赤羽根P「346プロですか?」 2nd season (116)








           『Break a spell on me!!』








SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1445011542

前作:赤羽根P「346プロですか?」
赤羽根P「346プロですか?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1428769079/#footer)








           『And, the time starts moving』






ーーーーー事務室

未央「それでは! CPソロ曲アルバム発売を祝して~」

「「かんぱ~い!!」」

ワー ホントニデタンダネー シュウロクタイヘンダッター

莉嘉「~~~♪」カシャ

みりあ「あ、莉嘉ちゃん何やってるの~?」

莉嘉「写メってお姉ちゃんに送るんだ~。初ソロって自慢するんだよ!」

みりあ「それいい! みりあもお母さんに送ろ~」カシャ

ミリアチャンノキョクスッゴクカワイカッタ! デショデショー!

智絵里「二人とも、すっごく嬉しそうだね」

かな子「ふふっ」

未央「いや~、しかしこの1ヶ月間、収録に宣伝に大変でしたなぁ……」

凛「うん。この企画が始動したタイミングも夏フェスが終わってすぐだったし、色々大変だったね」

杏「あ~。仕事しすぎて死ぬ~」

美波「夏フェスって聞くと、随分懐かしい気もするけどまだほんの1ヶ月前のことなのよね」

卯月「なんだかすっごい昔の話な気がしますね……」

かな子「この1ヶ月間でテレビ出演なんかもすっごく増えたもんね。まさかあのスイーツバラエティに出れるなんて思ってもなかった~」

凛「たしかに。正直私、アイドル始めたころはこんなに有名になるなんて思ってなかったよ」

みく「でも、まぁまぁ有名になったといってもまだまだこれから! みくたちはトップアイドルを目指すのにゃ!」

杏「……あんまり忙しくなっても困るんだけどな~」

みく「そのためには是非Pちゃんにも……。ってあれ?」キョロキョロ

凛「プロデューサーは?」

美波「会議があってちょっと遅れるみたい。でも、ちゃんと顔は出すそうよ」

卯月「そうなんですか……」

杏「……最近のプロデューサー、ちょっと働きすぎだと思うな」

未央「杏ちゃんが言うとあまり説得力がないけど……。確かにちょっと働きすぎかも」

智絵里「ちょっと心配です……」

美波「そうね。きっちり休んでもらわないと。今の状況だといつ倒れてもおかしくないわ」

ガチャッ

卯月「あ!」

みく「噂をすれば……」

未央「やっほー! プロデュー……」

「…………」

未央「サー……?」

智絵里「ひっ」

「…………」キョロキョロ

みく「ねぇ、美波ちゃん。この人は……」コソコソ

美波「さぁ……」コソコソ

「……ここが、シンデレラプロジェクト担当事務室か?」

美波「は、はい!」

「なるほど……」

「…………」ウロウロ

みりあ「ねぇ、きらりちゃん……」チラッ

きらり「ちょ~っと、我慢しててね☆ みりあちゃん」

みりあ「う、うん……」

凛「……美波」チラッ

美波「…………」コクッ

「…………」

美波「あの、すみません。失礼ですが……」

「……あのドアの飾りは、誰が?」

美波「え?」

「あのドアに飾り付けられている馬の蹄鉄は誰が持ってきたんだ?」

蘭子「わ、私が! ……です」

「なるほど……」

蘭子「…………」ビクビク

「…………」ジーッ

「…………素晴らしい」

蘭子「……ふぇ?」

「馬の蹄鉄には魔除けの意味もある……。そのことを踏まえた上で持ってきたのか?」

蘭子「は、はいぃ。一応……」

「素晴らしい……。これでこそこの私にふさわしい居場所だ……。君、名前を教えてくれないか?」

蘭子「か、神崎蘭子、でう! いたっ!」

「蘭子ちゃんだね。ありがとう」

美波「あ、あの!」

「なんだ?」

美波「お取込み中の所申し訳ないのですが、どちら様でしょうか?」

「? この私を知らないのか?」

美波「はい」

「……まぁ君たちはこの業界に入って日が浅い。知らなくても仕方がない、ということにしておこう」

凛「…………」ムッ

「では改めて……。紹介が遅れてしまい申し訳無い。本日からこのシンデレラプロジェクト担当となる……」

ガシャンッ!

