駆けつけた頃には一匹首を落とされて死んでおったが、やっぱり強かったのか?」

男「強いかどうかと言われたら正直微妙だったんだけど」

男「あのマモノ、臭いで相手の位置がわかるらしく、不意打ちを二度も食らってしまった」

男「おかげでまだ傷が痛むよ」ズキズキ

妖狐「まったく無茶しおって…」サスリ…

男「しかしもう一人の方は半端なかったな」

妖狐「あぁ…そうじゃのぉ」

妖狐「なんせわしとお主の二人がかりでようやく、じゃしなぁ」

男「だなぁ、せめて俺が万全の状態ならもう少しマシだったと思うけど」

男「あいつは剣の腕が俺より上だったしな」

妖狐「お主はよく死なんかったの…」

男「というか、それを言うならお前もだろ」

男「俺、絶対死んだと思ってたぞ」

妖狐「傷を閉じるのが少し遅ければ危うかったはずじゃ」

妖狐「あとは魔力のほとんどを自然回復に回したくらいかのー」

男「なるほどな…」

妖狐「結局、あやつらは何じゃったんじゃ?」

男「あいつら、番だったらしいぞ」

妖狐「なっ…!マモノと人間が!?」

男「あぁ、どうもそうらしい。てか本人から聞いた」

妖狐「お主は何故敵とお喋りをしておるんじゃ…」

男「いやほら、殺し合う前の挨拶…みたいな?」

妖狐「な、なるほどの…(ようわからん)」

男「なんでも、血が足りなくなるとあのマモノは死ぬらしい」

妖狐「じゃから襲っておった、と…」

男「そんな感じだな」

男「まぁ、俺らと出会ったのが運の尽きだったな!」ニヤッ

妖狐「じゃのぉ!」ニシシッ

男「しかし…もうこんな目にあわない事を祈るばかりだな」

妖狐「ぬふふっわしも死にかけたしのー」

男「あのまま死んでくれたら静かに旅が出来てたのに…まったく残念だ」

妖狐「またお主はそうやって意地を張りおってからに…」

妖狐「わしがいないと寂しい癖にっ」コノコノッ

男「あぁもう鬱陶しい…」

妖狐「それでそれでぇ?」

妖狐「お主は昨日なんて言っておったかのぉ?」

男「またかよ、もういい加減勘弁してくれないか」

妖狐「わしは役に立ってたんじゃなぁ?ちゃーんとそこは謝ってもらわないとのぉ?」

男「はいはいどうもすみませんでしたねー」

妖狐「誠意がこもってないの!やり直しじゃ!」

男「嘘を言って誠に申し訳ありませんでしたー」

妖狐「ふん、まっまぁ許してやらんこともないのっ」ニヤニヤ

妖狐「後はなんて言っておったかのぉー」

男「まだあるのかよ…」

妖狐「そうじゃそうじゃ、忘れておったことがあった」

妖狐「男よぉ、わしが必要なんじゃってなぁ?」

男「…恥ずかしいから名前で呼ぶなよ」

妖狐「まぁまぁよいではないかっ」

妖狐「で?わしは必要なのかもう一度聞きたいのぉ?」

男「ていうかあの時起きてたのかよ、くそっ…」

男「………」

妖狐「ほれほれ、どうしたー?」





男「うぜえええぇぇぇ!!!」

妖狐「わわっ、いきなり大声を出すでない!」

男「さっきから何っっ回同じ事言ってるんだよ!いい加減聞きた飽きたわ!」

妖狐「ほー、そんな言い方してもよいのかの?」

男「な、何がだよ」

妖狐「わしはあの時、凄くすごーく傷ついたんじゃがなぁ」

男「だぁから悪かったってば」

妖狐「はい、ではもう一度昨日言葉をどうぞっ」

男「へいへい…」



男「俺はお前の事が必要だよ、妖狐」

男「これでいいか?マジで何回目だよ…」

妖狐「ふふんっまぁこれぐらいにしておいてやるかのぉっ!」ニヤニヤ

男「はー、恥ずかしい…」

男「ていうか甘菓子をたらふく買ってやっただろ、アレで許してくれるって言ったじゃないか」

妖狐「アレはアレ、コレはコレじゃ」

男「そんな酷い」

男「しかしそんなに食ってたら冗談抜きで太るぞ?」

妖狐「大丈夫じゃ安心せい!」

男「その自信はどこから来るんだよ…」

妖狐「んー、ここ…かのぉ?」b ムネトントンッ

男「そんな平たい胸でよく自信満々に言えますね?」

妖狐「平たくないわ!」

男「間違いなく100人見て100人が平たいと言うくらいには平たいから安心しろ」

妖狐「うるっさいわい!そして安心ってなんじゃ!」

男「お前、曲がりなりにも男性を操ってたりしてたんだろ?そんな体で恥ずかしくないのかよ」

妖狐「恥ずかしくないわ!!」

男「はぁ…出会う前はもっと肉付きの良い体を想像してたんだがなー」

男「会ってみたらとんだガッカリだよ」

妖狐「むぐぐ…!」

男「ここで言い返せないあたり物語ってるよなぁ」

妖狐「くぅぅ、そんなに言わんでもよかろう…」グス

妖狐「そんなにこの体が嫌かぁ…!」エグエグ…

男「嫌じゃないけど?」

妖狐「ふえ…?」
 



男「別に嫌なわけじゃない、お前はそのままでいいよ」

妖狐「だってお主さっき…」

男「男なら誰だってそんなもんだろう」

男「それに、ほら、お前にはお前の魅力が多分、ある…はず…」

妖狐「どうしてそこで言葉が濁るんじゃ!」

男「いや…うん、えーっと…小さくて可愛いな!」

妖狐「全く褒められてる気がしないんじゃが!?」

男「ほ、褒めてる褒めてる!」

妖狐「ほー?じゃあ他にはどんな魅力とやらがあるのかわしに教えてほしいのぉ?」

男「よ、よく食べるところとか…?」

妖狐「ぜんっぜん褒めとらん!!」

男「あっ、そうだ…あったあった!忘れてたわ」

妖狐「ほぉほぉ?それじゃあ言うてみぃ」







男「すんごい歳を取ってるところだな」

妖狐「死ねぇぇぇ!!」ゲシッ!!

………
……


テクテク
 テクテク…

男「あー腰が痛いなぁ、歩く度に腰に響く」

男「はぁ…誰かさんが思いっきり腰に蹴りを入れてきたからなぁ?」

妖狐「うぐ…」

男「あー痛い痛い、これもうダメだわ歩けないわー」

男「誰か背負ってくれる人居ないかなー?」チラッ

妖狐「わ、わしが背負えるわけ無かろうが!このど阿呆!」

男「んんー?そんな事言っていいのかなぁ?」

妖狐「な、何を企んでおる」

男「お前今日の夕飯無しな」

妖狐「なんじゃと!?」

妖狐「そ、そんな殺生な…」

妖狐「すまぬ!謝るから飯抜きだけは…!」

男「…じゃあ甘菓子は当分無しでどうだ?」

妖狐「ぐぬぬ、わかった…飯抜きよりはマシじゃ…」ドヨーン

男「(よし、これで食費が浮く…!)」ニヤリ

妖狐「はぁ、わしはもう疲れたわい」

男「そうだな、じゃあここら辺で今日は休むか」





男「んー…と、こうしてっと…」ガサコソ

男「よっと!」ボッ

パチパチパチチ…

妖狐「のぉ、お主よ」

男「なんだ?」

妖狐「その、術というかお主にとっては技か…それを便利な道具みたいに使ってほしくないんじゃが」

男「なんで?」

妖狐「そんなにポンポン使われてはわしの威厳が…」

男「まぁまぁ気にすんなって。便利な道具は使ってこそ価値があるってもんだろ?」

男「それともお前がボッと火を点けてくれるのか?」

妖狐「いやぁ…わしは点けたくないが…」

妖狐「というか普通に火を起こせばよかろう」

男「えー、めんどくさくない?」

妖狐「…確かに面倒じゃが…複雑な心境じゃな」

男「使えるものは使っていこうぜ」

妖狐「はぁ…」

男「それより、ちょっとまずい事が起こっている」

妖狐「?なんじゃ?」

男「そろそろ金が底を尽きかけてる」

妖狐「ふむ、そうか」

男「そうだ」



男「………」

妖狐「………」


パチパチパチパチ……



        …パキッ…

妖狐「なんじゃとぉ!?」

男「うわっ、いきなり大声出すなよ」キーン

妖狐「ほんとに、ほんとに無いのか…!?」

男「すぐにとは言わないがじきに底を尽くぞ」

妖狐「そ、それは…まずい事じゃろう?」

男「まずいな、非常にまずい。金が無いと食べるものも買えないし宿にすら泊まれないぞ」

妖狐「まずすぎるの…なんでこんなことに…」

男「ぶっちゃけほぼお前のせいなんだがな」

妖狐「うぬぅ…すまぬ…」

男「ま、良いよ。今回はちゃんと管理できなかった俺も悪い」

男「それよりどうするか、だ」

妖狐「何か考えはあるのかの?」

男「そろそろ着くと思うんだが、この先に‘‘イムサ国’’って所があるんだ」つペラッ

男「国っていうくらいだし依頼掲示板とか多分あるはずなんだが…」

妖狐「依頼掲示板?」

男「うん。してもらいたい依頼を報酬と連絡先を書いて掲示板に貼って受けてくれる人を待つんだ」

妖狐「ほほー、つまりわしらはその依頼とやらで金稼ぎじゃな!」

男「そういうこと。運良く旨い依頼があれば良いんだけどなー」

妖狐「…なんか嫌な予感しかしないのぉ」

男「だーいじょうぶ大丈夫!なんとかなるって!」

妖狐「お主の大丈夫は全く信用ならんわ!」

男「今度は大丈夫だって!安心して」

妖狐「はぁ…もうよい」

妖狐「まったく、お主と出会ってから溜息の回数が増えまくっておるわ」

男「そんなにはぁはぁ言って、発情期か?」







妖狐「………」グイッ

男「うおっ」


  ドサッ…

妖狐「もし、発情期だと言ったらどうするのじゃ…?」

妖狐「男よ…」ソッ…

男「………」





男「……どうもしない」グイッ

男「そういうのはお前が決めた伴侶とやらとやってくれ」

妖狐「むすっ」

男「声に出してむすっとか言うやつ初めて見たぞ」

妖狐「…お主はほんと阿呆じゃのぉ」

男「阿呆で結構」

男「…その代わり、尻尾貸してくれ」

男「夜は寒くてたまらん…」ブルブル

妖狐「お主、まさかメスか?」

男「こんな外見の女がいてたまるかよ!」

妖狐「仕方ないのぉ、特別じゃぞ?ほれ」フワッ

男「お…おおぉっ温かい…それにふわふわしてる…」モフモフ

妖狐「ふふんっ毛並みは自信あるぞ?」

男「あぁ…眠くなってきた…」

妖狐「そのまま寝てもよいぞ。わしも寝る…」ノビー

男「じゃあ、お言葉に甘えて…」モフッ

男「おやすみ、妖狐」

妖狐「うむ、おやすみ」


………
……

今日はここで終わりますありがとうございましたっ

なんか場面いきなり飛んだ? そういう演出か?

>>201
わかりにくくてすみません、演出です

ー道中?ー

妖狐「なぁーお主よ、まだ着かんのか?」トボトボ…

男「あれぇ?おっかしいな…」トボトボ…

妖狐「かれこれ3日は歩いておるぞ?」

男「本当ならもう着いてるはずなんだが…」

妖狐「あぁあ…寒いしもうわしは疲れたぞぉ…」ドサッ

男「その意見には同意だな…」ドサッ

妖狐「ふぅ…ふぅ…疲れたの…」ハァ…ハァ…

男「大丈夫か?」

妖狐「大丈夫じゃ、心配するな」

男「………」ジー

妖狐「なんじゃ?」

男「お前、顔赤くないか?」

妖狐「赤くなっとらん」

男「嘘つけ、ちょっとこっち来い」

妖狐「う、うむ…」ス…

男「んー、熱いな」ピタ

男「お前風邪引いてるんじゃないか?」

妖狐「そんなことはない…はずじゃ…」

男「いや、どう見ても引いてると思うんだけど…」

男「結構寒くなってきたからな、仕方ないさ」

男「今日はここら辺で休もう」

妖狐「ま、まだ昼時も過ぎて無かろうが!」

男「いいや、休む。今日はここまでだ」

妖狐「しかしそれでは、遅れてしまうのではないか…?」

男「良いんだよ、遅れたって。お前の方が大事だ」

男「あそこの木の幹で今日は過ごそう」

妖狐「…わかった。すまぬの…」

男「気にするな」

………
……

ー木の幹ー

男「よっと…」サッサッ

男「ここに横になれ」

妖狐「うむ…」

男「あとこれ、毛布羽織っとけ」ファサッ

妖狐「う、む…」モゾモゾ

男「喉は渇いてないか?」

妖狐「少し…」

男「飲めるか…?」ス…

妖狐「んぐ…んぐ…。はぁ…はぁ…」ゴク…

男「…ん。何かあったらすぐ言えよ」

妖狐「…承知した…」

男「んー、とりあえず焚き火で暖を取るか」ザッザッ

男「ほっ」ボッ


ボォォ…
  パチパチパチ…

男「寒くないか?」

妖狐「大丈夫じゃ」

男「そっか。腹は減らないか?」

妖狐「少し、減ったの…」

男「わかった、ちょっと待ってろ」


ジュー…プスプス…

 パチパチパチパチ…

男「いやー、道中で魚多く取っておいて良かったな」






男「っと、焼けたみたいだ」

男「妖狐、起きれるか…?」

妖狐「う、ぬ…」ノソ…

男「少しでも食べて栄養取らないとダメだからな、一口でもいいから食べろよ」スッ

妖狐「ふ、む…ほいひいの…」モグ…モグ…

妖狐「ん…ごほっ…ごほ…」

男「っ!大丈夫か…?」サスリサスリ

男「水飲むか?」

妖狐「うむ…」ゴク…

妖狐「ぷは…はぁ…はぁ…」

男「ちゃんと食べたな、よしよし。もう横になっとけ」

妖狐「…うん」

男「んぐっんぐ…やっぱこの魚旨いなー」モグモグ

妖狐「なぁ、男よ…」

男「どうした?」

妖狐「また迷惑かけて、その…すまん…」

妖狐「わしのせいで遅れてしもうた…」

男「はぁ…そろそろ怒るぞ?」

妖狐「な、なんでじゃ!?」

男「あのなぁ、俺はお前が必要だって言っただろ?」

男「迷惑とか気にしなくていいんだよ」

男「むしろ迷惑かけまくれ。俺だってお前に迷惑かけるかもしれないしな」

男「だから今度からは体調が悪くなった時や何かあった時はすぐに言え」

男「言わなかった怒るからな」

妖狐「わ、わかった…次からはちゃんと言う…」

男「わかったなら今日はとっとと寝とけ」

妖狐「うん…」

妖狐「のぉ、お主よ…」

男「なんだ?」

妖狐「そのぉ…もう少し近くに来てくれんか…?」

男「わかった」スッ…



妖狐「…手を握っても、よいか…?」

男「…ん。」ギュ

妖狐「すまぬの…」ギュ

男「そこはありがとうって言って貰えると嬉しいんだけどな」

妖狐「ふふっ…ありがとう」

男「どういたしまして」



    パチパチパチパチ………


妖狐「…ぐぅ…ぐぅ……」

男「寝たか…。まったく世話が焼けるな」ハハ

男「きっと疲れがたまってたんだろう…」ナデナデ

妖狐「う、ぬ…むぅ…」モゾ…

男「ほんと、よく俺についてきてくれるよ」

男「初めて会った時は殺し合った仲なのに」

男「不思議なもんだな…」

男「ふあぁ…」

男「んんっー」ノビー

男「俺も少し、寝るかなぁ」

男「おやすみ、妖狐」

………
……

チュンチュンッ
   チュンチュンチュンッ

男「くぅ…くぅ…」 

妖狐「ぐぅ…ぐぅ…」

男「………んあ…?」

男「…ん?」モフモフ

男「………」

妖狐「ぐぅ…」





男「…え?」



男「………」

男「もう早朝か…ずっと寝てしまった…」

男「眠いしもう少し寝よ…」
……

男「ぐぅ……ぐ…んん…」

男「ふあぁ…あぁ」ノビー

男「んあー…」

妖狐「ぐぅ…ぐぅ……」スピー

男「妖狐、妖狐っ」

妖狐「う…む…」

男「妖狐、起きろって…重いから」

妖狐「う…ぬ…ん?」

男「起きろ、重い」

妖狐「………」

男「………」






妖狐「ぐぅ…」

男「寝るな!」

妖狐「なんじゃぁ…寝起きからうるさいやつじゃのぉ…」

男「上に乗られてると重いんだよ」

妖狐「もう少しこのまま…ふぁあ…」

男「………」

妖狐「ぐぅ…」

男「というかなんで自然に俺の上で寝てるんだよ」

男「はぁ…まぁいいか」


男「元気になったみたいで安心した」ボソ

妖狐「ほぉ、心配しておったのか?」ピクッ

男「…起きてるならどいてくれよ…」

妖狐「まぁまぁ、よいではないかっ」ギュッ

妖狐「すんすんっ…お主は良い匂いがするの」

男「ここ連日、体を軽く流しただけだからあんまり臭わないでくれ」

妖狐「そうか?わしはお主の匂い、好きじゃぞっ」スンスンッ

妖狐「それより…お主がわしの事を心配してくれておるとはの」

男「ま、まぁな…お前が居ないとつまらないしな」

妖狐「ほんとは寂しいんじゃろ?ぷぷっ」

男「う、うるさいなっ」

男「体調はどうだ?」

妖狐「んー、お主のおかげで昨日よりは大分マシになったかのー」

男「そっか、良かった」

妖狐「そ れ よ り!」

男「ん?なんだよ」



妖狐「お主はまた乙女に向かって重いなどと言いおって…!」グニー

男「ひはいひはい!ほおをふねるな!」

妖狐「つねらんとわからんじゃろうがっ!」

男「はふかっはっへ!はやふぁるから!」

妖狐「はぁ、まったくお主はもう少し気遣いと言うものを学んだ方がよいの!あとわしは重くない!」

男「いや、重い」

妖狐「ふんっっ!」ドスッ

男「ごふっ」

男「お、お前…思いっきり振り抜きやがったな…」

妖狐「わしは重くない、そうじゃろ?」

男「そうだな、重くなくなくない」

妖狐「つまり重いって意味じゃろう…がっ!」ドスッ

男「ごほっ…お前、前より凶暴になってないか…」

妖狐「何言っておるんじゃ、元よりわしはマモノじゃぞ?」

男「あぁ、そうだった…すっかり忘れてた」

妖狐「次、重いと言ったら焼くからの」

男「恐ろしいこと言うなよ…」

男「そ、そういえばシキは静かだな」

妖狐「ん?そう言われてみればそうじゃの」

シキ「静かにしておいた方が良いかなって…」ヒョコ

男「お、おぉ…びっくりした…未だに慣れないな」

妖狐「燃やすか?」

男「燃やさねーから!このやり取りも何回目だよ…」

シキ「あはは…」

男「てか、なんか前より流暢に喋ってないか…?」

妖狐「お主とずっと一緒に居たんじゃ、言葉も吸収しておるんじゃろうな」

男「もう何でも有りだな…」

シキ「私は主様の言葉を常に聴いておりました。それと主様の魔力を得て成長したのも大きいかと思いますよー」

男「すげぇ…ぺらぺら喋るな」

シキ「えへへ…」

男「かわいい」

妖狐「………」ゲシッ

男「おっ、なんだ?嫉妬か?」

妖狐「うるさい焼くぞ」

男「こまったもんだ」

シキ「すみません…」

男「お前が謝ることじゃ無いよ」

妖狐「謝るくらいじゃったら早ぅ男の腕から出ていってくれんかの…」

男「おま…そういう言い方は無いだろ」

妖狐「お主はそうやって甘いから死にかけるんじゃ!」

シキ「あのー…」

男「どうした?」

シキ「その…非常に言い辛い事なのですが…」

男「うんうん」

シキ「ここ数日、主様の腕にずっとくっ着いて私は成長いたしました」

妖狐「ふむふむ、そうじゃの」

シキ「なので主様の腕と同化しすぎて離れられなくなっちゃいました」テヘ

男「うんう………え?」

妖狐「ふむふ………は?」







男「はぁぁぁぁ!?」
妖狐「なんじゃとぉぉぉ!?」

男「おいおいじゃあ俺ずっとこのままなの!?」

シキ「一応、正確には離れることもできなくはないですが…」

妖狐「じゃ、じゃあ早ぅ離れい!」

シキ「その場合、主様の左腕は腐敗します」

男「ダメじゃんっっ!!」

男「ていうかなんで腐敗するの!?」

シキ「今主様の左腕が平常なのは私が左腕の血を巡らす役割を担っているからなのです」

妖狐「ち、血を巡らす…?」

シキ「えーと、何と言いますか…左腕は本来、私が寄生した時には既に腐敗していたはずなのです」

シキ「ですが、そのぉ…もし腐敗していれば主様は腕を切り落としますよね?」

男「ま、まぁ腐った腕を放置するのはまずいからな」

シキ「なので私がいる間は左腕を腐らせないようにしていたのです」

シキ「切り落とされたら次の宿主探すの面倒ですしね…」

妖狐「そんな…」

男「で、でもシキが俺の腕にいる限り大丈夫なんだろ?」

シキ「はい。ご心配ありません、私はずっとここに居ますよ…居心地良いので!」

妖狐「じゃあもし燃やしておったら男の腕は腐っておったんじゃのぉ」

男「いやその場合、腕が腐るどころじゃ済まない気が…」

妖狐「大丈夫じゃ、ちゃんと腕だけ燃やしてやるからの」

男「腕燃えたら意味無いだろ!」

シキ「ごめんなさい…呼ばれた時以外はなるべく出ないようにしますので…」

男「あ、あぁ…そうしてくれると助かる」

妖狐「まさかあの時の敵がこんな事になるとはの…」

男「だなぁ、俺も驚いてる」



シキ「あのぅ…」

妖狐「なんじゃ?」

シキ「私は…お二人の敵、だったのでしょうか…?」

妖狐「なっ…!しらばっくれる気か!?」

シキ「いっいえ!違います…私は、生前の記憶が思い出せないのです…」

男「き、記憶が無いのか…?」

シキ「はい…ぼんやりどころか何も覚えてないのです」

シキ「なので…もし、生前にお二人に迷惑をかけていたのならお詫びします。申し訳ございません…」ペコリ

男「えっ、えっと…も、もういいよ。過ぎた事だ。頭を上げてくれ」

シキ「ですが…」チラッ

妖狐「…ん?う、うむ…わしももうよい。気にしておらん」

妖狐「しかし何か余計な事をしでかした時は容赦無く燃やすからの」

男「おい待て、俺の身の安全は!?」

妖狐「大丈夫…大丈夫じゃ、腕だけうまく燃やす」

男「だからそれ全然大丈夫じゃないから!」

男「お前の大丈夫は信用ならねー…」

シキ「あはは…ありがとうございます。それでは、私はこれで…何か御用があればお呼び下さい」ヒュンッ

男「お、おう…」

妖狐「ふむ…」

男「はぁ…なんか旅するようになってから凄い事ばかり起こってるな…」

男「正直頭がついていかん」



妖狐「…なぁ…お主よ…」

男「なんだ?」

妖狐「お主は…今の体は、嫌か?」

男「どうした、突然」

妖狐「わしと一緒じゃと…お主にどんどん迷惑をかけてしまう…」



妖狐「今や‘‘半人外’’になり、左腕にはマモノまで居るしまつじゃ…」



妖狐「わしは…やっぱり居ないほうがいいんじゃないかの…?」ポロポロ…

男「お、おい…何言って」




妖狐「わしはっっ!!!!」

男「っ!」ビクッ


妖狐「わしはもうお主の傷つく姿を見とうない…」


妖狐「お主がついてくるなと言えばついて行かん…じゃから…」

男「ついてこない?そんなの、俺が許さん」ギリッ


男「‘‘瘴気の杜’’の時だって俺はお前に何でもするって言った」


男「‘‘キンペン街’’の事件だって俺がすすんで関わったことだ」

男「何が起こっても覚悟は出来てた」





男「…それに乙女は俺が守ってやらないとな?守る為の力を1つ手に入れたって事で良しとしようじゃないか」

妖狐「じゃが…」

男「お前は…お前は、俺と一緒に旅をするのは嫌か…?」

妖狐「い、嫌なわけ無かろうが!」

男「だったらそれでいいじゃないか。俺もお前と一緒は嫌じゃない」

妖狐「わしは…ほんとに一緒に居てもよいのか…?」グス…

男「当たり前だろ、勝手にどこか行くなんて許さないからな」

妖狐「うぅ…ひっぐ…」

男「もう、泣くなって…」ナデナデ

男「そもそも、お前と居るのが嫌だったらとっくに別れてるよ」

男「だから、そんな心配するな」

妖狐「うん……うん…ひっぐ…」ギュ

男「ったく、お前は俺のおねいさん、なんだろ?」ナデナデ

妖狐「今は…妹でもよいっ…」グス…

男「それはそれで困るな…」

………
……

今日はここで終わりますありがとうございましたっ

てす

ーイムサ国ー

ザッ…
 ザッ…


男「ふぅー…ようやく着いたな」

妖狐「じゃのぉ…疲れた…」

男「今日はもう宿屋探そう」

妖狐「賛成じゃ!とっとと寝たい…」

男「お前が飯放ったらかして寝たいだなんてよっぽどだな」

妖狐「うむ…睡魔が襲ってきて今にも倒れそう…じゃあ…」


………
……

チリリンッ

ーヤスラギ宿ー


男「こんちはー」
妖狐「ちはー」

宿主「いらっしゃーい」

男「一先ず、一晩泊まれますか?」

宿主「はいはい、大丈夫よー」

宿主「一晩銅貨2枚、食事は無しよ。どうする?」

男「わかりました、それでお願いします」チャリン

宿主「ありがとう。部屋は入り口から右手側に行って2つ目の所だから…じゃあこれ、鍵ね」ス…

男「ありがとうございます」

ー部屋ー

男「ふぅ…やっと一息つけるな」ドサッ

妖狐「じゃなー…」ドサッ

妖狐「明日は掲示板とやらを見に行くのか?」

男「そうだな、なるべく早く見に行った方が良いだろうし昼前までには行ってみるか」

妖狐「ふむ…そういえばどんな依頼があるんじゃ?」

男「うーん…俺が住んでた所では主に探し物が多かったな」

男「例えば、猫を探して欲しい…みたいなのから、少し危険だけど指定された鉱石を取ってきて欲しいみたいなのまであったな」

妖狐「ほぉ…ほぉ…して、その依頼の報酬は高いのかの?」

男「いや、あんまり大きな金にならないよ」

男「やっぱり一度に稼ぐとしたら魔物討伐とか未開の地の開拓を手伝うとか難易度の高い危険な依頼だろうな」

妖狐「げげー…やっぱり嫌な予感しかしないの…」

男「簡単な依頼なら毎日来なせば普通に暮らしていけるとは思うけど」

男「ここにずっと居るわけにはいかないしな」

妖狐「なぁ…お主よ。ここでずっと暮らすのはダメなのか…?」

妖狐「危険をおかしてまで旅をする意味はあるのか?」

妖狐「わしはお主が何のために旅をしておるのか未だにわからん…」

男「旅の理由、か…」

妖狐「うむ、そうじゃ」

男「正直に言うと、結構あやふやというか特にこれと言って何か重大な目的があるわけではないんだ」

妖狐「な、なんじゃと!?じゃあなんでお主は旅に出たんじゃ!?」

男「んー…旅に出た目的は結構前までは2つ。今は1つ増えて3つある」

妖狐「三つか…それを聞いてもよいか?」

男「まぁ、良いよ」

男「まず1つ目はお前の為でもある」

妖狐「わしのため?」

男「そうだ。お前はまがりなりにも国から討伐依頼まで出てたくらい厄介なマモノだった」

男「お前を討伐しに行って犠牲になった者、その親族も国に多数暮らしているだろう」

妖狐「う、うむぅ…」

男「まぁお前もあんな所に長年居て更に度々俺たち人間に攻撃されてたんだ、躍起になってても仕方ないけども」

男「まぁそんなわけで、晒し刑になってもおかしくなったんだ」

妖狐「おぉ…こわいの…」

男「隠れて住む事もできるが自ずと噂は絶対立つはずだ…それならいっその事、旅に出た方が楽だと思った」

妖狐「なるほどの…感謝するぞ、男よ」

男「どういたしまして。んで、2つ目」

男「これは自身の理由なんだけど…俺、父さんを探しててな」

妖狐「父親を?」

男「うん。小さい頃に出て行ったっきり行方がわからない、だから旅してたら会えるかなーって思ってさ」

男「どこをほっつき歩いてるんだか…」

妖狐「母親はどうなんじゃ?」

男「母さんは、亡くなったよ」

妖狐「っ…そうか、すまぬ…」

男「気にするな、体が弱かったらしいんだ」

男「母さんは‘‘エルフ’’?とかいう人間とは違う種族だって父さんは言ってた」

男「しかしそれについて調べようとしても何故かほとんど本には記載されてなく謎だらけで俺にもよくわからん」

妖狐「エルフ、か…」

男「何か知ってるのか?」

妖狐「わしもそこまで詳しくはないが…」

妖狐「エルフは森に里を作り決して人間に姿を見せず、森からもほとんど出ないらしい」

妖狐「歳は取るが容姿はある一時期を過ぎると全く老いなくなると聞いたことがある」

男「お前もなかなか若く見えるが…同じマモノとはまた違うのか?」

妖狐「ぶっちゃけるなら、わからん」

妖狐「そもそもお主らがわしらをマモノと呼ぶのも勝手に人間が決めただけじゃろう?」

男「それも、そうだな…」

妖狐「多分…一、種族だと思うが何せ姿を全く見たことが無いから調べようがなくての」

男「お前も調べてたことあったのか?」

妖狐「ぬふふ…まぁの」

妖狐「なんでも、エルフの血を飲むと不老不死になれると聞いて…そんなことは無いと思うが一応確かめてみたいしのぉ」

男「うわぁ…動機が不純だ」ジトー

妖狐「そ、そんな目で見るでないっ…今はもう考えておらん!」

男「ほんとかよ、怪しい」

妖狐「単なる暇つぶしじゃよ」

男「暇つぶしでエルフの血を吸うなよ…」

妖狐「ま、まぁもうよかろう!」

男「はぁ…そもそも何でお前はあんな所に封印されてたんだ?」

男「アホなお前だから何か罠に嵌ったとかか?」

妖狐「ぐっぐぬぅ…」

男「お、おいおい図星かよ」ププッ

妖狐「うがっーー!!!」ダンダンッ!

男「暴れんなよ!ここに泊まってるのは俺たちだけじゃないんだぞ…」

妖狐「ぐぬぅー!!絶対…絶対あやつだけは許さんからの!!!」ギリッ…

男「その、罠に嵌めてきたやつを探し出して復讐でもするのか?」

妖狐「今は探し出したりはせん、お主の旅が優先じゃ」

妖狐「しかし、もし偶然出会った時は…」

男「出会った時は…?」



妖狐「必ず息の根を止める」ギラッ

男「おぉ…怖ぇ…」ブルッ

妖狐「まっ、そうそう簡単に出会うわけないじゃろうし気にすることなかろう」

男「面倒な事になりそうだから勘弁してほしいな…」

男「っと…忘れてた、最後の3つ目」

妖狐「ふむ…」

男「3つ目は…ちょっと言うのが恥ずかしい」

妖狐「ほぉほぉ、お主にも恥じらいはあるんじゃな」ニヤニヤ

男「まぁ、な…」

妖狐「早ぅ言うてみぃ!聞きたいぞぉ」

男「うーん…その、妖狐…お前と一緒に色んな所に行きたいなぁって…」

妖狐「…わしと?どういう意味じゃ?」

男「お前と居るの楽しいし…一緒に旅して色々な事をできたら良いなぁというか…」

男「今までなんとなく生きてきたが…今の旅は凄く新鮮なものだ」

男「だから…これからも一緒に色んな景色を見たり色んな場所に行って色々な事をお前と経験したい」

男「そ、それだけだっ」

妖狐「………」ポカーン




妖狐「なっ何言うておるんじゃお主はっ!」バッ

妖狐「こっ、ここで告白か!?急すぎじゃろ!時と場合を考える気は無いのか!?」カァァァ

妖狐「いやしかし、いつ何が起きるかわからん…はっ!じゃからこそか…!?」

妖狐「わ、わしは…その、男となら…」

妖狐「いやまてまて…!男と居ると命がいくつあっても足りなさそうに無いし…」ブンブンッ

妖狐「しかしこやつを放っておくとそれこそ死にかねん…」

妖狐「でもわしと男はマモノと人間…そんな、よいのかの…?」

妖狐「わ、わしはどうすれば良いんじゃぁ…」


妖狐「あっ!そういえば男は人間ではなく半人外じゃった…よし!いけるの!!」


男「お、おいちょっと落ち着けよ…」

妖狐「なんじゃ?式をいつあげるか決めたか?」

男「なんでそうなるんだよ!ていうか式ってなんだ!?」

妖狐「…?わしと番になるんじゃろ?」

男「何言っておるんじゃ?みたいな顔するなよ!」

男「そして番にはならねーよ、どう捻じ曲げたらそうなる」

妖狐「なっ!?お、お主はまたわしの心を弄ぶのか!?」

妖狐「くぅぅ…ぬか喜びさせおって!この!!」ドスッ!!

男「ごほっ!お、お前が勝手に勘違いしただけ…だろうが…」

妖狐「か、勘違いなんぞしておらんっ」

男「はいはい、そういうことにしておきますよ」

妖狐「ぐぬぅ!その余裕の態度が腹立たしいのじゃ!!」

男「どうすりゃいいんだよ…」

妖狐「勘違いさせるような発言を妖狐様にしてしまい申し訳ございませんでした、と謝れぃ」

男「結局勘違いしてるんじゃん」

妖狐「しておらんっ」

男「妖狐様ををか ん ち が いさせてしまい申し訳ございませんでしたぁ」ニヤニヤ

妖狐「ふんっっ!!」ドスッ!!

……


妖狐「…ふぅ…明日掲示板を見に行くんじゃしそろそろ寝ようかの」

男「そう、だな…腹痛い…」

男「…尻尾借りるぞ」モゾ…

妖狐「うむ」




妖狐「………ん?」

妖狐「なにお主は自然にわしの尾を使おうとしとるんじゃ!」

男「減るもんじゃないし良いじゃん」

妖狐「減ったら困るわ!毛は抜けるけども!」

男「それにしても、綺麗な毛並みだな…」

妖狐「ふふーんっまぁ、それほどでもあるの!」ドヤッ

男「手入れとかしてるのか?」

妖狐「最近はあんまりしておらんのぉ…一応手で軽くはしておるんじゃが…」シュン…

男「そっか、ちゃんと手入れするには何か必要なのか?」

妖狐「そうじゃの…せめて櫛とかあれば助かる」

男「ふーん、櫛か…」

妖狐「まぁ、お主が持っておるわけないし…」

男「必要無いしな」

妖狐「そういうことじゃし、仕方ないの」

男「そうだな…」

男「(明日、櫛でも買ってやるか…)」

男「さて、寝るか…おやすみ」モフモフ

妖狐「………」

妖狐「…はぁ、もうよいか…おやすみ」

………
……

今日はここで終わります、ありがとうございました!

てす




男「ふぁあ…んん…」ノビー

男「眠い…」

男「妖狐、起きろー」ユサユサ

妖狐「んん…」

男「朝だぞ、起きろ」

妖狐「んあー…」ノビー

妖狐「もう朝か…」

男「そして腹減ったな」

妖狐「そうじゃの…昨日はそのまま寝てしもうたし…」


男「よっと…じゃあ、何か食べに行くか」スタッ

妖狐「じゃな」



    キィー
     バタン

ーカンハガイー

男「結構人がいるな…」

妖狐「こうも人が多いと疲れるのぉ」

男「そうだな…さっさと飯食って掲示板を見に行こう」

妖狐「うむ………ん?」スンスンッ

妖狐「お主よ、こっちから何とも芳しい匂いがするぞ!」


男「すんすんっ…おぉ、ほんとだ!」

男「ちょっと行ってみるか」

妖狐「あぁ、腹がますます減ったぞ…!」
   

……


男「はむっ…むぐもぐもぐ…」

妖狐「もぐもぐ…んぐ」




男「うまいな!」
妖狐「美味じゃの!」




男「匂いに釣られて勢いで買ってしまったがまさかこんなに美味しいとは」

妖狐「じゃのぉ…この肉も香ばしくて良いの!」

男「あの店主が言うには豚の…腸?の中に肉を詰めてそれを焼いたものだって言ってたな」

妖狐「なるほろの…このパンとやらと相性抜群じゃの」

男「だなぁ、上にかかってるたれ?みたいなのもまた旨い。こんな旨いものがあったなんて…」

妖狐「しかし妙に高かった気がするが気のせいかの?」

男「…気のせいじゃ無い、と思う。これに限らず他の物も結構値上がりしてた」

男「北国だからわからなくも無いが…それにしては不自然な値上がり方だ」

妖狐「ふむぅ…(全くわからん)」

男「っと、そろそろ掲示板に着くぞ」

妖狐「う、うむ…」

……

ー掲示板前ー

男「ふーむ…」ジー

妖狐「うーむ…」ジー


『犬を探してくれる方募集!特徴は…』

『庭の草刈りをしてくれる方、下記までご連絡下さい』

『秘匿案件。他言無用を守れる方下記まで』

『身辺警護‘‘オーキナ丘’’まで。腕のある方数名募集』

『日雇い、店番してくれる方。下記の現地まで来てください』

『魔物討伐、自信のある者数名。連絡は下記のここまで』


『雪かき!!!!してくれる人!!!!下記の場所に来て!!!』


男「うーん、微妙すぎる」

妖狐「大きな報酬の依頼が見当たらんのぉ…」

男「そうだなぁ………ん?」






『氷飛竜討伐依頼、報酬は金貨50枚…』バーン!


妖狐「無さそうじゃのぉ………お?』






『氷飛竜討伐依頼、報酬は金貨50枚。場所はセツヒョウの山→セツヒョウの風穴…』ババーン!


