男「羊になってほしいとか無理っすよ!」(9)

突然だが、俺は昔から何でもできた。

「男くんすごい!テストまた1番だね!」

「また男かよ!」「まあ、いつもどおりだね」

学校では勉強も運動もずっと1番。どうして1番になれるのか分からないが、とにかくずっとそうだった。
とにかく何でもできた。周りのやつらがどうしてできないのかいつも疑問だったくらいに。
そんな俺の人生が大きく方向転換したのは、10歳になったばかりの時だった。

男「はぁああ!?て、転校!?」

父「ああ、そうだ」

母「ごめんね男、お父さんとお母さんの仕事の事情なのよ」

男「ね、姉ちゃんと妹たちには…?」

母「もう言ったわよ」

父「3人とも、納得してくれたよ」

男「そっ…そうなんだ…」

父「下妹と姉は入学したばかりだったのにな」

父「本当、あの子たちには申し訳ないよ」

母「友だちもいるのにごめんね、男」

男「…は、ははっ、しょ、しょうがないよ!仕事だもんな!」

男「と、友だちは転校してもできるんだし、俺は大丈夫!」

母「男…」

男「…自分の部屋に荷物おいてくる」

男「っ…」ダッ

父「あっ、お、おい!」

母「…はぁ」

父「男、ごめんな…」

母「…そんなこと言ってもしょうがないわよ」

母「今の友だちと離れるのは寂しいかもしれない」

母「けどあの子なら、転校してもすぐに友だちができるはずよ」

父「…そうだな」

母「父と違ってね」

父「うぐっ…む、昔のことはいいだろ」

母「ふふっ」

男「はぁ…転校か」

男「あいつらともう会えなくなるのか」ゴロゴロ

男「あーあ…」ゴロゴロ

男「さびしいなぁ…」ゴロゴロ



姉「…あああああうるさい!!勉強してるんだから静かにしなさいよ!」

姉「それにここ、私の部屋でしょ!!」ビシッ

姉「私のベッドでゴロゴロするなああああああ!!」

男「姉ちゃん!いつの間に!?」

姉「暗い顔して部屋に入ってきたと思ったら、急にベッドでゴロゴロしだして」

姉「あんた、自分の部屋あるでしょ…」

男「妹たちがなぜか寝てたからな、しょうがない」

姉「あの子たち、またあんたの部屋で寝てたの…」ハァ

男「…転校だって」

姉「…うん、知ってる」

男「姉ちゃん、入学したばかりなのに」

姉「私のことはいいの」

姉「入学したばかりってことは、転校してもあまり変わらないってことだもんね」

男「けど、小学校からの友だちとか…」

姉「…まあ、しょうがないよ」

男「好きな人とか…」

姉「いないっての」

男「ほんとかな~」

姉「なにその顔…本当にいないってば」

男「はぁ、そうですか」

姉「…まっ、決まったことはしょうがないじゃん」

姉「お互い、がんばろうね」

男「…うん」

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