やすな「ソーニャちゃんなら、きっとできるよ!」(86)

あさ。

やすなは登校しているソーニャの背中を見つけるや否やスカートの端を揺らしながらソーニャの元へ駆け寄った。

やすな「ソーニャちゃん! おっはよう」

いつもと変わりなく肩をたたいて挨拶をするやすな。

ソーニャ「……」

本来ならば、サブミッションを決められるはずなのに反応がないのを訝しく思ったやすなは思わずソーニャの肩を揺らす。

やすな「あ、あれ? 触っても何もしてこないの? ねぇ、ソーニャちゃんってば!」

ソーニャ「…え? あ、ああなんだ、やすなか」

殺し屋という非日常的な職によって磨かれた反応は鈍く、数瞬、間を置いてから反応が返ってきた。

やすなはようやく自分の存在を気づいてもらえたことにほっと胸をなでおろすと同時にいつもと違う反応に不安を表情に浮かべた。

やすな「なんだじゃないよう、ソーニャちゃん。どしたのさ? ボーッとしちゃって」

ソーニャ「…なんでも、ないよ」

ソーニャはやすなの手を振り払うと、足早にひとり教室へと向かった。

やすな「…?」

やすなは怪訝な表情を浮かべ、去っていくソーニャの背中を見つめていた。

~~~~~~~
~~~~~~
~~~~
きのう。

親分(ゴッドファーザー)から直々に次の殺害依頼の話があると、組織の組員から託を渡されたソーニャはその夜、親分と依頼の密談を行っていた。

親分は会うやいなや、「次の目標(ターゲット)だ」といい、ターゲットの顔写真をソーニャに渡した。

ソーニャ「新しいターゲットって、えっ、でもこれ…」

困惑の色を隠せないソーニャ。

親分から渡された顔写真には見飽きた顔が映っていた。

いつものバカみたいな笑顔。

そう、写真に写っていたのはやすなの顔であった。

親分「そう、君のクラスメイトの折部やすなだ…」

ソーニャ「でも、なんで殺す理由が…」

親分「ソーニャ。君は我が組織の最高傑作だ。暗殺術・格闘術・銃、ナイフの扱いすべてにおいて他より秀でている」

親分「しかし、最近の君ときたらどうだ? 以前と今の仕事量と比べると今の仕事量なんて半分以下じゃないか?」

親分「あれほどの冷酷だったわたしの殺人マシーンはいったいどこへいってしまったんだ?」

親分「折部やすなの存在は君という存在を揺るがしているのだよ」

親分「ソーニャ、これは君のためでもあるのだよ。わかるね?」

親分がそういうと、ソーニャに研ぎ澄まされた殺気が重くのしかかる

脳裏に自分が殺害されるイメージがよぎり、ソーニャは思わず、ゴクリ、と生唾を飲み込んだ。

親分「折部やすなを暗殺し、本来の君への戻るんだ。いいかい、これは依頼ではなく命令だ。逆らえば…、わかるね?」

親分「冷酷だったころの君の帰りを心から待ってるよ、ソーニャ」

用件を言い終えた親分は、付き人を従えて夜の街に姿を消した。

ソーニャ「…」

ソーニャは、ただ呆然とその場に立ち尽くしていた。

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元ネタなに?

>>7
キルミーベイベー

?「…ニャちゃん、ソーニャちゃん!」

背後から自分を呼ぶ声を聞き、現実へと引き戻されるソーニャ。

振り返ると、そこには困った顔をしたやすながいた。

やすな「どしたの、もう? 朝から様子が変だよ? 触ってもいつもみたいにサブミッションしないし。いや、それはそれでありがたいんだけどね?」

やすな「あっ、ひょっとしてサブミッションのかけかたをわすれちゃったとか~? しょうがないな~今度わたしがスモウおしえてげようか?」

いつもどおりのバカな笑顔をつくるやすな。けれど、その笑顔がソーニャをひどく痛かった。

ソーニャ「…なにバカなこといってんだよ」

ソーニャは思わず視線をそらしてしまった。

やすな「このまま、サブミッションしないソーニャちゃんだとわたしうれしいなー」

やすな「…でも、いつものソーニャちゃんじゃないと、なんか…張り合いがないよ」

ソーニャ「…ッ」

ひどく、痛かった。

やすな「そ、そうそう昨日、スポーツ番組見たんだよ」

はよ

やすな「ボクシングの試合でさー。みていてすごくおもしろかったんだよねー」

