オーバーロードSS 戦闘メイドの休日 (353)


タイトル通りオーバーロードのSSです。

書籍版の設定で書いてあります。
8巻のその後の話を膨らませたもので多少ネタバレがあります。
大体が自分の妄想した部分なので楽しんで読んで頂ければ嬉しいです(少しオーバーな敬礼)。



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1443831454


ナザリック地下大墳墓 ナザリックスパリゾート


「あら来たわね」

「………………」

黒髪をお団子に束ねた美しい女性が眼鏡の端をキリリと持ち上げる。
その横には凄腕の職人が作り上げた美術品の人形を思わせる無表情の美人が立っている。
プレアデスの副リーダー……現在は仮リーダーのユリ・アルファと
オートマトンのシズ・デルタが向こうから来る3人組に気がつく。

「久しぶりねユリ姉さん」

艶やかな黒髪のポニーテールと切れ長の瞳が恐くも美しいーーナーベラル・ガンマが声をかける。

「ホント、あまり時間が経ってたわけじゃないのに久しぶりって感じだわ」

ふわりと巻いた金髪ロールに豊かな肢体が眩しい美人ーーソリュシャン・イプシロンが同意する。

「アレ?ルプスレギナはーーあっ」

可愛いらしい声に相応しい可愛いらしい大きな瞳に可愛いらしい触覚をピクピク動かすカワユイ美人
ーーエントマ・ヴァシリッサ・ゼータが声を出す。

エントマの視線の先には豊かな胸をシズの頭に乗せニコニコと笑う褐色美人ルプスレギナ・ベータが立っていた。

「私最初からここにいるっすよ? いやーそれにしてもナーちゃんのメイド服、久々過ぎて違和感感じるレベルっす」

シズは無表情のままうざったそうに頭を振るった。
にゃはは、と笑いながら離れるルプスレギナ。



「ルプー、それを言わないで。私だって常日頃この格好でいられたらどんなにいいか……でもこれもモモーーアインズ様の偉大な計画を遂行する為に必要な事。その為なら『人間の振り』なんて苦痛でもなんでもないわ」


ナーベラルはグッと堪えるポーズをするが表情はまったく逆で満足気である。


ナザリックで活動する全てのNPCにとってアインズの命令は絶対であり『歓喜』である。
至高の御方に必要とされる事を喜びとする彼らにとってアインズに従い、側で仕える任務をするナーベラルは羨望の的だ。


ナーベラルのさっきの発言は他で仕事をしているとはいえアインズの側で従いたい彼女らにとって
『毎日充実してツライわー』としか聞こえなかった。


「ぐぐっ、ナーちゃんちょぴり性格悪くなってないっすか!?」


「ハイハイそこまで! そういう話はお風呂場でしましょう」


ユリが教師のように手を叩くと本来の目的を口にする。


彼女らはナザリック地下大墳墓の戦闘メイド『プレアデス』。


メイドの中でもかの至高の方々に特別な役割を与えられた彼女ら6人は、至高の御方のまとめ役であり、唯一この地に残られた慈愛の王アインズ・ウール・ゴウンから直接命令を頂くという大変な名誉を受けた。


受けたのだがーー


アインズが出した命令は6姉妹全員での入浴であった。女性の部下に風呂に入って来いとはなんともセクハラめいた命令であるが実際には



『お前達姉妹も個別に休みをとってもつまらないだろう。たまには姉妹揃って風呂でも入って来るといい』



というニョアンスであり、これはアインズが守護者全員でお風呂に行った際の思いつきである。
アインズにとって守護者達と入った風呂はとても機嫌が良いものであった為に出た『提案』なのだが
彼女らにとってアインズの『提案』は『命令』となんら変わりない。


こうしてユリ・アルファを筆頭に出回ってた姉妹達が一同に風呂場に集結したのだった。

「もちろんそうするわ。……けれど……シズとエントマは大丈夫なの? 」


疑問を口にするソリュシャン。


「……大丈夫。この日の為に防水性の高い装備を鍛冶屋に造ってもらった。あと耐熱、対冷、各種耐性を上げてきた。……バッチリ」


「ワタシも水と熱に強い蟲に変えたからダイジョーーブ!」


まるでこれから戦いに挑むかのような二人。
何もそこまでと思うかも知れないが、アインズが『みんなで』と言ったならそうなるようにするのが臣下の務めである。


「そう。なら早速行きましょう」





絢爛豪華なナザリック地下大墳墓の風呂場はスパリゾートの名に相応しい大浴場で種類だけで9種、浴場も17つもある。


「どれから入るか悩むっすね~~」


「まずは体を洗ってからよ。せっかくだから『あっち』も洗っておけば?」


すっぽんぽんのルプスレギナに対しタオルで体を隠すユリ。


「えぇ!?『あっち』の毛濃いからめんどいっす、めんどいっす~~」


嫌がるルプスレギナを競泳選手が着けるような水着姿のシズががっちりと掴む。


「……洗ってあげる」


ぎゃああと連れてかれるルプス。


「そうね洗いっこもいいかも、ユリ姉さん洗うわ」


「あ、ソリュシャン狡い!」


そそくさとユリに近づくソリュシャンにナーベラルが狼狽える。


「ジャあ、ヨロシク~~」


エントマが『身体を拡げる』と節々が付いた脚が何本も現れる。ぐぬぬと苦虫を噛み潰した顔になるナーベラル。


「アッ、そうそうシャンプーじゃなくて水でキャアアアーー!!」


スポンジに大量の泡を付けてゴシゴシ洗うナーベラル。
エントマが呻くように「油分が油分が」と騒ぐ。


その向こうからは「ぎゃああシズちゃん毛が抜けるっす~~」と慌てた声が聞こえる。


「何してるんだか……」


ソリュシャンの柔らかな太ももの上で髪を洗われてるユリは静かに溜め息を漏らす。


「うふふ、ユリ姉さんの髪綺麗ね」


「あらありがとう。貴方の髪も素敵よソリュシャン」


ユリの頭をソリュシャンが洗い、そのソリュシャンの体をユリの胴体が洗う。
一見すると恐ろしい風景だが、彼女達の常識からすればとても微笑ましい風景だ。


「そういえばアインズ様はお風呂に入られる時サファイアスライムをご利用されるのよね」


「そうらしいわ。どうせなら私に声をかけて下さればいいのに、私だって似たような事出来るのに」


ぐにゃぐにゃと体を揺らすとユリの腕がソリュシャンの背中に沈む。


「きゃ!? ちょ、ちょっと止めなさい!」


うふふと意地悪気な顔を浮かべるソリュシャン。ユリの上半身まで取り込むとまたその中でうねうねとうごめく。


「止めなっ、あ、だめ、そんなとこ、あ、嫌だボクっ」


意外と気持ちがいい感覚に恥ずかしさを感じたユリが素の声をあげる。


「ーーこのっ!!」


生粋の戦士であるユリが全力で抵抗する。流石のソリュシャンも敵わない。


「あ、あ、あん!ご免なさいユリ姉さん、悪ノリしすぎたわ!」


ユリの体を解放すると謝罪を込めて優しくユリの頭を撫でる。


「まったく……」


再び頭を洗い始めたソリュシャンを尻目に隣を覗くと
エントマがさっきの仕返しとばかりに沢山の脚を使ってナーベラルを洗いまくっている。


車の洗車機のような洗い方にアガガガッと声をあげるナーベラル。
しかし表情を見ると、どうやら意外と気持ちいいようだ。


ルプスレギナとシズはいつの間にか洗いっこからお湯の掛け合いで遊んでいる。


ユリは再び小さく溜め息をついた。



「ふぅ」


色っぽい吐息、というよりは幾らか疲労の色の方が強い吐息はナーベラルのものであった。
モモンのパートナー、ナーベとしての任務はメイドとして誇らしい任務だ。


が、アインズに応えるため常に神経を尖らせなければならないうえ、下劣な下等生物が
周りをブンブン飛び回るという環境に精神的にかなり疲れていたのであろう。
普段からは想像も出来ない程、緩みきった顔をしていた。


「そんなに人間との生活が嫌なの?」


ソリュシャンがナーベラルの表情から察して問いかける。


「最悪ですね。あの下等生物(ハエ)共を魔法で凪ぎ払えたらどんなに心地いいか……ソリュシャンは大丈夫なの?」


「任務だと思えばそれほどにはね。どちらかというと『食欲』を抑えるのが大変ね」


「ソレわかるー。ソリュシャン凄いよねー私は我慢出来ないかも」


同意したエントマからすれば人間の街は選り取りみどりなご馳走が歩くバイキングだ。想像しただけで涎が出る。


「私も苦じゃないっすね。むしろいつボロボロになるか楽しーー」


「ルプス! 貴方はもう、アインズ様に叱られたばかりでしょ」


「ウフフ。ルプス、アインズ様に怒られた~~」


「ルプー、私もその場にいたけれども関係ない私だってとても恐ろしかったわ」


ユリにたしなめられ、エントマとナーベラルに弄られたルプスレギナはお湯に顔を半分着けぶくぶく苦い顔をする。


「ブクブク……プハー! 大丈夫っす!そのあとアインズ様のテストにキチンと合格したっすからオールオッケーっす!」


「ちょっとルプス、丸見えよ」


「……お湯かかった」


再びルプスレギナとシズのドタバタが始まったが無視する他四人。


「それでアインズ様と二人っきりで何もなかったの?」


「やめて欲しいわソリュシャン、貴方まで。アインズ様は私みたいなメイドに興味なんてないわ」


と自分で言ってみたものの振り替える。
二人で冒険してきたが、アインズには主従としての態度しか見せられていない。


やはり自分に魅力がないせいだろうか?
いやいやと邪な考えを振るう。これは不敬な考えだ。


「アインズ様にはアルベド様がいらっしゃいます。私なんか眼中にありません」


「アルベド様は……確かに魅力的だけど、ちょっとアプローチがアレよね……」


「ソリュシャンはシャルティア様よりなのよね?」


ユリが問う。アインズを巡る女性守護者の攻防はプレアデスだけでなく全ナザリック中が気になるところだ。


「ん~~そうなってくれた方が私にいいことありそうかな?とは思うけど、正直言うとアルベド様が怖いっていうのが大きいかしらね」


「そうかしら?」


「ボク……いや私からすればシャルティア様の方が怖いけど」


シャルティアのユリを見る眼差しを思い出す。ボクにそんな趣味は無い。


「私の思い違いかも知れないけど、『どんな手段を使っても』アインズ様のご寵愛を受けようって感じがしてね……」


「守護者統括を担っているアルベド様が無責任なことするわけないわ」


「……そうよね。エントマはどう思う?」


「ワタシは~~アインズ様が選んだ方でいい~~」


そりゃそうだと姉妹達が肩をすくめる。
結局のところアインズが決めたら、それがナザリックの決定で正しい事なのだ。
メイドがあれこれ考える事ではない。


そう思い静かに風呂に浸かろうとした三人にエントマが爆弾を投下する。




「ケド~~この前恐怖公の眷属がたまたま聞いたらしいんだけど、アインズ様がアウラ様に告白をしたらしいよ~~」


一斉に飛び上がるプレアデス。ルプスレギナとシズでさえ動きを止める。

「それ本当なのエントマ!?」


「アウラ様が一人事でブツブツと『アインズ様は私の事が好きアインズ様は私の事が好き』って言ってたみたいで~~。試しに部下の人(獣)聞いたらアインズ様がアウラ様に好きだと言ったのは本当みたい~~」


「いやまさかそれだけで…………」


「アウラ様はまだ子供よ?」


「そういえばアインズ様、この前人間を招待した時、小さい子供と楽しそうにナザリックを回られたわ」


「私そのあとアインズ様にその子を護るよう言われたっす!」


「私の時も、アインズ様は無垢なる者には寛大な慈悲を与えてるわよね……」





点と点が繋がったような気がした。





「だからアルベド様は」「シャルティア様パッドを外せばもしかして」「アウラ様は子供が産めるの?」


がやがやとお風呂に浸かりながら騒ぐプレアデスの会議は普通の女子会と変わりなく、賑やかで楽しそうな雰囲気を放っていた。


何気なしにアインズから下された命令ではあったがプレアデス(戦闘メイド)達はその命令を満喫し充実に過ごしたのだった。




ーー後日。メイド達の間ではある噂が広まり守護者統括の耳まで入るのだが
それはナザリック内でも一大事件となりアインズを大いに悩ますのだが、それはまだ先の話である。



おわり

結構書いたなと思って投稿してみたら思った以上に短い文章だった。
あまりにも読み応えないので!この話の続きか、また別のキャラをメインにした話を投稿したいと思います。

プレアデスはみんな可愛らしく恐ろしい。早く末妹を見てみたいです。

オーバーロードのキャラクターはみんな魅力的ですが一番好きなキャラはコキュートスですね。
アインズ様にめちゃくちゃ褒められて欲しい。そして顎をガチガチ鳴らして欲しい。

