真人「そういえばこの間、鈴が知らねえ男と歩いてたな」理樹「えっ?」 (60)

理樹部屋

理樹(いつものように雑談をしていると真人がこう言った)

真人「そういえばこの間、鈴が知らねえ男と歩いてたな」

理樹「えっ?」

謙吾「………なに?」

恭介「はぁぁああ!?」

理樹(部屋の空気が一変した)

真人「いやー、鈴が俺たち以外の男と絡むなんて珍しいと思ってたんだけどよお」

恭介「誰だ、名前を教えろ」

理樹(恭介の目つきが変わる)

真人「だから知らねえって言ってんだろ!」

ガラッ

鈴「ただいま」

理樹(と、そこへちょうど鈴が来た。4人の目が一斉に鈴の方へ向けられる)

「「「「…………………」」」」

鈴「な、なんだお前ら!?こっちみんなきしょいっ!」

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もしかするとハッピーエンドになるとは限らない





恭介「で、鈴に一つ聞きたいことがある」

理樹(いつの間か僕らは鈴を取り囲むようなフォーメーションを取っていた。部屋の真ん中で鈴は椅子に座らされている)

鈴「あたしは何も悪いことはしていない」

恭介「ああ、そうかもしれん。だがこれから聞くことはとても重要なことなんだ」

鈴「?」

理樹(首を傾げた拍子にちりんと鈴がなる)

恭介「お前、俺たち以外の男子と喋っていたらしいが、一体なんの話をしていたんだ?」

理樹(他の誰かが聞けばかなり誤解を招く…というか恭介に限ってはそれに近い質問だった。しかし、その質問相手は他ならぬ鈴だったのでそういう心配は要らない)

鈴「ん?なんであいつと喋ってたの知ってるんだ?」

理樹(どうやら真人の言っていたことは本当のようらしい)

理樹(けど、いくら他人とあまり付き合おうとしない鈴だからといって用事があれば男子とだって普通に会話ぐらいする。恭介のような心配は杞憂に終わるだろう)

恭介「いや、この間ふと見かけてな」

鈴「そうか。いや、別に普通のことだ」

恭介「その普通のことが聴きたい」

鈴「お前はあたしのストーカーかっ!」

恭介「……兄だぞ?」

理樹(恭介が冷や汗を垂らした。よほどショックだったらしい)

鈴「ふん、別に明日は小テストだとか今日はモンペチの発売日だとかしか言ってない」

理樹(その言葉に恭介は心の中で胸をなでおろしたに違いない。こわばっていた顔の筋肉がみるみるうちに緩んでいった)

恭介「ははっ!ならいいんだ!いや、疑って悪かったな!さて、早速人生ゲームでも…」

鈴「あ、それと…」

恭介「ん?」


鈴「今度2人で映画観に行こうって誘われた」


恭介「はぁぁあああああああああああああ!?」

真人「マジかよっ!?」

謙吾「…………本気か?」

理樹「…………………えっ……」

理樹(鈴はしれっと答えた。まるでそれが当たり前のことのように)

恭介「い、一応確認するがそれは男だよな?」

鈴「そうだ」

恭介「行くのか?」

鈴「その日は暇だからな。ちょうどチケットが2枚余ったらしい」

謙吾「な、なんてベタな誘い方なんだ…」

恭介「よし鈴。その日は俺たちと遊ぼう。モンペチも買ってやる」

鈴「ダメだ。既にしてる約束を破ったらめっだ」

恭介「ぐっ……」

理樹(鈴の言うことはもっともだった。あまりの正論に返す言葉もない)

真人「ちなみにそれはいつなんだ?」

鈴「日曜日だ」

日曜日

恭介「こちら恭介。ターゲットは依然進行中。統計によると待ち合わせ場所は噴水の近くと思われる」

理樹「いや、こちらも何も聴こえてるからさ…」

真人「これじゃ鈴の言うストーカーとなんら変わってねえじゃねえか…」

恭介「でもお前らだって気になるんだろ?」

謙吾「それは…まあ…」




………………………

……………





昨夜

恭介「という訳で『第1回!言い寄る男を叩き潰せ!俺たち恋のデビルブラザーズ』作戦会議を始める」

理樹「相変わらず酷い名前だね…」

理樹(僕らはいつもと違い恭介の部屋へ集まった。原因はもちろん鈴のことだった)

真人「タイトルから察するにその男とバトルしろってか?俺は嫌だぜ…」

恭介「いや、あくまで比喩だ。ただ鈴の元へ這い寄る悪しき男を手段問わず妨害するだけだ」

謙吾「どちらかというと立場的に俺たちが悪者じゃないのか?」

理樹「それにその男子だってどんな人か知らないのに…」

恭介「じゃあ、どんな男か知っていればお前はやすやすと引き渡すのか?」

理樹(有無を言わせない迫力で顔を近づけられた)

恭介「理樹!お前はそれでいいのか!?鈴が他の男に取られても!!」

理樹「でも別に彼氏って訳じゃないし…」

理樹(そう。彼氏ではない。あの事件を共に乗り越えたからといって別にそれ以上の特別な関係とは言えないんだ)

理樹(でも、もし今のように恭介達がいなくて、今日まで本当に僕と鈴だけだったならどう思っただろう?唯一残った僕の大切な人が僕を置いてけぼりにしていったら…)

理樹「…………」

理樹「……ちょっとだけ、様子を見るだけだよ…?」

恭介「よっしゃ、これで決まりだ!!理樹の作戦は鈴を尾行し、その男の正体を確認するということだ。異論はあるか?」

理樹「ちょっと僕が言い出しっぺみたいな言い方はやめてよっ!!」

謙吾「お前は異論はあってもそもそも認めんだろう…」

…………………………

……………




現在

理樹(そんなこんなで鈴にバレないよう幼馴染4人衆は跡をつけたのだった)