やすな「しかも、この前さ魔法少女になってボクシングする夢見たし。これもうボクシングやれっていわれているようなもんだよね!」

やすな「だからソーニャちゃん、サンドバック相手になってよ」

ソーニャ「普通スパークリングだろうが#」ビキッ!

やすな「いや、だって殴られるのはいやだよ」

ソーニャ「ほう…」ゴゴゴ

やすな「いたー! ソーニャちゃんサブミッション決まってるよー!!」

ソーニャ「殴られるのはいやなんだろ!」

やすな「くそう! くそう! ボクシングにサブミッションなんてないよ!」

ソーニャ「どんな相手にも立ち向かうのがプロだろ?」

やすな「はっ! そうだね! でもこれどうやってぬけだせばいいのー!?」

ソーニャ「かみつくとか」


やすな「なるほど! よっしゃもっかいカモカモ」

ソーニャ「ふん!」

やすな「くそう! くそう! これどこかめばいいの?」

ソーニャ「舌でもかめば?」

やすな「あーいたかったー。もう、ソーニャちゃんひどいよぅ。素人相手に本気になりすぎ!」

ソーニャ「お前が馬鹿なこと言うからわるいんだろ?」

やすな「バカじゃないもん! バカっていうほうがなんだもん」

ソーニャ「じゃあ、いまからいうことをやったら取り消してやる」

やすな「いいよ! なんでもいって!」

ソーニャ「つキルミーダンス」

やすな「わかった!」
====
3分後。

やすな「見てた? ソーニャちゃん? ぜんぶやったよ!」

ソーニャ「うん、バカみたいだった」

やすな「ひどいよぉー!」

やすな「でも…」

やすな「やっと、いつものソーニャちゃんに戻ってくれたね!」

やすなはいつもどおりの、ばかな笑顔を見せた。

そのとき、ソーニャは誓った。

この笑顔のためならば、私はすべてを、世界を敵に回してやろう、と。

「…このとおりです! すみません、今回の件は見送らせてください! 絶対に殺し屋としての勘を取り戻して見せますので!」

その日、やすなと別れた後、ソーニャは再び親分と会っていた。

ソーニャは親分にあうやいなや今回の件は水に流してくれと地面で額が傷つくくらい土下座をした。

親分「…」

親分はしばらくだんまりと沈黙を決めた。

黙っている間、ソーニャは地面に額をつけたままだった。

神経は研ぎ澄まされ、親分のちょっとした動作の音が耳に集まる。

動悸はいっそう激しさをまし、早鐘のように心臓を打ち、体中からは滝のように汗が流れた。

土下座をしてからいったいどれくらい時間がたっただろう。ほんの数秒だろうが、今のソーニャにはとてつもなく長く感じられた。

程なくして、親分の重い口はゆっくりと開かれた。

親分「…いいだろう。今回の件は不問にしてやろう。だが、次の依頼をこなせたら、だ」

その言葉を聴き、顔を上げ、安心の表情を浮かべるソーニャ。

ソーニャ「あ、ありがとうございます! 必ずやその依頼、達成して見せます!」

また11時くらいまで消えます

おk

酉つけとく

もうちょいまって。

その依頼のターゲットは赤髪おさげのなんだか幸の薄そうな少女。

なんだか、没キャラにされてそうな少女だ。

ソーニャとやすなが通っている学校の女学生で、なんでもソーニャと同じく学校生活にその身をくらませているヒットマンだという。

やすな「おはよ! ソーニャちゃん!」

ソーニャがターゲットの顔写真を確認しながら登校していると、やすながソーニャの肩に手を乗せていつもどおりの挨拶をしてくる。

ソーニャ「ふっ!」

殺人的な反応でやすなにサブミッションを極めるソーニャ。

やすな「ぐえっ」チーン

首を絞められ、わずか数秒でやすなの意識は落ちた。

~~~~~
やすな「もう、ひどいよぅソーニャちゃん。そろそろ普通に挨拶してくれてもいいじゃない」

ソーニャ「わるかったって」

やすな「でも、いつも通りのソーニャちゃんに戻ってくれてよかった。昨日は本当にどしちゃったのさ?」

ソーニャちゃん「なんでもいいだろ?」

やすな「そだね。ソーニャちゃんがいてくれれば!」

やすなはそういうと、天真爛漫の笑みを浮かべた。

ソーニャ「ふふっ、そうだな」

やすな「あっ、いまソーニャちゃんわらった! ついにデレてくれたんだね! ソーニャちゅわああん!」ルパンダーイブ!

