咲「和卓会議」和「のどかいぎ」恭子「」 (47)

恭子「末原裁判」咲「脳内会議」の咲さんサイドの話をとのことだったので

咲さんのみで脳内会議をすると末原さんが可哀想なことになりそうなので
原村さんにご登場願いました
まさかの末原さんは出てこず。ご容赦ください

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咲「はぁ……」

またメールきてる……
毎日のようにメールがくる。これが普通なのかな

まいったな。普通が分からないよ

和「どうしたんですか、咲さん」

咲「和ちゃん」


そうだ!和ちゃんなら……

いや駄目だよ。何考えてるの、私は

咲「なんでもないよ」

和「そうは見えませんよ」

咲「いやほんとに」

和「……末原さん、ですか?」

語尾は疑問形なのに確信しているかのような、含みのある笑みがこちらに向けられる


咲「いや……」

和「図星ですか」

ここで嘘をついても仕方がない、か

咲「なんで分かったの?」

和「今咲さんを悩ませる案件なんてそれくらいでしょう」

そんなことないよ。
今にも雨が降りそうだな……傘持ってきてないけどどうしよう。とか考えてるよ


和「別に隠してるわけじゃないでしょうに」

咲「でもあえて大っぴらにするような話でもないし」

和「それで、どうしたんですか?」

咲「毎日のようにメールとか電話とかくるんだけど、これって普通なのかなって」

和「惚気ですか……」

咲「う……だから言うの嫌だったんだよ」


和「付き合い初めにはよくあることなんじゃないですか」

咲「そうなんだ」

よく話題が尽きないなって感心するよ

和「それに遠距離ですし、不安な部分もあるのかもしれませんね」

咲「?」

和「つまり……不貞、とか」

咲「ええ!?ないない!」

和「無いと分かっていても、会えない時間が長すぎるとその無い可能性まで考えちゃうってことですよ」


咲「うーん。私は考えないけどなぁ」

和「……単純にもっと咲さんのことが知りたいとか、そういうことじゃないですか」

あ、和ちゃん急に適当に……さては面倒になったな

和「咲さんは末原さんにメールとかしないんですか?」

咲「しないね。報告することもないし」

和「報告って……咲さんはどの程度の出来事で『報告』するんですか?」

咲「……」

考えたことなかったな。何だろ?


咲「住所変更とか?」

和「市役所レベルじゃないですか」

咲「あ、アドレス変更?」

和「日本語と英語で変わりますね。それでも酷いですが」

咲「酷いの?」

和「咲さんはアドレス変更なんてそうそうしないでしょ」

和「連絡しないと言っているのと同義ですよ」


咲「そっか。それもそうだね……やっぱりまずいかな」

和「メールとか電話とかをちょっと重く考えすぎじゃないですか?」

和「連絡する理由はいらないと言ってもいいですよ」

咲「いや、いるでしょ」


和「暇だからしちゃった、くらいの理由で充分だということです」

それ理由になり得るの!?

和「咲さんからメールを頂ければ末原さんも安心するのでは?」

咲「なるほど。メールの頻度を減らすためにあえてこちらからメールするってことだね。和ちゃん策士だね!」

和「いや、そういうことでは……」


和「……え?減らしたいんですか?」

咲「毎日はさすがにね……」

和「そんなに不満ですか?愛されてるって証拠ですよ」

咲「うーん……なんで末原さんは私の事なんか好きなんだろう」

和「それこそ本人に聞けばいいじゃないですか」


咲「私のどこが好きなの~?って?無理!」

和「何ですか?その……」

和「頭空っぽな人みたいな言い方は」

言葉を選んでそれ!?

和「もう一回言ってみて下さい」

咲「私のぉどこが好きなのぉ?」


和「ぷふっ」

咲「ちょっと!笑わないでよ。言った私も私だけど」

和「ごめんなさい。でも確かにその台詞を咲さんが言う所は想像つきませんね」

今言っちゃたけどね


和「でも『私の事なんか』は聞き捨てなりませんね。咲さんは自己評価が低すぎます」

咲「そんなことないよ。自分を冷静に見てるだけだよ」

和「自分を客観的に見るなんて土台無理な話です」

和「生涯誰とも係わらないのであればそれでもいいですが」

和「他人と付き合っていく以上、他者評価もある種の自分なんですよ」


咲「そうかなぁ。でもそれは本当の私じゃないし」

和「本当の自分はそうじゃないと思っていても」
  
和「その人の前で出したモノが、その人にとっての咲さんを形作るんですから」


和「本当の自分じゃないと言いながらそれを他人に出せないのなら」

和「他人にとっては『本当のあなた』なんて存在しないと思いますよ」

咲「……そうかもしれないけど、それはそれでいいんじゃない?」

勝手に私の像を作る人たちを一々気にしてられないよ

和「本当に他人だったらそれで良いと思います」

和「でも末原さんは違うんでしょう?」

咲「う……」


和「……自己評価が高い人は鼻につきますが低すぎる人にも苛々することはありますよ」

咲「えっ」

じゃあ和ちゃんは私にイラッとしてたんだ……ショック!

