絵里「27歳になった。その2」 (24)


「私、百合が好きなんです。」

ごぼっ。
思わず咳き込む。
何を言っているのだこの娘は。

少し?を赤らめ、チビチビと酒を飲む園田海未は私に突然そう告げた。

絢瀬絵里27歳。2月の事である。

「久々に一杯どうですか?」

まだ寒さの厳しい時期、海未からの誘いがあった。
彼女とはμ'sで共に苦労役を担ってきた仲である。
時折、2人で集まっては思い出話に花を咲かせることがあるのだ。

しかしなんということか。
この娘は突如、百合の花を咲かせだしたのである。

「まさか絵里が真姫と付き合うとは思いませんでした」

なるほどなるほど。
海未はその事を聞きたくて家に来たのか。

真姫とはつい先日(一週間ほど前だが)付き合うことになったのだが、
あっという間にμ's内に広まったのである。(主に凛が広めた)


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「私、百合が好きなんです。」

ごぼっ。
思わず咳き込む。
何を言っているのだこの娘は。

少し顔を赤らめ、チビチビと酒を飲む園田海未は私に突然そう告げた。

絢瀬絵里27歳。2月の事である。

「久々に一杯どうですか?」

まだ寒さの厳しい時期、海未からの誘いがあった。
彼女とはμ'sで共に苦労役を担ってきた仲である。
時折、2人で集まっては思い出話に花を咲かせることがあるのだ。

しかしなんということか。
この娘は突如、百合の花を咲かせだしたのである。

「まさか絵里が真姫と付き合うとは思いませんでした」

なるほどなるほど。
海未はその事を聞きたくて家に来たのか。

真姫とはつい先日(一週間ほど前だが)付き合うことになったのだが、
あっという間にμ's内に広まったのである。(主に凛が広めた)

それを聞き付け、駆け付けたのか、海未は。
百合好きと言うだけはある。
言われて見ると、高校時代から叶わぬ恋などといったテーマの作詞の執筆速度は早かった気がする。

ちなみに、家で海未と飲んでいることは既に真姫に伝えている。
のーぷろぶれむなのだ。

「それで、何処までいったのですか?」

はぁはぁと、少し息を荒げる海未。
破廉恥である。昔の彼女のイメージが壊れていく。

まあ、手を繋ぐくらいよ、と言うと、
むむっ……と残念そうな顔を返された。

正直なところ、既に事を致している(というかそれが付き合うきっかけなのだが)それを言うと興奮するであろうので辞めた。

まあ、海未以外にも言うつもりは無いのだが。

実のところ、付き合いだしてからはやりまくりなのである。海未に破廉恥という資格はないのだ。
タレントとして活躍する真姫は忙しく、デートはおろかや電話をする暇もあまり無いのである。
その為、夜な夜な我が家を訪れては一晩明かし、朝早くにお互い仕事に出掛けるという生活が続いているのであった。

夜の真姫は凄いのである。
人の構造を知り尽くしているだけはある。
歳上として威厳を示そうにも、真姫のテクニックによって、ベッドの上でびくんびくんと跳ね回らされるのである。

まさに海老、絢瀬絵里ならず絢瀬海老なのである。
しかし、そんな事は言えぬ。言えないのである。


「では、花陽と凛のことですが……あの2人は?」

よし、安心。
百合の話題は終わったのだ。
花陽と凛とは先生会なるものを定期的に開いていて、お互いの近況はよく知っている。
2人は元気にやっていると告げる。

「いえ、そうではなくて……2人はお付き合いはしないのですか?」

わぁ。百合の話題は終わっていなかったのである。
どうも、花陽と凛は百合の匂いがするらしい。
確かに真姫と付き合いだしてから、女性同士の恋愛には興味津々のご様子なのだが。

「あの2人は良いですよね」

上機嫌な様子で海未が続ける。
何が良いのか。あれか、イマジネーション的になのか。

「書く甲斐があります」

ぐびっと、日本酒を飲む海未。
……書く?何のことであろうか。

「あ、私、小説も書くんです、百合の。」

モデルはあの2人です、と続ける。
なるほど。
今日の海未は失言祭りである。どうみても、飲みすぎである。

昨今、日本では百合やBLといった同性愛は広く認められている。
数年前にはそのジャンルからベストセラーが出た程なのだ。
しかし、こうも近くに作家がいたとは。

「出版も目指してまして」

読んでみませんか?と言われたが丁重にお断りした。
モデルはあの2人なのだ。
読んでしまうことで、先生会が百合会に見えるようになっては困る。
まあ、またの機会に、と話がひと段落ついたところでおつまみとお酒を追加することにする。

「しかし、絵里は美人ですね」

髪を結び直しているとそう言われる。
日頃から生徒や同僚などに良く言われるが、気の許した友達から言われるのとはまた別である。素直に嬉しいのだ。
海未もすごく美人で綺麗よ、と返す。

無論、お世辞ではない。
もともと、美人で凛とした印象の彼女であったが、
歳を重ね、より洗練されていったのである。
まさに大和撫子である。今は撫子というより百合になってしまったが。


「絵里には敵いません、……スタイルも良くて」

確かに海未はスレンダーな感じである。
ぼんきゅっぼんではないのである。
良く恨めしそうにぼんきゅっぼんのぼんの部分を見つめられることがあるのだ。
今日も例外なく、ぼんの部分を見られていたのだが、あの話を聞いた後である。

