【リライト版】真・恋姫無双【凡将伝】 (1000)

前スレ 【本編完結】真・恋姫無双【凡将伝】おまけ - SSまとめ速報
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 時は二世紀末、漢王朝の時代。
 四世三公の名家たる袁家に代々仕えし武家である紀家に生まれた一人の男児。
 諱(いみな)を霊、真名を二郎というこの男は様々な出会いや経験を重ねていく中で、やがて世を席巻していく。
 しかし、彼には誰にも言えない一つの秘密があった。
 彼の頭の中には、異なる世界における未来で生きてきた前世の記憶が納められていたのだ――。
 これは、三国志っぽいけどなんか微妙に違和感のある世界で英雄豪傑(ただし美少女)に囲まれながら右往左往迷走奔走し、それでも前に進もうとする凡人のお話である。


※一旦完結した作品のリライトとなります
※なろうにても投下しております。こっちで書いて推敲してからなろうに投稿って感じです

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1445344769

 一陣の風が荒野を駆け抜ける。舞い上がる砂塵の色は黄色。蒼天に立ち向かい、立ち上るそれは見る間に霧散していく。突風一つでは蒼天は揺るぎもしない。輝く日輪がじり、と大地を照りつける。
 果てしなく広がる蒼天に注いでいた視線を黄色い大地に落とす。そこには雲霞のごとく集う軍勢がある。出撃の合図を待ちわびる姿は引き絞られた弓のように張りつめている。その軍勢が俺の号令を今か今かと待ちわびているのだ。なんとも場違いであるという思いが絶えない。
 ふう、とため息を漏らす。ここに至ってびびっている内心を漏らさぬように歯を食いしばる。俺の号令一つで膨大な人死にが出る。敵も、味方も。ここまで俺なりにベストを尽くしてきたはずで、それでも怖気づきそうな自分に――いや、怖気づいている自分を自覚する。だが、それでも退くわけにはいかない。背負ったものがあるのだから。

「七乃~、喉がかわいたのじゃ~。蜂蜜水を持ってたもれ~。よーく冷えたやつを、じゃぞ?」
「え~、今日はもうだめですー。夜に大変なことになっても知らないですよー?」
「うう、七乃はこっちに来てから意地悪なのじゃ~」

 声の主は親愛なる主君とその忠実なる家臣かつ俺の同僚のものである。くすり、と。

「美羽様、そろそろ後ろに下がってくださいな」
「退屈なのじゃよー。いい加減、天幕の中も飽きたのじゃー」
「知らないですよ、お怪我をされても」
「ん?そちと七乃が守ってくれるのであろ?」

 にこにこと、無邪気でまっすぐな視線が俺を貫く。

「それは勿論です。ですがまあ、ここいらは矢玉が届きかねんということで一つ。お下がりくださいな。
 つか、七乃よ。美羽様の守護はお前の仕事だろうが。ちゃんと後方に下がっていただけるよう口添えくらいしろよ」

 じろり、と睨むのだが無論そんなのどこ吹く風である。

「えー、知らないですよー。美羽様の退屈を晴らすのも私のお仕事ですしー」
「それはそれとして、だ。よりによって前線に出てくることもないだろうって話だろうよ」
「やだなー。美羽様の退屈が一番紛れそうなとこに来ただけなのにー。ひどいぞー」

 ぶうぶうと不満を漏らす七乃とそれに便乗する美羽様にがくり、と脱力する。うん、いい感じに力が抜けた、と自覚する。膝の震えも、ばくばくいってた鼓動も落ち着きをみせている。マイペースな二人に、苦笑する。それを自覚する。口が笑みの形に曲がったことを自覚する。
 姦しく囀る二人から注意を前方に向ける。

――空にそびえる黒鉄くろがねの城――汜水関――を見据える。その威容は変わらず。だが。

「ま、なんとかなる!」

 向かうは精強たる董卓軍。翻るにこちらは群雄割拠する反董卓連合。うん、逆に考えるんだ。味方にはチート武将がたくさんいるんだから、自分でなんとかしなくていい、と。曹操とか劉備とか孫権とか。夏候惇とか夏侯淵とか郭嘉とか典韋とか趙雲とか馬超とか陸遜とか他にも色々!

 まあ、俺はこれで今の立ち位置が気に入っているのさ。そう。

 ――袁家の武将。紀霊という、今を。

 死亡フラグ?知らんなあ――。

 さて、紀霊と呼ばれる自分。そして漢朝が天下を差配するという現実。つまりまあ、自分はいわゆる三国志と言われる時代にいるのだろうと認識する。そして、それは俺の未来が暗澹たるものになるということ。
 そこまで三国志に詳しい知識はないのだが、紀霊――俺が呼ばれる名前――という武将は三国志序盤から中盤あたりで張飛にずんばらりんと切り殺されていたはずだ。くそ!なんて時代だ!だが、戦わなきゃ、現実と!
 つか、マジでこの先生きのこるために尽力せんとお先真っ暗であるのだ。俺の仕える袁家というのは北方の名門で相当な勢力であるのだが、敵対したのがあの曹操である。分かり易く言うと戦国時代の織田家とやりあう羽目になるということである。つまり役柄は今川ってか!死亡フラグおかわりありがとうございますとでも言えばええんか!
 ――まあ、とりあえずまだ幼児の身ではあるがやれることはやっとかんとなあ。

「二郎様ー。お待ちくださいってば!」

 ち、かぎつけられたか。

「陳蘭、逃げやしねえよ!だから俺のことはほっといてくれよ!」
「もう、また勝手な!私は二郎様のお守り役なのですから!」

 ふんす、と鼻息も荒く俺の前に現れたのは陳蘭。本人が言うように俺のお守り役である。くそ、俺より数年の年長であるという体躯的な優越を駆使して悉く俺の前に立ちはだかるのだ。いや、お役目を真面目に果たしているというのは分かってるのだが。

「二郎様!今日と言う今日はもう、逃がしませんからね!」

 なお、二郎というのは俺の真名、と言う奴だ。何でも神聖なもので、勝手にその真名を呼んだら殺されても文句は言えないという物騒なものらしい。字あざなと諱いみなを足したようなものだろうと理解している。まあ、俺がその真名を二郎としたのにそこまで深い理由はない。前世――と言うかリーマンだったころの本名がそれであるから、だ。無論そんなことを言えるはずもなく、中華に伝わる神話の英雄的な二郎神君からあやかったということにしてある。
 ――よく考えると、日本人的には「スサノオ」とか「ヤマトタケル」を名乗ったみたいなもんかと悶えたこともあるのだが。周りで飛び交う真名がもっとキラキラしているのを知って吹っ切れた。なお、俺のとーちゃんの真名は一郎だからまあ、嫡子たる俺が二郎であること。なにもおかしなことはない。
 などと思いながら陳蘭から逃亡していたのだが、突如として足が大地から離れて空を蹴ることになる。

「こら、ぼうや。駄目でしょ、陳蘭を困らせたら」
「あ、ねーちゃん」

 ぶらーんと。襟首を掴まれてしまっては幼児である俺に何かできるはずもないし、この体勢で暴れてもどうにもならないから大人しくするが吉である。長いモノには巻かれるべきであるというのが俺の保身術である。
 俺を力づくで――傍目には微笑ましい光景なのだろうなあ――拘束するのは。

「あ、麹義様!その、二郎様は何もわるくありません!わたしが目を離しちゃっただけで・・・。なにもされてませんから!」

 ぷるぷると震えながら、涙目で俺を解放するように必死に訴える陳蘭である。うおう。込み上げる罪悪感。
 そして容易く俺を拘束してニヤニヤとしてるのは麹義のねーちゃん。俺が産まれる前に勃発した匈奴の大侵攻から漢朝を救った袁家の宿将、生きる伝説その人である。

「あら、二郎?おいたは、駄目よって言わなかったかしら?」

 にこにこ、とほほ笑むねーちゃんはすこぶるつきの美人さんである。だが、顔の半分くらいが火傷のケロイドに覆われており、その美醜のアンバランスさが奇妙な威圧感をかもしだすのだ――。

「書庫に籠るだけだし、悪さとか別にするつもりないし」

 その容貌とか肩書に恐れ入る俺ではない。何となれば、だ。とーちゃん――これまた対匈奴戦の英雄らしい――と古くからの知己であり、物心つく前から俺を可愛がってくれてたからなあ。かーちゃんだと思ってたよ。ガチで。一度かーちゃんと呼んだら実に微妙な顔をされてしまった。それ以来、ねーちゃんと呼んでいる。

「へえ?じゃあ別に陳蘭が一緒にいてもなにも不都合はないわよね?」

 ぐぬぬ。その通りなのだが。俺がしたいのは書物の紐を解くことではなくってだ。これからの行動指針なり、事業計画書の作成だったりするからできることならば人目を避けたかったのだよなあ。とも言えず。

「いや、陳蘭が追っかけてくるからその。ちょっと楽しくって」

 ここは無邪気な子供アピールである。

「へえ……?それはよかったわね、陳蘭。二郎は貴女と遊ぶのが楽しくってしょうがないらしいわよ?」

 くすくすと笑みをこぼす麹義のねーちゃんと頬を赤らめる陳蘭。なのだが。

「二郎も、陳蘭と離ればなれは、嫌よね?」

 にこにこと。

「そ。そりゃあ、勿論」
「だったらわきまえることね」

 ツン、と俺の鼻っ柱を弾くのだが。その動きを俺は感知できず、ただ衝撃のみを受ける。これが、匈奴とやりあった英雄のスペックか!

 そうして俺は決心した。というか理解した。英雄豪傑入り乱れる三国志で俺は雑魚でしかいないと。そこで俺がこの先生きのこるにはどうすればいいか、と。

 答えは簡単である。

「――三国志なんて、始めさせるものかよ」

 だから、これは俺の反逆の物語。英雄英傑がその真髄を発揮する場なぞくれてやらん。
 つまり、俺は抗うのだ。時代の、流れに。

「二郎さま!やっと見つけました!」

 えへへ、と笑う陳蘭にばきべき、と濁音が響く程度の拘束を受けながら俺はそんなことを思っていたのである。
 いや、痛い痛い痛い痛い。マジ痛いんですけど!この子すごい怪力なんですけど!

「じ、二郎様、ごめんなさい!」

 涙目な陳蘭をどうどう、と宥める。そう、陳蘭の怪力ベアハッグにて俺は意識を失う寸前までいったのである。或いは逝ってたかもしれんな、とも思う。うむ、力こそパワーということである。

「いいって。もとはと言えば陳蘭から逃げてた俺も悪いしな」

 そりゃあ、守り役がその守護すべき対象を見失ったら責任問題であろう。陳蘭が必死になるのもむべなるかな、である。ひらひら、と手を振り重ねて気にしないように言う。
 しかしまあ、肉体的なスペックはおいといて、少しは鍛えんといかんなあとか思うのである。幼女に膂力でぼろ負けとか――。いや、俺も幼児ではあるのだがね。責めるでなく、色々と納得してもらった。
 というのが半刻前のこと。せっせと書庫にて筆を握る俺に興味津々とばかりに尋ねてくる。

「で、二郎様、何を書かれているのですか?」

 今泣いたカラスがもう笑ったとばかりに明るく陳蘭が聞いてくる。まあ、書庫なんぞ幼女にはヒマなだけだろうからな。図書館みたいに絵本とかあるわけないし、読み聞かせイベントもないし。むしろよくも半刻も大人しくしていたと言うべきか。

「ふむ。事業計画書をちょっとな」
「ふぇ?」

 さて、三国志を始めさせないと内心誓った俺ではある。では、どうすればそれが果たされるというかという話である。色々と細かい話は置いといて、乱が起きるその理由と言うのはただ一つ。

「まずは食わせろ。孔子様もおっしゃってるしな。陳蘭もひもじいのは嫌だろ?」
「は、はい!おなかがすくのは、やです!」

 だからと言って食べる量を減らすなんてのはナンセンス。つまり俺が目指すのは食糧増産。そのための事業計画書をでっちあげようとしているのである。とは言え、俺の頭に農業の専門知識があるというかと言うとそうではない。せいぜいが教科書レベルの歴史、そしてそのキーワードくらい。

「草木灰、備中ぐわ、千歯こき・・・」
「ふぇ?」

 非常に心もとないが、それでも西暦200年には届いていないであろう現段階では相当先進的な知識であるはずだ。そしてそれは俺がたくらむ農業改革の一端でしかない。本丸は効率的な苗の間隔、水やり、収穫のタイミングなどのノウハウの共有化なのだから。
 とにもかくにも食糧増産、である。幸いにして俺が所属する袁家が根拠地とする華北の地は中華が誇る穀倉地帯。効果が割合的には多少であっても母数が莫大だからな。こうかはばつぐんだ!となるはずである。
 と、陳蘭相手に力説してみる。当然帰ってくる反応は疑問符であるのだが。

「ほう、中々に興味深いのう。じゃが、それだけの知識、どこで得た?」

 そのような問いも想定の範囲内。欺瞞工作バッチこいである。

「そりゃあれよ。神農って知ってるか?」
「ふむ、古代の神仙。確か食べられる草と毒を自ら口にして区別した方、じゃな」
「そうそう。その神農様のありがたーいお言葉を記した書物が紀家の書庫にあったのを見つけてね。農徳書って」
「ふむ?じゃが紀家の書庫は先日不審火で全滅したじゃろう」
「そうそう。だからまあ、覚えている内容だけでも忘れないうちに書きつけといて、どうせだから実践してみようかな、って」

 というアンダーカバー的な――。ん?陳蘭ってこんなにじじくさいしゃべりだったっけ?と思って陳蘭を見ると、ぷるぷると震えており。その視線の先にぎぎぎ、と首を向けると。

「ん?どうした?続きを聞かせんか。中々に面白いことを囀る」

 そこには、白髪を長く伸ばして三つ編みにまとめた、筋骨隆々の、老人がいた。

 え。

 だ、誰--?

 そんな俺の内心を読んだかのごとく、老人は呵呵大笑する。

「む、名乗りがまだじゃったか。儂の名は田豊。今後ともよろしくな、紀家の麒麟児よ」

 にかり、といい笑顔でそんなことをおっしゃりやがりましたよー!

 そして軽くパニックになりながら現状を確認する。よし、大丈夫。多分致命的なことは口走っていない。ここまではOK。しかしてこの面前にいて圧倒的な存在感を放つ老人について考えよう。正直逃げ出したい気分だけんども。
 田豊。さほど三国志に詳しくない俺でも予備知識として知っている名前であり、これまでの生活でも耳にしている。すなわち、だ。ねーちゃんが袁家の武の要であるとすれば目の前の田豊と名乗った老人こそが文の要。そして俺の知る知識に於いてはこの老人の献策を袁紹は受け入れず、その結果として袁家は曹操に敗北することになるのだ。
 つまり、袁家にとっては鬱フラグブレイカーの一人であることは間違いなく、いずれは接触しようとしていたVIPの一人。こんなシチュエーションでドキがムネムネしてしまったがこれは存外な幸運とも言える。これは奇貨とせねばならん。袁家没落を防ぐために!そして俺の安寧な老後のために!
 故に頭を切り替える。企画書作成途中でプレゼンに臨まねばならないことなぞ幾度もあった。準備万端なプレゼン、商談なんぞ甘えである。突発的なイベントから企画をねじこむことこそ営業の本領。本来であればとーちゃんのコネを頼って袁家に波及させようとしていた事象。例えここでとちってもリカバリは効く。そしてプレゼンテイターたる俺は幼児であるからしてプレゼン内容には下駄を履かせてくれるだろう。なればローリスクハイリターン。
 男は度胸。なんだってやってみるもんさと偉い人も言っている。レッツ ショータイム!である。

 神童と言い、麒麟児と言う。随分と麹義が可愛がり、自慢する紀家の嫡男。それがどれだけのものか、と知己を得るだけのはずであったはずなのだがな、と田豊は内心苦笑しながら紀霊の説く計画について吟味する。
 いくつかの農具と農法。田豊も聞いたことのないそれは神農が記したという書物にあったものという。袁家の軍師として名著には通じているという、自らの記憶にもないその書に首を傾げる。
が、始皇帝の焚書以降多くの書物は散逸し、紛失されている。かの太公望が記したという六韜すら名前しか伝わっていないのだ。まあ、そういうことなのだろうと田豊は頭を切り替える。重要なのはそこではない。
 突飛な知識なぞはまあ、若気の至り、或いは失われた知識を発掘したということで終わりである。だが、と思う。手柄に逸る若人から出されたとは思えないその骨子に田豊は違和感を覚える。
 若手の武官や官僚に多い、手柄を誇るその功名心――これはこれで組織の活性化に好ましいものである――とは一線を画している。いや、異質と言っていいだろう。

「まあ、実際その有効性というのは膨大な試験において検討せねばならないかと」

 農作物それぞれにおいて、水遣り、種植えの時期、間隔、それらは現在実際に農作業に当たる民の習慣、勘で為されている。それを膨大な組み合わせに於いて効率化を図る、と。それを為す、と。

「や、袁家の誇る官僚団。遊ばせておくことはないかと思うのですよね」

 しれっとそのようなことを嘯く。確かに、匈奴の脅威は近年では遠く。緊急の動員もない。名門袁家に仕える官僚はその有能さを内部の権力闘争に注いでいたのが近年の懸案事項ではあったのだ。

「なにせ、古代の書でありますから失敗もやむなきことかと。むしろ各事例の集計、分析。そしてそれを加味しての改良こそが大事かと」

 紀霊としては、PDCAサイクルにちょっと味付けをしただけのつもりではあったがそれは思いのほか大きなインパクトを田豊に与えた。

「なるほどな」

 紀霊の視線はあくまで遠くを見つめ、それでいてその歩みはいっそ物足りないくらいに堅実である。何より、若輩の身でありながら人を使うというその姿勢が頼もしいではないか。思いの外、袁家は次代の人材に恵まれているのかもしらん。そう思い田豊は紀霊の計画に一部修正を加え、実行に移す。

――即ち、紀家ではなく、袁家が紀霊の提案たる実験を実施するということ。そして、この決定がただでさえ隆盛な袁家の力を特盛にすることになるのである。

「ちぇすとおおおおおおおおおおおおおおお!」

 渾身の雄叫びと共に握りしめた木剣を丸太に叩きつける。腹の底から放ち、喉を枯らすそれはもはや絶叫といっていい。むしろ猿叫か。
 更に連撃を叩きこむ。全身の筋肉の悲鳴を無視して、打つ、打つ、打つ。無酸素運動の稼働限界を越え筋肉が悲鳴を上げても尚、打つ。打つのだ。

 ぜえ、ぜえと呼吸が困難になり、意識に靄がかかるまでに打ち尽くす。それが俺の毎日の鍛錬である。三国志、つまり戦乱を防ぐと内心誓ったとしてそれが果たされるかどうかは別問題。ならば鍛えておかねば、というのはごくごく自然な発想である。
 そして、実践というか、実戦において猛威を振るったあの流派を俺は選んだ。いや、この時代、まともな武術とか流派とかないからね?
 そしてあの流派――(みんな大好き)示現流についてはちょいと道場に通ったこともあるしな!
 まあ、幼児のうちから立木打ちとかのトレーニングをしとけばきっといっぱしの戦闘力を身に付けているはずである、とか思いながらもひたすらに打つのだ。打つのである。努力はきっと裏切らない。といいな。

「二郎様、お疲れ様です・・・」

 ぜえぜえ、と息を切らす俺に陳蘭が水を持ってきてくれる。うん、生き返る。ぷはー、って感じ?
 だけんども実際、鍛錬したって気休めくらいなんだよなー。膂力で言ったら現状でも陳蘭には全然かなわんしね。とはいえ、白兵戦の能力を積み上げるのにこれ以上の鍛錬は思いつかなかった。俺が思うにこの鍛錬は自らの限界を越えてなお、相手を屠るためのもの。
 人は知らずにその振るう力にリミットを設けているという。それを取り払って発揮するのは非常時のみ。いわゆる「火事場の馬鹿力」というやつである。それを意識的に発揮することがこそが肝ではないのかな、と思うのである。いや、違うかもしれんけどね?そんなことを思いながらも腹の底から声を振り絞り、限界まで力を振るう。

 そんな感じで鍛錬に励む俺に思いもよらぬところから呼び出しがかかる。呼び出しの主は袁逢様。つまり、現在の袁家のご当主さまである。むむむ。まあ、否やはないのであるんだけどね。

「そんなに緊張しないで欲しいわね?」

 くすくすと優雅にほほ笑む袁逢様。そのエレガントなお姿に俺は心服するほかはない。只でさえ美人な袁逢様がエレガントなのである。これは何を言われてもハイかyesで応えるしかないじゃないですか!

「噂は聞いているわよ?紀家の麒麟児、神童、って」

 神童、長じれば凡人。はい、俺のことですね分かります。ちょっとなんか前世的な記憶によって早熟なだけなんだけどもね。もう数年したら三国志に巣食う天才、秀才、英傑、豪傑あたりがデビューするはずである。そしたら俺なんぞ普通に凡人ですだよ。やだー。

「過分な評価恐れ入ります。ですがこの身は非才故、皆の助力に頼っております」
「あら、余計なこと言っちゃったかしら。ごめんなさいね?」

 くすり、と微笑の袁逢様マジ天使。である。

「ほんと、田豊が言うのはほんとね。貴方のお父上もそうだったけど、お話ししてて安心できるのよね」

 なお、話題に上がった俺のとーちゃんはろくすっぽ政務をしていない。時折地方に出向いて歓待されるのがお仕事である。紀家の当主は俺のあこがれの役職である。とーちゃんマジ尊敬、リスペクトである。そんな地位を手放してなるものかよ!なんもなければ普通に相続できるんだし!
 という訳で、俺の目標はとーちゃんの跡目を相続すること。そしてそのためには袁家には隆盛でいてもらわんといかん。そのために全力でマッハなのだ。

「いえ、父や師父に比べると。いや、本当に非才だなと忸怩たる思いの毎日です」

 実際、俺のスペックはどう考えても凡人の範囲を逸脱できんしな。まあ、袁家というバックボーンや所々のコネがあるだけ恵まれているだろう。

「あらあら。紀家の麒麟児というのだからもっと尖っているのだと思ってたのだけれどもね」

 くすくす、とほほ笑む袁逢様マジ包容力Maxである。

「まあいいわ。紀霊。今日は貴方にこの子を任せたいと思ってたのよ」

 袁逢様は胸に抱いていた幼児を俺に示す。

「真名を麗羽、と言うの。この子をよろしくね?」

 真名。それは個人の友誼に大いに関わるが故にこうして関係性をあらかじめ結ぶためにも用いられる。政治、というやつだ。
 名門である袁家においてはそれくらいの腹芸はそこかしこで交わされている。まあ、袁逢様直々のお声かけということはとーちゃんやねーちゃんも了解済みのことだろう。
 はあ、時の抜けた返事をする。袁逢様の豊かな胸に抱かれた麗羽様。目と目が合って――なにこの可愛い生き物。マジ可愛いんですけど。

「二郎です、麗羽様。末永くよろしくお願いしますね」

 どれどれ、とばかりに差し出した指をきゅ、と掴んで麗羽様がきゃっきゃと笑う。

「あらあら。もう仲良しさんなのね」

 袁逢様の言葉を耳にしながら俺は不思議な感動に身を震わせていた。無条件にこちらを慕ってくる笑顔。その笑顔。守りたい、この笑顔。
 俺はきっとこれを忘れることはないだろうな、と思った。そしてそれ故に覚悟を決めるのだ。もう一度。
 ――三国志なんぞ、やらせはしないぜ、と。


「ふぇえ・・・緊張しました・・・」

 まあ、袁家当主といきなりの面接とか陳蘭にしたら気が気ではなかったろう。当事者ではなかったとしてもね。陳蘭がここまでプレッシャーを受けるのもやむなしである。袁家は四世三公の名門だからして。
 そして武の名門として北方の盾となり数世代にわたり土着している。これがもたらすのは圧倒的な安定。そして発展。そして継続は力なり。豊かな資金により社会資本への投資が行われ、それが継続され蓄積される。

「社会資本、ですか?」

 俺が漏らした呟きを耳にして陳蘭が不思議そうに問うてくる。いわゆるインフラストラクチュアのことだ。後世――俺の中の人の時代で言う所の電気ガス水道や、道やら港湾やら。そういう民間では整備できない施設。ライフラインと言ってもいい。

「まあ、公共投資でないと整備できない――まあ、便利な施設ってことだな」
「は、はい。便利な施設。ありがたいです。お姉ちゃんが言ってました。袁家領内はとっても恵まれているって」

 ここで重要なのはその施設を造るのも、運用するのも人の手がいるということである。袁家の強みとは、そういった分厚い人材の層であると思うのだ。俺のあれやこれやの案も世慣れた官僚あってのことである。まあ、その官僚をまとめている田豊様マジ辣腕って感じ。

「まあ田豊様がいるからこそ俺も色々と提案できたってとこはあるよな」
「ふぇ?」
「いや。あれやこれやと思い付きを提案しているけどさ。明らかに駄目なものは除外するだろうし、惜しい案があったならば添削してくれるだろうって、な」

 何にしても方針としては富国強兵待ったなし、である。常備軍には金がかかるからな!それに糧食不足での敗戦とかは、将来前線組になるであろう俺看過できない。
 まあ、ここらへんは割と安心している。史実でも袁家は兵站についてはしっかりしていたからな。――兵糧の集積地をやられたらしゃあない。しゃあないと思うんよ。
 それさえなければ袁家は天下統一とまではいかずともいい線いってたはずなのだ。

「くく、袁家の栄光まったなし。そして俺は平穏無事に人生を終えるのだぜ――」

 早期リタイア。そして晴耕雨読どころか晴読雨読の高等遊民生活はじまるよー!である。

「じ、二郎様なら大丈夫だって思います!あの田豊様も誉めてらっしゃいましたし!」

 まあ、田豊様の後ろ盾的なものは大変ありがたいのだが。そう。だが、なのである。

「田豊様と紀家が結んだとなれば、荒れるぞ・・・」

 呟く俺の言に陳蘭が狼狽える。

「ふぇ?どういうことですか?」
「田豊様は袁逢様の守役だったこともあって信頼が篤い。能力も化物的に優秀というか、飛びぬけているから政権の運営にも大過ない。だがそれだけに敵も多い」
「そ、そうなんですか?」

 袁家の派閥闘争は根が深い。毒殺暗殺ハニートラップなんでもありだ。

「だから逆に紀家の武力を背後に持ったという意味合いの方が大きいんだな」
「え、それじゃ・・・二郎さまが利用されるってことですか?」
「もちろん利点も大きいがね。こちらだけが恩恵を受けるわけではないってことさ」

 田豊様に危害を加えたら紀家の武力が火を噴くぜ!ってことである。

「武力的裏づけは官僚にはないからな。それが持ってしまったんだ。安易に手は出せないだろうさ。
 もちろん袁逢様がいらっしゃるうちはいいんだが、あの方身体が丈夫じゃあないからな」

「ふぇ・・・そうなんですか」

「恐らく、だ。麗羽さまの後見人として田豊様が指名されるだろう。それを他の奴らが黙っている訳がない。下手したら血みどろの政争になる。そのために先手を打ったんだろうさ」

 袁家の知恵袋は、伊達じゃない。

「袁逢様もそこらへん分かってるから俺と麗羽様を近づけようとしたんだろうな」

 だからこそ、袁逢様は自らいらっしゃったのだ。袁家は名門故に闇も深い。麗羽様だってその地位は安泰ではないのだ。だから、袁逢様は麗羽様と俺を近づけようとしたのだろう。
 そして、恐らく田豊様はそれに待ったをかけたのだ。最近の田豊様からの引き合いの強さがそれを裏付ける。あからさまなその動き。それには頭が下がるよ。

「ふぇ?なんでです?」
「袁逢様の死後、田豊様に権限が集中されるだろうからな。だから粛清対象は袁逢様や麗羽様ではなく、田豊様となったのさ」

 その忠義には頭が下がるね、ほんと。

「他の武家も袁逢様が麗羽様に武家の後ろ盾が欲しいというのは分かってるだろう。
 文、顔あたりが接触するはずだ。張は代々諜報畑だから距離を取るだろうし、
 バランスを取って両家から一人ずつ側近を派遣というあたりかな」

 あわわ、と混乱する陳蘭に心から同意する。政治、てやつに関わりたくないものだよね。

「まあ、麗羽様が袁家を継ぐという路線はできたっぽいからそれでいいか」
「そうですね。袁紹様。とってもお可愛くらっしゃいましたもんね」

 えっ?

「袁紹様。だと・・・?」

 そういや、三国志における袁家のキーパーソンはその人ですよねぇ。
 だが、ちょっと待て。誰それ聞いてない。

「麗羽様と袁紹様。くそ!どうすりゃいいんだ!」

 権力の集中は腐敗まっしぐらで世紀末フラグ特盛である。

「あの・・・。袁紹様の真名って、ご確認されました?」

 そんな陳蘭の言葉で俺は煩悶することになる。

「ちょっと待て。何で袁紹様の真名が麗羽様なの?わけがわからないよ」

 ねえ。俺の知ってる三国志となんか違うんだけど。違うんだけど。

ひとまず本日ここまですー

反応早すぎやしませんかねえ・・・(困惑)

それはそうと前スレでお勧めSS紹介してくる(暗黒微笑)

おかえりー(違
ども、沖縄さんですよー
祝リライト開始、またビクンビクンしながら読んじゃう

おや…ここからリライトですか、てっきり前スレの続きからかと思いましたが
またあの姐御のシーンを見れると思うと今からビクンビクン白目モノデスヨ

さて、何周目か忘れたがまだまだ周回せねば

おぉ、新スレたってましたか~お疲れさまです。

>>13
沖縄さん!申し訳ない沖縄さんじゃないか!
いあ、今作でもあんまり変わらないんじゃないかなあとおもうのですけどねw
筆の滑りにご期待ください!

>>14
そこまであ!

>>15
ありがとうです。
まだだ、まだ終わらんよ!

>>16
最近忙しいので、中々進めないのですけどね。。。
いや、粗もありましたけど、一旦完結させておいてよかったと思っておりますw

「しかし、やってくれたわね」
「ふむ。我ながら会心の一手であったと思うがな」

 その言葉に麗人は苦笑する。顔の半分を覆う火傷の痕。それがその笑みの凄味を増しているが、相対する人物は毛ほども気にしない。
 余人を交えず、一室で相対しているのは麹義と田豊。袁家を支える武と文のトップである。その二人が護衛もなく相対するのはよほどのことである。

「まあ、今回は譲るわよ。流石にあの子があんなことを考えていたなんて分からなかったしね」
「儂とてそうよ。たまさかに、一度紀家の跡継ぎを見ておこう。それだけのはずだったのよ。それがどうしてどうして。まさかこの中華全土を視野に入れているとはな。
 あれはまさしく麒麟児。いずれ鵬のごとく羽ばたくであろうよ。儂の弟子なだけのことはある」
「待ちなさいな、二郎は私が育てたのよ?そこは譲れないわねぇ」

 両者が数瞬睨み合い、互いに苦笑する。

「――あの子はどうやら中華に乱があることを確信しているようよ」
「成程のう。そこに至るか、あの年で」

 田豊の額に深い皺が刻まれる。漢朝の現在と未来。それはけして明るいモノではない。宦官が実権を握り、私欲の限りを尽くしている。その対抗馬は何進。肉屋の倅と揶揄される諸人である。妹を今上帝に差し出して地歩を固めつつあると聞く。大将軍という埒外の地位を望み、それを得るのも遠い未来ではないであろう。
 そして財政難。その対策が売官という救いのなさよ。宦官の養子が三公の一席を買うなどという異常事態。漢朝の未来はどう考えても淀んでいるのだ。袁家が北方の盾として洛陽から距離をとりつつあるのもそれが故である。
 中央の政争に関わってられるか、というのが最前線の武家の考えである。

「ほんと、あの子は先が見えすぎるみたいね」
「その分、足元が疎かじゃな。危なっかしいことこの上ないわい」

 憮然とした田豊に麹義は深く同意する。

「そうね。あの子はとっても利発よ。だからもう、そのために何をするか分かっている。それで動いた。で、田豊?あの子の視野を足元に向けせさせるのかしら?」

 含みを持たせた麹義の言に田豊はニヤリ、と笑みを浮かべる。

「愚問よな。鵬は天高く羽ばたくものよ。足元がおろそか?そのような雑事は置き捨てるがよいだろうよ。むしろ高みを目指してもらわんと困る。まあ、足を引っ張る有象無象は沸くじゃろうがな」
「露払いは私たちの仕事。それはいいのよ。でも、いつまでも私たちが出張るわけにもいかないでしょう?」
「そうよな。その通りよ。だから、沮授を付けようと思っておる」

 ふむ、と麹義は黙り込む。妻も娶らず、派閥も作らぬ孤高の田豊。その彼が引き取ったという俊才。田豊の後継者として英才教育を受けているその名を麹義も知っていた。

「へえ、大盤振る舞いね」
「賭けるべきじゃと思うのよな。袁胤殿は洛陽に近すぎる。次代の袁家は麗羽様のもと、武家四家、袁家官僚も付き従うべし。
 かつて――あの乱の時にできたことをこの平時にできるやもしらんと思うのは甘いと思うか?」
「甘いと思うわよ。まあ、楽しみなことだけれどもね。
 ――でもね、その賭け、乗るわよ?全力でね。
 勿論協力は惜しまないわ」

 くすり、と笑いを漏らした麹義はこほん、と咳払いをする。そして全身に覇気を漲らせて喝破する。そう、ここからはあくまで対立する文武のトップとしての体裁。
 組織に緊張感をもたらすためにも、彼らは激しく対立していなければならないのだ。そしてそれを緩和し、習合させるのは自分たちの役割ではない。
 だから麹義は全身で吠えるのだ。

「ふざけるなよ田豊!貴様何様のつもりだ!紀家の小倅を抱き込み軍部に唾を付けるつもりか?それはいささか越権行為が過ぎるというものだ。身の程を知れ!」

 並の人物ならば心臓発作を起こしそうなほどの麹義の覇気に田豊は小揺るぎもしない。にまり、と口元を歪めて吠える。

「ふはははは!だから貴様は阿呆なのだ!袁家は一つにまとまるべきなのだよ!その旗印に麗羽様!それを支えるのは二郎しかあるまいよ。なにせ、貴様も儂も紀家には大きな借りがあるでな!
 あの匈奴大戦での最大殊勲は紀家よ。匈奴の汗ハーンを討ち取った紀家。その功に報えたかというと否!絶対に否!」

 実際、袁家の表も裏も仕切るのは紀家であるはずだったのである。しかし、匈奴の汗を討ち取り見事生還した紀家当主。彼が廃人同様であったからそれは見送られてしまっていた。それを好機、と思うほどに両者の心根は腐ってはいない。
 その嫡子。彼に全てを押し付けるつもりはない。だが、その器は麹義と田豊が共に認めるほどのもの。ならば我らは踏み台となろうというものである。喜んで。

「ふざけるなよ田豊!浅知恵で二郎を政争の具とするか!麗羽様との一件も貴様の入れ知恵か!そういうのをな、余計なお世話というのだ。引っ込んでろ!二郎はすぐにでも軍務に就かせるからな!」
「おうおう。吼える、吠えることよのう。虚しくならんかね。二郎の施策は儂の施策。刻すでに遅しということよ。残念じゃったのう」

 かんらかんらと呵呵大笑しながら田豊は更に煽っていく。ブックありきとは言えそれぞれに本音のぶつかり合い。そこに遠慮斟酌なんぞ介在しない。室の外で控える文官武官が身を竦めるほどにその気迫は激しくほとばしる。

「は?聞こえんなあ。もう一度その口を開いてみろ。二郎は私が育てた。譲る訳にはいかんな」

 麹義の口元が凶悪に歪む。そして売り言葉には買い言葉。

「は、儂の弟子をよくもまあ囲い込もうとする!女の妄執というのは度し難いものよな!」

 袁家のお家芸である派閥争い。袁家において緊張状態にあった軍と官僚の亀裂。この時期が最も高まった。と言われている。


「と言う訳で、よろしくお願いしますね」

 にこやかに挨拶かましてくれるのは沮授。田豊師匠の一番弟子であり、将来の袁家の幹部候補生の筆頭である秀才である。K●EIのゲームでも知力90後半あるくらいの傑物であり、いずれ友誼を結ばなければいけないと思っていたキーキャラでもある。それが向こうから来てくれたのだ。拒む理由はない。

「こちらこそ、ドーモよろしく」

 実際挨拶は大事。だが、なんで?と思う。

「おや、信用できませんか?別にそれでもいいですけどね?」
「んー。あれか、ねーちゃんと師匠からのお目付け役ってことか?」
「いやあ、どちらかと言うと転ばぬ先の杖。その杖ってとこですね。
 いやあ、実際転ぶことはできないでしょう?ですから便利に使い潰してくれればよいのではないかと思うのですが」
「その笑顔が胡散臭いことこの上ないんだが・・・」
「それを面と向かって言うのもどうかと思いますよ」

 くすくすとおかしげに笑みを漏らす。いや、徹頭徹尾笑顔を崩さない。俺と同年くらい。それでこの肝の据わり様。これは間違いなく傑物ですわ。いや。その扱いをどうしようかというのは思うのだけれどもね。
 戸惑う俺を見て沮授は耳元で囁く。

「さて、農徳書。その施策は素晴らしいもの。だとしても君個人でやるのはいかにもまずいです。これまで袁家は武家が政治に口を出すのはご法度。まあ、偶然とはいえそれを察知した田豊様はそれを自らの施策であると抱き込んだのですよ?」

 む。む?

「うわ。うわあああああ。うわあ」

 やってもうてた。やってもうたんか俺ってば。既得権益に突っ込むとか。――いや、それを考えなかった俺の未熟さよ!

「これはねーちゃんと師匠に足を向けて寝られないなあ」
「おや、随分殊勝なのですねえ。もっと尖っていると思っていたのですが」
「ふざけんな。俺が隠居することで丸く収まるならばいつでも隠居してやるよ」

 むしろwelcomeな展開ではあるのだがね。そうもいかん。安寧な老後を迎えるにはこの時代とその行く末はアカンのだ。アカンのだよ。マジで。

「これは失礼。しかし、反省されているようですが、後悔してますか?」

 問う沮授の視線が鋭い。にこやかに笑いつつ、視線で刺す。なにそれカッコいい。

「いんや。後悔なんてしてないさ。するものかよ。絶対に必要だからな、食糧の増産は特にな。そして農徳書の理を利に転換する膨大な凡例。それこそが大事なんだよ。そうだな。来季の報告書を添付して内容を改訂しよう。題名も農徳新書、ってな」

 どっかにいるであろう曹操への嫌がらせとどっかにいるかもしれない奴への牽制である。だが、PDCAサイクルについては本気で根付かせようと思っている。2000年経っても報告書への粉飾なんてのはありふれているのだからして。この時代なんてお察しである。
 実際農産物の収穫なんてのは半分天候次第。それを言い訳にするのではなく、それを加味してどうやれば収穫が増えるかというのをきっちりと既知のものとしたいのよ。言い訳とか粉飾に使う官僚の能力を殖産に使うっていうのは当たり前だと思わんかね。

「そして食糧の増産。それはこの中華に必須さ。肥沃な袁家領内大地のこの北方の収穫。それがくしゃみをすれば中華全体が風邪をひく。所詮乱というのは食い詰めが起こすモノさ。
 だから、まずは食わせる」
「成程。孔子もそう言ってますね。衣食住。まずは食であると」
「そうよ。まず食わせるのが為政者の仕事だ、義務だ。それが出来ずして、何が政治家だよ!」

 っていつから口に出してたー!

「いや、割と最初から聞いてましたよ?」

 イヤー!グワー!

「ええと、姉ちゃんにも師匠にも言ったことないことなので、ね?」
「ええ、わきまえていますよ。そして、大したものだ、と思うのですよ。実際、僕にはそこまでの発想はありませんでしたし。
 実際、僕は驚愕しているのですよ?この際だから聞いておきましょう。二郎くん、と真名をお呼びしても?」

 むしろウェルカムである。はいとyesで応えた俺に沮授はにこり、と笑う。

「では、よろしくお願いしますね、二郎君」

 これが、生涯の友である沮授とのファーストコンタクトであった。

「ふむ。これ、すっげえ収穫増えてない?」

 沮授が持ってきた資料を斜め読みした限りでは、今年の袁家領内での税収はメガ盛り。それは領内での農産物の豊作――それも桁違いの――が故である。

「そうですね。天候に恵まれましたが、それ以上に農作業の効率が上がったというのが大きいみたいですよ。
 お流石、と言っておきましょうか」

 くすり、と笑みを浮かべる沮授の顔かんばせはあくまで涼やか。どう見ても爽やか系イケメンです本当にありがとうございました。

「よせやい。道具や肥料を多少整えたくらいでこんなになるかよ。どう考えても民が頑張った成果だろうが。
 だからある程度還元させた方がいいんじゃね?」

 実は中華全土に目をやれば天災に事欠かない。南方では豪雨による洪水、西方では蝗害。だがしかし俺がいる袁家領内では特段の災害は報告されていない。
 とは言え、局所的な豪雨だったり旱魃はあってしかるもの。つまり、何らかの災害があっても天災と為さずに人為によって治めたということである。それは袁家の統治機構が健全に機能しているということである。
 いくら俺が農具やらなんやらを提案したと言ってもそんなに短期的な効果は上がるはずがない。俺の上申はノウハウの蓄積とその普遍化が主眼なのだからして。
 ――災害に合うのは為政者にその資格なしと天が怒っているという説がある。超一般的な解釈だ。しかし、それは逆なのだと俺は思う。災害なんていつもどこかで起こってるものだ。実際、それへの備えと対応がしっかりしていれば問題は最小化されるのだ。
 天災を治めて見せる。それこそが為政者の仕事だろう。まあ沮授には釈迦に説法だろうけんどもね。

「まあ、領内の運営が順調なのは間違いないのですが・・・」
「ん?どったの?」

 問う俺に、懸念するほどではないのですが、と断りを入れて沮授は。

「どうもこの頃、張家から上がってくる情報の質が落ちている気がするのです」

 張家。俺が所属する紀家、顔家、そして筆頭格である文家と並び袁家を支える四家の一つである。だがその役目は他とは大きく違う。携わるのは諜報、である。

「二郎君だから言うのですがね。このところの定点観測の報告の質がどうにも。
 異常なしとか状況に変化なしとか、無難なものが目立ってきているようなのですよ」

「世は全てこともなし、漢朝は安泰、袁家は繁栄。実に素晴らしいじゃねえか」

 くす、と沮授は笑みを漏らして。

「そうだったらいいのですがね。どうにも。過去十年くらいの張家の報告に目を通したのですが――いや、ひどいものなのですよ。最近のそれは」

 マジか。さらりと、とんでもないこと言ったぞこいつ。――まあ流石に全部に目を通したということではないのだろう。きっと。多分抽出法からの拡大推計って感じなのだろうが、それをやろうと思ってほんとにやるのが凄い。
 いやあ、敵に回したらいけないタイプの奴だな。媚を売りまくって友人ポジを確立させてよかったぜ!よかったぜ!
 実際気も合うし、打てば響きまくってくれるし。こいつが将来の政敵とかマジ勘弁である。政争とかしたら絶対負けるしな!

「まー、とりあえずは食料の備蓄強化だなあ。買い上げは順調かい?」
「ええ、じわりと低下傾向にあった米、麦、豆、粟などの穀物の価格は安定していますよ。
 備蓄のために購入しているのが効いている、と思いたいですね」
「ん、完全には価格の統制は無理だろうがな。豊作になったが価格が下落して農民が路頭に迷うとか洒落にならん。しばらくは注視しないとな」

 豊作貧乏、という言葉がある。豊作によって農産物の供給が過多になり、価値が下落。それを防ぐために袁家が買い支えをしているという訳である。

「ええ、そうですね。それと少しずつ他の農作物への転作の推奨も視野に入れないといけませんね」

 商品作物と言う奴だな。麻や綿花な繊維、藍みたいな染料とかそういう感じのやつだ。

「そうだな。だがまあ、しばらくは備蓄強化でいいだろ。財政も相当余裕あるんだろ?」
「ええ、金蔵の銭を束ねる紐が腐ってしまうくらいには」
「ふん、安物使ってんじゃねーだろな」
「いえいえ。最高級の絹糸ですよ」
「無駄にもほどがあるっちゅうの」

 顔を見合わせて笑い合う。俺がここ、田豊様の屋敷に入り浸っているというのにはこいつとの馬鹿トークを楽しみたいというのも大きなモチベーションだ。いや、田豊師匠って基本コワイからね。師事するのにやぶさかではないけれども。

「まあ、とりあえずはそんなとこか」

 うーんと伸びをして頭を切り替えていく。

「おや、もうそんな時刻ですか。今日も鍛錬を?」
「おう、田豊師匠には言ってるし、また場所借りるぜ」

 軍師とか言いながらも筋骨隆々な田豊師匠の私宅には割と立派な鍛錬場が整備されており、そこで汗を流すのが俺の日課である。努力は裏切らない!はずである。のだが。

「あの。大丈夫ですか?」

 ぜえ、ぜえと呼気を漏らす俺に陳蘭が心配げに声をかけてくる。

「み、水を頼む・・・」

 こひゅーと呼気を漏らしながらした俺のリクエストに弾かれたように身を翻して駆けだす陳蘭。おっかしいなー。俺と同じメニュー以上に身体をいじめていたはずなんだが。
 走り込みの後に立木打ち、おまけに筋トレのフルコースなのだが。息も絶え絶えな俺に対し、陳蘭は鼻歌混じり――とまではいかないまでも。

「くっそ。俺の基礎体力が足りないのか陳蘭がすげーのかどっちだっての」
「そんなの決まってます。わたしはおねーちゃんなんですから」

 えへんとばかりに胸を――薄いのは年齢のためであるはず――偉そうに張る陳蘭である。まあ、陳蘭は俺より年上であるしこの年代では女子の方が身体的には優位であるのは確定的に明らかであるのではあるが。
 悔しいモノは悔しいのである。

「じゃあ、実技だな」

 基礎的なスペックで及ばないのであれば技巧だ!

「この円周から出たり、膝から上を地面に付いたら負けな」

 ずり、ずりと適当に地面に円を描いて仕切り線を追加する。

「ふぁ、はい!」
「後ぐーで殴るのも駄目な。こぶしを痛めるから。張り手は許可」

 つまり、相撲というやつである。傍目には子供がじゃれ合っているようにしか見えないだろう。そして俺は未来の格闘スキルがどれだけ通用するか。
 俺、気になります!



「ふぁれ?きゃっ」
「妙技、外無双――」

 俺はまさに技の百貨店やでぇ!

「こ、こんどこそ!」
「絶技、肩透かし――っ!」

「掴み投げ!」
「上手出し投げ!」
「下手投げ!」
「切り返し!」

 きゅう、と根を上げた陳蘭が不平を漏らす。

「力じゃ私の方が強いのに・・・」

 だからこそ俺の適当な知識による技術、技が有効か知りたかったのだ。

「ふ、身体能力の差が、戦力の決定的差でないということだな」

 だが、気を抜けば逆転されていただろう。基礎スペックというのは偉大である。レベルを上げて物理で殴る。これ最強。

「うー、なんかずるいですー」

 そこで感じるずるさこそが技巧。俺の持つ数少ない優位点なんだよなあ。

「陳蘭も覚えればいいさ」

 そんなことを言いながら思う。体格が互角ならばうろ覚えの技術であっても十分通用する。技の再現も思ったより容易にできた。
 思えばテレビで見た相撲や柔道、レスリングなんかは超一流の洗練された技。少林寺拳法だって4-5世紀後に発生するのだ。つまり俺が見ていたのは言わばオーバーテクノロジー。それを俺は視聴していた。これは見稽古につながるのではないか。そう思って試したのだが、予想以上に体が動いてくれる。これは嬉しい誤算だったのだ。

「ふぅ・・・」

 大人げなく少女相手にいい汗をかいてしまった。柔道、プロレス、いろんな技を試した。某友情力がMaxな超人漫画の技の再現は無理だったな。ボクシングとか空手みたいな物騒なのは今度防具着用で試すか。
 幾人もの天才達が生涯をかけて昇華させた技の数々、使わせていただく。それが実在しても、しなくてもな!

「うう、二郎様にはかなわないです。わたし、おねえちゃんでお守り役なのに・・・」

 あれやこれやに付き合ってくれた陳蘭がそんなことを言う。何か語弊があるような、ないような。

「じ、二郎様のお守り役にわたしなんて。おやくにたてない・・・」

 ぐず、ぐずと湿っぽくなる陳蘭に戸惑う。

「や。陳蘭が俺の守り役を外れたら困る。ほんと困る」

 これはマジ話である。

「ふぇ?」

 不思議そうな顔の陳蘭であるが、彼女には正直感謝しているのだ。色々好きにさせてもらってるし。俊才とか言われる彼女の姉であったならばこうはいかないであろう(確信)。
 それはさておき、陳蘭の機嫌をとるべく俺は見え透いた一手を。

「ほら、美味しいものでも食べに行こうぜ」
「・・・今日も町に出るのですか?」

 今泣いた烏がもう笑った。陳蘭がにこやかにそう問うてくる。

「ああ、だからいつものように服の準備を頼むな」
「はーい」

 いつも着ている服は質素とはいえ流石に質がいい。もっと襤褸を着ないと良家の子供だってばれてしまう。流石に誘拐の危険は少ないが、町の実情とかを見るには都合が悪い。
 陳蘭に持ってきてもらった襤褸の服に着替えると、連れ立って町に出かけるのであった。
 息抜きマジ大事、実際。

 と、思っていたのであるが俺の完璧な計画は麗しい闖入者によって破綻することになる。

「きゃっ!袁紹さま、髪の毛引っ張っちゃだめです」
「きゃはは!きれい!ちんらんの髪、きれい!」

 後ろでは陳蘭が麗羽様のお守をしている。麗羽様は俺と陳蘭をいったりきたりでよく構ってくれアピールをしている。懐かれないどころか距離を置かれている沮授はちょっと寂しそうだ。
 ざまぁ。

「まあ、安心してください。流民が想定を越えて流入しても問題ないですよ」

 俺の懸念を先取りして沮授が言う。天災レベルの災害が地方で頻発している。そして袁家領内は安泰。さすれば流民が流れ込んでくるのは必定なのだ。これはもうしょうがない。漢朝は農民の移住を許していないが、だからと言って出戻らせたり収監するわけにもいかん。

「流民を受け容れつつ、備蓄を増やす。やれるか?」
「まあ、なんとかしますよ」
「さすがだなーあこがれちゃうなー」

 未だ公務とは無縁の俺とは違い、沮授は既に田豊様の補佐をしているのだ。無責任にあれこれ非公式なルートでぶちあげている俺とは違うのだよ。
 いや、これってすごいことよ?そしてあからさまに田豊師匠の後釜って感じの沮授に対する風向きは複雑だ。言ってみれば首席補佐官とか官房副長官的な地位にある沮授に対しては硬軟様々な圧力やらなんやらが押しかけているはずだ。
 できたら、少しでもこいつの助けになってたらいいなあ。精神的な意味だけでも、な。
 とか思ってたら気遣いしてくれたのか、沮授から話を振ってくる。

「そういえば、もうすぐでしたか」
「おうよ、ようやく軍務に就けるのさ。やっと、だよ」
「ここはおめでとう、と言っておくべきなんでしょうね」
「そうだな、他でもない沮授にそう言ってもらえると嬉しいな。
 まあ、一番嬉しいのはアレだけどな!うひひ!」

 どうにもにやにやと笑みが漏れてしまうが、やっぱりアレは欲しかったのだよ。神話の時代から語り継がれる紀家の至宝。匈奴の汗ハーンすら討ち取ったというそれ。

「三尖刀、ですか」
「おう、紀家の家宝にして至宝だ。欲しかったんだよなーこれ。
 これで俺も二郎真君に一歩近づいたな」

 そう。中華の神話の大英雄たる二郎真君。俺の真名のモデルでもある。三尖刀と哮天犬、そして変化の術を自在に操るそれはマジチート。西遊記で孫悟空が二郎真君と伍し、変化合戦の後に老子様にやられたというのはあれだ。二郎真君の強さを引き合いに出して猿の実力を誇示したということに他ならない。正直天帝の甥とかは後追い設定を盛りすぎだろとか思うのだが。

「まあ、形から入るのは間違ってないと思いますよ?」
「うるへー」

 そして、俺はもうすぐ紀家の一軍への参加が認められるのだ。武力の掌握。これは非常に重要だ。某大陸の強国とか半島の独裁国家の例を出すまでもなく、武力を掌握している政権はまず倒れない。
 俺が武家の座にこだわったのはこれも大きい。べ、別に座学が苦手だなんてことはないんだからね!

「じろー、だっこー」
「はいはい、麗羽様。仰せのとおりに。陳蘭お疲れな」
「うう、あちこち痛いです・・・」
「よーし、肩車しましょう、そして駆け出しましょう!」
「わー、高い!はやいー」
「二郎君!夕食は食べていかれるのでしょう?」

 問うてくる沮授に諾、とジェスチャーで応え。

「おー、大盛りで頼むな。かーらーのー加速装置!」
「わぁ!」
「ふぁ、あ、危ないですよぅ!」

 そんな、いつも通りのごくごく平穏な一日であったのだ。

本日ここまでやねん

眠い

乙ですね
>>某友情力がMaxな超人漫画の技の再現は無理だったな。
たしかバスターは現実プロレスに逆輸入されたんだっけ?再現できなかった技は…まさか三大奥義か!?

バスターは相手を捕まえた体勢から立ち上がって尻餅付く感じで出してたはず
冷静に考えたらあれ自分へのダメージもかなりのものだよな…それよりも問題はいったいどんな技を陳蘭にかけようとしたかだ
下手したら後遺症残るだろ、素人の関節技(打撃技なら大体再現可能だろうからほぼ間違いなく48の必殺技タイプを使おうとしたはず)

>>26
マジすかw
あんなん自分にも大ダメージくると思うねんけど……w

>>28
見たことあるんですかw すげえw

>…それよりも問題はいったいどんな技を陳蘭にかけようとしたかだ
そりゃあ、アレですよ、アレw

>下手したら後遺症残るだろ
恋姫時空だからへーきへーき
というのは冗談として、バスターにしろドライバーにしろ、女の子にかけるとすごい絵図になってしまいますよね……

そういや地獄の断頭台よりも、普通にニードロップの方が破壊力あるような気がする……
そしてパイルドライバーとかいう既知外技を普通に仕掛けていた昭和のプロレスはやばいと思い魔s

ハウスがココイチを買収した……だと……
SBのコメントが欲しいとこですね

しかし、円満買収だというところが凄い

元々日本でカレーのチェーンが成立しないのはスパイスを輸入しているのがハウスとSBだけだからという説があってですね
それが円満買収かーそうかー

次は金沢のゴリラカレーかな?

やったぜ(菓子)

やったぜ(タイトル)

ナビスコおめでとー

赤党の妹もニッコリでしたわ

友人との会話で恋姫の名が出たもんだから、久々にあのSS読んでみるかな
と思って1から読み返してみれば、リライトなんていつの間に始まってたんだ?しばらく更新が無かったからてっきり失踪したかと思ってたんだがな

>>34
ありがとうございます
勝ってみると、現地に行けばよかったと後悔しておりますw

>>35
>友人との会話で恋姫の名が出たもんだから
羨ましい環境ですねえw

>しばらく更新が無かったからてっきり失踪したかと思ってたんだがな
更新の代わりになろうで投稿してました
疾走はしても失踪はしませんよ多分
骨折しても風疹になっても頑張りましたもの
音沙汰なくなったら、失踪というより死亡でしょうねえ

「商会、ですか?」

 沮授の問いである。つっても、もう作ったんだけどね。ずびび、と朝食の粥をすすりながら俺はそう答える。む。流石に田豊師匠んとこの朝食は美味いな。陳蘭が作るとこう、不味くはないんだけど美味くもないんだよなあ。

「おう、ただし袁家には無断での動きさ。むしろ糾弾されてもやむなし。そう認識はしている」
「なるほど。・・・それは二郎君に謝らないといけないかもしれませんね。いえ、認識はしていたし対策も打ち出していたつもりなのですが・・・」

 無為無策と言われてもしょうがありませんでしたからね、と沮授が頭を振る。

 実際農作物の収穫が増えるにつれ、その価格は下落傾向にあったのだ。沮授の施策で一定額での買い上げは進んでいるが、まだ領内には行き届いていないらしい。ならば豊作だからといって安く買い叩く商家が出てくるのは必然である。
 だがそれでは困窮する農家も出てくる。そのため袁家領内での最低買取価格を設定した。そして俺はその価格に基づき、買い付けをする商会を立ち上げたのである。無論安く買って高く売るのが商売の基本ではある。それを俺は私財でカバーしたわけじゃない。もっと高く売れるところへと運んで売る。それだけの話である。天災に見舞われた地域とかな!涼州とか。江南とか!

「商流の管理、が二郎君の主眼ですか?」

 沮授がちらり、とこちらを見やるがそんなの無理無理無理無理カタツムリ。である。

「いやいや。ぶっちゃけ袁家領内の物価の安定で精一杯、かな。それでも今のとこ上出来かなと思ってるんだけんどもね」

 なお、実務に俺は絡んでいない模様。餅は餅屋。出来る奴に任せる。そいつが俺のやり方、である。

「我々にとってもありがたいですが、初期投資費用はよろしいので?」

 まあ、そう来るわな。いくら高く売れるところへ運ぶとなっても初期投資というのは必要になる訳で。ちまちまと貯めた紀家の裏帳簿から出そうかと思っていたのだが、あまり表沙汰にできない金銭が――それも結構な大金である――俺に貸与されたのである。
 幾度も、多重厚層的にロンダリングされて流れてくるその金銭。気にしたら負けかなーと思いながらありがたく運用させてもらっている。
 多分田豊様あたりからの援助なんだろなーと思っているが定かではない。田豊様の一番弟子である沮授にそんなことを言う必要もないですしおすし。

「おうよ。資金の出所についてはまあ、お察ししてくれよ。そして知る必要はないと思うよ?
 それより、だ!思わぬ拾いものがあったんだってばよ」

 あからさまな話題逸らしに沮授はにこり、と笑みを深くして。それでも乗ってきてくれる。こいつ、全部分かってて聞いてるのと違うか。むしろ黒幕というのもありえるな。おおこわい、こわい。

「ほほう、拾い物ですか。二郎君がそんなに嬉しそうな拾い物のお話を伺いたいですね?」
「へっへー、沮授には分かんねーかもしれねーなー。へっへっへ。商会を任せるに足る人材を拾ったんだよ」

 俺の言葉は沮授にしても意外だったようでその澄ました顔がきょとん、とする。それは滅多に見られない表情であり。つまり、してやったり、である。

「おやおや、会ったばかりの人に二郎君のここまでの努力の結晶を任せるつもりなのですか?それは――ずいぶん高く買ったものですね」
「とんでもない、タダ同然の安値で拾ったんだよ」

 ニヤリ、と俺は会心の笑みを浮かべる。だって、それくらいの人材を拾うことが出来たのだから。いやあ、あの時ばかりは神の見えざる手に感謝したね。マジ話。


「おー!やっぱり賑わってるなあ!」
「そうだな、人通りも多いし、活気に溢れている。実に活気に溢れている。流石は袁家のお膝元、といったところかな」

 暢気そうに声を漏らした青年をくすり、と可笑しげに見やって。赤楽はそれでも周囲を油断なく見やる。いくらこの南皮の治安がいいとは言っても気を抜く理由にはなり得ない。なんとなれば旅の道連れであるこの青年はどうにも育ちがよすぎるのか、無防備すぎるのだ。呆れるほどに、だ。

「だから、いくら洛陽での修行を終えて目的地に着いたとしてもあまりはしゃぐなよ?」
「分かってるってば」

 さて何を分かっているのやらと赤楽は内心苦笑する。そしてお気楽な発言が続いても苛立ちの欠片さえ生じないのは彼の生来の気性、そして受けた恩故か。それとも別の要因によるものだろうか、と内心に思考を巡らすのは数瞬。それでも、機嫌のよさそうな彼の表情に赤楽の口も緩む。漏れ出でる言の葉は事前に考えていたモノとは違ったのだが。

「君には本当に世話になった。私にはどうやって恩を返せばいいのか見当もつかないな」
「おおげさだなあ、おいらは当然のことをしたまでだって」
「だが、君は一度故郷に帰るつもりだったのだろう?」

 くす、と艶やかに笑う赤楽にむう、と唸る。

「そ、そうだな。だけど、一度南皮には来るつもりだったしよ・・・」

 そう。本来の目的地は南皮ではなかった。彼は洛陽で学問を修め、故郷に戻る途中に連れを拾ったのだ。――赤楽と言う名の自分のことである。そしてそう、文字通り拾ったのだ。拾ってくれたのだ。水害で行き倒れていた自分を。
 赤楽、という名前だって便宜上彼がくれたものだ。赤毛をざんばらにしていた自分が貰うには過ぎた名ではあるかと思うのではあるが。
 ――閑話休題。受けた恩とかはともかく、彼がここ南皮に興味を持ったのはある時期からである。もっと言えば袁家領内の統治ににある人物が登場してからであるとのことだ。それを象徴するのが「農徳新書」だ。かの、「神農」の言葉を記したというその書物。まともな知識人であれば奇書として一笑に付したであろうそれ。
 袁家という、漢朝でも最大の組織がそれを容れたというのだ。そしてその結果が目の前の繁栄である。そりゃあ、その著者に興味がわく――どころか、会ってみたいとかいうのもごく自然なことである。
 洛陽で学び、漢朝の腐敗、汚泥に触れたならそうするのは士大夫として自然なことなのだろう。なお、自分は洛陽で学んでもないし漢朝の実態についても詳細については知らないので割とどうでもいいのだ。目の前の安寧こそ赤楽にとって至上なのである。
 だから、眼前で起こるトラブルについても華麗にスルーしてしまおうと思っていたのである。いくら善良そうな子ら。将来が楽しみであろう子らであっても赤楽にとってはどうでもいい事象である。だから可憐な幼女が暴漢に向かってぷるぷると震えながら背後の男児を庇っていても。思う所がないわけではないが優先順位は確定している。さっさとこの場からおさらばしてしまうのが最上だと理性が語りかけてくる。のだが。

「二郎様を、どうにかするのなら!わたしが!」

 涙目で放つ言の葉の熱を感じて。ちら、と見た連れはこくりと頷く。まあ、そうだろうなあと思う。捨て置いておけばいいのに、と思う心を置き去りにして身体が動く。

「しぃ!」

 やってやれと無言で激励された赤楽は一呼吸で破落戸たちの意識を刈り取っていく。こういう時は中途半端が一番いけない。本当は後腐れなく殺しきるのが正解なのだがな、と思いながら。
 何だお前は、と誰何の声すら上げさせることなく赤楽は破落戸たちを駆逐する。幾人かは儚くなってしまったかもしれないが、正直知ったことではない。

「やれやれ。袁家領内と言っても治安についてはこんなものか」

 そう言いながらも周囲への警戒は怠らない。徒党でこられたら面倒だ。百人程度であれば問題なく対処できるだろうが。



 正直破落戸の百人や二百人であれば俺と陳蘭ならばなんとでもなると思っていたのがまずかったのかもしれない。或いはロクでもない嗅覚にひっかかったか?襤褸を身に纏い、灰や泥で小汚くしても見落としていた点があったのかもしれない。まあ、結論から言うと俺と陳蘭は破落戸どもに絡まれてしまったのである。ほんで、逃げるかぶちのめすかを逡巡していたわけだが。
 俺がどうしようかと思っている間にことは解決されていた。

「あ、ありがとうございました!」
「なに、礼なら連れにするがいい。私は君らに興味なかったのだからな」
「なんでそう憎まれ口をきくかなあ」

 おおう!流れに乗り遅れた!俺だけ置いてけぼりじゃねーか!くそ!なんて時代だ!

「だから、割とこの先どうしようかと思ってるんだよ」

 苦笑しながらも悲壮感のない物言いは万人に好感を与えるであろう。無論俺だってそうだ。人当たりの良さもだが、一を言えば十を察してくる地頭のよさ。これは傑物やでぇ・・・。むしろ中央からのスパイか?と疑念を抱きながら思い切って聞いてみた。YOUは何しに南皮に?って。

「いや、ね。おいら、洛陽で学んでたんだ。それで、この書に感銘を受けてね。
 そんで、運がよければ作者に会えるかなー、とか思ってさ」

 無理目だろ?と笑う顔には邪気がなく、また、その書が予想外で絶句してしまう。
 その書は、「農徳新書」といった。いやいやいやいや。確かに農業のノウハウを拡散すべくばら撒いたのだが、まさか洛陽まで流れているとは。

「おいらも、せめて故郷への旅費を稼ぎたいなあ。日雇いでもして。連れの赤楽が仕事を見つけて、生活に目処が立つまで、かな」

 いや、そりゃ洛陽に学問するために行くくらいなら相当なもんだろうよ。赤楽っていった少女も凄腕みたいだし――。何だかぞくりと背筋に寒気が走る。

「あー、どっちも伝手がないわけじゃあないから、当たってみようか?」
「それは助かる。赤楽は、水害以前の記憶がないみたいなのでよろしくな。
 おいらは、読み書きとか簡単な計算ならできる」
「おうよ。あ、お前さんの名前聞いてないな」
「お、そうかすまんな。おいらの名は張紘ってんだ」

は?
はぁ?
はあああああああああああああ?

 ちょ。ちょっと!マジか。マジなのか。ちょっと眠たかった俺の意識が冴えるというか沸騰する。聞き間違いじゃないだろな。

「あ、すまん、もう一度、いいかな・・・」
「ん?張紘。それがおいらの名さ」

とんでもない大物が釣れました。釣りしてないけど。張紘と言ったら孫家の誇る二張の一角。K●EI準拠ならば政治パラ95以上確定の傑物じゃないですか、やだー。やったー。
 って、逃してたまるかこの大魚どころかもう、もう!乗るしかない!このビッグウェーブに!
 そこから始まる俺のリクルート。なんやかんやあって、俺のなりふり構わない必死の勧誘に張紘はついに首肯したのだ。
 いやあ、今日はいい日だ。マジで人生最良の日と言ってもいいかもしらんよ。くくく。

「で、おいらは何をすりゃいいんだ?」

 商会とか言われてもさっぱりだぞと首をかしげる張紘。ここいらへんの切り替えの速さは流石だと言わざるを得ないがなにもおかしくないな。思うところを軽く説明する。のだが。

「なるほど、物価の安定。それが第一義ってことだな」

 ふぅむ、と頷く張紘。ある程度の業務内容と企業理念を伝えただけでこれである。一を聞いて十を知るとはこのことか。ちなみに俺は頭が凡人なので三聞いて二くらいしか分からん。沮授は一を聞いて二くらいが精々と謙遜していた。倍返しか!

「おうよ、だから、赤字にならなきゃあ、それでいい」
「どちらかというと、買い上げ価格の広報が趣旨ってことだな」
「そういうこった。その場で買い付けるなり、町に売りにいかせるなり、さ。
 どっちでもいいんだ。差益の目安はまあ、後でうちのに相談してくれ」
「それは助かるなあ」

 流石に商売のノウハウなんてないしな、と張紘は笑う。沮授が腹黒系イケメンなら張紘は爽やか癒し系イケメンだな、なぞアホなことを思いながら業務内容のばっくりしたとこを伝えていく。
 はっきり言って儲けの多寡なんぞは問題ではない。収穫量が急拡大した農作物の物価の安定がその主眼である。それを俺のてきとーな説明で理解した張紘はマジで能吏である。それも破格の。これはすごい人材をゲットしたでぇ・・・。
 これは、きちゃったかな。俺の時代が。

「盛り上がっているところすまないが、私は何をすればいいのかな?」

 そう問いかけてくるのは燃え上がるような赤毛を三つ編みに括った麗人である。張紘の連れで赤楽と言ったか。さて、俺の三国志知識にない名前だが。

「あ、すまねえ、おいらのことばっかだった」
「いや、それはいいんだ。実際、やりがいのある仕事だと思う。
 私も負けてられないな、と思っただけだ。
 とはいえ、張紘と違って身体を使う仕事しかできないがね」

 ニヤリ、と凄味のある笑みを浮かべて背負った剣をちらりと見せつけてくる。うん。そのオーラといい、身のこなしといい普通に強いなこの人。まあ、無名の武人ってとこか。だがそれは好都合というもの。

「あー、そうだな。とりあえず張紘の護衛をしてもらおう。
 しばらくは二人で近隣を回ってもらって商売の流れを掴んでもらうつもりだしな。
 最悪、荷とか資金は捨ててくれていい。ただ、張紘だけは無事に連れ帰ってくれ」
「把握した。なに、賊の百人程度ならなんとでもするさ」

 なにそれこわい。赤楽さんの凄味に泡吹いて白目向いて卒倒しても許されるんじゃね?とか思っていた俺の意識を現世に呼び戻したのは張紘の一言だった。

「ふむ。つまり、だ。おいらは金では買えないものを持ちかえれば期待に沿える、と思っていいのかな?」
「――然り。だから死ぬなよ。お前に死なれたら困る。
 人質に取られたら千金だって積んでやる。だから死ぬな」

「うーん。ずいぶんとおいらを評価してくれてるみたいだけど、なんでだ?」

 そりゃあ、K●EI参照しても屈指の内政特化の強キャラだしなあ。とも言えず。

「袁家ってな。化け物みたいな人が普通にごろごろしてるんだよね」

 師匠とかねーちゃんとか沮授とかな!

「それで、これでも人を見る目と言う奴はあると言わせてもらおう。そして張紘。お前は、だ。
 お前はこの中華でも屈指の才能を持っている。
 俺はこの中華、漢朝の治めるこの平和を保ちたい。乱世なんてまっぴらだ。
 俺一人でできることなんてたかがしれている。しれてるんだよ。だから、張紘の力を借りたい。お前の力が必要なんだ。
 ――頼むよ、力を貸してくれ」

 思えばここは正念場、である。
 張紘に出会えたのはきっと天佑。だがそれを活かすことが出来るかどうかは俺次第、である。断られたらどうしよう。這い寄るプレッシャー。震える両膝、薄くなる酸素。ぐらり、と揺れ。ぐにゃりと歪む世界に射した一条の光。
 ぎゅ、と痛いほど握られた手から伝わるぬくもり。そして痛み。いや、割とマジで痛いよ?陳蘭?マジで痛いよ?折れるよ?心の前に!物理的に!ほら、今俺涙目なのは君のせいだからね?
 などと目を白黒させ、支離滅裂な思考の海に逃避する俺を現実に引き戻したのは張紘の声であった。

「ああ、そこまで言ってくれるのはこそばゆいけど、承知した。おいらを如何様にも使ってくれ。
 その、思い描く治世。それにきっとおいらは役に立つ。役立って魅せるとも」
「頼りに、させてもらうぜ」

 張紘と俺との出会いはそういう感じだった。照れながらも手を差し伸べてきた張紘の笑顔を俺は、一生忘れることはないであろう。そう思った。

 今日も今日とて鍛錬の日々である。固定値は裏切らない、というのは数少ない真理であると俺は固く信じている。そして鍛錬、座学と一口に言ったってやるべきことは多い。まあ、この時代ではありえないほど効率的にこなしているという自負はあるけどな。
 ・・・だが、今。ものっそい眠い。煌々と贅沢にも輝く灯火を頼りに書を紐解いていたのだがどうにも、ね。

「おや、お疲れのようですね。そろそろ一区切りにしましょうか。今、そこまで根を詰めても仕方ないですし」

 でも対面の沮授の方が疲れてるはずなんだよなあ。俺と違って既に実務の一端を担っているのだ。んでもってそれが田豊師匠の補佐なのだからその負荷は推して知るべし、である。いや、ガチでこいつは化け物だわ。俺みたいな凡人とは格が違った。――知ってたけどな。
 そんな沮授とのあれやこれやの打ち合わせやら相談――ぶっちゃけ俺から沮授への一方通行で、沮授にとっては負担でしかない――は更なる深夜に及んだため、まーた田豊師匠の屋敷に泊まっちまったのである。多分週の半分くらいは入り浸ってる気がするなあ。
 そして一番鶏が鳴く頃に肉体的な意味で俺の鍛錬は始まるのだが。

「じろー、もっとはやくー」

 俺を乗り物か何かと思っているのかな?麗羽様が当然のごとく肩車されている状況で俺に更なる加速を強いる。いや、遊んでるわけではなく、ウォームアップのための走りこみの中の負荷――ということにしている。気にしたら負けだ。
 ちなみに右腕には猪々子――文醜の真名である――を、左腕には斗詩――これは顔良の真名――を抱えてのランニングだ。
 まあ、幼女とはいえ、三人抱えればそれなりの負荷になるからいっかーとか思ってる。基礎スペック強化と共になんかイベントとかの伏線になってるかもしれんしね。
 なお、猪々子と斗詩との真名交換はまた政治的なあれやこれやで強制イベントであった。まあね、武家四家の跡継ぎ同士だからね、仕方ないね!
 つうか、ここに爆弾の一つも放り込まれたら袁家の未来はマッハで終わること請け合いである。いやマジで。袁家、顔家、文家と紀家の跡取りが全滅したら色々えらいことになりそうである。まあ、だからこそ見えないところで護衛がついてるはずなんだけどね。袁家配下の武家四家のうち張家はそういうのもお仕事だからして。
 と、もぞもぞと猪々子が動き出す。おいばかやめろください。バランスが!