スレがもったいないので次の話はここに投稿します。


オーバーロードSS 青薔薇女子会

始めます


王国都市エ・ぺスペル 宿屋ラウンジ




「はぁ~~」


今日何度目であろうその溜め息に周りの四人がうんざり顔で一体の『芋虫』を見つめる。


仮面で顔が隠れて見えないが、それでもその態度と溜め息が憂鬱な表情を感じさせる。
ソファーの上でローブにくるまった体をくねくね動かしながら寝っ転がる姿は正に芋虫であった。


「イビルアイ、いい加減機嫌直しなさいよ」


アダマンタイト級冒険者『蒼の薔薇』のリーダー。
ラキュース・アルベイン・デイル・アインドラが仮面芋虫とかした仲間に話しかける。


「すごく……すごく……たのしみにしてたのに……」


『本当』の子供のように拗ねらせてる仲間にラキュースは頭を悩ます。


蒼の薔薇のメンバーは現在王国都市のひとつエ・ぺスペルを拠点にある目的の為動いていた。


その目的はざっくり言うと修行である。


冒険者組合にエ・ぺスペルの外れの森にトロールの集団が住み着いたから退治してくれと依頼が入った。
本来の依頼の難度からすればミスリル級冒険者のチームが対応すれば解決出来る案件であるのだが
とある事情で現在蒼の薔薇の戦力が低下しており、それを解決する為に今回の依頼を受けたのだった。


今回の依頼でメンバーの一人イビルアイがやりたくないと駄々をこねるかと思ったが不思議と素直に了解したのだ。
ラキュースは驚いたのだがその代わりと言ってきた内容を聞いて納得した。


それは道中にある都市エ・ランテルに寄りたいと言うものだ。


エ・ランテルはアダマンタイト級冒険者『漆黒のモモン』が拠点にしている都市である。
見え見えの魂胆だったがラキュースは了承した。


正直遠回りで目的の内容を考えれば急いだほうがいいのだが
もしかしたらモモンに『修行』の協力を頼めるかも知れないという淡い期待もあった。


イビルアイの張り切りはいつもの冷静な彼女からは程遠いもので、自らローブを洗濯し
ラキュースからわざわざ化粧を教わるなど日頃慣れないお洒落をして(結局仮面を被るのだが)万全の態勢で向かったのだ。


ラキュースからすれば普段の依頼もそれぐらい張り切って欲しいなどと文句のひとつも言いたくなるが
仲間の、おそらくは初めての恋についつい甘い顔をしてしまう。


しかし行ってみるとモモンの拠点であるエ・ランテルの高級宿場『黄金の輝き亭』にモモンはおらず
冒険者組合の組合長に聞くと依頼でしばらく戻ってこないそうだ。


そして現在に至る。



「ったく冒険者が同じ場所にじっとしてるかっつーの。よく考えれば当たり前だろ」


蒼の薔薇の女丈夫ガガーランが酒を片手に呆れ顔で言う。それに対し双子忍者ティアとティナがうんうんと同意する。


「そうよイビルアイ。ほら料理が来たわよ」


料理といってもどれもお酒のツマミになるものであり、チーズに似た食べ物や燻製された肉などが上品に盛られている。


しかしイビルアイの傷付いた乙女心にはまったく響かない。


「もういいわ、勝手にやっちゃいましょ」


ラキュースは貴族らしく優雅にワインを傾ける。


「はぁ美味しい。……しかしイビルアイじゃないけどモモンさんに会えなかったのは残念だわ。あわよくば稽古してもらおうと思ったのに」


あの漆黒の戦士なら凄く格好いい必殺技とか持っていそうだ。
……暗黒戦士超烈斬(ダークウォーリアースラッシュ)とかどうだろうか。

「そうだな、俺も色々と聞いてみたいことがあったんだがな。前は忙しくてじっくり話せなかったし」


男らしく酒を一気飲みするガガーランにラキュースが冗談ぽく訪ねる。


「ねぇガガーランはモモンさんを誘わないの?」


イビルアイがビクリと動く。もぞもぞ話しに参加するようにソファーに座る。


「俺だってそういうのは相手は選ぶさ……悪い意味で言った訳じゃねーぞ?」


仮面越しでも伝わるイビルアイのはっきりとした怒気に肩をすくめる。


「珍しい」


「何でもイケると思ってた」


ティアとティナがパクパクと肉をつまみながら器用に喋る。ガガーランはふんっと酒臭い息を出す。


「命の恩人につまらない冗談を言うつもりはないってことさ。……まぁなんつーか、それとは別に気になる事があるしな」


「気になる事?」


「モモンの前に立つと妙な違和感を感じるんだ」


「違和感?」


「あぁ。ラキュースはモモンに何か感じなかったか?」


「ん~特には。一目で強そうだな、とは思ったけど……」


そうか、ガガーランは酒に口を付ける。その態度にイライラしたようにイビルアイが問い詰める。


「なんだガガーラン何が言いたいんだ」


「……例えばよ、ガゼフやアングラウスには訓練や修羅場を潜り抜けた事を感じさせるような強い戦士特有の『空気』みたいのを感じるんだけどよ。モモンにはそれを感じれないんだよな」


「それが違和感?」


「あぁ。まるで何の訓練もなしに『いきなり強くなった』人間みたいな……自分で言って馬鹿馬鹿しいな」


「もしくは最初からメチャメチャ強かったとか?」


「あぁ、その方があり得るな」


ガガーランと双子の受け答えにイビルアイは『神人』の文字を思い浮かべる。


あの戦いの際にも考えついた事だが実際のところどうなのかは本人に聞く以外あるまい。


そんな事を考えていたイビルアイだったが、「謎の漆黒の戦士……格好いい……」 というラキュースの呟きにその考えは吹っ飛んだ。


「ラキュースお前!」


「お、ラキュースもモモンに惚れたか?」


この世界での女性は強い男に本能的に惹かれる傾向がある。
モモンという規格外の男はラキュースから見てもまるで昔読んだ伝説の英雄のようで
そもそもそういう英雄に憧れて冒険者を始めたわけで
あれ、モモンさんって私の理想のタイプ?


考えこむラキュースに三つの好奇の目線と一つのトゲトゲしい視線がラキュースに集まる。


「違う違う! ただ同じ冒険者として憧れただけよ。だいたいね、モモンさんにはナーベさんという恋人がいるじゃない」


ラキュースは言ってからあっ、と隣のイビルアイを見る。イビルアイはふんっと軽く唸るだけだ。


「ナーベか、『美姫』なんてふざけた通り名だと思ったが、ありゃあ確かに美人だな。他に言い様がない」


「抱きたい」


「………………」


ティアの直球な欲望に思わず黙るティナ。誰もつっこまない。


「しかも魔法詠唱者としても凄い腕前なのよね。イビルアイは一緒に戦ったんでしょ、どうだった?」


イビルアイは少し間を置き辺りを見る。そして仮面を取りワインに口づけた。


「……あやつの実力は恐らく私以上。……私よりも強いだろう」


イビルアイの実力を知るメンバーからすればそれは信じられない話だった。


「マジかよ……いやあのメイドと互角以上に戦ったって聞いたからめちゃくちゃ強いのは知ってたがお前以上か……」


「……流石モモンさんのパートナーってところね」


「抱かれたい」


「………………」


押し黙るメンバーを無視して一人ワインを飲み干すイビルアイ。叩くようにワイングラスを置く。


「ふん、それでこそ競い甲斐がある。モモン様の隣は私が座る!」


幼さが残る少女の顔に『女』の顔が浮かび上がる。
そこにはかつて国堕しと恐れられた伝説の女吸血鬼(ヴァンパイア)の姿があった。化粧された唇が妖しく濡れーー







「いや、どう頑張ってもお前の負けだろ」





おもいっきり冷や水をかけられる。


思わずソファーからずり落ちそうになるイビルアイ。


「ガガーラン!!」


「いやよー体型で負け、魔法で負けたら、もうないだろー」


ガガーランの重い一撃がイビルアイにクリティカルする。


「ぐっ!? いやモモン様は私に少なからず惹かれてるはずだ。あの激戦の時何度もそれを感じた!後は既成事実さえあれば……」


「確かモモンさんのキャンプって『愛の巣』って呼ばれてるんだよね」


「ナーベさんと二人で泊まってるんだ。アツアツラブラブ」


双子の容赦ない追撃。ぐぅと呻きを上げ倒れるイビルアイ。


「…………いいなぁ」


再び芋虫になるイビルアイ。クネクネと身悶える。



「ア、ナ、タ、達~~」


ラキュースが三人を咎めるように睨む。ハハハハッと笑いあう三人。


「まぁアレだ、大切なのはテクニックよ。『玉袋』掴んどきゃぁ男はイチコロよ」


「急所の攻めかた教えてあげようか?」


「女の子で練習してみる?」


「ハイハイ、そこまで!今日はこれくらいにしましょう。明日は戦闘があるんだから早めに寝るわよ」


品がない話に呆れたようにラキュースは席を立つと皆に呼び掛ける。


「私は眠くないぞ。私は今からが本番だ」


芋虫のままくちゃくちゃと肉を食べるイビルアイ。他の三人もまだ喋り足りないようだ。


「私は眠いわ。…………依頼済ませて、ガガーランとティアの修行が終わったら、帰りにまたエ・ランテルに寄りましょう。その頃にはモモンさんも帰って来てるでしょうしね」




「よしもう寝るぞ。ガガーラン、ティア。明日は猛特訓だ、泣き言は許さんぞ!」


勢いよく席を立つイビルアイ。


分かった分かったと苦笑するガガーランとティア。
それを見て笑うラキュースとティナ。


女性だけの冒険者チームであり、人類が誇るアダマンタイト級冒険者蒼の薔薇。


その夜は賑やかに穏やかに更けていく。




終わりです。

読んで頂いてありがとうございました。

六巻の青薔薇の戦闘シーンを読むと世界樹の冒険をやりたくなります。

イビルアイちゃんいいっすね、いいっすね~(駄犬風
無垢なる者なんでアインズ様には寛大な慈悲を!!

オーバーロードは読み返すたびに新たな発見や想像が膨らんでまたSSを
書きたくなります。

また短い文章になるかも知れないですが、近いうちにまた書きたいです。

書いてて干物吸血鬼いびるちゃんっという言葉が降りてきた

ID変わったかもしれませんが上二つの作者です。
短いですが投稿します。

干物……じゃないよ吸血鬼いびるちゃん!


王国学園



イビルアイ「ではこの魔法は?」


クライム「えっと……第二位階の……炎魔法ですか?」


ガガーラン「おうイビルアイ、クライムに魔法教えてるのか?」


イビルアイ「いや、前にも言ったがこやつに魔法の才は無い。だが魔法の知識があるのとないのではテストに大きな差がでる。知っていて損はあるまい」


ティア「優しい」


ティナ「優しい優しい」


イビルアイ「う、うるさい!」


ブレイン「おーいクライム。コキュートス先生が呼んでるぞ~」


クライム「あ、ブレイン先輩!……すみませんイビルアイさん」


イビルアイ「あー行け行け」


クライム「勉強ありがとうございました!ブレイン先輩今行きます!」ダダッ


ラキュース「……あの二人怪しいわね……ブレイン×クライム」


ガガーラン「お前それキャラ変わりすぎだろ……」


ティア「だめだコイツ」


ティナ「腐ってやがる」


イビルアイ「?」


ガガーラン「あいつはラナー一筋だろ。それにアングラウスも三年のシャルティア先輩にぞっこんって噂だぞ?」



イビルアイ「そうなのか。……あの先輩は苦手だ」


ラキュース「へぇ~、じゃあ逆にイビルアイは好きな人いるの?」


イビルアイ「なんだ突然!?」


ラキュース「え~とまず私達でしょ?」


ティア「照れるな~」ニヤニヤ


イビルアイ「なっ!?――知らん知らん!!お前達なんて嫌いだ!もう帰る!」ダダッ


ガガーラン「がははっ!」


ティナ「可愛い可愛い」


アパート黄金の輝き亭


イビルアイ「あいつらめ、つまらんこと言いおって!(チラチラ」ガチャ


イビルアイ「……まだ帰って来てないのか」


イビルアイ「…………なら」


夜 アパート黄金の輝き亭



鈴木悟「はぁ~今日も支配者のフリ疲れたな……」ガチャ


いびるあい「サトル~~~~!!」いびる~~ん


鈴木悟「わ、イビルアイいきなり抱きつくな!?」


いびるあい「へへっ。サトルの事ずっと待ってたんだよ♪」


鈴木悟「分かった分かった。とりあえず中に入れてくれ」


いびるあい「は~~い♪」


鈴木悟「おっ、今日はシチューか」


いびるあい「へへ、サトルの為に作ったんだよ」


鈴木悟「美味しそうだな……よしお風呂入ったら早速いただこう」


いびるあい「じゃあ私も――」


鈴木悟「なっ!?――いびる~~!!」


いびるあい「んも~~サトルは恥ずかしがりやだな~~」


鈴木悟「……学校卒業するまでそういうのはしない」


いびるあい「ふっふっふっ。果たしてサトルの理性が持つのかな~~?」さわさわ


鈴木悟「なっ!?」パァー(抑制される音


鈴木悟「フッ、余裕だぜ!」


いびるあい「くっ、そういうとこだけ原作基準か!」




鈴木悟「ん、美味い」


いびるあい「へへ♪」


鈴木悟「ほんと随分上手くなったな料理」


いびるあい「そりゃ~好きな人には美味しいもの食べて欲しいし」いびる~ん!


