欠けた歯車、良質な物【艦これ】 (33)

【序 プロローグ】
海辺に堂々と構える巨大な建物。

それは海軍の軍事基地、いわゆる鎮守府である。

最近では女性の軍人が多少は増えたかもしれないが、

軍隊とは、ほぼ完全な『男社会』であると、巷の人々は思っている。

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しかし、鎮守府の中から聞こえてくるのは、

筋肉質な男たちの、ドスの利いた声ではなく、

若い、20代に入るか入らないかくらいの、

甲高い、ハキハキとした女の声である。

鎮守府に溢れる若い女性。

彼女たちは『艦娘』と呼ばれ、戦争のために生みだされた存在である。

また、戦争をする相手も人間とはかけ離れた存在であり、

『深海棲艦』と呼ばれている。

いかにして深海棲艦が生まれたのかは、国家の総力を成しても謎が多い、

また、彼女たち艦娘についても。

艦娘たちは日々、国のために、海の平和のために戦い、

深海棲艦を倒すことを目的として、今日も生きているのだ。

【1 欠けた歯車】

 歯車が一つ欠けたとしても、直ちにそれは修復される。

 しかし、そこに再び元の歯車が合わさろうとすることは難しく、

 その欠けた歯車は、戻ってきてもそのまま処分されてしまう――

「古鷹さーん! 相変わらず遅いですよー!」

「ま、待ってよ青葉~! 置いてかないでよ~!」

鎮守府の敷地内でランニングをする二人の少女、青葉と古鷹。姉妹である。

軽やかに走る青葉の後ろを、姉の古鷹が、息を切らせて、必死についていく。

その様子は、あたかも姉妹の上下関係が逆転したよう。

それもそのはず、艦娘にとって姉妹との間に血縁関係はなく、

姉妹というのはいわば、艦娘の整理のためのラベルにすぎない。

よって、それによる上下関係も存在しない。

「もう青葉~、少しは手加減してよ」

「辛いくらいのトレーニングが丁度いいんですよ、

実際、古鷹さんは付いて来れているじゃないですか。

青葉は、古鷹さんのために、付き合っているんですよ!」

「うん、それは嬉しいけど……」

古鷹は腰の水筒の水を一口飲み、大きくため息をついた。

「……もう1週、走ろうか」

「了解です!」

二人は鎮守府を再び駆けていく。

一方は、少しだけペースを落として。

一方は、荒い息を、さらに荒くして。

*****

*****

古鷹、青葉は4人姉妹である。

上から、古鷹、加古、青葉、衣笠。

皆バラバラで、一見、統一のない姉妹ではあるが、姉妹同士の仲はなかなか良い。

頭を悩ませ鎮守府の機関紙を作っている青葉に、衣笠がいざりよる。

「青葉ー、それって次に出す新聞?」

「はい、そうです。だからあまり見ないでくださいね」

「ごめんごめん。新聞づくり、頑張ってね」

青葉の趣味は新聞制作だ。

鎮守府の提督から直接命を受けたものではなく、単なる趣味である。

不定期に刊行し、提督からの内示と同じ掲示板に貼る。

それは、青葉ひとりで作っているとは思えないほどしっかりとしたものであり、

提督や、他の艦娘からの評価も高い。

そんな瞬間に、青葉は理性的な生きがいを感じるのだ。

*****

*****

理性的な生き物にとって、一番恐ろしいのは、他者から不必要とされることである。

『無視は精神的な殺し』と言われるように、

心のどこかで頼りにしていた者との絆が薄れていき、

いつの間にか、消えてしまいそうになるとき、

自分でも驚くほどに、精神的に傷付いてしまうものだ。

青葉は、兵士としては優秀な部類に入る。

毎日のように出撃を繰り返し、夜まで戦うこともある。

一日を戦いきり、食事も摂れないほど疲れ果て、部屋に戻ったとき、

部屋は真っ暗で、皆、ぐっすりと寝ている。

自分の任務は敵と戦うことであり、

そんな任務を全うできるのは誇りであるはずだ。

しかし、心のどこかで、仲間のぬくもり、

心のよりどころを求めてしまう。

そんな、自分の汚い思いを情けなく感じて、

青葉は今日も、任務を遂行する。


「青葉、どうかしたの?」

「はいっ!」

青葉は勢いよく、声のする方を振り向く、

そこにいるのは、姉の古鷹。

「ボーっとしてたよ、結構長い時間……」

「あー、いやこれは……」

青葉は手元を見ると、書きかけの記事、そしてノートパソコン。

「そうだ! 記事を練っていたんですよ! 