「ちょ、動くなってばよ。って危ない、落ちるぞ?」
「へへへー、一度やってみたかったんだー、とおっ!」

 どこぞのバッタモデルの改造人間みたいな掛け声を上げて俺の腕から飛び出る。

「ふぇ?き、きゃっ!」

 なんと並走していた陳蘭に飛びついた。お、上手いこと負ぶさったな。なんつー運動神経だ。流石未来の猛将だな。などと思っていたのだが・・・。

「アニキー!いっくぞー!」

 こっちにまた飛んできた。猿かお前は。
 ちょっとバランスを崩したが何とかワンハンドキャッチ。また俺の右腕に納まる。

「へへへー」
「うー、いいなあ」
「姫もやってみたらー?」
「う、うまくやれるかな……?」

 やるんかい。

 結果、三人中二人の幼女が俺と陳蘭を空中で行き来することになったのである。あ、斗詩は大人しく俺にぎゅっとしがみついてたよ?これは、ほんまええ子やでぇ・・・。
 でもこの三人組がこのままのノリで成長すると理不尽に斗詩が苦労するような気がする。そう思って撫でくりまわしてやる。嬉しそうにしているが、君の将来は七難八苦マシマシになりそうなんだぞ。頑張れよ?うん、頑張れ!
 ま、麗羽様も猪々子も大人になれば落ち着くだろうて。多分、恐らく。きっと、メイビー。

「しっかし麗羽様も結構師匠のとこに入り浸ってるよなあ」

 朝練の後。軽く水浴びをした後に水菓子を齧りながらふと思ったのだ。確か袁紹と田豊って不仲じゃなかったっけか?まあ、いい流れではあるな・・・と思っていたら俺の言葉に呆れたように沮授が。

「二郎君。・・・君が本気でそう思っていると言うのを僕は理解しています。ですが、世の中はそうではない。そして君の立場以上に袁紹殿はですねえ。そこのところを分かっていると思っていたのですが――」

 ええと。でもまあ、そういや麗羽様ってば政争の中心だったか。田豊師匠のとこに来るのはまずい?でも沮授が止めないということは師匠も問題視していないということであろう。

「むう。俺は袁家の政争に参入するつもりはないぞ」

 そりゃあ、麗羽様は今のところ俺に懐いてくれてるからして。上手くやればあれこれ好き放題できるだろうとかいうのは下衆の勘ぐりと言う奴だ。麗羽様を通じての袁家の舵取りとか俺の手に余るに決まっている。

「やれやれ、困ったものです。二郎君はそれでいいのでしょうけど。田豊様の思惑、知らないとは言わせませんよ?」

 え?なにそれ。ガチで知らないんですけど。知らないんですけど。知ってることになってるの?やめてよね。俺が本気出しても師匠の思惑とか分かるわけないじゃん。

「知ったことかよ。紀家は武家だぜ?そういうのは田豊師匠とかお前にお任せって感じさね」

 ここは逃げの一手である。大体腹芸とか向いてないしね。見ざる聞かざるである。

「――困ったものです。袁家の躍進、繁栄に大いに貢献している次世代の旗手である二郎君の言葉とも思えませんね」

 褒め殺しですね分かります。俺如きの動きが大身たる袁家にそこまで影響があるわけないですしおすし。まあ、俺が紀家を継ぐ時のバックボーンとしての下駄を履かせようとしてくれているのには感謝しといた方がいいのかな?

「いや、それもこれも袁家、ひいては漢朝への忠誠あってのことさ」

 日和った俺の言葉に肩をすくめて苦笑する所作はマジイケメン。座してイケメン、立ってもイケメン。歩く姿は超イケメンである。妬ましいことこの上ない。

「いえ、それほどでもないですよ」

 いつの間にか口に出していた俺のジェラシー混じりの雑言すら軽く受け流すこいつは輝くイケメンである。しかも爽やか系のだ。
 ぐぎぎ、ガチで俺とは格が違った。口惜しいから蹴ってやろう。げし、げし。

 夕餉を皆でつつきながら更に沮授と雑談する。幼女三連星の面倒は陳蘭が見ている。念願のお姉さん的立ち位置だぞ頑張れ。というか頼むわマジで。俺には無理だ。
 ちなみに屋敷の主である田豊師匠はいない。最近はよく政庁や袁家に泊り込んでいるらしい。偉い人は大変だなーと思うのである。激務とはこういうのを言うのだろうなぁ。うちのとーちゃんとはえらい違いである。

「しかしまあ、麗羽様と田豊師匠の関係がいいなら俺には言うことはないな」

 当初二人の関係についてはある意味諦めていたのだ。しゃあないしゃあないって。でも、その関係性がよくなりそうな可能性があるならば後押しせねばなるまいて。いや、俺に何ができると言われたら困るのだけんども。

「――しかし田豊師匠は忙しそうだな」
「ええ、ただ充実はしてらっしゃるみたいですよ?」
「それは実に結構なこったね。まだまだ倒れられたら困るからな」

 俺の言葉にくすり、と沮授が笑う。

「そうですね。それを狙ってる人もいるみたいですけどね」
「はぁ?今の田豊師匠を狙うアホがこの袁家に――いないではないかもだがなあ。
 外からの介入、か?」

 政敵である麹義のねーちゃんだって流石に田豊師匠をどうこうとかせんぞ?袁家の行く末を考えれば猶更、だ。

「いえ。むしろ内部ではないかと」

 常ならばくすくすと可笑しげに笑うであろう沮授。だがその表情に一切の感情は浮かんでいない。そしてそこまで言うということは。つまりそれは既にある程度尻尾を掴んでいるということなのであろう。むむむ。

「・・・いらんことを聞いたか、すまん。だが麗羽様の守護に関しては全力を尽くすから」
「そうですね。逆に、あのお方に何かあったらその責は田豊様と二郎君に向かうでしょうし」

 ふむ、なるほど。まあ、田豊師匠にあれこれ聞いても答えてはくれんだろうし、師匠が暗殺云々で死ぬとも思えないけどね。

「二郎君も気をつけてくださいよ?」
「俺の心配する前に田豊師匠の一番弟子で腹心のお前の方がやばくね?」
「僕はまだまだ塵芥程度の小物なので気に留める人もいないでしょう。大体、二郎君の方が派手に動いてますし」

 ふむ。沮授がそうまで言うならば俺をどうこうしようという動きもあるのかな?

「まー、毒でも盛られない限りなんとかなるな」
「おやおや、珍しく強気ですね」

 まあね。も少ししたら俺は軍務に就くからして。身の安全を考えれば万全だし。軍事スキルが伸びるしな!これからの乱世、軍事スキルは必要不可避なのだよ明智君。

「まあ、なんにしても、さ。これからようやく実務に関わるからさ、よろしくどうぞ」

 あれやこれやと沮授とガチトークし、そののち馬鹿トークに移ろうとしたのだが。

「おやおや、大した人気のようで。羨ましい限りですね」
「ぬかせ」

 呼び出しである。沮授と余人を交えないミーティング(意味深)をしている俺を一方的に呼び出すことのできる人物なぞ片手で足りる。そして俺なんぞを呼び出すのは――。

「好かれてますねえ。いや、次代の袁家は二郎君を中心に動きそうでなによりです。その際はお引き立てのほどを――」

 沮授がいい笑顔で揶揄するわけである。呼び出しの主は麗羽様。要旨はまあ、あれだ。暇だから来なさい!ってことである。まあ、主君の無聊を慰めるのもお役目というものである。

 ――さて、幼女とは些細なことで衝突をするものである。そしてあっけらかんと仲直りすると相場は決まっている。のだが。衝突する幼女が背負うものによっては周囲の胃袋はストレスで胃がマッハである。
 つまり眼前で繰り広げられる口論に俺のsan値が直葬されそう。

「もう!知らない!だいきらい!」
「アタイだって姫のことなんか、だいっきらいだ!」

 売り言葉に買い言葉ですね分かります。ってどうすんだこれ・・・。本人たちが後日和解するにしてもお付きの人員とかのメンタル、洒落にならんでしょ。俺とか豆腐メンタルなんだぜ。
 斗詩は猪々子を宥めながら、ちら、とこちらに目礼して猪々子を連れて出て行く。任せましたと言わんばかりの信頼に溢れた視線が痛い。どないせいと。
 ・・・説教なんて柄じゃない。でもただまあ、ほったらかしにしとくのも、なあ。ほっといても平気な気もするが、長引くと周囲がいらん邪推をするし、こじれたらかなわんからなー。ここは介入の一手しかあるまい。と決意する。損な役回りだぜ、と言ったら後日張紘に苦笑された。赤楽さんには舌打ちを頂いた。
 解せぬ。

 夕餉と入浴もそこそこに麗羽様は布団という絶対防衛ラインを崩そうとしない。他者の介在を拒むそれはまさにATフィールド。そりゃ近侍とかは何もできないわ。だがしかし、である。将来の袁家統領とその筆頭武将の不和なんて俺が看過できるわけもない。介入するべし、である。
 めりょ、と布団をめくってやる。何かじたばたと抵抗があったが営業トークで排除の一手。そして後ろから麗羽様を抱きしめる。もとい、拘束する。ん、逆か?

「じろー・・・」

 むっすりとしていた麗羽様の態度が大幅に軟化している。おこちゃまとは言え地頭はものっそい聡明なのだ。そりゃあ袁家に付き従う武家四家。その筆頭たる文家の次期当主(見込)との関係改善については思う所があるのだろう。

「はいな、二郎ですよ」

 それでも思う所はあるのだろう。ぶすっとして呟くのだ。なにこのかわいいいきもの。

「わたし、悪くないもん」

 力いっぱい自分の正当性を主張する。確かにささいな言葉の行き違いから発展した案件だからして、どっちが悪いとかはこの際どうでもよかったりする。まあ、とりあえず俺としてはこの涙目な麗羽様をどうするか、だ。

「だって、大嫌いっていっても、そんなこと思ってないって わかってるはずなのに」

 あー、取っ組み合いになるきっかけはそれだったなあ。ふと、じたばた暴れる――俺からしたらか弱いものだが――麗羽様を抱く手をほどき、正面から向かい合う。むす、としている麗羽様の耳元で優しく囁く。

「実は俺、麗羽様のこと、嫌い、なんですよ」

 麗羽様の目が大きく見開かれる。最初に混乱。そして何を言われたかを理解し、そしてまたパニックところころ表情が変わる。
 見る見るうちに表情が歪み、ぱっちりとした双眸に大粒の涙が溢れてくる。

「え、じ、じろー?うそ、でしょ・・・?」
「ええ、嘘ですよ」
「え、あ、ぇ?」
「勿論俺は麗羽様のことが大好きですよ」
「な、え?え?」

 混乱しているのだろう。ずびずびとむずがる麗羽様を抱きしめ、頭を撫でる。

「この二郎が麗羽様のことを嫌いなわけないでしょう?」
「で、でもきらいっていったもん!」

 そう、放った言葉を取り戻すことはできないのだ。よしよし、と頭を撫で繰り回しながら囁く。

「麗羽様、言葉というものはね、思ったより大きな力を持ってるんですよ?」
「――!」
「だから、ね?大好きな相手には、きちんと言葉にして伝えないと」
「ぅ・・・」
「時間が経つと、仲直りしづらくなりますよ?」
「・・・うん、わかった。
 でもじろー?ほんとにわたしのことすき?」

 上目遣いでおそるおそるといった風で麗羽様が聞いてくる。双眸に溜まっていた涙は絶えず流れ落ち、頬を濡らす。俺に問う声も震えて、嗚咽混じりである。む。これはやり過ぎたかもわからんね。ここはフォローの一手である。

「何度でも言います。麗羽様、大好きですよ」

 ぎゅっと麗羽様を抱きしめる。すがり付いてくる麗羽様にちりちりと良心が痛む。いや、これほんとにやりすぎたなあ、と。

「ほんと?ほんとにほんと?」
「ええ、ほんと、です」
「じろーがわたしのこときらいだっていった時ね、胸のおくがきゅっとして、泣きだしそうになったの」

 麗羽様を抱きしめる腕に力を込め、耳元で囁く。

「麗羽様、大好きですよ」

 それでも、びすびす、と嗚咽を抑えきれない麗羽様の可愛さが俺の中でストップ高である。

「ほんとにほんと?」
「勿論ですとも」
「だって・・・」

 それでも、ぷう、と頬を膨らまして思いのたけを吐き出す麗羽様がとてつもなく、いとおしい。この思いが通じたらいいのにな、と思いながらひたすらに耳元で謝罪と甘やかしの言葉を囁く。

「じゃあ、言うことひとつきいて!」
「仰せのままに」
「今日は朝までいっしょにいて!」

 それは不味かろう。流石にそれは各方面から睨まれている視線が更に厳しさを増す気がするのではあるが。

「言うこと聞くっていったもん!」
「そうでしたね」

 癇癪を起した体で、その実俺の反応を不安げに見る麗羽様を見るとなー。まあ、仔細についてねーちゃんと師匠にソッコー報告しといたら何とかなる。と思う。どっちから行くかについては深く考えないようにしようそうしよう。

「でね、ずっと大好きって言ってね?わたしが眠るまで」
「ええ、承知しました。二郎は麗羽様が大好きですからね。お安い御用ですとも。まあ、麗羽様より先に寝ちゃう可能性もありますけどね」
「じょうじょうしゃくりょうはするから安心していいからね!」

 ぺったんこな胸――袁逢様の胸部装甲を見ると将来性はあると思う――をそらせて麗羽様は笑う。その屈託のない笑顔を、俺は大切にしたいと思う。

 翌日、きちんと仲直りをしている幼女を見ながら呟く。

「子供ってすごいなあ」
「どうしたんですか?」

 不思議そうに陳蘭が問いかけてくる。

「いやー、すぐ仲直りできるってすごいな、と」
「ああ、昨日の喧嘩は激しかったですもんね」

 子供の特権。あんなに激しく喧嘩してても今泣いたカラスが、って感じである。俺がなんかせんでもよかったんじゃないか、と思っていたのだが。

「アニキー!」

 ドゴォ!という勢いで飛びついてくる猪々子を抱きかかえてやる。流石有名武将。幼女とは言えじゃれてくるのをあしらうのもそろそろ一苦労である。地味に肋骨が痛い。

「ありがとな。姫とすんなり仲直りできたよー」

 それに対して何か恰好いいことを言ってやろうと、キリッと表情を整えている間に俺の双の腕から離脱完了である。麗羽様と斗詩に向かって駆け出し、三人でキャッキャウフフとしている。
 うーん、この。いや、まあいいんだけどさ。



 それはそうと今日も今日とて鍛錬である。固定値は裏切らない。身体をいい感じに痛めつけて疲労困憊コンバイン。目指すは湯殿。そう、孤独で、だからこそ救われるような。そんな入浴で俺の鍛錬は完結するのである。
 そんなルーチンを淡々とこなすはずだったはずなのだが。

「そりゃー!」

 俺の声にきゃあと嬉しげに声をあげる麗羽様に遠慮なく湯をぶっかける。どしゃ、とな。怒涛の水流。かーらーのー洗髪である。俺なりに麗羽様の頭をごしごしと洗う。
 はい、麗羽様をお風呂に入れています二郎です。まあ、湯殿への道でインターセプトされたからね、仕方ないね。「お風呂?じゃあいっしょにはいるー」と言われたら「はい」か「yes」で応えるしかないじゃない。
 ――麗羽様の御髪おぐしとか、本来はものっそいトリートメントとかせんといかんのだろうなーと思うのだが俺にそんなスキルはない。構わずに光輝が顕現するような金色の髪の毛を、わしゃわしゃと遠慮なく洗う。
 てきとーな俺の洗髪が新鮮なのだろうか。割と麗羽様は俺に髪を洗ってもらいたがる。いいのかなあ。痛くないのかなあ。

「よーし、目をつぶってー」
「つぶったよ!」
「どっせい!」
「きゃーっ!」

 ざばばんと頭からお湯をかける。どばっとかける。遠慮なくかける。それに無意味にはしゃぐ麗羽様。うむ。ここからが本番である。

「溺れたら、め!ですからねー!」
「きゃー!」

 喜色満面な麗羽様を広大な湯屋に放り投げる。捻りと回転を加えるのがコツだ。絶叫系の娯楽施設であるかのごとく、その軌道が過酷であるほど麗羽様の満足度は高まる。それはそれでどうなのよ。
 ぶくぶくと沈み込む麗羽様を回収するのも俺なのだからまあ、いいとしよう。
でもまあ、こんなに乱暴に扱うのも俺くらいなもんだろうな。故に楽しく感じるのだろう。お風呂だけではない。かなーり俺にべったりである。
 ・・・十年後はともかく、幼女の裸体に欲情する性癖なんぞはないから何も問題ないし、無邪気にはしゃぐ麗羽様を見ているとそれだけで癒されるというものだ。

「ふあぁ・・・」
「そろそろのぼせてきましたか?」
「もうちょっとー」

 そういって麗羽様は俺におぶさってくる。これはのぼせてきたがまだ上がりたくないというサインだ。中々にお風呂好きの幼女である。だが脱水症状で倒れられても困るのでそのまま湯船から出る。

「あー、じろーのいじわるー。まだ入ってたいのにー」
「俺がそろそろ上がりたいんですよ。それとも一人で入ってます?」
「うー。じゃあいい。のども渇いたし」
「じゃあ、後でお水もってきましょか」
「うん、まってる!」

 満面の笑みはまさに太陽のように光輝を放つ。その光輝にあてられて、まあなんだ。この方のためならばと普通に思っちゃうのは仕方ないよね。これが天性のカリスマってやつだな。ほんと、将来が楽しみである。

「ねえ、じろー」

 こくこくと冷やした蜂蜜水を飲みながら麗羽様が俺に問いかけてくる。

「ほいさ」
「じろーは、ちゅうってしたことある?」

 ぶほ!

 錯乱ボーイに何を言うのだこの幼女は。つかその意味分かってないでしょぉ?

「は、はあっ?」
「んーとね、母上が言ったの。寝る前に大好きな人に
 ちゅうをしてもらったら怖い夢を見ないって」
「は、はあ。と、言うと・・・?」

 袁逢様、娘さんに何を吹き込んでるのですか。と内心でクレームの嵐である。

「でね、昨日ね、怖い夢をみたの」

 ちょっと潤んだ目で上目遣いとか。効果が抜群すぎて困る。これ将来えらいことになるんだろうなあとか思いながら続きを促す。

「誰もね、いないの。かあさまも、じろーも、いいしぇもとしも、ちんらんも、でんぽーも。
 周りに誰もいないの。ううん、いるんだけどいないの。だれも私をみてないの」

 ――聡い子だな。そう思う。それが幸せかどうかは微妙なところだが。知らないほうが幸せってこともある。袁家の跡取りであるから自分がちやほやされているというのを感じているのだろう。本当に、聡い。

「じろーはどこにもいかないよね?」

 涙ぐむ麗羽様に俺は何と答えるだろう。どう応えられるだろう。だが、俺が頼りとばかりに縋り付く麗羽様。・・・思えば袁逢様の意向で交換した真名。だがそれはきっかけだ。俺は、俺の意思で麗羽様を守りたい、と思っている。

「どこにも行きませんよ。お側にいますよ」
「うん、そうだよね・・・」

 まだどことなく不安げな麗羽様。それがとても心細そうで、寄る辺なさそうで。

「きゃ?」

 だから俺は麗羽様をぎゅ、と抱きしめるのだ。

「二郎はここにおりますよ。ね?」
「ふぁ、あ、うん。じろーはいるね。わたしのそばにいるね。じろーをかんじるよ・・・。
 もっと、もっとぎゅっとして?おねがい・・・」

 無言で俺はさらに抱きしめる力を強める。おそらく苦痛を感じてしまうだろうほどに。

「じ、じろぅ・・・」
「いらない、と麗羽様が言われるまでお側にいますよ」
「いらなくなんて、ならないよぅ・・・」

 潤んだ目で麗羽様が俺を見上げてくる。袁家、というバックボーン。それは光も闇も内包している。それはどこまでこの、聡い子の心を責め立てたのだろう。抱きしめる腕の力を込めるほどに嬉しそうに顔を綻ばせる。

「すん・・・」

 感極まったのか、麗羽様の双眸から涙が漏れてくる。

「麗羽様・・・」
「じろぅ・・・」

 そっと、その双眸に唇を寄せ、涙を吸い取る。

「ぁ・・・」

 続いておでこに唇を寄せ、頬に口付ける。

「俺がお側におりますよ」
「ん・・・」

 きゅ、と麗羽様が俺にすがりついてくる。潤んでいた目と、ぐずりつつあった鼻を押し付けてくる。何かをごまかす様に。

「あ、ありがと。じろー、だいすき!」
「俺も、ですよ」
「うん。ずっとだいすき!だからいつもみたいに、お話、して?」

 今泣いたカラスがなんとやら。ああ、麗羽様には笑顔が似つかわしいなあ。そしてその麗羽様がリクエストをしてくれる。

「いいですよ。――むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんがいました。
 おじいさんは山で雌竜を狩りに、おばあさんは、川で雄龍を狩りにでかけました・・・。
 おじいさんは大鎚、おばあさんは双剣を得物としていました・・・。おじいさんは罠を仕掛けて・・・」
「くー」

 安らかに寝息をたてる麗羽様。安心しきって幸せそうなその寝顔。誓いを新たにする。三国志なんて、やらせはしない。

本日ここまです

乙&誤字報告でーす
>>38
>>もっと言えば袁家領内の統治ににある人物が登場
○もっと言えば袁家領内の統治にある人物が登場
>>会ってみたいとかいうのもごく自然なことである。
間違いではないですが 会ってみたいと(か)いうのもごく自然なことである。 か が余計かと
>>40
>>なぞアホなことを思いながら
○などとアホなことを思いながら まあしゃべり言葉としては間違いではない気もします
>>42
>>君が本気でそう思っていると言うのを僕は理解しています。
○君が本気でそう思っているというのを僕は理解しています。 または 君が本気でそう思って言っているというのを僕は理解しています。 かな?
>>46
>>そんなルーチンを淡々とこなすはずだったはずなのだが。
○そんなルーチンを淡々とこなすはずだったのだが。

男3人がそろいましたねえ、こいつらの関係がとても好きなので今からwktkですよ
そしてれーは様を諭す二郎ちゃん、というか一回突き放してから甘い言葉の雨あられとかこれまんまやくざの手口じゃ…
しかも相手が親友とけんかして心が弱ってる時に…これ以上は危険な気がしてきたgkbr

>>51
誤字指摘感謝っす

きちんと点検したつもりやったんすけどねえ……ほんと感謝っす

>そしてれーは様を諭す二郎ちゃん、というか一回突き放してから甘い言葉の雨あられとかこれまんまやくざの手口じゃ…
意識してやってないからセフセフ


そして年末に向けて激務ですよ。
ほんと、逃げたいw

 南皮の街を陳蘭を伴いぶらつく。昼は適当に屋台で買い食いである。

「あんまり無駄遣いしちゃ、駄目ですよ」
「ふ。小遣いってのは無駄なことに遣うもんだ。それに金持ってる奴が金使わないと経済が回らん。だから、持てる者である俺は金を遣うというのはもはや義務ですらあるのだよ。
 というわけであの餃子も試してみようそうしよう」
「もう、二郎様ってば・・・」

 陳蘭のお小言をBGMにしながら街の徘徊を続行する。ほんと、毎回付き合せて悪いなーとか思ったりもする。まあ、それがお役目と言ってしまえばそれだけのことなのだろうがよく付き合ってくれるものである。
 と、陳蘭が足を止めてなにやら見ている。

「どったの」
「い、いえ、すみません。あっちに、ほら」
「ん」

 見ると流しの芸人だろうか。琵琶を伴奏に女芸人が歌を歌っていた。終わるとちっちゃな女の子がおひねりを集めに籠をもって駆け回る。ふーんと思いながら小銭を投げてやる。
 こういった娯楽的な階層が目立つということはそれだけ民の生活が豊かになっているという証左だ。緩みそうな口を引き締めてエンドユーザーにリサーチをかけるとしよう。

「そんなに歌、上手かったか?」
「いえ、そうじゃないんですけど、その、綺麗だな、って」
「あー、衣装な。着飾ってるしなー」
「なんか、いいなあって思って」

 なるほど。芸事そのものだけではなく、その装飾も憧憬の対象、と。なるほど。これは見落としてたな。華やかだからこそ憧れる。言われてみれば当たり前ではあるのだが。
 これは陳蘭にご褒美をあげなければ、と熱い使命感を覚える。

「今度、ああいうの仕立ててもらうか」
「ふぇ?い、いいです。どうせ似合わないし」

 顔を赤くしてぶんぶんと手を振る陳蘭。んなこたないと思うんだけどなぁ。  まー、一般的に女の子が着飾るなんてまだ結婚の時くらいだからなあ。なんとか普通に女の子がおしゃれできるくらいには発展させたいねえ。

「あ、あの、ほんとにいいですからね?」
「ん、まあ、そのうち、な」

 陳蘭が綺麗なおべべお望みとあらば全力で叶えてやらねばなるまいて。ククク。

「話聞いてます?」

 聞いてるとも。陳蘭がちらちらと目移りするくらいにアクセサリーとかも充実してきているってことを認識するくらいにはな!

 と、歩き出そうした俺に声がかけられる。

「あ~ら、二郎さん、珍しいですわね。てっきり隠遁されていたかと思いましたわ」
「あ、アニキだ、ひっさしぶりー!」
「ご無沙汰しております」

 意外なところで麗羽様たちに出くわした。三人とも美幼女が美少女にランクアップしている。これが実に目の保養であり、感慨深いものがある。これは唾つけとくべきでしたよねぇ・・・。

「ええと。俺だってたまには仕事します、よ?」
「・・・まあ、猪々子さんよりはされるでしょうね」
「あー、姫ってば。アタイだってアニキよりは頑張るっての!ひっでーなー」

 斗詩が俺たちのやり取りにくすくす、と笑う。・・・これでも仕事で来たのは本当なんだけどね。

「麹義のねーちゃんに報告書出しにきたとこだったんだわ」

 うげ、と猪々子が呻く。うん、何を思ってもいいけど声に出すなよ扱いに困るし。
 麹義のねーちゃんは二十年近く前の匈奴の大侵攻の時から常に第一線を張り袁家の防衛線を張り続ける知勇兼備のウルトラスーパーな名将、レジェンドである。一朝事あらば、袁家軍の総大将は間違いなくねーちゃんだろう。猪々子にとっては口うるさい先達でしかないだろうが、実際たいした人なのだ。
 政戦両略に長けており、特にその政治力は隔絶。魑魅魍魎湧く袁家において後背からの圧力を援護へと変え、前面の敵を討つなんぞ凡百にできるものかよ。
 少なくとも俺には無理な芸当を鼻歌混じりにやってのけるねーちゃんはガチで英傑的な存在であるのは確定的に明らか。間違っても喧嘩を売ってはいけない。俺なんて媚びを売りまくりのバーゲンセールであるし。

「そうだアニキ、用事済んだんだろ?」
「おうよ」
「じゃあ手合わせしようぜー」
「話が見えん」

 なんだこの脳筋美少女。アタイより強い奴に会いに行く、とか言って旅にでも出そうだなおい。

「だってアニキー、あれじゃん?梁剛隊で百人抜きをしたじゃん!」
「なんで猪々子がそれを知ってるんだよ・・・」

 結構、年単位で昔のことなんですがねえ。

「えー、武官の間では結構広まってるぜー?
 紀家の後継は武においても抜きん出ていたってな!語り草ってやつ?」
「どーせ身内だから箔付けにインチキしたとかいう噂も出てるだろ」
「へー、よく知ってるなー。でも信じる奴はほとんどいないね。
 あの梁剛隊の面子が。絶対にそんなことするもんかい。
 まあ、アタイはアニキがものっすごく強いのは知ってたけどな!」
「買いかぶりもいいとこだっての」

 俺は強いと盲目的に信じてくれるのは嬉しいのだがねえ。小さい頃に相撲で勝ったくらいで、なあ。

「だから、また手合せしてよー。ねーってばさー」

 可愛くおねだりしてくる姿に心がグラリとするのを押さえつける。のだが。その内容がねえ。

「あーら、いいじゃありませんこと?」
「ちょっとぉ、これ止める立場でしょうが麗羽様は・・・。
 やるにしても得物はなしですよ?怪我してもいいことないですし」

 まあ、麗羽様がゴーサインを出した以上、それは決定事項なわけである。練兵場に移動し、構える。まあ、まだ武力全盛期ではないだろうし、なんとかなる、かな?
 なると、いいなぁ。

※この後、滅茶苦茶苦戦した。

 これ、ガチで猪々子の基礎スペック半端ないって!完璧に決まった上四方固めをブリッジで跳ね返すとか・・・そんなんできひんやん普通!

 さて、久々沮授とお仕事のお話である。あれやこれやと報告を受けて意見交換をしているのだが。・・・実は想定以上に南皮他袁家領内に流入する流民が多い。食料がある所に民が群がるのは必然ではあるのだが、ね。そして都市部に流入する民には二通りある。
  一つは難民だ。天災で全てを失った者だ。特に江南からの難民が目立つ。なんでも大水害があったらしい。
 もう一つは農家の二男、三男などといった農村の余剰労働力、或いは穀潰しだ。――農業指導により同じ面積でも収穫が上がり、効率がものっそいよくなって耕す田畑を親からもらえなかった層だ。これが袁家領内を中心にかなーり増えている。
 こっちは比較的、懐に余裕もあったりするからそこまで治安への影響はただちにはなかったりする。だがまあ、いずれは食い詰めるのだろうけどね。だが、これはチャンスでもある。都市部での賃金労働者の増加が見込めるということ。
 これは産業革命の発生条件の一つだ。流石に機械化されてないから本格的なものは無理でも、工場制手工業マニュファクチュアならば、いける・・・かもしらん。いや、いけるいける。
 ちなみに工場制手工業とは地主や商人が工場を設け、そこに賃金労働者を集め、数次にわたる製造工程を1人が行うのではなくそれぞれの工程を分業や協業をおこない、多くの人員を集めてより効率的に生産を行う方式のこと。分業であるために作業効率が向上し、生産能力が飛躍的に上がるが、技術水準は前近代的なものにとどまる。経済史では、農民の副業として発展した問屋制家内工業の次段階とされる。さらに産業革命以降は、工場内で機械を用いて製品を大量に生産する工場制機械工業が工場制手工業の次の段階として登場する。ここまで前提。読み飛ばしてもよし。

「人口増加、ですか?」
「おう、想定より相当増えてるだろ?」
「そうですね。ですが、流民の流入は想定していましたからねえ。故に食料の備蓄に問題はありません。
 今のところ、他の地域に流す余裕が十分にありますよ」

 ここまでは順調か。よしよし。

「袁家領内が中華の穀倉となる日も近いな」

 俺の言葉に沮授はくすり、と笑みを浮かべる。

「ふふ、既にそうなっています。と言っても過言ではないでしょうね」

 流民の流入は想定の2割増(沮授調べ)。人口の自然増についても同様の傾向らしい。職と食が安定したら労働力確保もかねて子作りが盛んになる、というのは予測の範囲内。これから更に想定以上の人口増があるかもしれんから、食料の備蓄も継続している。蝗害とか怖いしね!

「ですがそろそろ都市部で流民の増加による揉め事が増えつつありますね」
「ふむ・・・」

 農家の二男坊以下や流民らへんが職を求めて都心部へと出てきたからであろうな。ここまでは想定の範囲内。なので対策も一応考えてある。

「そいつらは雇用の創出で賄う」
「と、いうと?」

 これは政治がせんといかんことだ。地方から出てきた余剰人口、他方から流入する流民をほっといてたらロクなことにならん。きっちりとその労働力の受け皿を造るのは為政者の義務である。働く意思がない奴については言及を避けるがね。

「公共事業だな。治水工事、街道整備、城壁の補修、まずはそんなもんかな」
「まあ、予算には余裕がありますからね」

 豊富な予算と(口減らしで都市部に来た農家の倅たちや流民で)安価な労働力。乗るしかないこのビッグウェーブに!大公共事業時代の到来である。ニューディール政策を先取りしてやんよ。
 とは言え、無駄なことをするつもりはない。公共事業・・・インフラの整備とは未来への投資なのだからして。なので自重しない。マジで。
 食料の増産と雇用の拡大。治安の維持には武力の増強よりもこっちが有効なのだ。という主旨の説明を沮授にしようとしたのだが。

「なるほど。膨れ上がった余剰人員については棄民しかない、と思っていましたが・・・。
 それすら資源として活かす。いや、二郎君の深謀遠慮には舌を巻く思いですよ。いや、その先見には嫉妬や敗北感があるはずなのですがね・・・」

 これでも田豊様の一番弟子として鍛えられていて、内政にはそれなりに自負があったのですがと沮授は苦笑する。

「しかしこれはもう認めざるを得ないですね、二郎君。僕はとても君にかないそうもありませんよ」

 ひらひらと両の手を挙げて降参の意思を伝え、首を振る。のだが。
いやいやいやいやいや。俺の拙い説明の、その切れ端で察した沮授こそが傑物でなくてなんなのだと思うのですだよ。産業構造の変遷とかあれやこれやについてを文字通り三行で理解するなんてありえないだろうよ・・・。

「いや、俺としては沮授がいてくれてよかったというのが本音なんだが」

 俺の言葉に沮授は苦笑の色を濃くする。その色は沮授にしては珍しく暗い。

「よしてくださいよ。二郎君だから言いますがね、敗北感なんてものじゃないですよ。一体自分は今まで何をしてきたのだって、ね」

 まてまてまてまて。なんでお前が、田豊師匠の一番弟子でスーパーエクストラ文官カスタムでウルトラエリートな沮授がネガティブ一直線なんだってばよ。

「いや、本当にね。自分の才というものがいかに小さいかを痛感しましたよ。本当に、ね。なけなしの矜持だって、あればあるほど惨めなモノです」

 動揺しまくっていた俺だが、ネガ吐いてる沮授の言葉にカチンとくる。ああ、カチンとくるぜ、とさかにくるぜ。

「ちょ・・・待てよ。それ以上は許さんぜ。それ以上自虐は許さん」

 へえ?とでも言いたげな――ちょっと拗ねたような沮授の視線に俺は激昂する。

「あのな!俺がお前に実務で及ぶはずないだろうが!あれやこれや好き勝手言ってるけどな!それを実際に、実務に落とし込めるかどうかって言ったら少なくとも俺にはできんわ!」

 むしろ俺に出来るとかガチで思ってたら困ったものである。

「沮授よ。張紘が偉いのはな、すごいのは、だ。俺がてきとーにぶちあげた絵空事をきっちりとやりとげようとしてくれてることだ。だから、外は張紘に任せてきた。だったら内は誰が担うか、分かるだろ?」

 分かってください。お願いします。なんでもしますから。
 そんな思いを込めた視線を真正面から受け止めて・・・。刹那表情を引き締め。にこりと、笑ってくれた。

「やれやれ。これは張紘君に先んじられましたか」
「なに、沮授ならその差なんて大したことないだろう」
「と言うか、別に競争しているわけでもないですしね。煽られても困りますよ?」
「そういやそうか」

 苦笑する沮授に俺の考える公共事業の具体案を示していく。

「主要な街道には思い切って焼成煉瓦を敷き詰めよう。
 雨が降っても輸送距離が落ちなくなる」
「なるほど。各種物資の輸送にかかる時間を向上、安定させれば色々と捗りますね」

 プロジェクト「赤い街道」である。つまりまあ、街道を広げるだけでなく、アスファルト・・・は無理だから煉瓦で舗装してしまおうということである。それにより輸送コストが劇的なことになるはずである。そして沮授の言う通り、物資の輸送にかかる時間が想定しやすくなる。
 これは各種政策を立案する上で物凄く重要なことなのだ。まあ、本命は軍の移動速度向上なのだがね。言うまでもなく沮授はそれくらいご存知のはずである。

「なるほど、煉瓦の生産、原材料の需要にも雇用が生まれますね」
「お前と話すと話が早くていいよ。まあ、そういうことだ」

 失業率は低ければ低いほどいいのである。

「――ですがそうすると管理職の人手が足りなくなりますね。
 未だに出仕を拒む士大夫もいますし」

 なん、だと・・・。

「はぁ?!この期に及んで隠者気取りかよ。呆れたもんだな。――しゃあない。ほっとけ」
「ふむ、なるほどですね。士大夫層に媚びる気はないと」

 当たり前田のクラッカーである。いちいちご機嫌伺いなんぞやってられんよ。そんな奴らとはどうせそのうち衝突するだろうしな。

「引退した官僚に私塾をやらせろ。そうだな。有力者の子弟ならば問題なかろう。庶人を集めても、玉石混交で選別が手間だ。将来的には話が別だが」
「ふむ。悪くありませんね。豪商や官僚の子息であれば基礎教育も進んでいるでしょうしね。早速取り掛かるとします」

 くそ隠者気取りの協力は得られない模様。ならばこっちも責任を負う覚悟のない奴らに頼ってやるものかよ。

「しかし、さしあたっての実務についてはどうしましょうか。教育はいいとして流石にぽっと出の人材をねじ込むわけにもいきませんし・・・」
「ああ、それなら張紘が大丈夫だって言ってた。もう手元の商会の幹部級には旧知の人材を充てて、いくらかそれ以外にも管理職以上の役職が欲しい人材を確保しているってさ」

 流石は張紘である。各地の情報を吸い上げるわ、独自のコネクションで珠玉の人材を発掘してくるわ、俺の思いつきをフォローしてくれるとか。いやあ、張紘のためなら三顧の礼どころか三十くらい礼を尽くすっつうの。特盛マシマシアブラカラメでな!五体投地をフルセットで毎日こなしてもいいレベルである。

「流石は張紘だぜ。いや。奴は傑物だからな。それくらい朝飯前ってことかもな」
「信用してるのですね、張紘君を。そして彼の育てた、或いは育てる人材を」

 沮授の言に、にひひ、と笑って応える。

「信頼、だよ。沮授。勿論お前と同じく、な」
「おや、これは。――光栄の極み、と言っておきましょうかね」

 にこり、と笑う沮授はやれやれ、と頭を振る。何かを振り払う。
 そうして俺のことなんかほっといてあれやこれやと指示を飛ばし、書面に没頭していく。うん、どこか楽しげに。
 うむ。無表情に書類を捌くよりは余程よかろうて。そう思い俺はその場からそそくさと立ち去るのだった。
 ――仕事振られたらかなわんからね。

世は全てこともなし。・・・さて、平時における軍隊というものが何をやっているか、というと訓練である。ひたすら訓練である。軍隊とは訓練がお仕事なのだよ。

「なーにしけたツラしとんねん」

 がしっと俺の頭を掴んだのは敬愛すべき我が隊の長、梁剛の姐さんである。

「いや、自分の立ち居地に納得いかないものがあってですね」

 梁剛隊にて軍務に就いた俺は、当初はすっごく兵卒扱いであった。しかし、一通り下っ端の雑用をこなすと、梁剛隊の副官である雷薄の補佐・・・つまり副官補佐みたいな感じになっていた。
 曰く。
「いつまでも下っ端の仕事しててもしゃあないやろ。
 二郎にはとっとと、指揮官として大成してもらわんといかんからなあ」

 そう言ってカラカラと笑う姐さん。なるほど。促成栽培とかエリート教育というやつである。俺としては下積みからじっくりやりたかったのだけんども。

「そらな、下っ端がどんな仕事してるかを知るのは大事やで?
 でもアンタは下っ端のままいるわけにはいかんやろ?
 将来はウチらを指揮する立場になるんや。そしたら、時間の無駄やんか」
「そんなもんっすかねえ」
「そんなもんや」

 そんなわけで最近は専ら部隊運用のノウハウを教わっている。流石こちらはガチで兵卒からの叩き上げだけあって合理的な運用法を確立している。と感心しきりな俺である。

「今日は・・・北西に偵察を兼ねて行軍ですか」
「せや、最近はここらへん、治安がええからなあ。ちょっと遠出せんと賊もおらへんわ。
 遭遇戦とか昔はしょっちゅうあったんやけどなあ」
「それ、わざと賊がいそうなところで訓練してたんでしょ」
「実戦は一番の訓練やからなあ。手柄にもなるし!」
「そっちが目当てっすか。流石紀家の最精鋭は発想が違った」
「やかましいわ。治安もよくなるし、民かて助かる。誰も損せえへん」

 軽くこづかれる。こんな気安いやり取りがすごく心地いい。袁家の闇やらを手探りで切り抜ける、そんな日々から比べると訓練の過酷さとかマジ天国。ああ、官僚志望でなくてよかったわ。

「まあ、実際ウチらが暇なんはいいことやしなあ、お給料が減ってまうけど」
「せっかくいい事言ってるんすからオチ付けなくていいっすよ?」
「その小賢しい発言がイラつくわ」

 うりうりと、こづき回される。周りの兵たちもニヤニヤ笑って見ている。ほんと、アットホームな職場だわ。

「姐さん、若。今日は大物をしとめましたぜ」

 そう言う雷薄に目を向けると、金冠ドスファン・・・もといでっかい猪を何人かで運んで来ているところだった。いやでもマジでけえよ、どうすんだこれ。

 まあ、それはいいとして、初日に梁剛隊とじゃれあった後、俺は「若」と呼ばれるようになっていた。血筋と腕っぷし。それらが相まって治まるとこはそういうことだったのだろう。いささかこそばゆいが俺の立ち位置としてはいい感じじゃないかな、と思う。

「おー、立派な大猪やな。よっしゃ今日はウチが腕を存分に振るったろ」

 姐さんの言葉に皆が盛り上がる。なんだこの一体感。ひとしきり隊の皆を煽った後、料理の準備に動き出す。

「よっしゃ、二郎、手伝ってもらうで、さっさとこっちきぃ」

 よしまかせろーと思うのだが。俺、料理ってカップラーメンとかレトルトカレーとかお茶漬けしか無理なんですけど。
 とは言え、弱音を吐くわけにもいかず。姐さんに指示されるままにあれこれ手伝う。腹かっさばいて血を抜いて、内臓を取り出して、洗って、代わりに笹で包んだ米を詰めて・・・。何これ超本格的なんですけど。

「せ、戦場料理というワリには手が込んでますね」
「当たり前や。食事は戦場唯一の楽しみやからな。手間暇かけてでも旨いもん作らな、な」
「まあ、飯が不味かったら士気も落ちますよねえ」
「お、わかっとるやないか。よし後は焼くだけ、やな」

 後はひたすら猪を焼くだけらしい。もちろん火加減は姐さんが指示をする。と思ったら結構テキトーらしい。肉を回転させながら均等に焼いていく。こうなったら絶対こんがり肉Gにしてやるぜとか思いながら焦げないように丹念に火の加減をしてやる。
 うむ、上手に焼けました!

「うめぇ」
「どや!」

 なんというドヤ顔であろうか。実質料理したの俺他数名じゃん。そんなことを思いながらも肉にかぶりつく。実際旨い。この、笹に包まれた米が脂を吸って、それでいて爽やかな笹の香りがこう、食欲をそそるぅ・・・。

 さて。たらふく飯を食ったらもう寝るだけだ。驚いたことに姐さんは天幕とか張らずに兵卒と一緒の条件で野宿する。姐さんは何も言わないが、指揮官の心得を示してくれてるのだろう。兵卒と同じものを食べ、同じところで寝る。部隊を掌握するための方法論とはいえ、中々できないことでもある。
 ・・・ただまあ、寝てる時に悩ましい声を上げるのは勘弁して欲しいと思う。近くには俺しかいないからいいものの、なあ。

「甲斐性なし、へたれ」
「へ?」

そんな感じで心身ともに鍛えられている俺であった。

「陳蘭、弾幕薄いよ、なにやってんの!」
「ふぇ、ふぇええっ?」

 男なら一度は叫んでみたい台詞を吐けて俺は満足した。もう、このまま帰ってもいいかもしらん。

「じ、二郎様、来るなら来るって前もって言ってくださいよ。
 こ、こんな格好で恥ずかしい・・・」
「いやいや、イイ感じだぞ、というかど真ん中かもしらん」

 ポニテというものはどうしてこう、男の夢を膨らませるのかという個人的な思いは置いておこう。
 ここは袁家技術開発廠・・・まあ、工房である。ここでは今陳欄が俺発注の長弓のテストを行っているのだ。
 そして陳蘭は肩まである髪を一つに括ってポニテにしている。時代を先取り過ぎだろ・・・常識的に考えて。ポニテがひょんひょんと動いてチラチラ見えるうなじなんてもう。
 いかん、発想がセクハラだ。自重自重。陳蘭相手にそれはまずいってばよ。

「で、どうしてこちらにいらしたんですか?」
「いや、久しぶりに休暇を貰ったんで陳蘭の顔を見に来た」
「ふぇ・・・ありがとうございます」
「長弓の性能も確かめたかったしな」

 何せ俺の肝いりで造ってもらった兵器だからな。そりゃ進捗に興味深々ってやつだよ。

「そうですか・・・」

 弓をさっきまで引いてたのだろう。上気した顔の陳蘭の持つ弓を見る。俺発注の長弓だ。大体120-180センチくらいの長さである。これから矢を飛ばすのにも相当な筋力が必要なんだが陳蘭なら問題ない。――なんせ俺より膂力があるしな!

「で、でも、狙いなんてつけれませんよ?」
「問題ない。数で補う。大体の方向さえ合ってればいいんだよ」
「そ、そうですか?」

 一応射程は数百メートルを想定している。近づく前に弾幕で敵を殲滅する、俺の数少ない軍事知識の中でも切り札だ。
 これを実用化したイングランドはフランスとの百年戦争で圧倒的な力を振るったのだ。フランスの逆撃は、かの聖女ジャンヌ・ダルク。それと大砲の登場まで果たされない。時代を考えると比較的簡単に再現できるワリには費用対効果に優れた武器だ。と思う。
 そして俺はこれを大量配備するつもりなのだ。だって間違っても敵将と一騎打ちとかしたくないからな!乱射乱撃雨霰である。

 まあ、それにしても。かのアマゾネスは弓を引くのに乳房を切り捨てたというが、陳蘭にその必要はなさそうだな!胸当てはきちんと装備しているが、実に平坦で、豊穣の恵みを祈念せずにはいられない。

「二郎様」
「お?」
「なんか、とんでもなく失礼なこと考えてませんか?」
「今日はいい天気だな。ほい、差し入れ」
「露骨に話をそらしましたよね・・・」

 そう言いながらも俺の持ってきた点心を頬張る。ぷりぷり怒っているみたいだが、実に表情豊かで可愛らしい。

「もう、聞いているんですか?」
「おうよ、北斗七星をかたどった運足は暗殺拳の秘中の秘って話だろ?」
「全然違いますよ・・・。麗羽様の誕生日に何を贈るかって話ですよ」
「正直思いつかない。軍務でそれどころでもないしな。まだ先だしいんじゃね?」
「去年もそう言って直前まで準備しないで麗羽様が拗ねちゃったじゃないですか・・・」
「なんで選定の過程まで筒抜けなんだろな。もっと違うところに手間を割けっつうのな」
「で、どうするんですか?」

 ずい、と陳蘭が身を乗り出してくる。ふわり、と柔らかな香りが俺を包んで、どきっとする。そういや陳蘭も女の子だったなあと余計なことまで思いが至る。

「ええと。去年と同じく超高級茶葉でいんじゃね?」
「悪くはないと思いますけど、去年と同じだっていうのはどうかと思いますよ」
「改めてそう言われると、まずいよなあ。つか、去年の贈り物、覚えてるもんかな?」

 俺の問いににこり、と陳蘭は首肯する。

「それだけ、楽しみにされてるんですよ」
「ほむ。そうなあ、また考えるわ。まだ時間あるしさ。
 それより飯食いにいこーぜ。俺腹減ったわ」
「私、差し入れいただいたばかりなんですけど」

 呆れたような口調な陳蘭なのだが、ものっそい健啖家であるのは確定的に明らか。なんだかんだ言って俺のあれやこれやに付き合ってくれるのである。うむ。感謝感謝である。

 でも実際麗羽様の誕生日プレゼント、どうしよ。

「アニキー、助かったよー。どうもアタイ、あの人苦手でさー」
「そうか?やることやってりゃ怖くないぞ?それにすこぶる美人さんだしな」

 火傷の痕も見慣れたらどってことないし。キツめの美人さん。ぶっちゃけものっそいタイプだったりするのである。

「アニキのそういうとこ、すごいと思うよ・・・」

俺と話し込んでるのは脳筋美少女こと猪々子である。報告書を提出しないといけないが、麹義のねーちゃんが苦手ということで付き添いを頼まれたのだ。まあ、俺も長弓のテスト結果と導入の稟議に行かないといけなかったからちょうどよかった。
 とーちゃんとは匈奴戦の戦友らしく、ちっちゃいころから可愛がってもらったから苦手意識とかないんだよな。猪々子も斗詩も微妙に怯えてるけんども。
 珍しく、びくびくした猪々子をからかいながら食堂に向かう。で、呼び止められる。

「ああ、紀霊殿。ここにいたのか。済まない、張紘が至急ということで呼んでる」

 俺に声をかけてきたのは、くすんだ赤毛を結い上げて――ポニテである――動きやすいからと言って男装をしている、ものっそい美人――キツメの――である赤楽だ。それにしても張紘が至急とは珍しい。商会に何かあったのだろうか。
 俺が張紘を責任者として立ち上げた商会はものすごい勢いで成長している。郷里から知り合いを呼んだらしく、人材面でも充実。重畳重畳。実際助かっているのだ。
 袁家の官僚機構は優秀だ。が、新規事業をいくつも立ち上げるほど余裕があるわけでもない。それを委託業務として実行することで、袁家の官僚団にそれほど負荷を与えず数々の事業に手を出すことができている。もちろん、利益も出しているけどな。そこいらへんの手腕は流石の一言。
 ほんと、張紘を登用できてよかったわーマジよかったわー。

「すまねえ二郎、呼び立てることになっちまった」

 そんな張紘が申し訳なさそうに語るだけで容易ならざる事態なのであろうと気を引き締める。

「問題ないさね。それよりどうした?」
「ちょっとおいらの手には余るかもしれない」

 張紘の手に余ることって、俺がどうしようもないと思うのですがそれは。そして張紘からの報告を聞いて俺は激昂する。

「くそったれ!」

 毒づく。だがそれはまだ現実逃避。そして、きやがったか。そんな焦燥感と納得が並列してなお危機感が俺を襲う。張紘ほどの傑物が俺に判断を仰ぐ事態。それを聞けば聞くほど俺は天を仰いだ。

「売り浴びせとかやってくれるじゃねえか畜生め・・・」

 400年という長期に繁栄してきた漢朝。それは貨幣経済を成熟させた。そして、近現代に通ずるほどの経済システムを作っていた。
 ・・・結論から言えば、俺の懸案事項とは農産物の価格の急落である。元々緩やかな価格の下落を目論んでいたから気づくのが遅れてしまった。価格が急落している地域は洛陽など中央に近い城邑である。
 つまり、物流の要所。で仕掛けてきてやがる。恐らく袁家領内で買い付けた物資を売り浴びせて価格の急落を誘っているんだろう。そうやって価格が下がれば、他に物資を保管している商家も狼狽売りをしてくる。ますます下がる価格。しまいにはタダ同然になる。で、その段になって回収していくのだろうて。
 洛陽を初めとする都市で適正価格で売れば莫大な利益になる。そしてめでたく袁家領内の農民は流民となり袁家の基盤にダメージを与えるってか。
 舐めやがって畜生。国土を荒らして何が政治だ。誰だか知らんが許さない。この俺をたった今敵に回したぞ畜生。絶対に許さん。
 だから、張紘にも徹底しろと言わずもがなの厳命である。

「買え。安く出回った農産物は全部買え。これまでの利潤を全て放出しても構わん」
「既にその方向で動いてる。追認ですまねえ」

 殊勝に頭を下げる張紘。だが、その五体は怒りに満ちている。飢えて、渇く。その苦しみを知っているからこそ、それを謀略に使うなど。虎の尾、逆鱗。

「むしろ感謝を。全力で頼む。お前が味方でよかったよ」

 がしり、とシェイクハンド!である。戸惑う張紘にニヤリ、と笑いかける。

「はは、二郎にそこまで言われちゃ、頑張るしかないや」

 ぽり、と照れ隠しに頬を掻く張紘に畳み掛ける。

「実際、張紘よ。お前みたいな英才と出会えて、こうして友誼を結べているのは奇跡みたいなもんさ」
「よせやい。実績もない、食い詰め浪人を拾ってくれたのは二郎だ。おいらはその恩義を忘れるほどに薄情じゃないさ。
 いや、そうじゃないな。確かに恩義はあるけどな。
 おいらは二郎、お前のために頑張りたいって思ってるんだぞ?」

 ――不意打ちにもほどがある。張紘ほどの俊才にそんなことを言われて浮足立たない奴がいるものか!

「お、俺だって!」

 友誼に応えたい。そして、できることならば張紘の出身地の復興事業だって手がけたい。だって、だって、さ。

 「友達だものな。いや、君たちのやり取りは見ていてこう、清々しいんだけど恥ずかしいなあ」

 げし、と張紘と俺を蹴りながら赤楽さんがそんなことを言ってくる。

「なに、江南が地獄絵図だったというのは確かさ。援助はありがたくいただくとも。きちんと活用させてもらうとも」

 なにせ、私も行き倒れていたのだからな、と笑う赤楽さん。何か言おうと思ったけど、それ、コメントに困るのですが。

「ま、まあ商会と紀家だけじゃ手におえない可能性が高い。沮授も巻き込もう」
「そうだな」


 舞台は沮授の執務室に移る。オブザーバーは張紘である。内向きの仕事をするにはこれ、三国志でも最強クラスの面子だぜ。俺を除けばな!

「おやおや、血走った目をして、どうしたんです?」
「うっせー非常事態だ力を貸せ」

 沮授のいつもの余裕のある台詞で若干気持ちが落ち着く。狙ってやってるんだろうが、有効だ。ほんと頼りになることこの上ない。なので全力で頼ってやんよ。

「概要はお聞きしました。これは厄介ですね」
「おう、通常の商取引の形を崩してない。介入しにくいったらねえよ」
「袁家が大規模に介入すれば、政敵に付け入る隙を与えてしまいますね」
「くっそ、そうなんだよ。だが放置もできん」
「困ったものです」

 頼みの綱の沮授でも咄嗟にはいい手が浮かばないか。言い訳でもいい。物資を大量に買い集める言い訳・・・。
 を。あれならどうだ・・・?

「沮授よ」
「はい、なんですか?」
「今年の麗羽様の誕生お祝いは盛大にしないと・・・な・・・?」

 得心したのであろう。さわやかなスマイルを浮かべながら、やれやれ、と苦笑する。器用だなおい。

「おやおや、僕としたことがすっかり忘れていましたよ」
「ちょっとー沮授君ってば大丈夫ー?」

 麗羽様の誕生のお祝い。それは常であっても盛大にお祝いされていたのだが、今回はその規模を拡大する。どうせなんだから派手にぶわーっとやっちゃおう。袁家領内の主要都市でお祭りを開催しようというのが俺のプランである。
 やられっぱなしは性に合わないからな!

 官僚たちを集め、矢継ぎ早に指示を飛ばしていく。そして沮授と打ち合わせ。やることを整理する。

「やることは大きく分けて二つだ」

 俺の言葉に沮授は頷き、応える。

「売り浴びせによる相場の暴落を防ぐための買い支えをすること。
 そして実際に袁紹様の誕生祝いの催しを華々しくする、ということですか」

 そう、シンプルなのだ、やることはね。達成が容易とは限らないんだけんども。

「そうだ。表立っては後者のための前者だが実際は逆だ」
「ええ、手段と目的が入れ替わっていますね。そしてそれを外部に悟られるのは避けたい、と」

 過不足なく沮授は俺の言いたいことを察してくれる。なにこのチートキャラ。

「ああ、仕手戦が表面化すると参加者が増えかねない。負けるとは言わんが不確定要因は増やしたくない」
「気づく人も、いるでしょうしね」
「それが分かる奴には袁家が本気であることも分かるだろうさ。安易に手を出してはこない。はずだ」
「出してきたら?」

 くすり、と笑う沮授はきっと俺の答えを知っているはずだ。

「――叩き潰す。完膚なきまでに。袁家に手を出すとどうなるか、野次馬含めて見せ付けてやるのさ」

 くすりと笑みを漏らし、沮授はにこやかに嘯く。

「いやいや、これは怖いですね。二郎君を敵には回したくないものです」
「俺の台詞だっつうの」

 軽口を叩きながら物流の計画を立てていく。動員する人員、予算、責任者。大筋を決め、ふと気づく。

「いかん、肝心の麗羽様誕生祝賀会の企画内容に手が回らん。つーか、こんな莫大な予算、どう使うんだ」
「さて、僕は言われたことしかできませんので」

 ここまでだんまりの張紘を見る。

「お、おいら贅沢なんてしたことねえからわかんねえぞ。
 っていうかうちの商会は買い付けの方で手一杯だ」

 なんてこった。早くも俺の計画が頓挫しようとしているじゃねーか。なんで揃いも揃って金の使い方を知らないんだよ・・・。俺もだけどさ・・・。

「あーら、二郎さん。政庁にいらっしゃるなんて珍しいこともあるものですわね」

 ――女神様の降臨であった。

「・・・よくわかりませんけど。わたくしの誕生を祝う祝賀会を開催するということですのね?」
「はい、それも大々的に、です。大陸に響き渡るくらいの規模で、です」
「で、お金の使い道が分からない、ということですのね?」

 ため息を漏らす麗羽様である。うむ、久々に話すが麗しいことこの上ないな。ぶっちゃけすっげえ美人さんになったものである。金色の御髪は華々しく縦ロールにまとめられており、まるで光輝を放っているかのようだ。

「恥ずかしながらそのとおり」
「ほんと、情けないですわね。袁家の柱石たるあなた方がそんなことでどうしますの」
「や、一言もありません」

 実際お手上げな俺の様子に麗羽様はくすり、と笑みを漏らす。雲間から差し込む昭光のごときその笑み。これがカリスマと言う奴か・・・。俺には縁のないものである。

「よろしいでしょう。このわたくしが骨を折ってさしあげますわ」
「え、でも麗羽様を祝うのにご本人が計画から携わるのは・・・」
「わたくしが主役なのでしょう?わたくし以上にわたくしを満足させられる企画を立案する者などおりませんわ」

そ、そうかもしれないが、いいんだろうか・・・。何か違くね?とそれでも反駁するのだが。
 おーほっほっほと優雅に笑みを漏らして俺に言い放つ。

「御安心なさいな。二郎さんの顔に泥を塗るようなことはしませんわ。
 袁家の跡継ぎに相応しい催し。ちゃんと演出してみせますとも。
 ええ、華麗に、優雅に、雄々しく!」

 沮授と張紘に視線をやると、沮授は他人事な笑顔。張紘は露骨に目を逸らしやがった。

 そして麗羽様の誕生祝賀会はそりゃもう盛大に催されることになったのである。

 公孫賛の感じたことを言葉にすればそれはまさに圧巻、であったろう。元々ここ南皮は袁紹――袁家の時期後継者であり、公孫賛の旧友――の住む町として発展を遂げていた。
 識者によるとその繁栄は洛陽より上位に推す者もいるとのこと。無論その統治の手法は学ぶことも多い。自身の住む都市と、規模の違いに圧倒されてしまう。これから表舞台に立つという意味では同じ立場のはずなのだが、どうしてもわが身を振り返ってしまう。

「白蓮さん?なにを呆けてますの?地味なお顔がより輝きを失ってますわよ?」
「う、うるさいな!地味って言うな!」

 おーほっほと高笑いする袁紹の声に反駁する。とは言え、今日の主役は間違いなく袁紹だというのは前提であるので傍目から見れば見目麗しい少女たちのじゃれ合いにしか見えない。というのを当事者である公孫賛もよく理解しており、くすくすと笑う袁紹に降参の合図を送る。
 満足気に頷く袁紹はいつもに増してきらびやかな衣装を身に付けており、群集に手を振る彼女は控え目に言って豪奢。そして華麗であった。その袁紹に手を振られた民が歓呼の声をあげる。それに応えるように横の顔良と文醜が福豆を投げる。
 絹の袋に入った福豆は更に金箔で覆われており、ちょっとした芸術品だ。それを惜しげもなくばら撒く袁家の財の底知れなさが恐ろしい。
 手元不如意な我が勢力を思いながら公孫賛はじっと手を見る。働けど働けど・・・。と、ずんどこの底に陥りそうな思考に覇気と反骨に満ちた声が入る。

「あきれたものね。ここまで贅の限りを尽くさなくてもよさそうなものなのに」

 自身と同じく袁紹の学友である曹操の声だと気づくのに数瞬かかったということに公孫賛の自失具合が察せられるであろう。

「あーら、華琳さん、何をひがんでらっしゃるのかしら?」

 とげとげしい曹操の声にも袁紹は余裕綽々で応じる。慣れたもの、ということであろう。

「フン。ひがんでなんかないわよ。ただ、こんな規模の祝賀会をするお金があればね・・・。
 もっと色々なことができる、そう言っているのだけど?」

 下の景色を見下ろしながら曹操が言う。常ならばその小さな体躯に似合わぬほどの覇気を漲らせ、相手を直視するものだが、この風景はそれほど衝撃的だったのだろう。
 ずしん、と地響きをたてて視界が動く。
 そう、ここは地上ではない。象、という生き物。その巨体の上の輿にいるのだ。こんな生き物がいるというのも驚きだが、その進む道先は真紅の天鵞絨ビロードが道を覆っている。正直どれだけの財貨が注ぎ込まれたのか想像もつかない。

「三国一の名家である袁家としてはこれくらい当たり前と思うのですけど?」

 応える袁紹は心底不思議そうで。公孫賛にはそれが本気の言だとしか見えない。器が大きいのやら、それとも・・・。その感想は横の曹操も同じだったようで。

「去年まではここまでじゃなかったじゃない」
「むしろ今までが地味過ぎたと言えるでしょうね」

 地味という言葉に反応しかけてしまうが、そうじゃないと留まる。が、去年までの宴席だって相当豪華だったはずなんだがなあと内心でツッコミを入れる。

「よくもまあ。袁家の家臣団が許可したわね、こんなのを」

 確かにそうだと公孫賛は内心首肯する。袁家の家臣団は極めて優秀だというのが世評であり、直接やりとりをするとそれが事実だとよくわかる。有名どころの人材にしても田豊を筆頭に、若手の切れ者と言われる沮授あたりがさらりと列挙される。彼等がただ虚名のためにこのような贅を尽くした催しを看過するはずはない。
 で、あればそれ以外の要素がある?と思うが、考えても無駄と思考を切り替える。ここらへんは前線指揮官として公孫賛が卓越しているところであろう。

「おーっほっほ。わたくしの美貌、高貴さ、それに心を打たれたようですわ。
 持って生まれた魅力というのはどうしようもありません。これまでの催しがわたくしの光輝を十全に相応しくはありませんでしたもの。それは皆にとって。いえ、この中華の大地にとって不幸なことではありませんこと?」
「・・・はぁ。答えになってないわよ」

 がくり、と肩を落とす曹操。これ以上論議をするつもりはないとばかりに、ひらひらと手を振る。

「おーほっほ。どうでもいいですけど、もっと朗らかにしてくださいな。
 華琳さんはただでさえ貧相なのですから。いえ、何がとは言いませんけども」
「な、なんですって!」

 袁紹が曹操をあしらう様子にさしもの公孫賛も仲介しようかと思う。まあ、民の前だしせっかく招いてくれて賓客として遇されているのだからして。毎度おなじみとは言え、この二人の喧嘩――あるいはじゃれ合い――を仲裁するというのも役回りというものであろうか。

「あ、白蓮さん、無理して笑顔を作ると、笑顔まで地味になってしまいますわよ」

 ――人が気を使ってやってるというのに。

 袁紹と曹操の間に挟まれて。内心思う所があっても、その場を穏便に済ませようとする公孫賛の苦労はまだまだ始まったばかりである。そう。祭りはまだまだ続くのだ。

 少女は、目の前の光景に絶句していた。なんだ、これは、と。
 少女は、目の前の光景が理解できなかった。群集が溢れ、歓声が飛び交う。それはいい。町が活気に溢れているということだ。
 だが、なんだこれは。
 奢侈にもほどがある。これを考えた人間は頭がおかしいのではないか?
 例えば、と少女は思う。手にした福豆。それを包むのは最上級の絹。
豆自体も金箔で包まれている。この絹の袋一つでどれだけの飢えた民が救われるのだろう。
 少女は憤慨し、次に失望した。ばかばかしい。袁家は確かに名家だ。
だが、この有様はどうだ。娘の誕生祝いにこれだけ散財する。
 民のことなど何も考えてないのではないか。
 彼女は嘆息する。
 荀家の力を総動員して袁家への士官を実現したのだ。師父や係累には多大な迷惑をかけてしまうだろう。
 だが、こんなことをする主君を仰ぐ気にはならない。
 名門袁家といえども、少女はその才能でもって登り詰める自信があった。だが、自分の能力はけして主君に贅の限りを尽くさせるためのものではない。
 そうして少女は踵を返した。

 猫耳を模したフードを深く被りながら。

 少女は知らない。
 この催しの裏でどんな暗闘が繰り広げられていたのか。
 この催しを実行するためにどれだけの人員がその能力の限りを尽くしていたか。この催しがなかったならば、どれだけの流民が生まれたか。
 この催しの光彩はあまりにも煌びやかで、未だ井の中の少女はその輝きに目を囚われていた。

 それこそが、この催しの黒幕たちの真の目的の一つだと知ることもなく。黒幕たちの想定する敵の条件すら満たさず。
 黒幕たちの怒りも、嘆きも、そして愛情も一顧だにせず、少女は南皮から去ることになる。

 幼さゆえの潔癖さ。それがこの外史にどんな影を落とすのか。
 それは、まだ誰にも、分からない。

ひとまず本日ここまです

乙&誤字報告を
>>57
>>「いや、自分の立ち居地に納得いかないものがあってですね」
>>いささかこそばゆいが俺の立ち位置としてはいい感じじゃないかな、と思う。
「立ち位置」とは「当人の意志」によって如何様にも変え得るようなそれbyはてなキーワード
立ち位地は誤字ですね、周りからみられるそれは[立場]の方が正しいかと。立ち位置でも間違いとは言い切れませんが
>>62
>>袁家の時期後継者であり、
○袁家の次期後継者であり、   あれ?デジャヴ
>>これまでの催しがわたくしの光輝を十全に相応しくはありませんでしたもの。
○これまでの催しがわたくしの光輝の十全に相応しくはありませんでしたもの。 かなあ接続詞が多いからちょっと自信がない

ここは私の好きなシーンベスト3ですね~ちなみにベスト3のうち2つが麗羽様関連(むしろ主役)です(笑)
二郎ちゃん?残りの一つにはハイッテルヨ

>>66
ありがとうございます!
ほんと、見返してても中々・・・w

本当に、自分ほど信用ならないものはないというものですよ

>ここは私の好きなシーンベスト3ですね~ちなみにベスト3のうち2つが麗羽様関連(むしろ主役)です(笑)
ありがとうございます

麗羽様についてはねえ。
本当に、エンディングでちろっとデレを出すくらいの予定だったのですよね。。。

なんだかんだでヒロイン力の圧倒を更に頑張りたいと思います

 麗羽様誕生祭は尚も盛り上がり、続いている。膨大なヒト、モノ、カネが南皮に集まり、動いている。乗数効果により、その経済効果についてはもう正直把握できないくらいである。というかそれが主目的じゃないし、いっかなーってこれ以上考えないことにした二郎です。そこらへんは沮授とか張紘があれこれ考えてくれるだろうし。
 しかし通常の業務に加え、麗羽様誕生祭の計画。運営と業務は多岐に渡り膨大である。前例もないのにこれを短期間で計画し――原案は麗羽様である――実施した袁家家臣団には頭が下がるのだ。恐るべき袁家の官僚集団である。改めて袁家という組織の強みを見た気がする。
 戦時においても、同様に種々のオペレーションがどれだけ円滑に運営されることか。他陣営の追随を許さないだろうことは確定的に明らかである。

「しかし、こう言っちゃなんだが斗詩が裏方に回ることなんてないんだぞ?」
「そうですか?」

 目の前で次々と持ち込まれる案件の処理をてきぱきとさばいているのは控えめ美少女の斗詩である。麗羽様と俺、あとちょっとだけ猪々子が無責任に立ち上げたイベントや思いつきを実際に形にして運営している官僚集団の指揮を執っているのは沮授だが、運営にはかなり顔を出したりするのだ、斗詩は。
 いざ祭りが始まると斗詩も出番が多くて時々進捗状況のチェック等しかする暇はないのだが、それでもちょくちょく顔を出しては事務処理を手伝っている。

「いや、ほら、割と麗羽様と猪々子って企画の思い付きだけで後は知らんぷりじゃん」
「そうですねえ。だからあの二人の後始末してるの、大体私なんですよ。はぁ」
「それはご愁傷様だな。貧乏くじにもほどがあんだろ」
「ええ、そうですね。でもまあ、悪いことばかりじゃないですよ?」

 そう言ってにこり、と笑みを浮かべる。うむ。花に例えたいのだが俺にそんなスキルはなかった。だけんども、ものっそい可愛かったということは断言できる。

「あー、それならいいんだが。ま、後はやっとくから麗羽様のとこに戻っとけ。
 護衛が本文だからな。あと少し休憩もしとけよ?」
「ええ、この書面に返信したら失礼しますね」

 まったく、真面目でいい子だなあ。こういう気質は顔家特有のモノなのだろうか。先代も兎角生真面目だったと聞くし。
 ――過労死は防がなきゃ(使命感)。
 と、斗詩の護衛対象があっちからやってきた。

「あら、斗詩さん、こんなとこにいましたの。
 そろそろ大会が始まりますわよ。
 ・・・それにしても二郎さんが真面目にお仕事してると雨でも降るのかと思ってしまいますわね」
「ひどい言い草ですが、俺だってやる時はやるんですよ?」

 ・・・別にいつもサボっているわけではない。最近俺が積極的に動くと色々勘ぐる奴が多いからあえて普段は仕事をしていないのだ。ということで一つご理解願いたい。
 ただまあ、今日はそうも言ってられないのでメイン指揮をしているのだ。なお、案件を人に振るのがメイン業務である。これはこれで難しいんだけどね?
 本当は天下一武道会と銘打った――無論命名俺である――武術大会とか観覧したり有望な武官にスカウトしかけたりしたかったのだよ。おろろろーん。

「はい、駄目でしたー」
「どうしたんですか、いきなり」

 お茶を淹れてくれる陳蘭にぼやく。

「いや、天下一武道大会、そう。俺が銘打った武術大会を見たかったなーと思ってさ」
「すごく、盛り上がったそうですよ」

 み、見たかった。くそう。武官としての飛躍のフラグを一つ折ってしまったのではなかろうか。まあ、ここは切り替えよう。今この時点でスカウトできそうな人材の情報が入ったと考えるべきだ。ポジティブにいこう。

「で、優勝者は誰になったんだ。
 まさか猪々子とか出てないだろうな。本人出たがってたが」
「あはは、流石に止められたみたいですよ、勝っても負けても角がたつ、って」
「まーなー。勝っても八百長の噂は出るし、袁家筆頭の武家の次期当主が負けるわけにもいかん。妥当な判断だな。
 で、誰が優勝したんだ?」
「それが、ですね。」

 陳蘭が口にした名前は黄蓋。呉の、孫家の忠臣である。

「ご存知なんですか?」

 その名前を耳にして狼狽えてしまった俺に陳蘭が問いかける。黄蓋ね。ゲームとかではよく知ってるよ!めっちゃ呉の名将じゃねーか。在野なら是非とも勧誘したいとこだけどな・・・。
 将来、歴史どおりに進むなら孫家とは敵対する。なんとかその前に唾つけときたいもんだ。が、黄蓋は既に孫家に仕えているとのことで、俺は大いにがっかりしたのだった。

 そしてその夜、俺は意外な来客を迎えることになる。俺が勧誘を諦め、孫家に対する警戒心をマシマシにする切っ掛けになった黄蓋その人である。
 え、マジで?マジなの?マジだった!

