男「そろそろ挨拶しに行くか…」(168)

301号室

男「このマンションに引っ越して来てから一週間…」

男「いい加減、挨拶しに行くか!」スタスタ

男「しかし、このマンション…かなり広いのに」

男「住人が俺を入れて6人とは…少なすぎるだろ」

男「……住人にも、まだ誰も会ったことないな」

369号室

男「灯りがついてる、いるみたいだな」

男「部屋番号、めちゃくちゃ過ぎるな」スッ

ピンポーン

?「はーい」ガチャ

男「えっと、新しく301号室に引っ越して来ました男です」

少女「初めまして、369号室の少女です」ニコ

男(小学生…?てか、ゴスロリファッションを初めてみてしまった)

少女「やっと挨拶しに来てくれたー!」

男「えっ?あぁ、遅れてすみません」

少女「えへへ、気にしてないよー!ほら、入って入って?」グイッ

男「え、えぇ?!」

ガシャン

少女「いらっしゃいませー」ニコ

男「………………」

少女「ふふ、びっくりした??」

男(なん、だ……この部屋…)ゾワ

少女「私の家族だよ!」クルクル

男「は、はは…大家族だね…」

男(……人形だらけ、か)

少女「みんな可愛いでしょ?」スリ

男「そうだね…」

少女「ほら、座って座って」トントン

男「うん、失礼します」スタ

少女「初めてお部屋の中に人いれちゃった」ニコ

男「えっと、少女ちゃん…一人暮らし?」

少女「うん、そうだよー」ナデナデ

男「そっか…」

男(こんな小さい子が一人暮らしなんて、おかしいだろ)

少女「でも、みんながいるから大丈夫」

男「……………」

少女「ねぇねぇ…一つだけお願いがあるの…」

男「うん?」

少女「男、さん…のこと、お兄ちゃんって呼んでいい?」

男「お兄ちゃん?」

少女「うん、私ずっとお兄ちゃんが欲しかったから…」

男「…まぁ、少女ちゃんが呼びたいなら」

少女「ほんと?!わーい、ありがとーお兄ちゃん!」ギュッ

男「うおっ?!」

少女「えへへー」スリ

少女「そうだ!お兄ちゃんに私のお気に入り見せてあげる」

男「お気に入り?」

少女「うん、こっちの部屋に来て!」グイッ

男「そんなに引っ張らないで…」スタ

ガララ

男(こっちの部屋も人形だらけか…)

少女「この娘だよー」シュル

男「──────」

人形「…………」

少女「えへ…私にそっくりでしょ?」

男(…これが…人形…?)

少女「私の双子の等身大お人形なの」

男「触ってみても、いい?」

少女「うん、お兄ちゃんなら特別にいいよ」

男「…………」スッ

ピトッ

人形「…………」

男「冷たい…」

少女「お人形だもんだからね」ニコ

男「ほんとに人形なんだね」

少女「うん!私の一番大切な、家族だよ」

男「…………」

人形「…………」

────
──

───
──


少女「もう行っちゃうの、お兄ちゃん?」

男「うん、他の人にも挨拶しないとだから」

少女「うぅ…寂しいよ」

男「…また来くるよ」ナデ

少女「約束、だよ?」ニコ

男「ん、じゃあ行くね」

少女「うん!またね、お兄ちゃん!」フリフリ

男「いきなり…凄い住人だった」スタスタ

男「それにしても、あの人形…」

人形『…………』

男「…………!」ゾワ

男「切り替えろ!次だ、次!」スタスタ

247号室

男「灯りはついてるな、よし!」スッ

ピンポーン

?「…………誰じゃ」

男「新しく301号室に引っ越して来ました、男です!」

?「ほう………」ガチャ

?「ふむ、よう来たな…まぁ、入りなさい」スタ

男「あっ、はい…お邪魔します…」

男(こんなにすんなり入っていいのか…?)