いや~、新聞づくりって手間がかかるもので、

いや、だから楽しいんですけどね……」

「……そう、何か、手伝えることがあれば、私、手伝うからね」

「ありがとうございます……」

青葉は気持ちを紛らわすため、新聞づくりに集中する。

古鷹は、青葉の表情が妙に暗かったことには触れず、

青葉の下から去った。

*****

*****

「おっはよーございまーす!」

青葉は大きな声で起床し、姉妹たちを起こす。

これは、青葉の日課だった。

「ん~、おはよう青葉」

「相変わらず、朝から元気だよね」

古鷹と衣笠はすぐに起きる。しかし、いつも通り、加古は中々起きない。

「加古さん、朝ですよー。起きてください」

暇さえあればどこでも寝てしまう加古。

夜更かしをしているわけでもないのに、なぜかいつも眠そう。

「んん~まだ夜中だよ~」

「なに寝ぼけたことを言ってるんですか? さあ、起きましょう!」

加古を起こすのに苦戦する中で、ふと、頭によぎる疑問。

もし自分がいなかったら、何が変わるのだろうか――

自分の存在価値とは何なのか。

自分の、兵士青葉の存在価値は、戦績以外にはないのだろうか。

そんな人生は、幸せなのか……現にいま、自分は幸せではないと思う。

もっと、個人としての青葉を見てほしい。

兵士としての、青葉ではなくて。

青葉の、生き方に対する疑問は、日に日に深く、

そして、暗くなっていった。

もし、自分がこの場から消えてしまったとしても、

抜けた穴は直ちに修復され、

何事もなかったかのように、自分はその場から抹消する。

そう思うと、青葉はより一層、自分というものが分からなくなるのだ。

淡々と敵を殺し、淡々と毎日を過ごす。

出撃の際、今日、死ぬかもしれないと思えば、

多少は自分の命に執着が湧くものの、

実際に危機的状況というものはめったには起こらず。

また、淡々と帰投するのだ。

自分は強い、それゆえに考えてしまう、自分の価値。

なんだかんだで、自分は必要ないのかもしれない。

喜びから覚めることはたやすいのに、

暗い感情は、一度はまってしまうと、自力で抜けるのは難しい。

まるで、網にかかった魚のように。

青葉はある日、失踪した。

そして、鎮守府は大騒ぎになった。

青葉のいない部屋で、最初に目を覚ましたのは古鷹だった。

いつも聞こえていた、青葉の声が聞こえてこない。

だから目を覚ました。

それは衣笠も一緒であり、目を覚まし、周りを見渡すと、

そこには青葉はいなかった。

いつもはなかなか目を覚まさない加古でさえ、

青葉のいなくなった部屋に異様な空気を感じ、

自ら目を覚ましたのだ。

青葉は決して、兵士青葉としてだけの存在ではなく、

姉妹にとって、欠けてはならない存在となっていたのだ。

その日の朝は、『青葉』がいなかった。

「青葉は見つかったのか?」

「いえ、どこにも……」

「おい古鷹! 青葉について、何か心当たりはないのか?」

「心当たり……」

古鷹は虚空を見つめ、過去を思い返す。まだ青葉がいた日のことを。

思えば、このところ、青葉の顔が暗かった。何か思いつめているように。

そしてよく、無邪気に楽しむ小さい子を、遠い目で見つめていた。

もし自分が、青葉をもっとよく見ていたら、

もし自分が、青葉の背中を一度だけでも叩いてあげたら、

もし自分が、もっと青葉の近くにいたのなら、

青葉は今も、自分の横にいて、笑いあっていたのかもしれない。