 目の前には見事なおっぱいがその存在を高らかに主張している。それは大地の豊穣を象徴するかのような双丘。しかも、その頂には何かを主張するぽっちのようなものが服の上からでも認識できる。ありがたや、ありがたや。正直、もう黄蓋が女性でしたとかどうでもよくなっている。慣れた慣れた。もう慣れたわ。

「というわけで、沮授殿に紹介いただいたというわけじゃ」

 何でも、武術大会での優勝商品とかの代わりに孫家の使いとしての面談を申し込んだらしい。しかも袁逢様に、だ。内容を吟味した沮授がこっちに振ってきた、と。全権委任という名の丸投げは俺の必殺技のはずなんだが、やられたね。まあ、いいおっぱいを拝めたからよしとするか。ふぅ。
 いや、孫家との縁をどうするかの判断を沮授が俺に委ねてくれたってことだとは分かってるんだけどね。そんな判断しとうなかった。

「で、江南の孫家に援助をして欲しい、と。
 随分率直だな」
「腹の探り合いは苦手でのう。時間の無駄じゃろ?」

 黄蓋のその笑みは満面。だが背負っているものがあるのだろう。凄味を内包しているのに気付かないほど鈍感じゃあない。でも美人って凄んでも魅力的だよね。
 まー、このおねーさん、こんなこと言っといていざという時には苦肉の策とかしやがるだろうからその覚悟たるや推して知るべし。つまり。

「そこまで水害の爪痕はひどいのか」
「うむ。恥ずかしい話じゃが、手が回っておらんのが現状よ」

 数年前の水害。張紘から聞いた災害。その影響がまだ残っているという。駄目になった農地、民は流れるか賊となるしかない。そして賊を討伐することでめきめきと影響力を増したのが孫家。
 が、江南は豪族が割拠している治めにくい土地だ。勢力を伸ばす決定打に欠けていた孫家の一手が袁家への援助依頼というわけか。物資と権威。なるほどそりゃあ欲しいだろうよ。
 というか、黄蓋クラスの武将がいなかったら統治に支障をきたすだろうに。いや。それでも黄蓋を派遣せざるをえないほどに孫家は逼迫しているのか?
 まー、いずれにしてもそれだけ本気でこの交渉に臨んでいるってこったろう

「そういう訳での、余り長居もできん」
「お帰りならあちらへどうぞ」

 江南の勢力争い、それに迂闊に介入はできるものかよ。そんな案件を持ってきた沮授め。今度なんか奢らせてやる。そう思いながら俺は気を引き締めなおしたのだ。
 いや、江南への援助については前向きなんだけどね。それにしたって孫家はちょっと・・・。俺の将来の死亡フラグ的に、さあ。ほら、袁術って孫家を子飼いにして裏切られるやんか・・・。鬼門なんやって、ほんまに。
 ぼすけてー。

 公孫賛は控え目に言ってその光景に圧倒されていた。袁家の隆盛を知ってはいたものの、だ。親友である――真名を交わしたのだからそうに違いない――袁紹の誕生祝いということで、公孫家としても贈り物を用意してきたのだ。・・・袁家であってもあれだけの名馬は中々手に入らないであろう。そのくらいとっておきの名馬を贈ったのだ。袁紹もそりゃあ喜んでくれたのであるが。
 返礼の贈答品に圧倒されてしまった。馬車に積まれた金銀財宝。ちなみにあの豪奢な馬車も含まれるそうな。倍返しどころではない。のだが。

「あら、わたくしは白蓮さんのお気持ちが嬉しかったのですわ。
 あのお馬さんたちは貴女の領内でも出色なのでしょう?それくらいはわたくしにだって分かりますもの。
 だったら、あれくらいお返ししませんとわたくしの気が済みませんわ!」

 そう言って高笑いをする。いや、おーほっほという笑い声なのはどうなんだと公孫賛としては思うのだが。だがまあ、実際助かったのは本当である。袁家領内から安く食料が流れてくるのはいいのだが、肝心の財政が心許ない。手元不如意という奴である。切実に。正直、今回南皮に来たのは借金を紀霊の仕切る商会に打診しに来たというのもあるのだ。
 うう、匈奴の侵入さえなければなあ。と内心滂沱の涙を流しながらも公孫賛は応える。

「ま、まあ、ありがたく受け取っておくよ、実際助かるしな」
「それはよかったですわ。・・・これでも頼りにしてるんですわよ?
 北方が安定しないと、わたくし達も困りますし」
「そうだな、頑張るよ」

 袁家が北方の三州――幽州、冀州、青洲――を治めるのには北方の匈奴への盾としてというのが大きい。実際、大規模な匈奴の侵入に際し、袁家の総力を挙げて戦ったこともある。

「あら?そういえば華琳さんはどちらにいらっしゃったのかしら?」
「ああ、市街に出てったぞ。視察だそうだ」
「せわしいことですわね。優雅さが欠けていますわ」
「は、ははは・・・」

 本当は賓客として武術大会に顔くらいは出したほうがいいと思うんだがなあと公孫賛などは思うのだが。そういったことに無頓着のようで、さっさと街に行ってしまったのだ。
 或いはそれでも南皮の街を視察したいということだろうか。発展した町並み、軒を並べる商家。そして卓越した治安に街の活気・・・。公孫賛から見ても学ぶべきことはたくさんある。まあ、公孫賛は地理的に近いこともあって度々来ているからそこまで今回街を巡る必要もないのだが、曹操はそうも言ってられないのだろう。学ぶことに貪欲なのは相変わらずである。
 むしろそういった催しの運営なんかの方に興味があるしな、と観覧した後で裏方を覗くことにした。まあ、多分袁紹のことだから二つ返事で承諾してくれるに違いないと公孫賛は思う。ただし高笑いが漏れなくついてくるであろうが。

「むう」

 圧巻。であった。武術大会の優勝者のことだ。名を黄蓋と言うらしい。他の参加者と比べても頭抜けていたと言ってもいいであろう。此度の武術大会は慣例通りの射に加え、木剣を使用した白兵戦も――民草の娯楽のためであろう――実施されていたのだが、見事二冠達成である。

(射ではとても敵わないな)

 公孫賛とて馬上からの射を得手とする――匈奴の技、騎射である――のだが、それにしたって格が違うというものだ。まったく天下は広いということか。少々気落ちしながら席を立つ。本来の目的であった運営について多少なりとも視察しようというのである。大会の終わった今ならば然程迷惑になるまい、と考えるあたり知人たちと比べて良識というものを弁えている。
 適当な官僚に声をかけて実行委員会なるものに通されたのだが、そこの一番偉い席に座っている人物が意外で、歩みを止める。

「じ、二郎?二郎が武術大会仕切ってたのか?」
「ん?白蓮じゃん。そういや招待状出してたっけか」

 そして驚いたことに、目の前に積まれた書類の山を実に見事に処理していくのである。常々「働いたら負け」とか「晴読雨読が俺のやり方」とか「さっさと隠居してえ」とか言っていた人物の働きようではない。これは本物か?と若干失礼なことを公孫賛が思ったのも無理からぬことである。

「あー。二郎、忙しそうだな」
「ん?まあそうだな。白蓮、せっかく来たんだ。お茶でも淹れてってくれ」
「それ、普通は招待された私がすることじゃないよな」
「いいじゃん、白蓮が淹れるお茶、俺より美味いんだし」
「まったく、仕方ないなぁ・・・」

 ああ、こいつは本物だなと内心ぼやきながら二人分のお茶を淹れる。その間にも紀霊は着々と書類の山を片付けていっている。やる時はやる。そういうことなのか。公孫賛は内心で紀霊の評価を是正する。――まあ、実際は誰に案件を投げるかという識別だけやってるから仕事が早いように見えるのであるが、流石にそこまで見抜くことはできない。いや、それを看破したとして仕事の振り先があるのかと落ち込むこと間違いないのではあるが。

「はぁ」
「どした?」
「いや、なんかさ、南皮に来るたびに自分の至らなさを思い知ってるなーと思って」
「白蓮はよくやってるだろ」
「ん。二郎はそう言ってくれるし、私なりに頑張ってるつもりなんだけど、さ。もっともっとやりようはあるのじゃないかって思ってしまうんだよな」

 通常の三倍くらい愚痴っぽくなってしまっているなあと紀霊は思う。それくらい公孫賛は次々にまくしたてる。それを時に苦笑し、時にフンフンと頷き、にかり、と笑う。

「いいことじゃないか」
「なにがいいんだよ」
「来るたびに思うところがあるんだろ?
 つまり、そのた度に白蓮は前に来た自分より成長してんだよ」
「な――。何を、言うんだ」
「いや、実際白蓮はよくやってるよ。少なくとも、俺はそう思ってる」

 狼狽、してしまう。自分が言ってほしい言葉をくれたことに。そしてその言葉でまた頑張れる、と思う自分に。先ほどまでは下向きであった視線は紀霊を真正面から捉え、更に目線を上げる。歯を食いしばり。

「なあ二郎。この際だからちょっと相談なんだけどな」
「ほいさ」
「為政者にとって、一番大事なことってなんだろう」

 きっと正解なんてない。それでも公孫賛は問わずにいられなかった。袁家の中枢で、自分に見えないモノを見ているであろう彼が見ている景色が見たくなったのかもしれない。

「人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり・・・」

 借り物の言葉だけどな、と言いながらも紀霊の表情はいつになく真面目で。こいつはこんな顔もするんだな、なんてどうでもいいことを思ってしまう。

「ありがとな、二郎」
「べ、別に白蓮に助言を与えたわけじゃないんだからねっ!」
「はいはい、そういうことにしとくよ」

 でも、また借りが増えたな、と公孫賛は思う。その心理的負債は結構積み重なっているのだが、生真面目な公孫賛にはそれを踏み倒すという発想はないのであった。

 人、人、人。見渡す限りの人の海に黄蓋はくらり、と眩暈ににた感覚を覚える。活気に溢れ、人が行き交う。猥雑ながらもその空気は統制がとれており、治安機構の優秀さが見て取れる。

「これは蓮華様や穏あたりに見せておくべきかもしらんな」

 数瞬の自失から回復し、呟きながら屋台で売っていた料理に舌鼓を打つ。塩がほどよく効いていて、旨い。この辺りの立ち直りの早さは流石である。想定よりも早く南皮に到着したので路銀にも余裕があることであるし。
 袁家の領内が想定以上に発展していたのも驚きであった。まず、第一に道が整備されている。治安もいい。宿場も街道沿いに整備されているので結構な旅程にも関わらず疲労感が少ない。野宿も覚悟していたのだが・・・。所々の物価も安く安定しており、物質面での豊かさには戸惑いどころか、目眩を覚えるほどである。
 そして、移動には乗合馬車なるものを利用したのだが、その移動速度が尋常ではなかったのが旅程が早まった最大の要因である。

 ――街道に煉瓦を敷き詰めればそりゃあ旅程も捗るというものである。ぬかるみにはまることもないし、馬へかかる負担も少ない。だが、それを具現化してしまう袁家。その資金力にため息をついてしまう黄蓋である。
 是非とも孫家の領内でも導入したいものだが。

「残念ながら孫家はその日の食料にも困る有様、とな」

 黄蓋はそれを打開するためにここに来たのだ。と思いを新たにする。のだが。

「しかしまあ、余裕もあることじゃし。今少し楽しんで――視察をしても問題なかろう」

 ちょうど、袁家次期当主である袁紹の誕生の祝いと重なるとは。と黄蓋は自らの幸運にほくそ笑んだ。それはそれ、これはこれである。どうやら、袁家はご息女の誕生祝賀会を盛大な祭に仕立て上げたらしい。
 まあ、それは分からなくもないのであるが、規模が桁違いである。これだけの規模の催しをするとなると、どれだけの資金がかかることか。どれだけの手間がかかることか。袁家の地力に笑うしかない黄蓋である。
 いつかは孫家でもこれだけの催しを開きたいものじゃな、と思いを馳せつつ。今度は腰を落ち着けて熱々の饅頭に舌鼓を打ち、盃を傾けながら改めて南皮の民たちの様子を見やる。
 ――しかしまあ、南皮の民たちの楽しそうなことよ。女子も相当着飾っている。普段お洒落とは無縁そうな庶民さえ、ハレの日には着飾る余裕があるということであろう。改めて江南との格差を嫌でも認識してしまう。
 この光景を周瑜が見たらさぞかし悔しがるだろう。いや、それとも貪欲に利を得ることに徹するだろうか?などとまだ若年ながら優秀な孫家の軍師の反応をあれこれと想像しながら街を散策する。その黄蓋が何とはなしに違和感を覚える。女子の格好が洗練されておるな、と。それはいい。だがその方向性がどことなく統一されてはいないだろうか。と思ったら指南書のようなものが出回っているらしい。

「阿蘇阿蘇?珍妙な名前じゃの」

 色つきの美麗な絵図入りで衣装の着こなしとそのアレンジメントを指南する絵草子、みたいなものであった。どう着飾ればよいか、これなら字が読めずとも庶人にも分かる。
 そしてそれを出版しているのは紀家が後援する商会。名を母流龍九商会と言う。特徴的な商会名であったので道中にあった宿場やの街道の整備を手がけていたな、と。
 政商。その言葉が浮かぶ。紀家は生粋の武門と聞いていたが、どうしてどうして、手広いではないか・・・。黄蓋の識見と経験がそこまで考えを及ばせる。紀霊がそのことを知れば「流石は呉の誇る名将」と唸ったことであろう。まあ、紀霊にしてみればそこらへんは探られても痛む腹はないのであるが。――ないはずである。
 それはそれじゃとばかりに心に棚を造り上げ、黄蓋は自らの真名でもある「祭」を存分に楽しむのであった。これもお役目、いたしかたなし。なんて呟きながら。
 その甲斐はあり、なんやかんやで武術大会にエントリーし、優勝までかっさらうのだから流石は黄蓋である。流石は孫家の宿将である。

 黄蓋は一つ伸びをして、ため息を漏らす。どうにかこうにか武術大会で優勝を果たすことができた。それも圧倒的な実力を見せつけて、である。とは言え、楽勝であったわけではない。背負ったものの重さを感じながらも実力を発揮するのはやはり亀の甲よりもなんとやら、であろう。
 ――しかし、黄蓋にとってはここからが本番である。あくまで、武術大会での勝利は目の前で爽やかに微笑む青年――本当は更に背後にいるであろう人物――と面会するための前提条件でしかないのだ。そして孫家の存亡はこの一戦にあり、と黄蓋は心得ている。流石に疲労が重くのしかかる身体に鞭を入れ、目の前の青年。沮授に向き合う。

「というわけでな、褒美なんぞいらん。孫家の名代として袁紹殿とお話がしたいのじゃ」
「なるほどですね。でもそれはできない相談ですね」
「なんじゃと」

 殺気を込めて沮授を睨む。黄蓋からすれば青二才と言っていいくらいの年代だが、沮授は黄蓋の殺気に特に反応しない。そよ風でも吹いたかのように軽く受け流す様子に黄蓋は沮授に対する評価を数段上方修正する。これは手ごわい、流石は袁家の柱石となる人材だと。

「袁家ご息女たる袁紹様の誕生を祝う催しの目玉たる武術大会の優勝者に褒美を出さないなど、袁家の面子にかかわりますしね」

 その言葉尻を捉えて黄蓋は問う。

「では、その後であれば袁紹殿と会談の席を設けてくれる。そういうことじゃな?」
「いえ、そうではありません」

 黄蓋が縋ろうとする細い道筋。それをにこやかに切り捨てる。ばっさりと。ひくり、と頬が引き攣るのを隠すように問いただす。

「どういうことか聞いても構わんか?」
「言葉の通りですよ。貴女を孫家の名代とは認めません。一介の武芸者として褒美を与える。そういうことです」
「なん・・・じゃと・・・?」

 つまり交渉のテーブルに着くつもりはないということか。ギリ、と歯軋りの音が漏れる。黄蓋は沮授を睨みつけ、殺気を叩きつける。先ほどの牽制のような生易しいものではない。思考回路がカチリ、と音を立てて切り替わる。穏便に済まないのであれば非常の手段を摂るべし。目の前のこの男を人質に取ってしまうか。
 そう決断してゆらり、と僅かに腰を浮かせる。こんなうらなり瓢箪、締め上げればどうにでもなる・・・か?さてそこからどうするか・・・。

「おい。あんまりオイタするなよー、いや、むしろしてくれって言うべきなのかなー?」

 それまで全く興味なさげに壁に背を預けに立っていた少女がニヤリ、と嗤う。空色の髪をしたその少女の笑みの獰猛さに黄蓋は内心盛大に舌打ちする。どうやら自分は相当に焦っていたようだ。あの少女が穏行していたわけでもないというのに。

「アタイ、ほんっと後悔してんだよなー。アニキと斗詩が止めるから参加しなかったんだよなー、天下一武道会。それでまさかの二冠する奴が出てくるとかさー。
 そいつにさ、沮授相手に調子こかれちまったら護衛のアタイの立場ないよなー。
 ・・・喧嘩売られてたら不味いよなー。
 沮授よー、やっちゃっていいだろー?身の程って奴を教えてやらんといけねーなー、いけねーよー。今のこいつなら、ぶち殺し確定、だぜー?」

 朗らかに笑う少女――文醜――は年齢に見合わぬ闘気を黄蓋に叩きつけて牽制する。黄蓋が沮授を確保しようとしても初手で逆撃を喰らうであろう。疲労の残る身体はベストコンディションとは程遠い。だが。

「じゃとしても、よ。ここで退くわけにはいかんのう。手ぶらで帰ることなぞできんからのぉ」

 我が意を得たとばかりに文醜が笑みを深める。

「アンタがどれだけのモンを背負ってるかは知らねーし知るつもりもない。アタイはただ、姫の、アニキの敵をぶっとばすだけだかんな」

 じり、とにじり寄る文醜。その気迫にさしもの黄蓋も舌打ちする。沮授に護衛が付くのはある程度想定していた。しかしここまでの腕利きを、と。

「文醜様、その辺で」
「は?」

 気勢を削がれた文醜が沮授に噛みつく。

「沮授、お前何言ってんの?」
「いえ。天下一武道会優勝者への表彰とかも終わっていませんしね。ここで黄蓋殿を害されても困るのですよ。主に二郎君が。彼、一応今回の催しの責任者ですし」

 その声に文醜は、あー、と声を漏らす。

「それは・・・不味いか。うん、不味い」
「でしょう?それに、そろそろ二郎君が来る頃ですよ?」
「え、なにそれ聞いてない」
「言ってませんからね」

 しれっとして言い放つ沮授。だからこいつは今一つ信用できないんだと文醜は思う。思うのだが、心酔する紀霊が絶対の信頼を寄せるのだからその判断は適切なのだろう。適切に違いない。適切であったとしても、むかっとするのは仕方ない。ガルルルルと威嚇することしかできないが。

 先ほどまでの闘気を霧散させた文醜と、何より沮授の口ぶりに黄蓋は噛みつく。

「どういうことか聞いてもいいんじゃろうな」
「ええ、無論ですとも。袁紹様は貴女と面会しませんし、天下一武道会の優勝を以って袁家との交渉をするのも認めません。こういう催しでそういう直訴とかの前例になっても困りますのでね」

 肩をすくめる沮授の言い様に違和感を覚える。

「つまり、どういうことじゃ?」
「黄蓋殿。孫家の宿将である貴女が孫家の名代としていらっしゃる。これは正直言って不測の事態です。そしてそういう予期せぬ事案を担当する一門が袁家にはあるのですよ」

 袁家の譜代に四家あり。文、顔、張、そして紀。紀家の本分は遊兵である。

「ええい、まどろっこしいのう。分かり易く言わんか」
「貴女の願いは叶う、ということですよ。喜んでくださいね?」

 ちらり、と沮授が向けた視線の先には一人の青年がいた。

「つまり、黄蓋さんよ。あんたと話すのは俺の役目ってことだし、これは既定路線さ。――天下一武道会に出るだけならともかく、二冠とかやっちゃうからめんどくさい話になったってことさね」

 苦笑交じりの声が響く。即ち。

「真打登場ということですよ」

 沮授はそう言って席を立ち、後方に控える。文醜がその隣に立ち、顔を綻ばせる。その豹変ぶりに流石の黄蓋が言葉を失う。

「もう、アニキってば来るなら来るって言ってよー。もー」
「おう、すまんな。想定外のお客さんが来たもんでね。後で旨いもん奢ってやるから」

 そしてどっかと席に座る。

「紀霊だ。黄蓋殿、委細は俺が承ろう」

 その名に黄蓋は精神を立て直す。若造と侮るなかれ。現在では政敵として火花を散らす袁家の二枚看板。「常勝」麹義の秘蔵っ子にして「不敗」の田豊の愛弟子。そしてその血筋は先の匈奴大戦で汗ハーンを討ち取った紀文の嫡男。南皮市中で噂になっていた紀家の麒麟児である。
 いや、事前に市中を回ったのは無駄ではなかったというものである。ニヤリ、と歪む口角の動きを隠そうともせず黄蓋は気合いを入れなおす。さあ、孫家の興廃はその背に負われているのだからして。

「江南はこのままじゃと、荒れに荒れてしまうじゃろう」

 黄蓋は率直に現状、或いは窮状を訴える。江南を襲った未曾有の水害。以来、田畑は荒れ、耕す民は流民となった。孫家はその中で勢力を増していった。何より大きかったのが江南の虎と異名を取る孫堅の武威。そして、北方より格安で流れてくる食糧。そしてその商流をいち早く捉えた周瑜の功績が大きい。
 孫家に従えば飢えない。その風聞が故に孫家の勢力は拡大を続けてきた。・・・かなり綱渡りではあったが、それを成し遂げてきた。
 だが、その根幹はあっけなく崩れた。これまで北方――袁家領内から江南に流れてきていた食料が高騰。逆流こそ食い止めたが、じり貧である。このままでは瓦解すらしかねない。
 ――孫家の首脳の動きは早かったと思う。だが、割けるリソースに余裕がなかった。本来ならば孫堅の補佐として黄蓋は来る予定であったのだ。が、圧倒的な軍略、カリスマで孫家を拡大した孫堅が三の姫の出産時の産褥にて亡くなってしまっているのだ。
 ――有り体に言って孫家は崖っぷちなのである。故に、袁紹との面会が叶わないとなれば、眼前の青年相手に踊るしかないというわけである。幸いなことに沮授は口を挟むつもりはないようだし、文醜はこちらが紀霊に害を加えると判断しない限り問題なかろう。爛々とした双眸を見ると若干不安になるが、それくらいの良識はあるはずである。

「という訳で沮授殿に色々とお願いしておったのじゃがな。暖簾に腕押しといった風で埒があかぬのでな。せめて腕っぷしくらいは見せようとそこの文醜殿に一手ご教授願おうかと思っていたところじゃったのよ」
「沮授?」
「まあ、そんなとこですかね。大体合ってますよ」

 にこりと笑って沮授は嘯うそぶく。嘘は言っていない。どうにもこの場を愉しんでいるようだ。いい空気吸っておるな、などと益体もないことを黄蓋は思う。が、沮授が中立というのは悪くない。

「で、江南で勢力を増している孫家に援助をしてほしいと。随分明け透けだな」
「腹の探り合いは好かんのでな。時間の無駄じゃろ?」

 小手調べとばかりに殺気をぶつけてみる。が、跳ね返すでなく、競るでもなく、受け流すでもなく。まさか無関心とは。それとも牽制と読まれているのか。文醜すら微動だにしなかった。

「ふむ。黄蓋ほどの人物にそこまで言わせる。そこまで水害の爪痕はひどいということか」

 黄蓋は是、と応える。恥も外聞もなく江南の窮状を訴える。一部では文字通り骨肉相食む地獄絵図すらあると聞く。これはけして他人事ではないのだとばかりに。

「なんと、江南の虎と呼ばれた孫堅殿が儚く、な」

 どうやら孫堅の武名は北方にも響き渡っていたようだ。

「堅殿亡き孫家には江南は重いと?」

 どこか投げやりな黄蓋の言葉に紀霊は否、と応える。

「策、権。どちらが継ぐか知らんがね。孫家のことだからきっちりと盛り立てるんだろ?」
「無論じゃな」

 我が意を得たり、と黄蓋は首肯する。孫策、孫権。ともに孫家を担うだけの大器。だが、恐るべきはそこまで知る紀霊である。では、と喜色を見せる黄蓋に紀霊は冷や水を浴びせる。

「江南には百家ある。孫家に肩入れする理由がないな」
「これはしたり。孫家の謝意は価値がないと?」
「謝意とか借りとかって踏み倒したらそれまでだかんな」
「ほう、形のあるものをお望みか。
 じゃが、わしに用意できるものは限られておるのでな・・・」
「ふん。例えば?」

 黄蓋は妖艶に笑い、組んでいた足をゆるり、と組み替える。見事に視線が露わとなった脚線美に流れる。

「孫家は袁家への恩義を忘れはせんよ。孫家の始祖に誓ってもよい。
 生憎、わしが今用意できるのはこの身だけじゃが・・・」

 ぬるり、と席を立ち紀霊にしなだれかかる。この身一つで孫家の安泰が購えるならば安いものであるとばかりに豊満な胸を紀霊に押し付ける。その所作を拒むでなく、感触を楽しんでいる様子に満足げに頷くのだが。

「あー。俺一人ならばどうかわかんねーけどさ。流石にこの状況でそういうことされても、その、なんだ。困る」

 む、と黄蓋は内心唸る。が、考えるまでもなくそりゃそうである。むしろ沮授と文醜が無言で見守る中で堂々とハニートラップを仕掛ける黄蓋の肝の太さこそ賞賛されるべきであろう。

「まあ、手土産の一つくらいもらわないと言い訳も立たんしな」
「そりゃそうじゃの。こうまであからさまに求められるとは思っておらなんだが」

 苦笑しつつ紀霊の眼前に書物を示す。

「孫子。写本じゃがの」

 さしもの紀霊が絶句するのを見て黄蓋は内心安堵する。いや、ものの価値が分かる相手でよかった、と。
 だから退室を促されても、黄蓋は紀霊より色よい返事があることを確信していたのである。

 さて、手元には黄蓋からもらった孫子。写本とは言え超貴重品である。これ華琳とかすっげえ欲しがるんだろうなあとか色々思う。何せ21世紀に至っても戦争の教本として最上級の扱いを受ける書物だ。その価値は計り知れない。いや、俺が持ってても宝の持ち腐れに近いんだけどね?
 まあ、孫子のエッセンスは何冊か解説本読んだから把握している。ということにしよう。独自に解釈を加えるようなことをするようなのは華琳に任せておく。そういや孟徳新書っていつ出るんでしょね。
 閑話休題。こっから本題。

「というわけで孫家を援助して江南を押さえさせることにする」
「結構ですよ。二郎君の判断、異存はありません」

 考えこむこともなくさらりと肯定する沮授である。いや、別に反対されるとは思ってなかったけど即断すぎでしょ。これは・・・。

「というか沮授よ。お前の絵図面どおりじゃねーの?」
「おや、それは過大評価というものですよ。そうですね・・・。どちらかと言えば潰す方向に誘導したつもりだったんですけれどもね」

 やれやれ、と苦笑すら爽やかだね。いつものことだけど。まあ、沮授もそう思うかー。

「まー、どう考えても厄介な勢力だかんなー」
「二郎君ならば孫家を使いこなせる、と?」
「んー、わかんね。でもまあ、江南が荒れたままっていうわけにもいかんしな。張紘にも約束してたし」

 沮授が孫家の扱いを俺に丸投げしたのには訳がある。表立って江南に袁家が援助をするわけにはいかないからだ。そりゃー、自領以外に干渉したらマズイってばよ。漢朝の中枢ににいらん疑念を与えてしまう。
 だから俺んとこの母流龍九ボルタック商会を通せば、如何様にも言い逃れはできる。分かる奴には分かるんだろうけどな。

「実際、どうするつもりなんです?」
「江南に母流龍九商会の支店を作る。あくまで表向きは商活動だ」

 ふむ、と頷き沮授は更に問うてくる。

「なるほど。それで誰を送るのです?」
「張紘が推挙してきてた人材だな。魯粛、虞翻、顧雍。地元の復興事業だからやる気も湧くってもんだろ」

 実際は孫家の首に付ける鈴である。社外取締役兼監査役と言えば分かりやすいだろうか。孫家の中枢に食い込んで意思決定に干渉していくのだ。孫家に取り込まれないように何年か単位で入れ替えるが、まずは最高の人材を送ろう。・・・流石に張紘は送れないがな。
 そして手を出すからにはきっちりやる。江南はきちんとやれば二期作、二毛作などが可能な気候。肥沃な大地はものっそい魅力的である。人口が少ないのがネックだが発展すれば伸びしろは相当あるのだ。

「なるほど、流石は二郎君。おみそれしましたよ。それであれば袁家内部の調整はやっておきますので」
「ほんとはなー。孫家の扱いとかは沮授に任せたいとこなんだが、こればっかは仕方ないかー」
「ええ、僕が仕切ると袁家としての介入と思われてしまいかねません」
「その点。俺ならば商会を挟むから誤魔化しようがあるしなー」

 ここらへんは結構綱渡りになってくるんだけどねえ。そこで沮授が俺を切り捨てることはないと思いたいものである。ほんと、高度な外交的判断とか俺にさせないでほしいものである。いや、相談とかめっちゃするけどね。

「沮授も張紘もなー。助言はくれるけどいざとなったら逃げるもんな」

 責任問題になりそうなことは俺に押しつけてくるのだ。ぷんすか。

「決断力というもの。いや、二郎君のそれがあるからこそ僕達も安心してついていけるというものです」
「うっせー、責任の所在をこっちに押しつけてるだけだろうが」
「まあ、そういう解釈が成り立つかもしれませんね」

 くすくす、と可笑しげに笑う沮授の減らず口をどうやって黙らせるかと思っていたら場が動いた。

「二郎、来たぞ。お前の言うとおりだったな。十中八九、今回の売り浴びせの主犯だ」

 息を弾ませて張紘が吉凶定まらない報をもたらす。更にその商人の背後関係までつらつらとレクチャーしてくれる。俺の弱い頭にも分かり易い親切な説明だ。流石張紘、パーフェクトだ。

「ん、来るかどうかは五分五分だと思ったんだがな。沮授、ちょっと喧嘩買ってくるわ。支払い準備よろしく」

 くすり、と沮授が笑う。

「おやおや、できるだけ値切ってくださいよ?」
「いやいや、高く。高く買い占めてやるよ」

さて、ここからが本番である。袁家領内の相場に手を出してくれたんだ。きっちりけじめはつけてもらわんとなぁ?
 ニヤリ、と歪む口元を自覚しながら俺は向かうのだ。そう。血の流れない戦場に。

「いや、お初にお目にかかります」

 目の前で自己紹介をするのは一見どこにでもいそうなおっさんだ。営業スマイルを顔に貼り付け、こちらをつぶさに観察しているのを隠そうともしない。名前?黄蓋みたいな美女ならともかく、所詮は木端商人。覚える気にもならんしそのつもりもない。

「というわけでしてな、此度の祭のために買い集められた物資を引き取る準備があります。
 いや、物資を集められたがそれほど使われてはいないご様子で・・・。蔵に納めておいても腐るだけでございましょう?
 どうでしょう、お買い求めになられた価格に多少色をつけてお引取りいたしますとも」
「んー、それだとそっちに利はないだろ」
「いえいえ。これを機に私どもとお付き合いいただければ、と思いまして・・・」

 にこり、と笑いやがる。まあ、なんて誠実そうに見える笑顔!ふむ、それなりにやり手のようだな。互いに益があるように持ちかけてくる。
 ・・・だが、断る。

「あー、残念ながら物資は江南の商会がお買い求め成約済だ。遅かったねー」
「な、なんですと?そんな馬鹿な!荒れ果てた江南にそんな資金があるはずがない!
 いかに孫家に勢いあろうともそこまでの資金力があるわけがない!」
「ほう、物知りだなー」
「と、当然ですな。情報こそ我らが扱う最上の商品。
 いかがです?私どもとお付き合い頂ければ上質の情報もお持ちいたしますが」

 なるほどなるほど。伊達に袁家領内で好き勝手やってくれただけのことはある。多少の劣勢は即座にひっくり返してくるか。見事な我田引水。
 だが無意味だ。

「は、熨斗つけて返品してやんよ。で、三倍だ」
「は?なんですと?」
「耳が悪いならそろそろ隠居した方がいいかもな。仕入れ価格の三倍だと言った」

 表情を変えずに俺は告げる。ここにきて流石におっさんが表情を変える。

「それは流石に・・・」
「うっせえよ、お前んとこが困ってんのは知ってんだよ」

 元々こいつの商会は中華の穀倉たる袁家領内で食料を買い付け、洛陽へと卸すのが商いだ。それだけでもそれなりの利益は出せるんだが、途中でオイタをしやがった。手にした食料を売り浴びせる。そしてタダ同然になった食料を買い集めれば自然暴利を貪れるってことだ。
 恐らく、他の地域でも同様のことをしてきたのだろう。そのオペレーションはまあ、見事と言ってよかった。だが今回は相手が悪かった。
 即ち、張紘。
 恐らくこの化物ぞろいの人物が乱舞する三国時代においても五指に入るであろう政治的手腕を持つ俊英。その張紘が袁家の商圏に君臨しているのだ。時が時ならば一国をも背負えるその破格の傑物がそれを見逃すはずがない。そして張紘の背後には俺がいる。基本的に張紘が挙げてくる稟議には無条件でOKの三連呼である。
 まあ、それはいい。
 つまり、目の前のおっさんは、本来の職責である食料のノルマを調達する目論みが外れたのだ。同情するつもりはない。なぜならば。

「いいか、お前は袁家に喧嘩を売ったんだよ。北方にて匈奴の脅威から漢朝を守護し、三世四公を輩出した名門中の名門たる袁家に、な。
 貴様ごとき木端商人の目論みを読めないとでも思ったか?ほどほどならば見逃してやったものを・・・。 
 よくも舐めてくれたものだ、な」

 顔色を白くさせながらも表情を崩さないこいつはやはり相当なものだろう。ならば倍プッシュだ。

「だからてめーは潰す。とことん潰す。袁家に手を出したらどうなるか思い知らせてやる。
 死ね。生まれてきたことを後悔しながら死ね。
 築き上げたものが崩れるのを見ながら死ね。
 愛するものから恨まれながら死ね。
 この世のあらゆる苦痛を受けながら死ね」

 す、と手を上げた俺にさしもの彼奴の表情が凍りつく。

「そ、そんな無体な!」
「そうそう、喋れるのも今のうちだからなぁ。精々歌っとけ」
「わ、我が商会を潰したら、いかに袁家とは言えども無事とは思わないことですな!」
「!」

 そうだ、それだ。その言葉が聞きたかった。実際こいつはどうでもいい。問題はこいつの背後で糸を引いてる奴だったのだ。それが誰か。張紘が気にしていたのもそれだ。ちょっとした小遣い稼ぎならばともかく、本格的に袁家領内の経済活動に楔を打ち込んでくるこの打ち筋。袁家に喧嘩を売るその行為。ひも付きでなければできるものかよ!

 俺の表情が変わったのをどう解釈したのか。やや余裕を取り戻したのかおっさんが言葉を紡ぐ。

「わ、私どももいささか強引な商売をしてしまいましたからな。
 いかがでしょう。五割り増しで引き取りましょう」
「ふん。倍、だな」
「――承りました。これを機にご贔屓にお願いします」

 そう言うと慌てて席を立つ。失言に気がついているのかいないのか。ともかくこれ以上情報は引き出せないようだ。まあいい。背後関係を洗えば見えてくるものもあるだろう。

「おい、客人のお帰りだ」

 俺はそう言って手を叩く。その合図に、完全武装した兵士――梁剛隊の皆さんである――が百人ほど出てくる。あ、姐さん、別に色っぽいポージングとかいらないですから。その点雷薄の威圧スキルは流石の一言である。巨体に傷跡だらけのいかつい顔。効果は抜群である。
 ターゲットの顔が更に色を失い、引き攣るのもいたしかたなし。いや、これでビビッてくれんかったら困るわ。だからニヤリ、と笑いながら念を押す。

「宿までお送りしろ。丁重にな。くれぐれも」

 脅して脅しすぎるということはない。こういうのは舐められたら終わりなのだ。ここまでやれば袁家でオイタをする商会も減るだろう。室内に静寂が戻る。いや、疲れたわ。圧迫面接、上手にできたかな?取りあえず、俺は茶を所望した。いや、俺も緊張してたし喉が渇いたのよ・・・。
 なお、陳蘭が淹れてくれたお茶は不味くはないが美味くもない微妙な味であった。

「やほー。孫家への援助物資の目録の素案持ってきたよー。目を通しといてねー」
「うむ、ご苦労」

 頷いて分厚い書類を受け取る。持ってきたのは魯粛だ。うむ。これまた呉のビッグネームのお越しである。おこしやす。さて、書類を受け取った俺をニヤニヤしながら窺う彼女――うん、またしても女性なんだ。もう慣れた――がここにいるのには勿論理由がある。俺が立ち上げた商会――張紘にぶんなげた奴である――の幹部として張紘が推挙してきたのである。知己を頼ったということで当然江南出身の人材になったのだが、驚くべきはそのネームバリュー(俺調べ)である。
 いや、張紘が推挙してくるんだから否応なく厚遇するつもりだったんだけどね?三国志のゲームだけでもやったことのある人ならばどれだけの陣容かというのが分かってもらえると思う。目の前の魯粛を筆頭に顧雍、虞翻、秦松など・・・。流石張紘の人脈は格が違った。
 張紘半端ないって!将来呉の柱石になる人材めっちゃ推挙してくるもん・・・。そんなんできひんやん普通・・・。
 まあ、考えてみれば張紘が洛陽に行ってたのも留学っちゅうことだから、かなーり毛並みはいいはずなのよな。そう思えば納得すると共に商業という賤業に身を落とさざるをえない江南の惨状が察せられる。そりゃ孫家もヘルプ出すわ。孫堅死んでるならなおさらな!つか、まだしも漢朝に忠誠心とかあった孫堅亡き後の孫家って・・・。
 戦闘民族まったなしである。穏健派で先の見える孫権でも絶好調の曹操に喧嘩売るとかさあ。俺なら間違いなくスピニング土下座して隷属するところである。イケイケの孫策が当主とか戦慄で青褪める俺を誰が責められようか。いやそんな奴ぁいねえ(反語的)!
 ここまで一秒で脳内会議をしていたのだが、魯粛の視線が俺に仕事をしろと強いてくる。くそう、見た目小学生のつるぺたのくせにぃ。うむ。江南の食糧不足は深刻なようだな。などと思っていたらどことなく誇らしげに胸を張ってきた。うむ。壊滅的にぺったんこ。えぐれとる。

「分かってないねー。江南では貧乳は希少価値なんだよ?右も左もばいんばいーんだよ?」
「なんだその楽園!」
「まー、江南が食糧不足でえらいことになってるのは確かだけどねー。私財での底支えなんてあっという間に尽きちゃったし」

 そりゃあなあ。多少の蓄えあってもなあ。個人資産と国家予算を考えてみよう。個人資産が例え10億円あったからと言って、東京都の予算ですら6時間も支えられないのと同様。そして金がないのは首がないのと一緒である。

「だからさ。張紘が声をかけてくれて嬉しかったんだよね。何をしても無力で無意味と等価値でさ。とりあえずは食べる為に就職したけどさ。案外悪くないね、商ってのもさ。そう思ってたんだよ。
そしたら今回の件でしょ?孫家を通じて江南に援助してくれるって言うじゃない。そりゃ、乗るしかないでしょ」

 いえーいとばかりに飛び跳ねる魯粛に苦笑してしまう。

「で、母流龍九商会ってなんなの?」

 気を緩めたらこれである。ああ、俺が張紘にぶん投げた商会の名前のことだ。金儲けも勿論重要なタスクであるがそれだけではない。

「今はまだ及ばんが、龍を治めるまでいかなくとも、宥めることができればと思ってるよ」

 へえ、と声を漏らして魯粛は頷く。

「つまり、治水ってことだね?なるほど、古来より河川の荒ぶる姿は龍に例えられていたからね。なるほどなるほど。九という数字、母という象徴。いや、本気で立ち向かうんだ。龍に」

 言えない。某ぼったくりなゲームのアレな商会と龍をてきとーに結びつけたとか言えない。ついでに阿蘇阿蘇と並んで、俺以外にこの世界に来ている奴がいたら反応するだろうと思ったのだが今のところ反応ないしなー。

「よせよ、恥ずかしいじゃないかね」
「いやいやー、いずれは黄龍すら治めてくれると信じとくからね。うん、だから私たちは全力で頑張るよ?」

 にまり、と無茶ぶりしてくる。黄河の治水とか二千年くらいかかるんじゃないか?歴史的に考えて・・・。いや、精一杯やるけどさ・・・。

「孫家の首に鈴をつける。そのための援助でしょ?いけるいけるへーきへーき。むしろ漲ってきてるよ?」
「なんでさ」

 俺の問いに魯粛は苦笑する。

「そりゃそうだよ。まさか江南の復興の手助けができるとは思ってなかったからね。私らから見ても孫家はちょっと危なっかしいからね。首につける鈴となるならば嬉しい限りなんだ」

 どこまで本気だか分からない。それでも張紘がここに送ってくるならばきっとそういうことなんだろう。あいつが裏切るとは思わない。付き合いはそんなに長くないが、親友だと思っている。一方的に、かもしれないけど。
 まあいい、やることはやったのだ。そう、今更ながら現代知識である。ククク、ここには公正取引委員会とかいう組織はないのだ。カルテル、トラスト、コンツェルン・・・。売り浴びせに買占め・・・。圧倒的な権威と資本力を背にした優越的地位の乱用美味しいです。そう、容赦はしない。徹底的に絶対儲けるマンである。嬉々としてその手法を繰り出す魯粛たちを笑顔で見守る俺であったのだ。
 なんでって?いや、袁家領内にちょっかい出してた商人を泳がせてたら麹義のねーちゃんに甘いってものすごーく絞られたからさ・・・(物理と精神両方)。
 彼奴をじわじわと嬲り殺しにするという申し開きでようやく開放されたのだ。そしてその結果として、母流龍九商会の経済的影響力は袁家領内でとんでもないことになっている。おかしいなあ。ごくごく真面目な製造業を営んで民政の足しにするだけのつもりだったのに。
 現在袁家領内はものっそい好景気に沸いている。まずもって俺がでっちあげた農徳新書。ごくごく普通の農業振興策と新規農具コンセプトシートの走り書きだったそれは今や農業指南書となっているのだ。そして毎年各地からの報告により改訂に次ぐ改訂。正直著者が俺とは言えないような代物になっているのだが・・・。
 農業の生産効率が上がり、農村の二男三男なんかが都市部に流入。あと流民とかも。その労働力を活かして産業革命待ったなしである。工場制手工業と分業による熟練工の促成栽培的ななんやかや。以下略。興味のある方は西ドイツが冷戦時代にやってたことをご参考ください。
 まあ、そんなわけで孫家への援助くらいどうってことないのである。むしろ資金物資で孫家に鈴を付けられるのならば安いものだ。いや、あいつらガチで戦闘民族だからな。

「なーにか一人で深刻ぶってるとこ悪いけどさ。こっちはやる気満々なんだからね。もうちょっと景気よくいこうよ!」
「あー。まあ、そうだな。そういう深刻ぶるのは張紘の役割だったわ。よし、魯粛よ!母流龍九商会の全力で江南を富ませてこい!孫家は適当にこう、ふわっとうまいこと丸め込む方向で!」

 なんか、そういうことになった。いや、いいんだけどさ。

 俺は黄蓋と昼食を一緒に摂っている時に例の情報を改めて確認する。内々に張紘経由でその可能性を示唆されてはいたのだ。いたのだが、実際にその情報が正しいとなると内心穏やかではいられない。まさか、三国志初期の英傑が、である。

「そうじゃ。誠に残念なのじゃがな・・・」

 孫堅は確か黄祖に殺されたんだっけか。ほんで劉表との遺恨になって孫策が生き急いだりすんだよなー確か。

「改めてお悔やみ申し上げる。
 が、やはり戦で?」
「いや、産褥で、の・・・」

 更なる衝撃である。というかマジか。つか、そうなると孫堅も女子ってことになるなあとか、孫策とか孫権も女子なのかな。なんて頭のどっかで思うくらいには俺は冷静であったと思う。続く黄蓋の言葉を追うのが精一杯だっただけかもしれないけれども。

「三女の尚香様を産まれた後の産後の肥立ちがよくなくて、の」

 どこか遠くを見て、黄蓋が幾分かの苦味を含んだ声色でそんなことを言う。その表情は刹那、沈痛で。
 そういや近代になるまで出産というのは非常に致死率の高いものであったか。

「そっか、そりゃ悪いこと聞いたか」
「いや、かまわんよ」

 くすり、と漏れる笑みには苦味が溢れていて。

「なに、孫堅殿の弔いではないけどな。江南。きっちり復興事業をやらせてもらうとも」

 かたじけない、と頭を下げる黄蓋。鷹揚にその感謝を受け取る。のだが。何か、三国志の知識があまり役に立たんなあ。まあ、有能そうな武将の名前が分かるだけよしとするか。
 つっても、有名な武将はまずもって現段階でも評判高いし、後世出世する在野武将なんて見付かんねえけどな!そう言う意味では珠玉の人材をゲットした張紘には感謝感激雨霰である。
 などとあれこれ考えながら食事を進める。いやー、なんだかんだ言っても美女とのランチとか役得でしかない。着飾り、化粧をした黄蓋は控え目に言って超美人さんであるからして。自然、トークも弾むというものである。

「だから俺は言ってやったんだよ、それは北斗を背負う者の定めだってな!」
「ほほう、北斗にはそのような宿命があったとはの・・・」

 内容のない馬鹿トークでもころころと笑ってくれる。うん、完全に接待されてるけどそれでも楽しいぜ。ここはありがたく談笑を楽しむとしよう。キャバクラに行ったってこんな美女いないんだし。
 食事を終え、席を立ったところで黄蓋が話しかけてくる。江南の援助については内々にGOサインを出してたからな。ここからが本番と言ったところか。流石に慎重なことだ。

「時に紀霊殿」
「ほいさ」
「わしが江南に戻った後、南皮に誰かを派遣しようと思うのじゃが面倒を見てやってくれんかの」

 ふむ、人質か。よっぽどこちらに気を使っていると見える。

「んー、構わんけど?
 俺としてはまた黄蓋が来てくれたら嬉しいな」

 にひひと下卑た笑いを浮かべてやる。まあ、むさいおっさんとか来られても困るし。何より、黄蓋とはうまくやってけそうだしな。

「ふふ、ありがたいの。できればそうしたいの。
 ま、誰を派遣するかはまた連絡させてもらうとするかの」

 にまり、と妖艶な笑みを浮かべながらしなだれかかってくる黄蓋。その豊満かつ引き締まった肉付きを存分に満喫しながら俺はぐびり、と酒を呷るのであった。おいちい。ハニートラップ?俺がそんなんに引っかかるわけないじゃない・・・。

「ほい、これが物資の目録な。見りゃ分かるけど食糧が最優先だが、衣料と建材についても手配してる」

 ほれほれ、これが欲しかったんだろうとばかりに差し出した書類。喜色を隠そうともせずに手に取った黄蓋が目を通しながら・・・。目を丸くしている。
 内容のダイジェスト的なものはまあ、全般に及ぶ物資の供与から始まる。衣食住を取りあえず整備せんといかんというのが魯粛を首魁とする江南出戻り組の総意だったのだ。だったら俺に否やはなく、やるならば全力である。

「・・・かたじけない」

 いつもの余裕綽々な態度はどこへやら。しおらしく謝意を伝えてくる黄蓋は其の大任を果たしたからであろう。喜色を隠そうともしない。だがそこに水をさしてやろう。どばばー。

「それと、人を派遣するんでよろしく」
「人、じゃと?」
「ああ。江南に母流龍九商会の支店を作る。その立ち上げにな。
 だがまあ、それは表向きだ」
「というと?」
「孫家の重要な会議には必ず出席させること。
 そして、孫家に助言を与えさせてもらおう。幅広く、な」
「なん、じゃと・・・」

 そうきたか、という黄蓋の表情に緊張が走る。なんだ、可愛いとこあんじゃん。

「助言、とおっしゃるが、そんな甘いものではなかろう?」
「例えば?」
「その、助言というやつに拒否権的なものはあるのかのう?」

 上目づかいに、ぷるぷると震える風を装ってくるその図はあざといのである。常ならば黄蓋ほどの武人がこうまですることに敬意を表して(強調)いくらか妥協もしてやるのだがね。ことがことだからね、しょうがないね。

「喧嘩を売るならばもっと高値で売りつけてくれんとな。お蔭様でこっちゃ好景気だからな。いつでも高値で買うとも」
「失言じゃった
 。いや、ありがたいのう。南皮の発展具合を見ても、袁家の方に助言を頂けるとは望外のことじゃ。きっと孫家、ひいては江南のためになるに違いない。わしも肩の荷が下りた気分じゃ。
 元々、無理目なお願いじゃったからのう。紀霊殿にも何かお礼をせねばなるまいて」

 妖艶な笑みを浮かべて再びしなだれかかってくる。うん。役得役得。

「ま、それは次に会った時にじっくりと相談しようや」

 すべては江南の復興事業次第である。

「そうじゃの、ぜひゆっくりとご相談したいのう」

 まあ、それはそれ。これはこれである。主導権はあくまでこちらにあるのだ。・・・一つ、確認しておかないといかん。

「孫家は何を望む?」

 流石の黄蓋が咄嗟に反応ができない。そりゃそうだ。俺みたいに色仕掛けに鼻の下を伸ばすような若造は舐めきってたろうからな。だからこそ、この奇襲が効くのだ。

「孫家に援助をするのはいい。江南が治まるのもいい。
 で、その後に、肝心の孫家は何を望む?」

 俺のその問いに、黄蓋は迷いなく答える。

「江南に平穏を。安定を。それだけが望みじゃ。
 それ以上なぞ、ありはせんよ。
 ――堅殿の最後のお言葉が、江南の平和じゃった。故にわしらは江南さえ治められればそれ以上は望まん。何やら警戒されておるようじゃが、孫家は袁家からの恩を忘れんよ。
 とはいえ、信じてもらう根拠はないんじゃがの」

 この身体くらいしか対価はないしの、とからからと笑う黄蓋は確かに英傑である。そしてそのような英傑に恥をかかせてしまったかな、と思う。

「そっか、んじゃま、今後ともよろしくな」

 こうして、袁家と孫家。本来ならば殺しあう両家に誼が結ばれた。俺の独断で。さて、吉と出るか、凶と出るか。
 まあ、とりあえずは沮授と張紘の知恵を借りるとしよう。俺一人で考えてもしゃあないしね。三人寄れば文殊の知恵ってね。

「はぁ、困りましたねえ。
 これじゃ、殺しておしまいってわけにもいかないですねぇ」

 口にした言葉ほど困った様子もなく、少女が呟く。にこにことした表情は固定されていながらも不自然さはない。心底楽しげな口調にもおかしなところは何もない。

「なになに、梁剛と深い仲になった可能性が大、と。
 これは意外ですねぇ。てっきり幼馴染あたりと乳繰り合うと思ったんですが」

 ぺらり、と報告書の分厚い束ををめくりながら言葉を紡ぐ。鼻歌混じりに。

「さらに、手元の商会を通じて江南への介入、内容は孫家を通じての援助ですか。
 これはまあ、どうでもいいですね。むしろ手元の人材が減るだけでしょうに。
 たまによく分からない手を打ちますねぇ」

 せっかくの珠玉の人材を得たというのに、と。応える者もいないまま、少女の独白は続く。あくまで笑顔のままに。

「それにしても業腹ですねえ。袁家内で保たれていた四家の均衡が完全に崩れちゃったじゃないですか。
 文家も顔家も、どうして危惧しないんですかねえ。次期当主の側近派遣で満足してる場合じゃないと思うんですが」

 全く、困ったものである。今の袁家は非常に危ういバランスの上に立っているのだ。それを理解しているのはごく一部のみ。
 そもそも当主の袁逢とてその地位は盤石ではない。本来彼女は匈奴との大戦における神輿にすぎなかった。最前線に袁家当主が立つということなどありえない。それが成されたからこそ士気は徹頭徹尾高く保たれていたのだ。無論戦争に万全などない。討死の可能性も大いにあった。つまり袁逢は戦死しても惜しくない、だが袁家当主としては不足ない。そういう立ち位置であったのだ。
 予想外であったのはその戦績である。「魔弾の射手」と異名をとるほどに最前線で兵を鼓舞しながらも自ら弓を取る姿はまさに武家当主の理想。いわゆる「匈奴戦役」を生き抜いた兵士、士官、将からの支持は凄まじいものがあり、そのまま袁家当主という地位を得たのである。
 だが、潜在的な政敵は多い。そこをあえて病弱を主張し政治に関わらないことで袁家のパワーバランスは安定していたのだが、袁逢が愛娘たる袁紹と紀家の跡継ぎたる紀霊を引き合わせてよりその構図が変わりつつある。

 ふぅ、とため息を漏らす。憂いが笑顔に影を落とす様は一流の役者の演技が如く迫真。

「大きくなりそうな火種も眠ってますしねえ。
 袁家が栄えるのはいいんですが、これ以上はちょっと不味いかなぁ?」
「火種・・・。彼奴きゃつの婚姻、かな」

 不意に少女に声がかけられる。その声に驚いた風もなく、少女が答える。憂い顔から喜色満面。花開くが如く。

「そうなんですよー。水面下で動いてる人もいますけどねー。
 顔家、文家も紀霊さんと次期当主を娶わせたいみたいですよ。
 今のところ袁家の後継たる袁紹様が本命ですけどねぇ」

 文武の首魁たる田豊と麹義。両者もどうやらその流れに異を唱えるつもりはないようである。

「ふう。妥当ではあるな。紀家の力が肥大化したならそのまま取り込めばよいおだから」
「そこが一番穏当な落とし所でしょうねえ。ただ、他の係累が黙ってないでしょうけど」

 ククク、と少女の言を受けて笑みを漏らす。

「まさか外患を誘致するとはな。これは流石に想定外であったとも」
「あー、それはそうかもしれませんねー。ちょーっと調子に乗りすぎかもしれませんねえ。紀霊、それとあの方。どっちに釘を刺しますか?」

 如何しましょうか?と小首を傾げる張勲に、影は囁く。

「ふむ。まあ、いい。しばらくは放置だ。いいな、娘よ」

 愉快そうにしているその声。それすら擬態であることを少女はよく知っている。

「はい、お父様。お父様のご意向のままに。
 私はお父様の意図に従い、糸のまま動く操り人形。袁家に張られた糸を紡ぐ人形。
 ――紀霊は蜘蛛の糸に絡め取られた獲物にすぎません。
 もがけばもがくほどに、糸に、意図に絡められ、動けなくなるでしょう。
 毒を与え、針を刺すその日のために、私はただ、糸を張り、意図を巡らしましょう」

 それは蜘蛛の理。袁家の闇の底の、さらに底。そこには糸が張り巡らされている。
 けして光の当たらぬ蜘蛛の巣の真ん中で絡新婦じょろうぐもはひたすら糸を紡ぐ。意図を巡らす。
 それが張勲の在り方であり、役割であった。袁家にて諜報を担う張家。異才奇才ひしめく張家。彼女はその中でも最高傑作である。

本日ここまですー

あっちでのルビがやってもうたところについてはスルーしてくだしあ

南無い

乙です。

リライト版つう事は、元がある?
あってもこっちの方がいい。

公孫賛とも結んで、堅実堅固な外敵防衛しないと 内政やら商売やら出来ないだろうに(ステマ

乙です&誤字報告
>>68
>>案件の処理をてきぱきとさばいているのは
○案件の処理をてきぱきとこなしているのは 処理と捌くは意味が重複するので(案件を処理する、案件を捌く)もしくは 案件をてきぱきとさばいているのは がいいと思います
>>護衛が本文だからな。
○護衛が本分だからな。 本分だと序文とかと併せて書物関係になりますね
>>71
>>つまり、そのた度に白蓮は前に来た自分より成長してんだよ」
○つまり、その度に白蓮は前に来た自分より成長してんだよ」
>>72
>>と眩暈ににた感覚を覚える。
○と眩暈に似た感覚を覚える。 誤字ではないですが漢字にした方が読みやすいですね
>>道中にあった宿場やの街道の整備を
○道中にあった宿場や街道の整備を
>>69で 面談を申し込んだらしい。しかも袁逢様に、だ。
>>72で 孫家の名代として袁紹殿とお話がしたいのじゃ」
となってます、そのあとも袁紹様になってますが、状況的に次期当主より現当主との面会を望むのが普通かな?それともいくらなんでも現当主は偉すぎるから次期当主か…とりあえず統一した方がいいですね
>>非常の手段を摂るべし 栄養?
○非常の手段をとるべし 漢字にするなら採る(手段を採用する)、もしくは執る(手段を執行する)辺りかと
>>74
>>その豹変ぶりに流石の黄蓋が言葉を失う。
○その豹変ぶりに流石の黄蓋も言葉を失う。 流石の黄蓋が~だと二つ名みたいになっちゃいます
>>76
>>独自に解釈を加えるようなことをするようなのは華琳に任せておく。
○独自に解釈を加えるようなことをするのは華琳に任せておく。
>>漢朝の中枢ににいらん疑念を与えてしまう。
○漢朝の中枢にいらん疑念を与えてしまう。
>>77
>>三世四公を輩出した
○四世三公を輩出した あれ…デジャビュこれは前回地味様が優遇される確約があったように月ちゃんが優遇されますかねえ(ゲス顔
>>75で 「なんと、江南の虎と呼ばれた孫堅殿が儚く、な」
>>79で 内々に張紘経由でその可能性を示唆されてはいたのだ。 デジャビュ再び…孫堅の話は前日にしてたよね
>>80
>>「失言じゃった
 。いや、ありがたいのう。
改行間違えてますよ
>>流石の黄蓋が咄嗟に反応ができない。
○流石の黄蓋も咄嗟に反応ができない。
>>81
>>報告書の分厚い束ををめくりながら
○報告書の分厚い束をめくりながら
>>紀家の力が肥大化したならそのまま取り込めばよいおだから」
○紀家の力が肥大化したならそのまま取り込めばよいのだから」

マルマル>>69がいらない気もします。というか>>69だとすげなく帰してる描写なので間違いですよね
そして>>82
>>南無い 逝っちゃダメー!!
寝言更新北是
…ふう、今回は結構多かったのでもしかしたら抜けがあるかも。
ついに孫家への介入が始まりましたね二郎ちゃんは俺の独断で誼が結ばれた。と言ってるけど史実でも袁術の下についてたんだから大きな問題にはならない、と良いなあ

あと>>84さん
つ ttp://www49.atwiki.jp/bonshoden/
内容はほとんど変わらないけどR18シーンとオリキャラのイメージとかが書かれてる(ただし陳蘭は除く)

>>86

ご紹介ありがとうございます。

まあ、ぼちぼち読んでますが。(申し訳ないが終わった後の話読んでもリライト版にどう繋がるか 見えない…とか言ったら フルボッコ全殺の上出禁なんだろうな…)ビクビク

>>84
>>87

ご新規さんいらっしゃい!ありがとう!読んでくれて!ありがとう!
良かったら好きなキャラとか読もうと思ったきっかけとか好きなエピソードを語ってくれると一ノ瀬が踊ります(物理)

ええと。リライトと言うか清書してる感じなんですけどねw
無印を読むと分かると思うのですが、基本的に一ノ瀬は呑んだくれて泥酔の果てに電波ソングを聞きながら書いていたので結構アレなとこがあったんですよね。
なので、推敲しようというのがリライト版なわけです。
※泥酔していないとは言っていない

なので、推敲しているはずなのに誤字脱字を指摘されるって寸法さ!これもうわかんねえな!

出禁とかありえませんので。ありえませんんおで!(必死)

>>85
誤字脱字諸々ありがとうです。助かってます。
あっちに追いついたら編集してから先を進めまする。
ほんと、ありがとうございます。



優遇してほしいキャラいたら、言ってもいいのよ?

>>88

ご丁寧な挨拶、傷み入ります。

恋姫で好きなキャラ

公孫 賛 白珪 (白蓮)

地味上等。普通最高。国境防衛の要。白馬長史は 伊達でないぞ。

恋姫は実はパチンコから入ったど素人。だからエピソードはあんまし知らない。

この『凡将伝』では…紀霊さんかな。このリライト版しか読んでませんので彼がどう成長進化するを楽しんでおります。

所で、『三国志をさせない』なら究極は皇帝に婿入りして後漢を発展させつつ道州制で実力者に統治させる。も有りですか?

>>90
>地味上等。普通最高。国境防衛の要。白馬長史は 伊達でないぞ。
きゃー地味様かっこいい!

>恋姫は実はパチンコから入ったど素人。だからエピソードはあんまし知らない。
ぬふふ、こっから先は地獄だぜい(特に意味なし)

>所で、『三国志をさせない』なら究極は皇帝に婿入りして後漢を発展させつつ道州制で実力者に統治させる。も有りですか?
アリですね。
道州制については置いといて、ですが。
誰が権力握っても、世が治まってればそれでいいのよ。というのが主人公的存在の二郎ちゃんの基本理念ですからして。

地味様はね……。すっごい見せ場が在りますと言うか、本当にこのキャラを無印でなぜ普通に見せ場もなく○したって感じですよほんと。
恋姫ssで、うちくらい地味様を優遇してるとこはあんまないと思います!

多分。

>所で、『三国志をさせない』なら究極は皇帝に婿入りして後漢を発展させつつ道州制で実力者に統治させる。も有りですか?

無論、ありです。
ただし、皇帝陛下が女子とは限らない・・・っ!

皇帝が男なら…まあ妃はいるから、紀霊(二郎)に姫を娶らせて…いや効果薄いか。逆に『官位買えます』だから内政系を 金で押さえて『逆らったら民からフルボッコ』な 施策を国家単位で少しずつ。紀霊(二郎)は公共投資の大切さを理解しているから、内務官僚を信者に出来れば…


…紀霊(二郎)が楽出来ないね。そんな運命?

>>あれ…デジャビュこれは前回地味様が優遇される確約があったように月ちゃんが優遇されますかねえ(ゲス顔
ということで月ちゃん(董卓)の優遇おなしゃす!(菩薩顔)
えっ駄目?詠ちゃんでもいいのよ(にっこり)…姐、はおりキャラだしアレだし、二郎、沮授、張紘のトリオで閑話とかお願いしてもいいです?
どれも無理でしたら…蜂蜜なのじゃと絡新婦さんで(リライト前の二郎ちゃんとの3人合わさった空気とか大好物です)

要望言えるだけ幸せよ
夢キボーもない沖縄さんよりいいじゃない(白目

なろう(小説家になろう)版も見つけたので平行して読んでますが…
ガチでシビアで面白い。 リライト版との比較も楽しみ方として有りだね。

出来れば…でよいのですが、袁紹さんが紀霊(二郎)に対してどういう感情を現時点で抱いているのか。
チラッとでも出せ…ますか?(恐る恐る)


…今度の投下であの胸糞話か…でも避けられないから心して読もう。


因みに、マイヒロイン。最強の普通将。365000顧の礼でパートナーにしたい公孫賛の主役級SSは結構ありますよ。

そういう物語の芯に近い部分は終わった後の暴露ぐらいで聞かないと個人的には白けるが。
完結後に改めて読むのが楽しいのであって。

チラッとなら出てるじゃないか
じろーに嫌いと言われて百面相したり、私が眠るまで大好きって言って、といったり
まあ幼女モードの時の話だけど

>>93
二郎ちゃんは楽したいのですが、それがどうなるかはまた別のお話ですねw

>>94


まあいいや。if董家ルート実装したらええんやろ(白目


>>95
沖縄産にはごめんなさいしないといけないよね

>>96
>出来れば…でよいのですが、袁紹さんが紀霊(二郎)に対してどういう感情を現時点で抱いているのか。
ラブとライクが天元突破やで(適当)

地味様については凄い重要キャラになっていきますから!

>>97
ありがとうございます

>>98
当初案ではエンディングまでデレない鉄壁のはずでしたとだけ

 ――その少女は、控えめに言って華麗であった。豪奢であった。光輝をまとい、高貴であった。少女の伸びやかな四肢は青い果実を思わせ清冽であった。そしてその双丘は豊かで、妖艶な色香すら匂わせていた。相反する魅力を見事に調和させ、あくまで彼女は――傲慢にもそれを当然のものとしていた。

「はぁ」

 その少女に対するもう一人の少女の思いは複雑である。憧憬があり、嫉妬があり、賞賛があり、羨望がある。少女達の関係は、友人という曖昧なものであった。

「あーら、華琳さん、辛気臭いため息つかれてどうしましたの?
 ただでさえ貧相な身体が更に縮まってますわよ」
「誰が貧相よ、誰が!
 相変わらず朝っぱらからお元気そうでなによりね!」
「当然ですわ。袁家の日輪たるわたくしが消沈していては、民の顔にも影が落ちますもの。
 あら、お食事も進んでいませんわね。そんなんだからいつまでたってもお胸にも未来が感じられないなのですわ」
「う、うるさいわね!朝からこんな大量に重いもの、食べられるわけないじゃない!」
「いけませんわ、華琳さん。朝餉は一日の活力の素ですわよ?
 あっちの貧乏くさい白蓮さんなんて、がっついておかわりまでされてるというのに」

 話題に上った少女――公孫賛――が顔を赤くして反論する。

「う、うるさいな!おかわりを勧めたのは麗羽じゃないか!
 いいじゃないか、うちじゃあこんな豪華な朝餉なんて出ないんだから!」
「正直なのは白蓮さんの美徳ですわね。豪華なだけではありませんわよ?
 美容にだって効果があるんですから。医食同源。袁家の食は更なる高みにいますのよ」

 おーっほっほと笑い声を上げる少女を曹操は複雑な目で見る。武芸でも、学問でも一度だって負けたことはない。だというのに、人の輪の中心で光彩を放つのはいつだって袁紹なのだ。
 最初は、家柄のせいだと思っていた。四世三公というのは伊達ではない。袁家の血筋というだけで栄達は約束されたようなものであるのだからして。
 だが、それだけではないのではないということを曹操は認めざるを得なかったのである。袁紹のことを思うと、心が乱れる。それはもはや、恋着といってもいいのかもしれなかった。自分にないものを持つ袁紹という存在をひれ伏させる。 そんな暗い情念に曹操が思いを馳せるのは一度ではない。
 そんなことを引きずっても仕方ない。曹操は軽くため息をつき、袁紹がよそってくれた粥を口にする。一流の舌を持つ曹操を大いに満足させる味だったのが、ちくり、と胸に痛みを残した。

 対して公孫賛にはそのような懊悩はない。高笑いする袁紹の声なぞなにするものかとばかりに朝餉に舌鼓を打つ。満足げに幾度も頷き、目の前の豪華な食事を次々と胃袋に送り込んでいく。

 喰える時に喰っておけというのが公孫の家訓なのだからして。常在戦場を体現する彼女のメンタルはまさしく鋼である。毒気を抜かれたのか、その様子を見た曹操も微妙な顔をしながら粥をすすっている。
 意地っ張りで素直じゃない華琳も、麗羽の言うことは結構素直に聞くのだなあと暢気なことを思う彼女は間違いなく大物である。いや、袁紹と曹操に挟まれてなお普通に友人関係を維持し、なおかつ真名を交換しあうのだからその器は深く、大きい。
 そして公孫賛から見て袁紹と曹操の二人は対照的である。ああ、個人としての総合能力で言えば曹操が上回っているのであろうとは思うのだが。

「一人の天才が百歩走るより、千人の凡人が一歩でも歩を進めるほうが前に進んでるんだよ」

 どこぞの凡人の台詞であるが、公孫賛なりに納得したものである。それと、千人に歩を進ませるほうが大変というのは小なりと言えども軍閥を率いる公孫賛には納得である。
 それに。

「曹家の泣き所は譜代の家臣がいないことだな。血縁は優秀でも数が少ない。
 少数精鋭もいいが、それだけじゃなあ」

 袁家も家臣の質がいい方じゃあないけど、譜代はそれなりにいる。数は力、と言い放つ紀霊の言葉にはなるほど、と唸るしかない。なにせ公孫賛には質、量ともに頼りになる家臣がいないのだからして。

 とは言え、自分が考えても仕方のないことである。袁紹と曹操が漢朝においてどのような足跡を刻むのか。大変興味深いところではあるが、公孫賛にとっては自分の率いる郎党の行方こそが一大事なのである。そういう意味では頼りになる親友が次期当主である袁家が隣であったということに感謝しないといけないであろう。――実際既にあれやこれやの援助を貰っていることだし。
 紀霊が立ち上げた、母流龍九商会は既に公孫賛の領内でも必須な存在になっている。彼が重点的に投資したというのが大きいのだが。街道の整備、橋梁の補強に新設など、必要であると分かっていても手が届かないことを請け負ってくれているのだ。
 そのことについて馬鹿正直に謝意を告げた公孫賛に紀霊は苦笑で応えた。この恩はきっちり返すという彼女に対して。

「そのうち、身体で返してもらうよ」

 というのは悪ノリが過ぎるというものではあるが。なお、公孫賛は頬を赤らめるだけで特に抗議はしなかった模様である。

「白蓮さん?食べなれないものを食べたからかしら?お顔が赤いですわよ?」
「ちちちちちがう、なんでもない。れ、麗羽、この肉をおかわりもらっていいか?」
「いいですけど・・・。朝からまた追加されますの?昔から健啖家ではいらっしゃいましたが、昼が食べられないとかいうことのないようにお願いしますわよ?」
「まままま、任せとけ!」
「ならばいいのですけれども」

 そうやって笑い合う二人を曹操は何とも言えない表情で見つめるのであった。

 張紘と沮授。言わずと知れた俺の最も信頼する腹心の二人である。袁家の外と内に目を光らせて、それぞれの立場をしっかりと認識した上で様々な助言をしてくれる貴重な存在というか――。いや、様々な厄介ごとを二人に投げまくっているというのは自覚している。いやほんと。だから、俺の丸投げ被害担当の右翼である張紘からの一報には耳を傾ける価値がありまくりである。

「なるほど。敵は洛陽に在り、か・・・」
「ああ、彼奴きゃつは元々洛陽を本拠にしてる商会だから目星はつけてたんだ。そんで、ようやく裏が取れた」

 袁家領内を荒らそうとしていた商人。彼奴の後ろ盾を探れば自然とその黒幕は見えてくるというものである。麹義のねーちゃんには甘いと散々説教(物理)を受けたのだが、それでも泳がせた甲斐があったというものである。いや、これで成果が出なかったらどうなっていたことか。

「流石は張紘。諜報においてもその手腕は卓越していて頼もしい限りだぜ」
「よせやい。対応も後手だったしな。これくらいはしねえと立つ瀬がねえって」

 俺の減らず口に乗らずにやれやれ、とばかりに張紘は嘆息する。察するに裏を取るにも相当の苦労があったようだ。これは、結構大物がかかったか――?

