赤髪「……」木こり「女の子……?」 (39)


赤髪「……」

木こり「あ、あれ……いつの間に……」

赤髪「……?」

木こり(綺麗な赤い髪だなぁ、こんな色の髪をした人がいるもんだ)

木こり「お嬢さん、そこからどいてくれるかな?」

木こり「今からその木を切り倒すんだ、作業に入りたいんだけど」

赤髪「だめ」

木こり「え、なんでだい」

赤髪「私が生まれた大樹だから」

木こり「えぇ……」




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木こり(まいったな、何だろうこの子)

赤髪「……貴方は人間…?」

木こり「他に何に見える?」

赤髪「………」

木こり「とりあえず危ないよ、どいてどいて」

赤髪「だめっ」

木こり「そんな事言われてもな」

木こり「雇い主が俺の住む土地の領主でね、この森で立派で頑丈な樹で屋敷を建てて欲しいんだと」

木こり「俺の見立てではこの大樹位しかないんだよ」

赤髪「……」


赤髪「代わりの木、探してあげるから……切らないで」

木こり「んんー……」

赤髪「……」じっ

木こり(綺麗な娘さんだなぁ、何処に住んでるんだ?)

木こり(ん、待てよ)

木こり(確か領主様の妾の中に、赤毛の女がいるって聞いたような)

木こり(赤毛どころか赤髪だが……着てる服も質が違う、領主様の妾かもしれない)


木こり「(ここはとりあえず従っとくか……)…ならお願いしようかな、ちょっと待っててくれるかい」

赤髪「?」

木こり「水筒と軽食でも持って行こうかと思ってね」

赤髪「……いらないよ」

木こり「いやいや、俺は欲しいからさ」

赤髪「大丈夫」スッ

木こり(手?)


< バシャァッ

赤髪「一応、お水出せるよ」ザァァ


木こり「……!?」


< ザァァ・・・


木こり(手からあんなに水を……)

木こり(噂に聞く魔導師って奴か? だとしたら下手をすると殺されるんじゃっ……)

赤髪「行こう…?」ピタッ

木こり「……あ、ああ」

木こり(魔導師の連中は『魔女』になる為に日々を狂気の研究に費やしてるって聞くが)

木こり(この子がそうなのか…?)

赤髪「こっち……」

木こり「そっちは良い木なんて無いよ」

赤髪「どうして?」

木こり「先日、国の騎士団が通ってね」

木こり「例の如く『聖水』を撒いて魔女を避けたせいで、向こうの良い木は殆ど枯れてしまっている」

赤髪「……」

赤髪「大丈夫、生きてるみたい」

木こり「生きてる…?」


赤髪「ここ」

木こり「ここ、って言われてもな……朽ちかけた大樹みたいだけど」

赤髪「そう、朽ちかけてるだけ」

赤髪「この子はまだ生きてる、最後に誰かと共に在りたいみたい」

木こり「共に在りたい? この大樹が?」

赤髪「……」コクン

木こり「……」


木こり(気味が悪い、が……)

木こり(樹齢は大体2、300年ってとこか? 表面は完全に枯れているがもしも中身は生きているとしたら……)

木こり(屋敷の建築材に限らず、家具にしても良いな)

木こり「……分かった、この木にさせて貰うよ」


赤髪「……」

赤髪「ありがとう」



< カーンッカーンッ


木こり仲間「驚いたなぁ、騎士団の撒く『聖水』ってのは触れた物を溶かして腐らせるって聞いてたのに」

木こり仲間「その赤い髪の娘が選んだこの大樹、本当にまだ朽ちてねえぜ? おまけに質も良いと来てる」

木こり「半信半疑だったんだけどな」

木こり仲間「へっへ、『木ノ魔女』とかだったりしてな」

木こり「何だそれ」

木こり仲間「知らねぇの? 北の国じゃ木を司る魔女がいるんだってよ」

木こり仲間「それの親戚じゃねえかなぁってよ、その娘」

木こり「あの子は魔女じゃないと思うぞ」

木こり仲間「当たり前だ! こんな辺鄙な所に魔女なんか出られても困るっての」


木こり「まぁそうだな……ぁ…!」


赤髪「……」キョロキョロ



木こり「あの子だ」

木こり仲間「えっ? おお! 本当に可愛い……ってかすげぇ美人じゃねえの!?」

木こり「だろう、だからもしかするとあの娘が領主様の妾なんじゃないかと思ってさ」

木こり仲間「んーん、俺は領主様の女を見たことあるからあの娘は違うな」

木こり「そうなのか」

木こり仲間「それより見てみろ、誰かを探してるみたいだぜ?」


赤髪「……」キョロキョロ

赤髪「……!」ピタッ


木こり(こっちを見た?)


