輿水幸子「モバマス・カート・グランプリ」 (65)


諸注意


・昔放送されていた、某バラエティー番組のパロディの……つもりです。

・マリオカートではないです。

・ちなみに作者にカートの経験はないです。


では、お楽しみ下さい。



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1444998047



九月某日。国内外のモータースポーツも、いよいよ終盤戦に突入する。
そんな中、世界耐久選手権を間近に控えた富士スピードウェイに、アイドル達がやって来た。


川島瑞樹「皆さん、こんにちは。本日の司会進行を務めます、川島瑞樹です。私達は、富士スピードウェイにやってまいりました」


瑞樹「今回の企画はですね……カワイイボクと142sが、カートに挑戦するというものです」

瑞樹「それでは、主役の皆さんをお呼びしましょう……カワイイボクと142s。輿水幸子ちゃん、白坂小梅ちゃん、星輝子ちゃんです!!」



輿水幸子「違いますよ!!」

瑞樹「え? どういう事なの?」

幸子「今日はカート挑戦という事で、輿水幸子を改め“サチコチャン・ベッテル”です!!」

星輝子「フヒ……“ショウコチャン・ブルデー”です」

白坂小梅「……あの……えっと……“コウメチャン・ブエミ”と言います」


瑞樹「……レッドブルね。わかるわ」


注)2009年のF1では、レッドブルF1チームと、その兄弟であるトロロッソF1チームに、セバスチャン・ベッテル、セバスチャン・ブルデー、セバスチャン・ブエミと、同名のレーサーが3人所属していた。



瑞樹「しかしですね。今日は初挑戦という事なので、ちゃんと先生も連れてきました。では、お呼びいたしましょう……」


瑞樹「この方です!!」


原田美世「こんにちは。原田美世です」

三人「おー……本当に先生だ……」


瑞樹「美世ちゃんは、幼い頃にカートレース歴のキャリアがあるという事で、今回の講師役を務めてくれるという事になりました」

美世「ん~、そんなに速く無かったけどね……」




幸子「美世さんは、名前がそのままで良いんですか?」

美世「……どういう事?」

幸子「ほら。ボク達も、折角語呂の良い名前に改名して、チャレンジするじゃないですか?」

輝子「折角だし……美世さんも。ね?」

小梅「うん……。良いと、思います」


瑞樹「では、美世ちゃん。原田美世を改めて?」



美世「えっと……“ダーチャン・ロウブ”で……」

瑞樹「……それは、WRCじゃない?」


注)WRCを席巻した、セバスチャン・ロウブ。彼の所属したシトロエンワークスの、メインスポンサーはレッドブルである。一時期のモータースポーツは何故かセバスチャンが沢山いた。



