白坂小梅「お芝居の仕事」 (15)

モバマスSSです。よろしくお願いします。
今回はガチャチケで小梅ちゃんを引いたので挑戦してみます。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1445772838

(とある日の事務所)

モバP「お~い、小梅」

小梅「どうしたの?Pさん」

モバP「あ、居た居た。小梅にな新しい仕事が来たんだ」

小梅「お仕事?…怖いお仕事…だったらいいな」

モバP「怖い…のかな。まだちゃんと中身は見ていないんだけどお芝居の仕事だよ」

小梅「お…お芝居?」

モバP「何か分からないけど、小梅は主役なんだけど、しゃべらず役を演じるらしい…」

小梅「え、演劇なのに…しゃべらないの?」

モバP「そうみたいなんだ。不思議だよな~」

小梅「Pさん…台本は…あるの?」

モバP「台本は明日届くらしい。何でも監督さんが小梅を気に入ってオファーって感じらしくてね」

小梅「そう…なんだ…ちょっと嬉しいね」

モバP「そうだな。小梅が魅力的だって分かってもらってるってことだもんな」

小梅「エヘヘ…」

モバP「とりあえず、仕事は受ける方向で調整していいか?」

小梅「うん。その…頑張りたい」

モバP「分かった。じゃあ、それで返事しておくな」

(数日後:事務所)

モバP「小梅、芝居の調子はどうだ~?」

小梅「あ、Pさん…んっとね…たぶん…大丈夫…」

モバP「そうか。ならよかった」

小梅「それに…仕掛けが面白いんだよ」

モバP「あぁ、ナレーションとセリフはたくさんの声優さんが入るんだっけ?」

小梅「うん。それに…ちょっと怖いストーリーで…楽しい」

モバP「そりゃあ良かった。そういえば、その台本、最後の数ページが埋まってないんだっけ?」

小梅「そうなの…まだ…決まってないんだって」

モバP「そんなんで大丈夫なのか?」

小梅「監督さんは…ぶっつけ本番でリアリティを出したい…とか…いろいろ言ってたよ」

モバP「ふ~ん…何かいろいろあるみたいだな。今回は他の子のサポート多くて見てやれなくてごめんな…」

小梅「だ、大丈夫…それに…Pさんにね…一緒に考えて欲しいの…このストーリーのこと…」

モバP「分かった。じゃあ、本番、楽しみにしてるな」

小梅「うん!」

(数週後:舞台袖)

モバP「あっという間に…本番…だな」

小梅「うん…そうだね…」

モバP「緊張…してるのか?」

小梅「ううん…大丈夫…あ、でも…ちょっとだけ…」

モバP「そうか…よし、小梅、左手を出して」

小梅「左手?…こ、こう?」

モバP「プロデューサーからの緊張をほぐすおまじない…手のひらに…P」

小梅「…ぴ、P?」

モバP「プロデューサーは近くに居るよって感じで…ダメかな?」

小梅「う、ううん…嬉しい…近くにPさん…エヘヘ…」

モバP「それだけ笑顔になれれば大丈夫だな」

スタッフ「白坂さん、声優さんのマイクチェック完了したので、スタンバイお願いします」

モバP「お、時間か…じゃあ、俺は小梅の希望通り、客席で見ているよ」

小梅「うん。頑張るから…見ていてね…」

スタッフ「白坂さんスタンバイに入りますー!定刻通りの進行でお願いしまーす!」

………………………………………………………
演目「君と僕の終末論」

(暗幕は上がるが暗い世界の中、ナレーションだけが響く)

 私は、この世界に絶望していた。

何もかもが上手くいかない…恋も…勉強も…私は…もう…なにもしたくない。

これはそんな女の子に起こった1つの物語…。

(ライトが、荷物のある部屋と小梅が照らされる)

私の名前は、まりや。…ここは…早くに亡くなった叔父の隠れ家…。

叔父は、日本人には珍しいプレッパーと呼ばれる人で、

ここは、有事の際に引きこもれるように作られたシェルターのような場所。

実はここには、食糧や日用品もたくさん詰め込まれている。

私は…親に嘘をついて…ここに引きこもっている…。

だって…お勉強も…恋も…お友達も…なにも上手くいかないから…

こんな世界に触れていたくないの…

この部屋に入った瞬間、部屋を開ける鍵を投げ捨て、ドアの内側にもチェーンを巻いて、

それを留めた南京錠の鍵もどっかに投げ捨ててしまった。

これで、この世界は私だけ…誰にも蔑まれないし、誰にも何も言われない最高の場所…。

私はここで…ずっと暮らすの…そう死ぬまで…

(暗転、本の詰まれたテーブルと大きな鏡のある背景に切り替わる)

ここは…私の暇つぶしの場所よ…

この部屋はね…1つだけ問題があって…時計が無いの。

窓も無いから時間の間隔が分からないわ。

だから、ここで飽きるまで本を読んで…たまに日用品にあるヘアゴムを使って髪型を変えていたの。

何で過去形なのか…そんなの決まってるでしょ?