男「お、おおおおぉ…」

妖狐「あ、ああぁぁ…」



男「あった!!」ダキッ
妖狐「あったの!!」ダキッ

男「あったぞ!やった!金貨50枚だ!!」

妖狐「うぬ!50枚じゃ!!」

男「うひょー!これでしばらくは贅沢な生活できるな!」

妖狐「そうじゃのぉ!」

妖狐「…ん?」

妖狐「ちょ、ちょっと待て!お主よ…」

男「なんだよぉ!早く行こうぜ!」ウキウキ

妖狐「よ、よくこれを見てみぃ…」アワワ

男「んー?どれどれ…」

『 氷飛竜討伐依頼、報酬は金貨50枚。場所はセツヒョウの山→セツヒョウの風穴…。死ぬ覚悟がある者だけ北の門前小屋まで来たし』

男「………」
妖狐「………」






男「………」ダラダラ
妖狐「………」ダラダラ



男「し、死ぬ覚悟がある者、だけ…」

妖狐「つまり、死人が出ておると言うことか…?」

男「だろう、な…金貨50枚、やっぱりそうそううまい話は無いよな…」

妖狐「…どうするんじゃ?」

男「どうするってお前…」





男「行くに決まってんじゃん!」

妖狐「はぁ…やっぱりの…」

妖狐「もうお主の両足を燃やしたいくらいじゃ」

男「金貨50枚だぜ!?トアール国の王がくれた金額と同じだぜ!?」

妖狐「同じ金額だろうがどうでもよいわ!」

妖狐「もしかしたら死ぬかもしれんのじゃぞ!?」

男「でも俺たちの手持ち、もうあんまり無いぞ?」

妖狐「ぐぬぅ…」

男「とりあえず話だけでも聞いてみないか?」

妖狐「………」




妖狐「…仕方ないのぉ…話だけじゃぞ?」

男「わかってるってっ」




男「…多分な」ボソ

……

ー北の門,前小屋ー

男「ここか…?」

妖狐「みたい、じゃの」


  コンコンッ


兵士「はい、なんの御用でしょうか?」ガチャ

男「あ、すみません。掲示板の依頼を見て来たんですけど…」

兵士「依頼の件ですね、どんな依頼でしょうか?」

男「えっと、氷飛竜?の討伐依頼の件です」

兵士「っ!?あ、あの依頼ですか!?」

男「そ、そうですけど…」

兵士「………」ジー

男「…?」

兵士「討伐…しに行くのですか?」

男「まだ行くかはわからないんですけど、話だけでも聞いておきたいなと思いまして」

兵士「…わかりました。お入りください」

男「失礼します」ペコ

妖狐「失礼するの」


   ギィー
    バタン



兵士「そこにお座りください」

男「ありがとうございます」ス…

妖狐「うむ」

兵士「それで…氷飛竜の事でしたよね」

男「そうです」

兵士「それは…やはり報酬が多いからでしょうか?」

男「そうですね!その通りです!」

兵士「あはは…正直なのですね」

男「いちいち隠す事でも無いですしね」

兵士「…脅すわけでは無いのですが、やめておいたほうが良いですよ?」

男「どうしてですか?」

兵士「…これまで、何人もの人が討伐に向かっていき、誰一人として帰還していないのです」


兵士「皆、それなりの実力はあったはずです。それが束になっても敵わない相手なのです」


兵士「見たところ、そちらの方は女性と見受けられる。お二人方で倒せるとは到底思えない」

男「やってみないとわからないじゃないですか」

兵士「やってみないとわからない、じゃダメなんですよ。やる前に勝てるかどうか明確になっていないと」


兵士「私は、無駄死にして欲しくないのです。だからここで討伐に向かう者を説得し行かないように勤めています」


兵士「中には、やはり向かってしまう者もいますが…」

男「どうして…勝てないとわかるんですか?」



兵士「私は実際に戦ったからですよ」

男「!?」

妖狐「おぉ、凄いの」

兵士「氷飛竜と初めて対峙したのは大規模な遠征中でした」

兵士「遠征の帰り、山を越えようとした時、ヤツは現れたのです」

兵士「無惨なものでしたよ。ひと度、尾を振るえば幾多の兵士が吹き飛び、凶暴な爪がかすれば肉を切り裂き、更に口から氷まで吐く始末」

男「凄まじいですね…」

兵士「はい、凄まじいんですよ。あんなのは人間の敵う相手じゃないと私は思います」

男「でも…じゃあ、何故討伐依頼を出しているんですか?そんなに危険な相手なら変に刺激しない方が良いのでは?」 

兵士「ですよね…私もそう思います。ですが、それがそうもいかないんです」

妖狐「ほぉ、それはどういう意味じゃ?」

兵士「あの氷飛竜、たまに私達の国の貿易道に現れることがあるんです」

兵士「毎度現れる事ではないんですが…やはり皆、氷飛竜を恐れてこの国に来なくなったんですよ」

兵士「ここの物価、妙に高くなっているの気づきました?」 

男「え、えぇ…。そういう事だったんですね」

兵士「はい、これも全てあの氷飛竜が原因なのです」

兵士「このままでは国の危機だと判断した王が依頼を貼ったんですよ」

男「王自らの依頼…それを説得し行かせないようにしてるあなたは結構まずいんじゃ…」

兵士「でしょうね、バレたら首ですかねー」

兵士「でも、私の首で多くの人が無駄死にしないのなら安いもんですよ」

兵士「それで、ここまで聞いてもやはり行かれますか…?」





男「…多分、行くと思います」

妖狐「っちょ!?」

兵士「あはは…そんな気はしていましたよ」

兵士「では私から1つだけ。ヤツは炎が苦手みたいですよ」

男「炎が?」

兵士「えぇ。あの時私は松明を持っていたんですけど、それを投げつけた時わずかに怯んだ気がしたのです」

兵士「信じるか信じないかは貴方に任せます」

男「助言ありがとうございます。今日は帰ってじっくり考えてみます」

兵士「はい。願わくば諦めて頂きたいですけどね」アハハ…

兵士「もし行かれる場合はもう一度ここを訪れてください。ヤツの住処をお教えしますよ」

男「わかりました。それでは、失礼します」ペコリ

妖狐「失礼したの」


   ギィー 
    パタン

………
……

今日はここで終わります、ありがとうございました!

雪かき。
炎で溶かして依頼1発終了。

とはいかず予想外のトラブルが発生してそこから話が展開。

雪なら話の持って行き方次第で氷竜ルートにも合流可能。
またはまさかの炎竜登場でシンメトリカルドッキング(謎)。

ーハンカガイー

男「ふぅ…どうするかなぁ…」

妖狐「お主は何でそう危険に足どころか頭から突っ込むのじゃ?」

男「うーん、そう言われてもな」

妖狐「あれか?困ってる人が居るなら助けるとかいう正義感から来るものなのか?」

男「いや、そんな物は無い」

妖狐「無いのか!?じゃあ一体何のために…」


男「………」

男「まぁ、単純に氷飛竜を見てみたい」

妖狐「お主は阿呆じゃな」

男「だって竜だぜ?竜なんて一度も見たことないんだぜ?」

妖狐「わしはあるが…というかそんな理由で行かれては困るんじゃが」

男「おまっ、竜見たことあるのか!?ずるい!」

妖狐「ずるいってなんじゃ!そんなことわしに言われても知らん!」

男「よし、これは行かなきゃならなくなったな」

妖狐「はぁ…どうせ止めても行くんじゃろ?」

男「…んー、正直ちょっと迷ってなくはないんだよな…」

妖狐「ほー、お主でも迷う事はあるんじゃな」

男「もちろん俺だけなら迷わず行くんだが、今はお前も居るからな」

男「キンペン街の時みたくなられちゃ困る」

妖狐「あ、あれは油断しておっただけじゃ!」

男「油断されたら困るんだよなぁ」

妖狐「ぐぬぅ…」

男「いっその事、お前は宿で待ってるか?」

妖狐「嫌じゃ!わしもついていく」

男「絶対危険だぞ?」

妖狐「だからじゃよ、お主一人では行かせとうない」

妖狐「それに、ヤツは炎が苦手とあの兵士は言っておった。ならわしも役に立てるはずじゃろう?」

男「炎なら俺も出せるし…」

妖狐「あんなちっぽけな炎で太刀打ち出来るわけなかろうが!」

男「まぁ…確かに。仕方ないなぁ」

男「あっ、そういえば本で読んだんだが…竜って賢いのか?」

妖狐「そうじゃのぉ…賢い者もおる」

男「お前みたいに喋ったりとか?」

妖狐「もちろん、喋れる者もおったりする」

男「…仲間にして竜の背中に乗って飛んでみたいな…」

妖狐「そんな馬鹿な事できるわけなかろうが…」

男「じゃあお前の背中でも良いぞ?」

妖狐「燃やすぞ」

男「………」





男「の、残りの金使って装備でも整えるか…」

妖狐「…じゃな。せめて武器くらいはちゃんとした物を用意した方がよいの」

男「よし、じゃあ店を回ってみるか」

……

  パサッ…

ー武器商店ー

店主「いらっしゃい」

男「ふーむ…」ジー

『焔壊の剣』 金貨7枚

『氷撃の剣』 金貨7枚

『双闇の剣』 金貨7枚

『鏡乱の盾』 金貨8枚

『風怒の槍』 金貨7枚

『聖鏡小太刀』金貨7枚

『四元楼の服』金貨9枚

『四元楼の服(脚)』金貨9枚


男「(うぐぅ…高ぇ…)」

男「(手持ちの金貨は20枚…)」

男「(何も考えず甘菓子買いまくったり豪遊しすぎたな…)」

男「(もし、もしも倒せなくて逃げ帰った時の為に少し残しておかなきゃならないし…)」

男「(かと言って手を抜いた装備だとそれこそ死にかねんしなぁ…)」

妖狐「どうするじゃ?」

男「うーん…今の装備は…」


  頭 【無】
  体 【旅装の服】
  腕 【無】
  脚 【旅装の服(脚)】
  武器【鋼の剣】
  盾 【無】
           』

男「なんだけど…」

妖狐「お主はよくそれで生きてこられたの…」

妖狐「これ、ほぼ安価装備というか…少なくともマモノと戦う類の装備では無い」

男「装備なんて気にしてなかったしそもそも旅したかっただけで毎度戦うつもりなんて無かったしな…」

妖狐「ふむぅ…」

男「とりあえず、武器と服だけでも買っとくか」

妖狐「炎が苦手と言っておったしあの剣がよかろうな」

男「そうだな…すいませーん、この剣と服くださーい」

店主「はいよー、合わせて金貨16枚だ、どうする?」

男「買います」チャリン

店主「ありがとよ、また来てくれよな」



  パサッ…

……

男「よっと…」スチャ


  頭 【無】
  体 【四元楼の服】
  腕 【無】
  脚 【旅装の服(脚)】
  武器【焔壊の剣】
  盾 【無】
           』
   
   残り金貨 4枚


男「やばい…残り4枚か…」

妖狐「じゃの…」

男「てか、買ったはいいものの、勝てるか怪しいな…」

妖狐「うむぅ…」

男「しかし買ってしまったからには行くしかない」

妖狐「…悩ましいの…」

男「うん…正直、今回も死にかける予感しかしない」

妖狐「はぁ…まぁ、もう死ななかったらいいわい…」

男「おいおい諦めんなよ、五体満足で帰ってこようぜ」

妖狐「お主がそれを言うか…」

男「まっ、とりあえず今は宿に帰ろう」


妖狐「………」チラッ

男「ん?どうしたんだ?」

妖狐「ん、あぁ…何でもない」

男「(露店の…これは、櫛か…)」

妖狐「さっ、行こうかの」

男「そこの露店で食べ物と、櫛も買っていくか」

妖狐「わ、わしは櫛などいらん!」

男「別にお前の為に買うんじゃないけど?」

妖狐「ぐぬぅ…そう、か…」シュン

男「買った後、使い心地悪かったらお前にやるよ」

妖狐「っ!よ、良いのか…?しかしお主、金はもうほとんど無いはずじゃが…」

男「まぁ、大丈夫大丈夫。櫛買ってもあと数日くらい食料と宿に泊まれるくらいはあるから」





店主「いらっしゃい」

男「さて、どれにするかなー。妖狐はどれが良いと思う?」

妖狐「お主が使うんじゃしわしが選んでも意味無かろうが…」

男「まぁまぁ、参考にだよ」

妖狐「ふむぅ…わしはこの少し赤みがかったのがよいのぉ」

男「これか…じゃ、これにするわ」

妖狐「んな!?そんな簡単に決めてよいのか!?」

男「櫛の良し悪しなんてわからんし直感に任せよう」



男「………」

妖狐「ん?どうしたんじゃ?」

男「松明、か…」

男「あの、これと…あと油もください」

妖狐「お主、忘れておったが食い物はどうするんじゃ?」

男「あ、ほんとだ、忘れてたな…」

男「じゃあそれと、あとそれを4つずつお願いします」

店主「こちらの櫛は金貨1枚と…油は銀貨2枚、果物と干し肉はそれぞれ銀貨1枚だけどどうします?」

男「(高ぇっ!櫛ってそんなにすんの!?)」

男「か、買いましゅ…」チャリン

店主「…?ありがとう」


……

……


男「…残り金貨2枚と銀貨6枚か…」

妖狐「お主、高ぇっ!って顔しておったの」

男「そ、そんなこと思ってねーし」

妖狐「本当かぁ?」

男「ごめん、実は思ってた」

妖狐「じゃろうな…」

男「ほら、やるよ」ポイッ

妖狐「わわっ…投げるでない」

男「すまんすまん」

妖狐「でも…本当によいのか…?まだ一度も使っておらんぞ?」

男「俺、櫛なんて必要無いしな」

妖狐「何で買ったんじゃ…」

男「素直じゃないお前の為だよ」

妖狐「わ、わしは別にっ…頼んでおらんっ!」

男「そうだな、頼まれてない。だからだよ」

妖狐「むぐぅ…その、ぁ…り…」モジモジ

男「ん?何て言った?」

妖狐「じゃから!ありがとうと言っておるのじゃ!!」

男「どういたしまして」ニヤニヤ

妖狐「くぅ…そのにやけ顔、腹が立つ…」 

男「じゃ、そろそろ宿に戻るか」

妖狐「………」

男「どうしたー?置いてくぞー」







妖狐「…ふふっ…」ギュ

妖狐「うむ!」

……

ーヤスラギ宿,部屋ー

男「…何もすることが無くなった…」

妖狐「じゃな、用は済んだしの…」

男「うーん、まだ時間あるよな」

妖狐「朝から出向いたしのぉ…」

男「掲示板に貼ってあった依頼、この際何か受けて少しでも金増やしておくか?」

妖狐「そうじゃな…もしもの時の為にあった方がよいかもしれんな」

……

ー掲示板前ー

男「さっき見た依頼は残ってるな」

男「どれにする…?」

妖狐「うーむ…、この秘匿案件とやら、気になるのぉ」

男「あー、これか…厄介事じゃなけりゃ良いかもな」ビリッ

妖狐「その確率が高いのかの?」

男「まぁ、秘匿って言うくらいだし何かワケありなのは確かだろう」

妖狐「ふむぅ、やめるか?」

男「いや、面白そうだし行ってみよう」

男「あとは…うん、この迫力のある依頼を受けるか」ビリッ

妖狐「雪かき、か」

男「うん。炎でボッとやれば一瞬だろ」

妖狐「ほーなるほど、盲点じゃった」

男「んじゃ、行くか」

……

ーチネモカ屋敷,前ー

男「ここら辺、だよな」

妖狐「じゃな…」


  ゴンゴンッ


   ……カチャ


執事「どちら様ですか?」

男「あ、掲示板の依頼の件(雪かき)で伺いました」

執事「おぉ、ありがとうございます」

執事「では、早速向かいましょうか」

男「ん…?は、はい」

妖狐「うむ」

……

ー1軒目ー

執事「ではまず、1軒目のここをお願いします」

男「わかりました」

男「(1軒目…?)」

男「えっと、じゃあ…すこーし後ろ向いて貰っても良いですか?」

執事「後ろ…?…わかりました」クルッ

男「妖狐、今だ」ボソッ

妖狐「うむ…!」

  ボシュンッ!

    ボゴォ!

     パチパチパチ…
       ボオォォォ……



男「………」

妖狐「………」



男「や、やばい…」

妖狐「あ、あぁ…」






男「(家が燃えた…!!)」
妖狐「(家が燃えおった…!!)」


男「ど、どどどどどどうすするるるる!???!」

妖狐「あわわわわわわ…」

執事「…ん?どうかさなさいましたか?」チラッ

男「あー、いえ!そのぉ…」

妖狐「こ、これは…」

執事「おぉ、燃えてらっしゃる」

男「そ、その、すみません!!」

執事「あ、良いですよー。この家はもともと物置に使っていただけなので」

男「は、はぁ…」

執事「燃えた分は報酬から引くという事でよろしいでしょうか?」

男「そ、それでいいんですか…?」

執事「えぇ、大丈夫ですよ。さっ、次行きましょうか」

男「え…次…?」

……

ー2軒目ー

執事「ではお願いします」

男「あの…」

執事「どうしました?」

男「すこーしだけ後ろに…」

執事「あっ、わかりました」クルッ

男「よし、今度こそ…いけっ」

妖狐「うむ…!!」

   ボシュッ…

     ボゴォ


       パチパチパチ
         ボオォォォ……







男「ま、まずい…また燃えてしまった」

妖狐「うぬ…」

執事「あらら…また燃えちゃいましたね」

男「ごめんなさい!!」

妖狐「すまぬ…」

執事「あ、良いですよー。さっ、次行きましょうか」

妖狐「…へ?」

ー3軒目ー

執事「ではお願いします」

執事「後ろ向いておきますね」クルッ

男「あ、はい…」

男「妖狐、今だ!」

妖狐「今度こそ!」

  ボヒュッ…

    ドゴォ
       パチパチ…
         ボオォォ……

男「やばい、またまた燃えてしまった…」

妖狐「今度はうまく行ったと思ったんじゃが…」

執事「あらら…またまた燃えちゃいましたね」

男「その…ほんとすみません…」

執事「じゃ、次行きましょうか」

男「え…」
妖狐「え…」

ー5軒目ー

執事「では後ろに向いてますので」クルッ

男「お願いします」

男「妖狐、次はもう少し弱くだ」

妖狐「うむ…ほりゃっ!」

  ポヒュンッ…

    ポゴォ

     ボォォ…

男「あーくそっ、惜しい!」

妖狐「じゃのぉ、もう少しだけ火力を弱くかの…」

執事「じゃ、次行きましょう」

…………


ー10軒目ー

男「あーくそっ!また燃えた!」

妖狐「ぐぬぬ…!惜しいの!」

……………

ー15軒目ー

男「くうぅ燃えた!あと少しな感じなんだがな!」

妖狐「まだまだ行くぞ!」




……………

ー19軒目ー


男「だんだんコツ掴めてきたか…?」

妖狐「うむ!家は燃えたがの!」




……………

ー23軒目ー

男「おぉっ燃えたけど何かさっきのは良い感じだったんじゃないか!?」

妖狐「じゃな!もう少しじゃ!」

ー25軒目ー

男「よし、いけぇっ」

妖狐「任せいっ!」

  ポヒュゥゥ…

    パフッ

      ジュワァ……
         …ポタ
         …ポタ…


男「おおおぉぉ!!やった!!雪だけ溶けてる!!」

妖狐「やったの!!ようやくじゃ!!」

執事「ふふふ、おめでとうございます」

執事「この調子でどんどん行きましょうか」

男「まだあるのか…」

ー40軒目ー

男「…妖狐、大丈夫か」

妖狐「はぁ…はぁ……ぜぇ…」

妖狐「ふんぬっ!」バッ

  ポヒュゥゥ…

    パフッ

      ジュワァ……
         …ポタ
         …ポタ…

妖狐「はぁ…はぁ…」

執事「お疲れ様です!この軒で最後です!」

男「お、終わったのか…」

妖狐「流石のわしも疲れたわ…」

男「あの…結構な数燃やしてしまいましたけど大丈夫だったんでしょうか?」

執事「心配いりませんよ、家の中には人は居ませんし何があっても大丈夫な軒だけご案内したので」

男「そう、だったんですね…」

執事「では、これは報酬です」ス…

男「あ、ありがとうございます…」

男「…ん?これ、こんなに貰っても良いんですか!?」

執事「えぇ、燃えなければもっと多かったんですが、すみません」

男「い、いえ…」

執事「あの依頼、誰も受けて貰えなかったんですよ。それで、旦那様がもし受けてくれる優しい方が居たら報酬を多目に渡してやって欲しいと仰られたんです」

男「そ、そうだったんですね…」

執事「はい。今回はありがとうございました」ペコ

執事「それでは、失礼します」

男「こ、こちらこそありがとうございました!」

妖狐「ありがとうじゃ!」

……

妖狐「それでお主よ、いくら貰ったのじゃ?」

男「金貨3枚と銀貨5枚だ」

妖狐「それは…多いのかの?」

男「多い、破格だよ」

妖狐「じゃあ儲けものじゃな!」

男「だな…まぁ40軒も回らされたんじゃたまったもんじゃないから誰も受けなかったんだろう」

男「俺達は依頼をよく見ず受けちゃったしな…」

妖狐「あぁ…」

妖狐「しかし今回、この依頼のおかげで力の調節の仕方がわかった気がするわい」

男「そうなのか?」

妖狐「うむ、今まで何も考えずぶっ放しておったが、これからは調節しながら長時間戦えるかもしれんの」

男「おぉ、そりゃ助かるな」

男「んじゃ、次に行くか」

ーギサウ家,前ー

男「ここ、だな…」

妖狐「ぷぷっ兎の形しておる…なんか面白い家じゃのっ」

男「それ、絶対依頼人の前で言うなよ…」


  コンコンッ……


男「………あれ?」

妖狐「………およ?」

男「すいませーん」


ドタバタドタバタ


使用人「遅れてしまいすみません!」

使用人「それで…どのようなご用件でしょうか?」

男「えっと、掲示板に貼ってあった依頼の件なんですが…」

使用人「!!あの件ですね!良かった…」

使用人「すぐにこちらに!!」グイッ

男「わわっ」

妖狐「お、おぉ…」


……



息女「ふーん、アンタが依頼を受けたんだ?」ジロジロ

男「誰ですかこいつ」

使用人「この家のお嬢様です」

男「それで、依頼というのは?」

息女「依頼はずばり!一日だけ私の彼氏になりなさい!」

男「このお嬢様は頭がボケてらっしゃる…?」

息女「なっ!?何なのこの無礼者は!」

使用人「ま、まぁまぁ…今更変えるわけにも行きませんよ…」

使用人「そろそろお見合いの時間になります」

男「はぁ!?お見合い!?」

息女「そうよ!私はまだ結婚するのが嫌なの!」

息女「なのにお母様ったら無理やり席を設けて…」

男「ちなみに、相手もお嬢様みたいな貴族の方が…?」

使用人「えぇ…。こちらと同じくそこそこ名のある‘‘メカ家’’の者なのです」

男「うわぁ…想像以上に面倒くさそう」

息女「時間がないわ!行くわよ!」グイッ

息女「そこの小汚いローブ!あなたは外で待ってなさい!」

妖狐「な、なんじゃとぉ!?この!!」

男「ば、馬鹿…やめろって」

妖狐「ふんっ!こんな所こっちから願い下げじゃわ!」スタスタ

息女「ふん、行くわよ」

男「え、えぇ…」

……

ーギサウ家,外ー

妖狐「ふん!あの小娘、調子に乗りおって!」スタスタ

妖狐「はぁ…暇じゃのぉ、こんな依頼受けるんじゃなかったわい」


  ドンッ


妖狐「おっと、すまぬ」

??「いえいえ、こちらこそすみません」

??「おや…?あなた…」

妖狐「な、なんじゃ?」

??「なんて美しいんだ…あの、お名前を聞いても…?」

妖狐「な、名か…?えーと…あー…」





妖狐「こ、コウヨじゃ!」

??「コウヨさんですか、素敵な名前ですね。僕は子息と申します」

子息「失礼ですが、お付き合いされてる方はいらっしゃいますか…?」

妖狐「い、いや…おらんが…」

子息「!!では、僕と…どうでしょうか?」

妖狐「…え?」

子息「いきなりとは言いません、まずは友人から…そして付き合っていただければ」

妖狐「あの…」

子息「そうと決まれば、今回の件を断りに行かなければ行けませんね」

子息「それに、そのローブ、綺麗なものに変えてあげますよ!」

妖狐「いや、これは大事な…」

子息「さて…では、行きましょう!」グイッ

妖狐「………ちょっ―――」

……

男「うっわやべぇ…場違い感が凄い」

息女「今は私の彼氏なんだからシャキッとしないさいよ!」

使用人「お嬢様、そろそろお見えになる頃です…」

息女「ようやくね」

男「一体どんな奴が来るんだろう…」


  スタスタスタスタ


子息「お待たせいたしました」

妖狐「………」

息女「来たわね」

男「…ん?」チラッ







男「……え?」

男「(ちょ、えぇ!?何であいつがここに居るの!?)」

息女「今日は来ていただいたのだけれど、謝らなければいけないことがあるわ」

子息「奇遇ですね、実は僕もです」

息女「アンタも…?」

子息「えぇ、実は僕…横にいるこの方と付き合っています」

息女「え?」

男「は?」





息女「えぇぇぇぇ!?」
男 「えぇぇぇぇ!?」

男「(ちょっとどういうこと!?付き合ってる?あの短時間に一体何が!?)」

子息「ふふ、そして僕はいずれこの方を妻として迎え入れるつもりです」

男「はぁ!?」

男「ちょ、あの!その…!その横の方は納得してらっしゃる、んですか!?」チラッチラッ

妖狐「いや、その…」

子息「納得していますよ」ニコッ

妖狐「………」

男「どゆことー!!?」ゴンッ!

息女「ちょ、ちょっとあなた落ち着きなさいよ…綺麗なブリッジね…」

息女「あの女、アンタの女なの…?」コソッ

男「付き合ってるわけじゃないんだが、大切なやつだ」コソッ

息女「ちょっと!それまずいじゃない!」

子息「なので僕はこのお見合いの話を断ろうと思います」

息女「あら!アナタから断ってくれるのね」

男「ま、まてまて!それは困る!」

子息「おや?どうしてですか?」

男「そ、そいつは…俺にとって大事なやつだ。だからお前には渡せん」

妖狐「お、お主…」

子息「でもこの方は僕を拒絶していませんよ?」

男「よ、妖狐…」

妖狐「うむぅ…その…」

男「………」

子息「はは、さて…長居しては申し訳ないですし僕達はこれで…」

男「待て」

子息「まだ何か?」


男「妖狐、お前…いつものローブはどうした」

妖狐「こ、こやつに…変えられた…」チラッ

男「変えられた…?着替えたのか」

妖狐「う、うむ…」

男「妖狐、最後にもう1つだけ聞く」

男「お前は子息と一緒に行くのか?」



妖狐「わしは…その…」

子息「バラしますよ?男に迷惑がかかってもいいんですか…?」ボソッ

妖狐「…っ!」

妖狐「わしは…」




妖狐「…わしは…こやつと一緒に、行かねばならん…」

男「………」

男「行かねばならん、か…」ボソッ

子息「話は終わりましたか?それでは…」ギュ

男「待てよ」

子息「はぁ…またですか。しつこいですね」

男「それ以上、その女に触ると斬るぞ」

妖狐「お主…!」

息女「ちょっ!?アンタ何言ってんの!?」

男「何言ってるも何も、そのままの意味だ」

子息「僕を斬るとこの国で少なからず肩身狭い暮らしをしなければいけなくなりますよぉ?」

男「…」


子息「まっ、コウヨさんは僕が貰うんで。あなたはそこで指を加えて見ていてください」


子息「それと、前に着ていたこの汚いローブは捨てておいてくださいね」グイッ

妖狐「あっ…」


   パサ…


子息「あっ、式にはちゃんと呼んであげますよ。はははっ」グリグリ

男「………」


子息「おやぁ?斬らないんですか?」ギュ

子息「いいですよ?ほら、斬って。どうしたんです?どうぞ斬っ――――」

  



   ザシュッ!
     ボォ…



子息「……ぇ………」



   ドサッ…



息女「わ、わわっ…」

子息「ごぼっ…げほっげほっ…ぉぇ…」ビチャ

子息「ごぃづ…ごほっ…」

男「おっ、斬った所が燃えた」

子息「ごの''…や''ろ''う''…!!」






子息「ぼん''どう''に''斬りや''がっだ…!!!」

男「何言ってるんだ、お前が斬って良いって言ったんだろ」

男「調子に乗りやがって。お前、妖狐の耳と尻尾見たんだろ」

子息「な''に''を''…僕ば…」

男「ローブを変えた時見たんだと思うが…」

男「何俺の大事な女に脅しをかけてんだ」

男「ぶっ殺してやりたいが一応急所は外して浅く斬ってやった。これ以上関わってきたら…」



男「次こそ一撃で息の根を止める」


子息「ぐぐ……ごの''…!」


男「あ、それと…コウヨだっけ?この女の秘密喋っても息の根を止めに来るからな」

子息「ぐぞ……や''ろ''ぅが……」

男「息女さんすみません、全ての責任は俺が持ちます」

息女「それには及びませんわ。この男がこんなに最低な人だとは思いませんでしたし」

息女「使用人、来てちょうだい」

使用人「どうしま…わわっ!どうしたんですかこれ!?」

息女「すぐに手当を」

使用人「か、かしこまりました!」






息女「ふふ、あなた…なかなかカッコイイじゃない」

息女「まさか剣で斬るとは予想外でしたけど。お強いのね」

男「伊達にここまで旅をしてませんからね」

息女「旅のお方だったのね」

息女「ま、あの子息…あまり良い噂は聞かなかったのよ。だから今回の話断りたかったの」

男「そうなんですか。執拗に迫られた時は言ってくれたら斬りに来ますよ」

息女「ふふ、ありがとう。アナタも何か困った事があればいつでも来なさい。少しなら力になれると思うから」

男「ありがとうございます」

息女「さっ、後は任せてさっさと行きなさい」

男「でも…」

息女「あ、それと他の使用人から報酬も受け取っときなさいよね」

男「さ、流石にそれは受け取れませんよ」

息女「良いのよ、依頼はこの話を断われたら完了よ。さっき相手から断ってくれたしね」

息女「納得行かなくても受け取りなさい。いい?」

男「…納得できませんがわかりました」

息女「ん。それじゃあね」

男「はい…。妖狐、行こう」

妖狐「う、うむ…」

……

妖狐「その、男よ…」

男「なんだ?」

妖狐「本当にすまぬ…」

男「あぁ、そうだな。今回ばかりは完全にお前が悪い」

妖狐「うぬぅ…」

男「しっかりしてくれよ、流石にバレるとまずいんだからな」

妖狐「……うむ…」

男「それと、ほら」パサッ

男「ったく、ローブはちゃんと持っとけよ。周りに誰もいないしとっとと変えろ」

妖狐「う、うむ…!」モゾモゾ

妖狐「ふふっ…このローブは落ち着くの…」

男「そういやそのローブ買ったの、旅に出発する時だったよな」

妖狐「じゃな。お主からの最初の贈り物じゃ」

男「金貯まったら新しいローブ買ってやるよ」

妖狐「ふふ、ありがとう。その時を楽しみにしておる」

男「はぁ、しかしやっちゃったなぁ」

妖狐「斬った事か?」

男「そうそう。ま、何かあったらとっととこの国から出りゃ良いか」

妖狐「わしは…嬉しかったぞ?」

妖狐「わしはお主の大事な��なんじゃろ?」ニシシッ

男「うぐ…ま、まぁな」

妖狐「おぉ、認めおったわ」

男「お前は俺にとって一番大事な��…いや、メス?だよ」

男「はぁ、しかしやっちゃったなぁ」

妖狐「斬った事か?」

男「そうそう。ま、何かあったらとっととこの国から出りゃ良いか」

妖狐「わしは…嬉しかったぞ?」

妖狐「わしはお主の大事な女なんじゃろ?」ニシシッ

男「うぐ…ま、まぁな」

妖狐「おぉ、認めおったわ」


男「お前は俺にとって一番大事な女いや、メス?だよ」





妖狐「な、なななんじゃお主は!何か企んでおるのか!?」カァァァ

男「何も企んでねぇよ…」

男「そういや、この剣…斬った時微かに炎が出た気がするんだよな…」

妖狐「ほー、なかなかよいではないか」

男「だな、高い金出して買ったかいがあったってやつか…」

妖狐「ふぅ…そろそろ宿に帰らんか?」

男「そうだな…軽くのつもりが結構疲れたな」

男「じゃ、帰るか」

妖狐「うむっ!」ギュッ


………
……

>>274-276
レスありがとうございます、助かりました。依頼のくだり長くなってすみません
今日はここで終わりますありがとうございました!

ー部屋ー

男「んん…あー…」ノビー

妖狐「ぐぅ……くぅ…」

男「こいつ相変わらずよく寝るなー…」

妖狐「ぐぅ………」スピー

男「はー、昨日はあれからいつまで毛づくろいしてたんだろ」

男「途中で眠くなって俺は寝たが…」

男「そんなに櫛が良かったんだろうか」

男「まぁ、毛はもふもふしてて気持ちいいんだけさ」モフモフ

男「………」

男「これは癖になるな…」モフモフ

妖狐「んん……んぁー…」モゾ

妖狐「……ん?お主、もう起きておったのかぁ…ふあぁ…」

男「まぁな」

妖狐「昨日は張り切りすぎて疲れたの…」

男「だな…」

妖狐「朝から行くのか?」

男「そうだな、何があるかわからないし明るいうちに行きたい」

妖狐「そうか…しかしわしはもう少しダラけたい」



男「………」

男「はぁ…わかったよ」

男「その代わり、尻尾貸せ」

妖狐「うむ…。ほれっ」フリッ

男「はふぅ…気持ちいいな…」

男「この毛で箒作れば掃除しやすそうだな」

妖狐「失礼な事言うでない」ポカッ


……

ー北の門前,小屋ー


  コンコンッ


兵士「はい。」ガチャ

男「おはようございます」

妖狐「おはよー」

兵士「おはようございます。やはり行かれるのですね」

男「ですね、行きます」

兵士「ははは、では立ち話も何ですしお入りください」

男「失礼します」

妖狐「うむ」


   バタン


兵士「そこにどうぞ」

男「ありがとうございます」

兵士「それで…場所、でしたよね」

男「はい。一応セツヒョウの山からセツヒョウの風穴に行くと依頼の羊皮紙には書いていたのですが…」

兵士「そうです。詳しくは敢えて載せてないんですよ」

兵士「勝手に行かれては色々と困りますしね」

兵士「で、場所なんですが…地図をお持ちですか?」

男「えっと…これしか…」スッ

兵士「ふむ、この地図は南東の物ですか。」

兵士「なら、これを差し上げます」スッ…

男「これは…?」

兵士「この国周辺の地図です、今貴方が持っている地図はあまりここの周辺が詳しく書かれていないので…」

男「助かります」

兵士「では改めて場所の事なんですが…」

兵士「まず今いる場所はこの北の門」スッ…

兵士「ここから北北西に進むとセツヒョウの山があります」

男「北北西…っと…」カキカキ

兵士「セツヒョウの山の麓までは半日もあれば行けると思います」

兵士「そこに宿泊用の小屋がいくつかあるので1日目はそこで夜が明けるまで過ごすといいでしょう。夜の山は危険です」

男「小屋、ですか。そこには色々と設備はあるんでしょうか?」

兵士「水と寝床、それと着火用の‘‘炎鉐’’があります」

男「‘‘炎鉐’’?なんですかそれは?」

兵士「ちょっとお待ちくださいね…」ゴソゴソ

兵士「っと、あったあった」

兵士「見ててくださいね」
  
 ジャリッ!
   ボッ…

男「おぉ…一瞬火が出た…」

兵士「こうやって2つの炎鉐を勢い良くぶつける事で火が出ます」

兵士「ここの国はこの様な特殊な石が丁度セツヒョウの山の鉱山から取れるんですよ」

男「他にもそんな感じの石ってあるんですか?」

兵士「そうですね…後私が知っているのは、これとこれですかね」

男「この2つも石、ですね」

兵士「はい。こちらの石はこうやって…!」ブンッ

 ガツンッ 
    カッッ!

男「うおっ!眩しい…」

妖狐「な、なんじゃこれは…」

兵士「この石は強い衝撃が加わると強烈な光を発します」

兵士「これを、私達は‘‘輝鉐’’と呼んでいます」

兵士「そしてもう1つ、こちらは…」ブンッ

  ガツンッ
    キィーーーーーン!!

男「ぅぁ…」

妖狐「ぬおおおおおぉぉ!!耳がぁぁぁ!」

兵士「ははは、耳が良い人には特に効きますよね」

兵士「この石は衝撃を加える事で大きな音を発します」

兵士「これを、私達は‘‘波鉐’’と呼んでいます」

兵士「ちなみに炎鉐は赤色、輝鉐は黄色、波鉐は茶色っぽい色をしています」

男「炎鉐、輝鉐、波鉐、か…」

男「それって買えたりするんですか?」

兵士「もちろん買えますよ。ただし、大きさや純度によって値段は変わります」

男「大きさや純度が違うと何が変わるんですか…?」

兵士「そうですね…例えばこの炎鉐、純度はあまり良くなく大きさも小さい品なんですが、これだと火は小さいし使用できる回数も変わってくるんです」

男「良い物だとより効果が大きく、使用できる回数も多くなる、と」

兵士「その通りです、ただし高いですけどね」ハハハ

兵士「その様子だと‘‘総鉐’’はお持ちでない…?」

男「そう、せき?」

兵士「あ、先程説明した特殊な石をひっくるめて‘‘総鉐’’と呼んでいるんです」

男「なる、ほど…えーと、持ってないですね」

兵士「でしたら、ちょっとお待ちくださいね」

兵士「ここら辺に…っと、ありました」

兵士「どうぞ、これをお持ちください」ゴト…ゴト…ゴト…

男「これは、さっき言っていた総鉐?」

兵士「はい。先程のよりも少し良い物です」

兵士「何も持ってないよりは良いと思いますし、戦闘をするのであれば役に立つと思います」

男「良いんですか…?こんなにいただいて…」

兵士「えぇ。行くなら万全な状態で準備をして行って欲しいですからね」

男「ありがとうございます…」ペコ

兵士「いえいえ。おっと、話が脱線してしまいましたね。それで小屋で夜が明けてからなのですが」

兵士「この山の中腹部辺りから洞窟…羊皮紙に書いていたセツヒョウの風穴に入れます」

兵士「そこまでの道は整備されているのですが洞窟の入り口に行くには途中から整備されている道から外れなければいけません」

兵士「そして、目印は……この槍です」カチャ…

男「槍…?」

兵士「はい。分かれ道の目印として、この槍をこんな風に‘‘↑’’上向きに5本突き立てています」

兵士「その目印の場所から整備されていない道に外れてください」

兵士「そこからは一定の間隔で同じ槍が突き立ててありますのでそれに沿って歩いてください」

男「その目印が無くなっていたりは…?」

兵士「昨日のうちに雪崩でも起こっていない限り大丈夫だと思います」

兵士「一応、定期的に私を含めた他の兵士達が確認に行っているので。」

兵士「ちなみに丁度昨日に確認しに行ったばかりなんですよ」

男「それなら安心ですね」

兵士「はい。万が一無かった場合は引き返して貰うことになりますけど…」ハハハ

男「…それで、洞窟の中の事は…」

兵士「すみません、わかりません…」

男「ですよね…」

兵士「氷飛竜と出会えば、まず私達では太刀打ちできませんから、調べられないんですよね…」

男「まぁ、仕方無いか…」

兵士「…ふぅ、私から言えることはこれぐらいですかね…」

兵士「危険を感じたらすぐに帰ってきてくださいね。逃げる事は恥じゃありませんから。」

男「わかりました、色々とありがとうございました」ペコ

兵士「いえいえ。何かのお役に立てたなら嬉しいです」

男「それでは、行ってきます」

妖狐「行ってくるの!」

兵士「ふふ、気をつけて。行ってらっしゃい」
 

 キィー
   バタン…





兵士「健闘を祈りますよ…」

……

ー北の門ー


男「持つものは持った。総鉐とかいう便利なのも手に入れた」

男「武器は持ったし装備は…まぁ、多分大丈夫なはず…」

男「一応確認!」

妖狐「大丈夫じゃ!」

男「よし!行くか」

妖狐「うむ!」


『    男
  
  頭 【無】
  体 【四元楼の服】
  腕 【無】
  脚 【旅装の服(脚)】
  武器【焔壊の剣】
  盾 【無】
 装飾品【シキ】

  技 《警戒》
    《炎粉》
    《筋力増強/脚/腕》     
             』

『    妖狐
  
  頭 【無】
  体 【紅璃の袴】
  腕 【無】
  脚 【紅璃の袴(脚)】
  武器【素手】
  盾 【無】
 装飾品【狐艷の指輪】
    【ただのローブ】

  術 《火炎》
    《浄化》
    《筋力増強/全》
    《暗視》    
             』


持ち物 【炎鉐】×4
    【輝鉐】×3
    【波鉐】×3
    クソ野郎のローブ
     食 糧
      水
    金貨8枚銀貨11枚


……………
………



ザクッザクッザクッ


男「まずは小屋まで行こう」

妖狐「そうじゃな」

男「氷飛竜…一体どんなヤツなんだろうな」

妖狐「竜じゃよ」

男「…それは知ってる」

妖狐「………」

男「………」


  ザクッ
    ザクッ
      ザクッ……


男「暇だ…」

妖狐「辺り一面、雪 雪 雪じゃしな…

男「浅いくせに雪に足が取られて歩きづらいし体力が無駄に減っていくな…」

妖狐「…疲れた…」

男「お前早すぎだろ…」

妖狐「はぁ………」




妖狐「《火炎》……」ポシュッ

男「お、おいおい何してるんだ…ついに頭がおかしくなったか?」

妖狐「違うわ!雪を溶かしたんじゃよ」

  シュワァァ……

男「あぁ、なるほどな。これなら歩きやすくなるな」

妖狐「じゃろう?…《火炎》3連発じゃ」ポポポシュッ

男「じゃあ俺も…《炎粉》」ボボボッ

妖狐「お主のは小さい炎が弾ける感じじゃし範囲が広くてよいの」

男「その分、威力はあんまり無いけどな」

妖狐「そうか…」

男「うん…」


 ポポポシュッ

 ボボボッ


男「………」スタスタ

妖狐「………」スタスタ


  ボボボッ

  ポポポシュッ


男「………」スタスタ

妖狐「………」スタスタ


  ボボボッ……






妖狐「うがー!!」

男「うおっ、びっくりした…」

妖狐「もう我慢ならん!なんじゃこれは!!」

妖狐「端から見たらわしら絶対変人じゃぞ!!」

男「お前が先にやり始めたじゃん…」

妖狐「そんなもん知るか!」

妖狐「あぁ暇じゃ!小屋はまだか!!」ユサユサ

男「お、落ちち着けよよよ」ガクガク

妖狐「そうじゃ!しりとりでもしようかの!」

男「喋るの疲れるし一人でやってくれよ」

妖狐「一人でできるわけなかろうが!」

妖狐「お主は薄情な奴じゃなぁ、こんなにも可愛い乙女が頼んでおるというのに…」

男「か弱きおばあちゃんが何だって?」

妖狐「ふんっ!」ドスッ

男「や、やめろよ…これ以上体力を奪わないでくれ…」

妖狐「じゃーまずはしりとりの『り』からじゃ!ほれっ」

男「りんご」

妖狐「ごりら」

男「らっきょ」

妖狐「きょ…?きょか…きょー…」




男「………」

妖狐「………」

男「…早く言えよ」

妖狐「ふんっ」ポカッ

男「なんだよ…」

妖狐「もう少し手加減せい」

男「おま、嘘だろ…」

妖狐「じゃ、らっきょからじゃ。ほれ」

男「それ俺が言ったやつじゃん、ずりー」

妖狐「ほれほれ早ぅ言わんか」

男「教会」

妖狐「い、い、いー……犬!」

男「ぬの(布)」

妖狐「のぉ…?の、の、の…」

妖狐「ノミ!」

男「お前についてそうだよな、ノミ」

妖狐「うるっさいわ!」

男「んー、じゃあみみ(耳)」

妖狐「なっ!同じ言で返すとは卑怯なやつじゃな…」

妖狐「みか、み…み…」

妖狐「みぃ…?み…………」







男「………」

妖狐「………」

男「………おい」

妖狐「なんじゃ?」

男「ほんとにお前がアホだったとは思わなかった」

妖狐「あ、阿呆ではない!」

男「しりとりすらまともにできないってやばいだろ…」

妖狐「とっさに出てこないだけじゃ!」



男「りんご」

妖狐「ごりら」

男「らっきょ」

妖狐「教会」

男「インコ」

妖狐「インコぉぉ!?」

妖狐「そこは犬と言わんか!」

男「それだとさっきと同じじゃねぇか!」

妖狐「もうよい!しりとりは終わりじゃ!決して勝てないからじゃないからの!!」

男「俺は負ける気がしない」

妖狐「黙っとれ!」ドスッ


……


男「なぁなぁ、ちょっと考えてたんだけど…」

妖狐「ほぉ…何をじゃ?」

男「技っぽいの」

妖狐「?お主は頭がおかしく…?」

男「大丈夫だ、俺は正気だ安心しろ」

男「旅してて結構体力や力がついたし、ただがむしゃらに剣を振るんじゃなくて何か技みたいなの決めといた方が良いかなって…」

妖狐「ふむ…」

男「あとカッコいいし」

妖狐「ほいほい…」

男「まぁ、見とけよ…」チャキ


 ヒュ
  ヒュ
 ヒュンッッ!!
 シュバッ


妖狐「お、おぉ…」

男「どうだ?なんかカッコよくない?」

男「斬る順は、上段横薙ぎ→左切り下げ→下段横薙ぎ→中央突きの連続斬りだ。形で言うと‘‘Z’’こんな感じだ」

妖狐「確かに、悔しいがこれを当てれたら少しカッコ良いかもしれん…」

男「ちなみにさっきのは《獅連斬》って名付けた」

妖狐「なんじゃそのダサい名は。さっきのが台無しじゃな…」

男「うるせぇ!語感が良けりゃ何でもいいんだよ!」

妖狐「あぁそうかい…」

男「あともう1つ」

妖狐「まだあるのか…」


  フォンッ
  ブォンッ!!


