咲「あ、竹井先輩だ」 (386)


久「~」フラー

咲(この間借りた本の話がしたいなあ…でも忙しいかな)

久「~」フッ

咲(え?あっちは屋上…?でも、屋上ってたしか鍵が…)

咲(…ちょっとだけ、ちょっと様子を窺うだけ…)ススス


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咲「いない…でも、こっちにきたのは間違いないし…隠れられそうな場所もないよね?」

 「――」

咲(話し声…?でもどこから…)

咲(小窓が開いてる…)スッ



久「あー疲れたわー」コキ

セーラ「いっつも疲れてんな」

爽「生徒会長サマは大変なんだろ。おつかれさん」

揺杏「うちは問題児が多いかんねー」

久「問題児筆頭集団がなに言ってんのよ」


白望「あー…ダル…」グテ

純「よっかかってくんな。重いだろーが」

照「…騒ぐなら出てって」

久「あら?屋上はあなただけのものじゃないでしょ?それに本来であれば誰だろうと生徒は入っちゃいけないんだから」

照「…」


咲(うわ…こ、怖い先輩たちがいっぱい…竹井先輩、あんな人たちとも交遊があるんだ…それにお姉ちゃんも…)ジリ

 ぽふっ

咲「わっ!?」

メグ「ンー?」ヌーン

咲(え、しまっ…!いつの間に…!)オロ

メグ「アブナイですヨ、テル。危うくカップ麺をこぼすトコロでしタ」

咲「えっ」

メグ「いつまでも突っ立ってナイデ、入っタ入っタ」グイグイ

咲「ちょっ…」

 ガチャ

咲(えっ、この人鍵を持って…?)


メグ「ヘーイ、オマタセシマシター」

純「おっせーぞダヴァン。さっさとシロの受け木代わってくれ」

メグ「ソノ役目を請け負った覚えはナイのデスガ…」チュルチュル

爽「お?だれだその子」

咲(ど…どうしよう…)オロオロ

久「あら?咲じゃない?」

揺杏「知り合い?」

久「かわいい後輩よ」

セーラ「ほーん」

 ゾロゾロ

咲(か、囲まれちゃったよぅ…!)


メグ「後輩?テルではナイのデスカ?」

爽「や、照はあっちいるし」

照「…」チラ

咲「!」ピク

照「…」

咲(お、お姉ちゃ…)

照「…」フイッ ペラ

咲「…っ」

メグ「オウ…これはイワユル…ドッペルゲンガー!」

純「ンなわけない」


久「照の妹よ、この子。宮永咲っていうの」

セーラ「聞いたことあるわ。このちんちくりんがなー」ジロジロ

爽「ふーん。いいじゃん、なんか初々しくて」

白望「…なんか怯えてない?」

咲「…」ビクビク

久「あんまいじめないでよー?あんたたちと違って咲は繊細なんだから」

揺杏「言えてるわ」クスクス

純「他人事じゃねーからなお前も」


照「…」ハァ

照「ちょっと」スッ

セーラ「おっ、なんやなんや?」

照「…咲のこと泣かしたら泣かす」ボソッ

セーラ「」ゾク

揺杏「うわー、こわ…」ヒク


メグ「ソウデスネ。まずはオチカヅキのシルシにカップ麺でもいかがデスカ?」

咲「あ…遠慮します…」

メグ「そうデスカ…」ガクッ

純「オレが貰ってやろう」ズルル

メグ「シィィーットッ!」

白望「…」ジー

咲「え…あの」

白望「…えい」ガバッ

咲「ぅわっ!?」

白望「これは…いい」ゴロン

咲「えっ、あの…」

白望「…このままで」

咲「あ、ハイ…」

セーラ「オイ宮永、これはええんか」

照「別にいいんじゃないの」

セーラ「ンなアホな」


咲「えっと…」

久「ごめんねー咲。その子、見ての通りのナマケモノなのよ。人をクッション代わりにするだけで害はないから」

咲「はい…じゃなくって!竹井先輩、これはどういうことなんですか?」

久「んー?なにが?」

咲「屋上のこととか、この…先輩たちのこととか…」

久「そういうことね。屋上って本来立ち入り禁止じゃない?」

咲「はい」

久「そういうのって、なんだかいいじゃない?」

咲「はい?」

久「だれも来ない、秘密の場所。ワクワクするでしょ?」

爽「するする」

咲「…そうでしょうか…?」

咲(そもそもなんの説明にもなってないような)


久「こっちについては自己紹介でもしましょ。そこのナマケモノは小瀬川白望」

白望「よろ」

咲「ど、どうも…」

爽「私は獅子原爽、よろしくな」

揺杏「岩舘揺杏ね~。ヨロシク」

咲(この二人、知ってる…いっつもいっしょにいるちょっと近寄りがたい先輩だ)


純「井上純だ。言っとくが、女だ」ズルル

メグ「返してクダサイ!ハヤク返せェェェ!」

純「このうっせーヒョロデカカップ麺野郎がメガン・ダヴァン」

久「ヒドイ言いぐさね」

セーラ「俺がご存知江口セーラや」フフン

爽「なお周知されてないもよう」

セーラ「うっさい!チャチャいれんなや!」

揺杏「ちゃちゃのん?」

セーラ「だれも言うとらんわ!」

久「漫才はよそでやってね」

咲(なんだかよくわからないけどすごい先輩だなぁ…)


久「私のことは知ってるわよね。照も言うに及ばずってところかしら」

咲「あ、はい…」

久「それでぇ、咲にひとつ相談があるんだけれどもー…」

咲「?」

久「ね?」ズイッ

咲(ちっ、ちかっ…!)

久「このことは他言無用でお願い」

咲「えっ、あのっ」

久「特にほら、規則にうるさい連中がいるじゃない?その辺には絶対漏らさないように、お願いね?」

咲「あう…でも、その、これってよくないことじゃ…」


久「なに言ってるのよ?ここでこうしている時点で、咲も共犯じゃない?」

咲「え…」

セーラ「おー、えげつな」

揺杏「カワイソー」クスクス

咲「あの…でも、私…」

久「だいじょうぶよ!約束してくれさえしたら、あなたも私たちの仲間よ?」

咲「あの…うぅ…」

久「どう?」


咲「…わかり、ました…だれにも言いません…」

久「よかったわ。これで私たち、共犯者(ナカマ)ね」ニコッ

咲「…う~っ」ジワァ

照「はい咲を泣かした。久はちょっとこっちきて」

久「えっ!?」

みたいなね
つるんでたらパッと見ワルそうな集団に純朴文学少女咲ちゃんを放り込んだらどうなるか見てみたいよね


 明くる日

咲「はあ…」

咲(大変なことになっちゃったなあ…)

セーラ「おう宮永妹!」

咲「ぅえっ!?え、江口先輩…?」

セーラ「おはよーさん!」


咲「お、おはようございます…あの、どうなさったんですか?」

セーラ「ん?」

咲「なにか急いでるみたいですけど」

セーラ「せや!なにモタクサ歩いてんねん妹!はよせんと遅刻すんで!」

咲「え?ち、遅刻?」

セーラ「あーもう!まだるっこしいなあ!放っておくんも寝覚め悪いし、しゃーないな!」ガシッ

咲「ひえっ」グラッ


セーラ「よー掴まっとき!振り落とされんなよ!」グッグッ

咲「あのっ、いったい…?」

セーラ「いくでー」ダッ

咲「きゃあああああああああっ!?」



智美「ワハハ、なんだありゃ」テクテク

佳織「さあ…?」テクテク


セーラ「よっし、近道や!」ピョーン タン トン

咲「あう…あう…」グルングルン

セーラ「どや!間に合ったやろ!?」

 「ほう?なにに間に合ったというんだ?」

セーラ「せやから遅刻せんで済んだやろっちゅー…」

智葉「…」ゴゴゴ

セーラ「…お?」


智葉「またお前か、江口セーラ。土足で校舎に上がるな、窓からの出入りはするな、危険な真似はするな…いったいどれだけ忠告すればお前は大人しくなるんだ?」

セーラ「げえ、風紀委員!?こっ、これはちゃうって!遅刻せんように致し方なくやなあ!?」

智葉「なにをわけのわからんことを。ついに頭まで筋肉になってしまったのか?」

セーラ「は、ハァ!?なんやとコラァ!」


咲「え…江口先輩…」ボロ

セーラ「なんや!?」

咲「いま…まだ登校時間まっただ中です…」

セーラ「…ホ?」

咲「これ…」スッ

セーラ「なんやこじゃれた腕時計やな…7時30分?え?」

咲「だから…遅刻とか、全然心配ない…です」ガクッ

セーラ「い、妹ォォォォォォ!!」

智葉(なんなんだこいつら」


セーラ「…さん…許さんで辻垣内智葉ァァァァァァ!!」

智葉「許されんのはお前だ。始業時間まで反省文でも書いてろ馬鹿者」ゴスッ

セーラ「いったぁ!?体罰反対!」

智葉「花田。頼んだ」

煌「はいはーい。江口先輩も凝りませんねー。さ、ちゃちゃっと済ませちゃいましょう!」

セーラ「ふざけんな!ちょ、やめ…いやや!朝っぱらからあの部屋はいややーーーーーーー(フェードアウト」

智葉「まったく…朝から騒がしいやつだ」

咲「…」グタッ

智葉「…さて」


 ―――
 ――
 ―

咲(…ん)パチ

咲(あれ…私…そういえば、江口先輩と…)ボー

智葉「…」スタスタ

咲「おねえ…ちゃん…?」ポヤーン

智葉「ん?目が覚めたか」

咲「…え」


智葉「残念だが、私は宮永照ではないぞ」

咲「えっ!?」ガバッ

智葉「こら、動くな。落ちてもしらんぞ」

咲「あっ…」

智葉「江口が君のことをずいぶん振り回してしまったようだな。大変だったろう」

咲「いえ…あの、もうだいじょうぶですから、降ろしてください…重いでしょうし」

智葉「そうか?もうすぐ着くし、気にすることはない。それに、君くらいなら軽いものだ」

咲(…なによりも恥ずかしい…)カァ


咲「あ、もうすぐ着くって…?」

智葉「ああ。ほら」

咲「保健室…?」

智葉「無茶せず、少し休んでいけ」

咲「いえ、でもほんとにだいじょうぶ…」

智葉「失礼する」ガラッ


憩「おっ、おはよーぅ!」

智葉「荒川、悪いがこの子を頼む」

憩「いきなりやね…ちゅーか、この子どないしたのん?」

智葉「まぁ、ちょっとな。どこぞの馬鹿のせいで朝から疲れてしまったみたいだ」

憩「ほーん…ま、ベッドは空いてるし、休んでったらええよーぅ」

智葉「だそうだ」スッ

咲「すみません…」スタッ


憩「…なになに?お姫様抱っこなんてずいぶん過激やね?」ツンツン

智葉「鬱陶しい。邪推するな」チッ

憩「あーん、相変わらずお堅いなーぁ」

智葉「それじゃ頼んだぞ荒川。私は仕事があるので失礼する」

憩「はいはーい」

咲「あっ…ありがとうございました。あの…江口先輩のこと、あんまりきつく怒らないであげてください」

智葉「…」

咲「す、すみませんっ。私が口出しできることじゃないですよね!」ワタワタ

智葉「いや…そうだな。今回はただの勘違いみたいだし、君がそういうなら程々にしておこう」

咲「あっ、ありがとうございます!」ペコッ


智葉「…君は頭を下げてばっかりだな」クスッ

咲「っ…」カァ

憩「おーぅ?あの鬼の風紀委員長と恐れられる辻垣内智葉がこんなやーらかい笑みを浮かべるとはねーぇ?ホの字?ねえねえホの字なん?」

智葉「うざい。おっさんかお前は」

憩「きゃー怖いー!」

智葉「ったく…それじゃ、今度こそ失礼する。宮永咲、また機会があれば話でもしよう」

咲「は、はい!」


憩「もーぅ、冗談が通じないヒトなんやから…じゃ、適当にベッド使ってええからね」

咲「はい。それじゃお言葉に甘えます」シャッ

怜「んー?」

咲「失礼しました」シャッ

咲(…なんだろ。自宅の自室の如きくつろぎ方の人がいたような)


咲「こっちかな」シャッ

白望「…お」

咲「失礼しました」シャッ

咲(いまの小瀬川先輩だよね…あーもう帰りたい)

憩「あ、空いてるんは一番奥やから」

咲「もうちょっと早く教えてほしかったです」


咲「よいしょ…」ポフッ

咲(ちょっとだけ横になろっかな…制服の上は脱ごう)ヌギヌギ

怜「…」ジー

白望「…」ジー

咲「ひゃっ!?」ビビクン


怜「エッロ…」ゴクリ

白望「…気にせず、脱いで」ジー

咲「なんなんですかぁっ!こんな状況で脱げるわけないじゃないですかっ!」ヒーン

怜「ジョークやジョーク。イッツオンジョージジョーク」ゴソゴソ

咲「どうして私の方のベッドに潜り込んでくるんですか?」

怜「そらもう人肌が恋しいからよ」

憩「竜華ちゃん呼ぶ?」

怜「ええよ別に。竜華も生徒会の方が忙しいやろうし」

憩「学祭やらなにやらイベントごとが続くもんなぁ今時期は」


怜「この一年生のふとももで我慢するわ」スリスリ

咲「ひあっ!?」

白望「ずるい。この子は私の」ゴロゴロ

咲「ちょっ、小瀬川先輩まで!」

白望「あー…いやされる」

怜「はー…ええわー…竜華の完成された膝枕もええけど…君のふともも、なかなか素質あるで」

咲「はぁ…ありがとうございます…?」


憩「休むー言うてきたんに、これじゃ休まれへんなぁ」

咲「苦笑いしてないで助けてくださいよーぅ…」

憩「あ、うちの真似?」

咲「え?あっ、いまの違うんですっ」

憩「ええよええよ。やー咲ちゃんはかわいいなーぁ」

咲「うぅ…」マッカ


怜「咲ちゃん言うんか。うちは園城寺怜や。見たまんま病弱やから、たまに膝枕させたってや」

咲「え、ええ…?」

白望「ここはいいよ。荒川さんはおおらかだし、ベッドがあるし」

咲「でも保健室って怪我したり具合が悪くないと利用しませんよね?」

怜「…なんやこの子。めっちゃ純粋やん…なんかごめんなさい」

咲「えっ?いまなんか変なこと言っちゃいましたか?」

白望「…いーんだよ、そのままで」

咲「???」

憩「フフッ、あっちゅー間に保健室の住人に好かれてもうたなぁ」

みたいなね
なんか手癖で愛され咲ちゃんになっちゃうね(モチモチ


咲「あ、和ちゃんだ」

和「…」コソコソ

咲「あっちは…そっか、今日は家庭科研究会の活動日かぁ」

和「…」キョロキョロ サササッ

咲「でも…なんであんなにこそこそしてるんだろ?」

咲(ちょっとついていってみようかな)サササ


咲「家庭科室…だよねここ?」

咲(なんだか…不穏な空気…引き返そうかな…?)