すっ、とよけるソーニャ。

やすな「いた! ソーニャちゃんなんでよけたのさ!」

やすな「あっ、もしかして照れくさいから~? もう、素直じゃないんだからー」

ソーニャ「うっとうしいから」シレッ

やすな「素直!」ズコ

いつもどおりのくだらない会話。

こんな風に、バカみたいな日常が続けばよかったのに。

どうして、私は殺し屋として育てられたのだろうか。

そう、ソーニャは思った。

しえ

昼休み。

やすな「ソーニャちゃんご飯いっしょにたべよー」

ソーニャ「わるい、今日は一人で食べてくれ」

やすな「えー?」

ソーニャ「用事があるんだ」

やすな(はっ、まさか仕事の依頼!?)

やすな「だっ、だめだよ! ほ、ほら瓦弁当やるから! 今日は一緒に食べよ?」

ソーニャ「いや、いらねえよ。そんなもん」

やすな「お願い、このとおり」

ソーニャ「あーもう、本当に行かなきゃ行けない用事があるんだって!」

やすな「わかったよ…。信じてるからね」

ソーニャ「ああ…」

やっとの思いでソーニャはやすなを振り切ると、ターゲットの追跡を行うことにした。

わさわさ

ターゲットの赤髪の少女を探す。

かといって、彼女も自分と同じ殺し屋。

ソーニャはあまり身を乗り過ぎないようにターゲットを探す。

いつもの仕事のように息を潜めるソーニャ。

今回のことは結果的にうそをついて、やすなの思いを裏切ってしまった。

仕事をしている間にも罪悪感に苛まれる。

どうしても彼女の顔が頭の中をちらついてしまう。

しばらく、ソーニャは校内を探し回った。

聞き込みをすれば、はやいだろうが、もしもそれが人伝てにターゲットに知られてしまってはターゲットに自分の存在を知られて元も子もなくなってしまう。

そうこうしている間に昼休みが終わってしまった。

やすな「ソーニャちゃん、用事は終わったの?」

ソーニャ「いや、まだだ。わるいけど、放課後は一人で帰ってくれ」

やすな「えー! 放課後もー? しょうがないなー」

ソーニャ「わるい…」

午後の授業が始まるが、ソーニャの頭の中にはさまざまな思案がめぐり、授業どころではなかった。

教師「じゃあ、次の問いを…ソーニャ、答えてみろ」

ソーニャ「……」

教師「? どうしたソーニャ」

やすな(ソーニャちゃん! ソーニャちゃん! 問題当てられてるよ。128p)ひそひそ

ソーニャ「え? あ、はい。えっと、領域dを考えて、そこから重責分で体積を求めると、~の答えになります」

教師「うむ。よろしい、ソーニャがボーッとしてるなんて珍しいな。今度は気をつけろよ」

ソーニャ「はい」

ソーニャ(ありがとう。やすな、たすかった)

やすな(ふふーん、もっとうやまえ)

ソーニャ(うぜぇ…)

そして今日のすべての授業科目が終わり、放課後になる。

ソーニャ「じゃ、わたしは用があるから」

やすな「うん。じゃーねー」

ソーニャはやすなに別れを告げると、教室から出て早速ターゲット探索を再開した。

仮にも相手は殺し屋。そうそう、姿を現してくれるはずもなく、長期戦が予想された。

もう放課後だし、すでに下校している可能性も考えられた。

ソーニャ(仕方ない。最後にいっていないあの教室へ行くか…)

