小梅「キミと私の」 (13)

小梅ちゃんがガチャで出た

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6月 中学一年生のクラスにはいくつかのグループができ、固定されていく時期だ

逆にいえばこのくらいまでにどこかに所属しないと、孤立した一年間を過ごすことになる

私はクラスにうまく馴染めず、まさにその状態になりつつあった

浮いた存在になり、最近はクラスメイトが私の方を見ながらヒソヒソ話をするようになった

片目が隠れるほど長い前髪、ジメジメと暗い性格、おまけにどもった喋り方

中学生が笑いものにするターゲットとしては最適なのだろう

「白坂ってさ・・・だよな」
「やっぱ!?俺もそう思った!」

そこの男子、うるさいぞ

私のことは放っておいてほしい


キーンコーン…

一日の終了を告げる鐘が鳴り、クラスメイトが部活へ行ったり下校する中、私は1人教室に残る

放課後は私が一番安心できる憩いの時だった

鬱陶しいヒソヒソ話も聞かなくてすむし、しばらくここでホラー小説でも読んでいれば、他の生徒と下校時間をズラすこともできる

そしてなにより

「小梅ちゃんっ」

「あ…きょ、今日も来てくれたんだ…」

トモダチが遊びに来てくれるから


どこのクラスかもわからないけど、放課後教室に残って小説を読んでいた私に初めて話しかけてくれた日から毎日遊びに来てくれる

中学初めてで唯一の友達

「今日もまた1人だったの?」

「う、うん…」

「辛い…?」

「だ、大丈夫…だよ…私にはキ、キミがいるから…」

「そう 無理しないでね?辛くなったらいつでも私の方に来ていいから」

「…わ、私はあまり自分の教室から出たく…ない…」

「なんで?」

「あんまり目立つ行動は…とりたくないの…」

「そっか…」

トモダチは私が置かれた環境をいつも心配してくれる

それだけで私の心は晴れた


「そ、そろそろ帰ろうかな…」

「あ じゃあ私も一緒に帰る」

「う、うん…」

そういえばトモダチと帰るのは初めてだ

というよりも誰かと一緒に帰ること自体初めてだ

二人で並んで歩くことに違和感を感じていると、いつの間にか昇降口に到着していた

「どうしたの?早く行こう?」

「あ…う、うん…」


急いで下駄箱から靴を取り出すと、中で何かが光った

……画鋲だ

「どうしたの小梅ちゃ…それ、画鋲…?」

「う、うん…」

「ひどい…誰がこんなことを」

「…」

とうとう本格的ないじめが始まったようだ

いつかはこうなるだろうと思ってはいたものの、いざその状況になってみると心にくるものがある

もしまたこういうことがあったら危険だから と言って、その日からトモダチは毎日一緒に下校してくれるようになった

トモダチが言う通り悪質ないじめは増え危険な目にも遭ったが、信頼できる友達がそばにいるだけで安心できた


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_


ヒソヒソ…

今日もクラスメイトのヒソヒソ話が耳につく

最近では違うクラスの人まで私を見に来るようになった

「あれが白坂小梅?」
「な?・・・・・だろ」

うるさい、うるさい、うるさい

早くトモダチに会いたい

私はひたすらに放課後が来るのを待った


放課後、いつものようにトモダチがやって来る

「小梅ちゃん、今日はどんな感じだった?」

「きょ、今日は…他のクラスの男子が…私のこと見に来た…」

「そうなの…… ねぇ、小梅ちゃん」

「な、なに…?」

「一回だけ私の方に来てみたら? こっちならきっとみんな小梅ちゃんのこと歓迎してくれるよ」

「あ、ありがとう…でも…遠慮しとく…」

トモダチは何度も自分のクラスへ招いてくれたが、私はそれを頑なに拒んだ

私と一緒にいるところを見られたら、トモダチまでいじめられてしまうかもしれないから



7月下旬 私とトモダチはいつものように一緒に下校し、横断歩道で信号待ちをしていた

今日で一学期が終わり、明日から夏休みだ

しばらくあの教室に行かなくてすむと思うと気が休まる

だけど、トモダチと会えなくなるのは少し寂しい

夏休みにトモダチを遊びに誘ってみようかな

そんなことを考えながらビュンビュンと行き交う車をぼーっと眺めていると、私は道路の真ん中に飛び出していた

もちろん自らの意志ではない 誰かに背中を押されたのだ


クラクションの音を荒らげたトラックが私に突進してくる

私はその場から動くことができなかった

ギュルギュルとおぞましい音をたてながら、トラックは私の真横をギリギリ抜けていった

膝の力が抜け、私はその場に座り込んだ

「小梅ちゃん!!」

トモダチが駆け寄ってくるのが見える

「小梅ちゃん!大丈夫!?」

「だ、大丈夫…もうちょっとタイミングがズレてたら、危なかった…かも…」

「本当に…あと、もうちょっとで…」

トモダチはワナワナと肩を震わせていた


「だ、大丈夫…だよ」

私はそう言ったが、本当はまだ心臓がバクバクいっている

これもいじめ?

いくらなんでもやりすぎではないだろうか

「大丈夫かいお嬢ちゃん!!?」

トラックの運転手が真っ青な顔で駆け寄ってきた

「は、はい…」

「よかったぜ…ここは昔から事故が多いから気をつけてくれよ!」

「はい…すみませんでした…」

こうして最悪な形で私の一学期は終わった

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