大淀｢作戦を確認します。今回の目標は敵空母ヲ級の撃破です｣

大淀｢敵空母ヲ級は、その指揮統一の高さと類い稀な戦略眼によって、幾多の戦場で深海棲艦に勝利をもたらしてきました｣

大淀｢常勝無敗の強さを誇り、深海棲艦から英雄と称えられるほどです。まともに戦うにはリスクが大きすぎます｣

大淀｢幸い空母ヲ級自体の戦闘能力は、そう高くありません。囮部隊で敵を散開させ、手薄になったところを主力艦隊で一気に叩きます｣

大淀｢以上、作戦の確認を終了します。……無事の帰還を｣

提督｢いけるな？……長門｣

長門｢ああ、そのつもりだ！｣

提督｢それは良かった。……じゃあ行こうか｣

長門｢了解だ。我々第８艦隊は、これより作戦行動を開始する！｣

艦娘一同｢了解！｣

長門｢よし、私に続け。遅れるなよ｣

大淀｢長門以下第８艦隊、作戦行動を開始しました｣

提督｢まあ、精々気張ることだな｣

提督｢尻拭いなど、あまり趣味じゃない｣

大淀｢味方囮部隊、敵部隊と接触。敵艦を上手く引き付けています｣

提督｢空母ヲ級は？｣

大淀｢味方囮部隊を追いかけず、こちらの作戦領域へと近付いています｣

大淀｢上手く敵の艦隊を分散させることに成功しました。空母ヲ級の周りには少数の艦しかいません｣

提督｢ほう……順調だな。抜かるなよ｣

大淀｢はい！……第８艦隊、作戦領域に近付いています。｣

大淀｢なっ!?第８艦隊、敵艦に囲まれました！｣

提督｢何だと！｣

大淀｢そんな、どうして空母ヲ級まで……あちらは偽造艦!?作戦が洩れていた｣

そこら辺の海域


長門｢くっ……敵艦に囲まれた｣

空母ヲ級｢囮部隊ヲ用イテ分断。ソシテ、手薄ニナッタトコロヲ奇襲カ｣

空母ヲ級｢犬ニ相応シイ所業ダナ。容赦ハセン……ユクゾ！｣

深海棲艦ども｢イー！｣

長門｢フッ……目標自ら登場とは丁度いい。いくぞみんな！｣

艦娘一同｢了解！｣

艦娘と深海棲艦、戦闘中


大淀｢味方艦隊、多少の被害は出たものの、少しずつ巻き返しているようです｣

提督｢ふんっ……仮にも艦娘。本来そういうものだろう｣

大淀｢だといいのですが……｣


空母ヲ級｢ホウ……ヤルナ。侮レンナ、艦娘｣

長門｢当然だ！貴様らと我々では背負っているものが違う｣

空母ヲ級｢……ソウカ。ダガ負ケン！｣

―通信
戦艦レ級｢コチラ戦艦レ級、救援二向カウ。持チコタエテクレ｣


大淀｢敵艦の増援により戦闘が膠着状態になりました。どちらも決定打を打てないようです｣

提督｢何をちんたらやっている……時間の無駄だ｣

提督｢――明石、例のものは出来ているか？｣

明石｢――はい提督。一応動かせますけど……まだ試運転もしていませんよ？｣
提督｢動かせるなら充分だ。試運転も兼ねて使うとしよう｣

大淀｢提督？｣

提督｢深海棲艦……貴様らの運命も今日で終わりだ。進化の現実ってやつを教えてやる｣

提督｢パワードスーツ“ステイシス”出るぞ！｣

戦闘継続中


長門｢ちっ……空母ヲ級がこれ程とは。戦艦レ級も厄介だな｣

空母ヲ級｢艦娘メ……随分ト粘ル｣

戦艦レ級｢ン？……ヲ級、レーダー二新タナ敵反応ガ｣

空母ヲ級｢ヨウヤク増援ヲ投入カ。仕事ガ遅イナ、敵ノ鎮守府モ｣


ﾋｭｰﾝ
―通信
提督｢こちら提督。長門、聞こえるか？｣

長門｢て、提督か？それは一体……｣

提督｢話しは後だ。……それより、準備できているか？｣

長門｢攻撃か？少し待ってくれ｣

提督｢まあ、空気で構わんがな｣ﾄﾞﾋｬｱ

長門｢｣

戦艦レ級｢ナ、何ダ、アレハ……マアイイ。沈メテヤル！｣