成果がでなく、深く嘆息をつくソーニャ。

はじめてあぎりにであった教室を今日の最後に足を運ばせる。

一行とかで細かく書くのはなぜなんだ
別に構わんけど不思議

すると、

?「…」

ソーニャはターゲットが例の教室に入っていくのを見つけ、それを追いかける。

いや改行じゃなくて、>>37みたいなやつ
別に答えなくていいけど

いつかの日のように入る前にお取りのための陽動をたて、数秒後に突入する

教室内に入ると、ターゲットはソーニャを待ち構えるように中央を立てる。

?「よく来たな、ソーニャ! 待ってたぞ」

ソーニャ「気付いていたのか…本当に殺し屋としての勘が鈍ったのかな…ところでなんでお前こしプルプルしてんだ」

?「さっきいきなり棒が投げ込まれて、その棒に足を滑らせて、すっごい腰うった…」

ソーニャ「こんなやつに気づかれたのかよ」

?「フフフ、それなんだが」

没キャラは不敵に笑った。

?「お前がここに来ることは周知のことだったのだ」

ソーニャ「なに…?」

?「お前が依頼された私への暗殺。じつはお前を出し抜くための嘘の依頼だ」

?「お前は必要以上に折部やすなと関わりをもった」
?「お前が元のお前に戻るための手段。それはやすなの死」

?「やすなを自らの手で殺めることで組織への帰還が果たされるはずなのにお前はそれを拒絶してしまった」

?「これが最後のチャンスだソーニャ」

?「今一度、やすなを殺し、真に組織にもどってくるのだ」

ソーニャ「…なにをいうかと思えば…」

ソーニャは目を一度つむりそういうと、決意に満ちた表情で没キャラの瞳を捉えた。

ソーニャ「わたしはあいつを殺さない! あいつはわたしが守る」

?「あいつは表面上の付き合いだろ! なぜ拘る!」

ソーニャ「表面上の付き合い? 違うな…」

ソーニャは強い眼差しで没キャラを睨んだ

ソーニャ「あいつは私の親友だ!」

?「正気か? 二度と組織には戻れなくなるぞ」

ソーニャ「あいつのためなら本望だよ」

?「どうやら、本気のようだな」

ソーニャ「ああ、もう迷うことなんてないね」

?「…なら、最後にひとついいことを教えてやろう」

?「この学校にもうひとり、私たちと同じく秘密裏に殺しをやっている隠密のものがいるだろう?」

ソーニャ「あぎりのことか…」

?「あいつは、なんのためにここに派遣された?」

ソーニャ「仕事のため…とかいってたな」

?「その仕事とは?」

ソーニャ「…っ! まさか!」

?「そう、そのまさかだ」

?「あぎりは私と一緒にあいつはお前とお前を壊した折部やすなの暗殺のためにきたんだ!」

ソーニャ「そんな!」

?「最初に言ったよな。お前への依頼は仕組まれたものだったと」

ソーニャ「仕組まれてたのか…」

?「そして」

?「私の仕事は、お前をこの教室まで誘導し、お前を殺すことだ!」

?「くく…、お前がいない今、呉織あぎりは今頃教室で折部やすなをどうしているかな?」

ソーニャ「! やすな!」

ソーニャは走り出した。

親友を救うために、組織を敵に回して。

?「お、おい! おまえはわたしがころすんだよ! 戻ってこーい!」

?「あれ? わたしの出番これだけ?」

心臓は早鐘のように鼓動する。

自らの身体能力をもってすれば、教室の距離など一瞬であるのに、今のソーニャにはひたすらに長く感じられた。

ソーニャはただアクリルの床を踏みしめる。

愛しい人を救うために、ただ走り続ける。脇目もふらずに走り続ける

教室をつくころにはソーニャの息は切れ、ソーニャはひたすら肩で呼吸を繰り返していた。

常に任務には慎重な行動を心がけるソーニャだが、一挙一動に慎重さなくなっていた。

普段なら陽動を先に行ってから部屋に入るだが、慎重性をなくしたソーニャは一気に扉をあけた

ソーニャ「やすな!」

教室には、床に倒れこむやすなと、そばでたっているあぎりの姿があった。

あぎり「あらソーニャ。こんにちはー」

やすなはあぎりになにかされた後なのか、ぐったりとしている。