恭介「それ見ろ噴水のところで止まったぞ!」

謙吾「気持ちは分かるが静かにしろ。見つかりたいのかっ」

理樹(鈴はその場に腰掛けると携帯で時間を確認していた。…というか鈴の私服姿って僕もあまり見たことなかったな…)


………………………



理樹(5分が経過した)

恭介「くっ…誰だか分からんが鈴を待たせやがって……!」

真人「なんか恭介キャラ変わってね?」

謙吾「………見ろ。あれじゃないか?」

理樹(謙吾の指差す方向を全員で凝視した)

「…………」

理樹(その男子は身長が高く、どこか大人しい雰囲気で顔もなかなかという感じだった)

鈴「!」

恭介「鈴も反応したな。アレで決まりだ」

理樹(恭介は横でマフィアのドンを隠し撮りするようにデジカメで何度も角度を変えてシャッターを押していた)

真人「にしても鈴は相変わらず仏頂面だな…まあ、でも側から見れば初々しいカップル…」

理樹(うっ…カ、カップル……)

謙吾「やめろ真人っ!そんなこと言ったら恭介が!」

恭介「お、俺は絶対に認めん……!!」

理樹(真人の言葉に恭介は僕よりはるかにダメージを受けていた。…いや違う!なんで僕がダメージを受けなくちゃならないんだ!)

商店街

恭介「…2人は商店街のいつものモンペチを買う店に行ったな。今のところ野郎は鈴に触れていないようだ」

真人「もし触れてたらどうするつもりだったんだよ」

理樹(ちょうどその時、男子が偶然僕らの方を振り向いた)

「………!?」

謙吾「ま、まずい!今目があった!」

理樹(あちらが驚くのも無理はない。なにせサングラスを掛けて物陰から自分たちを観察しているのだから)

恭介「くっ…一時撤収だ!」

今日本気出す

ファーストフード店

理樹(少し早めの昼ご飯を食べながら緊急の作戦会議を開いた)

恭介「モグモグ……やはり大人数での尾行は無理があったな…」

真人「まあな。ていうかそもそも俺と謙吾がうまく隠れながら移動するなんて無理があったんだよ」

謙吾「だがどうする?もう諦めて鈴からまた話を聞きだすか?」

恭介「いや、もうここは代表で1人があの2人の間に近づいて会話を傍聴するんだ。こんな事もあろうかと片耳イヤホンを持ってきた」

謙吾「気持ち悪いくらいに用意周到だな…」

理樹(むしろどんな事を想定していたのか知りたいぐらいだ)

理樹「やっぱり恭介が行くの?」

恭介「いや、そうしたいのは山々なんだがやはりここは理樹が行くべきだろう」

理樹「えっ、僕が!?」

恭介「俺は顔が知られ過ぎている。そうじゃなくったってデート相手の兄が近くをうろついてるとなればどうなるか分からん」

理樹「そういうものなのかな…」

恭介「ほら、付けてやるよ」

理樹(この動作に何故かデジャヴュを感じた)

恭介「それじゃ行ってこい」

理樹「鈴たちまだあの店にいるかな…」

恭介「あ、そうだ忘れてた。確かこの時間はそろそろ映画が始まる頃だったんだよな。映画館で張込みして2人がどの映画を観るのか確認してから一緒に観てこい。これお駄賃」

理樹(恭介は僕に2千円ほど握らせると高らかに宣言した)

恭介「ミッションスタートだっ!!」


……………………

恭介「……行ったか」

謙吾「…恭介、何故理樹に行かせたんだ?」

恭介「それはさっき言っただろ?」

謙吾「…………」

恭介「分かったよ!言えばいいんだろっ」

真人「へっ?他になんか理由あったのか?」

恭介「ああ。そろそろ理樹も彼女が欲しいんじゃないかと思ってな」

真人「はあ?」

恭介「気付いたのは最近なんだが理樹はどうも鈴のことが気がかりに思っていたようなんだ」

謙吾「あいつがそんなことを?」

恭介「いいや、言ってない。というか本人でさえその気持ちに気付いてないんだろう」

恭介「だからこれで少しでも焚きつけることが出来たらなって」

真人「う、嘘だろ!?理樹が鈴に!?」

謙吾「どうせもし付き合ったら理樹が構ってくれなくなるとでも言うんだろ?」

真人「ああそうだよっ!悪いかっ!?」

恭介「俺はさ…ずっとそうなってくれたらなって思ってたんだ。謙吾もそう思わないか?」

謙吾「まあ、お似合いではあるな。少なくとも俺の知っている男の中では」

恭介「理樹になら譲ってもいい。そう思ってた矢先にこれだ!理樹がまだ危機感も持ってないまま他の男に取られては可哀想だ」

謙吾「そもそも鈴がその男子と付き合うかどうかだが…鈴には恋は早いような気もするぞ」

恭介「鈴も成長したからなあ…どう出るか俺にはもう分からなくなっちまった」

理樹『2人が映画館に来たよ!』

恭介「おっと…了解だ!手際よく行け!」

映画館

恭介『了解だ!手際よく行け!』

理樹(2人は僕の数メートル先にいた。ちょうど死角にいるのでバレる心配はないだろう)

「~~~」

鈴「~~~」

理樹(男の人がポスターを指差し鈴は頷く。そのポスターは…)