鈴木悟「…………」パァー


いびるあい「今度お弁当作ってあげるね♪」


鈴木悟「え、いやそれは大変だろ」


いびるあい「でもコンビニ弁当とか外食だけじゃ体に悪いよ!」


鈴木悟「そこは大丈夫。職場の人がさ、いつも差し入れくれるんだよ。体に良さそうなおかずをさ」


いびるあい「……へーどんな人?」


鈴木悟「アルベドさんって人なんだけどさ。いつもおかず作りすぎちゃったって言って――」


イビルアイ「サトル」


鈴木悟「ん?」


イビルアイ「明日からお弁当作るから」


鈴木悟「え、でもたいへ――」


イビルアイ「作るから」


鈴木悟「あ、ハイ」


鈴木悟「あ~美味しかった」


いびるあい「サトル~~ゲームやろゲーム!これ今話題のゲーム『ユグドラシル』!」


鈴木悟「……ん~やりたいような、やりたくないような」


いびるあい「え~~やろうよ~~」


鈴木悟「……ふふ。はいはい」


いびるあい「名前どうしようかな~」


鈴木悟「ん~~よし俺は『モモンガ』っと」


いびるあい「だっさ」


鈴木悟「なにをっ!?」




おしまい

以上です。どうもありがとうございました。

アドバイスありがとうございます。酉の付け方わかなくて一応名前欄にそれっぽいの
入れてみましたがこれでいいのか……あとで調べておきます。

妄想設定では

鈴木悟ことアインズ様は総合商社ナザリックの課長。
島耕作並の強運で異例の速さで出世してデミウルゴス社長に一目置かれている。
一応有能。本人はそうとは思っていない。部下にはアルベドとガゼフがいる。
デミウルゴス「なるほど流石鈴木君。正にウチのエースですね!」
鈴木悟「は、はは。任せてください!」(冷や汗たらり)
アルベド「流石課長~~」

どや?

いびるちゃん

王国学園二年生。学園内ではトップクラスの才女。
いつもツンツンしてるが容姿と成績、そして意外と面倒見がいいことでクラスの人気者。
家ではサトルにデレデレ。ある事情で一緒に暮らし将来を誓ってる。
超人気タイトル『ユグドラシル』にはまってる。

ミスったw

これでおっけー!  かな?

怖いから酉変えておきます。

せっかく酉も付けたのでまた書きたいと思います。
またよければ読んでください~~

テスト

書けたので速やかに投稿します。

前回書いた戦闘メイドの休日の続きです。
よろしくお願いします。


オーバーロードSS 『ナザリック狂詩曲』

ナザリック地下大墳墓 勤務室




「ん~もう一押しといったところか」


いつもの黒壇の机が置いてある部屋でアインズは一人羊革紙を読んでいた。
アンティーク調に作られた大きめの椅子をしならせながら羊革紙を考え込むように覗く姿は
支配者というよりも大企業の社長のようである。


コンコンとドアを数回ノックする音が聞こえる。


「入れ。――忙しい中呼び出して悪いなアウラ」


「いえそんな! アインズ様のお呼び出しならどこからでもすぐ駆けつけます!」


相変わらずの畏まった態度とやり取りにアインズは軽く頷く。


「アインズ様、それなんですか?」


アインズの座る椅子の脇からアウラがひょっこり顔を出す。
普段であれば不敬な態度と指摘されるような行動だが、今この部屋にはそれを指摘する人物はいない。


「ん、あぁこれは王国で売っている新聞みたいなものだ。司書長に翻訳させたやつだが……」


ふとアウラを見るアインズ。前に東の森を二人で探索してから、アウラは前よりも自分に懐いているように思える。


「?……どうしたんですかアインズ様?」


不思議そうにこちらを覗くアウラ。その可愛らしい仕草に微笑ましさを感じる。
アインズの顔に頬肉があればだらしがなく緩んでいただろう。


(共同で行動する事でお互いの意思疎通が上手く出来た結果だな。これはいい事じゃないか。仕事は仕事、それ以外の時はこうやって家族のように過ごせたら……)

家族という単語に感慨深い何かを感じるアインズ。
父親としての自分を想像し、その横に怪しく微笑むアルベドが現れ妄想を掻き消すように頭を振るう。


この部屋で押し倒されて以来アルベドの事が少し怖い。


「大丈夫ですかアインズ様!?」


心配そうなアウラを安心させるようにいつもの支配者らしい態度に戻る。


「ん、んん!大丈夫だアウラ、少し考え事をしていた……うん、よしアウラそこに立っていたら読みにくいだろう。――私の膝の上に座るか?」


えぇー!っと言った声が部屋中に鳴り響く。
慌ててメイドと八肢刀の暗殺虫(エイトエッジ・アサシン)が駆けつけるがアインズはなんでもないと追い返す。


嫌なら~とアインズが言いかけたところでアウラはこれでもかと首を振るう。


「違います違います! 嫌じゃありません! しかしその至高の御方の上に座るなんて恐れ多いこと……不敬です!」


アインズはアウラの慌て様に悪い事をしたと思いつつも、アインズの膝上を未練がましそうに見るアウラに新聞を置いて膝をポンポンと叩く。
あ、あ、とゆっくりと近づくアウラ。


「構わんぞアウラ。私が許可しているんだ、遠慮せずに座れ」


アウラは数度息を整えると失礼しますとアインズの膝の上に座る。


カチコチに緊張して長い耳まで真っ赤だ。
アインズからは見れないがその顔は山の頂上の絶景を見下ろしてるような感動しきった顔だ。


うむ、と子供を膝に乗せる父親のような満足感を感じながらアインズは再び新聞を読む。
読み終えるまでの間アウラはただの置物のように動かなかったがその表情はとても幸せそうであった。




しばらくのどかな時間が流れ、読み終えたアインズが新聞をデスクの上に置く。
一方のアウラはアインズの膝の上から下りた今でも身体をカチカチにさせている。


また数度深呼吸してアインズに向き合う。


「ありがとうございました!一生忘れません!!」


「う、うむ」


「……そ、それでその、私を呼ばれたのは?」


「あぁそうだった。実はアウラに聞きたい事があるんだ」


なんでしょうかと少し緊張した面持ちで態度を改める。


「いやそんな緊張しなくていい。実は今度モモンとして王国の『慰霊式』に呼ばれてな、その際に民衆に何か激励のような事をしてくれと頼まれたのだ」


王国の使者には『慰霊式』と聞かされたが、詳しい内容を聞くとヤルダバオトの襲撃で犠牲になった人々への慰霊と
王国の危機を防いだという祝賀を合わせたもので、どちらかと言うと『祭』のような話の印象だ。
日本人の感覚としてはやや不謹慎のように感じる。


「はぁ……」


「私としては軽く挨拶して終わりにしようと思っていたのだが……ある計画の為、より民衆に好感を持たれるような事をしたくてな」

アインズの作り出した冒険者モモンという人物は既に王国では絶大な人気がある。
ヤルダバオトを撃退し王国を救ったことで一般の多くの人間にもモモンの名は知れ渡ったであろう。


しかしと思う。アインズは新聞に目を落とす。


新聞に書かれた記事はどれも絶賛された内容ばかりだが、決まって『謎の』とか『実は○○ではないか』など
変な憶測と根も葉もない噂が書かれている。


これはモモンの秘密を隠す為仕方ない事なのだが、これからの計画を進める上で何かしら障害になるかも知れない。


人の口に戸は立てられぬ。噂を完全になくす事はできないが、一般の大衆にモモンという人物は好人物であると
アピールできれば流れる噂も良いものへと変わるだろう。


「そこでターゲットを子供に縛り、何か催しものを考えてる」


不特定多数に対するアピールでは効果は薄い。好感を持たれるならばやはり子供だろう。
子供に好かれる人物を怪しく思う人間は少ないはずだし、子供に好かれればその親にもいい印象を与えるだろう。


「なるほどそれで私が……」


どこかがっかりしたように返事をするアウラ。


(子供の事は子供に聞くのが一番。売りたい商品を売るには顧客の気持ちを考える。商売(マーケティング)の基本だ)
アウラの様子に気付かず、うんうんと一人納得するアインズ。


アウラは少し悩み、その後真っ直ぐとアインズを見ながらビシッとした態度で自分の答えを言う。


「……そうですね。私はアインズ様にしてもらえることなら何をされても嬉しいです!」


「あぁ……うん、とても嬉しい返答だが、その中でも特にこうしてもらったら嬉しいとか、こういう事がしたいとかないかな?」



再び悩みだすアウラ。


「そうですね……ナザリックがここに来たばかりの時、アインズ様が私の階層でスタッフオブ・アインズ・ウール・ゴウンの力をお見せ下さったことが嬉しかったです。あとは……その……またアインズ様と二人でフェンリルに乗りたいなって」


もじもじと照れるアウラをよそに、なるほどなるほど、と唸るアインズ。


「――うん! いいアイディアが閃いたぞ。感謝するぞアウラ」


満足気なアインズに満面の笑みのアウラ。至高の御方に喜ばれることこそ自分の喜び。


「はい!アインズ様のお役に立てて嬉しいです!」



今回は以上です。
この話をメインに続きを投稿したいと思います。

でもたまに思いつきでまったく違う短編を載せることもあるので
楽しんでもらえれば嬉しいです。

アリガトウゴザイマス!!

続きは土日のいずれかに投稿したいと思います。(少しオーバー気味な敬礼

テスト

書き終わったので速やかに投稿。
前回の続きです。



オーバーロードSS 『ナザリック狂詩曲』その2




ナザリック地下大墳墓 第九階層



その日マーレはデミウルゴスに呼ばれていた。


指定された場所である第九階層のバーカウンターに予定された時間より早く着いたマーレは
キノコ頭の副料理長に挨拶するとバーカウンターの奥の椅子に座る。


副料理長はニッコリ――彼の顔ではそういうことになっている表情を見せると
慣れた手つきでグラスにリンゴジュースを注ぐ。
マーレは礼を言うとリンゴジュースをちびちびと飲みながらデミウルゴスを待つ。


今回のデミウルゴスの呼び出しには事前に姉(アウラ)には秘密でと伝えられていた。


何やら重大そうな話で正直不安だ。デミウルゴスの話だからナザリックにとって重要な話なのかも知れない。
それかまたナザリックにとって有益な計画を立案したのだろうか。
もしそうなら自分はそれに従い一生懸命頑張るだけだ。


自分の存在はただ至高の御方の為にある。そこに何の疑念も無い。
バーの雰囲気に誘われてかそんな物思いにふけるマーレ。



しばらくして約束の時間ピッタリにデミウルゴスが現れた。


「やぁマーレ、待たせてすまないね」


「い、いえ平気です」


デミウルゴスはマーレの横の席に座り、副料理長に目線で合図する。
副料理長も心得えおりスナップを利かせシャカシャカとシェイカーを振るう。
やがて軽快な音が収まり、グラスに鮮やかな真紅のカクテルが注がれる。



「それじゃまずは乾杯しましょうかマーレ」


「え、えっと、何にでしょう?」


「そうだね。コキュートスと飲む時もそうなんだが……至高の御方々に」


「――はい! 至高の御方々に!」


軽く音を鳴らし互いにグラスを飲む。
紅いカクテルを上品に傾けて飲むデミウルゴスは様になっていて大変格好いい。副料理長も満足気である。



「仕事はどうかなマーレ?」


「は、はい。基本は第六階層の守護ですが、たまに姉に頼まれて外の要塞造りを手伝ってます。あとはアインズ様の御命令で重要な伝言を伝えたり誰かを手伝ったり……」


マーレは仕事を思い出すうちに嬉しさを押さえられないといった感じで口元を緩ませ思い出にふけ、ハッとする。


「す、すみません。僕がアインズ様にご報告する度に、アインズ様が優しく声をかけて下さるのが嬉しくて……それを思い出して……」


うんうんとよく分かるといった様子でアウラの話を聞くデミウルゴス。


「私もアインズ様にお会いするたびにアインズ様の器の大きさを実感するよ。私などの身を案じて、お慈悲ある言葉をかけて下さったり、私の仕事において何かと都合させて頂けたり……」