ソーニャ「やすな! …お前がやったのか!」

あぎり「あらー、ソーニャったらそれじゃあ意味がないじゃない。だって大事な人質ですもの」

あぎりはいつものおっとりした口調で話すと、床に倒れていたやすなを無理やり立たせ、くないをやすなの首に突きつけた。

クナイの先端はやすなのくびの皮を少し切り裂き、やすなの首から少しだけ血が滴り落ち、教室の床に赤いしみをつくる。

あぎり「忍法、変わり身の術~」

やすなの命が無事だと知り、安心するもつかの間、あぎりの卑劣な行為とそして自分がそばにいれば彼女を守ってやれたというふがいなさが今のソーニャを苛んだ。

ソーニャ「くっ! やすなには手をだすな!」

あぎり「ソーニャがいけないんですよ? ソーニャがいつまでも折部さんに固執するから」

ソーニャ「やすなはわたしの友達だ! 友達を殺せるわけないだろ!」

くぎゅうがおざなり

あぎり「それでは、折部さんを殺すしかありませんね」

ソーニャ「やめろ! おまえだってやすなと一緒にバカやったりしたことあっただろ!」

あぎり「あれは、仕事の都合上、うわべだけの付き合いです。ソーニャとは違いますよぉ」

やすな「うぅ…、ソーニャちゃん」

ソーニャ「やすな! 待ってろ今助けてやる!」

あぎり「あら、おきちゃいましたか」

やすな「これは…、あぎりさん?」

あぎり「はい、あぎりですよー」

あぎり「ざんねんですけど、今からあなたはしぬことになりました」

あぎり「あとー、さっき体に遅効性の毒を盛らせてもらいましたー。1時間後にあなたは死んでしまいます。ごめんなさい」

やすな「え、そ、そんなあぎりさんが…」ゼェゼェ

先ほどからやすなが苦しんでいる理由は、その毒物らしい。

やすなの呼吸が荒く、いまにも倒れそうな様子でふらふらと足元がおぼついていない。

麻痺くらいの毒物ならまだしも、死にいたるものだったら解毒剤がなければどうしようもない。

あぎり「あ、そうだ。ソーニャにとって吉報があります」

あぎり「わたしはソーニャと折部さんの両名の殺害依頼を受けましたが、最悪ソーニャの殺害だけでもいいみたいです」

あぎり「一番はソーニャが折部さんを殺して組織に戻ってくれるのがいいんですが、どうも無理みたいですし」

あぎり「組織は組織髄一の殺し屋を危険因子としてほうっておけないみたいです」

あぎり「いくらソーニャが殺し屋としての牙は折れたとしても、わたし一人でソーニャを相手にするのは骨が折れます」

あぎり「だから、人質という形をとりました。ごめんなさい」

あぎり「ソーニャ、折部さんが殺されたくなかったら、おとなしく死んでくれますか?」

やすな「そ、そん…なの、だ…めだよ…。ソー、ニャ…ちゃん」ゼェゼェ

ソーニャ「…そうすれば、やすなを開放してくれるんだな?」

あぎり「はい。ちゃんと解毒もしてあげます」

やすな「だめ…! だめ…だよ! そ、そんなの…」

期待

やすな「ソーニャちゃん…聞いて」ゼェゼェ

ソーニャ「……」ピクリ

やすな「わ…たし、ソーニャ…ちゃんに出会った…こと、後悔…して…ないよ」ゼェゼェ

苦しそうなやすなから弱弱しく言葉がつむがれていく。

やすな「最初…、ソーニャ…ちゃんが…殺し屋って知った…とき…ね、怖かった…けど」ゼェゼェ

やすな「それでも…話している…うちに…本当は…いい子なんだなって…わたし…となんにもかわらないん…だって…うッ! げほっげほ」

体中に毒が回っているのか、やすなの苦るしそうな表情がさらに深刻になる。

やすなの目は焦点が合っていなかったが、それでもたしかにソーニャを見つめていた

ソーニャ「! やすな、もう…もうしゃべるな! 毒が…」

やすな「いわせて!」

ソーニャはやすなの制止しようとしたが、やすなは目いっぱい声を上げてソーニャを黙らせた。

やすな「でもね…ときどき…ソーニャ…ちゃん、さびしそうな顔…するんだ」ゼェゼェ

やすな「ソーニャ…ちゃん、周りの人とは…うまく…付き合っているようだけど」ゼェゼェ

