岡部倫子「これがシュタインズ・ゲートの選択……!!」 (1000)

~ 始まりと終わりのプロローグ♀ ~

2010年7月28日水曜日
ラジ館8階会議室


倫子「ドぉぉぉクぅぅぅターぁぁぁっ!」プルプル

まゆり「(ひざが震えてる……頑張って、オカリン)」

中鉢「なんだね君は?」

倫子「オ、オレが誰なのかはどうでもいい! この"ジョン・タイター"のパクリめっ!」

中鉢「誰か、その美少女をつまみ出せ!」

倫子「お、大きな声を出すなぁ!」ウルウル

まゆり「(涙ぐんでる……あとで良い子良い子してあげるからね)」

紅莉栖「ちょっとあなた」

ガシッ

倫子「ヒィッ、すいませ……ん?」

紅莉栖「……(この子、よく見るとかわいい)」


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1444823881

ネットで拾ったオカリン女体化画像
http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira091393.jpg


紅莉栖「(色白の肌、ピンクの唇……女の私でもドキッとしちゃう)」

紅莉栖「(ボーイッシュなショートヘアの黒髪がキレイ……でもどうして前髪オールバック?)」

紅莉栖「(それにヨレヨレの白衣、もっとかわいい服着ればいいのに)」

紅莉栖「(一人称はオレ……声はキレイなのに、残念ね)」

紅莉栖「(だけど科学者としてはこの残念な感じがたまらん……ってか私の大好きな先輩にこの辺が似てる)」

紅莉栖「(背は高い……膝が震えてるからよくわからないけど、結構高身長?)」

紅莉栖「(胸は控え目、私と同じくらいかしら。全体的なバランスはスレンダーね……)」


紅莉栖「こっちに来てくれない?」

倫子「き、貴様、"機関"の人間かっ!?」ウルッ

紅莉栖「だ、大丈夫よ! 怖くないから、一緒に行こう?」ニコッ

倫子「オ、オレを、狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真と知っての狼藉かぁ!」ガタガタ

まゆり「あの、オカリンが心配だからまゆしぃもついていくね」

紅莉栖「(この子もかわいいわね……)」

ラジ館7階踊り場


倫子「オレだ。"機関"のエージェントに捕まった……ああ、牧瀬紅莉栖だ、あの女には気を付けろ……」

紅莉栖「……」ヒョイ

倫子「あ、何をする! オレのケータイを返せぇ!」ジタバタ

紅莉栖「……って、電源入ってないじゃない」

倫子「小癪な真似を! 卑怯だぞぉ!」ジタバタ

紅莉栖「……こっちだぞー」プラプラ

倫子「か、返せよぉ……」ウルッ

紅莉栖「(かわいい)」


まゆり「えっと、オカリンはドキドキを抑える時にね、そうやって機関の人と連絡を取るのです」

倫子「何を言うかっ! ドキドキなどしてないもんっ!」

紅莉栖「スポーツ選手のルーティンみたいなものね。効果は脳科学的にも証明されてる」

倫子「だから違うと言っとるだろーがぁ!」

紅莉栖「ところで、さっき私になにか言おうとしてたわよね? すごく……悲しそうな顔をして」

倫子「ヒィッ! な、な、な、なんのことだっ!?」

紅莉栖「まるで、今にも泣き出しそうで、それにすごく辛そうだった」

紅莉栖「……どうして? 私、前にあなたに会ったこと、ある?」

倫子「何この人、怖い」

まゆり「オカリンより電波さんなのかな……」

紅莉栖「ぐはぁ!」

倫子「フン! 天才脳科学者よ、次会う時は敵同士だなっ!」プルプル

まゆり「(オカリン震えてる……この人のことが怖いんだ)」

倫子「さらばだっ、ふぅーはははぁ!」ダッ

まゆり「あ、待ってオカリン」

紅莉栖「嫌われちゃったかな……」


倫子「何か変なムービーメールまで来た。もうイヤ、帰りたいよぉ……」

まゆり「うん、もう帰ろう……あーっ!」

倫子「ど、どうしたまゆり!?」

まゆり「メタルうーぱがいなくなっちゃった……」

倫子「落としちゃったの?」

まゆり「たぶん……」

倫子「……ふぅーははは! オレの人質から許可なく脱走するとは卑劣なやつめ! 見つけ次第火あぶりにしてくれるわっ!」

まゆり「オカリン、無理しなくていいよ?」

倫子「なに、たかがうーぱではないか。一緒に探せばすぐに見つかるだろう」

まゆり「……オカリン、大好きだよ」

倫子「ん? 何か言ったか」

まゆり「う、ううん! オカリンありがとおーって!」


倫子「全然見つからないよぉ……まゆり、ごめんねぇ……」グスッ

まゆり「気にしないで。オカリンが探してくれただけですっごく嬉しいのです」


??「きゃぁぁぁぁあああああ!!!!!!」


倫子「ビクッ! い、今の……」

まゆり「女の人の悲鳴……かな? なんだか怖かったね……」

倫子「……まゆり、ここにいて」

まゆり「えっ」

倫子「オ、オ、オレの人質を怖がらせるとは、全くもって許せん! しょ、正体を見破らなければ!」プルプル

まゆり「……一緒に行こう? 手を握ってあげるから」

倫子「……うん」

従業員通路奥の倉庫


倫子「嘘……なんで……」

まゆり「そんな……」



紅莉栖「」



まゆり「死ん……でるの……?」

倫子「い、いやああああああああっ!!!!!!」ガクッ

まゆり「オカリン!! 大丈夫!?」

司会者「何があった……!? け、警察! 誰か! 救急車も呼べ!」


司会者「誰か、止血を!……君たちはここから離れたほうがいい!」

倫子「こ、腰が……」

まゆり「うん、ゆっくりでいいからね。まゆしぃが支えてあげるから」

倫子「あ、ありがとうまゆり。……あっ」シャー

まゆり「……先にトイレ、行こうね」

倫子「……ごめん」ウルッ

倫子「そ、そうだ。こういう時はダルに連絡しなきゃ」



To ダル
Sub ヤバい

牧瀬紅莉栖が男に刺されたみたいだ。
男が誰かはしらないけどさ。
ヤバいかも。大丈夫かな。



まゆり「……きっと、救急隊員の人が助けてくれるよ」

倫子「うん……送信するね」



ピッ



―――――――――――――――――――
    1.13024  →  0.52074
―――――――――――――――――――


第1章 時間跳躍のパラノイア♀


倫子「うっ……あ、頭が、痛い……」

倫子「あ、あれ、さっきまでラジ館の中に居たはずなのに、ここは中央通り……?」

倫子「誰も、いない……!?」アワアワ

倫子「そんな……何が、どうなってるの……」ワナワナ

まゆり「どうかしたー?」

倫子「ま、まゆりっ!! よかったぁ……まゆりが居るぅ……!!」ダキッ

まゆり「変なオカリン。まゆしぃがオカリンのそばから離れるわけないのです」ヨシヨシ

倫子「グスッ……えっと、それで、どうしてみんな消えちゃったの?」

まゆり「消えちゃった?」

倫子「うん。ここを歩いてる人たちが一斉に……」

まゆり「うーん? 最初からこの辺には誰もいなかったよー。もしかしてオカリン、熱中症……?」

倫子「そ、そんなバカな!? オレは幻を見ていたというのか……!?」


倫子「下着も乾いている……?」

まゆり「オカリンの体調が心配だから、もうラボに帰ろう?」

倫子「……そうだ。牧瀬紅莉栖はどうなったん……だ……なぁっ!?」

倫子「ラジ館に巨大な何かが突き刺さっている……だと……!?」

警官「そこの君たち! ここは立ち入り禁止だ、すぐに出て行きなさい」

倫子「な、なぁ制服警官さん! 牧瀬紅莉栖は、ラジ館で刺された少女は無事なのかっ!?」

警官「なにを言っているんだ? 迷い込んでしまったなら、案内してあげよう」

倫子「ひ、必要ない! 触るな、汚らわしい! まゆり、すぐにラボへ帰るぞっ!」

まゆり「あ、うん。待って、オカリーン」

未来ガジェット研究所


倫子「……一体何が起こっているんだ」カタカタ ッターン

まゆり「なにかわかったー?」

倫子「ラジ館に謎の物体が墜落した以外の情報がない。ドクター中鉢の発表会はどうなってしまったんだ?」

ダル「それなら中止になったってオカリン言ってたっしょ」

倫子「中止?……ククク、そうか、そういうことか!」

倫子「これもすべて"機関"の隠ぺい工作だな! 警察すら屈するとは、国家規模か……」

倫子「だが、オレの目はごまかせんぞ。いつか必ずヤツらの所業を暴き、その支配構造に終止符を打ってやる……」

まゆり「はい、ドクペ♪」

倫子「わーい♪……じゃなかった。ごくろう、まゆり」


倫子「ごく、ごく、ごく」

まゆり「(飲み方がかわいいのです)」

倫子「くーっ、頭脳労働の後のドクトルペッパーは相変わらずうまいな!」

ダル「オカリンの飲みかけのドクペ……昔はよくハァハァしてたっけ」

倫子「ダル。計画は順調に推移しているか」

ダル「え、計画ってなんぞ?」

倫子「8号機の調整以外になにがあると言うのか」

ダル「ああ、それ。なにかとおもた」

倫子「そろそろお前がオレの相棒となって3年半ほどになる。いい加減オレの会話についてこられるようになってくれ」

ダル「……ごめんお、オカリン」

倫子「…………」グスッ

倫子「司令官と副官の"思わせぶりで意味深に聞こえる会話"をするのが夢なのに……」ウルッ

まゆり「ダルくん? まゆしぃはがっかりなのです」

ダル「いやあ、僕にはハードルが高すぎるっつーか」

ダル「その分、マシンの調整は任せてくれなのだぜ!」

倫子「う、うむ! さすが我が頼れる右腕<マイフェイバリットライトアーム>!」キラキラ

まゆり「(かわいい)」

ダル「(かわいい)」

凶真だと男のままだし女なら変えた方がよくない?
オカリンがニョタリンになったSSでは凶華だったりしたな


倫子「それで、8号機『電話レンジ(仮)』の不調の原因究明は進んだか?」

ダル「うーん、一応実験繰り返して統計取ってるけど、なにか変数が足りないかもしらんね」

倫子「電話レンジ(仮)に入れたまゆりの大好物の冷凍からあげが、解凍されるどころか逆に冷凍されるとは」

まゆり「もうまゆしぃは気にしてないよ?」

倫子「オ、オレが気にしているのだっ! 目の前で発生している未知の現象を解き明かせずしてなにがマッドサイエンティストかっ!」

まゆり「ふふっ。頑張ってね、負けず嫌いのマッドサイエンティストさん♪」

倫子「まゆりっ! バナナを持ってこいっ!」

まゆり「はーい! またゲルバナを作るんだねー」

倫子「そして、オレの携帯から電話レンジ(仮)の携帯の番号に電話をかける……」プルルルル

まゆりの声『こちらは電話レンジ(仮)です―――#ボタンを押した後、温めたい秒数をプッシュしてください』

倫子「ここであえて"120#"と誤った入力を行う。そうするとターンテーブルが逆回転を始めるんだったな」

ウィーン

チン♪

まゆり「ゲルバナのできあがり~」

倫子「うぅ……気持ち悪い……ダ、ダルよ! これをテーブルへ移動させろ!」

ダル「はいはい」

>>19
俺もそのSS読んで変えようかと思ったけど
紅莉栖も「栗悟飯」だし、鈴羽も「JOHN」だし、女の子って男っぽい名前のハンネが多いよなと思って
この倫子だったら絶対妄想空間では男の名前だろうと踏みましたたのしかったです


まゆり「ゲルバナは、デロデロでぶにゅぶにゅだったよー」

倫子「た、食べたのかぁ!? まゆり、すぐうがいをするのだっ!」

まゆり「い、今じゃないよー」

ダル「まゆ氏、"あなたのバナナ、ぶにゅぶにゅだね……"って言ってみて」

まゆり「んーっとね、あなたのバナナ、ぶにゅぶにゅ……」

倫子「って、言わせるなHENTAI!」ポカッ

ダル「我々の業界ではご褒美ですっ!」

まゆり「ダルくん役得だねー」

倫子「ダルよ、お前がHENTAIなのは構わんが、オレのことを女として性的な目で見たら切り落とすからな」

ダル「僕ニハ虹嫁トフェイリスタンガ居ルオー(棒)」


ダル「んじゃそろそろATF行こうず、オカリン」

まゆり「オカリンオカリン、今くらいはおめかしして行ってもいいんじゃないかなー?」

倫子「フン、この狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真が化粧だと? 笑わせてくれる」

まゆり「いつも前髪を後ろにべとーってさせるのはあんまり良くないのです。毛先もくしゃくしゃだし……」

まゆり「それに服もよれよれのTシャツと白衣にチノパンで……もう夏休みだし、オシャレしてみない?」

倫子「だが断るっ! オレのこの姿は世を忍ぶ姿、いつ何時オレを襲ってくるヤカラが居るともわからんしなっ!」

まゆり「ダルくんが守ってくれるよー」

倫子「ダルはオレの右腕だ。仲間を危険にさらすわけには行かない」

ダル「あ、いや、僕も素のオカリンのことは知ってるわけだが、あれはまぶしすぎて直視できない罠」

ダル「なので今の格好のほうが助かるっつーか」

まゆり「まゆしぃは諦めないのです!」

倫子「フン、好きにしろ。ゆくぞ、ダル!」

大ビル5階 エレベーターホール


倫子「ダルよ、電話レンジ(仮)は運命石の扉<シュタインズ・ゲート>を開く鍵だと思うのだが」

ダル「イミフ杉ワロタ」

??「きゃっ」ドンッ

倫子「おっと、すまない。大丈夫か?」

倫子「あ……!?」

倫子「あ……あ……!!」

??「あの、なにか?」

倫子「牧瀬ぇ……紅莉栖ぅ……!!」ダキツ

紅莉栖「うわあっ!」

倫子「よかったぁ……生きてたんだぁ……」グスッ

紅莉栖「(な、なんぞーっ!? 突然残念系美少女に泣きながら抱きつかれるとか、これなんてエロゲ!?)」


倫子「ケガはもう、大丈夫なの?」ウルッ

紅莉栖「う、うん! 全然大丈夫よ!? (なんのことかわからんけど役得!!)」

ダル「あれ、その話1週間前に僕にメールで送らなかったっけ?」

倫子「メール? なんのこと?……あ、いや、一体なんのことだダル。説明しろ」

ダル「なんか、牧瀬紅莉栖が何者かに刺されたとかなんとか」

紅莉栖「ちょっと、勝手に殺さないでくれますか? 私ピンピンしてますんで」

ダル「そいや、あのメール、送信日時が1週間後になってたお」

紅莉栖「未来から来たメール……興味深いわね」

倫子「このオレ、鳳凰院凶真の送りし時空超越メールが牧瀬紅莉栖の命を救った、ということだな! 感謝するのだ、ふぅーははは!」ドヤァ

紅莉栖「(かわいい)」


教授「牧瀬さん。そろそろ時間ですし、始めましょう」

紅莉栖「え? あ、はい……っ」

紅莉栖「あ、あの、講義にあなたたちも出席されます?」

倫子「無論だ。そのためにここまで来たのだからなっ」

紅莉栖「(よ、よかったー! ならまだアドレス交換のチャンスはあるわね!)」

紅莉栖「じゃ、また後で会いましょ!」

ダル「えっと、オカリン。いつの間に天才脳科学者と知り合いになったのだぜ?」

倫子「……どういう理屈かは全くわからんが、しかし、それでも」

倫子「あの子が生きていて、よかった……」

会議室


倫子「なっ、牧瀬紅莉栖が講師だったのか……」

紅莉栖「こういうのは初めてなので緊張してますが、ガチガチなのは大目に見てください。どうぞよろしく」

パチパチパチ

紅莉栖「」チラッ

倫子「(睨まれている……!?)」ドキッ

紅莉栖「(かわいい……よし、がんばらなきゃ!)」

倫子「(『今度あったら敵同士』……そうだった。今、オレとあいつは敵同士なのだ!)」

紅莉栖「今回、『タイムマシン』をテーマに話してほしいと言われまして。正直、専門外なのですが、頑張って話してみようと思います!」

紅莉栖「最初に結論を言ってしまうと、タイムマシンなんていうのはバカらしい代物だということです」

紅莉栖「(う、うまく言えたかな……)」チラ

倫子「(なるほど、それが貴様の宣戦布告というわけか……受けてたとう!)」

倫子「異議ありっ!」

紅莉栖「ふぇっ!?」


倫子「タイムマシンが作れないと決めつけるのは早計だっ!」プルプル

ダル「オカリン、膝が震えてるお……ムチャしやがって」

紅莉栖「(えっと、これって、私とディスカッションしたいってこと?)」

紅莉栖「……いいですよ。そのほうが話も弾むでしょうし」

紅莉栖「(鳳凰院ちゃんとお話できるチャンスktkr!)」


・・・

紅莉栖「……どうです、鳳凰院さん。宇宙ひも理論でのタイムトラベル、挑戦できると思いますか?」

紅莉栖「ところで鳳凰院さん。ワームホールって、どんなものか知ってますか?」

紅莉栖「その理論だと、こっちの理論を否定しちゃいますけど。鳳凰院さん?」

紅莉栖「ふふ」ドヤァ

紅莉栖「(私の能力、認めてもらえたかしら?)」

・・・


倫子「うわぁぁぁぁぁん……うぅ……ひぐっ……ぐすっ……」ボロボロ


モブA「おいおい、女の子泣かせるかよ普通……」

モブB「名指しでいじり倒すとか、容赦ねぇな……」

モブC「俺に白羽の矢が当たらなくてよかった……」


ダル「(こりゃガチ泣きだな)……す、すみません。ほら、オカリン、ちょっと外で待ってような?」

倫子「ひぐっ……ぐすん……」ポロポロ


紅莉栖「…………」

紅莉栖「…………」

紅莉栖「…………」

紅莉栖「(やっちまったーっ!?)」


・・・

倫子「うぅ……ぐすっ……」

ダル「おまた~。こっちは終わったお。そっちは落ち着いた?」

倫子「う、うん。いつもありがとう……」

ダル「ちょ、しおらしいのは胸がときめいちゃうので勘弁なのだぜ」

倫子「わ、わかっている……! ダルよ、今回の働き、ご苦労であったぞ」

ダル「調子戻ったっぽいね」

倫子「オレはこれから柳林神社へ行く。まゆりに時空超越メールのことを相談したら、『お祓いしてもらったほうがいいよー』と言われてな」

ダル「神社まで送るお」

倫子「……うむ、ごくろう」

柳林神社


まゆり「オカリン、トゥットゥルー♪」

るか「岡部さん、こんにちは」

倫子「ルカ子はいつ見ても大和撫子だな(だが男だ)」

るか「そ、そんな、ボク、恥ずかしいです……」

倫子「仮にルカ子が女の子だったら、このオレでさえその色香に惑わされていたかも知れない」

るか「そ、そんな……!」

まゆり「女の子のるかくんかー。きっとかわいいんだろうなー♪」

るか「まゆりちゃんまで……」


倫子「修行は欠かさずしているか?」

るか「は、はい。あんな素敵なものをプレゼントしていただいて、感謝しています」

倫子「自衛は女の必須スキルだからな。お前は男だが、辻斬りや拐かし(かどわかし)はそうは思ってくれない」

倫子「くれぐれも妖刀五月雨の素振りを忘れるでないぞ」

るか「はい、岡部さん」

倫子「オレは岡部ではない。鳳凰院凶真だ」

るか「ご、ごめんなさい、凶真さん」

倫子「わかればよろしい。では、合言葉を」

るか「(ここでわざと間違えて……)」

るか「エル……プサイ……コンガリゥ……?」

倫子「違うっ! コンガリゥではなく、コングルゥだっ!」

るか「(そして正しく言い直すと……)」

るか「はいっ! エル、プサイ、コングルゥ……」

倫子「うむっ」ニコッ

るか「!!」ドキッ

るか「(岡部さんの貴重な笑顔が見れるんですよね……!!)」グッ

まゆり「美しい師弟関係だねー。まゆしぃは百合厨じゃないけど、ちょっとドキドキしてきちゃうよー」

るか「ボ、ボクは男だよ、まゆりちゃん!」


倫子「それで、ルカ子よ。実は、お、お、お祓いを頼みたいのだが、例のアレを持ってきてくれ」

るか「例のアレ、ですか」

倫子「そうだ、例のアレだ」

るか「え……と……?」

倫子「……棒に白い紙がふさふさーっと付いていて、それをわさわさーっと振るやつだ」

まゆり「今のオカリンの説明、かわいいねー」

るか「あっ、大幣<おおぬさ>ですね。わかりました」トテトテ

まゆり「じゃ、まゆしぃはこれからバイトだからもう行くね」

倫子「(まゆりはあの時、ラジ館で紅莉栖の亡骸を見たことを覚えているだろうか)」

倫子「(……いや、聞くべきではないな。あんな怖い思いは二度とごめんだ)」

倫子「そうか、気を付けて行けよ」

まゆり「うん! また明日ねー。トゥットゥルー♪」


るか「大幣、借りることができました。よかったです」

倫子「では、お、お、お祓いを今すぐ始めるのだ」プルプル

るか「(本当はお祓いが怖いんですよね、岡部さん……)」

るか「えっと、何に対するお祓いを……?」

倫子「な、なんでもいいっ! 早くやっちゃってくれ! このままではっ!」ガクガク

るか「え、えいっ。えいっ」フリフリ

倫子「ひぃぃ……!!」

るか「あ、悪霊よ……! おかべさ――じゃなくて、凶真さんから、出て行ってくださいぃ」ウルウル

倫子「うぅ……も、もう大丈夫だっ! 悪霊は去ったようだ、よくやったぞ、ルカ子」フーッ フーッ

るか「お、お役に立ててよかったです……(無理してる岡部さんかわいい)」ドキドキ

未来ガジェット研究所


倫子「今帰還したぞ」

ダル「お帰りー。オカリンオカリン、テレビの調子がちょっと悪いんだぜ」

倫子「なに? あのハゲ、不良品をつかませやがったな」

ダル「タダでもらい受けたわけだが」

倫子「ちょっと修理依頼ついでに文句言ってくるっ!」

ダル「僕が直そうか?」

倫子「わざわざ我が右腕の能力<チカラ>を発動させるまでもないわ!」

ダル「(オカリン優しいな)」

ダル「はいはい。テレビは僕が持つお」

ブラウン管工房


天王寺「おう、どうした岡部」

倫子「ミスターブラウン! 貴方からもらったテレビが壊れたのです」

天王寺「……そうか。貸して見ろ」

ダル「(この人、オカリンには優しいんだよね……まるで自分の娘みたいに扱って)」

倫子「今日は遅くまでやっているんですね。普通だったら夜7時までには閉めるでしょう」

天王寺「今日は客が来るんでな」

倫子「客? 例の小動物ですか」

天王寺「お前の身長からしたら小動物かもしれんが、二度とその名で呼ぶなよ」

天王寺「まぁ、姉妹みたいに仲良くしてやってくれ」

倫子「タダ働きを強要するとは、地に落ちたな! それ相応の対価をいただこう」

天王寺「だからこうしてブラウン管を直してやってんだろ」

倫子「……クッ、仕方ない。本望では無いが、今度綯と遊んでやろう」

天王寺「ああ、よろしく頼むわ」


??「おっはー」

倫子「お……おっはー?」

天王寺「…………」

ダル「…………」

??「あ、あれ……えーっと、さっき電話した者です。バイトの面接に来ました」

天王寺「俺が店長の天王寺だ。で、名前は」

鈴羽「阿万音鈴羽です」

天王寺「歳は」

鈴羽「18」

天王寺「なんでウチで働きたいんだ」

鈴羽「かわいい女の子が好きだから」

天王寺「採用。明日から来い。子守りも頼むわ」

倫子「ちょっ!? これはコントか!?」


鈴羽「ところで、君は誰?」

倫子「オレか?……やめておけ。それを知ることでお前にも災厄が降りかかるかもしれん」

天王寺「アホな妄想垂れ流してんじゃねーよ。この変な姉ちゃんは、2階に間借りしてる岡部倫子だ」

倫子「岡部ではない。オレは鳳凰院――」

天王寺「うるせぇ。家賃1000円上乗せするぞ」

鈴羽「……ほ、鳳凰院!!」ガタッ

倫子「む?」

鈴羽「あ、いや、あの、もしなにか困ったことがあったらあたしに相談して! 力になるよ!」

ダル「はい?」

鈴羽「キ、キミと出会えたのはきっと運命なんだ! あたしは、キミを守る戦士になりたい!」

天王寺「は?」

鈴羽「キミみたいなキレイな女の子を狙うやつが居たら、拷問や洗脳で廃人にしてあげるから!」

倫子「ミスターブラウン。彼女は採用しない方がいいと思う」

天王寺「騒ぎ起こしたらクビにするからな」

◆◆◆
2010年7月29日木曜日
ヨドダシカメラ


倫子「ジョン・タイター? どうして今更……。ここは日本の@ちゃんだぞ?」



343 名前:JOHN TITOR :2010/07/28(水) 20:47:42 ID:0A4nAofm0
タイムマシンはSERNによって独占されています。
一般人も、国家も、企業も、手に入れる事は出来ません。
彼らはそれを自身の利権の為だけに用いて、世界にディストピアをもたらしました。
そこでは同性愛も百合もレズも禁止され、人間の生産調整が行われています。
争いは完全に消えましたが、それは偽りの平和に過ぎません。


347 名前:栗悟飯とカメハメ波 :2010/07/28(水) 20:51:00 ID:Yhdly4Ep0
ジョンタイターさんはょぅι゛ょの可能性が微レ存


476 名前:JOHN TITOR :2010/07/28(水) 22:07:41 ID:0A4nAofm0
私は現在を(あなたがたから見れば未来ですね)変えるという崇高な使命の為にやって来ました。
ワルキューレの女騎士(この時代の表現ではテロリストのリーダーです)を保護すること。
それによって、SERNのディストピアを破壊し、再び自由を手にする為です。

ょぅι゛ょとは何でしょうか。


481 名前:栗悟飯とカメハメ波 :2010/07/28(水) 22:12:15 ID:Yhdly4Ep0
タイターたんかわいいよタイターたん


523 名前:JOHN TITOR :2010/07/28(水) 22:43:19 ID:0A4nAofm0
私のタイムマシンは、SERNの技術を盗んで作ったプロトタイプと言うべきでしょう。
あまり性能は良くありません。

2036年を例えるならば、独裁者によって地球が支配されたようなものです。
世界の支配構造を破壊できるのは、ワルキューレの女騎士その人だけです。
私は命に変えてでも彼女を守らなければならない。


525 名前:栗悟飯とカメハメ波 :2010/07/28(水) 22:44:51 ID:Yhdly4Ep0
え、なにそれSERN=独裁者とか言いたいの?
SERNがどんな機関か知らないとかこの幼女可愛いhshs




倫子「なんだこの栗悟飯とかいうクソコテ……さっきから気持ち悪いな」



689 名前:JOHN TITOR :2010/07/28(水) 23:31:58 ID:0A4nAofm0
所謂、祖父のパラドックスと言うものですね。
しかしそれは発生しない事が証明されています。

勿論、過去の自分に会う事は出来ます。
たとえ自分とレズ[ピ--]しても何も起こらないと言うのが2036年における主流の考え方です。


692 名前:栗悟飯とカメハメ波 :2010/07/28(水) 23:34:26 ID:Yhdly4Ep0
「素粒子物理学の研究機関」なんかより可愛い女の子が世界征服を成し遂げるべきだろw


807 名前:JOHN TITOR◆f8VuYnoyWU :2010/07/29(木) 00:50:57 ID:4Co5c6io0
>>692それには同意します。

世界線は、無数に並行して流れる川のようなものです。
途中で幾つにも分岐していきます。
あなたがノーマルから百合に目覚めた場合は世界線変動率が変化します。
と言っても、ほんの0.000002%程度でしょうけれど。
戦争や大きなテロ等が起きれば、その数値の幅も大きくなります。

今日は少し疲れてしまったので、また後日。


692 名前:栗悟飯とカメハメ波 :2010/07/28(水) 23:34:26 ID: OGj/ui2d0
おやすみタイターたん



倫子「……というか、どうして誰も10年前のジョン・タイターについて言及しないんだ?」

倫子「"ジョン・タイター"でググってみるか……え、たった12件!? しかも全部ニセモノについての情報じゃないか!」

倫子「これも"機関"による陰謀か……!?」


倫子「(とにかく、困った時はダルに電話だ!)」プルルル

ダル『どしたん』ピッ

倫子「オレだ。状況は?」

ダル『……もうちょっとヒントくんないと対応に困るわけだが』

倫子「今どこにいるのかと聞いている」

ダル『今は"メイクイーン+ニャン2"にいるお』

倫子「……内密に話がある。オレが行くまでそこを動くなっ!」

ダル『来るの? いいけど』

倫子「あと、オレが入店する時フェイリスたちを引きつけておくように!」

ダル『あぁそれ……うん、オーキードーキー』

ピッ


今日はここまで
更新すごく遅い予定で申し訳ないのと、皆さんの妄想力がかなり必要となるSSなのでガンバッテクダサイ
わりと手探りでやってるので凶華みたいな案くれると精神的に捗ります

シュタゲSS雑談スレもよろしくお願いします
【シュタインズ・ゲート】Steins;Gate SS雑談スレ@ラボメンNo. 001
【シュタインズ・ゲート】Steins;Gate SS雑談スレ@ラボメンNo. 001 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1444578998/)

メイクイーン+ニャン2じゃなくメイクイーン×ニャンじゃね?
鈴羽の場合は理由があったような…
クリフ…じゃなかった紅莉栖のはわからんけど

http://mup.vip2ch.com/up/vipper46143.jpg
こういうのもあるよね

メイクイーンって+なん?シュタゲSSだとどれもメイクイーンニャン×2とかだけど

>>46
レス嬉しいのでレス返し
決して論破厨ではないのでご了承下さい

メイド喫茶の名前
http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira091412.jpg

鈴羽がJOHN名乗ったのは「ありふれた名前だから」と「男の名前だから」で、どっちも阿万音鈴羽の正体をカモフラージュするため
以下小説版ウロボロス

てっきり男だと思っていた、と俺が言うと、鈴羽は自嘲気味に笑ってみせた。
「まんまと騙された? それならよかったよ。カムフラージュの意味もあったんだよね」
(中略)
「そう、SERNに対するカムフラージュ」
(中略)
……なるほど。だから鈴羽はありがちな名前としてジョンを名乗りつつ、タイターとも名乗ったのか。

>>51
それ見ながら乳の大きさですごく悩みました

ラジ館前


女性レポーター「謎の人工衛星墜落から一夜明けた秋葉原です。警察による規制は解除され、駅前にはものすごい数の人が集まっています!」

女性レポーター「墜落した人工衛星がどこの国のものなのかについては、現在も調査中とのことで、詳しいことが分かるまで撤去ができない状態です」

倫子「すごい人の数だな……。あの人工衛星、今、爆発とかしないよね……」

??「…………」パシャ

倫子「っ!? いきなり人の写真を撮るとは、し、し、失礼ですよ!」ガタガタ

盗撮女「…………」

倫子「ちょ、そこの貴女! 待って! 待ってくださいっ!」

堂々と写真を撮る女「……?」パシャ

倫子「やめてぇ! 撮らないでぇ!……まさか、"機関"の差し金かぁっ!?」ウルッ

スパイの可能性がある女「…………」

倫子「違うとしても問題がありますっ! オレの写真を持っていると"機関"に知られれば、貴女にもヤツらの魔の手が伸びるかもしれない……」

倫子「オレのせいで人が傷つくところは、もう2度と見たくない……」

スパイじゃないらしい女「……"オレ"?」

倫子「とにかく、即刻削除してくださいお願いします」

ノーリアクションの女「不快にさせたなら、謝る」


観光に来たらしい女「……証明。自分が今日、どこを歩いたか」

倫子「証明……」

変な女「桐生、萌郁」

倫子「は、はい。オレの名は鳳凰院凶真だ」

萌郁「聞きたいことがある」

萌郁「幻の、レトロPC。秋葉原のどこかにあるらしくて」スッ

倫子「このケータイ画面に映し出されたPCは……」

萌郁「『IBN5100』」

倫子「ああ、ジョン・タイターが手に入れようとしたやつか」

萌郁「っ!! 見たことがある……?」

倫子「いや、名前を聞いたことがあるだけだ」

萌郁「詳しい人、知らない?」

倫子「ダルなら知っているかも……あ、いや、なんでもない」


倫子「ではオレは行く。お姉さん、メディア・スクラムもほどほどにな」

萌郁「あ……」

ガシッ

倫子「な、なにをする!?」ゾワワッ

萌郁「メルアド……教えて」

倫子「はぁっ!?……なにが狙いだ」プルプル

倫子「(オレのメルアドを聞いて来るやつにはロクなやつがいない)」

萌郁「詳しい人に、会わせてほしい」

倫子「(ダルが狙いだと言うならなおさらだ)」

倫子「(もう、あんな思いはしたくない……)」

倫子「だ、だが断るっ! さらばだっ!」ダッ

萌郁「…………」


倫子「ちらっ。……あの女、ついてきている!?」

萌郁「…………」スタスタ

倫子「(こわいっ!! こわいよぉっ!!)」タッタッ

萌郁「……(私より少し背が高いのに足が遅い)」タッタッ

倫子「ま、回り込まれてしまった……」ガクガク

萌郁「あなたの写真……メルアド、教えてくれたら削除する」

倫子「貴様ぁ、脅そうというのかぁ!?……うわぁぁぁぁん……誰か助けてぇ……ぐすっ」ボロボロ

萌郁「えっ!? な、泣かないで……」

警官「キミ、そこで何をやっている」

萌郁「っ!! これ、私のアドレス……見つけたら、メール頂戴」タッタッタッ

警官「お嬢ちゃん、大丈夫か? 怪我はないか?」

倫子「さ、触るなっ!……ありがとう、ございます」

メイクイーン+ニャン2


倫子「(オレが来店すると、その場にいた常連客どもが同時に注文を開始し、オレを出迎えるメイドは一人もいなかった)」

倫子「(ダルの作戦が成功したようだ。こうでもしないとフェイリスの奴、オレを客席に座らせずに延々と厨二トークを垂れ流し続けるからな)」

倫子「それにしても、ひどい目にあった」

ダル「僕のこと売らなかったんだろ? ありがとな、オカリン」

倫子「当たり前だ。オレはお前を失いたくない」

ダル「嬉しいこと言ってくれるじゃん」

ダル「けど、オカリンの写真は消してもらえてないんしょ?」

倫子「お、おそらく……」

ダル「その女とは僕がやりとりしとくからさ」

倫子「それでは本末転倒ではないかッ!」

ダル「あ、そっか。うーん、携帯端末にハッキングして画像消去はやったことないけど、今度挑戦してみるお」

倫子「アドレスしかわからんが、可能か?」

ダル「僕をあなどってもらっちゃ困るのだぜ」

倫子「さすが、我が頼れる右腕<マイフェイバリットライトアーム>だ」


フェイリス「凶真、よく来たニャン。ゆっくりしていってね♪」

まゆり「ご注文はニャににしますか、お嬢様、ご主人様♪」

ダル「あ、いつもので」

フェイリス「今日も"機関"打倒のための極秘会議かニャ?」

倫子「そんなところだが、フェイリス……」

フェイリス「わかってるニャ。凶真からダルニャンを奪ったりしないニャ」

倫子「勘違いするような言い方はやめろ。別にこの童貞ピザメガネがどこの馬の骨と性交渉しようが知ったことではない」

ダル「ふぉっ!?」

倫子「それよりもオレはお前が心配なんだ。悪い虫がつかなければいいんだが……」

フェイリス「凶真ってフェイリスのママみたいな心配をするんだニャー。大丈夫、虫なんて、ハニー・トラップで一撃だニャ!」

倫子「自信家なのは良いことだが……なにかあったらオレに連絡してくれよ」

フェイリス「ニャゥ~! 凶真が男の子だったらフェイリス、今堕ちてたニャ!」


倫子「何度口説かれてもオレは貴様のモノになるつもりはない」

フェイリス「あ、あの時は悪かったニャ~。凶真が素敵すぎるのがいけないんだニャ!」

まゆり「でもね、お金にモノを言わせて女の子を買収しようとしたのは、まゆしぃドン引きですニャン」

フェイリス「でも凶真を執事に仕立て上げたい気持ちはわかるニャン?」

まゆり「うん、すっごく」

倫子「オレは誰のモノにもならん。もちろん執事にもメイドにもな」

フェイリス「それはもう諦めたニャ~。だから、こうしてたまにお客さんとして来てくれるだけでも、フェイリスは嬉しいニャ♪」

倫子「別にフェイリスのことは嫌いではない。普通に友達として付き合えばいいではないか」

フェイリス「と、友達……! なんだか恥ずかしいニャァ///」


ダル「で、僕になんの用事だったん」

倫子「……ジョン・タイターについて、知っているよな」

ダル「誰ぞ?」

倫子「アメリカに10年ほど前に現れた、自称未来人だ。お前とは以前、こいつの話題をしたはずだぞ」

ダル「またオカリンのいつもの"設定"?」

倫子「設定とか言うなぁ! オレが言う事はいつも真実だぁ!」

フェイリス「(かわいい)」

ダル「まーいいけどさ、そのタイターってのが未来人であるソースは?」

倫子「待て、なんで初耳のような言い方をするのだ」

ダル「事実初耳だもん」

倫子「……忘れちゃったの?」ウルッ

ダル「うっ。ちょ、ちょっと待つお。今思い出すから。うーむむむ……」

倫子「そういえばラボにタイターの本があったはずだ。それを見れば記憶力に難があるお前でも思い出すに違いないっ!」

ダル「……この間本棚整理したけど、そんな本はなかったと思われ」

倫子「くっ、ブックオフに売ってしまったか……」


倫子「あと、『IBN5100』について、なにか知っているか?」

ダル「へぇ、オカリンがそんなPCを知ってるなんて」

倫子「知っているのか?」

ダル「知ってるもなにも、1か月ぐらい前にネットで話題になってたお」

ダル「ただ、捜索班が出たけど発見されなかったって」

倫子「本当にアキバのどこかにあるのか……?」

ダル「ごめんお、あんまり力になれんくて」

倫子「そんなことはどうでもいい。それで、1つだけ確認したいのだが、IBN5100は世界が滅亡する超危険アイテムなのだな?」

フェイリス「世界滅亡しちゃうのかニャ? ご注文の品、お持ちしましたニャン♪」

ダル「フェイリスたんのオムライス最高だお!」

   『 凶真LOVE♡ 』

倫子「なぜオレのオムライスだけ……」

フェイリス「世界滅亡の前に、どうぞ召し上がれ♪」

未来ガジェット研究所


倫子「@ちゃんにまたジョン・タイターが現れているな……」


229 名前:JOHN TITOR◆f8VuYnoyWU :2010/07/29(木) 15:04:29 ID:4Co5c6io0
タイムトラベルは重力を変える事で行います。
基本的概念は双子のパラドックスを用いていると考えてもらえれば良いです。
しかしそれだけでは時間を逆行は出来ません。


234 名前:鳳凰院凶真:2010/07/29(木) 15:06:39 ID:1kz7Z7Sn0
>>229
ティプラー・シリンダーとカー・ブラックホールを使っているのだろう?
やはり10年前に現れたときとまったく同じだな!
そしてお前が乗っているタイムマシンは1970年代製のシボルエだ!


264 名前:栗悟飯とカメハメ波:2010/07/29(木) 15:19:38 ID:0WM1H5LT0
>>234
ティプラー・マシンのことを言ってるんでちゅか?
シボルエにそんなもん乗せるより鳳凰院ちゃんと一緒にドライブしたいお

タイターたんはどう思う?


265 名前:JOHN TITOR◆f8VuYnoyWU :2010/07/29(木) 15:20:29 ID:4Co5c6io0
これは驚きました。
鳳凰院凶真は別の世界線で私を見たと言う事だと思います。
少なくとも私はまだ2000年へは行っていません。
是非機会があれば私も鳳凰院凶真とドライブしたいものです。


271 名前:栗悟飯とカメハメ波:2010/07/29(木) 15:25:34 ID:0WM1H5LT0
ちょwww否定しないとかwww
鳳凰院ちゃんの話に乗ってあげるタイターたんマジ天使



倫子「栗悟飯……大丈夫か、こいつ」


ダル「オカリン。ゲル化について大学で調べてきたお。分子レベルでズタズタになってた」

倫子「……オレだ。計画は第2段階を迎えた。……ああ、これも運命石の扉<シュタインズ・ゲート>の選択だ。エル・プサイ・コングルゥ」ドキドキ

ダル「(オカリンってグロに免疫ないんだよな……)」

ダル「マシンの接続の方も終わったぜぃ」

倫子「バナナは用意してある。まゆりには感謝しなければな」

ダル「(まゆ氏も人がいいよな。気持ちはわからんでもないけどさ)」

ダル「ケータイからタイマー入力よろ」

倫子「『120#』っと……」

チン

ダル「お……おお!?」


倫子「何をしている」

ダル「いや、えっと……消えた……」

倫子「な、なにっ!? バナナが、消えた……!?」アワアワ

倫子「オ、オレだ! えーっと、何が、どうなってしまったんだ! バナナはどこに行った!?」

ダル「お、おちけつ! ケータイ耳に当てるの忘れてるお!」

倫子「残りのバナナでも食って落ち着こ……う……な、なに……?」

ダル「バナナが房に戻ってる……!? このゲルバナ、完全にくっついてるな……」

倫子「テレポー……テーション……!?」


??「ふーん。興味深い実験してますね」


倫子「だ、誰だっ!?」ガクガク

紅莉栖「ノックはしたんですけど」

倫子「ま、牧瀬紅莉栖っ!? 一体どういうことだ!! 何が目的でここへ!!」ブルブル

ダル「(完全に怯えてる……そりゃトラウマもんだろうし)」

紅莉栖「あなたに会いに来たの、岡部倫子さん。じゃなくて、鳳凰院ちゃん、だった?」

倫子「な、な、な、なぜオレの本名を!? 貴様、やはり"機関"のエージェントだな……!」

紅莉栖「女の子に限ってペンネームとかコテハンを男っぽい名前にしちゃうのよね。私も経験あるわ」

倫子「(というか、さっきからダルが驚いていない……!?)」

倫子「ダル、まさか、オレを裏切ったのかぁ!?」

倫子「牧瀬紅莉栖に弱みを握られたかっ!? それとも色香に惑わされたかっ!?」

倫子「オレの右腕を、よくも……!! 牧瀬紅莉栖ッ!!」ギロッ

倫子「許さん……絶対に許さんぞぉ、このヴィッチがぁぁぁぁぁうわぁぁぁん!!!」ポロポロ

紅莉栖「あっ……ち、違うの! 落ち着いて!」アセッ


紅莉栖「この場所のことは、昨日橋田さんから聞いたの。あなたの名前もね」

倫子「うわぁぁぁぁぁん……ダルが、ダルがぁぁぁぁ……グスッ……」ボロボロ

ダル「ちょ、オカリン泣くなって。僕はオカリンのこと、裏切ってないお」

倫子「ふぇ?」

紅莉栖「(かわいい……じゃなくて!)」

紅莉栖「あなたに昨日のことで直接謝りたくて……。本当にごめんなさい」

紅莉栖「私はあなたにひどいことをしてしまったから……それで、その、お詫びと言ってはなんだけど、コレ」スッ

倫子「これは?」

紅莉栖「ドクトルペッパーが好きだって橋田さんから聞いたから、ペットボトル5本を差し入れようかと思って……」

倫子「ふ、ふん! このオレ、鳳凰院凶真がそんなもので買収されるわけが……」

倫子「…………」

倫子「ホントにくれるの?」

紅莉栖「(かわいい)」


倫子「謝罪の機会を作ってあげたというわけか。さすがオレの右腕、優しい巨漢だ」ゴク、ゴク

ダル「いや正直牧瀬氏をオカリンに会わせるのもどうかと思ったけど、あんまり必死だったからさ」

紅莉栖「そ、そう! 別にあなたから橋田さんをとろうとか、そういうつもりは一切ないから」

倫子「貴様は何を勘違いしているのだ、この脳内お花畑め」

倫子「ダルはオレの男ではないし、オレを裏切る男でもない」

紅莉栖「へ……?」

ダル「僕らはただの友達だお」

紅莉栖「だ、男女の間で友情が芽生えるわけないでしょ!? 馬鹿なの、死ぬの!?」

ダル「ルイスちゃんの名台詞ktkr!」

倫子「お前、友達いないだろ」

紅莉栖「ぐっ……!?」


紅莉栖「改めまして、牧瀬紅莉栖です。よろしく」スッ

倫子「握手か。まあいいだろう」

ギュッ

紅莉栖「(手、やわらかい……!)」

倫子「鳳凰院凶真。今年で19歳だが、敬語は不要だ」

紅莉栖「う、うん」

倫子「こいつはオレの右腕、ダル。橋田至だ」

ダル「オカリンとは高校の時からの付き合いなんだお」

紅莉栖「一体どんな関係なのかしら……」


紅莉栖「……それにしても、このバナナ、本当に興味深いですね」ブスッ

倫子「あっ!? だ、大丈夫か触って……?」

紅莉栖「ビビりすぎ。……味は無しか、まっず」ペロッ

倫子「ひぇぇ……」ワナワナ

ダル「ま、牧瀬氏。オカリンの目の前でグロは勘弁だお」

紅莉栖「えっ……あっ、ご、ごめんなさい」

倫子「べ、別に!? 気にすることはないぞ!?」

紅莉栖「……詳しく教えて」

倫子「電話レンジ(仮)についてか?」

紅莉栖「いや、倫子ちゃんについて」ネットリ

倫子「はぁっ!?」


倫子「貴様ッ!! 女のくせに、女に欲情するとはHENTAIだなッ!?」

紅莉栖「へ、HENTAIちゃうわ! ただ、ちょっと倫子ちゃんがかわいいなって思っただけで……」モジモジ

ダル「さすがにドン引きなのだぜ、牧瀬氏」

倫子「今後一切オレのことを『リンコちゃん』などと、某革新的恋愛ゲームのヒロインのような名前で呼ぶことを禁じる!!」

紅莉栖「ぐはっ!!」

ダル「(そのせいで僕はマナカちゃんとネネちゃんしか攻略できなかったお……)」


倫子「クリスティーナと言ったか」

紅莉栖「言っとらん……ううん、りん……岡部さんが呼びたいように呼んでいいわ」

倫子「さんづけもやめろ。呼び捨てでいい」

紅莉栖「わかったわ、岡部……」

倫子「それで、クリスティーナよ。このレンジやバナナの実験、そしてオレのことを詳しく知りたいというHENTAI的欲求を満たしたくば、オレと取り引きしてもらおう」

紅莉栖「乗ったわ」

ダル「まだ条件すら提示されてないわけだが」


倫子「まず1つ。貴様にはラボメンとなってもらう」

紅莉栖「ラボ……メン? 研究所のメンバーに迎えてくれるってこと?」

倫子「うむ」

紅莉栖「イヤッホォォォォォォ……うわぁぁぁぁぁぁぁん!!!」

ダル「ちょ、歓喜したと思ったら泣き出した件について」

紅莉栖「わ、私、8月中にアメリカに帰らなきゃいけないの……グスッ……」

倫子「期間限定で構わん。他者に秘密を漏らさないと誓えばな」

紅莉栖「誓う誓う!! イエスにでもブッダにでも誓うわ!!」

ダル「うわぁ……」

倫子「ラボメンとなった暁には、帰国するまでその頭脳を我がラボのために役立ててもらって結構だ」

紅莉栖「それでそれで、2つ目の条件は!?」


倫子「このオレが貴様に対して行った行為について、すべて不問にすることだ」

紅莉栖「……へ?」

ダル「なんのことだお?」

倫子「……大ビルのエレベーターホールで、初対面なのにいきなり飛びついて悪かった」

紅莉栖「あぁ、そのこと……」

ダル「オカリン、人としての器がおっきいお! しっかり謝れる子はポイント高いっつーか」

紅莉栖「別に気にしてないわよ、ラッキースケベだったし」

倫子「……頼むからHENTAI度はもう少し控え目にしてくれないか。お前の個性は否定しないが」

紅莉栖「……以後、気を付けます」


紅莉栖「そう言えばあの時、私が生きてるとか殺されたとか言ってたわよね。あれってなんだったの?」

倫子「……気にするな。オレの妄想だ」

紅莉栖「あなたは自分の妄想をわざわざメールに書いてまでヒトに送信する人間なの? それも不謹慎な内容で」

倫子「……わかった。正直に話そう」

倫子「だが、あまりにも荒唐無稽なのだ。オレが幻覚を見たに過ぎない可能性がある」

紅莉栖「幻覚だろうと、岡部の脳が認識したのなら、それは脳内においては現実よ」

紅莉栖「脳科学的な見地から何かアドバイスできるかも知れない。だから、言って」

倫子「……オレは確かにラジ館の8階で―――」

倫子「―――お前が刺されて死んでいるのをこの目で見たんだ」


・・・

紅莉栖「……なるほど。だいたいわかった」

ダル「うーん、なんかいつものオカリンの設定にしては妙にリアルっつーか」

紅莉栖「橋田さん。さっきも言ったけど、こういうのは視た人にとっては現実なの。否定しないであげて」

ダル「あぅ……ごめんな、オカリン」

倫子「いい。そう思われて当然だろう。それに、やはり現実でなかったのだから考察するだけ時間の無駄だ」

紅莉栖「いいえ、そうとも限らないわ。あなたが体験したのは、脳が見せた世界だったのかもしれない」

倫子「脳? 白昼夢だと言いたいのか」

紅莉栖「日常的非病的乖離症状ね。そうなると心因性の可能性が高い」

ダル「『夢の中で逢った、ような……』ということですねわかりません!」


紅莉栖「わからないけど、もし岡部の身体や脳に少しでも異変があるようなら言って。HENTAI抜きにしても心配よ」

倫子「フン、貴様に心配される筋合いなど無い。せいぜいラボでの研究に励むがよい」

紅莉栖「……ふふっ。わかったわ」

倫子「オレへの下心は丸見えだからな。馬車馬のようにこき使ってやろう、クリスティーナよ!」

紅莉栖「ティーナじゃないけど、岡部がそう呼びたいなら別に……」モジモジ

ダル「(下心は否定しないんすな……)」

倫子「貴様はこの時をもってラボメンナンバー004だ。歓迎しよう、蘇りし者<ザ・ゾンビ>よ!」

紅莉栖「……私が蘇ってて、良かった?」

倫子「……意地の悪い質問をするな、バカモノっ」プイッ

ダル「(かわいい)」

紅莉栖「(かわいい)」


倫子「(その後、ダルから電話レンジ(仮)実験についてクリスティーナに説明してもらい、天才の脳をして分析、実験させた)」

ダル「あっ! 房にゲルバナが戻ったお」

倫子「ヒィッ……」

紅莉栖「104秒経過した時に、消えちゃった……」

倫子「……やはりテレポートなのだっ! 人類史上初のなっ!」ワナワナ

紅莉栖「結論ありきで考えるのは危険よ!」

倫子「ならば天才少女よ、今の現象はなんだと言うのだ」

紅莉栖「……とっかかりが欲しい。この電話レンジについて何か他に情報は無い?」

ダル「あ、そうだ。1度、こいつからすごい放電が起きたお」

倫子「なにっ!? そんな話は初耳だぞっ!?」

ダル「オカリンが居ない時だったからね。オカリンがドクター中鉢の発表会を見に行った時」

紅莉栖「(ドクター中鉢……)」

倫子「そう言えば、オレはその時例のメールをダルに送ったんだったな。着信は1週間前だったか」

紅莉栖「送信履歴はどうなってるの?」

倫子「ちょっと待て……。あ、あれ、無い……どこにも、どこにも送信履歴が無い……!?」ガタガタ


紅莉栖「1週間前にメールを送信し、履歴を削除した事実を忘却して、それを今になって思い出した……? でも、そうするとメールの内容との整合性が……」

倫子「オ、オレはいつも真実しか言わん! 信じてくれぇ!」ウルッ

紅莉栖「ごめんね、疑ってるわけじゃないの。あくまで可能性だから」

ダル「送受信のタイムスタンプ、放電現象のタイミング、メールの内容……なにがどうなってるん?」

倫子「……ククク、なるほどな。"そういうこと"だったのか」

倫子「やはりオレは、天才マッドサイエンティスト、自分の才能が恐ろしい……!」

ダル「ここでスイッチ入っちゃったかー」

紅莉栖「な、なに?」

倫子「オレが送った不可思議な現象と、放電が起きたことには……ッ!」

倫子「なにか関係があるッ!!!!!!!!!」

ダル「…………」

紅莉栖「……わ、わー! すごい! 鳳凰院ちゃん天才!」

倫子「フフン、そう褒めるな。あと"ちゃん付け"はやめろ」

ガチャ バタン

まゆり「ただいまー。はふー、外は暑いねー」


まゆり「あれれ? お客さ~ん? まゆしぃ☆です。よろしくねー」

紅莉栖「牧瀬です。ラボメンになったみたいです」

まゆり「えー? 本当? 女の子のラボメンだー」

紅莉栖「あれ、岡部も女の子じゃ……?」

まゆり「あー、オカリンはねー、"女の子"として扱われるのが嫌いなのです」

紅莉栖「ふぅん……(トラウマでもあるのかしら?)」

倫子「まゆりっ! ジューシーからあげナンバーワンを電話レンジ(仮)の中へ!」

まゆり「みんなもからあげ食べる? 1個ずつならあげてもいいよー」スッ

倫子「(今度はPCから……120#……っと)」カタカタ ッターン

ブーン……


倫子「そこに突っ立っている助手!」

紅莉栖「……私? 私のこと、"助手"って呼んでくれたの!?」キラキラ

倫子「めんどくさいやつめ。いいから、オレのケータイになにかメールを送れ」

紅莉栖「えっと、その、岡部のアドレスを教えて欲しいわけだが……」モジモジ

倫子「……ダル。オレのケータイにメールを送れ」

紅莉栖「ぐはぁ!」

ダル「でもなんて送るん?」

倫子「『じょしゅはHENTAI』、これで送れ」

紅莉栖「ぐぅ……私、M属性は無いんだけど……」

倫子「なぜ貴様の性癖に合わせねばならんのだ」


紅莉栖「で、でも、私、岡部が望むならM属性も開発するから……っ!」

まゆり「まゆしぃはドン引きなのです」

紅莉栖「とか言いながら、まゆしぃさんも岡部のかわいさに堕ちた側の人間でしょ?」

まゆり「もちろんだよー」

倫子「嫌な分類をするなっ!」

まゆり「オカリンをぎゅーって抱きしめるとね、なんだか幸せな気分になるのです」

紅莉栖「だ、だきっ!? まゆしぃさん、そんな高レベルなことを既に……!」

紅莉栖「わ、私も是非、岡部の抱き心地を試させていただきたいっ!」ワキワキ

倫子「やめろぉ! 近づくなぁ! こっちへ来るなぁ!」

紅莉栖「ダイジョウブよぉ、イタくしないからぁ」ウフフフフ

ダル「送信送信ポチッとな」ピッ

倫子「おわっ!? こ、転ぶーっ!!」


ガシッ(電子レンジの取っ手をつかむ音)


バキッ(電子レンジの扉が開く音)


バチバチバチバチッ!


倫子「ふおわぁ!?」


紅莉栖「放電してる!」

まゆり「っ!! 危ないオカリンっ!!」


ドォォォォォォォン……


倫子「ゴホッ、ゴホッ。ぜ、全員ケガはないか……?」

ダル「だいじょぶだおー」

紅莉栖「いの一番に仲間の安否確認をする優しい鳳凰院ちゃん……」

倫子「貴様は元気そうだな」

まゆり「オ、オカリン、なにが起きたのかな……?」ギューッ

倫子「大丈夫か? オレをかばってやけどとかしてないか?」

まゆり「うん……どこも痛くないからヘーキだよ」ギューッ

紅莉栖「(この混乱に乗じて身長差を利用した二の腕ギューだと!? まゆしぃさん、中々やるわね……!)」


紅莉栖「って、なにこれ!? テーブルが壊れてる!?」

ダル「うおっ!? いくら電子レンジでも床に穴を空けるほど重くはないっしょ……」

倫子「な……なに、これ……」ガタガタ

ダル「(オカリンが震えてる……ここはスイッチ入れて凌ぐか)」

ダル「まさか、これがオカリンの言ってた、シュタインズ・ゲートの選択かお……ッ!?」

倫子「ハッ……!?」

倫子「ク、ククク、ふぅーははは! す、すべて計算通り!」

倫子「……あっ、ケータイ、電話レンジ(仮)に刺しっぱなしだった……エル・プサイ・コングルゥ」ボソッ

紅莉栖「……落ち着いた?」

倫子「う、うん……」


倫子「そうだ! 受信履歴を確認しなければ……お、おおっ!?」

ダル「どうだった?」

倫子「......7月24日、ダルから、『じょしゅはH』」

紅莉栖「おい橋田こら」

ダル「ちょ」

倫子「内容はどうでもいい! やはり、5日分の時間遡行メール……!」

倫子「……すべてが繋がった。この電話レンジ(仮)に隠された機能の真実……っ!」

倫子「メールは過去へと送られた」

倫子「溶けかけたからあげは冷凍状態に戻った」

倫子「房から千切られたバナナは房へと戻った」

紅莉栖「……まさか」

倫子「そのまさかだ……この電話レンジ(仮)は……」



倫子「―――タイムマシンだっ!!!!!!!!!」




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


倫子「すぅ……すぅ……」

まゆり「今日は色んなことがあったから疲れて眠っちゃったね」

紅莉栖「はぁ……なんて癒される寝顔なのかしら……」

ダル「ってか牧瀬氏、どうして素のオカリンを見たことないのにそんなにベタ惚れしてるん?」

紅莉栖「そりゃ、初めて会った時に運命感じたから……って、ちょっと待って。"素の岡部"ってなに!?!?」

まゆり「寝る前にシャワー浴びた時とかは、髪の毛サラサラで着ぐるみパジャマ(※まゆり作)のもっとかわいいオカリンになるのです」

紅莉栖「なん……だと……!?」

紅莉栖「というか、岡部ってどうしてこんな不思議ちゃんになっちゃったの?」

ダル「あー、確かに説明しないとわからん罠」

まゆり「じゃー、まずはまゆしぃからオカリンの昔話するねー」

紅莉栖「わくわく」


・・・


まゆしぃとオカリンはご近所さんでね、物心ついた時からの幼馴染だったんだー。

オカリンはその頃からすっごく可愛い女の子でね、小学校ではみんなのアイドルだったのです。


まゆり「女の子のまゆしぃでもドキッとすることがあるよー」

倫子「そうかな……」

まゆり「うん、すっごくキレイ! 色白の肌、信じられないほど美しいストレートヘアー、ピンクの唇……」

倫子「それ、少女漫画のセリフだろ」


それで、男の子みんながオカリンのトリコになっちゃって……

オカリンは、困るからって全部断ってたんだけど、女の子たちがそれ見て怒っちゃってね。

……それから、クラスの雰囲気は最悪だったのです。

○○ちゃんの好きな男の子を振った、とか、オカリンのせいでみんな恋ができない、とか。

それで、オカリンはいじめられるようになっちゃって……

まゆしぃはね、ずっとオカリンのお友達で居たかったんだけど、

オカリンがね、自分の側に居るとまゆしぃまでいじめられちゃうからって言って、

まゆしぃを守るために、自分を犠牲にしようとして、

1年くらい、まゆしぃとお話してくれなくなっちゃったのです。

訂正
×クラスの雰囲気
○学校の雰囲気


その年にまゆしぃのおばあちゃんが死んじゃって……

まゆしぃね、おばあちゃん子だったから、すっごく落ち込んじゃったの。

失語症みたいになっちゃって、最初は周りも慰めてくれたんだけど、

半年も続いたらみんなまゆしぃのこと気味悪がっちゃった。

たぶん、オカリンはまゆしぃを励ましたかったんだと思うんだけど、

でも、まゆしぃに話しかけたら、今度はまゆしぃがいじめられるかもって葛藤しててね。

それでもオカリンはまゆしぃを助けてくれたの。

『まゆりは人体実験の人質だ』って言って。

自分が"鳳凰院凶真"っていう悪役になれば、まゆしぃがいじめられることは無いって考えたんだと思うなー。

実際にね、学校だと『オカリンがまゆしぃをいじめてる』って話になって、まゆしぃはいじめられなかったのです。

つらかったし、悲しかったけど、オカリンとまたお話できるようになって本当によかったなー。


・・・


まゆり「今はね、オカリンに守られてばかりのまゆしぃじゃなくて、オカリンを支えてあげたいなーって思う人質なのです」

ダル「オカリンはちっちゃい時からずっと大切なモノを守るために戦ってきたんだお」

まゆり「そのために長くてキレイだった髪もバッサリ切っちゃって……」

紅莉栖「そうだったの……グスッ……」

ダル「それで、鳳凰院凶真を名乗ったり、ダサダサファッションをするようになったのは中学の途中かららしい」

まゆり「私服の学校だったんだよー」

紅莉栖「そっか……男の子に好かれないように」

ダル「だけど、途中からだったから周りは素のオカリンのこと知ってたし、体育の時とか研修旅行でどうしてもオカリンの魅力があふれ出ちゃってさ」

ダル「それに、今じゃ信じられないけど、表向きには言動もそこまで厨二病じみてなかったっぽいし。設定だけは考えてたらしいけど」

ダル「だから、男子は『自分好みの女に開発してやる』って息巻いて、ストーカーまがいの行為までされて」

ダル「んで、結局女子全員からいじめられるっていう小学校の二の舞になっちゃったってわけ」

紅莉栖「壮絶ね……」

まゆり「でも女子高には進学しなかったんだよね」

ダル「それだけは負けた気がするって。オカリン、負けず嫌いでいつも無茶するからひやひやもんだお」

紅莉栖「レズの巣窟に行かなくてよかった……」

ダル「その後、遠くの高校に入学して、僕と出会うことになるんだお」

まゆり「言動をマッドサイエンティストにすれば、男の子は自分に興味を無くすかもって言ってたなー」

ダル「あれは入学式の日だった……」


・・・

2007年
□△高校 入学式
昇降口


タッタッタッ ドンッ

ダル「痛っ! な、なんだお」

倫子「待って! いや、違った、えっと、貴様、待てぇ!」

ダル「そんな前髪垂らして顔隠してるから前見えなくて人に当たるんだお」

倫子「そんなことはどうでもいい!」

倫子「貴様、いかにもな風体だが、趣味はなんだ? どうせPCゲーかガンプラあたりのオタクだろう!」

ダル「オ、オタクをバカにすんな! いずれオタク文化は世界に羽ばたくんだお!」

ダル「(なんなんこの言葉も見た目も汚らしい女子……いくら女子とまるで縁が無い僕でもちょっと頭に来ちゃったのだぜ……)」

倫子「そんなことはどうでもいい! 貴様のその見るからに女にモテなさそうな肉体が気に入った!」



倫子「オレの、右腕になれっ!!!!」



ダル「はいィ?」

倫子「具体的にはいついかなる時もオレの側に居てくれるだけでいい! いや、それこそが崇高な任務だと言っても過言ではない!」

ダル「何言ってるん」

倫子「……オレは常に某国の女スパイどもから命を狙われているのだ。故に、女子が生理的に話しかけたくない男ナンバーワンの貴様こそ、オレの仲間にふさわしい!」

ダル「つかさ、まともに顔を見せて話さないようなやつの偉そうな頼みをこの僕が聞くと思ってるん? バカにするのもいい加減にしろっつーか」

倫子「……貴様の言う事も一理ある。ほら、前髪を上げてやるから、オレの顔を見ろ」

倫子「これならオレの顔を男どもに見られずに済むと思ったが、思いのほかうっとうしかった……明日からはやめよう……」ボソボソ

倫子「その代わり、その瞬間から貴様はこのオレ、狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真の右腕になるのだぁ!」ファサッ

ダル「……ぬぁぁぁぁっ!?!?!?!?」

倫子「ククク……オレの恐ろしいスカーフェイスの恐怖に身悶えるがいい……」


ダル「ってこれ、傷かと思ったらシールじゃん」ビリッ

倫子「ひゃん!」

ダル「……ん? き、君って、もしかして、超美人……!?」

倫子「バ、バカなことを言うな! オレは、狂気のぉ……」

ダル「もしかして、エロゲ的展開キタコレ……? 我が世の春がきた……?」

倫子「お、おい。話を聞け……」

ダル「お、お、お、オッケーだお! 右腕でも左腕でもなんでもやるおっ!!」

倫子「……まあいい。一応言っておくが、オレはこれから3年間貴様と常に一緒に居るつもりだが、男女関係には死んでもならん!」

ダル「ぐはぁ!……だ、男女関係はなくてもギャルゲーのイチャラブ展開が……」

倫子「では選ばせてやろう。このオレと3年間ともに過ごすがオレを性的な目で見ない、あるいはオレにずっと無視され続ける。さあどっちだ」

ダル「一生ついていきます! ムッハー」

倫子「これだから男は……」


倫子「鳳凰院凶真だ、よろしく」

ダル「橋田至だお」

倫子「ならば、貴様のコードネームは『ダル』だな」

ダル「いきなりニックネーム呼びとか……もしかして、彼氏のフリをしろってこと? 某少女漫画的展開?」

倫子「断じて違う。いいか、オレは一切男に興味が無く、貴様のような残念な人間にしか興味が無い残念な子なのだ。そういうことにしろ」

ダル「イマイチわからんのだが……どうしてそんなにかわいいのに、女の子らしさ皆無なん?」

倫子「オレが目立つと、"ヤツら"がオレを狙ってくる……」

ダル「(神は二物を与えず、ってことなんかな)」

倫子「……もう、友を失うのも、友に裏切られるのも、こりごりだ」

ダル「ん……なんだかよくわからんけど、君が真剣に悩んでるってのだけはわかったお」

ダル「僕でいいなら、力になってあげるのだぜ?」

倫子「ダル……!!」

ダル「そ、そ、そ、その代わり、鳳凰院氏のリコーダーをペロペロさせて欲しい件」ハァハァ

倫子「オレが貴様にHENTAI行為を強要されたと校長に直訴したらどうなるかな、ククク……」

ダル「じょ、冗談だお……」


・・・



紅莉栖「HENTAIは死ね」

ダル「それブーメランっしょ」

まゆり「ようやくオカリンは楽しい学校生活を手に入れたのです。2人は学校のみんなが暖かい目で見守る名コンビだったんだよねー」

紅莉栖「なるほどね……それで今の岡部が出来上がった、と。納得した」

紅莉栖「ところで橋田さん。本当に岡部にHENTAI行為はしなかったんでしょうね?」

ダル「しなかったし、これからもしないお」

ダル「ホント言うとさ、僕、こんなアレだから、いついじめられてもおかしくなかったんだよね」

ダル「それがなかったのはやっぱりオカリンのおかげなんだお」

ダル「オカリン、仲間思いだから、僕になにかあるとすぐ助けようとしてくれたし。助けられたことはほとんどないけど」

ダル「だから、オカリンは仲間なんだお。もう性的な目で見ることもないお」

まゆり「あれれー? でもこの間、タケコプカメラーさんが背の高い木に引っかかっちゃった時……」

倫子「ダル……肩車……ムニャムニャ」zzz

紅莉栖「それで? 岡部のふとももの感触は良かったかしら?」ゴゴゴ

ダル「……正直たまりませんでした」


紅莉栖「そして今ではこの発明サークルをやってると」

まゆり「多分だけど、オカリンは信頼できる仲間が欲しかったんじゃないかな」

ダル「それでいて、友達が居ないような人には自分と同じ思いをさせたくないとも思ってるのだぜ」

紅莉栖「あっ……それで私、ラボメンに……」

まゆり「ク、クリスティーナちゃんが友達少ないとか、そういうことじゃ……」

紅莉栖「私の名前、"紅莉栖"ね。ううん、実際私に友達と呼べるような人は居なかった。少なくともこの7年は」

紅莉栖「唯一仲良い先輩が居るけど、どこかでライバル視されてて、親友っていう感じじゃないし……」

紅莉栖「だから、メンバーに入れてくれるってだけでも嬉しかった」

ダル「ま、ラボはオカリン中心に回ってるからさ、オカリンの魅力が伝わってるなら僕たちも仲良くなれると思われ」

紅莉栖「正直タイムマシンなんて信じたくないけど……これからよろしく、2人とも」

まゆり「もちろんだよー♪」




倫子「どこにも……行かないで……グゥグゥ」zzz



今日はここまで

第2章 空理彷徨のランデヴー♀

2010年7月30日金曜日
未来ガジェット研究所


倫子「んぅ……寝てしまったのか。ふぁぁ、ダルしか居ないしシャワー浴びよう」

シャー

倫子「(昨日はあれから色んなものをスーパーで買ってきて実験したが全部変化は無かった)」

ゴシゴシ

倫子「(火事対策も、質量増大対策も施した。ラボメンに危害が加わってはいけないからな)」

ワシャワシャ

倫子「(紅莉栖がタイムマシン実験そのものに否定的だったのには少し驚いた)」

倫子「(オレが『ダメか?』というと手伝ってはくれたが、あまり無理強いするのも良くないな)」

キュッキュッ フキフキ

倫子「ダルー。上がったぞー。こっち見たら切り落とすー」

ダル「ぐごぉぉっぉぉ……んぐぁっ」zzz


倫子「ポストは相変わらずゴミ広告ばかり……ん? なんだこの手紙の束? 15通は同じのが投函されているな……」


――――――――――――――
横暴飲今日まちゃんへ♪

萌郁だよ♪ ごめんね、昨日跡をつけちゃった(^^;)
今日まちゃんはこのビルで暮らしてるの?
どうしても私、ダルさんっていう人のことと、ジョンさんのこと、教えてもらいたいなv(^.^)v
画像は削除した(気づいたら消えてた!?)から、お願い♪
・・・
――――――――――――――


倫子「…………」ゾワワァ

倫子「ダルっ! 起きろ、ダルっ! "奴"に、殺されるぅ!!」ガタガタ

ダル「な、なんぞっ!?」


ダル「これはひどい」

倫子「今までもストーカーされたことはあったけど、まさかラボに来るなんて……」ウルウル

ダル「うーん、一度正面切って話し合ってみた方がいいんじゃね? 相手は女性だし、なんなら僕も同席するお」

ダル「ただIBN5100について知りたいだけっぽいから普通に話してもいいし」

倫子「我がラボを守るためには致し方なしか……こうなったら軍門に下らせてやるっ!」

倫子「今に目にモノを見せてくれよう! この鳳凰院凶真を挑発したことを後悔するがいいっ! ふぅーはははっ!」

ダル「待つおオカリン。こういうのは時間を置いて、ホームで交渉するのに限るお」

ダル「2日後にメイクイーンにメールで呼び出すけどおk? その間、連続ポストはアク禁って伝えとくから」

倫子「う、うむ。店側に迷惑がかからなければいいが……」

ダル「(フェイリスたん、オカリンのことなら喜んで協力してくれるんだよね)」


倫子「そう言えばダル、PCで何を見ていたのだ?」ピョコン

ダル「ああこれ? LHC<ラージハドロンコライダー>たんだお。SERNが持つ粒子加速器なのだぜ」

倫子「SERN……」

ダル「建設当初はブラックホールが生成されて地球がヤバイ! みたいな話もあったけど、ブラックホール生成はできなかったってSERNが公式で発表してる」

倫子「(10年前の書き込みでは、タイターのタイムマシンはミニブラックホールを使ったものだったはず)」

倫子「(そして2034年にタイムマシンを完成させたのはSERN……火の無いところに煙は立たない……)」

倫子「(それに、なぜオレの周りの奴らは揃いも揃って10年前のタイターを忘れている?)」

倫子「(SERNは何かを隠している……一流の研究機関がふざけた真似を……)」

倫子「……ククク、オレを誰だと思っている。すべては運命石の扉<シュタインズ・ゲート>の選択だよ。エル・プサイ・コングルゥ」

ダル「(このスイッチは……)」

倫子「SERNにハッキングしろ」

ダル「あーはいは……はぁっ!?」


ダル「それはひょっとしてギャグで言ってるん?」

倫子「オレはいつも本気<マジ>であるっ!」ドヤァ

ダル「(このドヤ顔には逆らえないお……)」

ダル「それで、報酬は?」

倫子「助手のムレムレ黒タイツを心ゆくまでくんかくんかさせてやろう」

ダル「うはwwwみwなwぎwっwてwきwたwww」

バターン!!

