魔王「こき使ってやるからな、覚悟しろ」奴隷(…勇者とも知らないで…) (37)

魔王「…なあ」

従者「はい」

魔王「俺たちってさ、魔物だよな」

従者「そうですね、まぁそれを最初に定義したのは人間ですが」

魔王「…」

従者「どうかなされたので?」

魔王「イマイチ、悪っぽさ足りないよな」

従者「そうですか?」

魔王「そうだろ」

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魔王「俺たちは人間が恐れおののく魔物だろ」

従者「はぁ」

魔王「足りないな」

従者「…と言うと…」

魔王「やっぱ、あいつらからみた魔物ってのはさ、もっとこう悪っぽくないとダメだろ」

従者「すっげー馬鹿っぽいですね」

魔王「え?」

従者「はい?」

魔王「あ、いや、何でもない」

魔王「…」

従者「…」

魔王「民は?」

従者「魔王様の支持率九十五%を維持しています、謀反が起こる可能性はほぼ皆無でしょう」

魔王「税は?」

従者「魔王様考案の新システムのおかげで民の負担は最低限でしょう」

魔王「貧富の差」

従者「我々が一軒家に住んでいるという時点で考慮する必要すらないでしょう」

魔王「そうか…」

魔王「…」

従者「どこからどう見てもいい国ですね」

魔王「…戦争は?」

従者「…」

従者「…現在人間との戦況は…」

従者「…我々が僅かに押していま」

従者「ただ、覆らないとも限りません」

魔王「いや、覆らんだろ、魔界屈指の魔将達だぞ」

従者「っせーな」

魔王「え?」

従者「はい?」

魔王「…ふーむ」

魔王「こうなると我々の威厳がなくなるな」

従者「もともと合ってないようなものでしたが」

魔王「んだとコラ」

従者「失礼致しました」

魔王「…労働力は?」

従者「…あー」

従者「…そういえば塔の建設に人手が足りないと」

従者「大臣がぼやいておりましたね」

魔王「それだぁ!」ガチャァン!!

従者「…」ビショビショ

魔王「奴隷だ!我々には奴隷が足りん!」

従者「…しかし魔界に奴隷制度というものは…」

魔王「バカものが」

従者「…」

魔王「魔物でなければいいのだ…!」ニヤッ

従者「…というと?」

魔王「人間の奴隷を、連れてこい!!」

従者「お気を付けて」

魔王「おう!!」

魔王「いや、お前だよ!!」

奴隷市場

従者「…ふーむ」

従者「中々小汚い場所でございますね」

魔王「なんで分かってて俺を連れてきたんだ?」

従者「一人じゃ心細くて」

魔王「嘘つけ」

従者「…あ、あれなんかどうですか?」

従者「踊り子」

魔王「俺の話聞いてた?」

従者「労働力」

魔王「聞いてんじゃねぇか」

従者「しかし、よくもまぁ…」

魔王「…」

従者「愚かな物ですね」

魔王「…全くだ」

魔王「我々魔物を、虐げていた頃と何ら変わりはせん」

従者「…」

魔王「…悪魔どもめ…」

従者「ま、今から魔王様も悪魔になるんですが」

魔王「…うぐ…」

魔王「お、俺はいいのだ!」

魔王「さぁ!いくぞ!」

従者「…はいはい、付いていきますよ」



ドンッ!

「あぐっ…」

魔王「…ん?」

「…ぁ…、ご、ごめんなさ」

魔王「…」

「…あ、あの…」

従者「そこに直れ、無粋な輩が」

従者「その首跳ね飛ばしてくれる」

「…ひっ…!」

魔王「おい、何でだよ」

魔王「いきなりマジになるのやめてくんない、俺も怖いんだが」

従者「生意気な口を叩きつつ、心の中では慕ってる風な感じを出してみました」

魔王「言っちゃダメな奴だと思う、それ」

魔王「すまんな、坊主」

魔王「…ん?」

従者「…魔王様…」

魔王「…あぁ」

魔王「お前、奴隷か?」

奴隷「は、はい…!」

魔王「決めた」

従者「馬鹿かすいませんでした」

魔王「謝るくらいならいうなよ!」

従者「こんなひょろひょろな子供を買ったところで奴隷になんてなり得ませんよ」

従者「ましてや労働力としてなんて」

魔王「ふん、お前は愚かだな、従者よ」

魔王「お試し期間だ」

魔王「取り敢えず1人、こいつを買おうではないか」

魔王「そうだな」

魔王「そして奴隷の扱い方というものを覚えよう」

従者「…」

従者「…まぁ、何事も慎重なのが魔王様のいいところでございますけれど」

魔王「決まりだ」

魔王「おい、お前」

奴隷「は、はい!」

魔王「俺について来い」バサァッ!



