【艦これ】魔法艦娘デストロイヤークレセント (172)



女性「あぁ、また彼に振られちゃった。仕事でもおこられちゃうし…この世には絶望しかないんだわ」ズーン

黒い澱み「…」ホワワーン

女性「あら?」

ズモモモ…

女性「きゃあっ!?ああっ…アアァァァァァァ…」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1444871421

三日月「遅くなっちゃった。はやく鳳翔さんに頼まれたお使い済ませて戻らないといけません…」

三日月「そう言えば、鳳翔さんが、最近街で行方不明になるひとが多いから気をつけて、って言ってました。うぅ、怖いです。」

女性?「ネェ?」

三日月「え」

女性? 「アナタ、海ノ中ニ興味ナイ?」

三日月「海、ですか?海は好きですけど。今は深海棲艦が出るから危ないですよ」
(誰でしょうか?いきなり変なこと聞いてきて…)

女性?「ソウ?デモ、慣レレバコノ身体モ気分ガイイヨ」カッ

三日月「きゃ!?」

ヲ級「アナタモイッショニ来ナイ?」

三日月「し、深海棲艦!?」

ヲ級「フフ」

三日月「そんな、陸地に現れるなんて!?」
(それに、、人の姿になってた?)

ヲ級「アナタ、素質ガアルワ…ツレテイッテアゲル」

三日月「深海棲艦の言う事なんて聞けません!!単装砲!!」ジャキン

ドーン!! モクモク…

三日月「やった?」

「フフフ」

三日月「効いてない!?それに装甲が変わってる!?」

魔女ヲ級「素敵デショ?」

三日月「強化型なの?初めて見るタイプ…」

魔女ヲ級「知リタイ?アナタモナレルワ」

三日月「え」



「そいつの言うことを聞いちゃダメだ」

魔女ヲ級「!?」
三日月「!?」

三日月「えっ、誰?どこから声が?」

「こっちこっち」

三日月「足元?」

ネズミ?「とにかくそいつから離れて!」

三日月「……ネズミさんが喋ってます」

ネズミ?「早く!!」

三日月「は、はいっ!」

タタタッ

三日月「あの?あなたは?」

ネズミ?「僕の名前は輸送鼠」

三日月「鼠輸送?」

輸送鼠「輸送鼠だよ!それよりさっきの深海魔女がくる!」

艦載機ブーン

三日月「ああっ!?」

輸送鼠「きみ、艦娘なんでしょ?」

三日月「は、はい。三日月っていいます。けど、さっきのヲ級には攻撃が効かないんです」

輸送鼠「あいつはただの深海棲艦じゃない。深海魔女だ」

三日月「魔女?そ、そういえば服が変わっていたような」

輸送鼠「あいつを倒すには、きみも変身するしかない」

三日月「ヘシン……え!?変身?」

輸送鼠「きみが魔法艦娘になるんだ。あ、その月型のブローチがちょうどいいね。ちょっと借りるよ」

三日月「あっ」

輸送鼠「ハァァァッ!海軍精神注入!!……よし、これを持って念じるんだ」

三日月「ええっと、どうすれば〜?」

輸送鼠「このままだと負けるぞ。負けたくはないだろ?」

三日月「ッ!?負けたくは、、ありません!戦いなのですから!」

輸送鼠「そうだ、そして唱えるんだ」

三日月「テトラクテュス・グラ 輸送鼠「違う!!」

輸送鼠「いいかい?魔法の呪文は…」ヒソヒソ

三日月「は、はい」



三日月「マジックフリート!ウェイアンカー!」



パァァァ

三日月「きゃ!?ふ、服が、脱げ…」

三日月「…と思ったら新しい服が。フリフリで可愛いです」

輸送鼠「よし、今からきみは「魔法艦娘デストロイヤークレセント」だ!」

魔女ヲ級「ホゥ?」

クレセント「わ、来ました!これ、こんなフリフリな服で戦えるんですかぁ?」

輸送鼠「問題ない、その服は…」

魔女ヲ級「行ケ!艦載機!アノ娘ヲイタメツケロ!」

ブーン

クレセント「敵機!?直上!?やられ……」

ヒュン スカスカスカッ

魔女ヲ級「ナニ?」

クレセント「え?私、いつもより速く動けた?」

輸送鼠「その姿になっているときはパワーもスピードも格段にアップするんだ」

輸送鼠「さあ!次は攻撃だ!武装を呼び出して!」

クレセント「え、えーと。いつも武装を呼び出すみたいにすればいいんでしょうか……えいっ」ジャキン

クレセント「わ、単装砲じゃない。連装砲だぁ。それに可愛らしい装飾が付いてます!」

輸送鼠「それが主武装だ。そのマジカル連装砲で敵を撃つんだ」

クレセント「マジカル…?魔法で攻撃とか出来るんですか?」

輸送鼠「いや」

輸送鼠「砲身が焼けつくまで…撃ち続けろォ!」

クレセント「凄い力技でした!?」

クレセント「ええいっ!!」

ドドン

魔女ヲ級「ウウ、コレハ魔力ノコモッタ砲撃!?」

クレセント「空母といえど艦載機をかい潜れれば…」

魔女ヲ級「アッ!?」

クレセント「ゼロ距離射撃、いっきまーす!!」

ドゴォォン

魔女ヲ級「オノォォレェェ……!!」

クレセント「はぁはぁ…」

魔女ヲ級「」 ポワァァン → 女性「……」

クレセント「え?」

輸送鼠「艦の怨念は霧散したか…お疲れ様、クレセント。魔法艦娘の初陣にしては上出来だよ」

クレセント「ど、どういう事ですか?どうして深海棲艦が人間に…」

シュルシュル〜 デストロイヤークレセント→三日月

三日月「一体何が起こってるんですか!?」

三日月(あれから一週間…)

〜〜〜
クレセント「たぁぁぁぁ!!」

ドカーン ドカーン

深海魔女「ジョォカァァ!?」

ポワワ〜ン

クレセント「や、やりました」

クレセント→三日月「ほっ…」

輸送鼠「お疲れ様、三日月。戦い方の飲み込みが早いね。大したものだよ」

三日月「そんなこと……私、普段は戦いではあまり役に立たないから。私に力があるなら、どんな形でも頑張りたいんです」

輸送鼠「でも無理は禁物だよ。さ、今日は早く帰って休むんだ」

〜〜〜

三日月(この輸送鼠さんから、現在この街で起こっていることを教えてもらい、人間に憑依する深海魔女を討ち払ってきました)


駆逐艦寮 三日月個室


輸送鼠「モグモグ…三日月、このチーズ美味しいねぇ」

三日月「ふふっ、それは何よりです」

三日月(輸送鼠さんによると…)

回想シーン

輸送鼠「改めて自己紹介すると…僕は輸送鼠、海軍のエージェントって所かな」

三日月「はぁ…」(妖精さんみたいなものでしょうか?)

三日月「ええっと、さっき教えてもらったように、あのヲ級は、艦の怨念が人の負の感情と混ざり合い、魔力…でしたっけ?そういう不思議な力を生み出した存在…ということですか?」

輸送鼠「僕たちは魔女と呼んでるけどね」

三日月「深海棲艦は、沈んだ艦娘や海で亡くなった人が怨霊化した亡者の集合体と言われていますが…」

輸送鼠「そう。それに対して深海魔女は、生きている人のエネルギーと亡者のエネルギーのハイブリッドなんだ。」

三日月「初め、私の攻撃が通用しなかったのは…」

輸送鼠「艦娘は、人間に艦艇の記憶を移した存在だよね。それによって艦時代の記憶や、艤装を使うことはできるけど、あくまで対怨霊、つまり通常の深海棲艦相手用なんだ。さっき言ったハイブリッドな力は想定していないんだ」

三日月「でも、あの時私が使った力は…」

輸送鼠「あの力…魔法艦娘に変身する力こそ、オリジナルの艦の魂だよ」

三日月「オリジナル?私が使っている駆逐艦三日月の力は本物じゃないんですか!?」

輸送鼠「それも本物だよ。というか本物、偽物という問題じゃない。言ってみれば幹と枝葉の関係だ。そしてその幹の力ともなれば、相手の魔力にも匹敵する。ファンタジーな言い方をすると希望のエネルギーだよ」

三日月「ますます魔法めいてきました。正義は我にあり、ということでしょうか?」

輸送鼠「さぁ?深海棲艦側が負の感情を使ってるから、それと対となるのはプラスの感情だろうけど。ただ誰でも使えるってわけじゃない。別の鎮守府には君以外にも「三日月」の子がいるだろうけど、オリジナルの力を使いこなせる子は限られるんだよね」

三日月「そういえば、あのヲ級が「素質がある」って言ってました。向こうも魔法艦娘のことを知っていたんでしょうか?」

輸送鼠「いや…おそらくは君を魔女にするつもりで言ったんだろう。僕があの場にいたのも、魔法艦娘になりうる子の反応があったからだけど。魔法艦娘になれる素質を持った子は、同じくらい負の感情にも影響されやすい。」

三日月「そ、そんな!?私、髪も制服も黒いですけど、お腹の中まで真っ黒なわけじゃありませんっ!」

輸送鼠「まぁまぁ、怒らないでよ。強い負の感情に捉われなければ大丈夫さ」

三日月「はぁ… ところで鎮守府のみんなも魔法艦娘になれるんですか?司令官にもこのことお伝えしないと…」

輸送鼠「悪いけど、この事は他言無用で頼む。深海魔女も魔法艦娘も、世間はもちろん、軍にも知られないほうがいい」

三日月「な!?何でですか!?この力があれば深海棲艦との戦いだって!そもそも輸送鼠さんは軍の関係者じゃないんですか?」

輸送鼠「たしかに軍の関係者だけど…これは極秘任務なんだ。ここまで大きな力を持ったら、次は艦娘たちが危なくなるよ。人類も皆、話のわかる人ばかりじゃないーーー」

輸送鼠「魔女狩りが始まるよ」

三日月「!」

輸送鼠「もちろんここでいう魔女は深海魔女ではなく魔法艦娘のことだ。その力を利用して悪巧みする軍人も出てくるかも」

三日月「そ、そんな…」

輸送鼠「まぁ、そっちはそんなに心配しなくても大丈夫。僕の見立てでは、深海魔女は自然発生してるんじゃなくて、艦の怨念を撒き散らしている元凶がいるんだ。だからそいつを倒せば事態は収まる。ちょっと不思議なことが起こった程度、で済むさ」

三日月「あ、そうなんですか?よかった…」

輸送鼠「三日月が協力してくれればね」

三日月「え?」

輸送鼠「そりゃ魔法艦娘デストロイヤークレセントがいなきゃ話にならないからね。活躍を期待してるよ!」

三日月「え?え?えええっ?」

輸送鼠「あ、ちなみに僕のことはネズミでいいよ。輸送鼠だと長くて言いにくいでしょ?」

回想シーン終了


三日月(そんな訳でネズミさんとの魔法少女…いえ、魔法艦娘生活が始まったのです)

三日月(けど、いくら強力な力とはいえ、私なんかに務まるのでしょうか?)

三日月「でも鎮守府の任務がありますから、あまり目立った行動は取れませんよ」

ネズミ「ん〜?大丈夫じゃないかな?ホラ」

三日月「え? 執務室から全艦娘へ通達…?」


提督『旅に出ます。艦娘のみんなは、鎮守府の防衛を主とし、ローテーションを組んで遠征や訓練をしてて下さい。追伸、夜更かししたら肌が荒れるぞ、おやつ食べ過ぎたら太るぞ〜。毎日パインサラダを残さず食べる子にはバトロイド形態に変形する瑞雲をあげるから良い子で待ってるように』


三日月「…」

ネズミ「ふふ、好都合だね。おおきな作戦行動がないうちに深海魔女事件を解決しよう」

三日月(ホントに都合が良すぎますよぉ…)アホ毛ショボ〜ン

そして三日月の深海魔女と戦う鎮守府生活が始まるが…

ネズミ「三日月〜、お腹がすいたよ〜」

三日月「もぅ、さっきチーズ食べたじゃないですか!?」

ネズミ「あれじゃ足りないよう」

三日月「も〜、こんなことで魔女を止められるんですか?」


睦月「三日月ちゃん?誰と話してるの?」

三日月「へ?あ、いえ…ちょっとお腹がすいちゃって…アハハ、独り言を」

如月「うふふ、いくら如月たちが低燃費だからって、育ち盛りだものね」

如月「如月なんてまた胸が大きくなっちゃって、下着が合わないわ」

睦月「にゃしぃ!?如月ちゃんばっかりズルイ!?」

三日月「ア、アハハ…じゃ、じゃあ私も食堂に行って牛乳でも飲んでこようかな…っと」ソソクサ

ネズミ「ふぅ、危ない危ない。混乱が拡がるから僕の事や魔法艦娘の事は内緒で頼むぜ?」

三日月「もぅ!だったらお腹がすいたのくらい我慢して下さいよ〜」

ネズミ「それはそれ。これはこれだよ」

三日月「はぁ、、とりあえず食堂で野菜の切れ端でももらってきましょう」

ネズミ「え?ハムとかソーセージとか無いの?」

三日月「そんな上等なもの貰えません!!働かざる者食うべからず、です!」

ネズミ「とほほ…」

食堂

三日月「失礼しまーす」

瑞鳳「あら?三日月ちゃん?」

三日月「瑞鳳さん!どうされたんですか?」

瑞鳳「う〜ん、実はついつい日課で、提督の為に玉子焼き作っちゃって…」

三日月「でも司令官はお留守にされてる…と」

瑞鳳「そ〜なの〜。よかったら三日月ちゃん、玉子焼き食べる?」

三日月「あ、それでは…」

ネズミ「食べりゅううぅぅ!!三日月!僕にくれぇ!」

三日月「!」

三日月「ぅわあああぁぁぁ〜!!?だ、ダメですよ、大きな声出しちゃ」

瑞鳳「? どうしたの?三日月ちゃん? “一人で”大きな声出して?」

三日月「え?えっ?」

ネズミ(ふふふ…これも次元連け…イヤ、魔法のちょっとした応用だ。三日月の頭の中に直接話しかけている)

