【艦これ】神通「祭囃子の中を、提督と」【浴衣神通】 (43)

浴衣姿の神通とお祭りに出かけるお話です。本編>>2から


過去作:神通ちゃん出演作品(今回と関係はなし)

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その他の作品もありますが、リンク辿って頂くかトリップ検索でお願いします。


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「お待たせいたしました」


恐る恐るかけられたその声に、提督は答えられない。

彼女を前にして、言葉もなく固まっていた。


万事に置いて控えめ、問題児の多い鎮守府の中でも群を抜いて目立つ姉妹の中で主張せず、騒ぐ二人の後ろで穏やかに微笑んでいる。

そんな彼女なら、落ち着いた深い色の…そう。例えば黒基調とした、もっと大人しい格好をして来るものだと思い込んでいたのだ。



でも。

まさか、その彼女が。

「…てい、とく?」


よほど今の自分の服装に自信が無いのだろうか。

提督からすれば、まったくもってする必要のない心配としか言えないけれど、仕方ない。この子はそういう子だ。


怯え混じりの、涙目になりながらの問いかけに何か返さなければと思うが、それでも提督はまだ、答えられない。

彼らが勤務する鎮守府への道と一般道を区切る、大きくて厳しい門を待ち合わせ場所にして。


いつもとは違う格好をした彼女の姿を正面に見据え続ける。

…そう。

いつもとは違う、彼女の格好。



まさか、控えめな彼女が、こんなにも華やかな格好ををしてくるなんて。

まったくもって、思いもよらなかった。

秋の始めの、早くも姿を見せ始めた月の微かな光を背中にして。

薄闇の中に照らされるのは彼の鎮守府の切り札、川内型軽巡洋艦二番艦の浴衣姿。



彼女の頬と同じ桃色の生地に白百合の柄という組み合わせは、大人しい彼女の華やかさ、という矛盾した魅力を見事に惹き立たせていた。

長い髪をアップに纏めているせいで、浴衣の後ろ襟からうなじが覗いていて。

ぞくりとするほどに真っ白いそれを隠すように横髪がゆらゆらと頼りなく揺れるのが、提督をいっそう不安な気持ちにさせた。



胸に沸き立つどうしようもない程の気持ちを爆発させずにどうにか抑えられているのは、艶やかな彼女の服装の中で唯一落ち着きを放つ、紺色の腰帯のおかげだろうか。

そしてその腰帯だけが、目の前の信じられないほど美しい少女が自分の知っている、控えめで一途な秘書艦であることを表現していて。

だからこそ提督の心はさざめきだって、落ち着くことがない。

緊張でかさかさになった唇を、無理やりに動かす。


「神通」


それでも結局、出てきたことばは目の前のとびきりの美少女を示す名前だけ。

ただ、それだけだった。

恥ずかしがり屋のあいつの事だから、浴衣といっても目立たない地味なものを選びそうだ。

それでもいい。自分のために着てきてくれるのなら、何でもいい。その気持ちが嬉しいのだから。



そう、だから…どんな格好をしてきても、提督は神通の浴衣姿を褒めようと身構えていたのだ。



指定した待ち合わせ場所に30分も前から到着して。

さて、ではいったいどう褒めたものかと、直前まで考えていた。

緊張して上ずってもいい、どもってもいい。そう、とにかく褒めようと思っていたのだ。


可愛いよ、似合っているなと…男らしく、スマートに。

浴衣姿を褒められて照れた神通をからかう様に笑いながら手を差し伸べて、一緒に祭りへと向かう予定だった。

憎からず想っている少女へ、素直な好意を示しながら。

それが、この有様はどうだろう。


軽巡洋艦の部下…神通の浴衣姿をいま、まざまざと見せつけられて。

そのあまりの可愛さに、そのあまりの可憐さに。

月並みで余りにも情けない表現だが、提督は言葉を失ってしまったのだ。


そしてそんな提督の無言を、神通はどう解釈したのだろうか。

「あの、提督。やっぱり私の格好…変でしょうか?」

「い、いや。そんな事は無いと思うぞ」


縋る様にかけられた声に、もう既に鷲掴みにされていた心臓をひと突きにされて。

呻くように、提督はどうにかこうにか、それだけの返事を絞り出すのが精一杯だった。

本日分以上です。

華やかな浴衣にしてくると思ってました、でも期待を超えない恐れも抱いていました。
我が鎮守府の彼女の姿を見た瞬間に、私は神通と添い遂げる覚悟を心に刻みました。

…いやもうほんと、俺の嫁可愛すぎるだろ。
という訳で、今後書け次第投下していきます。どうぞよろしくお願いいたします。

神通、改
羽黒みたいに弱々しい?イメージだけど神通改二は超強気なイメージ
おつつ

せんせー現行でこれ以外のスレやってたらURLはよ

投下しちゃおうか迷いましたが、もう少し推敲してからとします。時間が取れれば明日かな。
>>12うちの神通ちゃんは提督絡みの事だけ超弱気です。
>>13現行はこれと>>1の曙スレしか持っていません。同時進行は二つまでと決めていますので。