青葉がみんなの前から姿を消すことはなかったかもしれない。

いつの間にか当たり前に感じていた、青葉がそばにいる生活。

まだ、楽しかった日常……

「……心当たりが、あるんだな」

古鷹は我に返る。知らずのうちに、頬に涙を流して。

目をこすり、口を開いた。鎮守府の皆が、古鷹を見ている。

「……青葉は、普段は元気で明るいけど、

どこか、ふっと消えてしまいそうな不安定さがありました。

きっと青葉は……もう、何かに疲れてしまったのかもしれません。

もう青葉は……帰ってこないかもしれません。

ごめんなさい……。ごめんなさい……。」

周りは静まり、古鷹の嗚咽があたりに響き渡る。。

提督は目を閉じ、込み上げる感情を抑えていた。

ここで泣き出しても、何も解決しないと。

しかし時は残酷で、敵軍隊の接近を知らせる警報が鳴り響く。

提督は艦娘を指示し、出撃を開始した。

歯車が一つ欠けたとしても、直ちにそれは修復される。

しかし、そこに再び元の歯車が合わさろうとすることは難しく、

その欠けた歯車は、戻ってきてもそのまま処分されてしまう。

――しかし実際には、欠けた歯車のあったところには、

目に見えない何かが、ずっと、今も、欠けている。

*****

*****

青葉は、夜の静かな街を放浪していた。金には困っていなかった。

艦娘としての給金が銀行口座に貯金されていることは承知しており、

また、新聞づくりのノートパソコンを買う際には、その金を使った。

今はただ、ぶらぶらと、鎮守府の仲間たちのことを頭によぎらせながら、

夜の街を放浪していた。

海辺の港町に来たが、そこから艦娘たちは見えない。

艦娘が戦うのは、ずっと沖の方だ。

一瞬だけでも、出撃の瞬間を見られないかと試みるものの、

勝手に失踪しておいて、仲間を探す自分が情けなくなり、海辺から離れる。

自分は何がしたかったのだろうか。

街に出たところで、艦娘である自分が働けるわけもなければ、

そもそも自分には、この戦争以外に生きる術がないのだ。

外に出てみて、改めて鎮守府の温かさを再確認した。

こんなことなら、置手紙でもおいてくればよかったと、自分の早とちりを後悔する。

鎮守府に戻りたいものの、仲間を裏切った自分を受け入れてくれるとは、到底思えず、

先に不安を抱えながら、街の中を放浪するのみだ。

青葉は、海辺を意味もなく歩き続け、不安な気持ちを紛らわそうとする。

しかし、不安の膨張はとどまるところを知らない。

皆に会いたい、鎮守府の皆に会いたい、

そう願ったのはこれで何回目だろうか。

鎮守府に戻ったところで、居心地は良くないに決まっているにも拘わらず――

雲行きが怪しくなり、邪悪な黒い影が辺りを包み込む。

雨が降ってきた。

青葉は駅に向かって走った。駅なら雨宿りをしていても怪しまれない。

何しろ照明が明るく、人も多い。

一人ぼっちで雨宿りをするのを、青葉は考えもしなかった。

小ぶりだった雨が段々と強さを増し、

雨が地面を打ち付ける音が、青葉の周りを包み込んだ。

電車から降りてくる人々が言うには、台風が上陸するらしい。

台風、社会経験が皆無の艦娘であっても、海上で活動する以上、

その恐ろしさは、誰でも知っている。

ああ、なぜこんなことをしてしまったのか。

自分の愚かさを噛みしめながら、青葉は激しさを増す雨を眺める。

駅の人通りも、少なくなってきた――

(欠けた歯車 -FIN)

