【ミリマス×ジョジョ】恵美「『スタンド使いは惹かれ合う』……か」 (81)

 私達は、全員『スタンド使い』だ。
 最初からそうだった子も、後からそうなった子もいる。
 『矢』に刺さった子。『スタンドを与えるスタンド』に出会った子。『波紋』がスタンドに変わった子――そして、『遺体』にスタンドを与えられた子。
 『遺体』とは『奇跡』を起こすもの。
 アタシは決めていた。『遺体』を集めて『スタンド使い』を、この事務所から消してやる、と。
 この物語は……私が歩き出す物語だ……
 暗闇の荒野に……進むべき道を見つける、そんな物語……
 

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「まさか、あんたがスタンド使いなんてね」
「あはは。ねえねえ恵美、もう始めようよ! やっぱりさぁ……同じような『力』を持ってるなら、どっちの方が『強い』かは比べたくなるよねェ~ッ! 『スポーツ』と同じでさァッ!」

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨

海美は笑っている。その獰猛な笑みは、難しい振付に挑む時のものだ。
あの輝きを、アタシはよく知っている。
ああ、そうか。そういえば海美はこういう子だった。アグレッシブでアクティブで、どこまでも突っ走る。灼熱少女のダンスリーダーはそういう子だったね。

「『ハート・エクササイズ』! 私の『心』を『炎』に変える! 行くよ『恵美』!」
「っ! 『フローズン・ワード』!」

屋上のコンクリにヒビをいれ、両足から炎を吹き出し飛び蹴りしてきた『海美』を現れた『氷の壁』が受け止める。

「甘い甘い! 『美奈子』さんの作る『大学芋』よりも甘い! こんな『壁』なんかに私の『スタンド』は止められないよ!」

ドギャアアアアンッ!

拮抗は一瞬。増幅した『熱量』に耐えることが出来ず、『氷の壁』は一瞬で溶けきった。
その先には『アタシ』がいる。

「いいやっ、止まるねッ!
『一瞬』だ! アタシにはその『一瞬』でいい!」

バシュゥン!

『氷の壁』をギリギリで解除して回収した『スタンドエネルギー』で『氷の鎧』を構築する。
『アタシ』の『スタンド』、『フローズン・ワード』の『能力』は『冷気を操る』こと。
その『スピード』は『本体に近ければ近いほど早くなる』。

「受けてみな『海美』! 氷の硬さで殴られたことはあるかなっ?」 

突っ込んできた海美にラリアットの要領で攻撃を叩き込む。
『アタシ』の『鎧』は『攻防一体』。どんな相手にだろうと負けはしない。

「そんなのないよ! 殴られるつもりもないしね!」

飛び蹴りへのカウンター。空中にいるということは自在に身動きが取れないということで、射程にさえ入ればその攻撃は必中だ。
それを海美は。

「うおお! 唸れ! 私の『筋肉』! 『腹筋』! 『背筋』! 『胸筋』!」

踵から噴出した炎で一回転。ラリアットを交わされ体制を崩したアタシの顎を『海美』のブーツが直撃する。

「っっっ!!!」
「行くよッ! オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!」

着地と同時、全身から炎を吹き出して体勢を立て直し、両拳を燃やした『海美』の『ラッシュ』が『鎧』を粉々に砕いていく。

「これで終わりだね。さよなら『恵美』!」
「……まだだね! 『フローズン・ワード』、行くよ! 『バーニング・アップ』!」

バリィンンンッ!

『海美』の拳が直撃する寸前、内側から『弾けとんだ鎧』の破片が『海美』にいっせいに飛びかかる。

「っ! こんなの当たんないよ。ふふーん、もう終わりっぽいね。ありがと! 楽しかったよ」

全身にまとった『炎』で鎧の破片が溶けていく。『フローズン・ワード』の切り札。まさか、使わされるなんて思ってなかった。

「バイバイ『恵美』! 今度は『味方』として戦おうね!」

燃える右拳が振り下ろされる。アタシの鎧を壊すほどのパンチだ。生身のアタシなら一撃で終わりだろう。
……ごめんね。プロデューサー。約束守れなくって。
私が、最後を覚悟したその瞬間。

「はい、終わりです。これは『試合』なんでしょう。流石にこれ以上黙って見過ごせません」

その『声』は、本当に唐突だった。


「!? 『ハート・エクササイズ』の『炎』が『消えた』!? 『違う』……普通に消えたのなら『余熱』くらい残るはず……誰! 邪魔をするのは!」

「最後に『トドメを指す』スポーツなんて聞いたことありませんよ
『ライアールージュ』であなたの『炎』を『嘘』にした……」

屋上に繋がるドアが開き『声の主』が姿を現す。

波打つ黒髪。意思の強さを感じる鋭い瞳。手足をスラリと長く、まだ未成熟ではあるけど、それでも間違いなく彼女は美人の原石だ。

「あ、あんた! なんでここに!」 

驚くアタシに向かって『彼女』は事実だけを淡々と述べる。


「忘れたんですか? あなたの所属する『チーム』は『灼熱少女』だけじゃない」

氷のような表情が柔らかな笑みにかわり、アタシに軽く視線を向けたあと、毅然とした声色で鋭く言い放つ。

「LIVE THE@TER PERFORMANCE 第4期生『北沢志保』。同期のよしみで『恵美』さんに助太刀させていただきます」

バァ―――z_____ン!!!

To be Continued......

とりあえずここまで。志保を恵美に助けさせたいだけだったこともなくはないです。LTP04尊い
ジョジョは7部が好きです。ジョジョリオンでジョニィのあれがわかった時は3日くらい何もできませんでした

以下スタンドデータ
本体・人間・所恵美
スタンド『フローズン・ワード』


近距離パワー型・人型

破壊力C  スピードE-A  射程距離C

精密動作性A  持続性C  成長性C

能力射程B(8メートル)


能力『冷気を操る能力』
冷気を操り空気中の水分を自在に凍らせる。本体に近ければ近いほど硬度と凍結速度が増し全身に氷を纏えば攻防一体の鎧となる。鎧と化した氷を内部から破裂させ相手との距離を取る技『バーニング・アップ』を持つ

ビジョンは青いドレスを纏った人形の女性。背中にオーロラのような冷気のベールを纏う

本体・人間・高坂海美
スタンド『ハート・エクササイズ』

近距離パワー型・一体化型

破壊力A  スピードD(B)  射程距離E

精密動作性A  持続性B  成長性無し

能力射程E


能力『心を燃やす能力』

海美の戦意を炎として実体化する。これはいわゆる心が昂った時に生まれる『気』や『オーラ』を炎に変えたもので海美自身の肉体に纏うことが出来る。炎を纏うことで身体能力も強化される。

ビジョンはオレンジの陽炎のようなものを纏うピンク色のポンポンのような生物。ようはケセランパサランみたいな。能力を発動する時は海美と一体化する

本体・人間・北沢志保
スタンド『ライアールージュ』

遠隔操作型・動物型

破壊力D  スピードB  射程距離C

精密動作性C  持続性D  成長性無し

能力射程B(本体が認識する範囲)


能力『現実を嘘に変える能力』

事実を嘘に変えその事実を無効化する。ようするに某裸エプロン先輩の大嘘憑き。『スタンド』とは超能力でありその効果は『本体の精神』に依存する。志保の場合因果を曲げるほどの強力な力であるため精神の摩耗が『脳のオーバーヒート』という形で肉体に現れる