咲「…ちょっとだけ、ちょっとだけ中の様子を窺ってみよう…」コソッ

咲「…なにこれ」



はやり「ハイハイ!みぽりんステップが遅れてるぞ☆」パンパン

美穂子「は、はいっ」キュッキュ

はやり「いいよいいよ~、みんなの心がひとつになっていくのが感じる!すごいぞ☆」

和「フッ…フゥ…!」キュッキュッキュ ターン

由暉子「…っ!」タンッ タタン

いちご「キツイ…キツイんじゃあ~…」ハァハァ


はやり「よーし!…ちょおっと最後ちゃちゃのんがバテ気味だったかな~☆」

いちご「はぁっ…はぁっ…こんなん考慮しとらんかったもん…」ゼエゼエ

はやり「ユキちゃんはちょっと逸りすぎかな。はやりん的にははやってナンボみたいとこはあるけど☆ 周りとの調和はソロにはない課題だね~☆」

由暉子「…はい…っ」フゥ

はやり「のどっちは全体的に良いんだけど、もうちょっとやる気というか、アイドルらしさを意識しないとね☆」

和「…いえ、私はアイドルとかは別に」

はやり「みぽりんはちょっとスタミナがねー…うん、がんばってこう!」

美穂子「は、はひぃ…」


咲「…」

咲「今日は家庭科研究会は休みかな?なにも見なかったし、帰ろ」ドン

 「あたっ」

咲(…あ~もう…これだめなパターン…)

揺杏「ったいな~…お?宮永ちゃんじゃーん」

咲「岩舘先輩…」


揺杏「なになに?今日のゲスト?」

咲「えっと…私にはなんのことやらさっぱり…」

揺杏「おーい!お客さんだよーん」ガラッ

咲「あー…」

はやり「はや?」

和「咲さん…?」

咲「えと…奇遇、だね、和ちゃん…」アハハ


はやり「お客さん?それは“どっち”の?」

咲「どっち…って」

和「咲さん。悪いことは言いません。うちの見学にきてくれたのなら歓迎したいところですが、考え直しましょう。いいことなんてひとつもありませんから」

咲「え?え?」

いちご「ほうじゃほうじゃ。うちももーやめたい…こがぁなん家庭科関係ないもん…」

美穂子「私もちょっとおすすめはできないわ…」

由暉子「そうですか?たまにならいい刺激になって退屈しないと思いますが」

和「それはあなただけです…」

咲(なんなの一体…)


揺杏「んー、たぶんだけど、食い入るようにレッスン風景見つめてたし、アイドルの方じゃね?」

はやり「ほーうほう。ここに辿り着くとはなかなかはややだねっ☆」

咲(は…?)

はやり「そうだねえ…四人だとちょっとバランスが悪いかなーとも思ってたところだしー…それに」チラッ

いちご「…」ポヨーン

美穂子「?」バーン

由暉子「…?」ドーン

和「…」ドドーン

咲「…」チョコーン

はやり「…うん☆ 偏りをなくすのにも一役買ってくれそうかな☆」ドバーン

咲(なんだろう…この気持ち…)グスッ


はやり「それじゃようこそ、『目指せ牌のおねえさん!アイドル研究会』へ!」

咲「え!?なんですかそれ!?」

はやり「顧問のはやりんでーす☆ はいみんなも自己PR!」

和「いやです」

美穂子「み、みぽりん、でーす…」カァァァ

和「やるんですか福路先輩!?」

美穂子「ごめんなさい…なんだかもう反射的に…」フルフル

由暉子「ユキです」ムギュ

いちご「ちゃちゃのんじゃあー」フララー

和「…の、のどっちです」エロポーズ

咲「…」

和「ちっ、ちがうんです咲さん!これは瑞原先生にやれって!」


はやり「恥ずかしがってたりしたらみずぼらしく見えるだけだゾー?」

和「この…ッ」キッ

揺杏「まーまー。はやりん指導の下この四人がさっきみたいにレッスンしてるってわけ。ちなみに家庭科研究会がメインで、アイドルの方は週2の活動ね」

咲「はぁ…」

揺杏「家庭科の方は普通に手芸やったり簡単なおかしやらを作ったりなんだけどね。ちなみに私はアイドルの方じゃ衣装とか裏方ね」

はやり「もったいないよねー。ゆあんちゃんもすらっとしててキレイだし、名前もかわいらしいし、アイドルやったらいいのにー☆」

揺杏「冗談きついっすよー。あっはは」


咲「それで…私帰っていいんですか?」

はやり「だめ☆」ガシッ

咲「ひぃ!」

はやり「あなたはサキちゃんとしてうちのユニットに参入することがただいまを以て決まりました☆」

咲「えっ」

はやり「ゆあんちゃん!」

揺杏「へーい。これ四人の新衣装、特製立体裁断っす。宮永ちゃんのはその辺普通にして、代わりに…健康的なエロさを押し出してみよっか?」

はやり「いいねー☆ さすが☆」

揺杏「ちゃちゃっとやっちゃいましょうかねー。んじゃ採寸から」

咲「え?え?」


和「ごめんなさい咲さん…あなただけでも逃がしてあげたいんですけど、逃れられないみたいです…無力な私を許して下さい…」

咲「どーゆー…?あれ?もしかして私…?」

美穂子「ようこそ、家庭科研究会へ」ニガワライ

いちご「ほんでごしゅーしょーさま」

咲「え…」


 いやああああああああああああああああああああああああ…――


 この後滅茶苦茶はやりんにしごかれた(レッスン的な意味で)

 ~Outro.時にはHAYARIに流されて~

????「ふむふむ…今日のレッスンもなかなかになかなかですのだ!」


咲「あ、優希ちゃんだ」

優希「じょー」トタタタ

咲「タコスも持たずにどこいくのかな…ちょっと気になるかも」

咲「ついてってみよう」トテテ

咲「たしかこのあたりで…あ、あの教室から声が聞こえる…」

咲「…」ソー


優希「マスター!今日もとびっきりのヤツ頼んだじぇ!」

ハギヨシ「私はマスターなどではないのですが…」

衣「作ってやれハギヨシ!衣からも頼む!」

ハギヨシ「衣様の命とあらば。それでは家庭科室の設備を借りて作ってきますので、少々お時間をいただきます」

優希「おうっ!」

咲(なぁんだ…ハギヨシさんにタコスを作ってもらってたのかぁ。たしかにあの人が作るものならすごそうだけど)


純「なんだなんだ?出歯亀かァ?感心しねーな」

咲「えっ!?」ビクッ

純「よう。また会ったな」

咲「井上先輩…!」

純「純でかまわねーよ。チビたちになんか用か?」

咲「えっと…そういうわけでは」

純「エンリョすんな。ほら入れ」ガラッ


衣「じゅん!」

優希「出たなノッポ!」

純「お前にゃ用はねーよタコス。きたぞー衣」

衣「まってたぞ!ん?こっちの小娘は?」

咲「こむすめ…」

純「お前のほうがよっぽど小娘だろーが」

優希「おお!咲ちゃんだじょ!」

咲「優希ちゃんがこっちにくるのが見えたから、気になっちゃってついてきちゃった」アハハ

優希「そーかそーか。咲ちゃんも私のおっかけになっちゃったわけか」


衣「さき…」

咲「あ、はい。私、宮永咲っていいます。よろしくね」スッ

衣「…っ!」パァ

衣「ころもは天江衣だ!よろしく頼む!」ギュッ

咲「よろしくね、衣ちゃん!」

衣「むっ。ぶれーもの!」

咲「えっ?」

純「こいつこれでもオレと同いだからさ」

咲「ええっ!?」


衣「罰としてころもを肩車しろ!」

咲「ええ…それはさすがに」

純「だいじょーぶだろ。衣は軽いから」ヒョイ

咲「あうっ。あ…ほんとだ」

衣「うむ。大義!」

優希「じゃーこっちはもらったじぇ!」ヨジヨジ

純「あ、オイ!勝手に上んじゃねえ!」


 ガラッ!!

メグ「チョット匿ってクダサイっ!」

ネリー「ヤバイヤバイ!」

咲(なんか増えた…なにこの肩車空間)

純「オイオイ…穏やかじゃねーな。面倒事はゴメンだぜ?」

メグ「カップ麺の件チャラにしますカラ!ナニトゾ!」

ネリー「ナニトゾだよ!」

純「どんだけ根に持ってんだよ…」

優希「タコスに続きカップ麺までも…ぎるてぃだじぇ!」

純「うっせーだったら降りろ」

優希「ことわるっ!」


メグ「とにかくドアと鍵を閉めテ…」

初美「ちょっと待つですー!巻き込んだ挙句に見捨てるなんて許さないですよー!」ガッ

咲(う、浮いてるー!?)

メグ「ジョーブツしてクダサイ!」

初美「なんでですか!?とにかくハッちゃんも入れてください…!」

胡桃「待てぇー!おとなしくつかまれー!」

豊音「おっかけるけどー」

咲(また増えた…)


胡桃「追い詰めた!廊下でカップ麺の食べ歩きに恐喝行為、あと浮いてるのも諸々校則違反!つぶすぞ!」

メグ「ナニが校則デスカ!生徒の自由を拘束するダケノ忌まわしいルールなど!」

胡桃「上手いこと言ったつもりかっ!」

ネリー「いまの上手かった?おひねりちょーだい」ピョン タン トタタ

胡桃「かくほ!」

豊音「かくほー」ガシッ

ネリー「しまった!?」

メグ「クッ…卑劣ナ!」

純「なんだこれ。コントか?」


初美「いまのうちに逃げるですよー」

胡桃「塞!」

塞「はいはい。おイタはその辺までにね」ズンッ

初美「ちょ…待つですーーーーー…」ガサガサ

咲「いま落ちましたよ!?だいじょうぶなんですか!?」

塞「だいじょうぶでしょ。あそこ、下は木と茂みになってるし。自分で窓から飛び出したわけだし自業自得よ」

胡桃「さ、そっちのカップ麺の人も神妙にして」

メグ「クッ…!ナゼデス!?カップ麺はジャパンが誇る文化!広めこそすれ、規制する必要などナイハズ!」

胡桃「時と場所を弁えろ」

メグ「ハイ」


胡桃「よしっ!無事確保完了!豊音、塞、ありがと」

豊音「どういたしましてだよー」

塞「こっちは生徒会の仕事もあるんだからあんま煩わせないでほしいけどね」

胡桃「ゴメンゴメン」

純「なんだったんだマジで」

衣「げに愉快極まる見世物だったな!な、サキ!」

咲「そうかなぁ…」


胡桃「ん?咲?」

咲「え?」

胡桃「もしかして、あなた宮永咲?」

咲「あ、はい…そうですけど」

胡桃「ふーん…ちょっときて」

咲「はい?」

胡桃「いいから!ついてくる!」ビシッ

咲「は、はいっ!」


衣「えー…サキ行っちゃうのか…」

咲「ごめんね衣ちゃん」

衣「また遊ぼう!ぜったい!あとちゃんじゃない!」ピョン

純「まぁ、なんだ。ドンマイ。風紀委員に呼び出されるとは、なにかやったのか?」

咲「えっと、身に覚えはないですけど。そんなに怖いことはないと思いますけど…」

優希「あいつらオニだからな。咲ちゃん、生きて帰ってくるんだじょ」

咲「さすがに死にはしないでしょ…」

純「どーだかな」

胡桃「はやくっ!」

咲「はい!それじゃね」

衣「ばいばい!」


咲「あの…」トテトテ

胡桃「んー?」

咲「私、なにか怒られちゃうんですか?」

胡桃「怒るわけじゃないから心配しなくていいよ。ちょっとね」

咲「はぁ…」

咲(なんなんだろ)


咲「それにしても…おっきーですね」

豊音「私?」

咲「はい。あ、ごめんなさい、いきなり」

豊音「ううん、いいよー。宮永さんはちっちゃくてかわいいねー」

咲「そうですか?」

胡桃(…この子でちっちゃいって…私はいったい…)


胡桃「ついたよ」

咲「ここって、風紀委員の方々が使ってる教室ですよね?」

胡桃「そうそう。ただいま戻りましたー」ガラッ

豊音「おじゃましまーす」

咲「失礼します」

智葉「戻ったか…ン?」

咲「あ。どうも…」ペコッ


智葉「宮永…どうした?こんなところに」

咲「えっと」チラッ

胡桃「胡桃でいいよ」

咲「胡桃先輩についてこいって言われて」

胡桃「委員長が話したいって言ってたから連れてきた」

智葉「鹿倉…お前の仕業か」

胡桃「もののついでにね。いつもの二人は生徒指導室に」


久保「ダヴァン、ヴィルサラーゼ、またテメーらかァァァ!」


智葉「…階下の生徒指導室からここまで聞こえてくるとはな」

胡桃「怖い」


智葉「まぁ立たせておくのもなんだな。宮永、姉帯、気にせずかけてくれ」

豊音「はーい」

咲「えっと、失礼します」

智葉「姉帯は鹿倉がよく連れ回してるから顔馴染みだが、宮永は面識がない者が多いか」

咲「はい」

智葉「紹介しよう。そのちんまいのが鹿倉胡桃」

胡桃「ちんまくない!」

咲「よろしくお願いします」ペコッ

胡桃「うん。よろしくね。さっきは急にごめんね」

咲「いえ」


智葉「彼女は前に一度会っているな」

煌「花田煌と申します!以後よろしく!」

咲「宮永咲です。よろしくお願いします」

煌「お話はかねがね!すばら!」

咲(すばら…?)