従者「いくらですか?」

商人「兄ちゃん、あんなもん欲しいのか?ただで持ってけ、いる方が損だ」

従者「ありがとうごさまいます」




魔王「…」

魔王「ふーっははははは!」

魔王「従者よ!!コイツはなんだ!?」

従者「奴隷でございますね」

魔王「そうだ!」

魔王「俺の威厳のために、必要なものだ」

魔王「そして俺は誰だ!?」

従者「…」

魔王「そうだ!魔王だ!」

魔王「…ふっふっ…」

魔王「残念だったな、奴隷よ」

魔王「こき使ってやるからな、覚悟しろ」





奴隷(…勇者とも知らないで…)

奴隷(なーにが、魔王だ!だよ)

奴隷(僕が勇者ってことにも気付かないではしゃいじゃって!)

奴隷(馬鹿め、僕は人間のスパイだ!)

奴隷(そして勇者だ!)

奴隷(見ていろ魔王!今にお前の寝首、掻いてやる!!)

魔王「…それにしても」

奴隷「…は、はい」

魔王「いくつだ?お前?」

奴隷「12歳です…」チンマリ

魔王「…」

従者「ちょっと後悔しました?」

魔王「し、してねーし!」

魔王「…取りあえず、だな」

魔王「おい、お前」

奴隷「は、はい」

魔王「名を何と言う?」

奴隷「…僕に名前はありません、好きに及びください」

魔王「…そうか」

従者「いいんじゃないですか、奴隷で」

従者「僕たちも魔王従者ですし」

魔王「そうか…」

魔王「…そうか…」

従者(ちょっと寂しがってるな、これ)

魔王「従者よ」

従者「はえ」

魔王「気の抜けた返事だな」

従者「抜けてますので」

魔王「こいつをどうするべきだと思う?」

従者「…」

従者「…まぁ、労働力として使うにはいささか幼すぎますね」

従者「どうでしょう、ここは一つ、我々の身の回りの世話をさせてみては」

魔王「よし、それだ!」

奴隷(…)

奴隷(…よし!これでいつでも殺せる!)

奴隷(今に見てろ!その化けの皮はいでやるぞ!)

従者「何睨んでる」

奴隷「あっ、いや、何でもないですぅ…」

魔王「だからいきなり怒るなってば」

従者「1つ、魔王様のベッドのシーツはイチゴ柄」

奴隷「1つ!魔王様のベッドのシーツはイチゴ柄!!」

魔王「え?違うんだけど」

従者「1つ!魔王様の好物は地獄トカゲの丸焼き!」

奴隷「1つ!魔王様の好物は地獄トカゲの丸焼き!」

魔王「そんなワイルドに見える?俺?ねえ?」

従者「1つ!魔王様の趣味は萌えアニメ鑑賞!」

奴隷「1つ!魔王様の趣味は萌えアニメ鑑賞!」

従者「これさえ守っておけば誤魔化せますよ」

奴隷「り、了解です!」

魔王「…」

数時間後 

魔王「どうだ?奴隷の様子は?」

従者「ええ、なかなか筋がいいですね、というか、仕込まれてます」  

魔王「仕込まれてる?」
 
従者「奴隷としての価値を釣り上げるために、無理やり教えこまれたのでしょう」

魔王「ふーん」

魔王「ん?でもただでもらってなかったか?」

従者「…ええ」

魔王「どういうことだ?」

従者「簡単なコトですよ」

従者「要らなくなったものは捨てられる」

従者「どんな理由があるにせよ、彼は人間側ではいらない人間なのでしょう」


奴隷(…言ってろ!今に見てろよ!)