「ん~?」クルッ

李衣菜「あ! プロデューサーさん!」

莉嘉「Pくん!」

P「どうして……?」

「相も変わらず腑抜けた顔をしてるな、765プロ……。いや、今は違ったか」

P「なぜ、あなたがここに……?」






P「黒井社長……!」

黒井「ウィ。久しぶりだな。……プロデューサーくん」





ーーーーーープロデューサールーム

P「……それで、詳しくお聞かせ願えないでしょうか。黒井社長」

黒井「ほぉ……。なかなかいいところではないか。セレブな私にぴったりだ」ドサッ

P「黒井社長!」

黒井「……本来なら口答えどころか質問も許さないが今回は特別に許してやろう。なんだ?」

P「さっきから言っている通りです。なぜあなたがここに?」

黒井「そこまで気になるのかね?」

P「当たり前です! それに、さっきおっしゃってたシンデレラプロジェクト担当になるという話は本当なんですか?」

黒井「君の耳は塞がっているのか? さっき言った通りだ」

P「……今西部長はどうされたんですか?」

黒井「今西ィ? ……あぁ、あの前任の如何にも冴えない男の事か」

黒井「彼なら今頃『会長特別賞』の副賞に付いてきた半年の休暇を楽しんでいる最中だろうさ」

P「そんな……。聞いていません!」

黒井「聞いてない? それはそちらの落ち度だろう。そうだろう? 千川くん」

ちひろ「はい、つい報告を忘れてしまいました。申し訳ありません」ニコッ

P「……ちひろ、さん?」

黒井「今回の件に関しては大目に見てあげよう。次からは気をつけたまえ、千川くん」

ちひろ「はい、お心遣い感謝致します。社長」

黒井「おっと、今は部長だ。間違えないでくれたまえ」

ちひろ「承知いたしました」

P「……どういうことですか?」

黒井「……千川くん。彼に自己紹介は?」

ちひろ「配属初日に済ませたはずですが?」

黒井「なるほど。しかしまだ不十分なようだ。もう一度、自己紹介をしたほうがよいのではないか?」

ちひろ「はい」


ちひろ「それでは、改めまして……」

P「…………」

ちひろ「私、プロデューサーさんの補佐などを任されました、『現』美城プロ所属……」






ちひろ「そして、元961プロダクション所属、千川ちひろです。よろしくお願いしますね」ニコッ




P「…………」

黒井「まぁ元とは言っても今の君のような状態にすぎない。あくまで短期の契約だ」

黒井「彼女はよく働いてくれる……。君も3ヶ月間一緒に働いたのだからよくわかるだろ?」

P「……えぇ」

ちひろ「当然のことをしているまでです」

黒井「よし、これで部署の初顔合わせも済んだ。さっそく会議にでも行くとするか。くれぐれも送れないよう注意してくれたまえ、プロデューサーくん」バタンッ


P「…………」

ちひろ「では、私もこれで……」

P「…………騙してたんですか?」

ちひろ「……特に伝えるほどのことでもないかと思いまして」

P「……そうですか」

ちひろ「では」バタンッ

ーーーーーー事務室

ギィ

P「…………」

莉嘉「あ! Pくん!」

みりあ「ねぇねぇ。あのおじさん誰~?」

P「…………」

卯月「プロデューサーさん?」

アーニャ「大丈夫、ですか?」

P「! あ、あぁ大丈夫だよ」

美波「本当ですか?」

P「もちろん! それで、さっきの人は、その~……」

杏「……それよりプロデューサー、これから会議なんじゃないの?」

P「そ、そうだったな。ちょっと行ってくるよ。留守番よろしくな!」バタンッ

未央「あっ……」

李衣菜「行っちゃった……」

ーーーーーー会議室

ザワザワ ウチノブモンデハ…… ツイセンジツイケブクロノホウデ……

P「失礼します」

黒井「この私よりも遅れてくるとは、随分なご身分だな」

P「……すみません」

黒井「まぁいい。それよりも今日の会議について何か聞いていることはあるか?」

P「いえ、特には……」

黒井「そうか……。!」

P「? どうかされましたか?」

黒井「今入ってきたあの女……。何者だ?」

P「さぁ……。俺……、私は他部署との顔が特別広いわけでもないので」

黒井「一人称は特に変えなくていい。貴様に無理に恭しくされると虫唾が走る」

P「……ありがとうございます」

P「それよりも黒井社長、先ほどの話の続きなのですが……」

「……静粛に願おう」

P「!」

黒井「…………」

ッ-----------------

「……心遣い感謝する。私は本日付で美城プロダクションアイドル部門の総括を担当することとなった美城だ。以後よろしく頼む」

P「美城……!?」

黒井「……なるほど」

常務「今回は急な収集をかけたことに関しては申し訳ないと思っている。なので用件は手短に済ませよう」

常務「本日ここに集まってもらったのは他でもない。アイドル部門の未来に関わる話をするためだ」

常務「現在我が部門では約200名の大量のアイドル候補生がいる。全て君たちが選抜してきたものだ」

常務「しかしその全体数に対しアイドル部門自体の業績は芳しくない……。Bランクアイドルはほんの数名。Cランクアイドルすらも数えるほどしかいない」

常務「いくら新設の部門とはいってもそろそろ甘えが許されない時期に差し掛かっている。それは理解しているだろう?」

常務「このままではアイドル部門そのものの立場が危うい。……まぁこのまま潰してしまっても構わないのだが、200名もの人数をいきなり路頭に迷わせるのも美城のイメージとして避けたい……」

常務「よってしばらくはアイドル部門全体の総括を私が行う事となった。……本題に入ろう、以上の事を踏まえた上で私はある一つの改革を行いたいと思う」

カイカク? キイテナイゾ? ザワザワ

常務「静粛に!」

シンッ-----

常務「……回りくどい言い方ではなく単刀直入に言う。現在行われているプロジェクト、部門、その他全てを……」







「白紙に戻す」





更新終わり
>>2の補足ですが誤字が多いのでそこらへんきになる人は適当に検索かけてまとめで読んでください

前みたいに隔週更新なんてせずゆったりやっていく予定です

あとまとめて読むと話の区切りがわかりにくいので本家っぽく副題いれました
が、適当なんで英語文法とか間違ってても気にしないでください








           『Who's magician?』





ハクシィ!? ザワザワ ココヲツブスキカ? ナニカンガエテンダ?