デミウルゴスとマーレは互いを見ると自らの最高の主人に向け乾杯する。
グラスの飲み物はこれ以上ないほど美味しく感じた。




しばらくアインズ関連の雑談、ほとんどがアインズを褒め称えたものが続いたが、一息ついた時マーレが口を開いた。


「あ、あの、それでお話というのは?」


「んん、まぁ正直なところそれほど重大な話ってわけではないんだ。呼び出しておいてなんだがね。……アウラの様子は最近どうだい?」


はぁと伺うようにデミウルゴスを見るマーレ。デミウルゴスにしては歯切れが悪い言い回しだ。


「お、おねちゃんですか?……最近特に変わった感じは……ありません」


デミウルゴスは「そうか」と呟くと何やら考えこんでいる。しばしの沈黙にマーレが不安を覚える。


デミウルゴスが何度かグラスに口を付けると重々しく口を開いた。



「……今メイド達の間である噂が流行っていてね――『アインズ様がアウラに告白した』というものだ」


「え、えぇーー!!??」


普段のマーレからしてみればかなりの大きな声を上げ驚愕の表情を見せる。


「ほ、ほんとなんですか!?」


「それを確かめる意味を込めて君に聞いてみたのだがね。メイド達の話を聞くに真実みたいなんだ」


マーレは開いた口が塞がらない。姉がアインズ様に告白された、それはつまり姉はアインズ様のお嫁さんになるってこと?
いや違うそうと決まったわけじゃない。告白されたってことは好きって言われたってこと。愛してるってアインズ様に言われて――



「羨ましい――」


「えっ?」


「い、いえ! しかしそれはその……大変なことなんじゃ……」


不安そうに尋ねるマーレに対し、デミウルゴスは少し意地悪気な顔をして大袈裟に肩をすくめる。


「いーや。話を色々聞いてみて察するに――アインズ様のアウラに対しての告白というのはあくまでただの慈愛の御言葉。子供に対する大人の愛情でしょうね」


デミウルゴスの言葉の意味を慎重に考えて、デミウルゴスのおどけた態度を考えて……。
ようやく冗談だと気付く。


ふにゃふにゃとカウンターにうつぶせるマーレ。ホッとしたような残念のような複雑な気持ちを溜め息で出す。


「ハッハッハッ、驚かせてすまないね!」


「び、びっくりしました……」



小さなドッキリを成功させ悪魔らしく上機嫌なデミウルゴスだったがそれもしばらくの間で
眼鏡に手を触れると表情を変えるように眼鏡を直す。


「噂の内容自体は他愛無いものです。よく聞けば冗談のたぐいと分かりますし、アインズ様とアウラの微笑ましい話です。……だが噂を聞いた中には本気に捉える者もいるかも知れません」


マーレの頭に約二名の守護者が現れマーレの頭の中で盛大に暴れる。デミウルゴスも同じ想像をしているのか頭痛を抑えるように頭に手を当てる。


「だ、大丈夫でしょうか?」


「まだ何も動きがないから二人はまだ知らないのだろう。特にアルベドに知られてないのは幸いだ。正直放っておきたいところだが、最近の統括殿の行動を見ると……忠誠心と能力は疑わないのだが」



デミウルゴスは不満を飲み込むようにグラスを傾ける。


「とりあえず噂をこれ以上広めないようにメイド達にやんわり言っておいた、変に口止めして噂に『尾ひれ』がついてはたまらいないのでね。厳禁にはしてないからいずれアルベドやシャルティアの耳にも入るだろう。なのでこちらから先に手を打つ」


「て、手を打つ?」


「コキュートスには既に了解を取ってある。あまり乗り気じゃないがね。マーレにも協力して欲しい」


デミウルゴスの策だ、悪いことにはならないだろう。マーレは頷き了解した。




こうしてナザリック内で起こる狂詩曲は静かに始まった。


今回はこれでおしまいです。また続きます。

普段冷静なデミがプライベート?や牧場で趣味に走ってる時では、はっちゃけていて好きです。
アルベドの腹筋にツッコミ入れたりセバスとバチバチしたり意外と感情的な場面が多いでよね。

続きはまた来週の土日辺りか
合間に何か浮かんできたら投稿したいと思います。

ヘロヘロさんが「まだナザリックが残ってたなんて思ってなかった」って言ったときも
口を閉じるだけしか感情抑えられてなかったな
次の言葉で気持ちが解れたけど
行動の加減や周り(人)への感情や社会人としての自重意識が変わっただけっぽい

期待にそえるか分かりませんがゆる短いSSの投稿でありんす。
軽い気持ちで読んで下さい。……わん。



干物にならないで! 吸血鬼いびるちゃん



王国学園 校庭



ラナー「はいクライムいきますよ~~」


クライム「お任せ下さいラナー先輩!」


ラナー「え~~~~い」ポイ


クライム「ん~~~~とうっ!」パス


ラナー「あははは、ナイスキャッチです~~♪」




ブレイン「いいな~カップルでキャッチボール、羨ましいぜ」


イビルアイ「そ、そうか? なんか違うような……」


ラキュース「っていうか今は運動会の準備中よ、何やってんの!」



マーレ「せ、先輩ライン引き持ってきました」テッテッ


ラキュース「あらあら~ありがとうマーレ君」ツンツン


マーレ「な、なんでホッペをつつくんですか?」


ラキュース「さ~て何ででしょう」ニヤニヤ


イビルアイ「――〈結晶散弾〉」バババッ!


ラキュース「ぎゃーー!!??」


イビルアイ「後輩にセクハラするな」


ラキュース「ててて。なんで私ばかり! あっちのはどうなのよ!」指差し!



シャルティア「ほれほれ~しっかり支えないとテントが崩れるわよ~でありんす」さわさわ


アルシェ「なんでお尻ばっか触るんですかー!?」




イビルアイ「うん。あれはあれで幸せだろう」


ラキュース「あなたね~~あの人のこと笑えないわよ」


イビルアイ「ぐっ!?」


ラキュース「あっ、ブレイン」



ブレイン「シャルティア先輩~~俺の尻も触って下さい~~!!」


シャルティア「〈清浄投擲槍〉MP追加!!」


ブレイン「ぐえぇぇーーーー必中ーーーー!!」





イビルアイ「何やってんだか……おーいラキュース出番だぞ」


ラキュース「いっそのこと灰にしてやろうかしら」



マーレ「あ、相変わらず怖いですねシャルティア先輩……」


イビルアイ「うむ。……そういえばマーレは親戚だったな」


マーレ「はい、明日の運動会はママと叔父さん、お姉ちゃんとシャルティア先輩でお昼を食べるんです」ニッコリ


イビルアイ「そうか……それは……羨ましいな」


マーレ「イビルアイ先輩は家族の方来られないんですか?」


イビルアイ「仕事が忙しいからな……」




総合商社ナザリック



鈴木悟「チェック終了っと」


ガゼフ「課長、例の資料できました」


鈴木悟「うん、これで企画書はまとまった。ガゼフ君のおかげで早く終わったな」


ガゼフ「いえ課長程では! 『新カルネ町開発計画』無事成功させましょう」


鈴木悟「あぁ頑張ろう」


ガゼフ「では自分は現場との打ち合わせがありますので、失礼します!」スタスタ




鈴木悟(ふぅ、ガゼフさんの方が貫禄あるなぁ。そんな年齢変わらないのに……)


アルベド「課長お茶が入りました」


鈴木悟「あぁ、ありがとうアルベド君。……君の淹れるお茶は美味いね」


アルベド「ふふふ、心を込めて淹れてますから♪」


鈴木悟「な、なるほど。ところで明日の休みなんだが――」


アルベド「はいモチロン空いております!」


鈴木悟「アルベド君もか。実は私も珍しく空いててな」


アルベド「」ワクワクそわそわ




鈴木悟「妹の運動会に出れそうなんだ! 前にも話したが歳が離れた妹がいてね、いつも行事に出れなくて可哀想で……アルベドくん?」


アルベド「ソウデスカー」


鈴木悟「?」





アパート 黄金の輝き亭



いびるあい「よっしゃ! スルト倒した、原初の炎ゲットだぜ」カチャカチャ


鈴木悟「次は氷の魔竜を……」


いびるあい「いやまだまだ! あと三つは取るよ!」


鈴木悟「うぇ……。いやダメだ、明日運動会なんだし今日はほどほどだぞ」


いびるあい「む~~どうせ明日サトルは見にこないんでしょ~」


鈴木悟「いや、あれ言ってなかったか? 明日俺休みだよ?」


いびるあい「えぇーー!? 聞いてないよ!?」



鈴木悟「あぁ……そうだ行けるか分からないって言ったんだった。ごめん!」


いびるあい「いいよ別に! あっそうだお弁当」


鈴木悟「出店があるだろ? 俺が買っとくよ」


いびるあい「じゃあ焼きそばとフランクフルトとかき氷!」


鈴木悟「任せてとけ!……明日楽しみだな」


いびるあい「うん! えへへへ、サトル大好き!!」いびる~~ん!



鈴木悟「」パアーーーー


いびるあい「よーし! じゃああと一回倒したら寝よ」


鈴木悟「よしよし。じゃあ、サキュバスを倒しに」


イビルアイ「――〈結晶散弾〉」


鈴木悟「ギャアアーー!!」


いびるちゃんの運動会はいかに!?


とりあえず終わり。こっちは続くか不明。

うちの運動会には出店があったんですが、そうじゃない学校の方が多いみたい。

ラナー。
幸せ全開。クライムとは幼馴染。優秀な生徒で次期生徒会長候補だったがクライムといちゃつきたいので辞退。

クライム。
幸せ全開。ラナーに相応しい男になるために日夜努力している。剣術クラブに所属。顧問のコキュートスに指導されている。
童貞ではない。

テスト

なぜか家のパソコンからだとこのスレが開かなくなり漫画喫茶から投稿することになった。
けどめげない。始めます。



オーバーロードSS 『ナザリック狂詩曲』その3





王都 中央広場




飾られた壇上の上から漆黒の戦士が万雷の拍手を受けながら降りる。
拍手だけでない。歓声や口笛、あらゆる歓喜の表現が向けられ、中には涙ぐむものさえいる。


「素晴らしい演説でした!」


王女ラナーが輝くような笑顔で漆黒の戦士を称賛するとそれを皮切りに
今回この式典『慰霊式』に参加した要人達が続々と漆黒の戦士に握手を求めてきた。


皆、称賛の言葉を口にし漆黒の戦士を褒め称える。



(はぁ。勘弁してくれ……)




漆黒の戦士ことモモン……ことアインズは胸の奥で大きな溜め息をついた。


今回この慰霊式に出るにあたって国民に激励の言葉を送って欲しい、つまるとこ演説を頼まれたのだが
正直なところアインズには全く自信がなかった。


この体になってから演説のような事は何度かしてきたが、それはあくまでナザリック内でのこと。
支配者という立場での演説と今回みたいな立場での演説は全く違う。
そもそも普段の演説だって上手くいっているのかと疑問が残る。



(功労者の立場でとはいえ、大勢の人間の前でいったい何を話せというのか……)



そもそも立場で考えればアインズは『加害者』側なので加害者が被害者に激励の言葉を送るということになる。
笑えるほど理不尽な話だが、アインズの心に罪悪感という気持ちは既にない。



『そんな事』よりも演説の内容に困ったアインズは
それとなくデミウルゴスに相談し草案のようなものをデミウルゴスから受け取る事に成功した。


一安心と思いきや、よくよく内容を読んでみると、どうも高圧的というか人間を見下してるような印象を感じてしまう。


結局悩んだ末、デミウルゴスの草案を元でに書き直し、何度か抑制しそうになりながらも演説を成功させた。


(しかしなんか予想以上に受けているな)


喋っていた自分でもなかなか良いこと言ってるなぁとは思ったが、結果を見るに予想以上に素晴らしい演説になっていたようだ。
壇上から降りてしばらく経つがいまだに歓声が止まない。





今回アインズが書き直した演説部分は、鈴木悟の時に見た大昔のロボットアニメをそのまま『パクらせて』もらった。


アニメ好きの仲間に「これぞロボットアニメの古典だ」と進められて見た作品で
ロボット物ながら人間ドラマが面白く、当時は結構ハマってしまった。


その作品内に出てくる独裁者の演説とデミウルゴスの草案が合わさった結果
『恐ろしく盛り上がる演説』になってしまったことにアインズは気付かず


「この原稿、また何か使えそうだな」と呑気に思う。



「モモン様っ、素晴らしい演説でした!!」

仮面とフードを身に付けた子供のように小さい人間がこちらに向かって来る。
心の中で舌打ちをするアインズ。


(ナーベではないが、下等生物(ハエ)と言いたくなるな)


