北条加蓮「みんなと繋いだ手」 (28)



―――事務所


加蓮「…………ん」モゾ


加蓮「ふあぁ……ぁふ」

加蓮「……んー……」ムク…

加蓮「…………」ボーッ


P「――お。起きたか、加蓮」

加蓮「んん……。おぁよー……」クシクシ

P「よく寝てたな」

加蓮「……あさ……?」

P「違う違う、夕方」クス

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加蓮「ゆうがた……。あぁそっか、事務所だっけここ……んーっ」ノビーッ

P「目ぇ覚めたか?」

加蓮「うん、起きたよ――ていうか暑い、毛布掛けすぎっ」バサッ

P「はは、それは俺のせいじゃないって」

加蓮「……どうせ李衣菜と泰葉のお節介でしょ?」

P「最近涼しくなってきたから、冷えたら大変だーってな」

加蓮「まだ9月になったばっかりじゃん……もう、心配性なんだから」

P「とか言いながら、嬉しそうだな」

加蓮「べ、別にそんなことっ…………あるけどさ」

P「ふふ、そっか」

加蓮「……嬉しいよ、嬉しいに決まってる」

P「うん」ナデ

加蓮「ん。……二人には内緒ね、内緒。ふふっ」

P「あはは、真正面から言ったら真っ赤になって逃げ回るだろうしな」

加蓮「あ、それはそれで面白そう♪」

P「やめてやれって……。嫌われても知らないぞ?」

加蓮「ふふ、大丈夫だよ。そんなのあり得ないし」

P「分からないぞー、今もどこかで加蓮の悪口言ってるかも」


加蓮「…………」ウル…

P「ごめん俺が悪かった泣かないでくれ」

加蓮「Pさんきらい」

P「ご、ごめんって……李衣菜も泰葉も、加蓮を悪く言うはずないだろ?」

加蓮「……ふふ、だよね。それこそあり得ないよね」

P「そうそう。二人は加蓮のことが大好きだからな」

加蓮「えへへ。愛されてるね、私ってば」

P「うん、愛されてるぞ」

加蓮「Pさんも、私のこと好き?」

P「もちろん。大好きだ」

加蓮「…………」

P「言わせといて自分で照れるなよ……」

加蓮「や、やー……やっぱりほら、こ、心の準備ってやつ? いるじゃないっ?」

P「あーはいはい」

加蓮「ふふ、恥ずかしい。……えへへ、ふふふっ」

P「……なにニヤニヤしてるんだ?」

加蓮「んーん、なんでも。なんだかね、胸の奥がきゅーってして……すごくあったかいんだ」

P「あったかい?」

加蓮「うん、あったかいの。幸せすぎて、って言うと大袈裟かもしれないけど」

P「幸せ、か……」

加蓮「……ね、ちょっと手、出して?」

P「ん? ほい」スッ

加蓮「うん――」


ぎゅっ


加蓮「ほら、あったかい。ねっ」

P「……うん、あったかいな」

加蓮「おっきくて、優しい手……。この手が、私をここに連れてきてくれたんだよね」

加蓮「私と向かい合ってくれて、私のこと、真剣に考えてくれて――」

加蓮「それから、李衣菜や泰葉に出会わせてくれた。……ほんとに、本当に嬉しかったよ」


『一緒なら出来るよ。私たちなら、どんなことだってやれるって!』

『あなたも私も、もう独りじゃないから……。きっと、大丈夫』

『『だから――』』


加蓮「――だから、私は頑張れるの。この先、ずっとずっと……いつまでも、ずーっと」

P「…………」

加蓮「たぶん、別の未来だってあったかもしれないけど……」

加蓮「今の私は、Pさんやちひろさん、李衣菜と泰葉がいたからあるんだって思ってる」

P「……うん。ありがとな」

加蓮「あ、ううんっ、お礼を言うのは私のほうっ」フルフル

加蓮「……Pさんがここで繋げてくれた手――絆は、絶対に離さないから……だからね」

P「うん……うん」


加蓮「これからも……よろしくお願いしますっ!」

P「――ああ、こちらこそ!」



―――


毛布「――今激しく後悔してる」

P「ん、なにがだ?」

毛布「……勢いに任せてペラペラ喋って……」

P「そうか? 俺はほんとに嬉しかったけど」

毛布「~~っ、~~っ!」ペシッペシッ

P「あはは、くすぐったい」

加蓮「う~……。二人には絶対内緒だからねっ」モゾ

P「真っ赤になって逃げ回るのは加蓮だろうからなー、ははは」