1時間目、座学


瑞樹「まずは、サーキット走行のマナーやルールのお勉強の時間です」

美世「はい。では、あたしの方から、みっちりとお教えいたします」

142s「よろしくお願いしまーす」

美世「まずは、サーキット走行の基本の一つ。走行中にコントロールタワーから、旗が振られます。その旗の色によって、走行ペースを変えなければいけません」


美世「ざっくりと纏めるとこんな感じになります」


・日本国旗→競技開始の合図。主にスタートや、走行開始の合図。

・黄色旗→コース上にマシンが止まったり等、アクシデントが発生。追い越し不可で、ペースを下げろの指示。

・緑旗→黄色旗解除。追い越してもOKの合図。

・赤旗→更に大きなアクシデントの為、走行中断。全車ピットに戻る。

・チェッカーフラッグ→レースならばゴール。フリー走行やタイムアタックの場合は、走行時間終了の指示。

・黒旗→失格の指示。速やかにピットに戻って、コントロールタワーでオフィシャルに怒られてくる。


美世「……と、大まかにはこんな感じになります。ただ、黒旗を振られるのは、よっぽどの場合です。ま、三人はそんな事無いと思うけどね~……」



幸子「先生、質問です」

美世「はい、幸子ちゃん」

幸子「失格の対象になる様な事とは、どんなことですか?」


美世「例えば逆走したりとか、ショートカットしたりとか……。著しくスポーツマンシップや、マナーを損なうような行為をすると、問答無用で失格です」



美世「なお、この企画で黒旗を提示されたら、失格にした上で瑞樹さんに後でガッツリ説教して貰います。あと、廊下で1時間正座のおまけも付けます」

幸子「……本当ですか?」

輝子「……幸子。……フリだぞ?」

小梅「……うん。オイシイかもね……」

幸子「ちょっと!! ボクは失格になる前提ですか!?」



二時間目、実技


瑞樹「座学が終わった所で、カートに乗ってみましょう。これが、今回使用するカートですね?」


http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org563405.jpg.html



美世「そうです。今回は、富士スピードウェイのレンタルカートを使用します。カートのはエンジン付きの乗り物で、もっとも単純な仕組みになってます。そうする事でコストが下がるので、モータースポーツ入門に適していると言えます」


瑞樹「結構小さいけど、大体何キロくらい出るの?」

美世「50ccの入門用のカートなので、最高速は40kmに届かない位です。ただ、目線も低いし体が露出しているので、体感速度はかなり速く感じます」

瑞樹「なるほど。美世ちゃんがカートに乗っていたしていた時と、何か違いはありますか?」

美世「一番違うのは、セルモーターが付いてる事と、遠心クラッチが付いている事ですね」





瑞樹「それは、どういう違いになるのかしら?」

美世「あたしが乗ってたカートだと、ダイレクト式って呼ばれるタイプでした。エンジンとスプロケットが直結してて、押し掛けでエンジンを始動するタイプだったんです」

美世「このタイプだと、停車しててもエンジンは止まらないし、エンストしても簡単にエンジンを再スタートさせれます。反面、ダイレクト式よりも少し重くなりますね」

美世「ただ、コース上で止まってしまった場合。エンジンをかけ直すのは、係員にやって貰わないといけません。自分でかけ直すのは駄目です」


瑞樹「なるほど。一口にカートと言っても、色々種類があるのね」

美世「そうなんです。基本構造はほぼ同じでも、少しづつ違ったりしてます」




瑞樹「では、レーシングスーツに着替えた、142sです」


小梅「着てみると……結構暑いです」

輝子「……なんだか、スキーウェア見たい」

美世「そうだね。レーシングスーツは、基本は断熱耐火素材で出来てるから、生地は分厚いし風も熱も通さないんだ。本番のレースだと、更に耐火のインナーもつけるからね。夏は凄く暑くなるよ」

幸子「……これ着てると、何故か嫌な思い出が蘇ります」

美世「…………」


瑞樹「さあ、実際に乗ってみましょう!!」


参考コース図
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org563415.jpg.html



瑞樹「トップバッターは、輝子ちゃんです」

輝子「……フヒ。よろしく」


美世「まず、ハンドルで曲がる。右足がアクセルで進む。左足がブレーキで止まる。自分で危ないって思ったら、すぐに減速する事。OK?」

輝子「……頑張る」

美世「全部で、五週ね。あそこ(コントロールタワー)で、チェッカーが振られたら、すぐにピットに戻ってきてね?」

輝子「フヒ……任せて」


美世「じゃあ、スタートです」





瑞樹「さあ、輝子ちゃんの、カート初体験です。ゆっくりとコースインしました」

美世「最初の一週目だから、あれ位が一番良いんですよ」



輝子(……おお……おおお!?)


輝子(……右に曲がって……左に曲がって)


輝子(……こ、これ……意外と楽しい)


輝子(……最後のカーブを曲がって……全開!!)


輝子「……ヒャッハァァァァ!!」




瑞樹「結構飛ばし始めたわね……」

美世「……ちゃんと、旗を見るかが心配だよ」




瑞樹「これで、3週目ね。順調に周回を重ねてるようだけど……」

美世「ん~……次の1コーナーで多分、スピンすると思うな~」

瑞樹「わかるのかしら?」

美世「輝子ちゃん、順番にブレーキの踏むポイントが奥になってます。多分、一気にブレーキを踏み過ぎて、スピンしますよ……」


瑞樹「では、次の1コーナーに注目です」




輝子(……ヒャッハァァァ!!)

