【がっこうぐらし!】由紀「映画のヒーローみたいに」 (26)

由紀「放してっ! まだっ……」

悠里「ゆきちゃんやめて!」

由紀「まだ、めぐねえが外に……っ」

胡桃「駄目だ! もう手遅れだ!」

由紀「早くしないと……」




     ――――めぐねえっ!!

















美紀「はい、カットです」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1442078904

由紀「えっ、終わった?」

美紀「はい。これで全部撮り終わりました」

由紀「やったー!」

胡桃「あー……長かったなぁ」

悠里「やっと一息つけるわね」

胡桃「ゆき。めぐねえ呼んできてくれ」

由紀「はーい。めぐねえ、終わったよー!」

慈「……」

由紀「あれ? めぐねえ?」

胡桃「めぐねえ、ドア開けるよー」

慈「……」

美紀「わっ、震えてるじゃないですか!?」

悠里「えっ」

慈「こっ、このメイク、リアルで、すごく怖い……」

胡桃「あー……」



※原作6巻までの軽いネタバレを含むので、アニメ視聴者でネタバレが嫌な方は注意してください

由紀「でもめぐねえ、この前は怖がってなかったよね?」

慈「だっ、だってあの時は全然近くじゃなかったから」

慈「くるみさん、いつもこれを間近で見てたのね……」

胡桃「慣れればなんてことない……とは言い切れないけど、多少はマシだから」

悠里「ゾンビ役のみんな、ありがとうございました」

ゾンビA(生徒)「次の撮影はいつやるの?」

美紀「えっと……あ、自衛隊が学校に来るシーンの時です。だから早くても来週あたりになると思います」

ゾンビB(生徒)「また呼んでくれよー」

由紀「はーい」

悠里「それじゃ、部室に戻りましょう」

胡桃「おう、帰ろ帰ろー」

慈「腰が抜けて、立てない……」

由紀「あはは」

美紀「ゆき先輩、笑い事じゃないですよ?」

胡桃「あ、大道具用の台車なかったっけ」

慈「乗せるの!?」

【部室:映画研究部】

由紀「はー、これでクラン……くら……なんだっけ?」

慈「クランベリー?」

悠里「クランクアップ、でしょ?」

由紀「あっ、それそれ。これでクランクアップだね!」

美紀「いや、まだ全然撮り終えてませんから」

胡桃「ああ。まだまだあるぞー?」

由紀「ひえー……もう疲れたよ、太郎丸」

太郎丸「ワンっ」

美紀「パトラッシュじゃないんですから」

慈「それで、できた映像はどんな感じ?」

悠里「とりあえず、あの子に回して編集してもらってます」

由紀「ああ、けーちゃん?」

悠里「ええ」

由紀「すごいよねー、けーちゃん。みーくんのお友達でしょ?」

美紀「はい。ああいうの、得意なんです」

胡桃「おっ、みき。自慢げじゃん」

美紀「いや、そんなことないですよ」

慈「ふふ」

胡桃「……それにしてもこの学校、ホントすごいよなぁ」

由紀「え? 何が?」

胡桃「だってさ、急に『すごいゾンビ映画を撮りたい!』って言ったら、学校総出で協力してくれるんだぞ?」

胡桃「そういうのってさ、普通じゃありえないだろ?」

由紀「……?」

悠里「ゆきちゃん、この学校に慣れちゃってるからわからないのね」

由紀「でも私たちも、園芸部の屋上菜園を手伝ったでしょ?」

美紀「そもそも、普通の学校に屋上菜園なんてありませんから」

由紀「えーっ!? じゃ、じゃあ、放課後になって急に野菜が食べたくなったらどうするの!?」

胡桃「ないだろ、そのシチュエーションが」

由紀「じゃあ次のシーンは、くるみちゃんが野菜を丸かじりするところから」

胡桃「資源が大切なんじゃなかったのかよ……」

美紀「確かにすごいですよね、この学校。何でもそろってますし」

慈「校長先生がそういう人だから……」

慈「生徒の自主性を尊重して、特に体育祭や文化祭の力の入れようが物凄くて……」

慈「みんな知ってるでしょ? 去年の文化祭のこと」

悠里「ああ、全校生徒で陶芸作品を作ったアレですか」

胡桃「あったなー、そんなこと」

由紀「えー? 普通じゃないかなぁ。ねー、太郎丸」

