或る日のツバサと穂乃果 (73)






穂乃果「ぐー…」zzz



~♪



穂乃果「…ん…んぅ、でんわ…?」モゾ…モゾ…



穂乃果「でんわ…でんわ…」ゴソ…ゴソ…



穂乃果「…あ、メールだった……」ムニャ…



『おはよう、穂乃果さん』



穂乃果「あ、ツバサしゃんだ…」ゴシゴシ…



『時計を見て』



穂乃果「とけい…?」チラ…


穂乃果「…」ボー


穂乃果「!!」カッ


穂乃果「うわあああもうこんな時間っ!?生徒会遅れちゃうよぉ!?」ドタドタ



『良い目覚ましになったかしら♪』

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穂乃果「急げ急げーっ」アセアセ

雪穂「もーお姉ちゃん朝からうっさい」

穂乃果「起こしてくれてもいいじゃん雪穂ぉっ」

雪穂「知らないよ…」

穂乃果「ごめんお母さん朝ごはんいらないから!」

穂乃果母「とっくに下げてるわよ」

穂乃果「それはそれでひどいよぉ!」ドタドタ

穂乃果母「朝から騒がしい子ねまったく」

雪穂「ほんとに高3なのかな…?」

穂乃果「いってきまーすっ」ダッ

穂乃果母「待ちなさい穂乃果」グイッ

穂乃果「ぐえっ…もう、なにすんのさ!」

穂乃果母「これ、持っていきなさい」

穂乃果「なにこれ…?」ガサガサ

穂乃果「あ、パンだ!お母さんわかってるー!」

穂乃果母「お礼なら綺羅さんに言いなさい」

穂乃果「え、きらって…ツバサさん?」

穂乃果母「さっき来て渡してくれたのよ、『きっと必要になるから』って」

雪穂「ビックリしたんだから、A-RISEが家に来るなんてさ」


穂乃果「…」

雪穂「現役アイドルにお使いさせるなんて、お姉ちゃんもよくやるよねー」

穂乃果母「恥ずかしいからあんまり人様に迷惑を…って穂乃果?」



穂乃果「…そっか、ツバサさん」




穂乃果「…えへへっ」ギュ…



>穂乃果、まだ寝てるのでしょうか?

>お邪魔してみる?