常務「これは決定事項だ。これから変更する予定は今のところない。君たちにはこの決定に従ってもらう」

P「ま、待ってください!」

常務「何だ?」

P「あまりにも急すぎます! もっと手順を踏んでもらわなければこちらとしても困ります!」

ソウダヨナー ザワザワ イキナリイワレテモ… ブツブツ

常務「……君は確か、765プロの者だったな」

P「はい」

常務「君のことは噂には聞いている。倒産目前の事務所をたった1年で再建させ、Bランク級のアイドルを量産したとか」

常務「素晴らしい実績だ。敬意を表そう。しかし……」

常務「ここは美城プロだ。いくら君が輝かしい経歴を持っていたとしても君はここでは単なる『部外者』だ」

P「部外者……?」

常務「あぁ。今の君の所属が美城プロといってもあくまで仮所属に過ぎない。いずれは765プロに戻るつもりだろ?」

常務「そんな中途半端な立ち位置の君を、部外者以外の何で表現すればいいんだ?」

P「それは……」

常務「とにかく、ここは美城プロだ。部外者の君が、我が社の方針に口を挟まないでくれ」

P「ちょ、ちょっと」

ガシッ

P「! 黒井社長!」

黒井「……少し黙っていろ小僧」

P「し、しかし……」

黒井「黙っていろと言ってるのだ。君の主言語は日本語じゃないのか?」

P「ぐっ……」

常務「…………」

黒井「…………」

常務「…………」

黒井「……ふむ」

常務「?」

黒井「御見逸れしました常務ゥ!」

常務「! 貴様は……」

黒井「961プロダクションの黒井です。美城会長からアイドル部門の『アドバイザー』として仮所属を命じられました。……まぁ先ほどの彼と同様『部外者』ですよ」

常務「それで? 発言したからには、何か意見があるんだろうな?」

黒井「えぇ。私、先ほどの常務の美城の伝統を大事にする姿勢にとても感銘を受けました!」

常務「……要件は手短に」

黒井「そこで部外者の身である私は何をすれば常務のお役に立てるかを考えました」

常務「それで?」

黒井「結論としましては私が今担当しているシンデレラプロジェクト……。そちらから複数人をすぐさまトップアイドル級にして見せましょう」

黒井「これで美城プロのブランドイメージを上げさせ、更に他プロジェクトメンバーとシンデレラプロジェクトメンバーを絡ませ相乗効果も狙いましょう」

常務「つまり……君は『部外者の私がトップアイドルを作り出すから黙って見ていろ』と言いたのか?」

黒井「えぇ」

常務「……先ほども伝えた通りアイドル部門にはあまり余裕がない。君の計画ではどれくらいの期間でトップアイドルが産まれる予定だ? 言っておくが1年や半年では話にならない」

黒井「その点ならご安心を。そうですねぇ……、2ヶ月足らずでAランクアイドルを10名ほど作り上げてみましょう」

P「!」

オイオイ… ニカゲツ!? ホンキカ?