「で、どこのどいつだ。俺達に喧嘩ふっかけてきた奴は」

 口が重い張紘をせかす。が。更に口は重く。度重なる催促にぼそり、と。まだ確証とまではいかないのだがと強調する。

「十常侍」

 張紘がその名を出すのを躊躇うわけである。いやさ、よくぞ言ってくれたというべきか。或いはそこまで辿り着いた張紘の手腕を褒めるべきか。いや、とびっきりの大物である。

 ――十常侍。漢朝の政を仕切る宦官の元締めみたいな奴らだ。漢朝の腐敗の戦犯と言えばいいだろうか。権勢とか蓄財とか内向きのことにしか興味がないと思ってたんだがな。
 俺の抱いた疑念に沮授が応える。

「――袁家が力を付けすぎたのかもしれませんね」

 沮授曰く、袁家は既に中央から危険視されるほどに力を蓄えているとのことだ。

「ただでさえ袁家の領内は肥沃な華北の大地です。そこに二郎君が発掘した農徳新書ですよ。袁家領内では既に十年単位で匈奴との戦いに備えるだけの物資があります」
「更に母流龍九商会だな。おいらが言うのもなんだが、すげえことになってるんだぞ」

 なんでも、効率化された農業。そこからあぶれた労働力が都市に流入。さらに漢朝各地、とくに江南から流民が流入。それらを労働力として工場制手工業が成立。様々な物資が安価に量産されることになる。強化していた街道等のインフラ整備がマッチして袁家領内は空前の好景気に沸いているのだそうな。いや、知ってた知ってた。何かすごい景気がいいのは知ってた。でも、そこまでえらいことになってるのは知らんかった。もう、完全に俺の手を離れてるね。

「明確に袁家の力を削ぎに来てるか。それならば厄介だ、な」

 北方の異民族への備えとしての袁家。それはいい。だがその権勢が過度に大きくなればどうなるか、ということである。中央への色気を疑われる。いやさ警戒されるのはごくごく自然なことだ。歴史に学べば有力な家臣がどうなるかなんて明らかだしな。特に中華の歴史では。それは粛清と決まっているのだ。もっとも、むざむざやられてやるつもりはないが、ね。

「まあ、まだ正面切ってどうこうってことはない、か。
 だが、対応については考えんといかんだろうなあ」

 袁家領内と江南でも手一杯なのに十常侍まで出てきたらどうなることやら。それに、まだ十常侍が黒幕と決まったわけでもない。現状俺にできることは盛大にため息を漏らすことだけだった。と思っていたのだ。思っていたのだが。更なる懸案事項が沮授によってもたらされる。なんてこったい。

「黒山賊?」
「ええ、最近活発なんですよ」
「ええい。このクソ忙しい時にまた・・・」

 ただでさえ十常侍に対する方針が決まってない上に、黒山賊の蠢動とはな!
 説明しよう!黒山賊とは、常山を根拠とする賊の名前である。以上!だが・・・厄介なことに常山は袁家の領内の外れにある。そこは梁山もかくやという天然の要害であり、流れた犯罪者、山賊が集う一大拠点だ。流民やら無頼やらが流れ込み、いっぱしの軍事勢力となりつつある。

「・・・蠢動しやがるか。よりによってこの面倒な時期に」
「ええ、困ったものです」

 袁家領内では食糧事情が非常によい。故に、食べるに困って犯罪者になるというのはまずない。つまり、袁家の領内の犯罪者というのは、ただ真面目に働くこともできず、奪うことでしか生きられない者共である。ある程度適応性のあるごろつきは「侠」というシステムに拾われるのだが、それにすら所属できない奴らなんぞ、社会にとって害悪でしかない。

「大掃除、するしかないかな?」
「それもいいかもしれませんね」

 内政重視できていた袁家であるが、本来その存在意義は北の護り手。故に袁家の武威が舐められているなぞ看過できるはずもない。
 ――ならば、実力行使あるのみ。

「黒山賊と十常侍か。ぶつかる予定はなかったが、喧嘩を売られたならば話は別だ。やられたら、やり返す。倍返しくらいがちょうどいいだろうさ」

 そう、この世界、舐められたらアカンのである。手を出して来たら痛い目を見るときっちり理解してもらわなければならない。一歩引いたら二歩踏み込まれる。そういうものだ。妥協やら譲歩やらは殴り合った後のことである。無論引く気はない。

「軽く言うけどなあ。十常侍だぞ?――でもまあ、二郎が決めたのならやるしかないかぁ」
「やれやれ。張紘君は弱気ですね?折角二郎君がやる気になってるんです。降りかかる火の粉。振り払うついでに火元を消し飛ばしてやるとしましょう」

 苦い顔の張紘と、楽しげですらある沮授。それぞれの言葉に俺はニヤリ、と笑う。そうさ、俺一人で彼奴らと干戈を交えるわけじゃない。こんなにも頼もしい奴らが支えてくれるんだ。

「二人とも、頼りにしてるぜ」

 ばんばん、と二人の背中を叩く。返ってくるのは溜息と、笑顔。それが何よりも頼もしい。こいつらがいたら怖いものなんてない。袁家に喧嘩を売ったことを存分に後悔させてやるぜ。

「あらあら、これは面白いことになってきてますねえ」

 蜘蛛の巣の深奥で張勲はくすくす、と微笑む。ぺらり、とめくる書類。袁家領内外の動向がまとめられたものだが、最近は紀霊に関する報告の比重が高まっている。

「これはどう考えても偶然なんでしょうけどね・・・。ちょっと紀霊さんには気の毒かなぁ」

 いっそ、暢気といえるであろう表情のままに首を傾げる。紀霊という獲物は思いのほか元気だったようだ。想定よりもその動きは活発で、激しい。これは想定外である。

「動けば動くほど糸に縛られていくというのが分かってないですねえ・・・。といって、動かなければそのまま追い詰められますし。――結局、何をやっても無駄なのになあ」

 あくまで平淡――にこやかではあるのだが――な声からは何も読み取ることはできない。なぜならば、意図を束ねて糸を紡ぐ彼女もまた繰り人形でしかないから。そして、もはやその生が何のためにあるのか、彼女には分からない。
 ――既に彼女は生に倦んでいた。どうしようもなく心が膿んでいたのだ。
 だが、それがどうしたというのか。彼女はただ繰り手の意図通りに踊ればいいだけなのだ。そんなことを考える彼女の背後の闇がその濃さを増す。それこそが彼女の操り手。袁家の闇を一身に背負う張家の当主である。

「娘よ。戦が起こるな」

 それは、異形であった。容姿は整っていると言っていいだろう。だが浮かべる笑みは災厄を連想させ、発する言の葉からは破綻と崩壊を匂わされる不吉。纏う空気には死と血の赤黒い闇が色濃く匂う。そして、広げた両の手。そこに常人ならば違和感を抱くであろう。そう、広げた掌。そこにある指は六本。闇に生まれ闇に生き、名前すら捨て去って深淵から蒼天を睥睨する。希代の暗殺者でもある彼は、ただ、【六】という記号で認識されている。恐怖と嫌悪と畏怖を込めて。
 そしてその娘は張家の最高傑作と言われるほどに完成されている、という。その張勲がくすり、と笑む。父の言、その物騒な言葉をおかしそうに受けとめる。

「ええ、お父様。戦が起こりますね。しかも袁家が巻き込まれちゃいますねー。これは厄介ですねー」

 いっそ朗らかと言っていい口調で張勲は嘆息する。諜報が張家の本領。だからこそ不穏な空気を見逃さない。そしてその流れは変えることは困難であるし、そのつもりが全くない。そう。目の前の不吉な空気を纏う男にはそんなつもりがないのだ。

「――派手に火を放つべし」

 その言を受けて張勲が問う。

「それはいいんですけど、紀霊さん、死んじゃうかもしれませんよ?今彼がいなくなったら色々面倒じゃないですか?」
「ここで死ぬならその程度の駒というだけのことだ。精々抗ってもらおうじゃあないか。まだまだ紀霊は小物よ。奴一人が死んだとて知れている。
 それより田豊だとも。奴の手が見えん」

 ふむ。と数瞬熟考し、張勲は頷く。

「そうですねえ、田豊さん。表面的には全く何もしていないみたいなんですよねー。何もしてないわけがないのに。すごいですねー」
「そうだ。流石は田豊と言ったところか。こちらの絵図をある程度は察知しているだろうよ。それで動かないならそれで構わんとも。監視にも気づいているだろうが、それでいい」
「牽制ですかー。そういう駆け引きって、あの方には無意味っぽいですけどねー。
 ――いっそご退場願った方がよくないですか?」
「それには及ばん。あ奴がいなくなれば流石に乱れすぎる。
 沮授ではまだまだ袁家を押さえられんよ。
 それに、あ奴を消すとすればこちらも総出で挑まんといかん。不敗、という二つ名は伊達ではないのだ」

 過日の匈奴の大侵攻において、軍師という立場でありながら最前線で戦線を支えた――物理的に――猛者である。流石の【六】も尋常な手段では討ち取れないと判断する。

「はいはーい、了解です」

 その辺を理解しているのであろう。張勲はあっさりと引き下がる。察しがいいことである。本当に。

「ふ、お前は良くできた人形だよ。実によく踊ってくれる」
「あら珍しい。お褒めにあずかるなんて、いつ以来ですかねえ」

 張勲の問いに応える存在は既に室にはなく、その声は虚しく響くだけである。

「んー。どうしたものですかねえ」

 と言っても、どうしようもないのだ。彼女は人形でしかないのだから。どろり、と濁った瞳は闇を乱反射し、更に沈んでいく。そう。別に現状に不満があるではなし、問題はない。何も問題はないのである。絡新婦はただ、糸を繰るだけである。意図のままに。

 トントン、と軽やかな音が俺の耳朶を刺激する。それは慣れきっているにしても無視できない音響。一日の始まりを告げる音響。
 更に美味そうな匂いが鼻腔をくすぐり、意識が急浮上していく。夢の底から意識が急浮上していく感覚は嫌いではない。くあ、と欠伸を一つ。大きく伸びをする。これでも寝起きはいい方なのだ。いや、そうなるように鍛えられたと言うべきか。

「お、ようやく起きたかー。ちょうどええし、ご飯食べやー。ま、その前に顔洗っといで」

 にひひ、と悪戯っぽい笑みを浮かべた声の主――俺の上司の梁剛姐さんで、あれやこれやと俺を容赦なく鍛えてくれた人物である――が俺の尻を叩く。最近では週の半分くらいはここに入り浸っている。勝手知ったるなんとやらとばかりにささっと顔を洗い、食卓につく。

「ほら、とっとと食べてまいやー」

 いただきます。そして文字通りがっつく。ものっそい美味いんだからこれは仕方ない。姐さん曰く兵站に伝わる簡単な野戦料理のアレンジらしい。まあ、姐さんはもともと兵站出身らしいからなあ。などと思うのだが。
 卵と小麦粉に野菜と肉を混ぜたものを鉄板で焼いたそれは、多分お好み焼きそのものである。どろっとしたソースが食材の旨みを引き立てる。うん、ラーメンとかチャーシューとかあるからそりゃソースくらいあるよな。ここら辺は深く考えるだけ無駄であろう。
 しかし、兵站で経験を積むと料理が上手くなるのだろうか。ならば陳蘭にも兵站に異動させるべきだろうか。いや、別に不味くはないのよ。ただ、そのまあなんだ。けして美味くはないのであって。いや、不味くはないのよ。けして美味くないだけで。うん、別に不味くはないのだ。

「ごちそうさま!」
「はいな、よろしゅうおあがり」
「そしたら、夕方には詰め所に顔出せると思うんで」
「今日も泊まってくのん?」
「そのつもりっす、遅くなるかもしらんので、飯は・・・」

 十中八九遅くなるけど、どうしようか。と迷う俺に姐さんはくすり、と笑う。

「ええよ、どっちでも。冷めててもええんなら作り置きしとくさかいな。
 食べて帰るなら朝にするし」

 ひらひら、と手の平を振るって好きなようにしろと言外に。いやほんと、好き勝手させてもらってるなあと痛感する。

「そしたら、行ってきます」
「無理せんとな」

 ちゅ、と軽く唇を合わせてから俺は政庁に向かう。最近は訓練よりも中央との打ち合わせの比率が高い。隊の事務的なことは大部分を任せてもらっている。袁家の各方面との面通しということなんだろう。そこいらへんのノウハウもそうだが、そのついでに斗詩や沮授と会えるのが助かる。流石に一日訓練してから打ち合わせとかは無理だからな。
 本来なら猪々子もいるはずなんだが、日常業務に追われているそうで滅多に合流できてない。ここいらへんは個人の適性があるからしゃーないしゃーない。
そして本日のメインイベントである。麹義のねーちゃんに軽く挨拶だけすると、俺は待ち合わせの会議室に向かった。

「あら、二郎様、今日は早いですね」
「そりゃ斗詩もだろ……ってここでお仕事か」
「ええ、今日は来客もないですし」
「そっか」

 斗詩と猪々子は麹義のねーちゃんにびしばし鍛えられている。特に斗詩は何でもできる万能タイプなので重宝されてるようだった。まあ、袁家を支える名門の次期当主だから英才コース待ったなしである。俺?げ、現場優先で一つ・・・。
 まあ、戦乱にあっても前線参謀さえつければ猪々子で心配ないだろ。斗詩が後詰で沮授が後方支援。うむ、負ける気がしないな。俺?ゆ、遊撃こそ紀家の本領だから・・・。とーちゃん見習って領内を水戸黄門的行脚して治安維持に努めるつもりである。
 うむ。袁家配下の名家である紀家当主(見込み)が巡回すれば領内安堵間違いなし、である。そして受ける接待の嵐なんだぜ・・・。かー、つれーわー。毎日接待を受けるとか気が休まらないわーつれーわー。

 というのが俺の将来設計である。うむ。後は前線に引っ張られる前にさっさと隠居するだけである。そのためにも色々頑張らんとな……。

 さて、姐さんに送り出されて向かった先は政庁である。いや、俺だっていつも遊び歩いているわけではない。たまには仕事もするのだ。――それに今日のお仕事は俺が発起人だしな。そのために袁家の重鎮に召集をかけたのである。もっとも、その面子は斗詩と猪々子、それと沮授に張紘という超身内ではあるのだが。
 とは言え、いずれも次世代の袁家を担う人材であるというのは間違いないところである。麗羽様を旗印に、クソッタレな時代に立ち向かう戦友となるのは確定的に明らか。つか、このメンツが信用できないならもうなにも信じられないぜ。
 とは言え、各人は超多忙であり、打ち合わせの時刻に来ていたのは斗詩だけであったのはやむを得ないところであろう。むしろ万難を排してくれたであろう斗詩には感謝である。
 まあ、大筋については事前に打ち合わせてるしな。そしてイレギュラーな案件についても問題ないだろう。――黒山賊の討伐を紀家軍が担当するという案件だ。陳蘭に任せてた母流龍九商会の私兵もそれなりに使えるようになったらしいし、ちょうどいい。実戦テスト、って奴だ。
 くすり、と斗詩が笑う。

「それにしても二郎様がきっちり仕事されるようになったって、文ちゃんがぼやいてましたよ。最近相手をしてくれないって」

 ころころ、と軽やかな笑み。清冽さと、漂う艶やかさの危うい均衡にくらっとしかける。これは年頃の女子の特権なのだろうな。箸が転がっても面白い彼女らは、微笑み一つだけで魅惑的なのである。つい最近まではちっちゃい女の子だったのになあ。いかん、おっさんくさいぞ俺。

「いや、別に相手はしてるぞ?斗詩や猪々子みたいな美少女が来て相手しないとかありえんさ」

 実際、俺の横で飛び跳ねてた幼女軍団がいつの間にか美少女軍団に様変わりである。時の流れというのはすごいなあと思うのだ。いやだからおっさんくさい述懐だというのは認識しているのよ……。

「もう……。二郎様はまた、そんな調子のいいこと言って……」

 頬を朱に染め、どこか憮然とした表情の斗詩の頭をぽんぽんとはたいてやる。いや、この表情見ただけで世の男どもは八割方ノックアウトですわ。

「いや、ほんとだって。実際、歓迎はしてんだけどなあ。茶も菓子も出してるぜ?そのまま飯食って、泊まって帰ることだってあるんだぞ?
 嘘だと思ったら斗詩も遊びにおいでよ。全力で歓迎するぜー」

 これで相手していないとか言われると流石の俺も思う所はあったりなかったり。

「ああ、そういうことなんですね……。それは……文ちゃんが一方的にご迷惑をおかけしているだけですよね……。お仕事から逃げ出して二郎さんがサボり仲間と思ったらきちんとお仕事をしてたから愚痴ってただけという……」

 がくり、と肩を落として斗詩が頭を抱えてもだえる。よせよ、可愛いじゃないかね。

「いいっていいって。なんなら斗詩も机並べて仕事しよーぜー。
 斗詩みたいな可愛い子が横にいたら……駄目だな気が散って仕事になんねえや。
 今のなしー」

 ぷっと吹き出す斗詩。おかっぱにしている綺麗な黒髪が揺れる。

「もう、そんなこと言われたら……本気にしちゃいますよ?」
「いや、ほんとのことしか言ってないから」
「そうじゃなくて、ですねえ……。もぅ……」

 斗詩が笑いながら抗議の声をあげる。うむ。斗詩が睨んできても可愛いだけである。このこの、とぐりぐりとなでくりまわしてやる。
 と、ガチャリと戸が開く。

「おやおや、お邪魔でしたか」
「お邪魔というか遅いというか」
「すみませんね、最近立て込んでまして」

 これっぽっちも悪いなんて思っていないであろう胡散臭い笑顔で沮授が言葉を続ける。

「どうも、色々頻発している事象はつながってないみたいなんです」

 沮授の言葉に思考を切り替える。あれこれと袁家領内で起こる不具合はあれこれあったのだが、それの根っこは繋がっていると思っていたのだが。無論、沮授の調査よりも根深いだけという可能性もある。むしろこっちの方が蓋然性は高いであろう。

「……逆に厄介だなそりゃ」
「統一された意思の元動いているならこちらも対抗し易いんですが、少なくともその意図は見えないですね」

 やれやれ、困ったものですとばかりに肩をすくめる沮授。意外と消耗しているようで、激務っぷりが目に見える。頑張れ。超頑張れ。

「一つ一つ潰していくしかないかー。それでも沮授なら傀儡は炙り出せるだろ?
 ここまで大掛かりにやってくるんだ。囮くらいは仕込んでくるだろう」
「ええ、その通りですね。それも巧妙に隠蔽されてましたがね。それでも外患を誘致しているとされる黒幕気取りの人形は粗方捕捉できそうです」

 流石は沮授である。ひとまず後方は安心して任せてよさそうである。つか、他に任せる人材なんていないのだがね。

「よし、ま、とりあえずは黒山賊か」
「そちらはお任せしますよ?」
「応よ。外向きのことはまあ、任せとけ。紀家は遊撃がそのお役目。果たして魅せるともよ」

 攻勢には文家、守勢には顔家。そして遊撃こそが紀家の本領。とーちゃんが地位に拘らず、領内安堵に努めていたのもきっとその本領を保つため。そしてその紀家に於いて最精鋭たる梁剛隊である。一朝ことあらば士卒が将となるエリート部隊なのだ。

「気を付けて、くださいね……。月並みなことしか言えないですけど」
「なに、所詮は野盗の類さ。どうということもない」

 とは言え、史実全盛期の袁紹でも殲滅できなかった黒山賊が相手なのだ。慢心はしないとも。末端が相手だとしても、な。

「アニキー、ごっめーん遅れたー!」
「二郎すまねえ、色々揉めててな」

 まあ、メンバーが揃った会議自体は四半刻で終わったんだけどね。いや、事前に根回ししてたし。袁家の次代を担うこのメンツが一堂に会してあれこれやっているという事実が重要なのだよ。うむ。

 ――俺は俺で万全を期していたとこの時は思っていたのである。

本日ここまで、ということで

乙です。


…確かに、中華の歴史上の能臣で粛清されずに天寿全うした人って少ないイメージ。

…所で紀霊さん?公孫賛に唾付けるなら、それなりのモン出して貰えるよね?具体的には公孫家を 盛り立てる有能な超有能な事務集団とか。ね?ね?

乙&いつものを
>>100
>>そんなんだからいつまでたってもお胸にも未来が感じられないなのですわ」
○そんなんだからいつまでたってもお胸にも未来が感じられないのですわ」
>>それだけではないのではないということを曹操は
○それだけではないということを曹操は
>>意地っ張りで素直じゃない華琳も、麗羽の言うことは結構素直に聞くのだなあと暢気なことを思う
>>ああ、個人としての総合能力で言えば曹操が上回っているのであろうとは思うのだが。
他のところを見るに地の文では真名を出してないので上の方が間違いかな?どちらも公孫賛の【思う】なので統一した方がいいと思います
>>103
>>ちゅ、と軽く唇を合わせてから俺は政庁に向かう。
>>104
>>さて、姐さんに送り出されて向かった先は政庁である。
重複してるので片方削っていいと思います
>>どこか憮然とした表情の斗詩 …まあ憮然はもうそういう意味でいいか、もし直すならむすっとした表情とかかな
>>105
>>あれこれと袁家領内で起こる不具合はあれこれあったのだが、
○あれこれと袁家領内で起こる不具合はあったのだが、

さてさて不穏なフラグを立てた引き方ですね
適度に足を引っ張ってきそうな有能な内患張家、今回で一斉摘発は出来そうだけど最後っ屁をかましそうな無能な内患、大っぴらに敵対できない十常侍、そしてゴキブリ並みにしぶといだろう黒山賊
めんどくさいことこの上ないですね…とくに絶妙な嫌がらせをしてきそうな張家はノーマークですし、十常侍も手筋が読めない。足元掬われそうな悪寒

史実じゃ孤軍奮闘で袁家と10年近く戦争してたんだがww

ラブひなコイバナ伝が作者によりエタ宣言されちゃいました(涙
更新を楽しみにしてた2次作品がなかなか更新されてない中
二郎ちゃんには頑張ってほしいものです

連休は大洗で観光+鹿最終戦観戦でした
大洗は町ぐるみでガルパン応援してるんやなあというのが伝わってきました
映画、ヒットするといいですね
久しぶりにキャラグッズにお金を使いました(ピンバッジとお酒)

>>108
>…確かに、中華の歴史上の能臣で粛清されずに天寿全うした人って少ないイメージ
権力争いに勝ち続ければ大丈夫ですよw

>…所で紀霊さん?公孫賛に唾付けるなら、それなりのモン出して貰えるよね?
そりゃもう援助てんこ盛りやで

>>109
いつもすまないねえ……

>適度に足を引っ張ってきそうな有能な内患張家、今回で一斉摘発は出来そうだけど最後っ屁をかましそうな無能な内患、大っぴらに敵対できない十常侍、そしてゴキブリ並みにしぶといだろう黒山賊
言語化するとやってられない状況ですねw
頑張れ超がんばれw

>>110
黒山賊のことですよね?
全盛期の袁紹が討伐できないという時点でお察しのしぶとさですよねー

>>111
更新待ってる作品はねー
一ノ瀬もたくさんありますけどねー
中々哀しいものがありますねえ

二郎ちゃんの活躍はまだ始まったばかりだ!

 男が暗がりの中で酒を呷る。ぐびぐび、と咽喉に酒を流し込む。一見豪快な所作。だが時折小刻みに震える指先がそれを裏切る。

「ふふ、落ち着きませんことですわね。心配することなど何もありはしませんのに」

 女が艶やかな声で囁きながら酌をする。

「お、落ち着かねえのは仕方ないだろうが!
 あ、あの袁家に喧嘩を売ったんだぞ!」
「そうですわね。落ち着かないのも無理ありませんわ。
 だって、今までと比べ物にならないくらいの……戦果ですもの、ね?」

 くすり、と女が笑う。

「たくさんお金を持ってたでしょう?
 たくさん食料もあったでしょう?
 たくさん綺麗な女もいたでしょう?
 たくさん、たくさん殺したでしょう?
 たくさん、たくさん奪ったでしょう?
 たくさん、犯したでしょう?
 たくさん、楽しんだでしょう?」

 今さら怯えても、遅いのだと女が毒を注ぐ。
 今さら改心しても遅いのだと女が煽る。
 ――だから毒を注ぐ。

「もう、戻れないものね」

 くすくす、とおかしげに女が笑う。嗤う。

「て、てめえが!てめえが言ってきたんじゃねえか!
 袁家は豊かだから一回で一年くらいは遊んで暮らせるって!」
「袁家の領内は熟れた果実。それは間違ってなかったでしょう?美味しかったでしょう?
 もう、今さら黒山に戻れないのではなくって?」
「うるせえ、うるせえ……」

 男は気弱げに呟く。もう、あんな山奥には戻れない。ならば、もう少し。
 そう、もう少しだけ稼いでトンズラすればいい。なに、随分稼いだが袁家に目をつけられるのはまだ先のはずだ。いざ目をつけられたら逃げればいい。それまでに一生遊んでくらせるだけの財貨を得ればいい。
 それは、果たして誰が囁いたことなのか。それすら曖昧模糊としている。だが、どうせこうなっては退くことはできないのだ。と、思いこませたのは誰なのか。

「酒だ!酒を持ってこい!」

 どろりと欲望に濁った目を光らせながら男が叫ぶ。不安は目の前の快楽に溺れることでしか晴らせない。注がれた酒を一息に呷ると、目の前の美女を荒々しく組み敷く。所詮、この世は奪った者勝ちなのだ。
 偉そうに言葉を紡ぐこの女も、暴力という絶対的な価値の前では股を開く弱い存在でしかない。
 荒々しく衣服を剥ぎ取りながら男が言う。

「逃げられないとしても、お前も道連れだ、分かってんだろうな」

 くすり、と女が笑う。男の情欲を煽るようなその笑みは蠱惑的で、それでいて気品すら漂う。その笑みに男は暴力的に女体を思うままに蹂躙する。いや、それすらも女の掌の上。

 蹂躙されながら、浸食する人型の化け物。その名を李儒という。

 早朝、いや、まだ払暁であろう時刻に姐さんは起床する。同衾している俺を起こさないようにそっと起き上がるのであるが、常在戦場を叩きこまれているのであるからして。

「ああ、起こしてもうたか。寝ててかまへんで」
「そっすか。じゃあ、お言葉に甘えようかな・・・」

 とは言うものの、一つ大きく伸びをしてから意識を覚醒させる。これから朝の鍛錬をするのだ。柔軟、走り込み、立木打ち。そしてクールダウン。日課となっているそれを姐さんは揶揄する。

「なんや、えらい元気やな。昨夜は手抜きやったんかな?」
「いやいやいやいや。あれ以上やってたら姐さんの旨い朝ごはんにありつけないだろうなあと思ってのことですよ」
「飢えたケダモノめ。うちをあんだけ鳴かせといてまだ余裕があるんかいな」
「がおー」

 目を合わせて互いに笑い合う。最近、姐さんのとこに入りびたりである。いいじゃん。若いんだもん。青い山脈は狂った果実だということで、ひとつ。そりゃ障子から怒張が天元突破するというものである。

「塩と酢、どっちにする?」
「塩でー」
「はいな、と」

 汁物の味付けを器用に調整しながら鼻歌を歌う姐さん。あれだな、幸せってのはこういうことなんだろうなあ。・・・しかし、裸エプロンか・・・。マンモスマンが火事場のクソ力であるが、自重自重。である。そんな姐さんが投げかけたのは驚愕の台詞であった。

「あんな、ウチ、今回の出兵が終わったら紀家軍を辞めよう思うねん」

 なん、だと・・・。人間、本当に驚いた時には声が出ないものだな、と思った。つか、マジで?

「なーに間抜けな顔しとんねん」
「いやだって、姐さんがいなくなったら隊はどうすんのさ」
「二郎。アンタがおるやん。
 ウチはむしろおらへん方がええんちゃう?」

 そんなことを言いやがりますよこの方は。

「俺じゃあ、まだまだまとめきれませんってば。雷薄とか韓浩とかを指先一つでこき使う姐さんってばすごいんですよ。っつーか、まだまだ色々学びたいですし・・・」

 愚痴、である。姐さんの決めたことを俺がどうこうできるわけがないのだ。そんな俺をぴしり、と鼻先を爪弾いて笑顔で姐さんが言う。

「教えられることはもう叩き込んだっちゅうねん。
 後は自分の身で学ぶこっちゃな。万全の戦場なんてあらへん。常在戦場にして臨機応変にすべし、や」

 にひひ、と悪戯っぽく笑う姐さんは小悪魔めいていて。チェシャ猫の笑いというのはこういうものだろうか、などと益体もないことを思う。

「はあ、分かりましたよ。で、辞めた後どうするんすか?」

 にんまり、と姐さんが今日一番いい顔で笑いかける。

「んとな。うち、ご飯屋さんやるつもりなんよ」

 なるほど、と納得する。姐さんは料理が上手い。むしろ絶品である。紀家軍の士気が高いのは姐さん由来の食糧事情に依るところが大きかった。そして姐さんは元々は軍人になるつもりもなかった。
 ・・・戦乱の中で生き残るためにあがいて今の地位にいる。それはそれで凄いんだが、本人にとっては不本意ということなんだろう。

「なら、寂しくないですね」
「お、ご贔屓にしてくれるん?」
「姐さんの料理が食べれるならむしろ紀家軍の皆が殺到するでしょうよ」
「はっはは、まあ当然やな。餌付けした甲斐があったっちゅうもんや」
「姐さんなら料理だけで勝負できるでしょうに」
「せやろか?でもまあ、二郎がそう言ってくれるならそうなんかもしらんな。うち、ちょっと自信出てきたわ。
 いやー、これでうちのお店も安泰やわー。紀家軍の総帥がご贔屓にしてくれるからなー。
 かー、きっと二郎はお客さん、ぎょうさん連れてきてくれるんやろなー」

 けらけら、と笑う姐さん。その声は明るくて、つまりずっと描いていた夢なんだろうなあというのが否応なく理解できる。だったら、どうせなら繁盛してほしい。飲食店は立地八割だ。そして姐さんに恥をかかせるわけにはいかない。だから最高の物件を手配しなければならん。俺の声掛けだけの集客なんて。
 と決意を新たにしていたのであるが。

「なあ、二郎?」
「なんすか?」
「丈夫な子供、産んだるさかいな」

 その言葉に絶句してしまう。色々と考えていた――妄想とも言う――俺の頭が真っ白になる。

「なんや、愛想ないなぁ。毎日あんだけしといてほったらかしかいな。
 まあ、ウチはそれでも別にかまへんけど、な」
「いや、そうじゃなくって!」

 けらけらと俺を見て笑う姐さん。ああもう、翻弄されてるのは自覚するけど可愛いなあ。

「やから、うちとこのお店。食材は安く卸してな?」
「・・・まあ、いいですけど。そこらへんは張紘が上手くやってくれると思いますよ」
「なに、拗ねてんのん?いや、二郎はそういうとこ、可愛いねんよなあ」

 ニヤニヤ、艶っぽい笑みで迫ってくる姐さん。近い。近いってば。

「・・・言葉にしないとわかんねーこともあるんすよ」

 大人気ない。我ながらそう思う。思うのだが、やっぱりこう、そこはストレートに言って欲しい。とも言えず。だってさ。そんなあっさり身を退くとか、伝手で優遇しろとかさ。いや、流石に姐さんが俺のバックボーン目当てで近づいたとは思わないけどさ。でも、こう、な。

「つまらん意地を張る。うちは恰好ええと思うよ。むしろ武家の棟梁やもん。それくらいでないとあかんわ。
 ほんま。二郎はええ男になったわ。
 うん。ええ男や」

 ほう、とため息交じりの声。そして決定的な言の葉が脳髄の奥底までをも揺らす。

「ほんま、な。二郎はええ男になったわ。うち、な。ほんまに惚れてもうたんよ。
 やから、うち、二郎の子供が欲しいんよ。せやから、鉄火場とはおさらばやねん。
 せやねん。こっぱずかしいんやけどな。うち、二郎がほんまに好きやねんよ・・・」

 その言葉に俺は耽溺した。籠絡された。いや、もともと惚れていたのを自覚しただけなのかもしれない。

「姐さん。俺だって、姐さんに惚れてるし、俺の子を産んでほしい」

 つまり、そういうことである。俺だって姐さんのこと、間違いなく好きなのである。惚れてるのである。うん、これは確かだ。
 自分の好き勝手な都合だけでなく、他人のために頑張る。それってすごく頑張れる。だから。これ見よがしに、にししとほくそ笑むのをなんとかしたいものである。いや、ほんとに。

 黒山賊は常山に本拠を置く武装集団である。その軍事動員数は数万に達するとも言われている。通常は私兵集団として辺境の街道の安全保障をしたりしている。あのあたりを通る時は奴らに金を払って安全を買うわけだ。払わない奴には見せしめ的な制裁があったりする。
 まあヤクザがPMCとか傭兵団やってるみたいな感じであるな。特に袁家と対立することもなかったんだが、最近はちょっと関係が怪しいそうな。張紘の情報網ではどうも洛陽方面からけしかけられているとのことだ。袁家の勢力を殺ぎにきているというのは本当らしい。
 今回袁家領内で暴れているのは極少数、ほんの数十名程度だ。通常ならそこらへんに常駐している兵力で対応できる範疇なんだが。

「ったく、厄介この上ない」
「ほんまなー、ありえへんやろ、内部から情報が漏れるとか」
「外患誘致とかぶっ殺すべきっすね」

 袁家の冷や飯食らいどもが何をトチ狂ったのかやらかしてくれている。警備隊の動きをリークすることで、賊が自由に領内を食い荒らしてやがるのだ。少数の兵力ということもあり、なかなか捕捉も難しい。
 そこで腰を上げたのが紀家だ。とーちゃんのお仕事のおかげもあり、元々各地の治安組織との関係もいい。更に袁家内では比較的自由な裁量で動ける遊撃軍という位置づけも後押しした。梁剛隊の兵力は百余名。それに母流龍九商会の私兵が百名ほど動いている。
 賊の広域捜索も想定されているので、彼奴等のおよそ十倍以上の動員となっている。

「サクッと片付けんとな」
「ええ、誰に喧嘩売ったのか思い知らせてやりましょう」
「気合を入れるんはええけど、入れ込みすぎるとあかんでー」
「へいへい、おれはしょうきにもどりましたよ、と」
「あかんやん」

 姐さんに軽く小突かれながらも粛々と進軍する。つい最近被害を受けた村落が目的地だ。そこを仮の根拠地とし、賊を捕捉し殲滅する。そして内外の敵に警告を発するのだ。
 喧嘩を売る相手に。次は、お前だぞ、と。何せ武家というのは舐められたらいかんのである。

 到着した村はまあ、控えめに言ってひどい有様だった。家は焼かれ、財貨は奪われている。陰鬱になる俺達を出迎えた村長は涙ながらに謝辞と、被害と、税の軽減を訴えてきた。確かに、この村から例年通りの税を取ると流民になりかねん。
 というか、他の村落もここまでひどいのだろうか。低金利で母流龍九商店に融資を検討させよう。そう考えつつ、言葉を交わす。どうやら賊は二十人程度で、この村を襲った後に北に移動したそうだ。事前情報通りである。しかし、この有様では、ここを根拠地にするのは困難と言わざるをえない。

「あかんなあ。ここは使い物にならんわ。移動するで」
「そっすね。泊まろうにも屋根のある建物もほとんどないっすもんねえ」
「せや。むしろ村に負担になるわ。・・・それにうちらは復興の手助けに来たんとちゃうんやし」

 そう、あくまで賊の殲滅がお役目。それ以外は埒外である。思う所がないではないが。

「本末を転等させるわけにはいかねっすもんね」
「そういうこっちゃ。残念ながら野営が続くで」
「問題ないっしょ。姐さん肝入りの訓練。天幕も張らずの一ヶ月自給自足よりは全然マシっすわ」
「ならええ、ここの援助は後続に任せて野営地を選定するで」
「ういういー、雷薄を先行させますね」

 そうして、俺達は村を後にする。村長がちょっと物言いたげだったのはこのまま見捨てるように見えたからだろうか。だが、他の村落の被害を考えるとそこまでのフォローはできん。兵は神速を尊ぶのである。
 そして、雷薄が見つけた野営地は近場に水場もあり、理想的な平地だった。流石は雷薄。歴戦オブ歴戦。人相が悪いのが玉に疵ではあるがね。いや、戦場ではプラス要因なんよ?威圧スキル持ち確定のいかつい形相であるのだ。

「若、そりゃあひでえですよ」
「あれ、口に出てたか」
「そりゃもう、ばっちりと」

 隊の皆が笑う。よし、流石梁剛姐さんの直卒。士気にも問題はない。天幕を張り、仮の根拠地設営を進める。明日からは賊の追跡と索敵だ。実に地味だが、段取り八割ってね。

 軍を見送った長の顔がぐにゃり、と歪む。

「これで、よろしいのか」
「ええ、そうよ。なかなか見事なお芝居でしたわ」
「これで、孫は・・・」
「ええ、傷一つ付けずにお返しするわ。それとこれが焼いちゃった建物の代価ね。
 これだけあれば十分でしょう?」

 女がじゃらり、と重量感のある袋を差し出す。くすくす、と愉快そうに笑う。

「ええ、ご苦労様だったわね。それじゃあ、もう会うことはないでしょうし、失礼するわね」

 無言で女を見送る。年老いて皺の刻まれたその顔は、内心の苦悶に歪んだままであった。

 野営地の設置は滞りなく行われた。今日はこのまま休息を取り、明日から本格的に索敵業務開始である。これまでの傾向から、賊は居場所を転々としながら村落を襲っている。その動きはかなりランダムで読みにくい。
 よって隊を四つに分ける。俺、雷薄、韓浩が三十ずつ兵を率い、北、東、西を索敵する。賊を発見し次第本陣に連絡。現場の判断で撤収、あるいは威力偵察。もしくは殲滅を行う。母流龍九商会の私兵については合流し次第編成しなおす感じかなー。機動力ではやはり騎兵を中心とした紀家軍に一日以上の長がある。まあ、別運用でもいいしな。合流するまでに片付ければいいだけの話ではある。

「うっし、やってやるぜ!」
「おお、若が珍しくやる気だ!明日は雨ですな!」
「ちょっと待ってみようか。誰が雨乞いの達人だ!」

 げらげらと俺と雷薄のやりとりに皆が笑う。

「ほら、アホなこと言ってへんで、さっさと手伝う!」

 姐さんの声で皆がきびきびと動き出す。実にごもっともである。やはり引退とかありえんよな。姐さん指揮下の戦場料理に舌鼓を打ちながらそんなことを考えていた。



 梁剛は出撃する部下を見送るとすぐに食事の支度に取り掛かる。タダでさえ野営は過酷。屋根の下で眠れることを期待していた皆には申し訳ない気持ちでいっぱいである。だから、せめてご飯くらい美味しいものを食べさせてやろう、と気合いを入れる。
 ・・・梁剛は元々軍人になど縁はなかった。輜重に物資を納入する立場であったのだ。それがいつのまにやらごらんの有様である。まあ、それを愚痴っても仕方ない。正直人を率いて戦うより、手料理で士気を鼓舞する方が性に合っている。
 今でも自分がなんでこんな地位にいるのか、戸惑いがある。戦にいい思い出なんかあるはずないのではあるし。それでもまあ、自分の職責を果たしているうちにこういうことになった。紀家軍のトップたる幹部を預かるとか、非常時のみの扱いかと思ったら戦後平時でもその職責は維持されてしまったのである。
 だが、それももうすぐ終わりである。ようやく、紀家軍のトップの座を譲ることができる。そして夢であった自分の店を持てるのだ。それに、だ。子供を産んでやろうと思う男に会えた。まさか、と自分でも思うのだがどうにもベタ惚れである。

「二郎」

 なんとなく名前を呟いてしまう。初めは生意気なガキかなと思った。だが、その立ち振る舞いを見るに、流石は紀家の跡継ぎよと感嘆するようになった。支えてやらなければ、と自然に思う。情が湧く。気づけばご覧の有様だ。
 ――紀霊は色々と事業を手掛けている。そして成果を出している。しかし、危うさを感じる。これは幾多の戦場を潜り抜けた梁剛の直感であるから、根拠としては意味をなさないのではある。それでも、思った。どこか危うい、と。

 それも過去形で語るべきことであろう。自分と一夜を共にしてからの紀霊は地に足をつけることを覚えたようである。一歩一歩、踏み出したその立ち位置を大切にしてくれている。

「ほんまええ男になったわ」

 万感の思いを込めて呟く。そして、思う。自分が紀霊をそこまで魅力的に仕上げたというのは自惚れではない、と。だから、長生きしたいな、と思う。添い遂げられるわけではない。それでも、と思う梁剛の思索は断ち切られる。

「か、火事だー!」

 なるほど、敵襲。梁剛は理解する。つまりここが正念場。

「総員、戦闘態勢!舐めたらあかん!日没までには偵察に行った部隊が帰参するよって!それまで凌ぐんや!」

 応、と唱和する人員の質と量に梁剛は満足する。それが数名であっても、だ。

「死んでたまるかいな。うちは、こんなとこで死ぬわけにはいかんのや!」

 咆哮とともに迫る兵卒を切り捨てようとしたのだが、届かない。

「くっ!」

 見れば右膝を矢が貫いている。なるほど、これでは満足な動きができない。それでも、できることはある。梁剛は数少ない部下に指示を飛ばす。一秒でも長く持ち応えるのだ。
 そう、持ちこたえたらば援軍がくるのだから。その双眸には確かに不屈の炎が宿っていた。

 胸騒ぎなんてものはしなかった。虫の知らせなんてものもなかった。俺が一番早く引き返したのはもっと単純な理由だ。ノルマの地区を偵察して野営地に還る。その距離が最も近かっただけ。俺の率いる騎馬兵の動きが他の部隊よりも機敏だっただけ。
 だから、理解できない。どうして野営地から煙が上がっているのか。

  俺は何か叫びを漏らしながら愛馬に鞭を入れる。愛馬は間違いなく駿馬であろうが、もどかしくて仕方ない。馬を責めに責める。潰れる寸前に飛び降り、自身の足で駆ける。全速力で駆ける。

 間に合え。間に合え、間に合え。速く、もっと速く。俺が鍛錬したのはこの日のためではないのか。ただ、駆ける。駆けた。賭けた。そして。

 男達が腰を振る。白濁の液体に塗れた女体をなお責める。びくりと震えて精を放つ。

「ったく、締まりが甘くなってきたなあ」
「そりゃそうよ。活かさず殺さずが一番いいってのに」
「そうそう。首を絞めたら締まるっつってもよう。死なせたらいけないだろう」
「だな。抵抗の一つもしないってのはいいけど、なあ」

 男達が笑う。びきり、と肉が爆ぜる音が聞こえる。

「しかし、惜しいなあ、こんだけの女が自分で腰を振るとかないぜ」
「そうだよなあ。もうちっと飼ってもよかったよな。ほんと、ありえないくらい従順だったのにさ」
「これで袁家の将軍だってんだろ。いやあ、俺、こっちに来てよかったわ。
 こんな美人で具合よくて従順でさ――」

 砕けろとばかりに力の限り握った三尖刀。ばきり、と何かが壊れる音が脳髄に響く。喪失感を万能感が塗りこめていく。視界が赤く染まる。紅に、朱色に。そして、吼える。

「うおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 紅を浴びて撒いて散らす。襲い掛かってくる肉塊を散らす。それでも足りない。足りない。逃げ惑う肉塊を斬る、叩く、叩く。肉塊を叩く。かつて人であった塊をそれでも叩く。塊が散って、しまう。溢れる奔流の捌け口を失って、項垂れる。

「ちくしょう、ちくしょう。ちくしょう・・・!」

 慟哭する。取り返しのつかないことに、俺はどうすることもできない。ひたすらに、ひたすらに慟哭する。そして散っていく。仮初の力が霧散していく。喪失感だけが俺を支配する。

「ちく、しょう・・・」

 激昂すら霧散。脱力感が全身を襲う。それでも、譲れないものがある。やらんといかんことがある。それだけが俺を正気にとどめている。

「若・・・?」

 いつの間にか合流した雷薄の声に頭を振って意識を覚醒させる。

「いかんな、姐さんを綺麗にしてやらんと・・・」

 雷薄と、韓浩にこの場を任せて姐さんを抱きかかえて水場へ向かう。きっと一秒でも生き残ろうとしていたのだろう。生き足掻こうとしていたのであろう。生き残ったもんが勝ちだというのが姐さんのモットーだったからな・・・。賊に媚びてでも、それを貫いていたのだろう。味方の合流のための時間稼ぎをしようと全力で挑んでいたのだろう。

「間に合わなかった、ですよ」

 ツン、と鼻梁に込み上げるものを食いしばる。
 水辺に葬る。姐さんは水遊びが好きだったから。きっと喜んでくれる。そして、悼みに来よう。そして。

「くそ、くそ!くっそう!うう、う、うう!」

 激昂する意識。嗚咽を堪える裏で冷えた声が響く。そう、これは俺を狙った謀略なのだ。たまたま姐さんがその網にかかっただけ。これを仕掛けた奴にとっては軽い警告くらいのつもりであろう。

「喧嘩、上等。高く、高く買い取ってやる・・・」

 俺に売ったその喧嘩、買ってやる。誰に売りつけたかを後悔させてやる。尚も激昂する意識と裏腹に脱力していく身体。膝をつき、意識は薄れていく。だが、この喧嘩を売りつけてきた奴を俺は、絶対に許さない。この恨み、晴らさないではおかない。

 暗い天幕の闇の中。どれだけうずくまっていたのだろう。何をするでもなく、何も出来ず、俺はうずくまっていた。こんな姿を隊の皆に見られる訳にはいかない。指揮官はいつだって平然としていなければならないのだから。頭ではそんなことを思っても、何をする気にもならない。したくもない。
 何をしたって姐さんは帰ってこないのだ。身体を何か得体の知れないものが覆っている気がする。全身を痛みが、悼みが駈け、無力感と脱力感が巡る。とは言えいつまでもこうしている訳にはいかない。頭ではそう分かっているのだが。
 ふぁさ、と、天幕の入り口が開けられる音がする。

「・・・っ!入って来んなつったろうが!」

 声を荒げて拒絶する。こんな姿を見られる訳にはいかない。

「二郎さま、お食事持ってきました」

 咄嗟に反応できない。なんで陳蘭がここにいる?そんなに時間が経ったのか?俺はどんだけ自失していた?
 靄のかかっていた頭が徐々に思考能力を取り戻していくのを感じる。

「――おう、すまねーな。そういや飯食ってなかったわ。
 置いといてくれ、ちょっとしたら食うからさ」

 俺の声は震えてないだろうか。陳蘭と目を合わせることができない。誤魔化すように伸びをしながら、立ち上がろうとする。ぐらり、とふらついた俺を陳蘭が支える。
 がしゃん。音を立てて飯が落ちてしまう。だが、ちょうどいい。食欲なんてあるはずもないんだ。

「あ、悪いな。せっかく持って来てくれたのにな」

 どうにも月並みな台詞しか出ない。いや、そんなに洒落た台詞を吐くキャラでもなかったしいいや。陳蘭がもう一度食事を取りに行っている間に本格的に再起動しないと。そう思いながら更に適当な戯言を吐こうとしたのだが、ぎゅ、と抱きしめられてしまった。
 ふわり、と女の子の匂いが鼻腔をくすぐる。

「大丈夫、です」
「な、何がだよ、俺は!」
「わたしは、ここにいますから」

 ぎゅ、と俺を抱きしめる腕に力が込められる。――その温もりに甘えてしまいそうになる。溺れたくなってしまう。甘えてしまう。溺れてしまう。

「く・・・。う、う、うぅ!」

 また嗚咽が漏れ出す。吐き出してしまう。

「俺が、俺がいたなら!姐さんは死ななかった!後続部隊がいるのに兵力分散とか愚の骨頂だ!
 俺が殺したようなもんだ!何が紀家の麒麟児だ!上司を・・・。
 惚れた女一人守れないじゃないか!」

 陳蘭の胸の中で俺は甘える。自らを責める言葉。それらは全て甘えだ。それでも、口に出してしまう。

「泣き言なんて情けないよな」
「いいんですよ。わたしは二郎さまよりおねえちゃんなんですから」

 口にした自嘲を優しく抱きしめる言葉が、嬉しい。

「だから、二郎さまを大切に思ってる人がいるっていうことも知っておいて欲しいんです」

 そう穏やかに言って、陳蘭はその唇を、俺のそれに重ねた。

「私のこと・・・、嫌いになりました?」
「昔も、今も大好きだよ・・・」
「嬉しい、です・・・」

 肌のぬくもりに耽溺していく。包んでくれる暖かさを貫いて慟哭を漏らす。怨嗟をため込む。
 ごめん、もう少し。もう少しだけ、甘えさせてくれ。ほんの少しだけ、眠らせてくれ。そうしたら、頑張るから。

 戦闘の顛末を報告する使者を走らせる。始末書どころの話ではない。賊討伐に赴いて、だ。紀家軍最精鋭の梁剛隊の隊長が戦死なのである。これは責任問題であるからして。なので進退伺いを報告書に同封している。雷薄や韓浩に責を負わせるわけにはいかんからね。

 袁家からの使者が来たのは数日後だった。驚くべき早さと言っていいだろう。しかも、使者の格が違った。

「黒山賊の討伐、ご苦労さまでした。母上も満足されておりますわ」

 なんと、麗羽様――次期袁家のトップである――が使者とは予想外である。使い走りさせていいような人材ではないし、格でもない。などと考えているのを見抜いたのか、にこり、と微笑みながら口上を続ける。

「賊の奇襲に対し、一人で相手を殲滅したこと、まことに天晴れ。
 流石紀家の跡取りは武において比類ない。母上はそうおっしゃっております」

 ・・・む。

 絶句する。これは更に予想外のお言葉である。そんな俺を見て刹那、麗羽様の顔が微かにゆがむ。どこか痛ましげに。

「いや、お役目を果たしたのみ。袁家領内を荒らす賊は討ち果たす。お褒めの言葉を頂くほどのことでもありません」
「これは頼もしいことですわ。その意気やよし。しかして賊が跳梁跋扈しているのも事実。故に二郎さん。貴方には紀家軍再編を命じます。領内安堵と慰撫がその任となります。よろしくお願いしますわね?」

 おーほっほと響き渡る麗羽様の笑い声に武者震いが起きる。これまで平時に必要ないと分割されて長城へ派遣されていた紀家軍一万。その再編が命じられる。いずれは、と思っていたが随分早い。俺にそんな資格が、能力があるのだろうか。甚だ疑問であるのだが。
 思考の沼に沈もうとする俺の耳元で麗羽様が囁く。

「力をくれてやるからさっさと立ち上がれ。お二方からの伝言ですわ」

 嗚呼、なるほど。なるほど。師匠もねーちゃんも・・・落ち込むなんて贅沢は許してくれないということか。つまりそれが内外の最前線である袁家の幹部であるということなのであろう。紀家のトップに立つということなのであろう。
 瞑目する俺に、くすり、と麗羽様が笑いかける。

「そして。わたくしも、いずれ袁家頭領として立ちます。その時は応援してくださいますわね?」
「そりゃまあ、無論ですとも」

 袁逢様の後継争いというのは意外に熾烈である。多数派工作が今現在も繰り広げられているはず。まあ、兵を握っている文家、顔家、紀家の麗羽様支持は固いから多分安泰だけどね!でも実際麗羽様を予備にして、袁胤殿を当主にってのは結構バカにできない勢力なんだよなあ。
 本来は匈奴大戦の後に袁胤殿が当主になるはずが、使い捨てであったはずの袁逢様が予想外に武勲を挙げたのだ。軍幹部が壊滅状態であったから緊急措置として袁逢様が袁家当主となった。序列考えたらかしこき血の流れある袁胤殿であろうという主張は根強い。

「俺以下、紀家軍は麗羽様を支持しますとも」

 俺の返答に満足したのか、麗羽様はもっぺんあの笑いを場に響かせて――いや、ほんとよく響くのよ――場を去る。

「きな臭くなってきやがったな――」

 くい、と袖が引かれる。心配そうな陳蘭に笑ってやる。大丈夫だ、問題ない。何せほっといたら乱世が始まるからな。俺はそれを防ぐために力が必要なのだよ。落ち込んではいられない。いる暇はない。
 だって、俺が麗羽様を、袁家を支えなければいけないんだもの。俺がしゃっきりとしてなかったら、誰に付け込まれるか分かったものではないのだ。

 そうして、俺は南皮に華々しく凱旋することになったのだ。忸怩たる思いは別として。

「随分とご機嫌のようだな、李儒よ」
「あら、分かる?
 望外の収穫だわ。やっぱり私自ら来てよかったわ」
「そうなのか?折角けしかけた黒山賊は全滅しただろうに」
「うふ、本当によく踊ってくれたわ。ええ、素晴らしいわ」

 その言いぐさに華雄は舌打ちを漏らす。どうにもこいつとは相いれない、いけ好かないのだ。いや、それを言うならばそのような人物を護衛せねばならない我が身はどうだと問うことになるのだが。

「うふ、貴女にも分かるように説明してあげるわ。
 今回私がここまで来たのは袁家の力を削ぐため。それはいい?」
「ああ、それは散々聞かされたからな。
 過ぎた力を蓄えたんだろう?袁家は。
 だが、今回はお前が・・・あんなことしてまで黒山賊を動かしたのにたった10人くらいの兵の犠牲しか出せてないだろう」

 華雄の問いに李儒はくすくす、と心底おかしげに笑う。

「それでいいのよ。数はどうあれ、黒山賊が袁家に害を加えた、というのが重要なの。
 これまで黒山賊と袁家は別に敵対していなかったわ。当然よね。必要もなく喧嘩を売るなんて、獣だってしないわ」

 ふむ、と頷く。だが華雄は更に問う。所詮黒山賊の一部が暴走しただけだろう、と。言外には李儒の示唆によってであろうという揶揄を込めて。
 その声に李儒はくすくす、と深い笑みをこぼす。

「袁家はそうは思わないわよ。領内を荒らされて面子も潰れたもの。
 そう思えないわよ。だから、黒山賊もこれよりは袁家と本格的に敵対しないといけないでしょうね。
 だから、最低限の成果は最初から約束されてたようなものなのよ。
 でも、今回はもっともっと色々火種を撒けたわ」

 む?と華雄が問う。

「と、言うと?」
「そうねえ。正直、紀霊みたいな大物が釣れるとは思わなかったもの。
 適当に小競り合いするだけでもよかったのよ。
 でも、そうはならなかったわ。幸いにも、ね」
「そういえばそうだな。確か、警備の兵とはかち合わないように貴様が調整してたのだったか」
「ええ、袁家内部から情報が来るとは思ってなかったもの。それを活かさないと、ね。
 袁逢を旗頭に袁家は一枚岩と言われてるけど、そうでもない。それが分かったのが一つ。
 そして、袁逢を疎んじる勢力は外患を招くほどに焦っている。しかもそれなりに力を持っている。
 これは貴重な情報ね」

 ち、と華雄はいらだたしげに舌打ちを漏らす。

「ふん、唾棄すべき奴らだな」
「ええ、貴女はそう言うでしょうね。だって紀霊が出てくる時期まで知らせてくれるんですもの。
 死地にご招待できてよかったわ。そのために色々仕込んだんですもの」
「ふむ。まあ、ずっと逃げ回っていたから本陣の警戒が緩んだというのは分かるが」

 つい、李儒の話に引き込まれていて、華雄は内心舌打ちを重ねる。言葉を交わすほどに耳が、心が汚されていくようで。

「あら、意外ね、貴女がそこに気づくなんて。そうよ。だって後続の兵を待たれたらどうにもならないもの。
 そのために絶えず動き回り、逃げ続ける。だから攻めてくるなんて思いもせず、全力で索敵したものね。
 普通に考えたら、いい判断だと思うのだけれどもね」
「ふむ・・・。なるほど、村長に黒山賊の数を半分に言わせたのもそのためか」
「ええ、そうよ。相手が同数と知れば流石に兵力分散なんてしないでしょうからね。
 でも、50の賊なら最精鋭の梁剛隊なら30でも正面からぶつかっても勝てる。
 実際そうなったでしょうしね」

 勝ち誇ったような李儒がどうにも腹立たしいのだが、言っていることは確かなのだ。実際に彼女の思うままに盤面は展開していった。

「ふむ、なるほどな。だが、村で援軍を待ったら?
 それにたまたま今回は野営地の近くに伏せられたが、他のところに陣を構えたらあそこまで襲撃が上手くいかなかったろう」
「それをさせないために村を焼き払ったのよ。そしてあの村から北上すると野営地に相応しい場所はあそこだけ。
 そのためにあの村を襲うのを最後にしたのよ」

 悪辣な!その内心を漏らさないほどに華雄は器用ではない。

「なんとも性悪なことだな!だがお前の性格からして、人質を返すどころか金を握らせるとは思わなかったんだが」

 華雄の糾弾に李儒はくすり、と応える。

「うふ、よく見てるわね。それにも意味があるわ。
 袁家はきっとあの村に援助をするわ。でもね、援助が届く前に村はあのお金で復興するわね。
 当然、疑問に思うわね。すると分かるでしょう。徹底的に略奪、破壊された村がどうして自力で再建できるか」

 そうしたら、賊徒と結んでいたという結論が出るでしょう?助けに行った領民に裏切られたということになるでしょう?それは、とてもとても素敵なこと。そうして、それを知って袁家は民にその恩恵をもたらすのかしら?

「貴様、何を言っている?」

 李儒の毒言。触れるものを毒するその言は華雄にはある意味通じない。だが、何かしらの悪意があることは察知する。その本能で。

「うふ。でも、最大の収穫は紀霊の武を見れたことかしらね。
 てっきり紀家の御曹司としての上げ底の評価だと思っていたのだけれども」

 あの激情を、悲痛な慟哭をこいつに語らせるとこうにも醜悪に響くのか、と華雄は頭を振る。

「紀家に名高い三尖刀。それを振るう紀霊の武威は相当なもののようだ。それで?」

 個人的には手合せしたい。そう思わせるだけの武勇を紀霊は持ち合わせている。だが、前後の事情を知っていると話は別である。
 華雄の問いに李儒はくすり、と唇をゆがめる。

「ええ、そうね。名門袁家に息づく猛将。極めて厄介であると言えるわよね」

 袁家は力をつけすぎたのだ、と笑う李儒を華雄は嘆息交じりに見やる。重ねて思う。どうして自分がこのような奴の護衛をせねばならないと。

 ぽつり、と大地を穿つ雨粒はきっと涙雨なのだろう。華雄は李儒を置き捨て、馬に飛び乗る。後ろで抗議の声が聞こえるが知ったことか。
 黒幕気取りの李儒が華雄にはとても疎ましく思えたのである。

「毒婦、め・・・」

 その呟きを、遠くで響く慟哭を雨音が消し去っていく・・・。

 怒涛のような歓声が響き、俺を包みこむ。そう。俺は南皮に凱旋した。そう、凱旋だ。袁家領内を荒らしまわっていた賊百名を一人で殲滅した英雄ということになっている。
 なるほど。奇襲を受け、指揮官が討ち取られるも、単騎で駆け戻り賊を討伐する。紀家の麒麟児は武においてもまた素晴らしい。そんな筋書きが湧いてくるのには納得である。納得ではある。姐さんは所詮紀家の陪臣だったからなあ・・・。それに俺の立場を強化するという意味もある。だから納得するしかない。だが、思う所はあるのだ。あるのだよ。くそう。

 長らく平和だったからだろう。適度に危険の香りのするこのエピソードはあっという間に広まった。何も知らない者は歓呼で出迎え。ある程度事情を知るものは咎めるような視線を向け。更に深く知るものは道化として俺を見るだろう。造られた英雄。それが俺というわけだ。
 ――惚れた女一人守れない。それが俺だ。だから振り向けないし、涙を見せるなどもってのほか。感傷にひたる贅沢なんて許されない。
 そして、賊を皆殺しにした容赦のなさから異名も広まりつつある。

「怨将軍、ね」

 勇名である。いわば戦国時代の「鬼柴田」とか「鬼吉川」の鬼みたいな意味合いであるのだよ、怨というのは。まあ、持ち上げ過ぎだろうとか思うのだけれども、それだけの期待を受けているということなのであろう。それくらいは理解している。
 俺の凱旋の裏で囁かれる噂。麗羽様がいよいよ袁家の当主となられるらしい。引継ぎのためだろうか、袁逢様の姿をお見かけすることもなくなっている。体調が相当悪いのだろう。そして、ある日、袁家の主要な家臣が集められる。
 ここで麗羽様の後継を宣言するのだろうか?しかし傍流、反対派なども勢いを増しているのだがなあ。待ち合わせていた沮授と合流し、広間に向かう。

「しかし、麗羽様もいよいよかー、早いもんだなあ」
「ええ、そうですね。でも、今日はそれだけじゃありませんよ」
「あ?そうなのか?何があんの?」
「それはお楽しみということで」

 胡散臭い笑みのまま沮授が言う。こいつ、ほんといい性格してやがるよなあ。とりあえず蹴っとこう。うりゃ。おら。てや、てややー。
 などと沮授にちょっかいをかけていたのだが、後から思えば暢気すぎたのだよなあ。


「まあ、そういうことだったのかよなあ、と俺は脱力しまくりだのだよ」

 半ば呆然としたまま部屋に戻り、頭を抱える。沮授が意味深に笑うわけだ。流石だよ、流石だよ。つか、そんな一手は思いもよらなかった。

「ど、どうされたんですか?」

 陳蘭が茶を淹れながら問いかけてくる。よーし、おちつけ、KOOLになれ俺。

「やられたよ。あれもこれもこの日のためかよ。やーらーれたー」
「とりあえず落ち着いてください」

 淹れてくれた茶を啜りながら頭を整理する。うん、不味くはないが美味しくもない。いつもの陳蘭の茶だ。

「袁家の非主流勢力というのがあってだな」

 まあ、麗羽様を次期当主にしたくない勢力である。これが意外と手ごわいのだ。いや、流石に伝聞でしかないのだがね。そんな面倒な勢力と関わるつもりはないしね。麗羽様支持だけで十分だと思っております。奥向きのことにこれ以上関わるのは流石に俺の立場がやばくなるしね。越権行為にもほどがある。

「はい」
「それがまあ、非常に追い詰められつつあったわけだ。そりゃまあ、田豊様が腕を振るい、麗羽様が着々とその地位を固める。武家の文、顔が側近として仕え、紀うちとも関係は良好だ。
 そりゃあ、付け入る隙なんてないやな」
「そうですね」
「だから外部と結んだわけだ。
 外部にはこっちも手を出すのが難しいからな」

 忌々しいことである。まあ、追い詰められた勢力が外患を誘致するというのは歴史的にもよくあることである。なおその末路はお察しください。

「十常侍、でしたっけ」
「そうそう。黒山賊とも繋がってるだろうなあ。外患を誘致するなぞ愚の骨頂なんだがな。例え袁家の主導権を握ったとしても、現場おれたちがついていくものかよ。
 そういうことも分からないから主流派になれないんだな」

 なんでも反対の野党勢力が何かの間違いで政権を取ったらそりゃあ、国は乱れるよ。

「でも、それじゃどうしようもないですよね」
「だから、あえて袁家内に対立軸を仕立て上げたんだ」
「な、内部にですか?でも、麗羽様に対抗できる人なんていませんよね?」
「そう、だったんだよなあ」

 袁胤殿がその筆頭だ。特に外部――特に洛陽――とのパイプが太い。とはいえ、本来ならばそれはプラス要因だったのではあるのだが。実際今回の一件でそれが裏返ってしまった。その、絶妙なタイミングでの一手である。流石に狙っていたわけではないと思うのだが。

 俺は頭を振りながら、記憶を呼び起こす。麗羽様が当主を継ぐこと、それに従い、猪々子と斗詩がそれぞれ当主になること。
 それはいい。いいんだ。まあ、予想よりちっと早かったが既定路線だ。
 だが、そこに袁逢様がおいでになったんだ。病床に臥せっているという噂で、ここ暫く――半年くらいかなあ――はお姿をお見かけすることもなかった。
 その時。広間の空気がざわついた。

「久しいわね、皆」

 袁逢様が声をかけられる。相も変わらず鈴をころがすような麗しいお声である。が、俺達は反応できない。なぜなら、袁逢様は一人ではなかったからだ。その豊穣たる、豊かな胸に、赤子を抱いていた。それに一同の注目が集まり、無言の問いかけが袁逢様に向かう。
 にこり、とその空気を読んだかのように袁逢様は言の葉を紡ぐ。既に場は袁逢様に支配されており、流石は袁家当主だと後から唸ったものである。

「そして紹介するわね。袁術。私の娘よ」

 嫣然と袁逢様がおっしゃる。どういうことだ?これは出席者のほぼすべてに共通した思いだろう。いや、落ち着け俺。袁術ってあれだ、確か三国志では袁紹の異母兄弟だ。
 じゃなくて!

「ふふ、皆驚いているようね」

 そりゃそうでしょ!不意打ちどころの話じゃないっての!

「この娘を無事産めるか分からなくてね、皆には黙ってたのよ」

 ・・・あー、まあ、確かに袁逢様のお体を考えたら非公開にするのも致し方ないと言える。かの孫堅も産褥にて儚くなってしまっているのだからして。なのだが。なのだが。これはあんまりでしょう田豊師匠・・・。仕える主、そして生まれてくるお子様すら政略の彩にするとか、非情すぎませんかねえ・・・。
 こんな手、思いつかねえよ普通。思いついても、普通、やるか?あ、普通じゃないか。俺の茫然自失具合を見たら高笑いされるか殴られるかどっちかだろうなあ・・・。あ、蹴られる可能性もあるか。
 などと口から魂を出しながら現実から逃避していた俺に更なる試練が!

「そして、守役には紀霊と張勲。よろしくね?」

 なん・・・です・・・と・・・!



「ええ、袁術様の守役、ですか?」
「おうよ。拒否権なんてねえな絶対」
「それって、いいことなんですか?」
「何とも言えない」

 実際何とも言えないのだ。麗羽様と俺の関係はいたって良好。しかしここで袁術様の守役になった。
 これは見ようによっては左遷だ。
 しかし、袁術様の後ろ盾としては申し分ない。仕立て上げられたとはいえ、英雄な俺と、張家の跡取り娘だ。あるいは袁術様を奉じて袁家を牛耳ることも可能。そう、係累に思わせることができるだろう。

「つーか、張家含む不穏な勢力を俺に抑えろ、ってことなんだろうなあ」

 むしろ特に張家、かなあ。

「ふぇ、えええ?」
「あー、田豊様マジ鬼畜。鬼だ。悪魔だ」
「じ、二郎さまなら大丈夫ですよ!わたしもお手伝いしますし!」
「ありがとな」

 あー、マジへこむわ。360度365日周囲が敵じゃねえか。せめて事前の打診とか欲しかったでござる。いや、その場合全力でお断りさせていただきたいのだけど。
 ――と、とりあえずは武力だ。紀家軍はもちろん、母流龍九商会の私兵も増やさねばいかん。あれこれと考えながら頭を回していると、来客を告げられた。

「張勲、だと・・・」

 袁家の闇を支配する張家。その次代当主たる張勲のご指名に俺は頭が真っ白、である。いや。どないせいっちゅうねん。俺、アドリブに弱いのよー?




「ふん、ご苦労だったな」
「は」

 華雄は指令を果たしたという高揚感、それを打ち消して尚余りある忸怩たる思い。その、冷静と情熱の間で持て余した感情をどうしたものかと思いながら仔細を報告する。
 その懊悩を察したのだろうか、すさまじい威圧感が華雄の身体を縛る。

「なんだ、かなり不満そうじゃないかよ」
「・・・やはりあのような策は忌避したく」
「はは。おかしなことを言う。お前の任務は李儒の護衛。それ以上でも以下でもない。
 お前の見解など知らんな」

 冷然と切り捨てるが如く、響く。それには冷笑が含まれていると思うのは華雄の思い過ごしであろうか。

「無論、だ!一切口は出していない。それでも、それでもやはり承服しがたい」
「ほう。随分と愉快なお仕事だったらしいな」
「守るべき民草を蹂躙するなど、いくら袁家の勢力を削ぐためといえ、妥当とは思えん!
 それに、貴方は十常侍とは対立しているはずだ。なぜ十常侍の走狗たる李儒の護衛など申し付けたか!
 袁家の力が充実し、邪魔なら正々堂々と兵を起こせばいいではないか!
 黒山賊などという盗賊ごときの!片棒を担ぐなど!」

 怒号。しかしてその内実は哀願に近い。それほどまでに両者の力関係は隔絶している。少なくとも華雄はそれを理解している。
 そして、そのような華雄の哀願を聞いた男は笑みすらなく、淡々とした言の葉を紡ぐ。

「ふん、苦界に身を沈めてみるか?そんなこと言えなくなるぞ?
 ああ、それがいいかもしらんな。ま、現実と向き合うにはまだまだ足りんだろうがな」

 ニヤ、と笑う男に華雄は反発する。

「わ、私をそこまで愚弄されるというのか!」
「愚弄ではない。正当な評価だよ。
 武だのなんだのに拘ってる限り、お前は最強などには辿り着けんよ」

 華雄は反論できない。目の前の男の単純な武力。それに華雄はかつて膝を屈したのだからして。

「まあいい、お前の内面などには期待してなかったさ。
 ちゃんと、李儒は袁家に喧嘩を売ってきたのだろう?」
「――は。それに関しては間違いなく」

 ニヤリ、とした笑み。何進の笑み。滅多にない感情の発露にさしもの華雄も戸惑いを覚える。

「それでいい。袁家の勢力を削ぐとかはどうでもいいのさ」

 そのような華雄の思いを無視するが如く、更に笑みを深める。

「どういうことだ?李儒は色々火種を撒いてたようだが」
「クハ、それはどうでもいい。重要なのは十常侍が袁家に害を成したと言う事だ。
 今の袁家は日の出の勢いだからな。あのような小細工で止められるものではないさ」
「・・・よく、わからない」

 貴様はそれでいいとばかりに笑みを深めて言い募る。

「李儒の工作が十常侍の意思だというのは袁家に看破されるだろうよ。それに気づかぬくらいならば、逆にありがたかったのだがな。まあ、それはいい。そうすると、俺が差し出した手は限りなく貴重なものとなる。
 袁家と俺。同時に喧嘩を売るのはよっぽどの愚者だろうよ」
「・・・やはり、私に内向きの話は向いていないようだ」
「ふん、やはり一度輪姦でもされてこい。貴様に足りんのは弱者となることよ。視野が広がるぞ?」

 げらげら、と下品な笑い声を残し男が立ち去る。妹を使い、のし上がった成り上がり。肉屋の倅。彼を忌み嫌う者はそう言うのだ。
 漢朝に巣食う佞臣と言われ、権力をほしいままにするその男。事実上の漢朝の最高権力者。大将軍という並ぶものない地位を得た、魔都洛陽の実質的な最高権力者。

 その名を、何進、という。

本日ここまで

これにて第一部完となります

続きはちまちまと此方に投下
誤字脱字チェックと推敲したらなろうに投下いたします

オツ&ゴジホウコク(シンダメ)
>>118
>>一秒でも長く持ち応えるのだ。
○一秒でも長く持ちこたえるのだ。 もしくは持ち堪える 応えるの使い方は[期待に応える]という形になるのでちょっと違和感があります
>>126
>>「そして紹介するわね。袁術。私の娘よ」 間違いではないですが袁逢の娘ならそりゃ袁がつくよ…ということで
○「そして紹介するわね。公路。私の娘よ」 の方が自然かと思います。まあ読者としては袁術の方が分かりやすいんですけど
>>127
>>ニヤリ、とした笑み。何進の笑み。
中略
>>その名を、何進、という。
途中で何進、と名前は出さない方がいい気がしますね。ほかのところでは男、と表現してますし
>>ニヤリ、とした笑み。悪党の笑み。とか非道の笑み。とかの方が良さげなきもします

さて、私の嫌いなシーンベスト3ですよ(慟哭)まあこういうのがあったからこそより物語の好きなシーンが引き立つんですが(嗚咽)
もしかしたらこういった喪失を知らなければ二郎ちゃんはどこか現実感のないままだったかもしれませんしねえ
まあ李儒はぶち殺し確定として>>120の最後で激昂しながら気絶してたのに>>121で萎んでる二郎ちゃんですが一種の躁鬱状態になったのでしょうか?
李儒には地獄を見せるとして黒山賊に無謀な突撃をかますでも黒山賊絶対殺すマンになるでもなくヒッキー状態になった二郎ちゃん…現代人の精神力ならこんなものですかねえ
李儒死すべし慈悲はない。PS嫌いというか、理解はできるけど納得できないシーンでして、何とか姐さんには幸せになってほしかったと言うだけで決して作者および作品をdisるつもりはありません。李儒に災いあれ

>>130
いつもすまないねえ(おめめぐるぐる)

>さて、私の嫌いなシーンベスト3ですよ(慟哭)
好きなシーンと言われたらびっくりですよ(便乗)

>もしかしたらこういった喪失を知らなければ二郎ちゃんはどこか現実感のないままだったかもしれませんしねえ
凡将伝の世界観は、原作恋姫より殺伐としていますので……

>PS嫌いというか、理解はできるけど納得できないシーンでして、何とか姐さんには幸せになってほしかったと言うだけで決して作者および作品をdisるつもりはありません
いいええ、お気持ちはありがたくいただきます
ディスるとか、全くそんなことは思いませんので
本当にありがたく思っております

第一部完ですが今後ともよろしく……

あと、第一部のサブタイトル的なものを募集します

現状の案としては

・黎明編
・立志編
・とある外史の事前編
・外史序章

なんか、しっくりこないのですよね
ご意見いただけたら、と思います

胡蝶の羽ばたき編 この世界が夢か現か分からないことと主人公の行動によるバタフライエフェクト的に
凡人の小さな足掻き編 でも基本二郎ちゃんはいつもあがいてるか
袁家転換期 歴史から見ても外史から見てもここが転換期という事で
袁紹、その道の始まり もういっそ彼女が主役でいいんじゃないか(オイ)

>>133
案ありがとうございます

下積み編
袁家編
袁紹編

このあたりでも面白いかもですね
もちっと練ってみます

まだまだ募集しております

袁家編と袁紹編は…この先もその二つはメイン張る位置にいるだろうから
下積み編がいいかもね
立志編、隆盛編、立身編
とかどうでしょう

胎動編 色々なものが動き出す前準備とその後の波乱を予期させるいうことで
接触編 様々な人との接触からはじまるということで。その後発動篇が…

没ネタ はじめの一歩
4部構成だったら 無印・R・S・SS、始・続・終・余

竜堂兄弟乙
四部構成と聞いて
始まりの風、激流の水、戦争の火、治める土。とか考えたけどどことなく四天王っぽくなってしまった

>>135
>立志編、隆盛編、立身編
どれもいいですね!
でも隆盛編なんて転落間近っぽいw

>>136
>胎動編 色々なものが動き出す前準備とその後の波乱を予期させるいうことで
おー、一番しっくりきたかもです
これで仮確定としときます

>接触編 様々な人との接触からはじまるということで。その後発動篇が…
やめてください外史が壊れてしまいますw

>4部構成だったら 無印・R・S・SS、始・続・終・余
なのはさん、いい加減結婚しても誰も文句言わないと思います
そしてあの作品はもうエタったと思っていいのかなあw

>>137
>始まりの風、激流の水、戦争の火、治める土。とか考えたけどどことなく四天王っぽくなってしまった
なぜか南斗五車星を連想しました

 本日は晴天なり。日輪がもたらす暖気は暑くもなく寒くもなく。実に快適な旅路を提供してくれている。遥か彼方の地平線さえもが見渡せるほどに澄み切った空気。時折寄せる砂塵も大人しいものである。黄塵、舞うも儚げなり、と。
さて、現実逃避もほどほどにしようか。

「七乃ーあれはなんなのじゃー?」
「あれは、枇杷という果物ですよー
 葉もお薬になったりするんですよー
 だから、お医者さんの庭にはよく植えてありますねー
 実も甘くて美味しいですから後で食べましょうねー」
「分かったのじゃー。七乃は物知りじゃのう。
 でもどうして道沿いに色々な木が生えておるのじゃ?」
「道行く人が自由に食べられるようにですねー
 誰でも取っていいから、地元の人が集めて売ったりして
 お小遣いにしたりもしてますよー」
「なんと、早いもの勝ちということじゃな!
 早く取ってしまわんと食べられなくなってしまうのじゃ!
 七乃、急ぐのじゃ!取ってきてたもー」
「はいはーい、後で手配しますから安心してくださいねー」

やいのやいのと賑やかなことだ。この二人は馬車の中でずーっとこの調子で騒いでいる。あー、俺、馬にしとくべきだったかなあ……。ため息が漏れるのを誰が責められようか。いや、ない(おざなりな反語)。

「二郎さーん、なに辛気臭い顔してるんですかー?
 欲求不満ですかー?
 美羽様がおねむになったらちゃーんとお相手しますからー
 ね?」

 責めてくる人がいました。見た目は美少女、中身は混沌!這い寄る張家の跡取りこと張勲、真名を七乃という腹黒系女子である。

「ね?じゃねえよって。どんだけ俺は飢えてんだよ。誘うにしても、もちっと考えろってばよ」
「いやあ、そろそろ溜まってるころかなー、と思いまして。
 ほら、男の人って二日で欲求不満になるらしいじゃないですか」

 どこで仕入れたその知識!割と正しいぞ?

「七乃ー。溜まるって何が溜まるのじゃー?」

 不思議そうに美羽様が七乃に問う。いかんいかん。この場には純真無垢な幼子(おさなご)がいるのであった。

「美羽様にはちょーっと早いかなー?」
「だったらあえて口にするなよ!」

 にんまりと微笑むその表情は慈母のように見えるが、個人的には極めて胡散臭いなあと思うのである。と思っていたら目が合った。

「まだ口にしてませんよー?せっかちですねえ。
 そんなにおねだりされたら、仕方ないなあ。
 美羽様はちょーっとあっち向いててくださいねー」
「わかったのじゃー」
「ええかげんにしなさい!」

がおーっと叫ぶときゃーっと笑う主従。

つ、疲れる……!

しかしなーんか、七乃とも馴染んじまったなあ。と、俺の部屋を訪ねてきた当時のことを思い出すのであった。
 いや、当然警戒はしてるよ?してるってば。

現在俺の名は若き英雄、怨将軍として袁家領内では知れ渡っている。どうせなら虚名であっても利用しちまえ、ということで積極的にプロデュースしてみたのである。
講談師や流しの芸人にお手軽な英雄譚として話や楽曲を提供したら広まる、広まる。最近では阿蘇阿蘇(アソアソ)に姿絵入りでお話の連載も始めた。
なにこのリアル二郎真君似のイケメンって感じの絵姿だから、かえって街をぶらついてもばれなかったりする。
皆平和で退屈してたんだろーなー。匈奴の侵攻以来大規模な軍事的衝突なかったし。
……麹義のねーちゃんやうちのとーちゃんが未だに英雄扱いなのもむべなるかな。ねーちゃんと田豊様なんてまだ現役だかんなー。

以上、現実逃避である。

「はじめましてー、と言ったほうがいいと思いますー?」
「俺に聞くなよ俺に。そっちが避けてたんだろうが」
「あちゃー、ばれてましたかー」
「あんだけ露骨なら当たり前だっちゅうの」

あはー、と笑うのは張勲。張家の跡取り娘だ。
諜報を一手に担うという情報機関。それが張家。できればお近づきになりたくなかった存在である。いや、俺の立場からしてそれは無理だと分かってはいるのだけんども。それでも、だ。そんなおっかないとこには近づきたくなかった。
んで、どーせだ。きな臭い話に決まってるからとりあえず自室に招き入れたのだ。少なくとも俺と張家の跡取りが怪談――じゃなくて会談していると知られたら色々面倒なことになるのは必定。目の前でにこにこ笑っている娘さんはそれも狙いなんでしょうけどねえ。
 ま、いざとなったら三尖刀でずんばらりんとやってもうたらええねんということで一つ。いや、俺だってやる時はやるのよ?武家だしね。と主張しておこう。

「で、何しに来たんだ?挨拶ってわけでもあるまい」
「半分はそれですよー?
 一緒に美羽様を支える守役じゃないですかー。
 きちんとご挨拶をするのが筋かなーと思ってですねー」
「ああ、そりゃ結構なこって。はいよ、よろしく。お帰りはあちら」
「あれー、残り半分は聞いてくれないんですかー?」

 ありゃー?と戸惑う表情が本気そうで、読めない。心胆とか察せるはずもないしね。しょうがないね。凡人だもの。ここは塩対応待ったなしである。

「興味ないからいい」
「随分つれないですねえ。まあ、身から出た錆ですかねー」

 こいつ。本気で分かっているのかいな…………。

「ああ、言っておきますけどね。黒山賊の一件に張家は手出ししてませんよー?」
「――お前らが直接手を下さないってのは先刻承知さ。だが、止める手立ても打たなかったろう」
 
 じろりと張勲をにらむ。そうだよ。張家はきっとあの襲撃について情報を得ていたはずなのだ。それを知らんとは言わせん。言わせるものかよ。

 うーん、と言った風に逡巡して、にこやかに応える。

「あからさまに紀家に肩入れするわけにもいかないですしー」
「肩入れどころか足引っ張ってたじゃねえかよ」
「えー、そんなことないですよー。ただまあ、ちょーっと相手が悪かったですかねー」
「十常侍以外に誰かいるってことか」
「はい、そうですー。それで、残りの半分を聞いて頂けたら、なんでも教えちゃいますよー?」

 にこにこと笑う張勲。その凄味にいまさら気づく。捨て身、とはまた違う。こいつは、自分が今俺にぶち殺されることすら計算の内に入れて立っているのだ。その覚悟が尊いとは思わないが、ね。
 まあ、裏は張紘に当たらせたらいいか。

「で、残りの半分ってなんだ」

 俺の問いかけににんまりとした笑顔で張勲が言う。

「命乞い、ですー」

 は?なに言ってんのこの子。

「はあ?何言ってんのお前
 俺は何か、殺人鬼かなんかか。
 出会っていきなり命乞いとか意味分からんぜ」

 正直、こいつ含めて張家の粛清も考えたけどね。流石に無理っぽいからね。しょうがないね。

「いえいえ、怨将軍の容赦のなさは知れ渡ってますからー
 ちょーっといきなりばっさりやられても不思議はないなーと」
「やんねえよ何かその気もないではなかったけど失せたから帰れよ」
「あはー、それはそれでありがたいんですけど、瞬間的なものじゃないですかー
 ですから、永続的な安全宣言を頂きたいなー、と思ってですねー」
「なんだよそれ……」
「もちろん、無条件(タダ)というわけじゃありません」

 どーんと身を乗り出してくる張勲。顔が近いよ。いやまあ、普通に美少女だからかまわんけどさ。

「なんと、私の身体を貴方にささげちゃいますー。きゃー言っちゃいましたー!」

 ちょっとまて話が見えないぞ?