ガゼフが出席出来ないと知ってホッとしていたところに現れたので余計にうっとおしく感じる。



「モモン様の後に語る者は可哀想ですね、あれ以上の演説など出来ないでしょう」


「どうもありがとうイビルアイ。……それよりここに居て大丈夫なのか? この後すぐに出立すると聞いたが?」


アインズは内心とっと行けと、促すように遠くで手を振る『蒼の薔薇』の面々を見た。
すでに挨拶と激励を終えてる蒼の薔薇は式の最中だが急ぎの用で途中退場すると聞いてある。


「あの老婆が急用などと言わなければ――っとモモン様には関係ない話でしたね。仲間にお願いして少しだけ時間をもらいました」

アインズは少し身構える。この女は出会いから幾度かこちらに怪しい視線を送って来ている。
……もしやという疑いの芽がアインズにはあった。


「その、モモン様に言いたい事があって!」


「…………なんだ」


「実は私は…………」


イビルアイはそこから先何も言わず沈黙してしまう。
何が言いたいんだとアインズが仮面の顔をじっと見つめると、イビルアイは背けるように顔を横に向ける。



本当になんなんだコイツとイライラし始めるアインズ。
この仮面の女には会ってからずっと不快な思いをさせられっぱなしだ。
今も仮面で表情は分からないが、時おり熱い視線でこちらを見ている気がする。


しばし沈黙が続くと式の外れから美しい女性がモモンに近づいて来る。


「モモンさ――ん。こちらの準備が整いました」


美しい女性、モモンのパートナーであるナーベはその場の空気を読まず、無遠慮にモモンとイビルアイの間に入って来た。
イビルアイが仮面の下で小さい声で呻く。


「了解した。すまない、こちらもこの後に催しの準備があるのだが」


「あ、あぁそうですか……」


「話の方だが――」


「いえその――! 今度エ・ランテルに寄るので一緒に買い物等でもどうですか?!」



何を考えてるのか分からないが、イビルアイの『提案』に思わず息を漏らし苦笑してしまう。


「……素敵な提案ですね。喜んで付き合いましょう」


アインズの苦笑の声を喜んでいると勘違いしているのか、イビルアイはどことなく嬉しそうに感じる。


「ありがとうございます!ではまたいずれ!」


別れ際に意味ありげにナーベを見ると仲間の元へ文字どおり飛んで行った。


「よろしいのですか? あのような約束を下等生物(ガガンボ)にしてしまって」


「構わない。――楽しみだよエ・ランテルに来るのが」


漆黒の兜の下、暗く笑うアインズにナーベは静かに頷いた。




来賓の挨拶が終わり、ささやかな祭りが始まった。
出店から香しい肉の焼ける匂いとワインの香り。楽団が音楽を奏で、そのリズムに踊り子が踊る。


モモンとナーベがいる噴水前の広場では子供とその親御がモモン達を囲むように並んでいる。


「集まって頂いたことに礼を言おう。これよりささやかなながら余興をお見せしようと思う。喜んで貰えたら嬉しい限りだ」


子供達が騒ぎ、大人達が拍手する。


「まずは挨拶代わりだ。少々危ないので皆さん離れてください――来い、ハムスケ!」


広場の端で待機していたハムスケが民衆を飛び越えモモンの元へ現れる。
歓声から悲鳴に変わり、怯えが走る。


モモンを乗せ従っていることは理解しているはずだが、人々は森の賢王の姿には今だ慣れてはいない。
アインズからすればただのでっかいハムスターだがこの世界の人々からすれば恐ろしい魔獣なのだ。


そんな民衆の反応に我関せずのハムスケは背中に取り付けられた大きな鞍をうっとおしように体をよじっている。




「今日は森の賢王ことハムスケの力を皆さんにご覧にいれよう!」


「よろしくお願いするでござる!」


モモンがナーベの手伝いで二つの大剣を抜くとハムスケに構える。
ハムスケもそれに合わせ可愛い瞳をキュッと引き締める。


「いくぞハムスケ!」


「はいでごさる殿!」



モモンが剣を振るう。離れている民衆にまで剣風が届き、その太刀筋の鋭さに周りが驚く。
が、ハムスケはその太刀筋を紙一重でかわす。モモンは続け様に両手の大剣を振るうがハムスケは見事に避けきる。


こわごわ見ていた民衆からは次第に歓声が上がり、ハムスケが大きくジャンプしてモモンの後ろ側に立つと拍手が上がった。


「ナーベ!」


モモンの声に両者から離れた位置で見ていたナーベが用意していたリンゴをハムスケに投げつける。
ハムスケは投げつけられたリンゴを蛇じみた尻尾で切り裂くと、そのまま大きな口を開け食べた。



子供達が笑い声を上げる。
ナーベはまた一個、更にもう一個とハムスケにリンゴを投げつける。


そのどれもをハムスケは華麗に切り裂き口にほうばる。最早ただの観客とかした民衆が口々にハムスケを称賛する。


「最後だ!」


モモンの掛け声のもと、ナーベが複数のリンゴを投げつける。
空中に舞う五個のリンゴ。ハムスケはクルリと一回転して尻尾をしならすと一太刀でリンゴを切り裂いた。


数を増したリンゴは落下する勢いのままハムスケの口の中に入っていき
最後のリンゴがハムスケの口に入ると大歓声が上がった。




「ありがとうでござる~~♪」


観客に手を振るハムスケ。
さっきまで恐れられていたハムスケに子供達は「すごいすごい!」「カッコいい!」と興奮して近付く。
モモンの目が漆黒の兜の下でキラリと光る。


「私と乗ってみるか?」


一斉にモモンに集まる子供達。なぜかナーベも子供と一緒にに集まる。


(なぜナーベラルも期待しているんだ!)


ナーベを無視し、モモンは一人の可愛らしい少女を選ぶと少女の親御に許可を取りハムスケに乗せた。
支えるように後ろにモモンが座る。


ナーベからギリギリと歯軋りの音が聴こえる。後で拳骨だな。



ハムスケは少女が落ちないようゆっくりと噴水の周りを歩く。
最初は少し怖がっていた少女は徐々に嬉しそうに声を上げ、親に手を振るう。


再びの大歓声。今度はモモンに対して称賛する声が続々上がる。


「モモン様ありがとうございます!」


可愛らしい少女の丁寧な礼にモモンは少女の頭を撫で応えてあげる。
遠くでリンゴを握り潰したような音が聴こえる。


なんかお前アルベドに似てきたな。





その後数人の子供達と相乗りをするとハムスケから降り、子供達だけでハムスケと遊ばせる。


「うん。いいアピールになっただろう」


「はい。モモンさんを絶賛する声があちらこちらから聞こえて来ます。当然ですが」


この催しは大成功だろう。これでモモンという存在は更に人気者になったはずだ。


(アウラの発言がいいヒントになったな。帰ったら何か褒美をやるかな)


満足しているアインズにナーベラルは恐る恐るといった様子で神妙に尋ねる。



「あのアイーーモモンさん、少しお聞きしてもよいでしょうか?」


ナーベラルの様子を察し、人だかりから離れた所に場所を変えるとナーベラルに促した。


「なんだ?」


「その……アインズ様はあのような少女が好みなのでしょうか?」


「はぁ!?」


思わず大きい声を出してしまうアインズ。
さっきの言い回しはなんというか、先程のような少女を異性として意識しているのかと
聞かれたようなイントネーションだった。


「何を言っているんだ? 子供が好きかと聞いているのか?」


「いえその……実は……アインズ様がアウラ様に告白なされたという話を聞きまして」


「なっ!?」


続け様の衝撃に鎧の中で震えるアインズ。抑制が発動してしまうほどの衝撃だった。



今回は以上です。

ありがとうございました。

あと二回ほどで終わりの予定です。

また次の土日辺りに投稿予定ですが最初に書いた通り自宅のパソコンから投稿できない状態なので
どうなるか分かりません。

シャルティアにドキドキしちゃうアインズ様はなかなかその気が強い気もするな~。
ペロロンと仲いいのが~ペロロン様いい男友達なんだろうけど。

テスト

スマホから投稿。トラブルのせいで間延びして申し訳ないです。



オーバーロードSS 『ナザリック狂詩曲』その4




ナザリック第九階層 食堂



「アルベド様、ここから色を変えたいんですけど、どうしたらいいのでしょうか?」


「ここは色を変える段になったら変える色と一緒に少し編み込んで……そうそう」


アルベドに習いシクススが不器用ながらも編み進んでいく。


普段であれば香しい料理が並ぶそこは、今はメイド達が編み物を学ぶ場所になっていた。


「完成しました。アルベド様どうでしょうか?」


「あら素敵。インクリメント、あなた覚えるの早いわね」


「いえ」と控えめに恐縮するインクリメントだったがその顔は嬉しそうであった。


誉められたインクリメントに続けと他のメイドも黙々としかし楽しげに作業している。



今メイド達の間で編み物が空前の大ブームだ。


きっかけは一部のメイドがアルベドに編み物を教えて欲しいとせがんだのが始まりだった。


愛しのアインズの為ならば二十四時間三六五日働けるアルベドであったが
愛しの旦那様、もとい愛しのご主人様はそれがおきに召さないのか適度に休む事を勧めてくる。



主人の勧めを受け入れるのが臣下の勤めと、言われた通りに休日を作り休んではいるがなかなかどうも暇を持て余している。


そんな中での頼み事であったため、物は試しと教師役を引き受けてみた。


結果としては大成功でよいのだろう。
教わったメイド達も教えたアルベドも充実した時間を過ごせた。


が、あまりに好評で私にも教えて欲しいとメイド達が殺到。規模も大きくなり、今では非戦闘メイドの全てがアルベドの教え子になっている。



(休日の暇潰しだったのだけれど……)




実は編み物教室はある実験場になっていた。
さすがに規模が大きくなり一応アインズに了解を得ようとアルベドが伺ったところ、アインズが面白そうに興味を示したのだ。



非戦闘員のメイド達はレベル1でスキルもメイドスキルしか所有してない。


なのでスキルが必要な料理等をいくらやらせても必ず失敗してしまう。だがスキルを必要としない作業ならどうだろうか?


元々彼女達は外見以外の個性は細かく設定されていない。しかし実際この世界で生きる彼女達はそれぞれに個性があり性格も様々だ。


そんな彼女達に同一のスキルを必要としない作業をさせた場合どうなるか。


どの程度に上達し、また差が出るか。
アインズはアルベドにその観察と結果を報告するよう伝えた。



(嬉しいわ。思わぬところでアインズ様のお役に立てた)


こうしてアルベドとしてみても趣味と実益を兼ねた編み物教室はアルベドの休日のいいお楽しみになっていた。


「おぉ凄いっす! めちゃくちゃ可愛いっす!」


メイド達が囲んだテーブルの一角に突然ルプスレギナが現れた。


一人のメイドが編んでいるアインズ・ウール・ゴウンのギルドサインが編み込まれた黒地の手袋を指してはしゃいでいる。


客観的に見て可愛いと思えない尖ったデザインの手袋だがナザリックに仕える者からすると可愛いらしい。




「あらルプスレギナ珍しいわね……仕事はいいいのかしら?」


「あ、アルベド様……ハイ、えぇ大丈夫です。今日は村の出来事の報告に来ました……」


いつもの調子に乗っている態度から一変、アルベドの前では借りてきた猫のように大人しくなる人狼(ワーウルフ)。


それもそのはずで一見友好的なアルベドの表情とは別に体からは冷気のようなオーラを放っていた。


戦闘メイド(プレアデス)の一人として実力のあるルプスレギナはそれを敏感に感じとる。




少し前にルプスレギナは仕事上のミスでアインズに『激怒』されている。


智謀と力の王であると同時に慈愛の王でもあるアインズを本気で怒らせる者はナザリック内ではいない、というより生きてない。


それは万死に値する罪である。


少なくともアルベドはそう考えている。




(うーんでも、あれはあのあとちゃんとテストに合格したからOKっすよね?)


