モバP「心穿つ銀の弾丸」 (37)

モバマスSSです。

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こんばんは。
お久しぶりです。

車内

P「お疲れ様です」

のあ「……お疲れ様」

P「いやぁ、のあさん久々の休みですね」

のあ「そうね……貴方はどうなのかしら?」

P「俺ですか?俺はほら、他の子も見てるので」

のあ「仕事。という訳ね」

P「まぁ、そういうことですね」

のあ「それならばわざわざ……」

P「アイドルを家まで送るのも仕事ですから」

のあ「……大事な商品だものね」

P「商品だなんて…。ほら、心配じゃないですか」

のあ「私でも?」

P「えぇ。年齢なんてほぼ変わらないですけどのあさんだって女性なんですから」

のあ「……そうね」

P「決して子供扱いしてる訳じゃありませんから」

のあ「そうみたいね。他の人からも貴方のことは聞いているから」

P「評判どうですかね?」

のあ「……」

P「そこで黙られると怖いんですけど…」

のあ「悪い訳がないわ。今の沈黙は私なりの悪ふざけ……たまには貴方の慌てる顔が見てみたいから」

P「心臓に悪いですね」

のあ「そうかしら?」

P「えぇ、とりあえず一安心です」ホッ

のあ「……」ジー

P「えっと…なにかついてますか?」

のあ「いえ、そう言う訳ではないわ…ただ、貴方は笑顔の方が似合うわね」

P「そんなこと言われたの初めてです」

のあ「そうなの?」

P「えぇ。アイドルでもなんでもないわけですし」

のあ「ならば、私が今後褒めてあげるわ。…ふふ。喜んでくれると嬉しいのだけれど?」

P「ありがとうございます。なんだかくすぐったいですね」

のあ「初めて。が私。というのは中々悪くない気分」

P「そうですか?」

のあ「えぇ」

P「笑顔と言えば」

のあ「なにかしら?」

P「のあさんはあんまり笑ってる顔見ないですね」

のあ「そう……?」

P「いや、俺だけかもしれませんけど」

のあ「モデルの仕事が多いからかもしれないわね」

P「まぁ、それはあるかもしれませんけど…」

のあ「求められたことをこなす。それが仕事だわ」

P「仰る通りで」

P「……」チラ

のあ「なにかしら」

P「あら、バレてましたか」

のあ「流石に気づくわ」

P「いや、今はモデルの仕事をしてないから素ののあさんが見れるのかと思って」

のあ「……P」

P「はい」

のあ「私は…貴方と過ごす時間がとても面白く思っているわ」

のあ「私は私でいられるの」

P「え?」

のあ「さっきの視線に対する答えよ。それ以上は……無粋ね」

P「…ありがとうございます」

のあ「こういう時は頷くだけでいいと思うわ」

P「かもしれませんね」

のあ「止まって貰っていいかしら」

P「どうかしましたか?」

のあ「P、貴方が迷惑でなければ少し歩いて帰路に着きたいのだけれど」

P「俺もですか?」

のあ「えぇ」

P「構いませんけど…」

のあ「決まりね。そこの駐車場にでも停めて歩きましょう」

P「了解しました」

のあ「あぁ、そういえば…夕飯は食べたのかしら」

P「俺ですか?いやまだですけど」

のあ「奇遇ね。私もまだよ…」

P「いや、一緒にいたから知ってますよ」

のあ「……そうね」

P「えぇ…そうですね」

のあ「……」

P「……えっ――」

のあ「貴方は…人間の三大欲求は何か知ってるかしら?」

P「えぇ、一応一般的な意味としてなら」

のあ「そう。私は…今、その欲求に抗おうとしているわ。川の流れに逆らう鮭のように…」チラ

P「ん?あぁ、お腹空いたんですね」

のあ「そうとも言うわ」

P「それとも眠いんですか?」

のあ「……空腹。という意味よ」

P「そうですか。それじゃ、そこらへんのお店にでも入りますか。俺も腹減ってましたし」

のあ「気が合うわね」

P「昼から何も食べてませんからね」

のあ「人は誰しも食欲の奴隷…ね」

P「まぁ、腹が減っては戦は出来ぬとも言いますしね」

のあ「付いてきなさい。その渇望を満たしてあげるわ」

P「お、行きつけがあるんですね。お願いします」

のあ「……任せなさい」

中華料理屋
のあ「ここよ」

P「お、中華ですね」

P(意外と庶民的っぽい感じだな。もっと凄いとこ想像してたけど)