「いやー、それがですね。私、結構敵が多くってですねえ」
「そりゃまあ、そうだろ」
「どうせなら紀霊さんの女、愛人、情婦、肉奴隷、まあ表現はなんでもいいですが。
 ただならぬ関係になったら手を出してくる勢力に対して牽制になるなあって。それもすこぶる有効な、です」

 待ってちょっと待って。ほんと、ちょっと待って。色々待って?

「ちょっと現状把握できていないのですがそれは」
「それにー、結構紀霊さんって情にもろいタイプだからー、自分の女なら積極的に守ってくれるだろうなーって」

 ぐいぐい攻めてきますやん。そして……否定できないのが辛いとこだな。――っていかん。話のペースを持ってかれっぱなしだ。

「ですから、ね?」
「ね?じゃねーっての。こっちに何も益するとこないじゃねえか」
「えー、そんなことないですよー?
 美少女で名家の令嬢、しかも処女が奪えるんですよー?
 男なら奮い立つとこだと思うなー」

 おい。おい。

「自分で処女とか言うなよ、逆に萎えるわ。しかも確かめようないし」
「えー、疑り深いですねー、信じてくださいよー」
「張勲、お前を信じる理由が見つからない」
「やだなー、張勲だなんて、他人行儀ですねえ。七乃って呼んでくださいよー」
「知らねえよってそれ真名かよ軽いなおい!」

 あれ、こんなに軽い扱いじゃあなかったと思うんだが、真名って。俺が言うのもなんだけど。こう、命よりも重いものじゃなかったっけ?

「そんなことないですよー?真名を許したのは紀霊さんが初めてなんですからー」
「おいおい、いっそ清々しいくらいに嘘くさいな。家族とかどうしてんだよ」
「我が家は、そういう馴れ合いなんてないので、娘、お父様と呼び合ってます。
 名前なんて呼ばれたことないですねー」
「なんだよその家庭環境。さらっと重いなおい」
「というわけで、七乃って呼んでくださいね?」
 
 にこり、と笑う七乃。あかん、こいつ相手にペースなんて取り戻せないわ。そしてなんでか、蜘蛛の巣にかかってしまった自分を幻視してしまう。

 あれ、なんか俺。詰んでね?

本日ここまでー

明日もやります

感想とかくdしあー

乙。

>三尖刀でずんばらりん

…某TRPGのアーチーを思い出したw

何か…パターン的に…ここから、ハーレムキングへの始まりのような…悪寒…

乙ですー
誤字が…見当たらない!?そんな馬鹿な!!
とりあえず無理やりにでも
>>140
>>どこで仕入れたその知識!割と正しいぞ?
○どこで仕入れたその知識?割と正しいぞ! の方が?マークと!マークの意味としては正しいような気がします
>>141
>>「随分つれないですねえ。まあ、身から出た錆ですかねー」 …三国時代でことわざって通じるんですかね?しかも主人公じゃない人が使ってますけど、原作恋姫ではどうだっけ?

空っぽの操り人形に芯が出来ましたね、ただこれってもしかすると超勲としては弱体化したのかもしれませんねえ
空っぽで何もかもに価値を見出さないからこその強みが失われたとも言えますし…でもこの方がずっと好感が持てますよね
後の問題は先代の六さんがこの変化に気付くかとどう対処するか、ですかねえ

>>145
>…某TRPGのアーチーを思い出したw
わが青春のソードワールド……
GMしてて、出してはいけないと思ったモンスター
バグベアードとアイアンゴーレム
全滅案件でした(笑)

>>146
>誤字が…見当たらない!?そんな馬鹿な!!
寝言も、誤字脱字も、卒業したんやで……

>空っぽの操り人形に芯が出来ましたね、ただこれってもしかすると超勲としては弱体化したのかもしれませんねえ
公式で「本気になったら天下が取れる」という隠れチートな七乃さん
彼女が本気になるのはやはり美羽様絡みというお話であります
本編では本気にならず、敢えて如南袁家を滅ぼしにかかってましたが……

> …三国時代でことわざって通じるんですかね?
故事成語、言い回しについては考え出すと難しいところはあります
故栗本薫先生が、グイン・サーガの後書きで、「伊達ではない」とかそう言う言葉については異世界なのだからあり得ない云々と語っておられました
結論的には……どうだったっけかな
馬についても、ウマという生物で馬に極めて近いけども馬と同一ではないとかどうとか語ってらっしゃいましたねえ
まあ、凡将伝においては、「何か違う言語で書かれたのを現代の日本語に翻訳した」ということで、一つ
そんかしカタカナ表記は封じておりまする

「というわけで、七乃って呼んでくださいね?」

その笑顔は輝くばかりに眩しいのだが、どうにも胡散臭いものを感じてしまう。そりゃねえ。年相応な感じで笑ってくれているのだが、如何せん背景が厄い!実際どう考えても騙しにきているとしか思えないんだよなあ…………。
などと思いながら張勲――七乃――を睥睨すると、もじもじしながら上目遣いでこちらを見つめてくる。

「あ、あの、二郎さんって呼んでも、いいですか?」

 つい、頷いてしまう俺。
すると、へにゃり、と笑顔を浮かべてこんなことを言う。

「よかった。私、他人の真名を頂くの、初めてなんです」

 く、あざとい。あざといまでに可愛いぞこいつ!自分をどう見せたら一番いいか分かっているタイプの攻め方だこれ!でも流されちゃう!

とまあ内心煩悶しまくりな俺だったのだが。

「ほんと、二郎さんってちょろいですねー。
 まさかこんなに上手くいくとはおもってませんでしたー」

 おい、おい。

「か、返せ!俺の純情を返せ!この、悪女!」
「えーひどいですよー。それに嘘は言ってませんよー?」

 待て待て。真名を交わすのが初めてとかそれはないでしょう。常識的に考えて。いや、張家というのを考えたらそれも妥当なのか?という気もする。

「いちいち重いよ!微妙に真実っぽいよ!」
「やだなー、二郎さんに嘘なんてつきませんってばー」

 くすくすと、どこか可笑しげに笑うその笑顔は無垢っぽくて。どこか諦観を感じさせて。それでも強い意思の光を宿している。俺の一言一句に対しての反応。俺が何かするたび。いや、何もしないでも一秒ごとに絡め取られていくような錯覚に陥る。
 困ったことに、それが不快ではないのだ。悪意とは無縁と思うのだ。きっとね。

「わ、わかった。分かったからとりあえず一度帰ってくれ」
「えー、駄目ですよー、きちんと奪ってくれないとー。
 こういうのって、機会を逃すと次は難しいんですからー。
 ほら、勢いでこう、ね?」
「ね? じゃねえっつの。そんな気になんねえっての」
「一応、出来れば週一、少なくとも月一回はお情けを頂きたいんですよー」
「なんだよそれ!義務感で同衾するとかやだぞ俺!」

 男の子は繊細なんやぞ!義務とかなったら勃つものも勃たんわ!

「だってー、唯でさえ身体だけの関係じゃないですかー。
 やっぱ定期的に情を交わさないといけないと思うんですよねー。
 あまり期間が空くとよくないと思うんですよー」
「自分で身体だけの関係とか言われたらこっちも困惑するわ。
一理あるけどいつの間にか丸め込まれてる感が半端ないぞ」

 俺の言い様にくすくす、と笑みを深めてこちらを見やる。

「ふふ、でもね、二郎さん?」
「なんだよ」

やさぐれ気味に答える。翻弄されっぱなしだ。なんだかなー。

「でもでも、思うんですけどね。ほんと、二郎さんって不思議な方ですよねー」
「何がだよ。なんだよそれ。」

 褒められている感じもしないが貶されている感じもしない。つまり、どういうことだってばよ。

「んー、何というのかなー。
 正直、もっと怖い方なのかなーと思ってたのですよね」
「んだよそれ」
「いえ、所詮戯言ですし、お気になさらずに」

 てへり、と愛嬌をふりまく姿が普通に可愛いのだ。が、それ故に凄味というか、怖いよこの子!

「気にするなと言われると余計に気になるっての」
「女の子は、謎めいているくらいが魅力的。みたいな?」

 貴方のお父上がおっしゃってたそうです、とか適当に煙に巻かれてしまう。いや、とーちゃんならそれくらい言ってそうだぜ。

はあ、とため息をつく。なんだろうなあ。なんか、もっとギスギスとしたやり取りを想定していたのだ。手強いのは手強いんだが、ベクトルが想像と違うと言うか。

「まあ、その気にならなくても、手付けに唇くらいは受け取ってくださいね」
「は?」
「もちろん、唇を許すのも、初めてなんですよ?」

と、俺の唇に七乃のそれがふわり、と押し付けられていた。





眠気を伴う事後の余韻。心地いい感覚に身を委ねながら、俺は七乃の身体をなんとなくまさぐる。情欲を伴うものではなく、後戯というやつだ。
そんな俺に甘えるように七乃が身を寄せる。このまま眠気に身を任せれば、また甘く、淫蕩な関係が始まるのだろう。だが、それでも俺は問いかける。問いかけざるを得なかった。

「で、どうして俺に抱かれたんだ」

その言葉に七乃は答える。

「決まってるじゃないですかー。
 美羽様のためですよー」

その言葉は意外で。予想外だった。

なん……だと……。というか、どうしてそうなる。

「そんな顔しないでくださいよー。
 つまりですねー、二郎さんを篭絡しないと美羽様が危険だな、と」

 む?

「なんでだよ。俺は美羽様の守役だろ」
「んー、そうなんですよねえ。
 でも、どちらかと言うと袁紹様に近いお立場でしょ?」

 ちらり、と視線を散らす七乃。その笑みは深く、張りつめている。ように思う。

「まあ、仲は悪くないな」
「悪くないなんてもんじゃないでしょうにー。
 で、まあ今回の人事の肝ですが。美羽様の周りに袁紹様へ不満を持っている人達が集められてますよね?
 表面的には張家も含めてですね。
 それを二郎さんが抑えるという格好ですよね」

 ふむ。そういう一面もある…………というか、そういうことだなあ。袁家の奥底に眠るマグマの蓋が俺ということになるのか。

「まあ、ぶっちゃけそうだな」
「つまり、逆に、ですよ。実質美羽様は反袁紹勢力の旗頭ということになりますねー」
「それを俺が抑えるとか正直田豊様は鬼だよな」

 麗羽様に何かあった時のための美羽様。その後ろ盾に立てということなのであろう。いや、普通に麗羽様に助力させてくれって。

「鬼なんて生やさしいもんじゃないと思いますけどね。
 それはさておき、です。私が二郎さんの立場なら美羽様を殺しますね」
「は、はあ?」

何を言っているんだこいつは。

「その容疑者ということで私をはじめとする不穏分子を一掃します。
 見事粛清完了ですねー。
 袁家は袁紹様の下で一致団結、めでたしめでたし。ですよ。
やったぜ、ですね」

 いやいやいやいやいや。

「いや、その場合更に俺が粛清されんだろ」
「いえー、美羽様を守れなかった責は不穏分子を粛清した功で購えます。
 怨将軍にまた一つ派手な挿話が追加されますね。
 それに、正直不穏分子が一掃されれば美羽様の存在価値だって大方無くなります。
 むしろまた混乱の種になるんですよねー」
「……不穏分子を糾合するためには美羽様が必要である、と」
「そういうことですねー。ですから、美羽様含めて一掃するわけです」

絶句する。そんな俺を可笑しげに七乃は笑う。その笑みは軽くて、深いように見える。そして試すような、縋るような視線をくれながら言の葉を。

「私もですねー、実際ただの駒と思ってたんですよー。
 でもですねー。こう、袁逢様から預けられて、です。美羽様を抱っこしたんですよー。
 そしたらですねえ、ほんっとに美羽様ってかわいいんですよ!」

急にヒートアップする七乃。えらい剣幕で美羽様の可愛さについて語る語る。

「私の顔を見て、笑ってくださったんですよ!
 それでね、指をちゅぱちゅぱとしゃぶるんですよ!
 ああもう、あんなにちっちゃいのに一生懸命で!
 お乳なんて出ないのにー。正直なんで私は母乳が出ないかと思いましたよ!
 それで、また、きゅ、と握るんですよ私の指を!
 もう、お可愛らしいったらないですよー!
 それにね、美羽様を抱っこしてると、こう、暖かいんですよねー。ふにゃ、ってしていて、本当にお可愛らしい!
 ああ、私はこの方にお仕えするために生まれてきたんだなーって思ったんですよー」

力説する七乃さんである。言葉を挟むこともできやしねえ。なんだこれ。

「ああ、明日も……今からでも美羽様のお世話をしたいなあ。
 もう、美羽様なしでなんて生きていけません!」

 以下、四半刻ほど美羽様が如何に可愛いか理論を述べていた七乃なのである。ようやるわ。

「それでね、抱っこしてる時に思ったんですよー。
 美羽様の周囲で、美羽様のことを考えてる人間がどれだけいるのかなーって。
 そしたらですね、多分、私しかいないなーって思ったんです。
 でも、その私にしたって、二郎さんには嫌われてますし、いつ殺されてもおかしくないんですよねー。
 そしたら、美羽様は本当に一人ぼっちじゃないですかー。
 そんなの、あんまりじゃないですかー」

その言葉に反論できない。確かに美羽様……袁術に俺は特に思い入れはない。今この時点では。むしろ三国志の知識があるだけに疎ましくすら思うところだ。嫌だぞ帝位を僭称した勢力なんて泥船。

「で、ですね。頼りにできそうな人って。…………結局二郎さんくらいしか思いつかなかったんですよー。
 ですから、せめて私を殺さずに済ませて欲しいなーって思ったんですよー。
 お味方になってほしいのはやまやまなんですけどね。それは期待薄ですしねえ」

分かります?と小首をかしげる七乃。

わかんねえよ。わかりたくもねえよ。
そう思う俺の甘さを嘲笑うかの如く七乃は詰め寄ってくる。

「ですから、お慈悲を、お情けを頂きたいんですよー。
 私にできることでしたらなんでもしますし、何をされても構いません。全裸で街中を徘徊くらいしますし、公開輪姦だって大丈夫です。 腕や足の一本くらいなら今すぐでも切り落としてください
 自分でするのはちょっと、その、怖いんですけど。
 でも美羽様を抱っこできなくなるから腕よりは足がいいなあ。それくらいは考慮して頂けたら、ありがたいですねえ」
「やめろって!」

 たまらずに、七乃の言葉を遮る。どうしてこいつはそんなに苦界に身を沈めようとするんだ。どうしてこいつはそんなに自分を大切にしないんだ。
まだまだ俺は甘っちょろいということなのだろうと痛感させられる。そして、七乃だ。

七乃を抱きしめる。抱きしめてしまう。
ほぅ、と七乃の口から溜め息が漏れる。

「お前に責め苦を与えて何になるよ。それより。もっとお前は有用だろうよ。
 ……張家の握ってる情報を流せ」

辛うじて俺はそう言った。

「はいー、了解ですー」

――即答しやがった。

「じゃあ、お前の言う不穏分子って誰だ。
 それと十常侍の他にいる敵って誰だ」

七乃はすらすらと名前を口にする。確かに袁家の重鎮と言ってもいい名前だ。
バランスを取って美羽様の後ろ盾になったと思ったら、とんでもねえな。
そして、七乃の口にした名前に俺は戦慄する。

「李儒、だと…………」
「そうですー、ご存知なんですか?流石母流龍九商店の情報網もたいしたものですねー」

違う。俺が持っている三国志の知識だ。が、なんとも難敵だ。
だが、覚えたぞ李儒。怨将軍の名が伊達じゃないことを思い知らせてやる。

「私が接触できる情報ならいつでもお調べしますし、提供いたしますよー。
 ですから、ね?」
「ああ、分かった。とりあえずは信用する」

沮授と張紘に相談しなきゃならねえな。正直俺の手には余りそうだ。と言うか、余る。

「今日はちょっと遅いのでここに泊まらせてもらってもいいですか?」
「ああ、好きにしたらいい。ちょっと寝台が狭いかもしらんが」
「ふふ、構いませんよ。あ、欲情されたならいつでもご奉仕しますからね?」
「今日はもう十分だっつの」

 くすくす、と笑む七乃の笑みは無垢さと妖艶さが共存していて。

「……二郎さん?」
「――ん?」
「自分じゃないぬくもりがあるって、なんだか不思議ですね」

そう言った七乃の笑顔が余りにも透き通っていて。俺の顔を見た七乃が吹き出すのを見て、こいつにはかなわんと思ったのである。
そして、多分それはずっとそうなんだろうなあと思った。

本日ここまでー
感想とかくだしあー

タイトルとしては「凡人と絡新婦」かな?「凡人と絡新婦の邂逅」だとちょっと冗長かな?
もっとよさげなのあったらそっちにします

また暫く書き溜めに入ります

エロシーン?
要望があったらノクターンに投稿しますよ
このスレ、R-18付けてないですしね

乙。

現在恋姫各種を平行プレイ中ですが、正直袁術は ちゃんとした教育があれば国主として十分やって行ける感が個人的に強いので、紀霊さんが父or兄役で仕込めばと期待。
つか紀霊さん。流され過ぎwww
趙勲さんは暗部にいるから逆に袁術を守る為に自身も利用する。感心しますね

乙でした

> 寝言も、誤字脱字も、卒業したんやで……
次はお酒からの卒業…

>「よかった。私、他人の真名を頂くの、初めてなんです」
美羽様「七乃に真名を許したのは妾が先なのじゃ」
七乃「えーっと(汗 そうそう美羽様は他人じゃないってことで」

連日投稿乙でしたー
凡人がついに袁家の闇の中枢と邂逅しましたねー
その深さは分からなくても濃さは垣間見えたんじゃないでしょうか
七乃は…胡散臭いけど多分この胡散臭いのが素なんだろうな
演じるのが生活の一部になってるというか人形であることが根っこにあるというか
イロイロ考えると>>この方にお仕えするために生まれてきたんだな が凄く重いよなあ

乙したー

ノクターンにも書いてくれるなら嬉しいなぁ
本編進めてもらいたいのが一番だけど

澤さん、引退かあ

澤穂希 獲得タイトル

国内リーグ優勝 11回
リーグカップ優勝 3回
皇后杯優勝   12回

FIFAワールドカップ優勝  1回
FIFAワールドカップ準優勝 1回
オリンピック準優勝     1回
女子アジアカップ優勝   1回
女子東アジアカップ優勝  2回

FIFAバロンドール受賞 1回
FIFAワールドカップMVP 1回
FIFAワールドカップ得点王 1回
アジア年間最優秀賞    2回
日本女子サッカーMVP   2回
日本女子サッカーベストイレブン 11回

国民栄誉賞         1回

澤の前に澤なし、澤の後に澤なし


>>154
>正直袁術は ちゃんとした教育があれば国主として十分やって行ける感が
七乃さんはどう見てもまともな教育をするつもりがなかったみたいですからねえ。原作では。

>つか紀霊さん。流され過ぎw
基本的に二郎ちゃんは右往左往するのが持ち味です(断言)

>>155
>次はお酒からの卒業…
無理難題を申すな
あと、七乃さんは美羽様には適当に嘘をついていじくってます

>>156
>凡人がついに袁家の闇の中枢と邂逅しましたねー
ようやっと、って感じでございます

>七乃は…胡散臭いけど多分この胡散臭いのが素なんだろうな
疑い出すときりがない。それに疑ってもどうせ尻尾出さないだろうし敵わないくらいの気持ちでおります

>>157
>ノクターンにも書いてくれるなら嬉しいなぁ
>本編進めてもらいたいのが一番だけど
やりますねー
そんなに手間ではないですし

「アーニーキー!」

文醜は声と共に紀霊の執務室に飛び込む。

「おー、どうした猪々子?」

 サボりか?と紀霊が目で問うてくるのを認めて抗議する。

「あー、ひっでーなー。違うって、今日はちゃんとお仕事だって!」
「なん…だと…!」

それを聞いた紀霊が目を見開くのを文醜は満足げに頷く。そして大成功!とばかりに胸を張る。なお、胸部装甲の厚みについては親友である顔良には遠く及ばないのは衆知の事実である。
 まあ、本人は全く気にしていないのだが。

「だってさー、ほら、アニキって袁術様の守役になったろー?
 するとあれだ。麗羽様とハバツが違うからテキタイカンケイになりやすいんだろ?
 でも、上同士がキンミツな関係なら問題ないって麹義さんが言ってた。
 つまり、アニキと仲良くするのはアタイのお仕事ってことだ!」
「大体合ってるけど、猪々子お前よく分かってないだろ。んで大義名分作っただけで仕事からの逃避に来てんじゃねえかよ」

こつり、と文醜の頭を小突く。ぞんざいな扱い。それが嬉しい。うひひ、と笑ってじゃれつく。構ってオーラ全開だな、などと苦笑する紀霊の様子に文醜は持参した爆弾を投下する。

「アニキー、これ、見た?」

そう言って文醜は懐から一枚の紙を取り出す。

「お、おう…。つーか俺が描かせたから、なあ…」

なんとも微妙な顔つきでぼそぼそと呟く紀霊の顔を見て文醜は満足そうに大笑する。
そして文醜が取り出したのは、人気沸騰中の姿絵だ。

「最初は誰だよこれって笑っちゃったよ」
「うるせーよ。その方が売れるんだよ。お陰で面会希望者が増えたよ。
 そんで、俺をみると『あぁ…』って微妙な顔しやがんだよ」

ぶすっとした顔でぼやく紀霊を見て文醜は更に呵呵大笑。

見る目のない奴らだなあ、と文醜は思う。彼女が思うに、紀霊の魅力は別に顔の良さじゃないのである。いや、別に不細工ってわけではないのだ。
内心フォローしつつ、思う。紀霊の魅力とは…全体の雰囲気であろうか。最近特にぐぐっと格好良くなったし、どこがどう、とは説明しにくいなあと煩悶する。まあ、何が気に食わないかと言うと、だ。ちっちゃい頃から恰好いいなあ、と思っていた男が急に持ち上げられていて、なんだかもやもやするのである。自分の方が先に眼をつけていたのだぞ、と。
 なお、袁紹と顔良は同着だからいいか、と思っている。

「見る目がないよなー、アニキはちゃんと格好いいのにさー」

 あれこれと複雑ながら、概ね憤懣というベクトルに収斂される感情を隠そうともしない文醜の物言いに紀霊は苦笑し、くしゃ、と文醜の頭を撫でまわす。その手つきが嬉しくて、自然に頬が緩んでしまう。

「ま、そう言ってくれるのは猪々子くらいだよ。さあ、この饅頭をお食べ」
「おー、ありがとー」

貰った饅頭にかぶりつきながら、文醜は思う。やっぱりアニキは最高だな、と。
そして、だ。散々、馬鹿にしたけど、アニキの姿絵、全部持ってるって言ったらば、どんな顔するだろうかと。

凡人の肖像 猪々子編でした

乙でしたー
>>160
>>自分の方が先に眼をつけていたのだぞ、と。
○自分の方が先に目をつけていたのだぞ、と。

蓼食う虫も好き好きというかあばたもえくぼというか…
いや二郎の顔がどんなものかは分からないんだけどさ

乙。

紀霊さん自身の顔は多分 平均的な中の中。
ただし纏う雰囲気やオーラが「修羅場を潜って来た」それ。
後細マッチョは確定。

…インテリヤクザ?(違

…麗羽やら顔良やらも紀霊さんの絵姿コンプリートしてたら面白いが(にまにま)

>>163
>いや二郎の顔がどんなものかは分からないんだけどさ
フツメンくらいだと
顔面偏差値45-55くらい?

>>164
>紀霊さん自身の顔は多分 平均的な中の中。
大正解っす

>ただし纏う雰囲気やオーラが「修羅場を潜って来た」それ
なお、周囲の人物はもっとすごいオーラを出す模様

>…麗羽やら顔良やらも紀霊さんの絵姿コンプリートしてたら面白いが(にまにま)
こら!ネタバレは駄目って言ったでしょうw

「ふぅ…」

顔良は軽く伸びをして、溜め息を漏らす。ようやく今日のお仕事の目処が立ったのだ。他の幼馴染よりも、かなり早い段階で家を継いでからは彼女の予想以上に多忙であった。
量はそれほどでもない。だが、自分の決断で家が動くというのは大変なことだ。
本当なら、文ちゃんに誘われるままに二郎さんのとこに遊びに行きたかったんだけどな、とため息をもう一つ。ううん、と伸びを一つ。そして。
そ、と引き出しから綴じられた紙の束を取り出す。色鮮やかな絵姿。どれもこれも紀霊を描写したものである。文醜がわざわざ、親友である彼女のために店に並んで買ってきてくれたものだ。

「文ちゃんは『こんなのアニキじゃねーよな』とか言って大笑いしてたけどね……。うん、文ちゃんとは違う意味で私もそう思う。だって…二郎さんはもっと格好いいもの」

 それでも、仕事の合間に取り出しては眺めてしまう。この気持ちに気づいたのはいつからだろう。いつから懸想していたのだろう。

「ふぅ…」

ちっちゃい頃は、憧れのお兄さんだった。でも、文醜みたいにお兄さん的な呼びかけをするのは嫌だった。
でも、お兄ちゃん、って呼んでみたかった。
でも、お兄ちゃんと呼んだら、彼との関係が兄と妹になってしまう気がしてしまって。

「お兄ちゃん、か…」

顔良は、思う。ちっちゃい頃は陳蘭と紀霊はきっと結婚するのだと思っていた。その陳蘭も顔良達の面倒を見てくれたお姉ちゃん的な存在である。二人のやり取りはとっても自然で、割って入る余地なんてなかったのだ。二人が男女の仲になったと知っても、ああ、そうかと納得したものだ。
むしろ遅かったと言ってもいいんじゃないかな?と顔良は思うのだ。傍から見ても、陳蘭の紀霊への想いは明らかで。真っ直ぐで。応援していたのだ。
だから、良かった、と心から祝える。でも、それは無理な話である。紀霊に限らず、顔良や文醜。勿論袁紹もだが、その婚姻というのには政略的な意味合いが大きい。
紀霊のお嫁さんになるというのは顔良の幼い夢でもあった。でも、顔良や袁紹はある意味、陳蘭よりも駄目なのだ。袁家の武を司る四家、その均衡が崩れてしまう。紀家が勢力を突出させてしまう。それを袁家は許さないだろう。それは自明の理であるのだ。そう、そうやって顔良は蓋をするのだ。

「うぅん」

どうも、仕事を再開する気にならないな、と顔良は思索を続ける。現実逃避とも言うが。そしてその議題は対匈奴戦。或いは匈奴戦役と言われる過去の激戦である。
武家四家中三家の当主が戦死するという袁家最大の戦い。そして間違いなく紀家前当主は大戦の英雄だった。少数の精鋭で匈奴の本陣を叩き、汗(ハーン)を討ち取り生還。功績から行っても袁家軍の頂点に立ってもおかしくはなかった。いや、それこそが既定路線であったのだ。
 だが、四家の均衡が崩れることを防ぐために彼は一線から退いたのだ。それでも、実務から遠ざかるのではなく、現場主義を貫いた。袁家領内を自ら巡回し、治安の回復に努めたのだ。
地味で、成果も中々目に見えない。だが、実務をするとその重要さが分かる。分かるのだ。戦後の袁家の復興は紀家当主とその配下が治安の維持に心血を注いだからだ、と。
今は昼行灯なんて言われることもあるけど、実務をしたことがある人は皆分かっている。紀家当主は、実際たいしたものなのだ。

「はぁ…」

話がずれてしまった。でも、確かなことがある。顔家当主になる自分と、紀家当主となる彼が結ばれることはないのだ。決して、ないのだ。
でも、だ。この、胸を焼き尽くしそうな想いは、どこに行ってしまうんだろう。
 どうなってしまうのだろう。

 そして、自分はどうしたいのだろうか、と自問する顔良であった。

本日短いけどここまでー
明日は飲み会が浅ければやります

乙です
>>166
>>功績から行っても袁家軍の頂点に立ってもおかしくはなかった。
○功績から言っても袁家軍の頂点に立ってもおかしくはなかった。

ネタバレも何も>>161で 凡人の肖像 猪々子編でした と書いてますよ~
次はきっと 凡人の肖像 麗羽編 になると薄々感じてます
それにしても絵姿より本物の方が格好いいとか…恋は盲目というやつか

麗羽様の絵姿ください
ちび麗羽様ならなお可

乙。

>大正解っす
うしっ!(ガッツポ

>ネタバレはいけません
え!?(困惑)
「こうだったら面白いだろーなー」
で書いたんですが…
自重を検討します(自重するに非ず)

あけましておめでとうございます
今年も楽しく拝読させていただこうと思います

あけおめー
今年は董卓編まで行けるかな?

考察とか長文は歓迎だったと思うけどリライト前を知ってる人はネタバレに注意してくれると嬉しいなって

あけましておめでとうございます

おみくじは末吉でした
それはそうと新年早々にウンコ踏みましたのでウンが憑いたということでめでたいですね
まあ、クソ実家に40万円ほど吸い取られたので金策に右往左往ですよコン畜生

>>169
>それにしても絵姿より本物の方が格好いいとか…恋は盲目というやつか
それですな

>>170
>麗羽様の絵姿くださいちび麗羽様ならなお可
ガチで欲しいわw

>>171
>自重を検討します(自重するに非ず)
面白いのは積極的に拾います(ガチ

>>172
あけおめです
今年は転勤がありそうです
楽な職場に移れたらいいなあ(既に今の職場は相当ホワイト)

>>173
>考察とか長文は歓迎だったと思うけどリライト前を知ってる人はネタバレに注意してくれると嬉しいなって
董卓編とか言ってる時点でどうなんやw

恋姫無双のssの壁は反董卓連合やからねーそれ越える作品なかなかないのよねえ



今年は肝臓を労われたらいいなあと思います
なお現在ガンガン呑んでいる模様

明けましておめでとう御座います。

反董卓連合…麗羽さんつか袁家はどうすんのかな
個人的には董卓そっちのけで曹翌劉孫をフルボッコにする。
原因は紀霊さん。


…ありえんか。

ただ経済戦で十常侍一党をフルボッコにするのは やりそうで怖い。

>>175
あけおめっす

当初想定してたルートはもっともっと殺伐としてました、とだけw

ほら、プロローグで反董卓軍出てたやん・・・

董卓編以後がどうなるか楽しみやんね

考察カー
原作では蜂蜜おばかとダダ甘やかしの二人だったけど二郎(紀霊)が加わることでどう変化するのかが楽しみですねー袁術陣営
あとは小覇王陣営とは原作通りの殺伐感なのか二郎が間を取り持つのか、上手く首輪取り付けたいなー物理的に(オイ)…自分から首輪をつけてくれと懇願する孫策、いいかも(この先は血に濡れて読めない

>>177
>ほら、プロローグで反董卓軍出てたやん・・・
素で忘れてたw

>>178
>原作では蜂蜜おばかとダダ甘やかしの二人だったけど二郎(紀霊)が加わることでどう変化するのかが楽しみですねー袁術陣営
やってること考察すると七乃さんは全力で袁術陣営を壊しにかかっているとしか思えないw
萌将伝での動きなんてガチで恐ろしいくらいです
孫家から身を守るためにまさか、ねえ……

>上手く首輪取り付けたいなー物理的に(オイ)…自分から首輪をつけてくれと懇願する孫策
歪みねえな!
孫家とのやりとりもたっぷりある予定ですぞ

「どもですー。失礼しますよっと」

 聞きなれた、どこか能天気な声とともに扉が開かれる。袁紹はその声に仕事の手を止め、席を立って出迎える。次期袁家当主が確実とされる袁紹がそこまで礼を尽くす相手はそう多くはない。

「あーら、二郎さん、どうしたんですの?」

 紀家の御曹司たる紀霊その人である。袁紹との関係はすこぶる良好であったのだが、最近は周囲のいらぬ気遣い、勘ぐりがある。それによって彼との関係が微妙になりつつあったのだ。それを察知したのだろうか、彼からの訪問は意外であった。

「いや、いい茶葉が手に入ったのでお裾分けに、ね。
 それに最近麗羽様の顔を見てなかったですし」

 袁術の守り役とされ、彼は袁紹派閥からは袁術派と見なされていた。これまでの蜜月と言っていい関係が仇となり、可愛さ余ってなんとやら。袁紹の取り巻きからは仇敵のように扱うような言も出ていたのである。
 ぱん、と柏手を一つ。袁紹は取り巻き達に声をかける。それは、紀霊が政敵ではないという何よりの主張。色々とこじれる前に両者の仲は変わらずということを喧伝するには中々の妙手である。

「あら、殊勝な心がけですわね。
 では、小休止としましょうか、みなさん、二郎さんがお茶を差し入れてくださいましたわ」

 適度な休憩は仕事の能率を上げる。そんな言い訳めいた言葉を鹿爪らしく語ってくれたのも懐かしく感じる。何より、自分に会いに来てくれたということが純粋に嬉しかった。

「では、二郎さん、こちらへ。お茶菓子はこちらが用意いたしますわ」

 浮き立つ心を抑えつつ、青年を案内する。袁紹のその反応に、紀霊に鋭い目線を向けてた官僚が表情を消す。なるほど、袁紹と紀霊。二人の関係は絶えたわけではないのかと。
 それを知ってか知らずか。袁紹の足取りは、浮き立つようであった。

「あら、やはり二郎さんがお持ちになる茶葉は絶品ですわね」
「まあ、伝手がありますからねえ」
「母流龍九商会ですわね。ふふ、色々。本当に色々とされてるようで」

 にんまり、と笑いかける袁紹。紀霊は引きつった笑みで応える。

「あー、ええと。まさか」

 取り出した、それを見て。案の定、紀霊は頭を抱える。
 その様がおかしくて、笑いが漏れる。ひとしきり笑った後に、表情を改める。これはきちんと言っておかないといけないことなのだ。袁家を担う者として。姉として。そして――。

「二郎さん。美羽さんを、よろしくお願いしますね」
「はい、任されましたとも 」

 即答に袁紹は安心する。この人がいれば、妹も間違った方向にはいかないだろう。そんな安心感がある。
 そしてふと、思う。この人がいなかったら自分はどうなっていたのだろう。

 今だから分かる。幼い日々は、間違いなくこの青年に守られていたのだと。
 幼い頃から、周囲は自分を利用しようとする大人たちばかりだった。田豊の屋敷に度々遊びに行ったのは間違いなくこの青年に会うためだった。だって彼はけして自分を道具扱いしなかったから。
 遊んでもらった。色々教えてもらった。自然、田豊に師事することになった。正直、気難しい老人だ。きっかけがなかったならば自分から近づくことはなかったろう。むしろ、遠ざけていたのではないだろうか。
 田豊という後ろ盾の大きさに気づいたのも最近だ。あの青年は間違いなく自分の世界を広げてくれた。目を開けてくれた。彼と出会わなければ、自分は、猪々子と斗詩しか信じることができず、手足たる官僚を疑い、迷走を繰り返したのではないだろうか。

 そして袁術は自分以上に悪意の坩堝で育っていくのだ。何せ、守り役の片一方はあの張家の跡取り。それでも、この青年がいれば、いてくれたら、きっと大丈夫。大丈夫だ。いつだって、青年は憧れのヒーローなのだから。

「まあ、なんにせよ俺がいますから。美羽様についてはお任せくださいな」
「二郎さんがそうまでおっしゃいますもの。何も心配することはありませんわね」

 おーほっほと笑う袁紹を見て、取り巻きたちは確信する。紀家の当主と袁紹の繋がりは消えてはいないのだと。
 一挙手一投足に意味合いが出る。それが彼等の生きる世界である。

本日ここまですー
新年一発目に来るあたり、やはり麗羽様は格が違った

乙ですー
そうか、ここの麗羽様が原作と何が違うのかいまいちピンとこなかったんだけど
視野の広さが違うのか…基本的に原作とほとんど変わらないけどたしかに違うからどう違うのかなーと考えてたけどようやくしっくりきた
このカリスマ(真)っぷりはさす麗

乙。


うあうあ青春だあ(羨望

で、憶測で申し訳無いですが紀家は袁家の旗本ですよね?という事は紀霊さん麗羽美羽どっちかの婿認定を袁家直系からは されてるだろーなーと。

非常にお馬鹿な反董卓連合回避策。十常侍一党を 〆た後、月と詠を紀霊さんの秘書に。但し恋の反董卓連合結成のリスク有り。

>>183
>視野の広さが違うのか…
原作であんだけ名家名家言ってて文官の一人も出てこないあたり権力闘争すごそう
んで地盤固めに反董卓連合を起案するという辺り、発想はいいのですよね


>このカリスマ(真)っぷりはさす麗
なお二郎ちゃんは絶対そこまで考えてない(確信)

>>184
>うあうあ青春だあ(羨望
一ノ瀬もこんな青春送ってみたかったやで

>で、憶測で申し訳無いですが紀家は袁家の旗本ですよね?という事は紀霊さん麗羽美羽どっちかの婿認定を袁家直系からは されてるだろーなーと。
こら!ネタバレは駄目っていったでしょ!
まあ、展開予想されてて合ってても気にせず書きますけどね
既読の方は勘弁な!


なろうの章立てをようやく実施。
ふらりとアクセス確認したら6-700アクセスある模様
ありがてえなあ……

はよ続き書かなきゃ(使命感)

リライト版しか読んでないです。つか今までの流れで「紀霊なんぞに麗羽を嫁がせる?あり得ん」の方が…ねえ。

所で二郎さん。鞍と鐙、開発してみません?
去年、乗馬体験した時に 威力を実体験したので北方の白馬騎馬隊にあったら公…隊長はもっと楽だろうな。と。

紀霊さんが袁家中枢に姻族認定される事はこの先にも威力発揮しそうな気がするんですが(ネタバレ?

>>186
>リライト版しか読んでないです。
ありがとうございます。ガンガン考察なりしてください。しれっと拾うこともあるかもしれませんw

>つか今までの流れで「紀霊なんぞに麗羽を嫁がせる?あり得ん」の方が…ねえ。
一応次々回くらいにそこら辺が出る予定です

>所で二郎さん。鞍と鐙、開発してみません?
ですよねえ……。これ考えたんですよ。考えましたよ。
分かり易い現代知識チートキタコレ!ですよねえ。

ですがねえ、これ原作では実装されてるような気がするんですよねぇ……
それとweb恋姫(ブラウザゲーム)の騎兵は、画像を見ると多分その二つが描かれてるっぽいんですよねえ
なのでこれは原作尊重でお蔵入りです。一応そんな理由はあるのですよ……

元ネタのK○EI三国志とか無双シリーズには普通に常備されてるからね、仕方ないね

あと、あくまで二郎ちゃんは凡人なんで、そんなに大した技術力はないです
精々ばっくりとした概念くらい?

「やれやれ。二郎め、好き勝手言いやがって」

 苦笑交じりのその声に沮授は深く頷く。全く、困ったものだ、と。
 ……まあ、声の主である張紘にしても紀霊に呼ばれたらば否やはないのであるが。
 思えば長い付き合いになったものだ、と沮授は思う。師である田豊が高く評価をしたということで、子供心に嫉妬したこともあるのだ。今でも初対面の時のことは思い出す。

「お前が沮授か?ものっそい頭いいんだってな!俺のことは二郎と呼んでくれ!」

 初対面での真名の押し付けである。これには師である田豊も苦笑いであった。流石の沮授も面食らってしまい、頷くことしかできなかった。
 色々と話すにつれ、かなわないな、と思うようになった。自分が目の前の課題に精一杯だったというのに、彼の目線は遥か彼方を見据えていたのだ。

 ほんと、かないませんよ、と今では言える。苦笑交じりにでは、あるのだが。

 彼は、いっそ生き急ぐが如くに走り続けるのだ。紀家の農場で色々試すという話を聞いた時は耳を疑った。更に彼の計画書の骨子を見たときには目を疑った。

 計画→実行→検討→当初計画の修正。いわゆるPDCAサイクルであるが、その概念は当然存在すらしていない。継続的に続けられる進歩を前提とするそれは、非常に画期的なものであり、沮授や張紘はその発想に愕然としたものである。
 現在袁家が抱えるプロジェクトの多くはこの概念が練り込まれており、かつてない勢いで領内は発展を続けている。それまでの停滞が嘘のように、である。それを、飛躍をもたらした青年といつしか、友と言っていい関係になり、今では親友だと自負している。
 彼の歩みに負けないように沮授とて精進する日々なのだが、紀霊の歩みは更に先を行くように思える。今日も、驚くべき報を持ってきた。

「というわけで、張家から情報を引っ張ってこれるようになった」
「いや、結論から言われてもわかんねえぞ」

 呆れたように紀霊を小突く張紘は紀霊が拾ってきた――彼ほどの人材には相応しくないが、そう言うしかない――傑物である。
 商、という賤業に手を染めながらその気質は誠実にして篤実。人として信頼でき、その知性は打てば響くどころの話ではない。一体全体どうやったら張紘のような人材を拾ってこれるのやら、である。

「とはいえ、その情報の裏は確認しないといけませんね。
 偽報に踊ることになったら目も当てられません」
「まー、そうなんだよなあ。だがまあ、欺瞞工作含め情報源が増えるのはいいと思わね?」
「それはまあ、そうなんですが」
「仕掛けてくるとしたら、いざと言う時の情報かなあ。
 一応、おいらの情報網で裏は取るようにするさ」

 そもそも、だ。どうやって袁家の暗部たる張家から情報を引き出すことに成功したのやら。沮授も張紘もそこには指摘をしない。今更、である。
 ……打ち合わせは数時間に及び、今後の方針を確認すると、紀霊はまたどこかへと駆け出して行った。それを見送りながら。

「ほんっと、せわしない奴だよなあ」

 苦笑する張紘に沮授は同意する。

「ええ、あれで一日も早く隠居して遊んで暮らしたいなんて言ってるんですからね。
 本当に隠居する気があるのやら。疑わしいものです」
「ちげえねえや」

 ニヤリ、と笑い合う。全く、彼より精力的に動けと言われたら困るくらいだというのに。

本日ここまですー

そして野郎どもは流石に姿絵コンプリートなんかしてません。ただの版元とプロデューサーです

なお、二郎ちゃんは色々事業やらプロジェクトやらを立ち上げて軌道に乗ったらそれをあっさり手放すどっかの起業王のようなムーブをしている模様

乙ですー
>>本日ここまですー
なんて微妙なところで誤字ってるんだ
からかえないじゃないか!!

>>191
からかって、いいのよ(誤字とは言ってない)

 顔良は、思わぬ人物の訪問を受けていた。正直、苦手と言っていい相手である。

「どもどもー失礼しちゃいますよー」
「は、はあ」

 張勲。張家の息女であり、次期当主と見なされている人物だ。紀霊ともに袁術様の守役となった人物。だが、何の用なんだろう。正直、接点だってないし、と顔良は怪訝に思う。なんせ張家は言わば袁家の暗部だからして。

「実はですねー、ちょっとご報告に来たんですよー。
 実はこのたび私、紀霊さんの愛人になっちゃいましたーきゃー言っちゃいましたー」

 絶句する。一体何を言ったのだこの女は。
 頬を染めてわざとらしく、いやんいやんとくねくねする張勲。そこに顔良が感じるのは怒りでも嫉妬でもなく、困惑と混乱であった。

「あれー、反応がないですねー。
 そんなにショックですかー?」
「し、信じられません!そんなこと!」
「ま、信じなくても結構ですけどねー」

 にこにこと笑う張勲。その笑顔は常と変らず。いっそ無垢なまでに愉しげに、ころころと鈴を転がすような声を。

「ああ、安心してくださいね、身体だけの関係ですからー。
 私が一方的に言い寄って、お情けを頂いただけなのでー」
「そ、それが本当だとして何で私にそれをわざわざ言うんですか」

 辛うじてそんな問いを発する。違う、そんなことが聞きたいんじゃない。そんなことはどうでもいい。あの人は、陳蘭さんと結ばれたのではないのか。だから諦めれると思ったのだ。
 そして、四家の均衡はどうなる。紀家と張家が結ばれるなぞあってはならないことだ。いや、それが故に顔良は自身の気持ちに蓋をしていたのであるが。
 わけがわからなくなりそうになる。
 そんな顔良をみて張勲は薄く哂う。――心底楽しげに。

「いえねー、紀霊さんに想いを寄せてる方の中では一番こっち寄りかなーと思いまして」
「どう、いう、ことですか」

 問いに答えず、薄く哂い続ける。その笑みが透き通っていることに、顔良の何かが警報を鳴らす。

「だ、大体、どうして二郎さんと関係を持ったりしたんですか!」

 追い詰められた顔良はそんなことを言う。そんな顔良を見て張勲はくすり、と笑う。

「いえねー、姉妹と母娘、どっちがいいかなーと迷ったんですけど、
 絆的にはやっぱり母娘かなー、と思うんですよ」
「……一体何を、言っているのですか?」
「ですからー。美羽様と棒姉妹になるのもいいなあと思ったんですよ。
 でもね、それよりは私が産んだ子供と美羽様を娶わせたいなーと思うんですよねー。
 だから、紀霊さんに孕ませてもらおうと思ってるんですよ」

 何を言ってるんだこの人は。わけがわからない。そんなことができるはずがない。
 だって。

「そ、そんなことができるはずがないじゃないですか!
 紀家の当主と張家の当主が婚姻なんて出来るわけないじゃないですか!
 だって、だって!」
「あはー、そうですねー。婚姻関係は無理かもですねー」
「だったら!」

 激昂する顔良に張勲は変わらず、笑みを向ける。

「別に婚姻関係みたいな形式を気にするつもりもないですからねー。
 紀霊さんからは子種だけ頂ければいいんですよ」

 ぞくり、と背筋に怖気が走る。これ以上この人の言うことを聞いてはいけない。
 そんな悪寒が顔良を襲う。空気がどろりと粘り気を持ち、呼吸が苦しい。

「紀霊さんは袁家内の有力者のご息女と婚姻できません。これは暗黙の了解です。
 唯でさえ勢力の大きい紀家が他の家と結ぶと突出してしまいますからね。
 同じ理由で袁紹様や美羽様も難しいですね。
 でも、です。これにも抜け道はあります。
 さて、ここで問題です。袁紹様や美羽様の父親が誰だか問題になったことはあったでしょうか?」

 そう言って浮かべた笑みが深くなったように感じる。
 いや、お二人の権威は父親ではなく、袁逢様のご息女であるということに尽きる。当主が女性の場合、父親については不問とするのが慣例であり暗黙の了解ではある。あるのだが。
 まさか……。

「ですからー、袁家、文家、顔家の当主は女性になりますよね?
 そのうちどれかと紀家が結べば問題になります。
 均衡が崩れますから。
 でも、どうでしょう。全ての家と紀家が結んだら?
 かえって袁家の結束は強くなりませんか?
 結果として紀家の勢力、いえ、紀霊さんの力が増します。
 でも、それって問題ですか?」

 この人はなんてことを考えるのだろう。なんてことを考えたのだろう。

「いいじゃないですか。私達の代は紀霊さんに支配されても。
 外から訳の分からない婿をそれぞれ引っ張ってきてお家騒動になるよりよっぽどいいですよ。 
 顔良さんも、見知らぬ、そうですねー、皇族の係累とかにその身体を好きにされるより、紀霊さんに抱かれたくないですかー?
 紀霊さん、とっても優しく抱いてくださいますよ?」

これは、毒だ。聞いてはいけない。でも、それでも、余りに魅力的な提案だ。

「紀霊さんはあれで権勢に興味のない方です。
 もっと大きなものを見てらっしゃいますね。
 公私共に支えてあげるのもいいと思いますよー?」

 くすくす、と笑う。声が耳を抜けていく。身じろぎ一つできない。あたかも見えない糸に縛られたかのように。

「なんで私にそれを言うんですか」

 力なく問いかける。そんな顔良に張勲は優しく、囁く。

「袁家の文武の柱、田豊様と麹義様にこれを諮ってきますー。
 いえね?きっと顔家次期当主は乗り気であったというのはいい説得材料になると思うんですよ。
 それに、貴女なら誰にも漏らさないでしょうし」

 薄く哂って張勲が立ち去る。心底を見透かされ、毒を注がれた顔良は呆然と見送るしかない。悄然と立ちすくしかない。

 助けて、と思う。
 想うのは、たった一人で自縄自縛。泣くことすらできない。できないのだ。

本日ここまですー

タイトル的には「絡新婦の囁き」かな?
もっといいのあったらオナシャス

斗詩はいぢめたくなる不思議

久しぶり(年単位)にSS速報見に来てスレッド一覧眺めてたら
まさかのリライト版開始してたという……
まだですがこれから読みます

かつては長文だの考察だのやりまくってたけど、リライト版は控えめに静かに見守っていこうと存じます

ところで
書き直し……つまり、最後あたりの読んでて「は?」と声が出たグダグダ状態がいい感じに変わる可能性がっ!

乙でしたーいつものを
>>193
>>紀霊ともに袁術様の守役となった人物。
○紀霊とともに袁術様の守役となった人物。
>>わけがわからなくなりそうになる。 なりそうになるだとなるのかならないのか分かりにくいので
○わけがわからなくなりそうだ。 の方がいいと思います

二郎ちゃんハーレム化計画を裏から推し進める絡新婦さんと最初に毒を注入されたいぢめられっこprpr
外堀から埋めるのと脆いところから攻めるのと敵を寝返らせて味方を増やすのは計略の基本だよね
なんとなく芋づる式って言葉が頭をよぎった

乙。

紀霊(二郎)さんにとっては悪夢なんですが、七乃さん。
つか、本気で惚れた人と あんな別れ方した人には ちと辛いような


鞍と鐙のお蔵入りの理由 了解。
確かにそれらしい絵が有りますね。


二郎さんは概念しか伝えられない。
絵図書ければ職人はなんとかしますよ。多分。
確か鉄器生産技術あるから、農具も現代風の開発してるだろうと推測。
二郎さんが大卒なら、物理を応用して生物力クレーンは実用化してそうだし。


くどいようですが、この時の紀霊(二郎)さんが ハーレムを受け入れるのか?そこは注視。

確かに元現代人の二郎がハーレムを受け入れる精神を持ってるかは微妙だけどそれを言ったら女性陣が二郎をあきらめて適当な皇族とかを婿にとれる精神かも微秒…特にノウキン系の猪々子とか
諦めなきゃいけない理由(今回顔良が張勲に言ったようなもの)があるならともかく囲い込む理由(今回張勲が顔良に言ったようなもの)が有れば公人としても私人としてもGOサイン出ちゃうんじゃない?
二郎ちゃん本人の意思は袁家という巨大な存在の前ではわずかにしか考慮されないんだよ(完全に無視されるとは言わないけど)

>>196
>まさかのリライト版開始してたという……
おー、ありがとうございます。今後ともご贔屓に

>かつては長文だの考察だのやりまくってたけど、リライト版は控えめに静かに見守っていこうと存じます
おお、長文感想くれてた方ですか!モチベーションは感想から湧いてきますので、本当にありがとうございました

>書き直し……つまり、最後あたりの読んでて「は?」と声が出たグダグダ状態がいい感じに変わる可能性がっ!
いつも通り見切り発車です。電波とダイスとお酒のお導きなのです

>>197
いつもすまないねえ……ホロリ

>外堀から埋めるのと脆いところから攻めるのと敵を寝返らせて味方を増やすのは計略の基本だよね
実に真っ当な手でございます(手段が真っ当とは言ってない)

>>198
>確かにそれらしい絵が有りますね。
そうなんですよね。
普通に肉まんとかラーメンとかドリル髪用のヘアパーマ機とかあるから現代知識無双はかなーり慎重にせんとね……

>確か鉄器生産技術あるから、農具も現代風の開発してるだろうと推測。
備中鍬と千歯こきは実装しておりまする
なお、私大卒ですが生物力クレーンを寡聞にして知りませぬ
三角関数とかも忘れたしなあ……
精々三平方の定理とかですかね、何か役に立ちそうなのは(それ絡みでお話書く自信ないですw)

>くどいようですが、この時の紀霊(二郎)さんが ハーレムを受け入れるのか?そこは注視。
まあ、この時代で幼少期から過ごしてますし、郷に入っては郷に従え的な方向性かと

>>199
>二郎ちゃん本人の意思は袁家という巨大な存在の前ではわずかにしか考慮されないんだよ(完全に無視されるとは言わないけど)
梁剛姐さんにしても陳蘭ちゃんにしても、情人とか愛人的な扱いでしょうしね
そこは、実際二人ともわきまえております……

次回、「江南の風」

今日投下できるかは微妙っす

「しかし、同じ町とは思えんのう」

呟きながら黄蓋は嘆息する。ここは長沙の町。言わずと知れた孫家の根拠地である。つい最近までは水害の爪痕が色濃く残されていたものだが。田畑が荒れ、食料がなくなり民が流れる。
流れた民は食料を求めて北に流れ、或いは賊となる。だが、それもまだ動くことのできる余裕がある者のみ。飢えて死ぬ者も相当数出ていた。……それ以上は言うまい。
まさしく悪循環、地獄絵図とはこのことであったのだ。それがどうだ。

「んー、皆が頑張ったからじゃないのかな?」

腰まで垂れる黒髪をふぁさっとかきあげて、さらっと言う少女は魯粛。袁家――より正確に言えば、紀霊により派遣された人物である。母流龍九商会の責任者、支店長だとかなんとか言っていたか。見た目は幼女、頭脳はとびっきり!という自己紹介についてはどうかと思うが、その能力については疑問を挟む余地はない俊英である。

「ふん、袁家の援助のおかげというのは理解しておるともよ。
 孫家は忘恩の徒ではない。きっちり恩は返す」
「いいのいいの、そんなに構えてなくても、さ。
 黄蓋さんが義理堅いのは分かってるよー。
 それにこっちも儲けさせてもらってるしねー」

そういって笑うさまは無邪気なもの。だが、魯粛の影響力は日々増していっている。当初は袁家からのお目付け役として胡散臭い目で見る者が多かったのは確かだ。しかし、彼女らが運んできた大量の食料、資金。
何より彼女らの誠心と勤勉さが認められ、すっかり孫家に受け入れられている。元々実力主義な孫家においては自然な流れだが。

「まったく、頭が下がる思いじゃ。
 策殿もお主らのように勤勉ならのう」
「あははー、確かにねー。
 でもあれはあれで組織の長としては一つの形だと思うなー。
 組織の長がばたばたと駆けずり回るとさ、下っ端は何事かって思うしね」

それにしても惜しいな、と黄蓋は内心幾度目かの歯噛みをする。
この識見、人格。折角江南出身なのだから孫家に仕官してくれていれば、と思う。だが、思うだけ無駄なことでもある。先立つものが無ければいかに有能な士がいても活かせない。実際、袁家からの援助があと一月遅ければどうなっていたことか。

「でもまあ、江南に来れてよかったよー。
 私の実家もこっちだからねえ。
 張紘に呼ばれて商会の仕事を始めてさ、そりゃ楽しかったんだけど。
 窮状は気になってたからさー」

感傷、いや、未練か。そんなことを黄蓋は思う。もし、孫家にもう少しの余力があったならば、というのは。

「だからまあ、こっちに派遣してくれた紀霊さんには感謝、だねー」

どこか遠い目で魯粛は呟く。
そしてその言葉でまずは満足しておこうと黄蓋は思う。今の状況は本当に僥倖であるのだからして。

「た、確かにありがたいが、本当にこれだけの物資を提供していただけるのか……?」

周瑜が魯粛に問いかける。その目録をすさまじい速度で確認する。これで四度目か、とどこか他人事と思いながら魯粛はその形相に色々と察する。

「そだよー、とりあえず急場を凌ぐためにはそれくらいは必要でしょ?
 第二陣の内容は実態を見て、かな」
「これだけの物をすぐに用意し、運べるとは。
 隆盛は聞きしに勝るものだな」

流石の周瑜が嘆息する。実際孫家の家計は火の車である。むしろよく回っていると思うくらいのもの。武辺者と自称する黄蓋ですらそう思うのであるのだ。実務を取り仕切る周瑜の気苦労はいかほどのものか。

「あくまでこれは母流龍九商会から、だからね。そこは押さえておいてね。
 それとこれは別に提供するわけじゃないからね?
 きっちり利子付けて返してもらうからねー」
「それは……返済まで百年はかかりそうだな……」

深く、深く嘆息する周瑜である。黄蓋は美人が台無しじゃのう、などとお気楽な感想を抱くのだが。
そんな周瑜に魯粛が笑いかける。

「だいじょぶだいじょぶだってー。
 一応、こっちの試算では十年くらいを目処に完済できる見込みだよー」
「そんな馬鹿な。民からどれだけ搾取するというのだ!」
「そーんなに凄まないでよー。きちんと事業計画書と返済計画書があるからー。
 まあ、あくまで試算だからもっと短くなる可能性もあるよー」

魯粛の差し出した書類に目を通す周瑜。眉間のしわが濃くなり、薄くなり、また、それまでよりも深くなる。そして表情は険しいまま。

「つくづく袁家というのはとんでもないな」
「どもどもー、お褒めに預かり光栄だね」

なんとも対照的な表情ではある。一方は渋面、一方は笑顔。

「しかしこれでは随分そちらの手出しも多いのでは?」
「先行投資ってやつだね。だからいいの。
 母流龍九商会(うち)の理念は、損して得とれだからねー」
「ふむ……」

 唸る周瑜に追い打ちが来る。

「それにね、別に孫家に対して含むところもないからさ。
 あんまり負債で縛って暴発される方が厄介だしね」

さらりと言いよるわ、と黄蓋は苦笑する。一瞬が鋭くなる周瑜の表情に、まだまだ未熟、と苦笑する。まあ、これもまた経験というものだ。

 当然、魯粛も周瑜の表情には気が付いている。放っておいても収まるとこには収まるのだろうが……。

「どうせこちらに選択の余地などないんじゃ。
 あちらの条件丸呑みの方がよかろう」
「駄目駄目ー。
 こういうのは最初が肝心なんだからきっちりと条件を確認してもらわないと。
 でないと信頼関係なんて築けやしないよー」

 魯粛の注意をひきつける。それが数秒であっても周瑜ならば立て直すだろう。

「なるほどのう。まあ、確認作業はわしには向いておらん、冥琳任せたぞ。
 わしはそういう内向きのことはよく分からんのでな」

 そう言って席を立つ。これでまた十数秒くらいは稼げるか?と思い周瑜に視線を流すと、申し訳なさそうに目礼をしてくる。
 よし、これで大丈夫だとばかりに黄蓋はその場を去る。今は亡き孫堅の墓参りにでも往くか、と。墓参りには酒が必須だなあなどと思いながら。




「すまなかったな。少々こちらの対応が良くなかった。
 この内容で大筋に異存はない。
 これからよろしく頼む」
「こちらこそよろしくー。
 ちなみに一つだけ聞きたいんだけど」

 視線を合わせていた魯粛の目線が下がっていき、一点を凝視する。所謂ガン見、である。何を聞かれるのかと身構える周瑜であるのだが。

「黄蓋さんもそうなんだけどさ。どうして孫家の人には巨乳が多いの?
 江南出身者として解せないんだけど」

 ……どう答えろと言うのだ。

本日ここまでー
貧乳はステータス&希少価値って六韜にも書いてある


次回は江南の風その2

何だかんだで恋姫キャラでも貧乳のほうが少ない確かに希少価値
あれだ「可愛い子なら誰でも好きだよ、オレは」の方向で(酷)

乙ですーいつものを
>>202
>>つい最近までは水害の爪痕が色濃く残されていたものだが。田畑が荒れ、 中略 地獄絵図とはこのことであったのだ。それがどうだ。
○つい最近までは水害の爪痕が色濃く残されていたものだ。田畑が荒れ、 中略 地獄絵図とはこのことであったのだが。それがどうだ。
文脈からしてがの位置は最後にした方がいいと思います
>>203
>>流石の周瑜が嘆息する。
○流石の周瑜も嘆息する。
>>武辺者と自称する黄蓋ですらそう思うのであるのだ。
○武辺者と自称する黄蓋ですらそう思うのだ。 もしくは 武辺者と自称する黄蓋ですらそう思うほどであるのだ。
>>母流龍九商会(うち)の理念は、損して得とれだからねー」  間違いではないですがこの時代の儒教やら社会構造の在り方や他諸々から
○母流龍九商会(うち)の理念は、損して徳とれだからねー」  の方が受け入れやすく合ってる気がします
>>一瞬が鋭くなる周瑜の表情に、
○一が鋭くなる周瑜の表情に、 もしくは 一瞬目(線)が鋭くなる周瑜の表情に、 でしょうか?

犬はエサで飼えて人は金で飼えて…虎は恩で飼えるのか?これだけやって貰って噛みついてくるならそりゃもう虎じゃなくてイナゴだよね…きっちり躾けれるといいなあ。原作みたいに虎視眈々としなきゃいいけど

>>205
幼女以外での貧乳って、実は希少だったりしますよね

>>207
いつもすまないねえ

>なんだかんだ言いつつ恩はあるけどそれはそれ、今は悪魔の微笑む時代なんだよって言いそうなのが怖いところ
家康はんかて散々お世話になった今川はんにひどいことしたよね
それを考えるとノブノブの身内への甘さは実際すごい

「魯粛殿はどう思われる?」

 議事を進行していた周瑜の言葉に場がシン、と静まりかえる。議題は長沙の復興都市計画と周囲の豪族への対応等の基本方針である。意欲的な政策が並ぶが、それもこれも独力では到底果たせぬものばかり。つまりはスポンサーの代弁者たる魯粛の権限の大きさたるや、である。
 探るような、窺うような、睨むような。様々な視線を受けながら魯粛は小揺るぎもしない。ここ江南で、或いは南皮で。彼女の潜った修羅場は数知れないのである。

「大筋で問題ないと思うよー」

 魯粛の声に、場の空気が弛緩する。無論、魯粛が言えばすべての案を没にすることも可能である。孫家の首魁。その首の挿げ替えすら可能であろう。いや、そんなことはしないのだが。伝家の宝刀は抜かないことに意味があるのだ。
 実際、孫家と無駄に対立しても意味はないしねー。と魯粛は内心苦笑する。というか、方針は基本融和友好が既定路線。
 紀霊曰く「戦闘民族」たる孫家と良好な関係を築くのが魯粛のメイン任務である。もちろん、江南の復興も重要ではある。だが、それはあくまでも手段であって目的ではない。
 そんな紀霊の言に魯粛は内心思う所がないではないのだが。江南出身者として。
 だが、いざ孫家の首に鈴をつけようとして痛感する。孫家は控え目に言って化物揃いだ。包み隠さずに紀霊に主要人物の評を伝えている。
 曰く、孫策は本能と勘で勝っちゃう戦争の天才。
 曰く、周瑜は王佐の才と言っていいほど万能の天才。
 曰く、黄蓋は歴戦の名将で弓術の達人。
 曰く、甘寧は江賊出身にて水軍の達人。
 曰く、周泰は諜報の専門家で超一流の密偵。

 未来はないと去った江南にこのような勢力があったとは、と内心で苦笑したものだ。もし、自分が江南にずっといたら馳せ参じてたであろうと思うほどに、だ。
とはいえ、今の自分は母流龍九商会江南支店の支店長。ここは間違いなく鉄火場。血が流れない戦場。だからこそ分かる。孫家と敵対しても百害あって一利なし。孫家の潜在力を遠い南皮にて見抜く紀霊の慧眼こそ評価されるべきであろう。

「一つだけお願いがあるんだけど」

 その声に再び緊張が走る。この場合お願いと命令に等しい。それがいかなるものか。

「求人するから、そのお手伝いだけお願いするねー。
 物資の搬入と管理で手一杯なんだよー」
「求人、とは募兵ということか?」

 いくらか――かなり硬い声で甘寧が問いかける。やだなあ、目が怖いよと魯粛は肩を竦める。

「違うってば。母流龍九商会では街道と港湾施設の整備を最優先で取り組むからさ。
 その人夫を集める手伝いをしてほしいんだ」
「道と港を作る?いや、構わんが、商会とは商売をするのではないのか?」

 訝しげな甘寧。まあ、そうだよねえ、と魯粛はここからが本番と気を引き締める。

「うん、商売というのは元々古代商の国の人が物を生産地から消費地へと運んだことにちなんでるんだ。
 つまり物流は商売の基本ってことだね。そしてその物流を円滑にするためには施設が必要なんだ。
 荒地を馬車は進めないし、船は崖には停泊できないからね。
 先行投資ってやつだよ」

 もちろんそれだけではない。雇用を創出することで困窮している民の糊口を凌がせるのだ。更に、雇用された人に食事を配給、或いは販売するための人員も必要だ。お食事処的なものを自然発生させるには手元の食糧を何らかの形で市中に流さなければならないのだが。これを考えるのはまあ、顧雍や虞翻という頼りになる人材の役割だからして。近日中になんとかなるのは確定的に明らかである。
 でも、そこまで説明する必要はないしするつもりもない。分かる人だけ分かればいいのだ。あまり民政にまで口出しするつもりもない。
 さて、と視線を回したら周瑜と目が合った。ニヤリ、とニコリの中間くらいの実に魅力的な笑みを浮かべてくる。その笑みは虚勢か、それとも。

「まー、考えるだけ無駄だね。あんなのと張り合えとか。紀霊さんってあれで結構人使い荒いよねー」

 そう呟く魯粛の口元は、楽しげな笑みを浮かべていた。

江南ここまでー

次回、南皮に来訪者。あのキャラが出ます。(初)

「凡人と○○○」

タイトルは募集すると思います

乙でしたーいつものを
>>210
>>この場合お願いと命令に等しい。
○この場合お願いとは命令に等しい。

未来知識があってこその慧眼だけど周りからは分からないからねえ、本当に生き馬の目を抜くって感じだよね
次回出るのは誰かなー本命劉備、対抗数え役満、大穴董卓あたりかな
劉備がお金持ちに集りに来るか黄巾の影がちらつくか、今から反董卓連合の布石が打たれるか…それともほかの誰かか?もしかしたら一之瀬さんが加筆する可能性があるから本気で読めない

乙。

魯粛さんが支店長で、虞翻さんが部門長的立場。 この商会。まじチート


>生物力クレーン

多分、『動滑車と静滑車の組み合わせと人力や牛馬による』クレーンかな?

戦闘民族孫家。何となく格好良い(厨二)


現状で一番面白いのが、 校正さんがいるスレという点。
つか校正さんの技量ハンパねー(感動)

まさかの1読者の俺にファンが出来たことにびっくり!!
技量というほどのものは持ってないですよー(テレテレ)

>>213
いつもすまないねえ・・・

>未来知識があってこその慧眼だけど周りからは分からないから
何気にチートですが、他の二次創作だともっと現代知識チートやってたりするので比較的地味に感じる不思議

>もしかしたら一之瀬さんが加筆する可能性があるから本気で読めない
まさかのノーマルルート開始とか(ないけど)

>>214
>魯粛さんが支店長で、虞翻さんが部門長的立場。 この商会。まじチート
顧雍さんとかもおるで!出番は多分ないけど
魯粛も本来は出番ないはずだったけどぐいぐい来ます

>多分、『動滑車と静滑車の組み合わせと人力や牛馬による』クレーンかな?
ああ、あれね、知ってる知ってる(白目)

>戦闘民族孫家
サイヤ人かな?

>現状で一番面白いのが、 校正さんがいるスレという点。
確かにw

>>215
ほんと、いつもお世話になっております。
確認してるつもりなんですけどね。酔っ払いだからね、仕方ないね

「ほー、ここが南皮かー。流石にぎわっとるねー」
「もう、真桜ちゃんは気が早いのー、まだ城門も潜ってないのー」
「ほら、沙和、真桜、しゃんとしろ。まだ仕事は終わってないのだぞ」

 女三人いればなんとやら。賑やかな声が南皮の城門前に響く。

「ほおー、さっすがやなー。ぶ厚い城壁の周りに空堀かい。おお、城門は吊橋を渡らないとあかんのか。なるほど。あの鎖で橋を巻き上げるんやな……。
 城壁も、上から弓を射やすいようになっとるし、よく見たら真ん中にも通路があるやんか!
 いやあ、これは血が滾るでえ!」

 腕組みして城壁を見やるのは、藤色の髪を無造作に括った少女。極めて軽装であり、それで護衛が務まるのかというほど……端的にいってそれは水着姿。それもビキニスタイルであったりする。そしてその胸部装甲は南皮の城壁を向こうに回しても張り合えるほどに豊満であった。

「あー!あの子、阿蘇阿蘇(アソアソ)に載ってた服装を上手く崩してるのー!
 春物の流行を押さえながら、ちょっと挑発的な色合いが調和してるのー。
 これは負けてられないのー」

 声を張り上げる少女もまた軽装。栗色の髪を三つに編み上げて垂らしている。眼鏡の奥の瞳を彩るのは雀斑(そばかす)。常であれば短所とされるそれを魅力的に彩るのは彼女のコーディネイトの賜物であろう。

「あの、すみません。きちんと護衛の任は果たしますので。
 なにぶん、田舎者なもので……申し訳ない」

 生真面目そうな少女がわいのわいのと姦しい連れの様子にぺこぺこと頭を下げる。護衛、と言うだけあってその眼光は鋭く、周辺への警戒を怠らない。右目と頬、そしてそのしなやかな身体に幾筋もの傷跡が走り、まさに精悍。

「でも、護衛とか言ってもお仕事何もなかったのー。
 ほんと、こんなお仕事ばっかりだったら楽なのー」
「せやなあ。ほんま、いっそ申し訳ないくらいやったわ。それに、や。街道が煉瓦で舗装されとるからなあ。
 あのお陰で馬車の移動速度が飛躍的に伸びとるんや。建築素材としても貴重な煉瓦を敷き詰めるとか、どんだけやっちゅうねん!」

 紀霊の肝いりのプロジェクト「赤い街道計画」は順調に進んでおり、まさに袁家領内の大動脈として物流の根幹となっている。ひたすらにインフラを整備するその指針には異論もあるものの、結果がそれを封じている形である。

「こら、二人とも!」

 彼女らが就く護衛というのも雇用対策の一つ、治安の一環である。護衛がいれば野盗と言えど容易に襲撃はできない。また。一定以上の武力を持つ者の囲い込みにもなる。富に溢れる袁家に集う様々な不安定要素。それらをまるごと抱き込むという沮授と張紘の苦心の策でもある。
 なお、そもそもの元凶たる紀霊はそのころ……。

 今日も今日とて町の視察である。いや、お仕事だよ?ほんとだよ?きちんと予定にも入れてるし、視察の報告書だって出してるもんな。きっちりと課題とか、頑張ってる役人とかの報告してるし。こういう事前事後の事務仕事をしないと、ただのサボりになるわけだ。
 具体的に例示すると、猪々子とかさ。

「おやじー、その串焼きおくれー。陳蘭も食うだろ?」
「あ、はい。頂きます」

 どうせなら、町の様子の考察に女子の視点を取り入れたいというのは至極当然な発想だったりする。陳蘭も楽しそうだし、ほら、みんなハッピーでwin-winだ。いや、ほら。七乃との一件もあったから陳蘭にちょっと後ろめたいじゃない?気にしないって言われても、さあ。いや、だからこそ、か。
 今日は週に一度の定期市が立つ日でもあるしな。地方からいろんな産物を持ち寄ってなかなかの賑わいだ。いやあ、賑々しくて大いに結構!もっとやれ!倍プッシュだ!

「二郎さま、この後どうするんですか?」
「んー、このまま市を冷やかして、運営の方に顔を出そう。陣中見舞いだ。
 そうだ、何か差し入れ持ってってやらんとな。何持ってくかは陳蘭に任せるし」
「ふぇ?わ、わたしですか……?」

 びくり、と戸惑うさまが小動物めいているんだよなあ……。実際可愛い。

「おう。てきとーに大人数でつまめるようなお菓子か軽食的なものが無難かな」
「は、はい。分かりました」

 気合を入れる陳蘭。いやあ、頑張る女の子って、可愛いねえ。うん。
 そんな時だった。

「なんやねんそれ!どういうこっちゃねん!」

 女の子の声が響き渡る。

「ここ、空いてるやんか!この市は誰でも参加できるんやろ!
 なんでウチらが参加でけへんねん!」

 ……傍目にはおにゃのこ三人組に強面のおっさんが絡んでるようにしか見えない。いや、迫力的に立場は逆かな?