三日月(艦の魂の力ってすごい)

瑞鳳「ど、どうしちゃったの?三日月ちゃん?」

三日月「え、と…瑞鳳さんの玉子焼きがとても美味しそうだから、つい歓喜の悲鳴をあげてしまいました」

瑞鳳「あは。ありがと」

〜玉子焼きに舌鼓〜

三日月「ごちそうさまでした」
ネズミ(なかなか美味しかったよ)←死角で食べてた

瑞鳳「お粗末様」

三日月「そういえば瑞鳳さん、司令官が遠出をしているみたいですけど、行き先はご存知ですか?」

瑞鳳「ん〜、ごめん。私もわかんない…」

三日月「そうですか」

瑞鳳「出かけるんなら私も連れて行ってほしかったなぁ…提督、もう私の玉子焼きに飽きちゃったのかな…」ハァ

三日月「えっ!?こんなに美味しいのにですか?」

瑞鳳「うん。最近は秘書艦にもよんでくれないし…」

三日月「瑞鳳さん…」

瑞鳳「秘書艦のときは朝ごはん作ってもらえたり、スイーツ奢ってもらえたり、呑みに連れて行って貰えるのになぁ」

三日月「あっ…」
ネズミ(それが原因なんじゃ…)

瑞鳳「私、このままお役御免なのかな…」ズーン

三日月「そ、そんな大袈裟な」

瑞鳳「私、チンチクリンだし、飽きられてきっとこの後は高速給油艦に戻されちゃうんだ」

……ズモモモモモ

ネズミ(ッ!!三日月!!)

三日月「え?」

ネズミ(深海棲艦の怨念が来る!!)

三日月「ま、まさか。ここは鎮守府ですよ?」

ネズミ(憑依前や実体化前の怨念は、どこにでもやって来るんだ)

三日月「そんな!?瑞鳳さん、しっかりして下さい。信じられないかもしれませんが、ここに深海棲艦が…」

瑞鳳「……」

三日月「瑞鳳さん?」

ネズミ(いけない!その子に怨念が)

ズモモモモモ カッ!

三日月「きゃっ!?」

黒い澱み→瑞鳳「……」フシュゥゥ

三日月「ず、瑞鳳さんッ!?」

瑞鳳?「どうせ私はぁ…潜水母艦にならなかったから飛行甲板要素が強いんだぁ」クワッ!

瑞鳳→魔女高崎

魔女高崎「ウワァァァ」ビューン

三日月「うそ…瑞鳳さんが、瑞鳳さんが」

ネズミ(落ち込んでいたところを狙われたんだ)

三日月「ええっ!?そんな簡単に?」

ネズミ(まぁ…本人にとっては大きな悩みだったんじゃないかな?)

三日月「はぁ……。って、まずいですよ。とびだして行っちゃいました!?」

ワー!?キャー!?シンカイセイカン!?
デチィィィ!!?


三日月「ああああ!?大変な事に!」

タタタッ

三日月「あっ!?」

イク「ゴーヤー!しっかりするのね」

ゴーヤ「うぅ、痛いの痛いの、飛んでかないよ〜」

三日月「ゴーヤさん!?」

イムヤ「み、三日月ちゃん…急に見たこともない深海棲艦みたいなのが来て…」

ゴーヤ「ゴーヤを集中的に攻撃してきたでち」ガクッ

三日月「ゴーヤさぁん!?」

ネズミ(何か瑞鳳の怨みを買うようなことしたのかな?)


※回想
ゴーヤ(きっと瑞鳳だけ潜水母艦にならなかったから飛行甲板要素が強いんでち!)

瑞鳳「」
※回想終る


三日月「そんな!いくらなんでも瑞鳳さんが…」

ネズミ(今の瑞鳳は深海魔女だからね。負の感情が溢れて攻撃的になってもおかしくない)

ハチ「ともかくハッちゃんたちはゴーヤちゃんを入渠させてくるね」

三日月「は、はい」

一方その頃

魔女高崎「フフフ、フフフ」ビューン


赤城「アッ!私のボーキサイト!?」
長門「私のアイスが!?」
暁「あ〜!遠征で貰った資材がぁ〜」
響「私のボルシチ…」


魔女高崎「アハハハ、イッパイ食ベテ大キクナルヨ」


三日月「た、大変!?高速でみんなの物が盗まれています!」

ネズミ(三日月、変身して戦うんだ)

三日月「そ、そんなこと…。そうだ、深海魔女になるくらいの子は、魔法艦娘にもなれる素質があるんですよね?瑞鳳さんが魔法艦娘になれば元に戻りませんか?」

ネズミ(残念だけど無理だ)

三日月「な、なんで!?」

ネズミ(一つには、マイナスの気持ちにとらわれ過ぎてしまったこと。そしてもう一つは……僕はオリジナルの「瑞鳳」の魂を持っていない)

三日月「そ、そんなぁ」

ネズミ(だから今は戦って戻すしかない。ちょっと乱暴だけどね)

三日月「うぅ…」

ネズミ(大丈夫!今までも深海棲艦の怨念を討ち払って、取り憑かれた人を元の姿に戻してきただろう?自信を持つんだ!)

三日月「は、はいっ!」

魔女高崎「…」ザバーン

ネズミ(海上へ出たか。ちょうどいい。邪魔されないところで戦おう)

三日月「わかりました。瑞鳳さん、三航戦のエスコートとして、この三日月が必ず元に戻してあげます!!」ザバーン



三日月「マジックフリート!ウェイアンカー!」


パァァァ

三日月→デストロイヤークレセント「行きますッ!」

海上

魔女高崎「…ン?」

クレセント「瑞鳳さん!正気に戻ってください」

魔女高崎「ジャマヲ…シナイデ」

ビュン!

クレセント「え」

バシン!

クレセント「きゃあっ!!?」

魔女高崎「フフフ。オッソーイ!トデモイエバイイカシラ」

クレセント「うそ…速すぎて反応できなかった?魔法艦娘に変身してるのに」

魔女高崎「オソイオソイ!速サガタリナイィィ!」

バン!バン!バン!

スカッ

クレセント「あうぅ…砲撃が当らない!?」

魔女高崎「アハハハ。ソレッ」

ドカーン

クレセント「ふあぁっ!?」

ネズミ「クレセント!?大丈夫か?くっ、魔女化したら急にスピードが上がったようだね」

クレセント「何か理由があるんでしょうか?」


魔女高崎「機動破壊ハ脚ガ速イノヨ、脚ガ!」


クレセント「機動破壊?」

ネズミ「まさか!?」

クレセント&ネズミ「高崎だから!?」エェ…

魔女高崎「コノスピードヲ手ニイレタ今、胸ナド不要」ポロポロ

ネズミ「泣きながら言ってる…」

魔女高崎「カクゴ!!」

クレセント「あの…」

魔女高崎「コノスピードハ捉エラレマイ」

ギュイーン

クレセント「給油艦高崎の『高崎』はグンマじゃないですよ?」

魔女高崎「エ?」

クレセント「隠岐島か対馬の地名と言われてますけど…」

魔女高崎「ア…」

クレセント「あの……」

ネズミ「動きが止まった!今だ!」

クレセント「え〜と…ごめんなさいッ!!」ジャキン

ドカーン!ドカーン!ドカーン!

魔女高崎「アァーーッ!!」

瑞鳳「う、うーん…」

三日月「瑞鳳さん!よかった、目が覚めたんですね」

瑞鳳「あ…れ?三日月ちゃん?…私、食堂にいたんじゃなかったっけ?なんで外に…」

三日月「えっ…と…」

ネズミ(三日月、彼女は魔女になっていた時の記憶は無いようだ。ここは適当に話を合わせて!)

三日月「あ、あの、その…瑞鳳さんは司令官を追いかけるため、外に飛び出て行っちゃったんです!」

瑞鳳「え?そ、そうだっけ?」

三日月「そうなんです!覚えてないんですか!?」クワッ

瑞鳳「う、うん?そ、そう言われてみればそんな気もしてきた、ような…」

三日月「それで途中で転んで気を失っちゃったんです!」クワッ

瑞鳳「ひっ!?」(三日月ちゃん鬼気迫る表情だよ、私、気を失っちゃって迷惑かけちゃったのかな?)

瑞鳳「ご、ごめんね、三日月ちゃん」

三日月「あ、いえ、大きな声出してごめんなさい」

ネズミ(ハハ、名演技だよ、三日月。うまく誤魔化せた)

三日月(笑い事じゃないですよ〜)

瑞鳳「はぁ…こんなんじゃ私、余計に提督に嫌われちゃうね」

三日月「瑞鳳さん……そうだ!」アホ毛ピョコーン

三日月「瑞鳳さんの玉子焼きを強化しましょう!」

瑞鳳「へっ?」

三日月「司令官が帰ってきたときに、ビックリさせてあげるんです!!今までよりも、もっと味やバリエーションを増やしちゃいましょう!そうすれば司令官だって飽きちゃうなんてことはありませんよ!」

瑞鳳「それは…そうかもだけど…私、そんなにレパートリー多くないよ」

三日月「そこは大丈夫です!三航戦には強い味方がいるじゃないですか!」

三日月「鳳翔さぁん!」

鳳翔「あっ、三日月ちゃん。なんだか鎮守府に深海棲艦が侵入したって騒ぎになってるけど、大丈夫だった?」

三日月「え?そうなんですか?私の聞いた話では、島風ちゃんがラディカル・グッド・連装砲ちゃんで瞬殺のファイナルブリッドを放とうとして暴走したみたいですけど」シレッ

鳳翔「そ、そう…相変わらず島風ちゃんは元気なのね」

三日月「はい」

ネズミ(三日月…)

三日月(みんなに動揺が広がらないのが一番です)

三日月「それより鳳翔さん。フワフワの美味しい玉子焼きの作り方を教えていただけませんか?」

鳳翔「あら?」

瑞鳳「三日月ちゃん…」

三日月「瑞鳳さんが玉子焼きを極めたいんだそうです!」

瑞鳳「えっ!?その…私は……うん。提督にもっと美味しい玉子焼きを作ってあげたいの。鳳翔さん、お願いします!」

鳳翔「そう、それなら腕によりをかけて教えてあげなきゃね。じゃあ、一品目は出汁巻きの厚焼き卵から……」

瑞鳳「よ〜し、提督の舌をうならせちゃうわよ!!」

三日月「ふふっ、頑張らないとですね!」






ネズミ(へぇ…魔女の力を討ち払うだけじゃなく、落ち込んだ子を励まして、気持ちを強く持たせようとしている)

ネズミ(三日月…なかなかやるじゃないか)

しばらく経った別の日


鳳翔「三日月ちゃん、ちょっといいかしら?」

三日月「はい?なんでしょう?」

鳳翔「この前、睦月型の子たちの制服を繕い直したんだけど…」

三日月「あ、その節はありがとうございました。鳳翔さん、お裁縫がとっても上手だから見習いたいです」

鳳翔「ええ、それは私が好きでやってることだからいいのだけれど…実はね」

三日月「?」

鳳翔「うふっ、制服からサイズを測って、三日月ちゃんのお洋服も作ってみたの!試着してもらえないかしら?」ジャーン

三日月「わぁ!鳳翔さん、ご自分で作られたんですか!?すごいです!私が貰っちゃっていいんですか?」

鳳翔「もちろんよ。三日月ちゃん、いつもお手伝いしてくれるから、ご褒美にね」

三日月「わぁい、わぁい。早速着させていただきます!」


キガエキガエ

ネズミ(お、似合ってるじゃないか、三日月)

三日月(えっ、そんな、私が可愛いなんてありえないです)

ネズミ(いやまだ可愛いとは言ってな… いや、可愛いけどね)



鳳翔「よかったわ!とっても似合ってる。頑張って作った甲斐があったわ」

三日月「あっ、これ、上着がパーカーになってるんですね」パタパタ

鳳翔「そう、これをスッポリかぶせるとね…」スポッ

鳳翔「ほら。名付けて“みかずきん”ちゃんの完成よ!」つ鏡

みかずきん「み、みかずきん……あ、でもフードもこの可愛いですね」

ネズミ(アハハ、その名前もありがたく頂戴しておきなよ!)
みかずきん(もうネズミさんてば…)

三日月「ありがとうございます、鳳翔さん。今度皐月ちゃんたちとお出かけするので、その時に着て行っちゃいます!」

鳳翔「ふふっ、お役に立って何よりだわ」

三日月「今日は皐月ちゃんたちとのお出かけの日〜♪」

ネズミ「ご機嫌だね」

三日月「みんなで出かけるのは久しぶりですからね」

三日月「おっと、忘れるところでした」フードカブリ

みかずきん「今日はこれで行きます!」

ネズミ「なんだかんだで“みかずきん”を気に入ってるじゃないか」

みかずきん「鳳翔さんが作ってくれたんですから!」

オマタセー

みかずきん(あっ、みんなが来ました。ネズミさんはポシェットの中に隠れててくださいよ?)