咲「の、和ちゃんも?」


和「多少は」

やっぱり!

咲「じゃあ末原さんも?」

和「それはどうでしょう?恋は盲目、あばたもえくぼといいますからね」

今日の和ちゃんちょっと当たり強くない?


和「私が言うのもなんですが、咲さんは考えすぎです」

咲「そうかな。でも考えないと分からなくないかな?」

和「考えても分からないけど考えなくても分かるもの、というものもありますよ」

咲「それは?」

和「女心です」

……それは突っ込む所なの?いいの?つっこむよ?行くよ?和ちゃん!


咲「どういうこと?」

ああダメだった。私には難易度が高かったよ

和「……女心だけじゃないですけど」

あ、ちょっとがっかりしてる
やっぱりつっこんで欲しかったんだ。ごめんね。和ちゃん


和「人の気持ちは先に感情が来て、後から理由付けをするものです」

和「好きだと思った時に理由なんてないです」

和「振り返ってみてここが好きなんだと自分を納得させているんですよ」

咲「そんなものなのかな」

そういえば和ちゃんは普段は思慮分別のある人だけど割と直情的になる時もあるよね


和「現状、特に不満はないんでしょう?」

咲「まぁ……」

無いこともないけど、言ったらまたのろけだって言われそうだし

和「好きなんでしょう?」

咲「……うん」

和「では気持ちを言ってみるっていうのもアリだと思いますよ」


和「感情論ではダメですが、感情を出し合って、それから議論すれば問題ないでしょう」

咲「うーん、それは……」

和「恥ずかしい、ですか」

咲「うん」

和「はぁ……」

うわっ露骨に嘆息された!


和「咲さん。それはわがままというものですよ」

わがままだなんて、そんな事初めて言われたよ

咲「そうなの?」

和「咲さんが言っているのは『本当の自分を分かってほしい。でも本音は言いたくない。だから察してくれ』ってことです」

咲「……そう言われるとすんごい面倒くさい女だね」

和「程度の差はあれど、誰もが思っていることではありますが」

咲「言葉にしてしまうとダメだね」


和「つまり当人同士で話し合わなければ解決しない事だということです」

咲「なるほど。確かにそうだね。でもやっぱり難しいなぁ」

和「お役に立てずにすみません」

咲「そんなことないよ。とっても参考になったよ」

気付くと空から大粒の雨が降ってきていた
まだ本降りじゃないのか、そこまで激しくないのが救いかな


咲「和ちゃんは優しいね」

和「……どうしてその結論に至るんですか。それに優しい要素は無かったでしょう」

確かに割と厳しい事ばかり言われた気がする

でも……


咲「和ちゃんが言ったんだよ。他者の評価が自分なんだって」

私は和ちゃんが自分をどう思っているのかは分からない

咲「私が和ちゃんを優しいと思ったんだから、やっぱり和ちゃんは優しいんだよ」

咲「ありがとう」


ごめんね……とは言えなかった

私は何も言えない。何も言われていないから

咲「あ、話は変わるけど、和ちゃん傘持ってきてる?」

和「え?ええ」

咲「そう。良かった」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

雨は夕立のようでした
分かっていればもう少し学校で時間を潰したのですが……

少し濡れてしまいましたね。仕方がないですが

冷えた体を温めるように湯船に浸かる

和「何をしているんでしょうか、私は」


今日の私の言葉、振り返ると全て私に突き刺さりました……
自分のことを棚に上げるとは正にこのことを言うのでしょう

咲さんは私を優しいと言って下さいましたが
自分が出来ていないことを咲さんにしたり顔で注意して
なんて滑稽なんでしょうか

和「ぅ……」


あの人が貴女に幸せをもたらすのならいいんです
私は身を引きます


――身を引く?身を引くと言えるような立場ですらないはずだ
――私にとっての居心地のいい関係。そこから動けなかったのだから

――私は、未だそこから動けずにいる……


だけどもし貴女の輝きが失せるのなら
私は……


私の涙を知っているのは月だけでいい
貴女のために、そしてなにより自分のために笑う

朝日が昇れば涙も乾くでしょう?



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