老人「ワシのことは、みたまま…老人とでも呼びなさい」

男「…老人さん、でいいですか」

老人「うむ」

男「すごい綺麗なお部屋ですね」

老人「掃除くらいしかやることないからのぅ」ギシ

老人「まぁ、座りなさい」

男「はい、失礼します」ギシッ

老人「……………」ジッ

男「……………」

男(めっちゃ見られてるな…)

老人「男、と言ったな」

男「あっ、はい」

老人「昔話は好きか?」

男「…昔話、ですか?」

老人「うむ、本は読むほうかの」

男「読書は好きです」

老人「ではエントランスから行ける図書館に行くとよい」

男「図書館があるんですか?」

老人「司書も業者もいないが、不思議なことに最新の本もある」

老人「あそこは知識の宝庫じゃ」

老人「ワシのオススメは図書館の奥にある古い書物…」

老人「もし呼んだらワシに感想を聞かせてもらえるか?」

男「えっと、わかりました」

老人「老いぼれても探求心というのは潰えぬ」

老人「お主も常に知識を求めるといい」

男「はぁ………」

男(何て言うか難しい人だなぁ)

老人「さて、お主と語るにはもう少し時間が必要じゃの」

老人「他の住人にも挨拶するとよい」

───
──

───
──


男「先生と呼びたい人だ……」

男「もう少し勉強したら、また話に来よう」スタスタ

男「しかし、広いな……次の部屋まで遠すぎる」

707号室

男「灯りがついてない……留守か」

男「せっかくここまで来たのに……」

?「あのぅ……」

男「うん?」クル

?「私の部屋に何かご用事ですか?」

男「あっ、新しく引っ越して来た男です」

女「あっ?!初めまして、女です」ペコ

男(おっ、何だか普通の人っぽいな)

女「えっと、どうぞ中に……」ガチャ

男「やっぱり入れてくれるのか……」

女「??」

男「お邪魔します」キョロキョロ

女「あまり、見ないで下さい」

男「いや、素敵な部屋だね」

男(普通に女の子の部屋だ…)

女「ありがとうございます…//」カァァ

女「どうぞ、座って下さい」

男「じゃあ失礼します」スタッ

女「……………」スタッ

男「……近くない」

女「そんなことないですよ?」ニコ

男(いや、近すぎるから…)

女「…ダメですか?」

男「女さんがいいなら良いけど」

女「はい、大丈夫です」ピト

男「そっか」

女「もう他の方にはご挨拶したんですか?」

男「あとは632号室と444号室かな」

女「じゃあ、まだ婦人さんには会ってないんですね」

男「婦人さん?」

女「632号室の方です、凄くお綺麗な方なんですよ」

男「そうなんだ」

女「変なことしちゃダメですよ?」

男「あはは、しないよ」

女「ダメ、ですよ?」ジッ

男「う、うん…?」

男(何だかこの子もちょっと変だなぁ…)チラッ

男「ん、この本…」

女「知ってるんですか?」

男「うん、読んだことあるよ」

男「確か主人公の女の子が恋をして、どんどんおかしくなっていったような…」

女「おかしいなんて酷いこと言わないで下さい」

女「気が狂うほど一途に男性を愛していたんです」

女「私は、この主人公に共感するところがあって…」

男「女さんも一途なんだ?」

女「はい、それに私も気が狂ってしまいそうです」

男「えっ?」

女「男さんは、この本の主人公どう思います?」

男「んー、俺は……」

1 素敵だと思う
2 異常だと思う

男「異常だと思うな」

女「……………え?」

男「いくら愛してても、あれはやり過ぎだよ」

男「正直、ついてけないかな」

女「……そう、ですか」

男「えっと、そろそろ行くね」

男「これから、よろしく女さん」

女「……………」

───
──

ガチャン

男「なんだか最後、元気なくなってたな」

男「悪いこと言っちゃったかなぁ…」ハァ

男「後で様子見にくるか」スタ

632号室

男「ここが婦人さんの部屋か」

────♪

男「ピアノの音がする」スッ

ピンポーン

?「開いてるから入って」

男「は、はい!」

ガチャ

────♪

男「綺麗な曲ですね」

婦人「あら、素敵な表現ね」クス

婦人「えっと、童貞さんで良かったかしら?」

男「違います」

婦人「あら、卒業生さん?」

男「……………」

婦人「ふふ、その様子じゃ在校生みたいね」

男(帰りたい……)

男「さっきの曲なんだか懐かしい感じがしました」

婦人「それはきっと別の曲と勘違いしてるわね」

男「えっ?」

婦人「あれは私が作った曲だもの」クスッ

男「あっ、そうなんですか…」

男(でも…確かに懐かしい感じが…)