白い毛並みに緋色の目、赤と白縞模様が入った2本の尾を持つ猫
大きさは志保の肩の上に乗る程度

あ、奈緒とまつりの方とは別人です
あのSSはのり子が人間臭いのがすごく好きです。あとトライスターの3人が変に敵対とかしてなくて見てて安心します

>>1が好きな柱の男はエシディシです
第2話『ライアールージュ』投下します

「志保がわたしの相手ェ? いいよっ、さあ行くよ!」
困惑も一瞬。獰猛な笑みを浮かべ、海美が炎を纏いながら志保に突進する。

「『ライアールージュ』、『炎』を消して……そんな姿で突っ込まれても困ります」

海美の身体に炎が纏ったという事実を嘘に変えられた。身体に宿った炎を消された海美が思わず吠える。

「んもー! 志保、どういう気なの? 戦う気ある?」

その場で地団駄を踏みながら海美が問う。あの子は『どちらが強いかを決めたい』とはっきり言っていた。
やっぱり真っ向からのガチンコ勝負がいいんだろう。

「私の『スタンド』って戦いに向いてないんですよね。ほら、見ての通り姿もただの猫じゃないですか」

言って、志保の肩に現れた『スタンド』が真横に飛び跳ね、電灯とフェンスを蹴って海美の背後を取る。

シュパァァン!

海美が振り返ると同時、飛びかかった志保のスタンドが海美の頬をすれ違い様に切り裂いた。

「これくらいのことしか出来ませんけど。『海美』さんがそれでいいなら相手くらいしてあげますよ。『恵美』さんに手を出されても困りますし」
「上、等ォッ!」

全身から炎を吹き出しながら海美が咆哮する。志保の前に飛び出した『スタンド』が唸るように威嚇する。
勝負は一瞬。絶妙なタイミングで海美の顔目掛けて跳躍した『スタンド』が爪を一閃する。

バオオォォッ!

その瞬間。引き裂かれたはずの海美の顔が『炎』となって『スタンド』の一撃を透過した。

「『炎』には爪も、牙も、届かない! もらったァァッ!」

飛び交った体勢のまま地面に向かって落下する志保の『スタンド』。その腹部に海美の鋭い右の膝蹴りが入る。
しかも、これで終わらないのが海美だ。
膝をもろに食らって一瞬空中に浮かんだ『スタンド』に向かって一瞬で軸足を切り替えて左の回し蹴りをお見舞いする。華麗としか言いようがない連続攻撃。まるで演武かなにかを見ているようだった。
ただし『ライアールージュ』の方も流石『スタンド』だ。蹴り飛ばされながら姿勢を変えて、両足をクッションにして綺麗に着地する。

っ! はぁ……」
「!? 志保、あんたッ!」

それと同時、志保が苦悶の声をもらす。硬く食いしばった口から赤い雫が一筋の線を描く。
『スタンドのダメージはスタンド使いに還る』
アタシみたく『鎧』があるならともかく志保の『スタンド』で海美と近接戦はいくらなんでも無理がある。

「よくわかりました。海美さん相手に近接戦を仕掛けた私が馬鹿でしたね。どうぞ来てください。今度は近づけさせもしない」
「オッケェ! 『ハート・エクササイズ』!」

両足に炎を纏い、海美が大地を踏みしめる。その刹那。

「『ライアールージュ』、『踏み込み』を『嘘』にして」
「ああッ!?」

海美がバランスを崩しその場に倒れ込む。いわゆる階段を登る時に1段あると思い込んでなかった時にガクってなるやつだ。それが海美の身体能力で起きる。かなりの衝撃だろう。

「そして『海美さんとの距離』を『嘘』にするッ! これは『ライアールージュ』の分ッ!」
「ぐうッ!」

一瞬で海美の前に現れた志保がその勢いのまま海美に回し蹴りをお見舞いする。余程の威力だったんだろう。ガードした両腕ごと、海美の身体は吹っ飛んだ。

「志保ォォォッ! いいね、いいねいいね最高だよぉッ! 志保とも戦えて、恵美とも戦えて! ああ、ああッ! 『今日は死ぬにはいい日だ』!」
「うるさいんですよこの『バトル馬鹿』! 黙らせてあげるから早く来なさい! 『ライアールージュ』! 『海美』さんの『炎』を『嘘』に……ッ!」

してといいかけて、志保が苦痛の声を上げる。右腕で頭を抑えるその様は何かに内側から襲われているようだ。
『スタンドは本体の精神に依存する』
あれだけ強力な力なんだ。『肉体』に影響が出てもおかしくない。ああもう、考える前に体動かせアタシ! 身体を盾にしてアタシを助けてくれた志保にしてあげられることなんて、一つしかないでしょうが!
顔を真っ赤にして、熱中症みたいになってフラフラしてる志保をこのまま戦わせる? そんなの認められないね!


「美ィィ! あんたの相手はアタシでしょうが! よそ見をしてるんじゃァない!」

『鎧』を形成し海美の『スタンド』が残した『炎』を掻き分けながら最短距離で突っ込む。

「あははッ! いいよいいよ! 恵美も志保も、どっちも最高だよ!」

ぶつかり合う『炎』の蹴りと『氷』の拳。どうやっても力負けしてしまう。海美が残した炎には決して負けないのに……
ん? 『スタンドが残した炎』には勝てるってことは……それに、志保の能力……わかった!

「閃いたッ! 海美! あんたは終わりだよ! 『フローズン・ワード』!」

『鎧』を解除して『スタンド』を呼び出す。青いドレスを纏った人型の影が海美に向かって飛び出し……海美の隣を横切り、フェンスにもたれ掛かっている志保に平手をお見舞いした。

「はあッ!? なにやってんの恵美! 志保は私が倒すんだから! 邪魔しないでよ!」

ターゲットを横取りされたと勘違いした海美がアタシに向かって吠える。このエネルギー、もっと別のことに有効利用できなかったのかな。

「邪魔じゃないよ――どうよ、志保。気分はいい?」
「はっ!?」

アタシの声に、海美が振り返る。ついで漏れるのは驚愕の声。
それもそうだ。アタシが海美の立場なら同じリアクションをする。
何故なら、そこに立っていたのはもう立ち上がることがないはずの人間なんだから。

「平手打ちじゃなかったら良かったんですけどね……まあいいです。終わりです『海美』さん。『あなたの戦意』を『嘘』にした。もうこれ以上戦えない」

波打つ黒髪。意思の強さを感じる鋭い瞳。
普段と何ら変わらない毅然とした表情の、『北沢志保』がそこにいた。


「そんな……『志保』は『スタンド』の負担で戦えないはず……」
「そうだよ。力の使いすぎでアタマが『オーバーヒート』してたからね……だからさ。『フローズン・ワード』で『頭を冷やした』んだよ」

そう。海美の『炎』はアタシの『氷』を徹底的に溶かし尽くした。でもそれは、『海美のスタンドが生み出した炎』の話。
地面に燃え移って『ただの炎』になった後は、アタシの『鎧』に一方的にかき消されるだけだった。
『スタンドの現象はスタンドで干渉できる』
だから、志保の『熱中症』も、アタシの『スタンド』で治すことが出来たんだ。