「じ、二郎さま……」

 陳蘭が俺の袖をちょい、と引く。いや、分かってるって。

「はいはーい、どしたー?」

 どう見てもおにゃのこ三人組の方が荒事になったら……勝っちゃうもんな。それはまずい。

「あ、若……」

 ガラの悪い男が俺の顔を見てちょっとほっとしている。そうだよなー、格の違いくらいわかる。でも立場上引けないもんなあ。えらいえらい。きちんと報告書に載せとくから。

「兄ちゃん!聞いてや!そこのおっさんがひどいねん。
 ウチらがここで商売しようと思ったら因縁つけてくんねん!
 なんとかしたってーな!」
「そうなのー、ひどいのー!何様のつもりなのー!」

 なんとも威勢のいいことである。もう一人は油断なく無言で周囲――主に俺と陳蘭――を警戒している。いいコンビネーションだねえ。

「あー、ここの市は確かに誰でも参加できるけど、きちんと事前登録したか?
 場所代、払ったか?そうは見えないんだが……」
「はあ?ウチらこの町に到着したんは昨日や!そんな暇あるかいな!
 場所代やったら商品が売れたらきっちり耳を揃えて納めたるがな!」
「そうなのー。あちこちでお買いものしちゃって、もう手持ちのお金なんてないのー。
 今すぐ出せって言われてもないものはないのー」

 なんということでしょう。なんということでしょう。どないせいと。これ落としどころに困るぅ!

「んで、商品はどんなの?」
「これや!品質は全部最高級やでー!」

 そう言って見せてきたのは籠、笊などの雑貨だった。ふむふむ、確かに高品質で均等な出来だな……。感嘆せざるをえない。

「どや、ええ商品やろ?」
「そうなのー、真桜ちゃんの商品は一流なのー」

 だがしかし、である。

「ああ、でもそれってこの辺りだと浮くぜ?超浮くぜー?」

 そう言って周りを指し示す。ここは屋台ゾーン。店も客も飲食するところだ。ここで雑貨売っても、なあ。いや、買い食いして気力充実したとこで商売開始って感じだったんだろうけどね。

「あ……」
「それに、そこの場所も本来屋台が出るはずだったんだぜ?
 急遽出店できなくなっても、これから場所の予約待ちの屋台が来るぞ?」
「え、え?」

 まあ、半分ハッタリなんだが、当たらずとも遠からずだろう。視線をやると、おっさんが目礼をしてくる。この路線で大丈夫そうだ。
 一気に意気消沈する女の子たち。なんだ、素直ないい子たちじゃないか。

「なあ、兄さん、なんとかならへんかー?
 ウチら、路頭に迷うてまうわぁ……」
「そうなのー、か弱い女の子を見捨てるなんて、ひどいのー!」

 媚びるならきちんと媚びろよ!とは思うのだが、素人さんにそれは酷な話である。やだ、俺って極道みたいじゃない。

「あー、分かった分かった俺が預かろう。
 直接客とのやり取りは出来ないが、これ一式母流龍九商会で買い受ける。
 ちょっと安値になるが、とりあえず手元に金は残るさ。
 んで、これだけで過ごす資金稼ぐつもりはなかったんだろう?」

 乗りかかった船だ。泥船であろうと浮かしてやるのが俺のお仕事だろうさ。こんなに可愛い娘たちなんだしね。社会の荒波から守るのは当然なタスクである。

「はい、当座の資金を得て、それぞれ仕事を探すつもりでした」
「それぞれ何ができる?俺が口を利いてやる」

 もとより口入屋、職の斡旋は母流龍九商会の本業に近い。近年続く好景気で常に人手は不足しているのだ。

「は、私は楽進。無手の武術の心得があります」
「沙和は于禁っていうのー。読み書きできるし、お洒落にはうるさいのー」
「ウチは李典や!絡繰りにはうるさいでー!」

は?はあ?はああああああああああああああ?
 暫し凍りついた俺を責められる奴がいようか、いや絶対いないね!当事者の三人娘からは怪訝そうな、或いは不安そうな目で見られたのだけれども。けれども。

ほい、本日ここまでー
南皮は超豊かになってるからね、モノ売るならそこでしょうよ

も少し三人娘
或いは孫家

乙したー

気がついたら生け簀に大物が三匹、みたいな

乙です
若干二郎さんの反応が前回と違う気もするので
なんかのフラグじゃないかと戦々恐々

寒中見舞に去年のあれ(?)仕上げてみました
ttp://www1.axfc.net/u/3603058
P:地味様が太守を務めた都市を半角英数6文字で

R-17くらいなのでパスは難しめにしてます
元がデカすぎたので、サイズ小さくしたら何が何だか
高画質の方が良ければ他のろだ探してみます

乙&いつものでーす
>>217
>>女三人いればなんとやら。
○女三人寄ればなんとやら。 女三人寄れば姦しいですよね
>>雇用対策の一つ、治安の一環である。 間違いとは言い切れませんが
○雇用対策の一つ、治安向上の一環である。 もしくは 雇用対策の一つ、治安維持の一環である。 の方がいい気がします
>>また。一定以上の武力を持つ者の囲い込みにもなる。 また だけで【。】を使うのは変な気がします
○また、一定以上の武力を持つ者の囲い込みにもなる。

おお、三羽烏。袁家がただでさえ科学力と衣料関係でリードしてるのにさらに加速してしまう
え?もう一人いるって…気に関するあれやこれやが発展するかもね(するとは言っていない)
でも武将たちが気を会得して強化する可能性が無くはない(同上)

いやあ、雪で大変でした
今日は無理明日も微妙

>>222
>気がついたら生け簀に大物が三匹、みたいな
ため池作ったらなぜか錦鯉が泳いでたくらいにびっくり案件です

>>223
>若干二郎さんの反応が前回と違う気もするので
気のせいきのせい(白目)

>寒中見舞に去年のあれ(?)仕上げてみました
ファッ?
いや、ありがとうございます!まさかの肌色!これはprprせんといけない案件ですよ猿渡さん!
1コマめの台詞が見えないのが無念なのじゃー!

いや、ありがとうございまs。めっちゃテンション上がったす

>>224
いつもすまないねぇ……
ほんま、見返してるはずなんやけんども

>科学力
真桜はね、螺旋の力を手にしてるからね

>…気に関するあれやこれや
猛虎蹴撃という必殺技はweb恋姫出所です
え、そこじゃない?

乙。白い悪魔との闘いも乙です。


>生け簀に大物が三匹

何か増えそうな気がするんですが…

>紀霊(二郎)さんが極道

つうより『侠』か『頭目』?

>事前と事後の書類あればサボりでは無く視察


……二郎さん。妙なフラグ立てしたような?後で誰かが悪用しそうな悪寒


>>224

校正乙です(感謝)

>技量大したこと無い。
文法を正しく理解してその上で文章に合わせて修正。私には無理。


…田豊さんの人物像に興味ある今日この頃(戯言

地味さま太守…幽州?
6文字にならないな

今日は多分サッカー観戦してます

>>226
>何か増えそうな気がするんですが…
(増えちゃ)いかんのか?

>……二郎さん。妙なフラグ立てしたような?後で誰かが悪用しそうな悪寒
悪用ではなく活用ですw 成功事例の水平展開的な

>…田豊さんの人物像に興味ある今日この頃(戯言
田豊師匠の小話でも書くかねえ

>>228
>地味さま太守…幽州?
節子!それ太守ちゃう州牧や!
太守やったら都市名やと思うで!

 さて、目の前にいるのは于禁、李典、楽進。言わずと知れた曹操の宿将達である。あれだけ人材にうるさい曹操の下で将軍してたんだ。能力はまあ、言わずもがなだろう。なのでまあ、まずはスパイや工作員という線を考えた。

「ま、ないだろうな」

 現段階での曹操陣営ははっきり言って人材不足だ。譜代の臣がおらず、身内だけで回していると言ってもいい。……それで回ってるのが恐ろしいところなんだが。まあ、そんな状況でこの面子を外に出すとかありえない。むしろ、その程度ならば安心できるのだが。
 何より。

「いやー、兄さん、偉い人やったんやなー。おおきに。助かったわ」
「それにとっても親切なのー。まさか初日にお仕事が見つかるとは思ってなかったのー」
「本当にありがとうございます。この恩は、必ずや」

 この娘たちにスパイとか無理だと思うの。

「あー、再確認な。于禁は服飾関係、李典は技術関係の仕事をしてもらう。
 当然下っ端からだが文句は言うなよ?実力が認められたらすぐ上にいけるし
 給料だって上がるからな」
「おおきに」
「分かったのー」
「んで、楽進は、そうだな。ちょいと腕試ししてみっか。
 陳蘭!」
「ふぁ、はい!」

 陳蘭を呼び寄せ、楽進と相対させる。

「まずは、攻め手をしてもらおうか。陳蘭、攻撃はなしな」
「分かりました」

 きり、と戦闘モードに移る陳蘭。無手での戦闘は小さい頃から俺と繰り返し、近代格闘術をそれなりのレベルで再現させている。
 膂力だけなら俺より上だしな!

「凪ちゃん、頑張ってー!」
「凪ー!いてもうたれー!」

 無言で構える楽進。おおう。なかなかの気迫だ。

「はじめ!」

 俺の言葉と同時に楽進が陳蘭に飛び掛る。軽くフェイントを入れてから回し蹴りを放つ。
 陳蘭は慌てずバックステップで避ける。
 更に追撃。流れるような連続攻撃。拳と蹴りを組み合わせたコンビネーション。ふむ、なかなか見事だ。
 だが、まだまだ。俺や陳蘭の域には達していない。
 まあ、そりゃそうだ。俺達は武術の完成形に近いものをなぞっている。対して楽進は一から模索しているはずだ。逆に言えば自己流であそこまで磨き上げているというのは凄いとしか言いようがない。実際、膂力ゴリ押しじゃないのにびっくりしたよ。

「くっ!」

 連続攻撃を凌がれた楽進が一度距離を取る。そして構えを解き……ん?

「は、あああああ!猛虎蹴げ……!」

 いかんいかん、何だか知らんがヤバいのは分かる。楽進の気迫が凄まじい勢いで上昇していくのが俺にも分かる!

「そこまで!」

 流石にアレを受けたら洒落にならんだろうことは確定的に明らか。慌てて止める。何らかの必殺技的なものを発動させようとしていた楽進だが、大人しく指示に従ってくれる。これは正直助かった。

「次は楽進が受ける番なー」

 俺は陳蘭を軽くねぎらいつつ、攻めのパターンを指示する。
 
「二郎様、楽進さん、只者じゃありません」
「分かってる。いや、これは拾いもんだったな。だがまあ、やることは変わらん、いけるな?」
「はい」

 緊張気味ながらも陳蘭が頷く。実際やることは変わらない。近接格闘の文化の極み、見せてやれ!

「はじめ!」

 俺の声と同時に陳蘭が身を沈め、楽進の足を取りに行く。何千、何万回と繰り返した動き。必殺の初見殺し。いわゆるタックルである。そのままマウント。かわされたら回り込んでのスリーパーホールド。
 このコンボが俺達のとっておきである。これはいざという時にしか使わない切り札であり、陳蘭の他には猪々子と斗詩くらいしか見たこともないはずである。流石の楽進もこれにはどうすることもできず……いや、タックルかまされながら肘を落とそうとするとかどんだけだよ。

「そこまで!」

 陳蘭がマウントを確定させたところで俺が声をかける。

「も、もう一度、もう一度お願いします!」

 やや必死に楽進が言ってくる。不本意なのだろう。そりゃそうだ。恐らく持ち味を全く出せなかったと思っているのだろう。俺からしたら十分すぎるのだけれども。

「いいの、いいの。楽進の実力は分かったから」
「し、しかし!」

 食い下がる楽進。
 
「いいとこ見せられなかったからって焦ることはないって。実際大したもんだと思うし。
 ほんじゃま、勤め先は連絡するんで、頑張ってねー。
 あ、宿はこっちで手配しといてやるから。
 んで、職場決まったら家もいいとこ紹介してやるから心配すんなよー」



「兄さんほんまええ人やなあ、気風もいいし、惚れてまいそうやわー」
「おうよ、ありがとなー。家賃も安くしとくから安心してくれていいぞ」
「すごいのー。感激なのー。」
「ほいさ。後で連絡入れるから今日はもう休んどきな」

そう言って俺と陳蘭はその場を去る。……彼女らが見えなくなったくらいの所で陳蘭に問いかける。

「で、楽進はどうだった?」
「は、はい。身体能力は、わたしより上です」

 やはり、な。っちゅうことは俺より上でもある。同姓同名の別人という線はこれで消えた。そんなモブがいてたまるか!となればやはり本物か……。いや、もうこの際なんで女子やねんとか言うのは不粋ってもんだろう。そういうものなのだ、きっと。
 だが……思わぬ拾い物に俺はほくそ笑む。どうせ優秀なのは分かっている。だったら最初っから優遇して囲い込んでしまおう。

「……なんか、楽しそうですね」
「ん?ああ、とびきりの人材を拾えたからな。いや、俺、持ってるわ」
「……三人とも可愛い女の子ですもんね」

 ん?

「い、いや、陳蘭、そうじゃなくてな?
 純粋に人材としてだな……」

 慌てる俺を見て陳蘭はくすり、と笑う。

「ふふ、冗談ですよ。二郎さまったら慌てちゃって」
「あ、あのなあ」
「いいんですよ、別に誰に色目を使ったって。
 わたしはお側にいられるだけでいいんですから」

 そういって、腕に抱きついてくる。く、流石陳蘭!それ俺のツボやて。あかんて……。

「今晩は、どうされるんです?」

 上目遣いでそう聞いてくる。いかんなあ。最近主導権を握られてる気がする。

「美味い飯屋を見つけたんだ。一緒に行こうぜ」
「はい!」

 にこりと笑う陳蘭と一緒に俺は街の雑踏に飲み込まれていくのだった。

本日ここまです

眠いっす


陳蘭のヒロイン臭がぱない

乙でしたー
前回ラストで名前しか名乗ってなかったけど移動中に字も聞いたのかな?
まあ三羽烏そのままの名前聞いたら普通に本物だと信じるよね、一人一人だと微妙だけど
無手の武術とかこの時代だとほとんど無かっただろうしそりゃ一日の長ってレベルじゃないよね

校正さんって呼ばれてるけど実際にやってることは校正というよりは添削?
話の内容には口出ししないし(キャラ押しはしてるけど)あくまでも1ファンとしての分はわきまえてる…はず

>>235
年上の幼馴染でちょっとポンコツで貧乳と言うハイスペックさ

>>236
>前回ラストで名前しか名乗ってなかったけど移動中に字も聞いたのかな?
字ね、字。
凡将伝では極力字は使用しません。だって紀霊の字がわかんないんだもの。文醜や顔良もね!

>無手の武術とかこの時代だとほとんど無かっただろうしそりゃ一日の長ってレベルじゃないよね
まだ少林寺すらできてないですからね
現代格闘技の洗練といったらないのです。数多の天才たちが築いてきた歴史、そして産みだされた技
それこそが現代知識チートだと思うのですよね。地味だけんども。
一ノ瀬は貧弱な体格ですけど、修羅の国のキャバレーで外国人と喧嘩したことがあるんです
大内刈りから袈裟固めで瞬殺でした(殺したとは言ってない)
つまり、そういうことだと思うのです

>>237
赤ペン先生かな?
いや、いつもお世話になっております

 さて、ここは南皮の奥の奥。そこで対峙するは袁家を支える文武の要、田豊と麹義。匈奴大戦からの戦友であり、文武の派閥の頭目。つまりは政敵というやつである。
 文武の巨頭に挟まれながらも常通りの笑みを絶やさぬ沮授こそが流石であろう。その内心はともかくとして。

「何だこれは、ふざけているのか?田豊よ」

 挨拶代わりに殺気を振りまくのをやめてほしいものだと沮授は痛切に思う。麹義のそれは、例え直接向けられたのではなくとも息苦しさを覚えるほどに濃密なものである。それを向けられる田豊は揺るがない。小揺るぎもしない。

「いや。至って真面目だが」

 軍師と言いながら筋骨隆々のその肉体に恥じないほどの気力。頭髪は白一色であるがその表情は溌剌にして闊達。麹義の向ける殺気をどこ吹く風かとばかりに切り捨てる。
 ち、とばかりに麹義が舌打ちを漏らす。田豊とは長い付き合いである。かの匈奴大戦より文武筆頭として袁家を牽引してきた仲である。
 時に争い、時に和す。だがしかし、この度において明確に利害は対立している。だが、ここまでギスギスとしたやり取りは近年稀であり、それだけに深刻なのだろうと沮授は察する。

 数分、或いは数秒であったろうか。重い沈黙を田豊が討ち破る。

「やれやれ。難儀なことよ。貴様ら軍部の要望については最大限応じたと思うのだが」

 重々しい口調で鋭く麹義を射抜く。

「ふざけるなよ……」

 地獄の底から、と言うべきであろうか。その低い声にさしもの沮授も肝を冷やす。いや、微動だにしない田豊を賞賛すべきか。

「一万、だぞ。一万の兵……」

 いっそ悲愴と言っていいだろう。その口調から沮授は察する。これは人員削減なのであろうと。いくら袁家は北方の護り手だとしても、だ。洛陽から危険視されるほどに戦力は充実しているのだ。なればこそ。手塩にかけた兵を手放すとなればその悲痛な声にも納得である。

「一万の増員とはどういうことだ!」

 その声に流石の沮授が絶句する。

「なに、予算が余ったのでな」

 流石の沮授もこれには苦笑いすら浮かべられない。一体これはどういうことなのだ、と。予算の策定会議というのはもっとこう、殺伐としているものではないのか。予算を奪い合うものではないのか、と。

「ふざけるなよ田豊!兵を鍛える士官が足りんぞ!」
「そこよ。二郎が孫家に肩入れしておるのは知っておるじゃろう?」

 思いもかけずに出てきた友の名に沮授の表情が引きつる。またあの男はなんかやらかしたのか、と。

「人質という名目で幹部を招聘しているらしいからのう。そこらへんを遊ばせておくのも、のう?」
「孫家の将兵の練度については聞き及んではいる。が、まさか孫家の将に訓練をさせるわけにもいかないだろう?」

 確かに、孫家の将がいくら有能であろうとも兵を鍛えさせるとかいうのは論外である。のだが、田豊は不敵に笑う。

「じゃろうな。じゃから責任者は二郎とする。二郎はあれで生真面目よ。足繁く通うじゃろうよ」
「……二郎子飼いの兵にするということか」
「うむ。麹義よ。貴様とて十常侍の遣り様に思う所はあるじゃろう?」

 先ほどまでの言い争いなぞ馴れ合いの極み。そう沮授をして思わせるほどに田豊は殺気、或いは覇気を放つ。

「無論その通り。なるほど。先に手を出したのは彼奴等だからな。誰に喧嘩を売ったかを思い知らせないといけないということか」

 これまでは洛陽から危険視されないように手元の即応戦力については縮小していたのだ。ぎりぎりの戦力で北方防衛を果たしていたというのに、だ。

「暢気な二郎が本気になっておる。なれば泥をかぶるのは我らが役目であろうさ」
「……そうだな、洛陽に引き籠る御器噛りどもには教育が必要だ」

 二人の台詞に沮授は震撼する。つまり、十常侍は虎の尾を踏んだのだ。だからこそ袁家の重鎮は正面切って十常侍と遣り合うと決定した。
そしてそのための兵力を増強するというのだ。そしてそれを率いるのは紀霊だということになる。それを若輩である自分の前で明らかにするのはやめてほしいものだが。知りたくはなかった。
 袁家は北方の護り手にして漢朝有数の名家。だが、その本質はあくまで武家である。その権威が毀損されたのであれば報復あるのみということなのであろう。馬家に続いて袁家も叛旗を翻すことになるのかもしれない。
 と、静かに決意を深めていた沮授ではあるが。

「それはそれとして、ね。予算編成がめんどくさくなったから適当に増員したって話も聞いたのだけれども?」
「……軍部の要望は丸呑みしたじゃろ?」
「そこはせめて否定くらいはしてほしかったわね」

 不都合な真実というものはどこにでもあるものである。キリリ、と痛みを腹部に感じながら沮授は貼りついた笑みを崩さない。彼ができる意趣返しとしたら、親友たる紀霊にこの胃痛をお裾分けすることくらいであろう。
 いずれにしろ、袁家の戦力増強は既定路線となったのだ。それがこの中華にどのような影響をもたらすか、沮授は思いを巡らすのだった。

はい、本日ここまですー

だもんで次回は孫家の人質きたるんるん

乙です。

>タックル→マウントorスリーパーホールド

ふむ。合理的(褒め)
つか原始的格闘しか無い時代だから、理論立てた 対人格闘術持ち込んだ事もチート?
つか二郎さん、無手格闘系やってたとか?

>曹操陣営の将軍

前世知識の罠ですな。二郎さん、ご用心。


…生け簀云々で、現在の南皮が巨大な人材生け簀?と考えたら、既に無意識下で曹操にダメージ与えまくっていると気付いた。あわわ…

乙~
そういえば二郎さんの示現流って薩摩以外では江戸中期にはほとんど姿消してるのだが、
島津の分家の系譜らしい+剣術道場の孫の御遣いは実際の術理を知ってる可能性があったり

セリフ見えないとのことでもうちょっとゆるめたのをうpしますた
835kb、1154×1600と重くでかいので注意
ttp://www1.axfc.net/u/3605281
(pは前回と同じ)

セリフは普通の鼻歌ですが某団体対策のため中文訳してるだけです
実際当時はこんな文法も言葉もありえんのですが(右から左表記は○)、まぁ外史時空ということで
風呂もどうかとは思ったんですが、二郎効果+本人に言い訳させて誤魔化しております

おお、田豊様だ。

投下ありがとうございます。


……何と申しますか、生え抜きの重臣を体現された方ですね。
容姿はきっと苦み走った 眼光鋭い御方?


……ただ、紀霊さんと誰かの子の前では凄まじい爺馬鹿になりそうな気も

乙でしたー
ところで>>まだ少林寺すらできてないですからね と言ってますが少林寺が建立したのっていつでしたっけ?まあ隋の時代に改名して少林寺になったそうですからどちらにしろあとか…ちなみに武術の名前を言うのでしたら少林寺拳法は日本発祥、中国発祥は少林拳です、その前身と言われるカラリパヤットが中国に伝わったのは達磨さんが少林寺に来たころだそうですのでどちらにしろこのころの中国は体系立った無手の武術はなさそうですが
無駄知識はこのへんにしまして

>>239
>>その声に流石の沮授が絶句する。
○その声に流石の沮授も絶句する。
ちなみに 流石の沮授もこれには苦笑いすら浮かべられない。 は問題ないです
>>ここまでギスギスとしたやり取りは 問題ないですが下では漢字を使われているので(袁家の重鎮は正面切って十常侍と遣り合うと)
○ここまでギスギスとした遣り取りは の方が良いと思います

いつもの添削をエラそうにしつつ細かいところもネチネチと、私三国志は横山さんくらいだから都市の名前とか分らないのでちょっと八つ当たり気味な自覚はあります

これは閑話というべきか裏話というべきか…凄まじい職と食によるインフレスパイラルの影響がこんな所にも、それにしても1万人を生産性のない兵士にできるって恐ろしいですねえ、実際には公共事業やったり広大な袁家領土の見回りにしたりするから無駄飯ぐらいにはならないんでしょうけど
…そうだよ、袁家の軍人って本気でやることいろいろあるんだよなあ、これだけの人員を無駄にせずに扱えそうなあたりが袁家の真の恐ろしさかも

乙ー

一万人の兵士に需要があるのがすごいところよな

ところでノクターンやるの?

まあ、『元気(余力)が あれば何でも出来る』
と某氏も言ってますし。

一万人の武装工兵いたら まあ袁領内の治安維持だのインフラ整備だのはかどりますわ。それ以前にそれだけの収入を齎した 二郎さんと母流龍九商会の手駒を与える事で裏の戦力を作ろうという思惑も見え隠れ。


さて、孫家からは誰が二郎さん食べに(意味深)来るのかな?

本日はサッカー見ます

>>241
>ふむ。合理的(褒め)
基本ですよねw

>つか原始的格闘しか無い時代だから、理論立てた 対人格闘術持ち込んだ事もチート?
チートです。が、派手さはないです

>つか二郎さん、無手格闘系やってたとか?
世界最高峰のガチ試合をスロー再生付きで見るって、見稽古としては破格すぎると思いますね……
二郎ちゃんが経験あるのは示現流だけです

>既に無意識下で曹操にダメージ与えまくっていると気付いた。あわわ…
被害者の会が結成されたら会長はきっと曹操w

>>242
>島津の分家の系譜らしい+剣術道場の孫の御遣いは実際の術理を知ってる可能性があったり
原作で明言されてないので、なんとも
よそ様の二次創作ではそう言う解釈をするケースもありますが・・・

>もうちょっとゆるめたのをうpしますた
保存しました。保存しました。保存しました。
くそ!肝心なとこがみえないぜ!だがそれがいい!畜生!なんて時代だ(錯乱)
いや、ほんとありがとうございまsる

>セリフは普通の鼻歌ですが某団体対策のため中文訳してるだけです
某団体は怖いですからね
気を付けねば(戒め)

>>244
>おお、田豊様だ。
田豊師匠のお話でした。

>……何と申しますか、生え抜きの重臣を体現された方ですね。
なお、生身で匈奴と渡り合えちゃいます

>容姿はきっと苦み走った 眼光鋭い御方?
そんな感じそんな感じ。

>……ただ、紀霊さんと誰かの子の前では凄まじい爺馬鹿になりそうな気も
そらもうデレデレよ

>>245
>どちらにしろこのころの中国は体系立った無手の武術はなさそうですが
ローマだったらレスリングがあったからここまで無手で無双できなかったかもしれない
でも創成期だからワンチャン?……

まあ、緻密な歴史考察とかはすると一ノ瀬の頭がフットーするのでふわっとした感じでオナシャス

>私三国志は横山さんくらいだから都市の名前とか分らないのでちょっと八つ当たり気味な自覚はあります
ある意味ネタバレになっちゃうのですが、蒼天航路とかでも出てきます。襄平ですな。

>これは閑話というべきか裏話というべきか…
幕裏扱いですかね。

>それにしても1万人を生産性のない兵士にできるって恐ろしいですねえ
人口流入が激しいですからね。治安要員も必要っちゃ必要なのですよ(欧州を見ながら)
江南からの流入人員が一番ぎらぎらしている。となればそこを調練するには江南出身者がうってつけ、ですよねと

>>246
>一万人の兵士に需要があるのがすごいところよな
すごいんですよ。なお実務を考えると軽く死ねるけどそれをさらっと何とかしてしまう官僚たちもすごいんです

>ところでノクターンやるの?
はい

>>247
>まあ、『元気(余力)が あれば何でも出来る』
誰のエロをやりましょうかねっと

>一万人の武装工兵いたら まあ袁領内の治安維持だのインフラ整備だのはかどりますわ。
そこに気づくとは……やはり天才か……

>それ以前にそれだけの収入を齎した 二郎さんと母流龍九商会の手駒を与える事で裏の戦力を作ろうという思惑も見え隠れ。
こら、ネタバレは駄目って言ったでしょ!

>さて、孫家からは誰が二郎さん食べに(意味深)来るのかな?
多分予想通りの面子です

今月中にノクターンにエロ投下しますが

・梁剛
・陳蘭
・張勲

現在この三者についてアクセスできます
誰との濡れ場を見たいですか?
あ、こっちはR-18付けてないからいきなりノクターンにやりまs

無事転勤できたならばノクターンじゃ
転勤して関西復帰したいのう

がんばる

「す、すごい……。なんて高さ……。城壁があんなに高いなんて……」
「城壁で一々驚いてたら身が持たないよ?町はもっと凄いんだからねー」

 呆然とした孫権の声に引率役の魯粛が笑いかける。それを苦笑交じりに見守る黄蓋。まあ、黄蓋にしたって初見の時には似たり寄ったりの反応であったのだが。しかし前回と違って今回は長い滞在になりそうだ。

「これだけの城壁を造るだけでも袁家の凄さが分かるわね……」

 南皮の入り口にも至っていないというのに萎縮してもらっては困るのだがなあ、と黄蓋は思う。人質とはいえ、孫家を背負って来ているのだ。……とは言えそれを言うのは酷というものだろう。内心そんなことを思いながら声をかける。

「権殿、今からそんなに緊張していては倒れてしまいますぞ?」
「わ、分かってるわよ!」
「穏を見習いなされ。余裕綽々ですぞ?」
「あれはちょっと違うと思うのだけれども……」

 南皮へ送られる人質については割とすんなり決まった。まずは黄蓋である。袁家――紀霊と面識があるのは彼女のみであるからして、これはいの一番に決まった。
 周辺豪族への抑え、それに軍を率いるにしても孫策が残ればまあ大過ない。暴走のきらいもあるが周瑜があればそれもある程度は制御できる。また、周瑜をもってしても制御できない事態であればそれこそ孫策の持つ、孫家独特の勘が動いた時であろう。
 次に決まったのが孫権である。流石に当主である孫策殿を出すわけにはいかない。そういう意味では人質としての価値は孫策に次ぐのだからして。甘寧は喫緊の課題である江賊対策での主戦力であるし、周泰は周辺への探りとして江南を飛び回っている。消去法で陸遜となったのである。孫権と同じく、孫家の次代を担う者として袁家から学ぶべきことも多いであろうという期待も勿論大きい。
 人質、という名目であるが孫家の十年先を見れば中々に得難い機会でもあるのだ。それは同時に十年先を思う余裕が生じたおかげでもある。そう思い、終始無言であった陸遜に目を向けるのだが。

「ほれ、穏、しっかりせんかい」
「し、失礼しましたー」

 謝罪の言葉も上滑り気味。吐息は熱く、頬は紅潮。陶然とした表情はとろりと揺れる。悪癖が出たか?と黄蓋は内心頭を抱える。……陸遜は活字に没頭すると困った発作――発情というのが一番相応しい――を発症する。てっきりそれは活字だけのことかと思ったが、現状を見るに知的好奇心が満たされるとそれが起きるのか……。これは流石に想定外である。

「ほいほーい、んじゃ、付いてきてねー。
 商会の事務所に紀霊さんがいるはずだよー」

 そこらへんを華麗にスルーな魯粛の気遣いに黄蓋は頭が下がる思いである。やれやれと頭を一つ振り、久方ぶりに南皮の城門を潜るのであった。




 思えば、第一印象は良くなかった。いや、最悪と言ってもいい。

「おー、黄蓋、久しぶりー。
 ……相変わらず、扇情的な装いだな。けしからん、実にけしからん。
 目の毒、目の毒」

 にへら、と、だらしない顔でとんでもないことを言ったのだ。その男は。

「おぬしも変わらんのう。そこまであからさまじゃと怒る気もせんわ」

 答える黄蓋は落ち着いたものである。慣れっこと言わんばかりに軽くあしらい、どうだとばかりに胸を張る。それに見事につられて、男の視線は黄蓋の上半身の一部分……というより胸に釘付けだった。そしてその胸部は言うまでもなく豊満であった。
 にやにや、とだらしなく笑いながら次に陸遜に視線を移して……これまた胸を凝視している。

「随分ご執心のようじゃがな。貴殿が注目する乳の持ち主について紹介くらいはさせてもらってもいいと思うんじゃが」
「おうよ、どんとこい」
「わしはまあ、今さらじゃからいいとして、こちらが孫家二の姫、孫権殿。
 貴殿が助平な視線を向けておったのが陸遜じゃ」

 その声に男――この男が紀霊であるらしい――の目が一瞬鋭く光る。そしてじろり、と値踏みするような視線でこちらを見やる。品定めと言わんばかりの視線に精一杯胸を張り、笑みを浮かべる。
 上から下まで舐め回すような視線をくれて、やはり胸の辺りで視線が……止まらない?!なんだろう。ものすごく腹が立つ。ものすごく馬鹿にされた気がする。この男は敵だ。そう、全身に刻み込まれるくらいの屈辱である。

「孫権です。祭や魯粛から色々噂はお聞きしておりますわ。よろしくお願いしますね」

 辛うじて無礼にならない程度に挨拶をする。声が震えていなかったろうか。いくら気に食わないとはいえ、この男の胸先三寸で孫家の命運は左右されてしまうのだ。粗相をするわけにはいかない。
 
「おう、紀霊だ。よろしくな」

 にか、と笑いかけてくる。普通に好感を持てる笑みなのだろうが、さっきまでの印象が最悪だ。こちらこそ、と愛想笑いをするのが孫権には精一杯だった。

「陸遜ですー。あの、農徳新書、読ませていただきましたー」

 珍しく陸遜が自分から話し出している。ああ、そういえばあの書の著者だったか、と納得する。陸遜は随分とあの書に執心だったからして。……正直、著者本人とその著作の内容のあまりのギャップに目眩すら覚える孫権である。

「あららー、ご機嫌斜めみたいだねえ」

 魯粛の声に肝が冷える。いけない、態度が露骨であったかと。

「そんなことはないわよ。ちょっと緊張しているだけ」
「ふふーん?まあ、そういうことにしておこっか」

 にんまりと笑う魯粛。この娘も浅いようで読めない。見透かされているような、試されているような視線に居心地の悪さを覚える。何を言っても曖昧模糊ながらも当意即妙。このような傑物が留守にしても構わないほどに母流龍九商会は充実している。虞翻、顧雍などの識見には舌を巻いたものだ。
 まあ、いい。所詮は人質の身なのだ。だが、孫権は勿論それだけで済ます気はない。孫家の次代を支える者としての覚悟は完了している。袁家が繁栄しているならそこから学ぶべきことはたくさんあるはずだ。けして、遊びに来たのではない。
 私は孫家を背負って。孫家の代表としてここにいるんだ。決意も新たに紀霊を見やる。のだが。
 黄蓋と陸遜に挟まれて鼻の下を伸ばす彼に、一体どういう表情をしたらよかったのだろうか。まあ、少なくとも舌打ちをしてしまったのはまずかったなあ、と思うのである。多分彼には聞こえてなかったとは思うのだが。

凡人と人質

本日ここまですー

まあ、蓮華の魅力は尻だからね、しょうがないね
あと、めんどくさいとこも好きです

乙です。


消去法選択ならこうなりますね。
ただし、先を見据えた本気が孫家にはありますね 黒幕は周楡さん?

陸遜さんは「呉の放火魔」が…このコピー知った時本人には申し訳ないですが、爆笑。


……さて、そろそろ陳蘭さん辺りに〆て貰わないと。紀霊さん。
初対面の女性をジロジロなんてどこの狒々爺すか 陳蘭さんにしっかり絞って貰いなさい(意味深)

乙でしたー
>>253
>>私は孫家を背負って。孫家の代表としてここにいるんだ。決意も新たに紀霊を見やる。のだが。 ちょっと。が多い気がしますまあ彼女の覚悟とか緊張を表してるともいえるのでこれはこれでOKですね
○私は孫家を背負って、孫家の代表としてここにいるんだ。決意も新たに紀霊を見やる。のだが。 …ふむ文章としてはこの方が読みやすいけど彼女の心境としては一ノ瀬さんの方がいいかも

お互いに利用価値があれば裏切りづらいし信用もできるわけですが…とはいえどう見ても袁家が出しすぎなんだよなあ、神の視点(未来知識)無いとそこまで肩入れする理由が分からないという。これが袁家、孫家の方々にどう取られるか…二郎ちゃんの親友二人は信頼しつつもいざというときの為に準備してることは想像に難くない

>>257


袁家が出すというよりあくまでも母流龍九商会の出資という体を取ってると想像。
で必要な物資を袁家が払い下げなら単なる御用商への行動の一環だから、どこからつつかれても「言いがかり」と反論可能

孫家にしたら今はとにかく復興支援欲しい。裏がどうあれ袁家の大商人が 支援してくれるなら受けざるを得ないし、担保としての人質も商会として取る訳で直接袁家が取る訳でもなさそうだし。


つか張勲(七乃)さん辺りはこの程度織り込んでいるだろうし、田豊様なら袁家としての言いがかり反論を部下に作らせているだろう。


張紘さん達も最悪を想定して水面下で動いているのは間違いないでしょう 二郎さんがリスクヘッジを仕込んでいない訳ないし。


ただ、担保に人取ってどうするんだろ。大規模破綻なら彼女達個人の価値で釣り合わないし、政略婚目当てなら黙っていない方が一人。

>>256
>先を見据えた本気が孫家にはありますね 黒幕は周楡さん?
はい。

>陸遜さんは「呉の放火魔」が…このコピー知った時本人には申し訳ないですが、爆笑。
爆笑三国志は、名著だったと思っております
赤兎馬ロボ説とか超笑ったw

>初対面の女性をジロジロなんてどこの狒々爺すか
いやあ、あんなに扇情的な衣装を目にしたらそら凝視する。誰だって凝視する。孫家未来に生きすぎだと思いますw


>>257
いつもすまないねえ(ほろり)

>どう見ても袁家が出しすぎなんだよなあ、神の視点(未来知識)無いとそこまで肩入れする理由が分からないという。
まあねえ。袁術配下であることを考えれば未来知識さえあれば納得なのではありますがw
現在の欧州事情に近いものがあります
流民の過度の流入を防ぎたいなら、シリアの復興と安定が一番の近道という感じ

>>258
>袁家が出すというよりあくまでも母流龍九商会の出資という体を取ってると想像。で必要な物資を袁家が払い下げなら単なる御用商への行動の一環だから、どこからつつかれても「言いがかり」と反論可能
>孫家にしたら今はとにかく復興支援欲しい。裏がどうあれ袁家の大商人が 支援してくれるなら受けざるを得ないし、担保としての人質も商会として取る訳で直接袁家が取る訳でもなさそうだし。
ほぼ満点です。解説ありがとうございました。

>張紘さん達も最悪を想定して
参考までに張紘あたりが想定している最悪とかを考察していただけるとwktkでございます

>ただ、担保に人取ってどうするんだろ。
孫家には他に出せるものがないという哀しい台所事情
孫家精一杯の誠意だが一般的には「フーン」で済まされる模様
なお二郎ちゃん、面子の名前見るだけでご満悦
苦肉の策、碧眼児、放火魔という曹操と劉備という化け物を撃退した戦闘民族のメイン戦力(なお全員美女)

本日はサッカー見るので投下はナッシン

次のエピソードは文醜顔良の二枚看板予定です
孫家ご一行は暫くお休みかなー

エロシーンについては無事転勤が決まったらノクターンします

>張紘さんが想定する最悪


商売だけならまず孫家の夜逃げとそれによる治安崩壊。

まあ孫家に踏み倒された負債は特損で計上するし 魯粛さん辺りが管財人で再建に当たったり回収したりで何とかするでしょう。

問題は商売出来ない位治安崩壊したら回収以前の話で。最も、呉の四姓(朱、顧、張、陸)と結べばある程度の治安維持は 出来るかな?


ここに政治が絡んだ場合 特に十常侍周辺から


「孫家と袁家が商人を使って通じている。怪しい」


と騒がれたら、さすがに面倒だし商会や紀霊さんを切り捨てる可能性もある。


あくまでも憶測ですが、孫家からは「水害の窮状を商人により知った袁家の厚意」
で支援して貰っているという申し立て。
袁家からは「揚州の窮状を商人が知らせた事で義により」商会に支援を命じたという申し立て。

この2つを取ろうと奔走しているんじゃないかなと。


でも張紘さんは紀霊さんの命を第一に考えるだろうから、最終手段は商会から紀霊さんを完全に切り離して偽装解散までするかも。

その前に袁逢様や田豊様がロビー活動しそうな。 租授さんも必死で死角無しの反論書を書き上げそう。


…あ。孫家の人質の必要 解ったわ。
夜逃げした時に囮にしたら捕まるかも。
後彼女達に再建の矢面立たせれば良いのか

やったぜ(五輪)

>>261
考察ありがとうございました。
あれこれ語りたくもあるのですが、ネタバレもいかんだろうということで、作中でご確認してくださいませ

ものっそい参考になりました、ほんまありがとうございました
ただ、袁家は二郎ちゃん切り捨て路線は(今のところ)ないですとだけ

そりゃあ袁家上層部は個人としては二郎ちゃん切り捨てはあり得ないわけだし
公人としてみても切り捨てて得られるもの失うもの、切り捨てないことで得られるもの失わないもの…あとはこの先の展望諸々を加えれば
あれ?袁家が次郎ちゃんを切り捨てる理由がでっち上げれないぞ?のレベルですからよっぽどのバカが早まった真似をしない限りは袁家としては二郎ちゃん金のなる木として囲い込むよね
強いて言うなら上の方で顔良と張勲が相談してた力が一か所に集まりすぎることかな

>>262>>263

袁家、いや袁家中枢や主要家臣(田豊様、祖授さん、文醜さん、顔良さん 等)は二郎さんと紀家を切り捨てる事は無いでしょう。


が、専制君主制である以上「勅により」今回の支援に対する審問あれば二郎さんに僻みや嫉妬持ってる者が暗躍しかねない
更に支援の担当が母流龍九商会であり設立主体が二郎さんである以上、理不尽な「勅」の火の粉が降らないとも云えない。

張紘さんは「可能性」としてここまで考えて、で、二郎さん大事で水面下で商会と自らの情報網とで洛陽の動きを観測しつつ自らのコネで袁家に接触。


あくまでも憶測です。つか一介の高卒が天才の考え判んないよ

>>263
>あれ?袁家が次郎ちゃんを切り捨てる理由がでっち上げれないぞ?
まあそうなんですが

>よっぽどのバカが早まった真似をしない限りは
国会中継見てたらw ほんとどうしようもねえなとw

>>264
>が、専制君主制である以上「勅により」今回の支援に対する審問あれば二郎さんに僻みや嫉妬持ってる者が暗躍しかねない
>更に支援の担当が母流龍九商会であり設立主体が二郎さんである以上、理不尽な「勅」の火の粉が降らないとも云えない。
参考になります
どうしても一人であれこれ考えておりますので、すごくありがたいのですよ
なるほどなあと思いながらご意見を頂いております

お礼代わりに袁家の内情をちょっと公開しちゃいましょう
色々と火種も地雷もある袁家ですが、七乃さんが知らん間に消化、地雷撤去をしてくれております
斗詩とのやりとりもその一環だったりします

あれこれと有象無象が蠢動しますが、残念そこは絡新婦の守備範囲だ!出直して来るんだな状態でありまする
二郎ちゃんはもっと七乃さんに媚びへつらうべきそうすべきw

まあ、そんなかんじです(どんなかんじだ)

七乃VS華琳様とか誰か書いてくれないかなあとか思ったり

この前はいろいろとすみませんでした
ちび麗羽様がご入り用というのを思い出しなぜかSDを描きたくなりお詫び代わりに描いてみましたww
まだ線画ですがサンプルとしてどうぞ
http://www1.axfc.net/u/3608775

他のSDも描いたけど最終パーティの片方の面子でまたネタバレだからどうしよう

>>266
ファー?!
なにこの麗羽様超可愛いんだけど!可愛いんだけど!
絵心ってやつは残酷な才能なんだぜ……

うわーうわーありがとうございますー
SDキャラ素敵すぎますわー
助さん格さんばりに斗詩と猪々子を従える感じで高笑いしてそうですね!

最終パーティの面子ネタバレ?
つまりさっさと続きを書けと言うことですねがんばりますw

がんばりっす!

褒められてうれしいのでおそらくネタバレにならない助さん格さん追加
http://www1.axfc.net/u/3608810.png
http://www1.axfc.net/u/3608811.png

実は俺には絵心は全くないっ!
まぁあんまり似てないけどきっと愛だと思う、多分

成し遂げたな(五輪)
日韓戦楽しみやわぁ

リライト前のスレ民に漂ってた七乃を敵に回すとどうなるのかという恐怖感(震え

そういや七乃さん今何やってんだろ?
消化もとい消火やら地雷撤去やら暗部仕事を地味にこなしているのは想定出来るが、袁術にろくでもない事吹き込む子育てしてる可能性の方が有り過ぎて怖い。

>>268
これはいい助さん格さん
二郎ちゃんはうっかり枠やな(確信)

ありがたく保存しました

>>269
>成し遂げたな(五輪)
やったぜ

>>270
七乃さんの出番はもちっと後かな
まあ、ご想像通りじゃないかなあとおもったりしますw

「アニキーアニキー!」

今日も今日とて空は青く、透きとおっている。その空気を震わせる声が響く。それが美少女の叫び声、なおかつ俺を呼ぶ声であればいかほどに嬉しいことだろう。言わずもがな、脳筋美少女こと猪々子の声である。
俺を求める声は道を失った幼子のように響き、庇護欲をそそる。あくまで快活な声は彼女の溌剌とした魅力を引き立てていた。などと現実逃避をしていたのだが。

「アニキー!」
「近い!顔が近い!」

この娘はどうして警戒感がないのかねえ。がぶり寄りと言っていいくらい近いっつうの。

「聞いてよアニキー!」
「いや、聞くから聞くし聞かせてもらうから。だから顔が近いって!」

まあ、どうせ聞きゃあしねえんだけどね。そしてどうせ仕事がおわんねえとか仕事が大変とかそういうこったろう。

「仕事が終わんないよー」
「予想通りか!意外性仕事しろよ!」

猪々子は不思議そうな顔をしてやがるが……。まあいいや。

「猪々子が仕事に追われて俺か斗詩のとこに泣きつくのはいつものことだしな」
「うん、頼りにしてる!」
「いや、少しは頑張れよ!」
「頑張った結果がこの有様だよ!」
「お、おう……」

頼った結果がそれならば仕方ないな。いつもの猪々子だ。周囲の文官もくすくす笑いながらも仕事の手を止めない。いわゆる日常茶飯事というやつだ。

「ほんで、今日はどうした?始末書の書き方か?それとも財布でも落としたか?
 まさか、うっかりねーちゃんの秘蔵の酒を呑んだとかか?それはちょっと困るな」

 師匠は秘蔵なぞせずにあるだけ呑んでしまうしな。

「……アニキがアタイをどう思ってるか分かった気がするよ」
「なんだ、違うのか。ならどうにかなるぞ」
「うん、新兵の編成が終わんない」
「それ結構前の案件だぞ……」

 先日の袁家軍大増員である。表向きには一万の増員という大本営発表だったのだが、実際はそれどころではないのである。俺の指揮する紀家軍だけで一万+αの増員である。まあ、そのおかげで俺個人の裁量で動かす兵員についても算段がついたのはありがたいところ。遊撃がお役目の紀家軍は必要最低限の兵員で回してたからなー。なお、+αについてはこっそりと実験部隊的なモノを立ち上げているのは内緒である。
文家と顔家についてもそれなりに増員されたらしいと風の噂で聞いた。いや、七乃が言ってた。しかも北方から精鋭を引き抜きつつあるというのだ。常備軍そんなに備えてどうすんの。いやマジで。
 実際びっくりしたんだが、ねーちゃん曰く「黒山賊への備えだ」で終わった。妥当な理由だけど何か裏にありそうな気がするのは勘ぐりすぎだろうか。
「だってよー、一人動かしたらそこの穴埋めに一人動かさないといけないしよー。
 更にその穴埋めに一人動かしたらまた一人動かさないといけないじゃんかー」
「いや、人事ってそういうもんだろ」
「無理。アタイには無理。助けてよアニキー」

そう言って俺に抱き付いてくる猪々子。この娘はもうちょっとあれだな。慎みとか持ったほうがいい。俺としては無防備宣言状態な猪々子に、それはアカンやろと言いたいのですよ。

「あー、分かった分かった。手伝ってやるからとりあえず離れろ」
「アニキー!ありがとー!やっぱいざっていうときは頼りになるなー!」
「おはようからおやすみまで、猪々子を見守ってるしな」
「やったぜ!アニキが一緒にいてくれるなら、怖いものなんてない!」

 悲報。猪々子にボケてもツッコミは期待できない模様。いや、知ってたけどさあ。こういう時にはやはり斗詩の常識力が頼りになるのだなあと認識を新たにする。


「とは言え、文家の内実はわかんねえからな。誰かできる奴を派遣するわ。
 んー、これを機にむしろ四家の人材交流くらいした方がいいのかもなあ」

 統合整備計画的な感じでマニュアルの整備とかした方がいいのかなあ。めんどくさそうだけれども。連携とか考えたら必要なんだろうなあ……。うし、やるか。

「よくわかんないけど、アニキに賛成!」
「いや、もう少し考えようよ」
「考えた結果、アニキの意見に従うー!」
「いや、明らかに考えてねえだろ。文家ってのは袁家を支える武家の筆頭なんだからさ、もうちょっと考えようよ」
「えー、正直向いてないしー」
「……それは否定でけんなあ」

 正直、大本営であれこれ考えているよりも、単身で前線に立って脊髄反射で動いてる方が向いてる気はするんだよね。トップもそうだし部下もそんな感じだしね。
 じゃれついてくる猪々子の口に菓子を押し込みつつ引き剥がす。少し不満そうに、だが無言で菓子を咀嚼している。もっきゅもきゅという擬音が似つかわしい。

「アニキはアタイにとりあえずお菓子を食わせとけばいいと思ってる気がする」
「いやいや、慣れない頭脳労働した猪々子に対する正当な報酬だ。ほれ食えやれ食え」
「いや、もらうけどよー」

 もっきゅもっきゅと更にかぶりつく猪々子。これはほっこり案件ですわ。飼育係とか餌付けとかいう言葉が浮かんだが気のせいだろう。

「しかし、いつもなら斗詩に泣き付くだろうに、珍しいな」
「うーん、最近斗詩がふさぎこんでてさー。ちょっと声かけづらいんだよ。
 アニキからもなんか言ってやってよー」
「猪々子が言って駄目なら俺が何言っても駄目だろ」
「え、それ本気で言ってんの?」

 それはないわーといった風に俺を見やる。解せぬ案件ですねこれは。

「……まあ、いいや。気が向いたら斗詩に声かけてあげてよ」
「おうよ」

 まあ、斗詩は悩みがあっても一人で抱え込んでしまうとこがあるかんなー。そこはフォローしたげないといかんだろう。愚痴を聞くくらいはできるだろうしな。
 そういやあ、最近斗詩と会ってないなあ。猪々子が来る時は三回に一回は斗詩も一緒に遊びに来てたんだが。
 猪々子の持ってきた書類に目を通しながら俺は思いをめぐらすのだった。

本日ここまですー
次回は二枚看板の片割れのフォロー

題名募集中
凡人と○○

何もなければ「凡人と二枚看板」

乙したー

オリキャラ勢もっと見たいわぁ

乙です。

>意外性仕事しろ

???
赤ペン先生ヘルプ!


タイトル案

『凡人と懸案』
……(頭抱え)
こんなのでも良いですか?(涙目で恐る恐る)

乙でしたー
はいはい赤ペン先生(自称)ですよー
>>272
>>頼った結果がそれならば仕方ないな。 上の会話からすると
○頑張った結果がそれならば仕方ないな。 ですかね もしくは 結果的に頼ったならば仕方ないな。 …こっちは無いかな

アホのこは可愛いですねえ(ほっこり)それにしても1万人増員パネエ!が次郎ちゃん所だけでそれ以上とは…4家合わせて何人増員したんだか
土から生えてくるわけでもあるまいし引き抜かれた北方涙目、そしてどれだけの袁領地農家次男三男が集まったのか
農民を常備兵にしてもやっていける…それが万単位とか脅威ですよ

リライト版は溜まってから読もうと思ってたら結構増えててびっくり。
233の陳蘭可愛い。リライト前から風や韓浩と1、2を争って好きなキャラですよ〜(中後半影が薄くなったのは…)

あ、t抜くの忘れてましたすみません
今回は間違えないように……、ほい(ネタバレ注意)
ttp://www1.axfc.net/u/3610354
P:旧版で韓浩と旧知の仲であり、陳蘭の姉でもあった人物を半角英数7文字で

今の話題的にもちょうどいい、かな?

>>284
また間違えてましたがもう出がらしも出ないんで勘弁して下さい

>>1
まだ募集中だったら、「凡人と宵の風」などどうだろうか

>>276
おっすおす
オリキャラと括らずに個人名の方が何かと捗りますのですだよ?

>>277
>こんなのでも良いですか?(涙目で恐る恐る)
あると思います!
ガンガンご意見ご希望はありがたく承りまくりですぜ!

>>279
赤ペン先生!赤ペン先生じゃないか!
いつもありがとうですよ。もうコテ赤ペン先生でいいんじゃないかな(適当)

>アホのこは可愛いですねえ
癒し系です(断言)

>引き抜かれた北方涙目
その穴埋めに何をするかというと、地方軍閥の推挙でry

>農民を常備兵にしてもやっていける…それが万単位とか脅威ですよ
さて、誰にとって脅威なのですかねえw

>>280
>リライト版は溜まってから読もうと思ってたら結構増えててびっくり。
ちまちま書いております
ご贔屓にオナシャス。
韓浩はグインのリギアばりに後半からが本領発揮のキャラだと思います(適当)

>>282
アバー!ナンデ?SDキャラナンデ?
いや、マジ感謝っす。ネタバレが約1名すごいけど。
ちなみにの第一師団司令官の表情が一番ぐっときました。かわええっす。
保存しました。保存しました。

マスクデータになってる能力値とかスキルとか所有アイテム効果とか、オープンにした方がいいのだろうか悩んでおります
二郎ちゃんの三尖刀とかはオープンにした方がいい気もするのですがね・・・


>>285
>、「凡人と宵の風」
めっちゃ詩的やん。素晴らしいやん。
うむ。ここで使わなくてもどっかで使おうと思いました

「困ります!」
「俺は一向に困らんがな。そこをどけよ」
「いえ、困りますから!」
「それじゃ待たせてもらうとするかな」

 さて、斗詩である。猪々子があれこれ言ってたくらいだからな。大口叩いた手前フォローをせんといかんだろう。思い立ったが吉日とばかりに俺は顔家を訪問していた。こう、こっそりと忍び込んでやろうかとも思ったのだが流石に自重した。
 時既に夜半。それをしたらまるで夜這いになっちまうからして。世間体を考えて裏口からの侵入を試みたのだが、使用人に留め置きされている俺なのである。うむ、不審人物全開である。やはりこっそりと忍び込んだ方がよかったか?
 まあ、どっちにしろ一歩間違えれば醜聞(スキャンダル)となりかねないのではあるがね。どうせ俺が何やかやとやっちまうのは今に始まったことではないし、顔家の家人もわきまえているだろうから漏れることはないだろう。きっと、多分。メイビー。
 何故に訪問がこの時刻かというと、一応斗詩の素行聞き取りをそれとなくやってたからだ。
 どうやら、斗詩が元気がないというのは本当らしい。精力的に仕事はこなしているものの、表情が冴えない、憂いを帯びているなど証言多数だった。やっぱり何か抱え込んでるんだろうな。いや、体調不良であるという線もなきにしもあらずではあるのだが。

「やだ、二郎さん……ほんとにいらっしゃったのですか」

 常よりもカジュアルで……いけませんよそんなに太腿とか二の腕露出するような普段着。まあ、俺にとっては目の保養ではあるのだけんども。けしからん。実にけしからん。こうして改めて見ると、だ。斗詩のスタイルは端的に言って、立派に育ったなあ。などと思う俺なのである。

「おう、いい酒手に入ったからさ、一緒に飲もうかなって、さ」
「え?えと、ええと。その、……はい」

 こくりと頷く斗詩に安心する。いや、これで嫌ですとか言われたら俺は間抜けの塊であるからして。

「ここじゃ、なんなのでこちらにどうぞ……」

 通されたのは、斗詩の私室であった。というか、寝室であった。いや、それは流石にまずくね?

「いやいやいや、ここは流石にまずいだろうよ」
「こんな時刻に女の子を訪ねておいてそれはないなあ、って思うんです」

 にこり、と小悪魔的な笑みを斗詩が浮かべる。いや、そんな表情見たことなかったんですけど。こ、これがギャップ萌えという奴か?いやいやいやいや。

「だって二郎さん、深酒になったらそこらで寝ちゃうじゃないですか。だったら最初からそのつもりの方が楽しく呑めるでしょ?」

 くすくす、と笑む斗詩は心底楽しそうで、来た甲斐があったというものである。うむ。手酌酒も悪くないけど、美少女のお酌が格別美味なのは確定的に明らか。数少ない世界の真理の一つなのである。

「はぁ……」

 溜め息を一つ吐いて、寝台に横たわる。全身を覆う疲労感に徒労感。それでも、眠れない。しょうがないから仕事に逃避している。没頭するあまり、気がつくと向こう一週間はなにもしなくてもよくなった。
 でも、何かしていないと、落ち着かない。私室に居たって、やることがあるわけでもない。阿蘇阿蘇の最新号を買ったはいいけど、内容なんて一つも頭に入ってこない。

 張勲との邂逅、会談。それが顔良に及ぼした影響は大きい。動けないのだ。そして誰に相談することもできない。できるはずもない。もはや自分がどうしたいのかすら分からなくなってしまっている。

「はあ……」

 のそり、と起き上がり、引き出しから紙の束を取り出す。

「二郎さん……」

 彼の絵姿である。大切に、慎重に扱っているのである。だが幾度も手に取っているからだろう。紙が傷んできている、色も褪せてきている。それでも、彼女の拠り所はこれしかない。ないのだ。
 なんなんだろう。自分は何をしているんだろう。何をするべきなんだろう。わからない。わからない。
 不意に張勲の顔が浮かぶ。

「ずるい」

 こんなにも、自分は紀霊が好きなのに。あんなにも小さい時から慕っていたのに。あの人は横から現れてあっさりと彼の横でにこにこ笑っている。そんなのって、ない。
 自分の方が彼のことをたくさん知ってる。たくさん想ってる。絶対に。
 ずきずき、と胸が痛む。そんな時だった。家人から、来客が告げられたのは。正直、今は誰にも会いたくない。そんな気分だったのだが。
 来客の名前を聞いた顔良は飛び起きて身づくろいを始める。これは夢じゃないだろうかとばかりに、可及的速やかに。

「おう、いい酒手に入ったからさ、一緒に飲もうぜ」

 爽やかで、なおかつ武将に必須な野性味を残した笑みに顔良は心が蕩けそうになるのを堪える。いや、その心根は既に蕩けきっていたのかもしれないが。

だが、それどころじゃない。駄目だ。髪はぼさぼさだし、最近よく眠れてないからお肌だって万全じゃないのだ。ひょっとしたら目の下に隈だってできてるかもしれない。最低限のお化粧くらいしてくればよかったと今更ながら後悔しきりな顔良である。

 手酌で杯を進めようとしたのを制止して酌をする。ちら、と見ると嬉しそうな笑みが胸を満たす。それまでの、ちりちりとした痛みを覆ってなお甘く。更に、広がる。満たされる。
 そして、至る。如何にこの思いが強くて深いか、を理解する。だって。一緒にいてくれるだけで、こんなにも嬉しい。
 とりとめのない話、どうでもいい話。彼が紡ぐ言の葉が、どうしようもなく、愛しい。自分を見てくれるのが、嬉しい。
 だから、なんとなく来訪の意図も察せられる。その、至った結論が嬉しく、少しさびしい。だからこれはお酒のせいなのだ。そう、思うことにする。

「なーんか、悩んでるんだろ?ほれ、俺に言ってごらん?」

 その、言葉に甘えることにする。だっていつだって、そうだったのだ。袁紹や文醜ばかりが彼に遊んでもらって。でも、もっと構ってほしいなんて言えなくて。ただ見つめることしかできなくても。
 彼はいつだって私を見てくれていた。ためらう自分を輪の中に引きずり込んでくれたのだ。
 そう、いつだって彼は、自分を見てくれていたのだ。――何か、心が軽くなった気がする。一体自分は何を悩んでいたんだろう、と。

「ふふ、ありがとうございます。
 お言葉に甘えちゃいますね」
「おうよ。ない頭搾ってやろうじゃないの」

 そんな、なんでもないやり取りが、本当に嬉しい。だから甘えよう。彼を困らせてやろう。……めんどくさいと思われないくらいの範囲で。

「えっと、張勲さんからお話を頂いたんです。
 何かしら、思うところがあるらしくて。
 でも、私はそれに納得はできないんです。
 なのに、張勲さんの描く絵図は私も、その、いいなあ、なんて思っちゃうんです」

 支離滅裂だな、と内心苦笑する。それでも一生懸命に聞いてくれているのが、嬉しい。

「あの、やり方とかはどうかな、と思うんです。
 でも、反対する理由もなくって。
 私はどうしたらいいのかなって」

 相当ぼかしている……というか、ぼかし過ぎて何を言っているのか分からないだろう。大体口にしている自分だって何が言いたいか分からなくなってきているのだ。

「んー、そうだなあ。正直、よくわかんねえけどさ。
 多分、七乃は斗詩に協力してほしいって思ってるんじゃねえかな」
「え?」

 それは思いもよらない言葉だった。 

 言葉を選びながら、だろう。慎重に、それでも誠実に顔良に向かい合ってくれている。それが嬉しい。

「七乃もなあ。素直にこうしたいから助けて、って言えない女だからなあ。
 正直、斗詩の影響力が大きいからそういう話を持っていったと思うんだわ」
「私の、影響力、ですか」
「おう、基本的にあいつは自分の計画とか思惑は漏らさないしな。
 それをあえて斗詩に言ったってことは、斗詩の動き次第ではぶっ壊れると思ったんじゃねえかな」

 それは思ってもみなかったことである。だが、そう思うと色々納得がいく。つまり、張勲が打ち込んだ楔はたったの一つ。本当に困ることはその一つ。後はどうなってもよかったのだろう。
 つまり、自分の抜け駆けを恐れていたのだ。そしてそれを見事に封殺してのけたのだ。
 うん、お見事としか言えないな、と素直に思える。へな、と身体から力が抜ける。

「お、おい?斗詩?」

 慌てたように自分を気遣ってくれるのが、嬉しい。その気持ちが溢れる。零れる。漏れる。涙が、嗚咽が。そして、思いが決壊する。

「よしよし。斗詩は泣き虫だなあ。
 ちっちゃい頃から変わらないなあ」

 そう言って背中を撫でてくれる。優しく抱きしめてくれる。その温もりに、匂いに包まれて安心する。
 でも、自分はもうちっちゃい女の子じゃない。そんな思いを込めて、ぎゅ、としがみつく。

「ん?斗詩?」

 きゅ、と抱きしめてくれるその優しさに甘えてしまおう。

「私は、今でもちっちゃい斗詩のままですか?
 引っ込み思案な女の子のままですか?
 そうなのかもしれません。
 私の想いはあの頃から変わっていません。
 ずっと。ずっとお慕いしてました。お慕いしてます」
 
 言った。言ってしまった。……一生胸に秘めていこうと思っていたのに。

「え、あ、マジか?」
「はい。――ご迷惑ですか?」
「や、そんなことはない。ないんだ。ないんだけど。まずいだろ色々」

 心底慌てた様子でそんなことを言うのだ、この男は。だからすんなりと胸に落ちる。絡新婦(じょろうぐも)の意図が判った気がする。なるほど、糸の繰手なわけである。正直、掌の上だという自覚はある。だが、それでも、と思う。
 それでも、自分はこの思いを諦めたくないのだ。

「内緒にすれば、いいんですよ」
「ちょ、斗詩……。それって」

 表情を引きつらせる男にしなだれかかってやる。拒まれないのが、嬉しい。伝わる温もりが、嬉しい。

「いやです。二郎さん以外の男の方に抱かれるなんて。
 そりゃ、将来的には婿を取らないといけないかもしれません。
 でも、せめて、せめて初めてくらいは二郎さんがいいです。二郎さんじゃないと嫌です」
「と、斗詩……」
「はしたない、と自分でも思います。それでも、それでも私、二郎さんじゃないと、やです」

 もう、強がりはここまでである。言うべきことは言ってしまった。後は裁きを待つだけ。だから、がくがくと身体が震えて、一気に不安になるのも仕方ないこと。仕方ないこと。
 返答が聞きたい、でも聞きたくない。ぎゅ、と目を閉じて赤子のように身を縮みこませる。

 そんな身体が、ぎゅ、と力強く、熱く抱きしめられる。ちっちゃい頃から包んでくれていた腕だ。その力強さに、溺れた。荒々しく蹂躙されても、怖くなかった。むしろ、嬉しかった。
 もう、戻れない。そんな背徳感に酔う余裕すら、あった。

本日ここまでー

二枚看板、二枚目
でも突破は一枚目という

いやあ、ドロドロしてきましたねえ(白目)

次回は絡新婦とちょっと触れ合ってから(比喩)公務ですだよ

ご意見ご要望は24時間受付中です
なお対応については

乙でしたー 私がコテ付なんて恐れ多い
>>289
>>それでも誠実に顔良に向かい合ってくれている。それが嬉しい。 ここは顔良の心情(一人称)のようなので
○それでも誠実に自分に向かい合ってくれている。それが嬉しい。 他の部分でも自分って言ってますしね
>>ぎゅ、と目を閉じて赤子のように身を縮みこませる。
○ぎゅ、と目を閉じて赤子のように身を縮こませる。

袁紹、文醜、顔良の3人の中で一番苦労性っぽいですよね、二人のブレーキ役をやって疲れてる所を労ってあげたい衝動に駆られる
しっかりしなきゃってなってる所を支えてあげちゃう二郎ちゃんマジジゴロ
多分数少ない斗詩が甘えられる相手なんだろうなあ(男で言ったら唯一かも)しっかり系の子の支えになるとか…良いよね

斗詩さんはスモック着てたころからズボンのすそをきゅ、とつかんでたとわかるシーンですね
一人あぶれてるときは特にそんな感じだったのかも

データはアイテムもそうだけどリライトのノリだとあんまり出さない方がよさそうに見えます
文章でこんな人だ~とか、物だ~と語る分にはそこまででもないと思います
仮にするとしても、外伝として(列伝とか解説とか)完全に分離させる形が望ましいです
ぶっちゃけお前が言うなと言われそうですがww

乙したー

確かに四家の中だと一番官僚とかに信頼有るのは斗詩じゃないかなぁと
絡新婦・能天気・ヤ○ザ・常識人の4択だし

リライト前はちょくちょくTRPG的な楽しみが有ったけど、今回は純粋に物語を楽しみたいと思いまする

あと全く関係ないけどニューイヤーカップお疲れ様でした(最下位)

乙ですだすどす。

>四家(紀、文、顔、張or田or袁)の兵力増


……人員については分母(袁領)の総人口によって難易度が。と思考
つか1945当時の日本みたいな根こそぎじゃなさそうだし。
>北方からの抽出(引き抜き)
……対兇奴対策の完全成功による余剰兵の復員や 袁直轄兵力の交代も有り得そうだけどなぁ…
北方が極度の緊張状態なら主力三家には早急の新兵錬成を求めそうだけど 紀、文を見てると其処までの要求されてる風でも無し。
ただ、これが「官軍として」の状況度外視の政治の結果なら話も変わってくる。


文醜さんについては、アホの子いうより軍再編成に慣れていない印象。
多分兵站参謀が居ないんだろうなぁ…
ただ、机の前で知恵熱出しながら真面目に必死に 考えてる文醜さんに萌え
職業軍人を最低で一万人増員して経済破綻させずに運用出来る袁家の財と 国力は確かに凄い。
人件費て馬鹿にならない負担だからね。


……観測してる外野の勝手な言い種だけど、二郎さんはもう少し情報と諜報に留意した方が……



……リア充爆散しろ(ボソ

>>292
いつもすまないねえ……

>袁紹、文醜、顔良の3人の中で一番苦労性っぽいですよね、二人のブレーキ役をやって疲れてる所を労ってあげたい衝動に駆られる
無印でも真でも文官のネームドがいない袁家を支えるのはいつだって顔良です。
なお、戦場で関羽と会ったら即死不可避という、この薄幸キャラ

>しっかりしなきゃってなってる所を支えてあげちゃう二郎ちゃんマジジゴロ
メンタルケアはごく一般的だと思います。なおその効果たるや

>>293
>斗詩さんはスモック着てたころからズボンのすそをきゅ、とつかんでたとわかるシーンですね
脳内再生余裕でした
きゃわわあわっわ

>データはアイテムもそうだけどリライトのノリだとあんまり出さない方がよさそうに見えます
さいだすね。描写で勝負!頑張るます

>>294
>確かに四家の中だと一番官僚とかに信頼有るのは斗詩じゃないかなぁと
そらそうよw

>あと全く関係ないけどニューイヤーカップお疲れ様でした(最下位)
乙でしたなんだよ
鹿は金崎君の穴を埋められるかが勝負でしょうなあ

>>295
>……人員については分母(袁領)の総人口によって難易度が。と思考
まあ、半分くらいは口減らし……というか雇用の創出という側面もあったり

>ただ、これが「官軍として」の状況度外視の政治の結果なら話も変わってくる。
度外視はしません。現地の軍閥をその任にあてます。つまり。あとはわかるな?

>机の前で知恵熱出しながら真面目に必死に 考えてる文醜さんに萌え
不真面目なわけじゃない、不得手なだけなんだ!なにそのかわいいいきもの。
なお文官からは白い目で見られる模様

>職業軍人を最低で一万人増員して経済破綻させずに運用出来る袁家の財と 国力は確かに凄い。
常備軍の維持。それらがもたらす影響については信長さんをご参考くださいw

>二郎さんはもう少し情報と諜報に留意した方が……
超してるし!……沮授と張紘が

「おはようございますー」

とってもいい笑顔で七乃が歩み寄ってくる。肩と肩が触れるか触れないかという微妙な距離感。同僚にも恋人にも、見る側の観測次第でどうとでも取れる距離。かすかに触れる手と手。なんだこの距離感、見ようによっては、あれだぞ。
……いや、もう幾度となく肌は重ねているのだけれども、それは秘すべきものだろうに。こいつの考えてることは良く分からん。というか俺ごときの脳みそでいくら考えても無駄な気がせんでもない。

「なんだよ」

七乃の、何か言いたげな目つきに問うてみる。

「いえー、思ったよりお手が早いんだなー、と思ってですね」

 ちょっと情報早すぎやしませんかねえ……。顔家の家人から漏れたのか?それはないと思いたいのだが。がががが。

「な、なんで七乃が知ってるんだよ」

 くすり、と笑みを深くしてから七乃はひらひら、と手を振る。

「いえいえ、ご心配には及びませんよ?でも腹芸の苦手な人は見つかったみたいですね?」
「おい。おい」
「安心してください。張家の網にも何もかかってませんし。 それこそ私が、かまをかけないと確認できないくらいにはですね。
 そこらへんの統制はお見事としかいえませんねえ。違和感と言えば、ちょっとお幸せそうなくらいですしね」

 マジか。そっからどうやって色々推察を組み立てるというのか。

「あー、お前が敵でなくて良かったと思うよ」
「光栄の至りですねえ。敵だなんてとんでもない。二人三脚で美羽様を支えるって契ったじゃないですかー
 あ、後はちゃんと孕ませてもらわないとなー
 よ、この種馬!利用価値がなくなったらもげてしまえー」
「使い捨てか!お前が言うと洒落にならんわ!」

 そんなん聞かされたら物騒すぎて同衾も軽々しくできんわ!
いや、七乃の表情はあくまでにこやかで、口調も穏やかなんだけどね。それが逆に怖かったりするのですよ。
 いや、これは話題転換が必要。

「そ、そういや最近美羽様ってますますお可愛らしいよな?」

 美羽様の名前をきっかけに七乃のマシンガン賛美が始まったでござる。いや、相槌うつので精一杯である。ギスギスした駆け引きよりよっぽど気が楽なのだ。いや、敢えて乗ってくれたという可能性も大いにあるのだが。
まー、どうせ目的地は同じなのだから、会話を楽しまないと損だよなあ。今日はこれから会議なのだ。それも武家四家の次代を担う四人の密室会議である。参加人数は当然四名。議題については一応用意してはいる。
なお言いだしっぺは俺である。意外とすんなり開催されてしまって戸惑ってもいる。七乃とかどうせろくでもないこと考えてるのだろうなあ、と思ってたら蹴られた。
地味に痛いんですけど太腿の付け根を膝蹴りとか。歩くのに支障をきたさないギリギリの痛さとかちょっとそのスキル地味に怖いんですけど。
 おお、この満面の笑みの裏で何を考えているのやら。張家の闇は深そうですねえ。

「知りたいですか?」

 いえ、結構です。マジで。世の中には知らない方がいいことってあるのだと思うのです。はい。

「うぃーっす」

 会議室に入ると、斗詩が既に着席していた。暇潰しに阿蘇阿蘇の最新号を読んだりしている。女の子してるなあ、そう思って見てると視線が絡み合う。
 どこか艶めいた視線をくれる斗詩は、なんというかこれまでにない色気のようなものをまとっていた。

「おはようございます」

 そう言って微笑む斗詩はまあ、控えめに言ってすごく蠱惑的だった。ちょっとドキッとしたし。

「おはようございますー」

 そう言って七乃が つ、と歩を進める。斗詩と七乃の視線が絡み合う。んー。どうしてか室の空気が凍った気がする。おっかしいなー。どういうことなんだろなー。

「張勲さん、今日もご機嫌がよさそうでなによりです」
「あらー、知らない仲じゃないんですから、他人行儀すぎますねー。
 よし、この際だから七乃って呼んでくださいねー。
 末永いお付き合いになりそうですしー」
「ええ、そうですね。それでは私のことも斗詩とお呼びくださいね」

 うふふ、と笑いあう美少女達。うーん。胃が痛いぞー?口を挟めるような雰囲気でもないぞー?
 なんでさ!
 そして殺伐とした空気が漂う会議室に鋼の救世主が!

「ごっめーん!遅れたー!」
「猪々子!よく来た!えらい!この月餅を食らえ!」
「いや、遅刻してなんでお菓子もらえるのさ」

 そう言いながらぱくつく猪々子。ありがてえありがてえ。そしてこのまま押し通す!

