トコハ「お見舞いに来てあげたわよ」 クロノ「おう」(17)


・ヴァンガードGのSS

・短い

病室……

トコハ「《夢紡ぐラナンキュラス アーシャ》でヴァンガードにアタック」

クロノ「《アルリム》で完全ガード」

トコハ「むぅ、完ガ持ってたか……それにしても思ってたより元気そうで良かったわ。これならすぐに退院出来そうね」

クロノ「昨日折れたばっかりなんだぞ。そうすぐには出れねーよ」

トコハ「クロノなら根性で何とかしそうに見えるけど?」

クロノ「無茶言うな。いいからさっさとトリガーチェックしろよ」

トコハ「前々から思ってたけどたまに言い方が偉そうなのよね、アンタって……あ、ラッキー♪」

クロノ「ちょ、ここでクリティカル3枚? ただのカジュアル・ファイトでどういう引きしてんだよ、お前!?」

トコハ「それじゃあトリガー載せたリアガードでヴァンガードをアタックっと」

クロノ「ノーガード、ダメージチェック……はぁ、俺の負けだ」

トコハ「やりぃ♪ だけど今朝はびっくりしたんだからね。クロノが怪我して入院したって聞いた時はさ」

クロノ「悪かなったな、心配掛けさせて」

トコハ「ああ、確かに驚いたけど私は別に心配はしなかったわよ。クロノってほら、何か殺しても死にそうにない感じだし」

クロノ「何だ、それ? さっきの謝罪の言葉返せよ」

トコハ「でもクミちゃんとか他のみんなは本当に心配してたわよ。みんなの悲しい顔を見たくないならこういう怪我はこれっきりにしときなさいよね」

クロノ「……分かったよ」

トコハ「ところで今更なんだけど個室なんだね、クロノの病室」

クロノ「ああ、俺は相部屋でも良かったんだけどちょうど開いててせっかくだからって」

トコハ「ふ~ん。でもずっとここに1人で居たら寂しくならない?」

クロノ「別に。1人なんて慣れてるし」

トコハ「そっか。確かにクロノって無駄に1人で時間潰すのとか得意そうだもんね」

クロノ「無駄って何だよ、無駄って」

トコハ「まあ寂しくなったら何時でも呼びなさいよ。暇だったら来てあげるから」

クロノ「呼ぶのは何時でも良いけどそれで来るのは暇な時だけかよ……まあ最初から呼ぶつもりはねーけどさ」

トコハ「さて、どうする? 暇だしもう1戦する?」

クロノ「当然。負けっぱなしは性に合わねえからな」

トコハ「ふふん、返り討ちにしてあげるわよ」

トントントン

トコハ「あら、誰か来たみたいね。はい、どうぞ」

クロノ「お前が返事すんのかよ」

ガラガラ

シオン「やあ」

クロノ「何だ、シオンも来たのか」

トコハ「遅いわよ、シオン。私1人でクロノの面倒見るの大変だったんだからね」

クロノ「お前は何を言っているんだ?」

シオン「ごめん、ちょっと用事を片付けてて……それより怪我したって聞いたけど全然何ともなさそうだね」

クロノ「俺の右足のギプスが見えないのか?」

シオン「本当だ、結構ガチガチに固定されてるね。荷物載せても良いかい?」

クロノ「良くねえよ! 何爽やかな顔で恐ろしい事言ってんだよ!?」

シオン「まあ冗談はこれくらいにして元気そうで安心したよ、クロノ。これならすぐに退院出来そうだね」

クロノ「何かさっきも聞いたぞ、その台詞」

トコハ「シオン、その手に持ってる袋は何?」

シオン「ああ、お見舞いに来るのに手ぶらは悪いと思ってね。ここに来る途中で買って来たんだ、はい」

クロノ「おお、網目模様のメロンだ」

トコハ「見るからに高そう」

シオン「そんな大した物でも無いけどね」

トコハ「確か包丁あったわよね。早速切ってみんなで食べましょう」

クロノ「おい、俺が貰った見舞いの品だぞ? 何勝手に食べようと……」

トコハ「何? クロノはこんな美味しそうなメロンを独り占めしようって言うの? 新導クロノって男はそんなにケチな人間だった訳?」ギロリ

クロノ「あ、いや、その……」

トコハ「こういう美味しい物はみんなで食べるのが一番なのよ! 1人占めは駄目、絶対! 分かった?」

クロノ「あ、はい」

トコハ「よろしい。それじゃあきっちり三等分するわね」

クロノ「……なあ、俺なんか間違った事言ったのか?」

シオン「さあ?」

メロン切り分け後……

トコハ「美味しい♪ こんな美味しいメロン食べたの初めてかも!」

クロノ「本当だ。滅茶苦茶美味い」

シオン「喜んで貰えたなら良かったよ。ところでクロノはどうして右足を折ったんだい? 原因をまだ聞いてないんだけど?」

トコハ「何か木から降りれなくなった猫を助けようとして誤って落ちたんだって。しかも降りれない様に見えたのは勘違いで、猫はクロノが落ちた後に普通に1人で降りたらしいわよ。馬鹿みたいでしょ?」