ズギャギャギャ……

輝子「……あっ!?」


瑞樹「……本当にスピンしたわ」

美世「カートって、ブレーキが後ろしか付いて無いんですよ。なので、あんまり一気にブレーキかけちゃうと、簡単にスピンするんです」



美世「俗に言う、チャリドリと同じ原理ですよ」

瑞樹「私にはわからないわ」




瑞樹「お疲れ様~。どうだったかしら?」

輝子「結構……楽しい。面白かった……」

美世「初めてで、あそこまで踏めるのは、中々の度胸だね。だけど、抑える所は抑えないと、怪我に繋がるからさ。そこだけ、気を付けてね」

輝子「……うん。次は、少し抑えます」



美世「……後で速い走り方レクチャーするよ」ヒソヒソ

輝子「……本当か?」ヒソヒソ




瑞樹「続いては、二番手の小梅ちゃんです」

小梅「うん……ドキドキします」

美世「乗り方は、さっき説明した通りだね。まずは、落ち着いてゆっくり走れば良いよ」

輝子「小梅……無理は厳禁だから。私と同じ事になる……」

小梅「気を付けるね……」


美世「では、小梅ちゃんもスタートです」




瑞樹「小梅ちゃんも、ゆっくり走ってるわね」

美世「所で、小梅ちゃんって人格とか豹変するかな?」

瑞樹「というと?」

美世「ハンドル握ると人格変わる子って、多いじゃないですか。さっきの輝子ちゃんを見てから、それが気がかりで……」

瑞樹「……それ、間違いなく美世ちゃんは、言えない台詞よ?」



幸子「……実はカメラ回って無い時、美世さんは練習と言い張って、何週も全開で走ってました」ヒソヒソ

輝子「うん……凄く速かった……」ヒソヒソ




小梅(……気持ちいい)

小梅(……これ……うん。楽しい……)


美世「……ゆっくり走ってるね。見てる方は、安心だけど……」

瑞樹「これって、やっぱり性格が出るのかしら?」

美世「う~ん……小梅ちゃんって、割と慎重な性格……だっけ?」

幸子「だけど、心霊スポットに涼しい顔して出入りするから、度胸はあると思いますよ?」

輝子「きっと……慣れるまで慎重に走るんだと思う……」




瑞樹「さあ、小梅ちゃんが帰ってきました。どうだったかしら?」

小梅「気持ち良かったです……。拓海さんとか夏樹さんや里奈さんが、バイクに乗るのが好きって言うのが……良く解りました」

美世「そうそう。楽しいんだよね~……」

小梅「また、乗りたいて思いました」

瑞樹「なら、この企画を続けられるように、上層部に直訴しましょう」



輝子「フヒヒ……。その三人が、同じことを言ってるのを……私は知ってるんだ」ヒソヒソ

幸子「……本人は否定してますが、美世さんが一番飛ばすって皆言います」ヒソヒソ




瑞樹「さあ、最後に取りを務めるのは、幸子ちゃんです」

幸子「フフーン♪ カワイイボクなら、カートも乗りこなしちゃいますよ……」

美世「自信満々だね~」


輝子「フヒ……幸子。目が潤んでるぞ?」

幸子「……それは、目薬をさしてきたからです!!」

小梅「うんと……顔赤いよ?」

幸子「……元々ボクは血色が良いんです」


瑞樹「……幸子ちゃん。本音は?」

幸子「ちょっと……いえ。平気です!!」




瑞樹「そして、幸子ちゃんがコースインしましたが……」

美世「本当は、怖がってるぐらいの方が、慎重に走るから良いんだけど……」



幸子(……おお。………これ、結構速い……)

幸子(こうやって曲がって……こうかな?)

幸子(結構、いい感じな気がするけど……)

幸子(これ、楽しい~♪)

幸子(フフーン♪ やっぱり、ボクって何でも出来るんですね♪)