空母ヲ級｢アレハ……イカン。ソイツニハ手ヲ出スナ！｣

戦艦レ級｢マッハデ蜂ノ巣二シテヤンヨ｣ﾄﾞﾝｯﾄﾞﾝｯ

提督｢前面のみの弾幕とはな｣ﾄﾞﾋｬｱﾄﾞﾋｬｱ

戦艦レ級｢｣

空母ヲ級｢ヤハリカ……アンナモノヲ造ルトハ｣

戦艦レ級｢コノ私ガ、アンナ人形ゴトキニ｣ﾄﾞﾝｯﾄﾞﾝｯ
提督｢素人が……戦場に迷い込んだか？｣ﾄﾞﾋｬｱﾄﾞﾋｬｱ
提督｢貴様には海底が似合いだ｣ﾄﾞﾝｯ

戦艦レ級｢オイ、マジカヨ。夢ナラ醒メ……!?｣ﾄﾞｺﾞｰﾝ

提督｢戦艦レ級の撃沈を確認。後は……｣

空母ヲ級｢ヲッ！｣ﾄﾞﾝｯ

ｽﾄﾞﾝｯ
提督｢メインスラスターがイカれただと!?……狙ったか空母ヲ級！｣ﾊﾞﾁﾊﾞﾁ

提督｢よりによって海上で……くっ、駄目だ浮けn｣ﾌﾞｸﾌﾞｸ

長門｢提督ううううう!?｣


この後、何とか空母ヲ級たちを撃退した長門ら第８艦隊は無事に帰還することができた。
ちなみに提督は潜航していたゴーヤに救助されました。感謝するでち！

戦闘後


提督｢酷い目にあった……｣

長門｢まったく……調子に乗るからだぞ？｣

大淀｢本当ですよ。無事に救助されたから良かったものの｣

明石｢いやぁ～、提督のお陰で良いデータが取れました｣

提督｢当然だ。私にかかれば造作もない｣

長門｢だから調子に乗るなと……まあ、救援は感謝している。……嬉しかったよ｣

大淀｢ふふっ、カッコよかったですよ。提督｣

提督｢……フン｣


ｶﾞﾁｬ
金剛｢ヘーイ提督ゥー、大勝利おめでとうございマース｣

提督｢金剛か、あれは勝ちではない。目標の空母ヲ級は逃がしたんだからな｣

長門｢すまない……提督がチャンスを与えてくれたのに、取り逃がしてしまうとは｣

金剛｢ンー、でも敵にもかなりのダメージを与えましたし、充分な成果だと思いますヨ？｣

大淀｢そうですね。敵の被害も大きいですし、当分は動けないかと思います｣

明石｢それに提督が強いのも向こうにとっては予想外でしょうし、結構な抑止力になりますね｣

提督｢フン……それで何の用だ？金剛｣

金剛｢オーウ、そうでした。祝勝会をあげまショー！｣

提督｢祝勝会だと？だからあれは勝ちではないと……｣

金剛｢まあ、いいじゃないデスカ。気持ちの問題デース｣

長門｢そうだな。気持ちの切り替えは重要だぞ？｣(お酒呑みたい)

大淀｢そうですよ。折角なんですから｣(書類仕事切り上げたい)

明石｢おお～、いいですね。美味しいものをいっぱい食べたいです｣(お腹空いた)

金剛｢ウーフー、みなさん賛成してくれますか！……提督は？｣

提督｢駄目だ｣

金剛｢エェ～、何でデスカー？｣

提督｢鎮守府内でやる気だろ？鳳翔や間宮に準備してもらって｣

金剛｢イエース。そのつもりでしたが？｣

提督｢鎮守府内の食材やらを使うと、在庫の確認やら追加の発注やらをしなければならん。それに鳳翔や間宮にタダ働きをさせるわけにもいかんから、その分の給金も考えなくてはならん｣

提督｢つまり面倒だ。……いいか、私は面倒が嫌いなんだ｣

長門｢提督……｣

大淀｢鎮守府の財状を気にしているのではなく、面倒なだけですか｣

明石｢いっそ、清々しいですね｣

金剛｢ウゥ、提督ケチ臭いデスヨ……なら私の給金から差し引いてもいいデスカラ｣

提督｢それも面倒だ。あまり手間を掛けさせてくれるな｣

金剛｢そうデスカァ……｣ｼｮﾎﾞﾝ

長門｢提督！｣

明石｢酷いですよ！提督｣


提督｢……ふう｣ﾋﾟｯﾋﾟｯﾋﾟｯ

大淀(提督、何処かに連絡を？)