理樹「ほ、ホラーだ…」

恭介『よし!今すぐチケットを買って先回りしろっ。なるべく遠目の席を選んで2人が見えるようにな』

理樹(恭介が企むミッションはいつも面白い。現に今も鈴に彼氏が出来るかどうか分からないのにワクワクする自分がいる)

スクリーン内

理樹(バレないようにチケットを買うとそそくさと席に座った)

「~~~」

鈴「………」

理樹「来たっ、鈴だよっ」

恭介『順調だな決して目を離すなっ』

理樹「うん…っ」

理樹(2人は僕の3つほど前の座席に座った。男は必死に盛り上げようと話題を作っている)

男「~~~!」

鈴「…………」

理樹(あまり楽しんでいないように見えるんだろうけど鈴は普段からああなのを知らないらしい)

理樹「鈴のことを知りもしない癖に…」

恭介『ん?なんか言ったか?」

理樹「えっ、あ、いや!な、何でもないからっ!」

理樹(今僕はなんであんなこと言ったんだっ!?癖に…僕はその先に何を言おうとしたんだ…?)

恭介『フッ……』

理樹「な、なに?」

恭介『いや、なんでも』

ブーーーッ

理樹(上映が始まった)





スクリーン《ア”ア”ア”ア”ァァァァーーー!!!!!》

女性「うぐぅーっ!?」

男性「だから静かにしろって」

理樹(隣のカップルがさっきからうるさい)

理樹(僕は内容なんてハナから見ていないので怖くはなかった。それより僕が気にしているのは…)


鈴「っ!!」

ガシッ

「…………!」


理樹「あっ!」

恭介『どうしたっ』

理樹「いや……今、鈴が怖いシーンで男の人の腕を掴んだから…」

恭介『な、なんだと!?』

謙吾『落ち着け2人とも。その状況だとどうせ鈴は隣に電柱が刺さっていたとしてもやはり掴んだだろう』

恭介『そ、そう…だよな…』

理樹「そ、そう…だよね…」



……………………

理樹「映画が終わったよ。このまま尾行するの?」

恭介『もちろんだ!』





理樹(2人は外へ出ると喫茶店へ入っていった)

カランカラン

店員「何名様ですか?」

理樹「あ、えと1人で…」

店員「かしこまりました。こちらへどうぞ」

理樹(事情こそあれ1人って言うのは抵抗があるな…)

テーブル

理樹(メニューを開くと甘いものばかりしか無かった。いかにも小毬さんとかが好きそうな店だ)

「あれー?理樹君?」

理樹「えっ?」

小毬「あーっやっぱり理樹君だ!偶然だね」

恭介『今度はなんだ?』

理樹「小毬さんと会っちゃった」

恭介『なるほど。今はタイミングが悪かったな…』

小毬「ほえ?」

理樹「いやなんでもないよ!」

理樹(しかし追い返すわけにもいかなかったので2人で食べることになった)

小毬「理樹君がこういう店に来るって意外だねっ」

理樹「うん、まあね…」

理樹(チラチラと鈴たちの方を見ながら話を合わせるのは困難を極めた)

店員「お待たせしました~」

理樹(そして運ばれてくるパフェとパンケーキ)

小毬「うわぁ、美味しそうっ」

理樹(今日は申し訳ないけど小毬さんのリアクションを楽しんでいる余裕はない!)

鈴「~~~」

理樹(鈴が立ち上がってこちらへ向かってきた!)

理樹「し、しまった!トイレか!?」

理樹(どうしても鉢合わせしてしまう!)

恭介『なんとかしろ理樹!小毬かお前のどちらが見つかってもアウトだ!』

理樹「くっ…」

理樹(といってもどうすれば!鈴はその間にも近付いてくる…なにか…なにか言わないと!)

理樹「ば、爆発する!小毬さん伏せてっ!!」

小毬「ば、爆発~~~っ!?」

理樹(僕と小毬さんは頭を抱えてしゃがんだ。隣のテーブルの人からは変な目で見られたに違いない)

トコトコ

バタンッ

理樹(トイレの扉が閉まる音がした。もう大丈夫だろう)

理樹「小毬さん、もう大丈夫だよっ」

小毬「び、びっくりしたぁ~……」

恭介『上手いぞ理樹!』

小毬「…ところで理樹君そのパンケーキ頼んだんだね」

理樹「うん」

小毬「センスグーですよっ。そのパンケーキはこのお店では静かな人気を誇る通の御用達メニューだから。私まだ頼んだことないんだけどね~」

理樹「へえ。それじゃあ小毬さん食べてみる?」

小毬「いいの?ありがとうございますっ」

理樹(マイクからは小さな声で「お前ら付き合ってるのか」と聞こえてきた)

小毬「ん~~ほろ苦くて美味しいっ」

理樹「そう、なら良かったけど」

小毬「じゃあ私のパフェもどーぞ!」

理樹(そういうと小毬さんは器用にパフェのクリームとかフレークをスプーンに乗せられるだけ載せて差し出してきた)

理樹「い、いやそれは悪いよっ!」

理樹(というか物凄く恥ずかしい)

小毬「大丈夫っまだ口つけてないから」

理樹「いや、そう意味で言ったんじゃないけどさ…」

小毬「ほら、あーん」

理樹(しょうがない。ここは腹をくくるしか…)

理樹「あ、あーん……」

パクッ

ガチャ

鈴「……ん?小毬ちゃん…それに理樹もいるな」

理樹「~~~~っ!!」

恭介『や、やべぇっ!!』

真人『あーあ…』

謙吾『…………どんまいだ。理樹』

小毬「あっ、鈴ちゃんも来てたの?今日は偶然がいっぱいですねー!」

理樹(パフェは甘かった)