ネズミ(わかった、わかった)

みかずきん「皆さん、おはようございます!」

文月「おはよ〜」

皐月「あっ!三日月、フード着てる!カワイイね!」

みかずきん「えへ。皐月ちゃんのほうが可愛いですよ〜!」

文月「三日月ちゃん、もしかしてそのパーカー、手作り?」

みかずきん「そうなんです!鳳翔さんが作ってくれたんですよ」

文月「すご〜い。いいなあ、あたしも欲しいよぉ」

みかずきん「鳳翔さんはお手伝いしてくれたお礼に、って言ってました。いい子にしてお手伝いをいっぱいすれば、みんなの分も作ってくれるかもしれませんね」

皐月「三日月は三航戦のエスコートで鳳翔さんたちとよく一緒にいるもんね」

文月「ふわぁ…あたしも負けずにお手伝いする〜」

長月「おーい、みんな揃ったか?出かけるぞ」

菊月「望月もついてきてるか?」

望月「いるよ〜」

みかずきん「えっ?望月ちゃん…」

文月「ええっと」

皐月「望月、せっかくのお出かけなんだからジャージは…」

望月「え〜、別にいいじゃん」

長月「まったく…菊月でさえよそ行きの服に着替えてるというのに」

菊月「またオシャレしてしまった…この魅力、何に使うか」

文月「ふえぇ、すごい自信…」

皐月「魅力を使うって時点でかなり打算的な匂いがするんだけど…」

長月「よし、それなら今日は望月の服をみんなで選ぶぞ」

皐月「さんせーい!」

文月「よぉーし、望月ちゃんをいっぱい可愛くしちゃうよ〜」

みかずきん「さぁ、望月ちゃん、行きましょう」

望月「あーもう、しょうがねえなぁ〜」

菊月「では私の行きつけの店を紹介する。共に行こう」

望月「お前何気にオシャレ好きだな…」

菊月「うむ、実はいろんな服を着てみたい…」

長月「我々とて年頃の少女だ。それくらいの楽しみは許されるだろう」

みかずきん「せっかくのお休みです、いっぱい楽しみましょう!」

睦月型やどかりタイプが可愛らしくもかしましく通り過ぎていった後…

???「さーて、この町にも負のエネルギーが感じられるな」

???「ふふふ、強力な魔女を建造してくれよ…」

黒い澱み「……」ポワワーン



店員「ふんふーん…」

黒い澱み「…」ズゥゥゥン

店員「あ」

黒い澱み→店員「アアアァッ……!?」

一方、みかずきん達

ネズミ(こうして見ると、やっぱり女の子だねぇ、みんなオシャレ好きだ)

みかずきん(私達、表に出るときはほとんど制服ですからね。たまに水着や浴衣を着る人もいますけど)

皐月「みかづき〜、置いてくよ〜」

みかずきん「あっ、今いきまーす」



菊月「ここが私が懇意にしている店だ」

長月「ふむ、意外とお洒落なお店だ」

皐月「もっとミリタリー専門みたいなお店かと思ったよ」

菊月「む、そういう店のほうが良かったか?」

文月「そういうお店も知ってるんだ…」

長月「待て、ジャージから迷彩服ではあまり意味がないだろう」

望月「まー、アタシはそれでもいいけどね。動きやすそうだし」

皐月「もー!それじゃ物陰に隠れて動かなくなるだろう、望月の場合」

望月「うん、迷彩便利だ」

みかずきん「だめですよぅ!望月ちゃん、ほら、みんなが選んでくれるから、いろいろコーディネートを試してみましょう」

文月「うーん、どれが似合うかなぁ」

皐月「店員さんに聞いてみたらどうかな?」

菊月「うむ、頼んでみよう。ここの店員さんには私もいつも世話になっているからな」

トテテ〜


菊月「店員さーん、こんにちは!今日は友達も一緒に来たの!私達に似合う服を選んでもらってもい〜い?」ニコッ


皐月「キャラめっちゃ違ーう!!」

長月「菊月は鎮守府以外ではあんな感じだぞ」

皐月「ええっ!?」


ネズミ(君の仲間は愉快な子が多いね、三日月)

みかずきん(み、みんな良い子なんですよ?)

店員「あら?お菊ちゃん、みんなでお買物?」

菊月「うん!私の友達に似合う服あるかなぁ?」

店員「そう…ね。これなんかどうかしら?」

菊月「ゴスロリ服?」

菊月「よし、見立ててもらったぞ。さっそく試着するとしよう」

望月「なんでもう口調戻ってんだよ…」

文月「あれ?でも試着室が5つしかないね」

みかずきん「じゃあ私待ってます。みんな先に着てください」

長月「そうか。すまんな、三日月」

そして…
カーテン シャーッ

ゴスロリ皐月「じゃーん!どう?似合うかな!」

ゴスロリ文月「えへへ〜、お話の中のお姫様みたい」

ゴスロリ長月「ふむ、この気品。悪くないな」

ゴスロリ望月「おおぉ、この退廃感溢れるゴシックなのもいいな〜」

ゴスロリ菊月「クッ、ククク、この眼帯と包帯はいいな。力に目覚めそうだ…」



みかずきん「わあぁ、みんな可愛いですよっ!」

店員「ソウ、トテモカワイイワ…ミンナ、オ人形ミタイ…」

みかずきん「!?」


長月「え?」

望月「人形〜?」

ネズミ(ッ!?)

みかずきん(ネズミさん!?)

店員?「サァ、ワタシノイウ事ヲキイテ頂戴、オ人形サン達!!」カッ

文月「ふみゅ!?…うっ」ガクッ

長月「なんだ…これ、は…」ガクッ

みかずきん「み、みんな!?どうしたの!?」

皐月「…」

文月「…」

望月「…」

ネズミ(この感覚…マズイ!)

店員?「フフ、もう何を言ってもこの子達には聞えないわ…」カッ

みかずきん「まさか、あなたは!?」

離島魔女「サァ、貴女モ私ノ着セ替エ人形二シテアゲル」

みかずきん「離島棲鬼!?」

ネズミ「この店員も深海魔女化している!三日月、変身だ!」

みかずきん「はい!マジックフリート!ウェイアンカー!!」

みかずきん→デストロイヤークレセント

クレセント「長月ちゃん達をどうするつもりです!?」

離島魔女「フフフ、私ノ魔力ノ籠ッタ服ヲ着タラ最後、コノ子達ハ私ノオ人形ヨ」

菊月「…」

望月「…」

クレセント「み、みんな…」

ネズミ「く…睦月型の子達を盾に…」

離島魔女「貴女ハ面白イ力ヲモッテイルヨウダケド…コノ子タチヲ相手ニデキルカシラ?」ドォンドォン

クレセント「きゃあ!」

ネズミ「クレセント!」

クレセント「うぅ…皐月ちゃん達を引き離さないと…」

離島魔女「ヤッテオシマイ」

皐月「…」ジャキン

クレセント「!?」

ネズミ「クレセント!反撃するんだ!」

クレセント「っ!?ごめんね!」ドカァン

皐月「うわっ!?」

ネズミ「大丈夫だ!瑞鳳の時と同じように、人体に影響は…」

皐月「い、痛ったいじゃんかさぁ、やめてよぅ」

クレセント「…! 皐月ちゃん!」

離島魔女「アラアラ、オトモダチデモ容赦ナイノネェ」

ネズミ「ブラフだ!操られて言わされているに過ぎない。今までだってマジカル連装砲の攻撃は魔女の力を祓うだけだっただろ!」

クレセント「う、そうですけど…」ドカンドカン

皐月「うああっ!ひどいよ、なんでこんな事するの…」

文月「う〜、あたし達なんてどうでもいいんだ…」

クレセント「あ…あぁ…」

ネズミ(まずい、奴は三日月の心を攻めてきている。本体を狙っても睦月型の子達が盾になる…)

離島魔女「ドウシタノ?モウ撃タナイ?ナラ…」

離島魔女「コッチカライクワ!!」キュイィン ドカドカドカーン

クレセント「きゃぁああああ!!」

クレセント「う…」ボロッ

ネズミ「このままじゃ、君がやられる。我慢して撃つんだ!」

クレセント「でも…」

ネズミ「このままじゃ負けるぞ」

クレセント「ま、負けたくはありません。でも…」

クレセント「みんなを傷つける事もしたくありません!!」ピカー

ネズミ「これは!?」

離島魔女「ナニ!?ナンノ光ィィ!!」

クレセント「私に魔法の力があるなら、みんなを救う力が欲しい!」パァァァ

ネズミ「新しい装備を呼び出した?」

クレセント「ムーンライト探照灯!!照射しますっ!」ペカー

長月「!?」

菊月「!?」

クレセント「月の光よ!魔女の呪縛を浄化して!!」ペカー

皐月「!?」

文月「!?」

望月「!?」

離島魔女「馬鹿ナ!私ノ着セタ服ヲ浄化シタ!?」


皐月たち(下着姿)「……」パタン

ネズミ「下着姿で倒れる絵面はあれだけど、魔女の支配を無力化した」

クレセント「……これでみんなを巻き込ませません」ハァハァ

離島魔女「チィッ、セッカク私ノコレクションニシテヤロウト思ッタノニ」

離島魔女「ダガ、今ノデ力ヲ使イキッタヨウダナ」

クレセント「く、う…」ガクッ

ネズミ(いけない!新しい装備に力を入れすぎたか!?クレセント、しっかり!)

離島魔女「残念ダッタワネ。アラタメテオトモダチトイッショニ、ワタシノオ人形ニシテアゲル。貴女
、魔法ノ素質モモッテルミタイダシ、「アノ方」モヨロコブワ」ジャキン

ネズミ(やられる!?)




??「その「あの方」って奴、私にも紹介してくれない?」


離島魔女「!?」

クレセント&ネズミ「!?」



ダァン ダァン ダァン!

??「…」

離島魔女「ナニヤツ!」

??「…デストロイヤー・ハイタイド。あなたを地獄へ送る者よ」

ハイタイド「その店員さんから出ていきなさい!この怨霊!」

ハイタイド「マジカルトーピード、フルバースト!!」

ズドォォォン!!

離島魔女「ワタシハァ…離島ダゾォォ!!」 離島魔女→店員

店員「う、うぅん……」

ハイタイド「ふん…深海の怨霊は霧散したようね。黒幕を聞きたかったのに」

クレセント「あ、あの…貴女は?貴女も魔法艦娘なんですか?」

ハイタイド「…睦月型の子たちは無事?」

クレセント「え?あっ…」

長月「…う、うーん」

皐月「むにゃ…」

ネズミ「だいじょうぶ。気を失っているだけだ」

ハイタイド「そう。じゃ、後は適当に辻褄合わせて説明しときなさいよ…」シュタッ

クレセント「あ!待って…… 行っちゃった…」

クレセント「ネズミさん、あの人のこと知ってますか?」

ネズミ「いや、僕にもわからない。でも、あの子も魔法艦娘のようだ」

クレセント「…」シュゥゥ

クレセント→三日月(ver みかずきん)

みかずきん「私以外にも魔法艦娘が…」

菊月「ん…あれ?私は……ワァッ!?なんで下着で寝てるんだ!?」

長月「む、我々はたしか、服を試着しようとして…」

文月「えーっとぉ…着ようとしてて…どうしたんだっけ?」

望月「ふわぁぁ〜」

皐月「あれ?ボクたち、どんな服を着ようとしてたんだっけ?」

菊月「あ、そうだ。店員さんは?」

長月「店員さん。何があった?」

店員「えーと…たしか菊月ちゃんに服を渡して…?あれ?どうしたのかしら?思い出せない。でも、なんだか悪い夢を見ていたのが覚めたみたいにホッとしているような?」

みかずきん(あわわ…まずいです。深海魔女のことが知られたらパニックに…)

ネズミ(何とか誤魔化さないと)

みかずきん(そ、そういわれても…)

皐月「そーいえば三日月!」

みかずきん「はひっ!?」ビクッ

皐月「さっき三日月はさぁ…」

みかずきん「はわわわ…」ドキーン



皐月「まだ試着してなかったよね?」

みかずきん「え?」

文月「そーだよ!三日月ちゃんだけコーディネートしてないよ」

みかずきん「あ、あぁ、そうですね。でも元々望月ちゃんの服を選ぶためでしたし、私には鳳翔さんが作ってくれたこの服がありますし…」

望月「まぁいいじゃん?せっかくだし。お?この縦セタなんてどう?」

菊月「うむ、縦セーターは正義だ」

みかずきん「そ、そうでしたっけ?」

ネズミ(三日月、ここはこのまま着替える流れで進めてごまかすんだ)

みかずきん(あ、はい…)

みかずきん「じゃあ…試着室で着替えてくるね」

カーテン シャーッ

〜〜〜

みかずきん→三日月

三日月(ふぅ、何とか話をそらせそうですね。それにしてもあの魔法艦娘は誰だったんでしょう?ウチの鎮守府の所属の子でしょうか?)キガエキガエ

ネズミ(さぁ?そのうちまた出会うんじゃないかな。それより…)ジー

三日月(なんです?着替え中ですからあんまり見ないでくださいね)

ネズミ(三日月、キミ、意外と二の腕や太ももがポッチャリ…いや肉付きがいいんだね)

三日月「出てけ!!」

〜〜〜
外のみんな「!?」
〜〜〜

三日月「あ、いえ。なんでもありませんよ。ちょっと中に虫が飛んできて…あは、あはは…」





三日月(このあと滅茶苦茶着替えさせられましたが、魔法艦娘や深海魔女のことはバレずにすみました)

一方その頃 とある海岸では一人の男が海に向かってつぶやいていた

???「やれやれ…せっかく魔女が誕生したと思ったら…。魔法艦娘め…邪魔をしてくれる」

???「まぁいい。我ら深海勢力の戦力増強のために…僕は深海司令官として魔女の建造を続けるだけだ」


「やっぱりそういうことか」


深海司令官「……やぁ。君か。鎮守府の提督」

提督「町でおかしな騒ぎが起こり始めたっていうから、旅行ついでに調査をしてたが…随分と外道なことを…」

深海司令官「それほどでもないだろう?君たちだってか弱い女の子に、在りし日の艦の魂を憑依させて戦場に送り込んでるんだし。僕らもちょ〜っと生身の人間を使わせてもらっているだけさ」

提督「亡霊の親玉のくせして、生きてる人間を使うなんてよく言う」

深海司令官「そう怒るなよ。次にまた魔女が誕生したら、君も会えるかもしれないぜ。たとえ亡霊だったとしてもさ…」

提督「…!」

深海司令官「海で戦死した、いや我々が討ち取った女提督に、ね」

ビュンッ!!