常務「たった2ヶ月でか? 到底信用できんな。どうやって2ヶ月でAランクにする?」

黒井「きちんとした仮定に基づいた計算です。千川君!」

コンコンッ

「失礼します」

常務「入れ」

ガチャッ

ちひろ「資料をお持ちしました」

黒井「ありがとう。そこに置いていてくれ」

ちひろ「…………」ペコッ

バタンッ

常務「これは?」

黒井「たった2ヶ月でAランクアイドルを作るプランです。どうぞ」スッ

常務「…………」ペラッ

常務「……!」

常務「貴様……、正気か?」

黒井「もちろん。それに、こちらには彼がいますから」

常務「…………」チラッ

P「?」

常務「…………」ジーッ

P「あ、あの……」

常務「……Aランクになれなかったアイドル達はどうする?」

黒井「クビにします」

P「黒井社長!!」

常務「…………」

黒井「黙っていろと言ったはずだ!」

P「黙ってられません! クビってそんな……」

常務「なるほど、面白い。やってみろ」

P「!」クルッ

黒井「ありがとうございます」

P「常務!」

常務「連絡は以上だ。これからのことは計画が固まり次第各部署に順次連絡していく。それでは各自業務に戻ってくれ」

ーーーーー事務室

黒井「…………」スタスタ

P「社長! 待ってください! 納得のいく説明を……」

黒井「…………」ガチャッ

P「あんな計画聞いてません! 認めることなんてできません!」

黒井「…………」バタンッ

P「黒井社長!」

黒井「…………」ピタッ

P「! …………」

黒井「…………」

P「…………」ゴクリ

黒井「…………クソォッ!!」ガンッ

P「!」ビクッ

黒井「私の計画は完璧だったのに……。あの女めぇ……!」

P「く、黒井社長……?」

黒井「ん~? なんだ~?」

P「だ、大丈夫でしょうか?」

黒井「多少冷静さは欠けているが問題はない」

P「……でしたら、先ほどの件についてご説明願えないでしょうか」

黒井「先ほどの……? あぁ、あの女に言った計画のことか」

P「はい。クビなんてやりすぎです!」

黒井「……やはり高木のとこのぬるま湯で育った奴は考えが甘いな」

黒井「安心しろ。別に私はシンデレラプロジェクトを潰しにきたわけではない。むしろその逆だ」

黒井「あのままあの女の思い通りにさせてたらどうなっていたと思う? まっさきに『部外者』である私たちのプロジェクトを解散させるだろう」

黒井「だから先手を打ったのだ。あぁでもしないと今頃このプロジェクトの存続はなかっただろうな」

P「……どうしてそこまでしてこのプロジェクトを?」

黒井「最近美城のアイドル部門が目立ち始めたと聞いてな。最初は潰そうと考えていたが……。中から壊す方が楽だと思ってな」

P「中?」

黒井「あぁ。まぁつまり……、シンデレラプロジェクトを利用してここのアイドル部門自体を961プロの傘下に置くつもりだった」

P「出来るんですか? そんなこと」

黒井「できたはずだ。あの女さえいなければすぐにでもこのハリボテの城は私のものになっていたはずだ」チッ

P「そんなこと……、俺に言っても大丈夫なんですか?」

黒井「別にお前はここの社員でもない。それに、プロジェクトを潰したくない目的は同じだろ?」ニヤッ

P「…………それで、計画とは? まだ具体的な事は聞いてないんですが」

黒井r「これだ、読みたまえ」パサッ

P「……失礼します」パラパラッ

黒井「今回この計画で要となってくるのはフェスだ。フェスは一番ファンを増やすことのできるチャンスだ」

P「『1111フェス』……?」

黒井「名前なんぞどうでもよい。フェスで大事なのは対戦相手だ。対戦相手が有名であればあるほど利益がうまい。今回はそこを狙う」

P「なるほど……。!」

黒井「そしてこのフェスでの相手は……」

P「……黒井社長。本気ですか?」

黒井「あぁ、これが最善策だ。今回の相手は……」







黒井「765プロだ」





更新終わり

今回更新遅くなってしかもアイドルが一切登場しない一部の人にとっては全然面白くなかったかもしれません 申し訳ありません
しかし下地は整いました 次回からはちゃんとアイドルマスターする予定です
あと書き忘れましたが1111フェスの読み方はワンフォーオールです









           『Let's start to adventure!!!!』





ーーーーー事務室

杏「…………」

智絵里「…………」

かな子「…………」

未央「……プロデューサーと新しい部長さん、どうしたんだろ?」

凛「さぁ? 凄い剣幕だったけど……」

かな子「何かあったのかな?」

杏「さぁ~」

智絵里「…………」チラッ

未央「……見に行ってみる?」

智絵里「え? で、でも……」

杏「行かないほうがいいんじゃな~い?」

凛「何かあったら、ちゃんと言ってくれるだろうし……」

かな子「そ、そうだよね……」

杏「うん。それがいいそれがいい」

かな子「…………」

智絵里「…………」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーー

ーーーーーー

凛「……で、結局来ちゃったと」

智絵里「ご、ごめんなさい……」

未央「まぁまぁ、お堅いこと言わずに」

杏「なんで杏まで……」グデー

未央「ほらほらいくよ! じゃあ、みむっち!」

かな子「う、うん……」ソーッ

……デ……カ

未央「ん~?」

杏「…………」グデーン

智絵里「…………」ゴクッ

凛「あんまり聞こえない……」

未央「おや? しぶりん意外と乗り気だね」

凛「そ、それは……」

かな子「…………」ジーッ

……ノデハ…!

智絵里「あ、あの。そろそろバレちゃうんじゃ……」

未央「あとちょっとだけ!」

杏「…………」フワァ~

ヒド……マ…!

未央「……ねぇ、みむっち。もうちょっと開けれない?」

凛「未央、これ以上はさすがに……」

杏「…………」ムニャァ

未央「でも、せっかくここまで来たんだし~」

かな子「…………」ソーッ

ギィ

智絵里「か、かな子ちゃん!」

…ント……ツ…カ?

かな子「…………」

フェ…ニマケタ……ミンナクビ……

かな子「!」

杏「!」

バタンッ!

凛「!」

未央「び、びっくりした~」

智絵里「な、何か……あったの?」

かな子「う、ううん。ちょっと手が滑っただけ……」

杏「ま、これ以上は無理でしょ。帰ろ」

凛「そうだね。ほら、行くよ未央」

未央「あともう少し!」

凛「……行・く・よ?」

未央「ちぇ~」

かな子「…………」

杏「…………」

ーーーーー常務室

「……以上が今期の計画です」

常務「作り直せ」

「は?」

常務「二度も同じことを言わせるな。この計画では前期と比較して決算が上昇する可能性が低い」

「そ、それは……」

常務「私が求めているのは現状の維持ではない、更なる飛躍だ」

「……わかりました。失礼します」

バタンッ

常務「…………」ハァ

コンコンッ

常務「どうぞ」

ガチャッ

部長「やぁ。元気そうだね」

常務「……お久しぶりです」

部長「本当に久し振りだ。最初話を聞いたときは驚いたよ、まさか君が常務だなんてね」

常務「それで、要件は?」

部長「特にはないよ。それとも、何かなければ来ては行けなかったかな?」

常務「……いえ」

部長「しかし強引なことをするねぇ。全プロジェクトを凍結だなんて驚いたよ」

部長「それに、わざわざ社外から招いた人間を部外者呼ばわりしたそうじゃないか。お父上もさぞかしお怒りだったんじゃないのかい?」

常務「父の考えは……、理解に苦しみます」

部長「僕にとっては、君の行動の方がよっぽど理解できないがね」

常務「……美城は、祖父の代から続く歴史のある会社です。もちろん歴史だけの会社ではありません。輝かしい業績もあります」

常務「他の追随を許さない業界内での圧倒的なシェア率……。その業績歴史と伝統があってのことです」

部長「その歴史と伝統に異物を入れるのは我慢ならない、ということかね?」

常務「えぇ、特に……」

コンコンッ

常務「どうぞ」

「はっ」

ガチャッ

「依頼されていた黒井崇男に関する資料です」スッ

常務「…………」パシッ

常務「…………」パラパラ

常務「……ご苦労。引き続き調査を進めてくれ」

「わかりました。失礼します」バタンッ

常務「……あの黒井という男には、虫酸が走ります」

ーーーーーー数日後

ザワザワ ナンダローネー? ガヤガヤ ハッピョー?

P「よし、みんな集まったな!」

黒井「…………」

みりあ「ねぇねぇ、何かあるのー?」

P「あぁ、実は……」

かな子「じ、実は……?」

杏「…………」

P「2ヶ月後にフェスの開催が決まった!」

オォー フェスカー カンカクセマクナイ?

