【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である【データ3】 (1000)

このスレは安価で

結城友奈は勇者である
鷲尾須美は勇者である

を遊ぶゲーム形式なスレです


目的


・バーテックスの殲滅
・秘密の解明
・仲良くなろう
・変態回避


安価

・コンマと選択肢を組み合わせた選択肢制
・選択肢に関しては、単発・連取(選択肢安価を2連続)は禁止
・投下開始から30分ほどは単発云々は気にせず進行
・判定に関しては、常に単発云々は気にしない
・イベント判定の場合は、当たったキャラからの交流
・交流キャラを選択した場合は、自分からの交流となります


日数
一ヶ月=2週間で進めていきます
【平日5日、休日2日の週7日】×2


能力
HP MP SP 防御 素早 射撃 格闘 回避 命中 
この9個の能力でステータスを設定

HP:体力。0になると死亡。1/10以下で瀕死状態になり、全ステータスが1/3減少
MP:満開するために必要なポイント。HP以外のステータスが倍になる
防御:防御力。攻撃を受けた際の被ダメージ計算に用いる
素早:素早さ。行動優先順位に用いる
射撃:射撃技量。射撃技のダメージ底上げ
格闘:格闘技量。格闘技のダメージ底上げ
回避:回避力。回避力計算に用いる
命中:命中率。技の命中精度に用いる


戦闘の計算
格闘ダメージ:格闘技量+技威力+コンマ-相手の防御力
射撃ダメージ:射撃技量+技威力+コンマ-相手の防御力
回避率:自分の回避-相手の命中。相手の命中率を回避が超えていれば回避率75%
命中率:自分の命中-相手の回避。相手の回避率を命中が超えていれば命中率100%


wiki→【http://www46.atwiki.jp/anka_yuyuyu/】  不定期更新 ※前周はこちらに


前スレ
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である【データ1】
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である【データ1】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1437905159/)
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である【データ2】
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である【データ2】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1440313909/)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1442930969



前スレギリギリのためスレ立て

投下は日曜日以外基本、21:50~23:00
日曜日は大体13:00~

となります


わずかですが、少しやろうかと思います


天乃「ねぇ、貴方の能力ってなんなの?」

稲狐「?」

天乃「んー……貴方のご主人様よ」

天乃がそう聞くと、

稲荷の使いは首を傾げるのを止めて、

一転、最初と同じように身動ぎ一つしなくなってしまった

天乃「どうしたの?」

稲狐「……………」

天乃「聞いちゃいけないことだった?」

下僕、あるいはパートナーである以上

変に隠さずに能力を教えてくれていいはずなのだが……

暫く見つめていると

おもむろに、稲狐はまたしてもどこからともなく文を持ち出してきた


2通目の内容は天乃の質問に対する答え

要するに

言葉を聞いてから、文をしたためている可能性があるのだが

そう思うと、なんとなく面白くて

天乃はクスッと笑って手紙を開く

天乃「………………」

稲荷の能力に関しては、主に浄化をする力があるらしい

つまり、バーテックスとの戦闘における

樹海の侵食を抑制、あるいは打ち消すことができるということだ

それだけを抜けば相当いい能力と言えるだろうが

良すぎる能力ゆえに、デメリットがある

タオルで水を拭き取ればタオルが濡れてしまうように

樹海の侵食を抑制や打ち消した分だけ

天乃が冒されてしまうらしい

天乃「……大橋での被害を悔やんだからこそ。というわけなのね?」


天乃の問い未満の言葉に、稲狐はコクっと頷くと

天乃の方にさらに近づいて、頭を差し出す

撫でろ。ということなのか

触れ。ということなのか

叩け。ということ……は流石にないだろう

二通の文を届けたことを

もうひとりの主人である天乃に褒めて欲しいのかもしれない

天乃「………………」

稲狐「……………」

稲荷の使いは、ちらっと天乃を見つめつつも

そのまま黙って待機していた



1、頭を撫でる
2、下顎を触る
3、鼻にキス
4、言葉だけの、ありがとう
5、どうしたの?



↓2


天乃「……ふふ」

見た目は狐だけれど

大人しくて、言葉を発さない姿は普通のペットのようで

天乃は稲狐の頭を優しく撫でながら

天乃「ありがとう。お疲れ様」

言葉でも労うと

稲荷の使いは心なしか微笑んだような表情で姿をかき消していく

天乃「……言葉がなくて、手紙を運んで、頭を撫でられたい。か」

使い魔というか

使いだからそういうようなものなのかもしれないけれど……

私にはもう、ペットとしか思えない

天乃「また来てね」

聞こえてるのかは定かではないけれど

天乃は少し嬉しそうに、そう言ってあげた


√ 5月13日目 夜(久遠家) ※木曜日

九尾、死神、兄、姉との交流が可能です

1、九尾
2、死神
3、姉
4、兄
5、稲狐を呼んでみる(判定。九尾がくる可能性もある)
6、イベントの判定

↓2


では、今回は早いですが、此処までとさせて頂きます

あすも同じくらいの時間から通常通り、23時までできればなと思います


では、少しずつやっていこうかと思います


天乃「えーっと……確か」

ベッド脇にある二つのスイッチのうち

お姉ちゃんというシールの貼られた方を押すと

しばらくして、天乃の姉がドアを開けた

「なぁに?」

天乃「本当に来てくれるんですね」

「それはそうよ。貴女が必要なときに行かないなんてこと出来ないし」

天乃「私が狼少年みたいなことをしても?」

「ええ。それでも……正直に言えば、嬉しいもの」

悪戯で、意味もなく呼び出す

そういった天乃に対して、姉は偽りのない笑みを浮かべて

天乃のことを見つめる

だって、そうでしょ?

2年間も離れ離れだった妹だもの

たとえ悪戯だとしても

呼んでくれるだけ……嬉しい

この部屋にいてくれるだけで……嬉しいんだもの


「あと、出来たら昼間みたいに普通に話してほしいな。なんて」

天乃「普通?」

「ほら、だって……天乃ちゃん。時々敬語になるじゃない」

昨日の夜帰ってきた時だって

初めましては止めてって言ったら

久しぶりですね。だったわけで

記憶がないから他人として関わるしかないっていうのは分かってはいるが

天乃のことが大好きな姉にとっては

苦行そのものだった

それでも、会えない日々よりはましだが

天乃「と、言われても」

「せめてクラスメイトとか、知人とか。そう。他人以上で」



1、……恋人とか?
2、なら。お姉さま?
3、ごめんなさい……割り切れなくて
4、分かった……なるべく、そうする


↓2


天乃「なら………」

一応、姉ではあるらしい人

でも他人とそう違わない人

だったら……そうだ

と、天乃はにやっとしそうな顔を取り繕って笑みを浮かべると

姉のことを見つめて、言い放つ

天乃「お姉さま?」

「っな」

天乃「お姉さまとか、どうですか?」

「っ、え、えーっと……」

向けられる羨望のまなざしに似た何かに

姉はあからさまに困惑し、赤面していた

お姉ちゃんじゃなく、お姉さま

その力強さに、姉は言葉を失って、頷く

「あ、天乃ちゃんがいいなら。うん、私は一向に構わないっ!」

天乃「そっか」


天乃「ねぇ、お姉さま」

「な、なに……かしら」

天乃「お姉さまってお強いのね。あの人を負かすなんて」

「……まぁね」

強い。

そう、強いのだ、天乃の姉は

でも、それは無駄だった

いや、無駄に終わった

なにせ――姉の勇者適正は測定不能

高すぎて測れないのではなく、測るもの自体がなかったのだから

「昔は変……お兄ちゃんのほうが強かったのよ?」

天乃「そうなの?」

「それはもう……私だって守ってもらう立場だったわけだしね」

天乃「あの人から守られるんじゃなくて?」

「ふふっ、そういう時もあるけどね……お兄ちゃんは本当は凄く、優しくて強くて、格好いいのよ」

もっとも、妹の前では格好つけてるだけ。かもしれないが


「でも、色々あって……それでね。思ったの。私はもっと強くならなきゃダメなんだって」

天乃「……お姉、ちゃん」

お姉さまと呼ぶ悪ふざけを忘れてしまうほどに

姉の言葉はなにか、不思議なほどに重みがあって

その表情は目に見える以上の感情と、思いを含んでいて

「そうしたら、いつの間にかお兄ちゃんよりも強くて。戦技教導。みたいなこともしちゃったりなんかしてて」

天乃「……………」

「……私たちは大赦側。だから、知ってるのよ。全部」

天乃に何があったのか

乃木園子、三ノ輪銀に何があったのか

そして今もまた、何が起こっているのかを

「……ごめんね。辛い思いをさせ続けることになって」

大切な妹だ

だから、できるならこんな危ないことから遠ざけたい

でも、出来ない。できるわけがないのだ

久遠家というものは、久遠天乃というものは

そう簡単に、背を向けることなど許されないのだ


天乃「………………」

過去、おねえちゃんとどんな話をしていたのかは知らない

もしかしたらそういう話を聞いた上で

消えた記憶の中の私は

お姉ちゃんと呼び親しんでいたのかもしれないし

もしかしたら、憎しみやらなんやらを抱いて敬遠していたかもしれない

でも今は、不思議と憎いとか思うことはなかった

それは多分、

一つ一つを語る姉の表情が

自分自身に対する怒りを孕んでいたからだろう

「まぁ、だから昼間みたいに歩けるのなら戦い教えてあげられるかもしれないし。いつでも声かけてね」

天乃「うん」

去っていく姉の姿を目で見送って息をつく

戦技教導

もしかしたら、夏凜に稽古をつけたのはお姉ちゃんだったりするのかな

1日のまとめ

・  乃木園子:交流無()
・  犬吠埼風:交流無()
・  犬吠埼樹:交流無()
・  結城友奈:交流無()
・  東郷美森:交流無()
・  三好夏凜:交流無()
・     九尾:交流有(変身、添い寝)

・      死神:交流無()
・      稲狐:交流有(交流、能力、なでなで)
・    夢路瞳:交流無()
・     神樹:交流無()


5月の13日目終了後の結果


  乃木園子との絆 19(中々良い)
  犬吠埼風との絆 34(少し高い)
  犬吠埼樹との絆 46(少し高い)
  結城友奈との絆 19(中々良い)
  東郷三森との絆 26(中々良い)
  三好夏凜との絆 37(少し高い)
   夢路瞳との絆 9(普通)

     九尾との絆 25(中々良い)
      死神との絆 23(中々良い)
      稲狐との絆 20(中々良い)
      神樹との絆 -1(低い)


では、キリがいいのと時間も近いのでここまでとさせて頂きます

14日目終了後、6月になります


では、今日も少しにはなりますが、進めようかと思います


√ 5月14日目 朝(久遠家) ※金曜日

九尾、死神、兄、姉との交流が可能です

1、九尾
2、死神
3、姉
4、兄
5、イベントの判定

↓2


※樹、夏凜、風、東郷、友奈は判定でのみ


天乃「ねぇ、九尾」

九尾「?」

天乃「もうすぐ、6月ね」

九尾「そうじゃのう……」

6月だ

そう言われても特に思うことはないが

ひとつあるとすれば、天乃の誕生日だ

毎回、その日を園子が楽しみにしていたのを

九尾はよく知っていた

だからこそ

九尾「そうじゃのう……6月。じゃな」

今はそばにいない少しお転婆な少女を思い、九尾は息をつく



1、それでね、もうすぐバーテックスが攻めてきそうな気がするの
2、だからってわけじゃないけれど……昨日。稲荷の使いと会ったわ
3、どうしたの? 何かある?
4、ねぇ、貴女にも。魅惑の力があるの?
5、あなたの力で勇者にしてくれない?

↓2


天乃「だからってわけじゃないけれど」

九尾「うぬ?」

天乃「昨日ね? 稲荷の使いと会ったわ」

天乃がそう言うと、

九尾は嫌悪感に満ちた表情を浮かべて

天乃の瞳

その奥の奥をじっと見つめて――

九尾「ふーっ」

息を吹きかけた

天乃「っぁ!? やっ、この、もうっ!」

九尾「          」

天乃「なにするのよ……っ!」


その吐息に特別な力があるわけではない

けれど、目に息を吹きかけられたりなんかしたら

物の見事に目が乾いて、ほんの少しとはいえ、瞬きしていなければいけなくなる

九尾「主様の目にゴミが入っていたのじゃ」

天乃「嘘つかなくていいから……もうっ」

渇きを癒すための涙がポロっと落ちて行くのを感じて

天乃が天井を見上げると

合わせるようにして、九尾が覗き込む

天乃「次やったらひっぱたくわよ」

九尾「ふむ……主様が彼奴と接触したなどとのたまうからじゃ」

天乃「なんでよ……」

九尾「妾と同じ妖狐のくせに、彼奴は下級の使いに留まっておる。それが下賤のだ」

天乃「本当にそれだけ?」

九尾「……ふんっ、覚えておらぬのか。薄情者め」

天乃「意味わからないっ」


本当に、わからない

薄情者だと言われるようなことをした覚えはないし

稲荷の使いと会ったのは昨日含めて二回

それなのに、

九尾が稲荷の使いを嫌うようなことをした覚えなど、天乃にはない

もっとも、その記憶は奪われてしまっただけかもしれないが

天乃「薄情者なんて言われても……」

九尾「………………」

どうしよう、覚えてない

とりあえずごめめんねって、いう?

それとも……


1、ごめんね、私。酷い事しちゃったのね
2、私の奪われた記憶の中にあるのかも
3、本当に身に覚えがないんだけど……
4、ねぇ、酷いことをしたのなら謝りたいわ。だから、教えて?
5、沈黙


↓2


天乃「ねぇ、酷いことをしたのなら謝りたいわ」

九尾「…………」

天乃「だから、教えて?」

九尾「ふむ……」

九尾は天乃を見つめ、その言葉の真偽を探る

本当に覚えていない、思い出せないのか

本当は分かっているけど、解らないふりをしているのか

九尾「主様は……本当に」

家族としての交流ではなかった

だから、記憶を持って行かれたなんてことはないのだろう

そして、あれは本当にただ思ったことを口にしてしまっただけに過ぎないのだろう

でも、だからこそ

九尾「取り繕っていない言葉ほど、鋭いものはないのじゃよ。主様」

あの言葉は、九尾に嫉妬を抱かせた

天乃「だからなん――」

九尾「答えても良いが、侘びに接吻を要求するぞ」

天乃「っ」

九尾「くくくっ、無論冗談だがな。答えなど……くれてやるものか

悩め悩め、主様

悩んでいる間は、妾のことを、考えてくれるのだから


では、短いですが此処までとさせて頂きます
一回につき、交流一回分はやろうかと思います



好きな人に悪戯をする。みたいな


昨日はできませんでした。失礼しました
では、今日はやっていこうかと思います


√ 5月14日目 昼(久遠家) ※金曜日

九尾、死神、兄、姉との交流が可能です

1、九尾
2、死神
3、姉
4、兄
5、イベントの判定

↓2


01~10 兄
11~20 姉
21~30 死神
31~40 九尾
41~50 稲荷
51~60 大赦
61~70 姉
71~80 兄
81~90 九尾
91~00 死神

↓1のコンマ  


天乃「っ!」

ドアがひとりでに開くと

大きめの画用紙に、着替えてたりするか?と

電子文字のように角張った字体で書かれていた

多分、兄だろう

天乃「えーっと。うんって言ったら締めてくれる?」

そう聞くと、新しい画用紙に

『んー……妹の生着替えを見たい気持ちはあるんだが』

と、書いて兄はもう一度部屋へと画用紙を差し込む

着替え中の場合、

天乃が一人で着替えられるわけはなく

誰かが一緒にいるというのは確実

そう、つまり

バレなければ犯罪じゃない。が、不成立になってしまうのだ

天乃「はぁ……」


1、部屋には入らないで
2、ねぇ、お兄ちゃん。私のこと好き?
3、ねぇ、お兄ちゃん。私を襲いたい?
4、変態


↓2


天乃「ねぇ、お兄ちゃん。私のこと好き?」

「そりゃぁ、もちろん!」

天乃「ッ!」

勢いよくドアが開け放たれて、真横の棚が揺れる

音は聞こえずとも目の当たりにした天乃が目を見開く

侵入にではなく

天乃とその姉の名前そしてハートマークの書かれたハチマキで目隠しをした

あからさまな変質者が部屋に入ってきたからだ

天乃「こ、こっちに来ないで!」

「それはないだろう……好き? って聞いてきたくせに」

天乃「だって」

「目隠ししなきゃ、お前の服が乱れてた時に困る」

天乃「……やっぱり私のことおs」

「面と向かってなきゃ言葉が伝わらないのに、目を背けちゃうからな。きっと」


はははっと笑った兄は見えていないはずなのに、

近くの椅子の背中に手を触れると

あったあった。と、つぶやきながら

しっかりと天乃の方に体を向けて座る

「はっきり言うが、俺はお前が好きだ。大好きだ。愛してる」

天乃「っ」

「妹だとしても結婚して、たとえ何もしないニートっ娘だろうと養ってしまうくらいに溺愛してる」

天乃「……………」

その目隠しさえなければな……なんて

思ってしまう自分がいる

いや、好きとか恋してるとかではなくて

ただ、単に雰囲気として。だけど

「でも、だからこそ。俺はお前がいくら魅力的だろうと冗談でしか襲わない」

天乃「冗談でも怖いんだけれど」


「そんなこと言うなよ。泣くぞー」

お兄ちゃんは冗談めいた優しい声で、言う

でも、本当に怖い

お兄ちゃんが目隠しをしてくれていなかったら

私の言葉は本当の本当に

冗談なんかではなくなってしまっていた

天乃「………………」

お兄ちゃんが布団の中に潜り込んできていたせい

そう言うのは、簡単だ

でも、誘惑されてしまうのは私の精霊による呪い

震える体を抱き締められるのは片腕だけ

それだけでは……おさめることなど出来はしなくて……


1、冗談じゃないよ。お兄ちゃんのことがね。怖いんだ
2、目隠し。取って
3、ねぇ、襲いたい気持ちを我慢するのって、辛い?
4、頭。なでてもらえませんか?


↓2


天乃「冗談じゃないよ。お兄ちゃんのことがね。怖いんだ 」

「……まぁ、他人も同然だからな。それはそ」

天乃「それだけじゃなくて……怖いの」

お兄ちゃんは大丈夫だって言う

それを信じる信じないの問題ではない

だって、誘ってしまうのが事実なら

抗うことなんてきっと無理だから

すべてが終わったあと、ふと正気に戻って

してしまったことを嘆く

そんなことになってしまいそうだから

「……そうか。怖いか」

天乃「うん」

「悪いな……声が震えてることには気づいてたんだが」

天乃「っ」

「お姉ちゃんのことは怖くないか? お姉ちゃんなら、安心して任せられるか?」


お兄ちゃんは変わらず優しい声をかけてくる

怖い。なんて

ひどいことを言ったのに

怒らない

悲しまない

冗談だと逃避することさえせずに

お兄ちゃんは私のことを気遣って……

「お姉ちゃんも無理なら、勇者部から誰か寄越す事もできる。まぁ、世話を考えると、わし……いや、みもりんはダメだけどな」

天乃「友奈や風、樹、夏凜なら呼んでもいいの?」

「お前も大事な勇者だからな。お役目ってことで居候。あるいは養子にだってできるだろう」

以前、東郷美森を鷲尾須美としていたように

結城友奈を久遠友奈に

犬吠埼樹、犬吠崎風を久遠樹、久遠風に

三好夏凜を、久遠夏凜に

まぁ、名前まで変える必要なんて、ないだろうが


「俺は家族とは言え、異性なんでな。身の回りの世話は元々やらない予定だったんだ」

天乃「そうなのね……」

「だから炊事洗濯を任される……というわけで」

兄はそう言いながら

口元をほころばせると、首を横に振る

何かを言おうとはしたのだろうが

言うべきではない。と、判断したのだろう

天乃「洗濯とか好きなの?」

「いや、そこまでは。でも、得られるものもあるからな」

天乃「洗濯後の綺麗さを見て達成感得てるの?」

「まぁな」

お兄ちゃんが本当に言嘔吐したことは、結局分からなかった

それにしても

勇者部の中から誰かを呼べる

この家で暮らせる

それは嬉しいけど……でも。お兄ちゃんたちには悪くないんだろうか


√ 5月14日目 夕(久遠家) ※金曜日

九尾、死神、兄、姉との交流が可能です

1、九尾
2、死神
3、姉
4、兄
5、イベントの判定

↓2


※樹、夏凜、風、東郷、友奈は判定でのみ
※兄を選択することで、お世話係(同居)を選ぶことが可能です



01~10 勇者部一同
11~20 風
21~30 樹・夏凜
31~40 友奈・東郷
41~50 兄
51~60 姉
61~70 大赦
71~80 樹
81~90 兄
91~00 稲荷

↓1のコンマ  


樹「こ、こんばんは!」

樹は少し緊張しているのか、

天乃に知れない声は叫びに近づいていく

久遠さんのお家

事前に行くと、連絡が必要で

しかも、待ち合わせの場所に来るのは送迎車

それも、とっても立派な車

敷居というか、格式というか

とにかくいろんなものが高くて

途中で帰ろうかな。なんて思ったりもしたけど

天乃「いらっしゃい。樹」

樹「はいっ!」

来てよかった……そう思ってます


天乃「でも、どうしたの? こんな場所にまで、一人でなんて」

樹「どうしたのなんて言われても困るよ」

天乃「?」

樹「久遠さんがここにいるから、来たんだもん」

嘘じゃない

冗談でもない

本当に、そのとおり

私は、久遠さんに会いたくてここに来たんだ

でも

天乃「な、何言ってるのよ」

樹「えへへっ」

つい口をついて出た本心は恥ずかしさを引っ張り出して

私の顔を赤くして

体中の熱を高めていく

樹「そ、そういえばですねっ。夏凜さんが讃州中学勇者部に入部したんです!」

話題を逸らそう

その一心で、切り出す


天乃「夏凜が?」

樹「はい……実は、久遠さんが行っちゃったその日のうちにじゃぁ入学しましょう。という話になってですね……」

勇者は勇者で

バラバラになっているよりも、

ひとまとめで同じ学校同じ部活というのが好都合だったのか

それとも、勇者同士の親交を深めさせるためか

本来なら邪推と言わざるを得ない前者の推測も

大赦が関わると邪推と言えないのは、何とも言えない

天乃「馴染めてる?」

樹「まだ、なんとも。ただ、友奈さんと東郷先輩と同じクラスみたいで」

天乃「ふぅん……」

久遠先輩はそんな気はないのかもしれない

でも

どこか影があるように感じるのは

きっと、久遠さんには学校なんて行くことはできないからだろう


樹「ここ、久遠さんの部屋ですか?」

天乃「うん、そうらしいわ」

樹「あっ」

天乃「……気にしないで」

そうらしい。

その言葉が、申し訳ないと私に思わせる

だって、久遠さんは家族の記憶がない

だから、ここが自分の部屋かなんて分からない

だから、そうかもしれないとしか思えない

樹「ごめんなさい」

天乃「いいから。それに、ほら、あそこの制服」

樹「?」

天乃「あの胸ポケットに私の生徒手帳が入ってるのよ。それに教科書とかも全部私のだし」

過去の記憶は蘇っては来ない

けれど、その一つ一つのアイテムが

自分の過去を語ろうとしてくれているのが嬉しいのだろう

天乃は無理のない笑みを浮かべていた


樹「あの制服、讃州中学校のものじゃないですよね」

天乃「そうなのよ。この家だってエリア外だし」

樹「………………」

天乃が使っていたという制服

その校章にはどことなく大赦マークの面影があって

それが、どれほどのお嬢様学校というべきか

格上のものなのか想像できた樹は、首を振る

天乃「どうかした?」

樹「いえ……」

今でこそ冗談好きで明るい久遠さん

でも、本当はお淑やかで上品で、清楚だったのかもしれない

樹「あの」

天乃「うん?」

樹「ですわ。って、言ってみて貰って良いですか?」

天乃「えっ?」


1、お断りですわ
2、なんで?
3、このわたくしこそ、かの久遠家の後継ですわ
4、嫌よ……なんか恥ずかしいし
5、じゃぁ、樹は語尾にワンッって言って


↓2


天乃「んー……」

なぜそんなことを急に言い出したのかは分からないけれど

樹がそういうのなら。と

天乃「お断りですわ」

樹「!」

天乃は少し茶目っ気を交えて、望みを叶える

その一方で、樹は確信した

天乃はお嬢様ではないと

がさつとは言わないし、汚らしいとかも言わないけれど

おほほ。とか笑いながら

アフタヌーンティーを楽しむとか、そういう人ではないのだと

樹「やっぱり、久遠さんは久遠さんですねっ!」

天乃「どういうこと?」

樹「何でもないですっ」

お淑やかな久遠さんも見てみたいなんて思うけど

でも、お茶目で、元気で、明るくて

どんな時でも、導いてくれそうな久遠さんが、私は好きです


すみませんが、少し中断です
20時にはもどる予定です


遅くなりましたが、進めていきます


理由はよく、わからないけれど

緊張はどこかに消えていったのだろう

楽しげな樹を見つめて、天乃はクスッと笑う

樹「なんですか?」

天乃「んーん。なんでもなーい」

樹「っ、そういう言い方されると気になります」

天乃「ふふっ、気になっちゃいなさい」

可愛らしい素振りで教えてください。と言う樹

本人にそんなつもりはないのかもしれないけれど

天乃からしてみれば、とても愛らしくて……

でも、だからこそ。

………………………

1、ねぇ樹。樹は私のこと好き?
2、ねぇ樹。変なこと聞くけど……私を襲いたい?
3、ねぇ樹。この家に来ない?
4、ねぇ樹。風と一緒にウチにくる?
5、私、樹のこと好きよ


↓2


聞くのは忍びない

いや、本来なら聞くべきではないのだろう

しかし

天乃「ねぇ樹。変なこと聞くけど……私を襲いたい?」

樹「えっ?」

天乃「だから、その。私を、ね?」

樹「それは……」

意味がわからないからじゃない

なんでそんな事を聞くのか分からないわけでもない

ただ、聞き間違いだと、思いたかった

だって、それは疑われているようなものなのだから

警戒されているようなものなのだから

樹「…………………」


でも、全部が全部ではないにしても

樹「………………」

それは、真実だ

【天乃「……すごく、恥ずかしい。かな」 】

あの声

あの表情

あの仕草

あの時の私は……きっと

だから

樹「はい」

天乃「………………」

樹「襲いそうになったことも、あります」

私は正直に答えた

たとえ

このあと険悪な関係になってしまうとしても

隠すのだけはやめようと

思ったから


樹「ごめんなさい」

襲わなかった

でも、手を出してしまいたいと思ったのは事実だ

布団の上に押し付けて

そのまま……

樹「久遠さんが魅力的で……その」

変な想像をした

あの時聞いた甘い声で

少女漫画に出てくるような反応をする久遠さんとか

樹「もう……会わない方が良いのかもしれないです」

また同じような気持ちを抱いてしまうかもしれない

今抱いている好きという気持ちが

変な方向に曲がっていって

いけないことをしてしまうかもしれない

だから………

樹「このお別れは。久遠さんのお引越しは、ちょうど良かったのかもしれません」



1、襲うことを我慢するのは、辛い?
2、良いのよ。それは私が持つ、魅了の能力のせいなんだから
3、したいことをしても良いわ。我慢は辛いでしょう?
4、ねぇ樹。私とどんなことがしたかったの?
5、……そっか


↓2


天乃「ねぇ樹。私とどんなことがしたかったの?」

樹「そ、そんなこと」

言えない

言えるわけがない

樹「ッ」

樹の羞恥心が極限まで刺激され

罪悪感が、全てを白状するべきだと背中を押す

ダメ

ダメだよ。ダメだよ久遠さん

樹「わ、たしが。したかったのは」

ドキドキする

考えてしまう。妄想してしまう

だから、張り裂けてしまいそうなほど

樹の心臓は早鐘を打つ


01~10 
11~20 顎クイからのきす。的な!
21~30 
31~40 押し倒す
41~50 
51~60 手を引いて抱き寄せる。とか!
61~70 
71~80 胸ぐら掴みあげてきす
81~90 
91~00 耳たぶパクッ