【2 良質な物】

 散々なやみ、今まで支えてくれた仲間を裏切り、

 一日のうちに、その決断を後悔する。

 こんなクズな自分にも、まだ、仲間がいる。

提督から呼び出しを受け、少女は提督室のドアをノックする。

小柄で幼く、外見は小学生そのものではあるが、

この少女も立派な艦娘の一員なのだ。

「失礼します!」

部屋に入ると、提督はペンを置き、胸の前で手を組んだ。

「ご苦労。君に、少し特殊な任務を頼みたい」

「はい! 司令官のお役に立てるのであれば、何であろうと、引き受けるつもりです!」

少女の、見た目の幼さとは裏腹の、この軍人らしいこの忠誠心に、

提督は小さく微笑んだ。

「まだ内示は出していないのだが、近々台風が日本に上陸するらしい。

そこで、君には一種の救出任務に携わってほしい」

「救出任務……ですか」

少女は首を傾げ、提督から、任務を聞いた。

少女は早速準備に取り掛かる。

決行は明日。大きな任務ではないにしても、

少女にとって、いや艦娘にとって、この任務は非常に異色なものであった。

見ず知らずの地、鎮守府の外に出て、街に出るというのだ。

*****

*****

「こ、こんな格好でよろしいのでしょうか?」

「うむ、それが、街の女子らしい服装だ」

色のついたTシャツに、腰の部分がゴムでできたスカートをはき、

下着はスカートの中に入れ、Tシャツは外に出す。

彼女にとってこの服装は、不自然なものだった。

「シャツを外に出して良いのですか?」

「ああ、良い。入れたほうが変だと思われる」

少女は奇妙そうに自分の服装を見つめている。

「そして、これを肩にかけてくれ」

提督が渡したのは、容量の小さい肩掛けのカバン。

中には金と身分証明書が入っている。

「では、任務をしっかり頼む!」

「了解です! 任務を遂行して参ります!」

少女は提督に敬礼をし、鎮守府を出た。

*****

*****

駅に着き、提督に言われた通り、機械で切符を買い、

可動式の門を通って、電車に乗る。

少女の名前は朝潮と言った。

いくら兵士として練度の高い艦娘であっても、

冷静で臨機応変でなければ、こういった任務は務まらない。

よって提督は、この真面目で従順な朝潮を抜擢した。

台風が近い故か、駅の人は少なく、朝潮が人に流されることはない。

しかし朝潮にとって鎮守府の外の世界というものは非常に珍しく、

また、そこでの常識がわからないのだ。

「台風上陸の予報が出ており、状況次第では運転を見合わせる予定です。

お客様には大変ご迷惑をおかけします、ご了承のほどお願いいたします」

駅に響くアナウンスに、朝潮は不安を覚える。

もしかしたら、自分は、帰ることができないのでは、と。

目的地に着くと、そこからは海が見えた。

激しい雨のため、海は荒れている。

この中でも出撃している艦娘がいる、

荒れた海を見て、朝潮はそう考えた。

複雑な駅の構内をめぐるうちに、雨はさらに激しさをまし、

ついに、運休のアナウンスが入った。

「ただいま台風の影響を受けまして、運転を見合わせております。

お急ぎのお客様には大変ご迷惑をおかけします、申し訳ありません」

朝潮は不安を胸に抱きながらも、任務に努める。

任務は、失踪した青葉を連れ戻すこと。

救出任務とは、ずいぶん誇張した言い方だ。

軍隊は国家権力である以上、個人の特定などたやすい。

特に、それが艦娘の特定ともなれば。

失踪してから、青葉はこの駅の南口周辺をうろついているという。

そして台風ともなれば、駅で雨宿りをするのは当たり前だろう。

青葉は駅から少し離れた所で、雨に打たれながら呆然としていた。

それを見るものは皆、怪訝な顔で青葉を見つめるものの、

誰も声をかけようとはしない。

青葉自身も、かけられることを、すでに望んでいなかった。

朝潮は暴風の中で必死に傘を支え、青葉に踏みよった。

「……青葉さん」

暴風のためか、それとも単に聞こえていないのか、青葉は無反応だ

「青葉さん! 聞こえてますか?」

すると青葉の首が少しだけ動き、ゆっくりと、朝潮に振り向いた。

光のない目に、一瞬、光が差した。

「私は、司令官から命令を受けて、青葉さんを迎えに参りました。

青葉さん、私と一緒に、鎮守府に戻りましょう」

その時、風がさらに強くなり、朝潮の傘を壊した。

しかし、朝潮も青葉に、それを気にしなかった。

「……わざわざ、ありがとうございます。でも……帰ってくれませんか?

私は、もう疲れたんです。こんな自分に……」

「青葉さん……これは司令官からの命令です」

「だから嫌なんですよ!」

青葉の気迫に、朝潮は思わずたじろぐ。

「みんな、私を兵士としてしか見てくれない、

私自身を、見てはくれない。

朝潮さんは、自分がなぜ生きているのか、とか、考えたことありますか?