李衣菜「それで? わざわざみんなを集めてるんだから、並大抵のフェスじゃないんでしょ?」

P「あぁ、今回のフェスは参加数こそ2事務所だけだが、聞いた驚くな。相手はあの765プロだ!」

みく「な、765ォ!」

凛「765って……この前卯月たちが言ってた?」

卯月「はい!」

蘭子「はて……。では如何様にしてその高みから我らを見物に?(でも……、どうしてそんな有名なところと?)」

P「まぁ……、いろいろあって」

アーニャ「?」

P「と、とにかく! このフェスはみんなにとって重要なフェスだ。各々仕事もあると思うが、当分はこのフェスを目標にしてくれ」

「「「はーい」」」

ガヤガヤ フェスダッテー ミンナキテクレルカナ? ガンバロウネ!

黒井「……あの事は言わなくていいのか?」ボソッ

P「俺のプロデュース方針には、一切口を挟まないでください」

黒井「……どこまでも甘いな」フッ

ーーーーーレッスン室

杏「はぁ~。疲れた~」

智絵里「あ、杏ちゃん……。まだ、10分しか経ってないよ……?」

杏「疲れたもんは疲れんたんだよ~。今日のレッスン、もう終わりにしない?」

智絵里「え、えっと……」

杏「ね?」

かな子「で、でも、この後歌の番組の収録だしフェスも近いし、ちゃんとレッスンしなきゃダメだよ!」

杏「え~、って言って今日の振り付けはもう完璧だしフェスなんてまだまだ先じゃん? 今から心配することなんて……」

かな子「ダ、ダメ!!」

杏・智絵里「!」ビクッ

かな子「今度のフェスは絶対に勝たないとダメ!」

杏「か、かな子?」

かな子「じゃなきゃ私たちこのまま……!」

智絵里「か、かな子ちゃん。お、落ち着いて……」

かな子「あっ……」

智絵里「大丈夫?」

かな子「う、うん……。ご、ごめんね」

杏「な~んかかな子らしくないね。どうかしたの?」

かな子「あ、いや。その……」

かな子「……ちょ、ちょっと疲れちゃったのかも」

智絵里「え?」

杏「ほら~。かな子だって疲れてるじゃん。今、杏たちに必要なのは休養だ!」

智絵里「そ、そうなの?」

かな子「……うん。そう、みたい」

かな子「でも大丈夫! お菓子食べればすぐ治ると思うから」

智絵里「そっか……」

杏「そういうわけで……。ほらほら、二人とも上に行ってきな」

智絵里「杏ちゃんは?」

杏「う~ん。あたしはここに残ろうかな。上に行ってごちゃごちゃ言われるのめんどくさいし」

智絵里「そっか。気をつけてね。じゃあ行こっか、かな子ちゃん」

かな子「うん……」

バタンッ

杏「…………」

ーーーーーープロデューサー室

P「…………」カタカタ

P(ここ1週間のプロデュース方針はこれでよし、っと。それより問題は……)

ちひろ「…………」ニコニコ

P「千川さん……」

ちひろ「はい、何かお困りですか? プロデューサーさん」

P「率直にお聞きします。あなたは今回の黒井社長の案に賛成なんですか?」

ちひろ「全面的に、というわけではありませんが他ならぬ社長……、失礼いたしました。部長の方針ですから。もちろん賛成はしていますよ」

P「……どうしてですか?」

ちひろ「私が所属している961プロダクションはアイドルを『高貴なるもの』と象徴付けています」

ちひろ「アイドルとは完璧ではならない……、これが黒井の、同時に我が社の考えです。もちろん社員一同、その考えを社員教育で理解しています」

ちひろ「961プロダクションはそのようなアイドルを作るための会社です。そのためのバックアップは惜しみません」

ちひろ「しかし私たちができるのは今回のフェスのようなチャンスを提供するだけです。チャンスをものにできるかどうかは本人の力量しだいです」

P「そして、チャンスを棒に振れば二度とチャンスは与えない。ということですか」

ちひろ「はい、理解が早くて助かります」

P「そんなやり方って……」

ちひろ「おかしいと思いますか? ですが私たちはこの方法でJupiterや玲音といった数多くの高ランクアイドルを作り上げている確かな実績があります」

P「それは……」

ちひろ「それと、もう一つ。これはあくまで私の個人的な考えなのですが……」

ちひろ「夢見る少女たちに、早いうちから現実を見せるのも私たちの仕事だと思いませんか?」

ーーーーー事務室

ガチャッ

智絵里「し、失礼します……」

かな子「……誰もいないみたいだね」

智絵里「うん……。珍しいね」

かな子「…………」

智絵里「かな子ちゃん。大丈夫?」

かな子「! う、うん! ちょっと疲れただけだから」

智絵里「…………じゃあ、私、下に行ってお菓子買ってくるね。かな子ちゃんは休んでて」

かな子「え? それなら私も……」

智絵里「かな子ちゃんはちゃんと休んでて」

かな子「で、でも……」

智絵里「じゃあ、行ってきます」バタンッ

かな子「あっ……」

*****************

P「…………」

ちひろ『私たちには、数多くの高ランクアイドルを作り上げている確かな実績があります』

P(……アイドルを『作る』か……。本当にあれがちひろさんの本心なのか……?)

ちひろ『いくらプロデューサーさんのお願いであっても、それは許可できません』

P(でも、あの時の、サマーフェスの時のちひろさんは、アイドルのことを本気で考えている顔をしていた。それは確かだ)

P(それともあれも演技、だったのか……。わからないな……。 ん?)