美世「スムーズに乗ってるよ。思ったよりも、筋が良いね」

瑞樹「一つ質問して良いかしら?」

美世「はい、何でしょうか?」

瑞樹「こういうカートとかのモータースポーツの場合は、どんな身体能力的が求められるのかしら?」

美世「やっぱり、反射神経と動体視力ですね。後は、スタミナと瞬発力も求められます」


美世「基本的には、同じ操作を何十回も繰り返す形になりますので、中くらいの筋力を持続させるのが重要なんですよ」

美世「例えば、ダンスなんかも同じ動きを沢山繰り返しますから、それに通じる物は有るかもしれません」

瑞樹「なるほど。良くわかったわ」


美世「幸子ちゃんって、バラエティ路線が多いから注目されないけど、意外と運動神経が良いんだよね。ダンスなんかも上手いし」


瑞樹「だから、体を張るロケが多いのかしらね……」




瑞樹「さあ、帰ってきました」

輝子「お疲れ……どうだった?」

幸子「凄く楽しかったです。もっとスリルが有るのかと思ってたんですけど、バンジージャンプとかジェットコースターみたいな怖さは無いですね」


美世「やっぱり、自分で動かすからね。例えば、助手席に乗ってるのと、運転してるのだと、同じ速度でも全然違ってくるんだ」

小梅「幸子ちゃんは上手いよ……。うん」

幸子「本当ですか?」


美世「お世辞抜きで、思ってたよりも筋が良い。ほんとに」

幸子「フフーン♪ やっぱりボクは、何でも出来ちゃうんです♪」



三時間目、タイムアタック


瑞樹「先程の練習走行を終えて、今度は各自のタイムアタックに入ります」

瑞樹「美世ちゃんは、個別に走り方のコツを教えている様ですが……何時の間にか、目付きが真剣になってます」


瑞樹「ちなみに、富士スピードウェイのカートコースのコースレコードは34秒395になります」



注)レンタルカートのレコードタイムになります




瑞樹「今度のトップバッターは、小梅ちゃんです。意気込みは、どうですか?」

小梅「……あのお方が、空の上から見守ってくれると思います」

瑞樹「あのお方?」


小梅「音速の貴公し……「わからないわ」」


美世(……アイルトン・セナと霊界交信!?)


注)今更説明不要の偉大なるレーサー。没後20年を超えても、そのカリスマ性は衰えない。




瑞樹「さあ、小梅ちゃんのタイムアタックです。美世ちゃん、解説の方をお願いします」

美世「任せて下さい」


瑞樹「まずは、1コーナー。スムーズにクリアしてるようです」

美世「そうですね。最初から、丁寧な運転を心がけてましたので、そこまでミスはしないんじゃないかな」


瑞樹「そして、左の直角コーナーから、100Rに進入です。凄く、丁寧に走らせてます」

美世「小梅ちゃんは、基本のラインを教えました。あんまりガンガン攻めるタイプじゃないので、まずはライン取りから覚えてもらいます」


瑞樹「さあ、ヘアピンを立ち上がって300R。次は、ダンロップコーナーです」

美世「あ~……ちょっとライン取り失敗してるなぁ」

瑞樹「どういう所が?」

美世「300Rで小回りになっちゃうと、ダンロップコーナーの進入がきつくなっちゃうんだよね」


瑞樹「おっと、ダンロップコーナーの立ち上がりで、ラインから半分車体がはみ出しました」

美世「これで、次のネッツコーナーの進入もきつくなっちゃったね」


瑞樹「そして、最終のパナソニックコーナーを立ち上がって……ゴールイン」

美世「タイムは……52秒523です」




美世「お疲れ様。どうだった?」

小梅「……自分では、それなりに走れたと思います」

美世「まあ、初めてでここまで走れれば十分だよ」

小梅「……とっても面白かったです。ありがとうございました」



美世「後でさ、誰が空から見てたか教えて……」ヒソヒソ

小梅「良いですよ……」ヒソヒソ




瑞樹「続いては、二番手の幸子ちゃんです」

幸子「フフーン♪ 任せてください♪」

瑞樹「自信が有るみたいね?」

幸子「カワイイボクの、カッコイイ走りを期待してください!!」


瑞樹「では、スタートです」



美世(……大丈夫かな。調子に乗って、ポカしそうだけど……)