やすな「ほんとの…ともだちは…いないんだって」ゼェゼェ

やすな「だから…わたしは…思ったの。ソーニャ…ちゃん…と、友達に…なろうって」ゼェゼェ

ソーニャ「やすな…!」

やすな「ソーニャちゃんはね、わたしの一番の…親友…なんだ」ゼェゼェ

やすな「だからね…、わたし…ソーニャちゃんが生きていれば…それで」ゼェゼェ

やすな「ソーニャちゃん…わたしなんか…いい…から…、逃げて」

ソーニャ「そんな! そんなこと!」

あぎり「もうしゃべらないほうがいいですよ。毒も体中をめぐってます」

あぎり「それに。ソーニャはおとなしく死ぬと思いますよ。だって、いまのソーニャはやさしいから」

やすな「…だよ…ね…なら…」ガリッ

やすな「げほっ! がはっ!」

あぎり「…! あなた自分の舌を…!」

ソーニャ「やすな…なにを!」

やすな「いひゃい…なぁ…。でもこれ…でゅえ、たしゅから…ないよね…、ソーニャ…ちゃんも…未練ないよね…だから、はやく…逃げ…て」

自己犠牲の末、人質としての機能をなくすためにやすなは自害を選択した。

やすな「…」

あぎり「ちょっと! なにを勝手に! くっ!」

人質が死んで狼狽するあぎり。

ソーニャ「やすな…?」

血が溶岩のように沸騰する。視界が狭窄し、地震が起きたかのようにぐらつく。

脳は現状を理解できず、さまざまな言葉が浮かんでは消えていく。のどは渇き、うまく言葉がだせない。

混乱するソーニャだったが、瞬間冷静になり、次の瞬間には怒りがわいた。

殺意。目の前のやつを殺す。やすなを殺した償いを。

気づいたら、ソーニャは思い切り地面を踏み抜いていた。

あぎり「!!」

あぎりの眼前まで迫るソーニャ。あぎりは対応しようと懐に忍ばせていた暗器を取り出そうとするが、遅い。

ソーニャはあぎりの手首をつかむと、その体を一回転させた。

どしん!と大きな音を立てて、派手に地面に伏すあぎり。あばらの骨が何本も折れ、口いっぱいに鉄の味が広がる。

ソーニャは間髪いれずにあぎりにナイフを突きつける。

あぎり「まってください」

ソーニャ「待つもんか」

ナイフを振り下ろす

あぎり「折部さんはまだ生きてます」

ソーニャ「…」ピクリ

あぎり「わたしも…降参です。ごほっ!」

口から血の塊を吐き出すと、あぎりは懐の暗器をすべて捨て、両手を挙げて降参の意を示した。

ソーニャは床に伏したやすなを見る。

やすな「…」ゼェゼェ

やすなはかすかに呼吸をしていた。

あぎり「でも…危険な状態です」

あぎり「舌をかむなんて…プロならためらいます。そのためらいが、大事に至らなかったのでしょう。しかし、体の毒の問題が…」

ソーニャ「そうだ! 解毒剤は!?」

あぎり「血清…です」

ソーニャ「え?」

あぎり「わたしの血を使った血清。それも大量の。たぶん、わたしは死ぬでしょうね」

ソーニャ「それじゃあ…わたしが要求をのんだら開放するっていうのはやっぱりうそだったのか?」

あぎり「いえ…開放するつもりでしたよ」

ソーニャ「それじゃあ! それじゃあお前が死ぬじゃないか!?」

あぎり「ソーニャ、昔話をしましょう」

あぎり「あるところに一人の女の子がいました」

あぎり「女の子は忍者で、殺しの依頼を受けては平気で人を殺したりする子でした」

あぎり「人殺しは当たり前ですが、あまりいいもんじゃありません。断末魔の最後の顔をその子はいまでも忘れません」

あぎり「その子は毎日殺した相手に地獄に突き落とされる夢をみます」

あぎり「毎日が苦しい日々に、そんな日々を吹き飛ばしてくれるような人がいたら素敵ですよね」

あぎり「その子はそんな人に出会いました」

あぎり「夢はいまでも見ますが、その人の笑顔に女の子は救われました」

あぎり「女の子にとって、その子は生きる希望でした。もしも…希望がなくなればまたあの地獄の日々」

あぎり「女の子には生きる意味がないんです。あなたもそうなんじゃないですか? ソーニャ」

