あかり「わぁ、喋る猫さんだぁ」 QB「僕は猫じゃないよ」 (622)

ゆるゆりSSです。
まどマギ成分もあります。
ちょこちょこ書いていきますのでよろしくお願いします。

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1話


ごらく部


あかり「ねぇ、みんな見て!しゃべる猫さんだよ!」ガラッ

京子「はぁ?何言ってんのあかり?」

結衣「うわっ、あかりなんだそれ?ぬいぐるみ?」

あかり「ぬいぐるみじゃないよぉ。さっきこの子があかりに話しかけてきたんだよ!」

ちなつ「あ、あかりちゃん……」

京子「……あ、あかり。お前存在感が無いからって無理してそんな事をしなくてもいいんだぞ?」

あかり「もう! 京子ちゃんひどいよぉ! ねぇ、猫さんさっきみたいに話してくれないかな?」

猫?「だから僕は猫じゃないよ、キュゥべえって言う名前があるんだけどな」

ちなつ「!?」

結衣「うわっ!? し、喋った!?」

京子「なにこれ? どうやって喋らせてるの? あかりの腹話術?」プラーン

QB「僕の耳を持たないでくれないかい?」

京子「………」ジーーーー

QB「なんだい?」


京子「うぉぉぉぉぉ!? ほんとに喋ってるぅぅぅ!?」

QB「正確にはテレパシーだね」

京子「テレパシー? 頭の中で考えたことがわかるやつ?」

QB「そうだね、その認識でいいよ」

京子「すげぇ!! 結衣!! ちなつちゃん!! 私今超能力を使ってる!!」

あかり「京子ちゃん!? 何であかりを無視したの!?」

京子「あはは、ごめんごめん。ところであかり、この猫?をどこで拾ってきたの?」

あかり「え~っと、あかり今日日直だったんだけど、日直のお仕事が終わってごみを捨てに行くところで見つけたんだよ」

あかり「あかり、この子に話しかけられちゃってびっくりしちゃったけど、みんなにも見せたくて連れてきちゃったんだ。勝手に連れてきちゃってごめんね」ナデナデ

QB「気にしなくていいよ」

京子「あかり、ナイスだ!! こんな面白い生物を捕獲するなんて成長したな!!」

結衣「面白い生物って…… まあ、確かにこんな生き物見たことないな」

ちなつ「そうですね、一体なんなんでしょうね?」グニーン

QB「僕を引っ張らないでくれないかな?」

ちなつ「あっ、ごめんね」

京子「ちなちゅ~~、私の顔を引っ張ってもいいんだよ~~」グリグリ

ちなつ「うっとおしいです、離れてください」

京子「ひどっ!?」


QB「君達はにぎやかな人間だね、そろそろ僕の話を聞いてくれないかな?」

結衣「? 話?」

あかり「お話ってなぁに?」

QB「君達は皆魔法少女の才能を持っているんだ、だから僕と契約して魔法少女になってよ!」

京子「!?」

ちなつ「魔法少女? それってミラクるんみたいな?」

QB「ミラクるんは知らないけど、魔法少女というのは魔女と戦う使命を持った存在だよ」

結衣「魔女? それに戦うって…」

QB「もちろん君たちにもメリットはあるさ、魔法少女になるときに僕が君たちの願い事をなんでもひとつだけかなえてあげるよ」

ちなつ「!? なんでもってほんとになんでも?」グィッ

QB「そうだよ。なんだって構わないよ、どんな奇跡だって起こすことが…」

京子「私の願いはラムレーズン1年分!!」

結衣「ちょ!? 京子!?」

あかり「京子ちゃん!? そんな簡単に決めちゃっていいの!?」

京子「いいっていいって、ほらほら! 早く叶えてよ!」

QB「…ラムレーズン1年分だね。わかったよ、契約は成立だ。君の祈りはエントロピーを凌駕した」


京子「うっ… うあああ!?」

京子とQBを中心に強い光が輝き、京子が苦しみ始めた。

結衣「京子!? おい! お前京子に何をしてるんだ!?」

ちなつ「ま、まぶしい… 京子センパイ、大丈夫ですか!?」

あかり「京子ちゃん!?」

光が収まった後に、呆然とした顔の京子の周りにはラムレーズンのカップが大量に散らばり、京子の手には青色の宝石が収まっていた。

京子「えっ…? マジで願いが叶っちゃったの?」

QB「そうだよ。おめでとう、君はこれで魔法少女となった。さあ君の力を解き放ってごらん」

京子「ちょ、ちょ、ちょ… 結衣!! 私、魔法少女になっちゃったよ!!」

結衣「あ、ああ… 確かに願いは叶ったみたいだな」

京子「やべー! ほんとに願いが叶うんならもっとちゃんとした願いにするんだった!!」

ちなつ(ほんとに願いが叶った、だとしたら私の願いは結衣センパイと…)グフフ

あかり(ちなつちゃんが悪い顔をしてるよぉ…)


京子「で、キュゥべえだっけ? どうやったら魔法少女に変身できるの!?」

QB「君の持っているソウルジェムを使って変身するんだ、使い方はソウルジェムに意識を集中させてごらん」

京子「ソウルジェムってこれのこと?」

QB「そうだよ」

京子「ふむ… はぁぁぁぁ!」

京子が気合を入れるとソウルジェムが輝き京子の姿を包み込んだ。
光が消えて、京子の姿は魔女帽子を被ったミラクるんの服によく似た姿となっていた。

ちなつ「み、ミラクるんの格好…」

あかり「京子ちゃん、本当に変身しちゃった…」

結衣「マジか…」

京子「う、うおおおおおお!」

京子「はっ…、魔女っ娘京子ちゃん、華麗に登場!」キラリーン

京子「どうどう? 決まったでしょ?」

QB「いいんじゃないかな?」

京子「おお、わかってるねキミィ~」

結衣「お、おい京子。お前大丈夫なのか? さっきすごい苦しそうだったけど…」

京子「へ? 大丈夫だよ? むしろ絶好調みたいな? というか、魔女っ娘になれた今の私は今までの人生で一番幸せだよ!」

結衣「それならいいんだけど…」


結衣「そういえば… ねぇ、キュゥべえだっけ? 君はさっき魔法少女は魔女と戦うって言っていたけどそれはどういうことなのかな??」

QB「言葉通りさ、魔女と言うのは呪いから生まれた存在で普通の人間には見えないんだ」

QB「魔女は不安や猜疑心、過剰な怒りや憎しみ、そういう災いの種を世界に撒き散らしている存在なんだよ」

QB「魔法少女はそんな魔女と戦う為に、願いから産まれた希望を振りまく存在さ」

京子「おお~、それじゃあキュゥべえは愛と正義の魔法少女を探すために私達の元に現れたんだね」

QB「まあ、そんなところだね」

京子「それならば、この魔女っ娘京子ちゃんに任せたまえ! 悪さをする魔女はこの京子ちゃんが成敗してあげよう!」

QB「それは頼もしいね」

ちなつ「また調子に乗って…」

あかり「あはは、京子ちゃんらしいね」

京子「よ~し、それじゃあ今日のごらく部活動は、世界の平和を守るため魔女をやっつけに行くことに決定!」

結衣「お、おい京子!?」

京子「ほらほら、みんないくよ~~」ガラガラ

ちなつ「もう、勝手なんですから…」

あかり「京子ちゃんまってよ~~」

結衣「ほんとに大丈夫なのかな… って、京子! お前この大量のラムレーズンどうするんだよ!?」

京子「後で結衣ん家に持ってくからヨロシク~」

結衣「はぁ… わかったよ…」


斯くして魔女を探すために町に繰り出す京子たちであった。

1話終わり。
また書いてきます。それではー

2話


京子「って、魔女ってどこにいるの?」

結衣「私が知るわけ無いだろ… というかお前よくその格好で外歩けるよな」

ちなつ(私がミラクるんのコスプレして外歩いたときと同じくらい注目されてる…)

京子「よし、あかり。キュゥべえを見つけてきたみたいに魔女を見つけてくるんだ!」

あかり「無理だよぉ!」

しばらく当ても無く歩く4人。

京子「ねぇ、キュゥべえは魔女がどこにいるかわからないの?」

QB「魔女がいる場所の近くまで行けばわかるよ」

京子「おおっ、それじゃあ、魔女が現れやすい場所なんてないの?」

QB「そうだね、それより君のソウルジェムを使って探すほうがいいと思うよ」

京子「あの宝石? あれ、そういえばどこにいっちゃったんだ?」

QB「胸の中心に星型になっているものがソウルジェムだよ、少し意識を集中させてごらん、何かを感じないかい?」

京子「むむむ… あっ、へんな感じがする」

QB「魔力の痕跡を感じ取ったみたいだね、その感覚をたどっていけば魔女と出会えると思うよ」

京子「おお~、この宝石いろんなことできるんだね」

QB「そうだね、取り扱いには気をつけるんだよ」

京子「わかってるって~~」

京子「えへへ、ねぇみんな、私の魔法すごいでしょ?」

結衣「まあ、確かにすごいな」

ちなつ(今までの出来事を見ても、このキュゥべえが願い事を叶えられるのは確定的。今日帰ったらこの子を呼んで結衣センパイが私の事を好きになってくれるように願いを…)グフフフフ

あかり(またちなつちゃんすごい悪い顔をしてる…)

京子「おーい、ちなつちゃん。どうどう? 私の魔法、かっこいいでしょ? 惚れちゃった?」

ちなつ「惚れないです。ほら、さっさと魔女とやらを探すんでしょう。無駄口聞いてないで足を動かしてください」

京子「ひ、ひどい…」

あかり「あはは、とってもかっこいいしかわいいよ京子ちゃん!」

京子「あかりぃ~、お前は本当にいい子だなぁ」

4人はそのまま話しながらしばらく歩いたところで人気の無い公園に辿り着いた。

京子「なんかこの公園から変な気配を感じる」

ちなつ「ちょっと、寂れすぎじゃないですかここ… ものすごく寒気がするんですけど」ギューーーー

結衣「痛っ!? ち、ちなつちゃん、腕握りすぎ」

あかり「き、京子ちゃん。やっぱりやめておいたほうがいいんじゃ…」

京子「うっ… ここまで来て引き下がれるかってんだ! さあ、キュゥべえ、魔女はどこ!?」

QB「…これは魔女ではないね。使い魔の気配だ、その鉄棒のところに結界の入り口があるよ」

結衣「使い魔? 結界?」

QB「そうだよ、魔女から分裂して産まれる存在さ。成長すると分裂もとの魔女と同じ存在となるし、使い魔も人を襲うんだ」

QB「結界というのも、魔女や使い魔は自分の領域を持っていていつもは常に結界に隠れ潜んでいるんだよ」

京子「ふむふむ、それじゃあ、使い魔も魔女と同じで悪い奴なんだね。それならばこの京子ちゃんがこらしめてやらないといけないな!」

京子「それでその使い魔の結界ってどうやって見ればいいの?」

QB「使い魔の結界を開くためには魔力を使ってこじ開ければいいよ、その付近でソウルジェムに集中してごらん」

京子「むむむ… あっ、何か変な模様が浮かび上がって…」

QB「それが使い魔の結界だよ」

京子「よぉ~し、それじゃあ、みんな私に続け~~!」

京子が叫ぶと共に4人は光に包まれ使い魔の結界に閉じ込められた。

京子「えっ?」

あかり「な、なにここ?」

ちなつ「」ガタガタガタガタ

結衣「ち、ちなつちゃん、腕痛いって!」

使い魔の結界は赤く歪んだ風景で、4人の周りには茨のような鉄線が張り巡らされており、遠くのほうから人間の声とは思えないような声が近づいてきていた。

京子「えっ? えっ? これ何?」

QB「京子、使い魔が近づいてきている。速く戦闘準備をするんだ」

京子「戦闘準備って… まずは話し合いから」

QB「何を言っているんだい? 話なんて出来るわけないじゃないか」

京子「へ? だって魔女や使い魔も最初は悪い奴だけど話し合ってその内いい奴になるんだよね?」

QB「君が何を言っているかわからないけど、なんでもいいから早く武器を作り出さないとまずいよ。使い魔はもうすぐそこまで来ているんだ」

京子がいまだに状況を理解できないでいるうちに、周りにある鉄線が動き始め京子たちに向かい動き始めた。その先端にはハサミの様なものが付いており意思を持ったように京子たちに近づいてくる。

あかり「ひっ!? な、なにこれぇ!?」

京子「う、嘘、なんなのこれ?」

いつの間にか周りにはひげを生やした白く丸い物体がおり、京子たちを取り囲んでいた。
その数は多くはなかったがちなつは使い魔を見た瞬間気絶してしまった。

ちなつ「」

結衣「ちなつちゃん!?」

QB「まずいよ! 京子、早く戦うんだ!」

京子「だ、だって、こんなの聞いてないよ… 戦うなんてどうやって…」

QB「君には戦う力があるはずだ、イメージするんだ使い魔を倒せる武器を」

京子「武器って… そんないきなり言われても…」

京子とQBが話していたが回りで蠢いていた鉄線がついに京子たちに向かって攻撃を開始した。
鉄線が最初に向かった先には恐怖で顔を引きつらせたあかりがおり、あかりは鉄線の先についていたハサミで腕を切りつけられてしまった。

あかり「きゃあああ!」

京子「あかりっ!?」

結衣「あかり!!」

あかり「い、痛いよぉ…」

京子「お、お前らよくもあかりを」

京子はあかりを傷つけられ怒りに満ちた目で使い魔を睨んだ、その時には無意識で右手にミラクるんが持っているようなステッキを作り出していた。
そして、再び鉄線があかりに向かい動いたときに京子はステッキを掲げ叫んだ。

京子「やめろーーー!」

京子が掲げたステッキから吹雪が巻き起こり、襲い掛かってきた鉄線は全て凍りついていた。そして、使い魔のほうを見ると使い魔たちも全て凍りついており、京子たちの周りは氷壁で囲まれていた。

京子「こ、これって、私が?」

呆然とする京子だったが、しばらくすると氷の壁にひびが入りそのひびはどんどん大きくなっていった。
そして次の瞬間氷壁は砕け散り、中にいた鉄線も使い魔も粉々に砕け散った。

いつの間にか使い魔の結界もなくなり、元の公園に戻ってきた京子だったがあかりの呻き声を聞き意識を取り戻した。

あかり「うぅ…」

京子「あ、あかりっ! 大丈夫!?」

結衣「あかりっ! よかった、かすり傷だったか。それでも早く手当てしなきゃ…」

QB「おめでとう、京子。何とか使い魔を倒せたようだね」

QBは京子に話しかけていたが、京子たちはあかりが他に怪我をしていないか確認し続けQBの言葉は耳に入らなかった。
幸いあかりはかすり傷程度だったが手当ての為に学校に戻ることになった。

ごらく部


京子「あかり… 本当に大丈夫?」

あかり「うん、保健室で手当てもしてもらったしもう大丈夫だよぉ」

京子「ごめんね… 私が魔女退治をしようなんて言わなければ…」

あかり「だ、大丈夫だよぉ、確かに怖かったけどみんな無事だったんだし」

京子「あかりは無事じゃなかったじゃん…」

あかり「え、え~~っと… それじゃあ、あかりにこのラムレーズン3個頂戴、それで許してあげるから!」

京子「あ、あかりぃ…」グスッ

結衣「あかりがこう言ってくれてるんだ、お前ももう落ち込むなよ」

結衣「だけど、もう魔女退治なんて危ないことは駄目だぞ。後少し調子に乗りすぎたことを反省するんだぞ」

京子「うん… 本当にごめんね、あかり」

京子があかりにもう一度謝ったところで部室のドアが勢いよく開かれて二人の女生徒がごらく部にやってきた。

綾乃「歳納京子―ッ! もう下校時間はとっくに過ぎているわよ! って、あら? ど、どうしたのこの空気? 歳納京子? 泣いてるの?」オロオロ

千歳「あらあら~?」

京子「綾乃… ううん、泣いてなんかないよ! って、もうこんな時間じゃん、ちなつちゃんも起こして帰らないとね」

綾乃「歳納京子?」

千歳「吉川さんはお休み中? 珍しいなぁ~」

結衣「あ、ああ。今日はちょっと色々あってね。私達もすぐ帰るから!」

綾乃「? 船見さん? 後ろに何か持っているの?」

京子「あー、綾乃! 今日はもう私達帰るから!」

綾乃「ちょ、ちょっと押さないでよ」

千歳「あらら~?」

京子は二人をごらく部の外に連れ出して無理やり帰らせる。

綾乃「もう、ちゃんと下校時間は守りなさいよね!」

京子「わかってるって、心配して来てくれてありがとね綾乃」

綾乃「な、別にそういうわけじゃないわよ!」

千歳「ふふふ~」

京子「それじゃ、またね二人ともー」ガラガラ

京子「ふぅ… 危なかった」

結衣「あの二人にキュゥべえを見られたらまずいよね」

QB「僕が見つかったら駄目なのかい?」

結衣「まあ、あの二人なら部室でペットを飼っていても許してくれそうだけど、流石に立場があるだろうしね」

QB「? よくわからないけど、あの人間二人には僕は見えないし大丈夫だよ」

京子「……色々聞きたいことがあるけど、今日はもう帰るから明日聞くことにするよ。キュゥべえはその押入れに隠れてて」

QB「わかったよ。それじゃあ、しばらくはこの建物に住ませて貰うとするよ」


その後、ちなつが目を覚まし再び一悶着があったが4人は帰路に着いた。

2話終わり。

読んでるよ

QBの耳ってどこだよww

3話


次の日 ごらく部


結衣「それじゃあ、キュゥべえ、色々話してもらうよ」

QB「何を聞きたいんだい?」

京子「昨日のことだよ! 使い魔があんなとんでもないお化けだ何て話が違うじゃん!」

QB「? ちゃんと説明したじゃないか、魔女や使い魔は呪いから産まれた存在で人間を襲うんだ。君は魔女や使い魔と戦うための使命をその身に宿したんだ」

京子「わ、私はライバるんみたいな敵が出てくるんだって思っていたのに…」

QB「何のことかわからないけど使い魔は昨日君が見た通りの姿をしているよ」

京子「そ、それじゃあ、魔女もあんな怖いお化けなの?」

QB「魔女の姿はそれぞれだからなんともいえないね」

京子「…………」

結衣「…京子は君と契約をしたけど、魔女や使い魔があんなに恐ろしい相手だなんて思ってなかったんだ。君には悪いけど魔女退治はできそうにないよ」

京子「結衣…」

QB「それは困ったな、魔女を放っておく事は出来ないんだけど」

QB「京子、君は魔女退治を行うことはこれから出来そうにもないのかい?」

京子「うん… あかりだって怪我させちゃったし… それに私、あんな怖い目にはもう…」

あかり「京子ちゃん…」

QB「そうか、君の気持ちはわかったよ。残念だけど僕だって無理強いは出来ないしね」

QB「結衣、あかり、ちなつ、君たちはどうする? 君たちが契約して魔女と戦ってくれるなら僕はそれでもいいんだけど」

結衣「ごめん、私も出来そうにないよ…」

ちなつ「私も…」

あかり「あかりも無理だよ…」

QB「それは残念だ、だけど仕方ないね」

京子「ごめんね、契約しちゃったのに…」

QB「気にしないでいいよ。だけど京子、君は魔法少女の力を身につけたんだ、また気が変わったら僕を呼んでくれればすぐ駆けつけるからね」

京子「うん、ありがとうキュゥべえ」

QB「君たちも契約する気になったらいつでも僕を呼んでくれればいいよ」

結衣「魔女と戦わないのに契約は出来ないよ、京子のことは本当にごめんね」

QB「こっちこそ巻き込んですまなかったよ、それじゃあ僕はまた僕との契約を必要としてる子を探しに行くよ」

京子「うん、それじゃあね…」

ごらく部を出て行くQBを4人は見送りQBの姿が見えなくなるまで京子は手を振っていた。

京子「いっちゃったね…」

結衣「ああ、なんと言うかあっという間すぎて夢じゃないかって思うくらいだよ」

ちなつ「でも、ちょっともったいなかったですね。なんでも願いが叶うのは魅力的だったなぁ」

結衣「戦う気もないのに契約するなんてキュゥべえにも迷惑がかかっちゃうよ、京子はもっと考えて行動しないと駄目だぞ」

京子「反省しております…」

あかり「でも、よかったね。魔女退治しなくてもよくなって、またあんなに怖い体験を京子ちゃんにしてほしくなかったし」

京子「うわあああ! あかりぃぃ! お前はどこまで良い子なんだよぉぉぉ!」グリグリグリ

あかり「きゃあ! くすぐったいよ京子ちゃん~~~!」

ちなつ「あはは」

それから4人は京子の魔法を見たり、キュゥべえの話をしたりしていたが1週間する頃には魔法関係の話は殆どしなくなっていた。
京子もあかりに怪我をさせた後ろめたさもあって、魔法を殆ど使わずに生活をしていた。

京子のソウルジェムは徐々にその色を曇らせていったが、京子は特に気にもしなかった。

2週間後 結衣の家


ピンポーン

結衣「はーい」ガチャ

京子「来たよん!」

結衣「はいはい、早く上がれよ」

京子「なんだよ~、久々の連休を結衣ん家で過ごすってのに冷たいなぁ」

結衣「…お前もしかしてこの3連休ずっと私の家に泊まる気なのか?」

京子「あったりまえじゃん!」

結衣「…………」

京子「ああっ、ドアを閉めないでっ」

その後、結衣の家に上がってゲームをしたり漫画を読んだりしてごろごろしていた京子が結衣に言った。

京子「あれ、この漫画続きないの?」

結衣「ああ、そういえば最近それ買ってないな」

京子「そっか、それじゃ買ってくる」

結衣「お前、もう8時だぞ… 近くの本屋って言っても結構距離あるんだから、明日でいいだろ…」

京子「今続きが読みたいんだよ! ダッシュで行けば買ってこれるから平気だって」

結衣「はぁ、それじゃこれ自転車の鍵」ポイッ

京子「サンキュー、結衣。それじゃ、ちょっとひとっ走りしてくるねー」ガチャ

結衣「気をつけろよー」

京子が出て行きしばらくして結衣は机の上に京子の財布とソウルジェムが置きっぱなしになっていることに気が付いた。

結衣「京子の奴… 財布忘れてどうするんだよ…」

結衣「………あいつなんで電話に出ないんだ?」プルルルルプルルルル

結衣「仕方ない、少し走れば間に合うだろうし届けてやるか」

京子の財布とソウルジェムを持って部屋を出る結衣。
結衣は少し走り始めた所で、見覚えのある姿を発見した。
京子が道で倒れていた。

結衣「京子!?」

結衣「おい! しっかりしろ京子! どうしたんだよ!?」

京子は自転車に乗っているときに転んだのか擦り傷だらけになっていた。
だがそれ以上に、結衣は京子の異変を感じ取っていた。
京子は息をしていなかった。

結衣「嘘、だろ… 京子…」

結衣「ま、またいたずらか? やめてくれよ京子… 性質悪いぞこんないたずら…」

結衣は京子を起こそうとするが京子は力なく結衣にもたれかかって来る。
その時に、結衣は京子の脈も止まっていることに気付いてしまった。

結衣「や、やだ… なんで? どうして?」

結衣「嫌だよ京子… 目を開けてよ、起きてよ…」

自然に結衣の目から涙が零れ落ち、京子を揺さぶるが京子は何の反応も示さず揺さぶられ続けていた。

結衣「あ、あああ… うわぁぁぁぁん、嫌だよ京子!! ねぇ、起きてよ!! ねぇっ!!」

結衣が叫び声を上げ京子を呼んだその時、京子の目がパチリと開き結衣と目が合った。

京子「あれ? 結衣? って、どうしたの!? めっちゃ泣いてる!?」

結衣「………えっ?」

京子「ど、どうしたんだよ? 何があったの?」

結衣「京子…? 生きてるの?」

京子「はぁ? 私ピンピンしてるよ? って何だこりゃー!? 身体がズキズキする!」

結衣「よ、よかった… 本当によかった…」

京子「よくないし! 京子ちゃんの完璧ボディがこんなに傷だらけにっ、あー、自転車で転んじゃったのか」

京子「それにしても… プププ、結衣ってば私を心配して泣いちゃったの? 私ってば愛されてるぅ~~ …あれ? 結衣?」

京子は最初結衣をからかっていたが、結衣の様子がおかしいことに気付き結衣の顔を覗き込んだ。
結衣の顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっていたが、安堵の表情を見せていた。

京子「ちょ、ちょっと結衣? ガチ泣きしてんじゃん!? ほんとにどうしたの!?」

結衣「だ、だっで… ぎょうごがぁ…」

京子「と、とりあえず、家に帰ろ? ほら、立てる?」


京子は結衣の手を引き立たせ、そのまま結衣の家に戻った。
結衣の持っている京子のソウルジェムはまた少し色を濁らせていた。

3話終わり。
>>16 どもども
>>17 耳から生えてる耳毛みたいな奴です

ちなつは魔女見てもビビらなさそう
似たようなもの自分で書いてるし

続きが気になる

4話


結衣の家


京子「結衣、落ち着いた?」

結衣「うん… いや、私のことより京子、お前は大丈夫なのか!?」グワッ

京子「近い近い! そりゃ、自転車で転んじゃったから大丈夫とはいえないけどこんなのかすり傷だって」

結衣「違う! お前さっき息してなかったし、脈もなかったんだぞ!?」

京子「………え? またまた、結衣さんや私はこの通りピンピンしてますよ?」

結衣「馬鹿! 本当にお前死んでたんだぞ!? そうだ、こんなことしてられない… 救急車を呼ばないと…」

京子「ちょ、ちょっと大げさだって」

結衣「大げさなことあるか! 打ち所が悪かったかもしれないんだぞ? こういうのは早く精密検査しておかないとまた…」

京子「ちょっとちょっと! ほんとに呼ぶ気!? 大丈夫だって!」

しばらくは結衣との押し問答を繰り広げていた京子だったが、結衣の有無を言わせぬ迫力で押し通され京子の親を呼び救急病院に行く事となった。

京子母「結衣ちゃん、本当にごめんなさいね、うちの馬鹿娘が迷惑をかけて。ほら、あんたも謝りなさい!」

京子「へーい、ごめんね結衣―、少し診てもらってくるよー」

結衣「結果がわかったら連絡をくれよ? お前、本当に大変だったんだからな?」

京子「結衣… うん、わかったよ。ちゃんと連絡もするし、もうそんなに心配しなくても大丈夫だよ」

結衣「ん。あ、そうだ。これお前の財布とソウルジェムだよ、お前これを忘れていって届けにいったところで見つけたから返すのを忘れてたよ」

京子「おおぅ、何から何まで… そっか、もしかしたらソウルジェムが私のピンチを結衣に伝えてくれたのかもしれないね」

結衣「ん、そうかもしれないな。そうだとしたらキュゥべえに感謝しないといけないよな」

京子「うん。あ、それじゃそろそろ行くね。また連絡するからね」

結衣「ああ、それじゃあまたな」

京子はそのまま母親に連れられ救急病院に行き精密検査を受けた。
精密検査の結果は異常なし、健康体との診断が出て京子は家に帰ってきた。

京子の部屋


京子『そんで検査結果はなんの問題もなしだったよ』

結衣『はぁ~~~~、ほんとによかった… 一時はどうなる事かと…』

京子『心配かけさせちゃってごめんね。ほんと結衣にはお世話になりっぱなしだよね…』

京子『この前のキュゥべえに私が魔女退治が出来ないって言ってくれたのも私のことを想ってくれてのことだよね?』

結衣『…まあ、お前に戦いなんて無理だと思ったしな。それにお前が傷つくところなんてみたくないし』

京子『………いつもありがとね結衣』

結衣『ふふっ、今日はやけに素直だな京子』

京子『う、うっせー! それじゃまたね! 切るよ!』

結衣『うん、おやすみ』

結衣との電話を切り、ベットに横になり天井を見ながら京子は物思いにふけっていた。

京子(結衣のあの慌てよう、私ほんとに死んでたのかも知れないな)

京子(結衣が起こしてくれなかったら私そのまま目を覚まさなかったのかも…)

京子(なんかお姫様みたいで恥ずかしいな、それなら結衣は王子様かな? なーんてね)

京子が体勢を変えたときに机の上においてあるソウルジェムが目に入った。

京子(そういえばソウルジェムと財布を忘れたから結衣が来てくれたんだよね)

京子(私のお守りになってるのかもしれないな。そうだとしたらキュゥべえにもお礼を言いたいな)

京子(キュゥべえはいつでも呼んでもいいって言ってたし呼んでみよう。契約をしたのに魔女との戦いを逃げちゃったこともちゃんと私の口から謝らないといけないし)

京子「キュゥべえ~~、いる~~?」

京子がQBの名前を呼んでしばらくすると窓の外にQBの影が映し出され声が聞こえてきた。

QB「呼んだかい? 僕を呼んでくれたと言うことは気が変わったのかな?」

京子「おお、久しぶりだねキュゥべえ~、気が変わったわけじゃないんだけど今日はお礼を言いたくて呼んだんだよ」

QB「お礼?」

京子「うん、このソウルジェムのおかげで今日私の命が助かったみたいでさ、そのお礼を言いたくてね」

QB「そうなのかい? ソウルジェムを使って助かったのなら僕に礼を言う必要はないさ。それは君の魂なんだから、君は自分の力を使って助かったと言うことだよ」

京子「私の魂? なんかロマンチックなこと言うねぇ」

QB「そうかな? よくわからないけど」

京子「あはは、キュゥべえって面白いね」

京子「あ、それと、あの時は私の口からちゃんと言えなかったけど、契約したのに魔女退治から逃げちゃってごめんね。あの時私も混乱しててさ、ちゃんと謝りたいと思ってたんだ」

QB「気にする必要はないさ。魔女を倒すのも魔法少女次第だからね、君が気に病む必要はまったくないよ」

京子「…ありがとね、なんかすっきりしたよ」

QB「それならよかった、それで他の3人の様子はどうだい? 僕と契約してくれる気になった子はいないのかな?」

京子「ん~、みんな契約しないんじゃないかな? 最近は魔法のことは私があんまり話さないからごらく部でも話題に上がることも少ないし」

QB「それは残念だな。まあ、また契約したくなったら呼んでくれればすぐ駆けつけるって伝えておいてもらえるかな?」

京子「あはは、キュゥべえってそればっかだね。わかったよ、またみんなには話しておくね!」

QB「よろしく頼むよ京子」

少し会話が途切れ、京子は何気なく自分のソウルジェムを見てふと気付く。

京子(そういえばこのソウルジェム、キュゥべえに貰った時と比べて色が濁ってる)

京子(なんでだろ? 聞いてみよっかな)

京子「ねぇ、キュゥべえ」

QB「どうしたんだい?」

京子「このソウルジェムってさ、最初に貰ったときに比べて色が濁ってるんだけど、なんで?」

QB「それは今日までに魔力を使っていたからさ、ソウルジェムは魔力を使うことによって少しずつ穢れを溜め込むんだ」

京子「へぇ~、それじゃあこれって私のMPみたいなものなんだ。ソウルジェムの色が真っ黒になっちゃったら魔法は使えなくなっちゃうってことかな?」

QB「…まあ、そうだね」

京子「そっかー、何か回復する方法ってないの?」

QB「ソウルジェムの穢れを取る方法は魔女が落とすグリーフシードを使うしかないよ。グリーフシードを使うことによって魔法少女はソウルジェムの穢れを払って、再び魔法を使うことが出来るんだ」

京子「へぇ~、魔法を使うには魔女を倒さないとそのうち使えなくなっちゃうのか… でも、私は魔女と戦えそうにもないし…」

京子「まあ、残念だけど使えなかったら使えなかったで仕方ないよね。残りの使える分で何かしようと思うよ。あ、私が魔法を使えなくなったらソウルジェムは返したほうがいいの?」

QB「いや、それは君のものだし返す必要なんてないよ」

京子「そっか… それじゃ、大事にするね!」

QB「そうだね、大事にしてもらえると僕も助かるよ」

京子「あはは、やっぱりキュゥべえって面白いね。そういう時は嬉しいよとかでしょ? キュゥべえってたまに変な言葉遣いになるよね」

QB「そうなのかい? それじゃあ、嬉しいよ」

京子「あはははは、ねぇねぇ、またこうやって話したいんだけど呼んでもいいかな?」

QB「僕は構わないよ、いつでも呼んでくれればいいさ」

京子「ありがと! それじゃ、また話したいときに呼ぶね。今日はありがとね!」

QB「うん、それじゃあ僕は行くね。またね、京子」

京子「バイバーイ」

QBはそう言うと窓から外に出て行きあっという間に姿が見えなくなった。
京子はQBが消えるのを見送った後に、明日の予定を考え始めた。

京子(明日は結衣ん家に行って、また今日のお礼を言っておかないとね)

京子(お土産に奮発しておいしいケーキでも買っていってあげるか)

京子(そうだ、私の魔法で作り出した氷を使ってのかき氷なんかも面白いかも)

京子(でも何で私の魔法って氷なんだろ? もしかしてラムレーズンを願って契約したからそうなったのかな?)

京子(だとしたらラムレーズンも出せちゃう!? あー、でも願った1年分のラムレーズンを食べ過ぎちゃったし、しばらくは食べなくてもいいかな)

京子(まあ、魔法を最後に使うときはみんなにも見せる為に何か考えておかないとね!)


明日のことを考えながら、京子は結衣に持っていってあげるケーキをどれにしようか迷い、あげたときの結衣の顔を想像しながら笑顔で眠りに落ちていった。

京子の青いソウルジェムはまた少し色を落とし、黒に近づいていた。

4話終わり。
>>23 そういえばあれ完璧に魔女ですよねw
>>24 どもども、書き溜めはないので書きながら投下していってます。ちょこちょこ投下しますのでよろしくお願いします。

乙です
QBヒデェ…

聞かれたこと以上のことは答えない主義だしな
ちゃんと聞けば答えてくれるなんて易しいなぁきゅうべぇは

5話


5日後 ごらく部


京子「うー、なんかだるい」グダー

結衣「…………」

あかり「大丈夫? 風邪でも引いちゃった?」

京子「ちゃんと手うがしてるし熱もないんだけどなー」

ちなつ(懐かしいなー、手うが)

京子「なんかもやもやすんだよね、心の病気みたいな?」

結衣「まさかこの前の後遺症ってことはないよな…?」

あかり「後遺症?」

京子「おお~~っと、結衣さんや! それは私らの秘密ですぜぇ」

結衣「あっ」

京子と結衣はあかり達に心配かけさせない為に京子が死に掛けたことは秘密にしていた。

ちなつ「ちょっと京子先輩、結衣先輩と秘密を共有なんてうらやましい… 何を隠しているんですか?」

京子「なんでもない、なんでもないよ?」

結衣「そうだよ、なんでもないんだよちなつちゃん」

ちなつ「あやしい…」

結衣「そうだ、ちなつちゃんのおいしいお茶が飲みたいな」

ちなつ「! すぐ入れてきますねっ!」

京子(結衣、ナイス)グッ

ちなつがお茶を入れに行き、全員分を持って帰ってきてそれぞれに配り、京子はそのお茶をちびちびと飲み始めた。

京子「おいちい」グダー

あかり「ほんとに京子ちゃん今日はだるそうだよね」

京子「ん~、なんだろ? 変な感じなんだよねぇ」グダー

結衣「………今日はお茶を飲み終わったら帰ろっか」

ちなつ「ええ~… まあ、京子先輩がこの状態じゃ仕方ないですよね」

あかり「そうだね、京子ちゃん無理しちゃ駄目だよ?」

京子「すまないねぇ…」グダー

あかり達と別れ、京子と結衣は帰り道を歩いていた。

京子「もう、私は大丈夫だって。家まで付いてこないでも大丈夫だよ」

結衣「念のためだ、それにお前気が付いてないのか? ここ数日少しずつ顔色が悪くなっているんだぞ?」

京子「へ? そうなの?」

結衣「ああ、何か心当たりとかはないのか?」

京子「ちゃんと手うがもしてるし、風邪引くような薄着もしてないんだけどな~」

京子「あ、最近キュゥべえと夜結構話して遅くなってるから寝不足なのかな?」

結衣「キュゥべえと話してるのか? というか、キュゥべえは違う魔法少女を探しに行ったんじゃなかったっけ?」

京子「なんか呼んだら来てくれるよ。お~い、キュゥべえ~、出ておいで~」

QB「呼んだかい?」

結衣「うわっ!?」

京子「ほらね」

QB「やあ、京子。おや? 今日は結衣も一緒にいるんだね」

QB「結衣、あれから考えは変わったかい? 願い事があるなら僕が力になるよ?」

結衣「いや、戦う覚悟もないし、願い事を叶えて貰うわけにはいかないよ」

京子「うっ」グサッ


QB「そうか、残念だよ。ところで京子、今日はどうしたんだい? いつもより早い時間に呼び出して」

京子「いや~、結衣とキュゥべえの話しになってね、いつもキュゥべえは呼んだらどこからともなく現れるから結衣に見せる為に呼んだんだよ」

QB「そうなのかい? それならいいけど、用はそれだけなら僕はもう行くよ?」

結衣「あっ、キュゥべえは毎日京子と話してるのかな? こいつ最近調子悪そうで何か心当たりはないかな?」

QB「それは恐らく魔力が減ってきているからだね」

結衣「えっ?」

QB「京子は魔女を狩らずに魔力の補給を一切していないから魔力がなくなっていくのは当然のことさ。そして魔力が減ると当然体調にも影響は出てくる、京子が調子悪くなってきているのはその為だね」

京子「うぇ~、マジか… それじゃあ、私どんどん体調悪くなっていっちゃうの?」

QB「ソウルジェムが黒く濁りきったらそれもなくなるよ」

京子「そっか、もうぱぱーっと魔力を使い切ってMP0にしちゃおうかな? あー、でも最後に魔法を使うときは生徒会のみんなにも驚かせたいし… どーしよっかなー」

結衣「…………」

結衣「あのさ、ソウルジェムが黒く濁りきるってどういうことなの?」

QB「京子の魔力がなくなった時が当てはまるね。京子流に言えばMPが0になるってことさ。その状態になるともう魔法は使えないよ」

結衣「…それって大丈夫なの?」

QB「どういう意味だい?」

結衣「今でさえこんなに体調が悪そうなのに、それが魔力不足が原因って事なら魔力がなくなった時に京子がもっと体調を悪くするかもしれないじゃないか」

京子「結衣? どうしたの?」

結衣「お前の事が心配なんだよ! この前もお前は死にかけたんだし、立て続けに体調が悪くなってきたんだ心配もするだろ!」

京子「結衣…」

QB「そういうことなら心配はいらないよ、魔力がなくなった魔法少女を僕はたくさん見てきたけど彼女達は魔力がなくなった後は体調を気にすることもなくなっているよ」

QB「それに京子の体調を元に戻したいのなら君が僕と契約をすればいい、僕と契約すれば京子の魔力を元に戻すことなんて簡単なことさ」

結衣「そうなんだ… それならいいんだけど」

結衣「契約のことも考えておくよ…」

QB「うん、宜しく頼むよ」

京子「えへへ、なんか結衣にここまで心配されちゃうと体調を崩したのもよかったって思っちゃうな」

結衣「…馬鹿、人の気も知らないで」

QB「それじゃあ、僕は行くね。またね、京子、結衣」

京子「うん、バイバイ、キュゥべえ」

結衣「…またね」

その後、結衣は京子を家まで送り届けた後帰宅した。
京子が体調不良で寝込んでしまうのはその2日後の事だった。

2日後 結衣の部屋


結衣(京子が寝込んでしまった… お見舞いにも行ったけどかなり体調が悪そうだった…)

結衣(もしかしたら、あのときの後遺症が… そうなるとまた京子は…)

結衣(あんな京子を見るのは絶対に嫌だ)

結衣「キュゥべえ、いる?」

結衣がQBを呼んでしばらくすると結衣の背後から声をかけられ結衣は驚き叫び声をあげてしまった。

QB「呼んだかい?」

結衣「うわあ!? び、びっくりした… もっと普通にドアをノックして入ってくるなりしてくれよ」

QB「それはすまないね、次からはそうするようにするよ。それで今日はどうしたんだい?」

結衣「実は君と契約をする為に呼んだんだ」

QB「それは魔法少女の使命を受け入れると考えていいのかな?」

結衣「うん、あのお化けと戦うのは怖いけど、私は京子がこれ以上苦しむのを見たくないんだ」

QB「その言葉は本当かい? 君はその祈りの為に魂を賭けられるのかな?」

結衣「…大丈夫、京子の為なら私は戦える」

QB「わかったよ、それじゃあ君はどんな祈りでソウルジェムを輝かせるのかい? 教えてごらん」

結衣「私の願いは京子が元気になってくれること、苦しんでいる京子なんて見たくない、元気な京子に戻ってほしいんだ」

QB「契約は成立だ。君の祈りはエントロピーを凌駕した」

結衣「うっ… ああああぁぁぁ…」

京子の時と同じように結衣とQBを中心に強い光が輝き、光が収まると結衣の手にはダークイエローのソウルジェムが乗っていた。

結衣「これが私の?」

QB「そうだよ、これで君も魔法少女だ。京子の体調も元に戻っているだろう、連絡を取ってみたらどうかな?」

結衣「うん、ありがとうキュゥべえ… 今から京子の家に行ってくるよ」

QB「礼には及ばないよ、京子の家に行くなら僕も付いていくとするよ」

結衣「そうだね… あっ、京子には私が魔法少女になったのは言ってもいいけど、魔女と戦うって決めたことは内緒にしてもらえる?」

QB「なぜだい? どうせなら京子と協力して魔女を倒せばいいじゃないか? 君たちなら協力して戦えそうだけど?」

結衣「京子が自分の為に私が戦いを受け入れたって知ってしまったら京子も一緒に来てくれるだろうけど、私は京子には危ないことをしてほしくないんだ」

結衣「それに京子に無駄な心配もかけさせたくないしね」

QB「君はよくわからないね、京子の心配をするのに、京子が君の心配をするのは駄目なのかい? どちらも変わらない様に思えるけど」

結衣「そういうものなんだよ、キュゥべえにもいるでしょそんな相手」

QB「僕にはいないね、そういった相手は」

結衣「そっか、それならこれから見つかると思うよ。キュゥべえにも大事な人が」

QB「見つからないと思うけどな、そんな相手は」

結衣「もう、なんだよ。キュゥべえって結構頑固なんだな。出会いなんてどこであるかわからないんだからきっとあると思うよ」

QB「わかったよ、それならその出会いというのを楽しみにしてみようと思うよ」

結衣「ふふっ、京子がキュゥべえは面白いっていってたけどちょっとわかったかもね」ナデナデ

QB「面白いかな?」

結衣「うん」ナデナデ


QBをなでていた結衣は京子の家に行く準備をしてからQBを胸に抱え京子の家に向かい出発した。
京子の家に着いた結衣は、到着すると同時に家から飛び出してきた京子を見て苦笑する。
その後京子の部屋で、魔法少女になったことを話したり取り留めのないことを話しながら京子が元気になったことを喜んでいた。

京子の机に青色とダークイエローのソウルジェムが寄り添うように並び、その色は曇りなく輝いていた。

5話終わり。
>>30 ゆるゆり世界にQBが侵食し始めてます
>>31 言い方を変えたりもしますよね

これは負の連鎖が始まってますね……

QBが何処かでボロを出してないか血眼になって探したけど尻尾すら掴めない…
>>1さん上手いッスね

これはいいSS
期待

6話


3日後 ごらく部


京子と結衣はすぐ帰ってしまい、部室ではあかりとちなつが話していた。

ちなつ「う・ら・や・ま・し・い~~~」

あかり「ど、どうしたのちなつちゃん?」

ちなつ「結衣先輩と京子先輩のことよ! あの二人学校でここ数日ずっと一緒にいるじゃない!」

あかり「確かにそうだね~、京子ちゃんの看病とかしてた日も入れたら1週間くらいずっと付きっきりで一緒にいるよね」

ちなつ「キーーーーー! うらやましいいぃぃ…」ワナワナワナ

あかり「ひぃっ!?」

ちなつ「こうなったら私も風邪を引いて結衣先輩に看病をしてもらうしか…」ヌギヌギ

あかり「ちなつちゃん!? いくら部室って言ってもぬいじゃ駄目だよ!?」

ちなつ「冗談はこれくらいにして」

あかり(本気にしか見えなかったよ…)

ちなつ「ねぇ、あかりちゃん。結衣先輩って最近忙しいみたいだけど何してるのかな?」

あかり「そうだよね、3日前くらいから用事があるって遊べもしないしどうしちゃったんだろう?」

ちなつ「実は京子先輩も知らないみたいなんだ、昨日問い詰めて吐かせたんだけどほんとに知らなかったの」

あかり(京子ちゃん… 大丈夫かな)

ちなつ「と、いうわけで今日は結衣先輩の尾行をします」

あかり「えぇ~!? いきなりすぎるよ!?」

ちなつ「いきなりでもなんでもないわ、結衣先輩が私達に内緒で何かしてるのよ、これは調べない訳にはいかないと思わないの!?」

あかり「う~ん… あかりも結衣ちゃんが何をしてるのかは気になるけど…」

ちなつ「でしょっ!?」

あかり「でも、あかりたちに言わないんだから結衣ちゃんが言ってくれるまで待とうかなって思ってたんだ。結衣ちゃんが言わないって事はよっぽどの事だと思うし」

ちなつ「それだからよ! 力になってあげられるかもしれないじゃない!? そうして、困っている結衣先輩を助けた私が結衣先輩に…」

あかり「あはは…」ブルルルル

あかり「あ、メールだ」

ちなつ「ほらっ、あかりちゃん。準備するのよっ!」

あかり「ごめん、ちなつちゃん。お姉ちゃんから連絡が入って留守番を頼まれちゃった」

ちなつ「あら、そうなの?」

あかり「うん、急に大学に行かなきゃいけなくなったらしくて」

ちなつ「それじゃあ、仕方ないか。今日は私一人で尾行するけど明日はあかりちゃんも一緒に尾行するのよっ!」

あかり「あはは… わかったよぉ」

ちなつはあかりと別れ結衣の尾行方法を考え始めた。

ちなつ(尾行をするといっても、結衣先輩の居場所は…)

ちなつ(電話で聞けばいっか)

ちなつ『…………』プルルル

結衣『もしもし? ちなつちゃん?』

ちなつ『結衣先輩! こんにちわっ! 今どこにいるんですか?』

結衣『えっ? 今駅の近くを歩いてるけど…』

結衣の言葉を聞いた瞬間、ちなつは駅に向かって走り始める。

ちなつ『わかりましたっ! 今からどこに行かれるんですか?』

結衣『いや、特に行き先は… あ、ああ、ちょっと用事があってね』

ちなつ(むむっ)

結衣『何かあったの? 急ぎの用かな?』

ちなつ『いえっ、ただ結衣先輩の声が聞きたくなってぇ』ハァッハァッ

結衣『そ、そうなんだ。息荒いけど大丈夫?』

ちなつ『キャー、結衣先輩に心配してもらえるなんて、チーナ感激ですぅ!』ハァッハァッ

ちなつは走りながら結衣と電話をし続けて、駅周辺にやってきた。

ちなつ『ゼェー、ハァー、ゼェー、ハァー』

結衣『ち、ちなつちゃん、ほんとに大丈夫?』

ちなつ『だ、大丈夫です。結衣先輩、今はどこにいるんですか?』ゼーゼー

結衣『まだ駅の近くだけど…』

ちなつ『わかりましたっ、今日は結衣先輩とたくさんお話できて嬉しかったですっ! それじゃあ、切りますねっ』

結衣『そ、そう? それじゃ、またね』

電話を切って物陰に隠れたちなつの視線の先には結衣の姿が映っていた。

ちなつ(見つけた)ニヤリ

駅周辺


ちなつ(さて、結衣先輩はどこにいくのかしら?)

ちなつ(………ん?)

結衣が動き出したと同時に、別の物陰から動き出した見知った後姿をちなつは見つけ後ろから声をかけた。

ちなつ「…京子先輩、なにやってるんですか?」

京子「!?」ビクーーーン

京子「ち、ち、ちなつちゃん? い、いやー、こんなところでどうしたの? 散歩?」

ちなつ「いや、どうしたのはこっちの台詞ですよ。今日は用事があるんじゃなかったんですか?」

京子「えーっとね、ってマズっ!」ガバッ

ちなつ「きゃっ」

ちなつの視線の先にいる結衣がこちらを振り向く寸前で、物陰にちなつを連れて京子は隠れた。

京子「ふーっ、危なかった」

ちなつ「………もしかして、京子先輩も結衣先輩を尾行してるんですか?」

京子「…も、っていうことはちなつちゃんも?」

ちなつ「はい」

京子「…正直に話すね」

ちなつ「隠しても意味無さそうですしね、あれですか? 京子先輩も結衣先輩が何をしているのか探りに来たって所ですか?」

京子「そうだよ! 結衣のやつ、この2日間私の誘いを断ってまで何かやってるんだよ? そんなの調べないわけにはいかないじゃんか!」

ちなつ「京子先輩の誘いはどうでもいいですけど、何かやっているのを調べなきゃいけないのは同感です」

京子「うう… ちなつちゃん、最近厳しいよ…」

ちなつ「結衣先輩に看病を受けていた人には当然の対応です」

京子「そんなー」

ちなつ「むむっ、結衣先輩が移動し始めましたよ」

京子「おっと、ちなつちゃん、今は結衣がどこに行くかを調べるのが先決だ。協力し合おうじゃないか」

ちなつ「そうですね… あれ? 結衣先輩にくっついて歩いてるのってキュゥべえですか?」

京子「あー、最近は結衣とも一緒にいるみたいだねぇ」

ちなつ「? キュゥべえって魔法少女を探すために旅立ったんじゃなかったですか?」

京子「ああ、結衣も魔法少女になったからね」

ちなつ「はぁ!? ど、どういうことなんですか!?」グィィッ

京子「ちょ、ちなつちゃん苦しい…」

ちなつ「あっ、ごめんなさい」パッ

京子「えっとね、なんか3日前に急に魔法少女になったって言われた」

ちなつ「…ちゃんと説明してください、わけわかりませんよ」

京子「いやいや、ほんとに急に言われたんだよ。なんかどうしてもほしいものがあったらしくてそれを願いにして契約したらしいよ? キュゥべえもそう言ってたし」

ちなつ「そうなんですか? でも魔法少女ってあのお化けと戦わないといけないんじゃ…」

京子「それもなんか私みたいにやらないって言ってたよ。キュゥべえにも納得してもらったって結衣が言ってた」

ちなつ「そんなんでいいんですか…? 何か変じゃないですか…?」

京子「? 何が? キュゥべえも結衣も私の家に来て説明してくれたよ?」

ちなつ「………3日前って京子先輩の風邪が治った日ですよね?」

京子「そうそう! も~、びっくりしたよ。ものすごくモヤモヤしすぎて横になっていてもきつかったのに急に元気になってね、もう今じゃ元気いっぱいで困ってるくらい!」

ちなつ「…………」

ちなつ(京子先輩は結衣先輩に言われたことを鵜呑みにしてるけど、何か変! もしかして結衣先輩…)

京子と話をしながら結衣を尾行していたちなつだったが結衣が繁華街の裏路地に入っていくのを見て走りだした。

京子「あれ? 結衣どこにいった?」

ちなつ「こっちです、そこの裏路地を曲がっていきましたよ」

結衣の後を追い二人は裏路地に入っていき、少し話し声が聞こえてきたところで歩みを止めこっそりと様子を伺った。

ちなつ「………キュゥべえと何か話していますね」ヒソヒソ

京子「………うん、何してるんだろ」ヒソヒソ

二人が様子を伺っていると、結衣はソウルジェムを取り出して変身した。
結衣の姿は七森中の制服を基準にしたダークイエローのコスチュームで右手に剣を持っていた。
結衣が剣を前に突き出したと同時に、結衣の姿は光に包まれ掻き消えてしまった。

京子「えっ?」

ちなつ「嘘…」

京子「どういうこと…? 結衣、どこに…?」

ちなつ「…………」

二人は結衣が消えた場所に向かったが、そこには何もないように見えた。
だが、京子には何か違和感を感じ声を出した。

京子「この感じ… あのときの結界?」

ちなつ「結界って、魔女退治に行ったときのあれですか…?」

京子「うん… おんなじ感じがする…」

ちなつ「そんな…」

しばらく立ち尽くしていた二人だったが、結衣が消えた空間に歪みが生じ、そこから声が聞こえてきて視線を向けた。

結衣「大分この力もわかってきたよ、これならもう少し使い魔を倒して経験をつめば魔女も倒せるかな」

QB「君のセンスはかなりのものだし、もう戦えると思うけどね」

結衣「そういわれても、まだ不安だよ… もっと経験を積んで、簡単に倒せるくらいにならないと」

歪んでいた空間に輪郭がはっきりしていき、結衣とQBが姿を現す。
結衣は視線をQBから前に向けたときに、いるはずのない人物の姿を見てしまい目を見開き驚いた。

結衣「っ!?」

京子「………結衣」

ちなつ「………結衣先輩」

結衣「き、京子、それにちなつちゃんも。な、なんでここに?」

京子「結衣の後をつけてたんだ」

結衣「お前、今日は用事があるって…」

京子「これがその用事」

結衣「キュゥべえ! 京子が後をつけるようなことがあったら教えてって言っただろ!?」

QB「ちなつもいたからね、ちなつが一緒にいるときも教えたほうがよかったのかい?」

結衣「ああ、もうっ! 屁理屈言わないでくれよっ!」

結衣がQBに文句を言っていると、不安そうな顔をした京子が結衣にこの状況を尋ね始めた。

京子「ねぇ、結衣… もしかして、魔女退治をしていたの?」

結衣「…………」

京子「黙ってちゃわかんないよ! この前言ったよね? 魔女退治は怖いからしないって」

結衣「…ゴメン」

京子「なんで謝るの? 駄目だよ結衣、あんな危ないこと…」

京子「ねぇ、キュゥべえも結衣に言ってあげてよ、魔女退治はしなくてもいいって、私に言ってくれたみたいに!」

QB「言ってもいいけど、魔女退治は結衣が望んだことだよ」

京子「えっ? なんで…?」

QB「それは結衣の口から聞くといいよ、僕は結衣に口止めされているからね」

結衣「…………」

ちなつ「結衣先輩… どうしてなんですか…」

結衣「………私の家で話すよ」


結衣はそう告げ、無言で歩き出した。
京子とちなつも結衣の後に続き、結衣の家まで3人は話すこともなく夕暮れの町を結衣の家に向かい歩き続けた。

6話終わり。
>>39 気のせいですよ
>>40 どもども、QBさんに来てもらったんでがんばって原作っぽくしてみます
>>41 どもども

QBマジクズだな
まさに悪役の鏡

まどマギにもゆるゆりにもピンク髪キャラがいるだろ?
つまり……?

>>51まさか…チーナが…主役?


2人の願いが軽いぶん本家よりえげつないんだよなぁ...
ものすごく素質があれば別だが、普通は契約時点でもう詰み

7話


結衣の部屋


京子「ねぇ、結衣。そろそろ教えてよ… どうして魔女退治なんかを…」

結衣「…………えっと」

ちなつ「…もしかして京子先輩の為ですか?」

結衣「…うん」

京子「えっ? な、なんで私?」

ちなつ「何で京子先輩は頭いいくせにこういうことは鈍いんですか…」

ちなつ「結衣先輩言ってたじゃないですか、戦う気もないのに契約は出来ないって。それなのに魔法少女になったって事は受け入れちゃったんですよね、魔女と戦うことを」

結衣「…………」コクン

ちなつ「やっぱり… ちなみに結衣先輩が魔法少女になった時の願いって京子先輩の体調を良くしてほしいとかそんなところじゃないんですか?」

結衣「…………」コクン

ちなつ「やっぱりそうですよね…」

京子「そんな… なんでそんな事で」

結衣「…私にとってはそんな事なんかじゃない」

ちなつ「結衣先輩と京子先輩、私達に隠してることありますよね? それが原因なんじゃないですか?」

京子「!」

結衣「なんのこと…?」

ちなつ「もうっ、ここまで来たら話してくださいよ! 少し前の連休明けから結衣先輩、京子先輩しか見てないじゃないですか! 京子先輩のことを大げさに気遣って、何かするときでも『京子は休んでて』とか『京子、大丈夫? 平気?』とか、そんな感じでしたし、後遺症がどうとか言ってましたし、この間の京子先輩の体調不良もそれが原因なんじゃないんですか?」

京子「えっとね、それは…」

ちなつ「それに結衣先輩があんなお化けと戦うことを受け入れるなんてよっぽどのことですよね? 体調不良からくるなんてことは京子先輩は何か病気だったりしたんですか? それを治すための契約だったりしたんじゃないですか?」

京子がちなつからの質問攻めにオロオロしながら答えようとするが、今まで俯いていた結衣が顔を上げ覚悟を決めた表情で話し始めた。

結衣「わかった、言うよ。京子もこの前のことちなつちゃんにも話していいよね」

京子「う、うん。私は大丈夫」

結衣「それじゃあ、ちなつちゃん。まずこの前京子に起こったことを話すよ」

結衣は先日京子が自転車で転んだときに打ち所が悪く、心停止までしていたことを話した。

ちなつ「う、嘘。…京子先輩が死んじゃうところだったんですか?」

結衣「うん、私が見つけた時には呼吸もしてなくて脈もなかった」

ちなつ「そんな…」

結衣「幸い少ししたら息を吹き返したんだ、その後も病院で検査を受けて何も無いって言われたんだけど…」

結衣「それから少しして京子が体調を崩し始めたんだ、そのときの後遺症も考えられたから気が気じゃなくてね…」

ちなつ「…………」

結衣「キュゥべえの話だと魔力不足も原因の一つらしいけど、私は倒れていたの京子の姿が頭から離れなくて、ただ京子に元気になってほしくて契約をしたんだ…」

京子「それなら、私はこの通り… ううん、結衣のおかげで元気になったんだから! 魔女退治なんてしなくても!」

結衣「…契約した後に聞いたんだけど、魔女を倒した時に魔女はグリーフシードって言うものをたまに落とすらしいんだ」

ちなつ「?」

京子「うん、確か魔力を回復させるアイテムだよね?」

QB「その認識で間違ってないよ」

結衣「魔力がなくなっていくと体調が悪くなるんだけど、あのときの京子はかなり辛そうだっただろ?」

京子「まあ、きつかったって言えばきつかったけど…」

結衣「京子が魔女退治を出来なくても私が魔女を退治してそのグリーフシードを持って来たら、京子が魔力不足になることはないって思ったんだ。魔力不足にならなければ京子も苦しまなくて済むだろ? ただそれだけの理由だよ」

京子「結衣…」

結衣「京子にばれると心配もされちゃうし、一緒についてくるなんて言うと思ったから内緒にしてたんだ… もう無駄になっちゃったけどね」

京子「私の事は気にしなくていいよ、私は結衣が危ない目にあうことなんて望んでないし…」

結衣「私が気にするんだよ、私は京子が苦しむ顔は見たくない」

ちなつ(何、何? なんなのこの雰囲気! お互いしか目に入っていないじゃない!! 京子先輩めぇ~~~~)

ちなつ(………まあ、今回は許してあげるか。京子先輩も大変だったみたいだし。私も気付いてあげられなかったしね)

結衣と京子が二人だけの空間を作っていたが、ちなつはその空間を破壊する様に話し始めた。

ちなつ「はい、そろそろいいですか?」

京子「あっ、どうしたのちなつちゃん?」

ちなつ「どうしたのじゃありません、京子先輩はこれからどうするんですか? 結衣先輩を止めますよね?」

京子「…結衣が私の為に戦うって言ってくれるんなら、私も魔女退治をしようと思う」

結衣「京子! 駄目だよ! お前に危ないことをしてほしくないんだ」

京子「それでも、私は…」

ちなつ「はいはい、それなら私も一緒についてきますね」

京子「えっ?」

結衣「ちょ!? ちなつちゃんまで一体何を言い出すんだよ!?」

ちなつ「キュゥべえ、私も魔法少女になれるんだよね?」

QB「うん、君も魔法少女の才能を持っているよ。今契約するかい?」

ちなつ「まだしないよ、もしも二人が怪我したときは私が契約して治そうと思ってるから」

QB「それなら仕方ないね、残念だ」

京子「ちなつちゃん! 忘れちゃったの!? あんな怖いところに行かなきゃ行けないんだよ!?」

結衣「そうだよ! 絶対に駄目だって!!」

ちなつ「結衣先輩、その危ないところに行ってましたよね。それも一人で」

結衣「うっ…」

ちなつ「次は京子先輩も行くつもりですよね、しかも結衣先輩と二人っきりで」

京子「うぅ…」

ちなつ「もう決めましたので、もし私を置いていったら酷いですよ。いざとなったらキュゥべえと契約して結衣先輩の下に飛んでいきますからね」

結衣「ちょっと待って! まだ私は二人と一緒に行くなんて!」

京子「結衣、もう私達知っちゃったんだよ? 結衣が魔女退治をしないって言うなら私達もついていかないけど、魔女退治をするって言うなら絶対についていくからね」

ちなつ「さあ、どうしますか結衣先輩? 私達も連れて魔女退治をするか、それとも諦めるか、選んでください!」

結衣「うぅ… なぁ、キュゥべえ。魔力を回復する方法ってグリーフシードを使う以外にないのかな?」

QB「君のように契約をするというイレギュラーでもない限りは僕の知る限りでは無いね」

結衣「ううう…」

QB「ただ」

結衣「?」

QB「数日後、この町に超大型の魔女がやってくるはずなんだ、その魔女を倒すことが出来たら君たち全員分が使いきれないくらいのグリーフシードを手にすることが出来るかもしれないよ」

結衣「! そうなのか!?」

QB「ああ、だけど京子と結衣だけだと恐らく倒せないと思うよ、ちなつとあかりが契約してうまくやれば何とかできるかもしれない」

結衣「二人も魔法少女に…」

QB「その場合もちゃんとした願いじゃないと厳しいと思うよ、願い事の助言はできないけど、京子みたいな願いをすると資質が高くても魔法少女としての力は弱くなってしまうからね」

京子「うっ…」グサッ

QB「どうするかは君たちで話し合うといいよ」

結衣「…………」

京子「…結衣」

ちなつ「…あかりちゃんには無理ですよね」

結衣「ああ、あいつが戦うなんて京子以上に出来ないよ」

京子「下手したら、『魔女さんがかわいそう』なんて言い出しかねないよね…」

結衣「私達二人だとどうしようもないの?」

QB「無理だと思うね、京子の力は結衣に比べると大分低いし、結衣も祈りの特性で回復力や魔力効率が高いけどそれだけだ。二人でどうにかできるとは思えないね」

結衣「少し考えるよ…」

QB「そうだね、そのほうがいいと思うよ」


3人はその後も少し話し合い、明日あかりも入れて話し合うということで落ち着くこととなる。

超大型魔女・通称ワルプルギスの夜が七森市に現れる4日前のことであった。

???「願えば空気じゃなくなる……?」

7話終わり。
>>50 QBさんヘイト値をまだ稼いでくれると思います
>>51 >>52 私、主役の赤座あかりです
>>53 契約はよく考えないといけないですよね

結論:QB、もといインキュベーターは草

QBと櫻子の声は同じ人がやってるんだよな…

>>59
それってゆるゆり世界をひっくり返す程の願い事なんじゃ…

>>59
神の定めたルールに逆らうというのか…

8話


翌日 ごらく部


あかり「ごめんね、遅くなっちゃったぁ、今日は何して遊ぶ~?」

放課後にあかりがごらく部に着いた時には他の3人は揃っていた。

あかり「あ、あれ? みんなどうしたの? すっごい真剣な顔してるよ?」

結衣「あかり、少し真剣な話だ。座ってくれ」

あかり「う、うん」

まず、結衣はあかりに京子が事故にあって死にかけたこと、そして結衣が京子の為に魔法少女になったことを話した、するとあかりは涙目になって結衣と京子の手を握る。

あかり「うぅっ… ごめんね京子ちゃん、結衣ちゃん、あかり全然気付いてあげられなくって…」

結衣「こっちこそごめんな、心配をかけさせたくなくてあかりやちなつちゃんには黙っておこうって言ったのは私なんだ」

京子「そうだって、あかりが気にする必要はないんだよ!」

あかり「でもっ、あかりがもっと早く気付いていれば何かしてあげられたかもしれないし」

京子「あかり、私はあかりのその気持ちだけで十分だよ。それに今はこんな感じで元気になったんだからさ」

あかり「京子ちゃん…」

結衣「京子の言うとおりだよ、あかりもそんなに気にすることはないよ」

ちなつ「京子先輩の事故の話はこれまでにしましょうよ、京子先輩は今、結衣先輩のおかげで元気いっぱいなんですから」

結衣「うん、そうだね」

あかりは逆に気遣って貰っていると分かってしまいそれ以上何も言えなくなってしまった。

ちなつ「それでね、あかりちゃん。今二人は魔女退治に行こうとしていることが問題なのよ」

あかり「えぇ~~!? そ、そんな事しちゃ駄目だよ! あんな怖い目に二人が合うのなんて嫌だよ! もしかしたら怪我しちゃうかもしれないんだよ!?」

あかりがうろたえて二人を止めようと説得をし始めるが、今まで静観していたQBがあかりに話し始めた。

QB「あかり、どうやら結衣は京子が魔力不足になることで起こる、体調不良が気に入らないらしいんだ」

あかり「えっと…? 京子ちゃんの魔力?」

京子「キュゥべえ?」

結衣「いきなりどうしたんだよ、キュゥべえ…」

QB「いや、君たちが話すよりも、僕が話したほうがいいと思ってね。京子と結衣の事情も知っているし、この中で魔女のことを一番よく知っているのは僕だからね」

ちなつ「それはそうだけど…」

QB「まあ、まずはあかりに全て説明するよ。あかりも話を聞いてくれるかな?」

あかり「う、うん」

QB「ありがとう。それじゃあ、まずは二人が魔法少女になったことによって二人はソウルジェムを手に入れたんだ。京子、君のソウルジェムをもう一度あかりに見せてあげてくれないかな?」

京子「うん」ゴソゴソ

QB「このソウルジェムだけど、少し色が濁っているだろう?」

あかり「うん、ちょっと黒くなっているね」

QB「これは京子の魔力が少しなくなったって言うことなんだ、魔力がある程度なくなると京子の体調が悪くなり始めるんだ。まあ、魔力が完全に無くなるとその問題も解決するんだけど、完全に無くなるまではどうしようもないんだ。この前京子が調子悪かったのもこの魔力不足が原因でもあるんだよ」

あかり「そんなぁ… あのときの風邪って魔力が無くなっちゃってたからだったんだ… 京子ちゃんが病気になるのなんていやだよ…」

QB「そこで、結衣が契約によって失っていた京子の魔力を回復させたんだけど、魔力を補給しない限りは同じように京子は体調不良になる。だから結衣は京子が魔力不足にならないように魔女退治をすることを決意したんだよ」

QB「魔女退治をすることでグリーフシードという魔力を回復することが出来るものが手に入ることがあるんだけど、そのグリーフシードを手に入れる為に結衣は戦い始めたわけだね」

あかり「そうだったんだ…」

結衣「…………」コクン

QB「そのグリーフシードなんだけど、数日後にこの町にやってくるであろう魔女を倒せたら二人はおろか、あかりやちなつが契約して魔法少女になっても使いきれないくらいのグリーフシードを手に入れれるかもしれないんだよ」

QB「その魔女はとても強力な魔女だけど、君たち4人が魔法少女となって力を合わせれば何とかできるかもしれないんだ。そして、魔女を倒すことさえ出来ればもう魔女退治もしなくて済むかもしれない、一回限りのチャンスと言うわけだね」

あかり「あかりも魔法少女に…」

QB「うん、ちなつはもう魔法少女になってもいいって言ってくれているし、後はあかりだけなんだよ」

あかり「ちなつちゃんも?」

ちなつ「ちょっとキュゥべえ! 確かに昨日魔法少女になってもいいって言ったけど、まだその魔女と戦うって決まったわけじゃないでしょ!」

QB「それもそうだったね、でもこんなチャンスはないと思うよ? 普通の魔女のグリーフシードだと使えて2,3回だからね」

ちなつ「うっ… そうなんだ…」

QB「そういうことなんだ、あかりが決めてくれれば皆が戦ってくれるみたいだから…」

そこまでQBが話したところで京子が話に割り込んできた。

京子「キュゥべえ! なんかあかりに押し付けるみたいな言い方やめてよ! もう私が魔力使い切ればいいだけなんだから。結衣もそれでいいでしょ? 私が少し我慢して魔力を全部使い切るから」

結衣「………うん、さすがにあかりやちなつちゃんまで巻き込んで魔女退治はしたくないし。私達で魔力を全部使っちゃおうか…」

QB「そうなのかい? それでいいなら僕は止めないけど」

あかり(うぅ… 魔女さんと戦うなんて、あかりみたいにみんな怪我しちゃうかもしれないし、魔力が少なくなると京子ちゃんも結衣ちゃんも病気になっちゃうんだよね… どっちも嫌だよぉ)

あかり(あれ? そういえば魔法少女になるときにお願いが出来るんだったら…)

少し考えていたあかりがQBに質問をし始めた。

あかり「………ねぇねぇ、キュゥべえ。あかりのお願いで二人のソウルジェムを魔力不足しないようにすることって出来ないの?」

ちなつ「あ、そっか。そういう願いなら悩みも解決するじゃない、あかりちゃん冴えてる!」

あかり「えへへ~」

QB「…………その願いは可能かもしれないけど、あかりには他に願うことはないのかい?」

あかり「あかりの願いは二人が健康でいてくれることだよっ!」

QB「…………」

京子「ちょっとまったー! それじゃあ、あかりが私達と置き換わるだけじゃん! 却下だよ却下!」

あかり「えぇ~、あかりは大丈夫だよ? あかりは元気が取り柄だし」

京子「元気が取り柄なら私もそうだよ! その私があんなにきつかったんだから、あかりも一緒だって!」

あかり「うぅ… う~ん… キュゥべえ、何かいい方法はないのかなぁ?」

QB「…………願いに関しては僕から助言できることはないよ。ただ、京子もこういっているんだし、その願いはやめておいたほうがいいんじゃないかな?」

あかり「いい方法だと思ったのになぁ…」

結衣「あかり、いろいろ考えてくれるのは嬉しいけど、そもそもあかりに戦うことなんてできないだろ? 私も京子も魔力を使い切ることにするから大丈夫だよ」

あかり「でもでも… う~ん… う~ん…」

あかり(何かないのかなぁ、確かにあかりに戦いなんてできないけど、それでも二人が病気になっちゃうのは嫌だし…)

京子(あかり… このままだとあかりは魔法少女の契約を私達の為にしちゃうよね… 元はといえば私が軽はずみに契約しちゃったから、結衣も契約しちゃったんだし、私がなんとかしなくちゃ)

あかりがどうにかできないか考えていたときに京子がQBに問いかけた。

京子「ねぇ、キュゥべえ、私達が魔力不足で調子が悪くなるのってどれくらいかかるの?」

QB「魔法を全く使わなくても、魔力は徐々に減っていくから大体1ヶ月くらいかな、魔法を使っていればどんどん短くなるよ」

京子「おっけー」

結衣「京子?」

京子「これからのごらく部活動内容が決定しましたので発表したいと思います!」

ちなつ「またえらく急な…」

あかり「う~ん… う~ん… あれっ!? 決まっちゃったの!?」

京子「そうだよー、だからあかりも聞いてね」

あかり「う、うん」

京子「よし、まず結衣は魔女退治禁止!」

結衣「うん、そうしようと思ってたし」

京子「よろしい! というわけでキュゥべえ、今度来る魔女とは戦わないけど大丈夫?」

QB「………まあ、僕はお願いするだけだからね。君たちが決めたのなら仕方ないよ」

京子「ごめんね、我侭ばっかりで。魔女退治は出来ないけど他に何か出来ることがあったら言ってよ、今度は私がキュゥべえのお願いを聞くからさ」

QB「………そうだね、今は特にないかな。やってもらいたいことが出来たら京子に言うよ」

京子「うん、キュゥべえには恩返しが全然出来てないからね。私がやれることならなんでもやるからね!」

魔女関係の話はこれまでと京子は言い、次に魔力の事を話し始めた。

京子「それでは次に、私と結衣は魔力を使い切ることにします! だからあかりももう悩まなくて大丈夫だよ」

あかり「えぇ~、二人とも病気になっちゃうのは…」

京子「そんなのはあかりが気にしなくても大丈夫、というか私が一番気にしなきゃいけないのにあかりが気にする必要なんてないのさ」

京子「むしろあかりが私達の為に契約して、あかりが魔力不足で体調を崩したら私達がどうすればいいのか分からなくなっちゃうよ」

結衣「そうだね、私もあかりには契約してほしくないかな」


あかり「うぅ~… 二人とも本当に大丈夫なの?」

京子「大丈夫、大丈夫。実は魔力を使い切る方法も考えてるんだよ」

あかり「そうなの?」

京子「そうそう、生徒会のみんなも集めてパーッと魔法の一発芸でもして一気に使っちゃおうと思ってたんだ。一日で使い切っちゃえば体調も気にすることもないしね」

結衣「なるほど、確かに一気に使えば体調を崩しても少しの時間も済むよね」

京子「というわけで、あかりも魔法少女にならなくても大丈夫だからね」

あかり「う、うん。そういうことなら…」

京子「よーし、それじゃあ、私達が魔力を使いきる日は4日後の日曜日ね。その時は綾乃たちも呼んであっと驚く魔法大会にしよう!」

ちなつ「杉浦先輩たちも呼ぶんですか? そりゃ、魔法なんて見たらすごく驚くと思いますけど」

京子「最後の魔法なんだからね、すっごいのをやろうと思ってるんだ。とりあえずはその日まで私と結衣で魔力不足にならない程度に魔法の練習をしようぜ」

結衣「ん、わかったよ」

ちなつ(むむっ… このままだとまた二人の距離が縮まっちゃう、ここは私も…)

ちなつ「はい、その魔法の練習には私も参加したいです!」

京子「? そりゃ、練習はごらく部全員参加だよ? ちなつちゃんもあかりも強制参加だからね!」

ちなつ「…それは失礼しました」

あかり「わかったよぉ」

QB「…………」


京子は練習の内容などを決め、次の日曜を空けて置くようにと生徒会全員に連絡をした。
あかりとちなつは魔法少女になるのはやめておくことになり、魔女退治もやらないという方向で決定した。
その後少し魔法の練習を行い、下校時間となったところで帰宅することとなった。
それから2日間は放課後魔法の練習をしながら、ごらく部活動を行い全員の頭から大型魔女の存在は消えていった。

3日目、七森市にワルプルギスの夜が現れる日となってしまった。

8話終わり。
>>59 >>64 >>65 \アッカリ~ン/
>>61 (◕‿‿◕)
>>63 !?