穂乃果「あっ、2人とももう来てる」

穂乃果「いってきまーす!」ダッ

穂乃果母「あ、こら穂乃果っ!」

雪穂「…にやけすぎ」

通学路




海未「まったく、弛んでますよ穂乃果」クドクド

ことり「あはは…間に合いそうだし、いいんじゃないかな?」

海未「そういう問題ではありません!」

海未「最高学年で現生徒会長なのですから、生徒の規範となるべき行動を常に…」クドクド

ことり「残念だけど全然聞いてないよ、穂乃果ちゃん」


穂乃果「いやー今日もパンが美味い!」モグモグ


海未「穂乃果、歩き食いなんてはしたないですよ!」

穂乃果「貰ったものだから早く味わいたくて」モグモグ

海未「理由になってません!」

ことり「貰ったって誰に?」

穂乃果「ツバサさんが朝持ってきてくれたの♪」

ことり「ええ、ツバサさんが!?」

穂乃果「しかもパン屋さんのパンだよ、朝から贅沢だよね♪」

海未「何故わざわざ持ってきてくれたのです?」

穂乃果「きっと必要になるからって言ってお母さんに渡したみたい」

ことり「それって穂乃果ちゃんのお寝坊を予知してたってことかな?」アハハ…

海未「だらしない所までお見通しとは…」ハァ…

穂乃果「き、今日はたまたまだよっ。昨日遅くまで電話してたから…」

ことり「ツバサさんでしょ?」

穂乃果「なんでわかったの!?」

海未「連絡先を交換してからというもの、頻繁にやりとりしているのを見かけますからね」

ことり「着信音もA-RISEの曲だしね、すぐわかるよ」クスッ


穂乃果「そうなんだ…だってツバサさんの話すの楽しいんだもんっ」

穂乃果「アイドルの事とか、練習のアドバイスもしてくれて…」

穂乃果「流行のファッションとか、昨日見たテレビの話とか…」

穂乃果「穂乃果の好きな話も知らない話もね、話しててすっごい盛り上がるんだ♪」

海未「はあ、もうわかりました…」

ことり「波長が合うってことかな?なんかそういうのっていいね」

穂乃果「もちろん2人と話すのもとっても楽しいよ!」ギュッ

ことり「きゃっ、穂乃果ちゃん!?」

海未「まったく…それで、お礼は言ったのですか?」


穂乃果「…穂乃果、まだ夢の中だったし」テヘッ

海未「あなたという人は…」ハァ…

穂乃果「も、もちろんメールは送ったよ!ほんとは会ってお礼言いたいけど…」

ことり「ツバサさん、忙しいもんね」

海未「プロデビューも大成功して多忙を極めてるのでしょう」

穂乃果「うん…前みたいに気軽に会えなくなっちゃったから」



海未「あの学院に入るのが気軽とは思えませんでしたが…」

ことり「そこはほら、穂乃果ちゃんだから」

穂乃果「もう一ヶ月もまともに顔見てないよー」シュン

ことり「穂乃果ちゃん落ち込んじゃったよ?」

海未「わ、私のせいですかっ」

穂乃果「はあ…あ、ジャムパンおいし」モグモグ


海未「…私たちにはどうすることもできませんよ」

ことり「こればっかりは仕方ないよね…」


海未「さあ、いつまでも食べてないで――ん?」

海未「穂乃果、リボンが…


穂乃果「あー!あれ見て!!」

海未「な、何事です!?」ビクッ

ことり「あれって、向こうに走ってるリムジンのこと…?」

穂乃果「A-RISEが乗ってるリムジンだ!前乗せてもらったことあるもん!」

海未「はぁ、流石はA-RISEですね…スケールが違います」


穂乃果「おーーーーい!!ツバサさぁーーーーん!!!」ブンブン


海未「って穂乃果!?恥ずかしいからやめてください!!」

ことり「一気にテンションMAXになったね」アハハ…

穂乃果「おぉーーーい!!……あぁ、行っちゃった」

海未「ここから聞こえるはずないでしょう」