深海司令官「…っと!?」

瑞雲『…』ブーン

提督「チッ」

深海司令官「人の身で艦載機を投擲か。フフフ、そう言えば君も魔導提督の一人だったね」

提督「行け!瑞雲!ピンポイントバリアパンチだ!」

ガシャン!

瑞雲(バトロイド)『…!』パーンチ

深海司令官「おっと!?」スカッ

深海司令官「ハハ、やるじゃないか。魔法の力をこんな風に使うなんて。だがせっかくの司令同士の戦いだ。君との決着は艦隊戦で決めたいね」

提督「知るか!俺の目的はそんな事じゃない」

深海司令官「つれないなぁ。まぁ次は洋上で、艦隊を率いて会いたいね。それじゃ失礼!」

ザバーン!

提督「ちっ…逃げられたか」



提督「……女提督の亡霊が現れたら、俺は…」

「あっ、いたいた、見つけたわよ。司令官」シュタッ

提督「ん?」

デストロイヤー・ハイタイド「司令官にお知らせ」

提督「あぁ、ハイタイドか。深海魔女の黒幕ならさっき会えたよ」

ハイタイド「はぁ!?何よそれ!?私を散々調査に行かせといて自分で見つけちゃったわけ?」

提督「そういうこともある」

ハイタイド「はぁ…まったく。で?出会ったからには仕留めたんでしょうね」

提督「いや。海に逃げられた」

ハイタイド「もぉっ!!何やってるのよ。やっぱり私が出ないと話にならない……」

提督「いや…俺はまだ奴を仕留めるつもりはない。お前はいったん鎮守府に戻れ」

ハイタイド「ええっ!?」

提督「戦力を整えないとな。ウチにはもう一人いるだろ?魔法艦娘が、さ…」

ある夜

三日月「ムニャ…ムニャ…特製イタリアン…」スゥスゥ



ネズミ「……そうか。あの魔法艦娘はキミの…」ヒソヒソ

ネズミ「あぁ、君の見立てとおり、三日月は魔力を使いこなしている。大した素質の持ち主だよ」

ネズミ「そっちの計画は順調かい?それはよかった。いずれ三日月も気付くことになるだろうけど、それまではこの子のそばにいるよ」

ネズミ「情が移ったんじゃないかって?よせやい、そんな事あるもんか。僕はただの……使い魔だ」



三日月「うーん…うーん…そんなぁ〜これはイタリア料理じゃないなんて〜」ムニャ

ネズミ「ふふ、もうちょっとだけ頑張ってもらうよ、三日月」

ある日の鎮守府 調理場

三日月(司令官、まだ帰ってこないんでしょうか)セッセ セッセ

ネズミ(お休みが伸びていいじゃないか)

三日月(そういうわけにはいきません!深海棲艦と戦うのが私達鎮守府のお役目です!)セッセ セッセ

ネズミ(役目、かぁ)

三日月(それに私達も深海魔女の発生させてる黒幕を退治できてないんですよ)セッセ セッセ

ネズミ(焦ったら危険だよ。三日月はよくやって…って、さっきからせっせと何をしてるの?)

三日月(えーっと、何だか手持ち無沙汰だったのでクロワッサンを焼こうと思って)

ネズミ(『三日月』だけに!?)

三日月「後は焼けるのを待つだけです。あれ…」


満潮「…」スタスタ

ネズミ(あの子は…?)

三日月(この前、別の鎮守府からこっちに配属された満潮ちゃんですよ。そうだ…)




三日月「満潮ちゃーん!!」

満潮「……なに?」

三日月「あのっ!私、今クロワッサン焼いてるんです。よかったらおひとついかがですか?」

満潮「…ごめん。いまお腹すいてないから、結構よ」スタスタ

三日月「あ…いっちゃった…」アホ毛ショボーン

ネズミ(冷たい子だねぇ)

三日月(そんな言い方しちゃ駄目です!満潮ちゃんはこの鎮守府に来たばかりで緊張しているんですよ、きっと)

ネズミ(ふーん。前に居た鎮守府はどんな所だったんだろうね)

三日月(それは…まだ聞いたことないですね。今度、聞いてみましょう。何かがきっかけでもっとお話できるといいですね!)

ネズミ(…だと、いいね)

そして…

三日月「クロワッサンが焼けました!」

ネズミ「おお〜っ」

三日月「満潮ちゃんには今度食べてもらうとして…」

ネズミ「モグモグ…うん、うまい!」

三日月「あっ!ネズミさんてば勝手につまみ食いして!」

ネズミ「味見味見!それにしてもこんなに焼いてどうするんだい?」

三日月「いまから、うーちゃんの所に行くのでお土産代わりです」

ネズミ「ふーん」

三日月「ネズミさんはじっとしててくださいね」

三日月「うーちゃん、お待たせ〜」

卯月「三日月〜!待ってたぴょん!」

三日月「今日はなにする予定だったの?」

卯月「夕張さんからアニメ借りてきたぴょん。面白いんだって。三日月も一緒に見るぴょん」

『そんな…ワタシの記憶も、テイトクへのLoveも全部造られたモノ?』

卯月「ハラハラ」三日月「ドキドキ」

『そうよ、バーニングダイヤモンド。思い出も愛もすべて偽り…。絶望した?じゃ、この艦娘陰陽師イズモがとっととトドメを刺してあげるわ。こっちも忙しいから』

『でも…』

『ん?』

『それでも…テイトクと出会ってからの、このキモチに偽りはアリマセーン!!バァーニングゥ…ラァァブ!!』
つづく

卯月「くあぁぁぁっ!かっくいぃ!!ぴょん」三日月「バーニングダイヤモンドの不屈の愛は素敵でした!」

『次回、バトルシップガール・バーニングダイヤモンド!「奇跡の作戦、なんかヘンダーソン?」をみんなで見よう!』





卯月「あー…面白かった!」

三日月「そうですねっ……あれ?弥生ちゃん?」

弥生「…」

卯月「おりょ?弥生、いつの間に帰ってきたぴょん?」

弥生「ついさっき。二人があんまりにも熱心にアニメ見てたから…声掛けれなくて」

三日月「そうなの?」

卯月「弥生も一緒にバーニングダイヤモンド見るぴょん!三日月が焼いてくれたクロワッサンもあるよ」

弥生「ごめん。弥生、また出かけるから…」

三日月「そうなの?いってらっしゃい!気をつけてくださいね。クロワッサン、弥生ちゃんの分も取っておきますから」

弥生「うん…ありがとう。楽しみ…」

三日月「えへ」

イッテキマス イッテラッシャイ

卯月「むーっ…弥生付き合い悪いぴょん」

三日月「弥生ちゃんも予定があるんですよ」

卯月「予定…あっ!?さては男の子とデートかぴょん!?まさか弥生に先を越されるなんて!」

三日月「さすがにそれは飛躍しすぎじゃ…」

卯月「あーっもう!“私”もぴょんぴょん言ってる場合じゃないよ?これは!」

三日月「ちょっ!?うーちゃん、口調口調!」

卯月「うーちゃんはね、卯月って言うんだ、本当はね〜 だけどキャラ作りのために自分のことうーちゃんって呼ぶんだよ〜」

三日月「」

ネズミ(君の仲間はホントに愉快な子が多いねぇ…)

三日月「うーちゃんが暴走して手がつけられなくなりそうなので避難です」

ネズミ(賢明な判断だと思う)

三日月「あら?」

弥生「…」スタスタ

三日月(あれは弥生ちゃん…うーちゃんの誘いを断ってまで、本当に何処へ行くんでしょう?)

ネズミ(こっそり追いかけたら?)

三日月(そんなこと…)

ネズミ(気になるんでしょ?バレないように変身して尾行すればいい)

三日月(魔法艦娘に変身したら余計目立ちますよ!?)

ネズミ(違う違う、魔法の力で大人の姿になるんだ。それなら目立たないし、三日月だってこともバレない)

三日月(艦の魂ってそんなこともできるんですか!?)

ネズミ(ちょっとした応用だよ)

三日月(次元なんとかシステムみたいですね…)

パラレル…パラレル…アタゴサンミタイニ…ナァレ


パァァァ…

大人三日月「わぁ、手足長い、背も高い!」スラッ

大人三日月「おっぱいも大きい!」ポヨン

ネズミ(これなら三日月とバレないね)

大人三日月(こ、こうなったら弥生ちゃんを追いかけてみましょう)





弥生「……」テクテク

大人三日月「……」テクテク





大人三日月(ここは……?お墓?)

弥生「…」


大人三日月(お墓の手入れをして、お参りしてる)

ネズミ(知り合いが亡くなったのかな?)

弥生「また来るね…如月」

大人三日月(!?)

ネズミ(そうか…戦友を亡くしてたのか)

大人三日月(ま、待ってください。如月ちゃんは生きてますよ!今だって司令官不在の中、自主的に遠征に行って…)

ネズミ(ここの鎮守府とは別の、“如月の艦魂”の子だろうよ)

大人三日月(あ…)

ネズミ(あの子、以前の鎮守府かどこかで別の如月と知り合いだったんじゃないか?君や卯月と知り合う前の)

大人三日月(もしかして、いつも持ってる古びたリボンは…)

弥生「…如月」リボン ギュッ

パァァァ

弥生「え?何?」

大人三日月(リボンが光ってる!?)

「ヤ…ヨイ…チャ…」

弥生「!?」

「アイタカッタワ…弥生チャン…」



大人三日月(あ、あれは…)

ネズミ(三日月、マズイぞ!深海の怨霊だ!)

大人三日月(で、でもアレは…)



弥生「如月…?」

如月?「ソウヨ、弥生チャン」ニコォ



大人三日月(如月…ちゃん?)

ネズミ(早く弥生から引き離すんだ)

大人三日月(え?)

如月?「アリガトウ。如月ノオ墓ヲキレイニシテクレテ…」

弥生「貴女はやっぱりあの時沈んだ如月…」

如月?「ソウ、弥生ニ会イタクテ戻ッテキチャッタノ…アラ、ソンナ顔シナイデ」

弥生「お、怒ってないよ。ただ、ビックリしちゃっただけで。如月にまた会えるなんて…」

如月?「ウフフ。如月モ嬉シイワ…」

弥生「如月ぃ…」

如月?「ナァンテ、ネ?」バッ

弥生「え?」

如月?「ホシイノハ貴女ノ体ヨ」ズモモモモモ

弥生「きさ…らぎ…?」

ネズミ「しまった!?遅かった!」

大人三日月「弥生ちゃん!!」

ネズミ「深海の怨霊と化した如月に取り憑かれた!」

弥生?「アラ?貴女…三日月チャンカシラ…?姿ヲカエテイテモワカルワ…」

大人三日月→三日月「あ、貴女は弥生ちゃんの友達だったんでしょう!?弥生ちゃんをどうするつもりです!?」

弥生?如月?「アハ。弥生チャンノ生命ノチカラヲ…ツカワセテモラウノヨ」

カッ! ゴゴゴォ

魔女如月「…フフ、ドウ?チョット青白イケド、コノ輝ク肌」

三日月「魔女の力を手に入れるために弥生ちゃんを利用したんですかっ!?」

魔女如月「利用ダナンテ。弥生チャンモ海ノ底ヘ連レテイッテアゲルノヨ?…堕チテミレバ心地ヨイモノ…アナタモイッショニ来ル?」

三日月「ふざけないで下さい!弥生ちゃんから出ていってもらいます!」

三日月「マジックフリート、ウェイアンカー!」→デストロイヤークレセント

クレセント「ムーンライト探照灯っ!」ペカー

魔女如月「ウフ。探照灯ナンテ灯シテイイノカシラァ?」

クレセント「なにを言って…!?このまま照射して貴女を引き剥がします!」

ネズミ「クレセント!後ろだ!」

クレセント「え!?」

ドォンドォンドォン

クレセント「きゃあああっ!?」

深海棲艦たち「……」ワラワラ

クレセント「深海棲艦!陸上に?」

魔女如月「深海魔女トナッタ今、深海棲艦ノ召喚ナド容易イワ。コノママ取囲マレテ襲ワレチャイナサイ」

深海棲艦「ウオォォォン」

クレセント「こんなこと位で…負けませんっ!マジカル連装砲!」ドカンドカン

深海棲艦「ウェーイィィ…アババァ」バタンバタン

クレセント「どきなさい!あなた達に用はありません!」


魔女如月「アラアラ、ヤルワネ。デモ、一人デ相手デキルカシラ?」

駆逐イ級「…」
駆逐ロ級「…」
軽巡ヘ級「…」
軽巡ト級「…」ワラワラワラワラ

クレセント「うっ…」

魔女如月「ウフフ」


「相変わらず生ぬるい戦い方してるのね?」


魔女如月「!?」

満潮「手本をみせてあげる」

クレセント「え?み、満潮ちゃん?な、何で!?」


満潮「マジックフリート……ウェイッ、アンカーッ!!」パァァァ

満潮→デストロイヤー・ハイタイド


ハイタイド「さぁ、地獄に落ちたいヤツからかかってきなさい!!」

クレセント「み、満潮ちゃんが魔法艦娘?」

ハイタイド「マジカルキャノン、マジカルトーピード、一斉射撃っ!」

深海棲艦達「ウヮァ」

クレセント「す、凄い」

ネズミ「クレセント、今のうちに如月のほうを攻撃だ」

魔女如月「貴女ニデキル?如月ト弥生チャン、第三十駆逐隊ノ絆ヲ…破レルカシラッ!」

ドドドッ ダァンダァン!