私はもう嫌なんです。道具としてだけの、私が……」

青葉は感情を丸出しにして、肩を震わせて、泣き始めた。

朝潮はそんな青葉を、じっと見ていた。

「……青葉さん」

朝潮は青葉の目の奥を見つめながら、ゆっくり、青葉に近寄った。

そしてゆっくりと、青葉に優しく抱きついた。

並ぶと頭ひとつほどの身長差があるが、朝潮の背中は決して幼くない。

「……青葉さんは、道具としての、兵士としての青葉さんが嫌だと言いましたね。

青葉さんの居場所は、失踪した日からすでに分かっていました、

でも、司令官は、青葉さんを強制的に戻しはしませんでした。

『今の青葉には、一人になる時間が必要なんだろう』、そう言っていました

実際、青葉さんがいなくなってからの戦闘は、ちょっと苦戦していましたよ。

でも司令官は、青葉さんのことを大事に思って、そうしたんです」

朝潮は青葉に抱き付くのをやめ、一歩下がり、青葉を見つめた。

「私が今日、こうして迎えに参上したのは、

司令官に、台風が来るから青葉を連れて帰れ、と命令されたからです。

司令官は、私たち艦娘のことを、よくよく考えてくれています。

今日、近海の警備に行ったのも、より熟練した人たちみたいですし、

青葉さんが、自分が兵士としてしか見られていないというのは、

きっと、青葉さんの勘違いなのではないでしょうか?」

朝潮が話し終わると、長い沈黙が訪れた。

雨が地面を打ち付ける音が、二人を包み込む。

雨が二人の体を打ち付け、体温を奪っていく。

特に青葉は、半そでだ。

青葉はゆっくりと、そして熱く、泣いていた。

散々なやみ、今まで支えてくれた仲間を裏切り、

一日のうちに、その決断を後悔する。

こんなクズな自分にも、まだ、仲間がいる。

そんな鎮守府の温かさに、青葉は、ゆっくりと泣いていた。

まだ、自分は必要とされている。

青葉が諦めていたものが、そこには残っていた。

「青葉さん、さあ、帰りましょう」

「……」

青葉は、まだ、声を発することができなかった。

声を発する前に、嗚咽が漏れた。

「う……うう……」

そんな青葉を見て、朝潮はようやく、青葉が泣いていることに気が付いた。

「青葉さん! 大丈夫ですか? 駅に戻りましょう!」

青葉は、朝潮に支えられながら駅へと歩く。

駅に入った途端、青葉が心のうちに貯めていたものすべてが、

涙と共に、一気に流れ出る。

青葉は声をあげて泣いた。

しゃがみこんで小さくなり、声をあげて泣いた。

そして数分が経った後、青葉はようやく、落ち着きを取り戻した。

「……朝潮さん、ありがとうございます。

……きっと私は、今すぐ鎮守府に帰るべきなのですよね」

その問いに朝潮は、満面の笑みで答える。

濁りのない、純粋な笑みで。

「はい! 皆さんが鎮守府で、青葉さんの帰りを待っています!」

青葉は小さく笑い、目がしらに溜まった涙をふき取る。

「よしっ! ではこの兵士青葉、これより鎮守府に帰投します!」

そう言うと青葉は、台風の豪雨の中を走り出す。

ここから鎮守府まで、10キロメートルはあるにも拘わらず。

朝潮は一瞬戸惑い、そして、青葉に続いて走り出した。

「青葉さん! もっとゆっくり行きましょうよ!」

「遅いですよ朝潮さん! それでもネームシップですか?」

雨の中を駆け抜ける二人の少女は、傍には奇怪に映るだろう。

しかし彼女たちは、そこの何よりも、輝いていた。

歯車は必要だからこそ、そこに存在するのであり、

良質な物に、欠けて困らない歯車があるはずはない。

(良質な物 -FIN)

閲覧ありがとうございます.記念に,私の過去作を載せさせてください.

電「二重人格……」
提督「艦むすの感情」
艦娘という存在
映画『艦これ』 -平和を守るために
深海の提督さん
お酒の席~恋をする頃
忠犬あさしお
影の薄い思いやり

今年の1月から艦これのssを書き始めて,約半年.二次創作ssを書くのは楽しかったです.
これらの作品を読んでくださった方々,またレスをくださった方々には,心の底より感謝申し上げます.
ありがとうございました.

本当は,上記のようなssを短編集のように,より長く書いていくつもりだったのですが,
これをもって,艦これssの執筆をやめようと思います.

今までありがとうございました.またどこかでお会いできたら嬉しいです.

やめちまうのか残念

乙です
何作か見たことあるな
別な作品で書いてくれることを期待してます

最初から見てただけに残念


初めて見たけど良いSSだった
やめてしまうのは残念


今回のは面白かっただけに残念

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