穂乃果「だよね…」


ことり「仕方ないよ穂乃果ちゃん、それより…」チラッ

海未「周りの視線が痛いです…早く行きますよっ」グイッ

穂乃果「もーわかったってばー」ズルズル

~♪



穂乃果「…あ、ちょっと待ってっ」

海未「どうしました?」


穂乃果「メールが来てる。相手は…」



穂乃果「ツバサさん!?」




『リボンが緩んでるわ、身なりはきちんとね。生徒会長さん♪』




穂乃果「リボン?……あ、ほんとだ!ありがとうツバサさん!」キュッ




海未「この距離から見えてたのでしょうか…?」

ことり「すごいね、ツバサさんって」

午前中 休み時間



穂乃果「もー数学ってややこしすぎるよー」グデー

海未「そのセリフをもう何年聞いてることか」

ことり「3年生になってますます難しくなったね」

穂乃果「とかいって2人は余裕なんでしょー?」

海未「きちんと予習復習すればどうということはありませんよ」

ことり「いままで学んだ事の応用が利くからね」

穂乃果「それって穂乃果今までなに学んできたんだってこと?」ウゥ…

海未「先ほど先生に同じ事を言われてましたね」

穂乃果「もういいもん!穂乃果は他のことで頭使ってるんだから!」

海未「…生徒会は除外してくださいね」

穂乃果「なんでさ!?」

ことり「一応私たちも生徒会だし…」

海未「まあ新生アイドル部の活動は確かに大変でしたね」

ことり「すごいよね!いきなり大所帯になっちゃって♪」

海未「活動場所の確保、新入部員への指導、諸々の申請…先輩としてやることは山積みですね」

穂乃果「そうそう、μ’sの頃も色々大変だったなぁ…」シミジミ

穂乃果「でもっ、こっちはこっちでやりがいがあるよ!」


海未「ふふ…穂乃果の真価が問われる一年になりそうですね」

穂乃果「へ?どういう事?」

海未「忘れましたか?あなたの評価を」


海未「曰く…人を惹きつける魅力、引っ張っていくカリスマ――と」

ことり「英玲奈さんだよね」

海未「その通り。そしてそれは私たちも実感しているのですよ」

穂乃果「も、もーやだなぁ、そんなに褒めないでよ~」テヘヘ

海未「調子に乗りやすいのが玉に瑕ですが」

穂乃果「あぅ…」

ことり「あはは…でも、たまには花陽ちゃんにも任せないとね♪」

穂乃果「部室に新入部員が入ってきた瞬間『誰かたすけてぇ~』って言ってたもんね」

海未「ですが花陽も今や部長。皆をまとめ、上手く導いていってほしいものです」

穂乃果「固いよ海未ちゃん。花陽ちゃんならきっと大丈夫だって!」

ことり「穂乃果ちゃんはなにかアドバイスしないの?」

穂乃果「うーん、穂乃果人に教えるのって上手くないから…」

海未「感覚で生きてるようなものですしね」

穂乃果「そうそう、いきあたりばったり…って海未ちゃん!?」

ことり「ふふっ」

穂乃果「もー…そうだっ、ツバサさんに聞いてみよう!」スマホポチポチ

ことり「ツバサさんに?」

穂乃果「ツバサさんって話が上手くてわかりやすいんだ。きっと為になること教えてくれるよ!」

海未「知恵袋じゃないんですから…」

穂乃果「でも今は忙しいかなぁ……あ、来た!」



『そうね…とりあえずじっくり話し合えばいいんじゃないかしら?』



海未「…ふむ、もっともというか」

ことり「けっこう無難な回答だね…」

穂乃果「う~それがよくわかんないから聞いてるのにぃ」ポチポチ



『自分で考えなさい』

ことり「手厳しい…」

海未「妥協や甘えを許さないその姿勢…流石です!」

ことり「海未ちゃんの為になっちゃてるね…」アハハ…

穂乃果「むぅ…、ちょっとイジワルだよ」ポチポチ