乙です
惨劇の舞台が着々と出来上がっていく…
悪徳訪問販売員並にQB黒いな…

まだ誰も死んでないのにこの絶望感よ

アニメのQBも「魔法少女が魔力を使い果たした場合どうなるか」と質問されてもこんな曖昧な受け答えしかしなかったのかなあ?
アニメの場合「聞かれなかったから、答えなかった」というだけで、本来核心に迫る質問には明確な回答で応えると思うんだが

魔翌力尽きたら体調不良治るのか?
って言う質問に対しての答えだから体調不良は解消されるで明確な答えになってると思う
体調不良絡まない状況で聞いた時あったっけ?

9話


3日後


あかりの部屋


その日七森市は朝から強い風が吹きと雷雲がたちこめ雨が降り続いていた。
あかりは6時前に目を覚ましてしまい、強い風できしむ窓から外の様子を見て残念そうな顔をした。

あかり「台風かなぁ? 明日はみんなで魔法のお披露目会なのに大丈夫かなぁ?」

窓の外を見て、明日の心配をしているとあかりの部屋がノックされた。

あかね「あかり、起きてる?」コンコン

あかり「あ、おはよう、お姉ちゃん。どうしたの?」ガチャ

あかね「おはよう、あかり。ちょっと早いけど朝ごはんを食べて出かける準備をしましょう」

あかり「え? 外はこんな雨なのにお出かけするの?」

あかね「お出かけじゃないわよ、この台風が午後にはもっと強くなるみたいで避難指示が出たのよ。一番近いあかりの中学校に避難になるわ」

あかり「えぇ~!? ど、どうしよう、あかり避難訓練はした事あるけど本番は初めてだよぉ。え~っと、非常食も持っていかないといけないよね!?」

あかね「うふふ、慌てなくても大丈夫よ。あんまり多く物を持っていってもかさばっちゃうから着替えと他に必要なものを少し持っていけば大丈夫よ。お父さんやお母さんがちゃんと準備してくれているしね」

あかり「あっ、そうなんだぁ。慌てちゃってはずかしいよぉ…」

あかね「うふふ」

あかね(あかり可愛いわぁ)

その後、あかりは朝ごはんを食べ、準備を完了し家を出発した。
赤座家一同は避難場所に向かうために車を走らせ、七森中学校に到着する。
あかりが到着した頃には、風はさらに強くなり、雨も横殴りの雨で車から体育館に行くまでにずぶ濡れになるほどだった。

あかり「ひぃ~、ずぶ濡れになっちゃったね」

あかね「このままだと風邪を引いちゃうわね、着替えてきましょうか」

あかり「うん、そうだね」

あかりは更衣室で着替えて体育館の割り振られた場所に戻ると名前を呼ばれ振り返った。

京子「お~い、あかりぃ~、こっちこっち」

あかり「あっ、京子ちゃん。京子ちゃんも来てたんだね」

京子「おう、結衣とちなつちゃんもいるよ。みんなで遊んでるからあかりも来いよー」

あかり「そうなんだ。ねぇ、お姉ちゃん行って来てもいいかな?」

あかね「いいわよ、ご飯までには戻ってくるのよ」

あかり「はぁ~い、それじゃあ行って来るね」

京子「あかりをお借りしまーっす!」

あかりと京子はあかねに別れを告げ、そのまま体育館のステージ裏にやってきた。
京子は跳び箱やボールが入った籠の隙間を通り抜け奥に進み、少し開けたスペースまであかりを案内した。

京子「連れてきたよー」

結衣「お、あかりも来たか」

ちなつ「あかりちゃ~ん」フリフリ

あかり「うわぁ~、なんだか秘密基地みたい。こんなところあったんだねぇ」

京子「ふっふっふ、こんなこともあろうかと私が作っておいた秘密基地だ。流石にこの雨じゃ部室にもいけないし、今日はここを仮の部室とします!」

あかり「京子ちゃんすごーい!」

京子「もっと褒めてくれたまえ。あっ、あんまり大きな声出すとばれちゃうから静かにね」

あかり「わかったよぉ。なんだかこういうのも楽しいね~」

京子「だろー?」ニシシ

結衣「あかりも来たことだし、またトランプでもやる?」

あかり「うん、やろうやろう!」

しばらく、あかりたちはトランプをして遊んでいたが、外から聞こえる風の音や雷の音が大きくなるにつれ不安になっていった。

あかり「外、すごいことになっているねぇ…」

京子「そだねー、こりゃ今日は完全に泊まりになってしまいそうだね。ってか、明日もこれだったら魔法のお披露目会も延期だね」

結衣「まあ、仕方ないよね。というかほんとに大丈夫なのかな、体育館がさっきから軋んでる様な音してるけど…」

ちなつ「そうですね。雷も酷いですし… ひぃっ!?」ピシャアアーン

近くで雷が落ちた音を聞き、ちなつは驚き結衣の腕を掴む。
あかりはその音に驚き目を瞑って身体を震わせた、そしてあかりが目を開けると跳び箱の上にQBがいることに気が付いた。

あかり「あれ? キュゥべえ? あっ、キュゥべえも避難しに来たの?」

京子「ん? おっす、キュゥべえ。どしたのー?」

QB「やあ、少し君達に話したいことがあって来たんだ」

結衣「話?」

ちなつ「なにかあったの?」

QB「ああ、話というのはこの前に言ってた超大型魔女のことだよ。その魔女がもうすぐこの場所に現れるんだ」

京子「えっ? …ここに? 魔女が来るの?」

QB「そうだよ、一応君たちにも話しておこうと思ってね。戦わないとは言っても京子と結衣は魔法少女だ。君たちだけなら逃げられるかもしれないからね」

結衣「私たち… だけ?」

QB「そうだよ、もうすぐ現れる魔女は通称・ワルプルギスの夜、全てが規格外の力を持った魔女さ。規格外なだけあってこの魔女は結界の中に隠れていないんだ。現れた時点で周囲を破壊しながら進んでいく、この魔女が通った後には全てのものは破壊尽くされるよ」

ちなつ「え?」

QB「今ならまだ逃げ切れると思うからね。こんな小さな建物の中にいたら吹き飛ばされてその衝撃で死んでしまうかも知れないよ」

あかり「えっ? 死んじゃうって…? えっ?」

京子「ちょ、ちょっとキュゥべえ、何言ってんのさ、死ぬとかって、そんなわけないでしょ?」

結衣「そ、そうだよ。それに体育館を吹き飛ばすなんて…」

ちなつ「…何、言ってるの? …嘘だよね、キュゥべえ?」

QB「事実だよ」

京子「あ、あはははは。………冗談きついなぁ~、幾らなんでもそんな冗談は笑えないよ?」

QB「冗談でもなんでもないんだけどね」

あかり「き、キュゥべえ、怖いこと言っちゃだめだよぉ…」

QB「困ったな、事実を伝えているだけなんだけど… どうしたら信じてくれるんだい?」

結衣「信じるも何もそんな事ありえないだろ? だって使い魔もあんなに簡単に倒せたし、魔女だって使い魔より少し強い程度なんだろ?」

QB「結衣の倒した使い魔は全て力が強くない使い魔だったよ、京子が最初に倒した使い魔もそうさ」

結衣「なんだよ… なんなんだよそれ…」

ちなつ「…結衣先輩、そんなのでたらめですよ! キュゥべえ、そろそろ脅かすのはやめて、ほんとに怒るよ?」

QB「………僕は君たちを脅かすつもりなんてないんだけどな。まあいいや、僕の話はそれだけだよ」

QB「一応忠告はしたからね、僕の力が必要になったら呼んでよ、すぐ駆けつけるからね」

QBはそう言うと4人の前から姿を消した。
QBが去った後には不安げな顔をした4人がぽつりぽつりと話し始める。

あかり「ね、ねえ。キュゥべえが言ってたことってほんとなのかなぁ…?」

ちなつ「…そんなわけないでしょ。あかりちゃんは信じるの?」

あかり「うぅ… あかりも信じてないけど…」

京子「そ、そうだって! 信じるも何もこんな建物を吹き飛ばせるわけないじゃん!」

結衣「そうだよな… 魔女って言ってもそんな事なんてできるわけが…」

あかりたちは全員QBの言葉を信じようとはしなかった。
そもそもあかりたちの認識では、使い魔も魔女も恐ろしい姿をしているが人間に『多少の危害を加える存在』としか認識できていなかった。
使い魔や魔女が人間を『死に追いやる存在』と誰一人認識できていなかった。

その思い違いが、全ての行動を遅らせ、取り返しの付かない段階まで時計の針は進んでしまった。

七森中の体育館に凄まじい衝撃が叩きつけられ、あかりたちは全員衝撃によって数メートル吹き飛ばされた。

あかり「きゃあああああ!?」

結衣「うわああああ!?」

京子「あうっ!?」

ちなつ「あぐっ!?」

あかりと結衣は数メートルほど転がり、京子とちなつは跳び箱にぶつかる。
4人は何が起こったのかもわからず目を白黒させている。

京子「痛った~~~」

ちなつ「けほっ、けほっ… な、何が起きたの?」

結衣「いてて… 地震…? って、ちなつちゃん!!」

ちなつ「? どうしたんですか結衣先輩?」

ちなつがぶつかった跳び箱の上部が衝撃で今にも崩れそうな状態になっていることを結衣は気付いてちなつに呼びかけるが、ちなつはそれには気が付かず結衣の顔をきょとんとした顔で見ていた。
跳び箱の上には重そうな鉄の箱も乗っており、それも一緒に跳び箱が崩れちなつの頭上に降り注いだ。
だが、ちなつは横からの軽い衝撃に押し出され崩れ落ちてきた物に当たる事はなかった。

ちなつ「きゃっ」

ちなつ「あ… あれ…? あ、あかりちゃん…?」

ちなつは自分があかりに押されたことに気が付いた。
そして、あかりはさっきまでちなつがいた場所でちなつの変わりに跳び箱と鉄の箱の下敷きとなっていた。

京子「あかり!? ちょっと、大丈夫!?」

結衣「おい! あかり!!」

ちなつ「あかりちゃん! しっかりして!!」

すぐさま3人はあかりの上に落ちてきたものを退かしあかりの安否を確認するが、あかりは頭に落下物が当たったようで血を流して気絶していた。

ちなつ「た、大変… は、はやく手当てをしないと…」

結衣「頭を打ったのか… 無理に動かすより誰か呼んできたほうがいいかもしれない…」

京子「私、呼んでくる!」

京子が立ち上がり人を呼びに行こうとした時、先ほどの衝撃より数段上の衝撃が体育館を襲った。
そして、体育館は衝撃に耐え切れず崩壊し、あかりたち4人も崩壊した体育館と共に吹き飛ばされ宙に舞った。



―――――――――――――――――――――――
―――――――――――
――――――――
――――


あかり(………)

あかり(………?)

あかり(あれ? どうしちゃったんだっけ…?)

あかり(あ、そうだ。ちなつちゃんに跳び箱が崩れてきて咄嗟にちなつちゃんを押したんだっけ?)

あかり(あれれ? じゃあ、なんであかりはこんな所に一人でいるんだろ?)

あかりの周囲は宇宙のような不思議な空間で、あかりはその空間にふわふわ漂っていた。

あかり(あ、わかったよ! これは夢だね! いつの間にかあかり寝ちゃってたんだね)

あかり(夢の中で夢って気が付いたら、夢を思い通りにすることが出来るって聞いたよ!)

あかり(わぁい、すごい体験をしちゃってるよぉ! はっ、夢の中でならあかりだって…)

あかりが妄想を始めようとしたとき、あかりは少し離れたところに誰かいることに気がついた。

あかり(あれ? 結衣ちゃん? あっ、もう出てきたんだね、ふっふっふ…)

あかり(お~~い、結衣ちゃ~~ん! あかりはここだよぉ~~)

あかり(結衣ちゃ~~~ん!! 結衣ちゃ~~~~ん!! …あれ?)

あかりは結衣を呼び続けるが結衣はあかりの方には振り向かず歩き続けていた。

あかり(あれれ~~? これ夢なんだよねぇ?)

あかり(あっ、京子ちゃんもいつの間にか結衣ちゃんの隣に)

あかり(京子ちゃ~ん! 結衣ちゃ~ん! まってよぉ~~)

あかりは結衣と京子に向かって走り始めるがあかりが幾ら走っても二人の距離は縮まらずあかりは不思議な顔を浮かべた。

あかり(もう、二人ともあかりをスルーしないでよぉ!)

あかり(…あれ? ちなつちゃん?)

走っていたあかりの隣をちなつが横切り京子と結衣の元に近づいていった。

あかり(あれぇ~? なんであかりはそっちにいけないのぉ~~)

あかり(みんな~~、あかりはここだよぉ~~、お願いだから気付いて~~)

あかりが頬を膨らませて3人に文句を言いながら叫んでいると、3人が漸くあかりのほうに振り向いた。

あかり(あっ、やっと気付いてくれた! もぉ~、夢の中でもこんな扱いは酷いと思うな!)

あかり(…? みんなどうしちゃったの?)

3人は少し寂しそうな顔であかりを見つめていた。
しばらくあかりを見つめたあと再び3人は踵を返し歩き始めた。

あかり(ねぇ~~、まってよぉ~~)

あかり(あかりを置いてかないでよぉ~~、ねぇ、みんな~~)

あかりが3人を呼び続け、縮まらない距離を走り続けていたが、あかりはどこかに引っ張られるような感覚を受けた。

あかり(あれっ? 後ろに引っ張られるような…)

あかりと3人の距離はどんどん広がりあかりの意識が薄れていく中、再び3人は振り向きあかりに小さく手を振っていた。
あかりは3人を見ながら手を伸ばすが距離はどんどん離れ3人の顔も見えなくなってしまう。
あかりは薄れる意識の中3人の声を聞いたような気がした。

そして、あかりは夢から目を覚ました。

あかり「うぅっ…」

あかり「あれぇ…? あ、そっかぁ、あかり眠っちゃってたんだよね…」

あかり「………えっ?」

あかりは周囲の風景を見て言葉を失った。

あかり「な、なに? どこ、ここ…?」

あかりの視界に飛び込んできたのは瓦礫の山だった。
あかりがいたはずの体育館はどこにもなく、視界に入るのは建物の残骸に瓦礫の山、ひっくり返った車があちこちに散らばり火を噴いている物もあった。

あかり「…あ、そ、そっかぁ~、まだ夢を見てるんだね。えへへ、あかりはお寝坊さんだなぁ」

あかり「それじゃあ、おやすみなさい…」

あかりが目を瞑り身体を横にして数分経過した。
あかりの目がうっすらと開き、身体を起こし再び辺りを見回して顔を青ざめ始める。

あかり「ゆ、夢だよね…?」

あかりは自分が夢を見ていると証明しようと頬を抓った、だが抓った頬からは刺さるような痛みを感じさらにあかりは顔を青くした。

顔を青ざめ震え始めたあかりだったが、自分のまわりが薄い光の膜で覆われていることに気が付きその光に手を伸ばした。
あかりが触れた瞬間、光の膜は融けるように消えた。だが、あかりはその光の膜に何かを感じつぶやいていた。

あかり「………ちなつちゃん?」

融けていった光をあかりはしばらく見つめ続けていた。

9話終わり。
>>73 QBさんにもノルマありますしね
>>74 気のせいのはずです
>>75 >>76 どこらへんまでが明確かはその時次第です

10話


瓦礫の山


光の膜が消えて少し呆然としていたあかりだったが、我に帰り再び顔を青くしながらつぶやき始めた。

あかり「…どうなってるの? 夢じゃないの?」

あかり「あかり… 一体どこにいるの? 何があったの…?」

あかり「きゃっ、雨がまた降り始めてるよぉ… さっきまでは… あれ? さっきも降っていたよね?」

あかり「なんでだろう? ………痛っ!? うぅ… 頭から血が出ちゃってるよぉ…」

あかり「よくわかんないけど、頭も痛いし、雨も冷たいしとりあえずどこか雨宿りできるところに…」

あかりはふらふらと立ち上がり雨宿りが出来る場所を探すために歩き始めた。

あかり「うぅ… ほんとに何があったんだろう…」

あかり「まるで映画で見た爆弾が爆発した後の町みたい…」

あかり「どこを見ても瓦礫の山ばかり… 怖いよぉ…」

あかり「………あれ?」

あかりが少し歩くと、少女が倒れているのを見つけた。
その少女はあかりも良く知っているピンクの髪の少女だった。

あかり「ち、ちなつちゃん!?」

あかり「ちなつちゃん! 大丈夫!?」

ちなつを抱き起こしたときにあかりは物凄い違和感を感じた。
ちなつの身体が驚くほど軽く簡単に抱き起こせたからだった。
そして、抱き起こした際にあかりはちなつの身体を見てしまった。
胸に大きな風穴を空けたちなつをあかりは見てしまった。

あかり「…………」

あかり「…………あ、あれっ?」

あかりはちなつの顔と身体を何度も見た、だがちなつの顔は真っ白で胸には風穴が開き、その姿はどう見ても生きている状態ではなかった。

あかり「ち、ちなつちゃん? こんなところで寝てちゃ風邪ひいちゃうよ?」

あかり「ね、起きないと。ほら…」

あかり「も、も~。またあかりを脅かすの? 今度は騙されないんだからね…」

あかり「ほら、くすぐり~~。……あれれ、今度はちなつちゃん我慢するんだねぇ…」

あかり「…………ちなつちゃ~ん。起きてよぉ…」

あかりはちなつを何度か呼びかけた。
ちなつがすでに死んでいるということを理解したくなく現実逃避を続けながらちなつを呼び続けた。
呼び続ければもしかしたらちなつが起きてくれるかもしれないと期待をこめて呼び続けた。だがちなつは目を開けることはなかった。

あかり「あ」

あかり「あぁ… ああああ………」

あかり「うそ、こんなのうそだよぉ! ちなつちゃん! おきてっ!」

あかり「おねがいだからぁ!! おきてよぉ!! うわあああああん!!」

あかりはちなつを抱きしめながら叫び続けた。
どれくらい叫び泣いたかもわからない。
そして、ふとあかりは思った。早く医者の所にちなつを連れて行かなければならないと。
どうにかしてちなつを助けたいと思っての考えだった。

あかり「ま、まっててね、ちなつちゃん。あかりがお医者さんのところに連れて行ってあげるからねっ…」

あかり「よぃ… しょっと… えへへ、ちなつちゃん軽いねぇ…」

あかり「お医者さんに見てもらえばちなつちゃんの怪我も治してもらえるからねっ…」

あかり「それまでちょっとだけ我慢してねぇ… あかりが連れて行ってあげるからねぇ…」

あかりはちなつを背負いおぼつかない足取りで歩き始めた。
あかりが歩き始めて少し経ち今までの場所とは違い大きなクレーターが出来ている場所に辿り着いた。
クレーターには雨水が溜まり、小さい池となっていた。
そしてあかりはその池に人が浮かんでいるのを見つけてしまった。

あかり「う、うそ…」

あかり「結衣ちゃんと京子ちゃんなの…?」

浮かんでいたのが結衣と京子だと気付いたあかりは背負っていたちなつをゆっくりと下ろし、池に向かって走り始めた。
池はそこまで深くなくあかりの膝下程度の水位だった。
あかりはうつぶせで浮かんでいる二人の下に辿り着き二人を助けるべく身体に触れ抱き起こした。

あかり「結衣ちゃ………ん………?」

結衣の身体を抱き起こしたときに気が付いた。
結衣の身体は上半身しか存在していなかった。
あかりは硬直し、半開きとなった虚ろな目の結衣の顔を見て意識が飛びそうになる。

あかり「はぁっ… はぁっ… ゆいちゃ…」

あかり「ち、違うよ。こ、こんなの夢なんだもん、悪い夢なんだもん…」

あかり「は、はやく起きないと… あかりこんなこわい夢見たくないよぉ…」

あかりは結衣を抱きかかえたまま悪い夢はもう覚めてほしいと願い続けた。
だがあかりの願いは誰にも聞き得れられず、足元から伝わる水の冷たさや抱きかかえている結衣の身体の重さが妙な現実感をあかりに与えた。
硬直していたあかりが、水に浮かんでいた京子が自分の傍まで漂ってきたことに気付いた。

あかり「はぁっ… はぁっ… はぁっ…」

あかりは結衣を一度下ろし、震える手で京子を抱き上げた。
嫌な予感しかしなかった、だがあかりは京子がもしかしたら気絶しているだけなのかもしれないと思い抱き起こした。
そしてすぐさま安易に抱き起こしてしまったことを後悔した。

あかり「!? いやぁあああああああ!?」

あかりが抱き起こした瞬間、京子の首が落ち水面に波紋を作った。
あかりは首のない京子の身体を持ったまま叫んだ。

あかり「あああああああ!? ち、違うのっ、ごめん、ごめん京子ちゃん!?」

あかり「やだっ、どこ!? 京子ちゃんどこっ!?」

反射的に京子の身体を離し、あかりは水面に沈んだ京子の首を捜し始めた。
そしてそれはすぐ見つかった。
あかりは京子の首を拾い上げ、安堵の息をつく。

あかり「よ、よかったぁ~、ごめんね京子ちゃん」

あかり「………………………………あれ?」

京子の首を持ったままあかりは酷い違和感に襲われる。
そして、あかりは首だけの京子の顔を見て、首のない京子の身体を見て、上半身だけの結衣を交互に見た。

あかり「…………」

あかりは完全な無表情になり、京子の首を持ったまま立ち尽くした。

クレーター池のほとり


あかりは結衣と京子を池から引き上げ、ちなつの隣に寝かせた。
3人は並ぶように横たわっており、あかりは3人の前で体育座りをしながら顔を伏せていた。
あかりはずっと夢から覚めてと呟いていた、しかしあかりの悪夢は覚めることはなかった。

あかりの小さい身体から全ての水分が出尽くすくらい涙を流し、それでもなお流れ続ける涙があかりの視界を歪ませる。
そしてどこかからか聞こえてきた声にあかりは顔を上げ歪んだ視界の中、小さな生き物の姿を捉えた。

QB「やぁ、あかり」

あかり「きゅぅべぇ………?」

QB「君が無事で安心したよ、他の3人は残念だったね」

あかり「………はやくおきないと、こんなゆめもうみたくないよぉ…」

QB「どうしたんだい? 夢ってどういうことだい?」

あかり「………あかりはわるいゆめをみてるの。はやくおきてこんなこわいゆめわすれないと…」

QB「? 君は眠っていないよ? 起きているじゃないか?」

あかり「………ちがうもん、あかりはゆめをみてるだけ、みんなしんじゃうなんてそんなことあるわけないもん」

QB「ああ、そういうことだね。強い精神ショックを受けた場合に起きる症状か」

QBはあかりの顔を見ながら少し黙り、何かを思いついたのか再び話し始めた。

QB「………君がそんな事言っていたら、他の3人は悲しむんじゃないかな?」

あかり「…………」

QB「京子、結衣、ちなつは君を守る為に死んだんだよ?」

あかり「…………え?」

QB「特にちなつなんかは魔法少女になる願いも『あかりちゃんを守って』という願いだったね。君の周りに防御フィールドが出来ていただろう? 気が付かなかったかい?」

あかり「…どういうことなの? みんながあかりを守るためって…?」

QB「それじゃあ、全部話してあげようか」

QB「君がちなつをかばって気絶した後に、ワルプルギスの夜が具現化して君たちのいた建物は破壊されたんだよ、幸い君とちなつは京子たちがかばってくれて助かったけどね」

QB「その後に、僕が京子たちに呼ばれてこれがワルプルギスの仕業と教えてあげたんだよ。その後に少し話をしたら、彼女達は気絶した君を守る為にワルプルギスの夜と戦うと言ってくれたんだ」

あかり「…あかりのせいなの?」

QB「最初は結衣と京子がワルプルギスに挑んで、ちなつは君を守る為に一緒に居たんだけど、ちなつとも少し話したらワルプルギスの夜に立ち向かうと言ってくれてね。そこでちなつも魔法少女になったんだ、君を守るという願いでね」

あかり「…あかりのせいでみんなが」

QB「3人は健闘したと思うよ、だけどワルプルギスには及ばなかった」

QB「最初に結衣がワルプルギスの攻撃の直撃を受けやられてしまった。その後は京子だったね。だけど、京子はすごかったよ? あの願いで契約したにもかかわらず、ワルプルギスを数分間も一人でしかも真正面から足止めしたんだからね」

あかり「…………」

QB「まあ、その京子も力尽きやられてしまったよ。そして、最後はちなつだね。ちなつは二人がやられるところを見て君の元に向かったんだ。そして君の元にワルプルギスが来ないように防御魔法を使い続けていたよ」

QB「かなりの時間、ワルプルギスの攻撃を防いでいたんだけど、やはり彼女も最後にはワルプルギスの攻撃を受けやられてしまったんだ。そしてちなつがやられた直後にワルプルギスも消えたんだよ」

あかり「あかりが、あかりがみんなを…」

QB「彼女達は最後まで君を守ろうとしたんだ、だから君は助かって喜ぶべきだよ、彼女達の願いは成就されたんだからね」

あかり「………ちがうよぉ、あかりが助かってみんなが死んじゃうなんてそんなのだめだよぉ…」

QB「何が駄目なんだい? 彼女達は君に助かってほしいと本当に願っていたみたいだけど?」

あかり「ちがうよ、ちがうんだよぉ…」

QB「よくわからないけど、君はこれからどうするんだい?」

あかり「…………」

QB「君には運命を変えられる力が備わっているんだよ」

あかり「あ………」

QB「君が望むなら、僕が力になってあげられるよ?」

あかり「…どんな願いも叶えられる」

QB「そうだよ、君にはその資格がある。さあ、君の祈りを教えてごらん?」

あかり「…………」

あかりの脳裏に楽しかったごらく部の思い出が蘇る。
京子が馬鹿をやって、結衣がそれを咎める、そしてちなつは結衣にちょっかいを出し京子がちなつに詰め寄り、あかりはそんなみんなを見て笑っている。皆も楽しそうに笑っていた。

あかりが過去の思い出を思い出していたときに視界に今の3人が入り現実に引き戻される。
横たわりボロボロになった3人、二度と笑うこともなく3人の未来はここで閉ざされてしまっていた。

あかりはこれが悪夢だったとしても、こんな結末で終わることは絶対に許せなかった。

そして、あかりは悪魔の契約に手を出してしまった。

あかり「あかりは…」

あかり「あかりはみんなを助けたい… こんなことにならないようにしたい… みんなともう一度笑って一緒にいられる時間を取り戻したい」

QB「! …契約は成立した、君の祈りはエントロピーを凌駕した」

QB「さあ、解き放つといい。君のその新しい力を」

あかりを中心に紫色の光が輝きだした。
あかりの新たな力は空間を歪ませ、紫色の光としてあかりを包み込んだ。
光は輝きを増し、辺り一帯を包み込むようにして広がったかと思うと一瞬にして掻き消えた。
その場に残ったのは物言わぬ3人の亡骸とQBのみだった。

QB「これは… 彼女は一体どこに…?」

QB「まあ、いいか。契約は完了したんだし、彼女ならすぐ魔女になってくれるだろうしね」

QB「しかし、彼女の願いは3人を生き返らせたいとでもするかと思っていたのに的が外れたな。ワルプルギスとの戦いで3人はソウルジェムを破壊されて死んだのが痛かったから、あかりの願いで生き返ってもらって、魔女になってもらいたかったんだけどな」

QB「やはり人間の感情は理解できないな、ある程度誘導しても思い通りに行くことが殆どない。本当に厄介だ、せっかく苦労してワルプルギスを誘き寄せてまで契約を迫ったんだけど4人中3人もエネルギー回収できなかったし」

QB「まあ済んでしまったことは仕方ないか…」

QB「さて、次の娘のところに行かないとね」

QBの姿は掻き消え、残ったのは3人の亡骸のみとなった。
3人は寄り添うように並び、あかりの手によってそれぞれ手を繋いでいた。
雨がやみ雲の切れ間から差し込んできた光が3人の顔を照らしていた。



こうして、あかりの旅が始まる。
ひとつの悪夢は終わり、新たな世界にあかりは旅立った。

あかりは再び皆と笑いあい一緒に過ごせる時間を手に入れる為に契約をしてしまった。
後戻りをすることの出来ない契約を。

10話終わり。
85>> 86>> あかり「さあ、いこーか」

時をかけるあかりがここまで重いものに…
というか、ほむほむと違って最初から知り合ってる仲で、どこの時間帯に合流するのか…

エピローグ


あかりの部屋


まどろんだ意識の中、あかりはゆっくりと目を開ける。
見慣れた自分の部屋の天井を見て、身体を起こす。

あかり「………ゆ、ゆめ」

あかり「あああ……… よかったよぉ………」

あかり「ひっく… あんなこわい、ひっく… ゆめ…」

あかりは安堵の涙を流しながら右手に違和感を感じ手を開く。
そこには紫色のソウルジェムが握られていた。

あかり「えっ?」

あかり「これって… ソウルジェム…」

あかり「それじゃあ、あれは、ほんとに…」

あかりは自分の手にあったソウルジェムを呆然と見続け、数十分そのまま見続けていた。
顔色もどんどん青から白へと変化して行き、身体中が震えだした。
ベットの上で震えていたあかりだったが、家のチャイムの音に意識を引き戻され、外から聞こえてきた声に目を見開いて反応した。
そして、服も着替えず玄関まで全力で走り、そのままの姿で玄関の扉を開けた。

京子「うぉおう!? って、あかり~、新学期から寝坊か~?」ニシシ

結衣「あかり… パジャマ姿で出てきて寝ぼけてるの?」

あかり「…………」

京子「おーい、あかり? 聞いてんの? お~い?」

結衣「あかり? どうしたの?」

あかり「…………」ジワァ

あかり「うっ、ううっ… うわああああん!」

京子「うぉっ!? ど、どしたの、あかり?」

結衣「あかり!? うわっぷ!?」

あかりは二人に抱きつきそのまま泣き始めた。
そのままあかりは泣き続け、二人は顔を見合わせ困った顔をしてあかりをなだめ始めた。

京子「あ、あかり? どうしたんだよ?」

結衣「そうだよ、なにがあったの?」

あかり「ひっく、だって、だって二人が生きて… ひっく」

京子「生きて? とりあえず家に入ろうぜ。そこで聞くからさ」

結衣「そうだね、家に入って準備もしようか。早めに準備もしないと本当に遅刻しちゃうしね」

あかり「ひっく… 二人ともよかったよぉ… ひっく…」

京子「な、なにがよかったかはわかんないけど、ほらあかりも歩いて!」

結衣「歩ける? あかり?」

あかり「ひっく… ぐすっ…」コクン

そのまま3人はあかりの家に入り、あかりを部屋まで連れて行った。
泣き止まないあかりに、京子があかりの準備をしようと制服を取りに行こうとするとあかりに服を捕まれ動けなくされた。
京子と結衣は顔を見合わせ新学期早々遅刻かとため息をつきながらもあかりが泣き止むのを待った。


あかりが持っていたソウルジェムが転がり、3人の顔を映し出していた。
あかりは泣き顔だったが、京子と結衣は困った顔をしていたが笑顔であかりを見ていた。

エピローグ終わり。
1章 時をかけるあかり 終わり。
2章に続く。

文章力・構成力ともに高いなぁ
あかり=まどかだと思っていたんで、良い意味で期待を裏切られた

結衣がやられて京子が覚醒する場面は、想像したら涙出てきた…

優しさの権化みたいなあかりちゃんはほむほむみたいに覚醒出来るんだろうか

素晴らしい

2章 1話


あかりの部屋


京子と結衣はあかりを部屋に連れていき、あかりを泣き止ませようとしたが一向に泣き止まず困惑していた。

結衣「なぁ、あかり、本当にどうしちゃったの?」

あかり「ひっく… 二人がぁ… ひっく… 生きててぇ… えぐっ…」

京子「だ、駄目だこりゃ。あかりー、ほんとに遅刻しちゃうぞー、そろそろ泣き止めって」

あかり「えぐっ… 京子ちゃぁん… ごめんねぇ… ひっく… ごめんねぇ… うわぁぁぁん!!」

京子「結衣、こりゃマジで駄目だわ。なんかよくわからんけどあかりは泣き止みそうにないぞ」

結衣「うん、私達の服を握って離してくれないし、とりあえず落ち着くまでこうしてようか」

京子「あははー、夏休み継続だー! あかり、何があったかはわからんが、お前が泣き止むまでずっとこうしていてやるぞ!」

結衣「お前は授業をサボる口実が出来て喜んでるだけだろ…」

あかり「ひっく… えっぐ…」

その後、あかりがある程度落ち着くまで二人は待ち、途中あかねが話し声の聞こえるあかりの部屋をのぞきあかりの泣き顔を見て二人を問い詰めるハプニングもあったが、二人は必死の説得の末何とかあかねに納得してもらった。

京子「…あかりのねーちゃん怖かった………」

結衣「ああ… あかりが私達の傍を離れようとしなかったらどうなってたことか…」

京子「ま、まあ、私達も含めて休みの連絡を学校に入れてくれるって言ってたし、とりあえずこのままあかりの様子を見てようか」

結衣「うん、一応ちなつちゃんにも連絡しておこうか、今日は休むって…」

結衣がちなつの名前を声に出したとき、あかりは勢い良く顔を上げ結衣に詰め寄った。

あかり「ぢ、ぢなづちゃん! ぢなつぢゃんはどこにっ!?」

結衣「うわっ!? あかり、お前顔すごいことになってるぞ!?」

あかり「ぢなつちゃんはぁぁ!?」

京子「ほい、あかり」

京子は自分のスマホをあかりに渡し、液晶の画面を見せた。
通話マークにちなつちゃんと表示された画面から音声が漏れていた。

ちなつ『京子先輩? 朝からどうしたんですか? 京子せんぱーい?』

あかり「!?」

ちなつ『聞いてます? おーい… いたずらなら切りま…『ぢなつちゃん!!!!』』キーーン

ちなつ『うるさっ!? って、あかりちゃん?』

あかり『ちなづちゃん!? 生ぎてるのっ!? どこにいるのぉっ!?』

ちなつ『ど、怒鳴らないで。…あかりちゃん、どうしちゃったの、なんかすごい焦ってるみたいだけど…』

あかり『どこっ!? どこなのぉ!? ちなつちゃぁあん… うわぁぁぁぁん!!』

ちなつ『ちょ、あかりちゃん!? どうしちゃったの!?』

あかりが京子のスマホに、どこ?どこ?と叫び続け、京子は埒が明かないと思いあかりからスマホを取り上げちなつと会話をし始めた。

京子「あかりー、ちょいとごめんねー」ヒョイッ

あかり「あぁっ!? いやぁっ!」

京子『あー、ちなつちゃん? 私だけど』

ちなつ『き、京子先輩? さっきのあかりちゃんですよね? あかりちゃん、どうしちゃったんですか?』

あかり「ぢなつちゃん!! どこぉぉぉぉ!?」

京子『なんかね、すんごく泣いてる。とりあえずちなつちゃんもあかりん家に来てよ』

ちなつ『はぁ? もう学校に着くんですけど? というか今日始業式の日ですよ…?』

あかり「いやぁぁぁぁ!! どこなのぉぉぉ!!」

京子『だってさー、聞こえるでしょ? このままだとあかり泣きすぎておかしくなっちゃうよ?』

あかり「わぁぁぁぁぁぁん!! うわぁぁぁぁぁん!! ちなづちゃぁぁぁぁぁん!!」

ちなつ『………わかりました、ほんとにあかりちゃんどうしちゃったんですか…?』

京子『それが私達にもさっぱり、とりあえず急いで来てねー』

ちなつ『あっ! 私達って、もしかして結衣先輩もいるんですか!?』

京子『そだよー、んじゃ切るね』プチッ

京子「というわけで、もうすぐちなつちゃんが来るから落ち着けあかり!」

あかり「………ほんと?」

京子「おう!」

あかり「えぐっ… よかった… ぐすっ…」

結衣「ちなつちゃんもか… 本当にどうしちゃったんだろうね?」

京子「わからん!! まあ、今日はあかりの家がごらく部ということでここで部活動だー!」

結衣「お前… あかりがこんな状態なのに…」

京子「あかりもみんなと遊びたいよなー?」

あかり「ぐすっ… うん… うんっ!」

京子「ほら、あかりも遊びたいって言ってるよ? …それに遊んでればあかりも泣き止んでくれるかもしれないし」

結衣「…それもそうだね」

結衣はあかりの背中を擦りながらあかりを落ち着かせ、数十分経ったところでチャイムがなりあかりが立ち上がった。
あかりは二人を引っ張り玄関に向かい、ドアを開けちなつの姿を見つけると勢い良く飛び掛り抱きついた。

ちなつ「おはようございます~、って、ギャーーーー!?」

あかり「ちなつちゃん!! ちなつちゃん!!!!」ギュウウウウ

ちなつ「痛い、痛い! あかりちゃん痛いって!!」

あかり「みんな生きてる… みんなぁ… よかったぁ… よかったよぉ…」ジワァ

京子「ちなつちゃん確保ー! んじゃ、また部屋にもどろっか」

結衣「また泣き始めちゃったしね、そうしよっか」

ちなつ「ちょ、ちょっと待ってくださいよ! これ、一体どういう状況なんですかっ!?」

京子「さぁ?」

ちなつ「さぁ? じゃないでしょ!! 学校はどうするんですか!?」

結衣「あかりがこんな状態だし今日は休むことにしたんだよ、ちなつちゃんも多分あかりが離してくれなそうだし休みになっちゃいそうだね」

ちなつ「………結衣先輩も一緒なら仕方ないですよね! 今日はお休みですねっ!」

あかり「ぐすっ… ひっく…」

ちなつ「というか、ほんとにあかりちゃんどうしちゃったんですか… さっきも物凄く取り乱してましたし、こんなあかりちゃん見たことないですよ」

結衣「あかりとの付き合いは長いけど、ここまで泣いてるあかりを見るのは私も始めてだよ。何があったかはわからないけどとりあえずは一緒に居てやらないとって思ってね」

京子「…うん、あかりがここまで泣くって何かあったんだと思うし」

ちなつ「京子先輩… 急に真面目な顔にならないでくださいよ… わかりました、とりあえず家にはいります?」

京子「ほい、一名様ごあんな~~い!」

ちなつ「…………」

結衣「入ろっか…」

ちなつも連れ再びあかりの部屋に戻った4人はあかりが落ち着くまで待った。
1時間くらい経過したところで漸くあかりは平静を取り戻し、3人の質問を受け答えできるくらいまで持ち直した。

あかり「…みんな、ごめんねぇ、あかりすごくこわい夢を見ちゃって………」

結衣「ゆ、夢? それであんなに泣いてたの?」

あかり「…………」コクン

京子「はぁ、よかった…」

結衣「ふふ、なんだかんだで京子が一番心配してたもんな」

京子「!? ち、ちげーし」

結衣「はいはい」

ちなつ「むむっ… ………ちなみにどんな夢だったの?」

あかり「…………………みんなが死んじゃう夢」

ちなつ「あー… あかりちゃんならそんな夢見ちゃったら泣いちゃうかもね」

結衣「だから私達が生きてるって言ってたのか…」

京子「大丈夫だぞあかり~、この無敵の京子ちゃんが死ぬことなんてありえないからな!」

結衣「京子じゃないけど私達が死ぬなんてありえないからね、夢は夢だよ。怖い夢は早く忘れちゃおう」

ちなつ「結衣先輩の言うとおりだよ、怖い夢は早く忘れて楽しいことを考えようよ」

あかり「みんな… ありがとう…」

あかり「えへへ… みんなに慰めてもらってたらなんだかすっごく恥ずかしくなって来ちゃったよぉ」

京子「あんなに泣きまくって今さらだろ~、恥ずかしいあかりの姿をいっぱい撮ってやったぜ!」ニシシ

あかり「あぁ~~~!? け、消してっ! 消してよ、京子ちゃ~~ん!!」

京子「やだよー! 私達を心配させた罰としてこの画像はプリントアウトしてアルバムに閉じてやるんだ!」

あかり「も、もぉ~~! 京子ちゃ~~ん!!」

あかりと京子がドタバタと追いかけっこを始めると、結衣はやっと一息ついた。

結衣「はぁ、あかりも元気になってくれて安心したよ…」

ちなつ「そうですね、ほんとに最初の電話なんかなにがあったのかと…」

結衣「あの電話もすごかったね、だけど私達が最初に見たあかりの顔なんか今にも死にそうな顔をしてたから本当にどうなることかと思ったよ」

ちなつ「そんなに酷かったんですか?」

結衣「うん、真っ青を通り越して真っ白な顔をしてたからね」

ちなつ「怖い夢を見てそんな状態になっちゃうって、さすがはあかりちゃん…」

結衣「あはは、あかりらしいって言えばあかりらしいね」

結衣がちなつと話していると、ベットの隅に転がっていた紫色のソウルジェムが目に入った。
結衣はソウルジェムを拾い上げ、あかりにソウルジェムのことを聞き始める。

結衣「これ、宝石? って、こんなでかい宝石、本物のわけないか」

あかり「あ………」

結衣「これあかりの? おもちゃにしてはすごく良く出来てるね?」

今の今までソウルジェムのことをすっかり忘れていたあかりは、再び顔を青くし始める。

結衣「あ、あかり? 大切なものだった?」

あかり「う、ううん。違うの… なんであかりの手にソウルジェムがあったのかがわからなくて…」

京子「ソウルジェム? そのおもちゃのこと?」

あかり「えっ?」

ちなつ「ソウルジェムっていうんだ、すごく綺麗だねー」

あかり「あ、あれ? みんななんで…?」

結衣「? どうしたの?」

あかりは3人がソウルジェムのことを知らない事に疑問を浮かべる。
疑問を浮かべると共に先ほどから違和感が合ったことに気が付く。

あかり「ね、ねぇ、みんな今日は土曜日だよね? 何で制服であかりの家に来てるの?」

京子「? まだ寝ぼけてんの? 今日は新学期初日じゃん、それとも夏休みが抜け切ってないのかー?」

あかり「あれっ? あれっ? だって今日は10月終わりの週の土曜日…」

結衣「? 今日は9月1日だよ?」

あかり「えっ…?」


あかりの体感時間ではワルプルギスの夜が来た日の朝が今だったが、無意識のうちに時を遡ったためあかりは現状を理解できなかった。

あかりは2ヶ月間の時間遡行を行っていた。

あかりは呆然と自分のソウルジェムを見つめる、紫色のソウルジェムはあかりの心に連動するかのように少しだけ穢れを溜めていた。

1話終わり。

>>95 新学期初日にログインしました
>>98 どもども、覚醒シーンなしですいません
>>99 あかりちゃんは虫も殺せないような子ですもんね
>>100 どもども

2話


あかり「あれぇ…? だって… あれぇ?」

ちなつ「ほら、今日の日付だよ」

あかり「あ、ほんとだ。9月1日だ… それじゃあ、あれって全部夢だったの…?」

あかり「…でもなんでだろ、夢だったら何であかりがソウルジェムを持ってるんだろ」

結衣「はい、あかり。床に置いたままじゃ踏んで壊しちゃうかもしれないぞ」

あかり「あ… ありがとう」

結衣はあかりにソウルジェムを手渡した。
あかりはソウルジェムを見つめながら考え始めた。

あかり(ほんとに何であかりの手の中にあったのかなぁ?)

あかり(今日が9月1日だったらあれは全部夢だよね… でもそれじゃあ、なんでソウルジェムがあるのぉ? う~~、わかんないよぉ…)

あかり(………これもあかりが忘れてるだけでどこかで貰ったおもちゃだったかなぁ?)

あかり(う~ん… ………あれ? なんだろう? この感覚?)

あかりはソウルジェムを見ながら考え続けていると、ソウルジェムから何かを感じて意識を向けた。

あかり(変な感じ……… もうちょっと集中したら何かが…)

あかりが不思議な感覚の正体を知ろうとソウルジェムに集中してしばらくすると、ソウルジェムが輝きソウルジェムから放たれた光があかりの身体を包み込んだ。

あかり「きゃぁっ!?」

京子「は…?」

ちなつ「へ?」

結衣「…えっ?」

光が消えた後、あかりの姿は七森中の制服と良く似たワンピース状のコスチュームとなり、持っていたソウルジェムはダイヤの形となり左手の甲に埋め込まれていた。

あかり「あ、あれっ? なんで…?」

京子「」パクパク

結衣「な、なにそれあかり? い、今どうやったの?」

ちなつ「は、早着替え?」

あかり「あかり、変身しちゃった…? それじゃあ、あれって夢じゃないの…? わかんないよぉ… どうなってるのぉ…?」

京子「す、す、す…」

結衣「京子?」

京子「すっげーーーー!! あかりが変身したよ!? ねえ、あかり! 今どうやったの!? もっかいやってよ!!」

結衣「お、おい、京子…」

京子「結衣も見たっしょ!? あかりがミラクるんみたいに変身しちゃったんだよ!?  ってゆーかなんで黙ってたんだよあかり! こんなすごいこと秘密にしてるなんて水臭いだろーー!!」ガクンガクン

あかり「き、京子ちゃん~~、ゆすらないでぇ~~」ガクンガクン

しばらく京子に揺さぶられ、質問攻めを受けたあかりは京子の勢いに呑まれ、自分が何故魔法少女になっているかという疑問は頭の隅に追いやられてしまった。
揺さぶられ続けたあかりは目を回しながら、自分が魔法少女になったのかもしれないと3人に伝えた。

結衣・ちなつ「魔法少女?」

あかり「う、うん、たぶん…」

京子「うおおおおお! すっげぇ!! あかり、マジすげぇ!!」

結衣「お前、そろそろ落ち着けよ…」

ちなつ「あかりちゃんを見る目がすごいことになってますよ…」

京子「あかり! 魔法使ってよ! 変身だけじゃなくて本物の魔法も見たいよ!!」

あかり「そ、そんなこと言われても、魔法なんて使えないよぉ…」

京子「何言ってんだよ!? あかりは魔法少女に変身したじゃん! 使えないわけないって! 頼むよあかりぃ~~」スリスリ

あかり「やめてぇ~~、頬ずりしないでぇ~~」

ちなつ「京子先輩… あかりちゃん困ってますよ…」

結衣「いい加減にしろって」ポカッ

京子「ふっ、いくら結衣でも今の私を止めることは出来ないぞ!! 魔法を使うまで私はあかりを離さんぞーーー!!」グリグリグリ

あかり「やぁ~めぇ~てぇ~」

しばらく京子のされるがままになっていたあかりだったが、結衣とちなつの手によって京子は拘束されあかりは開放された。

京子「離せーーーーー!! あかりーーー!! 魔法を見せろーーー!!」ジタバタ

あかり「ひぇぇぇ!?」

結衣「馬鹿! 暴れるなって!! ちなつちゃん足持って! こいつをあかりから引き離すよ!」

ちなつ「はいっ! …きゃぁ、痛いっ! 京子先輩蹴らないでくださいよ!!」

京子「はーなーせーーー!!」ジタバタ

結衣「だから暴れるなって!! …あっ」ツルッ

結衣とちなつが京子をあかりから引き離すために宙ずりにして運んでいたとき、京子が暴れて結衣の手がすべり頭から床に落ちた。

京子「ぐはっ」ゴン

ちなつ「あっ」

あかり「あっ」

京子「きゅ~~~~」ガクッ

ちなつ「………うわ、モロにいっちゃいましたね」

結衣「気絶してる…」

京子「」

結衣「ま、まあいいか。この馬鹿はこのまま寝かせておこう」

ちなつ「そ、そうですね」

あかり「あはは… 一応ベットまで運んであげようよ」

気絶した京子を3人でベットまで運び、落ち着いたところで再び話はあかりの魔法少女の話しに戻った。

結衣「ところで、その魔法少女だっけ? あかりはどうやって魔法少女になったの?」

あかり「…あかりもわかんないんだよぉ、夢の中ではキュゥべえと契約したら魔法少女になれたんだけど…」

ちなつ「キュゥべえ? なにそれ?」

あかり「なんて言えばいいのかなぁ? 魔法の精霊さん? 猫さんみたいなかわいい子だよ」

ちなつ「ふ~ん、じゃああかりちゃんもそのキュゥべえと契約して魔法少女になったんじゃないの?」

あかり「………ち、違うよ、あかりは契約なんてしてないもん! あれは夢なんだもん!」

ちなつ(あー、あかりちゃんが見てた怖い夢にでも出てきたのかな?)

結衣「大丈夫だよあかり、もう怖い夢は終わったんだから落ち着きなって」ナデナデ

あかり「………うん」

結衣は再び怯え始めたあかりを包み込むように抱きしめて落ち着かせた、ちなつは羨ましそうな顔をしながらその様子を見ていたが、先ほどのあかりの酷い泣き顔を見ていたせいか二人の邪魔をせず見守っていた。
しばらくするとあかりは結衣の胸の中で寝息を立て始め眠ってしまった。

結衣「寝ちゃったか、あれだけ泣いてたんだし泣き疲れちゃったんだな」

ちなつ「そうですね、二人とも寝ちゃいましたけど、私達はどうしましょうか?」

結衣「…とりあえず京子を連れて帰ろうかな、こいつが起きたらまたさっきみたいなことになりそうだし」

ちなつ「ですね…」

結衣「ちなつちゃんは少しあかりの様子を見ててもらってもいいかな? あかりが起きてみんないなかったらまた泣き出してしまうかもしれないから… 頼めるかな?」

ちなつ「結衣先輩のお願いならなんでも聞きますよっ! それに他ならぬあかりちゃんの為ですからね、あかりちゃんが起きるまでは一緒にいますね」

結衣「助かるよ、それじゃああかりのお父さんかお母さんに頼んで車を出してもらえるか聞いてくるね」

ちなつ「は~い」

その後、あかりの両親に車を出してもらい結衣は京子を連れて家に帰った。
結衣の家について、京子を家に運び入れようとしたところで京子が意識を取り戻し、再びあかりの元へ行こうとしたため、結衣が無理やり部屋にいれ説教を行い、暴走する京子を何とかなだめることに成功した。

結衣『そういうわけで、私は京子を外に出さないように見張っておくよ。こいつ反省してるように見えて隙を見てあかりのところに行こうとしてるから』

ちなつ『本当にどうしようもない人ですね… わかりました、まだあかりちゃんは起きてないんで私もこのままあかりちゃんと一緒にいますね』

結衣『うん、あかりがまた泣くようなら連絡してよ、すぐ駆けつけるから』

ちなつ『わかりました』

結衣『それじゃあ、ちなつちゃんお願いするね』

ちなつ『任せてください!』

結衣との通話を切りベッドで眠っているあかりの手を握ってちなつは呟き始めた。

ちなつ「あ~あ、あんなに結衣先輩に心配してもらえて、羨ましいな…」

ちなつ「まあ、あかりちゃんだったら仕方ないか。これが京子先輩だったら有無を言わさず邪魔してやるんだけど…」

ちなつ「…京子先輩か、流石にさっきのは酷かったし明日あったら文句を言ってやらないといけないわね、あかりちゃんは大丈夫って言うと思うから私が言ってやらないと!」

ちなつ「日ごろからの文句も含めて言ってやらないと… ………あら?」

ちなつが京子に対しての文句を考えていると、握っていた手から握られる感覚を感じあかりの顔を見るとうっすらと目を開け始めていた。

あかり「うぅん…」

ちなつ「あ、起きた?」

あかり「あ… ちなつちゃん? あ、そっか、眠ってちゃったのかな?」

ちなつ「そうだよー、あれだけ泣き喚いてたんだし疲れたんでしょ」

あかり「あぅ…」カァァ

あかり「あれ…? 京子ちゃんと結衣ちゃんは…?」キョロキョロ

ちなつ「結衣先輩が京子先輩を連れて帰ったよ」

あかり「そう…なんだ…」

ちなつ「残念そうな顔しないでよ、あかりちゃんもあんな目にあうのはこりごりでしょ?」

あかり「そ、そうだね、さすがにあれはちょっと勘弁してほしいかなぁ…」

ちなつ「今は結衣先輩が見張ってくれてるから京子先輩がここに来る事はないし、眠いならまだ寝ても大丈夫だよ? 私もあかりちゃんが大丈夫そうだってわかったから、寝るんだったら帰るし」

あかり「あっ、もう眠くないよ。もしかしてちなつちゃん、あかりが起きるまで待っててくれたの?」

ちなつ「そうだよ、結衣先輩にも頼まれたし、何より大事な友達のあかりちゃんがこんな状態なのにほっとけるわけないじゃない!」

あかり「ちなつちゃん…」

ちなつ「あかりちゃんにはいつも相談にも乗ってもらってるし、お世話になってるし、こんなときこそ恩返ししないとねっ!」

あかり「ちなつちゃぁん! あかり、うれしいよぉ…」

ちなつ「えへへ。あ、そうだ、あかりちゃん何かしてほしいことある? 看病してあげるよ?」

あかり「え゛っ?」

ちなつ「そうだっ、目元が真っ赤になってるし、顔のマッサージをしてあげるよっ! マッサージなら自身があるし、あかりちゃんも前に褒めてくれたもんね!」

あかり「ま、ま、ま、まってぇ~~!! 大丈夫! 大丈夫だからっ!」

ちなつ「遠慮しなくていいのよ? ほら、顔出して!」ガシッ

あかり「ひぃぃぃぃぃ!? ホントに勘弁、勘弁してください!?」ピクピク

ちなつ「じっとしててね~、動くと危ないからね~」ジリジリ

あかり「い、い、いやあああああああ!?」

その後、ちなつのマッサージフルコースを受けたあかりは死んだ魚の目となってぐったりと倒れこみしばらく体を動かすことが出来なかった。

2話終わり。

3話


あかり「…………」グッタリ

ちなつ「どうだった? この前から練習してお姉ちゃんにも好評なんだよ?」

あかり「………うん。…すごすぎて動けそうにないよ」グッタリ

ちなつ「そんなに気持ちよかった? えへへ、もうちょっと練習したら結衣先輩にもやってあげるんだ~」

あかり(結衣ちゃん、逃げて………)

少しして、あかりはマッサージの傷が癒え動けるようになり、ちなつの看病から逃げる為に会話をし続けた。
しばらく取り留めない話をしていた二人だったが、ちなつがふと漏らした言葉から再び魔法関係の話題に戻っていった。

ちなつ「そういえば、あかりちゃんの服元に戻ってるね?」

あかり「あ、ほんとだ」

あかり「…ほんとにあかり変身しちゃったんだよねぇ、なんでなんだろ…」

ちなつ「あかりちゃんもどうやって変身できたかもわからないんだよね?」

あかり「…うん」コクン

あかり「このソウルジェムから変な感じがしたんだけど、それに集中したら変身しちゃったみたい」

ちなつ「ソウルジェムねぇ、すごい綺麗な宝石だけど、これが変身する為に必要な道具なのかな?」

あかり「わかんないよぉ…」

ちなつ「そっか~」

ちなつは少し考えふと思いつき手を叩いた。

ちなつ「あっ、そうだ」ポン

あかり「?」

ちなつ「さっき言ってたキュゥべえって言う魔法の精霊を呼んでみればいいんじゃない?」

あかり「キュゥべえを? でも、キュゥべえはあかりの夢に出てきただけなんだよぉ?」

ちなつ「でもさ、あかりちゃんは夢の中に出てきたソウルジェムを使って変身しちゃったじゃない、もしかしたらそのキュゥべえもいるかもしれないよ?」

あかり「う、うん…」

あかり(キュゥべえもいるんだったら、あの夢で契約したのはほんとのことになっちゃうの…?)

あかり(ううん、違うもん! ちなつちゃんもこうやってあかりの前にいるし、京子ちゃんも結衣ちゃんもちゃんといるからあれは絶対に違うんだから!)

ちなつ「あかりちゃん? どうしたの?」

あかり「ううん! なんでもないよっ!」

ちなつ「そう? それでどうする? 呼んでみる?」

あかり「…そうだねぇ」

あかり(よくわかんないけど、あかりは変身しちゃったしキュゥべえがいるなら何か知ってるかもしれないよね)

あかり(なんであかりが魔法少女に変身できちゃったのか聞いてみようかなぁ)

あかり「あかりもなんで変身できたのか気になるし呼んでみようかな」

ちなつ「わぁ、じゃあ、魔法の精霊がここに来てくれるの? どんなのなんだろ? 楽しみ~」ワクワク

ちなつは今から来るかもしれない魔法の精霊を期待し目を輝かせていた、あかりはそんなちなつを見ながらどうやったらQBが来てくれるのかを考えていた。
ちなつはあかりの視線を少し勘違いしあたふたしながら言った。

ちなつ「あっ… べ、別に魔法の精霊が気になるって訳じゃないんだよ? 私ももしかしたらあかりちゃんみたいに変身して魔法を使えたらな~ってなんか全然思ってないんだよ? 確かにミラクるんの映画を京子先輩に見せられてから魔女っ娘に憧れてたりもするけど、実際になりたいなんて思ってないんだからね?」アタフタ

あかり「ち、ちなつちゃん? もしかして魔法少女になりたかったりするの?」」

ちなつ「だ、だから違うって! も~、私の事はいいから早く呼んでよっ!」

あかり「う、うん。…キュゥべえ~、あかりはここだよぉ~、聞こえたらここにきてほしいなぁ~」

ちなつ「…………」キョロキョロ

あかりはしばらくQBを呼ぶ為に声を出したりしていたがQBの姿は一向に現れず、色々な方法を試すことにした。
方法を試す中、ソウルジェムを持って呼びかけていると、あかりの頭の中に直接声が聞こえてきた。

QB『………もしかして僕を呼んでいるのかな?』

あかり「あっ!! キュゥべえ? どこにいるの?」

ちなつ「どうしたのあかりちゃん?」

あかり「キュゥべえの声が聞こえたんだよ、でも、あれぇ? どこにいるんだろ?」キョロキョロ

ちなつ「声が? 私には聞こえなかったけど…」キョロキョロ

QB『………どうやら本当に僕のことを探しているようだね、君は一体何者なんだい?』

あかり「? あかりはあかりだよぉ?」

QB『………まあ、いいや。少し待っていてくれないかな? 君の位置を確認してそちらに向かうから』

あかり「うん、わかったよぉ、待ってるねぇ」

ちなつ「あかりちゃん? あかりちゃんには声が聞こえるの?」

あかり「うん、キュゥべえがここに来るって言ってるけど… あれぇ? なんであかりにしか聞こえなかったのかなぁ?」

ちなつ「やっぱり、あかりちゃんが魔法少女だからなのかな?」

あかり「う~ん… そうなのかなぁ?」

しばらくすると、窓の外から白い生物があかりの部屋を覗き込んでいた。
白い生物は警戒するような態勢で窓の外からあかりとちなつを見ているようだった。
部屋にいたあかりは窓の外にQBがいることに気が付き窓を開けQBを部屋に招き入れた。

QB「こんなことがありえるのか…? しかし、これは…」

あかり「キュゥべえ… やっぱりキュゥべえなんだよね? 夢と一緒だよぉ…」

ちなつ「ほ、ほんとに魔法の精霊なんだね…」

QB「…………」

QBはあかりの部屋に入ってから、ずっとちなつを見続けて何かを考えているようだった。

ちなつ「あっ、あかりちゃん。ほら、あかりちゃんが何で魔法少女に変身できたか聞いてみないと」

あかり「そ、そうだね。ねぇ、キュゥべえ、どうしてあかりが魔法少女になっているのかなぁ?」

QB「…………」

あかり「キュゥべえ?」

QB「…ああ、すまないね。ええと、君たちは一体何者なのかな? 君はあかりといったね、そっちの君は何ていうのかな?」

ちなつ「私は吉川ちなつだけど」

QB「ちなつだね、僕はキュゥべえ、突然だけど君にお願いしたいことがあるんだけど聞いてくれないかな?」

ちなつ「お願い?」

QB「そうだよ、お願いというのは、僕と契約して魔法少女になって欲しいんだ」

ちなつ「!?」

あかり「ちょ、ちょっとぉ! なんであかりをスルーするのぉ!?」

QB「………ああ、すまなかったね。でも少し待ってくれないかな、今はちなつと話をしたくてね」

あかり「えぇっ!?」ガーン

ちなつ(魔法の精霊にまで… あかりちゃん… 不憫な子…)

ちなつ「あのさ、あかりちゃんの話を聞いてあげてくれないかな? その後であなたの話を詳しく聞くからさ」

QB「…わかったよ」

QB「それで、あかりだったかな? 君は一体何者なんだい? 僕は君と契約した記憶はないんだけど、何故君は魔法少女になっているのかな?」

あかり「えっ?」

QB「どうしたんだい?」

あかり「…キュゥべえにもわからないの? あかりが何で魔法少女になっているのか」

QB「そうだね、何故君が魔法少女なのかは僕にはわからないよ。魔法少女になるには僕と契約しなければならないのだけど、僕は君と契約した記憶が無いんだ」

QB「…因みに君は僕と契約した記憶や、魔法少女について知っていることは無いのかな?」

あかり「…契約してないよっ! だって… 違うもん…」

QB「………なら僕がわかることは何も無いね、これ以上話してもしょうがないと思うよ」

あかり「そんなぁ………」

ちなつ(あらら… まさか、魔法の精霊に契約したことを忘れられちゃったなんてことはないよね…)

あかりが落ち込みながらなんでだろ?なんでだろ?と考え込む中、QBはちなつに再び『お願い』を始めた。

QB「さて、それじゃあちなつ。お願いだよ、僕と契約してくれないかな?」

ちなつ「ま、まってよ! 契約って言っても何をすればいいのよ?」

QB「そうだったね、まずは説明をしようか」

QB「僕は僕と契約して魔法少女になってくれる子を探しているんだ。それで契約というのはね、魔法少女になってもらう変わりにどんな願いでもなんでも叶えてあげることができるんだよ」

ちなつ「な、なんでも!?」グィッ

あかり(!? お、同じだよぉ…)

QB「そうだよ、だけどその代わりに魔女と戦ってもらうことになるんだよ。それが魔法少女としての契約さ」

ちなつ「なんでも… なんでもっていうことは…」ブツブツ

あかり(これも… 魔女さんと戦わなきゃいけないのも同じ…)

QB「魔女というのも呪いから産まれた存在で、人間に害を及ぼす存在なんだけど、君が魔法少女になりさえすればほとんどの魔女は君に敵うことはないよ」

ちなつ「待つのよチーナ… いくらなんでも願い事で結衣先輩が振り向いてくれるなんてそんな事はありえないわ… でも、魔法なんだからもしかしたら…」ブツブツ

あかり(あれ? ちなつちゃんが…? こんなこと言ってなかったよね?)

QB「そして、契約と引き換えに君にはソウルジェムという石を手にすることになるよ。そのソウルジェムを使って魔女との戦いを行っていくことになるのさ」

ちなつ「もし願いが叶ったら… 結衣先輩にあんなことやこんなことまで…」グフフ

QB「聞いているのかな? …まあ、いいや。説明は済んだけど、魔法少女になってくれるのかな?」

あかり(ほとんど一緒… あかりの夢で見たのと一緒だよぉ… それだと魔女さんは…)

ちなつ「ハッ!? いけない、いけない… えーっと、あなたと契約すれば結衣先輩と両思いになってあんなことやこんなことができるのよねっ!?」

QB「君が何を言っているのかわからないけれど、君が何かを願うのならどんな願いでも叶うと思うよ。君にはものすごい資質が備わっているんだ」

ちなつ「なるわっ! 私、魔法少女になるっ!」

QB「本当かい? それなら君の願いを…」

しばらく考え込んでいたあかりはちなつが魔法少女になると宣言したときに驚き止めに入った。

あかり「ち、ちなつちゃん!? だめだよぉ! 魔法少女になったらこわいお化けさんをやっつけなきゃいけなくなるんだよ!?」

ちなつ「へ? そうなの?」

あかり「そうだよぉ! ねぇ、キュゥべえ。魔女さんってすごいこわいお化けさんだよね?」

QB「…魔女は君の言っている幽霊などには分類されないね」

あかり「あれぇ…? で、でも、すごいこわいんだよ?」

QB「…さっきも言ったけど魔女といってもちなつが魔法少女になればほとんどの魔女がちなつに敵うことは無いよ。ちなつはね僕が今まで見たこともないくらいのものすごい資質を持っているんだ」

QB「その資質はね、一国の女王や救世主と呼ばれる存在を遥かに凌ぐほどの資質なんだ、まさに選ばれた存在としか思えないくらいのね」

あかり「えぇ~~!?」

ちなつ「ちょっとぉ~、私ってそんなにすごいの?」テレテレ

QB「そうだよ、君はこの世界でも一番といえるくらいの資質を持っているね」

ちなつ「あかりちゃん! 聞いた? 私、世界で一番だって!」

あかり「う、うん」

QB「話がそれたね、魔女はあかりが言うように君たちが見れば怖いといえる姿をしているかもしれないけど、ちなつの力なら姿が見えない様な距離から倒すことも可能だと思うよ、魔法少女になりさえすればちなつの好きなように戦い方を作り出せばいいんだからね」

ちなつ「もぅ! こんなに褒められると困っちゃうよ!」

QB「だから、戦いを怖がる必要はないと思うよ」

ちなつ「そうねっ! あかりちゃん、私決めたよ! 魔法少女になるよ!」

あかり「うぅ~… 大丈夫かなぁ…」

ちなつ「大丈夫だよ、それにあかりちゃんも魔法少女なんだから、あかりちゃんを助けてあげるよ! あかりちゃんは戦いなんて出来ないでしょ?」

あかり「あっ! そ、そうだったよぉ… あかりも魔法少女だったんだよね…」

ちなつ「それじゃあ、決定! もう願い事を言ってもいいの?」

QB「いいよ、君の祈りを言ってごらん」

ちなつは少し息を吸い込んで、QBに言い放った。

ちなつ「私の願いは結衣先輩が私の事を好きになってくれること!! いつも私が結衣先輩のことを考えているように結衣先輩も私の事をいつも考えてくれて私の事を見てくれて私の事を愛してくれるようにしてほしいのっ! 私が困っていたら結衣先輩がどこからともなく現れて私を助けてくれたり、私が悲しんでいたら結衣先輩が優しく私の事をなぐさめてくれて、私が嬉しいときは結衣先輩も隣で微笑んでくれるようにしてほしいわっ! それに朝起きたらおはようのキスを、毎日一緒にご飯を食べて、お風呂に入るときも一緒に… そして寝るときは一緒の布団で… って、キャーー何を言わすのよ!!」

あかり「ちょ!? ち、ちなつちゃん!?」

QB「願い事はひとつなんだけど…」

ちなつ「もぅ! だから今言ったように結衣先輩が私の事を愛してくれるようにしてほしいの!」

あかり「ま、待っ…」

QB「………わかったよ、契約は成立だ。君の祈りはエントロピーを凌駕した」

次の瞬間、ちなつの全身から水色の光が漏れ出し部屋全体を照らした。
目を開けていられないくらいの光が漏れ続け、数分後ようやく光は収まりちなつの手には水色のソウルジェムが乗っていた。

QB「おめでとう、これで君は魔法少女だ。君の願いも正しく叶ったことだろう」

ちなつ「ほんとにっ!? ということは、結衣先輩が…」グフフフフ

あかり「うぅ~~、目が痛いよぉ~~」

ちなつ「あっ、あかりちゃん、大丈夫?」

あかり「光を直視しちゃって目がチカチカするよぉ~~」

ちなつ「あはは、あかりちゃんドジなんだから~」

ちなつ「それよりもあかりちゃん! これからどうしたらいいと思う!? 結衣先輩に連絡をしてみようかしら? それとも結衣先輩の家にいったほうがいいのかしら?」

あかり「えっと… ちなつちゃん、あの願い事はどうかと思うよ………」

ちなつ「えっ… で、でも結衣先輩が私の事を好きになってくれるチャンスだったんだし…」

あかり「ちなつちゃんが結衣ちゃんのことを好きなのは知ってるけど、さすがに願い事で振り向かせるのは違うんじゃないかなって…」

ちなつ「うぅっ… そうだよね、私卑怯なことしちゃったよね…」ズーン

ちなつ「少しでも結衣先輩が私に気を向けてくれたらなって思ったんだけど… そうだよね、こんなの結衣先輩の気持ちを無視しちゃうようなやり方だよね…」ズーン

あかり「あぁっ!? ご、ごめんね、そこまで言うつもりは無かったの!」アタフタ

ちなつが暗い顔をしながら落ち込み始めて、あかりがあたふたとフォローを入れようとしているとちなつのスマホが震えた。
ちなつはのそのそとスマホを確認すると、液晶に映った名前を見てすごいスピードで通話ボタンを押した。
あかりは少しちなつの様子を見ていると、ちなつは途中で固まり、呆然とした顔で会話を続けていた。
しばらくすると通話が終わり、ちなつはあかりのほうを振り向き真っ赤な顔で話し始めた。

あかり「ちなつちゃん?」

ちなつ「結衣先輩が… 私の事を愛してるって… 結婚を前提に付き合ってほしいって…」

あかり「えぇぇぇぇ!? け、結婚って!?」

ちなつ「あ、あかりちゃん… どうしよう、本当に願い事が叶っちゃった…」

あかり「ど、どうしようもなにも…」

ちなつ「今日もこれから家に来てほしいって… 想いを自分の口からもう一度言いたいって…」

あかり「あわわわわ」

ちなつ「あ、あかりちゃん。わ、私どうすればいいの?」

あかり「ど、どうしよう?」

暫くあかりとちなつは真っ赤な顔をしながらどうしよう、どうしようと言い続けた。
話し合った結果、ちなつは結衣の家に行くといいあかりの家を出て、あかりはちなつを見送った。






ちなつは魔法少女となり、願いは叶ってしまった。

3話終わり。

4話


夜 あかりの部屋


あかり(ちなつちゃんが結衣ちゃんの家に行った後、キュゥべえと少し話をして結衣ちゃんと京子ちゃんのことを話したらキュゥべえはどこかにいっちゃった)

あかり(あかりが魔法少女になっていたことはうやむやになっちゃったなぁ)

あかり(そ、それよりも、結衣ちゃんがちなつちゃんのことを好きになっちゃった… いくら願い事で好きになっちゃったっていっても、今までのちなつちゃんの気持ちが伝わったっていうことだもんね、おめでとうって言ってあげた方が良かったかな?)

あかり(…今頃何をしてるのかなぁ? デ、デートでもしちゃってるのかなぁ!? 明日ちなつちゃんにお話を聞いてみないとっ!)

あかりが結衣とちなつのことを考えていると、スマホが振るえあかりは画面を見る。

あかり「あ、京子ちゃんだ」

あかり『もしもし、京子ちゃん?』

京子『よぉ、あかり! さっきは悪かったなー! 今一人?』

あかり『大丈夫だよぉ。うん、一人だよ』

京子『聞いてくれよー、結衣の奴、私をいきなり部屋から追い出してさ、何度も呼び出し押したり電話したのにずっと無視しやがってさー』

あかり『あー、そうなんだ…』

あかり(たぶんちなつちゃんを呼んだときかな?)