婦人「私は632号室の婦人、お姉さまって呼んで」

男「婦人さんって呼びますね」

婦人「あら、今ほんとうにがっかりしたわ」

男「あはは…婦人さんはピアノがお好き何ですか?」

婦人「えぇ、小さい頃からやっていたし…」

婦人「何より私が作った曲を他の人にも聴いてもらいたかったの」

男「俺、婦人さんのピアノ好きです」

婦人「いきなり告白なんて大胆ね」ニコ

婦人「でも、貴方みたいな人に聴いてもらえて嬉しいわ」

婦人「ここの住人は私もそうだけどあまり部屋の外に出ないから…」

男「そうなんですか?」

婦人「引きこもりばかりよ」クスッ

婦人「まぁ、外は怖いのよ」

男「怖い…」

婦人「もう狩人には会った?」

男「444号室の人、ですよね…まだ会ってないです」

婦人「そう…あの人には気を付けなさい」

婦人「あの人からは血の匂いを感じるから」

男「……………」

───
──

444号室

男(不吉過ぎるだろ部屋番号)スッ

ガチャン

男「うわっ?!」

狩人「……………」

男「あ、新しく301号室に引っ越して来ました男です!挨拶にやって参りました!」

狩人「入れ」スタスタ

男「し、失礼します!!」

男(入りたくない……)

ドン ドン ドン

狩人「……………」ブン

ドン ドン ドン

男(何を潰してるんだろう……)

狩人「……狩人だ」

男「えっ、あっ……よろしくお願いします」

狩人「……」ブン

男(しかし、凄い武器の種類だな……)キョロ

男(鉈に斧に槍、剣や弓や銃まで……普通捕まるよな…)

狩人「全て狩りの為の道具だ……」

男「何を狩ってるんですか?」

狩人「……………」ピタッ

男「?」

狩人「この世で一番恐ろしい生き物」

男(何だろう………?)