『イジワルされて困り顔の穂乃果さん、私は好きよ』



穂乃果「――っ!?も、もうっ、ツバサさんってばぁ!///」




ことり「もしかして、イジワルしたかっただけ…?」

海未「…私の先ほどの言葉を返してほしいです」

昼休み 中庭



穂乃果(ツバサさんも今昼食かな?)ポチポチ モグモグ


海未「はしたないですよ、穂乃果」

穂乃果「ちょっとだけだから…」ポチポチ

海未「まったく…」


凛「穂乃果ちゃんどうしたのかにゃ?」

真姫「どうせまた綺羅ツバサとやりとりしてるんでしょ」

花陽「すごいなぁ穂乃果ちゃん。あのツバサさんと普通に交流するなんて」

ことり「かよちゃんも連絡先知ってるよね?」

花陽「そ、それは知ってるけど…恐れ多いよぉ」

真姫「そう?私は前に曲作りのことで連絡したけど」

花陽「そうなの!?」

真姫「良いアイデアが浮かばないときにちょっとね」

真姫「…あの人、私には無い発想するのよ。悔しいけど、良い刺激になるわ」クルクル

ことり「にこちゃんぼやいてたね。『真姫ちゃんがツバサの奏でる旋律にメロメロにこぉ…』って」クスクス

花陽「それってアキバライブの準備の時?」

真姫「だ、だれがメロメロよっ、意味わかんない!///」




穂乃果「…」ポチポチ モグモグ

凛「凛もこの前ラーメンのことでメールしたよ!」

花陽「ええ!?皆連絡取り合ってたのぉ!?」

真姫「というかラーメンのことってなによ…」

凛「えへへ、ほんとはかよちんに送ろうとしたんだけど間違えちゃって…カ行だから」

真姫「普通間違えないでしょ…」

ことり「凛ちゃんらしいね」クスッ

凛「でもねでもねっ、なんかすっごい盛り上がったの!美味しいラーメン屋とか、まさかのトッピングとか、夜中のラーメンは格別だよねーとかぁ…」

花陽「ラーメン好きなんて知らなかったなぁ」

真姫「というより話題の盛り上げ方を心得てるって感じね」

ことり「お話が上手いってことかな?」

凛「ラーメンだけに?なーんて…」





穂乃果「パンのほうがおいしいよーだっ!!」

凛「わっ、びっくりしたにゃ…」

穂乃果「…」ムスッ ポチポチ


花陽「穂乃果ちゃんどうしたの…?」

海未「…可愛い嫉妬、というやつですよ」クスッ…






『返事が遅れてごめんなさい、これから昼食よ。10秒チャージだけどね』


穂乃果(10秒チャージ?ああ、あのゼリーのことか)

穂乃果(そんなんじゃ元気出ないよ)ポチポチ


『あら、ならどうして私が忙しい合間を縫って連絡してるかわかる?』


穂乃果(…?)ポチポチ

『元気が涌いてくるからよ。穂乃果さんとやりとりしてるとね』



穂乃果(…)ポチ…



『ゼリーよりも栄養があって、心にずっと残るの。まだまだ頑張れそう♪」




穂乃果(…)





穂乃果「えへ、えへへ…///」モジモジ




凛「ほ、穂乃果ちゃん…?」

花陽「不機嫌かと思ったら急に笑い出した…」

真姫「ちょっと気持ち悪いわね…」

ことり「そっとしておいてあげてね、すごく嬉しそうだから」

海未「…これでは注意する気にもなれませんよ」


午後 授業中




>ここテストに出るぞー




穂乃果(ツバサさんってやっぱり優しいな♪)カリカリ


穂乃果(忙しいのにきちんと返事してくれて)カリカリ


穂乃果(穂乃果のことなんて全部お見通しって感じ)カリカリ…


穂乃果(えへへっ、ちょっと照れくさいかも)ゴシゴシ… カリ…

穂乃果(………それとも)カリ…



穂乃果(嬉しい言葉もちょっぴりイジワルな言葉も…)


穂乃果(皆と一緒、なのかな……)チクッ



穂乃果(………)