< スタスタ……

赤髪「おはよう、木こりさん」


木こり「よっ、昨日お嬢さんに教えて貰ったこの木……」

赤髪「あの、ご飯ってどんな物ですか?」

木こり「……ん?」

赤髪「ご飯、食べ物の事です」

木こり「いやそれは分かるんだが……」

赤髪「?」

木こり「……あー」


木こり仲間「俺達の今日の昼飯でも見たいのか?」


赤髪「……」ススッ

木こり「お…?」

木こり(何故に後ろに……)


木こり仲間「ははーん」

木こり仲間「おい、お前が連れてってやんな、飯の置いてある所はわかんだろ?」

木こり「あ、ああ……」


木こり「俺達の飯は、動物や魔物に食べられないように適当な木の上に吊るしてるんだ」ザッザッ

木こり「この近辺にそれらしい動物はいないが、まぁ匂いで寄ってくる事もあるから用心してる」

赤髪「……」チラッ

木こり「どうした?」

赤髪「……何でもない」ふるふる

木こり「そうか、まぁとりあえず飯を見たいって言ってたが俺達は貴族様とは違うからなぁ…つまらないよ?」

赤髪「……」コクン

木こり「ほら、これが俺達の大体の主食だよ」

赤髪「……木の実?」

木こり「そうだな、これは固い殻に包まれていた時は胡桃と呼んでる」

木こり「食べるか?」

赤髪「ううん、いい」

木こり「…? 腹が減ったわけじゃないのか」

赤髪「病気にかかるかもしれないから、知りたかった」

木こり「病気? 誰がだ」

赤髪「貴方」


木こり「……俺?」



木こり「俺が何かの病気に…? 悪い冗談はやめてくれ」

赤髪「嘘や冗談は言わない」

木こり「君は医術師なのか?」

赤髪「……」ふるふる

木こり「なら、何故わかるんだよ」

赤髪「……」

木こり「……」

木こり(分からない、何だこの子は……)


< 「うわぁあああああ!!?」


木こり「!? 今の、俺の仲間だ……!」

赤髪「……」

木こり「君はここに居ろ!」ダッ!

赤髪「行っちゃだめ」ぐいっ

木こり「ぅおっ……!」ピタッ

木こり(凄い力だ、動けねえ……!?)グイッグイッ


木こり「離せ! 何かあったんだ行かねえと!」

赤髪「……」ふるふる

木こり「今は子供に構ってる場合じゃねぇんだよ!!」

赤髪「!」びくっ

< ぱっ

木こり「(離した…!) 悪いな、ここで待ってろよ!」ダッ!


赤髪「……」


木こり(くそ、まさか魔物とかじゃないだろうな……!)

木こり(正直、あの娘も連れていきたいが何かあったなら間に合わない!)

木こり「木の倒し時を間違えただけならいいが……」





木こり「はぁっ、はぁっ、はぁ……」ザッ


木こり(何処だ、何処に行った?)

木こり(いや、それよりもこれは……『糸』か? さっきまではこんなの無かった筈……)


< ピンッ……


木こり(……どんな大きさの蜘蛛だ、縄に等しい太さだぞこれ)

木こり(まさか、蜘蛛型の魔物でもいるのか? 聞いたこともないが……仲間はそいつに殺られ……)

木こり仲間「おいッ」ボソッ

木こり「~~ッ!?」ビクゥッ

木こり仲間「しっ、大きな声を出すな……死ぬぜお前」

木こり「……?」

木こり仲間「上だ、上を見ろ」

木こり「…………」スッ


木こり「!??」




   ギチ・・・ギチ・・・

    【ギィ……】ジャリッジャリッ……



木こり(何だあれは……)

木こり仲間「俺の見立てじゃ、あれはヤバい……直ぐに隠れなきゃ最初に上げちまった悲鳴で死んでた」ボソボソ

木こり(……人の二十倍はある……巨大すぎる)

木こり(あれに襲われたら……)ぞわっ…

木こり仲間「このままここで隠れてやり過ごす、いいな?」ボソボソ

木こり「……」コクン

木こり仲間「お前、あの嬢ちゃんは?」

木こり「向こうに置いてき…た…」

木こり「……しまった…!」

木こり仲間「まずいぞ、あの嬢ちゃんあんな化け物いるの知らねえんだろ……」


木こり(そうだ……こんな事なら連れてくれば)





< ザッ……

赤髪「……」キョロキョロ




木こり「あの子だ……!!」

木こり仲間「畜生やべぇぞ、上の蜘蛛が嬢ちゃんに気づいてやがる……ッ」



    ギチ・・・ギチ・・・


赤髪「……」



木こり(もう駄目だ、このままじゃ……!)