提督｢……これを持っていけ｣ｽｯ

金剛｢……？これは｣

提督｢私がよく行く料亭の会員カードだ。艦娘全員分予約してある。それを出せば向こうも理解するだろう｣

金剛｢えっ!?｣

提督｢それと鳳翔と間宮も連れていけ。あいつらは普段もてなしてばかりなんだ。たまには楽をさせてやれ｣

提督｢ああそれと支払いなら気にするな。私が個人的に払っているからな｣

金剛｢えっ……そんな、提督にご迷惑を｣

提督｢いいからさっさと行け。これ以上話す方が時間の無駄で面倒だ｣

金剛｢提督……ありがとうございマス!!｣ﾀﾞｯ

提督｢長門、大淀、明石。お前たちも行ってこい｣

長門｢ああ……だが本当にいいのか？｣

提督｢いいから行け｣

長門｢……ありがとう提督｣

明石｢提督、ありがとうございます！｣


ｶﾞﾁｬ
ﾊﾞﾀﾝ

提督｢……で、なぜ残っている？大淀｣

大淀｢提督はいらっしゃらないんですか？｣

提督｢私は行かん。行くのも面倒だし、後で仕事が溜まるのも面倒だ｣

大淀｢あら、そうですか。なら私も残って仕事をしますか｣

提督｢なに？……行きたいんじゃなかったのか｣

大淀｢行きたいですよ、祝勝会。ですけど提督お一人に仕事を任せるわけにはいきませんから｣

提督｢私のことなど気にせず行けばいいものを｣

大淀｢そういう訳にはいきません。私は秘書艦ですから。行くなら提督がご一緒でないと｣

提督｢……やれやれ。まったく面倒だな｣ﾊｧ

大淀｢はい。私は面倒な女ですよ｣ﾆｺｯ

提督｢……仕方ない。いくぞ大淀｣

大淀｢あら、どちらに？｣

提督｢祝勝会だ。……勿論お前も来るんだろう？｣

大淀｢はい。ご一緒させていただきますよ。提督｣

大淀｢存外、甘い男(ひと)なんですね。……そんな提督も悪くないですよ｣

提督｢フン……｣

提督｢アイムシンカー、トゥートゥートゥートゥトゥ～、アイムシンカー、トゥートゥートゥートゥ～♪｣

大淀｢あら、随分とご機嫌ですね提督｣

提督｢トゥートゥートゥ～♪ああ、とても気分が良い。晴れやかな気持ちだ｣

大淀｢何かいいことでもありました？｣

提督｢ふふふ……今日、間宮に頼んでいた“スーパーデラックスジャンボパフェ”ができたと聞いてな。｣

大淀｢そんなもの頼んでたんですか｣

提督｢そんなものとはなんだ……いやしかし、本当に気分が良い。今なら一億人くらい虐殺できそうなくらいだ｣

大淀｢仮にも国民を護る立場の人が、冗談でもそのような発言は慎んで下さい｣

提督｢すまんな｣

提督の仕事部屋(ノックしてから入れ)


提督｢そういえば、今日は新しい艦娘が着任する予定だったな｣

大淀｢はい、提督。本部からも、こちらに向かっているという連絡がありました。予定通りならもうすぐ到着するかと｣

提督｢ふむ……艦種は？｣

大淀｢駆逐艦です｣

提督｢駆逐艦か。ということは子供か｣

大淀｢見た目は、ですけどね｣

提督｢大抵は頭の中も見た目通りの子供だろう。暁とか、まんま背伸びしている子供だしな｣

大淀｢ふふっ、とても可愛らしいではありませんか｣

提督｢ことあるごとにレディーを強調するからな。まったく面倒だ｣

大淀｢提督は子供がお嫌いでしたか？｣

提督｢未来ある若者を嫌ったりはせんさ。彼らが羽ばたいていける世界を、我々が築かなければならない｣

大淀｢提督……｣

提督｢ただ、艦娘は若者ではない。まあ、面倒事を起こさなければ無闇に嫌ったりせんさ｣

大淀｢提督。私を含めてですが、艦娘に年のことは触れてはいけませんよ。女の子に対してデリカシーがないと怒られますから｣

提督｢フン……つまり、今お前は頭に来ているわけだな？｣

大淀｢そういうことは確認せず、ただ分かったと返事をして頂ければ宜しいんです｣

提督｢了解した｣

ｺﾝｺﾝ

大淀｢来たようですね｣

提督｢そのようだな……入ってくれ｣

｢はい、失礼します！｣ｶﾞﾁｬ
ﾂｶﾂｶ

提督(ふむ、頭に付いているリボンがウサギの耳のようだ。あと服が際どい)