実は…ここに積んである本はもう全部読んでしまったの…内容も覚えてしまったし…

髪型も面倒になってカミソリで後ろ髪を切ってショートカットにしちゃったからよ。

暇つぶしが出来ないのは大変…そこで、ちょっと積まれている荷物を散策することにしてみたの。

(暗転、段ボールだらけの区画に切り替わる)

この辺りの荷物は…まだ触ってなかったわね。

…う~ん、日用品ばっかりか…あれ?この箱…変に底が浅いような…

隠し蓋?…開けてみよう。

……これは…本?

タイトルが掠れて読みにくいな…えっと…終末…ゲーム…かな?

とりあえず読んでみよう。

えっと…この本は…悩むアナタを救うおまじないの本…

この儀式を最後まで信じることが出来れば…きっと…全てが解決する。

うわ、胡散臭い…でも、暇つぶしにはいいかも?

えっと…やり方は…鏡の前で蝋燭の火の中で…呪文と動きをする…。

…鏡は大きい方がいい…

私は大きな姿見を思い出して、そこで…儀式を行った。

(暗転、テーブルのあるスペースに戻る)

あの儀式からそれなりに時間が過ぎた気がするけど、何も変化はなかった。

今は読み飽きた本を選んで、他に解釈の方法が無いか粗探しをするような読書を始める。

そのとき…私しか居ないはずのこの場所で、私以外の声が聞こえた。

「そんな小さい器だから、何もかもに勝手に否定を重ねて逃げるんだ!弱虫が!」

…父親のような妙に威厳のある声…それが脳内に響く

すっごく不快な気分だ。

私は変な妄想をしたんだと思い込んで、気にしないようにする。

「今度は無視か、ほとほと呆れた小娘だ!」

また…声が聞こえる…耳の内側から聞こえてくるような感覚が本当に不快だ。

そして、その声には妙な響きというか、声の元に方向があるように感じた。

ふと、後ろを見ると…大きな姿見があった。

嫌な予感がする…私は…少し考えたあと…姿見の前に立った。

そこ居たいたのは…私…いつもの私…

何だ…って安心したときだった…

「お前は何をしているんだ?」

…声は明らかに大人な男性の声なのに…動いているのは…私の口…何で?

私はその不可解な現象を見た瞬間に姿見から離れた。

姿見から離れると声は聞こえるけど、音量は小さくなる。

それが分かってから、私は姿見の前に行かなくなった。

(暗転…暗いまま、囁くような大きさの様々な声と、主役の声が聞こえる)

うるさい…うるさい…老若男女入り乱れて頭の中で声が響く…

しかも…ほぼ全部が私を否定している…何で…何でこんなことになるの…

私は誰にも否定されたくなくて、ここに来たのに…なんで!?

こんな嫌な場所に居たくない!

私は原因になった本に解決方法が無いか探すことにした。

(本を見つけたスペースに移る)

あった!この本!!…やっと見つけた本を読み返そうと手に取ったとき…

ふとした違和感に気付いた…最初に読んだときは気にしていなかったし、

儀式の部分だけに興味を持ってしまって、最後まで読まなかったから見落としていたけど…


…最後の章が…全て破り捨てられている


もう嫌だ…何でこんなことに…

私は…どうしていいか分からないし、不快すぎる気持ちでいると…

今までとは違う声が聞こえてきた。

「僕を信じたら、君を幸せにしてあげるよ」

その声は…優しい少年のような青年のような男性の声だった…

信じる…どうやって…?

「簡単だよ。僕の言うとおりにすればいい」

本当に彼を信じていいの?

「大丈夫。僕は君を幸せにするために居るのだから」

優しく包み込むような声が私に響く。

今まで否定的な声ばっかりを聞かされていた私の心が彼への信用で絆されていく…

私は…彼の言うとおりに動くことにした。

(暗転、左手にカミソリを持ち姿見の前に立つ小梅がライトアップされる)

「じゃあ、少しだけ…君の体を借りるね」

その瞬間…私の心は急な眠気に襲われたようにふっと消された。

「彼女は僕が導くんだ…だから、不要な言葉しか発しない君たちは消えてくれ」

少年の声をした女の子は…

何度も…何度も…何度も…姿見に映る自分の首の部分にカミソリを這わせ切り裂いていく

そのたびに、断末魔のような声を上げ、女の子を蝕んでいた声が消えていく

少年は笑っていた。とても楽しそうに何度も何度もカミソリで姿見を切り裂いている

そして…最後の声が消えたあと…少年は笑いながら部屋を動き始めた。

(暗転、荷物が積まれた場所が背景になる)