妖狐「さっきのと威力が違う気がするの…」

男「おぉ、わかってくれたか」

男「これはほぼ全体重を乗せて強く踏み込み、切り下げ→切り上げだ」

男「切り上げの時に軸足で体を反対側に捻りつつ斬る。攻撃する対象に背を向ける感じだな。凄い足が痛いけど…」

男「ちなみにこれを《丈華》と名付けた」

妖狐「またダサい名じゃの…」

妖狐「別に四連斬りや上下斬りとかでよいのではないか?」

男「そんなのカッコよくないだろ!」

男「敵相手に、よんれんぎりーっとか、じょうげぎりーっとか叫ぶの恥ずかしいじゃん!」

男「どうせならカッコいい技名を叫びたい」

男「敵だってカッコいい技で倒されるなら本望だろ?」

妖狐「なんてわがままなんじゃ…」

男「でもお前だって、《火炎》!とか言ってるじゃん」ププッ

妖狐「あ、あれは術が出しやすいように敢えて言ってるだけじゃ!お主と一緒にするでない!」

男「お前そんなこと言って、氷飛竜がカッコいい技名を言いながら攻撃してきたらどうする?」

妖狐「ふん!その時は一度だけ何でもお主の言う事を聞いてやるわ!!」

男「よーし言ったな、覚えてろよ!」


……

ー麓小屋ー

 ギィー
  バタン

男「あー、着いた…疲れたぁ…」

妖狐「ふぅ…ふぅ…じゃなぁ…」

男「半日もあればって…もう夜じゃん!」

妖狐「結構、朝早くから出向いたのになんじゃこれは…」

男「あー、魔力と体力を無駄遣いした気がしてならない…」

妖狐「もう今日はとっとと寝るぞ…」ゴロン

男「ふぃー、だなー…」ゴロン


……………………


男「妖狐、起きてるか?」

妖狐「…うむ」

男「………明日、いよいよだな…」

妖狐「わしは死にとうないぞ…」

男「安心しろ、お前だけは何としても守ってやるから」

妖狐「そういう事はまずお主が死なぬようになってから言わんか」

男「……そうだな」

妖狐「まぁ…じゃが、その気持ちはありがたく受け取っておく」

男「はは、ありがとな」

妖狐「う、うむっ…そろそろ寝るぞ」モゾモゾ

男「あぁ、おやすみ…妖狐」

妖狐「……ふふ…おやすみ、男よ」


………
……

今日はここで終わりますありがとうございました!

ー麓,小屋ー


男「んん…ふぅぁ…」ノビー

妖狐「おはよう」モグモグ

男「!?」

男「俺より先に起きてるなんて……。明日は嵐か?」

妖狐「何故わしが早ぅ起きたくらいでそうなるんじゃっ」ポカ

男「だってお前いつも何回起こしても起きないじゃん」

妖狐「昨日は早く寝たしのぉ」

男「ま、いいか」

男「さて、朝飯でも食うか…って…」


男「何先に食ってんだよ…」

妖狐「んえ?食ったらまずかったかの?それはすまぬ」

男「別に勝手に食い物を食った事を咎めてるんじゃないんだ」

男「ただ、飯は一緒に食った方が旨いからな」

妖狐「ほぉ、お主からそんな言葉が聞けるとはのぉ」

男「お前と食う飯は旨いよ」

妖狐「そ、そうか…なんか照れるのっ」

男「照れた顔も可愛いな」

妖狐「なっ何を朝っぱらから言っておるんじゃっ」カァァァ


男「んくっ…んくっ…ふぅ」ゴクゴク

男「さてと、適度にお前をからかったしそろそろ行くか」

妖狐「ぐぬぬ…からかいじゃとぉ!屈辱じゃ!」

男「ここの小屋にある水、貰っていこう」

妖狐「はぁ…」


妖狐「ん?のぉ、お主…そこにあるアレはなんじゃ?」

男「んー?あぁ、少しホコリ被ってるけどこれは‘‘弓’’だな」ゴソ

妖狐「あぁ、ホコリを被っておったのか」

妖狐「せっかくじゃし、それも貰っておこうかの」

男「大丈夫なのかな…」

妖狐「大丈夫じゃろう、なんせわしらは氷飛竜を倒しに行くんじゃし」

男「うーん…まぁ、遠距離攻撃できる武器も持っておいた方が良いか…」

妖狐「この矢と布も持っていこうぞ」ゴソゴソ

男「お前ほんと遠慮を知らないよな」

妖狐「戦いに遠慮などしてる暇なぞ無い」

男「…それもそうだな」



男「じゃ、持っていくか!」

妖狐「うむ!」

………

ーセツヒョウの山,麓ー


男「麓まで来るとなかなか寒いな」

妖狐「じゃの…」

男「…気に食わんがあの野郎に貰ったローブ、羽織っとけ」バサッ

妖狐「うむぅ」

男「買った奴がクソ野郎ってだけでローブ自体は良い物だと思うぞ」

妖狐「そうじゃな…あまり寒さを感じんようになったわい」

男「実は俺も装備を買ってから上だけは気温が変化してもあんまり感じなくなったんだよな」

妖狐「どういうことじゃ?」

男「あんまり寒くないというか、寒さは感じるが凍死するほどでは無い」

妖狐「装備をちゃんと買って良かったのぉ」

男「まったくだな…」

男「さて、出発するぞ」

……


ザクッザクッザクッ

男「はぁ…はぁ…」

妖狐「ふぅ…ふぅ…」

男「ちょ、ちょっときゅーけぃ…」ハァハァ

妖狐「うむー…」フゥフゥ

男「普段山なんて登らないせいかキツいな」





妖狐「あー、もう無理じゃ歩けん」

男「まぁそう言うなって…中腹部まであと半分くらいだ」

男「ほら、おぶってやるからこい」

妖狐「そ、それは…お主に迷惑じゃろ…」

男「気にするな、お前には体力温存してもらわないといけないしな」

妖狐「うむぅ…わかった…。すまぬの」ギュッ

男「おう」




ザクッザクッザクッ


男「んー…おっ!もしかして槍ってあれか!?」

妖狐「おぉ、あったの!」スタッ

男「ここから道を外れて行けばいいんだよな…」

妖狐「じゃな。ちゃんと槍も道に沿って立っておるぞ」

男「んじゃ、これ辿りながら行くか」

妖狐「うむ!」

………




ザクッザクッザクッザクッ…



男「はぁ…はぁ…おっ?」

妖狐「ふぅ…ふぅ…どうしたんじゃ?」

男「ここじゃないか…?」

妖狐「穴が空いておるの」

男「周りには槍はもう立ってないしここみたいだな」

妖狐「それじゃあ、入るかの」

男「そうだな、覚悟はいいか?」

妖狐「とっくに決めておる」

男「ははっ…そうか。んじゃ入るぞ!」

妖狐「うむ!」

…………………………

ーセツヒョウの風穴,1Fー

コツ コツ コツ…

男「んー、普通の洞窟って感じだな」

妖狐「じゃな…。これといって目立つものは無いの」

男「とりあえず進んでみるか」

妖狐「うむ」

コツ コツ コツ コツ…
 
 コツ コツ コツ コツ…

男「ん?分かれ道か…」

妖狐「どうする?」

男「1つずつ回るの面倒だし二手に別れよう」

男「で、何かあった場合や発見した時はこの分岐点に戻ってくる事」

妖狐「承知した」

妖狐「男よ、気をつけるんじゃぞ?」

男「お前もな」


コツ     コツ
 コツ   コツ
  コツ コツ

…………

妖狐「ふー、しかし冷えるのぉ…」

妖狐「氷飛竜はどこにおるんじゃろうか…」

妖狐「あー、早ぅ終わらせて甘菓子が食べたいのぅ」

妖狐「そういえば、氷を砕いた物に蜜をかけて食す食い物があると聞いたな…」

妖狐「イムサ国へ帰った時、男にねだってみるかの」

妖狐「しっかし何も無い所じゃなー」

妖狐「いや、何かあってもまた面倒な事になりそうで困るんじゃが…」

妖狐「男のやつ、大丈夫じゃろか…?」

妖狐「簡単には死なぬやつとは思うが、やはり心配じゃな…」

妖狐「…ん?あれは、階段のような物か…?」

妖狐「あそこから上に行けそうな感じじゃの」



ドドドドドドドドド!!!

妖狐「な、なんじゃ!?この地響きは!」





「おわぁぁぁぁ!!!助けてえぇぇぇ!」

妖狐「聞いた事ある声が響いてくるの…」

妖狐「だんだん近づいてくる…」

妖狐「…嫌な予感しかせん」


「妖狐ぉぉぉぉ!!どこだぁぁぁ!!」

「居るなら助けてくれぇぇぇ!!……くれぇ…………クレェ…………」


妖狐「い、嫌じゃ…絶対余計なものまで持ってきそうじゃ…!」


男「はぁ…はぁ…!居た!!」

妖狐「な、何か用か…?」

男「すまん!あれをどうにかしてくれ!」

 ズラーーー

妖狐「おいおいおい!この魔物達をどうしろというんじゃ!」

男「なんかほら!どがーんっと一発で倒してくれよ!」

妖狐「そんなもん無理じゃ!ていうかこっちに連れてくるな!」

男「いやー、どうやら巣に入っちゃったみたいでさー。怒ってるみたい」

妖狐「そんな軽く言われても困るわ!」

男「やっぱり倒すしかないのかー…」

妖狐「はぁ…仕方が無いのぉ」

妖狐「《包狐》!」スッ

  ホワワワワー

妖狐「ほれ、今のうちにゆくぞ」グイッ

妖狐「そこから上に登れる」

コツ
 コツ
  コツ コツ コツ

ーセツヒョウの風穴,2Fー


男「おー、ほんとだ。上に続く道だったんだな」

妖狐「ちっとはわしを信じんか」

男「悪い悪い。で、さっきは魔物相手に何したんだ?」

妖狐「あれは幻惑の術じゃよ」

男「幻惑?」

妖狐「うむ。範囲内に居る者に幻惑を視せる術じゃ」

男「すげぇな、それがあれば氷飛竜も楽に倒せるかもな」

妖狐「いやー、多分無理じゃろう」

妖狐「この術はお主らで言う‘‘魔物’’にしか効かん。氷飛竜は間違い無く‘‘マモノ’’の類じゃろうし」

妖狐「何より、こういう術に耐性がある者もおるしの」

男「やっぱ簡単にはいかないかー、残念」

妖狐「ま、さっきも言った通り、魔物にはだいたい効くんじゃし無駄な戦闘は避けれるぞ」

男「そうだな、体力は温存しとかないとな…」

妖狐「うむ」

コツ コツ コツ コツ…

男「おっ?なんだありゃ」

妖狐「真ん中に道みたいなのが見えるの」

妖狐「それと大きな氷じゃな」

男「バカでかい氷が一定の間隔で4つ置かれてるな」

妖狐「周りにはそれ以外何もなさそうじゃな」

妖狐「どうにかしてあの氷を溶かすしか無いの…」

男「だなー………ん?」チラッ

男「あれ、氷の真上にロウソクがあるぞ」

妖狐「ほんとじゃの…火は灯ってないようじゃが」

男「氷以外は何も無いよな…」

妖狐「うーむ…」チラッ

妖狐「うん?これは…」

男「どうした?」

妖狐「なんかこの大きな氷の側面に小さな氷の杭が2本刺さっておる」

男「杭…?どれどれ…」

男「刺さってるな。他のにも…?」

妖狐「こっちのにもあるの」

男「こっちの2つもあった」


蝋燭 蝋燭   蝋燭  蝋燭
      道
      氷
 氷  氷   氷   氷
杭3本 杭1本 杭4本  杭2本


男「こんな感じだな…」

妖狐「ふーむ…」

妖狐「なんで真上に蝋燭があるんじゃ?」

男「大きな氷…」

男「蝋燭…」

男「刺さった杭…」

男「うーん…」

妖狐「じれったいのぉ!」

妖狐「《火炎》!!」ボシュッ

  ボゴォッ!

男「お、おまっ、何してるんだよ」

妖狐「うーむ、この氷…溶けんぞ」

男「え…?」

男「ほ、ほんとだ…全く溶けてない」

男「お前の炎で溶けないって凄いなこの氷…」

妖狐「溶かして通る事は無理じゃのぉ」

男「ん?さっきの炎が散って蝋燭に火がついてる…」

男「お前の炎で溶けないって凄いなこの氷…」

妖狐「溶かして通る事は無理じゃのぉ」

男「ん?さっきの炎が散って蝋燭に火がついてる…」

男「蝋燭…火…」

男「なぁ、あの蝋燭に全部火を灯せるか?」

妖狐「任せい!」

男「溶けないように弱めにな」

妖狐「うむ…!ほりゃっ」ポポポヒュッ


パフッ パフッ   火  パフッ


男「全部、ついたな」

妖狐「何か意味があるのか?」

男「全部の蝋燭に火をつけたら氷が溶けるかなって…」

男「いやこれで溶けるのもなんかおかしい気がするけど」

プシュゥ プシュゥ プシュゥ プシュゥ…


妖狐「お、お主よ…火が消えたぞ」

男「えぇ…全部つけるのじゃダメなのか」

男「というか何で消えるんだ??」

男「わけがわからん…」

妖狐「…あの刺さっておる杭は本当に関係ないのかの?」

男「杭の数…」

男「あっ…」

妖狐「どうしたんじゃ?」


蝋燭 蝋燭   蝋燭 蝋燭
      道
      氷
氷3  氷1   氷4  氷2


男「あの杭の数の通りの順で火をつけてみてくれないか?」

妖狐「うん?あの杭の数の順じゃな?」

男「あぁ。頼む」

妖狐「任せい!」ポヒュッ

   パフッ

妖狐「それっ」ポヒュッ

    火      パフッ

妖狐「もういっちょっ」ポヒュッ

 パフッ  火     火  

妖狐「これで最後じゃっ」ポヒュッ

 火  火   パフッ 火


……………………………………………………


 火  火   火   火
      道
      氷
氷3  氷1   氷4  氷2


男「………」

妖狐「………」




ボボボボボボボボッッッ!!!


男「いっ!?」

妖狐「ななななんじゃあ!?」

男「蝋燭の火が一斉に道の前の氷に当たってるな…」

妖狐「お、お主!見よ!氷が溶けておる!」

男「おおぉ!ほんとだ!」

妖狐「というか何なんじゃこの仕掛けは!」

男「俺にも全くわけがわからん」



男「これ、まさか氷飛竜が仕掛けたんじゃないよな…?」

妖狐「いやいやそんなまさか…」


男「………」

妖狐「………」



男「考えない事にするか…」

妖狐「じゃな…」

男「先に進もう」

    コツ
    コツ
    コツ
    コツ
 
男「おっ!上に続く道を発見!」

妖狐「まだ続くのか…」

男「一体どこまで続くんだろうな」

妖狐「はぁ…。とりあえず進むかの…」

コツ
 コツ 
  コツ コツ
    コツ
    コツ

ーセツヒョウの風穴,3Fー


男「な、なんか…急に冷えてきたな」

妖狐「じゃな…下よりも寒いぞ」

コツ コツ コツ コツ…

男「ありゃ…また二手に別れる道か…」

妖狐「…今度は一緒にゆこう」

男「…そうだな、今度は一緒に行くか」

男「えっとー…じゃあ右に行くか?」

妖狐「うむ、どちらでもよいがついていくぞ」

男「じゃ、行くか」

       コツ
     コツ
   コツ

男「さ、寒い…手がかじかむ…」ブルブル

妖狐「お主よ、手を出せ」

男「な、なんだ…?」

妖狐「よいから、ほれほれ」

男「わかったよ…」スッ

妖狐「うむ…。こうして手を握った方が温かろう」ギュッ

男「…冷たい」

妖狐「何も無いよりはマシという意味じゃド阿呆!」

男「なるほど…」

コツ
  コツ
    コツ

男「あれ…?また分かれ道?」

妖狐「どういう事じゃ…?」

男「とりあえず、また右に進んでみるか」

妖狐「う、うむ…」

   コツ
    コツ
     コツ

男「お、おい…これ、下に続く道じゃないか…?」

妖狐「というより、わしらがさっき登ってきた道じゃな」

男「ど、どうなってるんだ…」

妖狐「分岐点まで戻るぞ」

  タッタッタッタッ

男「はぁ…はぁ…ここだよな」

妖狐「ふぅ…ふぅ…。うむ…」

男「次は左に行くぞ!」

妖狐「承知した」

コツ
  コツ
    コツ

男「一体どうなってるんだ…」

妖狐「急ぎ足でゆくぞ」

男「だな」

 コッコッコッコッ…

男「ん?また分かれ道…」

妖狐「………」

男「今度も左に行くか?」 

妖狐「待て、お主よ…」

男「どうした?」

妖狐「もう行く必要は無い」

男「何かわかったのか?」

妖狐「うむ…。わしらはここを、ただぐるぐる回っておるだけじゃ…」

男「え…?この分岐点は繋がってるって事か?」

妖狐「そうじゃ。最初右に行き、2つ目の分岐点を右に行くと下に降りる道じゃった」

妖狐「2度目、左に行き、2つ目の分岐点を左に行くとまた下に降りる道じゃろうな」

男「つまり…行き止まり?」

妖狐「じゃな…」

男「はぁ…まじかよ、ここまで来たってのに」

妖狐「ほんとじゃ!まったく…このっ!」ゲシッ

  ヒューンッ
 ====石 壁


    フッ…
   ====壁


男「え?」

妖狐「どうしたんじゃ?」

男「いや…お前の蹴った石、丁度分岐点の方に飛んでいったんだけど…」

男「壁にぶつからずに消えた…」

妖狐「…へ?」

男「……そいっ」ポイッ

  ピューン
 ====石 壁


    フッ…
   ====壁


男「やっぱり消えるな…」

妖狐「あの壁、何かあるみたいじゃな」

男「うーん、どこも変わった感じ無いな…」ジー

妖狐「普通の壁っぽいのぉ…」スカッ

妖狐「ん!?」

男「どうした?」

妖狐「か、壁が透けおった…」

男「まじか…」

男「まじだ」スカッスカッ

男「は、入ってみるか…?」

妖狐「う、うむ…気をつけるんじゃぞ」

男「あ、あぁ…」

  コツ 
  
  コツ
  
  コツ

男「なんか霧がかかってるな…」

妖狐「よく見えんのぉ…」


『ほぅ…よくここ迄、辿り着いたな』


男「あん?妖狐、何か言ったか?」

妖狐「わしは何も言っておらん」


『あれを解き、ここ迄来る人間が居るとはな』


男「あれ…?霧が晴れてきた」

妖狐「わっ…あわわわわわ…」

男「なんだよ、何か居たのか?」

妖狐「う、上…!上を見てみぃ!!」

男「んー?一体何が」チラッ




男「」

『先程から私を無視するとは良い度胸じゃないか』ノソ…


男「あ、あの、いえ…そのぉ…」

男「や、やばい!とりあえず攻撃だ!」

妖狐「う、うむぅ!《火炎》!!」ボシュッ


 ボゴォッッッ!!!
  モクモクモクモク…
  




男「や、やったか…!?」

妖狐「相当強めに撃ったんじゃし結構傷を与えてるはずじゃ…!」

男「はっはー!見たか!どんな奴かは知らんが俺達に会ったの運のつきだったな!」

妖狐「ふふん!じゃなっ!」








『ふぅん。その程度の炎、私には効かんなぁ?』


男「」

妖狐「」


男「嘘、だろ…お前の炎、傷一つついて無いぞ…」

妖狐「ぐぬぅ…」


『まぁ、ここ迄辿り着いた者だ』


『褒美に、こちらの名くらい名乗っておいてやろう』


『私は氷飛竜。この山を根城にしている者だ』

今日はここで終わりますありがとうございました

男「ひょ、ひょひょ氷飛竜!?」

妖狐「あー、こヤツが氷飛竜か…」


氷飛竜『ほぅ、誰かと思えば…貴様は妖狐か』

氷飛竜『あの時より弱々しい身なりだが…』


男「あれ、お前の知り合い?」

妖狐「うーむ…」

妖狐「氷飛竜と聞いて、もしやとは思ったがのぉ…」

氷飛竜『忘れたとは言わせんぞ。貴様につけられた不意打ちの傷は未だに痛むからな』

妖狐「あれは貴様が余所見をしていたからじゃ」

氷飛竜『ふっ…。しかし、あの仕打ちを受けてまだ人間と居るとは笑わせてくれる』

氷飛竜『どうやってあの場所から出れたのかは知らんが…』

氷飛竜『どうしてそこまで人間に関わろうとする』

氷飛竜『本当に馬鹿なヤツだ。』

妖狐「わしはまだ諦めても無いし、人間には期待してるからの」



氷飛竜『期待…?クッ…ハハハハッ!とんだお気楽だな』


氷飛竜『人間は過ちを繰り返す。現在だってそうだ。何故手を取り合い共存しようとしない?』

氷飛竜『まぁ、私はその様な思想はとうに捨てたがな…』

氷飛竜『私利私欲の為ならどんな行為をも平気で行う。私達は身をもって経験した筈だが?』


妖狐「確かに、そうかもしれん…」

氷飛竜『ふん、では―――』

妖狐「そうかもしれん…じゃが!人間には良い奴も居る!あの時の人間も信じておる…!」

妖狐「そして、わしの横に居るこの男もじゃ!」

氷飛竜『そうか…。』




氷飛竜『…馬鹿は死ぬまで治らないと効くが、どうやら本当らしいな』

妖狐「貴様に言われたくはないのぉ?」




男「ちょ、ちょっと待ってくれ!話が全く見えない…」

��「氷飛竜と妖狐が知り合いってどういうことだ…?」

妖狐「知り合い…と言って正しいのかはわからん」

氷飛竜『ふん、知り合い…か。』

妖狐「わしらは、わしらは昔…」






妖狐「敵として殺し合った仲じゃよ」

氷飛竜『あの時は邪魔が入り流れたが、丁度良い機会だ』

氷飛竜『ここであの時の決着をつけようではないか』

妖狐「のぉ…できれば戦闘は避けたいんじゃが…」

氷飛竜『なんだ?怖気づいたか?」




妖狐「いやー、今戦ってもわしが勝ってしまって貴様の自尊心をまた傷つけてしまうかもしれんしのぉ」ププッ









氷飛竜『…なんだと?』パキキ

    
   ヒュォォォォ…


男「お、おい馬鹿!何煽ってんだよ!」

男「なんか周りもさっきより温度下がってるぞ…」

妖狐「なーにが『ふぅん。その程度の炎、私には効かんなぁ?』じゃ!」

妖狐「どんな奴かもわからんから死なぬ様に加減して撃ったに決まっとるじゃろうが!調子に乗るな!阿呆ぅ!」

氷飛竜『貴様ァ…その憎ったらしい減らず口は相変わらずの様だな』

妖狐「貴様も相変わらず不細工で安心したぞ」

男「お前、なんだか言葉遣いが荒くなってないか…?」

妖狐「男は下がっておれ」

男「へ…?おっ、おう…」ススッ

妖狐「コヤツは…わしが捻り潰す…!」

氷飛竜『ふん!そのちんけな体でやれるものなら、な…!』バサッ

  
  バササッッッッ

男「うおっ!飛んだぞ!」

妖狐「男よ!来るぞ!」

氷飛竜『そこの人間諸共吹き飛ばしてくれる!!《氷撃翔》!!』ヒュヒュンッッッ

男「えっ?」



 ブォォ 
   ォォォォッッッッ



 ドゴォ!!!



妖狐「くっ…!」ズザザザ

氷飛竜『ほぉ…避けたか』





男「」ズガガガガドシャァッ!! 壁

妖狐「男ぉぉぉ!!男が爆風で壁に吹っ飛びおった!」

妖狐「しっかりせい!男よ!」ユサユサ

男「う…ん…。ぐぅ…」

妖狐「何寝ぼけておるじゃ!」ペチペチ



妖狐「男!おとこ…!」



妖狐「おと――――」




男「(あぁ…この感覚…またか…)」





男「(もう見たくは無いんだがなぁ…)」





男「(うっ…ぁ…)」



―――――
―――

―――

「ほぉー、美味そうな果実じゃのぉ」

「よっと」ポシュッ


「ふふん、わしにかかれば容易いの!」

「はむっ…むぐむぐ…。うむ!ひゃっぱり美味いの!」モグモグ




「はー、しっかしつまらんのー」

「何か面白いことでも起こらないか……ん?」

「なんじゃ?声が聞こえたの…」



   タッタッタッ…




「ほー、人間か。それと、あれは…魔物じゃな」チラッ

―――

時折夢を見る


この夢には外見からして、いつも同じ一匹の魔物らしき者が出てくる


どこかの誰かと違って胸があり
ふくよかな肢体、身長は俺より少し低いくらいだろうか?頭には獣耳、腰の辺りには綺麗な毛並みの尾が生えている




だがこの夢はそう何度も見たくは無い



何故かって?



それは―――――


―――

―――

「ほー…人間か。それと…あれは魔物じゃな。」

「ふむ…争っておるのかの?」

「おーおー、人間側は劣勢じゃな」



「おっと…一人の人間に見られてしまったが」

「ま、わしもそろそろ離れておこうかの。面倒事に巻き込まれるのはゴメンじゃ」



―――




「しかし、何故人間は争いたがるのかのぉ…?」

「魔物だって気性が荒い者も居るが、争いの大半の理由は、『人間が攻撃してきたから反抗している』だけじゃし…」

「人間は独占欲が強く面倒くさいのー。これじゃあどっちが魔物なんだか…」

「この湖みたく人間の心も澄んでおればのー…」チラッ

  
   ゴツン!



「むっ!?すまん、考え事をしていて気付かなかった」


「怪我は無いか?…そうか、それなら良い」


「ん?あの時…?あぁ、わしを見たのか」


「おいおい…そう物騒な物を向けるな。なぁに、敵では無い。見物していただけじゃよ」


「お主は人間か?なるほど…傷を癒やしにこの湖に来たと言う訳か」


「ここの水は澄んでいて綺麗じゃからなー」


「…はぁ、全く。そんな痛そうな顔をされるとこっちも良い気がしないんじゃが…」


「ほれ、こっち来てみぃ。いいからいいから、ほれ早くっ」

―――


「よし!これで大丈夫じゃな。3日もすれば綺麗に傷は塞がるじゃろう」


「お礼?そんな物はいらん。見返りが欲しくてしたわけじゃないしの」


「だからいらぬと…」


「………」


「わかったわかった、そんな悲しそうな顔するな。受け取るから…」


「国を案内?いやいや…お主は阿呆なのか?わしは魔物じゃぞ?」


「隠せば大丈夫って…」




「はぁ、どうなっても知らんぞ?」

―――

「おほー!ここは凄いの!」

「アレはなんじゃ!?甘い匂いがするの!」クンクン

「甘菓子?なるほど…どんな物を渡せば譲ってくれるのかのぉ…?」

「お金…?なんじゃこのチマっとした物は…。」

「これを渡せば貰えるのかや?」







「むぐむぐ…うみゃい!これは美味すぎるのぉ!」モグモグ

「人間の食い物にもこんなに美味いのもがあるとは」ゲフッ

「…っとそろそろ帰るか…。人間が多く居る所は疲れる…」

「今日はありがとう、礼を言うぞ」

「ふふっ…そうじゃな、また会った時はよろしく頼むぞ」

―――


「なんじゃ、また会ったのぉ」


「何?わしに会いに来たと?」

「わしがここに居るともわからんのにか」




「くすっ、不思議なやつじゃの」

「今日もどこかへ案内してくれるのか?」

「わしと話がしたい?別に構わんが、つまらんと思うぞ?」



「なっ…!わしと居るだけで楽しいじゃと!?わしは魔物じゃぞ!?」



「はぁ…。お主は物好きじゃのぉ…」


「む?尻尾?あぁこれか」フリフリ

「だ、ダメじゃ!これは、その…まだお主はダメじゃっ」

「もう…全く。ふふっ…」





「さて、と…悪戯なお主には、わしのとっておきの話をしてやろうかの!」ニシシ


「悪戯ではわしも負けとらんからの!」


「あれは――――――――」


―――

―――

「ふぅ…。今日もアヤツは来るんじゃろうか…?」

「………ふふっ…。」

「アヤツと話すようになって早、数日か…」



「はー。しかしわしと居て何が楽しいんじゃろうか?」

「そりゃわしは美しいし体も自信はあるが…。」

「そもそもアヤツとわしは人間と魔物。住む世界が違うしのー…」

「…ん?」



「ま、まさかっ!わしの事を!?」

「いやいや!そんなまさか!」

「…でも…その、まさか…なのかの…?」カァァ



「ううん!ありえんありえん!」ブンブン


「………。」

「…遅いの…。何かあったんじゃろうか…?」

「いや…今日はたまたま用事があるだけかもしれんの」

「でも毎日来おったし…。うーむ…」


 ガサッ
   ガサッ



「…っ!何じゃ…!?」


「ってお主か。驚かすでないっ」

「む?どうしたんじゃそんな顔して…」

「何かあったのか…?」

―――

長期間空けてしまい申し訳ございませんでした…
保守本当にありがとうございます
これからまた少しずつ書いていこうと思います
今日はここで終わります、ありがとうございました

――――


「――おとこ――」


「―――男よ!」バシバシ


妖狐「これ!しっかりせい!」バシバシ

男「ん…ぁ…」

妖狐「おぉ!起きた起きた!」バシバシ





男「………痛い」

妖狐「おっとすまんすまん」

妖狐「良かった、無事な様じゃな」

男「あ、あぁ…。」

妖狐「なんじゃ、歯切れの悪い」

男「うーん、たまに見る夢を見ていたんだが…」

男「やっぱり起きると微妙に抜け落ちて忘れちゃうんだよなぁ」

妖狐「夢…?どんな夢じゃ?」

男「えっと…、一匹の魔物の夢なんだけど…」

妖狐「魔物の…か」

男「あぁ。お前と違って体はなかなか良かったぞ」

妖狐「余計なお世話じゃ」ポカッ

男「ま、そのうち思い出すか…」





男「っとそれより、なんだよさっきのアレ…氷が地面に当たった瞬間爆発したぞ」

男「いつっ…風圧をとっさに庇った腕が切れてる…」

妖狐「コヤツは名の通り、氷を扱った攻撃をしてくるんじゃ」

男「あぁ…そうみたいだな」









男「でも、そんな事より1ついいか…?」

妖狐「なんじゃ、この忙しい時に…」






男「あの時の約束、忘れたとは言わせねぇからな…!」

妖狐「なんじゃ?約束?」

男「ほぉ?とぼけるつもりか?」

男「散々俺の技名を馬鹿にしてたが…」

男「この氷飛竜とやらもダサい技名で技使ってきたぞ!!」

氷飛竜『だ、ダサい…』

妖狐「しまった…!忘れておった…」

男「あんなに恐い登場してたのに若干技名がダサい!これは俺でもわかるッ!!」

妖狐「お主のも似たような物じゃろ…」

男「俺とコイツとではセンスが違うんだよ!」

妖狐「うーむ…。しかしまさかコヤツとは思わんかったからのぉ」

氷飛竜『ちょ、ちょっと待て貴様ら…』

男「うるせぇ!!てめぇは黙ってろ!!」

男「俺はなぁ!あの時馬鹿にされたのをまだ根に持ってんだよッ!!」

妖狐「す、すまん…ほんとにすまん…」

妖狐「コヤツがダサいのは認める。完全にわしの負けじゃ…」

氷飛竜『…………』

妖狐「あの時は売り言葉に買い言葉だったんじゃがまさかこうなるとはのぉ」

男「いやーはっはっ!どんな事でも言う事を聞くんだったよなぁ?」

妖狐「ぐぬぅ…」

男「何にしようかなーっ!考えるだけでもわくわくが止まんないな!」










氷飛竜『では、そのわくわくとやらが止まらぬうちに…息の根も一緒に止めてやろう』

男「」

妖狐「くふっ、生きて帰れたら何でも言うことを聞いてやってもよいぞ?」

男「こ、こここんな竜ごとき俺の剣でちょちょいのちょろろーんよ!」

妖狐「ほほぉ!ではわしはお主に任せて、後ろで見物でもしてるとするかのー」

男「お、おい…待ってくれよ、一緒に戦うんじゃなかったのかよ…?」

妖狐「お主にかかれば、ちょちょいのちょろろーん…なんじゃろ?」

男「ま、まぁな!」

妖狐「言い忘れておったが、コヤツが本気を出せば攻撃一つで兵士軍の大半が吹き飛ぶぞ」


男「」

妖狐「まぁそんな相手をちょちょいのなんたら…らしいし?わしが心配する必要も無いかの?」ププッ

男「すいません、ちょろろーんは言い過ぎました」

妖狐「ほーん?言う事はそれだけかの?」

男「お願いしますどうかお力をお貸し下さい妖狐様…」

妖狐「ふふんっ!まっそこまで言われたら仕方ないのぉ?」

氷飛竜『…話はついたか?』





ヒュォ 
  ォ  ォ 
      ォ
        ォ  ォ



男「何でアイツはさっきの間に攻撃してこなかったんだ?」ヒソヒソ

妖狐「あヤツは昔から阿呆じゃからの」ヒソヒソ


氷飛竜『そうかそうか。竜が親切に時間を貴様らにくれてやったというのに、その言い草か』

妖狐「わしは時間をくれとは言っとらんしのー」

氷飛竜『貴様の態度はつくつぐ癇に障るなッ…』


―――


氷飛竜『それより、貴様らは此処へ何をしに来たのだ』

妖狐「わしらはお主がここで暴れておると聞きそれを沈めに来たんじゃよ」

氷飛竜『暴れている…だと?』

男「ん?なんだ、違うのか…?」

氷飛竜『ふん。寝言は逆立ちしてから言え』

妖狐「それを言うなら‘‘寝て言え’’じゃなかろうかの…」

男「凄いぞ、妖狐がツッコんでいる…」

氷飛竜『黙れ。そしてそもそも私は暴れてなどいない』

男「そうなの?」





氷飛竜『「そうなの?」ではない。そうなんですか、だろうが…!氷漬けにされたいか』

男「すみませんでした。暴れてないって本当なんですか…?」

氷飛竜『あぁ。人間は確かに憎いが、それで暴れるなど愚の骨頂』

妖狐「でも国は、お主が暴れて被害が出てるとまで言っておったぞ」

氷飛竜『ふむ…。暴れた記憶など無いのだがな…』










氷飛竜『ただ、最近体に余分な脂肪がついてきてな。少し運動をしていた事ならある』

男「乙女か!」

妖狐「絶対それじゃろ…」

氷飛竜『私は乙女だが…?』ギロッ

男「ひぇ…。すみませんでした…」

妖狐「なんじゃお主、メスなのか」

氷飛竜『今頃気づくとは、やはり貴様の頭は花畑だな』ククッ


 シーーーーン…




妖狐「ほぉ…、またあの時の様に燃やされたいか」

氷飛竜『ふん、あの時の決着をつけるか?』

男「まっ、待て待て!せっかくほんわかしてたのにわざわざ戦わなくてもいいだろ!」

妖狐「ま、戦ってもわしが勝つだけじゃしな。それこそ無駄な争いよ」

男「だからこのお方を煽るなって!殺されるの俺なんだから!」




氷飛竜『………』

妖狐「なんじゃ?急に黙りおって…」

氷飛竜『貴様は、良いのか?』

妖狐「何がじゃ?」

氷飛竜『そこの人間と何をする気だ?』

妖狐「何をって…うーむ…」




妖狐「‘‘旅’’、かのぉ…?」

氷飛竜『クハハッ…旅か…。』

氷飛竜『何をしても貴様の夢とやらは叶わんと思うがな』

妖狐「それはやってみん事にはわからんじゃろう?」

妖狐「わしが生きておる限り、な!」

氷飛竜『ふん、そうか…。』

妖狐「そうじゃ。」









氷飛竜『ふぅ。興醒めだ』

妖狐「なんじゃ?やらんのか」

氷飛竜『あぁ、やらない』

男「(ほっ…。良かった…)」

妖狐「のぉ、さっき言っておった運動とやらは何とかならんのかの?」

氷飛竜『私に言われても知らん。貧弱な人間が悪い』

男「子供か!」

氷飛竜『ほぅ?』ギロッ

男「いえ、そのぉ…。人間は子供みたく小さいですねからねーって…」

妖狐「ぷくくっ…」

男「笑ってんじゃねぇよ!」

氷飛竜『私は笑ってなどいないが?』

男「もうヤメテ…」





氷飛竜『ハァ…。では国の者に伝えておけ。この山の近くを通る時は伝えに来い、とな』

男「(その伝えに行く人間は死を覚悟するだろうな…)」

氷飛竜『あと、この山をそこら中掘るなとも言っておけ』

氷飛竜『それと、次私に牙を向けた時は国が無くなると思え…ともな』



男「まったく注文の多い氷飛竜だな」

氷飛竜『喰うぞ』

男「ほんっっとごめんなさい!!」

妖狐「まぁ、人間の方から手を出して来たんじゃろ?」

氷飛竜『そうだな。私を討伐しに来たことがあったが、そんなもの蹴散らしてやったわ!』ドヤッ

男「そんなドヤ顔されま―――いや可愛い顔ですね…!」

妖狐「魔物と見れば直ぐに敵意を見せる…。悲しいのぉ…」

男「妖狐…」

氷飛竜『それでも貴様は諦めないのだろう?』

妖狐「じゃな」

氷飛竜『本当に、馬鹿な魔物だな。貴様は。』

妖狐「馬鹿でも何でも勝手に言っておれ。それでもわしは見つける」

氷飛竜『ふん…。』


ススッ

 :
 ポト :
   ポト


氷飛竜『餞別だ。持って行け』

妖狐「なんじゃ?コレは」

男「鱗…?」

氷飛竜『それを身に着けていると寒さをある程度感じなくなる』

男「おおっ…すげぇ!本当だ!」

妖狐「うえー、お主のじゃろ?気持ち悪い…」

男「馬鹿野郎!このお方の鱗だぞ!有り難く貰えよ!!」

妖狐「お主はさっきからヘコヘコしすぎじゃ…」

妖狐「まっ、寒さを凌げるなら便利じゃし貰っておこうかの」





氷飛竜『そういえば、そこの人間…』

男「あ、はい!何でしょう?」

氷飛竜『魔力の流れが…。これは妖狐のものか』

男「あー…そうなんですよ。混ざっちゃいまして…。」

氷飛竜『それに、腕には更に魔物か』

男「そうなんですよねぇ、この魔物が居ないと…この腕、腐っちゃうらしくて…」

氷飛竜『クッ…ハハハッ!何とも奇妙な人間だ』

氷飛竜『半分人間、半分魔物だな』

氷飛竜『しかし、魔力が混ざるなど、何をしたのやらなぁ?』

氷飛竜『度を超えた事をしなければ滅多に、というより、絶対なるはず無いのだがな』










氷飛竜『人間よ、貴様…魔力をそこのちんけな妖狐に渡したな?』

男「えぇ!?何でわかったんですか!?」

氷飛竜『ククッ…私を誰だと思っている。人間よ、その行為は一歩間違えれば貴様は死んでいたぞ?』

男「まじか…いや、まじですか…」

妖狐「……」

氷飛竜『その様子だと、ちゃんと説明はしなかったようだな…?妖狐よ』

妖狐「あの時は説明する暇が無かったんじゃよ」

氷飛竜『まぁ良い。本来魔力とは‘‘生命の命’’、素とも言われる物だ』

氷飛竜『そこの妖狐は何年も自分の魔力を生きる為の生に変換していたのだろう』

氷飛竜『あんな場所に居たのだから当然と言えば当然か…。それしか方法が無いのだからな』

氷飛竜『多大な魔力は殆ど底を尽き、体も変わってしまったようだな』

男「なぁ妖狐。そもそも魔力って何なんだ?あんまり詳しく知らないんだが」

妖狐「…あヤツの言う通り、魔力とは生命の命じゃよ」

男「でも俺、魔力みたいなのを取った覚えは無いぞ?」

妖狐「それはお主が気づいてないだけじゃよ」

妖狐「前にも言ったが、魔力はどんな生物にも宿っておる」

妖狐「例えば、食べ物の肉や魚、果物にだって元は魔力を持っておった生物じゃ」

妖狐「それをわしらは食している、という事はつまり、同時に魔力も取っているんじゃよ」

妖狐「そして‘‘睡眠’’。この行為で取った魔力を自分の魔力へと変換しているのじゃ」

妖狐「魔力も個々によって性質は違うんじゃが…まぁその説明は今はよかろう」

妖狐「そして、食事をした後、眠くなるじゃろう?」

男「まぁ、確かによく眠くなるな」

妖狐「それは体の本能のせいじゃよ」

妖狐「というわけで、わしらは食事と睡眠をしている限り、死なん」

氷飛竜『しかしそれが無い場合…。もしくは、睡眠しか取れない場合』

氷飛竜『生きる為には魔力を消費する。それ故に、常に消費し続けてしまう』

氷飛竜『そこの妖狐は元が多かったから今まで生きてこれたのだろう』

妖狐「ちょっと人間を喰ってしまったがのー」

男「あぁ、あの事件はそのせいか」

氷飛竜『貴様…、あんなに夢を叶えると言っていたのにその人間を喰うなど、本末転倒ではないか。笑わせてくれる』ククッ

妖狐「い、生きる為にはこれしか無かったんじゃよぉ…」

妖狐「それに…あの頃は自暴自棄になっておったからのぉ」

氷飛竜『何ともまぁ、矛盾したヤツだ』

氷飛竜『だから貴様には無理と言ったのだ』

妖狐「ふんっ」

男「なぁ、その夢ってなんなんだ?」

妖狐「わしの夢か?」

男「そうそう」

妖狐「わしの夢はなー」












妖狐「人間と魔物の共存じゃよ」

男「共存…」

妖狐「どうにかならんかのー」

男「うーん…。俺やお前みたいな人間と魔物ばかりなら何とかなるかもしれないがなー…」

妖狐「なんじゃ、笑わんのか…?」

男「当たり前だろ。お前の夢を茶化すわけない」

氷飛竜『ふん。この世の中、そう都合良く行くわけあるまい』

男「ですよねぇ」

妖狐「お主は…」

妖狐「男からすれば…やっぱりこんな事は無謀かのぉ…?」

男「いやー、無理かどうかはわからないけどさ」

男「お前がそうしたいなら俺は一緒に着いて行くよ」

妖狐「男…」

男「夢、なんだろ?夢は見るものじゃなくて叶えるものだからな」ニヤ




氷飛竜『ハァ…熱い熱い。熱くてこの雪山に雪崩が起きそうだな』

氷飛竜『もう貴様らとっとと帰れ。私の目の前でその様な事を繰り広げるな』

男「………」

妖狐「………」



男「…帰るか、宿に」

妖狐「…じゃな」



【氷飛竜の鱗を手に入れた!】

――

氷飛竜「私も…、昔は妖狐の…アイツの様な気持ちもあった筈なんだがな…」

氷飛竜「いつからだろう…。期待するだけ無駄と思うようになったのは…」



氷飛竜「ふぅ…。」

氷飛竜「無理、か…。フフッ…」



氷飛竜「羨ましかったのかもしれないな、アイツが…。」


氷飛竜「………。」



氷飛竜「私も、もう一度…」





氷飛竜「もう一度だけ―――」

―――

―――

セツヒョウの山


  ビュウゥ ゥ ゥ ゥ



男「うおぉ!鱗のお陰で全く寒くないな!」

妖狐「そうじゃな、あヤツのじゃから少し複雑じゃが…」

男「氷飛竜も話してみれば案外良い奴だったな」

妖狐「うむ…。まぁ、あヤツもまた、人間に因縁があるがのー」

男「そっか…。」

妖狐「うむ」

男「…と、とりあえず下山するか」

妖狐「じゃな…とっとと寝たいわい」

男「しっかし、結局貰った石や拝借した武器は使わず仕舞い」

男「これを駆使して格好良く戦いたかったんだがな」

妖狐「お主はまたそんな阿呆な事を言いおって…」

妖狐「でも、本当に戦わなくてわしは正直ほっとしておる」

妖狐「あヤツも…変わったのかもしれんのぉ…」

男「あんなに煽ってたのにか?」

妖狐「あれは強がりじゃよ」

妖狐「昔のわしなら…勝てるかもしれんが、今のわしだと無理じゃな」

男「断言するのか…」

妖狐「うむ。もし戦っておった場合…」












妖狐「どちらかは死んでいたかもしれんな…」

―――――
――

友人にイメージを伝えて妖狐を書いて頂いたのですが読んでくださっている方の想像と違ったら申し訳ないと思い上げるか迷っております…

今日はここで終わります、ありがとうございました!