京子『でさー、しかたなく家に帰ったらさ、むふふふふ…』

あかり『何かあったの?』

京子『秘密ー!』

あかり『えぇ!?』

京子『明日教えてやるよ! みんなの前で見せたいものがあるからね! 朝早めにあかりん家にいくからさ!』

あかり『なんだろぉ? 何かおもしろいもの見つけたの?』

京子『見てのお楽しみだよ! それだけ言いたかったんだ、そんじゃーねー!』プチッ

あかり『あっ、京子ちゃん? 切れてる…』ツーツー

あかり「見せたいものってなんだろう? それも明日になればわかるよね」

あかりは怒涛の一日を乗り越え、布団に潜り込んだ。
このときには朝見た悪夢のことはあかりの中で大分薄れて、自分が魔法少女になっていることも不思議なことがあるんだなと割り切っていた。
その夜、あかりの夢は夏休みにキャンプに行ったときの夢だった、あかりも皆も楽しく笑っている夢をあかりは見て、翌日には完全に悪夢を忘れあかりは立ち直っていた。

翌日


京子「おーっす!」

あかり「おはよう、京子ちゃん。あれ? 結衣ちゃんは?」

京子「それがさー、あいつ電話に出ないんだよ。昨日からずーっと電話してんのにさ」

あかり「そうなんだ、どうしたんだろ?」

京子「風邪でもひいたかな? まだ時間もあるし結衣ん家にいってみる?」

あかり「そうだね、昨日はあかりがあんなにお世話になっちゃったから、結衣ちゃんが風邪をひいてたらあかりが看病しなきゃ!」

京子「あかりは真面目だなー、んじゃ、結衣ん家にレッツゴー!」

そのまま二人は結衣の家に行く為に歩き始めた。

あかり「そういえば、昨日見せたいものがあるって言ってたよね?」

京子「むふふふふー、まだ秘密だよ! 結衣とちなつちゃんがいる前で見せようと思ってるからね!」

あかり「気になるよぉ~、あっ、その鞄何か入ってるみたいだけどそれかな?」

京子「ふっふっふ、お楽しみさ!」

京子は終始にやにやしながらあかりの質問をはぐらかし続けた。
全員がそろったら見せると言い、あかりはそれに納得した。
そして、二人は結衣の家に着き、チャイムを鳴らし結衣が出てくるのを待った。

京子「おーい、結衣ー、もうそろそろ起きないと遅刻しちゃうぞー」ピポピポピポピポ

あかり「き、京子ちゃん、近所迷惑じゃ…」

京子「あれー? なんで出てこないんだ?」ピピピピピピピピピピピンポーン

しばらく京子がチャイムを鳴らし続けていると、インターホンから結衣の声が聞こえてきた。

結衣『………何?』

京子「お、やっと起きたか! 遅刻するぞー! 早く準備しろー!」

結衣『今日は調子が悪いから休む』ガチャッ

京子「…………」

あかり「あ、あれぇ?」

京子「開けろーーー!!」ピポピポピポピポピポ

結衣『うるさい、休むって言ってるだろ』

京子「全然調子悪そうな声して無いじゃん! ずる休みでもする気か!? 見せたいものがあるから学校にいこーぜ!!」

結衣『黙れ』ガチャ

京子「えっ?」

あかり「えっ?」

その後、何度かチャイムを鳴らすも完全に無視をされ、二人は暫く待っていたが結衣が出てくる気配すらなく遅刻寸前になったところで待つのは諦め学校へ向かい始めた。

京子「なんだよ… あんなに冷たい声で言わなくてもいいじゃんかよ…」

あかり「どうしちゃったんだろう… やっぱり風邪をひいちゃったのかなぁ?」

京子「そうかも、帰りに何か買って持って行ってあげよっか…」

あかり「うん、それがいいよね! あっ、昨日のお礼もこめてあかりが買っていくよぉ! 果物とかでいいよね?」

京子「そだね。んじゃ、お願いするよ」

京子「キュゥべえのお披露目会もそれまで我慢するかー、せっかく朝一で驚かせようと思ったのになー」ブツブツ

あかり「? どうかしたの、京子ちゃん?」

京子「いんや、なんでもないよー」

二人は学校に着き、それぞれの教室に向かった。

あかり「おはよぉー」

櫻子「あ! あかりちゃん、おはよーー!! 何、何? 昨日休んじゃってどっか旅行でもいってたの!?」

向日葵「おはようございます赤座さん。昨日はどうされたんですの?」

あかり「あはは、えっと、ちょっと風邪をひいちゃって」

櫻子「えー? そんな事言っちゃって、実は夏休みが終わって学校に行きたくないー! って家から出られなくなって休んだんじゃないの?」

向日葵「あなたじゃあるまいし… 赤座さんがそんな事するわけないでしょう?」

櫻子「あんだとー!? 私がいつそんな事をした!? 言ってみろこのおっぱい!!」

向日葵「例えですわ、あなたなら来年そういって休んでもおかしくないですわね」

櫻子「なにぃ~~~!?」グヌヌヌヌ

あかり「あはは、二人とも元気だねぇ… あれ? ちなつちゃんはまだ来てないの?」

向日葵「あら? 昨日もお休みでしたし、今日もお休みかと思ってましたわ」

あかり「あれぇ? どうしちゃったんだろ、ちなつちゃん…」

櫻子「ちなつちゃんはまだ夏休みだと思ってるんじゃない? 教えてあげないとずっと学校に来ないかもしれないよ?」

向日葵「だからあなたと一緒にするのは赤座さんや吉川さんに失礼ですわ…」

櫻子「んだとーー!?」

あかり「あはは…」

あかり(でも、どうしちゃったんだろ? あの後、結衣ちゃんの家に行って… あっ、結衣ちゃんも調子悪そうだったしちなつちゃんも風邪ひいちゃったのかな? それならちなつちゃんのお見舞いも行かないといけないよね)

そして、ちなつが来ないまま授業が始まり、あっという間に放課後になった。

帰り道


京子「しかし、ちなつちゃんも休んでるって風邪がはやってるのかな?」

あかり「そうだねぇ、昨日二人は一緒にいたみたいだし、風邪をひいちゃったのかもしれないね」

京子「ん? どういうこと?」

あかり「あっ!」

あかり(流石に願い事は秘密にしておいたほうがいいよね)

あかり「え、え~っと、あの後ちなつちゃんは結衣ちゃんの家に行ったみたいなんだよ」

京子「えー? 結衣のやつ、私に黙ってちなつちゃんと会うなんて… 羨ましい!」

あかり「だから、その時に二人とも風邪をどこかでもらっちゃったのかな~って」

京子「ふーん、そういうことね」

京子「二人とも連絡しても返事が出来ないみたいだし、インフルエンザとかかな? 朝の結衣もすごく変な感じだったし心配だな…」

あかり「そうだねぇ。あ、そろそろちなつちゃんの家だね」

二人は連絡が付かないちなつの家にお見舞いの為にやってきたが、いつもと少し様子が違うことに気付いた。

京子「あれ? 何かあったのかな?」

あかり「なんだろう? あっ、あれってちなつちゃんのお姉ちゃんかな?」

ちなつの家ではあわただしく大人が駆け回っており、そんな中あかりはともこの姿を見つけ、ともこもあかり達に気付き走ってきた。

ともこ「あの、あなた達ちなつのお友達よね? ちなつは今どこにいるのか分からないかしら?」

あかり「えっ? ちなつちゃんがどうしたんですか?」

京子「?」

ともこ「ちなつが昨日から帰ってきていないのよ… 連絡も通じなくて、どこにいるか見当もつかないの…」

あかり「えっ?」

京子「え…」

ともこ「朝から心当たりがある場所は全て探したんだけどどこにもいなくて…」

あかり「帰ってないって… 昨日ちなつちゃんは結衣ちゃんの家に行くって…」

ともこ「結衣さん? ちなつが良く話してる子の事? その子の家にちなつは行ったの!?」

あかり「は、はい。昨日、わたしの看病をしてくれてたんですけど、帰る時に結衣ちゃんの家に行くって帰ったんです」

ともこ「わかったわ、どうもありがとう。ところでその結衣さんは今どこにいるのかしら?」

あかり「えっと、結衣ちゃんは今日風邪で学校を休んでいて、今からお見舞いに行こうと思っていたんです」

ともこ「そうなのね…」

ともこ「あの… 私も一緒に結衣さんの家に行ってもいいかしら? もしかしたらちなつがどこにいるか知ってるかもしれないし、直接聞きたいのよ」

あかり「は、はい、わたし達は大丈夫です。ね、京子ちゃん」

あかりは先ほどから何かしている京子に向かってたずねた。
京子は結衣に連絡を取ろうとしていたみたいだったが、何度かけても電話が通じず諦めてあかりに向き直った。

京子「結衣のやつ電話に出ない… わかりました、一緒に行きましょう。結衣の家はこっちです!」

そのまま3人は結衣の家まで急ぎ、結衣の家に到着するとチャイムを鳴らし結衣が出てくるのを待った。
しかし、一向に反応が無く京子が実力行使に出始めた。

京子「おい! 結衣! いるんだろ!! 開けろって!!」ドンドンドン

京子「ちなつちゃんが大変なんだよ! おい! ゆ…」ドンドン

京子がちなつという言葉を口にした途端、ドアが半開きとなり中から手が出てきて京子の首がつかまれた。
京子はそのまま扉の隙間に引っ張られ引っかかったかと思うと、扉の隙間から見えた結衣の目を見て硬直した。
結衣の目は憎しみを通り越して完全な殺意を宿した目で京子を睨みつけていた。

結衣「ちなつちゃんの名前を口にしていいのは私だけだ、次に軽々しくちなつちゃんの名前を呼んだら殺すぞ」

京子「え… えぁ… ゆ、ゆぃ…?」

結衣は京子にそう言い放つと掴んでいた首を放し、京子の身体を腕だけの力で吹き飛ばした。
京子はそのままたたらを踏み、あかりとともこに受け止められ呆然としたあと震え始めた。

あかり「京子ちゃん!? だ、大丈夫!?」

ともこ「い、今の何?」

京子「…な、何? 結衣…? どうしちゃったの? あ、あんな目で私を………」

あかり「い、今の結衣ちゃんだよね?」

ともこ「………あの、ここを開けてもらえるかしら! 私はちな…」モガッ

ともこが再び結衣の部屋に向かって話しはじめ、ちなつという単語がでる直前で京子によって口をふさがれる。

あかり「京子ちゃん!? 何を!?」

京子「ま、まってください」ハァーッハァーッ

ともこ「」モガモガ

京子はそのままともこを結衣の部屋から遠ざけて廊下の端に辿り着いたところで口を塞いでいた手を放した。

ともこ「な、なにをするの!?」プハッ

京子「だ、駄目です。ちなつちゃんの名前を呼ぶのは駄目です」

ともこ「?」

京子「とんでもないことになるような気がして… あんな結衣、絶対におかしいよ…」

あかり「京子ちゃん…?」

京子は見たこともない結衣の目を思い出し身震いする。
そして、結衣が京子に言った殺すという言葉。冗談でもなんでもなく、次に誰かがちなつの名前を呼んだら結衣は本当に呼んだ人を殺すんじゃないかと思わせるくらいの目をしていた。

京子は必死にともこを説得し、ちなつの情報を必ず聞き出すと約束してともこを結衣の部屋に近づかせないようにした。
そして、ともこは再びちなつを探すと言い二人と別れ、京子とあかりは結衣の家の近くにある公園に来ていた。

京子「…………」

あかり「あ、あの、さっきは一体何があったの?」

京子「わかんない… だけど結衣が変だった…」

あかり「変?」

京子「私に向かって殺すって… 冗談でもない、凄く怖い目をしてた…」

あかり「き、聞き間違いじゃ…」

京子「聞き間違えるわけ無いよ… 一体何があったんだよ… 結衣ぃ…」

京子がベンチで項垂れていると、京子の隣に座っていたあかりがすすり泣く声が聞こえてきて京子はあかりの方を見る。

あかり「何かおかしいよぉ… 結衣ちゃんがそんな事言うのもそうだし、ちなつちゃんも家に帰ってないなんて… 一体なんなのぉ…」ヒックヒック

京子「あかり…」

あかり「京子ちゃん… あかり怖いよ… 不安だよぉ…」クスン

京子(…あかり、昨日もあんなに泣いてたんだし、情緒不安定になってるのかもしれない)

京子(私までこんな状態じゃ、あかりがどんどん不安になっていっちゃうな…)

京子「………あかり、大丈夫だって! 結衣はなんか機嫌が悪かっただけだし、ちなつちゃんももう家に帰ってる頃だよ! どこか寄り道してたんだと思うよ!」

京子「私達までこんなに気を落としてたら明日二人に会ったときにからかわれてしまうって!」

あかり「………からかうのはいつも京子ちゃんだよぉ」

京子「うっ、なかなか痛いところ突きますなぁ… まあ、こんなに心配しなくても大丈夫だって! 明日には二人とも元気に学校に来てるって!」

あかり「うん…」

その後、京子はあかりを慰めながら家まで送っていき、明日は二人も連れて学校に行こうと約束し別れた。
あかりと京子は不安を隠しながら明日は皆そろって学校に行けると信じ眠りに落ちた。



あかりと京子が眠りに落ちた頃、暗闇の部屋で生々しい音が鳴り響いていた。
雲の隙間から月の光が部屋に差し込み、一瞬だけ部屋の中を照らした。
そこには赤く染まった結衣の姿が照らし出されていた。

4話終わり。

5話


翌日 朝 あかりの部屋


あかりは朝一から結衣とちなつに連絡をするが二人とも連絡が通じず、あかりは京子に連絡をとった。

あかり『京子ちゃん… どうしよう… 結衣ちゃんもちなつちゃんも電話が通じないよ…』

京子『…………』

あかり『どうしよう… 京子ちゃん、どうしよう…』

京子『…あかり、今から部室にいける?』

あかり『え? うん… いけるけど…』

京子『思いついたことがあるから部室で話をしよう』

あかり『わ、わかったよぉ…』

京子との電話を切り、あかりは学校に行く準備をしてすぐ家を出た。
部室に着くと既に京子は着いており、あかりと同様暗い顔をして座っていた。

京子「おはよ…」

あかり「うん、おはよう…」

京子「悪いねこんなに早い時間に呼び出しちゃって」

あかり「ううん、それで思いついたことって…?」

京子「うん、ちょっと待って… ………キュゥべえ、来てくれないかな?」

あかり「えっ? 京子ちゃん、今キュゥべえって… キュゥべえの事知ってるの?」

京子「やっぱあかりも知ってるよね。2日前に出会ったんだけど、昨日はあんなことになって話が出来なかったんだ。あかりもキュゥべえと契約して魔法少女になったんでしょ?」

あかり「えっ… う~ん… わかんない…」

京子「? あかりも魔法少女だよね?」

あかり「うん… だけどあかりはキュゥべえと契約なんてしてないんだよ? キュゥべえも契約した記憶は無いって言っていたし」

京子「?? とりあえずそれは置いといて、私が思いついたことってキュゥべえにお願いしてちなつちゃんの居場所を探してもらおうと思ったんだよ」

あかり「キュゥべえを?」

京子「うん。ほら、キュゥべえって魔法のマスコットキャラクターってやつじゃん。魔法の力ならちなつちゃんが今どこにいるかなんてすぐ分かるんじゃないかって思ってね」

あかり「あ、そっか… ちなつちゃんも魔法少女なんだしキュゥべえならどこにいるか知ってるかもしれないよね…」

京子「!? ちょっと待った! あかり、今ちなつちゃんも魔法少女って言った?」

あかり「う、うん。2日前に京子ちゃんと結衣ちゃんが帰った後、キュウべえがやってきてちなつちゃんは契約して魔法少女になったんだよ」

京子「………せっかく結衣とちなつちゃんを驚かせる為に、契約もしないでたのに…」

二人が話していると、二人の死角から声が聞こえ、二人とも視線を向けるとテーブルの上にQBが居た。

QB「呼んだかい? …おや、君はあかりじゃないか。君のおかげで京子と結衣にも会えたし礼を言っておかないといけないね」

あかり「? お礼?」

京子「やー、キュゥべえ。ちょっとお願いがあるんだけどいいかな?」

QB「なんだい? 願い事なら君が魔法少女になればなんでも叶うと思うよ」

京子「魔法少女になるのはまた後でね。今はちなつちゃんがどこに居るのかが知りたくてさ、キュゥべえはちなつちゃんがどこにいるか知らない?」

QB「ちなつかい? ちなつなら結衣と共にいるよ」

京子「へ? そうなの?」

あかり「えっ?」

QB「そうだよ」

京子「はぁ~~~、なんだよもう… あかりの時といい心配して損することばっかりじゃん…」

あかり「………よ、よかったぁ」

京子「でもなんで結衣と一緒に居るなら連絡もしないんだろ? というか結衣のやつちなつちゃんと一緒に居るならそう言えよな…」

あかり「ふ、二人とも病気で家の中で倒れているとかじゃ!?」

京子「…その可能性もあるね。キュゥべえ、二人の様子はどんな感じだった?」

QB「様子かい? そうだね、結衣は病気ではなかったよ。だけど僕には理解できない行為をしたね」

京子「? どういうこと?」

QB「結衣とちなつは一つになったんだよ、結衣が言うにはちなつを愛するが故の行為らしいよ」

京子「はぁ!?」

あかり「愛する行為?」

QB「そうだよ、具体的に言うとだね…」

京子「ちょ、待った! 待った!」

あかり「京子ちゃん? どうしたの?」

QB「?」

京子(一つになるとか、愛する行為って… たぶんアレだよね… っていうかあの二人いつの間にそんな関係に!?)カァァ

京子(あかりは…)チラッ

あかり「?」

京子(やっぱ理解してないよね)

京子(うわぁぁぁ、それだったら昨日の結衣の態度も頷ける。あの時ちなつちゃんとシてたって事だよね… うわぁぁぁぁぁ!?)カァァ

あかり「京子ちゃん? 顔赤いけど、大丈夫?」

京子「だ、大丈夫! 大丈夫だよ!」

あかり「よかったぁ」

あかり「それでキュゥべえ、さっきの話ってどういうことなの?」

京子「だから待ったーー!! あかりは聞かなくても大丈夫だから! キュゥべえももう話さないで大丈夫だからね!」

QB「? わかったよ」

あかり「えぇっ!? なんであかりは聞いちゃ駄目なのぉ!?」

京子「あかりにはまだ早いんだ。その内あかりにも知る日が来るだろう。その日まであかりは知らなくてもいいことなんだ」

あかり「そ、そんなぁ…」

京子「これでよくわかったよ、二人とも大丈夫、連絡つかないのも無理ないよ。たぶん少ししたらまた電話が来ると思うよ」

あかり「そうなの…?」

京子「そうだよ! だからあかりも二人に連絡するのは控えるんだぞ!」

あかり「うん…」

あかり「…やっぱり二人が何をしているのか気になるよぉ、京子ちゃん教えてよ!」

京子「ダメ」

あかり「京子ちゃんのケチ~~」プクー

QB「…………」

その後、あかりは何度も京子に質問したが、のらりくらりと京子は質問を回避し続けて、あかりは聞くのを諦めた。
QBも京子に魔法少女の契約を勧め続けたが、京子は全員そろってから魔法少女になると言い、QBもその言葉を聞き引き下がった。

そして、2日が経過した。

2日後 放課後 ごらく部


京子「流石にこれ以上は見過ごせない」

あかり「もう4日もだもんね…」

京子「私が二人の家族を誤魔化すのにどれだけ苦労したか… 誤魔化すのももう無理だし、何より私達に連絡もせず部屋に引きこもってるのは許せん!」

京子「というわけで、結衣の家に行くぞ! 二人を引っ張り出してやる!」

あかり「合鍵も結衣ちゃんもお母さんに預かったもんね」

二人は部室を出て、結衣の家に向かって歩き始める。

京子(ったく、何日も何やってんだよ…)

京子(結衣とちなつちゃんがそんな関係になってるって冷静に考えたら、なんか胸の奥のほうがモヤモヤするし、イライラしっぱなしだ)

京子(絶対に結衣に文句を言ってやる! そうだよ、結衣は昔から私の事を守ってくれてたんだし、これからも私を守ってくれないと駄目なんだから)

京子(たとえちなつちゃんでも結衣を独り占めするなんて許さないんだからな。そこんところはっきり言ってやらないと)

京子は考え事をしながら、あかりとの会話を適当に流し結衣の家まで辿り着いた。
京子は合鍵を使って扉を開けようとしたが、あかりを見て少し思いとどまった。

京子(勢いに任せてあかりも連れて来ちゃったけど、このまま入ってもし二人が… し、してたらまずいよね…)カァァ

あかり「京子ちゃん? どうしたの?」

京子「あかり、お前はここで待機だ!」

あかり「えぇっ!? な、なんでぇ!?」

京子「なんででもだ、私が先に入って二人の様子を見てくる、それまではここで待機してるんだ」

あかり「んもぉ~~、この間からあかりの扱い酷くない!?」

京子「なんとでも言え! 何を言われようが私はあかりを連れて行くことはないと宣言しておこう!」

あかり「そんな事宣言しないでよぉ~~」


あかりはしぶしぶ京子の言うことを聞き、その場で待つことにした。
それを見てほっとした京子は、扉に向き直り合鍵を使って結衣の部屋の扉を開ける。
トビラはギィィと軋むような音を上げ開き、薄暗い室内を夕暮れの光が差し込み内部を照らす。
京子は良く知った結衣の部屋から纏わりつくような寒気に襲われ一瞬戸惑うが、頭を振り部屋の中に足を踏み入れた。
部屋の扉を閉める直前に、あかりに念を押すように目配せし、そのまま扉を閉めた。

5話終わり。

6話


結衣の部屋


京子は結衣の部屋に入り、一旦奥の様子を伺った。
するとリビングのほうから声がするのに京子は気がついた。

京子(結衣の声… すごいボソボソと何か言ってる…)

京子(こりゃ、ほんとにちなつちゃんと… うぅぅぅぅ、もーー! なんかムカムカする!!)

京子(いかん、いかん… とりあえず二人に気付かれないように様子を…)

京子は物音を立てないように薄暗い部屋を進み、リビングのドアを少し空けて中を覗く、するとすぐ結衣の姿を見つけることが出来た。
京子が目にしたのは、後姿しか見えなかったが四つんばいで一心不乱に何かをしながら呟き続ける結衣の姿だった。

京子(? 何をやってるんだろ?)

結衣が何をしているか良く確認する為に京子はさらにドアを開いた。
すると部屋から異様な生臭さが漂ってきて京子は顔をしかめる。

京子(な、何? この匂い…)

京子(結衣のやつほんとに何を………)

その時、京子の耳にようやく結衣の声が聞き取れた。

結衣「ちなつちゃん、本当に綺麗だ… ずっとこうして眺めていたい位だよ」

結衣「だけど駄目だよね。ちなつちゃんがせっかく残してくれた身体なんだ、ちなつちゃんと一つになれたんだから、残してくれた身体とも一つにならないといけないよね」

結衣「あぁ… 本当にもったいない、もうこれだけしか残っていないなんて… ゆっくりと食べていたのにあっという間になくなっちゃう」

京子(??? 結衣…?)

結衣「食べきる前にもう一度見ておかないとな」

京子「ッッッーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」

結衣が体勢を変え、座りなおし四つんばいの状態からずっと持っていた何かを持ち上げ目線の位置まで持ってきた。
その位置まで持ってきたことにより、京子の視界にも結衣が持っていたものが入った。

京子も良く知っているピンクの髪。
よく京子をジト目で見ていた目は見開かれたままで、京子はその見開かれた目と視線が合った。


それはちなつの生首だった。


京子はその光景を見て自分でも気がつかないうちに座り込んでいた、腰を抜かして立てなくなってしまっているようだった。
半開きだったドアも離して廊下で座り込み、自分の見ている光景はいったい何なのかと、結衣は何をしているのかと、結衣のもっているソレはいったい何なのかと、様々な何故が止め処なく浮かんでくる。
京子が混乱の境地に達していると、物音に反応した結衣が首だけを動かし京子のほうを向いた。

京子「ゆ、ゆ、ゆ、ゆ、ゆ…」

結衣「お前か、邪魔をするな、さっさと消えろ」

京子「ひっ」

結衣の京子を見る目は何の感情もこもってなく京子に言い捨てた後、ちなつの首を見る結衣の顔は恍惚とした表情で頬を赤らめていた。

そのまま結衣はちなつの頬に口を近づけたかと思うとそのまま噛み付き肉を喰らい咀嚼し始めた。

京子はそこまでが限界だった。
結衣が恍惚とした顔で、ちなつを食べていく様子をまじまじと見てしまった京子は白目をむきその場に倒れた。
結衣は京子を気にすることもなく、ちなつを食べ続けた。

結衣の家の前


あかり「もう夜になっちゃったよぉ…」

あかり「京子ちゃんが家に入ってからもう1時間かなぁ?」

あかり「………もしかして、あかり忘れられてる?」

あかり「う~、京子ちゃんにはああ言われたけど、もう待ってられないよぉ」

あかり「結衣ちゃん、おじゃましま~す」ガチャ

あかりは結衣の家に入り、すぐ京子が倒れているのを見つけた。

あかり「京子ちゃん!?」

あかり「京子ちゃん! 大丈夫!?」ユサユサ

京子「んぁ…? あれ? あかり? 私、どうしてたんだっけ…?」

あかり「よかった… 京子ちゃんが倒れてたからびっくりしちゃったよぉ」

京子「倒れて? あれ…? ここって結衣のい………え………?」サァァァァ

京子は気絶する前の記憶が蘇ってきて急激に顔色を悪くし始めた。
あかりはそんな京子を見て不思議な顔をするが、リビングに結衣の後ろ姿を見つけ顔を綻ばせ結衣に話しかけた。

あかり「あっ、結衣ちゃん! もぉ~、あかり心配しちゃったよ? 4日もどうしちゃったの?」

結衣はあかりの問いかけに反応せずに一心不乱に何かをしていた。

あかり「あれ? 結衣ちゃ~ん? …何してるのぉ?」

あかりは結衣が何をしているのか気になり結衣の元に歩き始める。
京子は目を見開きあかりを止めるため、あかりの服を掴もうとするがその手は空を切った。

京子「あ、ああっ、あかっ… まっ…」

あかり「結衣ちゃん? やっぱり調子悪いの? 大丈夫?」

京子の静止の声も空しくあかりは結衣の肩をさわり安否を気遣った。
結衣はあかりが触れても気にせず無我夢中で何かを続けていた。

あかり「何か食べてるの? あっ、もしかして抹茶………………」

あかり「……………ふぇ?」

あかりは結衣が何を食べているか見る為に、肩越しから結衣の顔を覗き込んだ。
そして、あかりの目に飛び込んできたのはちなつの顔を貪り喰っている結衣の顔だった。
結衣は目だけが血走り、息を荒げてちなつを食べ続けている。
あかりは結衣の肩に手をかけたまま全ての動作を止め、結衣がちなつを食べ続ける光景を瞬きもせずに見続けていた。

数分結衣の部屋に咀嚼音だけが鳴り響いていたが、腰が抜けて立ち上がれなかった京子が部屋を這いずってあかりの元に辿り着き、あかりを引っ張り自分の下に引き寄せた。

京子「あかりっ、あかりっ!!」

あかり「…………きょうこちゃん?」

京子「あかり!! しっかりしてっ!!」

あかり「…あ、あははっ、また夢かぁ、ほんとに最近こわい夢ばっかり見ちゃう」

京子「あ…」

あかり「もぅ… なんであかりはこんな夢ばっかり見ちゃうんだろう、いやだなぁ…」

京子「あかりぃ…」

あかりは先ほど見た光景を脳裏に焼き付けてしまった。
そしてあかりの脳が導き出した答えは、先日の悪夢と同じくこれは夢、性質の悪い悪夢と結論付け意識を飛ばした。

京子の腕の中で意識を飛ばしたあかりを見た後、京子は再び結衣がちなつを食べている姿を見てしまった。

結衣「…………」クチャクチャ

京子「うぁ…」

結衣「…………」クチャクチャ

京子「あああぁぁ…」

結衣「…………」クチャクチャ

京子「うああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁああぁぁぁぁ!!!!!」

京子は叫び声を上げ、目の前が真っ白になった。
そして京子はその場から逃げ出した。

それからどうしたのかは京子の記憶から抜け落ちていたが、次に京子が気がついたときには自分の部屋のベットの上で布団に包まり震え続けていた。

京子の部屋


京子「違う、違う、違う、違う」

京子「あんなの現実なわけない、これは夢、夢なんだ」

京子はあかりと同じように悪夢だと結論付けようとするが、先ほどの光景が生々しく京子の脳裏に蘇ってきて、吐き気を催す。
京子はトイレに駆け込み胃の中のものを全て吐き出してえずいた。

京子「うげぇっ、げほっ、げほっ」

京子「うぇっ… 違う、あんなの現実のわけないって… うっ…」

京子「はぁっ、はぁっ… そうだよ、あんなこと起こる分けないって… 結衣がちなつちゃんを… うぇぇぇっ」

しばらく吐き続けていた京子だったが、出るものも無くなりふらふらと自分の部屋に戻り、ベットに身体を投げ出すように倒れこんだ。

京子「誰か、助けて…」

京子「嫌だよ… こんなの嫌だよ… 誰か助けて… お願い…」

京子がベットの上で朦朧とする意識の中、助けてと呟き続けた。
するとその言葉を聞き届けたのか、どこからとも無く声が聞こえてきた。

QB「助けが必要なら、僕が相談に乗るよ?」

京子「あ……… キュゥべえ………」

QB「随分と憔悴しきっているけど何があったのかな?」

京子「結衣が… 結衣がちなつちゃんを… なんで… 違う、あれは夢…」

QB「ああ、結衣とちなつを見たのかい? 僕には理解できなかったけど、人間は愛というものを表現するのに他人を捕食するものなのかな?」

京子「ちがっ! あれは夢…」

QB「夢じゃないよ、現実に結衣はちなつの身体を食べきったんだよ?」

京子「嘘、嘘嘘嘘! そんなの嘘!」

QB「嘘じゃないって、今はちなつの血が染み付いた布を舐め続けているよ?」

京子「うぁぁ… なにそれ… なんでそんな事を…」

QB「結衣がなぜそんな事をしたのかという回答は出来ないけど予想は出来るよ?」

京子「…どういうこと?」

QB「そうだね、恐らく結衣はちなつの願いによって精神を歪められてしまったと推測できるね」

京子「ちなつちゃんの…?」

QB「そうだよ、ちなつの願いは『結衣がちなつのことを愛する』というものだったのだけど、ちなつのとてつもない才能による願いのおかげで、結衣はちなつの事しか考えられない状態になってしまったと推測できるね」

京子「なに… それ…」

QB「実際僕が結衣と話そうとしても彼女は耳を貸してはくれなかったし、一緒にいたちなつが口を利いてくれたおかげで何とか結衣と話をして魔法少女になってもらうことが出来たんだ」

京子「は? 結衣も魔法少女…?」

QB「そうだよ、僕が契約の話をして願い事を聞いたら、結衣は何のためらいも無く『ちなつと一つになりたいと』言って、正しくその願いは叶って結衣とちなつの魂は一つになったよ」

京子「わかんない… 何を言ってるの? 一つになるとか、魂とか…」

QB「言葉の通りさ、前例は無かったけど実際に願いは叶った。これには僕達にも驚いたさ、なんせ人間の魂が混ざり合うなんて通常はありえないことだからね」

QB「おっと話がそれたね、ええと結衣とちなつの魂が一つになって、結衣は抜け殻となったちなつの身体を見続けたんだ、その時に色々と説明はしてあげたけど結衣が聴いていたかは分からないし、本能で理解をしていたのかもしれないけど結衣は目の前にあるちなつの身体は抜け殻だと理解したよ」

京子「わかんない… わかんない… 抜け殻とか、なにそれ…」

QB「言葉の通りだよ、魂が無い身体は抜け殻じゃないか。そのちなつの抜け殻を結衣は何を思ったのか食べ始めたんだ。ずっとちなつのことを愛しているとかちなつは自分のものとかちなつの残したものは誰にも渡さないとか言い続けていたよ。まったく人間の感情は理解できないね」

京子「もう… やめて…」

QB「わかったよ」

京子「うぅ……… なんで、なんでそんなことを…」

QB「それはちなつの願い事のことかな? それとも結衣の行動のことかな?」

京子「うぅぅぅぅ…」

QB「どちらにせよ、君はどうするんだい? 君の才能ならばどんな願い事もかなえることは可能なんだよ?」

京子「…………」

QB「その為に助けを呼んだんじゃないのかい?」

京子「願い事…」

QB「そうだよ、君は何を望むのかな?」

京子「…………」

京子はうまく働かない頭で結衣のことを思い浮かべていた。
幼い頃から見てきた結衣、困った顔もしていた、嫌そうな顔もされたこともある、だけどいつも最後は笑顔だった。
いつも見てきた結衣はあんな狂いきった顔をしてはいなかった。
そしてただ一言ぽつりと呟いた。
それは京子が無意識に呟いた言葉だった、だがそれは京子が望んでいることでもあった。


京子「あんな結衣見たくない… 元の結衣に戻ってほしい…」


その言葉でQBとの契約は成立してしまった。

京子の願いは叶う。

ちなつの願いによって変わってしまった結衣は京子の願いによって元の結衣に戻る。

友達思いで少し恥ずかしがりやな心の優しい少女に、

戻った。

6話終わり。

7話


結衣の部屋


結衣「あれ?」

結衣はどす黒いシーツから顔を離し辺りを見渡す。
するとすぐ隣にあかりが倒れているのを見つけ、慌ててあかりを抱き起こした。

結衣「ちょ、あかり!?」

あかり「うぅ…ん…… あ… ゆ…いちゃん………」

結衣「大丈夫!? 何かあったの!?」

あかり「あぁ……… よかった、やっぱり夢だったんだぁ…」

結衣「え?」

あかり「あかりね、またすごくこわい夢を見ちゃって…」

結衣「夢って… おいおい、いつの間に私の家に来て寝てたんだよ」

あかり「………結衣ちゃんの家?」

結衣「そうだよ? そういえばさっき京子がいたよね? 京子と一緒に来たの?」

あかり「京子ちゃん? 京子ちゃんはあかりと一緒に結衣ちゃんの家に来て… それで…」

結衣「やっぱりあいつと一緒に来たのか、どうやって私の家に… もしかしてあいつ私の知らない間に合鍵でも作ったのか? 本当にしょうがないやつだな…」

結衣「はぁ… それはまたあいつに問い詰めないとな。って、外真っ暗だね、あかりは京子と一緒に泊まりに来たの?」

あかり「あれ…? 違うの… あれは夢なのに… あれ? 結衣ちゃんの家に来たのは…」

あかりは混乱しながら結衣に言った。

破滅への一言を。




あかり「ちなつちゃんを探しに」


あかりの口から出た言葉は結衣の耳を通り、脳の記憶を司る部分に到達し結衣の頭の中で記憶が蘇る。

ちなつの姿。

ちなつとの思い出。

そして、この数日間の記憶。

自分が一体何をしたのかということを。

ちなつに何をしてしまったということを。

結衣「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ」

あかり「結衣ちゃん…?」

結衣「うぁぁあああ… あぁぁああぁぁあああ………」

鮮明に浮かび上がる記憶。

ちなつを呼び出した後、自分の部屋に来たちなつを見た瞬間にちなつの全てを自分のものにしたいという感情に突き動かされ、ちなつの身体を貪った。
ちなつを抱き、ちなつの身体を味わい、何度も何度も絶頂に達し、達するたびにちなつをさらに自分のものにしたいという気持ちが湧き出て、ある思いが結衣の中で芽生えたときに白い生物が結衣たちの前に現れた。

どんな願いも叶える事が出来る。
その言葉に結衣は、芽生えた思いを吐き出した。
ちなつと一つになりたいという願い、愛しいちなつを本当の意味で自分のものにしたいという思い。
そしてその願いは、ちなつのソウルジェムと結衣のソウルジェムが一つになるという形で叶った。

その時、結衣はちなつと一つになれたと理解した。
結衣は歓喜する、ちなつと自分は一つになり愛しいちなつを永遠に自分のものに出来たと。

だが、結衣の目の前にちなつの身体だけが残されていた。
結衣は残された身体を見て狂喜する。
この身体も自分のものに出来る、今度は願いなんかではなく自分の手でちなつと一つになれるのだと。

狂った思いを現実に、結衣はちなつの身体を食べ始める。
ちなつの身体を飲み込むたびに結衣に絶頂が訪れた。
結衣がちなつを食べている間、結衣は楽園に居る気分だった、ちなつの身体を食べきった後はちなつの血が染み付いたシーツを舐めまわしていたがそれでも結衣は天にも上る気分で舐めまわしていた。

それは唐突に終わりを告げる。

そして、地獄が始まった。

結衣「あああああああああああああああああ!!!!」

あかり「ゆ、結衣ちゃん!?」

結衣「あがぁっ!! う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

結衣は頭を掻き毟りながら転げまわった。
あかりは今までに聞いた事も無い叫び声をあげる結衣をどうにか助けようと手を伸ばす。

あかり「結衣ちゃん! どうしちゃったの!?」

結衣「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!! あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!」

あかりは暴れまわる結衣を抱きかかえ、結衣を落ち着かせようとするが、結衣の身体の違和感に気がついた。
結衣の腹は尋常じゃないほど膨れ上がり、はち切れる寸前まで膨らみ切っている。
結衣は暴れ続けるうちに腹を圧迫される体勢になってしまい、あかりに向かってその腹に収まっていたモノを吐き出した。

結衣「ぐはぁぁっ、うげぇぇぇぇっ」

あかり「!? きゃぁぁぁぁぁ!?」

結衣が吐き出した内容物は、真っ赤な液体から始まり、肉片、骨の欠片を止め処なく吐き出し続け、数分間吐き出し続けていた。
あかりはなにが起きているかも分からなかったが、それでも結衣を放すことなく抱きとめ続けた。
やがて結衣の嘔吐が止まり、結衣が力尽きてあかりにもたれかかり、あかりも結衣を支えきれずに倒れこむ。

結衣「うぁぁぁ……… ぁぁぁぁぁぁぁぁ………」

あかり「ゆい… ちゃん… へいき…?」

あかりは結衣の嘔吐物にまみれ目も開けられないでいたが、自分にもたれ掛かり呻き声をあげつづける結衣を純粋に心配し声をかけた。

あかりは少し顔を拭って、目を開けてしまった。

そこには、おびただしい量の血と肉片と骨が散らばっており、この惨場を見たあかりは叫び声をあげた。

あかり「ひっ!? ひぃぁぁぁぁぁぁぁ!?」

あかり「なに!? なんなの!? これってなんなのぉぉ!?」

結衣「げほっ…」

あかり「ゆ、ゆいちゃん!? ゆいちゃん!! たすけてっ、こわいっ、こわいよぉぉぉぉ」

結衣「ごほっ」ポトリ

あかり「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」

あかりは結衣に助けを求めるが、結衣は絶望しきった顔でどこかを向いていた。
少し咳き込んだ結衣は口から何かを吐き出した。
結衣が吐き出したものをあかりは見て再び叫び声をあげる、あかりが見たものは水色の瞳の目玉であった。
あかりは先ほどの悪夢がフラッシュバックし、パニックに陥った。

あかり「ひぃぃぃ!! やぁぁぁっ!! いやぁぁぁぁっ!!」

結衣「…………」

あかり「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! やだぁぁぁぁぁぁ!!」

結衣「…………」

あかりは血の海でもがき続けた。
結衣が覆いかぶさっているため満足に動けずにジタバタと手と足を動かし続ける。
パニック状態と陥ったあかりは結衣を退かそうともせずにただ叫びもがき続けていた。

あかりの悪夢は永遠に続くかと思われたが、一時間が経過する頃に唐突に終わりを告げた。

あかりと結衣の近くにあったダークイエローと水色が螺旋状に混ざったソウルジェムが黒く濁りきり、濁りきったソウルジェムの中から巨大なグリーフシードが出現した。

グリーフシードが鈍く輝いたかと思うと、グリーフシードを中心に嵐が巻き起こる。
あかりと結衣は嵐に巻き込まれ吹き飛ばされた。
結衣の部屋の窓を突き破って二人は空に放り出されてしまった。

結衣の部屋は嵐の衝撃で崩れ、そこに残ったグリーフシードから巨大な魔女が顕現した。
その魔女は、下半身は蛇のような胴体で繋がり、上半身は二つに分かれた魔女だった。

片方の上半身は騎士のような姿をしており、片方の上半身は中世の姫のような姿で、その魔女は産声を上げるように叫び、その叫び声で周囲のものが全て吹き飛んだ。

魔女は動き始める、何かを探すように動き始めた。

7話終わり。

8話


京子の部屋


京子は呆然と自分のソウルジェムを見ていた。

京子「えっ…? 私…」

QB「おめでとう、これで君も魔法少女だ、君の願いも叶ったことだろう」

京子「願いって… 私願いなんてしてないよ…?」

QB「何を言っているんだい? 確かに君は願ったじゃないか、「元の結衣に戻してくれ」ってね」

京子「そんな… 何言ってるの? 私そんなこと…」

QB「言ったよ」

京子は呆然としながらソウルジェムを見続ける。
しばらく固まっていた京子だったが、猛烈に嫌な予感を感じ取り、顔を上げふらつきながらどこかに行こうと動き始めた。

京子「………結衣、結衣のところに行かないと…」

QB「結衣の元にかい?」

京子「そうだよ… 結衣の所に行って… 何とかしないと…」

QB「何とかって何をするんだい?」

京子「………うるさい! 結衣が… 結衣が…」

京子がふらふらと部屋を出ようとしたところで、QBが京子を呼び止めた。

QB「………少し待ってくれないかな?」

京子「…何? 私は結衣の所に…」

QB「その結衣の様子を見せてあげるよ」

京子「え………」

QBの言葉に京子は振り向きQBの目と視線があってしまった、京子にひどい倦怠感が押し寄せると共に、京子の脳裏に結衣の部屋を上から覗き込んだような光景が映し出された。

京子「あ……… これって………」

結衣はあかりを抱きかかえて話をしていた。
声もはっきりと聞こえ京子は少し表情を和らげる

京子「結衣… いつもの結衣だ…」

京子「あ、あはは……… そうだよ、あかりと一緒に泊まりに行ったことにして結衣に小言を言われよう。それで、今日は…」

京子はあかりと普通に話している結衣を見て、半泣きな笑顔を見せ安堵する。
しかし、あかりと話していた結衣は突然動きをピタリと止め、身体全体を振るわせ始め、絞り出すような声が徐々に大きくなっていった。
その時に京子は結衣の身体の異変に気付く。
結衣の着ている服はどす黒い色で染まりきっており、上から見た結衣の姿はその腹部のみが異様に膨らみ、他の部分とのアンバランスさが浮き出ていた。

京子「な、何? 結衣が… どういう…」

そして、結衣の表情が徐々に崩れ、京子の見たことのないような顔に変化して、結衣は絶望の叫びをあげた。

京子「!?」

京子「ゆ、結衣!? 何!? 結衣!! 結衣ぃぃぃっ!!」

京子は結衣がもだえ苦しむ姿を目の当たりにし、脳裏に映る光景に手を伸ばし結衣に触れようとする。
しかし、京子の手は空を切り続け、京子が結衣に触れることは無かった。
そして、脳裏の結衣が暴れまわっていたかと思うと、結衣はあかりにおびただしい量の血と肉と骨片をぶちまけた。

京子「ひぅっ!?」

京子「ち、血? う、嘘!? 嘘ぉぉぉ!? ち、違うっ! こんなの嘘っっ!!」

QB「嘘じゃないよ、これは紛れも無い現在の結衣の姿だよ」

京子「やめてぇっ!! 違うっっ!! こんなの信じないっっっ!!」

QB「でもこれは現実だよ」

京子「うぁぁぁぁぁぁぁ!! 違う、違うのぉぉぉぉ!!」

京子が目を閉じ耳を塞いでも、脳裏に鮮明に映し出される光景は京子の精神を削っていく。
京子は布団に包まり叫び声を上げ続けるが、結衣が吐き出し続ける光景は途切れることはなく京子の脳裏に映し出され続けた。

やがて結衣の嘔吐がとまり、あかりと共に血の海に倒れこみ一旦静寂が訪れる。

京子「いやぁぁぁぁぁ!! 結衣ぃ、やだぁぁ!! やだよぉぉぉ」

京子は血を吐き続けた無残な結衣の姿を見て号泣する。
泣き続ける京子は頭の中の結衣に手を伸ばし続けるが京子の手は届くわけもなく、ただ滑稽に手を振っているようにしか見えなかった。

結衣を見続けていた京子は別の方から聞こえてきた叫びに意識を向けた。
今度はあかりが恐怖に引きつった顔をしながら叫び、血の海でもがき続けていた。

京子「あ、あかりっ!?」

京子が見たあかりの姿は既に血で染まっていない箇所はなく、ただひたすらに叫びもがき続け、結衣の悲惨な姿を見ていた京子はあかりの姿も同じように死に逝く前の断末魔の様に見えた。

京子「あかりぃぃぃ!! なんでっ!? もうやだっ、やだぁぁぁぁ!!!!」

あかりはそのままもがき続け、ただひたすらに助けを求めて叫ぶ。
そして京子はあかりの叫びを聞いた。

あかり『いやぁぁぁぁぁぁぁ!! 京子ちゃん!! たすけてぇぇぇぇぇ!! あぁぁぁぁぁぁぁ!!』

京子「!?」

あかりが自分に助けを求める叫びを聞いた。

京子「うぁぁぁ… あかりぃ…」

あかり『やだぁぁぁ!! だれかぁぁぁぁ!! 京子ちゃん!! 結衣ちゃん!! ちなつちゃん!! たすけてっ!! たすけてぇぇぇっ!!』

結衣『…………』ビクンッ

あかりが叫んでいると何かの言葉に反応した結衣が身体を大きく震わせ、全てに絶望した顔で口を動かした。
声は出ていなかったが京子は結衣が何を言ったのか理解した。

結衣は、

『た・す・け・て・き・ょ・う・こ』

と言っていた。

京子「あぁぁ… 結衣ぃ………」

あかり『うぁぁぁぁぁぁん!! あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』

京子「あかりぃ………」

あかり『たすけてぇぇぇぇぇぇ!! 京子ちゃぁぁぁぁん!!』

結衣『…………』パクパク

京子の脳裏に過去の記憶が呼び起こされる。
二人に守られていた自分、いつも助けを求めるのは自分だった。
そんな京子を二人はいつも守ってくれていた、助けてくれていた、だが今は違う。

二人は京子に助けを求め続けている。
あかりの悲痛な自分に助けを求める声、そして結衣が絶望した顔で声も無く自分に助けを求める姿を見て、京子は拳を握りこみ叫んだ。

京子「うわあああああああああああああああああああああああああ!!!!」

京子の目は涙に濡れていたが、先ほどまでの絶望に浸った目ではなく、強い意志を宿した目に変わっていた。

QB「…どうしたんだい?」

京子「………行かないと」

QB「行くって結衣とあかりの元に行くのかい?」

京子「…そうだよ、私が二人を助けないと」

QB「もう無理なんじゃないかな?」

京子「うるさいっ!! 無理なんかじゃない!! 私が助けるんだっ!!」

QBの言葉は京子を精神をさらに燃え上がらせた。
二人を助けたいという京子の想いに反応し、ソウルジェムは青色の輝きを放つ。
その輝きは止まることを知らず、闇夜を切り裂くように強烈な光を放った後、一瞬のうちに京子を包み込み魔法少女の姿へと変えていた。

魔法少女と変身した時に、京子はQBから受けていた影響を全て無効化した。
京子は自分の力を正しく理解した。

QB「これは… そんな馬鹿な…」

京子「これが私の…」

QB「………なんて力なんだ」

京子「二人とも待ってて、今行くから!」

QB「…………」

京子はそのまま家を飛び出し、結衣の家に向かう。
二人を助けるため、新たな力を持って京子は夜の町を駆けだした。

京子の部屋にはQBが残っていた。

QB「まさか、魔力支配を強制解除するなんて… 彼女の願いによる特性から来る魔法か… 前例が無いわけではないけど、ここまで強力な力とはね」

QB「まあ、時間は稼げたし問題ないか」

QB「しかし、確かに絶望に落ちかけていたのに、何故彼女は再び希望を宿したんだろう?」

QB「やはり人間の感情は理解できない…」

QB「だけど、彼女の希望の源はあの二人に関係がありそうだな、それならば…」

QB「次は別の方法で試してみるか」

QBは京子の部屋から姿を消す、その瞳の奥で3人の姿を捉えながらどこかに消えていった。


結衣の家に向かい全力で走っていた京子は、ものの数分で結衣の家まで辿り着いた。
夜の町を駆け抜け、空を飛び、最短距離で結衣の家まで到達した…が、


京子は間に合わなかった。


京子が遅かったわけではない、QBが京子に結衣の様子を見せる際に体感時間を狂わせていた。
映像を見ている間に、時は過ぎ京子に助けを求めていた結衣は絶望しきってしまった。

京子が結衣の家の前に辿り着いた時に見た光景は、二人が窓を突き破り吹き飛ばされ、空を舞う瞬間であった。

8話終わり。

9話


京子「結衣っ!? あかりっ!?」

結衣とあかりは木の葉のように宙に舞っていた。
京子は二人を助けるため空を駆けようとするが、京子が飛び上がろうとした瞬間にあたり一面を覆う衝撃波が発生した。
だが京子に衝撃波が到達する直前に京子の身体が淡く光り、衝撃は京子に到達することは無かった。

京子「今度は何!? いや、それよりも二人は!?」

二人は今の衝撃波に吹き飛ばされたようで、二人の姿を見失ってしまっていた。
京子は二人がどこに飛ばされてしまったのか確認しようと周囲を見渡したときに巨大な異形の姿を発見する。

京子「な、何? あの化け物…」

京子が今まで見たこともないような大きさで、さらに禍々しい気配を発しているそれは京子の姿を見つけると、騎士側の頭が叫び声を上げ、再び京子に衝撃波が襲う。

京子(また魔力の塊!? さっきの衝撃波もあいつの仕業かっ!!)

だが、その衝撃波は再び京子に到達する前にかき消された。

京子(っ!? やっぱり私の力って… さっきもキュゥべえからの魔力を消したみたいに、魔力を打ち消すことが出来るみたい)

京子(いけない、こんなことを考えてる前に二人をっ!)

京子が頭を振り、双頭の魔女を無視して二人を探そうとしたが、騎士側の魔女の手が京子に掴みかかろうと伸びてきた。
京子はそれに気付き咄嗟に身をかわしたが、息つく暇も無く姫側の手も伸びてきて京子はそれを回避する為に飛び上がった。

京子「っ~~ 邪魔しないでっ! 私は結衣とあかりを助けないとっ!」

騎士魔女「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

京子「くっそぉ!! 邪魔… すんなぁっ!!」

京子が二人を助けると叫んだ瞬間、騎士魔女は唸るような叫びをあげ再び京子に向かって手を伸ばしてくる。
京子は今度は伸びて来た手を、右手に持っていたステッキを巨大なハンマーに変化させ叩きつけた。

騎士魔女「AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

姫魔女「AAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

京子「な、なんなの? 化け物同士が絡み合ってる?」

京子に手を潰された騎士魔女は聞き様には悲痛な叫びをあげ、それを見た姫魔女は騎士魔女の潰された手に触れる為に騎士魔女に纏わりつく。
京子は魔女同士が絡み合っている隙に、逃げ出そうとするが、逃げようとする京子を見た姫魔女が今度は胴体も伸ばし襲い掛かってくる。

京子「いっ!?」

姫魔女「UAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

京子「こんなことしてる暇ないってのにっ!!」

姫魔女「AAAAAAAAAAAA!!!!」

京子「邪魔っ! 私に近寄るなっ!!」

姫魔女「AAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」

京子が姫魔女の攻撃を避けながら、ハンマーで牽制していたときに頭の中にQBの声が聞こえてきた。

QB『苦戦しているようだね』

京子「!? キュゥべえ!? ちょっと、今、話しかけ、ないでっ!!」

QB『おっと、それはすまなかったね。だけどあかりが危険だからこうやって連絡をしてあげているんだけどな』

京子「!? なにっ、それっ!?」

QB『さっき吹き飛ばされたときに怪我をしたんだよ、このまま放っておくと危険だよ』

京子「なっ!?」

QB『早くその魔女を倒してあかりを助けてあげないといけないんじゃないかな? 君はあかりを助けるんじゃなかったのかな?』

京子「こいつっ! 魔女だったの!?」

QB『そうだよ、僕から伝えることは以上だよ』

京子はQBに出会ったときに魔女の説明を受けていた。
初めて目の当たりにする魔女を見て、QBの説明以上にとんでもない存在と京子は認識した。
そして今、あかりの危機もQBから伝えられ、目の前で行く手を阻んでいる魔女に向かって叫ぶ。

京子「邪魔しないでよっ!! あかりが危ないんだよっ!! 私に構わないでっ!!」

姫魔女「UAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

京子「くっそぉ!! お前達のせいであかりや結衣が吹き飛ばされて…」

辺り一体の惨状や先ほどあかりと結衣が衝撃波で吹き飛ばされたことを思い出し、京子は怒りの篭った目で魔女を睨む。

姫魔女「AAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

姫魔女は変わらず京子を捕まえようと京子に襲い掛かり続ける。
魔女の顔は何かに怒っているようにも見えた。

京子「どうしても、私を、通さないって、言うなら」

京子「やってやるっ!!!!」

京子がハンマーを構え、姫魔女に向かい直った。
姫魔女は立ち止まった京子を見て、胴体を伸ばし京子の真正面から襲い掛かってきた。

そして京子との距離が数メートルにまで近づいたその時、姫魔女の瞳が怪しく煌き京子に何かを行う、しかし京子には何の影響も与えず京子のそばまで近づいた頭は無防備な状態を晒していた。

京子は姫魔女から何かの魔力を打ち消したことに気がつく、だがそれに特に気にすることもなく無防備な頭に向かってハンマーを振り上げ、

京子「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

振り落とした。

姫魔女「AAA… AAAAAAAA…」

京子「………えっ?」

京子がハンマーを振り下ろして姫魔女の頭を砕く瞬間に魔女は呻き声を上げた。

京子「い、今の一体…」

騎士魔女「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」

京子「!?」

一瞬呆けていた京子だったが、騎士魔女の叫びによって意識が引き戻される。

騎士魔女は姫魔女が京子によって潰されたことに気づき叫び声を上げると共に体を振るわせ始めた。

次の瞬間、その体から無数の触手が出てきて、姫魔女の体を包み込んだ。

京子「っ!? 今度は何!?」

触手で包まれた姫魔女はそのまま騎士魔女の体に合わさり、騎士魔女の体が波打ったかと思うと姫魔女は取り込まれそこには一回り大きくなった騎士魔女のみが存在していた。

京子「う、嘘でしょ… 食べちゃったの…?」

騎士魔女「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

京子「ひっ!?」

騎士魔女は京子に向かって姫魔女を取り込んだ触手を伸ばしてきた。
先ほどの光景を見ていた京子は、小さな悲鳴を上げ触手から逃げようと身を動かす。

京子「わ、私まで食べるつもり!?」

騎士魔女「AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

京子「ふざけんな! やられてたまるかっ!!」

騎士魔女の触手を京子は避け続ける、一瞬の隙で京子は触手にからめとられ先ほどの姫魔女のように取り込まれてしまうと予想できていた。
だが、京子はあかりの危機、そして結衣もどうなっているか分からない状況にあせっていた。

京子(早くあいつをなんとかしないと、あかりが… 結衣が…)

京子(でも、あの触手に捕まったら… くっそぉ! どうすれば!?)

京子(まてよ… あいつって確か魔女… それならあの触手も…)

京子(試してみる価値は……… あるよね)

何かを思いついた京子は立ち止まり騎士魔女にあえて隙を見せた。
騎士魔女は隙を見せた京子に大量の触手を伸ばす。
その触手に捕まる寸前に、京子はまさに紙一重で触手を避けきった。

そして京子は触手を避けきる寸前で魔力無効化能力の範囲内に入った部分が消滅したことに気がついた。

京子(やっぱり! あの触手は魔力で作られているものなんだ!)

京子(あの魔女は… 触手を使い続けてる! 今、消滅したことには気付いていない…?)

京子(少し不安だけど、隙を見て触手を無効化して一撃であの魔女を仕留める!)

京子(仕留め損なったら、また何かしてくるかもしれないから、確実に一撃でやれるタイミングを見つけないと…)

京子(結衣… あかり… まってて、すぐこいつをやっつけてそっちに行くからね)

京子は魔女の隙を見ながら触手を避け続けた。
そして京子が上空に飛び上がり、魔女が触手を伸ばすタイミングが遅れた瞬間、京子は覚悟を決め集中する。

京子(ここだっ! 魔女も触手を伸ばしてくるだけ… いけるっ!!)

魔女の触手が京子に到達する直前に消滅していく。
それを見た京子はハンマーを振りかぶり、魔力を集中し始めた。
京子はハンマーに魔力を注ぎこみ、5メートル近い大きさのハンマーを作りだす。

そして、落ちる勢いそのまま魔女に向かいハンマーを振り下ろした。
ズンッという音と共に魔女の周囲が大きく陥没する。
騎士魔女はハンマーを受け止め抵抗していた。

騎士魔女「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」

京子「ぐううううっ!!」

魔女の抵抗は強く、拮抗した状態となっていたが、京子はさらに魔力を使いハンマーの裏面から魔力を放出し推進力を上げた。

京子「どりゃああああああああああああ!!」

騎士魔女「AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」

それにより拮抗状態は崩れ、

ズウゥンという鈍い音と共に地面が数メートル沈み込み、

魔女は潰れた。

京子「よっしゃ…………… えっ?」

京子が勝利を確信したその時、魔女が潰れた瞬間に京子の脳裏に結衣とちなつの姿が映った。

二人はとても悲しい顔をしていた、

二人とも泣いていた。

一瞬で通り過ぎたイメージだったが、京子の頭に二人の姿は残り続けていた。

京子「な、なんなの今のは…」

暫く呆けていた京子だったが、あかりと結衣を探さなければならないと思いだしてQBに二人の居場所を聞き出した。
二人の居場所を聞いた京子は、ハンマーを消して駆け出そうとしたが、先ほどまで魔女のいた場所に巨大な黒い宝石が残っていることに気がついた。

京子は引きこまれるようにその黒い宝石を手にし、あかりと結衣の元へと向かった。

9話終わり。
このQBさんはちょっと効率厨になってます。
この先もいろいろオリジナル設定がでてきますがあまり突っ込まないでください。

10話


京子はQBからのテレパシーであかりと結衣の位置を聞き向かう。
そして、京子はあかりの元に辿り着いた。

京子「あかりぃぃぃっ!!」

あかりは林の中にいた。
遠目から見て、あかりの頭が見えて京子は急いで駆け寄る。

京子「あかりっ!! 大丈夫!? あか………」

京子が見たあかりの姿は悲惨なものだった。
あかりは全身がどす黒い色で染まっていて、上空から落ちてきたときに木に引っかかったのか身体中擦り傷だらけになっていた。

そして、手足の骨は砕けているのか関節とは逆の方向に曲がり、腰の骨も砕けたようで上半身と下半身がねじれて、壊れて打ち捨てられた人形のようになっていた。
ボロボロのあかりを見て息を呑み立ち尽くす京子だったが、あかりが痛みを訴えずっと痛いと呟き続けていることに気がつく。

あかり「いたい、いたい、いたい…」

あかりは押し寄せる痛みに気絶することも出来ず、生き地獄を味わっていた。

京子「あぁ、あぁぁっ… ど、どうしよう、あかりっ、こんな、ひどい…」

あかり「うぁ、いたいぃぃ…」

京子「きゅ、救急車を呼ばないとっ… っ!? 何で電話が無いのっ!?」

京子はパニック寸前になっていたが、白い生物に声をかけられ後ろを振り向きすがる思いで話し始めた。

QB「やぁ、京子、間に合ったみたいだね」

京子「キュゥべえ!? あかりが、あかりが大変なの!!」

QB「そうだね、かなりひどい状態だね、目には見えないけど内臓も何箇所か破裂しているよ、このままじゃまずいね」

京子「そ、そんな事言ってないで助けてっ! お願い、魔法の力で何とかしてよっ!!」

QB「いやいや、僕には無理だよ」

京子「そんな… お願い、このままじゃあかりが…」

QB「君が魔法少女になる前なら願い事で怪我を治すことなんて簡単に出来たんだけどね、今となってはどうしようもないよ」

京子「うぅぅぅぅ… そ、それなら私が回復魔法を使う!! だから回復魔法を教えてよっ!!」

QB「魔法は魔法少女それぞれだから僕が教えることなんて出来ないよ、君が作り出すしかないと思うよ。でも、君の願いから生み出た特性は恐らく魔法や魔力の無効化だろう? 回復魔法なんて使えないと思うけど」

QBからあかりを助ける方法を聞くことは無理と悟った京子は、あかりに近づき魔力をあかりに放出し祈る。

京子「お願い… 良くなって…」

あかり「いた… あぅぅ… ぅぅぅ…」

京子の祈りが通じたのか、京子の放出していた魔力があかりに吸い込まれ始めあかりの擦り傷が徐々に治っていった。

QB「これは… まさかただ祈るだけで癒しの力を発動させているのか…」

QB「京子、君は凄いよ、誰に教わることも無く自分の望む結果を引き出すなんて、まさに天才というやつだね」

京子「…………」

あかり「うぅぅっ… きょうこ、ちゃん…」

京子はQBの言葉に反応することも無く、あかりに向かい癒しの魔法を使い続けた。
その様子を眺めていたQBだったが、再び京子に語り始める。

QB「本当に凄いね、このまま行けばあかりの怪我を癒すことも出来るかもしれない」

京子「…………」

QB「だけど、もう無理だよ」

京子「…………」

QB「あかりはもう間もなく魔女になる」

京子「…………」

京子「…は?」

QB「結衣と同じようにね」

京子「………な、に?」

QBの言葉に京子は呆然とした顔でQBを見る。
QBの言っている意味が理解できないのか、もう一度QBに聞き返す。

京子「な、なに言ってるの? 魔女になるってなにを…」

QB「だからあかりは魔女になるんだよ、結衣や結衣と同化したちなつと同じようにね」

京子「結衣が魔女って…? ちなつちゃんも? 意味わかんないよ… 意味、わかんないよ!!」

QB「説明は省略していたけど、君たちが魔法少女になった際に手に入れたソウルジェムは、穢れを溜め込み黒く濁りきったときにグリーフシードに変化し、魔法少女は魔女に変化するんだ」

京子「うそ…」

QB「嘘じゃないさ、君のソウルジェムを見てごらん、君も大分魔力を消費したし、穢れを溜めているはずだよ」

京子は自分のソウルジェムを震える手で取り出してまじまじとその色を見た。
京子のソウルジェムは7割近く色を黒く濁らせていた。

京子はハッと気付き、あかりの身体を触れ、ソウルジェムを見つけその色を確認した。
あかりのソウルジェムは既に真っ黒に近く濁りきる寸前の状態だった。

京子は混乱してうまく働かない頭でQBに叫んでいた。

京子「駄目!! あかりを助けてっ!! 色をきれいにしてよっ!! はやくっ!!」

QB「無理だよ、ソウルジェムの穢れを取るためにはグリーフシードを使うほか手は無いんだ。あかりはもう魔女になるよ」

京子がその言葉を聞いた瞬間、先ほどの黒い宝石の存在を思い出す。
すぐさま黒い宝石を取り出してあかりのソウルジェムに近づけた。
するとあかりのソウルジェムの穢れは黒い宝石に吸い込まれていき、暫くするとあかりのソウルジェムは穢れの無い紫色に戻っていた。

QB「………何故君がグリーフシードを」

京子「よかった… 黒くなくなった…」

QB「…結衣とちなつのグリーフシードを回収していたのか、説明もしていなかったのに回収してくるなんて予定外だな」

QBの言葉に再び京子は反応する。

京子「………なに? これが結衣とちなつちゃんのってどういうことなの…?」

QB「さっきも言ったじゃないか、結衣とちなつは魔女になったんだ、そして君が彼女達を倒してグリーフシードを回収してきたんじゃないか」

京子「………あの魔女が結衣とちなつちゃん?」

QB「そうだよ、正直驚いたよ、君一人で君と同等の力を持った二人が同化した魔女を倒してしまうなんてね。しかもかなりの余力を残してだから、本当に驚いているよ」

京子「………わ、私が結衣とちなつちゃんを?」

QB「先ほどの癒しの魔法といい、君は魔法の天才だね。恐らく君ならワルプルギスの夜さえ相手にならないだろうね」

京子「………結衣を ………ちなつちゃんを ………殺した?」

QB「そうだね。君が二人を殺したんだよ」

QBの言葉は京子の心を貫いた。
それと同時に、京子のソウルジェムの色が急速に濁り始める。
それを見たQBは再び話し始めた。

QB「おや、君のソウルジェムもかなり濁り始めているよ。グリーフシードで穢れを取らないのかい?」

京子「………なんで、なんでこんなことに」

QB「こんなこと? ああ、説明不足だったのは謝るよ、遅くなったけど詳しく説明をしてあげよう、そもそもこれは全て宇宙の寿命を延ばすためなんだ。京子、君はエントロピーって言葉を知っているかい?」

京子「………ちがう、あれは結衣じゃない… ちなつちゃんじゃない… あんな化け物が二人のわけないよ…」

QB「おや? 話を聞いてくれないみたいだね。せっかく説明をしようと思ったんだけどな、ちなみに君が言っている化け物は間違いなく結衣とちなつだよ」

京子「ちがう、ちがうっ! そんなわけない!! 早く結衣を探さないと、ちなつちゃんも探さないと!!!」

QB「それじゃあ、あそこにある結衣の抜け殻が君の探しているものなのかな? 結衣の腹の中にはまだ少しならちなつの抜け殻も残っているかもしれないよ」

QBが見上げる方向に京子も視線を向ける。
その先には、結衣が木に深々と刺さりモズの早贄のような状態となり、結衣の身体から血が流れ続け木を赤色に染め上げていた。

京子「う、うあああああああああああ!? 結衣、結衣ぃぃぃ!!」

京子は一瞬で飛び上がり、結衣の身体を木から開放し抱きかえた。
そして、あかりの横に横たわらせ二人を対象に回復魔法を使い始めた。

京子「お、おねがいっ、治って、はやく、治って」

QB「あかりには効果はあると思うけど、結衣の抜け殻に回復魔法を使っても意味が無いと思うんだけどな」

京子「おねがい… おねがいだから… もうわがままも言わない… 結衣に迷惑をかけるようなこともしない… だからおねがい… 治って…」

QB「だからもう結衣は死んでるって、無駄なことはやめておいたほうがいいと思うよ」

京子は癒しの祈りを続けた。
だが、結衣の身体は胸に穴が開いたまま塞がらず、京子は結衣が死んでしまっていると理解した瞬間膝から崩れ落ちた。

京子「ひどいよ… こんなのひどすぎるよ…」

QB「酷いなんてとんでもないよ、君たちは素晴らしい行いをしたんだよ。結衣もちなつもこの宇宙の寿命を延ばすために死んでくれた。彼女達はこれからの宇宙の礎となったんだ。彼女達のおかげでこの宇宙は救われたんだよ」

京子「結衣ぃ… ちなつちゃん… いやだよ… 戻ってきてよ…」

QB「そして京子、君が魔女になることで僕達が想定したエネルギーを回収することが出来る。数万年にもわたる計画でやっと折り返しというところだったんだけど、まさかこの数日で残りの数万年分のエネルギーを確保できるなんて考えてもいなかったよ」

QB「さあ、そろそろ魔女になってくれないかな? 君のソウルジェムは既に限界を迎えるはずだよ」

京子が結衣の死体を絶望した目で見ている。
京子の手から零れ落ちたソウルジェムは既に真っ黒に濁りきっており、最後に残った光が今消え去ろうとしていた。

そして、京子のソウルジェムは…


黒く濁りきった。


京子の身体は崩れ落ち、京子のソウルジェムから産み落とされたグリーフシードは嵐を巻き起こして木々をなぎ倒す。

3人の身体は嵐に巻き込まれ吹き飛ばされる。

3人のうち、京子と結衣の目は閉じられ絶望した顔だった。

だが、あかりの目は限界まで見開かれ、京子のグリーフシードと白い生物を見続けていた。

再び空を舞いながら、あかりは新たな魔女が誕生する瞬間を見る。

それと同時に白い生物が掻き消える様子を見た。

あかりの顔は歪んでいた、酷い悲しみと、言いようの無い悔しさ、それと同じくらいの怒りで歪んでいた。

そして、あかりの感情に呼応するようにソウルジェムが輝きあかりは魔法少女へと変身した。

あかりの瞳が紫色に輝き瞳の中に時計の針が現れ回転を始める。

空中を舞いながらあかりの身体は光に包まれ掻き消えた。

エピローグ


あかりの部屋。


あかりは自分の部屋のベッドで跳ね起きた。

あかり「はあっ… はあっ… はあっ…」

あかりはカレンダーをみて今日の日付が9月1日だということを確認する。

あかり「夢……… なんかじゃない…」

手の中にあるソウルジェムを見てあかりは呟く。

あかり「あぁぁぁぁ… 京子ちゃん… 結衣ちゃん… ちなつちゃん…」

あかりは林の中で動くことも考えることすら出来ない状態から京子の力によって、思考が出来る程度まで回復していた。
そして、あかりは全てを見ていた、聞いていた。
QBが京子に言ったこと。
魔法少女が魔女となること。
結衣とちなつと京子が全員魔女となってしまったこと。

あかり「あぁぁ… なんで… なんであのことを夢だって思い込んじゃったのぉ…」

あかり「あかりは最初にみんなを助るって… そう願って魔法少女になったのに…」

あかり「ただ守ってもらって… それでみんなは… みんな… うぅぅぅぅ…」

あかりは最初の世界の出来事を漸く現実だと理解した。
そして前の世界で起こったことも全て起こってしまった事と理解した。

あかり「ごめん… ごめん… あかりが馬鹿だったからみんなが…」

あかりはそのまま布団に顔を埋め謝り続けた、全て前の世界の皆への謝罪だった。
助けられなくて、救えなくて、魔女にしてしまって、そして自分だけ逃げてきてしまってごめんなさいと謝っていた。

あかりは泣きながら謝罪と続けていた。だが、あかりの思考は家のチャイムの音により現実に引き戻された。

あかり「あ………」

そして外から聞こえてくる元気な声。

あかり「うぅぅぅぅぅぅぅ…」

あかりはそのままの姿で動き出し、玄関まで歩き扉を開けた。

京子「おっす~! おいおい、新学期から寝坊か~? って、あかり目ぇ真っ赤じゃん! どしたの?」

結衣「おはよう、あかり。ほんとだ。どうしたのあかり?」

あかり「…………」ガバッ

あかりは二人に抱きつきポツリと呟いた。

あかり「………絶対に守るから、今度は本当に守るから…」

京子「うぉぅ!? なんだなんだ~、朝から強烈なハグだな! そんなにこの京子ちゃんが恋しかったのか~~?」ニシシ

結衣「わっ!? ど、どうしたのあかり? それに今何か言った?」

あかり「うぅん… なんでもないの…」

あかりは二人から離れ、二人の顔をもう一度見る。
最後に見た二人の顔は絶望しきった表情だった、今の二人からは微塵も感じられないが近い未来そうなってしまう可能性があると考えただけであかりの胸は締め付けられる。

顔を見続けるあかりを見て二人は不思議な顔をする。

京子「あかり~? どしたの? そんな真面目な顔しちゃって?」

結衣「私の顔に何かついてる?」

あかり「ううん、なんでもないよ」

あかり「京子ちゃん、結衣ちゃん… ちなつちゃんも呼んであかりのお話を聞いてほしいんだけど、いいかな?」

京子「? 何さあらたまっちゃって?」

結衣「話って、何か真面目な話みたいだね。みんなで聞かないといけないの?」

あかり「うん、みんないないとだめなんだ…」

あかりはその後ちなつにも連絡をしてあかりの家に来てもらうよう説得し3人を部屋に集めた。
3人とも不思議な顔をしていたが、あかりは3人の元気な姿を見て再び泣きそうになる。
そして今度はあんな未来にならないようにと心に誓った。



あかりの心の中で一つの変化があった。

あかりが最後に聞いた白い生物の言葉、

京子に向かって魔女になってくれといった言葉、

その言葉の後、京子は魔女となってしまった、

その光景を見た時、あかりの心に一つの感情が宿った、

それは今まであかりが持ったことの無い感情だった、

あかりは初めて憎悪という感情を抱く。

その感情が今後あかりにどういった影響を与えるのかはまだわからない。

10話 エピローグ 終わり。
2章 終わらない悪夢 終わり。
3章に続く。

3章 1話


京子・結衣・ちなつの3人はあかりの部屋に集められていた。

結衣「あかり、そろそろ学校に行かないと遅刻するよ?」

ちなつ「話をするって言ってたけど放課後に部室ですればいいんじゃないの?」

あかりは結衣とちなつの姿を見て結衣の部屋で目に焼きついた光景が脳裏に浮かぶ。
顔を顰めるあかりに3人は怪訝な顔を見せるが、あかりは頭を振り思考を切り替える。

あかり(結衣ちゃんがあんなことになっちゃったのもたぶんキュゥべえが何かしたんだよね…)

あかり(あのとき… 京子ちゃんのソウルジェムがグリーフシードに変わっちゃったときもキュゥべえがひどいことを言って京子ちゃんを………)

あかり(キュゥべえをみんなに会わせちゃ駄目だし、みんなにもキュゥべえはとっても悪い魔法の精霊さんだって知ってもらわないと)

京子「おーい、あかりー、話したいってみんな集めといてなにぼーっとしてんの?」

あかり「あっ、ごめんね。今するから、とっても大事なお話だから」

京子「ほいほい、そんでどんな話?」

あかり「………えっと、あかりね、未来からやってきたんだよ」

京子「…何言ってんの?」

あかり「信じてもらえないかもしれないけど本当のことなんだよ! これからみんなにはとっても酷いことが起こるの。あかりはそんな事にならないように魔法の力で過去に戻ってきたんだよ」

結衣「ふ、ふ~ん」プルプルプル

あかり「それでね、まずはみんなには魔法少女にならないようにしてほしいの」

ちなつ「ま、魔法少女…」プルプルプル

あかり「たぶんもう少ししたらみんなの前に悪い魔法の精霊さんが現れると思うんだけど、
その悪い魔法の精霊さんはキュゥべえって言って、みんなに魔法少女になってってお願いしてくるんだ」

全員「………」プルプルプル

あかり「そのキュゥべえはすごくかわいい姿をしてるんだけど、キュゥべえはみんなを騙して魔女さんにしようとしているとってもとっても悪い子なんだよ」

全員「………」プルプルプル

あかり「だからみんなもしもキュゥべえに会っても騙されちゃ駄目だよ。キュゥべえに見つかったらあかりに連絡してね、あかりがキュゥべえにみんなに近寄らないようにって怒るから」

全員「………」プルプルプル

あかり「? みんなどうしたの?」

結衣「い、いや… だって…」プルプル

ちなつ「ま、魔法の精霊…」プルプル

結衣「ぶはっ!! ち、ちなつちゃん、声に出して言わないでっ」

ちなつ「ご、ごめんなさい、でも可笑しくって… かわいいのに悪いって…」プルプルプル

京子「あかり… 真剣な顔でそれを話し続けるのは反則だぞ…」プププププ

あかり「!?」

京子「しかし今のはなかなかいいぞ! あかりの存在感が5割増したな!」

あかり「じ、冗談じゃないんだよっ! ほんとに酷いことになるんだよ!?」

ちなつ「もう、あかりちゃん駄目だよ? 変なこと言ってると京子先輩みたくなっちゃうよ?」

京子「!?」

あかり「し、信じてっ! あかりのお話を信じてよっ!!」

結衣「あかり、そろそろ冗談はやめて学校に行かないと本当に遅刻しちゃうよ、その話はまた放課後部室でするとして出発しようか」

ちなつ「そうですね、ほらっ、あかりちゃんも準備しないと!」

あかり「ま、まって!」

京子「ほらほら、早くしろー、置いてっちゃうぞー?」

あかりは3人が立ち上がり動き出そうとするのを見て止めようとするが、3人ともあかりを急かす。
3人を何とか信じさせようとあかりは思考をめぐらせる。

あかり(そ、そうだ。あかりが魔法少女に変身すればみんなもあかりのお話が本当だって信じてくれるよね)

あかり「みんなっ! これを見てっ!」バッ

全員「?」

あかりはソウルジェムを高く掲げて意識を集中させる、そして光と共に魔法少女へと変身した。

京子「!?」

ちなつ「へ?」

結衣「えっ?」

あかり「見て! あかりは魔法少女に変身したよ、これでさっきのお話も本当のことだって信じてくれるよね!?」

京子「」プルプルプル

ちなつ「あ、あかりちゃん、今のどうやったの?」

あかり「だから魔法だってば!」

結衣「ま、魔法? た、確かに変身して………」

京子「うおおおおおおおおおおおおお!? あかりぃっ!! なんなんだよそれ!? 魔法って魔女っ娘だろ!? いつの間に魔女っ娘になったんだよ!!」ガシッ

あかり「きゃっ!? き、京子ちゃん、落ち着いて?」

京子「魔法なんか見せられて落ち着いていられるか! あかりぃぃぃ! どうやって魔女っ娘になったんだ!? 吐けぇぇぇ!!」ギュウウ

結衣「おい、やめろ馬鹿」ポカッ

あかり(だ、駄目、このままだと京子ちゃん最初みたいに魔法少女になっちゃう… 魔法少女になっちゃ駄目だってことを教えてあげないと)

あかり「京子ちゃん! あかりのお話をきいてっ!!」グイッ

京子「うおっ!?」

あかり「京子ちゃんも、結衣ちゃんも、ちなつちゃんも魔法少女になっちゃ駄目なんだよ! 魔法少女になったら、魔女さんに……… あれ?」

ちなつ「あかりちゃん?」

あかり「魔法少女になると… 魔女さんになっちゃう?」

あかりは気付く、自分も魔法少女になっている以上、魔女となってしまうということに。

あかり(それじゃあ、あかりもあんな怖いお化けになっちゃうの…?)