瑞樹「さあ、タイムアタックに入りました。幸子ちゃんが1コーナーに飛び込みましたが、いかがでしょうか?」

美世「うん……レクチャーした事は守ってますね」


瑞樹「何を教えたんですか?」

美世「さっきも解説したんですけど、カートって後ろしかブレーキが効かないんです。なので、ハンドルを切ってブレーキをかけるとスピンしちゃうんです」

美世「だから、ブレーキはなるべく真っ直ぐの状態で踏むって事を教えました」

瑞樹「まずは、スピンしない対策からって事ね」

美世「ええ。わざとスピンして、感覚を覚えさせることも必要です。ただ、まずは普通に走る、曲がる、止まるを、こなせるようになってからです」


瑞樹「ヘアピンをクリアして、300Rです。この辺りは、スムーズに走らせてる様に見えますね」

美世「ちゃんと、コーナーではRを大きく取ってますね。なるべく大きく回って行った方が、速度が落ちないので速く走れます」


瑞樹「小梅ちゃんにミスが有った、ダンロップコーナーとネッツコーナーも、綺麗にクリアしました」

美世「うん、上手いよ。ホントに」


瑞樹「最終コーナーを立ち上がって……ゴールです」

美世「幸子ちゃんのタイムは……41秒913です。初めてにしては、かなりいいタイムだと思いますよ」




美世「いい感じだよ~。流石だね~」

幸子「フフーン♪ やっぱり、流石ボクですね♪」

美世「多分、あたしが初めて乗った時よりも上手いかもしれないよ。ホント、お世辞抜きでさ」

幸子「本当ですか? すっごく、嬉しいです」



瑞樹(裏で、ディレクターさんとプロデューサーが打ち合わせしてるのが気になるわね……)




瑞樹「そして、トリは輝子ちゃんです」

輝子「……フヒヒ、幸子の後だからちょっと緊張す……します」

瑞樹「……ちょっと、眼がすわってないかしら?」

輝子「……スイッチ入ったから、行け……ますぞ」

瑞樹「口調がムックみたいになってるわよ?」


美世「……緊張してる?」

輝子「……う、うん」




瑞樹「さあ、ラストは輝子ちゃんのタイムアタックです」

美世「1コーナーは、結構突っ込んでるね~」

瑞樹「輝子ちゃんには、どんな事をレクチャーしたのかしら?」

美世「他のみんなと変わらないですよ。ライン取りとブレーキの踏み方が主ですね。輝子ちゃんの場合は、特にアクセルを踏み込むので、ブレーキの踏み方を念入りに教えました」

瑞樹「さっき言ってた、真っ直ぐで踏むって事かしら?」

美世「そうですね。急ハンドル急ブレーキは、車体の姿勢を乱すので控えないといけません」


瑞樹「300Rを抜けて、ダンロップコーナーに飛び込んで行きますが……」

美世「あ~……失敗してるなぁ。突っ込み過ぎだよ~……」


瑞樹「随分と大回りになってしまいました」

美世「最終セクターみたいにコーナーが連続する所で、大回りになっちゃうと遅くなるんですよ。一つ目で曲がりきれないから、先のコーナーが余計に曲がれなくなっちゃうんです」


瑞樹「最終コーナーを立ち上がって、フィニッシュライン通過しました」

美世「タイムは……48秒211です」




美世「お疲れ様。手応えはどう?」

輝子「……失敗しました。奥のクネクネの所で、止まりきれなかった……」

美世「うん。見ててわかったよ」

輝子「所で、私のタイムは幸子より……?」

美世「残念だけど、下だったね」


輝子「……あ~。悔しいな……」




瑞樹「全員のタイムアタックが終わりまして、見事一番速いタイムをマークしたのは幸子ちゃんです」


幸子「ありがとうございます」

小梅「……幸子ちゃん、おめでとう」

輝子「負けたのは、悔しいけど……。幸子は、いい感じだったぞ」


幸子「でも、カートって初めて乗りましたけど、こんなに楽しいとは思いませんでした。また、是非乗りたいですね」


瑞樹「では、美世ちゃん。今回の企画の総まとめをお願いします」

美世「はい。今日は皆に、モータースポーツの入門として、カートを体験してもらいました。その楽しさを解って貰えたのなら、十分です」


美世「何よりも、今日びっくりしたのは、幸子ちゃんですね。今日初めて乗って、41秒台のタイムを出せたのは、本当にすごいです」


幸子「やっぱり、カワイイボクは何でも出来ちゃうんですね♪」




瑞樹「では、今日は一日お疲れさま……って。カンペが出てるわね」


幸子「えっと……収録時間が余ったから、レースしてる所を撮影したい?」

輝子「……へ?」

小梅「……はい?」


美世「プロデューサーからの許可は貰いましたので、4人でレースして下さい……?」




瑞樹「さあ、大変な事になりました。142sと美世ちゃんが、カートでレースをする事になりました」


瑞樹「手始めに、美世ちゃんにもタイムアタックをしていただきましょう」

美世「よろしくお願いします」

瑞樹「レーシングスーツで、カートに乗る姿がとても決まっています。目標は何秒くらいを目指しますか?」

美世「ん~……それなりの走りはしたいかな」


幸子「先生、お手本をお願いします」

輝子「……美世さんの走り、楽しみだ……」

小梅「美世さん……あの方が見守ってくれますよ?」


美世「……では、行ってきます」

瑞樹「はい、頑張って下さい」



142s(……美世さん、眼がマジだ……)