紅莉栖「ムレてないからっ!! ってゆーか勝手にそんなわけのわからん取り決めを……」

倫子「おーっと助手よ、今ダルはスーパーハカーモードなのだ。オレたちは席を外そう」

ダル「ハカーじゃなくてハッカーな」

紅莉栖「えっと、それって、もしかして私たち2人でお出掛け……!?」トゥンク

倫子「いちいちオレにときめくんじゃない……」

芳林公園


倫子「クリスティーナ、これを見て欲しい」スッ

紅莉栖「これって、@ちゃんじゃない」

倫子「今、ジョン・タイターを名乗る自称未来人がオカルト板に降臨してるわけだが、これについて助手の意見を聞きたい」

紅莉栖「ふむん……まず、ダイバージェンスとかいうものの変動を認識できない点がイミフ。だったらそもそもどうやって計算してるのって話だし」

紅莉栖「それに、この議論はタイムマシンの存在前提で話してるけど、そこが嘘でしたってなったらただの思考実験になっちゃうわ」

倫子「やはり助手はタイムマシンには否定的か」

紅莉栖「もう少し考えさせて……自分の中で色々整理してから前に進みたいの」

倫子「……もし嫌なら無理をしなくてもいいのだ」

倫子「ただの友達で居てくれてもいいのだから、我がラボのタイムマシン研究に関わる必要は……」

紅莉栖「だから、もう少し考えさせてって言ってるでしょ!! あっ……」

倫子「……」

紅莉栖「ご、ごめん、そんなつもりじゃ……」


倫子「ふぅーははは! オレは知的好奇心を満たしたいだけだっ!」

倫子「だが、それは同時に危険を孕んでいる……無論、"機関"にやられる鳳凰院凶真ではないがな」

倫子「故にっ! オレは、いつまでもお前を待つ! この記憶のある限りな……」

紅莉栖「岡部……」

倫子「さらばだ。いずれまた、運命が2人を導くだろう……」スタスタ

紅莉栖「あっ……」

紅莉栖「(この後特に予定ないから岡部とおしゃべりしてたかったけど今ここで呼び止めたら格好がつかなくなるだろうから声がかけづらい……!!)」

大檜山ビル前


鈴羽「あっ! ちょーどいいところに! 鳳凰院凶真!」

倫子「オレの真名を呼ぶとは……貴様は一体……?」

鈴羽「修理頼まれてたテレビ、直ったよ。今持っていこうと思って」

倫子「ああ、自称女好きのレズビアンか」

鈴羽「レ……ッ!? 違うよ! あたしは戦士だよっ!」

倫子「戦士? ネコとかタチとかいうそっち系の隠語か?」

鈴羽「隠語じゃなくて、そのままの意味だってば! もう、失礼しちゃうな」

倫子「ではなんの戦士なのだ」

鈴羽「もちろんっ! ワルキューレの女騎士を守護する、約束されし時空の戦士ッ!」

倫子「(こいつもフェイリスタイプか……)」


倫子「バイト戦士よ、お前、友達居るか?」

鈴羽「それ、あたしのこと?……仲間なら居た、かな。遠いところに、だけど」

倫子「上京してきたのか」

鈴羽「まあ、そんなところ」

倫子「(そういう状況ならば、心細く思う時もあるだろう)」

倫子「どうせこんな寂れた店のバイトなどヒマなはずだ。時間を持て余すようだったら2階に遊びに来てもいいぞ。今はダメだがな」

鈴羽「え、いいの? これでヤツラからワルキューレの女騎士――レジェンド――を守りやすくなった……」

倫子「誰から何を守るって?」

鈴羽「闇の機関、SERNは唾棄すべき連中だよ! キミみたいなかわいい子を常に狙ってるんだから!」

倫子「(う゛っ、こいつ、相当に面倒くさいぞ!)」


鈴羽「それじゃ、テレビ運ぶね。うんしょ……おっとっと!」

倫子「お、おい! 大丈夫かっ」ダキッ

鈴羽「ひゃああ/// あ、ありが、ありがとう、ございます、鳳凰院様……」カアアッ

倫子「無茶をするな。あと敬語はやめろ」

鈴羽「レジェンドと抱擁しちゃうなんて……」ドキドキ

倫子「(さっきからレジェンドとは何のことだ、と質問しかけてオレはやめた。どうせ"設定"なのだろう、聞いたところで話が長くなる)」

倫子「一応言っておくが、オレに好意を寄せるのは構わん。オレだって同姓からだろうが嬉しいものは嬉しい」

倫子「(人間関係の問題から言えばむしろ同姓からの方が嬉しい)」

鈴羽「えっと……?」

倫子「だがな、それは自己責任だ。何かあったとして、オレのせいにされてはたまったものではない」

鈴羽「あ、いや、そんなつもりじゃ!」

倫子「無茶をするなと言っている。一緒にテレビを持とう。元々持ってもらうのも申し訳ないくらいだ」

鈴羽「あ……」

倫子「ほら、そっちを持て。せーのっ」

鈴羽「う、うん。ありがとう……///」

未来ガジェット研究所


鈴羽「はい、これで取り付け完了」

倫子「配線まで悪いな」

鈴羽「キミの力になれるなら……って、何この手紙の束?」

倫子「ああ、それか。オレは今粘着質ストーカーに追われているようでな……」

鈴羽「ス、ストーカー!? ワルキューレの女騎士の情報を引き出そうとするなんて、SERNの犬め……許さないッ!!」

倫子「待て待て! こいつはIBN5100について知りたいだけらしい! オレとは関係ない」

鈴羽「IBN5100ッ!?」

倫子「知ってるのか?」

鈴羽「あ……ええっと、ほら、掲示板で話題になってたじゃん? それでさ……」

倫子「なんだそれでか。しかし、どうしてレトロPCなんかを欲しがるものか」

鈴羽「そりゃ、隠された機能があるからでしょ?……って知り合いが言ってたんだけどさ、あはは」

倫子「……そう言えば2000年のタイターもそんなことを言っていたな。プログラミング言語がどうとか」

鈴羽「何かあったらすぐに言ってね! あたしがキミを守るから!」

2010年7月31日土曜日
未来ガジェット研究所


倫子「(あれからダルは夜通しPCと向かい合っている)」

倫子「(少し休んだらどうだ、と声をかけたが)」

ダル『がんばれ♡ がんばれ♡ って言ってくれたらもっと頑張れるお』

倫子「(とほざいたので耳をつねってやった)」

倫子「(SERNの陰謀を暴いた暁には何か褒美をやらねばならんな)」フッ

倫子「それはそれとして、例のタイターが掲示板上でオレにメールを送るよう求めてきた……」

倫子「オレのメルアドを聞く奴にろくな奴はいなかったが、これは今までとは毛色が違う気がする」

倫子「奴はオレの正体を知らない。ならば、純粋に10年前の書き込みの情報が知りたいだけなのか?」

倫子「……@ちゃんでメルアドを晒すという危険行為に及んでまでオレと連絡を取りたいと言うのだ。これは奴からの挑戦と受け取るべきだろう」

倫子「さて、なんとメールを送るか……」


To ジョン・タイター
Sub 10年前の件

ジョン・タイター様

初めまして、鳳凰院凶真と
申します。
この度はご連絡ありがとう
ございました。

未来人の件で、いくつかご
質問があります。
IBN5100の隠された機能
・・・
等々、10年前のジョンの予
言は、いくつか的中しませ
んでした。
それはなぜでしょうか。

長文失礼致しました。何卒
よろしくお願いいたします。

鳳凰院凶真




倫子「これなら失礼はないよな……」ドキドキ


まゆり「トゥットゥルー♪ お風呂上がりのオカリン、いい匂いだねー♪」ダキッ

倫子「入ってくるなり抱き着くなっ!」

まゆり「やっぱり髪下ろしてる方がかわいいよー」クンカクンカ

倫子「ええい、嗅ぐな! そんなことより、こんな朝早くからどうしたのだ?」

まゆり「2人が2日連続でラボに缶詰ってスズさんから聞いたからね、差し入れ買ってきたよー」

まゆり「じゃーん! おでん缶。まゆしぃからのプレゼントだよー!」

倫子「おおっ! ごくろうまゆり! さすがラボメンナンバー002、その名に恥じぬ活躍だな」ヨシヨシ

まゆり「えっへへー。オカリンに撫でられると幸せいっぱいになるのです♪」

倫子「お前はご飯を腹いっぱい食べても幸せそうだが?」

まゆり「腹が減ってはなんとやらだよーオカリン」

倫子「まゆりはどれだけ食べても太らないからな」

まゆり「そ、そんなことないよー」

倫子「すべて胸に行っているのだろう! 羨ましいやつめ!」ワシッ

まゆり「ひやあっ! 急に、揉むのは、だめだよぅ……」アワアワ

ダル「ビクン! ビクビク……」

倫子「ダルが百合フィールドに反応して痙攣している……」


まゆり「でもハッキングって悪いことなんだよね? あんまり危ないことはしてほしくないのです……」

倫子「スーパーハカー、いやハッカーとしての腕前を使わなければ、ダルはダルではなくなってしまうからな」

まゆり「そっか……ダルくんがダルくんじゃ無くなるのは嫌だなぁ……」

ダル「おほっ、キタキタキター、いいよいいよ、おら、観念して俺の前に全部晒しやがれっつの、素っ裸にされてる気分はどうだよ、ヒャッハー」

まゆり「ダルくん全開だねー」

倫子「ダル、やったのか?」

ダル「ミッションコンプリート」キリッ

倫子「そ、そうか! さすが我が右腕! 褒美として、マユシィ・ニャンニャンに『あーん』してもらっておでん缶を食べる権利をやろう」

ダル「マジで? なにそれ勝ち組すぐる」

まゆり「ダルくんおつかれさまー♪ はい、あーん」

倫子「ラボメンには常に仲良くあってほしいからなっ」エヘン

用事ができたので今日はここまで
短くてすまん


倫子「それで、世界滅亡計画の証拠は見つかったか?」

ダル「まだ繋がっただけ。ここまで来れば後は楽勝だけど」カタカタ

倫子「ならば、疲れているところ悪いがさっそく調べてくれ。きっとあるはずなのだ、陰謀の影がっ!」キラキラ

ダル「倫子ちゃんに期待の眼差しを送られたら断れるわけないのだぜっと」カタカタ ッターン

倫子「倫子ちゃん言うなっ!」

まゆり「あのね、他人のメールを勝手に見るのって、すごくごめんなさいって気持ちになる……」

倫子「……オレはとっくに悪の道に踏み込んだマッドサイエンティスト、なんの良心の呵責も感じないのだ、ふぅーははは!」

倫子「責任はすべてこのオレが取る。ダルやまゆりに罪を被せるつもりはない」

ダル「うほっ。僕、オカリンになら掘られてもいい」

倫子「どんな状況かわからんが、それは死んでもお断りだ」

まゆり「オカリンが捕まっちゃうの、嫌だよ……」

倫子「法という正義は所詮国家の暴力。自分を守るのは結局自分自身でしかない」

倫子「(オレは警察が大嫌いだ。助けを求めたところで鼻の下を伸ばすことしかできない無能……ッ!)」

倫子「鳳凰院凶真は悪であり、法を隠れ蓑にする世界の巨悪と戦わなければならないのだ。オレを信じろ、まゆり」

まゆり「うん……」


ダル「LHCの実験レポートが見つかったっぽい」

倫子「タイムマシンのヒントはあるか?」ピョコン

ダル「……んー、どのメールにも"タイムマシン"って単語は出てこないけど、"Zプログラム"って単語がこの数か月で100カ所以上も使われてる」

倫子「ブラックホールの生成実験か?」

ダル「添付ファイル開くお……『なお、ミニブラックホール生成ミッションはすでに確立しているため報告は省く』……んん?」

倫子「やはりSERNはLHCを使ったミニブラックホール生成に成功していたのだっ! その先はっ!」

ダル「えっと……『実験結果:エラー。ヒューマンイズデッド、ミスマッチ』」

倫子「……どういう意味だ」

ダル「……人が死んだ、って意味じゃね」

倫子「人が……死んだ……!?」


倫子「(お、落ち着け鳳凰院凶真。奴らに恐れを気取られでもしたらそれこそ一大事だ)」プルプル

倫子「(そもそも、ここまで来たらもうどこまで行こうとも変わらぬはず。ならばSERNの悪事を暴くのが先ではないか)」ドキドキ

ダル「……オカリン。今ならまだ引き返せるお」

倫子「気休めを言うな。そうでないことぐらいはオレでもわかる」

ダル「う、うん」

倫子「オレはお前の腕を信じている。足がつくヘマなどしていないのだろう?」

ダル「なんだか照れるのだぜ」

ダル「ちなみにさ、今見てたのがSERNの一番でかいサーバーなんだけど、実はもう1個、妙なデータベースがあったんだよね」

倫子「妙、とは?」

ダル「バグってた……いや、バグっつーか、一応プログラムのコードらしきものは出てくるんだけど……」

ダル「そもそもプログラムとして成立してないんだよね。ただ、そんな誰にも見れないものがなんで置いてあんのかは気になる」

倫子「たしかに、気になるな」

ダル「ちょっと解析してみるお」カタカタ


・・・

ダル「ここまで来れば余裕だと思ってた時期が僕にもありますた……orz」

倫子「一度しっかり休め。ほら、シャワーも浴びろ。臭うぞ」

ダル「げっ、マジで? さすがに頭働かんくなってきたし、身体洗ったら寝るわ」

pppppp

倫子「ん? タイターからメールか……」



From ジョン・タイター
Sub あなたは本物ですか?

あなたは非常に興味深い存在です。
特にIBN5100に隠された機能があ
る事は私は誰にも話していません。
もちろん、SERNに狙われる前にワ
ルキューレの女騎士には教えるつも
りですが・・・


倫子「かなりの長文メールで、その大半は自分の使命についてうっとうしく書かれていた……」

倫子「そう言えば下のバイトも似たような話をしていたな。ちょっと窓から声をかけてみよう」


倫子「おーい、バイト戦士。ホントにIBN5100の隠された機能を誰にも話していないかー!」

鈴羽「もちろん! メールにだってそう書いたじゃん! あたしが鳳凰院凶真を裏切るわけないよ!」


倫子「アヤツのメルアドをオレは知らんのだが……まんまとオレのカマかけ<サイズハング>に引っかかったな、おっちょこちょい未来人め」

倫子「このジョン・タイターが阿万音鈴羽なのはほぼ確定だが、そんなことはともかく……」

倫子「とりあえずプログラムコードを写メってタイター(自称)に送っておこう」ピッピッ

倫子「ダルっ! 今シャワー室か!? 開けるぞっ!」ガラッ

ダル(全裸)「いやん! っつか誰得だよこの状況!」

倫子「もしかすると例のプログラムの正体、判明するかもしれん!」

ダル「ど、どうやって?」クルッ

倫子「ま、ま、ま、前を隠してから振り返れバカモノっ///」

ダル「おっと、タオルタオル……」

ppppppp

倫子「……丁度メールの返信が来た。これを見ろ!」


From ジョン・タイター(たぶん阿万音鈴羽)
Sub それをどこで?

それは、1975年以前に使われていた
IBN独自のとても古いプログラム言語
であり、解読するにはIBN5100を使
うしかないでしょう。



ダル「……わかったけど、あのバイトの子の言葉を信じるん?」

倫子「ダルよ、わかっていないな。奴は未来から送られたエージェント」

ダル「自称な件」

倫子「つまりこれは、時空操作の因果が生み出した必然……ッ! これこそが運命石の扉<シュタインズ・ゲート>の選択だっ!」

ダル「いやさすがにありえないっしょ。それじゃタイムマシンが存在することになっちゃうわけで……あっ」

倫子「ククク……タイムマシンなら、"そこ"にあるではないかっ。いや、正直タイムトラベルだの未来人だのはこの際関係ないのだ」

ダル「うーん……でもSERNが独自のデータベースを構築してる意味もわからん罠」

倫子「外部からのクラッキングに対する最高のセキュリティ方法はなんだ?」

ダル「そりゃスタンドアロンだろ―――ハッ」


倫子「そこに眠るのは、SERNにとって最重要機密のはずだっ!」

倫子「まゆり、ダル、2人とも聞けっ! これより未来ガジェット研究所は緊急極秘作戦を発動させる!」

まゆり「なにかななにかなー」ワクワク

ダル「ちょ、今パンツ履くから待ってほしい件」

倫子「これは世界を陰から操る巨大な闇との戦いの第一歩となるだろう! 敵はSERN! 世界的な研究機関でありながら邪悪に魅入られた連中!」

倫子「ヤツらに先んじられる前に我らが出し抜いてやろうっ!」

『おおーっ!!』

まゆり「……外からスズさんの声が聞こえたね」

ダル「で、具体的には?」

倫子「……IBN5100を手に入れる。このアキバのどこかにあるというレトロPCだっ」

倫子「ダルは寝てろ。まゆりは……」

まゆり「ごめんね、オカリン。まゆしぃはバイトとコス作りがあるから」

倫子「む、そうであった。ならばやる気満々のバイト戦士と共に探すか」

大檜山ビル前


鈴羽「おっはー、鳳凰院凶真♪」

倫子「楽しげだな。何か良いことでもあったのか?」

鈴羽「えっへへー、あたしの戦士としての使命が1つ達成された、って感じかな」

倫子「(こいつ、自分からジョン・タイターだと正体をバラしてしまったことに気付いてないのか……仕方ない、しばらく付き合ってやろう)」

倫子「少し話があるんだが、いいか?」

鈴羽「いつでもいいよ、キミと接触する時間を確保するのは特級の任務だからね」

倫子「一応言うが、オレのために無理だけはするなよ」

鈴羽「う、うん。わかってるよ。それで、話って?」

倫子「IBN5100はどこにある」

鈴羽「…………」

鈴羽「…………」

鈴羽「うぐぅぅっ……ひっく……ぐすん……失敗したぁぁぁ……」ポロポロ

倫子「なッ!?!?」


鈴羽「ごめんねぇ、鳳凰院凶真ぁ……あたし、この時代に寄ってる場合じゃないよねぇ……」ウルウル

倫子「なんの話だ!? というか何故泣く!?」オロオロ

鈴羽「一応ね、時間を見つけてはこのMTBに乗ってIBN5100、というかIBN5100について知ってる人を探して回ってるんだけど……全然見つからなくて……」

倫子「(こいつも未来のためにSERNの陰謀を暴きたいんだよな……本当かどうかはわからんが)」

倫子「そうとは知らず、済まなかった」

倫子「オレも今日からIBN5100を探すことにした。つまりそれは、必ず見つかるという事だ」

倫子「だから泣くな、バイト戦士よ」

鈴羽「うん……見苦しいところを見せちゃってごめんね」

倫子「そう言えば、お前の知り合いに例の隠し機能について知っている人物が居るんだったな? そいつに連絡は取れないのか?」

鈴羽「……無理」

倫子「何故?」

鈴羽「もう死んじゃった」


鈴羽「死んじゃった……何年も前に……」ウルッ

倫子「……重ねて詫びよう。済まなかった。大切な人だったのか?」

鈴羽「……」コクッ

倫子「……オレでよければ胸を貸そう」

鈴羽「鳳凰院凶真ぁ……」ダキッ

倫子「つらい時は泣け。泣き止んだら、また自転車を漕ぎ出せばいい」ヨシヨシ

鈴羽「キミって、良いやつだね……」グスッ





紅莉栖「ああーーーーーーーーッ!!!!!!!」


倫子「」ビクッ!!



紅莉栖「は な れ な さ い よ ッ!!!」

鈴羽「ちょっと!? いきなり何すんのさ!」

倫子「お、おい、落ち着け助手」オロオロ

鈴羽「助手って、鳳凰院凶真の助手……? そんな人、居たかな……」

紅莉栖「白昼の往来で何抱き合ってるのよ!! 百合なの!? ねぇ百合なの!?」

倫子「嫉妬は見苦しいぞ、クリスティーナよ!」

紅莉栖「ええ、どうせ嫉妬ですよ! で、この娘は誰なの!?」

鈴羽「あたしは阿万音鈴羽、鳳凰院凶真を守る戦士だよっ!」

紅莉栖「厨二病乙! ラボメンでも無いのにちょっかい出さないでくださいー!」

倫子「小学生か」

鈴羽「そういうキミはだ……れ……ッ!?」

倫子「あー、この百合女はだな……」

鈴羽「その顔……マキセクリスッ!!!!!!」ギロッ

倫子「ヒィッ!?」ビクッ

紅莉栖「ッ!?」


倫子「コワイコワイコワイ」ガクガクブルブル

紅莉栖「あなたが私の名前を科学雑誌読んで知ってくれてるのは嬉しいけど、そんな親の仇に会ったみたいな顔しないでよ……」

鈴羽「どうしてコイツがラボに……まさか、スパイ……鳳凰院凶真に近づいて、暗殺……」ブツブツ

倫子「バイト戦士は急にどうしてしまったというのだ……」ワナワナ

紅莉栖「バイト? いや、私にもわからないわ……」

天王寺「おうこらおめえら! 営業妨害してんじゃねぇ! 散れ散れ! バイトは仕事しろ!」

倫子「ひぇっ、ミスターブラウン! 助かった、クリスティーナ、ここは退散するぞっ!」ギュッ

紅莉栖「えっ、あっ、そんな、私の手を握って走り出すなんて……///」

鈴羽「マキセコロスマキセコロスマキセコロス……」ブツブツ

ラジ館前


倫子「ふーっ、ふーっ……ここまで来れば大丈夫だろう」

紅莉栖「なんなの、あの人。私も大概だってのは自覚してるけど」

倫子「貴様と鉢合わせるまでは元気いっぱい健康的でジョン・タイターな少女だったのだが……」

紅莉栖「よくわからんが。ってことは私のせいってこと? 2人が抱き合ってるのを邪魔しただけであそこまで怒るかな……」

倫子「……もしかしたらお前が忘れているだけで、鈴羽になにか嫌な思いをさせたことがある、とか」

紅莉栖「な、無いわよ……って言い切れないのがつらいところね」

紅莉栖「仮にあの人のお父さんが科学者だったとして、私の論文のせいで学会を追われた、って可能性も無くはないし」

倫子「……貴様は修羅の世界で戦っていたのだな」

紅莉栖「物のたとえだけど……まあ、実際大変よ。私みたいな若い女が先進的な論文を書いて、何人の恨みを買ってるかわからない」

紅莉栖「嫌がらせもいっぱいされたしね。でも、そんなことでへこたれる私じゃない」

倫子「強いのだな」

紅莉栖「そんなこと、ないけど……」

倫子「強い女はオレは好きだぞ」

紅莉栖「きゅ、急に口説かないでよ……ドキドキしちゃうじゃない……///」

倫子「(そんなつもりはこれっぽっちも無かったが……こいつの前では偉そうにしている方が良さそうだ)」


紅莉栖「そういえば、例の電話レンジはどうなった?」

倫子「かっこかり」

紅莉栖「へ?」

倫子「だから、(仮)をつけろと言っている」

紅莉栖「……ああ、ごめん。そうよね、岡部がせっかくつけた名前だもの、ちゃんと呼ばないともったいないわよね」

倫子「助手にはヤンデレ属性があるかも知れないな……」ボソッ

紅莉栖「え、なに?」

倫子「い、いや!? なんでもないぞっ!?」


倫子「実験に進展はない。助手の天才的頭脳があれば、あるいは……」

紅莉栖「…………」

倫子「……なぁ、オレに話してくれないか。お前がタイムマシンについて、何を悩んでいるのか」

紅莉栖「たいしたことじゃないの。ただ、トンデモ科学には抵抗がある……父と同じ失敗は繰り返したくない」

倫子「父?」

紅莉栖「父はタイムトラベル研究に執着するあまり学会から追放に近い扱いを受けた……ッ!」ギリリ

倫子「ヒッ……お、落ち着け、顔が人殺しのソレだぞ……」

紅莉栖「……ごめん。感情的になった」

倫子「……父親想いなのだな」

紅莉栖「別にそんなんじゃないわよ……」シュン

倫子「(この顔……父親との間に何かあるのか?)」

倫子「……無理にラボメンに誘って迷惑かけたな。もう二度とラボに来なくていい」

倫子「ラボメンナンバー004は永久欠番としておく。この番号は、ずっとお前のものだ」

紅莉栖「えっ……」

紅莉栖「…………」

紅莉栖「…………」





紅莉栖「な゛ん゛て゛そ゛ん゛な゛こ゛と゛い゛う゛の゛ぉ゛ぉ゛っ゛!!!!!」ポロポロ


倫子「」ビクッ!!


紅莉栖「待ってくれるってぇ……待ってくれるって言ったのにぃ……」グスッ

倫子「い、いや、家族の問題があるならオレが無理強いさせるわけには……」

紅莉栖「私は倫子ちゃんと一緒に研究したいぃぃぃぃっ!!」ダキッ

倫子「倫子ちゃん言うなっ! あと離れろっ!」ンググ

紅莉栖「同世代の日本人のかわいい女の子で理系で話が合っておもしろそうな研究やってるラボで研究したいぃぃぃぃっ!!」ギュゥ

倫子「わ、わかった!! 気が済むまでラボに居てくれ!! 貴様はラボメンなのだからな!!」

紅莉栖「ホ、ホント!? 私、ラボに居ていいの!?」パァァ

倫子「良いと言っている! だからひっつくなーっ!!」ジタバタ


萌郁「あっ……今日ま、さん……(こんなところで会えるなんて偶然だね!)」

倫子「はなれ……ひぃぃっ!? ストーカー女っ!?」プルプル

紅莉栖「えっ、ストーカーですって! ちょっと、あなた岡部に何したんですか!」

萌郁「岡部……? (あれ、本名は岡部さんって言うのかな?)」

倫子「明日ケリをつけるまではコンタクトを取ることを禁じたはずだ!」

倫子「それを自ら破るとは……貴様、わかっているのだろうな!?」ガタガタ

萌郁「ここに来たのは偶然……(なんか私嫌われてるっぽいー><。)」

紅莉栖「明日ケリをつけるって、どういうこと?」

倫子「情報取引を明日、メイクイーン+ニャン2で極秘に行う密約を交わしたのだが……」

紅莉栖「私も行く」

倫子「即決か!」

紅莉栖「早くここから離れましょ。何されるかわからないわ」ギュッ

倫子「あ、おい、ちょっと、手を離せっ!」タッタッタッ

萌郁「…………(行っちゃった。明日、教えてくれるかなー?)」

2010年8月1日日曜日
メイクイーン+ニャン2


紅莉栖「なにこの店……これがメイド喫茶か……」

まゆり「お帰りにゃさいませお嬢様♪ お連れ様がお待ちですにゃん」

倫子「今日はやけに客が多いな」

ダル「午後からフェイリス杯、えっと、雷ネットABのイベントがあってさ」

ダル「ここに居るのはその待機組ってわけ。みんなオカリンの味方だお」

倫子「それでこの日を選んだのか! さすが我が右腕!」

フェイリス「待つニャ! 凶真はホントに無血開城するつもりニャ!?」

フェイリス「フェイリスの魔力はいつでも解放限界180%だニャ!」

倫子「お前の手を汚させるような真似はしない。ただ、オレが帰らなかったら……その時は、頼んだぞ」

フェイリス「凶真ァ~! 帰らないなんてイヤだニャ! 絶対、ぜ~ったい生きて帰って来てほしいニャァ~!」ウルウル

倫子「なに、その時は地獄の門番と交渉してでもお前の元に戻って来てやるさ。だから心配するな」

フェイリス「ニャウゥ~///」

紅莉栖「…………」チッ

ダル「(オカリンの売り言葉に買い言葉癖、なんとかならんかな……)」


萌郁「…………(知らない人が多くて怖いなぁ)」

倫子「待たせたな、ストーカー。まず言っておくが、ここに居るのは全員オレの仲間だ。妙な真似をしたら……」

萌郁「あなたが……ダルさん……? (うわ、すごいソレっぽい)」

ダル「あ、はい」

倫子「お、おい。オレの話を……」

萌郁「…………(FBの指令だから頑張らなくちゃ!)」ポチポチポチポチ ピロリン♪

倫子「なんと素早いケータイさばきなのだ……その動き、閃光の指圧師<シャインイング・フィンガー>の名がふさわしい……」

ダル「ん、メール? 『IBN5100について知ってることを教えてほしい』?」

倫子「教えろと聞かれて教えるアホがどこに居るか。貴様は交渉術のコの字も知らんようだな」

萌郁「…………(この人、せっかく美人なのにどうしてこんなしゃべり方なんだろう。って、モエカもヒトのこと言えないぞ^^ おいおい♪)」

倫子「そもそもお前はなぜIBN5100を探しているのだ。まずはそこを話せ」

萌郁「…………(正直には言えないよー><。)」ポチポチ ピロリン♪


ダル「またメール? えー、『編プロの仕事で、秋葉原の都市伝説を追ってるから』……?」

フェイリス「嘘ニャ」

萌郁「っ!? (な、なんでわかったの!?)」

倫子「ふん、二流め。動揺し過ぎだ」

萌郁「……ッ!! (かまかけられたぁー! がーん!(´;ω;`) )」ギロッ

ダル「うおっ、急に目つきが怖いお!」

フェイリス「お嬢様~? ここはみんなの憩いの場ですニャン」

フェイリス「和を乱そうとするなら、それなりの対応をするのでよろしくニャン♪」

萌郁「…………(可愛いメイドさんだけど、只者じゃないオーラがすごいなぁ^^; )」

倫子「さあ、観念して本当の理由を話せ。でなければ貴様は永遠にIBN5100の情報を手に入れることはできない」


萌郁「…………(一応FBに本当の理由言っていいか聞いてみよっ)」ポチポチポチポチ

倫子「さっきから一体誰にメールしているのだ?」

ダル「誰かに確認取ってるって感じだけど……」

萌郁「(やっぱりダメでした><; )……理由は、言えない」

紅莉栖「いい加減虫が良すぎるわよ、あなた。それとも何、IBN5100の情報が手に入らないと家族でも殺されるの?」

萌郁「家族は……居ない……(FBが本当のお母さんだったらよかったけど)」

紅莉栖「あっ……ごめんなさい」

倫子「ふむ……理由は言えない、か。だが、貴様も相当に差し迫った状況のようだ」

倫子「ならば選択肢をやろう」

倫子「一つ目は、我が軍門に下り、IBN5100の情報を外部へは報告しない。すべて己の知的好奇心のためだけに行動するというなら、教えてやらないこともない」

萌郁「…………(軍門って、仲間になるってこと?)」

倫子「二つ目は取引だ。オレが知りたいのはタイムマシン研究やSERNに関する情報。その機密を持って来れば、取引に応じないこともない」

倫子「さあ、どうする」

萌郁「…………(大学生のサークルかー、青春って感じだね!)」ポチポチポチ ピロリン♪


ダル「えっと……」

『両方対応すれば絶対教えてくれるよね♪ 私、岡部さんの仲間になりたいなー。もちろん、内部情報は守るよ! それから私、SERNについてすごいウワサ知ってるんだー……』

倫子「なんだと!? ケータイ貸せ!」

『……SERNは「ラウンダー」っていう名前の非公式で私設の特殊部隊を持っててね、メールでメンバーを募集したりしてるんだよー……』

倫子「なぜそんなことを知っている!?」

萌郁「……私にも、メールが来たから(ここは秘密ってわけじゃないから大丈夫だもん!)」

紅莉栖「なんだ、イタズラか。迷惑メール、不幸の手紙の亜種ね」

倫子「助手よ、そう決めつけるのは早計だ。火の無いところに煙は立たない……」

倫子「ククク、やはりSERNはそこまでして知られたくない秘密を保有しているようだな」

倫子「無論、その情報をバラしたということは、指圧師はそのラウンダーの募集に応じなかったのだな。まあ、そういうことだろう」

萌郁「しあつ……? 私は……岡部さんの……仲間になりたい……」

萌郁「(もし友達になれるなら……ううん、私みたいな女の子じゃ嫌われちゃうよね……今までもそうだったし……)」

フェイリス「…………」

倫子「素晴らしい情報だ、桐生萌郁! その功績を讃え、貴様をラボメンナンバー005に任命するッ!」

萌郁「……っ! (ホント!? やったー!! \(^o^)/ )」

紅莉栖「ちょ、ちょっと! ホントにこの人信頼して大丈夫なの!?」

倫子「……ヤツの寂し気な目を見ろ。オレはあいつを放っておけない」ボソッ

萌郁「…………(でも、今までラウンダー以外に仲間なんて居なかったから、ちょっと不安だなぁ(+o+) )」

紅莉栖「……もう、何があっても知らないわよ」


倫子「ほら、ラボメン同士、握手だ」スッ

萌郁「…………(仲間だもんね!)」スッ

ギュッ

萌郁「……ッ!? (な、なにこの感じ! やわらかいっ!)」ドキッ

萌郁「…………(そう言えば私、もう何年も人間の肌に触れたことなかったんだった)」

倫子「よし、次はまゆり!」

まゆり「よろしくねー、萌郁さん」ギュッ

萌郁「よろ……しく……(まゆりさんはドキドキしないのに、どうして岡部さんの時だけ?)」

倫子「ダルを飛ばしてクリスティーナ」

ダル「3次元に希望を持っていた時期が僕にもありますた……」

紅莉栖「牧瀬です。私のナンバーは004、よろしくね」ギュウッ!!

萌郁「い……痛い……(なんでこの人強く握ってくるのー!? ><。)」


萌郁「それで……IBN5100は……」

ダル「んじゃ教えるけど、どうもIBN5100はSERNのデータベースにあったイミフなコードを解析できるっぽい。ソースはジョン・タイターなんだけどさ」

倫子「そこには間違いなくタイムマシン研究に関する何かが隠されている……ッ!」

萌郁「タイター……タイムマシン……(そうだったんだ! 私、末端だからSERNのこと全然知らないなぁ><。 )」

紅莉栖「えっ、嘘、あんたたちハッキングしてたの!?」

ダル「足がつくようなヘマはしてないのだぜ」

紅莉栖「そういう問題じゃ……でもそれ、根拠はあるの?」

倫子「IBN5100を入手すれば、すべてが解明される」ドヤァ

紅莉栖「結果主義ですかそうですか……ハァ」

萌郁「まだ、手に入れてない……?」

倫子「目下捜索中だ。もっとも、もはや鳳凰院凶真の手の届くところまで来たがな! ふぅーははは!」

萌郁「手に入れたら……教えて……(岡部さんって頼りになるお姉さんって感じがする(^^♪ )」

倫子「いいだろう」ドヤァ


萌郁「メルアド……教えてくれて……ありがとう…… (これでいっぱいお話できるね♪)」

倫子「だが、できるだけメールではなく直接話す練習をするのだぞ」

ピロリン♪

倫子「言ったそばから……」

『頑張るね(^^♪ それじゃ、かわいいラボのリーダーさんのためにも早速探しに行ってきまーす! 待っててね♪ 萌郁』

倫子「……この二重人格ぶりだ」

紅莉栖「私でさえ岡部のメルアドを教えてもらってないのに……ぐぎぎ……」

倫子「……後で教えるから、ハンカチを噛むのをやめろ?」

萌郁「それじゃ……(みんなー、バイバーイ! (@^^)/~~~ )」

倫子「外を出歩く時は気を付けろ。機関に狙われている可能性があるからな」

萌郁「…………(心配性だなー、岡部さん。なんだかFBみたい……FBじゃないよね?)」


フェイリス「いってらっしゃいませ、モエニャンお嬢様♪……」


フェイリス「……凶真、ちょっと耳を貸すニャ」ヒソヒソ

倫子「どうした? 異世界の電波でも受信したか?」ヒソヒソ


ダル「オウフ……またフェイリスたんとオカリンの固有結界が出来上がってるお」

紅莉栖「なにあれ」

まゆり「厨二病耐性の無いクリスちゃんは近づかない方がいいと思うにゃー」

紅莉栖「くっ……岡部と楽しく会話するためには厨二病を発症せねばならんのか……!」


フェイリス「実は……凶真にだけ特別に教えるけど、フェイリスが子どもの時、柳林神社に奉納したのニャ」

倫子「は? 何を」

フェイリス「……世界を混沌に陥れるマスターアイテム、IBN5100」

倫子「なん……だと……!!」

フェイリス「ホントはあんまり人に言いたくニャいんだけど……戦友<とも>の凶真を信じて教えるニャ」

フェイリス「パパの遺言……ううん、パパの大学時代の先生の遺言だったんだニャ」

倫子「遺言?」

フェイリス「遺言には続きがあったニャ……『いつかこれを必要とする若者が現れるから、それを快く貸してあげてほしい』」

フェイリス「小さい頃のフェイリスにはニャんのことかわからなかったけど……これって、モエニャンか凶真のことだと思うニャ」

倫子「……ククク、まさに女神の導き。これこそ運命石の扉<シュタインズ・ゲート>の選択だっ!」

フェイリス「だけど……モエニャン、たぶん、どこかで嘘を吐いてたニャ」

倫子「なに?」

フェイリス「モエニャンが凶真と仲良くなりたいってのは本当みたいニャけど……気を付けた方がいいニャ」

倫子「ふむ……わかった。他でもないフェイリスの忠告だ、心しておこう」

フェイリス「ふニャァ~、マジな話をすると疲れるニャ」

倫子「台無しだっ!」

柳林神社


倫子「(IBN5100を求め、フェイリス杯に出場するダルとバイト中のまゆりを残し、助手と2人で神社を訪ねた)」

るか「あ、岡……凶真さん。こんにちは。こちらの方は……?」

倫子「助手だ」

紅莉栖「鳳凰院ちゃんの助手、牧瀬紅莉栖です。あなたは?」

倫子「ちゃん付けするなっ!」

紅莉栖「私のことまともに紹介しなかったお返しよっ」ウフフ

倫子「助手のくせに生意気だぞっ!」

紅莉栖「(かわいい)」

るか「喧嘩は……やめてください……」グスッ

紅莉栖「(この娘もかわいい)」

るか「えっと……ボクは、凶真さんの弟子……漆原るかです」

紅莉栖「弟子?……ギリギリ勝った」ッシ

倫子「全方向に喧嘩を売っていくスタイルをやめろ?」


倫子「ルカ子、父上に伝言があるのだが、いいか」

るか「あ、はい。ちょうどお父さんもいるので」

紅莉栖「だったら直接話せばいいじゃない」

倫子「それが出来れば苦労はしない……ルカ子の父上は、悪い人ではないのだが、オレとまともに会話ができないのだ」

紅莉栖「えっ、それってどういう……」

栄輔(ルカパパ)「やあ、鳳凰院さん。いつもるかが世話になっていますね。ところで巫女服に興味は無いかな?」

倫子「あ、生憎ですが、オレはこの白衣が気に入っているので……」

栄輔「そうですか。では忍者服はどうですか? もちろんくノ一仕様ですよ」

倫子「い、いえ、だから、あの……」

紅莉栖「HENTAIだ……」

栄輔「おや、あなたもるかのお友達ですか? ふむ、ブレザーもいいですが、セーラー服も似合うかもしれませんね」

紅莉栖「ひっ!?」ゾワワァ

るか「お、お父さん、やめてよぉ……」グスン


・・・

栄輔「……なるほど。それでうちの神社に来たのですか」

倫子「そ、そういうことです」ゼーッ ゼーッ

紅莉栖「二言目にはコスプレの話……もう、疲れた……」

栄輔「秋葉さんから預かっていますよ。今持ってきましょう」

倫子「よかった……倉庫に取りに来てくださいと言われたとして、オレはあの人と共に暗がりに行く自信がなかった」

紅莉栖「生物的に危機を感じるわね……」

るか「本当にすみません……」

栄輔「よいしょ。重たいですが、このダンボール箱に入っていますよ」

倫子「どれ……これが、IBN5100っ!」

紅莉栖「ホントにあるなんて……」

倫子「ふぅーははは! 我、ついにアキバの都市伝説を解明せりっ!」

栄輔「ふむ。ドロンジョ様も似合うかもしれない……」ブツブツ

紅莉栖「お、岡部! こんなとこ早くずらかりましょう!」

万世橋


紅莉栖「急いでたから手で運ぶことになっちゃってごめんね……」フーッ フーッ

倫子「い、いや、むしろ助かった。あの場は戦略的撤退が最善策だ」フーッ フーッ

紅莉栖「(腕がもう限界だけど、お見合い状態で接近しててラッキーかも……)」ニヘラ

倫子「顔が緩んでいるぞ。運ぶことに集中しないとオレまで転んじゃうからやめろ?」

紅莉栖「(ああ、腕の感覚がなくなってきて、神経が岡部と一体になってるような錯覚が……)」デヘヘ

倫子「お、おい! 助手! しっかり歩け! 転んじゃうからーっ!!」

今日はここまで
軽い気持ちで始めたのに長くなりそうで失敗した失敗した

乙・プサイ・コンガリィ

フェイパパの恩師って鈴羽だよね?
鈴羽が飛ぶ前にIBN5100手に入れたらタイムパラドックスらない?

レスありがと。ゆっくり頑張る

>>175を原作で確認したけど、祖父のパラドックスと同じで世界線理論ではパラドックスにならない。つーか原作・アニメ通りの展開
この世界線上の橋田鈴さん、2010年鈴羽、2017年生誕鈴羽は全部別人だから問題ない

指摘サンクス、手探りでやってるから設定ミスありそうでビビってるので助かる

大檜山ビル前


鈴羽「あっ……」

紅莉栖「げっ……」

倫子「お、お前ら、今はやめろ……むしろバイト戦士よ、オレを助けてくれっ」プルプル

鈴羽「わかった。牧瀬紅莉栖を殺せばいいんだね?」

倫子「うぇいうぇい! 何をどうしたらそうなった! コレを運ぶのを手伝ってくれぇ!」

天王寺「ったくうるせぇやつらだ……俺が運んでやるから引っ込んでろ」

紅莉栖「あっ、店長さん! ありがとうございます」

倫子「正直、腕が限界だ……ミスターブラウン、頼みます」

天王寺「よっと。全く重てぇなぁ、何が入ってんだ?」

倫子「聞きたいか? ククク……そのパンドラの箱の中には、世界に変革をもたらす封印されしチカラが……」ドヤァ

天王寺「やっぱり聞くんじゃなかった。取りあえず2階に運び入れとくぞ」


鈴羽「……それで、あのダンボール箱の中には何が入ってるの?」

倫子「IBN5100だ、と言ったらどうする?」フフン

鈴羽「あいび……嘘ッ!?!?」

紅莉栖「目の色が変わった?」

鈴羽「どこっ!? どこにあったの!?」ガシッ

倫子「お、落ち着け。柳林神社だ」

鈴羽「じん……じゃ? なんたってそんなところに……」

鈴羽「でも、よかった……IBN5100はあったんだ……"あたし"は、成功したんだ……」ウルウル

鈴羽「ってことは、多分"あたし"も成功する……うぐぅぅぅっ……」ポロポロ

紅莉栖「今度は泣き出した!? ど、どうしたの、バイトさん?」

鈴羽「……これを見つけたのは君たち2人なんだよね。あたし、牧瀬紅莉栖のこと、勘違いしてたかも」

紅莉栖「へっ?」


鈴羽「このままいけばSERNの野望は砕かれる……なら、この世界線の牧瀬紅莉栖はタイムマシンの母になることもない……」

鈴羽「あとはワルキューレ初期メンバーの生命の確保だけ考えれば……いや、牧瀬紅莉栖が寝返る可能性も……ブツブツ」

倫子「おい、鈴羽? 大丈夫か?」

鈴羽「う、うん! 大丈夫大丈夫!」

紅莉栖「意味がわからない……あなたが私に何を勘違いしてたのか、説明してほしいのだけど」

鈴羽「んー……えっと、君が鳳凰院凶真を独り占めしようとしてたのが許せなくてさ、あはは」

紅莉栖「はあ?」

鈴羽「ホントそれだけなんだ! 深い意味はないよ」アセッ

倫子「オレを取り合って仲たがいなどもってのほかだ。そんなこと、このオレが許さんっ」ムッ

紅莉栖「……ごめんね、岡部。阿万音さん? もごめんなさい、確かに私の行動は良くなかった」

紅莉栖「はい、仲直りの握手」スッ

鈴羽「あー……」

紅莉栖「ん? ほら、これで喧嘩は終わりにしましょ」ズイッ

鈴羽「ひっ!」ビクッ


倫子「安心しろバイト戦士。クリスティーナは確かにクソレズだが見境なしに手を出したりはしない。無論、鈴羽だって可愛い女の子であることは違いないが――」

紅莉栖「クソレズ言うなっ!! さすがに泣くわよっ!?」

鈴羽「い、いや、その、なんていうか……牧瀬紅莉栖は、生理的に無理」

紅莉栖「生理的に……」ガクッ

鈴羽「ち、違うんだ! えっと、顔を見ただけで吐き気がする、というか……」

紅莉栖「あは、あはは……」

鈴羽「あ、あのね! 今の牧瀬紅莉栖は悪くないよ! 悪いのは将来性であって……」

紅莉栖「orz」チーン

鈴羽「ああもう! なんて言ったらいいの!?」

倫子「これはひどい……」

未来ガジェット研究所


紅莉栖「私ってヒトに嫌われて当然よね……生理的に無理よね……だからパパにも、アハハ……」

ダル「心ここにあらずって感じで帰ってきたと思ったら、ソファーに体育座りして独り言をつぶやき始めた件」

まゆり「クリスちゃん、元気出して」ギュゥ

紅莉栖「うぇぇ……ぐすっ……まゆりぃ……」

倫子「今はただ抱きしめてやれ……バイト戦士の奴も悪気は無さそうだったが、何故あんなことを……」

まゆり「でもね、まゆしぃそろそろ帰らないとだから、オカリンがバトンタッチしてあげて?」

紅莉栖「(えっ……ってことは、岡部が私を慰めてくれる!?)」ドキドキ

倫子「勿論、そういうことならやぶさかではない。クリスティーナは大事なラボメンだ、落ち込まれていては研究が捗らんしな」

紅莉栖「(まさか、そんな、ホントにっ!?!?)」ワクワク


~~~~~

倫子『紅莉栖、お前は強く美しい女性であり、可憐な少女でもある』ギュゥ

紅莉栖「(初めて名前で呼ばれた……はわわわわ……///)」

倫子『バイト戦士のアレは何かの間違いだろう。少なくともオレは、お前のことを嫌いになったりはしない』ナデナデ

紅莉栖「(わふぅ……///)」

倫子『今日は2人で重いものを持って疲れたな。今はゆっくり休むといい』

倫子『せっかくだ、膝枕をしてやろう。こういうのが好きなんだろう?』

紅莉栖「(いやっほぉぉぉっ!!!!!!)」

~~~~~


紅莉栖「えへへ……おかべぇ……」zzz

倫子「まゆりに抱きしめられて寝落ちするとは、かなり体力を消耗していたらしい。今はうーぱクッションを枕にソファーで寝転んでいるが」

ダル「なんか知らんけど、幸せそうな夢を見てるっぽい?」

倫子「悲しい夢よりよほど良い」フッ

ダル「つかさ、オカリンも結構そっちのケあるよな。いや? 僕は一向にかまわんのだが?」

倫子「ち、違うっ!! オレは盛った男が嫌いなだけであって、女が好きって訳じゃないもん!」アタフタ

ダル「ちょ、声でかいって。牧瀬氏起きちゃうお」

倫子「……それで、IBN5100の首尾はどうだ?」

ダル「電源と配線は取りあえず終わったけど、こいつの使い方覚えるのに時間かかりそう」

倫子「ふむ。ならばサーバ管理者のID探しを優先させてくれ」

ダル「オーキードーキー」

倫子「む? クリスティーナのやつ、寝返りをうってソファーから落ちそうになっているな……」

紅莉栖「むにゃむにゃ……」zzz


~~~~~

紅莉栖「岡部……私もその、まゆりや阿万音さんみたいに、抱きついてもいい? いいよね!」

スカッ

倫子『…………』

紅莉栖「あ、あれ? どうして避けるの……?」

倫子『貴様、オレのことを"岡部"と呼んだか』

紅莉栖「えっ……で、でも、敬語とかさん付けはしなくていいって岡部が……」

倫子『違うッ!!』

紅莉栖「っ!?」ビクッ

倫子『オレは岡部ではないッ! 鳳凰院凶真だッ!!』

紅莉栖「お、大きい声出さないでよ……嫌いにならないで……」ウルウル

~~~~~


紅莉栖「凶真ぁ……凶真ぁ……」ジタバタ

倫子「泣きながらオレの真名を連呼するとは、どんな夢を見とるんだこいつは」

倫子「そうだ、指圧師に連絡を入れておこう。『ブツは手に入れた。我がラボを訪ねてこい』……と」ポチポチ

ドテーン!!

紅莉栖「ふごっ!? あ、あれ? 凶真は?」パチクリ

倫子「オレはここだ。思いっきり床に身体を打ちつけたようだが、大丈夫か?」

紅莉栖「……もしかして、夢?」

倫子「脳科学者のくせに夢と現実の区別がつかんとは滑稽だな。ほら、手を貸すから起き上がれ」スッ

紅莉栖「夢でよかった……ありがとう、岡部」

倫子「そこは真名で呼ぶべきではないのか?」

紅莉栖「別になんでもいいでしょ、鳳凰院ちゃん」

倫子「ちゃん付けするなぁ!」


紅莉栖「ってもう夜!?」

倫子「今日はもう遅い。また明日ラボに来い」

紅莉栖「……今SERNにハッキングしてるんでしょ? 1マイクロ秒でも早く真実を知りたい」

ダル「とかなんとか言ってオカリンと寝泊まりしたいだけなんしょ? わかります」

紅莉栖「っさいわね! あんただってそうでしょ!? 羨ましいのよ男のくせに岡部と寝泊まりするなんて!」

倫子「オレの寝込みを襲わないと約束するなら構わん」

紅莉栖「そんなに信用されてないか私……この白衣借りるわよ」バサッ

倫子「おお―――」

紅莉栖「やっぱり落ち着くなー、白衣」ニコッ

倫子「素晴らしいっ!!!!!!!」ギュッ

紅莉栖「ちょっ―――!? (急に両手を握られた!?)」


倫子「まゆりもフェイリスもルカパパも、揃いも揃って白衣を否定することしか無かったが、助手は白衣の良さをわかっているのか……っ!!」ウルウル

紅莉栖「(か、かわいすぎる……なんだこの天使……)」

倫子「ダルに何度言ってもヤツは着てくれなかったっ! しかし助手は、オレが言う前に自分から着てくれたっ!」キラキラ

倫子「その白衣はお前にプレゼントしよう。あるいは、お前に巡り合うべくして巡り合ったのかもしれないっ」

倫子「やはりオレの目に狂いはなかったっ! クリスティーナ、お前は、最高の―――助手だっ!」ダキッ

紅莉栖「(あっ、やばい、また意識が……これも夢かな……)」ポーッ

倫子「……お、おい。どうした? 起きてるか? 帰ってこーい」ペチペチ


倫子「(意識を取り戻した助手は一通り電話レンジ(仮)実験に挑んだ、が、芳しい成果は得られなかった)」

倫子「ここに泊まるのはいいが、親に連絡しなくていいのか?」

紅莉栖「……父親とはかれこれ7年は会ってない。母親はアメリカ。私は今は御茶ノ水でホテル暮らし」

倫子「ホテル暮らしだとぉ!? お前、セレブだったのか……」

紅莉栖「そういう訳じゃないけど」

倫子「では、父親の件について聞こう。何度も引き合いに出すからには相談に乗ってほしいのだろう? そうだろう?」

倫子「お前はオレの助手だ。助手の悩みには乗ってやらねばなっ」フッ

紅莉栖「……無意識のうちに助けを求めてたのかな。気づいてくれてありがとう、岡部」

紅莉栖「私は7年間、この問題を独りで抱え込んでた。なんとかしようと思っても、自分ではどうにもできな――――」

ダル「キターーーーーーーッ!!!!!!」

紅莉栖「」ビクッ!!

倫子「」ビクッ!!