智葉「彼女は副委員長の末原恭子」

恭子「…よろしゅう」

咲「よろしくお願いします」

咲(ちょっとよそよそしい…?)


智葉「そして」

純代「…どうぞ。お茶です」カチャ

咲「あ、ありがとうございます」

智葉「彼女は深堀純代」

純代「…」ペコリ

咲「あ、よろしくお願いします…」ペコッ

智葉「そして私が委員長を務めさせてもらっている、辻垣内智葉だ」

咲「はい。先日はお世話になりました。ありがとうございました」ペコッ

智葉「気にしなくてもいい。当然のことをしただけだ」

咲(辻垣内先輩ってかっこいいなー…)ポー


智葉「以上が役員だ。他の者は基本的にはここに来ないな。召集の時くらいか?」

煌「です」

智葉「まぁ役員以外はここに集まる義務はないからな。姉帯のように、我々が協力を仰いでる者がここに出入りすることもある」

咲「そうなんですね」

智葉「さて…それでは私がすこし考えていた相談をさせてもらおうかな」

咲「相談…ですか?」

智葉「そうだ。実に嘆かわしいことに、我が校には少々ガラの悪い輩がいるだろう?誰、とは言わんがな」

咲(ガラの悪い…かぁ。アハハ…)


智葉「まぁその者らも例外なく我が校の生徒なのだから、爪弾きにしようというわけではないのだ。模範的になれ、とまでは言わんから、せめて常識を弁えてほしいというだけなんだがな…」

咲「大変そうですね」

智葉「実際大変だ。そこまでいかなくとも、日常的に意識せねばつい、うっかり、無意識に、越えてはいけないラインを越えてしまうという者も少なくはない」

智葉「もちろん我々とて普通の生徒と何ら変わらない、一生徒に過ぎない。しかし、誰かがそれを、目を凝らし、注意し、時には手荒な真似をしてでも止めねばならん。たとえ嫌われようが疎まれようが、な」

咲「それが風紀委員…」


智葉「そうだ。それで、ここからが本題なのだが」

咲「…」

智葉「君にも協力してほしい」

咲「私に、ですか?」

智葉「ああ。なにも精力的に見回りをしたり指導をしろと言うわけじゃない。ただ、もしダメだと思うことを見つけてしまった時は、教えてほしい」

咲「それって…」

智葉「告げ口をしろ、ということだ。気は進まないだろう。当然無償だし、ないようにはするが下手すると誰かに宇恨まれたりもないとは限らん」

咲「…」

智葉「義務を押し付けるつもりはない。ただ、どうしてもそういった場面に遭遇して、見過ごすことができないと思ったのなら、我々に吐き出してくれればいい。その後のことは、こちらで責任を以て対処させていただく」


咲「あの…」

煌「いっしょにすばらな学校を作っていきましょう!自由と秩序には均衡が必要なのです!」

胡桃「そう!そのための風紀なんだから!」

豊音「難しいことはわかんないけど、校則違反はダメなんだよー」

咲「えっと…」

恭子「好きにしたらええ。なんなら返事もいらん。そーゆー機会があって、もし悩んだりしたら、そん時はうちらにぶん投げにこい。そんだけ」

咲「…」


智葉「まぁ、いろいろと急に押し付けすぎたな。この話は頭の片隅にでも留めておいてくれ。さて、たまには世間話でもするか。客人がふたりもいることだしな」

煌「そーですねえ…あっ!そういえば午前中、また江崎先輩が廊下でアジ演説してたんですよー」

智葉「こう言ってはなんだが、バカだろ」

胡桃「愛宕の姉の方も騒いでたよね。そんなつまんない話より漫才させろーって」

智葉「…頭が痛くなるな」

純代「…お疲れ様です。お茶のおかわりです」スッ

智葉「すまない」

恭子「洋榎はホンマモンのちゃらんぽらんやからな」ズズ

智葉「どうにかしろ」

恭子「ムリ」

咲「あはは…」


咲(…ああああ…どうしよう…屋上のことを話すべきかどうか…)

久『これで私たち、共犯者(ナカマ)ね』ニコッ

咲(…っ)ズキッ

智葉『君に協力してほしい』

咲「…」

咲「…あのっ」

 「こんちはー」ガラッ

智葉「ん、ああ…お前か」

久「どもどもー。生徒会の方から、いくつか書類の方をお届けにきましたよん。あら?」

咲「あ…」

久「…へぇー」ニヤッ

さすがにネルソン
このssどこに向かってるんですかねぇ…


智葉「どうした?」

久「んー?や、珍しい子がいるもんだなぁって思ってね。ね、咲?」

咲「えっと…」

智葉「知り合いか」

久「本を貸したり借りたりする間柄よ」

智葉「…まぁお前は顔が広いからな」

久「褒められたのかしら?」

智葉「そうだな」

久「うれしいわー」


恭子「さっさと渡すもん渡せや」

久「あらごめんなさいね?はいこれ」

恭子「ん」

智葉「たまにはゆっくりしてったらどうだ」

久「んー。お言葉に甘えたいのはやまやまなんだけど、あんまりふらふらしてると怒られちゃうからねー。うちは怖い子が多いから」

智葉「それは残念」

咲(…なんか怖い)


久「それじゃ用は済んだし帰るけど…咲は風紀委員に用があったの?」

咲「え…っと、それは…」

智葉「彼女は私が招いた。先日話をする機会があったので、少しね。もう用件は済ませて、雑談に興じていたところだが」

久「ふーん…じゃ悪いんだけど、咲を借りてもいいかしら?」

咲「え?」

智葉「良いも悪いも、我々に彼女を引き留められるだけの理由はない。そういうことは本人に聞くべきだ」

久「だって。ちょっといい?」

咲「あ、はい…」


久「それじゃいきましょ」ギュ

咲「わわっ…!あ、あの、おじゃましました!」

智葉「またいつでもきてくれ。歓迎する」

久「じゃあねー」

 ピシャ

智葉「…」

豊音「宮永さん行っちゃったよー…」

胡桃「気に入ったの?今度こっちから会いにいけばいいよ」

豊音「そだねー」

煌「あの人は、やっぱり慣れませんね」

恭子「あれでかなりしたたかやしな。食わせもんっちゅーやつや」

智葉「…女狐め」


久「…」スタスタ

咲「…っ」トテトテ

咲(ど、どうしよう…?もしかして竹井先輩怒ってる…?)

久「咲」スタスタ

咲「ひゃいっ?」

久「…ぷ」クス

咲「えぇっ?」

久「なにその間抜けた返事。あなた、あいかわらず可愛いわねー」

咲「えっ、かわ…」


久「それで?喋ったの?」クスクス

咲「ま、まだ言ってないです!」

久「ふーん。私が現れなきゃ、そのうち言うつもりだったんだ?」

咲「え、それはちがっ…!…その…すみません…」

久「あら。そうだったの?」

咲「うっ…言いそうに…なってました」

久「イケない子ね」

咲「…だって!あんな真正面から、あんなことを言われたら罪悪感とかいろんなものでもう大変だったんですっ!」

久「冗談よ冗談。そんなにかっかしないの」

咲「…うぅ」


久「別に、言っちゃってもかまわなかったんだけどね」

咲「え?」

久「小うるさく言われるだろうし、あそこにも行けなくなるだろうけど、別にあそこじゃなきゃ集まれないわけじゃなし」

咲「じゃ、じゃあ…なんで口止めなんか」

久「それはほら。最悪バレてもよかったってだけで、バレないに越したことはないし。あなたならちょっと言えば黙ってくれそうだしね」

咲「…なんですかそれ」

久「もう、そうやってふくれないの」

咲「…先輩のいじわる」

久「ふふっ」

久(それに…ああやって言えば共犯意識みたいなものが芽生えるだろうし、ね…)クスッ


久「まぁ、真正面からどんなことを言われたかは聞かないでおくわ」

咲「そ、それは…はい」

久「結果的にはまだバレてないわけだし。あ、でもだからってそんな簡単にチクらないでよー?」

咲「う…」

久「次はないかもね?」

咲「…肝に銘じておきます」

久「くれぐれもね」


咲「それじゃ私はこれで」

久「ちょっと」ガシ

咲「な、なんでしょう?」

久「どこにいくのよ」

咲「どこって…」

久「まだこっちの用は済んでないわよ?」

咲「用?」


久「そ。バラすバラさないの話はそれでいいとして、それはそれとしても風紀委員なんかに出入りしてたのは妬けちゃうわ」

咲「なんですかそれ」

久「ちょっと生徒会にも寄ってかない?」

咲「え、ええ…」

咲(生徒会の人って、すごそうな人たちばっかりなんだよね…)


久「ちょっとお茶して、楽しくお話するだけよ」

咲「そんな…大体風紀委員って生徒会の下部組織ですよね?どうしてそんな」

久「まーいろいろあるのよ。とか言ってる間に着いちゃったけど」

咲「う…や、やっぱり遠慮して…」

久「ただいまー」ガラッ

咲(ためらいなく行っちゃった!?)


ゆみ「戻ったか」

菫「たかがおつかいにどれだけ時間をかけてるんだ」

久「やーねー。そのたかがおつかいに生徒会長を駆り出したのはあなたでしょ」

菫「全自動承認マシーンと化してたからな。いいリフレッシュになったろう?」

久「そうね。感謝感激雨あられだわほんと」


菫「…で?そっちは?」

久「ん?」

菫「その一年はなんだと聞いてる」

咲「」ビクッ

ゆみ「あまりおどかしてやるな。かわいそうだ」ハァ

久「この子はね、スペシャルゲストよ」ニコッ

菫「はぁ…またいつもの悪癖か」

久「なにそれ、失礼しちゃうわ」


菫「…」ジッ

咲「え…なんでしょう、か?」

菫「キミ、名前は?」

咲「宮永、咲です」

菫「宮永…ほう。照の妹か」

咲「はい」

菫「どうりでな」


久「そうね。まずはみんなに紹介しようかしら。みんな注目ー」

塞「あ、キミはさっきの」

咲「どうも」

塞「私臼沢塞。よろしくね」

咲「はい」

久「顔見知りもいるのね」

咲「いえ、たぶん臼沢先輩だけじゃないかと…」

竜華「宮永咲ちゃん?」

咲「あ、はい」


竜華「そっかそっか、キミがなー」ジロジロ

咲「あぅ…」モジ

竜華「あ、ゴメンな?うちは清水谷竜華。怜から話は聞いてたんよ。いつか会ってみたい思うてたけど、まさかこんなとこで会うとはなー」

咲「あ、園城寺先輩の…」

竜華「怜が毎度世話になってるみたいで。後でいっしょにお茶いかん?お礼させて!」

咲「えっと」

久「はいはいそういうのは後でね」


菫「弘世菫だ。知っているとは思うが副会長をやっている」

ゆみ「同じく。加治木ゆみだ」

咲「よろしくお願いします」

久「彼女は白水哩。まあちょっと気難しい子だけど、気にしないで」

哩「…」スッ

咲「どうも…」


久「こんな感じね。みんな有能だから正直私がやることほとんどないのよねー」

菫「面白い冗談を言う。お前がやらないから私たちがやらざるをえない、の間違いだろう?」

久「そうだったかしら?」

ゆみ「落ち着け弘世。殴りかかっても徒労に終わるだけだ」

咲(うぅ…やっぱりちょっと居づらい…)サッ

咲(風紀委員のとこは思ったよりそうでもなかったけど、なんだか職員室にいるみたいなアウェイ感が…)ポフッ

咲「ってええ!?いつの間にか膝枕されてる…?」

竜華「ああ、ゴメンゴメン。ついクセで」ナデナデ

咲「ふああっ…」


竜華「怜のおかげでうちもだれかに膝枕させてあげるのがクセになってしもてるんよね。ここのみんなはだれもさせてくれんし」

塞「さすがに恥ずかしいしね」

久「私でよかったらいつでもされてあげるのにー」

竜華「かいちょーはセクハラするからこっちからお断りや」

久「覚えがないんだけど…ちょっと遺憾ね」

菫「覚えがないだと…こいつ正気か…?」

ゆみ「気持ちはわかるが落ち着け」


久「ちょっとしたスキンシップでお尻撫でたりするだけじゃない…」

菫「お前の場合、本気で身の危険を感じるんだ」

久「酷いわ」

竜華「しー」

久「?」

竜華「咲ちゃん、寝てしもた」クスッ

久「あらあら」

菫「呑気なものだな」

ゆみ「確かに。生徒会室にきて寝てしまう者は初めて見た」

塞「微笑ましいものじゃないか」フフッ

哩「…」フッ

咲「…ん…」スースー

 ――
 ―



咲「あれ…私…」

咲「…えっ!?なにこれ!?」ジャララ

咲「なんで私縛られてるの…?」ガキィ…ジャラ

咲「だれか…!」

 「…」スッ

咲「あ、よかった…たすけてください!」

 「…」ススス

咲「え、ちょっと…!?」

哩「…」フッ

咲「え、ええええ…?」


咲「…ハッ」パチッ

竜華「あ」

咲「ゆ…ゆめ…?」

哩「…」ジー

咲「あ」

哩「あっ」フイッ

咲「…?」

咲(寝顔覗き込まれてた…?やだ、恥ずかしい…!)