301号室

男「はぁ…何だか今日は疲れたな」

男「不思議な住人ばっかりだし…」

男「……ドアノブに何か掛かってる」

ガサッ

女『さっき渡しそびれてしまったで、置いておきます』

男「女さんからだ!中身は…クッキーだな」

ガチャン

男「薄いピンク色だしイチゴ味かな」モグモグ

男「……不思議な味がするな」

男「何が入ってんだろ」モグモグ

男「明日、お礼言わないとな…」

───
──

───
──


男「ん?いつの間にか寝てたのか…」

男「そういえば時計ないから時間わかんないな」

男「とりあえずエントランスに行ってみるか」スタスタ

ガチャン

エントランス

男「薄暗いし夜なのは確かみたいだな」

男「えっと、時計はっと…」キョロキョロ

カツン カツン…

男「……誰かいる?」

カツン カツン…

男「ここからじゃよく見えないな」スタ

カツン…カツン…ビタッ

男「……………」ピタ

男「君は……」ドクン

人形「……………」

男「これって少女ちゃんの人形だよな」

男「何でこんなところに……?」

人形「……………」

男「まさか、人形が動くわけないし……」スッ

ピトッ

男「うん、やっぱり冷たいな」

人形「貴方の手は温かいですね」

男「……………」

人形「……………」

男「うわぁぁぁぁ??!」バッ

男「に、にに人形が喋って動いてる?!」

人形「はい、人形は喋って動く者です」

男「いやいやいやいや!」

人形「まずは落ち着いて下さい」

男「あ、うん…」スーハー

人形「大丈夫ですか?」

男「まだ混乱中なんだけど…」

人形「そうですか、混乱中でも私の話を聞いてください」

人形「まずは、初めまして…では無いですね」

人形「一度お会いしましたし」

男「そうだね」

人形「少し説明が難しいのですが…」

人形「今の私は人形ではありません」

人形「男さんと初めてお会いした時が人形の私です」

男「じゃあ今の君はなんなの?」

人形「そう、ですね…今の私は人間のなりぞこないと言うべきでしょう」

男「人間のなりぞこない?」

人形「はい、この身体は人間のものですが」

人形「私には欠けているものがあります」

男「欠けているものって?」

人形「…ここです」スッ

男「心臓…」

人形「そうです」

人形「私の行動時間は限られていて、この深夜の間しか動けません」

男「そういえば今って何時かな?」

人形「このマンションには時計といったものはありません」

人形「恐らく住人の誰一人として持っていないでしょう」

人形「ここで時間帯を知りたいなら、このエントランスにある銅像で確認するしかありません」

男「銅像で確認する?」

人形「はい、あちらにあるベンチにどの銅像が座っているかで時間帯は判断できます」

男「今は『斧を持った男』が座っているね」

人形「はい、『斧を持った男』は深夜を表しています」

人形「『双子の姉妹』は朝、『日傘を持った婦人』は昼、『ナイフを持った女』は夜です」

人形「どういう仕組みかは分かりませんが、時間になるといつの間にか座っているようですね」

男「へぇ………」

男(なんとなく、ここの住人に似てるなぁ…)

人形「他に何かご質問はありますか?」

男「えっと、君は少女ちゃんとは姉妹なのかな?」

人形「……………」

男「すごく良く似ているし双子なのかなって…」

人形「…私には二つの記憶があります」

人形「一つは私が人間だったという記憶」

人形「もう一つは私が人形になり、あの子のお気に入りになっていた時の記憶」

人形「私は人間だった頃の記憶が曖昧で…あの子とどういう関係だったかは思い出せないのです」

男「人間だった記憶か…」

男「深夜しか動けないって言ってたけど…何をしていたの?」

人形「探し物を探していたんです」

男「探し物?」

人形「私に足りていない、心臓を」

男「心臓を?!」

人形「はい、このマンションにあるそうなんですが…」

男「あるそうって、どうしてそう思うの?」

人形「247号室の方に教えて頂きました」

男「247号室って、老人さん?」

男「どうして老人さんが心臓のことを…」

人形「それは分かりません…ただ」

男「?」

人形「あの方のいうことは不思議と信じられるんです」

男「……………」

人形「それで…あの…」チラッ

男「ん…?」

人形「このマンションにあるのは確かなんです」

男「うん」

人形「…もし、男さんが手伝って下されば」

人形「私は、とても嬉しいです…」ニコ

男「……………」ドキ

1 心臓探しを手伝う
2 手伝わない

男「わかった、手伝うよ」

人形「本当ですか?」

男「ここまで話を聞いちゃったら、放っておけないよ」

人形「お優しいんですね」ニコ

男「うっ…それでどこから探す」

人形「実は、ある程度は探して怪しいところを三ヶ所見つけたんです」

男「そうなんだ?じゃあ、早速行こうか」

人形「はい」

図書館

男「すごい本の数だね…」

人形「ここの図書館は世界中の本が集まっていますからね」

男「誰が整理とかしてるんだろ」

人形「私も気になるところです…」

男「それで、この図書館がどうして怪しいの?」

人形「はい、こちらへ」スタスタ

男「うわ…全部英語の本だね」

人形「この棚の本は全て医学書なんです」

男「へぇ、医学書って言うと心臓に何か関係ありそうだね」

人形「実際、関係があるんです」

男「そうなの?」

人形「……………」スッ

人形「この本には心臓の摘出について書いてあるんですが、その文のところにメモ書きがあったんです」ペラ

男「ほんとだ…英語でメモが書いてあるね」

男「何て書いてあるのかな?」

人形「一度壊れた心臓は持ち主から離れ、別の物となり隠された」

男「人形ちゃんって英語読めるの?!」

人形「はい、この程度なら」

男(この程度だと…?)