倫子「ダル、やったのかっ!?」ピョコン

ダル「ミッションコンプリート。これで視姦し放題だぜひゃっほう!」

倫子「早速タイムトラベル理論についての情報があるか調べてくれっ!」キラキラ

ダル「オーキードーキー……うほっ、見つけた! って、jpegかよ、翻訳ソフト使えねーじゃん!」

ダル「こっちのゼリーマンズレポートってのも気になる罠……うーん、どうしよう」

紅莉栖「……『時空の支配とそれに基づく歴史の破壊、言い換えれば過去から未来までを含む"委員会"による完全なる理想郷を実現することは、21世紀に向けてのSERNの存在意義となるだろう』」

ダル「あそっか! 牧瀬氏英語できるんじゃん!」

倫子「わーい♪ でかした助手っ! お前がアメリカに留学したのも、すべて今日このときのためだったのだなっ!」ピョンピョン

紅莉栖「私は運命論者じゃないけど……そういう運命もあっていいかも」ニヘラ


紅莉栖「なになに……『Zプログラムは極秘共同プロジェクトであり、電磁波研究と同じく"300人委員会"から承認を受けた最優先研究事項である』」

倫子「Zプログラムの具体的な内容は書かれていないのか?」

紅莉栖「ん……っと、あった。これは……ッ!?」ガタッ

倫子「ど、どうした?」ビクッ

紅莉栖「……『Zプログラムでは、高エネルギーの陽子・陽子衝突を用いた、時空間転移実験を行う』」

倫子「それはつまり―――タイムトラベル実験っ!!」

ダル「ちょ……とりあえず窓閉めるお」

紅莉栖「40年近く前から、世界中の科学者を欺いてきたって言うの?……パパが学会から追放された理由って……ッ!!」

倫子「世界はあらゆる欺瞞で満ちている。お前たちが思っているほど、美しくはないのだよ」

ダル「オウフ……子どもの頃から見えない敵と戦ってたオカリンが言うと説得力が違うぜ……」


紅莉栖「……『プログラム第4段階、人体実験』」

ダル「……マジで?」

倫子「…………」ゾクッ

ダル「な、なあオカリン。前に書いてあったのは、実験結果エラー。ヒューマンイズデッド、ミスマッチ」

倫子「そ、そ、そ、それって……」ワナワナ

紅莉栖「岡部……」

ダル「オカリン……」

倫子「……だからと言って、この陰謀に見て見ぬふりをするのも後味が悪い」

倫子「ダル、ゼ、ゼリーマンズレポートを、さ、探してくれ……」ブルブル

ダル「オ、オーキードーキー……」

倫子「た、ただし、クリスティーナ。お前はもう帰れ」

紅莉栖「えっ―――」


倫子「ゼリーマンズレポート……イヤな予感がする。お前はその若さで『サイエンス』誌に論文が載るほどの天才、有望な将来を捨てる必要はない」

紅莉栖「もしかして心配してくれてる?」

倫子「当たり前だっ! お前はオレの助手だからな」

紅莉栖「岡部……」トゥンク

紅莉栖「気遣ってくれてありがと。でも帰らないわよ、この事実を世間に告発しないと」

倫子「ダメだっ! それは危険すぎる!」

紅莉栖「ここまで来てビビらないでよ! 私はSERNが許せない……」

倫子「これは遊びじゃないのよっ!……じゃないのだぞ」

紅莉栖「……分かった。告発はやめる。でも帰らないから。気になって眠れない」

倫子「後悔しないな?」

紅莉栖「しない。そういうあんたは震えてるじゃない。ほら、手」ギュッ

倫子「う、うむ……」


倫子「ダルはどうする? 覚悟はできているか?」

ダル「ま、僕はスーパーハッカーだし。このラボを守るくらい余裕っつーか」

倫子「よし、決まりだ。本作戦名は"業火封殺の箱<レーギャルンのはこ>"とする」

紅莉栖「なんで北欧神話?」

倫子「……カッコイイからだ」ボソッ

紅莉栖「(かわいい)」

ダル「(かわいい)」

倫子「ええい、まじまじとオレの顔を見るなぁ! ダル、作戦開始っ!」


ダル「それじゃ開くお……なんだろこれ、履歴書?」

紅莉栖「被験者リストね……それと、新聞の切り抜き?」

倫子「まさか、ゼリーマンズレポートの、ゼリーマンと言うのは……」

紅莉栖「……『超重力による無限圧縮、及びカー・ブラックホール内の特異点通過に耐えられなかったと思われる』」

紅莉栖「『身元不明の男の死体は全身がブヨブヨのゼリー状になっていた』……」

倫子「ゲル……バナ……ッ!?!?」フラッ

紅莉栖「ちょっと、大丈夫!? 岡部―――おか―――お―――……」



今日はここまで

第3章 蝶翼のダイバージェンス♀


2010年8月2日月曜日
未来ガジェット研究所


倫子「う、うーん……」

紅莉栖「(寝顔は、そりゃ可愛かったけど、つらそうな顔だった……)」

紅莉栖「おはよ。気分はどう?」

倫子「ああ……えっと、オレは昨日……?」

ダル「ゲル化人間を見て卒倒したんだお。覚えてる?」

倫子「ゲル化人間……うっ、おえっ」ウルウル

紅莉栖「大丈夫? トイレ行く?」

倫子「……思い出した。ヤツら、とんでもない実験を……うっぷ」

紅莉栖「ほら、一度吐いちゃった方がいいわ。肩貸すわよ」


倫子「(紅莉栖とダルはあの後SERNのタイムトラベル理論について調べたらしい)」

紅莉栖「SERNの理論はジョン・タイターの語ったものと同じだった……なんかはめられた気分」

ダル「だけどタイムトラベルの送り先が時間も場所もバラバラになってたんだよね。あとリフターの調整もうまくいってない」

紅莉栖「リフターってのはLHCの陽子衝突地点に置かれた変な装置のことね」

紅莉栖「ミクロ特異点の重力調整がうまくできていない。だから完全な裸の特異点を作れていない」

紅莉栖「その結果、あらゆる物質がフラクタル構造になってしまった……これでゼリーマンの出来上がりってわけ」

倫子「う、うむ……そろそろ慣れてきたぞ……」プルプル

ダル「(強がりオカリン……縮めて、つよがりん……)」


倫子「つまり、オレたちが先に電話レンジ(仮)を完成させれば、SERNを出し抜くことも可能というわけだ……!」キラキラ

紅莉栖「SERNでさえ完成できてないものを私たちで作れるとは思えないけど……」

倫子「なに、簡単な話だ。タイターは我がラボの階下に居る」

倫子「奴にタイムマシンを借りればいい。我ながら冴えているな」ドヤァ

紅莉栖「それってタイムパラドックスに……ならないわね。タイターの言う多世界解釈が正しいなら」

ダル「いや、だからそれ、自称だってば」

紅莉栖「それに、個人的に阿万音さんには近づきたくないし……」

ダル「ごめん、僕少し寝るお」

紅莉栖「私はもうちょっとSERNのレポートを読んでみる」

倫子「困ったものだな……」


まゆり「トゥットゥルー♪ うわー、おっもーい空気が漂ってるよ? 空気入れ替えるねー」ガララッ

倫子「いい機会だ、久々に円卓会議を開こうと思う」

倫子「(ラボメン全員が揃っていないのは残念だが……ちなみに萌郁から『今日は用事があるから、明日ラボに行くねー♪ 萌郁』とメールが入っていた)」

まゆり「かいぎなんて今までやったことあったかなー」

紅莉栖「アーサー王? さすがにちょっと無理があるんじゃないかしら」

倫子「…………」ウルッ

紅莉栖「そ、そうねっ! きっと私たちの心の中に円卓があるんだわ!」アセッ

まゆり「クリスちゃん、だいぶ慣れてきたねー♪」

倫子「とにかく、まゆりには今の状況を教えておく。お前を仲間外れにするわけにもいかないしな」


・・・

まゆり「……まゆしぃはね、オカリンを守るよ。その、こわーい黒服さんが現れてもね、人質パワーでやっつけちゃうのです」

倫子「フッ、期待しておこう。いずれにせよ、我がラボとSERNとの最終聖戦<ラグナロック>は避けられなくなった」

紅莉栖「こっちはまだ2回しか過去へメールを送れていないけどね。やっぱり電子注入がネックかしら……」

倫子「ところで、“過去へ送れるメール”では言いにくいな。名前を付けようではないか」

紅莉栖「どうせヘンテコな名前を付けたいんでしょ?」フフッ

まゆり「オカリンはね、自分で考えた名前を付けちゃう癖があるのです」エヘヘ

倫子「失敬なっ! ならばオレの名づけを発表しよう。その名も――」






倫子「時を超えた郷愁への旅路<ノスタルジアドライブ>ッ!!」ドヤァ






紅莉栖「(だ、だめよ……笑っちゃだめ……イミフな名前にこんな満足そうな顔、かわいすぎるけど……微笑ましく思ったら失礼……)」プルプル

まゆり「(クリスちゃんが笑いをこらえてる……)」


紅莉栖「い……いいんじゃ、ない、かしら……フフッ」

倫子「そうであろう、そうであろうっ!」パァァ

まゆり「でも、まゆしぃは長い名前は覚えられないよー」

倫子「仕方ない、ならば頭文字<イニシャル>を取ってNDとしよう」

紅莉栖「それだとわかりにくいわ。NDメール、ううん、もうNも取ってDメールでいいんじゃない?」

まゆり「じゃあ、Dメールに決定しまーす!」

倫子「それだと味気ないが……まあ、ラボメンが意見を出し合って決まったのなら良しとしよう」

紅莉栖「そうそう、ラボメンは大切にね」

倫子「フッ、知れたことを」


倫子「さて、今語るべきは、電話レンジ(仮)をタイムマシンとして使えるようにするにはどうしたらいいか、だ」

紅莉栖「……ねぇ岡部。どうしてタイムマシンを作りたいの? SERNを出し抜くためだけ?」

倫子「……だって、タイムマシン、使ってみたいんだもん」

まゆり「(かわいい)」

紅莉栖「(かわいい)」

紅莉栖「まあ、気持ちはわかるわ。誰もが抱く純粋な好奇心よね」

まゆり「まゆしぃもね、タイムマシンがあったら過去に行ってみたいな……そしたらおばあちゃんにちゃんとお別れを言いたいかも」

紅莉栖「えっと、ちゃんとお別れできなかったの?」

倫子「お前は。また土足でヒトの心を踏み荒らすつもりか」

紅莉栖「えっ?……あっ、ご、ごめんねまゆり!? 話したくないわよね……」

まゆり「……ううん、まゆしぃこそごめんね。変な空気にしちゃって」

倫子「謝るな。お前はオレの人質なのだから」ダキッ

まゆり「うん……」ギュッ


まゆり「怖いけど……今、ちゃんと言うね。そうしないと、まゆしぃの世界がまた暗くなっちゃいそうだから……」

紅莉栖「無理はしなくていいのよ?」

まゆり「うん、大丈夫。ありがと、クリスちゃん」

まゆり「実はね、おばあちゃんが死んじゃった日、まゆしぃは一緒にお団子をつくって食べようねって約束してたんだ」

倫子「初耳だな」

まゆり「だけど、まゆしぃはお友達に誘われてお祭りに出掛けちゃって……おばあちゃんとの約束を破っちゃった……」

まゆり「おばあちゃんとはいつでも会えるし、また明日でもいいねって……」ウルウル

まゆり「だけど、その明日はこなかったんだ……」グスッ

まゆり「おばあちゃん、一人暮らしだったから、倒れてから誰にも気づかれなくて、それで死んじゃったの」

まゆり「まゆしぃがきちんと約束を守ってたら、おばあちゃんは死なずに済んだのに……」

まゆり「今まで誰にもこのことは話せなかったの。まゆしぃがおばあちゃんを殺したんだって言われるのが、こ、怖く、て……」プルプル

紅莉栖「そ、そんなわけない! まゆりの、まゆりのせいなんかじゃない!!」

倫子「そんな考えはあの婆さんが一番望んでいない。まゆりは愛されているのだから」

まゆり「うん……ありがと、クリスちゃん。オカリン」

倫子「(そうか、それであの頃、恐怖やら自責の念やらでまゆりの心は遠く離れていたのか……)」


まゆり「暗い迷路からまゆしぃを助け出してくれたのは中学生のオカリンだったんだよ。えへへ、今もまた助けてくれたね」

倫子「オレたちはラボメンだ。互いを仲間として認め合う。一人で抱え込むことなど、この鳳凰院凶真が断じて許さん」

まゆり「うん……ラボメンで良かったー、えへへ」グスッ

紅莉栖「……やるだけやってみましょ、タイムマシン作り」

まゆり「あ、でもね、まゆしぃは別に、本当に過去に行きたいわけじゃ……」

倫子「フン、人質の分際でオレから離れて時空間移動できると思っているのか? その時はオレも同行しよう」

まゆり「で、でもでも~」

紅莉栖「ふふっ。一応言っとくけど、こういうのを机上の空論って言うのよ。マシンが完成してから心配しなさい」

まゆり「じゃあ、今は心配しなくていいの?」

倫子「無論だ。ふぅーはははっ!」

まゆり「そっかー。よかったー♪」


紅莉栖「それで、どこから取りかかればいいか……」

倫子「放電現象が起きるか起きないかはランダムだと思っているようだが、オレには仮説がある」

倫子「発生条件の再現だよ、クリスティーナ。オレたちは、最も単純で最も決定的な“条件”を見落としていた」

倫子「すなわち、発生時刻だっ!」エヘン

紅莉栖「あっ……ということは、12時頃か、18時頃! あるいは12時から18時の6時間ってとこかしら」

倫子「とにかく実験だ、試してみる価値はあるっ!」キラキラ

紅莉栖「岡部もたまには良いサゼスチョンを提供してくれるのね。関心関心」

倫子「たまには、は余計だっ! ほらダル、起きろ! 実験を再開するっ!」ゲシッ

ダル「ふごっ!? 美少女にお腹を蹴られるとか、我々の業界(ry」

紅莉栖「黙れHENTAI!」

まゆり「ぷよぷよのお腹が揺れてるねー」

大檜山ビル前


倫子「(やはり条件は時間帯だったようで、ゲルバナ実験もDメール実験も成功した。ククク、さすがは鳳凰院凶真……)」

倫子「(今はちょっと休憩中だ。オレとダルでコンビニに行ったのだが……)」

鈴羽「ちぃーっす。なんか朝から愉快そうなことしてる?」

倫子「おお、ジョン・タイターか、丁度いいところに」

倫子「実は今オレたちはタイムマシン実験をしているのだが、貴様のシボルエを見せてはもらえないだろうか」

鈴羽「へっ?……はぁぁっ!? あ、あ、あ、あたしがジョン・タイターなわけないじゃん!? 何言ってんの!?」

ダル「驚きすぎだろJK……つーかそう簡単に秘密バラしちゃっていいの、オカリン」

倫子「シマッター(棒) バイト戦士よ、今オレが話したことは内密に頼む。クックック……」

ダル「(ああ、そういうこと……)」

鈴羽「オーキードーキー! 時をかける戦士として、タイムマシンの秘密は死守するよ!」

倫子「おまっ! 声がデカいぞバカモノっ!」オロオロ

ダル「(未来人だってこと、隠す気あるんかな……)」


鈴羽「あと、店長がキミたちのタイムマシン実験について、揺れるしホコリが落ちてくるしで怒ってたよ」

倫子「なにっ!?……さすがに謝りに行かねばならないか」

鈴羽「そんな! ワルキューレの女騎士にそんな情けない真似はさせられないよ!」

倫子「はあ?」

鈴羽「既にあたしが綯を人質に取ることでキミたちの実験を黙認することを約束させておいたから! 安心して!」エッヘン

倫子「……綯は今どこに」

鈴羽「んー? ××の廃工場の中で眠らせてるけど」

倫子「ダルっ! 今すぐ小動物の救出に迎え! オレはミスターブラウンに全力で謝罪してくるっ!」ダッ

ダル「オ、オーキードーキー!」ダッ

鈴羽「レジェンドの作戦行動!? えっと、あたしはどうすればいいですか!?」キラキラ

倫子「貴様は目と口と耳を塞いでここから一歩も動くなぁっ!! うわぁん!!」

ブラウン管工房


倫子「(取りあえず綯の件は口八丁で乗り切った。バイトの話は冗談だったとして安心したようだ)」

天王寺「それで、岡部。おめぇらが上で何をやってようと知ったこっちゃねぇがな」

天王寺「このビルのオーナーは俺だ。このビルはな、俺にとっては大切なモンなんだ」

天王寺「俺が若い頃こっちに来てから母親のように面倒見てくれた、大切な人との思い出があってな……って、興味ねぇか」

倫子「い、いえ、そんなことは……」

天王寺「どうもお前の目付きや出で立ちはあの人に似ている気がしてならねぇ……そのせいでつい口が滑っちまった」

倫子「ほう? ということは、その人もマッドサイエンティストだったのでしょうね」

天王寺「マッドは余計だ。確かに白衣を着こなした大学教授だったが……」

天王寺「ともかく、コイツももう歳だからな。おめぇらがガタガタ揺らすと、壁にヒビでも入るんじゃねぇかと気が気じゃねぇ」

倫子「そのような大切なものだとは知らず、申し訳なかった。(床が少しへこんでしまったことは謝りづらい……)」

天王寺「わかってくれりゃいいんだ。岡部は言動は変だが、美人な上に根は良い娘で親御さんも―――」



……ガタガタガタガタッ!!!!



倫子「(ビルが揺れた。天井からホコリやらコンクリート片やらがパラパラと降ってくる)」

倫子「(助手よ……タイミングが最悪だぞ……)」

天王寺「…………」イラッ

倫子「(その時、ハゲ頭に青筋が立つのが見えた)」

倫子「ただでさえデカいマッチョマンとこのクソ狭い空間に居るだけでオレは生理的な恐怖を感じるというのに……)」ガクガク

倫子「(何より、この状況はオレの人生において最も忌々しい記憶を想起させる……)」ワナワナ

倫子「(もちろん、店長がオレに手を出すような下衆な男でないことは周知の事実だが、怖いもんは怖いっ!)」プルプル

倫子「ミ、ミスターブラウン! 我が名誉に懸けて今日はもう揺らさないと誓おう! さらばだっ!」ダッ

鈴羽「んん~~~~!! んん、んんん~~~~!!」

倫子「ええい、うっとうしい! 命令解除っ!!」

未来ガジェット研究所


倫子「クリスティーナ! 今すぐ実験は中止だっ!」

まゆり「ごめんねオカリン。まゆしぃのからあげを温めるついでにDメール実験をしようってなって……」

倫子「そ、そうか。だがせめてオレに報告をしてからだな……」

紅莉栖「メール見てないの? 5日も前に連絡しておいたのに」ニヤニヤ

倫子「わかるわけないだろぉ! というか、オレがミスターブラウンに怒られるのは真面目に勘弁してほしい!」ウルウル

紅莉栖「ご、ごめん。そんなつもりじゃなかった……」

倫子「……いちいち凹むな、助手よ。とにかく今日は、これ以上の実験は中止だ」ハァ

紅莉栖「うん、データは充分取れた。さすがに眠いし、シャワー浴びてゆっくり眠りたい」

まゆり「シャワーならここにもあるよ。オカリンはいつもここのを使ってるよねー」

紅莉栖「ホ、ホント!? ちょっと匂いを……は嘘で、ぺろぺろ……も違った、テイスティング……じゃなくて!!」

倫子「ダルも使ってるぞ」

紅莉栖「オロロロロロロロ!!!!」


紅莉栖「ホテルに帰ってシャワー浴びて寝るわ……」ガックシ

倫子「高級ホテルでセレブ気分のバスタイムか。オレも連れて行ってほしいものだ」

紅莉栖「だがことわ……断らないっ!! え、岡部、今なんてっ!?!?」ドキドキ

まゆり「まゆしぃも行ってみたいなー」

紅莉栖「まゆりも大歓迎よ!! ふ、ふふ、落ち着け栗悟飯……まだ笑うな……こらえるんだ……しかし……」デヘヘ

倫子「……また今度にしような、まゆり」

まゆり「オカリンがそう言うならー」

紅莉栖「ぐはっ!」ガーン


ダル「ただいま~。綯ちゃん氏は無事だお。鈴羽お姉ちゃんと遊んでるうちに寝ちゃったーとか言ってたからギリセーフっぽい」

倫子「それは良かった……もうイヤ……」

倫子「さて、ダルも帰ってきたところで、『過去を司る女神』作戦<オペレーション・ウルド>の実験成果について、この場で検討しようではないか」

ダル「オペレーション・ウルドってなんぞ?」

紅莉栖「Dメール送信実験のことでしょ」

倫子「いかにも。ふむ、助手とはかなり意志疎通が取れるようになってきたようだ……ククク」

紅莉栖「そろそろ素直に喜べないわね……大丈夫か私……」

紅莉栖「ともかく、実験の成果はあった。原理はまだわからないけど、取りあえず書き出してみる」


・・・

倫子「ふむ、最大で英文36文字、日本語文18文字しか送れない、というのは不便だな」

まゆり「ブラックホールの穴がきついんだと思うなー」

ダル「ま、まゆ氏。今のセリフ……」ハァハァ

倫子「ダル? 切り落とされたいか?」ニコッ

ダル「わおっ」キュッ

紅莉栖「おそらくSERNのタイムマシンと同じ原因ね」

紅莉栖「リフターの調整がうまくできてないから完全な裸の特異点を作れない。そのせいで36バイト+αしか送れない」

紅莉栖「そもそもリフターに代わるものがなんなのかすらわかってない」

ダル「でも、タイマーの1秒が現実の1時間になるっていう、いつへ送るかの調節ができるのを発見したのはすごくね?」

紅莉栖「とは言ってもこんなんじゃ物理的タイムトラベルなんて夢のまた夢よ。タイターの予言だと、あと24年かかるんだっけ」

倫子「確かに今のオレたちでは物理的なタイムマシンは無理かもしれんな。だが……」

倫子「オレたちはタイムトラベル実験に成功した。データを過去へ送ったのだ」



倫子「―――決して忘れるな。それだけは、オレたちの栄誉だ」


~~~


倫子「(ラボに居たメンバーはオレ以外帰宅の途に着いたが、しかし過去にメールを送れるとは改めて考えると夢のような力だ)」

倫子「(やはり宝くじでも当てるか。ラボの研究資金になるなっ! あるいは……)」


~~~


まゆり「(過去にメールを送るとしたら……おばあちゃんの約束を守るように送る?)」

まゆり「(……ううん、それだと、オカリンと今の関係じゃなくなっちゃう気がする)」

まゆり「(……オカリンといつまでも仲良くね、って送ろーっと♪)」


~~~


ダル「(過去に送れるメールか……やっぱりフェイリス杯での優勝だよな、フェイリスたんの手料理食べたかったお)」

ダル「(あるいは子どもの頃の僕に、もっと早くオタ道へ進め、って言うとか。あー、エヴァのTV放送をリアルタイムで観たかった)」


~~~


紅莉栖「(過去にメッセージを送ると世界はどうなるのかな。SFみたいに改変される?)」

紅莉栖「(そんなの非科学的すぎる……けど、変えられるなら、やっぱりパパとの関係……)」

紅莉栖「(ううん、あれがあったから今の私がある。否定はできない)」

紅莉栖「(……日本に居た頃の私に、岡部と友達になるよう送れば幼馴染属性が追加されるかしら)」ウフフフフフ

今日はここまで

レスありがとうございます
今回シリアス分、鬱分を投下します
思ったより重くなってしまったのですが許してください

2010年8月3日火曜日
未来ガジェット研究所


ピロリン♪


倫子「んー……もう朝か」


ピロリン♪


倫子「また鳴った? 誰からメールだ……って、指圧師から15通!?」


『今、秋葉原駅にいるの 萌郁』

『今、中央通りにいるの 萌郁』

『今、末広町交差点にいるの 萌郁』

『今、大檜山ビルの前にいるの 萌郁』

『今、ラボの扉の前にいるの 萌郁』

『今、あなたの目の前にいるの 萌郁』


倫子「……は?」

萌郁「…………」

倫子「どぅわああっ!?!? も、萌郁っ!! おどかすなっ!!」フーッ フーッ

萌郁「鍵、開いてた……(お邪魔してまーす(^^♪ )」

倫子「しまった……次からは気を付けなければ……」ドキドキ


萌郁「汗、びっしょり……(髪がしっとりしててセクシーだなー)」

倫子「誰のせいだ誰の!! あとでシャワーを浴びねば……」

萌郁「(私のせいー?><。 )……からだ、洗ってあげる」

倫子「べ、別にいい。そんな子どものような真似、できるか!」

倫子「(というか、その2つの大きなモノの迫力に勝てそうにない……羨ましいわけではないが)」

萌郁「(でもやっぱり申し訳ないし(T_T) )……遠慮、しなくていい。服、脱いで」グイッ

倫子「え? ちょ、うわ、やめろ! 脱がすなぁ! 引っ張るなぁ!!」ジタバタ

萌郁「(ボディーライン、綺麗……)ボディーライン、綺麗……」

倫子「ひんむかれた……うぅっ……」カァァ

倫子「一応確認しておくが、貴様にそっちの気はないよな?」

萌郁「……? (なんのことだろう(・・? )」

倫子「(どうやらノーマルだな……ひとまず安心だ)」フゥ

シャワー室


萌郁「……(うわあ、裸の岡部さん、すっごくキレイ……ホントに美人なんだなぁ(≧▽≦) )」

倫子「うぅっ……こっち見るな……」

シャー……

萌郁「髪、洗うね……(わざと髪の毛くしゃくしゃにするの、やめればいいのにー )」

倫子「ほ、ほんとにやるのか……ひゃん! も、もっとやさしく頼む……っ!」ビクッ

倫子「(というか、さっきから背中に当たっている……萌郁の、温かくて柔らかくて大きいソレが……)」

萌郁「ごめん……(はわわ! もっとやさしくしなきゃ!>< )」ワシャワシャ

倫子「あっ……う、うむ、上手だぞ。なかなかに気持ちいい」ポーッ

倫子「(子どもの頃を思い出すなぁ。人にされるのもたまには悪くないかも……い、いやいや、何を考えてるの私、じゃなくてオレは!)」

萌郁「そう……(喜んでもらえてよかったー!\(^o^)/ )」ワシャワシャ

倫子「(ああ……気持ちいい……篭絡される……)」ポーッ

未来ガジェット研究所
談話室


倫子「ふわぁ~……指圧師に指を使わせたらヤバイということがわかった。今後は気を付けなければ……」ポーッ

萌郁「(髪を下ろした岡部さん、かわいいな(^^♪ )」

倫子「それで、お前はIBN5100を見に来たのだな?」

萌郁「(そだよん♪)」コクッ

倫子「というか、昨日はどうして来れなかったのだ?」

萌郁「……取材」

倫子「(編プロのバイトとか言ってたな。それは嘘だったのでは……いや、仕事自体はしているのか)」

倫子「なるほど、わかったぞ。貴様、本当の狙いはこのオレの取材だなっ!?」ガタッ

萌郁「……? (えっと……?)」


倫子「ククク……世界を股にかける狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真への潜入取材となれば、ネタ的にはかなりおいしいだろう」ニヤニヤ

倫子「だがっ! それは断じて許すことができないっ! オレは各国のスパイ、そして“機関”に追われる身だからな……すまない、指圧師よ」フッ

萌郁「……IBN5100、見せて」

倫子「(まさかの真スルー……こいつ、なかなかできるな……)」スッ

倫子「……オレだ。奴はスキル持ちのようだ。……ああ、わかっている。その対処法を編み出したのは元々オレだということを忘れたのか? まあいい、そちらは頼んだぞ。エル・プサイ・コングルゥ」

萌郁「……? (誰と電話してるんだろう……まさか、FB!?)」ポチポチ 

ピロリン♪

倫子「(またメールか……『FB?』、だと? フッ、やられたらやりかえす。こちらもスルースキル発動だ)」

倫子「これが例のブツが入ったダンボールだ」

萌郁「……っ! (本物だぁ♪ やったよFB、ついに見つけたよ!(≧▽≦) )」ポチポチポチポチ 

ピロリン♪

倫子「……またメールか。『これを貸してほしいな 萌郁』」

倫子「こんなクソ重いものを1人で運ぶ気か?」

ピロリン♪

倫子「『運ぶのを手伝ってもらえたらうれしいな。いつでも身体洗ってあげるから、お願い♪ 萌郁』……」

倫子「くっ、姑息な手段を……この“姑息”が日本語として間違った使い方なのはわかっているが、この言い方がカッコイイのだ……じゃなくて!」

倫子「甘言に屈する鳳凰院凶真ではないわっ! そもそも外部への持ち出しは禁止だと言っただろう」

萌郁「…………(そうだけど、FBが! でも岡部さんもFBの命令で動いてるとしたら? うーん、私一体どうしたら(+o+) )」

倫子「それにこれは借り物だ。神社へ返さねばならん」

萌郁「……神社? (なんのこと?(・ω・) )」

倫子「元々これは柳林神社に奉納されていたもの。オレたちは一時的に借りているに過ぎないのだ」

萌郁「…………(そんなところにあったんだ!)」


萌郁「……どうしてもダメ?」

倫子「だめ」

萌郁「……お願い」

倫子「だめったらだめ」

ピロリン♪

倫子「……『そんなのずるいよー>< 萌郁』。ええい、小学生か!」

倫子「こんなことを言いたくはないがな、萌郁。IBN5100は我がラボにとってトップシークレット」

倫子「それを外に持ち出すという事は、背信、裏切り、仲間に対する最大の侮辱だ」

萌郁「…………(あっ、ご、ごめんね(T_T) )」

倫子「……だが、話せばわかるとはよく言ったものだ」

倫子「理由を言え。場合によっては力になってやらんこともないのだからな」

萌郁「ほ、ほんと……!」

倫子「当たり前だ。貴様は既にこのラボのメンバー、ラボメンなのだから」ニコッ

萌郁「……っ!(お、お姉ちゃんと呼ばせてくださいぃっ!///)」


萌郁「でも……理由は……言えない……」シュン

倫子「……そうだったな。ならば質問を変えよう。お前はコレを何に使うつもりなのだ?」

萌郁「……知らない」

倫子「使用目的を知らないだと? もしかしてコレクターに売りつけるのか?」

萌郁「…………」

倫子「黙秘は肯定と受け取るが、いいか?」

萌郁「……売りつけは、しない」

倫子「売りはしない、だと?……無償提供か」

萌郁「…………」

倫子「……それは、お前の人生にとって大事なことなのか」

萌郁「えっ……?」

萌郁「……かなり、大事……私の人生の、すべて……」

倫子「そうか……」


倫子「なあ、指圧師。お前、どうしてそんなに無口なのだ? それに珍妙なコミュニケーション方法を取るし……」

ピロリン♪

倫子「『口で話すの苦手だから 萌郁』」

倫子「……過去になにかあったのか?」

萌郁「…………」

倫子「言いたくないこと、か。だが、オレは貴女の人生を知っておきたい」

倫子「その虚ろな目に潜んだ真実を。双眸に映した世界の欺瞞を」

萌郁「…………」

倫子「いや、フェアじゃなかったな。オレが一方的に聞き出すばかりでは」

萌郁「……?」

倫子「座れ」ポンポン

萌郁「…………」スッ

倫子「……お前の口のかたさを信じて、オレの……いや、私の過去を話す」

倫子「仲間となる者にはいずれ話さなければならないことだ……」

倫子「女、岡部倫子の、人生最大の汚点にして、最悪の記憶……」

萌郁「…………」

倫子「わ、私はっ……」プルプル

倫子「……っ!」




倫子「中学の時、レイプされかけた……ッ!!」



萌郁「っ!?!?」


・・・

あれは中学2年の夏、まゆりが言葉を取り戻してすぐの頃だった。

私は浮かれていた。

まゆりと新しい関係を築けたこと、まゆりというかけがえのない友人を取り戻したことに。

あの頃、地元で私はちょっとした有名人で、岡部青果店の娘さんが美人だってウワサは町のみんなが知ってた。

学校のみんなも……

男の子たちは私に執拗にちょっかいを出すし、女の子たちは私を妬んだ。

典型的な嫌がらせを受ける毎日だった。

そんな状況で私は、自分はともかく、まゆりに害が及ぶことを極端に恐れていた。

まゆりとの本当の関係を世間に知られたくなかった私は徹底的にソレを隠すことにした。

建前としては、私がまゆりをいじめていることにした。

何かあってもまゆりだけは助かるための保険。

高校に行くまでの1年半隠し通せばいいと思っていた。

自分だけがいじめられればいいと思っていた。


そんな時、家で飼っていた柴犬が殺された。

私は悲しかったし、悔しかった。

だけど、それ以上に、これでようやく反旗を翻せるとも思った。

器物損壊罪―――

当時の私は法律に詳しくは無かったけど、“ヤツら”はついに失敗したと思った。

刑事ドラマのように鑑識が出れば科学捜査で犯人は特定され、“ヤツら”は少年院送りになると確信した。

勝ったのだと。これで長きに渡る戦いに終止符が打たれ、私の人生は変わるのだと信じたかった。

その日のうちに近所の交番に駆け込んだ。

そこには毎日挨拶をする程度には顔を見知ったお巡りさ……警察官の青年が居た。

××××。当時27歳。顔も名前も一生忘れることはないその男。

私は彼に事情を話すと、奥の部屋に居たもう一人の警官に私の家に行くよう命じた上で、私から話を聞くと言って私を奥の部屋へと連れ込んだ。


その部屋はとても狭かった。

彼はまず部屋の鍵を閉めた。内側から鍵をかけられる構造だった……防犯上の理由だろう。

それで、私が事件のあらましについて説明しようとしたところでハンカチを口に当てられた。

クロロホルム。私は激しい頭痛に襲われ、気が動転した上に身動きが取れなくなった。

あっという間に私の手足は机に拘束され、猿ぐつわを咬まされ、机の上にあおむけに寝そべる形になった。

拳銃が机の上に無造作に投げ出された。余計な真似をしたら殺すと言わんばかりだった。

……それこそ、まるでマッドサイエンティストの人体実験のようだと幼ながらに思った。

身体をまさぐられた。とにかくおぞましかった。気持ち悪かった。

怖かった。死を覚悟した。

そいつは行為に及びながら、お前が悪いんだなんだと、全部私の容姿のせいにしてきた。ふざけた話だ。

結局犬を殺したのもそいつだった。

犬を殺されたら自分を頼るくらいの信頼を築くために、日ごろから私に紳士的に接してきたのもそいつの作戦だったってわけだ。

丸裸にされて写真を撮られた。写真で私を脅すつもりだったらしい。

だけど、性交に至るすんでのところでもう一人の警官が帰って来て事件が発覚することになった。

一応警察に助けられた形にはなったが……そもそも私は裏切られた。

国家に。権力に。そして……親しみをもって接してきた大人に。

私が信じた正義なんてものは、初めから世界に存在しなかった。


そいつは捕まった。当時新聞やテレビで結構報道されたから、少し調べれば事件が出てくると思う。

事件は解決したことになった。学校でのいじめも一旦は止んだ。だが……

この忌々しい記憶は私が死ぬまで脳内に残り続ける。

世界に正義など無い。世界は敵意で満ち溢れている。

裏切りと、暴力と、死―――

真に信じられるのは、この世で唯一まゆりだけだった。

私は……オレは、自分の力だけで、自分自身も、まゆりのことも、すべてを守らなければならないのだと悟った。

それが世界の理なのだと理解した。

だからオレは……まゆりを抱きしめた時には既に心の中で生まれていた“鳳凰院凶真”を、この世に顕現させる決意をした。

まあ、こんな事件が無かったとしても高校デビューと同時に鳳凰院凶真を開花させるつもりではあったが……

不死鳥<フェニックス>の鳳凰に、院。凶悪なる真実と書いて、“鳳凰院凶真”。

女の子らしさがなんだ。まともな人間である必要がどこにある。

平和だの日常だのというのは気狂いの妄言であり、“機関”の陰謀なのだ。

欺瞞の仮面を取り去り、かき乱してやりたい。カオスにしてやりたい。

世界は―――常にオレたちを陥れようとしているのだから。

・・・


萌郁「…………」

倫子「これがオレの過去だ。このことはまだ、まゆりとダルしか知らないけどな」

萌郁「……岡部、さん。その……(こんな時、なんて言えばいいの……)」

倫子「……ふぅーはははっ! 封印されし真実<サンゲタル>を知ってしまったからには貴様はもはや引き返せんっ!」

倫子「さあ、悪魔の取引だ。貴様の過去をすべて吐き出すがよいっ!」

倫子「そして我がラボのために働けっ! その身を捧げ―――」

萌郁「」ダキッ

倫子「ふおわっ!? きゅ、急になにをする!」ドキドキ

萌郁「……貴女は、強いひと」ギュッ

倫子「……何を知れたことを」プルプル

未来ガジェット研究所の入口前


鈴羽「(な、な、な、なんだってーーー!?!?!?!?!?!?)」

鈴羽「(あのSERNの犬【※鈴羽の妄想】であるストーカー女が分厚い面<ツラ>してラボに入っていくもんだから玄関扉に貼りついて聞き耳を立ててたら……)

鈴羽「(ワルキューレの女騎士にそんな想像を絶する過去があったなんて……許せない……ッ!!)」

鈴羽「(……待てよ、あたしが過去へ行ってその男、××××を殺害すればっ!!)」

鈴羽「(仮に収束で殺せないとしても、陰部を切断するとか、産まれる前に母親を殺すとか、他にも色々試せばいいっ!!)

鈴羽「(あたしが……あたしが過去へ行って、レジェンドを救う!!)」

鈴羽「(IBN5100はこの世界線で既に手に入ってるけど……あたしは過去に行ってやらなきゃいけないっ!!)」



鈴羽「待っててね、鳳凰院凶真! あたしが貴女を必ず救うからっ!!」ダッ

未来ガジェット研究所
談話室


萌郁「…………」

倫子「…………」

萌郁「…………」

倫子「(もうかれこれ5分は抱き合ったままだ……体感では30分くらいに感じる……)」

萌郁「……昔」

倫子「……うむ」

萌郁「……昔、何もかも嫌になって……生きてる意味がわからなくなって……」

萌郁「死のうって思ったとき……1通のメールが来て……親身になって話を聞いてくれて……」

萌郁「メールでなら……人と話しやすいことに気付いて……」


萌郁「私……いらない子だって、ずっと言われ続けて……ずっとずっと……」

萌郁「だから、本当に自分はいらない子なんだぁって、ずっとずっと思ってて……」

萌郁「そう思うことで、私、安心して……」

萌郁「だって、いらない子の私なら……誰も私を見ない……」

萌郁「誰も私に期待しない……誰も私に失望しない……だから……私……」

倫子「……お前の目を見た時から、オレはお前のことを放っておけなかった。その理由が今わかった」

倫子「だが、もう諦めろ。貴様の能力はオレに期待されている」

萌郁「…………」グスッ

倫子「ラボは既にお前の居場所だ。いつでもここに遊びに来い」

倫子「オレへのメールの連投は勘弁してほしいが……まあ、話し相手くらいにはなってやろう」

萌郁「うれ……しい……」

倫子「だが、IBN5100については少し待ってほしい」

倫子「ダルに使い方をマスターさせ、SERNの陰謀を暴いてから、ルカパパに頼んで萌郁に貸すよう頼んでみる」

萌郁「少しって、どれくらい……」

倫子「そうだな……ダルなら2週間もあれば大丈夫だろう」

萌郁「わかった……それまで、待つ……」


ダル「グーテンモルゲン。おぉ~桐生氏がラボに来てるとは。いらっしゃいなのだぜ」

萌郁「お邪魔……してます……」

ダル「そうそう、電話レンジだけどさ、ちょっと改良しようと思うんだよね」

ダル「もっと簡単な手順でDメールを過去に送れるようにして、専用ケータイからの転送も可能にしようかと」

倫子「わかった。手伝おう」スッ↑

倫子「(ここでクールにハイタッチを決めることで、オレたちがいかに“出来る”名コンビかを萌郁に知らしめてやろう!)」

ダル「……んお? 虫でも居たん?」

倫子「……なんでもないっ///」スッ↓

萌郁「(かわいい)」


ピロリン♪

倫子「ん? 指圧師か。『今、“メールを過去に送る”って話してたよね? どういうこと? 教えて! 萌郁』」

倫子「フフッ。逆に問おう。なんだと思う?」

まゆり「トゥットゥルー♪ あのね、タイムマシン実験をする前にまゆしぃのから揚げを……」

萌郁「タイムマシン……(ホントにタイムマシンを作ってるんだ! すっごーい!(゜o゜) )」

倫子「まゆりっ! 台無しだぁ!」

倫子「まあ良い……我がラボはタイムマシン研究をしていると言っただろう。やはり、俄かには信じられんようだなぁ」ククク

倫子「(ああ、助手のひんまがった解釈ではなく、素直な好奇心を寄せられることはこんなにも優越感に浸れるものなのだな……)」ツヤツヤ

まゆり「わぁー萌郁さんだー! 来てくれたんだねー」ダキッ

萌郁「……! (胸に、椎名さんの顔が……///)」

まゆり「うほほーっ、萌郁さんおっきいねぇ~」スリスリ

ダル「お、大きいのは身長ではなくて、おっ、おっ、おっp」

倫子「黙れHENTAI! まゆりも指圧師が困っているからやめろ」

まゆり「あっ、ごめんね萌郁さん……」

萌郁「……いい(ちょっとドキドキしちゃった♪ 若いっていいなー)」

倫子「早速だがラボメンナンバー005、桐生萌郁に任務を与える……」

倫子「今後行う実験におけるメールの文面を考え、送信することっ! 機関に気付かれぬよう慎重になっ!」ニコッ

今日はここまで


倫子「震えよ、我が右腕……。契約に基づき命じる、漆黒の獄炎を纏いて、我が望み、すなわち破壊の衝動を満たせッ!」

バキッ(電子レンジの扉が外れる音)

ダル「(キャラ作り云々の前にオカリンって厨二なんだよな……)」

紅莉栖「それじゃ、実験再開ね」

まゆり「でも、店長さんに怒られないかなー」

倫子「……オレがブラウン管工房へ交渉に行ってこよう。一応、振動対策をしたことも伝えねばなるまい」

萌郁「だい……じょうぶ……?」

倫子「案ずるな。オレもミスターブラウンもこのビルに愛着を持っていることには変わらん。話せばわかるさ」フッ

紅莉栖「(たまにかっこつけたがるわよね、岡部って)かわいい」

ダル「牧瀬氏、逆逆」

大檜山ビル前


倫子「バイト戦士よ。仕事をサボってケータイいじりとは、いい身分だな」

鈴羽「えっ……うわぁ!? 鳳凰院凶真っ!?」

倫子「何をそんなに慌てている……何か調べ物か?」

鈴羽「う、うん。ちょっと昔の事件をね」アセッ

倫子「事件?」

鈴羽「ななな、なんでもないよ!! 過去に跳んだ時に殺す人間を調べてたとかじゃないから!! ホントだよ!!」アタフタ

倫子「(こいつホントに秘密を隠すのが下手だな……)」


鈴羽「それより店長に用事? 今は居ないよ。ね、綯!」

綯「こ、こんにちは」ペコリ

倫子「ゲッ、小動物……居たのか」

鈴羽「ん? 鳳凰院凶真って、子ども苦手なの?」

倫子「い、いや、そういうわけではないが……」

綯「その……凶真、おねえちゃん……また、遊んでほしいな……」モジモジ

鈴羽「なぁんだ、人気あるじゃん」

倫子「うむ……こいつに好かれるのは別に構わん」

倫子「いや、本当は狂気のマッドサイエンティストが幼女と仲良く遊んでいるのはイメージダウンなんだが……」

鈴羽「そんな理由?」

倫子「……この子と一緒に遊ぶとオレの身体に生傷が絶えない」

鈴羽「へ?」

倫子「ごっこ遊びを越えて、もはや格ゲーなのだ、こいつの機動力は……」ハァ

鈴羽「へー、そうなんだ! 綯、あたしも格闘技好きだよ! 今度一緒に遊ぼう!」

綯「えぇー……鈴羽おねえちゃんはちょっと……」

未来ガジェット研究所


倫子「今店長は留守だそうだ。思う存分実験ができるぞ、よかったなお前達」

ダル「ま、なんかあっても過去を変える実験に成功すれば問題ナッシング! 実験した過去を変えちゃえばいいだけだし」

萌郁「メールは……任せて……」

倫子「"過去を変える"……ククク、いよいよこの日が来たようだな」

まゆり「オカリン楽しそうだねー」

倫子「今日の実験では、作戦を第2段階へと進める。……すなわちッ! 『過去を変える』ッ!!!!!!」ガバッ

ダル「それ僕がさっき言ったわけだが」

倫子「…………」ウルッ

紅莉栖「(かわいい)」

ダル「(かわいい)」

萌郁「(かわいい)」

倫子「……まぁいい。それと助手、いいのか? てっきりお前なら反論してくると思ったのだが」

紅莉栖「……えっ。ひゃぁ!? えっと、ごめん、岡部の笑顔と泣き顔に見惚れてて話聞いてなかった……」

倫子「さすがにちょっと引くぞ……」

倫子「宝くじを当てる」ドヤァ

ダル「大賛成」

まゆり「おくまんちょーじゃだねー♪」

萌郁「……」ポチポチ

ピロリン♪

倫子「『成功したらすごいことになるね(≧▽≦)』……指圧師も楽しみか。そうかそうか」フフッ

紅莉栖「阿万音さんの言う多世界解釈なら確かにバタフライ効果が起こってもパラドックスは起きないけど……ブツブツ」

ダル「やってみなきゃわからんっしょ」

倫子「助手よ、実は試してみたくてうずうずしているのだろう?」

倫子「欲望に忠実に実験する。実にマッドではないかぁ!」

紅莉栖「欲望に忠実……(*´Д`)ハァハァ」

倫子「……なぁダル。助手はどうしてしまったのだ?」ヒソヒソ

ダル「たぶん、ここに来る前に阿万音氏にまたボロクソ言われて心が壊れちゃったんだと思われ」

倫子「……一度脳内走査してもらったほうがいいかもな」


ダル「ほい、ロト6の過去の当選番号出たお。1等は……ちょっ、2億とか!」

倫子「え、に、2億!? いや、待て、1等はマズイ!」アタフタ

紅莉栖「さ、さすがに2億は……ビビっちゃうわよね」

倫子「だ、誰がビビりだとぉ!? そうではなくだな……ほ、ほら! 目立ってしまうだろう!?」

倫子「ただでさえSERNや機関に我がラボは狙われているのだ、そこに2億当選しようものなら……たとえこの鳳凰院凶真でも、お前たちを守り切れるかどうか……」フッ

紅莉栖「必死すぎワロタ(かわいい)」

ダル「ん? 牧瀬氏いま……」

倫子「まさか、@ちゃん……?」

紅莉栖「へ?……ハッ。と、ともかく、2億は無理! 過去改変リスクが大きすぎるっ!」アタフタ

倫子「一理あるな。では、3等の70万にしよう」

紅莉栖「ほっ」


紅莉栖「送り先は1週間前、170#でセットしましょ」

萌郁「『021219343537 ロト6で買え 絶対当たる!』……これで、いい?」

倫子「うむ、いい感じだぞ、萌郁」ナデナデ

萌郁「……///」

まゆり「なんだかとってもうさんくさいねー♪」フミッ

萌郁「……!? (椎名さんが私の足を踏んで来た!?><。 )」

ダル「じゃ、レンジ起動させるぜよ!」

倫子「では、送信するぞ……ッ!」

紅莉栖「どきどき……」

まゆり「わくわく……」

倫子「エル・プサイ・コングルゥ……ッ!!」


―――――――――――――――――――
    0.52074  →  0.51015
―――――――――――――――――――


倫子「……っ。なんだこの目眩は……気持ち悪い……」

まゆり「オカリン、どうかした?」

倫子「……ハッ。まゆりか。いや、なんでもない。心配するな」

まゆり「だいじょーぶー?」

ダル「も、もしかして、お、お、お、女の子の日的なアレですかわかりません!」

倫子「まゆり、ハサミを持ってこいっ!」

まゆり「ちょっきんちょっきんだよー♪」

ダル「うほっ」キュッ


倫子「あ、あれ? 電話レンジ(仮)が止まってる……? それにセレセブよ、いつの間にソファーにテレポートしたのだ?」

紅莉栖「私に異能属性を付け加えるのはやめて? あとセレセブ呼び、唐突すぎだろ」

倫子「そういえば、メールはどうなった?」

ピッピッピッ

倫子「……受信されている。1週間前、あの内容の文章。なぜか送信履歴は無いが……」

倫子「ロト6は当たったのか?」

まゆり「えー、なんのことー?」

紅莉栖「岡部、さっきからどうしたの? ぽんぽん痛いの?」

萌郁「……(どうしたのかな(・・? )」

倫子「ダル、オレはたった今、ロト6の当たり番号を電話レンジ(仮)で送った。そうだな?」

ダル「おぉ、その発想はなかったわ。今すぐ実験すべきだろJK! うっひょう!」

倫子「何なのだ、これは……どうすればいいのだ?!」ブルブル


ガチャ

るか「あ、あの、こんにちは……」

まゆり「あ、るかくんだー。いらっしゃーい♪」

るか「あの、おか……凶真さんに、謝らないといけないことが……」

倫子「オレに?……って、それはロト6の券! お前、これをどこで!?」ガシッ

るか「は、はわっ!? 凶真さんに、手を握られると、ボク、ボク……」ドキドキ

ダル「おお、百合劇場ハジマタ? あ、いや、ノンケか……でも僕は大歓迎だお!」

紅莉栖「ん?」

倫子「教えてくれ、ルカ子。そのロト6の券はどこで手に入れたっ!?」

るか「え……あの、ボク、1週間前に凶真さんに数字を教えてもらって……」

倫子「オレが?……ククク、なるほど。そうか、そうかぁ! そういうことかぁ!!」ニヤリ

倫子「過去を変える実験……成功すれば、当然過去が変わる。それはつまり、"現在"も変わるということ!!」

倫子「だがどうしてお前達ラボメンは覚えていない? 先ほどのDメール送信実験を」

紅莉栖「えっと……いつもの設定、ってわけじゃなさそうね」

倫子「……オレを、疑うのか」ウルッ

紅莉栖「う、疑えない」グッ


ダル「ってかいくら当たったん!? 僕たち億万長者!?」

るか「ごめんなさい、数字を1個、間違えて記入しちゃって……」

倫子「当選金は70万ではなく5000円か……まあ、金額は問題じゃない。実験は成功した」

紅莉栖「……実験、やっぱりしたのね。私たちの記憶にはないけれど」

倫子「そうだ、そこなんだ。どうしてオレだけがあの実験の記憶がある?」

倫子「そりゃ、過去が変われば現在が変わるというのはわかる。宝くじDメールを受信したために、宝くじDメール実験をしなくなったというバタフライ効果も、まあわからなくはない」

倫子「だが……どうしてオレとお前たちの間に記憶の齟齬がある? まるでオレだけ機関に洗脳されたような……」

バーン!!

鈴羽「洗脳ッ!? 目を見せてッ!!」

クパァ!!

倫子「きゃぁ!? いたたたっ!? 目がっ、目があああああっ!!」

紅莉栖「ちょ、阿万音さん!?」

ダル「眼姦はさすがにレベル高杉だお……」

鈴羽「……大丈夫。洗脳チップは挿入されてない」ホッ


紅莉栖「突然飛び込んできてあんた何してんのよ!? バカなの!? 電波なのぉ!?」

鈴羽「ッ!? 本性を現したか、牧瀬紅莉栖ッ!!」キッ

倫子「うぇいうぇい! やるなら外でやれバカモノどもがっ!!」

鈴羽「レジェンド、どいて! そいつ殺せない!」

ダル「伝説の元祖ヤンデレ台詞ktkr! いいよぉ、もっと愛が激しくてもいいんだぜ?」

倫子&紅莉栖「「黙れHENTAI!」」

ダル「HENTAIじゃないよ! HENTAI紳士だよッ!!」

るか「な、なにがどうなって……」

萌郁「……(カオスだなー(+_+) )」

まゆり「もう、喧嘩はめっ、だよー?」


倫子「(鈴羽に、『それ以上我が助手をいじめるようならお前とは二度と口をきかん』と伝えたら泣きじゃくりながら土下座してきたので一件落着した)」

紅莉栖「腑に落ちないわけだが」

倫子「そんなことより、どうしてタイムマシン実験の成功を誰も記憶していないのだ?」

るか「えっ、タ、タイムマシン?」

鈴羽「やっぱり、成功したんだね。レジェンドならタイムトラベルをやり遂げると信じてたよ」グスッ

倫子「……そうか、悩む必要など無かった。おい、自称未来人、この現象について説明しろ」

鈴羽「ふぇ?」

倫子「ふぇ? ではない。お前が本当にジョン・タイターなら説明できるだろう?」

鈴羽「だからさー、あたしはジョン・タイターじゃないって言ってるじゃん」

倫子「……お前も萌郁と同じでメールじゃないと連絡しないクチか」

萌郁「……(えっ、同類!?(/・ω・)/ )」

鈴羽「違うってばー!」

ガシッ!

天王寺「何が違うんだ、バイトォ。42型つけっぱなしの上、店ほっぽらかしてよぉ、あぁん?」ゴゴゴ

鈴羽「……失敗した失敗した」ブツブツ

るか「あ、あの、あの人、担がれていっちゃいましたけど……」

倫子「(ホントに何がしたいんだ鈴羽は……)」


倫子「鈴羽が店長に連れ去られた後、まゆりとダルはメイクイーンに、ルカ子は謝り倒した挙句帰宅、萌郁は無言で退室……なんだかんだで助手と2人きりになってしまった」

紅莉栖「……なに? 私を追い出したいの?」

倫子「どうせ友達もいないし、ホテルに帰っても独りぼっちだからこの鳳凰院凶真に構ってほしいのだろう?」フッ

紅莉栖「半分正解だけど、半分不正解」

倫子「なに?」

紅莉栖「あんた、今元気無さそうな顔してる。悩みがあるなら聞いてあげようと思って」

倫子「ふん、セレセブに気遣われる鳳凰院凶真ではないわ」

紅莉栖「そっ。ならいいけど。……でも、側に居させて。女同士だし、別にいいでしょ」

倫子「お前の場合危機を感じるのだが……」

紅莉栖「わ、私は見境なく襲ったりするレズじゃないっ!! 鳳凰院ちゃんはお友達だからぁっ!!」

倫子「ちゃん付けするなぁ!」


倫子「お前には悪いが、これから自称未来人にメールで相談しなければならない」

紅莉栖「……そうだったわね。全く、あの足の生えた爆竹みたいな人、なんとかならないかしら」

倫子「もしかしてクリスティーナよ、下で鈴羽に会いたくないから18時過ぎまでここに居ようとしているのか?」

紅莉栖「……正直、それもある」

倫子「……早いうちになんとかしなければな」ポチポチ

紅莉栖「それで、なんて聞くの?」



 ……過去が改変されたら、世界線は変わってしまうのですか?

 出来事が"なかったこと"になっていたのですが、他にも影響はありますか?……



紅莉栖「そんなこと言ってたわね……。あの人に解決できるかしら」

倫子「やつも今バイト中だ、18時を過ぎないと返事が来ないかもな」ピッ


・・・


倫子「…………」

紅莉栖「恋する乙女が、好きな相手からのメールを待ってるみたい」フフッ

倫子「……クリスティーナ、嫉妬深いのはあまりよくないぞ」

紅莉栖「私だって結構活躍してると思うんだけど?」

倫子「あー、うん。そうだな。助手のおかげでここまでこれたのは事実だ。リスペクトしている」

紅莉栖「名前すらまともに呼んだことないくせに、よく言う……」

倫子「それについては済まないと思っている」

紅莉栖「えっ……えっ!?!?(まさか、名前で呼んでくれるの!?)」キラキラ

倫子「紅莉栖……と呼べばお前がつけあがることは火を見るよりも明らかだからな。すまないが、耐えてくれ」

紅莉栖「(身から出た錆でござった……orz)」


ppppp


倫子「きゃっ……メールか。『状況を詳しく教えてほしい……』、そりゃそうか。よし……」ポチポチポチ

紅莉栖「まだ16時半じゃない……バイト中ね」

倫子「おそらくミスターブラウンが出掛けたのだろう」

紅莉栖「……あんな人の言う事、ネットでもリアルでも信じたくないけど」


ppppp


 ……あなたが過去へ送ったメールによって世界線変動率(ダイバージェンス)は僅かながら変わった筈
 ……唯一分からない点は、あなたには過去改変前の記憶が存在しているという事です


倫子「なんだ? まだ俺のこと、洗脳されてると思ってるのか?」

紅莉栖「そうじゃないと思う。世界が塗り替えられたなら、岡部の記憶も改変されてなくちゃおかしいってこと」

倫子「あ、そうか……」


倫子「(その後、タイターから様々な説明を受けた。アトラクタフィールド理論はよくわからなかったが……)」

倫子「ますますわからん。オレに特別な能力<チカラ>があるとでも言うのか?」

紅莉栖「そんなわけない……岡部は、私にとっては特別だけど、なにも全人類にとって特別じゃない。うぬぼれんな」

倫子「う、うぬぼれてなどないっ! そりゃ、異能の一つや二つ、この鳳凰院凶真が持っていてもおかしくはないがなぁ?」ニヤニヤ

紅莉栖「……私は、あんたと対等な友達で居たいわ」

倫子「この黄昏時に何をたそがれているのだ、クリスティーナよ。たとえ禁忌の力を得ようとも、オレはオレだ」

紅莉栖「うん……そうだよね……」


ppppp


 ……もしかすると、キョーマはその稀にしか存在しない収束観測の力を有している可能性が有ります
 あなたならば世界を導く事が出来るかも知れません
 世界線変動率1%の向こう側へ
 アトラクタフィールドと呼ばれる壁の向こう側へ


倫子「な、なんだこれは? タイターが突然電波ゆんゆんになったぞ」

紅莉栖「ふむん……もっと情報を聞き出して」


ppppp


 その先に待つのは、真の自由です
 逆に言うと、その壁を超えられなければ未来は変わらずディストピアとなる
 私の目的は、未来を変える事なのです
 そしてそれを可能にするのは、あなたなのかも知れない


紅莉栖「しらじらしいわね……未来から来たなら、岡部に力があることくらい知ってるくせに……」

倫子「たしかに……」


ppppp


 私はキョーマに、救世主、ワルキューレの女騎士になって欲しい。


倫子「わけがわからん……これが、鈴羽が未来から過去へ来た理由だと言うのか?」

紅莉栖「……前から気になってたんだけど、タイターの言う『ワルキューレの女騎士』って二つ名、いかにも岡部っぽいのよね」

倫子「オレが北欧神話好きだからといって短絡的すぎるぞ」

紅莉栖「今だって『狂気のマッドサイエンティスト』って名乗ってるでしょ? 狂気とマッドで意味がかぶってる」

倫子「う、うるさいなぁ! 語感がすべてなのっ! じゃなくて、なのだっ!」

紅莉栖「ワルキューレって女性なのに、わざわざ女騎士って言っちゃってるところなんかそっくりなネーミング」

倫子「う……確かにちょっとかっこいいと思うが……」


倫子「すると何か。オレは将来的に自称を変えて、それを未来で生まれた鈴羽が知っていて、それを過去に来てオレに伝えた、ということか?……因果がループしているぞ」

紅莉栖「していない。多世界解釈、じゃなかった、そのアトラクタフィールド理論とかいう都合のいい話が本当ならだけど」

倫子「むむむ……だが、一つだけ納得できない」

紅莉栖「そうよね。納得できないことばっかr」

倫子「オレはぁ! 世界の支配構造を破壊し、混沌に陥れる、狂気のマッドサイエンティストだぁ!」

紅莉栖「お、おう」

倫子「そのオレがメシアだとぉ? ヴァルキュリアだとぉ? フッ、笑わせてくれる」

倫子「権力の破壊の後に始まるのは、秩序なき混乱っ! その中心に立つ存在こそ、このオレ、鳳凰院凶真だっ! フゥーハハハ!」

紅莉栖「まったく、どうしてこんなにかわいいダークヒーローに育っちゃったんだか」フフッ

倫子「か、かわいいは余計だっ!」

3章終了
更新遅くなってごめんなさい
書き溜めを誤って消去してガンナエしてエタってもいいやってなってました
遅くなりましたが今日からまた頑張ります

第4章 夢幻のホメオスタシス♀


ダル「ただいまんこ~。あれ、牧瀬氏まだ居たん?」

倫子「ダル、ちょうどいいところに。これより、"過去を司る女神作戦<オペレーション・ウルド>"を再開するっ!」パァッ

倫子「お前たちにも過去を変えるメールを送ってもらうぞ」フフッ

ダル「マジで? 下に店長まだ居るけど」

紅莉栖「夜は電話レンジ、カッコカリ、が作動しないはずでしょ」

倫子「無論、その検証も兼ねている」

倫子「(記憶継続現象が本当にオレだけに発現しているものか否かを確かめなければ……)」

倫子「(1週間前のあの現象――ドクター中鉢の記者会見や、2000年に現れたタイターの記憶が世界中から消えていた現象――も説明がつくかも知れない)」

倫子「(それはつまり、オレに特殊能力――"リーディング・シュタイナー"――があるやもしれぬということ……ふふふ)」ニヤニヤ

ダル「オカリン、にやついてるけど何かあったん?」

紅莉栖「特殊能力に目覚めそうなんだと」

ダル「あー、そういや高校の時、指ぬきグローブ集めたり、ノートに詠唱呪文書いてたりしたな……」


倫子「で、過去をどう変えるか、決まったか?」

紅莉栖「……私、今日は帰るね。実験結果は明日教えて。じゃ」クルッ

倫子「逃げるのか」

紅莉栖「え……はぁ!?」

ダル「突然どしたんオカリン」

倫子「ここまで来てまだタイムマシンから逃げるのかと聞いている」

倫子「愛憎相反する気持ちを同時に持ち合わせているようだが、トラウマは克服しなければいつまでも苦しめられることになるぞ」

紅莉栖「……あんたが私のためを思って言ってくれてるのはわかる。けど、けど……」

ダル「な、何の話?」

倫子「安心しろ。過去改変は一度無事に行われた。天才少女なら問題なく実行できるはずだ」

紅莉栖「……もし、私が記憶を失ったら?」

倫子「その時はオレが覚えていてやる。そしてお前に思い出させてやる」

紅莉栖「おかべぇ……///」トゥンク

紅莉栖「で、でも、そんなの、無責任で非科学的よ!」

倫子「そうだな……すまない」シュン

紅莉栖「……考えるだけ考えてみる」


紅莉栖「…………」

ダル「牧瀬氏が長考に入ったっぽいから、僕の過去から変えてもおk?」

倫子「ああ、いいぞ。どんな内容だ?」

ダル「こないだのフェイリス杯の話だけど、フェイリスたんに雷ネットABでどうしても勝ちたいんだよね」

倫子「む? フェイリス株を上げたいなら負けてあげた方がいいのではないか?」

ダル「いやあ、優勝賞品のオカリン写真集の副賞のフェイリスたんの手料理が食べたくて……おっといっけね」

倫子「おいまてコラ」

紅莉栖「橋田、今なんて言った!?!?」キラキラ

倫子「お、おい、やめろ! そこに食いつくなぁ!」

ダル「うっかり口が滑ってしまったのだぜテヘペロ☆」


prrrrrr ピッ

フェイリス『凶真ァ! 凶真から電話くれるニャんて、フェイリス嬉しいニャ♪』

倫子「この間のフェイリス杯での優勝賞品の件なんだが」

フェイリス『……ハニャ~ン? ニャんのことかニャ? フェイリス、全然わからないニャ! それじゃ』ピッ

倫子「……黒だな」

紅莉栖「岡部写真集についてkwsk!」

ダル「えっと、小学生の頃から今に至るまでのベストショット100選を収めたコレクター垂涎の一品だお」

ダル「まあ僕は3年間ずっとリアルオカリンの隣で萌え成分を吸収してきたから、それよりも副賞のフェイリスたんの手料理が食べたいわけだが」ドヤァ

紅莉栖「このデブ、羨ましすぎる……」ギギギ

倫子「ツッコミどころが多すぎるぞ……」

倫子「まず、どうしてそんなものをフェイリスが持っている? それに、まるでオレ関連グッズが市場に出回ってるような言い方ではないか」

ダル「アウトローだから元締めの許可がないと参加できないマーケットだお」

紅莉栖「フェイリスさんにお近づきにならなきゃ……!」

倫子「支配構造を破壊してやるぅ!! うわぁん!!」


紅莉栖「なんとしても橋田をフェイリスさんに勝たせるわよ……ウフフ」ジュルリ

倫子「なんとしてもダルをフェイリスに勝たせなければ……」ゴゴゴ

ダル「おうふ……2人とも僕よりやる気満々になっちゃったお」

倫子「早く準備をしろ、ダル!」

ダル「あいあいさー! 『フェイリス杯 敵の配置は VL V VL VLL』、これでバッチリだお!」

倫子「よしっ、早速送信だっ!」

バチバチバチッ……

倫子「ヒッ……この放電現象が出たという事は……"現在"が、変わっていない?」

ダル「過去、変わった?」

倫子「ちょっと待て! ダルも覚えているんだな?」

ダル「は? なにを」

倫子「今Dメールを送ったことをだぁ!」

紅莉栖「覚えてるに決まって……あ、そうか。過去が変わったなら、この記憶があるのはおかしい」

ダル「……僕がフェイリスたんに勝った記憶はないお。ショボーン」

紅莉栖「結局フェイリスさんのストラテジーのほうが一枚上手だった、ってことね」

倫子「ぐぬぬ……これではオレのプライバシーが守られないではないかぁ!」


ダル「僕が勝つまで何度でも試すお!」

紅莉栖「必勝法なんて本当にあるのかしら……」

倫子「ん、待てよ? 別にダルが勝つ必要はないんじゃ……」

倫子「過去のオレに『フェイリス杯 優勝賞品は オレの写真』と送るだけであの時のオレは探りを入れるはず……ッ!」

倫子「もちろん送信先は、萌郁をラボメンに加えたタイミングだっ! そのままフェイリスを問いただせばいい!」

倫子「(本当はダルの過去を変える実験をしたかったが、この際背に腹は代えられぬ!)」

紅莉栖「でもフェイリス杯やってる時、私と岡部はIBN5100を神社から運んでたのよね……」

ダル「じゃ、それ送ってみるお」

倫子「ああ、よろしく頼む」

ダル「ポチっとな」


―――――――――――――――――――
    0.51015  →  0.50329
―――――――――――――――――――


倫子「(ぐっ……またこの気持ち悪さか。だがこれはつまり、成功した、ということか?)」

紅莉栖「だ、だいじょうぶ? 突然具合悪そうにして……救急車呼ぶ?」

倫子「……もう大丈夫だ。頭痛も治まった」

紅莉栖「で、でも……脳疾患系だったら緊急の可能性もあるし……」

倫子「心配しすぎだ。ラボメンを置いて鳳凰院凶真が倒れるわけないだろう」

ダル「それで、どう? 過去変わった?」

倫子「なにっ? やはり失敗したか。この目眩は成功とは関係ないのか……?」

ダル「失敗かー。どうあがいても僕はフェイリスたんに勝てないのかお! ふざくんな!」

倫子「……む? 今のDメールはフェイリスに勝つためのメールではなかったはずだが」

紅莉栖「えっと、岡部の記憶ではどんなメールを送ったことになってるの?」

倫子「なんだと……? これは、ひょっとするとひょっとして……」


prrrr ピッ

フェイリス『凶真ァ! 凶真から電話くれるニャんて、フェイリス嬉しいニャ♪』

倫子「さっきも電話しただろう?」

フェイリス『ハニャ? ニャんのことかニャ?』

倫子「(やはり過去が変わっている……?)」

倫子「まあいい。それで、フェイリス杯の優勝賞品についてなんだが」

フェイリス『あ、あれは本当に悪かったニャ~。凶真ァ、そろそろ許してほしいニャ!』

倫子「……オレはお前から写真集を取り上げた、そうだな?」

フェイリス『黒服たちに頼んで10年かけて集めた至高の一品だったのにぃ……』

倫子「10年前からお前はオレのことをストーカーしていたのか。軽く衝撃の真実だな、引くぞ」

フェイリス『ニ゛ャーッ!? 凶真ァ、なんでもするから嫌いにならないで欲しいニャ! 前世より課された天命に従わされてしまったせいなのニャ!』

倫子「盗撮を棚に上げて何を……というか、そんなものをなぜ賞品にした」

フェイリス『もっちろん誰にも譲る気はなかったニャ! 事実、フェイリス杯はフェイリスの優勝だったのニャ!』

倫子「(ダルは勝てなかった……ここは変わっていないのか)」


倫子「(その後、過去改変が成功した旨を紅莉栖とダルに説明した)」

紅莉栖「ってことは、今写真集は岡部の手元にあるのね!? どこ!? どこにあるのぉ!?」ハァハァ

倫子「ええい、うっとおしい! というか、このオレにはそんな記憶はないのだ。わかるわけないだろ」

紅莉栖「忘れない能力っていうか、それ、思い出せない能力なんじゃないの? つっかえないわねー」

倫子「ぐぅっ!!」グサッ

ダル「牧瀬氏、容赦ねえっす」

倫子「言うようになったではないかぁ、助手ぅ……ククク」

紅莉栖「いつまでも下手に出てる私じゃないわよ? 私が居ないと研究が進まないことをわかってもらってるみたいだからね」フフン

倫子「弱みを握ったつもりか、貴様……いずれ鳳凰院凶真に盾ついたことを後悔させてやろう。覚悟しておくがいいっ!」

紅莉栖「……岡部の身体や脳に異変があるのは、私イヤだから」

倫子「ん? 何か言ったか?」

紅莉栖「ううん、なんでも」


倫子「(この後も実験を続けたが放電現象は起きなかった。夜の7時がタイムリミットらしい)」

紅莉栖「昨日からこのマシンの仕組みについて考えてたんだけど……」

紅莉栖「電子レンジ単体じゃブラックホールは作れない。何かが干渉して電子を注入してきているのは間違いない」

倫子「"なにか"とは、なんだ」

紅莉栖「……ごめん、そこまではわからない。ホテルで考えてみる」

ダル「牧瀬氏、今日はラボに泊まらないん? 僕は帰るけど」

紅莉栖「……と、泊まってもいい? 岡部?」

倫子「むしろオレはセレブなホテルでゆっくり風呂に入って体を休めてみたいがな」

紅莉栖「えっと……じゃぁ、来る?」

倫子「いいのか?」

紅莉栖「全然いいけど。料金は私が払うし」

ダル「うほっ。妄想が捗りますなぁ」

倫子「……やはり、やめておこう」

紅莉栖「な、なんで!?」

倫子「お前にこれ以上貸しを作っては、なにで脅されるかわかったもんじゃない。それに今オレの手持ちは5000円しかない」

ダル「うはwww 牧瀬氏信用なさすぎwww」

紅莉栖「ぐ……ぐはぁ」orz


紅莉栖「フェイリスさんが金で岡部を堕とそうとした気持ちがわかるわ。ってかそれでどうやってここの家賃払ってるのよ」

倫子「無論、家賃代や水道光熱費代は別に取ってある。手を付けるなよ」

紅莉栖「つけないわよ。むしろ無利子で援助したいくらい」

紅莉栖「私、結構研究費降りてきてるんだけど、そんなに使い道がないのよね」

倫子「なんともうらやましい……が、そんなことでセレセブになびくオレではないわっ!」

ダル「オカリンは夏休みになるまで必死でバイトしてお金溜めてたんだお」

倫子「言うなぁ!」

ダル「たしか、棚卸や映画館の半券もぎり、ティッシュ配りとかしてたっけ」

紅莉栖「へー、意外ね。でも、それって10万も溜まってないんじゃない?」

倫子「……正直、金がヤバイ」

紅莉栖「今日ホテルに泊まってくれるなら金銭的援助をしてもいいけど?」

ダル「それって援助交s」

倫子「……ッ! ダルぅ、助けてくれぇ!」グスン

ダル「プライドが金になると思えばいんじゃね? つか、牧瀬氏なら大丈夫っしょ」

倫子「裏切り者ぉ!! うわぁん!!」

御茶ノ水 ローズホテル東京


倫子「結局ホイホイついてきてしまった……屈辱だ……」

紅莉栖「待ってもらってごめん。片付いたから、どうぞ入って」ガチャ

紅莉栖「(ついに倫子ちゃんを部屋に連れ込むことに成功した……! ワクワクしてきたぞっ!)」

倫子「想像していたほどではないが、いい部屋だな」

倫子「シャワー借りるぞ。変なことするなよ」

紅莉栖「わかってるわよ。ゆっくりお風呂につかって、日ごろの疲れを落としなさい」

紅莉栖「(無理無理無理ッ! 変なことしない自信がないッ!!)」

紅莉栖「お、落ち着け牧瀬紅莉栖……素数を数えるんだ……だがしかし……」

シャー

紅莉栖「壁越しに聞こえるシャワーの音ッ! 正直、たまりません……ハァハァ」


倫子「ふわぁ、すっごく気持ち良かった……。足が伸ばせる湯船は最高だな!」ポカポカ

倫子「って、どうしたクリスティーナ? ぼーっとしているが」

紅莉栖「別に、なんでもないわ」ツヤツヤ

倫子「……まあいい。ほら、次はお前がシャワー浴びてこい」

紅莉栖「その台詞だけで3杯はイケるわね……」

倫子「はよ行け! この絶倫百合女が!」

紅莉栖「今までで一番ひどいっ!?」


倫子「まったく、いちいち疲れるやつだな。オレはベッドで寝かせてもらおう」

トスッ

倫子「……シーツが湿っている?」


紅莉栖「お待たせ。遅くなってごめん、髪乾かすのに時間がかかっちゃって」

紅莉栖「(倫子ちゃんの残り湯で第2回戦に突入してしまうとは……失敗したわ)」

倫子「別に待ってなどいない。助手が風呂をあがるまでに寝込むつもりが間に合わなかったか……」

紅莉栖「それで、その、私もそろそろ寝ようと思うのだけど……」モジモジ

倫子「ああ。オレはベッドで寝るから貴様は床で寝ろ」

紅莉栖「はぁっ!?」

倫子「もし寝ているオレに触れたり、写真でも撮ろうものならお前とは絶交する。この条件が飲めないならオレはラボに帰る」

紅莉栖「ちょ……。ううん、わかった。それでいいわ」

紅莉栖「(私ってラボメンなのに、こんなに信用されてなかったんだ……)」グスン

倫子「……と言おうと思っていたが、今後の助手の活躍を期待して大目に見てやろう。何よりこの部屋の主はお前だしな」

紅莉栖「ふぇ?」

倫子「ほら、こっちに来い」

紅莉栖「おかべぇ……!」ウルウル

倫子「か、勘違いするなぁ! 単にベッドで寝るのを許可しただけで、変なことしたら即通報するからなっ!」アセアセ


紅莉栖「(うほほぉーっ、まさかの同衾! くんかくんか、スーハースーハー!)」

紅莉栖「(岡部は向こう向いちゃって背中しか見えないけど……うなじのラインがたまらんっ!)」ハァハァ

倫子「静かにしろ。息を吹きかけるな、こそばゆい」

紅莉栖「ご、ごめん……」

倫子「……なあ、本当にオレでよかったのか」

紅莉栖「えっ?」

倫子「オレみたいな……その、痛い子が友達で、お前は満足なのか?」

紅莉栖「……私のいるアメリカの研究所って結構殺伐としてるのよね」

倫子「む?」

紅莉栖「それに比べて、あんたのラボは幼稚だけど……居心地がいい」

紅莉栖「あんたが作ってる空気に浸かってるとね……なつかしさっていうのかな。私に幸せなホームがあった頃を思い出すの」

倫子「ホーム、か……」


紅莉栖「そう言えば岡部はどうしてラボを作ったの?」

倫子「電機大にダルと共に行くことは前々から決めていたからな。自分で非公認サークルを立ち上げたまでだ」

紅莉栖「(既にあるサークルに入っても、岡部にはいずれ自分の居場所がなくなる不安があった、ってところかしら)」

紅莉栖「でも、どうして大檜山ビルに?」

倫子「……いいだろう。たまには昔話に洒落込むとするか。そう、あれは今から半年前のこと―――」



~~~~~


倫子「店主! 店主はいるか!」

天王寺「俺が店主だが、なんだい嬢ちゃん?」

倫子「表の張り紙を見てきたのだが、このビルの2階が貸し出し中というのは本当か? 賃料応相談というのも?」

天王寺「まあな」

倫子「ならば貸しては貰えないだろうか。もちろん出せる限りは出す」

天王寺「いくらだ? ほれ、電卓だ」

倫子「……こんなものでどうだろうか」スッ

天王寺「喧嘩売りに来たのか?」

倫子「い、いや、そういうわけでは……」

天王寺「だったら相場を学んでこい。いくら綺麗なツラした姉ちゃんだからって、社会を舐めちゃいけねえな」

倫子「くっ……そこをなんとか! オレは、このビルが気に入った! 風情というか、時代を生き抜いてきた空気感というか!」

倫子「実にすばらしい佇まいだ! このビル以外に我がラボはありえない!」

天王寺「ラボ? お前さん、研究者か何かか?」

倫子「ククク……我が名は狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真だぁ!」

天王寺「帰れ」

倫子「岡部倫子です……」


~~~~~


紅莉栖「それであそこを貸してもらうことになったのね」

倫子「いや、断られた」

紅莉栖「えっ?」

倫子「丁度その頃、別の人間があそこを借りようとしていたらしくてな……オレは必死にミスターブラウンに訴えたのだ」



~~~~~


倫子「待ってくれ! 話はまだ終わっていない!」

天王寺「向こうさんとは契約手前まで行きかけてるんだよ。お前さんと違っておかしな言動も無いしな」

天王寺「ハッキリ言って勝負にならねえ。お前さんみたいな文無しに貸す可能性は1%もねえんだよ」

倫子「そこをなんとか! 居場所が……居場所が、必要なんだ!」

天王寺「そんなの俺の知ったことか」

倫子「オレはどうしてもラボを作らなければならないんだ!」

天王寺「オイオイ、なんで俺が学生のサークル遊びに付き合わなきゃならねえんだ。カンベンしてくれ」

天王寺「大体、金がねえなら郊外に行きゃいいだろ。ここじゃなくたっていいはずだ」

倫子「ダメなんだ! この秋葉原でなければっ!」

天王寺「大声出すな。なぜこの街にこだわる?」

倫子「ここにはすべてがあるからだ。新しい物も古い物もすべてな」

倫子「この秋葉原には最先端の文化だけでなく、時代に取り残されたロストテクノロジーが眠っている!」

倫子「常人にはガラクタにしか見えない遺物。だがその中にこそ、偉大な発明の元がある!」

倫子「本流とは常にマスコミや広告会社の陰謀にまみれているもの。亜流から本流を生み出すことこそが、この鳳凰院凶真の目的!」

倫子「混沌に溢れた秋葉原こそ我が故郷なのだ! ふぅーはははぁ!」

天王寺「……お前さん、ブラウン管に興味はあるか?」

倫子「ブラウン管? フン、微塵もないな」

天王寺「なにィ?」

倫子「……いや、あります。あることにしました」

天王寺「そうか。なら今から一杯やりにいくか」

倫子「なっ!? 年端もいかない少女に酒を飲ませ、酔ったところを襲うつもりかこの卑劣漢め!」

天王寺「嫌ならいいんだ、嫌なら」

倫子「お酌致しますので、はい……」


~~~~~


紅莉栖「(あのクソハゲダルマ、倫子ちゃんを飲みに連れて行くなんて……羨ましいっ!!)」

倫子「まあ、飲みに連れて行かれはしたが奴の苦労話を聞くだけだった。オレを見てると死んだ嫁さんを思い出すんだと」

倫子「綴さん……ミスターブラウンが運命の人と出会ったのは、まだ相手が大学生の頃だったそうだ。偶然にも電大生でな、オレの先輩ってわけだ」

紅莉栖「えっ……じゃぁ、綯ちゃんのお母さんって……」

倫子「綯を産んだと同時に亡くなったらしい」

紅莉栖「そう……だったの……」

倫子「部屋を借りてからはミスターブラウンに頼まれて綯と遊ぶこともあったが……綯のタックルは痛い。受け止められるのはまゆりくらいだろう」

紅莉栖「まゆりって結構基礎体力あるわよね」

倫子「あいつは小さい頃から足が早くてな。食べても太らない、アスリート体質なんだよ」

紅莉栖「(こうして岡部とベッドの中で話してると、修学旅行の夜みたいで楽しいな……一度も行ったことないけど)」フフッ


紅莉栖「橋田に聞いたけど、最初のうちはまゆりだけがラボメンだったんでしょ?」

倫子「そうなのだ……あいつ、オレがラボに誘った当初は全く乗り気ではなかった」

倫子「5月過ぎにメイクイーンとラボが近所であることが判明したことでラボメンに加入することになったが」

紅莉栖「(橋田なりに岡部の大学生活を見守った結果なのかも知れないわね)」

倫子「……オレは、友達が欲しかっただけなのかもしれないな」

紅莉栖「私も……そうなのかな」

紅莉栖「まだ出会って1週間なのに、まるで何かの力に引き寄せられるように私たちは近づいていった……」

倫子「その何かとは、まさしくタイムマシンだろうな」

紅莉栖「……岡部の、力になりたい」

倫子「ああ、期待しているぞ。さあ、そろそろ未来へと旅立とうではないか」

紅莉栖「ふふ、そうね。日付をひとつ進めましょうか」

倫子「おやすみ、クリスティーナ」

紅莉栖「……おやすみ、岡部」

今日はここまで

まん!