「そっかあ……あーあ。負けちゃったあ……あ、あああ、ああああああ!! AHYYY AHYYY AHY WHOOOOOOOHHHHHHHH!!」

号泣する海美に思わず耳を防ぐ。そんなに負けたのが悔しかったんだ……

「あー……うん、すっきりした!」
「はい!?」
「切り替え早すぎでしょ……」 

一瞬で泣き止んだ海美に、志保が呆れたように呟く。まあ、この切り替えの早さが良いところではあるのかな。

「ねえ恵美、志保。さっそくなんだけどさ。次は誰と戦うの?」

ふいに、海美がそんなことを訪ねてくる。どうも、志保が『嘘』にしたのは『海美の中のアタシと志保への戦意』だけだったらしい。まあ、なんでもかんでも嘘に出来るわけないしね。

「海美……まだ戦うつもり?」
「私はね? 2人が何か目的があって『スタンド使い』を探してるなら『協力』するよ! 便乗ってやつ? 私は『強いスタンド使いと戦いたい』。2人は『スタンド使いを探す』必要がある。どうかな?」

唐突な取引に思わず驚く。けど、決して悪い話じゃない。戦力は1人でも欲しいし、海美ならアタシに足りない『パワー』を補うことが出来る。

「……うん。海美がいてくれたらアタシは嬉しいよ。よろしくお願いしようかな?」
「ほんと!? うんうん! こっちこそよろしく! うーん! 恵美と志保となら何人倒せるかな! 『スタンド使い』!」

嬉しそうに飛び跳ねる海美を見て苦笑する。うーん、エネルギーは有り余ってそうだけど、うまく行けばすごく頼りになりそうだ。

そして、そんな喜ぶ海美を――嘲笑うかのようにして、そのセリフは告げられた。

「海美さんが倒せる『スタンド使い』? それは0人だよ! だって、みんなはここで倒されちゃうんだから!」

方向は真下。一瞬でテンションを切り替えてそちらに視線を向ける。そこにいたのは、無数のケーブル波と共に、ビルの壁面を這い上がる『望月杏奈』の姿だった。
ケーブルの中から飛び出た1本が、屋上のフェンスに突き刺さる。
メキリ、と音を立ててフェンスが外れ、捻じれ、曲がり、形を変えて巨大な人型の姿を取る。背中に当たる部分にはさっき飛んできたケーブル、その先は杏奈の持つコントローラーに刺さっていた。

「ミッションはスタンド使いを倒すこと! 杏奈、ビビッとログインしまーす! 行くよ! 『ハッピー・ダーリン』!」

高坂海美(CV:藤原啓治)……ごめんなさい。言ってみただけです。

以下スタンドデータ
本体・人間・望月杏奈
スタンド『ハッピー・ダーリン』

遠隔操作型・群体型

破壊力E  スピードE  射程距離B

精密動作性C  持続性B  成長性無し

能力射程B(30メートル)


能力『繋いだものを杏奈にする能力』
『スタンド』から放たれた『ケーブル』に刺さったものが2メートルほどの大きさの人型『杏奈』になる。『杏奈』はそのままでも『近接パワー型』並の力を持つ。『杏奈』から伸びた『ケーブル』は先端が『コントローラー』になっており、それを操ることで更に強化することが出来る。『ケーブル』は高速で『巻きとる』こともでき、それを利用した『高速移動』も可能。

ビジョンは無数のケーブルが絡まった球体のような姿。中央に刺さった巨大なネジが目の役目を果たす

望月杏奈ちゃんの操り人形になりたい

第3話『ハッピー・ダーリン』投下します

「杏奈……やっぱりあの子……」
現れた杏奈を見て志保が歯噛みしながら呟く。どうやら何か心当たりはあるようだ。

「志保? どした?」
「えっと、恵美さん。私には聞いてくれないんですか。一緒に戦ってくれないかって」
「えっ」

唐突な志保の言葉に思わず驚く……うん。そう言ってくれるのは嬉しい。

「私は……恵美さん。千早さん。琴葉さんとすごす時間が好きでした。あの楽しかった時間に少しでも報いたい。そう思うんです。私ではダメですか」
「志保……ううん。そんなことはないよ。ありがとう。あんたがそう言ってくれて、嬉しい」

溢れてくる涙を手でぬぐい目の前に現れた杏奈の名前を持つフェンスの巨人を見据える。真正面からぶつかったら間違いなく力負けそうな見た目をしている。
でも、それはアタシ一人だけの時の話だ。

「志保! 海美! 背中は任せたよ!」
「了解!」
「はいッ!」

激励と同時、最初に突っ込んだのは海美だ。両腕に炎を纏いフェンスの巨人に殴りかかる。この自分の役目を本能的に理解してる感じ、海美らしくて好きだ。

「志保ッ! 援護お願い!」

言葉より早く、アタシの目の前に飛び出てきた『ライアールージュ』が、杏奈の『スタンド』から放たれた無数の『ケーブル』を切り裂いた。これで杏奈を守るのは『スタンド』本体だけ。アタシの『スタンド』は海美の『ハート・エクササイズ』とも少しなら殴り合える。杏奈の『ケーブルを操る』ことに特化した『スタンド』に力負けするはずない。

「行けッ!
『フローズン・ワード』!」

『フローズン・ワード』が拳を握り、無防備の『杏奈』の頬に向かって振り抜く。

「甘い、甘いねェ恵美さんッ! あなたは『ドクターペッパー』よりも甘い! 切り離された『ケーブル』を操れないなんて誰が言ったかなァァッ!?」

アタシの『スタンド』が『杏奈』の顔面を打ち抜く寸前。それよりも早く『ケーブル』が『フローズン・ワード』に絡みついた。


「くッ! 『フローズン・ワード』! お願い! 動いて!」
「無理無理! 1回絡みついた『ケーブル』を引き離すなんてできないよ!
『ハッピー・ダーリン』! 串刺しだよ!」

瞬間。杏奈の『スタンド』から伸びた無数の『ケーブル』がアタシは身体に突き刺さった。

脇腹と右肩、太ももに鋭い痛みが走る。クソッ、ああクソ油断した。突っ込むならもう少し様子見てからにするべきだった!

「あっはははッ! 痛い? ねえ痛い? 痛いよねェッ!!!」
「うるっさいなぁッ! 痛いに決まってるでしょォォッ!」

返事をしたのはアタシじゃない。貯水タンクから両脚を燃やしながらドロップキックを撃ってきた海美だった。
その一撃は『ハッピー・ダーリン』に直撃、激しく吹き飛ばし屋上のフェンスに叩きつける。


「ったく! 足から手からブスブス突き刺してくれちゃってさァァッ!? 私は『生け花』ですかァァッ!? って恵美! ひどい怪我じゃん! 大丈夫!?」

全身から『ケーブル』を生やした海美が怪我した私に声をかける。いや、あんたの方がやばいでしょ!

「いやいや、海美こそ! 傷だらけじゃん! 血、血を止めなきゃ!」

止める。止血。なんか、なんか方法は……あっ。そうじゃん。そういうのに向いてる能力じゃん!