瑞樹「さあ、美世ちゃんはタイムアタックに入りました」

幸子「最終コーナーから出てくる速度がもう違ってますよ……」


瑞樹「さあ、1コーナーに飛び込んで行きますが……速いわね」

幸子(……今、ちょっとだけ横向いてませんでしたか?)



美世(1コーナーはセンターに立ち上がって……コカコーラはインベタで立ち上がる)


美世(100Rもセンター寄りで立ち上がって……ヘアピンはアウトインアウトで、アウトまで目一杯使って……)


美世(……300Rもアウトまで膨らんで……ダンロップコーナーは奥目にクリッピングポイントを取る……)


美世(コーナーが連続する時は……最後のコーナーを重視するのがセオリー。だから、ネッツコーナーは攻めすぎない……)


美世(最終コーナーをアウトインアウト……道幅目一杯使って速度を乗せる……)



美世(ん~……どうかな!?)


瑞樹「美世ちゃん、ゴールです」



……ギャギャギャッ!!


幸子(見事なスピンターンで止まってくれました……ちょっとカッコイイ)


瑞樹「お疲れ様。手応えはどうかしら?」

美世「ん~……わかんないな~」

小梅「……美世さんのタイムは、35秒010でした」

美世「…………そっか。35秒切りたかったなぁ……」


輝子(……美世さん、本気で悔しそうだ……)



瑞樹「全員のタイムが出た所で、決勝レースの開始です。ここで、ルールを説明します」


レギュレーション(プロデューサー考案)

・決勝グリッドはタイムの速い順。

・レースは5週で争う。

・ただし、美世ちゃんだけは速すぎる為、1週多く走るハンディキャップを付ける。

・最下位は罰ゲームとして、バンジージャンプを跳んでもらう。

・ただし、美世ちゃんは1位以外、強制的にバンジージャンプとセクシー写真集を限定販売する罰ゲームが課せられる。

・美世ちゃんが罰ゲームを受ける場合、142sに罰ゲームは無し。

・なお、プロダクション上層部の許可はOKとなりました。




美世「……ちょっと!! これ、あたしだけハンデおかしく無い!? バンジージャンプ以外に、セクシー写真集って何よ!?」

瑞樹「大丈夫よ。勝てば良いんだから。そうしないと、盛り上がらないでしょ?」

美世「……約35秒のコースを5週だよ!? 幸子ちゃんとあたしのタイム差を考えると、かなりギリギリの計算だよ!?」

瑞樹「……け、計算がわからないわ」


美世「……わかったよ。勝てば良いんでしょ、勝てばさ!!」

瑞樹(Pくん……美世ちゃん、本気で怒ってるじゃない……)




幸子「バンジーは、何が何でも避けたいですね……」

輝子「……フヒヒ。一つだけ、作戦思いついたぞ?」

小梅「作戦……?」


輝子「美世さんが1位にならない限り、私達に罰ゲームは無いんだ……。だから、美世さんを2位にすれば良い……」

幸子「だとしても、どうやって?」


輝子「……私達の中だと、幸子が一番速いんだ。だから、先に幸子が逃げるんだ……。後は……私と小梅が美世さんに追いつかれた時、抜けない様に妨害すれば時間を稼げる……」

小梅「……だけど、ちょっとずるく無いかな?」

輝子「フヒヒ……私はバンジーを飛びたくないぞ……」

小梅「……うん。……その作戦にしよう」


幸子「……それで行きましょう。ボクは死ぬ気で逃げます」



瑞樹「さあ。シンデレラカートグランプリ、ラウンド1。実況はわたくし、川島瑞樹でお送りします」

瑞樹「各車フォーメーションラップに入りました所で、グリッドを紹介しましょう」



瑞樹「ポールポジションは、原田美世。35秒フラットの好タイムをマークしましたが、彼女には1週多く走るハンデがあります。この逆境を跳ね返して、罰ゲームを逃れられるんでしょうか」