2010年8月4日 
未来ガジェット研究所


倫子「(朝起きると助手がオレに抱き着く形でよだれを垂らしながら『倫子ちゃん、ぺろぺろー』などと寝言をほざいていたのでオレは無言で退室した)」

まゆり「オカリンだけずるいなー、クリスちゃんとお泊り会するなんてー」

倫子「性的な危機さえなければ大歓迎なんだがな……」

まゆり「はい、ラーメン缶だよー。朝ごはんにどぞー♪」

倫子「おお、ご苦労まゆりっ!」

キキーッ!!

倫子「む。このブレーキ音は、バイト戦士のMTBか」


 鈴羽<「やっほー! おはよー!」


倫子「窓を開けると下からもよく声が聞こえるな」

まゆり「スズさんだぁ! トゥットゥルー♪」


 鈴羽<「鳳凰院凶真ー! タイターはなんか言ってたー?」


倫子「(今更誤魔化そうとしてるつもりらしいが、開口一番その話題とは、問うに落ちず語るに落ちたな)」フッ


まゆり「あー、クリスちゃんだー!」

倫子「なにっ!? ただでさえあいつはオレが無言退室したことで不機嫌なはずっ」

倫子「そんなあいつが今バイト戦士と出会ったら……」ガタガタ


 鈴羽「…………」

 紅莉栖「……言いたいことがあるならハッキリ言えば」

 鈴羽「ぐっ……収束さえなければ殺すのに……」ボソボソ


倫子「(一瞬つかみ合いになるかと思ったが、二言三言交わしただけだった)」

ガチャ

まゆり「クリスちゃん、トゥットゥルー♪ 昨日はお楽しみでしたねー?」

紅莉栖「どこで覚えたのそんな言葉……グッモーニン、まゆり」

倫子「思いのほか機嫌が良さそうだな。なにか良いことでもあったのか?」

紅莉栖「えっ? 昨日の夜のこと、忘れちゃったの? 岡部の温もりを思い出しただけでも……えへへぇ」トロォ

倫子「そ、そうか。それでお前が満足ならいいが……」

まゆり「お泊り会でなにかあったのかなー、オカリン?」ズイッ

倫子「ひぃっ!? 顔が笑ってないぞぉ! 怖いからやめてくれぇ!」

紅莉栖「安心して、まゆり。一緒の布団で寝たけど、別に何もなかったわ」

まゆり「よかったー♪ もしオカリンにいたずらしてたら、まゆしぃは……ううん、なんでもないよー♪」

倫子「人質にどうこう言われる筋合いはないがなっ!」

紅莉栖「(まゆりも結構ヤンデレなのかしら……)」


倫子「しかし、バイト戦士はどうしてクリスティーナに突っかかるんだろうな」

ダル「そんなの、牧瀬氏の人気に嫉妬してるに決まってんじゃんJK」

まゆり「ダルくん、トゥットゥルー♪」

ダル「本来ならあたしがラボメンナンバー004になって、楽しくみんなと青春する予定だったのに、キーッ! 悔しい! みたいな」

紅莉栖「仮にそうだとしたら死んでも004の座は渡さないわ。岡部から貰った大切な番号だもん」

倫子「いい心がけだ、助手。ラボメンナンバーは数千万円というレートで違法トレードされるほどのシロモノだからな」フゥン

ダル「(実は裏マーケットでフェイリスたんが血眼になってラボメンナンバーを手に入れようとしているなんて言えない……)」

まゆり「みんな仲良くしてるほうがまゆしぃはいいなー」


倫子「それで、助手。変える過去は決まったか?」

紅莉栖「それなんだけど……私が今このラボにいる確率って、奇跡的なものだと思うの」

ダル「それは激同。サイエンス誌に載った若き天才が目の前に居るって、よくよく考えなくてもすごいことだお」

紅莉栖「だからね、どんな些細な過去を変えたとしても、私はこのラボのラボメンじゃなくなってしまう可能性がゼロとは言い切れない」

倫子「ふむ……。一理ある」

まゆり「まゆしぃもね、クリスちゃんがラボメンじゃなくなっちゃったら、いやだよー」

紅莉栖「私も絶対イヤ。日本に来てようやく見つけた私の居場所だもの、この現在を変えるなんて、私はできない」

倫子「……わかった。紅莉栖は過去を変えなくていい」

紅莉栖「ありがと、岡部」

倫子「となると、残されたのは……」

ダル「……」

紅莉栖「……」

まゆり「えー? まゆしぃ?」


倫子「いいか、まゆり。現在はまだ8号機の実験段階だ、制御下にあるとは言い難い」

倫子「ゆえに目下改変すべきは直近の過去であり、些細なことに限定している」

まゆり「……おばあちゃんが生きてた頃、まゆしぃはケータイ電話持ってないから大丈夫だよー」

倫子「そうだ、このラーメン缶を使おう。『今日はおでん缶が食べたい気分だなー』とメールするのだ」

まゆり「あー! それならすごくいいかも! 今日もね、自動販売機の前で10分くらい迷っちゃったんだよーえへへー」

紅莉栖「(アホの子かわいい)」

倫子「助手、今まゆりのことを"アホかわいい"と思っただろう」

紅莉栖「ふぇっ!?」

まゆり「クリスちゃん、まゆしぃのこと、アホだと思ってるのかなー?」ショボーン

紅莉栖「お、思ってないわよ!? まゆりと会話する時は難しい単語を使わないようにしようとかこれっぽっちも考えてないから!!」

ダル「Oh……」


ダル「1時間前にメールを送るとなると、マシン作動時間が1秒しかないから放電現象は起きませんでしたワロス」

倫子「ぐぬぬ……。これではいつまでたっても検証ができないっ!」

紅莉栖「岡部以外の過去改変で岡部の記憶がどうなるか、という点について、よね」

倫子「こうなったらラボメンナンバー005を出動させるしかなさそうだな」

紅莉栖「005?……ああ、桐生さんか。そう言えばラボメンだったわね」

倫子「お前。ひどいこと言ってるの、自覚してるか?」

紅莉栖「えっ?……あっ。ご、ごめん」

倫子「オレに謝られても困る。まあ、7年も友達が居なかったやつに人の気持ちを考えろというのも酷な話かも知れんな」

紅莉栖「うぅ……人として恥ずかしい……」

まゆり「だいじょうぶだよー、クリスちゃん。クリスちゃんは良い子だよー?」ナデナデ

紅莉栖「まゆりぃ……ふぇぇ……」

倫子「とにかく、指圧師に過去を変えさせるぞっ!」


倫子「メールで呼び出したから、今に来るだろう」

倫子「(受信履歴を見たところ、どういうわけか8月3日以降の萌郁からのメールは削除されていた……記憶には無いが、オレが消したのか?)」

ガチャ

萌郁「…………」

まゆり「トゥットゥルー、萌郁さん♪ あれー、元気ないよー? だいじょーぶ?」

倫子「指圧師はいつも無表情だろう」

倫子「萌郁よ。ラボメンとしての働き、期待しているぞっ」

萌郁「わかった……」

紅莉栖「送信するDメールの内容は、過去が変わったかすぐわかるような、それでいてシンプルなものが好ましいわ」

萌郁「過去を変える、メール……?」

倫子「もう忘れたのか? というか、お前はロト6のメールを送信……あ、そうか。この記憶はオレにしかないものだったな」

紅莉栖「なに岡部、まだ桐生さんに電話レンジの……カッコカリの機能の説明をしてなかったの?」

倫子「あー、どうやらそうらしい。記憶があったりなかったり、ややこしいな……」

萌郁「…………」


倫子「(萌郁に簡単に"過去を司る女神作戦<オペレーション・ウルド>"の概要について説明し、今までのDメール実験の成功例と失敗例を伝えた)」

萌郁「…………」ポチポチ

ピロリン♪

倫子「どれどれ? 『4日前にケータイの機種変したの。でもやっぱり変えない方がよかったなって思い始めて…… 萌郁』」

倫子「閃光の指圧師<シャイニング・フィンガー>は実に有能だなっ! まさにラボメンの鑑っ!」パァッ

紅莉栖「なるほど、良い案だと思うわ。桐生さんが今持ってるケータイが別のモノになれば過去が変わったことになる」

ダル「おっ、それって先月出たばっかの『GG01』じゃん! 最新機種だよ、今品薄でどこ行っても入荷待ちだけど、よく手に入ったなぁ」

萌郁「…………」

紅莉栖「それじゃ、早速実験の準備するわよ」

ダル「ブラウン店長になんか言われたらどうするん?」

倫子「ふぅーはははぁ! あんなハゲチクリン、おそるるに足らんわぁ!」

ダル「(まあ、あの人だったら許してくれるかもな)」


倫子「指圧師よ、メールの準備はいいか?」

萌郁「…………」コクッ

倫子「電話レンジ(仮)、起動ッ!!」

バチバチバチバチッ

倫子「放電現象っ! よし、今だ、萌郁っ! 送信ボタンを押せ!」

萌郁「…………」ポチッ

・・・チーン

倫子「あ、あれ……なにも、起こらない……?」

ダル「どう? 過去変わった?」

紅莉栖「ケータイの機種は……変わってない、わね」

倫子「どういうことだ? どうして過去が変わらなかった?」

萌郁「……私、あの時、最新機種に惹かれてたから、無視、したのかも」

ダル「あー、確かにそれはわかる。どんなに@ちゃんの評判がクソのゲームでも自分が気に入ったものだったら買わずには居られない」

紅莉栖「それに未来から来た変なメールだし、桐生さんなら信用するに値しないと判断したのかも」

倫子「くそぅ、結局失敗か……はぁ」


萌郁「私は仕事があるから、これで……」

倫子「そうなのか? 忙しいところ悪かったな。ヒマができたら遊びに来い」

萌郁「…………」

ガチャ バタン

倫子「ふむ、しかしまたどうして失敗してしまったのか……」

紅莉栖「どうして成功しないか、じゃなくて、どうして失敗したか、か。逆に、成功した時の状況を再現してみたら?」

倫子「……ぐあああっ!! オ、オレの左眼、魔眼"リーディング・シュタイナー"があぁぁっ!!」ガクッ

まゆり「オカリン、大丈夫……?」オロオロ

倫子「ダメだ、まゆり、オレに近づくな……今のオレは、お前を傷つけてしまうやもしれぬ……ぐぅっ!!」

ダル「釣り、乙」

紅莉栖「そ、そうよね……もう、冗談でもやめてよ。心配するじゃない」

倫子「再現しろと言ったのは助手ではないかー」プンスコ

紅莉栖「それに、シュタインズゲートもそうだけど、リーディングシュタイナーとかいうドイツ語と英語の組み合わせ、意味不明なんですけど」プークスクス

倫子「ぬうう……貴様、いよいよその生意気な本性を現し始めたな……」グギギ

大檜山ビル前


倫子「(結局電話レンジ(仮)の使用限界である夜7時までに芳しい成果は得られなかった)」

紅莉栖「それで、岡部。今日もホテルに来る?」

倫子「いや、今日は1人にさせてくれ。オレが外に出たのはお前らの見送りだ」

ダル「1人残ったラボでよからぬことを……はぁはぁ」

紅莉栖&倫子「「HENTAI禁止!」」

まゆり「まゆしぃもクリスちゃんとお泊り会したいなー」

紅莉栖「大歓迎よ、まゆり」

まゆり「でもねー、きっとお父さんが許してくれないのです」

倫子「まゆりの親父は過保護だからな」


ダル「そんじゃまた」

紅莉栖「バァイ」

まゆり「バイバーイ♪」

倫子「……まゆりは、帰らないのか?」

まゆり「…………」

倫子「(と思ったら例のクセ――"星屑との握手<スターダスト・シェイクハンド>"――か。夜空に片手を伸ばしている)」

まゆり「あっ、流れ星……ねぇ、オカリン」

倫子「願い事はしたか? 今の一瞬では3回唱えるのは難しいか」

まゆり「……オカリンって、小学生の頃、すごい熱を出して1か月くらい寝込んだことがあったよね」

倫子「何を突然……。99年の年末から2000年の元旦にかけて、40度近い熱が1か月も続いた、らしいな。親から聞いた話だが」

まゆり「そっか。オカリン、意識がもうろうとしてて記憶にないんだっけ」


まゆり「あのときね、まゆしぃはオカリンが死んじゃうんじゃないかって思って、すごく怖かったんだよー」

まゆり「だからね、おばあちゃんと一緒に、お空に祈ってたの。"オカリン死なないで"って」

倫子「ククク。このオレ、鳳凰院凶真が死ぬはずがないだろう!」

まゆり「そっか、オカリンはすごいねー」ニコニコ

まゆり「でもね、あの時……大晦日の日、流れ星がピューって流れたの。今みたいに」

まゆり「オカリン死なないで、オカリン死なないで、オカリン死なないで……って」

まゆり「次の日、年が明けた頃にね、オカリンは熱が下がって目を覚ましたのです」

まゆり「つまりまゆしぃは、オカリンの命の恩人なんだよーえへへー」

倫子「……そうか。それもまた運命石の扉<シュタインズ・ゲート>の選択。ククク」

まゆり「違うよー、まゆしぃのおかげだってばー」

倫子「それも含めて運命だったのだろう。オレとお前は、前世からの宿縁によって相利共生の存在となっているのだっ!」

まゆり「そうだったのー? なんだかすごいねー♪」


まゆり「ねぇねぇ。熱が下がったときね、オカリンはこんなことを言ったんだけど、覚えてる?」

まゆり「急に見ているものがグニャグニャしてきて、立っていられなくてふらふらして、身体がビクってなった、って」

倫子「ビ、ビクってなどいないわっ!」

まゆり「るかくんが宝くじを持ってきた時も、さっきのオカリンの……釣り? の時も、そんな感じだったよ」

まゆり「オカリン、本当に大丈夫? 熱出てない?」

倫子「案ずるな。なにも心配ない」フッ

倫子「(あの熱から目覚めて、最初に目にしたのはまゆりの泣き顔だった)」

倫子「(言われてみればリーディング・シュタイナーの時の目眩や気持ち悪さの感じととても良く似ていた気がする……)」

倫子「そうか。この魔眼は、まさにあの時この身に宿ったのだな……! ふぅーはははぁ!」

倫子「やはり特殊能力を得るには修行が必要! どの少年漫画でもそうなっているっ!」

倫子「1か月高熱を出し続けるという苦行に打ち勝ったオレは、魔眼を手に入れたのだっ! すべて辻褄が合う!」

倫子「……だが、オレにその記憶は無い。もしかして、ここ最近のオレの記憶同様、過去が変わったせいで記憶を思い出せないでいるのか?」

倫子「例えば、元々99年末にオレが熱を出さなかった世界線――自称未来人の単語を使うのは憚られるが――において、2010年のオレが電話レンジ(仮)を発明し……」

倫子「99年末へとなんらかの情報を送ることによってオレに原因不明の病を引き起こさせた……無論、目的は魔眼発動のため」

倫子「(いや、そうとは限らない。仮にあの高熱でオレが死亡していたとしたら……というか、医者には死んで当然と言われたらしい)」

倫子「(オレの死の後、何者かがオレを蘇らせるために過去を変え、魔眼はその副産物だったとしたら……まあ、さすがに妄想しすぎか)」

倫子「ククク……世界の支配構造を破壊するのも、時間の問題だなぁ! ふぅーはははぁ!」

まゆり「オ、オカリン、夜に大声出すとご近所さん迷惑だよー」アタフタ


・・・


その日、ラボのソファで寝たオレは、変な夢を見た。

紅莉栖が開発室に立っている。X68kのターミナルを呼び出し、タイマー指定をしている。

なぜか、テレビのリモコンを持っている。

気が付けば、オレの頭にはアルパカマンというゲームのヘッドセットが装着されていた。

『問題。岡部を救うために祈りを捧げたまゆりが岡部を救ったとする。ここから導き出される論理的帰結とは、どんなのもの?』

準備を終えた紅莉栖は、肩越しに変なことを聞いてきた。

『①まゆりは岡部を助けることができた ②岡部を助けたのでまゆりは死ぬ ③岡部が助かったとは限らない』

そしてマシンが起動した。

『答えは③。現実は非情よね』

『じゃあね、岡部。世界線を超えようと、時間を遡ろうと、これだけは忘れないで』

『いつだって私たちはあんたの――』

『味方よ――』

今日はここまで
全部読み返してみると、今までほとんど本編をなぞってきただけだったので
そろそろオリジナル要素を出せそうでわくわくしてます

ここまで読んでくださって本当にありがとうございます
毎回レスに気持ちを救われてます

>>314の8行目で岡部が紅莉栖を紅莉栖呼びしてますがミスです。失敗した失敗した

>>314

×倫子「……わかった。紅莉栖は過去を変えなくていい」

○倫子「……わかった。助手は過去を変えなくていい」


これ投下しておくとまとめサイトさんによっては訂正してくれるので助かってます
以後気を付けますのでお手数ですがよろしくお願いします

2010年8月5日木曜日
未来ガジェット研究所


るか「あ、あの、タイムマシンを使わせてくださいっ!」

倫子「……それは、むしろ願ってもない申し出だが、突然どうした?」

まゆり「るかくん、コスプレしに来てくれたんじゃなかったの……?」

るか「ごめんねまゆりちゃん。あの、岡部さん。ボク、どうしても試してみたいことがあって……」

倫子「凶真だ」

るか「あぁっ! す、すいません、おか――凶真さん」シュン

倫子「まったく、世話の焼ける弟子だな」フフッ

るか「(わふっ///)」

紅莉栖「しかしながら、こうしてみるとやっぱり漆原さんって……キュート、よね」ジュルリ

るか「え、え? えぇっ!?」

ダル「そろそろ牧瀬氏の性癖にも慣れてきた件」

倫子「出たな万年発情レズ。だが、お前は1つ重大な過ちを犯している」

紅莉栖「な、なにがよ? 漆原さんがかわいいってことは揺るぎない正義でしょーが」

倫子「まあいい。それで、ルカ子よ。己の望みをその言霊に乗せ、解き放てっ!」

るか「その……ボク……っ!」



るか「――女の子になりたいんですっ!!」



紅莉栖「…………」

紅莉栖「…………」

紅莉栖「"What's?"」


るか「ボク、自分の顔、あんまり好きじゃなくて……」

るか「だから、もし女の子になれれば、少しは自信が出るかなって、昔から思っていたんです……」

倫子「ルカ子がそのような悩みを抱えていたとは……。気付いてやれなくてすまない。師匠失格だな」

るか「そ、そんな! おか――凶真さんは悪くありませんっ! ボクがこんな容姿なのが悪いんです……」グスッ

倫子「そんなわけない。ありのままのお前でいいのだ、否定はできない」ナデナデ

倫子「だが、同時にオレは、オレたちは、お前の望みも否定しないっ!」

るか「(きゅん///)」

紅莉栖「彼女はナニを言っているの」

倫子「クリスティーナ。たまにはその邪念で曇った双眸を磨いたらどうだ」

紅莉栖「……どういうことよ」

倫子「人間ならば誰にでも、現実のすべてが見えるわけではない。多くの人は、見たいと欲する現実しか見ていない」

紅莉栖「……カエサル。というか、それを紹介した日本人の言葉ね」

倫子「貴様の、"かわいい女の子と接点を持ちたい~♪"という邪念によって、ルカ子がかわいい女の子であると心から信じてしまう……脳の認識を誤らせているのだっ!」

紅莉栖「嘘よ……嘘だと言って……」

倫子「さあ、ひざまずけっ! 己の愚かさを後悔しろっ!」

倫子「そして最近オレに対して上から目線になりつつあることを反省しろぉっ!!」

倫子「―――ルカ子は、おぉとぉこぉだぁぁぁぁっ!!!」

紅莉栖「ぐっはぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!」ダバーッ!

ダル「ちょ! 血を吐くほどとか」

まゆり「わー、タオルタオル……」


倫子「まあ。オレだって男っぽく振る舞ってる女だ。女らしい男が居ても今更驚くことはないだろう」

紅莉栖「いや、それは何か違う気がする……」

紅莉栖「その理屈で行くと、岡部も男になりたかったりするの?」

倫子「オレの場合はこうでもしてないと理性を保てない人間どもが多いというだけで、男になりたいとはならない」

ダル「もはや厨二病こじらせてるだけっしょ」

倫子「う、うるさいぞっ! 厨二病で悪いかぁ!」

紅莉栖「(かわいい)」

倫子「だが、ルカ子の場合は違う。なんというか……ルカ子は素の状態で既に女なのだ」

紅莉栖「見た目も中身も女の子より女の子らしい……。水泳の授業の時とか、どうしてるの?」

るか「体育の先生にはお話を伝えていて、いつも見学させてもらってます」

ダル「ちな制服はどっちを?」

るか「えっ? も、もちろん学ランです」

紅莉栖「……学校でいじめられたりしてない?」

るか「……いえ、そんなことはないですけど」

まゆり「るかくんはねー、学校では人気者なんだよー♪」

倫子「ルカ子はまゆりと同じ私立花浅葱大学付属学園の2年生だ。同級生ってやつだな」

紅莉栖「(もしかしなくても、まゆりさんが彼女――彼を守ってるのかしら)」


倫子「電話レンジ(仮)は我がラボの最重要機密事項。それを使う以上、お前はラボメンとならなければならないっ」

るか「あ、あの、ボク、このラボのメンバーに……ずっとなりたいって思っていたんです……」ウルウル

倫子「ラボメンナンバー006よ。以後、ラボに忠誠を誓い、ラボの発展のために全力を尽くせっ!」

まゆり「わーい! るかくんがラボメンだー♪」

ダル「(これはフェイリスたん憤死案件だ罠)」

倫子「しかし、性別を変えるほどの過去改変となると、どうすればいいか……」

紅莉栖「お肉をたくさん食べれば男の子を、野菜をたくさん食べれば女の子を産めるっている俗説があるらしい」

ダル「ソースは?」

紅莉栖「@ちゃ……インターネット」

ダル「そういう返しをするとは……おぬし、やるな……」

倫子「実に怪しい俗説。だが、それがいい。ククク、マッドな実験は大賛成だ」

るか「まっど……ですか。ちょっと怖いです」

紅莉栖「大丈夫よ、過去にメールを送るだけだから」

紅莉栖「えっと……この場合、漆原さんのお母さんが妊娠中の時期にDメールを送るのね」

倫子「さすが実験大好きっ娘。もう具体的な思案をしているとは」

ダル「ちょい待ち。るか氏のお母さん、その頃ケータイ持ってるん?」

倫子「あっ」

紅莉栖「はっ」


倫子「ルカ子は1993年8月生まれ。ということは、1992年年末頃にメールを送らねばなるまい」

ダル「えっと……ググったら、携帯電話が日本に普及するのは96年っぽい。メール機能が実装されるのはさらに遅いかも」

るか「え……ダメ、なんですか……」ウルウル

倫子「……こういう時にぴったりな、オレの師匠の至言がある」

るか「師匠の、師匠……?」

倫子「諦めたら、そこで試合終了ですよ」

紅莉栖「安西先生ェ……」

ダル「おお、スラダンで思い付いたけど、ポケベルならるか氏の母上も持ってるかも」

紅莉栖「ああ、あのヤンデレソングね」


・・・


るか「ただいま戻りました。お母さん、ポケベルを持ってました。番号も聞いてきました」

まゆり「わぁー! よかったね、るかくーん♪」

ダル「技術的には多分問題ない。当時のポケベル文字に変換すればおk」

るか「ええと……『やさいたべるとげんきなこをうめる』、でどうでしょうか」

紅莉栖「濁点が文字数になっちゃうから『やさいくうとげんきなこをうめる』にして、これを変換すると『*2*281311223134524040322512502137493』ね」

倫子「ルカ子。ケータイの送信ボタンを押すのは、お前自身だ」

るか「はいっ……」

倫子「タイマーは『154152#』……よーし、起動っ!」



バチバチバチバチッ



るか「……えいっ!」


―――――――――――――――――――
    0.50329  →  0.46903
―――――――――――――――――――


倫子「ぐぅ……っ! また……またこの目眩か。ということは、成功……?」

倫子「(ルカ子は女になったのか?)」

るか「あの、岡部さん。大丈夫ですか?」

倫子「凶真だ」

るか「えっ。あっ! ご、ごめんなさいおか――凶真、さん」

倫子「ふーむ……」ジロジロ

るか「そ、そんなに見つめないでください……照れちゃいます……」

倫子「(見た目は全く変わってない。胸なんか、これで女の子だとすればぺったんこを通り越してまな板クリフだ)」

倫子「(自慢じゃないが、オレのおっぱいは助手よりはある。バストサイズが下がればいいと思ったことは一度もないが、今回ばかりはルカ子に分けてやりたい気分になる)」

倫子「実験は失敗か……」

まゆり「しっぱいって、なにがー?」

倫子「なにって、今まさに過去を変える実験を―――ああ、そうか。過去が変わったから記憶がないのか」

倫子「(おそらく、ポケベルにメッセージを送ることでなんらかの事象が変わり、先ほどの実験をしないバタフライ効果が生まれた)」

倫子「(例えば、ルカ子が女になったためにそもそも性別転換を思いつかなくなった……)」

倫子「(ん? だったら過去改変に成功しているのか?)」


るか「それじゃ、ボクは帰りますね。まゆりちゃん、またね」

まゆり「今度こそコスを着てねー! ばいばーい♪」

ガチャ

倫子「(本人は帰ってしまった。周りに聞いてみるか)」

倫子「助手。ルカ子は女か?」

紅莉栖「へっ?……ちょ、ちょっと突然ナニ聞いてんのよ! 自分で聞いたらいいじゃない///」

倫子「(このアホ、また何かスケベな勘違いをしているな)」

倫子「まゆり。ルカ子は女か?」

まゆり「うーん? るかちゃんはねー、まだ誰とも付き合ってないよー?」

倫子「(日本語って難しいな……)」

倫子「おいダル。ルカ子の性別は女か? 生物学的な意味で」

ダル「おいおい、オカリン。あんなにかわいい子が女の子のわけがないだろ常考」

倫子「(話にならん)」

メイクイーン+ニャン2


倫子「(ダルが突然『フェイリスたん成分を充電しに行かなくては!』、などとほざいたので渋々ついていくことにした)」

倫子「なあダル。Dメールについてなんだが……もっと送り手側がコントロールできるような装置にしたいと思う」

ダル「うーん、いくら僕でもそういう改造は思いつかないっつーか」

倫子「まるで運命石の扉<シュタインズ・ゲート>の選択によって、オレたちが過去を自在に改変できないかのようだ……ええい!」

倫子「この鳳凰院凶真ともあろう女が、簡単に諦めたりなどしてたまるものかっ!」

倫子「この魔眼リーディング・シュタイナーを駆使し、必ずや完ぺきなタイムマシンを創り出し、時空の覇者となり、世界の支配構造を破壊する……」

倫子「それが運命石の扉<シュタインズ・ゲート>の選択なのだからなっ! ふぅーはははぁ!」

ダル「倫子ちゃんが楽しそうでなによりです」

倫子「倫子ちゃん言うなぁ!」

フェイリス「タイムマシン!?」

倫子「ハッ!?」


倫子「しまった、声がでかすぎたか……オレとしたことが」

フェイリス「大丈夫ニャ。この店に集うご主人様たちは、みーんな訓練されてるのニャ」

フェイリス「外部に凶真の秘密を漏らすような卑劣な人間は1人もいないニャ!」

客A「もちろんだお!」

客B「倫子ちゃんは僕たちが守るお!」

倫子「だから倫子ちゃん言うなぁ!」

フェイリス「アイスコーヒーとアイスティーとねこまんま、お待たせしましたニャン♪」

フェイリス「ミルクとガムシロは入れますかニャン?」

倫子「断る」

フェイリス「そんな凶真には、全部入れちゃうニャ~。まぜまぜ~、まぜまぜ~。にゃんにゃん♪」

ダル「出たー! フェイリスたんの秘技、"目を見て混ぜ混ぜ"だー!」

倫子「……オレのグッズの闇市場があると聞いたのだが」

フェイリス「ニ゛ャ゛ッ!?」

ガッチャーン!! バシャー

倫子「うわぁ!? オ、オレの白衣があっ!?」

マッキー・ニャンニャン「お嬢様、大丈夫ですか!」

リサリサ・ニャンニャン「今お拭きします!」

フェイリス「ハニャニャ……」


ダル「結果メイド服を着ることになったオカリンであった」

倫子「茶色く汚れたシャツと白衣は洗濯するしかなかったからな……仕方がないとはいえ恥ずかしいぞ……」

倫子「というか、なぜオレのサイズにピッタリのメイド服が用意されている」

フェイリス「それはもちろん、凶真がいつメイドさんになりたいって思ってもいいようにニャ!」

倫子「…………」ゾワワッ

ダル「チェキ1枚いいですか?」

フェイリス「猫耳をつけてくれないのは残念ニャけど、とってもカワイイニャン♪」

倫子「元はと言えば貴様のせいではないかぁ……っ! このダメイドがぁっ!」

フェイリス「きょ、凶真が突然変なこと言うから悪いのニャ」

倫子「ネタは上がっているんだ。ダルから聞いたぞ」

フェイリス「……ダルニャン。信じてたのに、ウニャァ……」

ダル「ちょ! 僕、一言もオカリンにブラックマーケットの件は言ってないお! 誓うお!」

倫子「そうか、過去が改変されてダルから聞くことは無くなったのか……。だが、リーディング・シュタイナーは真実を見通すっ!」

倫子「とにかく、どういうことか説明しろぉ!」

フェイリス「それは出来ない約束ニャ」

倫子「そもそもあの写真集だって、どうしてオレが小学生の頃からの写真をお前が撮影できたのだ」

倫子「知り合ったのは今年になってからだろう」

フェイリス「黙秘権を発動するニャ!」

倫子「……オレの服、ちゃんと洗って返すんだよな?」

フェイリス「……も、もちろんニャ」

倫子「おいィ!? なんだいまの間はっ!? うわぁん!!」


フェイリス「その秘密を教えてあげるかわりに、フェイリスにもタイムマシンについて教えてほしいニャ!」

倫子「どこまでもふてぶてしいやつめ。教えるわけがなかろう」

フェイリス「ダルニャーン♪」

ダル「実はメールを過去に送れるすげえマシンを作ったんだお。主に僕が。過去改変も小規模ながら成功してるっぽい」

倫子「貴様ぁっ! あっさり色香に惑わされおって……っ!」プルプル

ダル「ごめんオカリン、フェイリスたんの可愛さは正義だから」

倫子「まあ、フェイリスにはIBN5100の居処を教えてもらった恩がある……」

フェイリス「フェイリスにもタイムマシンを使わせてもらえないかニャー」

ダル「ま、僕の権限で使わせてあげてもいいお」

フェイリス「ホントかニャ! ダルニャン、だーいすきニャ♪」ダキッ

ダル「うへうへ」

バンッ!!

倫子「……帰るッ!! 勝手にしていろ、バカどもがッ!!」ダッ

未来ガジェット研究所


倫子「クソっ、クソっ、クソぉぉっ……! ダルのやつ、軽率な行動を取りおって……うぅ……」ウルウル

まゆり「うわー! オカリンがメイド服だー♪ もしかして、コスしてみたくなった?」キラキラ

倫子「断じて否っ! フェイリスにコーヒーをぶっかけられて仕方なく着ているだけだっ! 今すぐ着替えるっ!」プンスコ

まゆり「オカリン、なんだか怒ってる? なにかあった?」

倫子「ダルのやつがフェイリスにタイムマシンの情報を漏えいさせたのだ。鼻の下を伸ばしきってな!」ヌギヌギ

まゆり「そっかー。ダルくんらしいなー」

まゆり「でもね? だからって、ダルくんがオカリンのことを嫌いになっちゃったってわけじゃないと思うよ?」

倫子「は? ……別に奴に嫌われようが一向に構わん」

まゆり「まゆしぃたちは、オカリンの味方だよー」


『これだけは忘れないで。いつだって私たちはあんたの味方よ』


倫子「(……なんだ今の既視感<デジャヴ>は。リーディング・シュタイナー、ではなさそうだが……)」

まゆり「オカリン?」

倫子「クックック……バカなことを言うな。ラボメンは鳳凰院凶真の策略によって操られているに過ぎないのだからな! ふぅーはははぁ!」

まゆり「まゆしぃは操られてないよー?」

倫子「む、そうだった。お前はオレが呼んでもいないのにラボに参加してくれた……」

倫子「あの時のまゆりは女神に見えたぞ。ガチで」

まゆり「まゆしぃはオカリンの人質なのでー。えっへへー」


倫子「やっぱり白衣が落ち着くな……。助手の白衣、今日は借りさせてもらおう」

倫子「まゆり。くれぐれも助手にこの白衣をオレが着たことを言うなよ?」

まゆり「クリスちゃんはHENTAIさんだからねー。わかったよー」

まゆり「ねぇねぇオカリン。オカリンは、これからもまゆしぃのこと、人質にしておいてくれる?」

倫子「お前は人質のままでいたいのか?」

まゆり「うーん……。えへへ、居たいかもー♪」

倫子「まったく。とんだドM娘に育ってしまったものだな」

まゆり「まゆしぃはHENTAIさんじゃないよー?」

倫子「そんなんだと嫁の貰い手がなくなるぞ?」

まゆり「じゃあ、まゆしぃはオカリンのお嫁さんになるしかないねー♪」

倫子「そのためにはどっちかが性転換しなければならんな。少なくとも、2010年の日本では」

倫子「オレが男だったら今以上に痛い奴になっていそうだ」ククッ

まゆり「男の子のオカリンかぁ。きっとモテモテでイケメンなんだろうなー」

倫子「(こいつ。一見何も考えていないようで、落ち込んでいたオレを励ましてくれていたのか……)」

倫子「昼はまだか? 今日はおごってやろう」

まゆり「えー! いいのー? あのね、まゆしぃはキッチン・ジローのメンチカツがいいなー」

倫子「ああ。お安い御用だ」

まゆり「わーい。オカリン大好きー♪ まゆしぃはとっても幸せだよー」

倫子「(しかし、"オレが男だったら"か)」

倫子「(そしたらまゆりとは男女関係になっているだろうし、ダルのHENTAIにいちいち怒ったりしないだろう)」

倫子「(助手は……オレに興味を持たなくなるかもな。うむ、やはり今のままが一番だ)」

倫子「ほら、いくぞ。まゆり」

まゆり「うん!」

おまんこ

大檜山ビル前


倫子「(まゆりにカレーをおごり駅まで送ったあと、ラボに帰ってくると店先に小動物ことシスターブラウンが居た)」

綯「あっ……凶真、おねえちゃん……」

倫子「1人で何をしている。バイトはいないのか?」

綯「中に居ます……」

倫子「そうか。それで? オレになにか用か?」

綯「えっと……あの……」モジモジ

倫子「ん? なんだ?」

綯「わ、私にも……その……」

綯「タ、タイムマシン、使わせてくださいっ!」

倫子「……え?」

未来ガジェット研究所


綯「ごめんなさい……。2階のお話が、下にも聞こえてきてて」

倫子「あー、そのことは構わない。むしろいつもうるさくして申し訳ないと店長に伝えてくれ」

倫子「(床に穴も開いてるしな……。実際ほとんど聞こえているのだろう)」

倫子「それで。本気で言っているのか?」

綯「は、はい。どうしても変えたい過去があるんです」

倫子「その歳で思い悩むとは……。で、一体なんなのだ、それは」

倫子「表では話しにくいことだというから、ラボに入れてやったが……」

倫子「(このラボには未来ガジェットが転がっている。子どものオモチャにされたらたまったもんじゃない)」

倫子「(あんまりこの子をここに入れたくはないんだが……)」

綯「あの……、その……」

綯「お、お母さんを、生き返らせてほしいんです……」

倫子「な……」

倫子「(想像以上だった……)」


綯「お父さん、酔っぱらって帰って来た時、たまに言うんです」

綯「『俺はあいつを見捨てたんだ、守ることができたのに』って」

綯「お父さんは、お母さんは私を産んで死んじゃったって言ってたけど」

綯「たぶん……違うと思うんです。お父さんの寝言とか聞いても、そうは思えなくて」

倫子「どんな寝言だ?」

綯「えっと、にんむをやらなければ……とか、です」

倫子「(任務?)」

倫子「ふむ。しかし、奴の性格からしてそれらの言葉は額面通りに受け取るべきではないな」

倫子「何か事故ではあったのだろう。だが、守ることができた、ということは、対策をしていれば対処できる類のものだったのか……?」

倫子「(つまり、ミスターブラウンは綴さんが死ぬ危険にあることを知っていた?)」

綯「いつもお父さん、私の顔を見ながら遠い目をしていて」

綯「たぶん、お母さんの面影を見てるんだと思うんです」

倫子「察しの良い子どもだな……。いや、こういうのは子どものほうが勘が鋭いのか」

綯「だから、お父さんのためにも、お母さんを生き返らせてほしいんですっ!」

倫子「(断りにくいな……)」


倫子「確かに試す価値はある」

倫子「だが、死んだ人間を蘇らせるなど、因果律に対する反逆、創造主に対する冒涜ではないのか……」

倫子「冒涜……ククク。実にマッドではないかぁ」

倫子「このオレ、鳳凰院凶真こそ、亡者を現世に顕現せし者っ!」

倫子「よく聞け、シスターブラウンッ! 貴様はその齢にして、悪魔に魂を売るのだぁ……」ニタリ

綯「ひっ……で、でも、お父さんはいつも、お前はラボのメンバーにはなるなって言ってるので……」

倫子「あのハゲ頭め、ラボメンを何だと思ってるのだ。だがまあ怒らせたら怖いしな……」

倫子「貴様はラボメンにならなくていい。今回は特別だぞ?」

綯「は、はい!」パァァ

倫子「そうとなればさっそく文面を考えるぞっ!」

綯「はいっ!」キラキラ


倫子「『任務を遂行し ろ。でなけれ ば綴が死ぬ!』……。シスターブラウンの情報からだと、こんなところか」

綯「すいません……お力になれず……」

倫子「いちいち謝るな。それで、綴さんが亡くなったのはいつだ?」

綯「えっと、2001年の10月22日です。でも、メールは2000年の5月18日に送ってください」

倫子「なにか確信があるのか?」

綯「たぶん……。うちのお仏壇にいる、もう1人の人の命日なんですけど」

倫子「もう1人の人……」

綯「それから、これがお父さんのメールアドレスです」

倫子「店長がアドレスをここ10年間のうちに1度でも変えていたらアウトだが、コロコロ変えるような人間には見えないな」

綯「私が生まれる前からお仕事でも使ってたって言ってたので、たぶん変えてないと思います」

倫子「2000年に届く時間は……よし、マシンの準備もできた」

倫子「あとは放電現象中にお前の手でその送信ボタンを押すだけだ」

綯「はい……」ゴクリ

倫子「マシンを起動するぞ……」ポチッ

電話レンジ「……」シーン

倫子「あ、あれ? 起動しない?」ポチポチポチ

綯「え……」


倫子「うーむ、どうやら内部パーツのどれかがイッたらしい。クソ、これだからワゴン品は!」

倫子「(ちなみに電子レンジ本体はごみ置き場から拾ってきたものだ。中身の電子部品はほとんど魔改造したが)」

倫子「しかしここはダルの領域だ。オレはあいつがコレにどんな改造を施したかよくわかっていないから直せん」

倫子「ダルか……。正直、今日はあいつに会いたくないんだよな……」

綯「……す、すいません。あの……」

倫子「どうした? 綯」

綯「あっ///」ドキッ

倫子「……む?」

綯「あ、いえ、その……ごめんなさい。やっぱり、もう少し、考えさせてもらってもいいですか……」

倫子「……そうか」ホッ

倫子「無論、構わん。お前が本当にどうしたいのか、よく考えてみると良い」

倫子「(この子も大人への階段を上っているところなのかもしれないな)」フッ

倫子「オレたちはお前の手伝いをすることはできる。だが、行動を選択するのは己自身でなくてはならぬ!」

綯「は、はい」

倫子「送りたくなったらいつでも言えよ」ニコッ

綯「はいっ!」

大檜山ビル前


倫子「(小動物を未来人バイトの元へ送り返そうと階下に来たはいいが、なぜかクリスティーナが店先のベンチに座っていた)」

倫子「どうしてラボに入らない? ん、誰かと電話……?」


紅莉栖「なによそれ……。日本に呼びつけておいて今更そんな―――」

紅莉栖「……そう。結局、会うつもりなんかなかったんでしょ」グスッ

紅莉栖「いったいなにがしたかったのよ? それすら教えてくれな―――」


紅莉栖「あっ、岡部……」

倫子「お、おう」

紅莉栖「…………」

紅莉栖「……ッ!!」ダッ

倫子「あ、おいっ!」

綯「……お姉ちゃん、行っちゃった」

倫子「泣いていたようだが……。まさか向こうの彼氏か? いやいや、あいつはレズだから彼女か」

倫子「だがあいつにパートナーがいるようには思えない……。となると、例の親父さんか」

倫子「ほら。綯はもうお店に戻れ」

綯「うん。凶真お姉ちゃん、今日はありがとう、ございました」ペコリ

倫子「フッ。オレは感謝されるようなことをした覚えはないがな」

綯「えへへ……」

未来ガジェット研究所


紅莉栖「…………」

倫子「で、結局ラボに戻って来たか。……どうした」

紅莉栖「わ、私はっ! 別に、泣いてなんかないからなっ!」

倫子「なぜそこで強がる。まあ、お前がそういうならそうなんだろう」

倫子「目が赤いのも、ゴミが入ったんだろう?」

紅莉栖「……。今日のことは忘れて。気にしないで」

倫子「ホントにお前は構ってちゃんだな」

倫子「どう考えてもその台詞は、私の悩みを聞いてほしいの~にしか聞こえんぞ」

紅莉栖「うっ……。そ、そんなこと、ないからな」

倫子「いいか、クリスティーナ。話さなくていいから黙って聞け」

倫子「お前が困っているならば、オレは、オレたちは全力で解決に協力する」

紅莉栖「え……」

倫子「1人で強がって抱え込んでいるより、弱音を吐きたいときは吐いてしまえ。オレたちはそれを拒絶したりしない」

紅莉栖「なんで……」

倫子「お前が、ラボメンナンバー004だからだ」

紅莉栖「岡部……」ジュン


紅莉栖「ごめん……。なんだか、今日は気が立ってて……」

倫子「無理に今話せとは言わない。お前が落ち着いた時、話す準備ができた時でいい」

紅莉栖「うん……。あ、あのさ、岡部」

倫子「なんだ?」

紅莉栖「今日、ラボに泊まっていっていい?」

倫子「心細いのか?」

紅莉栖「そ、そんなこと……ある、かも」

倫子「だったら御茶ノ水のホテルで―――」

紅莉栖「だ、だめ! 私は、ラボがいい!」

倫子「む? なら別に構わんが」

紅莉栖「ホ、ホント!? ありがと……」

倫子「……なあ、紅莉栖。もしオレが男だったらお前は、オレに心を開いてくれただろうか」

紅莉栖「えっ?」

倫子「あ、いや、なんでもない。忘れてくれ」


その夜、ソファーで眠った紅莉栖は、やはりというべきか、夢の中でも泣いていた。

なんだかんだでこいつは、まだ自分のことについてほとんど話していない。

それは、強い自分を創るために必要なことだったのだろう。

他人に自分をさらけ出さない。

それこそが、こいつが生きてきた環境で生み出した、生きるすべだったはずだ。

だが、ここは違う。このラボは違う。

心から信頼してもいい仲間の集まりだ。

オレが望んだのだから、そうなるべきなのだ。

……早くこいつに、オレのことを信頼してもらわねばな。

今日はここまで

2010年8月7日土曜日
未来ガジェット研究所


倫子「諸君。土曜日なのにご苦労。本日もマッドに研究していくぞっ!」

ダル「…………」

倫子「(普段ならダルは、『そんなことより、昨夜はお楽しみでしたね、についてkwsk。百合厨の僕としては牧瀬氏が受けの展開キボン』などと言い出すところだが)」

倫子「(オレのよそよそしい態度が伝播してしまったのだろう。若干気まずそうにしている)」

倫子「(こんなことではいけない。機関によるラボメンの切り崩し工作がどこから始まるかわからないのだからな)」

紅莉栖「おいピザ。話は聞いたわよ」ギロッ

紅莉栖「あんた、倫子ちゃんを差し置いて猫耳メイドにうつつを抜かしてたんですって?」イライラ

倫子「倫子ちゃん言うなぁ!」

ダル「おうふ……。正直すまんかった」

倫子「ふん。誠意が見えんな」

倫子「貴様、この美女揃いのラボに居て、自分が世間的にどれだけ羨ましい存在かわかっていないようだなぁ?」

ダル「ぐはぁ! い、いや? 僕だってわかってるのだぜ?」

倫子「貴様のその幸せな日々は、誰のおかげで導かれたのだ。言ってみろ」

ダル「ほ、鳳凰院凶真さんのおかげです、ハイィ……」

倫子「む。よろしいっ」ニコッ

紅莉栖「(かわいい)」

ダル「(かわいい)」

倫子「次は無いからな。まゆり、ハサミ閉まっていいぞ」

まゆり「はーい」チョキチョキ

ダル「オーキードーキー……」


まゆり「でもでもー、ダルくんはね、本当はとってもオカリンのこと大好きなんだと思うなー」

ダル「ちょ、まゆ氏!?」

倫子「こいつがぁ? そもそも、恋愛感情を持たぬよう命じたのはこのオレだぞ」

まゆり「ううん、そうじゃなくてね、相棒としてだよー♪」

倫子「だが、ラボに誘ってすぐラボに参加しないような薄情者だぞ?」

まゆり「それはねー、オカリンがね、ダルくんが居なくてもしっかりやっていけるかどうか見てたって、ダルくん言ってたよー?」

倫子「な……に……」

ダル「あ、いや……。なんつか、ごめんお、オカリン」

ダル「大学入って、僕みたいなのとつるんでたらオカリンの株が下がっちゃうんじゃないかと思ってさ……」

倫子「そうだったのか……」

倫子「…………」

倫子「まったく、このラボはバカばかりだな」フフッ

ダル「いやあ」

倫子「褒めてないっ!」

紅莉栖「……あれ。私もバカ認定されたっ!?」

まゆり「クリスちゃんは、オカリンバカなんだよー」ニコニコ

紅莉栖「ならばよし」


・・・

カチャカチャカチャカチャ

倫子「どうだ? 直ったか?」

ダル「さすがにジャンクパーツだとピンキリあるよな。ちょっと良いやつに変えておいたお」

倫子「資金の出処は?」

紅莉栖「私よ。このくらいは出資させて。一晩泊めてもらったしね」

倫子「……まあいいだろう。さて、マシンも直ったところで話を進めよう」

倫子「昨日ダルには話したが、これまでの一連の実験結果を見て、気付いたことがあるっ!」

倫子「Dメールには、不確定要素が強すぎるということだ」

倫子「そこで、今回諸君に集まってもらったのは他でもない。本日の円卓会議の議題は――」

倫子「Dメールではなく、SERNと同じように物理的タイムトラベルという方法を模索したい件について、だっ!」

ダル「(もはや誰も円卓会議についてツッコミを入れないのな)」

紅莉栖「うーん……私たちに本当にそんなことできるのかしら」

ダル「SERNだって未だに成功してないわけですしおすし」

倫子「科学者たるもの、諦めてはならない。それに、我らはすでにDメールという、人類史上初の快挙を達成した実績がある」

紅莉栖「でも、未だにリフターの代替物も解明できてないし」

倫子「それが解明できればいいのだろう?」

紅莉栖「他にも、局所場指定問題がある」

倫子「いやちょっと待て。Dメールは局所場指定をしていないにもかかわらずちゃんと届いている」

紅莉栖「……言われてみれば」

倫子「そうかっ! ここに問題解決の糸口があると見たっ!」パァッ


ダル「でもさ、Dメールじゃ36バイト+αのデータ量しか送れないじゃん」

紅莉栖「物理的なタイムトラベルは夢のまた夢ね。データが送れるだけでもすごいわよ」

倫子「むむむ……どうすれば……」

紅莉栖「前から思ってたけど、電話レンジカッコカリをしかるべき研究機関に持ち込んで、専門家に委ねればね」

紅莉栖「適切な頭脳と設備、資金によって本格的な開発が進むんじゃないかしら」

倫子「……もし公表すれば、"機関"のヤツらに気付かれてしまう」

紅莉栖「そんな居もしないものを引き合いに出さないで」

ダル「まあ、SERNに知られるのはまずい罠。ハッキングの足はついてないけど、SERNが極秘でやってる研究をバラすようなもんだし」

紅莉栖「あ、そっか……。ホント、世界は欺瞞で満ち溢れているわね……」

まゆり「なんだか怖いね……」

倫子「それに。これが何よりも問題なのだが……」

倫子「公表してしまったら、もうラボでタイムマシンを使えなくなってしまうではないかぁ!」

紅莉栖「――ハッ! 私のアイデンティティがなくなる!?」

ダル「そこかよ」


倫子「そう言えばダルよ。SERNについて調べは進んだか?」

ダル「一応やってるけど、これと言った成果はナス」

倫子「そうか……」シュン

紅莉栖「(かわいい)」

ダル「そ言えば、今SERNは実験の真っ最中みたいで、LHCがフル稼働してんだよね」

ダル「こっそり使わせてもらえないかなーって準備してみたり」

紅莉栖「嘘っ!? スーパーハカー、恐ろしい子……!」

倫子「クリスティーナ改めネラーよ。この状況をどうみる?」

紅莉栖「ち、違うっ! 私はネラーじゃないっ!」

倫子「ID真っ赤に――」

紅莉栖「してないっ!! ……ハッ」

倫子「煽り耐性ゼロだなぁ、ククク。それで、ダル。IBN5100の解析は順調か?」

紅莉栖「スルー安定ですかぁ!?」ビェェ

ダル「は? なんのこと?」

倫子「例の擬似スタンドアロンデータべースを暴くべく、プログラミング解析をしろと言っただろう」

ダル「ああ、それは無理って言ったじゃん」

倫子「……なぜだ?」

ダル「なぜって、IBN5100が無いからっしょ常考」

倫子「……んん?」


倫子「IBN5100はオレとそこの助手が手に入れてきただろう」

ダル「へ? いつよ」

紅莉栖「えっと……そんな記憶、ないけど」

倫子「バカな!? だって、開発室のダンボール箱に――」

倫子「……無い。ダンボール箱も、IBN5100も、無い……?」

倫子「ここに置いてあったのにっ……なくなっちゃったよぉ……」ウルウル

まゆり「だ、だいじょうぶ、オカリン……?」

紅莉栖「えっと……?」オロオロ

倫子「疑問符を浮かべるなぁ!!」

倫子「お前達もよく知っているだろう!? フェイリスから託され、ルカ子の神社に奉納されていた、伝説のレトロPCだっ!!」

ダル「神社に奉納とか、妄想乙なんだが」

紅莉栖「もしかしてまた白昼夢、いえ、日常的非病的乖離症状……?」

紅莉栖「岡部、ちょっと休んだ方がいいわ」

倫子「なぁっ……なぜ、記憶がないのだ……」ワナワナ

まゆり「また記憶がなくなっちゃったの?」

倫子「また……? そ、そうか。一連の過去改変で、現在が改変されている可能性……」


To 桐生萌郁
Sub 至急確認
オレはIBN5100を手に入れ
たはずなんだが、何か知っ
ているか?