「『フローズン・ワード』!
海美とアタシの傷を凍らせて!」

現れたアタシの『スタンド』がアタシと海美の傷口に触れる。一瞬、『冷気』が傷口に触れて染みたけどすぐに痛みを感じなくなった。


「ありがと恵美! それで、どうする? 早くしないと杏奈が起き上がってくるよ。今ある『ケーブル』はさっき私と志保で片付けちゃったけど。志保。『ライアールージュ』でなんとかならない?」
「……『人の感情』を『嘘』にするのってかなり消耗が激しいんですよ。そもそも今日は『能力』を使いすぎました……2人がやれというならやってみますが」

「じゃあその作戦は無し! 他は? なんかない?」

志保の犠牲ありきの作戦なんて作戦だなんて言えないね!

「え~~っ!? ちょ、ちょっと待ってね。これなんとかして考える!」

刺さったままの『ケーブル』を引きちぎってそのまま手に炎を纏う。『スタンド』から離れた『ケーブル』は超高熱の熱量に耐えきれず一瞬で溶け落ちた。

「それだ! 閃いたッ! ありがと海美! 志保も手伝って! 3人で『杏奈』を倒すよ!」

 
「……もう許さないッッ! 『杏奈』を使うまでもない! この『スタンド』で! 『杏奈』の『スタンド』で『再起不能』にしてやる!
『ハッピー・ダーリンッッッ』!!!!!」

ブチ切れた杏奈の絶叫と同時。無数の『ケーブル』が海美とアタシ目がけて降り注ぐ。

「海美ッッ!」
「オッケェエエ! 高坂海美、行きますッッ!」

私の声と同時。右腕を炎に変えた海美が目の前を薙ぎ払う。放たれた爆炎は大気を焦がしながら杏奈が放った『ケーブル』を溶かしきった。

「志保ッッ!」
「『ライアールージュ』ッッ! 行って!」

紫電一閃。『ライアールージュ』の一撃が貯水タンクをぶち抜き――その瞬間。屋上全域に凄まじい量の水が降り注いだ。

「終わりだよ『杏奈』ッッ! あんたは『濡れた』、『濡れたんだ』! 『フローズン・ワード』!
『凍らせて』!」

予想外の攻撃に杏奈の動きが鈍る。そこを見逃す『フローズン・ワード』じゃない。杏奈が気づいた時には既に懐に潜り込んでいた。

「やっ、あっ、いやっ、あ…………」

杏奈の身体に触れ直接『冷気』を送り込む。濡れているため凍りやすさも抜群。10秒足らずで杏奈は物言わぬ氷の彫像になった。

「海美。急いで溶かして。終わったら劇場の仮眠室まで運ぼう。志保も手伝ってね」

このままだと凍死してしまう。[ピーーー]気は無いし、杏奈には色々聞きたいことがある。

「うん。……あっ、そう言えばさ」

杏奈の氷を溶かしていた海美がなにかを思いついたように右手を上げる。その表情はなにか楽しいことに気づいたような笑顔だ。

「……ああ。言われてみたらそうですね」

志保も何かを察したのだろう。同じように右手を上げ、笑みを浮かべる。

二人の態度でようやく悟る。ダメだなあアタシ。自分から誘っておいて。

「そう言えばさ。3人で組んだの初めてだっけ……ねえねえ、みんなさ。言いたいことは同じだよね」
「うんッ!」
「もちろん!」

二人の返事に思わず破顔し拳を握り掲げる。それから先は、皆一緒。

「「「お疲れ様でした!」」」
 
掲げた拳をぶつけ合い、互いの労を労いあった。

バァ―――z_____ン!!!

To be Continued......

「海美。急いで溶かして。終わったら劇場の仮眠室まで運ぼう。志保も手伝ってね」

このままだと凍死してしまう。殺す気は無いし、杏奈には色々聞きたいことがある。

「うん。……あっ、そう言えばさ」

杏奈の氷を溶かしていた海美がなにかを思いついたように右手を上げる。その表情はなにか楽しいことに気づいたような笑顔だ。

「……ああ。言われてみたらそうですね」

志保も何かを察したのだろう。同じように右手を上げ、笑みを浮かべる。

二人の態度でようやく悟る。ダメだなあアタシ。自分から誘っておいて。

「そう言えばさ。3人で組んだの初めてだっけ……ねえねえ、みんなさ。言いたいことは同じだよね」
「うんッ!」
「もちろん!」

二人の返事に思わず破顔し拳を握り掲げる。それから先は、皆一緒。

「「「お疲れ様でした!」」」
 
掲げた拳をぶつけ合い、互いの労を労いあった。

バァ―――z_____ン!!!

To be Continued......

杏奈Pには申し訳ないことをしたよね。
ここからは一旦バトルフェイズはお休みです(新しいアイドルが出ないとは言っていない)

ストイックで自罰的で、それでも前を見据えて立っている。北沢志保はそんな子だと思っています

第4話『Re:フレンド』
投下します

 杏奈が目覚めたのはそれから2時間後のことだった。
 その間アタシと海美は『ライアールージュ』で杏奈から受けた傷を『嘘』にしてもらうことで怪我の治療を終えている。
 目の前に万全のスタンド使い――アタシと海美がいるのを見て逃げられないことを悟ったのだろう。
 杏奈は、静かにそれまでのことを話し始めた。

 「最初に気づいたのはね……冬くらいのことだったの……杏奈、劇場でパソコンやってて……動画見ようとしたらイヤホンがなくて……こたつの外に一本転がってるのを見つけて……こたつから出たくないなーって思って……気づいたら、杏奈の手にイヤホンが入ってたの……それからね。少しずつ小さいもの……携帯の充電コードとか、パソコンの電源コードとかで練習してたら……スタンドが出るようになってた……
 それでね……可奈に、誘われたの……一緒に、チームを作らないかって……杏奈は……そのチームに入った……」

 その名が出た瞬間、わずかに志保の表情が変わったのをアタシは見逃さなかった。
 矢吹可奈。彼女はシアターのアイドルで、同じ765プロの仲間で……ここにいる、北沢志保の『親友』でもある。
 そんな彼女と同じ『チーム』である杏奈がアタシ達に攻撃を仕掛けてきた。可奈は……認めたくないけど。十中八九アタシらの『敵』だ。


 「……私もね。可奈に誘われた。一緒にスタンド使いのアイドルを集めてチームを組もうって。確か……2週間くらい前だったかな。その時は保留したの」

 滔々と、穏やかな口調で志保が語りだす。それは、彼女にとっての『スタンド』との向き合い方そのものだった。

 「私はね。『スタンド』は『何かを成すための力』じゃなくて『制御することを試される力』だと思う。『ライアールージュ』はすごく制御が難しい力よ。ううん。『ライアールージュ』だけじゃあない。海美さんの『ハート・エクササイズ』も、恵美さんの『フローズン・ワード』も一歩間違えれば自分自身を傷つけてしまう危険なものだわ……お二人はそれをコントロールしてる……ように、私には見える。
  『ライアールージュ』という『スタンド』を与えられたことはとても『幸運』なことだと思うわ。『嘘を現実に変える能力』が強いからじゃあない。『ライアールージュ』のコントロールが難しいって話はしたわよね。
 この力は、私を縛る荒縄のようなもの。この枷にも等しい力を制御することで成長できるならいいって思ってた」

 『スタンド』は自分を縛る鎖であり、それに耐える事で自分自身が成長する、か。うん。すごく志保らしい。

 「なんで杏奈が私達を攻撃したかは知らない。けど、これではっきりしたわ。私は可奈を倒す
  あの子の仲間である杏奈が私達に敵意を持って攻撃したということは可奈も私達に敵意を持っているということ
  ……同じ事務所のアイドル同士で争い合う……そんなふざけたことを可奈が認めているなら、私はそれを止めなきゃいけない
  ……それが『親友』としての私の役目ですから」

 最後だけ敬語になった志保が何かを訴えるような瞳でアタシを見つめてくる。わかってる。力を貸してほしいんでしょう?