クレセント「くっ…」

魔女如月「アハ。ヤッパリ弥生チャンノ身体トハ相性抜群ネ。ドウセナラ睦月チャンヤ望月チャンモ連レテイキマショ」

魔女如月「貴女ノ所ニイル別ノ『如月』ニハ沈ンデモラオウカシラ?」

クレセント「……にして」

魔女如月「ン?」

クレセント「い い か げ ん に し て!!!」

魔女如月「ッ!?」
ハイタイド「!」
ネズミ「!」

クレセント「何が絆ですかっ!」主砲ダァンダァン!

魔女如月「ウ…」ボロッ

クレセント「弥生ちゃんの身体を乗っ取って!」魚雷ドーン

魔女如月「ナッ!?」

クレセント「貴女が欲しいのは生きてる者の力だけでしょっ!?」探照灯ピカー

魔女如月「ソレノ何ガ…イケナイノ…ッ」

クレセント「私だったら…弥生ちゃんを連れて…一緒にクロワッサンを食べますよーだ!!」ガシャガシャン
主砲スタンバイ、魚雷スタンバイ、探照灯スタンバイ!

クレセント「うあぁぁぁっ!全弾発射いっきまーす!」カッ

魔女如月「あ…」

ズドォォォン!!!

ハイタイド「これで終わりっ!」ドォン

深海棲艦「シャアァァッ!?」ドカァン

ハイタイド「ふぅ、向こうも終わったみたいね」
ハイタイド→満潮


ドサッ

弥生「……」

クレセント「弥生ちゃん!?」クレセント→三日月

ネズミ(どうやら如月…いや『元』如月の怨霊はうち払ったみたいだね)

弥生「う…ん?」

三日月「弥生ちゃん、だいじょうぶ?」

弥生「みか、づき…?弥生、如月にあったような…」

三日月「…それは」

弥生「あ、如月っていっても、今一緒にいる如月じゃなくて…弥生の昔の知り合いで『艦娘如月』の子…ね。その子に会った気がするの」

三日月「う、うん…」

ネズミ(この子にとっては思い出さないほうがよさそうだけどね)

弥生「何を話したか覚えてないんだけど…最後に、ごめんなさいって言われた気がする」

三日月「!」

三日月(あの子…ホントは…!)

弥生「おかしいよね。弥生はもうあの子には会えな… 三日月「弥生ちゃん!」ギュッ

三日月「だいじょうぶ。見えなくても、会えなくても、その子はずっと弥生ちゃんのココロの中にいるんです。弥生ちゃんはその子のこと、ずっと大事に思ってたんでしょ?」

弥生「うん…そう、だね。ずっと弥生の胸(ここ)にいるよ。うん、いる。」リボンギュッ

ネズミ(やれやれ、めでたしめでたしってとこかな?)

弥生「ところで…三日月はどうしてここにいたの?」

三日月「えっ?えーと…」

弥生「それに満潮ちゃんも」

三日月「あ…」

満潮「…」

三日月(そうだ、満潮ちゃん。突然現れて、魔法艦娘に変身して…ど、どうしよ〜?満潮ちゃんにも話を聞きたいけど、まずは弥生ちゃんに話を合わせないと〜)アワワ

弥生「?」

満潮「しょうがないわね…」

三日月「へ?」

満潮「私が説明してあげる」

少女説明中…

満潮「と、いうわけで卯月が独り身を嘆いて暴走してたのを見かけたから、三日月を外に連れ出したの。それで一緒に歩いてたら倒れた貴女を見つけて介抱してたってわけ」

三日月「…」ポカーン

満潮「そうよね」

三日月「えっ、あっ!はい!そ、そうなんですよ」

弥生「二人ともそんなに仲良かったんだ?」

満潮「ま、まぁ…ね」

三日月「そう…そうなんです!今日もこれから一緒にクロワッサンを食べる約束してたんですよ!」

満潮「えっ!?何言って…」

三日月「満潮ちゃんも、私の作ったクロワッサン、楽しみにしてくれてましたよね。ねっ?」

ネズミ(三日月、強引だね…)

三日月(満潮ちゃんが魔法艦娘ということの事情も聞きたいですけど、それよりもまず満潮ちゃんと仲良くなりたいですからっ!)

ネズミ(やれやれ)

三日月「そうだっ!弥生ちゃんもご一緒しませんか?みんなで食べたほうが美味しいですよ」

弥生「うん、頂きます」

満潮「ちょっ!?私はいらな…う!?」

弥生「…」じーっ

満潮(うぅ…下手に断ったらさっきの説明が破綻しちゃうか…しょうがないわね)

満潮「わかった…わかったわよ。私も頂くわ」

三日月「ふふっ、それじゃ鎮守府に帰りましょ」エヘヘ〜

満潮「もう、なに笑ってるのよ」

三日月「なんでもないでーす、えへ」

弥生「くすっ」

満潮&三日月「?」

弥生「ホントに二人は仲良し、だね」

満潮「そんなこと…」

三日月「ありますよねっ」

満潮「もう…」

弥生「ふふ」

鎮守府

三日月「ただいま帰りました。あ、如月ちゃん達遠征から帰ってますね」

睦月「おかえり〜」

如月「お帰りなさい。あら、満潮ちゃんも一緒だったの?」

満潮「まぁね。お邪魔だったら失礼するわ」

如月「そんなことないわよ〜。駆逐艦同士、なかよくしましょう?」

満潮「……ありがと」

睦月「おりょ?満潮ちゃん、照れてる?」

満潮「むっ」

弥生「如月…」

如月「ん?なぁに?」

弥生「あらためて、よろしくね。弥生と友達になって」

如月「? ? ? もちろんよ?急にどうしたの?」

弥生「なんでもないよ、何でも…」



弥生(ごめんね、如月…ううん『如月だった』貴女…弥生、こっちの鎮守府にも仲間ができたの。だから…まだそっちには行けない、行けないよ)



如月「変な弥生ちゃん」

睦月「弥生ちゃんまで変になっちゃったにゃし?」

三日月「弥生ちゃんまで?」

睦月「アレ…」ユビサシ


卯月「大丈夫、うーちゃんはまだ行き遅れてない、まだ後があるぴょん。弥生に先を越されても、まだいたずらウサギ系キャラでなんとかなるぴょん。女子力アピールにカレーを作る必要はない…ぴょん」ブツブツ

三日月「まだ勘違いしてたんですね…」

弥生の件が終わってから数日後

三日月「満潮ちゃんっ!」

満潮「なに?」

三日月「この前は弥生ちゃんを助けてくれてありがとうございましたっ!」

満潮「いいわよ、そんなこと」

三日月「それにその前も皐月ちゃん達を助けてくれました」

満潮「貴女の戦い方が見てられなかっただけよ」

三日月「あぅ…」

満潮「それより…私に話があるんじゃないの?」

三日月「ええ」

満潮「魔法のこと?」

三日月「違います…あっ、いえ違わなくもないんですが」

満潮「?」

三日月「まずは満潮ちゃんとお友達になりたいんです!だから…」

三日月「またクロワッサン作ってきたんです!一緒に食べましょう!」

満潮「はぁ?」

三日月「今回はハムやチーズが中に入ってるんですよ」エヘッ

満潮「あんたねぇ。てっきり魔法艦娘について質問攻めになると思ったのに」

三日月「その前に満潮ちゃんは同じ鎮守府の仲間じゃないですか!仲良くしたかったんです!」ワクワク

満潮「はぁ……わかったわ。今日はまだご飯食べてないし、頂くわよ」

三日月「わぁい」

満潮「ふむ…なかなか美味しわね」モグモグ

三日月「えへっ。お粗末さまです。ところで満潮ちゃんも、こういうネズミさんに『艦の魂』をもらったんですか?」ヒョイ

ネズミ「うわぁっ、急に持ち上げないでよ」

満潮「何これ?しゃべる鼠?これも魔法の力?」

三日月「えっ?満潮ちゃんは『艦の魂』をこんなネズミさんからもらったんじゃないんですか?」

満潮「こんなのいなかったわよ」ペシッ

ネズミ「わぁぁぁ〜」ヒューン

三日月「あれっ?それじゃあ満潮ちゃんはどうやって魔法艦娘になったんですか?」

満潮「私は……司令官にこの力をもらったのよ」

三日月「司令官に?」

満潮「といってもここの司令じゃないけどね。私が前にいたところ」

三日月「ふぇ〜、いろんなルートがあるんですねっ」

満潮「艦の魂を扱える権限のある司令官は魔導提督って呼ばれるみたいよ」

三日月「まどー…ですか。魔法艦娘を導くってことでしょうか?」

満潮「そんなところじゃない?あくまで通称らしいから…」

三日月「じゃあ満潮ちゃんの、以前の司令官さんは魔導提督だったんですね」

満潮「そうね…そう、呼ばれてた」

三日月「呼ばれ『てた』?」

満潮「はぁ…昔話をしていてもキリがないわ。それより今後のことが大事でしょ!?」

三日月「は、はいっ」

満潮「貴女は深海魔女の黒幕については知ってるの?」

三日月「いいえ、ネズミさんから魔女を生み出す存在がいるとは聞きましたが、それがどんなモノかはさっぱり…」

満潮「そっか…ま、今のところ大きな騒ぎにもなってないし、地道に手がかりを追ってくしかないわね。何かあったら教えて頂戴」

三日月「え…と、協力してくれるんですか?」

満潮「貴女一人でやらせると無茶しそうだからよ」

三日月「はっ、はいっ!一緒に頑張りましょう。満潮ちゃん!」

満潮「それじゃあ、私は行くわね。あぁ、それと…」

三日月「はい?」

満潮「ク、クロワッサン…美味しかったわ。あ、ありがと…ね」

三日月「!」パァァァ

満潮「ちょっ!?何、いい笑顔してるのよ!?」

三日月「ふふっ、気に入ってもらえて嬉しいです!また作りますね。今度は鳳翔さん直伝のお料理だって作っちゃいますよ。あ、それとも妙高さんや阿賀野さんに教えてもらったイタリアンをつくりましょうか…」

満潮「わかった、わかったから…じゃ、またね」

三日月「は〜い!」

満潮「はぁ〜、あの子、いい子なんだけど調子狂うわ」テクテク

「仲良くなれて何よりじゃないか」

満潮「!」ピクッ

提督「よっ!」

満潮「司令官…帰ってたの?」

提督「今帰還したところだ」

満潮「そう…こっちはあの子と接触できたわよ。司令官のことは伏せたままで」

提督「そりゃよかった。三日月はいい子だから仲良くしろよ。満潮はこの鎮守府でやってくんだから」

満潮「…ッ」ギリ

提督「睨むなよ」

満潮「…ふん。でもなんで三日月には司令官のこと教えないのよ」

提督「変に複雑な事情を教えないほうがいい。今まで通り、不思議な事件を解決する魔法少女をやってたほうがな。おっと魔法艦娘か」

満潮「…」

三日月「〜♪」

ネズミ「ご機嫌だね」

三日月「あ、ネズミさん。満潮ちゃんと仲良くなれましたから」

ネズミ「僕は吹っ飛ばされたけど…」

三日月「まぁいいじゃないですか」

ネズミ「あれ?何か冷たくない?ねぇ!?」

三日月「いいじゃないですか」ルンルン

ネズミ「2回言った!?でも結局、満潮の前の鎮守府のことはわからなかったみたいだね」

三日月「そういえば…でも、また話す機会もありますよ。あ、もしかしたら満潮ちゃんを通じてあちらの鎮守府の子たちと知り合えるかも、ですね」

ネズミ「そっか」



ネズミ(………だったらよかったんだけどね)

執務室

提督「ただいま〜」

鳳翔「お帰りなさい。随分長い出張だったんですね」

提督「あぁ、いろんなところを見て回らなきゃいけなかったからね。留守中、鳳翔さんたちにも迷惑をかけたね。ちびっ子達の相手も大変だったでしょ」

鳳翔「あら、そんなことはありませんよ。みんないい子たちですから」

提督「そっか。じゃあ俺がいなくても大丈夫かな?」

鳳翔「え?」

提督「ああ、いや、何でもない」

瑞鳳「てぇ〜とく〜!」タタタッ バタン!

