幼馴染「はいはーい!立候補しまーす!」(52)

男「って言ってさぁ…お前、委員長になったじゃん?」

幼馴染「うん」

男「でさ、俺は高校に入学したときから言ってたよな?静かに暮らしたいって」

幼馴染「そうだねぇ」

男「なのにお前はさぁ…俺を副委員長に推薦したよねぇ」

幼馴染「したねぇ…でも良かったじゃん。楽しいよ、私は」

男「お前が楽しくてもなぁ…」

幼馴染「でもさ、私がこうして男の背中を押さなかったら、灰色の高校生活になってたんだよ?」

男「決め付けるな」

幼馴染「そう考えたら、むしろ感謝してほしいくらいだよ」

男「なーにが感謝だなにが。……はぁ、これからどうしよ」

幼馴染「どうせ部活も入ってないんだから、こうして放課後に残れるのはいいことだと思うよ?」

男「まぁ確かに…家に帰ってもやること無いしなぁ」

幼馴染「こうやって美少女と一緒に放課後、仕事できるんだから。喜びなよ?」

男「微少女の間違いだろ」

幼馴染「微妙ってことかコラ」

男「はぁ…面倒だ…俺今何やってるんだっけ」

幼馴染「プリントの整理。全員分あるか、ちゃんと確認してよね」

男「へーい…」

幼馴染「ね、これ終わったら帰りにどこか寄ろうよ?」

男「家に直行したい」

幼馴染「却下」

男「じゃあ聞くなよ…」

男「大体さぁ…お前違うよ」

幼馴染「違うって、何が」

男「委員長キャラって言うのはさ…もっとこう…眼鏡が似合って、クールで…」

幼馴染「ふむふむ」

男「勉強もできて、みんなを纏める力があって、読書好きで…」

幼馴染「うんうん」

男「お前とは正反対なんだよね」

幼馴染「んなっ…私は馬鹿だとでも!?」

男「学力はいいけど馬鹿な行動が目立つみたいな?」

幼馴染「ふーんだ、どうせ私は物静かなお嬢様キャラじゃありませんよーだ」

男「活発系だもんな。委員長とは程遠いよ」

幼馴染「とか言って、手が止まってるぞー」

男「面倒だなぁ」

幼馴染「あと少しで終わるから、もう一踏ん張り!」

男「どうせ明日も明後日もあるんだろ?」

幼馴染「先生によるよ」

男「生徒にまかせっきりにするなよー担任ー」

幼馴染「私は任せてくれてもいいんだけどねー」

男「…俺を巻き込むなよ」

幼馴染「だーめ、男も一緒に残るの」



男「……やっと終わった」

幼馴染「お疲れ様ー」

男「その紙の束…どうすんの?」

幼馴染「職員室に持っていくよー」

男「そうか…じゃあ行こう」

幼馴染「おうとも!」

男「うわー…薄暗い」

幼馴染「もうあんまり残ってる人もいないねー」

男「さすがにこんな時間じゃあな」

幼馴染「こりゃあ、寄り道できそうにないですなぁ…」

男「また明日すればいいだろ」

幼馴染「!」

男「な、なんだよ」

幼馴染「それって、明日も一緒に仕事してくれるってことだよね!」

男「はぁ?……あ」

幼馴染「なーんだ!男も結構やる気じゃん!これからも頑張ろうね!」

男「……」


ガラガラ

幼馴染「失礼しました」

男「…失礼しました」


男「はぁ…疲れた」

幼馴染「相変わらず体力ないねー、私はまだまだ大丈夫だよ?」

男「お前と一緒にすんな…こちとら運動の類は大のつくほど苦手なんだぞ」

幼馴染「全く…男のくせに情けないねー」

男「じゃあお前はもっと女らしくしやがれ」

幼馴染「ま、なにはともあれ…こうして委員長としての学園生活が始まったわけですが…」

男「ですが?」

幼馴染「男に言っておこうと思ってね」

男「何を?」

幼馴染「これからもよろしくね!」

男「……」

幼馴染「……」

男「…こちらこそ」

幼馴染「うん!これからたくさん、一緒に仕事しようね!」

男「はいはい」

幼馴染「はい一回!」

男「さーて帰ろう」

幼馴染「あ!私を置いていくなー!」

男「なんでそんなに元気なんだよお前は」

幼馴染「なんでかなー?……教えない!」

男「はぁ?」

幼馴染「わかったけど教えない!さ、帰ろ?」

男「…なんだぁあいつ?変なの」

幼馴染「はーやーく!」

男「うるせー、ちょっと待て」

しかし、この時俺は予想もしていなかった。
まさか幼馴染の身にあんなことが起ころうとは。
もしこのときに異変に気付いてさえいれば、最悪の事態は避けられたかもしれないのに。