瑞樹「セカンドグリッドは、輿水幸子。ベストタイムは42秒を切り、今日初めて乗った中でも、いいタイムを刻んでいます。果たして逃げ切れるのでしょうか」



瑞樹「サードグリッドには、星輝子が着きました。48秒台と健闘しましたが、ややミスの多い所が目立ちます。本番では、どんな走りを見せてくれるのでしょうか」



瑞樹「フォースグリッド、白坂小梅。51秒台とタイムは振るいませんが、決勝では奇跡の逆転劇を見せられるか……」





瑞樹「美世ちゃんが、各車を引っ張ります。さあ、最終コーナーを立ち上がってまいりました。隊列を整えて、ホームストレートに並んだ4台……」


瑞樹「フラッグが振り下ろされ、今スタートです!!」



瑞樹「美世ちゃんが良いスタートを切りました!! 1コーナーはグリッド通りのオーダーでクリアしていきます!!」


瑞樹「100Rを駆け抜け、美世ちゃんが早くも後続との差を広げ始めました」



美世(……ハードプッシュしないと追いつかないんだよ!!)





瑞樹「美世ちゃん速い!! 一気に差を広げます。ですが彼女にはハンデが有り、142s全員を抜かないと、バンジーを跳ぶことになります!!」


瑞樹「2番手の幸子ちゃんと、3番手の輝子ちゃんとの差も少し広がっています。幸子ちゃんも、2番目のタイムを出しただけに、負けられないんでしょう!!」


瑞樹「4番手の小梅ちゃんも、何とか輝子ちゃんに離されまいと、追いすがります。一周目から、激しい展開です!!」



幸子(美世さん、めちゃくちゃ速いよ……)


幸子(あのスピードじゃ追い付かれるかもしれないから……二人とも頼むよ~……)





瑞樹「さあ、2週目に入りました。美世ちゃんと、幸子ちゃんの差は広がる一方。そして、更に後方を走る輝子ちゃんと小梅ちゃん!!」

瑞樹「美世ちゃんが、小梅ちゃんに追いつくのは時間の問題かもしれません!! 実に大人げのない原田美世!!」


小梅(美世さん……そんなに罰ゲームが嫌なんですか?)


輝子(……冷静に……冷静に……)



美世(こっちがヘアピンで……小梅ちゃんが最終コーナー。輝子ちゃんがホームストレートで……幸子ちゃんが1コーナーね……)


美世(とにかく……フルスロットルだよ!!)




瑞樹「さあ、美世ちゃんは3週目です!! この週で、美世ちゃんは34秒868というファステストラップを叩き出しました!!」

瑞樹「バンジーが嫌なんでしょうか!? 写真集が嫌なんでしょうか!? それとも両方なんでしょうか!?」


瑞樹「しかし、幸子ちゃんも42秒フラットの好タイムをマーク!!」

瑞樹「実に、ハイレベルなレースとなっています」



美世(この週で、後ろの二人には追い付けるかな!!)


幸子(……美世さんって、こんなに負けず嫌いでしたっけ!?)





瑞樹「最後尾の小梅ちゃんは、ダンロップコーナーに差し掛かりました!! ここで、美世ちゃんはヘアピンコーナーをクリア!! 恐るべき、原田美世!! 正に鬼神の激走!!」

瑞樹「2台共、ネッツコーナーをクリアして、最終コーナーに飛び込みます!!」


美世(……アウトの道幅が余ってるよ!!)

小梅(……え、もう来てるの!?)


瑞樹「美世ちゃんは大外刈りで、小梅ちゃんを抜き去りました!! 凄まじい追い上げです!!」




瑞樹「レースも残り2週になりました!! 美世ちゃんの次の標的は、輝子ちゃん!! どこまで、食い下がれるんでしょうか!?」


輝子(うわっ……もう追い付いてきてる……)

美世(1コーナーだと、厳しいかな……)



瑞樹「さあ、1コーナーに飛び込む両者!!」


瑞樹「ああっと、輝子ちゃんは1コーナーでオーバーランです!! 隙を逃さず、美世ちゃんが前に出ました!!」

瑞樹「美世ちゃん、さすがの走りです!! 弱い者を相手に、一切の容赦をいたしません!!」



輝子(失敗した……)

美世(ラッキー……)




瑞樹「残る牙城は、幸子ちゃんただ1台。しかし、その差は少し広い様に見えます!!」

瑞樹「幸子ちゃんがダンロップコーナーをクリア!! 美世ちゃんは、まだヘアピンコーナーです!! このままでは、バンジージャンプとセクシー写真集が決定してしまいます!!」


幸子(……凄い追い付いてきてるよ~)

幸子(……逃げなきゃ!!)