てす

_______________
|セツヒョウの風穴     輝月の湖  |
|              塔     |
|    イムサ国      神炎村  |
|                    |
|        森           |
|                     |
|  洞窟          キンペン街 |
|______________|

―――

 ―宿【自室】―


男「さて、と」

妖狐「んーむ!よく寝た!」

男「昨日は大変だったな」

妖狐「じゃなー…あの兵士の質問攻めは疲れたのぉ……」

男「めちゃくちゃ興奮してたな」

妖狐「何やら紙に書き記しておったし、なんじゃろな?」

男「うーむ、わからん」

妖狐「今日はこの国の王の所へ行くんじゃろ?」

男「そうだな…。もっとも、この話をしても信じてくれるかどうか…」

妖狐「まっ、その時はその時じゃな」

男「ほんとお前はお気楽だよな」

妖狐「ダサいお主程ではないがな」

男「うるせっ!」

―――

 ―城内【謁見の間】―


王「おぉ…!待っておったぞ!良く来てくれた。旅人よ」

男「いえいえ。お会いできて光栄です」

王「兵士から氷飛竜を討伐したと知らせを受けたのだが」

男「あぁ…やはり間違って伝わっていましたか……」

王「何…?間違い?では、氷飛竜は討伐してないのか?」

男「討伐はしていませんけど、この国の問題は解決しました」

王「それはどういう事だ…?」

男「討伐していませんが、氷飛竜の脅威は無くなったと考えてもらって大丈夫です」

王「討伐もしていないのに何故そう言い切れる?」

男「それは…氷飛竜と話をしたから、ですかね」

 ザワ 
  ザワ…

王「会話…とな?」

男「はい。そもそも、兵士達が被害を受けたのは何も襲うつもりは無かったと言っておりました」

王「襲うつもりは無かった、だと?」

男「はい」 

王「……」










王「ふざけるなッ!!」

男「…っ」

王「兵士達は何人も負傷した。中には死の淵を彷徨った者も居る」

王「それが何だ…?襲うつもりは無かった、だと?」

王「ふざけるのも大概にッ―――」





妖狐「ふざけておるのはどちらじゃ?」

王「む…?」

妖狐「ふざけておるのはどちらか、と聞いておるんじゃよ」

王「なんだと…?」

妖狐「はァ…。人はいつも自分のことばかりじゃな」

妖狐「王とやらよ。お主は氷飛竜の気持ちを考えた事あるか?」

王「氷飛竜の気持ち、だと?」

王「魔物相手にそんな物考える必要など無い…!」

妖狐「じゃからふざけておるんじゃよ、お前さんがな」

妖狐「そもそも、氷飛竜が兵士と当たってしまったのは人間があの山をそこら中掘り起こしたからじゃろうが」

妖狐「あヤツは無意味に人間を攻撃するヤツでは無い。ましてや山を降りたのはそれなりの理由があるからじゃ」

王「う、むぅ……」

妖狐「何故お前さん達、人間は外見が違うだけでこうも区別するんじゃ?」

妖狐「わしらは同じ生を受けた者同士じゃろう」

王「…害悪な物を区別して何が悪い」

王「奴らは平気で人を殺す。私達の大切な者も何もかもな」

妖狐「それは人間だって同じじゃろう。人間だって魔物と同じ事をする」

妖狐「魔物達にだってお前さんと同じ様に大切な者は居る。それを人間が殺してる場合もある」

妖狐「確かに魔物にも悪はある。そういう奴らは人間と同じく然るべき裁きを受ける」

王「うーむ……」

男「…氷飛竜は、こちらから危害を加えない限り、あちらも手は出さないと言っていました」

男「それともう一つ。あの山をあまり掘るのは止めろとも言っていました」

王「しかし、あの鉱山は私達の主な収入源。それを止めろというのは……」

妖狐「わしらは忠告したぞ?次ヤツを怒らせるとわしらでももう止める事はできん」

男「今までの様に氷飛竜に怯えて暮らすよりは良いと思いますよ」

男「貴方は部下の命を大切にするお方だ。どうかご判断を誤らないようにお願いします」

王「……。本当に氷飛竜がそう言ったんだな?」

男「はい」

妖狐「うむ」

王「…………」









王「わかった…。その条件を、呑もう……」

王「だが、やはり鉱山の方は少しばかり掘らしてもらうぞ?」

王「働いている者達にも生活がある。全くしないわけにもいかん」

男「少しなら大丈夫だと思います」

王「そこの者、さっきは声を荒げてすまなかったな」

妖狐「うん?あぁ、わかってもらえたならそれでよい」

王「しかし、氷飛竜とまさか意思疎通が出来るとは、な…。今だに信じられん」

男「マモノも話せばちゃんとわかってくれる奴も居るって事です」

王「ふーむ。なるほど、な」




王「(少し、考えを改めなければならないな…)」

―――

ガタゴトッ
  ガタゴトッ…


 ―馬車内―


男「んあー…」

男「あーやべぇ、この揺れが心地良くてつい寝てしまった」

妖狐「寝るのは構わん、わしだって寝るしな」

男「おう」

妖狐「じゃが、わしの尾を当たり前の様に枕代わりにするのはどうなんじゃ?」

男「『どうなんじゃ?』って聞かれても、触り心地の良い綺麗な毛並みですねとしか」

妖狐「褒めても誤魔化されんぞ?」

男「ちっ、最近チョロく無くなったな」

妖狐「もう慣れたわ」

男「ちっ、最近チョロく無くなったな」

妖狐「もう慣れたわ」

男「いやーっしかしあの王様もなかなか良い人だな」

妖狐「じゃな。あヤツはちゃんと命を大切にしておる」

男「話せばわかる人で良かったよ、オマケに馬車まで出してくれるし」

男「っと、ちょっと聞いてくるから尻尾は隠しとけ」

妖狐「…お主が枕にしなければ出さなかったんじゃが……」ゴソッ



ガサガサッ 
   ピラッ

男「あのー、あとどれくらいかかりますかね?」

兵士「日が落ちる頃には着くと思いますよー」

男「わかりました。何かあったら知らせてください」

兵士「了解です」
 

パサッ


男「日が落ちる頃には着くらしいぞ」

妖狐「そうか」

男「なぁ、どこに向かってるんだ?」

妖狐「知らん」

男「はぁ!?」

妖狐「大声を出すでない」

男「いや、おまっ!」

妖狐「知らん、というのは今の地を知らんだけじゃ」

男「場所自体は記憶にある、と?」

妖狐「うむ…と言いたい所じゃが、もう何十年も前の記憶じゃし正確かはわからん」

男「一体またなんで急に……」

妖狐「昨日地図を見た時、見覚えがあるものがあっての」

妖狐「ほれ。ここに‘‘輝月の湖’’ってあるじゃろう?」

男「きげつのみずうみ?」ペラッ

妖狐「うむ。もしかしたら、わしの知ってるものかもしれん」

男「ほー、まぁお前が行きたいんなら着いて行くけどさ」

妖狐「すまんの」

男「気にすんな。それに、次の目的地は決まってなかったし丁度良かったよ」

妖狐「そう言ってもらえると助かる」

男「しかしここに何かあるのか?」

妖狐「ここはのぉ…わしの思い出の場所じゃ」

男「思い出…?」

妖狐「うむ。この湖で色々とあっての」

男「そんな所に俺が行ってもいいのか?」

妖狐「お主だから誘ったんじゃよ」

男「そっか」

妖狐「…うむ」




男「……ありがとな」

遅くなりすみません、今日はここで終わりますありがとうございました
ちなみに>>451で言っていた絵はこんな感じです
通常時
http://imgur.com/Bzxmtqy.jpg
フード時
http://imgur.com/uHX5EgD.jpg

―――

―神炎村【前】―


男「どうもありがとうございました」

妖狐「良くやった!」

兵士「いえいえ、無事着いて私もホッとしました」

兵士「今日はもう遅いのでここの宿に泊まると良いですよ。私も泊まるので一緒に行きますか?」

男「あ、では是非お願いします」ペコッ

兵士「わかりました、こちらです」



―辺りを見回してみると、ポツポツと小さな小屋らしき物が等間隔で建てられている


男「あの、ここってどんな所なんですか?」

兵士「ここは大昔、戦争に巻き込まれた土地なんですよ」

兵士「今は元に戻りつつありますが、当時は草木が全く生えてない焼け野原も同然な場所でした」

男「なるほど……。でもやけに静かというか……」

兵士「そうですね……結構前に来た時にはもっと人が大勢居た気がするのですが……」

妖狐「大勢どころか人っ子一人おらんではないか」

兵士「ですね…。何かあったのでしょうか」

兵士「おっと、着きましたよ。ここが宿屋です」


コンコンッ……

  シーン


兵士「あ、あれ?」

男「反応が無いですね」

妖狐「…燃やすか?」

男「燃やしちゃ泊まれなくなるだろ!」

兵士「あはは……、すみませーん!」


ゴトゴトッ


妖狐「む?やはり中に人かどうかはわからんが、生き物は居るぞ」ピクッ

男「どうする?ぶち壊すか?」

妖狐「それじゃとわしらが泊まれんじゃろうが!」


キィィ…


「人間か?」

男「あぁ、正真正銘の人間だ」

男「(一匹マモノが居るけど)」

兵士「ここに私達を泊めて頂けませんでしょうか?」

「……入れ」



パタンッ

 ―宿屋―


男「うっわ、暗い……」


―宿の中の明かりは蝋燭が一本…
 その蝋燭を囲む様に数人が座っている
―窓には黒い布が貼られており、外に光が漏れない様になっている


宿主「さてと、ある程度確認したな?とっとと火を消すぞ」

男「あれ、消すんですか?」

宿主「こうしておかないと、ヤツが来るんだよ」

兵士「何かあったのですか…?」

宿主「…アンタは旅人か?」

兵士「私はこのお二方の付き添いでここまで来ました。明日にはここを出ると思います」

宿主「そうか。そっちのアンタらは?」

男「俺達はここに少し滞在しようと思っています」

妖狐「うむ」

宿主「そうか…。悪い事は言わん、そこの甲冑を着た兄ちゃんみたいに明日にはここを出る事だ」

男「それはまたどうして?」

宿主「…人斬りだよ。最近ここには人斬りが出るようになった」

男「人、斬り……。なんかこの立て籠もった雰囲気に既視感が……」

妖狐「う、うむ……」

兵士「退治できないほど強力なお相手なのですか…?」

宿主「あぁ。ヤツはただ人を殺すんじゃないんだ」

男「それはどういう…?」

宿主「あの人斬りはな、斬った相手の中身を殺すんだ」

男「な、中身?」

宿主「ヤツに斬られた人らは皆、傷跡が全く見当たらない。なのに意識が戻らないんだ」

兵士「それはまた、珍妙ですね」

宿主「やっぱあの昔の大事件に似てるんだよなぁ。なぁ村長?」



「そう、じゃな……」


妖狐「何じゃお主は」

村長「私はこの村の村長をやっておる。しがない爺さんじゃよ」

男「あの大事件とは?」

村長「すまぬ……。私も詳しくは覚えていないのだ」

男「うーむ……」

宿主「そういや、村長の家に書物室があったよな。そこに事件の内容を記した物があるかもしれない」

村長「う、うむ……かもしれんの……」

男「じゃあ行っても…?」

村長「構わんが、危険じゃぞ?」

妖狐「危険はもう慣れたの」

男「だな」

村長「……そうか」


村長「……これは書物室の鍵じゃ。家はここから真っ直ぐ行った場所。入り口から入って左側に書物室がある」スッ

男「ありがとうございます、行ってきます」



村長「……あまり余計な物には触るなよ?」

男「…?わかりました」


パタン




―深くゆっくりと呼吸を一度した
―辺りの静けさに不気味さを感じつつ妖狐の手を握る


男「あぁ、夜に良い思い出が無いのが悲しい……」

男「はぁ、行くか」

妖狐「じゃな」


 スタスタスタ…
  スタスタスタ…


男「ここ、か?」

妖狐「辺りにそれらしい家は無いし、ここみたいじゃな」


キィィ…


男「一応扉の鍵閉めておけ」

妖狐「わかった」

カチャッ



男「左側だったよな……」

男「暗い…、何か灯りを持ってくるべきだった。アホだな俺」

妖狐「ふふん、わしに任せい!」スッ

―得意げに妖狐が指先を差し出す


 ポッ


男「す、凄ぇ……」

妖狐「まっ、火力を調節すれば蝋燭の真似事も出来る」

男「これで灯りは心配しなくていいな」

妖狐「うむ。そしてここが……」

男「‘‘書物室’’……開けるぞ」


カチャカチャッ


 キィィ…



男「中は案外狭いな」

妖狐「そうじゃな」

男「どこにあるのかな……」




妖狐「うーむ…ん?」

男「どうした?」

妖狐「もしや、これじゃなかろうか?」つ

男「あっさり見つかったな」

妖狐「そこの机の一番上に置いておったわ」

男「(一番上に…?)」

男「ちょっと読んでみるか」ペラッ

 【////国―事件簿―】

―とある刀鍛冶が、愛した者と離れたく無く、その者の魂を刀に込めた

その刀鍛冶は後にエルフと判明する

刀鍛冶エルフの証言によると


 刀の名は‘‘魂刀【霧霞】’’


しかし魂を繋ぎ止めた故、その愛した者の魂は次第に闇へと腐って行く

数日後、事件が起きる

一人の男がその刀を手に、視界に入った人々を斬り始めた。まるで何かに取り憑かれたように。

その男はたまたま、刀鍛冶をしているエルフの店に飾ってあった刀を手に取って、見ていただけという事が後からわかった

斬られた人は皆、意識を失い死んだ様に倒れ込む。無論外傷は見当たらない

暴れ回るその男を全兵の総力を上げて辛うじて抑える

しかし刀の処分方法が見当もつかない

その刀鍛冶に責任を追求、刀の処分を命じ、国から追放する

二度とこの惨劇が起きないように……。






男「…………」ダラダラ

妖狐「お、おぉ……」




男「……ぶ、物騒すぎるな……」

妖狐「魂を抜かれるのかの…?」

男「わからん。つーか、刀の名称が‘‘魂刀’’とか明らかにヤバイじゃねーか」

妖狐「魂を抜かれた人はどうなったんじゃろうか?」

男「えーと、下にまだあるな」


―上記で記述した様に、刀で斬られた者は皆、意識を失い倒れ込む

調べた結果、やはり外傷は見当たらなかった

数日経っても意識が戻らなかった為、斬られた者を埋葬する者も居た

そして私はある1つの結論に至った



刀で斬られた者は‘‘魂’’を抜かれたのでは無いか、と。

馬鹿にする者、信じようとしない者、数多の意見が出てきたが、やはりこれ以外私は納得ができない

それにあの奇妙な刀……私は見たのだ


あの刀が―――――のを!


間違いなく、あの刀は普通の刀では無い

私は何としてもあの刀の対処方を見つけようと思う。



男「んん…?重要な所が汚れで見えないな」

妖狐「うーむ、‘‘なった’’?が辛うじて読み取れるぐらいかのぉ」

男「まぁ、これは持っていこう」ゴソゴソ

妖狐「男よ、ここの引き出しだけ鍵がかかっておる」

男「何か大事な物が入ってるのかもな」


 バキッ


妖狐「ふむ、何か古ぼけた本が入っておったわ」つ本

男「その全く遠慮しない所、嫌いじゃないぜ」ペラッ


―刀を持ち、国を出る


私は何処へ行けば良いのだろう



どれくらい歩いたのだろうか、日が5回ほど登った


店に刀を置いていたのは、妻にいつもと変わらぬ日常を感じて欲しかったからだ……。






村が見える、今日はあそこへ泊まろう







私は間違っていたのだろうか。



愛する者といつまでも一緒に居たかった、ただそれだけなのに。





私は間違っていたのだろうか。



幾年の月日が流れ、ようやく掴んだ幸せなのに。





私は間違っていたのだろうか。











間違っているとしたら、どこだ?



どこで私は間違ったのだ?



愛する者を作ってしまった事か?



愛する者が病にかかっても、何もしてやれなかった事か?




それとも―――

    








    ―――刀か?



私は、間違って、いたのだろうか。


私は手放したくない。


私の想いを、そして愛する者の魂を込めて打ち込んだこの刀を。


しかし処分を命じられた。


だが愛する者を処分するなど……私には……






男「こ、これ、日記か…?」

妖狐「じゃな。それも例の刀を作った張本人のな」

男「しかし何故、書物室の引き出しに…?」

妖狐「ふーむ……」

男「これも持って帰って村長に聞いてみよう」ゴソゴソ

妖狐「じゃな。そろそろ帰っ―――」






 バンッッッ

 コツ

 コツ

 コツ


男「ッ!?」

妖狐「な、なん―――むぐっ」

男「(ばっ、静かにしろ…!)」ボソッ

妖狐「…………」コクコク

男「(一応火も消しとけ)」ボソッ

妖狐「……b」ポフッ

男「(さっきの大きな音は何だ…?)」

男「(扉を蹴破った様な大きな音……)」

男「(人、斬り…?え、うそ……)」

男「(こんなタイミングで?何で?)」

妖狐「(どうするんじゃ…?)」ボソボソ

男「(待て、今必死に考えてる)」ボソボソ

―――

男が目を通さなかった次のページにこの様な記述がある


 【刀の特徴】

私は例の刀を調べ、出来るだけここにその特徴、性質等を書き記そうと思う


1、この刀は人に反応する

2、この刀は火や熱い物が近くにあると反応する


1,2のいずれかの条件を満たした時、この刀は震える様に刃が動く。まるでそれに引き寄せられるかの様に。

しかし1の条件だけの場合、距離が近くではない限り、刃が震える事は無い


3、この刀は物体を壊さず貫通する

4、この刀に火を当てた状態の場合、物体を貫通しない

5、4の条件を満たしたとしても刀は奇妙な動きを見せ破壊は出来なかった


―まだ他にも判明していない物もあるかもしれないが、一先ずここまでまとめておこうと思う。

―――

今日はここで終わりますありがとうございました!
超どうでもいい事なんですが、最初の方で展開を飛ばし回想だけで終えた所をどこかに入れた方が良いかなとか思ってます

 コツ


 コツ


 コツ



男「(どうする!?幸い闇に紛れて奇襲することもできるが……)」

妖狐「(燃やすか?)」

男「馬鹿!こんな所でお前が炎出したら家ごと燃えるだろうが!!」

妖狐「(お、お主っ!そんな大きな声を出しては―――)」








 バンッッッ!!





男「(やっべえええぇ!!書物室に入ってきたぞ!)」

妖狐「(と、とにかく隠れるぞ!)」

妖狐「(運がいい事に、わしらは……)」



   入り口
 扉   |―――|
   本棚 机  |
   本棚現在地|←ココ
   本棚    |
          |
―――――――


妖狐「(ココにおる!)」フフン

男「(そんなドヤ顔いらねーから!)」

男「(逆に考えれば、俺らにもう逃げ道は無いって事だぞ?)」

妖狐「(…………)」

男「(…………)」







妖狐「(やばい)」

男「(だから言ったろうが!)」

妖狐「(ど、どどどどうする男よ!?)」

男「(ま、待て…。もしかしたら人斬りじゃない、かも)」

妖狐「(というと…?)」

男「(ほ、ほら、俺達と一緒にここに来た兵士さん。もしかしたら帰りが遅い俺達の事心配して見に来てくれたのかも……)」

妖狐「(な、なるほど…可能性は無くはないのっ)」






「ヒを……カンジル……」カタカタ

「ヒトの……タマシイ……」コツ コツ

「ソコにイるの……?…アナタ……」







男「(違ったああぁぁ!!!兵士さんじゃない!!)」

妖狐「(もう来るぞ!!)」

男「(クソ!構えろッ!)」









「……あれ…ここは……」




妖狐「(…む?)」ピクッ

男「妖狐!とりあえず炎をぶっ放せ!」

妖狐「なっ!?よいのか!?」

男「知らん!だが死ぬよりマシだ!」

妖狐「全く、どうなっても……知らんから、のっ!」ボシュゥッ



―妖狐の放った炎球が真っ直ぐに飛び……






 ボンッッ


「グ……ガッッ……」ヨロ




―命中した


男「命中すんのかよ!」

男「おま、すげぇな……こんな暗闇で当たるか?普通……」

妖狐「ま、まぁ?わしの、実力…じゃな……」オドロキ

男「俺より驚いてるじゃん」

男「暗闇を照らしたかっただけだが、思わぬ収穫だな」

妖狐「そんな事言っておる場合か!とっとと逃げるぞ!」ダッ

男「待て」グイッ

妖狐「へぶぁっ!」ズテ


―足を引っ張ったせいで盛大に顔から妖狐がコケた


妖狐「にゃ、にゃにをするんじゃぁ……」ヒリヒリ

男「す、すまん。だがまだ逃げる訳にはいかない」

妖狐「にゃんでじゃ!」

男「さっき炎が当たった時、見えたんだ」

妖狐「見えた…?何をじゃ」

男「アイツ、外見は人だった」

妖狐「ほぉ?」

男「さっきの資料を読む限り、問題はあの刀だ」

男「だったらアイツも、もしかしたら刀のせいで、ああなってるのかもしれない」

妖狐「なら…刀を壊せばよいのか?」

男「あぁ。何とか動きを止めて、壊そう」

妖狐「しかしどうやって壊すんじゃ?」

男「ふっふっふ……それは―――」

妖狐「あ、攻撃」ヒョイッ





 ザンッッ





男「うぉっっ!!あぶねーーッッ!!!」スパッ

妖狐「いやお主、斬れておるぞ」

男「危なかった……俺の超反射神経が無ければ斬られていたぜ……」ポタポタ

妖狐「いやだからお主は斬られておるって」

男「えっ…?んあああああぁぁぁ!!!」




男「って、腕を少し斬られただけか……」

妖狐「ぷくくっ…凄い悲鳴じゃの」

男「笑ってんじゃねーよ!なんでお前は避けれ―――」


―よく見ると妖狐の体の周りが淡く光っている


男「かぐや姫?」

妖狐「違うわ!もうバレたんじゃし炎を出してもよいじゃろ?」

男「それは良いが、なんなんだそれ?」

妖狐「火力を弱くさせ体に炎を纏わせてるだけじゃよ」

男「なる、ほど―――あちっ」ジュゥッ

妖狐「で?ここからどうするんじゃ?」

男「今居るこの場は狭く戦い辛い。だが逆に言えば、アイツも同じ事だ」

男「アイツは刀で攻撃する。しかしここには障害物が多い」

男「だからその隙にお前が注意を逸しつつ俺が一気に叩き斬る!」

妖狐「斬るのか!?助けるんじゃないのか!?」

男「斬るのはあくまで刀だ。こっちの剣でぶっ叩けば折れるんじゃね?」

妖狐「う、うーん?うーん……そう、なの、か……??」

男「……とりあえず、やってから考えようぜ!できるできる!」

妖狐「いつも思うが、お主のその自信はどこから来るんじゃろうか……」

―――

皆さんいつもレスありがとうございます
少ない更新ですが今日はここで終わりますありがとうございました!

その刀、物体を壊さず貫通すること忘れてるな

―――


男「よし、行くぞ!!」ダッ

妖狐「うむ!」ダッ


妖狐「《火炎》!!」ボシュッ


―妖狐が敵目掛けて火炎を放つ!


男「(その隙に俺が……回り込むッ!)」ザッ


 ボンッ


―《火炎》が標的の体に命中し、体勢が崩れる


『グッ……ナに……?』ヨロ


男「(崩れたッ!今だッッ!!)」フォンッブォンッッ


―【焔壊の剣】を握り締め、標的の刀に向けて思い切り《丈華》を放つッ!


 スウゥ…
  スカスカッ


男「ッ!?」

妖狐「男よ!やったか!?」

男「ま、マジかよ……」ザッ


―驚きを隠せないまま標的から距離を取る


男「わからん、わからんが……壊せなかった事だけは確かだ」

妖狐「なっ、何じゃと!?」

男「透けた、のか…?本当に何が起きたか見当がつかない…!」

妖狐「あの刀は透けるのか!?」

男「あぁ、俺の剣は絶対に当たったはず…なんだが……」

男「手応えどころか、当たった感覚すら感じなかった」

妖狐「それじゃあどうやって壊すんじゃ!」

男「チッ!透ける意味がわからねぇ」

男「何で刀が透けるんだよ……ん?」

男「透ける……」

妖狐「どうしたんじゃ?」

男「いや……透けた割には俺、腕を斬られたよな」

妖狐「そういえばそうじゃな」

男「それにあの資料によると、刀で斬られると魂を奪われるはずなんだが……」

妖狐「ちゃんと生きておるの」

男「う、む……わからないことだらけだが……」



―相手が刀を振り下ろしてくる



それを軌道に合わせ、辛うじで攻撃を受け流―――



 スウゥ…
  スカッ



男「せないっ!?」


「イまはオナカ……イッパイ、ダから、イらない…!」


 ザンッッ!!



―正面から斬撃を食らうッ


男「がッッッ……!!!」ボトトッ





妖狐「お、男ーッッ!!」

男「げほっ…おぇ……」ガク

男「(しまったッ…さっき剣が当たらなかったのに、アイツの攻撃を受け流そうとしてしまったッ…!!)」

妖狐「しっかりせい!!今すぐ傷を―――」

男「よ、妖狐…ぅし…ろ……!」ハァハァ




―妖狐に向けて刀が無慈悲に振り下ろされる




 ザンッッ!!



妖狐「ぬっ…ああぁぁぁッッ……!!!」ブシャッ

男「よぅこ……だい、じょう…ぶ、か……」ハァハァ


妖狐「ごほっ、ごほっ……ふ、ふざけ、おって……!!」フラッ


男「な、なに…を……」



―妖狐が怒りを露わにしながら、よろめきつつ立ち上がった




妖狐「わしを、怒らせた事……後悔、させてやる…からのッッ…!!」ギリッ



―妖狐の体が、怒りに反応するように炎に包まれるッッ









妖狐「消し飛べェッッッ!!!」ブォッ


 ズドンッッッ!!!

―激しい雷を纏いつつ2mを超える大きな《火炎》らしきものが標的を壁ごと、文字通り消し飛ばした

男「こ、怖ぇ……」

妖狐「はぁ…はァ……」バタッ

―残りある体力を使い果たしたのか、その場に妖狐が倒れ込んだ

男「大丈夫か…?妖狐……」

妖狐「う、む……。たぶん、の……」

男「それ、より…アイツはどうなった…?」

妖狐「わからん…壁ごと吹き飛んでいったわ」

男「そうか……はぁ……」

男「あー、もう…動けん……」ドサッ

妖狐「わしも、じゃぁ……」


バチバチバチ
   ボォォォォ…

ドスンドスンッ

―――
 ―宿屋―

宿主「あの兄ちゃん達、遅いな」

兵士「ですね……何かあったんでしょうか…?」

兵士「何も起きてなければ良いのですが」

宿主「まさか、ヤツが出たのか…?」

兵士「だとしたら、もしかして―――」


 ズドンッッッ!!!


兵士「!?」

宿主「!?」

兵士「い、今の音は!?」ガタッ

宿主「わからねぇ…!だが音の聞こえた方角は丁度―――」

兵士「あのお二人が向かった方ですね…!」ゴソゴソ

宿主「あぁ……って兄ちゃん、まさか行くつもりか?」

兵士「当たり前です!ここで行かずして何が兵士ですか!」

宿主「外はヤツが居るかもしれねぇんだぞ?」

兵士「関係ありません!お二人の方が心配ですっ!」スタスタ

宿主「あー、ったく……」


―宿主さんが私の肩を叩き、宿から出ようとするのを引き止めてきました


宿主「仕方ねぇな、俺も一緒に行ってやるよ」ガサガサ

兵士「良いのですか…?」

宿主「これでも昔は傭兵をやってたからな。そこら辺のゴロツキよりは動けると思うぜ?」

兵士「っ!頼もしいです!よろしくお願いします!」ペコ

宿主「おう!それより、とっとと行こうぜ」

兵士「はい!」



  ガチャッ


バタンッ

―――


 タッタッタッタッ


―外に出ると煙の臭いがする……

―辺りを見回すと音の聞こえた方角から赤い火が見えた


兵士「あ、あれは…!」

宿主「まずい……家が燃えてやがる」

兵士「っ!」ダッ

宿主「あ、オイッ!」


―夜の風を切り全速力で家まで駆ける

―間に合うかっ…?


 否!!間に合わせてみせる!

兵士「はぁ…はぁ……」

兵士「か、壁が無くなってる」

兵士「それより、あの二人は……」キョロキョロ

宿主「おいおい、なかなか足の速い兄ちゃんだぜ」タッタッ

兵士「宿主さん!多分この中に居るはずです!」

宿主「そんな事は、わーってるよ」ブン

 バシャア


―これは水…?
―そうか、宿主さんは火の中に行く私の為に……

兵士「冷たっ」

宿主「ったく、何も準備しないで行く気か?」スッ

兵士「あ、布まで……ありがとうございます」ペコ

宿主「礼は良いから、とっとと助けに行ってやれ」

兵士「はい!」



コツ コツ コツ

     バチバチバチ……


兵士「げほっ……酷い煙だ」

兵士「お二人はどこに……ん?」

兵士「あれは…!!」


―奥に妖狐さんを庇うように男さんが重なり、本棚の下敷きになっているお二人を見つけた


 タッタッタッ


兵士「男さん!!妖狐さん!!無事ですか!?」

兵士「駄目だ、返事が無い…!」



兵士「ふーぬぬぬぬ!!!おっっも!!」グググ


兵士「わ、私の25年間を、ナメてもらっては……困りますよぉぉぉぉぉっっ!!」グググッッ



―久しぶりに腹の底から出した力の衰えに嘆きつつ、本棚と床の間に少し隙間を空けることが出来た


兵士「ふぅ…ふぅ…!ふんぬっ!」グイッ


―友人にも見せれない必死の形相を浮かべ、一人ずつ掴み後ろに放り投げる


ドサッ


ドサッ


兵士「はぁ…はぁ……後は運ぶ、だけ……」


ドドンッ

 グラッ


兵士「(っ!ま、まず……本棚がっ―――)」

 


 ガシッ



宿主「おっと危ねぇ危ねぇ」ジュゥゥ

兵士「や、宿主さん…!手が……」

宿主「そんな事はいい!とっとと運ぶぞ!」

兵士「っ!はい!」


ドドンッ
 メキメキメキ……
 
 ボォォォォ

――― 

―宿屋【個室】―


兵士「はぁ…はぁぁ……」

宿主「ふぅー……お疲れさん」

兵士「はひぃ……」

宿主「灯りをつけてっと……」シュボッ

宿屋「すぐに手当するから、ちっと待っててくれ」

兵士「私も手伝いますっ!」

 【手当中】
   :
   :
   :
   :
 【手当完了】

宿主「悪いな、俺もちゃんとした医師じゃ無ぇから本格的な治療は出来ねぇ」

兵士「いえいえ、助かりました!ありがとうございます!」

宿主「おーい、大丈夫か?兄ちゃん」ペチペチ

男「ぅ……ん……」

宿主「とりあえず生きてはいるみてぇだな」

兵士「それにしても……」

妖狐「…………」スゥスゥ

兵士「お二人共、酷い怪我ですね……」

宿主「うーむ、仮にヤツに会ったとしたら何故生きてるのかわからん」

兵士「魂を抜かれる、んでしたっけ?」

宿主「あぁ。しかしこの二人は生きてる」

兵士「謎ですね……。私としては生きていて本当に良かったのですけども」ハハハ


「多分、腹が満たされていたのじゃろうな」

宿主「そ、村長……?」

兵士「腹が、満たされる…?それは一体」

村長「うむ。言葉通り、あの刀の腹が魂で満たされていたから、その二人の魂を吸わなかったんじゃろう」

兵士「吸えないのではなく、吸う必要が無かった、と」

村長「……多分、な」

宿主「しかし、何で村長がそんな事知ってんだ?」

村長「ふむ…。まぁ、昔色々と、の」

村長「それより、そろそろ目を覚ましそうじゃぞ」

兵士「おぉ…!」

男「う…ん……んあー」モゾモゾ






男「……ん?」

男「うおっ!?な、ななななんだ!?どこだ!?」ガバッ

兵士「はははっ、ここは宿屋の個室です」

男「個室…?っ!それよりアイツは!?」

兵士「例の人斬り、ですか?」

男「ああ!アイツ、吹っ飛んで行ったからまだ外に!!」

兵士「私が外に出た時には見当たりませんでしたよ」

男「そ、そうか…逃げた、のか…?」

男「っと、兵士さんが助けてくれた、のか?」

兵士「私と、そこの宿主さんです」

男「そっか。二人ともありがとう……」ペコ

宿屋「気にすんな。殆どそこの兄ちゃんのお陰だしな」

兵士「あはは……」

妖狐「う、むぅ…?」

男「お、妖狐も起きたか」




妖狐「…うん?……な、ななななんじゃあ!?ここはどこじゃ!?」ガバッ

妖狐「…はっ!それよりヤツはどうした!?」

兵士「ふふ、男さんと同じ反応で面白いですね」

男「ちょっとは落ち着け、俺が恥ずかしい……」ペチン

妖狐「いだっ!…何故わしは頭を叩かれたんじゃ……」

男「あの…村長の家はあのままで大丈夫なんですか?」

宿主「あぁ。ここは家と家が離れてる。それに村長の家の周りはほとんど何も無い。火も燃え移らねぇと思うぜ」

兵士「良かった……」

男「その、すみません…」

男「…ん?そういえば…妖狐は手当されて―――」

男「(やべ、妖狐が手当されたって事は、尻尾と耳も……)」ダラダラ

男「(幸い、今はフードを被った状態だが、いかんせん俺も同じく気を失ってたし……)」バクバク

兵士「(妖狐さんの手当は私がしました。無論、耳と尻尾の事は他言していません)」ボソ

男「兵士さん……アンタってやつぁ…!」ダキッ

兵士「ふふ、イムサ国の一件で普通じゃない方達とは思っていましたからね」

妖狐「何じゃお主らは抱き合いおって…気持ち悪いの」

男「うるせっ」

宿主「それより兄ちゃん達、村長の家で何があったん―――」


ドンッ

ドンドンッ


兵士「な、なんです!?」

宿主「わ、わからねぇ…入り口の方か?」

宿主「まさか……この灯りに反応した、のか…?」

男「この扉を叩かれる感じも既視感が……」

妖狐「じゃな……」


 バンッッ


宿主「扉が開いたみてぇだな……」

兵士「え、えぇ」


「誰だ!?灯りを点けろ!」


「な、なんだ!?コイツは!!」


「か…刀を持ってるぞ!!」


「ま、まさか!?コイツは…!!」

男「ッ!!クソ、アイツがここに来やがった!!」ガバッ

兵士「あっ!男さん!!」


―【焔壊の剣】を手に取り個室を飛び出―――


男「って!剣が無い!!」

男「っ!あの家に忘れてきたのか…!?」ダッ

妖狐「男っ!あぁもう!全く…!」ダッ

バンッ


―剣は無いが、やるしかない!!


男「この野郎ッ…!!」

妖狐「ま、待て……はぁ……待たんか……」ハァハァ

男「妖狐!動けないなら離れてろ!!」

「ム……?アなたハ……」


「ぐウぅ……アぁアァァァァ!!!」ヨロ

男「こん、のッッ!!」ドカッッ


―奇声を上げている隙をつき、外に向けて蹴り飛ばす!

ドサッ

男「(間合いを取られるとマズイ…!!)」

男「(一気に決めるッッ!!)」ダンッ


―標的が仰向けに倒れている所目掛けて拳を振り下ろす!!