最近かなり忙しく中々更新が難しいですが、長い目で見てやって下さいませ。では。

秋月着任時にはかろうじて保つことが出来た提督の理性を崩壊させる二番艦。
完全に誘ってやがる・・・。

カランコ、カランコと、夜の一般道に下駄の音が響く。

自分の下駄がアスファルトを叩くしらべが、しかし今の神通には聞こえていない。


数歩前を歩く提督の背中をぼんやりと追いながら。

神通は、数日前の軽巡洋艦寮での姉妹の会話を、ぼんやりと思い返していた。

「神通……せっかくのデートに、その浴衣はないでしょ?」

「せ、川内姉さん。デートなんかじゃありません」


事の発端は、この祭りのためにと浴衣を試し着していた神通への、姉の一言だった。

去年着た浴衣を今年も、とタンスから引っ張り出してきたのだが、それに思わぬあやがついた。


目立つのが嫌いな神通が好むのは、深い色の大人しい浴衣。これが何かマズイだろうか。

でも、と浴衣の評価は脇に置いて、神通はまず聞き捨てならない方の話題に言葉を返した。

だが、口を開いたのは川内ではなく…部屋にいるもう一人の艦娘。


「オトコノヒトと二人きりでお祭り。那珂ちゃんは十分、デートだと思うなあ」

「っていうかこれ、スキャンダル!?きゃーっ、アイドル人生が終わっちゃう!?」



川内はおろか妹の那珂まで…。

明日の提督とのお出かけをデートだと談ずる二人に、神通は言い訳をする様に漏らす。



別に、提督はデートのつもりで自分を誘った訳ではないのだと。

「へえ。じゃあ提督は、祭りに私たちも誘っておけって言ったの?」

「そ、それは……」


呆れ顔の川内の指摘に、神通は言葉を詰まらせる。

そして、言い訳のように……そう、言い訳のように、こう呟くのだ。



「別に、はっきりと確かめた訳ではないですから」

「ただ、偶然……他に誰かを誘うというお話が出なかっただけで」

言っている自分でも、なんだそれはと思ってしまうほどの反論。

語るに落ちた、という表情で肩をすくめる川内と那珂を見ているうちに声が小さくなって。

その隙に川内からトドメを刺されてしまう。うじうじとした神通を揶揄する様に、ただ一言。



「嬉しかったくせに」



意地悪そうに笑いながら姉にそう言われると、神通には返す言葉もない。

少なくとも神通の方から他に誰かを誘おうかと提案しなかったのは、偶然ではないのだし。

そして……そう。今だって、提督に誘われたあの瞬間を思い出す度に、自然と胸がときめいてしまうのだから。

「だったらさ、神通ちゃん!」


そんな神通に、今度は妹が顔を輝かせて迫る。


「提督をあっと言わせるくらい、とびっきりオシャレしていかなきゃ。ね?」

「アイツを見蕩れさせてやろうよ。今からみんなで選びに行ってさ!」


川内の服選びのセンスは良く知っている。

任せれば、神通では思いつかない様なコーディネートをしてくれるだろう。

「で、でも…」


何だか恥ずかしい。

あの人に見られるために頑張るのが、何だか恥ずかしい。


それに、もし失敗したら……?

そう思うと、やはり冒険はせずに今着ている大人しいタイプの浴衣にした方が良い気がする。



そんな神通の背中を押したのは、姉のこの言葉だ。

「提督に可愛いって、言われたくない?」

「……」


神通の心理を突く、川内のそんな問いかけに。

頬をこれ以上ないくらいに真っ赤に染めながら、神通は無言でコクンと頷いた。

本日ここまでです、がんばれヘタレ提督。

早く帰宅出来れば、明日更新。どうぞよろしゅう。

運営さん、浴衣が似合う軽巡、まだまだいますよ?(矢矧)
少しだけ投下します。

ああ、失敗した、失敗した。

神通の数歩前を歩きながら、提督は心の中で何度もそう呟く。


まったく、自分は何度、こういったドジを仕出かしたら気が済むのだろうか。

執務室のご立派な椅子にふんぞり返って命令を下す時は、ああも不遜な態度を示す癖に。

部下でない女の子――相手が神通であれば特に――を前にすると、こうも情けない事態に陥る。

原因はもう、これ以上ないくらいに分かっている。

神通の浴衣姿があまりも可愛いせいで言葉を失って、それがずっと続いてしまった。

せめて神通の方から話しかけてくれればと思うけれど、彼女が口を開く気配もない。



でもそんなのは当たり前。この沈黙は自分のせいなのだから。

だって、あの浴衣はおそらく、今日のために用意して来たもの。

自分と二人きりで祭りへ出かけるために、神通が用意して来てくれたものなのだから。

神通の性格を考えればそれは、決死の覚悟で用意してきたものに違いない。


提督である自分に似合っていると、可愛いと言われるため……

そんな乙女の純情をあろうことか自分は、



――変ではない



そう評しただけ。

ああ、そんな言葉を発したさっきの自分をぶん殴りたい!

いくら神通が可愛いと思っていても、それは言葉にしなければ伝わらないのだ。



言葉にすること。



それこそが、自分の神通に対する想いを伝える、最も冴えたやり方だというのに。

せめて会話を始めるきっかけとなるものはないだろうか。そう思って提督は耳を凝らす。


カランコ、カランコ。


神通の下駄の音だけが、会話の無い二人の間を取り持つように虚しく響くだけで。

二人で出かけると決まった時から待ち望んでいた祭囃子は、まだ聞こえない。

ヘタレ提督のせいで今回はあまり物語進まず。
次回は嫉妬神通を書けたらなあ、と思います。

(矢矧)運営さん、誰とは言いませんが浴衣の似合う艦娘はまだいると思います(矢矧)

他にやりたいことが浮かんできたので閉じます
ちょっと見切り発車しすぎました、すみません

明日新スレを立てる気でいますので、許して下さる方はそちらでお会いしましょう
第七駆逐隊(ぼのメイン)で短編のつもりです

それでは、また

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