竜華「哩さんももちょい堂々としたらええのにー」

哩「…」フイ

竜華「照れ屋さんなんやからー」

咲(白水先輩…なんだか、怖い夢を見ていたような…?どんな夢だったっけ…?)

竜華「にしても気持ちよさそうに寝とったね」

咲「あ…ごめんなさいっ!」

竜華「ええんよ。気持ちよさそうに寝てもらえると膝枕冥利に尽きるわ」

咲「えっと…ありがとうございました。その…すごく気持ちよかったです…」モゾ

竜華「なんやこの子。めっちゃかわええ」

咲「…っ」

塞「わお。すっごい、耳真っ赤」

ゆみ「よしてやれ。今ので首まで赤くなったぞ」


久「ねえ咲」

咲「は、はい!?」ガバッ

久「ちょっと相談があるんだけどー」

咲(あ、なんか嫌なフレーズ)

久「あなた、生徒会に入らない?」ニコニコ

菫「」ブフッ

ゆみ「はぁ?」

塞「また突拍子もないことを…」

竜華「ええやん!それ賛成!」


菫「馬鹿か。一年生を生徒会にだなんて聞いたことがない」

久「庶務でなら問題ないでしょう?後進への指導として中途で庶務に任命することも珍しくないし」

菫「それは規則上の話だ。それも基本的には二年から選ぶのが通例だし」

久「小難しいことはいいのよ。ね、咲。どう?」

咲「えっと…」

竜華「…」キラキラ

咲「か、考えさせてください…」アセ

ゆみ「よく考えるんだぞ。流されて、というのはよくない。ここで生徒会に入るということは来期の生徒会に立候補するということと同義だからな」

咲「う…」

咲(また悩みのタネがぁ…ほんとにどうしよ…)

もっと咲ちゃんss増えろー?


咲(どうしたらいいのかなぁ…風紀委員の協力の件…竹井先輩はともかくとしても、他の人やお姉ちゃんにはいい迷惑だろうし。でも辻垣内先輩を裏切り続けるのもいろいろ無理な気が…)

咲(そのうえ生徒会だなんて…あーもう…)

智紀「…」トントン

咲「あ、沢村先輩」

智紀「…これ。今度新しく入る予定の新書・文庫本のリスト」

咲「あ、ありがとうございます」

智紀「常連さんへのサービス」コクリ

咲「気になるのがあったらさっそく読んでみますね」

智紀「うん」

咲(…やっぱり図書室はいいなあ。すっごく落ち着く)


久「やっほー」

咲「…」

久「そんな嫌そうな顔しなくてもいいじゃない」

咲「…そんな顔してましたか?」

久「うん。『うわぁ…』って顔してたわよ」

咲「…すみません。いろいろあって、ちょっと」

久「いいわよ別に。大いに悩め少女よ」

咲(悩ませてる張本人がよくいうよ…)


久「なになに?新しく入る本?あ、これ気になってるでしょ」

咲「え、まぁ、はい」

咲(こういうところ鋭い…)

久「私、それ持ってるわよ。貸したげよっか」

咲「でも、悪いですよ。図書室でも借りられますし」

久「期限なんて気にせずゆっくり読みたいでしょ?」

咲「それはまぁ…」

久「遠慮なんてしなくてもいいのよ」


咲「…あの」

久「んー?」

咲「どうして私にそうまでしてくれるんですか?」

久「どういうこと?」

咲「いえ、先輩って生徒会長で人望があって、全校生徒が知り合いみたいな人じゃないですか。どうして私みたいな一年にここまで絡んでくるのかなって」

久「んー…そうねぇ」

咲「…」


久「あなたがかわいいから、かな?」

咲「はい?」

久「あ、変な意味じゃないわよ?ほら、よく言うじゃない?可愛い後輩とかって。そんなニュアンスね」

咲「はぁ…」

久「かわいいからこそいじめたくなるっていうの?困らせたくなるっていうか…」

咲「え…」

久「困った様子がいじらしくてかわいいのよね」

咲「………か」

久「だから…」

咲「なんですかそれっ!?」バンッ

久「えっ?」


咲「…そんな理由だったなんて」

久「さ、咲?」

咲「先輩がそんな人だったなんて…」

智紀「…しー」

咲「あ、すみません…っ」

久「咲…」

咲「…失礼します」ガタッ

久「あ…。あちゃー…こりゃやらかしたかな…」ガシガシ

まこ「やーらかしたーやらかしたー」

洋榎「いーちねんせいを泣ーかしたー」


久「…あんたたち、いつからそこにいたのよ」

まこ「『あなたがかわいいから』、からかのう」

洋榎「まさか久がソッチの人やったとはなぁ。驚き桃の木山椒の木あたりきしゃりきケツの穴ブリキ…あ、それ以上近づかんとってや」

久「…」ガタッ ゲシッ

まこ「いった!なんでわしを蹴るんじゃ!」

洋榎「染谷バリアー!」

まこ「姉御もわしを盾にすんのやめい!」

智紀「静かに出来ないなら出て行ってください」ゴゴゴ

洋榎「…撤退や撤退」

まこ「たぁ~…」サスサス

久「…まったく」ギシッ

久「…」ハァ


純「よーっす…お?珍しいやつがいるじゃねーか」

咲「…」ムスー

純「どしたんだ?」

メグ「サァ…?」

咲「私、グレます」

純「はァ?」


セーラ「なんや、反抗期か?」

咲「なんでもいいんです!もう振り回されるのだけはゴメンですから」フイ

爽「そっかぁ。でもさぁ、グレるっつったって、具体的にどんなことするわけさ?」

咲「う。そ、それは…仮病で授業サボったりとか」

白望「…おお」

咲「あとは…えっと、うーんと」

純「無理すんなよ…」

揺杏「宮永ちゃんにはちょっちムズいかもねー」


咲「カップ麺の食べ歩きとか!」

メグ「それはグッドアイデアデス!」

純「やめとけ」

爽「没」

揺杏「ないわー」

白望「…ナンセンス」

セーラ「フルボッコやん」

メグ「ナゼデス」


照「咲」

咲「お、お姉ちゃん…」

照「急にどうしたの?」

咲「別に…お姉ちゃんには関係ないよ…」フイ

照「…!」

爽「久だろ」

咲「」ビク

爽「ほら。やっぱりね」

揺杏「お、スルドい」

爽「憶測半分のカマかけだけどね」

照「つまり久を締め上げればいいわけ?」

セーラ「やめとき。騒ぎになる」

白望「…ダルくなってきた」


咲「とにかく!私はワルくなるんだからっ!」

照「…」ハァ

照「…適当に付き合ってあげて。目を離さないように、あとあまり無茶もさせないように」

セーラ「出た、シスコン」

照「…」ギュル

セーラ「ちょっとした冗談やろ!」アセ


咲「朝の時間は具合が悪いわけでもないのに保健室で過ごします!」

憩「おひさー」

白望「…ようこそ」

怜「待っとったで」

小蒔「…」zzz

咲(なんか増えてる…)


咲「あの…荒川先輩」

憩「んー?」

咲「…このことはどうか辻垣内先輩にはナイショでお願いします」

憩「あぁ…ええよーぅ。なんやいろいろ大変そうやねーぇ」

咲「あはは…」


怜「さ、お膝様カモン!」

咲「今日は私が膝枕されます!」ボフン

怜「なんやと…」

咲(先輩に対してこの不遜な態度…ワルい!)ドヤ

怜「いままでは与えられてばっかやったけど…こっちが与える番になると、なんやこう…母性みたいなもんが芽生える…」ナデ

咲(…あれ?なんか受け入れられてる?)

白望「…私は与えられる側のままでいいかな」

小蒔「むにゃ…もう食べられないれすよぅ…だからぁ、もう食べ…食べら…こくとうっ!?」ガバッ

憩「朝のこの和みタイムは役得やなぁ」ユルユル


爽「なに?いっしょに遊びたいって?」

咲「はい!」

爽「よっし、じゃあついてこい!倉庫行って備品で遊ぼう!」

咲「でも倉庫って鍵かかってますよね?用務員室に取りにいくんですか?」

爽「そんなことしたら大沼のおっちゃんに殺されるだろ」

咲「倉庫の備品で遊ぶ時点でアレな気もするんですけど…」


揺杏「倉庫の戸はたてつけが悪いかんね。ちょいとコツを掴めば鍵要らずよん」

咲「それはどういう経緯で発見したんですかね…」

爽「細かいことはいいっこなし!おらっ」ガタタ ガチャキイッ

咲「…」

揺杏「いまちょっと引いたっしょ?」

咲「…正直、結構」

揺杏「ケッコーケッコー」ケラケラ


爽「よーし!今日はなにで遊ぶ?台車でチキンレースするか、ライン引きで地上絵でも描くか?」

咲「…いまさらですけど、これだいじょうぶなんですか?」

揺杏「んー?だいじょうぶじゃね?毎度こんなもんだけど、私らなんもなってないし」

咲(説得力があるのかないのか…)


メグ「サァ、お好きなのを選んでクダサイ!」

咲「んー…あまり濃そうなのはちょっと」

メグ「じゃあこのベジ麺がオススメデス。ヘルシーですよ」

咲「じゃあそれで」

晴絵「悪いね、私までごちそうになっちゃって」

メグ「ナンノ。お湯の調達はわりと苦労するトコロデスカラ。ソコをマカナッテくれるのは助かりマス」


晴絵「やー、たまーに無性に食いたくなるんだよね。カップ麺」

咲「これ聞いていいのかな…あの、先生がこういうことしていいんですか?」

晴絵「ウッ。痛いとこ突いてくるね…まぁ普通はダメなんだけどね」

メグ「ハルエはたまに屋上にも来ますヨ」

咲「へー」


晴絵「教師だって人だかんね。たまには息抜きしたくなるもんさ」ベリッ

メグ「ア、チョット!マダ二分デスヨ!?」

晴絵「ちょっと固いくらいが好みなんだよ。うま」ズルル

メグ「解セナイ…指定された時間がメーカーの導き出しタ最高の状態で食べられる待ち時間ダト言うノニ…」

咲「そ、そうなんだ…」

メグ「サキのはソロソロいい頃合いデスヨ」

咲(あ、おいしい…)チュルル


はやり「咲ちゃーん☆」

咲「…」カタカタ

はやり「いま出て来たら怒らないから。ね?レッスンしよー?」

咲「…」

はやり「もう…困っちゃうなぁ…結構スケジュール押してるのに。お仕置きかなぁ…☆」

咲「…」ガクガク


咏「ね」

咲「」ビックゥ

咏「や、そこまでビビらんくても」

咲「…あ、三尋木先生かぁ」

咏「ん、やほ。あのさぁ、いまはやりんが探してる咲って子、キミ?」

咲「あ、えっと…ち、違います。人違いです」

咏「アッハハ、嘘つくのヘッタくそだねぇ。だいじょうぶ、警戒しなくてもいいよ」

咲「?」


咏「こんなとこに隠れててもいずれ見つかるっしょ。いいとこ教えたげよっか?」

咲「え?」

 ――

咏「ここ、書道の準備室。普段は鍵かかってっし、一介の生徒が隠れてるとはまー思わんね」

咲「…おじゃまします」

咏「準備室ってもほとんど私の私室になってっけどねー」

咲(なんかここで暮らせそうな設備なんだけど…)


咏「なんか飲むー?」

咲「あ、いえ…」

咏「遠慮しなくてもいいのに」

咲「…」

咏「緊張してる?」ニヤニヤ

咲「え。まぁ…はい」

咏「ふーん」ジロジロ

咲「あの」

咏「ん?」


咲「私に教えてもよかったんですか?ここのこと」

咏「どして?」

咲「だって、私がだれかに言っちゃうかもしれないですし…だれかに知れたらさすがにまずいですよねこれ」

咏「そだねー。…じゃあ、口ふう…口止め、しといた方がいいかな?」ペロリ

咲「すみませんでした絶対にだれにも言いませんから許してください」

咏「アッハハ」

咲(いま口封じって言いかけてたよね…?)


咲「でも、ほんとにどうして私をここに?」

咏「さぁ?」

咲「はい?」

咏「知らん」

咲「はい?」

咏「わかんねー」

咲「…」

咏「まァただのきまぐれさ。あの瑞原はやりが目を皿にして探してる子がそこにいたから、きまぐれに、ね」

咲「はぁ」


咏「もちろんここのことは内緒だぞー?」

咲「はい」

咏「お?思ったより聞き分けいーね」

咲「その代わり、これからもおじゃましていいですか?」

咏「へぇ…いいよ。オッケー、いつでも歓迎するぜい」

咲(よーし…どんどんワルくなれてきてる気がする!)