あかり(そんな……… やだ、そんなのやだ…)

あかり(………でも)

あかりはその事実に気が付き動揺するが、前の二つの世界での3人の姿を思い出す。
3人の最後はどれも悲惨なものばかりだったことを思い出し、あかりは魔女になってしまうという不安を無理やり押し込める。

あかり(あかりが魔女さんになっちゃうなんてことはどうだっていいんだ…)

あかり(みんながあんなことにならないようにあかりは魔法少女の力を使ってみんなを守るんだ…)

あかり(あんなの絶対に駄目なんだから… みんなが死んじゃうなんて… …みんながおかしくなっちゃうなんて絶対に駄目だもん)

あかりが少し考えていると再び京子が話し始める。
京子はあかりが言った言葉に反応していた。

京子「あかり、私達が魔法少女になっちゃいけないって言うことは、私って魔法少女になることが出来るの?」

あかり「あっ、そうだけど、さっきも言ったように魔法少女になっちゃうと魔女さんになっちゃうから絶対になっちゃ駄目なんだよ!」

京子「………魔法少女、魔女っ娘、ミラクるんになれる… ふふふふふふ…」

あかり「京子ちゃん! あかりのお話を聞いて! ほんとに魔法少女になっちゃ駄目なんだからね!!」

京子「………ほいほい、わかったよー」ニヘラ

あかり(うぅぅぅ、絶対に聞いてない… どうすればいいの…)

あかりの話を全く聞いていない京子に頭を悩ませていたあかりだったが、結衣があかりに質問をし始めた。

結衣「…そのさ、魔法をあかりが使えるのはわかったよ。それで未来から来たって言っていたけど一体どんなことが起こるの?」

あかり「それは……………」

あかり(うぁ… あ、あんなこと絶対に言えない… 結衣ちゃんがちなつちゃんを…)

あかり「…み、みんなが死んじゃうの」

結衣「えっ………」

あかり「最初はみんなが魔女さんに… こ、殺されちゃって… 次もみんな死んじゃったんだと思う…」

ちなつ「し、死んじゃうって… それに次もって…?」

あかり「…あかりはたぶん過去に戻れる魔法を手に入れたんだと思うんだ、最初に魔法を使ったときはそれを夢だって思って……… それで次の世界でもみんなが…」

結衣とちなつは初め半信半疑な顔をしていたが、あまりにも悲痛な顔をして話すあかりがとても嘘を言っているように思えなく、あかりの言葉を真面目に聞き始める。

結衣「…ちょっと、唐突過ぎるけどあかりが嘘を言ってるように見えないし、実際に魔法を使っているところも見ちゃったんだよな…」

ちなつ「そうですね… ということは本当にあかりちゃん未来から来ちゃったの?」

あかり「うん、そうだよ、だからみんなお願いだからキュゥべえに騙されないで… キュゥべえを見たらあかりがキュゥべえに怒ってみんなに近寄らないように言うし、みんなが危険な目に会うようなら絶対に守るから…」

結衣「そっか… なんというか、心には留めておくよ…」

ちなつ「そのキュゥべえってのが私達の前に現れたらあかりちゃんが言ってることは本当のことってなりますよね… それまではあかりちゃんには悪いけど完全に信じることはできないかな」

あかり「ううん、急にこんな話をしても信じてもらえるって思ってないし… それでも二人ともあかりのお話を聞いてくれてうれしいよぉ…」

結衣「まあ、あんな顔されちゃあね…」

ちなつ「そうですね… それで問題は…」

結衣「この馬鹿だな」

京子「うへへへ… 魔女っ娘になったときの名前は何がいいかな… 決め台詞も考えないと…」ニヤニヤ

あかり「京子ちゃん… あかりのお話聞いてなかったんだね…」ズーン

結衣「おいこら」ポカッ

京子「いてっ、何すんだよ結衣~?」

結衣「お前あかりの話聞いてなかっただろ、ちょっとやばい話だから真面目に聞けって」

京子「あー、ごめんごめん、魔法少女になれるというあまりの衝撃で我を忘れてたよ! そんであかり何の話だっけ? 私が魔法少女デビューしてみんなで魔法少女戦隊を結成する話だっけ?」

あかり「違うってばぁ!!」

あかりは結衣とちなつに話したことを含めて、魔法少女のことを知っている範囲で全員に話した。
願い事を決めて魔法少女になったこと、魔女や使い魔の姿やその恐ろしさ、そしてQBが前の世界で3人を魔女にする為にした事を。

結衣に羽交い絞めにされ、京子はあかりの話を聞くうちに2人と同じようにあかりの言葉聞いた。
京子も色々とあかりに質問をして魔法少女のことをあかりから聞き、最終的には魔法少女にはならないと言った。
そして、京子も含め全員QBが目の前に現れた場合は、あかりに連絡を取りQBとは話をしないと決めて話は終わる。
話が終わる頃には昼になっており、そのままあかりの部屋で遊んだ後3人とも帰路に着く。


まだQBは少女達に気付いてはいない。

1話終わり。

2話


夕方 学校裏にある森の公園


あかりは3人が帰った後に学校裏の公園までやってきていた。

あかり「この公園の… ここを通って…」ガサガサ

あかり「ここなら人も来ないし魔法を使うのはもってこいの場所だよね」

公園の奥にある森を通って少し開けた場所まで辿り着く。

あかり「それじゃあ、さっそく…」

あかり「えいっ!」ピカーー

魔法少女となったあかりはどうやって魔法を使うのかを考え始めた。

あかり「あかりが魔法を使ったのって、たぶん最初の世界で魔法少女になった時と… 前の世界で京子ちゃんが… 魔女さんになっちゃった時」

あかり「どっちも思い出したくないけど… あの時どうやったのかを思い出さないと」

あかり「あの時は………」

あかりは思い出す、二つの世界で魔法少女になった時に、京子が魔女になった時にどういった感覚で魔法を使っていたのかを。

あかり「そういえば最初に魔法少女になった時に何かに組み込まれちゃった様な… ううん、何かの一部になっちゃったような感覚があったような…」

あかり「その感覚が分かれば… う~~ん… えいっ! えいっ!」

掛け声と共にあかりは飛び跳ねたり目を閉じて集中したりするうちに、妙な感覚が目に集まっていることに気が付いた。

あかり「あっ… この感じ… たぶんあのときの!」

さらに集中しようとしたあかりだったが、後ろから聞こえた物音に反応して、音がした場所に目を向ける。

あかり「? ………あっ」

そこには草むらから顔を出した櫻子と向日葵の姿があった。

櫻子「あっ、やっと見つけたーーー!」

向日葵「待ちなさい櫻子! あら? 赤座さん… 本当にこんな森の中にいらっしゃったんですわね…」

あかり「櫻子ちゃん、向日葵ちゃん、なんでここに…?」

櫻子「だから言ったじゃん! あかりちゃんがいたって!」

向日葵「本当ですわね… てっきり見間違えと思ってましたわ」

櫻子「ふん! この私があかりちゃんを見間違えるわけ無いだろ! てかあかりちゃん学校休んでこんなとこで何してんの?」

あかり「あ、え~っとね…」オロオロ

あかりがどう説明しようかとアタフタしていると櫻子があかりが見慣れない服装をしていることに気が付く。

櫻子「あれ? 何その服ー! なんかカワイイ! 見せて見せてーー!」ダダダダ

向日葵「あっ、こら櫻子、こんなところでいきなり走ると…」

櫻子「あっ」コケッ

あかり「あっ! 危ない!」

走り出した櫻子が木の根元に足を取られ転びかける、それを見たあかりが咄嗟に櫻子を受け止めようとしたときにそれは起こった。

カチッ、カチッ、カ……… ピタリ

あかりの瞳に浮かんでいた時計の針が止まる。

あかり「おっとっと、櫻子ちゃん大丈夫?」

櫻子「………… おわーーっ! って、こけてない? あー、あかりちゃんが受け止めてくれたんだ」

あかり「間に合ってよかったよぉ」

櫻子「さっすがあかりちゃんだね! おい、向日葵! お前もあかりちゃんを見習ってこの櫻子様がこけそうになったら受け止めるくらいしろってんだ… あれ?」

櫻子が向日葵のほうを向いて不思議な顔をしていた、あかりもそれに釣られて向日葵を見ると、向日葵は手を伸ばした状態で身動き一つせず若干不自然な姿勢で停止していた。

あかり「向日葵ちゃん?」

櫻子「おい、向日葵。お前なにやってん………」ピタリ

櫻子は向日葵の元へ向かおうとあかりから離れた瞬間に全ての動きを停止した。

あかり「櫻子ちゃん…?」

あかり「お~い、櫻子ちゃ~ん」フリフリ

あかり「………えいっ」コチョコチョ

櫻子「………… !? あははははは!! な、なにすんのさ、あかり………」ピタリ

あかり「あ、あれ?」

あかりが櫻子をくすぐると触れた瞬間に櫻子は動き出したが、あかりから離れた途端またピタリと動きを止めてしまった。

あかり「これって… いったい…?」

あかりが今の状況を把握できずに呆然としていると、あかりの瞳から時計の針は消え、櫻子と向日葵は再び動き始めた。

櫻子「………ちゃん! くすぐったいって! あれ?」

向日葵「櫻子! あら? 転んだはずじゃ…?」

あかり「…………」

櫻子「あれー? あかりちゃん、なんでそんなとこにいるの? さっきこっちにいたよね?」

向日葵「?」

あかり「もしかして…」

櫻子「あー! そうだ! おい、向日葵! 何で私が転びそうになったのにお前はボーっと見てるだけなんだ!? そのおっぱいは飾りか!?」

向日葵「はぁ? 何をわけのわからないことを言って… あなたがこんな足場の悪いところで急に走り出すのがいけないんでしょう!」

櫻子「なんだとー!? このおっぱい魔神! おっぱい大魔王!!」

向日葵「せっかく心配したのに何よその言い草! あなたはいつも…」

あかりをそっちのけで喧嘩し始めた二人をよそ目にあかりは考え始めた。

あかり(今のって前にお泊りしたときにみんながいたずらした時間が止まった設定みたかった)

あかり(でも、今のが魔法の力だったら…)

あかり(あかりの魔法は時間を戻すだけじゃなくて止めることもできるのかな?)

あかり(今の感覚… もう一回…)

再びあかりは集中し始め、目に魔力が集まって瞳に時計の針が浮かび上がった。
あかりはさらに集中し、先ほどと同じように力を解放した。
そして、世界の時が停止する。

櫻子「」

向日葵「」

あかり「や、やっぱり…」

あかり「二人だけじゃない、鳥さんも、木から落ちる葉っぱも、全部止まってる… 間違いないよ! 時間が止まってるんだ!」

あかり「すごい… この魔法を使いこなせることができたら…」

あかりが集中を切らすと、時間停止は解除され再び櫻子と向日葵の言い争いが始まった。
時間停止魔法をどうやって使いこなすか考えていたあかりだったが、二人の言い争いがヒートアップし続けいつまでも終わる気配が無く、仕方なくあかりは止めに入る。

あかり「ふ、二人とも相変わらず仲いいね」

櫻子「はぁ!? 向日葵なんかと仲いいわけないし!!」

向日葵「そうですわ! 私達の仲の悪さは赤座さんも知ってらっしゃるでしょう!?」

あかり(よ、余計に火をつけちゃった!?)

櫻子「ああ、もう! 向日葵なんかと話してても面白くない! あかりちゃん、何かして遊ぼうよ!」

あかり「え、ええ!? いきなりそんな事言われても… 向日葵ちゃん、どうしよう?」

向日葵「はぁ… いつものことですわね… 赤座さん、少し付き合ってもらえますか?」

あかり(魔法の練習をしたかったけど… 仕方ないかぁ)

あかり「うん、それじゃあ何して遊ぼっか?」

櫻子「そんじゃ、この辺りを探検だー! 私について来い!」ガサガサ

あかり「あっ、まってよ櫻子ちゃん!」ガサガサ

向日葵「本当にもう…」

向日葵(そういえば、赤座さんはこんな森の中で何をしてたのかしら?)

向日葵(櫻子が赤座さんを見つけたと言って、何をするのか確かめるって言ってましたけど、当初の目的を完全に忘れてますわね…)

向日葵(まったく… 自分勝手なんだから)

その後、櫻子達と遊び、魔法少女の服装などに突っ込まれもしたがやんわりと誤魔化し、二人には魔法のことを知られることは無かった。
それから数日間、別の場所で時間停止の魔法を試し、今度は人にも見つからずあかりはある程度時間停止魔法を使いこなせるようになっていた。

1週間が経ち、京子・結衣・ちなつの前にQBが現れることも無く時間は経過する。
しかし魔法の練習を終え帰路に着くあかりを白い生物は観察していた。

QB「………彼女は一体何者だ?」

QB「偶然感知した未登録の魔力反応を確認する為に来てみたら、契約登録をしていないはずの人間が魔法少女になっている…」

QB「イレギュラーな存在か… 十分警戒をしなければならないかな…」

QB「まずは彼女の監視、この町の調査から始めるとするか」

あかりが家に到着したと同時に白い生物は姿を消した。


部屋に戻ってきたあかりは自分のソウルジェムを見てため息をつく。

あかり「大分黒くなってきちゃった… そろそろグリーフシードを使って穢れを取らないと…」

あかり「でも、グリーフシードを手に入れる為には魔女さんを…」

あかり「魔女さん… キュゥべえに騙されてしまった女の子達なんだよね…」

あかり「あかりには魔女さんをやっつけるなんてできないよぉ…」

あかりは魔法少女が魔女になると知ってから、魔女がもともとは人間だということを理解してしまい悩んでいた。

魔女を倒さないとグリーフシードは手に入らない、しかし魔女を倒すということは魔女になってしまった人間を殺すということと同じだとあかりは考えてしまい、自分のソウルジェムが少しずつ黒くなっていっても何もできないでいた。

あかり「…一度魔女さんと会ってみよう」

あかり「あかりはまだ魔女さんと会ったことは一度もないし、もしかしたらあかりのお話を聞いてくれるかもしれない…」

あかり「お話ができなくても、あかりの魔法なら魔女さんから逃げることもできると思うし…」

あかりは不安を抱えながら、翌日に魔女を探すと決める。
話をして説得ができればグリーフシードをもらうことができるかもしれないと考え、不安を押し殺し魔女を見つけ出そうと決めた。

そして翌日、あかりは魔女というものを目の当たりにする。

2話終わり。

3話


放課後


あかりは放課後一人で寂れた公園まで足を運んでいた。

あかり「確か最初の世界でここの公園に使い魔さんが…」

あかり「ソウルジェムを使って魔力を感じるんだったよね」

あかり「…………」ムムムム

あかりはしばらく集中して魔力の痕跡を見つけようとするが、あかりのソウルジェムには何も反応せず落胆する。

あかり「だめだぁ… わかんないよぉ」

あかり「ここの使い魔さんにお話ができれば魔女さんにもお話ができると思ったんだけどな」

あかりは公園をくまなく調べ、特に何も無いことを確認した後公園を後にする。
使い魔も魔女も見つけれずどうするかと思っていると、少し歩いたところで妙な違和感を感じ取った。

あかり「あれ? これって…」

あかり「たぶん魔力なのかな…?」

あかりは違和感の方向にしばらく歩き人通りの全く無い路地裏に辿り着いた。
それと同時にあかりのソウルジェムが輝き、目の前の壁に蝶を模した模様が浮かび上がった。

あかり「変な模様が壁に… これって魔女さんの結界だよね…」

あかり「確かソウルジェムを使って結界を開く……… きゃぁっ!?」

あかりが結界を開こうと考えていた矢先、あかりが見つけた模様が光り、あかりは模様に吸い込まれるように魔女の結界に閉じ込められる。

あかり「ひっ!? ここって… 魔女さんの…」

あかり「で、出口は… な、ないよぉ…」

あかり「ど、どうしよう…」

あかり「うぅん……… 違うよね… あかりは魔女さんとお話にきたんだから、魔女さんを探さないと…」

あかりは不安を押し殺し魔女の結界を歩き始めた。
するとすぐに最初の世界で一番初めに見た使い魔の姿を発見した。

あかり「あっ! あれって、使い魔さんだ!」

あかり「あかりには気付いていないみたい…」

あかり「…まず使い魔さんとお話できるか試してみないと」

あかりはそのまま使い魔の前に飛び出し、使い魔に語りかけた。

あかり「使い魔さん! あかりのお話を聞いてくれないかな!?」

使い魔「…………」

使い魔はあかりに気付き白く丸い体をあかりの方に向け、あかりを見ているようだった。

あかり(あかりを見てるんだよね… 何にもしてこないし、もしかしたら…)

あかり「お話を聞いてくれるのかな…?」

使い魔「…………」

使い魔はあかりを見たままふわふわと宙を漂っている、特に反応も無かったがあかりは使い魔が話を聞いてくれるものだと思いさらに使い魔に語りかける。

あかり「…お口もないししゃべれないのかな? でもこうやって居てくれるってことはお話を聞いてくれるんだよね?」

使い魔「…………」

あかり「うぅ… 反応が無いのが不安だけど…」

あかり「あ、あのね、あかりは使い魔さんや魔女さんに酷いことするつもりなんてないんだよ。ただ、あかりに魔女さんが持ってるグリーフシードを分けてもらいたいなって思ってここに来たんだ」

使い魔「…………」

あかり「だからあかりは魔女さんとお話がしたいんだけど、魔女さんの場所に案内してもらうことってできないかなぁ?」

使い魔「…………」

あかり「うぅ… 聞いてくれてるのかなぁ………」

あかり「…えっ?」

あかりが次に気が付いたときには、周りに白い使い魔が数十体いて、あかりは取り囲まれていた。

あかり「あ、あれれ? 使い魔さん、お友達を呼んだの?」

使い魔「…………」

あかりが周りの使い魔を見ると、使い魔たちの背後から鉄線が伸びてきて徐々にあかりに近づいていく。

あかり「あ、あかりはお話を…」

あかりが言葉を発すると鉄線が一斉にあかりに向かい襲い掛かった。

あかり「き、きゃあああ!?」パァァァァァ

あかりが叫び、反射的に変身をして数日間練習をしていた時間停止の魔法が発動する。
停止した時の中であかりはギリギリまで迫った鉄線の先についているハサミを見て顔を青ざめ、使い魔から逃げるように距離を取り物陰に隠れ時間停止を解除した。

使い魔「!?」

あかり(はぁっ… はぁっ…)

あかり(うぅぅ… どうしてぇ… お話できないのぉ…?)

あかり(使い魔さんとお話できないんじゃ、魔女さんとも…)

あかり(うぅぅ… まだ、わからないし… 魔女さんと会って駄目だったら今みたいに逃げよう…)

使い魔はあかりを探し、あかりが隠れた物陰に近づいてきたところであかりは再び時間停止を行い魔女を探すために停まった時の中を動き始める。
そして暫く使い魔に見つからないように動きながらあかりは蝶の模様が描かれた扉の前に辿り着く。

あかり「ここは…」

あかり「…………」ガチャッ

あかりは恐る恐る扉を開くと、その先には蛞蝓のような胴体に蝶の羽を生やした魔女が部屋の中央に蠢いていた。

あかり「」

あかりは言葉も無く魔女を見て立ち尽くす。
しばし呆然と立ち尽くしていたあかりだったが、自分が今入ってきた扉がバタンと閉まり、魔女がうめき声を上げながら動き出したところであかりは我に帰る。

あかり「えっ? ま、まって! 魔女さん! あかりは………」ガシッ

あかり「きゃあああああああああああ!?」

いつの間にかあかりの足元に蝶のような影が纏わり付いていて、その影は魔女の触手となりあかりの足に絡みつきあかりを宙に持ち上げる。

あかり「お話をっ、聞い… きゃああ!?」ガァン

あかりはそのまま振り回され、壁に叩きつけられた。

あかり「いぎっ!! いだぁ…」

あかり「げほっ… ま、魔女さん… あかりは魔女さんに何もしないよ…」

あかり「魔女さんもキュゥべえに騙されて、怒ってるんだよね…?」

あかり「でも、こんなことやめようよ、あかりとお話をしようよ…」

あかり「悪いことをしちゃ駄目だよ… だから………」

あかりが逆さづりになった状態で魔女に語りかけ続けていたが、あかりに対する返答はあかりを地面に叩きつける行為だった。

あかり「あぎっ!?」ガァン

再び宙吊りにされたあかりだったが、魔女に向かって語り続ける。

あかり「ま、まじょさん… あかりは… おはなしを…」

あかり「ぎっ!?」ガァン

再びあかりは叩きつけられる。

あかり「………あ、かり…は、なにも…しない…よぉ…」

あかり「」ガァン

あかりが話しては魔女があかりを壁や地面に叩きつける、数度それが繰り返されたところであかりは説得どころか話すら通じないと理解した。

あかり(お話… できない…)

あかり(このままじゃ… あかり… 死んじゃう…)

あかり(逃げないと… 魔法を………)

あかりが時間停止魔法を使用し時が停止する。

しかし、魔女は停止した時間の中、あかりを壁にたたきつけた。

あかり「げほっ!?」ガァン

あかり「な、なん…で……?」

魔女は困惑しているあかりを幾度も叩きつけ、あかりが弱りきったことを確認したのか宙に吊り上げたまま、頭の近くまで持っていき、口を大きく広げあかりを飲み込もうとする。

あかり(………やだ)

あかり(………あかりは、みんなをたすけないと…)

あかり(………こんなとこで死んじゃうなんてやだよ…)

魔女があかりを飲み込もうと触手をあかりの足から離した瞬間、魔女の全ての動きが停止する。

あかりは魔女の口を外れ、そのまま地面に落ちていく。

そして、地面に叩きつけられ、あかりの足の骨が砕けた。

あかり「いぎぃっ!? いだぁぁぁ」

あかり「いだぃぃぃ… うぅぅぅ…」

あかり「………いだいけど、あのときの痛みに比べたら………」

あかり「うごけるもん……… まだうごけるもん…」

しばらく痛みにもだえていたあかりだったが、前の世界で経験した痛みよりも数段弱い痛みにへこたれることなく動き始めた。

あかりの足は砕け、重症といえる状態だったが、前の世界で身体中の骨を粉砕される経験をしたあかりは痛みというものにかなりの耐性が付いてしまっていた。

あかりは芋虫のように這いずりながら魔女の部屋の扉まで辿り着き、扉を開ける。
そのまま、来た道を這いずって結界の出口に向かい始めた。

あかり「お話… できなかった…」ズリズリ

あかり「魔女さん… とっても怖かった…」ズリズリ

あかり「どうしたらいいの… あかりもあんな風になっちゃうの…」ズリズリ

あかり「怖いよ… 怖い…」ズリズリ

あかり「ううぅぅぅ… 違うよ… あかりはみんなを助けるんだ…」ズリズリ

あかり「みんなを助けて… あんなことにならないように…」ズリズリ

あかり「あかりが… みんなを… 大好きなみんなを…」ズリズリ

あかり「あ… ひかり…」ズリ

あかり這いずり続け、魔女の結界の入り口まで戻ってきていた。
外の光を見て手を伸ばし、あかりは結界から吐き出された。

あかり「そと… 助かったの…?」

あかり「あぅ…」

あかりは外に出たことによって緊張が切れて、今まで使っていた時間停止も同時に解除された。

あかり(いしきが…)

あかり(………あれ? あれって…)

あかり(ゆい…ちゃ…ん……)

あかり「」ガクッ

あかりは魔女に受けた攻撃やずっと使っていた魔力の消耗などで緊張の糸が切れたと同時に意識を失ってしまう。

あかりが意識を失う前に見た光景は、買い物袋を落として真っ青な顔をして走って来る結衣の姿だった。

3話終わり。

4話


あかり「ん…」

あかり「あれ…? ここは?」

結衣「あかり!! 大丈夫か!?」

あかり「結衣ちゃん? あれ?」

結衣「心配したんだぞ!? あんなに酷い怪我で… まだおかしなところは無いか!?」

あかり「怪我…? あ、ああ………!! あかりは魔女さんにやられて… それで…」

あかりは朦朧とした意識がはっきりしていき、結衣の家に居ることに気が付いた。
そして、自分の身体を見て違和感を覚える。
魔女に痛めつけられ、身体中に怪我を負っていたはずが、自分の身体を確認してみても怪我らしい怪我はひとつも無かったからだ。

あかり「…どうして? 怪我してない? どこも痛くないし… なんで?」

結衣「よかった… その様子なら大丈夫そうだね」

QB「だから言ったじゃないか、彼女の怪我は全て治っているって」

あかり「!?」

結衣「うん… でも心配だったからさ…」

あかり「な、なんで…?」

結衣「? どうしたのあかり?」

あかり「なんで、キュゥべえが…」

QB「…僕の名前を知っているのかい?」

結衣「やっぱり、この子があかりの言っていたキュゥべえなんだな………」

あかり「まさか… まさか………」

あかりは今起きている状況を理解し、一つの結論に到達してしまう。
結衣の部屋にQBがいて、さらに自分の怪我が治ってしまっている、そして結衣が浮かべている安堵の顔と若干気まずそうな顔。

あかり「結衣ちゃん… まさかあかりの怪我を願い事で…?」

結衣「うん」コクン

あかり「な、なんで!? 魔法少女になっちゃだめだって言ったのに!!」

結衣「…あんなあかりの姿を見て放って置くことなんてできないよ」

あかり「あかりは平気だよ! ちょっとの怪我なんだから我慢すればいいだけだったのに!!」

結衣「ちょっと? ちょっとなわけないだろ!? お前、全身ボロボロで足なんかもう酷い状態だったんだぞ!?」

あかり「あぅ… そ、それでも…」

結衣「それに… あの時、わけのわからないところに閉じ込められて、魔女に襲われたんだよ…」

あかり「え…」

結衣「あかりを背負って逃げてたけど、追い詰められたときにこの子が現れたんだ… あかりの話を聞いてたからなんとなくこの子がキュゥべえだって言うのはわかったよ」

結衣「だけど、あかりも助けられて、あの魔女をどうにかする方法なんてあの時はひとつしかなかったんだ」

あかり「そんな…」

二人の会話の途中にそれまで傍観していたQBが割り込んできた。

QB「…どうやら君たちは魔法少女について色々知っているみたいだね」

あかり「キュゥべえ…」

QB「赤座あかり、君の事はある程度調べさせてもらったけど、君は一体何者なんだい? 何故君は魔法少女になっているんだい? そして、何故僕のことを知っているのかな?」

あかり「あかりは未来からきたから、キュゥべえのことは全部知ってるんだよ!」

QB「…なんだって?」

あかり「キュゥべえがみんなを魔女さんにしようと考えてることは知ってるんだから! 絶対にそんな事させないんだからね!」

QB「魔法少女が魔女になることを知っているのか…」

あかり「そうだよ! あかりはそんな事にならないように未来から来たんだから、キュゥべえもみんなに近寄らないで!」

QB「…みんなね、そのみんなって一体誰なんだい?」

あかり「っ! 教えないよ!!」

QB「残念だ」

あかりは結衣を守るようにQBを強い視線で威嚇し続けた。
QBは何度か探るような質問をしてきたが、あかりがその質問を全て跳ね除け、QBもこれ以上情報を聞き出せないと判断し結衣の家から姿を消した。

その後、あかりと結衣は再び話し始めた。

結衣「あかり… やっぱり、あかりの言ってたことは全部本当だったんだな」

あかり「うん…」

結衣「悪かったよ、あんなに言ってくれたのに魔法少女になってしまって…」

結衣「でもさ、大丈夫だよ。あかりも魔法少女なんだろ? 私も一緒に京子やちなつちゃんを守ればいいんだよ」

あかり「…駄目だよ、結衣ちゃんが危ない目にあうなんて」

あかり「あかりが全部何とかするから、結衣ちゃんは何もしなくていいから!」

結衣「………あかり?」

あかりは恐怖していた、結衣が魔法少女になってしまったことによって、前の世界のように結衣が狂ってしまうのではないかと、最初の世界のように魔女に殺されてしまうのではないかと。

結衣「私は大丈夫だって、それに私強いんだぞ? 魔女だって…」

あかり「駄目なの! 結衣ちゃんはあかりが守るから!」

結衣「あかり… どうしたんだよ? 守るって言ったってあかりが魔女を何とかできるなんて思えないぞ…? それなら私と一緒に魔女を…」

あかり「大丈夫だから!! 魔女さんもあかりが説得してグリーフシードを分けてもらうから!」

結衣「説得って… あかり、お前まさか、あんなのを相手に話し合いをしようとしてたんじゃ…?」

あかり「今回は駄目だったけど、何度もお話すれば魔女さんもあかりの言葉を聞いてくれるよ… だから…」

結衣「…………」

結衣(あかり… あんな化け物と話し合いなんて… それであんな怪我を負って…)

結衣(駄目だ、あかりをこのまま一人にしておいたら魔女を説得しようとして殺されてしまう…)

結衣(やっぱり私が何とかしないと)

結衣(まずはあかりを納得させよう… 魔女を説得しようなんて考えないように…)

結衣は必死に語りかけてくるあかりに言葉を紡ぎ始めた。

結衣「…説得なんてできないよ、あんなの、あんな化け物」

あかり「結衣ちゃん… 魔女さんはキュゥべえに騙されちゃった女の子なんだよ…?」

結衣「………わかってるさ、だけどあかりをあんな目にあわせるような奴に同情なんてしないよ」

あかり「あ、あれは、あかりが悪かったの… 魔女さんを説得できなかったあかりが」

結衣「あかりは何も悪くないさ、ただああなってしまったらもうどうしようもないと思うんだ」

あかり「そんなこと…」

結衣「…………」

結衣(…ちょっと卑怯かもしれないけど)

結衣「…それじゃあ、また魔女と会って説得しようとしてできなかったらどうするの?」

あかり「そ、それは…」

結衣「説得できなくてあかりがまた重症を負ったら、私はどうすればいいの?」

あかり「うぅ…」

結衣「それであかりが死んじゃったら、私はみんなに何て言えばいいんだよ?」

あかり「…………」シュン

結衣「…ゴメン、あかりを責めるつもりじゃないんだ… だけど、わかってくれよ。私もあかりが心配なんだよ」

あかり「うん…」

結衣「後、これ」スッ

結衣はポケットから黒い宝石を取り出した。

あかり「こ、これって、グリーフシード? ゆ、結衣ちゃん、まさか!?」

結衣「うん、あそこにいた魔女を倒して手に入れたんだ」

あかり「そんな…」

結衣「あかり… あんなのを相手に話し合いなんて無理だよ…」

結衣「たとえキュゥべえに騙されて魔女にされた子だとしても、あんなふうになってしまったらどうしようもないよ…」

あかり「でも… でも… うぅぅぅ…」

あかりは俯き泣き始めてしまった、結衣もあかりが泣く姿を見て自分も泣きそうになるが必死にこらえてあかりを抱きしめる。

あかりは結衣に抱きしめられながら、泣きながら考える。

あかり(あかりのせいだ…)

あかり(魔女さんのところに行ったのはあかり、怪我したのもあかり、それに結衣ちゃんを巻き込んでしまって…)

あかり(あかりが魔女さんのところに行こうだなんて思わなければ結衣ちゃんは…)

あかり(あかりのせいで結衣ちゃんは魔法少女になって魔女さんもその手で…)

あかり(………魔女さん)

あかり(…………)

あかり(うぅぅ…)

あかり(うぅぅぅぅぅ………)

あかり(やっぱり…)

あかり(やっぱり、結衣ちゃんを戦わせることなんてできない…)

あかり(あかりのせいで魔法少女になっちゃった結衣ちゃんを戦わせることなんて…)

あかり(あかりが一人で、魔女さんを説得………)

あかり(ううん… 次あかりが怪我をしちゃったら結衣ちゃんは絶対に魔女さんをやっつける為にまた戦っちゃう…)

あかり(………うぅぅぅぅ)ポロポロ

あかり(…………)ポロポロ

あかりは結衣の胸に顔を埋めて、酷い泣き顔で一つの決断をする。

あかり(ごめんなさい… あかりは悪い子です…)

あかり(あかりのせいでこんなことになったのに、あかりは酷いことを考えています…)

あかり(でも、結衣ちゃんを危険な目にあわせたくないんです…)

あかり(だから… だから、ごめんなさい、あかりは魔女さんをやっつけます…)

あかり(許してなんて言いません… あかりを恨んでください…)

あかり(ごめんなさい… ごめんなさい…)

あかりは魔女に対して謝り続けた、心の中で長い時間謝り続けていた。
謝り続け、魔女を自分の手で倒すと決意し顔を上げ、結衣に向き直った。

結衣「あかり、泣き止んだ………? あかり…?」

あかり「結衣ちゃん、やっぱり結衣ちゃんは戦っちゃ駄目だよ。あかりが全部何とかするから」

結衣「お、おい、またそんな事を言って…」

あかり「あかりが魔女さんをやっつけるから」

結衣「え…?」

あかり「だから、大丈夫。結衣ちゃんの分のグリーフシードもあかりが手に入れてくるから」

結衣「そんな事言ったって、あかり… お前が戦いなんて…」

あかり「…見てて、あかりの魔法を」

あかりはそう言うと魔法少女に変身し、時間停止魔法を使う。
そして、止まっている結衣に触れる。

結衣「………? あれ? あかり、今そっちに…」

あかり(やっぱり… あかりが触れたらこの止まった時間の中に入ってこれるんだね…)

あかり(だから、あの魔女さんも…)

あかり「これがあかりの魔法だよ」

結衣「これって…? 何が…?」

あかり「見ててね」

あかりが机の上にあったリモコンを取り結衣の前まで持ってきて、それから手を離す。
結衣が落ちてくるであろうリモコンを受け止めようと手を出すが、リモコンはあかりが離した空中で止まっていた。

結衣「えっ? これは…」

あかり「これがあかりの魔法、時間停止だよ」

結衣「はぁ!? じ、時間停止って!?」

あかり「この時間停止の魔法の他にも、時間を巻き戻す魔法も使えるはずだよ」

結衣「じ、時間…」

あかり「この魔法があればあかりにだって魔女さんをやっつけることができるよ」

結衣「そ、そりゃ、こんな魔法があれば… って、そうじゃない! お前が戦いなんてできるわけ無いだろ!? さっきも魔女を説得するなんて言ってたじゃないか!」

あかり「ううん、説得はもう考えてないよ、あかりが魔女さんをやっつけるから」

結衣「そんな事言って! …あかり?」

あかり「結衣ちゃん、あかりを信じて」

結衣「あかり…」

まっすぐな目で結衣を見続けるあかりに結衣は出掛かった言葉を飲み込んでしまった。
あかりが何かを決意したことを結衣は理解してしまった、それが恐らく自分や京子たちを想っての決断だということを理解してしまい結衣はあかりに何も言えなくなってしまった。

次の日、あかりは魔女の空間に足を運んでいた。

その魔女の空間は影のシルエットしか見えない状態で、魔女の前に立つ人影が特徴のあるお団子二つからあかりだということが分かった。

あかりは既に時間停止魔法を使い、暫く無言で魔女の前に立っていた。

片手に持ったバットを持つ手はずっと震えていた。

あかりは震える手を別の手で支え、両手でバットを振り上げ、目の前の魔女に振り下ろした。

何度も何度も振り下ろしているあかりの顔から水滴のようなシルエットが振り下ろすたびに飛び散っている。

幾度と振り下ろし、魔女の頭の部分がへしゃげたところであかりは手を止め、時間停止を解除した。

すると、影の空間にひびが入り、そのひびはあっという間に全体に広がり魔女の空間は崩壊しあかりは元の場所に戻ってきていた。

荒い息をしながらあかりは傍に落ちているグリーフシードを見つけ、持っていたバットを落とし両手で包み込むように拾い上げた。

あかりは俯いたまま、グリーフシードを持って何かをずっと呟いていた。

長い間そうしていたが、あかりは顔を伏せたまま立ち上がり歩き始めた。

歩いているところであかりは顔を上げる、あかりの顔はいつもの天真爛漫な笑顔ではなく、いびつな笑顔で引きつっていた。

あかり「笑わないと… こんなのじゃ、結衣ちゃんを心配させちゃう」

あかり「結衣ちゃんが心配しないように、あかりが全部できるってわかってもらうためにも笑わないと…」

あかり「あかりが結衣ちゃんを守るんだ… みんなを守るんだ…」

結衣の家に付く頃にはあかりの表情はいつもの笑顔になっていた。

そして、チャイムを鳴らし部屋から出てきた結衣にあかりは笑顔でグリーフシードを見せて言った。

あかり「結衣ちゃん! これを見て、グリーフシードだよ! あかりが魔女さんをやっつけたんだから!」



あかりの心にまた一つ影が落ちた。

4話終わり。

5話


ちなつの家


ちなつ「もうこんな時間、そろそろ寝ないと」パタン

夜の11時を過ぎた頃、読んでいた本を閉じ電気を消そうとしたちなつは窓の外に何かがいることに気が付いた。

ちなつ「?」

ちなつ「猫…?」

QB「こんばんは」

ちなつ「!?」

QB「驚かせてしまったかな? 僕の名前はキュゥべえ」

ちなつ「キュゥべえ!?」

QB「そうだよ、僕は君にお願いがあって来たんだけど、少し話を聞いてもらえないかな?」

ちなつ(この子があかりちゃんの言ってた悪い魔法の精霊… 確かにかわいい姿をしてる)

ちなつ(お願いって事は…)

ちなつ「…お願いって、何?」

QB「うん、それはね、僕と契約して魔法少女になってほしいんだ」

ちなつ(やっぱり)

ちなつ(っていうことは、あかりちゃんの言ってたことは全部本当の事だったんだ…)

ちなつ(私達が未来で死んじゃう… 結衣先輩も… 京子先輩も…)

ちなつ(あかりちゃんの話だとこの子と契約をして魔法少女になってしまうことによって、魔女との戦いに巻き込まれて私たちは殺されちゃうんだよね…)

ちなつ(だとするともう回答はひとつしかないよね)

ちなつ「私は魔法少女になんてならないよ」

QB「…少し待ってくれないかな? 僕の話を聞いてからでも…」

ちなつ「願い事を叶えてくれるんでしょ? なんでもひとつだけ」

QB「………何故それを知っているんだい?」

ちなつ「それで魔女と戦わなければいけないんでしょ? 全部知ってるんだから」

QB「………君は色々知っているようだね、どこでその情報を手に入れたのかな?」

ちなつ「秘密」

QB「そんなこと言わずに教えてくれないかな?」

QB「それに魔法少女の契約の内容も知っているのなら、君は何か願い事は無いのかい? 僕はなんでも願い事をかなえてあげられるんだよ?」

ちなつ「しつこいよ、それに私知ってるんだよ」

QB「…まだ何を知っているというのかな?」

ちなつ「魔法少女が魔女になるこ……と………?」

QB「…………君は一体どこでそれを知ったんだい?」

QBがちなつに問いかけるが、ちなつはQBの問いに答えず思考する。

ちなつ(私達が死んじゃうって言う話が衝撃的過ぎて気が付かなかった…)

ちなつ(魔法少女が魔女になるって… あかりちゃんがお化けになっちゃうの?)

ちなつ(な、なにそれ… そんなの、そんな事…)

QB「…聞いてるのかな? 君は一体どこで…」

ちなつ「ちょっとあなた! 私に魔法少女について詳しく教えなさい!」

QB「…どういうことなんだい?」

ちなつ「あなたが女の子を魔法少女して、魔女にするって話を聞いたわ! 何でそんな事をしてるのよ!?」

QB「…君は全部知っているのじゃなかったのかな?」

ちなつ「いいから話なさい!」

QB「…やれやれ、わかったよ」

QB「君が言っているように僕は君たち人類、それも第二次性長期の少女と魔法少女の契約を行って、最終的には魔女になってもらっている」

QB「全てはね、この宇宙の寿命を伸ばすためなんだよ」

ちなつ「なによ… それ…」

QB「この宇宙全体のエネルギーは日々目減りしていく一方なんだ、そこで僕達はこの状況を打開する為にあるテクノロジーを発明したんだ。それは感情をエネルギーに変換するテクノロジーなんだけど…」

QB「困ったことに、僕達には感情というものを持ち合わせていないんだ。だから当初は失敗作かと思われたこの発明だったんだけど、君たち人類を発見したことによって話は変わったんだ」

QB「驚いたよ、全ての固体が別個に感情を持ちながら共存している世界が存在するなんて想像もしていなかったからね」

QB「それからは君たち人類と交渉をしながら、僕達の発明したテクノロジーを君たちに使用し続けてきた」

QB「それが魔法少女システムさ」

ちなつ「魔法…少女………」

QB「そうだよ、君たちの魂はエネルギー源として最適なんだ。最も効率がいいのは、君のような少女の希望と絶望の相転移なんだ」

QB「魔法少女の魂が燃え尽きるとき、魔法少女は魔女へと変化する。その瞬間に膨大なエネルギーを発生させるんだ」

QB「それを回収して、この宇宙にエネルギーを補充する、それが僕達の目的さ」

ちなつ「そんな、わけのわからないことを…」

QB「何を言っているんだい? この宇宙にどれだけの文明がひしめき合い、一瞬ごとにどれほどのエネルギーを消耗しているのか分かるかい?」

ちなつ「そんなこと知らないわよ!」

ちなつ「そんなことより、魔法少女を魔女にするなんて馬鹿なことはやめてよ!!」

QB「何を言ってるのか… そんな事できるわけないじゃないか」

QB「魔法少女エネルギーによって得られるエネルギーは破格なものなんだよ? 現状、これ以上のエネルギー回収テクノロジーは発見されていないんだ。それをやめるなんてできるわけ無いじゃないか」

ちなつ「ふざけないでよ! そんなわけのわからないことであかりちゃんが魔女になるなんて、絶対に許せないわよ!」

QB「………あかりとは赤座あかりのことかな?」

ちなつ「あ…」

QB「…やはり彼女が絡んでいたか、イレギュラーな魔法少女、未来から来た、なるほど理解できたよ…」

ちなつ「そ、そうよ! あかりちゃんが全部教えてくれたのよ!」

ちなつ「もうあなたのたくらみはばれたんだから、誰も魔法少女になることなんて無いわよ! だから魔法少女を魔女にするなんて事はやめて!」

QB「…君は赤座あかりが魔女になることが嫌なのかな?」

ちなつ「あたりまえじゃない! あかりちゃんは私の大事な友達なのよ! あなたがあかりちゃんを魔女にするなんて絶対に許さないわよ!」

QB「僕が魔女にするか… 少し違うね」

ちなつ「…どういうことよ?」

QB「魔女になるかならないかは、魔法少女次第ということさ」

QB「ちなつ、君は赤座あかりからソウルジェムの事は聞いているかな?」

ちなつ「知ってるわよ、魔法少女に変身する道具でしょ?」

QB「そうだね、その認識であっているけど、他に聞いていないのかな?」

ちなつ「…ソウルジェムに何かあるの?」

QB「………そうか、彼女はソウルジェムについてはそこまで知らなかったのか、しまったな」

ちなつ「………教えなさい、ソウルジェムについて、全部!」

QB「まいったな… 仕方ない、全部説明するよ」

QB「簡潔に言うと、ソウルジェムというのは人間の魂そのものさ」

ちなつ「は?」

QB「僕達と魔法少女の契約をする際に、君たち人間の魂を抜き取ってソウルジェムに変えているんだよ」

QB「だから、ソウルジェムというのは魔法少女の本体、魔力を効率よく運用できるコンパクトで安全な本体ということだね」

ちなつ「あの宝石が…? 本体って…」

ちなつ「ま、まってよ。ソウルジェムが魔法少女の本体って…」

QB「君の聞きたいことは、元の身体はなんなのかと言う事だろう? 今まで何度も同じ事を聞かれたよ、本当に人間というのは魂の在処にこだわるね」

ちなつ「わかってるなら答えなさいよ!」

QB「魔法少女にとって元の身体というのは外付けのハードウェアでしかないんだよ、魔女と戦う以上壊れやすい身体のままで戦ってくれなんて言えないからね」

ちなつ「そ、外付け?」

QB「そうだよ、とても便利なものだよ、心臓を破られても、ありったけの血を抜かれても、魔力で修理すればあっという間に元通りさ」

QB「ああ、そうは言っても弱点はあるんだ。ソウルジェムと外付けの身体を離しすぎると身体をコントロールできなくなるし、ソウルジェムを砕かれてしまうと流石に死んでしまう」

QB「だけどそれ以外は弱点の無い身体だね」

ちなつ「う、嘘… そんな…」

QB「本当だよ、だけどこの話をすると大抵の人間は僕達に敵意を向けてくるからいつも説明は省略しているんだけどね、説明さえ出来れば魔法少女ももっと効率よく魔女と戦えるんだけど、まあ仕方ないよ」

ちなつ「それじゃあ… あかりちゃんは…」

QB「赤座あかりがどうかしたのかな?」

ちなつ「あなた… あかりちゃんを… あかりちゃんをあんな石ころに変えたって言うの!?」

QB「僕が何かしたわけじゃないと思うんだけどな、恐らく赤座あかりは未来の僕達と契約して魔法少女になったんだろうしね」

ちなつ「同じじゃない!!」

QB「違うと思うけど… それにしても何をそこまで怒るんだい? 君自身の話でもないのにそこまで怒るなんて」

ちなつ「あたりまえでしょ!? あかりちゃんにそんな滅茶苦茶なことをしておいて… 怒るに決まってるじゃない!!」

QB「理解できないよ、今回は、時間操作能力をもった魔法少女が魔法少女候補にある程度まで魔法少女システムの内容を話してしまった場合か… 前例は0件」

QB「極めて稀な例と言えるね、とりあえず今回のパターンも一例としてデーターを残しておくから色々教えてくれないかな?」

ちなつ「…………」イライライライラ

QB「ちなつ、君は何故そこまで怒っているんだい?」

ちなつ「」プチン

ちなつは自分の中の何かが切れる音を聞いた、それと同時に目の前の白い生物に対する憎悪が心の底からあふれ出てくる。

ちなつ「…私の目の前から消えて」

QB「もう少し話をさせてくれないかな? 君が魔法少女になることでどれだけ素晴らしいことになるかも説明したいんだ」

ちなつ「早く消えて、たぶん次あなたが私を怒らせるようなことを言ったら、何をするかわかんないから」

QB「…残念だ、今日は諦めるよ、また来るとするよ」

ちなつ「二度と、私の、目の前に、現れないで」

ちなつが吐き捨てるように言うとQBは闇夜の町に消えていった。
完全にQBが消えるのを確認して、ちなつはスマホを取り出し電話をかけ始めた。

ちなつ(…私のところに来たって言う事は、たぶん結衣先輩と京子先輩のところにも行ってる筈…)プルルルル

ちなつ(結衣先輩はともかく、京子先輩は騙されてしまうかもしれないし釘をさしておかないと…)プルルルル

ちなつ(京子先輩… 早く出て…)プルルルル

京子『………はい』

ちなつ『京子先輩ですか!? …どうしたんですか? 凄いくらい声を出して…』

京子『ちなつちゃん……… あかりの言ってたこと、本当だったよ…』

ちなつ(まさか!?)

ちなつ『京子先輩、もしかしてキュゥべえが京子先輩のところに?』

京子『うん… ちなつちゃん、絶対に魔法少女になっちゃだめだよ… 魔法少女って私の思ってたものと何もかもが違ってた…』

ちなつ『…もしかして、京子先輩も魔法少女のことをキュゥべえに問い詰めたんですか?』

京子『私もって… まさか、ちなつちゃんのところにもキュゥべえが!?』

ちなつ『はい、そうです…』

京子『そっか、ちなつちゃんのところにも… なら魔女のこともグリーフシードのことも聞いたんだよね?』

ちなつ『魔女やグリーフシードですか? …まだ何か秘密があったんですか?』

京子『秘密? …とりあえず聞いたことを言うね』

ちなつと京子はそれぞれ聞いたことを話し、それぞれの内容をまとめた。
ちなつは魔法少女の本体がソウルジェムということに加え、魔法少女が魔力を使いきった時や、絶望しきった時にグリーフシードに変わり魔女になることを京子から聞いた。

ちなつ『魔力を使い切ったり、絶望したときって…』

ちなつ『こんな話、あかりちゃんにできるわけ無いじゃないですか… 自分が石ころにされたなんて知ったらそれだけで絶望しちゃいますよ…』

京子『…うん、ただでさえあかりは未来で私達が死んじゃうところを見たはずなんだ、多分あかりは過去に戻れたことで落ち着きを取り戻してるんだろうけど、これ以上なにか精神的に負荷がかかる様なことがあったらあかりは…』

ちなつ『そんなの嫌ですよ!! あかりちゃんが、魔女になっちゃうなんて!』

京子『………私も絶対に嫌だよ』

ちなつ『何か方法を… そうだ、キュゥべえに問い詰めてあかりちゃんを元に戻す方法を吐かせましょう!』

京子『無駄だったよ…』

ちなつ『え…』

京子『私、問い詰めたんだ、だけど無駄だった』

京子『むしろ私を魔法少女にするように誘導してきたんだよ、あいつは…』

ちなつ『…………そんな、それじゃあどうしようもないって事なんですか…』

京子『…………』

ちなつ『…………』

京子『考えよう』

京子『みんなで考えれば何か思いつくかもしれない… 結衣にも話してあかりを助ける方法をみんなで考えよう』

ちなつ『…そうですね、そうですよ。絶対に何か方法はあるはずです! みんなで考えれば絶対に思いつくはずです!』

京子『うん、それじゃあ今から結衣にも電話してみるよ、明日は休みだし朝から結衣の家に集まって話をしよう』

ちなつ『はい。…あかりちゃんには秘密ですよね?』

京子『うん… まずは私達で考えて、何か方法を考えよう』

京子『あかりに話すのはいい方法が見つかってからにしないと…』

ちなつ『わかりました』

京子『それじゃあ、結衣と話した後にまた連絡するよ』

ちなつ『はい、お願いします』

ちなつは京子と電話を切り、あかりを助ける方法を考え始める。
だが、10分もしないうちに京子から再び電話があり、電話をとる。

ちなつ『京子先輩? 早いですね、もう結衣先輩に話したんですか?』

京子『ちなつちゃん! 今から結衣の家に行くよ!!』

ちなつ『い、今って、もう0時になりますよ…』

ちなつ『…まさか、結衣先輩の家にもキュゥべえが?』

京子『違うんだ、結衣が、結衣がもう魔法少女になってたんだ!』

ちなつ『!?』

京子『私、話しちゃった、殆ど話しちゃったんだ』

京子『結衣もショックを受けてた、すぐに結衣の所に行かないと…』

ちなつは京子の言葉を聞くと共に部屋から飛び出し家族を起こさないように家を出て夜の町を走り始めた。

5話終わり。

6話


ちなつは走りながら京子と電話をし続けていた。

ちなつ『なんで、なんで結衣先輩が魔法少女に!?』

京子『あかりが魔女に酷い怪我を負わされたらしいんだ、それを治すために魔法少女になったって』

ちなつ『なんでそんなことにっ!?』

京子『わかんないよっ!! あっ』

ちなつは曲がり角を曲がったところで京子と鉢合わせる形となり、二人はそのまま結衣の家まで走り続けた。

ちなつ「京子先輩! 結衣先輩はどんな感じだったんですか!?」

京子「私がソウルジェムの話しをして、あかりを助ける方法を一緒に考えようって言ったところで電話を落としちゃったみたいなんだ、それからは連絡がとれないんだよっ!」

ちなつ「そんな… まさか、結衣先輩…」

京子「ちなつちゃん、変なこと考えないで、そんなわけない、間に合わないわけ無い」

ちなつ「そうですよね… ごめんなさい、今は一刻も早く結衣先輩の元に向かいましょう」

二人は全力で走り、結衣の家に辿り着いた。

京子(お願いだよ… お願いだから最悪なことになっていないで…)

ちなつ(結衣先輩… お願いです、無事でいて…)

二人は祈るように結衣の家のチャイムを押し反応を待った。
するとすぐ結衣の声がインターホンごしに聞こえてきた。

結衣『京子… ちなつちゃんも?』

京子「結衣っ! よかった! 私だよ、ドアを開けて!」

ちなつ「結衣先輩っ!! よかった…」

インターホンが切れたかと思うとすぐドアが開き、結衣が二人を招きいれた。

結衣「…とりあえず入ってよ、多分魔法少女の話なんだろ………?」

京子「そ、そうだよ、心配したんだぞ!? あれから電話も出ないから結衣に何かあったんじゃないかって!」

結衣「ごめん… ちょっと自分でもどうしたらいいかわかんなくなってさ… 考え込んでたんだよ…」

ちなつ「結衣先輩、魔法少女になっちゃったんですよね…?」

結衣「……うん、それで京子からソウルジェムのこととか全部聞いたよ…」

ちなつ「だ、大丈夫です! みんなで考えればなんとかする方法を思いつきますよ! だからそんなに落ち込まないでください!」

結衣「落ち込んでるか… 確かに落ち込んでるよ、あかりをどうすることもできないってわかっちゃって…」

ちなつ「な、何言ってるんですか!?」

京子「そ、そうだよ! 何言ってんだよ結衣!」

結衣「………今日さ、あかりがこのグリーフシードを私に渡しに来たんだ」

ちなつ「グリーフシードですか? それが一体?」

結衣「あかり、酷い顔してたんだよ。貼り付けたような笑顔でさ… そんな顔で私にこれを渡して私の事をずっと気遣うんだ…」

結衣「結衣ちゃんは何もしないでって、結衣ちゃんはあかりが守るからって…」

結衣「あかり、私が魔法少女になったことを完全に自分のせいだって思っちゃってるんだ…」

結衣「そんな状態のあかりに、ソウルジェムの話なんかしたら… あかりは自分のせいで私が石ころにされてしまったって思い込んで本当に絶望しかねないんだ…」

ちなつ「あかりちゃん…」

結衣「だからさ… あかりを助けようと思ったら私が契約しちゃ駄目だったんだ… 私が契約して魔法少女になっちゃった時点でもう…」

京子「そんな事…」

結衣「なんでだろ… あかりを助けようって願って魔法少女になったのに、その結果があかりを追い詰めることになるなんてさ… なんでなんだよ…」

ちなつ「結衣先輩! そんな事考えないでください! 絶対に何とかする方法はあるはずです! だから…」

QB「方法なんて、とても簡単な方法があるじゃないか」

3人は突然聞こえてきた声に驚き、声の発生源に目を向けた。

京子「…………」

結衣「キュゥべえ…」

ちなつ「…あなた、言ったよね、私の前に二度と現れないでって」

QB「そうだったね、だけど君達が助けを求めているようだったから、力になれるかもしれないと思ってやってきたんだよ」

ちなつ「…………」

結衣「お前…」

QB「きちんと君たちに説明できていなかったけど、君たちの潜在能力はとてつもないものなんだ」

QB「結衣は既にこの世界でも並ぶものはいない魔法少女となった」

QB「そして、京子、ちなつ、君たちも結衣と同等の潜在能力を秘めている」

QB「君達が願い、力を解放すれば奇跡を起こすどころか宇宙の法則を捻じ曲げる事だって可能だと思うよ」

京子「!」

結衣「お前、二人にあかりを元の人間に戻すように願わせるつもりか!?」

QB「僕は一言もそんな事を言っていないじゃないか、だけどその願いなら二人が願えば間違いなく遂げられるだろうね」

結衣「お前ぇぇぇ…」

結衣は魔法少女に変身し、QBに剣を突きつける。
だが、その剣を京子が優しく触れ下に向けた。

結衣「京子!?」

京子「結衣、ちょっとキュゥべえと話をさせてほしいんだ」

結衣「…お前、駄目だって! こいつはお前やちなつちゃんを狙ってるんだぞ!?」

京子「結衣、大丈夫」

結衣「京子…?」

京子「少しだけ、確認したいことがあるんだ」

結衣「…わかったよ」

京子「ありがと、それじゃあ、キュゥべえ。ちょっと聞かせてもらうよ」

QB「なんだい?」

京子「さっきも聞いたけど、魔法少女を普通の人間に戻す方法って本当に願い以外に無いの?」

QB「そうだね、君たちが願うなら魔法少女が元の人間に戻すことも可能だろうけど、それ以外の方法なんて僕の知る限りではないね」

京子「そっか、ならさ、さっき言ってた宇宙の法則を捻じ曲げるっていうのは一体どういうことなの?」

QB「…言葉通りさ、君たちが願うならこの宇宙に存在する法則を書き換えて新たな法則を作り出すこともできると思うよ」

京子「ふぅん、それじゃあ、私が魔法少女が魔女になるって言う法則を書き換えて魔法少女は魔女になることは無いなんて願いを叶えることはできるの?」

QB「………できるだろうけど、そんな願いをかなえたら君自身はこの宇宙の法則そのものとなって、ただの概念に成り果ててしまうだろうね。そうなってしまったら君を認識するものは誰もいなくなり、誰にも干渉できなくなるだろうね」

京子「それってただの予想だよね?」

QB「………まあ、そうだね」

結衣「待てよ! 京子、お前何を考えてるんだよ!?」

ちなつ「そうですよ! そんな願い叶ったとしても、京子先輩がどうなるか分からないんじゃ!」

京子「大丈夫、ただの確認だよ。そう、確認しただけだから」

QB「…………」

京子「色々と考えさせてもらうよ、そして思いつくたびに詳しく聞かせてもらうからね、キュゥべえ」

QB「…………」

京子「それじゃあ、私たちは契約しないから、もう消えてね」

QB「…わかったよ」

京子は冷たい目でQBを見ながら、QBがいなくなるところを確認すると大きなため息をつきへたり込んだ。

京子「はぁ……… 何とか追い払えたか………」

ちなつ「京子先輩…?」

京子「あはは、あいつと最初に話しててわかったんだよ。あいつ都合の悪いことになると急に喋らなくなったり話を逸らそうとしてくるんだ」

京子「ああやってあいつの都合の悪い話をしておけば追い払えるって思ったけどビンゴだったね」

結衣「そうだったのか…」

京子「うん、後さ、あいつと話してて思ったんだけど、結衣もあかりも助けれる方法ができるかもしれない」

結衣「え?」

京子「願い事だよ、何かいい願い事を考えてあいつを出し抜くって事さ」

結衣「…そんな事、一体どういう願いで」

京子「さっき言った魔女にならなくするって願いは結構いい線行ってると思うんだ。だけど、あいつのことを信じるわけじゃないけど、私が消えちゃうなんて嫌だからね、何か別の願いにしようと思う」

京子「それにあいつがそんな願いを簡単に叶えさせるとも思わないから、あいつが思いもよらない願いで出し抜いてやろうと思ってるのさ」

京子「だからさ、結衣も一緒に考えようよ。みんなが助かるいい方法を」

結衣「…そんな方法、思いつくかな?」

ちなつ「…………絶対に思いつきます」

結衣「ちなつちゃん?」

ちなつ「だって、そうじゃないですか、なんでも叶える事ができる権利を2回まで使うことができるんですよ? それなら、方法はいくらでも思いつくはずです!」

結衣「…私が魔法少女にならなかったら3回だったんだよな………」

京子「違うって! 結衣はあかりを助けた、この中の誰かが酷い怪我をしたら私もちなつちゃんも迷わずそうするから結衣が自分を責める必要なんてない!」

結衣「京子…」

ちなつ「そうですよ、だから自分を責めないでください」

結衣「ちなつちゃん…」

結衣「二人ともありがとう… 正直救われたよ、二人が今来てくれてなかったら私…」

京子「結衣が困ってたらいつでも私は駆けつけるぜ!」

ちなつ「わ、私もそうですよ! 結衣先輩が困ってたらいつでもどこでもこのチーナが駆けつけて悩みを聞くんですからっ!」

結衣「京子… ちなつちゃん…」

結衣は二人に抱きつき泣き始めた、普段は絶対に見せない泣き顔に二人とも驚いていたが優しく抱きとめ結衣が泣き止むのを待った。
そして、結衣が泣き止んで顔を上げて二人に話し始めた。

結衣「二人とも… あかりを今からここに呼ぼう」

ちなつ「あ、あかりちゃんをですか? あかりちゃんに真実を話しちゃったら…」

京子「そ、そうだよ! あかりにはいい方法が思いついてから話さないと! あかりが真実を知っちゃったら!」

結衣「ある程度は伏せるよ、ソウルジェムのこととかは流石に聞かせられないと思う」

結衣「だけど、今あかりを一人にしておくことは駄目だと思うんだ。私が魔法少女になっただけでこんなに思い悩んだのに、私達が死んでしまった未来からやってきたあかりがどれだけ思いつめているのか想像もできない」

京子「うっ… そ、そうだよね…」

結衣「あかりも一緒にみんなで考えよう、あいつを出し抜いてみんなが助かる方法を」

京子「…うん、そうしよう、冷静に考えたらあかりを仲間はずれにするなんて何考えてたんだよ私は…」

ちなつ「そうですね… あかりちゃんが一番辛いはずなのに、あかりちゃんだけ一人ぼっちにするなんてなんてこと考えてたんですかね…」

結衣「決まりだね」

結衣「とりあえず、今からあかりの家に行ってくるよ、寝てると思うけどあかりを抱きかかえて戻ってくる」

京子「ゆ、結衣さん、かなりアグレッシブですな…」

結衣「今日のあかりはそれだけ心配になる顔をしてたってことさ、あの場であかりを引きとめなかった後悔もあるからね…」

結衣「迷ってたら駄目だって分かったんだ、もう私は迷わないよ」

結衣はそういって変身し、窓を開け夜の町に飛び出していった。

6話終わり。

7話


あかりの部屋


あかりは結衣にグリーフシードを渡した後、家に帰り食事も取らず真っ暗な部屋で震えていた。
あかりの様子を心配したあかねだったが、あかりは大丈夫と言い切り一人で部屋に閉じこもり震え続けていた。

あかり(大丈夫、大丈夫、大丈夫、結衣ちゃんはこれで大丈夫…)

あかり(あとは今日と同じように魔女さんをやっつけてグリーフシードを結衣ちゃんにあげて、京子ちゃんとちなつちゃんが魔法少女にならなければ大丈夫…)

あかり(前の世界みたいにみんな死なない… みんな笑っていられる…)

あかり(あかりが魔女さんをやっつけて、グリーフシードを手に入れ続ける限り…)

あかり(あかりはできた。魔女さんをやっつけることができた…)

あかり(これからもそれを続けていくだけ…)

あかり(あかりにならできる… ううん、あかりがやらなきゃいけない…)

あかり(みんなを守る為に… みんなの為に…)

あかり(みんなの………)

あかり(…………)

あかり(…………また考えちゃった)

あかり(…本当にあかりは悪い子だ)

あかり(…魔女さんを殺したことをみんなの為だから仕方ないって考えてる)

あかり(…みんなのせいにしてあかりがやったことから逃げてる)

あかり(…そんな事考えちゃいけないのに)

あかり(…最低だよね)

あかり(…ほんと最低)

あかり(最低で、自分勝手で、とっても悪い女の子…)

あかり(…………)

あかり(…そうだよね、あかりはもう悪い子になったんだもん)

あかり(あかりは悪い子だから、魔女さんを殺すんだ…)

あかり(騙されて魔女さんになりたくなかった子達を自分の為に殺すんだよ…)

あかり(あかりは悪い子なんだ… 悪い子じゃないといけないんだ…)

あかり(……悪い子のあかりがかわいそうな魔女さんを… 殺していく…)

あかり(…あかりは悪い子なんだから、魔女さんを殺したって平気なんだ…)

あかり(あかりは悪い子… あかりは悪い子… あかりは悪い子…)

あかり(あかりは………)

あかりは魔女を手にかけたことによって、精神的に追い詰められていた。
思考は負の螺旋に陥り、あかりは徐々にその心をすり減らしていった。

そして、悩み・苦しむたびにあかりの心に暗い影が覆う。
純粋で優しい少女は、その純粋さ故に罪を背負い押しつぶされる寸前だった。

だが、押しつぶされる寸前で、あかりの前に白い生物が現れる。

QB「赤座あかり、君と話がしたいんだけど、大丈夫かな?」

あかり「………キュゥ………べぇ………」

QB「話を聞いてくれそうだね」

あかり(………キュゥべえ)

QB「君は自分が未来から来たと言っていたけど、結衣・ちなつ・京子と話をしてそれが正しいと判断できたよ」

あかり(………みんなと話した?)