その目線が何処ぞのエロ親父と、同じものを感じたのである。

「…………ごくり」

生唾を飲み込む音。
頭の中でしまったと呟く。
今日は気の許した相手と宅飲みである。
少しラフな格好(無防備ともいう)をしていたのである。
なんせ、ぼんきゅっぼんの私である。
ひとたび外にでるとエロテロリストになってしまう、そんな状態なのである。

しかし、いやまて。
海未は百合が好きなだけなのである。
自身が同性愛者でなくとも百合が好きな人は沢山いるのである。
一応、確認はしておこう。

「海未は、その……同性愛者なの?」

我ながらストレートな質問である。

「…………いえ、違います」

なんだ、今の間は。これでは安心できぬ。
少し、変化球を投げてみる。

「そういえば、園田道場って男女比ってどのくらいなのかしら、ちょっと生徒で入りたい子がいて……」

「大丈夫です、女性しかいませんから」

と、即答。疑惑が強まる。
そもそも、女子生徒とは言っていないのだが。
というか、さっきから乳を見るな乳を。父に言うぞ、父に。

「絵里、疲れてませんか?」

精神的な疲れは感じている。
もっとも、その原因ははっきりしているのだが。

「私、マッサージ得意なんですよ」

これは真っ黒である。まっくろくろすけである。
エロ親父の居酒屋での発言と全く同じなのだ。
マッサージが得意なんて、初耳である。多分嘘なんだろうが。

「ベッドに行きませんか?」

襲われる。確実に襲われる。
武道も嗜む海未に抵抗などできないのだ。
きっと、ベッドの上で海老のように跳ね回わされ、最後に意識を飛ばされるのだ。
ああ、海老になってふらいあうぇい。
まさに海老フライである。

「ちょ、ちょっとトイレに……」

一旦避難である。海未は酔っているのだ。
少し時間を空ければ忘れてしまうに違いない。

「……よし」

間を空けてから、トイレから出る。
一応、躱す策も考えてきた。策士えりちである。
おそるおそるリビングに戻る。

「すぅすぅ」

話相手の居なくなった海未は横になって寝ていた。
ひとまず安心である。海未に毛布をかけて、ふぅ、とひと息つく。
部屋の時計を見ると、既に12時を回っていた。
時間が経つのは早いものである。

……今日の事は忘れよう。
海未のためにも、私のためにも。

1人で飲み直すか、とグラスにお酒を注ぐ。
そんな時である。
ぴんぼーん、と家のインターホンが鳴ったのは。

「こんばんは」

真姫である。しかし、今日は仕事が忙しいといっていたのだが。

「今日は早めに終わらせてきたの」

私の心を読み取ったかのように、彼女は答える。
エスパーか。流石である。

「ねえ、それより……」

その長い指で身体を触られ、びくんっと反応してしまう。

「今日はお客さんが来てるか……んっ」

「……ん……あむっ……」

突然、口を塞がれる。
今日はいつもより大胆で、積極的である。

「ねぇ、ベッド……行きましょ」

酔っている上に濃厚なキスまでされて。

「今日も、凄く気持ち良くしてあげるから……」

と、言われては考える余裕など無いのである。
そのまま、海未のことなど忘れて、私は真姫にベッドに押し倒されるのであった。

ただ、こんな状況でも“気持ちよくしてあげる”を“気持ちよくして、揚げる”に脳内変換して、
ああ、海老フライになっちゃうのねって思ったのは秘密である。


───チュンチュン

「……ん」

朝を迎える、時計の針を見るとまだ6時前である。
ああ、そうか……昨日は。

「……はっ」

海未である。海未の存在を忘れていた。
最低限、服を着てリビングを覗く。
すぅすぅと寝息を立てる海未がいた。

危なかった。海未は早起きなのである。
下手したら、真姫と裸で寝ているのを見られるとこであった。

まだ、グッスリ眠っている真姫を布団で隠し、玄関の靴も隠して海未を起こす。
寝起きでも抜かりは無いのである。流石、私。

「ああ、おはようございます」

眠たげそうな目を擦り、海未が目を覚ます。
チラリと時計を見ると、そそくさと帰り自宅を始める。
園田家の朝は早いのである。

「じゃあ、私はこれで」

また、何処かで飲みましょうと、約束をする。
……ただし、今度は誰か追加で呼ばねば。

ああ、そうそう。と玄関先で見送るときに海未が告げる。

「とても良い、取材になりました」

「真姫によろしく伝えてください」

この時は意味が分からなかったが、私はすぐにその意味を知ることになる。
あの日、海未に真姫に焚きつけるような内容のメールを送ったことが判明。
酔っていたとはいえ、海未が朝眠そうにしていたのは、どうも私たちの情事を覗いていたからのようである。
あくまで、推測なのだが。

しかし、1ヶ月後、ピアノが得意なツンデレ女学生と、美人で面倒見の良い教師の百合小説が出版。(もちろん、えっちなシーンもあるのだ)
プチヒットとなったのである。
内容に目を通し、推測が確信に変わる。

園田海未。末恐ろしい娘である。
μ'sの作詞家はいつしか策士家になっていたのである。
私は彼女の手のひらで、転がされていた、
もとい、海で泳がされていたのである。
……海と海老だけに。

また、つまらぬ事を考えついてしまった。

その後、この百合小説家は別の作品で大ヒットを飛ばす事になるのだが、それはまた別の話である。

絢瀬絵里。27歳。
真姫と付き合いだして約一週間。
2月に起きた事件であった。

これで終わりです。読んでくれた方ありがとうございました。

1レス目は一文字なぜか文字化けしたので無視してください。

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