久「…」

照「…」

久「…」ジリ

照「…」ピクッ

久「…」ビク


照「…」

久「…あの」

照「なに?遺言?」

久「私死ぬの!?」

照「さすがにそこまでヒドいことにはならない…?」

久「そこで疑問形にならないでよ…。どうしてこんなことするの」

照「あなたのせいで咲が変になったからに決まってるでしょ」


久「咲が?」

照「そう。グレたとかなんとか」

久「…あちゃー」

照「あ。いまの反応、やっぱり」

久「え、や、いまのはちが」

照「問答無用」

久「ちょっ、待っ――」


和「おかしいです」ドン

優希「いきなりどしたーのどちゃん」

和「咲さんの様子がおかしいんです」

優希「そーか?いつも通りの咲ちゃんだったじぇ」

和「全然違います。いつもなら朝は始業三十分前には席について読書をしているはずなのに十分前になってようやく教室にきたり、昼は私が誘いにいくまで待っててくれたのに最近は咲さんの方から一緒に食べられないと謝りにきてどこかへ行ったり…それに見てくださいこれ」ゴソゴソ

優希「トーゼンのように咲ちゃんの机のなかを漁るのどちゃんの方がおかしいじぇ」


優希「こんなかさばって重いだけの厄介ものを持ち歩く方がどうかしてるじょ。机のなかは空にして帰ろうっていうのもだいたい守られてないし、先生たちも言うだけ言って後はノータッチという形骸っぷりだじぇ」

和「そんなことはこの際関係ありません。いままで生真面目に持ち帰っていたものを最近になって置いていくようになったということが問題なんです!」

優希「咲ちゃんも疲れただけだと思うけど」

和「きっと悪い輩に唆されているに違いありません…!許すまじ!」

優希「のどちゃんの話から咲ちゃんが超真面目な子ってことしかわからんかったじぇ…」

和「探りをいれていきますよゆーき!」

優希「ええ…私も参加させられるのか…?」


咲「…」ソワソワ

咲(どうしよう…つい勢い余って置き勉してきちゃったよ…)

咲(…取りに戻ろうかな?いやでも…うーん…)

セーラ「お?宮永妹やん!」

咲「あ、江口先輩」


セーラ「どないしてん?なんやうろちょろしとるけど」

咲「なんでもないんです。気にしないでください。江口先輩はなにを?」

セーラ「俺か?へへっ、これから空地でサッカーすんねん。せや、宮永もくるか?」

咲「え、でも寄り道とかは…」

咲(寄り道はだめ→だめなことをしたらワルい→ワルさに磨きがかかる!)

咲「えっと…私、運動とかだめなんですけど…見てるだけでもいいんですか?」

セーラ「参加した方が楽しいやろ。でもまー強制はせんけど!」

咲「じゃあ行きます」

セーラ「よっしゃ、決まりぃっ!」


 空地

セーラ「待たせたな皆のしゅー!」

穏乃「遅いですよー江口さん!」

セーラ「スマンスマン!」

絹恵「そっちの子は?」

セーラ「ギャラリーや」

純「よ、宮永」

咲「あ、井上先輩」

純「純でいいっつってんのに。真面目だねェ」

玄「私のお姉ちゃんもいるし、今日はお客さんが多いね」

華菜「ギャラリー…華菜ちゃんのファンか」

泉「それはないでしょ」

華菜「んだとー?」


穏乃「まぁまぁ。じゃさっそくチーム決めましょうか?」

セーラ「せやな」

絹恵「うちはいつも通りキーパーな」

セーラ「おう頼むわ。んじゃグーパーで3・3に分かれるで」

穏乃「おー!」


咲「元気だなぁ…」

宥「あ…そちらも付添いですか?」

咲「どうも。私は付添いとかじゃないんですけど」

宥「そうなんだ…あ、あの子、私の妹なんです」

玄「モチのロン、おもちのグーでいきますよー!」

華菜「それを先に言ってどうするし…」


咲「そう、なんですか…」

宥「かわいい妹なんですよ」ニコニコ

咲「…仲良いんですね。うらやましいなぁ」

宥「え?あ、えっと」

咲「あ、自己紹介がまだでしたね。私、宮永咲です。一年生です」

宥「松実宥、三年生です。宮永さんでいいのかな?」

咲「はい」


宥「宮永さんも姉妹とかいるの?」

咲「お姉ちゃんがいるんですけど…あまり良くは思われてないみたいで」

宥「お姉さんに…?」

咲「はい。あまり話もしないですし、態度もそっけなくって」

宥「…それはなんというか…あったかくないね」

咲「あったか…?」

宥「だいじょうぶだよ。妹のことが嫌いなお姉ちゃんなんていないもん。きっと宮永さんのお姉さんも心のなかでは宮永さんのことを大切に思ってるはずだよ」

咲「…そう、だったらいいんですけどね…あはは。松実さんってやさしいんですね」

宥「えっ、そ、そうかなぁ?」

咲「やさしいですよ。さっき会ったばかりの私を励ましてくれましたし」


宥「うーんと、それはなんといいますか…宮永さんが寒そうにしてたから」

咲「寒そう?」

宥「うん。妹がいる身としてはほっとけなかったというか」

咲「妹さんのことがほんとに好きなんですね」クスッ

宥「玄ちゃん、かわいいから」


玄「ま、負けた…」

華菜「そんな目でこっち見んなし…こっちだっておんなじ気持ちだし!」

泉「アカン…」

セーラ「俺穏乃純チーム対そっちな!」

玄「ま、まだ勝負は始まってないもん!」グッ


宥「ふぁいと、玄ちゃーん!」

咲「…松実さん」

宥「なぁに?あ、玄ちゃんも松実さんだから、宥って呼んでほしいな」

咲「…えっと、宥さん」

宥「ん」ニコッ


咲「手を、握ってもいいですか?」

宥「え」

咲「だ、だめならいいんですけど」

宥「えっと、だめじゃないですけど…ちょっと心の準備をさせてもらってもいいですか?」

咲「あ、はい、どうぞ」

宥「すぅはぁ、すぅはぁ…じゃ、じゃあどうぞ」スッ

咲「はい。失礼します…」スッ

 ぎゅうっ

咲「…あったかい」

宥「うん…すごく、あったかいね」

咲「これがお姉ちゃんのぬくもり、なんですかね」

宥「…宮永さんがそう思うのなら、そうなのかも」


セーラ「マークがあまっちょろいで泉ィ!」ザッ

泉「先輩の運動量のがおかしいんですって!」

セーラ「おらパァス!」ボッ

穏乃「ナイスパス!」

玄「ここは通さないよ穏乃ちゃん!」ガバッ

穏乃「うおりゃあっ!」

玄「ってもう抜かれてる!?」

華菜「つかえねーなオイ!」


純「おっと。自由に動けると思うなよ」

華菜「あーもう邪魔くさいし!」

穏乃「全力シューーーーーーート!!」ギュアッ

華菜「あいかわらずえげつねぇシュートだし!」アセ

絹恵「ふんっ!」ガシィ

穏乃「うわぁぁぁぁんっ!止めるかそこぉー!」ガクッ

絹恵「甘いわ!」

泉「そんであいかわらずすごいセーブ率や…」

セーラ「さすがやな」


宥「じゃあこういうのはどう?」ギュー

咲「さすがにあっついですよー」アハハ

宥「あったか~い」

咲「あっつ~い」


純「…なんか知らん間にイチャついてやがるしな」フゥ


 一方その頃

淡「テルー!駄菓子屋さん寄ってかーえろ!」

照「ごめん、今日は用があるから真っ直ぐ帰る」

淡「えー!?今日こそ当たる気がするのにぃ」

照「昨日も言ってたよねそれ」

淡「ヤッター麺んー…きなこ棒ぉー…チョコバットぉー…」

照「…やめて。そんな誘惑には負けない」

淡「ミニプリンちゃんチョコー、ヨーグルー」

照「…」ダッ

淡「あっ、逃げ出した!」


照「危なかった…もうすこしで持ってかれるところだった」

照「咲は…まだ帰ってない」

照「ふぅ…」ガチャ

照「今日も疲れた」ドサッ ボフッ

照「…ただいま、咲」

咲ちゃん人形「」


照「ごめんね、今日は廊下ですれ違った時に目逸らしちゃって」

咲ちゃん人形「」

照「はぁ…本物の咲と仲良くお話したい…もうちょっと素直になりたい」

咲ちゃん人形「」

照「…」足パタパタ

咲ちゃん人形「」

照「…」ゴロゴロ

<ただいまー

照「」ビクッ

 ドッタンバッタン ガタガタッ ダンッ


照「…」ガチャ

咲「お、お姉ちゃん…?なにいまの音」

照「おかえり。遅かったね」

咲「あ、うん。ちょっと…」

照「そう」フイッ

咲「あっ…」

照「…」スタスタ

咲「えっと…着替えてくるね」

照「…」

照(ベッドから落ちた時にひねった手首が痛い…)ズキズキ


久「そろそろ咲と仲直りしたいわ」

照「へえ」

久「どうしたらいいと思う?」

照「私に聞かないでほしい」

久「姉でしょ?」

照「姉だけど…」

久「役に立たないわねぇ」

照「ぶっとばしていい?」

久「いや」


照「…だいたい、どうしてそこまで咲にこだわるの?」

久「えっ?」

照「あなたにとって咲は学校中にいる知り合いのひとりに過ぎないはず。どうして咲にこだわるの?」

久「…どうして、かしら?」

照「後輩なら他にもいるでしょ。話が合う子ならもっと他にもいるでしょ」

久「…」

照「どうして咲なの?」

久(どう…して…だっけ…?)


 ――竹井先輩って生徒会長さんだったんですか!?ごめんなさい、知らなくって…!

 ――生徒会長さんってもっと怖そうな印象があったんですけど、全然そんなことないんですね。

 ――竹井先輩とお話するの、楽しいです! 


久(そっか…そうだった)

久「…だめだから」

照「?」

久「咲じゃないと、だめだから」

照「それで?」

久「咲とじゃなきゃできない話、咲がいなきゃ過ごせない時間があるから」

照「ふーん」


久「咲がいなきゃつまんない。咲がいなきゃ死んじゃう」

照「え、それはさすがに引く…」

久「再確認したわ…咲ってば、私が思ってた以上に私のなかで大きな存在だったみたい」

照「…そう」

久「行かなきゃ。咲にほんとうのことを話さなきゃ」

照「その必要はないんじゃない?」

久「え?」

照「咲」

咲「…」オズ


久「咲…いたの?」

咲「えっと…はい」

久「聞いてた?」

咲「はい」

久「そっか…」

咲「えっと…竹井先輩に借りてた本があったのを思い出して…」

久「そんなのどうだっていいの。聞いてたならわかるでしょ?」

咲「え」


久「私、あなたと仲直りしたいの。あなたには竹井久でいられるから、あなたがいないとだめなのよ」

咲「えっと」

久「からかったり弄んだりしちゃうかもしれないけど…でも、それも含めて私なの。咲に対して見せる竹井久なのよ」

咲「はぁ…」

久「だからね。いやだったら正直に言ってほしい。その時は謝る。それで仲直りして、またいつもみたいに本のことで話したり他愛もないことで笑い合ったりしたいのよ」

咲「…」


照(え…なにこれは。プロポーズかなにか?)

セーラ「すごいことなってんな…」

爽「こ、こっちがむずがゆくなってくる」

揺杏「青春だねぇ」

純「いいねぇ」

照「…なにやってるの」

メグ「デバガメというヤツデス」

照「…ばかばっかり」


久「咲、この間は調子に悪乗りしすぎてごめん。またやらかしちゃうかもしれないけど…許して。ね?」

咲「…なんですかそれ」

久「しょうがないじゃない。これが私なんだから」

咲「謝ってるのか開き直ってるのかわからないですよ」

久「謝ってるわよ。開き直ってもいる」

咲「清々しいくらい、先輩らしいですね」

久「そうよ。何度も言ってるでしょ?これが私なの」


咲「いやです、絶対許しません」

久「…」

咲「…って言ったら、どうするんですか?」

久「襲う」

咲「え”」

久「うそ。許してもらえるまでつきまとってやるんだから」

咲「…もう。なんだか怒ったり悩んだりしてる私の方がばかみたいじゃないですか」

久「それならだいじょうぶよ。私の方がもっと大ばかだから」

咲「それは知ってます」

久「そこは否定してよ」

咲「…あはっ」

久「ふふ、あっはは」


咲「次やったらほんとに怒りますから」

久「その時はまた誠心誠意謝るからいいわよ」

咲「誠心誠意ですかぁ?」ジト

久「なによ。なにか文句でも?」

咲「…いえ、なんでも」

久「これからも」

咲「?」

久「よろしくね、咲」

咲「…しかたないですから、今回は許してあげます」

久「ありがと」クスッ


咲「しょうがなく。しぶしぶ。いたしかたなく、ですから」

久「はいはい」

セーラ「言葉ではああ言うとるけど、満面の笑みやん」

爽「ちょっとドキッとした」

揺杏「不覚にも私も」

純「一件落着、ってとこか」

メグ「結果オーライデスネ」

照(…血を吐きそうなほどうらやましい…)