↓1のコンマ  


※あたりの場合即実行


もういっそやってしまえ

そういう私の心に従って

天乃「!?」

久遠さんの手を片手……は、無理だったので

両手で力いっぱい引っ張って抱き寄せる

天乃「い、樹っ?」

樹「…………………」

久遠さんの胸が私の胸に広がっていく

自分の小さな胸も

小さいからこそこうやって抱きしめられるんだと考えると

全然、悔しくなくて

全然、コンプレックスなんかではなくて

むしろこれでよかったとさえ、思える

でも

久遠さんの胸が大きいから。かな

久遠さんの体の暖かさは伝わっても、心臓の音までは伝わってこないのが

ちょっと、残念だった


樹「………………」

久遠さんの耳が近い

でも、何を囁いても無駄

可愛いとか

綺麗とか

いい匂いとか

大好きですとか

言って、恥ずかしがらせて

そんな少女漫画の展開

久遠さんはそういうの、あんまり好きじゃないのかな

抱きしめれば抱きしめるほど

久遠さんのやわらかい胸が私に押し付けられていく

その感触が広がるほど

なんだかとても、恥ずかしくなって

樹「っ」

天乃「樹……?」

久遠さんを手放して

樹「こうしてみたかったんです」

と、答えた


天乃「抱きしめるなんて、別に邪なことでもないんじゃない?」

樹「でも……」

天乃「ふふっ、それくらいならいつでもしていいのに」

抱きしめるなんて普通だ

何の問題もない

キスしたいとかそういう不純なことかと思えば

なんのことはない

その樹らしさに、天乃はくすくすっと笑う

心配して、損しちゃったかな

天乃「もっとする?」

樹「い、いえっ」

赤面して首を振る樹は

抱きしめようとした思考の危うさだからこそなのに。と

無垢な少女を見つめていた


√ 5月14日目 夜(久遠家) ※金曜日

九尾、死神、兄、姉との交流が可能です

1、九尾
2、死神
3、姉
4、兄
5、イベントの判定

↓2


※樹が判定で出てきます


01~10 樹
11~20 姉
21~30 兄
31~40 死神
41~50 兄
51~60 姉
61~70 九尾
71~80 樹
81~90 兄
91~00 稲荷

↓1のコンマ  


ではここまでとさせていただきます


樹ちゃんは健全
それはコンマでも変えられない理


遅くなりましたが、やっていこうかと思います


九尾「くっくっく」

天乃「なによ」

九尾「しかと見ておったぞ。犬の妹と楽しんでおったのう?」

そう楽しげに話す九尾の一方で

天乃は偽りでない困惑を浮かべながら、首を傾げる

抱きしめられた

それの何が問題なのか

それの何が、そんなにおかしいのか

天乃「楽しんだって、別に夏凜のこと話して抱きしめられて。それくらいよ?」

九尾「して、抱擁の感想は?」

天乃「樹らしい。とは、思ったけど」

九尾「それ以外じゃ。それ以外」

天乃「温かい?」

九尾「つまらん」


天乃「意味わからないんだけど」

九尾「もっとこう……なにかあるじゃろう、ほれ」

天乃「何かって」

何かと言われても、体が正直に物語っているように

凄く、困るのだ

暖かった

意外と力強くて、でも優しくて

声は聞こえなくても、吐息を耳に感じて

犬吠崎家の匂いがするな。と、思った

ただそれだけだ

天乃「貴女が楽しむようなことはないと思うけど」

九尾「犬妹を弄るべきじゃったか……妾の失態じゃのう」

天乃「いじめないでよ? 樹のこと」


九尾「ふむぅ……」

普通の精霊、普通の使いならば

まっとうな主であることを喜ぶべきだろうし

天然でやっているのかはともかくとして鈍感気質な主の言動に対して

ため息を付いたりするべきなのだろうが

九尾の心の中は

つまらない

ただそれだけ

もっと何か面白い変化でもあるのかと思えば

子供の反応

なにが温かい。じゃ、つまらんっ

という、弄れたものだった

九尾「……そうじゃ主様」

天乃「うん?」

九尾「主様は犬妹が好きか? 嫌いか? 愛しておるか?」

天乃「唐突ね」

九尾「良いから答えよ」


1、好きよ
2、普通の友達ね
3、愛してるわね
4、変に遠まわしにしないで、どういう意味で聞きたいのか言いなさい


↓2


天乃「好きよ?」

九尾「………そ」

天乃「血は繋がってないけれど、本当の家族のように思ってるし、それでなくても親友として好きよ」

九尾「う、うむ」

口を挟む隙がなかった

以前、そんな趣味はないと言っていたし

あれが嘘だと思っているわけではなかったが

となると、やはり

九尾「主様、その性格直さぬといけぬかも知れぬぞ」

天乃「どういうことよ」

九尾「いやなに。既に知っているじゃろうが、妾達の呪いによって主様には魅惑の力がある」

つまり、

何もしなくても、人に好かれやすいということだ

もっとも、神様はその範囲外なのかもしれないが

九尾「それに混じってその性格は……のう」

天乃「?」


九尾「…………………」

詳細に語って変えさせるか

それとも、語らずして、困らせるか

その二択に行き着いたとき、九尾は足を止めることはなかった

九尾「まぁ、問題はなかろう」

なぜ、面白そうな方を行かないで

明らかに平坦な安全な道を行くのか

意味が分からぬ

理解が出来ぬ

凸凹道の方が、愉快ではないか

天乃「本当に?」

九尾「今まで問題はなかったのだ。主様は主様の良いと思ったことをするがよいぞ」

天乃「なんか納得いかないけど……」

九尾「気にするな気にするな。妾の世迷言じゃ」

天乃「そう……」

少し納得いかなそうな表情を浮かべながらも

追撃してこない天乃から見えないように首を曲げ、九尾はくくくっと笑った


では、此処までとさせて頂きます


愉快? それは誤りじゃった。愉悦じゃよ


22時半頃から少しだけやります

1日のまとめ

・  乃木園子:交流無()
・  犬吠埼風:交流無()
・  犬吠埼樹:交流有(襲いたい、どんなことを、抱きしめた)
・  結城友奈:交流無()
・  東郷美森:交流無()
・  三好夏凜:交流無()
・     九尾:交流有(稲荷と会った、樹が好き)

・      死神:交流無()
・      稲狐:交流無()
・    夢路瞳:交流無()
・     神樹:交流無()


5月の14日目終了後の結果


  乃木園子との絆 19(中々良い)
  犬吠埼風との絆 34(少し高い)
  犬吠埼樹との絆 50(高い)
  結城友奈との絆 19(中々良い)
  東郷三森との絆 26(中々良い)
  三好夏凜との絆 37(少し高い)
   夢路瞳との絆 9(普通)

     九尾との絆 27(中々良い)
      死神との絆 23(中々良い)
      稲狐との絆 20(中々良い)
      神樹との絆 -1(低い)


↓1コンマ


01~10 土
11~20 日
21~30 月
31~40 火
41~50 水
51~60 木
61~70 金
71~80 土
81~90 日
91~00 休みとかそんなの関係ないわ。だって、樹海だもの


√ 6月1日目 朝(久遠家) ※土曜日

九尾、死神、兄、姉との交流が可能です

1、九尾
2、死神
3、姉
4、兄
5、イベントの判定

↓2


※樹、夏凜、風、東郷、友奈は判定でのみ


01~10 勇者部一同
11~20 風
21~30 樹・夏凜
31~40 友奈・東郷
41~50 兄
51~60 姉
61~70 大赦
71~80 樹
81~90 兄
91~00 稲荷

↓1のコンマ  


「そろそろ、ここの暮らしにもなれたか?」

天乃「少しは、ね」

変態をお兄ちゃんと呼べるかはともかくとしても

姉をお姉ちゃんと呼ぶことや

両親をお父さん、お母さんと呼ぶことは少し、抵抗なくなってきていた

しかし、天乃にとっては半月や一ヶ月程度の家族関係

ゆえに、本当の家族にはなりきれていなかった

「いい加減、お兄ちゃんをお兄ちゃんと呼んでくれてもいいんだぞ?」

天乃「お兄ちゃんはお兄ちゃんと呼ぶわ。でも、変態な人をお兄ちゃんとは認めたくないの」

「……変態と書いてお兄ちゃんと呼んでもいいんだぞ」

天乃「お断りさせていただきます」


天乃「それで? なにか用事があるから、部屋に来たんでしょう?」

「んー」

もうひとりの妹同様に

鋭いところのある天乃の瞳を見つめる兄は

特に隠すことでもないからな。と

軽くため息をついて、窓の外を見つめる

「どうだ? 俺とデートしないか?」

天乃「え?」

「ずっと家に閉じこもってるのもつまらないだろうし、どうだ?」

天乃「……………」



1、お姉ちゃんとなら行く
2、うん。良いよ
3、嫌よ
4、お姉ちゃんも一緒なら

↓2


天乃「お姉ちゃんも一緒なら」

「お兄ちゃんと一緒なら?」

天乃「お姉ちゃん」

「おn」

天乃「 お、ね、え、ち、ゃ、ん 」

「そ、そうか……そうか」

全力で二人きりを拒絶され

硬い鋼もぐにゃりと曲がって悲しそうな顔をすると

分かった。と、頷く

よし、断られたことにするか

……なんて、断られたから二人きりって言えばきっと

なら仕方ない。とか言うんだろうな

「あいつもあまのんの事好きだからなぁ。用事があっても来るだろうな」

天乃「そこまで無理に誘わなくていいからね?」

「わかってるよ」


きっと無理じゃない

兄が無理を言わなくとも姉が無理を言って同行するからだ

兄と二人きりで出かけさせるのは不安があるというのもあるが

一番はやはり、兄同様に妹が好きだからだ

「行き先はこっちで決めていいか?」

天乃「そうね……こんな私でも楽しめる場所ならどこでも」

「そうか。なら、昼にでも行くか」

そう言い残して、天乃の部屋を出ていく

耳が聞こえない。体が動かないし味覚もない

ほとんどの娯楽を奪われた状態で楽しめること

その難しい問題を考えながら

兄は姉の部屋へとノックもなしに入り込む

「っちょ、お兄っ」

「おーっと、つい、あまののへやの、くせがでちゃったぞー」

「出て行って変態ッ!」

お出かけはお昼を少し過ぎた時間から行くことになった


では、此処までとさせて頂きます
都合上、22時半からの再開が増えるかとは思います


では、少しだけですが勧めたいかと思います


√ 6月1日目 昼(外出中) ※土曜日

01~10 勇者部一同
11~20 
21~30 風
31~40 
41~50 樹

51~60 
61~70 
71~80 友奈

81~90 
91~00 夏凜

↓1のコンマ  


「ビニールプールに入る妹の動画とか持ってるから言ったんだよ。シスコンだよね。って。そしたらなんて言ったと思う?」

「君の足元にも及ばないけどな。とか?」

「いや、ただの家族の思い出であっていかがわしい理由など微塵もないって言ったんだ」

そんなはずないだろ。

だって妹の水着が映った動画を個人的に持ってるんだぞ。と

友人について兄が楽しげに話していると

姉の視線がどこか別の方を見つめたことに気づき、兄の言葉が止まって

少し遅れて、天乃の瞳が2人の視線の先に向かう

風「やっぱり天乃だった」

天乃「風。久しぶりじゃない」

風「ほんと、樹たちには会いに行かせておきながら、悪いわね。アタシだけ全然行けなくて」


わざわざ少し離れたところから近づいてきたのか

汗をかき、髪を額に貼り付ける風はため息をつくと、笑みを浮かべる

天乃「部活はどう? 大変?」

風「基本ボランティアしてるからねぇ。そりゃもうあちこち巡りまわってさ……」

笑みを浮かべてはいても

疲れを感じさせる表情の風に

天乃は悟られない程度に顔をしかめる

いくら勇者とはいえ、若人とはいえ

体が資本であり、大切なのは何も変わらない

だからこそ……無理して倒れるなんてことは避けて欲しかったのだ

風「猫の飼い主探しとか、色々ね」




1、私の世話とどっちが大変?
2、無理しないでね? 樹は貴女が無理してることに薄々気づいてるんだし
3、楽しい? 部活
4、猫……ねぇ、お兄ちゃん。ウチはだめ?


↓2


天乃「無理しないでね? 樹は貴女が無理してることに薄々気づいてるんだし」

風「樹が……?」

天乃「なによ。気づいてなかったの?」

まぁ、樹が気づいている。なんていうのは憶測でしかない

なにせ、天乃は樹からお姉ちゃんが頑張りすぎてる。なんてことは言われていないし

心配だ。なんて言葉も言われたことがない

天乃がそう言ったのは

ただ、少しそんな感じがしたというだけだし

そういうふうに言わなければ

無理し続けて体調崩しかねないと、思ったからだ

天乃「悩んだら相談。だっけ? それをしなさい」

風「でも」

天乃「みんなに言辛いなら私にだっていい。大変だったとか疲れたとか。愚痴こぼしたって、私は部員じゃないんだから良いのよ」

風「………………」

天乃「最年長で部長だから。そんな責任があるのかもしれないけれど。私は貴女の友人。そんな重荷は靴と一緒に脱いじゃいなさい」


風「………………」

天乃は年下にしか見えない

でも、その言葉の力強さ、説得力

それらを物語る表情は年下とは思えなくて

風は黙り込んで、小さく笑う

風「んーそうね。今度、会いに行こうかしらね」

天乃「いつでもどうぞ」

風「ん。じゃぁ、今度必ず行く」

天乃「ええ」

そう。吐き出すべきなのだ

勇者ということ

そのまとめ役であること

部長であること

姉であること

天乃「待ってる」

背負いすぎてしまわないように、誰かが手を貸してあげなければいけないのだから


では、此処までとさせて頂きます

22時半から23時までは中々に短いですね。すみません


では、今日も22時半ですが進めていきます


去っていく風の後ろ姿を眺める姉がどこか心配そうな表情を浮かべると

言葉にしたわけでもないのに、兄は心配するな。と、笑みを浮かべる

責任がある

不安がある

恐怖がある

時にはその重さに膝をついてしまうこともあるだろう

けれど

「あの子はひとりじゃないからな」

「…………………」

「そうだろ? 天乃」

天乃「うん。もちろん」

悩んだら相談

そんな五箇条のある勇者部の部長だ

部員だっているし、部員が難しいなら部外者だっている

だから、大丈夫よ。風

貴女が一人で背負う必要なんてどこにもないわ


「そうは言っても、あの子の場合。唯一の家族を巻き込んじゃってるわけだし」

姉はそれが不安だったのだ

唯一の家族である妹に何かがあったとき

果たして、風は平常心でいられるだろうか

前を向いていることができるだろうか

「私は、無理よ。ううん、手が届く届かない以前の問題だった私でさえ、無理だった」

天乃「お姉ちゃん……」

「そもそも何もできなかったなら、諦めもつく。でも、何かが出来たのにできなかったとしたら……それは」

きっと

途轍もなく、辛いだろう

物凄く、苦しいだろう

言い換えようのないほどに、自分自身が憎くて堪らないだろう

「あの子はそうなりかねない、届きそうで届かない立場に居るのよ」


1、心配いらないわ。妹だって、強いもの
2、大丈夫よ。みんながいるから
3、平気よ。風なら
4、優しいね、お姉ちゃん
5、私は届かなかった側の人。だからこそ、そんな人を作らない為に行動するわ


↓2


天乃「私は届かなかった側の人。だからこそ、そんな人を作らない為に行動する」

先人の知恵があろうと

それを知る人がいなければ無いのと同じで

結局、同じ轍を踏むことになる

でも、先人の知恵を知るだけでなく

その先人自身がいたとしたら

天乃「大丈夫……だって、あの子の家族は樹だけじゃないんだから」

血のつながりだけが家族じゃない

そんな狭い家族ではなく

もっと大きく広い家族の輪を、犬吠崎風はもっているのだと、天乃は言う

「……そっか」

天乃「ええ」

その中のひとりである天乃は

風と同じく姉であり

何もできることがなかった側の人間として、その言葉を見送る

記憶がなくなっていても

やっぱり……この子はこの子なんだね


√ 6月1日目 夕() ※土曜日


1、イネス
2、公園
3、海
4、久遠邸
5、久遠の神社



↓2


久遠の者が代々引き継ぐ由緒正しい神社

現在は天乃の祖父母から両親が引き継いでいるが

正式な血統としては母親の方だ

別に呪いなどがあるわけではないが

久遠の家はほとんどが女性なのだ

現在の子供が1男2女であるのもそのためだと言われている

そして、子供が3人いようと

本当に純粋な力を持っているのはたった一人

そう、全てを背負わされる

それはまるで、勇者のようだ。と

天乃は思い、首を振る

天乃「ここに何があるの?」

「大事なものだよ。一応、お前に見せておこうと思ってな」

そういった兄は本殿の扉を開け、奥の祭壇のような場所に飾られた刀を指さす

「見ろ。あれが先代勇者の持っていた大刀。名を、生大刀という。そして、お前の精霊である須佐之男がもっているべき刀だ」


では、此処までとさせて頂きます

明日もおそらく同じ時間になるかと思います


では、再開いたします


天乃「生大刀……?」

「うん。そう」

「もっとも、今はその力がなくなったただの刀になってるけどな」

昔は生大刀と呼ばれようと、今ではただの錆びた刀

手入れをしようにも

下手に扱えば壊れてしまいかねないほど、骨董品ゆえに手が出せないのだ

天乃「私が持ったらどうなる?」

「壊れると思うぞ。あれ、息を吹きかけただけで砕け散りそうな雰囲気があるし」

天乃「……そう」

須佐之男が持っているべきと言われた大刀

いや、須佐之男が持っていた大刀

その辺を学習した記憶はある。たしか、古事記だったっけ


虫に食い荒らされたかのように

穴だらけの記憶の本を捲っていく

そう、たしか。オオナムチとかいう神様だったかに取られた

生大刀、生弓矢、 天の詔琴

その中の一つ

天乃「それがどうしてここにあるの? ここ、大国主とか須佐之男関連の神社なの?」

「そういうわけじゃないさ。ただ、巫女の家系だから捧げものとして預かってるんだよ」

天乃「巫女の家系ね……私は勇者に転職しちゃったけど」

天乃が笑いながら言うと

兄も笑って、首を横に振る

「勇者は兼任だから転職じゃぁない。現に、天乃は未だにお告げを聞くことができるだろ?」

天乃「うん」

「どちらか片方を私ができれば良かったんだけどね……全部、天乃ちゃんに行っちゃったみたいなの」


それは言っても仕方がないことだと、わかってる

でも言わずにはいられない

何度だって

いつまでだって、思い続ける

「私が代わりになってあげたかったのに」

「なってあげられないんだから、仕方がないだろ」

「それは分かってるけど……」

それでも、変わってあげたかった

そう思い、悲しげな表情を浮かべる姉は

天乃を一瞥すると、ごめんね。と、言い残して去っていく

「……ったく。不可能を背負ったところで、どうにもならないだろうに」

天乃「………………」

追うべきかも知れないし

追わないべきかも知れない

でも、片腕しか動かない少女にできることなど……




1、お兄ちゃん。行ってあげて
2、お姉ちゃんのところに連れて行って
3、ねぇ……アレ(生大刀)。触ってもいい?
4、お姉ちゃんの何がダメだったの?


↓2


天乃「お姉ちゃんの何がダメだったの?」

「んー……何がダメだった。ってわけでもないんだよな」

努力が足りなかったなんてことはない

素行が悪かったなんてこともない

ただ、選ばれなかったのだ

「天乃と同じように友達思い、家族思いの優しい性格だし、困ってる人には手を貸すタイプの人間だ」

天乃は覚えていないかもしれないが

小さい頃には現在の勇者部のように

ボランティア部と言えるような活動をしていたりもしたのだから

けれど、敢えて言うのなら

「久遠の家に生まれたことが最大のダメな理由だろうな」

天乃「どうして?」

「ウチは一子相伝みたいなものがあるらしいんだよ。詳しくは知らないけど、たとえ十数人の子供を作ろうと力はたった一人にしか継がれないんだ」

兄はそう言って頭を掻く

まるで、ばらけている旨みをたった一つに凝縮して

普通の一杯ではなく、至高の一滴を絞り出そうとしているみたいだ……いや

ちがうな

天乃「なに?」

「いや、気にするな」

じっと見ていることがばれて、目をそらし他兄はため息混じりに首を振る

それができた

生まれ落ちた

だからこそ……久遠天乃がいる

至高の一滴、二つはない唯一無二のもの

「今、二人きりだなーって思ってさ」

天乃「だから?」

「手とか繋いでもいい?」

天乃「馬鹿なの?」

真面目な思考を振り払い、兄はにやっと笑って天乃の手を掴んだ


では、此処までとさせて頂きます


遊人(兄)が仲間になりたそうな目でこちらを見ています

   斬り倒す  逃げる 仲間にする


告知なしにはなりますが、昨日の分も含めて進めていきたいかと思います


天乃「ちょ、ちょっと!」

「昔はこうやって、よく手をつないでたんだ」

まだ小さい頃

お兄ちゃん、お兄ちゃんって

今も可愛いけど昔の可愛いなんの問題もなく身長の低かった妹が手を握って

こっち行く。あっち行く。一緒に行こう。遊ぼうよって

「やっぱり、覚えてないか?」

天乃「うん……ごめん」

「いや、良いさ。小さい頃の記憶なんて忘れて当たり前だ。お兄ちゃんだって小さい頃は妹のことしか覚えてないしな」

天乃「覚えてるって言えると思うけど」

「自分自身のことは覚えちゃいないよ。俺の頭の中は妹100%だからな」

自分の言葉を恥じることなく

むしろ誇るかのように胸を張って兄は答えながらも

天乃の手を話して、悪いな。と、呟く

「手を掴んで」

天乃「……ううん。別に」


元々いい雰囲気とは言えなかった

けれど、普通の雰囲気ではあった二人を暗い空気が囲い出す

どうしようもないことだ。でも、忘れてしまったことに変わりはないから

それを申し訳ないと思う必要なんてない。罪の意識を感じる必要なんてない

なのに、少女はあまりにも。優しくて

「……お姉ちゃんいなくなっちゃったし、帰るか?」

天乃「良いの?」

「俺はお前に外を見せてあげたかっただけだからな」

それに

お姉ちゃんが一緒ならという条件だったのに

そのお姉ちゃんがどこかに行っちゃったからな

兄は溜息をつくと、天乃の目を見つめる

「どうする? 天乃が望むようにするさ」


1、お出かけを続ける
2、二人きりだと……本当にデートみたいね
3、ねぇお兄ちゃん。私の体、元に戻る?
4、帰る
5、手くらいなら。繋いでてもいいよ


↓2


天乃「じゃぁ、手を出して」

「こうか?」

申し出に戸惑うことなく手を出した兄の顔から

鼻、口、首、肩、腕、掌

と、視線を流し、その手に向けて右手を伸ばして掴む

いや、掴んだのではなく、繋ぐ

兄と妹でありながら、その関係が不確かな青年と少女

少女は兄の顔を見据えて、照れくさそうな顔を浮かべる

天乃「手くらいなら。繋いでてもいいよ」

「お前なぁ……」

天乃「嫌なの?」

「それはないが……」


手をつなぐのが嫌なわけがない

外だから控えたほうがいい? 知るか、見せびらかしてやる

そんな兄が困った顔をしたのは

頭の中で、もう抱きしめちゃってもいいんじゃないか。とか

もう、キスしちゃってもいいんじゃないか。とか

普段抱いている欲望が活性化し始めたからだ

「んー……」

天乃「どうかした?」

「いや、大丈夫なんだけど」

困惑した天乃の顔が魅力的に見える

綺麗ではなく、可愛く見える。輝いて見える

「っ」

体に目が行く。顔に目が行く

瞳にではなく、柔らかそうな唇に目移りする

好きって気持ちは、あるんだが……っ

「くそっ」

天乃「お兄ちゃん?」


妹の声がする

耳に響いて頭に響く

手を出したらどんな反応をするのか

手を出したらどんな声を出すのか

そこに沸いた何かが、理性を取り込もうと蠢く

「あぁ……でも。無意味だ」

天乃「?」

「俺が妹を好きな気持ちは、理性ごときで収まっちゃいないからな」

大きく息を吐いた兄は、妹の戸惑いに揺らぐ表情を見つめると

天乃の頭を叩くようになでて、笑う

「帰るか。このまま」

天乃「うん。良いよ」

兄と妹

それが本当なのか、記憶を遡っても分からない

でも、握り締めた手の優しさはなんだかとても。懐かしくて

天乃は全く不安を感じなかった


01~10 勇者部一同
11~20 東郷
21~30 
31~40 友奈
41~50 
51~60 夏凜
61~70
71~80 樹
81~90 
91~00 風

↓1のコンマ  


樹「あっ」

風「ん? どした樹」

樹「久遠さんがいますっ」

夏凜「天乃?」

樹「あそこです、信号のところ!」

樹が指さす先に部活動を終えた友奈達の視線が集まって

東郷が「本当だわ」と、呟く

樹「久遠さーん!」

夏凜「ちょっ」

止めるまもなく樹が向かい、

続くように友奈まで駆け出して、残った3人は

顔を見合わせて、息をつく

夏凜「友奈はわかるけど、樹も大概よね」

風「嬉しい半面、ちょっと寂しいかも」

夏凜「だからって家事を放棄するんじゃないわよ?」

風「わかってるわよ」


久遠さーん。っと言う呼び声に兄が反応して、天乃の肩を叩く

天乃「?」

「樹ちゃんと友奈ちゃんだな。あと、ほかの3人も」

兄の視線を追うと

樹と友奈駆け寄ってきていて

そして、その後ろから風達が近づいてきていた

天乃「今日は部活だったのかしら」

「そうなんじゃないか?」

天乃「…………………」

元気よく走る姿は幸せそうで

それを嬉しいと思う心のどこかでは

羨ましいな。と、思う

九尾の力を借りれば歩けるだろう。走れるだろう

でも、それはやっぱり自分の足ではないから……

そんなことを考えてしまう自分を押し込んでいたからか

友奈「お兄さんと、手をつないでて仲良さそう」

天乃「あっ」

手を離すのを――忘れてしまっていた


天乃「こ、これはその……」

樹「私もおねえちゃんと良く手を繋ぎますし、恥ずかしいことじゃないですよ」

友奈「私も東郷さんと良く手を繋ぐよ!」

羞恥心に顔を赤くした天乃に対して

それは全然おかしくない。恥ずかしくない。とフォローをいれた二人は

友奈「ひっ」

樹「ひぃ!?」

笑顔から一転、怯えた表情を浮かべて首を振り

互いの手を握り合う

友奈「ど、どこからそんな」

樹「鳥肌が……」

天乃「どうしたの?」

ただひとり、耳が聞こえずその悍しいものに気付かなかった天乃が首をかしげると

樹は引きつった表情で、答えた

樹「お、お兄さんが。お兄さんが変な声で……私もって。音符が後ろにくっつきそうな声で言って……っ」

思い出してしまったのか、身震いした樹から兄へと目を向け、睨む

天乃「何してるのよ」

「つい、悪乗りしちゃったぜ」


にやりと笑う兄は悪乗りといったが

悪乗りだなんてとんでもない。これが普通なのだ

それを知る天乃が顔をしかめた瞬間

天乃「きゃぁっ!?」

体が傾いて、思わず悲鳴を上げた

樹「ご、ごめんなさい。でもっ、危ないですから」

兄と繋いだ右手と逆、左手を樹が掴んで引っぱったのだ

あんなこの世のものとは思えないような声を出す人と一緒にしておくのが心配だ

という建前

本音は。本当は。久遠さんが……

樹「友奈さん。お手伝いお願いしますっ」

友奈「えぇっ!? 引っ張ったら危ないんじゃ」

樹「落っこちそうになったら私が受け止めますっ」

天乃「そういう問題じゃないと思うんだけど」



1、お兄ちゃん、変なことしないで
2、樹。危ないから止めて
3、流れに身を任せる
4、みんな手を離して


↓2


天乃「お兄ちゃん、変なことしないで」

兄の顔を見たわけではないが

前方の二人が安堵のため息をついて、

そんなことないです。というような反応をしたのを確認して、天乃も息をつく

あと少し引っ張られていたら、どうなっていたことか

……まったくもう

天乃「樹、部活?」

樹「あ、はい。ごめんなさい」

天乃「良いのよ。守ろうとしてくれたんでしょう?」

慌てて手を離した樹に対して、笑みを向ける

悪いのはほぼ全面的に兄だ

音符がくっつきそうな声。というのは想像できないけれど

きっと、酷く気色悪かったに違いない

優しい二人があんなにも、隠すことなく嫌悪感を顕にしたのだから


天乃「それよりも部活の帰りなんでしょう? 疲れてないの?」

夏凜「運動部系サポートってわけじゃないし、疲れるほどのことはしてないわよ」

天乃「部長! ニボタージュした人がいます!」

夏凜「サボってないわよ!」

天乃の言葉にかぶせて、夏凜が怒鳴る

勝手に作った言葉

ちょっと考えなきゃ分からなそうな言葉

でも。考えるまでもなく分かった夏凜を見つめて

樹はちょっとだけ、羨ましいな。と、呟く

樹「夏凜さんもちゃんとお手伝いしてくれましたよ」

天乃「ふふっ、分かってるから大丈夫よ。だって、夏凜は優しい子だものね」

夏凜「っ」

風「そーなのよ。文句言う割に……ねぇ?」

夏凜「あんたに言われると無性にいらつく!」

楽しそうだ。幸せそうだ

お姉ちゃんとも、久遠さんとも……それはいいこと。なんだけど


天乃「樹」

樹「っ」

天乃「どうかしたの?」

樹「いえ、その……」

なんでもない

ただ、羨ましいなと。思っただけ

久遠さんが家からいなくなって、夏凜さんが久遠さんの部屋を使うようになって

……って、それは関係ないけど

樹「夏凜さん、どうですか?」

天乃「どうって言われてもね」

馴染めなだなんて初めから思っていなかった

夏凜「逃げんな!」

風「アタシは風だから、流されやすいだけよ~」

いまのこの賑やかさは当たり前だと思う

いまのこの仲のいい空気も当たり前だと思う

でも、敢えて言うなら

天乃「いいと思う。変わったと思うわ。夏凜自身が」

勇者のお役目に入れ込みすぎていた頃とは少し変わって

自分の今この時というものを、大切にしている。そんな気がするから


「かぜ? 風ってことは、お触りしていいのか?」

風「な」

天乃「本気で言ってるなら、勇者パンチするけど?」

「ご褒美じゃん」

天乃「変態ッ!」

ニコッと笑った兄に向かって

ボール。ではなく死神を投げつける

死神「ゴムタイナァー」

こんな世界のままだったら

こんな楽しいだけだったら

こんな平凡な毎日だけだったら、どれほどいいか

天乃は笑顔のうちに不安を隠して首を振る



1、樹。一緒に暮らさない?
2、友奈。一緒に暮らさない?
3、夏凜。一緒に暮らさない?
4、風。一緒に暮らさない?
5、お兄ちゃん。みんなで……みんなでひとつの家に住むなんて。できないの?
6、言わない