穂乃果(それって、なんか…)ウト…



穂乃果(なんか…)ウト…ウト…





穂乃果(ちょっと、やだなぁ……)zzz…






ヴー…ヴー…




『部室に行くのは顔を洗ってから、ね?』

放課後 屋上




穂乃果「」ズーン



真姫「なにあれ」

ことり「あはは…」

凛「穂乃果ちゃん、怒られてしょげてる犬みたい」

花陽「凛ちゃんそれはひどいよぉ!?」

海未「あながち間違いでもないのですがね」

ことり「ツバサさんにお見通しだったみたいなの」

真姫「なにを?授業中の居眠りとか?」

海未「そういうことです」

花陽「ツバサさんエスパーなのぉ!?」

真姫「穂乃果が単純だからでしょ」

凛「それ凛にもダメージいくにゃ…」

亜里沙「あの~…」

雪穂「こっちそろそろ練習始めるので、ご指導お願いします!」


穂乃果「あ、雪穂…」

雪穂「ってお姉ちゃんなに落ち込んでんのさ」

海未「察してあげてください」

雪穂「…はーん、さてはツバサさんにかっこ悪いところを知られて落ち込んでるって感じ?」

凛「すごいよ正解!」

亜里沙「ハラショー、さすがだね雪穂!」

雪穂「まあね、家でもたまにこんな感じになるの見かけるし」フフン


ことり「穂乃果ちゃん…」

真姫「つくづくお見通しなのね」

海未「まったく…」

花陽「で、でもそれって裏を返せば、ツバサさんの中では素敵な自分でありたいという自覚を持ってるわけで…」アセアセ

亜里沙「それはもしかして…イケナイ関係への第一歩!?」

雪穂「どこで覚えたの、その知識」


海未「その…関係、とやらはともかく、とても尊敬しているようですからね」

ことり「尊敬がやがて恋慕に変わりそして…やんやんっ、少女漫画みたい♪」

海未「バカなこと言ってないで練習始めますよ。ほら穂乃果っ」

穂乃果「はーい…」




~♪




穂乃果「ん…?」





『練習頑張ってね。ファイトだよっ!(゚▽^*)ノ⌒☆キラッ』

穂乃果「あっ…」

穂乃果「…」キョロキョロ




>頼みますよ、花陽

>だ、だれかたすけて~

>またそれ?まったくー

>あはは…

>かよちんなら大丈夫にゃー





穂乃果「…」


穂乃果「…そっか」






穂乃果「えへへっ、そっかぁ!」パァァッ

つまんね
こういうゴミは渋かついったーでやれ

花陽「そ、それじゃあ一年生の方は…」オドオド…

穂乃果「よぉーーーーっし!!!」ガバッ

花陽「ぴゃあ!?」

穂乃果「花陽ちゃんっ!!」

花陽「はいぃっ!」

穂乃果「今日は穂乃果と一緒にやろう!」

花陽「え、でも一年生を見ないと…」

穂乃果「大丈夫、穂乃果も一緒に見るよ!」

花陽「穂乃果ちゃん…?」

穂乃果「さっ、レッツゴー!」グイッ

花陽「ひ、引っ張らないでぇ~…」




真姫「自己解決?」

雪穂「いえいえ、あの表情は…」

海未「ふふ、そういうことでしょうね」

亜里沙「まさしく愛の啓示…おぉ、ハラショー!」

凛(絵里ちゃんよりハジけてるにゃ…)