白望「…ダル」

 カン

うまくまとまりましたね!
次から思い付くまま日常を垂れ流す感じに戻ろう


竜華「えぇ~!?咲ちゃん生徒会入らへんのっ?」

咲「はい」

ゆみ「…こう言ってはなんだが、意外だった。こうまではっきりと、しかもこの短期間で答えを出してくるとはな」

菫「流されやすそうだしな」

塞「こらこら。失礼でしょそれは」

菫「見たままの感想を言ったまでだが」

塞「あーもう…この有能ポンコツめ!」

菫「ハァ!?いまのは聞き捨てならんぞ!」

咲「あのっ、いいんです!弘世先輩の言うことももっともですから!私、流されやすいですし」


竜華「あーあ…」ジロ

菫「な、なんだ…私が悪いのか?」

ゆみ「うむ」

竜華「うんうん」

哩「…」コクリ

菫「…くっ」

塞「でもほんと、よく自分でちゃんと答えを出したね」

咲「はい。あれは竹井先輩のきまぐれだってわかっちゃいましたし」

ゆみ「オイ」

久「~♪」

ゆみ「こっち見ろ」グイ

久「ちょっとネクタイ引っ張んないでよぅ。たしかに軽いノリで言っちゃったのは認めるわよ、でも咲に入ってほしかったのはほんとなのよ?」

ゆみ「ノリが軽すぎるんだよ」


咲「いいんです。たしかに振り回されて悩んだりもしましたけど。でも、やっぱりこういうことを流されて、なんて無責任に決めちゃうのはよくないって気付けましたから」

久「風紀委員の口説きも断っちゃったもんね」

ゆみ「風紀委員?またややこしいことに巻き込まれていたんだな君は」

咲「えへへ…でも、これでよかったんだと思います。私は図書室で本を読んでるくらいがちょうどいいですから」

竜華「そんなぁ…」

塞「まぁまぁ。でもそっか。なんだかちょっと宮永さんに興味が湧いてきちゃったかも」

咲「へ?」


ゆみ「そうだな。君のような者なら生徒会も歓迎だ」

咲「いや、ちょっと…え?」

ゆみ「もし興味が湧くことがあれば、自らの手で生徒会の戸を叩いてほしいものだな」

塞「だね」

咲「お、おだてたって入りませんからっ」

久「じゃあ実力行使で♪」

ゆみ「やめろ馬鹿者」ゴスッ

久「いったぁ!なにすんのよ、いまので私の脳細胞ちゃんが何億と死滅したわよ」

ゆみ「迷信だ。それにネジのぶっとんだ脳細胞なら多少死んでも問題なかろう」

久「やぁねぇ…暴力反対」


竜華「図書室行ったら咲ちゃんに会えるん?」

咲「え、まぁ…図書室には頻繁にいきますけど」

竜華「本が好きなんやね。文学少女ってやつや!」

咲「そんな大それたものじゃ…」

久「絵になるわよ。咲が静かな図書室で読書に耽る姿は」

竜華「見たい!」

塞「へぇー、なんだかいいね」

咲「こ、困ります!見られてたら集中できませんし…」

久「見られて羞恥に身をよじる咲…」

竜華「…ええやん」

塞「…ちょっと見てみないことにはわからないかな」

ゆみ「お前たち、ほどほどにな…」

菫「真っ赤じゃないか」クス

咲「…っ」カァ


 トイレ

恭子「…」

郁乃「末原ちゃん、わろてほら~」

恭子「…」ムスッ

郁乃「そないにむくれてたら台無しやで~?」

恭子「…なんでうちが、赤阪先生の着せ替え人形にならなあかんのですか」

郁乃「まぁまぁ、ええやん?可愛いは正義、やで~」

恭子「適当言わんでください!」


郁乃「口では言うてもノリノリなクセに~」

恭子「アンタが無理やり着せたんやろが!ドタマかち割んぞ!」

郁乃「女の子がそないな汚い言葉遣いしたらあかんで~?風紀委員がちゃんと身嗜みを整えるんも、な?」

恭子「うっ…」

郁乃「改造制服やら学ランやら巫女服やらジャージやらを禁止して、ひとりだけスパッツいうんもおかしーよなぁ~」

恭子「ぐぬぬ…」

郁乃「ちゃあんとスカートはかんとな~?」

恭子「そ、それはそれとしても、リボンやらなんやらは関係ないでしょう!?」

郁乃「あ、それはうちのシュミ」

恭子「くっ…しばき倒したろか…!」


郁乃「ほんじゃちょいとカメラ取ってくる~。勝手に動き回ったらあかんで~?」フララ~

恭子「言われんでも、こんなはずいカッコで歩き回れるかっ」

郁乃「ちょちょっと取ってくるから待っとって~」ガチャ

恭子「…あーもう…」

恭子「あざとすぎやろこの髪型にこのリボン…」チラッ

恭子「こんなんでかわええとか安すぎや、頭に細工するだけで他人からの評価が変わったらなぁ…」

恭子「…」

恭子「…ポーズ取ってみたりしてな」クイ


咲「あ」ガチャ

恭子「――――――(声にならない悲鳴)」

咲「…おじゃましました」バタン

恭子「待てや!こら!」ガチャ

咲「なにも見てませんから!なにも!」

恭子「うそこけ鏡越しにばっちり目合ったやろ!」ガッシィ

咲「すっごい女の子らしい身なりの末原さんが鏡に向かってしなと蠱惑的な笑みを作りながらウインクしてたところを目撃なんてしてませんから!」

恭子「ぎゃーッ!?あほっ、そんな詳らかに表現せんでええ!ちゅーかばっちり見とるやん!」


咲「やめてください!たすけてだれか!」

恭子「かくなる上はあんたを殺して私も死ぬ!往生せえ!」グワバッ

咲「ちょ、重いです!?」

恭子「だれが重いって!?おおん!?」

咲「そうじゃなく!物理的な重いじゃなくて…」

恭子「この口か!この口が余計なことをべらべらとのたまいよるんやな!」

咲「ん~~~~~~っ!?」ジタバタ

郁乃「…」パシャ

恭子「…は?」


郁乃「下級生にケモノのように襲いかかる末原ちゃんゲット~」

恭子「…は?」

郁乃「馬乗りになって口を塞ぐなんて強引すぎ~!でもそこがええ!」

恭子「おら」バキッ

郁乃「あ~…」

恭子「あっぶな…っ!社会的に死ぬとこやった…」フゥ


咲「っ」ダッ

恭子「あっ、コラ!逃げんな!」ダッ

郁乃「ま~もう一台デジカメあるんやけどな~。決定的瞬間は逃してもうたけど、これはこれで」パシャパシャ


咲「なんで追いかけてくるんですかぁ!」

恭子「あんた絶対言いふらすやろ!」

咲「そんなことしませんって!」

恭子「なら逃げんなや!」

咲「そんな必死に追いかけられたら逃げもしますよっ!」


豊音「あ、宮永さんと末原さんだ。たのしそー、私もおっかけるけどー」タタタ

恭子「うおおおおおおっ!?なんかきたっ、なんか!」

咲「なんなんですかぁっ!」

豊音「なんだか今日の末原さんちょーかわいいよー。捕まえたらあんなことやこんなことしちゃおーっと」

恭子「あかん…!ヤられる…!」

咲「私関係ないよね…?このままそっと外れちゃえば…」

はやり「はや?」

咲「」ダダダッ


はやり「あ、咲ちゃーん☆ いいトコに、ってはやや?なんだか可愛い子もいっしょだ、ちょっと拉…勧誘しなきゃ!」ダッ

恭子「増えたぁ!?」

咲「ハァッ、息がっ…でも止まったら…おしまい…っ!」

 この後偶然通りがかった晴絵が奇跡的に場を収めた。
 その様をして、咲と恭子に言わしめた。――伝説、と。


洋榎「宮永!」

咲「…」スタスタ

洋榎「ちょ、シカトかっ!」ガッシ

咲「えっ、わ、私ですかっ!?」ビクッ

洋榎「アンタ以外にこの場に宮永サンがおんのか?」

咲「それは…そうですけど…」キョロキョロ

洋榎「探さんでええわっ!ったく、チョーシ狂うやっちゃでホンマ」

咲「えっと…ごめんなさい」

洋榎「謝らんでええ!実は何を隠そうアンタに用があんねん!」

咲「私にですか?」


洋榎「おう。の前にーちょちょいのちょいちょい」prr

洋榎「こちら染谷サンのお電話ですかー?」

  『違いますが』

洋榎「そんなんいらんのや。いますぐここまできて」

  『ここってそこどこなんじゃ!?』

洋榎「あと三秒なー」

  『ちょ、待っ――』ブツッ

洋榎「ちゅーわけや」

咲「どういうわけなんですかっ」


洋榎「お、ええやん!ツッコミ自体は拙いが食い気味にくるのはええ!素質あるで!」

咲「なんのですかぁ…」

洋榎「ツッコミ」

咲「…」

洋榎「うちにこーまで冷たい視線を浴びせかけられるんもそうはおらんで…」


咲「あの、ほんとになんなんですか?私に用っていったい?」

洋榎「あるツテからな、聞いたんや。アンタ、姉のぬくもりに飢えてるんやって!?」

咲「…はぁ」

洋榎「あ、あるツテっちゅーのはうちの妹なんやけどな。絹恵いうねん、知っとるやろ?」

咲「あー。愛宕さんのお姉さんですか」

洋榎「洋榎、ひろっち、ひろやん、カニ、なんとでも呼んでくれや」

咲「はぁ…わかりました、愛宕先輩」

洋榎「…………まぁあれや。うち、お姉ちゃんやん?」

咲「絹恵さんのお姉さんですね」

洋榎「せやから、アンタのお姉ちゃん代わりになったろうとやな」


まこ「…で?姉御と咲とは珍しい組み合わせというか、知り合いじゃったんか?」

咲「いえ…さっきいきなり声をかけられて、なんだか知らない間に話が」

洋榎「お姉ちゃんになりたいんや!」

まこ「荒川さんとこは頭の病気も見てくれるんかいのう」

洋榎「うちは至って正気や!最近絹が姉離れしてきてて寂しいのっ!察せやそんくらい!」

まこ「まぁ姉御の突拍子もない無茶ぶりはいつものことじゃが…お姉ちゃんねえ」


洋榎「宮永も寂しいやろ?な?」

咲「私は…別に、だいじょうぶですけど」

洋榎「はいうそー」

咲「え…ど、どうしてそんなこと」

洋榎「うちがそう思ったからや」

咲「ええ…」

まこ「まぁこういう人なんじゃこの人は。付き合ってやってくれんか」

咲「それは別にいいんですけど…」


洋榎「どーせなら賑やかにいこか!」

まこ「またいらんことを考え付いたな」

洋榎「適当に人呼んでそんなかでだれがお姉ちゃんに相応しいか決めたろ!」

まこ「ほうほう」

洋榎「ほんならさっそく呼びかけんで」ピッピッ

まこ「呼んどいてよかった」

恭子「はい洋榎アウトー」

洋榎「うおっ!?どっから湧いたんや恭子!?」



咲「あっ…」

恭子「んー?いまのはなんの『あっ』や?お?言うてみい」

咲「…い、いえなんでも」

恭子「…フン」

洋榎「せや、せっかくやし恭子もくるやろ?」

恭子「なにがや」

洋榎「くるんかこないんか」

恭子「まーたくだらんこと企んどるんか。ええわ、ついてったる」

洋榎「よっしゃ、いくで」

まこ「あーあー…」

咲(なんか変な話になっちゃったなぁ…)


 ザワザワ

まこ「…どんだけ集まっとるんじゃこりゃ」

洋榎「適当に送ったからうちもわからん」

咲「す、すごい人数…」

恭子「で?なにするつもりなんや?」

洋榎「もちろん、ここにおわす宮永の姉に相応しいモンを決めるんや!」

恭子「帰る」

洋榎「させへん!」

恭子「なん…ちょ、なんやその馬鹿力!?」

洋榎「その辺のやつから適当に宮永に姉アピールせえ!」

まこ「雑っ!」


宥「宮永さーん」

咲「宥さん!」

宥「宮永さんが寒がってるって聞いて、来ちゃった」

咲(そんな話だったかな…?)

宥「えいっ」ガバッ

咲「わっ」

宥「あっためてあげる~」

咲「…もう、宥さんがあったまりたいだけなんじゃないですか?」

宥「うっ」

咲「あっ、図星なんですね~?」

宥「ひゃっ…くすぐったいよぅ」


洋榎「…とまぁ、あんな感じのことをやな」

恭子「無理に決まっとるやろっ!」


久「やっほー」

咲「先輩まできてるんですか…」

久「そりゃもうくるわよ。楽しそうだし」

まこ「吹っ切れすぎじゃ…」

久「さぁ、なにしてほしい?言ってみなさい咲」

咲「えぇ…私が決めるんですか?」

久「当たり前じゃない」


咲「えっと…じ、じゃあ…」

久「うん」

咲「なでなで…とか?」

久「まかせなさい!」

咲「あ、ちょっと!なでなでって言ったら頭ですよね!?どこ触ってるんですかっ」


洋榎「久はまー、いつも通りやな」

恭子「…アホちゃうか」


竜華「咲ちゃんきたで!」

怜「うちもおるよー」

咲「清水谷先輩、園城寺先輩!」

竜華「妹がお姉ちゃんに求めるものと言ったらやっぱ甘やかしやろ!存分に甘やかしたるで!」

怜「んじゃうちはその逆を行って甘やかされるわ。甘やかしたい系お姉ちゃんを目指す」

白望(ちっ…とられた)

咲「えっと…膝枕して、膝枕されてって、これどういう…」


豊音「次は私だよー」

咲「姉帯さんだー」

豊音「そだよー。姉帯、つまりお姉ちゃんだよー」ドヤ

咲「…?」

 ザワ…ザワ…
 ナニガイイタイノ?
 アネタイダカラ、アネダッテイイタインジャナイ?