提督「ん?」

瑞鳳「お帰りなさいっ!早速だけどお腹空いてない?」

提督「え、まぁ…多少は」

瑞鳳「ふふっ。それじゃあ、練度の上がった私の卵焼き作ってあげようか?食べるぅ?」

鳳翔「あらあら、瑞鳳ちゃんったら。でもいっぱい頑張ってましたものね」

瑞鳳「えへへ。鳳翔さんに特訓してもらったんだ」

提督「そいつは楽しみだ」

鎮守府内

ワイワイ ガヤガヤ

三日月「あれ?なんだか騒がしいですね」

睦月「あっ三日月ちゃん。聞いて聞いて、司令官が帰ってきたんだよ」

三日月「えっ!?」

如月「お土産いっぱい買ってきてくれたんですって。それでみんな大騒ぎなの……って三日月ちゃんあんまり嬉しそうじゃないわね?」

三日月「えっと、そんなことはないんですけど…」

三日月(ど、どうしましょう。ネズミさん。司令官が帰ってきちゃったから、深海魔女の調査が…)

ネズミ(落ち着いて。三日月の任務は遠征が主だろう?今は満潮もいるし、空いた時間に調査して情報交換すればいいさ)

三日月(はい…。それにしてもネズミさん落ち着いていますね。てっきり解決を急がなきゃ!って言われると思ったんですけど)

ネズミ(焦っても仕方ないよ)ヒョイッ トコトコ

三日月(えっ?どこ行くんですか)

ネズミ(三日月だけに任せるわけにもいかないからね。僕も見回りくらいはできるから)タタタッ

三日月(行っちゃった)



三日月(あれ?私、ネズミさんに「遠征が主な任務」なんて教えましたっけ?)

三日月「あっ、それより私も司令官にお帰りの挨拶をしなきゃ」トテテー

三日月(うーん、魔法艦娘のことは司令官に秘密にしておいたほうがいいのでしょうか)テクテク

提督「やぁ。ただいま、三日月」ヒョイ

三日月「ひゃあっ!? し、司令官!?」

提督「おっと! 驚かせちゃったかな? 考え事してたとこ悪い悪い」

三日月「いえ、その…お帰りなさい、です」

提督「うん、ただいま。いい子にしてたかい?」

三日月「ええ! 司令官の留守中もこの三日月、気は抜きませんでした」

提督「流石は三日月だ」ナデナデ

三日月「えへへ…」

提督「ところで…」

三日月「?」

提督「巷の噂では、新手の深海棲艦とそれを退治している艦娘が出現しているようだが……」

三日月「…ッ!?」ドッキーン

提督「三日月は心当たりあるかな?」

三日月「さ、さぁ…私には心当たりがないですね〜」メソラシ

提督「そっか。もしそんなのと遭遇したらすぐ報告を入れるんだぞ」

三日月「は、はいっ。でっ、では失礼します!」




提督(ふっ…三日月は嘘をつくのが下手だな。まぁ、しばらくは大きな作戦からは外すから、是非頑張ってくれよ、デストロイヤークレセント)

提督帰還から数日後

三日月「司令官が戻られてからも、私達出番がありませんね〜。睦月ちゃんたちは遠征に行ってるのに」

満潮「だからって、私まで引っ張り出して深海魔女探しするわけ?」

三日月「こんなときこそチャンスじゃないですか!」

満潮「まったく…ん?」


深海魔女「……」ボウッ


三日月「い、いました!魔女です!」

満潮「どうやら既に人間に取り憑いているようね。行くわよ!」

三日月「はい!」

「「マジックフリート!!ウェイアンカー!!」」

三日月→デストロイヤークレセント
満潮→デストロイヤーハイタイド


深海魔女「ウゥ…」ササッ

クレセント「逃げる!?」

ハイタイド「罠かしら?だったら逃げる前に……」ジャキン

ハイタイド「撃ち落とすまでよ!!」ドォン

深海魔女「!?」ヨロッ

ハイタイド「動きは鈍ったわね」

深海魔女「…」ヨロヨロ

クレセント「まだ逃げるつもり……追いかけます!」

ハイタイド「待ち伏せがあるかもしれないわよ」

クレセント「それごと打ち砕くのみ!です」

ハイタイド「面白いじゃない。行くわよ」

クレセント「やぁぁぁぁ!!」ドォン

ハイタイド「てえぇぇぇい!」ドンドーン!

深海魔女「ワアァァァ!?!?」

ドサッ

深海魔女→人間


クレセント「やりました!」

ハイタイド「案外あっけないわね。仲間が出てくるかと思ったのに」

クレセント「こちらの方は無事みたいですね」

取り憑かれてた人「うーんうーん…」

ネズミ「……クレセント」

クレセント「あれ?ネズミさん?今日は静かでしたね。どうしたんです?」

ネズミ「この人についていたのは囮だ」

クレセント「え?」

ハイタイド「どういうこと?」

ネズミ「どうやらヤバいのが来たみたいだ…」


「ヤバいの、とはひどいなぁ」


クレセント「!」
ハイタイド「!」

深海司令官「こんにちは。魔法艦娘のお嬢さん」

ハイタイド「あ、アンタは…」

クレセント「し、知ってるんですか?」

ハイタイド「忘れもしないわ!こいつは…わたしのいた鎮守府を…」

深海司令官「ん? 僕らが潰した鎮守府の生き残りかい?」

クレセント「え?」

ハイタイド「アンタが前の司令官をっ…みんなをっ!」

深海司令官「そういえば潰滅した鎮守府から、魔法艦娘の力で一人逃げだした子がいたなぁ。ははは、君があの時の子か」

ハイタイド「だまれぇぇ!」ダッ

クレセント「みち……ハイタイド! ダメです!落ち着いて!!」

深海司令官「ふっ」ニイッ

満潮回想

〜〜〜〜〜
ハイタイド「だ、だめ… 力がッ…制御できない…っ」

女提督「満潮!? …まだ深海魔女に太刀打ちできるほど力を発揮できていないのね」

ハイタイド「わ、私は…みんなを…司令官を守らなきゃいけないのに…っ」

〜〜〜〜〜

朝潮「きゃあああっ… くっ、こちらはもうもちそうにありません!」

大潮「わあああっ…攻撃が効かないよぉ〜」

荒潮「し、司令官…もう、無理みたい…ごふっ」

朝潮「あっ…荒潮ぉぉぉ!?」

荒潮「はぁ…はぁ…み、満潮ちゃんと司令官だけでも…」

〜〜〜〜〜

女提督「鎮守府が囲まれた…最後まで残った朝潮たちも、もう…」

ハイタイド「ひっぐ…ぐすっ…私の…私の力が足りなかったせいで」

女提督「満潮!いい?貴女は生き残りなさい!」

ハイタイド「え?」

女提督「貴女は『艦の魂』の適合者…魔法艦娘の素質がある数少ない艦娘よ。艦娘になれる人間はいても、魔法艦娘になれる者はごく少数。 これから深海魔女や深海司令官との戦いのために生き残るの…。ここを離脱して私の旦那がやってる鎮守府へ行きなさい」

ハイタイド「だ、だったら司令官もいっしょに…」

女提督「……だめよ。沈んでいった皆に顔向けできないもの」ガシッ

ハイタイド「し、司令官っ!?」

女提督「ごめんね。「満潮」の貴女にはまた辛い思いをさせるわ。でも……生きなさい!デストロイヤー・ハイタイド!!」ブンッ

ハイタイド「きゃああああっ」ブーーン


女提督「ふふ…私に残ったありったけの魔力よ。包囲網を突破するくらいのことはできるでしょ」

女提督「あなた……満潮のことをお願いね」

そして女提督は敵を巻き込み鎮守府を自爆させた。

〜〜〜〜〜〜
回想終了

ハイタイド「うわあああああっ!!アンタのせいで、八駆も西村艦隊も女提督もっ!!」ドォンドォンドォン

深海司令官「おお、こわいこわい。殺されたみんなの復讐かい?」ヒョイヒョイッ



クレセント「ああっ。ハイタイドが一人で攻め立てて…。まさか、満潮ちゃんが話してた、前にいた鎮守府は…」

ネズミ「あの深海司令官たちに潰されてしまったんだ…」

クレセント「それでハイタイドは仇討ちを… ともかく、今は私も加勢しないと…」

クレセント「ええいっ!!」ドカン

深海司令官「ふっ、お友達も参戦かい?」ヒョイッ

ハイタイド「クレセント!悪いけどこいつは私がやるわ!手を出さないで」

クレセント「そういうわけにはいきません!」

ハイタイド「何よ。復讐は無意味とでも言うつもり?」

クレセント「いいえ!仇射ちをするならしてください!私は…」

クレセント「デストロイヤーハイタイドの友達として!お手伝いするまでです!! てやぁぁぁぁ!!」ズドォン

ハイタイド「まったく…呆れたお人好しね!」バァン

深海司令官「む!」ボカーン ボカーン!

ハイタイド「やった!?」

モクモクモク……

深海司令官「ふ、ふふふ……流石は魔法艦娘。我々の作り出した深海魔女をも退けるだけのことはある」

深海司令官「だけど…“この”魔女は一味違うよ!」

深海の怨霊「…」タチフサガリ

クレセント「攻撃が防がれていた!?いつの間に深海魔女を…」

ネズミ「違う…あれはまだ生者に取りつく前の海の怨霊……なのに魔法艦娘の攻撃を受け付けないなんて」

深海の怨霊「……」

深海司令官「彼女は生まれが特別でね。魔法に相当する力を持っているのさ。何せ、彼女の生前は…」

怨霊「ミ、チ…シ…オ…」

ハイタイド「はっ!? あれは?」

クレセント「?」

深海司令官「魔導提督と呼ばれていたからなぁ」ククク

ハイタイド「女提督ぅっ!!」

深海の怨霊(元女提督)「ウ、ウゥ…」

クレセント「ハイタイド!まさか…あの怨霊…」

ハイタイド「あ、あれは…戦死した…私の元司令官…っ」

クレセント「ッ!!」

深海司令官「海で死んだ人間の怨念が深海棲艦になる……ふふ、それがよく知っていた人間でも、何も特別なことじゃないだろう?」

クレセント「ひ、ひどい」

ハイタイド「きさまぁぁぁ!!」ダッ

深海司令官「おっと。来たぞ、やれ!」

深海の怨霊「クッ! ウ…ウゥ…アアアァッ…」バシィィン

ハイタイド「きゃああああっ」ボロッ

クレセント「ハイタイドっ!」

クレセント「くっ、いくらハイタイドの元上官とはいえ、今は戦いの中です」ジャキン

クレセント「今を生きる人たちを…守るためなら…」

怨霊「ウ、ウウウ…ミチシオ…ォ」

ハイタイド「え?」

クレセント「!」

クレセント「くっ」ダァン

怨霊「ウッ」

ネズミ「相手の艤装だけ攻撃を?どうして?」

クレセント「あ、あの人はハイタイドの…満潮ちゃんの名前を呼びました」

ハイタイド「…」

クレセント「もしかしたら正気に戻るんじゃあ…」

ハイタイド「無理よ!女提督はもう死んだの!」

クレセント「でも」

ハイタイド「変な希望を持たせるのは止めて!止めてよ…っ」

ネズミ「そうでもないかも…」

クレセント&ハイタイド「?」

ネズミ「確かにあれはもう深海の怨霊だ。でも負の怨念を取り去ることができれば、安らかに眠らせることはできるかもしれない」

クレセント「ネズミさん…良いことも言えるんですね」

ネズミ「あれ?なんかひどくない?」

ハイタイド「女提督…」

クレセント「ハイタイド、やりましょう!」

ハイタイド「…」

クレセント「あの女提督さんを止めるにはハイタイドが声をかけるしかありません!」

ハイタイド「でも…」

クレセント「私は、前の鎮守府の貴女はしりません。でも、今やらないと、今頑張らないと…ハイタイドは…満潮ちゃんは絶対後悔します!」

ハイタイド「クレ…三日月… そうね。私がやらなきゃ話にならないわね」

深海司令官「さて、作戦会議は終わったかな」

クレセント「っ!」

ハイタイド「く…」

深海司令官「元女提督の状態もいささか不安定だな。君達を倒した後、調整するとしようか」

クレセント「そんなこと」
ハイタイド「させるもんですか!」

深海司令官「ふん…」

クレセント「ここであなたを退治して、深海魔女の発生を止めてあげます!」





「その役目は俺に任せてもらおう!!」





クレセント&ハイタイド「えっ!?」

深海司令官「ほう、ここで君の登場か…鎮守府の提督」

提督「……」

クレセント「えっ?えっ?し、司令官?」

提督「よく頑張ったな、三日月」

クレセント「い、いえっ、私は…その、三日月では」

提督「いいんだ。今まで良く頑張ったな。後は任せろ。奴との決着は俺がつける」

クレセント「司令官…」

ハイタイド「あ、あんたねぇ。急に出てきて何を…」

提督「満潮も…すまなかったな。女提督を…妻を頼むぞ」

ハイタイド「…はい」

クレセント「えっ、妻? 司令官の、ですか?」

提督「まぁ詳しい事は、あいつを倒してからだ」キッ

深海司令官「…ふ。君との決着は艦隊決戦が望みだって言ったのになぁ」

提督「こっちの方がわかりやすくていい」ザッザッ

深海司令官「やれやれ、君、ホントに艦隊司令かい?」ザッザッ


提督・深海司令官「「 い く ぞ ! 」」カッ

(提督対深海司令官の戦闘シーン)

対峙する2人の指揮官。
両者は少しずつ間合いを詰め、相手の出方を伺った。

じりっ…と提督がもう一歩踏み込んだ瞬間、深海司令官が動いた。

先手必勝とばかりに、深海司令官が両の手から光弾を放つ! やはり異形の深海棲艦の長だけあって、攻撃方法も人間のソレとは異なるのだ。

「はっはっは!ただの人間が我々に勝てるかな?」

破壊力を持ったいくつもの光の玉が提督を襲う。

しかし提督は慌てない。その動きは深海司令官の攻撃を見切っている。

「お前達こそ……陸の上で人間様に敵うと思うなよ」

提督は腰に提げていた軍刀を抜き放ちざまに相手の光弾を叩き切った。目にもとまらぬ速さで次々に撃ち込まれる攻撃をさばいていく。
深海司令官の放つ光弾は、弾速も威力も艦娘及び深海棲艦の武装に勝るとも劣らない。だが、提督の戦闘能力もそれと同等かそれ以上なのである。