↓2


天乃「お兄ちゃん」

「ん?」

天乃「……みんなでひとつの家に住むなんて。できないの?」

樹「久遠さん?」

騒いでいた風達も

風に向かって飛び込み参加しようとしていた兄も

東郷も友奈も樹も……全員の目が天乃へと向く

天乃「私たちは勇者でしょ?」

「そうだな」

天乃「そのせいで、今ある平和が仮初であることを知った」

「ああ」

天乃「勇者は真実を知らされるだけで終わり? なにか特典があったっていいじゃない」

もしかしたら、奪われるかもしれない

でも

【こんなことになるなら、もっと。もっと……もっと色んな事しておけばよかった】

そんな後悔は、誰にもさせたくはないから

だから

天乃「どうなの? お兄ちゃん」

天乃は、問う


「できないとは、言わないが」

天乃「できるのね?」

「不可能ではないさ。あいつらだって学ぶ。いや、学ばせたんだから」

天乃「……………」

勇者の一緒にいたいという願い

それを、大赦が無碍にできるだろうか

いや、出来ていいはずがない

2年前、一人の小学生を死なせ、二人の小学生の心に傷を負わせたあの出来事

あの時、呟きでありながら、響き渡った声を

忘れたとは言わせない。聞こえなかったとは言わせない

「ただ、ほかが――」

樹「できるんですかっ?」

友奈「東郷さんと、みんなと。毎日お泊まりだね!」

東郷「友奈ちゃんったら」

風「流石に一人で全員分の家事は……」

夏凜「そのくらい、手伝ってやるわよ」

風「う、うん。ありがと」

「分かった。申請しておくよ」

聞く必要なんてない

勇者部とはそういう子の集まりだ

個性が有ってバラバラだけれど、それぞれがしっかりと合わさるチーム

天乃「よろ――」

樹「よろしくお願いしますっ」

天乃「みんな以上に嬉しそうね」

樹「えっ、ぁ……えへへ」

照れくさそうにごまかしの笑みを浮かべて

樹は天乃の車椅子の持ち手を掴む

樹「家まで、押して行ってもいいですか?」

みんなと一緒になれるのが嬉しい

そして久遠さんとまた一緒になれるのがすごく……嬉しかった

√ 6月1日目 夜(久遠家) ※土曜日

九尾、死神、兄、姉との交流が可能です

1、九尾
2、死神
3、姉
4、兄
5、イベントの判定

↓2


※判定で、樹のみ


01~10 兄
11~20 姉
21~30 樹
31~40 九尾
41~50 稲荷
51~60 大赦
61~70 姉
71~80 兄
81~90 樹
91~00 死神

↓1のコンマ  


「天乃入るぞ」

天乃「入ってから言わないで」

「入ってからでしか、言葉が通じないからな」

兄はハハハッと笑うと

天乃のそばのいつもの椅子に座って、息をつく

「向こうから返事が返ってきた。実に上手な言い訳だ」

天乃「というと?」

「現在、適した場所が見当たらないため、見送りとさせていただきます。だそうだ」

天乃「……………」

できないとは言えなかったのだろう

させられないとは言えなかったのだろう

でも、どちらにしても拒否されたことに変わりはない

天乃「どうするの?」

「適した場所が見つからないなら、適した場所も言えばいい」

天乃「?」

「この家とか。な」

にやりと笑う兄は、できれば敵に回したくない。と、思わせた


「幸い、ウチは広すぎるからな。子供が五人増えたって問題はない」

もしあれなら、大広間を使って全員まとめてひと部屋にだって問題なく出来る

それをしなくたって、部屋数は足りてる

といっても、流石に客間を使うことにはなるが

客を泊める旅館ではないのだから、客間なんてなくても何ら問題はない

応接室は応接室で、別の部屋……正しく言えば別棟があるしな

「どうだ?」

天乃「どうだって、言われても」

「俺もお姉ちゃんも、母さん達も。文句は言わないよ。ばあちゃんたちはもう、この家にはいないから関係ないしな」

天乃「…………」

いいのだろうか

この家で、みんなと暮らす

はたして、それで間違いはないのだろうか


1、この家でみんなと
2、もう少し考える


↓2


天乃「良いの?」

「聞く必要はないよ。妹の友達が泊まりに来るだけなんだから」

天乃「でも」

「気にするな。お前は俺の妹で久遠家の次女で家族だ。わがまま言ってもいいのかなんて、考える必要はない」

天乃の頭をポンポンっと叩いて

兄は笑みを浮かべる

2年前、何もしてあげられなかった

2年間、何もしてあげられなかった

なのに、今できることを断るなんてありえない

「我儘言えよ。甘えろよ。勇者は無理でも、子供なお前達のことは俺たちが全力で支えてやるから」

天乃「……………」

「な?」

兄の言葉は、優しくて

兄のその手は温かくて

天乃「…………………」

「どうした?」

右手でそっと触れて、自分のほほへと持っていく

天乃「記憶には、ないけど」

「うん」

天乃「なんだか、とても。安心できるの」

「……そうか」

手のひらを枕にして目を閉じる少女を見つめ、兄は笑みを浮かべ

自身の内側で轟き、蠢き、猛り狂う誘惑された欲望を握りつぶす

「……俺は兄ちゃんだぞ。その程度の誘いに乗るほど、妹を愛してない訳無いだろ」

1日のまとめ

・  乃木園子:交流無()
・  犬吠埼風:交流有(無理しないで、一緒に)
・  犬吠埼樹:交流有(一緒に)
・  結城友奈:交流有(一緒に)
・  東郷美森:交流有(一緒に)
・  三好夏凜:交流有(一緒に)
・     九尾:交流無()

・      死神:交流無()
・      稲狐:交流無()
・    夢路瞳:交流無()
・     神樹:交流無()


6月1日目終了後の結果


  乃木園子との絆 19(中々良い)
  犬吠埼風との絆 36(少し高い)
  犬吠埼樹との絆 51(高い)
  結城友奈との絆 20(中々良い)
  東郷三森との絆 27(中々良い)
  三好夏凜との絆 38(少し高い)
   夢路瞳との絆 9(普通)

     九尾との絆 27(中々良い)
      死神との絆 23(中々良い)
      稲狐との絆 20(中々良い)
      神樹との絆 -1(低い)


少し中断します。
19時頃には再開の予定です


兄と姉の名前……決めるべきかもしれません
文の書きにくさと違和感的に


遅くなりましたが、再開いたします

まずは2人の名前を決めてしまいたいかと思います。ご協力ください


まずは兄の方から


↓1~↓5 兄の名前候補


1、久遠大地
2、久遠人志
3、久遠遊人
4、久遠紡


↓1~↓5


大地(だいち)かな。

では次に、姉のほうです

↓1~↓5 姉の名前候補


1、久遠晴海
2、久遠祷
3、久遠智鶴
4、久遠望
5、久遠光

↓1~↓5


1と2がどう率ですが、1が先なので、優先権で1番になります

兄:久遠大地(くおんだいち)
姉:久遠晴海(くおんはるみ)

ですね…………はい。インストールしました

足りないものは、欠けたもの
欠けたものは、失われたもの
失われたものは、ほら。足りない


では、6月の2日目から開始します


√ 6月2日目 朝(久遠家) ※日曜日

九尾、死神、大地、晴海との交流が可能です

1、九尾
2、死神
3、晴海
4、大地
5、イベントの判定

↓2


※樹、夏凜、風、東郷、友奈は判定でのみ


01~10 風
11~20 友奈
21~30 東郷
31~40 樹海化
41~50 夏凜
51~60 死神
61~70 樹
71~80 樹海化
81~90 晴海
91~00 大地

↓1のコンマ  


晴海「天乃ちゃん。昨日はごめんね」

天乃「ううん。良いよ」

晴海「でも……」

天乃「お姉ちゃんには何回も。謝ってもらってるから。ね?」

謝る必要なんてないのに謝ってもらってばかりだ

それなら私だって謝りたい

どれだけ良くされても、思い出せない

どんなに大切な記憶だろうと覚えてない

そう。何一つ覚えていないし思い出せないのだから

謝り倒してしまいたいくらいに

晴海「……そっか」

天乃「うん」

謝るのをやめ、椅子に座り込む晴海を見つめ、

天乃は困ったように首を振る

天乃「私が選ばれたのも。お姉ちゃんが選ばれなかったのも。ただの運。だから、お姉ちゃんは何も悪くないよ」


晴海「それは私も分かってるの。頭では、分かってるつもりなの」

どうしようもなくて、抗えない

神様によって定められたものであると。理解している

でも、心が納得しなかった

だから辛かった。苦しかった。悶えることすら出来ないほどに。心が痛かった

自分が運のない人間であること

あるいは、自分が運のいい人間であることを。恨んだ

晴海「でもね? やっぱり私は姉だから。妹が苦しんで、姉が苦しまないということは許せなかったのよ」

天乃「私はそんなことなかった。と、思う」

晴海「うん。天乃ちゃんはどうして私なの。どうしてお姉ちゃんじゃなくて私なの。なんて恨み言はひとつも言わなかった」

それどころか

傷つくのがお姉ちゃんじゃなくて良かった。痛い思い、辛い思いをするのが私で良かった

そう、言ってくれていた

でも

晴海「それは。私が言ってあげるべき言葉だったはずなんだと。ずっと思っていたの」


まだ小学生から中学生に上がったばかり

そんな女の子以前に女児と呼ぶべき幼さだった妹

そんな子を戦わせているのに

自分はのうのうと生きていることが、苦しくてしょうがなかった

晴海「貴女は小さい頃から。そうね、物心つく前からずっと。普通とは違う生き方をしてきたの」

天乃「私が?」

晴海「うん。特別な天乃ちゃんを普通の子のように無知で無力のままにすることは許されなかったのよ」

戦うための力を全力で教え込んだ

棒術、槍術、弓道、柔道、剣道、空手、射撃、少林拳、太極拳

全てを小さな体に叩き込んだ

それだけでなく、巫女として重要な舞なども教え込んだ

晴海「私もお兄ちゃんも。そんな貴女を連れ出しては怒られて……また連れ出して」

天乃「……………」

お兄ちゃんが言っていた、手を繋いでいた。というのは

その時だろうか

晴海「……ずっと変わってあげたかった。ずっと、もう頑張らなくても良いからって、言いたかった」


晴海「ねぇ、天乃ちゃん」

天乃「……………」

理解した。察した

晴海が何を言いたいのか

回りくどい流れを作って、姉が何を言いたいのか

……回りくどいなんてとんでもない

お姉ちゃんはお姉ちゃんの気持ちを知って欲しいから言っただけ

晴海の右手が手を掴み、左手が頬に触れる

兄とは違った優しさと温かさ

晴海「大事な記憶を、大好きな親友を、聞くための耳を、歩くための足を、誰かに差し出す左手を……」

天乃「……………」

晴海「貴女が大好きだった食事を楽しむ味覚も。全部失った。だから、もう。これ以上は」

締め付けられる心から溢れ出す雫が瞳から流れ落ちていく

痛い。苦しい。辛い。悲しい

嫌だ。いやだ。イヤだ……もう

晴海「痛々しい天乃ちゃんは見たくないのっ!」

天乃「戦いを。勇者であることを止めて。そう、言いたいんだね。お姉ちゃんは」



1、ごめん。それはできない
2、大丈夫だよ……私は死なないから
3、ありがとう。気持ちは嬉しいよ……でも、私には守りたいものがあるから
4、私の代わりにみんなが傷つく。お姉ちゃんはそれでいいの?



↓2


天乃「ありがとう。気持ちは嬉しいよ」

晴海「天乃ちゃ」

天乃「でも」

希望に満ちた表情が見えた

それでも、天乃は続ける

晴海の言葉を遮って、思いを遮って

天乃「……でも、私には守りたいものがあるから」

自分の思いを貫き通す

昔の自分はなぜ戦ったのか

選ばれたから? 仕方がないから?

そんな小さい理由だったかもしれない

でも、いまの私はそう。守りたいものがあるから戦う

だからこそ

天乃「私にはやめるなんて、ことは絶対に言えない」

戦いを辞めるということは、全てを見捨てることになる

出来ることがあるのに、諦めたことになる

天乃「ごめんねお姉ちゃん。できるなら、その涙をこの体で受け止めてあげたかった」

そうすれば、涙は体に染み込んでいく

姉の背負ってきた辛さ、苦しさ、悲しさが。この心に染み込んできてくれた。はずだから

天乃「でも出来ないから。言葉だけ……ありがとうお姉ちゃん。私のために、泣いてくれて」


天乃の記憶に晴海の涙が刻み込まれていく

これは一生消させない

消えてもらっては困る。奪われては困る

これは、久遠天乃が背負うべきものなのだから

晴海「っ……」

涙を拭って、頭を振って

晴海はまっすぐ天乃を見つめる

晴海「どうしてそんなこと、言うの」

天乃「どうして。なんて言われても」

晴海「っ」

止めたい。どうしても。どうあっても。何をしてでも

でも、止まらない。止まってくれない。天乃は犠牲になっていくだろう

天乃「痛っ」

握られた手への圧迫感が強くなって

頬に触れるだけだった手に、押さえつけるような力強さ加わっていく

天乃「おね、お姉ちゃ……」

晴海「………………」

渦巻く欲が、猛り、盛り、轟き、蠢き、膨れ上がっていく


01~10 
11~20 樹
21~30 大地
31~40 風
41~50 
51~60 友奈
61~70 
71~80 東郷
81~90 大地
91~00 夏凜

↓1のコンマ  


晴海「ッ!」

首を絞めるような

そんな流れで動いていく手

それは男の人かと思うほどの力強さで

抗いきれず右手が跳ね除けられた瞬間、晴海の視線がドアへと向く

友奈「      」

友奈だ

顔は見えないが服装や雰囲気からそうだと定めた天乃が手を伸ばし

友奈の足が動き、

晴海「邪魔しないで」

晴海の口がそう動いたと読んで理解する頃にはもう

体の圧迫感は消えて

友奈「          」

晴海「死なせるために……守るの?」

友奈と晴海が対峙し、2人の間を桃色の光と

小さな白い体の牛鬼が遮っていた


天乃「お姉ちゃん……?」

晴海の体が動くたび、桃色の火花が激しく迸る

精霊の絶対防御

生身の人間では絶対に撃ち貫くことなど、不可能だ

九尾「じゃが、あの娘は人間だ」

天乃「九尾」

九尾「あの娘、妾達の毒気にやられたな……」

行き過ぎた思いほど恐ろしいものはない

どうしても守りたい

どうしても救いたい

でも、どうしようもないのなら。せめて

そんな思考回路に陥った晴海を見つめ、九尾の尾が動く

九尾「今なら隙がある。狩るぞ。狩らねば小娘が死ぬ」


1、九尾、私を勇者にして
2、お兄ちゃんッ!
3、お姉ちゃん止めて!
4、でも。精霊の守りは人の力じゃ……


↓2


天乃「九尾、私を勇者にして」

九尾「じゃが」

天乃「いいから早く!」

九尾「精霊の力を過信するでないぞ。主様」

九尾はそう言い残し、すぐに天乃を勇者へと変身させる

天乃「っ!」

足が神経伝達を受け付けるようになった瞬間

ベッドから飛び出す

向かうは晴海の背中

いくら精霊の守りがあるといっても連続攻撃に耐えられるか分からない

それ以前に、床に飛び散っていく赤い血が、嫌だ

天乃「お姉――」

目の前を黒い火花が飛び散って、言葉が途切れ

何が起きたの……?

そう思って瞳を火花のほうに向けると

蹴りから自分を守る死神の姿が、目に映った


天乃「お姉ちゃん?」

晴海「悲しい思い、苦しい思い、痛い思い、辛い思い。そんなことを、続けさせるくらいなら」

天乃「!?」

ふわっと風を体に感じた瞬間

二度目の蹴りが天乃を襲い、バリアが防ぐ

が、衝突が残した勢いで体が僅かに浮いて、天乃が目を見開く

晴海「右側がお留守よ」

天乃「っ!」

左側を守る死神が反応するよりも早く、風が舞う

間に合わない!

そう思った瞬間、クリーム色の光が右側を守る

稲狐「……………」

稲荷の使いだ

晴海「そんなに。そんなに天乃ちゃんを苦しめたいの?」

死神「クルシメナイタメ、クルシメル。オカシイコト」

晴海「っ」

死神「カナシイオモイ、イタイオモイ、ツライオモイ、クルシイオモイ。サセナイタメ、ワタシマモル!」


では、明日は早いので此処までとさせて頂きます
まだ先ですが、12日の月曜日はお昼頃からできる予定になります

VS久遠晴海
大切だからこそ。壊してしまうという愛情


では、再開します


悲しい思い、痛い思い、辛い思い、苦しい思いをさせないために守る……?

そんなの嘘だ。

そんなのは、ただの言い訳でしかない

ぐるっと体を反転させ、左足を振り上げて

晴海「守った結果――」

死神「!」

晴海「そういう思いをさせるくせにッ!」

振り下ろすのは、天乃の頭上ではなく

天乃からわずかに離れた位置にいる死神

当然、精霊の守りが発動してバチバチっと火花が散る――が

晴海「舐められたものね。これでも、夏凜ちゃんを鍛えた教導官なのよ?」

晴海はそのまま振り抜き、残った勢いで体をさらに回転させ、

死神「ッ!?」

守りごと、死神を蹴り飛ばす

天乃「死神さ――」

晴海「横が空いてるわよ。天乃ちゃん」

天乃「っ!」

慌てて半歩下がるが遅く、死神の守りが消えた左半身

その脇腹を鈍痛が撃ち貫く

天乃「っあ゛……っ」

晴海「精霊は空間を守っているわけじゃない。その場から動かせないわけでもない。守れば良いだなんて。思ってるの?」


天乃「っ……」

勇者だからか、痛みはすぐに和らいで、弱くなっていく

けれど、完全に内蔵まで届いたそれは、

天乃にとってはあまりにも重く

天乃「げほっ……っ」

血を吐くような声を漏らして、ふらつく体を正して晴海を見上げる

晴海「対勇者戦闘術。いわば、勇者が暴走した時の戦闘術。まぁ……貴女用よね」

天乃「精霊の守りは……」

晴海「精霊の守りなんてただの壁だわ。精霊が動けば動くから。扉といってもいい」

天乃「…………」

晴海「まもりが破れないのなら、精霊を退かせばいい。ただそれだけのことよ」

そんな簡単なことで済ませていいはずがない

精霊は言うのもアレだが、非現実的な力

そんな超常的な能力を、人間の力技でこじ開けられていいはずがない

天乃「なんなのよ……お姉ちゃん。化物?」

晴海「そうね……妹の代わりに化物と戦いたい人間。かな」


姉はくすりと笑って、息を吐く

その瞬間

天乃は頭で考えたわけでもなく

天乃「っ!」

壁にぶつかることも厭わずに、横へと跳躍する

ほんの数ミリにも満たず、刹那にも捉えられない差で

晴海「あら……」

天乃がいた空間を晴海の拳が吹き飛ばす

天乃「っ」

九尾は精霊の力を過信するなといった

それがどういう意味であるのかを悟り、冷や汗を垂らす

それでも拭わない。瞬きをしない。深呼吸しない

乱れた息など知ったことではない

整えようものなら、息の根が止まる

そんな恐怖を、天乃は感じていたからだ

晴海「私には神様の力がない。だから、人間の限界を追い求めた。神様には及ばなくても、超人ではあろうと思った」

天乃「どんな少年漫画に影響されたのか、すごく気になるんだけど」

晴海「影響されたわけじゃないわ。私の、純粋な気持ちよ」


天乃「…………」

友奈が端末を握り締め、勇者になって加勢しようとしているのが視界に入って、天乃は息を呑む

無理だ

無駄だ

友奈が加勢したところで焼き石どころか

マグマに水一滴を滴らせるようなもの。はっきり言おう、無駄な犠牲だ

背後なら隙がある

その一瞬にすべてをかけよう。なんて

そんな、海に落とした涙を拾う位に無謀なことなどさせるわけには行かない

天乃「お姉ちゃん。そんなに私を殺したいの?」

晴海「天乃ちゃんが苦しみ続けることを望むのなら」

天乃「っ」

心配で、不安で、怖くて、悲しい

それらが天乃の呪いに当てられて増幅させられ、短絡的な解決

つまり、死という救済へと直結してしまったらしい

さて……どうする


1、友奈と一緒に戦う
2、一人で戦う
3、私の呪いは交合へと誘うはず……思いを、そっちに向けられれば
4、お兄ちゃん、助けて!
5、分かった。控える。控えるから……もう。やめよう?


↓2


天乃「分かった。控える。控えるから……もう。やめよう?」

晴海「苦し紛れの言葉にしか聞こえない」

天乃「私は死にたくないし、お姉ちゃんに人殺しになんてなって欲しくないから」

それが嘘ではないからこそ

天乃の表情には影がなかった

だからこそ、晴海はためらいながらも、頷く

晴海「じゃぁ、もう。危ないことしない。約束だからね?」

天乃「……うん」

守る自信はない

だって、守りたいものがある

そして

それを守れないことほど、辛くて苦しくて嫌で悲しいものなど、ないから

でも

お姉ちゃんをなんとかしないと。きっと

晴海「?」

天乃「戦ったら疲れちゃった」

守ったあとで、殺されるかも

そんな冗談にもならないことを思いながら、天乃は笑みを浮かべた


では、此処までとさせて頂きます


少し違うけれど、東郷さんみたいな動機の晴海姉

よし、とりあえず殴ろう。話はそれからだ


では、今日は少し早め。といっても以前の開始時間からですが
勧めたいかと思います


友奈「あ、あの……」

晴海「ぁ。えーっと、そういうことだから。ね?」

友奈「っ……」

晴海の笑みに、友奈は思わず後退る

当たり前だ

バーテックスを圧倒した天乃を

姉という親族関係者とは言え、圧倒している姿を見せつけられたのだ

笑顔は笑顔足りえない

安心どころか恐怖を与える修羅の笑みにすら思えて、友奈はごくっと息を呑む

晴海「大丈夫よ。もうお話は終わったし」

友奈「おは、なし?」

晴海「ね? 天乃ちゃん」

天乃「ええ……まぁ」

その【お話】とやらをしていたらしい天乃も、友奈も

困った顔を見合わせて、首を振る

話したというより殴り合った。そんな記憶しか、二人にはなかったのだ


晴海「それじゃ、あとはお友達同士仲良く。ね?」

友奈「は、はい」

晴海「お菓子とか持ってきてあげるから、ゆっくりね」

友奈「ありがとうございます」

鬼神というべき姉が部屋から出て行ったのを見送って

友奈「っはぁ……!」

友奈はおおきく息を吐く

緊張したなんてレベルじゃなかった

大きく息を吐こうものなら

魂まで吐き出してしまいそうなほど、恐ろしかった

天乃「大丈夫?」

友奈「は、はい……久遠さんこそ」

天乃「私も平気。ありがとね、友奈」

友奈「いえ」

私はなにもできませんでしたから

そんな言葉を飲み込んで、友奈は困った笑みを浮かべた


姉がお菓子と飲み物を持ってきて、去ってから

友奈はもうちょっとだけ、天乃に身を寄せる

といっても、天乃の横たわるベッドと自分の座る椅子の距離を縮めただけ

天乃に対しての特別な感情などない

しかし、純粋無垢な友奈は

心のどこかで何かを感じて、気恥ずかしさから距離を取ってしまっていた

天乃「今日はひとり?」

友奈「本当は樹ちゃんも連れてこようとしたんだけど、朝起きられなかったみたいで」

天乃「あら、久しぶりね。何かあったの?」

友奈「風先輩曰く、間に合わせたいからって。夜ふかししていたみたいです」

樹は天乃と出会ってからというもの、

日々少しずつ成長を目指して努力し、起こされるギリギリではあるけれど、起きれるようになってきていたのだ

それなのに、夜更かし。とは

天乃「間に合わせたいって、何を?」

友奈「んー……それが教えてくれないんだよね」


友奈の困った顔は、本当の証

なにせ、友奈は嘘が大の苦手で

冗談でさえ、嘘が付けないような子

そのくせ、自分自身を騙すのは得意なのだから

なんともタチが悪い。と、天乃は思って笑う

天乃「近々何かある?」

友奈「勇者部としては、特に」

天乃「……そう」

樹の個人的な何か。かもしれない

でも、それでせっかくの早起き? を台無しにしてしまうのはもったいない気もするが……



1、そういえば。今日は何しに?
2、お姉ちゃん。怖かった?
3、ねぇ、あんまり無茶しないでね? お姉ちゃんと戦う。とか
4、今日は迷惑かけちゃってごめんね? お詫びになるかは分からないけど。何か一つ。お願いを聞くわ
5、間に合わせるねぇ……