木こり仲間「うおおおおお!!」バッ

木こり「!?」


赤髪「……!」


木こり仲間「嬢ちゃん! そこから逃げろォッ!」

赤髪「木こりの人は…? 」

木こり仲間「向こうで隠れてる! 走れ!!」


    ギチギチギチ・・・ッ

< ブワッ!!


木こり仲間「糸……!?」

< ジュァァア

木こり仲間「ぎっ!!? ぎゃああぁああああ!!」ジュゥゥ


木こり「アンダー!!」ダッ!


赤髪「っ、来ちゃだめ!」


< ズドォッ!!


大蜘蛛【ギチギチギチッ】


木こり「~ッ……!」ドサッ

木こり(で、でかい……降りてきて見ると改めてでかい……!)

木こり「逃げろ、逃げて国の騎士団を呼んでくれぇ!!」


赤髪「……」タッタッタッ

木こり「何してる! 早く逃げろ!」

赤髪「……大丈夫」

木こり「大丈夫じゃない!」

赤髪「……」


赤髪「聴こえてるよね」


大蜘蛛【……】ピタッ


赤髪「私が誰か、分かるよね」


大蜘蛛【……】


赤髪「お願い、下がって貰えるかな」


大蜘蛛【……】

大蜘蛛【「断る」】





赤髪「……そう」

赤髪「なら、ごめんね……?」


──────── ポッ・・・!


大蜘蛛【ギィィイッ!?】ビクッ

赤髪「私の力は……あなたの子供には熱過ぎるから……」

大蜘蛛【ギチギチギチィッ】ガシャガシャッ

< ピタァ

大蜘蛛【「……成る程、そういう力か」】

大蜘蛛【「魔力に満ち溢れているな、新生者か」】

赤髪「……」チラッ…



木こり(何が起きてるんだ…? さっきから、急に化け物蜘蛛が喋ったりあの子の指先から火の玉が出たり……)

木こり(……こっちを見てる?)



赤髪「彼の……おかげ」


大蜘蛛【「……フゥ……ン」】ギチギチッ……ギョロッ


木こり「っ……」

木こり(蜘蛛の目……あの瞳はまるで人間みたいだ、一つ一つに感情が映し出されている……)


大蜘蛛【「ならここは、お互いに見なかった事にしよう」】

赤髪「……」コクン

大蜘蛛【「警告しておくが西のエスト国には近付くなよ……そちらの命まで保証は出来ない」】

赤髪「……?」

大蜘蛛【「若い、若い、『妹』……願わくばお前の幸せが長くといいが……」】

赤髪「何が起きるの……」


大蜘蛛【……ギィィイッ】ガクンッ

< ヒュオォッ!


木こり「うわっ!? 飛び上がった……!」


赤髪「……」



< 「う……ぅぅ……」


木こり「っ! 生きてるか、おい!」

木こり仲間「ぁぁ……全身がなんか……痺れちまってるけど……」

木こり「良かった……! 肩に掴まれるか?」

木こり仲間「どうだろ…な…」ぐぐっ……


< ずるっ……

< べしゃっ


木こり仲間「……あ……れぇ…?」

木こり「ひっ…ぃ」ドサッ

木こり(アンダーの腕が……千切れて……)

木こり仲間「…………」フラッ

木こり「お、おいっ! 大丈夫か……」ガシッ


赤髪「……」スタスタ

木こり「手伝ってくれ! さっきの化け物の糸で体のあちこちが溶けてて……」

赤髪「間に合わない……と思う」

赤髪「『あれ』は殺す事に特化した子だから……多分、明日には……」


木こり「そんな……」


赤髪「そしてあなたも....死ぬ運命」


きこり「え、ちょっ」


ズシャッッッッッッ!!!!!!


きこりだったもの「」





赤髪「........おしまい。」




村長「……一体何が起きたと言うんだ」

木こり「それが、何処から話せば良いのか、化け物が村の近くの森に出たんです」

村長「あぁ、村の何人かがその化け物を見たと言っていたよ、蜘蛛のような姿をしていたと……それに襲われたのか」

村長「この村で魔物に襲われる者が出てきてしまうとはな」

木こり「村の近くで出会った娘の話では、アンダーは猛毒に侵されていて二日と保たない! 国の医術師を呼びましょう!」

村長「無理だ、お前は知らないのか?」

木こり「は…?」


村長「数日前に北の国が一夜にして滅んだというのだ、各地の国の騎士団がそれの調査と警戒で何処も城下町すら閉ざされている」


木こり「そんな……領主様の所にいる魔導師じゃこんな猛毒は取り除けないと聞きました! このままじゃ……」

村長「……どうにもできんよ」

木こり「……っ」


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