ソーニャ「お前は…」

あぎり「どの道、依頼を遂行できなかった私は組織に殺されるでしょう」

あぎり「どうせなら、仲間にころしてもらいたいです」

ソーニャ「…すまない」

あぎり「謝らないでください。仲間でしょう?」

ソーニャ「そうだな…」

あぎり「わたしの懐に治療器具があります。それで折部さんを」

ソーニャ「ああ」

あぎり「最後に、折部さんにこんなことしてごめん、と伝えてください」

ソーニャ「…わかってる」

あぎり「もう、思い残すことはありません」

あぎり「ソーニャ…」

あぎり「kill me baby...」

.........
......
...
やすな「ん…」スゥースゥー

舌の止血と解毒でなんとか小康状態におちつくやすな。

ソーニャはタオルでやすなの額の汗をぬぐうと、これからの方針を考えた。

ソーニャ(これからどうする。ぐずぐずしてれば刺客はやってくるし。やすなも暗殺対象にはいってるだろうし。もう日本にはいられないな)

やすな「…ん、あれ? ソーニャちゃん?」

ソーニャ「おきたか。よかった」

やすな「あぎりさんは…」

ソーニャ「…」

やすな「そっか…」

ソーニャ「なぁ…やすな」

やすな「なに?」

ソーニャ「今度いつまた刺客がくるかわからない。だから海外へ逃げようと思うんだ。たぶん、…ここにはもう二度と戻れない」

やすな「うん」

ソーニャ「ごめんな…」

やすな「大丈夫だよ…。わたしはソーニャちゃんがいてくれればいいから。お父さんとお母さんには悪いけど…」

やすな「その代り…ずっとそばにいてくれる?」

ソーニャ「ああ…ずっと一緒だ。約束する」

やすな「ふふ…優しいソーニャちゃんは初めて見るなぁ」

ソーニャ「余計なお世話だ…」

やすな「わたし…」

ソーニャ「ん?」

やすな「ソーニャちゃんの故郷に行きたいな…」

ソーニャ「ロシアか…わかった。連れてってやる」

やすな「楽しみだな…」

ソーニャ「ああ…いこうな…一緒に」

やすな「少し…眠いや。ちょっと眠るね」

ソーニャ「ああ…おやすみ」

やすな「ねぇ…ソーニャちゃん…。寝る前にさ、お願いがあるんだけど」

ソーニャ「なんだ…?」

やすな「膝枕してくれない?」

ソーニャ「まあそれぐらいなら」

やすな「えへへー、ひんやりしててきもちいー」

やすな「ねぇ…ソーニャちゃん…。もうひとつおねがいがあるんだけど」

ソーニャ「なんだ」

やすな「おやすみのチュウしてくんない?」

ソーニャ「ぶっ! ば、ばか! なにいってんだよ! おとなしく寝てろ」

やすな「ちぇっ、残念」

ソーニャ「たくっ、へんなこというな」

やすな「ソーニャちゃん…」

ソーニャ「こんどはなに?」

やすな「だいすきだよ」

ソーニャ「へ?」

やすな「それだけ! おやすみ///」

しばらくしてやすなの寝息が聞こえてくる

ソーニャ「まったく///」

ソーニャ「…わたしも好きだぞ」

ソーニャはやすなを優しくなでると身をかがめた。

ソーニャ「ん…」

唇と唇がふれ、ソーニャは真っ赤に茹で上がる。

ソーニャ「///」

ソーニャはやすなの眠りがふかくなったことを確認すると、やすなをおんぶし、ひとまず自分の隠れ家へいくことにした

隠れ家は組織にも場所を行っていないので、とりあえずはばれないだろう。

しかし、場所が特定されるのは時間の問題。

やすなが回復しだいすぐにでも日本を去らなければならない。

隠れ家につくころにはすっかり、日は落ちて、昼間の喧騒は静まり返っていた。

背負っているやすなの呼吸が耳に触れてこそばゆい。

夜の寒気を感じ、ソーニャは隠れ家に入った。

ソーニャはすぐにあたたかい布団を用意し、やすなを寝かせた。

あれからずいぶんたっているので、多少呼吸が落ち着いてきてるが、まだ顔色の悪さが抜けない。

ソーニャ「……」

ソーニャはやすなの髪を優しくなでると、すぐに海外高飛びの準備をした。

これで終わり?