幼馴染「…俺は…愚かだった」

男「勝手にモノローグつけるのやめてくれる?」

びっくりするじゃないか
(;・ω・)

幼馴染「ただ私たちがイチャイチャしてるだけじゃつまらないと思って」

男「イチャイチャしてたか?」

幼馴染「してなかったの?」

男「お前が一人ではしゃいでいたとしか…」

幼馴染「酷い!」

幼馴染「あれ…もう家着いちゃったね」

男「早く感じたか」

幼馴染「そうみたい…男といるからかなぁ」

男「なんで俺といると早く感じるんだよ」

幼馴染「……」

男「なんだよ…そんな目で見るなよ…」

幼馴染「いーだ!また明日ね!」

男「お、おう」

男「なんだぁ…あいつ?」

男「まぁいいや、俺も帰ろう」


しかし、このときの俺は考えてもいなかった。
これが、幼馴染と交わす最後の会話になるなんてことを…





男「しつこい」

幼馴染「てへっ」


翌日

男「ふわぁ…」

幼馴染「おはよ!いい夢みれた?」

男「放課後、お前と一緒に仕事をするという悪夢をみた」

幼馴染「なるほどねぇ…昨日私と一緒に仕事できたことがあまりにも嬉しくて、夢にまで出てきちゃったかぁ」

男「ポジティブだなー」

幼馴染「暗い私なんて見たくないでしょ?」

男「正直見てみたい、幼馴染が泣いているところ」

幼馴染「えぇ!?」

男「だってさー、お前とは結構長い付き合いなのに、泣いてるようなシーンが全く浮かんでこないのよ」

幼馴染「そ、そうかな…私は男の前で泣いたことあるような…」

男「えー?あったかぁ?」

幼馴染「あったよ!………あったよね?」

男「聞くなよ」

>>16
もう騙されないぞ( `ω´)フンス

幼馴染「じゃあさ、もし私が今急に泣き始めたら、男どうする?」

男「引く」

幼馴染「もっと紳士的に!」

男「抱きしめる」

幼馴染「だからもっと優し……え!?」

男「その状態から頭撫で撫でして、泣き止むまでずっと傍にいてやる」

幼馴染「え、えっと…その…」

男「って、言ってほしかったんだろ?」

幼馴染「だ、騙したな!うわぁぁぁん!」

男「文面だと泣きながら走ってどこかに行ってしまったように見えるが、実際は棒読みで依然、俺の前にいる幼馴染であった」

幼馴染「叙述トリックってやつ?」

男「難しい言葉を知ってるな。褒めてやろう」

幼馴染「わぁい!」

男「ちなみに、これは本当に喜んでいるのである」

幼馴染「むしろさっきのが演技だからねー」

男「女って怖いわー……」


放課後

男「じゃあまた明日な」

幼馴染「おい」ガシッ

男「なにをするんですか幼馴染さん、しんでしまいます」

幼馴染「今日も仕事があるよ」

男「えぇ……わかっていたとはいえ面倒臭い」

幼馴染「面倒でもやるの。若いころの苦労は買ってでもしろっていうでしょうに」

男「いいよ別に…老いてから苦労するし」

幼馴染「ダメ人間すぎる!」

男「はぁ…やりますよ、やればいいんでしょー」

幼馴染「態度が気に入らないけど…まぁ、やる気があるならよしとしますか」

作業中

男「…まだ、人残ってるのな」

幼馴染「まだ明るいからねぇ…ほらほら、夕日が綺麗だよ?」

男「本当だ…あんなに赤くなるもんなんだな」

幼馴染「そうだねぇ…ちょっぴりセンチメンタルな気分」

男「なにいってんだお前」

幼馴染「い、いいじゃん!たまにはクサいこと言っても!」

男「でもまぁ…言いたくなる気持ちもわからんでもないけどさ」

幼馴染「おお?男もいける口ですか?」

男「お前ほどではないけどな。こうまで綺麗な夕日見せられちゃ、何も言えん」

幼馴染「確かに、教室も赤く染まったね」

男「赤っていうか橙?」

幼馴染「どっちでもいいよー」

男「……」モクモク

幼馴染「……」モクモク

男「……」

幼馴染「……なーんかさ」