「はい。定刻をちょっと過ぎてますけども、参加者が揃いましたので第一回四家会議を始めたいと思います。
 よし、筆頭の猪々子、開会の挨拶を」
「え、それ無理。アニキに頼んだ!」
「いや、こういうのって序列的に猪々子がやるべきなんだけど」

 一応、こういう場でしきるというのも慣れてほしいとこなんだけど。これからそういう機会も少しずつ出てくるだろうし。

「そういう偉そうな権限でアニキにそういうのとか議事進行とかの任を移譲する!」

 すごいいい笑顔だよこの子。

「あのなあ……」
「んー、まあいいんじゃないですか?」

 思わぬインターセプトである。まあ、七乃が何を企んでいるかとかは考えるだけ無駄としよう。

「私たちを召集したのも。いえ、そもそも主催者は二郎さんですし、ここで形に拘っても仕方ないでしょう?
 形式に拘るならここまで出席者を削る必要もなかったはずですよね」

いやまあ、そうかもしんないけどさあ。
見れば猪々子は我が意を得たりというようなドヤ顔だし、斗詩もにこりと笑って賛意を示す。いいのかなあ。
ま、いっか。

「ほんじゃまあ。四家会議、始めよっか」

我ながらシンプルすぎる開会の挨拶だった。

「さて、議題だけど、四家で人材交流をしようと思う」

 この面子だから余計なことは言わず、本題に切り込む。疑問符でいっぱいの猪々子、少し考え込む斗詩。にこにこと読めない七乃と三者三様の反応である。

「アニキー、別に反対ってわけじゃないんだけどさー。
 うちにそんな余裕ないぞー?
 やーっと新兵の編成が終わったとこなんだからさー」

 挙手しながら口火を切る猪々子。ちなみに会議で最初に意見を言うのは結構勇気が要ったりする。だから議事進行するにあたってサクラを仕込むこともあったりする。無論猪々子がそんなことまで考えているわけがないのであるが。

「うーん、文ちゃんのとこの事務手続きを手伝うというのなら、反対ですね」

 小首をかしげながら斗詩が発言する。猪々子はガビーンといった風で見事な顔芸を披露している。大丈夫、表情が崩れても美少女だぜ。
 まあ、顔芸に免じてフォローしてやろう。というかこっからが本番。

「うんにゃ、そうじゃあないんだ。近くはあるが、そうじゃあない。
 言わば事務手続きの平準化、だな」
「どういうことですか?」

 七乃が口を挟む。
 
「うーん、この前、猪々子が新兵の編成に手間取っててさ。それを手伝ったんだ。
 これまでは、大枠の方針とか、麹義のねーちゃんに出す報告書の手伝いばっかだったんだよね。
 ほんで、初めて文家の内部の書類を見たんだわ」
「そうそう、あんときゃありがとなー、アニキ!助かったよー」

 纏わりついてくる猪々子を撫で繰り回しながら引きはがす。よーしよしよしよーし。

「どういたしまして。そんで思ったんだけど、文家の内部手続きは実際煩雑すぎるわ」
「え、どういうことさ!」
「いやー、当主の承認がいる案件が多すぎるだろ……。
 一兵卒の能力に対する所感とか適正評価とか、ありえねえって」

 いやマジで。新兵一人一人に対する所感の項目が多いのとそれが当主自らの評価項目って。ありえん。
 そのことが分かるのだろう。斗詩と七乃も驚き、戸惑っている。そうだよなー。実際俺もマジでびびったもんなー。

「猪々子の事務能力がとんでもなく低いってわけじゃあないんだ。
 業務がな、ものっすごく多岐に及ぶんだ。
 そりゃあ、真面目にこなしてりゃあ一兵卒まで掌握できるだろうよ。つか、文家軍の強さの一因でもあるんだろうなあ」

「星を砕くもの」とさえ言われた先々代の文家当主はそりゃあ、才媛だったらしい。多分自分用の組織運営のマニュアルを作って、後代に引き継ぐ時には変更するつもりだったんだろうなあ。それが対匈奴戦役で予想外の戦死。
兵数が少ない今まではそれでもなんとか回してたんだろうが、急な増員で処理能力がとうとうパンクしたんだろう。猪々子だからこそ、変に糊塗せずに表面化してよかったのかもしれない。

「まあ、そんなわけで、各家の無駄と思われる業務を平準化して、効率化しようというのが今回の議案の目的だ。
 数千人の増員で四苦八苦してる状況はいかにもまずい。
 いざ実戦になった時に混乱しか招かん。戦いは数だとは言っても、その数を有効活用できなかったら意味がない」

俺の言葉に考え込む斗詩、大きくうなずく猪々子、にこにことしている七乃。

「っちゅうわけで、ある程度業務の平準化をしようと思う。それぞれの家でやり方は違う面もあるとは思う。
 だけどまあ、今のうちにやっとかんとな。どっかの家が壊滅して残存兵力を抱え込んで、そいつらが
 足手まといになったら目も当てられん」
「顔家は賛成します。軍官僚からは反対があるでしょうが、押さえます」
「張家も賛成しますよー。反対する理由がないですねー」
「文家は大賛成!仕事が減るって知ったらみんな喜ぶ!」
「お、おう」

 なんだ、文家は配下も脳筋揃いなのか?まあ、全会一致で一番の懸案事項が可決されたのだった。こまごまとした意見交換の後、解散することになる。

「いやー、早く査察がないかなー。楽しみだなー」
「手の内を見られるのを嫌がる人もいるでしょうけど、そこは押さえて見せますから」
「ああ、急がないと美羽さまのお昼に間に合わない!」

 三者三様で会議室を後にする。
 ……会議室に静寂が戻り、俺は大きく溜め息を漏らす。何でって?後半戦があるからだよ!

凡人と会議(表)でした

本日ここまでー

しかし中々区切りのいいとこまでいかんですな

乙。ですよ。


えと、二股の当事者が揃うとこうなりますわな。 幸い、女性側は殺意や害意を(内心ともかく)男性には持ってはいないようなのでこの程度で済んでる感。
まあ二郎さんは女性から ボロカス言われても仕方ない。ついでに女性の嫉妬と鞘当てに慣れないと 真のリア充にはなれないぞっと(白眼)


>文醜さんが全てやる
……まあ無茶な事を(呆れ)これはあんまりだ


>故に業務の平準化、共通化

……単位軍編成の概念使うのか、それとも会社組織の部課制にするのか。

……今回の四家会議。二郎さんに二郎さんラブに二郎さんに懐いている娘に二郎さんのお手つき

……これで開催出来ないなら二郎さんの人格疑うよ


最後に、四則演算と九九って地味チートかもと思う。

乙でーす
最近添削が少なくて嬉しいような寂しいような
>>299
>>「手の内を見られるのを嫌がる人もいるでしょうけど、そこは押さえて見せますから」
○「手の内を見られるのを嫌がる人もいるでしょうけど、そこは押さえてみせますから」 見せる必要はないですね

一人の天才が力を揮うより1000人の凡才を使えるようにするという意味ではこれは非常に大きな一手
二人は二郎ちゃん囲い込み計画に理解はしていてもそうそう納得はできないって感じですね…あれ、鞘当してるってことは七乃の二郎ちゃん好感度がかなり高め?七乃って美羽様以外はすべて理詰めで感情を排しそうだと思ってたけど二郎ちゃんのこともかなり大切に想ってるのね

>>303

まずは添削乙です。


七乃さん。確か二郎さんとの子欲しいと言い切っていたような。
顔良さんもそうだけど、避妊具も生理周期を利用した避妊も無いこの時代に妊娠上等で二郎さんと 交合する時点で二郎さんラブは確定でしょう。
更に本能で強い雄認定されている訳だから、当然 独占欲も出てくる。男女共に。
ついでに二郎さんに指摘しとくと、この時代の妊婦、新生児の死亡率は現代と比較にならない位高い。文字通り命懸け。
『それでも』と受け入れた訳だから、その想いには本気で向き合わないと

二郎さん。偉そうな事言ってごめんなさい。

乙したー

七乃以外の二人は兄妹みたいなモンだしなぁ
そう言うと七乃の幼少期が気になって仕方ないですな

>>304
七乃の場合二郎の子供が出来れば家の乗っ取りが出来るから、必ずしもラブである必要はないんだよね。
弟もいるから家督を継ぐ必要も必ずしもあるわけでないし。

うし追いついた
リライト前から見てますが相変わらず面白い
途中の画像が見れなかったのがつらいけど…
そういえば食事に関してのお話ってリライト前からあったっけ…

>>302
>えと、二股の当事者が揃うとこうなりますわな。
尚、七乃さんはあの空気とかをエンジョイしている模様。いい空気吸ってます。

> 幸い、女性側は殺意や害意を(内心ともかく)男性には持ってはいないようなので
持たれてたら即死ですわw

>……単位軍編成の概念使うのか、それとも会社組織の部課制にするのか。
そこまで大したことしません 

>今回の四家会議。二郎さんに二郎さんラブに二郎さんに懐いている娘に二郎さんのお手つき
コネって大事ですね(白目)

>最後に、四則演算と九九って地味チートかもと思う
アラビア数字とかもですよね
まあ、そこらへんは原作恋姫がふわっとしてるので……


>>303
>最近添削が少なくて嬉しいような寂しいような
ゼロのつもりで書いてるんですけど、やはり自分ほど信用できないものはないですねえ

>一人の天才が力を揮うより1000人の凡才を使えるようにするという意味ではこれは非常に大きな一手
統合整備計画みたいなものですね
これにより初期配備が旧ザクからザク改になるという強力なイベントです

>…あれ、鞘当してるってことは
これ七乃さん、相手を煽って楽しんでるだけです。それを分かっていてもそういう遊びに二郎ちゃんを巻き込むことに憤慨する顔良さんの純な思い

>>304
>避妊具も生理周期を利用した避妊も無いこの時代に
えと、時代考証はね、恋姫空間だからということでふわっとしたかんじでオナシャス
ただまあ、顔良さんの思いの強さは本物ですし、そこを無碍にしたりはしません、とだけ
七乃については……w

>>305
>そう言うと七乃の幼少期が気になって仕方ないですな
ロクでもない教育を受けているのは確定的に明らかではありますが

>>306
>七乃の場合二郎の子供が出来れば家の乗っ取りが出来るから、必ずしもラブである必要はないんだよね。
そこに気づくとは……。やはり天才か。

>>307
>うし追いついた
いらっしゃっせー
ちまちま書いておりますよ

>そういえば食事に関してのお話
気が向いたらやりますけど、恋姫時空というのをご理解ください

「それではー。第一回袁家実務者会議をはじめたいと思いまっす!」

 景気づけに声を張り上げる。ぱちぱち、と気のない拍手が俺を包み込む。
 にこにことした沮授と、どっか呆れた表情の張紘である。
 これが何の集まりかというと、だ。先の会議を受けて実際どうするかという実務者協議になるわけである。まあ、大筋で合意された軍務の平準化については俺に一任されているからして。
 実際どんな感じにするかというのをこれから検討するわけだ。

「それで、どうするんです?」

 沮授が俺に問いかける。

「いや、どうもこうもねえよ。今のままじゃあ、急な増員にすら組織が対応できない」
「んー、でも、文家以外は対応できてたんだろ?」
「おう、だがまあ、ちっとばかりそこには訳ありでな。
 紀家、張家、顔家はまあ、人員をとりあえず編成した感じなんだな。
 訓練なんかはここからだ。対して文家は実戦主義だ。
 ある程度能力を測定してから兵卒ごとに適正を判断。
 そっから配置を組み立てていく。
 そりゃあ、ぱっと見、文家は編成が遅いだろうさ。しかしいざ実戦となるとそりゃ最強は文家だ。
 袁家筆頭は伊達じゃあねえってこった」
「最初は手間取るとしても、組織としての最終的な完成度はとんでもないことになる、と」

 軽く沈黙が落ちる。

「でもそれって、いざ戦時となると……」
「おう、戦時にそんなことやってられんだろうがよ。補充兵の適正を見てとかやってる場合じゃないだろう」

 そんなリソースあったら兵站とかに割くっつうの。

「今回みたいに、平時に戦力の増強ならまだ対応できる。
 でも実際戦乱になった時、次々と補充兵が来たらどうなるか、ということか」

 張紘が問題をまとめる。まあ、そういうことなんだよな。だもんで別に大規模な軍制改革をするつもりじゃない。単に軍務の洗い出しとその標準化、そして手続きの書式など事務手続きの共有化を行うのである。
 なお、今回の増員については俺もその規模を把握できていない。紀家軍については一万ほど純増であるのは確かなのだが、文家、顔家については北方からの引き抜き、その補充等が複雑になされており……。
 結果だけ言えば、何故か四家に属さない兵員が五千ほど湧いていた。なおそれは母流龍九商会の抱える傭兵的な扱いになっている。いったいどういうことなの。

「しかし、軍の業務を平準化すると言ってもどうするんです?
 実際にどの辺りまで業務が必要か、可能かという判断基準を我々は持ってませんよ?」
「それについては問題視してない。ちょうどいるじゃないか。つい先日まで鉄火場にいたのが」

 俺の言葉に二人が目を見開く。

「そ、黄蓋だ。適任だろ?」

 絶句する二人。そりゃ、匈奴戦役を体験した人も生きてはいる。しかしそれは俺達が生まれる前の出来事でもある。実戦の軍務という意味ではこの上ない経験の持ち主だ。

「しかし、外部に袁家の軍機密を漏らすのはいかがなものかと思うのですが」
「もっともな懸念だな。だが無用な懸念でもあるだろ。誰に内実を売るってんだ?」
「……売らなくても、孫家が牙を剥く可能性だってあるんじゃねえか?」

 どうも沮授も張紘も反対みたいだな。実に妥当な意見である。そのバランス感覚がありがたい。だが、ここは押し通す。

「漏れて困る相手といったら十常侍くらいか。そこと孫家が結ぶとは思えない。
 それに、今の段階で孫家がこちらに牙を剥いたら……。張紘には悪いが、潰す。
 徹底的に潰す」

 事務処理のルーチンを真似されても、そこまでの痛手ではない。そりゃあ効率化とかで多少手ごわくなるかもしれんがね。そのくらいで牙を剥くくらいの浅慮ならば却って味方にする方が危険だ。有能な敵よりも無能な味方の方が脅威度は高い。今の袁家には特に。

「いや、おいらのことはいい。そうさせないための魯粛達でもあるし、商会を通じての援助だ。
 それを無下にするんだったら。いや。……無下にしないと信じてぇところだなあ」

 苦い表情で張紘が言葉を搾り出す。商業というのは賤業というのがこの時代の常識。それにどっぷりと漬かっても尚。その人格は清冽にして柔和という世評を得ているのは流石としか言えない。罵詈雑言しか口にしない太鼓の達人だってこいつの悪口は差し控えるに違いない。

「しかし、兵力の増強に対する洛陽の反応が気になりますね。ただでさえ警戒されている袁家です。いささか不味いことになるのではないでしょうか」

 沮授が話題を変えるように呟く。

「逆なのさ。追い詰められたのは十常侍だろ」

 俺の言葉に二人が首をかしげる。

「隆盛を極める袁家。その勢力に危惧を覚えた十常侍は黒山賊を利用して牽制してきた。
 ここまではいいな?」
「ええ、その通りですね」
「それに対して、袁家は軍備を増強させた。黒山賊対策を名目にな。
 これがどういうことか分かるか?」
「なるほど。喧嘩を買ったってことだな。素晴らしく高値で。
 やるなら、受けてたつ。そう意思表示をしたってことか」

 張紘が苦笑する。その笑みがそこそこ引き攣っているのが事の重大さを示している。だけどそれだけじゃないのだ。

「十常侍の弱点は兵力を持っていないことだ。軍権は何進に握られているからな。
 宮中ならともかく、彼奴等の手がここまで伸びるかというとそうでもない」

 ふむ、と頷いて沮授が応える。くすり、と笑みを浮かべて。

「つまり、十常侍は眠れる獅子の尾を踏んでしまったということですね」
「そうだ。黒山賊への介入の中途半端さを見ても、あれは個人の独走だったに違いない。
 そいつが袁家と十常侍の対立を煽ってしまったという構図だな。
 てっきり十常侍の威光に恐れ入るものだと思ったら、とんでもないことになった」
「つまり、兵力の増強という一手で内部の引き締めと外部に対する牽制を兼ねた、と」

 そういうことだ。嘆息する。なんという手を打つのだろうな。
これに軍事力の後ろ盾のない十常侍は焦るはずだ。十常侍と一括りにしていても一枚岩ではなかろう。そこに亀裂が入るかもしれない。
田豊師匠と麹義のねーちゃんの高笑いが聞こえてきそうだ。

「それ、とんでもねーぞ。わかってたとしても……。その手はおいらにゃ打てねえよ」

 張紘の笑いが凍りつく。そしてその意見には俺も完全に同意である。漢王朝の中枢に巣食う癌細胞ども。それが害悪だと分かっていても、それに喧嘩を売るとか。安定志向の俺には少なくとも無理です。
 だがまあ、賽は投げられた……というか、砲弾は放たれたのである。それも盛大に。

「そんくらいの胆力がないと袁家という看板は背負えないってことだろうさ。それを……身をもって教えて下さったわけさ。ありがたいこったよ」

そうとも、腹を括ろう。手元の一万の兵。それにフリーハンドで使える五千の兵。そこまでお膳立てしてくれたんだから。まあ、どう使うかはまだ何も考えてないけどな!
 
「まあ、そんなわけで。なんやかんやあるけど、頼りにしてるぜ。そして今後ともよろしく、な」

 マジでこの二人が生命線だからなー。

「おいらでよけりゃ、おいらなりに」
「やれやれ、困ったものです」

 この後、滅茶苦茶打ち上げで馬鹿騒ぎした。

本日ここまですー
袁家会議裏でsった

表も裏も、二郎ちゃんの関係者ばかりじゃないか!(驚愕)


さて、次回は中央の反応を軽く
その後は内勤かな


明日はSMTショウを見学しに国際展示場に赴きます
KKの缶詰は毎回楽しみなんですよねー

乙したー

今の哀家は確実に二郎をハブにして回ってるからね、仕方ないね

なお、外からだとドロドロな権力闘争している風に見られている模様

一瞬SMショウに見えたぞ

乙でしたー
>>310
>>「つまり、十常侍は眠れる獅子の尾を踏んでしまったということですね」 慣用句が混ざってしまってますので
○「つまり、十常侍は虎の尾を踏んでしまったということですね」  もしくは「つまり、十常侍は眠れる獅子を起こしてしまったということですね」

二郎ちゃんは潤滑油だった?ぶっちゃけ灰汁の強い方々をまとめる能力としては現代日本人ってかなり高そうよね
二郎ちゃんの最も重要な力は繋ぐ力(確信)もちろんそれ以外も疎かにして良い訳じゃないけど

>>312
>今の哀家は確実に二郎をハブにして回ってるからね、仕方ないね
先達のお二方も敢えてそのようにしようと暗躍(?)されてますしねー

>なお、外からだとドロドロな権力闘争している風に見られている模様
そうなんですよねw ほんとこれっすw ありがとうございます!

>>314
>一瞬SMショウに見えたぞ
そりゃあ、空目するようにしましたもの
やったぜ

>>315
いつもすまないねえ……(今回は完璧と思ったのにw くやしいのう、くやしいのうw)

>二郎ちゃんは潤滑油だった?
ローション扱いと申したか。なお

>二郎ちゃんの最も重要な力は繋ぐ力(確信)もちろんそれ以外も疎かにして良い訳じゃないけど
本人はスペック凡人ですので、コミュで組織を回す感じですねー

空目に引っ掛かるとは不覚

それより今年からナビスコカップはビスケットカップになるのだろうか?

>>317
ヤマザキナビスコでナビスコカップやから、ナビスコカップじゃないかなあと思います(マジレス)

そしてむーちゃん復帰やったぜ

そのヤマザキナビスコがナビスコとのライセンス切れでヤマザキビスケットに改名するんやで
あと永木返して(´;ω;`)

あ、リライト版になってから初めてレスするけど初版に引き続き楽しませていただいてます

初版を一日かけて読んできたが面白かった。リライト版も期待

1…日?あの量を1日とか一ノ瀬さんの以外抜いたとしても凄いな
ちなみに好きなシーンと好きなキャラを書き込むと一ノ瀬さんがテンションあがるぞ

>>319
バーバリーが直販に変えて利益を摂るのと同じ縮図なのかな?
ブランドが浸透したら委託なんてしない!
いや、正しいと思いますが

>あと永木返して(´;ω;`)
湘南さんは鳥栖みたいに監督がいなくなるわけじゃないから大丈夫だと思います(マジ話)
ボランチは層が厚いと思わせて結構やばいからねー
満男は加齢、岳は海外移籍、軸たる山村は桜に転勤。次世代期待してた梅鉢は修行の旅へ

青木と久保田のダブルボランチって不安しかないもん
永木君に期待するところ大なのですよ

>あ、リライト版になってから初めてレスするけど初版に引き続き楽しませていただいてます
ありがとうございます!なろうの方にもブックマークとか感想とか評価とかオナシャス

>>320
>初版を一日かけて読んできたが面白かった。リライト版も期待
一日……だと……
すごすぎでしょう……。
頑張り魔s


>>321
>ちなみに好きなシーンと好きなキャラを書き込むと一ノ瀬さんがテンションあがるぞ
大騒ぎして頑張るモチベーションですがリライトだとネタバレになっちゃうからね……
つまりさっさと話しを進めろってことかー

「ククク、カハ、はっはは!
 これは傑作だ、傑作だとも……く、くくく」

 笑い声が室内に響く。心底楽しげな声が響く。その声の主がこのように感情を露わにするのは珍しい。

「どうか、したのか?」

 笑い声の主は何進。現在の漢朝の最高権力者である。大将軍という隔絶した地位を目前にし、卓越した手腕で漢朝を差配する。清廉でも潔白でもなく、汚濁と権益によって世を動かす。その権力は肉親たる皇后、そして皇子に由来している。
 不敵に笑うこの男を追い落とそうと幾多の士大夫、宦官が挑んだ。そしてその全てを退けてきたのだ。
 その凄味を華雄が理解してはいない。ただ自分を屈服させた男が英傑であることを疑わないのみ。故にその英傑を守ることこそが武人としての本懐。
 だが、ここまで声を上げて笑うことは滅多にないことである。怪訝そうな声に何進はニヤリ、と笑って応える。

「ああ、やられた。見事に先手を打たれたのさ。
 流石は田豊よ。不敗の二つ名は伊達ではないといったところ、か」

 不敗の田豊。袁家の最重鎮である。対匈奴の戦役では軍師として戦場に立ち、圧倒的な匈奴の攻勢を凌ぎ続けたと言う。彼のいる本陣は後退することはなく、自ら敵陣に単身切り込むなど逸話には事欠かない。
 当主の袁逢さえもが弓矢を放つほどの激戦。実際、実戦経験がある武家と言えば同じく北方の防壁たる馬家くらいであろう。

「まあ、読んでみろ」

 そう言って何進は手に持っていた書簡を投げて寄こす。
 袁家が一万人兵を増やした、極論すればそれだけである。黒山賊といつぶつかるか分からないし、ありえる動きではあろう。

「これが、何か?」
「ああ、分からんか。まあいい。
 せっかくこちらから救いの手を出そうとしていたのだがな。
 流石死線をくぐり抜けた奴は腹が据わっている。機を逸しちまった、俺としたことが」

 ぶつくさと言っているが、勿論華雄にはその内容は分からない。それをすんなりと口にすることができるのは彼女の美点であろう。多分。

「ええと、よく分からない」

 舌打ちを一つし、何進は状況を整理する。

「ふん、凡百なら十常侍……洛陽からの圧力に惑い、怖れるしかないだろうよ。
 だが、袁家はそれを逆手に取って戦力を増強した。
 やれるもんならやってみろってわけだ。
 ここまで強硬に来るとは思ってなかった。武家の矜持という奴を読み誤ったわけさ、十常侍も俺も」

 実際には別に十常侍は漢朝の意思を代弁しているわけではないのだが、それは内部に深く関わらないと分かるはずもない。だから十常侍の専横が止まらないのである。

「では、袁家は漢朝に叛くと?」

 直截的な問いに何進は苦笑する。

「そこは違うな。全然違うとも。単に、つっぱねただけださ。
 俺としてはその前に仲介なり結託をするつもりだったんだがなあ。
 そうそう上手くはいかんか」

 そう言いながらも。欠片も悔しそうではなく、むしろ楽しそうな表情を浮かべる。
 何進。肉屋の倅などと貶められることの多いこの男は日々その勢力を拡大している。
 皇后たる妹、その息子である皇太子の威光を存分に使っているのだから。皇甫嵩や朱儁のような傑物を尻目に大将軍――その権は三公すら凌ぐ――の地位に就くのも目前である。

「まあいい、王允を呼べ。袁家にそろそろ渡りをつけんといかんからな」

ギラギラと覇気を撒き散らすかのごとく浮かべる笑みこそ何進の真骨頂だろう。その気概こそが漢朝を黄泉路より引き戻すのである。少なくとも華雄はそう確信している。

「クハ、面白くなってきたじゃねえか」

 史実においても権謀術数が幾重にも織られる宮中において、正攻法ではあの十常侍すら武力行使という非常の手段でしか排除できなかった傑物。
 その、ある意味政治的怪物が袁家との接触を試みることになるのである。そしてその窓口となるのは――。

本日ここまですー

乙でしたー
いつものです
>>323
>>当主の袁逢さえもが弓矢を放つほどの激戦。 弓も一緒に放っちゃってますので
○当主の袁逢さえもが矢を放つほどの激戦。 もしくは 当主の袁逢さえもが弓で射るほどの激戦。 もしくは 当主の袁逢さえもが弓を引くほどの激戦。
他にもいろいろあると思いますが【弓矢】にしたい場合ですと 当主の袁逢さえもが弓矢を手に取るほどの激戦。 辺りが適当だと思います

よっ大将軍!!と思ったらまだだったんですね、何進
ここからは昨日の敵は今日の友、今日の友は明日の敵、の陰謀渦巻くドロドロパートスタートです!!(待て
私の好きなオリキャラ第1位、原作キャラ含めてもベスト3に入る何進さんの本格始動にwktkですよ(ちなみに二郎ちゃんはベスト5には入ってマスヨ
何進さんが喜んだのは使える手駒以上の使える仲間が出来そうだからか、丁々発止できそうな好敵手が現れたからか、はてさて

>>326
いつもすまないねえ……

>よっ大将軍!!と思ったらまだだったんですね、何進
チャート確認したら大将軍になってたw
大勢に影響はないので、前段かこっちかどっちか修正します

>ここからは昨日の敵は今日の友、今日の友は明日の敵、の陰謀渦巻くドロドロパート
これメインにすると脳細胞が死にますがねw

>私の好きなオリキャラ第1位、原作キャラ含めてもベスト3に入る何進さん
未読の方にも好きになってくれたらうれしいなあ
書いてて楽しいキャラではあります、何進

業務連絡です
転勤決まりそうです

引っ越しその他業務でくっころです

後、蕪が不作なのでご飯食べるときはリンガーハットでオナシャス

dじゃおい

乙。そして転勤オメです

……何進さん。個人的には生き方が好きなキャラです。成り上がり、そして潰される。しかしその間を閃光のように輝きながら駆け抜けた、乱世の 人物。


ここの何進さんは、実力も伴った英傑の匂い。
ただ惜しまれるかな、紀霊という伏兵を見いだせていない。この先紀霊(二郎)と邂逅した時にそれを見切れるか注目。


……翻って実務者会議の二郎さん。うん、芯の通ったビジネスマンだわ。 つか転生前も密かな注目株と想像。


現役武官の黄蓋の経験を所属関係無く採り入れる柔軟さ。袁家に害為すなら投資を無駄にしても切り捨てる冷静さ。パネェ

……SMT。調べたら裏側スキーにはWKTKな 見本市ですね。
過去、建機やら建材やらの見本市は参加しまくっていた身としては久々にクル情報でした。

転勤先は…ダイスの神様が荒ぶるのにお任せ

リンガーハットはねぇ最近週2で行ってたからちょっと飽きたでやんす
その代わり最近は浜勝にはまってます

>>329
引っ越し引越しさっさと引っ越し!
荷物片付かない(絶望)

>成り上がり、そして潰される。しかしその間を閃光のように輝きながら駆け抜けた、乱世の 人物。
清河八郎とか芹沢鴨という名前が惹起されましたw

>ただ惜しまれるかな、紀霊という伏兵を見いだせていない。
流石にこの段階では無理っしょw
乾がスペインで普通にやれるとか野洲高校時代見て分かるはずないっていうw
しかし何で清武や本田に比べて乾の報道がないんでしょうねえ

>現役武官の黄蓋の経験を所属関係無く採り入れる柔軟さ。袁家に害為すなら投資を無駄にしても切り捨てる冷静さ。パネェ
実際、すごいことなのですよね、これ

>……SMT。調べたら裏側スキーにはWKTKな 見本市ですね。
食品メーカー、什器メーカーなど色々と楽しいですよ
そして、地方公共団体が出展してますのですよ。各地の美味しいモノ試食でお腹いっぱいになりますw
お酒もありますよ!メーカーブースではお土産もあるぞ!

三月には幕張で類似イベントのフーデックスもあります
事前申請したら無料で参加可能なのですw

>>330
>リンガーハットはねぇ最近週2で行ってたからちょっと飽きたでやんす
それは行きすぎでしょう……w

まあ、国産野菜とちゃんとうたってるのがリンガーさんと王将くらいじゃなかったかなあ
松屋も野菜サラダはそうだっけか

まあ、最近リンガー蕪は手放して、今は塚田農場とかに乗り換えましたね

最近は畑が朱い赤い。どうしたものかですよね。

お願いとしては、銀河高原ビールをよろしく、とだけw

俺は目の前に広がる恵みの象徴に目を奪われていた。それは豊穣を象徴しており、大地の恵みたる地母神を想起させる。巨乳、と一言で言うのはたやすい。だがその漢字二文字の表す言葉は目の前の女体の奇跡を表現しきっているだろうか、いや、十分ではない。
大胆に胸元をあけた衣装からは圧倒的な質感を持った谷間が俺を誘うかのごとく色香を放っている。グランドキャニオンはここに顕現したのだ。世界遺産も真っ青である。
うん、けしからん。実にけしからん。
そんなけしからんおっぱいの持ち主二人と俺は密室にいるというのがある種の罰ゲームである。これはいけません――。


「なんじゃこれは」

などとあれこれと考えていた俺のピンク色をした思考を断ったのは黄蓋である。その声色は控え目に言って――呆れていた。

「わあ、これはすごいですねー」

 もう一人は陸遜。のほほんとした声色と、たわわに実った胸元がギャップ満点である。いや、直截的に言えば、エロいよこの娘。無防備エロ!そういうのもあるのか!畜生!孫家は未来に生きてるな!
いや、黄蓋は現段階で孫家の重鎮だし陸遜は未来の大都督なのだが。なのだが。ちなみに孫権は余り実務他あれこれに慣れてなさそうだったので呼ばなかった。いや、色々混ぜっ返されても困るしな。

さて諸君、目の前には四家会議の後、それぞれの軍務の手続きやらなんやらを記した書類の山がある。兵卒と士官にヒアリングした業務内容を取りまとめた業務チャート図とその詳細についてはかなりの力作である。頑張った斗詩、それに沮授と張紘には感謝感激雨霰である。俺?監督監修ってことで。
 七乃が予想以上に協力的だったのが不可思議ではあったのだが。解せぬ。

まあ、この書類の山を二人に見てもらって妥当性を検討していくわけだ。黄蓋は歴戦の名将だし、陸遜はあれだ。知力95以上はあるであろう化物だ。うん、軍政にうってつけの人材がいるって素晴らしい!
 ククク、立場的には協力を断ることもできんだろうて。パワーハラスメントなんて概念はあと二千年くらいしないと生えてこないし。なお、俺のお仕事はその内容がいかに手抜き骨抜きできないかのチェックするだけのお仕事である。
 ほら、俺ってサボるの得意だから!そういう感じで政策とか法案のを抜け道を塞ぐのは割と得意なのよねー。サラリーシーフは俺だけの特権なのである。




「なんじゃこれは」

黄蓋は卓の上の書類の山に戸惑いを隠さなかった。一方、傍らの陸遜はにこにこしながら遠慮呵責なしに手に取り目を通し始めている。

「うん、別に今日中ってわけじゃないから、じっくり頼むわ」
「話が見えんぞ」

黄蓋としてもちょっと手を借りたいとしか聞いてなかったのだ。どうせ拒否権なぞない、と思っていたらご覧の有様である。先導されるままに入った一室。
黄蓋的には、てっきり手篭めにでもされるのかと思っていたのだ。無論陸遜についてもその覚悟はあったはずである。それが目の前に広がるのは書類の山。

「んー、言ってなかったっけか。袁家の軍務の諸手続きの統合整備計画だな。
 一応整理はしたんだが、袁家と旗本たる武家四家。それぞれ手の続きを可能な限り統合した書式なんだが無駄や重複もあると思う。
 まあ、そこはご容赦くださいということで」
「いや、それこそが軍事機密じゃろう。わしらに見せる意味が分からんのじゃが」

ちらり、と見ると兵の編成方針やら評価基準、訓練の申請方法など、いずれも門外不出であろう文書ばかり。自由な家風である孫家の中でも、型破りで豪気で知られる黄蓋もドン引きである。こんなものを見せてどうしようというのか。

「いやー、正直手続きが煩雑なとこもあってさ。いざ実戦っていう時にこれじゃいかんなと。
 ほんでまあ、先日まで戦場を駆けてた君らにどこまでが必要でどこからが不要か見極めて欲しいのさ」
「えらく壮大な話じゃが、こんな機密をわしらに見せて構わんのか?」
「おう、大丈夫だ。問題なんてない」

即答されるとさしものの黄蓋も黙るしかない。そして思う。正直、器を見誤っておったかもしれないか、と。

「目を通して所見を述べるのにやぶさかではない。
 が、その後に始末されたりはせんじゃろな」
「しないしない。こんな立派なおっぱい達を失うなんて人類の損失だ。
 そんな愚行は俺の目が黒いうちは許さんよ」
「へらへらとゆるんだ笑み。これが心根を惑わすためのものならばたいしたものじゃなー」
「声に出てるぞ、おい」

いまひとつ本気かどうか分からないというのが黄蓋の正直な思い。だがまあ、否なぞありえない。拒否権なぞないのだと腹をくくる。
傍らの陸遜にちらり、と目をやるとにこり、とうなずいてくる。袁家の軍政を目にするのはこちらにとっても益になろう、と。特に陸遜、次代の孫家の軍師である。人質生活といっても、暇を持て余すよりはよっぽどよかろうと黄蓋は思う。

実際、この南皮で生活するだけでも……。

「権殿や穏にはよい刺激になるじゃろうて」

 そうあってほしい、と黄蓋は思うのだ。次代の孫家を担う二人がここ南皮に派遣されたのだ。その意義を、期待を背負っているのだ。彼女らは。
それはそれとして、袁家という漢朝の藩屏。その内実に触れられるのは願ってもないこと。まずは、情報収集である。
 そう理性は語る。だが、高鳴り燃ゆる胸の鼓動よ。袁家、どれほどのものか。ニマリ、と歪む口唇を自覚する寸前、耳朶に囁き。

「それ以上はよくないかとぉ」

 甘ったるい口調、無垢なる仮面。

「分かっておるとも」

 孫家次代の軍師たる陸遜の言。黄蓋と孫権のお目付け役として派遣された彼女こそが孫策と周瑜の切り札。その真価を知るのは黄蓋だけなのだ。そのはずだったのだが。
 陸遜について、一家言ある人物が袁家にいたというのは孫家にとって幸か不幸か。その断が下されるのはまだまだ先のことである。

本日ここまでー 感想とかくだしあ

そして始まる生活苦!

乙。

「手の続き」→手続き?

立場上断れないからパワハラはこの場合何か違うような。うまく言えませんが。


>黄蓋と陸遜の描写
DTには良いオカズ(意味深

蕪は趣味と実益でスパゼネをコツコツとそれなりに(総会前に御挨拶来るレベルww)
後は…お付き合いで雑多に。
ただ、蕪屋の営業がウザイ。塩漬け前提なんで。

さて、黄おっぱいと陸おっぱいは紀霊に食べられるかな?注目

乙でしたー
二郎ちゃんが傍から見たら仕事してますね
>>332
>>大胆に胸元をあけた衣装からは圧倒的な質感を持った谷間 圧倒的な質感とは何ぞや?滅茶苦茶柔らかそうってことかな?それとも張りがある?
○大胆に胸元をあけた衣装からは圧倒的な質量を持った谷間 もしくは
○大胆に胸元をあけた衣装からは圧倒的な量感を持った谷間 単純に大きさを表すならこちらですかね
○大胆に胸元をあけた衣装からは圧倒的な迫力を持った谷間 カタカナ使っていいならボリュームがしっくり来る気もしますが
○大胆に胸元をあけた衣装からは圧倒的な重量感を持った谷間 巨乳っぷりを示すならこれかなあ?
長く解説するなら 掌に吸い付きそうなきめ細やかさとどこまでも埋まりそうな柔らかさとそれでいて手を離せば一瞬で元に戻るであろう張り このあたりで圧倒的な質感?と思いますが…テンポ悪いですね気にしないでください
>>そういう感じで政策とか法案のを抜け道を塞ぐのは割と得意なのよねー。
○そういう感じで政策とか法案の抜け道を塞ぐのは割と得意なのよねー。
>>それぞれ手の続きを可能な限り統合した書式 上の方、添削先生になっても大丈夫ですよ?
○それぞれの手続きを可能な限り統合した書式
>>即答されるとさしものの黄蓋も黙るしかない。そして思う。正直、器を見誤っておったかもしれないか、と。 2か所訂正します
○即答されるとさしもの黄蓋も黙るしかない。そして思う。正直、器を見誤っておったかもしれない、と。 黄蓋の口調だと最後は【おったかもしれんな】も良いかもしれません
>>ニマリ、と歪む口唇を自覚する寸前、 間違いではありませんが
○ニマリ、と歪む口元を自覚する寸前、 の方が良い気がしますね、口唇だと色っぽい感じがするので誘惑する場面だとピッタリな気がします

パワハラは要はいやがらせですからねえ、無茶な仕事を割り振るという意味ではこれも立派?なパワハラと言えるでしょう
オッパイへの愛が迸ったせいかなんかやたらと長くなった誤字修正があるような…気のせいですね
黄蓋たちからしたら好色な青年がついに自分たちを毒牙にかけるか、と思って付いて行ったら機密一杯の場所で軍人として働けと言われたでござる、と言う
しかも自分はともかく陸遜の情報なんて0のはずなのに…なにこれ怖い
そしてサラッとボッチにされる孫権、あれ、離間の計?自分はただの人質で一緒にいた二人はお仕事(重要)を任せられてるとか澱んじゃうよね

>>335
修正あざっす

>立場上断れないからパワハラはこの場合何か違うような。うまく言えませんが。
これはあれですね。
優越的地位の乱用ですね

>蕪は趣味と実益でスパゼネをコツコツとそれなりに(総会前に御挨拶来るレベルww)
すごいじゃないづえさー!
大株主!富豪キタコレ!

>ただ、蕪屋の営業がウザイ。塩漬け前提なんで。
一ノ瀬も塩漬け配当目当てですが多分桁が違うっすw
ネットだけのあれこれなのでw

>さて、黄おっぱいと陸おっぱいは紀霊に食べられるかな?注目
美味しそうに実っておりますがw

>>336
>二郎ちゃんが傍から見たら仕事してますね
雨が降りますねw

>パワハラは要はいやがらせですからねえ、無茶な仕事を割り振るという意味ではこれも立派?なパワハラと言えるでしょう
優越的地位の乱用と言う方が合ってるなあと思いました
なお、現代社会においても解決されていない模様  ○菱の糞が

>黄蓋たちからしたら好色な青年がついに自分たちを毒牙にかけるか、と思って付いて行ったら機密一杯の場所で軍人として働けと言われたでござる、と言う
間違いなく覚悟完了してたのですよねw

>しかも自分はともかく陸遜の情報なんて0のはずなのに…なにこれ怖い
怖すぎですよねwでも現代人からしたら陸遜とかいう大都督w

>そしてサラッとボッチにされる孫権
流石に孫家二の姫をこきつかうとまずいかなーくらいの心胆w

>>337

>塩漬け配当目当て

あ…そかそか配当忘れてた。祖父の代からの相続分に20ン年間買い増しでいつの間にか増えたからなあ。

>大株主

うーん。総発行数に対して比率4%行かない位ですよ?私個人で動議出しても否決されるレベル。 ついでに毎年確定申告は 必須だし配当金は税金と 蕪屋の手数料に消えてますwwwwww

>優越的立場の乱用

黄蓋さんは当てはまるが 陸遜さんは何か喜々として始めているからどなんだろ?
ちなみに恋姫時空では陸遜さんは新しい情報に触れると発情するらしいが…

>孫権さんぼっちww

お姫様はお姫様同士、まずは外交ルート構築が必要でしょう。


という事でプリンセス外交に奮闘する孫権さん見たいです(希望)


最後に二郎さん。鋳造は実用化されてる?

>>338
>あ…そかそか配当忘れてた。祖父の代からの相続分に20ン年間買い増しでいつの間にか増えたからなあ。
一ノ瀬はまだ十年もやってませんからw

>うーん。総発行数に対して比率4%行かない位ですよ?
いやいやいやいや
十分すごいと思いますよw
蕪屋さんが来るとなるとやはりそのレベルなのだなあと

>黄蓋さんは当てはまるが 陸遜さんは何か喜々として始めているからどなんだろ?
そら嬉々とするとか想定外っすよw

>という事でプリンセス外交に奮闘する孫権さん見たいです(希望)
孫権さんハードですけど頑張ってもらいましょう


>鋳造は実用化されてる?
web恋姫に鍛冶場があるということで、鍛造もあるという前提で運営しております

 陸遜は若いながらも将来を嘱望される智謀の士である。のほほんとした人柄のがその才気を隠しているが、その智謀は切れ味鋭く、思慮は深い。
 彼女が袁家へ派遣される人員――人質となることについては彼女本人の意思もあったのだが、周瑜の強い推挙があった。だが、これには反対意見も根強かった。陸遜という人物はまだこの頃それほど声望は高くない。
 よしんば周瑜をよく補佐しているとは思われても、それだけである。そのような若輩者を派遣すれば、袁家を軽んじているということになりはしないか。ここは周瑜が赴くべきであろう。
 一時はその意見が大勢を占めたのである。孫家は江南で首魁的な地位にあると言っても、あくまで地方豪族のとりまとめでしかない。だから彼らの意見――孫家の頭脳たる周瑜を遠ざけてしまおうという魂胆――を無視することはできない。
 それを救ったのは魯粛の一言だった。

「紀霊さんって、きつい女の人、あんまり好きじゃないんだよねー」

 この一言で陸遜の派遣が決定づけられたのである。ちなみにこれは完全に虚偽である。紀霊の好みはキツメの美人であるのだからして。
 それはともかく、魯粛は周瑜と語ったものである。

「魯粛殿、お口添え感謝する」
「だってさー、周瑜さんがここを離れたら孫策さんを抑える人がいなくなっちゃうじゃん。
 あの人を抑えられるのって、黄蓋さんか周瑜さんくらいでしょ?
 二人ともいなくなったら何がどうなるか分かったもんじゃないよー」
「ふふ、反論できんのが情けないことだ」
「それに実務面でも相当困ったことになるしねー。
 まあ、豪族の皆さんとしてはその隙に乗じたいんだろうけどねえ」
「慧眼恐れ入るよ。いや、お恥ずかしい限りだ」
「私としてはよくこれだけ逆風の中で江南を押さえきっているというのが驚きなんだけどね」

 打ち解けた口調、おどけた仕草。和やかな空気の中、互いに視線一つ、口調一つで牽制し合う。江南出身の両者は対照的であった。片や孫家の頭脳、片や孫家の利権の代表者。
 この場に紀霊がいたら背丈であるとか肌の色であるとか胸部装甲についてツッコミを入れたであろうなあなどと魯粛は緊迫する空気の中で思う。余裕があるのは別に優劣が故ではない。単に前提条件が違い過ぎるのだ。いわば金銀飛車角落ちで対局しているようなもの。
 それでも真っ直ぐに立ち向かう周瑜の精神力。それを魯粛は内心賞賛する。だからといって手加減をすることはないのだが。
 そして陸遜は二人の会話に割り込むことはできなかった。まだ、まだ足りない。まだこの二人のいる高みに自分は至っていない。だがいずれは。その思いは強い。そして袁家へ赴くことは自分にとって転機となる。そう確信していた。
 ……孫家は危機を乗り越え、江南での地歩を固めている。一般的にはそう認識されている。一面ではそれは正しい。が、実のところ危ういというのが周瑜と陸遜の共通認識。
 かつて江南は深刻な食糧難に襲われていた。未曾有の飢餓、である。未来のための種籾すらその日の飢えをしのぐために費やされた。そこで起死回生の一手として黄蓋が袁家を頼ったのである。
 孫堅というカリスマを失った直後でもあり、非常にリスクの高い一手であった。結果として袁家からの援助を引き出すことに成功はしたのだ。それは、いい。願ってもないことだった。だがそのことが周瑜や陸遜の頭を悩ませることになったのである。幾度となく周瑜と陸遜は語り合ったものである。

「分からん。こちらから助けを請うておいて、なんだが。袁家がここまで手厚く援助してくれる理由が皆目見当もつかない」
「そうですねぇ。孫家への援助というよりは江南全体への援助です。
 それも、破格の」
「北はいい。公孫賛殿は袁紹殿の旧友だ。また、匈奴への備えということもある。
 だが、江南へ袁家が投資する意味が分からない」
「張紘さんや魯粛さん、虞翻さんに顧雍さんは確かに江南出身ですが、公私混同をする方々でもありませんし」
「うむ……」

 どうせほっといても孫家が勢力を伸ばすのだから、恩を売って取り込んでしまえ。などという紀霊の雑な思惑を読める者がいたらそれは間違いなく人外か狂人の類であろう。
 孫家の今の地位は袁家の後ろ盾あってのことである。であれば、その地位を奪うには袁家の、極端な話紀霊の歓心を買えばいい。そう、豪族達が思うのも自然なことであった。
 そしてそれを周瑜と陸遜は正確に読んでいた。
 読んでは、いたのだが。

「……打つ手、なし、か」
「江南の復興で手が一杯ですしぃ。
 そちらの手を抜くと本末転等ですからぁ」
「うむ、それこそ統治機能なし。と孫家を見限られてしまうことになるな」

 答えなど出るはずもなく、二人して溜め息をつくのが常であった。
 であるから、袁家への派遣が決まってからの陸遜は勤勉であった。呂蒙への事務の引継ぎをこなしつつ、情報を収集する。

「彼を知り、己を知らば百戦危うからず」

 孫子の一節である。余りにも彼の情報が少ない。何を意図して孫家を助けるのか、その判断材料がない。だから、知らねばならない。その心根を、その根底を。

「うーん、正直私にもよくわかんないんだよねー。
 でも、袁家では紀霊さんの道楽ってことになってるよー。
 なにせ、うちの商会そのものが紀霊さんの道楽扱いだからねえ。
 まあ、おかげで好き勝手できるのだけども、ね」

 陸遜の問いにそう言って笑む魯粛。そしてこれだけの規模の商会が道楽扱いというのに陸遜は目眩を覚える。実際には賤業として見下されているという面も大きいのではあるが、そこまでは流石に思い至らない。
 ただ、袁家領内では江南への援助は大きく二つの見方があるようである。黄蓋が訴えた江南の窮状に胸を打たれたという見方。
 もう一つは、単に黄蓋の色香に迷って紀霊がほいほいと手を差し伸べたというものである。前者は英雄譚を好む庶人に、後者は多少なりとも紀霊を知る士大夫にそれなりの説得力を持って受け入れられている。
 それでも。袁家領内の大多数にとっては、江南がどうなろうと知ったことではないというのが実際のところなのであろう。陸遜はそう結論づける。きっと、紀霊が勝手に自分の財産と人手を使って何かしている。それくらいの認識なのであろう。
 そして陸遜は紀霊の情報を集め続ける。逸話から風聞、果ては商会に出される命令書まで入手し、その書式から、筆跡から少しでも彼を理解しようとする。そして袁家内部の情勢を知れば知るほど、彼一人の独断で江南への援助が行われているというのが明らかになる。
 で、あるならば。
 彼を理解し、その思考を辿ることで答えが出るだろう。
 彼を理解し、その嗜好を探ることで彼の歓心を買えるだろう。
 
 それは、もはや恋着と言ってもいいくらいの執着であった。

「くふ、ぅ……」

 既に日課となった思索に耽る。目の前には可能な限り集めた紀霊の資料、紀霊の出した指示、書類。幾度となく読んだそれらに目を通す。風説から、指示の傾向から、筆跡から。
 ありとあらゆる資料を手に取りながら、紐を解く。紀霊という男の紐を解く。
 未知の書物を読むような、難解な暗号を解読するような、そんな興奮が陸遜を包む。既にその身は火照り、江南に珍しい白い裸身は紅に染まっている。
 知らず、白魚のような指がくちゅり、と水音をたてる。
 視線は宙を彷徨い、意識が遠くなっていく。雑念が飛んでいく。
 高ぶる身体とは対照的に、思考はいよいよ冷め切っていく。火のように燃え盛る身体、氷のように冴え渡る思索。炎と氷を併せ持つ。それが陸遜という希代の軍師であった。
 悦楽に翻弄されればされるほどに、思考は研ぎ澄まされていく。やがて辿り着く恍惚を繰り返すほどに、思考すら超越した解が脳裏に弾けて消える。頂を越えるほどに、それに手が届きそうになる。忘我の果てに掴んだそれは、目覚めと共に去るのが常であった。
 それでも、日ごと、夜ごとにつかめそうな気がしている。陸遜はその稀有なる脳髄の全てを振り絞り、紀霊という名の書物を読み解こうとしていたのである。本末と主客は転倒し、その中で陸遜は陶酔する。
 周瑜が後継者と認めるほどの天賦の才。異なる世界では三国に冠する英雄に死をもたらすほどの智謀の冴え。その全身全霊を持って、彼女は、紀霊に恋焦がれるようになっていたのである。



「いらっしゃっせー」

 そしてその出会いは突然で、あっけなかった。南皮の城門を潜り、昼食を終えたあたりで一人の男が声をかけてきたのである。瞬時に警戒する孫権。のんびりと視線をやる陸遜。そして、歴戦の武人たる黄蓋は。

「なんじゃ、おぬし自ら出迎えか。
 もう少し勿体ぶらんとありがたみがなくなるぞ」
「いや、歓迎してる証と思ってくれよ。しかし相変わらずけしからんおっぱいだな。
 目の毒、目の毒」

 そう言ってやにさがる男は傍目にもだらしなかった。しかし、陸遜はそれどころではない。これまで恋焦がれていた男が突然現れたのである。
 だから。目で、耳で、可能な限り紀霊の情報を受信する。蓄える。味わう。
 紀霊の視線が自分に突き刺さる。遠慮のない視線が自分の身体を嘗め回す。陸遜は歓喜に打ち震えながら、男の思考を、嗜好を探る。

 足りない。視覚と聴覚では足りない。触覚で、嗅覚で、味覚で。
 五感の全てをもってこの男を味わいつくしたい。味わわなければ。どろどろとした欲望が陸遜の身体を灼く。嗚呼、つまり。
 自分は、この男に抱かれなければならない。一つにならねばならない。男女が分かり合うにはそれが一番手っ取り早い。

 まだ、まだ駄目だ。冴え渡る頭はあくまで冷静に判断する。自分は所詮無名の士である。
 この男に認められるのが先だ。容色と肉体についてはいささかの自信がある。が、それだけではこの男は心を開かないであろう。色仕掛けなど慣れきっているはずだ。
 いかにしてこの男に自分を刻み付けるか。火照った身体を持て余しつつ、あくまで陸遜の思考は澄み切っていた。

本日ここまですー
陸遜さんと言えば本読んだら発情するという特殊体質でしょう
孫家未来に生きすぎだと思いました

今回の題名を募集いたします
仮題としては「陸遜という女」くらいですがしっくりきてません
奮ってご提案くだしあ。
おひとり様何案でも結構です


次回は地味様の憂鬱予定

乙。

>>340

「主客転等」→「主客転倒」
>>341でちゃんと記載されているので勿体無いです

タイトル案
『凡人に焦がれる陸遜(おんな)』


相変わらずセンス無いな(頭抱え)

乙でしたー
ペタペタ
>>340
>>のほほんとした人柄のがその才気を隠しているが、
○のほほんとした人柄がその才気を隠しているが、
>>「私としてはよくこれだけ逆風の中で江南を押さえきっているというのが驚きなんだけどね」 接続詞に違和感があります
○「私としてはこれだけの逆風の中で江南を押さえきっているというのが驚きなんだけどね」  が自然な感じがします、多分
>>そちらの手を抜くと本末転等ですからぁ」
○そちらの手を抜くと本末転倒ですからぁ」
>>情勢を知れば知るほど、彼一人の独断で江南への援助 一人と独断が意味が重複してるので
○情勢を知れば知るほど、彼一人の判断で江南への援助 もしくは 情勢を知れば知るほど、彼の独断で江南への援助 でしょうか
>>341
>>江南に珍しい白い裸身は紅に染まっている。  裸身・・・素っ裸なの!?お前読解と自慰とどっちに重き置いてんのよ

読み解く女が読み解けない男。 とか?うん俺は人の粗探しは出来ても自分で何かを作ることはできないと再確認した
陸遜による読解、難解、誤解。 とりあえず二つほど案を出しておいて
二郎ちゃんの凄いところは凄い人を上手に使いこなすところ、実態はともかく周りからは有能な怠け者に見える名司令官っぷり

>>345

本末転倒。でしたね
要らん事はするもんではない(反省と自戒)


二郎さんと恋姫キャラの 未来の子孫が某「不敗の魔術師」?
イヤだって、共通項結構多いよ。

>>344
>凡人に焦がれる陸遜(おんな)
いい感じやと思います
検討さしてくださいませ
しかし、言葉を捻りだすのはマジでセンスやなあと思いますわ

>>345
>裸身・・・素っ裸なの!?お前読解と自慰とどっちに重き置いてんのよ
体質ですからね、仕方ないね
読解してたら、もう辛抱たまらんというか、辛抱するつもりもないというか

>読み解く女が読み解けない男。
読み解く女、がシンプルでいいかもですね。やはり他者の感性というのは大事だなあと思います

>二郎ちゃんの凄いところは凄い人を上手に使いこなすところ、実態はともかく周りからは有能な怠け者に見える名司令官っぷり
使いこなすというか、丸投げというかw
これも生まれがよかったからでしょうね。底辺から伸し上がるモードだと中々難しいでしょうね

>>346
>イヤだって、共通項結構多いよ。
共通項……言われてみればw

>治水と水利を対策すれば 温暖な分巨大食糧庫に化ける可能性を秘めているし。
二期作二毛作万歳な土地ですからねえ
三国時代は人口が少なくて人狩りまでしてましたが

>ただこれ莫大な費用と期間掛かるんですよね……
使い道に困る財源があるじゃろ?

>この辺りなら孫家と魯粛さん達でやれるか?
多分大丈夫だと思います
内紛にリソースがどれだけ割かれるか、次第かなー

使い道の困る財源…1万人の追加兵のことかー!!(それだけではありません

使い道の困る財源…

商会からの運上?
つか母留流九商会の売上規模が想像つかない。
まあ、訳の判らん特殊法人作らんだけ真面目な人々が多い世界。だね


そういえば商会にも私兵五千配置されてますが、試しに幾らか甘寧さんに預けて水軍と水運も仕込んで貰うと物流の幅が広がるような(机上の愚考)

そのまま取り込まれないかが心配だな
外側から見れば圧倒的に袁家>>孫家だけど一緒に訓練して同じ釜の飯食って小覇王様の覇気を身近で感じたら一般人は孫家に傾くかもしれない
孫策だったらなんとなく内政よりも調練しまくってるイメージ

今気づいた お尻様が完全に目立ってないww
同じく陸家ってあんまり外史では目立ってないわけか

俺もタイトル考えた「想い着く先」

>>349
熱烈歓迎であります

>>350
>訳の判らん特殊法人作らんだけ真面目な人々が多い世界。だね
一番不真面目なのは二郎ちゃんです
実際、張紘君とか私欲には全く興味がないという不可解さ
人格が高潔すぎやしませんかねえ

>そういえば商会にも私兵五千配置されてますが
使い道は決まっておりますのです

>>351
>小覇王様の覇気を身近で感じたら一般人は孫家に傾くかもしれない
それをさせないために珠玉の人材を派遣しております
実際魯粛、顧雍、虞翻あたりは普通に漢朝の重責を担うレベルですしおすし

>>354
>お尻様が完全に目立ってないw
目立たないことで目立つ。そういうのもあるのです

あと陸遜にスポットが当たる恋姫二次って中々ないと自負してます!

 いつもは一つに括っている髪を今日は下ろしているので、何か落ち着かない。いや、落ち着かないのは髪形だけじゃない。今日の衣装、派手じゃないかな……?
 公孫賛は視線を泳がせながら、それでも胸を張り場に立つ。ここは戦場。血の流れない戦場。
 宴席と言う名の戦場に、公孫賛は立っていた。

 さて、袁家が北方の最前線から兵力を――それも精鋭を――引き抜いたという事実。それは当然最前線にて匈奴と向かい合う戦力に不安をもたらすものであった。
 そのことを放置するほど袁家は無責任ではなかった。いや、北方を守護する漢朝きっての武家という矜持がそのようなことを許さない。では、どうするのか。答えは簡にして単。

「外注(アウトソーシング)しかないじゃん」

 手元に集った兵力の充実、そして北方の戦力の不足を突き付けられた紀霊は事もなげにそう言い放った。段取りだけかまして、実務と後処理を押しつけてくる先達のご丁寧な指導(かわいがり)については、盛大に絶叫していたようだが。
 足りないならば、あるとこから引っ張ってくる。当然の帰結。そして紀霊が選んだのは公孫賛であった。騎兵を以って匈奴と伍し、その人格は誠実にして実直。その言動に裏表はなく、あくまで正道を選ぶ。袁紹や紀霊とも親しく、委託先としては申し分ない。ないのだが、足りない。実力はともかく声望と実績が足りないのだ。
 だから、こういう場で立場を好転させねばならない。それが派閥の領袖としての役割。向けられる助平な視線や、ちょっとしたお触りくらいどうということもないのだ。



 「阿蘇阿蘇?」

 訝しげな公孫賛の問いに紀霊は重々しく頷く。まあ、紀霊がこういうもったいぶった時ほど、口にするのはくだらない案件であったりする。流石に幾度も振り回されていれば免疫もできようというものだ。

「確か雑誌……だったっけ?」
「おう、情報発信誌というやつだな」

 丁々発止のやり取りの後に室に招き入れられたのは琥珀色の髪を束ねて、悪戯っぽく笑う少女だった。そばかすと眼鏡が彼女の陽性の魅力を引き立てている。
 そして、彼女の誘導によってあれよあれよという間に公孫賛は着せ替え人形と化したのであった。

「いや、これは流石に胸元が開きすぎじゃないか?それにこんなに派手な色使いはちょっと……」

 気後れする公孫賛に于禁は笑いかける。

「大丈夫なのー。公孫賛様は元がいいから、磨き甲斐があるのー。
 今日の主役、は流石にまずいけど……いい感じに仕立て上げるのー」
「まあ、そこは一任するさ」

 そして于禁の熱意とセンスが公孫賛に襲い掛かったわけである。


 さて。今回の宴における公孫賛への注目度は低くない。むしろ、高いと言っていいだろう。袁紹と真名を預け合い、紀霊からは有形無形の援助が注がれている。果たしてそれだけの価値があるか否か。目先の効く者は公孫賛を品定めしようと視線を向ける。

 そして、宴席の主役は金色を基調とした豪華な衣装に身を包み、艶然と笑む。左右に大戦の英雄である田豊と麹義を従える図は圧巻ですらある。さらに後方には沮授と文醜、顔良が控える。

「なんだかなー」

袁家の隆盛を目の当たりにして、溜め息が漏れそうになる。人、物、金。紀霊が言っていた、組織を運営する上で重要な要素をとんでもなく高い水準で備えている。つくづく、圧倒される。

それでも、今の自分にできることを最大限にやるしかないのだと公孫賛は気合いを入れなおす。そして目前の相手と談笑を続ける。常ならば相手にされないことも多いのだが、今日は違う。于禁の選んでくれた衣装のお陰なのだろうか。いつもより身体を嘗め回すような視線を多く感じる。
まあ、それで私に興味を持ってくれるなら安いものだ、と頬に貼りつかせていた笑みを更に深めていく。そう。小なりと言えど派閥の領袖なのだ。だからまあ、多少尻を触られたり密着されたりするのも我慢我慢、我慢の一択なのである。

「つ、疲れた……」
「まあ、今日は頑張ってたよなあ」

 ここは公孫賛に宛がわれた一室。大きく肩を落とした公孫賛を紀霊が労っている。或いは、からかっている。だが、その戯言にも似た労いに公孫賛が癒されているのも事実である。

「いや、二郎には世話になったよ」
「んなことないって」

 ひらひらと手を振るこの男には、実際助けられたなあと思うのである。
 なにせ雅な宴なぞとは縁のない粗忽ものである。要所要所での助言には実際助けられたのだ。
 曰く。宴席中はそんなに料理をがっつくなとか、今日は綺麗系の装いだから歩幅は縮めろとか……。綺麗系と言われて胸が高鳴ったのはきっと気のせいである。何せ普段、地味とか普通とかしか言われないのだからして。
それでも、まあ、嬉しかったのは認めないといけないだろう。だが。

「でもなあ、惜しいことしたなあ。あんなに豪華な食事、うちじゃあ目にすることだってないもんなあ」

 未練がましくぼやく公孫賛に紀霊は苦笑する。花より団子、とはよく言ったもの。だが、花が団子を所望するとはこれいかに。


「ほら、燕の巣の汁物だ。多分今日の宴席では一番価値があるな
美容にもいいらしいからな、たーんとお食べ」

 そう言う紀霊がいつもどおりで、ちょっと甘えてしまう。うん、お酒のせいだ。そうに違いない。

「袁家はすごいよなあ。
 料理一つとっても、うちじゃあこうはいかない」

埒のあかない愚痴。或いは弱音。

「どんなに私が頑張ってもさ、袁家が隣接してると見劣りするみたいなんだよな
 地味だとか。普通だとかさ」

 我ながら愚痴っぽいなと自嘲する公孫賛は聞こえる笑い声に憤慨する。

「二郎……。笑うことないじゃないか!」
「いや、そうじゃない、そうじゃないんだ。
 まずアレだ。白蓮はよくやってるって。田豊様も麹義のねーちゃんも褒めてるぞ」

想定外の有名人、その有名人の自己への評価に公孫賛は目を白黒させる。

「それにまあ、嫌になったらいつでも俺んとこ来いって」
「何だ?養ってくれるのか?」
「逆!俺の仕事全部白蓮にやってもらって俺は隠居するし」
「はあ?そんなこと出来るわけないじゃないか。というか私に二郎の代わりなんて出来るか!」

その言葉を受けて紀霊がにんまりと笑顔を浮かべる。うわ、うざい顔だなあというのが公孫賛の率直な感想なのだが。

「同じだよ、俺に白蓮の仕事なんてできないさ」

 だから今後ともよろしくな、と笑う紀霊に公孫賛は苦笑する。今後ともよろしくしてほしいのはこちらだというのに、だ。

「二郎が私に何を求めてるかは知らないけどな、きちんと借りは返すから、さ」

 まずは目の前の料理をありがたくいただくことにする。

「おかわりもいいぞ」

 余計なことを言う男には肘鉄が相応しいであろう。そして大仰に痛がる彼との絡みは公孫賛が思うより長く、深くなることになるのである。

本日ここまですー
感想とかくだしあ

後一つくらいエピソード投下したら暫く更新ないです
なろうの方をやります

今回のエピソードも題名募集します

地味様の○○

他、いいのあったら嬉しいなって

乙でしたー
地味様可愛いよ地味様
>>356
>>目先の効く者は公孫賛を品定めしようと視線を向ける。
○目先の利く者は公孫賛を品定めしようと視線を向ける。

私が取り込まれるかも、と言ったのは商会の私兵を甘寧さんに預けてみたら、と言う>>350さんへの私見ですよ
地味様が3割増くらいで輝いた名場面ですね、有名家臣がいないのに最前線で普通に領主やれる地味様は有能(確信
タイトルは…地味様戦場に立つ。とか、閑話・地味様奮闘記【おめかし編】とか?微妙だな

乙です。


……ジャンルは違うけど 某アイドルの「普通」と 同じレベルの証明された 公孫賛の回の巻
隣に超絶美人やら超大企業やらがいたらそらハイレベルでも地味に見えます。

陰の功労者は沙和。つか 一目で素材の良さを見抜く眼力はさすが。
つか「本日の主役」にしても良かったのに。
その程度でどうこうなるなら、袁昭の器も袁家の器もそこまで。


……で、領主である所の 公孫賛を酌婦か何かと莫迦にしているセクハラくそったれ共にトマホークなりRPGなりぶっこんでも構わないですよね?
まあ二郎さんは役得ですが。

タイトル案
『地味の仮面を外した女(ひと)』
『地味様レベルの違いを 魅せる』
『地味から開花した白き蓮』


……あうう(頭抱え)

>>360
いつもすまないねえ……

>地味様可愛いよ地味様
地味様はほんと可愛い
何故実在してくれないのかと吠えるレベルで可愛い

>>361
>陰の功労者は沙和。つか 一目で素材の良さを見抜く眼力はさすが。
多分地味様を見ながらきゅぴーんとか効果音が鳴ってたと思います

>つか「本日の主役」にしても良かったのに。
反逆の沙和っすかw
まあ、色々制限あって素材が極上とかいうシチュエーションは沙和、燃えるでしょうw

>……で、領主である所の 公孫賛を酌婦か何かと莫迦にしているセクハラくそったれ共にトマホークなりRPGなりぶっこんでも構わないですよね?
そういうのがまとまって群れているのが袁家の原作だと思います
だって軍師一人すらいないですからね!多分そういうのを切り離して袁家を浄化しようとしていたのでしょう、原作の袁家の三人は

>まあ二郎さんは役得ですが。
ほんとこれっすw

タイトルはほんと参考にしております


そして、なろうの方の更新はじめました

了解です。

……つか「なろう版」も ブクマで抜かり無し(ぼそ)


所で、某処とのお付き合いでサッカーのスタジアムシーズンシートを購入したのですが……
スタジアムでの観戦作法 てググった以外に何かあります?
サッカーて全く観た事無いですよ。
野球はまあこれもお付き合いで2チームばかし毎年シーズンシート購入しておりますが。

>>363
>……つか「なろう版」も ブクマで抜かり無し(ぼそ)
ありがてえ……ありがてえ……

半年ぶりくらいの更新なのに結構なPVあってありがてえなあと思いました
今日も更新するやで

>所で、某処とのお付き合いでサッカーのスタジアムシーズンシートを購入したのですが……
お、おう(白目) 蹴球への出資ありがとザンスw

>スタジアムでの観戦作法 てググった以外に何かあります?
いや、正直チームによると思いますがゴール裏以外なら特に縛りないと思いますよ
個人的には試合前にタオルマフラーを皆で振り回す鹿スタの応援が大好きですが
そして、こう、階段を上ってピッチが見えた瞬間が好きですね

後個人的には、誰か一人を視線で追いかけたりするのもいいかなあと思ったりですね。
まあ、ひたすらスタジアムグルメを堪能するのもありと思いますがw

yes!フォーリンデブ というブログで公式食べ歩きをされてますのでご参考くださいな
鹿スタならおススメできるんだけどなー!かー!鹿スタならなー!

なお、転勤のため鹿スタは通えなくなってしまいますw

>野球はまあこれもお付き合いで2チームばかし毎年シーズンシート購入しておりますが。
野球はTV観戦組ですねえ
現地行ったらビール呑んで野次飛ばす関西のおっさんスタイルになります
が、面白い野次はほんとうに面白いんですよねえ(日生球場感)

更新キタ!

>蹴球への出資
……チーム名は控えますが、長居の桜ユニフォームとは小口ですが長いお付き合いです。後京都の紫も立ち上げ当時からの お付き合いです。後方支援的にチケットを大量買いしたり後援会にも大口加入したり位ですが。
両チームの営業さんとは 良いお付き合いさせてもらっております。

日生球場を御存知とは。ちなみに私「大阪」「藤井寺」「日生」「西宮」球場でリアル観戦世代ですが。
……関西の電鉄蕪は球団売却で優待分以外は売っ払いましたが(白目)

観戦アドバイス感謝です。営業さんに「何も無いですから!治安は保証します!」と散々言われても怖くて行けなかったけど、一ノ瀬さんのレスで 勇気でました。


……鹿島かあ。凡将伝キャラの武運長久祈願がてら……フーリガンいない?(スタジアム観戦しない理由)

あっち短いけど更新しました

>>365
>……チーム名は控えますが
いや、自重ありがとうございましたw 見に行く試合にどっかで同席してそうですねえw

>日生球場を御存知とは
実家からは見える範囲ですたよw
わが青春の藤井寺

なお、心酔したのは甲子園の三連発w

>営業さんに「何も無いですから!治安は保証します!」
実際サッカーは平和っすよw
野球ではあるような野次でも問題になるくらいっすわw

>フーリガンいない?(スタジアム観戦しない理由)
フーリガンはいません(断言)

欧州のアレに比べたらお上品なもんですよ。
ゴール裏とかでもない限りカラムこともないですしね

吹田スタジアムには参戦しようかなあと思っております
後は岡山とか四国かなあ

J2の試合にはクリスタルな才能の本山選手を観戦しに行きます

あっちでの更新乙です

にしても「絡新婦」で「じょろうぐも」なんて知らないと読めません
凡将伝のおかげで一つ賢くなりました

久しぶりに覗いたら双子弟さんのログが過去ログになってた。残念

>>367
>にしても「絡新婦」で「じょろうぐも」なんて知らないと読めません
マジっすかと思ってルビ振ろうとしたけど題名は無理だったでござる

京極世代だからね、仕方ないね

>>368
マジすか

自分で精一杯であちこちチェックできてないからなー
残念無念また来年

こちらもきちんと完走できるよう頑張ります

なろう版更新乙でした。
>吹田スタジアム

関係者内覧会で見た限り設備面は良い印象(当たり前だ)
ただド素人故選手やクラブ関係者の使い勝手はどうなんだろ?
尚吹田スタジアムに自動車で来るなら、時間の余裕だけはしっかり取って下さい。関係者内覧会ですら帰りに渋滞ありました。
……道路を使わない交通がモノレールだけというのもなあ。新幹線やJR利用者は混雑さえ耐えられたら、地下鉄で座れるから良いけど。

>絡新婦
私も読めませんでした(苦笑)
辞書引きました。


どこかのスタジアムで場違いなスーツ姿で応援もせずにほけっとしてるおっさんがいたら私かも知れません。
多分応援に圧倒されてます。


……紀家には縁談話て持ち込まれないのかな。
当時の婚姻制度が良く解らないからなんとも。

三人娘の登場アップしました
過去一番ひどいサブタイトル。代案あったらオナシャス。もっとひどくなる方向で

>>370
>関係者内覧会で見た限り設備面は良い印象
内覧会かー行きたかったなーでも募金小銭だったからなあw

>尚吹田スタジアムに自動車で来るなら、時間の余裕だけはしっかり取って下さい。関係者内覧会ですら帰りに渋滞ありました。
フムフム、なるほどですね……鹿スタも渋滞すごいし、イベント時はしゃあないのかもですね
や、アクセスについての配慮は絶対必要だとは思いますのですが

>私も読めませんでした(苦笑)
初出絡新婦にルビふってみましたw

>……紀家には縁談話て持ち込まれないのかな。
火薬庫みたいな状況ですからね、持ち込む胆力ある人は分別あるので持ち込みませんわw
ほんま婚姻関係は袁家の火種やでぇ

なろう版最新話。真面目なのに爆笑した。

後「長ぇよ!」とツッコミたくなるタイトル。
ひどくなる方向なら
『三人娘。凡人に囲われる』
『凡人、地位権勢以て田舎娘三人手中にす』

嘘は無い(しれっと)


許可を戴きたい案件が
この作品の二次SS書いても宜しいでしょうか? 小ネタ集しか書けませんが。

>>372
>なろう版最新話。真面目なのに爆笑した。
真面目に馬鹿をやるお話というのは凡将伝のコンセプトです。
だからどうしたと言われたら困るのですが。
くすりとでもしていただけたら嬉しい限りですだよ。

>後「長ぇよ!」とツッコミたくなるタイトル。
最近のラノベに触発されてみましたのでこれから増えるかもしれません

>『凡人、地位権勢以て田舎娘三人手中にす』
これいいっすね
ちょっと加工するかもしれませんが

>この作品の二次SS書いても宜しいでしょうか?
いいっすよー
むしろウェルカムです!
今から超楽しみなんですけど!マジで!

乙です

モブと思ったら汗(ハーン)討伐吶喊とか捨て身のガチ精鋭だったでござるw
こういうモブ(棒)がいる組織は強いんだよなあ……

読んでてとてもワクワクしておりました。是非に続きが読みたいところであります。

しかし地味様は可愛いなあ……
地味様の可愛さが天元突破で実に嬉しかったです


一点だけ。
白馬的な地味様のアレについては本編でイベントを予定しておりますので、そこだけご配慮くださいませ

いや実際、楽しみにしております

そして流石の赤ペン先生である

>>380

お褒めの言葉、光栄です

>モブかと思いきやガチ
SSサイト全盛期によくこういうキャラを出していました。
紀霊さんの父上も、まさか一人で特攻はするまい じゃ、仲間が援護。
剣じゃその内斬れなくなる。
じゃ鈍器でぶん殴る。
ただぶん殴るのもつまらん。
よし、タコ殴りだ。

こんな感じです。


つか縁の下の脇役に興味を持つ変わった奴なので これからの作品にも地味様が霞む位の地味キャラばかりです。


>一点だけ注意
基本一ノ瀬様が投下した 話からネタ戴きますので 留意はしておきます。


地味様可愛い。この話の後日談で野郎ばかりのハーメルンが発生するつうのもありますよ?
つかサンプルの「私」なら地味様にセクハラかます莫迦たれ共を涼しい顔でタコ殴りにする問題児 でもあります。


因みにKOEIパラなら 武80他75つう
「うーん……」
な人。

引っ越し決まってweb環境がどうなるか分かりません
どういうことだ、ワグナス!
ちなみにワグナスって誰だよ!