 「……それで、杏奈はどうするの?」
 「まだ戦う気なら私が相手になるけど」

 私より先に杏奈への戦意を発露したのは他でもない海美だった。
 ああもう。この子は本当によくわかってる。
 今、アタシ達の心は一つになった。

 「杏奈は……杏奈は……」

 難しい話じゃない。杏奈がこれ以上私達と敵対しないと言ってくれるだけで良いんだ。

 「……恵美さん、志保、海美さん。ごめんなさい。杏奈。勇気がなかった。杏奈も、皆と一緒に、戦か――」

 戦うと、杏奈は最後まで宣言することができなかった。

 「杏奈、杏奈! ねえ、しっかりしてよ杏奈!」

 腹部から噴き出た鮮血が周囲を真っ赤に染める。駆け寄った海美が必死に声をかけるが反応はない。

 『やらせませんよ。杏奈ちゃんは、ここで死ぬんですから』

 同時。聞こえたのは女の声。姿は見えないけどこの声には確かに聴き覚えがある。

 次の瞬間。溌剌とした、あまりにも清々しい声で。その人物は宣言した。

 『あなたたちも! 杏奈ちゃんも! この七尾百合子と『ヴァニッシュメント・プロローグ』がトドメを指してあげましょう!』

バァ―――z_____ン!!!

To be Continued......

投下終わります
百合子ちゃんに名前負けって言葉知ってる?って小一時間言葉責めしたい
続きは近日中に

望月杏奈修正パッチみたいになってしまった
第5話『ヴァニッシュメント・プロローグ』投下します

 応急処置として杏奈の傷を凍らせる。乱暴ではあるけど止血には十分なはずだ。
 杏奈は戦えない。志保には杏奈を百合子から守ってもらわなきゃ行けない……海美の手が空いてるのは助かるけど、相手は能力がわからないスタンドを使ってくる百合子だ。

 「恵美っ。どうするの。早くゆりりんをなんとかしないと」
 「わかってるっ……けど、わかんないんだよ。百合子の能力が。それがわかんないと……海美。杏奈はどうだった? 何か変わったところはなかった?」

 話しながら背中合わせになり、肩越しに海美へと尋ねる。私が前、海美が後ろ。これで全方位がカバーできるってわけだ。

 「ええっ。変わったところって言われても……あ、でもそんなに深い傷じゃあないみたい。出血は派手だったけどね」
 「なるほどね……『スタンド』自体に攻撃能力はないみたいだね」
 「うん。じゃなきゃああれくらいの傷で済むわけがないもんね」
 「それに……さっきの声からして百合子はまだこの部屋にいる。なんかの理由があって攻撃は出来ないみたいだけど」

 結局のところ、何もわからないってことだ。ああクソ。せめて居場所がわかれば……

 「……そうだ。一つだけ提案があるんだ」
 「なに?」
 「成功できるかはわからないんだけどさ……恵美の『心』はさ。いつも温かいよね。そばで戦ってる私にはわかる……達人が『気』を読み取るように。『ハート・エクササイズ』は『心の温度』を感知する! 私、恵美、志保、杏奈以外にも……この部屋にはもう一つ『熱源』がいる! そこだァッ!」

 気合が入った声と同時。海美の踵から炎が噴き上がり、その勢いで飛び跳ねた海美が炎を纏った拳を振り下ろす。

 ドゴォォォォン!

 仮眠室のベッドに直撃した拳が爆音を上げてひしゃげる。シーツに燃え移った炎が音を立てて燃えあがる。

 「っ! ギリギリで避けられた……やるね! ゆりりん」

 百合子に賞賛の言葉をかける海美の視線はベッドとは反対方向の壁に向けられている。まるで、百合子がそこにいるかのように。

 「出てきなよゆりりん。もうどこに隠れても無駄なんだからさァ〜~ッ!」

 声を荒らげながら挑発する海美の目はついさっきアタシと戦ったときと同じものだ。
 まずいなこの子。完全にスイッチ入ったぞ。

 「……そうですね。『ヴァニッシュメント・プロローグ』の能力は『姿を消す』こと。海美さんがいたらその効果は意味がないのかもしれない……それでもッ! こちらの優位には変わりありません! さあ海美さん! これから繰り出すのは『透明』な攻撃……冷えきった鉄の温度。読めるものなら読んでみてください!」

 瞬間。海美の両脚から激しい鮮血が吹き上がった。

 「あああァァァァァ〜~〜ッ! 痛い、痛い痛い痛い痛いよォォォォッ!!!!」

 足を抑えてその場にうずくまる。急いで凍らせるけど機動力の要になる脚をやられたんじゃあしばらくは戦えない。

 「うっとうしい足は潰しました……次はあなたの番です!」

 どうする? こう悩んでる次の瞬間には百合子の攻撃はアタシに命中するだろう。
 『鎧』を作る? ダメだ。凍らせるだけならともかくあれはスタンドパワーの消費が激しすぎる。百合子は防戦だけで勝てるような相手じゃない。
 氷の柱でも作って防ぐ。ダメだ。海美の傷口は深い。人体をやすやすと貫くような攻撃を防げるわけがない。
 まずい。完全に万事休すだ。打つ手が何も無い。

「終わりですね恵美さん。あなたはここで『負けて死ね』!」

 宣言と同時。目の前に現れた黒い拳が百合子の攻撃を受け止めた。……いや、これは。

 「『糸』は束ねれば『像』になる……杏奈の『ハッピー・ダーリン』は新しい可能性にたどり着いたッ!
 杏奈は、もう何者にも屈しない!
 杏奈には見える……『ハッピー・ダーリン』が導いてくれた『輝き』の『未来』が……
 だから、この『スタンド』は『ハッピー・ダーリン』であって『ハッピー・ダーリン』ではない!
 行くよ!『ハッピー・ダーリンACT2
ビビッド・イマジネーション』!」

 バァ―――z_____ン!!!

 To be Continued......

ACT2覚醒はスタンド戦のロマンですよね
書き溜めあるんでキリのいいところまで続けます

第6話『ビビッド・イマジネーション』投下します

 「ふん! ただ人型になっただけじゃないですか。パワーとスピードがあるだけじゃ私の『ヴァニッシュメント・プロローグ』は破れない!
 『串刺し』だッ!」
 「効かないよ! ラビィ!」

 ボゴォッ! グシャァッ! ギャインッ!