これまだ終わってないよね?

>>75終わってなかったとしてももう帰ってこねーだろ

残念だけどさ

おちんぽミルク書き終わったら書くよ

次の日。

まだ朝霧が消えぬころ、ソーニャたちは追っての手から逃れるためにソーニャの故郷へ向かおうとしていた。

ソーニャ「やすな、大丈夫か?」

やすな「うん…大丈夫」

ソーニャがやすなを安否を気遣うが、やすなはソーニャを心配させたくないのか平静を装う。だが、病み上がりの顔色は優れず、無理をしているのがソーニャには簡単にわかった。

しかし、やすなの体調が万全じゃなくても、そうじっとはしていられない。いつまた二人の行く手を新たな刺客が立ちふさいでしまうのかもわからない。

自分たちの場所がかぎつけられるのは時間の問題であろう。その前に行動しなくては。

やすなには多少無理にでも我慢してもらわなくてはならない。

朝の空気は切るように冷たく、しんと澄み切っている。吐き出される息は空に白く解かれていく。

ソーニャ「寒くないか…」

やすな「ちょっとだけ…」

ソーニャ「ん」

やすな「?」

ソーニャがやすなに左手を差し伸べる。

ソーニャ「はやくしろよ…こっちだって寒いんだからな」

やすな「手、握ってもいいの?」

ソーニャ「いいから。恥ずかしいから早く!」

やすな「うん!」

ソーニャ「たくっ」

さっきまで、体調不良とこれからの漠然とした不安・焦燥からひどい顔色をしていたやすなの元気がすこしだけ戻るのを見ると、ソーニャは少しだけうれしくなった。

やすな「えへへ。ソーニャちゃんってば優しい」

ソーニャ「ばか、私が寒かったからこうしたんだよ!」

やすな「はいはい」

ソーニャの顔は蒸気が上がったように紅潮した。

やすな「えへへ、ソーニャちゃん」

ソーニャ「おい、あんまひっつくな…」

やすな「えへ…げほっげほ!」

ソーニャ「!おい、やすな大丈夫か!?」

やすな「だ、…大丈夫だよ。ちょっとまだ体が万全じゃないだけ」

ソーニャ「そうか…あまり無理すんなよ?」

やすな「うん。ソーニャちゃん」

ソーニャ「なんだよ」

やすな「ありがとう」

ソーニャ「な、なんだよ!急に」

やすな「一緒に居てくれて」

ソーニャ「約束したからな…ずっと一緒だって」

やすな「うん。約束」

ソーニャ「///」

やすな「えへへ」

やすな「あっ、ソーニャちゃん…ひとつだけお願いがあるの」

ソーニャ「なんだ? なんでもいってくれ」

やすな「最後に、お母さんとお父さんにお別れしたいの」

やすな「だめ…かな?」

ソーニャ「…わかった。けど手紙だけだぞ。それが終わったら日本をたつぞ」

やすな「うん…」

やすなの家はソーニャの家からはあまり離れていない距離にあるのだが、病み上がりのやすなを患って、ソーニャはタクシーを用意させた。

やすなは「別にいいのに」と遠慮したが、ソーニャは大事をとって聞き入れずやすなは渋々受け入れた。

程なくして、やすなの家の近所までたどり着く。

もうあと少しで、生まれ育ったこの街里を離れ、二度と戻ってこないと思い、やすなは愁いを帯びた顔で町並みを見据えた。

やすなの家にたどり着くと、やすなはソーニャの補助を受け、家の中に入る。

まだ、家族は眠っているのか、家の中は閑散としている。

やすな「ちょっと、お母さんとお父さんの顔を見させてもらえるかな? 最後になるから…」

ソーニャ「…普通ならまだまだ眠っている時間帯だしな。わかった、ここで待ってる。けど、絶対起こすなよ」

やすな「うん。じゃあ、いってくる」

ソーニャ「ああ」

やすなはソーニャを玄関口に残し、両親の眠る寝室へと足を運ばせる。

もう書かないのか?

もうすることないからな。仕切り直す?

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