魔王「さあ、飯にするか」

従者「…んあー、やっとこんな時間ですか」パタン

魔王「凄いよな、お前、平気で俺の前で本読むもんな」

従者「あぁ、奴隷くんのおかげで仕事がなくなって楽です」

魔王「楽とかいうなよ…」

奴隷「あ、あの…」

魔王「ん?」

奴隷「…ま、魔界は初めてなので…食材が…」

魔王「あぁ、勝手がわからないのか」

魔王「いい、俺が作る」

奴隷「ええっ!?」

従者「魔王様の数少ない特技ですよ」

魔王「どうだ!魔界フルコースだ!」

従者「いつ見ても、そそりますね」

奴隷「す、すご…」

魔王「はっはっ、だろうが」

魔王「今日はいい大魔王イカが入ってな」

従者「セリフが魔王のそれじゃないですね」

魔王「やかましい、とっとと食え」

従者「いただきます」ペコリ

魔王「うむ、いただきます」

奴隷「…」

奴隷「…」

魔王「…ん?どした?食わんのか?」

魔王「遠慮するな、人間界のものと見た目は違うがこっちもいけるぞ」

奴隷「…いえ…」

従者「魔王様、奴隷は主よりモノを口に運んではいけないのですよ」

従者「どんなに空腹であろうとも奴隷は主より先んじることは許されないのです」

魔王「あぁ、そうか」

奴隷「そ、そうなんです…」

魔王「うん、まぁいいから食え」

奴隷「え?」

魔王「いいから食え」

魔王「人間界のルールなど俺は知らん」

魔王「食わねば力もつかんだろうが」

奴隷「…」

奴隷(…情けないな、奴隷根性がが染み付いてるや…)

奴隷(…勇者、なのに…)

魔王「まぁ、なんだ」

魔王「あっちで色々あったのかもしれんが」

魔王「…その、な」

従者「主が食えと言っていますよ、さっさと席につきなさい」

奴隷「は、はい…」

パクッ

魔王「…」ジー

従者「…」ジー

奴隷「…お、美味しいです…」

魔王「だろうが!」

魔王「にしても随分と奴隷はひどい扱いを受けているのだな」

従者「まぁ、彼らは肌の色や瞳の色でさえ差別の対象としますからね」

従者「我々魔物のように、一世代違えば例え親と子であっても全く異なる姿、というわけには行きませんから」

魔王「はっはっ!」

奴隷「…」

魔王「どうだ?魔界も悪くはないだろう?」

奴隷「…そう、ですね」

魔王「お前も何か差別されたのか?」

奴隷「…」

ーーーー

「…赤い目」

「悪魔の子だわ」

「あの子の家系は、魔物とまぐわったのか?」 

「道理で、王家の分家といえども呪われた一族」

「両親ともに早死に、天涯孤独」

「王の血が、彼ら一族の存在を許さなかったのだわ」





「お前を旅に出す」

「身分を隠し、奴隷として生き、好機があれば魔物の情報を探ってくるのだ」

ーーーー

奴隷「…」

奴隷「…」ポロポロ

魔王「お、おい!?」

従者「デリカシーのない方ですね、ディリアル」

魔王「なんで呼び捨てた!?」

魔王「じゃ、じゃなくて!」

魔王「お、おい!すまん!」

魔王「…つ、辛い事だったか…?」

奴隷「…」ポロポロ

奴隷「…赤い目…」

魔王「赤い目?」

従者「…」

奴隷「…皆、僕の赤い目を見て…蔑んだ…」ポロポロ

魔王「…」

奴隷「…」スースー

魔王「…寝たか」

従者「泣き疲れましたか」

魔王「…赤い目」

従者「恐らく、彼の先祖は魔物と交わったのでしょう」

従者「隔世遺伝と言う奴ですよ」

魔王「…たかが、それだけのことで」

従者「人間にとっては許し難いことなのでしょう」

魔王「…」ドンッ!

魔王「…例え魔物と人間でも…そこに偽りなどないはずだ…!」

従者「…しかし、人間にとってそれは、誤りでしか無いのですよ」

魔王「バカものが…他者を愛する心が、誤りであってたまるか…!」

従者「…そうですね」

従者「そして、恐らく彼が今まで誰からも買われなかった理由もそれでしょう」

魔王「…赤い目か」

従者「ですね」

従者「人間という生き物は恐ろしいものです」

従者「他者を蔑むことに、何の疑問も持たない」

従者「心などいらないのですよ魔王様、そこに理由があれば」

従者「人を貶めることに、何の疑問も持たない、それが人間です」

魔王「…」







…ピッ

奴隷「…王様、王様」

「…なんだ」

奴隷「…ついに、魔物に取り入ることができました…!」

「…なに…?」

奴隷「しかも聞いてください!魔界の王、魔王の…」

「…でかしたぞ」

奴隷「は、はい…!」

「お前はそこで私がいいというまで、奴隷のフリをしろ」

「そして我々に有益な情報を流すのだ」

奴隷「了解です!」

「…隙あらば、殺しても構わん」

奴隷「は、はい…!」

…ピッ

奴隷(…ふふ、ふふっふっふっ)

奴隷(ついにやった…!)

奴隷(何が魔王だ!)

奴隷(護衛もつけないで、殺してくれと言っているもんじゃないか!)

奴隷(…ふふ、この調子で、あいつらの弱点を…!)

食わねば力もつかんだろうが

奴隷(…)

奴隷(騙されるか…)

奴隷(…お前は、僕が殺してやる)

奴隷(…人間のために…人類のために…)




奴隷(…ズキって…するな…!!)

とりあえずここまで

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