QB「君はとても厄介なことをしてくれたね。君が魔法少女について彼女達に話したことによって彼女達… 特に京子は魔法少女になる際の願いを使って何かしようと考えているようなんだ」

あかり(………京子ちゃんを… みんなをまた魔女にする気なの……)

QB「僕達としては魔法少女システムの根底を覆されるような願いを願われるのは遠慮してもらいたくてね、そこで君にお願いがあって来たんだよ」

あかり(………そんなの絶対に許せない… 絶対に… 許さない…)

QB「赤座あかり、君が魔女になるか、もしくは死んでくれないかな? そうすれば彼女達は君を助ける為に願い魔法少女になってくれるはずなんだ」

あかり(………何を言ってるの)

QB「京子とちなつが魔法少女にさえなってくれれば後はもう大丈夫、僕が責任を持って彼女達を魔女にして、回収した膨大なエネルギーは確実にこの宇宙に補充することを誓うよ」

あかり(………みんなを魔女になんて絶対にさせない… 絶対に…)

QB「だから安心して死んでくれるといいよ。ああ、心配しなくても彼女達が魔女になった場合、この星は高確率で消滅するだろうから彼女達も死ぬことには変わらないし、君だけに死んでくれといっているわけじゃないからね」

あかり(………)プチン

その時、あかりの心の中で何かが弾け飛んだ。
あかりがQBに抱いた憎悪は一瞬で殺意にまで膨れ上がり目の前にいたQBを掴みその首を絞めながらあかりは小さくQBに言った。

あかり「なんで… なんでそんな事言うの…?」

QB「苦しいよ、一体どうしたんだい? 君は未来から来たんだろう? 僕達の目的を知っているはずだろう?」

あかり「そんなの知らない…」

QB「…やれやれ、飛んだ誤算だな、僕達の目的も知らない状態だったなんてね。ソウルジェムのことと言い、君は殆ど何も知らない様だね」

あかり「…あかりが何を知ってるかとか知らないとかはもうどうだっていいよ」

あかり「……分かったことがひとつだけあるんだ」

QB「?」

あかり「なんでこんなことに気が付かなかったんだろう」

QB「何を言っているんだい?」

あかり「魔女を生み出すのはキュゥべえ、あかりたちに酷いことをするのもキュゥべえ」

あかり「それならキュゥべえがいなくなれば全部解決するよね?」

QB「………赤座あかり、待っ…」

あかり「死んじゃえ」

ゴキンと音が鳴りQBの首の骨が折れる。
あかりはそのまま力を入れ続けQBがピクリとも動かなくなるまで首を絞め続けた。
そして動かなくなったQBはあかりの手から放れポトリと床に落ちた。

あかり「…………」

あかり「……あかり、魔女さんだけじゃなく、キュゥべえまで殺しちゃった」

あかり「…でも、これでもうみんなが魔法少女になることはないし、他の子たちも騙されて魔女になることはないよね………」

あかり「…これでよかったんだよ、これでもう本当に大丈夫…」

あかりが暗い目をして窓の外の月を見ていると、空から小さな影が近づいてくる事に気が付いた。
小さな影はあっという間に大きくなり、その影はあかりの部屋のベランダに降り立った。

あかり「…結衣ちゃん?」

結衣「あかり! 遅い時間にごめん………」

結衣「えっ…?」

結衣はあかりの足元にピクリとも動かないQBを見つけ怪訝な顔をする。

結衣「お前! あかりの所にも来ていたのか!?」

結衣「………? おい、聞いているのか?」

あかり「結衣ちゃん、大丈夫」

結衣「あかり?」

あかり「もう死んでるから」

結衣「え?」

あかり「あかりが殺したから、もう誰も魔法少女になることもないし魔女にされることもないから大丈夫だよ」

結衣「あ、あかり? お前、何を…」

あかり「結衣ちゃん安心して、あかりがちゃんとグリーフシードも持ってくるからね。一生使い切れないくらいの数を持ってくるから結衣ちゃんは何もしなくて大丈夫なんだからね」

結衣「あ、あかり、どうしちゃったんだよ? 何言ってるんだよ?」


結衣はあかりの出す雰囲気に呑まれ戸惑っていた。
あかりは暗い笑顔で結衣に話し続ける、その様子を見た結衣はあかりの異常を感じ取り有無を言わさずあかりを抱え自分の家に飛び立った。

あかりはされるがままになっていたが、結衣の身体の温もりと、全てが終わったという安心感から結衣の腕の中で浅い眠りに付いた。


あかりの心にまた一つ闇が覆いその心を包み込んだ。

7話終わり。

8話


どこかの町


摩天楼がそびえ立つ夜の町、高い塔の上で一人の魔法少女と白い生物が会話をしていた。

魔法少女「はい、キュゥべえ。グリーフシードよ」

QB「ありがとう」キュップイ

魔法少女「でも、どうしたの? 急に使い切る寸前のグリーフシードがあるならたくさんほしいって言うなんて」

QB「気にしないでよ、君だってギリギリまで穢れを溜め込んだグリーフシードを持っていて、グリーフシードから魔女が再び孵化すると困るよね?」

魔法少女「まあ、それもそうね…」

QB「うん」

魔法少女「それじゃあ、私はもう少しパトロールを続けるわね」

QB「わかったよ」

魔法少女「あ、そうそう、今度はもっと早い時間に来てね。そしたら私の家でお茶をしましょう」

QB「わかったよ、それじゃあ僕はもういくよ」

魔法少女「ええ、それじゃあまたね、キュゥべえ」

魔法少女の前からQBは姿を消し、QBは七森市に向かい走り始める。

QB「七森市の固体は赤座あかりに破壊されてしまったか」

QB「京子も何を考えているかわからないし、本当にイレギュラーだらけで困るよ」

QB「もし京子が魔法少女が魔女にならなくなるという法則を作り出してしまったらこの宇宙全体に影響が出てしまう…」

QB「やはり、彼女達には考えさせる時間を与えず、一番単純な方法で魔法少女になってもらうとするか」

QB「そのためにもまずは魔法少女となっている結衣とイレギュラーの赤座あかりを京子とちなつから引きはなさないといけないな」

QB「さて、どういった方法で彼女達を引き離すとするか…」

結衣の部屋


京子「はやっ!? ほんとにあかりを連れて来たんだ… って、結衣?」

ちなつ「おかえりなさい、結衣先輩? どうしたんですか?」

結衣は眠っているあかりを抱きかかえたまま京子とちなつを交互に見て、声を絞り出すように話し始めた。

結衣「あかりが… あかりが変なんだ…」

京子「変って? 一体何があったの?」

結衣「あかり… キュゥべえを… 殺しちゃったみたい」

京子「は?」

結衣「あかりの家に行って、あかりの足元にキュゥべえがいたんだ。最初、私達がされたようにあかりに何かしてるんじゃないかって思ったんだけど、キュゥべえは全く動かなくって… それであかりは自分がキュゥべえを殺したって…」

ちなつ「ま、待ってくださいよ、あかりちゃんですよ? あかりちゃんがそんな事できる訳ないじゃないですか!」

京子「そ、そうだよ結衣、確かにあいつはムカつくけどいくらなんでも殺すなんて… それもあかりが? 結衣の聞き間違いじゃ?」

結衣「私だってそう思いたいよ! だけど、だけどあかりは間違いなくそういってたし、あのときの様子も嘘を言っている感じじゃなかった。何よりもあかりの足元でキュゥべえが死んでたのにあかりは泣きもせずにただ見てただけだったんだよ!」

結衣「普段のあかりだったら、自分の近くで生き物が怪我してたり、ましてや死んでたりしたら泣き崩れててもおかしくないのに!」

ちなつ「ゆ、結衣先輩落ち着いて…」

結衣が声を荒げながら二人に説明していると、その声に反応してあかりがうっすらと目を開けた。

あかり「………あ」

結衣「あ…」

あかり「結衣ちゃん、京子ちゃん、ちなつちゃん…? あれ? あかり何で結衣ちゃんに抱っこされてるの?」

あかり「あれ? ここあかりの部屋じゃない? あれれ?」

結衣「あ、ああ、ごめんなあかり、私があかりを連れて来たんだ、ここは私の家だよ」

あかり「え? そうなの?」

結衣「ああ…」

あかり「そっかぁ、でも、なんで? 外も真っ暗で… ええっ!? 今夜中の1時なの!? ゆ、結衣ちゃん、なんでこんな遅い時間に…?」

結衣「…あかりも一緒に魔法少女のことで話し合おうと思ってたんだ」

あかり「…魔法少女のこと?」

結衣「そ、そうだよ」

結衣が魔法少女の話をし始めた途端、あかりの雰囲気が変わり結衣は少したじろいだ。
京子とちなつもそんな様子を見て先ほど結衣が言った言葉を再び思い出した。

あかり「…大丈夫だよ。もう大丈夫になったんだから」

京子「だ、大丈夫って?」

あかり「…あかりがキュゥべえを殺したから」

ちなつ「」

京子「あ、あかり、冗談にしてはなかなかリアルな演技をするようになったな? でもさ、ほら、ちょっとみんなで話し合いたいしそろそろ冗談は終わりにしてさ…」

あかり「…冗談なんかじゃないよ」

京子「うっ…」

結衣「な、なんで? 何であかりが? お前が生き物を殺すなんて、そんな事…」

あかり「…………」

あかり「…だって、あかり気付いちゃったんだもん」

あかり「キュゥべえがいなくなればみんなが魔法少女にならなくても済むし、キュゥべえに騙されちゃう女の子もいなくなるでしょ?」

あかり「もう絶対にみんなを危険な目に合わせないって決めたの」

あかり「だから、あかりがキュゥべえを殺して全部終わらせたの」

結衣「だ、だからって言っても… そんな事をなんであかりが…」

あかり「あかりがやらなきゃいけなかったからだよ」

結衣「そんな事ない………」

あかり「あるのっ!」

結衣「っ!?」

あかり「最初の世界であかりはみんなに助けられて… ただ守られるだけであかりは何もできなくって…」

あかり「最期にはみんなが死んじゃって… あんな酷い死にかたで…」

あかり「前の世界なんてあかりが馬鹿なせいで… 最初の世界で起きた事を夢だ何て思ってみんなを見殺しにしちゃった…」

あかり「京子ちゃんもあかりの目の前で… 結衣ちゃんもおかしくなって… ちなつちゃんなんて…」

あかり「あかりがちゃんとしてたら! あんなことにならなかったのに!」

京子「あかり…」

あかり「あかりは決めたんだよ… 絶対にみんなを守るって、あかりがみんなを守ってみせるって!」

結衣「…そんな」

あかり(そう、みんなを守るためなら、あかりはなんでもできる……… どんな事だって………)

あかり(こうやってみんなの顔を見てよくわかったよ… キュゥべえを殺したことも、魔女さんを殺したことも間違って無かったって…)

あかり(みんなが生きている、みんなが元気な姿でここにいる)

あかり(あかりはもう迷わない)

あかり(みんなの幸せな日々を守るためにも、あかりはこれからも戦い続ける)

あかり(キュゥべえはもういない、だけど魔女さんはいる)

あかり(魔女さんがみんなを傷つけるかもしれない…)

あかり(そうさせないし、そうならないようにあかりは魔女さんも殺し続ける…)

あかり(あかりはできる… あかりがやるんだ…)

QBを殺した時にあかりはあるものを捨てた。
あかりは誰にでも分け与える慈愛の心を捨て去った。

だが、その代わりにあかりは3人をなんとしても守るという強い意志を手に入れた。
3人の姿を見てあかりは迷いを断ち切る。
3人を守るためなら、あかりは自分の手を汚し続けると決意した。

結衣「…………」

そんなあかりを見て、結衣は後悔する。
あかりが結衣にグリーフシードを渡したときに、結衣はあかりの異常を感じ取っていたが、あかりが必死に自分を気遣っていることとあかりが忠告してくれたにもかかわらず魔法少女になってしまったことによる気まずさであかりをそのまま帰してしまった。
再び結衣があかりを見たときにはあかりは思いつめ、自分達を守る為に自分の手を汚してしまっていた。

あかりが変わってしまったことを全員が感じ取っていたが、その中でも結衣はあの時引きとめてあかりと話していればこうはならなかったのではないかと思い目を伏せる。
そして結衣はあかりを無言で抱きしめ頭を撫で始めた。

結衣「…………」ギュッ

あかり「…結衣ちゃん?」

結衣「ごめんあかり… そこまで思いつめていたなんて…」

あかり「…なんで結衣ちゃんが謝るの?」

結衣「…だってさ、私あかりが無理してるのに気付いてたのにさ、あかりに何もしなかった… 何の言葉もかけてあげられなかった…」

あかり「あかりは無理なんてしてないよ…」

結衣「してるだろ… だってあかり私達の為にキュゥべえを…」

あかり「…………」

結衣「あかりが虫一匹殺せるようなやつじゃないって言うのは私達が良く知ってるんだ… それなのにあかりは…」

あかり「…そんなことないよ、あかりはみんなが思ってるような子じゃないんだから」

結衣「…やめてくれよ、それ以上自分を責めないでくれよ」

あかり「…………」

結衣「あかり… 一人で抱え込まないで」

結衣「一人で悩んで、苦しんでたら、いつか壊れちゃうよ」

あかり「…………」

結衣「私も一人で苦しんでいたけど、その時に京子やちなつちゃんが助けてくれた」

結衣「だからさ、あかりも一人で抱え込まないで私達を頼って」

あかり「…………」

結衣の言葉と結衣の身体から感じる温もりを受けて、あかりの心に柔らかな光が差し込む。
あかりは真っ直ぐな視線を向ける結衣から目を逸らし俯く。
少しの間あかりは唇を噛み締めながら何かを必死に堪えている。
そしてあかりは顔を上げ結衣に言葉を紡ごうと口を開きかけた。

しかし、開きかけたあかりの口は言葉を発することができず、唖然とした表情であかりは結衣の後ろの窓を見ていた。

あかり「な、なんで………?」

結衣「あかり?」

京子・ちなつ「?」

あかりは窓の外から結衣の部屋を白い生物が覗いていることに気が付いてしまった。
自分が殺したはずの白い生物はあかりを一瞥したかと思うと結衣の部屋のベランダから飛び降り姿を消す。

あかり「っ!?」

ちなつ「あかりちゃん? 外に何かあるの?」

あかり「…キュゥべえ」

結衣「え?」

あかり「…キュゥべえがいたの…」

あかり「なんで…? さっきあかりがこの手で…」

QB『そうだね、確かに僕は君に殺されたよ』

あかり「ひっ!?」

QB『何を怖がっているのかな?』

あかり「あ、あかりが殺したから化けて出てきたの…?」

結衣「あかりっ? どうしたの!?」

QB『ああ、勘違いしているね。君が殺したのは僕達の個体のひとつさ、いくらでも代わりはあるけどああやって壊されるのは勘弁してもらえないかな?』

あかり「なに… それ………」

QB『言葉通りだよ』

QB『しかし困ったな、君がいるんじゃ僕は殺されてしまうだろうし、話も出来ないじゃないか』

あかり「っ!!」

驚き戸惑っていたあかりだったが、すぐ冷静になりQBが結衣の家に現れた目的を察する。

あかり「…みんなを、魔法少女にするつもり…?」

QB『いやいや、魔法少女になってもらうのは手段でしかないよ、全員魔女になってもらいエネルギーを回収させてもらうことが…』

あかり「そんなことっ! させないっ!!」

結衣・京子・ちなつ「!?」

あかりはQBのテレパシーを途中まで聞いた所で魔法少女に変身し時間を止めた。
そのまま窓を開け、QBを探すと少し離れた道にQBの姿を見つけ、あかりはベランダから飛び降りQBを捕まえる。

QB「…赤座あかり? これは一体………」

QB「そうか、これは時間操作の魔法………」ゴキン

あかり「はぁっ… はぁっ… はぁっ…」

あかりはQBを捕まえ、有無を言わさずその首をへし折る。
あかりの手の中でQBは動かなくなり、あかりは荒い息を落ち着かせながら時間停止を解除した。
するとあかりの背後からQBの声が再び聞こえ、あかりは勢いよく振り向き目を見開く。

あかり「なんで…」

QB「言っただろう? いくらでも変わりはあるんだ、無駄なことはやめたほうがいいと思うけど?」

あかり「…………それなら」

あかり「…いなくなるまで」

あかり「やってやるんだからっ!!」

あかりは再び時間停止を行いQBを捕まえその首をへし折った。
しかし、時間停止を解除するたびにどこからかQBが現れ、あかりをあざ笑うかのように逃げ始める。
あかりは何度QBを殺したか数えていなかったが、QBが視界に入るたびに時間停止をしてQBをその手にかけ続けた。

そうやっているうちにあかりは少し大きな公園に辿り着いていた。

あかり「はぁっ! はぁっ!」

QB「」ゴキン

あかり「はぁっ… はぁっ… これで… さいご…?」

QB『いいや、そうじゃないよ』

あかり「っ!! どこっ!?」

QB『ここだよ』

あかり「!?」

声と共に数十体のQBが木の陰や草むらから現れあかりを取り囲んだ。
あかりはQB達を睨みながら再び時間停止を行おうとするが、全てのQBがグリーフシードを取り出したところであかりは目を見開き硬直してしまった。

そして数十のグリーフシードから嵐が吹き荒れ周りにいたQBを吹き飛ばしながら公園に巨大な結界が出来上がり、あかりは魔女の結界に取り込まれてしまった。

QB『これで赤座あかりの動きを封じることができた』

QB『後は結衣をあの二人から遠ざけて、二人を別々の魔女の結界に閉じ込めてしまえば完了だ』

QB『さて、準備をしなきゃいけないな』

QBは結衣の家に向かって移動を始めた。

8話終わり。

9話


結衣の部屋


京子とちなつはあかりが突然消え戸惑っていた。

京子「あかりっ!?」

ちなつ「あかりちゃん!?」

京子「一体何が… !! そういえばあかり、消える前にキュゥべえって…」

ちなつ「…キュゥべえはあかりちゃんが… その、こ、殺したんじゃ…?」

京子「…死んでなかったんだろうね」

結衣「………確かにあの時、私もあいつが死んでるか確認してない…」

ちなつ「だ、だとしたらキュゥべえがあかりちゃんを連れ去ったんですか!?」

京子「!!」

ちなつ「あかりちゃんに殺されかけて、その報復であかりちゃんに何かするつもりなんじゃ…」

京子「ありえる… だとしたらマズイよ! 早くあかりを見つけないとっ!!」

焦る二人を尻目にあかりの魔法を知っている結衣はあかりが時間停止魔法を使用したことに気が付く。

結衣「…違う」

京子・ちなつ「え?」

結衣「二人とも、あかりが消えたのは多分あかりの魔法だと思う」

京子「あかりの…?」

結衣「ああ、あかりは時間を止める事ができるんだ」

ちなつ「時間を止める!? …そっか、あかりちゃん未来から来たんですよね、それなら時間を止める事も…」

結衣「うん、あかりが時間をとめて動いたら私達から見たら消えたように見えるんだ、昨日あかりの魔法を見たときも同じ感じだったし、あかりは消える直前に変身してた」

ちなつ「そうなんですか… で、でも何であかりちゃんはその時間を止める魔法を使って消えちゃったんですか?」

結衣「あの時のあかり多分あいつから何かテレパシーを受けてた、それであかりが魔法少女に変身する直前に滅茶苦茶怒ってたよな…」

結衣「多分あかり、あいつを追って行ったんだと思う…」

京子「!」

ちなつ「あかりちゃんが… そ、それって、キュゥべえに止めを刺しに行ったって事ですよね!?」

京子「…………」

結衣「だ、駄目だ! あかりにこれ以上無理をさせちゃ!!」

あかりがQBを追っていったと判断した結衣は、窓を開け魔法少女に変身して二人に向き直った。

ちなつ「結衣先輩!?」

結衣「あかりを止めてくるよ、二人は待ってて!」

京子「結衣! 待って!」

京子は結衣を引きとめようとするが、結衣はそのままベランダから飛び出しあかりを探し始めた。


京子「…………」

ちなつ「京子先輩?」

京子「…ちなつちゃん、何か嫌な予感がする」

ちなつ「えっ?」

京子「…なんであいつはあかりにだけ姿を見せたんだろう?」

ちなつ「そ、それはただあかりちゃんがキュゥべえを見えるところにいたからじゃ?」

京子「…そうかもしれないね。でもさ、あかりにはあいつの声が聞こえていたのに私達には聞こえなかった。ということは結果的にあいつはあかりにだけ姿を見せて声を聞かせたって事だよね?」

ちなつ「そうですね…」

京子「それであかりはあいつを追って行った」

ちなつ「や、やっぱりキュゥべえがあかりちゃんに何かしようとしてるんじゃないですか!」

京子「いや、あかりはただ単に誘い出されてしまったんだと思う」

ちなつ「誘い出される…?」

京子「うん、それであかりを誘い出された後、結衣もあかりを止める為にここからいなくなっちゃった」

京子「私達二人だけの状況になってるよね?」

ちなつ「…………」

京子「…………」

ちなつ「…京子先輩の言いたいことなんとなく分かりました」

京子「…私の思い違いであればいいんだけど、実際にこういう状況になってしまってる」

京子「…これであいつが私達の前に現れるか、何かが起きたら確定」

京子「あいつの本当の狙いは私達」

ちなつ「…………」

京子「わざわざ二人を引き離したって事は、何かやってくる可能性が高いよ。それでさっきあれだけ魔法少女にならないって言ったにも関わらずに、何かするって事は私達が魔法少女にならなくてはどうすることもできない状況を作ってくると思う…」

ちなつ「何かって… 一体…?」

京子「そこまではわかんない、だけど碌なことじゃないと思う」

ちなつ「そんな… それじゃ、どうすれば…」

京子「…………」

京子は少し目を閉じ、大きく息を吸って吐き出した。
再び目を開けた京子は不安そうな顔をして自分を見るちなつを落ち着かせるように言った。

京子「大丈夫だよちなつちゃん」

ちなつ「京子先輩…」

京子「あいつが何をしてこようと、ちなつちゃんは私が守ってあげるから」

ちなつ「…強がらないでくださいよ」

京子「強がりなんかじゃない………」

京子は窓の外に白い生物の姿を見つけ眉を顰めた。
ちなつも京子の視線を追って窓の外を見て奥歯を噛み締め渋い顔をする。

京子「…ちなつちゃん、悪い予感当たったみたい」

ちなつ「ですね…」

QB「やあ、京子、ちなつ。おや、結衣はどこにいるのかな?」

京子「さぁね?」

QB「…なるほど、赤座あかりを追っているのか。しかしとてつもないスピードだな…」

京子「! 結衣がどこにいるか分かるっての…?」

QB「そうだよ、今は赤座あかりを探す為に街中を駆け回っているみたいだね。まあ、すぐにでも気が付くと思うけどね」

京子「…気が付く?」

QB「………ああ、君にはあまり余計なことを言わないほうがいいみたいだね」

QB「とりあえず、後ろを見てごらん」

京子「………やだよ。何を企んでいるかは分からないけど、あんたの思い通りにさせてたまるかっての」

QB「残念だ。まあ、どちらにしても同じことだけどね」

京子とちなつはQBの言葉を聞かず、QBを睨んだまま話していたが、突然肩に何かが乗って来た重さを感じ見てみると、そこには目の前にいるQBと全く同じ姿をした白い生物が鈍い光を点滅させているグリーフシードを咥えて二人の肩に乗っていた。

京子・ちなつ「なっ!?」

次の瞬間、グリーフシードが光を発し二人はそれぞれ別の魔女の結界に取り込まれてしまった。

魔女の結界(京子)


魔女の結界に取り込まれた京子は、まずちなつを探したがちなつの姿がどこにもないと分かり、地面に手を叩きつけ叫ぶ。

京子「あのヤローーーーー!! なんて事しやがる!!」

京子「キュゥべえ!! 出て来いっ!! どこにいるんだよっ!!」

京子はQBに出てくるように叫ぶが、QBの姿は一向に現れなかった。
そして、京子の声を聞きつけたのか物陰から使い魔が現れて京子に近づいてきた。

京子「ひっ!? あ、あれが魔女…?」

京子「に、逃げないと…」

京子は近づいてくる使い魔から離れるように走り出した。

京子(くっそぉ! あいつ、とんでもないことしやがって!!)

京子(出口も無い、こうやって魔女に襲われ続けてたらその内追い詰められちゃう…)

京子(! あいつ、そうやって私達を魔法少女にさせるつもりなのか)

京子(ちなつちゃんも同じ状況… そしてあいつが漏らした一言… 多分あかりもあいつに何かの罠を仕掛けられた可能性が…)

京子(結衣の居場所も気付かれてる… そして私達にこんな事をしてくるって事は、結衣にも何かしてもおかしくない、いやもう何かされてるかもしれない…)

京子(考えるんだ… いや、もう考えてる暇なんて… 違う、冷静にならないと… 早くしないとみんなが…)

京子(くっそぉ!! 考えが纏まらないっ!!)

追われている状況に加え、あかり達にもQBが何かをしていると考えた京子は焦り足をもつれさせ転んでしまい倒れる。

京子「痛っ!?」

京子「うぁぁ、足が………」

京子(…最悪、挫いて捻挫しちゃったかも…)

京子(どうする… どうしよう…)

京子(もう逃げられない…)

京子は近づいてくる使い魔の姿を青ざめた顔で見ながら、這いずって物陰に隠れる。

京子(もう無理、魔女がすぐそこまで来てる…)

京子(願いもまだ考えてないのに… もうあいつと契約するしか助かる方法がなくなっちゃう…)

京子(いや、すぐ考えて…)

京子(駄目… 考えてる暇なんて無い…)

京子(私以上にちなつちゃんがもっとやばい状況になってたら… 最悪魔女に殺されちゃう可能性も…)

京子(それなら一刻も早く…)

京子は覚悟を決め声を振り絞るように叫びをあげた。

京子は覚悟を決め声を振り絞るように叫びをあげた。

京子「キュゥべえ!! お願い! 姿を見せてっ! 私、魔法少女の契約をするからっ! だからお願いっ!」

QB「本当かい?」

京子「っ!!」

QB「さあ、どうしたんだい? 僕の準備は整っているよ、後は君が願いを決めて契約すれば君はこの窮地から逃れることができるんだよ」

QB「ほら、使い魔がすぐそこまで来ているよ、早くしないとマズイよ?」

京子「…………」

京子「…願い事を言うね」

QB「! 構わないよ」

京子「…私の願いはあかり、結衣、ちなつちゃんを、みんなをこの場所に、私の前に連れてきて!」

QB「…お安い御用だよ、そんな願いなら造作も無いことさ」

京子「早く叶えてよっ!」

QB「契約は成立だ、君の祈りはエントロピーを凌駕した」

京子の身体から青い光が漏れ出し、その光は京子の前集まり、3つの人の形となり数瞬の後、光は弾け京子の目の前にあかり、結衣、ちなつの3人がなにが起きたかわからない様子で立ち尽くしていた。

あかり「………えっ? これって一体………?」

結衣「!? ここは!?」

ちなつ「いやあああああああああ!? って、あれ…?」

QB「おめでとう京子、これで君も魔法少女だ。君の願いは正しく叶えられたようだね」

京子「…………」

あかり「………き、京子ちゃん? 願いって… まさか…」

結衣「お、おい、京子? お前…」

ちなつ「京子先輩… そんな…」

あかりは目から光を消して、結衣は信じられない様子で、ちなつは手で口を押さえ3人は同時に京子を見た。
だが、京子はそんな3人の視線を受けながら、手に持ったソウルジェムを持ち集中していた。
そして、何かに気付いたのか京子はソウルジェムを胸元までもってきたかと思うと、そのソウルジェムから青色の光があふれ京子は魔法少女の姿に変身した。

あかり「うぁぁぁぁ……… やっぱり……… なんで……… どうして………」

あかりはその場で膝を付き崩れ落ちた。
崩れ落ちたあかりにを支えようとした京子はあかりに触れて声をかけようとしたが、あかりの顔を見て出かけた声が止まってしまった。

あかり「キュゥべえ………」

あかりの目は釣りあがり、京子が今まで見たことのない眼つきであかりはQBを睨んでいた。

京子「あ、あかり?」

あかり「また… また、京子ちゃんを魔女さんにするんだね………」

あかりの眼が輝き、世界の時が停止した。
あかりを掴んでいた京子は異様な雰囲気のあかりを羽交い絞めにして落ち着かせようとする。

京子「お、おい! 待てって!」ギュッ

あかり「京子ちゃん、離して」

京子「離してって… あかり、何をする気なんだよ?」

あかり「何って、キュゥべえを殺すんだよ」

京子「」

あかり「もう許せない、絶対に許さない。何度でも生き返ってくるんだったらそれ以上に殺しちゃえばいいんだよね…」

京子はあかりが殺すという言葉を使っていることに酷い違和感を覚えると共に結衣と同じようにこれ以上あかりに無理をさせてはあかりは壊れてしまうと思い、あかりをさらに抱きしめその動きを止める。

あかり「京子ちゃん… 離してよ…」

京子「だ、駄目だよあかり、あかりがそんな事をするのは駄目だって!」

あかり「違うよ京子ちゃん、これはあかりがやらなきゃいけないことなんだよ? だからさ、離してよ…」

京子「駄目だよっ! 結衣! ちなつちゃん! 二人もあかりを止めてよっ! …結衣? ちなつちゃん…?」

あかり「…今はあかりが時間を止めてるから、二人とも動けないよ」

京子「じ、時間を…? え…? でも私は………」

あかり「京子ちゃんはあかりに触ってるから動けるんだよ。ほら、京子ちゃんもう離してよ、早く殺さないといけないんだから」

京子「触れてたら動ける…?」

あかりは京子を無理に振りほどこうとせず、京子に離してとお願いし続けた。
だが京子は別のことを考え始めてその間あかりを拘束し続けた。
そして、ひとつのことを思いつきあかりに話し始めた。

京子「あかり… とりあえず二人に触れて、二人ともこの止まった世界に来てもらおう」

あかり「…どうして?」

京子「ちょっとさ、思いついたことがあるんだ」

あかり「…………」

京子「お願い、あかり…」

あかり「…うん」

あかりは京子と手を繋いで結衣とちなつに触れ4人は止まった時の世界で話を始めた。

9話終わり。

10話


京子「よし、ちなつちゃんも結衣も動けるようになったね」

結衣「ああ…」

ちなつ「こ、これがあかりちゃんの魔法ですか…」

あかり「………それでお話ってなんなの?」

京子「…………」

あかり「京子ちゃん?」

京子はあかりを見て、先ほどまでのあかりの姿を思い出し思考を始めた。

京子(あかり… 私達を守る為にあんなに無理をして…)

京子(あかりが生き物を殺すなんてできるわけないのに… あかりは自分の心を殺して無理やりやろうとした… ううん… 生き返ってくるなんて言ってたしもう本当に殺しちゃったんだろうな…)

京子(あかり、少しずつおかしくなってる… このままあいつを殺し続けてたらあかりは本当におかしくなって壊れちゃう…)

京子(やっぱりあかりにあいつを殺させちゃいけない、あかりはあかりのままでいてほしい…)

京子(その為にも…)

京子はいまだに暗い雰囲気を放つあかりを止めようと思った。
そして、その為に先ほど思いついたあることを3人に向かい話し始めた。

京子「…ごめんごめん、話って言うのはね、このあかりの魔法のことなんだ」

結衣「あかりの?」

あかり「?」

京子「うん、この魔法ってあかりに触れていたらみんな動けるよね?」

ちなつ「そうですね、でもそれがどうかしたんですか?」

京子「…だったらさ、あかりが使った時間を戻す魔法も同じなんじゃないかなって思ってね」

あかり「あかりが時間を戻すときに誰かが触れてたらその人も一緒に過去に戻ることが出来るってこと…?」

京子「うん、そうなんじゃないかなって思ったんだ」

結衣「…そうか、それなら私達が魔法少女になる前の時間まで戻れば全部解決するじゃないか!」

あかり「あ………」

ちなつ「! そ、そうですよね! それなら全部解決です! すごいです京子先輩!!」

京子「…いや、それは多分無理だと思う」

ちなつ「な、なんでですか!?」

京子「…あかりが時間を巻き戻したのって2回だよね?」

あかり「…うん、そうだよ」

京子「その内の一回目は確か2ヶ月くらい先から戻ってきたんだよね?」

あかり「うん」

京子「その二回とも時間を巻き戻して、あかりが契約する前の時間だったにもかかわらずあかりは魔法少女として戻ってきてしまった…」

京子「多分あかりの魔法は戻ってきた時点でその世界の自分に上書きされてしまうんじゃないかな? 肉体の情報とか記憶とか全部」

結衣「上書き…」

あかり「…………」

あかり「…違うかも」

京子「?」

あかり「あかりは二回目の世界の最後で全身の骨が砕けてたし、死んじゃう寸前だったんだ… だけど、時間を巻き戻したら身体の怪我はなくなってたしおかしいところは何も無かったんだよ?」

結衣「死んじゃう寸前って… あかり、お前…」

ちなつ「あかりちゃん…」

京子(…落ち着け私、あかりが簡単にこんなことを言うことに動揺するな…)

京子(…今はあかりの魔法を考える……… あかりが死に掛けたって言うのなら記憶だけが戻って、魔法少女だった場合は魔法少女として上書きされるって事なのかな…)

京子(そうなると身体は未来に残って記憶だけが… 身体…?)

京子(………あ)

京子(ソウルジェムは魔法少女の本体… そういうことか…)

京子(ちゃんと身体も戻ってる… ソウルジェムという形で…)

京子(でも… これは言えない… あかりがこの事を知ったら…)

京子「…だとすると、記憶と魔法少女としての力は持って過去に戻れるって事だね」

あかり「…うん、そうだと思う」

京子「よし、それなら試してみようか」

あかり「えっ?」

結衣「京子? 試すって…」

ちなつ「…もしかして、私達全員で過去に戻るって事ですか?」

京子「ちなつちゃん、正解」

あかり「…そんな事できるかどうかもわからないよ」

京子「まあ、賭けだね」

結衣「賭けって… お前そんなに簡単に…」

京子「どの道この方法が現状最善だと思うんだ、このまま逃げようと思ってもあいつがまたとんでもないことをやってくると思うし、逃げたとしてもあいつって私たちの居場所をすぐ見つけてしまうと思うんだ」

あかり「…………」

京子「さっきも私たちのところに来たときに結衣の居場所をすぐ見つけてたみたいだし、何か魔法少女を見つける方法があるのかもしれない… ならあいつが追ってこれないところに逃げてそれであいつに対する対策を考えよう」

結衣「…追ってこれないところ、過去か」

ちなつ「そういうことですね…」

あかり「…………」

京子「よし、それじゃああかり、あかりの魔法を使って過去に… あかり?」

あかり「もし…」

あかり「もしもあかりの魔法で過去に戻っても京子ちゃんと結衣ちゃんは魔法少女になったまま戻っちゃうんだよね…」

結衣「おい… あかり… お前…」

京子「そ、そうかもしれないけど、それもどうにかする方法を考えるんだよ!」

あかり「…でも、あかり一人で戻ったら、みんなは魔法少女にならなくてすむかもしれないよね」

京子「!? おいっ! あかり、待っ………」

あかり「ごめんね」

あかりは一言そう言うと、握っていた京子の手を離してしまった。
それと同時に、3人の時は停止し、3人はあかりに視線を向け驚いた表情を作っていた。
3人の顔をあかりは寂しそうに見つめた後、あかりは3人に背を向け歩き始める。

あかり「…………」

あかり「…みんな、ごめんね」

あかり「…みんなと一緒に戻ったら、多分あかりはみんなに甘えちゃう」

あかり「…そしたらまた一緒、あかりはただみんなに助けられて、それでみんながまた死んじゃう…」

あかり「…この世界でもみんなに助けられてばっかり… 結衣ちゃんに怪我を治してもらって、京子ちゃんにはあの公園で閉じ込められちゃった魔女さんの結界から逃がしてもらったんだよね…」

あかり「…結局あかりは何も出来なくって… このままだとちなつちゃんもあかりの為に魔法少女になっちゃう…」

あかり「…変わらないと」

あかり「…みんながあかりを守ってくれるのは、あかりが弱いからだ」

あかり「…みんながあかりを守ろうなんて考えもしないくらいあかりが強くなればいいんだ」

あかり「…弱いあかりなんかいらない」

あかり「…変わって見せる、そしてみんなを守ってみせる」

あかり「どんな手を使ってでも… どんな事をしてでも…」

あかりの瞳が輝き、紫色の光があかりを包み込む。
3度あかりは時を遡り3人が助かる道を探すべく旅立った。
次の世界では、3人を守るため、あらゆることに手を染めると覚悟を決めあかりは旅立った。

10話終わり。
3章 少女は、闇に落ちる? 終わり。
次章に続く。

エピローグ1


京子「…待って!! あかりぃっ!!」

京子が手を伸ばした先に既にあかりの姿は無く、周囲の時は動き始め3人の周囲は使い魔が集まって来ていた。

ちなつ「ひっ!? ま、魔女が!?」

結衣「…ちなつちゃん、大丈夫」

結衣はちなつを落ち着かせるように優しく言う。

結衣「京子、少しだけちなつちゃんをお願い」

京子「ゆ、結衣?」

結衣「すぐ戻るよ」

その瞬間、結衣の姿は掻き消え、周囲にいた使い魔もバラバラとなり吹き飛んだ。

ちなつ「ゆ、結衣先輩!?」

京子「これって… 結衣が?」

QB「そうだよ」

京子「っ!! お前、それ以上ちなつちゃんに近づくなよ!」

QB「おっと、少しぐらい話を…」

京子「黙れよ! さっき私たちにした事を忘れたなんて言わせないぞ!?」

QB「仕方ないじゃないか、君たちが普通の願い事を考えてそれを叶える分には僕たちもあんな干渉はしないけど、赤座あかりに色々吹き込まれて、君たちは魔法少女システムを破綻させるような願いを言い出しかねなかったからね。このような状況では僕達からもある程度の干渉をさせてもらい君たちを魔女にする為に動かせてもらうよ」

京子「完全に敵対宣言ってわけだね…」

QB「僕達にはそんな気はないけど、君たちがそう思うのならそうなのかな? あいにく僕達には敵意や悪意なんてないから君たちがどう感じるかは分からないんだけどね」

QB「それじゃあ………」

QBが京子とちなつに何かをしようとした矢先、QBはバラバラになって吹き飛んだ。
そして、京子とちなつの前には消えたはずの結衣が二人を守るように剣を構えて立っていた。

結衣「二人には手を出させない」

ちなつ「結衣先輩…」

QB「やれやれ、赤座あかりだけじゃなくて君にまで壊されてしまうなんてね」

結衣「っ! なんで!? 間違いなくこの剣で切り飛ばしたはずなのに!!」

QB「ああ、僕達を殺そうとしても無駄だよ? いくらでも代わりはあるからね」

QB「しかし、驚いたよ、君が二人の傍を離れて数十秒で魔女を倒して戻ってくるなんて。ただの身体能力の向上だけでここまでの力を発揮するなんてね」

京子「…身体能力?」

QB「そうだよ、結衣の祈りは赤座あかりの怪我を治すというものだった。結衣は癒しの祈りを契約にして魔法少女になったから、その副次効果として自己治癒能力や自己身体能力に関しては既に人間の域を逸脱しているよ」

QB「他にも回復魔法も使えると思うけど、まだ試していないよね? 試してみたらどうだい?」

結衣「…何を企んでいるんだよ」

QB「何も企んでいないさ、ただ君の力を予想しているだけだけど」

京子(…いや、絶対に何かを企んでる)

京子(…まずいよ、こいつが何を企んでるか分からないけど、時間をかけすぎたらとんでもないことをしてくるような気がする…)

京子(…一刻も早くこいつの前から逃げないと)

京子(…でも、どうやって… あかりはもう一人で過去に行ってしまった…)

京子(…結衣はものすごい速さで動けるって言っても、私たちを連れて逃げようとしたら満足に動けるはずがない…)

京子(…私も結衣と同じような願いで契約していれば………)

京子(…? 私の願い?)

京子(あっ…)

京子は自分の魔法の可能性を考え、二人を抱き寄せ集中を始めた。

結衣「京子!?」

ちなつ「きゃっ!?」

QB「…一体何のつもりなのかな?」

京子「やれるはず… いや、やってみせる…」

QB「………魔力が集まっていく、何をするつもりなんだ?」

京子(イメージをして… 私達がいつもいるあの場所を…)

京子の脳裏に部室が浮かび上がってくる。
最初はおぼろげだった映像が徐々にはっきりとしていき、京子の脳内に部室の映像が浮かび上がったときに京子は『それ』ができると直感的に理解した。
そして京子は自分の直感に従い、集まっていた魔力を開放した。

京子「お願い! 飛んでっ!!」

QB「!?」

京子が魔力を解き放つと同時に、青い光が3人を包み込んではじけるように3人の姿はその場から消えていた。

QB「…やれやれ、契約して間もないはずなのに空間移動魔法を使用するなんてね…」

QB「…仕方ない、彼女達の行方を捜すためにもさらに固体を追加して探すとするか…」

QB「焦らなくても彼女達の魔力パターンは既に掴んでいるし、準備をしてから探すとするかな」

QBはそのまま姿を消し、QBが消えると同時に魔女の空間は崩壊を始めた。

エピローグ1終わり。

エピローグ2


ごらく部


青い光がごらく部の中心に現れ、光がはじけたかと思うと3人がそれぞれ転がりながらごらく部の部室に姿を現した。

京子「痛ってーー!?」

結衣「あ、頭ぶつけた…」

ちなつ「痛たたた… こ、ここ部室ですか?」

京子「部室!? や、やった、成功したんだ…」

結衣「成功って… 京子、お前一体なにを?」

京子「…瞬間移動ってやつかな?」

ちなつ「瞬間移動って…」

京子「あのままあそこにいたらあいつが何やってくるかもわかんなかったからね」

結衣「そ、それもそうだけど… お前、どうやって瞬間移動なんか…」

京子「あー、結衣が癒しの願いで自己治癒能力とかっていってたじゃん、だったら私の願いはみんなを私の前に連れて来てほしいっていう移動系の願いだったから、もしかしたらできるんじゃないかなーって思ってやったんだよ」

ちなつ「も、もしかしたらで成功させるなんて… めちゃくちゃですよ…」

京子「滅茶苦茶でもなんでも、出来たんだからいーじゃん、それにこれで少しは時間が稼げるでしょ?」

ちなつ「まあ、そうですけど…」

京子「…あかりが一人で過去に戻っちゃった以上、あいつから逃げ切る別の方法を考えないといけないしね…」

結衣「やっぱりあかりは一人で…」

京子「多分… ね…」

結衣「あかり… どうしてあそこまで… 私たちが魔法少女になってしまっているけど何とかする方法もあったかもしれないのに…」

京子「…………」

京子「……二人とも、あかりがああやって過去に戻っちゃった以上もう私たちで何とかするしかないよ、あかりのことは一旦忘れてあいつへの対策を考えよう」

ちなつ「…京子先輩、何言ってるんですか………」

結衣「…………」

京子「言葉の通りだよ、あかりの事を今考えていても仕方ないでしょ? それならまだ魔法少女になっていないちなつちゃんをあいつから守る為にどうにかする方法を考えないと…」

京子「一つの案としては、私のこの瞬間移動の魔法をどこまでの範囲で使えるかを試してみて、暫くの間あいつから逃げ続けて………」

ちなつ「京子先輩!!」

京子「…何?」

ちなつ「何じゃないですよ!! なんでそんなに平気そうにしてるんですか!? あかりちゃんがあんな風に… おかしくなっているのにあかりちゃんを放っておくなんてできるわけないじゃないですか!!」

京子「だからあかりはもう過去に…」

ちなつ「そんな事まだ分からないじゃないですか! またキュゥべえを殺そうとしてるのかも知れないじゃないですか! それだったら早くあかりちゃんを見つけて止めないとあかりちゃんはもっとおかしくなっていっちゃいますよ!!」

京子「…………」

ちなつ「京子先輩も言ってたじゃないですか、あかりちゃんを助けるって! それなのになんであんな状態のあかりちゃんを放っておくんですか!?」

京子「…………」

ちなつ「京子先輩冷たいですよ! あかりちゃんは京子先輩の幼馴染じゃないんですか!? 親友じゃないんですか!? そんな簡単に割り切るなんて冷たすぎますよ!!」

ちなつの言葉に京子の身体か小さく跳ね、京子は下を向き俯いてしまった。
京子の様子が変わったことにちなつ訝しげな顔をしていたが、再び京子に問い詰めようとしたところで今まで黙っていた結衣がちなつを止めに入った。

結衣「…ちなつちゃん、ストップ」

ちなつ「結衣先輩?」

結衣「ちなつちゃんの言ってることはわかるよ… でもそれ以上京子を責めないで、京子も限界なんだよ…」

ちなつ「えっ?」

結衣の言葉に再び京子を見ると、京子は大粒の涙を零しながら座り込んでいた。

ちなつ「き、京子先輩…?」

京子「わかってるよ… そんなの、わかってるよ…」ポロポロ

京子「私だってあかりの事をすぐ捜しに行きたいよ… でも、あの状況だとあかりは過去に戻ったとしか思えないんだよ… それならもうあかりを追うことなんて出来ないよ…」ポロポロ

ちなつ「ま、まだわからないじゃないですか………」

京子「わからないよ! なんでこんなことになっちゃったのかわからないんだよっ!」

京子「私が知ってるあかりだったら私たちを置いて一人で行くわけないのにっ! 私たちと一緒に過去に戻るはずだったのにっ!」

京子「あかりのことがわからないんだよぉ… どうしてなんだよぉ… あかりぃ…」ポロポロ

ちなつ「き、京子先輩…」

結衣「…ちなつちゃん、私もあかりのことがわからなくなっちゃった…」

ちなつ「結衣先輩…」

結衣「私も京子と一緒だよ… なんでもわかってるつもりだったあかりのことがわからなくなってしまったし、それにちなつちゃんをあいつから守らないといけない… 殺しても死なないような相手から… もうどうすればいいかわかんないんだよ…」グスッ

結衣「なんで一人でいっちゃったんだよ… あかり…」グスッ

ちなつ「うぅっ………」

京子と結衣はあかりの事を想いながら涙を流し続けた。
泣き続ける二人を見てちなつは二人にとってあかりの存在がどれほど大きいものだったのかを理解し考え始める。

ちなつ(二人ともあかりちゃんに置いていかれた事がよほどショックだったんだ…)

ちなつ(私もショックだったけど、二人は小さい頃からずっと一緒だったんだもんね…)

ちなつ(あかりちゃん… みんなあかりちゃんのことをこんなに思ってるのに… どうしてこんなことになっちゃったの…)

ちなつ(違う………)

ちなつ(…私達があかりちゃんを思ってるように、あかりちゃんも私達の事を思ってあかりちゃんは一人で行っちゃったんだ…)

ちなつ(私達の心とあかりちゃんの心がすれ違っちゃっていたんだ…)

ちなつ(あかりちゃんの本当の気持ちがわからなかったからこうなっちゃったんだ…)

ちなつ(…あかりちゃんの気持ち)

ちなつ(京子先輩も結衣先輩もわからなかった…)

ちなつ(そんなあかりちゃんの気持ちを知ることなんて…)

ちなつ(…………)

ちなつ(…あった)

ちなつ(あかりちゃんの気持ちを、心を知る方法…)

ちなつが思い浮かべるものは契約。
魔法少女の契約をすればあかりの心を理解できるのではないかと考えた。

エピローグ2終わり。

エピローグ3


ちなつ「結衣先輩、京子先輩… 私決めました」

結衣「ちなつちゃん…?」

京子「…なにを?」グスッ

ちなつ「私、魔法少女になります」

結衣「なっ!?」

京子「だ、駄目だよっ!! わかってるの!? 石ころにされちゃうんだよ!?」

ちなつ「わかってますよ、でも叶えたい願いを見つけたんです… 意味がないかもしれないけど、それでも知らないといけないと思うんです…」

結衣「一体何を知りたいの!? そんなの命を賭けてまでの…」

ちなつ「あかりちゃんの気持ちが知りたいんです…」

京子「え………」

ちなつ「あかりちゃんが何を思ったのか、あかりちゃんが何を考えていたのか…」

結衣「な、何を言ってるんだよ!? あかりの事を知るって何でそんな事を!?」

京子「そ、そうだよっ! そんな事の為にちなつちゃんは石ころになってもいいって言うの!?」

ちなつ「そんな事って言ってますけど、あかりちゃんの気持ちを知りたいのは先輩達も一緒なんじゃないですか?」

京子「そ、それは…」

結衣「そうだけど…」

ちなつ「今こうなっているのは、私たちがあかりちゃんの気持ちを理解できなかったからなんだと思います… そして先輩たちがあかりちゃんの気持ちが分からない以上、もう願いで知る以外にないじゃないですか」

京子「あかりの… 気持ち…」

結衣「でもさ… それを魔法少女になってまで…」

ちなつ「もう決めたんです。それにこのままだといつか私はキュゥべえに無理やり魔法少女にされてしまうと思うんです」

ちなつ「四六時中、眠ってる間とかもキュゥべえは何かをやってくると思います… そうなったらいつかは…」

結衣「…………」

京子「うっ… そ、それでも、私たちが…」

ちなつ「…ありがとうございます。先輩たちに守ってもらえるのはとても嬉しいです。だけど、私はただ守られているだけで見ているだけなんて嫌なんです」

結衣「そっか… ちなつちゃんは本当にそれでいいの?」

京子「ゆ、結衣!?」

ちなつ「はい、私も先輩たちと一緒に戦いたいんです」

結衣「…わかったよ、それなら私は止めないよ」

京子「結衣!! 何言ってるの!! そんなの駄目だって!!」

結衣「京子… お前もわかってるだろ?」

京子「何が!?」

結衣「このまま逃げていてもいつかちなつちゃんは魔法少女になっちゃう… あいつの罠にかかって無理やり魔法少女にされてしまう… お前みたいに…」

京子「うっ…」

結衣「それなら、ちなつちゃんの意思で魔法少女になって皆であいつと戦うほうがいいと思うんだ」

京子「…でも」

ちなつ「京子先輩、私は大丈夫ですから」

京子「ちなつちゃん…」

ちなつ「石ころにされてしまうって言っても、先輩達もあかりちゃんももうそうなってるじゃないですか、私だけ仲間はずれなんて嫌ですよ」

ちなつ「最終的にはみんなで助かる道を探すんです。それにはみんな人間に戻るって言うことも含まれているじゃないですか?」

京子「…………」

ちなつ「それに、あかりちゃんはもしかしたら過去に戻っていないかもしれないじゃないですか、願いであかりちゃんのことが分かればあかりちゃんが何処にいるかも分かるはずですよ」

京子「!!」

ちなつ「そうなったらあかりちゃんを見つけて、あかりちゃんを説得しましょう。あかりちゃんの心を勝手に覗いた後ですし、あかりちゃんは怒るかもしれないですけど… それでも心の底から謝ればあかりちゃんも許してくれるはずです…」

京子「あかりの居場所… そうか… それが分かれば…」

ちなつ「京子先輩?」

急にブツブツと呟き始めた京子にちなつは疑問の声を投げかけるが、京子は何かを思いついたのかちなつの声に反応せず思考を続けていた。

結衣「おい、京子… どうしたんだよ?」

京子「………ちなつちゃんの願いは『あかりの気持ちを知りたい』だよね?」

ちなつ「えっ? は、はい、そのつもりです…」

京子「その願い、少し変えて貰ってもいいかな?」

結衣「京子? 急に何を…」

ちなつ「変えるって… どんな願いにですか?」

京子「………『あかりの事を何もかも全て知りたい』っていう願い」

ちなつ「な、何もかもですか? それは流石に…」

京子「…もしもあかりが見つかったら私はあかりにぶん殴られる覚悟だよ。でも、思いついちゃったんだ… 可能性は殆どないかもしれないけど… だけどもしかしたら…」

ちなつ「一体何を…」

京子が自分の考えを二人に話そうとした時、部室の片隅から突然声が聞こえてきた。

QB「やあ」

全員「!?」

いつの間にかQBが姿を現していた。

QB「ようやく見つけることが出来たよ。まさか空間移動魔法を使用してあの場から移動するなんてね、本当に驚いたよ」

結衣「いつの間に…」

京子「みんな! 私に捕まって!!」

京子が再び瞬間移動をしようと二人を抱き寄せ集中し始める。
京子の脳裏に自分の部屋が浮かび上がり、再び瞬間移動をする為に魔力を解き放ったが解き放たれた魔力は3人を包み込む前に雲散し消滅した。

京子「えっ…」

QB「無駄だよ。君の空間移動魔法に対する対策はさせてもらったからね」

京子「な、何を…」

QB「…黙秘させてもらおうかな、君は何をしでかすか分からない、無駄に情報を与えることはもうしないよ」

京子「くっ…」

QB「ああ、結衣、君も動かないでもらえると助かるよ」

QB「君が動いたら僕はなすすべなく壊されてしまう、そうしたらまた強引な方法でちなつを連れ去らないといけないからね」

結衣「っ!」ピタリ

QB「さてと… ちなつ、僕と契約してくれないかな? できれば魔法少女システムを破綻させるような願いを言わないでもらえると僕も嬉しいのだけど」

ちなつ「…………こんなの契約でもなんでもないじゃない」

QB「そうかな? 僕はお願いしているだけで願いを言うのはあくまで君だよ?」

QB「…まあ、その願いによって僕達のやり方も少し強引なものになるかもしれないけどね?」

ちなつ「…………」

QB「できれば僕達も穏便に済ませたいんだよ、こうやって話し合いでね」

ちなつ(何が穏便によ、脅して無理やりじゃない…)

ちなつ(京子先輩の瞬間移動も封じられちゃったしもう逃げることも出来ない… もしも逃げれたとしても、次は本当に無理やり魔法少女にさせられちゃう…)

ちなつ(私の意志で魔法少女になる最後のチャンス…)

ちなつ(…願い、さっきの京子先輩の言葉)

ちなつ(あかりちゃんの全てを知る… 京子先輩は何かを思いついたみたいだけど、この状況だと京子先輩に聞くことも出来ない…)

ちなつ(…………考えていても仕方ない、か)

ちなつ「わかったわよ… 私、魔法少女になるわよ…」

QB「それはよかった。それじゃあ、ちなつはどんな祈りでソウルジェムを輝かせるのかな?」

ちなつ「…………」チラッ

京子「…………」

結衣「…………」

QB「どうしたんだい?」

ちなつ「………私の願いは」

ちなつ「私の願いはあかりちゃんの事を全て知りたい、あかりちゃんが何を思っているのか、あかりちゃんが何を経験したのか、あかりちゃんが今何をしているのか、そしてあかりちゃんはこれからどうなってしまうのか」

QB「…良く分からない願いだね、そもそも赤座あかりは既にこの宇宙の何処にも存在しないんだよ? 無駄な願いになるとしか思えないけどね」

ちなつ「…っ! …あなたの言葉なんて当てにならないわ、さあ叶えなさいよ、私の願いを!!」

QB「…まあ、いいけどね。…契約は成立だ」

ちなつ「うぅ… あああああああああああああああ!!」

ちなつは水色の光に包まれると共に、意識が急激に遠のいていった。
どこかに引っ張られるような感覚と、何かが入り込んでくる感覚に耐え切れずちなつの意識は闇に落ちた。

エピローグ3終わり。

僕「あかりちゃんをこんな目に遭わせるなんて許さんぞ!!!!!ぶっ殺してやる腐れ害獣めら!!!!!細胞一つ残さず抹消してやる!!!!!!!」

僕「かーーーーーーめーーーーーーーはーーーーーーめーーーーーーーーーーーー波ーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

QB「ぎょえええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

僕のかめはめ波で消し飛ぶ害獣

僕「あかりちゃん!もう大丈夫だよ!僕が害獣をやっつけたからね!」

あかり「わぁい!僕くんありがとう!」

僕「礼には及ばないさ!当然のことをしたまでだからね!」

あかり「僕くん…!」キュン

その後あかりちゃんと結婚して子供をたくさん作りました

エピローグ6

京子「ちなつちゃん!? ど、どうしたの!?」

ちなつ「駄目ぇぇぇぇぇぇぇっっっ!! あかりちゃぁぁぁぁぁん!!」

ちなつ「あああああぁぁぁぁぁ……… ぁぁぁ、ぁ、あれ………?」

ちなつは目を覚まし、自分を抱きかかえていた京子の顔を見ながら状況を理解できずにいた。

ちなつ「わ、私… あかりちゃんを見てたんじゃ………」

京子「!! あかりの居場所が分かったの!? ちなつちゃん、あかりは何処にいるのか分かったの!?」

ちなつ「居場所…? あ… そっか、私願い事であかりちゃんのことを…」

ちなつ「それじゃあ、あかりちゃんはこれから… あんな事に…?」

京子「ちなつちゃん…? ねぇ、どうしたの…? 一体何があったの?」

結衣「ちなつちゃん! 大丈夫!?」

京子に続き、QBを剣でなぎ払っていた結衣もちなつに駆け寄りちなつの心配をするが、当のちなつは今自分が見てきたあかりがこれから歩んでしまうだろう未来を思い出し顔を青ざめ二人に話し始めた。

ちなつ「き、京子先輩、結衣先輩… あかりちゃんが… あかりちゃんがこのままだと死んじゃうんです…」

京子「!?」

結衣「なっ!? 何を言ってるんだよちなつちゃん!?」

ちなつ「あかりちゃんの過去も現在もそして、未来も見てきたんです… あかりちゃんは私たちを守る為に、私たちの力を全て引き受けてそれで…」

京子「未来…? それに私達の力を…?」

ちなつ「あかりちゃん… あんな未来嫌だよ… なんであかりちゃんが…」

あかりのやりきれない最後を見てしまったちなつは悲しみに満ちた表情で視線も定まらずに京子と結衣を見ている。
少しずつちなつの心は絶望に向かっていたが、そんなちなつを京子はちなつの肩を掴み焦った表情で話し始める。

京子「ちなつちゃん! 気をしっかり持って!」

ちなつ「………京子先輩、でも、あかりちゃんが…」

京子「あかりを助ける方法があるんだよ!」

ちなつ「………え?」

結衣「京子、お前の言ってた考えってそれなのか?」

京子「うん、ちなつちゃんはあかりの事が見えたんだよね? 何処にいるかわかったんだよね!?」

ちなつ「はい… でも、あかりちゃんはもう別の世界に… もうこの世界には…」

京子「あかりはこの世界にはいない、だけどちなつちゃんにはあかりの居場所が見えたんだよね?」

ちなつ「はい…」

結衣「………やっぱり …もう、あかりとは………」

ちなつ「…………」

結衣とちなつはあかりが過去に戻ってしまいもう会うことすら出来ないと理解し悲しみにくれる。
だが、京子は二人を引き寄せ、二人の目を見ながらはっきりと言った。

京子「追うよ」

結衣「え?」

ちなつ「…何を?」

京子「だからあかりを追うんだ」

ちなつ「…そんな事もうできないですよ」

結衣「………あ」

結衣「京子… お前、まさか…」

ちなつ「?」

京子「結衣、そのまさかだよ」

京子「ちなつちゃん、ちなつちゃんが見たあかりが今いる場所に私の力で移動するんだ」

ちなつ「!? 何を… そんな事できるわけが…」

京子「できるできないじゃないよ、やるんだ」

京子「あかりが今いる場所さえ分かれば、そこに飛ぶことができるはず…」

京子「いや、絶対にやってみせる!!」

京子が力強く言い、それに結衣も頷く。

結衣「…うん、やろう」

ちなつ「結衣先輩も…」

結衣「あかりを追いかけてあかりを助けないといけない…」

ちなつ「あかりちゃんを…?」

結衣「ちなつちゃんはあかりが死んでしまう未来をみたんだろ?」

ちなつ「…はい」

結衣「そんな未来絶対に許さない、あかりが死ぬ未来なんて絶対に認めるもんか!」

結衣「未来は私たちが変えてやる!!」

ちなつ「あ…」

結衣の言葉にちなつは気が付く。
自分の見たのは未来、それならばまだ変えることもできるのだと。

ちなつ「そうですよね…」

ちなつ「あんな未来… あかりちゃんが死んじゃう未来なんて変えないと…」

京子「そうだよ! 絶対に変えないといけないんだ! そんな未来なんて!」

結衣「あかりを死なせはしない… 絶対に…」

京子「だから行こう、あかりのいる世界に!」

3人の心が一つになり、あかりのいる世界に行くと決めた矢先、どこかからかQBの声が聞こえてきた。

QB「それは止めておいたほうがいいと思うよ」

結衣「っ!? 何処から!?」

京子「…………止めるって何をさ?」

QB「今君が言った空間移動魔法を使っての時空間移動の事さ」

QB「空間移動魔法を使って時間を飛び越えるなんて不可能だよ。それにそれはとてつもなく危険な行為なんだよ」

京子「…………不可能とか危険とか関係ないね、それに今更あんたの言うことを聞くとでも思ってんの?」

QB「それでも聞いてくれないかな? 時間を飛び越える… いや、世界を超えるためには次元の壁を突破しなければならないんだよ」

QB「空間移動魔法なんかで次元の壁に突っ込んだりしたら君たちの身体は耐え切れず吹き飛んでしまうだろう」

QB「赤座あかりのような時空間操作魔法の使い手でない限りは、次元の壁をすり抜けることなんてできやしないよ」

QB「これは純粋に君たちの事を思っての事だよ、もしも君たちがそんな馬鹿げたことをして死んでしまったら僕達はエネルギーを回収することが出来ない」

QB「お願いだよ、君のしようとしている事はどれだけ危険なことかを理解してほしいんだ。次元の壁を越えることなんて僕達のテクノロジーでも不可能なことなんだからね」

京子「…………知ったことじゃないね」

QB「…残念だ、それじゃあ君たちを動けなくしなければならなくなったわけだ」

QB「魔法も使わせることも出来ない、本当はこんな事をしたくはないんだけどね」

京子「っ!!」

QBが京子達に言いその言葉に対し、京子が身構えた瞬間、京子とちなつの身体は結衣に抱きかかえられると共にごらく部の天井を突き破り3人は空を舞っていた。

京子「~~~~~~~っ!?」

ちなつ「き、きゃああああああああああああああ!?」

結衣「ゴメン、二人とも、ちょっと我慢してて」

京子「ゆ、結衣~~??」

京子がとてつもない風圧ではっきりと開けられない目を少しだけ開くと、夜空一面に輝く星空と真下に雲の絨毯が敷き詰められた光景が飛び込んできた。

京子「こ、ここって」

結衣「雲の上、今雲の上を走ってる」

ちなつ「な、なななな…」

結衣「あいつが何かしようとしてたし、京子の魔法が使えなくされてたみたいだから咄嗟にね」

京子「と、咄嗟にっても、空! 結衣、空飛んでる!? これも結衣の魔法なの!?」

結衣「違うぞ、空気を蹴って空を走ってるんだ。これは魔法じゃないぞ」

京子「」

京子「わ、私より滅茶苦茶なことやってんね…」

結衣「そう?」

京子は結衣のトンデモ発言に顔を引きつらせながら必死に結衣にしがみついていた。
背負われているちなつは若干気を失いかけているようだった。

結衣「それで京子、今魔法を使うことは出来る?」

京子「つ、使うも何も、こんな状態じゃ無理! 集中できないよっ!」

結衣「無理じゃないだろ? あかりを追うのにこんな事で無理なんて言ってたらあかりの所に行くことなんてできないぞ」

京子「っ!! …………できる、最初に使ったときと同じ感覚と魔力が集まってる。さっきみたいに魔力が散らされることもない、飛べるよ」

結衣「やっぱりあの場所でなにかされてたみたいだね、飛び上がるときに何か変な感覚があったんだ、遮られるようなそんな感覚が」

結衣「今ならあいつの妨害もなくいけるはずだ。京子、あかりの所に行こう…」

京子「うん… って、ちなつちゃん! 目を覚まして!」

結衣「えっ?」

ちなつ「」

結衣は背負っていたちなつが気絶していることも気が付かずに空を駆け続けていた。
気を失ってしまったちなつを起こすために結衣は雲の上から地上に戻り、高い山の頂上に降り立った。
京子と結衣はちなつを起こし、ちなつも状況を聞いて、あかりの居場所を京子に伝えようとして固まってしまった。

ちなつ「…京子先輩、あかりちゃんの居場所を伝えるってどうやって伝えればいいんですか…?」

ちなつ「言葉で言っても、京子先輩はあかりちゃんの居場所を理解して飛ぶことなんて出来るんですか…?」

京子「………言葉で聞いても飛ぶことはできないね、私の頭の中であかりのいる所を正確に思い浮かべないといけないんだ」

ちなつ「そ、それじゃあ………」

京子「ここで賭けその1になるよ」

結衣「その1?」

京子「うん、それじゃあ、ちなつちゃん魔法少女になってみようか」

ちなつ「私がですか…?」

京子「そうだよ、ちなつちゃんの魔法が鍵になってくるんだ…」

ちなつ「わ、わかりました」

ちなつは光に包まれると共に魔法少女と変身した。

ちなつ「それで私の魔法って…」

京子「…結衣は癒しの願いで身体能力や自己治癒能力」

京子「私は移動系の願いで瞬間移動の力」

京子「ちなつちゃんはあかりの事を知りたいという、思考系の願い… だったらちなつちゃんの魔法でちなつちゃんの思考を私に見せることも出来るんじゃないかな?」

結衣「…そういうことか」

京子「これが最初の賭け、それでこれがうまくいかなかったらまた別の方法を考える…」

京子「ちなつちゃん… お願いできるかな?」

ちなつ「わかりました」

ちなつ「行き当たりばったりですけど、これから私たちがやろうとしてることなんてもっと行き当たりばったりですよね」

ちなつ「最初で躓いてなんていられないです! やってみせますよ!」

ちなつは両手を胸の前に組んで祈るように集中を始めた。
すると、自分のすぐ傍にとても大きな何かがあるような感覚を掴む。
その感覚はとても心地よく、ちなつはそれに向かい意識の中で手を伸ばした。
そして、ちなつの手はそれに触れた。

エピローグ6終わり。

エピローグ7


ちなつ「こ、これって…」

結衣「!!」

京子「!?」

ちなつ達の周りは真っ白で何も無い空間に変わっていた。
そこは何処までも白く、前後左右何処を見ても白、気が遠くなるほど白い空間だった。
そんな空間にちなつと京子と結衣が3人立ち尽くしていた。

京子「!? な、何!? まさか… あいつに見つかったって言うの!?」

京子「(そうだったらマズイよ… くっそぉ… 折角結衣が作ってくれたチャンスを無駄にしてしまった…)」

結衣「何処にいるんだよっ!! 出てこいっ!!」

結衣「(さっきと同じ… 何も分からないフリをして油断させる… あいつが姿を見せて隙を見せたらまた逃げてやる…)」

ちなつ「ちょ、ちょっとまってください!」

京子「ちなつちゃんは魔法を使うことに集中して、ここは私たちに任せて」

京子「(そう、ちなつちゃんが狙い通りの魔法を使えさえすれば…)」

ちなつ「違うんです! 多分これ、私の魔法ですよ!」

京子「えっ?」

京子「(これが… だったら失敗したって言うの…?)」

結衣「(駄目だったのか… いや、まだだ、まだ方法が…)」

ちなつ「二人の考えていることがわかるんです!」

京子「へ?」

京子「(考えてることが…?)」

結衣「…考えがわかるって?」

結衣「(私が今思っていることを分かるっていうの…)」

ちなつ「はい、京子先輩の言っていた思考系の魔法だと思います」

京子「…………」

京子「(…私はラムレーズンが大好き。…本当に考えが分かるんならこの言葉を言ってみて)」

ちなつ「ラムレーズンが大好き、ちゃんと聞こえてますよ」

京子「!!」

結衣「(私もラムレーズン大好き)」

ちなつ「結衣先輩も、ラムレーズン大好きって考えました」

結衣「!!」

京子「はぁぁぁぁ~~~、よ、よかった… てっきりあいつに何かされたのかと…」

結衣「ふぅ… ひとまず安心だね」

京子と結衣は大きく息をつき白い地面に座り込んだ。
今の状況がちなつの魔法によるものだと認識して、一息つくと共にこの世界が一体なんなのかと話し始めた。

京子「私達の考えがちなつちゃんに伝わっているってことは分かったけど、一体この世界はなんなんだろ?」

ちなつ「…魔法を使うときに、そばにいた大きな何かを掴むと同時に私の中に引きこんだ感覚がありました」

ちなつ「大きな何かが先輩たちだったとすると、ここは私の中の世界…?」

結衣「ちなつちゃんの中? ちなつちゃんの心の中ってことかな?」

ちなつ「そ、そうです、私の心の中ってことです!」

京子「心の中の世界か…」

京子はちなつの言葉に少し考え、最初に考えていたちなつの思考を自分達に伝えることが出来るかどうかを試すことにした。

京子「………この世界では私達の考えはちなつちゃんに伝わる。それなら逆も、ちなつちゃんの考えを私たちに伝えることもできないかな?」

ちなつ「…やってみます」

京子「(お願い… がんばってちなつちゃん…)」

結衣「(頼むよ… 成功してくれ…)」

ちなつが再び祈るように意識を集中し始めると、今度は京子と結衣に違和感が起き始めた。

京子「(な、なんだこれ? 頭の中に何かが…)」

結衣「(私の中に何かが… 誰かがいる…?)」

二人はその感覚を探ろうと目を瞑り、ちなつと同じように意識を集中させる。
すると、目を瞑っているはずなのに目の前に光り輝く手がさし伸ばされていた。
二人とも最初は驚いたが、その手が自分達の見知った形、その手がちなつのものということが分かり、導かれるように自分の手を重ね合わせた瞬間、
3人の意識が完全に一つになった。

真っ白な世界のあらゆる場所に色が付き始めた。
色が増えると共に、その色は形となり、記憶となって白い世界が埋め尽くされる。
3人はお互いの記憶を全て共有し、意識を共有し、精神的に完全に繋がった。

『あ…』

『この魔法は…』

『わかる… ちなつちゃんの記憶も… 結衣の記憶も見える…』

『成功したんだ… 京子の考えも、ちなつちゃんの考えもわかるぞ…』

『全部わかる… あかりの未来の記憶も見えた…』

『あかり… あんな… あんなに傷つきながら… それでも逃げることも出来ずに…』

『あのあかりが… 優しいあかりが誰かを恨みながら… 呪いながら死んでしまうなんて…』

『…あかりちゃんは一人で頑張っていました… どうしようもない状況でも頑張って… もう逃げることも… 逃げるなんてことも考えられなくなっちゃって…』

『うん… そうやって全部抱え込んで… 背負いきれないくらいのものを抱え込んで…』

『最後は一人ぼっちで… あんまりだろ… こんなことって…』

『…………』

『……させない』

『…ああ、絶対に』

『…絶対にあんな未来にするわけにはいかない』

『…そのためにもあかりのいる世界に絶対に飛んでやる、私達みんなであかりの元にいかないと…』

『ああ… それであかりに言ってやらないとな…』

『私たちに頼ってくれって、あかり一人で頑張る必要はないんだって…』

『はい… 今度はあかりちゃんと気の済むまで話をしましょう…』

『…気の済むまで話し合って、あかりちゃんと一緒にみんなで助かる未来を見つけるんです』

『そうだね… そうと決まれば、こうやってる時間も惜しいよ』

『あかりが今いる世界も見えた… 飛べる… あかりの元に行くよ』

『うん… …あかり今行くよ』

『はい… 待ってて、あかりちゃん…』

一つになっていた3人の意識が遠のき始め、やがて弾かれるように3人は目を覚ました。

ちなつ「ぷはぁっ!! はぁっ… はぁっ…」

結衣「ちなつちゃん、大丈夫!?」

ちなつ「は、はい… でも、頭がボーっとして…」

京子「…ありがとう、ちなつちゃん。ちなつちゃんは少し休んでて」

京子「ここからは… 私の番!」

ちなつ「お願いします… 京子先輩…」

京子は頬を両手で叩き気合を入れると、真剣な顔で結衣に向き直った。

京子「結衣…」

結衣「ん、わかってる。あいつが邪魔をしてきてもお前とちなつちゃんは私が守るよ」

京子「ありがと」

結衣「お前は魔法を使うことに集中してくれよ、何があっても私が何とかするから」

京子「うん」

京子「それじゃあ… やるね」

結衣「ああ」

ちなつ「はい」コクン

京子「…………」

京子が集中し始めると共に、京子の脳裏にちなつが見て感じたあかりの姿が浮かび上がってくる。
京子の魔力も徐々に集まり、あかりの姿も鮮明に映し出され始めたが、それと同時に京子の周囲で放電が起き空間が歪み始めた。
京子の魔力が大きくなるにつれ、空間は歪み続け放電も大きな雷となり、3人に襲い掛かってきた。
魔法を使用する事に集中し無防備な状態の京子に襲い掛かった雷は、

結衣「はぁぁぁぁぁぁっ!!」

京子に直撃する瞬間に、結衣の剣によって切り裂かれた。

京子は目を瞑って集中している、集中すると共にさらに雷は激しさを増し雷鳴が鳴り響くが、京子は何も聞こえていないのかただ魔法に集中し続ける。
その間、京子に、ちなつに、そして自分に降り注ぐ雷光を結衣は切り裂き続けていた。
どれだけ時間が過ぎたのかも分からないくらい、結衣は動き続けた、その手は電撃によって焼け爛れていたが結衣は剣を落とすこともなく襲い掛かる雷光を引き裂き続ける。

ちなつ(ゆ、結衣先輩の手が…)

ちなつ(でも… 京子先輩の集中を途切れさせるわけにはいかない…)

ちなつ(お願い… 早く…)

ちなつが京子の魔法の完成を祈ったその時に、白い影がちなつの目に映った。

QB「待っ………」パァン

だが、ちなつがその姿を認識する前に、その白い影は弾けて消えた。

QB「聞………」パァン

QB「き………」パァン

QB「…」パァン

QB「」パァン

全て結衣が切り裂いていた。
姿が見えると同時に、見えるよりも早く結衣はQBを切り裂き吹き飛ばしていた。
幾度もQBは吹き飛ばされ、やがてQBは姿を現さなくなり、3人の頭の中に直接声が聞こえ始める。

QB『やれやれ、少しくらい話を聞いてくれてもいいんじゃないかな?』

結衣「…………」

ちなつ「…………」

QB『…本当にこれは君たちの事を思っての忠告なんだ、これ以上は危険なんだよ』

QB『既に次元の壁が視認できるくらいの状態になっている、君たちにも見えるだろう? 空間が歪み波打っている状態が』

QBの言うように、3人の周囲はまるで天に水が昇っていくような現象がおき始めていた。
空間に波が現れ、その波は天に昇り続け、先ほどまで荒れ狂っていた雷鳴はピタリと止まり、ただ静かに空間が揺れていた。

QB『それが次元の壁だよ、絶対に超えることの出来ない世界の壁、そこまで実体化した状態だと触れただけでも君たちの身体は吹き飛んでしまう』

QB『結衣、ちなつ、早く京子を止めるんだ。これ以上は本当に…』

ちなつ「黙んなさいよ…」

QB『…黙らないよ、こんな馬鹿げたことをして君たちが死んでしまったら、折角のエネルギーも回収できないじゃないか』

QB『どうせ死ぬんだったら、魔女になってくれないかな? 君たちが魔女になることによってどれだけの………』

結衣「黙れって言ってるだろ?」

QB『!?』パァン

テレパシーを送っていたQBの一固体の背後に結衣が現れ、QBをなぎ払い吹き飛ばした。

QB「馬鹿な… どうやって位置を掴んだって言うんだ…」

結衣「どうやってだろうね?」

QB「!?」パァン

再びQBの一固体は結衣によって吹き飛ばされた。
それと同時に、周囲に配置されていたQBの個体の全てがほぼ同時に結衣の手で吹き飛ばされ破壊される。

QBは破壊される寸前に結衣の動きを観測していた。
結衣の身体能力は人間の限界も超え、生物の限界も超え、そのとてつもない才能から生み出された動きは、音を置き去りにして、光速の域にまで達していたのだった。
結衣は光の速度で自分たちの周囲を動き、QBを見つけるたびに破壊した。
そして、結衣は京子達の元に1秒もかからずに全てのQBを破壊し戻って来ていた。

QB『………本当に驚いたよ、まさか光速で動くなんて… ああ、僕を探そうとしても無駄だよ、僕は今地球にいないからね』

結衣「っ!!」

ちなつ(光速…? それに地球にいないって…)

QB『…もう間もなく京子によって魔法が完成してしまう』

QB『お願いだよ、京子を止めてよ、このままだと君たちは確実に死んでしまうんだ』

結衣「……私たちが死ぬって誰が決めたの」

QB『…何を言っているんだい、このままだと君たちは間違いなく………』

結衣「…私たちはあかりの所に行くんだ」

QB『だからそんな事は不可能なんだよ』

結衣「不可能なんかじゃない… 私たちを邪魔するものはどんなものでも私が切り裂いてみせる」

QB『…結衣? 君は何をしようとしているんだ…』

結衣「この世界が私たちを邪魔するって言うんなら」

結衣「この世界を切り裂いて、私たちは進む!」

結衣は波打った空間に向かい剣を振るった。
その太刀筋は誰の目にも映ることもなく、音を発することもなく、光すらも遅れる速度の一撃となり、その一撃により空間に一筋の線が現れ3人の目の前で空間がズレた。

QB『ば、馬鹿な… ありえない…』

結衣「京子ぉぉぉぉっ!!!!」

ちなつ「京子先輩っっっ!!」

京子「見えたっ!! 飛べるっっっ!!」

京子が目を見開くと同時に、青い光が爆発するように広がり、ズレていた空間の裂け目に吸い込まれるように流れていった。
京子はちなつの手を取り、ちなつは結衣の手を取って3人は青い光となってこの世界から消失した。

QB「………そんな馬鹿な」

QB「………この世界を、宇宙を局所的といえど破壊してしまったというのか」

QB「………信じられない、彼女達は一体…」

3人がいた場所は切り裂かれた空間も元に戻り静寂に包まれていた。
QBは3人が消えた空間を観測しようと試みていたが、どれだけ観測しても何の成果も得られることはできなかった。

そして、3人は世界を越える。
あかりの元に辿り着く為に…

エピローグ7終わり。

エピローグ8


京子達は青い光に包まれて、真っ暗な空間を飛んでいた。

京子「やった… やったよ! 結衣! ちなつちゃん! 私たちは賭けに勝ったんだ!」

ちなつ「ですね! これであかりちゃんのところに… ………結衣先輩?」

結衣「…………」

ちなつは結衣の様子がおかしいことに気が付き、結衣を見る。
結衣は隠そうとしていたが、ちなつは見てしまった、
結衣の右腕が無くなっていることに。

ちなつ「ゆ、結衣先輩!?」

京子「ちなつちゃん? 結衣がどうかしたの…?」

結衣「あはは… ちょっと無茶しちゃったみたい」

ちなつ「む、無茶って、結衣先輩… 腕が…」

京子「ど、どうしたの? ねぇ?」

3人は京子、ちなつ、結衣と手を繋ぎながら飛び続け、京子からはちなつが影になり結衣の姿が殆ど見えていなかった。

結衣「…京子は気にしないで大丈夫、また到着するときは言って。私がまた空間を切り裂くから」

京子「待ってよ、何隠してんのさ… ちなつちゃん、結衣に何があったの!?」

ちなつ「ゆ、結衣先輩のう………」

結衣「ちなつちゃん!!」

ちなつ「うっ…」

京子「ねぇっ! 結衣!? 何があったの!?」

結衣「なんでもないさ、お前は気にせずに魔法を使うことに集中してくれよ」

京子「なんでもないって事ないでしょ!? 何があったの!?」

結衣「…大したことじゃないよ、ちょっとだけ怪我しただけ」

京子「っ! でも… ちなつちゃんもあんなに…」

結衣「大丈夫、本当に大したことじゃないから」

京子「………本当に?」

結衣「ああ」

京子「…信じるよ」

結衣「うん」

京子は結衣がどんな怪我をしてしまったかすぐにでも確認したかったが、魔法の維持をする為に意識を他に回すことが出来ない状態だった。
だが、どれだけ集中しようと一度頭にこびりついてしまった思いは取れず、京子はの頭の中に浮かび上がったあかりの姿と共に、結衣の姿も浮かび上がってきてしまう。

京子(結衣……… 一体何があったんだよ…?)