「へぇ、この前はおかしな戦闘機を投げていたのに、剣技の方も冴え渡ってるじゃないか」

「当然だ。この前の瑞雲バルキリーなどオモチャにすぎん。俺には軍刀(こっち)のほうが合っててな!」

言い様、提督は踏み込みとともに深海司令官に斬りかかる。神速のスピードをもっての一閃はしかし、深海司令官に防がれた。
深海司令官は、先程光弾に使用したエネルギーを今度は剣状に形成して、提督の斬撃を受け止めたのだ。

「ちっ、不意撃ちにも動じないか。青白い優男のわりにやるじゃないか」

「艦娘を率いる君が、部下の彼女らより強いというならば……当然、深海棲艦を纏める僕も鬼や姫より格上ってのが筋だろ? 君とは艦隊戦で勝負をつけたいと思ったが、一騎討ちで下すのモ面白いナ…… サ ァ 来 イ ッ !」

それまで飄々と話していた深海司令官は、一転して表情を険しくし、提督に光の剣先を向けた。同様に提督も軍刀を構え直し深海司令官に相対する。

「ハッ!」
「ふんっ!」

一息の呼吸の溜めの後、激しく突撃する両者。本来なら部隊を率いて戦う指揮官2人は一対一で火花を散らして斬り結んでいた。

クレセント「」ポカーン

ハイタイド「ちょっと何ポカーンとしてるの!」

クレセント「えっ、あっ…だって、司令官が…」

ハイタイド「女提督を説得するのを手伝ってくれるんでしょ?」

深海の怨霊(女提督)「フシュー…ウ、ウウゥ」ズルッ ズルッ

クレセント「そ、そうです。そうでした」

クレセント(さっき、司令官はあの人のことを妻って言ってました。満潮ちゃんの元司令官で、司令官の奥さん… だから司令官はあんなに激しく敵に攻撃を?やっぱり仇討ちのために…?)

ネズミ「クレセント、色々思う事はあるだろうけど、今はあの怨霊を抑えることに集中だ」

クレセント「は、はいっ!」

深海の怨霊(女提督)「ウ、ウウゥ…艦娘…沈メル…皆デ海ノ底へ…う、うあ…みちしお…」

ハイタイド「っ!! そうよ、女提督!満潮よ。貴女に渡された力で魔法艦娘になったのよ!でも、朝潮達も、貴女も、守ることができなかった……挙句に貴女をこんな姿にさせてしまった…」

深海の怨霊(女提督)「はあっ、はあっ…」

ハイタイド「私には貴女を救う資格すらないかもしれない…でも…」

ハイタイド「怨念にとらわれるのはやめて。深海棲艦の支配になんて屈しないで。命をかけて私を送り出してくれた貴女の、そんな姿なんて見たくないわっ」

深海の怨霊(女提督)「み、みちしおぉぉ!!」ガシィッ

ハイタイド「ぐっ…ううっ」

クレセント「ハイタイドっ!?」

ハイタイド「来ないで」

クレセント「!?」

ハイタイド「だ、大丈夫…」

深海の怨霊(女提督)「くうっ…ア、アアぁぁぁ…う、う」ギリギリギリ

ハイタイド「う…あ…」シュルシュルー

ハイタイド→満潮

クレセント「あっ、魔法艦娘の変身が解けて…」

満潮「女提督……私、今度は負けないわ。貴女の旦那さんの鎮守府で…友達ができたから…」

クレセント「!」

満潮「今度こそ…守り通してみせる。貴女にもらった力で…」

深海の怨霊(女提督)「……」

満潮「だから女提督…安らかに眠って…貴女の先に待つのが地獄じゃいけないわ……お願い」

深海の怨霊(女提督)「…………そう。ともだちが、できたのね」スッ

満潮「うっ、ごほっごほっ…女提督?」

深海の怨霊(女提督)「ごめんね。満潮。辛い思いをさせてばかりで…」

満潮「女提督!」

クレセント「正気に戻った?」

女提督「うっ…く…ごめんなさい…深海棲艦の力に抗える時間はほとんど無いみたい…」

満潮「そ、そんな…」

女提督「私はもう死んだ身。意識が…残ってるだけでも…奇跡でしょう? このまま私を…撃ちなさい」

クレセント「!」

満潮「!」

女提督「このままでは深淵の闇に飲まれてしまうわ…私が私である内に…はやく…」

満潮「待って! 今、司令官も…貴女の旦那さんも来てるの!」

クレセント「そ、そうです!まだ信じられませんが、司令官が魔法艦娘や深海魔女のことを知っているなら…この状況も!」

満潮「女提督、もう少し堪えて!司令官が深海棲艦の親玉を倒してくれるわ!」

女提督「……」ハァハァ

クレセント(でも…どうして司令官は私の事を知らないフリをしていたんでしょう?)

ネズミ(……)

その頃、提督と深海司令官の戦いは決着を迎えようとしていた。



深海司令官は暗い海の如きオーラをまとい、禍々しい姿になって、それまでの攻撃を凌駕する圧倒的な力をもって攻めてきた。

「僕ニコノチカラヲ使ワセルトハ…人間風情ガ…生意気ダ!」

そう、いかに強いとはいえ提督はただの人間…異形のモノを相手に刀一振りで対抗できるはずがない。もともと人間達は深海棲艦にすら敵わないのだ。先程までは互角だったとはいえ、深海棲艦のボスである自分が本気を出せばわけはない。深海司令官は確信していた。

が。

「人間を…提督を…なめるなッ!!」

気声とともに、提督の身体が光を発した。キラキラとした光が深海司令官の黒いオーラと拮抗する。さながら艦娘の戦意高揚状態のようになった提督は、異形の姿となった深海司令官にもパワー負けしていない。

「すぐそこで嫁さんが待ってるんでな。これ以上貴様の相手はしねぇよ」

「アノ女提督ノ怨霊カ… 人ダッタ頃ノ心ガ残ッテイタトハ」

「あまり俺の妻をなめないことだ」

「ナラバココデ君ヲ倒シテ、夫婦ソロッテ深海ニ沈メテヤル! 昏ク冷タイ海ノ底ヘ…沈メェ!!」

深海司令官が必殺の攻撃を仕掛ける。どの深海棲艦の攻撃をも上回る威力を乗せた斬撃が、提督へ向かって走る。今までのように剣の打ち合いには持ち込まない。受けようとすれば軍刀ごとまっぷたつのはずだ。

しかし提督は避けない。あろうことか刀を構えて相対した。“刀身にキラキラとした光をまとわせた”軍刀を構えて。

「やられるかよ!暁の水平線なんて遠いところでなくていいぜ。 お前のその身に!俺の勝利を刻めぇぇぇ!!」

それは妻を殺された提督の怒りか…

オーラ力のごとく光をまとった刀身は、深海司令官の斬撃ごと両断し、その身をまっぷたつに斬り裂いた!

「感謝するぜ、深海司令官。お前が女提督を深海の怨霊として連れて来てくれたんだからな。あとは自分でやるさ…」

「ガアアァァァッ!! 君ハ…マサカ…ッ!? ガハッ……」

最後に交わした会話は遠くにいるデストロイヤークレセント達には聞えなかった。

クレセント「」ポカーン

クレセント「はっ!?や、やりました!司令官が深海魔女の黒幕を!」

満潮「司令官!司令官…っ!女提督がっ!」

提督「……」

女提督「あ、なた…」

提督「久しぶりだな」ギュッ

女提督「えぇ…でも、私もう逝かなくちゃ…最期にあなたに会えてよかっ…」

提督「その必要はない」

提督「君をこのまま逝かせはしない」

女提督「無理、よ…… もう、深海の力に飲み込まれて…いつ暴走するか… 生きている人に取り憑いて深海魔女になってしまうかも…」

満潮「し、司令官、お願い…女提督を苦しまずに眠らせてあげて… 平和の為に戦っていた女提督が、こんな…」

クレセント「わ、私からもお願いします」

提督「大丈夫。女提督、君がこのまま現世に留まる方法はある」

女提督「?」ハァハァ…

クレセント「え?」

満潮「そんな方法が?」

提督「…満潮、お前も女提督に居てほしいよな?」

満潮「あ、当たり前よ!決まってるじゃない!」

提督「そうか。ならこっちに来て手伝ってくれ」

満潮「何をすればいいのよ」トテトテ

女提督「ハァハァ… あ、あなた…?」

提督「…俺は君がどんな存在だとしても、愛しているよ。どんな存在だとしても、だ」

女提督「…?」

女提督「……」

女提督「…………はっ!?」

女提督「満潮っ!来ちゃダメ!!」

満潮「!?」

クレセント「え?」

提督「フッ…」

クレセント(突然現れた司令官が、深海魔女の黒幕をやっつけて…いきなりのことでちょっと拍子抜けでしたが、これで深海魔女に関する事件はお終いだって思いました)

クレセント(けれど…その後起こった出来事は…)

クレセント(あまりの事に、私は“その”光景を、尻餅をついて呆けたように見ていることしかできませんでした…)ヘタリ


クレセント(今までも似た光景は見た事があります。瑞鳳さんや弥生ちゃんに深海の怨霊が取り憑いて、深海魔女になってしまった時…)


クレセント(でも…どうして…?)


クレセント(どうして「司令官が」「女提督さんの魂を」「満潮ちゃんに」「取り憑かせている」んですか…?)ボーゼン

満潮「う、ああああぁぁぁぁっ」

女提督「あなた!?やめ…ナゼ…コンナ…」

提督「君を満潮に取り憑かせて深海魔女化させる…そうすれば君はこの世にとどまることができる…俺の側にいることができる」

女提督「ソンナ…ノ、許サレナイ…ィィ」

提督「君だって生きたいだろう?」

女提督「違ウ、コンナコト…満潮ヲ…犠牲ニ…シタク、ナ…」

満潮「うわあぁぁぁ…司令官…女提督…ア…ア…」

提督「偽らなくていい…本当に嫌なら満潮から離れるはずだ。君は本当は生きたいんだ…」

女提督「アアァッ!満潮ッ、ハナレテッ」

提督「俺の側にいたいと…そう言うんだ…」ナデナデ

女提督「……アハ、アハハ ゴメン…満潮」



クレセント「はっ!だめ…だめっ!女提督さん!満潮ちゃん!」オキアガリ



女提督「私ハコノ人ノ…提督ノ側ニイタイ…」

満潮「…」フラッ

女提督・満潮「アハハ…アハハハハッ!!」→深海大魔女

提督「ハハッ!さすが我が妻だ!」

深海大魔女「エエ、モウズット一緒ヨ…アナタ…」



クレセント「満潮ちゃぁぁぁんっ!!」





満潮(あれ?私…どうなったの?)フラー

女提督「満潮…」

満潮(女提督… 無事、なの?)

女提督「エエ、貴女ノオカゲヨ…」

満潮(そっか……良かった……朝潮たちが沈んで…女提督もいなくなって……新しい鎮守府でも、いつかまた一人ぼっちになっちゃうんじゃないかって、怖くて怖くて…)

女提督「モウ怖ガラナイデイイノヨ…貴女ト私ハコレカラズット一緒。貴女ハナニモ考エナクテイイノ」

満潮(うん……それなら……いい……)ボーッ




満潮(あれ?わたし…何か大事なことを忘れてるような…?)