豊音「…出直してくるよー!」カァァ

咲「あっ、そーゆー…って姉帯さんもういないっ!?」


爽「やっほー」

揺杏「ういーっす」

咲「あ、おふたりもきてたんですか」

爽「まーうちらは付き添いみたいな?」

揺杏「そーそ。適任者を連れてきました」

誓子「ちょっ…なんなの?」

揺杏「チカセン、成香相手だとお姉さんみたいジャン?だから宮永ちゃんと合うんじゃねーかなーって」

誓子「いや、意味わかんないし」


咲「あの…なんかごめんなさい」

誓子「へ?あ、別にあなたが謝ることじゃないのよ?このふたりがちょっとアレなだけだから」

咲「でも…」

誓子「いいからいいから」

咲「はぁ…」

誓子「…」ウズ

爽「見ろよ、チカのやつうずいちゃってるよ」

揺杏「うちらの見立て通りだね」

誓子「よかったら爽たちとこれからも仲良くしてやってね」

咲「あ、はい」

咲(なんだかすごい年上の人って感じ…)


洋榎「そろそろ恭子も行ってきー」

恭子「だからなんでうちが――」

咲「末原さん…」

恭子「…ハァ。なんや、アンタとはつくづく因縁があるなぁ」

咲「あはは…そうですね」

恭子「洋榎に振り回れてるとこは同情したるわ」

咲「まぁ…振り回されてることは否定しませんけど…でもなんだかんだで楽しいですよ」

恭子「…ふーん」


咲「いろんな人と仲良くなれますし」

恭子「案外ポジティブやなぁ」

咲「末原さんとも仲良くなりたいなー…なんて」

恭子「…」

咲「…」

恭子「…ハァ?」

咲「あ、やっぱりだめ…ですか?」

恭子「なんで仲良うせなあかんの」

咲「そ、そうですよねっ…」ションボリ

恭子「まったく…」クルッ

洋榎「耳ちゃん真っ赤やでー恭子ー」ニヤニヤ

恭子「うっさい死さらせっ!」


洋榎「おー怖。ほんじゃま、ぼちぼちうちの出番やな!」

咲「はぁ」

洋榎「さ、うちのことお姉ちゃんやと思うてええで!」

咲「でも…絹恵さんが」

洋榎「う…」

咲「ちょっとヤケになってませんか?」

洋榎「ええんや!甘えてくれへんし、甘やかしてもくれへん絹なんか!」

絹恵「うちなんか?」

洋榎「…Oh」


絹恵「まったく…最近なんかいじけてると思うてたら、そんなことやったんや」

洋榎「そ、そんなこととはなんや!」

絹恵「おかーちゃんも心配してたで?」

洋榎「お、おかんまでもか」

絹恵「うち、別に姉離れとかしてへんから。おねえちゃんはおねえちゃんやし」

洋榎「…ほんまに?」

絹恵「ほんまに」

洋榎「…ならゆるす」

絹恵「ゆるすって、なにを。てかどっから目線なん」

洋榎「もーどーでもええやろ!ハイハイ、この話終わり!」

まこ「えー…巻き込むだけ巻き込んで勝手に解決するんかい…」

久「まー洋榎らしいんじゃない?で、咲はどうするの?」

咲「はい?」

久「姉グランプリ」

まこ「そんな名前が」

咲「えっと…私は…」

咲「…あっ」


照「…何事かと思えば」

照(私には関係なさそう。どうせ選ばれないだろうし)

咲「お姉ちゃんっ」

照「」ビクッ

咲「お姉ちゃん…」

照「なに?」

咲「あの…」

照「…」


咲「今日!」

照「?」

咲「い…いっしょに帰ろ?」

照「…」

咲「…」ドキドキ

照「別に」

咲「!」

照「…いいけど」

咲「ほんと!?」パァ

照「…ん」

咲「約束だよ!」

照「わかったから…」


久「…悔しいけど、やっぱりなんかあのふたりが一番なのよねぇ」

洋榎「にやけるわあんなん」

まこ「姉御のも端から見たらおんなじじゃ」

洋榎「…ほんまか」

久「うん」

まこ「うん」


咲「…」ニコニコ

照「…」フゥ


咲「あ、染谷先輩だ」

まこ「」ブツブツ

咲「なんだかメモ帳とにらめっこしながら歩いてる…あれじゃ危ないよ」

咲「なにを呟いてるんだろ?ちょっと気になるかも」

咲「…」

咲「だいじょうぶだよね。もうちょっとやそっとのことじゃ揺るがないよ私は」

咲「こっそりついてってみようっと」


咲「…あ、空き教室に入っていった…」

咲「ここで安易に近づくのは素人の考え。一旦スルーして通り過ぎて離れたところで様子を見よう」

洋榎「お、宮永やん。奇遇やな」

咲「え?あ、愛宕先輩…?」

洋榎「お、せや。閃いた」

咲「な、なにを…?」ヒク

洋榎「ちょいきて」

咲「あ、あぁ~…」


洋榎「きたでー」ガラッ

まこ「おー姉御」

咲「ど、どうも…」

まこ「咲?どうしたんじゃ?」

咲「えっと、さっきそこで愛宕先輩とばったり会いまして、そしたら強引に…」

洋榎「人員確保や」

まこ「フム…まぁええかのう」

咲「え?」

まこ「咲、折り入って頼みがあるんじゃが」

咲「頼みですか?」


まこ「実は学園祭でちょいと出し物をやろうと思っとるんじゃ」

咲「はぁ」

まこ「もちろん有志による出し物じゃから大それたことはできん…と思わせーの」

洋榎「いっちょごついもん出して歴史に名を刻んだろうっちゅーこっちゃ」

咲「それで、なにをするんですか?」

まこ「そりゃもう学祭と言やぁメイド喫茶じゃ!」

咲「安直ですね…」

まこ「まぁまだ企画段階じゃけえ、屋台骨もできちょらんのが現状じゃ。そこでとにもかくにも人手がいると思うてな」

咲「ま、まさか…?」


まこ「咲、メイドに興味は?」

咲「ないです」

まこ「よっし、今年の学祭を思い出に残るもんにしような咲!」

咲「人の話を聞いてくださいっ!」

洋榎「まぁまぁ。宮永」ポン

咲「愛宕先輩…」

洋榎「何事も諦めが肝心や。ドンマイ!」

咲「…」


まこ「他にも手当たり次第声かけたから、そろそろ何人か来てもいい頃合だと思うんじゃが」

咲(こんな話に食いつく人なんているのかな…)

爽「きたぞー」ガラッ

咲「いたよっ!」

爽「お?先客がいたのか」

咲「…爽さん、なんできたんですか…?」

爽「ん?そりゃあれだよ。メイドさんってやつに一度なってみたかったから」

咲「…」


優希「おいーっす」

未春「染谷さんきたよー」

まこ「おうーようきたのー」

咲(結構ぞろぞろきたよ…)

優希「お!咲ちゃんもまかないタコスに引き寄せられたのか?」

咲「違うけど…優希ちゃんはそれが目当てかぁ」

優希「うむ!合法的にタコスを貪れるなんて最高だじぇ!」


まこ「まぁこんなもんかのう。他は期待できそうになさそうじゃったし、これ以上をこんじゃろ」

洋榎「…しかしまぁ」

まこ「見事なまでに…」

未春「…」

優希「…」

爽「…」

咲「…」

まこ「…まぁ、胸なんぞ飾りじゃ、なくても死なんからな」グスッ

未春(涙ぐむくらいなら触れないでほしかった)


まこ「ほんじゃ獅子原さん、橋渡し頼んます」

爽「おう」

咲「橋渡し?」

洋榎「ここに集まったんは接客部隊。喫茶言うたら調理部隊も必要やろ?せやから家庭科研究会にやな」

咲「すみません私具合が悪いので帰ります」

爽「揺杏にもう話してあるからもうすぐここにくるんじゃないかな。…っと、噂をすれば影、と」

揺杏「ちーっす」

咲(遅かったかぁ…)


和「あら?咲さん、優希も」

咲「奇遇だね、和ちゃん…」

優希「おう」

咲「あの…瑞原先生は…?」ビクビク

和「今日は職員会議です。一応、先生から『ステージに出られるレベルじゃないからアイドル研究会の方は学祭に出さない』とのことで、こちらの手伝いをすることになったんです」

