天使「死ぬ前に、世界の為にヒーローになってくださいませんか?」(10)

天使「話せないでしょうから、一方的に話しますね?」

男「…」

天使「近く、世界に危機が訪れます。悪魔とか災害とか、そんな感じのものです」

天使「それらからこの世界を守って欲しいんです。このまま餓死するよりはましでしょう?」

天使「全く不運な人ですねー、親族には借金を押し付け捨てられ、友人にも同様の仕打ちを受け……。山の中で死にかけとは」

天使「しかもあなた、地獄行きが決まってるんですよ。まぁ、ほとんどの人間は地獄に送られるんですけど」

天使「でもでも、ヒーローになっていただければ天国にお迎え致しますよ? どうです? いい取り引きでしょう?」

男「…」

天使「いい心がけです♪ じゃあちょっと失礼しますね?」グイッ

天使「よいしょー」ザグッ

ブシャァァァァァ!

男「――ッ! ッは……」

天使「今からあなたをヒーローにするために、心臓にある物を埋め込みます。直接切り開いちゃいましたから痛いでしょうけど、我慢してくださいね」

天使「うん……馴染みそうですね。あなたの幸福はこの時のためにとっておかれたんでしょうか。馴染まず死ぬ確率がほとんどでしたから」

男「……」

天使「…次に目覚めたら、何か危機が目の前にあるはずです。それをどうにかしてください」

天使「見事危機から世界を守れば、あなたは天国行きになりますよ」ニコッ

男「…」

………

男「……?」

男(どこだ……)

ガヤガヤ

男(町……?)

男は人ごみの中で目を覚ました。
姿勢は直立した状態で、一緒前に気を失っていたような感覚だった。

男(服が……)

傷んだシャツとズボンは、清潔なものに変わっている。

男(……)

男(夢じゃなかったのか…)

ぎぃやぁぁああああああ!!

男「!?」

耳を覆いたくなるほどの悲痛な声が響いた。

飛び散る血飛沫。

痩せた男「…へへ」

「助けてぇぇぇ!」

別の方向から悲鳴が聞こえた。

太った男「……」ヘラヘラ

何か直感的な悟りが男の脳に告げた。

人が狂っていく災害。

そこかしこで殺し合いが始まっている。



陰気な男「クク…」

陰気な男「面白い力だ……」

陰気な男「俺を馬鹿にした奴ら……みんな殺してやる」



男(しばらくここに隠れるか……)

路地の裏に男は隠れる。

男(……あれが危機? …確かに狂ってる)

男(…でもどうしようもないんじゃ…)

目覚める前と比べて、気付けた自身の変化点がある。

まず、幼い頃からろくに食わず、骨から痩せこけた体は、別人のようにしっかりした体格になっている。

加えて髪が白く、肌は少し浅黒く健康的な色になっていた。

男(……これだけなのかな)

ガタガタッ!

おっさん「見ぃつけたぁ」ギラッ

男「!」

おっさん「ひゃへぁあ!」グワッ

バキッ

男「……このナイフ、借りるよ」

おっさん「 」

dqn「ほひょーwみんなおかしくなってるわww」

dqn2「……」

dqn「なぁ、俺らもここにいたらやばくねぇ?」

dqn2「クワァァア!」

dqn「お前もかw」バッ

ゴォォッ!

dqn「ま、炎をだせるようになった俺の敵じゃないっしょww」

dqn「まじおもしれーw何かクラスの奴らも変な能力が出たっつってたなww」

dqn「…っつーことは、この騒ぎはそういう奴の仕業か? 俺って冴えてるww」

陰気な男「死ね……皆死ね……!」

陰気な男「あはははははは!!」

dqn「ん? あれ? お前こんなとこで何してんの?」

陰気な男「!!」

dqn「今外にいちゃあぶねーっぺ? つかなんで学校来なくなったのww?」

陰気な男「…殺す!」

ワラワラ

狂った人達「……」

dqn「…お前の仕業か!」

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