 杏奈の『スタンド』が腕を振るうたび金属がひしゃげるような音があたりに響く。
 これは、杏奈が百合子の透明な攻撃を防いでいることの証明にほかならない。

 「無駄だよ。百合子さんの攻撃はもう通用しないッ! 百合子さんのナイフ投げは単調すぎる!」
 「確かに、そうかもね……けどね。気づいてる? 杏奈ちゃん。私の攻撃のリズムが少しずつ早くなってることに……それはあなたに少しずつ近づいているからッ!」

 アタシのすぐそば。杏奈の目と鼻の先で百合子の声が響く。

 「ッ! 『ビビッド・イマジネーション』!」
 「『ヴァニッシュメント・プロローグ』! 無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!」
 「ラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビラビィッ!」

 杏奈の『スタンド』が目の前の空間を殴りつける音がただただ響く。
 新しい『スタンド』をまだ使いこなせていないせいか。杏奈の表情が少しずつくもっていく。やがて、均衡していた両者の力は完全に崩れた。

 「触れた! 確かに触れたよ杏奈ちゃん! これであなたは『下半身失調』だ!」
 「あああァァァッ! 嘘……嘘でしょ……? 杏奈の……『右側』がないッ! 右手も、右目もッ!」 

 左手で右目を抑えながら杏奈がその場でうずくまる。百合子の『スタンド』は『姿を消す』能力を持つ。その力は姿だけではなく『感覚』も消せるのかッ!

 「『フローズン・ワード』ッ!」
 「遅いですよ。無駄ァッ!」

 っ! 『スタンド』を出すのと同時。百合子の方から飛んできた何かが刺さる。これは『ナイフ』ッ! 百合子はさっきからこれを『透明』にして投げていたのか!

 「終わりですよ恵美さん。『串刺し』じゃあ生温い! 『張り付け』になりなさい!」
 「いいや違うねッ! 終わったのはお前だ!」

 百合子が宣告した瞬間。アタシの目の前に現れた何かが百合子の攻撃から守ってくれていた。

 「パス!」 「パスパス!」 「ソイッ!」 「オラッ!」 「マダマダ!」 「コッチコッチ!」 「パース!」「イクゼェッ!」「タタミカケロォッ!」

 アタシの周囲に現れたのは白い身体を持つ小人達だった。キャップのようなものを被り背中に番号がある様はまるで『野球選手』のように見える。
 小人達は抜群のチームワークで受け止めた『ナイフ』をアタシに当たらないように逸らした。

 ヒュオンッ!

 姿こそ見えないが発生する風切り音はそれがナイフによるものであることを充分に語っている。
 絶妙なパスにより加速されたナイフは、百合子に避ける間すら与えずその右腕を貫いた。

 
 「ああァッ!? そんな、私の身体に、さ、さ、刺さって! なんで、なんであなたが『スタンド』を……答えて! 『昴』さん!」

 言ってアタシの後ろを睨みつける百合子。思わず振り向くと、そこには人影が立っていた。

 短く切りそろえた髪。
 猛禽類を思わせる切れ長の瞳。
 身を包むのはスタジアムジャンパーにデニムのショートパンツというシンプルな服装。
 一見中性的に見えるものの、その身体を描くのは丸みを帯びた曲線だ。そこに男特有の荒々しさは欠片も存在しない。

 「野球によぉー。『ジャイロボール』っつう球種があってさあ……それのキモが『回転』なんだよな。俺。それをどうしても投げたくてさあ……毎日毎日、1日1000球練習してた……いつの間にか、ボールを『回転』することだけがやけに上手くなってなぁ……気づいたら『回転』から生まれたエネルギーは俺に新しい力を与えていたんだ……」
 「『回転』……まさか。杏奈ちゃんも……ッ!」
 「ああ。俺がさっき『回転』を教えた。あいつも『スタンド使い』だからよぉ。1発でスタンドが『進化』したぜ」

 『回転』による進化……ようやく見つけた。『遺体』への可能性ッ!

 「昴ッ!」

 痛みを無視して昴に問いかける。アタシは何が何でもこの子を仲間にしなければならない。

 「落ち着けよ。百合子は俺が倒す。あとは任せとけ」

 ニッ。と歯をむき出しにして笑う昴を見てアタシは安堵する。ああ、あとはこいつに任せておけばいい、と。

 「なんのつもりか知りませんが……あなたはここで『再起不能』にしてあげます!」

 「へへっ。『プレイボール』といこうか。やるぞッ! 『ビキナーズ・ストライク』!」

 バァ―――z_____ン!!!
 To be Continued......

百合子戦終わるまで続けますよー(●・▽・●)
第7話『ビキナーズ・ストライク』投下します

 「『串刺す』! 『ヴァニッシュメント・プロローグ』!」
 「はッ! 効かねえよバーカ!」

 百合子が投げたナイフを昴の『スタンド』が即座に投げ返す。紙一重で避けた所に昴の拳が飛ぶ。

 「こっちですよ! どこ見てるんですか?」
 「うっせえ! 今度は俺から行くぜ。行くぜテメーら! 『パス』するぞッ!」

 海美の拳によってひしゃげたベッドの部品を『スタンド』で撃ち出す。しかし、流石というべきか。一度消えた百合子にはなかなか攻撃が当らない。

 「無駄ですよ。もう私からは攻撃しない。あなたはもう『下半身失調』を待つだけですッ!」
 「へっ! 当たらねえならよぉー……『ボール』をでかくするだけだよなァッ!」
 「は? はぁァァァッ!?」

 百合子の絶叫と同時。飛来したパイプ椅子が窓をぶち抜いた。

 「馬鹿じゃないんですか!? まともに当たったら死んじゃうでしょっ!?」
 「先に[ピーーー]気で来たのはおめーの方だろーが! まだまだ行くぜッ! 『パス!』『パス!』『パス!』」

 撃ち出したパイプ椅子は百合子には当らない。やばい。なんかやな予感がする。

 「昴! 避けて!」
 「はぁ? 避けるってなにが――」
 「遅い――『ヴァニッシュメント・プロローグ』はあなたに触れたッ!」
 「なっ! 馬鹿なッ! そんな、俺の『左腕』が! ……とでもいうと思ったか! お前が杏奈に使った時から『覚悟』はしてたぜ! お前の『敗因』はァッ! 俺の『スタンド』を警戒しすぎたことだッ!」

 鋭く言い放ち、右ポケットから『野球ボール』を取り出す。
 っ! なにこのボール、おかしい、明らかにおかしい。
 話は変わるけどアタシには兄貴がいる。兄妹仲はそんなに悪いほうじゃない。気が向いた時にキャッチボールとかするくらいには仲がいいつもりだ……だから、同年代の女子に比べたら比較的野球の知識はあるはずなんだけど。
 アタシの知ってる『野球ボール』はこんなに激しく『回転』したりしない!

 「『スタンド』はなぁ! あくまで俺が目覚めた『才能』でしかない! そんなもんよりよぉー……俺はこの『努力』で身につけた『技術』の方を信じるッ!」

 そんな、嘘でしょッ!?
 『野球ボール』の『回転』で巻き上がった埃が『回転』の振動で百合子の姿を浮き上がらせたッ!

 「見えたぜッ! 俺の『野球ボール』を食らええええェェェッ!」

 投げられた『野球ボール』が百合子に迫る。百合子も黙って食らってはいない。『スタンド』を呼び出し弾く、けどそれは悪手だ。『スタンド』を呼び出した隙に死角に移動した昴は2発目の準備をしている!