雪穂「じゃあ私たちもこれで。亜里沙行くよ」

亜里沙「は~い♪」



ことり「私たちもはじめよっか」

海未「そうですね。穂乃果と花陽が居ない分、こちらはより密度の濃い練習にしましょう」ニッコリ

凛「ひえぇ…」

真姫「…まったく」クルクル

帰り道




花陽「じゃあ私はここで」

穂乃果「遅くまで付き合わせちゃってごめんね」

花陽「ううん、いいの。私も楽しかったよ!」

花陽「来週も色々話し合おうね。バイバイ」フリフリ



海未「今日はずいぶんと熱心でしたね」

ことり「皆が帰った後も教室でずっと何かしてたみたいだけど…」


穂乃果「花陽ちゃんとね、じっくり話し合ってみたんだ」

海未「それはもしやツバサさんの…」

穂乃果「うんっ。でもいざアドバイスだーって思っても何話せばいいのかわかんなくて…」タハハ

ことり「難しいよね、人に何かを教えるのって」

穂乃果「だからね、細かい事はひとまず抜きにして…」


穂乃果「花陽ちゃんと一緒に、振り返ってみたの」

穂乃果「μ’sとして活動してた頃のこと」

穂乃果「あんなことあったねーとか、あれは悔しかったなーとか…」

穂乃果「もしかしたら花陽ちゃんのためになるヒントが出てくるかもって思ったんだけど…」


海未「ただ昔話に花が咲いただけ、と?」

穂乃果「えへへ…結局そうなっちゃったかも」

海未「…温故知新、という言葉があります」

海未「そうやって答えを模索するのも、有りだと思いますよ」


穂乃果「おんこ…?ってどういうこと、海未ちゃん?」

海未「あなたは間違ってない、ということです」

穂乃果「そ、そっか。海未ちゃんが言うならきっとそうだよねっ、よーし!」

ことり「燃えてるね穂乃果ちゃん♪」

穂乃果「もちろんっ…あ、というか2人とも先に帰っててよかったのに」

海未「熱くなった穂乃果がどうなるか、私たちはイヤというほど知ってますから」クスッ

ことり「明日は休みだからって、学校にお泊りはダメだよ」フフッ

穂乃果「そんなに話し込まないよ、もーっ」


海未「ですが花陽にもいい刺激になったでしょう」

穂乃果「そうだといいなぁ」

海未「来年は部長である花陽が中心となって部を纏めるわけですから…」

ことり「伝えたいことは今のうちに、だね」

穂乃果「うんっ♪…ツバサさんに感謝しなきゃ」スマホポチポチ

ことり「…ふふっ」

穂乃果「どうしたのことりちゃん?」

ことり「ううん、ただね…」


ことり「穂乃果ちゃんにとって、ツバサさんは特別なんだなぁ…って思ったの」



穂乃果「え…?」

海未「私もそう思いますよ」



海未「いつも皆を引っ張り、時には振り回すこともある穂乃果が…」

海未「ツバサさんの一言一言に一喜一憂し、振り回され…」

海未「そして導かれる」



穂乃果「…」

海未「似たもの同士ですね」クスッ

ことり「お似合いってことだよね♪」

海未「そ、そういう意味ではありませんっ」

ことり「そういう意味ってどういう意味?」

海未「ですから、特別な、その…関係というか…」

ことり「特別な関係だって穂乃果ちゃん!海未ちゃんお墨付きだよ♪」

海未「か、からかわないでくださいっ、破廉恥です!///」





穂乃果「特別な関係…」



穂乃果「…」







穂乃果「…」チラッ




『新着メールはありません』

帰宅後



穂乃果「…」モグモグ

穂乃果「…」チラッ



『新着メールはありません』



雪穂「食事中はやめなよお姉ちゃん」

穂乃果「触ってないじゃんっ」





穂乃果父「…」コネコネ…

穂乃果「ふい~さっぱりしたぁ」ホカホカ

雪穂「お姉ちゃん長すぎ、次私が入るんだから」

穂乃果「危うく寝そうになっちゃって…」タハハ

雪穂「もー…」スタスタ…


穂乃果「…」チラッ



『新着メールはありません』



穂乃果「…アイス食べよ」





穂乃果父「…」ギュッギュッ…

>なんでやねんっ



雪穂「あははっ」


穂乃果「…」チラッ



『新着メールはありません』



穂乃果「…」スク…



スタスタ…



穂乃果「おかーさーん、なんか手伝うことあるー?」

穂乃果母「お店のほうはもういいわよー」

穂乃果「んー」



スタスタ…



穂乃果「お父さー…」

穂乃果父「」シッシッ

穂乃果「…だよね」

雪穂「どしたの、お姉ちゃん?」


穂乃果「……もう寝る」

雪穂「はやっ!?テレビもういいの?」

穂乃果「うん、おやすみー」スタスタ

雪穂「う、うんおやすみ…」





雪穂「…ビョーキだね、こりゃ」




穂乃果父「…」コネ…コネ…

穂乃果「ふう…」ボフッ


穂乃果「…」ボー



『新着メールはありません』



穂乃果「…」




穂乃果(もう一回…)ポチポチ 


穂乃果(でも忙しいんだよね…)ポチ…



穂乃果(迷惑に思われたらやだしな…)