「フフフ…ハハハッ…いいね。この子…いいよ…願望がありすぎて僕が休めないや」

少年の声で笑いながら荷物の中を漁っていく…そして…1つの鍵と本の1部を見つけた。

「あったあった…さて、ここから出て、この子の願望をかなえてあげないと…」

嬉しそうに鍵を握りしめながら…ドアに向かって歩き出す…

(暗転、チェーンで固められた入口が背景になる)

チェーンを開ける前に部屋を見渡しながら独り言を言い始める

「前の奴は備蓄が出来ればいいと言ったから叶えてやったのに、勝手に亡くなりやがったな…」

「僕を信じたのに、その結果を幸福と思わないなんて、なんて不幸者なんだ…」

「今回の子は…願望そのものが違うから…僕を信じて幸福な終末を迎えるだろう…」

「さぁ、納得出来ないカオスな世界から旅立つときだ!」

チェーンに付いた南京錠を解放し、ドアが開く…そして、その子は部屋からゆっくり歩いて出ていった。

(暗転し、女の子の声だけが聞こえる)

その後…少年のようなしゃべりかたをするようになった少女は…

彼女を傷つけた全てにカミソリで消せない傷を付けて命の削ぎ落としを行った…

その子は…今、逮捕され…とある部屋で会話をしている。

(取り調べの椅子に座る小梅…ただ、顔は見えず体だけがライトアップされている)

「何でこんなことをしたのか?僕はただただ善意で1人の少女を救おうとしているだけさ…」

「それに…女の子がこんなちっぽけなカミソリで人を殺せるはずがないだろ?」

「僕は慈悲深いのさ…この不衛生な部屋に居る蝿が僕の手に止まっても殺さないんだ…違うかい?」

少女とも少年ともつかない声で、その子はそう語った。

そして、小さく自分に言い聞かせるように呟いた。

「君が望んだ終末を叶える…それが僕の仕事。だから…君の目覚めはまだ先だよ…たぶん…ずっと先…」

(暗転し、幕が下りる)

………………………………………………………

(講演後:控室)

モバP「お疲れ様~」

小梅「あ、Pさん。…お疲れ様です」

モバP「いやぁ~、いい演技だったよ」

小梅「エヘヘ…嬉しいなぁ…」

モバP「今回のって、サイコホラーって感じなのか?」

小梅「うん。そう…みたい。ヒッチコックさんのサイコみたい…」

モバP「ヒッチコック?」

小梅「そういう…ホラー映画の監督さんが居るの」

モバP「そうなんだ。流石小梅は物知りだな」

小梅「ホラーなら…任せて」

モバP「お、可愛いドヤ顔!…演技力も上がったかな?」

小梅「うん。その…セリフに合わせて…表情だけ変えるのって…難しくて……いっぱい…練習したの」

モバP「練習の成果が出ているな。あのカミソリで姿見を切るシーンとか凄かったもんな…」

小梅「あれはね…ものまね…なの」

モバP「ものまね?目のハイライトが消えてるっていうか、ああいう表情する子なんて居たか?」

小梅「居るよ……Pさんは…気付かないだろうけどね……」

モバP「何か怖いな…それ」

小梅「日常にも…ホラー?」

モバP「それは勘弁して欲しいな…あ、そうだ1個気になったんだけどさ…」

小梅「なぁに?」

モバP「ああいう二重人格じゃないけど、1つの命に多数の人格がある場合ってどんな幽霊になるんだ?」

小梅「どんな…幽霊?…う~ん……」

モバP「そういうくらいまでは見えてない…のかな?」

小梅「あ、そうか…ああいう子って…そうだったんだ…フフフ…Pさん、本当に知りたい?」

モバP「…その邪悪な笑顔で嫌な予感しかしないから、質問しなかったことにしていいか?」

小梅「そう?…残念…」

モバP「じゃ、打ち上げに行こうか。スタッフさんや声優さんたちにも挨拶しないとな」

小梅「うん。…あ、Pさん…その……手…つないでも…いい?」

モバP「いいよ。一緒に行こう」

小梅「エヘヘ…うん。…ずっと一緒に…」


(終わり)

以上です。

劇中劇って言うのを書いてみたくて挑戦してみたけど…難しいですね。
読んで下さる方がいらっしゃれば、その方に一言、ありがとうございました。

乙でした

もしかして最近よく小梅SS書いてる人?
この小梅らしい、静かな雰囲気好き

>>13

小梅ちゃんで速報に出すのは初めてですね…。
静かに怖いような空気が出せてれば嬉しいです。

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