加蓮「絶対だからねっ、言ったらほんとに嫌いになるからね!」

P「ふふ、はいはいっと」

加蓮「もー……!」

P「それにしても……二人とも、どこまで買い物しに行ったんだろうなぁ」

加蓮「ふぅん、買い物に行ってるんだ?」

P「ああ。……っと、目的は聞いてないけどさ」

加蓮「そっか。……さっきの途中で帰ってこなくてよかった……」

P「おしい!」

加蓮「おしくない!」

加蓮「はぁ、もう……。ていうか、私抜きで買い物なんてずるい……私も行きたかったな」

P「ぐっすり寝てたからなぁ、起こすのも気が引けたんだろ」

加蓮「むー、今度からは疲れてても寝ないように……」

P「いや、疲れてたら無理しないでくれよ――」


がちゃっ


泰葉「ただいま」

李衣菜「戻りましたー」

加蓮「あ――」

P「おー、おかえり。遅かったな」

李衣菜「はい、ただいまです。いやぁ、結構悩んじゃって」

泰葉「ふふ、なかなかこれだ、っていうのが見つからなくて」

P「そっか、寒くなかったか?」

李衣菜「あはは、風は吹いてますけどそこまでは――って、あ。加蓮、起きてたんだ?」

加蓮「……おかえり、二人とも」ムスー

李衣菜「……あれ?」

泰葉「何故か不機嫌……どうしたの?」

加蓮「どうしたもこうしたもないよ。一緒に買い物行きたかったのに」

泰葉「あ……えっと」チラッ

P「んー。内緒にしてたほうが良かったろ?」

加蓮「へっ?」

李衣菜「えへへ、気が利きますねPさんっ」

泰葉「ふふ、ありがとうございます」

加蓮「え……ちょ、ちょっと待ってよPさん知ってたの!? どういうことか説明してよ!」

P「はは、二人から聞いたほうが早いよ。な?」

李衣菜「はいっ。……泰葉、せーので……」

泰葉「ええ、せーの……」

加蓮「ちょっと、なんの話――」


「「――誕生日おめでとうっ、加蓮♪」」

加蓮「――――」

泰葉「はい、加蓮。これが誕生日プレゼント」

加蓮「――――」

李衣菜「お店、いろんなとこ回ったんだけどさー。なかなかいいのなくて」

加蓮「――――」

泰葉「ふふっ、同じお店ぐるぐる行ったり来たりしたりね……」

加蓮「――――」

李衣菜「あはは、店員さんに変な目で見られちゃったよね……って、加蓮? おーい」

泰葉「加蓮、大丈夫……?」

加蓮「――はっ!? ま、待って待って! さすがに誕生日前は油断してた!」

李衣菜「あぁ、なんだ」ホッ

泰葉「てっきりプレゼントが気に入らなかったのかと……」

加蓮「そ、そんなことない! ただ、いつもは当日か過ぎてからだったから、びっくりしちゃって……!」

P「ふふ、『加蓮が寝てる、行くなら今しかない!』ってな」

李衣菜「誕生日のあともスケジュール詰まってたし、慌てて飛び出したんだよね」

泰葉「ふふ。でも、加蓮が喜ぶもの……しっかり選んできたから」

加蓮「う、うん……ありがと。……これ、大切にするから……!」

李衣菜「うんっ。そしたら、これからまた一年……」

泰葉「よろしくね、加蓮」

加蓮「うん、……うんっ! これからもよろしく、李衣菜、泰葉!」

李衣菜「へへ♪」

泰葉「ふふっ……♪」

加蓮「……ねっ、李衣菜、泰葉。手、貸してくれる?」

李衣菜「へ? ……こう?」

泰葉「……? はい、どうぞ」

加蓮「ふふ――」


ぎゅ……


加蓮「…………~~~っ――うん、やっぱり、あったかい……♪」

李衣菜「よ、よく分かんないんだけど」

泰葉「ふふっ……加蓮が嬉しそうならいいじゃない」

李衣菜「へへ、うん。そだね」


加蓮「ふふ♪ 二人とも、ずっと一緒だよ!」


P「ふふ……」

P(――うん、いい笑顔だ)



―――雑踏


ちひろ「しまった……慌てて出てきたからお財布にお金が……!」

ちひろ「これじゃ加蓮ちゃんのバースデーケーキが買えないっ……助けてプロデューサーさーん!」



おわり

というお話だったのさ
これで無事、三人の誕生日を各々三回お祝いできたよー

一日前だけど加蓮、誕生日おめでとう!

(分かりにくくて)すまんな

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