 スカッ



―が、既の所で躱される


男「チッ、何なんだよこいつは!!」

男「(村長の家でも思ってたが、動きの差が俺とありすぎる……)」

男「(熟練の動きと、俺の素人の動きじゃ無理だ)」

男「(笑えないことに、今は手に武器すら無い……)」

男「(刀の破壊もできない―――)」

男「(いや、多分刀を破壊どころか俺ではアイツにすら勝機が無い可能性もある)」

男「(だったらやる事は一つ。アイツになるべく傷を与えて、退いて行く事に賭けるしか、ない!)」



―勢い良く踏み出し、標的の懐に入り込―――


ヒュン
 ビュンッ



男「っめない!」

男「(せめて何か武器があれば…!)」

兵士「男さーん!!これをっ!」ブン



===【槍】カランッカランッ


 
―兵士の投げた物が地面に転がった


男「これは……槍か」スッ

男「(槍は扱った事無いが、無いよりはマシだな)」

男「兵士さん!ありがとう!!」

兵士「アイツの刀で斬られても今は魂を取られないらしいです!!」

兵士「だから、思う存分やっちゃってください!」

男「なっ!?それは本当か!?」

兵士「はい!理由は後で話します!!」

男「わかった!」



―槍を構え間合いを図る


男「(これなら、何とかなりそう…か?)」チャキ



―――

今日はここで終わります、ありがとうございました

>>515
素で忘れていました…
ご指摘部分の修正を含んだ更新でしたが大丈夫な事を祈ります

 ヒュンッ
  

―ヤツの斬撃を後ろに飛び、躱す


男「(アイツの刀は、受け止められない)」

男「(だったらアイツが攻撃した隙にこちらの攻撃を入れるしかない!)」


 ヒュン
  ヒュンッ



―刀を振り抜きかけた瞬間、ヤツの懐に飛び込む!!


男「(ここしかない!!)」グシャッ


―足元の砂利を蹴り上げつつ
一撃目を左に避け、二撃目を体勢を低くして紙一重で躱すッ


男「悪いが、こっちも手加減する余裕は無いんでな…!」ブンッ


―横凪に槍を振り、標的を横腹から殴り飛ばした


「グッ……ゥ…!!」ズザザッ


男「(ちっ、しゃがんだせいか力をあまり乗せられなかった…!)」

男「(どうする…?さっきの誤魔化しはもう効かないだろうし……ん?)」



  ポツ


  ポツ


  ポツ ザアァァァァ


男「雨…?」


「ぐぅ……ぬあぁぁぁ!!おほーー!!!」



男「っ!奇声が聞こえる!まさかヤツは―――」

妖狐「うおぉぉぉ……!!雨は苦手じゃあぁぁっ!!染みるぅぅぅ!!」

男「お前かよ!!」


「グ…ん……あれ……」

「わたし なにを ……」

「うゥ……ダメ……」ダッ

男「!?アイツが消えた!!」キョロキョロ

兵士「男さん!あちらの方に逃げて行きましたよ!!」ユビサシ

男「逃げた…?アイツ、雨が嫌いなのかな」

妖狐「男よぉ……早く中にぃ……入ろうぞぉー……」

男「お前も雨嫌いなのか」

妖狐「雨と言うより、水が嫌いなのじゃぁ……」

男「じゃあ今度から水ぶっかける事にするわ」

妖狐「なっ!?この、人でなしぃ!」

男「俺、もう人じゃないしー」

妖狐「むぐぐっ!」

 ―宿屋―


「すげぇ、あの人斬り相手に……」

「何者だ?あいつら」

「…………もしや、あの者達なら―――」ボソ


 ザワザワザワ


宿主「ちっとここじゃあ落ち着かねぇし、個室に行くか」

兵士「……ですね」

男「はい」

妖狐「うむ」


 キィ…


パタン



宿主「いやー、しっかしやるなぁ兄ちゃん!」バシバシ

男「いてて…、たまたま運が良かっただけですよ」

兵士「傷はもう大丈夫なんですか?」

男「うん、もう治りかけてる」

宿主「なんつー治癒力だよ」

妖狐「はっくしゅ!」ブルブル

男「あー、何か拭くものってありませんか?」

宿主「あるぜ。ちっと待っててくんな」スタスタ



男「それで妖狐、お前あの時のは何だったんだ?」

妖狐「あの時、とはどの時じゃ?」

男「ほら、村長の家の壁を吹き飛ばしたアレだよ」

妖狐「あぁ、《雷炎》の事か?」

男「よくわからんが、何だよそれ」

宿主「っと、持ってきたぜ」スッ

男「おっ、ありがとうございます。ほら妖狐、じっとしてろよ」フキフキ

妖狐「簡単に言うと、わしの雷と炎の魔術を混ぜただけじゃよ……くすぐったいわい」ピクッ

妖狐「と言っても、あの時は無我夢中で放ったからよく覚えとらんが」

男「お前雷も使えんの?つーか、何だ魔術って」

妖狐「わしは、雷はあまり扱うのは得意ではないが、出せる事には出せる」

妖狐「それと、今までは面倒で‘‘術’’や‘‘技’’と濁した言い方をしておったが……」

妖狐「魔術と言うのは、まぁお主らの言葉で言う魔法みたいな物じゃよ」

男「(なる、ほど…。じゃあこれからは俺も魔術って言う事にするか……)」

男「雷を出せるとかカッコいいな、どうやって出すか教えてくれよ」

妖狐「あのなぁ、カッコいいから使うって言うのは正直どうなんじゃ?」

男「まぁまぁ」

妖狐「はぁ……。言っておくが、簡単には無理じゃぞ?」

男「そうなの?」

妖狐「当たり前じゃろ!」

妖狐「わしは思い通りに出せる様になるまで、電撃を浴び続けたからの」

男「えっ…お前ってそういう趣味あったんだ……」

妖狐「違うわ!!今日のお主はわしをツッコミ死にさせる気か?」

男「突っ込むならせめて下の―――」

妖狐「…………」ボシュッ

男「あっっっちぃぃぃぃ!!!」バタバタ

妖狐「体が雷を覚えるまで浴びていただけじゃよ」

男「……よく死ななかったな」ボフッ

妖狐「まぁの。知り合いに雷の扱いが上手い奴が居たんじゃ」

妖狐「そもそも、お主が炎を出せるのは本当に運が良かっただけじゃから―――」


妖狐「あっ……」


男「まー、でも便利になったわ。実際この体になってから」

男「一番便利になったと感じた時は火を起こす時だな。こう、ポポポーって―――」


男「あっ……」







兵士「あはは……」

宿主「へぇ……」

男「いや、その、あのぉ……」ダラダラ

妖狐「すまん!わしは人では無い!」ドーン

男「何白状してんだよ!」

妖狐「お主よ、この状況で誤魔化すのは流石に無理じゃろ」

男「……まぁ、確かに……」

宿主「兄ちゃん達の度胸を見れば、どれ程の修羅場を潜ってきたのかわかるぜ」

宿主「あの人斬り相手に立ち向かうなんて、俺には出来ないしな」

兵士「ふふ、なんて言ったって男さん達は、竜に立ち向かっても行きましたしね」

宿主「なっ、伝説上で語られている、あの竜にか!?」

兵士「えぇ。私達の国は、つい最近まで被害にあっていたんですが……」

兵士「そこの男さん達が解決して下さったんですよ」

男「あれは……一応解決になる、の…かな?」

妖狐「なるじゃろ、多分」

宿主「ただもんじゃねぇな……」

兵士「それに比べ、私は氷飛竜から逃げ出してしまいました……」

兵士「皆を守れなかった責任を取り、今や格落ち門番です」ハハハ

男「えぇ!?兵士さん、偉い人だったの!?」

兵士「一応、騎士試験に合格して兵の指揮を取ったりしていました」テレッ

男「あの、なんかタメ口ですんません……」

兵士「良いですよ、私もその方が助かります」

男「じゃあせめて、これからは‘‘騎士’’さんと呼ぶ事にします」

兵士「ふふっ、お気遣いありがとうございます。お好きにお呼び下さい」

男「えーと、それで…あの人斬りの件なんですが」


騎士「あぁ、そうでした」

男「さっき騎士さんが言ってた、今は魂を取られないってのはどういう…?」

騎士「村長さんが言っていたんですよ。『今は刀の腹が満たされている』と」

男「村長さん、か……。やっぱり黒いな」

宿主「それはどういうこった?」

男「実は村長さんの家で、刀を作ったと思われる人物の日記が出てきたんです」

男「俺は、どうも村長さんが関係してるんじゃないかと思えてならない」





「やはり辿り着いた、か……」


キィ…

騎士「そ、村長さん!?」

妖狐「ふむ……………」








妖狐「村長よ、お主……エルフじゃろ?」

村長「どうしてそう思う?」

妖狐「実物のエルフの魔力を感じたことは無いから正確にはわからんが、お主から人とは違う物を感じるのでな」

村長「そういうお前さんも、人とは違うみたいだな」

妖狐「まぁの。で?答えを聞きたい」

村長「……お前さんの言う通りだよ。私はエルフ、あの刀を作った者だ」

村長「ふぅ…、バレてしまったし、戻すか」

男「お、おいおい…まさか張本人だとは思わなかったぞ……」

騎士「ど、どうしてそれを早く言ってくれないんですか!!」

村長「お前さん達に話したとして、何になる?」

騎士「もっと早く知っていればあの刀の対策だって出来たはずです!!」ギリッ

村長「……無理なんだよ」

騎士「なっ……」

村長「対策出来ていたらとっくにしている。なんせ私が作ったんだからな」

男「対策が出来ない、とは?」

村長「実際対峙したお前さんならわかると思うが、まず刀を破壊できない」

村長「そして何より厄介なのが、その刀で斬られると生物の魂を刀に吸収されてしまう」

妖狐「本当に厄介じゃの。何でそんなもん作ったんじゃ」

村長「打った当初は魂を吸うどころか、刀を破壊できない何てことは無かった……と思う」

村長「しかし、刀を打った時、何かが混ざったのかもしれん。それに妻は侵されたと私はみている」

村長「それに…きっと、私を探しているのかもしれんな……」

騎士「ど、どうしてそんな危険な物をここに持ち込んだのですか!!」

村長「馬鹿を言うな。私は持ち込んでなどいない」

宿主「ん?じゃあ一体誰が…?」

村長「きっと、盗んだんだろう」

村長「私はな、二度と人の手に渡らない様に人気の無い場所に隠したんだよ」

村長「しかし……それを誰かに見られていたのかもしれん」

男「何ともマヌケな話だな」

村長「返す言葉も無い……」

男「で、本当にもう手は無いのか?」

村長「……実は、ある事には…ある」

男「それを教えてくれ」

村長「…対策が無いといったのはあくまで私だけの場合だ」

妖狐「ほぉ?」

村長「私は刀鍛冶だ。刀には刀で対抗する」

男「だったらその対抗できる刀とやらを打ってくれよ」

村長「だから、無理なんだ…。私では材料を手に入れるのが困難なのだ」

男「ふーむ……。その材料ってのは何なんだ?」

村長「材料は、‘‘炎鉐を3つ’’、‘‘毒豹の体液を1瓶’’、‘‘白石を1つ’’だ」

男「えぇ…すんごく面倒臭そうなんだけど……」

男「あの、仮にその刀の材料を俺達が集めてきたとします」

男「その時は使い終わったその刀、貰えるんですよね?」

妖狐「お主、図々しすぎじゃろ……」

男「いいや図々しくないね!刀を打って使いました、はいおしまい!なんてそんな無駄な労力使いたく無いんでね!」

村長「そうだな…。あの刀を止めれさえすれば、その後の処分については君に任せよう」

男「っしゃあ!!」

妖狐「見てるこっちが恥ずかしいわ……」

男「ちなみに騎士さん、例の人斬りはどこら辺に行ったかわかります?」

騎士「えっと……確か地図で言うとこの辺りですかね」トントン

男「‘‘塔’’と表記がありますね」

村長「その塔は昔、ある魔物が人間側に付き、竜と戦った場所だと言い伝えにある。その名も―――」




村長「‘‘証炎ノ塔’’」

男「しょうえんのとう……」

妖狐「う、む……そうか…塔か……」


―――

妖狐「男よ、なんじゃそれは?」

男「あぁ、ちょっと今日も日記をつけようかなって思ってて」ペラッ

男「前からつけてたんだけど、このページは最近関わった人物を書き記してるページだ」

男「ま、面倒くさいから俺と妖狐と……騎士さんくらいしか書いてないけど」

――――――――――――

 【男】


 『出身』

・トアール国

 『年齢』

・23

 『好きなもの』

・食べ物全般(特に果物)、雨の音、ふわふわした物、カッコいいもの

 『嫌いなもの』

・野菜、裏切り行為、他人の気持ちを考えない奴

 『夢』

・働かずにのんびり暮らす事。てか、働きたくない

 『今後の目標』

・目標を決める事が目標。それとお金貯めたい

――――――――――――

 【妖狐】


 『出身』

・そこら辺じゃろ

 『年齢』

・乙女の秘密じゃな

 『好きなもの』

・甘菓子じゃな!あとは甘い物!ちなみに甘菓子の読み方は‘‘あまがし’’じゃ。

 『嫌いなもの』

・水。本心を言わぬ奴。まどろっこしいからの

 『夢』

・出来れば魔物と人間、平和に暮らしたいが、まだまだ無理じゃろうな

 『今後の目標』

・無いわそんなもん。
……強いて言うなれば、この面倒臭い旅をとっとと終わらせる事じゃな。絶対どこかで死ぬわ

―――――――――――― 

 【騎士】


 『出身』

・イムサ国です

 『年齢』

・最近25歳になりました

 『好きなもの』

・天体観測と料理です

 『嫌いなもの』

・命を軽んじる行為

 『夢』

・いつか旅に出て世界中をこの目で見て回りたいですね!

 『今後の目標』

・もっと自分に自信を付ける事と、強くなる事です

 ―各装備品のページ―



『   【男】
  
  頭 【無】
  体 【四元楼の服】
  腕 【無】
  脚 【旅装の服(脚)】
  武器【無】
  盾 【無】
 装飾品【シキ】


 魔術 《炎粉》
    《筋力増強/脚/腕》     
  技 《警戒》
    《丈華》
    《獅連斬》
             
             』

『   【妖狐】
  
  頭 【無】
  体 【紅璃の袴】
  腕 【無】
  脚 【紅璃の袴(脚)】
  武器【素手】
  盾 【無】
 装飾品【狐艷の指輪】
    【思い出のローブ】


 魔術 《火炎》
    《浄化》
    《筋力増強/全》
    《暗視》
    《雷轟》
    《雷炎》        
              』

『   【騎士】 
     
  頭 【銅の顎当て】
  体 【銀の前当て】
  腕 【騎士の篭手】
  脚 【重鎮の銀靴】
  武器【騎士の槍】
  盾 【騎士の盾】
 装飾品【形見のスカーフ】


  技 《閃突》
    《薙廻》       
              』


 【男、妖狐の持ち物】

カバン 【炎鉐】×4
    【輝鉐】×3
    【波鉐】×3
    クソ野郎のローブ
     食 糧
      水
    金貨8枚銀貨11枚



妖狐「えーとなになに……って、わしの事も書いておるではないか」

男「うん、この前お前に質問とかしただろ?それを書いただけだ」

妖狐「あの質問はこれを書く為にか……」

男「あぁ、ちなみに今までの旅も簡単にまとめてる。こんな感じだ」スッ
 

 ―旅の記録―


・第壱章 封印ノ獣  (洞窟)

・場所  トアール国 方角は南(出発地点)
     
・敵   妖狐 

―――――――――――――――――――

・第弐章 旅立ちノ日 
    
・場所  トアール国

―――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――

・第参章 瘴気ノ杜 (元、桜類ノ森)

・場所 シュウヘン村 方角は西

・敵  植物のマモノ (シキ)

―――――――――――――――――――

・第肆章 血濡ノ館 

・場所  キンペン街 方角は北西

・敵   吸血鬼 (夫鬼、妻鬼)

―――――――――――――――――――


―――――――――――――――――――

・第伍章 氷龍ノ巣 

・場所  イムサ国 方角は更に北

     依頼で氷飛竜の巣に向かう

・敵   多分、氷飛竜

――――――――――――――――――――

・第陸章 証炎ノ塔 (魂刀【霧霞】)

・場所  神炎村  イムサ国から少し東

・敵   謎

――――――――――――――――――――



男「一先ず、こんな感じだな」

妖狐「う、うん…?その、なんじゃ……」

男「なんだよ、言いたい事があるならハッキリ言えよ」

妖狐「お主の記述は小難しい文字ばかり使いおって…読みにくいわ!」

男「カッコよくね?これが今後受け継がれて行くんだぜ?」

妖狐「全くカッコよく無い。ダサいだけじゃ」

妖狐「それに、受け継がれるって何なんじゃ」

男「俺ら、これから伝説になるんだぜ」






妖狐「は?」

男「多分、きっとこれからも凄い事を成し遂げるに違いないっ!だからこうやって日記を書いているの……さっっ」ファサッ

妖狐「いつになくウザい」

妖狐「わしらは今まで、確かにそこに記してある事はしてきたし、死にかけた事は何度かあったが」

妖狐「別に伝説と言うほど大きな事では無いと思うぞ?」

男「いや、絶対伝説級だろ」

妖狐「だから、お主のその自信は一体どこから出てくるんじゃ……」

男「炎もホイホイ出せるし、もしかして俺の中には秘めたる力が眠ってるんじゃね?そのうち解き放ってしまうんじゃね?」

妖狐「はいはい、もうよいからとっとと寝ろ」



―――

今日はここで終わります、ありがとうございました
自分への復習も兼ねて日記みたくまとめてみました。そろそろ仲間が増えるかも、です

1日で忘れるって鳥頭みたいでちょっと恥ずかしいですね…


  ザアァァァァ


男「おはよう」

妖狐「うむ、おはよう。良い朝…では無いの。雨が降っておる」

騎士「おはようございます」

宿主「おはようさん」

村長「む?皆、起きたか」

男「ふあぁ……、眠い」


村長「昨日話した通り、刀を打つには材料が必要だ」

男「んー?そういや炎鉐といえば、都合の良い事に持ってるな」

村長「な、何だと…!?この3つの材料は手に入れるのに苦労するはずなんだが……」

男「苦労というか、これ騎士さんに貰ったやつだしな」

騎士「え、もしや使わなかったんです?」

妖狐「使わなかったんじゃなくて使い所が無かった、かのぉ」

村長「な、なら残りの材料は2つか!希望が見えてきたな…!」

男「あのー、2つめの材料の『毒豹の体液』がそこはかとなく危険な香りがするんだけど……」

村長「……まぁ、危険なのは当たっている」

妖狐「嫌じゃぁ…行きたくないのぉ……」

男「俺も嫌だ。でも刀は貰いたい」

妖狐「のぉ。お主だけで行くってのはどうじゃ?」

男「嫌だ。楽しくない」

妖狐「材料集めに楽しさを求められるのは、わしも困る」

村長「材料は残り2つだし、手分けして探しに行くってのは、どうだ?」

村長「3つ目の白石は結構遠い場所に行かなきゃならない」

男「場所はどこなんだ?」

村長「地図で言うと…この‘‘洞窟’’の辺りだな」

男「遠すぎだろ!!」

村長「あぁ。だから手分けして―――」

男「ダメだ」

村長「っ…?何か理由でもあるのか?」

男「ある。大いにある」

男「今回は例の人斬りがいつ襲ってくるかもわからない」

男「それに、妖狐には俺の自分勝手な件に付き合わせてる。だからこれ以上危険な目に合わせる訳にはいかない」

妖狐「先日以上の危険な目に合う時は即ち、死じゃな」ククッ

男「おう。だから離れる訳にはいかない。探しに行く時は一緒に行く」

騎士「私も賛成です。刀に太刀打ち出来ない以上、単独で行動するのは危険だと思います」

村長「…そうか。確かに、その通りだ」

村長「それに、材料を集めるのはお前さん達だ。集める方法は好きにしてくれて構わない。悪かったな」

男「わかりました」

村長「ちなみに、‘‘毒豹の体液’’はとある魔物から取れる」

村長「幸い、この村の……少し離れた場所に‘‘輝月の湖’’って所に居るとの情報を昔に得た」

村長「だから、まだその場所に生息している可能性はある」

男「お、おいおい…‘‘輝月の湖’’って……」

妖狐「うむぅ……最悪じゃな」

騎士「何か、あるんですか…?」

男「いや、こっちの事だ気にしないでくれ」

妖狐「では先に近い所から行ってみるかのぉ」

男「だな。まずは輝月の湖だ」




騎士「あっあの!私も一緒に行きます!」

男「良いんですか…?」

騎士「はい!これも何かの縁です、それに人数は多い方が良いと思いますし!」

男「ありがとうございます、それなら是非お願いします」ペコ

騎士「そんなに畏まらなくても構いませんよ。敬語も使わなくて大丈夫です」ハハハ

男「す、すみま―――じゃなくて、ごめん」

妖狐「話も纏まった事じゃし、そろそろ行くかの」

騎士「ふふ、えぇ。出発しましょう!」

―――

 ―道中―



男「確か、この村から北の方だったよな?」

妖狐「じゃな。まっ、わしが地図を見てもあまりわからんから騎士に聞いてくれ」

騎士「ふふっ、お任せ下さい!」

男「お前なぁ……」

騎士「あの……聞きそびれてしまった質問してもよろしいですか…?」

男「それは良いけど、騎士さんも敬語を使わなくていいぞ?」

騎士「あはは、私のこれは癖でして…気にしないでください!」

妖狐「それで、なんじゃ?聞きそびれた質問とは」

騎士「あのですね…妖狐さんって人間では無いと仰っていましたが」

騎士「人間では無いとしたら、何者なんです…?」

妖狐「あぁ、わしは‘‘マモノ’’じゃよ。文字だとこんな感じじゃ」カキカキ

男「地図に落書きするなよ」

妖狐「落書きじゃないわ、戯けが!」

騎士「マモノ…?魔物では無く?」

妖狐「うむ。わしの様に自我が有り、こうして意思疎通も出来る、賢い物をマモノとわしは呼んでおる」

男「俺達人間は、最近ではあまり魔物とマモノの呼称は区別しなくなったけどな」

妖狐「あと、言い方は、『魔↑物↓』と『マ↓モノ↓』じゃ」

騎士「結構細かいんですねぇ」

騎士「では、村長宅の壁を破壊したのは…」

妖狐「わしじゃな」

騎士「それって具体的には何をされたんですか?」

妖狐「な、何を…?うーむ、魔術で壁を吹き飛ばしたとしか……」

騎士「魔術っ!?何ですかそれは!」

男「俺達の言葉で言う魔法みたいなものらしい……って騎士さんあの場に居たじゃん!」

騎士「あの時はなるべく盗み聞きしないように必死に堪えてたので……」

男「そ、そっか…」

騎士「魔法と言うと…‘‘雷灯’’みたいな感じの事を言うのでしょうか…?」

男「あぁ、あれも魔法だな。雷の魔法を貯蓄して任意で放電し、明かりを灯してるって感じだ」

騎士「なる、ほど。何分、私達兵士の中にそういった類のものを扱う人が居なかったので、疎くてすみません」

男「謝らなくて良いよ、俺もそんなに詳しいわけじゃないしな」


 ヒュゥゥゥゥ………


騎士「うぅ…それにしても、雨が降ってるせいか、この季節は特に冷えますね……」ブルブル

男「そう?俺はそんなに寒くないけど…」

妖狐「わしも特に寒くは無いな」

騎士「す、凄いですね…」

男「あっ…そうか、忘れてた。そりゃ俺達寒くないわけだ」

妖狐「なんじゃ?」

男「ほら、俺達って氷飛竜に鱗貰ったじゃん?それのお陰だな」

妖狐「あー、あヤツの鱗か…」

騎士「ひょっ氷飛竜の鱗ぉ!?」

男「うん、これ」ゴソゴソ…スッ

騎士「わ、わぁ…綺麗ですね…」

妖狐「正気か?こんな鱗が綺麗とは」

男「そういえば……」

妖狐「なんじゃ?まだ何かあるのか?」

男「あの約束、忘れて無いよなぁ?妖狐ちゃん?」

妖狐「急に気持ち悪くなったの…。何じゃ約束とは」

男「氷飛竜の件だよ、何でも言うこと聞くっていう」

妖狐「………………あっ」

騎士「???」

男「ふっ、ふふふふふっっ」

男「いやー、何をさせようか想像しただけで笑いが止まんねぇな」ニヤニヤ

妖狐「…………」

男「どうした?黙り込んで」






妖狐「約束…?はて?なんの事やら」

男「はぁ?」

妖狐「わしは約束なんてした記憶は無いのぉ?」

男「お、おまっ!ふざけんなよ!」

妖狐「ふざけてなどおらんよー、そこまで言うなら証拠があるんじゃろうなぁ?」

男「しょ、証拠…だとぉ!?」

妖狐「うむ。わしがそんな約束をしたという確たる証を示してもらわんと納得できんなぁ?」

男「ぐっ、ぐぬぬ!!」







騎士「…男さん、その約束は本当なのですか?」

男「本当ですよ!なんなら俺の信用を賭けても良いですよ!」

騎士「ふむ…。わかりました、妖狐さん」

妖狐「な、なんじゃ?」

騎士「妖狐さんは本当に約束はされてないんですか?」

妖狐「そ、そうじゃとも!してないわ!」ピクピクッ







騎士「……妖狐さん、残念です」

妖狐「ほ、ほぉ?」

騎士「実は私、人とマモノの嘘が見抜けるんですよ」

妖狐「どえぇぇぇぇぇ!!?!?」オドロキ

騎士「私は全てを見抜いていますよ。認めるなら今のうちです」

妖狐「ふ、ふん!そんなのハッタリじゃわ!」

騎士「妖狐さんの弱点はズバリ、その獣耳の裏ですね」ビシッ

妖狐「ぬわっ!?」

騎士「更に言うと、その尻尾を撫でられると嬉しい所と、最近尻尾の抜け毛に悩んでいる所!」ビシッビシッ

妖狐「な、なななななっっ!!」カァァァ

男「そ、そうなのか……」

騎士「最後に、貴方の好きな―――」

妖狐「どわーっ!!認める!認めるからもう勘弁してくれぃ……」

男「すげー、あの駄々をこねた妖狐を認めさせてしまった」

男「しかし、騎士さんにまさかそんな特技があるとは……」





騎士「本当の事を言うと、嘘を見抜けたりはしませんよ」ハハハ

妖狐「なんじゃとぉ!?」

男「え、じゃあさっきのは嘘ってこと…?」

騎士「いえ、先程妖狐さんに言った事は本当の事ですよ」

男「それはそれで恥ずかしいな…」

騎士「私は人を観察する事が得意でして」

騎士「妖狐さんは特に感情が表に出やすいのでそれはもう、ね?」

妖狐「くぅ…これは一生の恥じゃぁ……」

男「こんなのが一生の恥なら、お前の一生は恥だらけだな」

妖狐「うるっさいわ!」ポカッ

男「というわけで、妖狐に何をさせるか、騎士さんと一緒に決めまーす」

騎士「わ、私もですか…?」

男「うん、騎士さんのお陰で妖狐を認めさせられた様なものだからね」

騎士「あはは、恐縮です」



妖狐「もう煮るなり焼くなり好きにしてくれ……」ショボーン


―――

今日はここで終わります、ありがとうございました

妖狐にメイドの真似事をさせるくらいしか思いつかなかったので何かお題を頂けると助かります…





妖狐「は、はぁぁぁぁ!?」

妖狐「猫語じゃと!?」

男「あぁ、頑張れ。一先ず一個目はそれな」

妖狐「ちょっと待たんか、一個目ってなんじゃ」

男「え?まさか罰ゲームが一回で終わるとでも?」

妖狐「卑劣な……」

男「誤魔化そうとしたのも含めての罰だからな」

妖狐「はぁ…一体何回受ければよいのじゃ?」

男「‘‘何回’’じゃない、今日一日だ」

妖狐「は?」

男「『は?』じゃねぇよ、今日一日だ」

妖狐「な、なん…じゃと……」ガク

男「というわけで、最初は猫語だ」

妖狐「そもそも猫語って何なんじゃ」

騎士「猫語は語尾や言葉の中に『にゃ』や『みゃ』など付けて猫っぽく話す事ですね」

騎士「私の国では『アイドル』という崇拝物の様な方々が使用してるのをよく見かけます」

騎士「私からすると痛々し―――こほん、少々頭を悩ませる語尾ですね」

男「はい、始めっ」パンッ

妖狐「のぅ、どうしてもか…?」

男「どうしてもだ」

妖狐「…………」







妖狐「…罰ゲームは、一回で終わらせて欲しい……にゃん」

男「おっ」

騎士「おぉ」

妖狐「…………」カァァァ

男「言っておいて照れるなよ、可愛いけど罰ゲームは今日一日なのは変わりないからな」

妖狐「こ、こんなの嫌じゃ!」バタバタ

男「あるぇ?猫語じゃないなぁ」

妖狐「ぐぬぅ…!」

男「守らないと罰ゲームの期間を2日にするぞ」

妖狐「お主も酷な事を……」ウルウル

騎士「男さん容赦無いですね」

――


男「結構歩いたな」

妖狐「まだ着かにゃいのか」

騎士「もうそろそろだと思うんですけど……」

騎士「(というか妖狐さんは順応が早すぎて驚きます)」

騎士「あの、もしや妖狐さんは何かやってたりしましたか?」

妖狐「にゃにを、とにゃ?」

騎士「え、えぇ。先程言ったアイドルとか……」

妖狐「ふみゅぅ、特に何もしてにゃかったと思うにゃ」

騎士「そ、そうですか……」

妖狐「のぉ、わしは腹が減ったにゃ」

男「言葉遣いと相まって、アレだなぁ」

妖狐「お主よ、甘菓子はにゃいのかや?」

男「無い」

妖狐「むぅ!では今すぐ買いに行こうにゃ」

男「刀の材料を集めるんだろうが。無理だ」

妖狐「少し寄り道をするだけにゃ!」

男「寄り道って、イムサ国まで戻らなきゃ行けないじゃん」

妖狐「わしは甘菓子が食べたいにゃぁ」

妖狐「ダメかにゃ…?」ウワメ








男「し、仕方ねぇなあっ」

騎士「(男さんも存外チョロいですね)」チラッ

男「でもこの一件が終わってからな」

妖狐「嫌にゃ!今すぐ食べたいにゃあ!」

男「頑張った後の甘菓子は超美味いと思うけどナー」

妖狐「にゃ?」

男「仕事した後や何かした後の、自分へのご褒美として食べる甘菓子はいつもより美味しく感じると思うけどナー」

男「残念だワー、それが知れないなんて残念すぎるワー」

妖狐「…そこまでにゃのか?」

男「うん、そこまでだ」

妖狐「しょうがないにゃあ…」

騎士「疲れた後の自分へのご褒美は良いものですよねぇ」







――


  テクテクテク


男「よし、そろそろ猫語で喋りつつ次は甘えてくれ」

妖狐「はあ?」

男「はやく」

妖狐「全くもって意味がわからないんじゃが。というか理解したくない」

男「2日」ボソ

妖狐「はいはい!やればいいんじゃろ!やれば!!」

妖狐「(今日だけ!今日だけの辛抱じゃ…わしよ!)」フルフル

男「おっ?決心したか」

妖狐「後で殴る……いや、燃やす」

男「燃やしてもいいから、はーやくっはーやくっ」

妖狐「ちっ、図に乗りおって……」

男「あん?そんな口の聞き方してもいいの?」

妖狐「ふんっ」

男「ムカついたから期間を3日にするわ」

妖狐「すまん!!!」






妖狐「わしは男と居るだけで幸せにゃー(棒)」

男「ダメだ、心が篭ってない」

妖狐「くそ、ふざけおってからに」ボソ

男「んー?」

妖狐「お、男はいい匂いがするにゃっ!抱きついても良いかにゃ?」ダキッ

男「もう抱きついてるじゃん」

妖狐「そのぉ…頭を撫でて欲しいにゃん?」

男「はいはい」ナデナデ

妖狐「ぬふふーっ」

男「尻尾触っても良い?」

妖狐「もちろんだにゃっ」スッ

男「あー、サイコー」モフモフ

妖狐「んっ…はふぅ」

男「キスしても良い?」

妖狐「もちろ――――」






妖狐「って良い訳あるかっ!!」バシンッ

男「惜しい」

妖狐「もー、やめじゃやめじゃ。疲れたわ」

妖狐「そもそも、1億歩譲って猫語はまだわからんでもないが」

妖狐「甘えてくれという罰ゲームってなんなんじゃ。そんなの聞いたことないぞ」

男「お前いつも食ってばっかだから、たまには違う事をさせたかっただけだよ」

妖狐「余計なお世話じゃ!」

男「でもまだ終わってないからな?罰ゲーム」

男「次は何にしようかなー」

妖狐「せめてもう少しマシなのにしてくれ……」

騎士「(流石に見てる方も恥ずかしいですね、これは……)」


―――

 ―輝月の湖―

   
  ドロドロドロ
  

男「おおっ、ここか…?」

妖狐「なっ、なん…じゃこれは……」

騎士「これは酷いですねぇ……」

騎士「湖の辺り一面、毒素に覆われてますね」

男「紫がかってて、見るからにって感じだな」

騎士「毒豹、その名の通り毒を扱う魔物なのかもしれませんね」

妖狐「毒豹だかなんだか知らんが、灰にしてくれるわ」ギリッ

男「さて、どうしたものやら―――」

妖狐「《火炎》」ボシュッ

 ヒュンッ


 ドボォンッ


―妖狐が放った《火炎》が半円を描き湖に着弾した


 シーン


男「お前なぁ、後先考えずに―――ってあれ?」

男「…何も起こらないな」

騎士「もう居ないんでしょうか?」

妖狐「…む?何か、来るぞッ!」ピクッ



 ザバシャアッッッ



  ドパンッッ


―妖狐が耳を僅かに動かし叫んだ言葉と同時に、巨大な‘‘何か’’が湖から飛び出した


男「み、見たか今の!?」

騎士「は、はい!」

妖狐「まさか、アレなのか……」

男「頭は豹に似ていた」

騎士「けど、胴体はまるで蛇でしたよ」


チャプンッ
 バシャッバシャッ



妖狐「…?何か他にも居るぞ」

男「おいおい今度はなんだ?」

騎士「あれは…蛇?」

男「あぁ、蛇だな…俺達くらい大きさはあるが」

妖狐「もしや、子か?」

騎士「その可能性が高いですね」

男「数は…12体も居るぞ」

妖狐「だんだんと囲まれておるの」



騎士「はぁっ!《閃��》!!」ダッ


 ズドムッ


―騎士が槍で子蛇を吹き飛ばす


男「容赦無ぇ……」

騎士「あの大蛇が来る前に片付けましょう!」

妖狐「うむっ!」

男「わかった!」

>>608
騎士「はぁっ!《閃突》!!」ダッ


―子蛇が数匹固まっている所に妖狐が《火炎》を放つ

―男は飛び掛かってきた子蛇の攻撃を躱し、腹に《丈華》を―――



男「ってしまった!また剣忘れた!!」

男「や、やっべぇ!えとえと……オラァ!」ドムッ


―とりあえず子蛇の腹に裏拳を入れる



男「まずいどうしよう、何もできない」

騎士「まさか何も持ってないんですか!?」

男「恥ずかしながら……」

妖狐「ここに来る前に、剣を回収するの忘れておったの」

男「罰ゲームなんてしてる場合じゃなかった……」

騎士「とにかく、今は子蛇を片付けましょう!」

男「あ、あぁ!」

妖狐「ほっ!」ボシュッ


―妖狐が続けざまに《火炎》を放つ


男「おー、効いてる効いてる」

騎士「はぁっ!」ズドムッ


―騎士が子蛇の腹に槍を突き刺す


男「騎士さんの攻撃、速いな」

妖狐「お主も何かせんか!!」

男「いや、無理だって…何も持ってないんだぜ?」

妖狐「できることを見つけぃ!」

男「へいへい。《炎粉》っと」シュポポッ


―男の《炎粉》が2匹の子蛇に当たる、が―――


 ビチチチッ


男「んん!?なんか、効いて無くないか…?」

騎士「(炎が…効かない…?)」

妖狐「まっ、わしより弱っちい炎じゃし…なっ!」ボシュッ


―妖狐の《火炎》が子蛇に命中し吹き飛ばす


妖狐「ふふん、弱い弱い!」

騎士「(確かに、子蛇には辛うじで攻撃は通ってはいますけど……)」

男「この調子ならあの大蛇も余裕だな!」

妖狐「うむ!わしに任せい!」

騎士「(嫌な予感しかしませんね……)」


―――

罰ゲームの案助かりました
今日はここで終わります、ありがとうございました

発音の件は、一晩口に出しつつ考えてみましたが結局わけがわからなくなり強引にあの部分は‘‘妖狐独自の発音’’という事にしました
同じ発音の単語も見つからず申し訳無いです
ようかん、とかが若干似てますかね…
イチャイチャはこれからもありまぁす!

魔物が刃物でマモノが葉物じゃないの?