大淀(彼女の持っている箱みたいな珍妙なものは一体なんでしょうか？あと服が際どい)

｢本部よりこちらの鎮守府に配属となった―ー｣ﾋﾞｼｨ

島風｢――島風です！｣ｾﾞｶﾏｼｰﾝ

提督｢しまうーたよかぜにのり、とりとともに～｣

大淀｢それは島唄です｣

島風｢｣

提督｢オホン……初見となる、私が提督だ｣

島風｢えっ……あ、は、ひぁい｣

大淀(噛んだカワイイ)

提督｢少々質問をしてよろしいかな？｣

島風｢は、はいぃ///｣(噛んだ……恥ずかしい)

提督｢まずそのGAマンみたいな珍妙な物体は？｣

島風｢ジー、エー……？この連装砲ちゃんのことですか？｣

大淀｢連装砲ちゃん？｣

島風｢はい！大切な友達なんですよ｣

提督｢なるほど……よい友達をもっているな｣

島風｢えへへぇ～｣ﾆｺﾆｺ

提督｢次に頭のリボンには聴覚が付いているのか？｣(ウサ耳なのか)

島風｢聴覚、というよりは色々なセンサーの機能が付いてますよ｣

大淀(私の眼鏡みたいなものですか)

提督｢ほう。……その服装は個人的な趣味か？｣

島風｢いえ、本部から支給されたんですが……変ですか？｣

提督(老人どもめ……一体何を考えている)

大淀(本部には制裁が必要ですね)

島風｢うぅ……やっぱり変なのかな｣ﾓｼﾞﾓｼﾞ

提督｢……ま、アリじゃないか｣

大淀｢まあ、潜水艦の方がマズイ気がしますし｣

島風｢そ、そっか～。よかった｣ﾎｯ

提督｢さて……ここからは私の思想について聞いてもらいたい。｣

島風｢？｣

大淀｢……｣

提督｢真面目な話だ。それを理解した上で、耳を傾けてほしい｣

島風｢……｣ｺﾞｸｯ

｢君は何のために戦う？｣

島風｢えっ……｣

提督｢これから、この鎮守府で何のために武器を振るう？｣

島風｢あ、えっと……私は、艦娘として……深海棲艦から、人類を……まも、る｣

提督｢ああ……そうだな、それは艦娘として正しいのだろう。ただ私が聞きたいのは｢島風｣きみ自身の答えだ｣

島風｢私自身の……答え｣

提督｢……私は護るべき祖国のため、弱き国民を護るために戦っている。それは“提督”としてであり、私の答えでもある。ただ一番の答えは“艦娘”のためだな｣

大淀(提督……)

島風｢艦娘……私たちのため？｣

提督｢ああ……彼女たちと共に過ごしていく内に情が移ってしまったんだろうな……彼女たちを戦いから解放させたいと思うようになった｣

島風｢……｣

提督｢国を護る軍人としてはダメな提督だな｣

島風｢そんなこと……ないですよ｣

提督｢私の答えは今言った通りだ。君はどうだ？｣

島風｢わ、私は……その、まだよく分かんないんですけど、自分の居場所が欲しいかなって｣

提督｢なるほど……自分の居場所か｣

島風｢はい。まだハッキリとはしてないんですけど……｣

提督｢いや、それでいいさ。だが、常に考えていてくれ、何のために戦うのかを｣

島風｢……はい！｣ｺｸｯ

提督｢君の答えは聞かせてもらった。……ようこそ我が鎮守府へ｣

大淀｢これから宜しくお願いしますね｣ﾆｺｯ

島風｢はい！宜しくお願いします！｣ﾋﾞｼｨ

提督｢よし。早速だがその無理をしている敬語はやめろ。聞いているとムズムズする｣

島風｢えっ!?｣

提督｢あまり上下関係は気にしなくていい。自分のやりやすいように振る舞え。他の奴もそうしている｣

島風｢いいの？……それじゃあそうするね｣

提督｢あと何かあったら大淀に相談しろ。私は面倒が嫌いなんだ｣

島風｢はーい｣

提督｢じゃあ他の奴らにも挨拶してこい｣

島風｢うん。それじゃ、行ってきまーす｣ﾀﾀﾀｯ

ｶﾞﾁｬ
ﾊﾞﾀﾝ

…………

大淀｢良い子でよかったですね｣

提督｢ま、そうだな｣