咲「よかったよ…」ホッ

いちご「うちもそれ聞くまで憂鬱で憂鬱でしゃあなかったわ」

美穂子「さすがにまだ人前では恥ずかしいものね」

和「着々と毒されてきてますよ福路先輩…」


まこ「なかなか大所帯になったのう。ほんじゃ学祭まで時間もあんまないしちゃっちゃと準備に入ろうか」

揺杏「そんじゃメイドさんたちの採寸からね」

咲「え…そこからですか?」

揺杏「そだね。まー今回はこっちの四人でやれるしだいじょーぶっしょ」

まこ「事前準備はどーしてもそっちに負担が偏るなぁ。すまなんだ」

揺杏「その忙しなさが醍醐味っしょ?」

いちご「たしかに」


咲「和ちゃんって裁縫も上手なんだね」

和「嗜む程度ですが…」テレッ

優希「出来た嫁だじぇ。鼻高々!」

和「ハイハイ」クスッ

まこ「もうちょい数字に強いやつが欲しい気もするが…さてさて」

洋榎「浩子呼んだれ」

まこ「浩子…ああ。姉御の従姉妹じゃったか?」

洋榎「もう呼んだ」

まこ「即断即決じゃなあ…」


浩子「面白そうなことやっとるやん!」ガラッ

まこ「はやっ!」

浩子「一枚噛ませてくれるんやって?」

まこ「お、おう」

爽「そーいやユキはどした?」

揺杏「なんかトシさんのお手伝いだってさ、社会科の。たぶん今頃職員室で茶でもすすってんじゃね?」

爽「あー」


 それからどうした


浩子「メニューどーする?」

美穂子「大抵のものは作れますよ」

和「先輩ほどではないですが私もそれなりに」

由暉子「私はある程度、くらいですかね」

いちご「ちゃちゃのんはちょいと偏りがあるかな。お好みならまかせえ」

浩子「…なんやめっちゃ女子力高いなァこいつら」

まこ「採算取れそうか?」

浩子「まぁ適当にやってもこの面子なら食えるモン出してくれるやろ。そしたら話は簡単や」

まこ「さすが」


咲「い、いらっしゃいませっ、…ごしゅじんさま」

まこ「コラ、咲!恥じらうなァ!」

咲「うぅ…」

爽「い、いらっ…いら…」

まこ「恥じらいは捨てりゃァ!」

爽「…これ想像以上にはずいんだけど」

未春「だね…」

咲「なんでこんなことを…」

洋榎「へいらっしゃい!ええとこにきたなぁそこの旦那!」

まこ「姉御、真面目に!」

優希「いらっしゃいませっ、ご主人サマ!」キャルーン

まこ「これ!これじゃ!優希をお手本にせえ!」

咲「…」


優希「うまぁ!おかわり!」

爽「うんまい」

浩子「こりゃほんま売りモンになるで。うま」

美穂子「ゆっくり食べてくださいね」

まこ「…試作でこがぁな量作ってどうすんじゃ…すでに足出そうなんじゃが」

美穂子「はい、どうぞ」

優希「さんきゅー!」

和「はいどうぞ、咲さん」

咲「ありがと、和ちゃん」


まこ「ほうじゃ、咲」

咲「はい?」

まこ「忘れとったわ。ほい、これ」

咲「?」

まこ「生徒会に届けてくれい」

咲「…はい?」


まこ「メイド喫茶の出店許可申請じゃ」

咲「あの…ひとついいですか?」

まこ「だめ」

咲「どうしてこんな大事なものをまだ出してないんですかっ」

まこ「だめっちゅーたのに…」

咲「ありえませんよ…ここまでやってまだ申請を出してなかったなんて…これで却下されたらどうするんですか?」

まこ「そうならんために、咲にいかせるんじゃろ」

咲「…」ジト

まこ「まーまー。それに久ひとりが相手ならわしが行ってもいいんじゃが、あすこの連中は好かん」

咲「結局染谷先輩のわがままじゃないですかっ」

まこ「頼んだー」

咲「…あーもうっ」


咲「…生徒会室にくるのは勧誘を断った時以来かぁ」

咲「…よし」

咲「失礼します」ガラッ



智葉「馬鹿かお前は!」

久「馬鹿とはなによ」

智葉「馬鹿だろうが!学園祭を執り仕切るべき生徒会が役員をあげて出し物を出すなど聞いたことがない!前例もないぞ!」

久「そう!だから私も思いついた時は『私って天才…?』って思っちゃったわ」

智葉「~~~、このっ…馬鹿も底知れないと身震いしてくるな…」

久「感動に?」

智葉「呆れに決まっている。だいたいからして、お前は昔からそうだ。好き勝手やりたい放題、他人を振り回さなければ死んでしまうのか?」

久「そうだったっけ?」

智葉「振り回される方の身にもなれ」

久「そうそう、智葉ったら昔は――」

智葉「黙れ。そのべらべらあることないことのたまう舌を切り落とすぞ」

久「ちょ…どこから出したのよその木刀!」

智葉「死ぬか?死ぬ?なあ死ぬ?」

久「ちょ…シャレになってない!怖いから!」


咲(……えっと、これは)タジ


胡桃「見物だね、生徒会の出し物」

豊音「ちょー楽しみだよー」

塞「見世物じゃないから…ていうかたぶんそういうのシロのが似合うでしょ」

白望「めんどくさいのはごめんだね」

咲「あ」

胡桃「あ」

豊音「あ」

塞「あ」

白望「あ」


怜「竜華がなぁ…ちょっと想像でけへんわ」

竜華「そらあれや、当日のおたのしみっちゅーやつやな」

咲「あ」

怜「あ」

竜華「あ」


煌「とってもすばらなんでしょうねえ。楽しみですね!」

姫子「絶対行きます!先輩なら絶対似合いますよ!」

哩「そうか?」

咲「あ」

煌「あ」

哩「あ」

姫子「?」


豊音「宮永さんだー」

塞「や、久し振りだね。生徒会になにか用?」

咲「あ、その…はい」

竜華「生徒会に入るん!?」

咲「いえ、そうじゃないんですけど…」

胡桃「え、なにそれは」

豊音「宮永さん生徒会に入っちゃうのー…?」

咲「入りませんからっ」

竜華「そこまで嫌がらんでも…」


姫子「先輩、だれですかこん一年は」

哩「…」

姫子「先輩?花田、どゆことね?」

煌「この子は宮永さんです!とてもすばらなお人ですよ!」

姫子「わからん…」


怜「咲ちゃんは生徒会なんて入らへんよ。そんな面倒そうなんに入ったら保健室来られんようになるし」

白望「そーだそーだ」

塞「…シロ、もしかしてだけど、まだ保健室でサボってたりしないよね?」

白望「…だいじょうぶだよ」

胡桃「ほーう?」

白望「…」


久「あなたたちなにやってるの?」

智葉「逃げたか…」

咲「あ、えっと…生徒会にこれを」スッ

久「ん?なにこれ…申請書?……へえ」ニヤ

塞「なになに?」

久「咲、学祭出し物やるんだ?」

咲「えっと、私というか、染谷先輩が主導でやるのに巻き込まれたといいますか…」

竜華「ほんまに!?どんなんやるん?」

久「それがねえ、聞いてよみんな。メイド喫茶だってさ」

咲「あ、ちょっと…!」

 ザワッ

つづくよー

お待たせいたしまして誠に中略
すごいいまさらなんだけど>>271>>272の間抜けてた
正しくは下のが挟まる



まこ「なに言うとるんじゃこの人は…」ハァ

咲「あ、染谷先輩!」

まこ「おー咲。なにしとるんじゃこがぁなとこで」

洋榎「遅かったやん」

まこ「これでがんばった方じゃ…なんなら姉御のせいで風紀委員に携帯没収されて割食うとるくらいじゃ」

洋榎「そら大変やったなぁー」

まこ「くっ…このっ…」

咲「こらえてください!」


 当日

咲「うあ…この制服、ちょっと派手すぎないかな?」

和「似合ってますよ。すごく」グッ

咲「そうかな…?」

まこ「自信持ちんさい。自分が世界で一番かわいいと思えば恥ずかしくなくなるじゃろ」

咲「先輩もそう思ってやってるんですか?」

まこ「いんや全然」

咲「もうっ!」

優希「きゃるーん!」フリフリー

洋榎「どやーん!」

爽「いえーい!」

まこ「あれを見習え」

咲「はあ…」


和「それにしても材料、これだけで足りるんでしょうか…」

美穂子「どれくらいお客さんが入るかわからないことには…でもかなり不安よねぇ…」

まこ「あんたらが試作で大盤振る舞いするからじゃ…最悪足りなさそうじゃったら自転車操業で逐次買い足していくつもりじゃが」

浩子「とにもかくにも開店や!」

由暉子「ではオープンしますね」タタッ

咲「…」ドキドキ

咲「……」

咲「………」


 それから一時間

咲「…だれも来ませんね」

洋榎「せやな…」

優希「ヒマすぎてあくびが出るじょ…」フワァ

爽「だなぁー」ギッギッ

揺杏「メイドが勝手に座んな」ペシッ

爽「あだっ」

まこ「こりゃまずったかのう…」

咲「どういうことですか?」

まこ「ウチは女子校じゃからの。初日の校内公開日はあんま入らんとは思うたがまさか物見遊山すらいないとは」

咲「?」


浩子「女がメイド見る為に金払うかっちゅー話やな。目があるとしたら二日目の一般公開日か。にしても、他に飲食やってるとこは意外に少なかったと記憶してんねんけど…こうまでまったく入らんか?計算違いかね…」ウーン

 カラン

一同「!!」

浩子「きたっ!記念すべきお客サマ第一号や!気合いれてき!」

咲「はいっ!いらっしゃいませ!」

智葉「風紀委員だ。邪魔する」

まこ「…チッ」

浩子「はァー…」

智葉「…なんだこの空気は」


咲「風紀委員?」

美穂子「初日の校内公開の段階で、一般公開できるものか風紀委員が見回りして確認してるのよ。たしか去年は生徒会もいっしょだったと思ったけれど…」

浩子「こちとら客待ってたんで。初の客入りかと思ったら風紀委員の見回りだったっちゅー落胆を察してください」

智葉「なるほど。まぁそう言うな。見回りと行ってもただ冷やかすのもどうかと思ってな。客としてきたんだ」

洋榎「らっしゃせー!ご主人サマ、なにになさいマスー?」

智葉「チェンジで」

洋榎「なんでや!」

智葉「いやだから」

洋榎「こンの…!」

浩子「チェンジ!チェーンジ!」


優希「イラッシャイマセー!こちらメニューになりまーす!」

智葉「ああ…ん?」

優希「本日のおすすめはタコスだじぇ!」

智葉「…このメニュー、本日のおすすめしか載ってないじゃないか」

優希「1にタコス2にタコス!3、4もタコスだじぇ!それ以外ない!」

智葉「…チェンジ」ハァ

浩子「チェーンジ!次いけ次!」

智葉「まともな接客ができるやつはいないのか…」


咲「い、いらっしゃいませっ」

智葉「ほう…君か」

咲「どうも…こちらお水です。メニューをどうぞ」

智葉「ありがとう。見させてもらう」パラッ

智葉(メニューにおかしなものはなさそうだな…ん?)

智葉「この、サービスメニューというのは?」

咲(やっぱりそこ食いついてくるよね…)

咲「えっと、それはご注文をいただいたら私たちメイドがサービスとしてさせていただくメニューになってます」

智葉「いかがわしいもの…ではなさそうだが…」

咲(だいじょうぶ…かな?)


智葉「ふむ…」

咲「…」ドキドキ

智葉「そうだな。それじゃコーヒーとクッキー、それからサービスメニューの『メイドさんの笑顔』を」

咲「えっ!?」

智葉「どうした?」

咲「あ、いえっ…かしこまりました!少々お待ちくださいませ」ササッ

咲「コーヒーひとつ、クッキーひとつです!」

浩子「でかしたで宮永!」

咲「はいっ」

浩子「調理部隊準備はできとるか!?」

和「はい!いつでもお出しできますよ!」

浩子「はやっ!よっしゃ行ってこい宮永!」

咲「はいっ」


咲「っとと…お待たせいたしました!コーヒーとクッキー、それから…え、笑顔になりますっ」ニコッ

智葉「…」

咲「え、っと…いかがいたしましたか…?」オド

智葉「いや…なんだか、想像以上に良いものが見られたなと」

咲「え?」

智葉「なんでもない。いただこう」

智葉「ふむ…美味いな。正直こちらも想像以上だ…」サク

智葉「こういった喫茶形式の出し物は飲食というより休憩が主目的になりがちだとばかり思っていたが…これはなかなか侮れないな」ズズ

咲「あはは…ありがとうございます」


智葉「…ひとついいかな?」

咲「あ、はい!」

咲(なにかダメ出しとか指摘かな…?私じゃ答えられないだろうし、船久保先輩を呼ばなきゃ)

智葉「テイクアウトはできるのか?」

咲「へ?」

智葉「テイクアウトは可能なのかと」

咲「…えっと」チラッ

浩子「…」グッ

咲「はい、できますけど…」

智葉「では頼もうかな」

咲「あ、ありがとうございます」


智葉「それじゃ…」

咲「…」

智葉「『メイドさんの笑顔』を持ち帰りで」

咲「…」

智葉「…」

一同「…」


 ((…はい?))


咲「え、えぇっ?えっと、そのサービスメニューは」

智葉「ふふ、冗談だ。珍妙な顔をしていたぞ?」

咲(冗談…だったんだ…?心臓に悪いよぅ…)ハァ

智葉「サンドイッチを頼もうかな。昼が必要そうだったら宮永の笑顔を思い出しながら食べるとしよう」クス

咲「も、もうっ!冷やかさないでくださいっ」


浩子「あの冷徹な風紀委員長が笑うとる…!?宮永って何モンやねん…」

和「天使です」

優希「一理ある!」

まこ「ちょっち言いすぎじゃが、まぁニュアンス的には近い」


智葉「ごちそうさま。特に問題はなさそうだ」

咲「本当ですか!?」

智葉「ああ。他の委員の者にも友人としてお勧めしておこう。良いものが見られると」

咲「えっ、それは…」

智葉「なかなか忙しくなるかもな?がんばれ宮永」

咲「あはは…ありがとうございます。…ありがとうございました?」

智葉「私に聞かないでくれよ。まったく…」

咲「えへへ…」

智葉「それでは次にいくとしよう。君たちも学園祭を楽しんでくれ」

 「「ありがとうございましたー!」」

洋榎「やったな宮永妹ォ!いんちょの反応はちょいシャクやったけど、結果オーライ!」ギュウ

咲「わっ!愛宕先輩…くるじいでず~!」

浩子(宮永を接客の主軸にすりゃ…こりゃ大儲けのヨカン…!?)


 廊下

智葉「…」

脳内智葉『宮永の笑顔を持ち帰りたい』キリ

智葉「っ!」ガン

文堂「!?」

智葉(なんということを口走ってやがンだ私は…ッ!あんな歯が浮くような文句が自分の口から吐き出されたとは信じられん…というか信じたくない…)ガンガン

文堂「ちょっ、どうしたんですか!?」

智葉「だいじょうぶだ」タラリ

文堂「だいじょうぶって、おでこから血が出てますよ!?」

智葉「こんなんツバつけときゃ治る」

文堂「はぁ…?」

智葉「よし、頭冷えた。仕事を続けるとしよう」スタスタ

文堂(ええ…?)


誓子「やっほー」

成香「おじゃまします」

爽「おうっ!チカ、成香、きたな!」

誓子「ぷっ…あはは!ほんとに爽がメイドさんの格好してる!」

爽「むっ、どゆことじゃーい!」

誓子「やー、似合うじゃない。馬子にもなんたら」

爽「ほーう、つまりバカにしてんだな?おう?」

成香「爽さん、すてきです!」

爽「成香は違いがわかる女だなぁ」ウンウン


揺杏「おっ、よーこそー」

誓子「揺杏、エプロン似合うー!」

揺杏「やめてよチカセン」テレ

爽「なんだこの違い…」

揺杏「せっかくだしサービスするよん」

誓子「安くなるの?」

揺杏「んにゃ、爽がこのサービスメニューがんばる」コレ

誓子「へぇー」

爽「おいおい」


成香「いろいろあるんですねぇ…」

誓子「じゃ上からぜんぶやって」

爽「すげぇ無茶ぶりきた!?」

誓子「うそうそ。この笑顔とキメポーズ複合で」

爽「そんなんアリ?」

揺杏「アリ」

爽「マジで?」

揺杏「がんば」

爽「しゃーなし!いくぞ?きゃるーん、メイドの獅子原爽だよ☆」ビシッ

誓子「あ、宮永さん!」

咲「どうも」ペコッ

爽「見てないし聞いてないし!」ウワーン


成香「はじめまして…」ペコッ

誓子「この子は本内成香、宮永さんと同じ一年生よ。仲良くしてあげてね」

咲「宮永咲です。よろしくお願いします」

成香「はいっ」

咲(なんかちょっと安心するなぁ)

成香(こわい人ではなさそうです…お友達になれそうです♪)

誓子「オレンジジュースふたつと、成香、なにか宮永さんにしてもらったら?」

成香「はいっ。えっと、それでは…この、な、なでなでを…」

咲「はい、かしこまりました。オレンジジュースふたつと、なでなでですね。えっと…なでなでは今されますか?」

成香「おっ、おねがいします!」


咲「そ、それでは失礼します…」スッ

 なでなで

成香「ほわっ…」ピク

咲「…」ナデナデ

成香(すごくやさしい…すてきです…)ポワポワ

咲(なつかしいなぁ…昔はお姉ちゃんに頭撫でてもらったり、撫でてあげたりしたっけ)

誓子(こ、これは…なんという癒しオーラ…!ただ見てるだけでいやされるわ~…)

爽「むむむ…」


咲「どうでしたか?」

成香「は、はいっ…すごくすてきでした!」

咲「え、あ…あ、ありがとう、ございます…」カァ

誓子「最高ね」

揺杏「わかる」

爽「わからーん!妹ちゃんちょいこい!」

咲「ええっ!?」

爽「撫でろ!私を撫でるんだ!」

咲「な、撫でるんですか?」

爽「そう!成香にやったように!」

揺杏「へいお待ち」

誓子「ありがとう」

成香「宮永さん…」チラッ

揺杏「見たら巻き込まれるぞー」


爽「おお…いい…はっ!?いい、くないーい!もっとだもっと!」

咲「はいぃっ」

 なでなでなでなでなでなでなでなで
 なでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなで
 なでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなで…

爽「ハァ…ハァ…な、なかなか…んくっ…やるじゃん」

咲(手が疲れたよ…)

揺杏「チカセンたちもう行ったよ」

爽「にゃにい!?」

揺杏「あーもう、よだれでてるし」

爽「くやしいが…私の負けだ…」フキフキ

揺杏「なにと戦ってんのさ」

長くなりそうなんで一旦切る
つづくよー

乙です
原作から年齢設定を変えてないなら、成香は二年生では?

>>370
本当だぁ…
一年というのは間違いですね
完全に間違えて覚えてた

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年11月14日 (土) 22:59:33   ID: h3YXbBVF

どこに続くんだよぅ……

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