人形「このメモ、どう思いますか?」

男「うーん、人形ちゃんの心臓と関係があるのかも…」

人形「私も…このメモはとても興味があります」

男「他にも何か書いてあるの?」

人形「この本にはこれだけです」

人形「でも、この付近の本はまだ探してないので…」

男「よし、手伝うよ!」

人形「ありがとう、ございます」ニコ

───
──

───
──


男「何もないね…」パタン

人形「そうですね」ハァ

人形「そろそろ時間みたいです」スッ

男「時間?」

人形「私は深夜の時間しか動けません」

人形「もうすぐ朝になりますから部屋に戻ります」

男「そっか、俺はもう少し探してるね」

人形「いえ、もう寝て下さい」

男「いや、実は昼寝して眠くないんだよね」

人形「それでも………」

男「大丈夫だから」ニコ

人形「……………」

人形「わかりました…でも、無理しないで下さいね?」

男「うん、ありがと」

人形「では、失礼します」スタスタ

男「…とは言ったものの、どう探すかぁ」

男「流石に全部探すのは無理だしなー」

老人『ワシのオススメは図書館の奥にある古い書物…』

男「……………」

男「行ってみるか」スタスタ

男「古い書物は…これか?」スッ

ブワッ

男「げほっ、ごほ…!!」

男「すごい埃だな…」ブンブン

男「これは、日本語なんだな」ペラ

男「内容は…恋愛小説だな」

男「老人さん、これを読ませたかったのか?」ペラペラ

パサッ

男「ん?何か落ちたな」スッ

男「何だこの怪しい白い粉」

男「…何か関係あるのか?」

───
──

───
──


エントランス

男「ふぁぁ…眠くなってきたな」ノビ

男「ん…ベンチに『双子の姉妹』が座ってる?」

男「…ほんと、どういう仕組みなんだ」ジッ

男「とりあえず部屋に戻ろう」

301号室

男「…………何で」

男「何で、灯りがついてるんだよ」

ガチャ

女「お帰りなさい、男さん」ニコ

男「……………」

ガチャン

男「どうやって入ったの?」

女「鍵が開いていたんです」

男「そんなはずは…」

女「そんなことより、男さん」ズイッ

男「?!」ビクッ

男(近い…?!)

女「何か感想は言ってくれないんですか?」

男「か、感想…?」チラッ

女「ふふっ、どうですか」ヒラッ

男「な、何で裸エプロン?!」

女「こういうのが好きなんですよね」チラッ

男「勝手に読むなよ!」

女「私、あの雑誌の人より胸大きいですよ」ムニュ

男「……………」プイ

女「……………可愛い」

女「私、朝ごはん作ったんです」クイッ

女「座って下さい」ニコ

男「…ほんとに鍵が開いていたんだよね」スッ

女「はい、開いてました」

男(いや、確かに閉めた)

女「ふふっ、あーん」スッ

男「えっ?」

女「あーん、ですよ」

男「……………あーん」パク

女「どうですか?」

男「美味しいよ」

女「オイシイですか…良かった」ニコ

女「それで男さん」スッ

男(…自分では食べさせてもらえないのか)パクッ

女「昨日は、どこで何をしていたんですか?」ジッ

男「げほっ?!

女「うふふふふふふふふふふっ」

男「昨日は昼寝しちゃって夜寝れなかったから、マンションの中を探索してたんだよ」

女「それなら私も一緒に連れていってくれれ案内したのに…」

男「夜も遅かったし…昨日初めて会ったばっかりだしさ」

女「…………他の人とは一緒にいたくせに」ボソ

男「えっ?」

女「……………」ニコ

女「私、男さんのお世話をしたいんです」

男「何で?昨日会ったばかりの人だよ」

女「それでも…私は男さんに私の全てをあげたいんです」

男「どうして、そこまで…」

女「ふふっ、どうしてだと思いますか?」クスッ

男「………分からないよ」

女「いつかきっと分かってくれます」

女「だって男さんは私の…うふふふふ」

男(昨日より女さんの様子が変だ)

男(俺があんなこと言ったからか?)