―――

妖狐「よっと……」ボシュッ

 ズパンッ


―妖狐が《火炎》で最後の一匹を倒した


妖狐「これで全部じゃな」

男「あぁ!ようやく残るはあの大蛇だけだ」



ザパアッ
 ズルルルル


妖狐「ほほぉ、噂をすれば…じゃな」

騎士「何やら怒っているようですね」

男「そりゃそうだろ。自分の子を殺されて怒らない親は、それはもう親じゃない」キリッ

妖狐「格好をつけて言っておるが、お主は戦力外なんじゃぞ?」

男「そうだな!妖狐と騎士さんお願いします!!」

妖狐「お主はここへ何をしに来たんじゃ……」

騎士「妖狐さん!来ますよ!」


―大蛇が何やら口を膨らませている


妖狐「なんじゃ…?」

騎士「(毒性……まずいっ!)」

騎士「皆さん横に避けてください!!」ダッ

男「っ!?」ダッ

妖狐「むっ!?」ダッ


 ベチャァッ
  ジュゥゥゥ


―3人が居た所へ大蛇の吐物が着弾した


男「危ねぇ……これは、酸か…?」

妖狐「その、ようじゃな」

騎士「大丈夫ですかっ!」

男「俺は大丈夫だ」

妖狐「わしはフードが少しかすっただけじゃ」シュゥゥ

騎士「良かった。あの吐物は危険ですね」

妖狐「さて、どうするかの」

騎士「湖の中心から吐物で攻撃してくるせいで私は近づけません……」

男「という事は、妖狐頼りか」

妖狐「任せい!《火炎》!」ボシュッ


―狙いを定め、妖狐が《火炎》を直線に放つ


 バチチッ 
   ボフッ

妖狐「ほっほー!どんなもんじゃっ」

男「これで幾分かはダメージを与えられた、はず……」

騎士「いや…ダメですね」

妖狐「なっ…!」


―大蛇は何事も無かったの様に佇んでいる


男「ま、マジか」

妖狐「ちっ!《火炎》!《火炎》!!」ボシュッボシュッ


 バチィッッ
  シュゥゥ


男「やっぱり効いてねぇ!」

騎士「皆さん!また吐物が来ますっ!」

妖狐「ぐぬぬっ…!」

ッベチャァッ


 バシャバシャッッ

―大蛇が吐物を吐いたと同時に勢い良くこちらに向かってくる


男「うおおぉぉ!なんか来たぞ!!」

騎士「こちらとしては好都合です!」チャキ

妖狐「今度こそ燃やしてくれるわッ」


 ヒュンッ

―大蛇が体を捻り、尾を振り下ろすッ


騎士「くっ…!」ダッ

男「わっ…まずっ」ズテッ

妖狐「よっと」サッ

  
  ズダンッッ


―足元に躓き体勢を崩した男は、尾に押し潰される、が―――



妖狐「お、男ぉ!」

騎士「男さん!!」

男「ぅぐぐぐぐッ……」ミシミシッ


―男は咄嗟に両腕を上げ尾を受け止めた


男「大、丈夫だ!それ…より今のうちにッ!!」

騎士「っ!わかりました!!」タンッ

妖狐「うむ!」スッ



―大蛇が男に気を取られている隙に、騎士と妖狐が攻撃を仕掛ける

騎士「はあぁぁっ!《閃突》!!」ヒュンッ

妖狐「ぬんっ!《火炎》」ボシュッッ


  バチィッッ
   
   ズドムッッ


―僅かに大蛇がよろめくも、攻撃が効いている様子はあまり感じられ無い……


男「こ、これでも倒せない、のか」ハァハァ

騎士「こ、攻撃してわかった事は、あの大蛇の体表は相当柔軟性があるという事ですね」

妖狐「しかも炎も全く効かん……」

男「体表、か……」

妖狐「っ、また来るぞ!」

男「…ッ!」ギリッ


―大蛇が口を膨らませて吐物を吐き出そうとした瞬間ッ―――


男「《筋力増強/脚》!!」ダンッ



―男が勢い良く飛び上がるッ
 高さは丁度大蛇の頭と同じ程に



男「狙いを定めて……《炎粉》!!」シュボボッ



―男の放った《炎粉》が大蛇の口へ吸い込まれる様に飛ぶ




 ボフンッ
  プスプス



「ギグ…アアアアアア!!!!」キーン


―先ほどとは打って変わって、大蛇が大きな奇声を上げつつ悶え苦しむ


男「やっぱり…!」スタッ

妖狐「な、なんじゃ!?」

騎士「口へ、炎を……。そうか、なるほど……」

男「アイツの体表は確かに特殊だ。だけど内側はその限りじゃないッ!」

妖狐「し、しかしさっきの攻撃でも倒せなかったぞ!?」

騎士「多分、男さんの炎が少し弱かったんだと思います」

男「あぁ、騎士さんの言う通り俺の炎じゃ倒せない」

男「だが、妖狐の炎なら……」

騎士「あの大口へ放てば、イケる、かもっ!」

妖狐「なるほどの!」

ヒュンッ
  ズダンッッ

    ヒュンッ
ズダンッッ


男「クソ、アイツさっきの炎を警戒して口を開きやがらねぇ」

騎士「しかし陸上に居る限り、こちらに分はあります!」

ドムッ
ズルルルルルルッッ


―大蛇が地を這い突っ込んで来る

騎士「っ、これなら!」ダッ

男「お、おい騎士さん!!」

妖狐「何をしておるッ―――」

騎士「妖狐さん!!先程の炎を出す準備を!!!」

妖狐「だ、だが……」

男「妖狐!騎士さんの言う通りに頼む!」

妖狐「え、えぇい!どうなっても知らんからの!」スッ

 ズルルルルルルッッッ


騎士「(まだ、もう少し……口から飲み込まれるギリギリまで引き付けて……!)」



ズルルルルルルッ グバァッ


騎士「(ココだっ!!)」キッ

騎士「《閃突》!!!」ヒュゴッ


 ズドムッッ


―大蛇が獲物を喰らおうとし大口を開けた時、内側から騎士が《閃突》を全力で放つ


騎士「妖狐さん!!」

妖狐「任せい!《火炎》3連発じゃ!!」ボボボシュッ

―騎士が飛び退き、そこへ妖狐の放った《火炎》が大口の中へ消える

ボフンッ
 ボムンッ

  ボンッッッ


 ビタンッ

 ビタンッ

 ピクピク…

―立て続けに大蛇の体内で《火炎》が爆発し暴れまわった後、抵抗も虚しく息絶えた


妖狐「やっ、やったわ!やりおった!」

男「た、倒した、のか…?」

騎士「は、はぁ……。死ぬかと思いました……」ドサ

男「き、騎士さん…本当にありがとう」

男「騎士さんが居なかったら俺達、アイツを倒せなかったと思う……」

妖狐「誰かさんは武器を忘れるしの!」

男「その、それはごめん」

騎士「あはは、勝てたのはお二人の力があってこそ、ですっ」

妖狐「謙遜せんでもよい。今回は本当にお主のおかげじゃ」

騎士「なんだか、照れますね」テレッ

男「流石にもう他の魔物を相手にする余裕は無いから、とっととアイツから体液を採って帰るか……」

騎士「ですねぇ」

男「…そういや、俺解体できない……」

騎士「ふふ、それなら私にお任せをっ!」


―騎士が躊躇いも無く大蛇を解体していく……


男「騎士さんって何でも出来るんだな……」

妖狐「お主より役に立つわ。今後とも一緒に来てくれんかのぉ」

男「うるせっ」


 ―【毒豹の体液】を手に入れた!―

―――

 ―神炎村【村長宅 跡地】―

 ゴソゴソゴソ

男「あー、疲れた」

妖狐「じゃな、一つ目でこれか……」

騎士「もう一つもこんな感じなんでしょうか……」

男「気が重いな」

妖狐「おっ、あったあったぞ」

騎士「おぉ、ありましたか!」

妖狐「ほれっ」ポイッ

男「おっとと、さんきゅ」

男「んー!これこれ、この腰にくる重さの感じ!」チャキ

騎士「武器も回収しましたし、宿へ一旦戻りましょうか」

妖狐「じゃな」

男「そうだな」


 ―宿屋【個室】―

キィ


宿主「ん?おっ!おぉぉぉ!!」ガタッ

宿主「無事だったか!?」

男「えぇ、お待たせしました」

村長「ま、まさか…?」

男「もちろん採ってきましたよ」つ瓶

村長「本当に採ってくるとは……」

男「刀欲しいですし」

妖狐「お主のその刀への異様な執着はなんなんじゃ?」

男「刀だと間合いが広いってのもあるが、何より武器は念の為2本持っておきたい」


男「あと刀とかカッコいいし」

妖狐「出おったわ、お主の最もくだらない理由の1つ、『カッコいい』」


騎士「でも、刀を扱うのは意外と難しいと聞きますよ」

男「マジで?」

騎士「まじです」

男「…まぁ、持っておいて損は無い、ハズ!」

妖狐「騎士よ、コヤツはこうなると言う事を聞かんから覚悟せい」

騎士「あはは……」

村長「よし、これで残るは白石だけになったな」

男「あの、あれから人斬りは現れましたか?」

宿主「いんや、一度も来てねぇぞ」

騎士「あの人斬り、雨に当たると逃げましたし、もしかしたら雨が苦手なのかもしれませんね」

男「だったら、とっとと最後の材料も取りに行くか」

騎士「ですね。洞窟へは馬車で向かいましょう」

騎士「半時を過ぎましたし、一応2日分の食料と水が欲しいところですね」

宿主「おぅし!それなら俺に任せな!表の荷馬車だよな?」

騎士「助かります!ありがとうございます、お願いします」ペコッ

妖狐「じゃ、準備ができ次第出発じゃな!」

男「おう!」







男「罰ゲームもまた考えとかないとな!」ニヤニヤ

妖狐「ちっ、覚えておったか」


―――

今日はここで終わります、ありがとうございました

>>616
なんと…盲点でした

―――


ゴトゴトッ
  ゴトゴトッ


 ―馬車の中―



男「結構かかるって言ってたし、少し寝るかなぁ」ゴソゴソ

妖狐「こらっ」ベシッ

男「痛っ、何だよ」

妖狐「『何だよ』じゃなかろうが!何あたかも当たり前の様に、わしの尾を枕にしようとしてるんじゃ」

男「お前の尻尾は枕にする為にある。違うか?」ドヤッ

妖狐「違うわ!よくもまぁそんなドヤ顔できたもんじゃな」


妖狐「それに、先程の大蛇を倒す時、殆ど役に立たなかったお主に貸す義理は無い」

男「でも弱点を見つけたのは俺じゃね?」

妖狐「倒したのはわしと騎士じゃ。弱点を見つけれても倒せなかったら意味は無い」

男「チッ、なかなか言うようになったじゃん」

妖狐「ふん、お主の屁理屈にはもう慣れたわ」




男「そっか」

妖狐「うむ」


ゴトゴトッ
  ゴトゴトッ


男「…………」

妖狐「…………」




男「なぁ」

妖狐「なんじゃ」


男「お前は……妖狐は、これからも旅を続けたいか?」

妖狐「どうした、藪から棒に」

男「んー、辞めたければここで別れても良いぞ」

妖狐「お主は変な物でも食ったか…?」

男「いや。おかしくなった訳では無い」

男「ただ、流石に振り回しすぎたかな、と……」

妖狐「ようやくそこに気づいたか、わしは嬉しいぞ」

男「おう。だから、なんなら今からでも別れたって良い」

妖狐「はあ?何言っておるんじゃ、お主が付いてこいと言うたではないか」

妖狐「それに、ようわからんがわしはお主から離れられないんじゃろ?」

男「いや、離れられるぞ」

妖狐「なにぃ!?」

男「ずっと思い出そうとしてて、最近ようやく思い出したんだが」

男「お前と契約した時、あれどうもちゃんとなってないみたいなんだよな」

妖狐「という、と…?」

男「使い魔にする時は、手順と自身の……ごめん忘れたけど、とにかくあの時の俺だと無理だったんだよなー」

男「ちゃんと契約できてると、そもそも俺の言う事を聞くはずなんだ」

男「でもお前は自由に行動できてるだろ?」

妖狐「そうじゃな。不自由は感じん」

男「だからまぁ、お前は自由だよ」

男「どこに行こうが、どう生きようが妖狐の自由にすると良い」

男「俺と居ると毎度死にかけるぞ」ハハハ

妖狐「ふーむ、急に自由になったと言われてものぉ」

男「まっ、その耳と尻尾さえ見つからなければ街や村を転々とするのも、何処かに身を置くのも良いと思う」

男「それにお前、まだ伴侶も居ないんだろ?」

男「俺が一緒だと探す事も出来ないと思うぞー」

妖狐「余計なお世話じゃ……」

妖狐「お、お主はこれからどうするのだ?」

妖狐「何だったらわしと一緒に―――」






男「飽きたんだよ、俺はな」

妖狐「あ、飽きた…?」

男「うん。街や大きな国に住むのもそりゃ楽しいし何より楽だけど」

男「その狭い世界しか見れないって、悲しいじゃん」

男「ここまでの旅、確かに何度か死にかけた事も、ボロボロになった事もあった」

男「お前と一緒に騒いだり、一喜一憂したり、喧嘩したりと……」




男「でも、国に住んでる時より何倍も楽しかった。生きてるって感じがした」

男「そして何より……。この世界は広いんだなって改めて思った」

男「余計なお世話かもしれないが、あんな場所に居たお前に、今のこの世界を見せてやりたかった」

男「一緒に新しい物を見たり、体験したりしたかった。だから旅に連れてきた」

男「だけどやっぱり……」

男「命の方が大事だと、俺はあの人斬りに負けた時に改めて思った」

妖狐「それは、お主も同じじゃろうが」

男「そうだな。でも俺は旅を終えるつもりはない」

男「だが、妖狐を……俺のせいで死なせたくはない」

男「だから…別れても構わない―――いや、別れようと思ってる」






妖狐「ふん、勝手じゃな」

男「…………」

妖狐「お主はいつも自分勝手じゃ。あんな所から急に連れ出されたと思ったら、今度は旅について来い」


妖狐「挙句、お互い死にそうになるわ、何も考えずにホイホイ依頼を受けたり人助けしたり」


妖狐「黙って聞いておればなんじゃ、わしを死なせたくないじゃと?自惚れるのも大概にせい」


妖狐「自分の身は自分で守る。わしがどうしようが、これも勝手じゃろうが」


妖狐「それとも…わしと一緒じゃ嫌か?」

男「そ、そんなわけ無いだろ…!」

男「でも、俺は妖狐の事を思って―――」

妖狐「それが余計なお世話、と言っておるんじゃよ」

妖狐「それにの、わしはまだお主に借りを返せておらん」

男「か、借り…?」

妖狐「うむ。わしをあの場所から連れ出してくれた事の、な」

男「それは、成り行きだろ」

妖狐「それでもの、わしにとっては借りなのじゃよ」

妖狐「それじゃのに別れるのは、お主が良くてもわしが許さん」

妖狐「…あと、お主はもう少し考えて物を言わんか」

妖狐「二人で死にかけるのに、お主一人じゃと確実に今度は死ぬぞ?」

男「そ、それは…たまたまだっつの!たまたま!」

妖狐「偶然で何度も死にかけてたまるか!」

男「ぅぐ……」

妖狐「そういう事じゃから、わしは着いて行くぞ」

男「…本当に着いて来るのか?」

妖狐「うむ」

男「後悔しても、責任は取れないぞ?」

妖狐「うむ。お主と会った時点で色々と後悔はしておる」

男「これからも、死にかけるかも知れないんだぞ?」

妖狐「死なぬ様に頑張ればよい」

男「で、でも―――」

妖狐「もうよい…。お主が何を言おうと着いて行くという事は変わらん」

男「妖狐……」

妖狐「全く、世話が焼けるのぉ」

男「その、………がと」ボソッ

妖狐「うん?何か言ったか?」


男「…言ったよ。ありがとな」

妖狐「やけに素直じゃな」

男「まぁ、な。後悔したくないし」

妖狐「くふふっ、そうか」

男「おう」






妖狐「(はぁ…。わしと別れようとしてたみたいじゃが……)」


妖狐「(あんな悲しい顔されると、別れるに別れられんじゃろうが)」


妖狐「(まっ、男と一緒に居ると退屈はせんからの)」


妖狐「(それに、放って置くと何をしでかすかわからん)」


妖狐「(仕方ないのぉ、わしがもう少し付き合ってやる事にするわ)」クスッ









騎士「(うぅ……泣けますね……)」グスッ

騎士「(……愛、ですっ!)」

―――

ゴトゴトッ
  ゴトゴトッ


妖狐「さて、と!辛気臭い話はこれで終わりじゃ!」

妖狐「ほれ、宿主に貰ったアレを飲みたいぞ」

男「えっと…あぁ、アレか」ゴソゴソ


 ジャーン

男「何かよくわからない飲み物!」

妖狐「旨いと言っておったからの!気になるわ」

 キュッキュッ…

  キュポンッ


男「これは…林檎?」スンスンッ

妖狐「おほー!甘い匂いがするわぁ……」スンスンッ

妖狐「はよぅ!早ぅ飲みたいぞっ!」

男「わかったわかった、ちょっとコップ出すから待てって」ゴソゴソ

男「っと、あったあった…これも宿主さんがくれたんだよな」

男「とりあえず半分を三人分に分けるか」トットットッ

妖狐「凄いわぁ、輝いておるわ!」

男「林檎を絞った物かな」

男「ちょっと騎士さんにも渡してくる」

妖狐「ほいほい」

 パサッ


男「騎士さん、お疲れ様です」

騎士「おや、どうかされました?」

男「これ、宿主さんから頂いた飲み物なんですが……」スッ

騎士「おぉ、わざわざありがとうございます」スッ

男「まだ余ってますんで、必要であれば言ってください」

騎士「了解です、ありがとうございますっ」

パサッ


騎士「(ふむ……香りが良いですね。これは林檎でしょうか)」スンッ

騎士「(…ん?しかし、林檎に混ざって酒の味が…)」ゴクッ

騎士「(まぁ、私は酒に強いので運転中でも多少は大丈夫なのですが……)」

騎士「(弱い人が飲むと、結構不味い感じの強さですねぇ)」



――




男「渡してきたぞ……ってもう飲んだのか」

妖狐「うーむぅ!これはにゃかにゃか美味じゃのぉっ!」

男「お、おいおい…お前、呂律が回ってないぞ」

妖狐「ふむぅ?しょうかのぉ?」

男「俺も飲むとするか……」ゴクッ



男「げっ」

妖狐「なんじゃあ?どうしたんじゃー」

男「こ、これもしかして……」

妖狐「しょれより、わしゃあもっと飲みたいぞー!」

男「ま、待て待て!」サッ

妖狐「なんじゃっ!わしにはもうくれぬと言うのかぁ!」

妖狐「ましゃかお主……一人占めしようと企んでおるんじゃにゃかろうなぁ!」

男「ちげーよ!」

男「(こいつ、相当な下戸だな……)」


妖狐「よこせぃ!」グイッ

男「おわっ」




妖狐「んくっんくっんくっ……」ゴクゴクッ

男「ば、馬鹿っ!そんなに一気飲みすると……」

妖狐「…げふっ……」

男「大丈夫か…?目の焦点合って無いぞ」




妖狐「…………ふみゅぅ」ポー

男「妖狐…?」

妖狐「…鶏の丸焼きがおるわ」ボソッ

男「…へ?」

妖狐「旨そうじゃのぉ……」ニヤッ

男「お、まっ…ちょっ!やめ…!」

妖狐「ええぃ、観念しぇんかっ……あむぅ!」ガブッ

男「いっっっってえぇぇぇぇ!!!!」ジタバタ


妖狐「しゅこし固いが……これはこれでうみゃいっ!」アムアム

男「千切れる!腕の肉が千切れるぅ!!」バシッバシッ

妖狐「くぅ、肉の分際でまだ抵抗しゅるかっ!こにょぉっ!」ガブー

男「肉じゃねぇ!!はな、せっ!」グイー

妖狐「この肉、生きておるにょか…!?」

妖狐「尚更食べがいが―――ぅぇ」ウプッ

男「ッ!くっそぉぉ!!」ガシッ

―馬乗りになっている妖狐を後ろに投げ飛ばした

 ゴンッ

妖狐「うぼっ!?」

男「すまんすまん…吐くなら外に、な?」グイッ

―急いで妖狐の頭を馬車の外に出す

妖狐「うっ……ぁ……ぅぇ」ウプッ






妖狐「おろろろろろろろろろ」キラキラキラ


 馬車お
    ろ
     ろろろろろろろろ……


男「よーしよし、全部出しとけ」サスサス

男「水、飲めるか?」スッ

男「口もちゃんと拭いとけ」フキフキ

妖狐「おむぅ……」

――


妖狐「…あー、うー」

男「落ち着いたか」

妖狐「記憶があやふやじゃわ……」

男「俺に噛み付いた事、覚えてるか?」 

妖狐「甘噛みの事か?」

男「全然甘くねーっよ!見ろこの歯型!!」スッ

妖狐「?自傷行為…?」

男「お前の歯型だっつの!」

妖狐「きっとお主の腕が旨そうに見えたんじゃろうな。うんうん」

男「ったく、食い千切られるかと思ったわ」

妖狐「まぁ、腕の一本や二本、生えてくるじゃろ?」

男「俺をどんな奴だと思ってるんだよ……」

男「もっとさぁ、こう…酔うならエロい酔い方してくれないか?」

妖狐「なんじゃ、エロい酔い方とは」

男「なんつーか、お前の酔い方は下品だ」

妖狐「乙女に向かって下品……」

男「せめてもう少し女らしく酔ってくれ」

妖狐「ほぉ?」

男「な、なんだよ」

妖狐「よっ…と」


 ドサッ


―妖狐が再度、馬乗りになる


男「まだ、酔いが抜けて無いのか…?」

妖狐「そうじゃな、まだ酔っておるわ」

妖狐「じゃから、お主の言うエロい酔い方とやらをしてやろうと思うての」

男「は、はあ…?」



妖狐「ふーっ……」

男「ほわわわわわっっ!?」

妖狐「なんじゃぁ…?耳が弱いのか?」

男「ち、違う!突然息がかかったから―――」

妖狐「あむっ」


妖狐「今度はひゃんと、あみゃがみをしてひゃるわ」アムアム

男「(や、やばいやばい!喋られると息がかかって耳が余計にくすぐったい!)」


妖狐「んむ……じゅるっ…あんむ……」






男「や、や、や……」

妖狐「うんむぅ?」






男「やめーーーいっ!!」ガバッ

妖狐「おおっと」

男「はぁ……はぁ……」

男「わかった、俺の…負けだ……悪かったよ……」ハァハァ

妖狐「気持ち良く無かったかの…?」

男「し、知らん!ちょっと風に当たってくる!!」スタスタ

妖狐「…?」



パサッ




騎士「…お疲れ様です……」

男「聞いてましたか……」

騎士「…敢えて、聞いてなかったと嘘をついておきます」

男「はぁ……あー、恥ずい」

男「熱い熱い、今顔真っ赤だわ」パタパタ

騎士「(初々しいですねぇ)」ニコニコ

男「騎士さん、何で笑ってるんですか……」

騎士「いえいえ、楽しそうだな、と」フフッ

男「笑い事じゃないですよー、一体いつあんな事を覚えたのやら」

騎士「人は知らぬ間に成長しているものです。もっとも、妖狐さんは人ではありませんが」ハハハ

男「あいつの外見からすると、事案すぎるんだよなぁ……」

騎士「ふふっ、マモノに人間の法は効きませんよ」キリッ

男「確かにそうだけどさぁ……」

騎士「男さんは…妖狐さんの事、好きなのですか?」

男「うーん、どうだろう」

騎士「(おや、なかなか落ち着いていますね)」

男「俺自身、恋愛とかそういうのに疎いから、よくわからないんだけど」

男「妖狐の事は正直、考えた事無かった」

男「ここまで一緒に旅してきたが、出会った時は殺し合った仲だし」

男「こう、親しい友人に近い…かなぁ」

騎士「そうなんですね」

騎士「(やはり、ご自身が仰る通り、疎いから気づいていない感じですね……)」

騎士「(どこかでお互い意識させるような事でもあれば、また変わるかもしれませんね)」フフッ

男「(…騎士さん、すんごいニヤニヤしてるんだけど……)」





騎士「うん…?あれは……」

男「ん?」

 ゴトゴトッ……
   

親分「ちょっと待ちな!」ザッ

親分「おうおう、兄ちゃん達…通行料は払ってもらわないとなぁ?」

騎士「うっわ、よくある面倒くさいアレですね……」

親分「あん?どうした、オラッ」ガンッ

男「…………」イラッ

騎士「あのー、通行料と言うのは…?」

親分「そんな事もわからねぇのかよ……。てめぇらの持ってる荷物全部置いてけや!」

騎士「それは、ちょっと困りますねぇ」

親分「てめぇが困ろうが関係無ぇんだよ!」

―騎士に話しかけている親分と思わしき人物と、その近くに仲間らしき人物が二人見える


騎士「大きなお声を出すと、馬が怖がりますので止めてください……」

親分「はんっ!知ったこっちゃねぇなあ!」

親分「荷物を置いていけば命だけは見逃してやるぜ?」

騎士「困りましたねぇ……」

 パサッ

山賊「親分!後ろになかなか良いもんが居ましたぜ!」グイッ

妖狐「っと、なんじゃなんじゃ」

親分「ほぉ?女か。こいつは高く売れそうだな」

男「ッ!」ギリッ

親分「そいつは連れて行け!それと荷物も全部―――ぐげっ?!」

騎士「だから、静かにしてくださいと言ってるじゃありませんか」

―騎士が眼前の親分の頭を蹴り飛ばした


男「えぇ!?あの…ちょっ」オドロキ

騎士「先程までの気分が台無しにされて、私は今…怒ってますよっ!!」


親分「ぐっぞ…!ナメやがって!!」

親分「おめぇら!やっちまえ!!」

騎士「はぁ、何ですかその小物が言いそうな言葉は」


―騎士が馬車から飛び降り、軽く子分二人を武器も使わず往なす

親分「なっ、なんだ…こいつはッ!?」

騎士「ただのしがない兵士です…よっと!」ドスッ


―騎士が親分の腹に拳を入れ、更に背負い投飛ばす


 ドシャアッ

親分「うっぐ……」

騎士「さて、と。私達に楯突いた報いを受けてもらいますよ」ゴソゴソ

―騎士が親分達の懐を漁る

騎士「ふむ…少しばかりの装飾品、だけか」

騎士「こちらの方は……特に目ぼしい物は持っていませんね」ゴソゴソ

騎士「ほぉ……流石お頭、良い物持ってるじゃありませんか」ゴソゴソ

騎士「装飾品に、これは……良い小太刀ですねぇ」チャキ

親分「て…めぇ…!」ハァハァ

騎士「私も鬼じゃありませんからね、命は取りませんよ」

騎士「でも、追い剥ぎをするなら、される覚悟も必要ですよ?」

騎士「次来たら、貴方達のその価値の無い命も貰う事になるかもしれませんよ」

男「おっかねぇ……」

騎士「さっ男さん、洞窟へ向かいましょうっ」

男「は、はひ……」


ゴトゴトッ
  ゴトゴトッ


男「あの……」

騎士「先程の件ですか?」

男「えっと、その……」

騎士「私もよくああいうのに合っているんですけど、昔に親友が教えてくれましてね」

男「親友…?」

騎士「はい。その方が、『追い剥ぎに慈悲は必要無ぇ。むしろ来たら追い剥ぎ返せ』って」

男「なかなかワイルドな親友さんですね」

騎士「一応昔は手加減していたのですけど、その親友と出会ってからは今みたいな感じですね」アハハ


騎士「それに、ああいう役は私だけで十分ですよ」

男「騎士さん……」

騎士「男さんに任せちゃうと、躊躇いなく斬りそうですし」フフッ

男「もう少し遅ければ多分斬ってましたよ」

騎士「だと思いました」


騎士「っと、洞窟がそろそろ見えてきましたね」  

男「ようやく、か」




―――

今日はここで終わります、ありがとうございました

 ―入り口―


騎士「暗いですね……」

男「妖狐、アレを頼む」

妖狐「仕方ないのぉ、ほれ」ポゥッ

―妖狐の人差し指に炎が灯る

騎士「便利ですねぇ」

男「ここに村長の言ってた白石とやらがあるんだよな?」

騎士「みたいですけど、一体どこにあるんでしょうね……」

妖狐「とにかく、進むかの」

男「あぁ」

騎士「ですね」


  ジャリッ ジャリッ ジャリッ


男「結構道はちゃんとしてるんだな」

騎士「ここは昔、採掘場だったそうですよ」

妖狐「『だった』…?」

騎士「はい。数年前までは使われていたみたいです」

男「…あー…。なんかもう嫌な予感しかしない」

妖狐「何故使われなくなったんじゃ?」

騎士「簡単に言うと、事故が起きたから…ですかね」

妖狐「事故、か……」

男「その事故の原因は?」

騎士「魔物、ですね」

男「やっぱり、か」

騎士「はい……」

妖狐「なら、もしかしたらその魔物が現れる可能性がある…と?」

騎士「そうですね、あります」

妖狐「…はぁ。なんでわしらが行く先々には、常に魔物がおるんじゃ……」

男「妖狐は何かに憑かれてるんじゃないか?」

妖狐「馬鹿言え、憑かれてるとしたら間違いなくお主じゃ」

男「ドンマイっ」ポン

妖狐「お主じゃっつーの!」


キキーッ
 バサバサバサ


妖狐「な、何じゃあ!?」ガクブル

騎士「わわっ…。多分妖狐さんが大声を出したからでは」

騎士「コウモリ…ですね」

男「『な、何じゃあ!?』だって。ぷぷっ」

妖狐「むぐぐっ!覚えておれよ……」

 
 ジャリッ ジャリッ ジャリ…


男「なぁ、騎士さん」

騎士「はい。何でしょう?」

男「事故の原因だったその魔物…。一体どんな奴なんだ?」

騎士「私はその場に居合わせておらず、最近資料を整理していた時にたまたま読んだだけなのですが」

騎士「何でも、『ぶよぶよした物体』だそうです」

男「ぶ、ぶよぶよ…?」

騎士「はい。ぶよぶよです」

妖狐「なんじゃそれは。わけがわからんの」

騎士「そうなんですよ、訳が分からない―――だからこそ怖いんですが」

騎士「正確には、『半液体状の物体』です」

騎士「その魔物を閉じ込めた場所に近づけないように、この採掘場を閉鎖した―――らしいですよ」

騎士「入り口の開け方は知っていたんで、問題ないですが」

男「閉じ込めた…?それじゃまるで、倒せなかったみたい―――」

騎士「その通り、倒せなかったんです。為す術が無くて」

男「…出会うと不味い奴だな、それ」

妖狐「やめんか。お主がそう言うと絶対出てくる」

騎士「得体の知れない相手ですし、対峙した場合は逃げた方が良さそうですよね」

男「倒せそうなら倒そう」

妖狐「逃げたい……」

 
 ジャリ ジャリ ジャリ…

妖狐「のぉ、この下のはなんじゃ?」コツッコツッ

騎士「あぁ、これは線路ですよ」 

妖狐「線路?」

騎士「はい。トロッコという乗り物が走る道みたいなものです」

騎士「こちらの土地ではあまり見かけない技術ですね」

妖狐「ふーむ、歩きにくくてかなわん」

男「トロッコって何なんですか?」

騎士「そうですねぇ、この線路上でのみ走れる箱みたいな感じです」

妖狐「箱が動く時代かぁ……」

男「一度乗ってみたいな」

妖狐「やめい。お主がそう言うと絶対乗るはめになる」

男「お前さっきから俺の事なんだと思ってるんだよ」

妖狐「悪い意味での予言者、かのぅ?」

男「ひっでーな」

―――


















モゾモゾ
 ベチャッ



  ズルル……

―――

 ―採掘場【跡地】―


男「おおっ、広い所に出たな」

騎士「あっ、ちなみにトロッコと言うのは、そこに転がってるアレです」

妖狐「ほぉ、確かに箱じゃな」

妖狐「し、しかしぃ…重いぃぃ」ググッ

騎士「並の力で動かすのは大変ですよ」

騎士「本当は『エンジン』と言うものを用いて動かすんです」

妖狐「えんじん?なんじゃそれ」

騎士「ガソリンという特殊な油を入れて動かす装置、ですかね」

男「こんなの見た事ないな……」

騎士「そもそも、この技術は使っていた方々でさえ詳細が分からないみたいですよ」

男「はぁ!?」

騎士「このエンジンと言ったものや他の物も、遥か昔から既にあったみたいなんです」

騎士「機器の手入れの仕方は……例えばこの採掘場だと、それについての文書が元々あったみたいで」

騎士「ここが閉鎖されるまで、便利なので使っていたという事ですね」

妖狐「先ほどから、遠くで音が鳴っているのもソレか?」

騎士「多分、半永久的に動き続ける溶鉱炉だと思います」

騎士「魔物が出現した時、慌ててたんでしょうね。電源を切り忘れたんだと思います」

男「しっかし、そんな分からない物をよく使えるな」

妖狐「剣の創り方は解らずとも、扱う事はできる。みたいなもんじゃろ」

騎士「おっ!上手いですね」

男「(未知の採掘場……ここは一体なんなんだ…?)」

妖狐「それで、目的の白石はどこに?」

騎士「えーっと……うーん、流石に都合良く鉱石のリストとかは無いみたいですね……」ゴソゴソ

男「村長は、白石を手に入れるのは難しいって言ってたから多分、高価な物なんだと思う」

騎士「だとしたら、もっと奥なのでしょうか……」






妖狐「…む?」ピクッ

男「どうした?」

妖狐「のぉ、ここにおるのはわしらだけか?」

騎士「だと思います。現在ここは立ち入り禁止ですし」

男「ちょっ!それダメじゃん!」

騎士「……まぁ、バレなければ大丈夫ですよっ」

男「騎士さんってたまに大胆だよなぁ」

妖狐「…ふーむ。ま、いいわ」

騎士「ここからどうします?」

男「とりあえず、奥に進むしか無い、よな…?」

騎士「では、進みましょうか」

妖狐「…うむ」


――


 ジャリ ジャリ ジャリ

騎士「おっ、ありました」

男「これは…?」

騎士「電力を使って動かす、移動装置です」

騎士「昔の方法はわかりませんけど、今とは別の手段で電力を送っていたみたいなのですが」

騎士「それを今の環境でも私達が使えるように改良した感じですね」

男「よくわからんが、これで移動するのか」

妖狐「放置されていたみたいじゃが、ちゃんと動くのか?」

騎士「装置が生きていれば、動きますね……」カチャカチャ

ピコンッ

騎士「おぉ、作動しましたよ!」

男「えっと、ここに乗れば良いのか」

妖狐「おっふぅ……ふわふわするの」

騎士「その枠から出ないでくださいねー」


 ガチャコンッ


 ウィ
 |
 |
 |
 ン


 ガコンッ



妖狐「うぇっぷ、気持ち悪……」

男「確かに、この止まる時の胃が上に持ち上げられる感じは……」

騎士「あまり良いものではありませんよね」ハハハ


 ―採掘場【跡地】B1―

 ピチャン

 ピチャン



男「気味悪いな、ここ」

妖狐「暗いのも相まって、更にじゃな」

騎士「あまり長居はしたくありませんね」

男「んじゃ、さっさと行く―――」

妖狐「待て!」グイッ

男「な、何だ!?」

妖狐「《火炎》」ポヒュンッ


―妖狐がいつもより弱い《火炎》を前方に向けて放ち、それが壁に当たった


 モゾ…


騎士「なっ!?アレは……」

男「急にどうしたんだよ」

妖狐「鈍感なお主は気づかんか?騎士は分かったみたいじゃがな」

騎士「最悪ですね……、まさかのですよ」チャキ

男「え、なになに?まさか?さっき言ってた魔物?」

妖狐「何故お主は嬉しそうなんじゃ……」

男「いやー、実は気になってて―――」


 ヒュンッ

騎士「男さんっ!!」ガバッ

―騎士が咄嗟に男を庇う


男「おわっ!」

騎士「お怪我はありませんか!?」

男「あ、あぁ…。それより、何だコレは」ベチャァ

妖狐「何をモタモタしておる!来るぞ!!」

男「不意打ちとはやってくれるなぁ!」

妖狐「お主が鈍感過ぎるからじゃろうが!」

騎士「皆さん構えて!」

男「クッソ、暗くて見え辛え!」

妖狐「わしに任せい!」ポォォ

―妖狐の体が淡い炎に包まれる

妖狐「これで少しは見えやすくなったじゃろう」

騎士「助かります!」

 ヒュンッ
  ヒュンッ


―前方から男を襲った物が飛んでくる

騎士「おっと……」

妖狐「くぅ、汚らわしいの!」

男「これに当たると動き辛くなるな……」

騎士「どうしますか!?」

男「面倒くせぇ、一気に攻撃を仕掛けるぞ!!」ダッ

―男の後を騎士と妖狐が追う


男「《炎粉》ぉ!」ボボボッ


 ビチ  バチッ  ビチ
    

男「見えた…!」

男「二人共、追撃の準備ッ!!」ザッ

騎士「っ!はい!」

妖狐「承知ッ!」




男「何だかよくわからんが、倒させてもらう…ぞッ!!」ブンッ


―男が魔物らしき物に《丈華》を繰り出す!


 グニュン
  グニュン


男「(な、何だッ!?全く手応えが―――チッ、今は気にしてる場合じゃないな…!)」

男「騎士さん!!」

騎士「わかりました!」ダッ

―男の掛け声と共に騎士が《閃突》を繰り出す!


 ズムッッ


騎士「(んっ!?こ、これは…!!)」

騎士「妖狐さん!」

妖狐「ほいほいッ!」シュゥゥ

―騎士の掛け声と共に妖狐が《火炎》を放つ!

   ボンッッ



 ベチャッ   ベチャベチャ


男「倒した、のか…?」ハァハァ

騎士「案外、あっさり…でしたね」

妖狐「う、むぅ」

男「は、ははっ……なんだ、弱っちいじゃん。拍子抜けだな!」ゲシッ

―男が飛び散った残骸を蹴飛ばす


妖狐「うーーむ……」

騎士「どうさかされました?」

妖狐「閉じ込めなければいけない程の魔物が、こうも簡単に死ぬとは思えなくてのぉ」

男「でも、現に死んでるぜ?ほら」ユビサシ

妖狐「うむぅ……」

騎士「ま、まぁ…大事に至らなかったという事で」

妖狐「そうじゃの、先に進むか」

男「おう!」


――














モゾ…



 モゾ…グニュン…
  



―――

今日はここで終わりますありがとうございました

――

男「…ちょっと気になる事言っても良い?」ヌチャ

妖狐「ダメじゃ」

男「なんでだよ」

妖狐「お主がそうやって切り出す時は、ロクな事じゃないからの」

騎士「確かに、この状況で危険な目に合うのは避けたいですねぇ」

男「んー、そっかぁ」



妖狐「ところで、まだ白石がある場所には着かんのか?」

騎士「そうですね…実は言うと、場所は私も知らないんですよね」

妖狐「なんじゃと!?」

男「だからさっき、とりあえず進んでみるかって話になったんだろう」




妖狐「…もう帰らぬか?」

妖狐「わしゃぁ疲れた」


男「ここまで来てかよ!」

妖狐「そもそも白石ってなんじゃ。刀の材料くらいそこら辺の鉄でも構わんじゃろ」

男「霧霞に対抗するにはそれが必要らしいけど、よくわからんよなー」

騎士「きっとその材料でしか作る事が出来ないんでしょう」

妖狐「はぁ、なんと言うか…疲れたとしか言えん」



男「あぁ、なるほど。そりゃお前は疲れるか……」

騎士「というと?」

男「妖狐は俺達の為に、常に魔力を使い、明かりを灯し続けてる」

男「決して大きくは無いが、それを長時間ともなると、疲れるだろうな」

騎士「そうだったのですね」





騎士「では、ここからはこれを使いましょうか」ゴソゴソ

妖狐「む?」

―騎士が何やら硝子の筒を取り出した

妖狐「何じゃそれは」

男「それは…‘‘雷灯’’か?」

騎士「そうです、一応持ってきていたので」

男「俺の国にもあったが……」

男「毎度ながら、こんな道具を誰が作ってるんだか」

騎士「噂によると、男さんみたく不思議な力を、生まれながらにして扱える人達が居るみたいですよ」

男「つまり…魔力をどうこう出来る人らが居るって事か」

妖狐「ふん、人間の癖に生意気じゃな」

男「うるせー」モフッ






妖狐「ひゃんっ」

騎士「ひゃん…?」




妖狐「…こほん。耳を触るでない、次は燃やすからの?」

男「わかった、今後は気をつけるよ」ポンポン

妖狐「だから触るなと言っておろうが!」


妖狐「あと、その様な物を持っておるならとっとと出さんか!」

騎士「すみません、妖狐さんがあまりにも素晴らしい力を持っていらしたので……」

妖狐「う、うむ……それほどでもあるのぉっ!」ドヤ


騎士「それに、雷灯は有限です。ずっと使う事はできないので、妖狐さんが居てくれて頼もしいですよ」

妖狐「ほほぅ!其方はわかっておるではないかっ」コノコノ

男「(妖狐の扱いが上手くなってる……)」

妖狐「それじゃあ気を取り直して、進むか!」

騎士「えぇ、行きましょう!」

男「そうだな……」


 ジャリッ ジャリッ ジャリッ


妖狐「ん…?あれは……」

男「あれ?ここに降りてきた物と同じ様な移動装置がある……」

騎士「となると、まだ降りれるって事ですね」

妖狐「まだ下に行くのか」

男「これだけ降りると、天井が崩れたら一巻の終わりだよな」ハハハッ

騎士「ここは立ち入り禁止ですから、人も来ないでしょうしね」

妖狐「お、お主らやめんか……わしはこんな所で死にとうないぞ」

男「まぁでも、お前も最初はこんな感じの場所に居たんだし、案外なんとかなるかもな」

妖狐「居たくて居たわけじゃ無いわ!」


騎士「あれ…?」

男「どうした?」

騎士「この装置……死んでますね」

妖狐「死んでる?どういう事じゃ」

騎士「動力源が故障…いや、ただ雷気がここに来ていないだけ、か……」

男「雷灯と同じく、雷の魔力が必要なのか」

騎士「だと思います」

男「妖狐、お前の力で何とかならないか?」

妖狐「無理じゃな。どこに流せば良いのか検討もつかんし」

妖狐「何より、放出の微調整はわしにはできん」

妖狐「出せばこの装置とやらの保証は無いぞ」

男「うーん、そうか。どうすっかなぁ……」

騎士「この階に、装置に雷気を流す物があるみたいですよ」

男「何か心当たりが…?」

騎士「心当たりというか、地図に描いてました」

男「地図ぅ!?持ってたんですか!?」

騎士「先ほど拝借しましたっ」

妖狐「用意が良すぎるじゃろ……」

騎士「ここから左にぐるっと半分回った所にあるみたいですよ」

              【B1】

『雷源』      『階段』


    
     『移動装置(B2-6)』
        ←‘‘現在地’’