呑気にそんな事を考え、アルベドの態度を不思議に思うルプス。


しばらく考え、あることに思い至る。


「その……アルベド様にもチャンスはありますよ!」




訝しげにルプスレギナを見るアルベド。


「どういう意味かしら?」


「アインズ様がアウラ様に告白されたと言っても、まだアウラ様はお年がーー」

その先は言えなかった。突然空気が無くなったように息が出来なかった。
メイド達の編み棒を持った手が震えカチャカチャ音を立てる。


「それ詳しく教えてくれるかしら」


アルベドは笑顔で問いかけた。




ナザリック第六階層 闘技場



「お、お姉ちゃんに声かけました。しばらくしたら来るそうです」


「シャルティアニ声ヲカケタ、準備シテカラ来ルソウダ」


「ありがとうマーレ、コキュートス」


デミウルゴスは手にした資料を読みながらユリ・アルファに指示を出している。



闘技場内は簡素ながらテーブルと椅子が置かれ
テーブルから丁度見やすい所には即席のステージが作られていた。
その上にガラガラと移動式の黒板を置くシズ・デルタ。


「こんなものかな、ではユリ、この資料を配ってくれ」


ユリは持たされた資料を見て少しだけ恥ずかしそうにテーブルに置いていく。




資料はこの世界で流通している『性の営み』について書かれたものを司書に命じて翻訳したものだ。
ご丁寧に絵も描いてある。


「は、恥ずかしいです。本当にやるんですか?」


「気ガススマンナ……」


「ハァ。君達がそれでどうするんだね? これはアルベドの暴走ーーだけではなく、これからのナザリックに必要な知識だよ」




デミウルゴスが考えた策とは一般で言ういわいる『保健の授業』であった。


シャルティアはともかくアルベドは
例えアウラのような子供であっても女性として認識して嫉妬してしまう。


そこで『保健の授業』としてアルベドにアウラの情操教育をしてもらう。
そうすることでアルベドはアウラがまだ未成熟であり
性知識の乏しい『子供』であると意識出来るはずだ。


アウラもアウラで正しい性知識を学ぶ事ができ、勘違いしているかどうかは分からないが
アインズ様の寵愛を受けいれられる身体かどうか判断出来るであろう。




「出来ればシャルティアが上手くアルベドとアウラの間に入って進めてくれればいいが……彼女の『趣味』を考えると……」


「悪イ作戦トハ思ワナイガ、マーレハトモカク私ニモ必要カ?」


コキュートスがガチガチと顎を鳴らす。
威嚇の音っぽいが隣にいるマーレにはなんとなく照れているように感じる。



「必要だとも。今回は人型に限った話だが、他の種族の事も学ぶ必要があるだろう。君の支配しているリザードマンもそうだがナザリックに仕える種族の生態を学ぶ事は支配する上で大変重要な事だ」


デミウルゴスは今回の『保健の授業』の重要性を説くが
本当の『真意』はまだ胸の内にしまう。





それは『ナザリック内の者の交配』だ。


果たして我らに子供が出来るのか
また異種での交配は可能か。


ツァレとセバスの件もあるが今後将来的にもその可能性は確かめたい。


いずれナザリックが多くの国を支配下に置くとき
その国を治めるにはやはり忠誠心の厚いナザリックのメンバーが適任だ。


しかし国を動かすとなると今いる者では数が足りない。
ナザリック拡大の為にもナザリックの者の『生産』は急務なのだ。




それと同時にデミウルゴスには個人的な野望があった。


いずれアインズ様の『御子』が産まれた際には『国を一つ』プレゼントしたい。


出来れば美しく、国として強いものがいい。
そこにナザリックの次期主要メンバーになれる後継者を幹部に置き
治めて頂く。




デミウルゴスには珍しく禍々しい悪魔の尻尾をピンと立てる。


(いずれアインズ様に並ぶような智謀の王に成っていただく為にも補佐する者を厳選せば)


今回の一件が良い足掛かりになればとデミウルゴスは張り切る。



しかしデミウルゴスでも思いもよらない所で
その土台は崩れようとしていた。






今回は以上です。
ありがとうございました。



常識という概念が通用しない恐怖の世界(ナザリック)


誤字はともかく
行間が分かりにくいよーん

シャルティアは常識ありそうで常識ないと思いきや、そこそこある?

シャルティアは動かしずらい子だわ。
アホの子っぽい台詞を考えるけど、なんかそれはそれで違和感がある。

アインズ様的にシャルティア先生の保健の授業が一番良さげらしいけど

アリガトウゴザイマス!!

今回ちょっと諦めかけていてエタろうかなと思ってた分、読んでくれる人のレスがあるだけで嬉しいです。

セバスさんウブいからなー。
裏で色々と考えてるデミウルゴスと喧嘩にもなりそう。

別の国で竜と人間のハーフがいるからその内オメデタがあるかな~

スマホから投稿。
よろしくお願いします。



オーバーロードSS 『ナザリック狂詩曲』





???



シャルティアは紅茶を味わっていた。


奥深い香りのダージリンがシャルティアの可愛らしい鼻をくすぐる。
そのお供に味わうはこの世界で売られている高級クッキー。


潜伏していたソリュシャンが土産に持ってきたもので
様々な乾燥させた果物を練り込んである。


正直高級品という割に質素な菓子でナザリックで
作られる菓子に比べれば一段落ちる。


「まぁこれはこれで乙なものよね」



美食家気分で粗末なクッキーを許す。
そうこれらはあくまで演出のようなものなのだ。


シャルティアはテーブルに置かれた分厚い本を
ゆっくりと愛しそうにめくる。


『ペロロンチーノ様が所有していた百科事典(エンサイクロペディア)』


アインズから頂戴したシャルティアの宝物。


特に読書家ではないシャルティアだが
暇を見つけてはこの本を読んでいた。


何かを調べるわけでも
何か知識を増やそうというわけでもない。
しかし一ページ、一ページしっかりと読む。


「あ、うふふふ……」


丁寧な説明文の隅にぶっきらぼうに
だが説明文よりもより詳しい分析文を発見すると
シャルティアは嬉しそうに微笑む。


本の元所有者であり
自らを創造したペロロンチーノの書いた文。


それは例え一行にも満たない走り書きだとしても
シャルティアにとっては砂金を発見したような喜びを与えてくれる。


その度にシャルティアは本を閉じ
ゆっくりと紅茶を飲む。


シャルティアにとって最高の一時だ。



カーンカーン


ガラガラガラガラ


この音がなければーー


「ちょっと静かにしなさんし!」


「静かにすんのはアンタよアホ吸血鬼! 工事中なんだからうるさくて当たり前でしょ!」


杭を打ち付ける音と土砂が崩れる音
他にも色々な音が混ざりあい静かな森を騒ぎ立てる。


現在進行形でナザリックの出張要塞を作ってる場に
何故かパラソルを立て
リゾート気分で紅茶を飲んでるシャルティアに怒り心頭のアウラ。


「いやね~チビスケ。こうやって監視を手伝ってるでありんしょ?」


「どこがよ! お茶飲んでるだけじゃない!」


一応ナザリックから建築物資を運んでくるという名目で
ゲートを時々開いてはいるがそれだけである。
運び終ったならとっとと帰って欲しい。


「こういう事はお茶でも飲みながら優雅にやるものでありんすよ」


シャルティアが指を鳴らすとヴァンパイアブライドが恭しく紅茶を注ぐ。
そのままわざとらしく紅茶の香りを楽しむ素振りをすると
アウラに見せつけるように紅茶を飲む。



「ははーん。シャルティア、アンタ寂しいんでしょ?」


思わず紅茶を吹きかけるシャルティア。


「ば、馬鹿じゃないの!? そんなわけないでしょ!」


図星なのか素で喋るシャルティア。
色々と事情があるシャルティアは
あまりナザリックから外に出してもらえない。


「うう、いいでありんす。部屋でヴァンパイアブライドと乳繰りあってるでありんす……」


「あぁ分かった分かった、居ていいから! 邪魔しないでよ」


流石にシャルティアが可哀想になるアウラ。
シャルティアの事になると自分でも知らずに甘くしてしまう。


「いいでありんすなアウラは外で行動出来て、この前なんてアインズ様と二人で任務でありんしょ?」


「う、うん。まぁね」


シャルティアの問いかけに素っ気なく答えるアウラ。
アウラの態度を不思議に思うシャルティア。


アインズとの二人きりでのお出掛けなどご褒美にも似た任務だ。
自分であればアルベド達に自慢するだろう。


「そういえばメイド達がありもしない事を言ってたでありんす……」


「な、なにさ」


じっとりと、まるで炙るような視線でアウラを見る。


「アインズ様がアウラに告白されたとか」


アウラの顔が火を付けたかのように一気に真っ赤になる。
なんとか誤魔化そうとするがニヘっと口が緩み
身体を嬉しそうにくねらせる。


「え、本当に? え、はっ? ありえないでしょ?」


「……私のこと大好きだって」


浮かれるアウラにシャルティアは悪態つく。


「……『子供』としてでありんしょ? 嫌でありんすなぁ、マセた子供の勘違いわ」


シャルティアの言葉にアウラはくねらせたていた小さい身体をピタッと止める。


「……そうね。大きくなりなさいとは言ってたわ。で~も~、今の時点でもアルベドやシャルティアよりも好きだって言ってたし~。よっぽど普段の二人が煩(わずら)わしかったのかなー?」




空気が変わる。


一時前の掛け合いが冗談であったことを感じさせるように
シャルティアとアウラの間に剣呑な雰囲気が広がる。


この世界では存在自体が災害クラスのレベル100の化け物二人。
その二人が身体中から殺気を放つ。


普通の人間ならば対峙しただけで心臓を止めてしまうような氷の殺意。


その殺意が解き放たれそうになるその時。
シャルティアとアウラ、二人にメッセージが届く。




ナザリック第六階層 闘技場



デミウルゴスは事前にアルベドに今回の企画の許可を取っていた。


基本的に階層守護者は何かしらの仕事についており
全員で集まるには色々とスケジュールを調整しなければならない。


調整を管理するアルベドには今回の企画は『勉強会』だと伝え
アルベドも特に疑問を持たず了解した。


デミウルゴスにしてみても嘘をついたつもりはない。
『保健の勉強』はこれから先、必要な事だ。


しかしそれでも正直に言わなかったのは女性陣が嫌がると思ったからだ。
男性陣でもあまり歓迎さてないこの勉強会を
女性陣が好むとは思えなかった。


これは自分の思い過ごしで実際は抵抗ないのかも知れないが
とにかく何か『いちゃもん』をつけられても説き伏せるだけの言い訳と正論は考えてきた。


後は思った通りの結果を出さねば
デミウルゴスはその聡明な頭脳で色々と考えていた。


ーーが。それは現れたアルベドの姿によって霧散に消える。


「あら皆早いのね」


「あぁアルベド待って、た…………」


ピンクのパステルカラーを基調としたフリフリのワンピース。
柄にはクマやウサギのヌイグルミがプリントされ
蝶々に結んだリボンが端々に備えられている。


頭には青のリボンが付いたカチューシャ。
足はピンクとホワイトのしましまニーソックス。


腕には『これが今日のファッションのキーポイント』とばかりに
アインズのでっかいヌイグルミを抱いている。


アインズの元の世界でいう『スウィートロリータ』
俗に『甘ロリ』とも呼ばれるファッションで
シャルティアのよく着るゴシックロリータとは真逆のロリータファッションである。


『ピュア』と『天使』をモチーフとしている甘ロリ衣装に身を包んだ大天使アルベドとも言うべき存在は
「どうしたのかしら?」と普段と変わらぬ感じで唖然とするデミウルゴス達を見る。


「な、なんですかその格好は……」


あのデミウルゴスが大変珍しく動揺している。


ナザリック一の切れ者の頭脳が目の前の人物がどうしてそんな格好をしているのか考えようとして
色々考えて、面倒くさなって考えるのを止める。


「あぁこの格好? アインズ様はどうやら『子供っぽい』格好が好きみたいで……どうかしら?」


と、少女のようにいたいけなポーズに上目遣いをするアルベドだが
大人びたアルベドがやると可愛らしいどころか痛々しい。


マーレはおろおろと困ったように目を背け
コキュートスはガチガチと顎を慣らし警戒音を出す。


混沌(カオス)とかした闘技場に黒い渦が現れゲートが発生する。


「子供は子供らしく恋愛ごっこしてるでありんす!ーー!?」


「アンタだって子供みたいな体系の癖に!ーー!?」


ゲートから口喧嘩しながらシャルティアとアウラが出てくるが
目の前のアルベドに驚きで固まる。


「何よそのイカれた格好は!?」


「風俗嬢ってヤツでありんすか?」


二人の暴言にアルベドが顔をヒクつかせ二人に迫る。


「誰が風俗嬢よ!! 可愛いでしょ!! っていうかシャルティア、あんた人の事言えるの?」


「この衣装は『美少女』の私だからこそ相応しい服装なのでありんす! オバサンには無理でありんしょう?」


オホホと笑うシャルティアと今にも我慢の蓋が開きそうなアルベドをよそに
アウラがテーブルに置かれた資料に目をやる。


「げ、なにこれ。エッチな本?」


アウラにつられてアルベドとシャルティアも資料を目にする。


「夜の営みについて……基礎から学ぶ性の仕組み……」


「これが『勉強』でありんすか? 馬鹿馬鹿しいでありんす……」


熱心に資料を読むアルベドとは対象的に
つまらなそうに呆けるシャルティア。


「そ、そうそう。私にも必要ないし!」


「「貴女(チビスケ)はやりなさい」」


「な、なんで!?」


「貴女はこれから大人になってくのだから勉強しないと」


「そうそう。自分が子供だって分かってればアインズ様が言った事の意味も良く分かるでありんす!」


シャルティアの言葉に思い出したようにニッコリと笑うアルベド。
笑ってはいるが先程よりも殺気だっている。


腕に抱えたアインズ人形がアルベドの豊満な胸に挟まれ苦しそうに歪む。


「うふっ。そうそう忘れてたわ、アウラに聞きたいことがあったのよね!!」



女三人寄れば姦しい。


今回の集まりの事など忘れて騒ぎまくっている女性守護者達。


アルベドどころかシャルティア、いつもは止めに入るアウラまで暴れている。



完全に忘れ去られた男性陣。
どうしたらいいか分からないマーレはデミウルゴスを見て固まった。


デミウルゴスの顔は『素顔』に戻っており
背中からメリメリと音を立てて悪魔の翼を広げている。


誰がどう見ても怒っている。


正真正銘のマジギレだ。


それに気付かないアルベド達。


コキュートスも万が一を考え戦闘体勢をとる。


マーレも混乱しながらも杖を構える。



止めようにも止められぬ。
ナザリックの『狂詩曲(ラプソディ)』が始まる。






しかしその指揮棒(タクト)は下りる事はなかった。





ーーーーそれは突然に守護者全員に伝えられる


『守護者達よ、全員王座の前に集合せよ』


今回はここまで。

次回、最終回!!