───
──

───
──


男「はぁ…何とか帰ってもらえた」バタン

男「疲れたせいか胃が痛いな」

男「…相変わらず不思議な味だったな、女さんの料理…」

男「さて、どうするか」

1 婦人さんの部屋に行ってみる
2 少女ちゃんの部屋に行ってみる
3 老人さんの部屋に行ってみる

247号室

ピンポーン

男「こんにちは、男です」

ガチャ

老人「……中に入りなさい」

男「失礼します」スタスタ

老人「……………」チラッ

?「……………」サッ

老人「ふむ……………」

ガチャン

老人「男よ、図書館に行ったのじゃな」

男「あっ、はい行きました」

老人「……古い書物は読んだか?」

男「読みましたけど、あれ…恋愛小説ですよね」

老人「うむ、そうじゃ」

男「……………」

老人「……………」

男「あれを読ませたかったんですか?」

老人「……………」

男「そういえば書物の中に、こんなのがありましたけど…」スッ

老人「……………」ピク

男「これ、何でしょう?」

老人「うむ、それは────」

キィィィィィィン

男「……………老人さん?」

老人「────大切に持っていなさい」

老人「少しずつ…この場所の空気も変わってきている」

男「空気?」

老人「感じぬか?空気が淀み重くなっているのを…」

男「は、はぁ…」

老人「男よ、お主はこれから多くの選択と行動をしなければならない」

老人「そして選択と行動によっては…」

老人「この空気をよりいっそう重くするはずじゃ…」スッ

ポン

老人「慎重に選びなさい」

男「……はい」

───
──

───
──


ガチャン

男「ほんとに不思議な人だな…」

男「老人さんの言ってたこと良く分からないけど」

男「すごい大切なことなんだろうな…」

男「よし、とにかく今は人形ちゃんの心臓探しに集中しなきゃ!」

少女「人形ちゃんってだーれ、お兄ちゃん?」

男「うわぁぁ?!」ビクッ

男「少女ちゃん、いつの間に!」

少女「えへへ、お兄ちゃん驚かせ作戦大成功!」ニコ

男「心臓に悪いよ…」

少女「ねぇねぇ、人形ちゃんの心臓探しってどんなゲーム?」

男「えっと…」

男(少女ちゃんは人形ちゃんが動くことは知らないんだよな…)

男「いや、人形って心臓ないのかなって思ってさ」

少女「??…人形だもん、心臓なんてないよ?」

男「……………」

1 嘘をついて少女ちゃんにも心臓探しを手伝ってもらう
2 何とか誤魔化す

男「最近、そういうゲームが流行ってるんだよ」

少女「やっぱりゲームなんだ?」

男「うん、俺もやりたいんだけどパソコン無いからさ」

少女「うーん…そっかぁ」

男「…少女ちゃんは何してたの?」

少女「この子とお散歩してたの」ナデナデ

男(金髪の人形か…)

男「お気に入りの人形は散歩させないの?」

少女「……………」

少女「あの子は私の大切な家族だし…」

少女「それにちょっと大きいから」

男「確かに連れて行くにはちょっと大きいね」

少女「うん、あの子はあの部屋にいるべき何だよ」

男「……………」

少女「どこにも行かせないから…」

少女「ねぇ、お兄ちゃん!」

男「うん?」

少女「私ね、お兄ちゃんのこと大好きだよ」

男「えっ………?」

少女「お兄ちゃんは何だか懐かしい感じがするの」

男「懐かしいって…昨日初めて会ったよね」

少女「うん、でもね…何だか誰かに似てるの」

男「うーん、誰に似てるのかな」

少女「えへへ、分かんない」ニコ

男「少女ちゃんって双子の姉妹とかいないの?」

少女「…また、あの子のこと?」ムス

男「いや、何となく聞いてみたくて」

少女「私は一人っ子だし、家族はこの子たちだけだよ」

男「そうなんだ…」

少女「むぅ…私もう行くね」タッタッ

男「あっ…行っちゃった」


──
───

───
──


エントランス

男「今は、『日傘を持った婦人』が座ってるなぁ」

男「…そういえば、お腹すいたな」グゥ

狩人「……………」シャッシャッ

男「狩人さん…何してるんですか?」

狩人「武器の手入れだ」シャッ

男(何でエントランスでやってんだよ)

狩人「…腹が減ったなら、このエントランスから行ける食堂に行け」

男「食堂まであるんですか…」

狩人「俺は行かんが…他の連中はそこで食べてるぞ」

男「狩人さんはどうして行かないんですか?」

狩人「……………」ピク

狩人「俺は俺自身が狩りをした獲物しか食わん」

男「…カッコいい」

狩人「……………」シャッ

男「そういえば狩人さんって、どこで─────」

キィィィィィィン

男「──────?」

狩人「…どうした?」

男「あっ、いえ…」

男(あれ…今、何か聞こうとしたんだけど…)