          『移動装置(1F)』

男「んじゃあ雷源とやらの所に行ってみるか」

妖狐「じゃな」

騎士「ですね」

 
 ジャリ ジャリ ジャリ

男「これが……雷源?」

騎士「みたいですね」

妖狐「わしには、ようわからん」

騎士「おや、起動ボタン押しても何も起こりませんね」

男「これ、見た感じ移動装置と同じく死んでる、ってやつじゃないか?」

騎士「…みたいですね……」

騎士「こちらにも雷気が流れてなく、この雷源装置自体も動きませんね」

騎士「貯蓄していた雷気が切れたんでしょうか」

妖狐「ええぃ、もうまどろっこしいわ!」スッ

 バチチチッ

男「うおっ、お前!」

騎士「おや…?」

 パッ ピカー

妖狐「ほぅれ、点いたではないか」ドヤ


男「運が良かっただけだろ」

騎士「なかなか頑丈な物ですねぇ」

妖狐「わしに礼くらい言っても罰は当たらんぞ……」


騎士「何はともあれ、これで動かせますね」

男「で、どうやって操作するんだ?」

騎士「それはですね……えっと……」

騎士「えいっ」ポチー

男「えぇ!?」

妖狐「…こやつ、適当に押しおったわ」

騎士「B2って光ってるランプのボタンを押しましたし……平気ですよ、へーきへーき」


騎士「大丈夫!何とかなってますよ!」

妖狐「男と同じ様な事言っておるな……」



男「…とりゃりゃりゃりゃ!」ポチチチチ

妖狐「何をしておる!?」

男「どうせだし、隣にあるB3-B6までボタンを押してみた」

妖狐「よくわからぬ物は触るな、と教わらなかったのか?」

男「好奇心に負ける事もあるさ」

妖狐「幼稚な奴め」

男「体が幼稚なお前に言われてもねぇ?」

騎士「とりあえず、戻りましょうか!」


 ジャリ ジャリ ジャリ

妖狐「ん…?おぉっ光っておるな!」

騎士「生き返りましたね!」

男「凄えな……」

騎士「ちなみにこの移動装置からは、最下層まで移動できるみたいですよ」

男「じゃあ最下層まで行くか」

妖狐「とっとと帰りたいしの」

騎士「…最下層、B6ですって……」

男「おいマジかよ」

騎士「先ほどボタンを押しておいて良かったですねぇ」

妖狐「まだ5階もあるのか……」

騎士「最下層には溶鉱炉もあるみたいです」

男「うっし!んじゃ降りるぞ!」スッ

妖狐「またアレが来るのかぁ……」スッ

騎士「皆さん乗りましたね?では、降りますよー」ポチー

 ガシャコンッ












―ベチャッ






  ガコンッ

妖狐「うえぇー……もう嫌じゃぁ…… 」フラフラ

騎士「むむむ……」

男「何度も味わいたくないな」

騎士「い、行きましょうか……」


 ジャリ ジャリ ジャリ


男「結構歩いたな」


騎士「地図によると―――あっ」

妖狐「なんじゃ、その嫌な予感しかせぬ『あっ』は……」

男「俺も思った」

騎士「今思い出したのですが……」

騎士「魔物を閉じ込めたと、ここに入った時に言いましたよね…?」

妖狐「言っておったな」

男「うん、聞いた」

騎士「そ、その魔物を閉じ込めた場所が…この最下層B6なんですよ」ダラダラ




男「…でも俺ら、もう魔物倒したよな?」

妖狐「そうじゃな」

騎士「違うんです。あの魔物……‘‘小さすぎる’’んですよ」

妖狐「どういう意味じゃ?」

騎士「おかしいと思ってたんです。資料で書かれていた大きさと明らかに違っていて」

男「大きさ、か―――あっ」

妖狐「お主もか」

男「騎士さん、非常に不味いな」

妖狐「気になるからとっとと言わんか」

男「……俺らが倒した魔物、騎士さんの言う通り結構小さかった」

男「だがもしそれが‘‘同じ魔物’’だとしたら……」

騎士「はい。恐らく……」

妖狐「なんじゃなんじゃ!ようわからん!」

男「この最下層に居るんだよ、その本体が…!」

妖狐「…は?」

妖狐「あの魔物の更にデカイ奴がか?」

騎士「だと思います」





妖狐「…………よし!帰るか!」スッ

男「待て待てぃ!」グイ

妖狐「離さんか!こんな物騒な所から、わしは一刻も早く帰りたいぞ!!」

男「でも白石が必要だ」

妖狐「んなもん知るかあ!それよりわしらの命が大事じゃ!」

騎士「あの魔物、妖狐さんの炎はともかく、男さんと私の攻撃は効果が薄そうなんですよねぇ」

男「そうだな…こう、攻撃した時に手応えが全く無かった」

騎士「物理が効かないとなると、妖狐さん一人では厳しいかと思われます」




男「…騎士さんも、採りに行くのは諦めろ、と?」

騎士「そうです。危険すぎます」

男「…………」

騎士「それに、刀が作れずともきっと何か他に手が―――」




男「無ぇよ、そんなもん」 

男「他に手があるなら、もう俺達があの村に着く前にしてるはずだ」

男「どうしようもないから、こうして材料を採りに来た」

男「俺は村長と約束した。だから絶対に材料を集める」

男「危険だろうがなんだろうが、やると決めたからには投げ出したくない」

男「投げ出した後に、後悔する事はわかってるしな」

騎士「男さん……」

妖狐「はぁ…。その気持ちはわからんでも無いが、わしらの事を考えておるんじゃろうな?」

妖狐「お主の戯言に付き合って、命を落とすかもしれんのじゃぞ?」

男「…わかってる。だから……」






男「ここからは、俺一人で探しに行く」

騎士「なっ、お一人でですか!?」

妖狐「ほぉ?」

男「流石に、危険とわかってて付き合わせるつもりは無いよ」

妖狐「はぁ、全くお主は―――」











騎士「私は許しませんよ、そんなこと…!」ギリッ

妖狐「き、騎士…?」

騎士「危険だから一人で行く?馬鹿なんですか」

騎士「何故そうやって、自分だけで背負い込もうとするんですか…!」

騎士「危険だとわかってて一人で行くなんて、もっと危険に決まっているでしょう!」



男「で、でも俺は皆の―――」

騎士「余計なお世話ですよ、そんなの」

騎士「約束したと言うのなら、それは私だって同じです!」

騎士「それとも…私の事、信用してないのですか…?」

男「そ、そんな事は…!」

騎士「なに格好つけてるんですか…!死んだらそれまでなんですよ!!」

騎士「…男さんは、残された人の気持ち……考えた事ありますか?」



騎士「また、そうやって……私は置いて行かれるのですか……」ボソ

騎士「確かに、危険な場所に同行させたくないと言うのはわかります」

騎士「ですが、待つぐらいなら…私は一緒に行きます!」



妖狐「…だ、そうじゃぞ、男よ」

男「…わ、わかったよ、悪かった……」

男「妖狐はともかく、成り行きで一緒に来てもらった騎士さんには、なるべく迷惑かけたくなかった」

男「その…なんだ。そこまで心配してくれてるとは正直思わなかった」

男「『余計なお世話』…か。ははっ…妖狐にも言われたな、それ」






男「ごめん。…ありがとう」

男「じゃぁ……予定通り、三人で行こう」

妖狐「ちょっ待たんか!わしの意見は!?」

男「え?ここに残るの?そりゃ止めはしないけど……」

男「真っ暗だし、帰り方もお前じゃわからないだろうし、魔物も何処から来るかわからない……」

男「そんな場所に居たいなら、どうぞどうぞ」

妖狐「む、ぅ……」


妖狐「ま、まーそうじゃな!やはりここはわしが着いて行かんと、お主らだけじゃ心細いしのぉ!」

妖狐「仕方ないっ、しかたなーく着いて行ってやるわ!」

男「そりゃどうも」

騎士「では、とっとと材料を採って帰りましょう!」

男「だな!」

妖狐「うむ!」



―――

今日はここで終わります、ありがとうございました

 ジャリ ジャリ ジャリ


妖狐「むっ…!」ピク

男「どうした…?」

妖狐「皆、止まれ」スッ

騎士「何か奥に居るのですか…?」

妖狐「先程言っておった、魔物の本体かもしれん」

男「この曲がり角の先か……」

騎士「なるべく音を立てずに近づいてみましょう」


 シャリ… シャリ… シャリ…


男「ぉ…凄え……」チラッ

妖狐「なんじゃ…?居たか?」

男「かも、しれない」

妖狐「ハッキリせんやつじゃのぉ」

男「この暗闇の中で光ってる物が、奥にあったんだ」

騎士「暗闇で光る……それは、白い光ですか?」

男「ん?あぁ、そういや白かったな」

騎士「男さん、きっと白石と言うのはそれでは…?」

男「っ!なるほど、白く光る鉱石か……」

妖狐「見つかったのか?ならとっとと―――」

男「待て待て、焦るな」

男「その光る鉱石の周りに、何か居るんだよ」

騎士「それってもしかして……」

妖狐「やはり、避けては通れぬか」

男「でもどうする?俺達じゃ、もうあの大きさは倒せないぞ?」

騎士「では、二人が囮になって、最後の一人があの鉱石を採りに行く…と言うのはどうでしょう?」

男「そう、だな。それで行こう」

妖狐「それしか無さそうじゃしな」

妖狐「で?誰が採りに行くんじゃ?」

男「剥ぎ取るなら力が必要だから、妖狐は除外だな」

妖狐「お主は躊躇無く、囮にわしを入れるんじゃな……」

男「となると、騎士さんか俺か……」

騎士「私が囮になりましょうか…?」

男「うーん、いや……」

男「囮は妖狐と俺でやろう」

男「妖狐と俺は、二人で敵と戦う事に慣れてる」

男「騎士さんは、妖狐と出会ってまだ日が浅い。なのでお互い戦い辛いと思う」

騎士「わかりました。では、お二人に任せます」

妖狐「しかし珍しいのぉ。お主なら意地でも倒すと言いそうなんじゃが」

男「攻撃が効かないから仕方がない」

男「そして、こんな不気味な場所からとっとと帰りたい…!」

騎士「ですね!」

妖狐「同感じゃな……」


男「よし、じゃあ……行くぞッ!!」ダッ

騎士「はい!!」

妖狐「うむ!!」ダッ


―男と妖狐が魔物目掛けて駆け出す!


男「妖狐ッ!」

妖狐「わかっておる……《火炎》!!」ボシュゥッ

―妖狐の放った《火炎》が命中し、魔物が弾け飛んだ

 ベチャァッ
   ビチビチ

男「おーおー、結構……いや、カナリ大きいな」

妖狐「気持ち悪いのぉ……」

男「さて、どうしたものやら…ん?」

男「(奥へと続く道があるみたいだな)」

男「妖狐、こっちに道があるぞ」

妖狐「騎士の居る所より更に奥か」

男「あぁ。なるべくこっちに引きつけよう」

男「妖狐、天井を崩さない程度で派手にやっていいぞ!」

妖狐「任せい!」ボシュゥッ


―妖狐が立て続けに《火炎》を放つ





騎士「(お二人共、流石です…!)」

騎士「(魔物が気を取られている内に!)」ダッ

―騎士が鉱石まで駆け寄る

騎士「(むっ、硬いですね……)」ググッ


騎士「(そうだ、この小太刀で……)」ゴソゴソ

騎士「(ふぅ…。集中、集中……)」


騎士「(一点に力を込めて…!よっと!!)」ガツンッ


 ゴロッゴロ…


騎士「(やった!取れました!)」

騎士「(後はお二人に知らせるだけ―――)」ベチャ

騎士「(え…?これ、は……)」チラッ

騎士「(っ!!そんな…!)」


騎士「(魔物は、鉱石の周りだけじゃ無く、ここ一帯に体を張り巡らせて……!!)」

騎士「ここも危険ですね―――」ハッ

騎士「(奥に行くと不味い!早くお二人に知らせないと!!)」ダッ








「はーぁ、もう!下に降りたと思ったら、面倒な魔物の住処に入っちゃってさぁ」

「全く、世話が焼けるんだから」


――




男「はぁ…はぁ……クソ、攻撃さえ効けば…!」

妖狐「囲まれたぞ。どうするんじゃ…?」チラッ

男「どうもこうも、何とかするしか―――」


「ソコのお二人さん!こっちこっち!」


男「な、何だ!?」

妖狐「わからんが、この窮地から脱せられるかもしれん!」

男「わかった、行くぞ!」ダッ

妖狐「じゃな!」タッ








「こっちよ、一先ずここに隠れるにゃ」


男「はぁ……ハァ……」ドサ

妖狐「つか、れた……」

男「誰か知らないけど、助かったよ」

妖狐「そうじゃの……む?」

騎士「良かった、皆さん御無事で…!」

男「騎士さん!」

妖狐「ほぅ、其方も無事じゃったか」

男「でも、何故ここに…?俺達よりも後ろに居たはずじゃ……」


騎士「それは、このお方に助けて頂いたのです」


「にゃふふ、やっほー。こんにちは?いや、こんばんは…かにゃ?」フリフリ

「そこの甲冑のお兄さんは、抜け道からここに連れてきただけだよ」

男「そうだったのか」

妖狐「むむ!?」

妖狐「『にゃ』…じゃと!?」

男「どうした」

妖狐「ふっふっふっ……ここはわしに任せい!」

妖狐「ここに来る時にわしは、ますたーしたからの!」

男「お、おう…?」

騎士「…?」



妖狐「ん"ん"……」




妖狐「助けてくれた事、感謝するにゃ!」キリッ



男「ぅわ……」

騎士「あはは……」

「えーと……」


妖狐「なんじゃ、この微妙な空気は」

妖狐「こやつは猫語しか通じないのではないのか!?」

男「猫語ってそもそも、語尾に『にゃ』って付いてるだけじゃん……」

「なかなかのドヤ顔だったわね」

妖狐「…こほん」カァァ



妖狐「貴様は何者なんじゃ?」

男「無かった事にしようとしてる」

妖狐「うるさい」

「あ、ごめんごめん。自己紹介がまだだった」



猫神「私は猫神。よろしくねー」

妖狐「ふん、‘‘神’’か」

騎士「神様…かはよくわかりませんが、ご丁寧に猫らしき獣耳と細い尻尾までありますね」

猫神「そこら辺は面倒臭いから…また今度、ね?」

男「俺は男だ。で、こっちが妖狐」

騎士「私は騎士と言います」

猫神「はーい、よろしくね」



猫神「それより、何で君達はここに来たの?」

猫神「まさか……ここを住処にしている魔物を倒しに来た、とか?」

男「いいや。出来れば倒したかったが、ここに来たのは違う理由だ」

猫神「そっかー、今回も魔物退治かと思っちゃったにゃー」


騎士「(今回、‘‘も’’…?)」

男「ところで騎士さん、白石は採れました?」

騎士「あ、はい!ちゃんとここに」スッ

男「良かった、じゃあとっとと帰るか」

猫神「あれ、帰っちゃうの?」

妖狐「当たり前じゃ。もう用は無いしの」




猫神「でも、君達が降りて来た装置……あの魔物が纏わりついてたけど」

男「」

妖狐「」

騎士「あらら……」

男「本格的に、どうするか考えないとな……」

猫神「これだけ人数がいれば、倒すのは簡単だよ?」

騎士「と言いますと?」

猫神「ほら、ここの目の前に大きな溶鉱炉があるでしょ?」

猫神「あの魔物、火が苦手みたいだし……」

猫神「それに、溶鉱炉の中に落っことせば、だいたいどんな魔物も死んじゃうと思うよー」

男「そういや騎士さんが、溶鉱炉が何とか言ってたな」

騎士「そんなに簡単に行くのでしょうか……」

猫神「まーまー、そこら辺は何とかするにゃ」

妖狐「しかし落とすって、どうやってじゃ」

猫神「アナタの火をぶつけて落とせば良いんじゃにゃいかにゃ?」

猫神「にゃーにゃー」ニヤニヤ

妖狐「」イラッ

妖狐「この雌猫を燃やしてもよいか?よいな?よし、燃やす…!」

男「まぁまぁ」ナデナデ

騎士「…猫神さんと妖狐さんは、昔からの友人か知り合いだったり…?」

妖狐「ふん、初対面に決まっておる」

妖狐「こんな強烈な雌猫、忘れたくても忘れられんわ」

猫神「この先もずっと覚えててくれるなんて嬉しいなー」

妖狐「戯け、誰が覚えるか!」

騎士「そう、ですか」フム…

猫神「で、どうするの?」

男「…倒すしか無い、よな」

妖狐「面倒じゃが、な……」

騎士「そうですねぇ」

猫神「おっけ、決まりね。じゃあ連れてくるよ」タンッ


―そう言うと、猫神はあっと言う間に暗闇へと消えて行った


妖狐「足速すぎじゃろ……」

騎士「(猫神、か……)」



―――
――

今日はここで終わります、ありがとうございました

まさか落とすのがバレているなんて…!



―猫神が手を振りながら走ってくる


猫神「ほいほい、お待たせー」

男「お、来た―――か!?」チラッ

妖狐「なんじゃ…この多さは……」チラッ

騎士「だんだんと一つになってますね……」チラッ


男「既に、近くにまで集まって来ていたのも居るみたいだな」

猫神「そこら中、駆け回って集めてきたよー」

男「ま、まぁ……残ってると厄介だしな、うん」

騎士「では、行きましょう!」


―騎士と男が魔物の前に駆け寄る

男「さて、注意を逸らそうにも…どうするか……」

猫神「男くーん!君は何もしなくても狙われると思うよー!」

男「えぇ!?何で!?」

猫神「君の…その靴!」

男「靴…?―――」ヌチャ

男「…げっ!さっきより大きくなってる……」

男「やっぱりあの魔物、分裂しても生きていけるのか……」



男「騎士さん、とりあえず俺が引き付けるから、援護をお願い!」

騎士「わかりました!」



男「先ずはあのデカイ本体に当てるか……」スッ


―男が魔物の本体に《炎粉》を放つ

 ビチチチッ


男「ちっ。やっぱり俺のじゃあんまり効かないな」

騎士「でも、先程の攻撃でこちらを敵と認識したようですよ」


 ヒュンッ

―魔物が半液体状の物を男と騎士に飛ばす

男「よっ…と」ヒョイ

騎士「っと……おや?」ベチャ ジュゥゥ…



騎士「おおっ……」

男「どうした!?」

騎士「男さん、気をつけてください!」

騎士「あのドロドロに当たると、溶けます…!」

男「と、溶ける!?」

騎士「多分、私達が害のある物だとわかったからじゃないでしょうか…!」

男「当たるとますます面倒だな……」


猫神「男くん!そこの……あの少し高い所!そこに誘き寄せて!」

男「高い所……あそこか!」キョロキョロ


―男と騎士が指定された所に全速力で向かう


 タッタッタッタッ

男「ここ、だよな」ザッ

騎士「え、えぇ……」ザッ

男「下には溶鉱炉があるな」

男「本体は……ちゃんと着いてきてるな」

騎士「ですけど……」







男「囲まれちまったな」

騎士「…やはり、あの猫神と言う方は―――」



猫神「ほいっと」スタッ

男「うおっ、ビックリした……」

―背後から謀ったように猫神が跳んで来た

騎士「それで…猫神さん、どうするんですか?」

猫神「にゃふふ、それはねー」ブンッ

男「何を―――」


―するんだ、と男が言いかけたと同時に、猫神が拳を地面に振り下ろす


猫神「《慈砕鬼》!!」





  ドゴォ!
 バキ キ キ キ キ

騎士「えぇっ!?」グラッ

男「はあ!?」グラッ


―地面が凄まじい音を立て、亀裂が入り……崩れる


猫神「よいしょっと」グイッ

男「まずっ―――」

騎士「これ、はっ―――」

―地面が崩れる寸前に、猫神は男と騎士を無造作に掴み放り投げる


男「ぅぐ……な、何が…起こったんだ…?」ズザザッ

騎士「わか、りません……」ズザザッ

―魔物が崩れる地面と共に落ちて行った


 ドポン
  ドボンッ…



猫神「魔物を地面ごと溶鉱炉に落としただけよ」パンパン

―猫神が手を払いつつ、軽い口調で言った

男「地面、ごと…だと……」

騎士「さっきのは何をしたんですか…?」

猫神「あぁ、《慈砕鬼》の事?」

男「じくだき…?何だそれ」

猫神「んーとね、手から…こう、ドガーンっと」スッ

騎士「全くわかりませんね……」


猫神「アタシのは物を壊すくらいしか出来ないけど」

猫神「限度は一応あってさ、さっきのは触れた物の固さより強い力をぶつけて壊してる感じ」

猫神「まっ、さっきのは地面が丁度あそこだけ緩かったのよ」



男「ん?アタシ…?なんか、雰囲気変わったな」

猫神「うん…?…あっ―――」

猫神「えっと……まぁ、いっか。にゃはは」

騎士「なんだか、呆気なかったですね」

男「本当にそうだよ。俺達が苦労してたのは何だったんだ……」

猫神「ちらほら、そこら辺に残骸がまだ残ってるけど」

猫神「直に息絶えるでしょ」


 コラー!