のあ「私は、麻婆豆腐を食べるわ。貴方は?」

P「俺も同じで。すみませーん。麻婆豆腐二つで」

店員「あいよー」

P「のあさんは一人でこういう所来るんですか?」

のあ「零……とは言わないわね」

P「でも、のあさんが一人で食べてたら声とか掛けられませんか?」

のあ「私に声を掛けて…なにか起きるかしら?」

P「ほら、テレビ見てます!とかナンパとか…」

のあ「言われたことは……あるわ」

P「やっぱり」

P(そら、銀髪の綺麗な人が一人だったら目立つもんなぁ)

のあ「ただ…同じテーブルに座らせまではしなかったわ」

P「そうなんですね」

のあ「私的領域に、見知らぬ人を入れたくないの」

P「そうなんですね」

P(俺も気をつけよう…)

のあ「だから、P……。同じテーブルに貴方を座らせている意味…分かる?」

P「知り合いですもんね」

のあ「…30点ね。いつか追試でも受けて貰うわ」

P「中々手厳しいですね」

P(あと70点はどこにあるんだろうか…)

店員「お待たせしましたー。ごゆっくりどうぞー」

のあ「来たわね。渇望を満たす逃れられぬ原罪が」

P「美味しそうですねぇ」

P(なんだか、たまに蘭子みたいな表現を使うよなぁ。なんとなく分かるからいいけど)

のあ「いただきます」

P「いただきます」

のあ「……」
P「どうかしましたか?」

のあ「もう少し…味に…アクセントを」サッ

P「山椒ですか?」

のあ「えぇ……掛ける?」

P「俺は大丈夫です」

のあ「そう…こうしてチュー…」バサー

P「結構掛かりましたけど大丈夫ですか?」

のあ「えぇ、気にしないで…熱っ!」

P「……お水どうぞ」

のあ「刹那の快楽だったわ……貴方も味わいなさい」スッ

P「いや、思ったより辛かったからって俺に渡すなんて」

P(若干涙目だし)

のあ「私は…食事という行為を通じて…誰かと繋がる。そういうひと時を…過ごしたいと思っているわ」

P「まぁ、食べますって」

P「……結構辛いですね。ピリピリします」

のあ「刺激的…ね。水は必要かしら?」

P「大丈夫です。ご飯と食べれば丁度いい塩梅ですから」

のあ「そう……ならいいわ」

P「いやぁ、美味しかったですねー」

のあ「そうね。美味しかったわ」

P「さっ、お腹も膨れたことですし、帰りますか」

のあ「…そうね」

P「えーっとどっち方向でしたっけ?」

のあ「それは貴方が決めることよ」


P「いや、のあさんの家の方向によって決まりますよ」
のあ「……右ね」

P「了解しましたー」

遊歩道

P「そういえば、のあさんって眼鏡似合いますよね」

のあ「いきなり……どうしたのかしら?」

P「いや、ご飯食べてた時からなんとなく思ってたんですけど」

のあ「貴方の好み。ということかしら?」

P「似合ってるなぁって」

のあ「…そう。私も貴方はスーツ姿が似合ってると思うわ」

P「ずっとこの格好ですからね…」アハハ

のあ「プライベートは違うのかしら?」

P「そら、私服を着てますよ。休みにスーツ着てたら気が休まりませんよ」

のあ「そういうものなのね」

P「のあさんだってずっと衣装着てると気疲れしませんか?」

のあ「…そういうことね」

P「そういうことです」

のあ「いつか、貴方の私服姿が見れることを…期待しておくわ」

P「そんな面白い恰好してませんよ」

のあ「…奇抜な恰好は社会から浮いてしまうものね」

P「そうですね」

のあ「尤も仮にそうだとしても…私は気にしないけれど」

P「え?」

のあ「今更、そんな些細なことを気にする間柄…でもないわ」

P「そうですね」

のあ「貴方が覚えているか…定かではないけれど」

のあ「私の空白は…貴方が埋める。貴方に足りない力は…私が授ける。持ちつ持たれつの関係のはず」

P「そうですね。足りない所は互いに埋める。そんな感じのこと言いましたね」

のあ「えぇ。だから…例え貴方の私服のセンスが足りなければ…私がなんとかするわ」

P「あぁ、そういうことですか。大丈夫です。きっと…はい」

のあ「そう……ならいいわ」

P(なんだろう、遊ばれてる気がする)