小毬「鈴ちゃんもここに食べに来たの?」

鈴「うん。だけど今日は1人じゃないんだ。知り合いがいる」

小毬「そっか~」

恭介『理樹!もう見つかっちまったもんは仕方がねえ!せめてその男の名前を聞くんだっ』

理樹「……………」

理樹(どどどどうしよう!絶対勘違いされちゃったよ!!うう、僕のバカ!なんてタイミングで…)

真人『ダメだ、全然聞いてねえ…』

鈴「小毬ちゃんは理樹と2人で買い物か?」

小毬「ううん。たまたま会ったのですっ」

理樹「…………」

鈴「そうか。それじゃあまた夜ご飯の時だな」

小毬「うん。それじゃあまたねっ」

理樹「……」

鈴「ばいばい」

理樹「…ハッ」

理樹(少しの間思考放棄してしまった。鈴は既に席へ帰っていた)

理樹(そのあとも後をつけてみたけど大した情報は得られなかった)




……………………

…………






恭介「さあ、今日の収穫だが」

理樹「ごめん、あんまり大したことは見れなくて」

謙吾「理樹の責任じゃあない。それより男子の方はどうだった?」

理樹「うん。見た感じ本気だったというか…」

真人「ところでそいつの名前なんなんだ?さっきから言いにくくて仕方がねえよ!」

恭介「そうだな。こっちで勝手にコードネームでも付けておくか。さしずめ『火消しの風ウインド』とでも」

理樹「なんでそんな無駄にかっこよくて長い言い名前なのさっ」

謙吾「しかも風とウインドの意味が被ってるな」

恭介「うるせえ!たまたま雑誌でそんなフレーズが出てきたから言ってみただけだっ。そこまで言うなら代わりの案言ってみろよ」

真人「『筋肉の申し子マッスルン』とかどうだ?」

理樹「なんでみんなわざわざ異名付けるのさ!?というか話が脱線しすぎだよっ」

理樹(名前は結局決まらなかった)

恭介「とにかくだ。やっこさんは理樹の言う通り本気らしい」

謙吾「こういう輩は過去にも何人かいたが昔は鈴自体、人見知りだからなんとかなったところはあったんだがな」

理樹「そうだねえ…」

理樹(鈴は実際男子からやたらと人気があった。きっと猫との相乗効果もあったんだろうけど幼馴染目線から見ても可愛いには違いない)

恭介「くよくよしててもしょうがない。どうせまだあちらも出会ったばっかりなんだ。今のところは男子が実は超性格悪いことを祈るしかない」

理樹(確かにそうじゃなきゃ今僕らがやっていることは完全にタチの悪い嫌がらせなんだよな…)




…………………………

……………



食堂

理樹(朝、いつも通り全員が勢ぞろいした)

恭介「鈴、昨日はどうだった?」

鈴「映画がめちゃくちゃ怖かった。……いや、もうくちゃくちゃだ!」

来ヶ谷「む、なんの話をしているんだ?」

真人「深い事情があるんだよ!来ヶ谷に言うとろくな事にならねえぜ…」

来ヶ谷「なんの話をしているんだ理樹君?」

真人「あ、こら無視すんな!」

理樹「えっ…」

理樹(恭介の方を見た。顔を横に振っている)

理樹「ご、ごめん…」

来ヶ谷「ほう…お姉さんを仲間はずれにする気か……」

理樹「そういう訳じゃないんだけどさ…」

来ヶ谷「ふん…まあいいだろう」

理樹(あれ…案外簡単に引き下がったな)

謙吾「それで鈴はなにか言われなかったか?」

鈴「なにが?」

真人「例えばプロポーズとかだなあ…」

ザワ…

理樹(辺りの空気が一瞬凍った)

葉留佳「な、なにぃ!?プロポーズっ!?」

西園「確かに鈴さんの年齢なら結婚は可能ですね…」

クド「わ、わふー!学生結婚ですかーーっ!?」

鈴「別にプロポーズはされてないな。ただ今度またどっか行こうって言われた」

恭介「その日のうちにまたデートの誘いか…相手は高テクニックの持ち主らしいな」

理樹(とりあえずこの場で話すと更に騒ぎが起こりそうなのでこの辺りで話を切った)

続く(∵)

教室

理樹「……あれ…鈴は?」

理樹(自然と鈴を目で追うようになってしまった。一度意識してしまうと気になってしょうがなくなる)

真人「いや…」

理樹(真人は教室にいないなら知らないと言う風に肩をすくめて首を振った)

謙吾「外に出て行くところを見た。またHRまで猫と遊んでるんだろう」

理樹(と、謙吾がアドバイスをしてくれた)

理樹「分かったっ」

理樹(まだ時間に余裕はあるけど今、何故か無性に会いたくなった)

タッタッタッ




真人「…なんか恭介の言う通りになっちまってるな」

謙吾「理樹がどうしようと口出しはせん。今回に関しては激励も野暮だろう」

グラウンド前

理樹(いた。謙吾の予想通り猫とじゃれ合っている)

鈴「よしよし……なぁ!?」

猫「ニャー」

鈴「お前ここ禿げてるぞ!大丈夫なのか!?」

猫「ニャ~~」

鈴「全然気にしてないな…お前、育毛剤は要らないのか?」

猫「ニャァ…」

鈴「う…それはどっちなんだ…」

理樹「鈴っ」

鈴「理樹か」

理樹「やあ」

理樹(鈴は昔こそ猫と遊んでいるところを他の人に見られたくなかったようだけど、最近はそうでもないらしい。これも成長したから…なのかな)