>>382
ケータイでは見れるからスレ立てはよ……

袁家は武家にして漢朝最強。だから有望そうな人物が脳筋とかDQNとかチンピラとかアリと思います!
むしろ本編で一ノ瀬が書いてるのは相当お行儀がいい人らばかりやからね……

紀家で生き残りとかなったら、ヤザンとかサーシェスとかトロワみたいなガチばっかりだと思うので。思うので!
でも、ハマーン様は大好きです

最近鉄血の折るフェンス視聴しましたけど、ガチで面白いですね。流石サンライズですわw

>web環境
ポケットwi-fiやWiMAXを契約すればいいんやで

>>385
>ポケットwi-fiやWiMAXを契約すればいいんやで

どういうことだワグナス!
自慢じゃないがITには詳しくないぜ

頑張るよ

少なくともプランターでネギと紫蘇育成に奔走しますよ
それを応援してくれるんだったら、頑張りますよ勿論


エタしても怒らないでねw

なろう版、ひっそりと投下続いてますね。乙です

見解を伺いたい事が。
袁紹さんの誕生日イベントに登場した象。
どこから入手したのでしょうか?

袁紹さんの誕生日イベントのネタはものごっつい 書きたいんですが、そこだけ引っかかってます。

袁家か商会かはたまた売り込みか。
これだけでも御願いします。


……なんか大変そうですが、宜しければ御願いします。

送別会続きでしんどいっす
お仕事がてんやわんや

>>390
>袁紹さんの誕生日イベントに登場した象。

袁家ルートっすね
多分孔雀とかもいるんじゃないかな

そして象兵は浪漫ですよね……

おそ松さんを見て、才能というのは残酷なのだなあと思いました
何あの脚本、面白すぎやん……w
あんなん書ける人がいるなら日本の未来は明るいなと思います

自分にできることを頑張るだけなのですよね
いや、ガチでおそ松さんは面白いというだけのお話です

オソマツさんはすごいよね。ムツゴという個性潰れそうなキャラがそれぞれ個性持ちつつ全員クズキャラとか普通考えないわwww

>>394
いや実際、期待値は低かったと思うのですよ
声優の豪華さとかキャラ付も凄いですけど、個人的には脚本と演出やと思います
特に脚本

あんなんできひんやん普通!

と叫んでしまうくらい面白い
おそ松さんの評価をビジネス誌とか始めてますが、普通に面白いという書評がないのですよね
特異性に言及するだけで

いや、しゃあないねんやろうけどね。
サブ狩るを極めてる研究者とか、一人しか知らんわw
※ハルヒダンスをやるくらいのガチw

幻の第1話…デカパンマン…決してイヤミに頼りきりにならないストーリー。チャレンジ精神旺盛でこれぞギャグ漫画!!て感じよね

>>396
あれこれはっちゃけてるけど、それを原作に対するリスペクトがないと言う論は全くない
製作者のガチで綱渡りする気合いと覚悟が凄い

そして、赤塚先生なら絶対喜んでるやろという謎の信頼感
赤塚先生は絶対笑ってる(確信)

さて、これからまた書き溜めに入るのですが

書いたらこっちに投下と、書き溜めてからこっちに投下のどっちが嬉しいっすかね
現在進行形で進めた方がエタってないことが分かっていいかなあとも思うのですががが

どないしょかね

 さて、俺は美羽様のお守役である。のだが、その任をきっちりやっているかというと非常に疑問が残る。いや、一日に一回は顔を見に行ってるのよ?あやしたりもしてるんだが、いかんせん滞在時間が少ない。
 その点、七乃はほぼ一日中べったりだ。仕事すら持ち込んで美羽様の顔を見ながら書類と戦っているらしい。
 気を抜くと美羽様に見入ってしまい、手が止まるというのが本人の弁だが。まあ、一緒の部屋に居るというのが重要なんだろう。

 さて、その美羽様は現在、数少ない血縁である女性の胸に抱かれながらすやすやと眠っている。

「ほんとに大人しいですわねえ」

 うん、麗羽様だ。もったいぶる必要もなかったな。

「わたくしもこんな時期があったと思うと、不思議な気がしますわねえ」

 優しげな目で美羽様を見やる。なんともほほえましい光景である。執務の合間を縫って、麗羽様はできるだけ美羽様に会いに来ている。
 数少ない肉親というのもあるだろうし、袁逢様から託されたからというのもあるだろう。
 まあ、三国志において袁紹と袁術は仲が悪かったからなあ。そんなフラグが立たないように、麗羽様が来る時にはできるだけ同席するようにしている。
 美羽様を抱いた麗羽様と俺がだべって、時間が来れば名残惜しそうに麗羽様が帰っていく。こんな関係が続けばいいなあ。
 いやいや、続かせるのが俺の仕事っちゅう話だ。

「麗羽様は元気でしたからねえ」
「もう、覚えてないことを言われても分かりませんわ」

 頬を赤らめながら麗羽様が軽く抗議してくる。
 まあ、ちっちゃい頃の話をされても反論できねえしなあ。

「あら、美羽が目を覚ましましたわ。騒がしかったかしら」

 あ、ぁ、と軽く声を上げながら美羽様がふわふわと手を伸ばす。当然の帰結として、麗羽様の女性の象徴。豊穣の神を思わせるそれ……胸に手が当たる。
 手の動きに合わせて豊かな胸が形を変える。眼福、眼福。

「あら、おなかが空いたのかしら、ね二郎さん…ってどこを見てらっしゃるのかしら」
「いや、時の流れというのは実に偉大だな、と」

 あのつるぺったんだったちび麗羽様がなあ、と思うと感慨深いものがある。

「……なんだかとっても失礼なことを考えてませんこと?」
「とんでもない。今も昔も赤心に変わりはないですよ」
「もう、二郎さんは昔から……ってあら」

 みるみるうちに美羽様の表情が崩れていく、あ、泣くかな。

「あらあら、おもらしですのね。ふふ、可愛いこと」

 うろたえるでもなく、乳母が持ってきたおしめを受け取り交換する。最近では手馴れたものだ。
 うん、俺もよく麗羽様のおしめを取り替えたもんだ。
 知ってるか?赤さんのうんちって、臭くないんだぜ?母乳だけだからなんだろうな。ちなみに、離乳食を摂り出すと臭くなる。これ豆な。

「ほんと、赤ん坊って手間がかかるんですわね」

 すごく優しげな顔で麗羽様が呟く。再び美羽様を胸に抱えて、揺すり、あやす。
 この姉妹がいがみ合うようなことになってはいけない。そう、思う。

「二郎さん?」

 そう言って麗羽様が美羽様を俺に差し出す。
 美羽様が俺に向かって手を伸ばしてくる。

 美羽様を胸に抱きながら麗羽様と談笑する。幸せってこういうことなのかも知れないなあ。
 ふと、喪ってしまった未来に胸を痛めながら、俺はこの時間を噛み締めるのだった。

更新乙です
あっちでもチェックしてますよー

穏やかな時間の流れに慈母のごとき麗羽様
あいかわらずのヒロイン力

ところで麗羽様と美羽様の年齢差って如何ほど?
二郎と麗羽様が5歳差くらいで
麗羽様と美羽様が12歳差くらいかなと解釈してます

>>401

>穏やかな時間の流れに慈母のごとき麗羽様
夫婦かな?という感じですよねw

>ところで麗羽様と美羽様の年齢差って如何ほど?
想定されてるくらいなのだと思いますががが

恋姫については幼生体(インファント)と成体(エルダー)のみではないかなあと思っております。
恋姫は老いない。そんな感じのふわっとした感じで一つ。

乙です~

こっちではお久しぶりです~ww
個人的には、都度こっちで投下して貯めて向こうでが良いかと~

リアルお忙しいそうですけど、無理せずに~

乙でしたー
なんという穏やかさ
これなんかもう後日談みたいな空気だよ(笑)
麗羽様のオーラに母性が加わってさらに強化されてるwww
今回は特に添削ポイントはなかったかな…一ノ瀬さん、立派になって(ホロリ)

>>403
>こっちではお久しぶりです~w
どもです。お久でございまするるるる

>個人的には、都度こっちで投下して貯めて向こうでが良いかと~
やっぱそうですよねー^^
そうしようと思います

忙しいですけど、今がまだ楽なので。できるだけ進めたいなあと

>>404
>これなんかもう後日談みたいな空気だよ(笑)
ここで完でもいいかなとかw

>麗羽様のオーラに母性が加わってさらに強化されてるw
麗羽様のヒロイン力が、どんどん高まっていくんですけど……w


添削されないように頑張っております
つまり、酔いが足りなかったってことですね(お目目ぐるぐる)

「義勇兵、ねえ」

 第二回袁家実務者会議の最中に張紘から思いもよらない言葉が出てきた。

「ああ、そうだ。ちょっと問題になってきてる」
「どういうこった。話が見えないぞ」
「被害……と言っていいのかはわかんねえが、盗賊を独自に討伐してるらしい」
「つっても盗賊の被害なんてないに等しいだろうが」

 ……袁家領内の治安はかなりいい。これには理由が三つある。
 一つは食糧事情が非常にいいこと。餓えのあまり生きるために犯罪に走らざるをえないような人間が少ないということだ。昔から食糧増産に励んだ理由はここにある。人間、おなか一杯だったら大体おっけーなもんだよ。

 もう一つは母流龍九商会による黒社会の支配。どうしても真面目に働けないあぶれモノというのは出てくる。
 そういった社会の落伍者を救い上げるシステムとして黒社会が機能しているのである。私刑、粛清という恐怖により半端モノを締め上げている。規律への違反は峻烈な制裁によって裁かれる。それこそ表の司法機関より厳しいくらいだ。

 最後は法の厳格な運用と厳罰主義だな。流石に信長の一銭切りまで極端ではないが、かなーりの厳罰が与えられる。
 社会の光と闇の治安維持システム。双方から零れ落ちた社会のクズども。何かを産みだす事もせず、ただ社会に寄生し、害をなすしか能のない奴ら。そいつらの使い道は一つしかない。
「見せしめ」である。

 法を守らないとどうなるか、守っていて良かった。そう。法によって守られていることを庶人へと伝えるツールとして積極的に厳罰を与えているのだ。罪人、社会的不適合者も大事な資源です。有効利用しないとね。
 
「ええ、ですがゼロではありません。それに往々として後手に回ってしまいますからね……」

 軍の訓練がてらに賊の討伐は行われているが、広大な領内だ。取りこぼしだって出てくる。

「そうだ、それで自分らの手で……ってことらしい」
「ちょっと待て。武器や兵站はどうなってるんだ」
「武器は出所がわかんねえ。商会(うち)は通してねえ。食料は……各地で寄付を募っているみてえだ……」
「おい、それって……」
「ええ、実質は恐喝に近いでしょうね。村に武装集団が現れて寄付を募る。断れるはずがありませんから」

 ぎり、と歯軋りをする。
 食糧事情がいいからそこまで表面化はしてないが、これが飢饉の際なら場合によっては村落の存亡に関わるぞ。

「二郎君の華々しい活躍もあり、軍への入隊希望者も増えています。
 選抜に漏れた人を掬い上げて人員を確保しているのでしょう」

……耳が痛い話だ。プロパガンダが裏目に出たか。討伐もしづらい。だが放置もできん。厄介この上ないな。

「自治組織としての自警団ならまだいい。
 だが根無し草の軍事力が存在するというのは大きな問題だな」
「ええ、そもそも袁家の制御外にある武力があるというのはまずいでしょう」
「それを言われるとおいらも耳がいてえなあ」
「いや、黒社会は治安維持のための必要悪でもあるし、地域に根ざしている。
 そこにある思想はあくまで保守だ。社会が乱れると黒社会も困るしな。
 善良な民草あっての黒社会だ。その程度はわきまえてるだろ。
 商会の常備兵については実質俺の私兵だ。陳蘭が指揮官だしな」
 
 ……流石に陳蘭に裏切られたら泣いちゃう。みっともなく号泣する自信があるぜ。

「討伐しますか?」

 沮授がにこやかに問いかけてくる。曇りのないいい笑顔だ。……逆に怖ええよ。
 逆に張紘はしかめっ面だ。

「……とりあえずは保留だな。
 義勇軍を官軍が討つとか笑えねえだろうよ。
 まずは情報だな。最優先は指揮官と武器の出所だ。
 張紘、頼めるか?」
「もちろんだ。既に動いてる。二郎には張家への協力も頼む」
「……ああ。あんまり七乃に借りは作りたくないが、そうも言ってられないしな」

 ……味方になったらなったで厄介なんだよなあ。いや、敵に回したら勝てる気がしないけど。

「軍はどうします?」
「……入隊希望者が多いなら、こちらで掬い上げるしかないな。
 あくまで正統は官軍、更なる増員やむなし……。だが、予算は大丈夫か?」
「緊急に補正予算を組みましょう。ご心配なく」
「よろしく頼むぜ」
「ええ、任されました。明日中には予算を確保します」

 頼りになるなあほんと。一人じゃない。それはとても素敵なことなのだなあと痛感するのだ。知らず天を仰いだ俺を張紘はにやにやと、沮授はにこにこと眺めていた。

「ありがとな、親友達」
「よせやい、水臭いって」
「そうですよ。僕達の仲じゃないですか」

 ニヤリ、と笑い合い、拳を討ちつけ合う。この世界での俺の財産は前世知識とかじゃない。色々あって結べた、人との縁なのだと強く思う。思うのだ。
 いつも通り、この後滅茶苦茶飲み明かした。

蠢動編、開始です

「凡人と義勇軍」

直接対峙してないから時期尚早かなあ、このタイトル
タイトル案募集いたしまする

引っ越しなのです
しばらくネット回線とかどうなるか未知数です

>>415

そこまでなら、不動産屋に仮宿手配と同価格帯の 別物件探す義務生じますな。

物件自体の瑕疵ですからね。

場合によっては、弁護士沙汰ですかね。

お疲れ様です。



……所で、一ノ瀬さんぽいレスを頂いているのですが公式コメ重要なので コテ入れて頂けると有り難いです(勝手なお願い

タイトル案「放浪編 安住の地を求めて」

このスレに触発されて恋姫のゲームに手を出してみたけど、
どうも鈴々とかのロリ系はストライクゾーンから外れているようだ
バインバイン系以外のR18シーンは飛ばしてストーリーを追いかけてみる

てす

復活の一ノ瀬でございまする
明日から完全復活します
やったぜ、ネット開通したし、ガス漏れもなくなった!

>>416
宿代請求の咆哮です

あっちの案件でのコメントはあっちでやらせていただきます。
明日。

>>417
>タイトル案「放浪編 安住の地を求めて」
追放前提っぽいんですがそれはw

>>418
>このスレに触発されて恋姫のゲームに手を出してみたけど
二次創作やってる身としては一番の褒め言葉ですわ
ありがとうです!
つか、恋姫知らなくて読んでくださってあざっす!

>どうも鈴々とかのロリ系はストライクゾーンから外れているようだ
>バインバイン系以外のR18シーンは飛ばしてストーリーを追いかけてみる
そんな性癖晒されたらこっちも晒すしかないじゃない

お世話になった(意味深)恋姫たち

無印:愛紗、翠
真:シャオ、翠
萌:七乃

萌の袁術主従の優遇っぷりはすごいと思いました

 端的に言って、孫権は不機嫌だった。もちろんそれを態度に出したりはしない。この身は江南の平和を担保する人質だと孫権は理解している。袁家の、いや。あの男の機嫌一つで江南は焦土と化してしまうだろうことを理解している。……納得できるかどうかは別問題であるのだが。
 そして、農耕馬どころかわが子すら生計のために犠牲にせねばならなかった民の惨状を思い出す。それを考えると南皮は別世界と言っていいだろう。市場には物があふれ、民の顔には笑顔がある。子供は一日中遊び、婦女子は装身具や化粧に気をつかう。男達は夕暮れには酒を酌み交わし、笑いあうのだ。

 訳もなく悲しくなって、眠れぬ夜を幾度も過ごした。

 どうして。どうしてこんなに違うのかと思った。姉さまだって、冥琳だって寝る間を惜しんで頑張ってたのに、と。
 皆、頑張っていた。頑張っていたのだ。もちろん自分だって。それなのに、それなのに……。

 いや、だからこそ自分がここにいるのだ、と前を向く。心が折れても立ち上がる。
 間違いなく彼女は孫家の血筋。瞳に炎を宿して上を向く。袁家からの援助が途絶えぬよう、縁を結ぶ。そのために自分がいるのだと決意も新たに。
 ……だが、ここ数日の孫権は機嫌が悪かった。

◆◆◆

 これもあの男のせいだとばかりに孫権は不機嫌さを隠しもしない。黄蓋と陸遜は紀霊に呼ばれて何やら押し付けられたようだ。それに引き換え、自分は放置されている。
 歌舞楽曲を鑑賞する毎日。
 こんなことをするために自分はここにいるんじゃないとばかりに焦燥の炎が身を焼く。
 自然、目の前に居る護衛と言う名の監視役への視線も険しくなってしまう。厳しい表情で身動き一つしない女性。身体にはいくつも傷があり、歴戦であることを思わせる。
 この女も恐らく紀霊の手の者なのだろう。
 ふと、思いついて問うてみる。あの軟弱な男は部下、特に女子からはどう思われているのだろうか。

「ねえ、楽進、と言ったわね」
「は、自分は確かに楽進と申します」

 想像以上に生真面目なようだな、と孫権は微笑ましく思う。

「貴女から見て、紀霊という男はどんな人物なのかしら」
「は。は?き、紀霊様、ですか……?」

 少々困惑した様子を見せる楽進。まさかこの娘もお手付きとかだったら救われないなと孫権は内心苦笑する。

「とても、立派な方だと思います。
 私はつい最近お目にかかりました。正直なところ、私ごときがあれこれ言っていいとは思えません。
 しかし、個人的には恩義もありますし、悪い噂は余り聞きません」

 妥当なところであろう。流石に雇い主の悪口なんて言えないだろうからして。

「そう。よければどんな噂なのか教えてもらえるかしら?
 そういうことが、耳に入ってこないのよ」
「し、しかし私が知っていることとはいえ、軽々しく風評をお伝えしては……」

 本当に真面目なのだな、と孫権は楽進の評価を高める。そして。手の内にこんな駒があるという紀霊の懐の深さを垣間見た、と思う。

「貴女の耳にした噂で構わないわよ。流石にそれだけで彼を判断したりしないもの。
 それに、彼とはうまくやっていかないといけないのよ、私って。
 江南の民のためにも、ね?」

 そう言って悪戯っぽく笑いかける。困惑しながら、あれこれ思案顔な楽進に孫権は幾ばくかの罪悪感を覚える。

「き、紀霊様は……」

 幾分か緊張した顔で語る楽進の言葉、表情を孫権は注意深く観察する。そう、まずは敵を知らないといけない。
 かの、孫子の末裔たる身が恥とならないよう。あの男に楔を打ち込むべく、情報を集めるのだ。
 孫家のために。江南のために。自分のできることをするのだ。

「それで、聞かせてもらえるかしら」

 まだ口ごもる楽進に重ねて問う。彼女の口から聞けたのは、通り一遍等の風聞だった。
 曰く、農徳新書を幼くして編纂した麒麟児であった。
 曰く、武にも秀でており、一人で賊を百人殲滅した袁家の誇る怨将軍。
 曰く、広く財をなしながら民にそれを還元する仁徳の人である。

 ……どこの英雄か聖人だそれは、と改めて思う。全てが嘘ではないだろうが、相当に誇張をされているはずだ。だって。
 あの男の姿絵を思い浮かべる。思わず失笑が漏れたものだ。似ても似つかないではないか。

 なるほど、為政者が自らを美化するのは有効なのであろう。そういった民草の風聞というのは馬鹿にできないものだ。孫権とてそれくらいは理解している。だが、あの男のそれはやり過ぎのきらいがあるように思われる。そこまで考えて、至る。
 ……なるほど、自分はあの男が嫌いなのだ。気に食わないのだ、と。

 言葉を選びながら、慎重に、それでも誠実に語る楽進。一通りの説明を聞いて孫権は問いかける。

「それで、貴女は彼のことをどう思うのかしら」
「え?わ、私ですか?
 しかし、紀霊様とは知り合って間もないので……」

 僅かに顔を赤らめながら、楽進は口ごもる。

「それなら、彼と出合った時とかの印象とか出来事を教えてくれない?
 ちょっと興味あるもの」
「は、はあ。それならば……」

 なんでも、強面の男に絡まれていたところを助けてくれた上に、仕事まで紹介してくれたそうだ。
 ん?

「え、結局その強面の男って、彼の部下だったのよね?」
「は、はい、そのようでした」

 ……それって自作自演って言わないだろうか。こんな誠実な子をそんな小芝居までして手の内に納めたのかあの男は。
 不愉快だな、と思う。
 また、楽進が心からあの男に感謝しているのが不愉快さを助長する。だが、孫権の口から何を言うわけにもいかない。
 楽進は更に語る。

「武人としても私の及ぶところではありませんし。その、正直気にかけて頂いてるのが何故か分からないくらいです」

 また顔を赤らめながらそんなことを言う。
 ん?もしや。

「あ、あの、楽進。言いづらかったらいいんだけどね。
 その、もしかして、彼の、彼と、その、手を……」

 手を出されたのか。自分は何を聞こうとしているんだろう。自己嫌悪を覚えながらも聞いてしまった。

「あ、は、はい。お相手をして、頂きました」

顔を赤らめながら、そんなことを言う楽進。なんてことだ。なんてことだ。この純朴そうな子がもうあの男の毒牙にかかってしまったというのか。

「も、もしかして、無理やり、とか?」
「いえ、とんでもありません。私からお願いいたしました」

 恐らく、そうせざるをえないように仕向けたのだろう。見え透いている。

「その、正直、全く相手にならなくって、最初は何もできずに気を失ってしまったのです」

 語られる内容に孫権は言葉を失う。

「何度かお相手をするうちに、少しはお相手できるようになったのですけれども……。
 いえ。精進、あるのみです」

 孫権は知らず、天を仰ぐ。そして、思う。
 最低だ、あの男。
 そんな男を相手取って江南に、孫家に益をもたらさないといけない。そんなわが身を呪ってしまったとしても、誰も彼女を責められないはずだ。
 そして不意に、黄蓋と陸遜が心配になる。あの二人は大丈夫だろうか……。
 だが自分に何ができるだろう。何をするべきだろう。孫権は必死に頭を働かせるのだった。

◆◆◆

 楽進は孫権にあれこれ語りながらあの日のことを思い出していた。楽進達の、楽進の運命を変えたあの日を。

「お待ちください!」

 陳蘭に手も足も出なかった楽進は、暫くして彼らを追いかけた。やはり、納得できない。違う、悔しいのだ。せっかくの機会に持てる力を出せなかったわが身が口惜しいのだ。
 追いつき、その旨を精一杯伝える。自分は、もっとできるはずなのだ、と。その訴えに紀霊は苦笑して楽進を誘う。いいさ、と。
 鍛錬場で向き合う。紀霊と、立ち会う。……審判として立つ陳蘭が声を放つ。

「はじめ!」

 その声と同時に向かい合っていた姿が掻き消える。速い!
 辛うじて視線を下にやると、予想通り――その速度は予想以上――楽進の足を取りにくる姿が目に入る。
 あ、と思うまもなく引き倒されそうになる。背中から着地し、一瞬意識が飛びそうになる。が、一度経験した技だ。辛うじて身を捻り逃げようとする。
 刹那、拘束が解かれる。だが再度、拘束される。首に巻きつく大蛇を想起。そして楽進は意識を飛ばされていた。

 意識を取り戻した楽進は、更に幾度か挑んだがあっさりと組み伏せられた。それなりに鍛錬は積み重ねてきていたはずだが、相手にならなかった。ここまで絶望的な差を感じるのは初めてだった。
 この方なら、或いは。そう思い、問いかけてしまう。何度も手合わせを頂いただけでもあり得ないのに、更に図々しく甘えてしまう。

「紀霊殿の武に感服いたしました」
「あー、ま、初見の相手ならまあね、多少はね。実際負けることはないかな。だから今日使った技は内緒ってことで」
「……そのような秘中の秘を私などに……。ありがとうございます」
「いやいや、身体能力(スペック)は楽進の方が上だからな。もっと強くなれるって」
「ありがとうございます。そして……強く、ですか……」

 そう言う楽進を不思議そうに紀霊は見る。そうだろう。埒もないことを楽進は言おうとしている。

「秘中の秘を見せていただいた以上、私も奥の手を見せたいと思います」

 そう言って、庭に向かう。気を練り上げる。丹田に集中し、全身にくまなく行き渡らせ、叫ぶ。これこそが楽進の奥の手。

「猛虎蹴撃!」

 ばきり、と鈍い音を立てて木が折れる。しばし、言葉を失っていた紀霊が口を開く。

「生身とは思えんな。もしかして、気。というやつか」
「は、お流石です。気を全身に纏わせ、強化しております」
「ふむ……もしかして、纏わせるだけでなく、放ったりできたりするか?」
「!……お察しの通り、です!」

 正直驚愕した。気を使えないであろう方が気弾まで推察されるとは、と。なるほど、一流の技は全てに通ずるという奴だろうか。もしや、この方なれば……。
 そんな思いが楽進を襲う。
 誰にも言ったことのない迷いを口に出させる。

「――正直分からないのです。武を鍛えても、気の鍛錬をしても、結局は破壊の業(わざ)です。
 結局、武の行き着くところはそんなものなのでしょうか。所詮人殺しの業なのでしょうか……」

 これは于禁や、李典にも語ったことのない懊悩だ。鍛えるほどに湧き上がる疑問。

「武を、鍛えてきました。ですが、その終着はどこにあるのでしょう。
 所詮、人殺しの業にしかすぎないのでしょうか。
 世のために武を振るいたくても、暴力にすぎないと言われたこともあります。
 この世に、平和を、安寧をもたらすことなどできないのでしょうか……」

 いつしか楽進は双眸から流れる涙を自覚した。殺されたから、殺す。そんな終わりのない円環の理(ことわり)からは逃れられないのだろうか。

「教えてください。武を求めるということは、怨讐を、背負うということなのでしょうか……」

 しばしの沈黙の後、力強い言葉が楽進を叩く。貫く。

「俺は人を殺さない。その怨念を殺す!」
「怨念を。殺す……」

 楽進には思いもよらない言葉であった。そんなこと、考えたこともなかった。
 自(みずから)の拳で、そんなことができるのだろうか……。
 
「心にて、悪しき空間を絶つ!即(すなわ)ち、断空拳!」
「断空拳……」

 自分の心が、意思が。怨念を、悪を絶つことができるというのか……。憎しみの、悲しみの連鎖を止めることができるというのか……。楽進の双眸からとめどなく熱いものが溢れる。
 そんな、そんなことができるのか、と。

「それこそが活人拳の奥義であり、真髄である…」
「活人拳、と」

 人を殺すのではなく、活かすための拳。そう呟く紀霊はその背中は頼もしく。そして楽進に問うていたのだ。
 ついて来られるか、ならば黙って俺に3ついてこい。そんなことをその背が語っていた。
 我知らず、叫ぶ。

「ま、またご指導ください!
 私のことは凪、と及びください!」
「二郎で、いいとも」
「ありがとうございます!」

 楽進は踵を返し、駆け出す。心は羽根のように軽く、揺蕩(たゆた)う。
 そしてこの出会い、絆。それを楽進は終生忘れることはなかった。

本日ここまで

魔性の女ですね、凪ちゅんは
ぎゅんぎゅん回る回路が黙ってないから吠えるのですよ

感想とかくだしあー

乙です。


……孫権姫、焦りともどかしさが変な方向に向いておりますwww
亡国の姫様じゃないから ガンガン袁家の内政方法を自ら吸収した方が精神衛生上宜しいかと。


楽進さん。経験から来る悩みなんでしょうか。
紀霊さんに出会って少しは楽になれたかも。


ただ、『断空拳』
……何か聞き覚えがww ネタ元を思い出せない。

ファック!
12月にスマホデビューしたと思ったらそれが不良品とかベリーシット!
#め。ものづくりは真面目にしろや!くっそ。
色々アプリがリセットされるらしく、本当にふざけんなというか、もうね
はやく戦争になーれ



>>428
どもです

>……孫権姫、焦りともどかしさが変な方向に向いておりますw
第一印象は最悪ですた。さて。

>……何か聞き覚えがw
分かる人には分かる。
そんなネタを散りばめております。
ネタばらしは野暮ってものなのですよw きっとね。

乙でしたー 遅れちゃいました
>>422
>>彼女の口から聞けたのは、通り一遍等の風聞だった。
○彼女の口から聞けたのは、通り一辺倒の風聞だった。
>>424
>>「いやいや、身体能力(スペック)は楽進の方が上だからな。もっと強くなれるって」  これは楽進の回想なので(スペック)はいらないと思います
○「いやいや、身体能力は楽進の方が上だからな。もっと強くなれるって」  次郎視点なら言ってないけど思ってることで有りかもしれませんが
>>「ありがとうございます。そして……強く、ですか……」 【そして】に違和感があるので
○「ありがとうございます。それにしても……強く、ですか……」 もしくは 「ありがとうございます。ですが……強く、ですか……」 あえておうむ返しにして 「ありがとうございます。もっと……強く、ですか……」 楽進の強くなることへの戸惑いと言うか意味を考えるなら…どれがいいですかね?【それにしても】ならあやふやに迷ってる、【ですが】なら否定的になってる、【もっと】なら次郎に答えを求めてる感じが出ると思います
>>425
>>「活人拳、と」 これって楽進の言葉ですよね。この場面ではかなり胸いっぱいになってるようなので
○「活人拳」 もしくは噛みしめるように 「活人、拳」 もしくは 「活人…拳」 の方がらしい気がします
>>ついて来られるか、ならば黙って俺に3ついてこい。
○ついて来られるか、ならば黙って俺についてこい。 或いは ついて来られるか、ならば黙って俺に3歩下がってついてこい。(大和撫子か!?w)
>>私のことは凪、と及びください!」
○私のことは凪、とお呼びください!」

いやー背中がむずがゆくなるフレーズがちょいちょい出てきますね
言葉が足りないせいで勘違いするのはよくある話ですが楽進は顔を赤くしながらお相手していただきましたって狙ってやってんのか!?と突っ込みたくなるレベル

>>430
いつもすまないねえ……
つか、今回多いな。流石凪は魔性の女やでぇ(適当)

>言葉が足りないせいで勘違いするのはよくある話ですが楽進は顔を赤くしながらお相手していただきましたって狙ってやってんのか!?と突っ込みたくなるレベル
凪ちゃんがそんな狙うとかありえへんですよ(断言)
素だからこその凪ちゃんですよ
ジョインジョインナギィ……

 さて、俺の目の前には陸遜がいるわけなんだが。なんだろう、どうして朝から頬が上気してんの?目がとろんとしてんの?呼吸が荒いの?
 これは、あれだな……。

「風邪か?根を詰めて作業してくれたみたいだからなあ。今日は帰って安静にしてくれや」
「いいえー、体調はー、万全なんですー」

 にこり、と微笑みながらつい、と歩を進める陸遜に思わず半歩後ろに退いてしまう。

「本日はぁー、貴重なお時間を頂きましてありがとうございますー」
「お、おうともさ。んで、孫子だっけか。持って来たぞ」
「ああー、これこそ孫家の至宝、孫子様の書かれた書なのですねー」
「つって俺も孫家から貰ったに過ぎないけどな」
「いえいえー、孫家の臣といえども目にする機会はないと言っていいほどに貴重な至宝。それを目にする機会を下さってありがとうございますぅ」

 うっとりとした顔の陸遜。いや、何かクスリでもやってんのかと思うくらいには恍惚としてらっしゃるのだよ、これが。まあ、喜んで貰えるならいいということにしよう。

「そんなもんかね。書物なんてその叡智を拡散してなんぼのもんだろうに」
「秘すからこそ、その貴重さが増すということですぅ。ご存知でしょうけどもぉ」

 まあ、ここいらは多分俺の感覚の方が異端なんだろね。

「それと、農徳新書の最新版の閲覧許可書な。これ持ってけば好きなだけ読めるぞ。写しもご自由に、ってな」
「ああー、素晴らしいですー。ありがとうございますー」

 さて、ここで農徳新書についてちょっと語ろう。実は既に俺の手を離れているのだ。最初は俺のあやふやな記憶の書付でしかなかったんだがねえ。
 今や何十冊にもなる書となっているのだ。これは、農業の指導書ではあるんだが、それは今や袁家の農政の結晶と言ってもいい。つまり、毎年の農政の施策とその結果の膨大なデータ集となっているのだよ。
 毎年の天候、災害などを加味しながら、最も効率のよい農法を検討している。もはや毎年編纂されるそれは俺にも内容がよく分からん。未だに編纂者に名前が出ているのが恥ずかしいくらいだっつうの。
 ……本来ならば機密に類することなんだろうが、比較的安価で諸侯の求めに応じて提供している。食料増産こそが平和の礎だと信じての俺のわがままだ。
 黙認してくれている田豊様やねーちゃんに感謝、なのだ。

「あぁ、たまりませんー」

 何やら嬌声を上げながら陸遜が頁(ページ)をめくっている。いやいやいや。……何で本を読むと色っぽくなるの?喘ぐの?
 わけがわからないよ!いや、マジで!

 そして四半刻もしたら……。頬を上気させ、潤んだ瞳で俺を見つめる陸遜。……めっちゃエロいですやん。

「駄目なんですぅ。書を、名著を紐解くと、身体が火照ってしまうんですぅ……」

 なん……だと……?

「大丈夫です……一度達してしまえば、治まりますからぁ……」

 むわり、と牝の香気が俺を包む。フェロモンってレベルじゃねーぞ。

「ねえ、いつもわたしのこの、おっぱい……見てましたよね……」
「お、おうともよ……」
「触って、みたく……ないですか……?」

 自らの手でその、処女雪が積もったヒマラヤ山脈を思わせる魅惑の胸を揺らし、陸遜が問いかける。 
 たゆん、と胸が揺れる。形を変える。震える。その、雪崩的な破壊力にごくり、と生唾を飲んでしまう。

「触り、たくないですか……?」

 じり、と近づく陸遜。俺の肩に手をかけ、しなだれかかってくる。いっそう、濃密さを増した香気が俺を包み込む。

「好きにして……いいのですよ……?」

 その悪魔(メフィストフェレス)を思わせる囁きの蠱惑さよ。その誘惑に俺は、堕ち……ることはなかった。

 陸遜の蠱惑的な瞳の中に剣呑な光を感じた瞬間、俺はす、と冷め切ったのだ。苦笑しながら陸遜を押しやる。

「あー、分かった分かった。中座するから、落ち着いたら呼んでくれ」

 いや、そりゃね?俺はおっぱいとか大好きよ?それがこんな美人のおっぱいなら言うことないよ?
 でもさー、今は勤務時間なのですよ。
 
 小市民と笑わば笑え。でもまあ、こんな明るい中、しかも勤務時間内になかなかそういう気分にならんっちゅうの。
 それに、だ。壁に耳あり障子に目あり。もしもねーちゃんの耳にでも入ったら……。そう思うだけで息子がきゅってなるっちゅうの。

 ぽんぽんと陸遜の頭を叩いてから席を立つ。あ、フォローもしとこう。

「あー、別に陸遜が魅力的じゃないとかじゃないからな?
 そんな、その体質につけこむのが嫌だってだけだし。
 まあ、今度ゆっくりとその胸を堪能させてくれや。嫌じゃなかったらな」

 ……我ながらフォローになってるのか分からない台詞を残して部屋を去る。
 しかしまあ、危なかったなあ。そう、心から思う。

 昨晩、七乃に搾り取られてなかったら危なかったかもしらん。今度七乃に美味い飯でも奢ろう。

 そんなことを思いながら俺は厠を目指すのだった。

◆◆◆

 陸遜は歓喜に震えていた。際限なく火照る身体と冴え渡る思考。知らず、笑みが零れる。
 やはりか、と確信する。擬態であったか、と。
 推論が証明され、扉が閉まった瞬間には絶頂すら覚えたものだ。

 あは、と笑みが零れる。
 
 誘惑を跳ね除けられた体の陸遜であったが、彼女は全く落ち込んでいなかった。
 ……容色には自信がある。
 江南にいた時にはよく言い寄られたものだし、襲われたことも両手の指では足りない。……前者は上手くかわし、後者は武を持って叩きのめしたものだ。
 相手が紀霊のような男なら口説かれたろうし、身を委ねたろう。だが、ことごとく陸遜の要求水準を満たさない男ばかりだったのである。浅い男ばかりだったのである。

 陸遜は今日のこの機会のためにその能力の全てを振り絞った。およそ一月余り。それが与えられた仕事に対する期間であった。
 
 不眠不休で励んだ。自分は無名の士でしかない。ならば、求められる以上の結果をもたらさないとわが身に価値など生まれないだろう。紀霊(おとこ)の信頼を勝ち取ることなどできないだろう。個人的な時間など貰えないだろう。最後の三日三晩など、一睡もしていなかった。

 そうして得たこの機会に陸遜は勝負を賭けた。そして見事に負けてしまったのである。
 だが、収穫は思いのほか大きかった。
 そう、紀霊のあの軽薄な態度は擬態であると陸遜は断じた。つまり、風評から得ていた、江南を援助するのは色香云々というのは否定されたというわけである。
 であれば、何らかの思惑があるはずである。だから、それを読み取らねばならない。

 くすり、と陸遜は妖艶な笑みを深める。手にした書が想定以上に傑作だったような悦び。絶頂の余韻、そして底知れなさ。
 紀霊に対する思いは恋着とも執着とも違って尚、深まっていくのであった。


◆◆◆

「穏!大丈夫?!」

 ばたり、と開け放たれた扉の向うには、仕える姫君がいた。浸っていた余韻を断ち切られ、僅かに苛立ちを覚えながら視線を向ける。多少の悋気を含んでしまったのは未熟さゆえであるのだろう。
 孫権は、一瞬怯んだような表情をしながらもこちらを気遣い、重ねて問うてくる。

「大丈夫?変なことされてない?」

 ……むしろこちらから仕掛けたと知ったらこのお姫様はどう反応するだろうか。そんなことを思いながら陸遜は、問題ないと答えるのだ。

「なら良かったわ。さ、行きましょう、ね?」

 冷め切った思考で孫権を見やる。そう、孫家次代を背負うお姫様を。この方は何も分かってないのだな、と密かに嘆息する。
 元来、陸遜が随員として周瑜に強く推されたのは、その身を紀霊に捧げるためでもあった。孫家への援助と言いながら、実質江南全体を視野に収めたその内容。孫家の権威は袁家からの援助による物質的なものが非常に大きい。
 であるならば、都合が悪くなれば孫家を捨てて他の豪族を援助することも十分に考えられる。孫家を援助する対象として選んだ理由が分からなければ、それを繋ぎ止める策も打ちようがない。
 黄蓋と魯粛の証言からは、いよいよ紀霊個人の独断で孫家に肩入れしているということしか分からなかった。であれば、まずは世評で言われている処の色仕掛けから接触するしかあるまい。
 それが周瑜と陸遜の導き出した結論であった。

 黄蓋は確かに紀霊に抱かれてもいいくらいの意識はあったろう。が、危うい。彼女はあくまでその本質は武人。気質は苛烈。娼婦の真似事ができても、長続きするわけもない。
 孫権は論外である。孫策よりは理性的であろうが、孫家の気性はあくまで炎。温室育ちなせいか、潔癖な面もある。
 実際、紀霊にあれほど反発を覚えるとは。未だぷりぷりと怒りを示すその姿に思わず嘆息する。
 だがそれでも、孫策よりは扱いやすいのだ。そう思うと師でもある上司の苦労が思われる。
 ともかく、紀霊にその身を差し出すことで誼を確かなものにするというのが陸遜の役割であったのだ。このような汚れ仕事ができるのは孫家の臣では自分か周瑜くらいであろう。
 思いのほか薄い陣容に嘆息が漏れそうになる。せめて。
 せめて呂蒙がもう少し思慮を深めてくれれば。それが周瑜と陸遜の共通した思いであった。

 そして、この身体を差し出すはずだった紀霊。彼のその思惑が、陸遜にはまだ見えない。
 それを推察するためにも、理解するためにも。

 やはりこの身は紀霊に抱かれなくてはならないだろう。

 くす、と妖艶な笑みを浮かべる陸遜。
 そしてその表情に孫権が気づくことはなかったのである。

本日ここまですー

タイトルは「凡人と焦がれる女」
かな。
よさげのあったらありがたいせう

乙したー

二郎ちゃんマジ小動物!!
つくづく資本主義の犬やなぁ

乙でしたー
>>432
>>「それと、農徳新書の最新版の閲覧許可書な。 たぶん間違い…かな
○「それと、農徳新書の最新版の閲覧許可証な。 許可書で間違ってない可能性もありますので微妙
>>434
>>そうして得たこの機会に陸遜は勝負を賭けた。
○そうして得たこの機会に陸遜は勝負に出た。 もしくは そうして得たこの機会に陸遜は賭けに出た。 もしくは そうして得たこの機会に陸遜は女を賭けて勝負に出た。 辺りでしょうか ~を賭けた勝負と言いますので【女】の部分は陸遜が何を賭けたかによりますが
○そうして得たこの機会に陸遜は勝負を仕掛けた。 これは何か微妙か?この場合陸遜は誇りを賭けたのか手込めにされることを考慮すれば人生を賭けたのか…その辺はぼかした方が面白い気もしますので単純に 勝負に出た。か 賭けに出た。 がいい気がしますね
>>多少の悋気を含んでしまったのは未熟さゆえであるのだろう。 悋気≒嫉妬?ちょっとしっくりこないので
○多少の怒気を含んでしまったのは未熟さゆえであるのだろう。 もしくは 含む思いを漏らしてしまったのは未熟さゆえであるのだろう。  もしくは 多少の憤懣を含んでしまったのは未熟さゆえであるのだろう。  怒気だと強すぎる気がしますね、含む思いだとナニを考えてるのかちょっと怖すぎるかも憤懣辺りがちょうどいいかな、と思います

陸遜さんが次郎ちゃんを読もうとしてますが上手くかわされますね、七乃がいなけりゃ危なかったみたいですが
そして空回ってる孫権ちゃん…ガンバレ?
タイトルは…今回は次郎ちゃんよりも陸遜がメイン張ってたので『焦がれる女、深みにはまる』とかどうでしょう

>>438
小市民です。凡人です。
豪放磊落とか無縁の修飾語でございます。
本人なりに頑張っているつもりです。これでも。

>>439
いつもすまないねえ……
やっぱどうしても酔っぱらうと日本語不自由になるのかなあ

>陸遜さんが次郎ちゃんを読もうとしてますが上手くかわされますね
陸遜さん的にはそれでもオッケーという怖さw

>七乃がいなけりゃ危なかったみたいですが
七乃さんを敵に回してはいけません(断言)

>そして空回ってる孫権ちゃん
一生懸命な真面目女子って可愛い……可愛くない?

>『焦がれる女、深みにはまる』とかどうでしょう
陸遜とかいうストーカー気質の軍師系女子が凡人に焦がれてちょっと会っただけで執着するようになってしまった顛末のお話

とかいう頭悪い題名にしようかなと考えていたとは誰も知るまい……w
候補ありがとうございます。検討しまするるる

信じて送り出した本好き系軍師が農徳新書にド嵌まりして痴女な服装で男を誘惑する話…嘘は言ってない

いやー揺れたよびっくりしたよ@熊本市
大きな火事なくって救いでした。
ノートPCの液晶に食器棚が直撃して画面あぼんしますた
水の出が悪いのが心配

>>441
長いタイトルアリですねw
ちょっと検討します

>>442
熊本市、余震も震度4とか大変と思います
何もできないのですが。リクエストとかあったら最大限頑張りますので、是非

阪神大震災、福岡の水害、東日本震災と行くとこで色々あったので本当にご苦労はお察しいたします

442です
お気遣いありがとうございます。

リクエストは更新していただけたら嬉しいです。
できたらお尻様のツンデレを…

人の善意が身にしみます

>>444
ご無事なようでなによりです
お尻様については、これからがメインですというネタバレをひとつ

更新をお望みということで、これから秘蔵のお酒の封を切って(切った)ガソリン注入します。した。

九州には5年くらい在住しておりました。福岡の水害はガチで当事者でした。
本当に、余震で震度4とか不安になるかと思います。
頑張れとは言えません。
なんとかなる、としか言えません。

ただ、災害対策において現政権は当時の政権とは比べ物にならないと思います
遠慮せずに社会的インフラを活用してくださいませ

動揺の災害があったらその対応の一助となるのですから

本当に、本当に。

まずは自分にできることを頑張りますので
頑張りますので

そういや、このSSも民主の糞っぷりがフラストレーションになって始まったとか言ってた気がするなぁ

ホント息が長いのな

>>446
まあ、民主党の政権運営に満足してたのは日本の敵対勢力くらいじゃないですかねえ
震災のときにまともな政権であるというのは大きい
※なお熊本県知事

 今日も今日とてお仕事である。書類的なサムシングとの戦いなのである。
 まあ、ぶっちゃけ前世のコンプライアンスやら法律やら規制とかに縛られた上での書類仕事に比べたら楽勝なのではあるが。
 別に俺が優秀なわけじゃあない。単なる経験の蓄積ってやつだ。俺より頭のいい連中なんてごろごろしてるからなあ。いや、マジで。恐るべし袁家の官僚軍団。いや、楽をさせていただいてますよ。あっちこっちに書類を転送したり、付箋貼って予算通せとか適当かますのがメインのお仕事です。

 そんな感じで鼻歌交じりにルーチンワークをしていた俺に来客が告げられる。そげな予定は入ってないぜ。
 まあ、気分転換にはなるか。美羽様の後援の係累からの口ぞえならしゃあないしね。

 などと、軽く考えていたんだがね。来客の名を聞いた途端。血が、冷えた。対する相手が通り一遍等の挨拶を終える前に口を開く。

「おう、黒山賊が俺に何の用だ」

 下手なことを言いやがったら切り捨てる。文字通りな。後がどうなろうと知ったこっちゃねえのさ。これに関しては誰にも文句は言わせねえよ。
 そんな俺の恫喝に対して、動揺を顔に出すこともなく。相対する張燕はにんまりとした笑みを浮かべた。

「流石だねえ。アタシのことまで把握してるとは思わなかったさね」
「口上はいい。さっさと用件を言ってから俺に殺されろ」
「おやおや、物騒だねえ。この場でアタシを殺したら立場がまずくなるんじゃないのかい?」

 無言で三尖刀に手を伸ばす。まあ、取りあえず殺そう。そうしよう。

「あー、取りあえず話を聞いておくれでないかい?」
「は、戯言もそれまでにするんだな。言い残すことがあったとしても聞くつもりもないし」

 死出の旅路に六文銭を恵んでやるつもりもない。のだが。

「……物騒だねえ」

 あくまで表情を崩さずに張燕が言う。
 そう、張燕。飛燕将軍という異名を将来取るであろう名将である。史実において後漢王朝はこいつが率いる黒山賊を討伐することができなかった。袁家も討伐を繰り返すが、殲滅の前に官渡の戦いが起こってしまう。それ以後は確か曹操に従ったはずだ。
 メジャーじゃあないが、英傑の一人と言っていいだろう。軽く頭を振り、改めて向き合う。何とも不敵な面構えだ。

「で、わざわざ俺に何の用だ」

 俺が黒山賊を目の敵にしているのは周知の事実だ。いきなり殺されても文句は言えないだろう。よしんば俺を返り討ちにしたらまあ、袁家が全力で黒山賊を討つだろうさ。
 それくらいの影響力はあると自負している。

 俺の問いに、張燕は僅かに逡巡する。

「いやなに、手打ちをしたくってねえ」

 そんなことをほざきやがったのである。

「あ?喧嘩を売ってきたのはそっちだろうが」

 黒山賊への対応は俺に一任されている。というか任せてもらった。色々斟酌してくれたのか、仕事を丸投げされたのかは判断が難しいとこだが。

「いや、袁家と敵対するというのはアタシらの総意じゃないさね。
 身内からも討伐の手勢を出してはいたんだが。連中、中々捕まらなくてね」
「は。まあ、口では何とでも言えるな」

 俺の言葉に張燕は姿勢を正す。

「改めて詫びる。あれはアタシらの不始末であった。
 今さらとは思うが、ご寛恕いただきたい」

 深々と頭を下げる張燕。正直その首を落としたいなあ、と思うよ。

「アタシらとしても、袁家の怒りはもっともなことと認識している。
 謝って、はいそうですかということでもないことも認識している。
 だが、袁家と事を構えるだけの力はアタシらにはない。
 なんとかならないだろうか」

 美貌――キツめのそれはど真ん中ストライクである――に懇願の表情が浮かぶ。
 だが、なあ。

「遅いよ。既に黒山賊討伐のために軍備は増強されてる。
 今さら止まるわけねえだろ」

お前らはもう、死んでいる。そして絶対に許さないのだ。他でもない俺が。

「そこをなんとか、とお願いに来てるわけなんだよ。
 むやみに衝突しても、そちらにも損害も出るだろう?」

 少ない手札で、それでもこちらに勝負をかけてくるのはまあ、見上げたものである。

「そりゃ、さっさとアタシらを討伐して兵士を減らしたいというのも分かるんだけどさ。
 なんとかならないもんかね」

 ん。その意気やよし。なのだが、ね。

「アタシらにできることなら何でもするからさ」

 ふむ、よっぽど切羽詰ってるのか。まあ、そりゃあそうだな。今の袁家と正面切って殴りあうとかありえんわな。
 ふと思いついた案を頭の中で検討する。うん、悪くない、か。

「あー、とりあえず、袁家は軍備をこのまま増強する」

 俺の言葉に張燕の顔が青ざめる。

「だからお前らにはそれに見合った勢力を維持してもらう」

 その言葉に黙ってうなずく張燕。そして紡ぐ言葉に俺は満足する。

「あくまで袁家と黒山賊は不倶戴天。そういうことでいいのかい?」

 ああ、流石だな。こいつは敵に回すと厄介だ。だからこそ、である。そう、仮想敵として軍備増強のダシとなってもらう。

「そういうことだ。お前らは敵だ」
「そしたら、アタシらは何をもって袁家に赤心を示せばいい?」

 本当にこいつは傑物だ。戦後を考えてだろう。その場しのぎではなく、きっちりとした従属関係を申し出ている。

「表面だってあれこれできないな。とりあえず現頭目の張牛角は隠居。張燕よ。お前が頭を張れ。
 それをもって黒山賊が袁家に恭順した証とする」
「承った」

 即答である。トップの交代とか難しいはずなんだがな。
 まあいい、従わなかったら潰すだけだし。

「黒山賊はあんたに忠誠を誓おう。なんなら寝所で確かめてみるかい?」

……俺はどんだけ女好きと思われてるんだろうか。いや、敢えてそういう風説を流布させたんだけど、ちょっと思う所はあるなあこれ。
見え見えのハニートラップは流石にお断り、なのである。だから定期的に活動方針とかの報告を自らすることを飲ませると、溜め息を一つこっそり漏らす。

 いい笑顔――猫科の猛獣を思わせる――を浮かべて室を辞する張燕を見送る。忸怩たる思いである。
 だが、それでも。それでも、張燕を私怨で斬ることはできなかった。そのために色々と整えていたのだが、いざその時になるとできなかった。
 そんなこと、できるはずがないのだ。袁家という巨大な組織。そのトップ近くの俺が公私混同なんてできるものかよ。
 
 だからまあ、ちょっと絡み酒になっても許してほしいものである。ごめんね。
 
※絡み酒の被害者についてはご想像にお任せいたします。

◆◆◆

 張燕はこの上なく上機嫌であった。

「く、くく。いよいよアタシの時代かねえ」

 ふと呟く。聞くものとておらぬ馬上である。腹の底から沸きあがる愉悦に張燕は身を委ねていた。
 ……正直今回の役割は貧乏くじもいいところであった。厄介払い、或いは間接的な粛清であろうか。袁家への使者という役割が決まった時の憂鬱さすら今は心地よい思い出である。

 実際黒山賊は存亡の危機に揺れていた。隆盛を極める袁家。それが本腰を入れて黒山賊の殲滅に動き始めたのである。
 そもそも袁家は巨体である故に動き出すには時間がかかるのだ。それゆえの時間的猶予を有効に活かすことができなかった。動くことなどなかろうという推測。希望的観測。
 それが大勢を占めていたのである。人は信じたいことしか信じないということであろうか。

 混乱が生じたのは袁家の軍備強化が表面化されてからである。一万もの正規兵の増強。しかも標的は黒山賊と公表された。更に重ねて行われた募兵に訓練。そして北方の防備を担っていた精鋭の召集。
 はねっかえりが袁家領内の村落から略奪することはこれまでままあった。だがそれで黒山賊が本格的に討伐を受けることはなかった。
 それだけの武力を蓄えてきたからである。今回はそれが裏目に出たのだ。袁家が本腰を入れるだけの勢力として認識されてしまったのである。

 頭目の張牛角を筆頭に、黒山賊の上層部はパニックに陥った。当然である。袁家領内へと侵攻したのはあくまで黒山賊の中でもはねっかえり。
 中央の意向を無視することが存在意義という奴らだった。人数も少なく、袁家の領内の被害も少ない。まさか、まさか本腰を入れてこようとは。
 当初の袁家のアナウンスが怨将軍の戦果を誇るものであったことが希望的観測に説得力を与えたのもある。だが、それすら黒山賊を殲滅するための策であったのだろう。


 それが判明しても責任を取るものがいるはずもなく。ただただ、会議は踊るばかりであった。
 
 ……張燕が袁家への交渉へと派遣されたのは厄介払いという意味合いも大きい。実戦部隊を掌握する張燕は黒山賊の派閥争いで台風の目となりかねなかったのである。
 若輩故に危険視をされていないが、いつ粛清されてもおかしくない。それが張燕の立ち居地であった。故に袁家への使者として派遣されたのだ。
 張燕が交渉の窓口として紀霊を選択したのは賭けであった。怨将軍として知られる紀霊。
 黒山賊を目の敵にしているというのは有名な話である。更なる兵力の充実も紀霊の主導という話だ。
 だが、黒山賊への対応を一手に担っているという情報を掴むと、接触せざるをえなかった。このあたりの情報を掴むことができたのも張燕の優秀さを示唆してはいる。
 張燕にとっては正直、分の悪い賭けであった。何より、自分が黒山賊の幹部であるということを伝えた瞬間が一番危険だ、と判断した。
 だが、そこさえ乗り切ればなんとかなる。その思いで面会にこぎつけたのではあるが。

 まさか自分の名前が知られているとは思っていなかった。想定していた筋書きが崩れ、幾度も死を覚悟した。
 だが、結局張燕は賭けに勝利したのである。見事生存のみならず、袁家の後ろ盾すら確保したのだ。

 帰路を急ぐ張燕がわが世の春よとばかりに浮かれていても仕方のないことであろう。その帰路において、自分を切り捨てようとしてくれた幹部をどうしてくれようか。それを思うだけで暗い愉悦に酔うことが出来るというものである。


◆◆◆

 紀霊がその報を耳にしたのは張燕との面会より一月後であった。

 張燕が黒山賊の首領へとなったこと。そしてその際に黒山賊幹部――頭目であった張牛角を含む――の粛清があったこと。

 紀霊は虎に翼を与えたことを知り、人知れず懊悩することになる。そしてこれより袁家と黒山賊の確執、そして損害はその規模を拡大させていくことになるのである。

本日ここまですー

感想とかくだしあー



急に窓からラーメンの美味しい匂いが流れてきてヤバい
この時間帯は飯テロでしょうが!

乙でしたー。実はシ・・・張燕さんの強かさはかなり好きなタイプです。オリキャラの中ではベスト5に入るくらい好きです
>>448
>>対する相手が通り一遍等の挨拶を終える前に口を開く。  通り一遍=うわべだけで誠意のないこと 一辺倒=一つの考えに偏り、ほかの考えを退ける 大体こんな感じの意味らしいです。通り一遍等は誤用になるそうなので(私も最近知りました)
○対する相手が通り一遍の挨拶を終える前に口を開く。  が正しいようです。
>>451
>>頭目の張牛角を筆頭に、黒山賊の上層部はパニックに陥った。 ここは張燕視点なので極力カタカナを使わない感じに
○頭目の張牛角を筆頭に、黒山賊の上層部は大混乱に陥った。 の方がいいと思います
>>当初の袁家のアナウンスが怨将軍の戦果を誇るものであったことが
○当初の袁家の公布が怨将軍の戦果を誇るものであったことが もしくは 当初の袁家の公式発表が怨将軍の戦果を誇るものであったことが 辺りでしょうか
>>それが張燕の立ち居地であった。
○それが張燕の立ち位置であった。 
>>このあたりの情報を掴むことができたのも張燕の優秀さを示唆してはいる。  【してはいる】だとそれ以外の含むものが感じ取れますがそうする場合は後に【だからこそ排除されそうになった】のような文が必要になると思います、そういった文は前の方で出してるので
○このあたりの情報を掴むことができたのも張燕の優秀さを示唆している。  でいいと思います

黒山賊は不倶戴天の敵である(大本営発表)ですね分かります
公私混同をしない(できない)次郎ちゃんは上に据えておくと丁度いい感じに回してくれるよね、リスクとリターンで理解はできても心情で納得はできない状況でそれを飲み込める次郎ちゃんマジ潤滑油
そしてこれで中央から「お前ら軍備増強しすぎじゃね」と言われても『黒山賊がどんどん強化しててマジヤバいんだって、そういうならあいつら何とかしてくれよ』と言えるわけで…どこまであの短時間で思考したのか分からないけど次郎ちゃんも地味に頭の回転早いよね、あの場で切り捨てない方が得できる選択肢を出せるんだから(思考方向が普通は切り捨てる場合の得を考えそうな場面で真逆の方向に思考できるあたり傑物だと思うわ)

>>454
いつもすまないねえ……

>黒山賊は不倶戴天の敵である(大本営発表)ですね分かります
黒山賊は袁家の仇敵ですよ本当に

>公私混同をしない(できない)
師匠とねーちゃんに袁家の行く末を手渡されてますので、やはり自分に厳しく生きる感じです

>そしてこれで中央から「お前ら軍備増強しすぎじゃね」と言われても『黒山賊がどんどん強化しててマジヤバいんだって、そういうならあいつら何とかしてくれよ』と言えるわけで…
懸念してたのですね。兵力増強するとしてもどういい繕うの?って

>地味に頭の回転早いよね、あの場で切り捨てない方が得できる選択肢を出せるんだから(思考方向が普通は切り捨てる場合の得を考えそうな場面で真逆の方向に思考できるあたり傑物だと思うわ)
正直二郎ちゃんに必要なのはメイン軍師やと思いますw

 今日も今日とてお仕事である。書類的なサムシングとの戦いなのである。とはいえ、ルーチンワークは頭使わないからなあ。寝ぼけた頭にはちょうどいい刺激ではあるのだよ。
 機械的に筆を走らせながら軽く欠伸をする。ふむ、平和だぜ。これは今日は明るいうちから飲みに行けるかなあ。などと思っていたのだが。

「アーニーキぃ!」

 これは流石に予想外。猪々子の訪問である。珍しいな、昼間にやってくるとは。それに、いつになく嬉しそうじゃないか。

「んで、今日はどした」
「アニキにお礼を言わないといけないと思ってさ!」
「何かしたっけか」
「仕事が楽になったー!」

 満面の笑みである。

「そうか、良かったな。つーかそんなに楽になったのか」
「そうなんだよ!だって今日とか仕事終わったもん!」

 マジか。それは凄いの一言なんだぜ。いつも一月分くらいは仕事溜め込んでたというのに。それを斗詩と俺で手伝ってたのに。

「すげえな。あんなに仕事溜まってたのにもう処理したのか」
「ん?いや、溜まってるのはそのまま。とりあえず今日の分をやっつけた」
「いかんでしょ」

 なんというか、その発想はなかったわ。いや、それでも雪だるま式に内勤業務が増えないというのはきっと文家にとっての福音になるのであろうが。多分。きっと、メイビー。
 日々の業務も滞ってた猪々子である。導入開始直後でこれなら、相当効果が見込めそうだなあと内心頷く俺である。

「これで新兵の訓練にも本腰入れて力が注げるってもんさ!」
「え」

 文家の訓練は唯でさえ苛烈猛烈熾烈鮮烈という噂だ。それが、本腰入れてなかった、だと……?

「そ、そっかー。まあ、あまりやりすぎて死人が出ないようになー」

 その言葉に猪々子はきょとんとした顔で。

「へ?訓練って死人出るもんだろ。
 いざ実戦で足を引っ張られるのは勘弁だしなー」
「そ、そうか……」
「それに、戦場では死体も放置になっちゃうんだけど、訓練中なら弔ってやれるしなー」

 まあ、ここらへんの感覚は俺の方が非主流派なんだろうな。根源は平和ボケの日本人だし。
 にこにことしている猪々子を見ていると、とりあえず文家の兵卒でなくてよかったな、と思うわ。

「というわけで、アニキー、手合わせしよーぜー」
「んー、いいけどちょっと待ってな」

 とりあえず手元の書類を片付けてしまう。しかしまあ、こんなことを言ってくるんだから、よほど仕事に余裕ができたんだろうなあ。

「今日は本気のアニキとやり合いたいなー」
「いつでも本気で猪々子に叩きのめされてるじゃんか」
「違うってー、本気の本気だってばよー。三尖刀使った本気だよー」

 さ て、ここで三尖刀である。紀家の家宝であるそれは所謂宝貝(ぱおぺえ)というやつであるらしい。その効果を発動すると身体能力が著しく(当社比2割増しくらい?)増強されるというもの。
 なんだそのドーピングと思ったものであるが、その発動時間は限られている。具体的に言うとカラータイマーくらい。なお継ぎ足して連続発動すると、とーちゃんみたいにペナルティがある模様。
 用法用量にはご注意くださいってことだ。一応親しい人物にはこっそりオープンにしている。ほら、黒山賊百人を一人で皆殺しにしたってのも三尖刀のブーストあってのことだから。
 あれが普通にできるとか思われたらかなわん。マジで。

「軽々しく使えねえって知ってるだろうが」
「うー。分かってるけどさー。それでも本気のアニキとやりたいんだよなー」

ちなみに素だと猪々子には勝てん。むしろ俺が稽古をつけてもらうような感じになるのだ。三尖刀のブースト使ったらまあ、互角以上にはもってけるかな。

「大体、俺は一撃必殺だからなあ。
 それを防がれた時のやり取りとか無意味に近いぜ」

 今でも基本はなんちゃって示現流である。大上段からの必殺の一撃。三尖刀の効果と相まって中々にいい感じなのだよ。

「んー、それでもアニキと打ち合うのは楽しいからさ、頼むよ」
「そうさね、猪々子がそこまで言うなら、一度だけ、な」

 言いながら仕事を終わらせ三尖刀をかついで歩き出す。嬉しそうな猪々子が横に並び、あれこれと話しかけてくる。 
 何でも斗詩も呼んだらしい。はいはい、俺が公開フルボッコなわけですねわかります。
 そうだ、忘れるとこだった。猪々子の愛用してる斬山刀とかいう大剣は使わせないようにしよう。死人が出るぞ。そう思いながら猪々子と馬鹿トークを続けるのであった。

◆◆◆

 暗転。

 ……額には濡れた布がかけられ、何か柔らかいものが後頭部にあった。鈍痛に顔をしかめながら目を開くと、そこには陳蘭の顔があった。ああ、膝枕状態か。くっ。
分かってたけど情けない状況だなあと思う俺である。

「あー、痛ぇ」

 その声に困ったような、どこか安心したような笑顔をする陳蘭。気遣うような素振りを無視して取りあえず、身を起こそうとする。

「あ、ご無理はなさらないでください」

 ちょっと慌てたような陳蘭の声を聞きながら、よろり、と身を起こす。うん、大丈夫っぽい。そして記憶が一部蘇る。

 猪々子にやられた。以上。

 木剣とはいえ、まともに食らうとこうなるということだな。いやー、いつものこととはいえかっこ悪いなあ。
 軽く溜め息を漏らしながら視線を前にやると、猪々子と斗詩がやり合っている。
 おー、別次元だねこれ。猪々子の大剣に対し、斗詩は双剣だ。間合いを詰めつつ、間断なく攻撃を加える斗詩。舞踏のようなやりとりは実際目の保養になるレベルにある。

「ふむ。斗詩はやっぱ手数が多い方が活きるな」
「そう、なんですか?わたしにはよくわかりません」
「そうか?それでもあの大金槌はないだろ」
「あ、それはまあ、確かに」

 ……猪々子の謎なリクエストで一時斗詩の武器はでっかいハンマーだったのだ。流石にそれはない。元々器用な斗詩は手数とその運足で勝負する方が合っている。
 そんなわけで双剣を薦めてみたらまあ、どこの弓兵(エミヤシロウ)だというくらいに習熟するわするわ。
 うん、猪々子が大剣使いで斗詩が双剣。俺は槍なんだから盾でも持つべきだろうか。そしたら、二人はG級で俺は寄生プレイになるな。落とし穴とか痺れ罠でも仕掛けるか。

 そんな俺のアホな思惑とは対照的に真剣に二人の手合わせに目をやるのは凪だ。まあ、せっかくの機会だからとついでに呼んだんだが、思いの他刺激になっているみたいだ。
 そりゃま、武力90台後半の武将同士の手合わせとか見ようと思って見れるもんでもないしなあ。

 お、次は猪々子と凪か。おお、これはかなり気合入ってんな、凪。オーラ的なものを纏っているぜ。
 
◆◆◆

「断空砲!」
 響く凪の、裂帛と言っていい気合い。放たれる気弾。そして対する猪々子はまた気合いが入ってるようで。

 へー、気弾って気合い入れたら木剣で弾けるもんなんだ。知らなかったよ俺。そして、もはや残像すら見えそうな凪の連撃を得物で弾く猪々子。
 あー、そこでフェイント三つ入れるとかないわー。普通に対応するとかもっとないわー。
 見稽古ってこんなにつらたんなんですかねえ……。

くすん。

 やさぐれる俺に声がかけられる。

「アニキー、そろそろ本気で相手してよー」

 普通に本気でぶちのめされた訳だがそれは。

「いいじゃんかよー、ほら、楽進もアニキの本気が見たいってさ」

 目をやると、キラキラとした目で俺を見つめる凪がいた。あかんて。その目が俺を狂わせるってばよ……。斗詩も何か期待したような目つきで俺を見るし……。

「あー、気がすすまねー」
 
 そう言いながら立ち上がる。そして三尖刀を手にする。猪々子は嬉しそうに斬山刀を手にする。おいやめろ。それはアカンやろ。

「二郎様!頑張ってください!」

 凪がそんな声をかけてくる。斗詩と陳蘭も黄色い声をかけてくる。そんなの、頑張るしかないじゃない!だから吠える。

「とっておきを見せてやる!これが、俺の!全力!全開!
 くらえ――九頭龍閃!」

 三尖刀と同化する。身を包む全能感。そして俺は久々に。本当に久々に猪々子を圧倒するのであった。
 だからこれは三尖刀のズルあってのことだからね?そんなキラキラした目で見られても困るからね?

「いやー、やっぱアニキは強いなあ。ほんと、かなわないなー」

 そして追撃の猪々子である。
 俺は周囲で交わされる会話を全力で既読スルーするのであった。

本日ここまですー
感想とかくだしあー

G級って茶羽とか黒光りする奴らのことかとオモタ

乙でしたー
お父さんも宝貝使えるってことは代々仙人骨の家系なんですかね
むしろ先祖伝来ってことは初代は山から下りてきた仙人もしくは道士かな?
今回は誤字報告なしですね。
キラキラした目が二つもあったらそりゃ多少の無茶もしちゃうよね、男の子だもん

>>461
映画では茶色でがっかりだそうですね
彼奴らはやはり黒くないと!

>>462
>お父さんも宝貝使えるってことは代々仙人骨の家系なんですかね
たとえそうでも相当薄まってるでしょうねえ

関係ないですけど、恋姫と封神演義(フジリュー)のクロスSSで、おにゃのこばっかり強いのは妲己ちゃんが世界に融けてるからという考察には脱帽した覚えがあります。
久々チェックに行こうかな……

>今回は誤字報告なしですね。
いつ以来だろう。
やったぜ。
いや、毎回そうでなきゃいかんのでしょうけどもね。

ほんと、いつもすまないねえ

 眼前には、袁家の軍勢がある。一糸乱れぬ行進は流石と言う他はない。

 武威というもの。

 軍勢が行進するだけでそれが示されるのだ。閲兵式というのはなるほど凄いものである。
 袁家の精兵達が一斉に敬礼をする。対象はもちろん袁紹である。あふれんばかりの光輝を背負い、艶然と答礼する。
 いや、見事なもんだと公孫賛は嘆息する。

 見物に来ていた民衆から歓声が起こる。赤色一色に統一された軍勢の先頭には文醜。袁家筆頭の武家である。先代当主は「星を砕く」とまで謳われた豪の者。永らく空位であった当主には文醜が就いている。

 続くのは袁家の盾、顔家。こちらは青色一色に統一されている。かの匈奴大戦において、その侵攻をせき止めたという実績は洛陽ですら畏怖を以って語られるほど。その用兵の妙を受け継いだとされる顔良は武のみならず、政においても高く評価されているそうな。

 さて、武家四家と言いながらも張家に関しては存在が秘されている。ただ、この閲兵式において、警備の要所に髑髏の仮面が目立つ。つまりはそういうことであろう。

 そして民の歓声が一際大きくなる。白を基調とした衣装は紀家。匈奴大戦以来、紀家は袁家で一番声望の高いのだ。
 うん、普段はへらへらしてる男(きれい)も、きちんとしたら格好いいじゃないかと公孫賛が思うほどにはその面目は満たされているであろう。

 そして、民の歓声は怒号と聞き間違うほどになる。金色を身に纏った袁家直属。大戦の英雄麹義将軍である。それは豪華絢爛にして質実堅剛。

「春蘭、どう?」
「は、威容は確かに。ですが、装備の華美さと軍の精強さについては無関係であることをいついかなる時でも証明できましょう」

 ……おいおい、何を物騒なこと言ってるんだ。というのが公孫賛の正直な感想である。

「全く、浪費にもほどがあります。あの金ぴかの悪趣味なこと。
 あれ一つでどれだけの民が救われるか」

 そう言ったのは線の細い少女だ。ネコミミが特徴的な被り物が目を引く。
 吐き捨てる口調になんだか納得できず、思わず口を挟んでしまう。

「そのへんにしといたらどうだ?
 流石にさ。招待された客が口にする言葉じゃあないと思うんだが」

 途端に突き刺さる視線の鋭いこと。こりゃ、嫌われたかな。だがまあ、戦場で匈奴と遣り合うことを思えば屁でもないというものだ。
 薄く笑うと、視線を外す。しかし恐るべきは袁家だ。袁紹と袁術に派閥が分かたれ、対立は深まっているらしいというのに、そんなもの微塵も感じさせない。
 ま、そんな袁家が背後に控えてくれているというのは実際ありがたい限りなのである。

 相変わらず突き刺さる視線を意識の外へ追いやり、席を立つ。そしてこの後の宴席で誰から挨拶するか、話題はどうするかを練り始める。
 なに、袁家精鋭とは幾度も轡を並べたのだ。その頼もしさについては間違いなく来賓の中で一番詳しいのだから。
 見るべきものは見たしな、と思いながら公孫賛は大きく伸びをするのであった。


◆◆◆

 閲兵式。俺発案、麗羽様プロデュースのイベントは大成功だった。煌(きらび)びやかな衣装に身を包んだ袁家軍の威光は領内に拡散するだろう。阿蘇阿蘇(アソアソ)を通じて広報するしな!

「旦那にするなら兵士がお奨め!頼りになる肉体に本誌記者もメロメロ!」
「意外と稼ぐ正規軍。その収入を分析しちゃうゾ!」
「頼れるあの人の勤め先は……?敵は多い!恋せよ乙女!」

 ……煽り文句考えたの俺だが、疲れる小見出しだわな。まあ、これで装備がぼろぼろの義勇軍への憧れなんかはある程度砕けると思うんだが。うう、後手に回るのがもどかしい!いっそ殲滅してえ!
 まあ、表面上は洛陽に正式に喧嘩を売ったということになるのだろう。ここまで大規模な軍事的イベントを起こしたからには叛意ありと糾弾されても致し方なし。
 その覚悟を見せたわけである。黒山賊対策ということは、彼奴等をけしかけていた洛陽に対する宣戦布告でもあるわけだし。
 まあ、田豊師匠と麹義のねーちゃんの腹が据わってるからね、便乗しないとね。

 などと思っていたらネコミミ少女に絡まれた。なぜだ。あれこれと袁家の施策について駄目出しをしてくる。それはかなり的確だったりするのだが。つーか詳しいなおい。
 まあ、ノーチェックで俺んとこに来れるくらいだからどっかの官僚だか豪族だったりするのだろう。
 だが、足りん。覚悟知識経験人脈地盤看板なにより。袁家に対する理解が足りん。
 袁家は漢朝の藩屏にして北方の防壁。四世三公たる栄華は漢朝のためのものであるのだ。そしてその藩屏を蔑(ないがしろ)にしたのは誰だろうね。
 だから俺はこう答える。

「あー、一言だけいいかい」
「なによ」
「おとといきやがれ」
「……っ!」

 罵倒が浴びせかけられる前にその場を去る。めんどくせえ。何が金の無駄遣いだ。何がその金で民を救えるだ。
 くっだらねえ。
 そんなに民を慈しみたかったら税を永年免除でもしてろっつうの。施しを与えるだけならアホでもできるわ。
 そんなやさぐれた思考の俺に金髪ツインテールが現れた。
 しかも麗羽様と同じく縦ロール。いや、質感からいってドリルかな?実際ドリルの質感はまだまだ乏しい。胸部装甲と比例していて、因果関係について考察してしまう。

「貴方が紀霊ね」

 まあ、ここに出入りしてるからして彼女もまた何かおえらいさんの係累なんだろうなあ。

「ちょっといいかしら」

 ツラ貸せってことですね。どこの不良ですか。などと言えるはずもなく。まあ、おつきあいしましょうかね。

「紀霊、私は貴方を高く評価しているわ」
「そりゃどうも」

 俺のあからさまに気のない返事に、対面の少女が僅かにイラつく。いかんね。生の感情など交渉の席で見せるものではない。

「袁家では貴方を使いこなせてないようね。思い当たる節があるでしょう?」

 いあいあ。とっとと隠居せねばならんとは思っているがね。まだまだ次期尚早であるのだけんども。

「私なら貴方を活かしてあげられるわ。
 その能力を私のために使いなさい。
 私に仕えなさい」

 なんというカリスマ。まーったくそんな気がなかったのに、多少なりとも心惹かれてしまうというのはどういうことなの。これが英傑というものか。しかしせめて名乗れってばよ。さっきのネコミミもそうだけどさ。自分に自信ある人って自分を知ってて当たり前とか思う傾向