次回は次の土日に。

オーバーロードはアニメから興味持って読み始めたわけだけど、最初は立ち読みですませてたんだよね。

でも気づけば毎日本屋に通ってて、肩の痛みとか気にせずに閉店近くまで読み耽ってて、いや~~ハマった。

初回特典とか知らずにまずは古本屋にあった巻数全部買って(四巻以外全部揃ってた)
後から八巻の初版におまけがあると知って悔しがって自分の持ってる八巻捲って見たらおー風ー呂ーってなっててガッツポーズ。神はいた。

年齢がバレるかも知れないがライトノベルを買い集めたのは陰からマモル以来久々。

最近はまた色々と立ち読みしています。
下ネタとか立ち読みだと色々とキツいけど面白いっす……ブループラネット×モモンガ

思いつきで書いて気付けばこんな時間。

俺、これ投稿したら寝ます。

前の話とは関係ないよ!!


オーバーロードSS

ロック・トゥ・クライム




リ・エスティーゼ王国 王都



一際目立つ白色の鎧が繁華街の通りをうろうろしている。


王のお膝元で『表向き』はきちんと取り締まりされているこの繁華街は
所謂風俗紛いの店よりも、いくらか上品な飲みの店が建ち並び
大人の女性と楽しく飲めると評判の繁華街であった。


白い鎧を着た少年が女性の唇がでかでかと描かれた看板の店の前まで近付く。
二歩、三歩と近付くが、途中でピタリと止まり元の位置に戻ってしまう。


店の前に立つポン引きは白い鎧を着た少年を迷惑そうに見ていた。


本来であればこの迷える少年に声を掛け、優しく大人の階段を上らせるところだが
この白い鎧を着た少年は『とある人物』のお付きでここらでは名の知れた少年なのだ。


しがないポン引きでしかない男はわざわざ自分から面倒事に巻き込まれるのは御免であった。


行ったり来たりの少年は何回かそれを繰り返した後
大きな溜め息をつき少年とは思えないほどしわがれた声で愚痴を吐く。


「情けない」


先日の事であった。


たまたま万引きをした女性を発見し、取り押さえようしたところ揉み合いになり
その時偶然女性の胸を掴んでしまったのだ。


女性が悲鳴を上げ、クライムは思わず手を緩めてしまい
その隙に女性は逃げてしまった。


その後なんとか捕まえる事は出来たが、なんとも恥ずかしく情けない事件だった。


童貞……もとい、女性の扱いが下手な事は自分でも自覚してはいた。
でもそれは些細な問題であり、そんな事よりも剣術を鍛え強い男になる方が重要だと思っていた。


が、今回の事は童貞……じゃない、女性の扱いが下手な事が原因での失敗だ。


(命を賭けた闘いなら大丈夫だとは思う……しかしこのままでは)


ブレインや元冒険者の盗賊に相談するまでもなく、原因は自分で理解している。


解決するには女性と接しても冷静でいられるよう気持ちを鍛える必要がある。


そう思いとりあえずはこのようなところまで来てみたが、ふと考える。


(恥ずかしい気持ちもある。だがそれ以上に自分を『汚して』よいのだろうか)


しばらく考え、そして自分で自分を嘲笑った。
『既に汚れた身の上』の癖に何を考えているのか。


しかしそれでも何故か、この考えが捨てきれない。
何故汚れると思うのか、何故踏みとどまるのか。


自分でも分からない。
分からないが、二度とあの御方の前に立てないような気がした。


(自分でも馬鹿な考えとは思う……)


クライムは自分の胸の奥。自分の『芯』で太陽のように輝く女性を想う。
この国の姫であり、黄金とまで詠われた美女、黄金姫ラナー。


自分の人生は彼女の為にある。
彼女の為ならばこの身体、この命、全てを捧げる覚悟はある。


だがしかし、これは決して吟遊詩人が語る夢物語の姫と騎士の物語ではない。
『想い』までは捧げなくてよいのだ。
それはきっと迷惑で、優しい姫様を困らせるだけなのだから。




ーーーーそれでも。


「……止めよう」


玉無し、意気地無し。罵詈雑言がクライムの頭を巡る。
しかし気持ちに嘘は付けず、忠犬らしく主の元へ帰ろうとする。


その時であった。
繁華街の路地、店と店との間の物陰で何か言い争う声がする。


危険を察知したクライムが剣に手をかけ声のする方へと近付く。


「だから知らないって言ってんだろ!?」


「本当か? 嘘を付いても為にはならないぞ……」


物陰から覗くと二人の男が言い争っていた。


一人の男は一般人のような格好はしているが両耳にでかいピアスを嵌めており
どことなく堅気には見えない雰囲気を纏っている。


もう一人は大柄で全身をローブで覆い、顔には仮面のようなものを付けている。
何も悪いことをしていなくとも声をかけたくなる、怪しい事この上ない人物だ。
声の感じで男と分かるが田舎育ちか、独特の訛りがある。


「てめぇ一体何者だ? 八本指か?」


「だとしたらなんだ。いいから返せ!」


クライムは様子を伺う。
ある事件をきっかけに王都を裏で支配する組織『八本指』が弱体化した。


その事自体は良いことだ。
お陰で奴等の後ろ楯で好き勝手していた役人や貴族を取り締まる事が出来た。


しかし奴等の弱体化に漬け込んで、今まで八本指に煮え湯を飲まされていた若輩組織が
成り上がろうと抗争を始め、一般の人間にまで被害が出るようになった。


目の前の二人組が八本指か、それとも新手の組織かは分からないが
上手くすれば組織の一つと接触出来るかも知れない。


言い争いは熱を増し、去ろうとするピアス男をローブの男が強引に壁際に叩きつけた。


「ぐっ!? 知らねーって言ってんだよ!」


ピアスの男は懐に手を入れると短刀を出しローブの男に切りつける。


(いけない!!)


クライムは飛び出す。
が、ローブの男はいとも簡単に短刀を避けるとそのままピアス男の短刀を払い落とした。


(この男ーー強い!!)


飛び出してきたクライムの姿を見つけたローブの男はピアス男の仲間と思ったのか
こちらに警戒しローブの下に隠してあった剣を抜く。
クライムも剣を抜き構える。


「私は兵士だ!! 両方とも大人しくしろ!!」


クライムの名乗りにピアス男は右手を押さえながら逃げ出す。
それを見たローブの男がピアス男を追う。


「待て!!」


クライムは飛びかかる。
ローブの男は八本指の関係者の疑いがある。何としても捕らえたい。

斬るつもりはない。
剣の平で叩くように殴り付ける。
先程の動きを見るに相当の強者のようだが後ろを見せたのは失態だ。


(入るっ!!)


バチィと叩き付ける音が聞こえる。
肉を貫通し骨まで染みるような打撃音。


それはクライムの右腹に起きた音だった。


(ぐぅ!? な、なんだ鞭か!?)


そのまま壁に叩きつけらるーーはずだった。


バチンとクライムの頭のスイッチが入る。


右腹の傷みを無視し体を捻り、迫る壁を足で蹴飛ばす。
強引に方向転換し再びローブの男に突撃する。


「!? ーーやる!!」


ローブの男は振り返り剣で応戦する。
剣と剣の激突。ローブの男は剣も見事な腕前でクライムの剣を受け止めるが、勢いがある分クライムが押し勝ち、剣先がローブの男の仮面を裂いた。


ーーと同時にクライムは驚く。


「!? リザードマン!?」


仮面下から現れた蜥蜴の形相にゾクリとする。
それはまるで氷を押し付けられたような冷めた感覚ーーいや、本当に冷たい!!


蜥蜴男の刀身から発せられる冷気がクライムの皮膚を傷付ける。


このままでは不味い! 距離を取り構え直すクライム。
蜥蜴男もクライムをただならぬ相手と思ったのか足を止め剣を構える。


互いの視線が交錯しその出逢いは王国に新たな事件を呼ぶ



おしまい。

続きはないけど原作だと有り得ない出逢いのエピソードはSSの醍醐味に感じる。

ラナーはなに考えてるか難しい。
クライムの悪口言うヤツ殺すし、助けた娼婦も殺しちゃうしヤンデレっぽいキャラでいいのかな。

メイド「そう言えばラナー様のお付きの子、繁華街で何やら揉め事を解決したようですよ」

ラナー「あはは、そうなの? 流石私のクライム!」

ラナー(事件の事に触れつつ何故繁華街に居たのか問いかけてクライムを困惑させましょう)ゾクゾク

テスト

始めます



オーバーロードSS 『ナザリック狂詩曲』 その6




王国 黄金の輝き亭




慰霊式から帰ったアインズは漆黒の兜をベッドに置くと自身もそれに座る。
見るもの全てを畏怖させるであろう剥き出しの骸骨の奥に、灯火に似た眼光が妖しく輝いた。


対して床に正座するナーベラル・ガンマは叱られた子供のように反省した面持ちで主人の言葉を待つ。


「……それでナーベラル。お前は私がアウラに告白したという『噂話』を信じ、私が無垢なる者、子供が好きであると……そう思ったわけだな?」


アインズの問いかけにナーベラルは身体中から汗が吹き出す。
自分の馬鹿な勘違いでアインズの不興を買ってしまった事に止めどない後悔と自責に駆られる。
ナーベラルにとって人間の子供など下等生物の幼虫(ボウフラ)に過ぎず、それが目の前で至高の主の寵愛を受ける事に嫉妬してしまい
つい出てしまった言葉だった。


「……はいそうですアインズ様。下らない噂話を鵜呑みにし、至高の御方に不快な思いをさせた愚かな部下は今ここで消えます!!」


ナーベラルは腰のロングソードを勢い良く抜くと刃を首に向ける。


「待てナーベラル!!」


アインズの制止にナーベラルはピタリと止まる。薄皮一枚の所で止まるロングソードにアインズは胸の内で溜め息をつく。


今回の件は小さい出来事ではあるが『抑制』が働く程アインズに衝撃を与えた。

いつか悪い噂が立つであろうという覚悟は前からあった。
そもそも自分のそういう噂がまったく無いとは思ってはいない。
自分の言動に常日頃注意を払っているのもそれが悪い評判、悪い噂にならないようにする為でもある。


それでも全部が全部、完璧にこなすことなど出来ないだろうからある程度覚悟していたが……。


(まさか自分がロリコンだと思われているとは……)


ショックである。かつて仲間に実年齢よりもオッサンくさいと言われた時よりもショックだ。


(まぁ確かにアルベドやシャルティアにあそこまで言い寄られて何もしないのだから、そう思われても仕方がない……のか?)


色々と考え込むアインズはこちらをじっと見ているナーベラルの首に剣が当たっているのを思い返し、慌てて考えを切り替える。


(どうするべきかな)


ただの噂話といえばそうなのだが、組織をまとめる立場にいるものとしては注意した方がいいのだろうか。
誹謗中傷という訳でないので判断が難しい。そもそも誤解させた自分が一番悪い気がしないでもない。


アインズはナーベラルに向き直る。


「んんっ! 確かに噂と事実は違う。私はアウラに好意を伝えたが、それは異性に対する告白ではなく子供に対するそれだ。……子供に慈悲を与えるのも何も知らぬ無垢なる者に咎を求めるのを哀れに思うからだ」


子供に対する優しさの大半は鈴木悟の残滓から来る感情だが、それはアインズの胸の内に留めておく。


「噂話に惑わされ、いらぬ詮索をしたお前は確かに問題だ」


ナーベラルはロングソードを持つ力を込める。その先の言葉次第では直ちに首を落とす覚悟だ。


「だがそんな下らぬ噂話でお前を失うことの方が下らなく愚かな事だ、私はそう思うぞナーベラル」


「アインズ様……」


ナーベラルは剣を納めるとアインズに平伏した。その姿にいつも以上の敬意と忠誠を感じる。


「このナーベラル・ガンマ。アインズ様の温情に応えるべく更なる忠誠を示せるよう努力致します!」


「う、うむ。……しかしあれだな」


緊迫した空気から一転、アインズの物腰が柔らかくなりナーベラルは顔を上げる。


「ナーベラルも『そういう』噂話を気にするのだな。なんというか……可愛いところがあるな」


いつも機械的に任務をこなすナーベラルが色恋?の噂話を仲間内で話してる。
子供の知らない一面を知った親のように微笑ましい気分になる。


「か、可愛い!? 私が!? 」


赤面し顔を押さえるナーベラル。思わず立ち上がる。


「い、いえ私など、アルベド様に比べたら月とスッポンです!!」


(スッポンって……前から思っていたがこいつの人物表現は独特だな。というか何故そこでアルベドが出るんだ――アルベド?)