 「もおおおおいっぱああああつッッ!」
 「キャァァァッ!!」

 まさに一球入魂。今までで一番の速度で『回転』する『野球ボール』を腹に受け、百合子は気を失った。

 「俺は『回転』、お前は『スタンド』……お互い大事なものはちがうみたいだけどよぉー……『顔』は勘弁してやるぜ。俺とお前は同じ『アイドル』だからなッ!」


 バァ―――z_____ン!!!
 To be Continued......

昴にもおおおおおいっぱあああつ!を言わせたかっただけとか口が裂けても言えない
第8話『ゴールド・エクスペリエンス』投下します

「へえ……可奈がそんなことをねえ。で、百合子は可奈の言う通り襲って来たと」

 昴と海美、アタシと杏奈の治療を終え、気絶から起きた百合子の怪我を直したアタシたちは、シアターにある会議室の一つで作戦会議をしていた。

 「違いますよ! その……正直に言うと、覚えてないんです。可奈ちゃんの仲間になった記憶はあるんですけど……そこからは正直おぼろげで……でも、本当にごめんなさい。私のせいでみんなを傷つけてしまって」
 「あーいいっていいって。そんなに謝んないでよ。百合子の意思でやったことじゃないんでしょ。なら仕方ないよ。ねっ?」

 深々と頭を下げる百合子の姿にアタシは慌てて皆への賛同を求める。こう、大勢で1人を責め立てる構図は非常によろしくないと思うのだ。
 百合子に敵意がない以上行動に罪があるかないかを決めるなんて無駄でしかないだろう。

 「……恵美さんがいうなら。私は」
 「ゆりりんの『スタンド』って消えなくても強いんでしょ? 今度は真っ向から正々堂々戦おうよ。消えたりとかしないでさ。それならチャラ! 私もゆりりんのこと殴ったしね」
 「杏奈も……恵美さんや海美さん、志保を襲ったから……杏奈に百合子さんを悪くいう資格はないよ……みんな、本当にごめんなさい……」
 「……俺は直接お前に襲われたわけじゃねえし……いいんじゃね? 恵美達がそれでいいなら」

 ……うん。アタシの仲間はいい子ばっかりだね。瞳に涙を潤ませる百合子の頭を撫でる。よしよし、あんたもよく頑張ったよ。

 「なら問題ないね。ほらほら、百合子も泣かない泣かない。これで百合子と杏奈の件はおしまい。仲間をこれ以上責めたりしない! ……そんでさ。昴」
 「ん? 今度は俺?」

 『回転』を使う『スタンド使い』がアタシの目の前に現れた。これは、間違いの無いチャンスだ。このチャンスを掴むためには、アタシは皆に自分が何をしたいかを伝えなければいけない。
 『真に求めるものは』は『全てを投げ出さねば手に入らない』のだから。

 「どこから話したらいいのかな。みんなだから言うね?
 アタシは『遺体』ってものを探してる。この『遺体』はすごい力を持っててさ。どんだけ凄いかっていうと手にした人を『スタンド使い』に出来るくらいすごいんだよね。全部集めると『奇跡』が起きるって言われてる……
 アタシがモデル時代によくしてくれた編集さんがいてさ。その人、取材で『スタンド』を追ってて可奈がいるしような『組織』に殺されちゃったのね?
 別に可奈が殺したわけじゃあないよ? 話聞く限り可奈が『スタンド』に目覚めたのは編集さんに殺された後らしいし
 ……アタシの目的はね。『遺体』を集めて『スタンド』なんてものを無くすこと。それが編集さんの仇を討つ方法だと思う……ごめんね。急に重い話しちゃって」

 「……それで。なんで昴さんなんですか? なにか聞きたそうにしてたでしょ?」

 重苦しい空気の中、最初に口を開いたのは他でもない志保だった。

 「……『遺体』はね。ふさわしい人の元に巡るもの。『回転』を制するものは『遺体』を制するとさえ言われている……だから、『回転』を使う昴なら何か知ってるんじゃないかと思ってさ」
 「悪いな。俺の『回転』は自己流だからよぉー……『遺体』なんてものは聞いたこともねえ……だがな。その『遺体』がとんでもねえもんだってことはわかる! お前の編集さんを殺したやつは間違いなく悪人だ。『スタンド』に関わってるやつらにはそういう悪人がいるってことだ。そいつらの手に渡るくらいならさぁ。恵美、お前が集めた方がいい!
俺でよかったら力になるからさ」

 昴の答えは思いがけないものだった。『回転』と『遺体』は惹かれ合う……昴が側にいてくれたら『遺体』の関係者と関わる機会は増えるだろう。

 「私らは聞くまでもないよね。恵美?」
 「今更、ここから先は危ない戦いになるからついてくるな、なんて言いませんよね?」
 「杏奈は……杏奈は、もう迷わない。杏奈も昴さんと同じ。『遺体』なんてものを恵美さん以外の人に握らせるわけには行かない! それが可奈なら尚更!」
 「私は……許されないことをみんなにしました。その償いを果たしたい。私じゃ力にはなりませんか」

 みんなの言葉を聞いて思わず涙ぐむ。
 本当に、本当にいい仲間を持った。

 「……ううん。すごく嬉しい。ごめんね。あと少しだけ力を貸してくれる?」
 「もちろん! 言ったじゃん。『強いスタンド使いと戦いたい』ってさ。恵美と一緒にいるのが一番手っ取り早そうだしね」

 アタシの肩に腕を回し海美が笑う。
 まったく本当に。頼もしいったらありゃしない。

 「……オッケー。百合子。杏奈。2人の仲間……いや、可奈の仲間か。その中に、『回転』を使う『スタンド使い』はいなかった?」
 「……ごめんなさい。わかりません。『回転』自体、昴さんが使っているのを見たのが初めてです」
 「杏奈もわかんない。ねえ恵美さん。『遺体』って、そもそもどういうものなの?」
 「ある地域で信仰されてる偉大なお方の『遺体』なんだって。元々は『合衆国』のものだったんだけど。向こうから日本に移住した『騎手』の人がこっちに持ってきたってさ。なんかね、こっちでフルーツの輸入をしてたんだってさ」

 ここまで聞いた百合子が小さく手をあげる。

 「あの……これは『推理』ではありません。ただの私の『妄想』なんですけど。それでよければ聞いてください。昔から外国とも関わりがあって、輸入にも携わってる家に一つだけ心当たりがあります……『星梨花』。『箱崎星梨花』の実家は古くから貿易業を営んでいると聞きました。それに、あの子も『スタンド使い』です。『遺体』に関わってる可能性はあると思います……どうですか」
 「星梨花の家なら知ってます。恵美さん。行きましょう」

 志保の言葉を合図に全員が立ちあがる。

 「よし。目的地は星梨花の家! 目標は星梨花と接触すること。行くよ! みんな!」

 会議室を出て、玄関の扉をくぐる。小道を抜け表通りまで出たところで、意外な人物に遭遇した。

 「……恵美さん。それに……なんか、珍しいメンバーですね」

 艶のある黒髪が風になびく。
 静謐さを称える瞳は宝石のよう。
 目鼻筋は整い、唇は薄く一文字に結ばれている。
 まだ幼さは残るが、間違いなく美人と言える。
 最上静香。
 シアターの仲間である。

 「そう? アタシと志保は同期だし、海美とは同じユニットじゃん」
 「まあそれもそうですけど。それで、みなさんは何を?」
 「んー。ちょっとね。星梨花のとこに行くところ」

 次の瞬間。その言葉は余計な一言であったことを知る。
 感じたのは圧力に近い意思の力。
 その波動は、目の前の静香から放たれている。

 「星梨花……? あなたたち『スタンド使い』が雁首を揃えて星梨花の元に行く? ……何をする気かは知りませんが、見過ごすわけには行かないッ!」

 静香の言葉に、肌がひりつくのを感じる。まずい。こんなところで無駄な戦闘はしたくない。

 「っ! 静香、待って、話を!」
 「恵美さん危ない! 『ビビッド・イマジネーション』!」

 聞いてと言おうとしたその時。
 目の前に現れた杏奈の『スタンド』がアタシへの攻撃を防いでくれていた。
 杏奈の『スタンド』の右腕には何かが絡みついてる……これは、白い蔓?