鈴「理樹、最近おかしいことがあるんだ」

理樹「おかしいこと?」

鈴「ああ。どうもいろんな方向から目線を感じるんだ…」

理樹(鈴は心底不気味そうな顔で言った)

理樹「え、えっと……」

理樹(多分それ僕らの目線です。なんて言えたものじゃない)

鈴「なんだ、あたしはもてもてなのかっ」

理樹「そうなんじゃないかな…アハハ……」

鈴「そーか、もてもてか…」

鈴「ところで理樹はどうしたんだ?なんでこっちまで来たんだ」

理樹「えと、それは…」

「棗さんっ」

理樹(聞きなれない声がした)

「棗さん、こんなところにいたんだ」

鈴「またお前か」

理樹「!!」

理樹(心臓が飛び出るかと思った。何故なら、後ろを振り向くと、昨日から散々話の中心にいた例の男子が立っていたからだ)

「……そっちの人は?」

鈴「理樹だ」

「ああ、なるほど。例の…」

理樹(例のなに!?鈴はもしかして僕のことを彼に喋ってたのか!?)

理樹「えっと…」

「それで棗さん。ちょっと話があるんだけど」

鈴「話?どうしたんだ」

「いや、ちょっと2人で話したいことなんだ…」

理樹(そうチラリと僕を見ながら言った。どうや暗に退いてほしいと言っているようだ)

理樹「あ、あの…」

「ちょっと自動販売機で話せないかな?」

鈴「おーまーいーが」

「嘆いてるの!?」

理樹(だめだ。せっかく来たのに行ってしまう…)

鈴「すまんな理樹。話はまたあとだ」

「ごめん!ちょっと借りていくよ」

理樹(片手で謝るポーズを作って鈴の肩を持った。…鈴の肩を持った!)

理樹「………っ」

理樹(鈴はそんな事をされても嫌な顔一つしない。そりゃ、謙吾にそうされても反応は同じだったんだろうけど…)

理樹「り、鈴!」

理樹(少し行きかけたところで振り向いてくれた)

鈴「うん?」

理樹「え、えっと……ほら…その……」

鈴「どうしたんだ?」

理樹「いや…またあとでって言おうと思って」

鈴「……変な奴だな」

理樹(ぐさっ)

>>35ミスった
訂正

「棗さん、こんなところにいたんだ」

鈴「またお前か」

理樹「!!」

理樹(心臓が飛び出るかと思った。何故なら、後ろを振り向くと、昨日から散々話の中心にいた例の男子が立っていたからだ)

「……そっちの人は?」

鈴「理樹だ」

「ああ、なるほど。例の…」

理樹(例のなに!?鈴はもしかして僕のことを彼に喋ってたのか!?)

理樹「えっと…」

「それで棗さん。ちょっと話があるんだけど」

鈴「話?どうしたんだ」

「いや、ちょっと2人で話したいことなんだ…」

理樹(そうチラリと僕を見ながら言った。どうや暗に退いてほしいと言っているようだ)

理樹「あ、あの…」

「ちょっと自動販売機前で話せないかな?」

鈴「おーまーいーが」

「嘆いてるの!?」

理樹(だめだ。せっかく来たのに行ってしまう…)

鈴「すまんな理樹。話はまたあとだ」

「ごめん!ちょっと借りていくよ」

理樹(片手で謝るポーズを作って鈴の肩を持った。…鈴の肩を持った!)

理樹「………っ」

理樹(鈴はそんな事をされても嫌な顔一つしない。そりゃ、謙吾にそうされても反応は同じだったんだろうけど…)

理樹「り、鈴!」

鈴「……うん?」

理樹(少し行きかけたところで振り向いてくれた)

理樹「え、えっと……ほら…その……」

鈴「どうしたんだ?」

理樹「いや…またあとでって言おうと思って」

鈴「……今日の理樹はなんか変な奴だな」

理樹(ぐさっ)

教室

理樹「って感じで……」

真人「で、どんな感じの野郎だったんだ!?」

理樹「いや…割と普通というか……むしろ好青年?」

謙吾「相手にとって不足はないな」

真人「い、いや…実はそれは仮面を被っているだけで本性は物凄い悪者だったりすることもあり得なくないぜ…」

理樹「漫画の見過ぎだよっ。恭介じゃないんだから……」

ガラッ

理樹(と、そこへ鈴が帰ってきた。それと同時にチャイムも鳴る)

キーンコーン

理樹(いったいなにを話してきたんだろう?それだけが気がかりだ)

授業中

ブーブー

理樹「……?」

理樹(メールが届いた。先生に見つからないようチラリと送り主を見た)

《来ヶ谷唯湖》

理樹(うわあ…これ絶対開かなきゃあとで何されるか分かったもんじゃないな……しょうがないので慎重にメールを見てみた)

来ヶ谷『君の心配事をズバリ解決させてみよう。安心しろ、鈴くんとあの男子生徒はただ他愛もない話をしていただけだ。鈴くんとただ2人きりになりたかっただけらしいな』

理樹「なっ!?」

ガタッ

教師「ど、どうした直枝っ」

理樹「い、いや…なんでも…」

理樹(どうしてその事を知ってるんだ!?当の本人はいけしゃあしゃあと不思議そうな顔してるし!)