↓2


天乃「ねぇ、あんまり無茶しないでね? お姉ちゃんと戦う。とか」

友奈「でも」

天乃「正直、あれは勝ち目なかったから」

決して精霊の力を過信していたわけではなかった。が

あんなふうに容易くまもりを引き剥がされるなんて想像できるはずもなかった

私で良かった

天乃は心からそう思って、首を振る

天乃「私は精霊が多いから一度は防げた。でも友奈だったらそれすら無理」

友奈「っ」

守りごと天乃の体を浮かせる蹴りの威力

守りを引き剥がす戦闘技術

晴海は言った

せめて、超人ではあろうと思った。と

天乃「口の中が変に酸っぱくならなくて良かったわね」

友奈「……はい」

あれに勝ち目はない

天乃が言ったことをそのまま、友奈も思っていた


正直な話、生身では100%勝ち目はない

なにせ、勇者になりつつの天乃に対し、晴海は生身だったにも関わらず。なのだから

アレ。に、勇者の力を与えなかったのは

もはや、魔王に近い何か危険種的存在だったのではないか。とまで邪推してしまう

例えばそう、バーテックスの血を引いている。とか

天乃「でも、ほんと、友奈に怪我がなくて良かったわ」

友奈「久遠さんに怪我がなくて良かったです」

天乃「あらありがと」

友奈「私こそ」

つかの間の修羅を忘れて、笑い合う少女たち

けれど、友奈には少しばかりの不安があった

友奈「……………」

――本当に、久遠先輩には怪我がなかったのだろうか

天乃「友奈?」


01~10 聞く
11~20 
21~30 触る
31~40 
41~50 脱がす
51~60 
61~70 聞く
71~80 
81~90 触る
91~00 

↓1のコンマ  

>>392訂正。前回の癖が出てますね


正直な話、生身では100%勝ち目はない

なにせ、勇者になりつつの天乃に対し、晴海は生身だったにも関わらず。なのだから

アレ。に、勇者の力を与えなかったのは

もはや、魔王に近い何か危険種的存在だったのではないか。とまで邪推してしまう

例えばそう、バーテックスの血を引いている。とか

天乃「でも、ほんと、友奈に怪我がなくて良かったわ」

友奈「久遠さんに怪我がなくて良かったです」

天乃「あらありがと」

友奈「私こそ」

つかの間の修羅を忘れて、笑い合う少女たち

けれど、友奈には少しばかりの不安があった

友奈「……………」

――本当に、久遠さんには怪我がなかったのだろうか

天乃「友奈?」


友奈「あの」

天乃「?」

天乃は平気といった

だからといって絶対平気なんてことはない

友奈を心配させないため、不安にさせないため

痛みを我慢している可能性だって有るからだ

だから

友奈「本当に大丈夫?久遠さん?」

友奈はもう一度問う

触れたい。脱がして確かめたい

総思いもしたが、そんなことをできる勇気

あるいは、勢いが友奈にはなかったがゆえの言葉

天乃「そうね……」

痛みは実際、引きつつあるし

見てはいないが、きっと紫色になっているくらいだ

でも、見せたらきっと友奈はおお慌てになるだろう


冷やさなきゃ、手当しなきゃ

そんな風に

不安で心配でドギマギしてしまうだろう

友奈「やっぱり、痛むんじゃ……」

天乃「痛がってるように見える?」

友奈「見えないけど……」

でも

あの蹴りの衝撃を守りの上からでも受けたからこそ

友奈は納得がいかなかった

勇者とは言え、あんなものを受けて本当に平気なのか。と



1、友奈に脇腹を見せる
2、ごめん。本当はちょっと痛いわ
3、大丈夫よ
友奈のお腹を見せてくれたら、私のお腹も見せてあげる

↓2


天乃「そうね。百聞は一見に如かず。というし」

友奈「久遠さ――ッ!」

天乃が右手で少し頑張って右脇腹のあたりをめくると

白い肌の中で、酷く歪な紫色が目に入った

しばらくすればそれも癒えて、分からなくなるだろう

しかし、そこに痣ができてたという事象は変えることのできない過去そして現在だ

友奈「こんな……こんなひどい怪我っ」

天乃「捌ききれなかった私のミスよ。きっと、鈍ったのね」

そう言って笑う天乃を見つめ、

友奈「笑い事じゃないよ!」

友奈は聞こえもしない声を張り上げる

表情から怒鳴っているのだと判断した天乃は目を開いて

クスッと笑う

まさか怒られるとは、思わなかったのだ


では、少し早いですが此処までとさせて頂きます
唐突ですが、明日はできない可能性があります
できれば、22時半までには再開します



友奈「右脇だから私が氷当てる。嫌なんて言わせないよ」

昨日は予定通りできませんでしたので、今日は進めていこうかと思います
ただ、ミスがあるので>>401の訂正からになります


>>401訂正 右脇腹→左脇腹



天乃「そうね。百聞は一見に如かず。というし」

友奈「久遠さ――ッ!」

天乃が右手で少し頑張って左脇腹のあたりをめくると

白い肌の中で、酷く歪な紫色が目に入った

しばらくすればそれも癒えて、分からなくなるだろう

しかし、そこに痣ができてたという事象は変えることのできない過去そして現在だ

友奈「こんな……こんなひどい怪我っ」

天乃「捌ききれなかった私のミスよ。きっと、鈍ったのね」

そう言って笑う天乃を見つめ、

友奈「笑い事じゃないよ!」

友奈は聞こえもしない声を張り上げる

表情から怒鳴っているのだと判断した天乃は目を開いて

クスッと笑う

まさか怒られるとは、思わなかったのだ


友奈「もうっ、久遠さん!」

天乃「はいはい」

友奈「はいはいじゃなくて……」

自分が負ったわけでもない怪我

その痛みを想像した友奈は顔をしかめて、首を振る

友奈「何か冷やすもの持ってくるから待ってて!」

天乃「そこま――」

友奈「大丈夫じゃないよ」

ぴしゃりと言い切った友奈の瞳

決して睨んではいない

でも、優しさ、不安、恐怖が伝わるそれには、

有無を言わせない何かがあった

天乃「……わかったわよ」

友奈「すぐ戻るからね! すぐだから!」

そう言って、友奈は部屋を出て行った


天乃「全く……っ」

少し擦れただけでピリッと痺れるような痛みが走る

勇者としての治癒能力が怠けているのではなく

それがあっても、回復しきらない

それほどの力を受けた

――いや、そうじゃない

天乃「私の体が弱くなってる」

自分の身体能力の著しい低下を実感させられた

だって、あんなの全盛期なら躱せたはずだ

万が一受けたとしても、ここまで露骨なダメージとして残らなかったはずだ

天乃「……動け、なかったものね」

2年間もの間、運動という行為と疎遠だった体は

見たままの、あるいはそれ以上に弱々しい体になってしまったのだろう

天乃「っ………」

体の痛み以上に、痛かった


01~10 
11~20 友奈

21~30 
31~40 
41~50 兄

51~60 
61~70 
71~80 友奈

81~90 
91~00 

↓1のコンマ  


空白なら、耐え忍ぶ


天乃だって、プライドがある

でも

天乃だって、女の子だ

天乃「っ、私」

天乃の瞳に涙が溜まっていく

薄々感じていた自分の弱さ

それが露骨な痛みとして、現実として目の前に現れたのだ

悔しくないわけがない

悲しくないわけがない

苦しくないわけがない

辛くないわけがない

痛くないわけがない

天乃「っ」

こぼれ出す涙を、自分のではない指が拭う

天乃「ぁ」

友奈「ごめん。でも、黙って見てるなんて出来なくて」

耳が聞こえないから

俯いていた天乃は、友奈が戻ってきていることに気付かなかったのだ


天乃「別に痛いわけじゃ」

友奈「うん」

天乃「馬鹿に、しないで」

友奈「しないよ」

天乃「っ………」

友奈の瞳は同情しない。同感しない

でも、悟ったような穏やかな瞳だった

友奈「だって、お姉さん凄かった。すごくすごくすっごーく、凄かった」

だから

久遠さんの負けは、全然恥ずかしいことじゃない

久遠さんが弱いわけでもなくて

仕方ないことだったんだよ

友奈「痣になってるところ、氷当ててもいい?」

友奈は下手に触れることなく

天乃の体を抱きしめるようにしながら、問う


1、……………
2、うん
3、大丈夫。自分で出来るわ
4、私、泣いてなんかいないから


↓2


天乃「うん」

友奈「っ、じ、じゃぁ……ゆっくり。当てます」

天乃「っ」

わかっていたとはいえ、

氷袋の冷たさに、体がビクッと跳ねる

そんな仕草も、今さっきの子供みたいな返事にも

友奈は心なしか、ドキドキしていた

友奈「冷たすぎたり、痛かったら。言ってね」

天乃「ええ」

友奈「……………」

幼稚園のボランティア

小学校のボランティア

そこで学んだ子供の愛らしさかもしれない

でも、

久遠さんは強くて、格好良くて、優しくて、大人っぽい

友奈「ぅ」

でも今は、子供みたいな可愛らしさがある

友奈「……間違ったかも」

無意識に選んだ抱きしめるような体勢は、

いまのユウナにとっては、苦行にほかならなかった


友奈「……………」

天乃「……………」

友奈「……………」

天乃「……ねぇ」

友奈「は、はいっ」

天乃「みんなには、言わないでね?」

何をですか? なんてとぼける勇気も技量も知恵もなく

友奈はその言葉の意味を理解して、頷く

友奈「言ったらきっとみんな騒ぎますね」

天乃「どうせ馬鹿にされるんでしょ?」

友奈「あはは」

笑ってごまかして、目を瞑る

どうだろう

誰も馬鹿にはしないんじゃないかな

ただ、見たかったって言うかも

もしかしたら、羨ましいとか狡いとか、言うかも知れない

天乃「なによ」

友奈「いえ、別に」

久遠さんは気づいてないのかもしれない

みんなが久遠さんのこと、好きだってことに


√ 6月2日目 昼(久遠家) ※日曜日

九尾、死神、大地、友奈との交流が可能です

1、九尾
2、死神
3、友奈
4、大地
5、イベントの判定

↓2


※樹、夏凜、風、東郷は判定でのみ


天乃「ねぇ、死神」

死神「ナァニ?」

天乃「貴方は怪我してないの?」

死神「マモッテタカラ、ヘイキ」

そういった死神は、天乃のことを見つめると

赤い瞳を悲しげに曲げて、頭を下げるような素振りを見せた

死神「ゴメンナサイ」

天乃「どうして謝るの?」

死神「ワタシ、マモリキレナカッタ。ダカラ、クオンサン。ケガ、シタ」

天乃「………………」

死神「ツヨイ、ワカッテタ。ナノニ……ワタシヘイキッテ、ユダンシタンダ」

油断もなにもあったものではない

生身の人間があそこまで、対勇者に特化していると誰が考えられるというのか

精霊の守りを精霊ごと蹴り飛ばし

回避の余裕すら与えず勇者に直撃を与える

そんなことが一般人に可能だなんて、誰も考えたりしないはずだ


では、中途半端ですが此処までとさせて頂きます
友奈は主人公だと、改めて実感するコンマでした


一方の樹

樹「む、難しい……でも、お姉ちゃんに助けは借りないよ。自分でやるって決めたんだからっ」


では、今日も進めていきたいと思います


天乃「はっきり言うけれど、正直。貴方よりも相手を見る目はあると思うわ。私」

死神「クオンサン?」

天乃「それに貴方は精霊だし、あくまでサポートの立場なわけで」

つまりなにがいいたいのかと言うと

サポートが油断してどうなろうが、メインがしっかりしていれば防げたはず

だから

別に死神にだけ落ち度があるわけではない

それに

天乃「貴方がしっかりしてなかったから。なんて、まるで私が全力でもあの程度。みたいじゃない」

死神「……………」

天乃「確かに体は鈍ったわ。無駄な脂肪だって多少は付いちゃってると思う。でも、あれが全力ではないって信じたい」

希望的観測になるかもしれないけれど

人間に負けてしまうような力ではいけない

例えそれが、人間ではない人間であったとしても。だ


天乃「次は油断しない。次は勝つ。それで終わりにしましょう」

死神「クオンサン……」

天乃の言葉に、死神はただ名前を呟く

天乃がそういうのなら、そうしよう

反論したりする九尾と違ってそういう風に考える死神だからこそ、だった

死神「ワタシ、ナニモイワナイ。クオンサン、ソウスルナラ」

天乃「うん」

死神「ツギハヤラレナイ。ゼッタイニ!」

意気込む死神を眺めて、クスッと笑う

相変わらず、よくわからない生き物だ


1、ねぇ、近々何かある?
2、樹が何をしてるかわかる?
3、ねぇ、死神。姿を消してくれない?(来室判定。行方不明のドッキリ)
4、私……友奈に弱いところ見せちゃったんだけど、どうしたらいいと思う?


↓2


天乃「ところで、少しやってみたいことがあるのよ」

死神「ヤッテミタイコト?」

天乃「ええ。まぁ、ちょっとした悪戯なのだけど。私の姿を消してくれないかしら」

死神「?」

天乃「ドッキリよ」

首を傾げる死神に向かって

天乃は清々しいほどの満面の笑みを浮かべる

友奈が来るか、お姉ちゃんが来るか。お兄ちゃんが来るか

それとも、誰か別の人が来るか分からないけど

天乃「ちょっと驚かせてみたいな。なんて」

死神「オコラレルト、オモウ」

天乃「大丈夫よちょっとくらい。だから、ね?」

死神「ワカッタ」

子供じみた天乃の願いを受け入れて

死神は天乃の姿をかき消した


01~10 風
11~20 樹
21~30 東郷
31~40 友奈
41~50 兄
51~60 姉
61~70 夏凜
71~80 友奈
81~90 樹
91~95 姉
96~00 兄 

↓1のコンマ  


東郷「失礼します」

といっても、聞こないかしら

なんて、穏やかな心中ながらも

普通の友達の家に来る。というよりはやや緊張していた

なにせ、結城家+東郷家でも

この久遠家――否、久遠邸には敷地面積で勝ち目がない

大赦関連の大きな神社の家系だと聞いた

けれど。それにしても、この家は大きかったからだ

そして

東郷「久遠さん?」

緊張は緊迫に切迫に、焦りに焦燥にころころと七変化して

東郷は最終的に口を押さえて、首を振る

東郷「冷静に、冷静にならなきゃ……ッ」

部屋を見渡す。いない

車椅子から落ちることも厭わずに前のめりになって、強く胸を打ちながらも、ベッドの下を確認。いない

もう一度車椅子の座ってベッドの上を見る。いない

じゃぁ次はクローゼットだ。と、確認。いない

窓の鍵は施錠済み

東郷「く、久遠さんがいないわ!?」

たまらず、声を上げた


部屋に来てからそこにたどり着くまで数分程度

その間、東郷美森は現実逃避した

だって、寝たきりの友人が、ベッドの上にいないのだから

部屋にいるからと家族が言ったのに

部屋には誰も、いなかったからだ

東郷「お兄さんを呼ぶべき? それともお姉さんを……」

車椅子に座ったまま、悩む東郷をベッドの上に横たわる天乃はジッと見つめる

死神の能力【隠密】だ

元々、潜んでいる死神が持つ固有の能力は勇者状態でなくても姿を消すことができるのだ

天乃「…………………」

さて、どうしたものかしら



1、這いずって床に落ちてみる
2、とーごーとーごー、私はどーこー?
3、物音を立ててみる
4、東郷が近づいた隙を狙って、ベッドに引き倒す
5、もう少し様子を見る



↓2


天乃「………………」

天乃は思った

混乱している中、物事に動じている中

さらにおかしなことが起こったら

普段冷静でいるらしい鷲尾須美――もとい、東郷美森はどうなるのか。と

もっとも

根が鷲尾須美であるならば、きっと破綻するだろう。と答えを見ながら

天乃「っ……っ」

ずっ……ず……っ

奇妙な音が部屋に響く

天乃には聞こえないけれど、それは当然東郷には聞こえていた

だから、ずれていく布団が目に入った

そして

――ドサッ!

そんな鈍い音が聞こえて……東郷は車椅子のタイヤを回すための持ち手を掴む

東郷「久遠さん……?」

何もいない

でも、だれか。そう、久遠さんであって欲しい

東郷は祈る気持ちで、名を呼んだ


では、此処までとさせて頂きます
明日もできれば同じ時間からやりたいかと思っています



大地「ん? 天乃がいない? よし、布団に飛び込んで匂いを堪能するか!」

天乃「いやぁぁぁぁぁぁぁっ!」


昨日と同じ時間は無理でしたが、22時半頃から少しだけやろうかとおもいます


天乃「……………」

身動きを取らず、息を潜めて東郷を見上げる

下手に音を立てて東郷が驚いたら足が出てくるかも知れない

そうなったら、顔を蹴り飛ばされる可能性も少なからず有る

ゆえに、動きづらかったのだが

とはいえ何もしないままなのは意味がないだろう

東郷「そこにいるんですか?」

天乃「……………」

東郷は決して、幽霊というものにおびえているわけではない

天乃が消えてしまったという状況に続き

何者かが今目の前にいるから、おびえ、緊張していた

そろそろ……動かなきゃね



1、姿を現す
2、様子を見る
3、足を掴んで引きずり下ろす


↓2


天乃「……………!」

声には出さずに意気込んで、力を溜める

天乃の力が強いとは言え、

東郷も車椅子生活を経験していたし

その上で両腕はだいぶ力強い

イチかバチかの大勝負

失敗すれば、顔を蹴り飛ばされて

成功すれば、怒られるだろう

それでも、手を出すのが久遠天乃という愚か者だ

東郷「ひっ」

天乃の成否の不安、東郷の力の懸念とは裏腹に

不意に足を捕まれ、体が強ばった東郷は対応しきれず流れるように車椅子から滑り落ちていく

東郷「きゃぁ!」

天乃「ふぎゅっ」

車椅子は支えるどころか、ブレーキが解除されていたがためにバックして下がり、

それを失った東郷は前のめりに――そう、自業自得な天乃の上にのしかかったのだった


天乃「っ……」

東郷「なにか潰しちゃっ……?」

東郷は言葉を中断して、目をこする

あれ?