のあ「綺麗な月ね」

P「あ、そうですね。お月見が出来そうです」

のあ「月見酒は…お洒落ね」

P「事務所でもそういうのが好きな人がいそうですしね」

のあ「そうね。何人か思い浮かぶわ」

P「あと、言いながら思い出しましたけどハロウィンもすぐですね」

のあ「そうね。お菓子でもくれるのかしら?」

P「飴くらいなら持ってますけど食べますか?」

のあ「今は……大丈夫」

のあ「ハロウィン…死者を弔うのにお祝いムードなのは…どうなのかしら」

P「どうせなら楽しくという感じなですかね。全ての聖人の記念日ですし」

のあ「……物知りね」

P「たまたまですよ」

のあ「もし…ハロウィンにライブを行えば…死者の魂にも歌声が届くということね」

P「伝えたい相手がいたりするんですか?」

のあ「特にいる訳ではないわ…ただ、私と貴方の作り出す偶像を披露するには観客が多いに越したことはないから」

P「まぁ、観客が多い方がいいですね」

のあ「……そうね」

のあ「しかし……たまにこうして、貴方と歩くのも悪くないわ」

P「そう言えば久しくこういうことはしてませんもんね」

のあ「えぇ…そうね」

P「満月の晩に月からお迎えが来るとかありませんか?」

のあ「私は…輝夜姫ではないわ」

P「でも、なんとなく幻想的な雰囲気が合いますよね」

のあ「麻婆豆腐で噎せる姫とは…また随分と滑稽ね」

P「それはまた、随分と庶民的なお姫様ですね」

のあ「えぇ。間違いないわ」

のあ「……それに、私は月のお姫様と言うより兎よ」

P「あぁ、兎でしたね、懐かしい話です」

のあ「……そうね」

P「中々刺激的な兎だったことを覚えています」

のあ「あれは…貴方の好みかしら?」

P「いえ、先方からの要望でしたよ」

のあ「そう。貴方個人的には何か思う所があったのかしら?」

P「まぁ、少しは」

のあ「そう。ただ、衣装は私にとってはただの外装。社会における高峯のあという偶像を具体化するもの」

のあ「私の本質ではない、わ」

P「なるほど」

のあ「ただ、少しでも貴方が気に入ってくれたのであれば…ただの外装もまた別の意味を持つわ」

P「別の意味?」

のあ「えぇ…気になる?」

P「そりゃそこまで言われたら」

のあ「……いずれ話す時が来るわ。その時まで、待っていて」

P「分かりました」

のあ「実際に、月に兎はいるのかしら?」

P「ウサミン星には菜々さんがいるみたいですけど」

のあ「それとなんの関係が…?」

P「いえ、なんでもありません」

のあ「そう……ならいいけれど」

のあ「兎と言えば…」

P「はい?」

のあ「古来から…神話に出てるわね」

P「因幡の白兎とかですよね」

のあ「最後に自らの行いをバラしてしまうあれ、ね」

P「そうですね」

P「因幡の白兎の話からすると再生の象徴とかって言われてみたいですね」

のあ「再生の……」

P「えぇ、そうみたいですよ。詳しくは知りませんけど」

のあ「あとは…兎と猿と狐の物語もあったわね」

P「あぁ、兎は自分に特技がないから自ら火の中に飛び込んだって話でしたっけ」

のあ「……物知りね」

P「たまたまですけどね。その姿が月に映ってるみたいですよ」

のあ「餅つきを…している訳じゃないのね」

P「そこらへんは何とも言えませんけどね」

のあ「そんな兎を身に纏って…私はファンを魅了するの。ユニークな話…ね」クスクス

P「案外変な話でもないんですけどね」

のあ「…どういう意味かしら?」

P「白兎は特定の人との縁を取り持つものなんですよね」

のあ「……」

P「のあさんにとってはファンはきっと特別な存在ですから」

のあ「…そうね。そういう思いもあってあのような恰好を…指定したのかしら」

P「もしかしたら、俺がこじつけてるだけかもしれませんけどね」

のあ「…何かの行いに意味を持たせる。そう言った行いは素晴らしい…」

P「そう言って頂けるとなによりです。ただの世間話ですけど」

のあ「畏まった話のみが重要という訳ではない、わ」

P「そういうものですかね」

のあ「えぇ、そうね」

のあ「……P」

P「どうかしましたか?」

のあ「白兎の話だけれど…貴方は特別な人との縁を…結ぶ。そう言ったわね」

P「言いましたね」

のあ「確かに…高峯のあという偶像を見てくれるファンと言う存在は稀有…なもので、特別な存在であるのは間違いないわ」

のあ「ただ…貴方という存在はより特別なのよ?P」