♪~~。♪~、♪~~~。

P(レッスン室から音……?。あぁ、Candy Islandがレッスン中か)

P(せっかくだし、少し覗いていくか)ヒョイ

P(…………?)

シーーーーン

P(……? 誰もいない?)

ーーーーー事務室

チッ……チッ……チッ……チッ……

かな子「…………」

チッ……チッ……チッ……チッ……

かな子「…………」

ギィ……

かな子「! お帰り、智絵里ちゃ……!」

「おや? 先客がいたかな。これは失礼したね」

かな子「! ぶ、部長さん!?」

部長「やぁ、久しぶりだね。三村くん」

かな子「は、はい。お久しぶりです。部長さん」

部長「ははは、今はなんでもないただのおじさんだよ。そんなにかしこまらなくてもいい」

かな子「は、はぁ……」


部長「それにしてもすまないねぇ。私が急にいなくなったばっかり君達に苦労をかけてしまって」

かな子「そんな! 部長さんがいなくなったせいじゃ……」

部長「……君たちアイドルにはそう見えてるのかもしれないねぇ」

かな子「え?」

部長「なんでもないさ。ところで、酷く悩んでいた様子だったが、何かあったのかい?」

かな子「……いえ、何も」

部長「…………そうかい」

かな子「…………」

部長「……いいねぇ、若いというのは」

かな子「……?」

部長「三村くん。君は今、きっと自分の行動が本当に正しいのか疑問に思っているんじゃないかな?」

部長「……もしかしたら、ただ単純に今日のおやつの事について悩んでいるかもしれない。その時は年寄りの戯言として受け流してくれ」

かな子「いえ、そんなこと……」

部長「ああ、何も言わなくてもいい。ただの暇つぶしだよ。付き合ってくれないかね?」

かな子「……わかりました」

部長「ありがとう。感謝するよ」

部長「……私はね、本当に年寄りくさい考えなのだがね、若いというのは素晴らしいことだと思うんだよ」

部長「若いころはね、ある程度の無茶はしてもいい。いや、むしろするべきだ。特に君たちくらいの年齢の時はね」

部長「君たちはとっても良い子だ。それに頭も良い。立派だよ」

部長「でも、そのせいで後先の事を考えて遠慮してしまうのが悪い癖だ」

部長「もっと後先を考えずに行動してもいいんだ。その結果うまくいかなくたっていい。その尻拭いをするために、プロデューサーくんや私といった私がいる」

部長「失敗を恐れずに、冒険してごらん。それは若い君たちにのみ許されてる特権だ」

部長「……それに、君が冒険し始めるのを待っている人がいるかもしれないよ」

かな子「…………」

****************

杏「ふぃ~、今日も疲れた~」

智絵里「ご、五分しかたってないよ。杏ちゃん」

杏「人間には誰しも休養が必要なんだよ、はい飴」ポイッ

智絵里「わっ、わっ!」ギュッ

かな子「…………」

杏「お、ナイスキャッチ」

かな子「……杏ちゃん」

杏「ん~?」レロレロ

かな子「私、これまでずっと杏ちゃんに助けてもらってばっかりだよね」

杏「……? そう?」

かな子「うん。この前の切子のレポートだって、杏ちゃんのサポートがなかったらどうなってたかわからないし……」

かな子「私一人だったら、きっと今頃アイドルなんて辞めちゃってると思う。だからね、本当に感謝してるんだ」


杏「それは、……どうも」

かな子「私、今とっても楽しい。アイドルとしていろんな番組に出て、歌も歌って、ダンスも踊って。でもね」

かな子「もっと、……楽しめると思うんだ」

智絵里「…………」
杏「…………」

かな子「これまでずっと、杏ちゃんに甘えてた。でも、これから私がちゃんと頑張れば、もっと楽しめると思う!」

かな子「だから……、レッスン、一緒にしてくれない?」

杏「…………」

智絵里「……わ、私も!」

杏「!」

智絵里「私も、もっと頑張る。頑張って、もっと色んな景色を、色んな世界を……、二人と……見たい! だから……」

かな子「智絵里ちゃん……!」

杏「…………」

杏「……まったく」ハァ

智絵里「…………」ドキドキ
かな子「…………」ゴクッ

杏「ここまで言われたんじゃあしょうがない、か」

かな子「それって……!」

杏「やろっか、レッスン」

智絵里「……!」パァ

かな子「ほ、ほんとに!?」

杏「うんうん。ほんとほんと」

かな子「やったぁ!」ギュー

杏「ちょ、苦し」

智絵里「えへへ!」ギュー

杏「ち、智絵里まで……ぐぅ」キュー

かな子「よし、じゃあ早速……、あ、杏ちゃん!?」

杏「うぅ……、ほ、星が回る~」キュー

かな子「あ、杏ちゃん! 大丈夫!?」ガクンガクン

智絵里「ぷ、プロデューサーさん呼んでくるね」

かな子「お、お願い!」

杏「も、もうダメ~」ガクッ

****************

杏「…………ん?」パチッ

P「お、起きたか。どうだ? 気分は」

杏「……まぁまぁ、かな」ムクッ

P「それは良かった。かな子と智絵里も安心するだろ」

杏「ん」

P「二人とも申し訳なさそうにしてたよ」

杏「そう……」

P「まったく、二人ともしっかりしてきたと思ったらこれだからな。ちょっと心配になってくるよ」ハハッ

杏「……さっきの話、聞いたの?」

P「ん?」

杏「いや、なんでもない」

P「……杏は、もっと二人を頼ってもいいと思うぞ」

杏「……聞いてるじゃん」

P「あの二人づてにな。二人だって杏と一つしか変わらないんだぞ? リーダシップを積極的に発揮するのももちろんいいが、そんなこと続けてたらいつか杏が倒れるぞ」

杏「…………」

P「もっと人に甘えることを覚えてもいいと思うぞ」

杏「……わかった。でもさ」

P「?」

杏「その言葉、プロデューサーには言われたくないよ」

杏「私たちだって子供じゃないんだよ。……もっと、信頼してもいいんじゃない? じゃ」バタンッ

ア、アンズチャ~ン ダ、ダイジョウブダッタ?