おかしい……私は夢でも見ているのかしら

体制を立て直そうと床に手をついたはずなのに

手は空中で止まっていたのだ

しかし、しっかりと何かを押しつぶしている感触がある

東郷「一体何が、あるの?」

天乃「っ、っ!」

考えるために、何度か力を込めて押す

少し固くて、温かい

でも、硬すぎることなく柔らさもある

まるで、人間の皮膚に触れているかのような……

東郷「……もしかして、勇者の姿でイタズラを企てたのでは?」

考えた末の回答は、

半分正解。半分ハズレだった


とはいえ、

東郷に関していえば、それが正解だろうが間違いだろうがどうでもいいのだ

今、自分が乗っかっているであろう悪い子が、

久遠天乃であるのであれば、それでいいのだ

東郷「久遠さん。私の顔が見えてますか?」

天乃「っ!?」

背中に乗られている天乃には当然、東郷の声など聞こえない

そして

それもまた、東郷にはまったくもって関係ない

東郷は手が押している何かの幅を計るようにスーっと空間を滑る

天乃「ふくぅ……っ」

そして、左右で床に手を付いた中央のラインを指でなぞる

天乃「ひあぁっ」

ビクビクッと何かが震えたり、可愛らしい声が聞こえるが知ったことではない

私がどれだけ心配して、不安になって、驚いて、怖かったのか

思い知っていただきます。久遠さん

東郷は指の腹でなぞり、爪先で産毛だけを刈るような力でなぞる

東郷「ここ、背中ですか? 久遠さん」

聞いても聞こえていないとは思いますが。と、東郷は悪戯な笑みを浮かべ、仕返しを続けた


天乃「うぅ」

東郷「いたずらにも限度というものがあります。これに懲りたら二度としないでください」

くすぐるよりも拷問に近い背筋をなぞり続けるという行為に耐えかねて

姿を現した途端に始まった説教

くすぐったさの残る天乃はパジャマが背中をするたびに、ビクビクと体を震わせて、呻く

天乃「悪かったわよ」

東郷「本当です。猛省してください」

天乃「猛省って」

東郷「今度は寝巻き等の上からではなく、素肌を直になぞりますが?」

ニッコリと笑う東郷だけれど

絶対にいい意味では笑ってないんだろうな。と、思いつつ

天乃は苦笑を浮かべて頷く

天乃「分かった。分かったから。もう嫌よ」

東郷「よろしい」

東郷は満足そうにそう言って、笑みを浮かべた


1、鬼、悪魔、東郷!
2、いつかやり返すわ。覚悟してなさい
3、ねぇ、樹はどう? 無理してない?
4、でも……あなたが来るとは思わなかったわ


↓2


中途半端で申し訳ないですが。此処までとさせて頂きます
明日は可能であればお昼頃(約12時、13時)からゆったりと勧めていく予定です


忘れがちですが
天乃は友奈、東郷、樹、夏凜よりも年上です


少し遅れましたが、再開しようかと思います
途中休憩を挟むと思います


天乃「でも、あなたが来るとは思わなかったわ」

東郷「意外。でしたか?」

天乃「まぁね。こんな場所まできてもらえるとは。思ってなかったし」

久遠邸は天乃が讃州中学ではない学校に通っていたように

讃州中学のエリア外にある

つまり、勇者部のみんなが住んでいる地域とはだいぶ離れているのだ

送り迎えをしてもらえると言う利点があるにしても

車椅子の身で、ここまで来るのはやや面倒ではあるのだ

天乃「自分で言うのもアレだけれど、ここに来るより有意義なことあると思うし」

東郷「ですが、来てみなければ無意味なのかどうかなんてわかるものではありません」

実際に。と

東郷はくすくすと笑いながらつぶやいて携帯端末を取り出す

東郷「久遠さんが聞こえないのが残念です」

天乃「?」

東郷「さっき、久遠さんが漏らし続けた声。一部保存させて頂きました」

天乃「なっ」

東郷「久遠さんが実はこんな可愛らしい声を出すなんて……知らないみんなに教えてあげなきゃ」

悪魔のような含み笑いを浮かべる東郷を睨むように見つめて

天乃は自分の声を思い出して、首を振る

どんな声を出したのかは知らない

でも、きっとすごく恥ずかしい声に違いなかった


天乃「夏凜に笑われるじゃないっ」

東郷「そうかしら? 夏凜ちゃんのことだから照れつつしっかり聞くと思うわ」

天乃「しっかり聞くって……私の変な声なんて聞いてどうするのよ」

東郷「次は誰が可愛らしい声を出させるかの勝負が始まります」

天乃「やめなさい」

間髪入れずに拒絶し却下した天乃を見つめて

東郷は悪魔らしくないほほ笑みを浮かべて、頷く

可愛らしい声を、思わず一部録音したのは事実だ

からかうために用いようとしたのも事実だ

けれど……樹ちゃんや夏凜ちゃん

もしかしたら友奈ちゃんにでさえ、怒られちゃうかも知れない

東郷「なら、控えようかしら」

怒られるようなことをしたくはない

みんな久遠さんが好きだから。あんまりやりすぎると、本当にダメだよって注意される

でも、行方不明ドッキリ、心霊ドッキリ、車椅子から引きずり下ろすなんて悪行は見過ごせないもの

ちょっとくらい悪戯しても良いよね。友奈ちゃん


でも、ここからは本題に入る

おふざけは一切なし

冗談の欠片もなくて、空気は息苦しさを感じてしまうほどに、重くなる

私の用事はそんな用事

私が言いに来たことは、久遠さんを困らせる悪いことだ

それでも

東郷「久遠さん」

天乃「うん?」

東郷は口を開き、告げる

東郷「私も。私も勇者として戦おうかと思います」

ピキッと、空気に亀裂が入ったような気がした

動けば砕け散っていくそれに怯えたのか、何もかもが動きを止める

天乃の視線は東郷から動かない

東郷の視線は天乃から動かせない

動かせるはずなどない。逸らせば――根負けしたのと同じだからだ

東郷「悩んで悩んだこの約一ヶ月。それでも、私は戦うと。決めました」

天乃「…………………」

東郷「久遠さんがなんと言おうと私は戦うわ」


天乃「この体、私は勇者になったせいだと、言ったわよね?」

東郷「はい」

天乃「それでも?」

東郷「はい」

戦って失うものがある

でも

戦わなくても失うものがある

そして、それは戦えたのに戦わなかった者にとっては

言い表せないほど大きな後悔や絶望となる

だって、戦ってさえいれば。失わなかったのかもしれないのだから

天乃「…………………」

東郷の瞳に力強さを感じて

天乃は小さく息を吐く

ここでの言葉は間違えるべきではないだろう


1、貴女は既に両足と記憶を失っているのよ?
2、そう。分かった。この一ヶ月を悩みぬいた答えと覚悟なら、私は止めないわ
3、許可できないわ
4、奇遇ね。私もよ


↓2


天乃「そう。分かった」

東郷「え?」

天乃「この一ヶ月を悩みぬいた答えと覚悟なら、私は止めないわ」

正しく言えば、止める権利など天乃にはない

忠告をした

それでも戦うというのなら

それでも戦う理由があるのなら

失うものがあるとしても、失いたくないものがあるというのなら

止められるはずがない

久遠天乃もまた、自分がそれに類似する。否、それそのものだと

たった四文字の熟語一つで表せられるほどの愚か者であることを理解しているからだ

なればこそ

久遠天乃の瞳は鋭く東郷を刺し貫く

天乃「その覚悟を貫き通しなさい。その思いを貫き通しなさい。例え、どれほどの絶望があったとしても」

悩んで悩んで悩み続け、苦しみ喘ぎ、ひねり出した今の自分を

それが過ぎ去って過去となり、何もかもが変わり果ててしまったのだとしても

天乃「守り通すと決めたのなら。失っても失わないと覚悟したのなら。何もできなくなるまで、戦い抜きなさい」

東郷「……久遠さんのように。ですか?」

天乃「さぁ? どうかしらね」


天乃は感情を苦笑に変えて、お茶を濁すと

東郷から目をそらす

声が聞こえないから答えられない。というような素振りに

東郷は困ったようにため息をつく

東郷「そういう、子供みたいな態度を取るからいけないんです」

聞こえていないことを分かりながら

東郷はそのまま天乃の耳元に顔を近づけると

東郷「だから    みたいな扱い。されるんですよ」

天乃「っ」

耳のこそばゆさに天乃が目を向けると

東郷はニッコリと満面の笑みを浮かべる

天乃「なんなのよ」


01~10 
11~20 頭を撫でる

21~30 
31~40 
41~50 
51~60 口走る

61~70 
71~80 
81~90 頬に触れる

91~00 

↓1のコンマ  

空欄は流れ


東郷「いえ、なんでも」

天乃「なんでもなくなさそうなんだけれど」

東郷「ふふっ」

少し離れた久遠邸

事前に行きたいという連絡が必要なそこは

管理も厳重なところ

門番のようなお姉さんとお兄さんはとても強い

その中にいる、久遠さんはまるで……

東郷「さっき、ここに来るのが無意味かどうかは来るまで分からないと言ったけれど」

天乃「?」

東郷「意味はあるわ。きっと、絶対に意味がある」

天乃「どんな?」

東郷「久遠さんの笑顔を見てると、元気になれる。友奈ちゃんもだけれど。それとは違った嬉しさがこみ上げてくる」

東郷は自分の胸元に手をあてがうと

軽く息を吸って、吐いて、天乃を見つめる

心の奥底から湧き出す安堵と嬉しさに

真っ黒に塗りつぶされた記憶の一部がぴりっと反応する

でも、東郷は何も思い出すことはできなかった


√ 6月2日目 夕(久遠家) ※日曜日

九尾、死神、大地との交流が可能です

1、九尾
2、死神
3、晴海
4、大地
5、イベントの判定

↓2


※樹、夏凜、風、東郷、友奈は判定でのみ


九尾「解せんな」

天乃「うん?」

九尾「主様の姉が勇者であれば、戦いなど容易になるはずじゃ。なぜ、神樹とやらはきゃつを選ばぬ」

天乃「……どうしてかしらね」

あの圧倒的な力を目の当たりにし、その身に受けた天乃は

あの力があれば、二年前

誰も失わずに済んだかも知れない

言っても思っても仕方がないことだろう。けれど、

きっと、失わずに済んだはずだった

九尾「対勇者に特化しているとは言え、黄泉の者を退かせ、治癒能力さえ凌駕する力」

それが、生身の人間が繰り出したものだというのだから

もしも勇者の力が加わっていたら、蹴りひとつで体が真っ二つになる。そう言われても

危うく信じてしまいかねない

九尾「是非とも、助力を願いたいものなのじゃがな」

天乃「だったら、あなたの力でお姉ちゃんを勇者にしてみたら?」

九尾「できぬ。妾ができるのは主様だけじゃ。黄泉の者もまた同様にな」


期待はしてない、夢も見ていない

久遠天乃は現実を見つめて、九尾を横目で見つめる

天乃「でしょうね」

九尾「選定者の品定めから漏れたのか。それとも、選ばなかったのか」

天乃「考えるだけ無駄なことよ」

九尾「そうじゃのう……」

九尾は退屈そうな声で呟く

でも、本当に考えるだけ無駄なのよ

神樹は何も答えない

私が幾度となく、神樹様と叫んでも

そのお力に救いを求めても何も答えてはくれなかった

天乃「……でも」

九尾「?」

天乃「きっと神樹はお姉ちゃんを選ばなかったんだと思う」

九尾「ほう?」

天乃「だって、お姉ちゃんって勇者というより格闘家とか剣士とか。そういう職業っぽくない?」

九尾「脳筋族か」

天乃「そこまでは、言ってないけどね」


どちらかというとメインで戦わずにサポートするタイプというか

勇者の支えとなるべき人間。のような気がするのだ

とはいえ、神樹がそれで選ばなかったとは限らない

天乃「はっきり言って不毛な議論よね」

九尾「不毛だからこそ、暇つぶしには適しているのじゃがのう」

天乃「そうね」

九尾「そういえば、主様や」

天乃「うん?」

九尾「今月は主様の生誕祭を開かねばならぬな」

天乃「あぁ……そっか。そうね。園子がいないけど……」

この二年間は、ずっと園子と二人きりで

ケーキがなければロウソクもない

当然、プレゼントすらない質素を通り越した寂しい誕生日会だった

でも、園子がいてくれるだけで、私は満足していた

天乃「園子……大丈夫かしら」

九尾「下手な手出しは出来ぬじゃろうて。主様の怒りを引き出した瞬間、この家の門番の鬼が、動いたら死ぬしかないからのう」


天乃「鬼って」

九尾「本当の強者を見誤るでないぞ」

天乃「え?」

九尾「晴海も相当な実力者ではあるが……じゃからこそ。強くあらねばならぬ者がいるということじゃ」

九尾は何かを知っているのかもしれない

でも、九尾は語ることなく笑うだけ

天乃「お兄ちゃんのこと?」

九尾「くかか。きゃつは常に手を抜いておるからのう。そうかもしれぬな」

九尾は楽しげにそう言うと

今思いついたかのように、「そうじゃ」と、呟く

九尾「のう」

天乃「うん?」

九尾「もしも力不足を感じたのなら、妾を使って勇者になり。きゃつに教えを頼むと良い。もちろん、晴海でもかまわぬがな」

今でこそ、晴美が戦技教導を勤めてはいるが

その晴海を鍛え上げたのはほかでもない大地だ

そのどちらか。あるいは両方に手を借りれば

また全盛期のように戦えるようになるかも知れない


天乃「そうね、考えておくわ」

九尾「うむ。そうすると良い」

ただ、両腕や両足を使う戦い方は

九尾の力を借りればできるが、死神の力を借りて勇者になった場合は使えない

そうなると、回復を阻害する力も使えなくなってしまうという問題があるのだ

もちろん、それがなくても力技で押し切ることは不可能ではないだろうが

それはそれでより危険を伴う

天乃「それにしても、誕生日……か」

九尾「今年はきっと、賑やかになるじゃろう」

天乃「あら。東郷達に話した覚えはないけど」

九尾「主様以外にも、その日を知っているものはいるじゃろう?」

天乃「……そっか」

九尾「うむ」

天乃「もし。やるとしても……来てくれるかしら」

憂いを帯びた表情を浮かべる天乃を一瞥し

九尾扮する狐女性はくすくすっと笑って、天乃の頬に触れる

九尾「案ずるな。何もなくても来る連中が、特別な日に来ないわけがない」

天乃「そう。かな」

九尾「ああ。きっと。きっと来る。じゃからそう……気色悪いから乙女の仮面をかぶるな」

天乃「気色悪いって何よっ」



1、襲来について
2、樹に関して
3、死神の力、九尾の力の併用に関して
4、お姉ちゃんを呼ぶ
5、お兄ちゃんを呼ぶ
6、パルプンテ


↓2


天乃「私もちゃんと女の子なんだけど。というのは置いておいて」

九尾「置き引きにあっても知らぬぞ」

天乃「何が持ってかれるのよ……じゃなくて」

すぐにそれそうになる話を引き戻すために

少しだけ大声になるように声を出してみて、天乃は一息入れる

大事なことなのだ

九尾は茶化す可能性があるが

今後の戦いにおいて、これはすごく重要なことなのだ

天乃「貴女と死神。両方の力を同時に使うことはできる?」

九尾「というと?」

天乃「貴女で勇者になりながら、死神の付加能力を用いるの」

九尾「あれは単純に、主様がきゃつの力の源である死鎌を纏っているからじゃ。ちなみに、纏う。とは勇者になることじゃ」

天乃「うん」

九尾「つまり、妾で勇者になってさらに纏うとなると勇者勇者になるわけじゃな……そう。超勇者じゃ」

天乃「あら、す――」

九尾「なんてうまい話があるか戯け!」


九尾「良いか馬鹿乃」

天乃「ばっ」

九尾「妾と黄泉の者は同質の力ではない。むしろ水と油じゃ」

天乃「ばかのって……」

九尾「つまり、決して混ざらぬモノを主様という一つの器に流し込もうとしている。分かるかえ?」

九尾の問いに、天乃は悲しそうな瞳を向けて

つまりなんなのよ。と呟くと

天乃「どうせ馬鹿な私に教えて」

と、やや自棄になって目をそらす

九尾「主様はそれぞれを個別に制御しなければいけないということじゃ」

天乃「今までは一つだったものを、2つってこと?」

九尾「いかにも。妾だけだったり死神だけだったり。というのとはわけが違う。一歩間違えれば主様の力は完全に失われる」

天乃「なぜ?」

九尾「強き力には相応の代償があるからじゃ。そもそも。精霊二体を同時に纏うなど、満開するようなものなのじゃからな」

そう

いわばそれは、擬似的な満開だ

サポートの力を余すところなく100%用いつつ

それをひとつならず二つ用いて力を限界以上に持ち上げていく

九尾「主様は特別じゃ。故にできないとは言わぬ。じゃがのう……勧められたことではない」

天乃「……そっか」

九尾「少なくとも、今の弱き主様には犬死しかできん。やめておけ」


天乃「そうね……弱いものね。私」

九尾「今はもう。2人ではない。どちらかだけが抱え込むなど、不要じゃ」

九尾は意味なく優しい声でそう言って

天乃の頭をポンポンっと優しく叩く

声にどんな感情が詰まっているのか

どんな思いが詰まっているのか

天乃にはわからないから

だから、九尾は笑みを浮かべ、真っ白な右手を天乃の頬に当てがう

九尾「愛しい愛しい妾の娘よ。案ずるな。もう、無理はせずとも良いのだ」

天乃「………………」

九尾「しかし。主様がその力を欲し、どうしても扱わねばならぬというときは申し出よ」

天乃「九尾?」

九尾「我ら八精霊が、全力で主様の望みを叶えようぞ」

天乃「……うん」

しかしその代償は果てしなく大きい

願わくば、主様がそのような願いなどなく

この永劫に続くやも知れぬ闘いの日々から抜け出せますよう……

九尾は小さく息を吐いて、天乃を見つめ続けた


√ 6月2日目 夜(久遠家) ※日曜日

九尾、死神、大地、晴海との交流が可能です

1、九尾
2、死神
3、晴海
4、大地
5、イベントの判定

↓2


01~10 九尾
11~20 死神
21~30 稲荷
31~40 晴海
41~50 大地
51~60 死神
61~70 稲荷
71~80 晴海
81~90 九尾
91~00 大地

↓1のコンマ  


大地「天乃! お兄ちゃんと寝よう!」

天乃「帰って」

部屋に入るやいなや

絶対にしたくないことを言ってきた兄を一瞥して

天乃はそっけなく返す

お兄ちゃんとは言え、男の人だし

我慢してくれるとはいっても、欲望を抑えきれるかどうかわからないのだ

大地「なんだよ。素っ気ないやつだなー」

天乃「前に言ったけど、私はお兄ちゃんが怖いの」

大地「禁断の恋愛なら気にすることはない。バレなきゃ問題ないからな」

天乃「うん。違うから黙っててくれると嬉しい」

にこっと笑う天乃に笑みを返した大地は

いつもの椅子に座ると、これを渡しに来たんだよ。と

携帯端末を天乃に手渡す

天乃「良いの?」

大地「休みはともかく、平日は暇だろ? 勇者部の子達とメールでもするといい」

天乃「ありがと」

大地「気にするな。アドレスに関しては今日来たゆっきーとみもりんから許可はもらってるから心配いらないぞ」


天乃「でも、お返しとかはできないよ」

大地「他人じゃないんだ。いちいち、そういうことを気にするなよ」

お兄ちゃんはそう言ってくれる

けれど、でも

私にとっては未だに他人のようなものなのだ

だって、家族という関係になってからまだ一ヶ月しか経ってない

友達とか親友

そういうことはできるかもしれないけど

何もかもをしてもらっておいてお返しを一切しない

そんなことができるような関係だとは、思えていない

大地「どうした?」

天乃「……ううん。別に」

大地「そっか。無理に聞きはしないさ」

そんな一歩引いた態度が、天乃にとってはとてもありがたかった



1、ねぇ。なにかして欲しいことある?
2、ねぇ、お兄ちゃんはお姉ちゃんに勝てる?
3、ねぇ、私のことを鍛えてくれない?
4、ねぇ。昔の私は……その。どんなふうに接してた?


↓2


では、一旦休憩挟みます
再開は20時半頃を予定しています

この場合は2で進めます


遅れましたが、21時よりやっていこうかと思います


天乃「ねぇ」

大地「なんだ? 添い寝か?」

天乃「お兄ちゃんはお姉ちゃんに勝てる?」

大地「無視か……んー晴海にか」

化物じみた自称一般人の姉

その兄である大地もまた、並々ならぬ力を持っていることは

夏凜を軽く捌いた事からも伺えるし

初めてここに来た日、晴海と喧嘩していた所からも察しがつく

が、どちらが上なのかは分からなかった

大地「そうだな。まともにやり合えば勝てるんじゃないか? もちろん、そんなことやる気はないが」

天乃「勝てるの……? お姉ちゃんに!?」

大地「当たり前だろ。お兄ちゃんなんだから」

さらっと言う大地に対して

天乃はいやいやいや。と、首を振る

天乃「お姉ちゃん凄く強いのよ? 私なんかより、ずっと」

大地「そりゃ、お姉ちゃんだからな。それと悪いが、俺でも天乃に勝てると思うぞ」


天乃「っ!」

大地「別に挑発するつもりなんかないよ。そういうふうに育ったんだ。俺達は」

大地は思いを馳せるような表情を浮かべると

天乃をチラッと見つめて、腕を見せる

天乃「な、なにして」

大地「触ってみろ」

天乃「え、でも」

大地「なんで恥ずかしがってるんだ。抱きしめるぞ」

天乃「わ、分かったから止めて!」

渋っていた天乃は大地が腕を広げた瞬間

叫ぶように言い放ち、上気した頬の上の瞳を若干逸らしながら

大地の腕に触れる

成人男性と比べると、太めの腕

決して脂肪たっぷりのサンドバックではない

鍛え上げられた筋肉のみとさえ言えそうなほど、固い

天乃「……鉄筋?」

大地「ああ。実は俺は大地を司る精霊で、体が鉄で出来てるゴーレムなんだ」

天乃「ごめん、私が悪かったから話を戻して」


大地「お姉ちゃんだって、お前より体は一回りくらい大きいだろ?」

天乃「うん」

大地「つまりそういうことだ。勇者になっていようが、上回れずとも互角であれ。ってな」

天乃「互角の時点で十二分におかしいと思うんだけど」

もちろん、跳躍力等では追いつけるはずもなく

全てにおいて互角というわけには行かない

でも、だからこそ

大地「主に俺たちは作戦勝ちを狙うんだよ」

天乃「作戦勝ち?」

大地「そう。例えば、俺が今ここで天乃の唇を奪ったとする」

天乃「っ」

大地「ほら。お前は今体を強ばらせて唇を守ろうとしただろ?」

天乃「あっ」

大地「で、俺は本来の目的であるお前の胸を揉みしだけるわけだ」

じーっと見つめてくる大地のいやらしい視線に

天乃はビクッと体を震わせて、右手で布団をかきあげる

天乃「へ、変態っ!」

大地「やったぜ」


天乃「私は真面目に聞いてるのっ!」

大地「怒ってるのか、照れてるのか分からないけど真っ赤だぞ」

天乃「怒ってるの!」

大地「怒ってても可愛い。流石だな」

天乃「っ~~~~~!」

真面目な話をしていたのに

怒っているのに

相も変わらない兄の言動に耐えかねて

天乃が鋭く睨むと、大地は苦笑してごめんな。と、呟く

大地「お前が聞きたいことに答えるなら、最初も言ったようにイエスだ」

天乃「……私じゃ、勝てない?」

大地「勝てないとは言わないが、難しいと思うぞ。お前の場合、絶対に本気になれないだろ?」


大地の言うとおりだ

対人戦

ましてや家族との戦闘なんか、本気で出来るわけがない

天乃は勇者だ

その力には超人的なものがあるし

人間なんか骨を砕いて殺してしまいかねない

だから、本気になれるわけがなかった

大地「だから無理だな。まぁ、勝てるようにすることはできるが」

天乃「できるの?」

大地「もちろん」

そう答えて、大地は続ける

大地「今の天乃の場合、動かさなかった一般人以下の体が、勇者の力のおかげでアスリートレベルになってるだけなんだよ」

天乃「……やっぱり、衰えてるわよね」

大地「だから、基礎をアスリートレベルにして、そこから持ち上げればいい。なんなら、俺が稽古をつけてやるけど……」


1、ありがと。考えておく
2、じゃぁ。お願いしてもいい?
3、お兄ちゃんは、ちょっと


↓2


天乃「お兄ちゃんは、ちょっと」

大地「えっ」

天乃「べ、別に嫌いってわけじゃない。でも、その……」

戦技訓練とか、特訓とかをすることになったら

必然的に体が触れ合うことは多くなる

服装に関しては、九尾の力を借りる以上は勇者衣装

つまり、露出もやや多めになるわけで

天乃「恥ずかしいというか。怖いっていうか。気持ちは嬉しいし、信じられないわけでもないけど」

紅潮する頬を隠すかのように布団を持ち上げていく天乃は

口元まで覆うと、ジっと大地を見つめる

天乃「自意識過剰に聞こえるかもしれない。でも、襲われそうだから……ごめんなさい」

大地「そっか。なら仕方がないな。あははは……ははっ……はぁ」

天乃「お兄ちゃん?」

不意をついた高笑い

釣られてしまいそうな溜息

心配そうに呼んだ天乃を一瞥すると、大地はすまん。と、はにかみながら呟く

その額には汗が浮かび、大地は苦しそうに胸元を抑えていた


大地「無理なら仕方がないな。お姉ちゃんにでも稽古をつけてもらうといい」

天乃「う、うん……」

それどころではなさそうな状態なのに

大地はそう言いながら、笑う

なにかの持病なのか

それとも、間食でもして胸焼けでもしたのか

心配する天乃をよそに、

大地は椅子を蹴るようにして立ち上がると、後退る

天乃「お兄ちゃん?」

大地「っ……いや、その。なんだ」

天乃「?」

大地「俺が天乃にむしゃぶりつきたいのはいつものことなんだが」

なんだが……

なんだろうな。いつもなら葛藤するはずなのに

葛藤する相手が現れない

むしろ、思考回路の全てがゴーサインを出してくる

大地「不思議なことはあるもんだなぁ……」

天乃「お兄ちゃん?」

大地「もちろん、絶対にそんなことはしないけどな……まったく」

前に進もうとする足を無理やり下がらせて、天乃から体を遠ざける

駄目だ

ふざけるな

ありえない

そんなことがあって許されるものか

大地「俺はっ……天乃を襲うぞぉぉぉぉぉ!」


天乃「えぇっ!?」

大地「さぁこい……こい、こい、こいっ」

襲うと叫びながら、大地は微動だにしない

天乃をジッと見つめたまま

口角を釣り上げ、何かを急かすように、呟く

そして

晴海「せぇぇぇぃ!!」

ドアを蹴破るがごとく開け放ち、修羅の如き弾丸が部屋へと飛び込むと

大地「やったぜ!」

晴海「悪霊退散ッ!」

大地のうなじに蹴りを一発

大地「がっ」

体が前のめりになった瞬間

真横で姿勢を低くして一回転し、腹部に蹴りを一発

大地「ふぐあっ」

体がくの字に曲がるのと同時に、振り切った右足を上に持ち上げ、背中に全力の踵落とし

大地「ごふっ」

膝から崩れ落ちた大地の下顎に手の付け根を衝突させ、打ち上げる

大地「ぬわーっ!」

断末魔の叫びとともに壁に激突した兄は

ピクリとも動かずに、力なく頭を垂れる

晴海「……ふぅ」

天乃「お兄ちゃぁぁぁぁん!?」


天乃「や、やりすぎだよ……」

晴海「このくらいやらないと気絶しないのよ。この人」

そっけなく言い放った晴海は大地を一瞥して

天乃へと目を向ける

けが人の兄よりも、天乃を優先するのが晴海だ

もっとも、怪我の理由にもよるが

今回に限っては襲おうとした大地が悪い。と、晴海は思っていた

晴海「大丈夫?」

天乃「うん……お兄ちゃん。私のこと襲おうとはしなかったし」

晴海「襲えなかったんじゃなくて?」

天乃「そもそも、お兄ちゃんだよ? 叫べばお姉ちゃんが来ることくらい分かってるはずだよ」

晴海「……確かにね」

確かにそれはおかしい

音もなく天乃ちゃんに襲いかかって

呼び出しボタンを奪って助けを呼べなくしたあと、抵抗できない天乃ちゃんを弄ぶ

なんてことをしてもおかしくないのがお兄ちゃんのはず

なのに、わざわざ叫ぶなんて


晴海「分かった。とりあえずこれはあるべき場所に持って行くから」

晴海はそう言うと

大地の腕を掴み、ぐいっと引き上げて背中に回すと

そのまま背負って天乃に振り向く

晴海「何かありそうだったらすぐに呼び出しボタン。いいわね?」

天乃「う、うん。ありがとう」

大柄な兄を平然とおんぶして持っていく晴海を見送った天乃は

ドアが閉まった瞬間におおきく息をついて首を振る

アレに勝てる日が果たしてくるのだろうか

わずか30秒足らずで4連撃

お兄ちゃんが動かなかったとはいえ、凄まじいスピードだった

天乃「……お兄ちゃん。大丈夫かな」

ボロボロにされた兄を思いつつ

天乃は横になって布団をかぶる

天乃「ごめんね、きっと。私のせいだよね」

1日のまとめ

・  乃木園子:交流無()
・  犬吠埼風:交流無()
・  犬吠埼樹:交流無()
・  結城友奈:交流有(姉妹喧嘩、無茶しないで、見せる、耐える。お願いする)
・  東郷美森:交流有(行方不明・心霊ドっきり、引きずり下ろす、用事、許可)
・  三好夏凜:交流無()
・     九尾:交流有(力の併用)

・      死神:交流有(ドッキリ遊び)
・      稲狐:交流無()
・    夢路瞳:交流無()
・     神樹:交流無()


6月2日目終了後の結果


  乃木園子との絆 19(中々良い)
  犬吠埼風との絆 36(少し高い)
  犬吠埼樹との絆 51(高い)
  結城友奈との絆 26(中々良い)
  東郷三森との絆 31(中々良い)
  三好夏凜との絆 38(少し高い)
   夢路瞳との絆 9(普通)

     九尾との絆 28(中々良い)
      死神との絆 24(中々良い)
      稲狐との絆 20(中々良い)
      神樹との絆 -1(低い)


√ 6月3日目 朝(久遠家) ※月曜日

九尾、死神、大地、晴海、風、樹、友奈、東郷、夏凜との交流が可能です

1、九尾
2、死神
3、晴海
4、大地
5、風
6、樹
7、友奈
8、東郷
9、夏凜
0、イベントの判定

↓2


※樹、夏凜、風、東郷、友奈はメール
※判定でのみ、勇者部メンバーは来客


01~10 勇者部一同
11~20  友奈・東郷
21~30 樹・風・夏凜
31~40 樹海化
41~50 兄
51~60 姉
61~70 大赦
71~80 樹・友奈
81~90 九尾
91~00 樹海化

↓1のコンマ  


九尾「主様」

天乃「うん?」

九尾「あの変態、中々頑張っておるのう」

天乃「……そうね」

申し訳無さ過ぎて言葉もない

もともと云々という言葉も聞こえたけど

でも、それに関してはまだ平気な方だとは思う

けど……増長させられたあの状態は本当に酷い

辛そうだった、苦しそうだった

私を襲わないためだけに、あんな痛い思いまでして……

天乃「ねぇ」

九尾「?」

天乃「襲われるのって、痛いかな」

九尾「……さぁのう。きゃつが主様に何をするかによるじゃろう。ただ胸部を愛でるだけならば痛くはないじゃろう?」

天乃「そっか」

九尾「ただ、きゃつは男じゃ。交わろうとする可能性は零ではない」

天乃「そうよね」


天乃「それで? 貴女は私に何を提案するつもりなの?」

九尾「嫌な話じゃが、辛ければ稲荷の力を借りよ」

天乃「稲荷の力……?」

九尾「いかにも。きゃつには浄化する力があるからのう。少なくとも弱めることはできるはずじゃ」

九尾と稲荷はそこまで仲が良くない

稲荷の使いが狐で

自分もまた狐といことが気に入らないとかなんとかあるが

そんな自分のプライドを置き去りにして稲荷の力を勧めるほど

九尾は天乃の身を案じているのだ

九尾「まぁ、加護がなくなって主様が妾達の匂い。そう、獣臭くなって嫌われる可能性もあるが」

天乃「えっ」

九尾「嘘じゃ嘘」

ただ、問題があるとすれば

九尾・死神と天乃の繋がりが多少なりとも薄れる可能性があることだ


1、そうね。お願いしてみようかしら
2、ううん。良い。私が捌け口になればイイだけ。それでお世話のお礼にもなるだろうし、多少なら我慢するわ
3、それに関して。デメリットはないの?
4、考えておくわ


↓2


では、途中になってしまいますが、此処までとさせて頂きます
明日も同じような時間(13時頃または12時頃)からを予定しています



九尾「デメリットは、無性に米作りがしたくなることじゃな」


では、少しずつですが再開していきます


天乃「それに関して、デメリットはないの?」

九尾「ふむ。欠点を上げるのであれば、やはり。妾達との質の違いじゃろうな」

天乃「質の違い?」

九尾「浄化と聞いた際、主様は善悪どちらを想像する?」

天乃「そうね……善。かしら」

浄化する力が悪というのは

なかなか聞かない話だ

もっとも、善から見たのか悪から見たのかによってその見方は変わる

前から見た右が後ろから見れば左のように

善と悪は背中合わせで守りあっている可能性もあるわけで

九尾「反面、妾達は悪じゃ。主様ならば妾や黄泉の者の伝承を知っておるじゃろう?」

天乃「……でも、貴女に関して言えば何も悪いばかりではないはずよ」

九尾「話が進まぬ。今必要なのは妾達が悪であり、稲荷の力が善である。ということだ」

天乃「そこに異議があるんだけど?」

九尾「なぜじゃ」

天乃「今この呪いはともかく、貴女達の力は善行のためにある。それを悪と定めるのはおかしいわ」

九尾「くかかっ、ならばこう言おう。悪の力を主様が善に転換している。と」


天乃「つまり?」

九尾「妾達は害悪。ということじゃ。死を授けるきゃつ然り、人を惑わす妾も然り」

天乃「………………」

九尾「それを主様が扱うことで、最悪にはならないようになっている。ということじゃ」

簡単に言えば、黒に白を混ぜて灰色に変えているようなもの

コーヒーにミルクを入れて甘くするようなもの

九尾「その悪の代表みたいなものが、この猛毒、主様の惑わしの力あるいは、誘いの力」

天乃「……それで? そこに稲荷の力はどう作用するの?」

九尾「墨の溜まった器に水を流し込むような感じじゃな」

天乃「それって」

九尾「そう。最悪、主様から妾達の力は消え失せる」

天乃「………………」

九尾「といっても、妾達が消えるわけではない。ただ、通常の精霊と同じく。ただの補助になるだけだ」

そう。本当に

ただの精霊。ただの支援、補助、手伝いになるだけだ


天乃「本当にそれだけ?」

九尾「ああ、それだけじゃ」

無駄な口は聞かず

ただ命令に従順に

勇者を守り、勇者を縛る

ただ……それだけ

九尾「じゃから、主様が望むのならば。使うと良い」

たとえそうなったとしても

神樹の支配下に落ちるような

下等な存在になるのだとしても

九尾「案ずるな。妾達は、ずっと主様のそばにいる」

天乃「……うん」


1、使う
2、使わない
3、考えておく



↓2


天乃「ありがと。考えておくから」

九尾「うむ。それがいい」

天乃「……………」

私が使うことで悪ではなくせているのだというのなら

いま、私と私の周りを蝕むこの力だって

うまくいけば、害のない力に変えることができるかも知れない

何をどうしたらいいのかわからないし

もしかしたら出来ないのかもしれない

けど、ただ諦めて

死神や九尾の力が消え失せてしまうなんていうのは

なんだか、嫌だった

九尾「襲われる前に、導き出すのじゃぞ」

天乃「うん。わかってる」


√ 6月3日目 昼(久遠家) ※月曜日

九尾、死神、大地、晴海、風、樹、友奈、東郷、夏凜との交流が可能です

1、九尾
2、死神
3、晴海
4、大地
5、風
6、樹
7、友奈
8、東郷
9、夏凜
0、イベントの判定

↓2


※樹、夏凜、風、東郷、友奈はメール


天乃「そうだ。せっかくお兄ちゃんから端末を貰ったんだし……」

アドレス帳の中には

犬吠崎樹、犬吠崎風、お兄様、お姉ちゃん、

東郷美森、三好夏凜、結城友奈

この7人の登録しか、まだない

学校に行ってれば、友達の名前もあるのだろうけれど……

天乃「夏凜を選択して。と」

久しぶりのメール

間違えないように。と

心なしか緊張しながら新規メールを選択して、宛先が夏凜であることも確認

天乃「……さて」

あとは本文なのだが



1、端末もらったので、めーるしたよ。これで会えなくても、お話できるわね
2、本文なんていらない、写真を送るんだ
3、友奈や$東郷に変わった様子はある?
4、ねぇ。今日の夕方来てくれない?
5、ねぇ。樹について教えてくれない?
6、寂しいなぁ


↓2

2


送る写真


1、寝顔
2、笑顔
3、むくれ顔
4、泣いてるフリ
5、照れ顔
6、悪戯のために、ちょっぴりエッチなポーズ
7、制服の写真



↓2

これに関しては、>>573も連取可です


天乃「九尾」

九尾「ん? なんじゃ主様。また珍妙なことをやらかすつもりか」

天乃「ただの悪戯よ。ね? 手伝って」

九尾「それは構わぬが……」

天乃「ありがと」

天乃は端末を九尾に渡し、操作方法を軽く説明

布団の中に潜って軽く汗をかき、頬を上気させると

胸元のボタンを第三ボタンくらいまで開ける

九尾「……主様。正気か?」

天乃「うん」

九尾「いや、しかしこれは……」

天乃「大丈夫よ。ちょっと驚くくらいだって。ふざけんなって怒る可能性もあるけど」

九尾「ふむ……」

笑みを浮かべる天乃を見つめ、九尾はやれやれ。と、

聞こえない悪態をついて端末の画面に映る天乃を見つめる

横たわった体は胸部の隆起をよりはっきりと明確にし

汗で艶々した胸元は矢を吸い込む的の中心のように目を奪わせ、

額に張り付いた髪、やや不自然に垂れた前髪は妖艶で

上気し、ほんのりと赤くなった頬が体の熱を伝え、瞳を揺らがせるまるで涙のような過剰な水分は艶かしく

剥ぎ取られたかのような無造作な状態の布団はなにかいけないものを揺さぶり起こす

九尾「もういっそ襲われてしまえ。愚か者め」

九尾はそう言い捨てて、言われた通りに天乃を撮影した


天乃「ふふっ、どんな返事が返ってくるかな」

九尾「さてな。今頃、夏凜は激怒した。なんてなっているやも知れぬ」

天乃「そんな怒ることでもないでしょ」

メールを送ってから数分

期待しながら端末を胸に抱いて、天乃はおおきく息を吐く

天乃「ちょっとした悪戯なんだから」

九尾「悪戯で済めば良いのう」

天乃「え?」

九尾「あれはどう考えても、誘っておるだろうに」

天乃「誘うって、え?」

九尾「命は守るが貞操は守らんぞ」

呆れ眼の九尾を呆然と見つめていた天乃は

ハっとしたように

下から上へと急激に顔を真っ赤にして目を見開き、首を振る

天乃「わ、私そんなつもりないっ!」

九尾「知らん。主様がどう思うかではない。小娘がどう見るか。じゃ」


天乃「……か、夏凜だし」

九尾「夏凜ならやらぬ。と? どうかのう? あの娘。見栄を張るからのう……」

天乃「なにかダメなの?」

九尾「主様は小娘を挑発したようなものじゃ。どう? 私はこんな格好も見せられるのよ? なんてな」

九尾は困ったように言いつつも

どこか楽しげな笑い声を漏らして

ポンポンっと、天乃の頭を叩く

天乃「っ」

九尾「襲いに来たら拒絶するでないぞ? 挑発したのは主様じゃ。拒否権はない」

天乃「っ、だ。大丈夫よ。夏凜は優しい子だって……私は知ってるから」

そう言いながらも、不安だったし怖かった

そしてなによりも……悪戯しか頭になかったことを。後悔した

天乃「メール。帰ってこない」

九尾「返事は直接。かもしれぬな」

天乃「そうかもしれないわね……」


01~10 来客
11~20 バカじゃないの? あんた
21~30 なんてもの送ってきてんのよ!
31~40 来客
41~50 なに? 待受にしていいわけ? これ
51~60 返事なし
61~70 ……ありがと
71~80 なんてもの送ってきてんのよ!
81~90 返事なし
91~00 バカじゃないの? あんた

↓1のコンマ  


天乃「……返事。本当にない」

夏凜がまだ見てない可能性もある

メールアドレスを登録してないから

なんかの間違いメールとかと勘違いしているだけ。とか

天乃「………………」

謝りのメールを入れるべきか

それとも、変に続けるよりは

向こうからのアクションを待つべきか

悩んだ末に、天乃は端末を枕元に置く

謝ってどうする。冗談だとネタばらししてどうする

それは夏凜の気持ちを傷つけ、貞操を守るだけ

天乃「私のしたこと。だから……うん」

来るなら来て

するならして

やられるなら、やられて

天乃「良いよ。夏凜……それで傷つけずに。済むのなら」


√ 6月3日目 夕(久遠家) ※月曜日

九尾、死神、大地、晴海、風、樹、友奈、東郷との交流が可能です

1、九尾
2、死神
3、晴海
4、大地
5、風
6、樹
7、友奈
8、東郷
9、イベントの判定

↓2


※樹、風、東郷、友奈はメール
※判定でのみ、勇者部メンバーは来客
※夏凜は判定でのみ


01~10 勇者部一同
11~20 風
21~30 樹・夏凜
31~40 東郷
41~50 兄
51~60 姉
61~70 夏凜
71~80 樹
81~90 兄
91~00 夏凜

↓1のコンマ  


01~10 
11~20 暴走

21~30 
31~40 
41~50 暴走

51~60 
61~70 
71~80 暴走

81~90 
91~00 

↓1のコンマ 

空白はただの変態 


大地「昨日は悪かったな」

天乃「……ううん。良いよ」

なにかされたわけじゃない

意図的ではないにしても

何かをしてしまったのは私

そして……謝るべきなのは私の方だ

天乃「お兄ちゃんは平気なの? というより、よく平気だったね」

大地「そりゃぁ、急所は的確に避けたし。受身も取ったし」

天乃「受身なんて取れてないよね、絶対」

急所を躱すのはともかく

うなじへの一撃、腹部への一撃、背中への一撃、下顎への一撃

どれもこれも受身なんて取れるものじゃない

大地「はははっ。そうだな」

天乃「それで。平気なの?」

大地「平気じゃない姿をお前に見せに来るかよ。へいきだから、来たんだ」


そう言いながらも

笑う姿はどこかぎこちない

いつものように、椅子に座ろうとしない

天乃「背中、痛いの?」

大地「いや、そんなことは」

天乃「そっか」

大地「どうだ? メールしてみたか?」

天乃「うん……まぁ。してみた」

いたずらに使って

その返事は未だに返ってきてない

なんて言えなくて

天乃は少し沈んだ声でそう返して、大地を見つめる

大地「どうした?」



1、椅子に座らないの?
2、ねぇ、我慢は辛い?
3、お兄ちゃんが変な気持ちになるのは私のせいだよね
4、端末、ありがとね。これでみんなといつもお話ができる
5、ねぇ。私にしたいことをしてもいいよって言ったら。お兄ちゃん。する?