倫子「(あいつならIBN5100の居場所を常に気にしていたはずだ。何か知っているかもしれない)」ピッ

紅莉栖「バタフライ効果。どれかのDメールがIBN5100の存在に影響を与えた……」ブツブツ

倫子「おおっ! オレの話を信じてくれるのだなっ!」ウルウル

紅莉栖「(か、かわいい!)」

紅莉栖「でも、これまでのDメールはどれも些細なものばかり。とても影響を与えるとは思えない」

まゆり「ひとつは、ロト6のメールだよね。送ったところは見てないけど、着信履歴はあったもんね」

紅莉栖「あと、私が死んでた云々ってメールか」

ダル「桐生氏のメールは失敗だったんだっけ」

倫子「いや、まだある! その他に、フェイリス杯メール、ルカ子の性別改変メール……」

紅莉栖「でも、そう主張できるのは岡部の主観だけなのよね」

倫子「だから言っているだろぉ! オレだけがリーディングシュタイナーを保持しているのだとっ!」ウルウル

紅莉栖「ぐはぁ! この、罪悪感……」

紅莉栖「ごめん、言い方が悪かった。岡部の現実を疑ってるわけじゃないの、それだけは信じて」

倫子「お、おう……グスッ……」

紅莉栖「(お持ち帰りしたい……)」ウヘヘ


紅莉栖「さっき、漆原さんとフェイリスさんの名前が出たわね。2人にも確認取ったら?」

倫子「あ、ああ。やってみよう」

prrrrr

るか『はい。岡部さん、こんにちは』

倫子「ルカ子。IBN5100について聞きたい」

るか『え? あいびー……?』

倫子「柳林神社に、9年ほど前に小学生のフェイリスが預けたレトロなパソコンのことだ。知っているな?」

るか『……あ、はい』

倫子「覚えていたか! オレはあれをお前の父上から預かった、そうだな!?」

るか『え……? そんなはずは、ないと思います……』

倫子「なに……? だが、IBN5100が神社にあったのは事実なんだな? 今もあるのか?」

るか『…………』

倫子「(なんだ? なにを言いよどんでいるんだ、ルカ子は)」

るか『ごめんなさい、岡部さん……。ボク、わかりません……』

倫子「そうか……わかった。あとで神社に確認しに行く」ピッ

倫子「次はフェイリスだな。本当はあいつにオレの電話番号もアドレスも教えたくなかったのだが、泣きつかれて渋々教えたことがあった」

倫子「それがここで役に立つとは……」prrrrr


ピッ

倫子「オレだ」

フェイリス『凶真! その、昨日はダルニャンに悪いことしちゃったニャ。怒ってるニャ?』

倫子「いや、そのことはもうどうでもいい。それより、どうしても聞きたいことがある」

倫子「お前は昔、柳林神社にレトロPCを奉納した。それに間違いはないな?」

フェイリス『そうだニャ。IBN5100って名前だったって知ったのは最近ニャけど』

倫子「(やはり神社に確認しにいかなくては……)」

倫子「(そういえばフェイリスはレトロPCマニアだった。神社のIBN5100以外でも構わないのだから、ほかのIBN5100について聞いてみよう)」

倫子「お前はたしかアキバに強いネットワークを持っているだろう? 今アキバにあるIBN5100を探してもらえないだろうか」

フェイリス『探してもいいけど、条件があるニャ』

倫子「取引を持ち掛けるつもりか……。まあいい。それで、条件とはなんだ?」

フェイリス『じゃあ、これからフェイリスのおうちまで来てほしいのニャ。場所は……』

中央通り


倫子「で、お前らはどうしてもついてくるのだな」

まゆり「だってね、まゆしぃはフェリスちゃんのおうち、遊びに行ったことないんだもん」エヘヘ

紅莉栖「私もブラックマーケットに参加したい……じゃなくて、あの子かわいいから……でもなかった、えっと、えっと」アセアセ

倫子「ドン引きだぞ」

紅莉栖「ぐはぁ!」

倫子「(ダルは置いて来た。昨日の罪を償ってもらうため、今日は1日フェイリス禁止にしたのだ)」


倫子「(途中、柳林神社に寄り、ルカパパに話を聞いた)」

―――
栄輔(ルカパパ)「おや、鳳凰院くん。今日は天気がいいですね、こんな日はきっと巫女服が似合いますよ」

まゆり「えっへへー、オカリンは何を着ても似合うと思うのです♪」

紅莉栖「岡部の巫女服姿……ハァハァ」ジュルリ

倫子「おい、やめろ! 服を脱がそうとするな! アーッ!」
―――

倫子「(……ともかく、IBN5100はどういうわけか神社のどこにもなかった)」


倫子「ん? あそこに居るのは……指圧師ではないか! おーい、指圧師ー!」

まゆり「あー、萌郁さんだー」

紅莉栖「いつ見ても綺麗な人よね。岡部と並んだら直視できないわ」

萌郁「あいびーえぬ……ない……(どうして見つからないのー!><。 )」

倫子「閃光の指圧師<シャイニングフィンガー>、聞こえていないのか?」

萌郁「……どこかに、あるはず……じゃないと、おかしい……FBが……(死にたいよぉ……ふぇぇ……)」

倫子「桐生萌郁っ!」

萌郁「あっ……岡部姉さん……!(メールの返事ができないくらいパニクってたよぉ><。 )」

倫子「(その表情は少し和らいだ……ように思えたが)」

倫子「ね、”姉さん”!?」


倫子「……まあいい。なあ萌郁、ラボにあったIBN5100を知らないか」

倫子「貸し出すのは2週間ほど待ってほしいと言ったはずなんだが」

倫子「オレはお前が持って行ったとは思いたくない。仲間だからな……」

萌郁「IBN5100、見つけたの!?」ガシッ

紅莉栖「キマシ!」

倫子「ヒィッ! 急に肩をつかむなぁ!」ガクガク

倫子「い、いや、見つけたはずが、今日になって失くなっていたのだっ!」

萌郁「……っ!!」ポチポチポチ

ピロリン♪

倫子「『きちんと説明してほしい。IBN5100をどこで見つけたの? 萌郁』……このようすだと、本当に知らないようだな」

倫子「……すまない、指圧師よ。オレは、ラボメンであるお前を、仲間を、疑ってしまった……」

萌郁「……? IBN5100は、姉さんと一緒に見つける約束……(またいつものお芝居だったのかな(´・ω・`) )」

倫子「(そうか。そういう記憶、というか歴史になっているのか)」

倫子「もちろんだ。共に真実に辿り着くぞ、萌郁っ!」

萌郁「うん……(IBN5100、一緒に見つけようね(^^♪ )」

秋葉原タイムスタワー
秋葉邸


まゆり「リアル執事さんだー……」

黒木「ようこそおいで下さいました。鳳凰院凶真様と、そのお友達の皆さま」

フェイリス「ニャニャ? マユシィとクーニャンも来たのかニャン?」

紅莉栖「くーにゃん? 私のことか……」ハァ

フェイリス「……クーニャンって、この間メイクイーンで会ったのが初めまして、ニャ?」ジーッ

紅莉栖「うん? そうですよ。私、7年ぶりに日本に帰ってきたので」

紅莉栖「(こんな可愛らしい子に見つめられると……ウフフ)」

フェイリス「フェイリスに敬語はいらないニャン♪」

紅莉栖「あっ……うん、わかったわ!」

紅莉栖「でもなんだろう、こんな感じの家に一度来たことがある、ような気が……」

倫子「既視感<デジャヴ>だな。あるいは、別世界の記憶を受信しているのかもしれない」

フェイリス「ニャニャ!? クーニャンは前世でフェイリスの母星、チンチラ星の住人だったのニャ!?」

まゆり「えー、そうなの? クリスちゃんはすごいニャー♪」

紅莉栖「厨二病世界に巻き込まないでぇ!」


倫子「しかしこの豪邸……フェイリスが金持ちなのは知ってはいたが、一体何者だ?」

フェイリス「実は、この辺の土地は元々、秋葉家のものだったのニャ」

紅莉栖「なん……だと……」

まゆり「そっかー、だから秋葉さんなんだねー」

フェイリス「ちなみに、フェイリスはアキバの都市開発計画にも結構な発言力を持ってるニャン」

フェイリス「アキバの各ショップに萌え文化を積極的に導入するようお願いしたのは、フェイリスなのニャ」

フェイリス「でもでもー、これは内緒の話ニャ。みんなにはこれまで通りフェイリスラブの大ファンとして接してほしいニャ♪」

倫子「この2人は知らんが、オレは貴様のファンなどではないっ!」

フェイリス「ニャニャ! まさか、前世からの宿縁を背負う永遠のライバルだとでも言うのかニャ!?」

倫子「違うっ! オレは、フェイリスの友達だっ!」

フェイリス「ニャ……」

倫子「たとえ権力者だろうが大地主だろうが、そんなことでオレたちの絆は変わらんっ!」

まゆり「まゆしぃもフェリスちゃんのお友達だよー! えっへへー♪」

紅莉栖「じゃ、じゃあ、私も……///」

倫子「クリスティーナの下心が手に取るようにわかるな……」

フェイリス「……さすが凶真。フェイリスの弱いところを的確に突いてくるニャァ」

フェイリス「これまでいろんな人と会ったけど、"秋葉の跡取り"って話すと、みんなフェイリスをフェイリスとして見てくれなくなるのニャ」

倫子「(そんな理由でこいつ、友達が少ないのか……。金持ちの家に生まれるというのも考え物だな)」


倫子「しかし広い家だな。マンションなのに、何部屋あるんだ?」

まゆり「このお部屋はなんのお部屋ー?」

フェイリス「そこを開けてはならないニャ。犬耳が生える呪いがかかっているのニャ!」

倫子「レトロPCの部屋……か。父親が集めていた、とか言っていたな」

フェイリス「PCだけじゃなくて、古い家電なんかもコレクションされてるのニャ♪」

まゆり「えぇー? じゃあーこっちの、壁と同じ色になってるお部屋は?」

フェイリス「ニャ……ニャニャ!? マユシィ、なんでそこに部屋があるってわかったニャ!?」

フェイリス「ダメニャ!! そこは絶対開けちゃダメニャ!!」キシャー

フェイリス「10年に及ぶ凶真関連のコレクション……は、入ってなんかいないニャ?」アセアセ

紅莉栖「フェイリスさんっ!! 私、あなたにどうしてもお願いがあるんですっ!!」ガバッ

フェイリス「ニャァ!? クーニャン、土下座はやめるニャァ!」

まゆり「あ、オカリン、こっちにふかふかベッドがあるよー♪」

倫子「(都合のいいことにフェイリスの珍しい狼狽ぶりと助手の暴走ぶりはオレの耳には入らなかった)」


倫子「それでフェイリスよ、IBN5100を探す代わりの交換条件とはなんだ?」

フェイリス「フェイリスからの条件は――」

フェイリス「タイムマシンを使わせてほしいニャ」

倫子「そう言えばそんなことを言っていたな……」

倫子「タイムマシンは我がラボにおける最重要機密事項だ。どうしても使いたいと言うならば、ラボメンになってもらう必要があるが?」

フェイリス「えっ……そ、それホントッ!?」ギュッ

倫子「うおっ!? 急に手をつかむな……」

フェイリス「ラ、ラボ、ラボメ……フェイリスが、ラボメン……」ワナワナ

フェイリス「ウニャアアアアアアアアッ!!!!!!!!!!」

倫子「ヒィッ!?」ビクッ

紅莉栖「!?」

まゆり「!?」

フェイリス「我が生涯に、一片の悔い無し、ニャ……」バタッ

倫子「い、意味がわからんぞ。おい、フェイリス。……フェイリス?」

倫子「……返事がない。ただの屍のようだ」

紅莉栖「フェイリスさーん!! 帰って来てーっ!!」


フェイリス「タイムマシンが使える上にラボメンにしてくれる……こんな幸せなことがあるニャんて、想像もしてなかったニャ」

倫子「なんだ、フェイリスもラボメンになりたかったのか。そうならそうと早く言ってくれればよかったのに」

フェイリス「ニャニャニャ!? フェイリスからの協力は一切拒否するって言ったのは凶真ニャ!」

フェイリス「あの時フェイリスは、サイコエリアの第4層にまで及ぶ深い深ーい傷を負ってしまったのニャ……」

倫子「あ、あれは、お前が莫大な資金提供の代わりにオレを1日召使いにするなどと言いだしたせいだっ!」

フェイリス「召使いじゃなくてメイドだって言ったニャ!」

倫子「同じだろうがっ!!」

紅莉栖「ちょっと、ストップ! 話が進まないじゃない!」

倫子「ともかくだな! フェイリスをラボメンナンバー007に認定するっ!」

フェイリス「勝った!! 第3部完ッ!! ニャ!!」

紅莉栖「話を終わらせないでぇ!!」


倫子「そう言えば、フェイリスはさっきの握手までオレの身体に触れたことは一度もなかったな」

倫子「お前の仕事ぶりからして、他人とすぐ物理的に接触するのはクセのようなものだと思っていたが」

フェイリス「実はマーケット参加者には血の盟約が交わされているんだニャ」

倫子「……知りたいような、知りたくないような」

フェイリス「第359条。鳳凰院凶真に自ら肉体的接触をしてはいけない。但し、鳳凰院凶真から触ってきた場合は除く」

倫子「…………」ゾワワァ

紅莉栖「でも、フェイリスさんはさっき触ったわよね? この場合、どうなるの?」

フェイリス「ペナルティが課されるのニャ。その内容はMM<マーケットマスター>によってダイスが振られるんニャけど、今回は代理投擲による――」

倫子「……も、もういい。聞いたオレがバカだった」

倫子「(第359条ってなんだ!? 何条まであるんだ!? MMってなんだよ!? 何人が参加してるんだ!?)」ガタガタ

まゆり「オカリン、手が震えてるよ? だいじょうぶ?」ギュッ

倫子「おお、まゆり……! お前のこの小さな両手がこんなに頼もしく思ったのは初めてだ……!」


紅莉栖「話をタイムマシンに戻すけど、実際フェイリス様……じゃなかった、フェイリスさんが実験を手伝ってくれたらもっとデータが取れるわね」

倫子「そうだなっ! 貴様は実験台なのだぞ、大人しくするがいいっ!」

倫子「すべては運命石の扉<シュタインズ・ゲート>の選択っ! ふぅーははは!」

紅莉栖「若干やけになってるわね……そんな岡部も素敵だけど」

倫子「それで、説明は受け終わったのか?」

フェイリス「クーニャンにバッチリ教えてもらったニャ♪」

紅莉栖「ラボに残ってる橋田とも電話繋がってる。今準備中よ」

ダル『2000年4月3日午前8時へはっと……はーい、電話レンジはオッケーだお』

倫子「了解だ。フェイリス、メールの内容を教えるのだ」

フェイリス「そ、それはその……」

フェイリス「は、恥ずかしいニャ! 企業秘密だニャン!」

倫子「…………」

倫子「……いい加減、オレも堪忍袋の緒が切れそうだ」イラッ

倫子「貴様ぁっ! オレがどれだけお前の悪行の数々を見逃してやっていると思っているんだっ!」

フェイリス「なに言ってるニャ! これは交換条件だニャ! そっちがそう言うなら、IBN5100の話はなかったことにするニャ!」

倫子「ぐぬぬ……この猫娘が……っ!」

フェイリス「だてに会社運営をやってないのニャ……ッ!」

紅莉栖「実際訴えられたら負けるわよね、フェイリスさんって……」


倫子「秋葉留未穂。お前に、ラボメンとして、そして1人の友人として問いたい」

フェイリス「ニャゥッ!? そ、それは卑怯だニャァ……」

倫子「恥ずかしいとはいえ、オレに言えないほどなのか。そんなにオレを信用していないのか?」

フェイリス「凶真は誰よりも信頼しているニャ。だけど……」

倫子「正直に話せ。オレは嘘が嫌いだ」

倫子「今のお前は、お前を利用しようとして近づいてくるような汚い人間どもと同じだぞ」

フェイリス「――っ!!」

紅莉栖「ちょっと岡部、少し言い過ぎじゃ……」

まゆり「オカリン……フェリスちゃん……」オロオロ

フェイリス「……わかったニャ。正直に話すニャ」

フェイリス「――パパを、助けたいのニャ」

倫子「パパさんを?」


フェイリス「パパは10年前、飛行機事故で死んじゃったのニャ」

紅莉栖「飛行機事故……? それだったら有名な事故のはずよね」

フェイリス「ううん、死んだのは、乗客乗員合わせてもパパだけだったんだニャ」

倫子「なんだと!? そんなバカなことって起こり得るのか!?」

紅莉栖「私は岡部みたいな陰謀論者じゃないけど、さすがになにかあるんじゃないかと疑っちゃうレベルね……」

フェイリス「ちょうど90年代後半から2000年にかけては、パパの会社はITバブルに乗っかっていた頃だったのニャ」

フェイリス「90年代前半はバブル崩壊やメキシコ通貨危機の影響で業績が悪化してたから、その躍進はめまぐるしいものだったんだニャ」

倫子「あまりに目立った成長だったため、ライバル企業から刺客を送られ、事故に見せかけた暗殺……」

紅莉栖「そうと決まったわけじゃないけど、事実関係はもっと洗うべきね。警察は?」

フェイリス「警察はハナから事故として断定してたのニャ」

倫子「国家権力を丸め込むのは陰謀の基本だ。くそっ、10年も前では調べようが……」

倫子「……そうか。そのためのDメールかっ!」


倫子「お前の父上を飛行機に乗らせないようにする。そういうことだな? フェイリス」

フェイリス「さっすが凶真! そういうことだニャ」

倫子「Dメール送信で父上が亡くならなければ事故……」

倫子「それでも亡くなっていれば間違いなく暗殺……。まさかDメールにこんな使い方ができるとはな」

紅莉栖「でも待って! それって、死者を蘇らせることになるのよ?」

紅莉栖「冗談じゃなく、どんな事態を引き起こすかわからない」

紅莉栖「世界の因果が崩壊して、文字通り宇宙が破滅するかもしれないのよ! もっと慎重になるべき」

倫子「だが、真実の究明にはこれしかないのも事実だ」

倫子「それに、オレはリーディングシュタイナーを発動させることで改変前後を比較できる」

倫子「お前は科学者として、事実をうやむやにすることを良しとするのか?」

倫子「フェイリスの父上の死を、闇に葬っても良いというのか?」

紅莉栖「それとこれとは……ああもう、お願いだから時間をちょうだい!」

まゆり「うーん……まゆしぃには難しくてなんだかわからないけど、時間をかければ答えが出るのかなー?」

紅莉栖「それは……」

フェイリス「……ダルニャン。聞こえているニャ? 今すぐスイッチを押してほしいニャ」

ダル『オーキードーキー。放電現象、始まったお』

紅莉栖「ちょっと!!」

フェイリス「クーニャン、ごめんニャ。でも、フェイリスは可能性に賭けるしかないんだニャ」ポチッ


―――――――――――――――――――
    0.46903  →  0.40923
―――――――――――――――――――


倫子「……また、この目眩か」

倫子「さて、世界よ。変貌を遂げたその姿を現すがいい……!」チラッ


紅莉栖「ふむん、そんな戦術もあるのね。興味深いわ」

まゆり「あわわー、またウイルスカード?」

フェイリス「またフェイリスの勝ちだニャン♪」

まゆり「”待った”はだめかニャー?」

フェイリス「フェイリスの真似してもダメニャ♪」


倫子「呑気に雷ネットABで遊びおって。それより、フェイリスの父上は……」キョロキョロ


フェイリス「今度の公式大会では絶対に優勝するってパパに約束したニャ! その日までは誰にも負けられないニャ!」

倫子「……公式大会? パパに約束? ということは、お前のパパ上は生きているのだなっ!?」

倫子「(今まで一度も公式大会に出たことがなかったフェイリスが、パパさんが生きていることで変わった……?)」

フェイリス「ニャ? ……どういう意味ニャ。事と次第によってはぁ~……」

紅莉栖「岡部のその、人を勝手に殺す癖はあんまり慣れないな……」

倫子「あ、いや、そうではなく……」

初老の男性「失礼。留未穂、ちょっといいかな」

フェイリス「あ、パパ!」

倫子「あの人が、パパさん……!」


倫子「(父上は黄泉の国より舞い戻った……実験は成功したのだっ!)」

倫子「ついにオレは、神の禁忌を破ってしまった……ククク、ふぅーははは!」

紅莉栖「いつにもまして突然ね……なにか良いことでもあった?」

倫子「(そうか。この世界の歴史では、パパさんは10年間生きているのだから下手な発言はできないな……)」

倫子「いやなに。父と娘の仲が良さそうで嬉しいだけだ」

紅莉栖「……そうね。私もちょっとうらやましい」

フェイリス「ごめんニャ。フェイリス、これからパパと出掛けなきゃいけなくなっちゃったニャ」

まゆり「それじゃー、まゆしぃたちはこれでバイバイさせてもらうね」

紅莉栖「今日は来れてよかったわ。ちょっとした奇跡よね」

倫子「む? 何がだ?」

幸高(パパ)「紅莉栖ちゃん、またいつでも遊びに来るといい。留未穂も喜ぶよ」

フェイリス「もうパパ~。それじゃ、お見送りするニャ!」

中央通り


倫子「(結局、例の飛行機事故は天文学的な可能性で起こった事故だった、というわけだ)」

倫子「(ググってみたら、10年前の事故は死者0人となっていた。パパさんは飛行機に乗らなかったのだ)」

倫子「(狂気のマッドサイエンティストであるオレが蘇らせたわけだが……そのことを改変後の世界で吹聴しても意味がないだろうな)」

倫子「(あいつの幸せそうな顔が見れただけでも良しとしよう……)」

倫子「ところで、クリスティーナ。フェイリスのパパさんと仲良さげだったが、なにかあったのか?」

紅莉栖「えっ? あったもなにも、こっちがビックリよ。って、岡部も話聞いてたでしょ?」

倫子「……秋葉原の全景を見下すのに忙しくて聞いてなかった」

紅莉栖「……はぁ。えっと、私と留未穂ちゃん、じゃなかった、フェイリスが幼馴染だった、って話よ」

倫子「へぇー、そうだったのか」

倫子「…………」

倫子「…………」

倫子「は、はぁ!?!?!?」


紅莉栖「だ、大丈夫よ! それでも岡部が私の一番の友達、だから///」

倫子「いやいや! そんなことを心配してるわけではなくだなぁ!?」

倫子「どういうことだ!? なんの因果でそんなことになった!?」

倫子「(これも過去改変の影響か!? パパさんが生きていることで2人は幼馴染になってしまったというのか!?)」

紅莉栖「なんの因果って、私のパパとフェイリスのパパが大学の同期で親友なのよ」

倫子「なるほど、それで娘同士も自然に仲が良くなり、と。……衝撃の事実だ」

紅莉栖「向こうは源氏名だったから、パパさんに会うまで思い出せなかったけどね」

倫子「源氏名てお前……」

紅莉栖「7年ぶりに会えた友達……ふふ、私、日本に戻って来て良かった」ニコ

倫子「な……。ま、まあ、お前が喜んでいるようなら、別にいい」

紅莉栖「ん? 岡部は何もしてないでしょーが」

倫子「はぁ!? あのな、誰のおかげで……。あ、いや、なんでもない」

倫子「(記憶が失われるというのは、厄介だな……)」

紅莉栖「(もしかして……私とフェイリスの仲を妬いてる!?!?!?)」

紅莉栖「岡部はかわいいなーもう♪」ダキッ

倫子「ふわぁ!? って、お前、ブラックマーケットの血の盟約はどうしたのだ!? 入ったのだろう、貴様も!」

紅莉栖「……また設定? はいはい、厨二病乙~♪」ギュッ

倫子「やめろ、離せぇ! 暑苦しいっ!」ジタバタ

倫子「(こいつ、結局フェイリスの闇市場には参加しなかったのか? ……まあ、それならそれでいいが)」

倫子「……って、あれ? まゆりは?」

紅莉栖「あれっ? ……あ、あんなところに」


倫子「おーい、まゆり。どうしたんだ?」

まゆり「あ、オカリーン。あのね、まゆしぃはこれからおうちに帰るんだけど、中野に寄って行こうと思って」

倫子「(沈黙の直帰<スニーキング・フェードアウト>が発動したか。まったく心配させる)」

倫子「そもそも中野に何の用があるというのだ」

まゆり「あのね、昨日出た『哀ソード』の同人誌を買いに行くのです」

倫子「またまゆりはよくわからんことを。同人誌だったらそこに『とらのあな』があるではない……か……」

倫子「(あ、あれ? たしかにここ、アニメイトの隣だったと思うのだが……)」

倫子「(アニメイトも無い。というか、こんなところに電器店などあったか?)」

紅莉栖「岡部? どうしたの? 結婚する?」

まゆり「とらのあななんてアキバにないよー。だからまゆしぃは中野まで行くのです」

倫子「ないって……そんな、まさか。いや、それしか考えられない……っ」



倫子「――バタフライ、エフェクトッ!!」

今日はここまで


倫子「――ないっ、ないっ、ないっ!!」ハァッ、ハァッ

倫子「まんだらけも、ラムタラも、ゲーマーズも……」ハァッ、ハァッ

倫子「メイクイーン+ニャン2までも……」ハァッ、ハァッ

まゆり「オカリン、突然どうしたのー?」タッタッタッ

倫子「まゆり。お前、メイクイーンで働いていたよな?」

まゆり「ジャガイモさん?」

倫子「じゃなくて、お前のバイト先だよ!」

まゆり「まゆしぃがバイトしてるのは『ルモアンヌ』だよ?」

倫子「……普通の喫茶店か。名前は知っている」

紅莉栖「この前萌郁さんをラボメンにした時、一緒に行ったじゃない。まゆりのウェイトレス姿、ステキだったわよ」

まゆり「えっへへー。ありがとー、クリスちゃん♪」

倫子「(まさかまゆりのバイト先まで変わってしまうなんて……)」

倫子「(原因はなんとなくわかる。フェイリスはアキバの都市開発に萌えを導入した張本人だった)」

倫子「(父上が生存することによってここ10年間の都市計画そのものが変化してしまった、ということだろう)」

倫子「(オレが……、このオレが、街をひとつ変えてしまった?)」ガクガク

倫子「(いや、誰の記憶にもないのだから、オレが責められることもないが……)」ブルブル

紅莉栖「岡部……?」

秋葉原某所


萌郁「どうしてFBは……あんなことを……」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
3日前(萌郁の記憶)
8月5日木曜日


萌郁「…………」ポチポチポチポチ


To FB
Sub IBN5100
ごめんなさい……
例のIBN5100だけど、
まったく情報がつかめな
いの。


ピロリン♪

萌郁「っ!」ピッ


From FB
Sub Re:IBN5100
報告ありがとう。IBN5
100の件はしばらく置い
ておくわ。
実はM4には別の任務を
お願いしたいの。
未来ガジェット研究所って
組織について調べて。
できれば潜入して監視をお
願いしたいんだけど大丈夫
かしら?
危険な任務だから無理にと
は言わないわ。


萌郁「…………」ポチポチポチポチ


To FB
Sub IBN5100
私は大丈夫。
任せて。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


2010年8月8日日曜日
中央通り


prrrr

倫子「(変わり果てた秋葉原を散策していたら助手からメールがきた)」


From 助手
Sub ここにいること
どうして私はここにいるの
? どこで歯車は狂ったの
? 運命の女神様は本当に
いるの? 岡部、私を巻き
込んだ責任取りなさいよね
。私は貴女を信じてる。


倫子「謎ポエムをよこしおって……。牧瀬紅莉栖の憂鬱、アニメ化決定だな」ピッ

prrrr

倫子「またか……。連投レスとは、半年ROMっていろ!」ピッ


From patghqwskm@ninesixpbb.ne.jp
Sub
姉さんのこと見てるよ(≧▽≦)
▼添付画像アリ


倫子「なんだ、これ……?」

倫子「(なにしてるんだ指圧師。なんだこのアドレス?)」

倫子「(それにこの添付画像……、赤いゼリー?)」

倫子「冗談はやめてIBN5100を捜索しろ……と。普通に返事をしておこう」ピッ

倫子「帰りにゼリーでも買って帰るか」

未来ガジェット研究所


倫子「盆休みの日曜だというのに、男遊びの1つもしてないのかお前たちは。ほら、安売りのゼリー買ってきたぞ」

まゆり「オカリン、おかえりーん。わーい、ゼリーだぁ♪」

るか「お邪魔してます、おか……凶真さん」

萌郁「…………(お邪魔してるよー(≧▽≦) )」

紅莉栖「それはブーメランでしょ。私とデートする?」

倫子「フン、オレは俗世と違って男に興味などないが、女とイチャつく趣味もない」

紅莉栖「……それとなく暗示をかけて……いっそのこと開頭して洗脳……」ブツブツ

倫子「というか、指圧師よ来ていたのか。IBN5100は見つかったか?」

萌郁「IBN5100は……ひとまず中断……」

倫子「ほう? あんなに必死に欲していたのにか」

倫子「(これも過去改変の影響か?)」

倫子「それで、ラボメンガールズたちで何を話していたのだ?」

紅莉栖「複数形のsと”たち”で意味がかぶってる」クスクス

倫子「いちいち揚げ足を取るなぁ!」ウルウル

紅莉栖「(今日のかわいい、いただきました)」

萌郁「…………(えっとねー。色々あってね? )」ポチポチポチ

ピロリン♪

倫子「『岡部姉さんのステキなところについて語り合ってたよ(^^♪ 萌郁』……まあ、楽しそうでなによりだ。うん」

まゆり「メロン味のゼリー、おいしいのです♪」モグモグ


紅莉栖「まゆりはいいわね、いくら食べても太らなくて」モグモグ

まゆり「そんなことないよー」

るか「牧瀬さん、スレンダーですよね」

紅莉栖「そ、そうかしら。ありがと」

まゆり「萌郁さんもね、スタイル抜群だからコスプレ映えすると思うなー」

萌郁「…………」ポチポチポチ

ピロリン♪

まゆり「あれ? 萌郁さんからメールだー。えっと、『コスプレは恥ずかしいなぁ(/ω\) 写真を撮る方だったら得意だよ! 萌郁』」

まゆり「ホントー! じゃあ、今度のコミマ、一緒に行こうよー!」

倫子「随分打ち解けたようだな」フッ

萌郁「…………」ポチポチポチ

ピロリン♪

倫子「『みんな優しい人で良かった(^^♪ だけど、今まで友達なんて居たことないから、こんな接し方でいいのかわからないよ。 萌郁』」

倫子「いいんじゃないか? わからないなりにそれが正解なんだと思うぞ」

萌郁「…………(いいこと言うなぁ。さすが私の姉さん!)」


紅莉栖「こんなこと言うのも変なんだけど、私と桐生さんってどこか似ている気がするのよね」ヒソヒソ

倫子「ほう、珍しいことを言う」

紅莉栖「承認欲求が人一倍強いくせに孤独になりたがって、その上自分のホームを探してる」

倫子「自分で言うか、それ」

紅莉栖「か、観察の結果よ! 客観的な分析のもとに導出された解であって、変な意味は……」

倫子「はいはい」フフッ


倫子「それで? まゆりとルカ子はなにを読んでいるんだ?」

まゆり「昨日中野でね、チェックしてなかったサークルさんの"月華の刃"の新作が置いてあって、つい買っちゃったのです」

るか「原作は知らないですけど、衣装にこだわりがあって、見ていて面白いです」

倫子「……これ、BLじゃないか。ルカ子よ、お前……」

るか「えっ? えっと、びーえる、って、なんでしょうか……?」

紅莉栖「月華は単純にカップリングじゃ語れないわよ。琴たんの活躍は燃える。萌えるじゃなくて燃える、ね」

倫子「おいクリ腐ティーナ。貴様、百合厨から対極の存在へとクラスチェンジしたのか?」

紅莉栖「クリフ……っ!? その呼び方はやめてぇ!! 別に私は百合厨でも腐女子でもないからなぁ!?」

倫子「黙れこのクソレズ万年発情百合腐女子っ! あまつさえオレを腐界へと導こうという腹積もりらしいがそうはいかんっ!」

紅莉栖「じゃあ逆に聞くけど、まゆりがBL本読んでるのはOKなの!?」

まゆり「オカリンもねぇ、読み始めたらきっとハマると思うのです♪」

倫子「まゆりは健全な腐女子だから問題ない」

紅莉栖「どういう……ことなの……」ガクッ


まゆり「そうだぁ! コミマが終わったら、ラボメンのみんなで一緒に海に行こうよー!」

紅莉栖「……まゆり、グッドアイデア」タラタラ

倫子「鼻血を拭け、バカモノ」

紅莉栖「私、水に浮かんでる感覚って好きなのよね。久しぶりに行きたいなー、海」チラッチラッ

倫子「(こいつ……)」

紅莉栖「いいじゃない、海。一緒に行きましょうよ」

倫子「HENTAIが居なければオレだって諸手を挙げて賛成なんだがな」

紅莉栖「もしかして鳳凰院ちゃん、臀部の蒙古斑が見られたくないんでちゅかー?」ニヤニヤ

倫子「ちゃん付けするなぁ! というか、ネラークリスのネット弁慶さを抽出したような煽り文句はやめるのだ……っ!」ウルウル

紅莉栖「ご、ごめん。ってか、私は岡部と海に行きたいっ!」

倫子「もちろんダルもラボメンだから連れて行くぞ」

紅莉栖「HENTAIは不要」

倫子「萌郁やフェイリス、まゆりと乳比べすることになるが構わないか?」

紅莉栖「ちちっ!? ……か、構わない。岡部の水着姿が見れるなら全然構わない」ギリギリ

倫子「(歯ぎしりをするほどか……)」

まゆり「ひんにゅうは正義だよ、クリスちゃん。るかちゃん」

倫子「おいおい、ルカ子を引き合いに出してやるなよ。男と比べるのはさすがに紅莉栖が可哀想そうだろ」

紅莉栖「えっ」

まゆり「えっ」

るか「…………」

萌郁「…………」

倫子「あ、あれ……?」

またやってしまった・・・申し訳ない
×倫子「おいおい、ルカ子を引き合いに出してやるなよ。男と比べるのはさすがに紅莉栖が可哀想そうだろ」
○倫子「おいおい、ルカ子を引き合いに出してやるなよ。男と比べるのはさすがに“絶壁<クリフ>”ティーナが可哀想そうだろ」


紅莉栖「……ごめん。私、岡部のこと大好きだけど、さすがに怒らせて」

紅莉栖「あんたは“男”って言われてもいいかもしれないけどね、胸の話でそれは無いと思うわ」

まゆり「そうだよ、オカリン。そういうこと言うの、まゆしぃは好きじゃないな……」

るか「…………」グスッ

倫子「百合スティーナよ。お前が現実から目をそむけたくなるのもわかる。だがな――」

紅莉栖「岡部ッ!!」キッ

倫子「ヒッ!?」ビクッ

紅莉栖「私を変な呼び方で呼ぶのは構わない。でもね、他人を傷つける冗談を言うのは……」

紅莉栖「サイテーよ」

倫子「な……なにを怒っている……」ワナワナ

紅莉栖「謝りなさいッ! 今すぐ、漆原さんに謝りなさい!」

倫子「やめてよ……なんで私に怒るの……」ウルウル

倫子「わた……オ、オレは、真実しか言ってな――」

るか「いいんですっ」

るか「ボク……岡部さんに、そういう風に見られてたんですね」ウルッ

倫子「お前まで何を言っているっ! お前は男だよなぁ!? そうだよなぁ!?」

紅莉栖「ッ!!」



バシッ!



倫子「え……」ジンジン

倫子「(なにが起きた……? 助手に、ビンタされた……!?)」


倫子「うぇ……ひぐっ……」ウルウル

るか「ま、牧瀬さん!?」

まゆり「クリスちゃん……」

紅莉栖「あっ……ご、ごめん、岡部……」オロオロ

倫子「謝るなら最初からするなぁ……うぅ……」グスッ

紅莉栖「私の信じた貴女が、ひどい人になるのが耐えられなかった……」

紅莉栖「それに、同じ女として許せなかった……」

倫子「…………」

倫子「……だが、顔を叩かれたおかげで冷静さを取り戻せたようだ」

倫子「つまりは、ルカ子は女として生まれ変わっていた――」

倫子「あのポケベルへのDメールによって16年の歴史が塗り替わった、ということだな」

紅莉栖「えっ……? それじゃあ……」

倫子「Dメール実験が成功した場合、記憶を引き継げるのはリーディングシュタイナーを持つオレだけ」

るか「えっと……?」

倫子「今のお前達には信じられないかもしれないが、漆原るかは8月5日までは本当に男だったのだ」

紅莉栖「……そんなっ!? し、信じられないけどその可能性も否定できなうわあああああああああ!!!!!!!!」


倫子「(性別を変えるような過去改変はどのように実行されたか、そして男性だった頃のルカ子の状況を説明した)」

紅莉栖「死んで詫びるわ!!! 死んで詫びるわ!!!」ゴツッ!ゴツッ!

萌郁「土下座しながら……床に頭突き……(痛そうだなぁ>< )」

倫子「オレが虚言妄想の類をまき散らしている可能性も否定できないのだから仕方ない」

倫子「それに、ルカ子が男だったという方が信じられない。女よりも女らしかったからな」

るか「よくわかりません……」

まゆり「まゆしぃにはちんぷんかんぷんだよー。オカリンは嘘をついてないってこと?」

紅莉栖「状況証拠はいくつもあるし、なにより岡部があんなひどい嘘を言うなんて信じられない!」

紅莉栖「それに漆原さんのお母さんに確認すればいいだけの話よ! 過去改変の結果だけは改変後の世界にも残り続けるんだから!」

るか「そ、そうなんですか? 今からお母さんに電話してみます」ピッ

紅莉栖「あなたがお腹の中にいる頃に、ポケベルに変なメッセージが来なかったか聞いてみて!」

倫子「たしか、『やさいくうとげんきなこをうめる』だったか」

るか「……はい、うん、わかった。それじゃ」ピッ

るか「お母さん、たしかにそういうメッセージを受信してました。それで野菜をたくさん食べたそうです」

るか「でも、ボク、頭がこんがらがって……、どうしたらいいんでしょう……」グスッ

倫子「……お前にとっては女として生きてきた16年間のほうが現実なのだ。複雑に考える必要は無い」

るか「で、でも……」

倫子「大丈夫だ。たとえ何があろうとルカ子はルカ子、オレの大事な弟子だ」

るか「はいぃ……(きゅん///)」

ゴツッ!ゴツッ!

まゆり「クリスちゃん、そろそろやめた方が……」

紅莉栖「こ゛め゛ん゛ね゛お゛か゛へ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!!!!!」ゴツッ!ゴツッ!

萌郁「おでこから血が出てる……(写真撮っちゃお!)」パシャ

ガチャ

鈴羽「たいへんっ! 2階がドンドンうるさいからって店長怒ってるよ! 何やってんの!」

倫子「何ィ!? 今すぐ謝りに行くっ! 助手は自傷行為を直ちにやめなさいっ!」

紅莉栖「迷惑ばっかりかけてごべんねぇぇぇ!!!!」ビェェェ

大檜山ビル前


倫子「(なんとかミスターブラウン氏には弁明させてもらえた……が)」

倫子「なんだが気疲れしてしまったな……」

鈴羽「だったらさ、一緒にサイクリングでもしない? 今日みたいに天気のいい日は気分がスカッとするよ」

倫子「そう言えば、なんだかバイト戦士も元気無さそうだな。なにかあったのか?」

倫子「(いつもならもっと助手と喧嘩したり、わけのわからん面倒事を起こしそうなもんだが)」

鈴羽「えっ? ……あはは、さすが鳳凰院凶真。まあ、そんなところ」

倫子「前にケータイで調べていた事件のことか?」

鈴羽「あー、あれね。うん、容疑者は見つけたんだけど、事件の情報が全然見つからなくてさ」

倫子「というか、チャリは1台しかないではないか」

鈴羽「2人乗りすればいいじゃん。もちろん、あたしが漕ぐよ」

倫子「ミスターブラウンがこっちを見ているぞ?」

鈴羽「ちょっと待ってて……許可取ってきた。ほら、行こう!」

倫子「あ、おい、ちょっと!」

UPX前


倫子「思いのほか筋肉質なのだな」

鈴羽「まーね。戦士だもん」キーコキーコ

倫子「(今オレは鈴羽の肩をつかみ、背後に立つ形で2人乗りしているわけだが、肩甲骨の下のあたりなんかはキュッと引き締まっている)」

倫子「(特筆すべきはヒップだ。女のオレでさえその形と感触に惹かれてしまう)」

鈴羽「あんまり触られるとくすぐったいな、あはは」キーコキーコ

倫子「す、すまん! 決してHENTAI的な意味ではなくだなっ!」アセッ

鈴羽「わかってるって。レジェンドは最期まで純潔を守り抜いたしね」

倫子「またその話か。なんなんだ、それ」

鈴羽「あたしさ、東京に来たのは10日前が初めてなんだよね」

倫子「未来から来たのが、という意味か?」

鈴羽「あっ、あの辺座ろうよ。ちょっと自転車停めてくるね」

倫子「(まともに会話できない……)」


鈴羽「あたしね、父さんを"そうさく"するためにここに来たんだ」

倫子「そうさく……ソウサク……捜索、か。初耳だな」

鈴羽「もう何年も会ってなくて。この街にいるのは分かってるんだけど」

倫子「(こいつ、そのために過去へタイムトラベルを……? そう言えば2000年に現れた方のタイターも1998年から家族と暮らした、などと言っていたな)」

倫子「アテはあるのか」

鈴羽「……明日、チャンスがあるんだ。ある場所に現れるかもしれなくて」

倫子「(なんだか刑事ドラマのヒロインみたいなことを言い出したぞ。もしかしてこいつの父親、組織に追われる反逆者か何かなのか?)」

鈴羽「明日会えなかったら諦める。あたしはこの街を出るよ」

倫子「不安なのだな」

鈴羽「……なんていうかさ。曇りガラスの向こうをのぞいてるみたいに、自分で自分の心がよく見えないんだ」

倫子「わかるぞ、その気持ち。たった1人で誰かを探すなど、さぞ心細いだろうな」

倫子「(まゆりの心を取り戻すまでの半年間、オレの心は毎日が雨だった……)」

倫子「相談する相手を探したが、身近にいる人間で頼りになりそうなのがオレしかいなかった。そんなところか」

鈴羽「そんな消去法じゃないよ! あたしは、鳳凰院凶真だからこそ……話したんだ……」

倫子「だが残念だったな。オレは狂気のマッドサイエンティストっ!」

倫子「貴様のような心にスキマのある女など、都合のいい実験台でしかないのだぁ。ククク」ニヤリ

鈴羽「実験台……って?」

倫子「無論、Dメールだ。オレたちのラボが開発した栄光であり、人類の夢だ」


鈴羽「どういうこと?」

倫子「何、難しい話ではない。時間的過去の話であるならば、蒸発する前の父親に『娘を置いていくな』とDメールを送ればいい」

倫子「さすれば辛い記憶を忘却の彼方に置き去りにし、仲睦まじく触れ合う父子の姿がそこにあろう」

鈴羽「……やっぱりキミはレジェンド、鳳凰院凶真だね。父さんから聞いた通りだ」

倫子「ん? なんだって?」

鈴羽「ううん。なんかちょっとだけ、楽になったかも」

鈴羽「でもごめん。父さんのケータイの番号もメルアドも知らないんだ」

倫子「…………そう、か。力になれなくてすまないな」シュン

倫子「(Dメールは万能ではない。フェイリスの件でオレは天狗になっていたのかも知れないな……)」

鈴羽「そんな! キミが心配してくれて本当にうれしかったよ!」アタフタ

倫子「し、心配などしていないっ。勘違いするなっ」プイッ

鈴羽「(あれ? なんだろうこの気持ち……。レジェンドとしての尊敬以上の、なにか……)」トゥンク

倫子「早いところ、あのマシンを改良していかねばな」ハァ

鈴羽「……だったら、あたしからひとつ忠告」

倫子「む?」

鈴羽「牧瀬紅莉栖は仲間から外した方がいい」

倫子「……またそれか」


鈴羽「(こんなに居心地がいいんだね、キミのとなりって)」

鈴羽「(牧瀬紅莉栖がここに居たがる理由もわかる気がする。あたしだって本当は……)」

鈴羽「(でも甘えてちゃダメだ。あたしにはあたしの使命がある)」

鈴羽「(……鳳凰院凶真とは、距離を置かないと)」

鈴羽「さてと、30分休憩ももうおしまい。そろそろ帰らないと、また店長に怒られちゃう」

倫子「……明日は、父親と会えても会えなくてもラボに来い」

鈴羽「なんで?」

倫子「言っただろう? お前の傷心を利用して、Dメール実験を行うとなっ! ふぅーはははぁ!」

鈴羽「あはは。マッドサイエンティストにしては美人すぎるかな」

倫子「オレにとっては侮辱の言葉だが……。まあ、悪い気はしないな」フッ

鈴羽「もし父さんと会えたら行くよ。じゃあね」

鈴羽「(じゃあね……あたしの、鳳凰院凶真……)」

ガチャ シャー

倫子「(そう言うと鈴羽は自転車に乗って行ってしまった……って!)」

倫子「ちょっと待ってぇ! オレも乗せていけよぉ! うわぁん!」

今日はここまで


・・・


『オカリン、死んじゃやだよぅ……!』
『オカリン、死なないで……』


頭の中でまゆりの声がする。それも二重に。

片方の声は今よりも幼い、多分小学生だった頃の声。
もう片方は、今よりも歳をとったような落ち着いた声だ。

姿は見えない。何も見えない。
オレは宇宙空間のような暗黒の中に立っていた。


『それでもあなたは行くのね……岡部を救うために……』


これは、誰の声だ? 助手か?

眼下に広がる暗闇の先に、いくつかの光点が観測できる。
それはきっと過去からの光。
地球で観測できる星の輝きは何十年、何百年も過去のものだと、助手は言っていた。


『私は行きます。彼を救う可能性が、彼がそこへたどり着く可能性が1%でもあるなら』


なんなのだこの声は……幻聴か? それにしてはやけにリアルだな……


『だから、信じて待っていてください。必ず、今ここへ届けます』

『――何千年も過去にある、お星さまの祈りを』

2010年8月9日月曜日
未来ガジェット研究所


倫子「これより作戦名『エルドフリームニル』の概要について説明するっ」ドヤァ

まゆり「わー」パチパチ

るか「わ、わー」パチパチ

萌郁「……(わー(≧▽≦) )」

倫子「(ラボメン全員に召集をかけたのだが、フェイリスは忙しいらしく連絡が取れなかった。大会の準備か?)」

倫子「(そしてあのダルだが、"用事があるからパス"というふざけたことを言ってきた)」

紅莉栖「話は聞かせてもらったわ。要は阿万音さんを元気づけるためのパーティーをやろう、ってことよね」

倫子「ぐっ、たしかにそうだが、オレに仕切らせろよぅ」グヌヌ

倫子「(日に日に態度が委員長タイプになってきたな……バイト戦士が危惧していた事態はこれだったのか……)」

紅莉栖「あの人がお父さんを探してたなんて知らなかった。私を目の敵にしている理由は判然としないけど……」

紅莉栖「そういう事なら話は別。岡部の作戦に協力するわ」

倫子「バイト戦士のこと、苦手じゃなかったのか」

紅莉栖「大丈夫よ、私って人に嫌われるの慣れてるから」

倫子「(……やはり父親にも嫌われているのか)」


るか「あの、阿万音さんって、阿万音鈴羽さんのことですか?」

倫子「ほう、ルカ子に面識があったとはな」

るか「はい。昨晩、本殿の軒下で野宿されてまして……」

倫子「の、野宿だと!?」

紅莉栖「嘘でしょ!?」

るか「え、えと、うちの父が今朝方に野良猫と喧嘩している阿万音さんを見つけて、朝餉とお風呂を提供しまして……」

倫子「あの未来人、まともに現代の金が無いからといって根なし草だったとは……」

倫子「ん? ルカ子の父上が、お風呂を貸した……?」

るか「ご想像の通り、今頃阿万音さんは巫女装束です」シュン

倫子「……鈴羽のパパがオタ趣味に理解のある人であることを祈ろう」ハァ

倫子「本当はバイト戦士の側にいて励ましてやりたいところだが、親子水入らずの方がいいだろうと思ってな」

倫子「お前たちっ! ラボメンガールズの女子力をいかんなく発揮し、宴会の準備をするのだっ!」

紅莉栖「じゃあ、私は岡部と買い出しに行くわ。まゆりと漆原さんは今ある材料で料理を始めてて。桐生さんはこの辺の掃除をお願い」

倫子「だから勝手に仕切るなぁ!」

ヨドダシカメラ周辺


紅莉栖「……この前のこと、謝る。本当にごめんなさい」

倫子「なんだ藪から棒に。ビンタのことなら昨日許したと言っただろう」

紅莉栖「……私の事、嫌になったらいつでもラボから追い出していいからね」

倫子「馬鹿にするなよ」

倫子「たとえオレがIQ170の灰色の脳細胞を持つ狂気のマッドサイエンティストとは言え、1人でできることに限界があることは自覚している」

倫子「電話レンジ(仮)がいい例だ。お前の協力があってこそと言えよう」

紅莉栖「それは、そうかもしれないけど……」

倫子「貴様。オレが鈴羽に肩入れしているから、鈴羽に嫌われている自分はお払い箱になるとでも妄想してしまったんだろう」

紅莉栖「そんなわけ……ある、けど」

倫子「まったくもって発想がいじめられっ子のソレだな。逆留学中の高校生活で友達の1人や2人居なかったのか?」

紅莉栖「……みんな私にビビって話しかけてすらこなかったわよ」

倫子「ククク。世界は残酷だなぁ、ボッチティーナ?」

紅莉栖「もはや跡形がない件について……」

倫子「だが、オレたちはもはや外に漏らしてはならない秘密を共有しているのだ。よって貴様をラボから追い出すわけにはいかない」

倫子「くだらん被害妄想などドブに捨てて、オレに忠誠を誓っていればいいのだっ!」

紅莉栖「じゃ、じゃあ私も岡部の人質に……」テレッ

倫子「いや、あの、それはちょっと……」


紅莉栖「あれ? あそこにいるの、橋田?」

倫子「なっ!? 見つけたぞダル!」

ダル「えっ? あっ――」ダッ

倫子「なぜ逃げる! 待てィ!」ガシッ

ダル「ぐぇっ」

倫子「お前、オレの召集に応じないとはどういうつもりだ」ゴゴゴ

ダル「用事があるって言ってんじゃん……」

紅莉栖「岡部より大事な用ってどんな用事よ!」

倫子「そーだそーだ」

ダル「オフ会……」

紅莉栖「死刑」

ダル「いや、ちょっと聞いてくれよぅ――」

倫子「鈴羽のことを、なんとも思わないのか」

ダル「あの自称タイターの未来っ娘にも関係あるオフ会なんだけど――」

紅莉栖「あんた以外に男はいない美少女だらけのハーレムパーティーと、ムサいオッサンどもの酒飲み。さあ、選択権を持つのはあんたよ」ヒソヒソ

ダル「(え、フェイリスたんもいるん!? オカリンの手前、フェイリスたんのことは口に出せないけど……)」

ダル「……僕はオフ会を諦めるぞぉぉぉ!」

倫子「おおっ! それでこそ我が右腕だぁ!」パァァッ

紅莉栖「(この笑顔で今日も生きていける)」グッ

未来ガジェット研究所


ダル「フェイリスたんが居ない……ガクッ」

紅莉栖「あんたが勝手に勘違いしたんでしょ」

ダル「ふざけんなよぉ、せっかくのタイムマシンオフ会だったのに……」

倫子「タイムマシンオフ会だと!? くっ、なぜ先にそれを言わないのだ。オレも行きたい……っ!」

紅莉栖「はいはいまた今度ね」

ダル「ってか、ラボ散らかりすぎじゃね?」

紅莉栖「なにこれ!? えっと、桐生さん!?」

桐生「…………」ピロリン♪

倫子「『片付けるつもりが逆に散らかしちゃうことってあるよね☆ 萌郁』……もういい、オレがやるから代わりに料理を手伝ってやれ」

萌郁「私、カップ麺しか……作れない……」シュン

倫子「わかった、とりあえず指圧師は待機……ん? なにか変な臭いがしないか?」

紅莉栖「橋田の汗臭かしら。岡部に移るからあっち行きなさいよ」シッシッ

ダル「想像を絶する悲しみが僕を襲った」

るか「す、すみません……っ。たぶん、まゆりちゃんのお料理の臭い、だと思います……」

倫子「……まゆりに包丁を持たせたのかっ!?」

倫子「家庭科の授業の時も、バレンタインの時も、まゆりに包丁を持たせてはならなかったというのにっ!」

まゆり「もう。まゆしぃはいつまでも子どもじゃないよ、オカリン?」グサッグサッ

倫子「ヒィッ! 代われ、オレが料理するからっ!」

紅莉栖「あ、私も手伝うわ! えっと、卵を電話レンジカッコカリに入れて――」

倫子「やめろぉぉぉぉぉっ!! うわぁぁぁん!!」

トントントントン カチッ ジュージュー

倫子「……ルカ子、それをこっちに渡してくれ」

るか「は、はい、凶真さん! えへへ……」


ダル「結局オカリンとルカ氏2人で料理することになった件」

紅莉栖「岡部が料理女子だったとは……うぬぅ……」

まゆり「オカリンは昔からお料理上手なんだよー。おかーさんに鍛えられたんだって」

萌郁「岡部さんのお母さん……美人そう……」

まゆり「オカリンはおかーさん似なんだよー。おかーさんもモデルさんみたいにスラッとしてるのです」

紅莉栖「お父さんは?」

ダル「昭和の頑固親父って感じ。オカリンと一緒にいるところを見られた時は、僕半殺しにされたお」

紅莉栖「そりゃ、美人の娘が橋田と歩いてたら誰だってそうするわよ」

まゆり「オカリンね、お父さんから愛され過ぎちゃって、それであんまり家に帰りたくないみたいなの……。なんだかさみしいな……」

紅莉栖「そんな理由でラボに寝泊まりしてたの。お年頃だものねぇ」ウフフ


倫子「(あいつら……勝手なことばかり話しおって……)」トントントントン

るか「(岡部さんとの共同作業……えへへ……)」トントントントン

カチッ カチッ カチッ カチッ (秒針の音)


倫子「……遅いっ!」

ダル「料理冷めちゃったお……」

まゆり「お外、真っ暗だねぇ……」

萌郁「女子高生組は……そろそろ帰らないと……」

prrrr

倫子「む? 鈴羽からメール――ッ!!」


『さよなら』


倫子「(ヤツめ、父親とは会えなかったのか! そしてそのまま秋葉原を離れるつもりだな……っ!)」

倫子「そんなことは、この鳳凰院凶真が許さん……! あいつは実験台なのだから!」ダッ

紅莉栖「あ、ちょっと岡部! ……もう! 私たちも追うわよ!」

ダル「お、おう!」

NR秋葉原駅前


倫子「はぁっ……はぁっ……。どこだ、どこにいる……」

倫子「(ルカ子によればあいつは今上下紅白の派手な格好をしているはずだ、探せばすぐに……居たっ!)」

鈴羽「ぐすっ……ひぐっ……」

倫子「そこのバイト巫女っ!」

鈴羽「っ!?」ダッ

倫子「あ、おい! ちょっと待てっ!」ダッ

倫子「(……あいつは、未来から来たかはともかく、オレを信頼してくれた)」タッタッ

倫子「(だったら、せめてものことをすべきだろうが!)」タッタッ

ポツ、ポツ……

倫子「こんな時に雨っ! バイト巫女め、あの格好ですばしっこく走り回るとは……!」

倫子「だ、だめだ、体力が……。くそ、こんなことならまゆりと毎朝ジョギングしておくんだった……」ハァハァ

倫子「今更過去を後悔しても仕方ない、か。過去を、後悔……」

紅莉栖「見つけた! もう、いつも1人で飛び出して……岡部?」

ダル「ふぃ~、やっと追いついたのだぜ……って、オカリン?」

倫子「……ククク。その手があったか。いや、これこそが運命石の扉<シュタインズ・ゲート>の選択……っ!」

倫子「明日12時、電話レンジ(仮)を起動させ、今日のオレにメールを送ればいいっ!」

倫子「『何があっても鈴羽を尾行しろ』となっ! ふぅーはははぁ! はぁ、はぁ……」ゼェゼェ

今日はここまで
遅くなってごめんなさい

まん!

2010年8月10日火曜日
未来ガジェット研究所



―――――――――――――――――――
    0.40923 → 0.33871
―――――――――――――――――――



倫子「……この目眩。Dメールは正しく送信され、過去を変えたようだな」

倫子「鈴羽。鈴羽はどうなった?」キョロキョロ

鈴羽「……zzz」

倫子「ソファーで寝ていたか」ホッ

倫子「(ホームレスであることを知ったオレたちがこいつを帰さなかった、というわけだな)」

倫子「おい起きろバイト戦士。もう昼だぞ。あと服を着ろ」

倫子(どういうわけかこいつはスポブラにスパッツの状態で寝ていた。許しすぎだろ……)

鈴羽「んー……夜中まで騒いだの、久しぶりだから眠いよ。ふわぁ……」

倫子「……オレはお前を尾行し、"最後の晩餐"へと連行した。そうだな」

鈴羽「椎名まゆりの腹筋ナデナデ攻撃には参ったなぁ。でも、漆原るかのカレーは極上だった! 母さんのカレーよりおいしかったよ」ニコニコ

鈴羽「予定が狂っちゃったけど、タイムマシンオフ会よりは楽しかった、かな」

倫子「ちょ、ちょっと待て。タイムマシンオフ会!? それが父親が現れるかもしれない場所だったのか!?」

鈴羽「そうだって昨日説明したじゃん。鳳凰院凶真は忘れっぽい?」

倫子「い、いや、きっと昨日の料理に記憶破壊系の毒が盛られていたのだろう――ハッ」

倫子「(しまった! こいつには冗談が通じないんだった!)」

鈴羽「毒!? もしかして牧瀬紅莉栖が……なんて、ちょっと前のあたしなら身構えただろうけどさ」

倫子「……助手と和解したのか?」

鈴羽「キミたちのラボ、なんかいいね。みんな仲がよくて、いつも楽しそうで……」

鈴羽「あんなに心地いい時間は、生まれて初めてだったよ」

倫子「(意外にこいつは暗い青春時代を送ってきたのかも知れない……。父親の蒸発と関係があるのか?)」


鈴羽「いやあ、漆原るかがあたしのジャージを持ってきてくれて助かったよ」

倫子「(なぜかソファーには巫女服がキレイに折りたたまれて置いてあった)」

倫子「それで、約束通り、お前には実験台になってもらう。実験はいずれ行う」

倫子「そして電話レンジ(仮)は我がラボの最高機密だ。外部情報保護の観点からして、お前にはラボメンになってもらう」

鈴羽「……いいの? あたしみたいな末端が、ワルキューレの神話時代のメンバーになっても……」

倫子「言葉の意味はわからんが、いやでもなってもらうぞ。お前は今日から、ラボメンナンバー08だっ! ふぅーはははぁ!」

鈴羽「……うぅ……ぐすっ……」

倫子「ど、どうした? 急にしゃがみこんだりして……」オロオロ

鈴羽「……えへへ。ありがとう、ございます……」

倫子「同い年なのに敬語はやめろ。それで、どうするんだ」

鈴羽「うん。もうちょっとだけ、父さんを捜索してみるよ」

倫子「ラボメンの悩みはラボの悩みだ。オレたちも協力しよう。なにか手掛かりは無いのか?」

鈴羽「……あたしの父さんは『タイター』って名乗ってる」

倫子「なるほど。それで父親を炙り出すためにジョン・タイターを名乗っていたのか」

鈴羽「そうそ……ええっ!? いや、違うってば!」

倫子「となると、貴様の父親は2000年に現れたタイターの可能性があるな。お前、見るからに日本人だが、ハーフなのか?」

鈴羽「い、いや、父さんも日本人だと思うけど……」


倫子「お前の話を整理すると、我が未来ガジェット研究所の後身にあたるワルキューレとかいう反社会組織の創設メンバーの1人がパパタイターなのだな?」

鈴羽「違うって言ってるのに」

倫子「さんざんオレをワルキューレの女騎士扱いしておいて今更何を言うのだ、未来人ジョン・タイターよ」

鈴羽「ぐっ……あ、あのさ」

倫子「なんだ?」

鈴羽「その……仮に、だよ? あたしが未来人だったとして、鳳凰院凶真はあたしを、軽蔑、したりしない、かな?」

倫子「それはまたよくわからん心配だな。むしろオレなら未来人とコンタクトを取れる状況に対し、慎重になりながらも狡猾に利用してやるぞ、ククク」

鈴羽「……私欲のために、過去に必要以上に干渉する行為を、見逃してくれる?」

倫子「私欲、か。だが、お前は気付いていないだろうが、その欲望こそが運命石の扉<シュタインズ・ゲート>の選択なのだよ」

鈴羽「う、うん?」

倫子「貴様の行動はオレの掌の上で弄ばれているということだっ! ふぅーはははぁ!」

鈴羽「……あはは、さすが鳳凰院凶真。なんか1人で心配してたのがバカみたい」

倫子「ようやく未来人であることを認めるのか?」

鈴羽「それとこれとは別だってば」フフッ

倫子「生意気なやつめ」ムッ


倫子「お前が2036年から来た未来人だとすると、パパタイターの正体はダルしか考えられない……オレは基本的に男が嫌いだからな」

倫子「創設メンバーに居るとなると他にアテがない。無論、将来的に知り合う人間である可能性もゼロではないが」

鈴羽「ダルって、橋田至、だよね?」

倫子「…………」

鈴羽「…………」

倫子「HAHAHA! あのHENTAIに娘だとぉ? あいつは一生魔法使いに決まっているっ!」

鈴羽「あたしの父さんはもっと痩せてたよ。もう、悪い冗談はやめてよね」

倫子「…………」

鈴羽「…………」

倫子「だが確かにダルはタイムマシンオフ会に参加していた……オレの妨害が無ければ、だが」

鈴羽「橋田至の特徴、母さんからの情報とも一致する」

倫子「…………」

鈴羽「…………」

倫子「ちょ、ちょっと確認してみるか?」ガクガク

鈴羽「にわかには信じられないよ……」ブルブル


ダル「な~ん? 急に呼び出したりしてー。フェイリスたんの雷ネット特訓で忙しかったのにー」

倫子「それが、だな……」

鈴羽「あ、あはは……///」テレッ

ダル「あれ、阿万音氏。どったの? 顔赤いお」

鈴羽「ふぇっ!? い、いや、それが、その……」

倫子「お前も知っている通り、鈴羽は2036年からやってきた未来人ジョン・タイターでな」

ダル「っていう"設定"っしょ?」

鈴羽「信じて貰えないとは思うけど、本当なんだよ」

倫子「正直オレも信じられん……が、我がラボがタイムマシンを開発する運命であるならば、それもまた必然」

ダル「いやいや。阿万音氏を否定するわけじゃないけど、ホントに未来人なん? 証拠は?」

鈴羽「……ラジ館に突き刺さってる人工衛星。あれ、あたしの乗ってきたタイムマシン」

ダル「オウフ……」

倫子「マジか……」


倫子「お前には昨晩話したと思うが、鈴羽は未来で会えなくなった親父にこの時代で会おうとしている」

鈴羽「あのタイムマシンを作ったのはあたしの父さんなんだ」

倫子「その稀代のメカニックが我がラボのメンバーである可能性が高いらしいのだ」

ダル「なんだか僕たちのタイムマシン研究で阿万音氏の人生がとんでもないことになってる希ガス」

鈴羽「そんなことないよ。感謝してもしきれない……。あたしが生きる意味そのものだからね」

ダル「で? 阿万音氏のお父さんって誰なん?」

倫子「…………」

鈴羽「…………」

ダル「え、何? なんで僕を見るん? ……あっ」

ダル「ラボに男って僕しかいないじゃん……」

鈴羽「父さん……?」

ダル「……つ、つつ、つまりどういうことだってばよ!?」


倫子「栗毛色のくせ毛は父親譲りだったのか」

鈴羽「匂いも……。うん。あたしが小さい時の記憶、そのままかも」

ダル「うほっ、こんな可愛い子に匂いをかがれるとか……って、普段なら喜んでたはずなんだけどなぁ」

鈴羽「ご、ごめん。迷惑だった、よね」

ダル「あっーと……驚きはしたけど、迷惑なんかじゃないお」

ダル「むしろ未来の娘がこんなにかわいい娘と知って、僕、大勝利っつーか」ポリポリ

倫子「HENTAIは自重しろよ?」

ダル「わ、わかってるっつの。さすがに血を分けた娘に妄想とかしないお……てかできないお……」

鈴羽「あ、あはは……」

ダル「あの、1つだけ聞いていい?」

鈴羽「う、うん。なに?」

ダル「母さんかわいかった? ロリ顔で背が小さくて巨乳ってのをキボン」

倫子「わかってないではないかぁ! このHENTAI!」ゲシッ ゲシッ

ダル「お尻を蹴られるのは我々の業界ではご褒美ですっ!」

鈴羽「あははっ。それはナイショにしとく」


ダル「……思ったんだけどさ、阿万音氏の話を聞く限りじゃ、未来の僕って親失格じゃね?」

倫子「ディストピアがどんなものかは知らんが、父親としては最低だな」

鈴羽「な、なに言ってるのさ! あたしは別に父さんのことを恨んだりしてないよ、それどころか尊敬してる」

鈴羽「世界の支配構造を塗り替えるための、唯一の希望を残してくれたんだから」

鈴羽「父さんが世界を見捨ててあたしに優しくしてたら、それこそ軽蔑してたよ」

倫子「…………」

ダル「…………」

鈴羽「それに初代女騎士の数々の伝説を後世に残してくれたしね! ワルキューレの精神的支柱だったよ、鳳凰院凶真の伝説は!」

倫子「お前の仕業だったのか」ギロッ

ダル「まだやってないってばよ……」


倫子「……なあ、ダルよ」

ダル「オカリンが言いたいことはだいたい予想できるんだな、これが」

倫子「せっかくの親子の再会なのだ。水入らずで遊んで来たらどうだ?」

ダル「それって、阿万音氏とデートしてこいってことですねわかります!」

倫子「家族サービスと言え、バカモノッ」

ダル「いやあ、ぶっちゃけ同い年だし」

鈴羽「デ、デート……」モジモジ

倫子「バイトは休め。店長にはオレから言っておく」

ダル「えっと……アキバでも散歩する?」

鈴羽「い、いいの? ホントに?」

倫子「今のアキバには萌えショップも無いしな。親父のHENTAI度も下がるだろうし、いいんじゃないか」

鈴羽「あたしも、父さんたちが見てきた景色を見たい……かな」

ダル「そうと決まれば、父さんがんばっちゃうお!」

倫子「ああ、行ってこいっ!」ニコッ

第5章 時空境界のドグマ♀


そこに広がっていたのは一面の荒野だった。
空は絶望色に染まり、雲は凍えるほど寒々しく漂っている。

そこから生命の残滓を感じることはできない。

……また変な夢か。最近多いな。疲れてるのか?