P「……信頼する、か」

***************

ーーーーー事務室

ザワザワ ヒサシブリー チョウシドー? ガヤガヤ

P「…………」

莉嘉「ねぇねぇPくん。今日は何なの?」

みりあ「またはっぴょー?」

P「……あぁ、そういったところかな」

みく「じゃあ早くしてにゃあ。みくたちこう見えても結構ハードスケジュールにゃあ」

李衣菜「そんなのプロデューサーさんが決めてるから知ってるんじゃ……」

みく「あ、そっか」

P「いや、あまり長引かせる気はない。ただ……」

P「前回のフェスの件で一つだけ、言っていなかったことがある」

P「今回のフェス、敗れたユニットは……







P「CINDELLELA PROJECTメンバーから……、外れてもらうことになる」








更新終わり

皆様あけましておめでとうございます…… 締めるのに 5ヶ月もかかってしまい申し訳有りません
二度とこのような愚行を行わないよう善処いたします

P(『フェスに負けたらクビ』。このことをみんなに正直に言おうと決めた時、ある程度の反発があるとは覚悟していた)

P(たとえ数ヶ月と言えども慣れ親しんだプロジェクトだ。そこをやめさせらるとなると、抵抗はやはりあるだろう)

P(しかし、俺の見通しは甘かった)

P(俺の想像以上に、空気は凍った)










           『Because, Because, Because』








李衣菜「……どういう、こと?」

未央「プロジェクトメンバーから外れてもらうって……」

智絵里「それって……、クビってことじゃ……」

みりあ「! みりあたちアイドルできなくなっちゃうの!?」

莉嘉「そうなの? Pくん?」

P「…………そう、思ってもらっても構わない」

「「「……………」」」

凛「……誰の指図なの?」

P「…………」

凛「最近噂になってる常務とかいう人?」

P「いや、この計画は……、このプロジェクト独自で決めたことだ」

凛「!」

P「確かに常務の影響が大きいのは否定はしない。けどな、みんなの居場所を守るためにはこれが最善策なんだ。理解して欲しい」

凛「アンタ……!」グイッ

卯月「凛ちゃん!」ギュッ

凛「あ……」

P「……すまない」

凛「いや、こっちこそ、ごめん」

美波「……プロデューサーさん」スッ

P「どうした? 質問か? それとも……、何か意見か?」

美波「質問です。いいですか?」

P「……あぁ」

美波「勝てば、いいんですよね?」

P「……え?」

美波「フェスです。みんなが勝てばいいんですよね?」

P「あ、あぁ。まぁそうなるのが最善策だな。けど……」

美波「わかりました。ありがとうございます」

P「?」

美波「今のプロデューサーさんの言葉、みんなには聞こえた?」

美波「……勝てばいいのよ!」

「「「…………」」」ポカーン

美波「よく聞いて。フェスに負けたらっていう前提があるだけで、私たちはまだCPメンバーから外れたわけじゃないわ。今の時点では何も変わってないの」

美波「それに、逆に考えてみて。今回のフェスに勝ったらCPの部署としての立ち位置はすごく強固なものになるわ。これはチャンスなのよ!」

美波「私はこの中の誰一人として負けるとは思ってないわ。絶対にみんな勝つって自信がある! みんなはどう?」

…………………

莉嘉「……負けるわけないじゃん!」

アーニャ「Да」

智絵里「わ、私一人だとわかんないけど……。杏ちゃんと、かな子ちゃんがいたら……!」

蘭子「天使たちは必ずや我らを祝福してくれるだろう!」

李衣菜「絶対って言葉……、あんまり好きじゃないけど、いいんじゃない? ロックで」グッ

P「みんな……!」

ワイワイ ガヤガヤ

美波「……プロデューサーさん。これがみんなの答えです」

P「……ありがとう。美波」

美波「いえ。……でも」

P「?」

美波「きっとこれが今の現状で最善の計画なんだと思います。多少リスクがあったとしても。けど」

美波「プロデューサーさんなら、こんな案よりもっと良い案を出してくれるんじゃないかなって、思ってました」

P「……すまない」

美波「大丈夫です。では」ペコリ

P「…………」

P(美波が立ち去った後、少しだけみんなの顔を眺めてみた)

P(誰もが未来に向けて希望を持抱き、絶望なんて一欠片も見せない顔……)

P(そんな風を演じている顔をしていた)

P(こっちだって伊達に数ヶ月プロデュースしているわけではない。彼女たちの表情である程度のことはわかるつもりだ)

P(プロデュースには必要不可欠な能力だが、この時ばかりは自分の能力を呪った)

P(口では『絶対に勝てる』といいつつも誰一人としてその言葉に確信を持っていない)

P(負けることを恐れ、その恐怖を覆い隠すように作った空元気が部屋中を覆っていた)

P(それが彼女たちの答えだった)