P「えっ?」

のあ「私がいて、貴方がいて。二人がいてこそようやく高峯のあは存在するの」

のあ「どちらかが欠けても成り立たないわ」

のあ「私が…私じゃなくても。貴方が…貴方じゃなかったとしても」

P「確かにそれはそうかもしれませんね」

のあ「なら、私が兎をやったことに意味はあったわ」フフ

P「そうですか」

のあ「貴方が気づいているか知らないけど…私は貴方に嫉妬しているわ」

P「そうなんですか?」

のあ「えぇ、正確には貴方のその才能に…という所かしら」

P「才能…。自覚はしていませんが、どこか思う所があるんですか?」

のあ「それは…私の口からは言わない」

P「それは残念です」

のあ「ただ、私は貴方に惚れたわ」

P「随分と情熱的な言葉ですね」

のあ「…どう受け取るかは任せるわ貴方に」

のあ「言葉通りでも……それ以外でも」

P「月の兎が良く見えますね」

のあ「えぇ…望月ね」

P「望月だけに兎が餅を搗いてる様子が見えますね」

のあ「ダジャレね」

P「えぇ、誰かに影響された気がします」

のあ「…そう。仲良いものね」

P「それなりに。ですけどね」

のあ「遊ぶものは神。神のみが遊ぶことの出来る…」

P「どうしましたか?」

のあ「どこかで聞いたフレーズを思い出した…だけ。深い…意味はないわ」

P「そうですか。なんだか不思議なセリフですね」

のあ「そう…?私には…余り響かないわね」

P「もしかしたら、月の兎は神様かもしれませんね?」

のあ「餅つきをしているから…かしら?」

P「そうですそうです」

のあ「なら、私達も…今度のお正月にでも餅つきでもどうかしら…?」

P「神様になりたいんですか?」

のあ「貴方が望むなら」

P「いえ、俺はきっとどこまで行っても凡人なんで遠慮しておきます」

のあ「…そう。それもまた選択肢の一つね」

P「お、そろそろ着きそうですね」

のあ「えぇ…悪かったわ。巻き込んで」

P「いえいえ。良い運動になりましたよ」

のあ「それは良かったわ」

P「次は山椒掛け過ぎないようにしてくださいね」

のあ「…キャップを力強く絞めておく努力はするわ」

P「えぇ。そうしてください」ハハ

のあ「……」ジー

P「どうかしましたか?」

のあ「あの月までの距離と…私が貴方と共に歩み上り詰めるシンデレラへの道のり…どちらが遠いのかしら」

P「きっと月までの方が遠いですよ」

のあ「そうかもしれないわね。ただ、私という物語はシンデレラになったとしても…終わらない」

のあ「玉座について満足する、肩書に甘んじるのは性に合わないわ」

P「カッコいいですね」

のあ「そうかしら?」

P「えぇ、とっても」

のあ「……」スッ

P「……?」

のあ「満月の晩。男は狼になるというけれど貴方はどうなのかしら?」

P「狼…?」

のあ「私のこの銃から放たれる銀の弾丸で…貴方の心を、打ちぬける?」

P「実験してみますか?」

のあ「…そうね」

のあ「月を見て…」

P「はい?」

P(しかし、本当に綺麗に兎が見えるな――)

スッ

P「え?」

P(なにを…?)

P「真っ暗なんですけど」

のあ「貴方の目には月の兎が宿っているかしら?」

P「まぁ、残像という意味では」

のあ「そのまま…神様を瞳の中に閉じ込めておいて…」

P「えっ――」

のあ「…ぷは」

P「え、あ、ちょ、なにを」

のあ「白兎は叶わぬ縁を結ぶもの…貴方の瞳に閉じ込めれば…縁が結ばれる…」

P「神様を独り占めですか」

のあ「…そうとも言うわ」

トン

のあ「私の…弾丸…どうだったかしら?」

P「ちょっとまだ、なんとも…」

P(まだ、ドキドキしてるし)

のあ「…そう。じゃあ、また次の機会にでも。次の弾丸は……貴方の心を奪うわ」フフッ

終わりです。
読んで下さった方ありがとうございます。

『遊ぶものは…』
は白川静氏の『文字逍遥』遊字論より引用しております。

・遊ぶものは神である。神のみが、遊ぶことができた。
 
 遊は絶対の自由と、ゆたかな創造の世界である。

それは神の世界に外ならない。

この神の世界にかかわるとき、人もともに遊ぶことができた。

冒頭はこんな感じになります。

詳しく解説されているサイトもありますので詳しい内容はそちらをご覧下さい。

失礼いたしました。

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