『オカリン、見ーつけた♪』


まゆりか。どうしてそんなところにいるんだ?
どうして、そんな、岩の上なんかに。


『ここはね、7000万年前の地球だよ』

『オカリンは、陰謀に巻き込まれて、タイムマシンでここに送られちゃったんだー』


ほう? それはまた、トンデモ話だな。


『まゆしぃはね、オカリンを追いかけて、たくさん、たっくさん、たーっくさんの世界線の、すべてのオカリンを探し続けてきたのです』


ということは、お前はオレの知ってるまゆりじゃないのか……


『でね、オカリンもまゆしぃも、ここで死んじゃうと思う』


でも、お前がそばに居てくれてよかった。まゆりはオレの人質だからな。


『きっと、7000万年後の秋葉原にいる、オカリンとまゆしぃまで、意志は連続していくんだって思うな』


ああ、それか。知ってる。
だって、その結論を導き出したのは他でもない――"あいつ"なんだから。


『だから、大丈夫だよ♪』


そうだな。後のことはすべて……




――"岡部倫太郎"に任せよう。




倫子「……午睡を貪ってしまったか。ふわぁ……」

倫子「(今頃橋田親子はうまくやってるだろうか……)」

まゆり「はぁー、まゆしぃも『うーぱ』とお友達になりたいなー」

倫子「また雷ネット翔のDVDを見てるのか、まゆり。お前、今年で何歳だ?」

まゆり「んー? まゆしぃは2月生まれの遅生まれだから、まだ16歳だよー?」

倫子「そろそろ大人の色気の1つでも出さないと、男の子にモテないぞ」

まゆり「オカリンはまゆしぃに彼氏ができてほしいのー?」

倫子「そりゃ、そうだろ。お前だって女の子なんだ、人並みの幸せはあってもいいんじゃないか」

まゆり「でもでもー、まゆしぃは今こうしてラボに居ることが幸せだよー♪」

倫子「……まゆり。ケータイが鳴ってるぞ」

まゆり「え? あ、ホントだ。トゥットゥルー♪ フェリスちゃん、おはよーニャン♪」

まゆり「きょうまー? オカリンに替わりたいのー?」チラッ

倫子「絶対に、ノウッ!」


倫子「フェイリスのIBN5100探しは難航している、との連絡だったか」

ガチャ

ダル「ただいまー。ふぃー、やっぱ昼間に出歩くのは自殺行為だ罠」

鈴羽「もう、父さんはだらしないなー。おじゃましまーす」

まゆり「あーっ! スズさんにダルくん! おかえりー♪」

鈴羽「椎名まゆり、ちぃーっす」

倫子「それで、どうだった?」

鈴羽「うん……こんな素敵な時間を過ごせるとは思ってもなかった。鳳凰院凶真には頭が上がらないよ」

ダル「いやあ、周りの非リアどもの羨望のまなざしがたまらんかったっす」ムッハー

倫子「決してお前はリア充ではないがな」

鈴羽「あたし的には父さんがリア充? になってもらわないと困るんだけどね」

まゆり「ダルくんのお嫁さんかー。どんな人なんだろー」

倫子「案外まゆりだったりしてな」

まゆり「えっ? え、えぇーっ!? そうなの、スズさん?」

鈴羽「あー、これは言ってもいいのかなぁ」

ダル「な、なぬぅ!? マジで僕のリアル嫁がまゆ氏なん!?」

倫子「仮にそうだとしたらオレがダルを全力で更生させねばな」フッ

鈴羽「それ、あたしも手伝うよ。まずは痩せないとね」

ダル「い、いや、運動とか勘弁だお……」

まゆり「オカリーン……」


倫子「今日も泊まっていくか? それとも新小岩の橋田家に……いや、それはちょっとまずいか」

鈴羽「さすがにあたしのお婆ちゃんやお爺ちゃんにまで迷惑かけられないよ」

倫子「せっかく未来人がラボに参加したのだ、マシン開発に協力してくれるとありがたいのだがな」

鈴羽「タイムパラドックスにならない程度なら手伝うよ。物資の買い出しとかさ」

ダル「うおっ、なんじゃこりゃ」

倫子「どうした? SERNのデータになにかあったか?」

ダル「ええと、今、SERNのroot権ゲットしようと色々調べてて……」

ダル「なぜかこのビルからSERNまでの直通の光回線が通ってる。1本じゃなくて、束になってるっぽい」

倫子「ほう? それってすごいのか?」

ダル「こっからフランスのSERNまで物理的に光ケーブルが直接繋がってるんだお! しかもむちゃくちゃ速い!」

倫子「……どういうことだ」

ダル「SERN以外にこんなことできる存在、無いはずだけど」

鈴羽「SERNの罠、かもね」

ダル「ってことは、SERNはとっくに僕たちの存在に気付いてる……?」

倫子「な、なんだとっ!?」ガタッ


倫子「いや、待て待て。その回線はオレたちがテナントとして入る前から繋がっているはずだっ! ラボとは直接の関係がない……」

鈴羽「あるいは、未来のSERNが、自分たちのタイムマシンを使ってこのビルに直通回線を引いたとか」

倫子「未来だとぉ!? ラボが未来から監視されていると言うのかっ!?」ワナワナ

鈴羽「実際ここは反体制組織の母体だからね。監視対象になってなきゃおかしい」

ダル「でも、この回線はなんのためにあるん?」

鈴羽「それは……わからない」

倫子「れ、れれ、冷静に考えろ。お、落ち着くのだお前たち……っ!」ガクガク

まゆり「オカリン、大丈夫だよ。落ち着いて」ギュッ

倫子「……そうだ、冷静になれ。光回線を埋め込むことが歴史的に可能になるのは西暦何年だ?」

ダル「今ググるお……えっと、2001年がブロードバンド元年って呼ばれてる。FTTH<光ファイバー>が使えるようになるのは早くて2000年頃だお」

鈴羽「SERNがLHCでゼリーマン実験を始めたのが今から9年前だから、その頃だろうね」

倫子「ならばミスターブラウンが知っているはずだ。奴はたしか2000年6月にこのビルのオーナーになったと言っていた」

倫子「回線取り付け工事をオーナーに隠れて行うなど無理に決まっている」

鈴羽「……わかった。あたしが密偵として店長から情報を聞き出してくる」タッ

倫子「頼んだぞ、ラボメンナンバー008っ!」


まゆり「スズさん、大丈夫かな……」

倫子「(今更ながらあのバカ正直な未来人に密偵を任せたのは失敗だった気がしてきた)」ダラダラ

紅莉栖「……阿万音さん、行った?」

倫子「なぜ開発室に隠れていたのだ、コミュ障ティーナよ」

紅莉栖「だ、だって、せっかくお父さんと会えたのに、私のせいで気分を害させたら申し訳ないと思って……」

倫子「……あいつから聞いた話だが、鈴羽は未来のお前を暗殺しようとしたそうだ」

紅莉栖「うん……橋田から電話で聞いた……」

ダル「ほとんど脅迫だった件」

倫子「だが鈴羽はお前を殺せなかった。そしてそのせいで鈴羽の仲間はたくさん殺された……と、あいつは思っている」

紅莉栖「阿万音さんの中では、私の存在が仲間の死に繋がっている、ってことよね。わかってる」

紅莉栖「でも未来の私がSERNで研究してるってところがどうしても納得できない!」

紅莉栖「それに、未来からもたらされたこの情報によって私の選択が変わる場合、世界線が変動する可能性だってある」

紅莉栖「私の意志で収束を突破する可能性よ」

倫子「もうアトラクタフィールド理論を理解しているのか、さすが天才HENTAI少女」

紅莉栖「なんで私が岡部の敵対組織で研究しなきゃならないのよぉぉぉ!!!!! 倫子ちゃんと離れたくないよぉぉぉ!!!!!!」

倫子「倫子ちゃん言うなぁ!」


ダル「でもさ、この直通回線のおかげでLHCをこのPCから使えるようになったお」

倫子「SERNはここに人間をぶち込んでいたのか……。逆に人間を36バイトまで圧縮すれば通れたのにな」

ダル「そんなんできるわけないじゃん。オカリン、さすがの妄想力」

紅莉栖「……いえ、それなら、もしかしたら――」

紅莉栖「できるかもしれない」

倫子「…………」

ダル「いやいや、牧瀬氏。さすがによいしょしすぎっつーか」

紅莉栖「LHCが使える……人間一人分のデータの超圧縮……タイムトラベル……っ!!」

倫子「いい具合にマッドだな。ちょっと怖い」

まゆり「クリスちゃんはホンモノだよね……」

紅莉栖「つまりね、LHCのブラックホールをデータの圧縮に使うのよ」

紅莉栖「ブラックホールってのは、つまり素粒子の高速衝突だから、3.24TBくらいだったらDメール送信可能なレベルまで超圧縮できる」

倫子「ま、待て待て。そもそもどうやって人間をデータ化するのだ」

紅莉栖「あら? 私の論文、読んでないの?」

倫子「あ、ああ。あれな。もちろん読んだぞ! オレがお前の論文を読んでないわけないだろーハハハ」

まゆり「オカリンはね、英語が苦手なのです」

倫子「……すいません読めませんでした努力はしたんです」ウルッ

紅莉栖「(かわいい)」

ダル「えっと、『側頭葉に蓄積された記憶に関する神経パルス信号の解析』、ってやつ?」

紅莉栖「そうそれ。つまりね――」

紅莉栖「――人間の"記憶"をデータ化して、過去へ送るのよ」


・・・

倫子「……だいたいわかった。つまり、人間の記憶をVR技術を用いて光信号として抽出、バイナリデータ化」

倫子「一方、神経パルス信号をクリスティーナの研究チームが開発したソフトを使ってデータ化」

倫子「これら記憶データと神経パルス信号データをLHCのミニブラックホールを利用して超圧縮」

倫子「高速回線を通じて電話レンジ(仮)内に発生するカー・ブラックホールのリング特異点を通過させ――」

倫子「過去の自分に"通話"する」

倫子「過去の自分が通話に出ることで、電磁波化されたデータが脳に直接侵入し、記憶を"思い出す"……」

紅莉栖「ポイントは、送るのは"記憶"だけってこと。人格や意識についてはこれに含まれない」

ダル「えっと、ソフトだけ入れ替えてハードそのまんま、ってことでおk? ジーコサッカーを非公認ゲーム化する的な?」

紅莉栖「その例えはわからんが、あくまでも被通話者は未来の記憶を"思い出す"だけってこと」

紅莉栖「ある意味、未来予知ができるようになる、と言えるかも」

倫子「デメリットは」

紅莉栖「意識は送れないから、Dメールと同じようになるかもしれない。つまり、自分が過去へ跳ぶんじゃなくて、再構成された世界を現在時刻で認識する、ってこと」

倫子(再構成前の世界を覚えているのはリーディングシュタイナーを持つオレだけ、ということか)

紅莉栖「それから、小学生の頃の自分に現在の記憶を転送した場合、記憶と肉体のギャップのせいで精神的な障害が起きるかもしれない」

ダル「強くてニューゲーム、は限界があるってことですね」

紅莉栖「それに、通話に出る人物が同一人物じゃないと電気信号がマッチングせずに弾かれてしまうかも」

倫子「脳の電気信号には個体識別機能があるのか」

紅莉栖「どんな結果になるかはわからない。人類初の試みだもの」

倫子「人類初……ククク。甘美な響きではないかぁ」ニヤリ

ダル「あっ」

紅莉栖「あっ」

まゆり「はじまったねー」

倫子「ククク、ふぅーはははぁ!」

倫子「オレだぁ。すべての点が1本の線で繋がった。……ああ、計画はこれより最終段階に入る。無論、『現在を司る女神』作戦<オペレーション・ベルダンディ>のことだ」

倫子「案ずるな。うまくやってみせるさ。今のオレたちは無敵だ。エル・プサイ・コングルゥ!」


・・・

倫子「(あのあと鈴羽がブラウン管工房から戻ってきたが収穫は無かった。ミスターブラウンには回線工事の記憶など無い、とのことだ)」

倫子「(その後、鈴羽は漆原家こと柳林神社で寝泊まりすることになった。ルカパパの温情、と言えば聞こえはいいが……)」ゾワワァ

倫子「それで、助手はともかくとして、まゆりは帰らないのか? 早く帰らないとおじさんが心配するぞ」

まゆり「あのねぇ、まゆしぃもクリスちゃんたちの話を理解しようとしてみたんだけど……まゆしぃには難しい話だったよ。えへへ」

倫子「まあ、そうだろうな。正直オレもすべてを理解しているとは言い難い」

まゆり「まぶしいなぁ……」

倫子「む? どういう意味だ?」

まゆり「オカリンもクリスちゃんもダルくんも、キラキラ輝いてて……」

まゆり「クリスちゃんがラボメンになってね、なんだかラボの空気がビシッと引き締まった気がするんだー」

倫子「最初のうちはオレにこびへつらうだけのHENTAIだったが、今では委員長キャラを全面的に売ってるからな」

紅莉栖『そんなことないからぁ!』

倫子「(開発室から助手が悲痛な声を上げているがスルーしてやろう)」

まゆり「……まゆしぃももっと頭がよかったら、オカリンの役に立てたのかな」

倫子「……役に立っているに決まっている」

まゆり「うん……ねぇ、オカリン」

倫子「なんだ」

まゆり「まゆしぃは、これからもここに居てもいいのかな……」

倫子「くだらんことを。お前はオレの人質なのだ。どこへも行かせんっ」

倫子「無論、お前に恋人ができたなら応援してやる。ただし、オレに必ず紹介しろよ?」

まゆり「……うん。ありがと、オカリン」


倫子「……まゆりは帰ったが、お前は帰らないのか」

紅莉栖「マシン開発のため、よ。あと岡部の人質であるまゆりが羨ましい」

倫子「まゆりはノーマルだ。それにあいつはお前の才能をうらやんでいるようだが?」

紅莉栖「才能なんかあったって……ううん、過去は否定しないけど」

紅莉栖「ねえ、岡部。まったく関係ない相談、していい?」

紅莉栖「この前、言ってくれたでしょ? いつでも相談しろって」

倫子「……ようやく話す気になったか」

紅莉栖「私って、父親に嫌われてるのよね……」

倫子「この前の電話か」

紅莉栖「父は物理学者なんだけど、私は小難しい話を聞かされるのが大好きな子どもだった」

紅莉栖「父の話をなんとか理解したくて、小さい頃から物理学の本を読みまくったわ。父の論文も必死で解読した」

倫子「それを有言実行してしまえるポテンシャルが天才たる所以だろうな……」

紅莉栖「その論文について議論できるレベルにまでなったのが小学生の高学年になってから」

紅莉栖「父と物理学の話をできるのが嬉しくて、楽しくて」

紅莉栖「そしていつも私が論破して終わってた」

倫子「それは嫌われる。間違いなく嫌われる。オレだったらノイローゼになってる」


紅莉栖「忘れもしない、私が11歳の誕生日の日。父はうちを出ていったわ」

紅莉栖「それがショックで一時期は登校拒否にまでなりかけて……」

倫子「(メンがヘラってきたな……)」

紅莉栖「その頃ね、留未穂ちゃんの……フェイリスの友達が海外留学を勧めてくれてね。挑戦してみよう、ってことになったの」

倫子「フェイリスの友達?」

紅莉栖「友達って言っても、フェイリスは見守ってるだけ、とかなんとか言ってたけど……」

紅莉栖「とっても可愛い女の子だったわ。長くてキレイな髪で、目鼻立ちも整ってて」

倫子「ほう。さぞかし先見の明を持った子だったのだろう」

紅莉栖「そうね。今思えば、あの子には感謝しても感謝しきれないかも」

倫子「それで、父親には会ったのか?」

紅莉栖「ううん……この前の電話でね、"会いに来るな"って怒鳴られた……」グスッ

倫子「わかった。一緒に会いに行こう」

紅莉栖「……ふぇ?」

倫子「いつがいいか……そうだな。電話レンジ(仮)の改良が終わってから、夏休みが終わる前に行こう」

紅莉栖「い、いやいや、さすがにそんな迷惑かけられないって!」

倫子「お前はオレの助手だ。助手の悩みはオレの悩みだ」

紅莉栖「映画版ジャイアニズム……」

倫子「……まあ、普段のオレが嫌なら普通の格好をしていってもいい。それなりに化粧もしてやろう」

紅莉栖「えっ……」

紅莉栖「(女の子モード全開のオシャレな倫子ちゃんに会えるぜひゃっほうぅぅっ!!」

倫子「途中から声に出てるぞ……」

2010年8月11日水曜日
ラジオセンター


倫子「(助手のテンションが上がりまくったせいで昨日は寝不足だ……)」ウトウト

まゆり「オカリン、寝なくてだいじょうぶ?」

倫子「今はこの紅莉栖に指定されたパーツのお使いが先決だ。なに、タイムリープマシンが完成してしまえば、この眠気も吹きと……ぶ……」ウトウト

まゆり「はわわ、もう、ころんじゃうよ、オカリーン」ダキッ

ppppp

倫子「んー? 助手からメールか。追加の買い出し命令か?」


From 助手
Sub 予定
新幹線と深夜バスどっちがいい
?私としては一緒に駅弁食べる
のも、席を並べて夜を明かすの
も捨てがたくて……( *´艸`)
もちろん交通費は私が出すわ。
ただママにバレたら殺されるw


倫子「(完全に浮ついているな……)」

倫子「(『お前が夢にまで見た修学旅行みたいで楽しいのはわかるが単芝は許さん』、と)」ピッ

倫子「ああ……ダメだ、睡魔が……」フラッ

まゆり「オカリン? オ、オカリン! オカリ――――――

ハイツホワイト202号室


倫子「……ん……ふゎぁ、まゆり? あれ、ここは、どこだ……?」

萌郁「……おは、よう。姉さん……(ほっぺぷにぷにだったなー(≧▽≦) )」

倫子「え? ぬぅわぁ!? あ、あれ!? なんで指圧師が!?」

萌郁「ここ……私の家……(連れ込んでしまった(^^♪ )」

倫子「は……? なんだか、昭和臭のするアパートだな……」

萌郁「道端で……眠ってた、から……(椎名さんと会ってビックリしたよー)」

倫子「あ、ああ。そうだったのか。まゆりは?」

萌郁「友達に……コスを渡すって……(まゆりさんって友達多いなぁ)」

倫子「そ、そうか。すまないな、厄介になって」

萌郁「いい……(姉さんの力になれた、かな)」

倫子「……む? それよりもお前。なんだか顔色が悪いぞ?」

萌郁「っ! ……寝不足」

倫子「なんだ、お前もか。ほら、布団が空いたぞ。今度は萌郁が眠るといい」

萌郁「…………」


ピロリン♪

倫子「『タイムマシンはどうなった? 破棄した? 萌郁』……ああ、今は研究の第二段階だ」

萌郁「第二、段階……?」

倫子「記憶を過去へ跳ばす、タイムリープについて実験をしよう、というところなのだ」

萌郁「…………」ピッピッ

ピロリン♪

倫子「『危険だから絶対やめた方がいいよ! 姉さんに何かあったら私いやだな>< 萌郁』、フッ、何を心配している」

倫子「オレは狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真だぞ? マッドな実験こそ世界を混沌にする―――」

ピロリン♪

倫子「ぐぅ、途中でメールを送るな。えー、『お願いだから実験を中止して! 萌郁』……? お前……」

萌郁「……っ!」ガシッ

倫子「ぐっ!? い、痛いぞ、萌郁……。手を、腕から離せ……」

萌郁「約束……してくれたら……離す……」ギュゥ

倫子「……それはできない」

萌郁「どう……して……」


倫子「信じられないだろうが、実は今、我がラボが将来的に開発することになるタイムマシンに乗って過去へ跳んできた未来人が居る」

萌郁「……?」

倫子「つまりだ。ここでどうあがこうと、オレたちはタイムマシン研究をする運命にある、ということだ。もはや神にも止めることはできない」

萌郁「……じょう、だん……?」

倫子「アトラクタフィールド理論でいう収束、という現象らしい。オレもすべて理解しているわけではないが……」

萌郁「そん……な……」ガクッ

倫子「お、おい!? あからさまに体調が良くないぞ、指圧師! とにかく寝ろ、な?」

萌郁「ねえ、さん……えふ、びー……」ガクガク

倫子「ほら、布団をかけておこう。鍵は閉めた後ポストに入れておくぞ?」

萌郁「ごめんなさい……ごめんなさい……」

倫子「……ゆっくり休め、萌郁」



バタン


未来ガジェット研究所



倫子「…………」


PC『お姉ちゃん、恥ずかしいよぉ……』


紅莉栖「えへへぇ、いいよぉ、私にすべてをさらけ出しなさぁい……」カチカチ


PC『ひな子、変になっちゃいそう……』


紅莉栖「か、かわいすぐるっ……! たまらんすぐるっ……!」カチカチ


PC『そ、そこは……ひゃっ……あ……』


紅莉栖「ひな子たんペロペロ! ひな子たんペロペロ! ひなっ……」カチ…

倫子「…………」


PC『ぁ……んっ…んぁ…あっ…ぁ…あっんっ…』


紅莉栖「…………」

倫子「…………」


PC『えへへぇ、お姉ちゃん、だいす』ブチッ


紅莉栖「……どう見てもオ○ニーです本当にありがとうございました」

倫子「……ネラー語でごまかすあたり真性だな……というかごまかせてないぞ……」

紅莉栖「鬱だ……orz」

倫子「ダルのゲームはホテルへ持って帰っていいから。な?」

紅莉栖「う゛ぅっ……ぐすっ……ひぐっ……うぇぇっ……」


倫子「(その後、泣き喚く助手をなんとかなだめすかしたオレは買ってきたパーツを使ってマシンの改良に取り掛かった)」

まゆり「ただいまー。オカリン、もう元気になった?」

倫子「ああ、指圧師には世話になった」

まゆり「オカリンが倒れてすぐ萌郁さんが通りかかってね。助けてもらったのです」

倫子「フブキちゃんへコスを渡せたか?」

まゆり「うん! フブキちゃん喜んでくれたよー」

まゆり「でもねー、るかちゃんの分も作らないとだから、今日はね、まゆしぃもコス作りのためにラボに泊まるのです」

紅莉栖「女子会って感じでいいわね。そういや橋田は?」

倫子「あいつは今日も鈴羽とぶらぶらデートをしてると思ったんだが、どうやら緊急でバイトが入ったらしい」

紅莉栖「へー。バイトやってたんだ」

倫子「詳しくは聞いても教えてくれないのだ。日本経済を裏で操るため、スーパーハカーとしての辣腕を振るっていることだろう、ククク」

グー

まゆり「えへへ、お腹すいちゃったのです……恥ずかしいなぁ」

倫子「もうそんな時間か。どれ、オレが買い出しに行ってこよう。2人は作業していろ」

紅莉栖「いってらっしゃーい」

裏通り


倫子「おでん缶と、カップ麺。あとプラスチックフォーク、で良かったよな……」

ppppp

倫子「ん? 追加注文か?」ピッ


From patghqwskm@ninesixpbb.ne.jp
Sub
お前は知りすぎた。
▼添付画像アリ


倫子「また萌郁か……? って、な、なんだ、この画像……!?」ゾワワァ

倫子「なま……くび……う、うおぇぇっ!!」ビチャビチャ

倫子「はぁ……はぁ……、いったい、どういう……っ!」


  ・・・

  萌郁『SERNは「ラウンダー」っていう名前の非公式で私設の特殊部隊を持っててね』

  鈴羽『SERNの罠、かもね』

  萌郁『お願いだから実験を中止して!』

  ・・・


倫子「そんな……ウソ、だろ……!? 萌郁のケータイが、乗っ取られた……!?」ワナワナ

倫子「警察……いや、公表できない話が多すぎる。それに警察なんかが解決できるレベルの問題じゃない……」ガクガク

倫子「お、落ち着け……冷静になれ、鳳凰院凶真。きっと何かの間違いだ、大丈夫だって」プルプル

倫子「……今、ラボは、女子2人きり、だ」ゾワワァ

倫子「――まゆりっ!! 紅莉栖っ!!」ダッ

未来ガジェット研究所


ガチャ バタン!!

倫子「はぁっ……はぁっ……。よ、よかった、ラボは無事だ、誰も居ない……」

シャー……

倫子「だ、誰も居ない……? まゆりは? 紅莉栖は?」

シャー……

倫子「2人はどこへ……この音は、シャワー音?」

シャー……

倫子「(その時、オレの脳裏にはヒッチコックの映画、サイコのワンシーンが浮かんでいた)」ガクガク

シャー……

倫子「(排水溝へ流れる鮮血……見開かれた瞳……)」ダッ



倫子「――おい! 大丈夫か!」ガチャ



紅莉栖「きゃぁ! って、なんだ岡部か」シャー

まゆり「どうしたの、オカリン?」シャー

倫子「あ、いや、なんでもない。オレの思い過ごしだった……ハッ!?」


倫子「き、き、き、貴様ぁっ!? さっきの今で、まゆりと一緒にシャワーだとぉ!?」

紅莉栖「ギクッ」

倫子「大丈夫か、まゆりっ! 何も変なことされてないかっ!?」ペタペタ

まゆり「えっ? だいじょうぶだよ?」

倫子「そうか、なら良かった……」ホッ

倫子「おいHENTAI少女。どういうことか説明しろ」ギロッ

紅莉栖「い、いや、これは私からじゃなく、まゆりからの提案であってだな……」

まゆり「時間短縮で作業効率アップなのです♪」

倫子「ほう……では貴様は、そのまゆりの豊満なバストとヒップに欲情など一切してない、と言い張るのだな?」

紅莉栖「あ、当たり前でしょ! まゆりは友だちよ!?」

紅莉栖「触りたいなーとか、揉みたいなーとか、顔をうずめたいなーとか、ペロペロしたいなーとか、これっぽっちも思ってなんかないんだからな!」

倫子「ダウト」

まゆり「……すぐお洋服着るね。まゆしぃは悲しいのです」

紅莉栖「ぐはぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!」ビチャビチャ

倫子「(オレの妄想通り、排水溝へと鮮血が流れることになろうとは思いも寄らなかった……)」

今日はここまで

2010年8月13日金曜日
未来ガジェット研究所


それからほぼ丸2日間。
紅莉栖とまゆりは、ラボにこもりっきりだった。

例の脅迫めいたメールについて、ダルと鈴羽に相談しておいた。
が、SERNにはどうやらバレてないとのこと。

萌郁に聞いてもわからないの一点張りだった。
おそらく萌郁を装ってオレにメールした人物がいるのだろう。

誰が。一体。なんのために。

あの2通のメールはなんだか気味が悪くなったので削除してしまった。

ラジ館のタイムマシンを観察することは紅莉栖と鈴羽に止められた。
タイムパラドックスが発生する可能性がある、とのことだ。

それに、仮にSERNがオレをマークしているとすれば、オレがあそこへ向かうのは危険すぎる。

結局、リフターの代わりとなっている"なにか"については、自力で調べなければならない、ということだ。


倫子「なあ助手。お前がHENTAIになったのはいつからだ?」

倫子「(さしものこいつでも生まれてから、ということは無いだろう)」

紅莉栖「HENTAIじゃないと何度言えば……と反論したいところだけど、今となっては論破できそうにない」シュン

倫子「親父が家に居た頃はお父さんっ子だったのだろう? その後のショックで……とかか?」

紅莉栖「前に話したわよね? フェイリスの友達のこと」

倫子「あ、ああ」

紅莉栖「なんていうか、本当にあの子、絵に描いたような美少女だったのよ」

紅莉栖「衝撃だった。こんな可愛い子が現実世界に居るんだ、って驚いたわ」

紅莉栖「その子に自分の身の上話を打ち明けて、私はドキドキしてた。夢のようだった」

紅莉栖「それをフェイリスがね、きっと紅莉栖ちゃんはその子に恋しちゃったんだよ、って言ってくれて……」

倫子「……女の子に目覚めた、か」

紅莉栖「……アメリカに行っても友達なんてできなかったから、寂しい時は彼女を思い出してた」

ダル「そして自分を慰めていたわけですねわかります」

紅莉栖「まあ、その子ももう立派な女性になってるんでしょうけど。向こうも私のことなんか覚えているわけないし」

まゆり「なんだかさみしいね……」

倫子「その少女のせいで助手はHENTAIになってしまったのか。罪作りな少女だな」


紅莉栖「それで、最終調整のために電話レンジカッコカリを動かしたいんだけど」

倫子「……つまり、敵地に乗り込み死ね、というのだな」

ダル「やっぱ店長のご機嫌取れるのはオカリンしか居ないお」

まゆり「オカリン、死んじゃやだよー?」

倫子「この鳳凰院凶真、不死鳥の如く蘇ってみせようっ!」ダッ



ブラウン管工房



鈴羽「おーっす、鳳凰院凶真」

綯「凶真おねえちゃん! いらっしゃーい!」ドスッ

倫子「ふごっ!? タ、タックルはやめろ……」

天王寺「おう、岡部か。たまには俺も上の連中と混ぜろよ、若い女と話してみてえ」

綯「お父さん……」(※真顔)

天王寺「ち、違うぞ綯! 顧客獲得のためにだなぁ!」アセッ

倫子「(シスターブラウンの真顔は無表情すぎて怖いんだよな……)」


TV『髪切った?』

倫子「それで、バイト戦士。首尾はどうだ?」

鈴羽「え? ああ、うん。父さんには色々案内してもらった。さすがに今日はバイトするよ」

天王寺「おお、そういや見つかったらしいじゃねえか。岡部もたまにはやるな」

倫子「ふん。この鳳凰院凶真にかかれば、失せ人の1人や2人発見するなど朝飯前ですよ」

綯「凶真おねえちゃん、すっごーい!」キラキラ

倫子「いや、まあ、あはは……」


グラグラグラッ……


綯「きゃっ!」ダキッ

倫子「あ、あいつら! 勝手に実験を……っ!」

天王寺「おいコラ! 揺らすなって何度言ったら分かんだ? 若い娘だろうが俺は容赦しねえぞ!」

倫子「ヒィッ! ぼ、暴力反対ですよ! それにこれは、人類史を塗り替える偉大な実験であって――」

TV『一旦CMでーす』

鈴羽「もう! テレビ消すよ!」ピッ

ブツンッ!


シーン……


綯「……はぅ」

天王寺「……な、なんだ?」

鈴羽「あ、あれ? 揺れが止まった?」

倫子「そ、そんなバカな! リモコンを貸せ!」ピッ

TV『明日来てくれるかな? いいとも~』


グラグラグラッ……


倫子「これは……ク、ククク、ふぅーはははぁ!」

鈴羽「どしたの?」

倫子「見つけたっ! ついに見つけたぞぉ! これぞ間違いなくリフターの代替物だっ!」ピョンピョン

綯「わ、わーい!」ピョンピョン

天王寺「お、おい! ただでさえ揺れてるのに暴れるな! あぁー!? 俺のブラウン管ちゃんがぁ!?」ガチャーン

未来ガジェット研究所


倫子「クリスティーナ。オレは今ここで予言しよう。3分後、お前はこのオレの偉大さに気付き尊敬の念を抱くとなぁ!」キラキラ

紅莉栖「鳳凰院様は天才であられます……だから"あのこと"は秘密にしといてぇ!」ヒシッ

倫子「ええい、いちいち抱きつくなっ!」

ダル「んお? あのことって? あ、そう言えば僕のエロゲが1つ見当たらないんだけどオカリ――」

倫子「女の秘密だ、貴様は口を挟むな」ギロッ

ダル「え、なんで僕怒られてるん」

倫子「それと助手よ、勘違いするな。そんなことではなく――」

倫子「42型ブラウン管テレビが、リフターの代わりとしての役割を果たしているっ!!」ドヤァ

ダル「マジで?」

倫子「どうだぁ。驚いて声も出ないかぁ?」ドヤァ

紅莉栖「……ちょっと待って、今計算する……」クルッ

倫子「あ、おい……」

紅莉栖「高電界から出る電子ビームの運動量……リング特異点へ与える影響……」カキカキ

倫子「…………」グスッ

まゆり「だいじょうぶだよ、オカリン。クリスちゃんはオカリンのこと大好きだよ?」ナデナデ


紅莉栖「岡部の言う通りだったわ! 岡部すごい! 尊敬する!」アセッ

倫子「いいもん……別に。あんたはずっと計算式でもいじってればいいじゃない……」イジイジ

ダル「(女言葉に戻ってる……そんなにショックだったのかお)」

紅莉栖「でもホントに奇跡的な偶然ね。42型を設置してくれた店長さんに感謝しないと」

倫子「偶然だとぉ? ククク、違うな、間違っているぞクリスティーナ!」

倫子「すべては運命石の扉<シュタインズ・ゲート>の選択だっ!」

紅莉栖「……そ、そうねっ! その、シュタインズゲートすごいっ!」

倫子「そうであろう、そうであろう?」ニヤニヤ

ダル「牧瀬氏、もういっそのこと常識をかなぐり捨ててオカリン儲になっちゃえばいいのに」

まゆり「クリスちゃんは科学者さんだもんねー」

紅莉栖「"岡部のおかげ"でタイムリープマシンは99%完成したと言ってもいいわ」

倫子「いよいよだな……」ゴクリ

紅莉栖「このラボの、夢だものね。タイムマシンは」

倫子「夢、か」

倫子「そうだ。そのためにオレたちはこれまで努力を重ね、そしてこれからも挑み続けるのだ」

まゆり「よかったねー、オカリン♪」

倫子「オレはっ! 世界の支配構造を混沌に陥れっ! 時空の支配者となるのだっ! ふぅーはははぁ!」

ダル「オカリンが楽しそうでなによりです」

紅莉栖「激同」フフッ

今回はここまで
ゼロ楽しみ過ぎワロタ


・・・

まゆり「できたー♪」

倫子「ルカ子コス、完成したのか?」

まゆり「うん。クリスちゃんより先にできたよー。競争してたんだー」

紅莉栖「負けたわ。でも、こっちももう終わりよ」

ダル「はい、完成」b

倫子「……そうか。ご苦労」

紅莉栖「…………」

ダル「…………」

まゆり「み、みんな、どうしたのー?」

紅莉栖「私たち、ひょっとすると、とんでもないもの作っちゃったかもしれない……」

倫子「ど、どうする?」

ダル「どうするって、何が」

倫子「タイムリープマシンの扱いについて、だ」

紅莉栖「…………」

倫子「実験大好きっ娘のお前は実験したくてたまらないだろう」

紅莉栖「岡部は? 鳳凰院ちゃんじゃなくて、倫子ちゃんの意見が聞きたい」

倫子「だからちゃん付けするなと……。オレも実験してみたくはある、が……」

倫子「……だれがタイムリープするんだ?」


倫子「もし仮にオレが1時間前へタイムリープしたとして――」

倫子「フラクタル化によりスカスカになった記憶データがオレの脳にぶち込まれるかもしれない」

倫子「それは一種の記憶喪失と同じ状態になるのではないか……」ガクガク

紅莉栖「わ、私が跳ぶわっ! 倫子ちゃんに怖い思いをさせたくないっ!」

倫子「倫子ちゃん言うなぁ!」

ダル「なんの解決にもなってなくね?」

紅莉栖「結局のところ、実験しないとどうなるかなんてわかんないのよ」

紅莉栖「最終的には、"意識はどこにある"という問題に行きつく」

ダル「うは。それって、魂とか宗教の分野じゃん」

紅莉栖「だ、だから、岡部が実験したいなら、わ、私の脳を使って……。元々私が言い出したマシンだし……」プルプル

倫子「…………」

倫子「実験は、中止だ」

倫子「タイムリープマシンは、しかるべき研究機関に託そう。そして、世間に公表する」

ダル「ほっ」

紅莉栖「岡部……」ジュン

まゆり「ねえ、それならみんなで完成パーティーをしようよー!」

倫子「そうだな。内輪で宴会をやる分にはいいだろう。いざ、開発評議会っ!」

ダル「僕もうお腹ペコペコだお~」

紅莉栖「いいわね、それ。今まで根詰めっぱなしだったし、パーッと行きたいわ」

ブラウン管工房


倫子『実験は中止だ』

倫子『タイムリープマシンは、しかるべき研究機関に託そう。そして、世間に公表する』


天王寺「……なんだってまあ、指令書通りに物事が運んじまうんだろうな」

天王寺「運命なんてもんは信じたくねえけどよ」ポチポチ


To M4
Sub 元気にしてた?
今日の夜、実行部隊に未来
ガジェット研究所を襲撃さ
せるわ。
すでに実行部隊は秋葉原に
入っているわ。作戦開始ま
でに昌平橋ガード下の公衆
トイレ前で合流してちょう
だい。


天王寺「綯……、綴……、鈴さん……」

天王寺「仕方ねえよなあ。仕方ねえんだよ」

天王寺「これ以上、失うわけにはいかねえよなぁ……」

未来ガジェット研究所


prrrr prrrr

紅莉栖「あ、ごめん。私だわ。ちょっと電話出てくる。ママかな?」タッ

倫子「ここで出ても構わんのだが……。ちゃんと開発室のカーテンを閉めるところがいかにも助手らしい」

ダル「じゃ、僕はピザの予約しとくお」

まゆり「まゆしぃはるかちゃんとフェリスちゃんを呼びに行ってくるねー」

倫子「ついでにバイト戦士も頼む。指圧師にはオレからメールしておこう」

紅莉栖「…………」

倫子「早かったな助手。それじゃ、オレたちは買い出しにでも……クリスティーナ? どうした?」

紅莉栖「……ほかべぇ!!」ダキッ

倫子「ふおっ!?」

ダル「百合展開キタコレ!」

倫子「ちょ、どうした突然……って、お前、泣いているの、か?」

紅莉栖「……グスッ」

倫子「(よほどのことを母親に言われたのか? これは青森に行ってからも一波乱ありそうだな……)」

まゆり「クリスちゃん、大丈夫?」ナデナデ

紅莉栖「まゆり……まゆり……っ」ウルウル

倫子「ほら、いつまでもめそめそしているでないぞっ! ラボメンとしての本分を忘れるなっ!」


倫子「で、だ。メンバーも全員集合したところで、また晩餐を作ろうと思うわけだが」

ダル「いやー、ホント僕って勝ち組だよな。マジリア充の最先端っつーか?」

倫子「貴様は二酸化炭素だけ吸引して酸素でも吐いていろ」

るか「そ、それは難しいですね……」

紅莉栖「ごめん。私、外の空気吸ってくる」

鈴羽「その方がいいよ。牧瀬紅莉栖の料理って激マズだから」

紅莉栖「う、うん……」

鈴羽「……調子狂うなぁ」ポリポリ

倫子「まあ、助手はカレーにパインをぶち込むような典型的メシマズ女子だからな。英断と言える」

鈴羽「調理器具の準備終わったよ。お、桐生萌郁も手が空いてるなら手伝ってくんない?」

萌郁「カレー……作るの?」

フェイリス「ニャハハ。みんなでパーティーするのにカレーはもってこいニャ!」

ダル「フェイリスたんがキッチンに!? みwなwぎwっwてwきwたw」

フェイリス「ダルニャンはちょっとダイエットした方がいいから、フェイリスの手料理はおあずけニャーン♪」

ダル「鈴羽ごめんなぁ。もしかしたら父さん、フェイリスたんと結婚できないかも……」

鈴羽「あたしの母さんはフェイリスじゃないから安心して」

ダル「ぐふぅ!!」

萌郁「……(やっぱりみんなと居ると楽しいな(≧▽≦) )」

萌郁「……私、牧瀬さん探してくる」

倫子「ん? ああ、頼んだぞ。ラボメンナンバー005」

大檜山ビル前のベンチ


萌郁「…………」ポチポチポチポチ


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彼らにはSERNに反抗出
来る戦力はない。
殺してしまう必要はないと
おもう_


萌郁「……(こんなメール、送れない)」


To FB
Sub
了解


prrrr prrrr


萌郁「……!!」


To M4
Sub 確認しておくわ
万が一にもないって信じて
るけど、裏切ろうなんて思
ってないでしょうね?
ラボの人たちだって、いつ
かあなたを見捨てるかもし
れないわよ?
昔の自分には戻りたくない
でしょう?
私はすぐ側であなたを見て
いるわ。


萌郁「(私……どうすれば……)」

カランコロンカラーン

紅莉栖「はい、店長さん。それでよろしくお願いします。それじゃ」

萌郁「っ!?」

紅莉栖「あら、萌郁さん……顔色悪いわね……」

萌郁「な、なんでも……っ、ない……」

紅莉栖「あいつなら、なんて言うかな……」

萌郁「……?」

紅莉栖「もしも、桐生さんがつらい目に遭ってるなら、私たちラボメンは必ず力になる」

萌郁「…………」

紅莉栖「たとえ今の世界線では相談できなくても……ううん、早くラボに戻りましょう?」

未来ガジェット研究所


まゆり「ねぇねぇるかちゃん。まゆしぃが作ったコス、試着してみない?」

るか「え、ええっ!? まゆりちゃん、それ、作っちゃったの? は、恥ずかしいよ……」

倫子「まだルカ子に約束を取り付けていなかったのか。まゆりめ、意外と策士だな」

まゆり「"かわいいは正義"なのに。オカリンもクリスちゃんもかわいいよぉ~♪」

紅莉栖「え……。あ、うん……」

倫子「クリスティーナよ。放心していては"機関"につけ入れられるぞっ!」

紅莉栖「うん……そうなのよね、わかってる……」

ダル「ついに牧瀬氏がオカリンの厨二に同調してきた件」

フェイリス「ニャニャ!? ついにクーニャンもこちら側の勢力に……!」

倫子「嬉しいようで嬉しくないな、これ……」

鈴羽「牧瀬紅莉栖、大丈夫? 調子悪いの?」

紅莉栖「う、ううん。別に大丈夫よ、気にしないで」

鈴羽「そう……?」

倫子「(この2人、というか鈴羽の助手に対する意識は改められたようだな。ダルのおかげか)」


TV『"爆破テロ予告で山手線、総武線、京浜東北線の前線が運転見合わせ"』

鈴羽「テロ?」

ダル「うお、全部アキバ通ってんじゃん。まゆ氏帰れないんじゃね?」

まゆり「本当だー。お家に電話しなくちゃー」

フェイリス「秋葉原でテロなんて、このアキバの守護天使であるフェイリスが天地神明に誓って許さないのニャ!」

萌郁「…………」プルプル

るか「桐生さん? そ、そうですよね。怖いですよね。ボクも怖いです」

鈴羽「……鳳凰院凶真。1つ聞かせて。タイムリープマシンは完成してるんだよね?」

倫子「あ、ああ。そのための開発評議会だ」

鈴羽「あたし、用事思い出したからちょっと出かけてくる」タッ

紅莉栖「スズちゃん……」

ダル「ちょ、我が愛しのラブリーマイドーターをちゃん付けしていいのは僕だけだお」

倫子「打ち解けたと思ったらすぐこれだ。助手の魔の手から娘を守ってやれ、パパ」

ダル「うおっ、オカリンのパパ呼びも捨てがたい……ハァハァ」

倫子「鈴羽の母親になるつもりは、ないっ!」



バァン!!



??「動くな!」


オレは完全に油断し切っていた。

その警告はいくらでもあったはずなのに。

こうして仲間たちと和気藹々とする中に、あろうことか"鳳凰院凶真"を置き忘れてしまっていた――


ダル「えっ、ちょ……!?」

るか「銃!?」

倫子「(あれはAK-47、アーカーヨンナナ。カラシニコフと呼ばれる旧ソ連のアサルトライフルだ。モデルガンのような軽さは感じられない)」

倫子「(オレはミリオタではないが、中二の時、自衛手段をネットで色々調べていた延長で知っている)」

倫子「(この時のオレには、目の前の光景がどこか現実離れした、映画のワンシーンのように感じられた)」

ラウンダーA「手を挙げて全員一列に並べ」

ラウンダーB「早くしろ!」

ラウンダーC「タイムマシンはどこだ。渡せば危害は加えない」

倫子「やめて……やめてよ……」

倫子「私から、奪わないで……」

ダル「オ、オカリン、取りあえず手を挙げて!」

萌郁「……っ!」

紅莉栖「…………」スタスタ

ダル「ちょ、牧瀬氏!? どこ行くん!?」

ラウンダーC「う、動くんじゃねえ!!」

ラウンダーA「待て。この人が指令書にあった……」

ラウンダーB「なんだと? ってことは、あんた、FBなのか?」

萌郁「えっ―――」


紅莉栖「300人委員会序列持ち、ZプログラムのSERN主任研究員……、牧瀬紅莉栖32歳」

紅莉栖「計画通り、私の意識は2034年からタイムリープしてきた」

紅莉栖「この時代の人格としてはFBでいいわ。2010年のラウンダーのみなさん、改めましてよろしくね」

倫子「(外人部隊と握手を交わす紅莉栖。え、なんだ? 今、なんて言った――)」

萌郁「えふ……びー……っ!!」ダキッ

紅莉栖「スパイご苦労様。あなたにはつらい思いをさせてしまったわね」ナデナデ

倫子「(スパイ? いや、それより300人委員会って……)」

萌郁「FBっ!! 牧瀬さんが、FBっ!! 私を、見ててくれたぁ……」ウルウル

紅莉栖「(――――――)」ヒソヒソ

萌郁「……? わかり、ました……」

紅莉栖「さて、今から32秒後にテロリスト阿万音鈴羽が玄関から現れる。あんたたち、彼女を生け捕りにしなさい」

紅莉栖「側頭葉を解剖した上でラジ館のタイムマシンに乗せて1975年へ跳んでもらうわ」

ラウンダーA「了解、FB!」

倫子「(だめだ……まったく理解が追い付かない……こいつらは、一体何をやっているんだ?)」


カラカラカラ……

ラウンダーB「なんだ!? スモークか!?」

ラウンダーC「いや、違う……ケータイ?」

倫子「(あれは……鈴羽のケータイか? なんで部屋に投げ込まれ――)」

ガチャ!

鈴羽「ハッ!」

ラウンダーA「ぐあっ!」

鈴羽「借りるよっ!」パララッ! パララッ!

ラウンダーB「ぐふっ!?」バタッ

ラウンダーC「うおあっ!」バタッ

萌郁「動かないで、テロリスト」ジャキッ

ダル「桐生氏まで!?」

鈴羽「桐生萌郁っ!? どうして――ぐっ!」バタッ

ラウンダーA「クソガキが、舐めた真似しやがって!」

フェイリス「ス、スズニャンが爆破テロのテロリスト!?」

ダル「そんな……、なにかの間違いだお!」

萌郁「私は……M4。SERNの、ラウンダー」

倫子「SERN……!? ラウンダー、だと!? 助手、どういうことだ説明しろっ!」

紅莉栖「口で説明するよりも、実際に見せた方が早いかもね」


      『牧瀬紅莉栖には気を付けて』


倫子「お、お前、何を言って――」

紅莉栖「今から3分54秒後……、椎名まゆりは絶命する」


ラウンダーB「これがSERNの力か……間近で見るのは初めてだ」

ラウンダーC「えげつねえことしやがる……」

ラウンダーA「俺は2回目だ。あれはたしか9年前……現場には居られなかったが、身籠った女がゼリーマンとして処分されたと聞く」

紅莉栖「漆原るか、秋葉留未穂。今すぐここから退室しなさい。まゆりが死ぬわよ」

るか「そんなぁっ!! まゆりちゃんっ!!」

フェイリス「……ルカニャン、今は言う事を聞くニャ」

フェイリス「紅莉栖ちゃん……私は、貴女を信じてるよ……」

紅莉栖「…………」

倫子「ちょ、ちょっと待て! 状況を整理させろ! ええと、どこから話をすれば……っ!」

まゆり「まゆしぃが、ぜつめい? ぜつめいって……絶体絶命の絶命?」

紅莉栖「死因はおそらく心臓発作。まゆりが死ぬ根本的な原因は、阿万音鈴羽。あんたのせいよ」

鈴羽「牧瀬……、マキセ、クリスゥゥゥゥアアアアアアッ!!!!!!!」

紅莉栖「そいつは殺せないから撃っていいわ」

ラウンダーA「大人しくしろ!」バァン!

鈴羽「ギャァッ!!!」

ダル「や、やめろ、やめてくれぇ!!」

紅莉栖「阿万音鈴羽の乗ったタイムマシンが2010年7月、そして1975年6月に現れることでこの世界線は因果が円環状に閉じてる」

倫子「なんの……話だ……」

紅莉栖「世界を救うために作ったタイムマシンが、ディストピアの大黒柱になってるんだから、笑っちゃうわね」

紅莉栖「あんたのおかげよ、橋田至」

鈴羽「父さんを……父さんをバカにするなぁっ!!! ぐっ!!!」

ダル「鈴羽ぁっ! 大声出しちゃだめだぁっ!」

紅莉栖「まゆり、そろそろ息が苦しくなってくるんじゃない?」

まゆり「え――――カハッ」

倫子「ま、まゆりっ!?」ダキッ


倫子「嘘よ……こんな、こんなバカなことが……っ!!」

まゆり「オカ……リン……」

倫子「なんでよ……なにがどうなってんのよ、誰か説明してよぉ!!!」

倫子「冗談でしょ、全部演技なんでしょ!? ねえ!?」

紅莉栖「世界は欺瞞で満ち溢れてる。常に警戒を怠ってはいけない。誰の言葉だったかしらね」

倫子「……コノヤロウッ!!」ギロッ

まゆり「……いやだよ……死にたくないよ……」

倫子「まゆりっ!! そんな、ダメだ、逝くな!! おいっ!!!!!」

紅莉栖「橋田至を連行して。こいつも今は死なないから何してもいいわよ」

ラウンダーA「了解、FB!」バァン!

ダル「ぐはぁっ!」バタッ

鈴羽「父さんっ!!!」

紅莉栖「最後に岡部倫子……。お前は今から人体実験させてもらうわ。そこのマシンでね」

倫子「まゆりっ!! まゆりぃぃっぃっ!!!」

紅莉栖「あんたたち、後は私に任せて、とっとと仕事しなさい」

ラウンダーC「……マッドサイエンティストめ」

ラウンダーB「黙ってこのデブを運べ」


倫子「まゆりっ!! まゆ、ゴホッ、ま゛ゆ゛り゛ぃぃぃぃっ!!!!!」ポロポロ

まゆり「…………」

倫子「そ、そうだ、きゅうきゅうしゃ! いますぐきゅうきゅうしゃをよべ、じょしゅ!」

紅莉栖「椎名まゆりは予定通り死亡。ねえ、鳳凰院凶真。こんなの否定したい?」

倫子「き、きさま、なにをいってるんだ、さっきから、おい……」プルプル

紅莉栖「ちょっと刺激が強すぎたかしら。簡単な話よ。これは夢なの」

倫子「ゆ、ゆめ……?」ガクガク

紅莉栖「そう。だから、あんたは夢から目が覚めれば元の世界に戻っている」

紅莉栖「今頃本当はラボメンみんなで楽しくパーティーをしている頃合いでしょう?」

倫子「そ、そうだ、かいはつひょうぎかいを……はは、そうだよ、おいしそうなカレーだって、そこに……」フラフラ

倫子「血の……臭い……」ゾワワァ

紅莉栖「ほら、愛しの倫子ちゃん。こっちにおいで」ヨイショ

倫子「じょしゅ……たす、けて……」ヨロヨロ

紅莉栖「はい、ヘッドギアかぶって。そうそう、良い子ね。ケータイ借りるわよ」

紅莉栖「……(本物のFBはスズちゃんが殺した。どこかに盗聴器。42型点灯済み。マシンは完璧)」ヒソヒソ

倫子「え――――」

紅莉栖「さようなら、岡部倫子」

紅莉栖「……ごめんね」ピッ



バチバチバチバチッ!!




―――――――――――――――――――――――

2010年8月13日19時56分 → 2010年8月13日16時56分

―――――――――――――――――――――――



今日はここまで
いよいよ書くのが楽しくなってきました

まんまん!!

>>495
意味わかって使ってんの?嫌なら読むなよ

おおぅ、オカリンが女って事でこうも変わるか
でも紅莉栖って2010年段階で19歳だから2034年の云々だと40歳過ぎてるような…
とはいえ耳打ちで盗聴機が言ってるしこれも何かの伏線?