男「ん?」

幼馴染「こういうの、いいよねっ」

男「こういうのってどういうの?」

幼馴染「今の状況!」

男「?」

幼馴染「夕日で赤く染まった校舎…グラウンドから響く運動部の掛け声…かすかに聞こえる吹奏楽部の楽器の音色…」

男「うん」

幼馴染「これぞ……青春!」

男「うん」

幼馴染「絵に描いたような青春だよ!そう思わない!?」

男「そうかぁ?」

幼馴染「そうだよぉ!これ以上の青春っぽいことってある!?」

男「んー……じゃあ、一つ」

幼馴染「ほうほう?」

男「……恋とか」

幼馴染「鯉?」

男「ベタな間違いをありがとう」

幼馴染「……クッサぁぁぁぁ!!」

男「ちょ、声でかい……ってあれ?みんな帰っちゃったか」

幼馴染「お、男が恋って……あはは!お腹痛い…」

男「笑いすぎだろ…」

幼馴染「だ、だってそういうのに一切関心のなさそうな男が…あはははは!」

男「はぁ…言わなきゃよかった」

幼馴染「なにー?男、恋してるの?」

男「うん」

幼馴染「そっかー、あはは……ん?」

男「ん?」

幼馴染「恋、してるの?」

男「うん」

幼馴染「え、えっとそれって…私の知ってる人…?」

男「いやぁ、どうだろ?知らないんじゃないかな」

幼馴染「私の…知らない人…?」

男「いやぁ…言いたくなかったんだけどなぁ…恥ずかしいな、やっぱ」

幼馴染「そ、そんな……」

男「今言った事、内緒だぞ?誰にも言うなよ?」

幼馴染「秘密…?」

男「そう」

幼馴染「……」

男「いやぁーこういうことって幼馴染のお前にしか言えないからなー」

幼馴染「私だけ…」

男「こんな嘘つけるの、お前だけだからなー」

幼馴染「…え?」

男「しかし見事に引っかかってくれたよな。あんなに落ち込むなんて」

幼馴染「……」

男「さすがにちょっと可哀想だったからもうネタバラししちゃったけど…もっと続けたかったなー」

幼馴染「……お」

男「お?」

幼馴染「男の馬鹿ぁぁぁぁ!」

男「え、え?」

幼馴染「私がっ…どんな思いで……」

男「な、なんだよ…そこまで怒るものだったか?」

幼馴染「乙女の純情を弄んだ罰だ!馬鹿!」ビターン

男「いてぇ!」

幼馴染「もう知らない!」

男「お、おい!」

男「なんだぁあいつ?」

男「あぁ…いてぇ…思い切りぶたれた…」

男「…ていうか、どうするんだよこれ…まだ途中なのに…」

男「……やるかぁ…」


男「そういえばあいつ……さっき泣いてたか?」



男「失礼しました…」

男「……暗い」

男「…早く帰ろう」


「待って」

男「ん?」

幼馴染「……」

男「お、お前…なんでまだいるんだよ」

幼馴染「…図書室で寝てた」

男「寝てたんかい…」

幼馴染「……」

男「…とりあえず、帰るか?」

幼馴染「うん」

男「……」テクテク

幼馴染「……」テクテク

男「……」

幼馴染「…あのさ」

男「!……なんだ?」

幼馴染「……さっきはごめん…思い切りやっちゃって」

男「いや…別にいいよ…俺にも落ち度はあったし」

幼馴染「ううん…私も悪いよ…仕事も押し付けちゃったし」

男「……」

幼馴染「私ってば、男に迷惑かけてばっかりだね…ごめん」

男「……」

幼馴染「明日からはさ、残らなくてもいいよ?私一人でやるから……だからね」

男「…だから?」

幼馴染「また私とお話、してね?」

男「…なんだそりゃ」

幼馴染「じゃ、じゃあまた明日ね!」

男「待て」ガシッ

幼馴染「わわっ、何?離してよ…」

男「いや、だってお前…」

幼馴染「大丈夫だよ…一人で帰れるから……だから、離してよ…」

男「離せるかよ……俺は泣いてるお前を一人で帰させるほどクズじゃないわ」

幼馴染「泣いてなんか…ないよ」

男「……」ギュッ