理樹(席に着くと来ヶ谷さんに返信した)

理樹『どうしてそのことを!』

来ヶ谷『ま、この私に隠し事をするのはまだ早いということさ』

理樹(来ヶ谷さんは僕の方を見てニヤリと笑って見せた)

休憩時間

理樹「く、来ヶ谷さん!」

来ヶ谷「はっはっはっ。なんだね理樹くん?」

理樹「なんだじゃないよ!なんかああいう言われ方だとまるで僕がゾッコンみたいじゃないかっ!」

来ヶ谷「なに?少年は鈴くんの事が…」

理樹「いや、全然そういうのじゃ…鈴なんか好きじゃないからっ!」

ガタッ

鈴「っ!!」

理樹「あっ……」

鈴「り、理樹は……あたしのこと…」

理樹(鈴は心底驚いた表情で、そしてどうしたらいいのか分からないというように困った顔で立っていた)

理樹(僕は馬鹿だ。鈴が後ろに立ってのにも気づかないなんて)

理樹「ち、違う…っ」

鈴「………猫にエサをやってくる」

理樹(まだまだご飯の時間ではない。口実にすら、なっていなかった)

理樹「り、鈴!」

理樹(来ヶ谷さんは何か言いかけたようだけど気にしていられない。今はとにかく追いかけなくては)

グリウンド前

理樹「はあ…はあ……」

理樹(息が苦しいのはきっと走ったからだけではない)

鈴「……………」

理樹(いた。うつむいている)

理樹「鈴……っ」

「~~~~!」

鈴「…………」

理樹(最悪だ。さっきは見えなかったけど隣にあの人がいた。なにかしゃべりかけている…迂闊には近づけない)

理樹「……………」

理樹(さっきとは立場が逆だ。あの時はあの人は僕の元から鈴を取っていってしまったのに……今の僕はそんな勇気もない)

鈴「……………!」

理樹「…………っ」

理樹(鈴は僕の方をちらりと見た。僕はそれに慌てて視線を逸らすことで答えてしまった)

理樹「くそっ…」

理樹(落ち着け。別にこの場で誤解を解きに行かなくていいんだ…ここで引いても悪いことはない。ここは教室へ戻っておこう)

理樹「……………」

鈴「…………あ…」

「……?」



教室

理樹(恭介の計らいで5人は教室で食べることになった)

恭介「なるほど…それで……」

来ヶ谷「すまない。原因は私がからかってしまったからだな…」

理樹「そんなことないよっ!」

真人「別にそこまで気にすることでもねえんじゃねえの?明日になりゃ鈴もきっと忘れてるぜ」

謙吾「お前じゃあるまいしそんな単純な頭で出来てる訳がないだろう」

恭介「とにかくこれは打開策が必要だな。そろそろ反撃しないと手遅れになる。………おっと、その前に聞き忘れていたことがあったな!」

理樹「え、なに?」

理樹(途端に周りがニヤニヤし始める)

真人「理樹はさ、結局のところ鈴をどう思ってんだよっ」

理樹「えっ…ええっ!?」

来ヶ谷「お、顔が赤いな。図星か」

理樹「こっ、これは!」

恭介・謙吾「「フゥーーーッ!!」」

理樹「やめてよっ!!」

理樹(まるで高校生みたいなノリ…いや、高校生だけど!!)

恭介「ほら素直に吐いちまえよ!もしアイツと鈴が付き合ったらどう思うよ?」

理樹「えっ…そ、それは嫌だけど……」

恭介「それで?もし鈴がお前と付き合うことになったら?」

理樹「そ、それは…………」

理樹(4人の視線が集まる)

理樹「……………う、嬉しいかな」

「「「フゥーーーッ!!」」」

理樹「やめてってばっ!!」

恭介「さて。やっと恋の相対図が判明した訳だが」

理樹(すらすらとメモ帳を取り出し、紙に僕らの3角関係の図を勝手に書き出した)

理樹「恥ずかしいからやめてよ…」

理樹(なんかもう泣きそうだ)

恭介「ここでまだ渋るようならまた作戦の練り直しになったが、理樹が自分から言った以上、これで思う存分理樹をサポート出来るな!」

謙吾「ああっ」

真人「よっしゃあ!」

理樹「えっ!みんな分かってたの!?」

理樹(実をいうとこの僕自身、こうやってみんなにハッキリ言われてからやっと、鈴に対するこのモヤモヤした想いをそう捉えることが出来たんだ)

恭介「理樹は顔に出やすいからなあ…」

来ヶ谷「そういう理樹くんだからこそみんなに好かれるのさ。まあ、今回の件に関しては私達以外関知していないがね」

理樹「絶対他の人に広めたりしないでよ!?」

全員「「もちろんだとも」」

理樹(まったく説得力がないのは何故なんだろう)

恭介「という訳で!ここに!新作戦を実行する!その名も作戦名オペレーション・NGK!!」

理樹「NGK?」

恭介「タイトルは気にしないでくれ。それよりこの作戦について話そう」

謙吾「おお!」

理樹(謙吾が久しぶりにぶっ飛んでる…)

恭介「作戦は簡単だ。とりあえず真人と謙吾がチンピラになります」

理樹「ごめん、それ却下」

恭介「なんでだよ!?まだなにも言ってねえじゃねえかっ!」

理樹「もうだいたい予想つくよ!」

来ヶ谷「まあまあ。ここは一応聞いておくだけ聞いてみようじゃないか」

理樹「ええー……」

恭介「ありがとう来ヶ谷。それでは気を取り直して…」

恭介「まず鈴と理樹が2人でいる状況を作る。そこへ悪漢と化した謙吾と真人の2人が現れて鈴を無理やりナンパする。鈴は嫌がるだろうからそこへお前が立ちはだかり『鈴を離せ』と言う。そこできっと鈴がなんで助けるのかと聞くだろうから俺が『それはお前のことを本気で愛してるからなんや』と言う。そこで更に『さっきの理樹は許してやったらどうや?』と畳み掛ける。すると鈴は理樹のことを許し、むしろ勇気に惚れて2人は良い感じになってハッピーエンドという訳だ」