提督「やった…やったぞ。上手くいった!女提督は戻ってきたんだ」ナデナデ

深海大魔女「ウフフ」ウットリ


クレセント「司令官っ!これはどういう事なんですか!?」

提督「すまん、すまん。三日月には説明していなかったな。深海魔女も深海司令官も、すべては“ついで”だ」

クレセント「えっ?」

提督「戦死した俺の妻、女提督をこの世にとどまらせるための手段に過ぎない。たとえ深海棲艦たちの使う技術といえ、女提督に側にいて欲しかったんでな」

クレセント「司令官は、深海魔女の事を初めから知ってて…」

提督「俺だって初めから何もかも知ってたわけじゃない。深海魔女の出現とともに、奴らの黒幕を調査して知ったのさ。そして考えた。女提督の魂を奴らが手中にしているなら…そこから奪還してこちらの手で魔女にできれば、彼女を擬似的に蘇らせることができる、ってな」

提督「だが、俺も海軍の端くれだ。徒らに敵の戦力を増やすわけにはいかない。女提督以外の深海魔女も現れるからな…。だから三日月や満潮には魔法艦娘として戦ってもらい、他の魔女は間伐してもらった、というわけだ」

クレセント「待ってください!じゃあ満潮ちゃんは…満潮ちゃんはどうなるんですか!?」

提督「満潮には依代になってもらう」

クレセント「そん…なの…っ」

提督「わかっている…平たく言えば満潮は俺の身勝手の犠牲になった」

クレセント「…ッ!」

提督「手向け、になるかは分からんが、満潮の分も女提督を幸せにしてみせるさ」

クレセント「……」ワナワナ

提督「それに俺も今まで通り鎮守府司令を続けることはしない。こんな事をしでかしたんだからな。潔く職を辞するよ。何、お前達なら大丈夫さ、俺の留守中もしっかり鎮守府を守っていけただろ?後は新しい提督が来れば…」

クレセント「何を勝手なことを言ってるんですか、貴方はっ!」


提督「所詮、俺は提督には向いてないってことだ。鎮守府より自分の妻を優先させるんだからな。真面目な三日月には見たくないことかもしれないがな」

クレセント「司令官っ!司令官は奥さんを亡くして気が滅入ってるだけです! こんなこといけないって、許されないってわかってるはずです!」

提督「許してくれ、なんて言ったか…?」ゴゴッ

クレセント「うっ!?」ビクッ

提督「何も失ったことのないガキが、一丁前の口を利く…」ゴゴゴッ

クレセント「…ッ」

提督「今は見逃してやる…さっさと鎮守府へ帰るんだ」

クレセント「…帰りませんっ!」

提督「なに」

クレセント「確かに私は、本土にいるお父さんもお母さんも、艦娘の戦友も皆健在です。司令官みたいに大切な人を失ったりはしていません。でも、だからこそ、大事な友達の満潮ちゃんを失いたくないっ!」ジャキッ

深海大魔女「…」

クレセント「魔法艦娘の力で、満潮ちゃんから女提督さんを引き離しますっ!」ドォン

深海大魔女「チィッ!」

提督「なるほど、満潮と仲良くさせすぎたか」



クレセント「今までと同じように、深海の怨霊を払えば元に戻る…そうですよね、ネズミさん!」

ネズミ「……」

クレセント「ネズミさん?」

ネズミ「残念だけど“今までと同じ”じゃないんだ、クレセント…」

クレセント「え?」


提督「三日月の性格ならこういう可能性も考えられるよな……」

提督「やれ!輸送鼠」

ネズミ「ごめんよ、デストロイヤークレセント…」

シュルシュルシュル〜

クレセント「えっ!?変身が…」

クレセント→三日月

三日月「元に戻ってる…。どうして? どうなってるんですか、ネズミさん!?」

ネズミ「三日月…悪いけどもう魔法艦娘の役目はお終いなんだ」

三日月「そんなッ!まだ終わってませんよ。満潮ちゃんを元に戻さなきゃ…」

ネズミ「さっき提督が言ってただろう。魔法艦娘の役目はハズレの魔女を間伐することだって…」トコトコ

三日月「ちょっ!?どこ行くんですか」

ネズミ「役目も果たしたし、マスターのもとへ戻るのさ」

三日月「マスター…って。まさか…ネズミさん、貴方はっ!?」

提督「気づかなかったか?この輸送鼠は俺の使い魔… 魔導提督として力の一部だ。艦の魂をお前に預け、利用する為のエージェントだよ」

三日月「うそ……そんな……そんなぁ」ガクリ

ネズミ「君の焼いてくれたクロワッサンは美味しかったけどね。ここでお別れだ。僕のことは恨んでくれていいよ…」

三日月「……最初から騙してたんですか、私のこと。司令官もネズミさんも…」ウツムキ

提督「ショックがでかかったか。案外輸送鼠とも仲良くしていたんだな」

ネズミ「…」

三日月「うっ…ぐすっ…」

提督「さぁ、これでお前は魔法艦娘でもなくなった。ただの艦娘として、今までの事は忘れて鎮守府に戻れ」

三日月「………」

三日月「………できませんッ」スクッ

ネズミ「!」

提督「三日月…」

三日月「私はまだ負けていません。司令官の目を覚ましてあげます…ッ」単装砲構え

提督「ほぅ…」

深海大魔女「アナタ…コノ艦娘ハ倒シテイイノ?」

提督「向かってくるというんだ。仕方ないな。相手をしてやれ」

ネズミ「マスター!今さら三日月を痛めつけることはないだろ?もう気持ちだけじゃ何もできないさ」

提督「それは三日月にいってやれ。俺だって痛めつける気はないさ」

ネズミ「…」

三日月「うわあぁぁぁっ!!」ダダッ

深海大魔女「ハアッ」ズドーン!

三日月「きゃああぁぁぁっ!?」

三日月「うう…」ボロボロ

深海大魔女「シブトイ娘ネ。イイ加減ニアキラメナサイ」

三日月「くぅっ、負けたくは…ないっ…満潮ちゃんを…助けなきゃ…」

ネズミ「三日月、もうやめるんだ。今ならマスターも見逃してくれる!もうやめろ!君はもう魔法艦娘じゃないんだ!」

三日月「はぁ…はぁ… ネズミさん… 私のことをわかってないんですね…」

三日月「私は魔法艦娘だから魔女と戦っていた訳ではありませんっ。私は…艦娘の…駆逐艦の誇りにかけて、みんなを守りたいんですっ!」

ネズミ「ミカ…」

三日月「満潮ちゃんっ!お願いっ!返事して!元に戻ってください!」

深海大魔女「無駄ダ…」


ーー
ーーー
(精神世界)


満潮(あれ?何だろ…誰かに呼ばれて…)

満潮(朝潮?大潮?荒潮? うぅん…あれは…)

女提督「満潮…余計なことを考えてはダメよ…」

満潮(違う…違うわ…あれは…三日月は…私の友達…ッ!!)

女提督「貴女は私と一緒になるの…そして私とあの人とともに…」



満潮(地獄へ堕ちろ、って?)



女提督「っ!?」

満潮「悪いけど…もう地獄は見飽きたの…」単装砲ドカン

女提督「満潮っ」

満潮「言ったでしょ…私が…目を覚まさせてあげるって!」

ーーー
ーー

深海大魔女「ウ…?」

三日月「これは?女提督さんが苦しんでる?」

提督「何だ!?どうした?女提督っ!大丈夫か!?」

深海大魔女「ウワアァァァァ!」

深海大魔女→女提督(怨霊)、満潮

提督「なにっ!?」

三日月「満潮ちゃんっ!」カケヨリ

満潮「はぁ、はぁ、何よ、随分ボロボロじゃない」

三日月「み、満潮ちゃんだって。うぅ…でも満潮ちゃんが戻ってきて良かった…」

女提督「う…うぅ…」

提督「くっ、しっかりしろ。もう一度元に戻してやるからな…」

女提督「あなた……もうやめましょう…」

提督「な、何を言うんだ。俺と一緒にいたいんじゃないのか!?」

女提督「いたいよ…一緒にいたいに決まってるじゃない… でも…満潮に…あの子達にはやっぱり敵わないわ。本当はあなたもわかってるんでしょう?」

提督「駄目だ。俺は…俺は認めないっ」

三日月「司令官…」

提督「三日月、危害は加えないつもりだったが、もう容赦はしないぞ」抜刀

満潮「司令官っ、やめてよ。こんな事は女提督も望んでない!貴方も目を覚まして!」

三日月「満潮ちゃん、危ないっ。下がって」どん

ズバンッ

三日月「くっ」

満潮「三日月っ…くぅ、体が動かない…っ」

提督「この切っ先、触れれば斬れるぞ!」

三日月(避けられない!斬られ……)グッ


バチバチバチッ!


提督「なにぃ」

三日月「? き、斬られてない?」



提督「これは…」

ネズミ「…」

三日月「ネズミさん!?司令官の腕につかまって妨害を… 私を助けてくれたんですか?」

提督「馬鹿な。使い魔であるお前が…逆らうだと」

ネズミ「……どうやらマスターから離れて行動しているうちに、僕にも自我ができたらしい。そしてまさかそんなことはない、と思っていたけど…どうやら僕は三日月に情が移ったようだ」

提督「だが所詮貴様は魔力の塊だ。どうせ長くは持つまい」

三日月「えっ!?」

ネズミ「そうだね。三日月、僕はもうすぐ消える。僕の力ごと艦の魂を送るから…もう一度変身するんだ!」

三日月「で、でも…ネズミさんが…」

ネズミ「勝手を言ってるのはわかってるけどね。やっぱり最後は三日月の力になりたいよ…頼む」

三日月「そんな…最後って…」

ネズミ「“ただの魔力の塊が死ぬところまでこれたんだ”……ってね。三日月のおかげで僕は僕になれたんだ」

ネズミ「ありがとう」

ネズミ「さぁ行け!デストロイヤークレセント!」パァァァ

三日月「くっ… マジックフリートッ!ウェイアンカァァー!」

提督「まさか…こんなことになるとはな…」

デストロイヤークレセント「……」

提督「あの三日月がここまで俺に抵抗するとは。大した力だ」

クレセント「私の力だなんて…そんなことありえないです……これは満潮ちゃんが、女提督さんが、ネズミさんが、司令官に目を覚ましてほしいって思った結果です」

提督「だが、俺は俺の望むようにやらせてもらう」刀構え

クレセント「司令官には鎮守府へ、皆さんの元に戻ってもらいます。そのエスコートは…私の役目ですっ!」マジカル連装砲構え



提督「うおおぉぉぉぉっ!」

クレセント「やぁぁぁぁぁっ!」

提督「………」ボロボロ

クレセント「はぁ、はぁ、はぁっ…」

女提督「あなた…」すぅ〜

提督「すまん…俺は…君に、何も…」

女提督「いいの。貴方がここまでしでかしてくれただけで十分よ」

提督「む…ぅ」

女提督「満潮…」

満潮「女提督…」

女提督「いろいろごめんね…私ももう…皆のところへゆくわ」ナデナデ

満潮「…うん」ぐすっ

女提督「デストロイヤークレセント…いいえ、三日月ちゃん」

クレセント「は、はいっ」

女提督「ありがとう。あなたのおかげで旦那も私も最後まで堕ちずにすんだわ。満潮と仲良くしてあげて…そしてこの人のことを支えてあげて」

クレセント「女提督さん…」


女提督「ありがとう、あなた…愛しているわ」チュウ

提督「ん…」ムチュウ


満潮「ちょっ…」
クレセント「ひゃあああっ!?」////


女提督「さようなら」 〜消滅〜




クレセント(こうして、急展開をむかえた深海魔女騒動は終結しました)

クレセント→三日月

三日月(そして、私の魔法艦娘としての生活も…)

鎮守府


瑞鳳「あ〜もう、びっくりしちゃったよ。まさか提督が帰ってきたと思ったら、今度は深海棲艦に奇襲を受けて負傷だなんて…」

鳳翔「でも、三日月ちゃんと満潮ちゃんが間一髪間に合って、傷は大したことないそうですね」

三日月「え、えぇ」

瑞鳳「しばらく療養が必要なこと以外は大丈夫なんでしょ?私の強化玉子焼きをお見舞いにもっていってあげるわ」

三日月「はい、よろしくおねがいします……」

鳳翔「三日月ちゃん?なんだか元気ないわね?」

三日月「え?そ、そんなこと…」

鳳翔「提督が怪我したことで思いつめたらいけませんよ。あなたのおかげで提督は怪我で済んだともいえるのですから」

三日月「は、はい…」

三日月(とりあえず、鎮守府の皆さんには、こんな話で伝わっています。司令官も、今は皆に顔を会わせる資格は無い、とふさぎ込んでいますが…きっと立ち直ってくれるはずです)

満潮「三日月、いる?」

鳳翔「あら?」

三日月「満潮ちゃん」

満潮「ちょっといい?」

三日月「はい。鳳翔さん、瑞鳳さん、少し失礼しますね」

瑞鳳「はぁい、いってらっしゃい」

鳳翔「喧嘩しちゃだめですよ」

満潮「しませんよっ」





三日月「どうしたの?」

満潮「私が授かった艦の魂ね。あれ、司令官に返却したの」

三日月「そう、なんですか…満潮ちゃんは司令官のこと…」

満潮「なんとも思ってない…とは言えないわね。司令官も私に対して後ろめたい気持ちがあるみたいだし」

三日月「そう…」

満潮「でも、いつまでもウジウジさせてあげないわ。司令官には女提督の分まで働いてもらわなきゃいけないんだから!」

三日月「満潮ちゃんはやっぱりすごいですね〜」

満潮「ほ、褒めても何も出ないわよ。それより、アンタの魔法艦娘の力、艦の魂はどうするのよ?」

三日月「深海魔女がいなくなった以上、使わないほうがいいと思います。司令官が落ち着いたら、私も艦の魂を軍に返却しますね」

満潮「まぁ、強すぎる力は問題だものね」

三日月「満潮ちゃん、魔法艦娘でなくなってもお友達でいてくれますか」

満潮「当たりま…っ!そ、そうね。せっかくの縁だものね」

三日月「ふふっ」

満潮「な、なに笑ってるのよ〜!もうっ、じゃ私用は済んだから行くわね………また今度ね(ボソ)」タタタッ

三日月「はいっ!」

三日月(満潮ちゃんてば、素直じゃないです。ねぇ、ネズミさん?)

………

三日月(あ…そうでした…ネズミさんはもう…)

三日月(しばらくのあいだ、いつもお話してたからつい癖で…)

三日月(最後に魔法艦娘の変身が解けた後、もうネズミさんの声も姿もありませんでした… ホントに最後までおかしな人…人?でした)

三日月(魔法艦娘の力を持ち続けていれば、戻ってくるかもって思っていましたが…)

三日月(居なくなったら寂しいですよ。ネズミさん。私の方こそ…ありがとうって言ってないのに)ジワッ




(いいんだ。三日月。君は君らしく、駆逐艦の誇りをもって進むんだ)




三日月「はっ!?」フリカエリ

シーン・・・・

三日月「……気のせい?」

三日月「ううん……そうですね。不思議な力をありがとうございました、ネズミさん。ゆっくりでいいんです。魔法艦娘の思い出とともに…駆逐艦三日月は錨を上げます」



魔法艦娘デストロイヤークレセント、終わり

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