幼馴染「あ…」

男「今朝の伏線、ここで回収」

幼馴染「え…あれ伏線だったの?」

男「うん。ほれほれ」ナデナデ

幼馴染「うわわ…」

男「泣き止むまで…だからな」

幼馴染「い、いやだ…」

男「え?」

幼馴染「わ、私がいいっていうまで……続けろ」

男「……はいはい、やりますよ」

幼馴染「…よろしい」

男「……」ナデナデ

幼馴染「……この際だから言っちゃうね、私が立候補して、男を副委員長にした理由」

男「唐突だな…ま、聞いてやる」

幼馴染「ありがと…そんなに長くないから、最後まで聞いてね?」

男「承知しました」

幼馴染「ふふっ……私ね、男のことが好きなんだ」

男「……ん?」

幼馴染「いつごろかは覚えてないけど…私は男に惚れていてね」

男「お、おう」

幼馴染「でも、私は臆病だから…告白なんてできっこない…だからね」

男「だから…?」

幼馴染「役職を利用しようとしたの。男と2人っきりでお仕事を続けてれば、いつか男も私に惚れてくれるんじゃないかなって思って」

男「……」

幼馴染「でもね…ダメだった。結局、私の方から言っちゃった…臆病のはずなのに…おかしいね…」

幼馴染「男は私のこと、ただの幼馴染と思ってるってわかってる。でも、なんでだろ…今なら言えるって思った」

男「……」

幼馴染「今なら勇気だせるって…だから…もう一回言うね…?」

男「……」

幼馴染「私は男のことが好き…だから、私と、付き合ってください…」

男「……」

幼馴染「…無理に返事しなくていいからね…男の好きにしてくれればいいから…」

男「……お前は」

幼馴染「!……な、なに?」

男「お前は実に馬鹿だな」

幼馴染「え?」

男「俺だってお前に惚れてたんだよ」

幼馴染「え…え…えぇぇぇぇ!!?」

男「ちょ、うるさい」

幼馴染「え?え?え?う、嘘だよね?」

男「どんなたちの悪い嘘だよ…信じろよ、自分の耳を」

幼馴染「だ、だって男…そんな素振り全く…」

男「そりゃ気付かれないようにしてたからな」

幼馴染「そ、そうだったんだ…」

男「だから、正直副委員長になれたとき…嬉しかったんだよ」

幼馴染「そ、そっか…でも、面倒臭いって…」

男「それは本当」

幼馴染「え、え?」

男「俺がお前を好きなのは本当。副委員長になったときに嬉しかったのも本当。仕事がめんどくさいと思ったことも本当」

幼馴染「う、うん」

男「だからだ…その……」

幼馴染「……」

男「俺と…付き合ってくれ!」

幼馴染「……」

男「……」

幼馴染「うん!喜んで!」

男「はぁ…長かった…やっと想いが通じたか」

幼馴染「私もだよ…やっと男と…その……恋人同士になれた」

男「…なんか恥ずかしいな」

幼馴染「うん…」

幼馴染「でもね、私今とても幸せ!」

男「うん?俺だってそうだよ」

幼馴染「私だってそうだよ!」

男「ははっ…元気になって良かった良かった」


このとき、俺は思いもしていなかった。
まさか



男「おい」

幼馴染「まぁまぁ、最後まで聞いてよ」


このとき、俺は思いもしていなかった。
まさかこの先、今以上の幸せが俺たちに訪れるなんて。

幼馴染「こんどは明るい未来を予想してみました」

男「こいつめ…やるじゃねぇか」

幼馴染「えへへ」

男「それじゃあ、この予想を実現させてやろうじゃないか。な、幼馴染?」

幼馴染「うん!」



きっとこの先、俺たちの前にはたくさんの障害が立ちふさがることだろう。
だが大丈夫だ。俺には、幸せになる未来しか見えないのだから。


幼馴染「最後はこんな感じでどうでしょう!」

男「最高だ!」




終わり

このやろう!乙(^ω^)

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