理樹「なんで恭介のセリフだけ関西弁なの!?ていうか発音もおかしいよ!」

恭介「いちいち文句言うなっ。やるのか?やらないのか?」

理樹「やらないよ!」

恭介「いや、俺がやりたい」

理樹「どの道強行するならなんで聞いたのさ!?」

……………………………

放課後

裏庭

恭介『じゃあ作戦実行は放課後な。鈴は裏庭に連れておく』

理樹(やれやれ、なんでこんなことに…)

鈴「……り、理樹か…」

理樹「鈴……」

理樹(鈴はベンチに座っていた。僕も隣に腰掛ける)

鈴「今日は…なんか、恭介からここに来いって言われたんだ」

理樹「そっか……じゃあ僕もここで待とうかな…」

理樹(辺りは驚くほど静かで人っ子ひとりいなかった。空が赤みを帯びている)

鈴「さっき」

理樹「えっ?」

鈴「あたしのこと嫌いだって言ったな」

理樹(やった!やっとチャンスが回ってきた!)

理樹「そのことなんだよっ。あれは全然言葉のあやっていうか…」

鈴「?」

理樹「つまりその……ハハ…あれは言い間違いで……」

鈴「?」

理樹「~~~…」



物陰

真人「よし!そろそろ頃合いだな…謙吾、俺の長ラン似合ってるか!?」

謙吾「ああ。それではいざ出陣……」

恭介「……いや、待て!」

真人「ん?…………なっ!!」

恭介「なんつうタイミングで…来やがるんだ…」




理樹(恭介たちはまだなのかっ。早く芝居を打ってくれないと誤魔化しも伸ばしきれない…)

理樹「えーっと…だから僕は!」

「あれ、また2人でいるね」

理樹「えっ!?」

理樹(まただ。またやっとのところで現れる。……いったいなんなんだこの人は…ずっと鈴のあとを追ってたりするのか…でも、狙ってるなら当たり前なのか?)

鈴「またお前か」

「はははっ。ごめんごめん、また邪魔するよ」

理樹(自然な動作で鈴と僕の間に座られた。あちらからは別に敵とも思われていないらしい)

理樹「…………」


真人「なにやってんだよ理樹のやつは!」

謙吾「大声出すなっ。今見つかると面倒だぞっ」


「~~だから今度は今週末に…」

鈴「うーん…」

理樹(僕だって…僕だってここでなんとか言わなきゃダメなのに………でもなにを?なにを言えば鈴と話せるんだ)

理樹(そこで思考が詰まってしまった。鈴とはずっと話してきたはずなのに。2人であの地獄のような事件も乗り越えてきたはずなのに…)

理樹「あ、あはは…」

理樹(情けない。背中からなにか冷たいものがどっと流れてくる感覚を味わった。心臓の鼓動も既に最高速度まで達している)

「じゃあそこでジュースでも買う?」

鈴「いや恭介と待ち合わせしてるんだ」

「お兄さんと。それならそこの彼に来たら連絡してくれるように言えばいいんじゃないかな?遅刻してるようだし」

鈴「でも……」

理樹「き、きっとすぐ来るし待っていた方がいいんじゃないかな」

「心配いらないよ。来たとしてもすぐそこだし」

理樹(鈴が僕の方を向く。僕は……)

理樹「……そうだね…」

理樹(勇気のない自分をぶってやりたい)

理樹(2人が去ってから入れ替わりで恭介がやってきた)

恭介「……なんであそこで2人を行かせた?」

理樹「ごめん…」

恭介「謝る必要はない。どうせ自己嫌悪しているんだろうからな。それに一番困るのはお前なんじゃないのか理樹?」

理樹「そうだよね……分かってる」

恭介「今回の選択は決定的なミスだ。この選択があとでどういう結果を産んだとしても……いや、もう何も言わねえよ」

理樹(恭介はそう言うと寮の方へ戻って行ってしまった)

理樹「……………」

…………………………

………………




数日後

屋上

理樹「……………」


鈴「~~~」

「~~~!」


理樹(それからというものの、あの2人が一緒にいることが多くなってきた)

理樹(対する僕は鈴を見かけても避けがちになってしまっていた)

理樹(どこで鈴を見かけてもあの男子がいる。端から見れば……)

理樹「はぁー……」

小毬「ため息は幸せが逃げていくからつかないほうがいいよっ」

理樹「幸せね……」

小毬「理樹くんはどこ見てたの?」

理樹「あそこ…」

理樹(下から見える中庭を視線で指した)

小毬「あ…鈴ちゃんとあの最近仲がいい男の子だねぇ」

理樹「はあ…」

小毬「鈴ちゃん、最近私とも遊ぶ暇がないみたい」

理樹「なんで?」

小毬「あの人と予定が入っているのです。もう遊ぶ予約もいれるのが大変だよ~…」

理樹(まるで人気のケーキ屋さんのことのように言った)

理樹「小毬さんも鈴とあんまりしゃべってないんだ」

小毬「うん…でもその分、夜にメールはやってるよっ。鈴ちゃん、理樹くんと最近話してないのが気になってるんだって」

理樹「えっ?ぼ、僕と?」

小毬「はいですよ。理樹くんに嫌われてると思ってるんだって。そんな事ない…よね?」

理樹「も、もちろんだよ!」

小毬「よかったあ!喧嘩してるのかと思いました」

小毬「うーん…でもなんで伝わらないんだろうね…そんな簡単な事」

理樹「…………」

理樹(それは僕が自分から鈴を遠ざけてるからだ。僕は鈴のことが………好きなのに)

理樹「………そうだ。好きなんだよ…僕は」

小毬「ほえ?」

理樹「うん…小毬さん。僕は鈴のことが好きだ」

小毬「うん。そっかあ…」



理樹(僕は、人から言われるんじゃなく、やっと心からその気持ちに気付いた。しかし、それは遅過ぎたのかもしれない)

理樹(それはたまたま夜にジュースを買いに行こうと思った時だった)

理樹「そろそろ冷えるな……」

ガサガサッ

理樹(物音がした。あちらの方向からだ)


鈴「なぁ!?急にどうしたんだ!」


理樹(り、鈴の声だ!あっちからか!?)