ふと、想像するアインズ。


ナザリックに帰宅後、ロリータファッションに身を包んだアルベドが幼い子供のような仕草で迫ってくる。


(いやいやまさか、アルベドはそんな事はしない)


妄想を打ち消す。幾ら最近暴走気味とは彼女はナザリック地下大墳墓守護者統括なのだ。
そんな事は有り得ない。


それよりも問題があるとすればロリコン疑惑の方だ。
噂話とはいえ、もしかしてと思われているのは不味い。


(アルベドの好意を受け入れればいいのだろうか……)


ここに来る前の世界。ユグドラシル終了前に起きた小さな出来心。


「それは……出来ないな」


「アインズ様?」


今日の日の出来事を思い出す。悪評を消すにはどうするべきか。


アインズはしばらく沈黙すると立ち上がる。


「用事が出来た。ナザリックに帰還する」



ナザリック 玉座の間



「おや珍しいですね統括殿が一番遅いとは……皆様どうしました?」


セバスがヴィクティムを片手に抱きながら扉の前で緊迫している守護者達に訪ねる。
あまりの張り詰めた空気に反応してヴィクティムが短い手足をウネウネ動かす。


「なんでもないよセバス。アルベドは着替え中だ、時期来るさ……ほら」


最後に来たアルベドは普段通りの『キチンとした』姿だが表情は曇っている。
何があったのか、主人からの集結の命に関係があるのかセバスが思考を巡らせる前に荘厳な玉座の間の扉が開かれた。


守護者達は玉座の間に敬意と忠誠を捧げながら入室する。
奥に鎮座するは至高の御方、自身の全霊を持って仕えるべき主人。アインズ・ウール・ゴウン。


「よく集まってくれた守護者達よ。まずは――」


「すみませんでしたアインズ様っ!!」


「すみませんでした!!」


アインズの言葉を遮り、金切り声を上げ謝罪するシャルティア。
それに続きアウラも悲痛な声で謝罪し、その後ろではマーレが涙目でふるふると震えている。


いつもであればアインズに対しての無礼な振る舞いに怒号を上げるアルベドやデミウルゴスも
何かに堪えるように押し黙っており、コキュートスも何かの覚悟を決めたようにこちらを見る。


「皆様!! アインズ様の御前ですよ!!」


いつものアルベドの役目をセバスが果す。ただ事でない雰囲気にアルベドに見る。


「…………アルベド、説明しろ」


「…………はい」



「――――はぁ」


説明を受けたアインズは天を仰ぐ。
対してアルベドは処刑を待つ罪人のように静かに顔を下に向け。
他の守護者も同様に黙って絶対支配者の処罰を待つ。


守護者同士の争い


いつか言われた、アインズが最も失望する行動をとってしまった。


その罪は何よりも重く。罪深い。


アインズはアルベドに向き直り、頭をかき、小さく呻き、頭を捻る。
しばらくそれを続け、意を決したようにアルベドに近づく。

「アインズ様……」

「アルベドよ、一度しか言わぬ」

アインズの手が伸びる。
罰を受け入れるよう静かに目を瞑るアルベド。




アインズの手は――アルベドの頭を優しく撫でた。



「あ、ああああ、アインズ様ー―!!??」


突然の行動に頭がついていかないアルベド。だが身体はアインズの愛撫に脊髄反射するようにビクンビクンと震え出す。
香り立つ芳香が辺りを包み、アルベドの瞳が濡れる。


「愛しているぞアルベド」


翼が絶頂に達したように、いや実際に達したのだろうぴんと伸びきる。
美しい顔はだらしなく蕩けきり、軽く白目を剥いてる。


ちょっと人には見せられない。


他の守護者は愕然とその様子を見ている。



「シャルティア!」


「は、はい」


訳のわからないシャルティアはそれでも主人の命に従い来る。
シャルティアの正面に立ちじっと見つめる主人の眼差しに、胸の奥に閉まったかつての失敗が頭を過ぎった。
白い肌がより一層白くなり、恐怖に体が震える。


「シャルティアよ――愛しているぞ」


「え……」


思いがけない言葉に耳を疑うシャルティア。凍りつくアルベド。


誰よりも失敗を恐れるシャルティアは余程怖かったのだろう、唇を強く噛み締め過ぎて血が出ていた。
それを優しく拭うアインズ。シャルティアの震えを止めるようにそのまま頬に触れる


「安心しろシャルティア、前と同じだ。元は私が悪いのだ」


「アインズ様……」


シャルティアは涙を流し、アインズの優しく触れたその手を愛しそうに自分の手と重ねた。


ゆっくりとシャルティアから離れるとそのままアウラに振り向く。


「アウラ、愛しているぞ!」


「っ!!――はいっ!!」


アインズの告白に元気一杯に答えるアウラ。小さい体をぴんと張り、嬉しさを押さえきれないようにぴょんと前へ出る。


「お前を大好きだと言った言葉に嘘はない。まだ幼いお前にいらぬ誤解をさせたかも知れないが、成長しお前に言った真意を学んで欲しい」


「はい!アインズ様!!――わぁっ!?」


元気なアウラを片手に抱き上げ頭を撫でてやる。
どこにでいるような恥ずかしがりやな女の子のように頬を真っ赤にしアインズの肩で顔を隠す。


「マーレ! 愛しているぞ!」


は、はいと今だに震えながらも嬉しそうにおずおずと前に出る。


「ふっ」


アインズはアウラと同じように空いた片手でマーレを抱き上げる。


「あ、アインズ様!?」


「お前もだマーレ。姉と共に学び、いつか成長した姿を私に見せてくれ」


「は、はい!!」


アインズはアウラとマーレに挟まれるように抱き締めた。荘厳な玉座の間が暖かな空気に包まれる。


「コキュートス!」


先程からの様子に困惑している足取りだが、しかし堂々とアインズの前に立つ凍河の武人。


「愛しているぞ」


「ア、アインズ様!?」


アウラとマーレを降ろしコキュートスに向き直りその甲冑のような体に触る。


「この地に来て一番に成長したのはお前だコキュートス。本来の役割以外で自分を変えていく事は何より難しい事だろう」


激励するように触れた手に力を込める。
本来力を込めてもびくりとしない冷たく屈強な身体だが、アインズに触れた箇所だけは熱を感じたようにびくりと震える。


「それでもお前ならば出来ると私は信じる。信じた私をお前も信じてくれ」


「オ、オオオッーー!!」


コキュートスは感激が押さえられず両手を高々と上げ雄叫びを上げる。


「アインズ様ーー!!」


「デミウルゴス!」


デミウルゴスは全てを察したかのようにしっかりとした足取りでアインズの前に来る。
それでも先程の失態を後悔しているようで顔色には反省の色が浮かぶ。


「アインズ様、今回の事は誠に――」


「良い、デミウルゴス」


アインズは一回は躊躇しながらもデミウルゴスの肩に触れる。


「お前がいてくれたお陰でナザリックはこの地に置いても尊厳を保ち強く顕在していられるのだ」


主人の感謝の言葉にデミウルゴスは一瞬喜びの顔を見せるがすぐに曇る。


「勿体ない御言葉です。しかしながらこの地に置いてナザリックが偉大でいられるのはアインズ様が居られて、私達を導いて下さるからこそ。私如きの浅知恵など……」


アインズは悩んだように顎をかくと意を決し、デミウルゴスの両肩に手をやる。


「アインズ様?」


そのまま抱き締める。


「あ、はっ――!!?」


凍ったアルベドにヒビが入る。


「愛しているぞデミウルゴス」


抱き締めた腕を離すがデミウルゴスはそのまま固まって動かない。


「ゴホンッ、セバス」


すたっと執事らしい優雅な動きでアインズの前に立つセバス。


「お前にはいつも危険な任務を預けてすまないな。今だ黒い影が捕まらない内に単独で行動させている私を許してくれ」


踵を揃え一礼すると真っ直ぐにアインズを見つめ言葉を紡ぐ。


「勿体ない御言葉です。アインズ様に気遣されたこの身はどの者よりも幸福でしょう。不肖の我が身ですがより一層アインズ様に満足頂けるよう努めてまいります」


「うむ。任務が済んだらしばらく休暇を取るがいい。愛しているぞセバス!……ツァレには負けるかもしれんがな?」


「は、はい!ありがとうございます」


少し頬を赤らめセバスは一歩下がる。


「愛しているぞヴィクティム」


「ボタンぞうげにちゃしんしゃひとしんたまごヒハイあおむらさきたいしゃ(ありがとうございます!)」


ヴィクティムの頭を優しく撫でてやる。
ヴィクティムは嬉しそうに短い手足をわちゃわちゃさせた。愉快そうに笑うアインズ。


一通り終えたアインズは玉座の間に立つと、ナザリックを治める絶対者として全員に告げるように声を響かせた。


「守護者達よ!! 私はアインズ・ウール・ゴウンにより生まれし者全てを愛している。それがメイドであれ、階層に住まうモンスターであれ関係はない。伝えよ!ナザリックに仕える者全てに。その心に疑念があるならば私が行って教えよう。私の気持ちを! 私の愛を!」


アインズはローブを翻すとリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを起動させその場から去った。



嵐の後のように呆然と残された守護者達は各々が夢心地のようにうつらうつらしている。


デミウルゴスは今だ固まっている。


守護者達の沈黙はオーケストラで指揮される楽器のように一人、また一人と解かれていき
一番最後にデミウルゴスの金縛りが溶けると一斉にまとまって鳴り響いた。





「――――はぁ、はぁ~~~~」


自室に戻ったアインズはそのままベッドに倒れ込み、枕に顔を埋め足をばたばたさせる。
もう何度発動したか分からない抑制は今だ続いている。


やり過ぎた。


ロリコン疑惑を晴らす為にアルベド達に自分の気持ちを分かりやすく態度や行動で示そうと思いたったわけなのだが。
何がどうして守護者全員に愛を語る事になったのか。


アインズはさっきの出来事を思い出し再びじたばたし、抑制が働きまた止まる。


(嫌なんだよ大切な仲間が争うのは……)


訴えにも似たあの告白。本当はかつてのギルドメンバーに伝えたかった本気の思い。


知らず知らずの内に閉じ込めていた思いの蓋が、ほんの少し開いてしまった事をアインズは知らない。


「あぁ恥ずかしい! 何が――愛をだ!! え、マジかこれ!? マジでナザリック中で愛を語るのか!?」


覆水盆に帰らず。今更取り消しなど出来ない。


「うわぁ……はぁ、でも、まぁ……」


守護者達の顔を思い浮かべる。皆喜んでいた……と思う。


守護者の前で語ったことに嘘はない。


アインズ・ウール・ゴウンは


モモンガは


鈴木悟は


ナザリックを愛している。


かつての仲間との思い出だけではない。
今もこれまでもナザリックには大事な思い出が刻まれ続けている。


このナザリック(想い)を守る為ならば何でもしよう。


強く気高い賢王を演じ
あらゆる敵と国を滅ぼし
油断ならないこの世界で絶対的支配者(オーバーロード)として君臨しよう






後日この日はデミウルゴスによって『至高の愛の日』と名付けられる。
一年に一度、アインズに思いの丈を告白出来る日となり、アインズは告白してきた相手をお返しに抱き締めるという
とてつもなく恥ずかしい思いをする。


しかしその日は恐ろしいナザリックの中でも一際暖かく、微笑ましく。


そして間違いなく愛の溢れた日であった。




以上です。

長く間を空けての投稿で、最後まで読んで頂いた方の期待に応えられたかは分りませんが
楽しく読んでもらえたならば自分も嬉しいです。

オーバーロードで思いついた時にこのスレがあればここに投稿するとは思う。
しばらくは書かないけど

ピクシブはアカウント持ってるけど小説?的のも投稿出来るのか
ちょっと興味ある。ハーメルンは別の投稿サイトかな?あとで調べてみる

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