地味子「あ、あの」男「?」(19)

地味「……」(よかった、今日たも空いてた…)

私は、音を立てないようにそぉーと、椅子を引いた
学校の図書室の、大きな窓に一番近い席
最近、ここが私の指定席だ

ここから見える風景は好き
学校の向こうに広がる森は、見ていると心が穏やかになる
そのため、図書室に通っている
指定席を決めているのは、私だけではない
いつも、私の斜め前に座っているあの人も、そう

最初は、「あ、また居る」って思うくらいだった
でも毎日会ううちに仲間ができたみたいな気がして、
嬉しくて、図書室へ行く放課後が待ち遠しくなった

姿が見えない日は「今日は来ないのかなぁ…」って、落ち込んでしまう

地味(気づいたら…好きになっていた……単純…だよね…)

その日の図書室はいつもと違ってザワザワしていた

もうすぐ学期末のテストだからだ

テストが近づくと、慌てて参考書や辞書を使う生徒が増え、友達同士で勉強するグループも現れ…席は殆ど埋まってしまう…

(くそぅ…くそぅ…リア充め…勉強なんてしてないでdqnな彼氏と家でイチャついてろよ…)

私の指定席にも、もう誰かが座っている

地味(何処に座ろう…)

でも、空いてる席ないかも…

鞄を抱えたままウロウロしていたら、あの人がチラッと私を方を見た

ちゃんといつもの指定席に座っている

となりの席は、他の人の鞄でふさがっている

あの人は、鞄の持ち主らしき人をちょっとつついて、

小さい声で言った

男「この鞄…どかしたら?…席もいっぱいだし」

鞄の持ち主は、黙って荷物を机の下に降ろす

と同時にとなりの席が空いた

あの人は、私の方を見て、指でその椅子をトントンとたたく

地味(…え…もしかして…)

地味(…そこに…座っていい…の…?)

私は緊張しながら、あの人の隣に座る…

いつも後ろから眺めていたけど……こんなに近づいたのは初めてだった

破裂しそうな胸の音が聞こえちゃいそうで……気が気じゃないよ…

だけど、私の為にわざわざ鞄を退かすように言ってくれた…

「ありがとう」って言いたいけど……      無理っ

無理無理無理……コミュ障には無理難題っス…死ぬっス…

私は座り、急いでから鞄からノートを取り出した

ノートの端っこに「ありがとう」って書いて

あの人の方へとススッーと近づけて見せる……伝わったかな…

そしたら あの人は、こちらを向き軽くニコッとしてくれた。

私に向けられた、笑顔………嬉し過ぎる…

今までずーっと後ろから見つめてるだけだった、あの人

本を読みながら、ちょっと癖のある髪を掻き上げる

指でリズムをとりながら本棚の前でフラフラしながら本を選ぶ

本に夢中してるかと思うと、ときどき不意に窓の外をぼんやり眺めたりする

そんな癖はいっぱい知っている

けど、名前は知らない

地味(そういえば、図書室以外でのあの人のこと…知らないなぁ…)

地味(…彼女…とか居るの…かな…)

なんてことを思いながら、横目でチラッと見ると

ちょうど向こうも本から顔をあげたところで、モロに目が合った

地味(ッ!!?)

私は慌てて本で顔を隠す
多分顔は赤いだろう

……なんだこれ…なにかの少女漫画のヒロインになった気分だ

地味(うわ~…目が合うなんてェ…もしかして向こうも私を意識して……ないか…)

私は有頂天な心の中がバレないように、本に意識を集中させた

地味(……もっとこの人のこと知りたいな…)

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