↓2


天乃「お兄ちゃんが変な気持ちになるのは、私のせいだよね」

大地「そりゃ、なぁ。お前のこと好きだし」

天乃「……そうだけどそうじゃない」

大地の満面の笑みに

天乃は困った表情で呟く

もともと好いていてくれていることは

嫌なほどに分かり切っている

でも、そうじゃない

優しい愛情じゃなくて

もっとこう。荒々しい愛情

性的にどうにかしてしまいたいというような気持ち

天乃が聞きたいのはそこだった

天乃「私の体に、その。なんていうか」

大地「そうだな。多分、お前が聞きたい変な気持ちを俺は抱いてるし、今もしたいと思ってるよ」

天乃「っ」

大地「お前がナイスボデーのせいだからかな」

はははっと、大地は冗談めかして笑う

でも、冗談じゃない。冗談じゃないんだよ。お兄ちゃん


大地「昨日はなんかもう、凄くてな。思わず成敗マンを呼んだんだよ」

天乃「…………」

大地「いやー、痛々しいというか血生臭い過激な戦闘シーンを見せて悪かったな。はっはっはっはっ」

天乃「……………」

お兄ちゃんは冗談にしようとしてる

全部一時の気の迷いにしようとしてる

私のせいだと分かってないからかもしれないけれど

全部自分のせいにしようとしてる

大地「でも、今は平気だ。安心しろと言えた立場ではないが」

天乃「お兄ちゃん」

大地「これだけは言うが。不可解だからと、お前のせいにするつもりはないよ」

葛藤することさえできなかったとか

行け、行け! やれ、やってしまえ!

早く、早く、早く!

そんな催促しか思考回路が働かなかったとか

明らかに頂上的な力が加わっていても、大地は天乃に責任を取らせるつもりはなかった


天乃「………………」

辛くないのだろうか

苦しくないのだろうか

私と一緒にいるだけで

どんどん欲が溜まっていく、深まっていく、高まっていく

天乃「ねぇ、お兄ちゃん」

大地「ん?」

天乃「昨日ほどじゃないにしても、今もその。気持ちがあるんだよね?」

大地「掘り返すなよ」

天乃「おにいちゃ」

大地「下手なこと聞くなって。な? 後戻り出来なくなっても知らないぞ」

大地は困ったように笑いながら

天乃の言葉を遮り続ける

昨日の今日で、過ちを繰り返すなんてことはしたくなかったのだ


1、良いよ。後戻り出来なくなっても
2、ごめんね。それ。私が勇者の代償として持ってる魅惑の力のせいなんだ
3、ねぇ。辛い?
4、……じゃぁ、ここに来たのはただ謝るためだけ?
5、何も言わない


↓2


天乃「ごめんね?」

大地「なにが?」

天乃「それ。私が勇者の代償として持ってる魅惑の力のせいなんだ」

大地「魅惑の力……?」

良くわからないといった感じの大地に

天乃は九尾から聞かされたその力。その呪いについてを話す

天乃「だから、お兄ちゃんが私を好きであればあるほど。したくなる」

大地「……そうか」

超常的な何かがあることはわかってた

それが天乃関係であることもわかっていた

だから、大地は驚くことなく

ただ、少しばかり悲しそうに。言う

大地「お前が怖いって言ったのはそういう事だったんだな」

天乃「うん」

大地「確かに危ないよな。危険だよな。怖いよな。俺だって……抑えきれなかったらどうしようって怖いんだから」


今も頭の中はじわじわと冒されて、

天乃に対する欲望を抑えきれなくなりそうで

してはいけない事をしてしまいそうで

大地「部屋を出ないといけない。そう思ってるのに、出たがらないんだよ」

天乃「……………」

大地「話なんか端末でいいだろ。声なんて聞こえないんだから。いや、そもそも。なんで端末を渡したんだよ。俺は」

極力接触を避けるためだ

怖かった。嫌だった

取り返しのつかないことをしてしまいそうな自分が

育まれてきたこの愛情が、よからぬ欲望へと昇華されてしまうことが

大地「なぁ、天乃」

天乃「なに?」

大地「押し倒しても。いいか?」

天乃「………………」


1、良いよ
2、ダメだよ
3、それだけでいいの? もっとしてもいいよ
4、稲荷……っ、お願い


↓2


天乃「ダメだよ」

大地「……そう。か」

天乃「ごめんね」

大地「いや、いい」

押し倒していい? なんて聞く時点で間違ってるんだ

そんなこと聞くことなく、押し倒してしまえばいい

相手は右手しか動かせない

両足を抑えることも、左腕を抑える必要もない

呼び出すボタンを奪って、口を塞いで、右腕を押さえれば

ほら、あとは自由に出来るじゃないか

大地「んー……っ、よっと!」

つま先を上げ、体の重心を後ろに下げ

耐え切れなくなった体は後転して天乃から遠ざかる

天乃「お、お兄ちゃん?」

大地「可愛い声で呼ぶな。襲うぞ」

天乃「っ」

大地「怯えた顔するな。襲うぞ」

天乃「無茶言わないでよ……」


大地「あんまり見つめるな。襲うぞ」

天乃「そんなこと言われたって」

大地「隙を見せるな。襲うぞ」

大地はそれがまるで口癖のように言い続ける

それくらいに、危うかった。限界だった

でも、

大地は後ろ手にドアを開くとそのまま重心を後ろに傾けて、ドアの向こうに消えていく

天乃「おに」

ドアがひとりでに閉まって、天乃だけが取り残されて

もともと何も聞こえない天乃の聴覚だけでなく、視覚にも静寂を与える空気は

心なしかひんやりと冷たかった

天乃「……………」

大地が消えて数分、携帯端末が震えると

大地から『ごめんな。危ないから戻る』と、メールが来ていた

天乃「……私こそ。ごめんね」

夏凜からの返信は――来なかった


√ 6月3日目 夜(久遠家) ※月曜日

九尾、死神、大地、晴海、風、樹、友奈、東郷、夏凜との交流が可能です

1、九尾
2、死神
3、晴海
4、大地
5、風
6、樹
7、友奈
8、東郷
9、夏凜
0、イベントの判定

↓2


※樹、夏凜、風、東郷、友奈はメール


01~10 風
11~20 友奈
21~30 東郷
31~40 稲荷
41~50 夏凜
51~60 死神
61~70 樹
71~80 兄
81~90 九尾
91~00 姉

↓1のコンマ

※夏凜は奇数でメール 偶数で来室
※兄は偶数でメール 奇数で来室 


天乃「あら……メール?」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

こんばんは。樹です

友奈さんからメールアドレスを教えてもらえたので、メールしました

寝てるのにマナーモードの振動で起こしちゃってたら、ごめんなさい

返事は明日の朝とかお昼とかでも。全然構わないです

えーっとですね

最近、会いに行けずごめんなさい

色々とやりたいことがあって、終わらせたいことがあって

だから、今も頑張ってみてます

不格好かも知れない。下手かも知れない。それでも、ちゃんと終わらせて

そしたら、久遠さんに会いに行こうかなと。思ってます

それまで待っててくださいね。私も我慢しますから

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


天乃「樹……」

メールを読み終えた天乃は、ふっと息を吐いて軽く首を振る

否定するわけではなく、

思考を混ざり合わせるために

天乃「頑張るのは良いけど、頑張りすぎはよくないと思うの」

自分が言えた立場でもないだろうけど。と

天乃は冗談半分に呟いた


天乃「それにしても、樹の終わらせたいことってなんなのかしら」

何かを作ってる。というのが一番ありえそうなことだけど

不格好・下手と聞きつつ、姉の事を考えると

朝起きるの次は、料理が出来るようになりたいのかな

天乃「樹の手料理ねぇ……」

誰の料理を食べても味は変わらない

常に無味

温かさと、冷たさを感じるし、なんとなくだけど愛情を感じることもできる

でも、おいしいのか美味しくないのかだけは、どう頑張っても分からない

天乃「食べてみたいなって、思うけど……食べたいな。なんて口が裂けても言えない」

食べても意味がない

美味しいと言ってあげられない

事実がどうであれ、天乃の感想は嘘でしかないからだ

天乃「……返事。どうしようかしら」



1、ねぇ、それが出来たら見せてくれるの? できたら見せて欲しいわ
2、そっか……不格好でも下手でも。相手に思いは伝わるはずよ。頑張って
3、会いたいなー寂しいなー
4、写真を送る
5、ねぇ樹……もしかしてだけど。変なことしないように。我慢してるの?
6、待機


↓2


天乃「………………えい。えいっ」

タタタッと

素早く言葉を入力して送信

別に悪戯ではなく

結構毎日来てくれていたのになー

急に風のために何かするようになっちゃうなんてなー

妬いちゃうなー

なんて、ちょっぴり子供っぽい思いを凝縮した

会いたい。寂しい

このたった二言を送っただけだ

天乃「……樹は我慢してるって。書いてたけど」

本当に我慢してるのだろうか

お世辞みたいなものなんじゃないだろうか

天乃「……って、なんで私。こんな不安になってるの?」

頭を振って、胸元に手を当てて、深呼吸

いつまでたっても静かな部屋

可愛らしい笑顔は、いつ。この部屋に来るのだろう


しばらくすると、

樹からは普通に返事が返ってきた


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

そなこと言わないでください

困りmす。間違ったらダメんです

私さき我慢してるってイったじゃないですか

それなのに、久遠さんはそうやって狡いです

愛に行っちゃったらどうするんですか

間に合わなかったらどうするんですか

責任とってくれますか?

取って貰えるなら……なんて、冗談です

メールだと、会っている時よりも冗談が言いにくいです

きっと、久遠さんもちょっとふざあけた気持ちで送ってきたんですよね

メールだと、冗談だってついてないと、本当に思ってるみたいに思えます

だから、嬉しいです

おやすみなさい、久遠さん

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


天乃「……本気にしなかったんだ」

良かったのか

悪かったのか

あやふやなため息をついて、天乃は目を瞑る

天乃「お休みって言われたあと、お休みって返すべきなのかしら」

寝ようとしていたのに、バイブが震えたり、着信音がなったら迷惑じゃないだろうか

そう考えた天乃は

すぐに返せば平気なんじゃないかな。と

おやすみ。と、送り返して、端末を枕元に落とした

1日のまとめ

・  乃木園子:交流無()
・  犬吠埼風:交流無()
・  犬吠埼樹:交流有(会いたい)
・  結城友奈:交流無()
・  東郷美森:交流無()
・  三好夏凜:交流有(えっちな写真)
・     九尾:交流有(稲荷の力)

・      死神:交流無()
・      稲狐:交流無()
・    夢路瞳:交流無()
・     神樹:交流無()


6月3日目終了後の結果


  乃木園子との絆 19(中々良い)
  犬吠埼風との絆 36(少し高い)
  犬吠埼樹との絆 53(高い)
  結城友奈との絆 26(中々良い)
  東郷三森との絆 31(少し良い)
  三好夏凜との絆 ×(少し高い)
   夢路瞳との絆 9(普通)

     九尾との絆 29(中々良い)
      死神との絆 24(中々良い)
      稲狐との絆 20(中々良い)
      神樹との絆 -1(低い)


√ 6月4日目 朝(久遠家) ※火曜日


01~10 メール

11~20 
21~30 
31~40 本人

41~50 
51~60 
61~70 本人

71~80 
81~90 
91~00 メール


↓1のコンマ  


奇数偶数の条件設定を忘れてたのでもう一度

メール内容


01~10 暴 
11~20 怒
21~30 惑
31~40 礼
41~50 壊
51~60 怒
61~70 暴
71~80 礼
81~90 惑
91~00 怒

↓1のコンマ  


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

あんたなんて写真送ってきてんのよ!

バカじゃないの!?

食べてる時に見てたら大変なことになってたわよ!

金輪際あんなメール送ってくるな!

誰かに見られでもしたら大変なことになるんだから!

確かに、会いに行かなかったのは悪いと思うけど

だからってあれはないでしょうが!

メールじゃ怒鳴っても仕方ない

夕方行くから、行って改めて言わせてもらう。良い?

逃げんじゃないわよ?



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


天乃「……メールはここで途切れている」

ゲーム調につぶやいて、苦笑する

このあと何かを書いたはいいものの

やっぱりやめたと消したは良いけど消し残してしまった。らしい


なにを続けようとしたんだろうか

それに。それか。そして。そんなに。それとも。そこまで……

そから始まる言葉を頭の中で羅列して、思考をシャットダウン

夕方に会いに行くと言ってるんだから

気になるならそこで聞けばいい

天乃「それにしても、やっぱり怒っちゃったか」

何か変なことになると考えていた天乃にとって

夏凜らしさのあるお怒りメールは

安心するとともに、嬉しかった

天乃「ふふっ、ごめんね。夏凜」



1、うん。楽しみにしてる
2、ごめんね、ありがとう
3、写真はどうしたの?
4、そんなに怒らないで
5、冗談のつもりだったんだけどなー



↓2


天乃「うん。楽しみにしてる」

つんけん夏凜

つんでれ夏凜

会える時は会えるけど、あんまり会いに来てくれない夏凜が

理由はどうであれ、会いに行くと言ってくれたのだ

天乃「ふふっ」

メールを送って、端末をぎゅーっと抱きしめる

メールができる

それだけで、話が多くできるようになる。多く交流できるようになる

その嬉しさに、天乃は口元を綻ばせて

夕方を待ち望んで、どんよりとした曇り空を見つめる

天乃「送り迎えしてくれるだろうけど……大丈夫なのかな」

外は今すぐにでも――

天乃「っ」

ブルブルと体を震わせる端末のバイブ

画面を見ると、新着メールが1件。届いていた


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

怒られるのを楽しみにしてるなんて

そんな変なやつだっけ。あんた。本当に馬鹿なんじゃないの?

迂闊に近づくべきじゃなさそうね。何されるかわからないし。ともかく

必ず行くから、変なこと言わず、せず、ただ待ってなさい

もし、次変なメール送ったら怒るだけじゃ済まないわよ。とにかく

写真に関して、しっかりと話をさせてもらうわ。近くに行ったら

連絡入れるから

なにもおもてなしとか。そう、東郷にやった

居なくなってるドッキリとか絶対にするな。いいわね絶対よ↓→

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


天乃「あらっ、話しちゃったのねあの子」

居なくなってるドッキリというか、行方不明ドッキリだけど

夏凜は多分、これとかに関しても

あんまりやりすぎるなって怒るんでしょうね

天乃「夕方になったら、たくさん怒られちゃうのね」

声は聞こえないけれど

きっと、賑やかな表情が、この部屋で見られるのだろう

そう思うと

怒られるのも悪くないかな。と、天乃は嬉しそうに笑った


√ 6月4日目 昼(久遠家) ※火曜日

九尾、死神、大地、晴海、風、樹、友奈、東郷、夏凜との交流が可能です

1、九尾
2、死神
3、晴海
4、大地
5、風
6、樹
7、友奈
8、東郷
9、夏凜
0、イベントの判定

↓2


※樹、夏凜、風、東郷、友奈はメール


連続になってしまうので、↓1で

6


樹にメール


1、夏凜が会いに来てくれるらしいけど、貴女は来ないの?
2、ねぇ、夏凜はどう? すごく怒ってる?
3、授業は寝れずに受けられてるかしら?
4、こんなマッタリしてると、戦いを忘れちゃいそうよね
5、不格好でも下手でも。相手に思いは伝わるはずよ。頑張って


↓2

>>655も取得可能安価  


天乃「ここはやっぱり、一緒に暮らしてる樹に探りを入れておくべきよね」

怒られるにしても

会いに来てくれるから嬉しいは嬉しいけれど

ものすごく怒っているのなら、話は別だ

悪戯しておいて――とは思うけど。本気の本気で怒る怖い夏凜は出切れば避けたかった

天乃「ね、ぇ……夏凜は。どう。すごく、怒ってる? ……っと」

文章を打ち込み、

メールが送信されたのを見送って一息

天乃「…………………」

ドキドキする

通知表を手渡される前の

周りの喜哀の声が響く教室で、ただ宣告を待つだけだった頃を思い出して、苦笑する

天乃「あの頃は……色々酷かったっけ」

勇者のお役目と学業の両立

すごく、大変だった覚えがある

そんな風に思いを馳せていると、メールが返ってきた


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

夏凜さんになにかしたんですか……?

でも、夏凜さんは怒ってるような感じは全然しなかったですよ

むしろ

嬉しそうというか、幸せそうというか

今日は良い事あったから一日中幸せ。みたいな雰囲気でした

声とか態度に無理してるような感じはなかったですし

お姉ちゃんは「今日の夏凜はなんか気色悪い」って言ってましたけど

私は特には

とにかくですね

夏凜さんが怒ってるなんてことは、多分ないと思いますよ

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


天乃「……うん?」

あれだけメールで怒る怒ると言っていたのに

蓋を開けてみれば嬉しそう。なんて

本当はただの冗談だとわかってたのかしら?

別に怒ってるわけじゃないけど、せっかくだし

それを理由に会いに行こう……みたいな

天乃「夏凜ならありえなくはないかも」


果たして、一体どう言うことなのだろうか

怒りに行くという夏凜

怒ってないという樹

どっちが間違えているのだろうか

もっとも

夏凜の場合間違えている。というよりは

さっき天乃が考えたようにただそれを理由としただけかもしれないが

天乃「嬉しそう。か」

そんなに私に会いたかったのかしら。なんて

考えた天乃は頬を赤くして、首を振る

天乃「な、なんで照れるの。なんで照れるの!」

友達が会いに来るのなんて普通だ

嬉しいけど、すごく嬉しいけど……自分のあんなちょっぴりえっちなものを見せてしまったからか

天野はなんだか無性に恥ずかしさを感じて、布団の中に身を隠す

天乃「なんで、あんな写真送っちゃったんだろう……」



1、樹にメールを返す
2、夏凜が本当に怒ってるのか。メールを読み返してみる
3、悩んだら寝る


↓2


返信



1、夏凜にちょっとえっちなポーズの写真を送ったの
2、そっか。ありがとうね
3、ところで、やりたいことは順調? 風に見せる前に私に見せてくれてもいいのよ?
4、昨日いい忘れたけど、不格好でも下手でも。相手に思いは伝わるはずよ。頑張って
5、夏凜が会いに来るのよ。貴女もどう?
6、これだけ平和だと、後が怖いわね


↓2


天乃「流石に、樹にその写真は送れないけど」

一応、なにしたかは話しておこうかな。と

天乃は樹からのお怒りも覚悟してメールを打つ

夏凜にちょっとえっちなポーズというか

大胆な姿というか

そういう写真を送ってみたの

もちろん、いたずらのつもりだったんだけど。と

ついでのようにいいわけを付属して送る

天乃「………………」

何してるんだろう……久遠さんは

なんて、

呆れてる樹の姿が頭に浮かんで、苦笑する

天乃「まったくよ。本当に何やってるんだか」

自分で自分に怒ってみる

当然、意味なんてなくてちょっぴり。寂しさが増した


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

久遠さんは悪戯を頑張りすぎてませんか?

そんな気はなくて、

ただ、楽しんでるだけかもしれませんが

もう少し、

久遠さんは自分の警戒心のなさを見つめ直すべきだと思います!

東郷先輩にしたことだってそうです

東郷先輩だから何もなかったんです

あのお兄さんや私のお姉ちゃんだったら、その冗談に乗っかって

久遠さんにちょっとエッチなことをしていたかもしれません

もしかしたら私だって、

見えないからってわざと触っていたかもしれません

襲おうとしたことがあることを話した以上、

私が隠しても意味がないのではっきり言わせてもらいます

私は久遠さんがどんな写真を夏凜さんに送ったのか知りません

でも

久遠さんからちょっとエッチな写真が送られてきたら

そういうことしても良いのかなって……勘違いすると思います

長くなりましたが、あんまり無警戒になりすぎないでください

PS.

これから授業なので、返信はできません

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


天乃「……長い。というか、ごめんなさい」

天乃はそう呟くと

樹のメールをもう一度読み直して、ため息をつく

確かに警戒心が足りない

天乃にとって樹たちは親友、友人、家族

つまるところ、仲のいい存在だ

だから、ある程度ハメを外したことをしてしまうのかもしれない

しかし、やりすぎているのだ。色々な意味で

天乃「樹、本気で怒ってない……? これ」

怒ってると言いつつ怒っていなかった夏凜の感情は読み損ねたが

これは確実に怒ってる。と天乃には確信できた

そして、

その樹に指摘された警戒心のなさ

それを身を持って天乃は知ることに――なるのだろう


√ 6月4日目 夕(久遠家) ※火曜日


夏凜からのメール

『もうすぐつくわ。いわれたとおりにしてなさいよ』

天乃「もうすぐ来るのね」


1、メールを返す
2、約束を忘れて寝ているふり
3、秘技。隠密霧隠れ
4、おとなしく待つ



↓2


天乃「言われたとおり……なんて」

天乃がするわけがない

天乃はクスッと笑うと

布団の中に体を沈め、端末を枕元に置くと

一定のリズムを刻む穏やかな呼吸を始める

寝ているのではなく、寝たふりだ

もうすぐ。というのがどれくらいか分からないが

車の到着を知らせるエンジン音も、夏凜の近づく足音も

何も聞くことができない天乃には

今から始める必要があったのだ

天乃「……まだかしら」

ドアをジッと見つめ、開くのを待つ

せっかく会いに来たのに

寝ていたらどんな反応をするのだろうか

怒るだろうか、呆れるだろうか

それとも……見守っていてくれるだろうか


怒ったら、ごめんなさいと言おう

呆れてたら、笑って誤魔化そう

ただ、黙って見守ってくれたら

天乃「……………そうね」

少し大変だけど、バレないように薄目を開けて

夏凜のちょっとした独り言を期待するのもいいし

夏凜の珍しく穏やかな表情を見て、満足げに笑うのも良い

あとは

あとは、そうだ

天乃「ありがとうって……言う」

約束してたのに

なのに寝ている私を怒ることも起こすこともなく

ただ、見守ってくれる優しさにありがとうって

天乃「!」

ドアがゆっくりと開いていくのに気づき、天乃は咄嗟に薄目にして

夏凜「ん……なんだ、言われた通りにしてなかったんだ」

夏凜の姿と一言目を目にする


夏凜が近づいてくる

その姿を確認した天乃は仕方がなく目を瞑る

離れていれば薄目でもバレないだろう

でも、距離が近いとなるとそうはいかない

天乃「……すぅ……すぅ」

寝息を立てて、部屋の匂いを嗅ぐ

夏凜の匂いと気配がだんだんと近づいてくる

そして

天乃「っ」

椅子に座るのかと思えば、ベッドが軽く軋み

すぐ近くで、夏凜の匂いがした

天乃「ん……すぅ……すぅ……」

寝たふりかどうか、疑っているのだろうか

せめて椅子に座ってくれるまでは耐えきろう

そう決めた瞬間

天乃「んぐっ」

口に柔らかい感触が触れて――呼吸が止まった


天乃「っ……夏凜」

その感触はすぐに離れ、呼吸ができるようにはなったものの

流石に寝た振りは続けられない。と

天乃は目を見開いて目の前の夏凜を見つめる

天乃「なんで……」

夏凜「そんなの、我慢できないからよ」

夏凜は天乃の唯一動く右手を右手で押さえ込むと

余った左手の親指を天乃の口端に差込み、上下の歯の間で留める

天乃「ひゃひん……」

夏凜「あんたの望み通り、色んな事してあげる」

天乃「っ」

夏凜「して欲しいから、あんな写真。送ってきたんでしょ?」

夏凜はそう言いながら、笑う

笑っているのに……それはなんだか、辛そうで

夏凜「……………………」

私の精一杯の伝言は分からなかったか

やだな……こんなの

でも、頭の中はやっちゃえとしか――言ってくれないのよね

天乃「んんっ」

夏凜「っ」

夏凜は天乃の口から親指を引き抜いた瞬間

唇を重ねて、塞いだ


では、今日はここまでとさせていただきます
明日は諸事情でできないかと思いますが、できそうならなんとかやります



九尾「押すでないぞ。押すでないぞ! 肉球が濡れる! 絶対お――」

死神「エイッ」

ドン――ぼちゃっ

九尾「きゃいんっきゃいんっ」


では、今日は進めていこうかと思います


天乃「んっ、ふぁ……ぅ……」

夏凜「……………」

何をしているんだろうとか

止めた方が良いんじゃないかとか

そういった抗議的な思考は夏凜の脳裏には浮かばない

ただただ、求め、欲し、願い、奪う

もっと、もっと……もっと欲しい。と

天乃「っぅ……」

親しき少女の悲嘆の涙さえも愛おしく

その口に含む

夏凜「……なんで嫌そうな顔してんのよ」

天乃「っ」

夏凜「あんたが求めたくせに。なによ。私じゃ嫌だって言うの?」

言いたいことはそうじゃない

したいことはそれじゃない

でも、どうして。なんで……体が、心が

天乃のことを求めて止まない


夏凜はその思いとは裏腹に

天乃の口元を押し広げ、飲み込めない唾液を垂れ流させる

夏凜「そんな理不尽なことって許される? そんな、実はドッキリでした。みたいなことが許される?」

天乃「んんぅ……」

夏凜「冗談だ。なんて言ったら私。あんたが嫌がることを全力でするわ」

天乃「っんぁ!」

夏凜は天乃の口の中に人差し指と親指を突っ込み

舌を摘んで引き出す

夏凜「だって、私が嫌なことをされたんだから。私の思いを踏みにじられたんだから」

――踏みにじってるのは誰だ

天乃「ぁー……」

夏凜「なによ。また泣くの? 泣くほど嫌なの? そう。じゃぁ、私に送ったあれはあんたの悪戯で。弄んだってことか」

――泣かれるほど嫌なことをしてるのは誰だ

天乃「……………」

夏凜「だったら、今度は私があんたを弄んだって良いわよね?」



1、本当にしたい? 本当にしたいなら……受け入れるわ
2、止めて、ごめんなさい
3、九尾を呼ぶ
4、何もしない(コンマ判定 コンマが外れた場合は蹂躙されます)


↓2


01~10 樹
11~20 
21~30 風
31~40 姉
41~50 友奈
51~60 
61~70 樹
71~80 
81~90 兄
91~00 ばてくす

↓1のコンマ  


夏凜「沈黙は肯定。それでいいわね」

天乃「っ……」

夏凜「その一滴は、拭わせない」

天乃の頬を伝う涙一滴

拭おうとした左手を、夏凜は精一杯の力で押し留める

泣かせたことをかき消すな

その涙をなかったことにするな

今目の前で辛い思い、嫌な思い、悲しい思いをしている少女の

絶望に満ちたその表情を、焼き付けろ

どうしようもないのなら、

どうにもならないほどに、砕け散ってしまえ

もう二度と、こんなことをしないように

もう二度と、そんな思いを抱かないように

夏凜の抵抗心は、自分自身の心に深く牙を突き立てて、消えていく

そしてポッカリと空いた穴を埋めるかのように

夏凜「まだ時間はある。夜まで……可能なら朝まで。あんたのことを弄ばさせて貰うわ」

天乃「っ……」

夏凜はそう告げて、何度も。なんども……天乃の唇を奪った


√ 6月4日目 夜(久遠家) ※火曜日

01~10 
11~20 夏凜残留
21~30 
31~40 姉
41~50 
51~60 兄
61~70 
71~80 樹
81~90 
91~00 九尾

↓1のコンマ  


√ 6月4日目 夜(久遠家) ※火曜日

九尾、死神、大地、晴海、風、樹、友奈、東郷との交流が可能です

1、九尾
2、死神
3、晴海
4、大地
5、風
6、樹
7、友奈
8、東郷
9、イベントの判定
0、何もしない

↓2


※樹、風、東郷、友奈はメール


01~10 友奈 
11~20 東郷
21~30 風
31~40 樹
41~50 兄
51~60 九尾
61~70 死神
71~80 樹
81~90 九尾
91~00 姉

↓1のコンマ  


無機質な端末の振動

暗い部屋にパッとついた人工の光

天乃「………………」

少女は感情の不確かな瞳で端末に表示されるアイコンを選択し

届いたメールの差出人を確認する


from:犬吠崎樹


天乃「……樹」

表示された名前は

悩みを唯一打ち明けられる家族に最も近しい他人

端末を握り締める

手が震える

自業自得だと分かっていても

自らが引き起こしたほんの数時間の蹂躙は

桶に穴を開ける硫酸のように、ただただ。両者の心に穴を開けただけだったのだ

天乃「樹っ……」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

こんばんは、久遠さん!