太郎丸「わふ」

慈「はー。でも長かった撮影も一旦ストップなのよね?」

美紀「はい。学校がヘリを借りるまでですけど」

胡桃「本当になんなんだこの学校……」

美紀「あ、学校が燃えるところはCGですよ」

悠里「校長先生なら本当に燃やしかねないわね」

慈「改築工事と同時に進めそうな気が……」

胡桃「……」

悠里「……」

美紀「さっ、さすがにそれは……」

由紀「聞いてみる?」

慈「ゆきさん、駄目よ。絶対に駄目だからね」

由紀「とまあ、冗談はそのくらいにして」

胡桃「嘘つけ。本気の目、してたぞ」

由紀「ぎくっ!」

由紀「……そうだ! 撮影の時、大変だったこと暴露ゲーム!」

美紀「なんですかそれ」

悠里「大変だったこと?」

由紀「そう! これが一番大変だったなー、って思ったところをみんなで挙げていくの」

由紀「同じところを言ったら負け」

美紀「負けとかあるんですか」

由紀「何事も勝負が肝心だからね。ラブアンドピースの心で行くよ」

胡桃「愛も平和もないな」

由紀「じゃあまずは……さっきからちょっとソワソワしてる、くるみちゃんから!」

胡桃「ソワソワなんてしてないんだが……まあいいか。最初なら負ける心配を考えなくてもいいしな」

慈「えっ、勝負するの?」

胡桃「大変だったこと……そうだなー」

胡桃「あ、あれだ。シャベル背負ったまま、みきと短距離走するところだ」

悠里「ああ、そういえば何回か撮りなおしてたわね」

胡桃「シャベルがなー、重いんだよ。陸上部だっていうのは設定だし」

由紀「え? でもくるみちゃん、すごく楽しそうに『ハンデだ』ってみーくんに言ってたよね?」

胡桃「そういうセリフだからだよ!」

美紀「ありましたねー」

胡桃「ありましたねー、じゃねーよ! あの時は全然手加減してなかったくせに」

美紀「ハンデですから」

胡桃「だからそういうセリフだって!」

慈「そういえばあの時、武器として使うシャベルと、撮影用の軽いシャベルを間違えって背負ってたって聞いたけど……」

胡桃「そうそう! めぐねえが気づかなかったら、一生撮り終わらなかったよ……筋肉痛になったし」

胡桃「って、あれ? 聞いた? 誰に? 気づいたの、めぐねえじゃなかったの?」

悠里「気づいたのは私よ」

胡桃「えっ」

悠里「……黙ってる方が面白いかな、って」

胡桃「もう信じない! もう誰も信じないからなっ!」

胡桃「信じられるのはめぐねえだけだよ……」

慈「私も、ちょっとおかしいな、とは思ってたんだけど……」

胡桃「」

太郎丸「ワオン」

由紀「じゃあ次、りーさんの番ね」

悠里「私? そうねえ……」

悠里「……」

由紀「あれ? りーさん、まさか思いつかない?」

悠里「ううん。そうじゃなくて……思い当たる部分が多すぎて」

由紀「えっ」

悠里「でも一番大変だったのは、寝るシーンかしら」

慈「寝るシーン? それって結構あったんじゃ……」

悠里「本当に寝ちゃって」

由紀「えっ!? りーさん寝てたの!?」

美紀「全然気づきませんでした」

悠里「ほら、私って目を細めてるシーンが多かったから」

胡桃「おいおい」

美紀「そういえば、たまにセリフが抜けてるところがありましたね」

悠里「寝ぼけてて」

由紀「あー。そういうアドリブかと思ったよ」

慈「私は寝るシーン、なかったなぁ」

由紀「だってめぐねえ、すぐゾンビになるもん」

慈「それはそうだけど……。私もみんなと一緒にいるシーン、もう少しほしかったというか……」

胡桃「ゾンビになって、私の腕をひっかいたシーンあったじゃん」

慈「人間として!」

由紀「あ、リボンはいっぱい映ってたよね?」

美紀「はい」

慈「人間の部分を……」

由紀「めぐねえはゾンビのシーンが大変だったの?」

慈「それもあるけど……やっぱり一番は、ゆきさんの妄想として登場するシーンが一番大変だったわ」

胡桃「え? なんで?」

美紀「簡単そうに見えますけど……」

慈「ほら、髪を長く見せるウィッグつけたり、出るところ間違えたりして……」

悠里「確かにそれは面倒ですね」

胡桃「ああ、何回か間違えてたような気もする」