>>498
やってしまった・・・orz 
純粋に3と4をタイプミスしただけですごめんなさい

ちなみに2010年8月時点で紅莉栖さんは18歳なので
2034年7月25日以降は紅莉栖さんは42歳

>>487
× 牧瀬紅莉栖32歳
○ 牧瀬紅莉栖42歳

というか>>495ではないがまんまんの意味がわからん

>>496
怒ってんの?ごめん、ほんとごめん、ごめんなさい・・・><
うぅ・・・怒らせるつもりはなかっだです・:・ごめんなさい・・・
許して・・・許して・・・

>>501
フェミニストを小ばかにするためのネットスラング
調べたら2008年頃の801板発祥らしい

今まで>>307とか>>350とか>>429とか何回かレスされてたけど
そろそろ荒れないかなーと思ったので

>>502別に怒ってないけどお前は15年後に殺す

第6章 形而上のネクローシス♀

ブラウン管工房


天王寺「これは……驚いたな。まさかあんただったとは」

紅莉栖「指令書通り、今後は私が指揮を執りますので」

天王寺「肩の荷が下りるよ。ありがてえ」

紅莉栖「……勘違いしているようですが、あなたを生かしておくわけにはいきません」

天王寺「わかってるよ。それでも構わねえって言ってるんだ」

天王寺「だが、絶対に約束しろ」

天王寺「綯を関わらせるな。綯だけは何も知らずに育って欲しいんだ」

紅莉栖「大丈夫ですよ。私の居た未来では天王寺綯は秋葉原の大地主、秋葉幸高氏の養女となり、何も知らぬまま健やかに成長していきます」

天王寺「未来から来たあんたが言うんだ。間違いねえんだろうよ」

紅莉栖「あなたの処分方法ですが……この後、阿万音鈴羽が42型ブラウン管テレビの電源を入れにここにやってきます」

天王寺「あぁ? 42型ぁ?」

紅莉栖「それを阻止しようとすると同時に、自分がSERNの犬であることや、今日の襲撃を指示したことなどを暴露してください」

紅莉栖「そうすれば阿万音鈴羽は逆上し、必ず戦闘になる。そこで上手いこと死んでください」

天王寺「……おい、ちょっと待て。バイトの正体って、まさか……」

紅莉栖「あなたもよく知っている人物ですよ」ニコ

紅莉栖「2036年から来た反SERN組織のメンバーであり、橋田至の娘」

紅莉栖「そして……あなたの母親代わりだった、橋田鈴本人です」

天王寺「は、はぁっ!?」


紅莉栖「ブラボーチームが阿万音鈴羽を確保。記憶を消去してから1975年へと跳ばします」

天王寺「……理解はできたが、タイムトラベルってのはとんでもねえな」

天王寺「つまり俺は、過去の鈴さんに殺されるってわけだ」

天王寺「クソ。SERNのくせに粋な演出をしてくれるじゃねえか」

紅莉栖「これはSERNの仕込みではないですけどね」

天王寺「……巡り巡って、か。因果応報だな」

天王寺「鈴さんを裏切ったツケが回ってきたってわけだ」

天王寺「あの人に殺されるなら……本望だよ」


prrrr prrrr


天王寺「……M4からメールだ。それじゃ、俺から最後のメールを送っておくよ」

紅莉栖「私に依存させるような文面でお願いします」クルッ

天王寺「任せとけってんだ」



『―――うあああああああっ!!!!!!!』



紅莉栖「……っ!!!」

天王寺「な、なんだ? 岡部か?」

紅莉栖「……あなたには関係ない。聞かなかったことにしなさい」ギロッ

天王寺「お、おう。わかった」

カランコロンカラーン

紅莉栖「はい、店長さん。それでよろしくお願いします。それじゃ」

萌郁「い、今の、岡部姉さん……?」

紅莉栖「桐生さん……? 早くラボに戻りましょう」タッ

未来ガジェット研究所


鈴羽「……大丈夫。生命に問題は無い」

るか「岡部さぁん!!」グスッ

まゆり「オカリン……っ」

紅莉栖「岡部、大丈夫!?」

萌郁「岡部……さん……っ!」

ダル「牧瀬氏、桐生氏! な、なんかオカリンが急に悲鳴を上げて……」

倫子「はぁ……はぁ……。じょ、しゅ……?」

倫子「お、お前は、助手なのか……? オレの知っている助手なのか……?」ワナワナ

鈴羽「まるで記憶操作の洗脳を受けたみたい……」

倫子「紅莉栖……」ウルッ

紅莉栖「……初めて、まともに名前を呼んだくれたね」

倫子「……助けてくれぇ」ダキッ

紅莉栖「……また変な夢でも見たの?」ナデナデ

倫子「夢……? あ、ああ。そうか。あれは夢だったんだ……」

倫子「そうだよな、あんなのちっともリアルじゃなかった。どこのハリウッド映画だよ、はは……」

倫子「まゆりだって、こうして元気に……」

まゆり「オカリン? まゆしぃは元気だよ?」

紅莉栖「……ねえフェイリス。これ、どう思う?」

フェイリス「いつもの厨二……には思えないニャ」

紅莉栖「夕食時まではまだ時間があるし、ちょっと岡部連れて散歩しない? そう言えばドクペを買い忘れてたから、買いに行かなくちゃ」チラッ

フェイリス「……? ……大賛成ニャー! それじゃ、フェイリスとクーニャンと凶真は時間まで3人で約束の地を放浪してくるのニャ♪」

まゆり「えぇー、ずるいよフェリスちゃん、クリスちゃん。まゆしぃもお散歩したいよー」

フェイリス「このクエストは選ばれし者だけに許されているのニャーン。マユシィたちは準備の続きを頼むニャ」

紅莉栖「ほら、岡部。行くわよ?」

倫子「へ……? あ、ああ」

秋葉原タイムスタワー
秋葉邸


紅莉栖「アイコンタクトに応えてくれてありがとう、フェイリス。さすが私の幼馴染」

フェイリス「それで……凶真はどうしちゃったのニャン?」

倫子「お、おい。買い出しに来たんじゃなかったのか? どうしてフェイリスの家に――」

紅莉栖「……ここなら街中に蔓延ってるラウンダーの目も、盗聴器も無いわ」

倫子「なんの話だ……?」

紅莉栖「黒木さんも幸高さんも私たちの味方だってのは未来でわかってる」

フェイリス「未来で……?」

倫子「お、おい助手! いったいなんの話だ、3行で説明しろ!」

紅莉栖「逆に聞くけど、岡部。あんた今、"何週目"?」

倫子「な……に……?」

紅莉栖「その様子だと、もしかして1週目、かしら。わかる? あんたは今日の19時56分からタイムリープしたはずよ」

倫子「タイム……リープ……? ま、まさか……お前……っ!!」

紅莉栖「ラボの襲撃、SERNの陰謀、まゆりの死」

倫子「……っ!?!? あ、あれは、夢じゃなかったのか……っ!?!?」ゾワワァ

倫子「く、来るなぁ! フェイリス、今すぐ逃げろ! こいつは、この女は裏切者だっ!!」バタバタ

フェイリス「ニャニャ?」

紅莉栖「そこも説明されてないってことはやっぱり1週目か。いいわ、ちょっと長くなるけど全部説明する」

紅莉栖「…………」

紅莉栖「…………」

フェイリス「……?」

倫子「な、なんだ……!?」



紅莉栖「こ゛め゛ん゛ね゛お゛か゛へ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛っ!!!!!!!」



倫子「えっ」


紅莉栖の話は、即座に受け入れられるようなものではなかった。

まるで異世界の話をするような――

だが、オレの目の前に居るのは確かに"紅莉栖"だった。

ラボメンナンバー004にして、鳳凰院凶真の忠実なる助手。

オレの知っている、牧瀬紅莉栖。

オレは、裏切られたわけではないのか……

その考えが脳裏をよぎった瞬間、それを心から信じる自分しか存在しなくなっていた。


フェイリス「――取りあえず、クーニャンは凶真の味方、ってことでオッケーニャン?」

紅莉栖「私は岡部のためだけに生きてきたっ!! 岡部のことばかり考えて生きてきたっ!! 私が岡部の力になるっ!!」ヴィェェ

倫子「お、おう……」

倫子「(中身が42歳とは思えんな……まるでいつもの助手ではないか……)」

倫子「だが、つい数分前のお前はまるでSERNの犬だったぞ」

紅莉栖「もちろん演技よ……そういう計画を立ててたの。"この私"はまだ実行してないけど」

倫子「ということは、またやるのか……?」プルプル

紅莉栖「あれをやらないと2036年の未来に繋がらないから、私が逃げ出してもそういう風に収束する」

紅莉栖「桐生さんあたりが私の代わりをやるはず。……ごめん、ちょっと嫌な事思い出しちゃった」ウップ

フェイリス「だ、大丈夫ニャン!?」

紅莉栖「……桐生さんはラウンダーを裏切ったことで射殺、同時にまゆりも撃たれる」

倫子「(やっぱり萌郁はラウンダー、スパイだったんだな……だが、ラボメンとしての最期を選んだ、ということか)」

倫子「……さすが未来人、未来予知能力を持っているとは」


紅莉栖「今は"岡部の1週目"だから、襲撃の前に一度岡部を2週目に跳ばすわ」

倫子「またあの気持ち悪さを体感しろ、と言うのか……」ウェ

フェイリス「どうしてそんなことをするニャン?」

紅莉栖「言った通り、私は2034年からタイムリープしてきた。目的はまゆりの死を回避するため、よ」

フェイリス「マユシィの……死?」

倫子「お、お前がまゆりを殺したんだろぉ!?」ガタッ

紅莉栖「……簡単に言えば、まゆりが今から2時間41分後に死亡するのは"運命"なのよ」

倫子「はぁ!? そんなバカな話があるかっ!」

紅莉栖「物理学的に言えば収束によるもの。因果律の崩壊を世界が阻止しているの」

倫子「しゅうそく……、アトラクタフィールド理論っ!?」

紅莉栖「まゆりの死によって、世界はディストピアに収束する」

紅莉栖「まゆりの死を回避するには、アクティブ世界線を変更するしかない」

紅莉栖「それができるのは、岡部。あなただけなの」

紅莉栖「あなたこそ……救世主なのよ」

倫子「は……?」


倫子「つ、つまり、お前もジョン・タイターと同じ目的――ディストピアを破壊する――で過去へ跳んできた、というのか?」

紅莉栖「そう。そのためにSERNの幹部に上り詰めることで情報をつかんできた」

紅莉栖「おかげで2010年のSERNに私の計画通り動いてもらえるような指令書を送れた」

倫子「……電話レンジ(仮)を作ったのだな。それでDメールを……」

フェイリス「クーニャンは24年間敵地に潜入していた、ってことニャ?」

紅莉栖「そうよ……グスッ……大好きな岡部と会えないまま20数年間……エグッ……一緒に青森にも行けなかったのぉ……」

フェイリス「おー、よしよし」ナデナデ

紅莉栖「勿論、裏でワルキューレにSERNの情報を流してみたりしたけれど……。あまり効果がなかった」

紅莉栖「それ以上に収束は強力だった。人間1人の意志で、未来を変えようなんてほとんど不可能だった」

紅莉栖「私の力では、未来へも過去へもいけるタイムマシンを作ったり、何十年タイムリープしても問題ないリープマシンは作れても――」

紅莉栖「……世界線を変えることはできない」シュン

倫子「なぜだ? 過去へDメールを送れば現在も変わるはず」

紅莉栖「それを認識できるのは完全なリーディングシュタイナー発症者だけ」

紅莉栖「私は……不適合者だった」

倫子「発症? 不適合者?」


紅莉栖「リーディングシュタイナー。あんたが名付けたテキトーなネーミングが未来では通用してるわ」

倫子「……恥ずかしすぎるだろっ!!」ガバッ

フェイリス「未来の黒歴史を創出するとは……さすが鳳凰院凶真だニャ……」

紅莉栖「研究でわかったのは、リーディングシュタイナーは新型脳炎のようなものだった、ということ」

フェイリス「脳炎……? 凶真は病気なのかニャ?」

紅莉栖「脳に異常があることで発生する記憶喪失症状……それがリーディングシュタイナー」

倫子「……いいや違うぞ。オレはむしろ"覚えている"のだ、世界中の全員が忘れてしまったことを」

紅莉栖「通常の脳なら歴史の再構成に合わせて記憶も再構成される。だけど、リーディングシュタイナー患者の脳はね……」

紅莉栖「再構成されたはずの記憶を一瞬にして喪失してしまう。というより、記憶を"思い出せなくなる"の」

倫子「それでは脳がスカスカになってしまうではないか。だがオレはこうして前の世界線の記憶があるぞ」

紅莉栖「記憶だけじゃなく、今のあんたの脳には意識も人格も引き継がれている」

倫子「なに? 記憶はデータ化できるが、意識や人格はわからんと言ったではないか」

紅莉栖「結論を言えば、意識も人格もバイナリデータ化していた。あるいは添付ファイルみたいな形で」


倫子「まるで人間の魂が未知の物質により構成されているというトンデモ話だな……」

紅莉栖「量子脳理論ね。まあ、それはおいといて」

紅莉栖「つまり、再構成された記憶と意識と人格を喪失して空っぽになった脳に、それまで脳が持っていた記憶と意識と人格がダウンロードされてるってこと」

倫子「い、いやいや、タイターの説によれば、世界は多世界解釈のはずだ。オレの脳ミソは無限個あるのだから、改変前の脳と改変後の脳は別物ではないのか?」

紅莉栖「それは嘘。阿万音さんがSERNを欺くために仕組んだ罠」

倫子「嘘……。また、嘘なのか……」

紅莉栖「本当は、世界線は常に1つだけがアクティブの状態にある。それ以外の世界線は可能性の雲になっているに過ぎない」

紅莉栖「岡部の肉体が別世界線に移動してるんじゃない。世界自体が、スイッチのオンオフのように切り替わってるだけ」

倫子「……なるほど、世界線が変わろうとオレの脳ミソは1つしかない。だから意識も記憶も人格も引き継がれる、と言いたいのだな」

紅莉栖「通常の脳でも非アクティブ世界線における”あったはずの記憶”を思い出すエラーが起こることがある。今の時代ではこれはデジャヴとか白昼夢として処理されてる」

紅莉栖「正直に言うと、未来でもよくわかってないのが本当なんだけど、現状では岡部の認識で問題ないと思う」

フェイリス「うニャ~、難しくてわかんニャい~!」


紅莉栖「リーディングシュタイナー患者の脳を研究することで、人工的にリーディングシュタイナー脳を作る技術をSERNは開発した」

紅莉栖「これが無きゃ、タイムマシンでディストピアなんて夢のまた夢だものね」

倫子「……それは、脳を開頭して電気ショックを、とかそういうのじゃないだろうな?」ガクガク

紅莉栖「……今から代々木のAH東京総合病院の地下室に行けばわかるけど、この時代でも既に300人委員会は似たようなことをやってる」

フェイリス「マジかニャ……」

紅莉栖「だけど、私は不適合者だった。どれだけ脳をいじってもリーディングシュタイナーを手に入れることはできなかった」

倫子「……いじったのか?」ワナワナ

紅莉栖「今は18歳の脳だから、健康そのものよ」ウフ

紅莉栖「でもこれじゃ、私がタイムマシンで過去へ跳んでも意味がない。リーディングシュタイナーが無ければ、まゆりの死は回避できない」

紅莉栖「世界は間違いなくディストピアへと突き進む。そこでは私たちは全員不幸になる」

紅莉栖「他でもない、私がタイムマシンを完成させたせいでね……」

紅莉栖「だから、私はこの時間の岡部を頼るしかなかった……」グスッ

倫子「ま、待て待て。そこがわからん。どうしてオレじゃなきゃならんのだ?」

紅莉栖「本当は岡部にそんな思いをさせたくなかったんだけどね……」ウルウル

紅莉栖「あんたは2010年8月時点で"過去改変が可能な環境下"にありながら"リーディングシュタイナーを発症"している唯一の人類なのよ」

フェイリス「それで救世主……ニャるほど」

紅莉栖「そもそも、あんたが電話レンジ(仮)の機能に気付いたキッカケは、偶然Dメールを送信し、そして世界線の変化を観測したからでしょ?」

倫子「そ、そうだ。それが無ければおそらく天才少女たるお前にさえ興味を持たなかっただろう」

倫子「……もしかして、オレが、タイムマシンを作ろうと言ったから、お前も鈴羽も過去へ跳ぶことになって――」

倫子「まゆりが、死ぬのか?」ゾワワァ

紅莉栖「……岡部は間違ってないわ。悪いのは300人委員会以外の何者でもない」

紅莉栖「だから、岡部が責任を感じる必要は、ない」

倫子「あ、ああ……」

紅莉栖「つまりね……。岡部に改変前の世界線の記憶がある、ということがタイムマシン完成の因果へと直結している」

紅莉栖「裏を返せば、リーディングシュタイナーが無ければ過去を改変できない、ということになる」

フェイリス「えっと……それって文章的? 論理学的? にはそうかも知れニャいけど、なんだか納得できないニャ」


倫子「納得できない?」

フェイリス「納得できないところはいくつかあるけど……、クーニャン。"現在"ってどこにあるのニャン?」

倫子「は……?」

フェイリス「時間は大きな川のようなもので、"現在"はそこに落ちた1枚の葉っぱのようなものだと思ってるんニャけど」

紅莉栖「なかなか鋭い質問ね」

フェイリス「クーニャンは2034年からタイムリープしてきたって言ったニャ。そうなると、その24年間はどこへ行っちゃったニャ?」

紅莉栖「私の脳の中……でいいかしら」

フェイリス「でも、そうなるとフェイリスたちの主観はどうなるニャ? フェイリスたちの脳には24年間の記憶なんて無いニャ」

倫子「そりゃそうだろ。だって、今はまだ2010年なのだから……ハッ」

紅莉栖「そう。私の記憶の中には、2034年まで生きてるフェイリスさんの記憶がある」

フェイリス「そのアダルトなフェイリスは、肉体を消滅させて、クーニャンの脳内に棲みついちゃった、ってこと?」

紅莉栖「そうよ。タイムリープでも微小な世界線変動が存在する。タイムリーパーが過去に跳んだ瞬間、到着時点から世界は分岐する」

紅莉栖「……"なかったこと"になる」

倫子「なかったことに……」


倫子「それでオレがタイムリープしたことによって、あの惨劇はなかったことなった、ということか」

フェイリス「だから、そこがおかしいニャ」

倫子「む? オレには納得できたが」

フェイリス「タイムリープしてないフェイリスからすると、"現在"があっちに行ったりこっちに行ったりしてるのニャ」

フェイリス「まず、クーニャンが今日タイムリープして来ないで、クーニャンも襲撃された世界があるニャ?」

紅莉栖「そうね。私の24年前の記憶にはそれがある」

フェイリス「その時は凶真はタイムリープしなかったのニャン?」

紅莉栖「……岡部も女の子なのよ。あんなヤバイのが襲撃してきたら、どうなると思う?」

倫子「……悔しいが、チビって腰くだけになる未来が容易に想像できるな」ガックリ

倫子「だが、助手が過去へ跳んできたことにより、世界は分岐した。この分岐に乗ってオレは助手の大芝居を見たわけだ」

フェイリス「なんでそこで、今居る"1週目"の世界に分岐してないのニャン? 世界は1本の川の流れのようなものじゃないのかニャ?」

倫子「……フェイリスの言いたいことがわからん」

紅莉栖「つまり、フェイリスは"神の視点"を考慮してる、ってことよね」

フェイリス「そういうことニャ。クーニャンの話は、人類が時間を観測していることを前提に話をしてるのニャ」


紅莉栖「結論を言うと、"現在"は観測者の主観に委ねられる」

紅莉栖「これは結果論ね。正直私も、実際にタイムリープするまではこの理論に確信が持てなかった」

紅莉栖「『現象に対して素直になれ』……。岡部の言葉のおかげで、私の実験は挑戦的になったみたい」フフッ

倫子「助手が過去へ来た因果に、オレの存在が影響しているのか……」

フェイリス「つまり、神の視点は存在しニャい? 時計は関係ないのかニャン?」

紅莉栖「強いていうなら、それに一番近いのは別の世界線を観測できるリーディングシュタイナー罹患者ね」

紅莉栖「世界線を分岐させてしまえば時間を客観化できる。観測した瞬間が現在になる」

倫子「量子力学の観測問題、か。箱を開いた瞬間、その中の猫の生死が決まると言う」

フェイリス「じゃあ、今からフェイリスが1時間前にタイムリープしたら、世界は切り替わるニャ?」

紅莉栖「そうなるわ。当然フェイリスの主観は1時間前を"現在"として認識する」

紅莉栖「私の主観では、そもそもフェイリスが1時間前にタイムリープしていたことを事実と認識した上で、今を"現在"として認識する」

紅莉栖「岡部からすれば目眩を感じないレベルのリーディングシュタイナーを発症することになる」

紅莉栖「橋田を雷ネットで勝たせようとした時のDメールレベルの世界の変化が起きる。つまり、ほとんど全く同じ世界へと切り替わる」

倫子「そして、謎の1時間の記憶を持ったフェイリスが突然オレの目の前に現れる、ということだな」

紅莉栖「だからこそタイムリープをするのは岡部じゃないといけないの」

紅莉栖「擬似的に世界の"現在"を岡部の主観に近似させるのよ」

フェイリス「それってニャんだか……凶真が独りぼっちになっちゃう気がするニャ」

紅莉栖「それをさせないために私が跳んできた……。岡部が改変した後の世界線でも、収束がある限り私は絶対に未来から跳んできている」

紅莉栖「その時私は必ず確認する。今、"何週目?"って」

倫子「……わかった。覚えておこう」


紅莉栖「これで私がタイムリープしてきた理由はいいかしら」

フェイリス「つまり、凶真に世界線を変えてもらって、マユシィの死の運命を塗り替えるため、ってことでいいかニャ?」

紅莉栖「そう。世界線の変動はやってみなければわからない。そして私たちは絶対に諦めない」

紅莉栖「この2つの条件が揃ってるから、岡部は無限の時間をかけて世界を変えられるの」

倫子「当たり前だ。まゆりが死ぬ運命など、このオレ、鳳凰院凶真が塗りつぶしてくれるっ!!」

紅莉栖「そしたら、私を青森に連れて行ってね」フフッ

紅莉栖「……(今にそれがどれだけ無謀で、困難なことか。きっと身に染みてわかることになるんでしょう)」

紅莉栖「ごめんね、岡部……」グスッ

倫子「貴様はラボメンとして正しい行動をしたのだ。謝るのではなく誇るべきだっ」エヘンッ

紅莉栖「(かわいい)」


倫子「ということは、またDメールを送ればいいのだな。まゆりを生存させるような18文字……」

紅莉栖「いいえ、そうじゃないわ。収束っていうのはそういうことじゃない」

紅莉栖「たとえどんな手段を使ったとしても、まゆりは必ず死ぬ」

紅莉栖「何故なら、まゆりが死んだことで岡部はワルキューレを立ち上げ、橋田がタイムマシンを作ってスズちゃんが過去へ跳ぶから」

紅莉栖「過去へ跳んだスズちゃんを私たちは既に観測している。因果は円環状に閉じている」

倫子「……そうか、それでお前はあの時、鈴羽を撃っても橋田を撃っても死なないなどと言っていたのか」

紅莉栖「私、これからそんなこと言うのか……鬱だ……」

倫子「だが、ならばどうしろというのだ? それになぜもう一度タイムリープせねばならん」

紅莉栖「それはね……私より詳しい人が居る。スズちゃんから聞いて」

倫子「鈴羽から……?」

紅莉栖「鈴羽は私と違って世界がディストピアになってしまってからの2年間を知っている」

紅莉栖「"1週目"ではもう時間が無いから、スズちゃんから話を聞くためにも1回タイムリープして"2週目"で時間を作らないといけない」

紅莉栖「午後2時頃へ跳んでもらうわ。私がタイムリープマシンを完成させた時刻よ」

紅莉栖「完成したらすぐに"実験はしない"って宣言して橋田とまゆりを解散させて」

紅莉栖「それから、未来から来る私に声を掛けてくれればいい。私が未来から来るまでは特に何もしないこと」

倫子「なるほど……」

紅莉栖「それよりも、今のうちに幸高さんも交えて300人委員会に対する対策を打っておきたい」

フェイリス「パパを?」

紅莉栖「もちろん、この世界線の未来でもディストピアは築かれる。だけど、そこから過去に跳ぶ鈴羽は別よ」

紅莉栖「もしかしたら無意味かも知れない。収束に押しつぶされるかもしれない」

紅莉栖「未来は変えられないかもしれない。それでも――」

紅莉栖「あの娘は、私たちラボメンの希望なの」


幸高「――それで、紅莉栖ちゃん。僕を頼ってくれるみたいだね」

紅莉栖「私はもうちゃん付けされるような歳ではないですよ、おじさま」

幸高「あはは、それもそうか。いや、失敬」

幸高「……テキ屋さんの元締めにちょっと話をしたんだけど」

幸高「びっくりしたよ。紅莉栖くんから連絡があった通り、警察や鉄道会社に干渉があったらしい」

フェイリス「ニャッ!?」

倫子「なにっ!? ということは、あの爆破テロも……」

紅莉栖「報道まであと1時間ってところね」

倫子「(今までどこかリアリティに欠けるところがあったが、一度見た光景をこうして説明されると……現実なんだな、アレは)」ゾワワァ

幸高「この秋葉原一帯を封鎖して、出入りにも制限をかけているみたいだ。君たちを捕捉するためだろうね」

倫子「そこまでできるのか、SERNは……」ワナワナ

幸高「君たちは、一体何をして……」

紅莉栖「ごめんなさい。この計画自体は私が未来で練ったものです」

幸高「未来……?」


・・・

幸高「……そうか、話はわかった。まさかタイムマシンが完成するとはね」

フェイリス「ニャ? パパ、信じるニャ?」

幸高「留未穂も信じているんだろう?」

フェイリス「それは、凶真やクーニャンが嘘を吐いてないってわかるからだけど……」

幸高「話してなかったかな。僕は大学時代、タイムマシンの研究をしていたんだよ」

倫子「えっ」

フェイリス「えっ」

倫子&フェイリス「ええーっ!?!?」

幸高「東京電機大学の理論物理学専攻さ。僕は岡部くんの先輩にあたるんだよ」

倫子「し、知らなかった……」

紅莉栖「父とSERNで共同研究するようになってからお話を聞きました。橋田ゼミというところで"相対性理論超越委員会"というものをやっていたのだとか」

紅莉栖「(この世界線では……どう……?)」

幸高「そうそう。いやあ、懐かしいなぁ。当時を記録した8mmかカセットテープが残っていると思うけど、出そうか?」

紅莉栖「(良かった、スズちゃんはちゃんと記憶を持ったまま1975年に跳んでる)」

紅莉栖「(側頭葉の解剖に見せかけたただの人間ドッグはバレずに成功するみたいね)」

紅莉栖「(もしラジ館に刺さったタイムマシンが壊れてでもいたら"タイムマシンの母"が修理するつもりだけど、これも問題なさそう)」

紅莉栖「いえ、それはまた。それよりも、幸高おじさま……」

紅莉栖「あなたの愛する秋葉原を、こんな風にしてしまって……本当に申し訳ありませんでした」

幸高「君たちにとって大事なこと、なんだろう? それに、実際に荒らしているのは君たちじゃない」

幸高「SERNと300人委員会。僕は彼らのことを知っている。それも2つの方面からだ」


倫子「知っているんですか!?」

幸高「1つ目は、その橋田教授が知っていたんだ」

幸高「教授はタイムマシン研究が外部に漏れるのを極端に恐れていた。出資元が僕しか居なかったのもそのせいだよ」

幸高「今にして思うと、SERNに感づかれるのを避けていたんだろう。聡明な人だったよ」

倫子「……そんな頃からSERNを警戒している人物が居たのか」

幸高「2つ目は300人委員会のことだ。正確には、そのものを知っているというわけじゃないけどね」

幸高「君たちは、"秘密結社"というのは現実離れしてフィクションじみた大層なものだと考えているんじゃないかい?」

紅莉栖「……今の岡部の頭の中ではまさしくそうかも」

倫子「それは違うぞっ! オレが言うことは常に真実っ! ゆえにっ! "機関"は妄想の産物なんかではないっ!」プンプン

紅莉栖「岡部、その"鳳凰院凶真"をずっとわすれないでね」

倫子「お、おう?」

幸高「有名なところだとシチリアンマフィア、テンプル騎士団、ソビエト連邦の出自なんかがそうなんだ」

幸高「君たちのラボだって、ある意味では秘密結社だ。この認識は重要だよ」

倫子「我がラボが"秘密結社"だと? わかっているではないかぁ、パパさん……ククク」ニヤリ

フェイリス「いつもの凶真だニャ」


幸高「つまりね、300人委員会は"そこにいる"ことを前提としなければならない」

幸高「だが、こういう組織は考え方が分からない。本来なら喧嘩を売るべきではない相手だ」

幸高「けれどね、僕はこの秋葉原を自分勝手にしている連中を許せない。ああ、もちろん紅莉栖くんの事情はわかっているとも」

紅莉栖「……はい」

黒木「旦那様、お電話です」

幸高「おや、少し失礼するよ……。…………。どうやら手掛かりがつかめたようだ」

倫子「えっ?」

幸高「ラウンダーの1人を捕まえた」

フェイリス「ニャ!?」

幸高「話を聞く限り、おさげの女にやられていたところを確保してくれたらしい」

紅莉栖「……スズちゃんね。私の挙動をいぶかしんで動き出した、ってわけか……」


幸高「昨日8月12日、フランスから特殊部隊が日本に入国したらしい」

倫子「あいつらか……」

幸高「目的はタイムリープマシンの奪取、並びに開発者3名の拉致。加えてIBN5100の確保」

倫子「IBN5100? なぜあいつらが……って、そうか。あの変なサーバを見られたくないのか」

紅莉栖「襲撃が起こる前に岡部が過去へ跳んで時間を巻き戻します。ですが、一応大檜山ビルの警備をお願いしてもいいですか」

幸高「わかった。知り合いに頼んでおこう」

倫子「このパパさん、もしかしてダル以上にナンデモアリなんじゃ……」

幸高「ちょうどいい、留未穂にも教えておこう。自分ではどうしようもない時は、誰か信頼できる人間に力を借りるのがビジネスの鉄則だ」

紅莉栖「……岡部。ごめんね、私1人の力ではどうしようもできなかった」

倫子「だから謝るなと。オレだってお前の力を借りなければどうしようもなかったと思う」

フェイリス「信頼は時として武器、ってことニャ!」

幸高「逆にそれは弱点でもある。300人委員会の構成員だって、血縁、地縁、なんらかのしがらみが必ずある」

倫子「つまり、分断工作ですね。スパイや洗脳、あるいは人質……」

幸高「それと、ヨーロッパ系の300人委員会、あるいはフランスに拠点を置くSERNがいずれ世界を牛耳るとしても、今は違う」

幸高「たとえば、中東のイスラム系武装秘密結社だって今は活動している。ロシア系でも、トルコ系でも構わない」

幸高「それらの組織がなにかのきっかけで300人委員会に対する敵対行動を取れば……と、これが僕の考えた仕返しさ」

倫子「す、すごい……。まるでアニメの世界の話だが、それを有言実行できてしまうとは……」

紅莉栖「……やっぱり、幸高おじさまに助けを求めてよかったです」

幸高「他でもない、親友の愛娘からの救援要請だからね。僕もいい意味でしがらみの中に居るってわけだ」


幸高「おっと、そう言えば紅莉栖くんに渡すものがあるんだった。黒木」

黒木「こちらに」スッ

紅莉栖「私に?……って、え、これ……っ!?」

倫子「ひしゃげた箱? でも、かわいいラッピングがされているな」

フェイリス「中身は、フォークかニャ?」

幸高「章一の忘れ物だ。受け取ってほしい」

紅莉栖「そう……だったんだ……パパは、これをここに……」ウルッ

倫子「(そんなに大切なものなのか?)」


紅莉栖「もう1つ、頼みたいことがあります」

幸高「なんだい?」

紅莉栖「ブラウン管工房の天王寺裕吾……さん、の、娘さん、綯ちゃんを秋葉家の養女として迎えてください」

フェイリス「ニャ!?」

幸高「……つまり、未来でそうなっているんだね?」

紅莉栖「そういうことです」

倫子「む? しかし、なぜだ」

紅莉栖「これから店長さんは殺される。彼を救うことはできない。綯ちゃんは親を失ってしまうのよ」

倫子「……これもSERNのせいか。クソッ」グッ

幸高「天王寺さんか、懐かしい名前だ。10年前、42型ブラウン管テレビを教授に頼まれて譲ったんだ」

幸高「そうじゃなくても、あれは価値があるから会社が傾きかけた頃に手放そうと考えたりしたんだけどね」

フェイリス「前にも話したと思うけど、パパは古い家電の収集家でもあるのニャ」

倫子「なんと、あの巨大なブラウン管にそんな由緒が……」

幸高「天王寺さんの人柄は半導体屋のトメさんから良い人だって聞いてるよ。わかった、そうしよう」

フェイリス「フェイリスに、妹ができるニャ?」

幸高「新しい家族を歓迎する準備をしなければね。ちかねにも相談しておこう」

フェイリス「……フェイリスが妹を守らなきゃ」

幸高「僕はこれから方々に電話をかけ続ける。君たちは少し休んでいたらどうだい?」

紅莉栖「ありがとうございます。でも、私たちはそろそろ過去へ戻る準備をしないと」

幸高「そうだったね。それじゃ、健闘を祈るよ」

倫子「……これが運命石の扉<シュタインズ・ゲート>の選択だよ。エル・プサイ・コングルゥ」

未来ガジェット研究所


倫子「……なぁ、助手。本当にラウンダーは襲撃してくるのか?」

紅莉栖「自分の目で見たでしょ?」

倫子「そうなんだが……。あまりにもいつも通りのラボだから、周りがオレを担いでいるような気がしてならないのだ……」

紅莉栖「……まゆりの死は現実よ。つらいことだけど、絶対に忘れないで」

倫子「……う、うむ」

倫子「(まゆりの死を看取ったのはたしかにオレだった)」

倫子「(あいつはオレの腕の中で『死にたくない』と呟いたんだ……あれは、実際にあったことなんだよな……)」

紅莉栖「1周目の時は私が確実に未来に到着した後の時間へと跳んでもらったけど、今回は……」

紅莉栖「今から6時間前、午後1時30分に跳んでもらうわ。私の言ったこと、覚えてるわね?」

倫子「あ、ああ。鈴羽を捕まえて話を聞けばいいんだな?」

紅莉栖「そういうこと。それじゃ、私が42型の電源をつけてくるわ」

ガチャ

鈴羽「その必要はないよ、牧瀬紅莉栖。あたしが電源をつけてきたからね」

紅莉栖「っ……」

倫子「鈴羽……?」


鈴羽「店長、天王寺裕吾がSERNの手下だったなんて思わなかったよ。まんまとしてやられた」

倫子「な、なに!? そうなのかっ!?」アタフタ

紅莉栖「……殺したのね」

鈴羽「もちろん。それから、妙な書類を手に入れたよ。これから起こることを指示している書類……差出人は」ピラッ

紅莉栖「っ!!」ビクッ

鈴羽「牧瀬紅莉栖、お前がすべての元凶だったんだね。あたしは早々にお前排除しておくべきだった……っ!」ギリッ

倫子「ち、違うんだ鈴羽っ! これは紅莉栖が打った芝居であってだなぁ!?」

鈴羽「鳳凰院凶真は騙されてるっ!……そうか、お前が洗脳したんだなァッ!?」ギロッ

紅莉栖「岡部、早くタイムリープマシンへ!」

倫子「お、おう!」

鈴羽「洗脳を解く前にタイムリープさせるわけにはいかないッ!!」ダッ



??「ダメだよ、バイトのおねえちゃん」



鈴羽「っ!?」


鈴羽「な……綯……? どうして、ソファーの裏なんかに隠れて……」プルプル

綯「自分の胸に聞きなよ」ドスッ

鈴羽「しまっ!?……ぐあぁぁぁぁっ!!」バタンッ!!

倫子「なんで……そんな、どでかいナイフで……突進……すず、は……」ガタガタ

綯「あは……」

綯「あはは……」

綯「あははは……」

紅莉栖「ウソ……でしょ……」ガクガク

綯「嘘じゃない」ギロッ

紅莉栖「ヒッ」ビクッ

綯「父さんを死に追いやったお前たちを、絶対に許さないから」

倫子「おい紅莉栖どういうことだ説明しろぉっ!!」

紅莉栖「し、知らない……わからない……」ガクガク

綯「私がこの手で殺してやるまで、許さないから」グサッ

紅莉栖「ぐっ……ぎぃぃぃゃぁぁぁああああああ!!!!!!」

倫子「紅莉栖ぅぅぅぅっ!!!!!!」

綯「牧瀬は[ピーーー]わけにはいかないからな。足だけ潰してやるよ」


綯「岡部倫子、お前は15年後に殺す」

  『――いいか、綯――』

綯「跪かせる。命乞いをさせる。そんなことでは許さない」

  『――俺に何かあったときには、あいつを頼れ――』

綯「自らの腸と肝臓と子宮と卵巣と糞尿を飲み下させてやる。もちろんそれでも許さない」

  『――男勝りの変なヤツだが、誰よりも優しくて温かい女性だからよ――』

綯「許さない許さない許さない……っ!」


  『――このオレが、義理や同情で貴様を仲間にしたとでも思っているのか?』

綯「爪を剥がして目を潰して肉をニッパーでちぎり取って……」

  『――愚かな。お前はいつまでも発想が子どもだな』

綯「神経に焼けた鉄串を突っ込んで……」

  『――まゆりを殺した奴は、何人たりとも許しはしない』

綯「ケバブのように炙り吊るして……」

  『――思い出せ、お前もまゆりの死に荷担したことがあるはずだ』

綯「最後に残ったカスみたいな理性を強制的に目覚めさせてやる……!」


鈴羽「がはっ! ごぼっ!!」ビチャビチャ

紅莉栖「内臓をやられてる……スズちゃんが死なないのはわかってるけど、すぐに病院に運ばないとぉ!」ポロポロ

綯「橋田鈴はいずれ殺す。それまで何十年間も怯えて待っていろ」

鈴羽「な……え……ゴフッ」グタッ

綯「それよりもお前だ、岡部倫子」

倫子「ヒィッ!」ビクッ

綯「誰よりも独善的で、自分の目的のためならすべてを切り捨てるクズ……」


  『凶真様ッ!! 信じてたのにッ!! 尊敬していたのにッ!!』

  『……大好きだったのにィッ!!!』

  『――天王寺裕吾は死ななければならない。計画は変更できない』

  『――まゆりのためなんだ』


綯「お前を、岡部倫子をタイムリープさせるわけにはいかない」

紅莉栖「っ!? どうして私の計画を……ってそうか、そこに隠れて見てたんだものね……」ポロポロ

倫子「何が……どうなって……」ワナワナ

綯「うるさい」ドスッ

倫子「ぐっ……はぁ゛ぁ゛っ!?!?!?」バタンッ!!

紅莉栖「おかべぇっ!!!!」ポロポロ

綯「両手を使えなくしてやるよ。ケータイがいじれないようにな」グサッ グサッ

倫子「……ぃぃぃぃぃぃぃぃあああああああああああああああ!!!!!!!!」



まゆり「やめてぇ!!!」


紅莉栖「まゆりっ!? どうして戻ってきたのっ!?」

まゆり「る、るかちゃんのコスを置き忘れちゃって……」オロオロ

綯「なんだ、椎名まゆりか」グサッ グサッ

倫子「うわぁぁぁぁあああああっ!!! いやぁぁぁああああっ!!!」

まゆり「綯ちゃんっ! やめてぇっ!」ポロポロ

紅莉栖「(……待って、まゆりは間もなく死ぬ。でも今は生きている)」

紅莉栖「(この資源を使って時間を稼げれば、私が開発室まで這っていける……私なら手が使える……っ)」

紅莉栖「(考えてることサイテーだ……でも、今はそんなこと言ってられない……!)」

紅莉栖「まゆりっ!! 全力で綯を止めてぇ!! 岡部が死んじゃうっ!!」ポロポロ

まゆり「う、うん! わかったよ、クリスちゃん!」タッ

綯「雑魚が1匹増えたところで……っ!?」

鈴羽「させ……ない……」ガシッ

綯「っ! 鬱陶しいっ!」ブンッ ブンッ

紅莉栖「今のうちに……岡部っ! 痛いの我慢して歩いてっ!!」ズルズル

倫子「まゆりぃぃぃぃぃっ!!!! 逃げてぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!」

紅莉栖「……っ!! ダメ、岡部、こっちに、こっちに来てよぉっ!!!」ポロポロ

まゆり「綯ちゃんっ! 落ち着いてっ! そんなことしたらダメだよぅ!!」ガシッ

綯「クソ、11歳の肉体じゃ思うように動けない……」ギリリ


綯「……そうか。ここで私が椎名まゆりを殺すのか」

綯「そういうことか。ふふっ。なるほど、それで……」

綯「死ねよ椎名まゆり」グサッ

まゆり「ぅ、ぁっ……」バタッ

倫子「ま゛ゆ゛り゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛っ゛!!!!!!!!!」

まゆり「オカ……リンの、役に……た……て……」グタッ

綯「邪魔だ、阿万音鈴羽」ゲシッ

鈴羽「ぐぅっ!」

紅莉栖「X68000へ入力……電話レンジ起動……っ!! 岡部っ、ケータイ貸りるわよっ!!」

綯「行かせないっ!」タッ

紅莉栖「間に合ったぁっ!! 岡部、跳んでぇっ!!!」ピッ

倫子「うわああああああああああああああああああああ――――――――――




「逃げられると思うな、岡部倫子」



「お前は15年後に殺してやる」




――――――――――――――――――――――

2010年8月13日19時53分 → 2010年8月13日13時53分

――――――――――――――――――――――


頭の中に芋虫がいる。

脳がかゆい。死ぬほど痒い。

でも掻けない。

微細で、無数の針で、延々と脳を刺し貫かれているかのようだ。

脳に感覚なんてないはずなのに。


「……ぅあ、あ、あ、あ」


まゆり……まゆり……まゆり……

あいつは、綯に刺されて、血まみれで……血の……臭い……

無惨な死に方……断末魔……

『オカ……リンの、役に……た……て……』


「ああ、あああ、ああああ」


――気が、狂う。


「うわぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁあああああああああああっ!!!!!!!!!」



2010年8月13日(金)13時53分
未来ガジェット研究所


紅莉栖「岡部っ!? どうしたの!?」

ダル「ど、どしたん!? 何か買ってこようか? それとも救急車?」

倫子「……っ! かはっ……はあっ!」ヨロヨロ

まゆり「オカリンっ!」ウルウル

倫子「まゆ……り……?」

倫子「まゆりっ!! 大丈夫かっ!? 綯は、綯はどうした!?」ガシッ

倫子「(がしっ? 手でまゆりの肩を掴んだのか。手の痛みは……無い。記憶の中にしか……)」

まゆり「ええっ? 綯ちゃんならまだ下にいるんじゃないかな……」

倫子「……そ、そうか。なら、よかった……」

倫子「(次第に意識はハッキリとしてきて、オレは"思い出した")」


  『完成したらすぐに"実験はしない"って宣言して橋田とまゆりを解散させて』

  『それから、未来から来る私に声を掛けてくれればいい。私が未来から来るまでは特に何もしないこと』


倫子「(結局あの綯はなんだったのだろう……まるで小学生とは思えん)」

倫子「(まさか、あいつも未来から……?)」

倫子「時計は……2時前、か」

倫子「(こっちの紅莉栖は、まだ24年間を経験していない紅莉栖なんだよな……)」

倫子「マシンは完成したか?」

紅莉栖「ふぇっ? えっと、もうすぐ完成するところだけど」

倫子「そうか……。オレのことは気にせず開発を続けてくれ」

まゆり「ホントにだいじょーぶ?」ウルウル

倫子「……まゆり。私は大丈夫よ」ニコ

ダル「うおう、どう見ても大丈夫じゃない件。完成したらみんな休憩した方がいいと思われ」


まゆり「できたー♪」

倫子「…………」

倫子「(あれ、この時オレは何か台詞を言ったような……)」

まゆり「るかちゃんのコス、クリスちゃんより先にできたよー」

紅莉栖「負けたわ。でも、こっちももう終わりよ」

ダル「はい、完成」b

倫子「っ! 実験は中止だっ!」

紅莉栖「えっ!?」

倫子「(しまった、いきなりすぎたか……?)」

紅莉栖「……2日間徹夜で作業してようやく完成した仕打ちがコレとか、ヤバい何かに目覚めそう」ハァハァ

ダル「牧瀬氏もこっち側へ来ちゃうといいお。楽になるのだぜ~」

倫子「(大丈夫かこいつら……さっきまでのことが嘘に思えるほど平和だな)」

倫子「……タイムリープには問題が山積みだ。その点についてじっくり検証したい」

紅莉栖「つまり私の心配をしてくれて……」ジュン

ダル「でもさ、完成祝いにちょっとでもパーッとやったりしないん?」

倫子「後日だ。それから、紅莉栖とちょっと相談したいことがあるから、悪いがまゆりとダルは帰ってくれ」

ダル「ちょ!? ラボはラブホじゃないんだからね!」

まゆり「そういうの、よくないと思うな……」

紅莉栖「お、お、お、岡部ぇ!? わ、私、2日も同じ下着穿いてるから、一旦ホテルに着替えを……」ポワワァ

倫子「ちっがーう!!!」


・・・

紅莉栖「さっき名前で呼んでくれたよね……。それで、えっと、その、岡部……?」ソワソワ

倫子「貴様が今考えている脳内お花畑なことは一切ないから安心しろ」

紅莉栖「ですよね……」シュン

倫子「まもなくお前のケータイに電話がかかってくる。それは、2034年からタイムリープしてくる熟女紅莉栖だ」

紅莉栖「……なんの冗談?」

倫子「お前の理論は完璧だった、ということだ。さすがはオレの助手」

紅莉栖「ほ、褒めてくれるのは嬉しいけど、さすがに論理が飛躍しているというかだな……」


prrrr prrrr


紅莉栖「嘘!? ホントに……?」

倫子「タイムリープマシンは完成している。ちょっと気持ちが悪くなるが、いや、かなり気持ち悪いが……」

紅莉栖「で、でも、意識の所在の問題とか、現在時点の問題とか、人格障害の問題とか……」ワナワナ

倫子「大丈夫だっ! 信じろっ!」

紅莉栖「うん信じるっ!」ピッ

紅莉栖「……ぅぐぅっ!」ヨロッ

倫子「だ、大丈夫か?」ダキッ

倫子「(というか、オレの時より気持ち悪くなさそうにしている。もしかしてその辺も未来のタイムリープマシンでは改良されているのか?)」


紅莉栖「……おか……べ……?」

倫子「無事、2010年へ到着したようだな」ニコ

紅莉栖「ほかべえええええええええうわああああああああああああああん!!!!!!!」ヒシッ

倫子「(やかましい!)」ビクッ

紅莉栖「会いたかったよぉぉぉぉぉおおおお!!!! さみしかったよぉぉぉぉおおおお!!!! こわかったよぉぉぉぉおおおお!!!」ギュゥッ

倫子「42歳のくせに子どもかっ!! わかったから離れろぉ!!」ゲシゲシ

紅莉栖「グスッ……エグッ……」ウルウル

倫子「……落ち着いたか?」

紅莉栖「う、うん……ごめんね岡部……」

倫子「1周目でも言ったがいちいち謝るな。お前は自分の行動を誇るべきだ」

紅莉栖「うん……えへへ……」

倫子「それで、だな。えっと……オレは"2周目"だ」

紅莉栖「2周目……了解。それじゃ、これからフェイリスの家に行ってくる。そっちはスズちゃんをお願い」

倫子「ま、待ってくれ。1つ聞きたいことがある」

紅莉栖「なに?」

倫子「あの綯の豹変ぶりはどういうことだ?」

紅莉栖「なえ、って、綯ちゃん? ……1周目でなにかあったの?」

倫子「それがだな……」


・・・

紅莉栖「……なるほどね。綯ちゃんがタイムリーパーになっている可能性。そしてそれは父の仇を取るため……」

倫子「ミスターブラウンはSERNの犬だと言ったな。ということは、綯もSERNの幹部となり、お前の作った完璧なタイムリープマシンで……?」

紅莉栖「いえ、この私の記憶に無いんだから、それはないと思う」

倫子「なら、一体どうやって……」

紅莉栖「……このラボのタイムリープマシンを使ったのかも」

倫子「だがこれはSERNが回収するんじゃないのか?」

紅莉栖「そう。だけど、このマシンの起動に必要なのは階下のブラウン管テレビたちの絶妙な配置、ビルの外壁の素粒子透過性、そしてSERNとの直通回線……」

倫子「つまり、ビルごとパクる必要があった、ということか」

紅莉栖「"かなり昔"の話……いえ、"ちょっと未来"の話をするわね」

紅莉栖「岡部と橋田は、この後SERNの、スイス国境付近にある施設に2011年12月21日まで軟禁される」

倫子「我が天才的頭脳とダルの超人的能力を利用するためだな……ッ!!」

紅莉栖「ううん。このビルと電話レンジ(仮)の大局的なデータを取るために1年半年近く時間をかけたってだけ」

倫子「……SERNめっ」ムッ

紅莉栖「SERNはデータを取り終わってから電話レンジ(仮)とペケロッパを回収」

紅莉栖「2人がヨーロッパを脱出して日本に帰国するのはその後」

倫子「お前を残して……か」

紅莉栖「SERNによる収束現象の実証実験だった、ってわけ。2人は泳がされてたの」

紅莉栖「何がナイトハルトだ、あの偽者……ヒイラギアキコも……ブツブツ……」

紅莉栖「たぶん帰国後、橋田はラボで電話レンジ(仮)、というかタイムリープマシンを組み立て直したはず」

紅莉栖「橋田はSERNからデータを盗んでいたはずで、2010年の夏に作ったものより高性能になっていたと思われる」

紅莉栖「そしてそのマシンはその後のワルキューレへと引き継がれていく……」

倫子「お前が何を言いたいのかようやく見えてきたぞ。つまり――」

倫子「……綯はワルキューレの裏切者」プルプル


紅莉栖「このタイムリープマシンは一度に最長で48時間しか跳躍できない」

倫子「なにっ!? そうなのか!?」

紅莉栖「それ以上の跳躍になると、指数関数的に危険度が増加する」

紅莉栖「意識、人格、そして記憶に障害が出てしまう……それじゃ、過去へ行ったって無意味」

紅莉栖「だから10年の跳躍をしようとすると、単純計算で1825回タイムリープする必要がある」

紅莉栖「まあ、2012年製のマシンが何十時間跳躍できるかによるんだけど」

倫子「……綯は気の遠くなるほどの回数、タイムリープをしてきた、ということだな」

倫子「なんという執念だ……」

紅莉栖「岡部にも執念を持ってもらいたいの。まゆりを救うという、絶対的な執念」

倫子「……わかっている。まゆりは、まゆりはオレの人質だ」

倫子「今までもまゆりとオレは支え合ってきたんだっ! 誰にも奪われたりはしないっ!」

倫子「SERNなんかに、300人委員会なんかに、収束なんかに殺されてたまるかぁっ!!」

ガチャンッ!!

紅莉栖「っ!?」

倫子「な、なんの音だ?」


倫子「……なんだ、鈴羽が自転車を倒したのか。おい、そこのジョン・タイター! 話があるっ!」

鈴羽「ヒッ……」タッ

倫子「あっ、おい! 待てっ!」

紅莉栖「すぐに追いかけて、岡部っ!」

倫子「自転車を追いかけろと言うのかぁ!? 行くけどぉっ!! うわぁん!!」



中央通り



倫子「はぁっ……はぁっ……、体力は、無い、んだよぉ……はぁっ」ウルウル

倫子「そ、そうだ、電話してみるか……」ピッ


prrrr prrrr


鈴羽『…………』

倫子「鈴羽か! 聞きたいことがある!」

鈴羽『……ゴメン、きっとあたしのせいだ』

倫子「綯のことか!? それは、違う! 悪いのは全て300人委員会やSERNだっ!」

鈴羽『な、綯?……そっか、それもあたしのせい。あたしが甘えてたせいで……』

鈴羽『だから今度こそ、あたし行くよ。それじゃ』ピッ

倫子「おい! 鈴羽! おい!」

倫子「どこへ行こうと……って、そうか、そうだった」

倫子「……やつはラジ館にいるっ!」ダッ

ラジ館前


倫子「なっ……タイムマシンが、起動しているのか? 光っている……」

倫子「ラジ館のシャッターは半開き……中にはMTB……エレベータもエスカレータも動いていない……!」ダッ

・・・

倫子「ぜぇっ……はぁっ……ふぅっ……は、8階まで来たぞ……」

倫子「会議室は7月28日から時間が止まっているかのようだな。そしてこれが、タイムマシン……」

倫子「……鈴羽ぁぁぁっ!!!」ダッ

鈴羽「っ!? な、なんでレジェンドが、追いかけてくるのさ……」

倫子「お前はっ! ディストピアを破壊するために来たんだろっ! どこへ行くんだよっ!」

鈴羽「……行きたくても、行けない」ウルッ

倫子「は……? それは、どういう……」

鈴羽「……タイムマシン、動かない」グスッ

倫子「……っ!! お前、手が!? やけどをしているのか!? すぐ手当をっ!」

鈴羽「あたしは、なんのためにここまで……」ヒグッ

倫子「い、いいから来いっ! 話はそれからだっ!」

秋葉原タイムスタワー
秋葉邸


倫子「(あれからすぐ助手に電話をして、状況を説明したらココへ来いと命令された)」

倫子「(確かにここなら外部へ情報が漏れることはないが……)」

フェイリス「――取りあえず応急処置はしておいたニャ。まだ手、痛むかニャ?」

鈴羽「ううん、大丈夫。ありがとう、フェイリス」

紅莉栖「それで、タイムマシンは故障していたのね」

鈴羽「……うん」

紅莉栖「……フェイリス、岡部。ちょっとスズちゃ、じゃなかった、阿万音さんの手足を押さえてもらっていい?」

鈴羽「へ……?」

フェイリス「ラジャーニャー!」ガシッ

倫子「オレに命令をするなと……」ヒシッ

鈴羽「う、うわあっ!? レ、レジェンドに抱き着かれると、あたし……」ドキドキ

倫子「変なことを考えるなぁ! オレの周りこんなんばっかかよぉ!」

紅莉栖「阿万音さん、私はあなたの味方よ。同じラボメンだから。だから、冷静になって聞いてほしい」

鈴羽「……?」

紅莉栖「私は"タイムマシンの母"、牧瀬紅莉栖。2034年からタイムリープしてきた」


・・・

紅莉栖「……とんでもなく無駄な時間を過ごしたわ」ハァ

倫子「さすがにあの立ち回りができた鈴羽を女子2人では押さえ切れなかった……イテテ……」ジンジン

フェイリス「ウニャァ……スズニャン、ひどいニャァ……」ヒリヒリ

鈴羽「んん~~~!! んんん~~~~~!!!!!」ジタバタ

黒木「一時はどうなるかと思いましたが、私もまだまだ現役ですな」ギュッ

倫子「(この最強執事、一体何者なんだ……)」ガクガク

自警団A「秋葉さん、これで問題ないかい?」

フェイリス「スズニャンを組み伏せるのを手伝ってくれてありがとうニャン」

幸高「君たちは引き続き警備と情報収集を頼むよ」

自警団B「了解だ」

倫子「今の人たちは……?」

幸高「ああ、秋葉原自警団の皆さんさ。と言っても、ほとんどが商店会の人だけどね」

幸高「紅莉栖くんから連絡を受けて、各自の判断で動いてもらっていたんだが、ちょうどうちで会議をしていたんだ」

紅莉栖「スズちゃん、よく聞いて。何度も言うけど、岡部もフェイリスも洗脳はされてない」

紅莉栖「私も、SERNの幹部になったのはすべてラボのため」

鈴羽「んん~~~!!!」ジタバタ

紅莉栖「まず、あなたのタイムマシンに関しては大丈夫。この私が直すから」

幸高「そして僕に教授との思い出があるから問題ない……ってことだけど、それはどうしてだい?」

紅莉栖「えっと……この阿万音さんがこれから1975年に行って、教授になるんです」

倫子「なにっ!? え、そうなのか!? もう、さっきから驚かされてばかりだ……」

倫子「(そういや、その教授とやらはSERNを警戒していたとか言っていたな……なるほど合点が行った……)」

幸高「ということは、目の前に居るのは、若かりし頃の教授……?」

紅莉栖「そういうことになります」

鈴羽「んんんんん~~~~~~!!!!」ジタバタ

幸高「若い頃はお転婆娘だった、というのは本当だったみたいですね、教授」フフッ


倫子「……待て待てっ! それではなにか!? 鈴羽は1975年に行ったまま、帰ってこないということではないかっ!」

鈴羽「ん……」

紅莉栖「……推測なんだけど、橋田の作ったマシン、過去にしか行けないのね?」

鈴羽「…………」

フェイリス「そんニャァ!? 行ったら帰って来れないニャ!?」

倫子「な……っ! そ、そんなもん、タイムマシンとは呼べんっ!」

紅莉栖「岡部……」

倫子「ぐっ……」


  『――あたしは別に父さんのことを恨んだりしてないよ、それどころか尊敬してる』

  『――世界の支配構造を塗り替えるための、唯一の希望を残してくれたんだから』


倫子「……お前は、納得して跳んだんだな」

鈴羽「……ん」

幸高「こんな言い方は不謹慎かも知れないが、過去へ行っても教授には仲間ができる」

幸高「教授は学生から慕われる良き教師であり、敬愛すべき研究者だった」

幸高「それに、今の別れが最後じゃないよ」

倫子「え……あっ」


倫子「そ、そうですよ! すでに妙齢を迎えているであろう教授の方の阿万音鈴羽は一体どこに居るんです!」

幸高「実は彼女は12年ほど前に大病を患ってしまってね。僕の知り合いに紹介してもらって、海外の病院で治療を受けているんだ」

鈴羽「ん……!?」

フェイリス「つまり、スズニャンが2人……! いよいよタイムトラベルって感じがしてきたニャー!」

幸高「だいぶ快方に向かってるみたいで、そろそろ退院できるって話も聞いたけど……」

幸高「えっと、これってタイムパラドックスになってしまうのかな?」

紅莉栖「いえ、その心配は無いです。2人は別世界線出身なので……。こっちのスズちゃんも頑張って2010年まで生きてね」

鈴羽「んんんんんん~~~~~!!!!!」ジタバタ

倫子「だが、そもそもだ。なぜ鈴羽は1975年へと行かなければならないのだ?」

倫子「その、フェイリスのパパさんと紅莉栖のパパさんにタイムマシン研究を指導するためか?」

紅莉栖「いいえ、それは副次的な結果に過ぎない。それに、うちのパパなら教授が居なくてもタイムマシン研究をしていたと思うわ」

紅莉栖「@ちゃんに書いてあったジョン・タイターの言葉を思い出して。何を必要としていたかしら」

倫子「なにって……たしか、オレたちと同じ、IBN5100……っ!」

倫子「な、なるほど! 1975年と言えば、IBN5100が発売された年ではないかっ!」

鈴羽「んん~~……」



倫子「というか紅莉栖。あの書き込みを知っているということは貴様、『栗悟飯とカメハメ波』だな?」

紅莉栖「ギクッ」

倫子「気持ち悪いクソコテ……」ジーッ

紅莉栖「24年前の黒歴史を掘り返さないでぇ!!」ピィィッ


紅莉栖「そろそろ猿ぐつわを外していいかしらね。手足は拘束したままにさせてもらうけど」スッ

鈴羽「ぷはっ。はぁ……、もう、好きにしなよ」

倫子「それで、鈴羽。お前の口から改めて聞きたい」

倫子「なぜ、過去へ跳んだ」

鈴羽「……あたしは、300人委員会の独裁的支配構造を破壊するための解放組織ワルキューレのメンバーなんだ」

鈴羽「SERN……牧瀬紅莉栖がタイムマシン開発に成功したことで、世界の秩序はたった2年で塗り替えられていった」

紅莉栖「やっぱりそうなのね……」

鈴羽「この時代に来たのは……、えっと……」

鈴羽「前に言ってくれたよね。その、あたしを軽蔑しないって……」


―――――

  鈴羽『……私欲のために、過去に必要以上に干渉する行為を、見逃してくれる?』

  倫子『私欲、か。だが、お前は気付いていないだろうが、その欲望こそが運命石の扉<シュタインズ・ゲート>の選択なのだよ』

―――――


倫子「ああ、言った」

鈴羽「その……本当はあたし、この時代に寄るべきじゃなかった。まっすぐ任務を全うすべきだったんだ」

倫子「私欲、と言っていたな。それは……そうか。親父に会いたかったんだな」

鈴羽「だってワルキューレで神聖視されてるバレル・タイターやレジェンドを一目拝みたかったんだもんっ!」

倫子「ミーハーかっ!」


鈴羽「ホントはね、父さんがこの世界に本当に居たんだ、ってことを確認できれば、自分の生きている意味に確信が持てると思ったんだ」

鈴羽「あたしはほら、時間軸や世界線から外れる使命を持ってたから。それでいて収束で生死が決まってるから」

鈴羽「だから、自分の生きている意味が、わからなくなってたんだ……」

倫子「見つかったか?」

鈴羽「……うん」

倫子「ならばよし。未来のオレに変わって、今のオレがお前を赦すよ」

鈴羽「レジェンド……っ!!」ウルッ

倫子「それで、本当の使命とはなんなのだ?」

鈴羽「……世界線を変える。これが最終的な目標」

紅莉栖「それに関しては私も同じ。まゆりが死なない世界線、巡り巡って、ディストピアが築かれない世界線へとアクティブを切り替える」

倫子「アトラクタフィールド理論、か」

鈴羽「今あたしたちがいるアトラクタフィールドαの範囲外に出る」

鈴羽「つまり、アトラクタフィールドβ上にあるβ世界線に跳び移るってこと」

紅莉栖「基本的にアトラクタフィールド同士は干渉できない。だから未来のSERNは2年でディストピアを作れたし、西暦2010年や2000年、1991年をより重要視していた」

フェイリス「世界規模の大事件がある年、ってことニャ?」

鈴羽「そう。まさにその年代がアトラクタフィールドの分岐点なんだ。多くの人間の生死、つまり人類の歴史に関わってくるからね」

鈴羽「大分岐の年なら、アトラクタフィールドを切り替えるスイッチがまだ有効な状態で保存されている」

倫子「それが、タイムマシンが開発された今、というわけか」


鈴羽「ここ秋葉原でタイムマシン開発が行われたことがSERNのディストピアに直結している」

鈴羽「だから、それを阻止するように過去を改変すればいい」

フェイリス「阻止って、どうするニャ?」

鈴羽「……父さんの遺書には、一番最初のメールデータが原因だって書いてあった」

倫子「遺書……。ということは、ダルは……っ」

フェイリス「ダルニャン……」

紅莉栖「それは私が生前の橋田にリークした情報。SERNの擬似スタンドアロンサーバに、例のDメールが保存されている、って」

紅莉栖「内容は、私が男に刺された、というもの。受信日時は2010年7月23日」

倫子「28日ではない、か。そう、たしかダルは1週間前に届いたと言っていた」

紅莉栖「だけどSERNがこのメールを発見した当時、私はSERNで研究していて、当然過去に男に刺されてなんかいないから解析班に回されることになった」

紅莉栖「これが世界で唯一のアトラクタフィールドβから跳んできたモノであり、アトラクタフィールド理論を裏付ける証拠だった」

紅莉栖「そして当然送り主は誰か、という話になる。それは――」

紅莉栖「岡部倫子」


倫子「……あの時オレは電話レンジ(仮)の機能すらわかっていなかったというのに」グッ

紅莉栖「岡部、何度も言うけどあんたが責任を感じる必要は無いからね。悪いのは300人委員会だから」

鈴羽「自分こそが主犯のくせに、どの口が言うんだか……」

紅莉栖「…………」シュン

倫子「これ以上無い胸をえぐってやるな」

紅莉栖「ぐはぁ!?」

鈴羽「とにかく、まさにコレがディストピアの根源的な原因なんだ。コレさえ発見されなければSERNが過去のレジェンドを監視することは無くなる」

紅莉栖「ラボが監視されなければ私はSERNに招聘されることもないからね」

鈴羽「そしてタイムマシンは完成しなくなる。ディストピアは消滅する」

鈴羽「同時に、関連する収束である椎名まゆりの死も解除されることになる」

倫子「……まゆりは、助かるんだな」

紅莉栖「たぶん、因果の関係で私たちはタイムマシン実験をしないか失敗してるはずなんだけど……」

倫子「(オレがDメールを使って世界線移動した時はいつも実験をしていない状況になっていた)」

倫子「(つまり、それがすべての実験に関して起きる、ということだろう)」

倫子「構わん。タイムマシンの開発の喜びなど、まゆりの命に比べればなんでもない」

フェイリス「でも、一体どうやってSERNはその1通のメールを捕捉したニャン?」

鈴羽「SERNはエシュロンのネットワークを利用して、世界規模で情報を傍受してるんだ」

幸高「エシュロン……まさか本当に実在していたとはね。実業家としてはちょっと許せないな」


鈴羽「だから、捉えられた"最初のメールデータ"を、SERNのコンピュータから消去しないといけない」

倫子「……IBN5100、だな。だからこそやつらはIBN5100を血眼になって回収している、ということか」

倫子「(萌郁も、最初からそのつもりで……いや、悪いのはSERNだ。萌郁を傀儡のように操っていたのだから……)」

鈴羽「さすがレジェンド、そういうこと。そして、あたしの父さんなら間違いなくクラッキングを実行できる」

倫子「だがあれは失われてしまった……まだ助手がオレに対してヘーコラしていた頃は確実に手元にあったのだがな……」

紅莉栖「私の記憶には無いけど、もう昔の話よ……」フッ

鈴羽「あたしの役割は、君たちにIBN5100を託すことなんだよ。1975年に行って手に入れる」

倫子「待て待て。何もそこまでしなくても、パソコン1台くらい世界のどこかに転がっているはずだろう」

鈴羽「さすがにそれはSERNを侮りすぎてるよ」

紅莉栖「たとえ有ったとしても岡部は入手することができない。絶対に」

倫子「……収束というやつか。ゆえに過去改変でのみ入手できる、と言いたいのだな」

フェイリス「なら、病院に居る方のスズニャンがIBN5100を持っているんじゃないかニャ?」


紅莉栖「幸高おじさま、何か聞いていませんか?」

幸高「残念ながら、教授とレトロPCの話題をしたことはなかったと思うよ」

倫子「ということは、妙齢鈴羽はIBN5100を入手できなかったのか?」

紅莉栖「そうとは限らないし、そもそも50代の阿万音さんは別世界線出身の別個体よ」

紅莉栖「こっちのスズちゃんが過去に跳んだ時点で世界線が変動する可能性がある。つまり、IBN5100が現在に届けられるという過去改変」

鈴羽「あたし自身には観測できないけど、レジェンドになら、ってわけ」

紅莉栖「リーディングシュタイナーね」

鈴羽「2036年時点だと、記憶は世界線間の自分との"情報伝達手段"かもしれないって説もSERNの研究者から出てるんだ」

紅莉栖「へぇ、そうなの。もしかして私の後輩が研究を続けたのかしら」

倫子「よし……! ならば善は急げだ。鈴羽には今すぐにでも1975年に跳んでもらおう」

紅莉栖「マシンのメンテが先ね。壊れていたんでしょう?」

鈴羽「うん……。8月9日の深夜、雷に打たれたみたい。中は水浸しだった」

倫子「というか、助手は直せるのか?」

紅莉栖「そもそも橋田にマシンの情報をリークしたのは私。"タイムマシンの母"に感謝しなさい」ドヤァ

鈴羽「こいつ……頭をライフルで撃ち抜きたい……っ!」


紅莉栖「……ねえ岡部。まゆりの、その、死んじゃうとこ。もう見たくないよね?」

倫子「……当たり前だ。たとえなかったことになるとしても、まゆりを救えなかったという事実だけはオレの脳内に忘れ得ぬ記憶として残り続けるからな」

紅莉栖「私ね、3周目として、こういうシナリオを考えてる」

フェイリス「クーニャン、完全にクラスの委員長さんニャ」

紅莉栖「まずタイムリープマシンが完成する直前にリープする。完成したと同時に最大跳躍である48時間をリープして、8月11日まで跳ぶ」

倫子「む……? だが、そこには"お前"は居ないんじゃないか?」

紅莉栖「私は居ないけど、将来の天才メカニックは居る」

鈴羽「……父さん」

紅莉栖「橋田の技術でできるだけ直しておいてもらう。そして"この私"が13日の14時から橋田と同時にマシンを修理する」

紅莉栖「3時間。早くて午後5時までには修理できるはずよ」

倫子「(綯がタイムリープしてくる前にはなんとかなりそうか……)」

鈴羽「すごい……」

紅莉栖「スズちゃんっ!! もっと私を褒めてぇっ!!」ダキッ

鈴羽「ぎぃやあああああああああああっ!!!!!! 離れろおおおおおおおおおっ!!!!!」ジタバタ

倫子「……長年の監禁生活でHENTAI度が天井を突き破っているな」ゾワワァ

フェイリス「身の危険を感じるニャ」


紅莉栖「それともう1つ気を付けて欲しいことがある」

倫子「盗聴器、だな。そんなものがラボにあるとは信じたくないが……」

鈴羽「盗聴器なんか無くても、ほとんど話は下に筒抜けだったけどね」

倫子「綯までがタイムマシンの仕組みを理解していたくらいだからな……」

紅莉栖「岡部、店長さんからもらったものでラボにあるものって何がある?」

倫子「そうだな……IBN5100を運んでもらったが、今は無いし。あ、テレビがそうだった」

鈴羽「テレビ? それって、あたしと一緒に運んだやつ?」

紅莉栖「なるほどね。さすがブラウン管工房」

倫子「だ、だが、テレビに盗聴器など愚の骨頂だろう。テレビをつけている間は、テレビの音声がうるさくて盗聴などできまい」

紅莉栖「あんたもさすがに重要な会議をする時はテレビ消してたでしょ?」

倫子「ぐ、たしかに……」

鈴羽「ってことは、これから機密事項を話す時はテレビをつけてれば大丈夫ってことだね」

倫子「わかった。覚えておこう」


鈴羽「それと、秋葉幸高、さん。1つ確認したいことがある」

幸高「なんですか、教授」

鈴羽「うっ……。えっと、"あたし"は12年間海外に居るんだよね?」

幸高「そうなりますね」

鈴羽「それじゃ……について、教授のあたしは何か言ってなかった?」ヒソヒソ

倫子「む?」

幸高「それは……2005年……青果店……」ヒソヒソ

鈴羽「あたしがどれだけ調べても……そういうことだね?」ヒソヒソ

幸高「ええ。この10年間……」ヒソヒソ

鈴羽「そっか、よかった……」

倫子「2人はなにをひそひそ話をしているんだ?」

フェイリス「こっちの話ニャーン♪」

鈴羽「あの、鳳凰院凶真。最後にさ、その、勇気をくれないかな……」モジモジ

倫子「あ、ああ。頼んだぞ。ラボメンナンバー008、阿万音鈴羽」ナデナデ

鈴羽「ふゎぁっ……///」

フェイリス「スズニャンずるーい! フェイリスもっ!」ピョン

倫子「なんでお前まですり寄ってくるんだ……仕方ないな」ナデナデ

フェイリス「ニャフフ~♪」ゴロゴロ

紅莉栖「さあ早くタイムリープしないとぉっ!! ラボに急ぐわよ岡部ぇっ!!」ガシッ

倫子「わ、ちょ、引っ張るなっ!! こける、こけるぅぅっ!! うわぁん!!」


――――――――――――――――――――――

2010年8月13日17時38分 → 2010年8月11日14時21分

――――――――――――――――――――――

2010年8月11日(水)13時41分
中央通り


鈴羽「(今日も父さんとデー……、秋葉原の街を探索できるかと思ったのに、父さんもバイトしてたんだね)」ハァ

鈴羽「(でも、あたしもラボメンかぁ……えへへ)」

天王寺「なにかいいことでもあったのか?」

鈴羽「まあね」ニヘラ

天王寺「そうかよ。俺はちょっと出てくる。暫く留守番してろ」

天王寺「サボんじゃねーぞ」

鈴羽「うぃーっす(サボろう)」

鈴羽「さて、自転車磨きでも……お、椎名まゆり!」

まゆり「スズさーん! トゥットゥルー♪」

鈴羽「トゥットゥルー。あれ、鳳凰院凶真と買い物に出てたんじゃなかったっけ?」

まゆり「えっとね、オカリンは眠っちゃったので、まゆしぃはフブキちゃん用のコスをラボに取りに来たのです」

鈴羽「寝ちゃったの? 外で?」

鈴羽「(さすがレジェンド……女傑は豪快じゃないとね!)」

2010年8月11日(水)14時21分
中央通り


鈴羽「(レジェンドはどの辺で寝てるのかな?)」キョロキョロ

鈴羽「(ラボメン……みんないいやつだなぁ)」

鈴羽「(ますますワルキューレの母体組織だってのが信じられなくなっちゃう)」


prrrr prrrr


鈴羽「(噂をすれば、レジェンドからっ!) うぃーっす!」ピッ

倫子『……バイト戦士か』

鈴羽「どったの? なんかちょっとテンション低くない?」

倫子『今お前と話すべきことはたくさんあるが、まず伝えないといけないことがある』



倫子『――お前のタイムマシンが壊れている』



鈴羽「……っ!?」

ラジ館8階


鈴羽「そんなっ!? まさか、昨日の雷雨で!?」

倫子「……触らない方がいい。火傷するぞ」

鈴羽「ど、どうして……そんな、一体、なにが……」ワナワナ

鈴羽「それより……君は、誰なんだ……"岡部倫子"……」

倫子「……質問が間違っているぞ、阿万音鈴羽」

倫子「"誰か"、じゃない。"いつか"、と聞け」

鈴羽「なにを……っ!?」

倫子「察しが良くて助かる」

倫子「そう。オレは……」

倫子「――タイムリーパーだ」




倫子「(ヤバイ、オレかっこよすぎるだろ……鈴羽、こいつ、完全にビビってるぞ、ククク……)」


未来ガジェット研究所


倫子「――ということなんだ」

鈴羽「…………」

ダル「まさかそんなことになってるなんて……ごめんな、鈴羽。未来ではもっとちゃんとしたマシンを作るお」

鈴羽「父さんが悪いんじゃないよ……」

倫子「(TVの音量を上げ、まゆり、ダル、紅莉栖、鈴羽の居る前で、タイムマシン修理計画について説明した)」

倫子「(無論、まゆりの死亡話と"タイムマシンの母"の話、そして未来の綯の話は避けたけどな)」

ダル「じゃ、さっそく見に行ってみるべき」

倫子「さすが父親。娘のピンチは放っておけないよな」

倫子「(やっぱりダルは良いやつだ)」

鈴羽「父さん……。その、ありがと」

ダル「オーキードーキー、鈴羽」ニッ

紅莉栖「橋田、あんた今最高に輝いてるわ……」


鈴羽「あっ。そう言えば、コレ、見覚えあったりする?」スッ

まゆり「ピンバッジ?」

倫子「『O、S、H、M、K、U、F、A 7010』……?」

鈴羽「これ、父さんの形見なんだよね」

ダル「ちょ、さりげなく爆弾発言」

倫子「ダルは2033年に死ぬらしい。それまでに積みゲーはやりつくしておけよ」

ダル「これはメディアミックスに手を出してる場合じゃなかったお!」

紅莉栖「軽っ!」

まゆり「でも、このバッジ、どういう意味だろうねー?」

倫子「たしかに……何かの暗号か? ダル、覚えは?」

ダル「わかんね。つかそれよりも今はタイムマシンだろ常考」

倫子「そうだな。オレたちはラジ館へ向かおう。紅莉栖、ダルのエロゲは後で貸してやるからラボでやるなよ?」

紅莉栖「え……な、なななな、なあああああああっ!?!?!?」

ラジ館8階


倫子「(まゆりはコス作り、紅莉栖はタイムリープマシン作りに専念させることにして、橋田家とオレはタイムマシンへと足を運んだ)」

倫子「どうだ?」

ダル「……この中、むちゃくちゃ暑い件について」

鈴羽「直りそう?」

ダル「いや、まだ確証はないけど。でもさ、ちょっと触ってみて思ったんだよね」

ダル「これって、なんか電話レンジと似てるかもって」

倫子「それは偶然ではない。なにせ"お前"が作ったのだからな」

ダル「いや作ってねーし」

倫子「2日で直せ」

ダル「うはー。過去最大級のオカリンのムチャ振り。つかなんで2日なん?」

倫子「そ、それは……。…………」ウルッ

鈴羽「っていうか、父さん。今日バイトあるんじゃなかったの?」アセッ

ダル「え? あ、ああ。ソッコーで片付けてきたから大丈夫なんだな、これが」

倫子「(鈴羽、うまく話を逸らしたな。まゆりの話は、できることならダルにはしたくない)」

鈴羽「ふぅん……ホントにバイトだったの?」ジトッ

ダル「まだ彼女も居ないのに浮気を疑われるとか、僕かわいそす……」


prrrr prrrr


ダル「あれ、牧瀬氏かな。はーい、もしも……」

ダル「ぐふぉっ!?!?」ヨロッ バタンッ

倫子「ダルっ!?」

鈴羽「父さんっ!?」


鈴羽「大丈夫!? もしかして、熱中症!?」

ダル「ぐっ……はぁ、はぁ。これは確かに、ヘビーだな……」

倫子「おいっ! 突然どうした……っ、まさか」

ダル「……おお、オカリン。8年ぶり」

倫子「もしや貴様も未来から……?」

ダル「うん。牧瀬氏には頭が上がらないね」ヨイショ



ダル「――そう、僕は2033年から来た」



倫子「やはり……っ!」

鈴羽「えっ? ど、どういうこと?」


ダル「タイムマシンを完成させる前に僕が殺されることはオカリンたちの情報からわかってたから、ギリギリまで粘って過去へリープしたんだ」

ダル「どのみちタイムマシンを完成させることは収束のせいで不可能だったみたいだしね」

倫子「だが、1周目と2周目では貴様はタイムリープしてこなかったぞ」

ダル「3周目のオカリンには、タイムマシンが壊れてるって知識があったでしょ? それが僕を過去へ来させる動機になった、でいいかな」

ダル「もちろん、タイムリープでは世界線は大幅に変動しないことはわかってる。でも、僕はじっとしていられなかった」

倫子「お前が今リープしてこなかったはずの、お前の中の記憶ではどうなっているのだ?」

ダル「たしか、未来の牧瀬氏が13日にやってきてマシンを直したんだ。それがちょっと悔しかったってのもある」

ダル「で、42歳の僕が存在するのは当然オカリンがタイムリープできなかった可能性の未来ってことだから、13日の夜にラボは襲撃された」

ダル「それでちょっとオカリン1人に任せるのは色々心配になってさ」

倫子「……なるほど、だいたいわかった」ガクッ

ダル「まさか雷程度でやられるなんてね」

ダル「娘を危険な目に遭わせたのが他でもない、僕だ、なんてのは、さすがに許せなかったんだよ」

鈴羽「父……さん……」ウルッ

ダル「もう何年振りかな。随分大きくなったね、鈴羽」

鈴羽「……泣かないよ。あたしは、戦士だから……」グスッ

ダル「ああ、ここで泣いてる場合じゃない。なんとかしないとな」ニコ


倫子「というか、ダルよ。なんか話し方おかしくないか?」

鈴羽「あたしの子どもの頃の記憶だと、これが普通の父さんのしゃべり方だけど」

ダル「いやぁ、若気の至りっつーか? 倫子たんがこっちの方がいいってんなら戻しちゃってもいいんだからねっ!」

倫子「倫子たん言うなぁ! ダンディな方で頼むっ!」

ダル「オーキードーキー」ニッ


倫子「それで、どうだ? "お前"から見たマシンの調子は」

ダル「……これなら半日で直せる。幸い、VGL<ヴァリアブルグラビティロック>が壊れたわけじゃないから、過去へ跳んだらちゃんとラジ館の屋上に出るようになってる」

鈴羽「ホントっ!」パァァ

ダル「落雷のせいで三カ所回路が焼き切れてるだけだな。えっと、僕これから買い物行ってくる」

倫子「パーツの買い出しならオレが行く」

ダル「いや、ちょっとこれオカリンだとわからないと思うから、僕が行くよ」

倫子「むぅ……そうか」

ダル「今日の深夜0時までにはフライト可能になると思う。それまで2人とも遊んできなよ」

鈴羽「全部父さんに押し付けるなんでできないよ」

ダル「そんなに人数いても作業できないし」

倫子「……わかった。オレが責任持って鈴羽の面倒を見よう。ほら、行くぞ」

鈴羽「え……う、うん。わかったよ……」

ダル「(ごめんな、鈴羽。僕は鈴羽にどんな顔して父親づらすればいいのかわからないんだ……)」



??「……フフフ」


ラジ館屋上


??「あれれぇ? おかしいですねぇ。どうして私の殺すべき人間がこの時代に居るんです?」

??「ご丁寧にリープマシンに時限爆弾をつけて足跡をたどれないようにしておくなんて。滑稽」

??「いやはや、それにしても日本の警察は優秀ですねぇ。2010年8月11日、ラジ館に侵入者ありと。報告ご苦労様です」

??「もちろんラウンダーが握りつぶさせてもらいますけどねぇ? 警察が出る幕じゃないんで」

??「親子そろって、とんだおバカさんですねぇ。しかも娘はFBの元でバイトをしてるなんて!」

??「あのハゲ親父、私より下のくせにいちいち文句言いやがって……メルアド寄越すくらい別にいいじゃないですか……」ブツブツ

??「後で仕返ししておきます。まあ、それはそれとして」



??「――私のユートピアは、誰にも壊させませんから」

未来ガジェット研究所


倫子「(まゆりには悪かったが、家でコス作りをするように命じておいた。従順に応じてくれたのは、鈴羽がそろそろタイムトラベルしなければならないことを悟ったからだろうか)」

倫子「とにかく、紅莉栖にはタイムリープマシンに専念してもらいたいというわけだ」

紅莉栖「襲撃……IBN5100……綯ちゃんのタイムリープ……なるほどね。それで、まゆりを救うためのキーアイテムがコレ、ってわけか」

倫子「13日の14時までに完成させてほしい」

紅莉栖「それじゃ、コレとコレとコレ、追加で買い出しお願い」

倫子「む? あのパーツは要らないのか?」

紅莉栖「えっ? 今のところ使う予定はないけど、もしかして後々必要になるの?」

倫子「なると思うぞ。12日の夕方、お前がオレに使いパシリさせたものだからな」

紅莉栖「じゃぁ、それもお願い」

倫子「うむ。では、行ってくる」ガチャ

紅莉栖「阿万音さんは……」

鈴羽「あ、コーヒーでも淹れようか?」

紅莉栖「ふふっ。サンクス。それじゃ、サポートよろしく」


鈴羽「……ねえ、牧瀬紅莉栖。君はさ、SERNに興味ある?」

紅莉栖「……今のところ、SERNは許せない。このラボを滅茶苦茶にする主犯でしょ?」

鈴羽「この時代に来てから君を見ていて……君がSERNの研究員になっているとは思えなくなった」

紅莉栖「でも未来ではそうなっていた。ねえ、もしかしてなんだけど――」

紅莉栖「私がSERNに潜入するのって、スパイ行為のためなんじゃない?」

鈴羽「それって、どういう……?」

紅莉栖「未来ではSERNがタイムマシン技術を独占するのよね? だったら、橋田はどうやってタイムマシンを作ったの?」

鈴羽「――っ!!」

紅莉栖「まだわからないけど、でも、私なら岡部のために、このラボのために人生をかけてスパイになれると思う」

鈴羽「どうして君はそこまでして……」

紅莉栖「確かに私はあいつと出会ってからまだ2週間も経ってない。でも、どうしてかな。私の人生のほとんどはあいつで満たされてるような気がするの」

紅莉栖「父が家を出て、途方に暮れていた私を導いてくれたような……」

鈴羽「……もしかして、君もリーディングシュタイナーを?」

紅莉栖「さあ。ともかく、岡部がかわいいから、でファイナルアンサー」

鈴羽「それは同意」


鈴羽「あたしね、牧瀬紅莉栖を24年後の未来で殺そうとしたんだ」

紅莉栖「…………」

鈴羽「その時の君は怪しく笑っていたよ。まるで自分を殺して見ろと言わんばかりに」

紅莉栖「それ、もしかして岡部の指示?」

鈴羽「ううん。レジェンドはあたしがワルキューレに入る前に死んでる」

鈴羽「今から15年後、SERNによって殺されるんだ」

紅莉栖「……聞かなきゃよかったかも」ウルウル

鈴羽「スキなの? 岡部倫子のことが」

紅莉栖「だって可愛いじゃないっ!! ホントはとっても美人なのに自分から残念系女子を演じてて厨二病全開でっ!!」

紅莉栖「倫子たんハァハァ!! 倫子たんハァハァ!!」

鈴羽「いや、それは同意するけど、一応同性だよね」

紅莉栖「悪いっ!? なにか文句あるのっ!?!?」キシャー

鈴羽「いえ、ないです」

柳林神社境内


鈴羽「――それでラボから逃げてきたってわけ。あたしが牧瀬紅莉栖のそばに居ると作業が進まないみたい」

るか「ふふっ。牧瀬さんもかわいい方ですね」

鈴羽「それに、一応お世話になったし、挨拶しとかないと、って思ってさ」

るか「いえ、そんな。こちらこそ父が御迷惑をおかけしまして……」

鈴羽「一宿一飯の恩、ってやつだからいいんだよ。コスプレ? もできて楽しかったし」

るか「それでしたら、ボクも阿万音さんと同じラボメンですから」

鈴羽「そうだった。ホント、鳳凰院凶真の求心力はすごいや」

るか「きゅ、きゅうしん……?」

るか「でも、本当に行ってしまわれるんですね。向こうで落ち着いたら、お手紙でもいただければと思います」

鈴羽「……うん。そうだね。何年かかっても、あたしは必ず帰ってくるよ」


??「あのー、すいません。少しお尋ねしたいことが」

鈴羽「おっと、女子高校生の参拝客さんかな」

るか「どうされました?」

??「この辺にニコライ堂があると伺ったのですが」

るか「あ、はい。それでしたら神田川を渡らずに御茶ノ水方面へ行けば、駿河台の坂の上にありますよ」

鈴羽「稲荷神社でキリスト教会の場所を尋ねるなんて、君って結構アレだね」

??「ふふっ。そうですね。でも、キリストの教えは素晴らしいですよ」

??「もし弱き者が危機にさらされてる場面に遭ったら、あなたならどうしますか?」

鈴羽「……え?」


??「世の中には大した理由も無く弱者を踏みにじる人がいます」

るか「あ、あの、境内での宗教勧誘はちょっと……」

鈴羽「そんなやつが居たら、あたしならタコ殴りにしてあげるよ」

??「でも、外国で起こった事件だったら? 既に起こった事件だったら? あるいは――」

??「未来で起こる事件だったら?」

鈴羽「……?」

??「そう。たとえどんなヒーローがいても弱き人すべては守れません」

??「必要なのは、管理なんです。全人類を平等に扱う、管理」

伽夜乃「私は伽夜乃と申します。以後お見知りおきを」ペコリ

伽夜乃「――"橋田鈴羽"さん」クルッ スタ スタ ……

るか「えっと……?」

鈴羽「なんだったんだ……?」


鈴羽「『最終チェックにもう少し時間が欲しい。 パパより』……ってことで、ごめん。漆原るか。もう一泊させて」

るか「はい、もちろんです。せっかくですから、お母さんに頼んでおいしいものを用意してもらいましょう」

鈴羽「あ、だったらあたし、カレーがいいな! 漆原家のカレーは極上だもんね!」

るか「お褒めに預かり光栄です。そう言えば、橋田さんは……」

鈴羽「……本当は父さんもゆっくり休ませてあげたいけど、あの調子だと梃子でも動かなそうだから」

るか「……そうですか」

栄輔「今日が最後だなんて、寂しいね。それで、阿万音さん用に草薙少佐コスを用意してみたんだが、お風呂上がりにでも着てみるといい」

るか「って、お父さんまでコスプレを!?」

鈴羽「っ!? そ、その恰好は、元FOXHOUND隊員……! 母さんが良く話してた、伝説の傭兵……」

栄輔「いや、僕もたまには自分で着てみようかなと思ってね」

栄輔「阿万音さんはこういうのが好きだと娘から聞いてたんだが、どうだい? 僕もまだまだいけるだろう?」

るか「もう、お父さん……」

2010年8月12日(木)7時10分
未来ガジェット研究所


ピピピ ピピピ

倫子「――SERNの襲撃かっ!?」

紅莉栖「グッモーニン。ホント、ぐっすり寝てたわね。どう? 疲れ取れた?」

倫子「あ、ああ。そうだった……何度もタイムリープして忘れていたが、精神的疲労だけは蓄積してるな……」

鈴羽「それで、レジェンドに見て欲しいものがあるんだ」トンッ


 【 0.33871 】


倫子「……ニキシー管か?」

鈴羽「これは世界線変動率<ダイバージェンス>メーター。今、あたしたちがいるこの世界線がどこなのかを数値で表すことができるんだよ」

鈴羽「あたしが元々いた2036年の世界線を0%とした数値だから、あくまで相対的なものなんだけどさ」

紅莉栖「つまり、"2010年の大分岐が2036年にすべて収束する"と置いた系において、ニュートン極限のミンコフスキー時空における時間軸方向に垂直な世界線の振幅を――」

倫子「や、やめろォ……」

紅莉栖「アインシュタイン好きが聞いて呆れるわね」プププ

倫子「というかこれ、なぜ小数点第6位がないんだ?」

鈴羽「へ? 元々小数点は5桁だったんだけど」

倫子「……いや、済まない。記憶違いだ」

倫子「(初めて見るコレに、ニキシー管が1本足りないような気がした。これはリーディングシュタイナーとは関係ないただの記憶違いだろう)」


紅莉栖「どういう仕組みなの?」

鈴羽「あたしにもわかんない。作ったのは11年後の鳳凰院凶真だよ」

倫子「オ、オレが? ……そうか、相対値ということは、リーディングシュタイナー所持者にしか意味が無い」

紅莉栖「これが意味しているのって、世界線ごとに異なる物理的情報がどこかにあって、それを検知してる、ってことよね? 温度計や気圧計みたいに」

倫子「だが、検知器には見えんな。ふーむ……」

鈴羽「ともかく、このメーターの数値が1%を超えた時、君はβ世界線にたどりついたことになる。そういう風に作られてる」

紅莉栖「1%……それはつまり、2036年の大収束から解き放たれる、ということね」

鈴羽「そう。1%を突破さえできたら……椎名まゆりは、助けられる」

鈴羽「これはレジェンドに返すよ。あたしが持ってても意味ないしね」

倫子「しかし、かっこいいなこれ……7万円くらいで売ったら売り切れ続出なんじゃないか……」


倫子「それじゃ、オレたちはダルの様子を見てくる。この調子だと、タイムマシンの中でチャーシューになってるかもしれないからな」

紅莉栖「オーケー。リープマシンは任せて」

倫子「オレはスーパーに寄って行くから、鈴羽は先にラジ館に行って父親を労わってやるといい」

鈴羽「オーキードーキー」



スーパー


倫子「やっぱり知的飲料ドクペこそ至高だからな。ダルにはドクペを買って行ってやろう」スッ

ピトッ

伽夜乃「あっ、すいません」スッ

倫子「いえ、こちらこそ済まなかった。先に手に触れたのはそちらだ、ラスイチのドクペは持っていくがいい」

伽夜乃「あっ……///」

伽夜乃「(な、な、な、なんという美女……っ!! 偶然とはいえ、手と手が触れてしまった……!!)」ドキドキ

伽夜乃「(葉月ごめん、お姉ちゃんは……っ!! お姉ちゃんはぁぁっ!!!)」ポーッ

倫子「む? どうした? 要らないのか?」

伽夜乃「は、はいぃっ! 差し上げますぅっ!」ビクッ!!