******************

「「「ありがとうございましたー!」」」

「お、今日も元気だったね~。最近調子いいんじゃない? 凸レーション」

みりあ「え! ほんと!」

莉嘉「ま、とーぜんってとこかな☆」

きらり「このままトップアイドルまで、猛ダッ~~~シュ!!だにぃ」

「ほんとほんと。最近ね、おじさんのテレビ局でも3人の名前がよく上がるようになってね。今からぐんぐん伸びてくと思うよ~。これからも、よろしく頼むよ」

「「「は~い!!」」」

「じゃあ、また来週ね」バタンッ

莉嘉「ねぇねぇ聞いた? 私たち、ぜっこーちょーなんだって!」

きらり「えへへ☆ 褒められちゃったにぃ」

みりあ「あ! プロデューサーさん来たよ!」

P「みんな、お疲れ。随分と機嫌がいいみたいだけどどうかしたのか?」

みりあ「うん! 私たちね、ディレクターさんに褒められたんだよ!」

P「そうか! まぁ三人とも、最近はよく頑張ってるからな。その頑張りは認められて党是だと思うぞ」

莉嘉「そ、そうかな~? えへへ……」

P「よし、じゃあその調子で次はレッスンだ。人気が出ても基礎はしっかり大事にな!」

みりあ・莉嘉「おー!!」

きらり「……おー!」

P「? ……じゃあその前にご褒美だ。二人とも喉は渇いてないか?」

莉嘉「あ! もしかしてPくんジュース買ってくれるの?」

みりあ「わーい!」

P「たまには、な。きらりは何がいい?」

きらり「え? え~っとぉ、しゅわしゅわしてるなら、なんでもいいにぃ」

莉嘉「オッケー! じゃあ行ってくるね!」

みりあ「ダーッシュ! えへへ」

きらり「あ、待って二人と……」

P「いや、きらりは行かなくていい」

きらり「でも……、二人だけだと心配だにぃ」

P「それもそうだけど、今はきらりの方が心配だ」

きらり「…………」

P「どうしたんだ?」

きらり「……ねぇ、Pくん。きらり怖い?」

P「いや、全然」

きらり「!」ビクッ

P「ど、どうかしたか? 変なこと言ったならすまん……」

きらり「う、ううん。ちょっとびっくりしただけだにぃ……」

P「ならいいんだが……」

きらり「Pくんは違うかもだけど、普通ね、みんながきらりんのこと見たら怖がると思うの」

きらり「だからね、これから人気になっていったらみんなに迷惑かけちゃうんじゃないかな~って思って……」

P「迷惑?」

きらり「そ。きらりんがいなかったら、もっと早く人気が出て。人気が出ても、悪口言われないんじゃないかな~って」

P「そんなことはない!」

P「凸レーションはきらりが居てこそのユニットだ。きらりだけじゃい、他の誰が欠けてもダメだ」

P「悪口なんて言われても気にするな。もし言われたとしても、言った人全員を笑顔にしてやればいい。きらりのステージで」

きらり「……うん。そうだね」

P「きらりはステージを楽しんどけばいいんだよ。それだけでいい」

きらり「きらりんが楽しんでなきゃ、みんな楽しめないもんね☆」

P「その意気だ!」

莉嘉「Pくーん! 買ってきたよ! はい、Pくんの分」

P「おぉ、ありがとう。俺の分も買ってきてくれたのか? 悪いな」

みりあ「莉嘉ちゃんと一緒に選んだんだよ! はい、きらりちゃんの分はこっち!」

きらり「ありがと☆」

P「どれどれ……。お、いつも飲んでるコーヒーか」

莉嘉「どう? どう?」

P「うん。ちょうど飲みたかったところだ。ありがと」

莉嘉「でしょでしょ~? えへへ」

P「よし、じゃあそろそろ行くか」

莉嘉「は~い!」

みりあ「莉嘉ちゃん、嬉しそうだね」コソコソ

きらり「きっとプロデューサーさんに褒められて嬉しいんだにぃ」ヒソヒソ

みりあ「そうなの?」

P「二人とも~。置いてくぞ~」

きらり「うきゃー☆ 待って待ってぇ!」

ーーーーーーレッスンルーム

「1、2、3、4 1、2、3、4」

きらり「…ハッ…ハッ」
みりあ「ハッ…ハッ…」

「1.2……。……あ、すみません。止まってください」

みりあ「?」ピタッ

きらり「どうかしたの? ルキちゃん」

ルーキー「え、ええっと……その……」チラッ

莉嘉「…………」ボケーッ

ルーキー「あ、あの、莉嘉ちゃん?」

莉嘉「……へ?」

ルーキー「何かありましたか? それともやっぱり私のレッスンが……」

莉嘉「そう!」

ルーキー「あぁ、やっぱり……」

莉嘉「今日ね、Pくんに褒められちゃったの! ルキちゃんよく気づくね!」

ルーキー「……はい?」

莉嘉「聞いて聞いて! さっきさ~……」キャッキャッ

ルーキー「あ、あの……」

みりあ「莉嘉ちゃんさっきからずっとあんな感じだね」

きらり「きっと、すっご~っく嬉しかったんだと思うよぉ」

みりあ「でも、プロデューサーさんには前からよく褒めてくれたと思うんだけど……」

きらり「う~ん。それは、莉嘉ちゃんが気づいたからじゃないかな~」

みりあ「何に?」

きらり「みりあちゃんも、もうちょっ~と大人になったらわかるにぃ☆」

みりあ「?」

莉嘉「よーし決めた! 私、これからはPくんのためにアイドル頑張る!」

ルーキー「は、はぁ……」

莉嘉「そうと決まればレッスン頑張らなくちゃね! じゃあルキちゃんよろしく!」

ルーキー「へ? あ、は、はい!」

莉嘉「いっくぞー!」

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