 「なにこの『蔓』! 杏奈の真似はやめてよ。『2P』キャラなんていらない!」

 『蔓』を解き臨戦態勢を取った『スタンド』をかたわらに、杏奈が吠えるように叫ぶ。

 「そうだなぁ……邪魔するってんなら手加減はしねえぜ」
 「静香。あなたじゃ荷が重いわ。早くそこをどいて」
 「まあまあ。やる気なら良いじゃない。これは小学生でもわかるよ。『炎』が『蔓』には勝てないってのとなんてさぁァァァッ!」

 1手遅かった。こんな状態で話し合いなんてできるわけが無い。

 「重い? ……何を今更ッ! 私はね。既に重いものを背負ってるの。貴方達なんかじゃあ想像も出来ない『血脈』というものをね!
 みんなも知っての通り、私は両親との折り合いがとても悪いわ……それはね。2人と私が血が繋がっていないから
 私の本当の両親は私が幼い頃に亡くなったの……父は列車事故に巻き込まれて即死。母は父を亡くした心労でその半年後に……でもね。母は自分の死が近いのを自覚して、私に遺言を残した
 あなたは私の親友に託す、と。その親友の苗字には私達と同じ読みの字が入っている。その読みに、私達の意思を感じて欲しい、ってね。
 最上の『うえ』という字は『じょう』と読むッ!」

 そこまで言って、静香はカーディガンとキャミソールをめくる。晒されたのは右肩……あれは……『星型の痣』?

 「私の父は『ジョナサン・ジョーキッド・ジョースター』。
 母は『東方理那』。
 私の名前は『静香・ジョースター』
 私は『黄金の意思』を引き継ぐもの!
 父は星梨花の両親にお世話になったと聞くわ。星梨花には指一本触れさせないッ!」


 バァ―――z_____ン!!!


 To be Continued......

Q.時系列おかしくね?
A.勢いです
Q.ジョニィって痣なくない
A.勢いです

当SSはノリと勢いと7部への愛で構成されています


書き溜めなくなったんで終わりだよー(●・▽・●)

この最上静香には『凄み』があるッ!
第9話『プレシャス・グレイン』投下します

 「海美ッ! クソォッ! やらせるかよォォッ! 『ビキナーズ・ストライク』ッ! 『石』を『パス』するッ!」

 昴の『スタンド』が無数の石を『ボール』として『パス』する。あの百合子を追い詰めた『スタンド』。遠目に見たアタシでも見きれなかった速度の攻撃を。

 「遅いッ! 遅すぎるッ!」

 静香は苦もなく、紙一重で避けて見せた。

 「遅い? 当たり前だろ、そいつは囮ッ! 本命は『野球ボール』の方だッ!」 

 石を避け僅かにバランスを崩したところに、渾身の『野球ボール』が叩き込まれる。それはここしか無い一撃。絶妙なタイミングで繰り出された昴にとって必殺の一球だった。

 「本命? あなたの世界は小さすぎるわ! 『回転』は、あなただけの『技術』じゃあないッ!」

 台詞と共に静香がカーディガンのポケットから『テニスボール』を放り投げる。接触は一瞬、それでも充分な『回転』を与えられていた『テニスボール』は『野球ボール』と相殺し地面に墜落した。

 「海美ッ! クソォッ! 『ビキナーズ・ストライク』ッ! 『石』を『パス』するッ!」

 昴の『スタンド』が無数の石を『ボール』として『パス』する。あの百合子を追い詰めた『スタンド』。遠目に見たアタシでも見きれなかった速度の攻撃を。

 「遅いッ! 遅すぎるッ!」

 静香は苦もなく、紙一重で避けて見せた。

 「遅い? 当たり前だろ、そいつは囮ッ! 本命は『野球ボール』の方だッ!」 

 石を避け僅かにバランスを崩したところに、渾身の『野球ボール』が叩き込まれる。それはここしか無い一撃。絶妙なタイミングで繰り出された昴にとって必殺の一球だった。

 「本命? あなたの世界は小さすぎるわ! 『回転』は、あなただけの『技術』じゃあないッ!」

 台詞と共に静香がカーディガンのポケットから『テニスボール』を放り投げる。接触は一瞬、それでも充分な『回転』を与えられていた『テニスボール』は『野球ボール』と相殺し地面に墜落した。

 「次はあなたの番ッ! 私の『スタンド』は全てを『奪う』。さあ『枯れ落ちろ』!『死骸を晒せ』!」

 静香の『スタンド』が宙を走る。狙いはアタシ。触れたもの全てを風化させる死の茨がアタシ目がけて降り注ぐ。
 こんなの考えるまでもない。ようは、直接触れなきゃいいだけだ。

 「氷の『鎧』ッ! これであんたには何も出来ないッ!」

 『鎧』で包んだ手に巻きついた『スタンド』を強く握りしめる。静香とアタシならアタシの方が力は上だ。これでもう静香は動けない。

 「出来ないなら出来ないなりにやれることがあるんですよ。これは『回転』でも『スタンド』でもない新しい力ッ!はぁぁァァァッ!」

 深く呼吸をする静香の身体が光に包まれていく。まずい。これはまずい。この『エネルギー』は、『回転』でも『波紋』でもないッ!

 「あなたは『守り方』を間違えた。
 これが『岩』や『土』なら私は何も出来なかったッ!
 『氷』は元を正せば『水』ッ!
 食らえッ! 水を疾走する『波紋』!
 『青緑波紋疾走(ターコイズブルーオーバードライブ)ッッッ!』」

 バァ―――z_____ン!!!

 To be Continued......

 「先手必勝ッ! 『プレシャス・グレインッ』!」
 「やらせないよ。『ハート・エクササイズ』!」

 静香の両腕から放たれた白い蔓――『スタンド』、『プレシャス・グレイン』を海美が両手で鷲掴む。

 「『蔓』なら大人しく燃え……えっ、あ、あああアアアアァァァッ!!!」

 次の瞬間。耳を抑えたくなるような悲痛な叫びをあげ、海美がその場に倒れ込んだ。見ると、『スタンド』を握った両手が枯渇しヒビすら入っていた。

  「私の『スタンド』に触るからよ……あなたの両手は『風化』し『砂』になるのを待つだけ」

レス順を間違える悲しみ……>>78 >>76 >>77の順番で読んでください……

あ、酉つけました

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