男「なんだか叫び声が聞こえる」

猫神「妖狐ちゃん忘れてたねー」



妖狐「はぁ……はぁ……。こ、こらぁ……はぁ……」

妖狐「はぁ、はぁ……。ちょっと待っておれ……」ゼーゼー

男「体力無いのに走ってくるからだ」

妖狐「すぅ……はぁー……」

妖狐「ふぅ……」

男「落ち着いたら帰るぞ」

妖狐「うむ。って、違う!お主らはわしを放ったらかしにするな!!」

妖狐「置いてけぼりか!そこの雌猫に鼻の下を伸ばしおってからに!」

男「別にそんなつもりは……」


妖狐「それになんじゃ!炎を当てろ?いつ当てるんじゃ!」

猫神「さっきでしょ」

妖狐「ふん!そうじゃな!さっきじゃったわ!」


男「なぁ騎士さん、妖狐は何で怒ってるんだ…?」コソコソ

騎士「多分、自分だけ除け者にされたからじゃないでしょうか」コソコソ

男「えぇ…、倒せたんだしそれで良いじゃん……」

騎士「妖狐さんは、男さんの力になりたかったんですよ、きっと」

男「そういうもん、か……」

騎士「そういうものです」

妖狐「全く…意気込んで待っておったのに―――」ブツブツ

男「…妖狐」

妖狐「なんじゃ。雌猫に尾を振る戯け者が、何か用か?」

男「その、さっきは出番が無かったが…ここに来るまでお前に何度も助けられた」

男「あの魔物を倒せたのはお前の力あってこそ、だよ」

男「じゃなきゃ、ここまで来れなかったしな」

妖狐「ふん、そうか」

男「それに、尻尾振る相手は妖狐だけで十分だ」ボソ

妖狐「何か言うたか?」

男「尻尾振る相手はお前だけで十分って言った」

妖狐「そこは『何でもない』って言う所じゃろうが!」ポカッ

妖狐「毎度恥ずかしげも無く言いおって……」ボソ

妖狐「(それを聞くこっちの身にもなってみぃ)」カァァ



男「さて、と。じゃあ今度こそ帰るか」

猫神「夫婦漫才は終わった?」

妖狐「誰が夫婦じゃ!」

猫神「アタシとー、男くん?」ギュッ

妖狐「しばくぞ」

男「両手に獣だな」

騎士「それは、喜び辛いですねぇ……」












 ―入り口―


妖狐「出た!ようやく出たー!」

騎士「随分と長く感じましたよね」

男「やっぱ外の空気は旨い」

猫神「にゃふふ、採掘場はジメジメしてたしねー」

男「あれ?猫神は俺達に着いて来るのか?」

猫神「そうするつもりだけど、ダメかにゃ…?」ウワメ

男「ダメじゃないけど、これから俺達はまだやる事があるぞ」

猫神「全然オッケーだよ、どうせ暇だしね」

男「そうか、なら良いんだが」

妖狐「はあ?着いてくるのか?」

妖狐「この雌猫とまだ一緒におれと?わしは嫌じゃ」

猫神「えー、何でそんな事言うのさ」

妖狐「ふん、そもそも身元もわからん奴が同行するのは解せん」

騎士「確かに、そこら辺はハッキリとさせておきたいですね」






猫神「はぁ…メンドクサ……」ボソッ

猫神「それで、何を話せばいいのかにゃん?」

騎士「まず、猫神さんは何故あんな場所に?」

猫神「うーん、たまたま…かな?」

騎士「たまたま、ですか」

猫神「うん」

妖狐「というか、そこの雌猫。神というのはなんじゃ」

猫神「知らない。ただそうやって呼ばれてたから、そう名乗っただけだよ」

妖狐「なん、じゃと……」

男「神と呼ばれていた…?」

猫神「…聞きたいなら話そうか?」

騎士「是非とも」

猫神「長くなると思うし、移動しながらで良いかな?」

猫神「君達、馬車持ってるんでしょ?」

騎士「そう、ですね。そうしましょうか」

男「わかった」

 
 ガタゴトッ
   ガタゴトッ…


 ―馬車の中―


猫神「騎士くんにも聞こえるように、近くで話すね」

騎士「ありがとうございます」

妖狐「で?神ってなんじゃ」

猫神「さっきも言ったように、私はそう呼ばれてただけだよ」

男「誰に…?」

猫神「人間達…かな?」

猫神「気まぐれで村の人間を助けてあげたらさ、なんか崇められちゃって」

猫神「アタシ、猫っていう動物に外見が似てるらしいんだ」

猫神「だから、猫神様って呼ばれてた」

妖狐「その村がどこにあるのか知らんが、こんな所で油を売っていてもよいのか?」

猫神「さぁね。あんな村、もう知らないよ」

男「おいおい、崇められてたんじゃなかったのか」

猫神「知らないったら知らないの!」

男「そう、か……」

猫神「…っ」ハッ


猫神「そ、それより!身元と言えば妖狐ちゃんはどうなの?」


妖狐「雌猫に話す義理は無い」

猫神「にゃはは、冷たいなぁ」

男「こいつ、洞窟に何十年も閉じ込められて居たんだぜ?笑えるだろ」ハハハ

妖狐「笑えぬわ!」ベシッ

猫神「…その閉じ込められたのって、人間に?」

妖狐「む…?まぁ、そうじゃな」

妖狐「わしは、人間とマモノがあの時、手を組んでおったんじゃないかと思っておるが……」

妖狐「いや、そうだと信じたい…のかもしれぬ」


猫神「その人間達を、妖狐ちゃんは恨んでる?」

妖狐「いんや。もう過ぎた事じゃし、今更ってのもある」

妖狐「まっ、こうして生きておるし……」

妖狐「運が悪かっただけじゃろ、と思う様にしておる」




猫神「そっか。……妖狐ちゃんは強いね」

猫神「アタシは、妖狐ちゃんみたいには…なれないな……」ボソッ



 ガタゴトッ
  ガタゴトッ……


猫神「そういえば、やる事があるって言ってたけど」

男「あぁ、俺達は刀を作る為に、あの採掘場に材料を採りに行ってたんだ」

猫神「刀…?」

妖狐「そうじゃ。厄介な刀を持った人間が暴れ回ってての」

妖狐「ソイツを止める為、そしてその刀に対抗する為に、こちらも刀を作ると言う訳じゃよ」

猫神「何で君達は、そういう事に首を突っ込むの?」

猫神「その暴れ回ってる人、君達の友人とか?」

男「違うな」

猫神「じゃあ、何で…?」

男「知ってしまったら、見逃す事は出来ないだろ」

妖狐「わしも男も甘いが、そんな所じゃな」

猫神「わかんない。男くんはまだしも、妖狐ちゃんまで何で―――」

妖狐「『何で』と言われてものぉ……」

男「助けたいから助けるってだけだよな」

妖狐「毎回それで痛い目を見ているがな」

男「次は大丈夫!」

妖狐「お主の大丈夫は信用ならん」

猫神「その人間を助けて、何になるの?」

猫神「何で、そこまで命張れるの…?」 

男「『何で何で』って……そんなもん知るかよ」

男「じゃあ猫神、お前は何で俺達を助けてくれたんだ?」

猫神「えっと、それは……」

男「俺達が困ってたから、だろ?」

猫神「……そういう事にしとくよ」

男「そんなもんだよ」

妖狐「そういう事ってなんじゃ」

猫神「うーんと、困ってたみたいだから助けましたー」

妖狐「わざとらしいのぉ」

男「それで、もう一度聞くが…猫神は着いてくるのか?」

猫神「うん。男くん達が何をしようと、アタシは着いて行かなきゃいけないからね」

男「そんな義務は無いと思うが……」

猫神「まぁ、気分…かな」

妖狐「わしとしては、勘弁願いたいところじゃな」

猫神「むー!」



猫神「妖狐ちゃんのいじわるーっ」ムギュー

妖狐「や、やめんか!抱き着くでない!」

男「(ほぉ……)」ジー




猫神「あれあれ?耳が弱いのぉ…?」フー

妖狐「わふぅ……て、やめい!」

猫神「こしょこしょこしょー!」

妖狐「んんっ…くくっ、や…めっ!」

―二人は気づいていないのか、じゃれ合いでお互いの服が段々とはだけていく


男「(これはこれは……)」ジー


猫神「妖狐ちゃん、意外と胸小さいんだね」モミモミ

妖狐「揉むな!あと意外は余計じゃ!」

妖狐「貴様はデカイもんぶら下げおって!」ベチンッ

猫神「やんっ、痛いなぁ」

妖狐「わしだって昔は―――」ブツブツ




猫神「妖狐ちゃんの尻尾、良い毛並みしてる」モフモフ

妖狐「ほぉ、雌猫にも分かるとは、流石わしの尾じゃな」

猫神「アタシのは…どうだろ?」スッ

妖狐「ふむ…まぁ、わしのには劣るが、良いと思うぞ?わしには劣るがな!」サワサワ

猫神「んんっ……くすぐったいね」フフ

猫神「にゃふふ、良かったぁ」

猫神「手入れとかは―――」

妖狐「当たり前じゃ!この櫛で毎日―――」











男「(いやー、うん)」

男「(最っっっ高に眼福ですなあ!!!)」ジー


―――
――

今日はここで終わります、ありがとうございました

少し駆け足気味だったかもしれません


 ―宿屋【個室】―


男「材料は村長に渡したし、後は完成を待つだけだ」

妖狐「その間に、例の奴が来るかもしれぬがな」

騎士「それは…多分無いと思いますよ」

妖狐「何故じゃ?」

騎士「あの人斬り、雨が苦手みたいなんですよ」

騎士「今は雨が降ってますし、大丈夫かと」

猫神「ここ数日の天気は、ずっと雨みたいだしねー」モミモミ

妖狐「そうか……うむ……」

妖狐「…………」

猫神「…?」モミモミ

妖狐「だあー!もうっ!胸を揉むな!」

猫神「良いじゃない、減るもんじゃないしさー」

妖狐「鬱陶しいんじゃよ!!」

猫神「でも、揉むと大きくなるらしいよ?」

妖狐「…なに…?それは本当か?」

猫神「うん(多分)」

妖狐「…………」








妖狐「いやいやいや!わしは騙されんぞ!?」

男「(ちょっと考えてたな)」

猫神「妖狐ちゃん、良い匂いがする」ダキッ

妖狐「冗談抜きで、この雌猫をなんとかしてくれぃ……」

男「妖狐は置いといて、村長の事なんだが……」

妖狐「置いておくな!」

男「村長って、どうやって刀を作るんだ…?」

騎士「何でも、自宅の地下が鍛冶場になってるらしいですよ」

男「うっそ……あの家、地下があるのか」

騎士「えぇ。そこでカンカンしてるんでしょう」

男「か、カンカン……」

騎士「二日で出来ると言っていましたので、それまでは待たなければいけませんね」

男「逆に、二日で完成するのか……」

男「いやでも、あの資料によると、昔は凄い刀鍛冶だったらしいし」

男「エルフともなると、なんか色々と不思議な力を持ってるのかもしれん」

騎士「でしょうかねぇ」




男「そういえば、宿主さんは?」

騎士「宿主さんは、私達に気を遣って、今は別の部屋に居るみたいですよ」

男「そっか」





猫神「ねーねー、妖狐ちゃんってどこから来たの?」

猫神「シュウヘン村までは知ってるけど、もっと遠い所から来たんでしょ?」

妖狐「そうじゃなー、わしはその村からもう少し東に行った所じゃの」

妖狐「地図で言うと……この辺りじゃな」トントン

猫神「トアール国……」

妖狐「実際は、ここの近くの洞窟なんじゃが……」

妖狐「トアール国は、男の故郷みたいじゃな」

猫神「この国、大事?」

妖狐「うん…?まぁ、男にとってはそうなんじゃなかろうか」

妖狐「わしにとっては、どうでもよいがのー」

猫神「ふーん、そっかぁ」

妖狐「しかし…しかしじゃな!イムサ国にもあったが、甘菓子と言う物が素晴らしく美味い!」

猫神「知ってるっ、あの砂糖の塊でしょ?」

妖狐「うむ!あれはなかなか癖になる美味さじゃ」

妖狐「そうじゃ……男に買ってもらうと約束しておったのを忘れておったわ」

妖狐「二週間分くらいは買ってもらわんとのぉ」

猫神「…妖狐ちゃんってさぁ」

妖狐「む…?」








猫神「男くんの事、好きなの?」

妖狐「…は?」

妖狐「好き…?誰が?」

猫神「妖狐ちゃんが」

妖狐「誰を…?」

猫神「男くんを」

妖狐「好き、じゃと…?」

猫神「うん。違うの?」

妖狐「そ、そんな事…しらにゅ」キョロキョロ

猫神「(すっごく目が泳いでるんだけど)」

猫神「じゃあさじゃあさ!」













猫神「もうヤったの?」

妖狐「やる?何をじゃ」

猫神「もうっ、とぼけちゃってぇ!」コノコノ

猫神「雄と雌がヤる事と 言 え ば……一つでしょ?」

妖狐「雄と雌が……」ウーン

妖狐「(ん…?もしや接吻の事か…?)」

妖狐「(確かに、雄と雌がやる事、じゃな)」



妖狐「あぁ、それならしたぞ」

猫神「どえぇぇ!?本当に!?」

妖狐「うむ」

猫神「ちょちょっ!妖狐ちゃん、見かけによらずダ イ タ ンっ!」

妖狐「そうか?あんなもの、そんなに驚く程では無いと思うが」

猫神「そ、そんな……まさかもうその境地にまで至ってるとは……」

猫神「でっでっ!どうだったの!?」ハァハァ

妖狐「か、顔が近いわ!」

妖狐「どうって言われても……うーん」

妖狐「想像してたより、ふんわりしてたかのぉ?」

猫神「なる、ほど……男くんは優しい感じなのね」

猫神「妖狐ちゃんは男くんが初めて?」

妖狐「そうじゃな、あそこまでしたのは男が初めてじゃと思うぞ」

猫神「にゃにゃっ!これは熱いわ!」ハァハァ

妖狐「しかし、わしの時代より今は軽いものなんじゃな」

猫神「うーん、そうねぇ。確かに、昔よりは軽い気持ちでする人もいる……かもしれないわね」

妖狐「それに、こう……」

猫神「うん?」





妖狐「今思い出すと、体が火照る」モジモジ

猫神「っ!」カッ

妖狐「な、なんじゃ…そんなに目を見開いて」

猫神「にゃふフ……私がその火照り、解消してあげようか?」ワキワキ

妖狐「其方とアレをやると?馬鹿言え、雌同士など―――」

猫神「でも人間の中には、特殊な人もいるんだよ?」

猫神「それって私達マモノも同じなんじゃないかな?」

妖狐「ま、まぁ…それは否定せんが」

妖狐「しかしじゃな、何故わしと其方の様な雌猫とでしなきゃならんのじゃ」

猫神「まぁまぁ…まあ!!」ガバッ


妖狐「のわっ!こらっ…やめんか!」ジタバタ

猫神「ニャフフっ!きっと妖狐ちゃんもシたいんで…しょっ!」グイッ

妖狐「ま、待て!何故衣服を脱がすんじゃ!?」

猫神「え?だって脱がないと出来ないでしょ?」

妖狐「はあ!?脱がんでも出来るわ!」

猫神「えっ…!まさか!」

妖狐「な、なんじゃ…?」









猫神「くぅ…!妖狐ちゃんは脱がない派だったかぁ!!」

猫神「気づいてあげられなくてごめんね…!」

猫神「じゃあこのまましよっか」スッ

妖狐「待て待て待て!」

猫神「もぅ!まだ何かオプションを付けるの?」

妖狐「おぷしょん?よくわからんが、わしはせんぞ!」

猫神「恥ずかしがらなくて良いんだよ?」

猫神「一緒に気持ち良くなろ?…ね?」

妖狐「いやいやいや!ちょっ、男よ!助けて―――」チラ


男「さて、俺達はお邪魔みたいだから、外に出るか」スッ

騎士「で、ですね……」スッ

妖狐「ま、待って……頼むぅ!」

男「その、なんだ……」





男「すまん!」ダッ


ガチャ
 バタンッ


妖狐「こ、この薄情者めぇ……」


妖狐「ううぅ……」



妖狐「…………」チラ

騎士「っ……」ビクッ

妖狐「騎士よ……助け―――」



騎士「あっ!そういえば、男さんに話があるんでしたー」

騎士「お二人はお楽しみくださいね!それではっ」


ガチャ
 バタンッ



妖狐「ぐぬぅ!あ奴ら、覚えておれよ…!!」

猫神「大丈夫……アタシがそんな事忘れさせて ア ゲ ルっ」フー

妖狐「ひいぃぃぃ……」ガクブル

猫神「男くんと、あんまりヤってないんでしょ?」

妖狐「そんなもん知らにゅ!わしもここから出て―――」

猫神「フフ……ちょっと、お勉強しよっか?」

妖狐「う、う、うあああああ……」グスッ













男「…出てきてしまったが、大丈夫だっただろうか」

騎士「正直、あのタイミングで出てこれて良かったですよ……」

男「…なんだか、いけないものを見てしまったな」

騎士「…ですね……。世の中には知らない方が良い事もあるものだと、改めて思いました」

男「その通り過ぎて困る」

騎士「私達人間と外見が似てる分、あれはマズいですね」

男「女同士がイチャついてるのは好きだが」

男「あそこまで行き過ぎたモノはちょっと、な……」

男「しかもアイツらの話聞いてる感じ、俺らの年齢で言うと、ババアだぜ?」

騎士「そんなにお歳を……」

男「まぁ年齢に似合わない外見だが、それ故にますますマズい」

男「この前も言ったが、俺と妖狐だと傍から見れば事案だ」

騎士「猫神さんは、妖狐さんより背丈が高いですし、まだ少女と言うより女性に近いですよね」

男「だな。だが、あの二人があんな事してるのを誰かに見られると―――」



宿主「よぅ、お二人さん」

騎士「マズイですよねぇ……」

宿主「話し合いは終わったか?」

男「え、えぇ……まぁ……」

宿主「あん?そういや、あの一匹……じゃなかった、二匹はどうした?」

騎士「えーと、そのぉ……」

男「アイツらは今、多分……花園に居ます……」

宿主「花園ぉ?ここの近くにそんな所あったか?」

男「違うんです、物理的にでは無く、その……」

宿主「よくわかんねぇが、大丈夫なんだよな?」

騎士「だと思いたいですね」

宿主「そうかそうか。ならいい」

宿主「俺ぁ、あっちにいるからよ。何かあったら呼んでくれや」

男「わかりました」

騎士「了解です」








男「…はぁぁ……」

騎士「…ふぅぅ……」

男「心臓に悪い」

騎士「早く終わってくれないでしょうかねぇ」

男「覗いてみるか?」

騎士「良いんでしょうか?」

男「少しだけなら、良いだろ。大丈夫かの状況確認だ…!」

騎士「ごくり」


カチャ…
 キィ……


猫神「これは…どうかなっ……」

妖狐「ん…上手いのぉ」

猫神「そうかな…?えへへ……」

妖狐「ほふぅ、気持ちよいのー……」

猫神「じゃあ、ちょっと強くするねー」

妖狐「んんっ……これっ、もう少し弱く……」

猫神「ご、ごめんごめん」

妖狐「そうじゃ、次はわしがしてやろう」

猫神「いいの?」

妖狐「うむ、任せい」


猫神「あんっ…にゃふぅ……妖狐ちゃんも上手いぃ……」

妖狐「流石わしじゃな!」

猫神「ねー」


 パタン……






男「…………」

騎士「…………」








騎士「あの……」

男「言うな……言わないでくれ……」

騎士「はい……」




男「…っそぅ……」ボソッ

騎士「男さん…?」



男「くっっっそおおおぉぉぉぉ!!!!」ダッ

騎士「男さん!?」

宿主「お、おい!おめぇら、外は雨だぞ!?」


男「うおおおおおおおおお!!!!」ダダダダッッ

騎士「男さんんんんっっ待ってくださいぃぃ!!」ダッ



―――

今日はここで終わります、ありがとうございました

ちなみに度々出てくる甘菓子は金平糖の様な物として扱ってます

 ―???―


男「うおおおおおおおおお!!!」ダダダダッッ

男「ハァ…!ハァ……!!」

男「(なんだ!?アレはなんなんだ!?)」

男「(落ち着け、落ち着くんだ、俺!)」

男「(そうだ!スキンシップだ…!)」

男「(あの二人は出会ってまだ間もない……)」

男「(だから、お互いの事をもっと知る為に、すすすすスキンシップををを!!)」


男「(スキンシップぅ!?あんな過激なスキンシップがあっても良いのか!?存在してしまうと言うのか!!?)」






騎士「はぁ……はぁ……!」

騎士「なんて速さ……追いつけない……」

騎士「あれ…?見失ってしまった……」


 ダダダダッッ…

騎士「ん?」

男「うおおおおおおおおお!!!!」

騎士「えええぇ!?」

騎士「まさか、この森を一周してきたんですか…!?」

男「あんな、あんな事があぁぁ!!」ゴロロロロロッッ

騎士「凄い勢いで転げ回ってますね……」

男「ふ、不埒な、爛れた行為…!!」

騎士「(男さんはまだ気づいていないんですね……)」

男「やはり止めるべきか!?でも、くそぅ!」

騎士「(妖狐さんと猫神さんがしていたのは―――)」

男「…っ!そうか!」ハッ











男「俺も混ざればいいのか…!」

騎士「ちょっと待ってそれはおかしい」

男「こうしちゃいられねぇ!」ダッ

騎士「しまった!このまま行かせてしまうと、男さんが社会的に死んでしまう!!」






 ―宿屋【個室】―

扉「バーン!」

男「待てぃ!!俺も混ぜてもらおう―――」

妖狐「む?」

猫神「にゃ?」

男「か……?」





妖狐「なんじゃ?お主もまっさーじをして欲しいのか?」

猫神「妖狐ちゃん結構凝ってたし、男くんも凝ってるかもだよねー」

男「あれ?花園は…?」

妖狐「花園?ここいらに花畑なんぞあったか?」

猫神「花は…無くは無いけど……」

男「俺の、楽園は……桃源郷は…?」

妖狐「ようわからんが、混ざるならはよ来んか」





騎士「はぁ……はぁ……、やっと追いついた……」ガク

猫神「あれれ、よく見たら…男くんも騎士くんもずぶ濡れじゃん」

妖狐「一体なにをしておったんじゃ」

男「男にはな、叫び走りたい時があるんだ」

男「言葉では上手く言い表せない……だから叫ぶ」

妖狐「はあ?騎士よ、コイツはとうとう頭が…?」

騎士「いやー、まぁ…わからなくは無いんですよ、ね……」

猫神「まーまー、男くんっこっちこっち!」グイッ

男「マッサージか……はぁ……」

猫神「はいはい、ここに座ってねー」

男「うん……」

猫神「とりあえず、濡れた体を拭くね」フキフキ




猫神「ありゃ、肩凝ってますねぇ」モミモミ

男「そう、かな?」

猫神「というか、凝ってるのに体が慣れすぎてるんだと思う」

猫神「ちょっと背中もしたいから、うつ伏せになってもらっても良いかな?」

男「へいへい、どーぞー」

猫神「じゃ、乗るね……よっと」ストン



男「…あれ?」

猫神「うん?どしたの?」グイッグイッ

男「なんでも、ない……」



男「(おほほっ、これはこれで……)」ニヤニヤ

妖狐「なにをニヤけておる。気持ち悪いぞ」

男「うるせっ」




妖狐「ふむ……。では、わしは騎士の肩を揉んでやろうかの」

騎士「おや?良いんですか?」

妖狐「うむ!わしにして貰えるという事を光栄に思うがよいぞ」

騎士「それはそれは、ありがとうございます」

妖狐「ではここに―――」

男「待てっ!」ガバッ

猫神「わにゃっ!?」

男「おっと、すまん……」

猫神「どうしたのさ」

男「その、妖狐は……もっと他に肩を揉む相手が、いるんじゃぁないか?」

妖狐「…?誰じゃそれは」

男「ほら、えっと……いるだろ!」

妖狐「まさか…お主の事では無かろうな?」

男「そう!俺!」

妖狐「何故今、お主の肩を揉まなきゃならんのだ」

男「それは、そのぉ……とにかく、揉め!」

妖狐「わけがわからん奴じゃのぉ……」




騎士「(ほうほう、これは……)」

騎士「そうですね、妖狐さんは男さんの肩を揉んであげてください」

妖狐「???」


猫神「あー…にゃるほど」

猫神「妖狐ちゃん、アタシは騎士くんの肩を揉むから、男くんのをお願いっ」

妖狐「まぁ、よいが……」スッ





妖狐「じゃあ、先ずは肩からじゃの」

男「おう、苦しゅうないぞ」

妖狐「しばくぞ」

妖狐「これ、は…お主の肩、凝りすぎじゃろ……」ボッ

男「やっぱり、お前もそう思う―――熱っっ!!」

妖狐「すまぬ、炎が出た」

男「なんで炎が出るんだよ!」

妖狐「いやはや、まだ慣れてなくてのぉ」

妖狐「こうやって、掌の温度を上げてるんじゃが……」

男「あー、手が温かいとほぐれてる感じがするぅ」

妖狐「ま、少し気を抜くと炎が出る」ボッ

男「あっっちぃぃ!!」

男「もう温度上げなくて良いから!普通にして!」


妖狐「それじゃつまらん」

男「マッサージに楽しさを求めるなよ!」

妖狐「お主が悶える姿は愉しいがのー」



男「くそ…ご主人様にロクにマッサージも出来ないのか、この狐は…!」

妖狐「お主はもう主では無いがな」

男「ちっ、そうだった……」

男「騎士さん、狐って一応犬だよな?」

騎士「ですね、分類されるとしたら」

男「犬は飼い主に従順な筈なんだが」

男「どうしてこの狐は、こんなにも扱いづらいのか」

妖狐「わしは物では無いぞ、戯け」

男「どうしてこうも反抗するのか」

妖狐「ダサいお主に、これ以上従う義理は無い」

男「どうしてこうも言葉に棘があるのか」ジワ…

猫神「まぁまぁ…よしよし」ナデナデ


男「狐より猫の方が可愛いな!」

妖狐「お主は子か。情けない」


男「ババアに言われたく無いんですけどー」

男「そりゃ、ババアから見れば俺は子供ですよ」


妖狐「さ、さっきから黙って聞いておれば、ババアババアと連呼しおってからに…!」

妖狐「お主だってダサい技名やら、意味もわからん行動原理で動きおって!」

妖狐「中身まで幼稚じゃな!」

男「んだとぉ!」

妖狐「ふん!やるなら受けて立つぞ!」

猫神「あわわ…どうしよう……」









騎士「はいはい、そこまで」パンパン

騎士「確かに、男さんは意味不明な事を仰ったり、幼稚な所もあります」

男「ぐはっ」グサッ

騎士「先程も、発狂しつつ雨の中を走り出した時は何事かと思いました」

男「ごふっ」グサグサッ

妖狐「ほぅれ、やはりな」

騎士「妖狐さん、貴方もですよ」

妖狐「へ…?」

騎士「男さんが子供と言うのなら、貴方はそれよりもっと下。赤子です」

妖狐「な、なんじゃと……」

騎士「我儘で傲慢…挙句、自分の事を棚に上げて男さんに幼稚と言う始末」

妖狐「うっ……」

騎士「それに何ですか……」




騎士「ダサいと言うなら、お二人共ダサいですよ!」

男「」

妖狐「」

猫神「き、騎士くん…そろそろやめたげて……」

猫神「二人共燃え尽きちゃってるから……」

騎士「おっと、すみません」コホン

騎士「喧嘩するなとは言いません」

騎士「むしろ、お互いの悪い所を言い合える関係は素晴らしいと思います」

騎士「ですが、言い合ったままでは意味がありません」

騎士「お互いがそれを認めてこそ喧嘩する意味があるってものです」

騎士「それに、喧嘩別れなんて、悲しい事になった時…後悔しますよ?」

男「うん……」

妖狐「うむ……」




騎士「はい、それではお互いに手を出してください」

男「何でそんなこと」

妖狐「ふん、何故その様な事」

騎士「何か言いましたか?」ニコッ

男「い、いや……」スッ

妖狐「そ、そうじゃな……」スッ


騎士「では、はいっ。仲直りの握手です」

男「その、ごめん……」ギュッ

妖狐「わしも、悪かった…。すまぬ……」ギュッ

猫神「(騎士くん、親みたいだにゃ……)」



騎士「さて。そろそろ遅い時間ですし、寝ましょうか」

猫神「あら、もうそんな時間」

男「じゃあ、俺と騎士さんはこっちで―――」

騎士「私と猫神さんがこちらで寝るので、男さんと妖狐さんはそちらで」

妖狐「なんじゃとぉ!?」

騎士「まだ納得していないみたいですから、この際一緒に寝てくださいね」

男「意味がわからないんだけど!」

騎士「いずれわかる時が来ますよ」ニコッ

男「今教えてくれよ……」

騎士「では、明かりを消しますよー」

 フッ…



騎士「猫神さんはそちらのベッドで寝てください」ボソッ

猫神「騎士くんはどこで寝るの…?」

騎士「私は…下でもどこでも構いませんので」

猫神「それじゃ、風邪引くでしょ」

猫神「アタシの事は気にしなくていいから、一緒に寝よ?」

騎士「ですが……」

猫神「それとも、アタシとじゃ…嫌?」

騎士「そんな事はありません」

猫神「じゃ、良いじゃん」

騎士「わかりました。では、すみませんがお邪魔します」ゴソ…

猫神「はーい」





男「(なんで妖狐となんか……)」

妖狐「(ふん。何故男と寝なきゃならんのだ……)」

男「(…しかし、雨が降ってるせいか、冷えるな……)」ブルブル

男「(一応、掛ける毛布はあるが……)」

妖狐「…………はぁ」

 スッ

>目を凝らすと、妖狐が尻尾を差し出している

男「(ん…?)」

妖狐「使いたければ、使えばよい」

男「でも、お前は寒いんじゃ」

妖狐「こうして……尾を前にすれば変わらぬ」ゴソゴソ

男「そ、そっか」

妖狐「明後日には、いよいよ例のあ奴と戦わなければならん」

妖狐「お主に体調を崩されては困るからの」

妖狐「べ、別に寒そうとか、そういうので貸したんじゃ無いからの!」

男「うん…。ありがとう、暖かいな」



男「妖狐も、もう少しこっちに寄れ」

男「毛布から出てるぞ」

妖狐「うむ……」ゴソゴソ

男「…おやすみ」

妖狐「…ん……おやすみ……」


―――

――

今日はここで終わります、ありがとうございました




男「おはよう」

騎士「おはようございます」

猫神「むにゃ……おは、にゃー……」

妖狐「すぅ……すぅ……」

男「妖狐、起きろ。朝だぞ」ユサユサ

妖狐「あと半日……」

男「どんだけ寝るんだよ」

騎士「私は皆さんの分も含めて、朝食貰ってきますね」

カチャ
 パタン

男「妖狐、起きろって」

妖狐「うるさぃ奴じゃなぁ……」モゾモゾ

猫神「騎士くんが…来るまで…寝よ……」スヤァ

男「猫神もかよ……」





男「…起きないと、胸を揉むぞ」

猫神「いいよ」

男「え…?いいの?」

猫神「うん」

男「嘘、本当に?」

男「どうしよ…心の準備が……」

猫神「揉むなら早く」

男「…ごくり」

猫神「ん」

男「で、では……失礼して―――」ソー…

 
 カチャッ

騎士「お待たせしま……した」

男「」

猫神「おかーえりー」

騎士「男さん……」

男「違う!誤解なんだ…!」

妖狐「もぅ……朝っぱらから元気な奴じゃな……」

騎士「ははは…朝食、貰ってきたんで食べましょうか」

妖狐「ほぅっ!」ガバッ

男「お前は食い意地張り過ぎだろ」

騎士「スープに干し肉、それとパンです」

騎士「一応、水もありますよ」

妖狐「なかなか豪華じゃな…!」

男「だなー」

騎士「こ、これで豪華なのですか…?」

騎士「決して、貧相と言う訳ではないですが……」

妖狐「わしらの、村や街に行く道中の飯は適当じゃからのぉ」

男「俺、料理出来ないし…妖狐が調理すると炭になるし」

男「こいつ、何でもかんでも燃やそうとするからなー……」

妖狐「火が通ると美味いからの!」

男「火加減を覚えてくれよ」

妖狐「そんな訳で、食料が切れた時は、川魚や果実等を食うておったわ」クスクス

男「足りると計算して買っても、妖狐がガバガバ食うからだろ」

猫神「なかなか野性的な旅だね……」

騎士「食料管理がずさん過ぎますねぇ……」

男「ほら見ろ、やっぱり言われた」ハハハ

妖狐「元はと言えば、お主がケチケチするからじゃろう」

男「節約は大事だ。というか、一時期…本当にヤバかったからな」



男「そうだ、そろそろ宿主さんにも宿代と食事代払わなきゃならないな」

男「んー…手持ち、金貨8枚と銀貨11枚か……」

騎士「あっ、すみません、コレ……」スッ

男「なんだ?この袋は」

騎士「陛下から、これを預かっていたのですが、渡しそびれてしまいまして……」

騎士「氷飛竜の件の報酬、だそうです」

男「でも、俺達…氷飛竜を討伐してないよ、な…?」

騎士「ですが、イムサ国が救われたのは事実です」

妖狐「どれどれ……ひょわっ!?」

 ガシャーンッ

>袋を落とし、中に入っていた金貨が散らばる

男「す、すげぇ…何だこの枚数は……」

妖狐「こんな数の金…見たこと無いぞ……」

騎士「結構重いとは思っていたのですが……」

猫神「んーと、ざっと70枚くらいあるよ、これ」ヒョイヒョイッ

>猫神が金貨を袋に戻しつつ告げる

男「なななな、70枚!?」

騎士「イムサ国とその周辺での金貨の価値は、金貨1枚につき、銀貨11枚の価値がありますよ」

妖狐「つまり…どういう事じゃ?」

男「俺達、金持ちになったな!」

妖狐「金なら持ってるじゃろ」

男「そういう意味じゃねぇよ……」

騎士「流石に家は買えませんが、数ヶ月は生きていける程度にはありますよね」

男「ちょっと待てよ……確か、依頼の報酬は金貨50枚じゃなかったか?」

妖狐「きっとわしらに、感謝感激しておる分じゃろうな!」ドヤ

騎士「その線は、意外とありえます」

男「そんなバカな……」

騎士「氷飛竜の一件、本当に打つ手が無くて困ってたんですよね」

騎士「タイミング良く男さん達が来ていなければ、今頃どうなっていたか想像したくもありませんね……」

猫神「まぁ、貰えるなら貰っておけば良いんじゃない?」

男「そう、だな。金には当分困りそうに無くて助かる」

妖狐「ぬふふ……甘菓子がたらふく食えるのぉ」

男「太るぞ」

妖狐「ぐぬ……」


妖狐「そ、そう言えば騎士よ。其方は料理が得意と言っておったな」アセアセ

騎士「得意と言っても、少し出来るくらいですよ」

騎士「色々な場所で寝泊まりする事が多かったので自然に、という感じです」

妖狐「そうか。なら、わしらと一緒に来んか?」

騎士「一緒に、とは…?」

妖狐「言葉の通り、一緒に旅に着いて来ないか、と言う提案じゃよ」

妖狐「騎士が居れば、毎日食料に怯えながら過ごさなくても済む」

男「それは主にお前のせいだが」

妖狐「こほん。それに美味い飯が食えるなら尚更じゃ」

騎士「旅…ですか」

男「そうだな…一緒に着いて来てくれると、頼もしい」

騎士「…………」ウーン




騎士「…少し、考えさせて頂けませんか…?」

妖狐「うむ。よい返事を待っておるぞ」

男「あまり考え過ぎず、気楽にお願いします」

男「断られたとしても、俺達の関係が無くなる訳じゃないですから」

妖狐「じゃな」

猫神「はいはい!アタシも着いて行くにゃー」ビシッ

妖狐「いや、来んでいい」

猫神「えー、なんでよー」

妖狐「雌猫が居るだけで五月蝿くなる」

猫神「むー、冷たいなぁ」

男「正直、俺達に着いて来ても楽しくないと思うが……」


猫神「良いもーん、ダメって言われても着いて行くから!」

妖狐「わかったわかった、もう勝手にするがよい……」

猫神「にゃふふ、ありがとうー」ダキッ

妖狐「だからいちいちくっ着くなと言っておろうが……」





妖狐「…それで、今日は何をするんじゃ?」

男「特に、無いな」

騎士「刀を待つだけですよね……」

猫神「男くん、用事が無いなら少し出かけない?」

妖狐「む…?」

男「出かけるってどこに?外は雨だぞ」

猫神「うーん、今はヒミツ!」

男「妖狐はどうする?」

猫神「妖狐ちゃんは、騎士くんと一緒に居てねー」

妖狐「なんじゃと?」

猫神「ほら、あの人斬りが来るとまずいニャン?」

猫神「誰かが、一人きりになるのは避けた方が良いかニャーって」

男「それもそうだな」

妖狐「むぅ……仕方ないの……」ムスー

猫神「じゃ、行こっか」

男「あぁ」





 
 ―輝月の湖―


男「ここって……」

猫神「そう、男くん達が一度来た所だよ」

男「ここに何かあるのか…?」

猫神「あるある!大有りだよ」

猫神「妖狐ちゃんから聞かなかった?ここは思い出の場所だって」

男「そういや、そんな事言ってたな」

猫神「今から視せるものは、妖狐ちゃんには内緒だよ?」

男「…?お、おう。わかった」

猫神「にゃふふ。ふーっ」


>猫神が手元に息を吹きかけると、眩い光に包まれる

>暗転した後、景色が先程まで居た湖……と似た様な場所に変わっていた



男「ここ、は…?」

猫神「多分、妖狐ちゃんがまだ封印される前の時代なんじゃないかな」

男「何でそんなことわかるんだ」

猫神「妖狐ちゃんの言葉と、ここの風景。それにこれは妖狐ちゃんの記憶だからね」

男「記憶…?」

猫神「そうだよ。と言っても、視せれるのはこの場所の記憶だけだけれど」

男「一体どうやって……」

猫神「コレを使って、ね」スッ

男「…?髪の毛?」

猫神「そう、髪の毛。妖狐ちゃんのね」

猫神「髪の毛じゃなくても、記憶を視たい生物から取れる物なら何でもいいんだけど」

猫神「命に近い物程、関わった場所の記憶が詳しく視れるって感じ」

猫神「ほら、この湖の周り以外…例えば、遠くを見てみて」

男「なんだか、ボヤけてるな」

猫神「髪の毛だと、このぐらいしかダメみたいね」

男「便利だなぁ」

猫神「まぁ使うには、それなりにその使う対象の事を知らなきゃいけないからね」

男「ほー。っと、誰か来たな」

男「隠れたりした方が良いのか?」

猫神「気にしなくていいよ。これは記憶だから」


>遠くから魔物らしき者が歩いてくる

>胸が大きく、ふくよかな肢体、背丈は男より少し低い

>頭には獣耳、後ろの腰の辺りには綺麗な毛並みの尾が生えている


「しかし、何故人間は争いたがるんじゃのぉ?」


男「これって……」

猫神「どしたの?」


「魔物だって気性が荒い者も居るが、争いの大半の理由は、『人間が攻撃してきたから反抗している』だけじゃし……」

「人間は独占欲が強く面倒くさいのー。これじゃあどっちが魔物なんだか……」

男「うん、これ…知ってるぞ……」

猫神「知ってるって?」

男「夢で、同じものをたまに見るんだよ」

猫神「夢、か……にゃふふ。なるほどね」


「この湖みたく人間の心も澄んでおればのー……」チラッ

 ゴツンッ!


男「あ、やっぱりぶつかった」

猫神「このマモノ、妖狐ちゃんだね」

男「嘘だろ!?コレがか!?」

猫神「今と姿は違うけど、多分そうだよ」

男「くぅ、今の姿が悔やまれる……」

猫神「それ妖狐ちゃんの前で言うと、間違い無く死ぬよ」



妖狐「むっ?すまん、考え事をしていて気付かんかったわ」

「いえいえ!こちらこそすみません」

妖狐「怪我は無いか?」

「大丈夫です」

妖狐「そうか、それなら良い」

「あの…あなたはあの時、こちらを見ていた魔物ですか…?」

妖狐「ん?あの時…?あぁ、わしを見たのか」

「ま、魔物だと言うなら……」チャキ

>青年が武器を向ける


妖狐「おいおい…そう物騒な物を向けるな。なぁに、敵では無い。見物していただけじゃよ」

青年「見物、ですか…?」

妖狐「そうじゃ。暇じゃしな」

妖狐「お主は人間か。何故ここに?」

青年「はい。ここの水が綺麗だと聞いたので……」

妖狐「なるほど…傷を癒やしにこの湖に来たと言う訳か」

青年「そうです」

妖狐「ここの水は澄んでいて綺麗じゃからなー」

青年「ですねぇ、ずっと見ていたい―――痛っ……」ズキッ

妖狐「…はぁ、全く。そんな痛そうな顔をされるとこっちも良い気がしないんじゃが……」

青年「す、すみません……」

妖狐「ほれ、こっち来てみぃ」

青年「えぇ!?いや、でも……」

妖狐「いいからいいから、ほれ早くっ」グイッ

>妖狐が手をかざし、傷を治す



妖狐「よし!これで大丈夫じゃな」

青年「す、凄い…!」

妖狐「3日もすれば綺麗に傷は塞がるじゃろう」

青年「あ、あの!!何か、お礼を……」

妖狐「礼?そんな物はいらん。見返りが欲しくてしたわけじゃないしの」

青年「でも、させて欲しいんです…!お願いします!!」

妖狐「だからいらぬと……」

青年「…………」ドゲザ

妖狐「う、むぅ……」

青年「…………」チラッ

妖狐「わかったわかった、そんな悲しそうな顔するな。受け取るから」

青年「ありがとうございます!」

青年「では、僕の国を案内しますよ!」

妖狐「いやいや…お主は阿呆なのか?わしはマモノじゃぞ?」

青年「隠せば大丈夫!何とかなりますよ!」

妖狐「隠せば大丈夫って……」




妖狐「はぁ、どうなっても知らんぞ?」

>青年と妖狐が湖から去る



男「ん…?だんだん視界が暗くなってきたな」

猫神「別の日に移るみたい」



>妖狐が石に腰をかけ、湖を眺めていると、林の奥から青年が歩いて来た


妖狐「なんじゃ、また会ったのぉ」

青年「こんにちは、妖狐さん」

青年「今日は妖狐さんに会いに来たんですよ」

妖狐「何?わしに会いに来たと?」

妖狐「わしがここに居るともわからんのにか」

青年「きっと、ここに居るんじゃないかって。そんな気がしたんです」ハハハ

妖狐「くすっ、不思議なやつじゃの」

青年「よく言われます」

妖狐「今日もどこかへ案内してくれるのかや?」

青年「いえ。今日は妖狐さんとお話をしたいなと」

妖狐「わしと話がしたい?別に構わんが、つまらんと思うぞ?」

青年「つまらなくありませんよ」

青年「それに、妖狐さんと居るだけで楽しいですし!」

妖狐「なっ…わしと居るだけで楽しいじゃと!?わしはマモノじゃぞ!?」

青年「魔物でも、楽しければ関係ありませんよ」

妖狐「はぁ…。お主は物好きじゃのぉ……」

青年「あの、一つ質問いいですか?」

妖狐「なんじゃ、言うてみぃ」

青年「その、後ろの毛…というか、尻尾ですか?」

妖狐「む?尻尾?あぁこれか」フリフリ

青年「もしよろしければ、触らせては……」

妖狐「だ、ダメじゃ!これは、その…まだお主はダメじゃっ」

青年「残念、それでは仕方ないですね」

妖狐「もう…全く。ふふっ……」





妖狐「さて、と…悪戯なお主には、わしのとっておきの話をしてやろうかの!」ニシシ

妖狐「悪戯ではわしも負けとらんからの!」

青年「ぜひぜひ!」

妖狐「あれは―――」





男「おっと……また暗転」

猫神「ありゃ、とっておきの話を聞きたかったなー」

男「髪の毛だから、あまり深くは視れないんだろうか」

猫神「だねー、仕方ないかぁ」


>別の日に変わる

妖狐「ふぅ…。今日も、あ奴は来るんじゃろうか…?」

妖狐「…ふふっ……」

妖狐「話すようになって早、数日か……」

妖狐「今までは、一日が長い長いと思っておったが」

妖狐「最近はあっと言う間じゃなぁ」

妖狐「はー。しかしわしと居て何が楽しいんじゃろうか?」

妖狐「そりゃ、わしは美しいし、体も自信はあるが……」

妖狐「そもそもあ奴とわしは人間とマモノ。住む世界が違うしのー……」

妖狐「…ん?」

妖狐「ま、まさかっ…わしの事を!?」


妖狐「いやいや!そんなまさか!」







妖狐「…その、まさか……なのかの…?」カァァ




妖狐「ううん!ありえんありえん!」ブンブン



妖狐「………」ボー




妖狐「…遅いのぉ…。何かあったんじゃろうか…?」

妖狐「いや…今日はたまたま用事があるだけかもしれんの」

妖狐「しかし、毎日来ておったし…。うーむ……」

 ガザ 
   ガサッ


妖狐「…っ!何じゃ…?」

青年「こんにちはー」

妖狐「ってお主か。驚かすでないっ」

青年「はは…ごめんごめん」


>青年が何やら暗い顔をしている

妖狐「む?どうしたんじゃそんな顔して……」

青年「実は、もうすぐ魔物との大きな戦争が起こるかもしれないんだ」

妖狐「ほぅ、戦か」

青年「それで、僕もそれに行かなくちゃいけない……」

妖狐「なん、じゃと…?」

妖狐「…またくだらない事を、人間はするのか」

妖狐「人間も、飽きん奴らじゃなぁ」

青年「それで、その……」



青年「妖狐にも、来て欲しくて……」

妖狐「それは…なんで、じゃ…?」

青年「えーと、ついうっかり、騎士団のお偉いさんに話してしまって」アハハ…

妖狐「何ぃ!?喋ったのか!?お主とわしの事を!!」

青年「ご、ごめん……」

妖狐「ついうっかり…あはは、ではないわ!!」

妖狐「お主は阿呆すぎる……」

青年「話したらさ、妖狐の力も貸して欲しいって言われて……」

妖狐「ん?わしの力を…?」

妖狐「お主の長とやらに頼まれたのか?」

青年「うん」

妖狐「うーむ…人間側か……」


妖狐「(多分、こ奴も戦場に行けば、戦死は免れんかもしれんのぉ……)」

妖狐「(わしが居れば、守る事が出来るじゃろうか…?)」

妖狐「(しかし仮にもわしはマモノじゃし、人間側に着けば裏切り行為……)」

妖狐「うむぅぅぅ……」



妖狐「うーーーぬぅ……」





妖狐「あーーうー……」





妖狐「はぁ……」

妖狐「仕方無い、これも何かの縁じゃしの」

妖狐「良かろう。但し、わしをお主の側に置くという条件付きでな。そう伝えてこい」

青年「良いの、か…?」

妖狐「構わん。正直、魔物側も人間側もどちらでもわしは良いしの」

妖狐「じゃが…お主が居なくなるのは、寂しい……」ボソッ

青年「何か言った?」

妖狐「む?な、何でもない!それより早く報告してこんか!」

青年「へいへい。じゃあ行ってくる」

>青年が立ち去る




男「気になってたが…妖狐が頭の中で考えてる事までわかるんだな」

猫神「そうだよー、なんて言ったって記憶だからね」


>景色が変わる

>雨が降り、辺りには黒い煙がそこら中に立ち込めている

男「お、おいおいガラリと変わったな……」

猫神「これは、戦が終わった後…かな?」


>妖狐がおぼつかない足取りで歩いてくる

妖狐「はぁ…はぁ…。けほっけほ……」ヨロヨロ


妖狐「終わった、か……」


妖狐「ふぅ、ふぅ……」

  
  ザァーーーー


妖狐「流石に、氷飛竜をわしだけで相手するのはダルいのぉ……」


妖狐「こんな戦が起こっても、ここの湖は綺麗じゃな……」


妖狐「(戦は人間と魔物、どちらの被害も大きすぎるの……)」


妖狐「(引き分けかー……ま、それが妥当じゃな)」


妖狐「(そういえば、わし以外にも魔物がちらほら人間側にも着いてたのを見かけたのぉ)」


妖狐「(わしと同じ様な者達じゃろうか…?)」


妖狐「ふぅー、それにしても…疲れたのぉ……」

妖狐「こんなに動いたのは何年ぶりじゃろうか」


 ガサッ 
 
  ガササッッ


青年「…………」

妖狐「む?ようやく来たか、無事で良かった……」

妖狐「お主よ、雌を待たせるのはいかんぞ?」

青年「そう、だね」

青年「…………」

妖狐「どうした、黙りおって―――」

青年「ごめん……ごめん……」ポロポロ


>視界が一瞬、僅かに歪む

男「ん…?」

猫神「どうかした?」

男「いや、なんでも、ない」

猫神「そう…。ニャフフ……」ニヤ


>瞬きをした瞬間、妖狐が青年の剣に貫かれていた…


妖狐「どう、して……」


青年「ごめん……魔物は、生かしておけないんだ」

妖狐「なに…?」




妖狐「お主よ…それは、本心なのか…?」ポタ…ポタ…

妖狐「わしには、嘘をついてる様にしか見えんが、の?」ゴホゴホッ

>青年の後ろに人影が多く見える



妖狐「……なんじゃ、その後ろの人間共は……」



>後方の人間達が妖狐に向けて銃口を向ける


妖狐「うっ…ぐ……そんなもの、わしには―――」

妖狐「む…!?何故、傷が…ふさがらんッ…!!」ポタタ…

妖狐「それに魔力が―――」


>更に次々と妖狐が銃弾を浴びる


妖狐「げほっ……げほっ…」

>妖狐は必死に足掻くが……




>遂に力尽き、倒れる


「はっ!ようやく倒れたか、化物め」

「しかし、その剣は凄いな。魔物の動きを封じてしまうとは」

「この忌々しい魔物は……」

「そうだな。あの方に言われた通り、離れの洞窟に放り込んでおけ」

「後は何とかしてくださるだろう」




>雨の中、青年が立ちすくむ

青年「僕は、君と大切な人を天秤にかけてしまった……」

青年「でも、こうするしか……」

 ブツンッ


>辺りが元の景色に戻る





男「…………」

猫神「…………」

男「……帰ろう、か……」

猫神「うん」


―――
――

今日はここで終わります、ありがとうございました


 ―宿屋【個室】―


猫神「ただいまー」

騎士「おかえりなさい」

妖狐「む?男はどうした」

猫神「少し考え事するってさー」

妖狐「この雨の中でか?」

猫神「うん」

妖狐「考え事なら、部屋ですればよかろうに……」

騎士「きっと、気分転換も兼ねて外に居たいんだと思いますよ」

妖狐「そういうものか」

猫神「にゃフフ…そういうものなんじゃニャい?」

妖狐「おい雌猫……余計な事したんじゃなかろうな?」ジロ

猫神「さぁー、アタシはニャにもー」


妖狐「全く……どこをほっつき歩いておるんだか」スクッ

騎士「迎えに行かれるのですか?」

妖狐「あぁ」

猫神「にゃふふ…男くんの事、好きだねぇ」

妖狐「うるさいわ」

騎士「でしたら、一応雨避けのこれを」スッ

妖狐「すまんの。では、行ってくる」

騎士「行ってらっしゃい」

猫神「行ってらっしゃーい」

 カチャ
  パタン



 ザァーー…


騎士「猫神さん」

猫神「なになに、そんな怖い顔しちゃって」

騎士「貴方は、一体何が目的なんですか」

猫神「目的?そんなの無い―――」




騎士「それは嘘です」

猫神「嘘…?」

騎士「先ず、そもそも出会った場所が採掘場って所からおかしいんですよ」

猫神「それは、たまたま居ただけで―――」




騎士「あんな地下深く、陽の当たらない場所に…ですか?」

猫神「…………」

騎士「それに猫神さん、言ってましたよね」

騎士「『着いて行かなきゃいけない』、と」

騎士「まるで、誰かから命じられたみたいに」

猫神「それは言葉の綾だよー」

騎士「そうですか。でも、まだ疑問点はありますよ」

猫神「なに?」

騎士「貴方が男さんと妖狐さんの事を話す時、自分も見てきたかの様に話していました」

猫神「それが?」

騎士「…私達と採掘場で出会う前から、男さん達の事を、附けていたんじゃありませんか?」

猫神「それも、たまたまだよ」

騎士「先程から、都合の良い偶然が多いですね?」

猫神「そうだよ、アタシは運が良いからね」

騎士「今日、男さんと出かけた時…何処へ行かれたのですか」

猫神「それはー、ナイショっ」

騎士「ふざけないで下さい…!」











猫神「へー…そんな事、言うんだ」

騎士「な、なんですか……」




猫神「なに。アタシの事、疑ってるの?」ギロッ

騎士「っ…!」ビクッ



猫神「言っておくけど、君はアタシ達にとって必要じゃ無い存在だからね」

猫神「君が何を疑ってるのか知らないけどさあ」

猫神「図に乗ってると―――」スッ





 
 ザァーー

男「(妖狐はあんな事をされても尚、人間と…俺と一緒に居てくれるんだな……)」

男「(俺だったら、関わらないどころか復讐すら考えるぞ)」

男「(このまま、アイツを俺の都合で連れ回しても良いのか…?)」

男「(妖狐は、人間に関わらず幸せになるべきなんじゃないか…?)」

男「(…やっぱり、トアール国で別れておくべきだったんだ)」



男「(そういえば……)」

男「(それなりの期間一緒に居たのに、殆ど妖狐の事を知らないな)」

男「(アイツはどんな気持ちで、俺に着いて来てくれてたんだろう)」

男「(俺が、するべき事は―――)」


 パチャ…
  パチャ…


妖狐「ここにおったんじゃな」

男「妖狐……」

妖狐「どうした、辛気臭い顔しおって」

妖狐「こんな所におると風邪を引くぞ」

妖狐「それとも、あの雌猫に何か吹き込まれたか?」




男「なぁ妖狐」

妖狐「なんじゃ?」

男「お前の住んでた場所ってどこなんだ?」

妖狐「住処か…うーむ……」

妖狐「わからん」

男「わからない、のか…?」

妖狐「うむ。わしは各地を転々としておったしな」

男「元々は、輝月の湖の近くだったんじゃないのか?」

妖狐「いんや。あの湖も思い出の場所ってだけじゃよ」

男「そう、か……」






男「妖狐、提案があるんだが……」

妖狐「着いて来るな、と言う提案なら受けぬぞ」

男「何でわかったんだよ」

妖狐「お主の顔を見ればわかる」

男「まぁ、さっきまではそう考えてたが」

妖狐「何度も言うが、お主が何を言おうとわしは着いてゆくぞ」

男「そうだな、そうしてくれると有り難い」








男「でさ。俺、決めたよ」

妖狐「何をじゃ」

男「妖狐、お前が安心して暮らせる場所を探そう」

男「目的も無くここまで来たが、それも今日で終わりだ」


妖狐「場所を探してどうする」

男「決まってるだろ。暮らすんだよ、そこで」

妖狐「わしだけがか?」

男「そりゃ…そうなるだろ」

妖狐「お主はどうするのだ…?」

男「俺は、わからない」

妖狐「…そんなの嫌じゃ」

男「な、なんでだよ」

妖狐「わしだけじゃ…つまらん」

男「つまらんって……」

妖狐「もう、孤独になりとう無い……」

妖狐「わしは…一匹は嫌じゃ……」ウツムキ

男「と、言ってもなぁ……」








男「じゃあ、俺と住むか?って、それは嫌だよな」ハハハ

妖狐「よいのか…?」

男「え、いや…そんな答えが返ってくるとは思わなかった」

妖狐「なんじゃ、からかいおって……」シュン

男「お前なー、俺と暮らすって事は、この先ずっと一緒に居るって事だぞ?」

妖狐「誰もおらんよりはマシじゃ」

男「マシって……」

妖狐「それに、今も一緒に暮らしておる様なもんじゃろ」

妖狐「今更変わりゃあせん」

男「妖狐が良いなら、俺としても嬉しいんだが……」

妖狐「なら、決まりじゃな」

男「そんなあっさり決めてもいいのか」

妖狐「わしはお主なら構わん」

男「…じゃぁ……改めて、よろしくな。妖狐」

妖狐「うむ、わしもよろしく頼むぞ。男よ」

――





 カチャ

男「ただいまーっと」

妖狐「帰ったぞ…て、何をしておる」



猫神「ニャハハ、ちょっと夕飯の事で喧嘩になっちゃったんだけど……」パッ

猫神「もう仲直りしたよねー?」

騎士「そう、ですね……」

妖狐「飯の事じゃとぉ!?聞き捨てならんな!」

男「お前はホント食い意地張ってるな」

猫神「にゃふふ、妖狐ちゃんは食べる事が好きなんだね」

妖狐「当たり前じゃ!」

男「こいつ食ってばっかだな」

妖狐「食は数少ないわしの楽しみじゃからな!」













騎士「(何を企んでいるのか知りませんが)」


騎士「(やはり、猫神の事は気をつけなければいけませんね……)」


騎士「(きっと、最後の言いかけた言葉は……)」





騎士「(‘‘殺す’’、でしょうね)」


―――
――

今日はここで終わります、ありがとうございました

 
 ―次の日―

妖狐「…ふあぁ……」

男「あー……」

妖狐「全く眠れんかった」
男「ぜんっぜん眠れなかった」

騎士「仲がよろしいですね」

男「騎士さんおはよー……」

騎士「おはようございます」

猫神「みんなおはよん」

男「おう、おはよう」

騎士「…………」

妖狐「…?」








男「ふぅ。飯は食ったし、後は刀かー……」

騎士「そろそろ、ですかねえ」

妖狐「なんかもう、面倒になってきたわ」

猫神「にゃふふ。じゃあ…行くのやめる?」

男「いやー引き受けた以上、行くよ」

猫神「そっか」

騎士「猫神さんは、行きたくなければ行かなくても結構ですよ」

猫神「んー。心配だし着いて行くよ」

騎士「そうですか」

騎士「構いませんけど、命の保証はできませんよ」

猫神「自分の身くらい、自分で何とかするよ」

猫神「一応、これでも神様名乗ってるからね」




男「…………」ゴクリ

妖狐「…………」ゴクリ


>部屋にギスギスした空気が流れる


男「(お、おい……二人に何があったんだよ……)」ヒソヒソ

妖狐「(わしに聞かれても知らんわ……)」ヒソヒソ

男「(凄いギスギスした雰囲気なんですけど)」

妖狐「(騎士があの様な言い方をするのは珍しいの……)」



騎士「神様、ですか」

騎士「本当に神かどうかは、疑わしいですけどね」

猫神「ふーん、だったら……」




猫神「今、ここで試してみる…?」



男「(妖狐、止めに行けよ……)」

男「(猫神が未だかつて無いドスの効いた声で、怖すぎる……)」

妖狐「(い、嫌じゃ!わしは関わりとう無い…!)」



騎士「構いませんよ?神の力とやらをちゃんと確認しておきたいですし」

猫神「へぇ、言うじゃん」




猫神「人間は嫌いだし、丁度良いや」ボソッ


男「(やばいやばいやばい…!)」ヒソヒソ

妖狐「(どうするんじゃ!?)」ヒソヒソ

男「(俺に聞くなよ!どうもできねーよ!)」

妖狐「(くぅ…!お主は雄じゃろうが!)」

男「(あの二人に割って入るとか、無理だから!)」

男「(ど、どうしよ―――)」

妖狐「(どうすれば―――)」




 コンコンッ

男「はひぃっ!?」ダキッ

妖狐「わひゃぁっ!?」ダキッ


>思わず二人が抱き合う

村長「おっと、取り込み中だったか?」

男「村長、さん……」バクバク

妖狐「そ、其方か……」バクバク

男「ふぅ……心臓がバクバク言ってる……」

妖狐「わ、わしもじゃ……」

村長「…例の刀、完成したぞ」スッ

男「っ!完成、したんですね。ありがとうございます」

村長「あぁ、カナリの自信作……」






村長「誠刀【天ノ晴払】だ」



男「せいとう……」カチャ…スッ

妖狐「あまの…せいふつ……」


>刀身が淡い赤色に輝く……


村長「そいつで、その刀で……」

村長「あいつと、私の過去の過ちを………」

村長「どうか、頼む……」

>村長が頭を下げる

男「…わかりました」

妖狐「任せい」





村長「それと…一つだけ、言っておかなければならない事がある」

男「何ですか?」

村長「この刀は、普通より倍以上の短い期間で作った為―――」

村長「刀の効力は……持って三日だ」

男「なん、だと……」

男「それじゃあ、何の為に作って貰ったんだかわからないじゃないか!」

妖狐「そこなのか……」

村長「すまない。しかし、悠長に打つ事も出来んだろう?」

村長「その、なんだ。材料さえ持ってきて貰えば、また―――」

男「いえ、この刀で良いですよ」

男「例え効力が無くなったとしても、村長さんの想いはちゃんと籠もってますから」

村長「っ…!ありがとう、な……」

村長「それじゃぁ、私は行くよ。失礼したな」

 カチャ
  パタン


男「……ふぅ」

妖狐「ようやくじゃな」

男「あぁ」

男「騎士さん、猫神。準備をしてくれ」

騎士「わかりました」

猫神「わかった。少しお預けだね」

騎士「私はいつでも構いませんけど」

猫神「弱い癖に、強がっちゃって」ボソッ


妖狐「(…こんな雰囲気のまま大丈夫なんじゃろうか……)」ヒソヒソ

男「(わからん、が。行くしかない)」ヒソヒソ


騎士「目的地は証炎ノ塔でしたよね」

男「みたいだな。宿主さんに道を教えてもらうか」 

妖狐「じゃな」

猫神「ほいほい」


 ―道中の森―


 サァァァ……

男「小雨が降ってるせいか、ぬかるんで滑るな」

妖狐「足元の雑草もまた面倒じゃなぁ」

男「みんな気をつけろよー」 

妖狐「わかっておる」

騎士「はい」

猫神「うん」


 ザッザッザッ……

男「…………」

妖狐「…………」

騎士「…………」

猫神「…………」







男「(か、会話が続かねえぇ…!)」

男「(流石に妖狐とばかり話す訳にもいかないし……)」

男「(かと言って、騎士さんや猫神は話をしそうな感じもしないし……)」

男「(沈黙が重い)」

猫神「あっ……」

妖狐「む…?」

騎士「あれ、は……」

男「おぉ、着いたー!」

>屋根の横幅が広く、頂上がカナリ高い塔が建っている



男「さっそく登ろうぜ!」

妖狐「しかし鍵がかかっておるぞ」ガチャガチャ

猫神「はいはい。どーんっ!!」ドゴォッ

>入り口の扉が吹き飛ぶ

男「こりゃ、猫神だけでも勝てるかもしれないな……」

騎士「男さん、油断はいけませんよ」

男「そ、そうだな。気を引き締めて行くか…!」

妖狐「男よ、わしを背負ってくれぬか」

男「は?」

妖狐「あの高さを見ただけで、もう気だるさを感じるんじゃが……」

男「なら妖狐はそこに居ていいぞ」

妖狐「それじゃあ何の為にここまで来たのか、わからんではないか」

男「じゃあ登ろうぜ」 

妖狐「仕方ないのお……」