倫子「いや、いいんだ。よく考えたらダルにはダイエットコーラの方が良い気がしてきた」

倫子「それに、貴様も貴重なドクトルペッパリアンの同志に違いない。友好の証に受け取ってくれ」スッ

伽夜乃「ゆう……こう……」ポワワァ

倫子「さらばだ。達者でな」

伽夜乃「はぅぅっ……」クラクラ

裏通り


倫子「ここらでラボメンたちの進捗を確認してみるか」スッ


prrrr prrrr


倫子「オレだ。状況は」

ダル『……オカリンのその唐突な電話も懐かしいな』

倫子「っ、いちいちしんみりさせるようなことを言うなっ!」ウルッ

ダル『無人のラジ館で父と娘が汗まみれでくんずほぐれつ……はぁはぁ』

倫子「干からびて死ね」

ダル『ぐほぁっ!?』

鈴羽『父さんには一発お見舞いしておいたよ』

倫子「ご苦労」

鈴羽『この2人がレジスタンスの設立者なんだよね……なんだか実感沸かないなぁ』ハァ

倫子「……そう言えば、鈴羽は、オレがまゆりを救えない未来から来たんだよな」

鈴羽『そうだね。君は牧瀬紅莉栖を無理やり研究させるSERNを心底憎むことになるんだと思う』

倫子「まゆりを助けることもできず、のうのうと生き続けた挙げ句にテロリストとして活動するなど……下らんな」

鈴羽『世界に自由を取り戻そうとする、勇敢で立派な志だと思うけど』

倫子「オレはどんな女だった」

鈴羽『言わなかったっけ。君とは会ったことないよ。今から15年後にSERNに殺される』

倫子「なっ……」

鈴羽『未来ではみんなが不幸になる。だからあたしがIBN5100を届けるんだ』

ダル『鈴羽……』

倫子「……オレたちは、永遠に仲間だ。たとえ世界を違えてもな」

鈴羽『あはは。サンキュ』


prrrr prrrr


紅莉栖『はろー』

倫子「オレだ」

紅莉栖『鳳凰院ちゃんからの電話だけで今日も1日生きていける……はぁはぁ』

倫子「だからちゃん付けするなぁ! というか、徹夜明けで変なテンションになっているのではないか、栗悟飯とカメハメ波よ」

紅莉栖『どぅええぃっ!? ど、ど、ど、どうしてその名前をををっ!?!?』ガタガタッ

倫子「ふふふ……。オレがタイムリープする前、お前は涙ながらに告白したのだ。"私はねらーでニコ厨で、すぐ『幼女(*´Д`)ハァハァ』とレスしてスレを荒らす糞コテですが、それでも助手でいさせてくれますか?"となぁ!」

紅莉栖『っ……』

倫子「無論オレはこう答えた。"お前がねらーでニコ厨で、ラボに置いてあるエロゲで全力オナニーに興じる女だろうと、ラボメンであることには変わりはない」

倫子「これからもオレの助手でいてくれて構わない。だから涙拭けよ"と――」

紅莉栖『……ウソかホントか判別できない自分が情けないわ』

紅莉栖『そう言えば、丁度よかった。1つ確認したいことがあったんだけど』

倫子「なんだ?」

紅莉栖『タイムリープしてきたってことは、リフターの代替となるものは判明してるの?』

倫子「ああ、それだったら1階にある42型ブラウン管テレビだ」

紅莉栖『なるほど……わかった。岡部はこっちは手伝わなくていいから。何度も同じことやるのは苦痛でしょ?』

倫子「む……」

紅莉栖『今は阿万音さんと橋田の力になってあげて。それじゃ』


prrrr prrrr


まゆり『トゥットゥルー♪ まゆしぃです』

倫子「……元気か?」

倫子「(ついそんなことを聞いてしまった。いや、まだまゆりは大丈夫なはずなんだ)」

まゆり『んー? まゆしぃはいつでも元気だよー♪ へんなオカリン』

倫子「そうか、それはよかった。ルカ子のコス作りは順調か?」

まゆり『フブキちゃんとカエデちゃんの分はできたよー。るかちゃんのは、説得できなかったから今回は諦めたの』

倫子「(そうか。そう言えばオレが解散させてしまったから、ルカ子の説得……あれを説得と呼ぶかどうかは別だが……はできなかったんだな)」

まゆり『あ、でもね、ダルくんのお仕事がひと段落したらまゆしぃにも連絡してね』

倫子「……オレが池袋まで迎えに行くよ」

まゆり『えぇー? どうしたのオカリン? なんだかまゆしぃ、お姫様みたいだねぇ。えへへ』

倫子「いいだろ別に。お前はオレの人質なのだから、しのごの言うなっ」ピッ

倫子「先にダルに飲み物を届けよう。その後まゆりを迎えに行くか」

ラジ館屋上


倫子「あっつ……。ほら、ダル。ダイエットコーラだ」

ダル「さすがオカリン。僕の飲みたいモノ、解ってくれてるね」

倫子「それで、どうなのだ?」

ダル「やれることはやった。起動実験だけは目立つからできなかったけどね」

鈴羽「作戦会議も十分し尽した。MTBも積み込んだよ」

鈴羽「あとはオペレーションを開始するだけ」

倫子「……そうか」

鈴羽「もしかして、寂しい?」

倫子「ふんっ。オレは狂気のマッドサイエンティスト、仲間の犠牲など厭わないのだっ!」

倫子「……紅莉栖とまゆりを呼ぼう。本当は宴会を開きたいところだが、オレの完璧なオペレーション開始宣言だけでも聞かせてやらねばな」フンッ

鈴羽「ふふっ。レジェンドがどういう人かわかって良かったよ」

鈴羽「この時代に来ることができて、君たちと同じ時間を過ごせて、あたし、ホントに楽しかった」

鈴羽「2036年はさ、とっても平和で、喧嘩すら起きないんだ」

鈴羽「おおよそ争いって名のつくものは、ミクロなものからマクロなものまで、ぜーんぶ消えちゃった」

鈴羽「その代わり、みんな死んだ魚の目をしてた……でも、未来ガジェット研究所は、みんな生き生きしてて、すごく眩しかった」

倫子「……もし、向こうで寂しくなったらうちを訪ねるといい」

鈴羽「えっ?」


倫子「お前はこれから1975年へ行き、孤独と闘うことになるだろう。そこにラボメンは誰もいない――」

倫子「が、池袋の岡部青果店は、たしか築40年は超えているから、オレの親父がそこに居るはずだ」

倫子「そして1991年12月14日になればオレが生まれる。16年と半年、とても長い時間だが、だがっ!」

倫子「……オレはそこに居る。それは確定しているんだ」

鈴羽「……うん。わかってる。あたしが行くのは知らない街なんかじゃない」

鈴羽「今居るこの地平に繋がっているんだってこと、確信してる」

ダル「そうだ、鈴羽。オカリン。たしか、ピンバッジがあるよね?」

鈴羽「え? ああ、持ってるよ。ほら」

ダル「これ、ラボメンバッジって言って、ラボメンの証として作ったんだよね。僕が発案してさ」

倫子「なんと、そうだったのか」

ダル「鈴羽はそれを僕の形見だと思ってるみたいだけど、それは鈴羽のラボメンバッジなんだ」

鈴羽「あたしの……」

ダル「それを持ってれば、僕たちは時間を超えて、世界線を超えて繋がってるってことを覚えていられるはずだ」

鈴羽「……うん」

倫子「ダルにしては素敵なことをするじゃないか。さすが、俺の頼れる右腕<マイフェイバリットライトアーム>……」


prrrr prrrr


鈴羽「ん? あたしにメールだ。誰だろう?」

倫子「知らないアドレスか? それなら萌郁の可能性があるが……」

鈴羽「……っ!?!?!? ど、どういうことっ!?」

ダル「鈴羽、どうした!?」

鈴羽「こ、これ……これぇっ!?」



To skyclad2010@egweb.ne.jp
From hazukiLove@hardbank.ne.jp
天王寺綯は預かった
返して欲しくば以下の場
所まで来られたし
▼添付ファイル有



倫子「この写真は……綯っ!! 拘束されてっ!?」

ダル「この場所、廃工場だ……いつか鈴羽が綯ちゃん氏を拉致、じゃなかった、"かくれんぼ"してた時の……」

鈴羽「まさか……ラウンダーっ!!」

廃工場


鈴羽「レジェンド、本当に大丈夫……?」

倫子「ななな、なにを言っているぅ! 綯の一大事だぞぉ!」ガタガタ

倫子「それに、仮になにかあってもオレが記憶しておけばタイムリープでなんとかなる!」ブルブル

倫子「こ、このオレ、鳳凰院凶真に全て任せれば安心だなっ! ふ、ふぅは、はは、は……」ワナワナ

鈴羽「父さんはマシンを見張る必要があるから一緒に来れなかったけど……不安だなぁ。後ろに隠れててね?」

倫子「オレに隠れていろ、だとぉ? 寝言は寝て言うのだなぁ」ガクガク

鈴羽「お願いだから無理して見栄を張ろうとしないでよおっ!」

コツ コツ コツ ……

伽夜乃「いらっしゃい、鈴羽さん。さぁ後悔と懺悔の時間です」

倫子「ヒィッ!」サッ

鈴羽「き、君は、いつかのキリスト教の!」

伽夜乃「それだけじゃないんですよぉ? このお面に見覚えは?」スッ

鈴羽「それは……母さんを殺した女の……っ!!」

伽夜乃「それ、私です」ニタァ

鈴羽「……貴様ァァァァァアアアアアッ!!!!!」ダッ


伽夜乃「おっと、この子がどうなっても?」

綯「――――っ!」

鈴羽「ぐっ!!!!」

伽夜乃「私のミッションは2つです」

伽夜乃「1つは、2010年へと逃亡したと思われる橋田至の暗殺」

鈴羽「っ!?」

伽夜乃「おかしいんですよねぇ。リーディングシュタイナー保持者の情報によれば、2033年に橋田至は前任者によって殺されていたはずなんですよ」

鈴羽「なん……だって……」

伽夜乃「なのに私にその記憶は無い。そして、2010年8月11日の警察記録から橋田至の逃亡先が判明」

伽夜乃「その後始末をしに来た、というわけですよ。牧瀬博士のタイムマシンに乗って」

鈴羽「おま―――」

伽夜乃「2つ目。"ワルキューレ"最後の1人を抹殺すること」

鈴羽「最後の1人……? ま、まさか、そんな……」ワナワナ

伽夜乃「そう。ワルキューレは壊滅したんです。世界に平和が戻ったんですよぉ!」


鈴羽「何を言っているっ! 平和を壊しているのはSERNじゃないか!」

伽夜乃「ワルキューレはテロリストです。私の大事な家族を危険に陥れる忌むべき存在です」

伽夜乃「事実、SERNが世界を平定してから2年で争いは消滅しました。私も、私の妹も、もう暴力に虐げられる必要は無くなったんですよ」

鈴羽「そ、それは作られた平和だ! 偽りの世界だ!」

伽夜乃「争いも貧困も無く、本来失われていたはずの無数の命が救われた。虐待を受けていた子どもは1人残らず家族の元で平和に暮らしている」

伽夜乃「ワルキューレは、彼らへの大量虐殺を行おうとしているに等しい、死に値する大罪人なのです!」

鈴羽「ち……違う……そ、そんなことは……」ワナワナ




倫子「しっかりしろっ!! ジョン・タイターッ!!」


倫子「ワルキューレの戦士ともあろうものが、何を舌戦で押し負けているのだっ!」

鈴羽「鳳凰院凶真っ! ご、ごめんなさい、あたし……」

伽夜乃「ほ、鳳凰院凶真っ!? 前任者がとどめを刺したと聞いているのに……そうか、この時代の方の、か」

伽夜乃「こんなところでワルキューレ創設者様にお会いできるなんて光栄です。暗がりでお顔が良く見えないので、どうぞこちらへ」

倫子「言われんでも行ってやるっ。貴様には、地獄へ堕ちても償い切れぬ罪があるようだなっ」

倫子「このオレ、狂気のマッドサイエンティスト鳳凰院凶真が直々に断罪してやる……覚悟しろっ!!」ギロッ

伽夜乃「ほう、さすが鳳凰院凶真。良い目をして……って、あれ……あなた、もしかして……」

伽夜乃「ドクペの女神様ぁーーーーーっ!?!?!?!?」




倫子「……は?」


伽夜乃「なんでっ!? どうしてドクペの女神様が鳳凰院凶真なのぉっ!?」

倫子「こっちがなんでだ! ドクトルペッパリアンに悪人は居ないと信じていたのに……」グッ

伽夜乃「わ、私は悪人ではありませんっ! SERNの平和を守るためにっ!」

倫子「ん……、お前、その目……、過去に何かあったのか……」

伽夜乃「べ、別に両親からネグレクトされて学校でもいじめられて児童養護施設に預けられた生活で唯一の希望だった妹の葉月が叔父さんに強姦されて廃人になったとかそういうことはありませんからっ!」

鈴羽「一文で説明される取ってつけたような設定……」

倫子「1つ訊きたい、伽夜乃」

伽夜乃「は、はいぃっ! 鳳凰院様ぁっ!」

鈴羽「一応SERNにもレジェンドの伝説は伝わってるみたいだね」

倫子「(ダルめ、余計なことをっ!)」

倫子「お前の妹の葉月とやら、今はどうしているのだ」

伽夜乃「えっ……」

倫子「お前が側に寄り添ってやらずして、誰が守っているのだ」

伽夜乃「……あ、あああ……」

倫子「伽夜乃、お前の戦いはここに無い」ダキッ

伽夜乃「(なんて温かい手……)」ポロポロ

鈴羽「……むぅ」

倫子「戻れるなら今すぐ戻れ。お前の居るべき時代へ」

伽夜乃「すっ、すっ、すっ……」


伽夜乃「すいませんでしたぁぁぁぁあああああっ!!!!!」ズサーッ

倫子「垂直降下土下座……なんなんだこいつ……」

鈴羽「……取りあえずこいつ縛っておくよ。綯、もう大丈夫だからね」

綯「お姉ちゃん、ありがとう。なんかね、この人変だよ」

鈴羽「うん。知ってる」

鈴羽「レジェンド、後はあたしにこいつを殺させて」

倫子「ダメだ。お前を人殺しにするわけにはいかん」

鈴羽「はぁっ!? 母さんの仇なんだよ!? それに、あたしはもうたくさん人を殺してるっ!」

倫子「それでもダメだ」

伽夜乃「……ラウンダーでタイムトラベラーとなる者は使い捨ての殉教者。任務に失敗した私はすぐにでも消滅しなければならない」

伽夜乃「だから……殺したいなら、殺せばいい」

倫子「では、貴様には死よりも重い罰を与えてやろう」

伽夜乃「ひ、ひぃ……」


倫子「この世界線で生を受ける"貴様"をワルキューレの傘下に置く。姉妹ともどもな」

伽夜乃「っ!?」

鈴羽「ちょ、ちょっとレジェンド!?」

倫子「"貴様"の生まれは2018年頃だろう。このオレが直々に親元から引きはがし、ワルキューレの戦士として調教してやる。覚悟していろ」

伽夜乃「こんな"私"に、そんな素敵な人生を与えてくださるなんて……ああ、神よ……」

倫子「そして貴様はラウンダーをやめろ。未来へ帰れないというのならラボに来い。オレの下僕として死ぬまでこき使ってやる」

鈴羽「なっ!?」

伽夜乃「ほ、鳳凰院さまぁ……」ポーッ

綯「……よくわからないけど、私もこの人のこと、許せない」ギッ

綯「鈴羽お姉ちゃんのお母さんがかわいそうだよ……」

鈴羽「綯……」


綯「いいか! お前は地を這う虫ケラだ! 地球上で最下等の生命体だ!」

鈴羽「綯っ!?」

綯「葉っぱの上で縮んだり伸びたりするくらいの価値しかない!」

倫子「……ん!?」

伽夜乃「あ、あの、この子どうしちゃったの……?」

綯「勝手にしゃべるな! 尺取り虫さんは、"はい"か"いいえ"で答えるんだ!」

綯「それと、答える時には頭とおしりに"鳳凰院様"とつけろ! わかったか!」

伽夜乃「鳳凰院様っ! はい! 鳳凰院様っ!」

倫子「やめろォ!」

綯「それで、貴様はラウンダーをやめるんだな!?」

伽夜乃「鳳凰院様っ! はい! 鳳凰院様っ!」

鈴羽「なにこれ……」


倫子「綯、1人で帰れるな?」

綯「うん。今日のことはお父さんには言いません」

鈴羽「できた子だなぁ、綯は」

倫子「それで、お前のタイムマシン貸せよ」

伽夜乃「あ、いえ、あれは生体認証式なので、鈴羽さんを1975年に送るとなると、私も乗り込まないといけないのです」

鈴羽「死んでもやだよ」

伽夜乃「ですよね、あはは……」

伽夜乃「それに私のマシンは常にSERNにトレースされてますので、変な動きをすればすぐに第二第三の刺客がやってきます」

倫子「1975年から直接IBN5100を2010年へと物理的タイムトラベルさせることは無理か……」

鈴羽「……ちょっと待って。ってことは、あたしが1975年に行ってIBN5100を確保しようとすることは、SERNに筒抜けなの?」

伽夜乃「もちろんそうですよ。昨日ラジ館に侵入したことが運の尽きでしたね」

伽夜乃「警察記録から阿万音鈴羽が2010年8月11日に秋葉原に居ることが判明。そこからは現地のラウンダーと未来のSERNの連携で未来ガジェット研究所から情報を引き出すことに成功」

伽夜乃「鈴羽さんの作戦、オペレーション・ブリュンヒルデの概要と同時に橋田至のタイムリープ先も判明しちゃうわけです」

倫子「(盗聴か、あるいは直接聞き出したのか……)」

伽夜乃「仮に鈴羽さんが1975年から暮らし始めても、各時代のエージェントが鈴羽さんを狙いにくるでしょう」

倫子「(そうか、それで今海外に居る妙齢鈴羽はIBN5100をオレの元へ届けることができなかった、と……)」

倫子「なんとかしろ、伽夜乃」

伽夜乃「そう言われましても……」

鈴羽「思ったんだけど、Dメールであたしを8月9日深夜の雷雨より前に跳ぶようにしてもらうのはどうかな」

鈴羽「そしたらマシンも壊れてないし、SERNに作戦がバレることもない」

倫子「だが、ダルがお前の父親だと判明するのは10日だったはずだ。その記憶がなくなってしまうぞ?」

鈴羽「……そんなの、構わないよ」

倫子「ふむ……」


倫子「伽夜乃は鈴羽を暗殺するようSERNに言われてるんだろ? なら一緒に1975年へ行って鈴羽を守ってやれ」

倫子「そうすればSERNも未来から追加のエージェントを寄越さないだろう」

伽夜乃「つまり、二重スパイ、ということですね」

鈴羽「なんで母さんの仇なんかに……ブツブツ……」

伽夜乃「ただ、それでも私の力でなんとかできるのは、Dメールが物理的に送信可能になってしまう1980年代後半まででしょう」

倫子「日本に電波局が建ち始める頃、か」

伽夜乃「現地のラウンダーを直接未来から操作できる時代に突入してしまうと、さすがに私1人ではどうしようもないかと」

鈴羽「その頃になれば秋葉幸高の力も借りれるかもしれない。だからあたしに伽夜乃の力は要らないよ」

倫子「そうは言ってもだな……」


倫子「わからんっ! わからんが、時間を支配できる限り、ベストを模索することは可能なはずだ……」

倫子「取りあえず鈴羽、すぐに1975年へ跳べ。またSERNがおかしなことをしないうちにな」

鈴羽「オーキードーキー」

倫子「伽夜乃は言った通り二重スパイをしろ。鈴羽は嫌がるだろうが、陰から支えてやってほしい」

伽夜乃「この世界線の葉月が幸せになるなら……仰せのままに」

鈴羽「……っ」ムスッ

倫子「2人のタイムトラベラーを過去に送って世界線が変わらなかった場合、鈴羽の提案通りオレはDメールを送る」

鈴羽「その場合、あたしは緋袴……えっと、柳林神社の巫女服でタイムトラベルすることになると思うけど、それで問題ないと思う」

倫子「よしっ! では、作戦開始だっ!」

ラジ館屋上


ダル「ラウンダーまで手籠めにするとか、オカリンどんだけ人望あるんだよ……」

倫子「貴様の伝説の捏造のせいだがなっ!」

伽夜乃「持ってきました、これが私のタイムマシンです」

ダル「ほぅ、局所場指定が自在とか、さすが世界の研究者を独占しただけはあるな」

倫子「やっぱりシボルエか! このデザインにしたのは助手だろうな……ニクいことを……」

伽夜乃「カー・ブラックホールのトレースも可能なので、鈴羽さんのタイムマシンが到着する世界線と同一のダイバージェンスに到着できます」

倫子「まゆりと助手には悪いが、もう時間が無い。既にフランスから特殊部隊が日本へと入国している頃合いだ」

倫子「鈴羽っ! 準備はいいかっ!」

鈴羽『オーキードーキー! それじゃ、行くよ!』

鈴羽『35年後……じゃなかった、数時間後に、また会おうね!』

倫子「……ああ! がんばれよぉっ!」

ダル「がんばれぇっ! 鈴羽、がんばれよぉぉぉっ!!」ポロポロ



From ジョン・タイター
Sub ありがと
さよなら


キィィィィィィィィン……


倫子「くっ、まぶしいっ……!! 目が、眩む……っ!!」


倫子「……行ったか。伽夜乃のマシンも消えている」

ダル「それで、オカリン。リーディングシュタイナーは発動した?」

倫子「空間がゆがんだのを感じたが、自信が無いな……ラボへ戻ってメーターを確認してみよう」

ダル「オーキードーキー!」



未来ガジェット研究所



紅莉栖「えっ? もう阿万音さん行っちゃったの?」

倫子「済まない、時間が無かったんだ。それで、メーターは……」


 【 0.33871 】


倫子「変わっていない、か……」

ダル「だけど、過去に事象が増えたのは間違いない。メーターで検知できないレベルで世界線は変動したはず」

ダル「だから、仮に初老の女性がこのラボを訪れるとしたら、それは間違いなくオカリンの記憶と全くの同一人物のはずだ」


コンコン


倫子「す、鈴羽かっ!?」


ガチャ……




「おっはー」




倫子「す、鈴羽っ!!」

ダル「おぉ……」

紅莉栖「あ、あなた、阿万音さんなの!?」

鈴羽「もうおばさんになっちゃったけどね」

幸高「教授、日本に帰ってきているなら連絡をしておいてくださいよ」

鈴羽「いやあ、若かりしあたしを乗せたタイムマシンが消えてからじゃないと絵にならないだろうと思ってさ、秋葉原で待機してたんだよ」

倫子「余計な演出を……。ということは、1周目や2周目の時も待機していたのか……?」

フェイリス「えっと……お姉さんが言う、『あたしは阿万音鈴羽だった』ってのは、ホントだったニャン?」

鈴羽「だからそう言ってただろう? キミの瞳でも見抜けなかったのは、レジスタンス時代に取った杵柄だなぁ」

鈴羽「……みんなに言わないといけないことがある」

倫子「……ゴクリ」

ダル「……」

紅莉栖「……」

鈴羽「あたしは……」



鈴羽「――失敗した」




1975年に無事到着したあたしと伽夜乃は色々あったけど、数か月後には共同生活をするようになった。

母さんの仇とは言っても、同じ2036年の話ができる同士ってのと、レジェンドの話で1日盛り上がれる同志ってのは大きかったよ。

マシンを分解して手に入れた現金でIBN5100を複数台手に入れた。信頼できる人を伝って、2010年の秋葉原に届くようにしていたつもりだった。

だけど、やっぱりSERNの力は強大だったんだ。

あたしが日本中に隠していたIBN5100は、あの手この手で回収されていくことになった。

最後のIBN5100は伽夜乃が持っていたんだけどね。

伽夜乃が居てくれたからあたしは、病状が悪くなり始めた1998年頃に秋葉幸高のススメで日本を出て、海外の病院に行くことができたんだけど……

2001年にはもうあたしの手の届くところにIBN5100は無くなってしまった。

伽夜乃が殺されたんだ。ラウンダーの手によって。

それからのあたしは、君たちにこの失敗の報告をするためだけに命を長らえさせてきたんだ。

本当に、ごめん。

ごめんね。

あたしの人生は、無意味だった―――



ダル「そんなことない。そんなことはないんだ、鈴羽」ダキッ

鈴羽「父さん……グスッ……」ギュッ

ダル「鈴羽がその情報を、長い時間をかけて手に入れてくれたことで、オカリンが次につなげることができるんだ」

倫子「ああ。お前の記憶を、お前の歴史を、お前の人生を……っ、1秒たりとも無駄にしてやるものかっ」

鈴羽「うん……うん……」

紅莉栖「残された選択はあと1つね」

倫子「過去のオレにDメールを送り、8月9日の夜に1975年へと向かう鈴羽を呼び止めないようにする」

倫子「――Dメールを、打ち消す」

鈴羽「ありがとう……鳳凰院凶真……」

鈴羽「お願い、あたしを消して……」

ダル「僕からも頼むよ、オカリン。たとえそうなったとしても、僕たちが親子であることには変わりないから」

紅莉栖「……そうね。たとえそうなったとしても、私たちがラボメンであることには変わりないはずよ」

倫子「鈴羽の生きた証は……、オレたちの絆はっ!」

倫子「決してっ! 決してオレは忘れないっ!」

倫子「たとえ世界中の誰もが忘却してしまったとしても、オレだけはっ!」

倫子「絶対に、覚えているからなっ!!」





To 電話レンジ(仮)
Sub
尾行は中止だ前のメー
ルはSERNの罠




―――――――――――――――――――
    0.33871 → 0.40931
―――――――――――――――――――

第6.5章 幽明異境のオブリガーダ♀


2010年8月12日(木)16時27分
未来ガジェット研究所


倫子「ぐっ……!!」

倫子「(この立ちくらみは、リーディングシュタイナーっ!)」

倫子「(ということは、鈴羽はIBN5100の確保に成功した……っ!?)」

倫子「(仮にそうだとしたらラボにIBN5100があるはず……)」キョロキョロ

ダル「それじゃ、綯様。準備はいい?」

綯「は、はい」

倫子「……綯? どうして綯がここにいるのだ? そして何故助手がいない?」

ダル「は? オカリンどうしたん急に」

ダル「Dメール実験をやるって綯様と約束したんしょ? それで牧瀬氏は反対するだろうからってこっそりやろうって」 

倫子「へ……? な、なんのことだ?」



―――――

  綯『――だから、お父さんのためにも、お母さんを生き返らせてほしいんですっ!』


  『任務を遂行し ろ。でなけれ ば綴が死ぬ!』


  綯『――メールは2000年の5月18日に送ってください。うちのお仏壇にいる、もう1人の人の命日なんですけど』

―――――


倫子「……すまん、思い出した。確かにそんな約束をしていたな」

倫子「(何をそんな悠長なことをしているのだ、と思ったが、世界線が切り替わったという事はまだ未来から紅莉栖が来ていない0周目に戻った、ということだ)」

倫子「(ダルも未来からタイムリープしてこない。タイムマシンを修理する必要が無いからな)」

倫子「(部屋を見渡したがダイバージェンスメーターは無い。まあ、当然か)」

倫子「(それよりもさっき別れたばかりの54歳の鈴羽は今どこで何をしているのか……)」

ダル「でも綯様。どうして2000年5月18日に送るん?」

綯「お父さんが、その日の事をたまに独りでつぶやいているんです」

倫子「って、たしか誰かの命日だったんじゃないのか?」

綯「あ、はい。そうです。橋田さん、という人なんですけど」

倫子「橋田……って、ダルと同じ苗字?」

倫子「(何かが頭に引っかかる……くそ、記憶が混乱しているのか……)」ズキズキ

ダル「ほいじゃ、放電現象が起きたら送信ボタンを押してね」ピッ

倫子「あっ! バカ、ダル! 実験は中止だっ!」

ダル「へ? さっきまでめっちゃノリノリだったじゃん」

倫子「この一瞬で状況が180度変わったのだっ! とにかく、マシンを止め――」


バチバチバチバチッ……


綯「え、えっと、これ、押すんですよね」

倫子「ま、待てっ! 早まるな、やめろ、綯――――」


ピッ



―――――――――――――――――――
    0.40931 → 0.00312
―――――――――――――――――――

柳林神社


倫子「ぐぅっ……っ!! かはっ、はぁ……はぁ……」ヨロッ

るか「だ、大丈夫ですか!? 凶真さんっ!!」オロオロ

倫子「あ、ああ……大丈夫だ、オレの右腕に宿りし魑魅魍魎は鎮まったようだ……」

るか「よかったです……」ウルウル

倫子「……ここは柳林神社か。まさか、立て続けに世界線が変わってしまうとはな」

倫子「今は8月12日。明日になれば未来から紅莉栖がやってくるが、夜にはラボが襲撃される」

倫子「とにかくIBN5100だ。ラボにあるか、鈴羽が持っているか……あるいは、柳林神社に?」

倫子「なあ、ルカ子。この神社にレトロPCが奉納されている事実はあるか?」

るか「えっ? あ、はい、お父さんに確認してきますっ」タッ

・・・

るか「……どうやら、そのようなものはお預かりしていないみたいです。お力になれずすいません……」

倫子「いや、いいんだ。想定の範囲内だ」

倫子「それじゃ、世話になったな。そうそう、まゆりのコスプレ押しが迷惑ならちゃんと言えよ?」

るか「え? は、はい。それでは、また」

倫子「さて、取りあえずはラボだ。そこにIBN5100があれば、ダルに頼んでクラッキングだっ」タッ

裏路地


倫子「(オレたちのラボは妻恋坂交差点の手前の路地を1つ左に折れたところにある)」

倫子「(大檜山ビル2階。ブラウン管工房とかいうアナクロな店の真上を借りている)」

倫子「(オレは今年の3月から通い慣れた足でそこへ向かったはずなのだが……)」

倫子「おかしいな、道を間違えたか?」

倫子「(――いくら探しても大檜山ビルが見当たらない)」

倫子「……いや、そろそろ現実逃避はよそう。間違いなく、ここに大檜山ビルは"あった"」

倫子「(しかし、オレの記憶とは異なり、目の前には現代的な賃貸マンションが建っている)」



倫子「ラボが……消えた……」



柳林神社


るか「あれ、おか、凶真さん。戻ってらっしゃったんですか……凶真さんっ!? 大丈夫ですかっ!?」

倫子「あぅ……あぁ……」ヨロヨロ

るか「しっかりしてくださいっ! どうしちゃったんですかぁ!」ウルウル

倫子「ルカ子……お前、ラボを知らないか……」

るか「ラ、ラボ、ですか? たしか、まゆりちゃんが今日明日はバイトをお休みしてラボに居るって言ってましたけど……」

倫子「……なに? ラボは、あるのか?」

るか「は、はい。えっと……?」

倫子「どこにだぁっ!? 大檜山ビルは無かったのだぞぉ!? あのマンションの一室かぁ!?」ワナワナ

るか「え、ええっと、どういうことでしょう……」

倫子「今すぐラボまで案内してくれっ! 頼む、ルカ子っ!」ヒシッ

るか「は、はいっ! わかりましたっ!」ドキッ

都道452号線沿い


倫子「ここは……」

るか「ここ、ですよね? おか……、凶真さんのラボ」

倫子「メイクイーン+ニャン2の入っているビルの隣……」

倫子「その1階には自転車屋が入っていて、バイト戦士がBianchiのMTBを買ったであろう場所……」

倫子「立地としては、かつてのラボの真裏のビルだ。裏通りではなく、表通りに面してはいるが……」

るか「はい。自転車屋さんの2階のテナントがラボですよね。たしか、フェイリスさんが大家さんだとか」

倫子「ラボはミスターブラウンではなくフェイリスのテナントビルへと移動したのか……」

るか「それじゃ、中に入りましょう。まゆりちゃんが居るはずですよ」

倫子「お、おう……」プルプル

未来ガジェット研究所?


まゆり「あ、オカリンにるかくん! トゥットゥルー♪」

るか「まゆりちゃん、お邪魔します」

倫子「不思議だ……。初めて来た場所なのに、内装は実に馴染んだ佇まい……」

倫子「ガジェットも、ソファーも、ダルの積みゲーもそのままだ。まるで未視感<ジャメビュ>……」

まゆり「オカリン、どうしたの?」

るか「なんだか凶真さん、今日は1日ぼーっとしているみたいで……」

倫子「まゆりが居る……グスッ……」

まゆり「オ、オカリン? だいじょうぶ? どこか痛いの?」

倫子「まゆりぃ……ふぇぇ……」ヒシッ

まゆり「もう、オカリンどうしちゃったのかな? よしよし♪」ナデナデ

倫子「ご、ごほん。今のは忘れろ」

まゆり「はーい」ニコニコ

るか「はい」ウフフ

倫子「ところで、さっきまゆりはルカ子のことを『るかくん』と呼んでいたが、『るかちゃん』とは呼ばないのか?」

まゆり「んー? るかくんが女の子だったらそう呼んでたかも♪」

るか「ま、まゆりちゃん! ボクは男だよぅ」アセッ

倫子「……ダルはどうした? マシンの開発をサボって何をやっているのだ」

まゆり「ダルくん? 今はフェリスちゃんのところに行ってるんじゃないかなー」

倫子「(さっきはスルーしたが、メイクイーンが復活していたということは、そういうことなんだろうな……)」

倫子「メールでここに呼びよせるか。それで、助手は?」

まゆり「クリスちゃん? クリスちゃんならもう帰っちゃったでしょ?」

倫子「む? 帰ったって、ホテルにか?」

まゆり「違うよー。そうじゃなくて、おうちに、だよ」

倫子「おうち?」

るか「あの、凶真さん? 3日前、一緒に成田までお見送りに行きましたよね?」

倫子「成田? いや、あいつの実家は青森で……って、まさか……」




まゆり「クリスちゃんはね、アメリカに帰っちゃったんだよー」


prrrr prrrr


紅莉栖『今何時だと……』

倫子「紅莉栖っ!? 紅莉栖なのかっ!?」

紅莉栖『なんだ、夢か。私の倫子ちゃんが夜中にラブコールしてくるわけがない』

倫子「夢じゃないっ! 寝ぼけてるのかぁっ!?」ウルウル

紅莉栖『え、だって、私の名前をまともに呼んでくれるなんて……』

倫子「なあ!? どうしてアメリカへ帰ったぁ!? お前はラボメンナンバー004だろぉ!?」

紅莉栖『……岡部にそう言ってもらえて心から嬉しい。でも、私が岡部のラボに居るべき意味を見つけられなかったから、ね』

倫子「……どういう意味だ。タイムマシンの研究こそお前のアイデンティティだと言っていたではないか」

紅莉栖『確かに最初の……Dメール? 橋田のケータイへ5日前に送られてるメールには興味があった』

紅莉栖『だけどそれっきりで、研究と呼べるようなことはできなかったでしょ』

紅莉栖『倫子ちゃんと離れなきゃいけないのは寂しかったけど、元々アメリカに帰る予定だったし……』

倫子「り、倫子ちゃん言うなぁっ!」

倫子「(そう言えばこいつ、元々アメリカへ帰る予定だったのを、電話レンジ(仮)やタイムリープマシンの研究のために日本に残ってくれていたのだったな……)」

倫子「だ、だが、青森へ一緒に行くという約束はどうしたんだ!?」

紅莉栖『へ? そんな約束したっけ……』

倫子「…………」ピッ

倫子「(これは……とんでもない規模で世界線が変わっている……)」ワナワナ


倫子「電話レンジ(仮)っ! 電話レンジ(仮)はどこだぁっ!」ダッ

まゆり「開発室にあるよ? から揚げ食べる?」

倫子「から揚げ……だと? 電子レンジとしても機能しているのかっ!?」

るか「たしか、未来ガジェット8号機はケータイで電子レンジを遠くから使える、っていう未来ガジェットでしたよね」

倫子「……っ。そ、そうだ、IBN5100はラボにあるか……?」

まゆり「あいびー?」

るか「聞いたことないですね……」

倫子「……どうやらオレは、死ぬほど疲れているようだ。……少し休ませてくれ」ハァ

るか「えっ!? だ、大丈夫ですか? 今お水を……」



なるほどな……

そろそろわかってきたぞ、この世界線の仕組みが。

信じたくはない。

信じたくはないが……


キッカケは綯が送信したDメールだろう。

その内容は、2000年5月18日の天王寺裕吾に対し、妻である今宮綴を救え、と指令するもの。

これによっておそらく、天王寺裕吾が大檜山ビルのオーナーとなる因果が消滅した。

誰かのものとなったビルは集合住宅へと建て替えられてしまった。

一方、2010年3月のオレはそれでも秋葉原にラボを求めた。

なんの因果か知らんが、フェイリスがオーナーとなっているというこのビルにラボを構えたらしい。

だが、重要なのは階下の店だ。

そこにブラウン管がないということは―――


Dメールもタイムリープマシンも、偶然の産物だった。

42型ブラウン管テレビが点灯していることで未来ガジェット8号機はタイムマシンへと変貌するのだ。

それが無いということは、おそらくこの世界線では実験らしい実験は成功していない。

まゆりがから揚げを解凍ではなく逆に冷凍させてしまうこともない。

ゲルバナが生成されることも、テレポートすることもない。

過去を司る女神作戦<オペレーション・ウルド>も、タイムリープマシン実験も。

ロト6は当たっていないし、写真集は回収できていないし、ルカ子は男だし、フェイリスのパパは亡くなっているし、秋葉原は萌えの街だし……

鈴羽はどうなった? 8月9日の夜には1975年へとフライトしたのだろうか。

54歳になる鈴羽はどうしている? 海外か? 秋葉原に潜伏中か?

紅莉栖は明日の2時ごろにタイムリープしてくるのか?

ダルはどうやらタイムリープしてきていないらしい。

萌郁はラウンダーなのか? この世界線でもラボの為に死ぬのか?

フェイリスのパパはどうなった? アキバが萌え化しているということは……生死も"元に戻った"のか。

ルカ子は……だが男だ。

まゆりは……死ぬのか……?


鈴羽はIBN5100こそが世界線をαからβへと変更できるキーアイテムだと言っていた。

だが、今オレがいるこの世界線がβ世界線である、という可能性もあるんじゃないのか?

つまり、ディストピアは築かれず、紅莉栖はタイムマシンの母とならず、ワルキューレなどというレジスタンスは創設されず……

まゆりは……死なない。

それを確かめるにはあと30時間ほど待てばいい。話は簡単だ。

そこでまゆりが死ねばαのまま――

……オレは何を考えているんだ。

人は普通、死んだら生き返らない。

永遠に失われてしまう。

それが自然の摂理のはずだろ……


倫子「ごめん……まゆり……」グスッ

まゆり「突然どうしたのー? 怖い夢でも見た?」

倫子「夢……か。この世界線にとっては夢なんだよな……」


―――――

  『……また変な夢でも見たの?』

  『夢……? あ、ああ。そうか。あれは夢だったんだ……』

―――――



倫子「……なあ、まゆり? お前、『鈴羽』という名前に心当たりはあるか?」

まゆり「スズさん? うん、今日もバイトしてたよ」

倫子「バイト? ……ブラウン管工房でか?」

まゆり「ぶらうん? それじゃなくてねー、自転車屋さんで、だよー」

倫子「なんと。あいつ、ラボの真下でバイトする、というのは変わっていないのか。というか――」


  『鈴羽が1975年へと跳んでいない』


倫子「これってどういうことなんだ……? なぜあいつはIBN5100を取りに行っていない……?」

倫子「まさか本当に、"ここ"が1%の壁の向こう側なのか……?」

自転車屋


倫子「オレはここに来るのは初めてのはずだが、"この世界線のオレ"はおそらく何度か来ているのだろうな……」ウィーン

鈴羽「おっ、鳳凰院凶真じゃーん。ちーっす」

倫子「なあ、ジョン・タイター。話がある。バイトはいつ終わる?」

鈴羽「話? えっと、店長さんに言えばいつでも上がれるよ」

倫子「それはよかった。なら今すぐ――」

鈴羽「そうだっ! まだ日も高いし、あの約束、今日お願いしてもいいかな?」

倫子「っ、約束?」

鈴羽「もう準備もできてるよ! ほら、早く早くっ!」

倫子「うわっ!? お、おい!? 引っ張るなぁっ!」

晴海大橋


まゆり「きもちいいねー」チリンチリン

ダル「ふぅっ、ひいっ、なんで僕がこんなことに付き合わなきゃ、いけないんだ……」ギーコギーコ

るか「修行よりも、全然大変です……」キーコキーコ

倫子「ど、同感だ……はあ、ふう……っていうか、風強すぎ……」キーコキーコ

まゆり「ダルくんはね、メタボだからもっと運動しておくべきだと思うよー」

ダル「デブオタ上等……」

鈴羽「いい景色だなー。レジェンドたちと来れて、あたし幸せかも」

倫子「というか、だな……ふぅ……どうしてサイクリングなんかに……はぁ……」

鈴羽「えー? 鳳凰院凶真が提案してくれたんじゃん。あたしの父さんを探すついでにサイクリングをしよう、って」

倫子「は、はぁ? お前の父親はダ――」

倫子「(ま、待て待て。"この世界線のオレ"はワルキューレの話をされていないのか?)」

倫子「(それと、バレル・タイターが橋田至である、という情報は未来のSERNにバレるとマズイ。あまり口にしない方がいいか……)」

倫子「ゴホン。というか、こんなところに父親の痕跡があるのか?」

鈴羽「言ったでしょ? あたしの父さんと母さんって、"コミマ"ってところで出会ったんだって」

倫子「コ、コミマだとぉ!?」

鈴羽「告白の言葉は、『キミに一生、萌え萌え☆キュン』だったって聞いてる。この時代に来るまでは意味がわからなかったけど、情熱的な愛の言葉だったんだね」

ビッグサイト


鈴羽「ビッグサイト、生で見られて感動! 2036年にはさ、ビッグサイトってなくなっちゃってるんだよね」

倫子「鈴羽の母親は腐女子の可能性があるな。ということはコイツ、実はオタクのサラブレッド……?」

まゆり「まゆしぃはおなかが空いちゃったから、ダルくんとるかくんとファミレスに行ってるね」

ダル「もうダメでごわす……ふひぃ」

るか「気づいたらもう晩御飯の時間ですね……ふぅ」

鈴羽「わかった。あたしはもうちょっと日暮れの有明を散策してくる。鳳凰院凶真も来る?」

倫子「ああ。お前に話があると言っただろう」

鈴羽「……そうだった。それじゃ、椎名まゆり、橋田至、漆原るか、また後で!」


鈴羽「あのさ、あるテレビ記者が雪の街に取材に来て、そこで時間の連鎖に絡めとられちゃう、って映画、なかったっけ?」

倫子「『恋はデジャ・ブ』だったか。コメディ部分は好きだな」

鈴羽「あたしは微妙。だって主人公が特になにかしたわけでもないのにさ、時間の無限ループはきれいさっぱりなくなっちゃうじゃん」

倫子「本当は裏に陰謀が渦巻いている……そう言いたいのか?」

鈴羽「ううん。今のキミ、映画と同じ状況に置かれてるんじゃない?」

倫子「(なんだ、こいつ……本当にオレの知っている鈴羽なのか……?)」

倫子「……"タイムリープマシン"も無いのに、そんなわけないだろ」

鈴羽「やっぱり。キミは"別の世界線"から来た。そうでしょ?」

倫子「……だったらどうした」

鈴羽「よかった。これでようやくあたしの使命が果たされるんだね……」

倫子「なに……? お前の使命は、1975年へ行ってIBN5100を手に入れることでは無かったのか?」

鈴羽「キミの元居た世界線のあたしはそう言うと思う。でも、このあたしは違うよ」

鈴羽「あたしの使命、それは、"鳳凰院凶真が元居た世界線"へと世界線を変動させること」

倫子「元居た……?」

鈴羽「――2000年へ跳んで、Dメールを取り消すこと、だよ」


世界は大きく変わっていた。

いや、ある意味で大事な部分は何も変わっていない。

この世界線でもまゆりは死ぬ。

つまり、ここはまだα世界線だ。

鈴羽が持っていたダイバージェンスメーターによると、その値は0.00312らしい。

オレが未来で作り出したというダイバージェンスメーター。

以前確認した0.33871からはだいぶ離れてしまった。

1%の壁からは、遠のいてしまっている。

オレたち未来ガジェット研究所がタイムマシン開発にこぎつけられなかったせいだろう。

0.00312。

世界を変えようと意気込んだオレにとって数値の減少が意味するところは。

0.00312。

この無機質な数字の羅列は、オレにとって絶望だった。


倫子「……結局、ダメだったんだな。紅莉栖も、ダルも、鈴羽も、綯も伽夜乃も、揃いも揃って未来から過去を変えに来たというのに……」

倫子「24年だの、23年だの、35年、15年……タイムトラベラーどもは皆、人生を賭けたというのに……」

倫子「世界は変わらない……」

倫子「まゆりは、死ぬ……」ウルウル

鈴羽「そのためにあたしが居る。大丈夫だよ、父さんが遺した作戦を完遂できれば――」

倫子「できるのかぁっ!? それは本当に、確実な情報なのかぁっ!?」

倫子「もし作戦に穴があったらっ!! もし予測できない事故が起こったらっ!!」ブルブル

鈴羽「鳳凰院凶真! あたしを見て! 心を殺さないで!」

鈴羽「それでもキミは、諦めることなんかできないんだ! 椎名まゆりを救おうと動くしかないんだ!」

倫子「わかっているっ! そんなことは、わかっているんだ……っ」ウルウル


―――――

  『岡部にも執念を持ってもらいたいの。まゆりを救うという、絶対的な執念』

  『……わかっている。まゆりは、まゆりはオレの人質だ』

―――――


倫子「……ぐぅっ!」ポロポロ

鈴羽「落ち着いてあたしの話を聞いてほしい。それは、キミにとっても希望のはずなんだ」


鈴羽「今はあたしが2000年へ立ち寄ればいいっていう答えが出ているけど、あたしの知ってる2010年から先はその答えが出せなかった世界なんだ」

倫子「……そもそも、どうやってタイムマシンが作られたのだ」

鈴羽「7月23日に受信された、キミが送信者となっているメールがエシュロンに捕えられることで未来のSERNはキミを監視することになった」

鈴羽「実は、牧瀬紅莉栖は元からSERNに目をつけられていた。タイムマシンに関する論文を書いたらしいんだけど、どこからかそれが漏えいしたんだ」

倫子「あいつが、タイムマシンの論文を……?」

鈴羽「牧瀬紅莉栖を研究員へと迎えた未来のSERNは過去改変を行い、エシュロンメールの関係者と思われる2010年の牧瀬紅莉栖と鳳凰院凶真、橋田至の3名を当時のSERNへ連行した」

鈴羽「そこで君たちはSERNのZプログラムに従事することになった。当時からリーディングシュタイナーを持っていたキミは伝説級の活躍をしたって聞いてる」

鈴羽「"別の世界線での記憶"ってのがタイムマシン開発を後押ししたんだろうね」

倫子「……まんまと利用されたわけだ。くそぅ……」

鈴羽「そしてキミは、盗んだんだ。SERNのすべてを」

倫子「……そうか。収束の力を利用して、逆にSERNをやりこめたのかっ!」

鈴羽「鳳凰院凶真とバレル・タイターは日本でレジスタンスを創設する」

鈴羽「タイムマシン技術はSERNの独占を逃れた。これが世界の希望になったんだ」

鈴羽「タイムリープが可能となったことで時間は実質無限になった。レジェンドはこれを利用して科学技術レベルを1世紀は進めたって聞いてる」

倫子「そんなにタイムリープしたのか、未来のオレは……」

鈴羽「あたしの使命はもちろん、エシュロンに捕えられたメールデータの削除が可能なIBN5100を、1975年で確保して2010年のラボに届けること」

鈴羽「その前哨戦として、2000年の天王寺裕吾の元へ送られたDメールによる因果の取り消しが必要なんだ」

鈴羽「これを取り消さない限り、IBN5100がラボに届くことはない。だからあたしは1975年へ行く途中で一度2000年に立ち寄る必要がある」

鈴羽「これは未来のキミが導き出した答えだよ。父さんの遺書……ムービーメールでそう教わった」

倫子「未来のオレの、答え……」


倫子「だが、あの綯のDメールで、一体なにがどうなったのかがわからない……。これでは何をどうしたらいいかがわからんではないかっ!」

倫子「この世界線ではミスターブラウンが消滅しているのに、どうやって調べれば……」

鈴羽「天王寺裕吾は居なくなったわけじゃない。探せばきっと見つかる」

鈴羽「もしSERNがキミたちを拉致するまでに天王寺裕吾から話を聞けなかったら、あたしがタイムマシンで少し過去へ行って天王寺裕吾を捜索するよ」

倫子「だ、だが、お前のタイムマシンは壊れているはずだっ! 8月9日の深夜、雷雨に遭ったせいで……」

鈴羽「えっ……嘘……」

倫子「Dメールも、タイムリープも、タイムマシンも使えない状況で、どうやって2000年の因果を操作しろと言うのだっ!!」グッ

倫子「そ、そうか! 未来のオレがDメール技術を使えるようになった時点からDメールを送れば……」

鈴羽「……あたしは未来のキミがDメールを"送らなかった"世界の未来から来ているから、たぶんそれはできない」

倫子「……収束、か。いや、だが収束に逆らう方法もあるはず……」

鈴羽「あたしの知る限りでは、2036年にはメールで過去を改変する技術は存在しない。完全なリーディングシュタイナーを持った人間が居なかったからかも知れないけど」

倫子「収束に逆らうためには、たしか2010年という年に意味があると言っていたな!?」

鈴羽「そう。大分岐の年っていうイレギュラーを利用するんだ」

倫子「紅莉栖は言っていた、世界の現在をオレの主観に近似させる、とも……」

倫子「……そうだ、あいつは明日の14時には未来から跳んでくるかもしれない」

倫子「だが、それで間に合うのかっ!? 6時間でタイムマシンを修理できるのか!?」

鈴羽「……あいつって?」

倫子「牧瀬紅莉栖だっ! タイムマシンの母、牧瀬紅莉栖がお前のタイムマシンを直しに……っ!」

鈴羽「牧瀬紅莉栖……っ、そんな作戦、知らされてない……」ギリッ

倫子「頼む、もう説明するのも面倒くさい……頼むから紅莉栖を敵視しないでくれ……」ウルウル


鈴羽「でも、あたしにはわからないな。仮に牧瀬紅莉栖が父さんのタイムマシンを直せるとして、6時間の制限ってのはなんのこと?」

倫子「それは……まゆりが死ぬタイムリミットのことだ」

鈴羽「……それって、本当にタイムリミット?」

倫子「なに……?」

鈴羽「この作戦が成功すれば、キミは元居た世界線とほぼ同じ世界線に戻れる。そこならタイムリープマシンもある」

鈴羽「だったら、この世界線での椎名まゆりは諦めて、次の世界線で生き返らせれば――」



倫子「…………お前ェェェエエエエッ!!!!」ガシッ



鈴羽「うわぁっ!?」

倫子「まゆりをっ!! まゆりをなんだと思ってるっ!?」

倫子「これはゲームじゃないっ!! やり直せば生き返るとか、そういう問題じゃないんだよぉっ!!」

鈴羽「ご、ごめん。でも他に方法が――」

倫子「たとえ世界が再構成されようと、まゆりは世界にただ1人しかいないっ!!」

倫子「私の……オレの、かけがえのない幼馴染なんだよぅ……グスッ……」ウルウル

鈴羽「…………」

倫子「……もうまゆりの死ぬ場面は見たくない」

倫子「いつも脳天気に微笑んでいるまゆりの、あんな無惨な死の姿を見せられるのは、つらすぎるよ……」ポロポロ

鈴羽「レジェンド……」


まゆり「あー、いたいた~! オカリーン!」タッ タッ

倫子「まゆり……」

まゆり「もう真っ暗になっちゃったね~。そろそろ帰ろう?」

倫子「あ、ああ。そうだな。なんだかんだでもう8時前か……」

倫子「(8時、前……。い、いや、今日じゃない。今日はまだ13日じゃ……)」

まゆり「あれー? まゆしぃのカイちゅ~、止まっちゃってるー」

倫子「な、に……」



まゆり「あれ、か、あ……っ……」バタッ



鈴羽「椎名まゆりっ!?」

るか「まゆりちゃん、足早いよぉ……あ、あれ、まゆりちゃん?」

ダル「ま、まゆ氏ちょっと待って……って、あれ? まゆ氏、どしたん……?」

まゆり「…………」

倫子「あ……あ……あぁ……」

ダル「息……してない……」

るか「うそ……そんな……」




倫子「……ぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああ!!!!!!!!」


鈴羽「……椎名まゆりは死んだ」

倫子「違うっ!!! オレが、見殺しにしたんだっ!!! オレがっ!!!」

ダル「おい、まゆ氏! 起きろよ! ドッキリか!? ドッキリだろ!?」

るか「まゆりちゃんっ!! まゆりちゃぁぁぁぁぁん!!」

鈴羽「……救急車を呼ぼう。SERNがキミたちを拉致する前に対処しないと」

倫子「お前なんでそんな平然とした顔してんだよぉっ!!」

鈴羽「あたしは、戦士だから。仲間が死んでも冷静に行動するための訓練は受けている」

倫子「こいつ……っ!!」ギロッ

鈴羽「まだ椎名まゆりは助けられるっ! お願いだから冷静になって!」

ダル「た、助けられるって、どういう……」

鈴羽「とにかく、一旦ラボに戻ろう」

倫子「まゆり……っ、まゆりぃ……」ポロポロ

まゆり「…………」

未来ガジェット研究所?


倫子「(気付けばオレたちはラボに戻ってきていた。どうやって戻ってきたかはまるで覚えていない)」

ダル「ちょ、オカリン。阿万音氏……鈴羽? その話、全部マジなん?」

るか「俄かには信じられないです……あ、いえ、凶真さんを信じてない、ということではないんですけど……」

倫子「(既にダルと鈴羽の親子関係については説明した。オレが世界線を渡ってきたということも)」

倫子「(まゆりが死んだんだ。もうなりふり構ってなどいられない)」

倫子「(フェイリスがオーナーのこのビルなら、たぶん盗聴などはされていないだろう)」

鈴羽「とにかく、レジェンドは救世主なんだ。あたしたちワルキューレの希望だよ」

倫子「(さっきから鈴羽はアトラクタフィールド理論だのオペレーション・ブリュンヒルデだのを講釈しているが、オレの耳にはまったく入らなかった)」

鈴羽「だから、まずは橋田至……父さん? にタイムマシンを直してもらおうと思うんだけど……」

倫子「……待て。明日の14時、24年後から紅莉栖がタイムリープしてくる。それを待たなければなるまい」

鈴羽「まだそんなこと言ってるの? それはキミが元居た世界線での話でしょ?」

鈴羽「この世界線では椎名まゆりは8月12日に死んだのに、どうしてそれよりも前に牧瀬紅莉栖はタイムリープしてこなかったのさ」

倫子「それは、きっとなにかトラブルがあったんだ……」

鈴羽「素直に認めて。きっと牧瀬紅莉栖はタイムリープしてこない。だったら、それ以外の手段を講じるべきだって」

倫子「(……この世界線では紅莉栖が8月9日にアメリカへ帰っていた。このことが、あいつがタイムリープしてこない、という結果を生み出したのか……?)」グスッ


ダル「わかったお。その、牧瀬氏がどうのってのは置いておいても、僕がタイムマシンの修理を手伝う」

鈴羽「ありがとう……父さん。あたしだけじゃ修理に不安があったんだ」

るか「ボクも、まゆりちゃんのためなら手伝います。と言っても、ご飯の用意くらいしかできませんけど……」

鈴羽「漆原るかも、ありがとう。できればカレーがいいな」

ダル「とにかくオカリンは明日、その天王寺裕吾氏のところに行って、Dメールで何が起こったのかを確認すべきじゃね?」

倫子「天王寺裕吾、ミスターブラウンがこの世界線ではどこにいるのか、皆目見当もつかない……」

倫子「それに明日は……まゆりの通夜があるそうだ……」

るか「あっ……」

鈴羽「…………」

ダル「おぅふ……」

ガチャ

フェイリス「凶真っ!! マユシィが、マユシィがぁ~っ!!」


フェイリス「クーニャンには連絡したニャ。明日のお昼にはこっちにつけるって」

倫子「……ご苦労」

るか「でも、まゆりちゃん……今日のお昼までは元気にしていたのに……グスッ……」

倫子「……すまない」ウルッ

るか「いえ……つらいのは凶真さんですものね……ヒグッ……」

鈴羽「……もうわかった」

倫子「え……?」

鈴羽「鳳凰院凶真は何もしなくていい。全部あたしと父さんがやる」

ダル「す、鈴羽ぁ……」

鈴羽「天王寺裕吾の居場所の調査も、作戦の立案も、タイムマシンの修理も。だからキミは何もしなくていい」

鈴羽「この世界線における椎名まゆりの死を悼んでくるといいよ」

倫子「…………」

フェイリス「天王寺裕吾? それって、家電修理のおじさんのことかニャ?」

倫子「……なに?」


倫子「知っているのかフェイリスッ!?」ガシッ

フェイリス「ハニャ!? さ、触っちゃダメニャ! ///」ドキッ

フェイリス「えっと、秋葉原商店会のメンバーだニャ。頭のつるつるした筋肉むきむきのおじさん、であってるニャ?」

るか「そ、その方でしたらボクも地鎮祭の時にお会いしたことがありますっ」

倫子「そいつは今どこにっ!?」ユサユサ

フェイリス「うニャ~!? い、今黒木に調べさせるニャァ~!」

倫子「Dメールで何が変わったのかがわかれば、未来のオレたちから救いの手が差し伸べられるかもしれない……!」ワナワナ

倫子「まだ、可能性はある……っ!」ガタッ

ダル「オカリンに生気が戻ったっぽいね」

鈴羽「……それじゃ、そっちは鳳凰院凶真たちに任せるよ。父さん、今すぐラジ館に行こう」

ダル「オーキードーキー」b

2010年8月13日金曜日
新御徒町 天王寺家


倫子「ここが、ミスターブラウンの家……」

フェイリス「別に気負うことはないニャ。顔は怖いけど、フェイリスとは顔見知りだから大丈夫ニャン」

フェイリス「万が一何かあったら、凶真守護天使団団長のフェイリスが、命に代えても凶真を守るニャ!」フンス

倫子「……もしかして、この世界線にも裏マーケットはあるのか?」

フェイリス「おっじゃましまーすニャーン♪」

ピンポーン

??「はーい。あ、ねこのおねえちゃん!」

倫子「(……ん? 誰だこの小動物。綯に妹なんて居たか?)」

フェイリス「結ニャン、久しぶりだニャ。ちょっと結ニャンのパパさんとお話させてもらってもいいかニャ?」

結「どうぞー。おとうさーん、おきゃくさんだよー!」

天王寺「なんだこんな朝早くから……って、ああなんだ秋葉の嬢ちゃんか。今度はなんの企画だ?」

フェイリス「今日お話があるのはフェイリスじゃなくて凶真だニャ」

天王寺「きょうま……? 誰だ、嬢ちゃん」

倫子「は、初めまして……」


天王寺「俺はここいらで家電の修理やリサイクルをしてる天王寺だ。よろしくな」

倫子「店舗を持っていたりは……」

天王寺「しねえな。自宅や貸倉庫をうまく使ってやりくりしてるぜ」

天王寺「まあ、確かに廃品回収をやってた12年くらい前は店舗を持ったりしてたけどよ」

倫子「そ、それって、もしかして『ブラウン管工房』ですか!?」

天王寺「……なんだ、知ってたのか。もうずいぶん懐かしい響きだ」

倫子「どうしてビルを手放したんです?」

天王寺「手放した? いや、オレはテナントを借りてただけさ。格安でな」

天王寺「ただ、オーナーが死んじまってな。それでビルも建て替わっちまったってわけだ」

倫子「オーナーが、死んだ……?」