穂乃果(……)ウト…




穂乃果(あいたい、な…)ウト…ウト…







穂乃果「つば…さ……しゃ……」スゥ…

~~~



仕事を終えた場所が近場で幸運ね。



ようやくメールに気付いた私は、考えるより先に体が動いていた


すぐに戻ると言い残し上着を引っ掴むと

目を丸くした2人を尻目に外へと駆け出す

ごめんなさいね、2人とも

メールを返せば済む問題だけど

それじゃ私の気が済まないみたい

辺りはすっかり暗くなってしまったけれど、穂むらはまだ開いていた


穂乃果さん居るわよね…

息を整え、戸を開ける



暖簾をくぐるとお団子を頬張っている穂乃果さんのお母様と目が合う

そこには驚きよりも、またやっちゃった、というお茶目な表情

ふふ、親子よね

私と気付いたお母様は朝のお礼を言ってきた

パンの差し入れのこと

…あれ、実はお詫びでもあるんだけどな

昨日遅くまで電話に付き合わせた、お詫び。



返事もそこそこに穂乃果さんのことを聞くと

もう寝る、と部屋に戻ったみたい。

眠るにはまだ浅い時間と思っていたけれど

きっと練習でお疲れなのね

それとも――




まあ、仕方ないわ。


うん、仕方ない…

諦めて帰ろうと思ったところに

奥から店主…穂乃果のお父様が出てきた。

むっつりとした表情から何を言われるかドキドキしていると

立てた親指を奥に向けて、二度三度揺らす


――上がっていけ、ということだろうか


寡黙なお父様の真意を汲みあぐねていると

その横でお母様が穂乃果さんの部屋の場所を教えてくれた。


ご迷惑では…と遠慮する余裕なんて無い


お礼を言いつつ奥へ上がらせてもらう

途中お父様の方をちらりと見ると

小さく頷き、そしてさらに小さく微笑んでくれた

二階を上がった突き当たり

そこが穂乃果さんの部屋だという


階段を登ろうとする矢先、居間にいる雪穂さんを見かけた

一言声を掛けてみると、テレビに向けていた視線を私の方に向け、

そして硬直した


目を白黒させ、口に銜えた煎餅が今にも落ちそうな程驚き…

あ、あわてて飲み込んだみたい

お邪魔してます、と言い残しさっさと二階に上がる

年頃の女の子ですもの、これでも配慮したつもり。

でもどうか気にしないで、雪穂さん

私も家では、けっこうだらしない方なのよ?


階段を上がりきると、階下から雪穂さんの声

振り返ると、何とも複雑な顔で一言


「お姉ちゃんを、よろしくお願いします」


――良い家族よね、本当に。

穂乃果さんの部屋の前に立った私は

別段緊張する事も無く

ノックを二度鳴らす

…妙ににじんだ手汗には、気付かないふり


………返事はない

もう眠ったのかしら…?


諦めきれない私は、少しだけ開いている戸から

中を覗き見る

――こんなこといけない

窓からの薄明かりに目が慣れたころ

ようやく穂乃果さんを見つけた

布団も被らず、ベッドの上に身を投げ出し

眠りに落ちている

――覗きなんて、最低の行為よ


無邪気な寝顔のすぐ横にある

手の中に納まったスマホを見つけた私は

――だめよ、だめよ…


理性に蓋をして、そっと戸を開けた…

傍らに座り、そっと身を乗り出し

彼女の寝顔をじぃっと眺めてみる

――ステキね

というのが正直な感想


そっと前髪を搔きあげると

普段の天真爛漫さはなりを潜め

年相応の女性らしい、色気が際立つ無防備な表情に

思わず息を呑む

うぅん…と身じろぎした後

再び小さい寝息を立てる穂乃果さん


どんな夢を見てるのかしら?

あなたの事はお見通しでも

流石にそこまではわからない


…そう、本当はね、わからないことだらけなのよ

…ねえ、穂乃果さん

私、不安なの

あなたももしかしたら感じてるかしら?



時が経てば経つほど

お互い気軽に会えなくなって

メールもろくにやりとり出来なくなって

いつしかぷっつりと

交流が途絶える…


そんな不安

大人になればそんなの

よくあることだと人は言うわ



でも私たちは特別

だって、スクールアイドルとしてあんなに熱い時間を共有したんですもの

特に、あなたとは…ね

だからいつまでも繋がっていられると

そう気楽に構えてたのかもしれない

いざ時計の針が進むと

環境はめまぐるしく変化する

残酷な時の流れが

私の想いを、ジワジワと食らっていくよう。


わかっていたつもりだったけれど

所詮私も、学生気分が抜けない子供だったのね

ふふ…まるで後味の悪い小説を追体験してる気分

…はたしてツバサと穂乃果は

片や画面の向こうのアイドルとして

片や老舗和菓子屋の跡取り娘として