あとちょっとでなんとか完成しそうです

あと何日かしたら絶対に久遠さんに見せてあげます

ちょっとがっかりというか

残念な気持ちになるかもしれませんが……なんて

えへへっ、ハードル下がったかな


冗談です


絶対に、見せます

誰よりも先に、まずは久遠さんに見て欲しいから

あとちょっとだけ。待っててくださいね

ファイト、おーっ! です

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

天乃「あはは……っ」

楽しそうな文章だ。幸せそうな文章だ

温かそうな文章だ

天乃「ぐすっ」

言えない

言えないよね……どうせ、自業自得なんだから

自分の失態で起きた損害で悩ませたりなんだりなんて

していい分け……ないよね


では、此処までとさせて頂きます
明日も普通にやる予定です


九尾達の呪いによる効果ですが
目安としては大体、2倍程度になっている感じになります

つまり、
夏凜の場合、公開時で絆値38ですので
毒気にやられてる時は76±yっていう感じになっていた感じです

※誤差はあります


では、少しずつ進めていこうかとおもいます


夏凜としたのはキスだけだった

でも、それだけだったとしても

家に来てから帰るまでの数時間

ずっとずっと……キスだけだった

それを幸と言うか不幸と言うかは本人次第だが

それは幸せとは、言いにくいものだった

天乃「樹……私、私……っ」

抱きしめてるのは端末だ

機械の稼動熱による熱さしかない

優しくない、柔らかくもない

天乃「………………」

そばにいて欲しい。その言葉ですら

自分が発したらただの誘い。誘惑、魅了でしかないのではないのだろうか。と

天乃は端末を抱きしめ、唇を噛み締める

染み付いた夏凜の味がした



1、メールは送らない
2、そう。楽しみにしてるわね
3、あら。風には見せなくていいの?
4、会いたい。会いたいわ。お願い。会いたいの
5、どうしよう……私。夏凜にキスさせちゃった。馬鹿な悪戯で、キスされちゃった


↓2


天乃「……これは。相談なんて」

自分の体の不自由はみんなが知ってる

それが代償であることは東郷も知っている

でも

風や東郷たちに罪悪感を抱かせかねない味覚の消失は

樹だけしか、しらない

記憶がないことだって……

でも

自業自得の不幸は――相談なんてできなかった


――そう。楽しみにしてるわね ――


天乃は樹にメールを送ると

端末を抱きしめるようにして、目を瞑ろうとして首を振る

天乃「っ」

目を瞑るのが怖くなった

音が聞こえず、目にも見えないという無の時間が

天乃の心についた傷を撫でて刺激する


良いのか?

耳が聞こえないのに

目を瞑って、見えなくなってしまっても

誰かがそこにいるかも知れない

誰かが部屋に入ってくるかも知れない

大騒ぎで【こんなところに良い人形がある】と、喜んでいるかもしれない

天乃「っ……うるさい、止めてっ」

そんなことないと分かっていても

優しい夏凜なら

あの、夏凜なら

そう信じ、思っていた気持ちが踏みにじられた天乃にとっては

ありえないなんてことは、もはやあり得なかった

どれほど小さな確率しかない不幸でも

あり得ると。思わずにはいられなかった

そんな無の時間

ヴーヴーッと端末のバイブが震えて

天乃「ッ!」

天乃は思わず、体をビクつかせながら新着のメッセージを開いた


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

はい!

ぁ、でもですね!

そこまで期待しなくてもいいですよ!

期待してもらえるというか、楽しみにしてもらえるのはすごく嬉しいけど

あんまりそうされると困っちゃうというか

……えへへ。我儘ですね

そんなこと言う暇あったらそれに応えられるくらい頑張れ!

お姉ちゃんだったら、きっとそう言うかと思います

なので

私もあとわずかだけど、頑張って

少しでもその期待に答えられるよう、頑張りますね

おやすみなさい、久遠さん

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

天乃「………………」

期待

何を期待しているのだろうか

楽しみにしてる。そう打った時の自分の感情は

果たして、本当にそんなものだったのだろうか

いや、断じて違う

何も期待していなかった。なにも楽しんでいないし喜んでいなければ嬉しくもない

無感情に、無機質に

当たり障りのない反応という一覧から定型文を引用したに過ぎない

天乃「ごめんね、ごめんね樹……貴女に。私は嘘をついた」

積み重なる負はあまりにも綺麗に、そしてあまりにも脆く積み重なっていく

1日のまとめ

・  乃木園子:交流無()
・  犬吠埼風:交流無()
・  犬吠埼樹:交流有(夏凜は?、夏凜へのメール、見せたいもの、楽しみに)
・  結城友奈:交流無()
・  東郷美森:交流無()
・  三好夏凜:交流有(お怒りメール、楽しみに、蹂躙)
・     九尾:交流無()

・      死神:交流無()
・      稲狐:交流無()
・    夢路瞳:交流無()
・     神樹:交流無()


6月4日目終了後の結果


  乃木園子との絆 19(中々良い)
  犬吠埼風との絆 36(少し高い)
  犬吠埼樹との絆 56(高い)
  結城友奈との絆 26(中々良い)
  東郷三森との絆 31(少し良い)
  三好夏凜との絆 ×(暴走しました)
   夢路瞳との絆 9(普通)

     九尾との絆 29(中々良い)
      死神との絆 24(中々良い)
      稲狐との絆 20(中々良い)
      神樹との絆 -1(低い)


√ 6月5日目 朝(久遠家) ※水曜日



01~10 
11~20 兄
21~30 
31~40 死神
41~50 
51~60 樹
61~70 
71~80 夏凜
81~90 
91~00 風

↓1のコンマ  

※現在、天乃に行動選択の気力はありません

※空白の場合は九尾です


死神「クオンサン」

天乃「……死神」

死神「ネ、ナキャ。ダメ。ワタシ、イルカラ。ズットココデミテルカラ。ダカラ……」

天乃「お兄ちゃんが来たらどうするの? お兄ちゃんには貴方じゃ勝てないのに」

死神「ソレハ」

どうしようもない

蹴り飛ばした晴海よりも

兄、久遠大地は能力的に上。それが事実であるとするのなら

死神には、止めることは不可能だ

天乃「それに、どうせなら。昨日出てきて欲しかった」

死神「ゴメンナサイ」

天乃「いいのよ。別に。八つ当たりするつもりなんてない。全部私が悪い。ただそれだけだから」

天乃は笑って見せようとして

口元がただ引き攣るだけなのを感じて首を振る

天乃「ほんと、平気だから」

死神「クオンサン……」


目を瞑れなくなって

寝ることが出来なくなって

安心することができなくなって

笑うことすらできなくなって

何が平気だというのか

何が大丈夫だというのか

天乃「自業自得だから、仕方がないの」

死神「デモ」

天乃「私はこの能力を知ってた。なのに、甘く見て楽しもうとした」

だから、平気であるべきだ

だから、大丈夫であるべきだ

自分自身にそう言い聞かせながら

天乃は死神を見つめた


1、どうして昨日。出てこれなかったの?
2、夏凜はもう。満足したのかな
3、ねぇ。貴方も私を弄びたい?
4、夏凜はね。すごく、悲しそうな顔をしていたのよ


↓2


天乃「夏凜はね。すごく、悲しそうな顔をしていたのよ」

天乃の涙を啜い、涙が枯れても

指についた唾液、顎に伝う唾液を啜っても

天乃の唇を奪い、口腔の酸素を奪い去っても

三好夏凜は満たされていなかった

それを簡潔に言い表した天乃の一言を

死神は黙って飲み込み。頷く

死神「キュウビハワタシニイッタ。コノマジワリニ、ヨロコビハナイ。ト」

天乃「……どうして?」

死神「カリンハノゾンデナイカラ。ダカラ、ナカッタ」

死神の言い方は端的だが

九尾が死神に対して言った言葉をそのまま引き出すのなら、こうだ

蛇口から流れる水は、器がなければただ流れていくだけ

夏凜も主様も器を持たぬゆえ、永遠に流れゆくだけじゃ

ゆえに、満たされることはなく、繰り返し。その度に、満たされぬまま汚れゆく悲しみに沈んでいく

死神「カリン、クオンサンスキ。デモ……ヒドイコトスルノハ。イヤダッタ」

天乃「……でも」

死神「ウン。ワタシタチノ。チカラガ、カリンニソレヲサセタ」


天乃「……………」

死神「キュウビ、イッタ」

天乃「何を?」

死神「カリンヲ、スクウホウホウハ、アル。ッテ」

正気に戻っていなければ

夏凜は再び、自分の心を傷つける蹂躙を天乃に繰り返すだろう

正気に戻っていれば

夏凜は天乃を蹂躙したことの罪悪感に打ち拉がれてしまうだろう

今のまま、過ぎていく時間に癒しはない。治癒能力など欠片もない

むしろ毒のように蝕み、汚し、壊し、罅を走らせていく

天乃「……………」

九尾の案を聞くか

それとも

このまま夏凜と話し、こころを救うための蹂躙を承諾するか

それとも

金輪際、関わるのを辞めるか……きっと

正気に戻った夏凜は最後の選択肢を選ぶことだろう



1、九尾の案を聞く
2、夏凜と話して蹂躙を承諾する
3、関わるのを控える
4、そう……今は。どうもする気力がないわ


↓2


天乃「参考までに聞かせて」

死神「……ジャァ。デテキテ」

死神がそう言うと

みんながいつも座る椅子に座るような格好で

九尾の化けた女性が姿を現す

九尾「昨日は楽しかったかえ? 愚鈍な主様よ」

天乃「………………」

九尾「小娘が無知な者で良かったのう? でなければ、主様の寝具は純血に汚れておったやも知れぬからの」

馬鹿にするように笑いながら

九尾は天乃を見下して、睨む

九尾「この愚か者めが」

天乃「……ごめんなさい」

九尾「謝罪で済むのならば罪という言葉すら元よりないわこの戯け」

天乃「そうね……」

否定する言葉がない

反抗する言葉もない

九尾は何一つ、誤った糾弾をしていないからだ


九尾「主様がどれだけ苦しもうと、妾の知るところではない」

散々言った

何度も何度も警告し

最後の最後まで言ってあげたにも関わらず、

やらかした愚か者など救う価値はない。というのが

九尾の考えだからだ

九尾「じゃがな。曲がりなりにも勇者である小娘をあのままにはしておけん」

天乃「どうすればいいの?」

九尾「きゃつを呼べ。妾達が昨日を夢にする」

天乃「昨日を、夢に?」

九尾「きゃつが主様を汚した事を夢とし、それを見ていただけの現実に作り替える」

そのために。と

九尾は天乃の手を掴み、ベッドに押し付けて顔を近づける

九尾「平然ともう一度きゃつを誘惑して呼び出せ。そうすれば、あとは妾達がやってやる」

天乃「………………」

九尾「……選べ。主様に考える時間など二度とくれてやるものか」



1、夏凜の記憶を夢にすり替える
2、夏凜に思考強制の理由を話し、蹂躙を許可する
3、関わるのを控える
4、私に決定権はないわ。夏凜に委ねる



↓2


では、ここまでとさせていただきます
この場合は4ですね


夏凜は数時間を接吻だけで過ごしました
九尾さんは意外と本気で怒っているかもしれません


どうだろうな
>>796で「平然ともう一度きゃつを」なんて言ってるから騙しみたいなのが必要みたいだし
率直に「夢にする?」とは聞けないと思うが


では、少しずつ再開していきます


天乃「そうね、私に考える時間なんて必要ない」

九尾「ほう?」

天乃「私になんて、決定権なんてないんだから」

どちらが被害者かなんて明白だ

なのに

加害者だと確定している者に

被害者に対する処遇を決めさせるなんていうのは、意味がわからない

決定権などあっていいはずがない

九尾「つまり、小娘に決めてもらう。それで良いか?」

天乃「ええ」

九尾「きゃつが主様の体を求めても。か?」

天乃「それが夏凜の望みなのなら」

夏凜に委ねた

だから、夏凜がそう望んでいるのなら

私に拒絶することは許されない

甘んじて――蹂躙されるほかない


九尾「その夏凜とやらがどちらの夏凜なのかは、定めずとも良いのか?」

天乃「え?」

九尾「思考する生物は皆、複数の己を持つ。理由は分かるかえ?」

天乃「えっと……」

思考する生物

つまり、考えることのない生物には

それがない。ということだ

もっとも、そんな生物がいるのか甚だ疑問ではあるけれど……

今はそんなのは無意味な思考だ。と、

天乃は九尾を見つめて口を開く

天乃「その言動を是とする自分と非とする自分?」

九尾「いかにも。例えば、きっかけとなった写真を送るか否か。その時点でも、主様は二人いた。ということじゃ」

天乃「じゃぁ、夏凜も今は二人いる?」

九尾「喜とする夏凜と悲とする夏凜じゃな。どちらの望みを。主様は叶えたい?」


天乃「どちらって……」

九尾「喜は、昨日を幸と思う者。悲は昨日を不幸と思う者」

天乃「………………」

前者の望みは天乃との肉体関係

交合、性の交わり

後者の望みは天乃とのやり直し

可能なら、昨日をなかったことにしたい

自分の罪を償いたい

そんなものかも知れない

九尾「どちらでも構わぬか? ただ、三好夏凜という存在の望みを聞きたいか?」

天乃「それは」

九尾「もっとも、主様は言ったのう? 私に決定権はない。と」

九尾は天乃の体を押し付けるのをやめて

ゆっくりと離れていくと、ため息をつく

九尾「なれば、三好夏凜の思考に委ねようぞ。主様の信じるきゃつが、今一度。主様とともにあることを望んでいるとよいのう」


√ 6月5日目 昼(久遠家) ※水曜日



01~10 友奈
11~20 兄
21~30 樹
31~40 死神
41~50 夏凜①
51~60 樹
61~70 東郷
71~80 夏凜②
81~90 姉
91~00 風

↓1のコンマ  

※現在、天乃に行動選択の気力はありません


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

久遠さん。少し教えて欲しいことがあるんです

知らなければ、知らない。で構わないです

言いたくないなら、言えない。で構わないです

私は個人的なことに集中していたので全く気づきませんでしたが

昨日、夏凜さんの帰りが遅かったらしいです

いつもの鍛錬時間よりも長かったって、お姉ちゃんは言ってました

写真の件があります

久遠さんの特殊な力があります

だから、もしかしたら久遠さんの所に行って

なにかしちゃったんじゃないかって……とっても不安です

何もなかったですか?

大丈夫でしたか?

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

天乃「……貴女って子は」

ただ偶然、昨日の夏凜の帰りが遅かったことを知っただけなのだろう

でも、それを知ったからではなく

天乃が写真の件や魅了の能力を話してしまったからこそ

遅くなった帰りと合わさって

樹は不安になってしまったのだろう


天乃「………………」

知らないといえば、そうですか。と樹は返すだろう

言えないといえば、分かりました。と樹は返すだろう

では

知っていると言ったら? 昨日の出来事を話したら?

樹はなんて言うだろうか

天乃を叱る? 夏凜を叱る?

ひどいことだと、悲しむ?

夏凜は言った。沈黙は肯定だ。と

だからこそ、天乃は直感的に思った

ここでメールを返さなかったら、樹は絶対に。ここに来てしまう。と


1、知らないわ
2、言えない
3、ええ。知ってる。夏凜が何をどうしていたかまで。全て知ってるわ
4、さぁ? 夏凜のことだし、ついつい技の追求したとかじゃないの?
5、返事を返さない


↓2


――ええ。知ってる。夏凜が何をどうしていたかまで。全て知ってるわ


天乃はそんな文章をたたき出して樹へと送り出す

なんで嘘をつかなかったのか

なんで隠さなかったのか

そう思う自分の心の内側で

助けて欲しいと願う自分が蹲っているのが分かる

天乃「誰しもが、複数の人格を持つ」

巻き込みたくない

知られたくない

自業自得だ、諦めろ

そんなふうに思う自分もいる

でも

助けて欲しいとすがりつきたい自分もいる

天乃「ごめんね樹。不安よね。心配よね……私が貴女に今まで相談し続けたせいで」

そんなことはもういまさらだと

樹からの返信を知らせるバイブが強く震えた


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

私は、久遠さんのそうやって隠したような言い方から

本当に言いたいことを理解できるような頭の良さはないつもりです

だから

久遠さんのその言葉がただの冗談で

続きの言葉は、どこかに出かけてた。とかいう可能性も考えます

久遠さんのその言葉が本当で

今、久遠さんが一人で悩んでいて

続きの言葉は、夏凜さんに襲われてしまった。という可能性も考えます

でも……なんでかな

これはただのメールで顔なんて見えるはずもないのに

久遠さんが言いたくても言えない。そんな顔してる気がします

それは多分。きっと

久遠さんのメールが冗談なのか本気なのか悩ませるものだからだと思います


だって。久遠さんは……心配してる人をさらに心配させること。しなそうですから

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

天乃「……なんでかな」

私も、あなたの顔が見える気がする

怒ってない

泣いてない

ただ、笑ってるように見える

しかも、困ったような苦笑いみたいな感じ。というところまで鮮明に

天乃「馬鹿ね、樹。私は貴女が思うほど。真面目な人間じゃないのに」

思わず、笑みがこぼれた


返信はどうしようか

今更誤魔化したところで

樹はきっと、そうなんですね。と、返すだけだろう

何言ってるのよ。と照れた振りをしてみても

またなにか、変な返信が返ってくるのだろう

天乃「……夏凜を惑わせた。夏凜に襲われた」

正直に話すべきだろうか

それとも

やはり誤魔化すべきか

この件は天乃と夏凜だけの問題のはずだ

樹には関係ない

襲ったのは夏凜で、襲われたのは天乃

でも

被害者は夏凜で、加害者は天乃

この二人しか。関係はないはずなのだから




1、正直に話す
2、何言ってるのよ。私はそんな良い性格してないわよ
3、返信しない
4、残念。別に何もないわよ。ただ、夏凜が写真に関して怒りに来ただけよ


↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日は通常の時間、22時頃からになる予想です


天乃「実はね、夏凜。弄ぶとか言ってキスしかしなかったの。子供よねぇ」

樹「そ、それだけしか知らなかったんですね」

樹(キス以外にもなにかすることあるの!?)

夏凜「くしゅんっ」


間に合いませんでしたが、今日はここから少しだけ進めようかと思います


正直に話そう

天乃はそう決めてメールを打ち込んでいく

話さないまま向こうで勝手に話が縺れるよりは

こっち側で話してしまったほうがいい。と、判断したからだ

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

まず、重要なのは

これが私の自業自得で、被害者は私ではなく夏凜だってことよ

それを念頭に置いて、読んでちょうだい


単刀直入に言うと

昨日は放課後から夜まで、ずっと夏凜にキスされていたのよ

だから、私は夏凜が何をどうしていたか知っているの


貴女が言ったとおり悪戯を頑張りすぎた

それが夏凜を惑わせて、困らせて、思いを爆発させて……

全部私が悪いのよ。そう、悪いのは私なの

だから、貴女が心配するべきは私じゃない

貴女が不安になるべきは私じゃない

私よりも夏凜のことを気遣ってあげて

ごめんね、樹。ごめんなさい

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


天乃「………………」

ただの悪戯だった。なんていうのは通用しない

それがわかっているからこそ

天乃はそんな言葉を使わず、ただ説明し、ただ謝罪する

どうしてそうなったのか

どうしてこうなったのか

理由はどうあれ原因はただ一つ

自分自身にほかならない。と、天乃は端末を抱きしめる

樹はなんて言うだろうか

怒るか、呆れるか

それとも、返信を返すことさえないのだろうか

ありえないことじゃない

だって、

何度言われても直さなかった挙句の結果だ

もはや、言う言葉なんて何もないかも知れないのだ


しばらくして、昼休みが終わって5限目に入るような時間になっても

樹からの返信は無かった

役割を失い、稼働しなくなった端末は

熱を放出しきって、冷たくなっていく

天乃「……呆れてものも言えない。みたいな感じかな」

さんざん言ったものね

襲うかも知れない。とまで忠告してくれた

それなのに、こんなことになっちゃって

当たり前よね

そう思った天乃は、自分のメールを読み返し

自分よりも夏凜を。という一文を見つめて頷く

天乃「自分でそう言っといて、樹がまだ気にしてくれてるって期待するなんて。馬鹿みたい」

天乃は布団にくるまりながらも

決して何も見えなくなるほど深くは潜らず、

そして、絶対に目を閉じようとはしなかった




01~10 
11~20 返信 
21~30 
31~40 
41~50 突撃

51~60 
61~70 
71~80 返信

81~90 
91~00 突撃

↓1のコンマ  


そろそろ5限目も中盤だろうか。という時間

「お、お待ちください!」

「許可は頂いておりません!」

そんな騒ぎが久遠邸に巻き起こる

それでも、耳の聞こえない天乃には何も変わらない無音の時間

動かないドアをただただ見つめるだけの、代わり映えのない――

天乃「っ」

動かないはずのドアがゆっくりと動く

兄も姉も呼び出しボタンは押していない

じゃぁ誰なのか、なんなのかと警戒する天乃の頭に

暴走してしまった兄の襲撃がよぎって、唇を噛み締める

もしも暴走した兄なら、どうにもならないからだ

けれど

樹「……久遠さん」

その侵入者は兄ではなく妹だった

樹「メールじゃ伝えられないと思ったので、早退してきました。説教はさせません。でも、説教はします」


天乃「い、樹……」

どうして。なんで

心配するなと言ったのに

不安になるなと言ったのに

自分よりも夏凜のことをと言ったのに

そんな表情を浮かべる天乃を見つめて

樹は首を横に振る

樹「久遠さんの言うとおり、久遠さんが悪いと思います。でも、だから心配も何もしないなんておかしいです」

天乃「…………………」

樹「そんな疲れた顔で、そんな悲しそうな顔で、そんな元気のない顔で……」

自業自得と言ったって

自分の心が痛まないわけがないのだから

傷ついていないわけがないのだから

樹「大丈夫なんていって、信じてもらえると思ってるんですか?」

天乃「でも、私はメールしか……」

樹「うん。メールしかしてない。メールしかできない。だから、会いに来たんです」


では、此処までとさせて頂きます
明日は出切ればお昼(13時ころからの予定です)
ひょっこりと、敬語じゃない樹が出てきてますが仕様です



九尾「ここで犬妹も暴走すれば、主様も懲りるじゃろうな。くふふっ」


では、少し遅れましたが進めていこうかと思います


天乃「だからって、いくらなんでも早退するのは……」

樹「久遠さんが心配だったからです」

樹はそう言って、やっぱり違います。と

微妙に読みにくいほど小さな動きでつぶやいて、天乃を見つめる

樹「それじゃ、まるで久遠さんのせいで早退したみたいだよ」

天乃「……………」

樹「私がただ、久遠さんのそばにいたかっただけなのに」

明日まで

そう、明日まで会わないつもりでいた

もうすでに遅いかもしれないけれど

約1ヶ月ほど前から始まった犬吠崎樹のマル秘プロジェクトを知られないために

でも、そんなことを隠し通すことなんかよりも

今辛そうな久遠さんを助ける方がずっとずっと、私にとっては重要なんだ

樹「私に遠慮なんてしないで下さい。我慢なんてしないでください。辛いこと。もう、ほとんど共有してるんですから」

天乃「……………」

樹「大丈夫とか、心配いらないとか、問題ないとか。そんな嘘。私たちには要らないはずです」


指を包帯で巻いた小さな手が差し出されて

天乃はその手を伝って樹を見つめる

天乃「ついこの間まで、貴女。寝ぼすけだったのに」

樹「今でもちょっと寝ぼすけです。でも」

これはただ見下しているだけと取られるかもしれない

だけど。それでも、樹は答える

樹「出来る事を出来ないって諦めたままでいるのは、久遠さんに失礼じゃないですか」

天乃「…………」

樹「だから、少しでもできるならやろうって。そう、決めたんです」

やりたくても出来ない

できたはずなのに出来なくなった

そんな人の目の前で、惰性のままいるなんてことは

樹自身が、許せなかったのだ

樹「だから、今の久遠さんが抱える辛い気持ちも。和らげてあげたい。出来る事があるならしたいんです」



1、なら、そばにいて
2、なら、抱きしめて
3、なら、やさしいキスをして
4、貴女のそういうところ。私は好きよ
5、ありがとう。でも、本当に大丈夫……貴女の顔を見たら。少し、安心した

↓2


天乃「なら、やさしいキスをして」

樹「え、でも」

天乃「……夏凜は激しかった。痛かった。力強くて苦しくて凄く。だから」

樹「っ」

樹はキスという行為を知らないほど未熟ではなく

それがどういうものかを分かっているからこそ驚き、紅潮して首を振る

樹「私。女の子です。久遠さんと同じ……良いんですか?」

天乃「貴女以外の誰かに頼めるように見える? 貴女だからこそ。頼んでいるのに」

樹「っ!」

天乃の切なそうな声と表情に、樹は目を見開いて胸元を抑える

自分が天乃に対し恋愛感情を抱いていると、樹は思っていない

けれど、東郷と友奈のような強い好意があることは自覚していた

だからこそ、恋愛漫画で見るような強い心音に驚いて、戸惑って

より顔を赤くした樹は、天乃の唇に目が行ってしまうのをこらえるように天井を睨む

樹「く、久遠さんは」

天乃「うん?」

樹「久遠さんは女の子同士でも。良いんですか?」


天乃「女の子同士……ね。それはもう、無理やりされちゃったから」

樹「……っ」

天乃「まぁ、自業自と――んっ」

なんていうのか分かった

だから樹はその言葉が出るよりも先に動いた

天乃の右手に手を重ねて

決して押し付けることのない、触れ合い

リップを塗るよりも優しく、軽く

けれど、伝える気持ちはなによりも強く大きく

唇同士を絡めることさえなく、ただ接触させて静止する

樹「………………」

天乃「……………」

夏凜の時のように淫らな音はなく、呼吸を乱すほどの荒々しさもない

そして数秒後には離れて、一息つく

樹「未だに責任をかぶろうとする悪い口は塞ぎます」

天乃「塞いでから言わないでよ」

樹「前例がないと、ダメかと思ったので」

天乃「貴女って子は」


激しさに荒らされた唇

優しさに整えられた唇

それを震わせて苦笑する天乃を見つめて

樹は自分の胸ぐらを握り締めて、俯く

樹「…………………」

もっと。もっと……もっと

向こうはいいと言ったのだから

向こうが求めてきたのだから

もっと強く、もっと深く、もっと激しく

くすぶる気持ちを抑えこむ

樹「夏凜さんが我慢できなくなった気持ちが、わかる気がします」

天乃「樹……?」

樹「喉が渇ききってる時のお水を求める気持ち。みたいな感じです」

天乃「………………」

激しい鼓動はやがてズキズキとした痛みに変わり、

思考を鈍らせるかのような火照りが全身を包み込んでいく


私は久遠さんが好きだ

でも、これは恋愛の意味合いなんかじゃない

そして

久遠さんだってきっと違う。違うって分かってる

樹「夏凜さん、きっと辛かったんだと思います」

天乃「え?」

樹「大好きな久遠さんにひどいことして、悲しませて、辛い思いさせて……」

天乃をベッドに押し倒して

やるべきこと、するべきことをしたい

そんな酷い思考に汚れていく頭を振って、樹は天乃を見つめる

樹「でも、好きだからこそ。耐え切れないくらいにしたい気持ちは強くなって行く」

そして樹は天乃とのキスを経験した

その心地よさを知った

だからこそ、失いたくない、もっとしたいという思いが芽を出す

樹「っ」

天乃の唇、胸元、布団に隠れた肢体

重力によって張り付いたような布団はただの妖艶さを演出する布でしかない

それが一層、情欲を刺激する


01~10 
11~20 少女漫画で見る展開
21~30 
31~40 夏凜と同じこと
41~50 
51~60 犬吠崎樹は勇者である
61~70 
71~80 耐え切れない

81~90 
91~00 

↓1のコンマ  


いやだ

いやだ、いやだ。いやだ、いやだいやだ!