京子(怪我って、本当に大丈夫なのかな… 酷い怪我だったら…)

京子(うぅ… 駄目、今は集中しなきゃ…)

京子(あかりの場所に… でも… 結衣が………)

『………ユイ』

京子(え…? 何今の…?)

京子の頭の中に誰かの声が届く。

『………ユイ、ドコ?』

京子(な、なんなのさ… 誰の声なの?)

『………ドコニイルノ?』

京子(ちなつちゃん…? いや、違う… 一体なんなんだよ…)

頭の中に響く声と共に京子の意識が先ほどまで浮かび上がっていたあかりと結衣の姿が砂嵐と共に消え、空の上から木々が吹き飛ばされてさら地となった森が浮かび上がっていた。
それとともに今まで進んでいた方向から、別の方向に引っ張られるように3人は飛ばされ始めた。

京子「なっ!? そっちじゃないよっ!!」

ちなつ「京子先輩? どうしたんですか?」

京子「わかんない! でも、頭の中に誰かの… 違う場所が上書きされて… ヤバイ、このままだと…」

京子「み、みんな、気をつけて! 何かに引っ張られてる! 違う場所に行っちゃう!!」

結衣「違う場所? あかりのいる世界じゃないのか!?」

『ユ・イ?』

京子「マズっ!! うわあああああああ!!」

京子の目の前の空間に針の先ほどの小さな穴が空いていた。
紫色の光に包まれた穴は今にも閉じる寸前だったが、閉じきる寸前に京子はその小さい穴に入り込み、真っ黒な空の上で京子達が包まれていた青い光は弾け、3人は空中に投げ出された。

京子「ああああああああああ!!」

ちなつ「きゃぁあああああああ!!」

結衣「っ!!」

投げ出された二人を結衣は受け止めた。
右腕が無かったため、左手で無理やり二人の服を掴み空中を蹴りながら鋭角な動きで地上に降り立った。

ちなつ「あ、ありがとうございます。結衣先輩」

京子「ゆ、結衣ありがと……… っ!! 結衣!! 腕がっ…」

ちなつ「っ…」

結衣「ん、さっきちょっと無茶しちゃってね」

京子「そ、そんな…」

結衣「そんな顔するなよ」

京子「するって! なんで結衣はそんなに平気そうにしてるのさ!?」

ちなつ「そ、そうですよ! 早く手当てしなくちゃ…」

結衣「手当ては必要ないよ、もう治ってるから」

京子「は?」

ちなつ「ど、どういうことなんですか?」

結衣「私の力、自己治癒能力もかなり高いみたいでさ。怪我した次の瞬間には治ってたんだよ」

京子「で、でも、腕がなくなっちゃって…」

結衣「それも気にしなくても大丈夫さ」

ちなつ「な、何言ってるんですか!」

結衣「ほら、あいつも言ってただろ。私は回復魔法も使えるかもしれないって」

結衣「今はまだどうやるかは分からないけど、回復魔法を使えば腕の一本や二本生やすこともできるだろ」

京子「…………結衣、流石にそれは滅茶苦茶すぎるよ」

ちなつ「…………はい」

結衣「そう? さっきのことに比べたら滅茶苦茶でもなんでもないと思うぞ?」

京子「…そうなのかな?」

結衣「うん、そうだよ」

京子「そっか…」

ちなつ「って、京子先輩も納得しないでくださいよ!! どう考えても滅茶苦茶じゃないですか! 生えるわけないじゃないですか!」

京子「はっ… そ、そうだよ結衣!」

結衣「その話は置いておこうよ、私が大丈夫だって言ってるんだから」

ちなつ「もうっ! 結衣先輩! なんだか行動が京子先輩みたくなってますよ!!」

京子「わ、私みたいって…」

ちなつ「そうじゃないですか、無鉄砲で何も考えてないのに行動して人のことも全く考えない言動なんて京子先輩じゃないですか!」

京子「」

結衣「い、一応みんなのことは考えてるよ?」

ちなつ「わかってますよ! だからそういうのも全部含めてってことです!」

結衣「………京子っぽくなったんじゃなくて昔に戻っただけなんだけどな」

ちなつ「何か言いました!?」

結衣「い、いや、なんでもないよ」

あまりにも自分の怪我を軽いものとして扱う結衣に二人は心配していた感情も薄まり、実際に結衣の怪我も肉も塞がり、痛みも感じていないようで、ひとまず後回しにすることとなった。

結衣「京子、魔法は成功したのか? あかりは一体どこにいるんだ?」

空は真っ黒な雲で覆いつくされ、木々がなぎ倒され吹き飛んでいる森に3人は降り立っていた。
そして付近にはあかりの姿はどこにもなく結衣が疑問を持ち京子に尋ねる。

京子「………この世界、私が飛ぼうとしていた世界じゃないんだ」

ちなつ「え… それって一体?」

京子「わかんない… なにかが私の頭の中に、声が聞こえてその後は意識も………」

『ミツケタ』

京子「っ!?」

再び京子の頭の中で声が聞こえた。
そして、視界が一瞬ブレたかと思うと空の上から、自分達を… 結衣を見ている光景が浮かび上がり消えた。

京子「ま、また… 何なの…? 空から…?」

ゾクリと京子の背中に悪寒が走る。
空から何かが見ている。
その感覚を、視線を感じ京子は空を見上げた。

『………ナンデ』

そこには小学生くらいの少女が浮かんでいた。
その少女に京子は見覚えがあった。
見覚えがあるなんてものではなかった、それは京子自身だった。

輪郭は全て幼い頃の京子だった、
しかし、その姿は顔色はどこまでも白く、
目と口にあたる部分はぽかりと穴が空いてその中には闇が渦巻き、
その表情は悲哀と絶望が入り混じり、見るだけで絶望の深遠に誘われるほどの姿をしていた。

京子「わ、私………?」

ちなつ「ヒィッ!? な、なんなんですかあれ!?」

結衣「き、京子… なのか? で、でも、京子はここに…」

『………カエセ』

白く小さな少女はゆっくりと京子達の元に近づいてきた。

京子「さっきから一体なんなんだよっ! 頭の中に声がっ!」

『………ユイヲ』

京子の頭の中に声が聞こえ、視界もブレ続け、自分達を空から見ている視界と、白い少女を見ている視界に交互に切り替わる。

『ユイヲカエセエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ』

白い少女が両腕を伸ばし襲い掛かってきた。

エピローグ8終わり。

エピローグ9


京子「うぇっ!? ぐはっ!?」

結衣「京子っ!?」

ちなつ「京子先輩っ!?」

白い少女の手は京子の首に絡み付き、京子は宙吊りになり足をばたつかせもがき始めた。

『ソコハワタシノバショナンダ………』

『オマエジャマ』

京子「うぇっ……… ぐっ………」

結衣「お前っ! 京子を離せよっ!!」

結衣は白い少女の腕を京子の首から剥がそうとするが、どんなに力を入れてもその手が京子の首から外れる気配はなかった。
京子の顔色が青くなり始めたところで、結衣は剣を左手に作り出し白い少女の腕に切りつけた。

結衣「このっ… 京子を離せって言ってるだろぉっ!!」

しかし結衣が切りつけた剣は白い腕に到達した瞬間、剣の刀身が完全に消滅した。

結衣「なっ!?」

消えてしまった剣を驚愕の表情で見つめる結衣。
そして、そんな結衣を白い少女はずっと見つめていた。
結衣が白い少女の腕に触れたときからずっと。
絶望の表情の少女の表情が、口元だけ裂けるように広がり、表情が笑っているような歪な形に変化する。

『ユイダ… ユイガモドッテキテクレタ…』

京子(こいつ… なんなんだよ…)

『マモレナカッタ… デモイキカエッテクレタ…』

京子(さっきから聞こえる声… まさかこいつの声なの…?)

『チナツチャンモイル… ウレシイ…』

京子(こいつ… まさか…)

『アカリハ… アカリハドコ…』

京子(信じたくない… だけど…)

『ワタシノダイジナトモダチ…』

京子(こいつは… 私だ…)

京子が白い少女の正体に気が付く。
白い少女は2度目の世界で魔女になってしまった京子だった。
京子達は接触することにより互いの意識や記憶も共有しあっていた。
それは元が同じ存在だから起きた現象だった。

京子(この記憶……… みんな魔女になってしまった世界の記憶!?)

京子(それじゃあ、この私は… 魔女になった、あの世界の…)

白い少女に掴まれた時から、京子と白い少女は繋がっていた。
白い少女の声も聞こえ、白い少女が見ているものが京子には見えた。
そして、京子の脳裏にフラッシュバックするように白い少女の記憶が浮かび上がった。

京子(や、やめてっ! 私なんでしょ!?)

『ワタシ…? オマエガワタシ?』

京子(そうだよ! 記憶が見えたんだよっ! ねぇ、そっちも見えるでしょ? 私の記憶!)

『オマエノキオク…』

京子(そうだよっ! そっちの記憶も見えた、それならそっちも私の記憶が見えてるんでしょ?)

『キオク… アカリヲタスケル…』

京子(そう! 私たちはあかりを助ける為に世界を超えたんだ!)

『アカリガシンジャウ?』

京子(そうだよっ! あかりの所にいかないとあかりが死んじゃうんだ! そんなの嫌でしょ!?)

『イヤ』

京子(やっぱり私だ… 魔女になってもみんなのことを思って…)

京子(そうだよね! だったらこの手を離してよ、私たちはあかりの所に行かないといけないんだ!)

『イヤ』

京子(!?)

『ズルイ』

京子(えっ…)

『オマエバッカリズルイ』

京子(な、何を…)

『ワタシハユイヲタスケレナカッタノニ』

『ソコハワタシノバショ』

『オマエハイラナイ』

『ワタシガキョウコナンダ』

『オマエハニセモノ』

京子(ま、待って! お願い、話を…)

『シネ』

京子の首が魔女京子によってへし折られる寸前、

結衣「うおおおおぉぉぉぉらぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」

魔女京子は結衣の光速の飛び蹴りによって吹き飛ばされた。

京子「げほっ!! げはっ!! はぁっ、はぁっ…」

結衣「京子っ!! 大丈夫かっ!?」

ちなつ「京子先輩! 結衣先輩!」

結衣「あいつ… 一体なんなんだ…」

結衣「っ!? またこっちに!?」

吹き飛ばされた先から再び魔女京子が3人の元に向かって飛んで来ていた。

京子「げほっ… ゆ、結衣、あれは… こほっ…」

結衣「喋るなっ! ひとまず逃げるぞっ!!」

結衣「ちなつちゃん、私の首に手を回してしっかり捕まって!」

ちなつ「は、はいっ」

ちなつは結衣の背中にしがみつき、京子は結衣の左腕で抱きかかえられ、結衣は地面を強く踏み抜き空のかなたに跳躍した。
結衣が消える瞬間を見た、魔女京子は絶望の表情を濃くし、その手を伸ばしたが結衣を掴むことはできずに空を切った。

『ユイィィィィ………』

『ナンデ、ドコニイッチャッタノ』

『………ソウカ、アイツニ』

『ニセモノ… コロシテヤル…』

魔女京子は結衣達を追う、その顔は絶望に歪みながらも悪鬼のような表情に変わっていた。

結衣「ここまで来れば一旦安心かな…?」

3人は魔女京子から逃げた後に、見晴らしのいい山の山頂に降り立った。
結衣に下ろされた京子は震える声で呟いた。

京子「あれは… 私…? それじゃあ、この世界って… あかりが移動した後の世界…?」

ちなつ「どうしたんですか…?」

京子「落ち着け… 考えろ… 冷静になって可能性を…」

結衣「京子…?」

しばらく京子は考え込み、可能性のひとつを導き出し2人に話し始める。

京子「結衣、ちなつちゃん… ここはあかりのいる世界じゃない、多分あかりの記憶で見たみんなが魔女になってしまった世界だよ」

結衣「!?」

ちなつ「なっ!? ど、どうしてそんなことが!?」

京子「さっきの白い魔女、あれは私だったんだ」

結衣「!? あ、あれがお前!? なんでそんなことが!?」

京子「首を掴まれたときに… いや、移動しているときからあの私の心や、思考が私の中に入り込んで来てたんだ…」

京子「ああやって触れられたときに理解したよ、これは私なんだって…」

ちなつ「あれが… 京子先輩…?」

京子「多分、あの私の思考と私の思考が重なってしまってこの世界に飛ばされてしまったんだと思う」

ちなつ「そんな…」

京子の予想は正しかった。
この世界の時間はあかりが時を巻き戻し、世界を渡って間もない時間帯。
そしてあかりが移動した際に、時空に穴が空いた状態でその世界を横切ろうとしていた京子に、この世界で魔女となってしまった京子の思考が流れてきて、京子はそれを感知してしまいこの世界に飛ばされてしまったのだった。

結衣「…あれがお前だって言うのは間違いないのか?」

京子「うん、間違いない、あれは私だよ」

結衣「そっか…」

京子「…でも、仕方ないよ、ああなってしまったのならもう… 早くあかりの世界に行かないといけない、みんな集まってよ」

再び京子は魔法を使うために準備を始めるが、結衣は動かずに京子を見つめていた。

京子「結衣?」

結衣「本当に京子はそれでいいの? あんな風になってしまった自分を放っておいていいの?」

京子「…うん」

結衣「そっか… なら私はあの京子を助けるよ」

京子「はぁっ!? そ、そんな事、なんでっ!?」

ちなつ「…………」

結衣「私がやりたいから、それだけ」

京子「や、やりたいからって… 危ないよ! あの私は私を殺そうとしてたし、結衣も何されるか分からないんだよ!?」

京子「それに一刻も早くあかりの所に行かないといけないんだよ!? こんなところで足止めを喰らっているわけには…」

結衣「それなら一刻も早くあの京子を助けて、あかりのいる世界に向かわないといけないな」

京子「違うって! 私のいいたいことはそうじゃなくて!」

ちなつ「…私もあの京子先輩を助けたいです」

京子「ちなつちゃんまで!?」

ちなつ「…あの京子先輩が記憶の中で見た京子先輩だったら絶対に救わないといけないです」

ちなつ「あんな酷い結末を迎えてしまった京子先輩… あんなに一生懸命頑張っていたのに最後には報われず絶望して…」

ちなつ「それに、京子先輩一人救えなくて、あかりちゃんを助けることなんてできるわけないじゃないですか! 私も結衣先輩と一緒にあの京子先輩を救います!」

結衣「ちなつちゃん… ありがとう」

京子は魔女になってしまったこの世界の自分を救うと言う二人を止めたかった。
合理的な思考を優先していた京子はこの世界に留まるよりも一刻も早くあかりのいる世界に移動したかった。

だが、京子は魔女となった京子の感情を受け取っていた。
結衣を救えなかった後悔、ちなつの悲惨な姿を見てしまった嘆き、そしてあかりが既にこの世界にいないことを知ってしまった悲しみ。
そして自分に対する嫉妬、みんなを救える可能性を持った自分自身に対する嫉妬。
京子は魔女となってしまった自分の感情も全て受け取り、その上で自分を放置し旅立とうとしていた。

しかし、本心は自分自身を救いたかった。
自分の気持ちは自分が痛いほど分かっていた。
もしも自分があの立場だったら同じことをしてしまうと思う。
そんな自分が嫌だった、そしてそんな自分を救いたかった。

京子は揺れていた。
そして揺れる京子を吹っ切らせたのは結衣だった。

結衣「ほら」

京子「…結衣?」

結衣「お前も本当は何とかしたいって思ってるんだろ?」

京子「そんな事は…」

結衣「思ってるよな」

京子「…………」

結衣「よし、わかった」グィッ

京子「ゆ、結衣?」

結衣は京子の手を引き立ち上がらせる。

結衣「お前が本当に嫌だったらこんな事しないけどさ、お前は迷ってるだけだもんな」

結衣「それだったら私がお前の迷いを断ち切ってやるよ」

京子「結衣…」

結衣「京子、お前は私について来ればいいんだ」

結衣「ほらっ、いくぞ」

京子「………うん」

3人はこの世界の京子を救うために立ち上がる。
絶望に染まり、魔女に堕ちた京子を救うために。

エピローグ9終わり。

エピローグ10


3人が魔女京子を救うと決め、京子が結衣に手を引かれ立ち上がったとき、
再び京子の視界が切り替わり、魔女京子の声が聞こえた。

『ニガサナイ… ニセモノ、コロシテヤル』

京子「っ… 見つかった…」

結衣「見つかったって… あの京子にか?」

京子「…うん、あっちも私の事を感知できるみたい。私の居場所がばれてるよ」

ちなつ「丁度いいじゃないですか、わざわざ出向いてくれるなんて」

結衣「ああ、これであの京子を探す手間も省けたって事だ、後はどうやってあの京子を助けるかだけど…」

ちなつ「それなら、私の魔法であの京子先輩を説得する方法なんてどうですか?」

結衣「…あの世界か、それも一つの手だよね」

ちなつ「はい! あそこならあの京子先輩も暴れることはできないと思いますし、もし暴れても私が何とか押さえ込めるはずです」

ちなつ「でも、問題はあの京子先輩を引きこむことが出来るかどうかですが…」

結衣「そこは私があの京子を押さえ込んで動きを封じるよ、その間に引き込めば」

京子「…………ちょっとまって」

ちなつ「どうしました?」

京子「…そもそもあの私に魔法って通じるのかな?」

結衣「!」

ちなつ「そういえば、あの京子先輩の力って…」

京子「うん、魔法を打ち消してた、魔法無効化能力… 魔女になってもその力が変わってなかったら…」

結衣「……そういえば私の剣がさっきあの京子に届く前に消え去ってた」

ちなつ「そ、それって!」

京子「能力はそのまま… ってことだね」

ちなつ「…本当に厄介な、さすが京子先輩ですね………」

結衣「…魔法が通じなくても、私たちの声は届くはずだよ」

結衣「呼びかけ続けよう、あの京子に」

京子「…そだね。もうあっちも来ちゃったみたいだしね」

3人の視線の先に、暗雲と共に白い京子が近づいて来ていた。
視界に入ったかと思うとあっという間に魔女京子は3人の目の前まで到達し京子に攻撃を仕掛けてきた。

京子「!? ま、まっ…」

京子の頭を狙った魔女京子の手は結衣によって間一髪で防がれた。

『…ユイ? ナンデソノニセモノヲ…』

結衣「京子! 聞いてくれっ! 自分を殺そうとなんかしないでくれよ!」

『ジブン? コノニセモノノコト?』

ちなつ「京子先輩! 元の京子先輩に戻ってくださいよ! こんな事悲しすぎるじゃないですか!」

『チナツチャン? モトノキョウコッテ? ワタシガキョウコダヨ?』

京子「ねぇっ! 私だったらわかるでしょ! 私たちがこんな事をしても意味ないよ!」

『ダマレ… ニセモノ』

京子「っ! 私の気持ちは私が一番良く分かるよっ! 今だってずっとそっちの気持ちが流れ込んできてる、そっちも一緒でしょ!?」

『ダマレダマレダマレダマレ…』

京子「悔しかった気持ち、悲しかった気持ち、後悔した気持ち、全部わかる! だったら私の… 私の気持ちも分かるでしょ!?」

『ダマレ…』

京子「私はあかりを助けたい、みんなを助けたい、そして私も… あなたも助けたいんだよっ!」

『ウルサイ……』

結衣「そうだよ! 京子、私たちはお前を助けたいんだ! 魔女になってしまったって言っても元に戻る方法だってあるはずだ! 一緒にその方法を探そう!」

『…………ユイ』

ちなつ「京子先輩はあんなに頑張ったんですよ! 私たちがここに来たのも京子先輩を助けるためだったんです! こんな悲しい結末京子先輩も嫌ですよね!?」

『…………チナツチャン』

魔女京子の攻撃はいつの間にか止まっていた。
空中に浮きながら3人をただ見つめているだけだった。
結衣とちなつは攻撃を止めた魔女京子を見てもう少しで説得が出来ると安堵の表情を見せた。
その表情を、京子に向かって。

『ナンデ』

『ナンデ、ユイモチナツチャンモワタシヲミテクレナイノ』

京子「っ!? ち、違う! みんなあなたを見てるよ! 結衣だってちなつちゃんだって!」

『ウソダ、ミテクレテナイ』

『ニセモノ、ワタシヲダマスツモリダッタ』

京子「騙してなんかない! 分かるでしょ!? 私たちはあなたを騙すなんてことはしないよ!!」

結衣「京子!? どうしたんだ!?」

ちなつ「あの京子先輩が何を言ってるんですか!?」

京子の様子が変わり、二人は京子に詰め寄る。
魔女京子の声は京子だけに聞こえ、二人には京子たちの間で何が起こっているのかがわからなかった。
だが、二人が完全に京子に意識を向け、魔女京子から意識を外したとき、魔女京子の全身から闇の粒子があふれ出した。

『ヤッパリワタシヲミテクレナイ』

『フタリトモワタシヲミテクレテナンカイナイ』

京子「違うっ!!」

『ズルイ、ナンデオマエダケ…』

『オナジワタシナノニ、ナンデオマエダケ…』

京子「聞いてよっ! 私たちはあなたを!」

『ソウカ…』

『オマエモワタシ…』

『ワタシガコンナスガタダカラ、フタリハミテクレナイ』

『ダケドオマエノスガタナラ、フタリハミテクレル』

京子「!?」

『オマエ、イラナイ』

『ダケド、オマエノカラダヲイタダク』

京子「何言ってんのさ! そんな事…」

『ダマレ』

魔女京子の身体が闇の粒子となり京子に纏わり付いた。
一瞬で纏わり付いたソレは京子の姿を覆いつくし、京子の目や耳や口から京子の体内に侵入を始めた。

京子「がっ!? うがぁぁぁあああああああああああぁぁぁぁあぁぁぁ!?」

結衣「き、京子ぉぉぉぉっ!!」

ちなつ「う、嘘っ!? 何が起きたのっ!?」

京子は頭を抱えのた打ち回り、絶叫を上げ続ける。
結衣とちなつは京子を抱き起こそうと動いた瞬間、
2人の周囲に複雑な立方体の光が現れその光は何重にも重なり合い、結界となって2人の動きを封じ込めた。

結衣「なっ!?」

ちなつ「今度は何なのよっ!?」

混乱する2人に、声が聞こえてきた。

QB「捕獲完了、だね」

山頂の岩場や、物陰から無数のQBが姿を現す。
その姿を見た瞬間、結衣は剣を作り出そうとするが、剣を作り出そうとした魔力は雲散し結衣の手に剣が現れることはなかった。

結衣「っ!? なら…」

結衣は左手で結界を殴りつけ、少しだけ切れ目が入ったところから、内側から結界を破りだした。

QB「!?」

何重にも張られた結界を破り続けたが、残り数枚となったところで結衣の意識は落ち、結衣はその場に崩れ落ちた。

QB「…やれやれ、信じられないな、魔力を散らす性質を持ち尚且つ物理強度にも優れた結界なんだけど…」

QB「…肉体強化型の魔法少女になっているみたいだね、肉体の内側からの魔力は散らせないけどここまでの力を持っているとは…」

ちなつ「ゆ、結衣先輩っ!? あなた! 結衣先輩に何をしたのよっ!?」

QB「君はちなつで間違いないようだね? そして、結衣と京子… あかりはいないようだね」

QB「君達がこの世界に現れたときから、会話も全て聞かせてもらった。君たちは別次元の君たちで間違い無さそうだね?」

ちなつ「質問に答えなさいよっ!! 結衣先輩に何をしたの!?」

QB「ああ、少しだけ精神に干渉させてもらっただけさ、精神支配も効かなかったらどうしようかと思ったけど安心したよ」

ちなつ「精神支配って… 結衣先輩に何をするつもり!?」

QB「少しだけ眠っているだけさ、あのままだと結界を破られていたからね」

ちなつ「っ!!」

京子「うがっ!! あぎっ!!」

ちなつ「き、京子先輩っ!!」

京子は結衣とちなつがQBに捕らわれた事に気付く。
だが京子は動くことすらままならず、その場で痙攣をしながらただ魔女京子の侵入が進む一方だった。
涙を流しながら、結衣とちなつを見続けていた京子だったが、魔女京子が全て京子の身体に収まったと同時に京子は白目をむき完全に意識を失った。

ちなつ「京子先輩!!」

ちなつ「出しなさいよ! このままじゃ京子先輩が!!」

QB「そうだね、魔女に侵食された魔法少女は過去何人もいるけど、同一体の場合はどうなるかなんて前例はないからね、とても興味深いよ」

ちなつ「ふざけないで!! 早く出しなさいよ!!」

QB「君は結衣と違い、結界を破る力は無さそうだね。その中で京子がどうなるか見届けるといい」

QB「おや、始まったみたいだね」

京子の身体から闇の粒子が溢れ出して、少しずつ京子の身体を包み込んだ。
結界の内側からちなつはその様子を見続けていた。
京子の身体は闇の繭に包まれ、その姿は完全に闇に覆い尽くされた。

ちなつ「な、何!? なんなの!? 京子先輩っ!!」

QB「…同化しているのか? ソウルジェムの反応が消えた… 魔女に取り込まれただけか…」

ちなつ「!? デタラメ言わないで!」

QB「いやいや、でたらめなんかじゃないさ。どうやら京子は魔女に取り込まれたみたいだね。今までの魔法少女と同じ、同一体といえど例外はなかったわけだね」

ちなつ「嘘よ… 私はそんな事信じないわ!!」

QB「君が信じる信じないは勝手だけどね… おや、動きがあるね…」

闇の繭に皹が入り始めた。
皹が入った部分から、闇が噴出し禍々しい瘴気が山頂に充満する。
やがて繭の皹が全体に広がり、繭が割れた。
そこには何も変わっていない京子が倒れているだけだった。

ちなつ「京子… 先輩…?」

京子はムクリと起き上がり、左右を見渡し、正面を向き結衣とちなつを見た。
その時にちなつは京子の顔を見てしまった。

ちなつ「ヒィッ!?」

京子の目は何処までも深い闇に覆われ、ただの黒い穴となっていた。
そのまま立ち上がった京子は首だけを動かし自分の手元を見ていた、
そこには闇色に染まりきった京子のソウルジェムがあった。

京子は手に持っていた闇色に染まったソウルジェムを口元まで運び、口づけするようにゆっくりと口に含み、

ちなつ「!? だっ、だめっ!?」

そのソウルジェムを噛み砕いた。

ちなつ「あぁ… そんな………」

噛み砕かれたソウルジェムはその場に留まり、京子の口の中から出てきたグリーフシードと混ざり合って闇色の宝石となり、その宝石を京子は再び飲み込む。

同時に、京子の身体から溢れ出ていた闇色のオーラは勢いを増し、京子の身体に纏わりつき形をおび始めた。

京子の髪に纏わり付いていた闇は京子の髪を漆黒に染め上げ、

京子の身体に纏わり付いていた闇は漆黒のドレスとなり、

周囲に撒き散らされていた闇は京子の背に集まり、漆黒の翼となって広がる。

QB「………これは一体?」

QB「…何故、魔女になったはずなのにエネルギーを発生させない?」

QB「それとも… 魔女ではないのか?」

闇に覆われた京子の目が閉じられる。
再び京子が目を開くと、黒く染まった目の中に青色の瞳が輝く。
闇の中に輝く瞳は確かに強い意志を感じさせる瞳だった。

エピローグ10終わり。

エピローグ11


時間は少し戻り、QBによって結衣とちなつが捕らわれてしまった所を京子は見る。

京子(結衣!? ちなつちゃん!?)

『モウスコシ… モウスコシデ…』

京子(待ってよ!! 結衣が! ちなつちゃんがあいつに!)

『ニセモノ… オマエノコトバニダマサレルモンカ』

京子(見えるでしょ!? 二人がっ!)

『アトスコシデワタシガモトノスガタニ…』

京子はただ悲しかった。
救おうとしている自分は言葉も聞いてくれずただ自分勝手に自分の体を乗っ取ろうとしている。
結衣とちなつが危機に瀕しているのに自分は何も出来ずに、もう一人の自分には何も伝わらない。

京子(何で… 何で私の事を信じてくれないの… あなたは私なのに…)

『ダマレニセモノ、モウスコシデ、ユイモチナツチャンモ、ワタシヲミテクレル』

京子(結衣も… ちなつちゃんも… 危ないんだよ… あいつに何かされてるんだよ…)

『ワタシハダマサレナイ、オマエハソウイッテニゲルツモリダ』

何度言っても京子の言葉は伝わらなかった。
そして、京子の視界で結衣が崩れ落ち、ちなつがQBと言い争っていた。

『アトスコシ… フフフフフフ…』

『ヤットニセモノガイナクナル… フフフフフハハハハハハハ…』

その言葉に京子の中で沸々と怒りがわき始めた。
自分が見えている光景は、この京子にも見えているはずなのにこの京子は結衣やちなつの事を見ようともせずに自分のことだけを考えていた。

『ユイィィ… チナツチャン…… ワタシガニセモノヲコロシテアゲルカラネ』

『ニセモノニダマサレタ、カワイソウナフタリヲ、タスケテアゲルカラネ』

その言葉に京子の怒りは爆発した。

京子(………ふざけんなよ)

『フン、ニセモノガナニヲシヨウトモウムダ…』

京子(何が偽者だ! お前が偽者だろ!!)

『ナニヲイッテル、ワタシハホンモノノキョウコダ…』

京子(本物の私だったら、結衣が、ちなつちゃんが危ないのに知らない顔なんてしない!!)

『ナニヲイッテイル…』

京子(お前にも見えてるんだろ!! 分からない何て言わせない!!)

『…………』

京子(今度は黙るのかよ!?)

『…ニセモノノコトバナンカ………』

京子()プチーン

魔女京子の言葉に京子の中で何かが切れた。
そのまま京子は、魔女京子の侵入を自分から受け入れ始めた。

『ナニヲシテイル…?』

京子(喜びなよ、私の身体をお前にあげるよ)

『…ナニヲタクランデイル』

京子(私は、一刻も早く、二人を、助けたいだけ!)

『………ウソダ』

京子(そう思いたいのならそう思えば? だけどお前が私の身体を手に入れて二人を助けなかったら絶対に許さないからね)

『……オマエ』

京子(後、一言だけ言っておくよ)

『…ナニ?』

京子(私の… バカ!!)

『…………』

魔女京子は京子が大粒の涙を流しながら自分の中に消えるのを見た。
そして、京子たちは一つになった。

魔女となった京子はうっすらと目を開ける。
目を開けて感じたのは、今まで心の中で渦巻いていた絶望や嫉妬、そういった負の感情が消え、とてもはっきりと自分の心を認識できたことだった。

『ここは… 部室…?』

目に入ってきた光景はごらく部の部室に良く似た場所だった。
そして、机に向かい側から自分を見ている存在に気が付いた。

『!?』

「また会ったね」

顔を怒りに染めた京子がそこに座っていた。
魔女京子は京子の姿を見て先ほどまで自分が彼女に行ってしまったことを思い出す。
さっきまで感じなかった罪悪感が急激に襲い掛かり、搾り出すように声を出した。

『な、何でまだ…』

「さあね? でも、まだ私は残っている、でももうすぐ消えると思う」

その言葉に魔女京子は心の中で安堵する。
しかし、すぐに安堵したことに対する後悔の念に捕らわれた。

『…………』

「何ほっとしてんの? それで、何でのん気にあんたは寝てるの?」

『な、何?』

「言ったでしょ? 二人を助けろって、私の身体をあげたんだからあんたは私の代わりに二人を助けないといけないんだ」

魔女京子の記憶が蘇る。
確かに京子は二人を助けだすことしか考えていなかったことを。
しかし、魔女京子は震える声で言った。

『あの言葉… 本当だったの…?』

「本当も何もないでしょ? 私の心もずっと伝わってたでしょ? 私は最初から嘘なんか何も言ってない」

その言葉は真実だと理解してしまう。

『そ、そんな…』

「ほら、さっさと動いて、あんたは私の代わりに二人を助けて、その後はあかりを助けに行かないといけないんだから」

『わ、私が?』

「そうだよ、もう私はいなくなるんだ、だからあんたがやらなきゃならない」

京子の言葉に魔女京子はガタガタと身体を震わせ始める。
そして、自分を消してしまうことに対して言いようのない不安と後悔を感じていた。
その顔には既に魔女のときのような悪鬼に見まごう顔ではなく、小さな子供が大切なものを無くしてしまって泣いている顔に変わっていた。

『うぁぁ… ち、違うの… 私はただ… 羨ましくて…』

「何が?」

魔女京子は言い訳をするように話す。

『あなたが… 私が失ったものを全部持ってるあなたが羨ましくって…』

「…………だから私から全部奪ったの?」

そして、京子の言葉に心を射抜かれた。

『うぁぁぁぁ… ご、ごめん、ごめんなさい… そんなつもりじゃなかったのに… 何で… 何であんな事を…』

魔女京子はそのまま泣き続けてしまった。
そんな魔女京子を見て、京子はため息をつき、魔女京子のそばまで歩み寄った。

「ふぅ… もういいよ、全部分かってるから」

『え…?』

「あんたが魔女になってたときは、どうしようもなかったんだよ、こうやって一つになってようやく何とか出来た」

「魔女になるって、そういうことなんだろうね… 自分の気持ちが抑えられなくなる、知らず知らずのうちに他人を絶望に追い込んでしまうんだ… そして自分自身も…」

『…………』

「あんたが私にした事は全部許してあげるよ」

『え…』

「でも、ちゃんとみんなを助けてあげて… 今のあなたにならお願いしてもいい…」

『待って…』

「今度はさ、あなたもみんなを助けることが出来るよ。それだけの力を私たちは持ってるんだ」

『待ってよ…』

「みんなを、お願いね…」

『待って! 行かないで!!』

消える寸前だった京子の手を掴む。
すると、消える寸前だった京子の身体が色を取り戻し、魔女京子を驚いた顔で見た。

「っ!? 戻った…?」

『待って… あなたが消えちゃうのは駄目だよ…』

「…そういってもね、もうこんな状態なんだし…」

『あなたが消えたら… 結衣も、ちなつちゃんも、あかりも悲しむよ…』

「それはあなたが何とかして、私が消えたことを感じさせないようにね…」

『…………』

『ううん… やっぱり、駄目だよ… こんな事をした私が言う言葉じゃないと思うけど…』

「…でも、もう時間はないよ? あなたも分かると思うけど、外の世界で私の身体はあなたに乗っ取られてもう殆ど魔女になっちゃってる」

『…うん』

「それなら、私があなたの絶望や悲しみを全部引き受けて消えるからさ、あなたはみんなを守ってあげてよ」

『!? 私が正気に戻ったのは… まさか…』

「ま、そゆこと」

『…………』

「魔女の力を持って、正気に戻れたら多分凄いよ? 魔力不足なんて気にせず魔法を使えると思うし、私とあなたの力なら瞬間移動+魔法無効化っていう力になると思うし、あいつがどんな邪魔をしてきても何とかできると思うんだ」

『…………』

「だからさ、この手を離してよ… あなたが掴んでいたら私が残り続けるみたいだしさ…」

『…………離さない』

「…私が消える事でみんなが助かる可能性が一番高くなると思うんだけど」

『……もう』

「?」

『もう、誰も失いたくないんだ… 誰も殺したくなんてないんだよぉ…』

「!」

京子の心に魔女京子の心が伝わる。
魔女京子は魔女になってしまった結衣とちなつを殺してしまったことにとてつもない後悔を抱いていた。
そして、最後に結衣の死体を見たときの喪失感、魔女京子はもう二度とあんな気持ちを味わいたくなかった。
例えそれが、自分自身であったとしても。

「………わかったよ」

『……え?』

「…あなたの気持ちは伝わったし、そういう考えなら私も消えない。あなたの手を握り続ける」

『ほんと…?』

「うん、どうなっちゃうかは分からないけど…」

『…多分大丈夫だよ』

「…なんで?」

『だってさ、私たちが好きなミラクるんだったらこういうときは絶対に何とかなるでしょ?』

「ぷっ… 確かにそうだね」

『だから大丈夫…』

「うん…」

『…後、最後に言わせて』

「なに?」

『本当にごめんね』

「いいよ、そんな事」

『ありがと…』

「うん」

そして、京子たちは完全なる融合を果たした。
ソウルジェムとグリーフシードは一つとなり、魔女の身体がベースとなった京子は禍々しい外見… 悪魔のような外見に変貌していたが、その心は元の京子のまま、京子として新たに生れ落ちたのだった。

京子は魔法少女や魔女という存在から一つ上の領域の存在にシフトした。

ちなつ「き、京子先輩…? その姿って…」

呆然と変わり果てた京子を見るちなつに、京子は視線を向ける。

京子「…………」

ちなつから視線を外し、結衣を見て最後にQBを見据える。

QB「これは… 君は一体…?」

京子は右手を見ながら指を動かし手を握り締めた。
視線を再び結衣とちなつに戻し、京子は右手を前に出し、手を握り締める動作を行った。

QB「なっ!?」

何の前触れも無く結衣とちなつを封じていた結界が消滅する。
再び京子が手を開くと、今度は結衣とちなつの周りに黒い闇が発生し二人を包み込んだ。

QB「一体何が起きているんだ!?」

一瞬で黒い闇は消え去ったかと思うと、京子の背後に現れ結衣とちなつが闇の中からふわりと地面に下ろされた。

京子「ふぅん… こうやって使えばいいんだ…」

ちなつ「き、京子先輩!? 何が起きたんですか!? その姿って!?」

京子「ちなつちゃん、ちょっと待っててね」

ちなつ「きゃっ」

京子の漆黒の翼がちなつと結衣を包み込み、二人の姿は翼の中に消え去った。
そして、再び京子はQBを見据え歩き始めた。

京子が一歩進むごとに、京子の姿が掻き消え、数歩前の位置に現れる。
数十メートル離れていたQBの前までに辿り着くまでに、何度もその現象は起こり続け、京子とQBの距離は0になった。

QB「空間移動なのか…? いや、それよりもその姿は一体…?」

京子「…………」

QB「魔法少女でもなければ、魔女でもない… 君は一体何者なんだ? 一体どういった存在になってしまったんだ?」

京子「私がどういう存在?」

QB「そうだよ、魔法少女は魔女になる… それは覆されないこの宇宙の概念なんだ、君は魔法少女から魔女にもならず別の存在に変わってしまった」

京子「それってさ、あんたたちが勝手に決めた事でしょ?」

QB「…違うよ、これはこの宇宙に…」

京子は手を目線の位置まで上げ指を動かす、次の瞬間にはQBが京子の手に収まっていた。

京子「あんた達が決めたルールなんて、私達が滅茶苦茶にしてやる」

京子「まずは手始めに…」

京子は左手から闇の粒子を放出し始め、山頂一面が覆われるくらいの闇が渦巻き始める。

QB「一体…?」

京子が人差し指と中指を上に折り曲げたかと思うと、闇の粒子は掻き消え辺りには静寂が戻ってきた。
だが、その静寂もつかの間、空一面が埋まるくらいの量のQBが空中に現れた。

QB「な、なん…」

京子「ふふふふふ……… あんた達、確か死なないんだったよね?」

京子「だけどさ、全部の固体が死んでしまったらどうなるのかなぁ?」

QB「…………」

QBは京子をつぶらな瞳で見たまま何も言わずに固まっていた。
しばらくはその状態だったが、京子が指を弾いた途端空中に浮かんでいた全てのQBが消え去っていた。

QB「!?」

京子「ほら… これで後はあんただけ…」

QB「馬鹿な… そんな事が…」

京子「この宇宙にいる全てのあんたを連れてきて消したんだけどさ、こうなってしまってもあんたは死なないのかな?」

QB「ありえない… 本星の個体も… 予備の個体も… 別星系にいる個体まで全てなんて…」

京子「へぇ… 今にも殺される寸前だって言うのに他のことを考えられるんだ?」

京子の言葉に漸くQBは自分が死ぬ寸前だということに気が付く。

QB「ま、待つんだ京子、僕を殺してしまったらこの星に… この宇宙を湧いた呪いをどうやって処理するというんだい!?」

京子「それもあんたが勝手に決めたルールでしょ? そんな事知ったことじゃないね、そんなルールも私達が滅茶苦茶に壊してやるからあんたは安心して死ねばいいよ」

京子の言葉にQBは固まる。

京子「あれ…? 青ざめてるの? ねぇ、あんたには感情がなかったんじゃないのかな?」

QB「………馬鹿な、感情なんて単なる精神疾患にしか過ぎない…」

京子「精神疾患ね… それじゃあ、あんたがその疾患を患ったのか試してあげるよ」

そう言うと京子はQBを岩肌に向かい全力で投げつけた。
凄まじいスピードで投げられたQBはどうすることも出来ずに岩肌に向かい飛び続ける。

QB(速… 動けな… 衝突…)

QB(………死)

QBが死を垣間見たところで、QBは京子の手に収まっていた。
京子の黒い目がQBを射抜く。

京子「ねぇねぇ、今どんな気持ちだった? 怖かった? 死ぬかと思った?」

QB「ハァーーッ! ハァーーーッ!!」

京子「その様子だと、あんたにも感情って言うものが芽生えたみたいだね」

怪しく、凄惨な笑みを見せる京子にさらにQBは凍りついた。

京子「よかったよ、あんたに感情が芽生えなかったらこのまま殺そうと思ってたけど、これなら色々楽しめるよね」

京子「ほら、これであんた達が決めたルールが二つも覆っちゃったよ?」

京子「まあ、感情が芽生えたばかりのあんたと遊ぶのはつまらないから、遊ぶのはまた今度だけどね」

QB「………な、何をする気なんだい?」

京子「………ふふふっ」

京子は笑いながらQBを黒い穴に沈め始めた。

QB「こ、これは一体!?」

京子「…………」

QB「ま、待ってくれ、京子!!」

トプンと波紋が広がるようにQBの姿は黒い穴に沈んで消えた。

京子「さてと…」

京子「これであいつは処理できたし大丈夫」

京子「後は、あの場所に行かないとね…」

京子は漆黒の翼を広げ、目的の場所に飛び立った。
その姿は黒き目に漆黒の翼を広げ、体から闇を溢れさせた漆黒のドレスの少女。
今の京子は、人々が思い描く邪悪な悪魔の姿そのものだった。
だがその表情だけは、とても人間臭い表情を浮かべて闇夜を駆けていた。

エピローグ11終わり。

エピローグ12


京子はこの世界に辿り着いた最初の場所である木々が吹き飛ばされた森の上空に辿り着いていた。

京子「見つけた」

上空から辺りを見渡して、目的のモノを発見した京子はそれの場所まで移動する。
それの前に空間移動した京子は壊れ物を扱うかのように優しく拾い上げた。

京子「…………」

京子がそれを拾い上げ静かに佇んでいると、京子の翼の中から声が聞こえてきた。

ちなつ「京子先輩ーーー! どこにいるんですかーーー!?」

結衣「京子ーーー! おーーーーい!!」

京子「あ… 結衣も起きたんだ」

京子は翼を大きく広げ自分の前まで持ってくると、両の翼に人が腰掛けるような形を作る。
すると、そこには結衣とちなつがいつの間にか腰掛けていた。

ちなつ「あっ…」

結衣「!?!? き、京子… なの…?」

ちなつは京子が変わった瞬間を見ていたので今の京子を見てもそこまで驚かなかったが、結衣は京子の変貌してしまった姿を見て驚き戸惑いながら問いかけた。

京子「うん、私だよ」

結衣「お、お前… その髪や目は… っていうか、お前、翼生えてる!?」

京子「うん、生えちゃった」

結衣「生えちゃったって… 一体何があったんだよ!? あの京子はどうなったんだ!? お前は大丈夫なのか!?」

京子「えっと… なんと言いますか… 気が付いたらこうなってたって言うか… あの私も私と一緒になっちゃったって言うか… もう私は私だし…」

結衣「ちゃんと説明してくれよ!!」

ちなつ「あー… 本当に京子先輩みたいですね… よかった…」

少しだけ警戒していたちなつは京子と結衣のやり取りを見てほっとため息をつく。
結衣は京子になにが起きたのかを問い詰め、京子は自分とのやり取りを二人に説明した。

結衣「…それじゃあ、あの京子の説得は成功して今お前達は融合した状態だって言うことなんだな?」

京子「ま、そんな感じかな?」

ちなつ「はぁ… 本当に良かった…」

京子「心配かけさせちゃってごめんね?」

ちなつ「本当ですよ… まあ、結果オーライってやつですね」

結衣「そうだね… っ!! そういえばあいつは!? 京子があいつからちなつちゃんや私を助けてくれたの!?」

京子「あ、そうそう。あいつのことも言っておかないといけないんだった」

ちなつ「…何があったんですか?」

京子「あいつはもう私たちに何もできないよ」

結衣「…どういうこと?」

京子「簡単に言うと、あいつを捕まえて調教中」

ちなつ「…わけわかんないんですけど」

京子「直接見たほうが早いか、こっち来てよ」チョイチョイ

京子が二人を呼び寄せ手を前にかざすと、目の前の空間に黒い鏡が現れその中に無数のQBが映し出されていた。

ちなつ「な、なんですかこれ? キュゥべえが数え切れないくらい…」

京子「この宇宙にいるって言ってた全部のあいつを捕まえたんだよ、それでこうやって私の結界に幽閉中」

結衣「この宇宙って… そんな事どうやって…?」

京子「なんか出来ちゃった」

ちなつ「…………」

結衣「そ、そうなんだ…」

京子「そうそう、それでね、この私の結界は光も、魔法も、何もかも遮って封じ込めることが出来る結界なんだけど、あいつを閉じ込めるときに一匹だけ外に出したまま閉じ込めたら面白いことが起きたんだ」

ちなつ「…あの、その結界って一体なんなんですか?」

京子「あー、魔女の空間の応用ってやつだよ。心の中でギューってしてパッって開くと出来上がるんだ」

結衣「…………」

ちなつ「そ、そうですか…」

京子「うん。それでさ、外の世界に残った個体に色々やってたらなんか感情を芽生えさせたみたいでさ、今その個体を調教してるんだよ」

京子「ほら、こいつ」

京子が指を刺した先には、闇の中にボロボロのQBが何かから逃げるように走り続けている姿が映し出されていた。

ちなつ「…なにかから必死で逃げてるような」

京子「私の使い魔をけし掛けて、死なない程度に追い掛け回してるのさ」

結衣「…使い魔? …それになんでそんな事を?」

ちなつと結衣が質問してる間にも、京子が指を動かすと、闇の中から漆黒の烏が現れQBの身体を啄ばんでいた。
その様子を京子は楽しげに見て哂っていた。

京子「あの個体が芽生えたのは恐怖とか絶望とかの感情だと思うから、それをちゃんと認識させて芽生えたばかりの心に刷り込んでるんだよ。ほら、そういう感情ってうまく操ってしまえば私に逆らえなくすることもできると思うしね。あいつには利用価値もあるし操るだけ操って………」

結衣「………お、お前、何を言ってるんだよ?」

ちなつ「き、京子先輩…? どうしちゃったんですか…?」

京子の言葉に二人は信じられないものを見るように京子を見ていた。
京子はハッとした様子で二人に慌てて弁明しだす。

京子「待った!! 今の無し!!」

京子「って、無しに出来ないかな…?」

結衣「…………」

ちなつ「…やっぱり京子先輩、あのときに何かが…?」

京子「…まあ、何かあったって言ったら、ちょっとだけこういう悪い考えをしちゃう様になっちゃったって感じかな?」

京子「それでも元は変わってないと… 思う。姿形が変わったとしても、私の心は変わってないと… 思う…」

実際、京子は不安だった。
魔女となってしまった京子の負の感情は、消え去ることはなく京子の中に留まり続けていた。
だが、その感情を完全にコントロールできていたのだが、それでも京子は不安でたまらなかった。
こうして二人の前で、自分の暗い面を曝け出したことによって、さらにその不安は大きくなり、京子の表情に浮かび上がった。
いつかこの負の感情に囚われて再び暴走してしまうのではないかと。

京子の表情は非常に小さい変化だったが、結衣はその表情を見て京子の不安を見抜いていた。
結衣はそっと京子の頭を撫でながら言う。

結衣「………確かに少しだけ変わっちゃったのかもしれないな」

京子「結衣?」

結衣「さっきは少し驚いちゃったけど、そういうのも全部含めてお前はお前さ。だからそんなに不安そうな顔するなよ」

京子「…でもさ」

結衣「そこまで不安だったら、お前がおかしくなってしまったら私が何とかしてやるよ」

京子「…ほんとに?」

結衣「ああ」

京子「ありがと…」

京子は結衣にもたれ掛かかり、結衣の肩に頭を乗せ結衣の体温を感じていた。
先ほどまで不安でいっぱいだった京子の心はいつの間にか別の感情で満たされていた。
二人はそのまま永遠にそうしているかと思われたが、その空気をたやすく切り裂いた少女がいた。

ちなつ「あの、そろそろいいですか? 私もここにいるんですけど?」

ブスっとした顔のちなつが言い放つ。

京子「あっ、ご、ごめんねちなつちゃん、無視をしていたわけじゃ…」

ちなつ「まあ、いいですよ。あ、それと私も京子先輩のこと信じてますんで。どんなに変わっても京子先輩は京子先輩ですもんね」

京子「あ、ありがと」

ちなつ「はいはい、それじゃ、次はどうするんですか? そのキュゥべえを使って何かするんですか? そうやって遊んでる暇があったらさっさとあかりちゃんのいる世界に行きたいんですけど、私」

結衣「そ、そうだったね。早くあかりのいる世界に行かないといけない……」

京子「待って、その前にこの世界でやらないといけないことがあるんだ」

結衣「やらないといけないこと?」

ちなつ「…なんなんですか?」

再び真面目な顔になった京子は、二人に巨大なグリーフシードを見せる。

結衣「そ、それって!?」

ちなつ「まさか…」

京子「うん… この世界の結衣とちなつちゃん…」

京子は優しくグリーフシードに触れながら二人に言った。

京子「私は… 今度こそ結衣を… ちなつちゃんを助けたいんだ」

黒く輝くグリーフシードに結衣とちなつの顔が映り、反対側には強い目線でグリーフシードを見ている京子の姿が映っていた。

エピローグ12終わり。

エピローグ13


ちなつ「この世界の私たちを…」

結衣「助ける、か」

京子「うん」

結衣「どうやって?」

京子「…私の結界の中に連れて行く。さっき二人がいたところに」

ちなつ「さっきのところ… 部室に良く似た部屋でしたね?」

京子「あそこは特別な場所なんだよ。あそこなら肉体がなくなったこの世界の二人も存在することが出来る。私があそこに二人を繋ぎとめることができるんだ」

結衣「そんな事までできるのか?」

京子「できる。私が融合したときに私が出来ることは全て理解できたんだ。自分がどうすればなにが起きるかって言うことが感覚的にね」

京子「だから、待っててほしい。私が結衣とちなつちゃんを連れてくるまで」

京子の言葉に結衣とちなつは同時にお互いの顔を見合わせた。
目線をあわせ、二人はお互い何を考えているかを瞬時に理解する。
二人とも同じことを考えていたからだ。

ちなつ「ちょっと待ってもらえますか?」

京子「何? ちなつちゃん?」

ちなつ「そのこの世界の私たちを何とかするのは私たちに任せてもらえませんか?」

京子「…? 何を…」

結衣「私もちなつちゃんを一緒、今回は私たちにやらせてくれないかな?」

京子「結衣まで… 一体何を…」

ちなつ「簡単です。私たちもこの世界の私たちと一つになるんです。京子先輩と同じ方法を取ろうと思うんです」

京子「…………」

結衣「驚かないんだな?」

京子「なんとなく予想できてたから…」

京子「でも、いいの? 私みたいに普通の人間の姿ってやつを失ってしまうかもしれないんだよ?」

結衣「私は構わないさ」

ちなつ「そんなの後回しですよ。京子先輩のその外見も後からどうにかすればいいんですから」

京子「………あかりの記憶でも見たと思うけど、この世界の結衣はちなつちゃんを…」

結衣「それも承知の上さ…」

ちなつ「…はい」

京子「………本気みたいだね」

結衣「ああ」

ちなつ「京子先輩にばっかり甘えてられないですからね」

京子「…わかったよ、それじゃあ、二人にお願いするよ」

京子は二人にグリーフシードを持たせ翼を大きく広げ二人を包み込んだ。
二人は翼に包まれたかと思うと、先ほどまでいたごらく部に瓜二つの京子の結界に移動していた。
二人が結界の中にいることを確認し、京子は二人に伝え始める。

京子「その中なら何かあっても私がどうにかできる。後は… ちなつちゃんの魔法を使ってグリーフシードに干渉ってできるかな?」

ちなつ「…多分、できると思います」

京子「よし、それじゃあ、ちなつちゃんがグリーフシードに干渉してこの世界の二人を説得する。…もう邪魔ははいらない、二人はこの世界の二人と融合することだけを考えて」

結衣「わかったよ」

京子「後、融合する方法は… 多分自分自身に会えば分かると思う」

ちなつ「…本当に適当って言うか感覚派ですよね、京子先輩って」

京子「…否定はしないよ」

結衣「会えば分かるんだったら会ってみるしかないさ」

ちなつ「まあそうですけど…」

結衣「それじゃあ、ちなつちゃん、お願いしてもいいかな?」

ちなつ「…はい、大丈夫です」

結衣「京子、頼んだよ」

京子「うん。頼まれた」

ちなつは魔法を使うために集中を始める。
結衣と共にグリーフシードを持ち、ちなつの魔力が高まるにつれ、ちなつは不思議な感覚を受け始める。
とてつもなく大きな何かに包まれている自分、すぐ傍に自分が以前に感じた結衣の気配。
そして、一つの大きく冷たい気配。
ちなつは結衣の気配を掴むと同時に、冷たく大きな気配を掴んだ。

京子「…………」

ちなつの精神世界に旅立った二人を京子は外の世界から見守り続ける。

ちなつは白い世界に二人の結衣を引きずり込んだ。
片方の結衣は頭に手を当て顔を顰め、
もう片方の結衣はボロボロの騎士甲冑を身につけ、虚ろな視線で宙を見ていた。

結衣『ぅぁ………』

ちなつ「つ、連れてこれました… 成功です!」

結衣「うぅぅ………」

ちなつ「ゆ、結衣先輩、お二人とも大丈夫ですか!?」

結衣に魔女結衣の記憶が流れ込んでいた。
自分が嬉々としてちなつを貪り食う記憶。
あかりの記憶として客観的に見た記憶とは桁が違う生々しい記憶は、覚悟して赴いた結衣だったがその記憶に呑まれかける。

結衣「だ、大丈夫… 覚悟していたから…」

ちなつ「うっ… この記憶… 確かにきついですね…」

ちなつも同時に結衣達の記憶と思考が伝わる。

結衣「ふぅっ… ふぅっ… 落ち着いてきたよ…」

ちなつ「む、無理をしないでください」

結衣「…ありがとう、でもそんな事を言ってられない状況だからね」

結衣「この私と話を………」

ちなつ「っ… こ、この結衣先輩は…」

結衣「この私… もう心が………」

結衣『…………ぁ』

二人は記憶以外に魔女結衣の思考が伝わっていたが、魔女結衣の心は既に壊れているといっても変わりない状態だった。
その心にあるのは、絶望と恐怖と後悔、ただそれだけ。

結衣「それでも… それでも呼びかけ続ければ…」

結衣は魔女結衣に呼びかけ始める。

結衣「…ねぇ、私。私の声が聞こえるかな…?」

結衣『…………ぁ………ぅ』

結衣「あなたがやったこと、全部私にも伝わってきた… 絶望するのもわかるよ…」

結衣『…………ぅぅ』

結衣「私もあなたと同じ立場だと絶望して、あなたと同じように魔女になってたと思う」

結衣『…………』

結衣「あなたの苦しみ、悲しみ、私も一緒に背負うよ…」

結衣『…………』

結衣「一人だと背負いきれない苦しみも二人なら、二人で背負えば一歩踏み出すことも出来るはずだよ」

結衣『…………』

結衣「二人でもう一度歩こうよ、一歩ずつ歩いて、私たちの日常に戻るんだ」

結衣『…………』

結衣「あかりがいて、京子がいて、そして… ちなつちゃんがいるいつもの日常に…」

結衣『…………』

結衣の言葉は何も魔女結衣に届いてはいなかった。
魔女結衣の中で渦巻いている絶望は、魔女結衣の思考を全て遮り、誰の言葉もその心に届くことはなく、魔女結衣はただ虚空を見つめ続ける。
それでも結衣は魔女結衣に言葉を紡ぎ続けた。
言葉が届くと信じて。

ちなつ「…………」

そうやっている間に、ちなつはあらぬ方向を見ながらその顔を険しい物としていた。
そして、ちなつは何も無い空間に向かい歩き始める。

ちなつ「…………ねぇ」

ちなつ「……ねぇ、そこにいるんでしょ」

結衣「…?」

ちなつ「…何やってんの? あなたは一体何やってるのよ!?」

結衣「どうしたの…? ちなつちゃん?」

ちなつが声を荒げ始めたところで結衣もちなつの行動に気が付く。
結衣が声をかけたと同時にちなつは何も無い空間に手を伸ばし、その手が消えたかと思うと、誰かの手を掴んで再び手が現れた。

ちなつはその手の主を乱暴に投げ飛ばし、その人物は結衣の傍まで転がってきた。

結衣「…この世界のちなつちゃん?」

その人物はちなつと同じ姿をした、魔女ちなつであった。

ちなつ『…………』

ちなつは自分自身を見ながら怒りの篭った目で睨みつける。

ちなつ「…なんで隠れてたのよ」

ちなつ『…………』

ちなつ「…なんで、なんであなたはこの世界の結衣先輩がこんな事になってるのに何もしようともせずに隠れてたのよ!?」

ちなつ『…………』

ちなつ「あなたは結衣先輩に声をかけることも出来たでしょ!? それなのになんで!?」

ちなつ『…………』

ちなつは魔女ちなつに掴みかかり叫ぶ。
だが、魔女ちなつは目を逸らしたまま言葉を発しようともせずにされるがままになっていた。

ちなつ「何とか言ったらどうなのよ!?」

ちなつ『…………しょ』

ちなつ「何よ!? 聞こえないわ!!」

ちなつ『…できるわけないでしょ』

ちなつ「何が!?」

ちなつ『私が、結衣先輩に、何が出来るって言うのよ… 私のせいでこんな事になっちゃったのに…』

ちなつ「っ!」

魔女ちなつの言葉にちなつは固まる。

ちなつ『私が… あんな願いをしなければ、こんな事にならなかった…』

ちなつ『全部私のせいなのよ… そんな私が結衣先輩に何を言えばいいのよ…』

ちなつ『私が… 私のせいで、結衣先輩がおかしくなって… 京子先輩は魔女になって…』

魔女ちなつの思考がちなつに伝わる。
魔女ちなつも後悔していた。
自分が願わなければ、こんなことにはならなかった、自分が願ったから全てが壊れてしまった。

ちなつ『私が… あんな馬鹿なことをしなければ… うっ… うっ…』

魔女ちなつが泣き崩れちなつはそれを見続けていた。
しばし無言だったちなつだったが、再び魔女ちなつを掴み上げ強い言葉で言い放った。

ちなつ「甘ったれないで!」

ちなつ『っ!』

ちなつ「かける言葉が見つからない? あんな事をして後悔している? あなたはただ逃げてるだけじゃない!」

ちなつ『…………』

ちなつ「あなたがこの結衣先輩にもっとはやく手をさし伸ばしてたら、違っていたのかもしれない、結衣先輩の心はここまで壊れなかったのかもしれない!」

ちなつ『……ぅぅぅ』

ちなつ「まだウジウジしてるの!? 逃げないでよ! あなたは…」

ちなつ「結衣先輩を助けたくないの!?」

ちなつの言葉に魔女ちなつは漸く顔を上げちなつの目を見た。

ちなつ『……たいわよ』

ちなつ「何!? 聞こえない!!」

ちなつ『助けたいわよ!! 私だって結衣先輩を助けたい!!』

ちなつ「だったら立ちなさいよ!! 何を這い蹲ってるのよ!?」

ちなつ『うるさい… あなたに言われなくたって…』

ちなつ「…フン、何グズグズしてるの? そうやってモタモタしてて結衣先輩を助けれるとでも思ってるの?」

ちなつ『うるさい… うるさいうるさい!! 助けてみせるわよっ!! 私が…』

ちなつ「あなたがじゃない、私達がよ」

ちなつ『っ!!』

ちなつ「私の心、伝わってるでしょ。だったらわかるわよね?」

ちなつ『…うるさい、わかってるわよ』

ちなつ「私も結衣先輩を助けたい」

ちなつ『わかってるって…』

ちなつ「絶対に助けるわよ」

ちなつ『言われなくても…』

ちなつと魔女ちなつは手を重ねあう。
それと同時に二人の姿は光に包まれ、徐々にその姿も重なり始める。
二人の姿が重なりきった瞬間、二人を中心に光が爆発するように溢れ始めた。

柱状の光が煌々と立ち昇り、その光はちなつの身体に徐々に吸い込まれていく。

ちなつの魔法少女の衣装は純白のドレスに変わったかと思うと、そのドレスのいたるところに黒い文様が浮かび上がる。

光がちなつに吸い込まれきったと同時に、その背に片翼は白、もう片翼は黒の翼が現る。

結衣「…ちなつちゃん…」

ちなつ「…結衣先輩、少しだけ… 少しだけ私に任せてくれませんか?」

ちなつの言葉に結衣はコクリと頷いた。
それを見てちなつはふわりと浮き上がり魔女結衣の元に降り立ち、その身体を抱き起こした。

エピローグ13終わり。

エピローグ14


ちなつ「結衣先輩… 私の言葉聞こえますか…?」

結衣『…………ぁ』

ちなつ「本当にごめんなさい… 結衣先輩の心を弄ぶような事をしてしまって、結衣先輩を狂わせてしまいました…」

結衣『…………』

ちなつ「結衣先輩は苦しまなくていいんです… 私は結衣先輩にされたことはこれっぽっちも恨んでなんかないです、むしろ私を恨んでください… 叱ってください…」

結衣『…………ぅぁ』

ちなつ「…この言葉をもっと早くかければよかった… ただそれだけだったのに…」

結衣『…………ぁ』

ちなつ「結衣先輩、ごめんなさい。私がグズグズしてたから…」

結衣『…………』

ちなつ「結衣先輩の心はもうどうしようもないくらいボロボロだって言うことがわかります…」

結衣『…………』

ちなつ「でも、まだ壊れきっていない… とても深いところに結衣先輩の意識が眠っているのを感じます」

結衣『…………』

ちなつ「まだ、壊れていないなら…」

ちなつは魔女結衣を抱えながら結衣に向き直り話し始めた。

ちなつ「結衣先輩、今の私ならこの結衣先輩を救うことができます」

結衣「どういうことなの…?」

ちなつ「京子先輩が言っていたように融合したことによって私の力の使い方が分かったんです」

ちなつ「今の私なら、人や他の生物の心を見ることも、操ることも、壊すことも何でも出来ます」

ちなつ「…壊れかけた結衣先輩の心を、記憶を治したり改ざんすることも」

結衣「…そう、なの?」

ちなつ「はい、ですから…」

ちなつは結衣に言おうとした。
魔女結衣の記憶を書き換え、ちなつにしてしまったことを全て忘れさせ、壊れかけた心を元に戻し、何もかもをなかったことにする。
ちなつの口に出掛かっていた言葉は結衣がちなつの目を見て首を振ることで飲み込まれることとなった。

結衣「ちなつちゃん、ありがとう… でも、大丈夫。大丈夫だよ」

ちなつ「だ、大丈夫って… この結衣先輩はもう言葉も届かないくらい心が壊れているんですよ。そんな状態はもうどうしようも…」

結衣「………ちなつちゃんも京子も自分自身と納得した上で一つになったよね」

ちなつ「え… そ、そうですけど…」

結衣「…それなのにさ、私だけ二人に頼りきりで何もしないって… そんなの嫌なんだよ」

ちなつ「そ、そんな事を言っても…」

結衣「大事なことだよ… このまま二人に頼っていたら私は駄目になってしまう」

結衣「二人に頼りきって、自分では何も出来ないように…」

ちなつ「…………」

結衣「そんなのは嫌だし、二人とは対等な関係でいたい」

結衣「だから、これは私が何とかしなくちゃいけないんだよ」

結衣の言葉にちなつは少しだけ考え、結衣の意思を酌むことにした。

ちなつ「…わかりました。でも、ちょっとだけサポートさせてください… 二人が話しやすくするためのサポートならいいですよね?」

結衣「………お願いするよ」

ちなつ「はい! それじゃあ…」

ちなつは二人の結衣の手を取る。
それと共に、ちなつから淡い光が溢れ出し、3人を包み込んだ。

―――――――――――――――――――――――
―――――――――――
――――――――
――――


暗い世界。
なぜか意識がクリアに感じられる。
今まではもっと濁っていた。

そうだ…

私は…

ちなつちゃんを殺した…

その言葉を意識してしまった、
暗い世界にちなつちゃんの姿が浮かび上がってくる。

―――結衣先輩

結衣『ちなつちゃん…』

―――なんで私を殺したんですか?

結衣『違う、違うんだよ、私はそんなつもりなんて…』

―――違うってどういうことですか? 結衣先輩は私をこんな風にしちゃったじゃないですか?

目の前のちなつちゃんの左腕がポトリと落ちた。
それを皮切りに、ちなつちゃんの身体が徐々に崩れ始めていく。

―――結衣先輩酷いですよ。

ちなつちゃんは下半身が崩れ落ちてしまった。

結衣『う… うぁぁぁぁ…』

―――こんな姿じゃ、もう何も出来ないじゃないですか。

ちなつちゃんの上半身まで崩れ落ち、ぐらりと傾き、そのまま落ちた首は私の元まで転がってきた。

結衣『ひっ… ひぅっ… ひぃぁぁぁぁぁ…』

―――どうしてこんな事をしたんですか?

ちなつちゃんの顔が、口が、鼻が、耳が、目が、崩れ落ちていく。

結衣『あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ………………』

―――私は生きていたかったのに。

ちなつちゃんは完全に崩壊しきってしまった。
残されたのは、原型もわからないほどぐちゃぐちゃになった血と肉と骨。

結衣『ぁ―――ぅ―――っ―――』

―――この人殺 「結衣先輩っっっ!!」

どこかから声が聞こえると共に、
私の目の前が白い光に満たされ、その先に光り輝く手を見た。

結衣『ぅぁ… こ… こは…?』

魔女結衣はちなつの力により、心の奥底に残っていた小さな理性を無理やり引き出されていた。

ちなつ「…結衣先輩、私がするのはここまでです。後は、お願いします」

結衣「ありがとう、ちなつちゃん」

結衣『ぁ… ち、ちな… ぅぁぁぁぁ……… ぁぁぁぁぁぁぁぁ…』

魔女結衣はちなつの声に反応し、自分の手を握っているちなつを凝視し、やがて身体中を震わせながら怯え始めた。
結衣は怯え始めた魔女結衣を抱き起こす。
すると、魔女結衣に自分の覚えのない記憶が頭の中に流れ込み、それと同時に恐怖の感情や絶望の感情がどこかに流れ出していることに気が付く。

結衣『うぅぅ… なに… 私…?』

結衣「…うん、そうだよ」

結衣『私の心が… あなたの心と…』

魔女結衣の中で渦巻いていた負の感情は薄まっていた。
今まで魔女結衣の心で巣食っていた負の感情の大半を結衣が肩代わりをしていたからだ。

結衣『なに…? なんなの? なにが…』

さらに魔女結衣に自分の知らない記憶が浮かび上がる。
記憶の中で自分はあかりに対して何も出来ずにいて、あかりは旅立ってしまった。
そして、あかりのやりきれない最後を見て、記憶の中の自分はあかりを救うために全ての迷いを断ち切り前を進みだしていた。

結衣『あかり…?』

結衣「………そう、私たちは… あかりを救うために… 世界を、飛び越えて、きたんだ…」

結衣『あかりが… …っ!?』

記憶は続く。
この世界に辿り着き、京子とちなつが別の世界の二人と融合したという記憶が浮かぶ。
それと同時に魔女結衣はちなつを見た。

結衣『ち、ちな、ちなつ… ちゃん…』

ちなつ「はい…」

結衣『ゆるし…「ごめんなさい!! 本当にごめんなさい、結衣先輩!!」 …え?』

ちなつ「私が、私があんな事を願ってしまったから結衣先輩は… 結衣先輩の心は狂ってしまってあんな事に… 全部私が悪かったんです」

結衣『ちなつちゃんは何も…「私が悪いんですっ!!」

ちなつ「だから、結衣先輩は、もう苦しまないでくださいっ! 私は結衣先輩を恨んでませんし、恨んだりすることなんてないんですから!」

結衣『ちなつちゃん…』

ちなつ「お願いします… 私、結衣先輩が苦しんでいるところを見るのはもう…」

魔女結衣はちなつの言葉を聞きながら、自分のやったことを思い出していた。
ちなつはこう言ってくれるが、自分がちなつを殺したことに違いないと考えてしまう。

結衣『それでも、私は… 自分のやったことを…』

ちなつ「…………許せない、ですか?」

結衣『うん… ちなつちゃんは許してくれても、私は…』

ちなつ「…………私も同じです、自分自身を許せません」

結衣『…ちなつちゃんは悪くなんて………』

ちなつ「…………」

ちなつは無言で魔女結衣の前まで移動した。

結衣『ちなつ、ちゃん…?』

ちなつ「…結衣先輩、私を殴ってください」

結衣『え…? な、何を?』

ちなつ「けじめです。このままだと私たちはお互い自分自身を許せませんし、ずっと引きずってしまいます」

ちなつ「でも、結衣先輩は私を許してくれるっていっています。だったら結衣先輩からきつい一発をもらってそれで自分自身を許そうと思います」

結衣『…そんなこと』

ちなつ「結衣先輩が殴ってくれないなら私は自分自身を一生許せません!」

結衣『うぅ…』

ちなつ「それに、結衣先輩が殴ってくれた後は私も結衣先輩にきつい一発をお見舞いします。それでチャラにしましょう。お互いを許しあいましょう…」

結衣『…………』

魔女結衣はちなつの言葉に涙を流しそうになる。
あんな酷い目にあわせてしまったちなつが自分を許してくれる、そして自分自身を許す道を作ってくれている。
必死に涙をこらえながら魔女結衣は立ち上がる。
これ以上ちなつに迷惑をかけれない、ここまでしてくれるちなつの気持ちを無碍にすることなど魔女結衣にはできなかった。

結衣『わかったよ… ちなつちゃんの言う通り、お互い一回ずつ… それでもうおしまい。今回のことは許しあおう』

ちなつ「結衣先輩… はいっ!」

結衣『…それじゃあ、ちなつちゃん。いくよ?』

ちなつ「…………」コクン

魔女結衣の平手がちなつの頬を弾き、ちなつはよろめきながらもその場に踏みとどまった。

ちなつ「っっ~~。結衣先輩、ありがとうございます…」

結衣『ううん… それじゃあ、ちなつちゃん…』

ちなつ「はい、いきますよ!」

ちなつは魔女結衣に平手打ちを放った。魔女結衣もよろめいて燃えるような頬の痛みに身体を震えさせるが、すぐにちなつと向き合う。

結衣『…効いたよ、ちなつちゃんの一発』

ちなつ「私もです、でもこれで…」

結衣『うん、これで今回のことはお互い許しあおう。もう蒸し返すこともしない』

ちなつ「はい、これ以上は野暮ってやつですね」

魔女結衣とちなつはお互いを許しあった。
お互い思うところも色々あるが、もうこの話を蒸し返したりはしない。
再び蒸し返しても同じことになるだけなのだから。

魔女結衣はそう考えているうちに、違和感を感じた。
何故自分は冷静にこんな事を考えていられるのかと。
今までは何処までも絶望が渦巻いて、冷静な思考など出来なかったというのに。

結衣「…………」

魔女結衣が結衣を見る。
結衣は二人を見ながら、ただ見守っているだけのように見えた。
だが、魔女結衣は理解してしまった。自分が抱いた負の感情を全て結衣が持っていってしまったことを。

結衣『あ、あなたは…』

ちなつ「…結衣先輩」

ちなつもそれに気が付く。

結衣「話は、出来たみたいだね…」

結衣『っ! 出来た、もうこうやって私たちはお互いを許しあえた! だからもうそれを返して! あんな… あんな気が狂ってしまうような感情を他人に………』

結衣「…他人じゃないでしょ、だって、あなたは、私なんだから………」

結衣「それに、言ったでしょ……… 私も、あなたの… 苦しみを一緒に背負うって…」

結衣『あなたはっ…』

結衣「ははは… でも、これ、きっついね… こんな感情にあなたはずっと晒されていたんだね…」

結衣『む、無理しないで! 早くそれを私に!』

魔女結衣と結衣の手が重なる。

結衣「…大丈夫、だって… ね?」

結衣『あっ…』

二人は淡い光に包まれ、ゆっくりと同化していく。

結衣「ほら… もう私たちは一つになるんだ… もう、この感情をあなた一人で背負うことはないんだよ」

結衣『………本当に何て言えばいいのかな… 私は何もできなかったのに… ここまでしてもらって…』

結衣「気にしないで… 私が、やりたいことを、やってるだけだから…」

結衣『…やりたいこと、か』

同化している二人の意識は既に一つになっていた。

結衣(私が私と一つになった…)

結衣(私のやりたいこと、みんなを守りきる…)

結衣(ちなつちゃん… あかり… そして、京子…)

結衣(…もう、後悔なんてしない)

結衣(…みんなを守るために私は戦う)

結衣を包んでいた淡い光は爆発するように立ち昇った。
その光の中で結衣の姿に変化が生じる。

結衣の魔法少女の衣装は純白のドレスとなり、その上に漆黒の騎士甲冑が現れその身を包む。

失われた右手が再構築され、両の手に光に輝く騎士剣と闇に覆われた騎士剣を握り、

光を吹き飛ばすように、黒と白の両翼を羽ばたかせ舞い降りた。

エピローグ14終わり。

エピローグ15


結衣「…これは」

結衣が再生した自分の右手を見て、さらに自分の力をどうやって使えばいいか理解したと同時に京子の声が聞こえてきた。

京子『二人とも、成功したみたいだね』

結衣「京子… ああ、何とかね」

ちなつ「はい、無事成功です!」

京子『おっけー、それじゃ戻ってきてよ、そっちの様子は分かるけど、二人の力が強くなって無理やり干渉ってのも難しくってさ』

京子の言葉にちなつは自分の魔法を解除し、京子の結界に戻ってきていた。
戻ってきたかと思うと、視界が変わり外の世界に戻ったことに気が付く。

京子「二人ともお帰り… って、結衣! 手が戻ってる!!」

結衣「ああ、元に戻ったみたいだ。うれしい誤算ってやつかな」

京子「よかった… 本当によかった…」

結衣「大げさだな、腕の一本や二本のことで」

京子「大げさなんかじゃないし… もう…」

ちなつ「はいはい、それじゃあそろそろあかりちゃんのいる世界に行きましょうか。あんまりグズグズもしてられないですし、私早くあかりちゃんに会いたいです」

京子「う、うん… そうだね」

世界移動をする準備をしようとした京子だったが、ふと思い出したように手を叩く。

京子「あ… 忘れるところだった」

ちなつ「? なんですか?」

京子「キュゥべえのこと、あいつには色々やらせようと思ってたんだけどね」

結衣「…あいつか、色々って何をさせようとしてたんだ?」

京子「んー、とりあえずは調教した後に私に絶対服従を誓わせて、もう二度と魔法少女を生み出さないようにさせるつもりだったんだ。その後は、魔法少女になってる子たちを死なせないように動かそうと思ったんだけど…」

結衣「…それって、そんなに簡単にできるのか? というか、感情が産まれたのって確か一匹だけなんだろ? 流石に無理があるような…」

京子「まー、そうだけど、その一匹をモルモットにして、他の個体も感情を生み出す方法を見つけようと思ったんだ。その方法が見つかれば全部のキュゥべえに感情を作り出すことも出来るでしょ?」

結衣「どれだけ時間がかかるんだよ、それって…」

京子「そうだよねぇ… 何の考えもなしにあいつを全部捕まえたけど、この世界の魔法少女はこのままだとグリーフシードの処理が出来ないし、魔女や使い魔を処理するのもこいつがいないと出来ないし… どうしたもんか」

京子が頭を悩ませていると、ちなつが京子に声をかける。

ちなつ「…それ、私が何とかできるかもしれないです」

京子「へ?」

ちなつ「私の力なんですけど、他の生物に対する精神干渉が出来るんです。今の私の力ならキュゥべえたちに感情を生み出すことも出来ますよ?」

結衣「確かに私のときも、私の心の奥底にあった理性を呼び覚ましてくれたよね…」

ちなつ「はい、あの時は結衣先輩の心を壊さないように慎重にやりましたけど、キャゥべえに感情を作るだけなら無理やり作り出すことは簡単ですよ」

京子「ちなつちゃん、すげぇ!」

ちなつ「あー… それよりも、キュゥべえを操りましょうか? 魔法少女を守って、魔女の処理をするだけの存在にするのが手っ取り早いと思いますけど」

京子「そんな事もできるの?」

ちなつ「はい、むしろその方が簡単ですね」

京子「…ちなみにちなつちゃんが出来るのって、ある特定の感情を与えることなんかも出来るの?」

ちなつ「できますけど… どうしたんですか?」

京子「…………」

結衣「京子?」

京子「いーこと思いついた」

京子は口元を吊り上げ、クスクスと笑い始めた。
笑いながら黒い鏡を作り出し、その中で逃げ続けているQBを見ながらちなつにQBに与える感情を話し始めた。

見渡す限りの闇に覆われた空間。
その中に白い生物が必死に走り続けていた。

QB「ハァッ! ハァッ!」

その身体は傷だらけになっており、その顔には明らかに一つの感情を思わせる表情が浮かんでいた。
その感情は恐怖、QBはいつ現れるか分からない京子の使い魔からの攻撃に恐怖していた。

QB「ハァッ! ハァッ!」

京子によって捕まったQBはまずQB達のネットワークにアクセスできるかを試した、だが駄目だった。
次に他の個体とリンクが繋がっているか確認した、それにも何の反応もなかった。
そこで初めてQBは群体ではなく、個としての意識を芽生えさせることとなった。

個としての意識が芽生えたQBに京子は死の恐怖を与えた。
それはQBにとって今までに感じたこともないものだった、だが生き物としての本能がQBに感情を芽生えさせることとなる。

その後、京子により闇の空間に閉じ込められ、いつ襲ってくるか分からない攻撃に晒され続けQBの感情は、恐怖という感情は膨れ上がるように育っていく。
今も恐怖だけを感じ逃げ続けていたQBだったが、急に視界が切り替わり目の前に結衣とちなつの姿を捉えた。
QBは京子に首根っこを掴まれて外の世界に戻ってきていた。
QBは外の世界に戻ってきたことに気が付き、目の前にいる二人に向かい必死に懇願をし始める。

QB「た、助けて! お願いだ!」

ちなつ「は?」

QB「こ、怖いんだ、あんな所にいるのは怖いんだよ!」

結衣「…………」

QB「お願いだよ、助けて… もう君たちには何もしない、君たち人類からも手を引く、だから…」

QBの視界がぐるりと半周し、目の前に無表情の京子の顔が現れ、
真っ黒な目で自分を凝視している姿が目に入り恐怖の悲鳴を上げる。

QB「うわぁぁっ!?」

京子「ねぇねぇ、あんた今なんつった? マジでさ、私が寝ぼけてなければあんた今、「助けて」って言った?」

QB「ひっ…」

京子「いやー、面白い冗談言うようになったねー。散々私たちを殺そうとしたのに、いざ自分が死にそうになったら、助けてーって…」

京子「ほんと、笑っちゃうよねー」

笑いもせずに淡々と言う京子。

京子「ちなつちゃーん、こいつには何もしないで。こいつ以外にさっき話していた処理をしてもらえればいいから」

ちなつ「…いいんですか?」

京子「うん、こいつはさ、何ていうか私の手で処理したくなっちゃった」

QBは固まったまま動けなかった。
京子の視線から目を離すこともできずにただ震えていた。
震え続けるQBに京子は歪んだ笑顔を見せながら、QBを落ち着かせるように話す。

京子「ふふふふふ… 大丈夫、そんなに怖がんなくても、あんたを殺したりなんてしないよ」

QB「ほ、本当かい?」

京子「ほんとだよー、あんたにはこれから私達がすることを見ていてもらわないといけないんだからね」

京子はQBを持つ手とは別の手を空にかざす。
すると空一面に黒い鏡が現れ、中に無数のQBが映っていた。

QB「こ、これは…」

京子「あんた以外のあんた達だよ。これからこいつらが面白いことになると思うからよーく見ていてね」

京子「ほい、そんじゃちなつちゃんお願い」

ちなつ「わかりました、それじゃあ…」

ちなつも京子と同じように手を空にかざし、黒い鏡に向かって何かをし始めた。

QB「一体何をしているんだ…」

京子「あんた以外の個体に感情を芽生えさせてるんだよ」

京子「罪悪感っていう感情をね」

QB「ど、どういうことなんだ…? それが一体…?」

京子「まあ、見てればわかるんじゃない?」

ちなつ「終わりましたよ。これで全部完了しました」

京子「おー、早いね」

QB「一体… 何が…」

QBが京子達の行動に疑問を抱いていると、
黒い鏡の中にいるQB達に変化が現れ始めた。

エピローグ15終わり。

エピローグ16


闇の中にいるQBの一匹が動きを見せる。

QB「これは一体なんなんだ… 京子の魔法によって僕達は捕まってしまったようだが…」

QB「まったく信じられないな… 宇宙にいる全ての僕達を捕まえるどころか、それぞれの個体へアクセスもできない… 完全に捕獲されてしまったようだ」

QB「あの力… いや、魔女になったはずの彼女が一体どうやって………」

QBは魔女になった京子のことを思い出し、そこで何か違和感を感じ始めた。

QB「魔女… そうだ、僕は確かに京子を魔女にした…」

QB「彼女を追い詰めて、それで結衣の死体を見せ付けて絶望させ魔女にした…」

QBの違和感が少しずつ大きくなっていく。

QB「いや… それだけじゃない… 僕は今まで数え切れないくらいの少女達を魔女にしてきた…」

QB「時には騙して… 時には誘導して絶望に…」

QBの身体が震え始め、その視線が揺れ始めた。

QB「な、なんなんだこれは… 僕は一体何を考えているんだ…?」

QB「か、彼女達は、この宇宙の為に… ひ、必要な犠牲なんだ…」

QBの脳裏に今まで魔女になった少女たちの姿が思い出されていく。
どの少女達も願いが叶い、QBに笑顔を見せQBに感謝をしていた。
だが、少女達は最後まで笑顔でいることはなかった。
そして、最後に決まって見せる表情、絶望した表情。
今までは何も感じていなかった。
だが何故か、今、その表情を思い出すと何かがこみ上げてきて震えが止まらなかった。

QB「ぼ、僕をそんな顔で見ないでくれ…」

今まで感じたことのない感覚に取り乱すQB。

QB「や、やめてくれ… 僕は… 僕はこの宇宙の為に…」

QBがかつて魔法少女にした、全ての少女たちの記憶が鮮明に蘇る。

QB「い、いや… ぼ、ぼ、僕は… か、彼女達に…」

QBの中で急速に何かが形作られていく。

QB「な、なんてことをしてしまったんだ…」

QBはある感情を芽生えさせられた。

QB「うわぁぁぁぁああああああああああーーーーーーーーーっっっ!!!!」

外の世界で京子達はQBの様子を眺めていた。
京子は外の世界にいるQBの頭を掴みながら、闇の結界内のQB達を笑いながら見続けていた。
結界内のQB達は次々に叫びを上げもだえ苦しんでいる。
その様子を見せ付けられたQBは怯えた声で呟いていた。

QB「な、なんなんだ… なにが起きているんだ…」

京子「聞きたいの?」

QB「ひっ!?」

既にQBにとって京子の姿は恐怖の対象でしかなかった。

京子「そんなに怯えなくてもいいじゃん。京子ちゃん傷ついちゃうなぁ~~~」

QB「…………」ガタガタ

京子「ま、いいや。それでさっき言ってた、なにが起きているかって事の回答だけど」

京子「あんた達に罪悪感を芽生えさせたんだよ。特に、魔法少女にした子たちに対して罪悪感を抱くように調整してね」

QB「そ、それが、なんであんな事に…」

京子「………あー、あんたにはわかんないか。…ちょっと試してみるか」

京子は無数にある闇の鏡の中で一際苦しんでいるQBを見定めると、その結界の中からQBを引きずり出した。

QB『ゴメン、ゴメンよぉぉぉぉ! 僕は… 僕はぁぁぁぁ………』

京子「こいつでいいや。ほら、あんた達はそれぞれ思考を繋げることも出来るんでしょ? 今まではそれを邪魔してたけど、こいつとだけは出来るように解除してあげたよ。こいつの気持ちを感じてみれば、なにが起きたかって分かると思うよ」

QB「…………」ガタガタガタ

QBの目の前に何かに謝り続けるQBが突きつけられた。
だが、QBはその個体とのリンクを回復させることができなかった。
恐怖という感情を芽生えさせてしまったQBは目の前の個体とリンクすることで、自分も同じようにされてしまうのではないかと恐怖していたからだった。

京子「どうしたの? ほら、早くしなよ」

QB「い、嫌だよ… こ、怖いんだよ…」

京子「怖い、ねぇ…」

QB「お、お願いだ。君たち人類にはもう手を出さない、僕達は別の星でエネルギーを回収するから… だからもうやめ………」

京子「…………」

京子はQBを持つ手に力をこめ、QBの瞳を覗き込むように言った。

京子「さっさとやれよ」

QB「ひっ!?」

QBはその言葉に逆らえず、思考リンクを回復させてしまった。

QB「うぁ… こ、これは…」

QBは目の前の個体が何に苦しんでいるのかを感じ取る。
QB達が今まで契約してきた少女達の姿。
運命を狂わされ、絶望し死んでいった少女達の姿が浮かび上がる。
別個体が感じている何かがQBにも伝わり、QBもその感情が芽生えてしまう。

QB「あ、あ、あ… ぼ、僕が今までしてきたことは…」

京子「おっ? 何何?」

QB「ぼ、僕は、今まで、こんな酷いことを…」

QBが漏らした言葉を聞いた京子は、別個体を元の結界に再び閉じ込め、QBを両手で掴みその眼を見ながら観察する。

京子「ねぇ、今どんな気持ちなの?」

QB「あ… あぁぁ… き、京子…」

京子「あれ? なんか怖がってないね? 私を見て何を思ってんの?」

QB「ぼ、僕は、僕は君に… ゆ、許してくれ…」

京子「許す? 何を?」

QB「き、君を追い詰めて魔女にしてしまった… 結衣もちなつも見殺しにして、魔女となった彼女達を君の手で殺すように仕向けたのも僕なんだ…」

京子「…あぁ、そういうことね」

QBは京子に恐怖以外に、罪悪感を感じながら許しを請う。

京子「そうだよねぇ~、キュゥべえは私たちにとっても酷いことをしちゃったんだもんね~~~?」

QB「うっ、うぅぅぅぅ…」

京子「ねぇ、許してほしい?」

QB「う、うん。お願いだ… 僕が今までやってきたことを考えると、凄く痛いんだ、何かに潰されそうなんだよ…」

京子「ふふふ… そうなんだ、とっても痛いんだ? そんなに許してほしいんだ?」

QB「お、お願いだよ。僕を許して… 助けて…」

京子は花が咲くような満面の笑みでQBに言い放った。

京子「絶対に許さない」

QBはその言葉に自分の中で何かが落ちていく感覚を感じ取った。

QB「そ、そんな………」

QBの視線が定まらず、何かを感じ取っている様子を見ながら京子は優しくQBを撫で始めた。

京子「今、何かを感じてるよね? それはね、絶望ってやつだよ」

京子「凄いじゃない、これでキュゥべえは恐怖や絶望って感情を自分で生み出すことが出来たんだよ」

QB「う、うぅぅ…」

京子「あれれ? 聞いてない?」

絶望に打ちひしがれるQBには京子の声も届かなかった。
少し詰まらなさそうな顔をしながら、京子はQBを再び闇の結界に閉じ込める。

京子「今回はこんなもんか。ま、ゆっくりと色々調教してやらないとね」

そんな様子を見ていた結衣とちなつは京子に声をかける。

結衣「終わった?」

京子「うん、お待たせー! 結構順調だぜ! あの感じならいろんな感情もその内芽生えていくんじゃないかな?」

ちなつ「…まあ、いいですけど。それで他のキュゥべえ達にはさっき言ってた処理をし直せばいいですか?」

京子「あ、そだね。目的も達成できたし、こいつらは完全に操ってしまっちゃおうか。とりあえず、この世界の魔法少女を死なせないようにするのとグリーフシードを処理する行動だけを可能にしておいて」

ちなつ「わかりました。………はい、これで大丈夫ですよ」

京子「ありがと! そんじゃ、結界も解除しておくかな」

京子が指を振ると黒い鏡は消え、空一面にQBが現れる。
ちなつは全てのQBが自分の支配下に置かれていることを確認し、京子に問題ないと告げた。
京子はその言葉に頷き、QBの拘束を解除する。
それと同時にQB達は散り散りになるようにどこかに走り去って行った。

京子「これで、この世界はもう大丈夫だね…」

ちなつ「そうですね、違う世界に行っても私の魔法が解けることはないですから、この世界ではもう二度と魔法少女は生まれないですね」

結衣「これで、この世界でやることは…」

京子「全部終わったし、決着が全て付いたね。あかりのいる世界に行ったときも今回と同じ方法で何とかしてしまおっか」

ちなつ「…それはかまわないですけど、ひとつだけ言っておきたいことがあります」

京子「?」

結衣「どうしたの?」

ちなつ「私の魔法ですけど、次の世界でキュゥべえを操った後は封印してもう二度と使わないようにしてもいいですか?」

京子「…別にそれは構わないけど、何で?」

ちなつ「…人の心を勝手に操る魔法なんて好んで使いたいと思います?」

京子「あー… ごめん」

結衣「…………」

ちなつ「そういうことです。あんまり使いたくないんで、次に使ったら私の魔法はお終いです」

京子「うん、そのほうがいいね」

結衣「…私も、そう思う」

ちなつ「それだけです! それじゃあ、あかりちゃんの元にいきましょう、もうこれ以上時間をかけたくないですし、さっさとちゃっちゃといっちゃいましょう!」

結衣「………ん、そうだね」

京子「…おっけー、そんじゃ行っちゃおうか」

京子「今度こそ、あかりの所に」

結衣「ああ」

ちなつ「はい!」

京子が目を閉じあかりの姿を思い浮かべると、すぐにあかりの姿が浮かび上がってきた。
頭の中にあかりの姿がはっきりと映し出されたと同時に、京子の両手から闇の粒子が溢れ、その粒子は結衣とちなつの身体を包み込む。

京子「いつでもいけるよ。後は… 結衣、またお願いできる?」

結衣の身を案じながら京子はお願いする。

結衣「心配しなくても大丈夫さ」

結衣は両手に光と闇の騎士剣を生み出し、剣を交差させ構えを取る。

結衣「今の私なら… 無傷でやれるっ!!」

京子とちなつの目には結衣が動いた姿が映らなかった。
結衣は剣を振りぬいた体勢で、数メートル移動し、結衣が今までいた場所には十字に切り裂かれた歪んだ空間が存在していた。

京子「見える… この先にあかりが…」

結衣「あかり… 待っててくれ…」

ちなつ「今行くからね… あかりちゃん…」

3人は闇に包まれ時空のかなたに飛び立った。

あかりのいる世界


雲ひとつ無い満月の夜。

夜空に歪みが生じ、放電が始まった。

空間が歪み、夜空の月が引き伸ばされて縦伸ばしになったように見えたかと思うと、

伸びきっていた空間に十字の裂け目が現れた。

裂け目からは闇が溢れ出し、その闇は月夜の空を満たすように広がり、月光を遮った。

やがて闇は集まり、3つの影を形作り始めた。

空に3つの何かが姿を現す。

その姿は何れも翼を持ち、禍々しい気配を携えてその世界に顕現した。

それと同時に、時空の裂け目から別の何かが現れた。

それは誰の目にも見えず、先の3つの存在に絡みつくように繋がっていた糸のようなものであった。

その糸のようなものは、3つの存在に絡みつきながらも、この世界の何かを目指し動き始める。

そして、その糸はある存在に絡み付いた。



あかり「えっ………?」



あかりの眼が黄金色に輝き、その姿が何処までも強い光に包まれた。

エピローグってなんだか分からないほど長くなったエピローグ終わり。
最終章に続く。

最終章


あかりの部屋


あかり「…………」

あかり「……戻って、これた」

あかりは戻ってきた。
みんなを置いて、またあかりだけ……
でも、それでも、あかりは……

あかり「……今度こそ、絶対に」

そう、今度こそ……

あかり「もうみんなを魔法少女にさせない、あかりが全部一人でやって見せる」

そのためにはどんなことでも……
たとえ誰かを傷つけることになっても……
…………やってみせるんだから。

あかり「まずは…… キュゥべえを…… いなくなるまで殺す……」

そう、キュゥべえ……
キュゥべえさえいなくなれば…… でも……

あかり「ううん、駄目だよね…」

前の世界では殺しても死ななかった……
どれだけいるかもわからない、殺しつくすことなんて出来るかもわからない……

あかり「それなら……」

キュゥべえをみんなに近づかせない。
ずっとあかりがみんなを監視して、キュゥべえを見つけたらあかりが時間を止めてあかりに気付かれる前に殺す。
あかりの存在を気付かれないように、慎重に、確実に殺す。

あかり「そうすればいつか……」

いつか諦める……
駄目、そんな事を考えちゃ。
諦めるなんて無い、前の世界でもどんなに殺してもみんなを追ってきた……

それなら、今回は……
キュゥべえが死なない理由を探る……
そして、その秘密を暴いたら……

あかり「そのときは…………」

確実に……

あかり「……殺す」

あかりが色々考えているうちに、いつの間にか時間が経っていたみたいだ。
外から京子ちゃんの声が聞こえてきた。

「おーい! あかりーー!」

京子ちゃん……

「おい、朝からそんな大声だすなよ」

結衣ちゃん……

階段を下りて、玄関のドアを開けたら京子ちゃんと結衣ちゃんが少し変な顔をしてあかりを見ていた。
どうしたんだろう?

結衣「あかり? どうしたの?」

あかり「?」

京子「あかり、なんか顔つき変わった? なんか目つきがあかりっぽくないぞ?」

結衣「うん…… なんというか鋭い目つき?」

あかり「……そう?」

二人ともこんなあかりを見てくれている。
みんなを裏切って一人で帰ってきたあかりなんかを。

あかり「京子ちゃん、結衣ちゃん。ちなつちゃんも呼んで聞いてほしいことがあるんだ」

京子「? どしたの? なんか妙に真剣な顔してるけど?」

結衣「ちなつちゃんもって、今から?」

あかり「うん、大事な話だから」

京子「な、なんか、変な威圧感あるな」

結衣「それだけ真面目な話ってことだろ。とりあえずちなつちゃんも呼ぼうか」

あかり「……ありがとう」

少しして、ちなつちゃんもあかりの部屋に来てくれた。
みんながそろったところであかりは話し始める、魔法について、キュゥべえについて。
みんな最初は信じられない顔をしていたけど、あかりが実際に魔法をつかって見せたことであかりの話を信じ始めてくれた。

京子ちゃんは前と同じようにあかりに詰め寄ってきたけど、あかりが時間を止めて京子ちゃんを動けなくしたところでみんなはあかりが魔法を使えることを完全に信じてくれ、その後の話も黙って聞いてくれた。

しばらくあかりは話し続けていたけど、前回とは違って全部は話さないことにした。
みんなに話したのは、あかりは魔法少女としてキュゥべえと戦っていること。
キュゥべえは言葉巧みにみんなを騙して、みんなの命を狙っているということ。
ここでキュゥべえがみんなをだます為に、どんな願いでも叶えるということや、魔法少女になれるって言葉巧みに誘惑してみんなを連れ去ろうとしているんだよって説明した。

結衣ちゃんやちなつちゃんは詐欺師みたいだねって言って納得しているような感じだったけど、京子ちゃんだけは何か考えているみたいだった。
まだもしかしたら魔法少女になれるんじゃないかって考えているみたいだったけど、その時に泣きながら騙されないでってお願いしたら、完全に信じてくれたみたいだった。

あかりが魔法少女になっている理由は秘密にした。
キュゥべえをやっつけてから話すよって説明したらしぶしぶ納得してくれたけど、また聞かれるかもしれない……
何かいい作り話を考えておかないといけないや……

その後長い間あかり達は、キュゥべえに対する対策を夕方まで立てながら話し合いをし続けた。
夜になるまで続いた話し合いは、キュゥべえが現れたらあかりにすぐ連絡をするようにすることで一旦終わり、みんなが家に帰るのを見送った後、あかりは魔法少女に変身して動き始める。

夜 結衣の家付近


あかり「……今日は現れなかった」

結衣ちゃんの部屋が見える木の上であかりは結衣ちゃんの部屋を見続けていた。
今日は大丈夫だった… ううん、油断しちゃ駄目、いつ現れるか分からないんだから…
今日は結衣ちゃんの家、明日は京子ちゃんの家、明後日はちなつちゃんの…

あかり「……?」

そう考えながら結衣ちゃんの家を見ていたら、何か変な感じがした。
その感じはすごく大きくなって、あかりの身体が知らないうちに震え始めていた。

あかり「な、なに?」

感じた、遠いところで何かが現れたのを。
あかりにはそれがとてつもなく大きな魔力だってことだけが分かった。
身震いするくらいの大きな魔力、あかりがみた魔女や使い魔なんて比較できないくらいの魔力だった。

あかり「なん、なの… これって…」

あかりが呆然と遠い空を見上げていると、また大きな違和感があかりを襲う。
それはあかりの中から何かが溢れだしたからだった。
止め処なくあふれ出すそれは、あかりの魔力なのかな…?
いつの間にかあかりの身体は内側から溢れ出した光に包まれあたり一面を照らすくらいの光を放っているみたいだった。

あかり「えっ……?」

あかりが何が起きているか分からない状態で戸惑っていると。
結衣ちゃんの家の屋上に、キュゥべえがいつの間にか現れてあかりに話しかけてきていた。

QB「……信じられない、一体何が起きているんだ?」

あかり「っっ!!」

キュゥべえの姿を見た瞬間、あかりは咄嗟に時間を止めた。
そう、時間を止めたはずなのに……

QB「」サァァァァァァ

あかり「な、何?」

あかりの視界に入っていたキュゥべえがぴたりと止まったかと思ったら、ゆっくりと崩れていき塵となって消えちゃった……

ううん…… 違う……
時間を止めるときとは違う感覚……
この感覚は……

そう考えていると、建物の影になっている所からキュゥべえが姿をあらわしてあかりに話しかけてくる。

QB「……君は、一体何者なんだ? その魔力量…… 契約記録がない魔法少女…… そしてその魔法……」

あかりは再びキュゥべえを見ながらさっき感じた感覚を逆にして、キュゥべえに魔力を解き放った。
すると今度はキュゥべえがどんどん小さくなり、やがて目に見えなくなるほど小さな粒になって消えちゃった。

やっぱりそうだ。
時間を戻すだけでなく進めたりできる。
あかりの魔力を包み込むことで細かく調整することが出来る。

なんで急にこんなことが……
そう考えていたら、今度はテレパシーであかりの頭の中に声が聞こえてきた。

QB『……僕の個体のみを対象に時間の加速・逆行を行ったというのか?』

……どこにいるの? 姿さえ見えれば……

QB『……テレパシーを送っている個体には何の影響もなし。君の力は視認しなければ発動しないタイプと言うことかな? 先ほども個体が崩壊する直前に君の魔力が個体の周囲に展開される事を観測したし、恐らくは君の魔法は視認した対象に魔力を展開して、その魔力範囲内における対象の時空間を操作する魔法と推測できるけど……』

あかり「…………」

QB『……沈黙されたらお手上げだ。でも、君はテレパシーを送っている僕には何も出来ないと言うことだけはわかったよ。これでようやく話が出来るということだね』

あかり「…………」

QB『君は一体何者なんだ? 僕が契約した記憶がない魔法少女…… そしてそのとてつもない魔力係数…… その魔法……』

あかり「…………」

QB『……やれやれ、何も話してくれないか。つい先ほど発生した謎の時空断層から現れた3つの存在もそうだし、一体なにが起きていると…………』

あかり「……?」

急にテレパシーが途切れた。
あかりは周囲を見渡しながらキュゥべえを警戒していたけど、何も起きずにテレパシーが送られてくることもなく、キュゥべえを探す為に今度こそ時間停止を行おうとしたその時。

あかりの周りに黒い霧が漂っていた。

この霧… さっき感じたとてつもなく大きな魔力…
だけど、なんでかは分からないけどあかりにはこの霧に触れていると心が落ち着いて、安心できる不思議な感じがする。
なんでだろう? そう思っているとあかりの前に黒い霧が集まり、やがて霧は黒い影を形作って、辺りに凄い風が巻き起こりゆっくりと影の中から何かが出てきたみたい。
薄っすらと目を開けながら、あかりは影の中から何かが突き破って現れるのを見た。
後姿しか見えなかったけど、真っ黒な髪で真っ黒な翼を広げた女の子だった。

「やっと…… やっと、たどり着いた」

その声に聞き覚えがあった。
そしてその女の子はゆっくりと振り向き、あかりの目にその横顔が飛び込んでくる。
その顔は……

あかり「きょうこ…… ちゃん……?」

京子「よっ、あかり」

あかりの知っている京子ちゃんとは違う髪。
目も黒いし、翼も生えている。
だけどこの女の子は……

どういうことなの?
あかりの目の前にいる女の子は、京子ちゃんなの?

あかり「な、なに……? 京子ちゃん、なの?」

京子「私の顔を忘れたって言うの?」

間違いない。
京子ちゃんだ。
でもなんで、その格好は一体……

そうやって考えていると、京子ちゃんは無言であかりに近づいてきて、あかりとの距離が0になったかと思うと、あかりを抱きしめてきた。

京子「この…… 馬鹿あかりっ! 何で私たちを置いて一人でいっちゃったんだよっ!!」

え……?
何を言っているの……?

京子「私達がどれだけ心配したかわかってんのか!?」

あかり「え……? え……?」

京子「でも…… また、こうやって会えた……」

京子ちゃんはそのまま泣き始めてしまった。
何がどうなっているの?
そう思っていると、空に二つの影が現れて、あかりの近くにその影は舞い降りてきた。

あかり「ゆ、結衣ちゃん? ちなつちゃん?」

結衣「あかり…」

ちなつ「あかりちゃん、やっと会えた…」

二人の姿は魔法少女としか思えない姿だった。

あかり「な、何? どういうことなの?」

京子「もう、もう絶対に離さないんだからな!」クスン

結衣「うん…… これからはみんな一緒だよ……」

ちなつ「……あかりちゃん。本当にあかりちゃんがここにいるんだよね……」クスン

わかんない……
一体何が起きてるのかがわからないよ……

なんで京子ちゃんはそんな姿になっているの?
なんで結衣ちゃんとちなつちゃんは魔法少女になっているの?
なんであかりを見てそんな嬉しそうな顔をして泣いているの?

わからないよ……
なにがなんだかわからないけど……

すごく、嫌な予感がする。

京子ちゃんとちなつちゃんはあかりに抱きついたまま泣き続けてる。
結衣ちゃんも目に涙をにじませながらあかりをみてる。
しばらくあかりはそのままの状態で、何が起きているかわからなかったけど二人が泣き止むまで待っていた。
しばらくして、泣き止んだ京子ちゃんがあかりに話してくれた。

京子「へへ…… ごめんな、あかり。あかりの顔をこうやってまた見れたら我慢できなくなっちゃった」

あかり「……また?」

京子「そうだよ。大変だったんだぞ! あかりが一人で戻るもんだから私たちはみんなで力を合わせてようやくこの世界にたどり着いたんだ!」

…………待って。

結衣「……あかりが一人でこの世界に行ってしまった理由はもうわかってるよ。だけど、あかり一人で抱え込まなくてもいいんだよ。これからは私たちと一緒に歩いていこう。それで元の日常にもどろう」

…………嘘だ。

ちなつ「あかりちゃんはあんなに頑張ったんだから…… あんなに苦しんで、傷ついたんだから…… もう休んでも大丈夫だよ。あかりちゃんがあれだけ頑張ったんだからもう私たちに任せてくれても大丈夫だよ」

あかり「……まさか ……みんなは」

みんなの視線があかりに集まる。
前の世界で最後に見た光景と同じ……

あかり「……前の世界から ……あかりと同じように時間を戻して」

京子「時間を戻すなんて出来ないって。だけどみんなで力を合わせてこの世界までやってきたんだよ」

あかり「え……?」

京子「あかり、あの後に何が起こったかって言うのはね…………」

京子ちゃんの話をあかりはただただ呆然と聞いていた。
あの後、ちなつちゃんが魔法少女になってあかりの居場所を見つけて、京子ちゃんの魔法で飛んできた……
その途中で、あの世界に、みんなが魔女になってしまったあの世界に行って、魔女になってしまったみんなと融合してこの世界にたどり着いた……

その話はあかりにとっての絶望だった。

あかり(……あかりは時間を巻き戻していたんじゃなかったの?)

あかり(……あの世界でみんなが魔女になったままだったって言うことは)

あかり(……最初の世界のみんなは)

あかり(…………)

あかり(……わかんない)

あかり(わかんないよ…… どうすればいいの……)

あかり(時間を巻き戻してみんなを助ければよかったんじゃなかったの……?)

あかり(時間を戻してもみんなが魔女のままだったっていうことは……)

あかり(あかりのした事は意味の無いことだったの……?)

あかり(わかんない…… わかんない…… わかんない……)

京子「あかり?」

あかり「っ!?」

京子ちゃんがあかりの顔を覗き込んでいた。
あかりは京子ちゃんの声も聞こえないくらいに考え込んでいたみたいだった。
少し心配そうな顔をしてあかりを見る京子ちゃん……

京子「……あかり。私達が魔法少女になってしまったことを自分のせいにするのは止めようぜ」

あかり「え……?」

ちなつ「そうだよ、あかりちゃんがどれだけ思いつめていたのかは私が一番知ってるんだから! もうそのことで苦しまないで…… 私たちみんなでもとの人間に戻る方法を探そうよ」

あかり(……違うの)

あかり(……そうじゃないの)

あかり(みんなが元の人間に戻る方法は…… 多分あかりのさっき使えるようになった力を使えば……)

あかり(だけど…… そうじゃないんだよ……)

あかり(もうみんなはこの世界に来てしまってるし…… 最初の世界のみんなは死んじゃってる……)

あかり(もう、どうしようも…………)

あかりの心が絶望に向かい始めたその時、
結衣ちゃんが話し始め、言葉があかりの頭に入ってくる。

結衣「そのことだけどさ。私達みんな人間に戻る方法の一つとして、私の力を話しておくよ」

京子「結衣の力? 確かトンデモ身体能力と自己治癒能力…… あと回復魔法も使えるんだっけ? あっ! もしかして、結衣の回復魔法は魔法少女を人間にする力もあるの!?」

結衣「いや、そうじゃなくて、魔女としての私の力だよ」

ちなつ「……あっ」

京子「それって……」

結衣「他の生物との同化能力」

ちなつ「……」

京子「それが一体……?」

結衣「この力の使い方の一つとして、他の生物のある一部分だけを奪い取ることも出来るんだ。それは肉体の一部でも、魂の一部でもね」

結衣「だから私の力を使えば、みんなの身体を作り変えて人間に戻すことも出来るかもしれないってことだよ」

京子「それ、マジ?」

結衣「……最終手段の一つと思ってもらえればいいさ」

京子「……わかった。候補のひとつだね」

結衣「ああ……」

結衣「あっ、そうだ。後みんなに私の力の一部を渡しておくよ」

京子「? どゆこと?」

結衣「魂の一部…… 魔法少女や魔女の力を奪い取ることもできるんだけど、受け渡すことも出来るんだよ。私の力はね」

京子「…………」

ちなつ「どうしたんですか?」

京子「……今の結衣の発言を聞いて、ちなつちゃんは驚かないの?」

ちなつ「知ってましたから特には」

京子「…………そっか」

結衣「ちなつちゃんの世界で私はこの力を手に入れたから、ちなつちゃんには知られているさ」

京子「あぁ、そうだったね」

京子「それでさっき言った私たちに渡す力ってなんなの?」

結衣「私の身体能力向上魔法と自己治癒能力向上魔法さ。この二つをみんなに渡しておけばいざって言うときに何とかなるって思うから」

京子「……あぁ、あの滅茶苦茶な力か」

あかり「…………」

みんなは考え込んでいるあかりにを気にしながらだけど話し合いを続けてる。
だけどあかりの頭の中ではさっき結衣ちゃんが言った言葉がぐるぐると回り続けていた。

魔法少女や魔女の力を奪い取って自分のものにできる……
それに力を受け渡すこともできる……

さっき聞いた話だと、京子ちゃんの力は瞬間移動の力。
京子ちゃんの力を使って、この世界までみんなはやってきた……

それなら、京子ちゃんの力を結衣ちゃんに頼んであかりに移してもらえれば……
今ここにいるみんなを元の世界に戻すことが出来る。

そして、元の世界に戻したところでさっき使えるようになったあかりの魔法でみんなを人間だったときまで時間を巻き戻す……
これで三番目の世界のみんなは助かる……

ううん…… 違う、それだけじゃ駄目だよ……
まず結衣ちゃんの力もあかりに移してもらって魔女になってしまったみんなを今のみんなから分けて、そのみんなも人間だったときまで時間を巻き戻さないと……

……でも時間を巻き戻したとして、記憶はどうなるんだろう。
……多分同じように記憶もその時まで戻るはずだけど……
駄目…… 確証が無い…… それだったら……

もしも記憶はそのままだったときの保険として、ちなつちゃんの力もあかりに移してもらわないといけない……
記憶がそのままだったときは、書き換えないといけない……

そうすれば大丈夫。
魔女になってしまったみんなも元の人間に戻って、あの恐ろしい記憶も書き換えてしまえば大丈夫。
二番目の世界もみんな助かる。

あとは一番最初の世界に戻って、みんなが死んでしまったあの場所に行ってみんなの身体の時間を巻き戻す……
それで全てが終わる。
全部の世界でみんなが生き返る。

キュゥべえも京子ちゃんがやったように全部捕まえてどこかに閉じ込めてしまえば……
ううん、全部捕まえたら。そのまま処分してしまおう。
それで本当に全部終わる。

みんなが助かる!
全部の世界でみんなが助かる!!

あかりの頭の中にみんなが助かる光景が浮かび上がったその時、あかりは決めた。

今考えたことを実行に移すと。

そして、それを実行に移すためには結衣ちゃんにお願いしないといけない。

そのために…………



あかりは時間を止めた。


停止した時間の中、あかりは結衣ちゃんに向かって歩き出す。

結衣ちゃんは動かない。隣にいるちなつちゃんも止まっている。

だけど、違和感を感じた。

そう、京子ちゃんだ。

止まっているはず、止まっていないといけないのに……

京子ちゃんは停止した時間の中、あかりに話しかけてきた。

京子「こ、これって……?」

あかり「そっか、魔法無効化の力…… だったよね?」

京子「結衣? ちなつちゃん? 二人とも……」

京子「っ!! まさか!?」

京子ちゃんと視線が絡み合う。

京子「……なんで時間を止めてるの?」

あかり「必要なことだから」

京子「わかんないよ!! ちゃんと説明して!!」

あかり「分からなくても大丈夫だよ。全部あかりがやるんだから」

京子「何言って……」ハッ

京子「お前…… まさかまた私たちを置いて過去に戻るつもりじゃ!?」

あかり「そうじゃないよ。でも大丈夫だから。京子ちゃんは何も気にしなくても」

京子「……」

京子ちゃんはあかりの目の前から飛び上がって空に浮かびながらあかりを見る。

京子「あかりっ! お前が何をしようとしているかは分からないけど、今のお前は何かおかしいっ!」

あかり「…………」

京子「悪いけど私の結界に無理矢理にでも来てもらうぞ! そこで、詳しく聞かせてもらうからな!」

京子ちゃんはそう言って手を広げるとあかりの回りに黒い霧が現れあかりを取り囲むように広がった。
これが京子ちゃんの魔法……
結界に連れて行くって言っていたし、この黒い霧に触れたら強制的に瞬間移動をされてしまうのかも……

あかり「…………」

あかりは周囲一帯に魔力を撒き散らす。
京子ちゃんの黒い霧にあかりの魔力を当て、京子ちゃんの魔力の時間を加速させた。
すると黒い霧は制御を失ったように雲散し、あかりは周りの黒い霧をひとつ残らず消し去ることに成功した。

京子「!?!?」

京子「な、なんで? 何が、どうなって……?」

あかり「……京子ちゃんが止まった時間の中を動けるって言っても」

京子「っ!!」

あかり「京子ちゃんを眠らせてしまえば、止まっているのと変わらないよね?」

京子「あかり、お前……」

あかり「京子ちゃん、少しだけ眠ってもらうよ」

あかりは内側から溢れ出す魔力を、外側に向かって放出した。
するとあかりの背に光の翼が現れて、あかりも京子ちゃんと同じように空に浮かび、再び京子ちゃんと視線が会う。

京子「な、なんで…… あかりの魔力がなんでそんなに高くなって……」

あかり「いくよ、京子ちゃん」

あきらかにうろたえている京子ちゃんに向かい、
あかりは魔力を展開し、その魔力を解き放った。

最終章 前編終わり。
遅くなりましてすいません。円環から戻ってきました。

主人公兼ラスボスはあかりちゃん。

中編1


あかりは京子に向かい魔力を解き放つ。
時間の操作も何も無い、ただの魔力の奔流。
それは京子を傷つけるためのものではなく、京子の意識を奪うためのもの。
そのとてつもなく大きな魔力が京子に到達した場合、大きすぎる魔力の奔流は京子の身体を駆け巡り、魔力に耐え切れず意識を飛ばしてしまうそんなシロモノだった。

だがその魔力波は京子の目の前で掻き消え、あかりは苦虫を噛み潰したような顔で京子を見る。

あかり「……これも、駄目なの?」

京子「あかりぃ!? お前今の攻撃、本気だったろ!?」

あかり「それじゃあ……」

京子「聞けって!! おいっ!!」

京子の叫びを聞くこともなくあかりは京子との距離をつめ、両手から魔力の弾を生み出しながら京子に投げ始めた。
一発でも頭部に命中すれば先ほどの魔力波と同じように意識を刈り取られる魔力弾。

京子はその魔力弾から逃れるように、一瞬でその姿を闇に包み込みその姿をくらませる。
京子の闇は闇夜と完全に同化し、溢れ出る魔力を隠蔽し、その状態を維持する。

あかりは姿も魔力も見失った京子を探すように、空中に浮きながら360度全てを見渡しながら呟いた。

あかり「京子ちゃん、どこ?」

あかりの呟きには返さず、闇と同化した京子はあかりを見ながら考えていた。

京子(何を考えてんだ…… あかり……)

京子(私を眠らせるって…… その後は一体何をしようとしてんだよ……)

京子(時間を戻すつもりじゃない…… あかりのあの感じ…… 何かを決めた感じ……)

京子(あかりは自分だけで何とかするって言っていた…… 自分だけで……)

京子の脳裏にちなつの記憶を共有した際に見たあかりの最期が浮かびあがる。

京子(ふっざけんな! あんな未来にさせないためにも私たちはこうやってあかりを追ってきたんだ!)

京子(グダグダ考えないで、まずはあかりをとっ捕まえてやる!)

京子(その後は説教だ! 二度とあかりが一人で何でもかんでも抱えこむ考えをしなくなるように説教してやる!!)

京子(そのためにもまずは……)

京子は目線を自分を探しているあかりから、完全に停止している結衣とちなつに向けた。

京子(二人を私の結界に連れて行く)

京子(私の結界内なら二人の時間停止も解除されるし、ちなつちゃんの力があればあかりの意識をちなつちゃんの世界に引きずり込むことも出来るかもしれない)

京子(そうなれば…………!?)

京子は違和感を感じる。
結衣とちなつを見ていた京子だったが、二人の姿は太陽の光に照らされていた。
そう、先ほどまで闇夜だったはずなのに、突如として太陽が現れ、その日差しはあたりを照らし出していた。

京子(太陽!? 何が起きたの!?)

京子の疑問。
その回答は、あかりが世界の時間を加速させ夜を昼にしたという単純なものであった。
停止している時間の中、時間を加速させるという無茶だったが今のあかりにとってはその無茶を押しとおす力があった。

そしてあかりが何故夜を昼にしたのか。
それは、あかりは京子が力を使うときに闇が溢れ出していることを見ていたからだ。
京子が力を使うたびに溢れ出す闇、あかりはそれを見る為に、京子の魔力の発動タイミングを見えるようにする為に。
そして視界の確保を考えて夜を昼に変えた、ただそれだけだったのだが、その行為はあかりにとって思わぬ収穫をもたらすこととなる。

太陽に照らされた空に一部分だけ霧状の闇が浮かんでいたからだ。
そして、ぽつりと呟く。

あかり「見つけた」

京子「!?」

あかりはそれに向かい再び大きな魔力の奔流を放ち、京子は瞬間移動を試みるが間に合わず、あかりの魔力の奔流をかき消すために両手を突き出しギリギリのところで打ち消すことに成功した。

あかりは魔力を再び消されたことに渋い顔をし、その顔を見た京子はあかりに向かい叫ぶ。

京子「あかりっ! 何をしようと無駄なんだって!」

京子「お前の魔法は私が全部打ち消せる! お前が私を魔力を使って眠らせるなんて絶対にできないんだよっ!!」

あかり「…………」

京子「だからっ……」

京子があかりに叫ぶ言葉にかぶせるようにあかりは京子を指差し話しはじめた。

あかり「京子ちゃん、さっきより魔力が減ってるよね?」

京子「!!」

あかり「あかりの魔力を打ち消す前と今、ものすごく魔力が減っているのが分かるんだよ?」

あかりの指摘は正しかった。
京子の魔法無効化の力も無制限に使えるわけではなく、その使用に大本の京子の魔力が必要となる。
そして京子は2度の世界移動と2度の世界でQBを宇宙中から捕まえる為に魔力を使っていた。
その魔力行使は、魔法少女や魔女という存在から逸脱し、新たなステージに上った京子だったが、その京子を以ってしても魔力が底を付くのに十分な魔力行使だった。

そして今、あかりの時間停止を抗いつづけ、数度あかりの巨大な魔力を打ち消したことにより、京子の魔力の残量は枯渇寸前まで陥っていた。

京子(くっ…… 確かにこの身体になってから魔力を使い続けていたし、あかりのあの馬鹿でかい魔力やこの時間停止を打ち消すためにもずーっと使っている状態……)

京子(このままだと、いつか魔力が底をついてあかりの魔法を打ち消せなくなる)

京子(そうしたら私の時間も止まってしまうし、ここは一旦引いて少し魔力を回復させる……)

京子(私は何を考えてるんだよ…… あかりを一人にしちゃったらあかりはまた私たちを置いて…… ううん、もしかしたら私たちの手の届かないところまでいっちゃうかもしれない……)

京子(……あかりはここで捕まえる。絶対に!)

京子は実際瞬間移動を使いこの場から離れることも出来た。
だが、京子はその選択はせずにあかりに向き直り、周囲に黒い霧を展開し続け、空一面を覆うくらいの闇を形成させあかりに言葉を紡ぐ。

京子「あかり…… もう手加減なんかしてやんないからな……」

あかり「…………」

京子「お前を絶対にとっ捕まえて説教をしてやる! いくら私たちのためだって言ったってお前が……」

京子の言葉の途中であかりは動き出した。
あかりは空一面の魔力を見て、最初に行ったように自分の魔力をぶつけて相殺を狙う。
京子の闇色の魔力に対し、あかりは黄金色の魔力を撒き散らし、空は闇と黄金の光によって色を成し、二人の魔力はぶつかるたびに色を失い雲散し続ける。

京子(くっそぉ! 何で魔力無効化の効果もつけてるのに消えてしまうんだよ!?)

京子は自分の魔力が何故掻き消えてしまうのか分からなかった。
魔力を打ち消す効果も付与した京子の魔力、通常ならばそれはいかなる魔力障壁や魔力効果のある魔法であっても止める事は不可能なシロモノだった。
だが何故かあかりの魔力とぶつかると雲散しコントロールを失い掻き消えてしまう。

その答えはあかりの魔力が京子の魔力とぶつかる寸前に周囲の空間を含めて時を加速させていたからだった。
周囲の空間ごと時間加速が発動し、京子の魔力はその空間に取り残される。
空間内の時は通常時間とは異なる時間帯、京子には別の時間帯にある自分の魔力をコントロールする術は持っていない、そのために魔力は雲散し消えてしまう。

もしこれがあかりの時間加速が発動する前に京子の魔力がぶつかれば京子の魔力が先にあかりの時間加速の魔力を打ち消していただろう。
だが、あかりのほうが先に魔法を発動させ、発動した後の空間自体に京子の魔力が干渉することはなかった。
いわばどちらかが先に当てれるか、発動するかのタイミング次第だった。

京子があかりの力を真に理解していれば他に手はあったのかもしれない。
だが、あかりが新しく身につけた力を京子はしらない。
京子はあかりに消されていく自分の魔力を見ながらも考える。
それと同時に、必死に京子の魔力を止める為に時間加速処理を続けていたあかりも考える。

京子(周囲に散らした魔力で駄目なら、あかりに纏わり付くよう魔力を瞬間移動させて……)

あかり(あかりの周囲の空間の時間も加速させ続けて京子ちゃんの魔力が入ってこないようにしないと)

京子(っ!! あかりを包み込むように魔力を展開しようとしても、作り出した瞬間に制御が出来なくなってしまう!?)

お互いの魔力を相殺しあっている間にも二人とも相手がやってくると予想できることに対し対策も行いながら魔力を使い続けた。
京子の闇色の魔力と、あかりの黄金色の魔力は永遠に衝突し会うように見えたが、少しずつ空を覆う色が変わって行っていた。

空は眩い黄金の輝きに覆われていく。

京子(マズイ、マズイ、マズイ…… もうこれ以上は駄目だ)

あかり(京子ちゃんの魔力は目に見えて少なくなって行っている。でも、油断しちゃ駄目…… あかりはいつもいつも油断して取り返しの付かないことをしてきたんだもん)

京子(私の魔力もどんどん減って行ってる…… この状態であかりのあの馬鹿魔力を喰らったら多分数回で私の魔力はすっからかんになっちゃう。なんとしてもその前にあかりを捕まえないと…… そうしないとあかりは……)

あかり(このまま京子ちゃんに魔力を使わせて、京子ちゃんが魔力を使えないくらいまでにする)

京子(あかりは…… 私たちとはもう……)

あかり(今度こそ、今度こそ……)

京子(…………)

あかり(今度こそ、絶対に、みんなを助けてみせるんだから)

空を覆う魔力が黄金に染まりきったとき、京子は自分の周囲に闇を展開しその闇につつまれ瞬間移動を行った。
あかりはそれを見て、視線を動かすが、その瞳が少し動いたところで、闇の塊を見つけそこに向かい魔力の奔流を放つ。
その魔力があたる寸前に京子は翼をはためかせ急上昇しあかりの魔力を回避した。

京子「はぁっ…… はぁっ……」

あかり「…………」

京子は自分に向かい手を向けてくるあかりに言葉をかける。
魔力を放つ寸前だったあかりだったが京子の言葉にその手を止めた。

京子「あかり…… これがお前に止められたら私の魔力は0になる」

あかり「……そうだね。もう京子ちゃんの魔力は殆ど残っていないみたいだね」

京子「だからこれが最後……」

あかり「安心してね。次に京子ちゃんが目を覚ますときには全部終わった後だからね」

京子「…………そんなことさせないってーのぉ!!」

京子が叫びと共にその翼から先ほどまでとは違う濃い闇の奔流をあかりに向けて放つ。
あかりは先ほどと同じように魔力をぶつけようとするが、その闇の奔流はまるで意思を持つかのようにあかりの魔力に触れることも近づきもせずに、不可思議な軌道であかりに迫っていく。

あかり(これって……)

あかり(どんなに魔力を展開しても、時間を加速させた空間も関係なく進んでくるの?)

あかり(どうやって……)

あかり(!! もしかして……)

京子が放った闇の奔流、それは京子自身だった。
あかりが先ほどまでと同じように時間を加速させるが、京子自身が突っ込んで魔力を生み出し続けているために魔力も雲散されず、時が加速した空間に突っ込むたびに京子の突進する速度は上がりあかりに目がけて一直線に突き進む。

京子(捨て身の特攻だ!! あかりがどんなことをしてきても全部の魔法を打ち消してあかりに突っ込んでやるっ!!)

京子(あかりに触れた瞬間、あかりが何かをする暇なんて与えずに私の結界に取り込む!)

京子(もうあかりも目の前!! 後は手を伸ばして触れて…………)

京子が闇の中から手を伸ばし、あかりに触れる寸前にそれは起きた。
四方八方から黄金色の魔力弾が京子に襲い掛かり、
あかりに触れる寸前だった京子の全身を、黄金色の魔力弾が通過していった。

京子「」

あかりの目の前にあった京子の手がゆっくりと下がっていく。

京子(いったい、なにが…………)

既に途切れかけの意識の中、京子はあかりの声を聞いた。

あかり「危なかったよ…… でもあかりの勝ちだね」

あかり「京子ちゃんにばれないように魔力を作り出して、あかりの周りに設置しておかなかったらあかりは捕まってたかもしれないね」

あかりの周りには、先ほど京子を打ち抜いた魔力弾がピタリと止まり停止していた。
あかりが行ったことは、
京子に見えないように魔力を背後に展開し、その魔力弾自体は時間停止の影響を受けるように作り出し、停止した魔力弾を数個維持する。
その後に、京子が射程内に入ったと同時に、停止している魔力弾を一斉に動かし、全弾京子に命中させた。

京子は自分自身が特攻したことが完全に裏目となり、あかりに敗北することとなってしまった。

京子は薄れ逝く意識の中、あかりを見て、視線をさらに動かそうとしたところで、
その身体の動きを止め、完全に停止した。

あかりは京子を見て、ほんの少しだけ泣きそうな顔をしながら言葉を紡ぐ。

あかり「……本当にごめんね京子ちゃん」

あかり「こんなあかりの為に、そんな姿になってまで、こうやって来てくれて……」

あかり「でも、大丈夫…… あかりの魔法で京子ちゃんの身体の時間を巻き戻せば、京子ちゃんも、みんなも人間に戻れるんだよ……」

あかり「……みんなを元の世界に戻して、みんなの記憶も魔法のことなんて覚えていない状態にして、みんなは元の生活に戻ることが出来るんだよ……」

あかり「全部の世界でひとつずつやりきらないと…… そのためにも、あかりにみんなの力を集めないと……」

あかり「……結衣ちゃんは、あかりのお願いを聞いてくれるかな……?」

あかり「…………ううん、聞いてもらわないと、結衣ちゃんを騙してでもあかりにみんなの力を…………」

あかりが悲しげな目線を結衣に向けようとしたその時、
あかりの首に衝撃が襲い掛かった。

鋭い衝撃は一瞬にしてあかりの意識を刈り取るほどの一撃であった。

結衣「そんなお願いは聞けないよ…… あかり……」

薄い闇を身体から溢れさせた結衣は、あかりを優しく抱きしめて呟いていた。

時は少し遡り、京子は気絶する寸前に最後の力を振り絞り結衣とちなつの近くに闇を生み出し、その中から闇色の烏、京子の使い魔を召還した。

その使い魔は、よたよたと歩き、停止した結衣の元にたどり着くと、その背を上り結衣の肩に乗った時点でその姿を崩し、結衣の身体を薄い闇が包み込んだ。
そして、結衣の身体が薄い闇につつまれきったところで、結衣の目は色を取り戻し、あかりの時間停止の影響を退けた。

結衣「!?」

京子『まって結衣! 喋らないで! 動かないでっ!!』

結衣(……? 京子?)

京子『そう、今は動かずに私の話を聞いて! 時間が無いんだ!』

結衣(一体……?)

京子『簡単に説明するけど、今あかりが時間を止めて何かをしようとしてるんだ。私はあかりを止めようとしたんだけど、返り討ちにされてもう少しで完全に意識を失う状態』

結衣(!?)

京子『結衣、あかりを止めて…… 絶対にあかりは馬鹿なことを考えてる。このままあかりを行かせてしまったら……』

結衣(……ああ、わかった。あかりを止めるよ)

結衣(その後は、あかりを交えて話し合いだ。今度こそあかりにも私たちの気持ちを知ってもらおう、もうこれ以上すれ違うのは嫌だからな)

京子『……うん』

京子『それじゃあ、結衣。私の力を受け取ってよ。……といっても、この魔法無効化の力の一部しか渡せないけど』

結衣(十分だよ。…………確かに受け取ったよ)

京子『……うん。でも油断しないで…… あかりは、本気だよ……』

結衣(……今のお前がやられるくらいなんだろ? 油断なんてしない、一瞬でケリをつけるさ)

京子『…………あかりを、お願い』

結衣(ああ)

結衣は京子の力の一部を自分のものとし、あかりの時間停止を退ける魔法無効化の力を手に入れた。
だが、ほんの一部だけを受け取ったに過ぎないその力は、京子のように放出した魔力に魔法無効化の効果を付与することは出来ず、自分の身体に影響を及ぼす魔法のみを無効化するというだけのものであった。

だが、結衣にはそれだけで十分だった。
とてつもない身体能力を駆使し、目にも映らぬ速度で動きあかりの背後に現れ、あかりの呟きを聞いた結衣は無防備なあかりの首に手刀を打ち込んだ
魔法少女であってもその肉体は人間の構造と変わらない、結衣の一撃は確実にあかりの意識を刈り取るほどの一撃を放っていた。
全てが完璧な一撃、力、速度、タイミング。そしてあかりが絶対に怪我をしないように想いを込めた一撃、意識だけを刈り取る一撃。

ゆっくりと崩れるあかりの身体を優しく抱きとめた結衣はあかりに抵抗されずに事を成せたことに安堵した。
ひとまずはこれで安心、この後は京子とちなつと共にあかりと話し合うためにどうするかと考えていた結衣は怪訝な顔をしながら周囲を見渡す。

結衣「…………時間が止まったまま?」

まさかと思いあかりを見たその瞬間、

あかり「…………っ!!」

結衣「なっ!?」

あかりの全身から爆発するように魔力が噴出し、あかりは魔力を噴出させながら結衣との距離を十分に取って結衣をその視界に入れた。

あかり「ぜぇっ…… ぜぇっ……」

肩で息をしながらあかりは空中に留まっていた。

結衣(浅かった!? いや、そんなはずは……)

結衣の一撃は完璧だった。
あかりも一瞬で意識を刈り取られるはずだった。
だが、その意識が飛ぶ寸前に結衣の身体に抱きとめられた。
あかりの身体に結衣の温もりが伝わる。
あかりの身体に結衣が自分を気遣うように抱きとめたことが伝わる。
その時、刈り取られるはずのあかりの脳裏に想いが駆け巡る。

――――結衣ちゃんだ。

――――あれ、あかりは結衣ちゃんに抱きかかえられて?

――――結衣ちゃんも止まった時間の中に?

――――お願いを聞けないって、それじゃああかりはみんなを助けられないの?

――――嫌だ。

――――そんなのは、嫌だ。

――――あかりは絶対にみんなを助けるんだ。

――――そのためにも、そのためにも!!

あかりの意識は最後の最後で踏みとどまり、意識を飛ばすことはなく結衣との距離を取り再びあかりは臨戦態勢をとる。

あかり「ぜぇっ…… はぁっ……」

結衣「っ!」

荒い息のあかりは、その全身から膨大な魔力を噴出し空中で結衣と対峙する。
その噴出された魔力はあかりの目に集まり、あかりの瞳が黄金色に輝き瞳の内部で時計の針が目まぐるしく動き始めた。

中編1終わり。

中編2


結衣はあかりが魔力を集め始めたことを悟り、再びあかりの意識を奪うために動いた。
先ほどと同じ様にあかりの首筋を狙い、手刀を繰り出す。
動き出してから手刀を繰り出すまでの一連全てが一瞬にも満たないほどの速度だった。
そして、結衣の手が再びあかりに届こうとしたその時、

あかりの身体がゆらりと動き結衣の手刀は空を切った。

結衣「!?」

あかり「ぜぇっ…… ぜぇっ……」

結衣の驚愕。
確実に首元に打ち込んだはずの手が空を切っている。
あかりが偶然動いたせいでだが、何かが腑に落ちない。
頭を切り替え再び結衣は同じように動いてあかりを気絶させる為に手刀を打ち込む。

結衣「!?」

だが再びその手刀は空を切る。
またあかりが結衣の手が届く寸前に動いたせいだ。
そして、三度結衣が手刀を打ち込みあかりがよろめくように動きその手が空を切ったとき、結衣はこれが偶然ではないことを悟る。

結衣(避けてる……のか?)

あかり「はぁっ…… はぁっ……」

あかりは荒い息を整え始め、頭を振りながら結衣を見る。
最初に結衣があかりに与えたダメージはまだ残っている、だがもう行動に影響がないほどまで回復していた。
あかりの息が落ち着いてくるのとは対照的に結衣は焦り始める。

結衣(一体何が!? だ、だけど、すぐにでもあかりを気絶させないと。あの京子ですらやられちゃったあかりだ、モタモタしてるとこっちがやられる!)

結衣はあかりの意識を奪うことを優先しあかりに向かい行動を開始した。
だが、結衣があかりに手刀を放つがすべてそれは紙一重のところであかりに避けられ続けた。
あかりはまるで結衣が何をしてくるか分かっているかのように、結衣の手刀を避け続けた。

あかり「……無駄だよ」

あかり「結衣ちゃんはあかりには絶対に触れられないよ」

結衣「っ! そんな事分からないだろ?」

あかり「わかるんだよ。だってあかりには未来が見えるんだから」

結衣「!?」

あかりが放った言葉。
それはあかりが予知を出来るという言葉だった。

結衣「それって、予知能力っていう事?」

あかり「そうだよ」

結衣「そんな力使えるなんて聞いてなかったけど?」

あかり「さっき出来るようになったんだよ」

結衣「……さっきって」

あかり「それ以外にも、いろんなことが出来るようになったんだよ? 時間を止めたり戻すだけじゃない。進めることも、こうやって未来を見ることも時間を進める魔法の応用…… 多分あかりは時間を自由自在に操ることが出来るようになったんだと思う」

結衣「……なんでそんな急に」

あかり「わかんない。でもそんなのはどうだっていいんだ。この力を使えばみんなを助けることができるって事が分かってるんだから、あかりにはそれだけわかっていれば十分だよ」

結衣は決めかねていた。
今の自分なら光すら超える速度で動くことができる。
その速度ならあかりが予知をしようとも避けることなど不可能、結衣の手刀はあかりに届くと確信していた。
だが、そんな速度の手刀をあかりに放ってしまっては最悪あかりの首を切り落としていしまう。
あかりに怪我をさせずに意識を奪う。そのギリギリの速度で結衣は動いていたが、その速度では予知を行うあかりに避けられる速度だということが分かってしまった。
煮詰まってしまった結衣は、あかりに問いかけ始める。

結衣「あかり…… 私がこうやって止まった時間の中で動けていることには驚かないんだな?」

あかり「京子ちゃんが何かをやったんでしょ? 多分さっき…… 最後かな? 京子ちゃんの最後の力を結衣ちゃんが受け取ったんだと思うけど」

結衣「……なんでそうだと思うの?」

あかり「だって最初から京子ちゃんの力を貰ってたんだったら京子ちゃんと一緒にあかりを止めようとして来るだろうし、それをしなかったって言うことは、そのときにはできなかったっていうことだよね? だったら考えられるのは最後の最後で京子ちゃんがあかりに分からないように結衣ちゃんに力を渡したことって事しか考えられないよ」

結衣「……まあ、その通りだよ」

結衣はさらに問う。

結衣「あかり。一体何を考えてるんだよ…… なんでこんな、京子を気絶させてまで何をしようとしてるんだよ……」

あかり「…………」

あかりは少しだけ考え、結衣に話しはじめた。

あかり「……あかりがやろうとしていることはね、みんなが…… 全部の世界のみんなを助けようと思ってるの」

結衣「全部? それって……」

あかり「あかりは今まで4つの世界を渡ってきた」

あかり「この世界、一つ前の結衣ちゃんがいた世界、もう一つ前のみんなが…… 魔女になった世界、そして…… 一番最初の…… みんな死んじゃった世界」

あかり「最初はあかりが時間を戻して、みんなを助ければいいんだって思ってた」

あかり「だけど、そうじゃなかった。みんながこの世界に来たことで、それがわかっちゃった……」

結衣「……それって」

あかり「あかりが時間を戻しても、あかりがいた世界のみんなは助かってなかった…… あかりはただみんなを傷つけて、一人だけ安全な所に逃げ続けていただけだったんだって」

あかり「もう…… どうすればいいのかわからなくなっちゃった……」

結衣「あかり……」

あかり「でも」

あかり「結衣ちゃんの言葉を聞いて、みんなの力を聞いて、あかりは思いついたんだよ?」

結衣「思いついたって……」

あかり「みんなの力をあかりに集めれば、全部の世界でみんなを助けれるって!」

結衣「な、何を?」

あかり「だってそうだよね?」

あかり「京子ちゃんの力があれば別の世界に渡ることが出来る。ちなつちゃんの力があればみんなの記憶から魔法のことを消すことが出来る。そして結衣ちゃんの力があれば……」

あかり「…………もしもみんなの力やあかりのこの時間を戻す力でもみんなを助けることができなかった場合に、他の魔法少女や魔女から必要な力を奪い取ることができる」

結衣「!! あ、あかり、お前!?」

あかりはその未来を考えながら空を見上げて笑っていた。
今まで結衣はあかりの笑い顔を見てきていたが、今のあかりの笑い顔は狂気を携えるような歪な笑いで、そんな顔をするあかりに結衣は顔を顰めながら見続ける。
そして、結衣はたまらず叫んだ。

結衣「な、なんでだよ!? みんなで協力すればいいだけだろ!? お前一人でやる必要なんてないだろ!!」

あかり「あるよ」

結衣「そんなことない……「あるんだってば」」

あかり「だって、あかりのせいなんだから」

あかり「あかりが、キュゥべえをみんなに会わせちゃったのが全ての始まりだったんだから」

結衣「え……?」

あかりの脳裏に最初の世界で始めてQBを見つけたときが浮かび上がる。
あの時はみんなに見てもらいたかった。
こんなに可愛くて、喋れる猫を見せたらみんな驚くし喜んでくれると思った。
それがこんな地獄の始まりだと気付きもしなかった。
あかりはあの時に自分がQBを結衣たちに会わせてしまったことを後悔し続けていた。

あかり「あかりには責任があるの。みんなを傷つけて、みんなを巻き込んで、みんなを殺してしまった責任が」

あかり「あかりがキュゥべえをみんなに見せなかったら……」

あかり「あかりが最初の世界のことを夢だと思わなかったら……」

あかり「あかりがあの時怪我をしなかったら……」

あかりの中で今までの世界で結衣たちの最後が浮かび上がる。

あかりはずっと自分のせいだといいながら手を握り締め、その目は見開かれ血走っていた。
結衣はそんな事はないと叫ぶがあかりにはその言葉は届いていないようで、あかりは血走った目を結衣に向けながらお願いを始める。

あかり「だから……」

結衣「あかり!!」

あかり「結衣ちゃん。あかりにみんなの力を移してほしいんだ」

あかり「そうすれば、みんなは助かるんだよ? ねっ、お願いだよ」

あかりの目を見て結衣は気付いてしまった。
あかりは既に自分では止まれない所まで来ていることを。
それならば、あかりが自分の意思で止まれないなら、

結衣「……おい、あかり」

結衣は決めた。

あかり「なぁに、結衣ちゃん?」

全力であかりを止めると。
その結果あかりが傷つくこととなっても。

結衣「お前を絶対に止める!! お前に力を与えることなんて絶対にしない!!」

あかり「…………残念だよ」

結衣とあかりはそれぞれ魔力を展開し、その魔力を開放した。

先に動いたのは結衣であった。
魔力を開放して光速の動きであかりに一撃を加え一瞬で気を失わせる。
単純だが確実な方法、今のあかりが予知を行えると言っても光速の一撃を避けることなど不可能。
そう思い動いた結衣だったが、突如目の前に現れた巨木に視界を奪われあかりの姿を見失う。

結衣「なっ!?」

一体どこからこんな巨木が? と考えるが、一瞬で思考を切り替え結衣は上空に飛び上がろうとするが、その結衣の行く手には黄金色の魔力弾が雨霰のごとく降り注いだ。

結衣「~~~っ!?」

結衣はその魔力弾を見た瞬間に光速で背後に動き全ての魔力弾を回避する、だがその結衣の背中に衝撃が走る。

結衣「いたっ!? ま、また木!? なんなんだよっ!?」

いつの間にか周りには数十メートルはある巨木がそびえ立つように現れていた。

結衣「な…… なんだよ、これ……?」

呆然とする結衣だったが、再び上空から魔力弾が結衣目がけて降り注いできた。
それを見てあかりは上空にいると判断した結衣は、飛び上がろうとするが、完全に意識外からの激しい衝撃が結衣を襲った。

結衣「うぁぁぁぁっ!?」

結衣「し、下から? 一体……!?」

それはあかりの魔力弾だった。
京子の力を得ている結衣には魔力自体は無効化していたが、着弾した際の衝撃までは無効化できなかった。

結衣「あかりの攻撃……? 上からじゃ…… っっ!?」

再び結衣に魔力弾が襲い掛かる。
今度は上下左右、全ての方向からの一斉砲撃であった。

結衣(よ、避けきれない)

結衣「それならぁっ!!」

結衣は上空の魔力弾に突っ込み、その魔力弾を無効化して空に飛び上がった。
下では巨木に囲まれてあかりの姿を見ることも出来ない、だが数百メートル上空から見下ろせばあかりの姿を見つけることも出来ると考えた結衣は上空に飛び上がる。

そして、そこで結衣は驚愕に目を見開いた。

結衣「な、なんなんだよこれ…… 空中に木?」

そこは巨木の樹海だった。
確かに結衣は上空にいる、だがその目に映るのは巨木の森。
結衣は自分の目がおかしくなってしまったのかと思ったが、巨木は全て不自然な形で空に留まっており、その根は地面にはなく、ただ空中に巨大な木が留まっているという状態だった。

結衣「まさか…… これはあかりが……?」

あかり「そうだよ結衣ちゃん」

結衣「!?」

突如聞こえてきたあかりの声に振り向いた結衣だったが、その目に映ったのはあかりの魔力弾だけだった。

結衣「~~~っ!!」

あかり「いくら早く動けても。これだけ沢山の木に邪魔されて、あかりの姿も見えないんだったらどうしようもないよね?」

結衣「うぁっ!?」

あかりの声はするが、その方向に振り向くと決まって魔力弾がある。
結衣は体勢を崩しながらも、魔力弾を無効化し、再びあかりを探そうとするが意識を向けた先とは別の方向から襲ってくる魔力弾を喰らい行動が出来なくなっていた。

結衣「一体…… うぁっ!? どうやって…… あうっ!?」

気がつけば結衣の周りは隙間がないくらいの巨木があり、その巨木を通過するように魔力弾が結衣に襲い掛かる。

あかり『もう動けないよね? 結衣ちゃんの周りにはあかりが成長させた木がもう数キロ近く覆われているから逃げ出すことも出来ないよ』

あかり『もうわかったでしょ? 降参して、あかりに…………』

超上空であかりは見ていた。そして、結衣にテレパシーを送っていた。
自分が木の時間を加速させ成長させた巨木の樹海と、結衣の周りに隙間なく木を生長させ作り出した巨木の牢獄を。
だが、その巨木の牢獄に一本の線が入ったかと思うと一瞬で数十の線に分かれ、巨木の牢獄は内側から爆散し中から両手に騎士剣を持った結衣が飛び出してきた。

結衣「はぁっ! はぁっ! あかりぃぃぃっ! どこだぁぁぁっ!!」

あかり「…………」

超上空にいるあかりの姿に気付かず結衣は辺りを見渡す。

あかり(あれじゃ駄目なんだ…… それなら……)

見下ろすあかりは両手を広げ、巨大な魔力を作り始める。

結衣「!?」

結衣も上空に魔力の胎動を感じ視線を上に向けた。
そして、その瞳にあかりの姿を捉えた瞬間、あかりに向かい一歩を踏み出したところで、
巨木にその身を打ちつけた。

結衣「ぶっ!? ぐぁっ!?」

あかり『……あかりには結衣ちゃんがどう動くかわかるの』

隙が出来た結衣に容赦なく巨大な魔力の奔流が襲い掛かる。

結衣「うぅぅぅぅぅぅっ……」

あかり『結衣ちゃんが動く先、動こうとするところにあかりはいろんな罠をしかけたんだよ』

結衣が魔力の奔流に耐え切り上空を見上げたとき、そこには再び巨木の樹海とさらには大量の水が落ちて来ていた。

結衣「!?」

あかり『木を生長させたり、雲を元の水に戻したり、いろんなことが出来るんだよ』

結衣は完全にあかりの手の上で遊ばれていた。

結衣「…………」

あかり『ごめんね…… でも、こうしないとあかりはすぐ結衣ちゃんに捕まっちゃうんだ』

あかり『結衣ちゃんの魔力もあかりの魔力を打ち消して大分減ってきてる…… 京子ちゃんより打ち消すのは苦手みたいだね』

あかりの言葉どおり結衣は京子よりも魔力を打ち消す際に多量の魔力を使っていた。
あかりの時間停止をキャンセルしながら、魔力弾を打ち消していた結衣はかなりの魔力を消耗していた。

あかり『結衣ちゃんの魔力がなくなるまでこうやって…………!?』

結衣「うぉぉぉぉぉおおおおおぉぉらぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

結衣が叫んだと同時に結衣の姿が掻き消えた。
それと同時にあかりの瞳に映っていた未来が書き換わった。
結衣の周囲に動く先に設置していた全ての罠がが全て吹き飛んでいる未来、そして数秒後に自分の背後に結衣が両手を振りかぶりその手を振り下ろす瞬間が見えた。

あかり(うそ……)

あかり(後3秒であかりの後ろに結衣ちゃんが……)

あかり(今までは本気じゃなかったんだ……)

あかりの瞳は目まぐるしく可能性を選択し結衣から逃れる未来を探すが、全ての未来があかりの後頭部を結衣が殴り抜き、あかりは気を失い地面に衝突する寸前で結衣に抱きとめられる未来しか浮かび上がらなかった。

あかり(そんな…… もうどうしようもないの?)

あかりの未来は変わらない。

あかり(……そんなことない、絶対にそんなことないもん)

既に時間は1秒を切っていた。

あかり(……あかりは絶対に、負けられないんだもん!)

そして、その時が訪れる。

あかり(例えそれが京子ちゃんでも、結衣ちゃんでもっ!!)

あかりの背後に結衣が現れ、その手をあかりに振り上げ。

あかり(あかりはっ! 負けられないのっっっ!!!!)

あかりの瞳の中の時計の針が歪み、新たな未来が発生した。

結衣「うらぁぁぁぁぁっっ!!!!」

結衣はあかりの後頭部に手を振り下ろした。
手加減も微塵に感じさせない攻撃、
手加減などしていたらあかりを止める事などできやしないと思い知った結衣が行った攻撃。
その攻撃はあかりの後頭部に吸い込まれ、完全にあかりの意識を奪う、それどころか下手をしたら骨まで砕くほどの一撃だった。

確実に振りぬいた。
手ごたえもあった。

結衣「っっっ!?」

だがその場にあかりは留まっていた。

何故? 確かに当たった、あかりが吹き飛んでいないとおかしい。
結衣の疑問は尽きなかったが、その答えを導き出す前に結衣の全身に魔力弾が打ち込まれた。

結衣「っあぁぁっ!!」

あかり「はぁーーーっ! はぁーーーっ!! はぁーーーっ!!!」

再び距離を取ったあかりは荒い息をしながら両手に魔力弾を形成した。
だが、結衣がその姿を再び消し、あかりの背後を取り同じように回避不能の攻撃を放つ。
先ほどと同じように手ごたえもあった、だがあかりは攻撃を受けたにもかかわらず振り向きざまに結衣に魔力弾を打ち込んできた。

結衣「っぁああ!! な、なんでだよっ!? 当たってるのに何でっ!?」

あかり「…………これって」

あかりは何かに気付いた。
その間にも結衣の攻撃に晒され続けていた。
だが先ほどと同じように何かが起きていた。

結衣(な、なんなんだよこれは!? 当たってるのに! それなのにあかりはまるで当たってないように平然としてる!?)

結衣(そ、それどころか、反撃までしてきて…… ど、どんどんあかりの攻撃が激しく……)

あかりは結衣の攻撃を受けながら、お返しとばかりに結衣に0距離で魔力弾を打ち込み始める。
結衣があかりを殴りつけ、あかりが結衣に魔力弾を放つ双方の攻防は激しく続いたが、
その状態は長くは続かず、たまらず距離を取ったのは結衣だった。

結衣「な、何をしたんだよ!?」

あかり「…………」

結衣「答えろよあかりっ!!」

あかり「……もう結衣ちゃんはあかりに勝てなくなったって事」

結衣「っっ!?」

あかりの言葉に目を見開き、あかりを凝視する結衣。
あかりは再び口を開いた。

あかり「この力も時間操作の応用だよ」

結衣「時間操作!? そんな馬鹿な! 私にはあかりの魔法は……」

あかり「そうだね、結衣ちゃんにはあかりの魔法は効かないよ」

あかり「だけど、あかり自身にかけることは出来るんだよ」

結衣「どういうことなんだよ!」

あかり「あかりが結衣ちゃんの攻撃を受けた時、あかりの眼には二つの未来が見えたんだ。あかりがそのまま結衣ちゃんの攻撃を受けた未来と受けなかった未来」

あかり「あかりはその受けなかった未来のあかりを結衣ちゃんの攻撃を受けちゃった今のあかりに上書きしたんだよ」

結衣「………………は?」

あかり「その結果は、こうやって無傷のあかりがいる。もう結衣ちゃんがどんなことをやってこようとしてもあかりには絶対に届かないの。あかりに都合の悪いことはぜーんぶなかったことに出来るんだよ?」

結衣「い、意味が、分からない……」

結衣は混乱の極みに陥っていた。
あかりの言うことが正しければ、あかりを気絶させることはもう出来ない。
攻撃自体がなかったことにされるのではもうどうすることも出来ない。
だが結衣は頭を切り替える、これも魔法の一つ。
だったら魔力がなければ使うことなどできない。

結衣「……それでも、それは魔法なんだろ? それなら魔力がなくなれば使うことも出来ないだろ!?」

あかり「そうだね。確かに魔力が使えないとこの魔法も使えないよ?」

結衣「だったら、根比べ……」

あかり「だけど、魔力を持っているあかりを上書きすればいいだけだよね」

結衣「え……?」

あかり「言ったでしょ? あかりに都合の悪いことは全部変える事が出来るの」

今度こそ結衣は完全に固まった。
あかりはそのまま続ける。

あかり「あは、あははは…… すごいよ、この力があればもう間違うことはないんだよ……」

あかり「もう失敗することなんてないんだ。失敗しても正解の道を上書きすればいいんだもん」

あかり「あは、あははははは、あははははははははははは!!」

狂ったように笑い出すあかりを見て、結衣は空中で後ずさった。
あかりの言うことを信じたわけじゃない、だが今までの情報を整理するとあかりの言葉が嘘ではないことが理解できる。

魔法を無効化しようしても自分は自分自身に影響がある魔法しか無効化することは出来ない。
あかりが新たに得た力を防ぐ術を結衣は持っていなかった。

あかり「さあ、結衣ちゃん。もういいでしょ?」

結衣「っ!」

あかり「あかりにみんなの力を移してよ。そうすればぜーんぶ元通りなんだから、ぜーんぶあかりが元に戻せるんだから」

あかりがゆっくりと近づいてくる。
あかりが近づくたび結衣は後退する。

あかり「ねっ、結衣ちゃん」

結衣「…………あかり、確かにもう私はお前を止める事は出来ないのかも知れない」

あかり「うん、出来ないよ?」

結衣「だけどな!! 私はまだ諦めてなんかいないんだからなぁっ!!」

あかり「あっ」

あかりの前から結衣の姿が忽然と掻き消えた。

あかり「……もう、本当に諦めてないんだね」

あかり「あかりがみんなの力を得る未来がまだ見えないよ……」

あかり「でも、それも時間の問題」

あかり「結衣ちゃんが諦めたその時…… みんなの力を得る未来が見えた時」

あかり「その時が…… あはははは…… あはははははははは!!!!」

あかりは笑いながらゆっくりと降下していった。
逃げた結衣を捕まえる為に、歪んだ笑みを浮かべ行動を開始する。

中編2 終わり。

中編3


あかりの前から逃げの一手を打った結衣は光速を超える速度で動きある場所へとたどり着いた。

結衣「はぁっ!! はぁっ!!」

結衣の目の前には空中で静止した京子、その京子の身体を掴み結衣はまた別の場所に移動する。

結衣(くっ! やっぱり今の私じゃ京子に触ってもあかりの時間停止を解除できない)

結衣は自分に影響を受ける魔法効果を無効化することは出来たが、その無効化の範囲はあくまで自分だけにしか広げれなかった。
これが京子ならば自分にやったみたいに他人の魔法効果も無効化できたというのに。

結衣(それを考えるのは後! 次は……)

京子を抱えた結衣はもうひとつの目的地、
ちなつの傍に降り立ちちなつも抱きかかえる。

結衣(よし! 次は……)

そのまま飛び立とうとした結衣の周りの地面にひびが入った。
結衣は気を取られ視線を向けると、地面から再び木の芽が現れ瞬く間に巨木へと変化して結衣の周りを取り囲むようにどんどん成長していった。

結衣「っ!?」

飛び上がろうと上を見上げた結衣は、あかりが空にいることを思い出し飛び上がらずに足に力をこめ巨木を蹴りぬき、巨木の腹を粉砕しつづけ横に横に突き進み、
そして巨木の中から飛び出した。

飛び出した結衣がまず見たのは、目の前に立っているあかりの姿だった。

結衣「~~~っ!?」

結衣はとまることも出来ずにあかりに突っ込む。
あかりは結衣に突っ込まれたが、何事もなかったかのように結衣の肩に手を回して耳元でぼそりと囁いた。

あかり「結衣ちゃん、捕まえた」

結衣「うぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

結衣はあかりを振りほどこうと反射的に飛び上がった。
しがみ付かれて拘束されるかと思っていた結衣だったが、以外にも簡単にあかりは手を離し結衣はあかりを振りほどくことに成功する。

あかり「も~、逃げないでよぉ」

結衣「はぁっ!! はぁっ!!」

あかり「結衣ちゃんはもうあかりから逃げられないんだから諦めてよぉ」

結衣「諦める、もんか!!」

結衣は足に力をこめ、あかりとは反対方向に飛び立った。

あかり「……ふふっ、鬼ごっこだねぇ」

あかりから距離を取る為に飛び立った結衣の視界は目まぐるしく変化する。
一回の跳躍で日本とは別の国にあるそびえたつ山の山肌の側面に結衣はたどり着いた。
足元は衝撃でクレーターが出来、山肌の形はへこみ歪な形に変化していた。

結衣「こ、ここまで来れば少しは時間が……」

結衣はあかりが追って来るであろう方角を見つめ荒い息をついていた。
そんな結衣に背後から肩を触れられる感触が襲う。

結衣「ひぅっ!?」

全身が硬直し、心臓の鼓動が大きく跳ねる。
結衣は恐る恐る振り向く。
振り向いた結衣の視界に、

あかり「えへへ、捕まえたぁ」

あかりの顔が飛び込んできた。

結衣「うわあぁぁぁぁぁぁっ!?」

結衣はたまらず叫び、京子とちなつを離し山肌を転がり落ちていく。
だが転がり落ちる途中で、結衣はあかりに支えられた。

あかり「結衣ちゃん、大丈夫?」

結衣「な、なななな、なんで?」

あかり「? なんでって?」

結衣「なんでっ! 私の居場所がわかるんだよっ!! それになんであかりが私の動きについてこれるんだよっ!!」

結衣はあかりが自分の動きについて来れる、いや先回りをしていたことが理解できなかった。
結衣はあかりに問いかけ、あかりは素直に結衣の問いに答える。

あかり「え? だって結衣ちゃんの動きは予知で分かるし」

あかり「結衣ちゃんが動いた先にあかりが先回りすることも、あかりがあかりの動きを加速させれば簡単だよ?」

結衣「なん……だよ、それ……」

あかり「京子ちゃんと、結衣ちゃんのおかげであかりはこの新しい力をすごく使いこなせるようになったんだ」

結衣「わ、私たちのおかげって……」

あかり「うん、二人があかりに力をくれたんだよ」

あかりは笑っている。
対称的に結衣は顔を引きつらせている。

あかり「だから」

あかり「ねっ」

結衣「うぅぅっ……」

あかり「諦めよっ? ねっ?」

結衣「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

結衣はあかりの手を振りほどき駆け出す。
京子とちなつの手を取りそのまま山が崩壊するほどの踏み込みを行い上空に跳躍した。

あかり「えっ?」

あかりの眼に結衣の未来が映った。

あかり「そ、そんな!? た、大変!!」

あかりは自分自身に時間加速を行い、その場から姿を消す。
あかりは見てしまった。
結衣の跳躍により、3人は地球を飛び出し宇宙空間へと飛び出してしまったことを。

結衣は跳躍して気が付いた。
あかりから逃げる為に何も考えずに全力で跳躍した。
その結果、今結衣の視界には今まで見たこともないような煌く星空が映っていた。

結衣(あ…… これってもしかして……)

視界は変化して目の前に青く丸いものが映った。

結衣(あー…… やっぱり……)

ものすごい勢いで青く丸いものは小さくなる。

結衣(地球は青かったって…… 何のん気に考えてんだよ私……)

結衣(これはやっちゃったな…… こんな事で死ぬなんて……)

結衣(…………)

ほんの少し、ほんの少しだけ諦めかけた結衣だったが、再び目を開き魔力をその身体から噴出させる。

結衣(……死ぬもんかよ)

結衣(……やっとここまで来たんだ、こんな事で死んでられるか)

結衣(宇宙に飛び出しちゃったからってまた戻ればいいだけの話!)

結衣(どこか足場を! 足場があれば地球まで飛んでやる!!)

その時、結衣は自分の背後に大きな何かがあることに気が付く。
そしてそのまま結衣はその何かに背中を打ち付けることとなった。

結衣「ぐっはぁぁっ!?!?」

結衣「な、なに……? 何かにぶつかって……?」

結衣「…………地面?」

結衣と衝突した衝撃で巨大なクレーターが出来上がったそこは、
月だった。

結衣は自分が今月にいることを瞬時に察する。
地球とは違い大気もない、宇宙服もなく生身の状態の人間は即死している環境。
だが、結衣や京子、ちなつは人間でも魔法少女でも魔女でもない存在。
今、結衣は自分たちが宇宙空間でも存在できる状態であることを理解する。

結衣「……じ、自分のことながら信じられない」

結衣「ここって月だよな…… ああ、そっか…… 私の本体は……」

結衣は自分の胸をそっと触った。
自分の体内にしまいこんだ、ソウルジェムとグリーフシードが一つになったナニカ。
それが破壊されない限り自分は死なない。

結衣「初めて感謝するかもね、こんな身体になってしまったことに……」

結衣はそこまで考え頭を切り替える。

結衣「流石に月まであかりも追っては……」

結衣「……いや、今のあかりだったら追ってくる。絶対に追って来るはず……」

結衣「でも、さっきみたいにすぐ現れない…… ということは少し手間取っているってことか……」

結衣「今のうちって事か…… 時間もかけてられないな……」

結衣は覚悟を決める。

結衣「……賭け。完全な賭け」

結衣「お願い、うまくいって……」

もう自分だけの力であかりを止める事は不可能。
京子に頼まれて、あかりのことを引き受けた、だが自分ではその願いを聞き入れることが出来なかった。
京子でも駄目、自分でも駄目、一人ずつじゃあかりを止められない。
だったら。

結衣「京子、お前に貰った力、今返すよ……」

結衣「私の魔力も半分受け渡す……」

結衣「うまくいってくれ…… 頼むよ……」

結衣は京子の手を握りながら京子から受け取った力を京子に戻した。
自分の魔力と共に。

それと同時に結衣の時間は停止し、結衣は京子の手を握り祈るような姿勢で固まった。
結衣が固まったと同時に京子の手がピクリと動く。
薄っすらと閉じられていた京子の目が開き、その目が結衣を捕らえた。

京子「…………結衣?」

京子「……あれ? 結衣?」

京子「!? な、なに!? ここどこ!?」

京子「結衣!! ねぇっ!! どうしたのっ!? あかりはどうなったの!? ねぇっ!?」

京子の問いかけに答えない結衣、それと同時に岩と砂しかなく見たことのない場所にいることに気付いた京子は結衣の肩を持って揺さぶるが結衣が反応することはなかった。

京子「っ! こ、これってもしかして、まだあかりの時間停止が続いてるっての?」

すぐさまあかりの魔法がまだ続いたままだと気が付いた京子は行動を起こす。

京子「ここがどこだかは分からないけど、とりあえず結衣の時間停止を解除しないと……」

そこですぐ傍にちなつがいることにも気付く。

京子「!! ちなつちゃんも? ……ちなつちゃんの時間停止も解除して結衣に説明してもらわないと……」

京子は自分の魔力が少し戻っていることに疑問を持ったが、まずは二人の時間停止を解除する為に魔力を注ぐ。
京子の手から溢れ出た闇が二人の身体を覆い尽くしたところで、二人は時間停止から逃れ、結衣は京子の顔をみて安堵のため息をつき、ちなつは何が起きているのか分からない様子で二人の顔を見比べていた。

結衣「よ、よかった…… 成功したんだ……」

ちなつ「え? え? なに? どうしたんですか?」

京子「結衣! 一体どういうこと!? なにがおきてるの!? あかりはどうなったの!?」

ちなつ「え? あかりちゃん……? あかりちゃんがどうかしたんですか!?」

結衣「二人とも落ち着いて! 今は時間がないんだ!」

三者三様にお互いに問いかける。
京子はあのあとにどうなったのか、今のこの状況はいったい何なのかと。
ちなつはあかりという言葉を聞き、あかりに何かがあったのかを問いただす。
そして結衣は二人に説明をする為に、二人の言葉を遮り話し始める。

結衣「まず京子! 今あかりの魔法を無効化している状態でちなつちゃんの思考を繋げる魔法って使えるのか!?」

京子「え? あかりの魔法だけを無効化するってこと……? た、多分できるけど」

結衣「多分じゃない! やって!」

京子「う、うん」

結衣「それじゃあちなつちゃん! みんなの意識を繋げて!」

ちなつ「え? で、でも……」

結衣「いいから早く!!」

ちなつ「わ、わかりました」

結衣の有無を言わせぬ迫力に二人は言われるがまま魔法を使う。
そして、3人の意識が繋がり、京子が見たあかりと結衣が見たあかりの記憶が3人に共有された。

ちなつ「……うそ、あかりちゃん……」

京子「あ、あかりのやつ…… あんな事考えてやがったのかよ……」

結衣「二人とも今のあかりの状態がわかった!? もうあかりは自分じゃ止まれないし、止まらない状態なんだよ!」

ちなつ「…………」

京子「……結衣でも止められなかったんだね」

結衣「ああ、悔しいけどその通りだよ! もう私一人でどうすることも出来ないんだよっ!」

俯く結衣の肩に京子が手を置き、結衣を慰めるように言う。

京子「……結衣、結衣の考え伝わったよ」

結衣「うん…… 物理攻撃はあかりに全部無効化される。多分魔力で気絶させようとしても同じ……」

京子「後、私達ができる事って言ったら……」

二人の視線はちなつに向けられた。

ちなつ「…………」

京子「ちなつちゃん……」

結衣「ちなつちゃん、もうちなつちゃんしか可能性はないんだよ……」

ちなつ「……それしかないみたいですね」

ちなつ「でも、私の力でも効果がない可能性は高いですよ? その、あかりちゃんが未来のあかりちゃんを上書きする力でしたっけ?」

京子「……チートすぎるよね」

結衣「それでも、ちなつちゃんに賭けるしかないんだ……」

ちなつは目を瞑り少し考えながら頷く。

ちなつ「わかりました」

ちなつ「でも、あかりちゃんの心を操ったりなんて絶対にやりませんからね? 私がやることはあかりちゃんに私たちの気持ちを全部伝えることだけ」

京子「うん、わかってるよ」

結衣「もとよりそのつもりさ」

ちなつ「分かりました…… それじゃあ」

ちなつはあかりの位置を正確に掴み、

京子「あかりの元に」

京子はちなつからあかりの居場所を受け取り、

結衣「行こう」

3人はその姿を闇と共に消し、再びあかりの元に舞い戻った。

まず3人の目に映ったのは、雲ひとつない青空。
いや、雲は自分たちの遥か下に存在していた。
そして青い空にひとつの色が存在していることに気付く。
その存在は黄金色の魔力光を溢れさせ、両手を広げて3人を迎えるように言う。

あかり「おかえり、みんな」

あかりは穏やかな笑顔で3人を迎える。

京子「よう、あかり。その様子じゃ、私たちを待ち構えていたって事だよな?」

あかり「そうだよ、結衣ちゃんが宇宙に飛び出しちゃったときはすっごく焦っちゃったけど、すぐこの未来が見えたからここでみんなを待ってたんだよ」

結衣「……随分と余裕だな? 私たち3人に簡単に勝てると思ってるのか?」

あかり「勝てる勝てないじゃないよ? あかりに未来が見えている限りみんなが何をしようともあかりはなかったことに出来るの。何をやろうとしても無駄なんだよ?」

ちなつ「あかりちゃん……」

あかり「ちなつちゃん、先に言っておくけど、あかりにちなつちゃんの魔法は効かないよ。あかりを説得しようとしているみたいだけど何の意味もないんだよ?」

京子「!」

あかり「さ、もう終わらせよう。みんなでやってもあかりにかないっこないってわかってもらわないとね」

あかり「みんなが諦めるまで、何度でも、何度でもあかりがみんなの相手をしてあげる」

あかりの全身から渦巻くように魔力が立ち昇り、
3人はそれと同時に散開し、各々魔力を発動させ、
最後の勝負が始まった。

中編3 終わり。

ようやく終わりが見えた。
最初はこんなに長くなるとは思わなかったし、だらだら続けちゃった感があってもの書くのって難しいって思いました。

次でラストです。
色々お付き合いいただいた方、乙コメありがとうございます。
また書いてきますのでよろしくお願いします。

後編


最初に飛び出したのは結衣。
京子とちなつの眼には結衣の姿は映っていなかった。
眼に映すことも出来ないほどの速攻であかりに一撃を加えようとした結衣だったが、あかりはその結衣の攻撃をいとも簡単に回避し、さらには回避をするついでに結衣に無数の魔力弾を打ち込んでいた。

結衣「くっ!?」

京子「ゆ――――」

結衣(京子! ちなつちゃん! あかりに魔法をっ!)

京子(!)

ちなつ(!!)

結衣の声が二人の脳裏に響く。
それと同時に二人はあかりに向かって魔法を発動させた。
京子はあかりの周囲を囲む触れたものを強制的に瞬間移動させる闇を。
ちなつはあかりの精神を己の精神世界に取り込む為に、あかりの魔力を掴もうとする。

だが、二人の魔法は、あかりを捉えることは出来なかった。
あかりの姿はいつの間にか二人の背後、その上空に現れ二人はあかりの魔力弾を打ち込まれその衝撃に空中でたたらを踏む。

京子「っぁあ!?」

ちなつ「あぅっ!?」

背後に無数の魔力弾を展開させたあかりは3人に向かって語りかけた。

あかり「ほら、かないっこないでしょ?」

あかり「あかりにはみんながなにをするか全部見えてるから、何をしようとしても意味も無いしあかりにはぜーったいにみんなの魔法は届かないんだよ」

結衣「そんなこと! やってみないとっ! わからないだろっ!」

またも一瞬であかりの前に現れ攻撃を仕掛ける結衣。

あかり「わかってるんだってば」

その一撃はあかりの手によって受け止められた。

京子「う、嘘だろ? ゆ、結衣のパンチを…… 受け止めた……?」

あかり「今はあかりの考える速さとからだを動かす速さを加速させてるの。だから結衣ちゃんがすごい速さで動いていてもあかりもそれと同じ速さまで加速させて動いているからこんな事もできるんだよ」

言いながらもあかりは結衣に0距離の魔力弾を打ち込み、結衣は衝撃で大きく吹き飛ばされた。

ちなつ「結衣先輩っ!?」

結衣「~~っ!!」

あかり「みんなの動きがわかるからこんな事もできるの」

あかりが3人に魔力弾を投げつけた。
簡単に回避できる速度の魔力弾。
3人とも真正面から自分に向かってくる魔力弾を回避したその瞬間。
それぞれの背中に鋭い衝撃が襲った。

その衝撃、それは3人の背後からあかりの魔力弾が襲いかかったのだ。
気を取られたと同時に3人の意識外から、意識できない死角からの衝撃が3人を襲い続ける。

あかり「どう? みんながあかりをどうすることも出来ないってわかったでしょ?」

回避すること、いや知覚する事も出来ずに魔力弾の嵐に晒されていた3人にあかりは語りかける。

あかり「結衣ちゃんが無理矢理あかりの魔法の弾を受けながらこうやってもあかりは避けることができるの」

あかりの魔力弾を喰らいながらあかりの背後を取って一撃を加えようとした結衣の手が空を切る。

あかり「京子ちゃんがあかりの魔法を消して、瞬間移動をしてきてあかりに触ろうとしているのも見えてるんだよ」

あかりの魔力弾を打ち消して、あかりの背後に瞬間移動をした京子は背後を取っていたはずのあかりにさらに背後を取られ魔力弾を打ち込まれる。

あかり「ちなつちゃんの魔法は二人と違って少し時間がかかるみたいだね。それだと絶対にあかりに魔法をかけることは出来ないよ」

ちなつの魔法にはあかりが言うように若干の溜めが必要だった。
それを指摘しながらあかりはちなつに魔力弾を投げつけ続ける。

そういった攻防、いやあかりによる一方的な攻撃は3人の体力と魔力を削りつづける。
3人の姿は疲弊と焦り、そしてあかりの魔力弾を受け続けボロボロとなっており。
それに対し、あかりは薄い笑みを浮かべながら魔力を全身から噴出させ、3人を見下ろしている。

あかりを見上げながら、あかりの行動に疑問を持った京子が問いかける。

京子「……あかり、最初と違ってその魔力弾で私たちを気絶させる事はしないんだな?」

あかり「うん。だってあかりはみんなに分かってもらいたいだけなんだからね」

京子「……随分と余裕だな?」

あかり「余裕? そんなのじゃないよ?」

結衣「そんなのじゃないって、どういうことだよ……」

あかり「だってもう未来は決まっているんだよ? あかりが未来を見ている限り、みんなは絶対にあかりには勝てないし、みんながあかりにできることなんて何もないんだから」

ちなつ「…………」

あかり「だから、みんなは諦めてあかりのお願いを聞いて」

京子「…………んな」

あかり「あかりにみんなの力を頂戴」

結衣「……ざけんな」

あかり「そうすればあかりがみんなを助けてあげれるんだから」

京子「ふっざけんなぁっ!!」

あかり「? どうしたの京子ちゃん?」

京子「なにが未来は決まってるだ!! 未来は決まってなんかないっ!!」

あかり「決まってるよ? だってあかりには見えるんだもん。未来は決まってるしみんなには変えられないんだよ?」

結衣「変えられないわけないだろ!! 私たちは未来を変えに来たんだ、あかりの未来を変えに来たんだ!!」

あかり「無理だよ? あかりの未来を変えることなんて出来ないよ。あかりの未来は……絶対にみんなにはあかりの未来は変えられないんだからね」

ちなつ「……あかりちゃん。もう止めて、それ以上言わないで……」

3人とも気持ちは同じだった。
あかりの未来を変える為にやってきた。
それなのに当のあかりは自分たちでは未来を変えられないと言う。
あかりの言う未来と、3人の考える未来は別物だが、3人はあかりに未来を変えることは出来ないと否定されたことによって気持ちが爆発した。

京子「おい!! あかりぃっ!!」

あかり「? なぁに? 京子ちゃん?」

京子「私たちはなぁっ!! お前の未来をブッ壊す為にここに来たんだっ!!」

あかり「?? だからそんなことは…………」

結衣「出来ないなんか言わせないぞ!! 私たちはお前の見てる未来を変えて見せるんだからな!!」

あかり「無理だって。みんながあかりに勝つ未来なんて……」

ちなつ「無理なんかじゃないよあかりちゃん……」

ちなつ「それを、証明して、あげる」

あかり「!?」

3人が各々の魔力を立ち昇らせる。
今まで魔力を使い、さらにはあかりの攻撃に晒され続け、既に全力の力を引き出すことはできないかと思われた3人の全身から爆発するように力があふれ出した。

それと共にあかりの瞳に映る未来がノイズと共に書き換わった。

3人の思考は刹那ともいえる一瞬で伝わる。

結衣(京子、ちなつちゃん、私があかりに突っ込んであかりの動きを封じる。だから二人は私ごとあかりを無効化する魔法を使ってほしい)

京子(わかったよ。こっちは任せて、あの馬鹿あかりに私たちの力見せてやろうぜ)

結衣(ん)

ちなつ(はい、私たちが力を合わせれば出来ないことなんて何もないんだってあかりちゃんに見せてあげましょう)

結衣(ああ)

二人の心が伝わる。
二人とも結衣を信頼し、あかりの行動を結衣が封じてくれると信じ切っていた。
先ほどまで結衣はあかりに動きを読まれあかりの動きを封じることなど出来なかったのにだ。

二人の信頼を裏切るわけにはいかない。
その想いが結衣の心に、肉体に、意思に力を与えた。

結衣(今のあかりに生半可な行動は通用しない……)

結衣(それなら、今の私の限界を超えて……)

結衣(持てる全ての力を今全部出し切ってやる……)

結衣(私を信じてくれる二人のためにも……)

結衣(なによりも、あかりのために……)

結衣(いくぞ、あかり)

結衣(いくよ、みんな)

そして、結衣の心から無駄な思考は掻き消え、同時に結衣の精神は研ぎ澄まされていく。
それと同時に周囲に溢れ留まっていた魔力が全て結衣に集まり、結衣に吸収された。
吸収された魔力は結衣の体内で結衣の使いやすい魔力に変質し、圧縮され、収縮しその時を待つ。
そして、その魔力が開放されるその時はやってきた。
極限まで圧縮された魔力を体内から爆発させ、目を見開いた結衣が動くと同時に周囲の空間が捻じ曲がった。

――二人とも、ありがとう。

結衣が動いたと同時に結衣を覆っていた魔法を無効化していた闇が全て吹き飛ぶ。

――あかり。

結衣はあかりに到達する刹那にも満たない時間であかりに対する想いを溢した。

――あかり、お前はすごいよ。

それはあかりに対するどこまでも湧き出る賞賛の気持ち。

――私一人じゃお前にかないっこない。

ここに来て結衣はあかりに敗北を認める。

――だけどな。

だが、

――私には二人がついていてくれる。

自分は負けても、私たちは負けない。

――私たちみんなでお前を止める。

負けてやらない。

――お前の未来を変えてやるんだ。

そのためにも絶対に負けられない。

――それでこれが終わったら。

結衣の手があかりに届く。

――あかり、お前も一緒に…………

あかりの全身に数え切れないほどの衝撃が叩き込まれた。

あかりの瞳に映る未来は全てあかりが勝利する未来だった。
京子と結衣の魔力は尽き、ちなつはあかりに手を出すことも叶わず停止する世界に取り残されその世界であかりは笑う、そんな未来。
全てを最良の選択で進んでいった先、あかりにとっての最良の未来。

だがその未来は変わってしまった。
変わった未来が映し出すは結衣の攻撃により、全身に攻撃を叩き込まれたところで終わる未来。
未来があかりが敗北する未来に書き換わってしまったのだ。

あかり(未来が変わった!?)

あかり(そんなわけない)

あかりは新たな未来を探すために眼に魔力を注ぎ込む。
そして無数の未来のひとつに結衣の攻撃を防ぐ未来が見えた。
だが、一発を防いだ後は無数の攻撃があかりに吸い込まれ同じように全身に攻撃が叩き込まれている。

あかり(……もっと、もっと先を……)

あかりの瞳は更なる未来を検索する。
結衣の攻撃を防ぎきる未来を探すが、あかりの瞳に映る未来は全て結衣の攻撃を防ぎきれずに全身に攻撃を叩き込まれ気を失ってしまう未来しか映らなかった。

あかり(うそ…… なんで……?)

思考を加速させ、未来予知の速度を加速させてもその未来は変わらない。
あかりの瞳に映る未来の結衣は光速を越えて時空を歪ませてあかりに攻撃を加えていた。
どんなにあかりが肉体速度を加速させてもその加速を上回る速度で動く結衣にあかりはどうすることも出来なかった。

あかりは動揺する。
絶対に負けるはずがないと思っていた。
未来が見え未来を操作できると言っても過言ではない今のあかりにとって自分が負けることなど微塵も思っていなかった。
勝利を確信していたから、その動揺はとてつもなく大きいものだった。

あかり(なんで? なんであかりが負けちゃうの?)

あかり(未来が見えてる限りあかりに負けは無いはずなのに、なんで?)

動揺の次にあかりの心に浮かぶのは自分に拳を叩き込むであろう結衣の姿。

あかり(結衣ちゃん……)

あかり(結衣ちゃんは本当にすごいなぁ……)

あかり(未来をこんなに簡単に変えてしまうんだもん……)

最初は驚愕と共に結衣に対する羨望の気持ちが湧き上がる。

あかり(あかりも結衣ちゃんみたいな力があったらみんなが苦しむことなんてなかったのに……)

あかり(……そう、こんなに簡単に未来を変えてしまえるほどの結衣ちゃんの力)

あかり(……そんな力があかりにあれば……)

しかしあかりの思考はすぐに黒く染まり始める。

あかり(……そうだよ)

あかり(……あかりが見た未来も変えてしまえるくらいの結衣ちゃんの力)

あかり(……そんな力があればもう誰にも負けないし、みんなを苦しめる未来も全部変えてしまうことなんて簡単なことだよ)

あかり(……そのためにも結衣ちゃんの力を奪わないといけない)

あかり(……京子ちゃんの力も、ちなつちゃんの力も!)

あかり(……そうすれば、そうすれば!)

あかり(……みんな助かる!! みんな生き返る!! みんーな元通り!!!!)

その思考とは対照的に、あかりの全身から眩い光が生み出されあかりの眼は黄金色に輝く。

あかり(負けられない、負けられないの!!)

あかり(だから、だからぁっ!!)

あかり(未来をっ!! あかりの進む未来を見せてぇぇぇっ!!)

あかりの想いが、結衣を京子をちなつを助けたいというただそれだけの純粋な想いがあかりに更なる力をわきあがらせた。

あかりの瞳の時計の針が分裂し数本に分かれた。
それと共にあかりの瞳が映し出す未来は分裂し、無数の未来があかりの瞳に、脳裏に映し出される。
最良の未来を探し出す。
結衣の攻撃が当たらない未来、偶然避けられる未来、何か外的要因で助かる未来、様々な未来を、選択をあかりは探し続けた。

そして、見つける。

あかり(あはっ、あははっ!!)

あかり(見えたっ!! 見えたよぉぉぉっ!!!!)

あかりの眼は再び未来を映し出した。

それと同時にあかりは自分の思考速度の加速、そして肉体の行動速度の加速を限界まで行う。


あかりと結衣の最後の攻防が始まる。

結衣があかりに攻撃を開始した時、あかりはその瞳を閉じていた。
無限ともいえる未来を見切ったあかりが出した結論は、結衣の姿を捉えることは不可能、見えもしない、反応も出来ない。
ならば見るのは未来、未来だけを見続ける。

結衣の手があかりの身体に触れる。
この攻撃はどの未来でも必ず当たる攻撃、故に未来を上書きしようとしても出来ない攻撃。
だから、あかりはその攻撃があたる場所に先に手を置き、衝撃を吸収させ受けるダメージを最小限まで落とす。

次の攻撃は偶然当たらない未来があった。
攻撃を受けたと同時に未来を上書きする。
その次の攻撃は必ず当たる攻撃、同じように防御しダメージを減らす。

あかりは常に未来を見続けてその時にあった行動を常に行っていく。
単純な行動、だがそれ以外の行動を何をしても無駄だった。
あかりはまるで詰め将棋のように一つ一つの行動を選択していく。
細い、恐ろしく細い糸の先に見えるたった一つだけの未来。
結衣の猛攻をギリギリのところで耐え切るその未来に向かって。

結衣の攻撃が始まって既にあかりの身体には千を越える攻撃が叩き込まれている。
あかりはその攻撃に耐え、いまだに意識を失わず結衣の攻撃を処理し続けていた。
閃光のような一瞬だったが、その終わりが見えた。

あかりにはその未来が見え、
結衣には己の限界がすぐ傍まで来ていることを悟る。

――後5発

――耐えればあかりの勝ち
――決めれなければ私の負け

結衣の攻撃があかりの腹部を貫いた。
だがあかりはその攻撃を耐え切る未来を上書きする。

結衣の手があかりの頭部に直撃する。
あかりはその攻撃に合わせて首を動かし衝撃を逃がしきる。

返す手であかりの首元に攻撃する結衣。
あかりは首と結衣の手の間に自分の腕を滑り込ませ防御する。

結衣があかりの胸に掌底を打ち込む。
その一撃はあかりに吸い込まれ、あかりがたまらず息を吐き出し致命的な隙を結衣の前に晒しだした。

あかりが晒しだした隙。
結衣は無防備になったあかりに最後の一撃を繰り出した、
結衣の拳があかりの頬を打ち抜くかと思われたその時、
あかりの身体がわずかにブれる。
それと共に結衣の拳は完全に空を切った。

全てはあかりが見た未来の通り。
あかりは耐え切った。
時間にすると万分の一秒といった一瞬にも満たない時間の結衣の猛攻。
千を超える結衣の猛攻をあかりは全てを予知し、その攻撃を最善の行動で防ぎ、かわし、上書きしきった。

そして、あかりは「結衣」の攻撃を耐え切った。
その姿はボロボロ、満身創痍という言葉ですら言い表せないくらいボロボロになっていたが、あかりは全てを出しつくした結衣を見て勝ち誇った顔を見せる。
そんな余裕なんてなかったが、結衣に負けを認めさせる為に強がりながらもそんな顔を作って結衣の顔を見た。
だが、あかりが見た結衣の顔は何かをやりきったような顔。
そして、聞いた。
聞こえるはずのない結衣の声と、京子の声を。

――任せた

――うん、任せろ

「結衣」の攻撃を耐え切ったあかりは、その先の行動に1手遅れることとなった。

あかりは結衣の攻撃を読みきる為に魔法を駆使していた。
時空間を歪めながら攻撃してくる結衣、時間停止すら跳ね除けて攻撃を仕掛けてくる結衣の攻撃を耐え切るには他のことを考えている余裕も、思考をまわす余裕もなかった。
そのためにおきた本当の隙。
あかりが結衣の攻撃を耐え切った際に見せた相手を誘い込む隙ではなく、本当の意味でのあかりの隙。

あかりが未来予知を行う前に、あかりの視界は全て闇で覆われる。

――もう逃げられないぞあかり。

――私の魔力で地球を覆い尽くした。

――地球ごとお前を私の結界に取り込んでやるよ。

結衣との戦いによって極限まで研ぎ澄まされていた感覚もあいまって、あかりは聞こえるはずもない京子の声をしっかりと知覚していた。
京子の声にあかりは再び未来を見る為に魔法を使う。

あかり(今度は京子ちゃんの魔法)

あかり(あかりの目の前…… ううん、地球全部が京子ちゃんの魔力で覆われてる)

あかり(京子ちゃんの魔力をさっきみたいに…… 駄目、今からじゃ間に合わない)

あかり(未来を上書きして…… 駄目、京子ちゃんの魔力に触れたらあかりの魔法が無効化されてしまう)

あかり(逃げるしかない、京子ちゃんの魔法が届かない場所まで)

あかり(その場所を…… 見つける……)

あかり(あかりのこの魔法でっ!)

あかりの瞳が激しく輝き、闇に覆われた未来にひとつだけの光が映し出される。

あかり(見えたぁっ!!)

あかり(未来が、見えたよぉぉっ!!)

あかりはその未来を見て、魔力を爆発させ飛翔し始めた。
あかりは黄金色の光となり京子の闇の空間を上へ上へ上っていく。
京子の闇の空間はまだ完全に地球を覆い尽くしてはいなかった。
だが既に地球のほぼ99%は京子の闇で覆われ、空間内の闇を触れただけでもあかりは完全に無効化され強制的に瞬間移動を喰らい京子に捕まるといった状況だった。

先ほど京子の魔力を無効化した時間加速を使おうとしてもあまりにも多い京子の闇にあかりはどうすることも出来なかった。
そして、あかりが見た未来で助かる道は一つ。
地球を飛び出し、京子の魔力範囲外に逃れる道唯一つだった。

あかりは光となり闇の空間を突き進む。
京子の闇が影響していない空間を進み、一点に向かい上昇し続ける。

京子(あかりのやつどこに……)

京子(!? 私の魔力で覆われていない一点を目指してる!?)

京子(間違いない! それだったら……)

京子があかりの進む先を封じようと魔力を展開するが、あかりはその全てを回避しながら突き進む。

京子(くっそぉ!! 捕まんない!!)

京子(あかりの動きも速すぎる!! このままだと逃げられてしまう!!)

京子(せっかく結衣が作ってくれたチャンスを……)

――もうちょっと頑張れよ

京子(……え?)

――私はお前のことを信じてるぞ

京子(結衣の声? だけど結衣は力を使い果たして気を失ったはず……)

――京子

京子(……何?)

――任せた

京子(!!)

京子(……うん、任せろ!!)

京子は自分の内から聞こえた声に力強く答えた。

あかりは一点に向かい上昇を続ける。
触れたらアウトの京子の魔力が今だ覆い尽くされていない道筋を選択し続け回避しながら上昇を続ける。
そしてたどり着く、地球全てが京子の魔力に覆い尽くされる寸前のわずかな穴。
その穴にあかりは光となり飛び込み、京子の魔力の外、
地球の外側に飛び出した。

あかり(あはっ!! はははははっっっ!!!!)

あかり(どう!? 逃げ切ったよ!!)

あかり(もうあかりを捕まえることなんて…………)

あかりは振り向きざまに闇に覆われてしまった地球を見る。
そして愕然とした。
京子の闇が、地球を包み込んでいる闇がさらに広がり宇宙を侵食し始めたからだ。

――へっ、地球ごとでも駄目なら

――この宇宙ごとお前を取り込んでやんよ!

呆然と京子の闇に侵食されていく宇宙を見るあかり。
だが、あかりは再び未来予知を行う。
ここまでされてもあかりは今だ勝利の道を見つけ出そうと足掻いた。
しかし、あかりは先ほど京子の力に呆然とし、わずかな隙を見せた。
その隙は致命的な隙。
「結衣」と「京子」の執念があかりの行動をさらに1手遅らせ、あかりの加速された思考、加速された肉体、そして未来予知を以ってしても対応できないほんのわずかな間を生み出すことに成功した。

――今だ!! ちなつちゃん!!

――はいっ!!

あかりの加速された思考は、それをはっきりとその眼に映し出す。
闇に覆われたはずの地球が、半分に割れるように線が現れる。
線はゆっくりと上下に分かれ、開かれていく。
中から現れたものは大きな瞳、水色の大きな瞳。
あかりはその瞳を驚愕と共に見た。
そして、その巨大な瞳が怪しく煌いたかと思うとあかりは全身を強張らせ動かなくなった。

ごらく部?


あかりは困惑していた。
先ほどまで地球を飛び出して真っ暗な宇宙空間にいたはず。
だけどここは……

あかり「……部室?」

ちなつ「ううん、私の世界だよ」

扉を開いてお茶を持ってきたちなつがあかりの問いに答えた。

あかり「!? ち、ちなつちゃん!?」

京子「本当に手間取らせやがって……」

結衣「やれやれだよ、まったく……」

あかり「京子ちゃん!? 結衣ちゃん!?」

テーブルの死角から起き上がってきた二人はちなつのお茶を受け取りため息をついた。
どうやら寝転がっていたようだ。

ちなつ「はい、あかりちゃん」

あかり「…………」

あかりの目の前のテーブルにお茶が置かれる。
それを見ながらあかりは震える声で呟いた。

あかり「……あかりはみんなに負けたの……?」

3人はあかりの言葉に同時に頷いた。

あかり「なんで…… なんで……」

京子「なんでって、当たり前だろーが!」

結衣「3対1なんだからあかりに勝ち目なんて最初からなかったんだよ」

あかり「そんな事ない…… あかりは絶対勝つはずだったのに……」

ちなつはあかりの隣に座りあかりの手を握る。

ちなつ「ねっ、もういいでしょ? あかりちゃんはもう一人で頑張らなくても大丈夫なんだよ?」

ちなつ「みんなが力を合わせれば出来ないことなんてないって分かったでしょ? だからあかりちゃんも一緒に私たちと……」

あかりはちなつの手を振り解き立ち上がって叫んだ。

あかり「駄目なのっ!! あかり一人でみんなを助けないといけないのっっ!!」

京子「おい、ほんっといい加減にしろよあかり……」

あかりはそのまま結衣の元まで駆け寄り結衣の肩を掴み懇願し始める。

あかり「ねぇっ!! 結衣ちゃん!! 早くあかりにみんなの力を移してよっ!!」

結衣「……おい、あかり」

あかり「そうすればさっ!! みーんな元通りなんだよっ!! ぜーんぶあかりが元に戻せるんだからぁっ!!」

結衣「あれだけ殴られても、まだ分からないのかよ……」

あかり「ねぇっ!! はやくっ!! おねがいっ!!」

あかりは狂気に囚われた顔で結衣に懇願し続ける。
結衣と京子はそんなあかりを見ながらどうしてこうなってしまったのかと顔を顰め、ちなつに向かって叫ぶ。

京子「ちなつちゃん! 何でみんなの心を共有させてないの!?」

結衣「そうだよ! みんなの気持ちが伝わればあかりだって!!」

ちなつ「…………」

この世界にやってきてから、意識を共有していた3人は共有状態を解除されそれぞれの思考を取り戻していた。
以前のこの世界では全員の意識が、記憶が共有されていたのに何故か今はそうではない。
それに疑問を浮かべた二人はちなつに問いただすが、ちなつは二人に向かって小さく言った。

ちなつ「……ちょっとだけ、あかりちゃんと二人っきりにさせてくださいね」

その言葉と同時に京子と結衣の姿は消え、あかりとちなつだけが残される。

あかり「!?」

ちなつ「あかりちゃん…… やっと二人っきりになれたね」

あかり「どこ!? 結衣ちゃんはどこに行っちゃったの!? ねぇっ、ちな…………」

ちなつの胸倉を掴む勢いで迫ったあかりはちなつによって言葉を封じられた。
精神を操作されたわけではなく、あかりは物理的にちなつによって言葉を封じられた。

ちなつがあかりの唇を自分の唇で塞ぐことによって。

あかり「……え?」

あかりの思考は一瞬固まるが、再びちなつを問いつめる為に言葉を紡ぐ。

あかり「な、なにをしてるのか分からないけど、結衣ちゃんはどこ……」ムグッ

再び唇が重ねられあかりの言葉は遮られた。
あかりには今何が起きているのか理解できなかった。
突然ちなつに口付けをされている。

あかり「ぷはっ!? な、なに!? なんなのちなつちゃん!?」

ちなつ「やっと見てくれた」

あかり「どういうことっ!?」

あかりの意識はちなつに向けられる。
ちなつはあかりを真っ赤な顔をして見続けていた。

ちなつ「あかりちゃん、私の話を聞いてほしいの」

あかり「なんなの!? あかりはお話なんかしなくてもいいの!! あかりは結衣……」ムグッ

三度ちなつに唇を奪われた。
その後もあかりは自分が結衣の居場所を聞きだそうとするたびにちなつに唇を奪われ言葉を封じられる。
幾度も繰り返し、ようやくあかりはちなつの話を聞き始めた。

ちなつ「無理矢理キスしちゃってごめんね。でも聞いてほしいの」

あかり「……なにを?」

ちなつ「私が見たあかりちゃんの未来、それと私たちの…… ううん、私の気持ち」

あかり「…………」

あかりは静かにちなつの話を聞く。
ちなつが話すあかりの未来、自分が未来でみんなの代わりに魔法少女の力を奪って最後には自殺をしてみんなを救う。
その話を聞いたあかりは喜びが湧き上がり笑顔になる。

ちなつ「どうして、どうして笑ってるのあかりちゃん……?」

あかり「だってみんなが助かるんでしょ!?」

ちなつ「あかりちゃんは死んじゃうんだよ……?」

あかり「あかりが死ぬだけでしょ? あかりが死んでみんなが助かるんだったらあかりは喜んで……」

再びあかりの唇が塞がれる。

ちなつ「……あかりちゃん、ひとつだけ言わせて」

あかり「……?」

ちなつ「あかりちゃんが死んだら私も死ぬから」

あかり「!? な、なん……」

ちなつの言葉にあかりは目を見開く。

ちなつ「あかりちゃんが私の記憶を奪おうとしても無理だよ? 私にはどんな魔法でもあかりちゃんのことを忘れることなんて出来ないし、あかりちゃんがどこに行ったとしてもあかりちゃんのことが分かるの」

ちなつ「だから、あかりちゃんがどこに逃げても私は追いかけ続ける。あかりちゃんが私の知らないところで死んじゃったら私も死ぬ」

あかり「な、なんで…… なんでそんな……」

ちなつの本気の目にあかりは動揺しながらちなつに問いかけた。
そしてちなつからの返答。

ちなつ「だって好きになっちゃったから」

あかり「………………え?」

ちなつ「愛しちゃったから」

あかり「………………なに?」

ちなつ「あかりちゃんのことを、この宇宙で誰よりも愛しちゃったから」

あかり「……え? ……え?」

告白を受けた。
あかりの頭が真っ白になる。

ちなつ「あかりちゃんの事は全部知ってる。生まれたときから、あかりちゃんが死ぬまでのことを全部見ちゃったし、体感した」

ちなつ「あかりちゃんが私の事をただの友達としてしか見ていないことも知っている」

ちなつ「だけど、あかりちゃんの心に触れて、誰よりも綺麗で繊細で純粋なその心に触れて私の中で小さな何かが芽生えた」

ちなつ「そしてあかりちゃんの未来を見て、どんなに辛くても、どんなに悲しくても、どんなに傷ついても、最後には自分の命をなげうってまで私を救ってくれたあかりちゃんを見て私の中で芽生えた気持ちは大きくなっていったわ」

ちなつ「決定的だったのはこの世界であかりちゃんの姿を見たとき」

ちなつ「私の目の前に生きているあかりちゃんがいてくれる。あかりちゃんの顔を見たその瞬間分かったの、私はあかりちゃんが好きなんだって。愛しちゃったんだって」

あかり「あ、愛してって…… だ、だって、ちなつちゃんは、結衣ちゃんのことが……」

ちなつ「結衣先輩は憧れ、私が愛してるのはあかりちゃんだけ」

あかり「そ、そんな事、急に言われたって……」

あかりが明らかにうろたえ始める。
ずっとみんなが助かることだけを考えていたあかりに突然の愛の告白。
あかりの思考は完全に停止し、どうすればいいのかも分からない状態に陥っていた。
それに畳み掛けるようにちなつは行動する。

ちなつ「……あとあかりちゃんに見てもらいたいものがあるの」

あかり「……?」

ちなつ「私の記憶をあかりちゃんに見てほしい。勝手にあかりちゃんの全てを見てしまった私の記憶を……」

あかり「ちなつちゃんの、記憶?」

ちなつ「あかりちゃんが目を背けたくなるような私も映っていると思う、黒く汚い心の私なんてあかりちゃんに見られたくない…… だけど、だけど、これはけじめ。けじめとしてあかりちゃんに見てもらわないといけないと思ってる」

あかり「…………」

ちなつはあかりに手を伸ばす。
あかりはその手を見て、一瞬戸惑うがゆっくりとちなつの手に自分の手を重ねる。
あかりを見つめるちなつの目を見ているとそうしないといけないと思ってしまったからだ。

そして触れ合った瞬間、あかりの意識とちなつの意識が完全に繋がった。
一瞬で流れ込むちなつの記憶。
小さな頃から中学に入りあかりと会うまでの記憶。
あかりの知らない記憶があかりの中に流れ込んでくる。

記憶は流れ込み続け、目を背けたくなるような記憶も流れ込んできた。
ちなつと結衣が裸で絡み合っている。
心の底から幸せを感じていたのもつかの間、結衣と同化しその肉体が結衣に喰われてしまう記憶が流れ込む。

その記憶も一瞬で通り過ぎ、今度はあかり自身の記憶を追体験していた。
ちなつが願った結果、あかりの全てを見てしまった記憶。
自分の記憶を客観的に見ているような不思議な感覚。
だがその記憶を見ている間にもちなつの心が流れ込んでくる。

そしてその後は今の世界に至るまでの記憶。
その記憶が流れ続ける間、ちなつはずっとあかりの事を想い続けていた。
この世界にたどり着きあかりの顔を見てその想いは爆発するが、あかりに対して後ろめたさ、あかりの心を勝手に覗いてしまったという後悔もあってすぐに想いを伝えれなかった。

そしてあかりは暴走し、再び自分の元から離れていくと知ってしまった。
もうちなつは足踏みをするのは止めようと思う。
あかりに想いを伝え、あかりと共に生きていこうと思う。
たとえこの記憶を見せて、自分の汚い部分を見られて嫌われることになろうとしてもあかりと一緒に生きていこうと決心した。

一瞬で想いは伝わり、あかりとちなつの手は握られたままちなつは話し始める。

ちなつ「これが、全部だよ」

あかり「…………」

ちなつ「私の気持ち、伝わったかな?」

あかり「……うん」

ちなつ「そっか、それならよかった」

顔を伏せながらちなつはあかりの言葉を待っていた。

あかり「あの…… ちなつちゃん……」

ちなつ「ん」

あかり「あかりにちなつちゃんの気持ちは伝わったよ…… だけど、あかりは…… ちなつちゃんのことをそんな…… 友達としか思えないよ……」

ちなつ「ん、そうだよね」

あかり「…………」

ちなつ「…………」

沈黙が訪れる。
あかりの中で渦巻いていた狂気は、ちなつの心を見て、ちなつが自分を愛しているという気持ちが伝わり小さくなっていた。

ちなつ「あかりちゃん、これからどうするの?」

あかり「どうするって……」

ちなつ「まだ私たちの力を奪おうって考えてる?」

あかり「…………」

あかりの狂気が小さくなっている今、あかりは冷静に自分の心と向き合うことが出来た。

あかり(どうしてあかりはみんなを傷つけてまであんな事をしようとしていたんだろう……)

あかり(みんなを助けたいっていう気持ちは本当の気持ち……)

あかり(だけど、みんなを騙したり、傷つけてまで……)

先ほどまでの狂気に囚われていたあかりではなく、元のあかりに近い精神まで一時的に戻っていた。
だが、あかりの心の天秤はどちらにも傾く状態だった。

何かの拍子に狂気の思考に再び囚われるか、それとも元のあかりのような優しく純粋な心に戻るか、その瀬戸際だった。

そしてその心の天秤をちなつが動かす。

ちなつ「あかりちゃん。おねがい、元のあかりちゃんに戻って。私は苦しんでるあかりちゃんを見たくないの」

ちなつ「みんなのことが大好きで、誰かを傷つけちゃったら泣いちゃって、誰よりも綺麗に笑っているあかりちゃんに戻ってほしいの」

あかり「…………」

ちなつ「もうそんなに苦しみながら笑う顔は見たくないの、だからおねがい……」

ちなつの涙が零れ落ち、あかりの手に降り注いだ。
最初の一滴があかりの手に落ちたと同時に、あかりの心の中に一滴の波紋が広がり、

あかりの心から狂気の思考は消え去り、元のあかりのような優しく純粋な心へと戻った。

あかり「うぅぅ…… うわぁぁぁぁぁぁ!!」

ちなつ「あかりちゃん……」

あかり「ご、ごめ…… ごめんねぇぇぇ…… なんであかり、あんなこと……」

あかり「みんなを騙して…… ひぐっ みんなにあんなひどいことをして…… えぐっ」

あかり「みんなを傷つけちゃった…… うぁぁぁぁぁぁん!!」

ちなつはあかりを抱きしめながら優しく背中を擦り続ける。
あかりは滝のような涙を流し続ける、助けたいと守りたいと思っていたみんなを傷つけてしまった、騙してしまった。

ちなつ「大丈夫、大丈夫だから」

あかり「ひっぐ…… みんなに…… ひどいことしちゃった……」

ちなつ「大丈夫、みんな許してくれるよ」

あかり「えっぐ…… みんなにあんなにいっぱい魔法を使って傷つけちゃった…… ひぐっ……」

ちなつ「私は気にしてないし、二人とも気にしないよ。大丈夫だから」

あかり「でも…… ひぐっ…… でもぉ…… えぐっ……」

ちなつ「それなら二人にも聞いてみようよ、ほら……」

ちなつが視線を動かすと、京子と結衣がちなつの視線の先に現れる。
二人とも困惑した顔でちなつを問い詰め始めた。

京子「!! ちなつちゃん!! 私たちを…… ってなにこれ……?」

結衣「!? これは…… どういうこと……?」

二人が現れたと同時にあかりも二人に視線を向ける。
涙に覆われた目では二人の姿を見ることもままならなかったがあかりはそのまま二人に向かい駆けだし飛びついた。

あかり「きょうこちゃん、ゆいちゃん、ごめん…… ごめんねえぇぇぇ……」

結衣「うわっと!?」

京子「おわっ!? これって、もしかして……」

ちなつ「みなさん、あかりちゃんを許してあげてください。それでさっきのことはなかったことにしましょう、それでいいですよね」

あかり「ひどいことしちゃってごめんなさい…… うそついちゃってごめんなさい…… ひっぐ…… えぐっ……」

結衣「ああ…… そういうことか……」

京子「いいとこは全部ちなつちゃんが持っていったってことね…… はぁ~~……」

二人を抱きしめて離れないあかりを見ながら京子と結衣は安堵のため息をついた。
あかりが落ち着くまで3人はあかりに寄り添いあかりを慰め続けていた。
やがてあかりの涙も止まり、3人に囲まれながらあかりは顔を上げる。

あかり「みんな…… ごめ……」

京子「はーい! もうそれはお終い! あかりのごめんはもう1万回は聞いた! 耳にタコが出来るほど聞いたからもうなーし!」

あかり「そ、そんな……」

結衣「そうだよ、それにさっきのはちょっとしたケンカだからね。私たちもあかりにひどいことしちゃったし………… って、わ、私あかりを本気で殴りまくっちゃったんだけど…… だ、大丈夫なのか……?」

あかり「え……?」

ちなつ「……!? あ、あかりちゃんの身体ボロボロですよ!? 全身骨折してますし、今宇宙空間にありますから放っておいたらとんでもないことに!!」

あかり「……へ?」

京子「ちょぉーーー!? 結衣!! 何やってんのさ!? いくらなんでも全身骨折させるなんて馬鹿じゃないの!?」

結衣「うっさい!! あの時は無我夢中で手加減してる余裕すらなかったんだよっ!!」

ちなつ「二人ともケンカするなら後でやってください!!!! すぐあかりちゃんの身体をどっちでもいいから回収して来てください!!!!」

あかり「……えと、えっと……」

結衣「わ、私が行くよ! 使ったことないけど回復魔法を使えばあかりの身体を治すことも……」

ちなつ「さっさと行ってください!! 絶対にあかりちゃんの身体を治してくださいよ!?」

結衣「わ、わかったよ」

京子「ち、ちなつちゃん、こええ……」

ちなつ「京子先輩も結衣先輩を手伝ってきてください!! 私はあかりちゃんの精神に肉体のフィードバックがないように調整してますから!!」

京子「はいーーーっ!!」

あかり「あう……」

外の世界で結衣があかりの身体を回収し、治療したあとあかりの身体は京子の結界に厳重に保管された。
そして、結衣と京子はちなつからの任務を終え、ちなつの世界に舞い戻ってきた。

京子「た、ただいま」

結衣「ただいま……」

あかり「お、おかえり。ごめんね、あかりのせいで……」

ちなつ「ありがとうございます。これであかりちゃんの精神を肉体に戻しても大丈夫そうですね」

京子「そだね……」

結衣「痛みとかはもうないと思うけど、戻ったときに一気に痛みが押し寄せるなんてことは……」

ちなつ「そうならないようにしますので大丈夫です」

京子「そっか……」

結衣「それなら安心だ……」

二人とも疲れた様子でため息をつく。
あかりはそんな二人を見ながら、言葉をかけようとするが、

京子「あー、あかり。もう本当に謝んなくていいよ」

あかり「で、でも……」

結衣「結果的に見たら、私達が寄ってたかってあかりをいじめた状態になっちゃったから、あかりは気にすることなんて何もないさ」

あかり「そ、それでも……」

ちなつ「そうだよ、それにさっき結衣先輩も言ったじゃない。さっきのはちょっとしたケンカなんだから。1対3のケンカであかりちゃんは私たちに無謀なケンカを仕掛けただけっていうこと」

あかり「うぅ……」

京子「そーそー、なんだかんだであかりとマジケンカするのなんて初めてだからちょっと新鮮だったかもなー」

結衣「それは言えてるかも、これだけ長い付き合いだけど本気でケンカしたのって私たち始めてじゃない?」

ちなつ「……私はあのときに結衣先輩と本気でケンカしましたけどね」

京子「あー! あのときか! あの子がちなつちゃんだったって全然気が付かなかったよ!」

結衣「記憶を共有して初めて気が付いたもんね。あの時は本当に気に入らない子だって思ったからなぁ……」

ちなつ「私も同じ気持ちでしたよ、本当に生意気なヤツだって思いましたもん」

あかりが3人のやり取りを見ていると、京子があかりの肩に手をかけ引っ張ってきた。

京子「ほら! あかりもそんな顔してないでこっちにこいよ!」

あかり「京子ちゃん……」

京子「覚えてるか? あの公園で私を虐めてたのってちなつちゃんだったんだぜ!」

結衣「よくよく考えたらあんまり変わってないね、ちなつちゃん」

ちなつ「えーー!? それどういう意味ですか、結衣先輩!!」

あかりは3人が笑いながら話す光景を見て思い出す。
自分はこの光景を求めていたんだと。
そして自分はこの光景を自らの手で遠ざけていただけだと理解する。

あかりの目から一筋の涙が零れ落ちた。
それと共に決意する。
今度は間違えない、この光景を手放すようなことは二度としないと。

――あかりはもう二度と

――二度とみんなと離れるようなことなんてしない

――これからはずっと一緒

――どんなことがあっても

――あかりはみんなの手を離さない

あかりの想いは何も言わずとも3人に伝わり、3人ともあかりに微笑みかけ手をさしのばす。
あかりは泣き笑いの表情で3人の手を取った。

あかりたちが和解し、通常空間に戻ってきたとき世界は混乱に陥っていた。

突如発生した大地震により某国の山は崩壊し、世界のいたるところで激しい暴風が巻き起こり、日本のある街では山の木々が全て消え去るという異常事態が起き、さらには夜が昼に変わってしまうといった天変地異が起きていたからだ。

その原因を作り出した4人は世界の混乱も気にすることもなく、自分たちがやるべきことをやっていた。

結衣「よし、これで大丈夫だ」

結衣『わ、私がもう一人いるなんて変な感じだな』

4人はこの世界の3人から魔力を受け取っていた。
魔力を受け取る手助けをしたのは結衣、魔女としての力を使いこの世界の3人から膨大な魔力と魔法少女の才能を受け取った。

この世界では既にQBを全て捕まえている。
魔法少女になることは無いが、膨大な魔力がその身に宿っていることで何が起きるか分からない為に、魔力と才能を回収しようと考えたのは京子だった。

京子「よし、そんじゃこの世界でもやることは終わったね」

京子『えーっと、私だよね? やることってさっきそっちの結衣に触れてもらっただけなんだけどそれでいいの?』

京子「そだよー、さっきのでこの世界の私たちの魔力は私達がちゃんと受け取ったからね」

ちなつ『えっと、私はなんであかりちゃんと手を繋いでるの?』

ちなつ「あかりちゃんが不安にならないように」

ちなつ『……ずーっと繋いでるよね?』

ちなつ「あかりちゃんが許してくれるならずーっと、永遠に繋いでたいわね」

ちなつ『…………』

あかり「ち、ちなつちゃん~~」

あたふたとしながら二人のちなつと会話するあかり。

この世界の3人は全ての事情を聞いていた。
そして、これから行うことも全て聞いて、別の世界の自分たちを見送りにきていた。

京子『そんでさ、今から別の世界に行くんだよね?』

京子「うん、一番最初の世界、そこで全部終わらせてくる」

京子『あかりも一緒に行っちゃうんだよね……?』

京子「うん、あかりも連れて行く」

京子『……この世界だとあかりはどうなっちゃうのさ』

京子「それは……」

答えようとした京子の前にあかりが出る。

あかり「京子ちゃん、あかりが説明するね」

京子『あかり……』

あかり「全部終わった後、あかりたちは人間に戻る方法を探そうと思ってるの」

あかり「最初の世界のみんなを生き返らせたあと、人間に戻るための方法を色々探してそれと一緒にあかりもそれぞれの世界に戻る為に3人に分かれる方法を探そうと思ってるんだ」

京子『わ、分かれるって、お前はプラナリアじゃないんだぞ……』

あかり「あはは」

京子『わ、笑い事じゃないだろ? お前が3人になるなんてそんな事一体どうやって……』

あかり「今はどうやってやるかっていうのは分からないかな…… でも絶対に見つけて見せるよ」

京子『む、無理だろ?』

あかり「無理なんかじゃないよ? だってそうしないと、全部の世界でみんなが助かったことにならないからね」

あかりの心の変化、
それはあかりの言うみんなの中に自分自身も含まれた事。

あかり「あかりは欲張りさんなんだ」

あかり「全部の世界でみんなが助かって幸せにならないと嫌なんだ」

あかり「だから、あかりはまた戻ってくるよ」

あかり「この世界のみんなとも一緒に生きて行きたいと思っているからね」

京子『……どれくらいかかるの?』

あかり「わからない……けど、待つ必要なんてないよ」

京子『え?』

あかり「みんなに寂しい思いなんてさせたくないからね」

京子がどういう意味かと問いただそうとするが、あかりは踵を返し別の世界の自分たちの元へ歩いていく。

京子『あかりっ!』

あかり「みんな…… 行って来ます」

既に準備ができていたのか、あかりの姿は黒い霧につつまれて見えなくなる。

京子『おいっ!!』

あまりにも自然に別れを告げあかりは旅立ってしまった。
急すぎて京子はただ手を伸ばしたまま固まりそれ以上は何もいえなかった。

結衣『京子……』

ちなつ『京子先輩……』

京子『……なんだよもう』

京子『そんなにあっちの私達が良いって言うのかよ…… あかりぃ……』

「そんなことないよ」

京子『え?』

その声に反射的に振り向く。
その先にいたのは。



「ただいま」



始まりの世界


ワルプルギスの夜が通り過ぎた街を離れるQBはピタリと止まり、今まで走ってきた道を振り返り視線を上空にあげた。

QB「……なんだこれは?」

何かを感じ取ったのか、QBは再び今まで駆けて来た道を逆走し始める。

QB「これは…… 魔力……?」

感じ取った場所に近づくにつれその気配は大きくなる。

QB「信じられない…… 一体なんなんだこの魔力は……」

目的地にたどり着いたQBの見上げる先に、空間が裂け中からおぞましいほど強大な魔力があふれ出してくる。

QB「空間が裂けた? その中から何かが出てくる……」

裂け目から溢れ出した強大な魔力は闇となり空中に漂う。
その闇は4つの塊を形作りさらに強大な魔力の胎動をQBは感じ取っていた。

QB「……ありえない」

QB「……こんな事がありえるはずがない」

呆然と上空を見上げ続けるQBの瞳に闇から溢れ出す黄金色の光が入り込んだ。
闇の中から現れたのは白い衣に身を包み、光の翼をはためかせ、空から舞い降りる少女。
それに続くように、白と黒の翼を持った二人の少女が舞い降りる。
最後に漆黒の翼を広げ、黒き少女が現れる。

QB「あれは…… あかり?」

QB「それに、結衣とちなつ……?」

黒き少女は空中に留まり、手を空に上げ何かをしているようだった。
QBはとてつもない魔力の波動を感じその瞳を向け観測を始める。
少女が一体何をしているのか、それを見極める為に観察をし続ける。

数分がたち、上空は真っ黒な闇で覆いつくされていたが、QBは今だ何が起きているのかも観測しきれないでいた。
そして、次の瞬間。

QB「!?」

上空にQBが現れた。
空を埋め尽くさんばかりの自分たちの個体。
宇宙にいる全ての個体だった。

QB「ば、馬鹿な……」

そして次の瞬間、全ての個体が消え去った。
呆然と上空を見続けるQB。
何が起きたのかも理解できず、ただただ見上げるQBの瞳に黒い少女が映る。

そしてその黒い少女は、
QBを見て、
笑った。

QB「!!!!」

その瞬間QBは駆け出していた。
なぜかは分からない、だけど本能的な何かがQBの足を動かさせた。

一歩、二歩、三……
QBが動けたのは二歩まで。
気が付けばQBの身体は黒い少女の手のひらに納まっていた。

QB「!?!?」

京子「おいっす、キュゥべえ~、始めまして~」

QB「き、京子なのかい?」

京子「おう! 京子ちゃんだぜ!」

QB「そ、その姿は一体……?」

京子「カクカクシカジカ」

QB「な、何を?」

京子「あれ? わかんない? おっかしーなー」

QBの身体を持ち、ケタケタと笑いながら京子はQBには理解できない返答をし続ける。

京子「ならばちゃんと説明してあげよう!」

QB「君は一体……」

京子「私は時空を超えた魔女っ娘キョウコリン!! 華麗にこの世界に登場!!」キュピーン

QB「わ、わけがわからないよ」

京子「ムカッ、訳が分からないってどーいうことよ。せっかく名乗りを上げてあげたのに訳が分からないってどーいうことー!?」

QB「き、君の言っている事は何一つ理解できない。君は一体なんなんだ? 君は確かに死んだはず、一体どうやって……」

京子「…………」イラッ

京子「……あー、京子ちゃんすっごくキャッチボールしたくなってきちゃったー」

QB「な、何を?」

京子「ゆーいー、キャッチボールやろーぜー」

結衣「何急に言ってるんだよ…… ボールなんてどこに……」

京子「ここにあるでしょ? ほら、これ」

QBを振り回しながら言う京子。
それを見てやれやれといった表情で頷く結衣。

結衣「あんまり無茶して壊すなよ? あかりにも言われてるだろ、そいつには用があるって」

京子「わかってるって~~」

QB「い、一体何をしようとしてるんだい?」

京子「ん? だからキャッチボール」

QB「キャ……」

京子「ボールはお前ね、んじゃ…… ほいっ!!」

QB「うわああああああああああああああ!?」

京子の手から放たれ