理樹(音のする方向に行くと2人の影がライトに照らされていた。1人は鈴で、もう1人は…)

「急じゃないっ。ずっとこういう時を待っていたんだ」

理樹(男子は鈴の肩を両手で掴んでいた)

理樹「!!」

鈴「どうした、何をしたいんだ!?」

「分かるだろ?ずっと君が好きだったんだ。だからこれまでデートにも連れてった!」

鈴「何ぃ!?」

「もちろん無理やりなんて言わない。嫌なら逃げてくれ。そうすればその時は二度と関わらないから」

鈴「なっ……」

理樹(遂に、この時が来た。引き延しに出来るはずなんて無かった。このままなあなあで終わる訳がない)

理樹「…………っ」

理樹(勝手に足が前に出る。出ざるをえない)

鈴「…………っ!!」

理樹(鈴が僕を見つけた。前と同じ状況だった)

鈴「………り…き…」

理樹(僕の名前を呼んだ。しかし顔は離れていない。僕がどうするか鈴は待っていた)

「鈴さん……いくよ」

理樹(彼はゆっくりと顔を近づけた)

理樹「あっ………」

理樹(ここで何もしなければ、2人は付き合うかもしれない。付き合わなくても、行為をした事実は拭い去る事は出来ない。鈴は押しが弱い女の子だから…)

理樹(鈴の事はなんでも知っている。だって小さい頃から一緒だったんだから。なにが好きか何が嫌いかも知っている)

理樹(あの世界でも僕らは2人でやってきた。鈴がいなければ僕はみんなを助けられなかっただろう)

理樹(鈴。だからまだまだ僕の近くにいてよ…)


理樹「鈴っ!!!」


「!?」

鈴「あ……」

鈴「………うんっ!」

理樹(チリンと音を立てて鈴はこちらへ走ってきた)

理樹(掴まれていた腕を払って、猫のように向こうをかえりみず、一目散に僕の元へ駆けてきた。そしてこう言った)

鈴「どうしたんだ?」

理樹(その姿がとても愛しくて…気付けば鈴を抱きしめていた)

鈴「ふにゃ!」

理樹(びっくりしたのか一瞬だけ拘束を解こうとした。だけど徐々にその抵抗もなくなっていく)

鈴「お前は……まったく…アホだな」

「………ああ…」

理樹(後ろから声が聞こえた。そんなの知るもんか。もう、譲らなくたっていいんだ…恋に関してだけは敵に優しくする必要なんかないんだから)

鈴「…いつまでこうしてるつもりだ?」

理樹「さあ……」




…………………………

理樹(結局、手を離した時にはもう彼の姿は無かった。今思うとなかなかエゲツないことをしたと思う……いや、これは今までのお返しだ)

鈴「理樹の考えてることが分からんな…」

理樹「なんで?」

鈴「あたしのことが嫌いなのかと思ったらこんなんするからな…もうめちゃくちゃだ」

理樹「僕でもよく分かんないよ。とりあえず今の所は鈴のことが大好きってことさ」

鈴「…………ちょー恥ずかしいこと言ってるぞお前」

理樹「聞いてるのは鈴だけだよ」

鈴「ふんっ…こいつバカだ」

理樹(鈴は笑った)

後日

食堂

恭介「というわけで、新郎新婦のご入場ですっ!!」

真人「イェェェェエエエエエエエイッッッ!!!!!」

葉留佳「いいぞいいぞーーっ!!」

クド「ヒューヒュー!なのですーっ!」

理樹「やめてよ!超恥ずかしいよっ!!」

理樹(その日のことを恭介に伝えたらこうなった。リトルバスターズ全員で揃うとお祭騒ぎを回避することは出来ない)

鈴「そうじゃボケェ!!」

理樹(この日は全員で集まって食堂を貸し切って何故か付き合ったことを祝うことになった)

西園「お二人とも、包丁をどうぞ」

理樹(こういう時のみんなの手の回しようはもはや笑うしかない。わざわざケーキを取り寄せて初の共同作業ってアレまで再現させた)

鈴「理樹……逃げよう」

理樹「…た、多分無理だと思う」





小毬「えーっ、私はずっとそうならいいなーって思ってました!だって私の大好きな2人が好き同士になってくれると私はとってもなんというか…嬉しいからです!」

理樹(友人によるスピーチまで…なんでマイクスタンドすら用意出来るんだ…)

謙吾「ヒューヒュー!」

恭介「いいぞ小毬ーーっ!!」

鈴「なあ理樹…」

理樹(こっそり僕に囁いた)

理樹「なに?」

鈴「この前言うの忘れてたけどな、あたしも理樹が好きだ」

理樹「!」

理樹(たとえどんな関係を過去に築こうが、ちょっとした弾みでそれは崩れてしまうだろう)

理樹(しかし、お互いがもう一度立て直そうと思い立つことが出来れば元に戻るのはとても簡単だ。それどころか、それ以上の関係になれるかもしれない)




終わり

明日はなんだかんだでほぼ建てたことのないさささのスレでも建てよう

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