相模南「私のサイテーな幼馴染」 (19)

あのバカ…

メールの文面をみて、私はすぐにそう思った。

家路に着こうとしていた足を、職員室へと向ける。

放課後とはいえどこのクラスもHR終了直後なせいか、廊下のあちこちでは雑談の輪ができあがっている。

すれ違う何人かの顔見知りと挨拶、挨拶、挨拶。

やっていることは、ささやかな微笑の交換でしかないが

こういったコミュニケーションが関係をつくっていくのだ。

あいつにも何度も言っているはずだけど、面倒がっているのか実践している様子はない。

あいつ何やったんだろ。

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職員室に呼び出しくらった。平塚先生がおまえを呼べって

絵文字も顔文字も使わない。必要最低限の情報しか書かない。あいつのメールはいつもそうだ。

職員室のドアを開いて、一礼。失礼します。

机に向かっていた先生たちは一瞥してそれきり無関心の顔になった。

平塚先生の机を見る。

彼女の姿はなく、見えるのは無造作におかれた教科書、副読本、参考書、何かの書類。

私はこういうの、見ているだけで整理したくなる。ここにいないとなると…

奥へと進み、やっぱりそうだ。内心でガッツポーズを決める。

ブースで覆われているものの、煙がゆらゆらとゆれ、向かい合う二つのシルエット。

そっと覗くと、平塚先生と目があった。

大きな瞳。少し吊り気味な形が、きつめの顔立ちをつくっている。髪は背中まで届くロングヘアー。

「きたか、相模」

足を組んで煙草を吸っているせいで、男の人みたいだ。いい意味で。

「座りたまえ」

「はあい」

私は平塚先生の向かいのソファーへと座る。

ぶすっとした顔ですわっていたそいつは、その表情を変えずに横へと詰めてくれた。

隣に座る男。比企谷八幡。

大きな目をして、鼻筋ははっきりしている。

小さい頃から八幡を見ている私からしても、顔立ちはなかなか整っていると思う。

でもめったに表情が変わらないせいか。いわゆる、何を考えているのか分からない奴。

クラスメイトがそんな風に言っているのを聞いたことがある。

「で、八幡、どうしたの?」

「さあな」

「さあなって…」

八幡は、ふてくされたようにソファーに体全体を預けた。

細くなった目は天を仰ぎ、どよんとした疲労感が伝わってきた。

煙草があったらスパスパ吸い出しそうな表情だ。

「平塚先生から言ってくださいよ」

「最初からそのつもりだ馬鹿者」

私はその物言いに少しむっとする。生徒に向かって軽々しく馬鹿者って…。

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