多忙の日々を送ることになる

しだいに目の前のことで手一杯となり

徐々にお互いの存在など…



――やめましょう、その先は。



未来の事は誰にもわからないし

悲しい事も、あるかもしれない

でも

今はあなたを一目見られただけで

それだけで、十分よ

――じゃあね、穂乃果さん。



あらわになった額に口付けをする

いつか見た洋画の真似事

おやすみのキス…といったところかしら?

映画ではいやらしさなんて微塵も感じなかったのに


…少し鼓動が速まったみたい

起こさないようそっと立ち上がろうとすると

右腕に重みを感じる

寝ぼけた穂乃果さんが袖をぎゅっと握り締めていた



行かないで、ってこと?


ここにいて、ってこと…?



…なんて、流石に夢見すぎね。




それにしても困ったわ

無理に解くと起きてしまうかもしれないし…

あれこれと四苦八苦していると、控えめなノック音

入り口を見ると、雪穂さんが立っていた

どうやらけっこう時間が経っていたみたい

気付かなかったわ


私は左手で右手の袖を指さし、捕らわれの現状を示した

それを見た雪穂さんは何も言わず

大丈夫です、と言わんばかりの得意げな顔で親指を立てた後

そっと戸を閉じ去っていった

…あら、もしかして泊まっていけという流れ?

お気持ちはありがたいけれど、それはそれで困ったわ

もう戻らなきゃ、このあとは…



右ポケットにあるスマホが振動する

左手で悪戦苦闘しながらようやく取り出して確認すると

メールは英玲奈から

このあと予定していたはずのミーティングの内容と明日の予定が事務的に羅列され

最後の行には、また明日

次いであんじゅのメールには

ごゆっくり~♪と、一言だけ…



――おせっかいよね、まったく。



明日顔を合わすと思うと気が重いけれど

今はただ、感謝の気持ちでいっぱいだった

気を使ってくれた2人と、この優しい家族に…ね。

憂いが無くなった私はひとまず、

引き寄せた毛布をそっと穂乃果さんにかぶせる

手に添えてあるスマホを退けようとした時

誤ってボタンを押してしまった

写ったのは、メール作成画面


ロックを設定しないのはいかにも穂乃果さんらしいけど

アイドルなんだから、気をつけなきゃダメよ?


そっと電源を落とそうとして、目に入った画面には



『ツバサさん』



その一文だけが残されていた

何を書き込もうとしたかはわからない

返信の無い私への催促?

そんなこと忘れてて、別の話題?


…ただ一つわかることは


眠りに落ちる瞬間まで、私のことを考えてくれてたということ




――ずるいわ、穂乃果さん。

心の奥がぽうっと温まった私は

ありがとうの気持ちを、ほっぺに落とすことにした


ごめんなさい、我慢出来なかったの

毛布はいらないから、許してね?


そのままベッドに寄りかかる形で半身を委ねた

体勢的には寝やすいとは言いがたいけれど、

どっと押し寄せる日頃の疲れと

目の前に広がる穂乃果さんの寝顔を前にすると

そんな問題はどうでもよかった

襲い来る睡魔に屈するまで

じっと寝顔を眺める


心地よくて、でも気恥ずかしくて、少し切なくて…



――この気持ちに名前をつけるなら…


――友情?親愛?


――いえ、きっとそれは…




まとまらない思考の中で

ぐるぐると、想いが彷徨い続ける

まどろみに落ちてゆく直前


最後に頭に浮かんだのは


当たり前の疑問






――穂乃果さん、明日びっくりしちゃわないかしら…?

~~~








チュンチュン…




穂乃果「ぐー…」zzz




「さん……ほのかさん……」




穂乃果「…ん~……」zzz…




「おはよう……ほのかさん……」




穂乃果「う~……あといちじかん……」モゾ…




「めをあけて……」




穂乃果「んぅ……め…?」モゾモゾ…




「そう、ゆっくり……」




穂乃果「う~ん……」ショボショボ

穂乃果「……」ボー




「…」ジーッ




穂乃果「……?」ボー




「…」ジーッ




穂乃果「」ゴシゴシ

穂乃果「」ジー…




「…」ニコッ

穂乃果「あっ」


穂乃果「あぁ……あわわ……っ///」



「ふふっ」













ツバサ「良い目覚ましになったかしら♪」

おしまい

乙です!
最高だったよ


こういうの好きだよ

消えろカス

もんじゃかな?

ほのツバ書く奴は総じてクズ

面白かったよ乙

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