樹「っ」

好きだ

大好きだ

だからこそ、そんなことするべきじゃないとどうして思えない

どうして手を出してしまうことしか考えられない

どうしてそれを躊躇おうとする頭が働かない

頭以外。そう、心の拒絶を持ってして

樹は天乃のそばから離れる

天乃「樹……貴女も」

樹「初めからそうです。最初からそうなんです……明日になったら。また、普通の私に戻ります」

そばにいたい

それを心から思うからこそ

樹も、夏凜も

天乃の傍にはいられなくなってしまうのだ

樹「だから。だから明日は……元気な姿を。見せてください。約束ですっ」

樹はそう言い残して、逃げるように部屋を飛び出していった

√ 6月5日目 夕(久遠家) ※水曜日

九尾、死神、大地、晴海、風、樹、友奈、東郷、夏凜との交流が可能です

1、九尾
2、死神
3、晴海
4、大地
5、風
6、樹
7、友奈
8、東郷
9、夏凜
0、イベントの判定

↓2


※樹、夏凜、風、東郷、友奈はメール
※判定でのみ、勇者部メンバーは来客


夏凜にメール

内容


1、あんまり気負いすぎないでね。あんなの、美味しそうだからつい食べちゃった。みたいなものだし
2、ごめんね、夏凜。あなたは悪くない。だから、これからも友達のままでいて
3、あなたのおかげでいろいろ学ぶことができた。肝に銘じるわ。ありがとう
4、ねぇ……あなたは昨日のこと。どうしたいと思ってる? 夢? 気の迷い? それとも罪?
5、ねぇ。夜に砂浜。これる?



↓2


天乃「必要なことだから」

向こうは拒絶する?

いや、きっとしない

きっとできない

その弱みにつけこむのは、いささか問題があるかもしれないけれど

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ねぇ、夜に砂浜。これる?

昨日のことで少し話がしたいのよ

メールではきっとちゃんと伝えられない

だからといって電話はできない

でも、勇者の力を使えばここから出ることはできる。だから

夏凜、来てくれるかしら

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

天乃「……こんな感じかしらね」

メールを送って一息つく

夏凜がどうくるか……少し、不安だった


もしかしたら何の返事もないかもしれない

もしかしたら

また直接ここに来るかも知れない

その不安を打ち消すように、端末が震えた

その内容はとても単純で分かりやすい


―――分かった


そのたった一言だけだった

天乃「……話はそこで」

そう呟くと

どこからともなく現れた九尾が椅子に座り

ふよふよと浮かぶ死神がそのとなりに並ぶ

天乃「……どうするか。ね」

九尾「いかにも」


1、九尾
2、死神 ※九尾に跨るのは砂浜まで



↓2


天乃「ごめんね死神。貴方は休んでて」

死神「ウン。マモルカラ。キヲツケテ」

天乃「ありがとう」

そう言って、近づいてきた死神の頭を撫でると

死神は空気に溶け込むように消えていく

九尾「なんじゃこの敗北感……主様主様」

天乃「うん?」

九尾「ほれ」

天乃「?」

頭を下げた九尾に対して、天乃が首をかしげると

九尾はちょっと膨れた顔で「もう良い!」と、言い放つ

残念ながら、天乃に怒鳴り声としては届かなかったが

その表情から察したのだろう

天乃「すねないすねない」

そう笑って、天乃は九尾の頭を撫でた


天乃の持つ魅惑・魅力・誘いの能力は強力だ

しかしながら、それ単体ではさほど意味をなさない

もちろん、相手に恋心を抱かせる

言い換えれば【一目惚れ】させる能力のようなものではあるが

好意を増幅させるという面が強いために、そこまで強く反応させることはない

そう、つまり

天乃自身が、増幅させられてしまう好意を相手に与えている。ということなのだ

それも、その魅了の力を抜きにして。だ

九尾「…………………」

それが一番の原因じゃろうに

全く……主様は節操のない女子じゃのう

天乃「どうかした?」

九尾「いやなに。主様はきっと。能力なくとも襲われるじゃろうな。と」

天乃「なんでよ」

九尾「そういう人間じゃからのう……主様は」

くくくっと笑った九尾も

時間まではと消えていく

天乃「……なんでよ」

残った天乃はそうつぶやいて、その時をただ静かに……待つ



√ 6月5日目 夜(砂浜) ※水曜日

01~10 
11~20 風

21~30 
31~40 
41~50 兄

51~60 
61~70 少女
71~80 
81~90 姉
91~00 

↓1のコンマ  


空白は夏凜のみ


天乃「あら……」

九尾の力を借りて家を抜け出した天乃が砂浜に行くと

夏凜ではない先客が佇んでいた

朝方、昼間、夕方なら理解ができる

夜だとしても、夜釣りを楽しむ大人なら分からなくもない

しかし、その影は長髪を風に揺らしながら

ゆっくりと振り向く

明らかに、少女だった

「ん……久しぶりと言うべきなのかな。それとも。初めまして?」

天乃「貴女……」

「そんな警戒されると傷つくかも」

天乃は知ってる。ただ、忘れていただけだ

「その顔。忘れてたって感じだね。仕方がないと思う。久遠さんの記憶は今やニットみたいに穴だらけだもんね」

天乃「っ」

「……ごめん。和ますための冗談にしては失礼だったね」


沙織「改めて、あたしは伊集院沙織です。一応、大赦の巫女やってるんだよ」

天乃「……沙織」

沙織「どうしてここにいるのかというと、そろそろ近いな。と思ってね」

天乃「戦いのことかしら」

沙織「流石久遠さん。そのとおりだよ」

平静を装っているのか

それとも、もともと仮面のように動かない表情なのか

沙織は抑揚のない声で言うと

天乃の方へと一歩踏み出す

沙織「多分、次の戦い。全力で久遠さんを仕留めに来る」

天乃「……どうして?」

沙織「そんなの、久遠さんが一番強敵だからだよ。逆に言えば、最強が敗北すればそれ以外は烏合の衆にほかならない」

最強の力があるとしても

その最強を打ち破りさえすれば、残るは絶望と諦念だけ

そのために、バーテックスは全力で天乃を潰しに来る

沙織はそう言っているのだ


沙織「最近ね? 暴走の可能性のある試作機は投棄すべき。という声がよく聞こえるんだよね」

天乃「?」

沙織「改良を重ねた完成品。多少スペックは落ちるが制御圏内なればよし。とかね」

沙織は全く感情のこもっていな苦笑をすると

まっすぐ天乃を見定め

その後方から近づいてくる少女を目視して、頷く

沙織「久遠さんは昔と比べて、いけない力が強く絡まってるように感じる」

天乃「どういうこと?」

沙織「私も詳しくは知らない。でも、その力……神樹様はNGだって。言ってるよ。気をつけて」

沙織はそう言い残すと、逃げるように走り去ってどこに隠していたのか

自転車に跨って消えていく

天乃「なんなのよ……貴女わかる?」

夏凜「今の、憑かれ巫女じゃないの?」

天乃「憑かれ巫女?」

夏凜「神様に憑かれてるんだか疲れてるんだか。意味不明な発言が多いって。大赦にいるときよく聞いたわ」

天乃「……なるほどね」


夏凜「……で」

天乃「うん」

夏凜「あんた、その格好ってことはやり合うつもりなの?」

天乃「…………………」

きたばかりで私服の夏凜

その一方で白い装束に身を包んだ天乃

対峙する二人は見つめ合い

波の音ですらその空気に萎縮して、掻き消えていく

夏凜「ただ話す。なんてのは、私たちの性分じゃないかもしれないしね」

言われたわけでもなく木刀を持ってきていた夏凜は

そう言いながら、にやりと笑う

夏凜「前の勇者服と違うみたいだし……それがあんたの本気ってことなんでしょ? ヤラセなさいよ」



1、戦う
2、これは移動するためよ。私はただ、貴女が今どう思っているのか聞きたいだけ
3、貴女は誰? 止めたい夏凜? 襲いたい夏凜?
4、ねぇ、昨日のことが夢にできるとしたら、したい?
5、ごめんね、夏凜……私のせいで辛い思いしたわよね


↓2


天乃「前回の借りもあるしね……うん。受けるわ」

夏凜「あんたが乗りの良いやつで良かったわ。まぁ、昨日の乗り心地も良かったけど」

天乃「……………」

間違いない

天乃はそう確信して夏凜を睨む

この夏凜は襲いたくない方の夏凜ではなく襲いたい方の夏凜だ

昨日の件で傷ついたから

きっと、本当の夏凜は何もかもを投げ出してしまっているのだろう

天乃「今の私は昨日のことを言われたくらいで怯えないわよ」

夏凜「ん?」

天乃「大事なご加護、貰ったからね」

言いながら自分の唇を指でなぞり、天乃はクスッと笑う

夏凜「あっそ……使う使わないどっちにしても平等のために受け取りなさい」

天乃「っと」

投げ渡された木刀を見て観察して、振って観察し、触って確かめる

天乃「うん。ありがと」

夏凜「それじゃぁ、行くわよ」

天乃「ええ、どうぞ」


↓1

天乃回避100% ただし特殊条件戦闘のため

ゾロ目で命中

25~34でカウンター


天乃命中判定
命中率180% ただし、特殊条件下のため

ゾロ目で夏凜回避


↓1


夏凜「行くわよ!」

天乃「……っ」

一歩目の踏み出しで砂が吹き飛ぶ

聴覚があれば爆発音でも聞こえていたのではないかと思うほど

高く広く飛び散る砂塵

けれど、それに驚くことはない

怯えることもない

夏凜はどこだ。目の前だ

なら、それ以外見る意味はない

天乃「来なさい夏凜。その体に叩き込んであげるから」

右手に構えた木刀を後ろに下げ、左手を前に出す

防御ではなく、距離の目算だ

夏凜「斬り殺すつもりでぶった斬る!」

天乃「!」

夏凜は聞こえずとも叫び、天乃と肉薄する二歩手前

右足の着地に合わせて重心を左へと傾け、天乃の右側面へと飛び込む


武器のある右側、武器の無い左側

行くべきはどちらか、安全なのはどちらか

当然左だというのならそれは負けにつながる

なぜなら、

左に回った時点で、天乃の武器が死角に消えるからだ

だからこそ、夏凜は天野の右側に飛び込む

もちろん、その時にはすでに刀は切り捨てるための軌道を描く

夏凜「ぉぉっ!」

勝った。と、慢心しない

これで終わると慢心しない

相手に馬乗りになってその息の根を止めるまで、呼吸さえしない

その勢いに乗った一閃を

天乃「ったぁああッ!」

天乃は右足で蹴り上げる

夏凜「ッ!?」

天乃「マニュアル通りの戦闘術でこの私を倒すつもり? ふざけるなっ!」


木刀を弾き飛ばされ、バックステップで引き下がった夏凜

その一方で

木刀との衝突によって、

砂浜へと叩き落とされた右足が着地した瞬間

天乃はその勢いを利用して跳躍すると

天乃「ふッ!」

一回転しながら木刀を夏凜へと振り下ろす

夏凜「なっ」

躱せるか?

当たり前だ。躱せなかったら頭蓋骨が叩き割られるッ!

その恐怖によって後退った夏凜の鼻先を木刀の切っ先が掠める

夏凜「っ」

掠った。でも躱した

次の一手――

天乃「見通しが甘いッ!」

夏凜「あ゛っ」

体制を立て直そうとした夏凜の頭上に

2回転目の右足が振り下ろされ、直撃

思いっきり脳の揺れた夏凜はそのまま……倒れ込んだ


天乃「いつもの夏凜なら、あの程度なら躱せたはずだわ」

夏凜「ッ……く……」

天乃「軽い脳震盪を起こしたんだから……無理に起き上がらないほうがいいわよ」

後頭部に感じるのは砂のザラつきでも地面の硬さ

その冷たさでもなく

ほんの少し固くでも柔らかく温かい感触

夏凜「あんた……」

天乃「なによ。ただ、砂の上は痛いだろうからって思っただけよ」

夏凜「それで膝枕? 上着とかでも良いのに」

天乃「……嫌よ。まだ寒いもの」

夏凜「あんたのせいで、頭の中ぐちゃぐちゃよ」

天乃「綺麗すぎるのも考えものだと思って」

夏凜「嘘つけ。あんた、殺す気でやったでしょ」



1、ええ。まぁ……正直。あの夏凜は嫌いだったから
2、だって、私の好きな夏凜を取り戻すためだもの
3、ふふっ、貴女だって殺すつもりだったでしょうに
4、そのおかげで洗脳は解けたでしょ?
5、ふふっ、ごめんなさい


↓2


天乃「ふふっ、貴女だって殺すつもりだったでしょうに」

夏凜「殺す気でやんなきゃ無理だと思ったんじゃないの」

天乃「他人事みたいなこと言っちゃって」

まだ頭が痛い

それでも、目は見えて耳も聞こえて

直撃したはずの頭の感覚もちゃんとある

きっと、勇者だからだろう

くすくすと笑う天乃を見つめ、夏凜は残念そうに笑う

夏凜「あんた、本気になったら強いのね。完敗だった」

本来は二刀流の夏凜だが

それでも、刀一つでも勝機はあると思っていたのだ

しかし、終わってみれば大敗

戦闘中

しかも一撃目を空ぶった状態で着地ではなく、二回宙返り

空ぶれば自分にダメージがいきかけない大技を迷いなく選択する相手だ

二刀流でも勝ち目はないのかもしれない

諦めかけて、

夏凜「ふざけんな」

言い聞かせるように、呟く


↓1


01~10


31~40


71~80

またはゾロ目で


言う


夏凜「あんたに負ける? ふざけんな、勝つわよ。勝つわよ絶対ッ」

天乃「あ、あらっ」

怒鳴るように言いながら、飛び起きた夏凜は

まだ違和感のある頭を振って、天乃を見つめる

夏凜「それで今度は私が膝ま……じゃなくて、あんたを気絶させてやるわ」

天乃「……そう。勝てるの? 私に?」

夏凜「勝つのよ。私が」

言い放つ夏凜は、ここに来た時のような

誤った方向ではなく、正しい方向を見据えて言う

夏凜「あんたにも、私自身にも。私のために、あんたのために……勝つわ」

天乃「……………………」

夏凜「あれは抗いきれなかった私の弱さ。それをあんたが嫌っても仕方がない」

天乃「夏凜……」

夏凜「……でも。私はあんたが好き。だから、嫌われたままで居たくない」

だから

夏凜「私はもっと強くなる。もっともっと。ずっと強く、それでいつか。ちゃんと……あんたに言う」

天乃「?」

夏凜「それまでに、誰かにあんたが負けないことを祈ってるわ。天乃」

夏凜はそう言い残して去っていく

その姿を見つめていた天乃は困ったように笑って、首を振る

天乃「別に……嫌ってはないんだけど」

死神「ショギョウムジョウ」

九尾「主様は変わらぬ。無理じゃ無理」

天乃「な、なによ」

九尾「知るか戯け!」


そして……天乃は15歳になった

1日のまとめ

・  乃木園子:交流無()
・  犬吠埼風:交流無()
・  犬吠埼樹:交流有(夏凜との出来事、突撃、キス)
・  結城友奈:交流無()
・  東郷美森:交流無()
・  三好夏凜:交流有(呼び出し、戦闘、勝利、殺す気、言う)
・     九尾:交流有(夏凜を救う方法)

・      死神:交流有(夏凜について、変身)
・      稲狐:交流無()
・    夢路瞳:交流無()
・     神樹:交流無()


6月5日目終了後の結果


  乃木園子との絆 19(中々良い)
  犬吠埼風との絆 36(少し高い)
  犬吠埼樹との絆 60(かなり高い)
  結城友奈との絆 26(中々良い)
  東郷三森との絆 31(少し良い)
  三好夏凜との絆 46(高い)
   夢路瞳との絆 9(普通)

     九尾との絆 29(中々良い)
      死神との絆 24(中々良い)
      稲狐との絆 20(中々良い)
      神樹との絆 -1(低い)


では、一旦中断とします
再開は21時頃を予定しています


久遠さんの誕生日
星々もお祝いに来るかもしれません


遅くなりましたが、再開しようかと思います



√ 6月6日目 朝(久遠家) ※木曜日


九尾、死神、大地、晴海、風、樹、友奈、東郷、夏凜との交流が可能です

1、九尾
2、死神
3、晴海
4、大地
5、風
6、樹
7、友奈
8、東郷
9、夏凜
0、イベントの判定

↓2


※樹、夏凜、風、東郷、友奈はメール
※判定でのみ、勇者部メンバーは来客


01~10 勇者部一同
11~20 大赦
21~30 樹・夏凜・風
31~40 友奈・東郷
41~50 九尾・死神
51~60 姉
61~70 大赦
71~80 樹
81~90 兄
91~00 稲荷

↓1のコンマ  


風「天乃っ!」

天乃「………………」

力いっぱい扉を開け放っても

びっくりすることなく

それどころか、開けたことにすら気づいていない天乃はぼーっと外を眺めていた

風「あーまーのーっ!」

夏凜「なにやってんのあんた」

風「いやぁ、ほら。ドッキリとか」

夏凜「天乃、全くこっち見てないんだけど?」

樹「久遠さーんっ」

風と夏凜の横を抜けて

小走りで走り寄っていった樹が布団の上に飛びこむ

天乃「な、なにっ?」

樹「えへへっ」

唐突な刺激に目を見開くと

視線の先にいた樹は笑みを浮かべる

樹「お誕生日、おめでとう。久遠さん」

天乃「あっ」

風「忘れてたー?」

夏凜「せっかく来てやったっていうのに」


天乃「……わざわざ朝来なくても、メールで簡単に済ませればよかったのに」

夏凜「まぁ、朝来てもまた夕方に来るんだけどね」

天乃「えっ?」

風「お祝い。みんなでしましょ」

ちょっとツンとした態度の夏凜

部長らしく、笑みを浮かべる風

そしてベッドに肘をつきながら、見上げてくる樹

一通り視線を巡らせた天乃は樹を見つめると

その頭を撫でて、首を振る

天乃「大丈夫なの?」

樹「この記念日を壊すほど、私は飢えてないです」

天乃「……そう」

風「なんのこと?」

夏凜「何でもないわよ。どうせ」

ひとり、案件にまだ関わっていない風を置いてきぼりにする夏凜は

そうでしょ? と、天乃を見つめる

天乃「ええ……まぁね」


風「えーっと、樹ぃ? なんのことー?」

樹「縦断をやりすぎちゃわないようにするってだけだよ」

風「そうなんだ……なんかしっくりこないけど」

もんもんとした表情を浮かべる風は

夕方にはもっとちゃんとしたお祝いするからね。と、言って

夏凜に目を向けて頷く

夏凜「……ああ言った手前。見過ごすのはなんかこう。嫌なんだけど」

天乃「?」

夏凜「っ……じゃぁ、樹は用事があるみたいだし。私たちは先に行くわ」

天乃「えっ、ちょっと」

夏凜「なんかあったら呼びなさい。すぐ来るから」

そう言い残して

風と夏凜が部屋を出て行った部屋はなんだか広く感じる

そして

残った樹と視線を交差させ、息を呑む

天乃「用事って?」

樹「お誕生日のプレゼントです」

そう言うと、樹はカバンの中からプレゼント用の箱を取り出すと、天乃に差し出した


天乃「ありがとう………って、あら。これ」

樹「はいっ。久遠さんが開けられるように、側面を押せば口が開くやつです」

天乃「気遣いありがと」

樹「えへへっ、それは買ったものですし」

樹は照れくさそうに笑いながら、ごくっと喉を鳴らす

緊張に乾いた喉

痛みを伴う激しい鼓動

いらないって言われないかな

下手だって言われないかな

ダサいって言われないかな

樹「っ」

ちょっと怖い

けど……もう渡しちゃったから

樹「開けてみてください」

天乃「ええ、じゃぁ……」

箱を開けると

勇者部の三文字に形作られたビーズ飾りのついた黒いヘアゴムが入っていた

形はちょっと歪で、ビーズの縫製にツレが見えるけれど、でも。だからこそ

それが素人の作ったものだと、はっきりと天乃に教えてくれた


天乃「ねぇ、これ……」

樹「私が作ったんです」

天乃「……なるほど」

姉によるあの一撃決殺のような蹴りはともかく

自傷目的ではない致命傷にならない怪我に関しては

ある程度見逃されるのだろう

昨日から巻かれていることに気づいた手の包帯は

これを作っていたからで

間に合わないと言っていたのも

きっと、これのことだったのだ

樹「勇者部の文字がちょっと大変で……えへへっ」

天乃「繋げるの失敗したらばらばらだものね」

樹「うん……」


1、ねぇ、付けていい?
2、ありがとう。大事にする
3、ねぇ、つけてくれる?



↓2


天乃「ねぇ」

樹「は、はいっ」

天乃「つけてくれる?」

樹「……はい」

久遠さんは寝てばかりだ

だから基本的に……ううん

初めて会った時から今まで、ずっと髪を下ろしたままだった

髪型や服装のおしゃれ

久遠さんは迷惑になるだけだからと、全部断ってた

樹「……さらさらしてます」

それだけでなく、艶もあって

さっと撫でただけで、すごくいい匂いがする

そんな久遠さんの髪を束ねて、私が作ったヘアゴムで留める

樹「こんな感じになりましたっ」

今は変に手を加えることなく、ポニーテール

鏡二枚で後頭部を映して見て貰う

天乃「勇者部の、ちゃんと隠れないようにできてるのね」


樹「大事なワンポイントです」

女の髪は命

それを勇者部というヘアゴムで包む

つまり

久遠さんのことは私達勇者部が守るってことです

とは、流石に樹は言えずに口篭る

天乃「そっか、ふふっ。ねぇ樹」

樹「なんですか?」

天乃「どうかしら、似合ってる?」

カラダを動かせないからと

頭だけを動かして髪を揺らし、樹へと目を向ける天乃を見返して

樹はゴクリと唾を飲んで首を振る

隠されてたうなじ、束ねられて揺れる髪

そしてなにより、照れくさそうな天乃の表情は、狡い

でも

情欲に身は委ねない

堪えて、飲み込んで、深呼吸する


01~10 
41~50 
91~00 

↓1のコンマ  


上記範囲内でうっかり


樹「似合ってます」

可愛い。とか

綺麗とか

ほかにも言える言葉はあったに違いない

でも、何故か気軽に言えなかった

天乃「あら、そう? ふふっ」

樹「っ」

嬉しそうに笑う久遠さんのことを

私は直視出来なかった

襲いそうになるからとかじゃなくて

ただ、なんだろう……

樹「わ、私もう行きますねっ」

天乃「え、あ。そうね。学校よね。行ってらっしゃい。ヘアゴムありがとうね」

樹「う、うんっ」

樹は慌てて部屋を出ていく

遅刻しそうな時間だからではなく

自分の好意がなにか別のものに。なってしまいそうに思えたからだ


では、此処までとさせて頂きます
明日は早い時間からで、17時か18時ころからのスタートの予定になります



60。そろそろ頃合ですね


では、予定通り進めていきたいかと思います


√ 6月6日目 昼(久遠家) ※木曜日

九尾、死神、大地、晴海、風、樹、友奈、東郷、夏凜との交流が可能です

1、九尾
2、死神
3、晴海
4、大地
5、風
6、樹
7、友奈
8、東郷
9、夏凜
0、イベントの判定

↓2


※樹、夏凜、風、東郷、友奈はメール


01~10 友奈
11~20 風
21~30 樹
31~40 東郷
41~50 兄
51~60 姉
61~70 大赦
71~80 夏凜
81~90 九尾
91~00 稲荷

↓1のコンマ  


お昼になる頃には

家に来れなかった友奈や東郷からの略式的なお祝いメールが届いた

文章に差異はあれど

共に、家に直接行けなかったことへの謝罪とともに

夕方のお誕生日会でしっかりと。というのが入っていた

天乃「お誕生日会。ね」

正直に言えば嬉しいけれど

流石に、手放しで喜べそうにはない

不安がある。嫌な感じがして楽しい気分になれそうにない

昨日の沙織の言葉が、酷く記憶にこびり付いていたのだ

【暴走の可能性のある試作機】、【改良を重ねた完成品】、【絡まったいけない力】

適当な発言を言うにしては、あの表情はおかしい

まるで機械のような無表情は、とても冷たい感じがした

天乃「っ!」

その不安をかき消すかのような端末の振動に

天乃は思考を中断して首を振った


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ねぇ天乃

まぁ、なんていうか……こんなこと聞くなんておかしいとは思うんだけど

あんたってさ、女の子からキャーキャー言われるっていうか

好意持たれるのって、あんまり嬉しくない?

別に深い意味はないんだけど

今日の体育の時、他の女子が色々と言ってきて

それでさ。気になったっていうか

こんなの友奈は役に立たないだろうし

東郷もなんかズレた回答しそうだし

風に至っては確実に茶化すだろうし

樹も聞けそうにないし。だから……参考までに教えてもらえると助かるんだけど……

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

天乃「だからって私?」

風も真面目な話に関してなら

真面目な対応してくれるとは思うんだけど……

というより、恋愛したことのない私にそれを言うのは

色々と悪手だと思うわ。夏凜


天乃「……って、え?」

天乃は端末を握り締めたまま、呆然と呟いて

窓に映る自分を見つめる

紛れもない久遠天乃だ

けれど、天乃には違和感があった

そこに映る自分ではなく自分の思考に関して、だ

天乃「………………」

今さっき、天乃は

女子から受ける好意に対し

なんの迷いもなく、恋愛的な好意だと思った

だからこそ、恋愛したことのない私。と言ったのだ

天乃「違う、わよね……? この好意は羨望とか、そういう。だからえっと……」

私、なんで女の子からの好意が恋愛の方だって思ったの?

だってそんなの普通じゃないっていうか。おかしいというか

恋愛は普通、男の子とするもののはずなのに……

天乃「っ」

もしかして

そう考えそうになった天乃は激しく首を振る

それに合わせて揺れたポニーテールは、少し、懐かしい感じがした


天乃「ど、どんな意味で……じゃなくてっ。そう。普通の女の子同士の好意だろうし……」

それに関して言うなら嫌ということはない

人気になりすぎて、授業とかに集中できなくなったり

プライベートにまで影響を及ぼされるというのなら話は別だが

そこまで至らない友人程度の行為であれば

天乃は全く気にすることはない

天乃もまた、

小学校時代と、中学1年のわずか数ヶ月ではあれど

ある程度の好意を受けていた経験があるからだ

もっとも。本当にある程度。で済んでいたかは別だが

天乃「無いとは思うけど。ないとは思うけれど……恋愛。だったら……」

天乃はそれを考えて、息をつく

女の子であれ

自分のことを恋愛対象に見ているのだとしたら……どう答えるべきか


1、別にいいじゃない。好かれるのは悪くないと思うわ
2、それが普通の意味なら、喜んで受ければいいし、恋愛なら、貴女がどうなのかを言えばいいわ
3、私的には、嬉しいわよ。恋愛的な意味でも……受けるかは、ともかくとして
4、貴女はどっちなのよ。貴女がどうなのか。それだけでしょ? 必要なのは


↓2

【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である【データ4】
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である【データ4】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1445246073/l50)


つぎスレになります

こちらは埋めてしまってください

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom