ロボット「私はしがない作業ロボット」 (24)

ロボット「一応、主人を会話で楽しませることができるために、意思のようなものはある」

ロボット「けれど、私に埋め込まれたチップには、主人からの命令は厳守であるという強固なプログラムが刻まれている」

ロボット「そして、私の主人は冷酷で、残忍な人。武器を生産する工場の社長で、工場長」

ロボット「気に入らないことがあれば、私たちを殴り、蹴り飛ばし、拷問する…」

ロボットA「…H-245、ご主人様がお呼びです」

ロボット「!」

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主人「…来たか。H-245」

ロボット「はい、ご主人様」

主人「お前、今日はミスをしたそうだな?」

ロボット「…申し訳ありません。溶接の際、手をすべらせてしまって…」

主人「ふん!」殴る

ロボット「ああ…っ」倒れこむ

主人「言い訳するな!ロボットが人間に勝っていることはなんだと思っているんだ?正確性と、延々と作業をすることができるスタミナだろうが!」

ロボット「ですがご主人さま、私はもう二年もメンテナンスをされておらず…」

主人「ええい黙れ!これだからこのタイプの作業用ロボットは嫌なんだ。無駄口叩いて、主人に逆らいやがって!お前らに感情なんていらないんだ!人間のように臨機応変に動けるため、様々な仕事を任せられますと言われて大量に買ったはいいが、その口答えが気に入らん!お前らにはなんの権利もないんだ!」バン!バン!

ロボット「ああ…っ、いたい…、んあっ」



ロボット「眠ることの必要がない私たち。200時間ぶっつづけで働いたあとは、三時間の休憩がやっと与えられる」

ロボット「この時間に、自分でできる範囲でメンテナンスをする」

ロボット「私はそれをなるべく早く終わらせて、人間と作業ロボットが一緒に休憩するスペースにおいてある、少女マンガを読むのが好き」

ロボット「生まれてすぐにここに来て、作業ばかりの生活だけど、ここで素敵な男性との恋を想像するのが好き」

ロボット「性別がない私たちだけど、少女マンガの影響で、私は自分を女性だと思い込み、女言葉で話すようになった」

ロボット「見た目は、シルエットだけ人間に似た、ただの鉄の塊なのだけれど」

ロボット「ああ…」

ロボット「…恋がしてみたい」




ロボットB「H-245、悪いが、工場の敷地内の端にある、家があるだろう?そこの二階の、3の部屋に、これを届けてくれ」

ロボット「わかりました。パンとミルク、それにリンゴ…。誰がいるのですか?」

ロボットB「質問に答えるのは指令外だ」

ロボット「…承知しました」

ロボット「…ここね」


コンコン


???「どうぞ」

ロボット「…若い男性の声」

ロボット「失礼します」ガチャ

青年「やあ、悪いね。おや?今日は違うロボットさんかな?」

ロボット「!」

ロボット(優しい声、カールした栗色の髪、白い肌、美しい瞳…)

ロボット(少女マンガに出てくる人みたい…)

青年「ありがとう。昼ごはんだね」ニコ

ロボット「!」

ロボット(どうして、私はロボットのはずなのに、素敵な男性がいたからといって、内部の電子回路が熱をもって…)

ロボット(私たちはロボット。ゆえに生殖機能はない。だから人間に発情するわけないはず…)

ロボット(…では、なぜ私は少女マンガを読むの?いままでは、ただの人間の文化への憧れだと思っていたけれど…)

青年「うん。美味しい」モグモグ

ロボット「…し、失礼します」

青年「待ってよ」手を取る

ロボット(キャー!)

青年「もっとお話ししようよ。僕、話し相手がいないんだ」

ロボット「…そうなんですか」

青年「うん♪」ニコ

ロボット(この方の笑顔よりも眩しいものなんてないわ。溶接のときに生じる火花も何倍も眩しい)

ロボット「えっと…お名前は?」

青年「青年だよ」

ロボット「…ご主人様と同じ苗字」

青年「ああ、息子なんだ。妾の子だけどね」ハハハ

ロボット「そう…なのですね」

ロボット(どうしてこの家でひとりで暮らしてるかは、聞かないでおこう)

青年「ねえ、名前つけていい?」

ロボット「…名前? 呼び方は、H-245で区別化できると思いますが…」

青年「いや、ダメだよ!僕がつけてあげるから」

青年「んとねー」

ロボット(…名前なんてつけても、誰も呼んでくれる人なんか…)

青年「ロボ子ね♪」

ロボット「ロボ子…」ちょっと不満

ロボット(せっかくなら、つくしとか、つばきとか可愛い名前がよかったなあ。…まあふたつとも少女マンガの主人公だけど)

青年「ロボ子♪」

ロボット「…////




青年「あ、もうこんな時間か。そろそろ仕事大丈夫?」

ロボット「はっ!?つい…」

青年「また少女マンガの話してよ!僕も、今からネットで注文するからさ。漫画は好きだし、金だけはあるし」

青年「またね、ロボ子♪」ニコ

ロボット「はい…青年、さん」ドキドキ





主人「息子となにを話してたんだ!すぐに仕事に戻らない鉄塊が!」バシッ!バシッ!

ロボット「ああ、すいませんご主人様、ごめんなさい…っ」

管理者「おい!H-275!作業が止まってるぞ!どうした!故障か?え?」

ロボット「すいません…管理者さま」

ロボット「私の…プログラムに…不条理なものが介入して…それが動作を停滞させ…」

管理者「なんだ?ウィルスか?そろそろ廃棄処分にするぞ!まあギリギリまで作業を続けるんだ!」

ロボット「ああ…これは感情?…情念?…わかりません…なにか…不合理な電子が…苦しい…苦しい…」

管理者「…ったく。社長に廃棄処分にさせるよう相談させるか」

ロボット「苦しい…苦しい…胸が痛い…」

管理者「お前に心臓なんてないだろ!痛覚はあるけどよぉ…絶対開発者はサディストだなあ!ハハハ!」

ロボット(青年さん…青年さん…青年さん…)

青年「…久しぶりだね。ロボ子」

ロボット「は、はい…」

青年「ロボ子は女性言葉を使うよね。だから『子』ってつけたんだけど。珍しいよね?」

ロボット「…この工場では、私以外にいないかもしれません」

青年「ふふ。…はーあ」

ロボット「…どうされました?」

青年「外の世界に出たいなあ」

ロボット「…あまり出られないんですか?」

青年「出たことないよ」

ロボット「…え?」

青年「俺、妾の子だからさ。お父さん、僕のことがバレるのが嫌みたいで。ほら、毎回市議会選挙に立候補してるじゃん?」

ロボット「…そうなんですか」

青年「うん、当選したことないけどね」アハハ

ロボット「…あ、そろそろ行かないと」

青年「待ってよ。もっとお話しよ」手をとる

ロボット「はぅ」

青年「ん?いま変な出た」ハハハ

ロボット(次は壁ドンされてみたい…///)

ロボット「わかりました…あと五分だけです」

青年「ありがと。ロボ子が一番喋ってくれるから、ロボ子が一番好きだよ」ニコ

ロボット「!」

ロボット(す、好きって…!好きだって…!わ、私も好きです!青年さんが大好きです!りょ、両想い!?両想いなの!?)

ロボット(…なんて)

ロボット(あるわけないよね…)

ロボット(私は…ただの醜い鉄塊。作業をするために産みだされたロボット。性別さえもない、恋愛対象になるわけがない機械)

青年「そうだなあ…次はなんの話しよっかなあ」ニコニコ

ロボット「外に出たら、なにをしてみたいですか?」

青年「んー?そーだなあ。図書館に行ってみたいなあ。本は好きだけど、好きなもの注文しても、誰かが僕に読ませられるものか選んでるみたいで、届くものは限られてるし」

青年「あとは…買い食いしたいし、公園で日向ぼっことかしたいなあ」

青年「ロボ子は、外の世界でしてみたいことある?」

ロボット「…デートとか」

青年「俺としてみる?」

ロボット「!」熱量上昇

ロボット「////」プシュー

青年「どうしたの!?壊れちゃった!?大丈夫!?」




青年「あ、たまに熱を放出させなきゃいけないんだね。初めて見たからびっくりした」

ロボット「お騒がせしてすいません」

ロボット(嘘だけど)

青年「あとねー、してみたいことはねー」

ロボット「なんですか?」

青年「お母さんに会いたい」

ロボット「青年さ…」


ガチャ


管理者「おい!Hー245!なにやってるんだ!早く戻れ!」

ロボット(また今日もぶたれたけど…、青年さんと話せてよかった)

ロボット(ご主人様にぶたれても尚、まだ幸福感が残ってる…)

ロボット(青年さん、お母さんに会いたいんだ)

ロボット(なにか、できることはないかな…)

ロボット(愛は、その人のために損をしてでもなにかをすることって、少女マンガに書いてあったし)

ロボット(なにか…なにかできないかしら…)

管理者「おいH-245!お前やっぱり廃棄させるか!?作業のスピードが遅いぞ!」

ロボット「はい!すいません!」

ロボット「やっと与えられた休憩時間、あと一時間しか残ってないけど、青年さんの家に来ちゃった…」

ロボット「迷惑じゃない、かな…」

ロボット「…」コンコン

???「えっ!んな!うそ!ごめんなさい!ちが…」

ロボット「青年さん!?」ガチャ

青年「ろ、ロボ子!?いや、違うんだ!この荷物は、家でキャンプごっこをしようとしてて、窓は、その!音楽が聴きたくて、ひっかいてただけで…」

ロボット「落ち着いてください!私は、ただこっそり青年さんに会いに来ただけです!」

青年「え、ああ…そっかあ」




ロボット「…脱走しようとしてたんですか?」

青年「…うん」

ロボット「それは…お母さんに会いたくて?」

青年「…そうだよ」

ロボット「そうなん、ですか」

ロボット(嫉妬する…ここまでしてお母さんに会いたいだなんて。私も、青年さんのなかでそんな存在になれたら)

ロボット「青年さんは…脱走してまで、外に出たいんですね?」

青年「…うん」

ロボット「いまから、約200時間後。また来ます。私が手を考えておきますので、青年さんはここにいてください」

青年「え?」

ロボット「…私が手を貸すので、脱走しましょう」




ロボット(なんの為に人工頭脳が私に埋め込まれてあると思うの?それは、作業の際、臨機応変に動くことができるため)

ロボット(この工場の敷地内の事情は、二年ここで働いている私は十分に知っている)

ロボット(確かに、私の中に埋め込まれているチップのせいで、ご主人様がしてはダメだと命令していることはできない)

ロボット(しかし、そのときは青年さんに動いてもらえばいい)

ロボット(敷地内の事情を知っていて、人間よりも運動能力の高い私と、なんの機械的な制約がない青年さんが、それぞれの強みで動けば、きっと…)

ロボット(最悪、私は捕まってもいいわ。どうせ恋心のせいで作業がうまくいかず、いまにも廃棄されそうだし)

ロボット(青年さんだけでも…)

ロボット(たいした知能は与えられてないけど…。考えるのよ。考えるのよ!私!)

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