狩人「早く行け」

男「はい、失礼します」スタスタ

食堂

男「うわぁ…すごい広いな」キョロ

婦人「あら、貴方もお食事?」

男「婦人さん、こんにちは」

婦人「こんにちは」ニコ

男「婦人さんもお昼ご飯ですか」

婦人「えぇ、良かったら一緒に食べない?」

男「あっ、是非!」

婦人「ふふ、じゃあ行きましょう」スタスタ

男「ここってどうやって頼むんですか?」

男「見たところ食券とかもなさそうですけど」キョロ

婦人「あそこにもう用意されてるわ」スッ

男「………本当だ、しかも俺の好きなものばかり」

婦人「この食堂は来る人の好物やその時の食べたいものを出してくれるの」

男「どうして伝えてもないのに分かるんですか?」

婦人「さぁ、どうしてかしらね」クスッ

婦人「とにかく食べましょう、味は保証してあげる」

男「美味しい…」モグ

婦人「ふふ、子供みたいな顔してるわよ?」クスッ

男「うっ、いいじゃないですか別に」モグ

婦人「そういえば444号室の住人とは会ったの?」

男「狩人さんですか?会いましたよ」

婦人「どうだった?」

男「どうって…言われても」

婦人「そうね…じゃあ、会ってみてどう思った?」

男「正直、得体の知れない何かを感じました」

男「部屋中、狩りの道具ばかりでしたし…」

婦人「そう、やっぱりあの男は危険ね」ゴク

男「婦人さんはどうしてそこまで狩人さんのことを…?」

婦人「…前にも話したけどあの男から血の匂いがすること」

婦人「それと、何度か夢にみるのよ」

男「夢に?」

婦人「えぇ、あの男が私達を殺しに来る夢を」

男「………………」ゴクリ

婦人「貴方が何か感じたなら…」

婦人「その感覚を大切にしなさい」

男「感覚ですか…」

婦人「えぇ、相手の第一印象は案外その人の本質だったりするものよ」

男「なるほど」

婦人「ふふ、素直な子ね…ほんとに」クスッ

───
──


エントランス

婦人「貴方、この後は予定ある?」

男「いや、ありません」

婦人「なら、私の部屋にこない?」

男「えっ」

婦人「貴方に…その、もっと私のピアノを聞いてもらいたいの」チラ

男「!」ドキッ

男「えっと、俺で良ければ…」

婦人「そう…それなら早く行きましょう!」キュッ

男「あっ……!」タッタッ

チン

婦人「あぁ、早く弾きたい」

男「婦人さん、落ち着いて」アハハ

婦人「だって私、貴方に聴いてもらいたくて」

男「何だか子供みたいですよ」

婦人「そうね…子供の頃を思い出すわ」

男「子供の頃を?」

男「婦人さんってどんな子供でした?」

婦人「子供の頃からピアノばかりだったわ」

婦人「私はピアノが大好きだったから…」

男「そうなんですね…ピアノを始めるきっかけとかってあったんですか?」

婦人「それは………」グッ

男「………?」

男「あの、すみません…聞いちゃダメでしたか?」

婦人「いえ、大丈夫よ」

婦人「きっかけは母よ」

男「婦人さんのお母さんですか」

婦人「えぇ、母もピアノをやっていてね…」

婦人「私も母のように美しい旋律を奏でたいって憧れたの」

男「そうだったんですね」

632号室

ガチャ

婦人「入って 」

男「はい」スタスタ

婦人「さぁ、座って」

男「は、はい」スタ

男(気合い入ってるなぁ…)

婦人「………………」スタ

婦人「…………」ピト

──────♪

───
──


男「…………あ、れ?」パチッ

男「いつの間にか寝てた……」

男「婦人さん?」キョロ

シーン

男「どこいったんだろ?」

男「確か婦人さんのピアノを聴いて………」

ポタ ポタ

男「…………何だこれ」

男「ピアノが血だらけに……」

男「部屋には俺だけみたいだし、外に出るか」

ガチャン

男(空気が重い、薄暗いし別の場所みたいだ)

男(血だらけのピアノ、婦人さんを探さないと)

?「男さん」ギュッ

男「うわぁぁ?!」ビクッ

男「お、女さん?!」

女「はい、やっと会えましたね」

男「やっと会えた?」

女「男さん、ずっと婦人さんの部屋にいたから……」

女「私、ずっと待ってたんですよ」ニコ

男「どうして婦人さんの部屋にいるの知ってるの?」

女「どうしてでしょうねぇ」トロン

男(女さん、出会った時より明らかにおかしくなってる)