クロノ「馬鹿とか言うなよ、馬鹿とか」

シオン「成る程ね。でもある意味で君らしい怪我の仕方だと思うよ」

トコハ「しかしこんな美味しいメロンが食べられるのもクロノが足を折ってくれたおかげね。ありがとう、クロノ」

クロノ「ここまで嬉しくないお礼の言葉もそうねえだろうな。というかお前は手ぶらで来たよな?」

トコハ「私からのお見舞いなんてこの笑顔で十分でしょ?」

シオン「ふふふっ」

クロノ「おい、何人の顔見て笑ってんだよ? 感じ悪いぞ」

シオン「ごめん。でも2人とも元気みたいで良かったなと思って」

クロノ「は? 2人?」

トコハ「!」

シオン「君が怪我をしたって報告を受けて一番心配してたのはトコハなんだよ。僕あんなに慌てたトコハを見たの初めてだったよ」

クロノ「へ?」

トコハ「ちょっと、シオン! いきなり何を言い出すのよ!!」

シオン「学校が終わったら飛び出す様に教室を出たからね。今も制服だし多分そのままここに来たんじゃないのかな?」

トコハ「いい加減な事言わないでよ、シオン! 嘘だから! 私は別にアンタを心配なんかしてないんだからね、クロノ!!」

クロノ「トコハ、お前……」ジーン

トコハ「そんな目で私を見ないで!?」

シオン「だからトコハが手ぶらで来た事も許してあげて欲しい。多分早く君の無事を確認したくてお見舞いの品を選ぶ暇も無かったんだよ」

トコハ「もう黙れよ、そこの爽やか御曹司!!」

クロノ「トコハって思ってたよりずっと良い奴だったんだな……俺、あいつへの認識をもう少し改める事にするわ」

シオン「多分時折出る辛辣な言葉は愛情の裏返しなんだよ。何て言ったかな? 昔ユウヤから聞いたんだけどこういうのは、えっと、ツン……」

トコハ「言いたい放題言って……ああ、もう頭に来た!!」ウガー

クロノ「なっ、お前何を人のメロン勝手に食べてんだよ!?」

トコハ「うるさい、うるさい! もうあんた達にこのメロンは食べさせない! 全部私1人で食べてやる!!」

シオン「みんなで食べるのが美味しんじゃ無かったのかい、トコハ?」

クロノ「あっ、また食べた! くそっ、良い奴って発言は撤回だ! 食べた分、お前のメロンを寄越せ!!」

トコハ「これは私のメロンなのよ! 安城トコハのメロンなの!!」

看護士「こら、貴方達! 病院で何騒いでるの!!」

…………

クロノ「……疲れた」

トコハ「……疲れたわね」

シオン「……疲れたね」

クロノ「まったく、見舞いに来られてこんな目に会わされちゃたまったもんじゃねえぜ」

トコハ「うぅ、さすがに悪かったわよ……でも元はと言えばシオンが変な事言うから」

シオン「僕そんなに変な事言ったかな?」

トコハ「言ったわよ。大体シオンは……」

クロノ「ああ、もうやめろよ。また看護士さんに叱られるから」

トコハ「そうね……じゃあ今日はもう帰ろうか」

シオン「そうだね」

トコハ「じゃあクロノ、明日も学校の帰りに来るから」

シオン「今度は何か別のお見舞いの品を持ってくるよ」

クロノ「無理に来なくて良いぞ」

トコハ「そんな事言って来なかったら来なかったで寂しがる癖に」

シオン「だろうね。クロノは意外と寂しがり屋っぽいところがあるらしいし」

クロノ「勝手に決めんな! いいからさっさと帰れよ」

トコハ「はいはい、それじゃあまた明日ね」ノシ

シオン「また明日。早く退院できる事を祈ってるよ」ノシ

ガラガラ…ピシャ

クロノ(ふぅ、やっと帰った)

クロノ(あ、そういえばトコハにリベンジ挑むの忘れてたな)

クロノ(まあいいか。対戦する機会なんていくらでもあるし)

クロノ「…………」

クロノ(それにしても静かだな)

クロノ(それにちょっと落ち着かない)

クロノ(昔はこんなの感じた事なんてなかったのに)

クロノ「…………」

クロノ「…………」

クロノ「……また明日、か」ボソッ

<おわり>


以上です。では。

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