美世(……あと一周半なら、なんとか行けるかな)


瑞樹「最終コーナーを立ち上がる幸子ちゃん!! そして、後ろから追い上げる美世ちゃん!!」


瑞樹「勝負は、ファイナルラップに突入しました!!」





幸子(……何とか逃げきらなきゃ!!)


……ギャギャギャッ


幸子「……あ゛ぁっ!?」




美世(……あっ!!)




瑞樹「何と、幸子ちゃんは1コーナーで痛恨のスピンです!! 何と言う事でしょうか!!」


瑞樹「スピンしてエンジンが止まってしまうと、オフィシャルにエンジンを再始動して貰わなければいけません!!」


瑞樹「空を見上げる幸子ちゃんの横を、美世ちゃんが悠然と追い抜いて行きました!!」



瑞樹「これで、美世ちゃんは全車追い抜き完了です!!」




幸子(スタッフの人!! 早く来て下さい!!)


輝子(幸子……何してるんだよ……)

小梅(……幸子ちゃん、やっぱり持ってるね……)



瑞樹「幸子ちゃんは再スタートするまでに、輝子ちゃんと小梅ちゃんにも抜かれてしまいました!! これでは、罰ゲームが確定してしまいます!!」



瑞樹「さあ、美世ちゃんが最終コーナーを立ち上がって、ホームストレートに帰ってきました!!」


瑞樹「ハンデキャップを跳ね返して、見事な勝利です!! 右手を高々と上げながら、チェッカーを受けました!!」



瑞樹「そして、2位に輝子ちゃん、3位には小梅ちゃんが入りました!! 見事な逆転劇です!!」


瑞樹「最後に、幸子ちゃんもチェッカーフラッグを受けました!! まさかのスピンで、最下位!! バンジージャンプは……幸子ちゃんに決まりました!!」




リザルト

1位 原田美世

2位 星輝子

3位 白坂小梅


ビリ 輿水幸子



瑞樹「ウイニングランを終えて、皆ピットに戻ってきましたが……幸子ちゃんはヘルメット越しに頭を抱えています」




瑞樹「まずは、見事に勝利を飾りました、美世ちゃんにお話を聞きましょう」


美世「何とか、勝てました。いや~……何をコメントしたらいいのかな?」


瑞樹「幸子ちゃんのスピンの事?」


美世「だって、後姿が見えてきたと思ったら自爆してますもん……」



輝子「……幸子を連れてきました」


小梅「幸子ちゃん……あのスピン、どうしたの?」


幸子「えっと……美世さんが追い付いてきてるから、速く走らなきゃって思ったら……スピンしました」


瑞樹「幸子ちゃん、真剣に落ち込んでない?」


幸子「そりゃ……バンジージャンプは嫌ですよ!!」




瑞樹「では、最後に。幸子ちゃんから、カメラに向かって一言どうぞ!!」


幸子「この企画、もう一回やりましょう!! ボク以外の誰かをバンジーさせないと腹の虫が収まりません!!」



瑞樹「では、皆さん。お疲れ様でしたー」


142s&美世「お疲れ様でしたー」




オマケ


カートロケ二日後。とある遊園地。


幸子「……はぁ~あ。こんな事する為にアイドルになったんじゃないんですけどねぇ……」


小梅「……頑張ってとしか言えないよ」


輝子「幸子……観念して飛ぶしかないぞ?」



幸子「……次にカートの企画があるのなら……絶対に原田美世さんを、バンジーで飛ばさせます!! ご期待ください!!」


http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org563508.jpg.html


こんな状態でリベンジを誓う幸子。その日は来るのだろうか……?


以上になります。

昔のバラエティー番組を見て、ネタを思いついたので書いてみました。
142sのバラエティ適正は、案外高いと思います。

評判が良ければ、今度は違うユニットと対決させてみようかな?

では、ご視聴ありがとうございました。

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