女「ふふふふふふ」ギュゥ

男「女さん、苦しいから離れ─── 」

女「嫌」

男「?!」ゾクッ

女「ぜっっったい、はなしませんよ」ギュゥ

男「…………」

男「婦人さんを探しに行きたいんだ」

女「デートですねぇ、行きましょう」

男「いや、デートじゃなくて」

女「さぁ、出発です」グイッ

男「ちょっ…………?!」

女「楽しいですねぇ、ふふふ」スタスタ

男「どこ行くの?」

女「男さんと一緒ならどこでもいいです」ニコ

男「婦人さんがどこに行ったか知らないかな?」

女「………………」

女「そんなに心配なんですかぁ?」

男「心配だよ、いつの間にかいなくなっちゃってたし…」

女「…………ふーん」

女「では、取引です」

男「取引?」

女「婦人さんの居場所を教えるかわりに男さんを私に下さい」

男「えっ?」

男「それってどういう意味?」

女「私は男さんが好きなんです」スッ

男「…………」

女「ほんとに…ほんとに…貴方が好きなんです」ギラッ

男(包丁…?!)

女「決めて下さい、私の物になるか…私の物にされるか」ニコ

男「…………」ドクン

1 女さんを受け入れる
2 女さんを受け入れない

男「わかったよ、女さん」

女「…………?」

男「君の気持ちを受け入れる」

女「ほんと、ですか?」

男「俺と一緒にいてほしい」

女「はい!私、男さんから離れません」ギュゥ

男「うん」

女「えへへ、約束通り婦人さんの場所を教えますね」ニコ

男「どこにいるの?」

女「5階で婦人さんの声が聞こえたんです」

男「5階?」

女「はい、早速行きましょう!」グイッ

5階

男「そう言えば5階に来るの初めてだ」

女「ふふふふ」スリ

男「女さん?」

女「はぁい」トロン

男「大丈夫?」

女「ふふふふふふ…」ニコ

男「……………」ナデ

女「ひゃっ?!」ビクン

男「歩ける?」ナデ

女「はぃぃ……」ギュゥ

男「どこから婦人さんの声が聞こえたの?」

女「今も聞こえてますよぉ… 」

男「えっ?」

─────────

男「…………泣いてる」

男「この部屋からだね」

女「ここで良くパーティーをしてたんです」

女「婦人さんのピアノで皆で踊って………」

男「皆…?」

女「私も狩人さんも少女ちゃんも…あの人だって」

女「………でも、ある日終わってしまったんです」

女「どうして…あんなことに…………」

男(女さん…何を行ってるんだろう?)

男「扉、開けるよ」

女「……………」

ギィィィ

男「暗いな」

男「婦人さん、どこにいるんですか?」

シーン

男(さっきまで聞こえてた泣き声が聞こえない)

女「……………」

女「……………」スッ

男「どうしたの、女さん?」

女「あそこに、います」

男「……………」ジッ

婦人「……………」ブルブル

男「婦人さん?!」タッ

男「こんなところで何してるんですか!」

婦人「私…もう……」ガタガタ

男「何があったんですか?」

ポタポタ

男「婦人さん血が────」

婦人「もう弾けない」ボタッ

男「……………」

男(指が…切断されてる)

婦人「………………ぃゃ」

婦人「いやぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!」

男「ふ、婦人さ……」

婦人「弾かせて!私にピアノを弾かせてよぉぉぉ!!」ブン

婦人「私は弾かなきゃダメなの…!」

婦人「ああぁぁぁぁぁ!!私を見捨てないでっ!」

婦人「弾ける…私はまだ弾けるからぁ!!」

婦人「お母さん…お母さん…っっ」

女「可哀想な人…ピアノが全てだったのに」クス

男「女さん…!」

女「ふふふふ…卑しい指なんて必要ないです」

男「何言って…」

婦人「私の指を返して…返してよ!!」

男「………女さん、まさか?!」

女「男さんを誘惑する指なんて私が奪いとります」ニコ

女「痛かったですか?痛かったですよね…ふふふふふふ」ギラ

女「痛みから解放してあげます!」ブン

ブシャァァァ

婦人「あっ………ぁぁぁぁぁ」ドサッ

女「あはっ…あははははははは!!」ドスドス

男「っ…はぁはぁ」ガタガタ

男(逃げなきゃ!)

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