美紀「でもNGは少なかったような……」

由紀「演技してたから本当に影が薄くなったのかもね」

慈「うれしくない……」

由紀「じゃあ次はみーくん!」

美紀「私は特になかったですよ」

由紀「えー、つまんない」

悠里「そうよ。何か言わないと」

美紀「ええっ。ていうかりーさんも乗り気だったんですね」

美紀「でも、そんなにはなかったような……」

美紀「あ」

慈「何か思い出したの?」

美紀「先輩がたと初対面のような演技をするのが大変でした」

胡桃「あー。それな」

胡桃「それって由紀にも当てはまらないか?」

由紀「なんで?」

胡桃「いや、お前ずっとみーくんみーくんって言ってただろ? 初対面なのに」

悠里「ピアノの上のみきさんを見つけたときも、『みーくんを助けよう』って言ってたわね」

由紀「そうだっけ」

慈「私は行ってないから知らないけど、そんなことがあったの?」

胡桃「ああ。大変だった。撮影止まるたびに、みーくんみーくんって」

悠里「みきさんも、まんざらじゃなさそうな顔してたしね」

由紀「えっ? ホント?」

美紀「してません!」

太郎丸「ワン」

胡桃「ほら、太郎丸もしてたって」

美紀「むむ……」

慈「じゃあ、ゆきさんが大変に思ったところはどこ?」

由紀「大変に思ったところ? うーん、どこだろう」

胡桃「言い出しっぺなのに考えてなかったのか」

由紀「あははー」

由紀「ちょっと待って、今から真面目に考えてみる」

悠里「くるみ、静かに」

胡桃「なんで私なんだよ」

慈「……元気だから?」

胡桃「あ、うん。ありがと、めぐねえ」

慈「お礼言われちゃった」

由紀「よかったね、めぐねえ」

美紀「先輩は考えてくださいよ」

由紀「そうだった」

胡桃「真面目って何だったんだ」

由紀「あ、思い出した!」

悠里「どこだったの?」

由紀「学園生活部、って紙を貼り付けるところ」

美紀「ええっ!?」

悠里「想像してたより、はるかに序盤だったわ……」

胡桃「そこかー……」

由紀「あと、くるみちゃんを生贄にして、めぐねえを復活させるシーン」

胡桃「そんなシーンなかったよ」

美紀「そういえば撮りましたね。くるみ先輩が寝てるときに」

悠里「あの時の魔方陣の模様、ゆきちゃんが考えたのよね」

胡桃「……ウソ?」

悠里「ええ」

胡桃「びっくりした! 超びっくりした……」

美紀「あ、圭からメールが来ました。もうすぐ編集が終わるみたいです」

由紀「ワクワクするね!」

悠里「今回撮ったシーンを途中に挟めば、中盤までは出来上がりだったわよね?」

胡桃「まだ終わりは決めてないけどな」

美紀「次は太郎丸の出番も増やしたいですね」

太郎丸「ワンっ」

慈「私の遺書の部分、本当に公開しちゃうの?」

由紀「うん。めぐねえが寝ぼけて書いたところがそれっぽいから」

慈「ああー……じゃあせめて、寝ぼけて書いたっていうのは内緒にしてね?」

胡桃「撮影に協力してくれたみんな、すでに知ってると思う」

慈「はうっ」

由紀「とりあえず学校を爆発させて、次は……学校の外に出よう!」

胡桃「あれ? 炎上じゃなかったのか?」

由紀「映画と言ったら爆発だよ!」

由紀「あ、芸術か。まあ映画も芸術だし、そんな感じ」

悠里「何にせよ完成が楽しみね。ある意味では卒業制作みたいなものだし」

胡桃「卒業するまでに終わるかな?」

由紀「なんならもう1年……」

美紀「私たちが先に卒業することになりますね」

由紀「そんな! おいてかないで!」

胡桃「勉強しなくていいのはゾンビがいる世界だけだぞー?」

慈「そうね。まあ、映画では勉強もしてたけど」

胡桃「ま、ゆきが留年するのはどうでもいいとして、そろそろ見に行くか」

悠里「そうね。じゃあゆきちゃん、今度から私のことは悠里先輩って呼ばないといけないわよ」

美紀「私は呼び捨てにできるわけですね」

由紀「そ、そんなー! ちゃんと勉強するからぁー!」






      HAPPY END

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